以下では、図面を参照しながら本発明に係る接続構造、接続方法及び接続部材の実施形態について詳細に説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法等は図面に記載のものに限定されない。
接続構造、接続方法及び接続部材は、複数の耐火ケーブルを互いに接続するためのものである。本明細書において、「心線」は、導体、耐火層及び絶縁体層を有する耐火電線を含む。「ケーブル」は、心線と、心線を覆うシースとを備える耐火ケーブルを含む。「耐火部材」とは、例えば、「接続部耐火試験方法(小型加熱炉)」(JCS7505:2014)に規定する耐火試験を経ても絶縁性能を発揮する部材をいい、燃えないように耐火性をもたせる部材を含んでおり、耐火性能を有する部材、及び、他の部材を覆うことにより当該他の部材の燃焼を抑制する部材、を含んでいる。
「空間形成部材」は、心線が通る空間を形成する部材を示しており、例えば、複数の心線のそれぞれが通る空間を区画形成する部材を含んでいる。「被覆部材」は、他の部材を被覆する部材を示しており、他の部材の全体を覆う部材、及び他の部材の一部を覆う部材の両方を含む。また、「螺旋状」は、時計回り又は反時計回りに巻かれることを示しており、1周以上巻かれる状態、及び1周未満巻かれる状態の両方を含む。
(第1実施形態)
図1に示されるように、第1実施形態に係る接続構造1は、複数のケーブル2A,2Bの間に位置するケーブル接続部Cにおいて、ケーブル2A,2Bを互いに接続する。ケーブル2A及びケーブル2Bは耐火ケーブルである。ケーブル2A,2Bの断面形状は例えば円形状であるが適宜変更可能である。接続構造1は、一例として、スプリンクラー消火設備又は非常灯等、非常時において電力供給が可能な構造である。
ケーブル2Aの構造とケーブル2Bの構造とは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。以下では、ケーブル2Aの構造とケーブル2Bの構造とが互いに同一である例について説明する。また、ケーブル2A及びケーブル2Bのそれぞれをケーブル2として説明する場合もある。
ケーブル2は、例えば、複数の心線10と、複数の心線10を被覆するケーブルシース3(シース)とを備える。心線10の本数は、例えば、4本であるが適宜変更可能である。各心線10は、導体11と、導体11を被覆する耐火層12と、耐火層12を被覆する絶縁体層13とを備える。
ケーブル接続部Cでは、心線10の端部が剥き出しにされている。ケーブル接続部Cでは、心線10の端部から、導体11が露出するように絶縁体層13及び耐火層12が剥ぎ取られている。また、心線10の端部から、導体11、耐火層12及び絶縁体層13がこの順で並ぶように絶縁体層13及び耐火層12が剥ぎ取られてもよく、絶縁体層13及び耐火層12の剥ぎ取り方は適宜変更可能である。耐火層12は、例えば、マイカによって構成された耐火層であってもよい。この場合、耐火層12は、雲母を含んでおり、電気絶縁性及び耐熱性に優れた層とされている。また、絶縁体層13は、例えば、架橋ポリエチレンによって構成されている。但し、耐火層12及び絶縁体層13の材料は適宜変更可能である。
一例として、複数の心線10において、絶縁体層13及び耐火層12が剥ぎ取られる箇所は、ケーブル2の長手方向D1に互いにずれている。しかしながら、本実施形態では、複数の心線10において、絶縁体層13及び耐火層12が剥ぎ取られる箇所は、長手方向D1に互いにずれていなくてもよく、適宜変更可能である。
本実施形態に係る接続構造1は、ケーブル2A及びケーブル2Bのそれぞれから延び出す心線10の導体11を互いに接続する接続子4と、各心線10が通る空間を形成する空間形成部材5と、複数の心線10及び空間形成部材5を覆う耐火部材6と、耐火部材6を被覆する被覆部材である常温収縮部材7とを備える。本実施形態に係る接続部材21は、例えば、接続子4、空間形成部材5及び耐火部材6を備える。接続子4は、例えば、複数の導体11をかしめて接続するスリーブである。接続子4は、2本の導体11を突き合わせた状態でかしめて接続するタイプのものであってもよいし、2本の導体11を並列させた状態でかしめて接続するタイプのものであってもよい。
