JP2014525922A - N−グリコシル化インスリン類似体 - Google Patents

N−グリコシル化インスリン類似体 Download PDF

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Abstract

N−グリコシル化インスリン類似体を含む組成物および製剤を記載する。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体をインビボで製造し、それは、高マンノースまたはフコシル化もしくは非フコシル化ハイブリッド、少マンノースまたは複合N−グリカンから選択される1以上のN−結合N−グリカンを含む。他の実施形態においては、高マンノースまたはフコシル化もしくは非フコシル化ハイブリッド、少マンノースまたは複合N−グリカンを含むN−グリカンを該インスリン類似体にインビトロで結合させる。N−グリカンの例には、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子が含まれるが、これらに限定されるものではない。

Description

関連出願に対する相互参照
本出願は、2011年8月8日付け出願の米国仮出願第61/521,142号(これを参照により本明細書に組み入れることとする)の利益を主張するものである。
発明の分野
本発明は、N−グリコシル化インスリン類似体を含む組成物および製剤に関する。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体はインビボで製造され、高マンノースまたはフコシル化もしくは非フコシル化ハイブリッド、少マンノース(paucimannose)または複合N−グリカンから選択される1以上の該N−結合グリカンを含む。他の実施形態においては、高マンノースまたはフコシル化もしくは非フコシル化ハイブリッド、少マンノースまたは複合グリカンを含むオリゴ糖またはグリカンを該インスリン類似体にインビトロで結合させる。
インスリンは、ヒトを含むほとんどの高等真核生物において適切なグルコースレベルを維持するのに不可欠なペプチドホルモンである。糖尿病は、個体がインスリンを産生できない又はインスリン抵抗性を生じさせる疾患である。I型糖尿病は、膵臓のインスリン産生ベータ細胞の自己免疫破壊から生じる糖尿病の一形態である。II型糖尿病は、インスリン抵抗性および相対的インスリン欠乏の状態における高血糖により特徴づけられる代謝障害である。I型またはII型糖尿病を有する個体は、治療されないで放置されると死亡する。インスリンは、根治薬ではないものの、実質的に全ての形態の糖尿病におけるグルコースを低下させるのに有効である。残念ながら、その薬理学的特性はグルコース感受性ではなく、したがって、それは、生命を脅かす低血糖を招きうる過剰作用を引き起こす可能性がある。調和性を欠く薬理学特性がインスリン療法の特徴であり、したがって、低血糖の発生を伴うことなく血液グルコースを正常化することは極めて困難である。更に、天然インスリンは短い作用持続時間を有し、それを基礎グルコースの制御における使用に適したものにするための修飾を要する。インスリン療法における1つの中核的目標は、1日1回の時間的作用をもたらしうるインスリン製剤の設計である。インスリン投薬の作用時間を延長させる方法は、注射部位におけるインスリンの溶解度を減少させること、または糖、ポリエチレングリコール、疎水性リガンド、ペプチドもしくはタンパク質を該インスリンに結合させることを含む。
インスリンの溶解度を減少させるための分子的アプローチは、(1)亜鉛および/またはプロタミンを含有する不溶性懸濁液としてインスリンを製剤化すること、(2)アミノ酸の置換および/または付加(例えば、生理的pHにおいて該分子を不溶性にするカチオン性アミノ酸)により、その等電点を増加させること、あるいは(3)インスリンの溶解度を減少させ血清アルブミンに結合する疎水性リガンドを含むようにインスリンを共有結合により修飾することを含む。これらのアプローチの全ては、注射部位における該分子の沈殿と共に生じる、ならびに後続の該分子の再可溶化および活性ホルモンの形態での血液への輸送と共に生じる固有の可変性により制限されている。たとえ、インスリンの再可溶化がより長い作用持続時間をもたらすとしても、インスリンは血清グルコースレベルに対して尚も応答性ではなく、低血糖のリスクが依然として存在する。
インスリンは、低い効力の一本鎖プロインスリン前駆体から酵素的プロセシングにより生合成的に誘導される二本鎖ヘテロ二量体である。ヒトインスリン類似体は、ジスルフィド結合により互いに結合しており合計51アミノ酸を有する2本のペプチド鎖、すなわち、「A鎖ペプチド」(配列番号33)および「B鎖ペプチド」(配列番号25)からなる。B鎖のC末端領域およびA鎖の2つの末端は、インスリン受容体への高アフィニティ結合のための部位を構成する三次元構造で会合する。該インスリン分子はN−グリコシル化を含有しない。
インスリン分子は、該分子の薬物動態学的または薬力学的特性を修飾するための試みにおいて、種々の部分を該分子に連結することにより修飾されている。例えば、アシル化インスリン類似体が、例えば米国特許第5,693,609号および第6,011,007号を含む幾つかの刊行物に開示されている。例えば米国特許第5,681,811号、第6,309,633号、第6,323,311号、第6,890,518号、第6,890,518号および第7,585,837号を含む幾つかの刊行物には、PEG化インスリン類似体が開示されている。例えば国際公開番号WO06082184、WO09089396、WO9010645、米国特許第3,847,890号、第4,348,387号、第7,531,191号および第7,687,608号を含む幾つかの刊行物には、糖結合インスリン類似体が開示されている。PEG化などのためのグリカン構造を含有させるための、インスリンを含むペプチドのリモデリングが、例えば米国特許第7,138,371号および米国公開出願第20090053167号を含む刊行物に開示されている。
本明細書に開示されているとおり、本出願人は、N−グリコシル化インスリンおよびインスリン類似体、該N−グリコシル化インスリンおよびインスリン類似体を含む組成物および製剤、ならびにそれらの製造方法を提供する。これらのN−グリコシル化インスリン類似体はインスリン受容体において活性であり、N−グリカン基の種々の組合せが該インスリンまたはインスリン類似体に種々の修飾された薬物動態学的および/または薬力学的特性を付与する。
発明の簡潔な概要
本発明は、N−グリコシル化インスリンおよびインスリン類似体、該N−グリコシル化インスリンおよびインスリン類似体を含む組成物および製剤、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の製造方法、ならびに該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の使用方法を提供する。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は1以上のN−グリカンを含み、各N−グリカンは、コンセンサスN−結合グリコシル化部位のアスパラギン残基に結合しており、該インスリンまたはインスリン類似体のインビボ発現およびプロセシング中に該タンパク質に結合する。他の実施形態においては、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、インビトロで該分子のアミノ酸残基に連結された1以上のN−グリカンを含む。他の実施形態においては、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は少なくとも2つのN−グリカンを含み、それらのうちの1つは、N−結合グリコシル化部位を含むアスパラギン残基にインビボで連結され、それらのうちの1つは該分子のアミノ酸残基にインビトロで連結される。該N−グリコシル化インスリンおよびインスリン類似体(ならびにそれらを含む組成物および製剤)は、インスリン療法を要するI型およびII型糖尿病個体を治療するのに有用である。
したがって、特定の実施形態においては、インスリンのA鎖ペプチドまたはその機能的類似体およびB鎖ペプチドまたはその機能的類似体を有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と医薬上許容される担体とを含む組成物を提供し、ここで、A鎖もしくはその機能的類似体またはB鎖アミノ酸もしくはその機能的類似体のアミノ酸残基の少なくとも1つはN−グリカンに共有結合しており、該インスリンまたはインスリン類似体は3つのジスルフィド結合を有する。第1ジスルフィド結合はA鎖またはその機能的類似体の6位および11位のシステイン残基の間に存在し、第2ジスルフィド結合はA鎖またはその機能的類似体の7位およびB鎖またはその機能的類似体の7位のシステイン残基の間に存在し、第3ジスルフィド結合はA鎖またはその機能的類似体の20位およびB鎖またはその機能的類似体の19位のシステイン残基の間に存在する。
したがって、特定の実施形態においては、アミノ酸配列GIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号33)を含むA鎖ペプチドおよびアミノ酸配列HLCGSHLVEALYLVCGERGFF(配列番号161)を含むB鎖ペプチドを有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と医薬上許容される担体とを含む組成物を提供し、ここで、該A鎖またはB鎖アミノ酸配列のアミノ酸残基の少なくとも1つはN−グリカンに共有結合しており、該インスリンまたはインスリン類似体は、17個までのアミノ酸置換を更に含んでいてもよく、ならびに/または該Aおよび/もしくはB鎖ペプチドのN末端に、該A鎖および/もしくはB鎖のC末端に、あるいはN末端において該B鎖のC末端に、およびC末端において該A鎖のN末端に、あるいはそれらの組合せで共有結合している3〜35アミノ酸のポリペプチドを更に含んでいてもよい。該インスリンまたはインスリン類似体は3つのジスルフィド結合を有し、第1ジスルフィド結合は配列番号33の6位および11位のシステイン残基の間に存在し、第2ジスルフィド結合は配列番号161の3位および配列番号33の7位のシステイン残基の間に存在し、第3ジスルフィド結合は配列番号161の15位および配列番号33の20位のシステイン残基の間に存在する。
他の実施形態においては、前記組成物は、前記のとおりの複数のグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を含み、各グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、それに結合した少なくとも1つのN−グリカンを有し、ここで、該組成物中の主要な又は唯一のN−グリカンは高マンノース、ハイブリッド、複合または少マンノース(paucimannose)N−グリカンからなる。もう1つの実施形態においては、前記組成物は、前記のとおりの複数のグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を含み、ここで、特定の高マンノース、ハイブリッド、複合または少マンノースN−グリカン種が、主要な又は唯一のN−グリカンである。例えば、該N−グリカン種は、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子である。他の実施形態においては、主要な又は唯一のN−グリカンは、本明細書に示されているN−グリカン構造1〜106の群から選択される。
更に、(a)複数のN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と、(b)医薬上許容される担体とを含む医薬製剤を提供し、ここで、各グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、それに結合した少なくとも1つのN−グリカンを有し、該製剤中の主要な又は唯一のN−グリカンは高マンノース、ハイブリッド、複合または少マンノースN−グリカンからなる。例えば、該N−グリカン種は、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子である。他の実施形態においては、主要な又は唯一のN−グリカンはN−グリカン構造1〜106の群から選択される。
該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、該インスリンのアミノ酸残基に該N−グリカンを化学的に結合させることによりインビトロで製造されることが可能であり、あるいは該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、(a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、(b)N−結合グリコシル化部位を含むインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子を該宿主細胞内に導入し、(c)グリコシル化プロインスリンもしくはプロインスリン類似体前駆体または該グリコシル化インスリン類似体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、(d)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工(プロセシング)して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得、あるいはグリコシル化インスリン類似体を該培地から回収して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、インビボで製造されうる。他の態様においては、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得る。適当な宿主細胞には、ヒト様N−グリカンまたは主に特定のN−グリカン種を産生するように遺伝的に操作された昆虫、植物、酵母または糸状菌宿主細胞、例えば、ヒト様N−グリカンまたは主に特定のN−グリカン種を産生するように遺伝的に操作されたピチア・パストリス(Pichia pastoris)またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
更に、インスリンまたはインスリン類似体のアミノ酸残基にN−グリカンを結合させて、グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることを含む、溶液中のインスリンまたはインスリン類似体を安定化させ、あるいは溶液中のインスリンまたはインスリン類似体の原線維化を低減するための方法を提供し、ここで、該N−グリカンに結合したグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、該N−グリカンに結合していないインスリンまたはインスリン類似体より、溶液中で安定であり、または低減した原線維化を有する。特定の実施形態においては、該N−グリカンは、主に又は専ら、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子である。他の実施形態においては、主要な又は唯一のN−グリカンはN−グリカン構造1〜106の群から選択される。
特定の実施形態においては、該インスリンまたはインスリン類似体のアミノ酸残基に該N−グリカンを化学結合させることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビトロで結合させて、グリコシル化されていないインスリンまたはインスリン類似体と比較して溶液中の安定性の増強または原線維化の低減を示すグリコシル化インスリンを得、あるいは、(a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、(b)N−結合グリコシル化部位を含むインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子を該宿主細胞内に導入し、(c)グリコシル化プロインスリンもしくはプロインスリン類似体前駆体または該グリコシル化インスリン類似体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、(d)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工(プロセシング)して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得、あるいはグリコシル化インスリン類似体を該培地から回収して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビボで結合させて、グリコシル化されていないインスリンまたはインスリン類似体と比較して溶液中の安定性の増強または原線維化の低減を示すグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得る。他の態様においては、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得る。
もう1つの実施形態においては、(a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、(b)インスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子(該インスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子は、それにおいてコードされているインスリンまたはインスリン類似体内にN−結合グリコシル化部位を導入するために修飾されている)を該宿主細胞内に導入し、(c)培地内に分泌される該N−グリカンを含むグリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、(d)該N−グリカンを含むグリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、(e)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工(プロセシング)して、グリコシル化されていないインスリンまたはインスリン類似体と比較して溶液中の安定性の増強または原線維化の低減を示すグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビボで結合させて、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得る。
適当な宿主細胞には、ヒト様N−グリカンまたは主に特定のN−グリカン種を産生するように遺伝的に操作された昆虫、植物、酵母または糸状菌宿主細胞、例えば、ヒト様N−グリカンまたは主に特定のN−グリカン種を産生するように遺伝的に操作されたピチア・パストリス(Pichia pastoris)またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
更に、1以上のN−グリカンを有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と医薬上許容される担体とを含む組成物を提供し、ここで、そのような1以上のN−グリカンを有するインスリン類似体は、グリコシル化されていないインスリンまたはインスリン類似体と比較して溶液中の安定性の増強または原線維化の低減を示す。もう1つの実施形態においては、該組成物は、複数のN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と、(b)医薬上許容される担体とを含み、ここで、各グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、それに結合した少なくとも1つのN−グリカンを有し、該組成物中の主要な又は唯一のN−グリカンは高マンノース、ハイブリッド、複合または少マンノースN−グリカンからなる。例えば、該N−グリカン種は、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子である。他の実施形態においては、主要な又は唯一のN−グリカンはN−グリカン構造1〜106の群から選択される。一般に、該組成物は、本明細書に示されているインビボまたはインビトロ方法により製造される。
更に、インスリンまたはインスリン類似体のアミノ酸残基にN−グリカンを結合させて、グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることを含む、インスリンまたはインスリン類似体の薬物動態学的または薬力学的特性を変化させるための方法を提供し、ここで、該N−グリカンに結合したグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の薬物動態学的または薬力学的特性は、該N−グリカンに結合していないインスリンまたはインスリン類似体と比較して変化している。特定の実施形態においては、該N−グリカンは、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を主に又は専ら有する分子である。他の実施形態においては、主要な又は唯一のN−グリカンはN−グリカン構造1〜106の群から選択される。
特定の実施形態においては、該インスリンまたはインスリン類似体のアミノ酸残基に該N−グリカンを化学結合させることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビトロで結合させて、グリコシル化インスリンを得、ここで、該N−グリカンに結合したグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の薬物動態学的または薬力学的特性は、該N−グリカンに結合していないインスリンまたはインスリン類似体と比較して変化しており、あるいは、(a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、(b)N−結合グリコシル化部位を含むインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子を該宿主細胞内に導入し、(c)グリコシル化プロインスリンもしくはプロインスリン類似体前駆体または該グリコシル化インスリン類似体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、(d)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工(プロセシング)して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得、あるいはグリコシル化インスリン類似体を該培地から回収して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビボで結合させて、グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得、ここで、該N−グリカンに結合したグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の薬物動態学的または薬力学的特性は、該N−グリカンに結合していないインスリンまたはインスリン類似体と比較して変化している。
もう1つの実施形態においては、(a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、(b)インスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子(該インスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子は、それにおいてコードされているインスリンまたはインスリン類似体内にN−結合グリコシル化部位を導入するために修飾されている)を該宿主細胞内に導入し、(c)培地内に分泌される該N−グリカンを含むグリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、(d)該N−グリカンを含むグリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、(e)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工(プロセシング)して、グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビボで結合させて、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得、ここで、該N−グリカンに結合したグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の薬物動態学的または薬力学的特性は、該N−グリカンに結合していないインスリンまたはインスリン類似体と比較して変化している。
適当な宿主細胞には、ヒト様N−グリカンまたは主に特定のN−グリカン種を産生するように遺伝的に操作された昆虫、植物、酵母または糸状菌宿主細胞、例えば、ヒト様N−グリカンまたは主に特定のN−グリカン種を産生するように遺伝的に操作されたピチア・パストリス(Pichia pastoris)またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
更に、1以上のN−グリカンを有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と医薬上許容される担体とを含む組成物を提供し、ここで、そのような1以上のN−グリカンを有するインスリン類似体は、そのような1以上のN−グリカンに結合していないインスリンまたはインスリン類似体と比較して変化した薬物動態学的または薬力学的特性を有する。もう1つの実施形態においては、該組成物は、複数のN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と、(b)医薬上許容される担体とを含み、ここで、各グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、それに結合した少なくとも1つのN−グリカンを有し、該組成物中の主要な又は唯一のN−グリカンは高マンノース、ハイブリッド、複合または少マンノースN−グリカンからなる。例えば、該N−グリカン種は、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子である。他の実施形態においては、主要な又は唯一のN−グリカンはN−グリカン構造1〜106の群から選択される。一般に、該組成物は、本明細書に示されているインビボまたはインビトロ方法により製造される。
更に、インスリンまたはインスリン類似体のアミノ酸残基に、末端ガラクトース残基を含むN−グリカンを結合させて、グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることを含む、肝臓内の受容体を主に標的化するインスリンまたはインスリン類似体の製造方法を提供し、ここで、該N−グリカンに結合したグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は肝臓内の受容体を主に標的化する。特定の実施形態においては、該N−グリカンは、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を主に又は専ら有する分子である。他の実施形態においては、主要な又は唯一のN−グリカンはN−グリカン構造1〜106の群から選択される。
特定の実施形態においては、該インスリンまたはインスリン類似体のアミノ酸残基に該N−グリカンを化学結合させることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビトロで結合させて、肝受容体を主に標的化するグリコシル化インスリンを得、あるいは、(a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、(b)N−結合グリコシル化部位を含むインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子を該宿主細胞内に導入し、(c)グリコシル化プロインスリンもしくはプロインスリン類似体前駆体または該グリコシル化インスリン類似体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、(d)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工(プロセシング)して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得、あるいはグリコシル化インスリン類似体を該培地から回収して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビボで結合させて、肝受容体を主に標的化するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得る。他の態様においては、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得る。
もう1つの実施形態においては、(a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、(b)インスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子(該インスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子は、それにおいてコードされているインスリンまたはインスリン類似体内にN−結合グリコシル化部位を導入するために修飾されている)を該宿主細胞内に導入し、(c)培地内に分泌される該N−グリカンを含むグリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、(d)該N−グリカンを含むグリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、(e)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工(プロセシング)して、肝受容体を主に標的化するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビボで結合させて、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得る。もう1つの実施形態においては、該N−グリカンは、GalGlcNAcManGlcNAc構造を有する、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群から選択される構造を有するフコシル化または非フコシル化グリカンからなる。
適当な宿主細胞には、ヒト様N−グリカンまたは主に特定のN−グリカン種を産生するように遺伝的に操作された昆虫、植物、酵母または糸状菌宿主細胞、例えば、ヒト様N−グリカンまたは主に特定のN−グリカン種を産生するように遺伝的に操作されたピチア・パストリス(Pichia pastoris)またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
更に、1以上のN−グリカンを有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と医薬上許容される担体とを含む組成物を提供し、ここで、そのような1以上のN−グリカンを有するインスリン類似体は肝臓内の受容体を主に標的化する。もう1つの実施形態においては、該組成物は、複数のN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と、(b)医薬上許容される担体とを含み、ここで、各グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、それに結合した少なくとも1つのN−グリカンを有し、該組成物中の主要な又は唯一のN−グリカンは高マンノース、ハイブリッド、複合または少マンノースN−グリカンからなる。例えば、該N−グリカン種は、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子である。他の実施形態においては、主要な又は唯一のN−グリカンはN−グリカン構造1〜106の群から選択される。一般に、該組成物は、本明細書に示されているインビボまたはインビトロ方法により製造される。
更に、インスリンまたはインスリン類似体のアミノ酸残基にN−グリカンを結合(コンジュゲート化)させて、グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることを含む、糖尿病の治療に使用された場合にグルコースの血清濃度に感受性である該コンジュゲートの薬物動態学的または薬力学的特性の少なくとも1つを有するインスリンまたはインスリン類似体の製造方法を提供し、ここで、該N−グリカンに結合したグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、グルコースの血清濃度に感受性である少なくとも1つの薬物動態学的または薬力学的特性を有する。特定の実施形態においては、該N−グリカンは、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を主に又は専ら有する分子である。他の実施形態においては、主要な又は唯一のN−グリカンはN−グリカン構造1〜106の群から選択される。
特定の実施形態においては、該インスリンまたはインスリン類似体のアミノ酸残基に該N−グリカンを化学結合させることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビトロで結合させて、グルコースの血清濃度に感受性である少なくとも1つの薬物動態学的または薬力学的特性を有するグリコシル化インスリンを得、あるいは、(a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、(b)N−結合グリコシル化部位を含むインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子を該宿主細胞内に導入し、(c)グリコシル化プロインスリンもしくはプロインスリン類似体前駆体または該グリコシル化インスリン類似体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、(d)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工(プロセシング)して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得、あるいはグリコシル化インスリン類似体を該培地から回収して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビボで結合させて、グルコースの血清濃度に感受性である少なくとも1つの薬物動態学的または薬力学的特性を有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得る。他の態様においては、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得る。
もう1つの実施形態においては、(a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、(b)インスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子(該インスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子は、それにおいてコードされているインスリンまたはインスリン類似体内にN−結合グリコシル化部位を導入するために修飾されている)を該宿主細胞内に導入し、(c)培地内に分泌される該N−グリカンを含むグリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、(d)該N−グリカンを含むグリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、(e)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工(プロセシング)して、グルコースの血清濃度に感受性である少なくとも1つの薬物動態学的または薬力学的特性を有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビボで結合させて、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得る。
適当な宿主細胞には、ヒト様N−グリカンまたは主に特定のN−グリカン種を産生するように遺伝的に操作された昆虫、植物、酵母または糸状菌宿主細胞、例えば、ヒト様N−グリカンまたは主に特定のN−グリカン種を産生するように遺伝的に操作されたピチア・パストリス(Pichia pastoris)またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
更に、1以上のN−グリカンを有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と医薬上許容される担体とを含む組成物を提供し、ここで、そのような1以上のN−グリカンは、そのような1以上のN−グリカンを有するインスリンまたはインスリン類似体の薬物動態学的または薬力学的特性の少なくとも1つを、糖尿病の治療に使用された場合にグルコースの血清濃度に対して感受性にする。もう1つの実施形態においては、該組成物は、複数のN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と、(b)医薬上許容される担体とを含み、ここで、各グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、それに結合した少なくとも1つのN−グリカンを有し、該組成物中の主要な又は唯一のN−グリカンは高マンノース、ハイブリッド、複合または少マンノースN−グリカンからなる。例えば、該N−グリカン種は、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子である。他の実施形態においては、主要な又は唯一のN−グリカンはN−グリカン構造1〜106の群から選択される。一般に、該組成物は、本明細書に示されているインビボまたはインビトロ方法により製造される。
前記実施形態のいずれかの特定の態様においては、該N−グリカンはβ1結合でAsn残基のアミド基に共有結合している。更に詳細な実施形態においては、該Asn残基は天然A鎖ペプチドのアミノ酸10もしくは21位または天然B鎖ペプチドのアミノ酸3、25または28位に存在する。ただし、該AsnがB鎖の3位に存在する場合には、該B鎖ペプチドの5位のアミノ酸はSerまたはThrであり、該AsnがA鎖の21位に存在する場合には、A鎖は該AsnのC末端にアミノ酸配列Xaa−SerまたはXaa−Thr(ここで、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である)のジペプチドを更に含む。更に詳細な実施形態においては、該AsnはA鎖ペプチドの21位に存在し、A鎖ペプチドは該AsnのC末端にアミノ酸配列Xaa−SerまたはXaa−Thr(ここで、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である)のジペプチドを更に含む。特定の実施形態においては、XaaはLys、ArgまたはGlyである。
前記実施形態のいずれかの更に詳細な態様においては、アミノ酸配列Asn−Xaa−SerまたはAsn−Xaa−Thr(ここで、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である)を有するトリペプチドがA鎖のN末端にペプチド結合で共有結合している。特定の実施形態においては、XaaはThrである。
前記実施形態のいずれかの更に詳細な態様においては、アミノ酸配列Asn−Xaa−SerまたはAsn−Xaa−Thr(ここで、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である)を有するトリペプチドがB鎖のN末端にペプチド結合で共有結合している。特定の実施形態においては、XaaはThrである。
前記実施形態のいずれかの更に詳細な態様においては、アミノ酸配列Asn−Xaa−SerまたはAsn−Xaa−Thr(ここで、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である)を有するトリペプチドがB鎖のC末端にペプチド結合で共有結合している。
前記実施形態のいずれかの更に詳細な態様においては、A鎖ペプチドのN末端、B鎖ペプチドのN末端、B鎖ペプチドの29位のLysのイプシロン−アミノ基またはいずれかの他の利用可能なアミノ基がC1−20アルキル基に共有結合している。
前記実施形態のいずれかの更に詳細な態様においては、該N−グリカンはA鎖ペプチドまたはB鎖ペプチドのNまたはC末端のアミノ酸残基において該インスリンまたはインスリン類似体に結合している。
前記実施形態のいずれかの更に詳細な態様においては、該N−グリカンはヒスチジン、システインまたはリシン残基において該インスリンまたはインスリン類似体に結合している。
前記実施形態のいずれかの更に詳細な態様においては、該インスリンまたはインスリン類似体は、A鎖ペプチドまたはB鎖ペプチドを含むヘテロ二量体分子であり、この場合、A鎖ペプチドは2つのジスルフィド結合により該B鎖に共有結合しており、あるいは、A鎖ペプチドを含む一本鎖分子が接続ペプチドによりB鎖に連結されており、この場合、A鎖とB鎖とは2つのジスルフィド結合により共有結合している。
前記実施形態のいずれかの更に詳細な態様においては、B鎖ペプチドの1〜4位および/または26〜30位の1以上のアミノ酸が欠失している。
前記実施形態のいずれかの更に詳細な態様においては、該アミノ酸置換は、A鎖ペプチドの5、8、9、10、12、14、15、17、18および21位ならびにB鎖ペプチドの1、2、3、4、5,9、10、13、14、17、20、21、22、23、26、27、28、29および30位から選択される。
前記実施形態のいずれかの更に詳細な態様においては、A鎖ペプチドの21位のアミノ酸はGlyであり、B鎖はジペプチドArg−Argを含み、これは、B鎖ペプチドの30位のThrに共有結合している。
前記実施形態のいずれかの更に詳細な態様においては、B鎖ペプチドは30位のトレオニン残基を欠く。
前記実施形態のいずれかの特定の態様においては、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の組成物を提供し、ここで、該組成物中のN−グリカンは高マンノースN−グリカン、フコシル化または非フコシル化ハイブリッドN−グリカン、少マンノース(paucimannose)N−グリカン、複合N−グリカン(二分岐(bisected)または多アンテナ(multiantennary)N−グリカンを含む)またはそれらの組合せからなる。典型的なN−グリカンには、限定的なものではないが、GlcNAc(1−4)ManGlcNAc、Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcおよびNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAc(ここで、整数は糖残基の数を示す)からなる群から選択される構造を有するフコシル化または非フコシル化N−グリカンが含まれる。一般に、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体はインスリン受容体における天然インスリンの活性の少なくとも20%を有しうる。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体はインスリン受容体における天然インスリンの活性の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を有しうる。更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%はグリコシル化されている。
前記実施形態のいずれかの特定の態様においては、本発明で提供するグリコシル化インスリンまたは類似体組成物は、GlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、NANAGalGlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAcおよびNANAGalGlcNAcManGlcNAc(ここで、整数は糖残基の数を示す)からなる群から選択される少なくとも1つのハイブリッドN−グリカンを有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を含む。
特定の実施形態においは、該ハイブリッドN−グリカンは該組成物中の主要N−グリカン種である。更に詳細な態様においては、該ハイブリッドN−グリカンは、該組成物中のN−グリカンの約30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、97モル%、98モル%、99モル%または100モル%を構成する特定のN−グリカン種である。該ハイブリッドN−グリカンがNANA残基を含む特定の実施形態においては、該NANAはガラクトース残基にα2,6結合で結合しており、あるいは該NANAはガラクトース残基にα2、3結合で結合している。
更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%はグリコシル化されている。更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は該N−グリカンを含む。
前記実施形態のいずれかの特定の態様においては、本発明で提供するグリコシル化インスリンまたは類似体組成物は、GlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、NANAGlcGlcNAcManGlcNAcおよびNANAGalGlcNAcManGlcNAc(ここで、整数は糖残基の数を示す)からなる群から選択される少なくとも1つの複合N−グリカンを有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を含む。
特定の実施形態においは、該複合N−グリカンは該組成物中の主要N−グリカン種である。更に詳細な態様においては、該複合N−グリカンは、該組成物中のN−グリカンの約30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、97モル%、98モル%、99モル%または100モル%を構成する特定のN−グリカン種である。
更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%はグリコシル化されている。更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は該N−グリカンを含む。該複合N−グリカンがNANA残基を含む特定の実施形態においては、該NANAはガラクトース残基にα2,6結合で結合しており、あるいは該NANAはガラクトース残基にα2,3結合で結合している。
前記実施形態のいずれかの特定の態様においては、該N−グリカンはフコシル化されている。一般に、該フコースは該N−グリカンの還元末端におけるGlcNAcに対するα1,3結合、該N−グリカンの還元末端におけるGlcNAcに対するα1,6結合、該N−グリカンの非還元末端における糖に隣接した又は該N−グリカンの非還元末端におけるGal(ガラクトース)に対するα1,2結合、該N−グリカンのの非還元末端付近の又は該N−グリカンの非還元末端におけるGlcNAcに対するα1,3結合またはα1,4結合で存在する。
前記実施形態のいずれかの特定の態様においては、該グリコフォーム(糖形態)は、GlcNAcManGlcNAc(Fuc)、GalGlcNAcManGlcNAc(Fuc)、NANAGalGlcNAcManGlcNAc(Fuc)、ManGlcNAc(Fuc)、ManGlcNAc(Fuc)、GlcNAcManGlcNAc(Fuc)、GlcNAcManGlcNAc(Fuc)、GalGlcNAcManGlcNAc(Fuc)、GalGlcNAcManGlcNAc(Fuc)、NANAGalGlcNAc2ManGlcNAc(Fuc)およびNANAGalGlcNAcManGlcNAc(Fuc)からなる群から選択されるグリコフォームを生成するようにα1,3結合またはα1,6結合フコースで存在し、あるいはGlcNAc(Fuc)ManGlcNAc、GalGlcNAc(Fuc)ManGlcNAc、NANAGalGlcNAc(Fuc)ManGlcNAc、GlcNAc(Fuc)ManGlcNAc、GlcNAc(Fuc1−2)ManGlcNAc、GalGlcNAc(Fuc1−2)ManGlcNAc、GalGlcNAc(Fuc1−2)ManGlcNAc、NANAGalGlcNAc(Fuc1−2)ManGlcNAcおよびNANAGalGlcNAc(Fuc1−2)ManGlcNAcからなる群から選択されるグリコフォームを生成するようにα1,3結合またはα1,4結合フコースで存在し、あるいはGal(Fuc)GlcNAcManGlcNAc、Gal(Fuc1−2)GlcNAcManGlcNAc、NANAGal(Fuc1−2)GlcNAcManGlcNAcおよびNANAGal(Fuc1−2)GlcNAcManGlcNAc(ここで、整数は糖残基の数を示す)からなる群から選択されるグリコフォームを生成するようにα1,2結合で存在する。
特定の態様においは、該フコシル化N−グリカンは該組成物中の主要N−グリカン種である。更に詳細な態様においては、該主要フコシル化N−グリカンは、該組成物中のN−グリカンの約30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、97モル%、98モル%、99モル%または100モル%を構成する特定のN−グリカン種である。
更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は該N−グリカンを含む。更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%はグリコシル化されている。該フコシル化N−グリカンがNANA残基を含む特定の実施形態においては、該NANAはガラクトース残基にα2,6結合で結合しており、あるいは該NANAはガラクトース残基にα2,3結合で結合している。
前記実施形態のいずれかの特定の態様においては、該複合N−グリカンはフコシル化および非フコシル化多アンテナN−グリカン種を更に含む。特定の態様においては、該フコシル化または非フコシル化多アンテナN−グリカンは該組成物中の主要N−グリカン種である。
更に詳細な態様においは、該主要フコシル化または非フコシル化多アンテナN−グリカンは、該組成物中のN−グリカンの約30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、97モル%、98モル%、99モル%または100モル%を構成する特定のN−グリカン種である。更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%はグリコシル化されている。更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は該N−グリカンを含む。
前記実施形態のいずれかの特定の態様においては、該複合N−グリカンは二分岐(bisected)N−グリカン種を更に含む。特定の態様においては、該二分岐N−グリカンは該組成物中の主要N−グリカン種である。更に詳細な態様においては、該主要二分岐N−グリカンは、該組成物中のN−グリカンの約30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、97モル%、98モル%、99モル%または100モル%を構成する特定のN−グリカン種である。更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%はグリコシル化されている。更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は該N−グリカンを含む。
前記実施形態のいずれかの特定の態様においては、該グリコシル化インスリンまたは類似体は、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAcからなる群から選択される高マンノースN−グリカン、またはManGlcNAcN−グリカン構造(ここで、整数は糖残基の数を示す)からなるN−グリカンからなる。
特定の態様においては、該N−グリカンは該組成物中の主要N−グリカン種である。更に詳細な態様においては、該主要N−グリカンは、該組成物中のN−グリカンの約30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、97モル%、98モル%、99モル%または100モル%を構成する特定のN−グリカン種である。更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%はグリコシル化されている。更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は該N−グリカンを含む。
前記実施形態のいずれかの特定の態様においては、該N−グリカンはManGlcNAc、またはManGlcNAcもしくはGlcNAcManGlcNAc構造からなるN−グリカンでありうる。特定の態様においては、該N−グリカンは該組成物中の主要N−グリカン種である。更に詳細な態様においては、該主要N−グリカンは、該組成物中のN−グリカンの約30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、97モル%、98モル%、99モル%または100モル%を構成する特定のN−グリカン種である。更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%はグリコシル化されている。更に詳細な態様においては、該組成物中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は該N−グリカンを含む。
本発明を構成するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、それに結合したN−グリカンが高マンノシル化N−グリカン、または別のマンノース残基にβ結合で結合した1以上のマンノース残基を含むN−グリカンである実施形態を除く。
更に、糖尿病治療用の組成物または製剤の製造のための、N−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の使用を提供する。更に、糖尿病治療用の、本明細書に開示されている組成物を提供する。例えば、それは、アミノ酸配列GIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号33)を含むA鎖ペプチドおよびアミノ酸配列HLCGSHLVEALYLVCGERGFF(配列番号161)を含むB鎖ペプチドを有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と、糖尿病治療用の医薬上許容される担体とを含み、ここで、A鎖またはB鎖アミノ酸配列のアミノ酸残基の少なくとも1つは該N−グリカンに結合しており、該インスリンまたはインスリン類似体は、所望により、17個までのアミノ酸置換、および/またはN末端、C末端に共有結合している3〜35アミノ酸のポリペプチドを更に含むことが可能であり、あるいはそれは、N末端においてB鎖のC末端に共有結合しており、C末端においてA鎖のN末端に結合している。
定義
本明細書中で用いる「インスリン」なる語は、動物体内の炭水化物の代謝に影響を及ぼす、そして糖尿病の治療に重要である、膵臓の活性因子を意味する。この語は、天然に存在するインスリンと構造、使用および意図される効果において同じである又は類似している、糖尿病の治療において重要な、合成により及びバイオテクノロジーにより誘導された産物を含む。
「インスリン」または「インスリン分子」なる語は、配列番号33に示されているアミノ酸配列を有するA鎖ペプチドと、配列番号25に示されているアミノ酸配列を有するB鎖ペプチドとを含む51アミノ酸のヘテロ二量体であって、A鎖の6位のシステイン残基と11位のシステイン残基とがジスルフィド結合で連結されており、A鎖の7位のシステイン残基とB鎖の7位のシステイン残基とがジスルフィド結合で連結されており、A鎖の20位のシステイン残基とB鎖の19位のシステイン残基とがジスルフィド結合で連結されているヘテロ二量体を示す総称である。
本明細書中で用いる「インスリン類似体」なる語は、天然A鎖ペプチドおよび/またはB鎖ペプチドの修飾の1以上を含む任意のヘテロ二量体類似体または一本鎖類似体を含む。修飾には、A4、A5、A8、A9、A10、A12、A13、A14、A15、A16、A17、A18、A19、A21、B1、B2、B3、B4、B5、B9、B10、B13、B14、B15、B16、B17、B18、B20、B21、B22、B23、B26、B27、B28、B29およびB30から選択される位置における天然アミノ酸を或るアミノ酸で置換すること、B1〜4およびB26〜30位のいずれか又は全てを欠失させること、あるいは1以上のアシル、ポリエチレングリシン(PEG)または糖部分(単数または複数)を直接的に又は重合体もしくは非重合体リンカーにより結合させること、あるいはそれらのいずれかの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。本明細書に開示されているN−結合グリコシル化インスリン類似体により例示されているとおり、この語は更に、少なくとも1つのN−結合グリコシル化部位を有するように修飾された任意のインスリンヘテロ二量体および一本鎖類似体を含み、特に、該N−結合グリコシル化部位がN−グリカンに連結されている又はN−グリカンにより占有されている実施形態を含む。インスリン類似体の例には、公開国際出願WO20100080606、WO2009/099763およびWO2010080609(それらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されているヘテロ二量体および一本鎖類似体が含まれるが、これらに限定されるものではない。一本鎖インスリン類似体の例には、公開国際出願WO9634882、WO95516708、WO2005054291、WO2006097521、WO2007104734、WO2007104736、WO2007104737、WO2007104738、WO2007096332、WO2009132129;米国特許第5,304,473号および第6,630,348号;ならびにKristensenら,Biochem.J.305:981−986(1995)(それらの開示のそれぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されているものも含まれるが、これらに限定されるものではない。
「インスリン類似体」なる語は更に、インスリン受容体における検出可能な活性をほとんど又は全く有さないが、天然インスリンと比較してインスリン受容体における活性の少なくとも1%、10%、50%、75%または90%を示す、インスリン受容体における活性を有するように1以上のアミノ酸修飾または置換を含むように修飾されており、少なくとも1つのN−結合グリコシル化部位を更に含む一本鎖およびヘテロ二量体ポリペプチド分子を含む。特定の態様においては、該インスリン類似体は、天然インスリンと比較してインスリン受容体における2倍〜100倍低い活性を有する部分アゴニストである。他の態様においては、該インスリン類似体、例えば、公開国際出願WO2010080607(これを参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されているIGFB16B17誘導体ペプチドは、インスリン受容体における増強した活性を有する。インスリン成長ホルモン受容体における低減した活性およびインスリン受容体における増強した活性を有するこれらのインスリン類似体はヘテロ二量体および一本鎖類似体の両方を含む。
本明細書中で用いる「一本鎖インスリン」または「一本鎖インスリン類似体」なる語は、天然インスリンと比較してインスリン受容体におけるインスリンの活性の少なくとも1%、10%、50%、75%または90%を有する、A鎖ペプチドまたは機能的類似体とB鎖ペプチドまたは機能的類似体とが2〜35アミノ酸のペプチドもしくはポリペプチドまたは非ペプチド重合体もしくは非重合体リンカーにより共有結合している構造的に関連したタンパク質の一群を含む。該一本鎖インスリンまたはインスリン類似体は更に、3つのジスルフィド結合を含み、第1ジスルフィド結合はA鎖またはその機能的類似体の6位および11位のシステイン残基の間に存在し、第2ジスルフィド結合はA鎖またはその機能的類似体の7位およびB鎖またはその機能的類似体の7位のシステイン残基の間に存在し、第3ジスルフィド結合はA鎖またはその機能的類似体の20位およびB鎖またはその機能的類似体の19位のシステイン残基の間に存在する。
本明細書中で用いる「接続ペプチド」または「C−ペプチド」なる語は一本鎖プレ−プロインスリン様分子のB−C−Aポリペプチド配列の接続部分「C」を意味する。特に、天然インスリン鎖においては、C−ペプチドはB鎖の30位のアミノ酸とA鎖の1位のアミノ酸とを接続する。この語は、天然インスリンCペプチド(配列番号30)、サルC−ペプチド、およびB鎖をA鎖に接続する3〜35アミノ酸のいずれかの他のペプチドの両方を意味しうる。したがって、それは、一本鎖インスリン類似体(例えば、米国公開出願第20090170750号および第20080057004号ならびにWO9634882を参照されたい)において並びにWO9516708および米国特許第7,105,314号に開示されているようなインスリン前駆体分子においてB鎖ペプチドをA鎖ペプチドに連結する任意のペプチドを含むと意図される。
本明細書中で用いる「プレ−プロインスリン類似体前駆体」なる語は、プレ−プロインスリン類似体前駆体を宿主細胞の分泌経路へと標的化するリーダーペプチドを含む融合タンパク質を意味し、ここで、該リーダーペプチドはB鎖ペプチドまたはB鎖ペプチド類似体のN末端に融合しており、該B鎖ペプチドまたはB鎖ペプチド類似体はCペプチドのN末端に融合しており、そして該Cペプチドは、そのC末端において、A鎖ペプチドまたはA鎖ペプチド類似体のN末端に融合している。該融合タンパク質は、所望により、該リーダーペプチドのC末端と該B鎖ペプチドまたはB鎖ペプチド類似体のN末端との間に1以上の伸長またはスペーサーペプチドを含みうる。該伸長またはスペーサーペプチドは、存在する場合には、B鎖またはB鎖類似体のN末端を発酵中のプロテアーゼ消化から保護しうる。天然ヒトプレ−プロインスリンは、配列番号35に示されているアミノ酸配列を有する。
本明細書中で用いる「プロインスリン類似体前駆体」なる語は、該プレ−プロインスリン類似体前駆体のシグナルまたはプレペプチドが除去されている分子を意味する。
本明細書中で用いる「インスリン類似体前駆体」なる語は、プロインスリン類似体前駆体のプロペプチドが除去されている分子を意味する。該インスリン類似体前駆体は、所望により、B鎖ペプチドまたはB鎖ペプチド類似体のN末端に、伸長またはスペーサーペプチドを含みうる。該インスリン類似体前駆体は、Cペプチドを含むため、一本鎖分子であるが、該インスリン類似体前駆体は、ヒトインスリンの場合と同様に、適切に配置された(3つの)ジスルフィド架橋を含有し、1以上の後続の化学的および/または酵素的プロセシングにより、ヘテロ二量体または一本鎖インスリン類似体に変換されうる。
本明細書中で用いる「リーダーペプチド」なる語は、プレペプチド(シグナルペプチド)とプロペプチドとを含むポリペプチドを意味する。
本明細書中で用いる「シグナルペプチド」なる語は、タンパク質の前駆体形態上にN末端ペプチドとして存在するプレペプチドを意味する。シグナルペプチドの機能は、それが結合している発現ポリペプチドの、小胞体内へのトランスロケーションを促進することである。シグナルペプチドは通常、この過程の経過中に切断除去される。シグナルペプチドは、該ポリペプチドを製造するために使用される生物に対して異種または同種でありうる。使用されうる幾つかのシグナルペプチドには、酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(YAP3)シグナルペプチドまたはいずれかの機能的類似体(Egel−Mitaniら,YEAST 6:127 137(1990)および米国特許第5,726,038号)およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)接合因子α1遺伝子(ScMFα1)遺伝子のシグナルペプチド(Thorner(1981)The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces cerevisiae,Strathernら編,pp 143 180,Cold Spring Harbor Laboratory,NYおよび米国特許第4,870,008号)が含まれる。
本明細書中で用いる「プロペプチド」なる語は、それが結合している発現ポリペプチドが小胞体からゴルジ装置へと、そして更には培地内への分泌のために分泌小胞へと導かれること(すなわち、細胞壁を越えて、または少なくとも細胞膜を越えて酵母細胞の周辺腔内に運ばれる、該ポリペプチドの輸出)を可能にする機能を有するペプチドを意味する。該プロペプチドはScMFα1でありうる(米国特許第4,546,082号および第4,870,008号を参照されたい)。あるいは、プロペプチドは、合成プロペプチド、すなわち、天然で見出されないプロペプチド、例えば米国特許第5,395,922号、第5,795,746号および第5,162,498号ならびにWO9832867に開示されているもの(これらに限定されるものではない)でありうる。プロペプチドは、好ましくは、C末端にエンドペプチダーゼプロセシング部位、例えばLys−Arg配列またはそのいずれかの機能的類似体を含有する。
本明細書中で「インスリン」なる語と共に用いる「desB30」または「B(1−29)」なる語は、B30アミノ酸残基を欠くインスリンB鎖ペプチドを意味すると意図され、「A(1−21)」はインスリンA鎖を意味する。
本明細書中で用いる「直接的にN末端に」なる語は、あるアミノ酸残基またはペプチド配列が、そのC末端において、別のアミノ酸残基またはアミノ酸配列のN末端にペプチド結合により直接的に結合している状況を示すと意図される。
本明細書中で用いるアミノ酸「修飾」は、該アミノ酸への又はアミノ酸からの化学基の付加および/または除去によるアミノ酸の誘導体化またはアミノ酸の置換を意味し、ヒトタンパク質において一般に見出される20種のアミノ酸および非定型または非天然アミノ酸のいずれかでの置換を含む。非定型アミノ酸の商業的入手源には、Sigma−Aldrich(Milwaukee,WI)、ChemPep Inc.(Miami,FL)およびGenzyme Pharmaceuticals(Cambridge,MA)が含まれる。非定型アミノ酸は商業的供給業者から購入され、新たに合成され、または天然アミノ酸から化学修飾もしくは誘導体化されうる。
本明細書中で用いるアミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸残基を別のアミノ酸残基と交換することを意味する。本出願の全体において、文字および数字による特定のアミノ酸位置に対する全ての言及(例えば、A5位)は、それぞれの天然ヒトインスリンA鎖(配列番号33)またはB鎖(配列番号25)におけるA鎖(例えば、A5位)またはB鎖(例えば、B鎖)のその位置のアミノ酸、あるいはそのいずれかの類似体における対応アミノ酸位置を意味する。
