JP7169552B2 - パン発酵種調製用素材 - Google Patents
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Description
この出願は、2017年12月20日に日本国特許庁に出願された出願番号2017-244096号の優先権の利益を主張する。優先権基礎出願はその全体について、出典明示により本明細書の一部とする。
パンにおける発酵熟成の旨味又はコク味や良好な芳香は、パン生地や発酵種の発酵のさせ方によって産まれる発酵生成物に由来するが、多くのパンメーカーでは安定性や生産性が良好な簡略かつ短時間の発酵方法が採られており、発酵生成物が十分でないままパンが作製されているのが現状である。
この発酵種は小麦粉、ライ麦、ホップ、米などにパン酵母や乳酸菌等を生育させて「種起こし」を行って初種を調製し、さらにこの初種に上記原料を追加して繰り返し種継ぎを行いながら、腐敗化を制御しながら、1週間ほど十分に熟成させて微生物種を安定化させたものであり、これをパン生地の配合中に加えて発酵させたパンが製造されている。
このような発酵種を用いる方法は、深い発酵による濃厚な旨味又はコク味と芳醇な芳香を有するパンが得られる点で風味面のメリットがある。しかし、かかる発酵種の製造には、1週間程度という長期間の熟成工程が必要であり、且つ、その間の温度管理や種継ぎのタイミングなどが難しく、酸化や腐敗を抑制するために熟練者の勘に頼らなければならないところもある点で、工業生産を困難としている。
すなわち本発明は、発酵種を用いたパンの製法において、種継ぎを繰り返して長期間熟成された発酵種と同様に、深い発酵熟成産物に由来する旨味又はコク味と良好な芳香をパンに付与できる液種、中種、サワー種、ルヴァン種等の発酵種を容易に調製することができる、パン発酵種調製用素材を提供することを課題とする。
(1)a)含脂大豆由来抽出物の酵素分解物及び/又は大豆粉の酵素分解物を含有すること、
b)低分子ペプチド混合物を含有すること、
c)遊離アミノ酸含量が固形分中0.1~0.5質量%であること、
を特徴とする、パン発酵種調製用素材、
(2)a)において、含脂大豆由来抽出物の酵素分解物のみを含有する、前記(1)記載のパン発酵種調製用素材、
(3)a)において、大豆粉の酵素分解物のみを含有する、前記(1)記載のパン発酵種調製用素材、
(4)a)において、含脂大豆由来抽出物の酵素分解物及び大豆粉の酵素分解物を含有する、前記(1)記載のパン発酵種調製用素材、
(5)含脂大豆由来抽出物の酵素分解物の15%TCA可溶率が30%以上である、前記(2)記載のパン発酵種調製用素材、
(6)大豆粉の酵素分解物の15%TCA可溶率が30%以上である、前記(3)記載のパン発酵種調製用素材、
(7)含脂大豆由来抽出物の酵素分解物及び大豆粉の酵素分解物の15%TCA可溶率が30%以上である、前記(4)記載のパン発酵種調製用素材、
(8)含脂大豆由来抽出物の酵素分解物が、固形分換算で60~95質量%含有する、前記(2)又は(5)記載のパン発酵種調製用素材、
(9)大豆粉の酵素分解物が、固形分換算で60~95質量%含有する、前記(3)又は(6)記載のパン発酵種調製用素材、
(10)含脂大豆由来抽出物の酵素分解物及び大豆粉の酵素分解物が、合計量として、固形分換算で60~95質量%含有する、前記(4)又は(7)記載のパン発酵種調製用素材、
(11)含脂大豆由来抽出物及び大豆粉の混合質量比が固形分換算で1:99~99:1である、前記(10)記載のパン発酵種調製用素材、
