以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
実施の形態1.
図1から図6を参照して、実施の形態1のパワー半導体モジュール1を説明する。パワー半導体モジュール1は、絶縁回路基板10と、パワー半導体素子20a,20b,20cと、プリント配線基板30と、導電ワイヤ50とを主に備える。パワー半導体モジュール1は、導電ポスト40と、第1電極端子42と、第2電極端子44と、エミッタ制御端子46と、ゲート制御端子48とをさらに備えてもよい。
絶縁回路基板10は、絶縁板12と、導電回路パターン13とを含む。絶縁回路基板10は、さらに、ベース板11を含んでもよい。
絶縁板12は、主面12aを含む。絶縁板12の主面12aは、第1方向(x方向)と第2方向(y方向)とに延在している。
絶縁板12は、特に限定されないが、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(Si3N4)、二酸化ケイ素(SiO2)または窒化ホウ素(BN)のような無機セラミックス材料で形成されてもよい。絶縁板12は、微粒子及びフィラーの少なくとも1つが分散された樹脂材料で形成されてもよい。微粒子及びフィラーの少なくとも1つは、例えば、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(Si3N4)、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ホウ素(BN)、ダイヤモンド(C)、炭化ケイ素(SiC)または酸化ホウ素(B2O3)のような無機セラミックス材料で形成されてもよいし、シリコーン樹脂またはアクリル樹脂のような樹脂材料で形成されてもよい。微粒子及びフィラーの少なくとも1つが分散される樹脂は、特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂またはアクリル樹脂で形成されてもよい。
導電回路パターン13は、絶縁板12の主面12a上に設けられている。導電回路パターン13は、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。
ベース板11は、絶縁板12の主面12aとは反対側の絶縁板12の主面上に設けられている。ベース板11は、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。
パワー半導体素子20a,20b,20cは、各々、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)または金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のようなパワー半導体素子である。パワー半導体素子20a,20b,20cは、各々、コレクタ電極21と、エミッタ電極22と、ゲート電極23とを含む。パワー半導体素子20a,20b,20cは、各々、主に、シリコン(Si)、または、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)もしくはダイヤモンドのようなワイドバンドギャップ半導体材料で形成されている。
パワー半導体素子20a,20b,20cは、導電回路パターン13に固定されている。具体的には、パワー半導体素子20a,20b,20cのコレクタ電極21は、はんだ、金属微粒子焼結体または導電性接着剤のような導電接合部材15を用いて、導電回路パターン13に接合されている。パワー半導体素子20a,20b,20cは、第1エミッタ導電パターン33に電気的に接続されている。具体的には、パワー半導体素子20a,20b,20cのエミッタ電極22は、はんだ、金属微粒子焼結体または導電性接着剤のような導電接合部材25を用いて、第1エミッタ導電パターン33に接合されている。本明細書のはんだは、例えば、Sn-Ag-In系はんだ、または、Sn-Ag-Cu系はんだなどである。本明細書の金属微粒子焼結体は、例えば、銀ナノ粒子焼結体などである。後に詳しく述べるように、パワー半導体素子20a,20b,20cのゲート電極23は、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている。パワー半導体素子20a,20b,20cは、互いに電気的に並列接続されている。
プリント配線基板30は、第1方向(x方向)及び第2方向(y方向)に垂直な第3方向(z方向)において、絶縁回路基板10から離間されており、かつ、絶縁板12の主面12aに対向して配置されている。プリント配線基板30は、絶縁基板31と、第1エミッタ導電パターン33と、第1ゲート導電パターン36と、第1コレクタ導電パターン35とを含む。プリント配線基板30は、第1導電パッド34と、第2導電パッド37と、第1導電ビア38とをさらに含んでもよい。
絶縁基板31は、例えば、ガラスエポキシ基材又はガラスコンポジット基材である。ガラスエポキシ基材は、例えば、エポキシ樹脂を含浸したガラス織布が熱硬化されて形成される。ガラスコンポジット基材は、例えば、エポキシ樹脂を含浸したガラス不織布が熱硬化されて形成される。
絶縁基板31は、主面31aと、主面31aとは反対側の主面31bとを含む。絶縁基板31の主面31bの平面視において、絶縁基板31の長手方向は第1方向(x方向)であり、絶縁基板31の短手方向は第2方向(y方向)である。なお、絶縁基板31の主面31bの平面視は、絶縁基板31の主面31aの平面視と同様である。絶縁基板31の短手方向(y方向)は、絶縁基板31の長手方向(x方向)に垂直である。主面31aと主面31bとは、第1方向(x方向)と第2方向(y方向)とに延在している。主面31aの長手方向と主面31bの長手方向とは、各々、第1方向(x方向)である。主面31aの短手方向と主面31bの短手方向とは、各々、第2方向(y方向)である。本実施の形態では、絶縁基板31の主面31aは、導電回路パターン13に面している。絶縁基板31の主面31aは、絶縁板12の主面12aに対向している。
絶縁基板31の主面31bの平面視において、絶縁基板31は、縁31cと、縁31cとは反対側の縁31dと、縁31eと、縁31eとは反対側の縁31fとを含む。絶縁基板31の縁31cは、絶縁基板31の長手方向(第1方向(x方向))に沿って延在してもよく、絶縁基板31の主面31bの平面視における絶縁基板31の長辺であってもよい。絶縁基板31の縁31dは、絶縁基板31の長手方向(第1方向(x方向))に沿って延在してもよく、絶縁基板31の主面31bの平面視における絶縁基板31の長辺であってもよい。縁31cと縁31dとは、絶縁基板31の短手方向(第2方向(y方向))において、互いに対向している。
絶縁基板31の縁31eは、縁31cと縁31dとを接続している。絶縁基板31の縁31eは、絶縁基板31の短手方向(第2方向(y方向))に沿って延在してもよく、絶縁基板31の主面31bの平面視における絶縁基板31の短辺であってもよい。絶縁基板31の縁31fは、縁31cと縁31dとを接続している。絶縁基板31の縁31fは、絶縁基板31の短手方向(第2方向(y方向))に沿って延在してもよく、絶縁基板31の主面31bの平面視における絶縁基板31の短辺であってもよい。縁31eと縁31fとは、絶縁基板31の長手方向(第1方向(x方向))において、互いに対向している。
第1エミッタ導電パターン33と、第1ゲート導電パターン36と、第1コレクタ導電パターン35と、第1導電パッド34と、第2導電パッド37とは、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。第1エミッタ導電パターン33と、第1導電パッド34とは、主面31a上に設けられている。第1エミッタ導電パターン33が設けられている絶縁基板31の主面31aが、導電回路パターン13に面している。第1エミッタ導電パターン33が設けられている絶縁基板31の主面31aが、絶縁板12の主面12aに対向している。第1エミッタ導電パターン33と第1導電パッド34とは、互いに離間されており、かつ、互いに電気的に絶縁されている。
第1ゲート導電パターン36と、第1コレクタ導電パターン35と、第2導電パッド37とは、主面31b上に設けられている。第1ゲート導電パターン36と第1コレクタ導電パターン35と第2導電パッド37とは、互いに離間されており、かつ、互いに電気的に絶縁されている。プリント配線基板30は、例えば、両面銅張積層板である。
第1エミッタ導電パターン33は、第1方向(x方向)と第2方向(y方向)とに延在している。第1エミッタ導電パターン33の長手方向は、第1方向(x方向)であり、第1エミッタ導電パターン33の短手方向は、第2方向(y方向)である。第1エミッタ導電パターン33は、第1エミッタ導電パターン33の長手方向(第1方向(x方向))に沿って延在する第1縁33aを含む。絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aは、絶縁基板31の縁31cに沿って配置されている。第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aは、絶縁基板31の長手方向(第1方向(x方向))に延在している。
第1エミッタ導電パターン33は、第1導電ビア38に接続されている。第1導電ビア38は、絶縁基板31を貫通している。第1導電ビア38は、第1エミッタ導電パターン33と第2導電パッド37とを電気的に接続している。第1導電ビア38は、例えば、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。
第1コレクタ導電パターン35は、第1方向(x方向)と第2方向(y方向)とに延在している。第1コレクタ導電パターン35の長手方向は、第1方向(x方向)であり、第1コレクタ導電パターン35の短手方向は、第2方向(y方向)である。
第1コレクタ導電パターン35は、導電ポスト40に接続されている。導電ポスト40は、プリント配線基板30を貫通している。導電ポスト40は、導電回路パターン13と第1コレクタ導電パターン35とに電気的に接続されている。導電ポスト40は、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。導電ポスト40は、プリント配線基板30を支持している。具体的には、導電ポスト40は、はんだのような導電接合部材(図示せず)を用いて、導電回路パターン13に固定されている。導電ポスト40は、はんだのような導電接合部材(図示せず)を用いて、第1コレクタ導電パターン35と第1導電パッド34とに固定されている。
第1ゲート導電パターン36の長手方向は、第1方向(x方向)であり、第1ゲート導電パターン36の短手方向は、第2方向(y方向)である。第1ゲート導電パターン36の長手方向は、絶縁基板31の縁31cが延在する第1方向(x方向)である。第1ゲート導電パターン36の長手方向は、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aが延在する第1方向(x方向)である。
図1、図5及び図6に示されるように、第1ゲート導電パターン36は、絶縁基板31の主面31bの平面視において絶縁基板31の縁31cに沿って配置されている。第1ゲート導電パターン36は、絶縁基板31の主面31bの平面視において第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿って配置されている。特定的には、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1ゲート導電パターン36は、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに重なっている。さらに特定的には、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1ゲート導電パターン36の短手方向(第2方向(y方向))における第1ゲート導電パターン36の中心線は、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに重なっている。
第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1は、第1エミッタ導電パターン33のうち、絶縁基板31の主面31bの平面視において第1ゲート導電パターン36の長手方向(第1方向(x方向))で第1ゲート導電パターン36に対応する第1部分33pの幅we1より小さい。第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1は、第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pの幅we1の二分の一以下であってもよく、第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pの幅we1の三分の一以下であってもよく、第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pの幅we1の四分の一以下であってもよく、第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pの幅we1の五分の一以下であってもよい。
第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1は、第1ゲート導電パターン36の短手方向(第2方向(y方向))における第1ゲート導電パターン36の長さとして定義される。第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pの幅we1は、第1エミッタ導電パターン33の短手方向(第2方向(y方向))における第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pの長さとして定義される。
一般に、導電パターンの幅が減少するにつれて、導電パターンのインダクタンスは増加する。第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1は、第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pの幅we1より狭い。そのため、第1ゲート導電パターン36の寄生インダクタンス65,66(図9を参照)を、第1エミッタ導電パターン33の寄生インダクタンス60,61(図7を参照)よりも大きくすることができる。
導電ワイヤ47は、パワー半導体素子20aのエミッタ電極22とエミッタ制御端子46とにボンディングされている。導電ワイヤ47が接続されるパワー半導体素子20aは、パワー半導体素子20a,20b,20cのうち、第1電極端子42または絶縁基板31の縁31eから最も遠位するパワー半導体素子である。導電ワイヤ47が接続されるパワー半導体素子20aは、パワー半導体素子20a,20b,20cのうち、絶縁基板31の縁31fに最も近位するパワー半導体素子である。導電ワイヤ47は、例えば、金、銀、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。
エミッタ制御端子46は、例えば、ベース板11上に載置された絶縁ブロック(図示せず)上に設けられている。パワー半導体モジュール1の外部から、エミッタ制御端子46に、エミッタ電圧が供給される。エミッタ制御端子46は、例えば、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。エミッタ制御端子46は、導電ワイヤ47を介して、パワー半導体素子20aのエミッタ電極22に接続されている。エミッタ制御端子46は、導電ワイヤ47、パワー半導体素子20aのエミッタ電極22及び第1エミッタ導電パターン33を介して、パワー半導体素子20b,20cのエミッタ電極22に接続されている。
パワー半導体素子20a,20b,20cは、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿って配置されている。パワー半導体素子20a,20b,20cは、第1ゲート導電パターン36に沿って配置されている。パワー半導体素子20a,20b,20cは、絶縁基板31の縁31cに沿って配置されている。絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1ゲート導電パターン36の長手方向(第1方向(x方向))は、パワー半導体素子20a,20b,20cの配列方向(第1方向(x方向))である。絶縁基板31の主面31bの平面視において、パワー半導体素子20a,20b,20cの配列方向(第1方向(x方向))は、絶縁基板31の長手方向(第1方向(x方向))である。絶縁基板31の主面31bの平面視において、パワー半導体素子20a,20b,20cのゲート電極23は、絶縁基板31(プリント配線基板30)から露出している。
