以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置1の構成を示す概略図である。図において、記録媒体Mの搬送方向と直交する方向(第1の方向)をX方向、記録媒体Mの搬送方向(第2の方向)をY方向としている。またX-Y平面から垂直上方をZ方向とする。他の図においても同様である。
本実施形態のインクジェット記録装置1は、複数のノズル233がX方向に直線的に並んだノズル列234を有する。このノズル列234は記録ヘッド232に設けられている。そして、インクジェット記録装置1は、記録ヘッド232を複数有する記録ヘッドユニット23を有し、この記録ヘッドユニット23がさらにY方向に並べて複数配置されている。インクジェット記録装置1は、記録ヘッドユニット23に対して、ノズル233の配列方向と直交する方向(Y方向)に記録媒体Mを相対的に移動させて画像を記録(印刷)する。本実施形態は、記録媒体を移動させている。このようなインクジェット記録装置1は、シングルパス方式と言われている。
このインクジェット記録装置1は、記録媒体格納供給部10と、画像記録部20と、記録媒体排出部30と、制御部40(図4参照)とを有する。インクジェット記録装置1は、制御部40による制御下で、記録媒体格納供給部10に格納された記録媒体Mを画像記録部20に搬送し、画像記録部20で記録媒体Mに画像を記録し、画像が記録された記録媒体Mを記録媒体排出部30に搬送する。記録媒体Mとしては、たとえば、紙、布帛、またはシート状の樹脂等、表面に吐出されたインクを固着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。また、記録媒体Mの形態は、たとえば、ロール状(布帛においては反物でもよい)であっても折りたたんだ長尺物等であってもよく、また、任意の大きさ(ただし記録可能な大きさ)にカットされたものであってもよい。
記録媒体格納供給部10は、記録媒体Mを格納する記録媒体トレー11と、記録媒体トレー11から記録媒体Mを供給して搬送する媒体供給部12と、受け渡しドラム13とを有する。なお、ロール状の記録媒体を用いる場合は、記録媒体トレー11に代えて、ロール状の記録媒体を保持し、送り出すことのできる専用のホルダーが使用される。
媒体供給部12は、内側が2本のローラー121および122により支持された無端ベルト123を有する。媒体供給部12は、無端ベルト123上に記録媒体Mを載置した状態でローラー121および122を回転させることによって、記録媒体Mを記録媒体トレー11から取り出して、受け渡しドラム13へ搬送する。
受け渡しドラム13は、媒体供給部12により取り出された記録媒体Mを画像記録部20の搬送部21に引き渡す。受け渡しドラム13は、媒体供給部12と搬送部21との間の位置に設けられ、媒体供給部12により搬送された記録媒体Mの一端を保持して取り上げて搬送部21に引き渡す。なお、媒体供給部12と受け渡しドラム13との間に、媒体供給部12から受け渡しドラム13へ記録媒体Mを受け渡すスイングアーム部が設けられていてもよい。
画像記録部20は、搬送部21と、加熱部22と、記録ヘッドユニット23と、定着部24と、読取部25とを有する。
搬送部21は、図1のX方向に延びる回転軸を中心に回転する2本の搬送ローラー211および212を有する。2本の搬送ローラー211および212は、内側から無端ベルト状の搬送ベルト213を支持する。搬送部21は、搬送ベルト213の搬送面上に受け渡しドラム13から引き渡された記録媒体Mが載置される。搬送部21は、搬送ローラー211および212を回転させることによって搬送ベルト213を移動させる。これにより、搬送ベルト213の移動方向に記録媒体Mが搬送される。搬送ベルト213の移動方向は、記録媒体Mの搬送方向であり、図1のY方向である。
加熱部22は、搬送ベルト213の搬送面に載置された記録媒体Mを加熱する。加熱部22は、たとえば赤外線ヒーター等を有し、制御部40から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電して発熱する。加熱部22は、搬送ベルト213の搬送面の近傍であって、記録媒体Mの搬送方向において記録ヘッドユニット23の上流側に位置するように設けられる。加熱部22は、搬送ベルト213の搬送面に載置されて、加熱部22の近傍を通過する記録媒体Mが所定範囲内の温度となるように、制御部40により制御される。なお、加熱部22は、加熱する必要のない記録媒体Mを用いる場合は、なくてもよい。
記録ヘッドユニット23は、記録媒体Mが載置された搬送ベルト213の周回移動に応じて記録媒体Mに対してインクを吐出して画像を記録する。記録ヘッドユニット23は、インク吐出面が搬送ベルト213に対向して所定の距離をおいて配置される。本実施形態のインクジェット記録装置1では、複数の色に対応するために、複数の記録ヘッドユニット23が記録媒体Mの搬送方向(Y方向)に配置されている。
図2は、複数の記録ヘッドユニット23の配列を説明するための模式図である。図2は、搬送ベルト213上に配置された記録ヘッドユニット23を上から見た図である。
記録ヘッドユニット23は、記録媒体Mの搬送方向(Y方向)の上流側からシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、オレンジ(O)、およびブルー(B)の色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。したがって、本実施形態では、6色分の記録ヘッドユニット23が配置されている。
図3は、記録ヘッドユニット23の内部構成を示す模式図である。ここでは、記録ヘッドユニット23のうち搬送ベルト213の搬送面と対向する面が示されている。
1つの記録ヘッドユニット23は、複数の記録ヘッド232(1)~232(n)を有する。ここで符号の内カッコ内の1~nは1つの記録ヘッドユニット23内にある記録ヘッドを個別に識別するための番号である。なお、以下の説明においては、記録ヘッド232(1)~232(n)を個別に説明する必要がない場合、または総称する場合は、記録ヘッド232とする。
複数の記録ヘッド232は、Y方向に間隔を開けて2列、各列X方向に間隔を開けて複数個、Y方向から見て互いに一部重複するように千鳥配置されている。複数の記録ヘッド232は、搬送ベルト213のX方向の長さをカバーするように設けられる。