(12)含脂大豆の脂質含量が固形分中12質量%以上である、前記(2)、(5)及び(8)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(13)含脂大豆の脂質含量が固形分中12質量%以上である、前記(3)、(6)及び(9)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(14)含脂大豆の脂質含量が固形分中12質量%以上である、前記(4)、(7)、(10)及び(11)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(15)含脂大豆由来抽出物の脂質含量が固形分中15質量%以下である、前記(2)、(5)、(8)及び(12)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(16)含脂大豆由来抽出物の脂質含量が固形分中15質量%以下である、前記(4)、(7)、(10)、(11)及び(14)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(17)含脂大豆由来抽出物の炭水化物に対する蛋白質含量が100~200質量%である、前記(2)、(5)、(8)、(12)及び(15)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(18)含脂大豆由来抽出物の炭水化物に対する蛋白質含量が100~200質量%である、前記(4)、(7)、(10)、(11)、(14)及び(16)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(19)含脂大豆が予めNSI15~77となるように加熱処理されたものである、前記(2)、(5)、(8)、(12)、(15)及び(17)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(20)含脂大豆が予めNSI15~77となるように加熱処理されたものである、前記(3)、(6)、(9)及び(13)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(21)含脂大豆が予めNSI15~77となるように加熱処理されたものである、前記(4)、(7)、(10)、(11)、(14)、(16)及び(18)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(22)低分子ペプチド混合物が植物由来、乳由来又は微生物由来である、前記(1)~(21)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(23)低分子ペプチド混合物の15%TCA可溶率が、50%以上である、前記(22)記載のパン発酵種調製用素材、
(24)低分子ペプチド混合物の15%TCA可溶率が、50%以上である、前記(2)、(5)、(8)、(12)、(15)、(17)及び(19)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(25)低分子ペプチド混合物の15%TCA可溶率が、50%以上である、前記(3)、(6)、(9)、(13)及び(20)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材、
(26)低分子ペプチド混合物の15%TCA可溶率が、50%以上である、前記(4)、(7)、(10)、(11)、(14)、(16)、(18)及び(21)記載のパン発酵種調製用素材、
(27)パン発酵種の原料として、前記(1)記載のパン発酵種調製用素材および穀粉を混合し、酵母により発酵させることを特徴とする、パン発酵種の製造法、
(28)パン発酵種の原料として、前記(2)、(5)、(8)、(12)、(15)、(17)、(19)及び(24)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材および穀粉を混合し、酵母により発酵させることを特徴とする、パン発酵種の製造法、
(29)パン発酵種の原料として、前記(3)、(6)、(9)、(13)、(20)及び(25)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材および穀粉を混合し、酵母により発酵させることを特徴とする、パン発酵種の製造法、