導電ワイヤ50は、パワー半導体素子20a,20b,20cのゲート電極23と第1ゲート導電パターン36とにボンディングされている。導電ワイヤ50は、例えば、金、銀、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。パワー半導体素子20a,20b,20cのゲート電極23は、導電ワイヤ50を介して、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている。
導電ワイヤ49は、第1ゲート導電パターン36とゲート制御端子48とにボンディングされている。導電ワイヤ49は、例えば、金、銀、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。第1ゲート導電パターン36は、導電ワイヤ49を介して、ゲート制御端子48に電気的に接続されている。パワー半導体モジュール1の外部から、ゲート制御端子48に、ゲート電圧が供給される。ゲート制御端子48は、例えば、ベース板11上に載置された絶縁ブロック(図示せず)上に設けられている。ゲート制御端子48は、例えば、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。ゲート制御端子48は、導電ワイヤ49、第1ゲート導電パターン36及び導電ワイヤ50を介して、パワー半導体素子20a,20b,20cのゲート電極23に電気的に接続されている。
パワー半導体モジュール1の外部から、エミッタ制御端子46とゲート制御端子48との間に、エミッタ-ゲート間電圧が供給される。エミッタ-ゲート間電圧に応じて、パワー半導体素子20a,20b,20cはオン状態とオフ状態との間でスイッチングされる。
第1電極端子42と第2電極端子44とは、例えば、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1電極端子42と第2電極端子44とは、絶縁基板31の縁31eに配置されている。
第1電極端子42は、はんだのような導電接合部材43を用いて、第2導電パッド37に固定されている。図3に示されるように、第1電極端子42は、第2導電パッド37及び第1導電ビア38、第1エミッタ導電パターン33及び導電接合部材25を介して、パワー半導体素子20a,20b,20cのエミッタ電極22に電気的に接続されている。第1電極端子42は、エミッタ電極端子として機能する。
第2電極端子44は、はんだのような導電接合部材45を用いて、第1コレクタ導電パターン35に固定されている。図3及び図4に示されるように、第2電極端子44は、第1コレクタ導電パターン35、導電ポスト40、導電回路パターン13及び導電接合部材15を介して、パワー半導体素子20a,20b,20cのコレクタ電極21に電気的に接続されている。第2電極端子44は、コレクタ電極端子として機能する。導電回路パターン13の一部はコレクタ導電パターンとして機能する。すなわち、導電回路パターン13は、コレクタ導電パターンを含む。
図5から図10を参照して、比較例のパワー半導体モジュールと対比しながら、本実施の形態のパワー半導体モジュール1の作用を説明する。比較例のパワー半導体モジュールは、本実施の形態のパワー半導体モジュール1と異なり、第1ゲート導電パターン36が、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿って配置されていない。
パワー半導体素子20a,20b,20cの各々に印加されるゲート-エミッタ間電圧(すなわち、ゲート制御端子48に印加されるゲート電圧とエミッタ制御端子46に印加されるエミッタ電圧との間の差)を閾値電圧よりも大きくして、パワー半導体素子20a,20b,20cをターンオンさせる。主電流55は、第2電極端子44から、第1コレクタ導電パターン35、導電ポスト40、導電回路パターン13、パワー半導体素子20a,20b,20c、第1エミッタ導電パターン33、第1導電ビア38及び第2導電パッド37を通って、第1電極端子42に流れる。図5から図7に示されるように、パワー半導体素子20a,20b,20cでは、主電流55は、パワー半導体素子20a、パワー半導体素子20b、パワー半導体素子20cの順に流れる。
一般に、導電パターンの縁が、導電パターンのうち、電流が最も多く流れる部分である。そのため、図5及び図6に示されるように、主電流55は、第1エミッタ導電パターン33のうちパワー半導体素子20a,20b,20cに近位する第1縁33aに沿って流れる。第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55は、主電流55の周りに(例えば、第1エミッタ導電パターン33に)磁束Φを形成する。
パワー半導体素子20a,20b,20cをターンオンさせると、主電流55は時間が経つにつれて増加し(図8または図10を参照)、主電流55が形成する磁束Φも時間が経つにつれて増加する。図7に示されるように、第1エミッタ導電パターン33は、寄生インダクタンス60,61を有している。そのため、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿って流れる主電流55が形成する磁束Φの時間変化dΦ/dtは、第1エミッタ導電パターン33に、第1誘導起電力62,63(図7を参照)を発生させる。
第1誘導起電力62,63は、パワー半導体素子20a,20b,20c間でエミッタ電圧を変動させる。第1誘導起電力62,63は、パワー半導体素子20aの第1ゲート-エミッタ間電圧Vgeaと、パワー半導体素子20bの第2ゲート-エミッタ間電圧Vgebと、パワー半導体素子20cの第3ゲート-エミッタ間電圧Vgecとを互いに異ならせる。例えば、第3ゲート-エミッタ間電圧Vgecは第2ゲート-エミッタ間電圧Vgebよりも大きくなり、第2ゲート-エミッタ間電圧Vgebは第1ゲート-エミッタ間電圧Vgeaよりも大きくなる。
そのため、パワー半導体素子20a,20b,20cのうちの一つのパワー半導体素子20cのコレクタ-エミッタ間電流が急増する。例えば、図8に示されるように、パワー半導体素子20aのコレクタ-エミッタ間電流Iceaとパワー半導体素子20bのコレクタ-エミッタ間電流Icebとに比べて、パワー半導体素子20cのコレクタ-エミッタ間電流Icecが急増する。比較例では、パワー半導体素子20cのコレクタ-エミッタ間電流Icecがパワー半導体素子20cの定格電流を超えて、パワー半導体素子20cが破壊されてしまう。比較例のパワー半導体モジュールの寿命は相対的に短い。
これに対し、本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、第1ゲート導電パターン36は、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿って配置されている。そのため、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55は、第1ゲート導電パターン36にも磁束Φを形成する。第1ゲート導電パターン36は、寄生インダクタンス65,66を有している。第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿って流れる主電流55が形成する磁束Φの時間変化dΦ/dtは、第1ゲート導電パターン36に、第2誘導起電力67,68(図9を参照)を発生させる。
第2誘導起電力67,68は、パワー半導体素子20a,20b,20c間でゲート電圧を変動させる。パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20a,20b,20c間のエミッタ電圧の変動の少なくとも一部を打ち消す。特定的には、パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20a,20b,20c間のエミッタ電圧の変動を完全に打ち消す。例えば、パワー半導体素子20bの第2ゲート-エミッタ間電圧Vgebとパワー半導体素子20aの第1ゲート-エミッタ間電圧Vgeaとの間の差が減少する。パワー半導体素子20cの第3ゲート-エミッタ間電圧Vgecとパワー半導体素子20bの第2ゲート-エミッタ間電圧Vgebとの間の差が減少する。特定的には、パワー半導体素子20aの第1ゲート-エミッタ間電圧Vgeaとパワー半導体素子20bの第2ゲート-エミッタ間電圧Vgebとパワー半導体素子20cの第3ゲート-エミッタ間電圧Vgecとは、互いに等しくなる。
そのため、図10に示されるように、パワー半導体素子20a,20b,20cのコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。本実施の形態では、パワー半導体素子20a,20b,20cが破壊されることが防止されて、パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
第1ゲート導電パターン36の寄生インダクタンス65,66を第1エミッタ導電パターン33の寄生インダクタンス60,61より大きくする。例えば、先に記載したとおり、第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1を第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pの幅we1より小さくすることによって、第1ゲート導電パターン36の寄生インダクタンス65,66を第1エミッタ導電パターン33の寄生インダクタンス60,61より大きくすることができる。
そうすると、パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20a,20b,20c間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。パワー半導体素子20aの第1ゲート-エミッタ間電圧Vgeaとパワー半導体素子20bの第2ゲート-エミッタ間電圧Vgebとパワー半導体素子20cの第3ゲート-エミッタ間電圧Vgecとの間の変動をより一層小さくすることができる。
図11から図19を参照して、本実施の形態のいくつかの変形例を説明する。
図11から図13に示されるように、本実施の形態の第1変形例では、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1ゲート導電パターン36は、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aから離間されてもよい。
第一の例では、第1ゲート導電パターン36の長手方向(第1方向(x方向))に垂直な断面における、第1ゲート導電パターン36と第1エミッタ導電パターン33との間の第1最大距離d1は、3.0mm以下である。そのため、パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動が増加する。パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20a,20b,20c間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。パワー半導体素子20a,20b,20cのコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
第二の例では、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1ゲート導電パターン36の短手方向(第2方向(y方向))における第1中心線と第1エミッタ導電パターン33との間の第2最大距離d2は、絶縁基板31の厚さTの7倍以下である。そのため、パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動が増加する。パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20a,20b,20c間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。パワー半導体素子20a,20b,20cのコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
第三の例では、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1ゲート導電パターン36と第1エミッタ導電パターン33との間の第3最大距離d3は、絶縁基板31の厚さTの5倍以下である。そのため、パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動が増加する。パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20a,20b,20c間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。パワー半導体素子20a,20b,20cのコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
図14及び図15に示されるように、本実施の形態の第2変形例では、第1エミッタ導電パターン33に、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿う第1スリット33sが設けられている。第1スリット33sの外縁は、第1エミッタ導電パターン33の縁でもある。一般に、導電パターンのうち、導電パターンの縁には、より多く電流が流れる。そのため、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55は、第1エミッタ導電パターン33のうち、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aと第1スリット33sとの間の第1領域に、より集中的に流れる。主電流55が第1ゲート導電パターン36に形成する磁束Φが増加する。第1ゲート導電パターン36における磁束Φの時間変化dΦ/dtの大きさが増加する。
そのため、第1ゲート導電パターン36に発生する第2誘導起電力67,68(図9を参照)の大きさが増加する。パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動が増加する。パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20a,20b,20c間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。パワー半導体素子20a,20b,20cのコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態の第2変形例では、第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1は、第1エミッタ導電パターン33のうち、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aと第1スリット33sとの間の第1領域の第2幅wr1より狭くてもよい。第1エミッタ導電パターン33の第1領域の第2幅wr1は、第1ゲート導電パターン36の短手方向(第2方向(y方向))における第1エミッタ導電パターン33の第1領域の長さとして定義される。
図16及び図17に示されるように、本実施の形態の第3変形例では、第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1は、第1エミッタ導電パターン33のうち、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aと第1スリット33sとの間の第1領域の第2幅wr1より広い。
そのため、主電流55が第1ゲート導電パターン36に形成する磁束Φが増加する。第1ゲート導電パターン36に発生する第2誘導起電力67,68(図9を参照)の大きさが増加する。パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動が増加する。パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20a,20b,20c間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。パワー半導体素子20a,20b,20cのコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