「糖タンパク質」なる語は、1以上のオリゴ糖が共有結合している1以上の結合基を含む一本鎖インスリン類似体などのいずれかのグリコシル化インスリン類似体を含むと意図される。
本明細書中で用いる「N−結合グリコシル化部位」はトリペプチドアミノ酸配列NX(S/T)またはAsnXaa(Ser/Thr)を意味し、ここで、「N」はアスパラギン(Asn)残基を表し、「X」はプロリン(Pro)以外の任意のアミノ酸(Xaa)を表し、「S」はセリン(Ser)残基を表し、「T」はトレオニン(Thr)残基を表す。
本明細書中で用いる「N−グリカン」および「グリコフォーム(糖形態)」なる語は互換的に用いられ、N−結合グリコシル化部位を含む結合基にアスパラギン−N−アセチルグルコサミン結合により結合しているオリゴ糖基自体を意味する。該N−グリカンオリゴ糖基は、アスパラギン以外のいずれかのアミノ酸残基にインビトロで、あるいはN−結合グリコシル化部位を含むアスパラギン残基にインビボで結合されうる。
「N−結合グリカン」なる語は、還元末端におけるN−アセチルグルコサミン残基が該タンパク質中の結合基のアスパラギン残基のアミド窒素にβ1結合で結合したN−グリカンを意味する。
本明細書中で用いる「N−結合グリコシル化」および「N−グリコシル化」なる語は互換的に用いられ、アスパラギン残基またはN−結合グリコシル化部位もしくはモチーフを含む結合基に結合したN−グリカンに関するものである。
本明細書中で用いる「N−グリカンコンジュゲート」なる語は、結合基にインビトロでコンジュゲート化(結合)されたN−グリカンを意味する。該結合基はアスパラギン残基を含んでいても含んでいなくてもよい。
本明細書中で用いる「グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体」なる語は、N−グリカンがインビボまたはインビトロで結合しているインスリンまたはインスリン類似体を意味する。
本明細書中で用いる「インビボグリコシル化」または「インビボN−グリコシル化」または「インビトロN−結合グリコシル化」は、インビボ(すなわち、N−結合グリコシル化によりポリペプチドを発現するグリコシル化細胞における翻訳後プロセシング中)で生じるN−結合グリコシル化部位へのアスパラギン残基へのオリゴ糖またはグリカン部分の結合を意味する。厳密なオリゴ糖構造は、該グリコシル化タンパク質またはポリペプチドを製造するために使用される宿主細胞に大きく左右される。
本明細書中で用いる「インビトログリコシル化」なる語は、N−グリカンコンジュゲートを得るために、場合によっては架橋剤を使用して、ポリペプチドの結合基にコンジュゲート化または連結されうる官能基を有するN−グリカンを共有結合させることを通常は含む、インビトロで行われる合成グリコシル化を意味する。インビトログリコシル化は更に、該タンパク質またはポリペプチドを化学合成することを含み、この場合、N−グリカンに共有結合したアミノ酸が該タンパク質またはポリペプチド内に合成中に取り込まれる。インビボおよびインビトログリコシル化は後記に更に詳細に記載されている。
「結合基」なる語は、巨大分子物質、例えばオリゴ糖もしくはグリカン、重合体分子、親油性分子または有機誘導体化剤に共有結合しうる、該ポリペプチドの、特に、そのアミノ酸残基の官能基を示すと意図される。
インビボN−グリコシル化の場合、「結合基」なる語は、N−X−S/T(ここで、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)を含む「N−結合グリコシル化部位」または「N−グリコシル化部位」を構成するアミノ酸残基を示すために、通常でない様態で用いられる。N−グリコシル化部位のアスパラギン(N)残基は、グリコシル化中にオリゴ糖またはグリカン部分が結合する部位であるが、そのような結合は、該N−グリコシル化部位のその他のアミノ酸残基が存在しない限り達成され得ない。該N−結合グリコシル化インスリン類似体前駆体は、インビボN−グリコシル化を可能にする「結合基」を構成する全3個のアミノ酸を含むが、該N−結合グリコシル化インスリン類似体は後に、Xおよび/またはS/Tを欠失するようにプロセシングされうる。したがって、コンジュゲート化がN−グリコシル化により達成されることになる場合、ポリペプチドのアミノ酸配列の改変に関して用いられる「オリゴ糖またはグリカンのための結合基を構成するアミノ酸残基」なる語は、機能的N−グリコシル化部位が該アミノ酸配列内に導入されるように、N−グリコシル化部位を構成する1以上のアミノ酸残基が改変されることになることを意味すると理解されるべきである。該結合基は該インスリン類似体前駆体内に存在しうるが、該ヘテロ二量体インスリン類似体においては、該オリゴ糖またはグリカンに連結されるアスパラギン(N)ではない該結合部位を構成するアミノ酸残基の1つ又は2つが除去されうる。例えば、インスリン類似体前駆体は、それぞれB28、29および30位においてNKTからなる結合基を含みうるが、該類似体の成熟ヘテロ二量体は、30位のTが除去されたdesB30インスリン類似体でありうる。
一般に、巨大分子物質のための結合基を伴う導入アミノ酸残基を含む本明細書に開示されているコンジュゲートの場合、該巨大分子物質は該導入アミノ酸残基に結合することが好ましい。より詳しくは、該巨大分子物質のための結合部位として本明細書に特に示されている位置に関しては、本発明のコンジュゲートは、少なくとも、該位置の1つに結合した巨大分子物質を含むと一般に理解される。
本明細書中で用いる「N−グリカン」は、ManGlcNAc(「Man」はマンノースを意味し、「Glc」はグルコースを意味し、「NAc」はN−アセチルを意味し、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンを意味する)の共通の五糖コアを有する。通常、N−グリカン構造は、非還元末端を左側に、そして還元末端を右側にして表される。N−グリカンの還元末端は、該タンパク質上のグリコシル化部位を含むAsn残基が結合している末端である。N−グリカンは、「トリマンノースコア」、「五糖コア」または「少(pauci)マンノースコア」とも称されるManGlcNAc(「Man」)コア構造に付加される周辺糖(例えば、GlcNAc、ガラクトース、フコースおよびシアル酸)を含む分岐(アンテナ)の数において異なる。N−グリカンは、その分岐(分枝)構成成分に従い分類される(例えば、高マンノース、複合またはハイブリッド)。「高マンノース」型N−グリカンは5個以上のマンノース残基を有する。「複合」型N−グリカンは、典型的には、「トリマンノース」コアの1,6マンノースアームに結合した少なくとも1つのGlcNAcと、1,3マンノースアームに結合した少なくとも1つのGlcNAcとを有する。複合N−グリカンは、シアル酸または誘導体(例えば、「NANA」または「NeuAc」が挙げられ、ここで、「Neu」はノイラミン酸を意味し、「Ac」はアセチルを意味する)で修飾されていてもよいガラクトース(「Gal」)またはN−アセチルガラクトサミン(「GalNAc」)残基をも有しうる。複合N−グリカンは、コアフコース(「Fuc」)および「二分岐(bisecting)」GlcNAcを含む鎖内置換をも有しうる。複合N−グリカンはまた、「トリマンノース・コア」上に複数のアンテナを有することが可能であり、これは、しばしば、「多アンテナグリカン」と称される。「ハイブリッド」N−グリカンは、トリマンノースコアの1,3マンノースアームの末端における少なくとも1つのGlcNAcと、トリマンノースコアの1,6マンノースアーム上の0個以上のマンノースとを有する。ManGlcNAc構造からなるN−グリカンは少(pauci)マンノースと称される。前記の種々のN−グリカンは「グリコフォーム(糖形態)」とも称される。
複合N−グリカンに関しては、「G−2」、「G−1」、「G0」、「G1」、「G2」、「A1」および「A2」なる語は以下を意味する。「G−2」は、ManGlcNAcとして特徴づけられうるN−グリカン構造を意味し、「G−1」なる語は、GlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられうるN−グリカン構造を意味し、「G0」なる語は、GlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられるN−グリカン構造を意味し、「G1」なる語は、GalGlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられるN−グリカン構造を意味し、「G2」なる語は、GalGlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられるN−グリカン構造を意味し、「A1」なる語は、NANAGalGlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられるN−グリカン構造を意味し、「A2」なる語は、NANAGalGlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられるN−グリカン構造を意味する。特に示されていない限り、「G−2」、「G−1」、「G0」、「G1」、「G2」、「A1」および「A2」なる語は、N−グリカンの還元末端においてGlcNAc残基に結合したフコースを欠くN−グリカン種を意味する。該用語が「F」を含む場合、「F」は、該N−グリカン種が該N−グリカンの還元末端においてGlcNAc残基上にフコース残基を含有することを示す。例えば、G0F、G1F、G2F、A1FおよびA2Fは全て、N−グリカンが、該N−グリカンの還元末端においてGlcNAc残基に結合したフコース残基を更に含むことを示す。酵母および糸状菌のような下等真核生物は、通常、フコースを示すN−グリカンを産生しない。
多アンテナN−グリカンに関しては、「多アンテナN−グリカン」なる語は、該N−グリカンの1,6アームもしくは1,3アームの非還元末端を含むマンノース残基上のGlcNAc残基、または該N−グリカンの1,6アームおよび1,3アームの非還元末端を含むマンノース残基のそれぞれにおいてGlcNAc残基を更に含むN−グリカンを意味する。したがって、多アンテナN−グリカンは、式GlcNAc(2−4)ManGlcNAc、Gal(1−4)GlcNAc(2−4)ManGlcNAc、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(2−4)ManGlcNAcにより特徴づけられうる。「1−4」なる語は1、2、3または4個の残基を意味する。
二分岐N−グリカンに関しては、「二分岐N−グリカン」なる語は、GlcNAc残基が該N−グリカンの非還元末端においてマンノース残基に結合している、N−グリカンを意味する。二分岐N−グリカンは式GlcNAcManGlcNAcにより特徴づけられることが可能であり、ここで、各マンノース残基はその非還元末端においてGlcNAc残基に結合している。これに対して、多アンテナN−グリカンがGlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられる場合、該式は、2つのGlcNAc残基が、N−グリカンの、2つのアームの一方の非還元末端において、マンノース残基に結合しており、1つのGlcNAc残基が、該N−グリカンの他方のアームの非還元末端において、マンノース残基に結合していることを示す。
本明細書中で用いる略語は、当技術分野において一般に用いられているものである。例えば、前記の糖の略語を参照されたい。他の一般的な略語には、「PNGアーゼ」または「グリカナーゼ」が含まれ、これらは全て、糖ペプチドN−グリコシダーゼ、グリコペプチダーゼ、N−オリゴ糖グリコペプチダーゼ、N−グリカナーゼ、グリコペプチダーゼ、タチナタマメ グリコペプチダーゼ、PNGアーゼA、PNGアーゼF、グリコペプチドN−グリコシダーゼ(EC3.5.1.52;旧称EC3.2.2.18)を意味する。
本明細書中で用いる「組換え宿主細胞」(「発現宿主細胞」、「発現宿主系」、「発現系」または単に「宿主細胞」)なる語は、組換えベクターが導入された細胞を意味すると意図される。そのような用語は、その特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の後代をも意味すると意図されると理解されるべきである。突然変異または環境の影響により、後の世代において、ある修飾が生じうるため、そのような後代は実際には親細胞と同一でない可能性があるが、本明細書中で用いる「宿主細胞」なる語の範囲内に尚も含まれる。組換え宿主細胞は、培養内で増殖した単離された細胞または細胞系であることが可能であり、あるいは、生きた組織または生物に存在する細胞でありうる。宿主細胞は、糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作された酵母、真菌、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞および原核生物および古細菌でありうる。
糖タンパク質の調製物中に存在するグリカンの「モル百分率」または「モル%」に言及する場合、この用語は、該タンパク質調製物をPNGアーゼで処理し、ついで、グリコフォーム組成により影響されない方法(例えば、PNGアーゼにより遊離したグリカンプールを2−アミノベンズアミドのような蛍光タグで標識し、ついで高速液体クロマトグラフィーまたはキャピラリー電気泳動により分離し、ついで蛍光強度によりグリカンを定量すること)により定量した場合に遊離したN−結合オリゴ糖のプール内に存在する特定のグリカンのモル%を意味する。例えば、50モル%のGlcNAcManGlcNAcGalNANAは、遊離したグリカンの50%がGlcNAcManGlcNAcGalNANAであり、残りの50%が他のN−結合オリゴ糖から構成されることを意味する。いくつかの実施形態においては、糖タンパク質の調製物中の特定のグリカンのモル%は20%〜100%、好ましくは25%超(すなわち、25%を超える)、30%超、35%超、40%超または45%超、より好ましくは50%超、55%超、60%超、65%超または70%超、最も好ましくは75%超、80%超、85%超、90%超または95%超である。
「機能的に連結」された発現制御配列は、関心のある遺伝子を制御するように、関心のある遺伝子に隣接して連結された発現制御配列、ならびに関心のある遺伝子を制御するように、トランスで又は或る距離を隔てて作用する発現制御配列を意味する。
「発現制御配列」または「調節配列」なる語は互換的に用いられ、本明細書中で用いられる場合には、それが機能的に連結されているコード配列の発現に影響を及ぼすのに必要なポリヌクレオチド配列を意味する。発現制御配列は、核酸配列の転写、転写後事象および翻訳を制御する配列である。発現制御配列には、適当な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;効率的なRNAプロセシングシグナル、例えばスプライシングおよびポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増加させる配列(例えば、リボソーム結合部位);タンパク質安定性を増強する配列;ならびに望ましい場合には、タンパク質分泌を促進する配列が含まれる。そのような制御配列の性質は宿主生物によって異なり、原核生物においては、そのような制御配列には、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位および転写終結配列が含まれる。「制御配列」なる語は、少なくとも、発現のために存在が必須である全ての成分を含むと意図され、存在すると有利である追加的な成分、例えばリーダー配列および融合相手の配列をも含みうる。
「トランスフェクト」、「トランスフェクション」、「トランスフェクトする」などの語は、高等真核細胞および下等真核細胞の両方を含む真核細胞内への異種核酸の導入を意味する。歴史的には、原核生物、酵母または真菌細胞内への核酸の導入を示すために「形質転換」が用いられてきたが、任意の原核または真核細胞(酵母および真菌細胞を含む)内への核酸の導入を示すために「トランスフェクション」なる語も用いられる。更に、原核または真核細胞内への異種核酸の導入はウイルスもしくは細菌感染または射撃DNA導入によっても行われることが可能であり、「トランスフェクション」なる語は、適当な宿主細胞におけるこれらの方法を表すためにも用いられる。
「真核生物」なる語は有核細胞または生物を意味し、昆虫細胞、植物細胞、哺乳類細胞、動物細胞および下等真核細胞を意味する。
「下等真核細胞」なる語は酵母および糸状菌を含む。酵母および糸状菌には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピチア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピチア・コクラメ(Pichia koclamae)、ピチア・メンブラネファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピチア・ミヌタ(Pichia minuta)(オガタエア・ミヌタ(Ogataea minuta)、ピチア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピチア・オプンチエ(Pichia opuntiae)、ピチア・テルモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピチア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピチア・グエルクウム(Pichia guercuum)、ピチア・ピエペリ(Pichia pijperi)、ピチア・スチプティス(Pichia stiptis)、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピチア属種(Pichia sp.)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クライベロミセス属種(Kluyveromyces sp.)、クライベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、任意のアスペルギルス属種(Aspergillus sp.)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・レーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ルックノウエンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム属種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)およびニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)。
本明細書中で用いる「から実質的になる」なる語は、示されている整数または整数群の包含を示唆する一方で、示されている整数に対して著しい影響または改変をもたらす修飾または他の整数の除外を示唆するものと理解される。例えば、インスリンまたはインスリン類似体に結合しているN−グリカンの種に関しては、示されているN−グリカン「から実質的になる」なる語は、特定のN−グリカン種に関して、該N−グリカンがフコースを欠くグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と比較して該フコースが該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体に実質的に影響を及ぼさない限り、該N−グリカンが、糖タンパク質のアスパラギン残基に直接結合するN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)においてフコシル化されているか否かにかかわらず、該N−グリカンを含むと理解される。
本明細書中で用いる「主に」なる語、またはその派生語、例えば「主要(主な)」または「優勢である」は、インスリン類似体をPNGアーゼで処理し、遊離グリカンを質量分析、例えばMALDI−TOF MSまたはHPLCにより分析した後、全中性N−グリカンに対する最高モル百分率(%)を有するグリカン種に関して用いられると理解される。言い換えると、「主に」なる語は、ある個々の実体(例えば、特定のグリコフォーム)が他のいずれの個々の実体よりも大きなモル%で存在する場合として定義される。例えば、ある組成物が、40モル%の種A、35モル%の種Bおよび25モル%の種Cからなる場合、該組成物は種Aを「主として(主に)」含み、種Bは2番目に優勢(主要)な種ということになろう。幾つかの宿主細胞は、中性N−グリカン、および荷電N−グリカン、例えばマンノシルホスファートを含む組成物を産生しうる。したがって、糖タンパク質の組成物は複数の荷電および非荷電または中性N−グリカンを含みうる。本発明においては、主要N−グリカンが決定されるのは、該組成物中の全体的な複数の中性N−グリカンの状況においてである。したがって、本明細書中で用いる「主要N−グリカン」は、該組成物中の全体的な複数の中性N−グリカンのうち、該主要N−グリカンが、特定の構造のものであることを意味する。
本明細書中で用いる、フコースまたはガラクトースなどのような特定の糖残基を「実質的に含有しない」なる語は、糖タンパク質組成物が、そのような残基を含有するN−グリカンを実質的に欠くことを示すために用いられる。純度に関して表されている場合、実質的に含有しないは、そのような糖残基を含有するN−グリカン構造の量が10%以下、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満、最も好ましくは0.5%未満であり、ここで、該比率は重量%またはモル%である。したがって、本明細書に開示されているインスリン類似体組成物におけるN−グリカン構造体の実質的に全ては、例えば、フコースまたはガラクトースまたはそれらの両方を含有しない。
本明細書において、インスリン類似体組成物がフコースまたはガラクトースのような特定の糖残基を「欠く」または「欠いている」と示されるのは、検出可能な量のそのような糖残基がいずれの時点においても該N−グリカン構造体上に存在しない場合である。例えば、本発明の好ましい実施形態においては、該インスリン類似体組成物は、酵母(例えば、ピチア属種(Pichia sp.)、サッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)、クライベロミセス属種(Kluyveromyces sp.)、アスペルギルス属種(Aspergillus sp.))を含む前記の下等真核生物により産生されるが、これらの生物の細胞は、フコシル化N−グリカン構造体を産生するのに必要な酵素を有さないため、該糖タンパク質組成物は「フコースを欠く」であろう。したがって、「フコースを実質的に含有しない」なる語は「フコースを欠く」なる語を含む。しかし、組成物が一時的にフコシル化N−グリカン構造体を含有していた、または限られた量であるが検出可能な量の前記フコシル化N−グリカン構造体を含有する場合であっても、該組成物は「フコースを実質的に含有しない」ものとされうる。
本明細書中で用いる「医薬上許容される担体」なる語は、標準的な医薬担体、例えばリン酸緩衝食塩水、水、エマルション、例えば油/水または水/油エマルション、および種々のタイプの湿潤剤のいずれかを含む。該用語はまた、ヒトを含む動物における使用に関して米国連邦政府の規制機関により承認された又は米国薬局方に収載されている物質のいずれかを含む。
本明細書中で用いる「医薬上許容される塩」なる語は、親化合物の生物活性を保有し生物学的に又はその他の点で不都合でない、化合物の塩を意味する。本明細書に開示されている化合物の多くは、アミノおよび/もしくはカルボキシル基またはそれらに類似した基を有するため、酸および/または塩基塩を形成しうる。
医薬上許容される塩基付加塩は無機および有機塩基から製造されうる。無機塩基由来の塩には、単なる例示としてであるが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウム塩が含まれる。有機塩基由来の塩には、第一級、第二級および第三級アミンの塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。
医薬上許容される酸付加塩は無機および有機酸から製造されうる。無機酸由来の塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが含まれる。有機酸由来の塩には、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエン−スルホン酸、サリチル酸などが含まれる。
本明細書中で用いる「治療」なる語は特定の障害もしくは状態の予防、特定の障害もしくは状態に関連した症状の緩和および/または該症状の予防もしくは除去を含む。例えば、本明細書中で用いる「糖尿病を治療する」なる語は、一般に、血液グルコースレベル(血糖値)を正常レベル付近に維持することを意味し、与えられた状況に応じて血液グルコースレベルを増加または減少させることを含む。
本明細書中で用いる、インスリン類似体の「有効」量または「治療的有効量」は、所望の効果を与える、インスリン類似体の無毒性であるが十分な量を意味する。例えば、1つの所望の効果は高血糖の予防または治療であろう。「有効」である量は、個体の年齢および全身状態、投与方法などに応じて、対象によって変動するであろう。したがって、厳密な「有効量」を特定することが常に可能なわけではない。しかし、いずれかの個々の場合における適当な「有効」量は、通常の実験を用いて当業者により決定されうる。
「非経口」なる語は、消化管経由ではなく、何らかの他の経路、例えば鼻腔内、吸入、皮下、筋肉内、髄腔内または静脈内によるものであることを意味する。
本明細書中で用いる「薬物動態」なる語は、インスリンまたはインスリン類似体の、該タンパク質の遊離、吸収、分布、代謝および消失に関連した分野で一般に用いられるインビボ特性を意味する。そのような薬物動態学的特性には、用量、投与間隔、濃度、消失速度、消失速度定数、曲線下面積、分布体積、任意の組織または細胞におけるクリアランンス、血液中のタンパク質分解、バイオアベイラビリティ、血漿への結合、半減期、初回通過消失、抽出比、Cmax、tmax、Cmin、吸収速度および変動が含まれるが、これらに限定されるものではない。
本明細書中で用いる「薬力学」なる語は、インスリンまたはインスリン類似体の、該タンパク質の生理的効果に関連した分野において一般に用いられるインビボ特性を意味する。そのような薬物動態学的特性には、最大グルコース注入速度、最大グルコース注入速度までの時間、およびグルコース注入速度曲線下面積が含まれるが、これらに限定されるものではない。
発明の詳細な説明
本発明は、グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体分子、グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体分子を含む組成物および医薬製剤、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の製造方法、ならびに該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の使用方法を提供する。該組成物および製剤は糖尿病の治療および療法に有用である。
1つの実施形態においては、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、結合部位を含むアスパラギン残基にβ1結合で結合したN−グリカンをそれぞれが含む1以上の結合基を含むN−結合グリコシル化インスリン類似体である。N−結合グリコシル化のための少なくとも1つの結合基を有するインスリン類似体をコードする核酸分子が、糖タンパク質を産生しうる宿主細胞において発現される場合、前駆体形態および成熟形態の両方のインスリン類似体は、該結合基を含むアスパラギン残基に連結された、該インスリン類似体上の少なくとも1つのN−結合グリカンを含むであろう。特定の実施形態においては、N−グリコシル化インスリン類似体ヘテロ二量体へのN−グリコシル化インスリン類似体前駆体のプロセシングは、機能的結合基を含むアミノ酸残基の1つ又は2つの除去をもたらしうる。
もう1つの実施形態においては、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体はN−グリカンコンジュゲートであり、ここで、インスリンまたはインスリン類似体分子上の結合基はN−グリカンにインビトロでコンジュゲート化(結合)されることが可能であり、あるいは該インスリンまたはインスリン類似体分子は、N−グリカンに共有結合したアミノ酸残基を含むようにインビトロで合成される。
インビボN−グリコシル化
N−結合グリコシル化インスリン類似体分子を含む組成物においては、該組成物中の主要N−グリカン種は、該N−グリコシル化インスリン類似体の発現に使用される宿主細胞に左右であろう。例えば、1以上の結合部位(例えば、N−結合グリコシル化部位)を含むインスリン類似体をコードする核酸分子の、哺乳類宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)またはマウス骨髄腫宿主細胞)における発現は、該哺乳類宿主細胞において産生される糖タンパク質にとってグリコシル化パターンが異種であり典型的なものである、N−結合グリコシル化インスリン類似体を産生するであろう。現在、未修飾宿主細胞に典型的なN−結合グリコシル化パターンとは異なるN−結合グリコシル化パターンを有するように遺伝的に修飾された哺乳類宿主細胞は少数しか存在しない(例えば、米国特許公開第20040110704号;Yamane−Ohnukiら(2004)Biotechnol Bioeng 87:614−22;EP 1176195;WO 03/035835;Shieldsら(2002)J.Biol.Chem.277:26733−26740を参照されたい)。哺乳類宿主細胞において産生されたN−結合グリコシル化インスリン類似体の組成物はN−グリコシル化の異種パターンを含むが、一般に、特定のグリコフォームが優勢であろう。
植物、糸状菌、酵母、藻類、原核生物および昆虫宿主細胞は、非哺乳類N−グリカンパターンを有する糖タンパク質を産生する。しかし、これらの宿主細胞(特に酵母宿主細胞)は全て、哺乳類またはヒト細胞において観察されるパターンに類似しているN−結合グリコシル化パターンのタイプを制御するためだけでなく、宿主細胞において産生される糖タンパク質の組成物中のどの特定のN−グリカン種が優勢になるかを制御するためにも、遺伝的に操作されうる。望ましくないグリコシルトランスフェラーゼを宿主細胞から除去し、グリコシダーゼおよび/またはグリコシルトランスフェラーゼの特定の組合せを導入することにより、これは達成されている。例えば、高マンノシル化N−グリカンの酵母グリコシル化パターンを産生する能力を喪失させるために遺伝的に操作された酵母宿主細胞(例えば、該酵母宿主細胞は、N−グリカンに関するα1,6−マンノシルトランスフェラーゼ活性を示さないように遺伝的に操作される)は、哺乳類グリコシルトランスフェラーゼの種々の組合せを含むように更に操作されている。本明細書に示されているとおり、特定のN−グリカン構造が優勢である糖タンパク質を産生するこれらの酵母宿主細胞は、N−結合グリコシル化インスリン類似体を製造するために使用されている。これらの遺伝的に操作された宿主細胞は、該宿主細胞において産生される糖タンパク質のN−グリコシル化パターンを制御する可能性をもたらす。したがって、特定のN−グリカン構造が優勢であるN−結合グリコシル化インスリン類似体の組成物が提供されうる。しかし、N−結合グリコシル化インスリン類似体を製造するために使用される宿主細胞には無関係に、一般に、いずれかのN−グリカン種の最小多糖単位はManGlcNAcであり、ここで、還元末端のGlcNAc残基は、N−結合グリコシル化部位を含むアスパラギン残基に連結されている。しかし、特定の態様においては、該宿主細胞は、ManGlcNAc、ManGlcNAcまたはGlcNAcからなるグリコフォームへとN−グリカンを切断する組換え発現酵素を更に含むことが可能であり、あるいは該N−グリカンは、ManGlcNAc、ManGlcNAcまたはGlcNAcからなるグリコフォームを産生するようにインビトロで処理されうる。
インスリンはN−結合グリコシル化部位を天然では含有せず、したがって、本発明においては、該インスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子は、インスリン類似体をコードする核酸分子を得るために該ヌクレオチド配列内に少なくとも1つのN−結合グリコシル化部位(結合部位)を導入するために修飾されている。N−結合グリコシル化部位はトリ−アミノ酸配列Asn−Xaa−(Ser/Thr)を含み、ここで、Xaaはプロリン以外の任意のアミノ酸である。それにおけるアミノ酸突然変異および特定のN−結合グリカンは、薬物動態学的(PK)特性の向上、薬力学的(PD)特性の向上、低血糖のような副作用の軽減増強(これらに限定されるものではない)を含む、非グリコシル化N−グリコシル化インスリン類似体と比較した場合の1以上の有益な特性を、該N−グリコシル化インスリン類似体に付与することが可能であり、該N−グリコシル化インスリン類似体が、グルコース感受性活性を示すこと、インスリン受容体(IR)に対するアフィニティと比較して低下した、インスリン様増殖因子1受容体(IGF1R)に対するアフィニティを示すこと、IR−AまたはIR−Bのいずれかへの優先的な結合を示すこと、インスリン受容体に対するオン・レイト(on−rate)の増加、オン・レイトの減少および/もしくはオフ・レイト(off−rate)の減少、ならびに/または運搬経路の改変(例えば、皮下、静脈内または筋肉内投与と、経口、鼻腔内または肺投与との違い)を示すことを可能にしうる。例えば、実施例および図44に示されているとおり、N−グリカンを含むN−グリコシル化インスリン類似体は、天然インスリンと比較した場合の安定性の増強、ならびに低pHおよび高温で誘発される繊維形成(繊維化)の傾向の低下を示し、特定のN−グリカン構造は、該グリコシル化インスリン類似体が、血清中のグルコースの濃度に感受性または応答性であるインスリン受容体における活性を有することを可能にするらしい。
インスリン類似体上のN−結合N−グリカンは前記特性の1以上をもたらすことが可能であり、現在の糖尿病治療に対する有意な改善をもたらしうる。例えば、特定のN−結合N−グリカンは治療用タンパク質のPK/PD特性を改変することが知られている。現在市販されているインスリン治療剤は、組換えヒトインスリン、およびヒトインスリンの突然変異体(インスリン類似体と称される)からなる。これらの類似体は、アミノ酸突然変異および製剤化バッファーの組合せにより、インビトロおよびインビボ特性の改変を示す。インスリンへのN−グリカンの付加は、全ての現在のインスリン療法に欠けている、体内のインスリン作用をモジュレーションするためのもう1つの特質を付加する。糖またはオリゴ糖部分に直接的に又は重合体もしくは非重合体リンカーにより結合したインスリンは、例えば米国特許第3,847,890号、米国特許第7,317,000号、国際公開番号WO8100354、WO8401896、WO9010645、WO2004056311、WO2007047977、WO2010088294およびEP0119650号に既に記載されている。本明細書に開示されている該グリコシル化インスリン類似体の特徴は、それに結合したN−グリカンが天然構造であることである。該N−グリカンがアスパラギン残基にインビボで連結されている実施形態においては、該連結は、N−結合グリコシル化能を有するいずれかの生物によりインビボで生成されうる天然化学結合である。
30年以上にわたって、インスリンの研究者は、既存のインスリン療法を改善するために、化学的リンカーまたはエクスビボ酵素反応を用いて、糖をインスリンに結合させることを記載している。インスリンへの糖部分の化学結合の概念は、生理的血液グルコースレベルに応じてインスリンのバイオアベイラビリティをモジュレーションするための手段として、1979年にMichael Brownleeにより最初に導入された(Brownlee & Cerami,Science 206:1190(1979))。この最初の提示の大きな欠点は、グリコシル化インスリン誘導体が相互作用するコンカナバリンAの毒性であった。酵母において産生されたインスリン上のO−結合マンノースグリカンの存在を記載している文献報告があるが、このグリカンは混入物とみなされた(Kannanら,Rapid Commun.Mass Spectrom.23:1035(2009);国際公開番号W09952934およびWO2009104199)。したがって、1つの実施形態においては、本発明は、少なくとも1つのN−グリカンがインビボで結合したN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体(前駆体形態または成熟形態、ヘテロ二量体形態、または一本鎖形態)を提供し、ここで、該N−グリカンは該N−グリコシル化インスリン類似体の少なくとも1つの治療特性を改変して、例えば、該インスリンまたはインスリン類似体を、少なくとも1つの修飾された薬物動態学的(PK)および/または薬力学的(PD)特性、例えば、血清半減期の延長、溶液中の安定性の改善、グルコース調節性インスリンとなる可能性、または肝臓のアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)(Ashwell−Morell受容体)のような特定の受容体を標的化する可能性を示す分子にする。
現在、商業的に入手可能な組換えインスリンおよびインスリン類似体を製造するために、大腸菌(Escherichia coli)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびピチア・パストリス(Pichia pastoris)が使用されている。これらの3つの生物のうち、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびピチア・パストリス(Pichia pastoris)のみが、N−グリカンをタンパク質に付加する固有能力を有する。一般に、酵母におけるN−グリコシル化は、真菌型高マンノースまたは高マンノシル化構造を有するN−グリカンを有する糖タンパク質の産生をもたらす。例えば、インスリン受容体(IR)アイソフォーム選択的インスリン類似体に関する報告において、Glendorfら,PLoS ONE 6(5)e20288(2011)は、真菌型N−グリカンを有する糖タンパク質を産生するサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株において発現された、B鎖の25位のフェニルアラニンがアスパラギン残基で置換された類似体の構築を開示している。該著者は、該グリコシル化類似体がIRに結合しないと推定した。真菌高マンノースまたは高マンノシル化構造を含む糖タンパク質が哺乳動物またはヒトに投与された場合、該糖タンパク質は循環から迅速に消失し、幾つかの場合には、望ましくない免疫応答を惹起しうる。しかし、過去10年の間に、グリコシル化パターンが真菌型から哺乳類またはヒト型へと変化した酵母株が構築された。例えば、本明細書に開示されている糖操作(glycoengineered)ピチア・パストリス(Pichia pastoris)株を使用して、該糖タンパク質のN−グリカン組成が予め決定され、制御されうる。したがって、特定のN−グリカンが主要種である糖タンパク質組成物が製造されうる(例えば、Hamiltonら,Science 313:1441(2006);Hamilton & Gerngross,Curr.Opin.Biotechnol.18:387(2007);Li & d’Anjou,Curr.Opin.Biotechnol.20:678(2009);Wildt & Gerngross,Nat.Rev.Microbiol.3:119(2005)を参照されたい)。したがって、該糖操作酵母形態はN−グリコシル化インスリンおよびインスリン類似体の製造に好適である。N−グリコシル化インスリンは哺乳類細胞において発現されうるが、それは、現在、組換え製造するための実施不可能な手段のようである。なぜなら、哺乳類細胞培養は、最適な細胞生存性および適合性のためには、インスリンの添加を常套的に要するからである。インスリンは正常な哺乳類細胞発酵過程において代謝されるため、分泌されたN−グリコシル化インスリン類似体が該細胞により利用されて、該N−グリコシル化インスリン類似体の収率が低下する可能性がある。哺乳類細胞培養の使用のもう1つの欠点は、特定のN−グリカンが優勢である組成を得るためにグリカンプロファイルを修飾または特別設計することが現在不可能であることである(Sethuraman & Stadheim,Curr.Opin.Biotechnol.17:341(2006))。
最近の報告は、タンパク質グリコシル化を促進するための原核生物の遺伝的操作を記載している(Henderson,Isett,& Gerngross,Bioconjug Chem.2011 Apr 7;Pandhal,Ow,Noirel,& Wright,Biotechnol Bioeng.2011 Apr;108(4):902−12;Fisherら,Appl Environ Microbiol.2011 Feb;77(3):871−81)。また、古細菌および他の原核生物の種がタンパク質をN−グリコシル化することが報告されている(Calo,Guan,& Eichler,Microb Biotechnol.2011 Feb 21)。したがって、本明細書に開示されているN−結合グリコシル化インスリン類似体は、特定のN−グリカンが優勢である糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作された原核生物から製造されうる。
本明細書に記載されているN−グリコシル化インスリン類似体の製造には多数の利点が存在する。遺伝的に操作された(または糖操作された)ピチア・パストリス(Pichia pastoris)は、発酵可能性および収率を含む、インスリンのための他の酵母系インスリン産生系の魅力的な特性をもたらす。遺伝的操作は、酵素反応および精製の処理工程を排除する、インスリン前駆体のインビボ成熟を可能にする。インビボN−グリコシル化に関しては、酵母細胞はグリカンの供給源であるため、糖操作ピチア・パストリス(Pichia pastoris)はN−グリカン部分の化学合成または供給を必要とせず、このことは収率の改善をもたらし、原料コストを低下させうる。本明細書に記載されているとおり、インビトロ反応を用いた場合には合成および精製に高くつく可能性のある、ヒト糖タンパク質上に存在するハイブリッドおよび複合N−グリカン構造を含む特定の主要N−グリカン構造を有するN−グリコシル化インスリンを発現する糖操作ピチア・パストリス(Pichia pastoris)株が選択されうる。更に、リンカードメインおよび非天然グリカンは、幾つかの場合には、N−結合N−グリカンより免疫原性であり、それにより、インスリン療法の有効性を低下させうる。最後に、選別されうるN−グリカン類似体の量を著しく増加させるために、インスリン上のN−結合グリカン構造は酵素反応または化学反応により更に修飾されうる。したがって、純粋に合成的な方法を用いた場合より迅速かつ低コストで、最適なN−グリカンが特定されうる。
一般に、N−グリコシル化インスリン類似体をコードする核酸分子は、少なくとも1つのコンセンサスN−結合グリコシル化部位モチーフ(Asn−Xaa−SerまたはThr;ここで、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である)をコードするように突然変異されることが可能であり、これは、N−結合グリコシル化のためにコンピテント宿主細胞において発現された場合、N−結合グリコシル化インスリン類似体の産生をもたらす。該宿主は、特定のN−グリカン構造またはグリコフォームが優勢であるN−グリコシル化インスリン類似体を産生する能力を有することが望ましい。特定の主要N−グリカン種は、臨床プロファイルが改変または改善されるように、特異な機能特性を該N−グリコシル化インスリン類似体に付与する。例えば、特定のN−グリカン構造は受容体レベルにおける生物活性の相違をもたらす(例えば、IGF−1R、IR−A、IR−Bにおける結合を増強および/または低減する)ことが可能であり、あるいはN−結合グリコシル化は、グルコース応答特性をもたらす、クリアランスの代替経路、またはより大きな治療指数をもたらす、組織分布(例えば、肝臓への標的化)における相違に影響を及ぼしうる。
現在市販されているインスリン類似体のアミノ酸置換は、しばしば、B鎖のカルボキシ末端に集中している。インスリン受容体(IR)への結合を保持するが、インスリン様増殖因子1受容体(IGF−1R)への結合に劇的な影響を及ぼしうる、この領域内の突然変異が、数十年間の研究により確立された。IGF−1R結合はインスリンに望ましくないと一般に考えられている(Zib & Raskin,Diabetes Obes.Metab 8:611(2006))。インスリン類似体のPKおよびPD特性を改変する溶解度およびオリゴマー形成のような、この領域内の突然変異の追加的な影響が存在する。例えば、インスリン類似体であるインスリン・アスパルト(aspart)(NOVOLOG)は、プロリン残基がアスパラギン酸で置換された1つのアミノ酸置換をB鎖内の28位に含有する。この置換は、B28におけるアスパラギン酸残基の電荷反発による六量体形成の抑制ゆえに、インスリン・アスパルトの迅速な作用発現および短い作用プロファイルをもたらす。インスリン・アスパルトはIGF−1R結合の低減をも示す。文献からのデータは、B鎖の末端に、より負の電荷を有するインスリン類似体が、IGF−1R結合の低減を招くことを示唆している(Zib & Raskin,前掲;Uchioら,Adv.Drug Deliv.Rev.35:289(1999))。
したがって、本明細書に開示されているN−グリコシル化インスリン類似体の1つの実施形態においては、B鎖の28位のプロリン残基がアスパラギン残基で置換されており(P28N置換)、これは「NKT」のトリ−アミノ酸配列を生成する。N−グリカンを有する糖タンパク質の産生のためのコンピテントな宿主細胞、特に、特定のN−グリカン種またはグリコフォームを主に有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作された宿主細胞において、N−結合グリコシル化のための部位を含むN−グリコシル化インスリン類似体が発現される場合、該NKT配列は該N−結合グリコシル化部位を与える。
B鎖の28位のアスパラギンにおける該インスリン類似体へのN−結合N−グリカンの付加は、インスリン受容体(IR)における活性を保有するN−グリコシル化インスリン類似体を与える。また、B鎖の28位のN−結合N−グリカンは、例えば、ManGlcNAcの場合には約910ダルトン、またはNANAGalGlcNAcManGlcNAcの場合には約2,222ダルトンの推定質量を増加させる(種々のN−グリカン構造の分子量に関しては、図2を参照されたい)。B28位のN−グリカンの流体力学的体積は六量体形成を低減しうる。シアル酸(NANA)およびその付随負電荷を含有するN−グリカンはIGF−1Rとの該類似体の相互作用を更に低減することが可能であり、これは臨床安全プロファイルから望ましいであろう。
N−グリカンは糖タンパク質の薬物動態学的特性に影響を及ぼすことが知られている。シアル酸組成を有するタンパク質は、シアル酸を含有しない同一タンパク質と比較して改善されたPKプロファイルを示す傾向にある。その改善されたPKプロファイルは、該タンパク質の流体力学的体積の増加および濾過部位の膜との電荷反発の増加による糸球体における腎クリアランスの低減によるものでありうる(Borkら,J.Pharm.Sci.98:3499(2009))。更に、シアル酸化糖タンパク質は、肝細胞膜におけるアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)と相互作用する中性グリカンのマスキングによる肝クリアランスの低減を示しうる。したがって、B鎖の28位のN−グリカン上のシアル酸残基は迅速作用発現臨床プロファイルをも該類似体にもたらしうる。なぜなら、インスリン・アスパルトと同様に、該負電荷により、六量体形成が抑制されうるからである。しかし、シアル酸化N−グリコシル化インスリン類似体はインスリン・アスパルトと同様の迅速な作用発現(六量体形成の低減)を示しうるだけでなく、より長い活性持続時間(PKプロファイルの改善)をも示すことにより、インスリン・アスパルトとは異なりうる。該N−グリカンへのポリシアル酸形態の追加的シアル酸の転移はPKプロファイルを更に改善する可能性があるであろう。糖操作ピチア(Pichia)の追加的株の形質転換により、代替的グリカンの転移が明らかに可能である。
インビトログリコシル化
もう1つの実施形態においては、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体は、結合基がN−グリカンにインビトロでコンジュゲート化されているコンジュゲート、またはN−グリカンに共有結合したアミノ酸残基を含むように結合基がインビトロで合成されたコンジュゲートである。一般に、該結合基または部位および該N−グリカンは、該結合基への該N−グリカンの結合を可能にする、該N−グリカンの還元末端における機能的部分または基(官能基)を含むであろう。以下の表は、有用な結合基、およびN−グリカンを結合部位に結合させうる機能的部分または基を有する活性化N−グリカンの例を示す。
Figure 2014525922
特定の実施形態においては、該N−グリカンは、直接的に、またはリンカーもしくはスペーサーにより間接的に、結合部位にインビトロでコンジュゲート化される。特定の実施形態においては、該リンカーまたはスペーサーは、1〜約60個の原子、または1〜30個以上の原子、2〜5個の原子、2〜10個の原子、5〜10個の原子、または10〜20個以上の原子の鎖を含む。幾つかの実施形態においては、該鎖原子は全て、炭素原子である。幾つかの実施形態においては、該リンカーまたはスペーサーのバックボーンにおける鎖原子は、C、O、NおよびSからなる群から選択される。鎖原子およびリンカーまたはスペーサーは、より溶解性のコンジュゲートを得るために、それらの予想溶解度(親水性)に従い選択されうる。幾つかの実施形態においては、該リンカーまたはスペーサーは、標的組織または器官または細胞において見出される酵素もしくは他の触媒または加水分解条件による切断に付される官能基を与える。幾つかの実施形態においては、該リンカーまたはスペーサーの長さは、立体障害の可能性を低下させるのに十分な程度に長い。該リンカーまたはスペーサーが共有結合またはペプチジル結合であり、インスリン類似体が異種ポリペプチド、例えば免疫グロブリン、免疫グロブリンのFcフラグメント、ヒト血清アルブミンにコンジュゲート化されている場合、該コンジュゲート全体は融合タンパク質でありうる。そのようなペプチジルリンカーは任意の長さでありうる。典型的リンカーは約1〜50アミノ酸長、5〜50、3〜5、5〜10、5〜15、または10〜30アミノ酸長である。
特定の実施形態においては、該リンカーまたはスペーサーは(i)1〜7個のメチレン基を有する1、2、3個またはそれ以上の非分枝アルカンα、ω−ジカルボン酸基;(ii)1、2、3個またはそれ以上のアミノ酸;あるいは(iii)1、2、3個またはそれ以上のγ−アミノブタニル残基でありうる。特定の実施形態においては、最適なリンカーまたはスペーサーは1、2、3個またはそれ以上のγ−グルタミル残基;1、2、3個またはそれ以上のβ−アラニル残基;1、2、3個またはそれ以上のβ−アスパラギル残基;あるいは1、2、3個またはそれ以上のグリシル残基でありうる。
特定の実施形態においては、該リンカーまたはスペーサーは共有結合;炭素原子;ヘテロ原子、以下のものからなる群から選択される所望により置換されていてもよい基:アシル、脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、アリール、ヘテロアリールおよび複素環基;所望により置換されていてもよい2価直鎖状または分枝状飽和または不飽和C1−30炭化水素鎖[ここで、1以上のメチレン単位は、所望により且つ独立して、−O−、−S−、−N(R)−、−C(O)−、C(O)O−、OC(O)−、−N(R)C(O)−、−C(O)N(R)−、−S(O)−、−S(O)2−、−N(R)SO2−、SO2N(R)−により置換されていてもよい(Rのそれぞれは、独立して、水素、適当な保護基またはアシル部分、アルアルキル部分、脂肪族部分、アリール部分、ヘテロアリール部分またはヘテロ脂肪族部分である)]でありうる。
連結部分の例には、γ−Glu(γE)、γ−Glu−γ−Glu(γEγE)およびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されるものではない。
結合基がアミン、例えば、A鎖ペプチドのN末端のアミノ基(A1)、B鎖ペプチドのN末端のアミノ基(B1)、A鎖またはB鎖ペプチドのリシン残基のイプシロンNH基あるいはそれらの組合せを含む実施形態においては、A鎖ペプチドのN末端またはB鎖ペプチドのN末端またはA鎖ペプチドのN末端とB鎖ペプチドのN末端との両方が直接的または間接的にN−グリカンに結合している、天然ヒトインスリンA鎖ペプチド(配列番号33)またはその類似体と天然インスリンB鎖ペプチド(配列番号25)またはその類似体とを含むグリコシル化インスリン類似体を提供する。
更に、B鎖ペプチドの29位のLysのイプシロンNH、A鎖ペプチドのN末端およびB鎖ペプチドの29位のLysのイプシロンNH、B鎖ペプチドのN末端およびB鎖ペプチドの29位のLysのイプシロンNH、またはA鎖ペプチドのN末端とB鎖ペプチドのN末端との両方およびB鎖ペプチドの29位のLysのイプシロンNHが直接的または間接的にN−グリカンに結合している、天然ヒトインスリンA鎖ペプチドまたはその類似体と天然インスリンB鎖ペプチドまたはその類似体とを含むグリコシル化インスリン類似体を提供する。
更に、A鎖ペプチドのN末端またはB鎖ペプチドのN末端またはA鎖ペプチドのN末端とB鎖ペプチドのN末端との両方が直接的または間接的にN−グリカンに結合している、配列番号34に示されているアミノ酸配列を有するA鎖ペプチドと配列番号27に示されているアミノ酸配列を有するB鎖ペプチドとを含むグリコシル化インスリン・グラルジン(glargine)類似体を提供する。
更に、B鎖ペプチドの29位のLysのイプシロンNH、A鎖ペプチドのN末端およびB鎖ペプチドの29位のLysのイプシロンNH、B鎖ペプチドのN末端およびB鎖ペプチドの29位のLysのイプシロンNH、またはA鎖ペプチドのN末端とB鎖ペプチドのN末端との両方およびB鎖ペプチドの29位のLysのイプシロンNHがN−グリカンに直接的または間接的に結合している、配列番号34に示されているアミノ酸配列を有するA鎖ペプチドと配列番号27に示されているアミノ酸配列を有するB鎖ペプチドとを含むグリコシル化インスリン・グラルジン(glargine)類似体を提供する。
更に詳細な実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、28−29位のPro−LysがLys−Proにより置換されている天然ヒトインスリンA鎖ペプチドおよびB鎖ペプチド(インスリン・リスプロ(lispro)、配列番号298)、28位のProがAsp残基により置換されている天然ヒトインスリンA鎖ペプチドおよびB鎖ペプチド(インスリン・アスパルト(aspart)、配列番号299)、3位のAsnがLys残基により置換されており29位のLysがGlu残基により置換されているB鎖ペプチド(インスリン・グルリシン(glulisine)、配列番号300)、29位のLysがパルミチン酸に結合しており30位のThrを欠くB鎖(インスリン・デグルデック(degludec)、配列番号301)、または29位のLysがミリスチン酸に結合しており30位のThrを欠くB鎖(インスリン・デテミル(detemir)、配列番号302)を含み、ここで、A鎖ペプチドのN末端、またはB鎖ペプチドのN末端、またはA鎖ペプチドのN末端とB鎖ペプチドのN末端との両方が直接的または間接的にN−グリカンに結合している。
更に、B鎖ペプチドの28位のLysのイプシロンNH、A鎖ペプチドのN末端およびB鎖ペプチドの28位のLysのイプシロンNH、B鎖ペプチドのN末端およびB鎖ペプチドの28位のLysのイプシロンNH、またはA鎖ペプチドのN末端とB鎖ペプチドのN末端との両方およびB鎖ペプチドの28位のLysのイプシロンNHが直接的または間接的にN−グリカンに結合している、天然インスリンA鎖とインスリン・リスプロ(lispro)B鎖ペプチドとを含むグリコシル化インスリン類似体を提供する。
更に、B鎖ペプチドの29位のLysのイプシロンNH、A鎖ペプチドのN末端およびB鎖ペプチドの29位のLysのイプシロンNH、B鎖ペプチドのN末端およびB鎖ペプチドの28位のLysのイプシロンNH、B鎖ペプチドのN末端およびB鎖ペプチドの29位のLysのイプシロンNH、またはA鎖ペプチドのN末端とB鎖ペプチドのN末端との両方およびB鎖ペプチドの29位のLysのイプシロンNHが直接的または間接的にN−グリカンに結合している、天然インスリンA鎖とインスリン・アスパルト(aspart)B鎖ペプチドとを含むグリコシル化インスリン類似体を提供する。
更に、B鎖ペプチドの3位のLysのイプシロンNH、A鎖ペプチドのN末端およびB鎖ペプチドの3位のLysのイプシロンNH、B鎖ペプチドのN末端およびB鎖ペプチドの3位のLysのイプシロンNH、またはA鎖ペプチドのN末端とB鎖ペプチドのN末端との両方およびB鎖ペプチドの3位のLysのイプシロンNHが直接的または間接的にN−グリカンに結合している、天然インスリンA鎖とインスリン・グルリシン(glulisine)B鎖ペプチドとを含むグリコシル化インスリン類似体を提供する。
結合基がCys残基を含む実施形態においては、該Cys残基はA鎖の6、7および20位ならびにB鎖の7および19位のCys残基のいずれでもない。特定の実施形態においては、該Cys残基はAおよび/またはB鎖のNおよび/またはC末端に存在する。
タンパク質およびペプチドのインビトログリコシル化は当技術分野で公知である。例えば、Yamamotoら,Tetrahedron Letters 45:3287−3290(2004)(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)は糖ペプチドのインビトロ合成のための方法を開示しており、この場合、ブロモアセチアミジルジシアリル−11糖(NANAGalGlcNAcManGlcNac−NHCOCHBr)をペプチド内のシステイン残基のスルフヒドリル基に結合させた。Yamamotoら,Agnew.Chem.Int.Ed.42:2537−2540(2003)(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)はシアリル糖ペプチドの固相合成を開示しており、この場合、アスパラギン結合ジシアリル−11糖Fmoc誘導体(NANAGalGlcNAcManGlcNac−AsnFmoc)が該ペプチドの合成中に該ペプチド内に取り込まれた。Itoら,米国公開出願第20100016547号およびAndersenら,WO02055532(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)は種々のグリコシル化GLP−1類似体の固相合成を開示しており、この場合、合成中に種々のアスパラギン結合オリゴ糖またはN−グリカン構造が該分子内に取り込まれる。Unverzagt(Agnew.Chem.Int.Ed.36:1989−1992(1997))、Weiss & Unverzagt(Agnew.Chem.Int.Ed.42:4261−4263(2003))、Ellerら(Tetrahedron Letts.51:2648−2651(2010)およびDavis(Chem.Rev.102:579−601(2002)は全て、複合N−グリカンをインビトロで化学合成するための開示している。
これらの方法は、分子内のアミノ酸残基に共有結合した特定のN−グリカン構造を有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を製造するために使用されうる。したがって、特定の実施形態においては、N−結合グリコシル化のための結合基を含むアミノ酸または結合基(アスパラギン残基以外)に共有結合している本明細書に開示されているN−グリカン構造を有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を提供する。例えば、1つの実施形態においては、本明細書に開示されているN−グリカン構造は、該グリカン分子の還元末端にN−ヒドロキシスクシンイミド、アセトアルデヒドまたはプロピオンアルデヒド基を有するように化学合成されうる。ついで該N−グリカンは、インスリンまたはインスリン類似体に、B29位のリシン残基において又は該分子内の他の位置の別のアミノ酸から置換されたリシンにおいてコンジュゲート化(結合)されうる。もう1つの実施形態においては、前記インスリン類似体またはインスリンは、N−グリカン分子の還元末端にスクシンイミジルまたはベンゾトリオール基を有するように合成された本明細書に開示されているN−グリカン構造に、B5のヒスチジン残基において又は該分子内の他の位置のアミノ酸から置換されたヒスチジンにおいてコンジュゲート化されうる。もう1つの実施形態においては、システイン残基を含むように修飾されたインスリン類似体は、N−グリカン分子の還元末端にマレイミド、ビニルスルホン、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミドまたはオルトピリジルジスルフィド基を有するように合成された本明細書に開示されているN−グリカン構造にコンジュゲート化されうる。
Wang,米国特許第7,807,405号(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)は、均一なN−グリコシル化を伴う糖タンパク質を製造するためのインビトロ法を開示している。該方法は、糖タンパク質をエンド−A、エンド−F、エンド−Hまたはエンド−Mでインビトロで処理して、該糖タンパク質からN−グリカンを除去するが、該糖タンパク質内のアスパラギン残基に結合した還元末端のGlcNAc残基は残し、ついで該糖タンパク質を、特定のグリカン構造を有する糖オキサゾリンと反応させて、N−結合グリカンを再構築することを含む。該方法は、糖タンパク質組成物における糖タンパク質の実質的に全てが同一N−グリカン構造をそれにおいて有する、該糖タンパク質組成物の産生を可能にする。それにおいて開示されている方法は、本明細書に開示されているN−グリコシル化インスリン類似体の種々の種を産生させて、それにおけるN−グリコシル化インスリン類似体が特定のグリコフォームに関して実質的に均一である組成物を得るために使用されうる。
I.インスリンのタンパク質工学
1980年代の組換えインスリン発現の初期報告の後、突然変異インスリンタンパク質の構造−活性関係に関する多数の研究が報告された。科学文献は、種を越えたインスリンの天然アミノ酸変異を記載している(例えば、Conlon,Peptides 22:1183(2001)を参照されたい)。部位特異的突然変異誘発を用いる実験は、結合、物理化学的または機能的特性の改変を伴う置換を示した(Kohnら,Peptides 28:935(2007);Kristensenら,J.Biol.Chem.272:12978(1997);Sliekerら,Diabetologia 40 Suppl 2,S54(1997))。そのような情報は、インスリン受容体との相互作用に決定的に重要なアミノ酸がGlyA1、GlnA5、TyrA19、AsnA21、ValB12、TyrB16、GlyB23、PheB24およびPheB25を明らかにした(Mayerら,Biopolymers 88:687(2007))。したがって、これらの残基は、グリコシル化による修飾にそれほど魅力的ではない標的に相当しうる。限定的なものではないが、種を越えるアミノ酸変異は超可変領域(A8−A10)およびB鎖の末端において優勢である傾向にあり(Conlonら,前掲)、グリコシル化修飾のための魅力的な標的に相当しうる。追加的残基が、種を越えて置換または付加されうる。これらのデータに基づいて、置換がインスリン受容体における該分子の活性の変化を全く又は僅かしかもたらさない位置におけるアミノ酸が、該グリカンまたはオリゴ糖の結合のための結合基を得るために修飾されうる(例えば、N−結合グリコシル化部位を得るために修飾されうる)。特定の実施形態においては、インスリン受容体における活性の僅かな喪失を伴うグリコシル化インスリン類似体が幾つかの用途に有利でありうる。該グリカンが半減期の延長をもたらすグリコシル化インスリン類似体の場合、インビボ活性の喪失は、より長い半減期により取り戻される。
a.グリコシル化のためのタンパク質工学
インビボでグリコシル化されるインスリンをコードする核酸分子は、N−結合グリコシル化のための結合基を含有するように修飾されうる。該グリコシル化インスリン類似体は、2〜35アミノ酸残基のC−ペプチドまたはペプチドドメインがB鎖ペプチドとA鎖ペプチドとの間に存在する一本鎖インスリン類似体またはヘテロ二量体インスリン類似体でありうる。該ペプチドドメインはインビボN−結合グリコシル化のための1以上の結合部位を含みうる。特定の実施形態においては、インビボN−グリコシル化のための結合部位はA鎖またはB鎖またはそれらの両方のN末端および/またはC末端に配置されうる。
本明細書における具体例(実施例)は、28位のプロリン残基をアスパラギン残基により置換(P28N置換)することによりN−結合グリコシル化部位がB鎖内に導入されたN−グリコシル化インスリン類似体の製造を例示している。追加的なN−結合グリコシル化は、複数のN−グリカン占有のために、B鎖、A鎖またはそれらの組合せの他の位置で生じうる。更に、N−結合コンセンサスモチーフ(結合基)を生成させるためのアミノ酸置換は、天然野生型ヒトインスリンのアミノ酸配列、当技術分野において現在入手可能な又は記載されているインスリン類似体のいずれかのアミノ酸配列、あるいはいずれかの一本鎖インスリンのアミノ酸配列に施されうる。例えば、A21位のグリシン残基ならびにB31およびB32位のアルギニン残基のインスリン・グラルジン(glargine)アミノ酸修飾を含むインスリン類似体は、28位のプロリンがアスパラギンにより置換されて、アミノ酸配列NKTを有するN−結合グリコシル化部位が生成しているB鎖P28N突然変異を更に含みうる。インスリン・グラルジンの、中性pHにおけるその不溶性によるPK特性の改善は、P28N置換、および該アスパラギンへの中性N−グリカンの転移の場合にも維持されうる。しかし、特定の実施形態においては、P28N置換を有するグリコシル化インスリン・グラルジンは、酸性電荷を伴うN−グリカンを有する可能性があり、該分子のpIを減少させて、中性pHにおいてそれを溶解性にしうる。そのような分子は、中性pH不溶性を再獲得するために、該分子の他の位置における追加的なアミノ酸置換を要しうる。図1は、N−グリカン結合部位を与える該インスリン分子上の幾つかのアミノ酸置換、単一および二重修飾の例を示す。B−2、B3、B25、B28、A−2、A8、A10およびA21位は、インスリン受容体への該分子の結合能を維持しながらN−結合グリコシル化部位を付与するためにアスパラギン残基が導入されうる、該インスリン分子内の部位に相当する。
以下は、N−グリカンモチーフ(結合基)を含むように修飾されうるインスリンアミノ酸配列の例を示す。以下の配列の組合せは、2以上のN−グリコシル化部位またはモチーフを有するN−グリコシル化インスリン類似体分子を作製するために適用されうる。ジスルフィド結合を除去するいずれかの置換も以下には含まれていない。
1.N−結合グリコシル化部位を与える単一B鎖置換
B鎖H5S:FVNQLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号42)
B鎖H5T:FVNQLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号43)
B鎖F25N:FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFYTPKT(配列番号44)
B鎖P28N:FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTKT(配列番号26)