(30)パン発酵種の原料として、前記(4)、(7)、(10)、(11)、(14)、(16)、(18)、(21)及び(26)の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材および穀粉を混合し、酵母により発酵させることを特徴とする、パン発酵種の製造法、
(31)パン発酵種が、湯種又は中種である、前記(27)~(30)の何れか1項項記載のパン発酵種の製造法、
(32)前記(27)又は(31)記載のパン発酵種を生地配合中に添加することを特徴とする、パンの製造法、
(33)前記(28)記載のパン発酵種を生地配合中に添加することを特徴とする、パンの製造法、
(34)前記(29)記載のパン発酵種を生地配合中に添加することを特徴とする、パンの製造法、
(35)前記(30)記載のパン発酵種を生地配合中に添加することを特徴とする、パンの製造法。
中でも冷凍パン生地においては、故意にパン生地の発酵を浅くするように管理するため、風味に乏しいとされていることから、本発明の発酵種調製用素材を利用した発酵種を冷凍パン生地においても加えることにより、深い発酵風味を付与することができ、スクラッチ製法で時間をかけて作られたパンのような旨味又はコク味と良好な芳香をもつパンを製造することができる。
「発酵種」は一般的には小麦粉やライ麦等の穀粉、ホップ、米、果実等に天然の酵母や市販のパン酵母、あるいは酵母と共生的に乳酸菌や酢酸菌を付着させて培養したものであり、パン酵母の代替として、あるいはパン酵母と併用してパン生地の原料の一部として配合され、パン生地の発酵に用いられている。
本発明における「パン発酵種調製用素材」とは、上記の「発酵種」を調製するための原料として用いられる加工素材をいい、該加工素材はパン生地に直接配合される原料とは区別される。
本発明のパン発酵種調製用素材には、含脂大豆由来抽出物の酵素分解物及び/又は大豆粉の酵素分解物(以下、これらをまとめて「本酵素分解物」と称する場合がある。)を含有することが必須である。
ここで、本酵素分解物は、単独又は併用にかかわらず合計量として、本発明のパン発酵種調製用素材中に、固形分換算で60~95質量%含有することが好ましく、70~90質量%含有することがより好ましい。本分解物の含有量が少なすぎると、発酵種の酸味や旨味又はコク味の後引き、吟醸の香りが弱くなる傾向にあり、上記範囲で含有することにより、程よい酸味と後引きの強い旨味又はコク味、吟醸香を持った発酵種をより効果的に調製することができる。
含脂大豆由来抽出物と大豆粉とを併用する場合、これらの混合質量比は固形分換算で1:99~99:1、好ましくは10:90~90:10とすることができる。
以下、本酵素分解物の原料(酵素分解の対象)である含脂大豆由来抽出物(以下、「本抽出物」と称する場合がある。)の態様について説明する。
本抽出物の抽出原料となる大豆は、全脂大豆や部分脱脂大豆などの含脂大豆であり、脱脂大豆とは異なる。全脂大豆は、圧搾やロールによる物理的処理や有機溶剤処理などにより油の抽出処理がされていないものをいう。部分脱脂大豆は圧搾やロールによる物理的処理のみによる抽出処理がされたものをいう。含脂大豆の脂質含量は通常10質量%以上、好ましくは12質量%以上である。全脂大豆では固形分中15質量%を超えるのが通常であり、多くは18質量%以上である。分離大豆蛋白や醤油の製造などに使用されているような脱脂大豆を原料とした場合は、本発明の効果を奏しにくい。
すなわち、試料2.0gに100mlの水を加え、40℃にて60分攪拌抽出し、1400×gにて10分間遠心分離し、上清1を得る。残った沈殿に再度100mlの水を加え、40℃にて60分攪拌抽出し、1400×gにて10分遠心分離し、上清2を得る。上清1および上清2を合わせ、さらに水を加えて250mlとする。No.5Aろ紙にてろ過したのち、ろ液の窒素含量をケルダール法にて測定する。同時に試料中の窒素含量をケルダール法にて測定し、ろ液として回収された窒素(水溶性窒素)の試料中の全窒素に対する割合を質量%として表したものをNSIとする。