図18及び図19に示されるように、本実施の形態の第4変形例では、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに、第1縁33aから後退している少なくとも一つの第1後退部33hが設けられている。絶縁基板31の主面31bの平面視において、少なくとも一つの第1後退部33hでは、少なくとも一つの第1後退部33hに対応するパワー半導体素子20a,20b,20cの少なくとも一つは、第1エミッタ導電パターン33から露出してもよい。
少なくとも一つの第1後退部33hは、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55bと第1ゲート導電パターン36との間の距離を増加させる。少なくとも一つの第1後退部33hは、主電流55が第1ゲート導電パターン36に形成する磁束Φを減少させる。少なくとも一つの第1後退部33hは、第1ゲート導電パターン36に発生する第2誘導起電力67,68(図9を参照)の大きさを減少させて、パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動を減少させる。少なくとも一つの第1後退部33hは、パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動が、パワー半導体素子20a,20b,20c間のエミッタ電圧の変動を過度に打ち消すことを防止する。
少なくとも一つの第1後退部33hは、複数の第1後退部33hであってもよい。複数の第1後退部33hは、それぞれパワー半導体素子20a,20b,20cに対応するように、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに設けられている。絶縁基板31の主面31bの平面視において、複数の第1後退部33hでは、パワー半導体素子20a,20b,20cは、第1エミッタ導電パターン33から露出してもよい。複数の第1後退部33hは、パワー半導体素子20a,20b,20c間のゲート電圧の変動が、パワー半導体素子20a,20b,20c間のエミッタ電圧の変動を過度に打ち消すことを防止する。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1の効果を説明する。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1は、絶縁回路基板10と、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と、第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)と、プリント配線基板30とを備える。絶縁回路基板10は、第1主面(主面12a)を含む絶縁板12と、絶縁板12の第1主面上に設けられている導電回路パターン13とを含む。第1パワー半導体素子は、第1エミッタ電極(例えば、パワー半導体素子20aのエミッタ電極22)と、第1ゲート電極(例えば、パワー半導体素子20aのゲート電極23)とを含む。第2パワー半導体素子は、第2エミッタ電極(例えば、パワー半導体素子20cのエミッタ電極22)と、第2ゲート電極(例えば、パワー半導体素子20cのゲート電極23)とを含む。プリント配線基板30は、絶縁板12の第1主面に対向して配置されている。プリント配線基板30は、絶縁基板31と、第1エミッタ導電パターン33と、第1ゲート導電パターン36とを含む。絶縁基板31は、第2主面(例えば、主面31a)と第2主面とは反対側の第3主面(例えば、主面31b)とを含む。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子は、導電回路パターン13に固定されている。
第1エミッタ電極(例えば、パワー半導体素子20aのエミッタ電極22)及び第2エミッタ電極(例えば、パワー半導体素子20cのエミッタ電極22)は、第1エミッタ導電パターン33に電気的に接続されている。第1ゲート電極(例えば、パワー半導体素子20aのゲート電極23)及び第2ゲート電極(例えば、パワー半導体素子20cのゲート電極23)は、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている。第1エミッタ導電パターン33は、第2主面(例えば、主面31a)上に設けられている。第1ゲート導電パターン36は、第3主面(例えば、主面31b)上に設けられており、かつ、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31b)の平面視において第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿って配置されている。
パワー半導体モジュール1は、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)に加えて、第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)を備えている。そのため、パワー半導体モジュール1の電力容量を増加させることができる。
また、第1ゲート導電パターン36は、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31b)の平面視において第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿って配置されている。そのため、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55は、第1エミッタ導電パターン33だけでなく、第1ゲート導電パターン36にも磁束Φを形成する。第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)及び第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)のターンオン時における磁束Φの時間変化dΦ/dtは、第1エミッタ導電パターン33に第1誘導起電力62,63(図7を参照)を発生させるとともに、第1ゲート導電パターン36に第2誘導起電力67,68(図9を参照)を発生させる。
第1エミッタ導電パターン33に発生する第1誘導起電力62,63は、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のエミッタ電圧の変動をもたらす。第1ゲート導電パターン36に発生する第2誘導起電力67,68(図9を参照)は、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のゲート電圧の変動をもたらす。第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のエミッタ電圧の変動の少なくとも一部は、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のゲート電圧の変動によって打ち消される。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、第1ゲート導電パターン36の第1長手方向(第1方向(x方向))に垂直な断面における、第1ゲート導電パターン36と第1エミッタ導電パターン33との間の第1最大距離d1は、3.0mm以下である。
第1ゲート導電パターン36と第1エミッタ導電パターン33との間の第1最大距離d1が3.0mm以下であるため、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のゲート電圧の変動が増加する。このゲート電圧の変動は、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31b)の平面視において、第1ゲート導電パターン36の第1短手方向(第1方向(x方向))における第1中心線と第1エミッタ導電パターン33との間の第2最大距離d2は、絶縁基板31の厚さTの7倍以下である。
第2最大距離d2が絶縁基板31の厚さTの7倍以下であるため、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のゲート電圧の変動が増加する。このゲート電圧の変動は、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31b)の平面視において、第1ゲート導電パターン36と第1エミッタ導電パターン33との間の第3最大距離d3は、絶縁基板31の厚さTの5倍以下である。
第3最大距離d3が絶縁基板31の厚さTの5倍以下であるため、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のゲート電圧の変動が増加する。このゲート電圧の変動は、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31b)の平面視において、第1ゲート導電パターン36は、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに重なっている。
そのため、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55が第1ゲート導電パターン36に形成する磁束Φが増加する。第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のゲート電圧の変動が増加する。このゲート電圧の変動は、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31b)の平面視において、第1ゲート導電パターン36の短手方向(第2方向(y方向))における第1ゲート導電パターン36の中心線は、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに重なっている。
そのため、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55が第1ゲート導電パターン36に形成する磁束Φがさらに増加する。第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のゲート電圧の変動が増加する。このゲート電圧の変動は、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、第1エミッタ導電パターン33に、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿う第1スリット33sが設けられている。
第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55は、第1エミッタ導電パターン33のうち、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aと第1スリット33sとの間の第1領域に、集中的に流れる。第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55が第1ゲート導電パターン36に形成する磁束Φが増加する。第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のゲート電圧の変動が増加する。このゲート電圧の変動は、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1は、第1エミッタ導電パターン33のうち、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aと第1スリット33sとの間の第1領域の第2幅wr1より広い。
そのため、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55が第1ゲート導電パターン36に形成する磁束Φが増加する。第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のゲート電圧の変動が増加する。このゲート電圧の変動は、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに、第1縁33aから後退している少なくとも一つの第1後退部33hが設けられている。
少なくとも一つの第1後退部33hは、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55が第1ゲート導電パターン36に形成する磁束Φを減少させる。少なくとも一つの第1後退部33hは、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のゲート電圧の変動が、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動を過度に打ち消すことを防止する。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、少なくとも一つの第1後退部33hは、複数の第1後退部33hである。複数の第1後退部33hは、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)とに対応するように、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに設けられている。
複数の第1後退部33hは、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55が第1ゲート導電パターン36に形成する磁束Φを減少させる。複数の第1後退部33hは、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のゲート電圧の変動が、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動を過度に打ち消すことを防止する。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aと第1ゲート導電パターン36とは、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)及び第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)に沿って配置されている。そのため、第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のゲート電極23と第1ゲート導電パターン36との間の電気的接続が容易になる。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のエミッタ電極22と第1エミッタ導電パターン33との間の電気的接続が容易になる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、絶縁基板31の第2主面(例えば、主面31a)は、導電回路パターン13に面している。そのため、パワー半導体モジュール1の電力容量を増加させることができるとともに、パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1では、第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1は、第1エミッタ導電パターン33のうち、第3主面(例えば、主面31b)の平面視において第1ゲート導電パターン36の第1長手方向(x方向)で第1ゲート導電パターン36に対応する第1部分33pの幅we1より小さい。
そのため、第1ゲート導電パターン36の寄生インダクタンス65,66を第1エミッタ導電パターン33の寄生インダクタンス60,61より大きくすることができる。第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のゲート電圧の変動が増加する。このゲート電圧の変動は、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1の寿命を延ばすことができる。また、第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のスイッチング動作の際に発生するノイズが第1ゲート導電パターン36に及ぼす悪影響が低減され得る。
実施の形態2.
