JP7170285B2 - 生体貼付け用選択透過膜、経皮吸収キットおよび美容方法 - Google Patents

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Description

本開示は、生体貼付け用選択透過膜、経皮吸収キットおよび美容方法に関する。
美容効果を目的として、肌上に有効性成分を保持させ、経皮吸収、つまり皮膚から有効成分を内部へ吸収させるためのシートパックが提案されている。特許文献1では、活性成分を外に放出させず通気性を有する半透膜の層を含む多層技術コンポジットが提案されている。また、特許文献2では、生体適合性の疎水系ポリマー層を含む30-1000nmの粘着剤なしに肌に密着可能な皮膚用自立性美容シートが提案されている。
特表2008-538705号公報 特開2014-227389号公報
本開示は水を速やかに選択的に透過する生体貼付け用選択透過膜、経皮吸収キットおよび美容方法を提供する。
本開示の生体貼付け用選択透過膜は、自己支持可能な生体貼付け用選択透過膜であって、再生セルロースを含み、20nm以上1300nm以下の厚さを有し、水を選択的に透過する。
本開示の実施形態によれば、水を選択透過する自己支持型のセルロース膜が提供される。
図1は、天然セルロースのX線回折パターンの一例を示す図である。 図2は、電気穿孔装置に用いる電極の構成の一例を示す分解斜視図である。 図3Aは、美容方法の一ステップを示す図である。 図3Bは、美容方法の一ステップを示す図である。 図3Cは、美容方法の一ステップを示す図である。 図4は、セルロース膜100を有する積層シート100Bを示す模式的な斜視図である。 図5は、セルロース膜100の一方の主面から保護層101の一部を剥離した状態を示す模式的な斜視図である。 図6は、セルロース膜100と皮膚200との間に液体300および/またはクリーム302を介在させる例を説明するための図である。 図7は、積層シート100Bを皮膚200に貼付した状態を示す図である。 図8は、皮膚200上のセルロース膜100から保護層101を剥離する途中の状態を示す図である。 図9は、セルロース膜100、保護層101および第2の保護層102を有する積層シート100Cを示す模式的な斜視図である。 図10は、積層シート100Cのセルロース膜100から保護層101の一部を剥離した状態を示す模式的な斜視図である。 図11は、セルロース膜100および第2の保護層102の積層シートを皮膚200に貼付し状態を示す図である。 図12は、着色されたセルロース膜100bを皮膚200に貼り付けた状態を模式的に示す図である。 図13は、実施例1および比較例1-6におけるヒアルロン酸(Mw:2000-4000)の肌への浸透性を示す図である。 図14は、実施例1および比較例1-2におけるヒアルロン酸(Mw:5000-10000)の肌への浸透性を示す図である。 図15は、実施例1および比較例1におけるビタミンCの肌への浸透性を示す図である。 図16は、実施例1、3および比較例4、8の結果であって、再生セルロースの厚さと肌への密着性との関係を示す図である。
従来の肌上に有効性成分を保持させるためのシートパック等は、肌の蒸れを抑制するために、通気性、つまり、水蒸気透過性を備えている場合がある。しかし、従来のシートパックは液体の水を選択的に透過させることはできなかった。本願発明者は、再生セルロースを含む膜を経皮吸収に利用することを想到し、再生セルロースの構造を検討する過程において、再生セルロースを含む膜が、速やかに液体の水を選択的に透過し得ることを見出した。この特徴を利用すれば、美容等の有効成分を含む水溶液を濃縮させて皮膚に保持させることができ、美容成分を皮膚からより効率よく吸収させることできると考えられる。このような知見に基づき、本願発明者は、新規な生体貼付け用選択透過膜、経皮吸収キットおよび美容方法を想到した。本開示の生体貼付け用選択透過膜、経皮吸収キットおよび美容方法の概要は以下のとおりである。
[項目1]
自己支持可能な生体貼付け用選択透過膜であって、再生セルロースを含み、20nm以上1300nm以下の厚さを有し、水を選択的に透過する、生体貼付け用選択透過膜。
[項目2]
前記生体貼付け用選択透過膜は生体適合性を有する、項目1に記載の生体貼付け用選択透過膜。
[項目3]
前記生体貼付け用選択透過膜は、60以上の分子量を有する化合物を実質的に透過しない、項目1または2に記載の生体貼付け用選択透過膜。
[項目4]
前記再生セルロースは、0~12%の結晶化度を有する、項目1から3のいずれかに記載の生体貼付け用選択透過膜。
[項目5]
前記生体貼付け用選択透過膜は、50%以上の吸水率を有する、項目1から4のいずれかに記載の生体貼付け用選択透過膜。
[項目6]
前記再生セルロースは、150000以上の重量平均分子量を有する、項目1から5のいずれかに記載の生体貼付け用選択透過膜。
[項目7]
項目1から6のいずれかに記載の生体貼付け用選択透過膜と、
イオン導入装置、電気穿孔装置および超音波導入装置からなる群から選択される少なくとも1つと、
を備えた経皮吸収キット。
[項目8]
前記電気穿孔装置は、一対の電極と、前記一対の電極の一面を覆う少なくとも1つの絶縁層とを含む電極パッドを含む項目7に記載の経皮吸収キット。
[項目9]
項目1から6のいずれかに記載の生体貼付け用選択透過膜と、皮膚との間に有効成分を含む水溶液を配置する美容方法。
[項目10]
有効成分を含む水溶液を皮膚に配置するステップと、
前記水溶液の少なくとも一部を覆うように、項目1から6のいずれかに記載の生体貼付け用選択透過膜を皮膚に貼付するステップと、
前記有効成分を前記皮膚から内部へ浸透させるステップと
を含む美容方法。
[項目11]
前記浸透させるステップは、穿孔形成法、イオン導入法、および超音波導入法からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いる項目10に記載の美容方法。
以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも包括的または具体的な例を示す。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。本明細書において説明される種々の態様は、矛盾が生じない限り互いに組み合わせることが可能である。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
(生体貼付け用選択透過膜)
本開示の実施形態による生体貼付け用選択透過膜は、再生セルロースを含み、20nm以上1300nm以下の厚さを有する。また、生体貼付け用選択透過膜は、水を選択的に透過し得る。
再生セルロースは、例えば、実質的に以下の式(I)で表されるセルロースである。ここで、「実質的に式(I)で表されるセルロース」とは、式(I)で表されるセルロースにおけるグルコース残基のヒドロキシル基が90%以上残っているセルロースを意味する。セルロースのグルコース中のヒドロキシル基の割合は、例えば、X線光電子分光(XPS)等の公知の方法で定量できる。また、上記の定義は、セルロースが分岐構造を含んでいてもよいことを意味する。人工的に誘導体化されたセルロースは、典型的には、「実質的に式(I)で表されるセルロース」には該当しない。一方、「実質的に式(I)で表されるセルロース」からは、誘導体化を経て再生されたセルロースが排除されるわけではない。誘導体化を経て再生されたセルロースであっても、「実質的に式(I)で表されるセルロース」に該当することがある。再生セルロースは、未架橋であってもよい。
Figure 0007170285000001