Y方向に隣り合う記録ヘッド232は、図3に示すように、X方向に重複している範囲Rを有する。範囲Rにおいては、たとえば範囲Rにノズルを有する2つの記録ヘッド232のうち一方の記録ヘッド232のノズルのみからインクが吐出されるように設定される。これにより、本実施形態では、X方向における記録ヘッド間の繋ぎ目で記録位置が連続するようになる。
1つの記録ヘッド232は、インクが吐出される複数のノズル233が配列されたノズル列234を複数有する。複数のノズル233は、X方向に並んで配列されてノズル列234を構成する。ノズル列234はY方向に並んで4つ配置されている。なお、ノズル列234の数は4つに限定されず、1つでもよいし2つ以上の任意の数であってもよい。また、各ノズル列234は、X方向においてノズル233の配列間隔の2分の1だけ互いにずれた状態で配置されていてもよい。
各ノズル233は、インクを吐出するための駆動素子を有する。駆動素子は、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子とを備える。後述する記録ヘッド駆動部231(図4参照)は、圧電素子に対して、圧電素子を変形動作させる駆動波形の電圧信号を印加する。圧電素子は、この電圧信号に応じて圧力室内の圧力を変化させて、圧力室に連通するノズル233からインクが吐出される。
記録ヘッド駆動部231は、各記録ヘッド232に対して画像データに応じた駆動波形の電圧信号を供給する駆動回路と、この駆動回路に適切なタイミングで画像データを供給する駆動制御回路とを有する。ここで、記録ヘッド232に対して供給される画像データは、ベクター画像データをラスタライズ処理すること等により得られるラスター画像データであってもよい。ラスター画像データは、ハーフトーン処理によって階調数がインクジェット記録装置1により表現可能な階調数に減じられたデータであってもよい。
たとえば、4階調の画像データが用いられる場合は、画像データの各画素の階調値(画素値ともいう)[0,1,2,3]に応じてノズル233から吐出されるインクの量がそれぞれ0pL、7pL、19pL、30pLとなるように各階調値に対応する駆動波形が定められている。この場合は、各ノズル233から吐出可能な最小のインクの量は、7pLである。
このように、記録ヘッドユニット23のノズル233からは、最小量(7pL)のインクと、この最小量の非整数倍の量(19pLおよび30pL)のインクが吐出される。すなわち、ノズル233から吐出される複数段階のインク量には、一のインク量に対して相対的に多いインク量の倍率が非整数となるものが含まれる。ここで、最小量の非整数倍の量のインクは、量が異なる複数のインク滴をノズル233から連続して吐出し、これらの複数のインク滴を記録媒体Mへの着弾前に空中で一体化させることにより生成されてもよい。
インクは、たとえば、温度によってゲル状またはゾル状に相変化し、また紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化する性質を有するものが用いられる。
各記録ヘッドユニット23は、図示しないインク加熱部を備える。このインク加熱部は、制御部40による制御下で動作し、記録ヘッドユニット23内に貯留されるインクをゾル状となる温度に加熱する。記録ヘッド232は、加熱されてゾル状となったインクを吐出する。
定着部24は、搬送ベルト213のX方向の幅に渡って配置された発光部を有する。定着部24は、搬送ベルト213に載置された記録媒体Mに対して、発光部から紫外線等のエネルギー線を照射することによって、記録媒体M上に吐出されたインクを硬化させて、インクを記録媒体Mに定着させる。定着部24の発光部は、搬送方向において記録ヘッドユニット23の下流側に、搬送ベルト213と対向して配置される。なお、紫外線照射による硬化処理が不要なインクが使用される場合、定着部24はなくてもよい。
読取部25は、定着部24よりも搬送方向下流側の位置に、搬送ベルト213に対向して配置されている。読取部25は、搬送ベルト213により搬送される記録媒体Mに記録されている画像を所定の読取範囲で読み取って、記録されている画像の2次元画像データを出力する。
読取部25は、搬送ベルト213により搬送される記録媒体Mに対して光を照射する光源(不図示)と、記録媒体Mに入射した光の反射光の強度を検出する複数の受光素子がY方向に配列されたラインイメージセンサー251とを有する。また、読取部25は、ラインイメージセンサー251をX方向へ移動させるためのレール252および駆動機構(不図示)を有する。読取部25は、ラインイメージセンサー251をレール252に沿って移動させることによって、画像を読み取る。この画像の読み取り方向を走査方向という。
ラインイメージセンサー251は、周知のように、1列(または2列の千鳥配置)に並んで配置された画素となる受光素子を有し、ライン状に画像を読み取る。ラインイメージセンサー251の画素が並ぶ方向は、Y方向、すなわち搬送方向である。
ここで仮に、記録ヘッドユニット23内の各記録ヘッド232からX方向に1直線となる画像を記録した場合に、各記録ヘッド232間におけるインクのY方向の記録位置にずれがなく、かつ読取部25がY方向にずれることなく、X方向に走行したとする。そうすると、X方向に1直線の画像は、ラインイメージセンサー251の、同じ1つの画素(または数画素)で読み取られて、他の画素で読み取られることはない。逆に、各記録ヘッド232間におけるインクのY方向の記録位置のずれ、または読取部25がY方向にずれて走行した場合は、X方向に1直線の画像は、読取部25の移動にともないラインイメージセンサー251の複数の異なる画素で読み取られる。
なお、読取部25の構成はこれに限られず、たとえばラインイメージセンサー251に代えてエリアイメージセンサーを用いてもよい。エリアイメージセンサーを用いる場合も、記録媒体のX方向における長さが、エリアイメージセンサーの画像読み取り範囲を超える場合は、エリアイメージセンサーをX方向へ移動させて画像を読み取る。
記録媒体排出部30は、受け渡しドラム31と、デリバリー部32と、排出トレー33とを有する。
受け渡しドラム31は、搬送部21により搬送された記録媒体Mを、読取部25の搬送方向下流側で受け取ってデリバリー部32に引き渡す。なお、搬送部21からデリバリー部32へ記録媒体Mを受け渡す機構は、受け渡しドラム31を用いたものに限られず、他の公知の機構を用いてもよい。