図20から図24を参照して、実施の形態2のパワー半導体モジュール1eを説明する。本実施の形態のパワー半導体モジュール1eは、実施の形態1のパワー半導体モジュール1と同様の構成を備えるが、以下の点で主に異なる。
パワー半導体モジュール1eは、パワー半導体素子20d,20e,20fと、導電ポスト40eと、導電ワイヤ50eとをさらに備える。プリント配線基板30は、第2ゲート導電パターン36bと、第1導電パッド34eとをさらに含む。プリント配線基板30は、第3ゲート導電パターン36cをさらに含んでもよい。
パワー半導体素子20d,20e,20fは、各々、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)または金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のようなパワー半導体素子である。パワー半導体素子20d,20e,20fは、各々、エミッタ電極22と、ゲート電極23、コレクタ電極21とを含む。パワー半導体素子20d,20e,20fは、各々、主に、シリコン(Si)、または、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)もしくはダイヤモンドのようなワイドバンドギャップ半導体材料で形成されている。
パワー半導体素子20d,20e,20fは、導電回路パターン13に固定されている。具体的には、パワー半導体素子20d,20e,20fのコレクタ電極21は、はんだ、金属微粒子焼結体または導電性接着剤のような導電接合部材15を用いて、導電回路パターン13に接合されている。パワー半導体素子20d,20e,20fのエミッタ電極22は、第1エミッタ導電パターン33に電気的に接続されている。具体的には、パワー半導体素子20d,20e,20fのエミッタ電極22は、はんだ、金属微粒子焼結体または導電性接着剤のような導電接合部材25を用いて、第1エミッタ導電パターン33に接合されている。後に詳しく述べるように、パワー半導体素子20d,20e,20fのゲート電極23は、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている。パワー半導体素子20d,20e,20fは、互いに電気的に並列接続されている。パワー半導体素子20a,20b,20cとパワー半導体素子20d,20e,20fとは、互いに電気的に並列接続されている。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eに含まれるパワー半導体素子20a,20b,20c,20d,20e,20fの数は、実施の形態1のパワー半導体モジュール1に含まれるパワー半導体素子20a,20b,20cの数よりも多い。本実施の形態のパワー半導体モジュール1eは、実施の形態1のパワー半導体モジュール1より大きな電流容量を有している。そのため、本実施の形態のパワー半導体モジュール1eは、実施の形態1のパワー半導体モジュール1より多くの導電ポスト40,40eを備えている。具体的には、パワー半導体モジュール1eは、導電ポスト40に加えて、導電ポスト40eをさらに備えている。
第1導電パッド34eは、絶縁基板31の主面31a上に設けられている。第1導電パッド34eは、第1エミッタ導電パターン33及び第1導電パッド34から離間されており、かつ、第1エミッタ導電パターン33及び第1導電パッド34から電気的に絶縁されている。第1導電パッド34eは、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。
第1コレクタ導電パターン35は、導電ポスト40eに接続されている。導電ポスト40eは、プリント配線基板30を貫通している。導電ポスト40eは、導電回路パターン13と第1コレクタ導電パターン35とに電気的に接続されている。導電ポスト40eは、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。導電ポスト40eは、プリント配線基板30を支持している。具体的には、導電ポスト40eは、はんだのような導電接合部材(図示せず)を用いて、導電回路パターン13に固定されている。導電ポスト40eは、はんだのような導電接合部材(図示せず)を用いて、第1コレクタ導電パターン35と第1導電パッド34eとに固定されている。
第1エミッタ導電パターン33は、第1エミッタ導電パターン33の長手方向(第1方向(x方向))に沿って延在する第2縁33bを含む。絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bは、絶縁基板31の縁31dに沿って配置されている。第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bは、絶縁基板31の長手方向(第1方向(x方向))に延在している。第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bは、第1エミッタ導電パターン33の短手方向(第2方向(y方向))において、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに対向している。
第2ゲート導電パターン36bは、主面31b上に設けられている。第2ゲート導電パターン36bは、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。第2ゲート導電パターン36bは、第1コレクタ導電パターン35と第2導電パッド37とから離間されており、かつ、第1コレクタ導電パターン35と第2導電パッド37とから電気的に絶縁されている。
第2ゲート導電パターン36bの長手方向は、第1方向(x方向)であり、第2ゲート導電パターン36bの短手方向は、第2方向(y方向)である。第2ゲート導電パターン36bの長手方向は、絶縁基板31の縁31dが延在する第1方向(x方向)である。第2ゲート導電パターン36bの長手方向は、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bが延在する第1方向(x方向)である。
図20、図23及び図24に示されるように、第2ゲート導電パターン36bは、絶縁基板31の縁31dに沿って配置されている。第2ゲート導電パターン36bは、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1縁33aとは反対側の第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに沿って配置されている。特定的には、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第2ゲート導電パターン36bは、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに重なっている。さらに特定的には、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第2ゲート導電パターン36bの短手方向(第2方向(y方向))における第2ゲート導電パターン36bの第2中心線は、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに重なっている。
第2ゲート導電パターン36bの第3幅wg2は、第1エミッタ導電パターン33のうち、絶縁基板31の主面31bの平面視において第2ゲート導電パターン36bの長手方向(第1方向(x方向))で第2ゲート導電パターン36bに対応する第2部分33qの幅we2より小さい。第2ゲート導電パターン36bの第3幅wg2は、第1エミッタ導電パターン33の第2部分33qの幅we2の二分の一以下であってもよく、第1エミッタ導電パターン33の第2部分33qの幅we2の三分の一以下であってもよく、第1エミッタ導電パターン33の第2部分33qの幅we2の四分の一以下であってもよく、第1エミッタ導電パターン33の第2部分33qの幅we2の五分の一以下であってもよい。
第2ゲート導電パターン36bの第3幅wg2は、第2ゲート導電パターン36bの短手方向(第2方向(y方向))における第2ゲート導電パターン36bの長さとして定義される。第1エミッタ導電パターン33の第2部分33qの幅we2は、第1エミッタ導電パターン33の短手方向(第2方向(y方向))における第1エミッタ導電パターン33の第2部分33qの長さとして定義される。本実施の形態では、第1エミッタ導電パターン33の第2部分33qは、第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pと同じである。
一般に、導電パターンの幅が減少するにつれて、導電パターンのインダクタンスは増加する。第2ゲート導電パターン36bの第3幅wg2は、第1エミッタ導電パターン33の第2部分33qの幅we2より狭い。そのため、第2ゲート導電パターン36bの寄生インダクタンスを、第1エミッタ導電パターン33の寄生インダクタンスより大きくすることができる。
第2ゲート導電パターン36bは、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている。例えば、第3ゲート導電パターン36cは、第1ゲート導電パターン36と第2ゲート導電パターン36bとを接続する。第2ゲート導電パターン36bは、第3ゲート導電パターン36cを介して、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている。第2ゲート導電パターン36bは、導電ワイヤ49と第1ゲート導電パターン36と第3ゲート導電パターン36cとを介して、ゲート制御端子48に電気的に接続されている。
第3ゲート導電パターン36cは、第1コレクタ導電パターン35と第2導電パッド37とから離間されており、かつ、第1コレクタ導電パターン35と第2導電パッド37とから電気的に絶縁されている。第3ゲート導電パターン36cは、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。特定的には、第3ゲート導電パターン36cは、絶縁基板31の縁31fに沿って配置されている。第3ゲート導電パターン36cは、第1エミッタ導電パターン33の縁に沿って配置されている。さらに特定的には、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第3ゲート導電パターン36cは、第1エミッタ導電パターン33の縁に重なっている。絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1ゲート導電パターン36、第2ゲート導電パターン36b及び第3ゲート導電パターン36cは、第1コレクタ導電パターン35の三辺に対向している。
具体的には、第3ゲート導電パターン36cは、第1ゲート導電パターン36の第1端と第2ゲート導電パターン36bの第2端とを接続する。第1ゲート導電パターン36の第1端は、絶縁基板31の縁31fに近位する第1ゲート導電パターン36の端である。第1ゲート導電パターン36の第1端は、第1ゲート導電パターン36の端のうち、第1電極端子42及び第2電極端子44から遠位する端である。第1ゲート導電パターン36の第1端は、第1ゲート導電パターン36の端のうち、エミッタ制御端子46から延びる導電ワイヤ47がボンディングされるパワー半導体素子20aに近位する端である。第2ゲート導電パターン36bの第2端は、絶縁基板31の縁31fに近位する第2ゲート導電パターン36bの端である。第2ゲート導電パターン36bの第2端は、第2ゲート導電パターン36bの端のうち、第1電極端子42及び第2電極端子44から遠位する端である。第2ゲート導電パターン36bの第2端は、第1ゲート導電パターン36の端のうち、エミッタ制御端子46から延びる導電ワイヤ47がボンディングされるパワー半導体素子20aに近位する端である。
エミッタ制御端子46は、導電ワイヤ47、パワー半導体素子20aのエミッタ電極22及び第1エミッタ導電パターン33を介して、パワー半導体素子20d,20e,20fのエミッタ電極22に接続されている。
パワー半導体素子20d,20e,20fは、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに沿って配置されている。パワー半導体素子20d,20e,20fは、第2ゲート導電パターン36bに沿って配置されている。パワー半導体素子20d,20e,20fは、絶縁基板の縁31dに沿って配置されている。絶縁基板31の主面31bの平面視において、第2ゲート導電パターン36bの長手方向(第1方向(x方向))は、パワー半導体素子20d,20e,20fの配列方向(第1方向(x方向))である。絶縁基板31の主面31bの平面視において、パワー半導体素子20d,20e,20fの配列方向(第1方向(x方向))は、絶縁基板31の長手方向(第1方向(x方向))である。絶縁基板31の主面31bの平面視において、パワー半導体素子20d,20e,20fのゲート電極23は、絶縁基板31(プリント配線基板30)から露出している。
導電ワイヤ50eは、パワー半導体素子20d,20e,20fのゲート電極23と第2ゲート導電パターン36bとにボンディングされている。導電ワイヤ50eは、例えば、金、銀、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。パワー半導体素子20d,20e,20fのゲート電極23は、導電ワイヤ50eを介して、第2ゲート導電パターン36bに電気的に接続されている。ゲート制御端子48は、導電ワイヤ49、第1ゲート導電パターン36、第3ゲート導電パターン36c、第2ゲート導電パターン36b及び導電ワイヤ50eを介して、パワー半導体素子20d,20e,20fのゲート電極23に電気的に接続されている。
パワー半導体モジュール1の外部から、エミッタ制御端子46とゲート制御端子48との間に、エミッタ-ゲート間電圧が供給される。エミッタ-ゲート間電圧に応じて、パワー半導体素子20a,20b,20c,20d,20e,20fはオン状態とオフ状態との間でスイッチングされる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eの作用は、実施の形態1のパワー半導体モジュール1の作用に加えて、以下の作用を奏する。
パワー半導体素子20d,20e,20fの各々に印加されるゲート-エミッタ間電圧を閾値電圧よりも大きくして、パワー半導体素子20d,20e,20fをいずれもターンオンさせる。第2電極端子44から、第1コレクタ導電パターン35、導電ポスト40,40e、導電回路パターン13、パワー半導体素子20d,20e,20f、第1エミッタ導電パターン33、第1導電ビア38、第2導電パッド37を通って、第1電極端子42に主電流55bが流れる。図23及び図24に示されるように、主電流55bは、パワー半導体素子20d,20e,20fでは、パワー半導体素子20d、パワー半導体素子20e、パワー半導体素子20fの順に流れる。
一般に、導電パターンの縁が、導電パターンのうち、電流が最も多く流れる部分である。そのため、図23及び図24に示されるように、主電流55bは、第1エミッタ導電パターン33のうちパワー半導体素子20d,20e,20fに近位する第2縁33bに沿って流れる。第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55は、主電流55の周りに(例えば、第1エミッタ導電パターン33に)磁束Φを形成する。第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55bは、主電流55bの周りに磁束Φを形成する。
