本方法のある特定の態様、様式、実施形態、バリエーションおよび特性が、本テクノロジーの実質的な理解をもたらすために、様々なレベルの詳細さで以下に記載されることは、理解されるべきである。
本方法の実施において、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、免疫学、微生物学および組換えDNAにおける多くの従来技術が使用される。例えば、Sambrook and Russell eds. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition;シリーズのAusubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biology;シリーズのMethods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);MacPherson et al. (1991) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press);MacPherson et al. (1995) PCR 2: A Practical Approach;Harlow and Lane eds. (1999) Antibodies, A Laboratory Manual;Freshney (2005) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 5th edition;Gait ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization;Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins eds. (1984) Transcription and Translation;Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press (1986));Perbal (1984) A Practical Guide to Molecular Cloning;Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides ed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;Mayer and Walker eds. (1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London);およびHerzenberg et al. eds (1996) Weir 's Handbook of Experimental Immunologyを参照。
本開示は、インスリンとFcの融合タンパク質(例えば、プロインスリンとFcの融合タンパク質)の組成物および自己免疫疾患、例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病を処置または予防するためのそれらの使用に関する。本明細書に記載される通り、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質は、自己抗原特異的B細胞(例えば、インスリン特異的B細胞)に選択的に結合し、これにより、全てのB細胞の非特異的な包括的な排除と関連する弱点(例えば、免疫不全状態)を回避する。加えて、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質は、インスリンホルモン受容体に結合するインスリンに対する結合親和性を欠くので、それらは、インスリンホルモン受容体を発現する全ての細胞を非特異的に除去することを回避する。理論に束縛されるものではないが、ある実施形態において、本明細書に記載される融合タンパク質が、自己抗原特異的BCR(例えば、インスリン特異的BCR)に結合すると信じられる。
本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質は、ビオチン標識インスリンのIM-9のインスリンホルモン受容体への結合と干渉せず、それ故、IM-9細胞上に存在するインスリン受容体に非常に弱く結合するか、または全く結合せず、インビボでの血糖を下げるそれらの機会を最小にする。これは、正常またはわずかに上昇した血糖レベルを有し得、本明細書に記載されるインビトロでの結合アッセイにおいて、インスリン受容体にIC50値<3,000nMで、またはタンパク質にIC50値<1,000nMでのより高い結合親和性でさえ結合することができるインスリンとFcの融合タンパク質での治療により誘導された可能性のある低血糖(例えば、低い血糖)のリスクが疑われる、自己免疫疾患を有する患者(例えば、前糖尿病患者、インスリン自己抗体を有する患者、または最近発症した1型糖尿病患者)を処置するのに有利な特性である。従って、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質は、それらのインビボ血液グルコースレベルを下げることなく、対象において自己免疫1型糖尿病を処置または予防するのに有用である。
定義
別段定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、一般に、本テクノロジーが属する当該技術分野における当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書および添付の請求の範囲において使用される通り、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が別段明確に示さない限り、複数の参照物を含む。例えば、「1個の細胞」への言及は、2個以上の細胞の組合せなどを含む。一般に、本明細書において使用される命名法、ならびに以下に記載される細胞培養における実験室の手法、分子遺伝学、有機化学、分析化学および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションは、当該技術分野において周知であり、一般的に利用されるものである。
用語「インスリン+」、「Ins+」、「インスリン特異的」および「抗インスリン」は、本明細書において互換的に使用される。
本明細書において使用される、EC50は、インビトロでのインスリン特異的B細胞の除去についての最大応答の半分が観察される、インスリンとFcの融合タンパク質の濃度(例えば、インスリン+B細胞受容体が半分低減される濃度)を指す。
本明細書において使用される、IC50は、所定の生物学的機能または生化学的プロセス(例えば、結合)が半分阻害される、インスリンとFcの融合タンパク質の濃度を指す。ある実施形態において、IC50は、インスリンのヒトインスリン受容体への結合が半分低減される、インスリンとFcの融合タンパク質の濃度を指す。ある実施形態において、IC50は、インスリンのインスリン特異的B細胞への結合が半分低減される、インスリンとFcの融合タンパク質の濃度を指す。ある実施形態において、IC50は、参照標準により誘導されるT細胞活性化が半分低減される、インスリンとFcの融合タンパク質の濃度である。
本明細書において使用される、数に関する用語「約」は、一般に、(かかる数が、可能性のある値の0%未満であるか、もしくは100%を超える場合を除き)別段規定されるか、または文脈から別段明らかでない限り、数のいずれかの向きの(より大きいかもしくはより小さい)1%、5%、10%、あるいは20%の範囲内にある数を含むとみなされる。
本明細書において使用される、対象への薬剤または薬物の「投与」は、その意図される機能を果たすために対象に化合物を導入またはデリバリーする任意の経路を含む。投与は、経口、経鼻、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、もしくは皮下)、直腸性、くも膜下腔内、経皮、または局所を含むが、これらに限定されない任意の適当な経路により行うことができる。投与は、自己投与および別のものによる投与を含む。
本明細書において使用される、用語「類似体」は、少なくとも1つの態様において、別の化合物もしくは結合体のものと類似する化学構造を有するが、それとは異なる化合物または結合体(例えば、化合物、本明細書に記載される結合体、例えば、インスリン)を指す。
本明細書において使用される、用語「自己抗体」は、個体自身のタンパク質、細胞、組織、もしくは器官の1つまたは複数を標的にする、および/あるいは反応する抗体を指す。本明細書において使用される、用語「自己抗原」は、免疫応答(例えば、液性もしくは細胞介在性免疫応答)の標的である正常な組織、細胞、タンパク質、ペプチド、またはDNAを含む抗原を指す。自己抗原は、自己免疫疾患の場合には、自己抗体により標的にされるか、またはそれと反応し得る。
本明細書において使用される、「自己免疫性糖尿病」は、膵臓のインスリン産生β細胞の破壊により特徴付けられる糖尿病を指す。
本明細書において使用される、用語「細胞表面受容体」は、細胞膜の外部表面において一般にみられ、例えば、血液供給において循環する可溶性分子と相互作用するタンパク質のような分子を指す。細胞表面受容体はまた、可溶性形態で細胞外空間に分泌され得るか、または細胞の外部表面から脱落し得る。ある実施形態において、細胞表面受容体は、抗原、または抗原受容体を含んでもよい。他の実施形態において、B細胞とも呼ばれるBリンパ球は、「B細胞受容体」もしくは「BCR」、またはある場合には、「IgM」受容体と呼ばれる、細胞表面受容体を有する。
本明細書において使用される、「対照」は、比較目的で実験において使用される代替試料である。対照は、「陽性」または「陰性」であり得る。例えば、実験の目的が、特定のタイプの疾患についての処置用治療剤の有効性の相関を決定することである場合、陽性対照(所望の治療効果を発揮することが知られた化合物または組成物)および陰性対照(治療を受けていないか、もしくはプラセボを受けた対象または試料)が、典型的には利用される。
本明細書において使用される、用語「有効量」は、所望の治療および/または予防効果を達成するのに十分な量、例えば、本明細書に記載される疾患または状態、あるいは本明細書に記載される疾患もしくは状態と関連する1種もしくは複数の兆候または症状の予防、あるいは減少をもたらす量を指す。治療または予防適用の文脈において、対象に投与される組成物の量は、組成物、疾患の程度、タイプ、および重症度、ならびに一般的な健康、年齢、性別、体重および薬物に対する抵抗性のような個々の特徴に依存して変動する。当業者は、これらおよび他の要因に依存して適当な投薬量を決定することができる。組成物はまた、1種または複数のさらなる治療化合物と組合せて投与することができる。本明細書に記載される方法において、医薬組成物は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の1種もしくは複数の兆候または症状を有する対象に投与されてもよい。本明細書において使用される、組成物の「治療上有効量」は、本明細書に記載される疾患または状態の生理的作用が、改善されるか、または排除される組成物レベルを指す。治療上有効量は、1回または複数回の投与で与えることができる。本明細書において使用される、組成物の「予防上有効量」は、本明細書に記載される疾患もしくは状態の少なくとも1つの症状の開始を予防または遅延させる組成物レベルを指す。予防上有効量は、1回または複数回の投与で与えることができる。
本明細書において使用される、用語「内在性Cペプチド」レベルは、処置、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質処置に先立つ、対象におけるCペプチドのレベルを指す。
本明細書において使用される、用語「融合タンパク質」、例えば、「インスリンとFc融合物」タンパク質は、ペプチド結合を通じて共有結合されている、例えば、典型的には、異なる供給源(例えば、異なるタンパク質、ポリペプチド、細胞など)由来の1つより多くのドメインを含むタンパク質を指す。ある実施形態において、融合タンパク質は、組換え産生される。ある実施形態において、融合タンパク質のドメインは、それぞれのドメインをコードする遺伝子配列を単一の核酸分子と結びつけることにより、共有結合される。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、インスリンおよびFcフラグメントポリペプチドをペプチド結合により結合させて、単一のポリペプチドを形成する、インスリンポリペプチド(例えば、プロインスリンポリペプチド)およびFcフラグメントポリペプチドを含むタンパク質、例えば、単一のポリペプチドである。
本明細書において使用される、用語「インスリン」は、成熟インスリン、プレプロインスリン、およびプロインスリン、ならびに天然に生じるインスリンまたはその類似体(例えば、プロインスリン類似体)を包含する。ある実施形態において、インスリンポリペプチド、例えば、プロインスリンポリペプチドは、全長インスリン(例えば、全長プロインスリン)ポリペプチドまたはそのフラグメントであり得る。ある実施形態において、インスリンポリペプチド(例えば、プロインスリンポリペプチド)は、天然に生じるインスリン(例えば、プロインスリン)由来の1種もしくは複数のフラグメントまたはドメイン、および/あるいは天然に生じないインスリン(例えば、プロインスリン)由来の1種もしくは複数のフラグメントまたはドメインを含む。
本明細書において使用される、用語「個体」、「患者」、または「対象」は、個々の生物、脊椎動物、哺乳類、またはヒトであり得る。ある実施形態において、個体、患者または対象は、ヒトである。典型的なヒト対象は、障害、例えば、本明細書に記載される障害を有するヒト患者、または正常対象を含む。
本明細書において使用される、用語「非経口投与」および「非経口投与される」は、通常注射による、経腸および局所投与以外の投与の様式を指し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内注射ならびに注入を含むが、これらに限定されない。
本明細書において使用される、用語「医薬的に許容される」は、合理的な恩恵/リスクの比と釣り合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なく、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適当な正当な医療判断の範囲内である化合物、物質、組成物、ならびに/あるいは投薬形態を指す。
本明細書において使用される、用語「医薬的に許容される担体」は、ある器官もしくは身体の一部から別の器官もしくは身体の一部に本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質を運ぶか、または輸送するのに関与する、液体あるいは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒あるいは封入物質のような、医薬的に許容される物質、組成物あるいはビークルを意味する。それぞれの担体は、製剤の他の成分と適合可能であり、患者に有害でないという意味で、「許容される」なければならない。
本明細書において使用される、障害もしくは状態の「予防」または「予防すること」は、統計試料において、処置されていない対照試料と比べて処置された試料における障害もしくは状態の出現を低減するか、あるいは処置されていない対照試料と比べて障害もしくは状態の1つまたは複数の症状の開始を遅らせる化合物を指す。本明細書において使用される、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を予防することは、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状の開始を予防するか、または遅らせることを含む。本明細書において使用される、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の予防はまた、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の1つもしくは複数の兆候または症状の再発を予防することを含む。
本明細書において使用される、用語「試料」は、対象の生きている細胞からもたらされた生物学的試料材料を意味する。生物学的試料は、対象から単離された組織、細胞、タンパク質または細胞の膜抽出物、および生体体液(例えば、腹水または脳脊髄液(CSF))、ならびに対象内に存在する組織、細胞および液体(血液、血漿、唾液、尿、血清など)を含み得る。
本明細書において使用される、用語「別の」治療上の使用は、異なる経路による同時または実質的に同時の少なくとも2種の有効成分の投与を指す。
本明細書において使用される、アミノ酸もしくはヌクレオチド配列の文脈における用語「配列同一性」または「同一」は、クエリー配列のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の特定された連続セグメントが、整列され、参照配列のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列と比較されるとき、同じヌクレオチドまたはアミノ酸残基が、特定のクエリー配列および参照配列内で見られることを意味する。配列アライメントの方法および配列間の同一性の決定方法は、当該技術分野において公知である。例えば、Ausubel et al., eds. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 19 (Greene Publishing and VViley-Interscience, New York);およびALIGNプログラム(Dayhoff (1978) in Atlas of Polypeptide Sequence and Structure 5: Suppl. 3 (National Biomedical Research Foundation, Washington, D.C.))を参照。2つのヌクレオチド配列の最適なアライメントに関して、クエリーヌクレオチド配列の連続するセグメントは、参照ヌクレオチド配列に関して追加のヌクレオチドまたは削除されたヌクレオチドを有してもよい。同様に、2つのアミノ酸配列の最適なアライメントの目的のため、クエリーアミノ酸配列の連続するセグメントは、参照アミノ酸配列に関して追加のアミノ酸残基または削除されたアミノ酸残基を有してもよい。ある実施形態において、参照ヌクレオチド配列または参照アミノ酸配列との比較のため使用される連続するセグメントは、少なくとも6、10、15、もしくは20個の連続するヌクレオチド、またはアミノ酸残基を含み、30、40、50、100個以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基であってもよい。クエリーヌクレオチド配列またはアミノ酸配列におけるギャップの組み入れと関連する増大した配列同一性についての補正は、ギャップペナルティを評価することにより成され得る。配列アライメントの方法は、当該技術分野において公知である。
ある特定の実施形態において、2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成される。例えば、アミノ酸配列のパーセント同一性は、ギャップオープンペナルティ12およびギャップ伸長ペナルティ2、BLOSUMマトリックス62でのアフィン6ギャップ検索を使用するスミス・ウォーターマン相同性検索アルゴリズムを使用して決定される。スミス・ウォーターマン相同性検索アルゴリズムは、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math 2:482-489に記載され、参照により本明細書に取り込まれる。ある実施形態において、ヌクレオチド配列のパーセント同一性は、ギャップオープンペナルティ25およびギャップ伸長ペナルティ5を使用するスミス・ウォーターマン相同性検索アルゴリズムを使用して決定される。配列同一性のかかる決定は、例えば、TimeLogicのDeCypherハードウエアアクセラレータを使用して行うことができる。
本明細書において使用される、用語「連続的な」治療上の使用は、異なる時間、同一または異なる投与経路での少なくとも2つの有効成分の投与を指す。より具体的には、連続的な使用は、他の投与または他が始まる前の有効成分の1つの投与全体を指す。従って、他の有効成分もしくは複数の有効成分を投与する数分、数時間、または数日前に渡り有効成分の1つを投与することが可能である。この場合には、同時処置は存在しない。
本明細書において使用される、用語「同時の」治療上の使用は、同じ経路による、同時または実質的に同時の少なくとも2つの有効成分の投与を指す。
本明細書において使用される、「特異的に結合する」または「選択的に結合する」は、(i)免疫グロブリン分子(例えば、抗インスリン免疫グロブリン)とインスリンもしくは本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質、(ii)B細胞受容体(例えば、抗インスリン免疫グロブリン)とインスリンもしくは本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質、または(iii)B細胞受容体を発現するB細胞(例えば、抗インスリン免疫グロブリン)とインスリンもしくは本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質の間に生じるタイプの非共有結合の相互作用を指す。結合相互作用、例えば、免疫学的結合の相互作用もしくは特異的な結合の相互作用の強さ、または親和性は、相互作用の解離定数(Kd)に関して表されることができ、Kdが小さいほど、高い親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的または特異的な結合特性は、当該技術分野において公知の方法を使用して定量することができる。1つのかかる方法は、リガンドとリガンド受容体の複合体(例えば、抗原と抗原受容体の複合体;インスリン抗体とインスリンの複合体;またはインスリン抗体とインスリンとFcの融合タンパク質の複合体)形成および解離の比を測定することを必要とし、それらの比は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、および両方の向きで比に等しく影響する幾何学的パラメーターに依存する。従って、「結合速度定数」(kon)と「解離速度定数」(koff)の両方は、濃度の計算ならびに結合および解離の実際の比により決定することができる。例えば、Nature 361:186-87(1993)を参照。koff/konの比により、親和性と関連しない全てのパラメーターの取り消しが可能になり、解離定数Kdと等しい。(一般に、Davies et al. (1990) Annual Rev Biochem 59:439-473を参照)。ある実施形態において、本明細書に記載される融合タンパク質は、平衡結合定数(Kd)が、例えば、放射性リガンド結合アッセイ、ELISA、表面プラズモン共鳴、平衡結合アッセイ、または当業者に公知の同様のアッセイのようなアッセイにより測定された、1μΜ以下、例えば、100nM以下、10nM以下、100pM以下、または約1pM以下のとき、抗インスリン抗体免疫グロブリン、BCR(例えば、抗インスリン免疫グロブリンを含むBCR)、および/またはB細胞、例えば、インスリン特異的B細胞のような自己抗原特異的B細胞に特異的に結合する。
本明細書において使用される、用語「全身投与」、「全身投与される」、「末梢血投与」および「末梢投与される」は、それらが患者のシステムに入り、これにより、代謝および他の同様のプロセスの対象にされるような、直接中枢神経系に以外のインスリンとFcの融合タンパク質の投与、例えば、皮下投与を意味する。
本明細書において使用される、「処置すること」または「処置」は、ヒトのような対象における、本明細書に記載される疾患または障害の処置をカバーし、(i)疾患または障害を阻害すること、すなわち、その発症を抑止すること;(ii)疾患または障害を軽減すること、すなわち、障害の退縮を引き起こすこと;(iii)障害の進行を遅らせること;および/あるいは(iv)疾患もしくは障害の1つまたは複数の症状を阻害すること、軽減すること、あるいは遅らせることを含む。ある実施形態において、処置は、疾患と関連する症状が、例えば、緩和されるか、低減されるか、治癒されるか、または寛解状態に置かれることを意味する。
本明細書に記載される疾患または障害の処置の様々な様式が、トータルの処置を含むが、トータルの処置未満も含む「実質的」を意味することが意図され、ここで、いくらかの生物学的または医療上関連する結果が達成されることも理解されるべきである。処置は、慢性疾患のための継続的長期処置、または急性状態の処置のための1回、もしくは数回の投与であってもよい。
I型糖尿病の管理
T1Dに付随する辛苦を低減するか、または排除するための3つの主なアプローチ、1)より良好な疾患管理、例えば、改良されたインスリン、スマートポンプ、および継続的グルコースモニター;2)疾患の逆転、例えば、膵臓または膵島移植、β細胞の再生、全身またはT細胞特異的免疫調節;ならびに3)疾患の予防、例えば、環境上のトリガーの回避、抗原特異的ワクチン接種、抗原非特異的免疫療法が存在する。T1D患者は自己免疫を発症するので、彼らのβ細胞機能は衰退し、故に、介入の可能性のある治療恩恵を衰退させる(Rewers, M and Gottlieb, P. Diabetes Care (2009), 32, 1769-1782)。加えて、自己免疫プロセスが始まると、それは、変更するのがより漸進的に困難になり得る。これらの理由から、および遅い段階での介入と比べて推定されるコスト上の利点のため、長期間の、T1Dの最も早も早い可能性のある段階での疾患の予防が理想である。
有効な疾患の予防は、T1D自己免疫プロセスの深い理解、ならびに明白な高血糖の発病の十分前にT1Dを発症するリスクを実際に診断するか、または予想することができるツールを必要とする。膵島自己免疫の開始後、大抵のT1D患者は、臨床的糖尿病への進行を止めるための処置の機会を与える長い前臨床期間を有する。膵島自己免疫の発病の主要な特徴は、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼのアイソフォーム65(抗GAD65)、タンパク質チロシンホスファターゼ様タンパク質(IA2)、および亜鉛輸送体8(ZnT8)を含む、膵島自己抗原に特異的な循環抗体の存在である。事実、診断時に、T1D患者の90%より多くが、少なくとも1種の膵島特異的抗体を提示し、若年(DAISY)コホートでのプロスペクティブ糖尿病自己免疫研究において、糖尿に進行した小児の89%が、2種以上の膵島特異的自己抗体を発現していた。CD4+およびCD8+T細胞は、β細胞への最終的な攻撃に関与するが、病原性の役割のB細胞(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、またはインスリン+B細胞)が近年明らかになり、これが、なぜ抗体およびT細胞が、同じ膵島特異的自己抗原に特異的であるか、ならびに膵島特異的自己抗原の出現と完全なT細胞介在性β細胞破壊の間のタイムラグであるかを説明するのを助け得る。B細胞は、膵島抗原を取り込み、それらをヘルパーT細胞に提示し、抗原提示細胞による抗原取り込みを増強する抗体分泌形質細胞に分化させることができ、これが、β細胞破壊のための細胞傷害性T細胞の活性化を最終的に導く。
例えば、リツキシマブのようなB細胞抗原抗体による包括的なB細胞枯渇が、自己免疫疾患、例えば、T1Dのための処置として提案されてきた。例えば、Pescovitz et al., N. England J. Med. 361.22(2009):2143-52を参照。しかしながら、包括的なB細胞枯渇は、正常な機能のため免疫系により通常必要とされる健常/非自己免疫B細胞の非特異的排除(例えば、病原体のクリアランス)に起因して、対象において免疫不全状態を引き起こすことが示されている。
従って、健常な細胞の破壊により引き起こされる副作用を回避する、T1Dのような自己免疫疾患のための処置および予防が必要である。
Fcドメイン
本明細書において使用される、用語「Fc領域」、「Fcドメイン」または「Fcフラグメント」は、哺乳類のFc(ガンマ)またはFc(Rn)受容体、例えば、ヒトFc(ガンマ)もしくはFc(Rn)受容体に結合する能力がある、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を指す。Fc受容体(FcR)は、抗体のFcフラグメントまたはFc領域に結合する受容体を指す。ある特定の実施形態において、FcRは、天然のヒトFcR配列である。ある実施形態において、FcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合し、これらの受容体の対立遺伝子バリアントおよび選択的スプライシングフォームを含む、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を含む。FcγRII受容体は、それらの細胞質ドメインにおいて主に異なる同様のアミノ酸配列を有するFcγRIIA(「受容体を活性化する」)およびFcγRIIB(「受容体を阻害する」)を含む。FcRは、Ravetch and Kinet, 1991, Ann. Rev. Immunol., 9:457-92;Capel et al., 1994, Immunomethods, 4:25-34;およびde Haas et al., 1995, J. Lab. Clin. Med., 126:330-41において記載されている。「FcR」はまた、新生児の受容体FcRnを含み、これは、移行IgGの胎児への移動に関与し(Guyer et al., 1976 J. Immunol., 117:587;およびKim et al., 1994, J. Immunol., 24:249)、インビボでの抗体およびFc融合タンパク質の長期インビボ排除の半減期に寄与する。
