以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。下記、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
<印刷装置>
図1は、印刷装置1の全体概略図を示す。図1では、本発明の一実施形態に係る印刷装置1の一例として、インクジェット連帳機について、画像形成などの動作を行う機構であるメカ部を示す。図1を参照して、印刷装置1の全体の構成について説明する。
印刷装置1は、メカ構成として、給紙機構110、表面側印刷機構120、後乾燥機構130、スキャナー140、反転機構150、裏面側印刷機構160、後乾燥機構170、スキャナー180及び巻き取り装置190を備える。
用紙(例えば、ロール紙)Pは、給紙機構110であるアンワインダーにより巻き出され、表面(第1面)の印刷を行う印刷機構120に到達する。用紙Pはインク滴が吐出される被吐出物の例である。被吐出物は記録媒体として表記する場合もある。
なお、印刷機構120の前段に、インクを凝集させる機能や浸透性を制御する機能を有する前処理液を塗布する前処理機構や、塗布した前処理液を乾燥させる前処理液塗布乾燥機構を設けていてもよい。
印刷機構120を通過した用紙Pは、表面側の乾燥装置である乾燥機構130を抜け、スキャナー140を通過する。
本実施形態では、乾燥機構130が、用紙Pの裏面から接触加熱を行うヒートドラム131である例を説明する。ヒートドラム131での加熱温度は、印刷速度やインクの乾燥性にもよるが、50℃〜100℃程度に設定される。乾燥機構130はこの他にも、温風、赤外線、加圧、紫外線といった手段に変えたり、これらの機構を組み合わせたりすることも可能である。
乾燥機構130の後段に配置されたスキャナー140は、図10〜図18に示す着弾位置調整のための検査に用いる画像であるテストチャートの読み取りを行う。画像検査機構は、スキャナー140などの読取対象の画像情報を取得する機構と、取得した画像情報を演算する制御機構を備えている。制御機構は例えば図9に示す読取結果処理部118、記録ヘッド着弾位置設定部117により構成される。
図1に示す、画像検査機構の読取手段であるスキャナー140は、後述する図10のフローに示す着弾位置補正のための検査用画像である複数のテストパターンを含むテストチャートを撮影して、読み取る。例えば、スキャナー140は、CCD(Charge Coupled Device)カメラを備え、用紙の全幅を撮影可能に取り付けられ、あるいは、任意の間隔で、例えば図2のオーバーラップした部分に対応する部分を撮影可能な幅方向に取り付けられている。
取得した画像情報は、図9に示す読取結果処理部118において演算処理される。読取結果処理部118は、印刷装置1内の制御部として機能する図5(a)に示すプリンタコントローラ101、102ではなく、画像検査機構内の制御機構、又は図5に示す上位装置等のコンピュータの何れかに存在しても良い。つまり、画像情報の演算処理は何れの機構で行われても良い。
次に、用紙Pは表裏を反転させる反転機構150を通過し、裏面(第2面)を印刷する印刷機構160、裏面を乾燥させる乾燥機構170、及びスキャナー180を通過する。
裏面のヘッド間濃度調整は、上述の画像検査機構と同様の機能を有する、読取手段としてのスキャナー180と、図6に示す読取結果処理部118とを備える画像検査機構で行われる。
最後に、用紙Pは、印刷後の用紙Pを加工する後加工装置の一例である巻き取り装置(リワインダー)190によって、巻き取られる。印刷後の後加工処理の内容によっては、リワインダーの代わりに、カッターを用いて紙を裁断する切断動作を含む搬出工程が実施されてもよい。
上記の構成に加えて、印刷機構120,160の後段であって、乾燥機構130,170の前段に、用紙P上のインク膜の剥離を防止する後処理液を塗布する後処理機構を設けてもよい。
図1では、複数の機構を一体化した装置について説明にしたが、これらの機能を別々の筐体内の装置として、印刷システムとして機能させてもよい。
<ヘッド外形>
画像形成手段として機能する印刷機構120,160の外形形状の一例を、図2、図3を用いて説明する。ここで、図2は、本発明の実施形態に係る、画像形成手段である印刷機構120,160の全体の構成の一例を示す概略平面図である。
図2に示すように、印刷機構120,160は、本実施形態では、フルライン型のヘッドであり、記録媒体の搬送方向Xmの上流側からブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)に対応する4つのヘッドアレイ(吐出ヘッドアレイ)400K、400C、400M及び400Yが配置されている。
ここで、ブラック(K)のヘッドアレイ400Kは、本実施形態では、用紙Pの搬送方向Xmと直行する方向に4つのヘッド40K−1、40K−2、40K−3及び40K−4を千鳥状に配置している。これらのヘッドは記録ヘッド、記録部、吐出ヘッドとも言う。
ヘッドアレイ400Kでは、複数のノズル列を有する複数の記録ヘッド40K−1、40K−2、40K−3及び40K−4は千鳥配列されている。千鳥配列については後述の図3の説明において説明する。