本明細書において、「再生セルロース」は、天然セルロースに特有の結晶構造Iを持たないセルロースを意味する。セルロースの結晶構造は、X線回折パターンによって確認することが可能である。図1は、天然セルロースのX線回折パターン(CuKα線(50kV、300mA))の一例を示す。図1に示すX線回折パターンでは、結晶構造Iに特有の、14-17°および23°付近のピークが現れている。再生セルロースは、結晶構造IIであることが多く、12°、20°および22°付近にピークを有し、14-17°および23°付近のピークを有しない。
再生セルロースの原料は、特に限定されない。例えば、再生セルロースの原料は、植物由来の天然セルロース、生物由来の天然セルロース、セロハン等の再生セルロース、又はセルロースナノファイバー等の加工されたセルロースでありうる。再生セルロースの原料における不純物の濃度が10重量%以下であることが有利である。
セルロースは生体適合性に優れ、親水でありながら水に溶けない性質を持つ。特に、再生セルロースは、天然セルロースのナノファイバーよりも小さい単位同士で水素結合が均一に形成されているため、薄くても強度が強い膜を形成し得る。また、分子内に多くの水と相互作用可能な水酸基を持つため、水を選択的に通しやすいと考えられる。本明細書において、生体適合性に優れる、あるいは、生体適合性を有するとは、生体、特に皮膚に発疹、炎症等のかぶれなどの反応を生じさせにくいことをいう。
上述したように、生体貼付け用選択透過膜は、20nm以上1300nm以下の厚さを有することが好ましい。生体貼付け用選択透過膜が20nm以上の厚さを有することによって、生体貼付け用選択透過膜は自己支持可能である。また、生体貼付け用選択透過膜が1300nm以下の厚さを有することによって、皮膚表面の伸縮や変形に追従し、粘着剤などを用いることなく皮膚に長時間貼付け可能である。更に、1300nm以下の厚さを有することにより、速やかに水を選択的に透過することが可能となる。
生体貼付け用選択透過膜の厚みは、50nm以上1000nm以下の厚さを有していてもよい。厚さが50nm以上であると、より高い強度が得られ、生体貼付け用選択透過膜の取り扱いがより容易となる。生体貼付け用選択透過膜の厚さが1000nm以下であると、皮膚に貼付した場合にセルロース膜100が目立たないので有益である。生体貼付け用選択透過膜は、500nm以上1000nm以下の厚さを有していてもよい。厚さが500nm以上であると、より強度が高く破れ難い生体貼付け用選択透過膜が得られる。また、より多くの有効な成分(例えば美容成分)をセルロース膜に保持させることができる。生体貼付け用選択透過膜が100nm以上500nm以下の厚さを有していてもよい。厚さが100nm以上であると、薄膜の形状の維持に有利である。厚さを500nm以下とすることにより、生体貼付け用選択透過膜の密着性をより向上させ得る。したがって、皮膚またはその他の表面に、生体貼付け用選択透過膜をより長く安定に貼り付け得る。また、生体貼付け用選択透過膜がより薄くなることにより、生体貼付け用選択透過膜を皮膚上でより目立たなくすることができる。
生体貼付け用選択透過膜の厚みは、例えば、生体貼付け用選択透過膜の厚みを複数箇所測定し、平均することによって決定される。各箇所における厚みは、例えば、ブルカー ナノ インコーポレイテッド製 触針式プロファイリングシステムDEKTAK(登録商標)を用いて測定できる。
ここで、「自己支持可能」とは、支持体なしに膜としての形態を維持できることを意味する。例えば指、ピンセットなどを用いて膜の一部をつまんでその膜を持ち上げたときに、その膜を破損させることなく、支持体なしにその膜の全体を持ち上げることが可能である。
生体貼付け用選択透過膜が再生セルロースを含むことによって、再生セルロースの構造に由来する細孔、および、再生セルロースの繰り返し単位であるグルコースのヒドロキシル基が、生体貼付け用選択透過膜に水の速やかでかつ選択的な透過性を与える。本明細書において、水を選択的に透過するとは、液体の水を透過し、水よりも大きな分子およびイオンを透過しにくい、つまり、実質的に透過しないことをいう。水よりも大きな分子およびイオンは、例えば、60程度以上の分子量を有する。以下の実施例で詳細に説明するように、例えば、水が浸透すると変色する紙上に生体貼付け用選択透過膜を配置し、その上から有効成分を含有した水溶液を滴下した後、30秒後に、紙が水の透過により変色するが、紙から検出される有効成分が、滴下した水溶液の有効成分濃度の1/10以下の濃度であれば、生体貼付け用選択透過膜は水を選択的に透過し、分子量60以上の分子およびイオンを実質的に透過しないと定義される。より好ましくは、透過した水中の有効成分の濃度が1/20以下であり、さらに好ましくは検出限界以下である。有効成分の検出方法としては、質量分析、吸光光度計による分析、有効成分が蛍光体である場合は蛍光顕微鏡による分析などが挙げられる。水の透過速度は、生体貼付け用選択透過膜の厚さに依存する。生体貼付け用選択透過膜が20nm以上1300nm以下の厚さを有する場合、概ね30秒以内に上述した方法によって下に配置した紙の変色が確認し得る。言い換えると、本明細書において、水を選択的に速やかに透過するとは、数十秒以内に目視によって液体の水が生体貼付け用選択透過膜の一方の面から他方の面へ透過したことを確認できる程度の速さで水が透過することをいう。
生体貼付け用選択透過膜に含まれる再生セルロースは、150000以上の重量平均分子量を有することが好ましい。重量平均分子量が150000以上であることにより、1分子鎖あたり、より多くの水酸基が含まれ、より多くの分子間の水素結合が形成されることにより、20nm以上1300nm以下の厚さでありながら、支持体を要することなく形状を維持可能な膜を得ることができる。
生体貼付け用選択透過膜は再生セルロールを含んでいればよく、不可避的不純物、原料、他の添加材料などを含んでいてもよい。好ましくは、生体貼付け用選択透過膜は、90質量%以上の割合で再生セルロールを含んでいる。
本開示の実施の形態による生体貼付け用選択透過膜に含まれる再生セルロースは、0~12%の結晶化度を有し得る。後述する例示的な製造方法によれば、0%の結晶化度を有するセルロース膜を得ることも可能である。結晶化度が12%以下であると、結晶の形態の形成に関わる水酸基の割合が適度に低減されることにより、セルロース膜の皮膚への密着性が向上し得る。更に、結晶構造の形成に関わる水酸基の量が適度に少ないことにより、水と相互作用する水酸基が多くなり、より速やかに水を選択透過できる。なお、水酸基が存在すべきサイトにおいて所定の化学修飾がなされることにより、生体貼付け用選択透過膜が様々な機能を発現しうる。
生体貼付け用選択透過膜は、50%以上の吸水率を持つことが望ましい。吸水率は、JIS K7209に記載と同様の方法により定義される。50%以上の吸水率を持つことにより、生体貼付け用選択透過膜は水を保持し、膜自体の電気抵抗を小さくすることができる。これにより、静電気などを防ぐことが可能となり、空気中の埃や粉塵(花粉やPM2.5など含む)を引き寄せにくくなる効果を示す。吸水率は100%以上であることが、より望ましい。また、膜の厚さが20nm以上1300nm以下であり、電気抵抗が低いことにより、生体貼付け用選択透過膜の抵抗による電圧降下が少なく、イオン導入装置、電気穿孔装置および超音波導入装置を用いて皮膚と生体貼付け用選択透過膜との間に有効成分を含む水溶液を配置した場合、これらの機器による有効成分の皮膚内部への導入の効果をより高めることが可能となる。
生体貼付け用選択透過膜は、0.3cm3/g以下の細孔容積を有することが好ましい
。細孔容積が0.3cm3/g以下であることにより、生体貼付け用選択透過膜は、高い
水の選択透過性を発揮し得る。更に、0.05cm/g以下の細孔容積を有することが好ましい。細孔容積が0.05cm3/g以下であることにより、生体貼付け用選択透過