2.N−結合グリコシル化部位を与える単一A鎖置換
A鎖I10N:GIVEQCCTSCSLYQLENYCN(配列番号45)
3.N−結合グリコシル化部位を与える二重B鎖修飾
NへのB鎖置換:N3,H5,C7,L17,C19,T27以外の全ての位置
SへのB鎖置換:C7,S9,C19,E21,K29以外の全ての位置
TへのB鎖置換:C7,S9,C19,E21,T27,K29,T30以外の全ての位置
B鎖付加:B鎖のN末端のトリペプチドNXSまたはNXT(それぞれ、−2、−1および0位)(ここで、Fは1位に存在する);29位のアミノ酸がNであり、30位のアミノ酸がPでない場合、S31またはT31;30位のアミノ酸がNであり、31位のアミノ酸がPでない場合、S32またはT32;1位のアミノ酸がSまたはTであり、−1位のアミノ酸がNである場合、P以外の0位の任意の残基。
4.N−結合グリコシル化部位を与える二重A鎖修飾
NへのA鎖置換:E4,Q5,C6,C7,S9,C11,N18,C20,N21以外の全ての位置
SへのA鎖置換:C6,C7,T8,S9,C11,S12,L13,C20以外の全ての位置
TへのA鎖置換:C6,C7,T8,S9,C11,L13,C20以外の全ての位置
A鎖付加:A鎖のN末端のトリペプチドNXSまたはNXT(それぞれ、−2、−1および0位)(ここで、Gは1位に存在する);21位のアミノ酸がNであり、22位のアミノ酸がPでない場合、S23またはT23;1位のアミノ酸がSまたはTであり、−1位のアミノ酸がNである場合、P以外の0位の任意の残基。
該N−グリコシル化インスリン類似体は、A鎖ペプチド、B鎖ペプチド、またはA鎖ペプチドとB鎖ペプチドとの両方の置換および/または二重修飾の任意の組合せを含みうる。したがって、該N−グリコシル化インスリン類似体は、コンセンサスN−結合グリコシル化部位またはモチーフを有するインスリン類似体を与えるN置換、S置換、T置換および付加の任意の組合せを含みうる。したがって、更に詳細な実施形態においては、該N−グリコシル化インスリン類似体は、1以上のN−結合グリコシル化部位を含むインスリン類似体を与えるA鎖ペプチドおよび/またはB鎖ペプチド置換および/または修飾の任意の組合せを含みうる。更に詳細な実施形態においては、該N−グリコシル化インスリン類似体は、インスリン受容体結合活性を改善する更なる置換を伴うことなくA1、A2、A3、B6、B8、B11、B12 2B3またはB24位の置換を含まない。
5.B鎖またはA鎖へのN−グリコシル化ペプチドドメインの付加
インスリン・グラルジン(glargine)は、追加的アミノ酸を含有し活性を尚も保有するインスリン類似体の一例である。それはB鎖ペプチドのC末端に2つの追加的アルギニン残基を含有する。これは、BおよびA鎖ペプチドのNおよび/またはC末端における他のペプチド配列の付加も、インスリン受容体における活性を有するインスリン分子を与えうることを示唆している。したがって、B鎖またはA鎖またはそれらの両方の末端に1、2個またはそれ以上のアミノ酸を有するN−グリコシル化インスリン類似体が更に含まれる。Asn−Xaa−(Ser/Thr)モチーフ(結合基)(ここで、Xaaはプロリン以外の任意のアミノ酸である)からなるB鎖および/またはA鎖のNまたはC末端への3個のアミノ酸の付加は該分子へのN−グリカンの転移のための認識シグナルを与える。追加的配列がインスリンに融合されることが可能であり、これは、人工的または天然ペプチドまたはタンパク質配列、ヒトタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンまたはFcフラグメント)との融合体、あるいはN−グリコシル化モチーフを含有するタンパク質との融合体を使用して達成されうる。該タンパク質融合体は、結合基をも含有する完全または部分タンパク質でありうる。例えば、該グリコシル化インスリン類似体へのポリシアル酸の転移を可能にしうるヒトNCAMからの部分配列。インビトロのエンドプロテアーゼプロセシングにより除去可能であるインスリン類似体前駆体のCペプチドにおいてNCAMの部分IG5−FN1サブドメインを含むインスリン類似体前駆体は、B鎖のP28NまたはA鎖ペプチドのN21におけるポリシアル酸化をもたらしうる。該NCAM配列はトリプシンまたはエンドペプチダーゼLysCでのエンドプロテアーゼプロセシングの後でグリコシル化インスリン類似体から除去されるであろう。
II.糖設計
治療用糖タンパク質の大多数は、現在、哺乳類細胞系において製造されている。典型的に、哺乳類細胞由来のN−グリカンは、マンノース(Man)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース(Gal)、N−アセチルノイラミン酸(NANA)、N−グリコリルノイラミン酸(NGNA)、フコース(Fuc)およびN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)から構成されうる複合構造のものである。
N−グリカンの結合はインスリンのPKおよびPD特性に影響を及ぼしうる。具体例(実施例)に示されているとおり、シアル酸末端N−グリカンを主に有するN−グリコシル化des(B30)インスリン類似体をヒトdes(B30)インスリン(des(B30)となるように修飾されたNOVOLIN)と比較した場合、シアル酸末端N−結合グリコシル化des(B30)インスリン類似体のPKプロファイルは、該修飾NOVOLINおよびガラクトース末端N−グリカンを主に有するN−グリコシル化des(B30)インスリン類似体と比較して改善された。また、該シアル酸末端N−結合グリコシル化des(B30)インスリン類似体はインスリン増殖因子受容体(IGF−1R)への結合の低減を示した。両方のN−結合グリコシル化des(B30)インスリン類似体はインビボグルコース低減活性を保持している一方で、特定の特性は特定のN−グリカン構造によりモジュレーションされた。
a.N−グリカン構造
図2は、結合基を構成するアスパラギン残基に還元末端においてβ1結合で結合しうる、糖操作ピチア(Pichia)により産生されうるN−グリカン構造の幾つかの非限定的な例を示す。これらのグリコフォームのいずれかは、結合基を含むインスリン類似体に付加されうる。示されているグリコフォームの多くは、特定のN−グリカン構造が優勢である糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作された宿主細胞において産生されうる。しかし、他のグリコフォームの場合、所望の優勢グリコフォームを有するN−グリコシル化インスリン類似体を得るために、追加的な遺伝的改変、プロセス変化、精製スキームおよび/またはインビトロ酵素反応が用いられうる。図2に挙げられているグリコフォーム群は包括的であるわけではない。ポリシアル酸、ポリラクトサミン、シアル酸化ルイスX、GalNAc、フコース、グルコースなどのような追加的なグリカンが糖操作ピチア(Pichia)において合成されうる。また、図2に示されている構造は結合基にインビトロで結合されうる。
したがって、特定の実施形態においては、本明細書に開示されているグリコシル化インスリン類似体は、オリゴ糖またはグリカンの還元末端においてGlcNAc残基に共有結合される、インビボまたはインビトログリコシル化のための1以上の結合基を含む。したがって、式
INSL−[X−R]
を有するグリコシル化インスリン類似体を提供する。前記式中、INSLは、A鎖ペプチド、B鎖ペプチド、3個のジスルフィド結合および1以上の結合基(例えば、1〜10個、または1〜5個、または1〜2個の結合基)を含むインスリンまたはインスリン類似体分子である;nは、1〜10、または1〜5、または1〜2から選択される整数であり、該整数値はINSLにおける結合基の数に対応する;Xは、結合基に共有結合している、1以上のアミノ酸もしくはアミノ酸誘導体、非ペプチド部分またはそれらの両方を含む、所望により存在するリンカーまたはスペーサーであるか、あるいは存在せず、ここで、該リンカーまたはスペーサーの各存在は、リンカーまたはスペーサーのいずれかの他の存在から独立している;Rは、その還元末端において、該結合基または該リンカーもしくはスペーサーに結合しているN−グリカン構造であり、ここで、Rの各存在は同一であるか、または独立して特定のN−グリカンである。該結合基は、インビボN−グリコシル化のためのAsn残基、またはインビトログリコシル化のためのNH、COOH、SHもしくはHisのイミジゾール環でありうる。特定の実施形態においては、該N−グリカンは、以下に示されている構造1〜106から選択される。
Figure 2014525922
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特定の実施形態においては、式
INSL−[X−R]
を有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と医薬上許容される担体とを含む組成物または製剤を提供する。前記式中、INSLは、A鎖ペプチド、B鎖ペプチド、3個のジスルフィド結合および1以上の結合基(例えば、1〜10個、または1〜5個、または1〜2個の結合基)を含むインスリンまたはインスリン類似体分子である;nは、1〜10、または1〜5、または1〜2から選択される整数であり、該整数値はINSLにおける結合基の数に対応する;Xは、結合基に共有結合している、1以上のアミノ酸もしくはアミノ酸誘導体、非ペプチド部分またはそれらの両方を含む、所望により存在するリンカーまたはスペーサーであるか、あるいは存在せず、ここで、該リンカーまたはスペーサーの各存在は、リンカーまたはスペーサーのいずれかの他の存在から独立している;Rは、その還元末端において、該結合基または該リンカーもしくはスペーサーに結合しているN−グリカン構造であり、ここで、Rの各存在は同一であるか、または独立して特定のN−グリカンである。該結合基は、インビボN−グリコシル化のためのAsn残基、またはインビトログリコシル化のためのNH、COOH、SHもしくはHisのイミジゾール環でありうる。特定の実施形態においては、該N−グリカンは構造1〜106から選択される。該組成物または製剤は、医薬上許容される担体、塩、またはそれらの組合せを含む。
特定の態様においては、該組成物または製剤中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%がグリコシル化されている。一般に、該組成物または製剤中の構造1〜106から選択される少なくとも1つのN−グリカン種が優勢または主要体であろう。更に詳細な態様においては、該組成物または製剤中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも80%がグリコシル化されている。一般に、該組成物または製剤中の構造1〜106から選択される少なくとも1つのN−グリカン種が優勢または主要体であろう。更に詳細な態様においては、該組成物または製剤中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも90%がグリコシル化されている。一般に、該組成物または製剤中の構造1〜106から選択される少なくとも1つのN−グリカン種が優勢または主要体であろう。更に詳細な態様においては、該組成物または製剤中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも95%がグリコシル化されている。一般に、該組成物または製剤中の構造1〜106から選択される少なくとも1つのN−グリカン種が優勢または主要体であろう。更に詳細な態様においては、該組成物または製剤中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも98%がグリコシル化されている。一般に、該組成物または製剤中の構造1〜106から選択される少なくとも1つのN−グリカン種が優勢または主要体であろう。更に詳細な態様においては、該組成物または製剤中のインスリンまたはインスリン類似体の少なくとも99%がグリコシル化されている。一般に、該組成物または製剤中の構造1〜106から選択される少なくとも1つのN−グリカン種が優勢または主要体であろう。
特定の態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約30モル%〜約100モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。更に詳細な態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの30モル%〜100モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。更に詳細な態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの30モル%〜80モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。更に詳細な態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの50モル%〜100モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。
更に、特定の組成物および製剤においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約30モルが、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。もう1つの態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約40モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。もう1つの態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約50モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。もう1つの態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約50モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。もう1つの態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約60モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。もう1つの態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約70モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。もう1つの態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約80モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。もう1つの態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約85モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。もう1つの態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約90モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。もう1つの態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約95モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。もう1つの態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約98モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。もう1つの態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約99モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。もう1つの態様においては、該組成物または製剤中の全N−グリカンの約100モル%が、構造1〜106から選択されるN−グリカン種からなる。
特定の実施形態においては、ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体は、N−グリカンに共有結合した少なくとも1つのアスパラギン(AsnまたはN)残基を含む。したがって、更に詳細な実施形態においては、該ヘテロ二量体または一本鎖インスリン類似体における少なくとも1つのアスパラギン残基がN−グリカンに結合している限り、該ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体は、以下の配列番号(SEQ INO)162〜254および316〜337に示されている配列の群から選択されるアミノ酸配列を有するAおよびB鎖ペプチドの任意の組合せ、あるいはそれらと天然AまたはB鎖との組合せを含む。更に詳細な実施形態においては、該ヘテロ二量体N−グリコシル化インスリン類似体は、該ヘテロ二量体または一本鎖インスリン類似体における少なくとも1つのアスパラギン残基がN−グリカンに結合している限り、該ヘテロ二量体N−グリコシル化インスリン類似体は、以下の配列番号162〜254および316〜337に示されている配列の群から選択されるアミノ酸配列を有するAおよびB鎖ペプチドの任意の組合せ、あるいはそれらと天然AまたはB鎖との組合せを含む。更に、医薬上許容される担体、塩またはそれらの組合せを含む前記の組成物および製剤を提供する。
Figure 2014525922
前記のA鎖配列において、X1はセリン(Ser)またはトレオニン(Thr)であり、X2はプロリン(Pro)以外の任意のアミノ酸であり、 は、N−グリカンにβ1結合で共有結合したアスパラギン(Asn)である。該N−グリカンは、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子でありうる。該N−グリカンは、本明細書に示されているN−グリカン構造1〜106の群から選択されうる。特定の実施形態においては、該N−グリカンは少マンノース(paucimannose)(ManGlcNAc)またはManGlcNAcである。
Figure 2014525922
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前記のB鎖配列において、X1はセリン(Ser)またはトレオニン(Thr)であり、X2はプロリン(Pro)以外の任意のアミノ酸であり、 は、N−グリカンにβ1結合で共有結合したアスパラギン(Asn)である。該N−グリカンは、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子でありうる。該N−グリカンは、本明細書に示されているN−グリカン構造1〜106の群から選択されうる。特定の実施形態においては、該N−グリカンは少マンノース(paucimannose)(ManGlcNAc)またはManGlcNAcである。
もう1つの態様においては、該N−グリコシル化インスリン類似体は、ヒトインスリンのB鎖ペプチドおよびA鎖ペプチドまたはそれらの類似体または誘導体を含むN−グリコシル化一本鎖インスリン類似体であり、それらは、例えば、該一本鎖インスリン類似体における少なくとも1つのアスパラギン残基が、接続ペプチドにより連結されたN−グリカンに結合している限り、配列番号162〜254および316〜337に示されている配列の群から選択されるアミノ酸配列を有するAおよびB鎖ペプチドの任意の組合せ、あるいはそれらと天然AまたはB鎖との組合せ体を含む前記誘導体のいずれかであり、ここで、B鎖ペプチド、A鎖ペプチドまたは接続ペプチドの少なくとも1つが、それらに結合したN−グリカンを含む限り、該接続ペプチドは、3アミノ酸残基から、ヒトインスリンにおける天然Cペプチドの長さに対応する長さまでの様々な長さのものでありうる。しかし、該N−グリコシル化一本鎖インスリン類似体における接続ペプチドは、通常、ヒトCペプチドより短く、典型的には、該ペプチド鎖における3〜約35、3〜約30、4〜約35、4〜約30、5〜約35、5〜約30、6〜約35、または6〜約30、3〜約25、3〜約20、4〜約25、4〜約20、5〜約25、5〜約20、6〜約25、または6〜約20、3〜約15、3〜約10、4〜約15、4〜約10、5〜約15、5〜約10、6〜約15、または6〜約10、または6〜9、6〜8、6〜7、7〜8、7〜9または7〜10アミノ酸残基の長さである。一本鎖ペプチドは、米国公開出願第20080057004号、米国特許第6,630,348号、国際出願番号WO2005054291、WO2007104734、WO2010080609、WO20100099601およびWO2011159895(それらのそれぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている。更に、医薬上許容される担体、塩またはそれらの組合せを含む前記の組成物および製剤を提供する。
特定の実施形態においては、該N−グリコシル化一本鎖インスリン類似体接続ペプチドは、式Gly−Z−Gly−Z(式中、ZはAsnであるか、またはチロシン以外の別のアミノ酸であり、Zは2〜35アミノ酸のペプチドである)を含む。特定の実施形態においては、該接続ペプチドは、配列Asn−Xaa−Ser/Thr(式中、Xaaはプロリン以外の任意のアミノ酸である)を含む少なくとも1つの結合部位を含む。例えば、ZがAsnである場合、ZのN末端アミノ酸はSerまたはThrである。
特定の実施形態においては、該N−グリコシル化一本鎖インスリン類似体接続ペプチドはGNGSSSRRAPQT(配列番号258)、GAGNSSRRAPQT(配列番号259)、GAGSNSSRRAPQT(配列番号260)、GNGSNSSRRAPQT(配列番号261)、GAGSSSRRANQT(配列番号262)、GNGSSSRRANQT(配列番号263)、GAGNSSRRANQT(配列番号264)、GAGSNSSRRANQT(配列番号265)、GNGSNSSRRANQT(配列番号266)、GAGSSSRRAPQT(配列番号267)、GGGPRR(配列番号268)、GGGPGAG(配列番号269)、GGGGGKR(配列番号270)またはGGGPGKR(配列番号271)である。
特定の実施形態においては、該N−グリコシル化一本鎖インスリン類似体接続ペプチドはVGLSSGQ(配列番号272)またはTGLGSGR(配列番号273)である。他の態様においては、該N−グリコシル化一本鎖インスリン類似体接続ペプチドはRRGPGGG(配列番号274)、RRGGGGG(配列番号275)、GGAPGDVKR(配列番号276)、RRAPGDVGG(配列番号277)、GGYPGDVLR(配列番号278)、RRYPGDVGG(配列番号279)、GGHPGDVR(配列番号280)またはRRHPGDVGG(配列番号281)である。
特定の実施形態においては、該一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体は、該一本鎖インスリン類似体における少なくとも1つのアスパラギン残基がN−グリカンに結合している限り、(1)配列番号162〜254および316〜337に示されている配列の群から選択されるアミノ酸配列を有するAおよびB鎖ペプチドの任意の組合せ、あるいはそれらと天然AまたはB鎖との組合せ、および(2)任意の前記接続ペプチドを含む。特定の実施形態においては、該B鎖はC末端において1、2、3、4または5個のアミノ酸を欠いていることが可能である。もう1つの実施形態においては、該B鎖はdesB30またはdesB26−30である。該N−グリカンは、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子でありうる。該N−グリカンは、本明細書に示されているN−グリカン構造1〜106の群から選択されうる。特定の実施形態においては、該N−グリカンは少マンノース(paucimannose)(ManGlcNAc)またはManGlcNAcである。更に、医薬上許容される担体、塩またはそれらの組合せを含む前記の組成物および製剤を提供する。
特定の実施形態においては、該一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体は、該一本鎖インスリン類似体における少なくとも1つのアスパラギン残基がN−グリカンに結合している限り、(1)配列番号162〜254および316〜337に示されている配列の群から選択されるアミノ酸配列を有するAおよびB鎖ペプチドの任意の組合せ、あるいはそれらと天然AまたはB鎖との組合せ、および(2)配列番号258〜281に示されるアミノ酸配列を有する接続ペプチドを含む。更に、医薬上許容される担体、塩またはそれらの組合せを含む前記の組成物および製剤を提供する。
特定の実施形態においては、該N−グリコシル化一本鎖インスリン類似体接続ペプチドはG GSSSRRAPQT(配列番号283)、GAG SSRRAPQT(配列番号284)、GAGS SSRRAPQT(配列番号285)、G GS SSRRAPQT(配列番号286)、GAGSSSRRA QT(配列番号287)、G GSSSRRA QT(配列番号288)、GAG SSRRA QT(配列番号289)、GAGS SSRRA QT(配列番号290)またはG GS SSRRA QT(配列番号291)であり、ここで、 は、N−グリカンにβ1結合で共有結合したアスパラギン(Asn)である。該N−グリカンは、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子でありうる。該N−グリカンは、本明細書に示されているN−グリカン構造1〜106の群から選択されうる。特定の実施形態においては、該N−グリカンは少マンノース(paucimannose)(ManGlcNAc)またはManGlcNAcである。
特定の実施形態においては、該一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体は、(1)天然A鎖およびB鎖、ならびに(2)配列番号258〜281に示されるアミノ酸配列を有するN−グリコシル化接続ペプチドを含む。該一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体のN−グリカンは、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子でありうる。該N−グリカンは、本明細書に示されているN−グリカン構造1〜106の群から選択されうる。特定の実施形態においては、該N−グリカンは少マンノース(paucimannose)(ManGlcNAc)またはManGlcNAcである。更に、医薬上許容される担体、塩またはそれらの組合せを含む前記の組成物および製剤を提供する。
特定の実施形態においては、該一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体は、少なくとも1つのNH、COOH、SHもしくはHisのイミジゾール環がN−グリカンに直接的または間接的に結合している限り、(1)天然A鎖およびB鎖、または1、2、3、4、5個もしくはそれ以上のアミノ酸置換および/または欠失を有するそれらの類似体、ならびに(2)任意の前記接続ペプチドを含む。該一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体のN−グリカンは、Man(1−9)GlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはGal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される、またはNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群におけるN−グリカンから選択される構造を有する分子でありうる。該N−グリカンは、本明細書に示されているN−グリカン構造1〜106の群から選択されうる。特定の実施形態においては、該N−グリカンは少マンノース(paucimannose)(ManGlcNAc)またはManGlcNAcである。更に、医薬上許容される担体、塩またはそれらの組合せを含む前記の組成物および製剤を提供する。
特定の実施形態においては、該N−グリカンは、所望により存在しうる前記リンカーまたはスペーサーにより、結合部位に直接的または間接的にインビトロで結合される。更に詳細な実施形態においては、前記の所望により存在しうるリンカーまたはスペーサーは、1〜約60個の原子、または1〜30個以上の原子、2〜5個の原子、2〜10個の原子、5〜10個の原子、または10〜20個以上の原子の長さの鎖を含む。幾つかの実施形態においては、該鎖原子は全て、炭素原子である。幾つかの実施形態においては、該リンカーまたはスペーサーのバックボーンにおける鎖原子は、C、O、NおよびSからなる群から選択される。鎖原子およびリンカーまたはスペーサーは、より溶解性のコンジュゲートを得るために、それらの予想溶解度(親水性)に従い選択されうる。幾つかの実施形態においては、該リンカーまたはスペーサーは、標的組織または器官または細胞において見出される酵素もしくは他の触媒または加水分解条件による切断に付される官能基を与える。幾つかの実施形態においては、該リンカーまたはスペーサーの長さは、立体障害の可能性を低下させるのに十分な程度に長い。該リンカーまたはスペーサーが共有結合またはペプチジル結合であり、インスリン類似体が異種ポリペプチド、例えば免疫グロブリン、免疫グロブリンのFcフラグメント、ヒト血清アルブミンにコンジュゲート化されている場合、該コンジュゲート全体は融合タンパク質でありうる。そのようなペプチジルリンカーは任意の長さでありうる。典型的リンカーは約1〜50アミノ酸長、5〜50、3〜5、5〜10、5〜15、または10〜30アミノ酸長である。更に、医薬上許容される担体、塩またはそれらの組合せを含む前記の組成物および製剤を提供する。
特定の実施形態においては、該リンカーまたはスペーサーは(i)1〜7個のメチレン基を有する1、2、3個またはそれ以上の非分枝アルカンα、ω−ジカルボン酸基;(ii)1、2、3個またはそれ以上のアミノ酸;あるいは(iii)1、2、3個またはそれ以上のγ−アミノブタニル残基でありうる。特定の実施形態においては、最適なリンカーまたはスペーサーは1、2、3個またはそれ以上のγ−グルタミル残基;1、2、3個またはそれ以上のβ−アラニル残基;1、2、3個またはそれ以上のβ−アスパラギル残基;あるいは1、2、3個またはそれ以上のグリシル残基でありうる。
特定の実施形態においては、該リンカーまたはスペーサーは共有結合;炭素原子;ヘテロ原子、以下のものからなる群から選択される所望により置換されていてもよい基:アシル、脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、アリール、ヘテロアリールおよび複素環基;所望により置換されていてもよい2価直鎖状または分枝状飽和または不飽和C1−30炭化水素鎖[ここで、1以上のメチレン単位は、所望により且つ独立して、−O−、−S−、−N(R)−、−C(O)−、C(O)O−、OC(O)−、−N(R)C(O)−、−C(O)N(R)−、−S(O)−、−S(O)2−、−N(R)SO2−、SO2N(R)−により置換されていてもよい(Rのそれぞれは、独立して、水素、適当な保護基またはアシル部分、アルアルキル部分、脂肪族部分、アリール部分、ヘテロアリール部分またはヘテロ脂肪族部分である)]でありうる。
III.インスリン類似体
本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の種々の実施形態においては、該グリコシル化はN−結合であり、該結合基はB28に存在する(PはNにより置換されている)。しかし、N−結合グリコシル化インスリン類似体がアスパラギン以外のアミノ酸残基への突然変異をB28位に含む実施形態においては、N−結合グリコシル化部位(結合基)は、該分子内の別の位置に存在するように選択され、例えば、B−2、B3、B25、A−2、A8、A10またはA21に存在するように選択される。例えば、インスリン・リスプロ(lispro)(HUMALOG)は、BペプチドのC末端の最後から2番目のリシンおよびプロリン残基が逆転している迅速作用性インスリン類似体(LysB28ProB29−ヒトインスリン)であり、これはインスリン多量体の形成を低減する。インスリン・アスパルト(aspart)(NOVOLOG)は、B28位のプロリンがアスパラギン酸により置換されている、もう1つの迅速作用性インスリン突然変異体(AspB28−ヒトインスリン)である。この突然変異も多量体の形成を低減する。したがって、結合基が28位に位置する(すなわち、N−結合グリコシル化部位を得るためにB28位のプロリンがアスパラギンにより置換されている)、またはオリゴ糖もしくはグリカンがB28もしくはB29位のアミノ酸に化学的にコンジュゲート化されている(例えば、29位のリシンまたは28位のリシンにコンジュゲート化されている)、本明細書に開示されているグリコシル化インスリンは、多量体を形成する能力の低減を示し、したがって即効性プロファイルを示しうる。幾つかの実施形態においては、B28および/またはB29位の突然変異は該インスリンポリペプチド内の他の位置の1以上の突然変異を伴う。例えば、インスリン・グルリシン(glulisine)(APIDRA)は、B3位のアスパラギンがリシン残基により置換されており、B29位のリシンがグルタミン酸残基により置換されている、更にもう1つの迅速に作用するインスリン突然変異体(LysB3GluB29−ヒトインスリン)である。この類似体はB3位のリシン残基においてオリゴ糖またはグリカンにコンジュゲート化(結合)されうる。
種々の実施形態においては、インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、ヒトインスリンから変化した等電点を有する。幾つかの実施形態においては、等電点の変化は、インスリンA鎖ペプチドのN末端および/またはインスリンB鎖ペプチドのC末端に1以上のアルギニン、リシンまたはヒスチジン残基を付加することにより達成される。そのようなインスリンポリペプチドの例には、ArgA0−ヒトインスリン、ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、ArgA0ArgB31ArgB32−ヒトインスリンおよびArgA0GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリンが含まれる。更なる例としては、インスリン・グラルジン(glargine)(LANTUS)は、AsnA21がグリシンにより置換されており、2つのアルギニン残基がBペプチドのC末端に共有結合している、典型的な長時間作用性インスリン類似体である。これらのアミノ酸変化の効果は、該分子の等電点を変化させて、それにより、酸性pH(例えば、pH4〜6.5)で可溶性であり生理的pHで不溶性である分子を生成することであった。インスリン・グラルジンの溶液を筋肉内に注射すると、該溶液のpHは中和され、インスリン・グラルジンは微小沈殿物を形成し、該微小沈殿物は、注射の24時間にわたってインスリン・グラルジンをゆっくり放出し、この場合、顕著なインスリンピークは生じず、したがって、低血糖を誘導するリスクの低減が示される。このプロファイルは、患者の基礎インスリンを供与する1日1回の投与を可能にする。したがって、幾つかの実施形態においては、該インスリン類似体は、A21位のアミノ酸がグリシンであるA鎖ペプチド、ならびにB31およびB32位のアミノ酸がアルギニンであるB鎖ペプチドを含む。本開示はこれらの突然変異の単一および複数の組合せの全て、ならびに本明細書に記載されている任意の他の突然変異(例えば、GlyA21−ヒトインスリン、GlyA21ArgB31−ヒトインスリン、ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、ArgB31−ヒトインスリン)を含む。
種々の実施形態においては、インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体はトランケート化(末端切断)されている。例えば、ある実施形態においては、B鎖ペプチドは少なくともB1、B2、B3、B26、B27、B28、B29またはB30を欠く。特定の実施形態においては、B鎖ペプチドは残基の組合せを欠く。例えば、B鎖は、アミノ酸残基B1−B2、B1−B3、B1−B4、B29−B30、B28−B30、B27−B30および/またはB26−B30を欠くようにトランケート化されうる。幾つかの実施形態においては、これらの欠失および/またはトランケート化は、前記インスリン類似体のいずれかにも(例えば、限定的なものではないが、des(B29)−インスリン・リスプロ(lispro)、des(B30)−インスリン・アスパルト(aspart)などを得るために)適用される。
幾つかの実施形態においては、インビトログリコシル化またはインビボグリコシル化インスリン類似体はA鎖ペプチドまたはBペプチドのNまたはC末端に追加的なアミノ酸残基を含有する。幾つかの実施形態においては、1以上のアミノ酸残基はA0、A22、B0および/B31位に位置する。幾つかの実施形態においては、1以上のアミノ酸残基は0位に位置する。幾つかの実施形態においては、1以上のアミノ酸残基はA22位に位置する。幾つかの実施形態においては、1以上のアミノ酸残基はB0位に位置する。幾つかの実施形態においては、1以上のアミノ酸残基はB31位に位置する。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体はA0、A22、B0またはB31位にいずれの追加的なアミノ酸残基をも含まない。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体のアミド化アミノ酸の1以上が酸性アミノ酸または別のアミノ酸で置換されている。例えば、グリコシル化位置以外の位置のアスパラギンはアスパラギン酸またはグルタミン酸または別の残基で置換されうる。同様に、グルタミンはアスパラギン酸またはグルタミン酸で置換されうる。特に、AsnA18、AsnA21もしくはAsnB3またはそれらの残基の任意の組合せはアスパラギン酸またはグルタミン酸により置換されうる。GlnA15もしくはGlnB4またはそれらの両方はアスパラギン酸またはグルタミン酸または別の残基により置換されうる。特定の実施形態においては、該インスリン類似体はA21位のアスパラギン酸または別の残基、あるいはB3位のアスパラギン酸または別の残基、あるいはそれらの両方を有する。
分子の生物活性を維持させたまま、インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体における更に他のアミノ酸を他のアミノ酸で置換することが可能である、と当業者は認識するであろう。例えば、限定的なものではないが、以下の修飾も当技術分野で広く受け入れられている:アスパラギン酸でのB10位のヒスチジン残基の置換(HisB10からAspB10へ);アスパラギン酸でのB1位のフェニルアラニン残基の置換(PheB1からAspB1へ);アラニンでのB30位のトレオニン残基の置換(ThrB30からAlaB30へ);アラニンでのB26位のチロシン残基の置換(TyrB26からAlaB26へ);およびアスパラギン酸でのB9位のセリン残基の置換(SerB9からAspB9へ)。
種々の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、延長した作用プロファイルを有する。例えば、ある実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は脂肪酸でアシル化されうる。すなわち、該インスリン類似体上のアミノ基と該脂肪酸のカルボン酸基との間でアミド結合が形成される。該アミノ基は該インスリン類似体のN末端アミノ酸のアルファ−アミノ基であることが可能であり、あるいは該インスリン類似体のリシン残基のイプシロン−アミノ基であることが可能である。該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、野生型ヒトインスリンに存在する3つのアミノ基の1以上においてアシル化されることが可能であり、あるいは野生型ヒトインスリン配列内に導入されたリシン残基上でアシル化されることが可能である。特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体はB1位においてアシル化されうる。ある実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体はB29位においてアシル化されうる。ある実施形態においては、該脂肪酸は、ミリスチン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、ヘプタデシル酸(C17)およびステアリン酸(C18)から選択される。例えば、インスリン・デテミル(detemir)(LEVEMIR)は、ThrB30が欠失しておりC14脂肪酸鎖(ミリスチン酸)がγEリンカーを介してLysB29に結合している長時間作用性インスリン突然変異体であり、インスリン・デグルデック(degludec)は、ThrB30が欠失しておりC16脂肪酸鎖(パルミチン酸)がγEリンカーを介してLysB29に結合している長時間作用性インスリン突然変異体である。
1以上のN−結合グリコシル化部位を含むインビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体分子は、4−アミノフェニルアラニンへのA19、B16またはB25位のアミノ酸の修飾、あるいは5、A8、A9、A10、A12、A13、A14、A15、A17、A18、A21、B1、B2、B3、B4、B5、B9、B10、B13、B14、B16、B17、B18、B20、B21、B22、B23、B26、B27、B28、B29およびB30から選択される位置における1以上のアミノ酸置換、あるいはB1〜4およびB26〜30の位置のいずれか又は全ての欠失を含む天然A鎖および/またはB鎖の修飾誘導体を含むヘテロ二量体類似体および一本鎖類似体を含む。インスリン類似体の例は、例えば、公開国際出願WO9634882、WO95516708;WO20100080606、WO2009/099763およびWO2010080609、米国特許第6,630,348号、およびKristensenら,Biochem.J.305:981−986(1995)(それらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に見出されうる。更に詳細な実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体はアシル化および/またはペジル化(PEG化)されうる。
幾つかの実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体のAペプチドのN末端、BペプチドのN末端、B29位のLysのイプシロン−アミノ基または任意の他の利用可能なアミノ基は、一般式:
Figure 2014525922
(式中、Xは該インスリンポリペプチドのアミノ基であり、Rは水素またはC1−30アルキル基であり、該インスリン類似体は1以上のN−結合グリコシル化部位を含む)の脂肪酸部分に共有結合している。いくつかの実施形態においては、RはC1−20アルキル基、C3−19アルキル基、C5−18アルキル基、C6−17アルキル基、C8−16アルキル基、C10−15アルキル基またはC12−14アルキル基である。ある実施形態においては、該インスリンポリペプチドはA1位の部分にコンジュゲート化(結合)される。特定の実施形態においては、該インスリンポリペプチドはB1位の部分にコンジュゲート化される。特定の実施形態においては、該インスリンポリペプチドはB29位のイプシロン−アミノ基の部分にコンジュゲート化される。特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体のB28位はLysであり、LysB28のイプシロン−アミノ基が該脂肪酸部分にコンジュゲート化される。特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体のB3位はLysであり、LysB3のイプシロン−アミノ基が該脂肪酸部分にコンジュゲート化される。幾つかの実施形態においては、該脂肪酸鎖は8〜20炭素長である。特定の実施形態においては、該脂肪酸はオクタン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ウンデカン酸(C11)、ドデカン酸(C12)またはトリデカン酸(C13)である。ある実施形態においては、該脂肪酸はミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)またはアラキジン酸(C20)である。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含み、あるいは該アスパラギン残基がB28位に存在しグリコシル化インスリン類似体がdesB30である場合にN−結合グリコシル化部位を構成していたアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:LysB28ProB29−ヒトインスリン(インスリン・リスプロ(lispro))、AspB28−ヒトインスリン(インスリン・アスパルト(aspart))、LysB3GluB29−ヒトインスリン(インスリン・グルリシン(glulisine))、ArgB31ArgB32−ヒトインスリン(インスリン・グラルジン(glargine))、NεB29−ミリストイル−des(B30)−ヒトインスリン(インスリン・デテミル(detemir))、AlaB26−ヒトインスリン、AspB1−ヒトインスリン、ArgA0−ヒトインスリン、AspB1GluB13−ヒトインスリン、GlyA21−ヒトインスリン、GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、ArgA0ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、ArgA0GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、des(B30)−ヒトインスリン、des(B27)−ヒトインスリン、des(B28−B30)−ヒトインスリン、des(B1)−ヒトインスリン、des(B1−B3)−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含み、あるいは該アスパラギン残基がB28位に存在しグリコシル化インスリン類似体がdesB30である場合にN−結合グリコシル化部位を構成していたアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−パルミトイル−ヒトインスリン、NεB29−ミリストイル−ヒトインスリン、NεB28−パルミトイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ミリストイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−パルミトイル−des(B30)−ヒトインスリン、NεB30−ミリストイル−ThrB29LysB30−ヒトインスリン、NεB30−パルミトイル−ThrB29LysB30−ヒトインスリン、NεB29−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含み、あるいは該アスパラギン残基がB28位に存在しグリコシル化インスリン類似体がdesB30である場合にN−結合グリコシル化部位を構成していたアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−オクタノイル−ヒトインスリン、NεB29−ミリストイル−GlyA21ArgB31ArgB31−ヒトインスリン、NεB29−ミリストイル−GlyA21GlnB3ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−ミリストイル−ArgA0GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−ArgA0GlyA21GlnB3ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−ミリストイル−ArgA0GlyA21AspB3ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−ミリストイル−ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−ミリストイル−ArgA0ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−オクタノイル−GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−オクタノイル−GlyA21GlnB3ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−オクタノイル−ArgA0GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−オクタノイル−ArgA0GlyA21GlnB3ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−オクタノイル−ArgB0GlyA21AspB3ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−オクタノイル−ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−オクタノイル−ArgA0ArgB31ArgB32−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリンポリペプチドの1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB28−ミリストイル−GlyA21LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB28−ミリストイル−GlyA21GlnB3LysB28ProB30ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB28−ミリストイル−ArgA0GlyA21LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB28−ミリストイル−ArgA0GlyA21GlnB3LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB28−ミリストイル−ArgA0GlyA21AspB3LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB28−ミリストイル−LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB28−ミリストイル−argA0LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB28−オクタノイル−GlyA21LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB28−オクタノイル−GlyA21GlnB3LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB28−オクタノイル−ArgA0GlyA21LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB28−オクタノイル−ArgA0GlyA21GlnB3LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB28−オクタノイル−ArgA0GlyA21AspB3LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB28−オクタノイル−LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB28−オクタノイル−ArgA0LysB28ProB29ArgB31ArgB32−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−トリデカノイル−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−トリデカノイル−GlyA21−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−GlyA21−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−GlyA21−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−GlyA21−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−トリデカノイル−GlyA21GlnB3−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−GlyA21GlnB3−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−GlyA21−GlnB3−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−GlyA21−GlnB3−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−トリデカノイル−AlaA21−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−AlaA21−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−AlaA21−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−AlaA21−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−トリデカノイル−AlaA21−GlnB3−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−AlaA21GlnB3−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−AlaA21GlnB3−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−AlaA21GlnB3−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−トリデカノイル−GlnB3−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−GlnB3−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−GlnB3−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−GlnB3−des(B30)−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含み、あるいは該アスパラギン残基がB28位に存在しグリコシル化インスリン類似体がdesB30である場合にN−結合グリコシル化部位を構成していたアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−トリデカノイル−GlyA21−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−GlyA21−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−GlyA21−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−GlyA21−ヒトインスリン、NεB29−トリデカノイル−AlaA21−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−AlaA21−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−AlaA21−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−AlaA21−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−トリデカノイル−GlyA21GlnB3−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−GlyA21GlnB3−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−GlyA21GlnB3−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−GlyA21GlnB3−ヒトインスリン、NεB29−トリデカノイル−AlaA21GlnB3−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−AlaA21GlnB3−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−AlaA21GlnB3−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−AlaA21GlnB3−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−トリデカノイル−GlnB3−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−GlnB3−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−GlnB3−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−GlnB3−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−トリデカノイル−GluB30−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−GluB30−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−GluB30−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−GluB30−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−トリデカノイル−GlyA21GluB30−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−GlyA21GluB30−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−GlyA21GluB30−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−GlyA21GluB30−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−トリデカノイル−GlyA21GlnB3GluB30−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−GlyA21GlnB3GluB30−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−GlyA21GlnB3GluB30−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−GlyA21GlnB3GluB30−ヒトインスリン、NεB29−トリデカノイル−AlaA21GluB30−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−AlaA21GluB30−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−AlaA21GluB30−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−AlaA21GluB30−ヒトインスリン、NεB29−トリデカノイル−AlaA21GlnB3GluB30−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−AlaA21GlnB3GluB30−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−AlaA21GlnB3GluB30−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−AlaA21GlnB3GluB30−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−トリデカノイル−GlnB3GluB30−ヒトインスリン、NεB29−テトラデカノイル−GlnB3GluB30−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−GlnB3GluB30−ヒトインスリン、NεB29−ドデカノイル−GlnB3GluB30−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−ホルミル−ヒトインスリン、NαB1−ホルミル−ヒトインスリン、NαA1−ホルミル−ヒトインスリン、NεB29−ホルミル−NαB1−ホルミル−ヒトインスリン、NεB29−ホルミル−NαA1−ホルミル−ヒトインスリン、NαA1−ホルミル−NαB1−ホルミル−ヒトインスリン、NεB29−ホルミル−NαA1−ホルミル−NαB1−ホルミル−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−アセチル−ヒトインスリン、NαB1−アセチル−ヒトインスリン、NαA1−アセチル−ヒトインスリン、NεB29−アセチル−NαB1−アセチル−ヒトインスリン、NεB29−アセチル−NαA1−アセチル−ヒトインスリン、NαA1−アセチル−NαB1−アセチル−ヒトインスリン、NεB29−アセチル−NαA1−アセチル−NαB1−アセチル−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−プロピオニル−ヒトインスリン、NαB1−プロピオニル−ヒトインスリン、NαA1−プロピオニル−ヒトインスリン、NεB29−アセチル−NαB1−プロピオニル−ヒトインスリン、NεB29−プロピオニル−NαA1−プロピオニル−ヒトインスリン、NαA1−プロピオニル−NαB1−プロピオニル−ヒトインスリン、NεB29−プロピオニル−NαA1−プロピオニル−NαB1−プロピオニル−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、本開示のインスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−ブチリル−ヒトインスリン、NαB1−ブチリル−ヒトインスリン、NαA1−ブチリル−ヒトインスリン、NεB29−ブチリル−NαB1−ブチリル−ヒトインスリン、NεB29−ブチリル−NαA1−ブチリル−ヒトインスリン、NαA1−ブチリル−NαB1−ブチリル−ヒトインスリン、NεB29−ブチリル−NαA1−ブチリル−NαB1−ブチリル−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−ペンタノイル−ヒトインスリン、NαB1−ペンタノイル−ヒトインスリン、NαA1−ペンタノイル−ヒトインスリン、NεB29−ペンタノイル−NαB1−ペンタノイル−ヒトインスリン、NεB29−ペンタノイル−NαA1−ペンタノイル−ヒトインスリン、NαA1−ペンタノイル−NαB1−ペンタノイル−ヒトインスリン、NεB29−ペンタノイル−NαA1−ペンタノイル−NαB1−ペンタノイル−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−ヘキサノイル−ヒトインスリン、NαB1−ヘキサノイル−ヒトインスリン、NαA1−ヘキサノイル−ヒトインスリン、NεB29−ヘキサノイル−NαB1−ヘキサノイル−ヒトインスリン、NεB29−ヘキサノイル−NαA1−ヘキサノイル−ヒトインスリン、NαA1−ヘキサノイル−NαB1−ヘキサノイル−ヒトインスリン、NεB29−ヘキサノイル−NαA1−ヘキサノイル−NαB1−ヘキサノイル−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−ヘプタノイル−ヒトインスリン、NαB1−ヘプタノイル−ヒトインスリン、NαA1−ヘプタノイル−ヒトインスリン、NεB29−ヘプタノイル−NαB1−ヘプタノイル−ヒトインスリン、NεB29−ヘプタノイル−NαA1−ヘプタノイル−ヒトインスリン、NαA1−ヘプタノイル−NαB1−ヘプタノイル−ヒトインスリン、NεB29−ヘプタノイル−NαA1−ヘプタノイル−NαB1−ヘプタノイル−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NαB1−オクタノイル−ヒトインスリン、NαA1−オクタノイル−ヒトインスリン、NεB29−オクタノイル−NαB1−オクタノイル−ヒトインスリン、NεB29−オクタノイル−NαA1−オクタノイル−ヒトインスリン、NαA1−オクタノイル−NαB1−オクタノイル−ヒトインスリン、NεB29−オクタノイル−NαA1−オクタノイル−NαB1−オクタノイル−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−ノナノイル−ヒトインスリン、NαB1−ノナノイル−ヒトインスリン、NαA1−ノナノイル−ヒトインスリン、NεB29−ノナノイル−NαB1−ノナノイル−ヒトインスリン、NεB29−ノナノイル−NαA1−ノナノイル−ヒトインスリン、NαA1−ノナノイル−NαB1−ノナノイル−ヒトインスリン、NεB29−ノナノイル−NαA1−ノナノイル−NαB1−ノナノイル−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−デカノイル−ヒトインスリン、NαB1−デカノイル−ヒトインスリン、NαA1−デカノイル−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−NαB1−デカノイル−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−NαA1−デカノイル−ヒトインスリン、NαA1−デカノイル−NαB1−デカノイル−ヒトインスリン、NεB29−デカノイル−NαA1−デカノイル−NαB1−デカノイル−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB28−ホルミル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαB1−ホルミル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−ホルミル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ホルミル−NαB1−ホルミル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ホルミル−NαA1−ホルミル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−ホルミル−NαB1−ホルミル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ホルミル−NαA1−ホルミル−NαB1−ホルミル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB29−アセチル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαB1−アセチル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−アセチル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−アセチル−NαB1−アセチル−LysB28ProB29−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB28−アセチル−NαA1−アセチル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−アセチル−NαB1−アセチル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−アセチル−NαA1−アセチル−NαB1−アセチル−LysB28ProB29−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB28−プロピオニル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαB1−プロピオニル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−プロピオニル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−プロピオニル−NαB1−プロピオニル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−プロピオニル−NαA1−プロピオニル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−プロピオニル−NαB1−プロピオニル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−プロピオニル−NαA1−プロピオニル−NαB1−プロピオニル−LysB28ProB29−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB28−ブチリル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαB1−ブチリル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−ブチリル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ブチリル−NαB1−ブチリル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ブチリル−NαA1−ブチリル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−ブチリル−NαB1−ブチリル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ブチリル−NαA1−ブチリル−NαB1−ブチリル−LysB28ProB29−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB28−ペンタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαB1−ペンタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−ペンタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ペンタノイル−NαB1−ペンタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ペンタノイル−NαA1−ペンタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−ペンタノイル−NαB1−ペンタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ペンタノイル−NαA1−ペンタノイル−NαB1−ペンタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB28−ヘキサノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαB1−ヘキサノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−ヘキサノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ヘキサノイル−NαB1−ヘキサノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ヘキサノイル−NαA1−ヘキサノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−ヘキサノイル−NαB1−ヘキサノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ヘキサノイル−NαA1−ヘキサノイル−NαB1−ヘキサノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB28−ヘプタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαB1−ヘプタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−ヘプタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ヘプタノイル−NαB1−ヘプタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ヘプタノイル−NαA1−ヘプタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−ヘプタノイル−NαB1−ヘプタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ヘプタノイル−NαA1−ヘプタノイル−NαB1−ヘプタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB28−オクタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαB1−オクタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−オクタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−オクタノイル−NαB1−オクタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−オクタノイル−NαA1−オクタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−オクタノイル−NαB1−オクタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−オクタノイル−NαA1−オクタノイル−NαB1−オクタノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB28−ノナノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαB1−ノナノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−ノナノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ノナノイル−NαB1−ノナノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ノナノイル−NαA1−ノナノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−ノナノイル−NαB1−ノナノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−ノナノイル−NαA1−ノナノイル−NαB1−ノナノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB28−デカノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαB1−デカノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−デカノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−デカノイル−NαB1−デカノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−デカノイル−NαA1−デカノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NαA1−デカノイル−NαB1−デカノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン、NεB28−デカノイル−NαA1−デカノイル−NαB1−デカノイル−LysB28ProB29−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを更に含む。