常温収縮部材7は耐火部材6及びケーブル2A,2Bを外側から締め付けるために設けられ、ケーブル接続部Cを被覆する外被となる部材である。例えば、常温収縮部材7は、常温で収縮し伸縮特性に優れたゴムによって構成される常温収縮チューブである。常温収縮部材7は、例えば、絶縁性及び防水性を有する材料によって構成されている。具体例として、常温収縮部材7の材料はEPDMゴム又はシリコーンゴムである。
常温収縮部材7は、心線10及びケーブル2A,2Bを締め付ける前には、引き抜き可能であって且つ管状に形成された拡径保持部材の外周に拡径された状態で保持されていてもよい。この拡径保持部材は、例えば、螺旋状に巻かれた解体線と、引き抜き可能な紐状体であるコアリボンとを備え、コアリボンを引き抜くことによって順次解体線から解体可能とされている。拡径保持部材に拡径された常温収縮部材7は、耐火部材6及びケーブル2が通された状態でコアリボンが引き抜かれることにより、徐々に縮径してケーブル2及び耐火部材6を締め付ける。
以上のように、引き抜き可能な管状中空の拡径保持部材としては、前述のようにコアリボンを引っ張ることによって常温収縮部材7を徐々に縮径させる態様もあれば、拡径保持部材が常温収縮部材7に対して摺動し常温収縮部材7から引き抜かれることによって離脱する態様もある。また、耐火部材6を被覆する被覆部材は、常温収縮部材7以外のものであってもよく、例えば、絶縁性及び防水性を有するテープ部材であってもよいし、2液混合型レジン等、液状の樹脂材料であって且つ時間の経過と共に硬化する樹脂部材であってもよい。この場合、被覆部材は、耐火部材6を囲むように配置されたモールドに流し込まれる樹脂が硬化して形成された樹脂部材であってもよい。
図2は、ケーブル2から延び出す複数の心線10、空間形成部材5及び耐火部材6を示す斜視図である。図3は、耐火部材6を示す正面図及び側面図である。図2及び図3に示されるように、耐火部材6は、複数の心線10及び空間形成部材5を覆う螺旋状とされている。耐火部材6は、例えば、接続子4、心線10及び空間形成部材5を覆って空間形成部材5と共に耐火性能を発揮する。例えば、耐火部材6は、外力が付与されない状態において螺旋状とされている。
耐火部材6は、例えば、シリコーンゴムによって構成されている。耐火部材6は、耐火のゴム材料によって構成されていてもよい。例えば、耐火部材6は、着火すると絶縁性を有すると共に硬くなって焼結し火を通さなくする材料であってもよい。また、シリコーンゴムは、燃焼時及び燃焼後のいずれにおいても、電気伝導性が高い物質の発生が少ない材料である。よって、耐火部材6がシリコーンゴムによって構成されている場合、耐火性がより高い耐火部材6とすることができるので、耐火性能及び絶縁性能を高めることができる。
一例として、耐火部材6のショアA硬度は、60以上且つ80以下、又は70以上且つ80以下であり、耐火部材6の伸び率は110%以上且つ400%以下、又は110%以上且つ200%以下であり、耐火部材6の引張強度は3.0MPa以上且つ9.0MPa以下である。また、耐火部材6の発煙性(Ds値)は30未満であり、耐火部材6の酸素指数は40以上且つ60以下である。耐火部材6は、例えばケーブル接続部Cの大きさに応じて、切断されて用いられてもよい。
耐火部材6は、可撓性を有するシート状部材とされていてもよい。また、前述したように、耐火部材6は螺旋状に癖づけられていてもよい。すなわち、耐火部材6は、その軸線方向(長手方向)に長く延びる耐火螺旋チューブであってもよい。耐火部材6は、空間形成部材5に接触する内面6aと、内面6aの反対側を向く外面6bと、耐火部材6の軸線方向の両端に位置する螺旋状の端面6cとを有する。