パワー半導体素子20d,20e,20fをターンオンさせると、主電流55bは時間が経つにつれて増加し、主電流55bが形成する磁束も時間が経つにつれて増加する。第1エミッタ導電パターン33は、寄生インダクタンスを有している。そのため、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに沿って流れる主電流55bが形成する磁束Φの時間変化dΦ/dtは、第1エミッタ導電パターン33に、第3誘導起電力を発生させる。
第3誘導起電力は、パワー半導体素子20d,20e,20f間でエミッタ電圧を変動させる。第3誘導起電力は、パワー半導体素子20dの第4ゲート-エミッタ間電圧Vgedと、パワー半導体素子20eの第5ゲート-エミッタ間電圧Vgeeと、パワー半導体素子20fの第6ゲート-エミッタ間電圧Vgefとを互いに異ならせる。
しかし、第2ゲート導電パターン36bは、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに沿って配置されている。そのため、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55bは、第2ゲート導電パターン36bにも磁束Φを形成する。第2ゲート導電パターン36bは、寄生インダクタンスを有している。第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに沿って流れる主電流55bが形成する磁束Φの時間変化dΦ/dtは、第2ゲート導電パターン36bに、第4誘導起電力を発生させる。
第4誘導起電力は、パワー半導体素子20d,20e,20f間でゲート電圧を変動させる。パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20d,20e,20f間のエミッタ電圧の変動の少なくとも一部を打ち消す。特定的には、パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20d,20e,20f間のエミッタ電圧の変動を完全に打ち消す。例えば、パワー半導体素子20eの第5ゲート-エミッタ間電圧Vgeeとパワー半導体素子20dの第4ゲート-エミッタ間電圧Vgedとの間の差が減少する。パワー半導体素子20fの第6ゲート-エミッタ間電圧Vgefとパワー半導体素子20eの第5ゲート-エミッタ間電圧Vgeeとの間の差が減少する。特定的には、パワー半導体素子20dの第4ゲート-エミッタ間電圧Vgedとパワー半導体素子20eの第5ゲート-エミッタ間電圧Vgeeとパワー半導体素子20fの第6ゲート-エミッタ間電圧Vgefとは、互いに等しくなる。
そのため、パワー半導体素子20d,20e,20fのコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体素子20d,20e,20fが破壊されることが防止されて、パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
第2ゲート導電パターン36bの寄生インダクタンスを第1エミッタ導電パターン33の寄生インダクタンスより大きくする。例えば、先に記載したとおり、第2ゲート導電パターン36bの第3幅wg2を、第1エミッタ導電パターン33の第2部分33qの幅we2より小さくすることによって、第2ゲート導電パターン36bの寄生インダクタンスを第1エミッタ導電パターン33の寄生インダクタンスより大きくすることができる。
そうすると、パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20d,20e,20f間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。パワー半導体素子20dの第4ゲート-エミッタ間電圧Vgedとパワー半導体素子20eの第5ゲート-エミッタ間電圧Vgeeとパワー半導体素子20fの第6ゲート-エミッタ間電圧Vgefとの間の変動をより一層小さくすることができる。
図25から図33を参照して、本実施の形態のいくつかの変形例を説明する。
図25から図27に示されるように、本実施の形態の第1変形例では、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第2ゲート導電パターン36bは、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bから離間されてもよい。
第一の例では、第2ゲート導電パターン36bの長手方向(第1方向(x方向))に垂直な断面における、第2ゲート導電パターン36bと第1エミッタ導電パターン33との間の第4最大距離d4は、3.0mm以下である。そのため、パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動が増加する。パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20d,20e,20f間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。パワー半導体素子20d,20e,20fのコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
第二の例では、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第2ゲート導電パターン36bの短手方向(第2方向(y方向))における第2中心線と第1エミッタ導電パターン33との間の第5最大距離d5は、絶縁基板31の厚さTの7倍以下である。そのため、パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動が増加する。パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20d,20e,20f間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。パワー半導体素子20d,20e,20fのコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
第三の例では、絶縁基板31の主面31bの平面視において、第2ゲート導電パターン36bと第1エミッタ導電パターン33との間の第6最大距離d6は、絶縁基板31の厚さTの5倍以下である。そのため、パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動が増加する。パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20d,20e,20f間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。パワー半導体素子20d,20e,20fのコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
図28及び図29に示されるように、本実施の形態の第2変形例では、第1エミッタ導電パターン33に、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに沿う第2スリット33tが設けられている。第2スリット33tの外縁は、第1エミッタ導電パターン33の縁でもある。一般に、導電パターンのうち、導電パターンの縁には、より多く電流が流れる。そのため、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55bは、第1エミッタ導電パターン33のうち、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bと第2スリット33tとの間の第2領域に、より集中的に流れる。主電流55bが第2ゲート導電パターン36bに形成する磁束Φが増加する。第2ゲート導電パターン36bにおける磁束Φの時間変化dΦ/dtの大きさが増加する。
そのため、第2ゲート導電パターン36bに発生する第4誘導起電力の大きさが増加する。パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動が増加する。パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20d,20e,20f間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。パワー半導体素子20d,20e,20fのコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態の第2変形例では、第2ゲート導電パターン36bの第3幅wg2は、第1エミッタ導電パターン33のうち、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bと第2スリット33tとの間の第2領域の第4幅wr2より狭くてもよい。第1エミッタ導電パターン33の第2領域の第4幅wr2は、第2ゲート導電パターン36bの短手方向(第2方向(y方向))における第1エミッタ導電パターン33の第2領域の長さとして定義される。
図30及び図31に示されるように、本実施の形態の第3変形例では、第2ゲート導電パターン36bの第3幅wg2は、第1エミッタ導電パターン33のうち、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bと第2スリット33tとの間の第2領域の第4幅wr2より広い。
そのため、主電流55bが第2ゲート導電パターン36bに形成する磁束Φが増加する。第2ゲート導電パターン36bに発生する第4誘導起電力の大きさが増加する。パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動が増加する。パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動は、パワー半導体素子20d,20e,20f間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。パワー半導体素子20d,20e,20fのコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
図32及び図33に示されるように、本実施の形態の第4変形例では、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに、第2縁33bから後退している少なくとも一つの第2後退部33jが設けられている。絶縁基板31の主面31bの平面視において、少なくとも一つの第2後退部33jでは、少なくとも一つの第2後退部33jに対応するパワー半導体素子20d,20e,20fの少なくとも一つは、第1エミッタ導電パターン33から露出してもよい。
少なくとも一つの第2後退部33jは、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55bと第2ゲート導電パターン36bとの間の距離を増加させる。少なくとも一つの第2後退部33jは、主電流55bが第2ゲート導電パターン36bに形成する磁束Φを減少させる。少なくとも一つの第2後退部33jは、第2ゲート導電パターン36bに発生する第4誘導起電力の大きさを減少させて、パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動を減少させる。少なくとも一つの第2後退部33jは、パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動が、パワー半導体素子20d,20e,20f間のエミッタ電圧の変動を過度に打ち消すことを防止する。
少なくとも一つの第2後退部33jは、複数の第2後退部33jであってもよい。複数の第2後退部33jは、それぞれパワー半導体素子20d,20e,20fに対応するように、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに設けられている。絶縁基板31の主面31bの平面視において、複数の第2後退部33jでは、パワー半導体素子20d,20e,20fは、第1エミッタ導電パターン33から露出してもよい。複数の第2後退部33jは、パワー半導体素子20d,20e,20f間のゲート電圧の変動が、パワー半導体素子20d,20e,20f間のエミッタ電圧の変動を過度に打ち消すことを防止する。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eは、実施の形態1のパワー半導体モジュール1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eは、第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と、第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)とをさらに備える。第3パワー半導体素子は、第3エミッタ電極(例えば、パワー半導体素子20dのエミッタ電極22)と、第3ゲート電極(例えば、パワー半導体素子20dのゲート電極23)とを含む。第4パワー半導体素子は、第4エミッタ電極(例えば、パワー半導体素子20fのエミッタ電極22)と、第4ゲート電極(例えば、パワー半導体素子20fのゲート電極23)とを含む。プリント配線基板30は、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている第2ゲート導電パターン36bをさらに含む。第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子は、導電回路パターン13に固定されている。
第3エミッタ電極(例えば、パワー半導体素子20dのエミッタ電極22)及び第4エミッタ電極(例えば、パワー半導体素子20fのエミッタ電極22)は、第1エミッタ導電パターン33に電気的に接続されている。第3ゲート電極(例えば、パワー半導体素子20dのゲート電極23)及び第4ゲート電極(例えば、パワー半導体素子20fのゲート電極23)は、第2ゲート導電パターン36bに電気的に接続されている。第2ゲート導電パターン36bは、第3主面(主面31b)上に設けられており、かつ、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31b)の平面視において、第1縁33aとは反対側の第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに沿って配置されている。
パワー半導体モジュール1eは、第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子に加えて、第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)とを備えている。そのため、パワー半導体モジュール1eの電力容量を増加させることができる。