特定の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、以下のインスリン類似体の1つの、突然変異および/または化学修飾を含む:NεB29−ペンタノイル−GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NαB1−ヘキサノイル−GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NαA1−ヘプタノイル−GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−オクタノイル−NαB1−オクタノイル−GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−プロピオニル−NαA1−プロピオニル−GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NαA1−アセチル−NαB1−アセチル−GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−ホルミル−NαA1−ホルミル−NαB1−ホルミル−GlyA21ArgB31ArgB32−ヒトインスリン、NεB29−ホルミル−des(B26)−ヒトインスリン、NαB1−アセチル−AspB28−ヒトインスリン、NεB29−プロピオニル−NαA1−プロピオニル−NαB1−プロピオニル−AspB1AspB3AspB21−ヒトインスリン、NεB29−ペンタノイル−GlyA21−ヒトインスリン、NαB1−ヘキサノイル−GlyA21−ヒトインスリン、NαA1−ヘプタノイル−GlyA21−ヒトインスリン、NεB29−オクタノイル−NαB1−オクタノイル−GlyA21−ヒトインスリン、NεB29−プロピオニル−NαA1−プロピオニル−GlyA21−ヒトインスリン、NαA1−アセチル−NαB1−アセチル−GlyA21−ヒトインスリン、NεB29−ホルミル−NαA1−ホルミル−NαB1−ホルミル−GlyA21−ヒトインスリン、NεB29−ブチリル−des(B30)−ヒトインスリン、NαB1−ブチリル−des(B30)−ヒトインスリン、NαA1−ブチリル−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−ブチリル−NαB1−ブチリル−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−ブチリル−NαA1−ブチリル−des(B30)−ヒトインスリン、NαA1−ブチリル−NαB1−ブチリル−des(B30)−ヒトインスリン、NεB29−ブチリル−NαA1−ブチリル−NαB1−ブチリル−des(B30)−ヒトインスリン。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、N−結合グリコシル化部位を構成するアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含み、あるいは該アスパラギン残基がB28位に存在しグリコシル化インスリン類似体がdesB30である場合にN−結合グリコシル化部位を構成していたアスパラギン残基に結合している本明細書に開示されている少なくとも1つのN−グリカンを含む。
したがって、特定の実施形態においては、該インスリン分子が、少なくとも1つのアシル基、および例えばAsn残基において又はNH、COOH、SHもしくはHisのイミジゾールに結合している少なくとも1つのN−グリカンを更に含む限り、該ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体は、1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸置換および/または欠失を含むA鎖ペプチドまたはB鎖ペプチドまたはそれらの類似体を含む。更に詳細な実施形態においては、該インスリン分子が、例えばAsn残基において又はNH、COOH、SHもしくはHisのイミジゾールに結合している少なくとも1つのN−グリカンを更に含む限り、該ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体は、前記アシル化類似体のいずれか、あるいは1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸置換および/または欠失を含むそれらの類似体を含む。
該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、前記突然変異および/または化学修飾のいずれかを含む、非ヒトインスリン(例えば、ブタインスリン、ウシインスリン、ウサギインスリン、ヒツジインスリンなど)の修飾形態を更に含む。これらの及び他の修飾インスリン分子は米国特許第6,906,028号、第6,551,992号、第6,465,426号、第6,444,641号、第6,335,316号、第6,268,335号、第6,051,551号、第6,034,054号、第5,952,297号、第5,922,675号、第5,747,642号、第5,693,609号、第5,650,486号、第5,547,929号、第5,504,188号、第5,474,978号、第5,461,031号および第4,421,685号、ならびに米国特許第7,387,996号、第6,869,930号、第6,174,856号、第6,011,007号、第5,866,538号および第5,750,497号(それらの全開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に詳細に記載されている。
種々の実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は3つの野生型ジスルフィド架橋(すなわち、1つ目はA鎖の7位とB鎖の7位との間、2つ目はA鎖の20位とB鎖の19位との間、および3つ目はA鎖の6位と11位との間)を含む。
幾つかの実施形態においては、該インビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、インスリン受容体に対するそのアフィニティを低減するように修飾され、および/または突然変異している。特定の理論に拘泥するものではないが、修飾(例えば、アシル化)または突然変異によるインスリン分子の受容体アフィニティの低減は、インスリン分子が血液から消失する速度を減少させうると考えられている。幾つかの実施形態においては、低減したインビトロインスリン受容体アフィニティはインビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体に関する優れたインビボ活性と解釈される。
IV.インスリンタンパク質工学および糖設計の統合
a.薬物動態学的(PK)/薬力学的(PD)改善
患者におけるインスリンの基礎レベルを供与する1日1回投与のインスリン類似体であるインスリン・グラルジン(glargine)の導入により、I型糖尿病に関するクオリティ・オブ・ライフは有意に改善された。I型糖尿病患者は反復的な血液モニタリングおよび皮下注射に耐えなければならないため、注射の頻度の減少は糖尿病治療における歓迎される進歩であろう。いずれの新規インスリン治療剤に関しても、1日1回の注射を達成するための薬物動態学的プロファイルの改善が大いに求められている。実際、最近、月1回投与のインスリンが動物モデルにおいて報告された(Guptaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 107:13246(2010);米国公開出願第20090090258818号)。インスリンのPKプロファイルを改善するための多数の方法が研究されているが、本明細書に開示されているインビトログリコシル化またはインビボN−グリコシル化インスリン類似体は、他の手段では達成し得ない利益を糖尿病患者に与えうる。
治療用タンパク質は循環からの複数のクリアランス方式を有する。標的媒介性クリアランスは治療用タンパク質と受容体または標的分子との相互作用により引き起こされる。受容体または標的分子との嵌合の後、リガンド−受容体複合体はエンドサイトーシスにより細胞内に導かれ、ついで、分解のためにリソソームへと標的化され、および/またはエンドソーム内のプロテアーゼにより分解される。循環からのタンパク質のクリアランスのもう1つのメカニズムは腎クリアランスである。糸球体は腎臓の主要血液濾過単位である。インスリンを含む約50kDa未満の治療用タンパク質は、しばしば、糸球体において濾過されて、尿中に排泄される。治療用タンパク質のサイズを約50kDa以上に増加させると、糸球体における腎クリアランスは低下する。また、全体的に負の電荷を有する循環タンパク質は糸球体フィルター内の膜との反発を引き起こし、それによりクリアランスを低減する。また、末端シアル酸を欠く循環内の糖タンパク質は肝細胞膜におけるアシアロ糖タンパク質(Ashwell−Morell)受容体と相互作用しうる。アシアル酸化タンパク質は肝臓内のレクチン媒介性クリアランスによりPKの低減を示しうる。タンパク質クリアランスのためのもう1つの主要経路は循環内のタンパク質分解である。分解メカニズムを低下させるための手段(例えば、DPIV消化に対して抵抗性となるように突然変異したGLP−1類似体を参照されたい)は全体的なPKおよび効力プロファイルに大きな影響を及ぼしうる。インスリンへの直鎖状ポリシアル酸重合体のインビトロコンジュゲート化はインスリンのPKプロファイルを改善(拡張)することが示されている(Zhangら,J.Diabetes Sci.Technol.4:532(2010);Timofeevら,Acta Crystallogr.Sect.F.Struct.Biol.Cryst.Commun.66:259(2010);Bezuglovら,Bioorg.Khim.35:274(2009);Jainら,Biochim.Biophys.Acta 1622:42(2003))。Satoら,J.Am.Chem.Soc.126:14013(2004)は、グルタミン残基にコンジュゲート化された2個および3個のシアリル−N−アセチルラクトサミンを示す樹枝状構造を有するインスリン類似体が、拡張されたPKプロファイルを有していたことを開示している。しかし、種々の重合体および樹枝状構造の構築ならびにインビトロコンジュゲート化は複雑であり、高い経費を要しうる。
本明細書に示されているとおり、B鎖内にP28N置換を有するインスリン類似体は、末端シアル酸残基を伴うN−グリカンを有する糖タンパク質を産生するように糖操作されたピチア・パストリス(Pichia pastoris)株において発現された。ノイラミニダーゼ処理後、末端ガラクトースを有するインスリンが得られた。該シアル酸化およびガラクトシル化インスリン類似体前駆体タンパク質をエンドペプチダーゼLysCで処理して、des(B30)形態を得た。該des(B30)インスリン類似体はインスリン類似体において活性であるが、天然インスリンと比較して低減した効力を有し、B(Thr30)を置換するトリプシン媒介性ペプチド転移反応を回避する。また、組換えヒトインスリン(NOVOLIN)をLysCで処理して、グリコシル化インスリンサンプルに対する比較体としてのdes(B30)形態を得た。図3はインスリン負荷試験(TTT)における4つのインスリン類似体サンプルおよびビヒクル(インスリンを欠くバッファー)の薬物動態学的特性を示す。それらのN−グリコシル化インスリンサンプルは共に、NOVOLIN des(B30)と比較して改善または拡張されたPKプロファイルを示した。該シアル酸化インスリンサンプル(GS6.0)およびガラクトシル化インスリンサンプル(GS5.0)は、成熟NOVOLINと比較してAUCにおける統計的に有意な改善を示した。更に、シアル酸末端グリコフォームは、ガラクトース末端グリコフォームと比較して一層大きなAUC測定値を示した。
インビトログルコースレベルをマウスITTにおいてモニターしたところ、該シアル酸末端グリコフォームおよびガラクトース末端グリコフォームは共に、インスリン受容体における活性を保有していた(図4)。図3に示されているAUC測定値とは異なり、NOVOLIN des(B30)は、未処理NOVOLINと比較して遥かに低減したグルコース低下活性を示した。重要なのは処理NOVOLINと未処理NOVOLINとの間の製剤化バッファー組成物における相違であり、これはインビボ活性に影響を及ぼしうる。全てのdes(B30)サンプルのための製剤化バッファーは同一であり、したがって、NOVOLIN des(B30)とのN−グリコシル化インスリンの比較は両方のN−グリコシル化サンプルに関するグルコース低下活性の増強を示した。実際、シアル酸末端グリコフォームは、全てのdes(B30)サンプルのなかで最長のグルコース低下活性を示し、これはAUC(曲線下面積)測定値の改善に関連づけられうる。総合すると、図3および4からのデータは、インスリンB鎖P28N置換がインスリン受容体におけるインスリン活性の保持に適合していることを示しているだけでなく、それらの種々のグリコフォームがインスリンのインビボPK/PDプロファイルを有利に改変することをも示している。
更なるタンパク質工学および糖設計は、更に改善または修飾されたPK/PDプロファイルを有するインビトロまたはインビボグリコシル化インスリン類似体を与えうる。例えば、該インスリン類似体への追加的なシアル酸化N−グリカンの付加はAUC測定値の改善と共にインスリン類似体のpIを更に低下させうる。もう1つの実施形態においては、B鎖のB28位のアスパラギンに結合したN−グリカンを有するN−グリコシル化インスリン類似体の提供および該N−グリカンに結合したシアル酸の量の増加もAUCを増加させうる。これは、トリシアル酸化およびテトラシアル酸化グリコフォームを得るために多アンテナグリカンを付加することにより達成されうる。シアル酸は、α−2,6およびα−2,3結合シアル酸に加えて、α−2,8結合でも付加されうる。シアル酸以外のグリコフォームも、受容体媒介性クリアランスまたは分解の低減により、PKプロファイルを改善または修飾しうる。
タンパク質半減期の延長およびAUCの増加のほかに、N−グリカン、特に、インスリン類似体のB28またはB29位に位置するN−グリカンは、六量体を形成する該インスリン類似体の能力を低減することにより、皮下注射後のバイオアベイラビリティの速度を増加させうる。したがって、これらの位置のN−グリカンは、迅速に作用するインスリン類似体を与えうる。N−グリカンのシア(sheer)サイズ(1〜2kDを超える)により、またはシアル酸によるN−グリカンへの負荷電の付加により、極めて迅速に作用するインスリンを与えるN−グリカンが構築されうる。
したがって、特定の実施形態においては、天然A鎖、天然B鎖または配列番号162〜254に示されている配列の群から選択されるアミノ酸配列を有するAおよびB鎖ペプチドの任意の組合せを含む、天然インスリンのPKプロファイルおよび/またはPDプロファイルと比較して修飾されたPKプロファイルおよび/またはPDプロファイルを有するヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化ンスリン類似体を提供し、ここで、該ヘテロ二量体または一本鎖インスリン類似体における少なくとも1つのアスパラギン残基は、非還元末端に少なくとも1つの末端シアル酸残基を含むN−グリカンに結合している。もう1つの実施形態においては、天然A鎖ペプチドおよびB鎖ペプチド、あるいは1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸置換および/または欠失を含むそれらの類似体を含む、天然インスリンのPKプロファイルおよび/またはPDプロファイルと比較して修飾されたPKプロファイルおよび/またはPDプロファイルを有するヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ここで、該インスリン分子は、非還元末端に少なくとも1つの末端シアル酸残基を含む少なくとも1つのN−グリカンに結合しており、例えば、該分子の、少なくとも1つのNH、COOH、SHまたはHisのイミジゾール環は、少なくとも1つの末端シアル酸残基を含むN−グリカンに結合している。
b.IRへの結合の改変
インスリンとインスリン受容体(IR)との相互作用はグルコースの取り込みに決定的に重要である。前記のとおり、受容体媒介性エンドサイトーシスはインスリンクリアランスのためのメカニズムの1つである。受容体生物学の一般的概念に基づけば、インスリンとIRとの間の極めて密接な相互作用は受容体媒介性エンドサイトーシスの増強およびPKの低下を招きうる。あるいは、IRへの結合アフィニティの低下はPKを拡張させうるが、結合アフィニティが低下しすぎると、グルコース取り込みの低下も生じうる。進化は、膵臓によるインスリン放出の際の迅速なグルコース取り込みを生じさせるために内因性インスリンに関するこれらの力の釣り合いを保っている。しかし、皮下注射投与は結合関係の改変を要しうる。循環内の長時間作用性インスリンは、低血糖を避けるために、IRへのインスリン結合の低減を要しうる。
N−グリカンは、IR結合をモジュレーションするための手段となる。図5に見られるとおり、該N−グリコシル化インスリンサンプルはN−グリカン依存的IR結合プロファイルを示した。ガラクトース末端N−グリカンを有するインスリンサンプルは、非グリコシル化インスリンに類似したインビトロIR結合を示したが、シアル酸末端インスリンN−グリカンを有するインスリンサンプルはIRへの結合活性の低下を示した。同様に、インビトロIRシグナリングアッセイは、他のサンプルと比較して、シアル酸末端N−グリカンのインスリンサンプルの活性の低下を示した。該シアル酸化N−グリカンは、非シアル酸化N−グリカンを有するインスリン類似体と比較して、該インスリンのPKを拡張した。しかし、そのPKの拡張はIRにおける結合の低下により相殺される。これらのデータは、N−グリコシル化インスリン類似体のIR結合活性が、B28位のアスパラギンに結合した特定のグリコフォームにより修飾されうることを示している。本明細書に示されている実施例(具体例)を考慮すると、インスリン−IR相互作用のモジュレーションは、インビボのN−結合グリコシル化により1以上のN−グリカンが該分子に付加されたグリコシル化インスリン類似体を得ることにより、あるいは該N−グリカンの1以上を該インスリン分子にインビトロで結合させることにより、あるいはそれらの両方の組合せにより達成されうる。
c.IGF−1Rへの結合の改変
インスリン様増殖因子1(IGF−1)受容体(IGF−1R)は、細胞増殖を招く分裂促進性受容体である。内因性インスリンおよび治療用インスリンはこの受容体に結合することが知られている。多数の癌細胞は異常細胞増殖のためにIGF−1Rを利用するため、治療用インスリンは、IGF−1Rに結合し細胞増殖を誘導するそれらの能力に関して試験される。高いIGF−1R結合アフィニティを有することはインスリン類似体に不利であると一般にみなされている。インスリン・グラルジン(glargine)は、FDAにより承認されているものの、ヒトインスリンより遥かに高いアフィニティでIGF−1Rに結合する。インスリン・グラルジンは10年前から市販されており、現在、インスリン・グラルジンを使用している患者が癌のリスクの増大を有するという決定的な証拠は何ら存在しないようである。しかし、患者は長期にわたってインスリン・グラルジン治療を受け続けているため、癌リスクを更に理解するための研究が継続中である。これらの懸念ゆえに、野生型内因性ヒトインスリンの結合アフィニティより有意には大きくないIGF−1R結合アフィニティを有するインスリン類似体を得ることが望ましいであろう。
インスリンがB鎖の末端に実効負電荷を含有する場合、インスリンはIGF−1Rとの相互作用の低減を示すことを、公開されている研究結果は示している(Sliekerら,前掲)。したがって、本発明者らは、シアル酸末端N−グリカンを有するN−グリコシル化インスリン類似体がIGF−1R結合の低減を示すと仮定した。図5において見られるとおり、シアル酸末端N−グリカンを有するN−グリコシル化インスリン類似体は、NOVOLIN(組換えヒトインスリン)またはガラクトース末端N−グリカンを有するN−グリコシル化インスリン類似体より一層低いアフィニティで、IGF−1Rと相互作用する。したがって、N−グリカンの末端の少なくとも1つにシアル酸残基を含むグリコシル化インスリンは、IGF−1Rに対するインスリン・グラルジンのアフィニティより大きくないIGF−1R結合アフィニティを有するグリコシル化インスリン類似体となりうる。特定の実施形態においては、N−グリカンまたはグリカンの末端の少なくとも1つを有するグリコシル化インスリン類似体のアフィニティは、IGF−1Rにおいて、天然インスリンとほぼ同じであるか、または天然インスリンより低い。
d.肝特異的グリコシル化インスリン類似体に対する受容体の同時関与
肝臓は、タンパク質合成、脂質代謝、代謝産物の解毒および排泄ならびに炭水化物変換のような正常生理学における多数の決定的に重要な機能を有する。肝細胞は、これらの機能を行う主要細胞型であり、肝質量の70%以上を構成する。門脈は胃腸管に端を発し、血液の約75%を肝臓へ運び、残りは肝動脈からである。
食後状態では、グルコースレベルは上昇し、膵ベータ細胞はインスリンを分泌する。門脈は血液グルコースおよびインスリンを肝細胞へ運び、それにより、インスリンと細胞表面インスリン受容体との相互作用がグルコース取り込みを招く。インスリンおよびグルコースレベルが循環内で高いままである場合、グルコースはグリコーゲンに変換される。分泌インスリンの大部分は、インスリン受容体との相互作用の後、受容体媒介性エンドサイトーシスにより肝細胞により取り込まれ、残りは腎臓により血液から濾去される。あるいは、分泌インスリン分子は循環系に存在し続けて、筋肉、脂肪細胞または他の組織におけるグルコース取り込みを促進して、細胞代謝を支持しうる。食物摂取後、血液グルコースレベルは細胞グルコース取り込みの作用により低下する。グルコースレベルが低下すると、インスリン分泌は低下し、肝細胞におけるインスリン受容体シグナリングの欠如はグリコーゲン合成を停止させる。絶食状態に入って炭水化物が摂取されないと、低い基礎レベルのインスリンが膵ベータ細胞により分泌されて、血液グルコースを制御する。食物摂取が無ければ、時間が経つにつれて、血液グルコースレベルは正常未満に低下し、膵アルファ細胞はグルカゴンの分泌を増加させうる。グルカゴンは肝細胞に作用して、グリコーゲンの分解およびグルコースの放出を刺激して、細胞代謝を支持する。肝臓内のグリコーゲン貯蔵は、8〜12時間の絶食状態に、血液グルコースの一次源として作用するのに十分である。炭水化物の摂取の後、血液グルコースレベルはグルカゴンの分泌を低下させ、インスリン放出を増加させて、肝臓および他の組織におけるグリコーゲン貯蔵を回復させる。
内因性ボーラス(食後)および基礎(絶食)インスリンは主に肝臓に作用し、肝臓においては、末梢筋肉および脂肪組織と比較して推定2〜3倍過剰なインスリン活性を示す。あるいは、皮下投与治療用インスリンの大部分は筋肉および脂肪組織上のインスリン受容体を関与させ、皮下注射インスリンの僅か1%が肝細胞に到達するに過ぎない(Canfieldら,Endocrinology 90:112(1972))。幾つかの研究からの結果が、末梢作用(例えば、肝臓への脂肪酸および糖新生基質の流動を減少させること)によりインスリンが肝グルコース産生を制御することを主張するために用いられている。一方、他の研究は、末梢組織に対する該ホルモンの間接的作用に加えて、肝グルコース産生の低下に対するインスリンの直接的作用の追加的な重要性を示している。更に、相当な研究が、グルコース負荷後の肝グルコース取り込みを門脈インスリンが有意に増加させうることを強調している。したがって、インスリンの肝作用は、(1)肝グルコース出力をより有効に低下させることにより、および(2)肝臓によるグルコース取り込みを増加させることにより、食後血糖の低下において重要な役割を果たしていることが明らかである。したがって、肝臓に対する治療用インスリンの標的化は内因性インスリンの天然生理学をより厳密に模倣するものあろう(Davisら,J.Diabetes Complications 15:,227(2001))。肝特異的インスリン療法は、末梢高インスリン血症の結果であるアテローム性動脈硬化症、癌、低血糖および他の有害な代謝作用のような現在のインスリン療法の副作用の幾つかを低減しうることが提示されている(Gehoら,J.Diabetes Sci.Technol.3:1451(2009))。更に、最近のデータは、肝特異的インスリン(HDV−I)が、肝刺激に要求される通常のインスリンの用量の1%未満しか要しないことを示している(Gehoら,前掲)。肝特異的インスリンの利点は2つある。第1に、肝臓におけるインスリン作用の増強は、肝グルコース取り込みを増加させながら肝グルコース出力を抑制するはずである。第2に、全身インスリン血症の軽減と共に食後血糖制御の改善が得られ、それにより、後続の低血糖のリスクが低減しうるであろう(Davisら,前掲)。
肝細胞に対するインスリン活性および門脈を介した肝臓へのインスリンの生理的運搬の重要性ゆえに、本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体は肝細胞に対する標的化部分として使用されうる。該N−グリカンは受容体または輸送体のような細胞表面上のタンパク質を標的としうる。肝細胞の場合、アシアロ糖タンパク質受容体、ビオチン受容体および肝胆汁性ABC輸送体は他の組織より高いレベルで発現され、インスリン標的化のための受容体の一例となりうる。
インスリンへのN−グリカンのインビボ付加を可能にするインスリン配列の突然変異は、該インスリン類似体が優先的に肝臓を標的化するのを可能にする。グリカンがN−グリカン構造を有するインビボグリコシル化またはインビトロN−グリコシル化の場合、該インスリン類似体へのN−グリカンの付加は外因性リンカーを必要としないであろう。なぜなら、N−グリカンは、該分子に結合している天然化学構造体だからである。該肝標的化インスリン類似体は、本明細書に記載されている任意のタンパク質工学または糖設計特性を有しうる。該肝標的化インスリンは、N−グリカンがN−結合グリコシル化またはコンジュゲート化により直接的に結合しているインスリン類似体を含む。該インスリンは、プロドラッグ、またはタンパク質の半減期を延長させる他の部分(すなわち、PEG)をも含有しうる。また、肝特異的インスリン類似体は、IRに対する効力の低減および/または速いIRオフ速度および/または遅い作用発現を回避するタンパク質結合を示すように設計されうる。
1.IRおよびASGPR
肝細胞への分子の標的化が、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)(Ashwell−Morell受容体)を介して、成功裏に用いられている。このレクチンは、主として、自身の糖タンパク質の糖鎖から末端シアル酸残基を喪失して最後から2番目のガラクトース残基を露出している老衰赤血球の認識のために肝細胞により用いられる。ASGPRは肝細胞およびクッパー細胞の表面上で発現される。クッパー細胞は、補体被覆病原体およびアシアル酸化糖タンパク質に対する先天性免疫系を支持するために肝臓の洞様血管における細網内皮系の一部として機能する専門化マクロファージである。ASGPRは、末端ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)およびα−2,6−シアル酸を有する糖タンパク質に選択的に結合することを、幾つかの研究が示している(Steirerら,J.Biol.Chem.284:3777(2009))。ほとんどのレクチンと同様に、ASGPRと該グリカンとの間の相互作用の強度は、異なるグリカン構造に対する相対的結合アフィニティ、および複数のグリカン相互作用により生じるアビディティにより決定される。
グリコシル化インスリン類似体は、該インスリン類似体が肝臓に標的化されるように、必ずしも同時ではないがインスリン受容体とASGPRとの両方に結合しうる。ASGRに結合するグリコシル化インスリン類似体は、末梢組織と比較して肝臓におけるインスリンの局所濃度の増加を示すであろう。結果として、肝臓においては、インスリン受容体は、筋肉および脂肪組織のインスリン受容体より速い速度で活性化されうる。あるいは、エンドサイトーシスにより取り込まれたグリコシル化インスリン類似体は、リソソームにおける分解の前にインスリン受容体シグナリングを活性化するための活性を保有しうる。ASGPRおよびIRに対する特定のグリコシル化インスリンの相対アフィニティは最適な活性のためにモジュレーションされうる。肝細胞と同様に、クッパー細胞もASGPRを発現するがIRを発現しないため、ASGPRによる分解の前にIRを活性化するために、クッパー細胞よりも肝細胞を標的化することが有益でありうる。これは、所望のインビボPK/PDプロファイルを示す最適なグリコシル化インスリン類似体分子を選択するためにIRおよびASGPRに対する結合アフィニティをモジュレーションするためのタンパク質工学および糖設計の両方により達成されうる。
ASGPRに結合しうる幾つかのN−グリカンが存在する。例えば、末端ガラクトース残基を有するN−グリカンはASGPRに対する適当な標的でありうる。ASGPRに結合することが知られている他の末端糖としては、GalNAcおよびα−2,6シアル酸が挙げられる。該末端Gal/GalNAc/α−2,6シアル酸は、該グリコシル化類似体をASGPRへと標的化するN−グリカン構造を有するコンジュゲート化グリカン、あるいはビ−、トリ−またはテトラ−アンテナN−グリカンに含まれうる。あるいは、該グリコシル化インスリン類似体をASGPRに結合させるために、Gal/GalNAc/α−2,6シアル酸構造に基づく化学修飾糖または糖模倣体が特定され、N−グリカンに結合されうる。
したがって、特定の実施形態においては、天然A鎖、天然B鎖、または配列番号162〜254に示されている群から選択されるアミノ酸配列を有するAおよびB鎖ペプチドの任意の組合せを含むアシアロ糖タンパク質受容体標的化ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ただし、該ヘテロ二量体または一本鎖インスリン類似体における少なくとも1つのアスパラギン残基は、非還元末端に少なくとも1つの末端ガラクトースを含むN−グリカンに結合している。もう1つの実施形態においては、天然A鎖ペプチドおよびB鎖ペプチド、あるいは1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸置換および/または欠失を含むそれらの類似体を含むアシアロ糖タンパク質受容体標的化ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ただし、該インスリン分子は、非還元末端に少なくとも1つの末端ガラクトース残基を含む少なくとも1つのN−グリカンに結合しており、例えば、該分子の、少なくとも1つのNH、COOH、SHまたはHisのイミジゾール環は、少なくとも1つの末端ガラクトース残基を含むN−グリカンに結合している。
更に詳細な実施形態においては、天然A鎖、天然B鎖、または配列番号162〜254に示されている群から選択されるアミノ酸配列を有するAおよびB鎖ペプチドの任意の組合せを含むアシアロ糖タンパク質受容体標的化ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ただし、該ヘテロ二量体または一本鎖インスリン類似体における少なくとも1つのアスパラギン残基は、非還元末端に少なくとも1つの末端α−2,6−結合シアル酸残基を含むN−グリカンに結合している。もう1つの実施形態においては、天然A鎖ペプチドおよびB鎖ペプチド、あるいは1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸置換および/または欠失を含むそれらの類似体を含むアシアロ糖タンパク質受容体標的化ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ただし、該インスリン分子は、非還元末端に少なくとも1つの末端α−2,6−結合シアル酸残基を含む少なくとも1つのN−グリカンに結合しており、例えば、該分子の、少なくとも1つのNH、COOH、SHまたはHisのイミジゾール環は、少なくとも1つの末端α−2,6−結合シアル酸残基を含むN−グリカンに結合している。
したがって、特定の実施形態においては、天然A鎖、天然B鎖、または配列番号162〜254に示されている群から選択されるアミノ酸配列を有するAおよびB鎖ペプチドの任意の組合せを含むアシアロ糖タンパク質受容体標的化ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ただし、該ヘテロ二量体または一本鎖インスリン類似体における少なくとも1つのアスパラギン残基は、非還元末端に少なくとも1つの末端GalNc残基を含むN−グリカンに結合している。もう1つの実施形態においては、天然A鎖ペプチドおよびB鎖ペプチド、あるいは1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸置換および/または欠失を含むそれらの類似体を含むアシアロ糖タンパク質受容体標的化ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ただし、該インスリン分子は、非還元末端に少なくとも1つの末端GalNAc残基を含む少なくとも1つのN−グリカンに結合しており、例えば、該分子の、少なくとも1つのNH、COOH、SHまたはHisのイミジゾール環は、少なくとも1つのガラクトース残基を含むN−グリカンに結合している。
2.IRおよびビオチン受容体
グリコシル化インスリン類似体は、該インスリン類似体が肝臓に標的化されるように、必ずしも同時ではないがインスリン受容体とビオチン受容体との両方に結合しうる。ビオチンはビタミンHまたはB7とも称され、水溶性Bビタミンである。過去のデータは、ビオチン受容体が肝細胞の表面上に位置することを示している(Veselyら,Biochem.Biophys.Res.Commun.143:913(1987))。したがって、これはグリコシル化インスリン類似体の肝標的化の潜在的経路の一例である。
N−グリカン上に末端ガラクトースを有するインスリンの、コンピテント宿主における発現は、ガラクトースオキシダーゼ(GAO)による酸化を可能にする。ビオチンまたはその変異体は該酸化ガラクトース部分に結合して、内因性ビオチン受容体とインビボで相互作用しうる。ビオチン受容体に結合するグリコシル化インスリン類似体は、末梢組織と比較して肝臓におけるインスリンの局所濃度の増加を示すであろう。結果として、肝臓においては、インスリン受容体は、筋肉および脂肪組織のインスリン受容体より速い速度で活性化されうる。あるいは、エンドサイトーシスにより取り込まれたグリコシル化インスリン類似体は、リソソームにおける分解の前にインスリン受容体シグナリングを活性化するための活性を保有しうる。
3.IRおよび肝胆汁性受容体
グリコシル化インスリン類似体は、該インスリン類似体が肝臓に標的化されるように、必ずしも同時ではないがインスリン受容体と肝胆汁性受容体との両方に結合しうる。ABC輸送体のような肝胆汁性受容体は、化学物質から血液を解毒するように機能する(Jonkerら,Front Biosci.14:4904(2009))。過去のデータは、リポソームへのビリベルジンおよびディソフェニンのコンジュゲート化が肝胆汁性受容体を介した肝標的化を効率的にもたらしたことを示唆している(米国特許第4,603,044号、米国特許第4,863,896号、米国特許第7,169,410号)。N−グリカン上に末端ガラクトースを有するグリコシル化インスリン類似体の、コンピテント宿主における発現は、ガラクトースオキシダーゼ(GAO)による酸化を可能にする。ついで、ビリベルジンおよびディソフェニンまたはそれらの変異体は該酸化ガラクトース部分に結合して、内因性肝胆汁性受容体とインビボで相互作用しうる。更に、肝特異的インスリンメカニズムを可能にするために、肝胆汁性表面タンパク質と相互作用する他の化学物質もインスリンにコンジュゲート化されうる。肝胆汁性受容体に結合するグリコシル化インスリン類似体は、末梢組織と比較して肝臓におけるグリコシル化インスリン類似体の局所濃度の増加を示しうる。結果として、肝臓においては、インスリン受容体は、筋肉および脂肪組織のインスリン受容体より速い速度で活性化されうる。あるいは、エンドサイトーシスにより取り込まれたグリコシル化インスリン類似体は、リソソームにおける分解の前にインスリン受容体シグナリングを活性化するための活性を保有しうる。
4.長期作用性肝特異的グリコシル化インスリン類似体
前記のとおりの幾つかのメカニズムによる肝臓へのインスリンの標的化は、1日当たりの用量の数を減少させるために更に最適化されうる。所望のインスリン療法は、主として肝臓において血液グルコースを制御するために内因性インスリンを模倣したものであり、追加的な有害なリスクを有さず、1日1回以下で投与されうる。前記のとおり、肝特異的インスリンは、インスリン受容体および標的化受容体(例えば、ASGPR、ビオチン、肝胆汁性)の受容体媒介性クリアランスメカニズムによる薬物動態学的特性の低減を示しうる。PK特性が改善の必要性を示す場合、該肝特異的グリコシル化インスリン類似体はアミノ酸置換および/または改変により更に修飾されうる。
1つのそのような修飾は、インスリン・グラルジン(これは、中性pHにおけるその不溶性ゆえに、基礎インスリン療法として作用する)の物理化学的特性を保持させることである。中性pH不溶性の結果として、1日1回の注射を可能にする皮下デポー剤における遅い再可溶化過程が生じる。インスリン・グラルジン分子は、B鎖の末端において2つのアルギニン残基を付加しA鎖の末端においてアスパラギンをグリシンへと置換するように設計された。これらの3つの変化は該タンパク質のpIを増加させて、それを低pH製剤化バッファー中では可溶性にしたが、生理的pHでは不溶性にした。これらの変化は肝特異的グリコシル化インスリン類似体内に組込まれうる。1以上のガラクトース−またはGalNAc−末端N−グリカンまたはグリカンを有するグリコシル化インスリン・グラルジンの発現は長時間作用性肝特異的(標的化)インスリン療法をもたらしうる。
したがって、特定の実施形態においては、アミノ酸配列FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTNKTRR(配列番号27)を有するB鎖とアミノ酸配列GIVEQCCTSICSLYQLENYCG(配列番号34)を有するA鎖とを含む長時間作用性肝特異的ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ここで、該ヘテロ二量体または一本鎖インスリン類似体における少なくとも1つのアスパラギン残基は、非還元末端に少なくとも1つの末端ガラクトースまたはGalNAc残基を含むN−グリカンに結合している。もう1つの実施形態においては、アミノ酸配列FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTNKTRR(配列番号27)を有するB鎖およびアミノ酸配列GIVEQCCTSICSLYQLENYCG(配列番号34)を有するA鎖、あるいは1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸置換および/または欠失を含むそれらの類似体を含む長時間作用性肝特異的ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ただし、該インスリン分子は、非還元末端に少なくとも1つの末端ガラクトースまたはGalNAc残基を含む少なくとも1つのN−グリカンに結合しており、例えば、該分子の、少なくとも1つのNH、COOH、SHまたはHisのイミジゾール環は、少なくとも1つの末端ガラクトースまたはGalNAc残基を含むN−グリカンに結合している。
e.グルコース応答性グリコシル化インスリン類似体
インスリンへの糖部分の化学結合により生理的血液グルコースレベルに応じてインスリンのバイオアベイラビリティをモジュレーションする概念はMichael Brownlee(Brownlee & Cerami,前掲)により1979年に最初に導入された。該概念の大きな制約は、グリコシル化インスリン誘導体と相互作用するコンカナバリンAの毒性であった。この最初の報告以来、グルコース調節性インスリンに関する潜在的改善に関する多数の報告が公開されているが、現在のところ、該糖をインビボN−結合グリコシル化により結合させたという報告は存在しない。
1979年のBrownleeの概念以来、血液グルコースレベルが低い場合にインスリン貯蔵体内のインスリンを隔離するために、多種多様な方法が進展した。これらは、マンノース結合性レクチンであるコンカナバリンAを含み、これは高い血液グルコース濃度で結合インスリン−糖複合体を遊離させることが示された。より最近になって、米国特許第7,531,191号ならびに国際出願番号WO2010088261およびWO2010088286(これらを参照により本明細書に組み入れることとする)は全て、外因性多価糖結合性分子(例えば、レクチンまたは修飾レクチン)に結合したインスリン−糖コンジュゲートを含む微粒子が患者に投与されうる系を開示しており、この場合、該微粒子から放出されるインスリン−糖コンジュゲートの量および持続時間はグルコースの血清中濃度の関数である。他の方法は、修飾レクチン、内因性受容体、内因性レクチンおよび/または糖結合性タンパク質を使用することを含む。そのような例には、マンノース受容体、マンノース結合性タンパク質およびDC−SIGNが含まれる。例えば、国際出願番号WO2010088294は、高アフィニティ糖リガンドを含むように或るインスリン−コンジュゲートを修飾したところ、ConAのような外因性多価糖結合性分子の非存在下で糖濃度変化に応答するPK/PDプロファイルをそれらに示させることが可能であったことを開示している。マンノース結合特性を有する少なくとも31個のヒトタンパク質が公知である。より大きなC型レクチンファミリーは、種々の糖部分への結合を伴う少なくとも60個のヒトタンパク質を含む。これらのC型レクチンファミリーメンバーの幾つかは未知機能を示し、同様に、グルコース応答性インスリンに対する内因性結合相手として働きうるであろう。
グルコース応答性インスリンは、内因性インスリン放出の生理的拍動を模倣しうる1つの治療手段である。膵ベータ細胞からのインスリン放出を誘発する主要刺激は高血糖(高い血液グルコース)である。類似手段においては、高いグルコース濃度により保護プールから循環内に放出される治療用グリコシル化インスリンは振動的(oscillatory)様態で機能しうる。
例えば図2に示されているような種々のN−グリカンは、インスリンまたはインスリン類似体に結合している場合に、グルコース応答性インスリン療法を支持する様態で内因性タンパク質に結合するように機能しうる。少なくとも1つのN−結合グリコシル化部位を含むようにインスリンアミノ酸配列を修飾することは、グルコースの血清レベルに感受性であるN−グリコシル化インスリン類似体のインビボ産生を可能にしうる。末端マンノースまたはGlcNAc残基で終わるN−グリカンはグルコース応答性N−結合グリコシル化インスリン類似体を与えうる。なぜなら、ヒトタンパク質のマンノース結合性ドメインと相互作用することが知られている主要糖はマンノースおよびGlcNAc糖残基である。図40に示されているとおり、B28位のアスパラギンに連結されたManGlcNAcグリカン構造を有するN−グリコシル化インスリン類似体は、マンノースレクチン相互作用を妨げるために使用される化学物質であるα−メチルマンノースに対して該インスリン類似体を応答性にした。更に詳細な実施形態においては、該グリカンは1以上のフコース残基を更に含みうる。
野生型ピチア・パストリス(Pichia pastoris)は、グルコース応答性グリコシル化インスリン類似体を構築するのに有用でありうる高マンノース構造、ベータ−マンノース結合、ホスホマンノースおよびアルファ−1,6−マンノース結合を有するN−グリカンを産生する。該N−グリカンは、ベータ−1,2−マンノース、ホスホマンノースおよびアルファ−1,6マンノースを除去するように更に改変されうる。また、N−グリカンは、まず、末端グルコースでキャップ化され、これは小胞体内での成熟に際して除去される。そのようなグルコース末端構造もグリコシル化インスリン類似体内に含まれうる。グルコース応答性グリコシル化インスリン類似体内に含まれうる特定のN−グリカン構造には、少マンノース(paucimannose)(ManGlcNAc)、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAc、およびMan10GlcNAc N−グリカンまたはグリカン;少なくとも1つの末端GlcNAc、Galまたはシアル酸残基を含むManGlcNAc N−グリカンまたはグリカン;GlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、コアフコースを有するGlcNAcManGlcNAc、コアフコースを有するGlcNAc−Man、コアフコースを有するMan、1,3フコースを有する末端GlcNAc、およびMan−NANAハイブリッドが含まれるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、少なくとも1つの末端マンノース残基を有する少なくとも1つのN−グリカンを含む。更に詳細な実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は少マンノースまたは高マンノースN−グリカンのみを含む。更に詳細な実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体は、構造43、51、105および106から選択される少なくとも1つのN−グリカンを含む。
したがって、N−グリカンが結合しておりグルコース応答性療法として働くインスリン類似体は以下の特性を有する。
該インビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体は、ヒトインスリン、現在市販されているインスリン類似体、一本鎖インスリンポリペプチドに対する1以上の追加的アミノ酸置換を含んでいても含んでいなくてもよく、親水性重合体、例えばPEG、または疎水性重合体、例えば脂肪酸、またはプロドラッグ部分を含有する類似体を更に含みうる。該オリゴ糖単位はマンノース単位を含有することが可能であり、天然および非天然糖を含みうる。該グリコシル化インスリン類似体は1以上のN−グリカンを含みうる。インビトロ反応を用いて、N−グリカン構造を有するグリカンが該ペプチド配列に結合するように、該グリコシル化インスリン類似体は合成法によっても製造されうる。特定の実施形態においては、該グルコース応答性インスリン類似体は、マンノース受容体以外の受容体を介したクリアランスを増強するオリゴ糖を含有する天然および非天然非マンノースを含有しうる。
多数の内因性マンノース結合性タンパク質は、先天性免疫を支持するように機能する。グリコシル化インスリン療法と組合される内因性糖結合性タンパク質は、血液グルコースに応答性であることに加えて、高マンノースタンパク質または病原体に結合する先天性免疫機能を保持しうるであろう。したがって、適切な糖結合性タンパク質を標的化すること、および該タンパク質と相互作用するグリカンのタイプが重要である。低減した副作用およびグルコース応答特性に関するN−結合および合成グリカン構造のスクリーニングが試験されうる。
したがって、特定の実施形態においては、天然A鎖、天然B鎖、または配列番号162〜254に示されている群から選択されるアミノ酸配列を有するAおよびB鎖ペプチドの任意の組合せを含むグルコース応答性ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ただし、該ヘテロ二量体または一本鎖インスリン類似体における少なくとも1つのアスパラギン残基は、非還元末端に少なくとも1つの末端マンノース残基を含むN−グリカンに結合している。もう1つの実施形態においては、天然A鎖ペプチドおよびB鎖ペプチド、あるいは1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸置換および/または欠失を含むそれらの類似体を含むグルコース応答性ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ただし、該インスリン分子は、非還元末端に少なくとも1つの末端マンノース残基を含む少なくとも1つのN−グリカンに結合しており、例えば、該分子の、少なくとも1つのNH、COOH、SHまたはHisのイミジゾール環は、少なくとも1つの末端マンノース残基を含むN−グリカンに結合している。
f.長時間作用性グルコース応答性グリコシル化インスリン類似体
前記のグルコース応答性インスリンの機能は、1日当たりの用量の数を減少させるために更に最適化されうる。前記のとおり、グルコース応答性インスリンは、インスリン受容体および標的化受容体(すなわち、マンノース受容体、マンノース結合性タンパク質、DC−SIGN)の受容体媒介性グリアランスメカニズムにより薬物動態学的特性の低減を示しうる。PK特性が改善の必要性を示す場合、該グルコース応答性グリコシル化インスリンタンパク質はアミノ酸付加および/または改変により更に修飾されうる。
1つの手段は、インスリン・グラルジン(これは、中性pHにおけるその不溶性ゆえに、基礎インスリン療法として作用する)の物理化学的特性を保持させることである。中性pH不溶性の結果として、1日1回の注射を可能にする皮下デポー剤における遅い再可溶化過程が生じる。インスリン・グラルジン分子は、B鎖の末端において2つのアルギニン残基を含みA鎖の末端においてアスパラギンをグリシンへと置換するように設計された。これらの3つの変化は該タンパク質のpIを増加させて、それを低pH製剤化バッファー中では可溶性にしたが、生理的pHでは不溶性にした。これらの変化は、少なくとも1つのN−結合グリコシル化部位を含むようにAまたはB鎖を修飾することにより、本明細書に開示されているグルコース応答性グリコシル化インスリン法に組込まれうる。例えば、1つの実施形態においては、B鎖はアミノ酸配列FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTNKTRR(配列番号27)を有し、A鎖はアミノ酸配列GIVEQCCTSICSLYQLENYCG(配列番号34)を有する。本明細書に開示されているN−結合グリコシル化を引き起こしうる宿主における、これらの配列をコードするグリコシル化インスリン前駆体遺伝子の発現は、長時間作用性グルコース応答性インスリンを与えうる。あるいは、該インスリン類似体は、N−グリカン構造を有するグリカンでインビトロでグリコシル化されうる。
したがって、特定の実施形態においては、アミノ酸配列FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTNKTRR(配列番号27)を有するB鎖とアミノ酸配列GIVEQCCTSICSLYQLENYCG(配列番号34)を有するA鎖とを含む長時間作用性グルコース応答性ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ここで、該ヘテロ二量体または一本鎖インスリン類似体における少なくとも1つのアスパラギン残基は、非還元末端に少なくとも1つの末端マンノース残基を含むN−グリカンに結合している。もう1つの実施形態においては、アミノ酸配列FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTNKTRR(配列番号27)を有するB鎖およびアミノ酸配列GIVEQCCTSICSLYQLENYCG(配列番号34)を有するA鎖、あるいは1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸置換および/または欠失を含むそれらの類似体を含む長時間作用性グルコース応答性ヘテロ二量体または一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を提供し、ただし、該インスリン分子は、非還元末端に少なくとも1つの末端マンノース残基を含む少なくとも1つのN−グリカンに結合しており、例えば、該分子の、少なくとも1つのNH、COOH、SHまたはHisのイミジゾール環は、少なくとも1つの末端マンノース残基を含むN−グリカンに結合している。
g.ヒトレクチンとのグリコシル化インスリン類似体の相互作用
レクチンは、炭水化物部分に結合するタンパク質である。細胞内および細胞間グリカン運搬に関与し、防御分子として作用する、C型、I型、P型、ガレクチンおよびペントラキシン群を含む多数の型のレクチンが存在する(Kaltner & Gabius,Adv.Exp.Med.Biol.491:79(2001))。C型、Siglec(シグレック)およびガレクチン群はパターン認識受容体である(Dam & Brewer,Glycobiology 20:270(2010))。I型の最も広範に特徴づけられているレクチンは、Siglecs、つまり、末端α−2,3/α−2,6/α−2,8シアル酸と相互作用するシアル酸結合性レクチンとして公知である(Crockerら,Nature Reviews Immunology 7:255(2007))。ガレクチンはβ−galおよびLacNAc部分に対する特異性を有する(Dam & Brewer,前掲)。C型レクチンは、以下の2つのファミリーに分類されるカルシウム依存性タンパク質である:Manおよび/またはフコース末端グリカンへの結合を伴うマンノース(Man)特異的;Galおよび/またはGalNAcへの結合を伴うガラクトース(Gal)特異的(Dam & Brewer,前掲)。C型レクチンのアフィニティは多価提示と共に増加し、したがって、グリカン構造に対する特異的アフィニティおよびアビディティが重要である。
効力を改善するための、合成炭水化物構造によるレクチンへの治療用タンパク質、分子または薬物の標的化が報告されている(Bernardesら,Org.Biomol.Chem.8:4987−4996(2010);Lepeniesら,Curr.Opin.Chem.Biol.14:404(2010))。また、合成または半合成グリカンはレクチンとの相互作用および後の糖タンパク質のインビボ生物学的分布に影響を及ぼすことが示されている(Andreら,Biol.Chem.390:557(2009))。Man特異的C型レクチンは、マンノース受容体、DEC−205、Endo−180、ホスホリパーゼA2受容体、DC−SIGN、DC−SIGNR、LSECtin、BDCA−2およびdectin−1のような抗原提示細胞にワクチンを標的化するために使用されている(Kelerら,Expert.Opin.Biol.Ther.4:1953(2004))。Man特異的C型レクチンに関して、以下の受容体−リガンド関係が特定されている:マンノース受容体−マンノース、フコースおよびGlcNAc;dectin−1 −β−グルカン;DC−SIGN−マンナン(Man6/7/8/9のような高マンノース)、シアル酸化ルイス構造、アガラクトシル化グリカン(GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAcフコース、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAcフコース;DC−SIGNR −マンナン(Man6/7/8/9のような高マンノース)、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAcフコース(Kelerら,前掲;Yabeら,FEBS J.277:4010(2010)))。そのような構造は、インビボでグルコース応答性プロファイルを有するグリコシル化インスリン類似体を得るためにインスリン類似体を結合させるための好適な部分でありうる。
マンノースグリカンと相互作用するもう1つのレクチンは、マンナン結合性レクチンまたはマンノース結合性タンパク質としても公知であるマンノース結合性レクチン(MBL)である。これは、先天性免疫系を支持するために血中を循環する分泌性タンパク質である。また、MBLは、レクチン媒介性補体カスケードを始動するように機能する。興味深いことに、MBLレベルは高可変性であり、MBL欠損がヒト集団の3分の1以上で生じ、糖尿病患者において変動しうる(Fernandez−Realら,Diabetologia 49:2402(2006);Fortpiedら,Diabetes Metab Res.Rev.26:254(2010))。タンパク質グリケーションは高血糖と共に増加するため、MBLはマンノース、フコースおよびフルクトリシンへの結合の改変を示し、補体活性化および糖尿病の病理発生における役割に寄与しうると仮定されている(Fortpiedら,前掲)。また、MBLへのマンノースグリカンの結合は血液グルコースレベルに対して応答性であることが示されている(Ilyasら,Immunobiology 216:126−131(2011);2010年7月1日付けオンライン)。したがって、MBLへグリコシル化インスリンを標的化すること、およびグルコース応答活性でそれを機能させることが、第III節および図2に記載されているような、マンノース、特に末端マンノースを含有するN−グリカンを使用して達成されうる。
C型レクチンのその他の主要クラスはGal特異的レクチンである。このクラスにおけるそのような受容体はアシアロ糖タンパク質H1およびH2受容体(ASGPR)ならびにマクロファージガラクトース型レクチン(MGL)である。ASGPRは、末端ガラクトースおよびGalNAcを有するトリ−またはテトラ−アンテナグリカンに優先的に結合し、あるいは、MGLは、末端GalNAcを有するグリカンに優先的に結合する(van Vlietら,Trends Immunol.29:83(2008))。ASGPRは肝細胞の表面上に位置し、一方、MGLは未熟樹状細胞およびマクロファージ上に存在するため、肝特異的活性のためには、末端ガラクトースを有するトリ−またはテトラアンテナグリカンを使用することが最も好ましいかもしれないが、末端GalNAcもインビボ活性に関して試験されるべきである。
h.グリコシル化インスリン類似体のPDおよびPK
本明細書に開示されている種々の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体の薬物動態学的および/または薬力学的挙動は、グルコースおよびアルファ−メチル−マンノース(これらに限定されるものではない)を含む糖の血清中濃度の変動により修飾されうる。