ここで、「可撓性」は、手で撓めることが可能であることを含んでおり、柔軟であるがゆえに手で折り曲げたり丸めたりすることが可能であることを含む。「可撓性」は、力が加えられても折れない性質を含んでおり、力が加えられることにより自在に変形する性質を更に含んでいてもよい。「シート状」は2次元的に広がっている状態を示しており、「シート状部材」は薄くて容易に他の部材に被せられたリ巻き付けられたりする部材を含む。
耐火部材6は、例えば、金型成形、又は、軸線方向に押し出し成形されることによって製造される。この場合、成形時点において耐火部材6が螺旋状とされているので、耐火部材6の螺旋形状が確実に維持される。但し、耐火部材6は、予め平坦状とされ、平坦状の耐火部材6がパイプ等に巻き付けられた後に熱処理や架橋処理がされることにより、耐火部材6が事後的に螺旋状にされてもよい。
耐火部材6の長手方向の長さL1は、例えば100mm以上且つ150mm以下であり、一例として130mmである。耐火部材6の螺旋の巻き数は、例えば、2周以上である。耐火部材6をその軸線方向に直交する面で切断したときの断面の直径E(耐火部材6の螺旋部分の直径E)は、例えば、5mm以上且つ50mm以下であり、一例として20mmである。但し、直径Eは、ケーブル2の直径等に応じて適宜変更される。耐火部材6の厚さは、例えば0.5mm以上且つ2.0mm以下であり、一例として1.0mmである。また、巻かれた耐火部材6の厚さの合計は、例えば、2mm以上である。この場合、空間形成部材5の外側には、2mm以上の厚さとなるように耐火部材6が巻き付けられることとなる。
図4は、空間形成部材5を示す正面図及び側面図である。図2及び図4に示されるように、空間形成部材5は、心線10を通す空間Sを形成する。空間形成部材5は、例えば、心線10の位置を定めるために設けられる。例えば、空間形成部材5は、耐火部材6の内側の空間を複数の領域に仕切ることによって各心線10が通る空間Sを形成する。このように空間形成部材5が心線10を通す空間Sを形成することにより、耐火部材6の内部における心線10の位置を安定させることが可能となる。すなわち、空間形成部材5が形成する複数の空間Sのそれぞれに心線10が配置されることにより、一の心線10と他の心線10との交錯が抑制されると共に、空間Sとして1本1本の心線10の経路が確保される。
空間形成部材5は、例えば、ケーブル2の軸線Lから径方向の外側に放射状に延びている。空間形成部材5は、中央部5bと、中央部5bから放射状に延びる延在部5aを有する。一例として、空間形成部材5は十字状に配置される4個の延在部5aを有し、4個の延在部5aはケーブル2の周方向に等間隔に配置される。この場合、複数の延在部5aは90度の位相角度をもって配置される。
空間形成部材5は、例えばシリコーンゴムによって構成されている。一例として、空間形成部材5の材料は、耐火部材6の材料と同一であるが、耐火部材6の材料とは異なる材料であってもよい。空間形成部材5の各延在部5aは、可撓性を有するシート状部材であってもよい。空間形成部材5は、例えば、耐火部材6と同様、金型成形、又は軸線方向(長手方向)に押し出し成形されることによって製造される。この場合、例えば、成形時点において空間形成部材5は十字状とされている。
空間形成部材5の各延在部5aは、各心線10に対向する平面5cと、平面5cの中央部5bとの反対側の端部に位置する端面5dとを有する。延在部5aの表裏の平面5cは、共にケーブル2(螺旋状の耐火部材6)の径方向に延びており、例えば、互いに平行に延びている。すなわち、延在部5aの太さは径方向に沿って一定である。一例として、端面5dは、平面5cに交差する方向に延びる平面であり、平面5cに直交していてもよい。端面5dは、空間形成部材5の径方向外側の端部に位置しており、耐火部材6の内面6aが対向又は接触する面である。
空間形成部材5の長手方向(ケーブル2の軸線方向)の長さL2は、例えば、70mm以上且つ120mm以下であり、一例として95mmである。空間形成部材5の延在部5aの厚さTは、例えば、1.5mm以上且つ2.5mm以下であり、一例として2.0mmである。また、空間形成部材5の幅B(2つの延在部5aの長さと延在部5aの厚さとの和)は、例えば、15mm以上且つ25mm以下であり、一例として20mmである。