Fcフラグメント、領域、またはドメインは、天然配列のFc領域であり得る。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は、変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、位置Cys226のアミノ酸残基から、またはPro230からそのカルボキシ末端まで伸展すると定義される。Fc領域における残基のナンバリングは、KabatのようなEU指標のものである。Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1991。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2およびCH3を含む。
ある実施形態において、Fcフラグメントは、哺乳類のIgG、例えば、ヒトIgGのFc領域(例えば、CH2ドメインおよびCH3ドメイン)を含むか、またはからなる。ある特定の実施形態において、Fcフラグメントは、ヒトIgG1のFc領域(例えば、CH2ドメインおよびCH3ドメイン)を含むか、またはからなる。ある実施形態において、Fcフラグメントは、ヒトIgG1のFc領域(例えば、CH2ドメインおよびCH3ドメイン)に少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
ある実施形態において、ヒトIgG1のFc領域は、以下のアミノ酸配列:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号22)を含む。
ある特定の実施形態において、ヒトIgG1のFc領域は、一方または両方の末端に追加アミノ酸を含む。ある実施形態において、この追加アミノ酸は、荷電した側鎖(例えば、正に荷電したアミノ酸、例えば、リジンまたはアルギニン)を含む。ある特定の実施形態において、ヒトIgG1のFc領域は、以下のアミノ酸配列:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号23)を含む。
インスリンおよびインスリン類似体
インスリンは、膵臓内のランゲルハンス膵島中のβ細胞により産生されるペプチドホルモンである。インスリンは、血液からのグルコースの吸収を制御することにより機能する。増大したタンパク質およびグルコースレベルのような、刺激に曝露されたとき、インスリンは、β細胞から放出され、インスリン受容体に結合し、ヒトの代謝の多くの態様に影響するシグナル伝達カスケードを開始する。このプロセスの破壊は、いくつかの疾患、自己免疫性糖尿病(例えば、1型糖尿病)、インスリノーマ、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、および多嚢胞性卵巣症候群と直接関連する。インスリンのアミノ酸配列は、進化を通じて、特に、脊椎動物において強固に保存され、ジスルフィド結合を通じて結合されている、AおよびB鎖と呼ばれる、2つのポリペプチド鎖からなる。ヒトプロインスリンの配列は、アミノ酸配列:
FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKTRREAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQKRGIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号24)により表される。
インスリンは、プレプロインスリンと呼ばれる不活性な前駆体としてまず合成される。一連の高度に協調した、酵素制御工程を通じて、プレプロインスリンは、成熟インスリンに変換される。小胞体でのプレプロインスリンのシグナルペプチドの切断、続いて酸化およびシャペロン支持フォールディングにより、プロインスリンを生じ、それが、トランスゴルジネットワークに運ばれる。次に、プロインスリンは、さらなるタンパク分解性処理工程の対象にされ、Cペプチドと呼ばれるフラグメントの放出および成熟インスリンの形成をもたらし、それが、不活性な6量体としてβ細胞中の亜鉛(Zn2+)およびカルシウム(Ca2+)リッチな分泌小胞内に保存される。刺激への曝露後、分泌小胞は、細胞膜と融合し、インスリンを放出し、活性なインスリン単量体への6量体の解離を促進する。ある実施形態において、本開示のインスリンは、単量体である。ある実施形態において、インスリンは、非共有結合性の多量体(例えば、2量体、4量体、6量体、またはより大きなオーダーの多量体、例えば、2量体の3量体)である。ある実施形態において、インスリンは、単量体または非共有結合性の多量体(例えば、2量体、4量体、6量体、またはより大きなオーダーの多量体、例えば、2量体の3量体)であってもよい。
ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンは、1本鎖インスリンである。ある実施形態において、インスリンは、プレプロインスリンまたはプロインスリン、例えば、成熟インスリンのプロホルモン前駆体である。インスリンおよびインスリン類似体(例えば、プロインスリンおよびプロインスリン類似体)の全ての塩形態および非塩形態が、本開示の範囲により包含される。
ある実施形態において、本開示のインスリンは、インスリン類似体(例えば、プロインスリン類似体)を含む。ヒトインスリンのいくつかの類似体は、治療上の使用のため市販されている。ある実施形態において、本テクノロジーのインスリン類似体は、単量体である。ある実施形態において、インスリン類似体は、非共有結合性の多量体(例えば、2量体、4量体、6量体、またはより大きなオーダーの多量体、例えば、2量体の3量体)である。
インスリン類似体は、ヒトインスリンの構造と密接に関連し、修飾(例えば、構造上の修飾)をさらに含有して、ある特定の機能的態様を増強してもよい。ある実施形態において、インスリン類似体は、ヒトインスリンの構造とアミノ酸置換のみで異なってもよい。ある実施形態において、インスリン類似体は、ヒトインスリンの構造とアミノ酸欠失のみで異なってもよい。ある実施形態において、インスリン類似体は、ヒトインスリンの構造とアミノ酸付加のみで異なってもよい。ある実施形態において、インスリン類似体は、インスリンのバリアントまたは変異体を含む(例えば、配列番号24により記載されるインスリンの配列)。ある実施形態において、インスリン類似体は、インスリンと比べてアミノ酸置換、欠失、または付加を含む(例えば、配列番号24により記載されるインスリンの配列)。ある実施形態において、インスリン類似体は、インスリンと比べて少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、もしくは少なくとも50個のアミノ酸置換、欠失、または付加を含む(例えば、配列番号24により記載されるインスリンの配列)。
ある実施形態において、インスリンまたはインスリン類似体は、A鎖、B鎖、およびC鎖のエレメントを含む3つの鎖のペプチドである。ある実施形態において、インスリンまたはインスリン類似体は、例えば、哺乳類(例えば、ヒトもしくはマウス)由来の野生型インスリンB、A、および/またはC鎖ペプチドを含む。
ヒトインスリンA鎖およびB鎖の配列は、それぞれ、配列番号19および配列番号25により表される:ヒトインスリンA鎖:GIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号19);ヒトインスリンB鎖:FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号25)。
ある実施形態において、インスリンあるいはインスリン類似体の配列に対する修飾(例えば、アミノ酸置換、欠失、もしくは付加、または化学的修飾)は、インスリンのA鎖、インスリンのB鎖のいずれか、またはその任意の組合せに対するものであってもよい。ある実施形態において、インスリンまたはインスリン類似体が、1つより多くのA鎖、B鎖、および/またはC鎖を含む非共有結合性の多量体であるとき、インスリンに対する修飾(例えば、アミノ酸置換、欠失、もしくは付加、または化学的修飾)は、非共有結合性の多量体におけるA鎖、B鎖のいずれか、または両方に対するものであってもよい。
本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質
1つの態様において、本開示は、Fcドメインに融合したインスリンポリペプチドを含むインスリンとFcの融合タンパク質であって、インスリンポリペプチドが、B鎖ペプチド、C鎖ペプチド、およびA鎖ペプチドを含み、C鎖ペプチドのアミノ酸配列がAAKである、インスリンとFcの融合タンパク質を提供する。加えてまたは代わりに、ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、競合的結合アッセイにおいてIC50>5,000nMでヒトインスリン受容体に結合する。ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、低い生物活性を有するか、または実質的に代謝上不活性であり、例えば、それらは、投与の際に対象において血液グルコースレベルを実質的に下げない。
加えてまたは代わりに、ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、インスリン+B細胞受容体のインスリンへのインビトロでの結合をIC50<300nM、<200nM、<150nM、<100nM、または<75nMで阻害する。加えてまたは代わりに、ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、T細胞を活性化して、組換えヒトインスリンにより活性化されたT細胞において観察されたものと比較して、低減されているIL-2レベルを分泌する。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、T細胞を活性化して、3,000pg/ml未満、1,000pg/mL未満、500pg/mL未満、300pg/mL未満、または100pg/ml未満であるIL-2レベルを分泌する。
ある特定の実施形態において、インスリンポリペプチドは、プロインスリンポリペプチドまたはプレプロインスリンポリペプチドである。インスリンとFcの融合タンパク質のある実施形態において、A鎖ペプチドのアミノ酸配列は、配列番号19を含む。インスリンポリペプチドは、ペプチドリンカーを介してFcフラグメントに融合されてもよい。ペプチドリンカーの例は、配列番号20および配列番号21を含む。あるいは、ペプチドリンカーは、インスリンとFcの融合タンパク質のインスリンポリペプチドとFcドメインの間に存在しなくてもよい(例えば、インスリンポリペプチドのC末端領域が、(例えば、ペプチド結合を介して)FcドメインのN末端領域に共有結合されるか、またはインスリンポリペプチドのN末端領域が、(例えば、ペプチド結合を介して)FcドメインのC末端領域に共有結合される)。加えてまたは代わりに、インスリンとFcの融合タンパク質のある実施形態において、Fcドメインは、ヒトIgG1の野生型Fcフラグメントを含む。ある特定の実施形態において、Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号22を含む。
加えてまたは代わりに、インスリンとFcの融合タンパク質の上記の実施形態のいずれかにおいて、N末端からC末端へのインスリンポリペプチドの配向性は、(N末端)-B鎖ペプチド--C鎖ペプチド--A鎖ペプチド-(C末端)である。インスリンポリペプチドは、FcドメインのN末端またはC末端に位置してもよい。
加えてまたは代わりに、インスリンとFcの融合タンパク質の上記の実施形態のいずれかにおいて、B鎖ペプチドは、アミノ酸配列FVNQHLCGSHLVX1ALX2LVCGEX3GFFYTPK(配列番号28)(式中、X1は、EまたはQであり、X2は、YまたはAであり、X3は、RまたはEである)を含む。ある特定の実施形態において、X2はAである。
1つの態様において、本開示は、Fcドメインに融合したインスリンポリペプチドを含むインスリンとFcの融合タンパク質であって、インスリンポリペプチドが、B鎖ペプチド、C鎖ペプチド、およびA鎖ペプチドを含み、B鎖ペプチドが、アミノ酸配列FVNQHLCGSHLVX1ALX2LVCGEX3GFFYTPK(配列番号28)(式中、X1は、EまたはQであり、X2は、YまたはAであり、X3は、RまたはEである)を含み、C鎖ペプチドのアミノ酸配列がAAKである、インスリンとFcの融合タンパク質を提供する。ある実施形態において、X2はAである。
インスリンとFcの融合タンパク質のある特定の実施形態において、インスリンポリペプチドは、プロインスリンポリペプチドまたはプレプロインスリンポリペプチドである。インスリンとFcの融合タンパク質のある実施形態において、A鎖ペプチドのアミノ酸配列は、配列番号19を含む。インスリンポリペプチドは、ペプチドリンカーを介してFcフラグメントに融合されていてもよい。ペプチドリンカーの例は、配列番号20および配列番号21を含む。あるいは、ペプチドリンカーは、インスリンとFcの融合タンパク質のインスリンポリペプチドとFcドメインの間に存在しなくてもよい。加えてまたは代わりに、インスリンとFcの融合タンパク質のある実施形態において、Fcドメインは、ヒトIgG1の野生型Fcフラグメントを含む。ある特定の実施形態において、Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号22を含む。
加えてまたは代わりに、ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8である。
図1Aは、本テクノロジーの典型的なインスリンとFcの融合タンパク質の図式表現を示す。本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、(i)可溶性抗インスリン抗体(例えば、細胞に結合しない抗インスリン抗体);(ii)例えば、B細胞(例えば、抗インスリンB細胞)上のB細胞受容体(BCR)に結合した抗インスリン免疫グロブリン;および/もしくは(iii)抗インスリンB細胞の1つまたは複数に特異的に結合するという利点を有するが、インスリン-ホルモン受容体と相互作用しない。図1Bを参照。
1つの態様において、本開示は、Fcドメインに融合したインスリンポリペプチドを含むインスリンとFcの融合タンパク質を提供する。ある特定の実施形態において、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質のインスリンポリペプチドは、以下のN末端からC末端の配向性:(N末端)-B鎖ペプチド--C鎖ペプチド--A鎖ペプチド-(C末端)でドメインを含む。加えてまたは代わりに、ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、以下のN末端からC末端の配向性:(N末端)-インスリンポリペプチド-場合によりリンカー-Fcドメイン-(C末端)(例えば、(N末端)-B鎖ペプチド--C鎖ペプチド--A鎖ペプチド--場合によりリンカー-Fcドメイン-(C末端))でドメインを含む。ある特定の実施形態において、リンカー(例えば、本明細書に記載されるペプチドリンカー)は、インスリンポリペプチドとFcドメインの間に位置する。他の実施形態において、リンカー(例えば、ペプチドリンカー)は、インスリンポリペプチドとFcドメインの間に存在しない。典型的なリンカー(例えば、ペプチドリンカー)は、本明細書におけるリンカーの節においてより詳細に記載される。
典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(例えば、プロインスリンとFcの融合タンパク質)およびそれらのドメイン配列が、表Aに示される。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、例えば、抗インスリンB細胞の除去および/またはインスリン特異的T細胞活性化の阻害のような特性を導く、修飾された変異体を含む。
本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質は、約3~5個のアミノ酸長であるC鎖ペプチドを含み、アラニンおよびリジンの中から選択されるアミノ酸を含む。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質のC鎖ペプチドは、アラニンおよびリジン以外のアミノ酸を含まない。ある特定の実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質のC鎖ペプチドは、AAKのアミノ酸配列を含むか、またはからなる。表Aを参照。
加えてまたは代わりに、ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質のA鎖ペプチドは、野生型ヒトプロインスリンのA鎖ペプチドのアミノ酸配列、もしくは野生型ヒトプロインスリンのA鎖ペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはからなる。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質のA鎖ペプチドは、GIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号19)のアミノ酸配列、もしくは配列番号19に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
加えてまたは代わりに、ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質のB鎖ペプチドは、野生型ヒトプロインスリンのB鎖ペプチドのアミノ酸配列、もしくは野生型ヒトプロインスリンのB鎖ペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはからなる。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質のB鎖ペプチドは、表Aに挙げられるB鎖ペプチドのアミノ酸配列、もしくは表Aに挙げられるB鎖ペプチドに対して少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはからなる。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質のB鎖ペプチドは、FVNQHLCGSHLEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号25)のアミノ酸配列、もしくは配列番号25に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
加えてまたは代わりに、ある実施形態において、変異を、インスリンとFcの融合タンパク質のB鎖ペプチドに導入して、例えば、配列および/または長さを変動させてもよい。インスリンのB鎖の特定のアミノ酸残基での変異は、非肥満糖尿病(NOD)マウスにおいてT細胞刺激を抑止することが示された(Nakayama, M. et al. Science (2005) 435:220-223;Nakayama, M. et al Ann NY Acad Sci (2006) 1079: 122-129)。理論に束縛されるものではないが、ある特定のインスリン変異体が、T細胞受容体によるインスリンペプチドエピトープとMHC-IIの複合体の認識を破壊させ得、順に、膵島細胞へのT細胞活性化を防ぐと信じられている。インスリンまたはインスリン類似体の配列に対する典型的な修飾は、例えば、配列番号25の残基16でのアミノ酸置換(例えば、Y16A置換)を含んでもよい。従って、ある実施形態において、インスリンもしくはインスリン類似体のB鎖上に少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、または付加(例えば、配列番号25と比べて)を含むインスリンとFcの融合タンパク質は、インスリンフラグメントもしくはインスリン類似体フラグメントを生じるMHC-II複合体に対するT細胞の低減した親和性、および/またはインビボでの低減したT細胞活性化をもたらしてもよい。従って、ある特定の実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質のB鎖ペプチドは、アミノ酸残基16での変異(例えば、Y16A置換)を有する変異誘発されたB鎖を含む。ある特定の実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質のB鎖ペプチドは、配列番号11~15のいずれか1つの配列を有する。
Fcドメインに作動可能に結合されたインスリンポリペプチドを含むインスリンとFcの融合タンパク質が、本明細書において提供される。ある特定の実施形態において、インスリン融合タンパク質は、本明細書に記載されるFcドメインを含む。インスリンとFcの融合タンパク質のある実施形態において、Fcドメインは、配列番号22のアミノ酸配列、もしくは配列番号22に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはからなる。インスリンとFcの融合タンパク質の他の実施形態において、Fcドメインは、配列番号23のアミノ酸配列、もしくは配列番号23に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質の全長配列が、以下に提供される。
配列番号2
FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKAAKGIVEQCCTSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号3
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTPKAAKGIVEQCCTSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号4
FVNQHLCGSHLVQALYLVCGERGFFYTPKAAKGIVEQCCTSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号5
FVNQHLCGSHLVEALYLVCGEEGFFYTPKAAKGIVEQCCTSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号6
FVNQHLCGSHLVEALALVCGEEGFFYTPKAAKGIVEQCCTSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号7
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTPKAAKGIVEQCCTSICSLYQLENYCNDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号8
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTPKAAKGIVEQCCTSICSLYQLENYCNGGGGSGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号9
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTPKAAAKGIVEQCCTSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号10
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTPKAAAAKGIVEQCCTSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
表Aは、リーダー配列を含まない。ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、N末端においてリーダー配列を含まない。他の実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、例えば、N末端においてリーダー配列を含む。典型的なリーダー配列は、アミノ酸配列MEWSWVFLFFLSVTTGVHS(配列番号26)を含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、例えば、細胞(例えば、真核生物、例えば、哺乳類細胞)における発現(例えば、組換え発現)のため、リーダー配列を含む核酸分子によりコードされる。ある特定の実施形態において、リーダー配列は、発現中、例えば、細胞培養液において切断される。リーダー配列をコードする典型的な核酸配列は、核酸配列ATGGAATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTCTTCCTGTCAGTAACGACTGGTGTCCACTCC(配列番号27)を含む。他の実施形態において、本明細書に記載される融合タンパク質は、リーダー配列を含まない核酸分子によりコードされる。
配列番号2~10のインスリンとFcの融合タンパク質をコードする核酸配列(例えば、mRNA、cDNA、DNA)も、本明細書において開示される。
ある実施形態において、核酸配列は、
ATGGAATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTCTTCCTGTCAGTAACGACTGGTGTCCACTCCTTCGTGAAGCAGCACCTGTGCGGCCCTCACCTGGTGGAAGCTCTGTATCTCGTGTGCGGCGAGCGGGGCTTCTTCTACACCCCCAAGTCTCGGAGAGAGGTGGAAGATCCCCAGGTGGAACAGCTGGAACTGGGCGGCTCTCCTGGCGATCTGCAGACACTGGCCCTGGAAGTGGCCCGGCAGAAACGGGGCATCGTGGACCAGTGCTGCACCTCCATCTGCTCCCTGTACCAGCTGGAAAACTACTGCAATGGTGGAGGCGGTGGAGTGCCCAGAGATTGTGGATGTAAGCCTTGCATATGTACAGTCCCAGAAGTATCATCTGTCTTCATCTTCCCCCCAAAGCCCAAGGATGTGCTCACCATTACTCTGACTCCTAAGGTCACGTGTGTTGTGGTAGACATCAGCAAGGATGATCCCGAGGTCCAGTTCAGCTGGTTTGTAGATGATGTGGAGGTGCACACAGCTCAGACGCAACCCCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACTTTCCGCTCAGTCAGTGAACTTCCCATCATGCACCAGGACTGGCTCAATGGCAAGGAGTTCAAATGCAGGGTCAACAGTGCAGCTTTCCCTGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAACCAAAGGCAGACCGAAGGCTCCACAGGTGTACACCATTCCACCTCCCAAGGAGCAGATGGCCAAGGATAAAGTCAGTCTGACCTGCATGATAACAGACTTCTTCCCTGAAGACATTACTGTGGAGTGGCAGTGGAATGGGCAGCCAGCGGAGAACTACAAGAACACTCAGCCCATCATGGACACAGATGGCTCTTACTTCGTCTACAGCAAGCTCAATGTGCAGAAGAGCAACTGGGAGGCAGGAAATACTTTCACCTGCTCTGTGTTACATGAGGGCCTGCACAACCACCATACTGAGAAGAGCCTCTCCCACTCTCCTGGTTAG(配列番号1)である。
ある実施形態において、核酸配列は、
ATGGAATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTCTTCCTGTCAGTAACGACTGGTGTCCACTCCTTCGTGAACCAGCACCTGTGCGGCTCCCACCTGGTGGAAGCTCTGGCTCTCGTGTGCGGCGAGCGGGGCTTCTTCTACACCCCCAAGGCCGCTAAAGGCATCGTGGAACAGTGCTGCACCTCCATCTGCTCCCTGTACCAGCTGGAAAACTACTGCAATGGCGGAGGTGGTGCAGGAGGCGGTGGAGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTTAG(配列番号29)である。
ある実施形態において、核酸配列は、
ATGGAATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTCTTCCTGTCAGTAACGACTGGTGTCCACTCCTTCGTGAACCAGCACCTGTGCGGCTCCCACCTGGTGCAAGCTCTGTATCTCGTGTGCGGCGAGCGGGGCTTCTTCTACACCCCCAAGGCCGCTAAAGGCATCGTGGAACAGTGCTGCACCTCCATCTGCTCCCTGTACCAGCTGGAAAACTACTGCAATGGCGGAGGTGGTGCAGGAGGCGGTGGAGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTTAG(配列番号30)である。
ある実施形態において、核酸配列は、
ATGGAATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTCTTCCTGTCAGTAACGACTGGTGTCCACTCCTTCGTGAACCAGCACCTGTGCGGCTCCCACCTGGTGGAAGCTCTGTATCTCGTGTGCGGCGAGGAGGGCTTCTTCTACACCCCCAAGGCCGCTAAAGGCATCGTGGAACAGTGCTGCACCTCCATCTGCTCCCTGTACCAGCTGGAAAACTACTGCAATGGCGGAGGTGGTGCAGGAGGCGGTGGAGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTTAG(配列番号31)である。
ある実施形態において、核酸配列は、
ATGGAATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTCTTCCTGTCAGTAACGACTGGTGTCCACTCCTTCGTGAACCAGCACCTGTGCGGCTCCCACCTGGTGGAAGCTCTGGCTCTCGTGTGCGGCGAGGAGGGCTTCTTCTACACCCCCAAGGCCGCTAAAGGCATCGTGGAACAGTGCTGCACCTCCATCTGCTCCCTGTACCAGCTGGAAAACTACTGCAATGGCGGAGGTGGTGCAGGAGGCGGTGGAGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTTAG(配列番号32)である。
ある実施形態において、核酸配列は、
ATGGAATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTCTTCCTGTCAGTAACGACTGGTGTCCACTCCTTCGTGAACCAGCACCTGTGCGGCTCCCACCTGGTGGAAGCTCTGGCTCTCGTGTGCGGCGAGCGGGGCTTCTTCTACACCCCCAAGGCCGCTAAAGGCATCGTGGAACAGTGCTGCACCTCCATCTGCTCCCTGTACCAGCTGGAAAACTACTGCAATGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTTAG(配列番号33)である。
ある実施形態において、核酸配列は、
ATGGAATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTCTTCCTGTCAGTAACGACTGGTGTCCACTCCTTCGTGAACCAGCACCTGTGCGGCTCCCACCTGGTGGAAGCTCTGGCTCTCGTGTGCGGCGAGCGGGGCTTCTTCTACACCCCCAAGGCCGCTAAAGGCATCGTGGAACAGTGCTGCACCTCCATCTGCTCCCTGTACCAGCTGGAAAACTACTGCAATGGCGGAGGTGGTTCAGGAGGCGGTGGAGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTTAG(配列番号34)である。
ある実施形態において、核酸配列は、
ATGGAATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTCTTCCTGTCAGTAACGACTGGTGTCCACTCCTTCGTGAACCAGCACCTGTGCGGCTCCCACCTGGTGGAAGCTCTGGCTCTCGTGTGCGGCGAGCGGGGCTTCTTCTACACCCCCAAGGCCGCTGCAAAAGGCATCGTGGAACAGTGCTGCACCTCCATCTGCTCCCTGTACCAGCTGGAAAACTACTGCAATGGCGGAGGTGGTGCAGGAGGCGGTGGAGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTTAG(配列番号35)である。
ある実施形態において、核酸配列は、
ATGGAATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTCTTCCTGTCAGTAACGACTGGTGTCCACTCCTTCGTGAACCAGCACCTGTGCGGCTCCCACCTGGTGGAAGCTCTGGCTCTCGTGTGCGGCGAGCGGGGCTTCTTCTACACCCCCAAGGCCGCTGCAGCTAAAGGCATCGTGGAACAGTGCTGCACCTCCATCTGCTCCCTGTACCAGCTGGAAAACTACTGCAATGGCGGAGGTGGTGCAGGAGGCGGTGGAGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTTAG(配列番号36)である。
リンカー
ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、例えば、インスリンとFcの融合タンパク質の1つもしくは複数のドメインの間、またはインスリンとFcの融合タンパク質と結合した分子/部分の間に1つあるいは複数のリンカーを含む。例えば、インスリンとFcの融合タンパク質は、インスリンポリペプチドとFcフラグメントの間にリンカーを含む。他の実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、インスリンポリペプチドの1つまたは複数のペプチド(例えば、A鎖、B鎖、および/もしくはC鎖ペプチド)の間にリンカーを含む。
ペプチドリンカーは、天然または非天然のアミノ酸を含んでもよい。ある実施形態において、例えば、単一の核酸分子が、インスリンポリペプチド内の様々なペプチドならびにペプチドリンカーをコードし得るか、またはインスリンポリペプチド、Fcフラグメント、およびペプチドリンカーをコードし得るように、ペプチドリンカーは、核酸分子によりコードされ得る。
ある実施形態において、ペプチドリンカーは、少なくとも5個のアミノ酸残基、例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上のアミノ酸残基を含む。ある実施形態において、ペプチドリンカーは、5~9個のアミノ酸残基を含む。ある実施形態において、ペプチドリンカーは、4個以下のアミノ酸または6個以上のアミノ酸長を含む。ある実施形態において、ペプチドリンカーは、0個のアミノ酸を含む(例えば、ペプチドリンカーがない)。ある実施形態において、ペプチドリンカーは、4個以上のグリシン(例えば、4、5、6、7、8個以上のグリシン)を含む。ある実施形態において、ペプチドリンカーは、4個以上の連続したグリシン(例えば、5個以上の連続したグリシン)を含む。ある実施形態において、ペプチドリンカーは、GGGGAGGGG(配列番号20)またはGGGGSGGGG(配列番号21)のアミノ酸配列を含む。ある実施形態において、ペプチドリンカーは、エタネルセプト融合タンパク質中のリンカーを含む。例えば、米国特許第8063182B1号を参照し、これは、全体が参照により本明細書に取り込まれる。ある実施形態において、ペプチドリンカーは、ヒト免疫グロブリン(例えば、IgG、例えば、IgG1)の「ヒンジ」領域(またはそのフラグメント)を含まない。
ヒト免疫グロブリンの「ヒンジ」領域は、しばしば、3つの領域、上部、中部、および下部のヒンジに分けられる。ある実施形態において、免疫グロブリンにおいて、上部のヒンジは、重鎖の第1のドメイン(CH1)の末端と重鎖間ジスルフィド結合を形成する第1のシステインの間のアミノ酸の数である。中部のヒンジは、プロリンが高く、重鎖間システインジスルフィド結合を含有する。下部のヒンジは、中部のヒンジをCH2ドメインに結び付ける。Sandlie, I. and Michaelsen, T., Chapter 3: Engineering the Hinge Region to Optimize Complement-induced Cytolysis, In Antibody Engineering: A Practical Guide, W. H. Freeman and Co., New York, N.Y.を参照;Hamers-Casterman. C., Naturally Occurring Antibodies Devoid of Light Chains, 363 Nature 446 (1993) and Terskikh, A. V, “Peptabody”: A New Type of High Avidity Binding Protein, 94 Proc. Natl Acad. Sci. USA 1663 (1997)も参照。
本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質の機能的特徴
本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質の対象への投与を含む、自己免疫疾患、例えば、自己免疫性糖尿病の処置または予防方法であって、インスリンとFcの融合タンパク質が、抗インスリン抗体に特異的に結合し、抗インスリンB細胞に結合し、T細胞相互作用(IL-2分泌により決定される)を減少し、および/またはインスリン受容体への弱い結合を示す、方法が、本明細書に記載される。加えてまたは代わりに、ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、競合的結合アッセイにおいて、ヒトインスリン受容体にIC50>3,000nM(例えば、4,000nM、5,000nM以上)で結合する。
加えてまたは代わりに、ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質の投与は、対象においてグルコースレベル(例えば、血液グルコースレベル)に対する実質的な効果(例えば、実質的な低下効果)を有さない。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質のグルコース低下活性は、参照標準より低い(例えば、少なくとも10%低い、20%低い、30%低い、40%低い、50%低い、または少なくとも2倍低い、例えば、少なくとも5倍低い、10倍低い、15倍低い、20倍低い、30倍低い、40倍低い、50倍低いなど)。参照標準は、哺乳類、例えば、ヒトまたはマウスから天然に生じるインスリン(例えば、プロインスリンもしくは成熟インスリン)であり得る。参照標準はまた、米国公開第2013/0028918A1号または中国公開第103509118A号に記載された融合タンパク質であり得る。
ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、特定の膵島自己抗原と反応するB細胞を特異的に標的にし、例えば、インスリンとFcの融合タンパク質は、その特定の膵島自己抗原と反応しないB細胞を標的にしない。例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、インスリンと反応するB細胞(インスリン特異的B細胞、インスリン+B細胞、インスリン+B220+細胞、または抗インスリンB細胞とも呼ばれる)を特異的に標的にする。ある実施形態において、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質は、非インスリン特異的B細胞を標的にしない。従って、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、有利には、特定のB細胞、例えば、抗インスリン受容体を発現する自己免疫B細胞(例えば、抗インスリンBCR、抗インスリンB細胞、またはインスリン+B細胞)に対する高い特異性を有する。
ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、特定のタイプのB細胞、例えば、自己抗原特異的B細胞または自己免疫B細胞(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、もしくはインスリン+B細胞)に結合し、それらを、例えば、マクロファージもしくは樹状細胞による食作用を介した、または抗体依存性細胞介在性細胞傷害活性(ADCC)もしくは補体介在性細胞傷害活性(CDC)を介した排除の標的にする。ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、排除のため非自己抗原特異的B細胞または非自己免疫B細胞(例えば、抗インスリンB細胞以外の細胞)を標的にしない。自己免疫B細胞または自己抗原特異的B細胞、例えば、インスリン特異的B細胞の排除は、自己免疫応答、自己抗体のレベルを減少し、最終的に、自己免疫(例えば、I型)糖尿病のような自己免疫疾患を処置または予防し得る。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、特異的な実体、例えば、B細胞、自己免疫抗体、特異的な免疫グロブリンB細胞受容体、または他のタンパク質もしくは細胞を標的にすることにより、機能してもよい。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、B細胞、例えば、膵島自己抗原に特異的であるB細胞、例えば、インスリンに結合するB細胞受容体を含有するB細胞を標的にすることにより、機能する。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、抗インスリンB細胞、例えば、インスリンに結合するB細胞受容体を含有するB細胞を標的にすることにより、機能する。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、2つのプロインスリンまたはプロインスリン類似体を含有するホモダイマーであり、同じB細胞上の複数(例えば、1つより多く)の抗インスリンB細胞受容体に同時に結合することができ、インスリンとFcの融合タンパク質が飲食運動されるのを引き起こす。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、2つのプロインスリンまたはプロインスリン類似体を含有するホモダイマーであり、同じB細胞上の複数(例えば、1つより多く)の抗インスリンB細胞受容体に同時に結合することができ、B細胞内でシグナル伝達現象を引き起こす。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、2つのプロインスリンまたはプロインスリン類似体を含有するホモダイマーであり、同じB細胞上の複数(例えば、1つより多く)の抗インスリンB細胞受容体に同時に結合することができ、B細胞がアポトーシスを経験させる。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、2つのプロインスリンまたはプロインスリン類似体を含有するホモダイマーであり、同じB細胞上の複数(例えば、1つより多く)の抗インスリンBに同時に結合し、一方、インスリンとFcの融合タンパク質のFc領域上のエピトープは、免疫エフェクター細胞と相互作用して、B細胞に対する作用(例えば、ADCCを通じたアポトーシス)を誘発する。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、初期ステージのB細胞である抗インスリンB細胞に結合し、受容体編集として公知のプロセスを通じて初期B細胞がそのB細胞受容体を修飾させる。
1つの態様において、対象に本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質を投与することを含む、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病)を処置する方法であって、インスリンとFcの融合タンパク質の投与が、参照標準または参照処置と比べて、対象において自己抗原特異的B細胞レベルの減少をもたらす、方法が、本明細書において提供される。別の態様において、対象に本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質を投与することを含む、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病)を処置する方法であって、インスリンとFcの融合タンパク質の投与が、対象において自己抗原特異的B細胞を誘導して、参照標準または参照処置と比べて増大した受容体編集を経験させる、方法が、本明細書において提供される。ある実施形態において、B細胞は、自己抗原に特異的である(例えば、B細胞は、自己抗原、例えば、インスリンに結合する免疫グロブリンを含むBCRを含む)。
ある実施形態において、B細胞は、疾患を引き起こすB細胞または病原性B細胞(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、もしくはインスリン+B細胞)を含む。ある実施形態において、B細胞は、抗インスリンB細胞を含む。ある実施形態において、B細胞は、特異的な細胞表面受容体を提示する。ある実施形態において、抗インスリンB細胞表面受容体は、B220、CD19、CD20、CD22、ならびに他の同様の細胞表面受容体およびそのアイソフォームを含む。ある実施形態において、抗インスリンB細胞は、B220、CD19、CD20、CD22、ならびに他の同様の細胞表面受容体およびそのアイソフォームを含む細胞表面受容体の組合せを提示する。ある実施形態において、抗インスリンB細胞は、インスリンに特異的なB細胞受容体(BCR)を提示し、例えば、BCRは、インスリンに特異的な免疫グロブリン、例えば、IgM受容体を含む。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与は、インスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち、対象に(例えば、血液または脾臓に)存在するインスリン特異的B細胞の10%より高い(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上より高い)排除を導く。加えてまたは代わりに、ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与は、インスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち、対象に存在する非インスリン特異的/反応性B細胞の30%未満(例えば、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2.5%、1%以下の未満)の排除を導く。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与は、インスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち、対象に存在するB細胞の総数(インスリン特異的B細胞と非インスリン特異的B細胞の両方を含む)の30%未満(例えば、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2.5%、1%以下の未満)の排除を導く。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与は、処置後少なくとも1日間(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60日間以上、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週間以上)の間、(インスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち観察されるものと比較して)インスリン特異的B細胞の数の低減を(例えば、少なくとも2倍、例えば、少なくとも2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、400、500、1000、または10,000倍以上で)導く。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、例えば、対象に慢性的に投与されるとき、処置の期間中、およびある場合には、処置の休止後の期間、例えば、処置の休止後少なくとも1日間(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60日間以上、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週間以上)、(インスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち観察されたものと比較して)インスリン特異的B細胞の数の低減を(例えば、少なくとも2倍、例えば、少なくとも2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、400、500、1000、または10,000倍以上で)導く。
インスリンとFcの融合タンパク質での処置により排除された細胞数を決定する典型的な方法が、実施例の節に記載される。例えば、排除された細胞量の決定は、マクロファージ(例えば、ラット肺胞マクロファージ)の抗インスリン抗体フラグメントを発現する導入遺伝子を含有する脾細胞(例えば、VH-125マウス由来の脾細胞)とのインビトロでの共培養を使用して行うことができる。例えば、Hulbert, et al., J. Immunol. 167(2001):5535-38を参照。別の例では、排除された細胞量の決定は、対象の末梢血中のB細胞(例えば、自己抗原特異的)のレベルを測定することにより、行うことができる。例えば、処置に先立ち観察されたものと比較した、インスリンとFcの融合タンパク質での処置後の自己抗原特異的B細胞数における低減は、インスリンとFcの融合タンパク質の投与が、自己抗原特異的B細胞の排除を導くことを示す。トータルのB細胞または非インスリン特異的B細胞数におけるわずか(もしくはない)低減は、インスリンとFcの融合タンパク質が、B細胞の包括的非特定的な排除を導かないこと、すなわち、インスリンとFcの融合タンパク質が、自己抗原特異的B細胞に特異的であることを示す。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、1μΜ以下(例えば、1μΜ、900nM、800nM、700nM、600nM、500nM、400nM、300nM、200nM、100nM、50nM、10nM、5nM、1nM、0.1nM、0.01nM、0.001nM以下)のKdにより特徴付けられる、抗インスリン抗体(例えば、可溶性、例えば、循環、または受容体に結合した)に対する親和性を有する。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、インスリンホルモン受容体のものより大きい(例えば、少なくとも2倍大きい、例えば、少なくとも2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、400、500、1000、または10,000倍以上大きい)、抗インスリン免疫グロブリンまたはB細胞受容体(BCR)(例えば、インスリン特異的B細胞上の)に対する親和性を有する。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、1μΜ以下
(例えば、1μΜ、900nM、800nM、700nM、600nM、500nM、400nM、300nM、200nM、100nM、50nM、10nM、5nM、1nM、0.1nM、0.01nM、0.001nM以下)のKdにより特徴付けられる、インスリン特異的B細胞に対する親和性を有する。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、非インスリン特異的/反応性B細胞に対するその親和性より低い(例えば、少なくとも2倍より大きい、例えば、少なくとも2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、400、500、1000、または10,000倍以上低い)インスリン特異的B細胞に対する親和性を有する。
加えてまたは代わりに、ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、IC50<300nM(例えば、250nM、200nM、150nM、100nM、95nM、90nM、85nM、80nM、75nM、70nM、65nM、60nM、55nM、50nM、45nM、40nM、35nM、30nM、25nM、20nM、15nM、10nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM以下)で、インスリン+B細胞受容体のインスリンへのインビトロでの結合を阻害する。
加えてまたは代わりに、ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、インビトロでインスリン特異的B細胞を約70pMのEC50で除去する。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、ヒトインスリンで観察されるものの少なくとも5%である結合親和性で、インスリン自己抗体に結合する(例えば、インビボまたはインビトロで)能力がある。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、ヒトインスリンで観察されるものの約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%または約100%である結合親和性で、インスリン自己抗体に結合する(例えば、インビボもしくはインビトロで)能力がある。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、ヒトインスリンで観察されるものの少なくとも5%である結合親和性で、B細胞受容体に結合する(例えば、インビボまたはインビトロで)能力がある。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、ヒトインスリンで観察されるものの約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%または約100%である結合親和性で、B細胞受容体に結合する(例えば、インビボもしくはインビトロで)能力がある。
抗原提示細胞(APC)は、抗原提示のプロセスを通じて、その細胞表面上に主要組織適合複合体分子(MHC)、例えば、MHCII分子と複合体を形成した抗原を提示する細胞である。
ある実施形態において、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質は、ペプチドに抗原提示細胞(APC)により処理される能力がある。次に、これらのAPCにより処理されたペプチドは、T細胞受容体に結合する能力があるペプチドとMHCII複合体の形態でAPC MHCII受容体上に提示することができる。ある実施形態において、これらのAPCにより処理されたペプチド-MHCII複合体は、ヒトインスリンペプチド-MHCII複合体、例えば、ヒトインスリンB9:23ペプチドとMHCIIの複合体で観察されるものより、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%または約100%高い結合親和性で、T細胞受容体に結合する(例えば、インビボもしくはインビトロで)能力がある。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与は、投与後の対象において、インスリン自己抗体(IAA)(例えば、循環IAA)のレベルにおける減少、例えば、少なくとも2倍、例えば、少なくとも2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、400、500、1000、または10,000倍より大きな減少をもたらす。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与は、Fcフラグメントに融合していないインスリンまたはインスリン類似体での処置で観察されるものと比較して、対象においてインスリン自己抗体(IAA)(例えば、循環IAA)レベルにおける低減をもたらす。
ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、天然に生じるヒトインスリン、例えば、ヒトプロインスリンまたはヒト成熟インスリンと比べて、インビボおよび/またはインビトロで減少したT細胞活性化をもたらす。ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、インビトロまたはインビボでB細胞と接触させたとき、B細胞により処理され、MHCII複合体中の抗原としてT細胞に提示される(例えば、少なくともB鎖ペプチドまたはB鎖ペプチドの一部が提示される)。
なおさらなる実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞もしくはマクロファージ)とインビトロまたはインビボで接触されたとき、抗原提示細胞により処理され、MHCII複合体中の抗原としてT細胞に提示される(例えば、少なくともB鎖ペプチドまたはB鎖ペプチドの一部が提示される)。インスリンとFcの融合タンパク質が、Y16A変異を含むB鎖ペプチドを含む、ある実施形態において、T細胞によるこのB鎖ペプチドとMHCIIの複合体の認識の程度が、野生型ヒトインスリン(例えば、Y16を含む)由来のB鎖ペプチドを含むインスリンとFcの融合タンパク質と比べて低減され、ここで、変異のナンバリングは、N末端と比べたインスリンB鎖の位置を指す。ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、米国公開第2013/0028918A1号または中国公開第103509118A号に記載された融合タンパク質と比較して、インビボおよび/またはインビトロであまりT細胞活性化をもたらさない。
加えてまたは代わりに、ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、T細胞を活性化して、組換えヒトインスリンにより活性化されたT細胞において観察されたものと比較して、低減されているIL-2レベルを分泌する。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、T細胞を活性化して、3,000pg/ml未満(例えば、2750pg/mL、2500pg/mL、2250pg/mL、2000pg/mL、1750pg/mL、1500pg/mL、1250pg/mL、1000pg/mL、750pg/mL、500pg/mL、250pg/mL、200pg/mL、175pg/ml、150pg/ml、125pg/ml、100pg/ml、95pg/ml、90pg/ml、85pg/ml、80pg/ml、75pg/ml、70pg/ml、65pg/ml、60pg/ml、55pg/ml、50pg/ml、45pg/ml、40pg/ml、35pg/ml以下)であるIL-2レベルを分泌する。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、参照標準により誘導されるT細胞活性化を、100nM以下(例えば、100nM、95nM、90nM、85nM、80nM、75nM、70nM、65nM、60nM、55nM、50nM、45nM、40nM、35nM、30nM、25nM、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.01nM、0.001nM以下)のIC50で阻害し、ここで、参照標準は、配列番号5のアミノ酸配列を有するインスリンとFcタンパク質である。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、参照標準により誘導されるT細胞活性化を、5nM以下のIC50で阻害し、ここで、参照標準は、配列番号5のアミノ酸配列を有するインスリンとFcタンパク質である。
ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、対象に投与されるとき、参照標準と比較して、自己免疫疾患、例えば、自己免疫性糖尿病の発生を減少する。参照標準は、哺乳類、例えば、ヒトまたはマウスから天然に生じるインスリン(例えば、プロインスリンもしくは成熟インスリン)であり得る。
ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、対象に投与されたとき、少なくとも2時間(例えば、少なくとも2時間、5時間、10時間、15時間、20時間、24時間、36時間、1日間、1.5日間、2日間、2.2日間、2.5日間、3日間、5日間、7日間以上)の血清半減期を有する。ある実施形態において、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、参照標準より長い血清半減期を有する。参照標準は、哺乳類、例えば、ヒトまたはマウスから天然に生じるインスリン(例えば、プロインスリンもしくは成熟インスリン)であり得る。参照標準はまた、ペプチド(例えば、インスリンB鎖ペプチド、または1つもしくは複数のアミノ酸変異を含有するインスリンB鎖ペプチド)であり得る。参照標準はまた、米国公開第2013/0028918A1号または中国公開第103509118A号に記載される融合タンパク質であり得る。
加えてまたは代わりに、本明細書において開示される方法のある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与は、投与に先立ち対象において観察されたものと比較して、対象において(例えば、血液または脾臓において)減少した数の抗インスリンB細胞をもたらす(例えば、少なくとも5%、例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍以上の低減)。ある特定の実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与は、抗インスリンB細胞以外のB細胞の数を実質的に低減しない。本明細書において開示される方法のある実施形態において、対象は、投与に先立ち対象において観察されたものと比較して、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、2週間後、3週間後、3週間以上後に抗インスリンB細胞数における低減を示す。
加えてまたは代わりに、本明細書において開示される方法のある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与は、投与に先立ち対象において観察されたものと比較して、対象において減少したレベルのインスリン自己抗体(例えば、循環IAA)をもたらす(例えば、少なくとも5%の減少)。本明細書において開示される方法のある実施形態において、対象は、投与に先立ち対象において観察されたものと比較して、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、2週間後、3週間後、3週間以上後に減少したレベルのインスリン抗体を示す。
加えてまたは代わりに、本明細書において開示される方法のある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与後の対象の血液グルコースレベルは、投与に先立ち対象において観察されたものと同等である。本明細書において開示される方法のある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、2週間後、3週間後、または3週間以上後の対象の血液グルコースレベルは、投与に先立ち対象において観察されたものと同等である。
インスリンとFcの融合タンパク質の作製
様々な手法が、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質の産生のため使用され得る。(例えば、Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow E, and Lane D, 1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照し、これは、参照により本明細書に組込まれる)。
ベクター。インスリンとFcの融合タンパク質は、本明細書に記載される本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質をコードするDNA配列のいずれを含むベクターにより発現され得る。これらは、核酸ベクター、リポソーム、ネイキッドDNA、アジュバント補助DNA、遺伝子銃、カテーテルなどを含み得る。ベクターは、標的部分(例えば、細胞表面受容体に対するリガンド)を有する、国際公開第93/64701号に記載されるような化学結合体、および核酸結合部分(例えば、ポリリジン)、ウイルスベクター(例えば、DNAまたはRNAウイルスベクター)、プラスミド、ファージなどを含み得る。ベクターは、染色体、非染色体または合成であり得る。
典型的なベクターは、ウイルスベクター、融合タンパク質および化学結合体を含む。レトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイルスを含む。ある実施形態において、ウイルスベクターは、DNAウイルスベクターである。典型的なDNAベクターは、オルソポックスもしくはトリポックスベクターのようなポックスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター(Geller, A. I. et al., J. Neurochem, 64:487 (1995);Lim, F., et al., in DNA Cloning: Mammalian Systems, D. Glover、Ed. (Oxford Univ. Press, Oxford England) (1995);Geller, A. I. et al., Proc Natl. Acad. Sci.: U.S.A. 90:7603 (1993);Geller, A. I. et al., Proc Natl. Acad. Sci.: USA 87: 1149 (1990)を参照)のようなヘルペスウイルスベクター、アデノウィルスベクター(LeGal LaSalle et al., Science, 259:988 (1993);Davidson, et al., Nat. Genet 3 :219 (1993); Yang, et al., J. Virol. 69:2004 (1995)を参照)、ならびにアデノ随伴ウイルスベクター(Kaplitt, M. G. et al., Nat. Genet. 8: 148 (1994)を参照)を含む。
ポックスウイルスベクターは、遺伝子を細胞質に導入する。トリウイルスベクターは、核酸の短期発現のみをもたらす。ある実施形態において、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、核酸を細胞に導入するために使用される。アデノウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(約4ヶ月)より短い発現(約2ヶ月)をもたらし、それは、順に、HSVベクターより短い。特定のベクターの選択は、標的細胞および処置されている状態に依存する。導入は、標準的な技術、例えば、感染、トランスフェクション、形質導入または形質転換によるものであり得る。遺伝子導入の様式の例は、例えば、ネイキッドDNA、CaPO4沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクション、およびウイルスベクターを含む。これらのベクターを使用して、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質を発現することができる。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、実施例の節に記載されるベクターにより発現することができる。
細胞株、発現および精製。本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質を発現するT細胞、または本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質をコードするDNA配列のいずれかを含むベクターも、本明細書において開示される。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、例えば、真核生物細胞、例えば、哺乳類の細胞または非哺乳類の細胞において、組換え発現することができる。発現のため使用される典型的な哺乳類の細胞は、HEK細胞、例えば、HEK293細胞、またはCHO細胞、当該技術分野において入手可能な他の細胞株の中でも、例えば、抗体フラグメントまたはFc含有タンパク質の発現のため使用される細胞株を含む。ある実施形態において、昆虫細胞のような非哺乳類の細胞、例えば、SF9またはS2細胞、当該技術分野において入手可能な他の細胞株の中でも、例えば、抗体フラグメントまたはFc含有タンパク質の発現のため使用される細胞株が、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質の発現のため使用される。ある実施形態において、細胞は、インスリンとFcの融合タンパク質(例えば、インスリンとFcの融合タンパク質の全体が、単一核酸分子によりコードされる場合)をコードする、核酸分子、例えば、ベクターでトランスフェクトされる。他の実施形態において、細胞は、それぞれの核酸分子が、インスリンとFcの融合タンパク質の異なるドメインをコードする、1つより多くの核酸分子でトランスフェクトされる。例えば、ある核酸分子がインスリンポリペプチドをコードし得、異なる核酸分子が、Fcフラグメントをコードし得る。細胞は、当該技術分野における標準的な方法を使用して培養することができる。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、細胞から(例えば、細胞の溶解により)精製されるか、または単離される。他の実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、細胞により分泌され、例えば、融合タンパク質が、細胞が成長した細胞培養培地から精製されるか、または単離される。インスリンとFcの融合タンパク質の精製は、カラムクロマトグラフィー、例えば、親和性クロマトグラフィーを使用すること、またはある特定の分子についてのサイズ、電荷および/もしくは親和性に関する他の分離方法を使用することを含み得る。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の精製は、例えば、タンパク質Aビーズまたはタンパク質Aカラムを使用することにより、Fcフラグメントを有するタンパク質を選択/濃縮することを含む。例えば、抗インスリン抗体またはそのフラグメントを使用する、他の親和性分離方法も使用することができる。加えてまたは代わりに、イオン交換クロマトグラフィーおよび/またはゲルろ過クロマトグラフィーのような他の分離方法を利用することもできる。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の精製は、タンパク質調製物の濾過または遠心分離をさらに含む。
精製された融合タンパク質は、様々な方法、例えば、280nmでの吸光度(例えば、収量を決定するため)、サイズ除外またはキャピラリー電気泳動(例えば、分子量および/もしくは純度を決定するため)、質量分析(MS)ならびに/または液体クロマトグラフィー(LC)-MS(例えば、純度および/もしくはグリコシル化を決定するため)、および/またはELISA(例えば、抗インスリン抗体への結合、例えば、親和性の程度を決定するため)を使用して、例えば、純度、収量、構造、ならびに/あるいは活性について特徴付けることができる。典型的な特徴決定方法はまた、実施例の節に記載される。
ある実施形態において、細胞、例えば、細胞培養液におけるインスリンとFcの融合タンパク質の発現は、培養液1リットル当たりインスリンとFcの融合タンパク質(例えば、精製された融合タンパク質)少なくとも50mg(例えば、少なくとも50mg/L、60mg/L、70mg/L、80mg/L、90mg/L、100mg/L、110mg/L、120mg/L以上)を生じる。ある実施形態において、精製されたインスリンとFcの融合タンパク質は、例えば、標準的な方法により決定される、少なくとも80%(例えば、少なくとも80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、97重量%、99重量%)の純度を有する。
ある実施形態において、細胞における本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質の発現は、米国公開第2013/0028918A1号または中国第103509118A号に記載される融合タンパク質より多い(例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍以上)インスリンとFcの融合タンパク質(例えば、精製されたインスリンとFcの融合タンパク質)の収量を生じる。
治療および予防方法
以下の考察は、説明の目的のみで提示され、制限することを意図しない。
自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法であって、対象に本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質を投与することを含む、方法が、本明細書に記載される。本明細書において開示される方法のある実施形態において、自己免疫疾患は、自己免疫性糖尿病、例えば、糖尿病タイプ1(すなわち、1型糖尿病(T1D)、若年性糖尿病、もしくはインスリン依存性糖尿病)、または成人の潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)である。遅延発症型1型糖尿病とも呼ばれる、LADAは、成人において生じ、よりゆっくりとした発病経過を提供する糖尿病タイプ1の形態である。非肥満関連2型糖尿病と診断された成人の最大約50%が、LADAを有し得ると推定される。本明細書において開示される方法のある実施形態において、自己免疫疾患は、参照標準または正常な対照対象と比べて、対象における減少した数の膵臓のインスリン産生β細胞を含む。
本明細書において開示される方法のある実施形態において、対象は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)と診断されている。ある特定の実施形態において、対象は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)と、3ヶ月未満、6ヶ月未満、9ヶ月未満、1年未満、または1.5年未満の間診断されている。
加えてまたは代わりに、本明細書において開示される方法のある実施形態において、対象は、検出可能なレベルの自己免疫抗体を有するが、高血糖のような、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状を発症していない。自己免疫抗体は、膵島自己抗原に特異的であってもよい。例えば、ある実施形態において、膵島自己抗原は、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(例えば、アイソフォーム65、例えば、抗GAD65)、タンパク質チロシンホスファターゼ様タンパク質(IA2)、または亜鉛輸送体8(ZnT8)を含む。他の実施形態において、自己免疫抗体は、抗インスリン抗体である。
本明細書において開示される方法のある特定の実施形態において、対象は、検出可能なレベルのインスリン自己抗体を有さず、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状を発症しておらず、例えば、高血糖を発症していない。
本明細書において開示される方法のある実施形態において、対象は、検出可能なレベルの病原性B細胞集団または疾患を引き起こすB細胞集団(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、もしくはインスリン+B細胞)を有さず、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状を発症しておらず、例えば、高血糖を発症していない。
本明細書において開示される方法のある特定の実施形態において、対象は、検出可能なレベルの病原性B細胞集団または疾患を引き起こすB細胞集団(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、もしくはインスリン+B細胞)を有するが、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状を発症しておらず、例えば、高血糖を発症していない。ある実施形態において、B細胞集団は、インスリン特異的B細胞を含む。ある実施形態において、インスリン特異的B細胞は、B220、CD19、CD20、CD22のような特異的な細胞表面受容体、または他の同様の細胞表面受容体およびそのアイソフォームを提示する。ある特定の実施形態において、インスリン特異的B細胞は、B220、CD19、CD20、CD22のような2つ以上の細胞表面受容体、および他の同様の細胞表面受容体およびそのアイソフォームを発現する。
加えてまたは代わりに、本明細書において開示される方法のある実施形態において、対象における内在性Cペプチドのレベルを評価して、自己免疫性糖尿病(例えば、1型糖尿病または潜在性自己免疫性糖尿病)の診断および程度を助ける。Cペプチドは、インスリンと等しい量で産生され、それ故、対象におけるインスリン分泌の総量を表すので、それは、残るβ細胞機能のバイオマーカーとして頻繁に利用される(Jones, A G. and Hattersley, A.T., Diabet Med (2013) 30, 803-817)。対象に存在する任意の外因性インスリンも直接的なインスリンアッセイにおいて検出されるので、対象におけるCペプチドの測定は、インスリンレベルの決定を指示する際に有用であり得る。健常対象(例えば、自己免疫性糖尿病を有しない対象)は、約0.6nmol/L~約0.8nmol/Lの範囲にある(例えば、約0.65nmol/L)内在性Cペプチドレベルを有する。対照的に、自己免疫性糖尿病(例えば、1型糖尿病またはLADA)を有する対象は、検出不可能から約0.6nmol/Lまでの範囲にある(例えば、約0.05nmol/L)内在性Cペプチドレベルを有する。ある実施形態において、内在性Cペプチドレベルは、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質の投与後に、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質のCペプチドからもたらされるCペプチドを含まない。
ある実施形態において、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば、1型糖尿病)と診断されており、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置前に、約0.01nmol/L、約0.02nmol/L、約0.03nmol/L、約0.04nmol/L、約0.05nmol/L、約0.06nmol/L、約0.07nmol/L、約0.08nmol/L、約0.09nmol/L、約0.1nmol/L、約0.125nmol/L、約0.15nmol/L、約0.175nmol/L、約0.2nmol/L、約0.3nmol/L、約0.4nmol/L、もしくは約0.5nmol/L以下、または0.6nmol/L未満の内在性Cペプチドレベルを有する。
ある実施形態において、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば、1型糖尿病)と診断されており、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置前に、約0.1nmol/L、約0.09nmol/L、約0.08nmol/L、約0.07nmol/L、約0.06nmol/L、約0.05nmol/L、約0.04nmol/L、約0.03nmol/L、約0.02nmol/L、約0.01nmol/L以下より低いかまたは等しい内在性Cペプチドレベルを有する。ある実施形態において、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば、1型糖尿病)と診断されており、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置前に、約0.01nmol/L、約0.009nmol/L、約0.008nmol/L、約0.007nmol/L、約0.006nmol/L、約0.005nmol/L、約0.004nmol/L、約0.003nmol/L、約0.002nmol/L、約0.001nmol/L以下より低いかまたは等しい内在性Cペプチドレベルを有する。ある実施形態において、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば、1型糖尿病)と診断されており、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置前に、約0.001nmol/L、約0.1pmol/L、約0.01pmol/L、約0.001pmol/L以下より低いかまたは等しい内在性Cペプチドレベルを有する。ある特定の実施形態において、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば、1型糖尿病)と診断されており、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置前に、検出不可能なレベルの内在性Cペプチドを有する。
ある実施形態において、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば、1型糖尿病)と診断されており、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置前に、参照標準と比べて約95%以下の内在性Cペプチドレベルを有する。ある実施形態において、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば、1型糖尿病)と診断されており、参照標準と比べて、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、または約1%以下の内在性Cペプチドレベルを有する。
ある実施形態において、内在性Cペプチドレベルは、空腹(例えば、グルコースの欠乏した)または摂食時(例えば、グルコースで刺激された)状態の対象において測定され得る。例示の目的で、空腹状態の対象は、内在性Cペプチドレベルの解析に先立ち、約30分間、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約12時間、約18時間、約20時間、または約24時間、食物を控えてもよい。別の例では、摂食状態の対象は、内在性Cペプチドレベルの解析の12時間以内、10時間以内、6時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1.5時間以内、1時間以内、30分以内、15分以内、または同時に食物を消費してもよい。
ある実施形態において、対象は、空腹(例えば、グルコースの欠乏した)状態にあり、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち、検出不可能なレベルの内在性Cペプチドを有する。ある実施形態において、対象は、空腹(例えば、グルコースの欠乏した)状態にあり、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち、約0.06nmol/L以下の内在性Cペプチドレベルを有する。ある実施形態において、対象は、空腹(例えば、グルコースの欠乏した)状態にあり、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち、約0.06nmol/L、約0.07nmol/L、約0.08nmol/L、約0.09nmol/L、約0.1nmol/L、約0.125nmol/L、約0.15nmol/L、約0.175nmol/L、約0.2nmol/L、約0.3nmol/L、約0.4nmol/L、約0.5nmol/L、約0.6nmol/L、約0.7nmol/L、約0.8nmol/L、約0.9nmol/L、約1.0nmol/L以下の内在性Cペプチドレベルを有する。ある実施形態において、対象は、空腹状態にあり、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち、約0.2nmol/L以下、または約0.5nmol/L以下、または約1.0nmol/L以下の内在性Cペプチドレベルを有する。
ある実施形態において、対象は、摂食(例えば、グルコースで刺激された)状態にあり、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち、検出不可能なレベルの内在性Cペプチドを有する。ある実施形態において、対象は、摂食(例えば、グルコースで刺激された)状態にあり、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち、約0.2nmol/L以下の内在性Cペプチドレベルを有する。他の実施形態において、対象は、摂食(例えば、グルコースで刺激された)状態にあり、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち、約0.2nmol/L、約0.25nmol/L、約0.3nmol/L、約0.4nmol/L、約0.5nmol/L、約0.6nmol/L、約0.7nmol/L、約0.8nmol/L、約0.9nmol/L、約1.0nmol/L以上より低いかまたは等しい内在性Cペプチドレベルを有する。ある特定の実施形態において、対象は、摂食状態にあり、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質での処置に先立ち、約0.6nmol/L以下、または約0.75nmol/L以下、または約1.0nmol/L以下の内在性Cペプチドレベルを有する。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、予防的に投与される。ある実施形態において、対象は、検出可能なレベルの自己免疫抗体(例えば、インスリン自己抗体)を有さず、インスリンとFcの融合タンパク質は、予防的に投与される。ある実施形態において、対象は、検出可能なレベルの病原性B細胞集団または疾患を引き起こすB細胞集団(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、もしくはインスリン+B細胞)を有さず、インスリンとFcの融合タンパク質は、予防的に投与される。ある実施形態において、対象は、検出可能なレベルの自己免疫抗体(例えば、インスリン自己抗体)および検出可能なレベルの病原性B細胞集団または疾患を引き起こすB細胞集団(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、もしくはインスリン+B細胞)を有さず、インスリンとFcの融合タンパク質は、予防的に投与される。ある実施形態において、対象は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)と診断されていない。ある実施形態において、対象は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)と診断されておらず、インスリンとFcの融合タンパク質は、予防的に投与される。ある実施形態において、対象は、T1Dを発症するリスクがあり、例えば、対象は、T1Dと診断された人と比べて、第1度を有する。対象は、成人または小児であってもよい。
ある実施形態において、対象は、T1Dを発症するリスクがあり、例えば、対象は、例えば、参照により本明細書に取り込まれる、Erlich, et al., Diabetes. 2008 April; 57(4): 1084-1092に記載される通り、T1Dを発症するより高いリスクと関連するDRB1、DQA1、および/またはDQB1座に1つまたは複数の対立遺伝子(例えば、DR-DQハプロタイプ)を有する。ある実施形態において、対象は、次のヒト白血球抗原(HLA)ハプロタイプ:
(a)DRB1*0301-DQA1*0501-DQB1*0201
(b)DRB1*0405-DQA1*0301-DQB1*0302
(c)DRB1*401-DQA1*0301-DQB*0302
(d)DRB1*0402-DQA1*0301-DQB1*0302
(e)DRB1*0404-DQA1*0301-DQB1*0302;または
(f)DRB1*0801-DQB1*0401-DQB1*0402