例えば、薬物動態学的(PK)観点からは、糖(例えば、グルコース)の血清濃度が上昇すると、または糖の血清濃度が閾値を超える(例えば、正常グルコースレベルより高い)と、血清濃度曲線は上方に移動する。
特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体の血清濃度曲線は、哺乳動物に投与された場合、絶食条件下と高血糖条件下とで実質的に異なる。本明細書中で用いる「実質的に異なる」なる語は、それらの2つの曲線が、スチューデントt検定により決定された場合に統計的に異なることを意味する(p<0.05)。本明細書中で用いる「絶食条件」なる語は、5名以上の絶食非糖尿病個体からのデータを合わせることにより血清濃度曲線が得られたことを意味する。特定の実施形態においては、絶食非糖尿病個体は、採血時に糖尿病症状を示していない及び採血時前の12時間以内に食事を摂っていない18〜30歳のヒトから無作為に選択される。本明細書中で用いる「高血糖条件」なる語は、本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体とグルコースとの同時投与により高血糖状態(絶食条件下で観察される平均グルコース濃度を上回る、少なくとも100mg/dLのグルコースCmax)が誘発された5名以上の絶食非糖尿病個体から血清濃度曲線が得られたことを意味する。
本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体とグルコースとの同時投与は、検出可能なレベルで血清中に該グリコシル化インスリン類似体が存在する期間中にグルコースCmaxが生じることを要するに過ぎない。例えば、グルコース注射(または摂取)は、該グリコシル化インスリン類似体の投与の直前、同時または直後に行われるように、その時機が調節されうるであろう。特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体およびグルコースは、異なる経路で又は異なる位置において投与される。例えば、特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体は皮下投与されるが、グルコースは経口または静脈内投与される。
特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体の血清Cmaxは、高血糖条件下では、絶食条件下と比較して高い。それに加えて又はその代わりに、特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体の血清曲線下面積(AUC)は、高血糖条件下では、絶食条件下と比較して高い。種々の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体の血清消失速度は、高血糖条件下では、絶食条件下と比較して遅い。特定の実施形態においては、該グリコシル化インスリン類似体の血清濃度曲線は、1つの短い半減期および1つの長い半減期を有する2コンパートメント双指数(bi−exponential)モデルにフィット(当てはめ)されうる。そのような長い半減期はグルコース濃度に特に感受性でありうる。したがって、特定の実施形態においては、そのような長い半減期は、高血糖条件下では、絶食条件下と比較して長い。特定の実施形態においては、該絶食条件は100mg/dL未満(例えば、80mg/dL、70mg/dL、60mg/dL、50mg/dLなど)のグルコースCmaxを含む。特定の実施形態においては、該高血糖条件は200mg/dLを超える(例えば、300mg/dL、400mg/dL、500mg/dL、600mg/dLなど)のグルコースCmaxを含む。他のPKパラメータ、例えば平均血清滞留時間(MRT)、平均血清吸収時間(MAT)などが、前記パラメータのいずれかの代わりに又はそれらと共に用いられうる、と理解されるであろう。
ヒト、イヌ、ネコおよびラットにおけるグルコース濃度の正常範囲は60〜200mg/dLである。当業者は、種々の正常範囲(例えば、ミニブタにおけるグルコース濃度の正常範囲は40〜150mg/dlである)を有する種に関して、以下の値を外挿しうるであろう。一般に、50mg/dL未満のグルコース濃度は低血糖とみなされ、200mg/dLを超えるグルコース濃度は高血糖とみなされる。特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体のPK特性は、グルコースクランプ法(実施例を参照されたい)を用いて試験されることが可能であり、本明細書に開示されているインビトロまたはインビボグリコシル化インスリン類似体の血清濃度曲線は、50および200mg/dL、50および300mg/dL、50および400mg/dL、50および500mg/dL、50および600mg/dL、100および200mg/dL、100および300mg/dL、100および400mg/dL、100および500mg/dL、100および600mg/dL、200および300mg/dL、200および400mg/dL、200および500mg/dL、200および600mg/dLなどのグルコース濃度で投与された場合、実質的に異なりうる。それに加えて又はその代わりに、血清Tmax、血清Cmax、平均血清滞留時間(MRT)、平均血清吸収時間(MAT)および/または血清半減期は、それらの2つのグルコース濃度において実質的に異なりうる。後記のとおり、特定の実施形態においては、比較グルコース濃度として100mg/dLおよび300mg/dLが用いられうる。しかし、本開示は、以下のペア(それらに限定されるものではない)のいずれかを含む比較グルコース濃度の代替ペアを有するこれらの実施形態のそれぞれを含むと理解されるべきである:50および200mg/dL、50および300mg/dL、50および400mg/dL、50および500mg/dL、50および600mg/dL、100および200mg/dL、100および400mg/dL、100および500mg/dL、100および600mg/dL、200および300mg/dL、200および400mg/dL、200および500mg/dL、200および600mg/dLなど。したがって、特定の実施形態においては、N−グリコシル化インスリン類似体のCmaxは、それらの2つのグルコース濃度のうちの高いほうの濃度(例えば、100mg/dL グルコースと比較される300mg/dL グルコース)で哺乳動物に投与された場合、より高い。
特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体のCmaxは、それらの2つのグルコース濃度のうちの高いほうの濃度(例えば、100mg/dL グルコースと比較される300mg/dL グルコース)で哺乳動物に投与された場合、少なくとも50%(例えば、少なくとも100%、少なくとも200%または少なくとも400%)高い。特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体のAUCは、それらの2つのグルコース濃度のうちの高いほうの濃度(例えば、100mg/dL グルコースと比較される300mg/dL グルコース)で哺乳動物に投与された場合、より高い。特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体のAUCは、それらの2つのグルコース濃度のうちの高いほうの濃度(例えば、100mg/dL グルコースと比較される300mg/dL グルコース)で哺乳動物に投与された場合、少なくとも50%(例えば、少なくとも100%、少なくとも200%または少なくとも400%)高い。
特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体の血清消失速度は、それらの2つのグルコース濃度のうちの高いほうの濃度(例えば、100mg/dL グルコースと比較される300mg/dL グルコース)で哺乳動物に投与された場合、より遅い。ある実施形態においては、該N−グリコシル化インスリン類似体の血清消失速度は、それらの2つのグルコース濃度のうちの低いほうの濃度(例えば、300mg/dL グルコースと比較される100mg/dL グルコース)で哺乳動物に投与された場合、少なくとも25%(例えば、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%または少なくとも400%)速い。
特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体の血清濃度曲線は、1つの短い半減期および1つの長い半減期を有する2コンパートメント双指数(bi−exponential)モデルにフィットされうる。そのような長い半減期はグルコース濃度に特に感受性でありうる。したがって、特定の実施形態においては、そのような長い半減期は、それらの2つのグルコース濃度のうちの高いほうの濃度(例えば、100mg/dL グルコースと比較される300mg/dL グルコース)で哺乳動物に投与された場合、より長い。
特定の実施形態においては、そのような長い半減期は、それらの2つのグルコース濃度のうちの高いほうの濃度(例えば、100mg/dL グルコースと比較される300mg/dL グルコース)で哺乳動物に投与された場合、少なくとも50%(例えば、少なくとも100%、少なくとも200%または少なくとも400%)長い。
特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体の血清濃度曲線を2つの異なるグルコース濃度(例えば、100mg/dL グルコースと比較される300mg/dL グルコース)で得、それらの2つの曲線を、1つの短い半減期および1つの長い半減期を有する2コンパートメント双指数(bi−exponential)モデルを用いてフィットし、それらの2つのグルコース濃度で得られた長い半減期を比較する、方法を提供する。特定の実施形態においては、この方法は、本明細書に開示されている1以上のインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体のグルコース感受性を試験または比較するためのアッセイとして用いられうる。
特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体および該インスリンの非グリコシル化形態の血清濃度曲線を同一条件(例えば、絶食条件)下で得、それらの2つの曲線を、1つの短い半減期および1つの長い半減期を有する2コンパートメント双指数(bi−exponential)モデルを用いてフィットし、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体および非グリコシル化形態に関して得られた長い半減期を比較する、方法を提供する。特定の実施形態においては、この方法は、該非グリコシル化形態または天然インスリンより迅速にクリアランスされる本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体を特定するためのアッセイとして用いられうる。
特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体の血清濃度曲線は、高血糖条件下で哺乳動物に投与された場合、該類似体の非グリコシル化形態の血清濃度曲線と実質的に同じである。本明細書中で用いる「実質的に同じ」なる語は、スチューデントt検定により決定された場合に、それらの2つの曲線の間に統計的な差が存在しないことを意味する(p>0.05)。特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体の血清濃度曲線は、絶食条件下で哺乳動物に投与された場合、該類似体の非グリコシル化形態の血清濃度曲線とは実質的に異なる。特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体の血清濃度曲線は、該類似体の非グリコシル化形態の血清濃度曲線と比較して、高血糖条件下で哺乳動物に投与された場合には実質的に同じであり、絶食条件下で投与された場合には実質的に異なる。
特定の実施形態においては、該高血糖条件は200mg/dLを超える(例えば、300mg/dL、400mg/dL、500mg/dL、600mg/dLなど)のグルコースCmaxを含む。特定の実施形態においては、該絶食条件は100mg/dL未満(例えば、80mg/dL、70mg/dL、60mg/dL、50mg/dLなど)のグルコースCmaxを含む。血清Tmax、血清Cmax、AUC、平均血清滞留時間(MRT)、平均血清吸収時間(MAT)および/または血清半減期のような前記PKパラメータのいずれかが比較されうると理解されるであろう。
薬力学的(PD)観点からは、グルコース濃度が上昇すると、またはグルコース濃度が閾値を超える(例えば、正常グルコースレベルより高い)と、本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体の生物活性は増強しうる。特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体の生物活性は、高血糖条件下と比較して絶食条件下で投与された場合に低い。
特定の実施形態においては、該絶食条件は100mg/dL未満(例えば、80mg/dL、70mg/dL、60mg/dL、50mg/dLなど)のグルコースCmaxを含む。特定の実施形態においては、該高血糖条件は200mg/dLを超える(例えば、300mg/dL、400mg/dL、500mg/dL、600mg/dLなど)のグルコースCmaxを含む。
特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体のPD特性は、一定のグルコース濃度を維持するのに必要なグルコース注入速度(GIR)を測定することにより試験されうる。そのような実施形態においては、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体の生物活性は、50および200mg/dL、50および300mg/dL、50および400mg/dL、50および500mg/dL、50および600mg/dL、100および200mg/dL、100および300mg/dL、100および400mg/dL、100および500mg/dL、100および600mg/dL、200および300mg/dL、200および400mg/dL、200および500mg/dL、200および600mg/dLなどのグルコース濃度で投与された場合、実質的に異なりうる。したがって、特定の実施形態においては、本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体の生物活性は、それらの2つのグルコース濃度のうちのうちの高いほうの濃度(例えば、100mg/dL グルコースと比較される300mg/dL グルコース)で哺乳動物に投与された場合、より高い。ある実施形態においては、該N−グリコシル化インスリン類似体の生物活性は、それらの2つのグルコース濃度のうちの高いほうの濃度(例えば、100mg/dL グルコースと比較される300mg/dL グルコース)で哺乳動物に投与された場合、少なくとも25%(例えば、少なくとも50%または少なくとも100%)高い。
本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体に関するPD挙動は、最小血液グルコース濃度(Tnadir)に達するまでの時間、血液グルコースレベルが初期値の或る割合未満(例えば、初期値の70%または10 T70% BGL)で維持される持続時間などを比較することにより観察されうる。一般に、本明細書に記載されているPKおよびPD特性はいずれも、種々の公開されている薬物動態学的および薬力学的方法(例えば、皮下運搬に適した方法に関しては、Baudysら,Bioconjugate Chem.9:176−183(1998)を参照されたい)のいずれかにより決定されうる、と理解されるであろう。また、該PKおよび/またはPD特性は任意の哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、ネコ、ミニブタ、イヌなど)において測定されうると理解されるべきである。
特定の実施形態においては、PKおよび/またはPD特性はヒトにおいて測定される。特定の実施形態においては、PKおよび/またはPD特性はラットにおいて測定される。特定の実施形態においては、PKおよび/またはPD特性はミニブタにおいて測定される。特定の実施形態においては、PKおよび/またはPD特性はイヌにおいて測定される。また、前記説明は、本明細書に開示されているグルコース応答性インビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体に関して記載されているが、外因性糖、例えばマンノース、L−フコース、N−アセチルグルコサミン、アルファ−メチルマンノースなどを含む他の糖に応答性である本明細書に開示されているインビボまたはインビトログリコシル化インスリン類似体に、同じ特性およびアッセイが適用される、と理解されるであろう。幾つかの態様においては、絶食および高血糖条件下でPKおよび/またはPD特性を比較する代わりに、外因性糖の投与を伴う及び伴わない絶食条件下でPKおよび/またはPD特性が比較されうる。本明細書に開示されているインビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリン類似体は、与えられた外因性糖の種々のCmax値に応答するように設計されうる、と理解されるべきである。
V.N−グリコシル化インスリン類似体を製造するための宿主細胞
一般に、インスリンおよびインスリン類似体の商業的製造には、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、および酵母細胞、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピチア・パストリス(Pichia pastoris)が使用されている。例えば、Thinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:6766−6770(1980)、米国特許第4,916,212号、第5,618,913号および第7,105,314号はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)におけるインスリンの製造を開示しており、WO2009104199はピチア・パストリス(Pichia pastoris)におけるインスリンの製造を開示している。大腸菌(E.coli)におけるインスリンの製造は、Chanら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:5401−5404(1981)および米国特許第5,227,293号を含む多数の刊行物に開示されている。酵母宿主におけるインスリンの製造の利点は、インスリン分子が、適切なジスルフィド結合を有する適切にフォールドした立体配置で該宿主細胞から分泌されることであり、ついでそれはインビトロで酵素によりプロセシングされて、インスリンヘテロ二量体を与えうる。これとは対照的に、大腸菌(E.coli)において産生されるインスリンはインビボでプロセシングされずに、それは、不適切にフォールドした立体配置で封入体内に隔離される。該封入体は該細胞から回収され、一連の反応においてインビトロで加工されて、適切な立体配置のインスリンヘテロ二量体を与える。インスリンは、N−結合グリコシル化部位を欠いているため、通常は糖タンパク質とみなされないが、インスリンが大腸菌(E.coli)においてではなく酵母において製造された場合には、合成されたインスリンの小集団はO−グリコシル化されているらしい。これらのO−グリコシル化分子は汚染物だとみなされており、その除去のための方法が開発されている(例えば、米国特許第6,180,757号およびWO2009104199を参照されたい)。
しかし、本明細書に開示されているN−グリコシル化インスリン類似体の製造のためには、酵母および糸状菌のような下等真核生物が特に魅力的である。なぜなら、N−グリコシル化パターンが哺乳類様もしくはヒト様である又はヒト化されている、あるいは特定のN−グリカン種が優勢である糖タンパク質をそれらが発現するように、それらは遺伝的に修飾されうるからである。選択された内因性グリコシル化酵素を除去し、および/または外因性酵素を供給することにより(Gerngrossら,米国特許第7,449,308号(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているとおり)、これは達成されうる。酵母におけるO−グリコシル化を低減するための一般的方法は国際出願番号WO2007061631に記載されている。
したがって、本発明の特定の態様においては、宿主細胞は酵母細胞または糸状菌宿主細胞である。酵母および糸状菌宿主細胞には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピチア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピチア・コクラメ(Pichia koclamae)、ピチア・メンブラネファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピチア・ミヌタ(Pichia minuta)(オガタエア・ミヌタ(Ogataea minuta)、ピチア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピチア・オプンチエ(Pichia opuntiae)、ピチア・テルモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピチア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピチア・グエルクウム(Pichia guercuum)、ピチア・ピエペリ(Pichia pijperi)、ピチア・スチプティス(Pichia stiptis)、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピチア属種(Pichia sp.)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クライベロミセス属種(Kluyveromyces sp.)、クライベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、任意のアスペルギルス属種(Aspergillus sp.)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、フザリウム属種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)、クリソスポリウム・ルックノウエンス(Chrysosporium lucknowense)、トリコデルマ・レーゼイ(Trichoderma reesei)およびニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)。更に詳細な態様においては、該宿主細胞は、特定のN−グリカン種を主に有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作されている。
特定の実施形態においては、該宿主細胞は酵母宿主細胞、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、メチロトローフ酵母、例えばピチア・パストリス(Pichia pastoris)またはオガタエア・ミヌタ(Ogataea minuta)、特定のN−グリカン種を主に有する糖タンパク質を産生するそれらの突然変異体およびそれらの遺伝的操作変異体である。このようにして、特定の所望のグリコフォームが組成物において優勢である糖タンパク質組成物が製造されうる。所望により、コアフコシル化を伴う又は伴わない糖タンパク質が産生されうるように、グリコシル化の追加的な遺伝的操作が行われうる。下等真核宿主細胞、例えば酵母の使用は更に有利である。なぜなら、糖タンパク質の主要グリコフォームが該組成物中の糖タンパク質の30モル%超(すなわち、30モル%を超える)として存在しうるように、これらの細胞は糖タンパク質の比較的均一な組成物を産生しうるからである。特定の態様においては、該主要グリコフォームは、該組成物中に存在する糖タンパク質の40モル%超、50モル%超、60モル%超、70モル%超、最も好ましくは80モル%超で存在しうる。選択された内因性グリコシル化酵素を除去し、および/またはGerngrossら,米国特許第7,029,872号および米国特許第7,449,308号(それらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているとおりに外在性酵素を供給することにより、それは達成されうる。例えば、宿主細胞は、糖タンパク質上のN−グリカン上にマンノース残基を付加するα1,6−マンノシルトランスフェラーゼ活性を欠損するように選択または操作されうる。例えば、酵母においては、そのようなα1,6−マンノシルトランスフェラーゼ活性はOCH1遺伝子によりコードされており、OCH1遺伝子の欠失または発現破壊(och1Δ)はピチア・パストリス(Pichia pastoris)またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のような酵母における高マンノースまたは高マンノシル化N−グリカンの産生を抑制する(例えば、Gerngrossら,米国特許第7,029,872号;Contrerasら,米国特許第6,803,225号およびChibaら,EP1211310B1(それらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)。したがって、1つの実施形態においては、N−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を製造するための宿主細胞はOCH1遺伝子の欠失または発現破壊(och1Δ)を含み、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子を含む。
もう1つの実施形態においては、該宿主細胞は更に、α1,2−マンノシダーゼ触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、α1,2−マンノシダーゼ活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される。該宿主細胞のERまたはゴルジ装置を通る組換え糖タンパク質の通過は、ManGlcNAcグリコフォームを含む組換え糖タンパク質およびその組成物、例えば、ManGlcNAcグリコフォームを主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生する。例えば、米国特許第7,029,872号、米国特許第7,449,308号および米国公開特許出願第2005/0170452号(それらの開示の全てを参照により本明細書に組み入れることとする)は、ManGlcNAcグリコフォームを含む組換え糖タンパク質およびその組成物を産生しうる下等真核宿主細胞を開示している。
もう1つの実施形態においては、直前の宿主細胞は更に、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GlcNAcトランスフェラーゼIまたはGnT I)触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、GlcNAcトランスフェラーゼI活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される。該宿主細胞のERまたはゴルジ装置を通る該組換え糖タンパク質の通過は、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを含む組換え糖タンパク質およびその組成物、例えば、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生する。米国特許第7,029,872号、米国特許第7,449,308号および米国公開特許出願第2005/0170452号(それらの開示の全てを参照により本明細書に組み入れることとする)は、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを含む組換え糖タンパク質およびその組成物を産生しうる下等真核宿主細胞を開示している。前記細胞において産生されたN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体をヘキソサミニダーゼでインビトロで処理して、ManGlcNAcグリコフォームを含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を産生させることが可能である。あるいは、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物をマンノシダーゼIIで、ついでヘキソサミニダーゼでインビトロで処理して、ManGlcNAcグリコフォームを主に含む少マンノース(paucimannose)N−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生させることが可能である。
もう1つの実施形態においては、直前の宿主細胞は更に、マンノシダーゼII触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、マンノシダーゼII活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される。該宿主細胞のERまたはゴルジ装置を通る該組換え糖タンパク質の通過は、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを含む組換え糖タンパク質およびその組成物、例えば、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生する。米国特許第7,029,872号および米国特許第7,625,756号(それらの開示の全てを参照により本明細書に組み入れることとする)は、マンノシダーゼII酵素を発現し、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを主に有する糖タンパク質およびその組成物を産生しうる下等真核宿主細胞を開示している。前記細胞において産生されたN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を、末端GlcNAc残基を除去するヘキソサミニダーゼでインビトロで処理して、ManGlcNAcグリコフォームを含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を産生させることが可能であり、あるいは該ヘキソサミニダーゼを該宿主内で共発現させて、ManGlcNAcグリコフォームを含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体およびその組成物を産生させることが可能である。
もう1つの実施形態においては、直前の宿主細胞は更に、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII(GlcNAcトランスフェラーゼIIまたはGnT II)触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、GlcNAcトランスフェラーゼII活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される。該宿主細胞のERまたはゴルジ装置を通る該組換え糖タンパク質の通過は、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを含む組換え糖タンパク質、例えば、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生する。米国特許第7,029,872号および第7,449,308号ならびに米国公開特許出願第2005/0170452号(それらの開示の全てを参照により本明細書に組み入れることとする)は、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを含む糖タンパク質を産生しうる下等真核宿主細胞を開示している。前記細胞において産生されたN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を、末端GlcNAc残基を除去するヘキソサミニダーゼでインビトロで処理して、ManGlcNAcグリコフォームを含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体およびその組成物組を産生させることが可能であり、あるいは該ヘキソサミニダーゼを該宿主内で共発現させて、ManGlcNAcグリコフォームを含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体およびその組成物を産生させることが可能である。
もう1つの実施形態においては、直前の宿主細胞は更に、ガラクトシルトランスフェラーゼ触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される。該宿主細胞のERまたはゴルジ装置を通る該組換え糖タンパク質の通過は、GalGlcNAcManGlcNAcもしくはGalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームまたはそれらの混合物を含む組換え糖タンパク質およびその組成物、例えば、GalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームもしくはGalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームまたはそれらの混合物を主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生する。米国特許第7,029,872号および米国公開特許出願第2006/0040353号(それらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする)は、GalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームを含む糖タンパク質およびその組成物を産生しうる下等真核宿主細胞を開示している。前記細胞において産生されたN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体およびその組成物をガラクトシダーゼでインビトロで処理して、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体およびその組成物、例えば、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生させることが可能であり、あるいは該ガラクトシダーゼを共発現させて、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体、例えば、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生させることが可能である。
もう1つの実施形態においては、直前の宿主細胞は更に、シアリルトランスフェラーゼ触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、シアリルトランスフェラーゼ活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される。該宿主細胞のERまたはゴルジ装置を通る該組換え糖タンパク質の通過は、NANAGalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームもしくはNANAGalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームまたはそれらの混合物を主に含む組換え糖タンパク質およびその組成物、例えば、NANAGalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームもしくはNANAGalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームまたはそれらの混合物を主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生する。下等真核宿主細胞、例えば酵母および糸状菌の場合、該宿主細胞が、N−グリカンへの転移のためのCMP−シアル酸を供与するための手段を更に含むことが有用である。米国公開特許出願第2005/0260729号(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)は、CMP−シアル酸合成経路を有するように下等真核生物を遺伝的に操作するための方法を開示しており、米国公開特許出願第2006/0286637号(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)は、シアル酸化糖タンパク質を産生するように下等真核生物を遺伝的に操作するための方法を開示している。前記細胞において産生されたN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体をノイラミニダーゼでインビトロで処理して、GalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームまたはその混合物を主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体およびその組成物を産生させることが可能であり、あるいは該ノイラミニダーゼを該宿主細胞内で共発現させて、GalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームもしくはGalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームまたはそれらの混合物を主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体およびその組成物、例えば、GalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームもしくはGalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームまたはそれらの混合物を主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生させることが可能である。
もう1つの態様においては、ManGlcNAcグリコフォームを有する糖タンパク質を産生しうる前記宿主細胞は更に、マンノシダーゼIII触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、マンノシダーゼIII活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される。該宿主細胞のERまたはゴルジ装置を通る組換え糖タンパク質の通過は、ManGlcNAcグリコフォームを含む組換え糖タンパク質およびその組成物、例えば、ManGlcNAcグリコフォームを主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生する。米国特許第7,625,756号(その開示の全てを参照により本明細書に組み入れることとする)は、マンノシダーゼIII酵素を発現し、ManGlcNAcグリコフォームを主に有する糖タンパク質およびその組成物を産生しうる下等真核宿主細胞の使用を開示している。
前記宿主細胞はいずれも、米国特許第7,598,055号および米国公開特許出願第2007/0037248号(それらの開示の全てを参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されているような二分岐(bisected)(GnT III)および/または多アンテナ(GnT IV、V、VIおよびIX)N−グリカン構造を有する糖タンパク質を産生させるためのGnT III、GnT IV、GnT V、GnT VIおよびGnT IXからなる群から選択される1以上のGlcNAcトランスフェラーゼを更に含みうる。
更に詳細な実施形態においては、GlcNAcManGlcNAc N−グリカンを主に有する糖タンパク質を産生する宿主細胞は更に、ガラクトシルトランスフェラーゼ触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される。該宿主細胞のERまたはゴルジ装置を通る該組換え糖タンパク質の通過は、GalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームを主に含む組換え糖タンパク質およびその組成物、例えば、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生する。
もう1つの実施形態においては、GalGlcNAcManGlcNAc N−グリカンを主に有する糖タンパク質を産生した直前の宿主細胞は更に、シアリルトランスフェラーゼ触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、シアリルトランスフェラーゼ活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される。該宿主細胞のERまたはゴルジ装置を通る該組換え糖タンパク質の通過は、NANAGalGlcNAcManGlcNAcグリコフォームを含む組換え糖タンパク質およびその組成物、例えば、GlcNAcManGlcNAcグリコフォームを主に含むN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体組成物を産生する。
一般に、酵母および糸状菌は、フコースを含むN−グリカンを有する糖タンパク質を産生し得ない。したがって、GDP−フコースおよびフコシルトランスフェラーゼを合成するための経路を含むように宿主細胞が特に修飾されていない限り、本明細書に開示されているN−グリカンはフコースを欠くであろう。したがって、N−グリカンがフコースを含む糖タンパク質を得ることが望ましい特定の態様においては、前記宿主細胞のいずれかは、フコシルトランスフェラーゼと、フコースを産生しフコースをERまたはゴルジに輸送するための経路とを含むように更に修飾される。有するN−グリカンの1以上がフコシル化されている糖タンパク質をピチア・パストリス(Pichia pastoris)が産生しうるようにするために、ピチア・パストリスを修飾するための方法の例は、公開国際出願番号WO 2008112092(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている。本発明の特定の態様においては、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)宿主細胞は、GDP−マンノース−4,6−デヒドラターゼ、GDP−ケト−デオキシ−マンノース−エピメラーゼ/GDP−ケト−デオキシ−ガラクトース−レダクターゼ、GDP−フコース輸送体およびフコシルトランスフェラーゼを含むフコシル化経路を含むように更に修飾される。特定の態様においては、該フコシルトランスフェラーゼは、α1,2−フコシルトランスフェラーゼ、α1,3−フコシルトランスフェラーゼ、α1,4−フコシルトランスフェラーゼおよびα1,6−フコシルトランスフェラーゼからなる群から選択される。
前記の種々の宿主細胞は更に、1以上の糖輸送体、例えばUDP−GlcNAc輸送体[例えば、クライベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)およびムス・ムスクルス(Mus musculus)UDP−GlcNAc輸送体]、UDP−ガラクトース輸送体[例えば、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)UDP−ガラクトース輸送体]およびCMP−シアル酸輸送体(例えば、ヒトシアル酸輸送体)を含みうる。下等真核宿主細胞、例えば酵母および糸状菌は前記輸送体を欠くため、下等真核宿主細胞、例えば酵母および糸状菌は、前記輸送体を含むように遺伝的に操作されることが好ましい。
宿主細胞は更に、ホスホマンノシルトランスフェラーゼ遺伝子PNO1およびMNN4B(例えば、米国特許第7,198,921号および第7,259,007号(それらの開示の全てを参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)の一方または両方を欠失または破壊することにより、ホスホマンノース残基を有する糖タンパク質を除去するように遺伝的に操作されたピチア・パストリス(Pichia pastoris)を包含し、更に詳細な態様においては、それは、MNN4A遺伝子を欠失または破壊することをも含みうる。破壊は、特定の酵素をコードするオープンリーディングフレームを破壊すること、または該オープンリーディングフレームの発現を破壊すること、または干渉性RNA、アンチセンスRNAなどを使用して、β−マンノシルトランスフェラーゼおよび/またはホスホマンノシルトランスフェラーゼの1以上をコードするRNAの翻訳を阻害することを含む。該宿主細胞は更に、特定のN−グリカン構造を産生するように修飾された前記宿主細胞のいずれかを含みうる。
宿主細胞は更に、タンパク質O−マンノシルトランスフェラーゼ[Dol−P−Man:タンパク質(Ser/Thr)マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子)(PMT)(米国特許第5,714,377号(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)]の1以上を欠失または発現破壊することにより糖タンパク質のO−グリコシル化を制御するように遺伝的に修飾された、あるいは公開国際出願番号WO 2007/061631(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されているとおりにPmtpインヒビターおよび/またはアルファ−マンノシダーゼの存在下で増殖された、あるいはそれらの両方に付された下等真核細胞[例えば酵母、例えばピチア・パストリス(Pichia pastoris)]を包含する。破壊は、Pmtpをコードするオープンリーディングフレームを破壊すること、または該オープンリーディングフレームの発現を破壊すること、または干渉性RNA、アンチセンスRNAなどを使用して、Pmtpの1以上をコードするRNAの翻訳を阻害することを含む。該宿主細胞は更に、特定のN−グリカン構造を産生するように修飾された前記宿主細胞のいずれかを含みうる。
Pmtpインヒビターには、ベンジリデンチアゾリジンジオンが含まれるが、これに限定されるものではない。使用されうるベンジリデンチアゾリジンジオンの例としては、5−[[3,4−ビス(フェニルメトキシ)フェニル]メチレン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸、5−[[3−(1−フェニルエトキシ)−4−(2−フェニルエトキシ)]フェニル]メチレン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸、および5−[[3−(1−フェニル−2−ヒドロキシ)エトキシ)−4−(2−フェニルエトキシ)]フェニル]メチレン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸が挙げられる。
特定の実施形態においては、少なくとも1つの内因性PMT遺伝子の機能または発現が低減、破壊または欠失される。例えば、特定の実施形態においては、PMT1、PMT2、PMT3およびPMT4遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの内因性PMT遺伝子の機能または発現が低減、破壊または欠失され、あるいは該宿主細胞は1以上のPMTインヒビターの存在下で培養される。更に詳細な実施形態においては、該宿主細胞は1以上のPMT遺伝子の欠失または破壊を含み、該宿主細胞は1以上のPmtpインヒビターの存在下で培養される。これらの実施形態の特定の態様においては、該宿主細胞は分泌性α−1,2−マンノシダーゼをも発現する。
PMT遺伝子欠失もしくは破壊および/またはPmtpインヒビターは、O−グリコシル化の占拠を低減することにより、すなわち、グリコシル化される糖タンパク質上のO−グリコシル化部位の総数を減少させることにより、O−グリコシル化を制御する。該細胞により分泌されるα−1,2−マンノシダーゼの更なる添加は、該糖タンパク質上に存在するO−グリカンのマンノース鎖長を減少させることにより、O−グリコシル化を制御する。したがって、PMT欠失もしくは破壊および/またはPmtpインヒビターを分泌性α−1,2−マンノシダーゼの発現と組合せることは、占拠および鎖長を減少させることによりO−グリコシル化を制御する。個々の状況においては、個々の異種糖タンパク質(例えば、抗体)は種々の度合の効率で発現されゴルジ装置から輸送される可能性があり、したがって、PMT欠失または破壊、Pmtpインヒビターおよびα−1,2−マンノシダーゼの特定の組合せを要しうるため、PMT欠失または破壊、Pmtpインヒビターおよびα−1,2−マンノシダーゼの個々の組合せは実験的に決定される。もう1つの態様においては、1以上の内因性マンノシルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子が欠失される。この欠失は分泌性α−1,2−マンノシダーゼおよび/またはPMTインヒビターの供与と組合されることが可能であり、あるいは分泌性α−1,2−マンノシダーゼおよび/またはPMTインヒビターの供与の代わりに行われうる。
したがって、O−グリコシル化の制御は、より良好な通算収率または適切に構築された糖タンパク質の収率で、本明細書に開示されている宿主細胞において特定の糖タンパク質を製造するのに有用でありうる。O−グリコシル化の低減または排除は、全抗体のような糖タンパク質が分泌経路を横断し細胞表面へ輸送される際の、全抗体のような糖タンパク質の構築および輸送に有益な効果をもたらすらしい。したがって、O−グリコシル化が制御された細胞においては、適切に構築された糖タンパク質(例えば、抗体フラグメント)の収率が、O−グリコシル化が制御されていない宿主細胞において得られる収率と比較して増加する。
α−マンノシダーゼに耐性である、β−結合マンノース残基を有するN−グリカンおよびO−グリカンの可能性を減少させ又は排除するために、β−マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子(例えば、BMT1、BMT2、BMT3およびBMT4)の1以上を欠失または破壊することにより、α−マンノシダーゼ耐性N−グリカンを有する糖タンパク質を除去するために、組換え糖操作ピチア・パストリス(Pichia pastoris)宿主細胞を遺伝的に操作する(米国特許第7,465,577号、米国特許第7,713,719号および公開国際出願番号WO2011046855(それらのそれぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)。また、BMT2とBMT1、BMT3およびBMT4の1以上との欠失または破壊は、宿主細胞タンパク質に対する抗体に対する検出可能な交差反応性を低減または排除する。
特定の実施形態においては、該宿主細胞はAlg3pタンパク質活性を示さず、あるいはALG3遺伝子からの発現の欠失または破壊(例えば、該宿主細胞をalg3Δにする、Alg3pをコードするオープンリーディングフレームの欠失または破壊)を有する[公開米国出願第20050170452号またはUS20100227363(それらを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているとおり]。Alg3pはManGlcNAc−PP−ドリチル アルファ−1,3−マンノシルトランスフェラーゼであり、これは、脂質結合ManGlcNAc(図2,GS 1.3)のアルファ−1,6−アームのマンノース残基へアルファ−1,3−結合でマンノース残基を転移して、脂質結合GlcManGlcNAcの合成のための前駆体である脂質結合ManGlcNAc(図2,GS 1.4)を産生し、ついでこれは、オリゴサッカリルトランスフェラーゼにより糖タンパク質のアスパラギン残基に転移され、ついでグルコース(Glc)残基の除去に付される。Alp3pタンパク質活性を欠く宿主細胞においては、脂質結合ManGlcNAcオリゴ糖はオリゴサッカリルトランスフェラーゼにより糖タンパク質のアスパラギン残基に転移されうる。α1,2−マンノシダーゼを更に含むそのような宿主細胞において、該糖タンパク質に結合しているManGlcNAcオリゴ糖はトリ−マンノース(少マンノース)ManGlcNAc構造(図2,GS 2.1)へと切断される。ManGlcNAc(GS 1.3)は、図2に示されているManGlcNAc(GS 2.0)から区別され、これは、ManGlcNAc−PP−ドリチル アルファ−1,3マンノシルトランスフェラーゼ(Alg3p)を発現する宿主細胞において産生される。
したがって、ALG3遺伝子の欠失または破壊(alg3Δ)を含み、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子を含む下等真核宿主細胞におけるN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体およびその組成物の製造方法であって、該インスリンまたはインスリン類似体を発現させるための条件下、該宿主細胞を培養して、ManGlcNAc(GS 1.3)構造を主に有するN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることを含む製造方法を提供する。更に詳細な実施形態においては、該宿主細胞は更に、エンドマンノシダーゼ活性[例えば、完全長エンドマンノシダーゼ、またはキメラエンドマンノシダーゼ(これは、細胞標的化シグナルペプチドに融合したエンドマンノシダーゼ触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、エンドマンノシダーゼ活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される;米国特許第7,332,299号を参照されたい)]および/またはグルコシダーゼII活性[完全長グルコシダーゼII、またはキメラグルコシダーゼII(これは、細胞標的化シグナルペプチドに融合したグルコシダーゼII触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、グルコシダーゼII活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される;米国特許第6,803,225号を参照されたい)]を発現する。特定の態様においては、該宿主細胞は更に、ALG6(α1,3−グルコシルトランスフェラーゼ)遺伝子の欠失または破壊(alg6Δ)を含み、これはalg3Δ宿主細胞における糖タンパク質のN−グリカン占拠を増加させることが示されている(例えば、ManGlcNAc(GS 1.3)または少マンノースN−グリカン構造を有する糖タンパク質を産生させるためのヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の遺伝的操作を開示しているDe Pourcqら,PloSOne 2012;7(6):e39976.Epub 2012年6月29日を参照されたい)。ピチア・パストリス(Pichia pastoris)ALG6をコードする核酸配列はEMBLデータベース,アクセッション番号CCCA38426に開示されている。更に詳細な態様においては、該宿主細胞は更に、OCH1遺伝子の欠失または破壊(och1Δ)を含む。
更に、ALG3遺伝子の欠失または破壊(alg3Δ)を含み、α1,2−マンノシダーゼ触媒ドメイン(該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、α1,2−マンノシダーゼ活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される)を含むキメラα1,2−マンノシダーゼをコードする、該キメラα1,2−マンノシダーゼを過剰発現する核酸分子を含み、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子を含む下等真核宿主細胞におけるN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体およびその組成物の製造方法であって、該インスリンまたはインスリン類似体を発現させるための条件下、該宿主細胞を培養して、ManGlcNAc構造を主に有するN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることを含む製造方法を提供する。更に詳細な実施形態においては、該宿主細胞は更に、エンドマンノシダーゼ活性[例えば、完全長エンドマンノシダーゼ、またはキメラエンドマンノシダーゼ(これは、細胞標的化シグナルペプチドに融合したエンドマンノシダーゼ触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、エンドマンノシダーゼ活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される)]および/またはグルコシダーゼII活性[完全長グルコシダーゼII、またはキメラグルコシダーゼII(これは、細胞標的化シグナルペプチドに融合したグルコシダーゼII触媒ドメインを含み、該触媒ドメインは、該触媒ドメインに通常は結合していない細胞標的化シグナルペプチドに融合しており、該シグナルペプチドは、グルコシダーゼII活性を該宿主細胞のERまたはゴルジ装置に標的化するように選択される)]を発現または過剰発現する。特定の態様においては、該宿主細胞は更に、ALG6遺伝子の欠失または破壊(alg6Δ)を含む。更に詳細な態様においては、該宿主細胞は更に、OCH1遺伝子の欠失または破壊(och1Δ)を含む。実施例14は、キメラα1,2−マンノシダーゼおよび完全長エンドマンノシダーゼ過剰発現するalg3Δピチア・パストリス(Pichia pastoris)宿主細胞の構築を示す。実施例15において、該宿主細胞は、少マンノースN−グリカンを有するインスリン類似体を産生することが示された。他の酵母または糸状菌において、類似宿主細胞が構築されうる。
更に詳細な実施形態においては、前記alg3Δ宿主細胞は更に、特定のハイブリッドまたは複合N−グリカンを主に有するN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を産生させるための、既に開示されている追加的な哺乳類またはヒトグリコシル化酵素(例えば、GnT I、GnT II、ガラクトシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ)を含みうる。
糖タンパク質の収率は、幾つかの場合には、哺乳類またはヒトシャペロンタンパク質をコードする核酸分子を過剰発現させることにより、あるいは1以上の内因性シャペロンタンパク質をコードする遺伝子を、1以上の哺乳類またはヒトシャペロンタンパク質をコードする核酸分子で置換することにより改善されうる。また、宿主細胞における哺乳類またはヒトシャペロンタンパク質の発現も該細胞におけるO−グリコシル化を制御するらしい。したがって、シャペロンタンパク質をコードする少なくとも1つの内因性遺伝子の機能が低減または排除されており、該シャペロンタンパク質の哺乳類またはヒトホモログの少なくとも1つをコードするベクターが細胞内で発現される、本発明における宿主細胞が更に含まれる。また、該内因性宿主細胞シャペロンおよび該哺乳類またはヒトシャペロンタンパク質が発現される宿主細胞も含まれる。更に詳細な態様においては、下等真核宿主細胞は酵母または糸状菌宿主細胞である。組換えタンパク質の収率の改善およびO−グリコシル化の低減または制御のためにヒトシャペロンタンパク質が導入される、宿主細胞のシャペロンの使用の具体例は、公開国際出願番号WO 2009105357およびWO 2010019487(それらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている。前記と同様に、該内因性シャペロンタンパク質の1以上をコードする遺伝子を、1以上の哺乳類またはヒトシャペロンタンパク質をコードする核酸分子で置換すること、あるいは前記のとおりに1以上の哺乳類またはヒトシャペロンタンパク質を過剰発現させることに加えて、タンパク質O−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)タンパク質をコードする少なくとも1つの内因性遺伝子の機能または発現が低減、破壊または欠失されている、下等真核宿主細胞が更に含まれる。特定の実施形態においては、PMT1、PMT2、PMT3およびPMT4遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの内因性PMT遺伝子の機能が低減、破壊または欠失されている。
本明細書に開示されている方法は、糖タンパク質を産生するように遺伝的に修飾された任意の宿主細胞を使用することが可能であり、ここで、主要N−グリカンは複合N−グリカン、ハイブリッドN−グリカンおよび高マンノースN−グリカンからなる群から選択され、ここで、複合N−グリカンは、GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群、Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAcからなる群、またはNANA(1−4)Gal(1−4)ManGlcNAcからなる群から選択され、ハイブリッドN−グリカンは、GlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAcおよびNANAGalGlcNAcManGlcNAcからなる群から選択され、高マンノースN−グリカンは、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAcおよびManGlcNAcからなる群から選択される。もう1つの実施形態においては、該主要N−グリカンは少マンノース、ManGlcNAcである。
組換え宿主細胞において産生される糖タンパク質上のN−グリコシル化部位占拠を増加させるために、内因性宿主細胞ヘテロオリゴマーオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OTase)複合体を含む1以上の必須サブユニットの致死突然変異を機能的に抑制しうる1以上の異種単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸分子を、該宿主細胞内での該糖タンパク質の発現の前または該発現と同時に、該組換え宿主細胞において過剰発現させる。リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3Aタンパク質、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3Bタンパク質およびリーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3Dタンパク質は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)におけるSTT3遺伝子座の欠失の致死表現型を抑制することが示されている単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼである(Nasebら,Molec.Biol.Cell 19:3758−3768(2008))。Nasebら(同誌)は更に、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3Dタンパク質がWBP1、OST1、SWP1およびOST2遺伝子座の欠失の致死表現型を抑制しうることを示した。Heseら(Glycobiology 19:160−171(2009))は、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3A(STT3−1)、STT3B(STT3−2)およびSTT3D(STT3−4)タンパク質がOST2、SWP1およびWBP1遺伝子座の欠失を機能的に相補しうることを教示している。PCT/US2011/25878(公開国際出願番号WO2011106389;これを参照により本明細書に組み入れることとする)に示されているとおり、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3D(LmSTT3D)タンパク質は、宿主細胞により産生される異種糖タンパク質(例えば、抗体)のN−グリコシル化部位占拠を増加させうることが本明細書中の実施例に示されているΔwbp1、Δost1、Δswp1およびΔost2突然変異の少なくとも1つの致死表現型とΔstt3突然変異の致死表現型とを抑制しうる異種単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼである。
したがって、前記の1つの態様においては、酵母または糸状菌宿主細胞におけるN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の製造方法を提供し、該方法は、異種単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸分子と、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子とを含む、特定のN−グリカン種を主に有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作された酵母または糸状菌宿主細胞を準備し、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体を発現させるための条件下、該宿主細胞を培養して、該N−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を産生させることを含む。
前記のもう1つの態様においては、N−グリコシル化部位占拠が83%を超える主要N−グリカン種を含有するN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の、酵母または糸状菌宿主細胞における製造方法を提供し、該方法は、異種単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3Dタンパク質)をコードする核酸分子と、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子とを含む、特定のN−グリカン種を主に有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作された酵母または糸状菌宿主細胞を準備し、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体を発現させるための条件下、該宿主細胞を培養して、N−グリコシル化部位占拠が83%を超える該N−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を産生させることを含む。前記の特定の実施形態においては、該N−グリコシル化部位占拠は少なくとも94%である。更に詳細な実施形態においては、該N−グリコシル化部位占拠は少なくとも99%である。