また、第2ゲート導電パターン36bは、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31b)の平面視において第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに沿って配置されている。そのため、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55bは、第1エミッタ導電パターン33だけでなく、第2ゲート導電パターン36bにも磁束Φを形成する。第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)及び第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)のターンオン時における磁束Φの時間変化dΦ/dtは、は、第1エミッタ導電パターン33に第3誘導起電力を発生させるとともに、第2ゲート導電パターン36bに第4誘導起電力を発生させる。
第1エミッタ導電パターン33に発生する第3誘導起電力は、第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)との間のエミッタ電圧の変動をもたらす。第2ゲート導電パターン36bに発生する第4誘導起電力は、第3パワー半導体素子と第4パワー半導体素子との間のゲート電圧の変動をもたらす。第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)との間のエミッタ電圧の変動の少なくとも一部は、第3パワー半導体素子と第4パワー半導体素子との間のゲート電圧の変動によって打ち消される。第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eでは、プリント配線基板30は、第1ゲート導電パターン36の第1端と第2ゲート導電パターン36bの第2端とを接続する第3ゲート導電パターン36cをさらに含む。そのため、パワー半導体モジュール1eの電力容量を増加させることができるとともに、パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eでは、第2ゲート導電パターン36bの第2長手方向に垂直な断面における、第2ゲート導電パターン36bと第1エミッタ導電パターン33との間の第4最大距離d4は、3.0mm以下である。
第2ゲート導電パターン36bと第1エミッタ導電パターン33との間の第4最大距離d4が3.0mm以下であるため、第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)との間のゲート電圧の変動が増加する。このゲート電圧の変動は、第3パワー半導体素子と第4パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eでは、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31b)の平面視において、第2ゲート導電パターン36bの第2短手方向(第1方向(x方向))における第2中心線と第1エミッタ導電パターン33との間の第5最大距離d5は、絶縁基板31の厚さT(図13を参照)の7倍以下である。
第5最大距離d5が絶縁基板31の厚さTの7倍以下であるため、第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)との間のゲート電圧の変動が増加する。このゲート電圧の変動は、第3パワー半導体素子と第4パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eでは、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31b)の平面視において、第2ゲート導電パターン36bと第1エミッタ導電パターン33との間の第6最大距離d6は、絶縁基板31の厚さT(図13を参照)の5倍以下である。
第6最大距離d6が絶縁基板31の厚さTの5倍以下であるため、第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)との間のゲート電圧の変動が増加する。このゲート電圧の変動は、第3パワー半導体素子と第4パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eでは、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31b)の平面視において、第2ゲート導電パターン36bは、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに重なっている。
そのため、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55bが第2ゲート導電パターン36bに形成する磁束Φが増加する。第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)との間のゲート電圧の変動が増加する。このゲート電圧の変動は、第3パワー半導体素子と第4パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eでは、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31b)の平面視において、第2ゲート導電パターン36bの第2短手方向(第2方向(y方向))における第2ゲート導電パターン36bの第2中心線は、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに重なっている。
そのため、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55bが第2ゲート導電パターン36bに形成する磁束Φがさらに増加する。第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)との間のゲート電圧の変動がさらに増加する。このゲート電圧の変動は、第3パワー半導体素子と第4パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eでは、第1エミッタ導電パターン33に、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに沿う第2スリット33tが設けられている。
第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55bは、第1エミッタ導電パターン33のうち、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bと第2スリット33tとの間の第2領域に、集中的に流れる。主電流55bが第2ゲート導電パターン36bに形成する磁束Φが増加する。第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)との間のゲート電圧の変動がさらに増加する。このゲート電圧の変動は、第3パワー半導体素子と第4パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eでは、第2ゲート導電パターン36bの第3幅wg2は、第1エミッタ導電パターン33のうち、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bと第2スリット33tとの間の第2領域の第4幅wr2より広い。
そのため、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55bが第2ゲート導電パターン36bに形成する磁束Φが増加する。第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)との間のゲート電圧の変動がさらに増加する。このゲート電圧の変動は、第3パワー半導体素子と第4パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eでは、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに、第2縁33bから後退している少なくとも一つの第2後退部33jが設けられている。
少なくとも一つの第2後退部33jは、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55bが第2ゲート導電パターン36bに形成する磁束Φを減少させる。少なくとも一つの第2後退部33jは、第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)との間のゲート電圧の変動が第3パワー半導体素子と第4パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動を過度に打ち消すことを防止する第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eでは、少なくとも一つの第2後退部33jは、複数の第2後退部33jである。複数の第2後退部33jは、第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)とに対応するように、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bに設けられている。
複数の第2後退部33jは、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55bが第2ゲート導電パターン36bに形成する磁束Φを減少させる。複数の第2後退部33jは、第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)との間のゲート電圧の変動が第3パワー半導体素子と第4パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動を過度に打ち消すことを防止する。第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eでは、第1エミッタ導電パターン33の第2縁33bと第2ゲート導電パターン36bとは、第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)及び第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)に沿って配置されている。そのため、第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のゲート電極23と第2ゲート導電パターン36bとの間の電気的接続が容易になる。第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のエミッタ電極22と第1エミッタ導電パターン33との間の電気的接続が容易になる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1eでは、第2ゲート導電パターン36bの第3幅wg2は、第1エミッタ導電パターン33のうち、第3主面(例えば、主面31b)の平面視において第2ゲート導電パターン36bの第2長手方向(第1方向(x方向))で第2ゲート導電パターン36bに対応する第2部分33qの幅we2より小さい。
そのため、第2ゲート導電パターン36bの寄生インダクタンスを第1エミッタ導電パターン33の寄生インダクタンスより大きくすることができる。第3パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20d)と第4パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20f)との間のゲート電圧の変動がさらに増加する。このゲート電圧の変動は、第3パワー半導体素子と第4パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動をより一層打ち消すことができる。第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1eの寿命を延ばすことができる。また、第3パワー半導体素子及び第4パワー半導体素子のスイッチング動作の際に発生するノイズが第2ゲート導電パターン36bに及ぼす悪影響が低減され得る。
実施の形態3.
図34から図38を参照して、実施の形態3のパワー半導体モジュール1fを説明する。本実施の形態のパワー半導体モジュール1fは、実施の形態2のパワー半導体モジュール1eと同様の構成を備えるが、以下の点で主に異なる。
パワー半導体モジュール1fでは、第3ゲート導電パターン36cは、第1ゲート導電パターン36の第1中央部と第2ゲート導電パターン36bの第2中央部とを接続している。第1ゲート導電パターン36の第1中央部は、第1ゲート導電パターン36の長手方向(第1方向(x方向))において第1ゲート導電パターン36を三等分された部分に分けたときの中央部分である。第2ゲート導電パターン36bの第2中央部は、第2ゲート導電パターン36bの長手方向(第1方向(x方向))において第2ゲート導電パターン36bを三等分された部分に分けたときの中央部分である。
プリント配線基板30は、第2コレクタ導電パターン35fをさらに含む。第2コレクタ導電パターン35fは、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。第2コレクタ導電パターン35fは、絶縁基板31の主面31b上に設けられている。第2コレクタ導電パターン35fは、第3ゲート導電パターン36cに対して、絶縁基板31の縁31fに近位している。第2コレクタ導電パターン35fは、第3ゲート導電パターン36cに対して、絶縁基板31の縁31eから遠位している。第2コレクタ導電パターン35fは、第3ゲート導電パターン36cに対して、第1電極端子42、第2電極端子44及び第2導電パッド37から遠位している。
第1コレクタ導電パターン35は、第3ゲート導電パターン36cに対して、絶縁基板31の縁31eに近位している。第1コレクタ導電パターン35は、第3ゲート導電パターン36cに対して、絶縁基板31の縁31fから遠位している。第1コレクタ導電パターン35は、第1電極端子42、第2電極端子44及び第2導電パッド37に近位している。第1コレクタ導電パターン35は、第3ゲート導電パターン36cに対して、第1電極端子42及び第2電極端子44に近位している。第1コレクタ導電パターン35と第2コレクタ導電パターン35fとは、第1ゲート導電パターン36、第2ゲート導電パターン36b及び第3ゲート導電パターン36cから離間されており、かつ、第1ゲート導電パターン36、第2ゲート導電パターン36b及び第3ゲート導電パターン36cから電気的に絶縁されている。
第2コレクタ導電パターン35fは、導電ポスト40eに接続されている。導電ポスト40eは、プリント配線基板30を貫通している。導電ポスト40eは、導電回路パターン13と第2コレクタ導電パターン35fとに電気的に接続されている。導電ポスト40eは、はんだのような導電接合部材(図示せず)を用いて、導電回路パターン13に固定されている。導電ポスト40eは、はんだのような導電接合部材(図示せず)を用いて、第2コレクタ導電パターン35fと第1導電パッド34eとに固定されている。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1fは、実施の形態2のパワー半導体モジュール1eと同様の以下の効果を奏する。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1fでは、プリント配線基板30は、第1ゲート導電パターン36の第1中央部と第2ゲート導電パターン36bの第2中央部とを接続する第3ゲート導電パターン36cをさらに含む。そのため、パワー半導体モジュール1fの電力容量を増加させることができるとともに、パワー半導体モジュール1fの寿命を延ばすことができる。
実施の形態4.