膜は、より高い水の選択透過性を発揮し得る。本明細書での細孔容積とは、100nm以下の細孔径を有する細孔の容積を意味する。細孔容積は、例えばガス吸着法によって決定できる。生体貼付け用選択透過膜は高い透明性を有するため、100nmより大きな細孔はほとんど存在しないと考えられる。生体貼付け用選択透過膜は、例えば0.001cm/g以上の細孔容積を有する。
本実施形態の生体貼付け用選択透過膜によれば、20nm以上1300nm以下の厚さを有することによって、かぶれなどの原因であった粘着剤なしに、化粧水や美容液などのみで膜を生体に長時間貼り付けることが可能となる。また、生体貼付け用選択透過膜の主成分が再生セルロースであるため、生体適合性に優れ、生体に負担無く長時間使用することが可能となる。
また、生体貼付け用選択透過膜は水を選択的に透過し得るため、生体と生体貼付け用選択透過膜との間に医用または美容用の有効成分を含む水溶液を配置すれは、水溶液の溶媒である水が選択的に生体貼付け用選択透過膜を透過し、生体貼付け用選択透過膜の表面に浮き出る。このため、生体と接する水溶液の溶媒が減少することにより、有効成分の濃度が高められ、濃度勾配により生体により浸透されやすくなる。
再生セルロースは分子内または/および分子間で水素結合が形成されやすく、薄くても高い強度を有し、かつ、適度な柔軟性及び破れにくい膜を得ることが出来る。また、膜中に美容成分等の有効成分を担持することも出来る。再生セルロースは、両親媒性を示すので、親水性の有効成分及び疎水性の有効成分を適切に担持できる。有効成分は美容成分に限られず医用成分であってもよい。
本開示の実施形態による生体貼付け用選択透過膜は、例えば顔、腕などの皮膚に貼付されて使用され得る。本開示の実施形態による生体貼付け用選択透過膜は、典型的には、7mm以上の面積を有する。セルロース膜の面積が7mm以上であると、皮膚に貼付する場合、より大きな領域を覆えるので有益である。また、本開示の生体貼付け用選択透過膜は、皮膚以外の生体にも適用することができ、例えば、臓器の表面に貼付してもよい。
生体貼付け用選択透過膜は、例えば、23MPa以上の引張り強さを有する。この場合、例えば、生体貼付け用選択透過膜は皮膚に貼り付けても容易に破れることがなく、長期間皮膚に貼り付けておくことが出来る。また、本開示の生体貼付け用選択透過膜は、少なくとも一部が着色されていてもよい。
生体貼付け用選択透過膜は、例えば、以下の方法 によって製造することができる。ま
ず、溶媒にセルロースを溶解させてセルロース溶液を調製する。150,000以上の重
量平均分子量の再生セルロース膜を得るために、重量平均分子量が少なくとも150,000以上のセルロースを用いてセルロース溶液を調製してもよい。この場合、1300nm以下の厚み有する自己支持型の生体貼付け用選択透過膜を作製できる。このように、セルロース溶液の調製において使用されるセルロースの重量平均分子量を150000以上にすることにより、1分子鎖において、より多くの水酸基が含まれることにより、多くの分子間水素結合を形成することが可能となることで、1300nm以下の生体貼付け用選択透過膜を安定に作製することができる。セルロース溶液の調製に使用するセルロースは、所望の重量平均分子量を有する限り、特に制限されない。
溶液の調整に使用するセルロースとしては、天然セルロースおよび再生セルロースのいずれをも用い得る。セルロースは、例えば、パルプ及び綿花等の植物由来のセルロース、又は、バクテリア等の生物が生成したセルロースでありうる。セルロースの原料における不純物濃度は、例えば10重量%以下である。再生セルロースの重量平均分子量は、2,
000,000以下であると取り扱いが容易となるため有用である。更に望ましくは再生
セルロースの重量平均分子量は1,000,000以下である。
溶媒は、例えば少なくともイオン液体を含有している溶媒(第1溶媒)である。第1溶媒を用いることにより、セルロースを比較的短時間で溶解させることができる。イオン液体は、アニオンとカチオンとから構成される塩であり、150℃以下の温度において液体状態を示しうる。第1溶媒に含まれるイオン液体は、例えば、アミノ酸又はアルキルリン酸エステルを含むイオン液体である。第1溶媒がこのようなイオン液体を含有していることにより、セルロースの分子量の低下を抑制しながらセルロースを溶解させることができる。特に、アミノ酸は、生体内に存在する成分であるので、アミノ酸を含むイオン液体は、生体に対してより安全な生体貼付け用選択透過膜を製造するのに有利である。
セルロースを析出させない溶媒によって予め希釈されたイオン液体を用いてセルロースを溶解してもよい。例えば、第1溶媒として、非プロトン性極性溶媒とイオン液体との混合物を用いてもよい。非プロトン性極性溶媒は、水素結合を形成しにくく、セルロースを析出させにくい。
第1溶媒に含まれるイオン液体は、例えば、下記の式(II)で表されるイオン液体である。式(II)で表されるイオン液体において、アニオンがアミノ酸である。式(II)に記載の通り、このイオン液体において、アニオンは、末端カルボキシル基及び末端アミノ基を含んでいる。式(II)で表されるイオン液体のカチオンは、第四級アンモニウムカチオンであってもよい。
Figure 0007170285000002
式(II)中、R1~R6は、独立して、水素原子又は置換基を表す。置換基は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はフェニル基でありうる。置換基は、炭素鎖に分岐を含んでいてもよい。置換基は、アミノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基等の官能基を含んでいてもよい。nは、例えば、4又は5である。
第1溶媒に含まれるイオン液体は、下記の式(III)で表されるイオン液体であっても
よい。式(III)中、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、水素原子又は1~4個の炭
素原子を有するアルキル基を表す。
Figure 0007170285000003
セルロース溶液を調製する工程において、第2溶媒をさらに加えてもよい。例えば、所定の重量平均分子量を有するセルロースと第1溶媒との混合物に第2溶媒をさらに加えてもよい。第2溶媒は、例えば、セルロースを析出させない溶媒である。第2溶媒は、例えば非プロトン性極性溶媒でありうる。
セルロース溶液のセルロースの濃度は、典型的には、0.2~15重量%である。セルロース溶液のセルロースの濃度が0.2重量%以上であれば、生体貼付け用選択透過膜の厚みを薄くしつつ、その形状を保つのに必要な強度を有する生体貼付け用選択透過膜が得られる。また、セルロース溶液のセルロースの濃度が15重量%以下であれば、セルロース溶液におけるセルロースの析出を抑制できる。セルロース溶液のセルロースの濃度は、1~10重量%であってもよい。セルロース溶液のセルロースの濃度が1重量%以上であると、より高い強度を有する生体貼付け用選択透過膜が得られる。セルロース溶液のセルロースの濃度が10重量%以下であると、セルロースの析出がより低減された安定したセルロース溶液を調製できる。
次に、基板の表面にセルロース溶液を塗布して、基板の表面上に液膜を形成する。基板の表面の水に対する接触角は、例えば90°以下である。この場合、セルロース溶液の基板に対する濡れ性が適切であり、基板の表面に沿って広がりのある液膜を安定的に形成できる。基板の材料は、特に限定されない。基板は、典型的には、平滑な表面を有する非多孔構造を有する。この場合、基板の内部にセルロース溶液が入り込むことを防止でき、後工程において生体貼付け用選択透過膜を基板から分離しやすい。基板は、化学的又は物理的な表面改質されていてもよい。基板として、例えば、紫外線(UV)照射又はコロナ処理等の表面改質処理がなされたポリマー材料の基板を用いてもよい。表面改質の方法は特に限定されない。例えば、表面改質剤の塗布、表面修飾、プラズマ処理、スパッタリング、エッチング、又はブラストが適用されうる。