次に、接続部材21を用いてケーブル2を接続する接続方法について説明する。以下では、2本のケーブル2A,2Bを互いに接続する例について説明するが、本実施形態に係る接続方法は、3本以上のケーブルを接続する場合、又はケーブルと他の機器とを接続する場合にも適用可能である。まず、図5(a)に示されるように、ケーブル2Aの端面とケーブル2Bの端面とを対向させる。このとき、ケーブル2A又はケーブル2Bの一方を、筒状に拡径された常温収縮部材7に通しておく。
この状態で図5(b)に示されるように、ケーブル2A及びケーブル2Bのそれぞれからケーブルシース3を剥いで複数の心線10を露出させる。この次に、複数の心線10の対向位置を長手方向D1に沿って千鳥配置としてもよい(複数の心線10のそれぞれを長手方向D1に異なる位置で対向させてもよい)。しかしながら、空間形成部材5で心線10が通る空間Sを仕切る本実施形態では上記の千鳥配置を不要とすることができる。
続いて、図6(a)に示されるように、各心線10に対し、導体11が露出するように、絶縁体層13及び耐火層12を剥ぐ端末処理を行う(絶縁体層及び耐火層を剥ぐ工程)。このとき、導体11、耐火層12及び絶縁体層13がこの順で露出するように絶縁体層13及び耐火層12を剥ぐ端末処理(段むき)を行ってもよいが、本実施形態では導体11同士を接続すればよいため、耐火層12の露出を不要とすることができる。そして、図6(b)に示されるように、複数の導体11を突き合わせた後に、複数の導体11を接続子4でかしめて複数の導体11を接続する(導体を接続する工程)。このとき、複数の導体11を突き合わせる代わりに、複数の導体11を並列させ重ね合わせた状態として、接続子4で接続(分岐接続)してもよい。
次に、図7(a)に示されるように、複数の心線10のそれぞれの間に空間形成部材5を配置し、複数の心線10のそれぞれを延在部5aの各平面5cに対向させる。すなわち、空間形成部材5が形成する空間Sのそれぞれに各心線10を配置する(心線を空間形成部材が形成する空間に通る工程)。そして、図7(b)に示されるように、複数の心線10及び空間形成部材5に耐火部材6を巻き付ける(耐火部材で覆う工程)。
その後、図8及び図1に示されるように、ケーブル2A又はケーブル2Bを通しておいた常温収縮部材7で耐火部材6を覆い、例えば拡径保持部材のコアリボンを引き抜くことで常温収縮部材7を順次縮径させる。このように縮径させた常温収縮部材7によってケーブル2A,2B、耐火部材6及び空間形成部材5を強く締め付ける(耐火部材及び空間形成部材を被覆部材で締め付ける工程)。以上の工程を経て接続構造1の施工が完了する。
次に、本実施形態に係る接続構造1、接続部材21及び接続方法の作用効果について詳細に説明する。
本実施形態に係る接続構造1、接続部材21及び接続方法は、心線10が導体11、耐火層12及び絶縁体層13を有し、複数の心線10の導体11同士が接続子4によって互いに接続される。接続構造1は、心線10を通す空間Sを形成する空間形成部材5を備え、空間形成部材5によって形成される空間Sに心線10が配置される。また、接続構造1は、耐火部材6を備え、耐火部材6は空間形成部材5によって形成された空間Sに配置された心線10と空間形成部材5とを覆う。よって、空間形成部材5が形成する空間Sに心線10を配置すると共に耐火部材6で空間形成部材5と共に心線10を覆う。
ところで、従来は耐火ケーブルの接続において、マイカテープが用いられることが一般的であった。マイカテープは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カリウム及び粘着剤から構成されている。従来の耐火ケーブルの接続方法は、耐火ケーブルの製品規格であるJCS4506に記載されており、JCS4506によると、心線接続部について、マイカテープを4回巻きするように指定されている。