デリバリー部32は、内側が2本の搬送ローラー321および322により支持された無端ベルト323を有する。デリバリー部32は、受け渡しドラム31により搬送部21から無端ベルト323上に受け渡された記録媒体Mを、無端ベルト323により搬送して排出トレー33に送出する。
排出トレー33は、デリバリー部32により搬送された記録媒体Mが載置される板状の部材である。
図4は、インクジェット記録装置1の制御部40の構成を説明するためのブロック図である。
インクジェット記録装置1の制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)および記憶部44を有する。したがって、制御部40はコンピューターである。制御部40は、加熱部22、記録ヘッドユニット23内の記録ヘッド232を駆動する記録ヘッド駆動部231、定着部24、読取部25、搬送駆動部51、操作表示部52、およびインターフェース53などとバス54により接続されていて各部を制御する。なお、図4においては、記録ヘッドユニット23とその中の記録ヘッド232および記録ヘッド駆動部231は、いずれも1つだけ描いているが、実際は、1つの制御部40に対して、複数の記録ヘッドユニット23が設けられ、1つの記録ヘッドユニット23の中に複数の記録ヘッド232と、複数の記録ヘッド232を駆動する記録ヘッド駆動部231が設けられる。
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、このプログラムを実行して各種演算処理を行う。CPU41は、これによりインクジェット記録装置1全体の動作を制御する。たとえば、CPU41は、記憶部44に記憶された画像データに基づいて、記録媒体格納供給部10、画像記録部20および記録媒体排出部30の各部を動作させて記録媒体Mに画像を記録させる。
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。また、RAM42には、後述する不良ノズル情報や、画像データのうち補正を行っている画素行の行番号を示す変数Nが記憶される。なお、RAM42は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。ROM43は、マスクROMのほかに、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
記憶部44は、HDD(Hard Disk Drive)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成される。記憶部44には、後述するテストパターンを記録するために必要な画像データ、インターフェース53を介して外部装置2から入力された画像データ、および読取部25により読み取って得られた画像データなどが記憶される。記憶部44は、フラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
たとえば、記録媒体Mに画像が記録される場合は、画像データを含む印刷ジョブが外部装置2から入力される。入力される画像データとしては、たとえばRGB表色系のフルカラー画像データに対して色変換処理を行ってCMYKOBの各色系に変換し、ディザ処理や誤差拡散処理といったハーフトーン処理により各画素の階調数をインクジェット記録装置1により表現可能な階調数に減じたデータが使用される。なお、これらの色変換処理やハーフトーン処理は、インクジェット記録装置1の制御部40、または制御部40とは別に設けられた画像処理装置において行われてもよい。また、外部装置2から直接CMYKOBの色ごとに独立した画像データが入力されてもよい。
搬送駆動部51は、CPU41から供給される制御信号に基づいて、搬送部21の搬送ローラー211および212を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、搬送ローラー211および212を所定の速度およびタイミングで回転させる。また、搬送駆動部51は、CPU41から供給される制御信号に基づいて、媒体供給部12、受け渡しドラム13および31およびデリバリー部32を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、受け渡しドラム13および31およびデリバリー部32を所定の速度およびタイミングで動作させる。
記録ヘッド駆動部231は、CPU41から供給される制御信号および画像データに基づいて、記録ヘッド232にインクの吐出を行わせる。詳しく説明すると、記録ヘッド駆動部231は、CPU41から制御信号および画像データが供給される。記録ヘッド駆動部231は、この画像データに基づき記録ヘッド232内の圧電素子に駆動波形の電圧信号を出力し、ノズル233から画像データの階調値に応じた量のインクを吐出させる。これによりインクジェット記録装置1は、画像データによって示される画像を記録媒体Mに記録する。
操作表示部52は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネルといった入力装置とを有する。操作表示部52は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御部40に出力する。また、操作表示部52は、後述するエラー発生時においては、制御部40からの指示によりエラー内容に応じた警告を表示する警告部となる。警告部としては表示以外にも、警告音や音声で警告を外部に知らせるための音響装置を有していてもよい。
インターフェース53は、外部装置2との間でデータの送受信を行う手段であり、たとえば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれかまたはこれらの組み合わせで構成される。
外部装置2は、たとえばサーバーやパーソナルコンピューターであり、インターフェース53を介して画像記録命令(チケット)および画像データ等を含む印刷ジョブを制御部40に供給する。
次に、このインクジェット記録装置1における記録位置の補正について説明する。
まず、補正に用いるテストパターンを説明する。図5は、記録媒体に記録されたテストパターンの画像例を示す図である。