大豆を水性溶媒で抽出する際の加水量、抽出温度、抽出時間等の抽出条件は特に限定されず、例えば加水量は大豆に対して2~15重量倍、抽出温度は20~99℃、抽出時間は20分~14時間などで設定すればよい。本抽出物は液状、固形状、粉末状の何れの形態をもとり得る。
本抽出物が、この態様の場合、例えば全脂大豆から抽出した通常の脂質含量の高い全脂豆乳とは明確に区別され、いわゆる「低脂肪豆乳」と称される場合がある。ただし、全脂大豆からの水性溶媒抽出物であって脂質含量が上記範囲である限り、これらの呼称や製法に限定されるものではない。例えば市販品であれば、不二製油株式会社製の「USS」(R)製法で製造された「低脂肪豆乳」又は「美味投入」(R)(Bimi-tonyu)を用いることができる。
ここで、本抽出物中の炭水化物に対する蛋白質含量(以下、「P/C含量」と称する場合がある。)は、一つの好ましい態様として1~200質量%の範囲を選択することができる。このうち、より限定的には100質量%以上、120質量%以上、130質量%以上や140質量%以上の範囲、またさらに190質量%以下、180質量%以下や170質量%以下の範囲を選択することができ、かかる範囲を選択すると適度な低分子の水溶性成分と高分子の蛋白質がバランス良く含まれ、また蛋白質は遊離アミノ酸の有効な供給源となりうる。また別の限定的範囲として2質量%以上や4質量%以上の範囲、またさらに100質量%未満、80質量%以下、60質量%以下、40質量%以下や30質量%以下の範囲も選択できる。かかる範囲を選択すると蛋白質の比率が小さくなり、遊離のアミノ酸の供給源が減少するが、この場合は別の遊離アミノ酸の供給源を補強しつつ用いることもできる。
また、無調整豆乳などの全脂豆乳は、P/C含量が200質量%を大きく超え、相対的に高蛋白質含量であり、低分子の水溶性成分が相対的に少なくなるが、本抽出物の一態様として用いることもできる。
なお、本発明において、蛋白質含量はケルダール法により測定される。また炭水化物含量は、固形分から脂質、蛋白質及び灰分の含量の和を引いた計算値とする。
以下、本酵素分解物の原料(酵素分解の対象)である大豆粉の態様について説明する。
大豆粉は上記の含脂大豆を粉砕したものである。大豆粉は水に分散されたものでもよく、大豆に加水して水溶性成分の抽出操作を行った後に、不溶性成分(オカラ)を除去せずに製品化したものも大豆粉の概念に含まれる。
本大豆粉は、上記の全脂大豆由来抽出物と同様の態様で、予め加熱処理されていることがより好ましく、これにより芳醇な風味をパンに付与する発酵種を得やすく、本発明の効果を奏しやすい。
本発明のパン発酵種調製用素材に含まれる、本酵素分解物は、上述した含脂大豆抽出物及び/又は大豆粉が、プロテアーゼ等の蛋白質分解酵素により加水分解されたものである。
酵素を作用させるタイミングは問わず、例えば含脂大豆由来抽出物の場合は、予め含脂大豆の状態で作用させてもよいし、含脂大豆から水で抽出する際や抽出後に作用させてもよい。また、大豆粉の場合は粉砕前あるいは粉砕時に酵素を作用させてもよいし、粉砕後に作用させてもよい。一つの態様として、大豆粉や含脂大豆由来抽出物を調合して、その後にパン発酵種調製用素材の製造工程中に酵素を加えて反応させ、調合液の中で加水分解物を得ることができる。また蛋白質分解酵素は市販の酵素を用いても良いし、該市販酵素の代わりに麹菌で発酵させて麹菌が有するプロテアーゼ等の蛋白質加水分解酵素を作用させることもできる。
このプロテアーゼの分類は、酵素科学の分野において通常行われている活性中心のアミノ酸の種類による分類方法である。各々の代表として「金属プロテアーゼ」にはBacillus由来中性プロテアーゼ,Streptomyces由来中性プロテアーゼ,Aspergillus由来中性プロテアーゼ,『サモアーゼ』等が挙げられ、「酸性プロテアーゼ」にはペプシン,Aspergillus由来酸性プロテアーゼ,『スミチームFP』等が挙げられ、「チオールプロテアーゼ」にはブロメライン,パパイン等が挙げられ、「セリンプロテアーゼ」にはトリプシン,キモトリプシン,ズブチリシン,Streptomyces由来アルカリプロテアーゼ,『アルカラーゼ』,『ビオプラーゼ』等が挙げられる。また、上記の通り、麹菌等のプロテアーゼ活性を有する微生物菌体を選択することができる。もちろん、これら以外の酵素でも作用pHや阻害剤との反応性により、その分類を確認し、使用することができる。また、より多くの遊離アミノ酸を生成させるには、エキソ型のプロテアーゼ活性を有する酵素を選択することが好ましい。