しかしながら、マイカテープは、柔軟性及び粘着性が低いので、巻き付けが困難であると共に扱いづらい。よって、マイカテープを巻き付ける場合には、巻き付けの品質が作業者の熟練度に依存して変動すると共に綺麗に巻くことが困難である。更に、本実施形態のように複数の心線を備える場合には、各心線に対してマイカテープを4回巻きしなければならない。従って、巻き付けの作業に多大な時間を要するため、作業性がよくないという問題があった。
これに対し、本実施形態では、前述したように、空間形成部材5で心線10を通す空間Sを画定し、空間Sに心線10を配置した後に、耐火部材6で空間形成部材5と共に心線10を覆う。従って、耐火性の空間形成部材5と耐火部材6とによって囲まれた空間Sに個々の心線10が収納されるので、マイカテープを用いなくても耐火性能を確保することができる。従って、マイカテープを用いる代わりに、空間形成部材5に心線10を配置して耐火部材6で空間形成部材5と心線10を覆えば所望の耐火性能が得られるため、耐火性能を確保するケーブル接続作業を容易に行うことができる。
また、空間形成部材5が形成する空間Sに心線10を通した後に耐火部材6で覆う作業を行う。その結果、空間形成部材5が形成する空間Sに心線10を配置することにより、心線10と他の心線10とが互いに交錯せずに1本1本の心線10の経路を確保することができる。よって、1本1本の心線10の位置を安定させた状態としつつ各心線10を耐火部材6で覆うことができ、耐火部材6の被覆時における心線10の移動を抑制することができるので、ケーブル2A,2Bの接続作業を効率よく行うことができる。なお、JCS4506においては、マイカテープ巻きをした心線接続部について、黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープを2回以上巻き付ける作業が求められる。しかしながら、本実施形態では、上記の作業を不要とすることができるので、ケーブル2A,2Bの接続作業を更に効率よく行うことができる。
具体的には、図1に示されるような4心の耐火ケーブルの接続作業において、従来のマイカテープを4回巻きする場合には、1箇所を4回巻きする作業に3分程度の時間がかかるので、4箇所の心線にマイカテープを巻き付ける場合には12分もの時間がかかった。これに対し、空間形成部材5に各心線10を配置して耐火部材6を巻き付ける場合には、各心線10に対するマイカテープの巻き付けが不要となるため、少なくとも10分以上の時間(更にポリエチレン絶縁テープを巻く時間も)を削減することが可能となる。
また、空間形成部材5は、ケーブル2の軸線Lに対して放射状に延びる延在部5aを有する。よって、空間形成部材5を配置することにより、放射状に延びる複数の延在部5aの間に心線10を配置する空間Sを容易に形成することができる。
また、耐火部材6は、外力が付与されない状態において螺旋状とされている。よって、耐火部材6が螺旋状とされていることにより、耐火部材6を手で撓ませて耐火部材6の巻き付け作業を容易に行うことができる。すなわち、耐火部材6は予め螺旋状とされているので、螺旋状とされた耐火部材6を手で開き、耐火部材6の内面6aで空間形成部材5の各端面5dを覆うことによって空間形成部材5に対する耐火部材6の巻き付けを容易に行うことができる。従って、耐火部材6の巻き付け作業を一層容易に行うことができるので作業性をより向上させることができる。
また、空間形成部材5の延在部5aの太さは、ケーブル2の径方向に沿って一定とされている。従って、太さが一定の複数の延在部5aが放射状に延びる空間形成部材5とすることができるので、空間形成部材5の形状を簡易にして製造しやすい空間形成部材5とすることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る接続構造及び接続部材について図9(a)及び図9(b)を参照しながら説明する。第2実施形態に係る接続構造及び接続部材は、空間形成部材5とは異なる空間形成部材35を備える点で第1実施形態と相違する。以降の説明では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