ここで、隣接するヘッド間でノズル列の端部が第1の方向でオーバーラップしているオーバーラップ部の例を、図2中、太線点線部Oa,Ob,Ocで示す。
これにより、印刷機構120,160は、用紙Pの画像形成領域(印刷領域)の幅方向(搬送方向と直行する方向)の全域に画像を形成することができる。なお、他のヘッドアレイ400C、400M及び400Yの構成は、ブラック(K)のヘッドアレイ400Kの構成と同様のため、説明を省略する。下記、特に色を区別する必要が無い場合は、末尾の符号を省いて説明する。
<ヘッド底面図>
図3は、図2に示す記録ヘッド40の底面部を拡大した模式図である。図3において、(A)は、記録ヘッド40のノズル48が設けられたノズル板43の表面(底面)を示す平面図である。図3(B)は、図3(A)の一部を拡大した模式図である。
図2及び図3を参照して、ヘッドアレイ400Kでは、用紙P上にインク滴を吐出する複数のノズル48が第1の方向(X方向)にノズル列20Aとして配列されている。そして、ヘッドでは、ノズル列が第1の方向と直交する第2の方向(Y方向)に複数存在する(20A,20B)。
そしてヘッドアレイ400Kでは、複数のヘッドの隣接するヘッド間のノズル列の端部が第1の方向でオーバーラップし、前記第1の方向と直交する第2の方向で異なる位置にあるように配置されている。
各ヘッド(記録部、吐出ヘッド)40は、複数のノズルが第1の方向に並んでいるノズル列が複数(ノズル列20A,20B)設けられている。複数のノズル列20A,20Bは、第2の方向Yに間隔を隔てて配列している。第1の方向Xと第2の方向Yとは、互いに交差する方向であればよい。本実施形態では、第1の方向Xと第2の方向Yとは、直交する方向である。
また、本実施形態では、図3に示すように、記録ヘッド40は、ノズル列20を第2の方向Yに2列配列した構成である場合を説明する。このため、本実施形態では、記録ヘッド40では、搬送方向Xm(図2参照)の上流側にノズル列20A、第2方向Yの下流側にノズル列20Bを、間隔Wを隔てて配列されている。
また、図3に示すように、記録ヘッド40で、ノズル列20Aにおける複数のノズル48の位置とノズル列20Bにおける複数のノズル48の位置とが、第2の方向Yにおいて重ならないように、ノズル列20Aとノズル列20Bとは第2の方向Yで少しずれて配置している。
図3の例ではノズル列20Aの端部の位置と、ノズル列20Aの端部の位置とのX方向のズレ量は、ノズル列20Aにおける複数のノズル48の位置とノズル列20Bにおける複数のノズル48の位置との夫々のズレ量(間隔)(600dpi)と等しい。
<ヘッド内部>
図4は、ヘッド40の構造を示す概略図である。図4において、(a)は記録ヘッド40の液室長手方向に沿う断面説明図であり、(b)は記録ヘッド40の液室短手方向(ノズル並び方向)の断面説明図である。
図4(a)において、印刷機構120(160)のヘッド40は、吐出するインクの通路を形成する流路板41と、流路板41の下面(ヘッド40の内部方向)に接合された振動板42と、流路板41の上面(ヘッド40の外側方向)に接合されたノズル板43と、振動板42の周縁部を保持するフレーム部材44とを備える。また、ヘッド40は、振動板42を変形させるための圧力発生手段45を有する。
本実施形態に係るヘッド40は、流路板41と、振動板42と、ノズル板43とを積層することによって、ノズル板43と同一位置の吐出口40Nであるノズル48に連通する流路であるノズル連通路40R及び液室40Fを形成している。また、ヘッド40は、フレーム部材44を更に積層することによって、液室40Fにインクを供給するためのインク流入口40S及びインクを液室40Fに供給する共通液室40Cなどを形成している。
また、本実施形態では、フレーム部材44には、圧力発生手段45を収納する収容部、共通液室40Cとなる凹部、及び共通液室40Cにヘッド40外部のカートリッジ(不図示)からインクを供給するためのインク供給口40INが形成されている。
圧力発生手段45は、本実施形態では、電気機械変換素子である圧電素子45Pと、圧電素子45Pを接合固定するベース基板45Bと、隣り合う圧電素子45Pの間隙に配置された支柱部とを備えている。また、圧力発生手段45は、圧電素子45Pを記録ヘッドドライバ210A,210B(図7参照)に接続するためのFPCケーブル45C等を備えている。記録ヘッドドライバ210A,210Bは、圧電素子45を夫々駆動するためのヘッド駆動部であって、駆動回路や圧電素子駆動ICで構成される。
ここで、圧電素子45Pは、図4(b)に示すように、圧電材料45Ppと内部電極45Peとを交互に積層した積層型圧電素子(PZT)を用いる。内部電極45Peは、複数の個別電極45Peiと複数の共通電極45Pecとを有する。内部電極45Peは、本実施形態では、圧電素子45Ppの端面に交互に個別電極45Pei又は共通電極45Pecを接続している。
以下に、ヘッド40がノズル孔48からインクを吐出する動作の1つの方法である引き−押し打ち動作を具体的に説明する。