更に、異種単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする第1核酸分子と、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体をコードする第2核酸分子とを含む、特定のN−グリカン種を主に有するN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を産生するように遺伝的に操作された酵母または糸状菌宿主細胞を提供し、ここで、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OTase)複合体を含むタンパク質をコードする内因性宿主細胞遺伝子が発現される。これは内因性STT3遺伝子(これは、酵母においては、STT3遺伝子である)の発現を含む。
一般に、前記方法および宿主細胞においては、該異種単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼは、OTase複合体の少なくとも1つの必須タンパク質の突然変異の致死表現型を機能的に抑制しうる。更に詳細な態様においては、OTase複合体の必須タンパク質はSTT3遺伝子座、WBP1遺伝子座、OST1遺伝子座、SWP1遺伝子座またはOST2遺伝子座あるいはそれらのホモログによりコードされる。更に詳細な態様においては、例えば、該単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼはリーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3Dタンパク質である。
プロモーターは、遺伝子発現を制御するためのDNA配列要素である。特に、プロモーターは転写開始部位を特定し、TATAボックスおよび上流プロモーター要素を含みうる。選択されるプロモーターは、選択される個々の宿主系において機能しうると予想されるものである。例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、オガタエア・ミヌタ(Ogataea minuta)またはピチア・パストリス(Pichia pastoris)のような酵母が使用される場合には、酵母プロモーターが使用されるが、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)またはトリコデルマ・レーゼイ(Trichoderma reesei)のような宿主細胞においては真菌プロモーターが使用されるであろう。酵母プロモーターの例には、GAPDH、AOX1、SEC4、HH1、PMA1、OCH1、GAL1、PGK、GAP、TPI、CYC1、ADH2、PHO5、CUP1、MFα1、FLD1、PMA1、PDI、TEF、RPL10およびGUT1プロモーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。Romanosら,Yeast 8:423−488(1992)は酵母プロモーターおよび発現ベクターの総説を記載している。Hartnerら,Nucl.Acid Res.36:e76(pub on−line 6 June 2008)は、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)における異種タンパク質の微調整発現のためのプロモーターのライブラリーを記載している。
本明細書に開示されている核酸分子に機能的に連結されるプロモーターは構成的プロモーターまたは誘導プロモーターでありうる。誘導プロモーター、例えばAOX1プロモーターは、誘導因子に応答して、転写因子の結合に際して、増加または減少した速度での転写を導くプロモーターである。本明細書中で用いる転写因子には、プロモーターの調節または制御領域に結合して転写に影響を及ぼしうる任意の因子が含まれる。宿主細胞における転写因子のプロモーター結合能またはRNA合成は、該宿主を誘導因子にさらす又は宿主細胞培地から誘導因子を除去することにより制御されうる。したがって、誘導プロモーターの発現を調節するためには、誘導因子を宿主細胞の増殖培地に加えるか又は該増殖培地から除去する。そのような誘導因子には、糖、ホスファート、アルコール、金属イオン、ホルモン、熱、寒冷などが含まれうる。例えば、酵母において一般的に用いられる誘導因子はグルコース、ガラクトースなどである。
選択される転写終結配列は、選択される個々の宿主細胞において機能しうるものである。例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)またはピチア・パストリス(Pichia pastoris)のような酵母宿主細胞が宿主細胞である場合には、酵母転写終結配列が発現ベクターにおいて使用されるが、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)またはトリコデルマ・レーゼイ(Trichoderma reesei)のような宿主細胞においては真菌転写終結配列が使用されるであろう。転写終結配列には、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)CYC転写終結配列(ScCYC TT)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)ALG3転写終結配列(ALG3 TT)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)ALG6転写終結配列(ALG6 TT)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)ALG12転写終結配列(ALG12 TT)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)AOX1転写終結配列(AOX1 TT)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)OCH1転写終結配列(OCH1 TT)およびピチア・パストリス(Pichia pastoris)PMA1転写終結配列(PMA1 TT)が含まれるが、これらに限定されるものではない。他の転写終結配列が実施例および当技術分野において見出されうる。
酵母を遺伝的に操作するためには、組換え宿主細胞を構築するために、必須細胞栄養素(例えば、アミノ酸)を該酵母宿主細胞が合成するのを可能にする遺伝的機能および薬物耐性マーカーを含む選択マーカーが使用されうる。酵母において一般に使用される薬物耐性マーカーには、クロラムフェニコール、カナマイシン、メトトレキセート、G418(ゲネティシン(geneticin))、ゼオシンなどが含まれる。酵母宿主細胞が必須細胞栄養素を合成するのを可能にする遺伝的機能は、対応ゲノム機能における栄養要求性突然変異を有する利用可能な酵母株と共に用いられる。一般的な酵母選択マーカーは、ロイシン(LEU2)、トリプトファン(TRP1およびTRP2)、プロリン(PRO1)、ウラシル(URA3、URA5、URA6)、ヒスチジン(HIS3)、リシン(LYS2)、アデニン(ADE1またはADE2)などを合成するための遺伝的機能を付与する。他の酵母選択マーカーには、亜ヒ酸塩の存在下で増殖される酵母細胞に亜ヒ酸塩耐性を付与するサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)由来のARR3遺伝子が含まれる(Bobrowiczら,Yeast,13:819−828(1997);Wysockiら,J.Biol.Chem.272:30061−30066(1997))。幾つかの適当な組込み部位は、米国特許第7,479,389号(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に列挙されているものを含み、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)および他の酵母または真菌に関して公知の遺伝子座に対するホモログを含む。酵母内にベクターを組込むための方法はよく知られている[例えば、米国特許第7,479,389号、米国特許第7,514,253号、米国公開出願第2009012400号およびWO2009/085135(それらの開示の全てを参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい]。挿入部位の例には、ピチア(Phichia)ADE遺伝子、ピチアTRP(TRP1〜TRP2を含む)遺伝子、ピチアMCA遺伝子、ピチアCYM遺伝子、ピチアPEP遺伝子、ピチアPRB遺伝子およびピチアLEU遺伝子が含まれるが、これらに限定されるものではない。ピチア(Pichia)ADE1およびARG4遺伝子はLin Cereghinoら,Gene 263:159−169(2001)および米国特許第4,818,700号(それらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されており、HISおよびTRP1遺伝子はCosanoら,Yeast 14:861−867(1998)に記載されており、HIS4はGenBankアクセッション番号X56180に記載されている。
酵母細胞の形質転換は当技術分野でよく知られており、例えば、自体公知方法によるプロトプラスト形成およびそれに続く形質転換により行われうる。該細胞を培養するために使用される培地は、酵母生物を増殖させるのに適した任意の通常の培地でありうる。分泌N−グリコシル化インスリン類似体前駆体の相当な割合は、適切にプロセシングされた形態で培地内に存在し、以下のものを含む(それらに限定されるものではない)種々の方法により培地から回収されうる:遠心分離、濾過による培地からの酵母細胞の分離、あるいはイオン交換マトリックスまたは逆相吸収マトリックスによる該インスリン前駆体の捕捉、塩(例えば、硫酸アンモニウム)による上清または濾液のタンパク質性成分の沈殿、およびそれに続く、種々のクロマトグラフィー法、例えばイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどによる精製。
該分泌N−グリコシル化インスリン類似体前駆体は、所望により、米国特許第5,395,922号および欧州特許第765,395A号(それらの両方を参照により明示的に本明細書に組み入れることとする)に記載されているN−末端伸長またはスペーサーペプチドを含みうる。N末端伸長またはスペーサーは、シグナルペプチドまたはプロペプチドとB鎖のN末端との間に位置するペプチドである。分泌経路を通過する間にシグナルペプチドおよびプロペプチドが除去された後、該N末端伸長ペプチドは該N−グリコシル化インスリン前駆体に結合したままである。したがって、発酵中、B鎖のN末端はDPAPのような酵母プロテアーゼのタンパク質分解活性から保護される。N末端伸長またはスペーサーペプチドの存在は、該タンパク質の化学的加工中のN末端アミノ基の保護としても役立ちうる。すなわち、それはBOC(t−ブチル−オキシカルボニル)または同様の保護基の代用となりうる。該N末端伸長またはスペーサーは、Lys残基において該末端伸長が除去されるように塩基性アミノ酸(例えば、Lys)に特異的であるタンパク質分解酵素により、回収N−グリコシル化インスリン前駆体から除去されうる。そのようなタンパク質分解酵素の例としては、トリプシン、アクロモバクター・リチクス(Achromobacter lyticus)またはリソバクター・エンザイモゲネス(Lysobacter enzymogenes)エンドプロテアーゼLys−Cが挙げられる。
培地内への分泌および回収の後、N−グリコシル化インスリン類似体前駆体は、該随意的なN末端伸長またはスペーサーペプチドおよびCペプチドを除去するための種々のインビトロ処理に付されて、N−グリコシル化desB30インスリンを与えうる。ついで該N−グリコシル化desB30インスリンは、B30にThrを付加することにより、B30インスリンへと変換されうる。L−トレオニンエステルの存在下で該N−グリコシル化インスリン類似体前駆体をトリプシンまたはLys−Cで消化することによる該N−グリコシル化インスリン類似体前駆体からB30ヘテロ二量体への変換、およびそれに続く、塩基性または酸性加水分解による該トレオニンエステルからL−トレオニンへの変換が行われうる(米国特許第4,343,898号または第4,916,212号(それらの開示を参照により明細書に組み入れることとする)に記載されているとおり)。また、該N−グリコシル化desB30インスリンは、米国特許第5,750,497号および米国特許第5,905,140号(それらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されているとおり、アシル化誘導体に変換されうる。
本明細書に開示されている方法は哺乳類、植物および昆虫細胞における使用に応用されうる。動物細胞の例には、SC−I細胞、LLC−MK細胞、CV−I細胞、CHO細胞、COS細胞、マウス細胞、ヒト細胞、HeLa細胞、293細胞、VERO細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MDOK細胞、CRFK細胞、RAF細胞、TCMK細胞、LLC−PK細胞、PK15細胞、WI−38細胞、MRC−5細胞、T−FLY細胞、BHK細胞、SP2/0、NSO細胞、ニンジン細胞およびそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されるものではない。昆虫細胞には、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)由来の細胞が含まれる。これらの細胞は、特定の又は主として特定のN−グリカンを有する免疫グロブリンを該細胞が産生可能となるように遺伝的に操作されうる。例えば、米国特許第6,949,372号は、昆虫細胞におけるシアル酸化糖タンパク質の製造方法を開示している。Yamane−Ohnukiら,Biotechnol.Bioeng.87:614−622(2004)、Kandaら,Biotechnol.Bioeng.94:680−688(2006)、Kandaら,Glycobiol.17:104−118(2006)ならびに米国公開出願第2005/0216958および第2007/0020260号(それらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする)は、N−グリカンがフコースを欠くか又は減少したフコースを有する免疫グロブリンを産生しうる哺乳類細胞を開示している。米国公開特許出願第2005/0074843号(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)は、二分岐N−グリカンを有する抗体の、哺乳類細胞における製造を開示している。
哺乳類、昆虫または植物細胞における発現カセットの発現を調節するために選択される調節可能なプロモーターは、選択される細胞型における機能性に関して選択されるべきである。適当な調節可能なプロモーターの例には、テトラサイクリン調節可能プロモーター(例えば、Berens & Hillen,Eur.J.Biochem.270:3109−3121(2003)を参照されたい)、RU 486誘導可能プロモーター、エクジソン誘導可能プロモーターおよびカナマイシン調節可能系が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらのプロモーターは、実施例に記載されている発現カセットにおいて例示されているプロモーターの代わりに使用されうる。捕捉部分は、選択される細胞型における使用に適した細胞表面アンカータンパク質に融合されうる。GPIタンパク質を含む細胞表面アンカータンパク質は哺乳類、昆虫および植物細胞に関してよく知られている。GPIアンカー融合タンパク質はKennardら,Methods Biotechnol.Vo.8:Animal Cell Biotechnology(Jenkins編.Human Press,Inc.,Totowa,NJ)pp.187−200(1999)に記載されている。安定な組換え体を作製するために発現カセットを宿主細胞ゲノム内に組込むためのゲノム標的化配列が、実施例に例示されているゲノム標的化および組込み配列の代わりに使用されうる。安定および一過性トランスフェクト化哺乳類、昆虫および植物宿主細胞を作製するためのトランスフェクション方法は当技術分野でよく知られている。本明細書に開示されているとおりにトランスフェクト化宿主細胞が構築されたら、本明細書に開示されているとおりに、該細胞を、関心のある免疫グロブリンの発現に関してスクリーニングし、選択することが可能である。
したがって、前記のもう1つの態様においては、哺乳類、植物または昆虫宿主細胞におけるN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の製造方法を提供し、該方法は、異種単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼ[例えば、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3タンパク質]をコードする少なくとも1つの核酸分子と、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子とを含む哺乳類または昆虫宿主細胞を準備し、該インスリンまたはインスリン類似体を発現させるための条件下、該宿主細胞を培養して、該N−グリコシル化インスリン類似体を産生させることを含む。更に詳細な態様においては、該宿主細胞は、N−グリカンを含有する特定のN−グリカン種を主に有する糖タンパク質を産生するように、例えば、ヒト様N−グリカン、または該宿主細胞に通常は内在しないN−グリカンを有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作されている。
前記のもう1つの態様においては、インスリンまたはインスリン類似体のN−グリコシル化部位占拠が83%を超えているインスリンまたはインスリン類似体の、哺乳類または昆虫宿主細胞における製造方法を提供し、該方法は、異種単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3タンパク質)をコードする核酸分子と、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子とを含む、特定のN−グリカン種を主に有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作された哺乳類または昆虫宿主細胞を準備し、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体を発現させるための条件下、該宿主細胞を培養して、該インスリンまたはインスリン類似体のN−グリコシル化部位占拠が83%を超えている該インスリンまたはインスリン類似体を産生させることを含む。更に詳細な態様においては、該宿主細胞は、ヒト様N−グリカン、または該宿主細胞に通常は内在しないN−グリカンを有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作されている。
前記方法の更に詳細な実施形態においては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OTase)複合体を含むタンパク質をコードする内因性宿主細胞遺伝子が発現される。
前記の特定の実施形態においては、該N−グリコシル化部位占拠は少なくとも94%である。更に詳細な実施形態においては、該N−グリコシル化部位占拠は少なくとも99%である。
更に、異種単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3Dタンパク質)をコードする第1核酸分子と、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体をコードする第2核酸分子とを含む哺乳類または昆虫宿主細胞を提供し、ここで、該内因性宿主細胞オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OTase)複合体を含むタンパク質をコードする内因性宿主細胞遺伝子が発現される。
また、特定の実施形態においては、高等真核細胞、組織または生物は、植物界、例えばコムギ、イネ、トウモロコシ、ニンジン、タバコなどに由来するものでありうる。あるいは、コケ植物細胞が、例えば、フィスコミトレラ(Physcomitrella)、フナリア(Funaria)、スファグヌム(Sphagnum)、セラトドン(Ceratodon)、マルチャンシア(Marchantia)およびスフェロカルポス(Sphaerocarpos)属の種から選択されうる。典型的な植物細胞は、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)のコケ植物細胞であり、これはWO 2004/057002およびWO 2008/006554(それらの開示の全てを参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている。植物細胞を使用する発現系は更に、特定のN−グリカンを主に有する糖タンパク質を該細胞が産生することを可能にする改変されたグリコシル化経路を有するように操作されうる。例えば、該細胞は、コアフコスルトランスフェラーゼの機能不全を有するように若しくはコアフコスルトランスフェラーゼを有さないように、および/またはキシロシルトランスフェラーゼの機能不全を有するように若しくはキシロシルトランスフェラーゼを有さないように、および/またはβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼの機能不全を有するように若しくはβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを有さないように遺伝的に操作されうる。あるいは、ガラクトース、フコースおよび/またはキシロースは、該残基を除去する酵素での処理により、免疫グロブリンから除去されうる。当技術分野で公知である、N−グリカンからガラクトース、フコースおよび/またはキシロース残基を遊離させる任意の酵素、例えばα−ガラクトシダーゼ、β−キシロシダーゼおよびα−フコシダーゼが使用されうる。あるいは、1,3−フコシルトランスフェラーゼおよび/または1,2−キシロシルトランスフェラーゼおよび/または1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼにより基質として利用され得ない修飾N−グリカンを合成する発現系が使用されうる。植物細胞におけるグリコシル化経路を修飾するための方法は米国特許第7,449,308号、第6,998,267号および第7,388,081号(それらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されており、これらは、ヒト様N−グリカンを有する組換え糖タンパク質を産生するように植物を遺伝的に操作するための方法を開示している。WO 2008006554(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)は、キシロースまたはフコースを含有しない糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作された植物における糖タンパク質、例えば抗体の製造方法を開示している。WO 2007006570(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)は、動物またはヒト様糖グリコシル化パターンを有する糖タンパク質を産生するようにコケ植物、有毛虫、藻類および酵母を遺伝的に操作するための方法を開示している。
したがって、前記のもう1つの態様においては、特定のN−グリカン種を主に有するN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の、植物宿主細胞における製造方法を提供し、該方法は、異種単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼ[例えば、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3Dタンパク質]をコードする核酸分子と、少なくともN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子とを含む、哺乳類またはヒト様N−グリカンを有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作された植物宿主細胞を準備し、該インスリンまたはインスリン類似体を発現させるための条件下、該宿主細胞を培養して、該N−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を産生させることを含む。
前記のもう1つの態様においては、該インスリンまたはインスリン類似体のN−グリコシル化部位占拠が83%を超えるN−グリカン種を主に有するインスリンまたはインスリン類似体の、植物宿主細胞における製造方法を提供し、該方法は、異種単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼ[例えば、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3Dタンパク質]をコードする核酸分子と、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子とを含む、特定のN−グリカン種を主に有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作された植物宿主細胞を準備し、該インスリンまたはインスリン類似体を発現させるための条件下、該宿主細胞を培養して、該N−グリコシル化部位占拠が83%を超える該N−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を産生させることを含む。
前記方法のもう1つの実施形態においては、内因性宿主細胞オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OTase)複合体を含むタンパク質をコードする内因性宿主細胞遺伝子が発現される。
前記方法の特定の実施形態においては、該N−グリコシル化部位占拠は少なくとも94%である。更に詳細な実施形態においては、該N−グリコシル化部位占拠は少なくとも99%である。
更に、異種単一サブユニットオリゴサッカリルトランスフェラーゼ[例えば、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3Dタンパク質]をコードする第1核酸分子と、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するインスリンまたはインスリン類似体をコードする第2核酸分子とを含む植物宿主細胞を提供し、ここで、内因性宿主細胞オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OTase)複合体を含むタンパク質をコードする内因性宿主細胞遺伝子が発現される。
VI.徐放製剤
ある実施形態においては、インビボN−グリコシル化またはインビトログリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を徐放様態(すなわち、可溶性組換えヒトインスリンより持続的な吸収プロファイルを示す形態)で投与することが有利でありうる。これは、典型的なグルコース変動時間尺度に、より厳密に関連した時間尺度で(すなわち、分単位ではなく時間単位で)、グルコースの変動に応答しうるグリコシル化インスリンの持続レベルを与えるであろう。ある実施形態においては、該徐放製剤は、非高血糖条件(すなわち、絶食条件)下で哺乳動物に投与された場合、該グリコシル化インスリンの0次放出を示しうる。持続的吸収プロファイルをもたらす任意の製剤が使用されうる、と理解されるであろう。ある実施形態においては、これは、該グリコシル化インスリンを、全身循環内へのその放出特性を遅らせる他の成分と組合せることにより達成されうる。例えば、PZI(プロタミン亜鉛インスリン)製剤がこの目的に使用されうる。幾つかの場合には、該亜鉛含量は約0.05〜約0.5mg亜鉛/mgグリコシル化インスリンの範囲である。
したがって、ある実施形態においては、本開示の製剤は約0.05〜約10mgプロタミン/mgグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を含み、例えば、約0.2〜約10mgプロタミン/mgグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体、例えば、約1〜約5mgプロタミン/mgグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を含む。
ある実施形態においては、本開示の製剤は約0.006〜約0.5mg亜鉛/mgグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を含み、例えば、約0.05〜約0.5mg亜鉛/mgグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体、例えば、約0.1〜約0.25mg亜鉛/mgグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を含む。
ある実施形態においては、本開示の製剤は、約100:1〜約5:1、例えば、約50:1〜約5:1、例えば、約40:1〜約10:1の範囲の比(w/w)でプロタミンおよび亜鉛を含む。ある実施形態においては、本開示のPZI製剤は、約20:1〜約5:1、例えば、約20:1〜約10:1、約20:1〜約15:1、約15:1〜約5:1、約10:1〜約5:1、約10:1〜約15:1の範囲の比(w/w)でプロタミンおよび亜鉛を含む。
ある実施形態においては、本開示の製剤は抗微生物保存剤(例えば、m−クレゾール、フェノール、メチルパラベンまたはプロピルパラベン)を含む。ある実施形態においては、該抗微生物保存剤はm−クレゾールである。例えば、ある実施形態においては、製剤は約0.1〜約1.0% v/v m−クレゾールを含みうる。例えば、約0.1〜約0.5% v/v m−クレゾール、例えば、約0.15〜約0.35% v/v m−クレゾールを含みうる。
ある実施形態においては、本開示の製剤は等張化剤としてポリオール(例えば、マンニトール、プロピレングリコールまたはグリセロール)を含む。ある実施形態においては、該等張化剤はグリセロールである。ある実施形態においては、該等張化剤は塩、例えばNaClである。例えば、製剤は約0.05〜約0.5M NaCl、例えば、約0.05〜約0.25M NaCl、または約0.1〜約0.2M NaClを含みうる。
ある実施形態においては、本開示の製剤は或る量の非グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を含む。ある実施形態においては、製剤においては、グリコシル化インスリン類似体:非グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体のモル比は約100:1〜1:1、例えば、約50:1〜2:1または約25:1〜2:1の範囲である。
本開示はまた、小分子製剤の分野でよく知られている標準的な徐放(持続放出)製剤の使用を含む(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995を参照されたい)。
本開示はまた、グリコシル化インスリン類似体を徐々に送達(運搬)するための、ポンプまたは遅延拡散に基づく装置の使用を含む。ある実施形態においては、長時間作用性となるように該インスリンを修飾することにより、長時間作用性製剤が(追加的または代替的に)提供されうる。例えば、該インスリン類似体はインスリン・グラルジン(glargine)またはインスリン・デテミル(detemir)でありうる。インスリン・グラルジンは典型的な長時間作用性インスリン類似体であり、これにおいては、Asn−A21がグリシンにより置換されており、2つのアルギニンがB鎖のC末端に付加されている。これらの変化の効果は、等電点を変化させて、pH4において比較的可溶性である溶液を生成することである。インスリン・デテミルはもう1つの長時間作用性インスリン類似体であり、これにおいては、Thr−B30が欠失しており、C14脂肪酸鎖がLys−B29に結合している。
図1は、N−グリコシル化インスリン類似体を産生するようにインビボでグリコシル化されうる、天然インスリンアミノ酸配列内のN−結合グリコシル化部位を生成する、天然インスリンアミノ酸配列に突然変異が施されうる例を示す。示されている突然変異は単独であっても組合されていてもよい。AおよびB鎖ペプチド(それぞれ配列番号33および25)に関して示されているアミノ酸配列は野生型ヒトインスリンのものである。N−グリコシル化部位を与える類似突然変異は、リスプロ(lispro)、アスパルト(aspart)、グルリシン(glulisine)、グラルジン(glargine)およびデテルミル(determir)を含むいずれかの他のインスリン類似体からも構築されうる。 図2は、モチーフAsn−Xaa−Ser/Thr(ここで、Xaaはプロリン以外の任意のアミノ酸である)でアスパラギン残基に結合しうる又はいずれかのアミノ酸に結合しうるN−グリカン構造の例を示す。 図3は2つのグリコシル化インスリン類似体の薬物動態を示す。P28N des(B30)GS.5.0(ガラクトース末端N−グリカン)インスリン類似体およびP28N des(B30)GS6.0(シアル酸末端N−グリカン)インスリン類似体に関するインスリン負荷試験(ITT)中の循環インスリン類似体レベルがNOVOLIN RおよびNOVOLIN des(B30)と比較して示されている。 図4は2つのN−グリコシル化インスリン類似体のインビボ活性を示す。P28N des(B30)GS.5.0(ガラクトース末端N−グリカン)インスリン類似体およびP28N des(B30)GS6.0(シアル酸末端N−グリカン)インスリン類似体に関するマウスITT中のグルコースレベルがNOVOLIN RおよびNOVOLIN des(B30)と比較して示されている。 図5はインスリンおよびインスリン様増殖因子(IGF−1)受容体における2つのN−グリコシル化インスリン類似体のインビトロ活性を示す。P28N des(B30)GS.5.0(ガラクトース末端N−グリカン)インスリン類似体およびP28N des(B30)GS6.0(シアル酸末端N−グリカン)インスリン類似体に関するインスリン受容体結合、インスリン受容体リン酸化およびIGF−1受容体結合がNOVOLIN RおよびNOVOLIN des(B30)と比較して示されている。 図6は、TRP2またはAOX1p遺伝子座を標的化するロールイン(roll−in)組込みプラスミドであるプラスミドpGLY4362の地図を示し、該プラスミドは、ヒトインスリンA鎖に融合したアミノ酸配列AAKからなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したN末端スペーサーに融合したTA57プロペプチドに融合したYps1ssペプチドを含むインスリン前駆体融合タンパク質をコードする発現カセットを含む。 図7は、TRP2またはAOX1p遺伝子座を標的化するロールイン組込みプラスミドであるプラスミドpGLY7679の地図を示し、該プラスミドは、ヒトインスリンA鎖に融合したアミノ酸配列A(10×HIS)AKからなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したN末端スペーサーペプチドに融合したTA57プロペプチドに融合したYps1ssペプチドを含むインスリン前駆体融合タンパク質をコードする発現カセットを含む。 図8は、TRP2またはAOX1p遺伝子座を標的化するロールイン組込みプラスミドであるプラスミドpGLY7680の地図を示し、該プラスミドは、ヒトインスリンA鎖に融合したアミノ酸配列RRからなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロペプチドを含むインスリン前駆体融合タンパク質をコードする発現カセットを含む。 図9は、TRP2またはAOX1p遺伝子座を標的化するロールイン組込みプラスミドであるプラスミドpGLY9290の地図を示し、該プラスミドは、N21G置換を有するヒトインスリンA鎖に融合したアミノ酸配列RRからなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロペプチドを含むインスリン前駆体融合タンパク質をコードする発現カセットを含む。 図10は、TRP2またはAOX1p遺伝子座を標的化するロールイン組込みプラスミドであるプラスミドpGLY9295の地図を示し、該プラスミドは、N21G置換を有するヒトインスリンA鎖に融合したアミノ酸配列RRからなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したN末端HISスペーサーペプチドに融合したサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロペプチドを含むインスリン前駆体融合タンパク質をコードする発現カセットを含む。 図11は、TRP2またはAOX1p遺伝子座を標的化するロールイン組込みプラスミドであるプラスミドpGLY9310の地図を示し、該プラスミドは、N21G置換を有するヒトインスリンA鎖に融合したアミノ酸配列RRからなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロペプチドを含むインスリン前駆体融合タンパク質をコードする発現カセットを含む。 図12は、TRP2またはAOX1p遺伝子座を標的化するロールイン組込みプラスミドであるプラスミドpGLY9311の地図を示し、該プラスミドは、ヒトインスリンA鎖に融合したアミノ酸配列TA(10×HIS)AK(配列番号32)からなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したN末端MYCスペーサーペプチドに融合したサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロペプチドを含むインスリン前駆体融合タンパク質をコードする発現カセットを含む。 図13A、13B、13Cおよび13Dは株YGLY12897およびYGLY12900の構築を示す。どちらの株も、シアル酸末端N−グリカンを含む、本明細書に開示されているインスリン類似体を含む糖タンパク質を産生しうる。 図13A、13B、13Cおよび13Dは株YGLY12897およびYGLY12900の構築を示す。どちらの株も、シアル酸末端N−グリカンを含む、本明細書に開示されているインスリン類似体を含む糖タンパク質を産生しうる。 図13A、13B、13Cおよび13Dは株YGLY12897およびYGLY12900の構築を示す。どちらの株も、シアル酸末端N−グリカンを含む、本明細書に開示されているインスリン類似体を含む糖タンパク質を産生しうる。 図13A、13B、13Cおよび13Dは株YGLY12897およびYGLY12900の構築を示す。どちらの株も、シアル酸末端N−グリカンを含む、本明細書に開示されているインスリン類似体を含む糖タンパク質を産生しうる。 図14はプラスミドpGLY6の地図を示す。プラスミドpGLY6は、URA5遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、該プラスミドは、ピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列(PpURA5−5’)を含む核酸分子に一方の側で及びピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(PpURA5−3’)を含む核酸分子に他方の側で隣接しているサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)インベルターゼ遺伝子または転写単位(ScSUC2)を含む核酸分子を含有する。 図15はプラスミドpGLY40の地図を示す。プラスミドpGLY40は、OCH1遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、該プラスミドは、OCH1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列(PpOCH1−5’)を含む核酸分子に一方の側で及びOCH1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(PpOCH1−3’)を含む核酸分子に他方の側で隣接している、lacZ反復配列(lacZ反復)を含む核酸分子に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位(PpURA5)を含む核酸分子を含有する。 図16はプラスミドpGLY43aの地図を示す。プラスミドpGLY43aは、BMT2遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、該プラスミドは、lacZ反復配列(lacZ反復)を含む核酸分子に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位(PpURA5)を含む核酸分子に隣り合ったケイ・ラクチス(K.lactis)UDP−N−アセチルグルコサミン(UDP−GlcNAc)輸送体遺伝子または転写単位(KlGlcNAc Transp.)を含む核酸分子を含有する。前記の隣り合った遺伝子は、BMT2遺伝子の5’領域(PpPBS2−5’)からのヌクレオチド配列を含む核酸分子に一方の側で、およびBMT2遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(PpPBS2−3’)を含む核酸分子に他方の側で隣接している。 図17はpGLY48の地図を示す。プラスミドpGLY48は、MNN4L1遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、該プラスミドは、lacZ反復配列(lacZ反復)に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位(PpURA5)を含む核酸分子に隣り合っている、ピチア・パストリス(P.pastoris)GAPDHプロモーター(PpGAPDH Prom)を含む核酸分子に5’末端において及びサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC終結配列(ScCYC TT)を含む核酸分子に3’末端において機能的に連結されたUDP−GlcNAc輸送体(MmGlcNAc Trans.)オープンリーディングフレーム(ORF)のマウスホモログをコードする核酸分子を含む発現カセットを含有し、ここで、該発現カセットは全体として、ピチア・パストリス(P.pastoris)MNN4L1遺伝子の5’領域(PpMNN4L1−5’)からのヌクレオチド配列を含む核酸分子に一方の側で、およびMNN4L1遺伝子の3’領域(PpMNN4L1−3’)からのヌクレオチド配列を含む核酸分子に他方の側で隣接している。 図18はプラスミドpGLY45の地図を示す。プラスミドpGLY45は、PNO1/MNN4遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、該プラスミドは、PNO1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列(PpPNO1−5’)を含む核酸分子に一方の側で及びMNN4遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(PpMNN4−3’)を含む核酸分子に他方の側で隣接している、lacZ反復配列(lacZ反復)を含む核酸分子に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位(PpURA5)を含む核酸分子を含有する。 図19はプラスミドpGLY1430の地図を示す。プラスミドpGLY1430は、プラスミドpGLY1430は、ADE1遺伝子座の発現を損なうことなくADE1遺伝子座を標的化するKINKO組込みベクターであり、(1)ピチア・パストリス(P.pastoris)SEC12リーダーペプチド(CO−NA10)にN末端において融合したヒトGlcNAcトランスフェラーゼI触媒ドメイン(コドン最適化されている)、(2)UDP−GlcNAc輸送体のマウスホモログ(MmTr)、(3)サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)SEC12リーダーペプチド(FB8)にN末端において融合したマウスマンノシダーゼIA触媒ドメイン(FB)、および(4)lacZ反復配列(lacZ)に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位(PpURA5)をコードする4つの発現カセットを縦列配置で含有する。全体はADE1遺伝子およびORFの5’領域(ADE1 5’およびORF)、ならびにADE1遺伝子の3’領域(PpADE1−3’)に隣接している。PpPMA1 promはピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1プロモーターであり、PpPMA1 TTはピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1終結配列であり、SEC4はピチア・パストリス(P.pastoris)SEC4プロモーターであり、OCH1 TTはピチア・パストリス(P.pastoris)OCH1終結配列であり、ScCYC TTはサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC終結配列であり、PpOCH1 Promはピチア・パストリス(P.pastoris)OCH1プロモーターであり、PpALG3 TTはピチア・パストリス(P.pastoris)ALG3終結配列であり、PpGAPDHはピチア・パストリス(P.pastoris)GADPHプロモーターである。 図20はプラスミドpGLY582の地図を示す。プラスミドpGLY582は、HIS1遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、(1)サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)UDP−グルコースエピメラーゼ(ScGAL10)、(2)サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)KRE2−sリーダーペプチド(33)にN末端において融合したヒトガラクトシルトランスフェラーゼI(hGalT)触媒ドメイン、(3)lacZ反復配列(lacZ反復)に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位(PpURA5)、および(4)キイロショウジョウバエ(D.melanogaster)UDP−ガラクトース輸送体(DmUGT)をコードする4つの発現カセットを縦列配置で含有する。全体はHIS1遺伝子の5’領域(PpHIS1−5’)およびHID1遺伝子の3’領域(PpHIS1−3’)に隣接している。PMA1はピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1プロモーターであり、PpPMA1 TTはピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1終結配列であり、GAPDHはピチア・パストリス(P.pastoris)GADPHプロモーターであり、ScCYC TTはサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC終結配列であり、PpOCH1 Promはピチア・パストリス(P.pastoris)OCH1プロモーターであり、PpALG12 TTはピチア・パストリス(P.pastoris)ALG12終結配列である。 図21はプラスミドpGLY167bの地図を示す。プラスミドpGLY167bは、ARG1遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、(1)サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)MNN2リーダーペプチド(CO−KD53)にN末端において融合したキイロショウジョウバエ(D.melanogaster)マンノシダーゼII触媒ドメイン(コドン最適化されたもの)、(2)ピチア・パストリス(P.pastoris)HIS1遺伝子または転写単位、および(3)サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)MNN2リーダーペプチド(CO−TC54)にN末端において融合したラットN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)トランスフェラーゼII触媒ドメイン(コドン最適化されたもの)をコードする3つの発現カセットを縦列配置で含有する。全体はARG1遺伝子の5’領域(PpARG1−5’)およびARG1遺伝子の3’領域(PpARG1−3’)に隣接している。PpPMA1 promはピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1プロモーターであり、PpPMA1 TTはピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1終結配列であり、PpGAPDHはピチア・パストリス(P.pastoris)GADPHプロモーターであり、ScCYC TTはサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC終結配列であり、PpOCH1 Promはピチア・パストリス(P.pastoris)OCH1プロモーターであり、PpALG12 TTはピチア・パストリス(P.pastoris)ALG12終結配列である。 図22はプラスミドpGLY3411(pSH1092)の地図を示す。プラスミドpGLY3411(pSH1092)は、lacZ反復配列(lacZ反復)に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位(PpURA5)を含む発現カセットを含有する組込みベクターであり、これは、ピチア・パストリス(P.pastoris)BMT4遺伝子の5’ヌクレオチド配列(PpPBS4 5’)に一方の側で、およびピチア・パストリス(P.pastoris)BMT4遺伝子の3’ヌクレオチド配列(PpPBS4 3’)に他方の側で隣接している。 図23はプラスミドpGLY3419(pSH1110)の地図を示す。プラスミドpGLY3430(pSH1115)は、lacZ反復配列(lacZ反復)に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位(PpURA5)を含む発現カセットを含有する組込みベクターであり、これは、ピチア・パストリス(P.pastoris)BMT1遺伝子の5’ヌクレオチド配列(PBS1 5’)に一方の側で、およびピチア・パストリス(P.pastoris)BMT1遺伝子の3’ヌクレオチド配列(PBS1 3’)に他方の側で隣接している。 図24はプラスミドpGLY3421(pSH1106)の地図を示す。プラスミドpGLY4472(pSH1186)は、lacZ反復配列(lacZ反復)に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位(PpURA5)を含む発現カセットを含有し、これは、ピチア・パストリス(P.pastoris)BMT3遺伝子の5’ヌクレオチド配列(PpPBS3 5’)に一方の側で、およびピチア・パストリス(P.pastoris)BMT3遺伝子の3’ヌクレオチド配列(PpPBS3 3’)に他方の側で隣接している。 図25はpGLY2456の地図を示す。プラスミドpGLY2456は、TRP2遺伝子座の発現を損なうことなくTRP2遺伝子座を標的化するKINKO組込みベクターであり、(1)マウスCMP−シアル酸輸送体(コドン最適化されたもの)(CO mCMP−Sia Transp)、(2)ヒトUDP−GlcNAc 2−エピメラーゼ/N−アセチルマンノサミンキナーゼ(コドン最適化されたもの)(CO hGNE)、(3)ピチア・パストリス(Pichia pastoris)ARG1遺伝子または転写単位、(4)ヒトCMP−シアル酸シンターゼ(コドン最適化されたもの)(CO hCMP−NANAS)、(5)ヒトN−アセチルノイラミナート−9−ホスファートシンターゼ(コドン最適化されたもの)(CO hSIAP S)、および(6)サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)KRE2リーダーペプチドにN末端において融合したマウスa−2,6−シアリルトランスフェラーゼ触媒ドメイン(コドン最適化されたもの)(comST6−33)をコードする6つの発現カセットを含有する。全体はTRP2遺伝子およびORFの5’領域(PpTRP2 5’)ならびにTRP2遺伝子の3’領域(PpTRP2−3’)に隣接している。PpPMA1 promはピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1プロモーターであり、PpPMA1 TTはピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1終結配列であり、CYC TTはサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC終結配列であり、PpTEF Promはピチア・パストリス(P.pastoris)TEF1プロモーターであり、PpTEF TTはピチア・パストリス(P.pastoris)TEF1終結配列であり、PpALG3 TTはピチア・パストリス(P.pastoris)ALG3終結配列であり、pGAPはピチア・パストリス(P.pastoris)GADPHプロモーターである。 図26はpGLY5048(pSH1275)の地図を示す。プラスミドpGLY5048(pSH1275)は、STE13遺伝子座を標的化するKINKO組込みベクターであり、(1)キメラタンパク質を分泌経路および該細胞からの分泌に導くためのサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)αMATpreシグナルペプチドにN末端において融合したティー・レーセイ(T.reesei)α−1,2−マンノシダーゼ触媒ドメイン(aMATTrMan)、ならびに(2)ピチア・パストリス(P.pastoris)URA5または転写単位をコードする発現カセットを含有する。 図27はプラスミドpGLY5019(pSH1246)の地図を示す。プラスミドpGLY5019(pSH1246)は、DAP2遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、アシビア・ゴシッピィ(Ashbya gossypii)TEF1プロモーターおよびアシビア・ゴシッピィ(Ashbya gossypii)TEF1終結配列に機能的に連結されたナーセオスリシン(Nourseothricin)耐性(NAT)ORFをコードする核酸分子を含む発現カセットを含有し、これは、ピチア・パストリス(P.pastoris)DAP2遺伝子の5’ヌクレオチド配列に一方の側で、およびピチア・パストリス(P.pastoris)DAP2遺伝子の3’ヌクレオチド配列に他方の側で隣接している。 図28はプラスミドpGLY5085(pSH1312)の地図を示す。プラスミドpGLY5085(pSH1312)は、シアル酸化N−グリカンの産生に関与する第2セットの遺伝子をピチア・パストリス(P.pastoris)内に導入するためのKINKOプラスミドである。該プラスミドは、ヒグロマイシン耐性(HygR)をコードする発現カセットでピチア・パストリス(P.pastoris)ARG1遺伝子が置換されていること、および該プラスミドがピチア・パストリス(P.pastoris)TRP5遺伝子を標的化すること以外は、プラスミドYGLY2456に類似している。それらの6つの縦列カセットは、TRP5遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列およびORF(これは終止コドンで終わる)ならびにそれに続くピチア・パストリス(P.pastoris)ALG3終結配列を含む核酸分子に一方の側で隣接しており、TRP5遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子に他方の側で隣接している。 図29はプラスミドpGLY5192の地図を示す。プラスミドpGLY5192は、該株を液胞局在化受容体(Vps10−1p)活性欠損状態にするためにVPS10−1遺伝子のORFを欠失するように構築された組込みベクターである。該プラスミドは、VPS10−1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子に一方の側で及びVPS10−1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子に他方の側で隣接している、lacZ反復配列を含む核酸分子に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位を含む核酸分子を含有する。 図30はプラスミドpGLY3673の地図である。プラスミドpGLY3673は、PRO1遺伝子座の発現を損なうことなくPRO1遺伝子座を標的化するKINKO組込みベクターであり、キメラタンパク質を分泌経路および該細胞からの分泌に導くためのサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)αMATpreシグナルペプチドにN末端において融合したティー・レーセイ(T.reesei)α−1,2−マンノシダーゼ触媒ドメイン(aMATTrMan)をコードする発現カセットを含有する。 図31はプラスミドpGLY7603の地図を示す。プラスミドpGLY7603は、ピチア・パストリス(P.pastoris)においてVPS10−1遺伝子座を標的化しLmSTT3Dを発現する組込みプラスミドである。LmSTT3Dをコードする発現カセットは、誘導可能なピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1プロモーター配列を有する核酸分子に5’末端において及びサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を有する核酸分子に3’末端において機能的に連結された、P.における最適な発現のためにコドン最適化されたLmSTT3D ORFをコードする核酸分子を含み、選択のために、該プラスミドは、lacZ反復配列を含む核酸分子に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位を含む核酸分子を含有する。どちらのカセットも、VPS10−1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子に一方の側で、およびVPS10−1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子に他方の側で隣接している。 図32はプラスミドpGLY3588の地図を示す。該プラスミドは、AOX1遺伝子座を標的化する組込みプラスミドであり、該プラスミドは、AOX1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子に一方の側で及びAOX1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子に他方の側で隣接している、lacZ反復配列(lacZ反復)を含む核酸分子に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位(PpURA5)を含む核酸分子を含有する。 図33Aおよび33Bは実施例3における株YGLY21058およびYGLY16415の構築を示す。 図33Aおよび33Bは実施例3における株YGLY21058およびYGLY16415の構築を示す。 図34は実施例4における株YGLY23560およびYGLY24005の構築を示す。 図35Aは実施例5における株YGLY23605の構築を示す。 図35Bは実施例5における株YGLY23605の構築を示す。 図36は実施例6における株YGLY21080、YGLY21081およびYGLY21083の構築を示す。 図37は、株YGLY21058において産生されたN−グリコシル化プロインスリン類似体前駆体の分析を示す。該還元16.5% トリシン(Tricine)ポリアクリルアミドゲルは、該類似体がN−グリコシル化されたことを示している。該N−グリコシル化プロインスリン類似体前駆体を培養上清流体から精製し、該N−グリカンをPNGアーゼ消化により遊離させた。該類似体の観察されたN−グリカン組成は約75% A2(ビシアル酸化)(配列番号282)であり、約16%はA1(モノシアル酸化)であり、約5%はハイブリッドManであった。 図38は、精製されたN−グリコシル化プロインスリン類似体前駆体(図39A)および脱グリコシル化プロインスリン類似体前駆体(図38B)のポジティブMALDI−TOFの分析を示す。プロインスリン類似体前駆体に結合したN−結合グリコフォームが図38Aにおいて注釈されており、対応する構造が図37に示されている。 図38は、精製されたN−グリコシル化プロインスリン類似体前駆体(図39A)および脱グリコシル化プロインスリン類似体前駆体(図38B)のポジティブMALDI−TOFの分析を示す。プロインスリン類似体前駆体に結合したN−結合グリコフォームが図38Aにおいて注釈されており、対応する構造が図37に示されている。 図39は、株YGLY21058において産生され、RESOURCE RPCカラム上で複数のプールへと分離されたN−グリコシル化プロインスリン類似体の分析を示す。種々のプール化画分のアリコートをゲル電気泳動により分析し、プール1、2および3におけるN−グリコシル化プロインスリン類似体に関して該N−グリカン組成を決定した。 図40は、B28位に結合したN−グリカンを有するインスリンB:P28N des(B30)類似体のインビボ活性を示す。12週齢のC57BL/6マウスを2時間絶食させた後、GS2.1またはGS5.0 N−グリカン組成を有するインスリンdes(B30)類似体をs.c.注射により投与した。α−メチルマンノースの存在下および非存在下、血液グルコースに対する影響を時間の関数として決定した。 図41は、0、1、2または3個のN−グリカンを含有する種々のインスリン前駆体配列の産生の分析を示す。無細胞培養上清流体を4〜20% 勾配還元アクリルアミドゲル内にローディングし、SDS−PAGEにおいて処理した。クーマシーブルー染色によりインスリン類似体前駆体を可視化した。 図42は、N末端スペーサーを含むプレ−プロインスリン類似体前駆体からN−グリコシル化インスリン類似体を製造するための方法の概要図である。 図43は、N末端スペーサーを欠くプレ−プロインスリン類似体前駆体からN−グリコシル化インスリン類似体を製造するための方法の概要図である。 図44は、5時間にわたる低pHおよび65℃におけるインスリンの安定性に対する電荷およびN−グリカンの影響を示す。A2 N−グリカン(GS6.0)もしくはManGlcNAc N−グリカン(GS2.1)を含むN−グリコシル化B:P28N desB30インスリン類似体または脱グリコシル化B:P28D desB30インスリンの繊維化をNOVOLINと比較した。標的化インスリン形態(1mg/ml)の溶液を、100mM HCl(pH2.0)を使用して調製された0.5ml円錐チューブ内に移した。バイアルを、65℃に設定されたPCR装置内に配置した。440nm〜500nmの蛍光スキャンと共にTecanプレートリーダーを使用して、0時間および5時間の時点で、該サンプルのアリコートをThioT蛍光により測定した。 図45はプラスミドpGLY6301の地図を示す。プラスミドpGLY6301は、ピチア・パストリス(P.pastoris)においてURA6遺伝子座を標的化しLmSTT3Dを発現する組込みプラスミドである。LmSTT3Dをコードする発現カセットは、誘導可能なピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1プロモーター配列を有する核酸分子に5’末端において及びサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を有する核酸分子に3’末端において機能的に連結された、P.における最適な発現のためにコドン最適化されたLmSTT3D ORFをコードする核酸分子を含み、選択のために、該プラスミドは、ヒ素耐性を付与するサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)ARR3遺伝子を含む核酸分子を含有する。 図46Aおよび46Bは実施例11におおける株YGLY26268の構築を示す。 図46Aおよび46Bは実施例11におおける株YGLY26268の構築を示す。 図47はプラスミドpGLY9316の地図を示し、これは、TRP2またはAOX1p遺伝子座を標的化するロールイン組込みプラスミドであり、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列を使用する空発現カセットを含む。 図48は実施例11における株YGLY26580の構築を示す。 図49Aおよび49Bは実施例11における株YGLY26734の構築を示す。 図49Aおよび49Bは実施例11における株YGLY26734の構築を示す。 図50はプラスミドpGLY11099の地図を示し、これは、TRP2またはAOX1p遺伝子座を標的化するロールイン組込みプラスミドであり、ヒトインスリンA鎖に融合したアミノ酸配列AAK(配列番号139)からなるCペプチドに融合したNGT(−2)トリペプチド付加およびP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したN末端スペーサーペプチドに融合したサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロペプチドを含むインスリン融合タンパク質をコードする発現カセットを含む。 図51はpGLY1162のプラスミド地図を示し、これは、AOX1pにより駆動されるT.r.マンノシダーゼIを発現するようにPRO1遺伝子座において組込まれるKINKOプラスミドである。PRO1遺伝子座におけるpGLY1162の組込みはPRO1オープンリーディングフレームの遺伝的破壊を引き起こさず、選択はURA5カセットによる。 図52Aは、絶食糖尿病ミニブタに皮下(s.c.)投与された場合に血液グルコースレベルに経時的に効果を及ぼすN−グリコシル化インスリン類似体210−2−Bの投与を示し、該効果は、絶食糖尿病ミニブタに皮下(s.c.)投与された場合に血液グルコースレベルに及ぼすRHIの効果と同等である。 図52Bは、絶食正常ミニブタに皮下(s.c.)投与された場合の経時的な血液グルコースレベルに対するN−グリコシル化インスリン類似体210−2−B(B−2およびB28のAsn残基に連結された少マンノース)の効果と組換えヒトインスリン(RHI)の効果との比較を示す。 図53Aは、ベースラインからの血液グルコースの変化として再プロットされた、図52Bに示されているデータを示す。 図53Bは、ベースラインからの血液グルコースの変化として再プロットされた、図52Aに示されているデータを示す。 図54Aは、絶食糖尿病ミニブタに皮下(s.c.)投与された場合に血液グルコースレベルに経時的に効果を及ぼすN−グリコシル化インスリン類似体200−2−Bの投与を示し、該効果は、絶食糖尿病ミニブタに皮下(s.c.)投与された場合に血液グルコースレベルに及ぼすRHIの効果と同等である。 図54Bは、絶食正常ミニブタに皮下(s.c.)投与された場合の経時的な血液グルコースレベルに対するN−グリコシル化インスリン類似体200−2−B(B−2およびB28のAsn残基に連結されたManGlcNAc)の効果と組換えヒトインスリン(RHI)の効果との比較を示す。 図55Aは、ベースラインからの血液グルコースの変化として再プロットされた、図54Bに示されているデータを示す。 図55Bは、ベースラインからの血液グルコースの変化として再プロットされた、図54Aに示されているデータを示す。 図56Aは、組換えタンパク質発現のために誘導されたクライベロミセス・ラクチス(K.lactis)からの分泌インスリン類似体前駆体を検出するウエスタンブロットのイメージを示す。 図56Bは、組換えタンパク質発現のために誘導されたクライベロミセス・ラクチス(K.lactis)からの分泌インスリン類似体前駆体を検出するウエスタンブロットのイメージを示す。 図57Aは、2つのManGlcNAc N−グリカンを含む接続ペプチド(配列番号303)により天然ヒトB鎖ペプチドに連結された天然ヒトA鎖ペプチドを含むグリコシル化インスリン類似体GSCI−7の構造を示す。 図57Bは、B28位に結合したN−グリカンを有するGSCI−7のインビボ活性を示す。12週齢のC57BL/6マウスを2時間絶食させた後、GS2.1またはGS5.0 N−グリカン組成を有するインスリンdes(B30)類似体をs.c.注射により投与した。α−メチルマンノースの非存在下および存在下、血液グルコースに対する効果を時間の関数として決定した。 以下の実施例は、本発明の更なる理解を促すことを意図したものである。