基板にセルロース溶液の液膜を形成する方法は、例えば、アプリケータなどにより基板の表面との間に所定のギャップを形成するギャップコーティング、スロットダイコーティング、スピンコーティング、バーコーターを用いたコーティング(Metering rod coating)、及びグラビアコーティング等の方法である。ギャップの厚みまたはスロットダイの開口の大きさと塗工スピード、またはスピンコートの回転数、バーコーターやグラビアコートの溝の深さや塗工スピードなどにより調整した液膜の厚みと、セルロース溶液の濃度を調整することによって、生体貼付け用選択透過膜の厚みを調整可能である。なお、基板にセルロース溶液の液膜を形成する方法は、キャスティング法、スキージを用いたスクリーン印刷、吹付塗装、又は静電噴霧であってもよい。
基板にセルロース溶液の液膜を形成するときに、セルロース溶液及び基板の少なくとも一方を加熱してもよい。この加熱は、例えば、セルロース溶液を安定に保つことができる温度範囲(例えば、40~100℃)で実施されても良い。
基板に形成されたセルロース溶液の液膜は、加熱されてもよい。液膜の加熱は、例えば、第1溶媒に含まれるイオン液体の分解温度よりも低い温度(例えば、50~200℃)でなされる。液膜の加熱は、イオン液体の分解温度よりも低く、かつ、第2溶媒の沸点よりも低い温度でなされてもよい。このような温度で液膜の加熱を実行することにより、イオン液体以外の溶媒(例えば、第二溶媒など)を適度に除去でき、生体貼付け用選択透過膜の強度及び再生セルロースのかさ密度が高くなりやすい。加えて、セルロース溶液中の溶媒の突沸に起因する、生体貼付け用選択透過膜の品質低下を抑制できる。液膜の加熱は、減圧環境下で実行されてもよい。この場合、溶媒の沸点よりも低い温度でイオン液体以外の溶媒をより短時間で適度に除去できる。
基板にセルロース溶液の液膜を形成した後に、液膜はゲル化されてもよい。例えば、イオン液体に溶解可能であり、かつ、セルロースを溶解させない液体の蒸気に液膜を曝すことにより、液膜をゲル化させ、高分子ゲルシートを得ることができる。例えば、30~100%RHの相対湿度の環境下に液膜を放置すると、液膜中のイオン液体が水と接触することにより、液膜におけるセルロースの溶解度が低下する。これにより、セルロース分子の一部が析出し、3次元構造が形成される。その結果、液膜がゲル化する。ゲル化点の有無は、ゲル化した膜を持ち上げることが可能か否かによって判断できる。
ゲル化の工程の条件により、最終的に得られるセルロース膜の結晶化度を調整し得る。例えば、相対湿度が60%RH以下の環境でゲル化を行うと、ゲル化が徐々に進行するために、セルロース分子の3次元構造体を安定に形成しやすく、結晶化度を安定に低下させ得る。相対湿度が40%RH以下の環境下では、より結晶化度が低減された再生セルロース膜を得ることが可能である。
なお、液膜の加熱は、液膜のゲル化の前に行われてもよいし、液膜のゲル化の後に行われてもよいし、液膜のゲル化の前後で行われてもよい。
次に、セルロースを溶解させない液体であるリンス液に、基板及び高分子ゲルシートを浸漬させる。この工程において、高分子ゲルシートからイオン液体が除去される。この工程は、高分子ゲルシートの洗浄の工程と理解される。この工程において、イオン液体に加えて、セルロース溶液に含まれていた成分のうち、セルロース及びイオン液体以外の成分(例えば、第2溶媒)の一部が除去されてもよい。この工程において、リンス液を複数回交換してもよい。リンス液は、典型的には、イオン液体に溶解可能な液体である。このような液体の例は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、トルエン、キシレン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドである。
次に、高分子ゲルシートから溶媒等の不要な成分を除去する。換言すると、高分子ゲルシートを乾燥させる。このとき、高分子ゲルシートを保護層などの上において乾燥させても良い。高分子ゲルシートの乾燥方法として、自然乾燥、真空乾燥、加熱乾燥、凍結乾燥、及び超臨界乾燥等の乾燥方法を適用できる。高分子ゲルシートの乾燥方法は真空加熱であってもよい。高分子ゲルシートの乾燥の条件は、特に限定されない。高分子ゲルシートの乾燥の条件として、第2溶媒及びリンス液等の不要な成分の除去に十分な時間及び温度が選択される。高分子ゲルシートから不要な成分が除去されることによって、再生セルロース膜が得られる。高分子ゲルシートの乾燥工程において、高分子ゲルシートを所定の力
で引っ張ってもよい。この場合、高分子ゲルシートに加わる引っ張り力の大きさを調整することによって、再生セルロース膜の細孔容積や形状、及び再生セルロースのかさ密度等を所望の状態に調節できる。
高分子ゲルシートを乾燥させる工程において、例えば、凍結乾燥を適用する場合、凍結可能であり、かつ、100~200℃付近の沸点を有する溶媒が用いられる。例えば、水、tert-ブチルアルコール、酢酸、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、又はジメチルスルホキシド等の溶媒を利用して凍結乾燥を行うことができる。凍結乾燥に用いる溶媒が、リンス液に溶解可能な溶媒であると有利である。ただし、凍結乾燥に用いる溶媒が、リンス液に溶解できないような溶媒であっても、高分子ゲルシートのリンス液への浸漬の工程の後、高分子ゲルシート中のリンス液をリンス液に溶解可能な溶媒に置換し、さらに、その溶媒を凍結乾燥のための溶媒に置換することにより、凍結乾燥を実施することが可能である。
美容成分等の有効成分を保持させるために、高分子ゲルシートの乾燥させる工程の前または/および後に成分の溶液に浸漬させることがきる。このとき、溶液には複数の有効成分を含んでいてもよい。溶液における溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、トルエン、キシレン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも1つが使用できる。溶液への高分子ゲルシートの浸漬に代えて、噴霧法、蒸着または塗工によって高分子ゲルシートに粘着成分を付着させてもよい。
(美容方法)
本開示の実施形態による美容方法は、上述した生体貼付け用選択透過膜と、皮膚との間に有効成分を含む水溶液を配置する。水溶液は水を含んでいれば、溶液、分散液、又はエマルジョンの状態でも良い。
有効成分とは、皮膚に保湿、美白などの美容効果を示す成分であり、例えばアラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)等の植物由来高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等の微生物由来高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物由来高分子、ヒアルロン酸、ムチン、コンドロイチン硫酸、可溶性コラーゲン等の生物由来高分子化合物、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチトース、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、トリメチルグリシン、レチノール、レチナール、レチノイン酸等のビタミンA、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ピリドキサミン、葉酸等のビタミンB、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD、α-トコフェロール(ビタミンE)フィロキノン、メナキノンのビタミンK等で代表されるビタミンやトレチノイン、パルミチン酸レチノール等のビタミンA誘導体、グリセリルアスコルビン酸やテトラヘキシルデカン酸アスコルビル等のビタミンC誘導体、アスコルビン酸およびその塩、酢酸α―トコフェロール、α―トコフェリルキノン、コハク酸α―トコフェロール等のビタミンE誘導体、トラネキサム酸、アルブチン、ハイドロキノン、コウジ酸、4-メトキシサリチル酸カリウム、トラネキサム酸、ルシノール、エラグ酸やアントシアニン等のポリフェノール、3-サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウム、ルチン、ミノキシジル、フィナステリド、セファランチン、ピロリドンカルボン酸などが挙げられる。