の1つまたは複数を有する。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、対象は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状を発症していない。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、対象は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状を、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約1.5年間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間、少なくとも約10年間、少なくとも約15年間、少なくとも約20年間、少なくとも約25年間、少なくとも約30年間、少なくとも約40年間、少なくとも約50年間以上発症しない。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、対象は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を発症していない。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、対象は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約1.5年間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間、少なくとも約10年間、少なくとも約15年間、少なくとも約20年間、少なくとも約25年間、少なくとも約30年間、少なくとも約40年間、少なくとも約50年間以上発症しない。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、対象は、参照標準または参照処置と比較して、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の遅延した発病率を有する。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の発病率は、参照標準または参照処置と比較して、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも1年、少なくとも1.5年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年、少なくとも25年、少なくとも30年、少なくとも40年、少なくとも50年以上遅延される。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状の発病率は、参照標準または参照処置と比較して、約2%、約3%、約4%、約5%、約7%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%以上遅延される。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、対象は、参照標準または参照処置と比較して、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の遅延した発病率を有する。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の発病率は、参照標準または参照処置と比較して、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも1年、少なくとも1.5年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年、少なくとも25年、少なくとも30年、少なくとも40年、少なくとも50年以上遅延される。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の発病率は、参照標準または参照処置と比較して、約2%、約3%、約4%、約5%、約7%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%以上遅延される。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、治療的に投与される。ある実施形態において、対象は、検出可能なレベルの自己免疫抗体(例えば、インスリン自己抗体)を有し、インスリンとFcの融合タンパク質は、治療的に投与される。ある実施形態において、対象は、検出可能なレベルの病原性B細胞集団または疾患を引き起こすB細胞集団(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、もしくはインスリン+B細胞)を有し、インスリンとFcの融合タンパク質は、治療的に投与される。ある実施形態において、対象は、検出可能なレベルの自己免疫抗体(例えば、インスリン自己抗体)および検出可能なレベルの病原性B細胞集団または疾患を引き起こすB細胞集団(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、もしくはインスリン+B細胞)を有し、インスリンとFcの融合タンパク質は、治療的に投与される。ある実施形態において、対象は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)と診断されている。ある実施形態において、対象は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)と診断されており、インスリンとFcの融合タンパク質は、治療的に投与される。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与は、投与に先立ち対象において観察されたものと比較して、対象において自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状を処置するか、逆転させるか、または改善する。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、対象における自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状は、投与に先立ち対象において観察されたものと比較して、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも1年、少なくとも1.5年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年、少なくとも25年、少なくとも30年、少なくとも40年、少なくとも50年以上処置されるか、逆転されるか、または改善される。ある特定の実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、対象における自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状は、投与に先立ち対象において観察されたものと比較して、約2%、約3%、約4%、約5%、約7%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%以上処置されるか、逆転されるか、または改善される。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与は、投与に先立ち対象において観察されたものと比較して、対象において自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置するか、逆転させるか、または改善する。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、対象における自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)は、投与に先立ち対象において観察されたものと比較して、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも1年、少なくとも1.5年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年、少なくとも25年、少なくとも30年、少なくとも40年、少なくとも50年以上処置されるか、逆転されるか、または改善される。ある特定の実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の投与の際、対象における自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)は、投与に先立ち対象において観察されたものと比較して、約2%、約3%、約4%、約5%、約7%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%以上処置されるか、逆転されるか、または改善される。
ある実施形態において、対象は、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質の1回の一連の処置を受ける。本明細書において使用される一連の処置は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)が、処置されるか、治癒されるか、緩和されるか、または症状が低減されるまで、対象に提供される、適当な開業医により決定される特定の投薬量または計画を指す。他の実施形態において、対象は、融合タンパク質の1回より多くの一連の処置を受ける。他の実施形態において、対象は、融合タンパク質の複数回の一連の処置を受ける。なお他の実施形態において、対象は、融合タンパク質の複数回の一連の処置を受け、それぞれの一連の処置は、特定の長さの時間(例えば、約1日、約1週、約2週、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約6ヶ月、約1年、約1.5年、約2年、約3年、約4年、約5年、約7.5年、約10年、約12.5年、約15年、約20年以上)で隔てられる。
ある実施形態において、対象は、成人(例えば、年齢少なくとも18歳、例えば、年齢少なくとも19、20、21、22、23、24、25、25~30、30~35、35~40、40~50、50~60、60~70、70~80、または80~90歳)である。ある実施形態において、対象は、小児(例えば、年齢18歳未満、例えば、年齢17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1歳未満)である。ある実施形態において、対象は、男性または女性である。
ある実施形態において、本明細書に記載されるいずれかの方法において使用される参照処置は、インスリンまたはインスリン類似体、例えば、本明細書に記載されるインスリンもしくはインスリン類似体;膵島細胞移植;膵臓移植;あるいはpan-B細胞抗原に対する抗体(例えば、細胞傷害性抗体)(例えば、抗CD20抗体、抗CD22抗体、または抗CD19抗体)を含むが、これらに限定されない。ある実施形態において、参照処置は、哺乳類、例えば、ヒトまたはマウスから天然に生じるインスリン(例えば、プロインスリンもしくは成熟インスリン)、あるいは米国公開第2013/0028918A1号または中国公開第103509118A号に記載される組成物を含み得る。
ある実施形態において、本明細書に記載されるいずれかの方法において使用される参照標準は、自己免疫疾患治療、例えば、1型糖尿病治療の結果、例えば、本明細書に記載される結果を含む。ある実施形態において、例えば、対象が、T1Dを発症するリスクがある(例えば、対象が、T1D関して第1度である患者である)場合;対象が前糖尿病である(例えば、対象が、自己抗体陽性である)場合;対象が、T1Dの最近の発病を経験した(例えば、発病からの時間が12ヶ月未満)場合;対象が、長年T1D(例えば、発病からの時間が12ヶ月以上)を有する場合;または対象が健常対象(例えば、健常な、年齢および/もしくは性別の一致した対象)である場合、参照標準は、治療、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質治療の開始に先立つ、対象におけるマーカーのレベル(例えば、血液グルコースまたはCペプチドのレベル)である。ある実施形態において、例えば、対象が、T1Dを発症するリスクがある(例えば、対象が、T1Dに関して第1度である患者)場合;対象が前糖尿病である(例えば、対象が、自己抗体陽性である)場合;対象が、T1Dの最近の発病を経験した(例えば、発病からの時間が12ヶ月未満)場合;対象が、長年T1D(例えば、発病からの時間が12ヶ月以上)を有する場合;または対象が健常対象(例えば、健常な、年齢および/もしくは性別の一致した対象)である場合、参照標準は、治療、例えば、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質治療の開始に先立つ、疾患の存在/進行/重篤度、または疾患の症状の存在/重篤度の測定値である。
医薬組成物
自己免疫疾患、例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病を処置または予防するために使用することができる本明細書に記載される融合タンパク質を含有する医薬組成物が、本明細書において提供される。
医薬組成物における融合タンパク質の量および濃度、ならびに対象に投与される医薬組成物の数量は、対象の医療上関連する特徴(例えば、年齢、体重、性別、他の医療状態など)、医薬組成物中の化合物の溶解性、化合物の効力および活性、ならびに医薬組成物の投与様式などのような臨床上関連する要因に基づき選択することができる。投与経路および投与計画についてのさらなる情報については、Chapter 25.3 in Volume 5 of Comprehensive Medicinal Chemistry (Corwin Hansch; Chairman of Editorial Board), Pergamon Press 1990を参照。
自己免疫疾患、例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病を処置または予防するために使用することができる本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質を含有する医薬組成物が、本明細書において提供される。
本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質は、単独で投与されるのが可能である一方、ある実施形態において、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質は、インスリンとFcの融合タンパク質が、1種もしくは複数の医薬上許容される希釈剤、賦形剤または担体と組合されている、医薬製剤(組成物)として投与されてもよい。本明細書において開示される1つまたは複数のインスリンとFcの融合タンパク質を有する医薬組成物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにその適当な混合物を含有する溶媒または分散媒体であり得る、担体を含むことができる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チオメラソールなどにより達成することができる。グルタチオンおよび他の抗酸化剤を、酸化の防止のため含むことができる。多くの場合において、組成物において、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含むことが有利である。注射可能な組成物の吸収の延長は、例えば、組成物において、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含むことによりもたらすことができる。
インスリンとFcの融合タンパク質は、ヒト医薬における使用のための任意の好都合な方法での投与用に製剤されてもよい。ある特定の実施形態において、医薬調製物において含まれるインスリンとFcの融合タンパク質は、それ自体が有効であってもよいか、または例えば、生理学的設定で有効な化合物に変換される能力がある、プロドラッグであってもよい。選択された投与経路に関わらず、適当な水和形態で使用され得る、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質、および/または本テクノロジーの医薬組成物は、本明細書に記載される医薬上許容される投薬形態に、または当業者に公知の他の従来の方法により、製剤される。
別の態様において、本テクノロジーは、1種もしくは複数の医薬上許容される担体(添加剤)および/または希釈剤と一緒に製剤された、治療上有効量または予防上有効量の本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質を含む医薬上許容される組成物を提供する。本明細書に記載される医薬組成物は、例えば、無菌の溶液もしくは懸濁液としての例えば、皮下、筋肉内または静脈内注射による非経口投与に適合したものを含む、固体あるいは液体形態で投与のため特別に製剤することができる。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、無菌の水に単に溶解されるか、または懸濁され得る。ある実施形態において、医薬調製物は非発熱性である、すなわち、患者の体温を上昇させない。
医薬上許容される担体として働き得る物質のいくつかの例は、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖;(2)コーンスターチおよびジャガイモデンプンのようなスターチ;(3)ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのようなセルロースならびにその誘導体;(4)トラガント末;(5)モルト;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび坐剤ワックスのような賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ごま油、オリーブオイル、コーン油および大豆油のような油;(10)プロピレングリコールのようなグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのようなポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;(21)Captisol(登録商標)のようなシクロデキストリン;ならびに(22)医薬製剤において利用される他の無毒性の適合可能な物質を含む。ある実施形態において、担体は、リン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような湿潤剤、乳化剤ならびに滑沢剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘未剤、香味剤および灌流剤、保存剤ならびに酸化防止剤もまた、組成物に存在することができる。
本明細書に記載される通り、ある特定の実施形態の本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質は、アミンのような塩基性の官能基を含有し、これにより、医薬上許容される酸と医薬的に許容される塩を形成する能力がある。これらの場合での用語「医薬的に許容される塩」は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質の比較的無毒性の、無機酸および有機酸付加塩を指す。これらの塩は、インスリンとFcの融合タンパク質の最終的な単離および精製中に、またはその遊離塩基形態の本明細書に記載される精製されたインスリンとFcの融合タンパク質を適当な有機酸または無機酸と反応させること、およびこれにより形成された塩を単離することにより、その位置で調製することができる。代表的な塩は、水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリル硫酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリル硫酸塩などを含む(例えば、Berge et al. (1977) “Pharmaceutical Salts”, J. Pharm. Sci. 66: 1-19を参照)。
他の場合には、ある特定の実施形態の本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質は、1つまたは複数の酸官能基を含有し、これにより、医薬上許容される塩基と医薬的に許容される塩を形成する能力がある。これらの場合での用語「医薬的に許容される塩」は、インスリンとFcの融合タンパク質の比較的無毒性の、無機酸および有機塩基付加塩を指す。これらの塩は、同様に、インスリンとFcの融合タンパク質の最終的な単離および精製中に、またはその遊離酸形態の精製されたインスリンとFcの融合タンパク質を、医薬上許容される金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩のような適当な塩基、アンモニアと、または医薬上許容される有機1級、2級もしくは3級アミンと別々に反応させることにより、その位置で調製することができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム塩などを含む。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンは、エチレンアミン、ジエチレンアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどを含む(例えば、上の、Berge et al.,を参照)。
医薬上許容される酸化防止剤の例は、(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどのような水溶性酸化防止剤;(2)アスコルビルパルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなどのような脂溶性酸化防止剤;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などのような金属キレート剤を含む。
医薬組成物は、典型的には、その意図される投与経路に適合可能であるように製剤される。投与経路の例は、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内または皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼内、イオン泳動的および経粘膜投与を含む。非経口、皮内、または皮下適用のため使用される溶液または懸濁液は、以下の成分:注射用水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような無菌の希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムのような酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のような緩衝液、および塩化ナトリウムまたはできストロースのような弾力性の調節のための剤を含む。pHは、塩酸もしくは水酸化ナトリウムのような、酸または塩基で調節することができる。非経口調製物は、アンプル剤、ディスポーザブルの注射器またはガラスもしくはプラスチック製の複数回用量のバイアルに封入され得る。患者または処置を行う医師の便宜上、投与製剤は、処置コース(例えば、7日間の処置)のための全ての必要な器具(例えば、薬物のバイアル、希釈剤のバイアル、注射器および針)を含有するキットにおいて提供することができる。
本開示の製剤は、非経口投与に適当なものを含む。製剤は、便宜上、単位投薬形態で提示されてもよく、薬局の当該技術分野において周知の任意の方法により調製されてもよい。担体金属と組合せて、単一投薬形態を作製し得る、有効成分の量は、処置されている対象および特定の投与様式に依存して変動する。担体物質と組合せて、単一投薬形態を作製し得る、有効成分の量は、一般に、治療効果を生じる化合物のその量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、約1パーセント~約99パーセント、約5パーセント~約70パーセント、または約10パーセント~約30パーセントの有効成分の範囲にある。
非経口投与に適当な本テクノロジーの医薬組成物は、1種または複数の医薬的に許容される無菌の等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液もしくは乳液、または酸化防止剤、緩衝液、静菌薬、意図されるレシピエントの血液と等張な製剤を与える溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含有してもよい、使用の直前に無菌の注射可能な溶液もしくは分散液に再構成され得る無菌の粉末との組合せで、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質を含む。
本テクノロジーの医薬組成物において利用され得る適当な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびその適当な混合物、オリーブオイルのような植物油、ならびにオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルを含む。適切な流動性が、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用により、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持により、および界面活性剤、例えば、Tween様界面活性剤の使用により、維持することができる。ある実施形態において、医薬組成物(例えば、本明細書に記載される)は、Tween様界面活性剤、例えば、Tween-80を含む。ある実施形態において、医薬組成物(例えば、本明細書に記載される)は、Tween様界面活性剤、例えば、Tween-80を約0.001%~約2%、または約0.005%~約0.1%、または約0.01%~約0.5%の濃度で含む。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射部位からの薬物の吸収を遅らせることが所望され得る。これは、低い水溶解度を有する結晶または無定形材料の液体懸濁液の使用により達成され得る。次に、薬物の吸収率は、その溶解率に依存し、順に、結晶サイズおよび結晶形態に依存する。あるいは、インスリンとFcの融合タンパク質の非経口投与の遅延した吸収は、インスリンとFcの融合タンパク質を油性ビークルにおいて溶解または懸濁することにより、達成される。あるいは、薬物の吸収は、濃縮形態のインスリンとFcの融合タンパク質の濃縮形態の使用を通じて遅延されてもよい。
ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、ボーラス注入または静脈内プッシュとして投与される。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、注射器注射、ポンプ、ペン、針、または留置カテーテルを通じて投与される。
注射可能な使用に適当な医薬組成物は、無菌の水溶液(水溶性の場合)または分散液、および無菌の注射可能な溶液もしくは分散液の即時調製のための無菌の粉末を含み得る。静脈内投与のため、適当な担体は、生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR EL(商標)(BASF、パーシッパニー、ニュージャージー州)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、非経口投与用組成物は、無菌でなければならず、容易な注射器通過性が存在する程度まで、流体であるべきである。それは、製造および保存の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌のような微生物の混入作用に対して保護されなければならない。
無菌の注射可能な溶液は、上で挙げられた成分の1つまたは組合せと共に適当な溶媒中必要とされる量の有効な化合物を取り込むことにより調製することができ、必要であれば、続いて、濾過滅菌される。一般に、分散液は、基本的な分散媒体および上で挙げられたもの由来の必要とされる他の成分を含有する無菌のビークルに有効な化合物を取り込むことにより、調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌の粉末の場合、典型的な調製方法は、真空乾燥およびスプレー乾燥を含み、これにより、有効成分および予め無菌的に濾過されたその溶液由来の任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる。
経口組成物は、一般に、不活性な希釈剤または食用可能な担体を含む。経口治療投与の目的で、有効な化合物は、賦形剤と共に取り込まれ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物はまた、マウスウォッシュとしての使用のための流体担体を使用して調製することができる。医薬的に適合可能な結合剤、および/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含むことができる。錠剤、ピル剤、カプセル剤、トローチ剤などは、次の成分、あるいは同様の性質の化合物:微結晶セルロース、トラガントガムもしくはゼラチンのような結合剤;スターチもしくはラクトースのような賦形剤、アルギン酸、プリモゲル、もしくはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロテスのような滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素のような滑剤;スクロースもしくはサッカリンのような甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバーのような香味剤のいずれかを含有することができる。
吸入による投与のため、化合物は、適当な高圧ガス、例えば、二酸化炭素のようなガスを含有する、加圧容器もしくはディスペンサー、または噴霧吸入器からエアロゾルスプレー形態でデリバリーすることができる。かかる方法は、米国特許第6,468,798号に記載されるものを含む。