本発明のパン発酵種調製用素材は、低分子ペプチド混合物をさらに含有することが必須である。低分子ペプチド混合物の例としては、大豆ペプチド、エンドウペプチド、米ペプチド、酒粕分解ペプチド、コーンペプチド等の植物由来の蛋白質を加水分解したもの、乳ペプチド、ホエーペプチド等の乳由来の蛋白質を加水分解したもの、酵母エキス等の微生物由来の蛋白質を加水分解したものなどが挙げられる。大豆ペプチドは例えば市販の「ハイニュート」シリーズ(不二製油(株)製)などを用いることができる。
本発明のパン発酵種調製用素材は、遊離アミノ酸を固形分中0.1~0.5質量%、好ましくは0.1~0.3質量%含有するものであり、この遊離アミノ酸含量は、上記の本酵素分解物と、低分子ペプチド混合物に含まれる遊離アミノ酸により主に供される。そして特定量の遊離アミノ酸や、含脂大豆由来抽出物や大豆粉中の低分子ペプチド等の成分の存在が、パンの発酵種を調製したときに酵母の発酵を活性化させる一つの因子となっているためか、カルボン酸エステル、中鎖脂肪酸エステル、アルデヒド、高級アルコール、有機酸等のパンにとって好ましい香気成分や旨味又はコク味成分が高い濃度で醸成されやすくなる。
本発明のパン発酵種調製用素材は、上記a)~c)の原料又は成分を含有するものであり、これらの条件を満たすものであれば、他の原料は特に限定されるものではない。他の原料として、例えば水、有機酸等のpH調整剤、糖類、塩類、酵素等を加えることができる。
本発明のパン発酵種調製用素材は、その形態が液状でも粉末状でもよく、液状の場合は水分含量は60~95質量%が好ましく、70~95質量%がより好ましく、80~90質量%がさらに好ましい。
本発明のパン発酵種調製用素材は、上記の原料を水と混合し、得られる調合液を遊離アミノ酸を増加させるために必要により蛋白質分解酵素による処理を行った後、必要十分な加熱殺菌を行い、密閉容器に充填して液体製品としたり、さらに該加熱殺菌後にスプレードライヤー等で乾燥した粉末製品とする等、各種形態の製品に仕上げることができる。上記調合液はpH調整剤として無機酸、有機酸又はこれらの塩や、アルカリ等を添加して所望のpHに調整することができる。好ましい実施態様として、pHは保存性を考慮してpH3~6に調整することができる。
上記により得られた本発明のパン発酵種調製用素材を発酵種の原料として加え、酵母で発酵させて発酵種を調製する。発酵種は液状、流動状、固体状の何れの発酵種にも適用でき、液種、中種、サワー種、ルヴァン種、酒種等の種の種類を問わない。特に液状又は流動状の発酵種に適用するのがより好ましい。
該発酵種中における本発明のパン発酵種調製用素材の添加量は、発酵種に十分な量の遊離アミノ酸を供給できるように適宜調整すればよく、具体的には固形分換算で1~5質量%が適当であり、2~4質量%がより好ましい。
発酵種の他の原料としては、小麦粉、ライ麦粉等の穀粉類、水、糖類、食塩等を用いることができ、これらを調合する。
このようにして本発明のパン発酵種調製用素材を添加して調製されたパン発酵種は、一般的なパンの製造において調製される液種や中種等に比べて香気成分や旨味又はコク味成分に有意に富むものとなる。
本発明において、パンとは、食パン,クロワッサン,デニッシュペーストリー,フランスパン,チャバタ,フォカッチャ,ナン,ピザ,ベーグル,イングリッシュマフィン,菓子パン、イーストドーナツ、クラッカー等をいう。
パンの製造法は常法に則ればよく、一般的には、小麦粉、全粒粉、米粉等の穀粉、水、イースト、糖類、食塩、油脂等の原料を混練して生地を調製し、所望の形状に成形した後に、オーブン等により焼成したり、フライ等することにより製造される。