このテストパターンは、各色の記録ヘッドユニット23ごとに記録する記録列マーカー101~106、決められた色の記録ヘッドユニット23のみで記録する基準マーカー110、読取部25の走行方向を校正するための校正パターン111、および画像読み取りの範囲を示す範囲マーカー112を有する。
記録列マーカー101~106について説明する。本実施形態では、既に説明したように、記録ヘッド232にはノズル233が4列ある。記録列マーカー101~106は、各色の記録ヘッドユニット23のすべてのノズル233からインクを吐出して、X方向に1直線の画像がY方向に間隔を開けて記録される。記録列マーカー101~106は、記録ヘッド232ごとに、基準マーカー110とX方向に隣接して記録される。このとき、記録列マーカー101~106のY方向に間隔を開けるための記録タイミングは、後述する基準マーカー110がY方向に間隔を開けるための記録タイミングと同じである。しかし、補正処理前の段階では、記録タイミングを同じにしても、記録列マーカー101~106のY方向の位置と、基準マーカー110のY方向の位置は同じにならない場合がある。本実施形態における補正処理は、このようなずれを補正するためのものである。
記録列マーカー101~106は、図5に示すように、色ごとに4本のX方向に並んだ直線が基準マーカー110と交互に描かれた画像となっている。図5においては、シアンの4本の直線(記録列マーカー101)は、シアンの記録ヘッドユニット23(C)により記録される。同様に、マゼンタの4本の直線(記録列マーカー102)はマゼンタの記録ヘッドユニット23(M)により記録される。イエローの4本の直線(記録列マーカー103)はイエローの記録ヘッドユニット23(Y)により記録される。ブラックの4本の直線(記録列マーカー104)はブラックの記録ヘッドユニット23(K)により記録される。オレンジの4本の直線(記録列マーカー105)はオレンジの記録ヘッドユニット23(O)により記録される。ブルーの4本の直線(記録列マーカー106)はブルーの記録ヘッドユニット23(B)により記録される。
なお、図5において、各符号に添えられているカッコ内の数字は、図3同様に、記録ヘッド232に対応した基準マーカーおよび記録列マーカーを個別に識別するための番号である。基準マーカー110および記録列マーカー101~106を区別して説明する必要がない場合は、それぞれ基準マーカー110および記録列マーカー101~106という。
記録列マーカー101~106は、記録ヘッド232ごとに、X方向に可能な限り長く記録されることが好ましい。本実施形態では、記録列マーカー101~106は、基準マーカー110と重ならない程度の長さとなるように記録されている。これにより、記録列マーカー101~106が読み取られたときに、記録ヘッド232のX方向に対する傾斜が認識され易くなる。
基準マーカー110は、1色、すなわち1つの記録ヘッドユニット23によって記録される。基準マーカー110は、記録ヘッドユニット23内の記録ヘッド232の数だけX方向に記録される。また、基準マーカー110は、テストパターン記録中は継続して、Y方向に間隔を開けて記録される。これに対し、記録列マーカー101~106は色ごとに記録される。
本実施形態においては、基準マーカー110は、ブラックを記録する記録ヘッドユニット23(K)により記録される。これは、記録ヘッドユニット23(K)は、Y方向において、他の5色のほぼ中間に位置するため、記録ヘッドユニット23(K)により記録された直線を基準とすることで、補正量の絶対値を少なくできる。なお、基準マーカー110は、ブラック以外の色を記録する記録ヘッドユニット23により記録されてもよい。
校正パターン111は、X方向に移動するラインイメージセンサー251の走行方向を校正するためのパターンである。この校正パターン111は、テストパターンを記録する記録媒体上に、記録媒体のX方向全体に渡り記録された直線である。
校正パターン111は、記録媒体のX方向全体に渡りY方向にずれのない直線として記録されている必要がある。この点、補正処理前の記録ヘッドユニット23による記録では、X方向全体に渡りY方向にずれのない直線を正確に記録することができない。このため、校正パターン111は、たとえば、補正処理の終わっているインクジェット記録装置1や他の装置または方法によって、記録媒体上に記録する。なお、校正パターン111の記録方法は後述する。
範囲マーカー112は、画像を読み取る範囲を示す。範囲マーカー112は、どの色によって記録されてもよい。
次に、テストパターンを使用した補正処理について説明する。図6および7は、補正処理手順を示したフローチャートである。図6は、メインルーチンのフローチャートであり、図7は、取得した画像を解析する処理のサブルーチンのフローチャートである。この補正処理手順は、この補正処理手順に基づいて作成されたプログラムを制御部40が実行することで行われる。
まず、制御部40は、既存の補正テーブルを読み込む(S11)。補正テーブルは、複数の記録ヘッド232に設けられたそれぞれのノズル列234ごとに、Y方向の記録位置を合わせるための補正量が記述されたデータテーブルである。この補正テーブルは記憶部44に記憶されている。制御部40は、補正テーブルに基づいて、ノズル列234ごとに、画像を記録する記録タイミングを調整する。
補正テーブルによる記録タイミングの調整について、簡単な具体例を用いて説明する。たとえば、記録する画像の中のある記録点(ドット)の位置がY方向に300画素搬送された位置であったとする。一方、補正テーブルには、この記録点を記録するノズル列234に対する補正量として100画素という値が記述されていたとする。この場合、制御部40は、指示に従い300画素目に画像を記録することになるが、さらに補正テーブルに基づいて100画素加算した400画素目に記録点を記録するように記録タイミングを調整する。
補正テーブルは、一度も補正処理をしていない段階では、製造段階での記録ヘッド232のずれを推定して記録ヘッド232ごとに記録位置がある程度一致するように作成されている。しかし、補正テーブルは、たとえば、すべてのノズル列の記録タイミングが同じ(たとえば0(ゼロ))であってもよい。