図9(a)に示されるように、空間形成部材35は、第1板状部材35aと第2板状部材35bとを備える。第1板状部材35a及び第2板状部材35bは、例えば、共に長方形状とされている。第1板状部材35a及び第2板状部材35bのそれぞれは、空間形成部材35の長手方向D3に延びるスリット35c,35dを有する。例えば、スリット35cの長手方向D3の長さL3は、第2板状部材35bの長手方向D3の長さからスリット35dの長さL4を引いた差X1と略同一である。この場合、スリット35dの長手方向D3の長さL4は、第1板状部材35aの長手方向D3の長さからスリット35cの長さL3を引いた差X2と略同一である。また、第1板状部材35aの厚さはスリット35dの幅と同程度であり、第2板状部材35bの厚さはスリット35cの幅と同程度である。
従って、第1板状部材35aのスリット35cに第2板状部材35bが挿入可能であり、且つ第2板状部材35bのスリット35dに第1板状部材35aが挿入可能である。このように、各スリット35c,35dに板状部材35b,35aが挿入されると、図9(b)に示されるように、十字状の空間形成部材35が組み立てられる。組み立て後の空間形成部材35の形状及び大きさは、例えば、前述した空間形成部材5の形状及び大きさと略同一である。
以上、第2実施形態に係る空間形成部材35は、第1板状部材35a及び第2板状部材35bを備え、第1板状部材35aと第2板状部材35bとが組み立てられることによって構成される。従って、簡易な形状の第1板状部材35a及び第2板状部材35bから空間形成部材35を製造することができるので、成形等の負荷を減らすことができる。なお、第2実施形態では、第1板状部材35a及び第2板状部材35bのそれぞれがスリット35c,35dを有し、各スリット35c,35dへの挿し込みを行うことによって空間形成部材35が構成される例について説明した。しかしながら、各スリットの形状、大きさ、数及び配置は適宜変更可能であり、更に、第1板状部材及び第2板状部材を組み立てるための構成としてスリット以外の構成を採用してもよい。
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る接続構造及び接続部材について図10(a)及び図10(b)を参照しながら説明する。第3実施形態に係る接続構造及び接続部材は、前述した各実施形態とは異なる空間形成部材45を備える。空間形成部材45の材料は、空間形成部材5(又は耐火部材6)の材料と同一であり、例えばシリコーンゴムを含んでいる。空間形成部材45は、前述した空間形成部材5と同様、ケーブル2(耐火部材6)の軸線Lから径方向の外側に放射状に延びており、中央部45bと、中央部45bから放射状に延びる複数の延在部45aを有する。複数の延在部45aのそれぞれは、各心線10に対向する傾斜面45cと、傾斜面45cの中央部45bとの反対側の端部に位置する頂部45dとを有する。
延在部45aの表裏の傾斜面45cは、中央部45bから頂部45dに向かうと共に、径方向に対して傾斜して延びている。表裏の傾斜面45cは、例えば三角形状とされており、延在部45aの太さは径方向の外側に向かうに従って細くなっている。すなわち、各延在部45aは、軸線Lから離れるに従って細くなっている。各延在部45aの可撓性は頂部45dに向かうに従って高くなっている。よって、図10(b)に示されるように、空間形成部材45が耐火部材6に覆われると、各延在部45aの頂部45d側の部分が耐火部材6の周方向に撓んで傾くことにより、各延在部45aの径方向への大きさが小さくなる。