パン生地を調製する方法としては、本発明においては発酵種を用いる製法が適しており、中種法、液種法や湯種法のように、原料の一部を用いて先に種生地を調製後、残りの原料を加えて本生地を調製する方法がより好ましい。
調製したパン生地は一次発酵後又は二次発酵(ホイロ)後に冷凍し、冷凍パン生地とすることができる。
含脂大豆由来抽出物として、特開2012-16348号公報に記載の製法(不二製油株式会社の「USS」(R)製法)で製造された「低脂肪豆乳」(固形分10%、栄養成分組成(固形分中):脂質5%、タンパク質54.6%、炭水化物34.1%、P/C含量160%)を用いた。
この低脂肪豆乳を、Aspergillus属微生物由来の市販プロテアーゼ「プロテアーゼA『アマノ』SD」(天野エンザイム(株)製)で45℃で120分間加水分解を行った。次に、大豆ペプチド「ハイニュートAM」(不二製油(株)製、15%TCA可溶化率95%)を低脂肪豆乳100部に対して1部を添加し、水酸化ナトリウムでpHを5.0に調整後、90℃で60秒間、プレート殺菌を行い、パン発酵種調製用素材を得た。
実施例1において、低脂肪豆乳の固形分のうち50%を大豆粉に置き換え、水を添加して固形分が同じになるよう調整する以外は、実施例1と同様にして、パン発酵種調製用素材を得た。
実施例1において、低脂肪豆乳の固形分を大豆粉に完全に置き換え、水を添加して固形分が同じになるよう調整する以外は、実施例1と同様にして、パン発酵種調製用素材を得た。
実施例1において、含脂大豆由来抽出物として、低脂肪豆乳の代わりに無調整豆乳(キッコーマンソイフーズ(株)製、固形分10%、栄養成分組成(固形分中):脂質37%、蛋白質45%、炭水化物16%、P/C含量281%)を用いる以外は、実施例1と同様にして、パン発酵種調製用素材を得た。
実施例1において、低脂肪豆乳の全量を水に置き換え、プロテアーゼの反応を行わずにグルタミン酸ナトリウムを遊離グルタミン酸量が実施例1のパン発酵種調製用素材と同じになるように添加し、それ以外は実施例1と同様にして、パン発酵種調製用素材を得た。
実施例1において、低脂肪豆乳をプロテアーゼで加水分解せずに、代わりにグルタミン酸ナトリウムを遊離グルタミン酸量が実施例1のパン発酵種調製用素材と同じになるように添加し、それ以外は実施例1と同様にして、パン発酵種調製用素材を得た。
実施例1において、含脂大豆由来抽出物として、低脂肪豆乳の代わりに実施例5の無調整豆乳を用い、該無調整豆乳をプロテアーゼで加水分解せずに、代わりにグルタミン酸ナトリウムを遊離グルタミン酸量が実施例1のパン発酵種調製用素材と同じになるように添加し、それ以外は実施例1と同様にして、パン発酵種調製用素材を得た。
実施例1~4及び比較例1~3で得られたパン発酵種調製用素材を用い、表2の配合の原材料を混合した後、28℃で16~24時間、15℃で12~16時間、4℃で4~24時間発酵させて、パン発酵種の一種である液種を調製した。
また、比較例4として、表1においてパン発酵種調製用素材の配合量を0部とし、通常用いられる標準的な液種を調製した。
5名の社内パネラーが、得られた各液種を口に含んで風味をチェックし、合議による評価コメントを表3に記した。
なお、遊離アミノ酸分析は、液種のサンプルを10倍希釈した液と6%スルホサリチル酸溶液を1:1の容量比で混合し、これを遠心分離して沈殿を除去し、さらに0.22μmのフィルターで処理したものを分析サンプルとした。分析機器は全自動アミノ酸分析器「JLC-500/V」(日本電子(株)製)を用いた。
また、有機酸分析は、液種のサンプルを10倍希釈になるよう水抽出を行い、上清をろ紙(No.1)でろ過後、「SepPack tC18」(Waters社製)に通して脂質成分を取り除き、0.2μmのフィルター処理(ニトロセルロース)をしたものを分析サンプルとした。分析条件は以下の通りとした。
・分析機器:イオンクロマトグラフ「コンパクトIC-861システム」(Metrohm社製)