本明細書に記載される治療化合物の全身投与はまた、経粘膜または経皮/局所手段によるものであり得る。経粘膜または経皮/局所投与のため、透過されるべきバリアに適切な浸透剤が、製材において使用される。かかる浸透剤は、一般に、当該技術分野において公知であり、例えば、経粘膜投与のため、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻用スプレーまたは吸入薬の使用を通じて成し遂げられ得る。経皮/局所投与のため、有効な化合物は、当該技術分野において一般に知られた、粉剤、溶液剤、軟膏、ローション剤、ゲル、パッチ、ペースト、膏薬またはクリーム剤に製剤される。有効な化合物は、無菌条件下で医薬上許容される担体と、および任意の保存剤、緩衝液、または必要とされ得る高圧ガスと混合することができる。1つの実施形態において、経皮投与は、イオン導入により行われてもよい。
導入方法は、再充電可能または生分解性装置により提供されてもよい。様々な低速放出ポリマー装置が開発されており、タンパク質生物製剤を含む、薬物の制御されたデリバリーについて近年インビボで試験されている。生分解性と非分解性ポリマーの両方を含む、様々な生体適合ポリマー(ヒドロゲルを含む)を使用して、特定の標的部位での化合物の持続放出のための挿入物を形成することができる。
本テクノロジーは、上述の医薬組成物および調製物のいずれかにおけるインスリンとFcの融合タンパク質の製剤を考慮する。さらに、本テクノロジーは、前述の投与経路のいずれかを介した投与を考慮する。当業者は、処置されている状態、ならびに処置されている患者の全体的な健康状態、年齢および大きさに基づき、適切な製剤ならびに投与経路を選択することができる。
有効な投薬量
任意の治療剤の投薬量、毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な医薬手法により決定することができる。毒性と治療効果の間の用量比は、治療指数であり、それは、比LD50/ED50として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が有利である。毒性の副作用を示す化合物が使用され得る一方、影響されない細胞への可能性のある損傷を最小にするために影響された組織の部位にかかる化合物を標的化し、それにより、副作用を低減するデリバリーシステムを設計するケアが取られるべきである。
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲を公式化する際に使用することができる。かかる化合物の投薬量は、少ない毒性を有するか、または毒性を有さないED50を含む循環濃度の範囲内であり得る。投薬量は、利用される投薬形態および利用される投薬経路に依存してこの範囲内で変動し得る。方法において使用される任意の化合物について、治療上有効な用量は、細胞培養アッセイからまず推定することができる。用量を動物モデルにおいて公式化して、細胞培養液において決定されたIC50を含む、循環血漿濃度範囲を達成することができる。かかる情報を使用して、ヒトにおいて有用な用量を正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定されてもよい。
本明細書に記載される医薬組成物におけるインスリンとFcの融合タンパク質の実際の投薬量レベルは、患者に毒性ではなく、特定の患者、組成物、および投与様式について所望の治療または予防応答を達成するのに有効である、有効成分の量を得るように、変動することができる。
選択された投薬量レベルは、利用される特定のインスリンとFcの融合タンパク質、またはそれらのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与の時間、利用されている特定のインスリンとFcの融合タンパク質の排泄率、処置の持続、利用される特定のインスリンとFcの融合タンパク質と組合せて使用される他の薬物、化合物および/もしくは物質、疾患または障害の重篤度、以前の処置、処置されている患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態および既往歴、ならびに当該技術分野において周知の同様の要因を含む、様々な要因に依存する。さらに、治療上または予防上有効量の本明細書に記載される医薬組成物での対象の処置は、1回の処置または一連の処置を含み得る。
当業者である医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し、規定することができる。例えば、医師は、医薬組成物において利用されるインスリンとFcの融合タンパク質の用量を所望の治療または予防効果を達成するために必要とされるものより低いレベルではじめ、所望の効果が達成されるまで、投薬量を徐々に増大させることができる。インスリンとFcの融合タンパク質が、医薬として対象に投与されるとき、それは、例えば、医薬上許容される担体と組合せて、例えば、0.1~99.5%(または0.5~90%)の有効成分を含有するそれ自体または医薬組成物として与えることができる。
一般に、インスリンとFcの融合タンパク質の適当な1日用量は、治療効果を生じるのに有効な最小用量であるインスリンとFcの融合タンパク質のその量である。かかる有効用量は、一般に、上記の要因に依存する。典型的には、治療または予防効果を達成するのに十分な、本明細書において開示される1種または複数のインスリンとFcの融合タンパク質の有効量は、1日毎に体重1キログラム当たり約0.000001mg~1日毎に体重1キログラム当たり約10,000mgの範囲にある。適当には、投薬量範囲は、1日毎に体重1キログラム当たり約0.0001mg~1日毎に体重1キログラム当たり約100mgである。例えば、投薬量は、毎日、2日毎もしくは3日毎に体重1kg当たり1mgまたは体重1kg当たり10mg、あるいは毎週、2週間毎もしくは3週間毎に1~10mg/kgの範囲内であり得る。1つの実施形態において、治療化合物の1回投薬量は、体重1kg当たり0.001~10,000マイクログラムの範囲にある。1つの実施形態において、担体中の1種または複数のインスリンとFcの融合タンパク質濃度は、デリバリーされる1ミリリットル当たり0.2~2000マイクログラムの範囲にある。典型的な処置計画は、1日1回または1週間に1回の投与を必要とする。治療適用において、比較的短い間隔での比較的高い投薬量は、ときに、疾患の進行が低減されるか、もしくは止まるまで、または対象が疾患の症状の部分的もしくは完全な改善を示すまで、必要とされる。その後、患者は、予防計画を投与され得る。ある実施形態において、1種または複数のインスリンとFcの融合タンパク質の治療上有効量は、10-32~10-6モル、例えば、およそ10-7モルの標的組織でのインスリンとFcの融合タンパク質の濃度として定義されてもよい。この濃度は、0.001~100mg/kgの全身用量、または体表面積により均等な用量によりデリバリーされてもよい。投与のスケジュールを最適化して、継続投与(例えば、非経口点滴または経皮適用)も含むが、1回の毎日または毎週の投与によるような、標的組織での治療濃度を維持する。
一般に、患者のためのインスリンとFcの融合タンパク質の静脈内および皮下用量は、1日毎に体重1キログラム当たり約0.0001~約100mg、例えば、約0.0001~約0.001mg/kg/日、約0.001~約0.01mg/kg/日、約0.01~約0.1mg/kg/日、約0.1~約1mg/kg/日、約1~約10mg/kg/日、または約10~約100mg/kg/日の範囲にある。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、60nmol/kg/日以上の用量で投与される。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、75nmol/kg/日以上、100nmol/kg/日以上、150nmol/kg/日以上、または200nmol/kg/日以上の用量で投与される。ある特定の実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、1mg/kg/日以上、例えば、2mg/kg/日、4mg/kg/日、8mg/kg/日、16mg/kg/日、32mg/kg/日、64mg/kg/日、100mg/kg/日、200mg/kg/日以上の用量で投与される。
インスリンとFcの融合タンパク質は、約100mg/mL以下(例えば、100mg/mL以下、例えば、90mg/mL、80mg/mL、70mg/mL、60mg/mL、50mg/mL、40mg/mL、30mg/mL、20mg/mL、10mg/mL、5mg/mL、2.5mg/mL、1mg/mL、0.5mg/mL、0.25mg/mL、0.1mg/mL、0.05mg/mL、0.01mg/mL以下)の濃度で存在してもよい。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、約0.25mg/mL~約1mg/mL、例えば、約0.25mg/mL、約0.5mg/mL(例えば、0.5mg/mL)、約0.75mg/mL、または約1mg/mLの濃度で存在する。
所望なら、インスリンとFcの融合タンパク質の有効な1日用量は、場合により、単位投薬形態で、1日を通じて適当な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6回以上の亜用量として投与することができる。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、1日1回投与される。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、少なくとも1週間に2回投与される。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、少なくとも1週間に1回投与される。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、毎週2回投与される。
インスリンとFcの融合タンパク質は、それ自体、または医薬上許容されるおよび/もしくは無菌の担体との混合物中で投与することができ、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよび糖ペプチドのような抗菌剤と併せて投与することもできる。従って、接続的な治療は、第1の投与された治療の治療または予防効果が、続く治療が投与されるとき、依然として検出可能である方法での、インスリンとFcの融合タンパク質の連続、同時および別々の投与を含む。
併用療法
ある実施形態において、本明細書において開示される1種または複数のインスリンとFcの融合タンパク質は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の予防もしくは処置のための1種または複数のさらなる治療と組合せてもよい。
任意の場合において、複数の治療剤は、任意の順または同時にでさえ投与されてもよい。同時なら、複数の治療剤は、単一の、統合された形態で、または複数の形態で(例示のみの目的で、単一のピル剤としてまたは2つの別々のピル剤としてのいずれかで)提供されてもよい。治療剤の1つは、複数回用量で与えられてもよく、または複数回用量として与えられてもよい。同時でないなら、複数回用量間のタイミングは、0より長い週から4週以下まで変動してもよい。加えて、組合せ方法、組成物および製剤は、2種の薬剤のみの使用に限定されない。
ある実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療を、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質との組合せを含む製剤において投与して、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する。ある特定の実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療は、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質と同時に投与される。ある特定の実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療は、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質より連続して(異なる時間に)投与される。例では、少なくとも1つのさらなる治療は、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質と約5分、約10分、約30分、約1時間、約1.5時間、約2時間、約4時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間隔てて投与される。少なくとも1つのさらなる治療は、インスリンとFcの融合タンパク質と同じ経路により投与されてもよいか、または投与されなくてもよい。例では、インスリンとFcの融合タンパク質は、1つの方法で(例えば、静脈内または皮下)投与されてもよく、一方少なくとも1つのさらなる治療は、別の方法で(例えば、経口)別々に投与されてもよい。
ある実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療は、インスリン増感剤である。インスリン増感剤(例えば、ビグアニド(例えば、メトホルミン)ならびにグリタゾン(例えば、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン))は、対象の応答をインスリン(またはインスリン類似体)の所定の量まで増加させることにより、作用する。それ故、インスリン増感剤を受け取った患者は、当該インスリン増感剤を受け取っていない患者と比較して、より少ない用量の本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質を必要とし得る。従って、ある特定の実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、インスリン増感剤と組合せて対象に投与される。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、インスリン増感剤の不存在下で必要とされる標準用量の約95%で、例えば、インスリン増感剤の不存在下で必要とされる標準用量の約90%で、約85%で、約80%で、約75%で、約70%で、約65%で、約60%で、約55%で、約50%で、約50%で、約45%で、約40%で、約35%で、約30%で、約25%で、約20%で、約15%で、約10%で、約5%以下で投与されてもよい。
ある実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療を投与して、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)またはその症状の完全な発病を予防し、健常対象のものと比較して、少なくとも約90%のβ細胞塊の維持をもたらす。ある実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療を投与して、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の完全な発病を予防し、健常対象のものと比較して、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%のβ細胞塊の維持をもたらす。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状を予防する治療と組合せて対象に投与され、健常対象のものと比較して、少なくとも約90%のβ細胞塊の維持をもたらす。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状を予防する治療と組合せて対象に投与され、健常対象のものと比較して、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%のβ細胞塊をもたらす。
ある実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療を投与して、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)またはその症状の完全な発病を予防し、健常対象のものと比較して、少なくとも約90%の内在性Cペプチドレベルの維持をもたらす。ある実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療を投与して、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)またはその症状の完全な発病を予防し、健常対象のものと比較して、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%の内在性Cペプチドレベルの維持をもたらす。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状を予防する治療と組合せて対象に投与され、健常対象のものと比較して、少なくとも約90%の内在性Cペプチドレベルの維持をもたらす。ある実施形態において、インスリンとFcの融合タンパク質は、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の症状を予防する治療と組合せて対象に投与され、健常対象のものと比較して、少なくとも少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%の内在性Cペプチドレベルをもたらす。
キット
本開示はまた、本明細書に記載されるインスリンとFcの融合タンパク質の1種または複数を含む、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の予防および/または処置のためのキットを提供する。場合により、本テクノロジーのキットの上記成分は、適当な容器に入れられ、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の予防および/または処置についてラベルされる。
上述の成分は、水溶液、好ましくは、無菌の水溶液として、または再構成用の凍結乾燥、好ましくは、無菌の製剤として、単位または複数回用量の容器、例えば、密封されたアンプル剤、バイアル、ボトル、注射器、および試験管において保存されてもよい。キットは、より高容量に医薬組成物を希釈するのに適当な希釈剤を保持する第2の容器をさらに含んでもよい。適当な希釈剤は、医薬組成物の医薬上許容される賦形剤および食塩水溶液を含むが、これらに限定されない。さらに、キットは、医薬組成物を希釈するための説明書、および/または希釈されるかどうかに関わらず、医薬組成物を投与するための説明書を含んでもよい。容器は、ガラスまたはプラスチックのような様々な材料から形成されてもよく、無菌のアクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、皮下注射針により突き刺され得るストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであってもよい)。キットは、さらに、リン酸緩衝食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液のような医薬上許容される緩衝液を含む、さらなる容器を含んでもよい。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器、1種または複数の適当な宿主のための培養培地を含む、市販および使用者の観点から望ましい他の物質をさらに含んでもよい。キットは、例えば、表示、使用、投薬量、製造、投与、禁忌および/またはかかる治療剤もしくは製品の使用に関する注意についての情報を含有する、治療製品の市販のパッケージに慣例的に含まれる説明書を場合により含んでもよい。
キットはまた、例えば、緩衝剤、保存剤または安定化剤を含み得る。キットはまた、アッセイされ、試験試料と比較され得る対照試料または一連の対照試料を含有し得る。キットのそれぞれの構成要素は、個々の容器内に封され、様々な容器の全てが、キットを使用して行われるアッセイの結果を解釈するための説明書と共に、単一パッケージ内にあることができる。本テクノロジーのキットは、キット容器上またはキット容器内に記載された製品を含有してもよい。記載された製品は、キットに含有される試薬の使用方法を記載する。ある特定の実施形態において、試薬の使用は、本テクノロジーの方法に従うものであり得る。
本テクノロジーは、以下の実施例により説明され、それは、いずれかの制限と解釈されるべきではない。
実施例1:HEK293細胞におけるインスリンとFcの融合タンパク質の合成および作製方法
インスリンとFcの融合タンパク質を、以下の通り合成した。プロプライエタリ・ソフトウェア(LakePharma、ベルモント、カリフォルニア州)を使用して、目的の遺伝子配列を構築し、高発現哺乳類ベクターにクローニングした。HEK293細胞を、トランスフェクションの24時間前に、振とうフラスコ内に播種し、血清を含まない化学的に規定した培地を使用して成長させた。一過性トランスフェクションのためのSyd Labs(ナティック、マサチューセッツ州)の標準的な操作手法を使用して、HEK293細胞の懸濁液2Lに、目的のインスリンとFcの融合タンパク質をコードするDNA発現コンストラクトを一過性にトランスフェクトした。20時間後、細胞をカウントして、生存能および生細胞カウントを決定し、ForteBio(登録商標)Octet(Pall ForteBio LLC、フレモント、カリフォルニア州)により、タイターを測定した。さらなる読み取りを、一過性のトランスフェクション作製実行を通じて取得した。5日目またはその後に、培養液を回収した。
表1に示す通り、HEK293細胞において合成した、本テクノロジーの典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;および配列番号8)は、「AAK」C鎖配列を含有しない他のインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号9および配列番号10)より有意に高いタイターを示した。
実施例2:CHO細胞におけるインスリンとFcの融合タンパク質の合成および産生方法
CHO細胞株は、元々、CHO-K1(LakePharma、ベルモント、カリフォルニア州)に由来し、当該技術分野において公知の方法を使用する組換えテクノロジーにより、内在性グルタミンシンテターゼ(GS)遺伝子をノックアウトした。安定な発現DNAベクターを設計し、CHO発現およびGSセレクションに最適化し、高発現哺乳類ベクター(LakePharma、ベルモット、カリフォルニア州)に組込んだ。それぞれの完成したコンストラクトの配列を、スケールアップ実験の開始に先立ち確かめた。加湿5%CO2インキュベーターにおいて、37℃で、化学的に規定した培地(CD OptiCHO(商標);インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)においてCHO細胞を培養した。CHO細胞の培養において、血清または他の動物由来の製品を使用しなかった。
指数増殖相中にCD OptiCHO(商標)培地中で成長している、およそ8000万個の懸濁適合したCHO細胞を、DNA80μgでのMaxCyte(登録商標)STX(登録商標)システム(MaxCyte,Inc.、ゲイサーズバーグ、メリーランド州)を使用するエレクトロポレーションによりトランスフェクションして、それぞれのインスリンとFcの融合タンパク質について安定なCHO細胞株を作製した(DNAコンストラクトは、インスリンとFcの融合タンパク質の全長配列を含有する)。24時間後、トランスフェクトした細胞をカウントし、インスリンとFc融合物遺伝子の安定な組込みについての選択下に置いた。トランスフェクトした細胞を、100μΜメチオニンスルホキシイミン(MSX)を含有するCD OptiCHO(商標)選択培地に、0.5×106個細胞/mLの細胞密度で振とうフラスコにおいて播種し、37℃、5%CO2でインキュベーションした。選択プロセス中、細胞をスピンダウンし、プールがその成長率および生存能を回復するまで、2~3日毎に新鮮な選択培地に再懸濁した。成長およびタイターについて、細胞培養液をモニターした。
1mL当たり2.5×106個の細胞まで、細胞を成長させた。細胞を預けるための回収時に、生存能は95%より高かった。次に、細胞を遠心分離し、細胞ペレットを、7.5%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含むCD OptiCHO(商標)培地に、1個のバイアル毎に1mL当たり15×106個の細胞カウントまで再懸濁した。液体窒素中での保存のため、バイアルを凍結保存した。
以下の通り、CHO細胞を使用して、スモールスケールアップ産生を行った。37℃での、100μΜ MSXを含有するCD OptiCHO(商標)成長培地における産生のため細胞をスケールアップし、必要に応じて2~4日毎に、グルコースおよび必要に応じてさらなるアミノ酸を添加したCD OptiCHO(商標)成長培地をおよそ14~21日間与えた。安定なプール産生実行から回収した条件培地の上清を、遠心分離により清澄化した。タンパク質を、タンパク質A(Mab Select、GEヘルスケア、リトル・チャルフォント、英国)カラムに通し、pH勾配を使用して溶出した。0.2μΜメンブレンフィルターを使用して、濾過を行った。
場合により、単クローン性までさらに細胞株をサブクローニングし、場合により、当業者に公知の方法である限界希釈法を使用して、高いタイターのインスリンとFcの融合タンパク質を発現するクローンについてさらに選択した。高いタイターの単クローンのインスリンとFcの融合タンパク質を発現する細胞株を得た後、インスリンとFcの融合タンパク質の産生をMSXを含まない成長培地において、または場合により、MSXを含有する成長培地において上記の通り行って、組換えCHO作製インスリンとFcの融合タンパク質を含有する細胞培養上清を得た。
実施例3:インスリンとFcの融合タンパク質の精製
以下の通り、インスリンとFcの融合タンパク質の精製を行った。一過性もしくは安定的にトランスフェクトしたHEKまたはCHO産生実行から、分泌されたインスリンとFcの融合タンパク質を含有する条件培地上清を回収し、遠心分離により清澄化した。所望のインスリンとFcの融合タンパク質を含有する上清を、タンパク質Aカラムに通し、低pH勾配を使用して溶出した。その後、溶出した所望のタンパク質分画をプールし、200mM HEPES、100mM NaCl、50mM NaOAc、pH7.0緩衝液に緩衝液交換した。0.2μmのメンブレンフィルターを使用して、最終的な濾過工程を行った。280nmでの溶液の光学密度から、最終タンパク質濃度を計算した。さらに場合により、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、または他の方法による精製を、必要に応じて行った。タンパク質Aカラム精製後に得たタイター結果(mg/L)を、図2に示す。
実施例4:非還元性および還元性CE-SDSによる構造の確認
LabChip(登録商標)GXII(パーキンエルマー、ウォルサム、マサチューセッツ州)において、200mM HEPES、100mM NaCl、50mM NaOAc、pH7.0緩衝液に溶解した精製したインスリンとFcの融合タンパク質の溶液について、CE-SDS解析を行い、電気泳動図をプロットした。非還元条件下で、試料を公知の分子量(MW)タンパク質標準に対して走らせ、溶出ピークは、インスリンとFcの融合タンパク質ホモダイマーの「見かけ」MWを表していた。
還元条件(インスリンとFcの融合タンパク質ホモダイマーのジスルフィド結合を壊すためにベータ-メルカプトエタノールを使用する)下で、得られたインスリンとFcの融合タンパク質モノマーの見かけMWを、インスリンとFcの融合タンパク質の構造純度がおそらく正しいことを決定する方法として、インスリンとFcの融合タンパク質ホモダイマーの分子量の半分と比較する。
HEK293細胞において合成させたインスリンとFcの融合タンパク質のCE-SDS解析を介して見られる非還元および還元の主要ピークを、表2に示す。CHO細胞において合成させたインスリンとFcの融合タンパク質についてのCE-SDS解析を介して見られる非還元および還元の主要ピークを、表3に示し、得られたインスリンとFcの融合タンパク質モノマーの2倍の見かけMWを、インスリンとFcの融合タンパク質ホモダイマーの分子量と比較した。表2および表3における結果は、インスリンとFcの融合タンパク質の構造純度が、おそらく正しいことを説明する。
実施例5:グリカン除去を伴うLC-MSによる配列同一性
質量分析(MS)を介してインスリン-Fc質量の正確な推定値を得るために、試料をまず処理して、MS解析と干渉し得る天然に生じ得るグリカンを除去した。200mM HEPES、100mM NaCl、50mM NaOAc、pH7.0緩衝液溶液に溶解した2.5mg/mLインスリンとFcの融合タンパク質100μLを、Zeba脱塩カラム(Pierce、サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、マサチューセッツ州)を使用して、5mM EDTAを含有する0.1M Tris、pH8.0緩衝液にまず交換した。融合タンパク質に存在するN結合グリカンを除去するために、PNGaseF酵素(プロザイムN-グリカナーゼ)1.67μLをこの溶液に加え、混合物を、37℃で一晩、インキュベーターにおいてインキュベーションした。次に、試料をLC-MS(NovaBioassays、ワーバン、マサチューセッツ州)を介して解析し、グリカンを含まない所望のホモダイマーに対応する分子の分子質量を得た。次に、アスパラギンからグリカンを切断するために使用される酵素プロセスはまた、アスパラギン側鎖を脱アミノして、アスパラギン酸を形成し、その際に、酵素的に処理したホモダイマーは、ホモダイマーに存在するそれぞれの鎖についての1Daの質量に対応する、2Da全体を得るので、この質量をさらに補正した。それ故、実際の分子量は、解析試料中のインスリンとFcの融合タンパク質構造の酵素修飾について補正するために測定した質量マイナス2Daである。典型的なインスリンとFcの融合タンパク質についてのLC-MS分子量データ、補正質量データ、および理論分子量(Expasy MW/pIツールを介して得た)を、表4に示す。