図39から図44を参照して、実施の形態4のパワー半導体モジュール1gを説明する。本実施の形態のパワー半導体モジュール1gは、実施の形態1のパワー半導体モジュール1と同様の構成を備えるが、以下の点で主に異なる。
プリント配線基板30は、第1導電パッド34(図6を参照)に代えて、第2エミッタ導電パターン72を含む。パワー半導体モジュール1gは、導電ブロック74(図42を参照)とゲート端子70(図39を参照)とをさらに備える。
第1コレクタ導電パターン35と第2エミッタ導電パターン72と第1ゲート導電パターン36とは、絶縁基板31の主面31a上に設けられている。第1ゲート導電パターン36が設けられている絶縁基板31の主面31aが、導電回路パターン13に面している。第1ゲート導電パターン36が設けられている絶縁基板31の主面31aが、絶縁板12の主面12aに対向している。第1コレクタ導電パターン35と第2エミッタ導電パターン72と第1ゲート導電パターン36とは、互いに離間されており、かつ、互いに電気的に絶縁されている。第2エミッタ導電パターン72は、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。
第1エミッタ導電パターン33と第2導電パッド37とは、絶縁基板31の主面31b上に設けられている。第1エミッタ導電パターン33と第2導電パッド37とは、互いに離間されており、かつ、互いに電気的に絶縁されている。
図43及び図44に示されるように、第1コレクタ導電パターン35は、第1コレクタ導電パターン35の長手方向(第1方向(x方向))に沿って延在する第3縁35aを含む。第1コレクタ導電パターン35の第3縁35aは、絶縁基板31の縁31cに近位する第1コレクタ導電パターン35の縁である。絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1コレクタ導電パターン35の第3縁35aは、絶縁基板31の縁31cに沿って配置されている。第1コレクタ導電パターン35の第3縁35aは、絶縁基板31の長手方向(第1方向(x方向))に延在している。
第1コレクタ導電パターン35の第3縁35aに、第3縁35aから後退している第3後退部35rが設けられている。第3後退部35rによって第1コレクタ導電パターン35から露出した絶縁基板31の主面31a上に、第2エミッタ導電パターン72と第1ゲート導電パターン36とが配置されている。絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1ゲート導電パターン36は、第2エミッタ導電パターン72より、第1コレクタ導電パターン35の第3縁35aに近位している。絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1ゲート導電パターン36は、第2エミッタ導電パターン72より、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに近位している。絶縁基板31の主面31bの平面視において、第1ゲート導電パターン36は、第2エミッタ導電パターン72より、絶縁基板31の縁31cに近位している。
図42に示されるように、第1コレクタ導電パターン35は、第1導電ビア38に接続されている。第1導電ビア38は、絶縁基板31を貫通している。第1導電ビア38は、第1コレクタ導電パターン35と第2導電パッド37とを電気的に接続している。導電ブロック74は、第1コレクタ導電パターン35と導電回路パターン13とを電気的に接続している。導電ブロック74は、プリント配線基板30を支持している。具体的には、導電ブロック74は、はんだのような導電接合部材(図示せず)を用いて、第1コレクタ導電パターン35と導電回路パターン13とに固定されている。
図41に示されるように、第1エミッタ導電パターン33は、導電ポスト40に接続されている。導電ポスト40は、プリント配線基板30を貫通している。導電ポスト40は、第1エミッタ導電パターン33と第2エミッタ導電パターン72とに電気的に接続されている。パワー半導体素子20a,20b,20cのエミッタ電極22は、第2エミッタ導電パターン72に電気的に接続されている。具体的には、パワー半導体素子20a,20b,20cのエミッタ電極22は、はんだ、金属微粒子焼結体または導電性接着剤のような導電接合部材25を用いて、第2エミッタ導電パターン72に接合されている。
図39、図43及び図44に示されるように、絶縁基板31の主面31bの平面視において、パワー半導体素子20a,20b,20cのゲート電極23は、絶縁基板31(プリント配線基板30)に覆われている。絶縁基板31の主面31bの平面視において、ゲート端子70は、絶縁基板31(プリント配線基板30)から露出している。ゲート端子70は、例えば、ベース板11上に載置された絶縁ブロック(図示せず)上に設けられている。ゲート端子70は、例えば、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。ゲート端子70は、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている。具体的には、ゲート端子70は、はんだ、金属微粒子焼結体または導電性接着剤のような導電接合部材(図示せず)を用いて、第1ゲート導電パターン36に接合されている。
導電ワイヤ49は、ゲート端子70とゲート制御端子48とにボンディングされている。ゲート端子70は、導電ワイヤ49を介して、ゲート制御端子48に電気的に接続されている。パワー半導体素子20a,20b,20cのゲート電極23は、はんだ、金属微粒子焼結体または導電性接着剤のような導電接合部材25を用いて、第1ゲート導電パターン36に固定されている。
第1電極端子42は、はんだのような導電接合部材43を用いて、第1エミッタ導電パターン33に固定されている。第1電極端子42は、第1エミッタ導電パターン33、導電ポスト40及び第2エミッタ導電パターン72を介して、パワー半導体素子20a,20b,20cのエミッタ電極22に電気的に接続されている。第1電極端子42は、エミッタ電極端子として機能する。
第2電極端子44は、はんだのような導電接合部材45を用いて、第2導電パッド37に固定されている。第2電極端子44は、第2導電パッド37及び第1導電ビア38、第1コレクタ導電パターン35及び導電ブロック74を介して、パワー半導体素子20a,20b,20cのコレクタ電極21に電気的に接続されている。第1電極端子42は、コレクタ電極端子として機能する。
エミッタ制御端子46は、導電ワイヤ47、第1エミッタ導電パターン33、導電ポスト40、第2エミッタ導電パターン72を介して、パワー半導体素子20a,20b,20cのエミッタ電極22に電気的に接続されている。ゲート制御端子48は、導電ワイヤ49、ゲート端子70、第1ゲート導電パターン36を介して、パワー半導体素子20a,20b,20cのゲート電極23に電気的に接続されている。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1gは、実施の形態1のパワー半導体モジュール1と同様の以下の効果を奏する。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1gは、絶縁回路基板10と、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と、第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)と、プリント配線基板30とを備える。絶縁回路基板10は、第1主面(主面12a)を含む絶縁板12と、絶縁板12の第1主面上に設けられている導電回路パターン13とを含む。第1パワー半導体素子は、第1エミッタ電極(例えば、パワー半導体素子20aのエミッタ電極22)と、第1ゲート電極(例えば、パワー半導体素子20aのゲート電極23)とを含む。第2パワー半導体素子は、第2エミッタ電極(例えば、パワー半導体素子20cのエミッタ電極22)と、第2ゲート電極(例えば、パワー半導体素子20cのゲート電極23)とを含む。プリント配線基板30は、絶縁板12の第1主面に対向して配置されている。プリント配線基板30は、絶縁基板31と、第1エミッタ導電パターン33と、第1ゲート導電パターン36とを含む。絶縁基板31は、第2主面(例えば、主面31b)と第2主面とは反対側の第3主面(例えば、主面31a)とを含む。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子は、導電回路パターン13に固定されている。
第1エミッタ電極(例えば、パワー半導体素子20aのエミッタ電極22)及び第2エミッタ電極(例えば、パワー半導体素子20cのエミッタ電極22)は、第1エミッタ導電パターン33に電気的に接続されている。第1ゲート電極(例えば、パワー半導体素子20aのゲート電極23)及び第2ゲート電極(例えば、パワー半導体素子20cのゲート電極23)は、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている。第1エミッタ導電パターン33は、第2主面(例えば、主面31b)上に設けられている。第1ゲート導電パターン36は、第3主面(例えば、主面31a)上に設けられている。第1ゲート導電パターン36は、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿って配置されている。第1ゲート導電パターン36は、絶縁基板31の縁31cに沿って配置されている。
パワー半導体モジュール1gは、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)に加えて、第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)を備えている。そのため、パワー半導体モジュール1gの電力容量を増加させることができる。
また、第1ゲート導電パターン36は、絶縁基板31の第3主面(例えば、主面31a)の平面視において第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿って配置されている。そのため、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のエミッタ電圧の変動の少なくとも一部は、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)と第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)との間のゲート電圧の変動によって打ち消される。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1gの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1gでは、第3主面(例えば、主面31a)は、導電回路パターン13に面している。そのため、パワー半導体モジュール1gの電力容量を増加させることができるとともに、パワー半導体モジュール1gの寿命を延ばすことができる。
実施の形態5.