続いて、制御部40は、この段階で記憶部44に記憶されている補正テーブルを使用して、記録媒体へテストパターンを記録させる(S12)。このとき、校正パターン111は、他のマーカーと一緒に記録してもよいし、あらかじめ校正パターン111が記録されている記録媒体に他のマーカーを記録してもよい。校正パターン111の記録方法は、後述する。なお、あらかじめ校正パターン111が記録されている記録媒体に他のマーカーを記録する場合は、校正パターン111が範囲マーカー112の範囲内に入っていて、かつ、記録列マーカー101~106および基準マーカー110と重ならないように、テストパターンの記録位置が調整される。
テストパターンを記録する際の搬送速度は、実使用時と同じである。記録媒体上に、複数の同じテストパターンが繰り返し記録されてもよい。
続いて、制御部40は、読取部25によりテストパターンを読み取らせる(S13)。この段階では、テストパターンの記録は終了しているため、制御部40は、記録媒体の搬送を停止させてテストパターンを読み取らせる。
続いて、制御部40は、取得した画像を解析する(S14)。制御部40は、取得した画像を解析することにより補正量を求める。この処理については後述する。
続いて、制御部40は、S14で得られた解析結果に基づいて、補正テーブルを更新する(S15)。制御部40は、更新した補正テーブルを、記憶部44に記憶し、記録媒体に画像を記録する際にはRAM42などに読み出して使用する。
図7を参照して、テストパターン画像の解析処理を説明する。
まず、制御部40は、取得されているテストパターン画像から、解析範囲を特定する(S21)。解析範囲は、範囲マーカー112の範囲内である。
続いて、制御部40は、基準マーカー110の位置を校正パターン111と対比して算出する(S22)。ここで、基準マーカー110は、記録ヘッド232ごとに記録されているので(図5における基準マーカー110(1)、110(2)、110(3))、基準マーカー110ごとに位置が算出される。これにより、校正パターン111を基準として基準マーカー110の位置が算出される。したがって、S22の処理により、本実施形態では、複数の基準マーカー110間でY方向の位置に差があれば、その差を校正することができる。このため、本実施形態では、仮に、読取部25のラインイメージセンサー521の走行がY方向にずれていたとしても、基準マーカー110の位置は校正パターン111により校正されて、記録媒体のX方向全体に渡りY方向に読み取り誤差のない状態にできる。
続いて、制御部40は、記録列マーカー101~106の位置を校正パターン111と対比して算出するとともに、代表値を特定する(S23)。ここで、記録列マーカー101~106は、記録ヘッド232ごとに記録されているので、記録列マーカー101~106ごとに複数箇所で位置が算出される。これにより、記録列マーカー101~106の位置も、基準マーカー110同様に、校正パターン111により校正されて、記録媒体のX方向全体に渡りY方向に読み取り誤差のない状態にできる。
また、この段階で記録列マーカー101~106の位置の代表値が特定される。代表値は、後述するS24における基準マーカー110に対する記録列マーカー101~106のずれ量を算出する際に用いられる。記録列マーカー101~106は、X方向に長く延びて形成される。基準マーカー110に対する記録列マーカー101~106のずれ量を算出する際に、1つの記録列マーカーの直線を構成しているすべての記録点(ドット)について、基準マーカー110とのずれ量を算出してもよいが、その場合、データ数も多くなり、算出に掛かる時間が長くなる。本実施形態では、1つの記録列マーカーの直線を構成するドットの中から算出点として複数箇所を選び、それらの算出点の位置から代表値が特定される。たとえば、図5に矢印として示すように、複数の算出点120が設定される(算出点120は記録媒体に記録されなくてよい)。この例では、算出点120は、記録ヘッド232ごとの1つの記録列マーカーに対してX方向に6点としている。本実施形態では、この算出点120において、校正パターン111に対する記録列マーカー101~106の位置を算出し、算出された位置の平均値または中心値などに基づいて代表値が特定される。
制御部40は、代表値を特定する際に、算出点120間で、校正パターン111から算出された位置に、ばらつきが大きい場合には、エラーなどとして処理を中断し、ユーザーに警告する。校正パターン111から算出された位置にばらつきが大きくなる原因は、たとえば、記録ヘッドユニット23に対する記録ヘッド232の取り付け誤差が大きい場合や傾いている場合などである。このような場合は、記録タイミングの制御だけでは、Y方向の記録位置を補正できないこともあるので、エラーとしたり、警告したりしてユーザーにその他の対策を促すことが好ましい。
なお、S22において基準マーカー110の位置を算出する際にも、複数のノズル233によって記録されたドットの中から基準マーカー110の代表値を使用するが、基準マーカー110は、記録列マーカー101~106と比較して短いので、複数の算出点120から代表値を決める必要はなく、任意のいずれか1点を代表値とすればよい。このため、代表値を特定するための処理は必要ない。任意のいずれか1点はたとえば基準マーカー110のX方向の真ん中などとすればよい。もちろん、基準マーカー110においても、複数の算出点120を用いて代表値を求めることとしてもよい。
続いて、制御部40は、記録ヘッド232ごとに基準マーカー110に対する記録列マーカー101~106のそれぞれのずれ量を算出する(S24)。このずれ量の算出は、記録列マーカー101~106のそれぞれの代表値を用いて行われる。図5を参照して説明すると、たとえば、シアンの記録ヘッドユニット23においては、基準マーカー110(1)と記録列マーカー101(1)とが対比されてずれ量が算出され、基準マーカー110(2)と記録列マーカー101(2)とが対比されてずれ量が算出され、同様に、記録ヘッド232の個数(n)分だけ、ずれ量が算出される。他の色の記録ヘッドユニット23においても同様である。ただし、本実施形態においては、ブラックを基準マーカー110として使用しているので、ブラックにおいては、記録列マーカー104と基準マーカー110のずれ量を算出する必要はない。または、ブラックにおいては、基準マーカー110だけ記録し、記録列マーカーを記録しなくてもよい。
なお、このS24の段階においても、算出されたずれ量が、ずれ量の所定範囲を超える場合、記録タイミングの制御だけでは、解決できない場合があるので、エラーとしたり、警告したりしてユーザーにその他の対策を促すことが好ましい。