水を選択的に透過する生体貼付け用選択透過膜と皮膚との間に有効成分が含まれる水溶液を配置することにより、水だけが速やかに生体貼付け用選択透過膜を透過し、皮膚上に
有効成分を濃縮し、皮膚から内部へ有効成分が浸透しやすくなる効果を示す。つまり、経皮吸収効果を高めることができる。
(経皮吸収キットを用いた美容方法)
本開示の実施形態による経皮キットは、上記生体貼付け用選択透過膜と、イオン導入装置、電気穿孔(エレクトロポーレーション)装置および超音波導入装置からなる群から選択される少なくとも1つとを含む。これらを用いることにより、一般的に皮膚に浸透し難いと考えられている、分子量500以上の有効成分を、肌に浸透し易くすることができる。
図2は、電気穿孔装置に用いられる電極パッド10の一例を示す。電極パッド10は、第1電極23および第2電極24と、第1電極23および第2電極24の一面に配置される絶縁層21a、21b、および、第1電極23および第2電極24の他の面に配置される絶縁層25a、25bとを含む。電極10が絶縁層25a、25bを備えていることによって電流が生体に流れることを防ぎ、傷みを感じることなく、施術することが可能である。
図3Aから図3Cは、経皮吸収キットを用いた美容方法を説明する図である。図3Aに示すように、まず、皮膚30に有効成分が含まれる水溶液40を塗布する。次に、図3Bに示すように、水溶液40を覆うように生体貼付け用選択透過膜100を皮膚30に貼付ける。さらに生体貼付け用選択透過膜100上に電極パッド10を配置する。
次に図3Bに示すように、電極パッド10の第1電極23および第2電極24を電気穿孔装置本体60に接続し、電気穿孔装置を動作させる。電極パッド10を介して皮膚30には電気パルスが印加される。これにより、皮膚30の表面に微小な穴が一時的に形成され、穴を介して有効成分を内部へ浸透させる。この時、生体貼付け用選択透過膜100は、水溶液40中の水を選択的に透過するため、皮膚30に接している水溶液40中の有効成分が濃縮される。このため、高濃度で皮膚に接している有効成分が、電気穿孔法によってより内部へ浸透しやすくなる。
図3Cはイオン導入装置70を含む経皮キットの使用方法を示す。電気穿孔装置の使用方法と同様、皮膚30の表面に有効成分を含む水溶液40を塗布し、水溶液40を覆うように生体貼付け用選択透過膜100を皮膚30に貼付ける。その後、生体貼付け用選択透過膜100にイオン導入装置70のヘッド70aを接触させる。この状態で、イオン導入装置70を動作させると、イオン導入装置70のグリップ70bを使用者が手で握ることによって、破線で示すように、使用者とイオン導入装置70との間で電流経路が形成され、ヘッド70aから生体に微弱な電流が流れる。この電流経路に従って、有効成分を生体へ浸透させる。特に有効成分がイオンであり、有効成分の電荷と電流の向きを適切に選択することによって効率的に、有効成分を皮膚30の内部に浸透させることができる。この時、生体貼付け用選択透過膜100は、水溶液40中の水を選択的に透過するため、生体30に接している水溶液40中の有効成分が濃縮される。このため、高濃度で皮膚に接している有効成分が、イオン導入法によって、より内部へ浸透しやすくなる。
イオン導入装置および電気穿孔装置は独立して使用できるが、併用してもよい。この場合、例えば、まず、電気穿孔装置を用いて皮膚に一時的な穴を形成した後、イオン導入装置を用いると、形成された穴から有効成分をより効率的に生体に浸透させることができる。
超音波導入装置もイオン導入装置と同様に使用することができる。また、超音波導入装置もイオン導入装置およびまたは電気穿孔装置と併用してもよい。この場合、イオン導入
装置と同様、まず電気穿孔装置を用いて皮膚に一時的な穴を形成した後、超音波導入装置を用いると、形成された穴から有効成分をより効率的に生体に浸透させることができる。
本実施形態では、電極パッド10が本体と分離した電気穿孔装置を説明したが、電気穿孔装置は電極パッド10が本体に一体的に設けられたハンディータイプであってもよいし、本体と本体に接続されたハンディータイプのプローブを備え、プローブに電極パッド10が一体的に設けられていてもよい。これらの場合、生体貼付け用選択透過膜100の表面に電極パッド10が設けられた部分を接触させて使用することによって、同様に有効成分を効率的に生体に浸透させることができる。
(積層シート)
図4および図5は、本開示の実施形態による積層シートの一例を示す。図4に示すように、本開示の実施形態による生体貼付け用選択透過膜は、保護層が取り付けられた積層シートの形で提供されてもよい。図4に示す積層シート100Bは、セルロース膜100と、セルロース膜100の一方の主面上に配置された保護層101とを有する。セルロース膜100としては、上述の生体貼付け用選択透過膜100Aを適用することができ、セルロース膜100は、例えば、重量平均分子量が150000以上の再生セルロースで構成された膜であり得る。言うまでもないが、図4および図5は、積層シート100Bをあくまでも模式的に示し、現実の寸法が反映されているわけではない。例えば、セルロース膜100および保護層101の厚さは、図4および図5においては誇張されている。本開示の他の図面においても、説明の便宜のために、実際とは異なる寸法、形状でセルロース膜などを図示することがある。
この例では、セルロース膜100は、概ね円形状を有している。図4に示すセルロース膜100の直径は、例えば3mm程度であり得る。もちろん、セルロース膜100の形状は、図4に示す例に限定されず、楕円、多角形または不定形であり得る。また、セルロース膜100と保護層101とは、大きさが異なっていてもよい。
図5を参照する。セルロース膜100は、主面SfおよびSbを有し、ここでは、主面Sb側に保護層101が配置されている。保護層101は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリウレタン、合成ゴム、セルロース、テフロン(登録商標)、アラミド、ポリイミドなどのシートもしくは不織布、または、シート状の金属、ガラスなどである。また、これらのシートまたは不織布の表面の全体または一部に化学的または物理的な表面処理が施されていてもよい。この例では、保護層101もセルロース膜100と同様に円形である。しかしながら、セルロース膜100および保護層101の形状が一致している必要はない。例えば、単一の保護層101上に複数のセルロース膜100が配置されることもある。なお、積層シート100B中の保護層101は、セルロース膜100の形状の維持のための支持体ではない。
図5に模式的に示すように、保護層101は、セルロース膜100の主面Sbから剥離可能に構成されている。セルロース膜100は、例えば23MPa以上の引張強さを有し、保護層101が剥離された状態においても形状を維持可能である。
ここで、図6~図11を参照しながら、本開示の積層シートの使用方法の例を説明する。
まず、上述の積層シート100Bを用意し、図6に示すように、セルロース膜100の主面SfおよびSbのうち、保護層101の配置されていない主面Sfを、積層シート1
00Bを貼りつけたい部分に対向させる。この例では、皮膚200(例えば顔の皮膚の一部)に、セルロース膜100の主面Sfを対向させる。