以上、第3実施形態に係る空間形成部材45は、ケーブル2の軸線Lに対して放射状に延びる延在部45aを有し、延在部45aは、ケーブル2の軸線Lから離れるに従って細くなっている。従って、延在部45aの先端側を周方向に撓ませることにより、空間形成部材45の径方向への大きさを小さくすることができる。また、各延在部45aを周方向に回し込んで心線10を収納することができると共に、大小様々な心線10に適用させることが可能となる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る接続構造及び接続部材について図11(a)及び図11(b)を参照しながら説明する。第4実施形態に係る接続構造及び接続部材は、前述した各実施形態とは異なる空間形成部材55及び耐火部材56を備える。図11(a)及び図11(b)に示されるように、耐火部材56と空間形成部材55とは互いに連続している。ここで「互いに連続している」とは、2つの部材が繋がって一体化された状態を示しており、一の部材の延長上に他の部材が存在する場合、及び一の部材に他の部材が固定されて他の部材が一の部材から延び出している場合の両方を含んでいる。
空間形成部材55は、例えば、第3実施形態と同様の延在部45aを備えており、耐火部材56は延在部45aから延び出している。耐火部材56は、空間形成部材55と一体成形されてもよいし、空間形成部材55に固定された部位であってもよい。第4実施形態では、複数の延在部45aのうちの1つから耐火部材56がシート状に延び出しており、耐火部材56は空間形成部材55に外側から巻き付けられる。
耐火部材56は、平坦状とされており、径方向の内側を向く面56aと、径方向の外側を向く面56bとを有する。面56aの空間形成部材55との反対側の端部には接着層56cが設けられており、例えば、接着層56cは空間形成部材55の長手方向に延びている。接着層56cには、例えば、剥離ライナーが貼り付けられていてもよい。
第4実施形態に係る接続方法では、例えば、複数の延在部45aの間に心線10が配置されて延在部45aから延びる耐火部材56が空間形成部材55を覆って接着層56cが面56bに貼り付けられることにより、心線を空間に通す工程と、耐火部材で覆う工程とを実行する。なお、耐火部材56は、外力が付与されない状態において螺旋状とされていてもよい。この場合、耐火部材56が自然と空間形成部材55に巻き付けられるので、接着層56cを不要とすることができる。
以上、第4実施形態に係る接続構造及び接続部材では、耐火部材56と空間形成部材55とは互いに連続している。従って、耐火部材56と空間形成部材55とを一体とすることができるので、部品点数を減らすことができる。また、心線10の空間Sへの配置及び耐火部材56の巻き付けを、一体とされた空間形成部材55及び耐火部材56によってスムーズに行うことができる。従って、更なる作業性の向上に寄与する。
(第5実施形態)
続いて、第5実施形態に係る接続構造及び接続部材について図12を参照しながら説明する。第5実施形態に係る接続構造及び接続部材は、前述した各実施形態とは異なる空間形成部材65を備える。空間形成部材65の材料は、例えば、空間形成部材5(又は耐火部材6)の材料と同一である。空間形成部材65は、中央部65bと、中央部65bから放射状に延びる複数の延在部65aとを有する。各延在部65aは、各心線10に対向する対向面65cと、対向面65cの中央部65bとの反対側の端部に位置する外面65dとを有する。
各対向面65cは、例えば、各心線10の外周に沿った湾曲面とされており、延在部65aの太さは径方向の外側に向かうに従って太くなっている。すなわち、各延在部65aは、軸線Lから離れるに従って太くなっている。各延在部65aの可撓性は中央部65bに向かうに従って高くなっているので、各延在部65aを周方向に容易に移動させることが可能である。外面65dは、例えば、円弧状に湾曲しており、複数の外面65dの間には空間Sに連通する挿入穴65eが形成される。各挿入穴65eから空間Sに心線10が挿入されることによって心線10の配置が行われる。
以上、第5実施形態に係る空間形成部材65は、ケーブル2の軸線Lに対して放射状に延びる延在部65aを有し、延在部65aは、ケーブル2の軸線Lから離れるに従って太くなっている。従って、空間Sに連通する心線10の挿入穴65eを分かりやすくすることができるので、空間形成部材65に心線10を配置する作業を容易に行うことができる。その結果、更なる作業性の向上に寄与する。