図45から図48を参照して、実施の形態5のパワー半導体モジュール1hを説明する。本実施の形態のパワー半導体モジュール1hは、実施の形態1のパワー半導体モジュール1と同様の構成を備えるが、以下の点で主に異なる。
図46及び図47を参照して、プリント配線基板30は、絶縁基板31の主面31aと主面31bとの間に配置されている少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)を含む。少なくとも一つの内側ゲート導電パターンは、複数の内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)であってもよい。本実施の形態では、少なくとも一つの内側ゲート導電パターンは、内側ゲート導電パターン81b,81cである。内側ゲート導電パターン81b,81cは、プリント配線基板30の厚さ方向(z方向)において、第1エミッタ導電パターン33と第1ゲート導電パターン36とから離間されている。少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)は、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。プリント配線基板30は、例えば、多層銅張積層板である。
図45から図48を参照して、少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)は、複数のパワー半導体素子20a,20b,20cの少なくとも一つに対応して設けられている。例えば、内側ゲート導電パターン81bは、パワー半導体素子20bに対応して設けられている。内側ゲート導電パターン81cは、パワー半導体素子20cに対応して設けられている。絶縁基板31の主面31bの平面視において、内側ゲート導電パターン81bは、パワー半導体素子20bに重なってもよい。絶縁基板31の主面31bの平面視において、内側ゲート導電パターン81cは、パワー半導体素子20cに重なってもよい。
図46及び図47を参照して、少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)は、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている。例えば、内側ゲート導電パターン81bは、導電ビア82bを用いて、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている。内側ゲート導電パターン81cは、導電ビア82cを用いて、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている。導電ビア82b,82cは、例えば、銅またはアルミニウムのような金属で形成されている。
少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)は、絶縁基板31の主面31bの平面視において第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿って配置されている。特定的には、絶縁基板31の主面31bの平面視において、内側ゲート導電パターン81b,81cは、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに重なっている。さらに特定的には、絶縁基板31の主面31bの平面視において、内側ゲート導電パターン81b,81cの短手方向(例えば、第1ゲート導電パターン36の短手方向、第2方向(y方向))における内側ゲート導電パターン81b,81cの中心線は、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに重なっている。
図45及び図48を参照して、少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)の幅wigは、第1エミッタ導電パターン33のうち、絶縁基板31の主面31bの平面視において第1ゲート導電パターン36の長手方向(第1方向(x方向))で第1ゲート導電パターン36に対応する第1部分33pの幅we1(図6を参照)より小さい。そのため、少なくとも一つの内側ゲート導電パターンの寄生インダクタンスを、第1エミッタ導電パターン33の寄生インダクタンス60,61(図7を参照)よりも大きくすることができる。少なくとも一つの内側ゲート導電パターンの幅wigは、第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pの幅we1の二分の一以下であってもよく、第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pの幅we1の三分の一以下であってもよく、第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pの幅we1の四分の一以下であってもよく、第1エミッタ導電パターン33の第1部分33pの幅we1の五分の一以下であってもよい。
少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)の幅wigは、第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1より大きくてもよい。少なくとも一つの内側ゲート導電パターンの幅wigは、第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1に等しくてもよいし、第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1より小さくてもよい。少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)の第1幅wigは、少なくとも一つの内側ゲート導電パターンの短手方向(第1ゲート導電パターン36の短手方向、第2方向(y方向))における少なくとも一つの内側ゲート導電パターンの長さとして定義される。
少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)は、第1ゲート導電パターン36より、第1エミッタ導電パターン33の近くに配置されている。第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55が少なくとも一つの内側ゲート導電パターンにおいて形成する磁束Φは、主電流55が第1ゲート導電パターン36において形成する磁束Φより大きい。少なくとも一つの内側ゲート導電パターンに発生する第2誘導起電力は、第1ゲート導電パターン36に発生する第2誘導起電力より大きくなる。
図49から図51を参照して、本実施の形態の第1変形例では、プリント配線基板30は、絶縁基板31の主面31aと主面31bとの間に配置されているシールドパターン84をさらに含む。シールドパターン84は、例えば、パワー半導体素子20aに対応して設けられている。絶縁基板31の主面31bの平面視において、シールドパターン84は、パワー半導体素子20aに重なってもよい。シールドパターン84は、第1ゲート導電パターン36から電気的に絶縁されている。シールドパターン84は、第1エミッタ導電パターン33から電気的に絶縁されている。
シールドパターン84は、絶縁基板31の主面31bの平面視において第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに沿って配置されている。特定的には、絶縁基板31の主面31bの平面視において、シールドパターン84は、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに重なっている。さらに特定的には、絶縁基板31の主面31bの平面視において、シールドパターン84の短手方向(例えば、第1ゲート導電パターン36の短手方向、第2方向(y方向))におけるシールドパターン84の中心線は、第1エミッタ導電パターン33の第1縁33aに重なっている。
シールドパターン84の幅wsは、第1ゲート導電パターン36の第1幅wg1に等しいまたはより大きい。そのため、シールドパターン84は、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55が形成する磁束Φの少なくとも一部を遮蔽する。シールドパターン84は、シールドパターン84に対応する第1ゲート導電パターン36の部分において磁束Φを減少させる。シールドパターン84は、第1ゲート導電パターン36の当該部分に発生する第2誘導起電力を減少させる。シールドパターン84の幅wsは、シールドパターン84の短手方向(第1ゲート導電パターン36の短手方向、第2方向(y方向))におけるシールドパターン84の長さとして定義される。
シールドパターン84の幅wsは、少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)の幅wig(図48を参照)に等しくてもよい。シールドパターン84の幅wsは、少なくとも一つの内側ゲート導電パターンの幅wigより大きくてもよい。シールドパターン84の幅wsは、第1エミッタ導電パターン33のうち、絶縁基板31の主面31bの平面視において第1ゲート導電パターン36の長手方向(第1方向(x方向))で第1ゲート導電パターン36に対応する第1部分33pの幅we1(図6を参照)より小さい。
図52を参照して、本実施の形態の第2変形例では、少なくとも一つの内側ゲート導電パターンは、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20b)に対応して設けられている第1内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b)と、第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)に対応して設けられている第2内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81c)とを含む。第2主面(例えば、主面31a)と第3主面(例えば、主面31b)とが互いに離間されている方向(絶縁基板31の厚さ方向、z方向)において、第1エミッタ導電パターン33と第1内側ゲート導電パターンとの間の第1距離は、第1エミッタ導電パターン33と第2内側ゲート導電パターンとの間の第2距離と異なっている。
例えば、第2主面(例えば、主面31a)と第3主面(例えば、主面31b)とが互いに離間されている方向(絶縁基板31の厚さ方向、z方向)において、第1エミッタ導電パターン33と第1内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b)との間の第1距離は、第1エミッタ導電パターン33と第2内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81c)との間の第2距離より大きい。第1内側ゲート導電パターンは、内側ゲート導電パターン81cより遠くに配置されている。第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55が第1内側ゲート導電パターンにおいて形成する磁束Φは、主電流55が第2内側ゲート導電パターンにおいて形成する磁束Φより小さい。第1内側ゲート導電パターンに発生する第2誘導起電力は、第2内側ゲート導電パターンに発生する第2誘導起電力より小さくなる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1hは、実施の形態1のパワー半導体モジュール1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1hでは、プリント配線基板30は、絶縁基板31の第2主面(例えば、主面31a)と第3主面(例えば、主面31b)との間に配置されている少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)を含む。少なくとも一つの内側ゲート導電パターンは、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20b)または第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)の少なくとも一つに対応して設けられている。少なくとも一つの内側ゲート導電パターンは、第1ゲート導電パターン36に電気的に接続されている。少なくとも一つの内側ゲート導電パターンは、絶縁基板31の第3主面の平面視においてエミッタ導電パターン(第1エミッタ導電パターン33)の第1縁33aに沿って配置されている。
そのため、少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b,81c)は、第1ゲート導電パターン36より、第1エミッタ導電パターン33の近くに配置されている。少なくとも一つの内側ゲート導電パターンに発生する第2誘導起電力は増加し得る。第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動が第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のゲート電圧の変動によってより適切に打ち消されるように、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のゲート電圧は調整され得る。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1hの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1hでは、少なくとも一つの内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b)は、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20b)に対応して設けられている。プリント配線基板30は、絶縁基板31の第2主面(例えば、主面31a)と第3主面(例えば、主面31b)との間に配置されているシールドパターン84をさらに含む。シールドパターン84は、第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20a)に対応して設けられている。シールドパターン84は、第1ゲート導電パターン36から電気的に絶縁されている。シールドパターン84は、絶縁基板31の第3主面の平面視においてエミッタ導電パターン(第1エミッタ導電パターン33)の第1縁33aに沿って配置されている。
シールドパターン84は、シールドパターン84に対応する第1ゲート導電パターン36の部分において、第1エミッタ導電パターン33を流れる主電流55が形成する磁束Φを減少させる。シールドパターン84は、第1ゲート導電パターン36の当該部分に発生する第2誘導起電力を減少させる。第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動が第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のゲート電圧の変動によってより適切に打ち消されるように、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のゲート電圧は調整され得る。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1hの寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のパワー半導体モジュール1hでは、少なくとも一つの内側ゲート導電パターンは、第1パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20b)に対応して設けられている第1内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81b)と、第2パワー半導体素子(例えば、パワー半導体素子20c)に対応して設けられている第2内側ゲート導電パターン(例えば、内側ゲート導電パターン81c)とを含む。第2主面(例えば、主面31a)と第3主面(例えば、主面31b)とが互いに離間されている方向(絶縁基板31の厚さ方向、z方向)において、エミッタ導電パターン(第1エミッタ導電パターン33)と第1内側ゲート導電パターンとの間の第1距離は、エミッタ導電パターンと第2内側ゲート導電パターンとの間の第2距離と異なっている。
そのため、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のエミッタ電圧の変動が第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のゲート電圧の変動によってより適切に打ち消されるように、第1パワー半導体素子と第2パワー半導体素子との間のゲート電圧は調整され得る。第1パワー半導体素子及び第2パワー半導体素子のコレクタ-エミッタ間電流が急増することが防止される。パワー半導体モジュール1hの寿命を延ばすことができる。
実施の形態6.
本実施の形態は、上述した実施の形態1から実施の形態5のパワー半導体モジュール1,1e,1f,1g,1hを電力変換装置に適用したものである。本開示は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態5として、三相のインバータに本開示のパワー半導体モジュール1,1e,1f,1g,1hを適用した場合について説明する。
図53に示す電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は、特に限定されないが、例えば、直流系統、太陽電池または蓄電池で構成されてもよいし、交流系統に接続された整流回路またはAC/DCコンバータで構成されてもよい。電源100は、直流系統から出力される直流電力を別の直流電力に変換するDC/DCコンバータによって構成されてもよい。
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、図53に示されるように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201を制御する制御信号を主変換回路201に出力する制御回路203とを備えている。
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子(図示せず)と還流ダイオード(図示せず)を備えている。スイッチング素子が電源100から供給される電圧をスイッチングすることによって、主変換回路201は、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換して、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態の主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードとから構成され得る。主変換回路201の各スイッチング素子の少なくともいずれかは、上述した実施の形態1から実施の形態5のいずれかのパワー半導体モジュール1,1e,1f,1g,1hに相当する半導体装置202が有するスイッチング素子である。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
また、主変換回路201は、各スイッチング素子を駆動する駆動回路(図示せず)を備えている。駆動回路は、半導体装置202に内蔵されていてもよいし、半導体装置202の外部に設けられてもよい。駆動回路は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成して、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に駆動信号を供給する。具体的には、制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
制御回路203は、負荷300に電力が供給されるように主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、負荷300に出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって、主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、主変換回路201が備える駆動回路に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
本実施の形態の電力変換装置では、主変換回路201を構成する半導体装置202として、実施の形態1から実施の形態5のいずれかのパワー半導体モジュール1,1e,1f,1g,1hが適用される。そのため、電力変換装置の電力容量を増加させるとともに、電力変換装置の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに本開示を適用する例を説明したが、本開示は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では2レベルの電力変換装置としたが、3レベルの電力変換装置またはマルチレベルの電力変換装置であってもよいし、電力変換装置が単相負荷に電力を供給する場合には、単相のインバータに本開示が適用されてもよい。電力変換装置が直流負荷等に電力を供給する場合には、DC/DCコンバータまたはAC/DCコンバータに本開示が適用され得る。
本開示を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
今回開示された実施の形態1から実施の形態6及びそれらの変形例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態1から実施の形態6及びそれらの変形例の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本開示の範囲は、上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。