続いて、制御部40は、記録ヘッド232ごとの基準マーカー110間のずれ量分を補正する(S25)。複数の記録ヘッド232間においてもずれがあるため、基準マーカー110同士の間でもY方向においてずれがある。これを、ここでは、基準マーカー110間のずれ量という。制御部40は、S25において、S24で算出した基準マーカー110と記録列マーカーとのずれ量を、基準マーカー110間のずれ量分で補正する。これにより、すべてのノズル列234に対するY方向の記録タイミングを合わせるための補正量が得られる。
さらに、上記の処理内容について、具体例を用いて説明する(後掲の表1参照)。
まず、S22および23における校正パターン111との対比による位置の算出例を説明する。位置の算出に用いる値は、ここでは、画素数とする。なお、位置の算出に用いる値は、距離でもよいし、あるいは制御部40が演算で使用する座標値などでもよい。距離は、画素数、ラインイメージセンサー251の画素間距離、およびレンズの倍率などから算出される。
基準マーカー110の位置は、たとえば、校正パターン111と基準マーカー110との差分を算出することによって得られる。例として、図5を参照して説明する。図5およびこの説明において画素数は[ ]により示した。また、以下の説明において、読み取り画素数とは、単純に、ラインイメージセンサーによりマーカーを読み取った画素の位置をラインイメージセンサーの基準となる画素(たとえば画素数0)から数えた画素数である。
基準マーカー110(1)における1つの直線のY方向における読み取り画素数が[610]であったとする。このとき、校正パターン111上のX方向の同じ位置におけるY方向の読み取り画素数が[100]であったとする。そうすると、基準マーカー110(1)の位置=[610]-[100]=[510]となる。
また、基準マーカー110(2)におけるY方向の1つの直線の読み取り画素数が[613]であったとする。校正パターン111上のX方向の同じ位置におけるY方向の読み取り画素数が[102]であったとする。そうすると、基準マーカー110(2)の位置=[613]-[102]=[511]となる。
これらの結果から、基準マーカー110(1)の位置[510]と基準マーカー110(2)の位置[511]は、1画素分Y方向にずれていることがわかる。
記録列マーカー101~106の位置も同様に、たとえば、校正パターン111と記録列マーカー101~106との差分を算出することによって得られる。
図5を参照して、記録列マーカー106(1)におけるY方向の最初(搬送方向先頭)の1つの直線の読み取り画素数(代表値)が[611]であったとする。これに対応する校正パターン111の読み取り画素数が[100]であったとする。そうすると、記録列マーカー106(1)の位置=[611]-[100]=[511]となる。
また、記録列マーカー106(2)におけるY方向の最初(搬送方向先頭)の1つの直線の読み取り画素数(代表値)が[613]であったとする。これに対応する校正パターン111の読み取り画素数が[102]であったとする。そうすると、記録列マーカー106(2)の位置=[613]-[102]=[511]となる。
これらの結果から、記録列マーカー106(1)の位置[511]と記録列マーカー106(2)の位置[511]は、Y方向にずれていないことがわかる。
なお、校正パターン111との差分を取る方法は、あくまでも一例であり、基準マーカー110および記録列マーカー101~106のそれぞれの位置を求める方法は、このような方法に限定されない。
次に、S24の基準マーカー110に対する記録列マーカー101~106のそれぞれのずれ量を算出する処理について説明する。
上記の例では、基準マーカー110(1)の位置[510]、記録列マーカー106(1)の位置[511]であるから、記録ヘッド232(1)は、Y方向において1画素分進む方向にずれている。また、基準マーカー110(2)の位置[511]、記録列マーカー106(2)の位置=511であるから、記録ヘッド232(2)は、ずれていない。
次に、S25の基準マーカー110間のずれ量分を補正する処理について説明する。上記の例では、基準マーカー110(1)の位置[510]、基準マーカー110(2)の位置[511]であるから、基準マーカー110(1)に対して基準マーカー110(2)は、Y方向において1画素分進む方向にずれている。このように、基準マーカー110(1)を記録した記録ヘッド232(1)と基準マーカー110(2)を記録した記録ヘッド232(2)との間においてもずれがあることがわかる。このため、S24において算出された基準マーカー110に対する記録例マーカー101~106のずれ量は、もともとの基準マーカー110間のずれの分だけ、ずれて算出されていることになる。S25は、S24において算出された基準マーカー110に対する記録例マーカー101~106のずれ量を、もともとの基準マーカー110間のずれ量分で補正する処理である。
上記の例では、基準マーカー110(1)に対する記録列マーカー106(1)のずれは1画素、基準マーカー110(2)に対する記録列マーカー106(2)のずれは0である。これらのずれ量を、もともとの基準マーカー110(1)と基準マーカー110(2)の間のずれ量分で補正する。記録列マーカー106(1)は、基準マーカー110(1)に対して1画素進む方向にずれている。一方、記録列マーカー106(2)は、基準マーカー110(1)に対してずれていないが、基準マーカー110(2)が1画素進む方向にずれている。したがって、記録列マーカー106(2)は、基準マーカー110(1)に対しては、1画素進む方向にずれていることになる。ここで、記録列マーカーの位置が1画素進む方向にずれていることは、記録列マーカーを記録するタイミングが1画素分早いことを意味する。したがって、記録列マーカーの位置を1画素戻る方向に補正するためには、記録列マーカーを記録するタイミングを1画素分遅らせる必要がある。
そうすると、基準マーカー110(1)に記録列マーカー106(1)を合わせるためには、記録列マーカー106(1)を記録するタイミングを1画素分遅らせる。同様に、基準マーカー110(1)に記録列マーカー106(2)を合わせるためには、記録列マーカー106(2)の記録するタイミングを1画素分遅らせる。このように、S25は、記録ヘッド232間における記録列マーカー同士の位置のずれ、すなわち記録するタイミングを補正する処理であり、ここで得られた補正量に基づいて、S15において補正テーブルを更新する際の補正量が決定される。