以上、本発明に係る接続構造、接続方法及び接続部材について説明したが、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。例えば、接続構造を構成する各部品、接続部材を構成する各部品の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は適宜変更可能である。また、接続方法の各工程の内容及び順序についても適宜変更可能である。
例えば、前述した各実施形態では、様々な形状を有する延在部を備えた空間形成部材について説明したが、延在部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は、前述した各実施形態から更に変更することも可能である。
また、前述した実施形態では、4本の心線10を備えるケーブル2について説明したが、ケーブル2に代えて、1~3本又は5本以上の心線を有するケーブルを備えていてもよい。例えば、5本以上の心線を有するケーブルには、空間形成部材の延在部の数を5個以上にすれば、各心線を通す空間を形成することができる。また、3本以下の心線を有するケーブルには、延在部の数を減らした空間形成部材を用意してもよいし、前述した空間形成部材5(図8等参照)を用いることも可能である。すなわち、3本以下の心線を有するケーブルに空間形成部材5を用いた場合、4個形成される空間Sのうちの少なくとも1つが空室となる。
また、前述の実施形態では、1本の心線10と1本の心線10とを接続し、且つ1本のケーブル2Aと1本のケーブル2Bとを接続する例について説明した。しかしながら、接続する心線の本数、及びケーブルの本数は上記の例に限定されない。例えば、1本の心線と2本の心線とを接続し、且つ1本のケーブルと2本又は3本のケーブルとを接続する分岐型の接続構造であってもよい。この場合も前述した各実施形態と同様の効果が得られる。更に、前述した実施形態では、一例として、非常時において電力供給が可能な接続構造1について説明したが、接続構造は非常時に用いられるものでなくてもよく、接続構造の用途は適宜変更可能である。
(実施例)
続いて、本発明に係る接続構造、接続方法及び接続部材の実施例について説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。実施例に係る実験では、図13に示される実験装置Fを用いた。実験装置Fは、ケーブルを保持する保持部F1を備えており、保持部F1にケーブルを保持した状態でケーブルを加熱することが可能である。
実験では、実験装置Fを用いてケーブルの耐火特性について確認した。この実験は、接続部耐火試験方法が定められているJCS7505規格に基づいて行った。FP4Cであって導体断面積が8mm2のケーブルに600Vの電圧をかけた。そして、課電した状態でケーブルを840℃で30分間加熱した。この加熱を実施例に係る接続部材に対して行った。実施例に係る接続部材は、空間形成部材5及び耐火部材6を備える接続部材21とした。この実施例に係る接続部材に対して加熱を行い、絶縁破壊が生じたかどうかについて実験を行った。その結果、実施例に係る接続部材では絶縁破壊が生じなかった。
また、上記の実施例に係る接続部材、及び比較例に係る接続部材を用いてケーブルの接続にかかる時間を測定し、作業性の確認を行った。比較例に係る接続部材としては、4本の心線のそれぞれの接続子にマイカテープを巻き付ける従来の接続部材を用いた。以下の表1は、作業性の確認を行った結果を示す。
表1に示されるように、比較例のケーブル全体の接続作業に要した時間が26.25分であったのに対し、実施例のケーブル全体の接続作業に要した時間は10.25分であった。以上のように、空間形成部材5及び耐火部材6を備える実施例の接続部材及び接続構造では、比較例よりも、ケーブルの接続にかかる時間が60%削減され、作業性の大幅な向上が見られた。