このとき、セルロース膜100の主面Sf上または皮膚200上に、上述した有効成分を含む水溶液300を付与する。さらにクリーム302を配置してもよい。クリーム302は、例えば、油脂、アルコールまたは乳化剤などを含有し、上述した有効成分をさらに含んでいてもよい。
次に、セルロース膜100の主面Sfを皮膚200に対向させた状態で積層シート100Bを皮膚200に接触させることにより、図7に示すように、積層シート100Bを皮膚200に貼付する。さらに、図8に示すように、セルロース膜100の主面Sbから保護層101を剥離する。セルロース膜100から保護層101を剥離することにより、皮膚200上にセルロース膜100を残すことができる。
セルロース膜100の主面Sf上に、他の保護層を設けておいてもよい。図9は、積層シートの他の例を示す。図9に示す積層シート100Cは、セルロース膜100の主面のうち、保護層101が配置された主面とは反対側の主面に、第2の保護層102を有する。保護層102を構成する材料は、保護層101と共通であってもよいし、異なっていてもよい。保護層102の大きさが、セルロース膜100または保護層101と異なっていても構わない。典型的には、この保護層102も、保護層101と同様にセルロース膜100から剥離可能である。保護層102の存在は、セルロース膜100のハンドリングをより容易にする。
このような積層シート100Cを用いる場合、図10に示すように、まず、セルロース膜100から保護層101を剥離する。保護層101の除去により、セルロース膜100の主面Sbが露出される。その後、露出された主面Sbを皮膚200に対向させる。積層シート100Bの場合と同様に、このとき、セルロース膜100の主面Sb上または皮膚200上に、有効成分を含む水溶液300が付与される。さらにクリーム302が付与されてもよい。
次に、図11に示すように、セルロース膜100および第2の保護層102の積層シートを皮膚200に貼付する。その後、セルロース膜100の他方の主面、すなわち、主面Sbとは反対側の主面から、保護層102を剥離する。保護層102の剥離により、皮膚200上にセルロース膜100を残すことができる。
本開示の生体貼付け用選択透過膜は、前述したように、少なくとも一部が着色されていてもよい。図12は、着色されたセルロース膜100bを皮膚200に貼り付けた状態を模式的に示す。セルロース膜100bは、上述のセルロース膜100を染料、顔料などによって着色することにより得られた膜であり得る。上述した製造方法によれば、典型的には透明な再生セルロース膜が得られる。皮膚の色に近い色で着色されたセルロース膜100bを用いることにより、有効成分を作用させる部分が皮膚200のシミ、ホクロ、傷痕などである場合に、生体貼付け用選択透過膜これらを覆い、目立たなくすることが可能である。
本開示の実施形態による生体貼付け用選択透過膜は、例えば傷痕の上に貼り付けられる場合には、外部からの刺激から皮膚を保護する保護シートとしても機能し得る。印刷などによって生体貼付け用選択透過膜に模様、色彩を施してもよい。
(実施例)
以下、実施例により本開示の実施形態による選択透過する生体貼付け用選択透過膜をよ
り詳細に説明する。本開示の実施形態は、以下の実施例によって特定される形態に限定されない。
(有効成分の浸透性評価)
(実施例1)
(選択透過する生体貼付け用選択透過膜の作製)
以下の手順により、生体貼付け用選択透過膜である再生セルロース膜を作製した。まず、純度が90%以上の、木材を原料とした漂白パルプ由来のセルロースを用意した。
漂白パルプ由来のセルロースをイオン液体に溶解させることにより、セルロース溶液を調製した。イオン液体としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルフォスフェイト(アルドリッチ社製、純度98%)を用いた。セルロース溶液は、ジメチルスルホキシドで希釈した。ギャップコーティングを適用して基板の表面にセルロース溶液を付与することにより、基板上に液膜を形成した。このとき、再生セルロース膜の厚みが1000nmになることを狙って、ギャップの大きさを調整した。
液膜の形成後、セルロース溶液の液膜を70℃で1時間加熱し、その後20℃40-60%RH環境に置くことで高分子ゲルシートを得た。その後、高分子ゲルシートを洗浄することにより、高分子ゲルシートからイオン液体を除去した。その後、高分子ゲルシートを、テンション約0.1Nで乾燥させることにより、自立可能な、厚さ約930nmの再生セルロース膜を得た。再生セルロース膜は、概ね5cm×5cmの矩形形状を有していた。
再生セルロース膜の厚さは、ブルカー ナノ インコーポレイテッド製 触針式プロファイリングシステムDEKTAK(登録商標)を用いて、複数箇所測定し平均化することによって、ガラス板上に置いた再生セルロース膜の厚さを測定することで確認した。
再生セルロース膜のセルロースの重量平均分子量をGPC(Gel Permeation Chromatography)-MALS(Multi Angle Light Scattering)法により測定した。測定には、島津製作所製の送液ユニットLC-20ADを用い、検出器としてWyatt Technology Corporation製、示差屈折率計Optilab rEXおよび多角度光散乱検出器DAWN
HELEOSを用いた。カラムとしては東ソー株式会社製のTSKgel α-Mを用い、溶媒には塩化リチウムが0.1M添加されたジメチルアセトアミドを用いた。カラム温度:23℃、流速:0.8mL/minの条件で測定を行った。再生セルロースの重量平均分子量は224000程度であった。
Park et al. “Cellulose crystallinity index: measurement techniques and their impact on interpreting cellulase performance”, Biotechnology for Biofuels 2010, 3:10において報告されている、13C-NMRを利用した方法に従って、再生セルロースの結晶化度を求めた。この方法によれば、固体13C-NMR測定により取得されたスペクトルにおける、87~93ppm付近のピークを結晶構造に由来するピークと扱い、かつ、80~87ppm付近のブロードなピークを非結晶構造に由来するピークと扱う。前者のピーク面積をX、後者のピーク面積をYとしたとき、下記の式(1)から結晶化度が決定される。なお、式(1)において、「×」は、乗算を表す。
(結晶化度)[%]=(X/(X+Y))×100 (1)
13C-NMRの測定には、Varian社製Unity Inova-400および
Doty Scientific, Inc.製の5mmのCP/MASプローブを使用し、CP/MAS法を用いた。測定条件は、MAS速度:10kHz、室温(25℃)、試料回転数:10kHz、観測幅:30.2kHz、観測中心:96ppm、観測周波数:100.574MHzであり、CPパルス(1H→13C)法で、観測核90°パルス:3.9μsec、1H励起パルス:3.8μsec、接触時間:2.0msec、待ち時間:10sec以上、積算回数:8,000回とした。この条件でCP法により測定したセルロースの固体13C-NMRスペクトルは、十分な緩和時間を設定したDD(Dipolar Decouple)法により測定した固体13C-NMRスペクトルとよく一致することを確認した。ここで、固体13C-NMRの基準物質はテトラメチルシラン(TMS)を用いた。算出された再生セルロースの結晶化度は、0%であった。
細孔容積は、BELSORP-mini2(マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて、窒素によるガス吸着法により測定し、BJH法で解析を行った。100nm以下の細孔容積は0.016cm/gであった。また、作製した膜の吸水率は198%であった。