表1は、上記の具体例をまとめたものである。表1において、「基準:記録列」は、基準マーカー:記録列マーカーの意味である。また、「補正量」は、ここでは、基準マーカー110(1)を基準として、各記録ヘッド232の記録タイミングを合わせるための補正量である。したがって、補正量0の場合は、基準マーカー110(1)を記録するタイミングと同じタイミングとなる。補正量1の場合は、基準マーカー110(1)を記録するタイミングに対して1画素分先に記録する。補正量-1の場合は、基準マーカー110(1)を記録するタイミングに対して1画素分遅く記録する。なお、この表1は、あくまでも、説明のために上記具体例をまとめたものであるので、本発明がこのような値に限定されるものではない。また、補正量の基準は、基準マーカー110(1)を記録するタイミングではなく、別途定めた基準であってもよい。
次に、S25の後、S15に戻り、得られた補正量に基づいて補正テーブルを更新する。
表2は、補正テーブルの具体例である。
例示した補正テーブルの値は、画素単位である。なお、補正テーブルの値は画素単位に限らず、たとえは制御に使用するクロック信号単位(すなわち時間単位)としてもよい。
表2に示した補正テーブルでは、5個の記録ヘッド232を例に、それぞれ記録ヘッド232に設けられた4列のノズル列234それぞれの補正量を示している。制御部40は、この補正量に基づいて、ノズル列234ごとに記録タイミングを調整して、印刷ジョブとして入力を受けた画像を記録する。
本実施形態では、以上のようにして、複数の記録ヘッド232に設けられた複数のノズル列234それぞれについて、記録タイミングを合わせるための補正テーブルの更新が行われる。なお、一回の補正動作、すなわち、テストパターンの記録から補正テーブルの更新を行っても補正が完了しない場合は、補正が完了するまで同じ補正動作を行ってもよい。
ここで、校正パターン111について説明する。
既に説明したように、校正パターン111が補正処理前のインクジェット記録装置1によって記録されると、校正パターン111自体に、Y方向のずれが生じる可能性がある。このため、インクジェット記録装置1によって記録した校正パターン111は、それ自体のずれを補正する必要がある。
校正パターン111自体のずれを補正する方法としては、たとえば、次の2つの方法がある。
第1の方法は、あらかじめ校正パターン111を記録する記録ヘッドユニット23のみ、その中の記録ヘッド232間のずれを補正しておく方法である。たとえば、ブラックにより校正パターン111を記録する場合は、ブラックのみでX方向の直線を記録し、記録ヘッド232間のずれを補正する補正テーブルを更新しておく。その後、第1の方法では、他のマーカーと同じ印刷ジョブ内で、更新した補正テーブルを用いて、ブラックにより校正パターン111も一緒に記録させる。これにより、第1の方法では、ずれのない校正パターン111を記録できる。また、この場合、基準マーカー110についても、記録ヘッド232間のずれがないので、S25による記録ヘッド232間のずれ量分の補正を省略することができる。
第2の方法は、補正前のインクジェット記録装置1によって校正パターン111に相当する線を記録して、後からずれを補正する方法である。この方法では、たとえば、記録ヘッド232で記録された基準マーカー110間のずれ量を解消するための補正値を算出する。ここでは、この補正量を基準マーカー間補正量という。そして、第2の方法では、この基準マーカー間補正量を使用して基準マーカー110の位置を校正する。
具体的には、たとえば、記録ヘッド232(1)による基準マーカー110(1)対して記録ヘッド232(2)の基準マーカー110(2)が1画素進んでいたとする。この場合は、S22における基準マーカー110の位置の算出は、単に両者の基準マーカー110のずれ量を算出する。そうするとS22の算出結果は、1画素となる。この値が、基準マーカー間補正量となる。
S23における記録列マーカー101~106のそれぞれの位置の算出においては、基準マーカー間補正量を使用して、記録列マーカー101~106のそれぞれの位置を算出する。すなわち、基準マーカー110(1)に対する記録列マーカー106(1)の位置の算出はそのまま行う。基準マーカー110(2)に対する記録列マーカー106(2)の位置の算出は、まず、基準マーカー110(2)と記録列マーカー106(2)の差分を算出する。続いて、算出された差分値から基準マーカー間補正量である1画素引く。これにより、基準マーカー110同士のずれ量が補正された記録列マーカー106(2)の位置が得られる。
このように、第2の方法は、基準マーカー110同士のずれ量を補正することで、基準マーカー110を校正パターン111と同様に働かせている。実際の処理においては、隣接する基準マーカー110同士のずれ量を算出して、互いにそのずれが解消する補正値を求めて行けばよい。
この第2の方法では、基準マーカーが校正パターンなるため、校正パターンを別途、記録しなくてよい。
なお、上記の第1の方法および第2の方法は、基準マーカー110を記録する記録ヘッドユニット23を使用して校正パターン111を記録するものとして説明したが、校正パターン111は、基準マーカー110を記録する記録ヘッドユニット23以外の記録ヘッドユニット23を使用して記録されてもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
インクジェット記録装置1は、色ごとに異なる複数の記録ヘッドユニット23を有し、各記録ヘッドユニット23は複数の記録ヘッド232を有し、さらに各記録ヘッド232は、インクを吐出する複数のノズル233を有する。このため、これら複数のノズル233から吐出されるインクによる記録位置が所定範囲内に収まるようにしなければ、記録された画像にずれや歪みが出てしまう。所定範囲は記録された画像にずれや歪みが出ないようにするための範囲である。したがって、この所定範囲は、望まれる画質にもよるが、たとえば搬送方向に1画素以内とすることが好ましく、さらに高画質を求めるのであれば、ハーフトーンなどの画像形成法に応じて1/2画素以内、さらにそれ以下の範囲とすることが好ましい。もちろん、この所定範囲は、これらの範囲に限定されない。