実施例1
この実施例は、トリ−アミノ酸配列Asn Xaa (Ser/Thr)(ここで、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である)を有するN−グリコシル化部位を得るためのアスパラギン残基によるB鎖の28位のプロリン残基の置換を含むヒトインスリン類似体をコードするプラスミド発現ベクターの構築を例示する。これらの発現ベクターは、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)におけるタンパク質発現のために設計されているが、挙げられているインスリン類似体AおよびB鎖をコードする核酸分子は、N−グリコシル化糖タンパク質を産生しうる他の宿主細胞、例えば哺乳類細胞および真菌、植物、昆虫または細菌細胞(ヒト様N−グリカンを有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に修飾された宿主細胞を含む)におけるタンパク質発現のために設計された発現ベクター内に組込まれうる。
以下に開示する発現ベクターはプレ−プロインスリン類似体前駆体分子をコードしている。該プレ−プロインスリン類似体前駆体をコードするベクターの、酵母宿主細胞における発現中に、該プレ−プロインスリン類似体前駆体は分泌経路に輸送され、ここにおいて、シグナルペプチドが除去され、該分子は、天然ヒトインスリンと同じ立体配置を有するジスルフィド結合により合体した構造へとフォールドしたN−グリコシル化プロインスリン類似体前駆体へとプロセシングされる。ついで該N−グリコシル化プロインスリン類似体前駆体は分泌経路を経由して輸送され、ここで、該N−グリコシル化プロインスリン類似体前駆体上のN−グリカンが修飾される。ついで該N−グリコシル化プロインスリン類似体前駆体は小胞へと導かれ、ここにおいて、該プロペプチドが除去されてN−グリコシル化インスリン類似体前駆体分子が形成され、ついでこれは宿主細胞から分泌され、それは、トリプシンまたはエンドプロテイナーゼLys−C消化を用いてインビトロで更に加工されて、N−グリコシル化インスリン類似体ヘテロ二量体を与えうる。
プラスミドpGLY4362(図6)は、TRP2遺伝子座またはAOX1p遺伝子座を標的化するロールイン(roll−in)組込みプラスミドであり、ヒトインスリンA鎖(配列番号33)に融合したアミノ酸配列AAK(配列番号31)からなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖(配列番号26)に融合したN末端スペーサー(配列番号22)に融合したTA57プロペプチド(配列番号21)に融合したYps1ssペプチド(配列番号20)を含むプレ−プロインスリン類似体前駆体をコードする発現カセットを含む。該プレ−プロインスリン類似体前駆体は、配列番号6に示されているアミノ酸配列を有し、配列番号5に示されているヌクレオチド配列によりコードされている。N末端スペーサーを有するプロインスリンは、配列番号36に示されているアミノ酸配列を有し、N末端スペーサーを有さないプロインスリン類似体は、配列番号37に示されているアミノ酸配列を有する。該発現カセットは、誘導性ピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1プロモーター配列を有する核酸分子(配列番号118)に5’末端において、そしてサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)CYC転写終結配列を有する核酸分子(配列番号58)に3’末端において機能的に連結された融合タンパク質をコードする核酸分子(配列番号5)を含む。形質転換体の選択のために、該プラスミドは、ゼオシンORFをコードする発現カセットを含み、ここで、該ORFをコードする核酸分子(配列番号122)が、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)TEFプロモーター配列を有する核酸分子(配列番号123)に5’末端において、そしてサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を有する核酸分子(配列番号58)に3’末端において機能的に連結されている。該プラスミドは更に、TRP2遺伝子座を標的化するための核酸分子を含む。
Yps1ssペプチドは、米国特許第5,639,642号および第5,726,038号(それらを参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている合成リーダーまたはシグナルペプチドである。該TA57プロペプチドおよびN末端スペーサーはKjeldsenら,Gene 170:107−112(1996)ならびに米国特許第6,777,207号および第6,214,547号(それらを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。他の合成プロペプチドは米国特許第5,395,922号、第5,795,746号および第5,162,498号ならびにWO9832867(それらを参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている。
プラスミドpGLY7679(図7)はpGLY4362に類似しているが、該発現カセットは、ヒトインスリンA鎖(配列番号33)に融合したアミノ酸配列A(10×HIS)AK(配列番号32)からなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖(配列番号26)に融合したN末端スペーサーペプチド(配列番号22)に融合したTA57プロペプチド(配列番号21)に融合したYps1ssペプチド(配列番号20)を含むプレ−プロインスリン類似体前駆体をコードしている。該プレ−プロインスリン類似体前駆体は、配列番号8に示されているアミノ酸配列を有し、配列番号7に示されているヌクレオチド配列によりコードされている。N末端スペーサーを有するプロインスリンは、配列番号36に示されているアミノ酸配列を有し、N末端スペーサーを有さないプロインスリン類似体は、配列番号37に示されているアミノ酸配列を有する。
プラスミドpGLY7680(図8)はpGLY4362に類似しているが、該発現カセットは、ヒトインスリンA鎖(配列番号33)に融合したアミノ酸配列RRからなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖(配列番号26)に融合したサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロペプチド(配列番号19)を含むプレ−プロインスリン類似体前駆体をコードしている。該プレ−プロインスリン類似体前駆体は、配列番号10に示されているアミノ酸配列を有し、配列番号9に示されているヌクレオチド配列によりコードされている。サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列は米国特許第6,777,207号、第4,546,082号および第4,870,008号(それらを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。該プロインスリン類似体は、配列番号37に示されているアミノ酸配列を有する。
プラスミドpGLY9290(図9)はpGLY4362に類似しているが、該発現カセットは、N21G置換を有するヒトインスリンA鎖(配列番号34)に融合したアミノ酸配列RRからなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖(配列番号26)に融合したサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロペプチド(配列番号19)を含むプレ−プロインスリン類似体前駆体をコードしている。該プレ−プロインスリン類似体前駆体は、配列番号12に示されているアミノ酸配列を有し、配列番号11に示されているヌクレオチド配列によりコードされている。該プレ−プロインスリン類似体前駆体が分泌経路に進入した場合、該プレ−プロインスリン類似体前駆体のプロセシングは、配列番号38に示されているアミノ酸配列を有するプロインスリン類似体を生成する。
プラスミドpGLY9295(図10)はpGLY4362に類似しているが、該発現カセットは、N21G置換を有するヒトインスリンA鎖(配列番号34)に融合したアミノ酸配列RRからなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖(配列番号26)に融合したN末端HISスペーサーペプチド(配列番号23)に融合したサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロペプチド(配列番号19)を含むプレ−プロインスリン類似体前駆体をコードしている。該プレ−プロインスリン類似体前駆体は、配列番号14に示されているアミノ酸配列を有し、配列番号13に示されているヌクレオチド配列によりコードされている。また、該発現カセットはピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1転写終結配列を含む。N末端スペーサーを有するプロインスリンは、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、N末端スペーサーを有さないプロインスリン類似体は、配列番号38に示されているアミノ酸配列を有する。
プラスミドpGLY9310(図11)はpGLY4362に類似しているが、該発現カセットは、N21G置換を有するヒトインスリンA鎖(配列番号34)に融合したアミノ酸配列RRからなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖(配列番号26)に融合したサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロペプチド(配列番号19)を含むプレ−プロインスリン類似体前駆体をコードしている。該プレ−プロインスリン類似体前駆体は、配列番号12に示されているアミノ酸配列を有し、配列番号11に示されているヌクレオチド配列によりコードされている。また、該発現カセットはピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1転写終結配列を含む。該プレ−プロインスリン類似体前駆体が分泌経路に進入した場合、該プレ−プロインスリン類似体前駆体のプロセシングは、配列番号28に示されているアミノ酸配列を有するプロインスリン類似体を生成する。
プラスミドpGLY9311(図12)はpGLY4362に類似しているが、該発現カセットは、ヒトインスリンA鎖に融合したアミノ酸配列TA(10×HIS)AK(配列番号32)からなるCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖(配列番号26)に融合したN末端MYCスペーサーペプチド(配列番号24)に融合したサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロペプチド(配列番号19)を含むプレ−プロインスリン類似体前駆体をコードしている。該プレ−プロインスリン類似体前駆体は、配列番号16に示されているアミノ酸配列を有し、配列番号15に示されているヌクレオチド配列によりコードされている。N末端スペーサーを有するプロインスリンは、配列番号40に示されているアミノ酸配列を有する。また、該発現カセットはピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1転写終結配列を含む。
プラスミドpGLY9312はpGLY9311に類似しているが、該発現カセットをコードするヌクレオチド配列は、代替的コドン最適化アルゴリズム(配列番号17)を使用してピチア・パストリス(Pichia pastoris)コドン使用頻度に関して最適化されている。表1は前記発現カセットの要素を要約している。
プラスミドpGLY9316(図47)は、表1に挙げられているインスリン発現プラスミドpGLY11074、pGLY11084、pGLY11085、pGLY11087、pGLY11088、pGLY11098、pGLY11099(図51)、pGLY11101、pGLY11164、pGLY11464およびpGLY11465を作製するために使用した空発現プラスミドである。プラスミドpGLY9316はpGLY4362に類似している。ただし、該発現カセットはサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロペプチド(配列番号148)を含有するが、インスリン前駆体配列を含有しない。表1に挙げられている派生インスリン前駆体発現プラスミドは、MlyIおよびFseIを使用して、ヒトインスリン配列変異体に融合したN末端スペーサーペプチド(配列番号149)をコードするインスリン前駆体DNAをクローニングすることにより構築された。該インスリン変異体をコードする核酸分子は、配列番号127をコードする配列番号126(pGLY11074)、配列番号129をコードする配列番号128(pGLY11084)、配列番号131をコードする配列番号130(pGLY11085)、配列番号133をコードする配列番号132(pGLY11087)、配列番号135をコードする配列番号134(pGLY11088)、配列番号137をコードする配列番号136(pGLY11098)、配列番号139をコードする配列番号138(pGLY11099)、配列番号141をコードする配列番号140(pGLY11101)、配列番号143をコードする配列番号142(pGLY11164)、配列番号145をコードする配列番号144(pGLY11464)、および配列番号147をコードする配列番号146(pGLY11465)である。これらのベクターにより産生されるプロインスリン類似体前駆体配列は表1に挙げられている。また、該発現カセットはピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1転写終結配列を含む。
Figure 2014525922
該プレ−プロインスリン類似体前駆体をコードする発現カセットを含有する発現ベクターを、N−結合糖タンパク質を産生しうる酵母宿主細胞内に形質転換する。図42および図43に例示されているとおり、該プレ−プロインスリン類似体前駆体は、宿主細胞ゲノム内に組込まれた発現カセットから発現される。該プレ−プロインスリン類似体前駆体は分泌経路を目的地とし、ここにおいて、それはジスルフィド結合によりフォールドし、N−グリコシル化される。該N−グリコシル化プロインスリン類似体前駆体はゴルジ装置内で更にプロセシングされ、ついで小胞に輸送され、ここにおいて、該プロペプチドが除去され、該N−グリコシル化プレ−プロインスリン類似体前駆体分子が該宿主細胞から培地内に分泌され、それは精製され、CペプチドおよびN末端ペプチドを除去するためにインビトロ(細胞外)で更に加工されて、N−結合N−グリカンを含むN−グリコシル化インスリン類似体ヘテロ二量体を与えうる。トリプシンまたはエンドプロテイナーゼLys−Cでのインビトロ加工の後に前記前駆体から産生された個々のN−グリコシル化インスリン類似体はB30 チロシン残基を欠いており、したがって、該N−グリコシル化インスリン類似体はdesB30類似体である。しかし、当技術分野で公知のとおり、desB30インスリン類似体は、天然インスリンの場合と実質的に異ならない、インスリン受容体における活性を有する。
実施例2
シアル酸化N−グリカンを産生しうるピチア・パストリス(Pichia pastoris)株を以下のとおりに構築した。該株の構築は図13A〜13Dに図示されている。簡潔に説明すると、該株を以下のとおりに構築した。
株YGLY8316は、既に記載されている方法(例えば、米国特許第7,449,308号、米国特許第7,479,389号、米国公開出願第20090124000号、公開PCT出願番号WO2009085135、NettおよびGerngross,Yeast 20:1279(2003)、Choiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:5022(2003)、Hamiltonら,Science 301:1244(2003)を参照されたい)を用いて野生型ピチア・パストリス(Pichia pastoris)株NRRL−Y 11430から構築した。全てのプラスミドは、標準的な分子生物学的方法を用いて、pUC19プラスミドにおいて作製した。ピチア・パストリス(P.pastoris)における発現に関して最適化されたヌクレオチド配列に関しては、天然ヌクレオチド配列をGENEOPTIMIZERソフトウェア(GeneArt,Regensburg,Germany)により解析し、その結果を用いて、ピチア・パストリス(P.pastoris)発現に関してコドンが最適化されたヌクレオチド配列を得た。
酵母株をエレクトロポレーション(エレクトロポレーターBio Radの製造業者により推奨されている標準的な技術を用いるもの)により形質転換した。一般に、酵母形質転換は以下のとおりであった。ピチア・パストリス(P.pastoris)株を50mLのYPD培地(酵母エキス(1%)、ペプトン(2%)、デキストロース(2%))内で約0.2〜6の光学密度(「OD」)まで一晩増殖させた。氷上の30分間のインキュベーションの後、2500〜3000rpmで5分間の遠心分離により細胞をペレット化した。培地を除去し、該細胞を氷冷無菌1M ソルビトールで3回洗浄した後、0.5mlの氷冷無菌1M ソルビトールに再懸濁させた。10μLのDNA(5〜20μg)および100μLの細胞懸濁液をエレクトロポレーションキュベット内で一緒にし、氷上で5分間インキュベートした。エレクトロポレーションは、予め定められたピチア・パストリス(Pichia pastoris)プロトコール(2kV、25μF、200オーム)に従い、Bio−Rad GenePulser Xcellにおいて行い、その直後に、1mLのYPDS回収培地(YPD培地+1M ソルビトール)を加えた。該形質転換細胞を室温(26℃)で4時間〜一晩回収した後、該細胞を選択培地上でプレーティングした。
プラスミドpGLY6(図14)は、URA5遺伝子座を標的化する組込みベクターである。それは、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)インベルターゼ遺伝子または転写単位(ScSUC2;配列番号46)を含む核酸分子を含有し、該核酸分子は、一方の側では、ピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列(配列番号47)を含む核酸分子に隣接しており、他方の側では、ピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(配列番号48)を含む核酸分子に隣接している。プラスミドpGLY6を線状化し、該線状化プラスミドを野生型株NRRL−Y 11430内に形質転換して、ScSUC2遺伝子がURA5遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY1−3を選択した。これはウラシルに対して栄養要求性である。
プラスミドpGLY40(図15)は、OCH1遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、ピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位(配列番号49)を含む核酸分子を含有しており、該核酸分子は、lacZ反復を含む核酸分子(配列番号50)に隣接しており、そしてこれは、一方の側では、OCH1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列(配列番号51)を含む核酸分子に隣接しており、他方の側では、OCH1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(配列番号52)を含む核酸分子に隣接している。プラスミドpGLY40をSfiIで線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY1−3内に形質転換して、lacZ反復に隣接したURA5遺伝子がOCH1遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY2−3を選択した。これはURA5に対して原栄養性である。株YGLY2−3を5−フルオロオロト酸(5−FOA)の存在下で対抗選択して、URA5遺伝子が喪失しlacZ反復だけがOCH1遺伝子座内に残存した幾つかの株を得た。これは、該株をウラシルに対して栄養要求性にする。株YGLY4−3を選択した。
プラスミドpGLY43a(図16)は、BMT2遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、ケイ・ラクティス(K.lactis)UDP−N−アセチルグルコサミン(UDP−GlcNAc)輸送体遺伝子または転写単位(KlMNN2−2、配列番号53)を含む核酸分子を含有しており、該核酸分子は、lacZ反復を含む核酸分子に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位を含む核酸分子に隣接している。該隣接遺伝子は、一方の側では、BMT2遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列(配列番号54)を含む核酸分子に隣接しており、他方の側では、BMT2遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(配列番号55)を含む核酸分子に隣接している。プラスミドpGLY43aをSfiIで線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY4−3内に形質転換して、lacZ反復に隣接したKlMNN2−2遺伝子およびURA5遺伝子がBMT2遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。BMT2遺伝子はMilleら,J.Biol.Chem.283:9724−9736(2008)および米国特許第7,465,557号に開示されている。得られた株から株YGLY6−3を選択した。これはウラシルに対して原栄養性である。株YGLY6−3を5−FOAの存在下で対抗選択して、URA5遺伝子が喪失しlacZ反復だけが残存した株を得た。これは、該株をウラシルに対して栄養要求性にする。株YGLY8−3を選択した。
プラスミドpGLY48(図17)は、MNN4L1遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、UDP−GlcNAc輸送体(配列番号56)オープンリーディングフレーム(ORF)のマウスホモログをコードする核酸分子を含む発現カセットを含有しており、該マウスホモログコード化核酸分子は、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)GAPDHプロモーターを含む核酸分子(配列番号57)に、そして3’末端においては、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC終結配列を含む核酸分子(配列番号58)に機能的に連結されており、さらに前記マウスホモログコード化核酸分子は、lacZ反復に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子を含む核酸分子に隣接しており、ここで、これらの発現カセットは全体として、一方の側では、ピチア・パストリス(P.pastoris)MNN4L1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列(配列番号59)を含む核酸分子に隣接しており、他方の側では、MNN4L1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(配列番号60)を含む核酸分子に隣接している。プラスミドpGLY48をSfiIで線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY8−3内に形質転換して、マウスUDP−GlcNAc輸送体およびURA5遺伝子をコードする発現カセットがMNN4L1遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。MNN4L1遺伝子(MNN4Bとも称される)は米国特許第7,259,007号に開示されている。得られた株から株YGLY10−3を選択し、ついで5−FOAの存在下で対抗選択して、URA5遺伝子が喪失しlacZ反復だけが残存した幾つかの株を得た。株YGLY12−3を選択した。
プラスミドpGLY45(図18)は、PNO1/MNN4遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、ピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位を含む核酸分子を含有し、これは、lacZ反復を含む核酸分子に隣接しており、そしてこの核酸分子は、一方の側では、PNO1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列(配列番号61)を含む核酸分子に隣接しており、他方の側では、MNN4遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(配列番号62)を含む核酸分子に隣接している。プラスミドpGLY45をSfiIで線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY12−3内に形質転換して、lacZ反復に隣接したURA5遺伝子がPNO1/MNN4遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。PNO1遺伝子は米国特許第7,198,921号に開示されており、MNN4遺伝子(MNN4Bとも称される)は米国特許第7,259,007号に開示されている。得られた株から株YGLY14−3を選択し、ついで5−FOAの存在下で対抗選択して、URA5遺伝子が喪失しlacZ反復だけが残存した幾つかの株を得た。株YGLY16−3を選択した。
プラスミドpGLY1430(図19)は、ADE1遺伝子座の発現を損なうことなくADE1遺伝子座を標的化するKINKO組込みベクターであり、(1)キメラ酵素をERまたはゴルジに標的化するピチア・パストリス(P.pastoris)SEC12リーダーペプチド(10)にN末端において融合したヒトGlcNAcトランスフェラーゼI触媒ドメイン(NA)、(2)UDP−GlcNAc輸送体のマウスホモログ(MmTr)、(3)キメラ酵素をERまたはゴルジに標的化するサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)SEC12リーダーペプチド(8)にN末端において融合したマウスマンノシダーゼIA触媒ドメイン(FB)、および(4)ピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位をコードする4つの発現カセットを縦列配置で含有する。KINKO(nock−n with little or nock−ut)組込みベクターは、標的化遺伝子座内への異種DNAの挿入を、該標的化遺伝子座における遺伝子の発現を損なうことなく可能にし、米国公開出願第20090124000号に記載されている。NA10をコードする発現カセットは、SEC12リーダー10をコードする核酸分子(配列番号64)に5’末端において融合している、ピチア・パストリス(P.pastoris)における発現に関してコドン最適化されたヒトGlcNAcトランスフェラーゼI触媒ドメインをコードする核酸分子(配列番号63)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1プロモーターを含む核酸分子(配列番号65)に、そして3’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1転写終結配列を含む核酸分子(配列番号66)に機能的に連結されている。MmTrをコードする発現カセットは、UDP−GlcNAc輸送体ORFのマウスホモログをコードする核酸分子(配列番号56)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)SEC4プロモーターを含む核酸分子(配列番号67)に、そして3’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)OCH1終結配列を含む核酸分子(配列番号68)に機能的に連結されている。FB8をコードする発現カセットは、SEC12−mリーダー8をコードする核酸分子(配列番号70)に5’末端において融合している、マウスマンノシダーゼIA触媒ドメインをコードする核酸分子(配列番号69)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)GADPHプロモーターを含む核酸分子に、そして3’末端においては、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を含む核酸分子に機能的に連結されている。該URA5発現カセットは、lacZ反復を含む核酸分子に隣接したピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位を含む核酸分子を含む。それらの4つの縦列カセットは、一方の側では、ADE1遺伝子の5’領域および完全ORFからのヌクレオチド配列(配列番号71)ならびにそれに続くピチア・パストリス(P.pastoris)ALG3終結配列(配列番号72)を含む核酸分子に、そして他方の側では、ADE1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(配列番号73)を含む核酸分子に隣接している。プラスミドpGLY1430をSfiIで線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY16−3内に形質転換して、それらの4つの縦列発現カセットがADE1 ORFの直後のADE1遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY2798を選択した。これはアルギニンに対して栄養要求性であり、今やウリジン、ヒスチジンおよびアデニンに対して原栄養性である。ついで該株を5−FOAの存在下で対抗選択して、ウリジンに対して今や栄養要求性である幾つかの株を得た。株YGLY3794を選択した。これは、ガラクトース末端N−グリカンを主に有する糖タンパク質を産生しうる。
プラスミドpGLY582(図20)は、HIS1遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、(1)サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)UDP−グルコースエピメラーゼ(ScGAL10)、(2)キメラ酵素をERまたはゴルジに標的化するサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)KRE2−sリーダーペプチド(33)にN末端において融合したヒトガラクトシルトランスフェラーゼI(hGalT)触媒ドメイン、(3)lacZ反復に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位、および(4)キイロショウジョウバエ(D.melanogaster)UDP−ガラクトース輸送体(DmUGT)をコードする4つの発現カセットを縦列配置で含有する。ScGAL10をコードする発現カセットは、ScGAL10 ORFをコードする核酸分子(配列番号74)を含み、該ORFは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1プロモーターを含む核酸分子(配列番号65)に機能的に連結されており、3’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1転写終結配列を含む核酸分子(配列番号66)に機能的に連結されている。キメラガラクトシルトランスフェラーゼIをコードする発現カセットは、KRE2−sリーダー33をコードする核酸分子(配列番号76)に5’末端において融合している、ピチア・パストリス(P.pastoris)における発現に関してコドン最適化されたhGalT触媒ドメインをコードする核酸分子(配列番号75)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)GAPDHプロモーターを含む核酸分子に、そして3’末端においては、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を含む核酸分子に機能的に連結されている。該URA5発現カセットは、lacZ反復を含む核酸分子に隣接したピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位を含む核酸分子を含む。DmUGTをコードする発現カセットは、DmUGT ORFをコードする核酸分子(配列番号77)を含み、該ORFは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)OCH1プロモーターを含む核酸分子(配列番号78)に機能的に連結されており、3’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)ALG12転写終結配列を含む核酸分子(配列番号79)に機能的に連結されている。それらの4つの縦列カセットは、一方の側では、HIS1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列(配列番号80)を含む核酸分子に、そして他方の側では、HIS1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(配列番号81)を含む核酸分子に隣接している。プラスミドpGLY582を線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY3794内に形質転換して、それらの4つの縦列発現カセットがHIS1遺伝子座内に相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。株YGLY3853を選択した。これはヒスチジンに対して栄養要求性であり、ウリジンに対して原栄養性である。
プラスミドpGLY167b(図21)は、ARG1遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、(1)キメラ酵素をERまたはゴルジに標的化するサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)MNN2リーダーペプチド(53)にN末端において融合したキイロショウジョウバエ(D.melanogaster)マンノシダーゼII触媒ドメイン(KD)、(2)ピチア・パストリス(P.pastoris)HIS1遺伝子または転写単位、および(3)キメラ酵素をERまたはゴルジに標的化するサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)MNN2リーダーペプチド(54)にN末端において融合したラットN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)トランスフェラーゼII触媒ドメイン(TC)をコードする3つの発現カセットを縦列配置で含有する。KD53をコードする発現カセットは、MNN2リーダー53をコードする核酸分子(配列番号83)に5’末端において融合している、ピチア・パストリス(P.pastoris)における発現に関してコドン最適化されたキイロショウジョウバエ(D.melanogaster)マンノシダーゼII触媒ドメインをコードする核酸分子(配列番号82)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)GAPDHプロモーターを含む核酸分子に、そして3’末端においては、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を含む核酸分子に機能的に連結されている。該HIS1発現カセットは、ピチア・パストリス(P.pastoris)HIS1遺伝子または転写単位(配列番号84)を含む核酸分子を含む。TC54をコードする発現カセットは、MNN2リーダー54をコードする核酸分子(配列番号86)に5’末端において融合している、ピチア・パストリス(P.pastoris)における発現に関してコドン最適化されたラットGlcNAcトランスフェラーゼII触媒ドメインをコードする核酸分子(配列番号85)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1プロモーターを含む核酸分子に、そして3’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1転写終結配列を含む核酸分子に機能的に連結されている。それらの3つの縦列カセットは、一方の側では、ARG1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列(配列番号87)を含む核酸分子に、そして他方の側では、ARG1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(配列番号88)を含む核酸分子に隣接している。プラスミドpGLY167bをSfiIで線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY3853内に形質転換して、それらの3つの縦列発現カセットがARG1遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY4754を選択した。これはアルギニンに対して栄養要求性であり、ウリジンおよびヒスチジンに対して原栄養性である。ついで該株を5−FOAの存在下で対抗選択して、ウリジンに対して今や栄養要求性である幾つかの株を得た。株YGLY4799を選択した。
プラスミドpGLY3411(図22)は、lacZ反復に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子を含む発現カセットを含有する組込みベクターであり、該lacZ反復は、一方の側では、ピチア・パストリス(P.pastoris)BMT4遺伝子の5’ヌクレオチド配列(配列番号89)に、他方の側では、ピチア・パストリス(P.pastoris)BMT4遺伝子の3’ヌクレオチド配列(配列番号90)に隣接している。プラスミドpGLY3411を線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY4799内に形質転換して、該URA5発現カセットがBMT4遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY6903を選択した。これはウラシル、アデニン、ヒスチジン、プロリン、アルギニンおよびトリプトファンに対して原栄養性である。ついで該株を5−FOAの存在下で対抗選択して、ウリジンに対して今や栄養要求性である幾つかの株を得た。株YGLY7432およびYGLY7433を選択した。
プラスミドpGLY3419(図23)は、lacZ反復に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子を含む発現カセットを含有する組込みベクターであり、該lacZ反復は、一方の側では、ピチア・パストリス(P.pastoris)BMT1遺伝子の5’ヌクレオチド配列(配列番号91)に、他方の側では、ピチア・パストリス(P.pastoris)BMT1遺伝子の3’ヌクレオチド配列(配列番号92)に隣接している。プラスミドpGLY3419を線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY7432およびYGLY7433内に形質転換して、該URA5発現カセットがBMT1遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY7656およびYGLY7651を選択した。これはウラシル、アデニン、ヒスチジン、プロリン、アルギニンおよびトリプトファンに対して原栄養性である。ついで該株を5−FOAの存在下で対抗選択して、ウリジンに対して今や栄養要求性である幾つかの株を得た。株YGLY7930およびYGLY7940を選択した。
プラスミドpGLY3421(図24)は、lacZ反復に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子を含む発現カセットを含有する組込みベクターであり、該lacZ反復は、一方の側では、ピチア・パストリス(P.pastoris)BMT3遺伝子の5’ヌクレオチド配列(配列番号93)に、他方の側では、ピチア・パストリス(P.pastoris)BMT3遺伝子の3’ヌクレオチド配列(配列番号94)に隣接している。プラスミドpGLY3419を線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY7930およびYGLY7940内に形質転換して、該URA5発現カセットがBMT1遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY7961およびYGLY7965を選択した。これらはウラシル、アデニン、ヒスチジン、プロリン、アルギニンおよびトリプトファンに対して原栄養性である。
プラスミドpGLY2456(図25)は、TRP2遺伝子座の発現を損なうことなくTRP2遺伝子座を標的化するKINKO組込みベクターであり、(1)マウスCMP−シアル酸輸送体(mCMP−Sia Transp)、(2)ヒトUDP−GlcNAc 2−エピメラーゼ/N−アセチルマンノサミンキナーゼ(hGNE)、(3)ピチア・パストリス(Pichia pastoris)ARG1遺伝子または転写単位、(4)ヒトCMP−シアル酸シンターゼ(hCSS)、(5)ヒトN−アセチルノイラミナート−9−ホスファートシンターゼ(hSPS)、(6)キメラ酵素をERまたはゴルジに標的化するサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)KRE2リーダーペプチド(33)にN末端において融合したマウスα−2,6−シアリルトランスフェラーゼ触媒ドメイン(mST6)をコードする6つの発現カセット、およびピチア・パストリス(P.pastoris)ARG1遺伝子または転写単位を含有する。マウスCMP−シアル酸輸送体をコードする発現カセットは、ピチア・パストリス(P.pastoris)における発現に関してコドン最適化されたmCMP Sia Transp ORFをコードする核酸分子(配列番号95)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1プロモーターを含む核酸分子に、そして3’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1転写終結配列を含む核酸分子に機能的に連結されている。ヒトUDP−GlcNAc2−エピメラーゼ/N−アセチルマンノサミンキナーゼをコードする発現カセットは、ピチア・パストリス(P.pastoris)における発現に関してコドン最適化されたhGNE ORFをコードする核酸分子(配列番号96)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)GAPDHプロモーターを含む核酸分子に、そして3’末端においては、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を含む核酸分子に機能的に連結されている。ピチア・パストリス(P.pastoris)ARG1遺伝子をコードする発現カセットは(配列番号97)を含む。ヒトCMP−シアル酸シンターゼをコードする発現カセットは、ピチア・パストリス(P.pastoris)における発現に関してコドン最適化されたhCSS ORFをコードする核酸分子(配列番号98)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)GAPDHプロモーターを含む核酸分子に、そして3’末端においては、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を含む核酸分子に機能的に連結されている。ヒトN−アセチルノイラミナート−9−ホスファートシンターゼをコードする発現カセットは、ピチア・パストリス(P.pastoris)における発現に関してコドン最適化されたhSIAP S ORFをコードする核酸分子(配列番号99)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1プロモーターを含む核酸分子に、そして3’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)PMA1転写終結配列を含む核酸分子に機能的に連結されている。キメラマウスα−2,6−シアリルトランスフェラーゼをコードする発現カセットは、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)KRE2シグナルペプチドをコードする核酸分子に5’末端において融合している、ピチア・パストリス(P.pastoris)における発現に関してコドン最適化されたmST6触媒ドメインをコードする核酸分子(配列番号100)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)TEF1プロモーターを含む核酸分子に、そして3’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)TEF転写終結配列を含む核酸分子に機能的に連結されている。それらの6つの縦列カセットは、一方の側では、TRP2遺伝子の5’領域およびORF(これは終止コドンで終わる)からのヌクレオチド配列(配列番号101)ならびにそれに続くピチア・パストリス(P.pastoris)ALG3終結配列を含む核酸分子に隣接しており、他方の側では、TRP2遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(配列番号102)を含む核酸分子に隣接している。プラスミドpGLY2456をSfiIで線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY7961内に形質転換して、それらの6つの発現カセットがTRP2 ORFの直後のTRP2遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY8146を選択した。ついで該株を5−FOAの存在下で対抗選択して、ウリジンに今や栄養要求性である幾つかの株を得た。株YGLY9296を選択した。
プラスミドpGLY5048(図26)は、STE13遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、(1)キメラタンパク質を分泌経路および該細胞からの分泌に導くためのサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)αMATpreシグナルペプチドにN末端において融合したティー・レーセイ(T.reesei)α−1,2−マンノシダーゼ触媒ドメイン(aMATTrMan)、ならびに(2)ピチア・パストリス(P.pastoris)URA5または転写単位をコードする発現カセットを含有する。aMATTrManをコードする発現カセットは、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)αMATpreシグナルペプチドをコードする核酸分子(アミノ酸配列番号105をコードする配列番号104)に5’末端において融合している、ティー・レーセイ(T.reesei)触媒ドメインをコードする核酸分子(配列番号103)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1プロモーターを含む核酸分子に、そして3’末端においては、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を含む核酸分子に機能的に連結されている。該URA5発現カセットは、lacZ反復を含む核酸分子に隣接したピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位を含む核酸分子を含む。それらの2つの縦列カセットは、一方の側では、STE13遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列(配列番号106)を含む核酸分子に、そして他方の側では、STE13遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(配列番号107)を含む核酸分子に隣接している。プラスミドpGLY5048をSfiIで線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY9296内に形質転換して、幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY9469およびYGLY9465を選択した。該株は、単一マンノースO−グリコシル化を有する糖タンパク質を産生しうる(公開米国出願第20090170159号を参照されたい)。
プラスミドpGLY5019(図27)は、DAP2遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、アシビア・ゴシッピィ(Ashbya gossypii)TEF1プロモーターおよびアシビア・ゴシッピィ(Ashbya gossypii)TEF1終結配列に機能的に連結されたナーセオスリシン(Nourseothricin)耐性(NATR)発現カセット[元々はpAG25(EROSCARF,Scientific Research and Development GmbH,Daimlerstrasse 13a,D−61352 Bad Homburg,Germany)由来;Goldsteinら,Yeast 15:1541(1999);GenBankアクセッション番号CAR31387.1およびCAR31383.1を参照されたい]をコードする核酸分子を含む発現カセットを含有する。NAT発現カセット(配列番号108)は、アシビア・ゴシッピィ(Ashbya gossypii)TEF1プロモーター(配列番号109)およびアシビア・ゴシッピィ(Ashbya gossypii)TEF1終結配列(配列番号110)に対して機能的に調節され、その全体は、一方の側では、ピチア・パストリス(P.pastoris)DAP2遺伝子の5’ヌクレオチド配列(配列番号111)に隣接しており、他方の側では、ピチア・パストリス(P.pastoris)DAP2遺伝子の3’ヌクレオチド配列(配列番号112)に隣接している。プラスミドpGLY5019を線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY9469内に形質転換して、該NATR発現カセットがDAP遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY9797を選択した。
プラスミドpGLY5085(図28)は、シアル酸化N−グリカンの産生に関与する第2セットの遺伝子をピチア・パストリス(P.pastoris)内に導入するためのKINKOプラスミドである。該プラスミドは、ヒグロマイシン耐性(HygR)をコードする発現カセットでピチア・パストリス(P.pastoris)ARG1遺伝子が置換されていること、および該プラスミドがピチア・パストリス(P.pastoris)TRP5遺伝子を標的化すること以外は、プラスミドYGLY2456に類似している。該HYG耐性カセットは配列番号113である。HYG発現カセット(配列番号113)は、アシビア・ゴシッピィ(Ashbya gossypii)TEF1プロモーターおよびアシビア・ゴシッピィ(Ashbya gossypii)TEF1終結配列に対して機能的に調節されている(Goldsteinら,Yeast 15:1541(1999)を参照されたい)。それらの6つの縦列カセットは、一方の側では、TRP5遺伝子の5’領域およびORF(これは終止コドンで終わる)からのヌクレオチド配列(配列番号114)ならびにそれに続くピチア・パストリス(P.pastoris)ALG3終結配列を含む核酸分子に隣接しており、他方の側では、TRP5遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列(配列番号115)を含む核酸分子に隣接している。プラスミドpGLY5085を株YGLY9797内に形質転換して幾つかの株を得、それらから株YGLY12900およびYGL12897を選択した。
実施例3
この実施例は株YGLY21058およびYGLY16415の構築を記載する。どちらの株も、シアル酸化N−グリカンを有する糖タンパク質を産生することが可能であり、プラスミドpGLY4362における発現カセットによりコードされるB鎖の28位にN−グリコシル化部位を含むインスリン類似体を発現することが可能である。YGLY9797からの株の構築を図33A〜33Bに示す。
実施例2からの株YGLY12900をプラスミドpGLY4362で形質転換した。該プラスミドは、ヒトインスリンA鎖に融合したアミノ酸配列AAKを有するCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したN末端スペーサーに融合したTA57プロペプチドに融合したYps1ssドメインを含むグリコシル化インスリン類似体前駆体分子の発現をピチア・パストリス(Pichia pastoris)において可能にする発現プラスミドである。該形質転換により幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY21058を選択した。該株は、ヒトインスリンA鎖に融合したアミノ酸配列AAKを有するCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したN末端スペーサーを含むN−グリコシル化インスリン類似体前駆体を産生しうる。
実施例2からの株YGLY12897を5−FOAの存在下で対抗選択して、ウリジンに対して今や栄養要求性である幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY13658を選択した。
プラスミドpYGLY5192(図29)は、該株を液胞局在化受容体(Vps10−1p)活性欠損状態にするためにVPS10−1遺伝子のORFを欠失するように構築された組込みベクターである。該プラスミドは、VPS10−1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子(配列番号117)に一方の側で及びVPS10−1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子(配列番号116)に他方の側で隣接している、lacZ反復配列を含む核酸分子(配列番号50)に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位を含む核酸分子(配列番号49)を含有する。プラスミドをSfiIで線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY13658内に形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY15691を選択した。株YGLY15691をプラスミドpGLY4362で形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY16415を選択した。該株は、ヒトインスリンA鎖に融合したアミノ酸配列AAKを有するCペプチドに融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したN末端スペーサーを含むN−グリコシル化インスリン類似体前駆体を産生しうる。
実施例4
この実施例は株YGLY23560およびYGLY24005の構築を記載する。どちらの株も、ガラクトース末端N−グリカンを有する糖タンパク質を産生することが可能であり、プラスミドpGLY9312における発現カセットによりコードされるB鎖の28位にN−グリコシル化部位を含むインスリン類似体を発現することが可能である。株YGLY7965からの株の構築を図34に示す。
プラスミドpGLY3673(図30)は、PRO1遺伝子座の発現を損なうことなくPRO1遺伝子座を標的化するKINKO組込みベクターであり、キメラタンパク質を分泌経路および該細胞からの分泌に導くためのサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)αMATpreシグナルペプチドにN末端において融合したティー・レーセイ(T.reesei)α−1,2−マンノシダーゼ触媒ドメイン(aMATTrMan)をコードする発現カセットを含有する。aMATTrManをコードする発現カセットは、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)αMATpreシグナルペプチドをコードする核酸分子(配列番号104)に5’末端において融合したティー・レーセイ(T.reesei)触媒ドメインをコードする核酸分子(配列番号103)を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1プロモーターを含む核酸分子(配列番号118)に、そして3’末端においては、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を含む核酸分子(配列番号58)に機能的に連結されている。該カセットは、一方の側では、PRO1遺伝子の5’領域および完全ORFからのヌクレオチド配列(配列番号119)ならびにそれに続くピチア・パストリス(P.pastoris)ALG3終結配列を含む核酸分子に、そして他方の側では、PRO1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子(配列番号120)に隣接している。該プラスミドはPpARG1遺伝子を含有する。プラスミドpGLY3673を実施例2からの株YGLY7965内に形質転換して幾つかの株を得、それらのうち、株YGLY8323を選択した。
株YGLY23560を作製するために、株YGLY8323をプラスミドpGLY9312で形質転換した。該プラスミドは、ヒトインスリンA鎖に融合したCペプチド“TA(10×HIS)AK”に融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したN末端MYCスペーサーペプチドに融合したサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)アルファ接合因子シグナル配列およびプロ−ペプチドを含むグリコシル化インスリン類似体前駆体分子の発現をピチア・パストリス(Pichia pastoris)において可能にする発現プラスミドである。該形質転換により幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY23560を選択した。該株は、ヒトインスリンA鎖に融合したCペプチド“TA(10×HIS)AK”に融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したN末端MYCスペーサーペプチドを含むN−グリコシル化インスリン類似体前駆体を産生しうる。
株YGLY24005を作製するために、株YGLY8323を5−FOAの存在下で対抗選択して、ウリジンに対して今や栄養要求性である幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY8405を選択した。
プラスミドpYGLY3588(図32)は、AOX1遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、該プラスミドは、AOX1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子(配列番号124)に一方の側で及びAOX1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子(配列番号125)に他方の側で隣接している、lacZ反復配列(lacZ反復)(プラスミドpYGLY6を参照されたい)を含む核酸分子に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位(PpURA5)を含む核酸分子を含有する。
プラスミドpYGLY3588を株YGLY8405内に形質転換して、ウリジンに対して原栄養性である幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY13186を選択した。株YGLY13186をプラスミドpGLY9312で形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY24005を選択した。該株は、ヒトインスリンA鎖に融合したCペプチド“TA(10×HIS)AK”に融合したP28N置換を有するヒトインスリンB鎖に融合したN末端MYCスペーサーペプチドを含むN−グリコシル化インスリン類似体前駆体を産生しうる。
実施例5
この実施例は実施例2の株YGLY9465からの株YGLY23605の構築を記載する。該株は、シアル酸化N−グリカンを有する糖タンパク質を産生することが可能であり、プラスミドpGLY9312における発現カセットによりコードされるB鎖の28位にN−グリコシル化部位を含むインスリン類似体を発現することが可能である。該株は、誘導プロモーターに機能的に連結されたリーシュマニア・メジャー(Leishmania major)STT3D(LmSTT3D)オープンリーディングフレーム(ORF)を更に含む。LmSTT3D遺伝子の含有はN−グリコシル化部位占拠を増加させることが示されている(国際出願番号PCT/US2011/025878を参照されたい)。YGLY9465からの該株の構築を図35A〜Bに示す。
実施例2に記載されているプラスミドpGLY5019は、DAP2遺伝子座を標的化する組込みベクターであり、アシビア・ゴシッピィ(Ashbya gossypii)TEF1プロモーターおよびアシビア・ゴシッピィ(Ashbya gossypii)TEF1終結配列に機能的に連結されたナーセオスリシン(Nourseothricin)耐性(NATR)発現カセット[元々はpAG25(EROSCARF,Scientific Research and Development GmbH,Daimlerstrasse 13a,D−61352 Bad Homburg,Germany)由来;Goldsteinら,Yeast 15:1541(1999)を参照されたい]をコードする核酸分子を含む発現カセットを含有する。プラスミドpGLY5019を線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY9465内に形質転換して、該NATR発現カセットがDAP2遺伝子座内に二重交差相同組換えにより挿入された幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY9781を選択した。
株YGLY9781をプラスミドpGLY5085(実施例2)で形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、YGLY12903およびYGLY12905を選択した。ついで株YGLY12903を5−FOAの存在下で対抗選択して幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY14294を選択した。
プラスミドpGLY7603(図31)は、ピチア・パストリス(P.pastoris)においてVPS10−1遺伝子座を標的化する組込みプラスミドである。LmSTT3Dをコードする発現カセットは、誘導可能なピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1プロモーター配列を有する核酸分子(配列番号118)に5’末端において及びサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を有する核酸分子(配列番号58)に3’末端において機能的に連結された、ピチア・パストリス(P.pastoris)における最適な発現のためにコドン最適化されたLmSTT3D ORFをコードする核酸分子(配列番号121)を含み、選択のために、該プラスミドは、lacZ反復配列を含む核酸分子(配列番号50)に隣接しているピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位を含む核酸分子(配列番号49)を含有する。どちらのカセットも、VPS10−1遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子(配列番号117)に一方の側で、およびVPS10−1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子(配列番号116)に他方の側で隣接している。
プラスミドpGLY7603を株YGLY14294内に形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY22812を選択した。
株YGLY22812をプラスミドpGLY9310で形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY23605を選択した。該株は、N21G置換を含有するヒトインスリンA鎖に融合したCペプチドRRに融合した置換P28Nを含有するヒトインスリンB鎖を含むN−グリコシル化インスリン類似体前駆体を産生しうる。
実施例26
この実施例は実施例5の株YGLY12905からの株YGLY21083およびYGLY21080の構築を記載する。該株は、シアル酸化N−グリカンを有する糖タンパク質を産生することが可能であり、プラスミドpGLY9312における発現カセットによりコードされるB鎖の28位にN−グリコシル化部位を含むインスリン類似体を発現することが可能である。YGLY12905からの株の構築を図36に示す。
株YGLY12905をプラスミドpGLY7680で形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY21083を選択した。該株は、ヒトインスリンA鎖に融合したCペプチドRRに融合した置換P28Nを含有するヒトインスリンB鎖を含むグリコシル化プロインスリン類似体を産生しうる。