実施例6:分子ふるいクロマトグラフィー(SEC-HPLC)による%ホモダイマー
280nmの波長でのWaters2998フォトダイオードアレイを取り付けたWaters2795HT HPLC(ウォーターズコーポレーション、ミルフォード、マサチューセッツ州)を使用して、インスリンとFcの融合タンパク質の分子ふるいクロマトグラフィー(SEC-HPLC)を行った。目的のインスリンとFcの融合タンパク質を含有する試料100μL以下を、0.2mL/分の流速で作動する、50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、および0.05%w/v窒化ナトリウム、pH6.2を含む移動相を有する、MAbPac SEC-1、5μm、4×300mmカラム(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、マサチューセッツ州)に注入した。MAbPac SEC-1カラムは、分子サイズ分離の原理に基づき作動する。それ故、可溶性のインスリンとFcの凝集物(例えば、インスリンとFcの融合タンパク質ホモダイマーの多量体)が大きいほど、短い保持時間で溶出し、凝集していないホモダイマーは、より長い保持時間で溶出した。解析的SEC-HPLCを介して凝集した多量体ホモダイマーからホモダイマーの混合物を分離する際に、凝集していないホモダイマーのパーセンテージに関してインスリンとFcの融合タンパク質溶液の純度を確認した。図3は、HEK293細胞においておよびCHO細胞において作られたインスリンとFcの融合タンパク質のホモダイマーのパーセンテージを示す。図3は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;および配列番号8)が、HEK293とCHO細胞の一方または両方において作られたとき、比較的高いホモダイマーの%を示したことを示す。対照的に、配列番号9および配列番号10は、HEK293細胞で作られたとき、比較的低いホモダイマーの%を示した。
実施例7:インスリンとFcの融合タンパク質のビオチン結合体
以下の通り、インスリンとFcの融合タンパク質をビオチンに結合させた。PBS、pH7.4中0.5mg/mLのインスリンとFcの融合タンパク質1mL、を、磁気撹拌棒を備えた小さいバイアルに加えた。別に、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で30mMビオチニダーゼ抵抗性ビオチン-BR-PEG4-NHS試薬(Quanta BioDesign、ユニオン郡、オハイオ州)を作製した。次に、ビオチン試薬ストック溶液の一部を、緩衝していないpH4.0の脱イオン水中で10倍希釈し、直後に、希釈したDMSO/水ビオチン試薬溶液をインスリン-Fcタンパク質溶液に加えた。インスリンとFcタンパク質に対するビオチン試薬のモル比が、1~100mol/molであるように、断続的に撹拌しながら、希釈したビオチンDMSO/水溶液の量を、インスリンとFcのタンパク質溶液に少しずつ加えた。典型的なビオチン結合反応は、12:1のインスリンとFcの融合タンパク質に対するビオチン試薬のモル比を標的にする。合わせたビオチン試薬とインスリンとFcの融合タンパク質の溶液を、2時間以上、室温(RT)で反応させ、その後、結合していないビオチン試薬およびDMSOを、Zeba(商標)10mL、7kDaのPierce(商標)スピンカラム(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、マサチューセッツ州)を使用したゲル濾過を介して除去し、エンドトキシンフリーのリン酸緩衝食塩水(PBS)に入れた。280nmでの吸光度により、溶液の終濃度を決定した。
以下の通り、ELISAアッセイを介して、ビオチン結合体のプルーフを得た。インスリンとFcの融合タンパク質および非ビオチン化マウスIgG1対照抗体を、0.1M炭酸ナトリウム緩衝液中の10μg/mLに希釈し、100μl/ウェルのそれぞれの溶液を、96ウェルアッセイNunc MaxiSorp(商標)マイクロプレート(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、マサチューセッツ州)のウェルに別々に加え、1時間、RTでインキュベーションして、ウェルをコーティングした。次に、プレートを、0.1%v/v Tween-20(PBST)を含有するPBSを含むプレートウォッシャー(Biotek(登録商標)、ウィヌースキ、バーモンド州)で洗浄し、ウェル表面を、250μl/ウェルのPierce(商標)SuperBlock(商標)(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、マサチューセッツ州)で1時間、室温でブロッキングした。次に、プレートをPBSTで洗浄し、試料を、ストック溶液から1:8000~1:15,000に希釈したストレプトアビジン-HRP結合体(Abeam、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)と共に100μl/ウェルで別々にインキュベーションした。プレートを、そのまま1時間、RTでインキュベーションした。次に、プレートを、PBSTを使用したプレートウォッシャーで最終的に洗浄し、次に、2×脱イオン水で再度洗浄した。最終的に、プレートを、100μl/ウェルTMB(ライフテクノロジーズ(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、カールスバド、カリフォルニア州)と、続いて100μl/ウェルELISA停止溶液(Boston BioProducts、アシュランド、マサチューセッツ州)と、適当な時間(典型的には、5分間)インキュベーションして、プレートを開発した。SpectraMax 190マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス、サニーベール、カリフォルニア州)でのOD450nmにより、プレートの吸光度を定量した。成功したビオチン結合インスリンとFcの融合タンパク質でコーティングされたウェルは、典型的には、マウスIgG1非結合対照またはブランクウェルのものより1.5OD以上高い、A450値を示した。
実施例8:インビボでの薬物動態(PK)および薬力動態(PD)パラメーターの測定
以下の通り、ビオチン結合インスリンとFcの融合タンパク質および非結合インスリンとFcの融合タンパク質を、それらのインビボでの薬物動態について評価した。1群当たりN=4匹のbalb/cマウス(ジャクソン研究所(JAX)、バー・ハーバー、メイン州)を体重測定し、2つのベースラインの血液グルコース測定値を、血糖値測定器(アボット・ラボラトリーズ、アボットパーク、イリノイ州)を使用して取得し、1つのベースライン血液試料を、顎下静脈を介して後の血清解析のため収集した。次に、マウスに、2mg/kgインスリンとFcの融合タンパク質を腹腔内(i.p.)投与した。血清解析用血液グルコース測定および血液回収を、t=0~t=21日の間隔で取得した。血液を凝血させ、凝血した試料の遠心分離後、血清を得て、ポリプロピレン96ウェルプレートにおいて直ちに凍結し、解析を行うまで、-20℃で保存した。別の対照実験を、組換えヒトインスリン(RHI)(シグマアルドリッチコーポレーション、セントルイス、ミズーリ州)で行い、インスリンとFcの融合タンパク質対RHI対照群のグルコース低下活性における差を示す。
ELISAベースのPKアッセイ。以下の通り、ELISA解析を介して、薬物動態データを得た。96ウェルNunc MaxiSorp(商標)プレート(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、マサチューセッツ州)を、10μg/mL Pierce(商標)NeutrAvidin(商標)(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、マサチューセッツ州)で、1時間、RTでコーティングし、その後、プレートを洗浄し、250μl/ウェルPierce(商標)SuperBlock(商標)(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、マサチューセッツ州)で、一晩4℃でブロッキングした。次に、希釈したインビボ血清試料100μL(典型的には、2~200倍の希釈倍数以上)、かつ別のウェルにおいて、PBST/SB中の公知の濃度を有するビオチン結合インスリンとFcの融合タンパク質標準をプレートに添加し、標準曲線(3倍連続希釈)を構築し、1時間、RTでインキュベーションした。プレートを、プレートウォッシャー(Biotek(登録商標)、ウィヌースキ、バーモンド州)を使用して洗浄し、PストックからBST/SBに1:10,000希釈した適当な2次抗体ウサギ抗ヒトIgG(H+L)-HRP(Bethyl Laboratories、モントゴメリー、テキサス州)100μlをプレートに加え、1時間、RTでインキュベーションした。プレートを、プレートウォッシャーを使用して洗浄し、TMB溶液(ライフテクノロジーズ(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)、カールスバド、カリフォルニア州)100μlを、プレートのそれぞれのウェルに添加した。プレートを適当な時間発展させたら、停止溶液(Boston BioProducts、アシュランド、マサチューセッツ州)100μLを、それぞれのウェルに加えた。プレートを、SpectraMax 190マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス、サニーベール、カリフォルニア州)においてOD450nmで読み取り、標準について得たOD450nm曲線に対して希釈血清試料のOD450nmを比較することにより、血清中のビオチン結合インスリンとFcの濃度を得た。次に、さらに以下に記載する通り、Prism(GraphPad Software、Inc.、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を介して、データを解析した。
場合により、MercodiaマウスインスリンELISAキット(Mercodia、ウプサラ、スウェーデン)を使用して、製造元のプロトコールに従い、およびマウスインスリン均等単位の血清試料中のインスリンとFcタンパク質の濃度の値を報告するための製造元の標準曲線を使用して、インスリンとFcの融合タンパク質のプロインスリン部分の検出を通じて、薬物動態データも取得した。それぞれの試料の濃度を決定し、それらの希釈倍数により戻して増加させ、エクセル(マイクロソフト、シアトル、ワシントン州)およびPrism(GraphPad Software、Inc.、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)ソフトウエアを介して解析して、Cmax、tmax、AUC、および終結相除去率(半減期)を計算した。
図4Aは、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号3)を腹腔内投与した後の日数である時間の関数として、ng/mLの血清濃度を説明する。図4Aに示す通り、試験したインスリンとFcの融合タンパク質の血清半減期は、約1日であった。
空腹時血液グルコース(%FBGL)測定の結果は、試験したビオチン結合インスリンとFcの融合タンパク質のグルコース低下活性を観察しなかったことを示す。図4Bを参照。
実施例9:ヒト血清試料におけるインスリン自己抗体(IAA)に対する結合親和性の決定
以下の通り、循環ヒト血清インスリン自己抗体(IAA)へのインスリンとFcの融合タンパク質の結合親和性を決定した。抗体は、哺乳類におけるB細胞受容体の分泌形態であるので、IAAの起源であるインスリン+B細胞に対するインスリンとFcの融合タンパク質の親和性の代理として、決定値を使用した。前糖尿病のIAA陽性対象(Barbara Davis Center for Childhood Diabetes)からのヒト血清試料を、放射標識したインスリン、および連続希釈濃度の非標識組換えヒトインスリン(RHI)またはインスリンとFcの融合タンパク質(例えば、配列番号3)のいずれかとインビトロで混合して、IAAへの125I放射標識RHI結合の阻害を測定した。混合物を1時間、RTでインキュベーションした後、混合物を、抗ヒトIgGビーズ(CaptureSelect、GEヘルスケア、リトル・チャルフォント、英国)の懸濁液に加えた。ビーズを洗浄し、得られたビーズを、シンチレーションカウンター(ガンマ放射線カウンター)を使用して解析した。ヒト血清IAAへのRHI対照またはインスリンとFcの融合タンパク質の強力な結合は、125I標識インスリンへのIAA結合を阻害し、これにより、より少ないガンマ放射線カウントをもたらした。RHI対照またはインスリンとFcの融合タンパク質の結合が弱いほど、多いガンマカウントをもたらした。データを使用して、結合曲線を構築し、Prism(GraphPad Software、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を使用して解析して、IAAへの放射標識インスリン結合の50%を阻害する濃度(IC50)を決定した。図5に示す通り、配列番号3のインスリンとFcの融合タンパク質(IC50=10nM)は、プールした前糖尿病ヒトIAA試料についてRHI(IC50=3nM)と比較して同様の親和性を有し、これは、配列番号3のインスリンとFcの融合タンパク質が、対象において抗インスリンB細胞クローンを標的にするのに有用であることを示している。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法において有用であることを示す。
実施例10:抗インスリンB細胞のインビトロでの低減-125Tg NODマウス
本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質のインスリン+B細胞を特異的に除去する能力を評価するために、125Tg NODマウス脾細胞および初代ラット肺胞マクロファージ(AM、肺洗浄液)またはAkston Biosciences(ビビバリー、マサチューセッツ州)で繁殖した動物由来のマウスマクロファージ(骨髄由来のMM)を使用するインビトロアッセイを開発した。脾臓を回収し、赤血球を溶解し、脾細胞をフィコールプレップにより精製して、T細胞とB細胞の精製混合物を得た。125Tg NODモデルの利点は、脾細胞のおよそ50~80%が、実験的な試験を促進するインスリン+B細胞であることである。次に、変動する濃度の典型的なインスリンとFcの融合タンパク質および対照に沿って、精製した脾細胞混合物を、ラットAMまたはMMと共に、3日間に渡り共培養した(1つの96マイクロタイターウェル当たり5×104個のAMまたはMMと共に約5×105個の脾細胞)。インキュベーション後、細胞を繰り返し洗浄し、一晩、新鮮培地中でインキュベーションし、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質の完全な除去を確認した。次に、細胞を回収し、抗B220-PEmAb1μg、抗IgM-PECy7mAb0.7μg、およびRHI-マイクロビーズ(RHIを使用して作成した(シグマアルドリッチコーポレーション、セントルイス、ミズーリ州))5μL、およびNHS活性化マイクロビーズキット(Miltenyi Biotec、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)のカクテルで標識した。次に、ビーズを、抗マイクロビーズAPCmAb(Miltenyi Biotec、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)でさらに標識する。洗浄後、細胞を固定し、FACSにより解析した。
CellQuest Proソフトウエア(BDバイオサイエンス、サンノゼ、カリフォルニア州)を使用して、4色2レーザーFACSCalibur(登録商標)フローサイトメトリーにおいて、FACS解析を行った。生きたリンパ球に、FSC対SSC散乱でゲートをかけ、4分割スタティックスを使用して、FL2対FL4ドットプロットにおいて解析し、B220+B細胞およびB220+インスリン+B細胞(インスリン特異的B細胞)を確認した。B220(-)インスリン(-)集団レベルおよび阻害対照試料(細胞の標識に先立ち非標識RHIを加えることにより阻害した)に基づき、インスリン+およびインスリン(-)集団の4分割のゲートを設定した。FL2対FL3ドットプロットにおける抗IgM-PECy7の蛍光強度中央値(MFI)を使用して、B細胞上のB細胞受容体密度も推定した。
FACS解析の結果を、図6A~6Bに示す。B220は、複数の細胞タイプの混合物中のトータルのB細胞の定量を可能にするB細胞表面マーカーである。B220+は、結合し、フローサイトメトリーにおいてB220+B細胞として蛍光を発する抗B220とフルオロフォアの結合体で標識されている細胞の分画を指す。Ins+は、フローサイトメトリーにおいて定量される全てのタイプの標識インスリン(またはインスリン結合ビーズ)に結合する細胞の分画を指す。Ins+およびB220+分画を評価することにより、両方のB細胞であり、インスリンに結合する能力がある細胞のパーセンテージを確認することが可能である。
配列番号3での標的細胞除去は、B220+インスリン+B細胞に高度に特異的であり、対照と区別できないB220+インスリン(-)B細胞(下側右の4分割、図6Aおよび6B)とB220(-)インスリン(-)細胞集団(下側左の4分割、図6Aおよび6B)の両方はそのままであった。インスリン+B細胞の配列番号3介在性排除の全体的な用量応答曲線を、図6Cに描く。これらのデータは、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号3)が、80nMの濃度での共培養液由来のB220+インスリン+B細胞において>95%の低減を引き起こしたこと、および効果が、約70pMのEC50で用量依存性であったことを示す。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法において有用であることを示す。
実施例11:抗インスリンB細胞のインビボでの低減-VH125 NODマウス
オスおよびメスVH125 NODマウス(1群当たりN=3~6匹のマウス)における2週間の0.4mg/kgでの1週間に2回の腹腔内注射を介して、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質、配列番号3、またはビークル対照製剤を使用した実験を行った。投与の2週間後、血液採取中(顎下静脈)イソフルランを使用してマウスを麻酔し、続いて、二酸化炭素窒息し、リンパ節、骨髄、および/または脾臓の回収を無菌条件下で行った。実施例12~13に記載する通り、血液および脾臓試料を処理し、解析した。これらの実験の結果を図7A~7Hに示し、これは、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号3)の、インスリン(-)B細胞集団を保存しながら、VH125 NODマウスにおいて血液および脾臓中のインスリン+B細胞を除去する能力を示している。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法において有用であることを示す。
実施例12:抗インスリンB細胞のインビボでの低減-全血液解析(VH125 NODマウス)
本明細書に記載される典型的なインスリンとFcの融合タンパク質での処置後のVH125 NODマウスから収集した末梢血中のインスリン特異的B細胞を解析する手法を開発した。顎下(SMD)静脈穿刺により処置したマウスからの血液およそ200~400μlを、2mM EDTA/HBSS/ゲンタマイシン2mLを含む5mLの微量遠心管に採取し、反転させることにより直ちに混合して、凝血を防いだ。次に、試験管を500×gで7分間遠心分離し、HBSS/ヘパリン緩衝液5mLで、500×gで7分間、2回洗浄した。血液ペレットを、ヘパリンを含む完全IMDM培地(10%FBS、5mg/mLゲンタマイシンおよび2-ME)に再懸濁し、10ウェルプレートにおいて一晩、37℃でインキュベーションし、それらに、内在性マウスインスリンまたはインビボでの実験から存在する残りのインスリンとFcの融合タンパク質がないように、B細胞受容体(BCR)のターンオーバーをさせた。次に、血液細胞を、5mLの試験管に回収し、500×gで7分間、遠心分離し、細胞ペレットを、RBC-溶解バッファー5mLに再懸濁し、5分間、室温で維持した。RBCの溶解後、白血球を、HBSS/2%FBSで、500×gにて7分間、2回洗浄し、最後に、マウスFcRブロック(Miltenyi Biotech、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)10μL、mAbラット抗マウスB220-Alexa Fluor(登録商標)488(BioLegend(登録商標)、サンディエゴ、カリフォルニア州)1μg、ラット抗マウスIgM-PE/Cy7mAb0.7μgおよびRHI結合マイクロビーズ(Miltenyi Biotech、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)100当量(12.5μL)を含有する冷FACS染色培地100μLに懸濁し、30分間、4℃で維持した。氷冷FACS洗浄バッファー2mLを加える、500×gで7分間遠心分離することにより、血液細胞を洗浄した。最後に、細胞を、FACS染色バッファー100μl中の抗マイクロビーズ-APC(Miltenyi Biotech、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)6μLで、20分間、4℃で標識し、FACS洗浄バッファー2mLで1回洗浄し、FACS解析のため、2%パラホルムアルデヒドバッファー150μlに再懸濁した。VH125遺伝子導入マウスについては、血中のインスリン特異的B細胞の低い頻度のため、FACS解析前に濃縮手法を行った。濃縮手法のため、血液およそ500~600μLを必要とし、これは、所定の処置群についてN=3以上の個々のマウス血液試料のプールを必要であった。血液標識手法を、実施例12に記載したインスリン特異的B細胞濃縮プロトコールと組合せた。FACS解析前に、VH125 NOD脾臓細胞について上で記載した通り、固定および洗浄工程後の標識血液細胞を、MSカラムを使用して濃縮することができる。
図7Aは、ビークルで処理した対照のパーセントとして血液中のインスリン+B細胞を示すグラフであり;図7Bは、対照のパーセントとして血液中のインスリン(-)B細胞を示すグラフである。図7Aおよび図7Bから、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号3)が、Ins+B細胞を有意に低減し、一方、Ins(-)B細胞を有意に低減しない(*は、結果が統計上有意、p値<0.05(スチューデントt検定)であることを意味し、n.s.は、結果が統計上有意でない、p値>0.05(スチューデントt検定)ことを意味する)ことを見ることができる。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法において有用であることを示す。
実施例13:抗インスリンB細胞のインビボでの低減-脾臓解析(VH125 NODマウス)
FACS解析のための、マウス脾細胞由来のインスリン特異的B細胞の濃縮。この手法を、VHI125 NODマウスから新たに単離した脾細胞中のインスリン特異的B細胞を解析するのに適用することができる。VH125 NODマウスにおけるインスリン特異的B細胞の頻度は、全てのB細胞の2~5%であるので、磁性活性化セルソーティング(MACS)カラム濃縮手法を使用して、トータルの脾細胞からインスリン特異的B細胞を濃縮し、インビボでのインスリン特異的B細胞の低減の程度を正しく定量した。それぞれの濃縮手法のため、およそ10×106個の脾臓細胞を標識した。新たに単離したVHI125 NOD脾臓細胞を濃縮したとき、細胞を、完全培養培地(10%FBS、5mg/mLゲンタマイシンおよび2-メルカプトエタノールを含むIMDMまたはDMEM培地)と共に、37℃で、5%CO2インキュベーターにおいて、一晩インキュベーターし、それらが、内在性マウスインスリンまたはインビボでの実験から存在した残りのインスリンとFcの融合タンパク質を含まないように、B細胞受容体(BCR)のターンオーバーをさせた。細胞を、15mLの試験管に回収し、細胞をフィコール2.5mlと共に下に敷き、800×gで15分間遠心分離することにより、フィコール精製した。
HBSS/2%FBSバッファーを用いて500×gにて10分間、2回洗浄後、細胞を、FACS染色バッファー(HBSS/2mM EDTA/0.1%Na-アジド+4%ウマ血清)250μlに再懸濁し、ブロッキングのため、4℃で20~30分間維持した。細胞をカウントし、250μL体積中107個の細胞に調節した。mAbラット抗マウスB220-Alexa Fluor(登録商標)488(BioLegend)3.5μg、ラット抗マウスIgM-PE/Cy7mAb2.5μg、BV510-抗マウスCD23 1.6μg、BV421-抗マウスCD21 0.7μg、PE-抗マウスCD43 1.6μgおよび均等な(25μL)RHI-結合マイクロビーズ(上記)200ngで、30分間、4℃で細胞を標識した。氷冷FACS洗浄バッファー5mLを加え、500×gで7分間遠心分離することにより、細胞を洗浄した。次に、細胞を、抗マイクロビーズ-APC(Miltenyi Biotec、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)10μlを含有するFACS染色バッファー100μLに、20分間、4℃で再懸濁し、氷冷FACS洗浄バッファー2~4mLを用いて500×gで7分間、1回洗浄した。次に、細胞を、21%の新たに調製した超高純度のパラホルムアルデヒド200mLを用いてRTで5分間、固定した。固定後、細胞を、FACS洗浄バッファーで2回洗浄し、最後に、MACSバッファー(HBSS/0.5%ウマ血清/0.1%アジド/2mM EDTA)600μLに再懸濁した。MSカラム(Miltenyi Biotec、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)を、磁気分離機に置き、MACSバッファー500μLで1回洗浄し、次に、細胞懸濁液をカラムに加えて、通した。濃縮していないトータルの細胞を解析するため、標識細胞懸濁液およそ100μLを、MSカラムを通すことなく、維持した。次に、MSカラムを、MACSバッファー3×500μlで3回洗浄した。次に、カラム中に保持されたマイクロビーズ標識インスリン特異的B細胞を、磁石からカラムを取り除き、MACSバッファー1mLを加え、MSカラムを備えたプランジャーを使用して、それらを1.8mLの微量遠心チューブに差し込むことにより、溶出した。次に、濃縮した細胞を、500×gで7分間遠心分離し、FACS解析のため、MACSバッファー250μLに再懸濁した。
図7Cは、全ての脾臓区画におけるインスリン+B細胞を描くグラフである。図7Cによると、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号3)は、全ての脾臓区画において、インスリン+B細胞を有意に低減した(**は、p値≦0.01(統計上有意)を意味する)。
図7Dは、辺縁帯脾臓区画(CD21高CD23高)におけるインスリン+B細胞を示す。図7Dに示す通り、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号3)は、辺縁帯脾臓区画においてインスリン+B細胞を有意に低減した(*は、p値≦0.05(統計上有意)を意味する)。
図7Eは、濾胞性脾臓区画(IgM中CD21中)におけるインスリン+B細胞を示す。図7Eによると、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号3)は、全ての濾胞性脾臓区画において、インスリン+B細胞を有意に低減した(*は、p値≦0.05(統計上有意)を意味する)。
図7Fは、T1脾臓区画(CD21低CD23低)におけるインスリン+B細胞を示す。図7Fに示す通り、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号3)は、T1区画においてインスリン+B細胞を有意に低減した(*は、p値≦0.05(統計上有意)を意味する)。
図7Gは、T2脾臓区画(IgM高CD21中)におけるインスリン+B細胞を示す。図7Gによると、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号3)は、T2脾臓区画において、インスリン+B細胞を有意に低減した(*は、p値≦0.05(統計上有意)を意味する)。
図7Hは、辺縁帯脾臓区画(IgM高CD21高)におけるインスリン+B細胞を示す。図7Gに示す通り、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号3)は、前辺縁帯脾臓区画においてインスリン+B細胞を有意に低減した(*は、p値≦0.05(統計上有意)を意味する)。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法において有用であることを示す。
実施例14:抗インスリンB細胞のインビボでの低減-骨髄解析(VH125 NODマウス)
試料処理および濃縮(骨髄)。この場合では、試験物を、6週齢から34週齢で週に2回投与することを除き、実施例11に記載のものと同様のインビボ実験を行った。実施例11に記載に記載したインビボ実験を行った後、VHI125 NODの脛骨および大腿骨を、周辺筋肉および腱から切断した。無菌のスクレーパーを使用して骨から、筋肉および組織デブリを掻把し、骨を、70%イソプロパノールで1回、無菌PBSで2回洗浄した。それぞれの骨の両末端を、無菌のはさみで切断し、20mLの注射器に充填した無菌のHBSS/2%FBSバッファーおよそ8~10mLおよび骨の一方の端を通して挿入した25G針を挿入することにより、髄を流した。20μmの細胞濾過器を通して、骨髄懸濁液を濾過し、次に、500×gで10分間遠心分離した。上清を吸引後、RBC溶解バッファーを使用して、5分間、室温で、赤血球細胞を溶解し、次に、HBSS/2%FBSバッファーで2回洗浄した。骨髄細胞懸濁液を、完全培地(DMEM、5%BSA、1mMピルビン酸ナトリウム、50μg/mLゲンタマイシン、5×10-5Mベータメルカプトエタノール)に再懸濁し、一晩、37℃でインキュベーションして、BCRのターンオーバーをさせた。インキュベーション期間の終わりに、フィコール密度勾配分離を使用して、デブリから骨髄単核細胞を明らかにした。