本実施形態では、複数設けられた記録ヘッド232内の複数のノズル列234からインクを吐出させてテストパターンを記録し、記録されたテストパターンの画像をインラインで読み取る。そして、本実施形態は、読み取り結果に基づいて、各ノズル列234から吐出されるインクによる記録位置が所定範囲内となるように、記録タイミングを補正する。このとき用いるテストパターンは、各記録ヘッド232により記録された記録列マーカー101~106と、基準となる基準マーカー110と、記録媒体におけるX方向(第1の方向:記録媒体の搬送方向と直交する方向)に渡り、Y方向(第2の方向:搬送方向)にずれのない校正パターン111と、を有する。
基準マーカー110は1つの色の記録ヘッドユニット23の記録ヘッド232により記録され、記録列マーカー101~106はすべての記録ヘッドユニット23の記録ヘッド232により記録される。制御部40がこのテストパターンを読取部25に読み取らせる。そして、制御部40は、得られた画像から、校正パターン111を使用して校正された基準マーカー110のY方向の位置を算出する。同様に、制御部40は、校正パターン111を使用して校正された記録列マーカー101~106のY方向の位置を算出する。そして、制御部40がそれぞれの位置から、基準マーカー110に対する記録列マーカー101~106のずれ量を算出して、算出結果から補正量を求める。このため、本実施形態は、複数のノズル233からなるノズル列234による記録位置の違いを正確に把握できるようになり、把握した記録位置から補正を行うことで、記録媒体の搬送方向の記録位置を正確に補正することができる。このため、搬送方向におけるずれや歪みなどのない高画質の画像を記録(印刷)することができる。
特に、本実施形態では、校正パターン111を用いることによって、読取部25が走行方向(X方向)に対して、搬送方向(Y方向)にずれて走行して、読み取り誤差が発生したとしても、校正パターン111を基準に基準マーカー110および記録列マーカー101~106の位置を校正することができる。このため、校正された基準マーカー110および記録列マーカー101~106の位置からずれ量を補正されるようになり、正確な補正量を求めることができる。また、校正パターン111を用いることによって、読取部25の取り付けに傾きがあったり、読取部25の光学系に歪みがあったりする場合においても、記録位置のずれを正確に検出でき、画像の高画質化が実現される。
また、本実施形態では、あらかじめ補正テーブルを用意しておき(記憶部44に記憶しておき)、この補正テーブルを更新することとした。これにより、複数の記録ヘッド232の記録タイミングが全く決まっていない状態から補正するよりも、補正が完了するまでの時間を短縮することができ、また補正回数を少なくすることができる。
また、本実施形態では、記録ヘッド232ごとに、できるだけその全長に渡り記録列マーカー101~106を記録して、基準マーカー110とのずれを算出した。これにより、記録ヘッド232ごとに取り付け位置に誤差や傾斜がある場合であっても、記録ヘッド232間の記録ずれや記録ヘッドユニット23間の記録ずれ(色ずれ)を検出して補正できる。
また、本実施形態では、複数の記録ヘッドユニット23のX方向同位置にある、それぞれの記録ヘッド232により記録された記録列マーカー101~106と、ズレ量算出のための基準として記録された基準マーカー110と、校正のために記録された校正パターン111と、を有するテストパターンを用いた。このテストパターンは、基準マーカー110と記録列マーカー101~106がX方向に隣接している。これにより、本実施形態は、複数の記録ヘッドユニット23の記録タイミングと、1つの記録ヘッドユニット23内の記録ヘッド232の記録タイミングを1つのテストパターンで補正することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
上記実施形態においては、記録ヘッド232のほぼすべてのノズル233を使用してテストパターンを記録することとしたが、これに代えて記録ヘッド232内のX方向における特定位置のノズル233だけ使用してテストパターンを記録してもよい。たとえば、上述した実施形態において、記録列マーカー101~106のそれぞれの位置の代表値を特定する際に用いたX方向の算出点部分を含む数個のノズル分だけテストパターンを記録するようにしてもよい。
また、上記実施形態の処理手順においては、S25で記録ヘッド232間のずれ量分を補正する際に、S22で算出した基準マーカー位置の記録ヘッド232間での違いを利用した。これに代えて、記録ヘッド232間のずれ量分の補正は、たとえば、隣接する記録ヘッド232ごとに記録列マーカーの近接点同士の位置が同じになるように補正することとしてもよい。この場合は、たとえば、記録列マーカー106(1)の記録列マーカー106(2)に一番近いドットの位置と、記録列マーカー106(2)の記録列マーカー106(1)に一番近いドットの位置との差分を取り、その差分を補正分とする。これを順に隣接する記録列マーカー同士で行う。その後、上記処理手順のS25の段階で説明したとおり、この補正分により、S24で算出したずれ量を補正して、最終的な補正量を求める。これにより、記録ヘッド232の隣接部分においての記録位置のずれを最適化し、つなぎ部分の不連続性を緩和できる。
また、インクジェット記録装置1がテストパターンを記録するための画像データは、記憶部44に記憶しておいてもよい。また、テストパターンの画像データは外部装置に記憶しておいて、印刷ジョブとして制御部40へ送り、テストパターンを記録させるようにしてもよい。この場合、外部装置がテストパターンの画像データを記録したコンピューター読み取り可能な記憶媒体ということになる。さらにテストパターンの画像データは、別途、コンピューター読み取り可能な記憶媒体に記録しておいて、制御部40または外部装置が読み出して使用してもよい。この場合の記憶媒体は、たとえば、光学ディスクや、フラッシュメモリーを利用したメモリーカードやメモリードライブなどの可搬式の記憶媒体、さらにインターネットを利用したクラウドサーバーなどであってもよい。
そのほか、本発明は特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。