(水および有効成分の選択透過性評価)
再生セルロース膜の選択透過性については、浸透すると変色する紙を下地として、上に作製した再生セルロース膜を設置し、膜上から水(分子量:18)、プロパノール(分子量:60)、オクタノール(分子量:130)、デカン(分子量:142)、オレイン酸(分子量:282)をそれぞれ滴下した。下地の変色評価は、周りからの液の回り込みがないことを確認しながら、実施した。
水を滴下した場合は10秒以内に下地は変色し、水が再生セルロース膜を透過したことを確認できたが、プロパノール、オクタノール、デカン、オレイン酸を滴下した場合は、5分経過しても下地の変色は見られず、プロパノール、オクタノール、デカン、オレイン酸は再生セルロース膜を透過しなかった。
次に、分子量2000-4000の蛍光標識化したヒアルロン酸((株)PGリサーチ製Fluoresceinamine labeled Sodium Hyaluronate(3K2))の0.1重量%水溶液を、下地上に設置した再生セルロース膜の上から滴下した。滴下後30秒後再生セルロース膜を取り外し、下地に水の透過による変色の有無と、蛍光顕微鏡により、蛍光化したヒアルロン酸が検出されるかを確認した。蛍光顕微鏡は、キーエンス社製の蛍光顕微鏡を用いた。励起波長470nm、吸収波長525nm、露光時間1/200sで行った。水の透過による下地の変色を確認した。蛍光顕微鏡によるヒアルロン酸は検出限界以下であり、再生セルロース膜が水のみを透過していることを確認した。同様の方法で、分子量5000-10000の蛍光標識化したヒアルロン酸((株)PGリサーチ製 Fluoresceinamine labeled Sodium Hyaluronate(U2))についても、評価を行い、水の透過による下地の変色は確認できたが、蛍光顕微鏡によるヒアルロン酸は検出限界以下で有り、再生セルロース膜が水のみを透過していることを確認した。
次に、アスコルビン酸水溶液を下地上に設置した再生セルロース膜の上から滴下した。滴下後30秒後選択透過膜を取り外し、下地に水の透過による変色の有無と、下地を抽出し、吸光分析法によりアスコルビン酸が検出されるかを確認した。吸光分析は島津製作所製 UV1600により行い、266nmの吸収について検量線を用いて評価を行った。水の透過による下地の変色は確認できたが、吸光分析法によるアスコルビン酸は検出限界以下で有り、再生セルロース膜が水のみを透過していることを確認した。
(有効成分の肌への浸透性評価:機器使用時)
以下の手順で、機器を用いた場合の有効成分の肌への浸透性評価を実施した。
蛍光標識したヒアルロン酸水溶液を前腕内側の肌上に塗布する。その後、再生セルロース膜を肌上に配置し、電極の施術面側に絶縁体を設けたエレクトロポレーション電極を用いて、37V、1kHz、Duly50で3秒間穿孔形成を行う。その後速やかに、イオン導入を6秒実施する。施術3分後に施術箇所の角質層をテープストリップ法によりサンプリングし、7層目中の皮膚面積に対するヒアルロン酸による発光面積比率をレーザ顕微鏡で評価した。分子量2000-4000のヒアルロン酸の結果を図13に、分子量5000-10000のヒアルロン酸の結果を図14に示す。
(有効成分の肌への浸透性評価:シートのみ)
以下の手順で、有効成分の肌への浸透性評価を実施した。
ビタミンC(アスコルビン酸ナトリウム)水溶液を肌に滴下後、再生セルロース膜を設置し、30分静置した。その後、テープストリッピング用のテープを貼付け、角質を2枚除去した。同じ箇所で3~12枚目(計10枚)の角質をテープストリップで剥がし、測定試料とした。測定試料は、水4mLを加え3分超音波処理を行い抽出した液を、島津製作所社製LC-Vp10の高速液体クロマトグラフを用いて評価を行った。結果を図15に示す。
(実施例2)
厚みが300nmとなることを狙ってギャップコーティングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る再生セルロース膜を作製した。実施例2に係る再生セルロース膜の厚みは320nmであった。また、100nm以下の細孔容積は0.047cm/gであった。実施例2に係る再生セルロース膜の厚み、および細孔体積は、実施例1と同様にして測定した。実施例2に係わる再生セルロース膜を用いて、下地上に実施例2に係わる再生セルロース膜を設置し、その上から有効成分として、分子量2000-4000および分子量5000-10000の蛍光標識したヒアルロン酸が含有した水溶液を滴下し30秒静置したところ、水の透過による下地の変色を確認した。蛍光顕微鏡による評価では、何れのヒアルロン酸も検出限界以下であり、実施例2に係わる再生セルロース膜が水のみを透過していることを確認した。
(比較例1)
機器使用時の有効成分の肌への浸透性評価において、蛍光標識したヒアルロン酸(分子量2000-4000、および分子量5000-10000)水溶液を上腕内側の肌上に塗布した後、膜を貼り付けずに穿孔形成を行った以外は実施例1と同様に評価を行った。結果を図13および図14に示す。
また、シートのみの有効成分の肌への浸透性評価において、膜を貼り付けなかった以外は実施例1と同様に評価を行った。結果を図13および図14に示す。
(比較例2)
重量平均分子量250,000のポリ乳酸をクロロホルムに溶解することにより、ポリ乳酸溶液を調製した。重量平均分子量500程度のポリビニルアルコール膜が予め形成された基板上に、スピンコーティングによってポリ乳酸溶液を付与した後、溶媒であるクロロホルムを気化させた。その後、水への浸漬によりポリビニルアルコールを除去し、比較例2のポリ乳酸膜を作製した。得られたポリ乳酸膜の厚さは、約960nmであった。
下地上にポリ乳酸膜を設置し、その上から蛍光標識したヒアルロン酸(分子量2000-4000、分子量5000-10000)を含有した水溶液を滴下し30秒設置したが
、下地に水の浸透は確認できなかった。また、蛍光顕微鏡観察において、何れのヒアルロン酸も検出されなかった。
有効成分の肌への浸透性評価において、選択透過膜の変わりにポリ乳酸膜を使用した以外は実施例1同様に評価を行った。結果を図13および図14に示す。
(比較例3)
厚さ23μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートを用いて、下地にPETシートを設置し、その上から有効成分として、分子量2000-4000および分子量5000-10000の蛍光標識したヒアルロン酸が含有した水溶液を滴下し30秒静置したが、下地の変色はなく水の浸透は確認できなかった。また、蛍光顕微鏡観察において、何れのヒアルロン酸も検出されなかった。PETシートの吸水率は、0.4%であった。
有効成分の肌への浸透性評価において、選択透過膜の変わりにPETシートを使用して、分子量2000-4000の蛍光標識したヒアルロン酸を用いた以外は実施例1同様に評価を行った。結果を図13に示す。
(比較例4)
厚さ約20μmの市販のセロハン(再生セルロース)を用いて、下地上にセロハンを設置し、その上から有効成分として、分子量2000-4000および分子量5000-10000の蛍光標識したヒアルロン酸が含有した水溶液を滴下し30秒静置したが、下地の変色はなく水の浸透は確認できなかった。また、蛍光顕微鏡観察において、何れのヒアルロン酸も検出されなかった。セロハンの結晶化度は21%であった。
有効成分の浸透性評価において、選択透過膜の変わりにセロハンを使用し、分子量2000-4000の蛍光標識したヒアルロン酸を用いた以外は実施例1同様に評価を行った。結果を図13に示す。
(比較例5)
厚さ約150μmのろ紙(天然セルロース)を用いて、下地上にろ紙を設置し、その上から有効成分として、分子量2000-4000および分子量5000-10000の蛍光標識したヒアルロン酸が含有した水溶液を滴下し30秒静置したところ、水の浸透と有効成分双方の浸透を確認した。