次に、細胞を、FACS染色バッファー(PBS、2%BSA、0.1%窒化ナトリウム)およびFcブロック(Mitenyi Biotech、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)に再懸濁した。ビオチン化インスリンおよび他のB細胞マーカーを、氷上の細胞に加えた。30分後、細胞を洗浄し、2%PFAを含むHBSSバッファーに再懸濁した。細胞を再度洗浄し、ストレプトアビジン-Alexa Fluor(登録商標)647を含むFACS染色バッファーでの続く染色工程を完了した。次に、場合により陽性濃縮工程(製造元のプロトコールによる)のため、Miltenyi抗Alexa Flour(登録商標)647マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)を使用した。高MFIインスリン+B細胞のゲーティングを用いた試料取得のため、BD FACSCalibur(商標)(BDバイオサイエンス、サンノゼ、カリフォルニア州)を使用した。一色の染色対照を使用して、電位および補正を設定した。FlowJoソフトウエア(FlowJo、LLC、アシュランド、オレゴン州)を使用して、データを解析した。
研究34週目の骨髄解析を、図8Aに説明し、これは、配列番号3での処置後のオスとメスのVHI125マウスの両方における抗インスリンB細胞の有意な低減を示す。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法において有用であることを示す。
実施例15:抗インスリンB細胞のインビボでの低減-リンパ節解析(VH125 NODマウス)
実施例14のインビボ実験を行い、所定の動物について、2~4つのリンパ節を1つの試料として一緒にプールし、フィコール精製および溶解バッファー工程を行わなかったことを除き、脾細胞について既に記載した手法と同様の方法で、リンパ節および得られたリンパ節懸濁液を処理し、回収した。得られたリンパ節細胞懸濁液を、上記の骨髄細胞懸濁液について記載したものと同様の方法で標識した。研究34週目のリンパ節解析を、図8Bに説明し、これは、配列番号3での処置後のオスとメスのVHI125マウスの両方における抗インスリンB細胞の有意な低減を示す。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法において有用であることを示す。
実施例16:T細胞活性化アッセイ-単一濃度
インスリンB鎖エピトープ(インスリンB鎖上の位置9~23)について、反応性T細胞受容体(TCR)を有する5KC-3-4マウスIAg7T細胞ハイブリドーマによるIL-2分泌を測定することにより、インスリンとFcの融合タンパク質のT細胞を活性化する能力を評価した。抗原提示細胞として使用するため、125Tg NOD脾臓からインスリン特異的B細胞を単離した。脾臓を無菌的に単離し、細胞を、40μmの無菌の細胞分離機を通してろ過した2%FBSを含有する無菌バッファーに単離した。ACK溶解バッファー(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、マサチューセッツ州)を使用して、赤血球細胞を溶解し、続いて、無菌バッファー中の2%FBSで2回洗浄した。製造元の指示(マウス膵B細胞単離キットII、Miltenyi Biotec、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)に従い、非接触B細胞単離キットを使用して、脾臓細胞混合物からB細胞を単離した。次に、活性化または固定を行うことなく、細胞を抗原提示細胞として使用した。5KC-3-4細胞とB細胞を混合し、FBS中それぞれ6.67×106/mLおよび1.33×107/mLで再懸濁した。7kDaのMWCO Zebaスピンカラムを使用して、試験化合物を、0.002%Tween-80、1mMピルビン酸塩、55μΜベータ-メルカプトエタノール、およびゲンタマイシンを含有するIMDMにバッファー交換し、次に、0.2mg/mLに希釈した。RHI(MW約5.8kDa)を、インスリンとFcの融合タンパク質(MW約63.5kDa)のものと等モル濃度で比較するように、陽性対照として、0.018mg/mLの組換えヒトインスリン(RHI)を同じ培地中で調製した。細胞懸濁液(1×105個の5KC-3-4および2×105個のB細胞)15μLならびに試験化合物150μLを、96ウェルの組織培養プレートにおいて合わせた。37℃で一晩のインキュベーション後、培養培地を回収し、3500rpmで5分間、4℃で遠心分離した。次に、製造元のプロトコールに従い、マウスIL-2Quantikine ELISAキット(R&D Systems、ミネアポリス、ミネソタ州)を介して、IL-2について上清をアッセイした。
図9は、pg/mLで、T細胞刺激実験(IL-2分泌により示す)ELISAの結果を示す。図9は、同じインスリンとFcの融合タンパク質が、5KC-3-4細胞(配列番号3-T細胞刺激=32pg/mL IL-2)に関して、非常に低いかまたは非刺激性行動を示し、一方、一部のインスリンとFcの融合タンパク質が、T細胞刺激性(配列番号5-T細胞刺激=21,635pg/mL IL-2)であることを示す。RHI対照はまた、若干刺激性でもあった(RHI-T細胞刺激=5,503pg/mL IL-2)。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法において有用であることを示す。
実施例17:T細胞活性化アッセイの阻害-複数濃度
インスリンB9-23反応性5KC-3-4T細胞を125TgB細胞と混合し、これが、アッセイにおいて抗原提示細胞として振る舞った。この細胞懸濁液に、固定濃度(10ng/mL)のインスリンとFcの融合タンパク質、配列番号5を、130~10,000ng/mLの様々な連続希釈濃度の試験化合物と予め混合した刺激性対照として加え、アッセイプレートを、一晩37℃でインキュベーションした。IL-2分泌を測定し、データから、IC50濃度を決定した。
アッセイのより詳細な記載は以下の通りである。抗原提示細胞として使用するため、125Tg NOD脾臓からインスリン特異的B細胞を単離した。脾臓を無菌的に単離し、細胞を、40μmの無菌の細胞分離機を通してろ過した2%FBSを含有する無菌バッファーに単離した。ACK溶解バッファー(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、マサチューセッツ州)を使用して、赤血球細胞を溶解し、続いて、無菌のバッファー中の2%FBSで2回洗浄した。製造元の指示(マウス膵B細胞単離キットII、Miltenyi Biotec、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)に従い、非接触B細胞単離キットを使用して、脾臓細胞混合物からB細胞を単離した。次に、活性化または固定を行うことなく、細胞を抗原提示細胞として使用した。5KC-3-4および125TgB細胞を、40%FBS(血清フリーの培地中)に、それぞれ1mL当たり2.67×106および3.6×106個の細胞で再懸濁した。試験化合物を、1mMピルビン酸塩、125μΜ β-メルカプトエタノール、および0.002%Tween-80を含有するIMDMにおいて2倍(20,000ng/mL)に希釈し、7つのさらなる1:5連続希釈液を、同じ培地において調製した。試験したインスリンとFcの融合タンパク質に加えて、精製したヒトIgGをまた、非刺激性対照として使用した。インスリンとFcの融合タンパク質、配列番号5を、同じ培地において4倍(10ng/mL)に希釈した。細胞懸濁液(1×105個の5KC-3-4および1.4×105個の125TgB細胞を含有する)37.5μL、配列番号5(または培地)37.5μLおよび試験化合物(または培地)75μLを、96ウェル組織培養プレートにおいて合わせた。一晩37℃でインキュベーション後、培養培地を回収し、3500rpmで、5分間4℃で遠心分離した。次に、製造元のプロトコールに従い、マウスIL-2Quantikine ELISAキット(R&D Systems、ミネアポリス、ミネソタ州)を介して、IL-2レベルについて、上清をアッセイした。
図10は、固定量のインスリン特異的T細胞刺激性化合物(配列番号5)の存在下でのIL-2分泌の競合的阻害の結果を示す。表5は、IC
50(hIgG)での、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号3)ならびに様々な対照インスリンとFcの融合タンパク質(配列番号9および配列番号10)ならびにhIgG陰性対照についての、T細胞刺激性化合物により誘導されたIL-2分泌の競合的阻害を示す。IC
50値が低いほど、IL-2分泌の強力な阻害剤を示す。
表5は、配列番号3が、配列番号9および配列番号10と比較して、T細胞活性化の有意に大きな阻害を示す。理論により束縛されるものではないが、配列番号9および配列番号10のC鎖は、(i)インビトロで、それらのインスリン+B細胞受容体(mAb125)に結合する能力を低減すること(実施例18を参照)、および(ii)B細胞受容体のそれらの比較的弱い相互作用のため、恐らく、効率的に処理され、125Tg B細胞により提示されるのができず、これにより、配列番号3で観察したものと比較して、配列番号5と共培養したインスリンペプチド特異的T細胞の低減した阻害を説明している、と信じられている。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患{例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法において有用であることを示す。
実施例18:インビトロでのインスリン+B細胞除去アッセイ(125Tg NOD細胞)
本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質のインスリン+B細胞を特異的に除去する能力を評価するために、125Tg NODマウス脾細胞および初代ラット肺胞マクロファージ(AM、肺洗浄液)またはAkston Biosciences(ビビバリー、マサチューセッツ州)で繁殖した動物由来のマウスマクロファージ(骨髄由来のMM)を使用する、インビトロアッセイを開発した。脾臓を回収し、赤血球を溶解し、脾細胞をフィコールプレップにより精製して、T細胞とB細胞の精製混合物を得た。125Tg NODモデルの利点は、脾細胞のおよそ30~80%がインスリン+B細胞であり、これが、実験的な試験を促進することである。次に、変動する濃度の典型的なインスリンとFcの融合タンパク質および対照に沿って、精製した脾細胞混合物を、ラットAMまたはMMと共に、3日間に渡り共培養し(96マイクロタイターウェル当たり5×104個のAMまたはMMと共に、約5×105個の脾細胞)。インキュベーション後、細胞を繰り返し洗浄し、一晩、新鮮培地においてインキュベーションし、典型的なインスリンとFcの融合タンパク質の完全な除去を確認した。次に、細胞を回収し、抗B220-PEmAb1μg、抗IgM-PECy7mAb0.7μg、およびRHI-マイクロビーズ(標準的なキット(Miltenyi Biotec、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)を使用してRHI(シグマアルドリッチコーポレーション、セントルイス、ミズーリ州)およびNHS活性化マイクロビーズで(Miltenyi Biotec、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)で作製した)のカクテルで標識し、続いて、抗マイクロビーズ-APCmAb(Miltenyi Biotec、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)で標識した。洗浄後、細胞を固定し、FACSにより解析した。
CellQuest Proソフトウエア(BDバイオサイエンス、サンノゼ、カリフォルニア州)を使用して、4色2レーザーFACSCalibur(登録商標)フローサイトメトリーにおいて、FACS解析を行った。生きたリンパ球に、FSC対SSC散乱でゲートをかけ、ゲートをかけたリンパ球をFL2対FL4ドットプロットにおいて解析し、4分割スタティックスを使用して、B220+B細胞およびB220+インスリン+B細胞(インスリン特異的B細胞)を確認した。B220(-)インスリン(-)集団レベルおよび阻害対照試料(細胞の標識に先立ち非標識RHIを加えることにより阻害した)に基づき、インスリン+およびインスリン(-)集団の4分割ゲーティングを設定した。FL2対FL3ドットプロットにおける抗IgM-PECy7の蛍光強度中央値(MFI)を使用して、B細胞上のB細胞受容体密度も推定した。
表6は、使用した定性スコアリングスキームを記載する。陰性対照として、RHIを使用した。
図11Hは、インスリン特異的125TgB細胞の除去における様々なインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号2~10)の有効性を示す。図11に示す通り、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号2~8)は、配列番号9および配列番号10(より長いCペプチド鎖を含有し、すなわち、「AAAK」および「AAAAK」対「AAK」)より、インスリン特異的B細胞の除去において有意により有効であった。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法において有用であることを示す。
実施例19:インスリン特異的B細胞受容体結合ELISA
モノクローナル抗体mAb125(クローンAE9D6 ATCC番号HB-125)は、125Tg遺伝子導入マウスの表面IgM(B細胞受容体)の可溶性バージョンであり、それ故、それを、インスリンまたはインスリンとFcの融合タンパク質への結合のため使用して、インスリン特異的B細胞受容体へのそれらの結合特性を測定することができる。ヌードマウスにおける腹水生成を使用して、mAb125をインビボで作製し、当該技術分野において公知の方法を使用して、タンパク質G親和性クロマトグラフィーを介して精製した。ELISAプレート上にコーティングしたmAb125を使用して、それらのIC50値(データをプロットし、GraphPad Prism(GraphPad Software、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を使用して得られた曲線をフィッティングすることにより計算した)により定量した、mAb125(代替B細胞受容体(BCR))に結合する相対的効率を決定するための競合的阻害ELISAフォーマットにおいて、固定量のビオチン標識組換えヒトインスリン(RHI)に対して連続希釈のインスリンとFcの融合タンパク質を結合させた。96ウェルMaxiSorpプレートを、10μg/mLのmAb125で、1時間以上、室温(RT)でコーティングし、次に、洗浄し、SuperBlockブロッキング溶液(サーモフィッシャー、ウォルサム、マサチューセッツ州)250μL/ウェルで、一晩、4℃でブロッキングした。0.1%Tween-80および10%v/vSuperBlock(PBST/SB10)を含有するPBSバッファーにおける試験のため、75μg/mL~34ng/mLの範囲にある、インスリンとFcの融合タンパク質の8つの連続希釈液を調製した。それぞれの化合物の連続希釈液120μLを、1.2mLのチューブにおいて1.5ng/mLビオチン-RHI(20×)6μLと混合し、これらの混合溶液100μLを、複数チャンネルのピペッターを使用して、mAb125コートプレートに直ちに加えた。プレートを、1時間、RTでインキュベーションし、次に、プレートウォッシャー(バイオテック、ウィヌースキ、バーモンド州)を使用して洗浄して、未結合の試薬を取り除いた。100μl/ウェルの1:20,000希釈したストレプトアビジン-HRP(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、マサチューセッツ州)をウェルに加え、1時間インキュベーションした。プレートを、プレートウォッシャーを使用して再度洗浄し、100μL/ウェルTMB溶液(ライフテクノロジーズ、カールスバド、カリフォルニア州)をプレートに加えた。5~15分後に、ELISA停止溶液(Boston Bioproducts、アシュランド、マサチューセッツ州)100μLを全てのウェルに加えることにより、色の発生を停止させた。マイクロプレートリーダー(SpectraMaxl90、モレキュラーデバイス、サニーベール、CA)上、OD450nmで、プレートを読み取った。OD値を使用して、ビオチン-RHIの%阻害を計算し、GraphPad Prismを使用して、IC50値を計算した。
図12は、いくつかのインスリンとFcの融合タンパク質(対照としてのRHIに加えて、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、および10)について、クローニングされたインスリンB細胞受容体(mAb125)の抗体形態へのビオチン標識インスリン結合の阻害を示すグラフである。図12に示す通り、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号2~8)は、インスリン特異的B細胞受容体へのビオチン標識インスリンの結合を有意に阻害し、ある場合では、RHI(陽性対照)で観察したものと同等である阻害性活性を示した。対照的に、配列番号9および10は、インスリン特異的B細胞受容体へのビオチン標識インスリンの結合の阻害においてあまり有効ではなかった。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法において有用であることを示す。
実施例20:インスリン受容体結合アッセイ
インスリン受容体結合アッセイは、ヒトIM-9細胞(ATCC番号CCL-159)の表面に存在するインスリン受容体に結合する、本明細書において開示されるインスリンとFcの融合タンパク質の能力を評価するよう設計した競合的結合アッセイである。FACS染色バッファー中で希釈した7つの連続希釈のインスリンとFcの融合タンパク質および対照組換えヒトインスリン(RHI)を、固定濃度のビオチン化RHIと予め混合し、次に、IM-9細胞に加え、氷上でインキュベーションして、細胞上に存在するインスリン受容体で生じる競合的結合を可能にした。次に、得られた結合したビオチン化RHIを、ストレプトアビジン-PE試薬により標識し、標識した受容体の蛍光強度を、FACSCaliburフローサイトメトリーにおいて解析した。IM-9細胞を、完全RPMI-10培地(10%ウシ胎児血清、25mM HEPES、および50μg/mLゲンタマイシンを含むRPMI)において、T75培養フラスコにおいて対数成長期で成長させ、50mLの試験管での培養の日に回収し、250×gで10分間遠心分離し、冷FACS染色培地(HBSS/2mMEDTA/Na-アジド/4%ウマ血清)において濃度2×106個の細胞/mLまで再懸濁し、氷上で維持した。
ビオチン化RHIを、冷FACS染色培地中の10μg/mLで調製し、この溶液5μLを、氷上に置いたV底の96ウェルプレート中の1ウェル毎に加えた。試験化合物を、試験管において、7つのモル濃度(784nM、261nM、87nM、29nM、9.7nM、3.2nMおよび1.1nM)まで、冷FACS染色培地において連続希釈(1:3)した。RHIを、192nMから0.26nMまで連続希釈した。それぞれの試験化合物の連続希釈液50μlを、ビオチン化RHIを含有するウェルに加え、含有物を、プレートシェーカーにおいて混合し、次に、氷上に置いた。次に、複数のチャンネルのピペッターを使用して、2×106個の細胞/mLのFM-9細胞懸濁液50μLを全てのウェルに加え、含有物をプレートシェーカー上で再度混合し、氷上で30分間インキュベーションした。次に、3000rpmで3分間4℃で遠心分離し、上清を吸引することにより、細胞を冷MACSバッファー(HBSS/2mM EDTA/Na-アジド/0.5%ウマ血清)で2回洗浄した。細胞を、50μl/ウェルの、1:100希釈したストレプトアビジン-PEを含有する冷FACS培地において再度再懸濁し、次に、氷上で20分間インキュベーションした。細胞を、冷MACSバッファーで1回、最後の洗浄をし、次に、3%パラホルムアルデヒドで固定した。FACSCaliburフローサイトメトリーにおいて、細胞を解析し、それぞれの試料試験管についてFL-2MFIを解析した。FM-9細胞上のインスリン受容体へのビオチン化RHIの試験化合物によるパーセント(%)阻害を、それぞれの試験化合物の対数濃度に対してプロットし、GraphPad Prism(GraphPad Software、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)において、IC50値を計算した。試験化合物のIC50値が低いほど、インスリン受容体への強力な結合を反映する。
表7は、いくつかのインスリンとFcの融合タンパク質(配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、および10)ならびにRHI(対照)についての、IM-9インスリン受容体へのビオチン標識インスリン結合の阻害(IC
50nM)を示す。表7に示す通り、インスリンとFcの融合タンパク質、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8は、IM-9インスリンとホルモン受容体へのビオチン標識インスリンの結合と干渉せず、それ故、IM-9細胞上に存在するインスリン受容体に非常に弱く結合するか、または全く結合せず、これは、インビボで血糖を下げるそれらの機会を最小にする。これは、正常またはわずかに上昇した血糖レベルを有し得、このアッセイにおいてIC
50値<3,000nMでインスリン受容体に結合することができるインスリンとFcの融合タンパク質(例えば、配列番号9、配列番号10、またはこのアッセイにおいてIC
50値<1,000nMでのなおより高い結合親和性を有するタンパク質)での治療により誘導される可能性のある低血糖(例えば、低い血糖)のリスクが疑われる、自己免疫疾患を有する患者(例えば、前糖尿病患者、インスリン自己抗体を有する患者、または最近発症した1型糖尿病患者)を処置するのに有利な特性である。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を処置または予防する方法において有用であることを示す。
実施例21:配列番号2~4は野生型NODマウスにおいて糖尿病を予防する
この結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を予防する方法において有用であることを示す。
以下の通り、3週齢の野生型NODメスマウス(1群当たりn=15)での研究を開始した。NODメスマウスに、インスリンとFcの融合タンパク質(配列番号3-処置群)を、またはビークル対照(食塩水+0.02%Tween-80)を、およびある場合には、マウスIgG1アイソトープ対照(細胞株番号CC9C10から分泌させ、精製した)を、週2回(2mg/kg、腹腔内注射(i.p.))処置した。処置期間は、試験研究結果に示した。携帯用アルファTRAK血糖値測定器(アボット、アボットパーク、イリノイ州)を使用して、少なくとも1週間に1回、血液グルコースレベルを測定した。2回の連続する毎週の血液グルコース読取り値>240mg/dL後、T1Dと診断した。
糖尿病発生率データを、カプラン・マイヤー生存曲線フォーマットに変換して、統計上の有意性を示すp<0.05を有するログランク検定を使用して、処置群と対照群(ビークルおよびIgG1アイソタイプ対照)の間の糖尿病発生率の統計的比較を行った。
図13は、対照群(55%換算)と比較した、配列番号3を受けた処置群(22%換算)において、49週齢でのT1D発生の統計上有意(p≦0.05対IgG1アイソタイプ対照;p≦0.001対ビークル対照)な減少を示す。34週齢で、投与を停止した。続く盲検研究において、これらの結果を確認した。図14(26週齢での、配列番号3を受けた処置群(56%換算)対対照群(94%換算)の間での糖尿病予防における統計上有意な差(p≦0.0001)を示している)を参照。
図15は、26週齢での、配列番号2を受けた処置群(40%換算)対対照群(94%換算)の間での糖尿病予防における統計上有意な差(p≦0.0001)を示す。図16は、配列番号4を受けた処置群(22%換算)対対照群(85%換算)における68週齢でのT1D発症における統計上有意(p≦0.0001)な減少を示す。この研究において、18週齢で投与を停止した。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患{例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を予防する方法において有用であることを示す。
実施例22:配列番号5~8は野生型NODマウスにおいて糖尿病を予防する
この結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を予防する方法において有用であることを示す。
3週齢の野生型NODメスマウス(1群当たりn=15)でさらなる研究を行って、他の典型的な配列を評価した。インスリンとFcの融合タンパク質(配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9もしくは配列番号10の1つ)で、または食塩水もしくはビークル対照で週2回(2mg/kg、腹腔内注射(i.p.))で、NODメスマウスを処置した。処置期間は、26~60週齢に行う。携帯用アルファTRAK血糖値測定器(アボット、アボットパーク、イリノイ州)を使用して、少なくとも1週間に1回、血液グルコースレベルを測定した。2回の連続する毎週の血液グルコース読取り値>240mg/dL後、T1Dと診断した。糖尿病発生率データを、カプラン・マイヤー生存曲線フォーマットに変換して、統計上の有意性を示すp<0.05でのログランク検定を使用して、処置群と対照群(ビークルまたは食塩水対照)の間の糖尿病発生率の統計的比較を行った。
配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8は、配列番号2(図15)、配列番号3(図13および図14)ならびに配列番号4(図16)で観察したものと同様のT1D表現型を予防することが予想される。配列番号9および配列番号10は、T1Dの予防においてあまり有効でないことも予想される。
これらの結果は、本テクノロジーのインスリンとFcの融合タンパク質が、自己免疫疾患{例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)を予防する方法において有用であることを示す。
均等物
本テクノロジーは、本出願に記載される特定の実施形態に関して制限されるべきではなく、それは、本テクノロジーの個々の態様の1つの説明と意図される。本テクノロジーの多くの修飾およびバリエーションは、当業者に明らかである、その精神および範囲から逸脱することなく、なされ得る。本明細書において挙げられたものに加えて、本テクノロジーの範囲内の機能的に均等な方法および装置は、前述の記載から当業者に明らかである。かかる修飾およびバリエーションは、本テクノロジーの範囲内にあることが意図される。本テクノロジーは、特定の方法、試薬、化合物、組成物または生物学的システムに限定されないこと、そしてそれらは、もちろん変動し得ることは理解されるべきである。明細書において使用される専門用語は、ただ、特定の実施形態の記載の目的であり、限定することは意図されないことも理解されるべきである。
加えて、開示の特徴または態様が、マーカッシュグループに関して記載される場合、当業者は、開示がまた、マーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはサブグループに関してそれにより記載されることを認識する。
当業者により理解される通り、任意および全ての目的のため、特に、書かれた説明を提供する点で、本明細書において開示される全ての範囲はまた、任意および全ての可能性のある部分範囲、ならびにその部分範囲の組合せも包含する。任意の挙げられた範囲は、少なくとも等しい、半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解されている同じ範囲を十分に記載し、可能にすると容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書において考察されたそれぞれの範囲は、より下側の3分の1、中程の3分の1、および上側の3分の1などに容易に分解され得る。当業者によっても理解される通り、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」などの全ての言語は、挙げられた数を含み、上で考察された通り、部分範囲に続いて分解され得る範囲を指す。最終的に、当業者に理解される通り、範囲は、それぞれ個々のメンバーを含む。従って、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、または3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4、または5個の細胞等を有する群を指す。
全ての図および表を含む、本明細書において言及されるか、または引用される全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、それらが、本明細書の明確な教示と矛盾する程度まで、それらの全体が参照により取り込まれる。