・カラム:Shodex RSpak KC-811(昭和電工(株)製、内径8.0mm×長さ300mm)2本
・溶離液:2mM HClO4(シュウ酸以外)、5mM HClO4(シュウ酸)
・サプレッサー:40mM NaOH(シュウ酸以外)、120mM NaOH(シュウ酸)
・流速:1.0mL/分
・カラム温度:50℃
・検出器:電気伝導度計
各アミノ酸で見ると、実施例1の液種は、他の比較例の液種に比べてVal、Pheが10倍以上、Tyr、Leuが5倍以上、Asp、His、Thr、Asn、Ala、Lysが3倍以上となった。以上の結果は、実施例1の液種において、パン酵母による発酵が比較例1~4の液種よりも活発に行われたことを示唆している。
実施例1と比較例4の液種を用いてパンを試作した。
具体的には、表7の配合に従って、全原材料をミキシングして調製したパン生地を、28℃で1時間発酵させて、分割及び成型した後、35℃の温度、75%の湿度のホイロで発酵させ、約2倍~3倍程度に生地を膨張させた後、オーブンで焼成してコッペパンを製造した。得られたパン中の遊離アミノ酸含量と15%TCA可溶化率(ペプチドの低分子化の指標)を測定した。また、得られたパンについて社内のパンに関する熟練パネラー5名に依頼し、下記の判定基準により合議によって1~5点の点数をつけて風味評価を行った。
これは、表10の風味評価の結果と合わせて考察すると、パン生地の本発酵中に、パン酵母のGluや低分子ペプチドの代謝が実施例1のパンでは極めて活発に促進され、高級アルコールやカルボン酸エステル等の旨味又はコク味となる代謝産物を多く産生し、液種で醸成蓄積された旨味又はコク味を、更に上乗せしてより美味しくなったものと考えられる。
Claims (12)
- a)含脂大豆由来抽出物の酵素分解物及び/又は大豆粉の酵素分解物を含有すること、
b)低分子ペプチド混合物を含有すること、
c)遊離アミノ酸含量が固形分中0.1~0.5質量%であること、
を特徴とする、パン発酵種調製用素材。 - 含脂大豆由来抽出物の酵素分解物の15%TCA可溶率が30%以上である、請求項1記載のパン発酵種調製用素材。
- 含脂大豆由来抽出物の酵素分解物が、固形分換算で60~95質量%含有する、請求項1又は2記載のパン発酵種調製用素材。
- 含脂大豆の脂質含量が固形分中12質量%以上である、請求項1~3の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材。
- 含脂大豆由来抽出物の脂質含量が固形分中15質量%以下である、請求項1~4の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材。
- 含脂大豆由来抽出物の炭水化物に対する蛋白質含量が100~200質量%である、請求項1~5の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材。
- 含脂大豆が予めNSI15~77となるように加熱処理されたものである、請求項1~6の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材。
- 低分子ペプチド混合物が植物由来、乳由来又は微生物由来である、請求項1~7の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材。
- 低分子ペプチド混合物の15%TCA可溶率が、50%以上である、請求項1~8の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材。
- パン発酵種の原料として、請求項1~9の何れか1項記載のパン発酵種調製用素材および穀粉を混合し、酵母により発酵させることを特徴とする、パン発酵種の製造法。
- パン発酵種が、湯種又は中種である、請求項10記載のパン発酵種の製造法。
- 請求項10又は11記載のパン発酵種を生地配合中に添加することを特徴とする、パンの製造法。
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