有効成分の浸透性評価において、選択透過膜の変わりにろ紙を使用し、分子量2000-4000の蛍光標識したヒアルロン酸を用いた以外は実施例1同様に評価を行った。結果を図13に示す。
(比較例6)
市販のキトサンを含むナノファイバーシート(マジックフェイシャル、株式会社エコライフ製)を用いて、下地上にナノファイバーシートを設置し、その上から有効成分として、分子量2000-4000および5000-10000の蛍光標識したヒアルロン酸が含有した水溶液を滴下し30秒静置したところ、水の浸透と有効成分双方の浸透を確認した。
有効成分の浸透性評価において、選択透過膜の変わりにナノファイバーシートを使用し、分子量2000-4000の蛍光標識したヒアルロン酸を用いた以外は実施例1同様に評価を行った。結果を図13に示す。
(比較例7)
純度が90%以上の、木材を原料とした漂白パルプ由来のセルロースを用意した。漂白パルプ由来のセルロースをイオン液体に溶解させることにより、セルロース溶液を調製した。イオン液体としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルフォスフェイト(アルドリッチ社製、純度98%)を用いた。セルロース溶液は、ジメチルスルホキシドで希釈した。ギャップコーティングを適用して基板の表面にセルロース溶液を付与することにより、基板上に液膜を形成した。このとき、比較例7に係る生体貼付用膜の厚みが300nmとなることを狙ってギャップコーティングにおけるギャップの大きさを調整した。液膜の形成後、20℃40-60%RH環境に置くことで高分子ゲルシートを得た。その後、高分子ゲルシートを洗浄することにより、高分子ゲルシートからイオン液体を除去した。その後、高分子ゲルシートを、自然乾燥させることにより、自立可能な、厚さ約300nmの比較例7に係わる再生セルロース膜を得た。比較例7に係る生体貼付用膜において、100nm以下の細孔径を有する細孔の細孔容積は0.44cm3/gであった
比較例7に係わる再生セルロース膜を用いて、下地上に比較例7に係わる再生セルロース膜を設置し、その上から有効成分として、分子量2000-4000および分子量5000-10000の蛍光標識したヒアルロン酸が含有した水溶液を滴下し30秒静置したところ、水の浸透と有効成分双方の浸透を確認した。
図13に、実施例1および比較例1-6の分子量2000-4000のヒアルロン酸の浸透性評価結果を示す。図13より、比較例1-6と比較して、実施例1ではヒアルロン酸を肌中に浸透させる能力が高いことが分かる。特に比較例2との比較により、同じ程度の厚さの膜であっても実施例1ではヒアルロン酸を浸透できることが分かる。
図14に、実施例1および比較例1-2の分子量5000-10000のヒアルロン酸の浸透性評価結果を示す。図14より、分子量が5000-10000の場合においても、比較例1-2と比較して、実施例1ではヒアルロン酸を肌中に浸透させる能力が高いことが分かる。
図15に、実施例1および比較例1のビタミンCの浸透性評価結果を示す。図15より、比較例2と比較して、実施例1ではビタミンCの肌への浸透性が高いことが分かる。
(生体貼付け用選択透過膜の肌への密着性評価)
(実施例3)
セルロース溶液中のセルロース濃度と、ギャップの大きさとを調整することにより、ねらい厚さを100nm、200nm、500nm、1300nmとして、実施例1と同様の方法で実施例3のセルロース膜を作製した。各ねらい厚さに対する、得られたセルロース膜の厚さは、それぞれ、約90nm、約220nm、約510nm、約1340nmであった。
(比較例8)
セルロース溶液中のセルロース濃度と、ギャップの大きさとを調整することにより、ねらい厚さを3000nm、5000nmとして、実施例1と同様の方法で比較例7のセルロース膜を作製した。各ねらい厚さに対する、得られたセルロース膜の厚さは、それぞれ、約2700nm、約5000nmであった。
以下の手法により、セルロース膜を皮膚に貼り付けたときの密着性を評価した。まず、上腕内側の皮膚上に市販の化粧水を少量付与し、その上にサンプル(セルロース膜)を貼付した。その状態で5h経過後、サンプルが皮膚上から脱落したか否かを調べた。
図16は、実施例1、3および比較例4、8のサンプルに関する評価結果を示すグラフである。図16に示すグラフの縦軸は、サンプルが貼付された人(合計5人)のうち、皮膚上のサンプルが脱落した人の割合を示す。
図16より、生体貼付け用選択透過膜である再生セルロースは、厚さを1300nm程度以下とすることにより、皮膚上から脱落しにくい、換言すれば、皮膚に対する密着性の良い薄膜を提供できることがわかる。厚さ1300nm以下の生体貼付け用選択透過膜は、粘着剤なしで肌に長時間接着させることができるため、より美容効果を持続させることができる。
本開示の実施形態による生体貼付け用選択透過膜は、接着剤なしに皮膚に貼付可能であり、更に有効成分を含む水溶液の水を選択的に透過させることから、皮膚上の有効成分濃度を上げることで、美容効果を高めることが可能である。更に、穿孔形成装置および/またはイオン導入装置および/または超音波導入を併せて行うことで、より高い美容効果が得られる。
本開示の生体貼付け用選択透過膜は、例えば、美容または医療を目的とした肌ケアフィルムなどとして利用できる。
10 電極
21a、21b 絶縁層
23 第1電極
24 第2電極
25a、25b 絶縁層
30 生体
40 水溶液
60 電気穿孔装置本体
70 イオン導入装置
70a ヘッド
70b グリップ
100、100A 生体貼付け用選択透過膜
100B、100C 積層シート
101 保護層
102 第2の保護層
200 皮膚
300 水溶液
302 クリーム

Claims (10)

  1. 自己支持可能な生体貼付け用選択透過膜であって、
    0~12%の結晶化度を有する再生セルロースを含み、
    20nm以上1300nm以下の厚さを有し、
    100nm以下の細孔径を有する細孔の容積である細孔容積が0.3cm /g以下であり、
    水を選択的に透過し、60以上の分子量を有する化合物を実質的に透過しない、生体貼付け用選択透過膜。
  2. 前記生体貼付け用選択透過膜は生体適合性を有する、請求項1に記載の生体貼付け用選択透過膜。
  3. 前記再生セルロースは、実質的に0%の結晶化度を有する、請求項1または2に記載の生体貼付け用選択透過膜。
  4. 前記生体貼付け用選択透過膜は、50%以上の吸水率を有する、請求項1からのいずれかに記載の生体貼付け用選択透過膜。
  5. 前記再生セルロースは、150000以上の重量平均分子量を有する、請求項1からのいずれかに記載の生体貼付け用選択透過膜。
  6. 請求項1からのいずれかに記載の生体貼付け用選択透過膜と、
    イオン導入装置、電気穿孔装置および超音波導入装置からなる群から選択される少なくとも1つと、
    を備えた経皮吸収キット。
  7. 前記電気穿孔装置は、一対の電極と、前記一対の電極の一面を覆う少なくとも1つの絶縁層とを含む電極パッドを含む請求項に記載の経皮吸収キット。
  8. 請求項1からのいずれかに記載の生体貼付け用選択透過膜と、皮膚との間に有効成分を含む水溶液を配置する美容方法。
  9. 有効成分を含む水溶液を皮膚に配置するステップと、
    前記水溶液の少なくとも一部を覆うように、請求項1からのいずれかに記載の生体貼付け用選択透過膜を皮膚に貼付するステップと、
    前記有効成分を前記皮膚から内部へ浸透させるステップと
    を含む美容方法。
  10. 前記浸透させるステップは、穿孔形成法、イオン導入法、および超音波導入法からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いる請求項に記載の美容方法。
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