また、株YGLY12905をプラスミドpGLY7679で形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY21080およびYGLY21081を選択した。該株は、ヒトインスリンA鎖に融合したCペプチドA(10×HIS)AKに融合した置換P28Nを含有するヒトインスリンB鎖に融合したN末端スペーサーペプチドを含むN−グリコシル化インスリン類似体前駆体を産生しうる。
実施例7
種々のN−グリコシル化インスリン類似体を産生しうる株は以下のとおりに増殖されうる。500mLのBSGY培地を含有する2つの2.8リットル(L)のバッフル付きフェルンバッチ(Fernbach)フラスコに2mLの関連株のリサーチ・セル・バンク(Reserch Cell Bank)を接種することにより、初代培養を調製する。48時間のインキュベーションの後、バイオリアクターに接種するために該細胞を移す。該発酵バッチ培地は培地1リットル当たりに以下のものを含有する:40gのグリセロール(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)、18.2g ソルビトール(Acros Organics,Geel,Belgium)、2.3gのリン酸二水素カリウム(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ)、11.9gのリン酸水素二カリウム(EMD,Gibbstown,NJ)、10gの酵母エキス(Sensient,Milwaukee,WI)、20gのHy−Soy(Sheffield,Bioscience,Norwich,NY)、13.4gのYNB(BD,Franklin Lakes,NJ)および4×10−3gのビオチン(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)。
15L 凹底ガラス(オートクレーブ可能)および40L SIPバイオリアクター(それぞれ、8Lおよび20Lの開始容量)(Applikon,Foster City,CA)内で発酵を行った。以下の条件で、単純バッチ様態で該発酵を行った:24±1℃の温度;30% NHOHの添加により維持される6.0±0.1のpH;約0.7±0.1vvmの気流;20%飽和の溶存酸素[撹拌速度(250〜800rpm)のフィードバック制御のカスケード化およびそれに続く0.1vvmまでの注入気流への純酸素の補給により維持される]。溶存酸素濃度の急激な増加により認められるグリセロールの初期仕込みの消失の後、100+/−10g/L(湿潤細胞重量)の細胞密度に達する。この時点で、溶存酸素制御を切断し、35〜90mmol/L/時の範囲内の一定の酸素取り込み速度を可能にする一定速度に撹拌を固定する。ついで、pHを6.0から5.2±0.1に変化させると共に、100%メタノール供給溶液の添加を開始する。メタノールを0.15%±0.02%の濃度で過剰状態に維持する。これは、メタノール・センサー(Methanol Sensor)(Raven Biotech Inc.,Vancouver,British Columbia,Canada)からのフィードバックにより制御される。該メタノール相は72±8時間継続する。該発酵の終了時に、13,000×gで30分間の遠心分離により上清を得る。
本明細書に開示されている形質転換酵母株のタンパク質発現は、1% 酵母エキス、2% ペプトン、100mM リン酸カリウムバッファー(pH6.0)、1.34% 酵母窒素ベース、4×10−5% ビオチンおよび1% グリセロールからなる緩衝化グリセロール複合培地(BMGY)を含有する振とうフラスコ内で24℃で行われうる。タンパク質発現のための誘導培地は、BMGYにおけるグリセロールの代わりに1% メタノールからなる緩衝化メタノール複合培地(BMMY)である。O−グリコシル化を制御または低減したい場合には、誘導培地を加えた時点で、メタノール中のPmtインヒビター、例えばPmti−3(5−[[3−(1−フェニル−2−ヒドロキシ)エトキシ)−4−(2−フェニルエトキシ)]フェニル]メチレン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸)(公開国際出願番号WO2007061631を参照されたい)またはPmti−4(以下の構造
Figure 2014525922
を有する米国公開出願第20110076721号の実施例4化合物)を18.3μMの最終濃度で増殖培地に加える。細胞を回収し、2,000rpmで5分間遠心分離する。
SixForsファーメンター・スクリーニング・プロトコール(Fermentor Screening Protocol)は、表2に示されているパラメータに従った。
Figure 2014525922
接種後約18時間の時点で、350mLの培地A(以下の表3を参照されたい)+4%グリセロールを含有するSixFors容器に、関心のある株を接種する。少量(100%メタノール中、0.2mg/mLで0.3mL)のPmti−3を接種物と共に加えた。約20時間の時点で、17mL、50% グリセロール溶液(グリセロール・フェッドバッチ供給;以下の表4を参照されたい)+大量(4mg/mLで0.3mL)のPmti−3またはPmti−4のボーラスを容器ごとに加える。溶存酸素(DO)濃度の正の急上昇により示されるグリセロールの消費が認められる26時間の時点で、メタノール供給(以下の表5を参照されたい)を0.7mL/時間で連続的に開始する。同時に、もう1つの量のPmti−3またはPmti−4(4mg/mL ストック、0.3mL)を容器ごとに加える。約48時間の時点で、もう1つの量(4mg/mLで0.3mL)のPmti−3またはPmti−4を容器ごとに加える。接種後約60時間の時点で、培養物を回収し、加工する。
Figure 2014525922
実施例8
この実施例においては、株YGLY21058を増殖させるために使用した培地から抽出したN−グリコシル化インスリン類似体前駆体をN−結合グリコシル化に関して分析した。該類似体は、配列番号36に示されているアミノ酸配列を有する一本鎖分子である。該培地のアリコートをPNGアーゼまたはノイラミニダーゼで処理し、該処理サンプルを、対照としての未処理アリコートと共に、還元16.5% TRICINEポリアクリルアミドゲル上で分離した。図37は、該インスリン類似体前駆体がN−グリコシル化されたことを示している。PNGアーゼ消化により遊離したN−グリカンを正および負イオンMALDI−TOFにより分析し、その結果を図38に示す。図37に示されているとおり、該インスリン類似体前駆体の観察されたN−グリカン組成は約75% A2(ビシアル酸化)であり、約16%はA1(モノシアル酸化)であり、約5%はハイブリッドManであった。図37はまた、主要インスリン前駆体種の構造を示す。該N−グリコシル化インスリン類似体前駆体のインビトロ加工は、主要N−グリカンがビ−シアル酸化された、N−グリコシル化インスリン類似体組成物を与えるであろう。予想されるN−グリカン組成は、約75:16:5:3mol%の比の、NANAGalGlcNAcManGlcNAc:NANAGalGlcNAcManGlcNAc:ManGlcNAc:NANAGalGlcNAcManGlcNAcと予想されるであろう。
該N−グリコシル化インスリン類似体前駆体を精製するために、上清培地をSorvall Evolution RC(kendo,Asheville,NC)における13,000gで15分間の遠心分離により清澄化し、ついでpHを4.5に調節し、Sartopore 2 0.2μm(Sartorius Biotech Inc.)を使用して濾過した。濾液をCapto MMCカラム、マルチモード陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare,Piscataway,NJ)(同じpHに調節されたもの)にローディングした。pH7での溶出の後で得られたプールを集め、RESOURCE RPCカラム(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)、SOURCE 15Cが充填された逆相カラムクロマトグラフィー、ポリスチレン/ジビニルベンゼンから構成される強固な単分散15μmビーズに基づく重合体逆相クロマトグラフィー媒体内にローディングした。該樹脂をpH3.5で平衡化し、同じpHでの12.5%〜20% 2−プロパノールの段階溶出を用いて溶出した。画分を集め、図39に示されているとおり、7つの群にプールした。それらの7つの群を還元16.5% TRICINEポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した。各グリコフォームの相対量を定量するために、N−グリコシダーゼFで遊離したグリカンを2−アミノベンジジン(2−AB)で標識し、HPLCにより分析した(Choiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:5022−5027(2003)およびHamiltonら,Science 313:1441−1443(2006)に記載されているとおりに行った)。
タンパク質1モル当たりのシアル酸のモルの比として糖タンパク質上の全シアル酸含量を検出するために、以下のアッセイを用いた。以下の方法を用いて、シアル酸を酸加水分解により糖タンパク質サンプルから遊離させ、HPAEC−PADにより分析した。約10〜15μgのタンパク質サンプルをリン酸緩衝食塩水中にバッファー交換した。400μLの0.1M 塩酸を加え、該サンプルを80℃で1時間加熱した。SpeedVac(Savant)における乾燥の後、該サンプルを500mLの水で再構成させた。ついで100μLをHPAEC−PAD分析に付した。該N−グリコシル化インスリン類似体前駆体プール1〜3の収率およびN−グリカン組成も決定し、結果を図39に示す。
A2、G2、G0またはG−2 N−グリカンを有するN−グリコシル化インスリン類似体前駆体の組成を得るために、後記の酵素工程のために、N−グリカン組成に基づいて該プールを選択した。これらのN−グリカンは、連続的な酵素消化により、N−グリコシル化インスリン類似体前駆体類似体上で生成した。該酵素反応条件は、該製造業者により推奨されているものを用いた。A2 N−グリカンを有するN−グリコシル化インスリン類似体前駆体をアセチル−ノイラミニルヒドラーゼ(Sialidase,Neuraminidase)(New England BioLabs,Inc)で消化して、G2 N−グリカンを有するN−グリコシル化インスリン類似体前駆体を得た。G2 N−グリカンを有するN−グリコシル化インスリン類似体前駆体をβ1−4ガラクトシダーゼ(New England BioLabs,Inc)で消化して、G0 N−グリカンを有するN−グリコシル化インスリン類似体前駆体を得た。N−グリコシル化インスリン類似体前駆体G0をβ−N−アセチルグルコサミニダーゼ(ヘキソサミニダーゼ)(New England BioLabs,Inc)で消化して、G−2 N−グリカンを有するN−グリコシル化インスリン類似体前駆体を得た。前記種の全てに適用された最後の酵素工程は、エンドプロテイナーゼLys−C(Roche)を使用してN−グリコシル化インスリン類似体前駆体を完全に消化して、天然ヒトインスリンA鎖ペプチドおよびdes(B30)B:P28N B鎖ペプチドを有するN−グリコシル化インスリンヘテロ二量体[ここで、28位のAsnはA2 N−グリカン(GS6.0)、G2 N−グリカン(GS5.0)、G0 N−グリカン(GS4.0)またはG−2 N−グリカン(GS2.1)に結合している]を得るためのものであった。種々の類似体のB鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号294、295、296および297に示されている。
酵素消化後、得られたN−グリコシル化des(B30)B:P28Nインスリンヘテロ二量体を、前記のとおりにSOURCE 15RPCを使用して精製した。最終プールを25mM 第2リン酸ナトリウム(無水物)、10mM NaCl、1.6% グリセロール(pH7.4)中で製剤化した。この最終製剤化タンパク質を該インビトロおよびインビボ研究の全てにおいて使用した。並行して、市販のNOVOLIN(Novo Nordisk)を、エンドプロテイナーゼLys−C(Roche)を使用して消化して、対照として使用するためのdes(B30)形態を得た。前記のとおりに、精製および製剤化を行った。
実施例9
GS2.1およびGS5.0インスリン類似体のグルコース応答性を研究するために、12週齢のC57BL/6マウスを2時間絶食させた後、GS2.1またはGS5.0をs.c.注射により投与した。同時に、動物にα−メチルマンノース溶液(塩類液中の21.5% w/v、10ml/kg)またはビヒクルをi.p.投与した。高濃度では、α−メチルマンノースはc型レクチンと糖タンパク質(特に、マンノース、GlcNAcまたはフコース残基を末端に有するもの)との間の相互作用を競合的に抑制することが知られている。時間0、ついで注射の30、60、90および120分後、グルコメーター(OneTouch Ultra LifeScan;Milpitas,CA)を使用して、血液グルコースを測定した。時間0のグルコース(100%として)に対して標準化された値を用いて、グルコース曲線上面積(Area−Over the−Curve)(AOC)を計算した。
図40に示されているとおり、18nmol/kgで投与された、末端ガラクトースを含有するGS5.0は120分間の研究時間中にグルコースを低下させた。α−メチルマンノースの注射は、GS5.0により誘導されたグルコース低下に対する検出可能な追加的な効果を及ぼさなかった。これとは対照的に、末端マンノースを含有するGS2.1は、単独で投与された場合、GS5.0と比較して低い度合ではあったがグルコースを低下させた。しかし、α−メチルマンノースの存在下では、GS2.1は、60および90分の時点で、GS5.0より良好な又はより大きな効力でグルコースを低下させた。α−メチルマンノースの存在下および非存在下のグルコースAUC(%)は、GS2.1に関しては有意に異なっていたが、GS5.0に関しては変化は検出されなかった。グルコースはマンノース結合性c型レクチンと糖タンパク質との間の相互作用を、α−メチルマンノースより低い効力でではあるが抑制することが知られている。これらのデータは、GS2.1がグルコース応答様態でグルコースを低下させうることを示しており、これは恐らく、マンノース受容体のようなマンノース結合性レクチンによるものであろう。
実施例10
この実施例は、0、1、2または3個のN−グリカンを含有するN−グリコシル化プロインスリン類似体前駆体の製造を示す。該N−グリカンはGS1.0(Man(8−12)GlcNAc)またはGS2.0(ManGlcNAc)のいずれかであった。
実施例1の表1に示されている発現ベクターのそれぞれを株YGLY26268内に別々に形質転換した。株YGLY26268は、アルファ−1,6−マンノシルトランスフェラーゼ活性を欠くGFI1.0株であるが、LmSTT3D遺伝子の存在により高いN−グリコシル化部位占拠を伴う高マンノースN−グリカン(Man(8−12)GlcNAc)を有する糖タンパク質を産生する。
各トランスフェクションからの3個のクローンをMicro24リアクター(Pall Corporation)内で培養し、メタノールの添加に際して組換えタンパク質を誘導した。得られた培養上清流体を各形質転換からの3個の異なるクローンから単離し、還元4〜20% Tris−HCl SDSポリアクリルアミドゲル上のゲル電気泳動によりタンパク質発現に関して分析し、該タンパク質をクーマシーブルー染色で可視化した。YGLY26580およびYGLY26734と称される2つの対照株をこれまでの形質転換において作製し、該実験実施に加えた。
該ゲル電気泳動の結果を図41に示す。結果は、N−結合グリコシル化部位を有するプロインスリン前駆体類似体が主にMan(8−12)GlcNAc N−グリカンでN−グリコシル化され、N−グリカンの推定数に合致したタンパク質分子量(各N−グリカンは約1720ダルトンの分子量を有する)で泳動したことを示している。pGLY11164によりコードされるプロインスリン前駆体類似体はグリコシル化されなかった。なぜなら、それはB28位にアスパラギン残基を含有していたが、それはB30位のトレオニン残基を欠き、したがって、完全なN−結合グリコシル化モチーフを欠いていたからである。
対照株YGLY26734は、図41に示されているゲルのレーン18において、1個のN−グリコシル化部位を含有する類似体(例えば、13−14)に対応する位置で泳動していると思われるプロインスリン類似体前駆体を産生した。しかし、該プロインスリン類似体前駆体は両方の位置でグリコシル化されている。移動度の変化は、GFI1.0株において産生されたプロインスリン類似体前駆体のN−グリカンと比較した場合の該N−グリカンのサイズの減少によるものである。該高マンノースN−グリカンは約1720ダルトンの平均分子量を有するが、ManGlcNAc N−グリカンは約1257ダルトンの分子量を有し、その差は約463ダルトンである。2個のN−グリコシル化部位が存在するため、サイズの全体的減少は約926ダルトンである。高マンノースN−グリカンを有するプロインスリン類似体前駆体とManGlcNAc Nーグリカンを有するものとの間の分子量におけるこの相違は、該ゲルにおいて示されるそれぞれのプロインスリン類似体前駆体の移動度に影響を及ぼす。
実施例11
この実施例は実施例10の株YGLY26268の構築を記載する。株YGLY26268は、GS1.0(Man(8−12)GlcNAc)N−グリカンを有する糖タンパク質を産生することが可能であり、LmSTT3D遺伝子を含み、これは、lmSTT3D遺伝子を欠く株と比較して、N−グリコシル化部位占拠の増加をもたらすことがPCT/US2011/25878に示されている。
株YGLY26268の構築を図46に示す。簡潔に説明すると、株YGLY16−3を、既に記載されているプラスミドpGLY3419で形質転換して、幾つかの株を得、これらのうち、YGLY6698およびYGLY6697を選択した。それらの2つの選択された株を5−フルオロオロト酸(5−FOA)の存在下で対抗選択して、幾つかの株を得、これらのうち、YGLY6720およびYGLY6719を選択した。
株YGLY6720およびYGLY6719をそれぞれ、既に記載されているプラスミドpGLY3411で形質転換して、幾つかの株を得、これらのうち、YGLY6749およびYGLY6743を選択した。それらの2つの選択された株を5−フルオロオロト酸(5−FOA)の存在下で対抗選択して、幾つかの株を得、これらのうち、YGLY7749およびYGLY6773を選択した。
株YGLY7749およびYGLY6773をそれぞれ、既に記載されているプラスミドpGLY3421で形質転換して、幾つかの株を得、これらのうち、YGLY7760およびYGLY7754を選択した。
プラスミドpGLY6301は、ピチア・パストリス(P.pastoris)におけるURA6遺伝子座を標的化するロールイン組込みプラスミドである。LmSTT3Dをコードする発現カセットは、誘導可能なピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1プロモーター配列を有する核酸分子(配列番号118)に5’末端において及びサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を有する核酸分子(配列番号58)に3’末端において機能的に連結された、ピチア・パストリス(P.pastoris)における有効な発現のためにコドン最適化されたLmSTT3D ORFをコードする核酸分子を含む。形質転換体を選択するために、該プラスミドは、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)ARR3 ORFをコードする発現カセットを含み、ここで、該ORFをコードする核酸分子(配列番号255)は、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)PRL10プロモーター配列を有する核酸分子(配列番号257)に、そして3’末端においては、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を有する核酸分子(配列番号58)に機能的に連結されている。該プラスミドは更に、URA6遺伝子座(配列番号256)を標的化するための核酸分子を含む。5’末端においてEcoRI部位に、そして3’末端においてFseI部位に隣接したコドン最適化LmSTT3D ORF(pGLY6287)をコードするDNA断片を、EcoRIおよびFseIで消化されたプラスミドpGFI30t内にクローニングすることにより、プラスミドpGLY6301を構築した。
株YGLY7760を、既に記載されているpGLY6301でトランスフェクトして幾つかの株を得、これらのうち、YGLY26268を選択した。株YGLY26268を、前記実施例1の表1に挙げられている代替的インスリン発現プラスミドで形質転換した。表1からの全てのインスリン発現プラスミドは、制限部位MlyIおよびFseIを使用してインスリン前駆体遺伝子をプラスミドpGLY9316(図47)内にクローニングすることにより作製され、配列番号126(pGLY11074)、配列番号128(pGLY11084)、配列番号130(pGLY11085)、配列番号132(pGLY11087)、配列番号134(pGLY11088)、配列番号136(pGLY11098)、配列番号138(pGLY11099)、配列番号140(pGLY11101)、配列番号142(pGLY11164)、配列番号144(pGLY11464)、および配列番号146(pGLY11465)に示されているオープンリーディングフレームを有する。YGLY26268由来のクローンは、Man(8−12)GlcNAc構造を主に有する糖タンパク質を産生しうるGFI1.0株である。
この実験における対照株であるYGLY26580およびYGLY26734は、配列番号156に示されているアミノ酸配列を有するN−グリコシル化インスリン類似体前駆体をプラスミドpGLY11099から産生する。該N−グリコシル化インスリン類似体前駆体は、2つのN−グリカン、すなわち、B(−2)位に1つ、およびB28位に1つのN−グリカンを有する。YGLY26580およびYGLY26734は共に、インスリン発現プラスミドpGLY11099を含有するが、YGLY26580は、Man(8−12)GlcNAc N−グリカン構造を主に有する糖タンパク質を産生するGFI1.0株であり、一方、YGLY26734は、ManGlcNAc N−グリカン構造を主に有する糖タンパク質を産生するGFI2.0株である。株YGLY26580の構築は図48に示されており、実施例12に記載されており、一方、株YGLY26734の構築は図49A〜49Bに示されており、実施例13に記載されている。プラスミドpGLY11099の地図を図50に示す。
実施例12
株YGLY26580の構築を図48に示す。該株は、GS1.0(Man(8−12)GlcNAc)N−グリカンを有する、pGLY11099によりコードされるインスリン類似体を産生する対照株であり、LmSTT3D遺伝子を含む。
簡潔に説明すると、株YGLY7760をプラスミドpGLY11099でトランスフェクトして幾つかの株を得、これらのうち、YGLY26189を選択した。プラスミドpGLY11099(図50)は、B−2位およびB28位にN−グリコシル化部位を含むインスリン類似体をコードしている。該プラスミドによりコードされるプロインスリン前駆体類似体のアミノ酸配列を配列番号156に示す。
株YGLY26189を、既に記載されているプラスミドpGLY6301でトランスフェクトして幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY26580を選択した。
実施例13
株YGLY26734の構築を図49に示す。該株は、GS2.0(ManGlcNAc)N−グリカンをB(−2)位およびB28位に有する、pGLY11099によりコードされるインスリン類似体前駆体を産生する対照株であり、LmSTT3D遺伝子を含む。該グリコシル化インスリン類似体前駆体はグリコシル化インスリン類似体200−2−Bへとインビトロで加工される。200−2−Bは、アミノ酸配列 GTFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYT K(配列番号293)[ここで、1位および31位(B−2およびB28)のAsn残基Nはそれぞれ、ManGlcNAc N−グリカンにβ1結合で共有結合している]を有する、天然インスリンA鎖およびB鎖を含むヘテロ二量体(des(B30))である。株YGLY26734の構築は以下のとおりである。
株YGLY7754を5−フルオロオロト酸(5−FOA)の存在下で対抗選択して幾つかの株を得、これらのうち、YGLY8252を選択した。
プラスミドpGLY1162(図51)は、PRO1遺伝子座の発現を損なうことなくPRO1遺伝子座を標的化するKINKO組込みベクターであり、キメラタンパク質を分泌経路および該細胞からの分泌に導くためのサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)αMATpreシグナルペプチドにN末端において融合したティー・レーセイ(T.reesei)α−1,2−マンノシダーゼ触媒ドメイン(aMATTrMan)をコードする発現カセットを含有する。aMATTrManをコードする発現カセットは、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)αMATpreシグナルペプチドをコードする核酸分子(配列番号104)に5’末端において融合したティー・レーセイ(T.reesei)触媒ドメインをコードする核酸分子を含み、これは、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1プロモーターを含む核酸分子に、そして3’末端においては、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を含む核酸分子に機能的に連結されている。該カセットは、一方の側では、PRO1遺伝子の5’領域および完全ORFからのヌクレオチド配列(配列番号119)ならびにそれに続くピチア・パストリス(P.pastoris)ALG3終結配列を含む核酸分子に、そして他方の側では、PRO1遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子(配列番号120)に隣接している。該プラスミドは、lacZ反復を含む核酸分子に隣接している、ピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位を含む核酸分子を含有する。プラスミドpGLY1162を株YGLY8252内に形質転換して幾つかの株を得、得られた株から株YGLY8292を選択した。株YGLY8292を5−フルオロオロト酸(5−FOA)の存在下で対抗選択して幾つかの株を得、これらのうち、YGLY9060を選択した。
株YGLY9060を、既に記載されているpGLY3588で形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、YGLY24957を選択した。株YGLY24957をプラスミドpGLY6301で形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、YGLY24964を選択した。株YGLY24964をプラスミドpGLY11099で形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、YGLY26734を選択した。
株YGLY26734の発酵の後、インスリン類似体前駆体を無細胞発酵上清から精製し、LysCエンドプロテイナーゼで処理して、実施例15に記載されているインビトロおよびインビボ試験のためのdes(B30)ヘテロ二量体200−2−Bを得た。
実施例14
この実施例は株YGLY29365の構築を記載する。株YGLY29365は、GS2.1(ManGlcNAc)N−グリカンをB(−2)位およびB28位に有するグリコシル化インスリン類似体前駆体を産生しうる。該グリコシル化インスリン前駆体はグリコシル化インスリン類似体210−2−Bへとインビトロで加工される。210−2−Bは、アミノ酸配列 GTFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYT K(配列番号292)[ここで、1位および31位(B−2およびB28)のAsn残基Nはそれぞれ、ManGlcNAc(少マンノース)N−グリカンにβ1結合で共有結合している]を有する、天然インスリンA鎖およびB鎖を含むヘテロ二量体(des(B30))である。
株YGLY29365の構築は、図49Aに示され実施例13に記載されている株YGLY9060から開始する多数の遺伝的修飾の産物である。
株YGLY9060をプラスミドpGLY7140で形質転換した。プラスミドpGLY7140は、YOS9遺伝子座を標的化するノックアウトベクターであり、ピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子(配列番号49)または転写単位を含む核酸分子を含有し、これは、lacZ反復を含む核酸分子(配列番号50)に隣接しており、そしてこれは、一方の側では、YOS9遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子(配列番号306)に隣接しており、他方の側では、YOS9遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子(配列番号307)に隣接している。Yos9pはER関連分解(ERAD)経路に関連づけられており(Kimら,Mol.Cell.16:741−751(2005)を参照されたい)、YOS9遺伝子の欠失はグリコシル化タンパク質の収率を改善しうる。プラスミドpGLY7140をSfiIで線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY9060内に形質転換して、lacZ反復に隣接したURA5遺伝子が二重交差相同組換えによりYOS9遺伝子座内に挿入されている幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY23328を選択した。株YGLY23328を5−FOAの存在下で対抗選択して、URA5遺伝子が喪失しlacZ反復だけが残存している株YGLY23360を得た。
プラスミドpGLY5508を形質転換することにより、株YGLY24542を作製した。プラスミドpGLY5508は、ALG3遺伝子座を標的化するノックアウトベクターであり、ピチア・パストリス(P.pastoris)URA5遺伝子または転写単位を含む核酸分子を含有し、これは、lacZ反復を含む核酸分子に隣接しており、そしてこれは、一方の側では、ALG3遺伝子の5’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子(配列番号308)に隣接しており、他方の側では、ALG3遺伝子の3’領域からのヌクレオチド配列を含む核酸分子(配列番号309)に隣接している。プラスミドpGLY5508をSfiIで線状化し、該線状化プラスミドを株YGLY23360内に形質転換して、lacZ反復に隣接したURA5遺伝子が二重交差相同組換えによりALG3遺伝子座内に挿入されている幾つかの株を得た。得られた株から株YGLY24542を選択した。
プラスミドpGLY10153は、ピチア・パストリス(P.pastoris)におけるURA6遺伝子座を標的化しLmSTT3A、LmSTT3BおよびLmSTT3D ORFをコードするロールイン組込みプラスミドである。LmSTT3タンパク質の過剰発現は該インスリン類似体のN−グリコシル化部位占拠を増強しうる。LmSTT3Aをコードする発現カセットは、誘導可能なピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1プロモーター配列を有する核酸分子に5’末端において及びサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を有する核酸分子に3’末端において機能的に連結された、ピチア・パストリス(P.pastoris)における有効な発現のためにコドン最適化されたLmSTT3D ORF(配列番号310)をコードする核酸分子を含む。LmSTT3Bをコードする発現カセットは、誘導可能なピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1プロモーター配列を有する核酸分子に5’末端において及びサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を有する核酸分子に3’末端において機能的に連結された、ピチア・パストリス(P.pastoris)における有効な発現のためにコドン最適化されたLmSTT3B ORF(配列番号311)をコードする核酸分子を含む。LmSTT3Dをコードする発現カセットは、誘導可能なピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1プロモーター配列を有する核酸分子に5’末端において及びサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を有する核酸分子に3’末端において機能的に連結された、ピチア・パストリス(P.pastoris)における有効な発現のためにコドン最適化されたLmSTT3D ORF(配列番号121)をコードする核酸分子を含む。形質転換体を選択するために、該プラスミドは、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)ARR3 ORFをコードする発現カセットを含み、ここで、該ORFをコードする核酸分子は、5’末端においては、ピチア・パストリス(P.pastoris)PRL10プロモーター配列を有する核酸分子に、そして3’末端においては、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)CYC転写終結配列を有する核酸分子に機能的に連結されている。プラスミドpGLY10153を株YGLY24542内に形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY24561を選択した。株YGLY24561を5−FOAの存在下で対抗選択して、URA5遺伝子が喪失しlacZ反復だけが残存している株YGLY24586を得た。
株YGLY24586を、ATT1遺伝子を破壊するプラスミドpGLY5933で形質転換した。ATT1遺伝子の破壊は発酵中の細胞適合性を改善しうる。該プラスミドの顕著な特徴は、それが、ATT1遺伝子の5’または上流領域を含む核酸分子(配列番号312)に一方の末端で及びATT1遺伝子の3’または下流領域をコードする核酸分子(配列番号313)に他方の末端で隣接している前記URA5発現カセットを含むことである。YGLY27303をプラスミドpGLY5933で形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、YGLY27303を選択した。株YGLY27303をプラスミドpGLY11099(図50)で形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、株YGLY28137を選択した。
プラスミドpGLY12027は、ピチア・パストリス(P.pastoris)におけるURA6遺伝子座を標的化しマウスエンドマンノシダーゼORFをコードするロールイン組込みベクターである。完全長マウスエンドマンノシダーゼをコードする発現カセットは、ピチア・パストリス(P.pastoris)における有効な発現のためにコドン最適化された完全長マウスエンドマンノシダーゼORFをコードする核酸分子(配列番号314)を含み、これは、誘導可能なピチア・パストリス(P.pastoris)AOX1プロモーター配列を有する核酸分子に5’末端において、および転写終結配列、例えばピチア・パストリス(Pichia pastoris)AOX1転写終結配列(配列番号315)に3’末端において機能的に連結されている。形質転換体を選択するために、該プラスミドは、アシビア・ゴシッピィ(Ashbya gossypii)TEF1プロモーター(配列番号109)およびアシビア・ゴシッピィ(Ashbya gossypii)TEF1終結配列(配列番号110)に機能的に調節されたNAT発現カセット(配列番号108)を含む。該プラスミドは、URA6遺伝子座を標的化するための、既に記載されている核酸分子を更に含む。株YGLY28137をプラスミドpGLY12027で形質転換して幾つかの株を得、これらのうち、YGLY29365を選択した。
株YGLY29365の発酵の後、該インスリン類似体前駆体を無細胞発酵上清から精製し、LysCエンドプロテイナーゼで処理して、実施例15に記載されているインビトロおよびインビボ試験のためのdes(B30)ヘテロ二量体210−2−Bを得た。
実施例15
この実施例は、グルコース応答特性を示す2つのN−グリコシル化インスリン類似体を示す。第1のインスリン類似体は210−2−Bと称され、アミノ酸配列 GTFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYT K(配列番号292)[ここで、1位および31位(B−2およびB28)のAsn残基Nはそれぞれ、ManGlcNAc(少マンノース)N−グリカンにβ1結合で共有結合している]を有する、天然インスリンA鎖およびB鎖を含むヘテロ二量体(des(B30))である。第2の類似体は200−2−Bと称され、アミノ酸配列 GTFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYT K(配列番号293)[ここで、1位および31位(B−2およびB28)のAsn残基Nはそれぞれ、ManGlcNAc N−グリカンにβ1結合で共有結合している]を有する、天然インスリンA鎖およびB鎖を含むヘテロ二量体(des(B30))である。該N−グリコシル化インスリン類似体はB:NGT(N末端における)、B:P28N,des(B30)である。
これらの類似体の活性を評価するために、3つのインビトロアッセイを行った。ヒトインスリン受容体アイソフォームB(IR−b)への結合を、IR−bを過剰発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に対する、放射能標識ヒトインスリンとの該類似体の競合において決定し、IC50値として示した。IR−bを過剰発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞におけるIR−bのリン酸化を評価することにより、IR−bの機能的活性化を決定し、EC50値として示した。ヒトマンノース受容体C型1(MRC1)への結合を、ELISAアッセイにおいて、MRC1のエクトドメインに対する、ユウロピウム標識マンノースBSAとの該類似体の競合において決定し、IC50値として示した。組換えヒトインスリン(RHI)の結合と比較された、該類似体のIR−b結合、IR−bリン酸化およびMRC1結合のインビトロ特性を、表7に示す。
Figure 2014525922
正常血糖および低血糖条件下のMRC1へのインスリン類似体のインビボ結合は、生じる血液グルコース低下に関連していないインスリンクリアランスの代替経路となりうる。一方、高血糖条件は、MRC1への該類似体の結合に関してグルコースが競合するのを可能にし、IR結合、クリアランスおよび血液グルコースの関連低下の、より高い速度を招きうる。したがって、MRC1結合を欠損しているインスリン類似体、例えば組換えヒトインスリンは、重篤な低血糖を引き起こす可能性を伴って全ての血液グルコース状態において完全に活性でありうる。したがって、グルコース応答性を評価するために、類似体2102−Bおよび200−2Bをユカタン(Yucatan)ミニブタモデルにおいて試験した。正常なユカタンミニブタにアロキサンを投与し、回復させ、I型糖尿病のモデルにおいてNPHインスリンの毎日2回の皮下注射を行った。5頭の正常ミニブタおよび5糖の糖尿病ミニブタを2時間絶食させた後、該インスリン類似体を皮下(s.c.)注射により投与した。グルコメーターを(例えば、OneTouch Ultra LifeScan;Milpitas,CA)使用して、時間0分ならびに注射後8、15、30、60、90、120、150、180、210、240、270、300、360、420および480分の時点で、血液グルコースを測定した。絶食した正常および糖尿病ミニブタにおける1つのそのような実験の結果を図52A〜55Bに示す。
図52Aは、絶食糖尿病ミニブタに2.0nmol/kgで皮下(s.c.)投与されたN−グリコシル化インスリン類似体210−2−Bが血液グルコースレベルに経時的に効果を及ぼすことを示しており、該効果は、絶食糖尿病ミニブタに0.9nmol/kgで皮下(s.c.)投与された場合に血液グルコースレベルに及ぼすRHIの影響と同等である。
図52Bは、絶食正常ミニブタに皮下(s.c.)投与された場合の経時的な血液グルコースレベルに対するN−グリコシル化インスリン類似体210−2−B(B−2およびB28のAsn残基に連結された少マンノース)の効果と組換えヒトインスリン(RHI)の効果との比較を示す。この図は、2.0nmol/kgで投与された210−2−Bが、0.9nmol/kgで投与されたRHIにより引き起こされる血液グルコースレベルの変化より小さい変化を引き起こすことを示している。この図はまた、210−2−Bに関して観察されるグルコースレベルの変化が、重篤な低血糖を引き起こす可能性がより小さいことを示している。
図53Aは、ベースラインからの血液グルコースの変化として再プロットされた、図52Bに示されているデータを示し、図53Bは、ベースラインからの血液グルコースの変化として再プロットされた、図52Aに示されているデータを示す。これらの図は、210−2−Bがグルコース応答様態で血液グルコースレベルに影響を及ぼすことを示している。図53Bはまた、210−2−Bが絶食糖尿病ミニブタにおいて血液グルコースレベルを制御していることを示している。
図54Aは、絶食糖尿病ミニブタに皮下(s.c.)投与された場合に血液グルコースレベルに経時的に効果を及ぼすN−グリコシル化インスリン類似体200−2−Bの投与を示し、該効果は、絶食糖尿病ミニブタに皮下(s.c.)投与された場合に血液グルコースレベルに及ぼすRHIの効果と同等である。この図は、血液グルコース低下効果において、5nmol/kgの200−2−Bが0.9nmol/kgのRHIと同等であることを示している。
図54Bは、絶食正常ミニブタに皮下(s.c.)投与された場合の経時的な血液グルコースレベルに対するN−グリコシル化インスリン類似体200−2−B(B−2およびB28のAsn残基に連結されたManGlcNAc)の効果と組換えヒトインスリン(RHI)の効果との比較を示す。この図は、5.0nmol/kgで投与された200−2−Bが、0.9nmol/kgで投与されたRHIにより引き起こされる血液グルコースレベルの変化より小さい変化を引き起こすことを示している。この図はまた、200−2−Bに関して観察されるグルコースレベルの変化が、重篤な低血糖を引き起こす可能性がより小さいことを示している。
図55Aは、ベースラインからの血液グルコースの変化として再プロットされた、図54Bに示されているデータを示し、図55Bは、ベースラインからの血液グルコースの変化として再プロットされた、図54Aに示されているデータを示す。これらの図は、200−2−Bがグルコース応答様態で血液グルコースレベルに影響を及ぼすことを示しており、図53Bは、200−2−Bが絶食糖尿病ミニブタにおいて血液グルコースレベルを制御していることを示している。
実施例16
この実施例は酵母クライベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)における2つのインスリン類似体前駆体の発現を示す。第1のインスリン類似体は、配列EEAEAEAEPKFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYT KTAAKGIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号305)(ここで、コンセンサスN−グリカンモチーフを得るためにB28位のPro残基はAsnで置換されており、B28位のAsn残基Nはマンノシル化N−グリカンにβ1結合で共有結合している)を有する一本鎖前駆体である。第2のインスリン類似体前駆体は、配列EEGHHHHHHHHHHEPKFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTKAAKGIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号304)(ここで、B28位のPro残基はAsnで置換されているが、B30 Thr残基の除去ゆえにN−グリカンを欠いている)を有する一本鎖前駆体である。
図56Aは、組換えタンパク質発現のために誘導されたクライベロミセス・ラクチス(K.lactis)からの分泌インスリン類似体前駆体を検出するウエスタンブロットのイメージを示す。この株においては、B28位にN−グリカンを有する分泌インスリン類似体前駆体(配列番号154)をコードするDNAがKlLAC4プロモーターの後にクローニングされており、生じたプラスミドがOCH1欠損株K34内にエレクトロポレーションにより形質転換される(米国特許第7,449,308号を参照されたい)。3つのランダムな形質転換体を、BMGalY(3%)を含有する培地内でインスリン類似体前駆体発現のために誘導し、無細胞上清を遠心分離により得た。ついで、標準的な反応条件に従い、N−グリカンを除去するために、該無細胞上清のアリコートをPNGアーゼと共にインキュベートし、SDS−PAGE分析に適用した。タンパク質を膜に移し、標準的なウエスタン技術により抗インスリン抗体でプローブした。そのような処理の結果を図56Aに示す。この図においては、PNGアーゼの非存在下(「−」で示されている)のランダム発現クローンの全3個の上清のウエスタンブロットは、PNGアーゼで処理された同じ上清の場合(「+」で示されている隣接レーン)より高い分子量を有する交差反応性バンドを示している。該データは、クライベロミセス・ラクチス(K.lactis)において発現された配列番号154のインスリン類似体前駆体バンドが、酵素PNGアーゼで脱グリコシル化されうるN−結合グリカンを含有することを示している。
分子量の変化が、該インスリン類似体前駆体のN−グリコシル化によるものであり、B28におけるAsnでの置換によるものではないことを更に実証するために、第2のインスリン類似体前駆体遺伝子をクライベロミセス・ラクチス(K.lactis)発現ベクター内にクローニングし、得られた株をタンパク質発現のために誘導した。図56Bは、組換えタンパク質発現のために誘導されたクライベロミセス・ラクチス(K.lactis)からの分泌インスリン類似体前駆体を検出するウエスタンブロットのイメージを示す。この株においては、B:P28N置換を有するが、B30にThrを欠いており、したがってN−グリカンを欠いている分泌インスリン類似体前駆体(配列番号304)をコードするDNAがKlLAC4プロモーターの後にクローニングされており、生じたプラスミドがOCH1欠損株K34内にエレクトロポレーションにより形質転換される。3つのランダムな形質転換体を、BMGalY(3%)を含有する培地内でインスリン類似体前駆体発現のために誘導し、無細胞上清を遠心分離により得た。ついで、標準的な反応条件に従い、N−グリカンを除去するために、該無細胞上清のアリコートをPNGアーゼと共にインキュベートし、SDS−PAGE分析に適用した。タンパク質を膜に移し、標準的なウエスタン技術により抗インスリン抗体でプローブした。そのような処理の結果を図56Bに示す。この図においては、PNGアーゼの非存在下(「−」で示されている)のランダム発現クローンの全3個の上清のウエスタンブロットは、PNGアーゼで処理された同じ上清の場合(「+」で示されている隣接レーン)と同じ分子量を有する交差反応性バンドを示している。B30位のThr残基の欠如によりAsn−X−Thr/Ser(ここで、X≠Pro)のN−グリカントリペプチドモチーフが除去され、酵素PNGアーゼでの処理により分子量が変化しなかったため、クライベロミセス・ラクチス(K.lactis)において発現された配列番号304のインスリン類似体前駆体バンドはN−結合グリカンを含有していないことを、該データは示している。
実施例17
この実施例は、グルコース応答特性を示す一本鎖N−グリコシル化インスリン類似体を示す。該インスリン類似体はGSCI−7と称され、2つのN−グリカンを含有する12アミノ酸のCペプチドにより連結された天然インスリンB鎖およびA鎖を含む一本鎖インスリン類似体であり、アミノ酸配列FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKTGYG SSRRA QTGIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号303)[ここで、34位および40位(C4およびC10)のAsn残基Nはそれぞれ、ManGlcNAc N−グリカンにβ1結合で共有結合している]を有する(図57Aに示されているとおり)。
該インスリン類似体GSCI−7は、GSCI−7タンパク質配列をコードするDNA発現カセットを含有するプラスミドを、図49Bに既に記載されているYGLY24964と同じ遺伝子型および遺伝的修飾を有する宿主株YGLY24962内に形質転換することにより作製された。得られた株を発酵し、精製して、2つのN−グリカンを含有する一本鎖インスリン類似体GSCI−7を得た。活性のアッセイの前に一本鎖特性を保持させるために、該類似体GSCI−7をLysC、トリプシンまたは別のエンドプロテイナーゼにより処理することはしなかった。
GSCI−7の活性を評価するために、3つのインビトロアッセイを行った。ヒトインスリン受容体アイソフォームB(IR−b)への結合を、IR−bを過剰発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に対する、放射能標識ヒトインスリンとの該類似体の競合において決定し、IC50値として示した。IR−bを過剰発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞におけるIR−bのリン酸化を評価することにより、IR−bの機能的活性化を決定し、EC50値として示した。ヒトマンノース受容体C型1(MRC1)への結合を、ELISAアッセイにおいて、MRC1のエクトドメインに対する、ユウロピウム標識マンノース−BSAとの該類似体の競合において決定し、IC50値として示した。組換えヒトインスリン(RHI)の結合と比較された、該類似体のIR−b結合、IR−bリン酸化およびMRC1結合のインビトロ特性を、表8に示す。
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GSCI−7のグルコース応答性を調べるために、2頭の非糖尿病ユカタン(Yucatan)ミニブタを一晩絶食させた後、0.69nmol/kg GSCI−7の静脈内注射を行った。同時に、無菌リン酸緩衝食塩水(PBS)(2.67ml/kg/時間)または無菌α−メチルマンノース溶液(αMM)(2.67ml/kg/時間の速度でのリン酸緩衝食塩水中の21.2% w/v)の静脈内投与を動物に行った。高濃度では、α−メチルマンノース(αMM)はc型レクチンと糖タンパク質(特に、マンノース、GlcNAcまたはフコース残基を末端に有するもの)との間の相互作用を競合的に抑制することが知られている。手持ちサイズのグルコメーターを使用して、注射後−60、0、1、2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、45、60および90分の時点で血液グルコースを測定した。
図57Bに示されているとおり、末端マンノース含有N−グリカンを含有するGSCI−7の0.69nmol/kgでの投与は、PBSと共に注射された場合、90分間の研究時間中に、血液グルコースを明らかには低下させなかった。しかし、α−メチルマンノースを同じ容量のGSCI−7と共に注射したところ、より良好またはより大きな効力でグルコースが低下した。グルコースは、α−メチルマンノースよりは低い効力でではあるが、マンノース結合性c型レクチンと糖タンパク質との間の相互作用を抑制することが知られている。これらのデータは、一本鎖類似体GSCI−7がグルコース応答様態で血液グルコースレベルを低下させうることを示しており、これはマンノース受容体のようなマンノース結合性レクチンにより引き起こされると考えられる。
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本発明は、例示されている実施形態に関して本明細書中で説明されているが、本発明はそれらに限定されないと理解されるべきである。当業者および本明細書における教示の読者は、その範囲内の追加的な修飾および実施形態を認識するであろう。したがって、本発明は、本明細書に添付されている特許請求の範囲によってのみ限定される。

Claims (29)

  1. アミノ酸配列GIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号33)を含むA鎖ペプチドおよびアミノ酸配列HLCGSHLVEALYLVCGERGFF(配列番号161)を含むB鎖ペプチドを有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体と医薬上許容される担体とを含む組成物であって、
    該A鎖ペプチドまたはB鎖ペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸残基の少なくとも1つがN−グリカンに共有結合しており、
    該インスリンまたはインスリン類似体が17個までのアミノ酸置換を更に含んでいてもよく、ならびに/または該A鎖ペプチドもしくはB鎖ペプチドのN末端に、該A鎖ペプチドもしくはB鎖ペプチドのC末端に、N末端において該B鎖ペプチドのC末端に、およびC末端において該A鎖ペプチドのN末端に、あるいはそれらの組合せで共有結合している3〜35アミノ酸のポリペプチドを更に含んでいてもよい、組成物。
  2. 該N−グリカンがAsn残基のアミド基にβ1結合で共有結合している、請求項1記載の組成物。
  3. 該Asn残基が天然A鎖ペプチドのアミノ酸10もしくは21位または天然B鎖ペプチドのアミノ酸3、25または28位に存在し、ただし、該Asnが該B鎖の3位に存在する場合には、該B鎖ペプチドの5位のアミノ酸はSerまたはThrであり、該AsnがA鎖の21位に存在する場合には、該A鎖ペプチドは該AsnのC末端にアミノ酸配列Xaa−SerまたはXaa−Thr(ここで、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である)のジペプチドを更に含む、請求項2記載の組成物。
  4. アミノ酸配列Asn−Xaa−SerまたはAsn−Xaa−Thr(ここで、XaaはPro以外の任意のアミノ酸である)を有するトリペプチドが該A鎖のN末端または該B鎖のN末端もしくはC末端にペプチド結合で共有結合している、請求項1記載の組成物。
  5. 該N−グリカンがヒスチジン、システインまたはリシン残基において該インスリンまたはインスリン類似体に結合している、請求項1記載の組成物。
  6. 該インスリンまたはインスリン類似体がヘテロ二量体または一本鎖である、請求項1記載の組成物。
  7. 該B鎖ペプチドが30位のトレオニン残基を欠いている、請求項1記載の組成物。
  8. 該N−グリカンが少マンノース(paucimannose)、高マンノース、ハイブリッドまたは複合グリカンである、請求項1記載の組成物。
  9. 該N−グリカンが、ManGlcNAcグリカン構造またはフコシル化ManGlcNAc構造;ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAcまたはManGlcNAc構造;GlcNAcManGlcNAc;GalGlcNAcManGlcNAc;NANAGalGlcNAcManGlcNAc;GlcNAcManGlcNAc;GalGlcNAcManGlcNAc;またはNANAGalGlcNAcManGlcNAc構造;フコシル化または非フコシル化GlcNAcManGlcNAc;GalGlcNAcManGlcNAc;GalGlcNAcManGlcNAc;NANAGalGlcNAcManGlcNAc;またはNANAGalGlcNAcManGlcNAc構造;あるいはManGlcNAc;ManGlcNAc;GlcNAc(1−4)ManGlcNAc;Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAc;およびNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAc構造からなる群から選択される構造を有するフコシル化または非フコシル化グリカンからなる、請求項1記載の組成物。
  10. 該インスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が該N−グリカンを含む、請求項1記載の組成物。
  11. (a)複数のグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体、および(b)医薬上許容される担体を含む医薬組成物であって、(a)における各グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体が少なくとも1つのN−グリカンを有し、ここで、主要N−グリカンが、高マンノース、ハイブリッド、複合または少マンノース(paucimannose)N−グリカンからなる、医薬製剤。
  12. 該N−グリカンが、ManGlcNAc N−グリカン構造またはフコシル化ManGlcNAc N−グリカン構造;ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAcまたはManGlcNAc構造;GlcNAcManGlcNAc;GalGlcNAcManGlcNAc;NANAGalGlcNAcManGlcNAc;GlcNAcManGlcNAc;GalGlcNAcManGlcNAc;またはNANAGalGlcNAcManGlcNAc構造;フコシル化または非フコシル化GlcNAcManGlcNAc;GalGlcNAcManGlcNAc;GalGlcNAcManGlcNAc;NANAGalGlcNAcManGlcNAc;またはNANAGalGlcNAcManGlcNAc構造;あるいはManGlcNAc;ManGlcNAc;GlcNAc(1−4)ManGlcNAc;Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAc;およびNANA(1−4)Gal(1−4)GlcNAc(1−4)ManGlcNAc構造からなる群から選択される構造を有するフコシル化または非フコシル化グリカンからなる、請求項11記載の医薬製剤。
  13. 該インスリンまたはインスリン類似体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%がN−グリコシル化されている、請求項11記載の医薬製剤。
  14. インスリンまたはインスリン類似体のアミノ酸残基にN−グリカンを結合させて、該N−グリカンに結合したグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることを含む、溶液中のインスリンまたはインスリン類似体を安定化させ、あるいは溶液中のインスリンまたはインスリン類似体の原線維化を低減するための方法であって、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体が、該N−グリカンに結合していないインスリンまたはインスリン類似体より、溶液中で安定であり、または低減した原線維化を有する、方法。
  15. 該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビトロで結合させる、請求項14記載の方法。
  16. (a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、
    (b)N−結合グリコシル化部位を含むインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子を該宿主細胞内に導入し、
    (c)グリコシル化プロインスリンもしくはプロインスリン類似体前駆体または該グリコシル化インスリン類似体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、
    (d)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得、あるいはグリコシル化インスリン類似体を該培地から回収して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビボで結合させる、請求項14記載の方法。
  17. インスリンまたはインスリン類似体のアミノ酸残基にN−グリカンを結合させて、グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることを含む、インスリンまたはインスリン類似体の薬物動態学的または薬力学的特性を変化させるための方法であって、該N−グリカンに結合したグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の薬物動態学的特性が、該N−グリカンに結合していないインスリンまたはインスリン類似体と比較して変化している、方法。
  18. 該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビトロで結合させる、請求項17記載の方法。
  19. (a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、
    (b)N−結合グリコシル化部位を含むインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子を該宿主細胞内に導入し、
    (c)グリコシル化プロインスリンもしくはプロインスリン類似体前駆体または該グリコシル化インスリン類似体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、
    (d)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得、あるいはグリコシル化インスリン類似体を該培地から回収して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビボで結合させる、請求項17記載の方法。
  20. インスリンまたはインスリン類似体のアミノ酸残基に、末端ガラクトース残基を含むN−グリカンを結合させて、グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることを含む、肝臓内の受容体を主に標的化するインスリンまたはインスリン類似体の製造方法であって、該N−グリカンに結合したグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体が肝臓内の受容体を主に標的化する、製造方法。
  21. 該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビトロで結合させる、請求項20記載の製造方法。
  22. (a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、
    (b)N−結合グリコシル化部位を含むインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子を該宿主細胞内に導入し、
    (c)グリコシル化プロインスリンもしくはプロインスリン類似体前駆体または該グリコシル化インスリン類似体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、
    (d)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得、あるいはグリコシル化インスリン類似体を該培地から回収して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビボで結合させる、請求項20記載の製造方法。
  23. インスリンまたはインスリン類似体のアミノ酸残基にN−グリカンを結合させて、グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることを含む、糖尿病の治療に使用された場合にグルコースの血清濃度に感受性である少なくとも1つの薬物動態学的または薬力学的特性を有するインスリンまたはインスリン類似体の製造方法であって、該N−グリカンに結合したグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体が、グルコースの血清濃度に感受性である少なくとも1つの薬物動態学的または薬力学的特性を有する、製造方法。
  24. 該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビトロで結合させる、請求項23記載の製造方法。
  25. (a)糖タンパク質を産生しうる宿主細胞を準備し、
    (b)N−結合グリコシル化部位を含むインスリンまたはインスリン類似体をコードする核酸分子を該宿主細胞内に導入し、
    (c)グリコシル化プロインスリンもしくはプロインスリン類似体前駆体または該グリコシル化インスリン類似体を産生する条件下および培地内で該宿主細胞を培養し、
    (d)該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体を該培地から回収し、該グリコシル化プロインスリンまたはプロインスリン類似体前駆体をインビトロで加工して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得、あるいはグリコシル化インスリン類似体を該培地から回収して、該グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体を得ることにより、該N−グリカンを該アミノ酸残基にインビボで結合させる、請求項23記載の製造方法。
  26. 1以上のN−グリカンを有するインスリンまたはインスリン類似体と医薬上許容される担体とを含む組成物であって、そのような1以上のN−グリカンが、そのような1以上のN−グリカンを有するインスリンまたはインスリン類似体の薬物動態学的または薬力学的特性の少なくとも1つを、糖尿病の治療に使用された場合にグルコースの血清濃度に対して感受性にする、組成物。
  27. 糖尿病の治療のための、請求項1〜10または26のいずれか1項記載の組成物。
  28. アミノ酸配列GIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号33)を含むA鎖ペプチドおよびアミノ酸配列HLCGSHLVEALYLVCGERGFF(配列番号161)を含むB鎖ペプチド(および糖尿病治療用の医薬上許容される担体)を有するグリコシル化インスリンまたはインスリン類似体であって、
    該A鎖ペプチドまたはB鎖ペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸残基の少なくとも1つがN−グリカンに共有結合しており、
    該インスリンまたはインスリン類似体が17個までのアミノ酸置換を更に含んでいてもよく、ならびに/またはN末端、C末端、あるいはN末端において該B鎖のC末端に、およびC末端において該A鎖ペプチドのN末端に共有結合している3〜35アミノ酸のポリペプチドを更に含んでいてもよい、グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体。
  29. 糖尿病の治療のための製剤または組成物の製造のための、本明細書に開示されているN−グリコシル化インスリンまたはインスリン類似体の使用。
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