まず、ヘッド40において、記録ヘッドドライバ210A,210B(図7参照)が、圧電素子45Pに印加している電圧を基準電位から下げ、圧電素子45Pをその積層方向に縮小させる。また、ヘッド40は、圧電素子45Pの縮小によって振動板42を撓み変形させる。このとき、ヘッド40は、振動板42の撓み変形によって液室40Fの容積を膨張させる。この動作により、ヘッド40において、共通液室40Cから液室40F内にインクを流入させる。
次に、ヘッド40において、記録ヘッドドライバ210A,210Bは圧電素子45Pに印加している電圧を上げ、圧電素子45Pを積層方向に伸長させる。また、ヘッド40は、圧電素子45Pの伸長によって、振動板42をノズル孔48方向に変形させる。このとき、ヘッド40では、振動板42の変形によって、液室40Fの容積を収縮させる。この動作により、ヘッド40は、液室40F内のインクを加圧する。また、ヘッド40は、インクを加圧することによって、吐出口40N(ノズル48)からインクを吐出(噴射)する。
その後、ヘッド40において、記録ヘッドドライバ210A,210Bは、圧電素子45Pに印加している電圧を基準電位に戻し、振動板42を初期位置に戻す。このとき、ヘッド40は、液室40Fの膨張によって液室40F内を減圧し、共通液室40C内から液室40F内にインクを充填する。次いで、ヘッド40は、ノズル48のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次のインクの吐出のための動作に移行し、上記の動作を繰り返す。
このように、ヘッド40は、圧力発生手段45を用いて、振動板42を変形(撓み変形)する。これにより、ヘッド40は、液室40Fの容積を変化させ、液室40F内のインクに作用する圧力を変化させることで、ノズル48から、インクを吐出させる。
なお、本発明を適用可能なヘッドの駆動方法は、上記の例(引き−押し打ち)に限定されるものではない。例えば、ヘッドの駆動方法は、圧電素子45Pに印加する電圧である駆動波形を制御することによって、引き打ち又は押し打ち等を行ってもよい。
さらに、圧力発生手段45は、発熱抵抗体を用いて液室40F内のインクを加熱して気泡を発生させるサーマル型や、液室40Fの壁面に振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させた静電力によって振動板を変形させる静電型のものを用いてもよい。
以上により、本実施形態の印刷装置1は、画像形成手段である各色4つの計16個のヘッド40を用いて、1回の用紙Pの搬送動作で、画像形成領域の全域に、白黒又はフルカラーの画像を形成する。
(システムの制御)
図5(a)は、本発明の実施形態に係る印刷装置1を含む制御システムの一例の概略図と、図5(b)は上位装置の一例の概略構成図である。
図5(a)の制御システム70は、印刷装置1の動作を制御する全体の制御手段である。制御システム70において、上位装置71は、本実施形態では、印刷装置1の各構成に動作を指示し、その動作を制御する。
なお、本発明の実施形態に係る制御システム70は、プロダクションプリンティングシステムを用いてもよい。ここで、プロダクションプリンティングシステムとは、ジョブ管理や印刷データの管理などを効率的に行うことによって、短時間に大量の印刷物(画像形成媒体、印字物)を印刷(画像形成、印字)することができる製造システムである。
具体的には、本実施形態に係る制御システム70は、複数の装置、例えばRIP(Raster Image Processing)装置と印刷装置1とからなる。RIP装置は、印刷データの印刷順等の制御と印刷データのラスターイメージデータへの変換を行う装置である。プリンタ装置は、変換されたラスターイメージデータに基づく印刷動作を制御装置である。
また、本実施形態に係る印刷装置1を含む制御システム70は、印刷データの作成から印刷物の分配までの管理を行うワークフローのシステムを構築する。図5に示す制御システム70はラスターイメージデータを作成するRIP装置と印刷装置1のように装置を分離し処理を分散させることで、印刷の高速化を実現する。
図5(a)に示すように、本発明の実施形態に係る印刷装置1の制御システム70は、RIP処理などを行う上位装置(RIP装置、例えば、DFE(Digital Front End))71と、印刷処理などを行う印刷装置1とを含む。ここで、上位装置71と印刷装置1とは、複数のデータ線70LDと制御線70LCとで接続されている。
図5(a),図5(b)に示す印刷装置1に接続される上位装置71は、ホスト装置から出力される印刷ジョブデータ(ジョブデータ、印刷データ)に基づいて、RIP処理を行う装置である。すなわち、本実施形態に係る上位装置71は、印刷ジョブデータに基づいて、各色に対応する印刷画像データを夫々作成する。ここで、印刷画像データは、本実施形態では、図13、図16〜図18に示す「テストパターンデータ」を更に含む。
また、本実施形態に係る上位装置71は、印刷ジョブデータ及びホスト装置の情報などに基づいて、印刷動作を制御するための制御情報データを作成する。ここで、制御情報データとは、印刷条件として、印刷形態、印刷種別、給排紙情報、印刷面順、印刷用紙サイズ、印刷画像データのデータサイズ、解像度、紙種情報、階調、色情報及び印刷を行うページ数の情報など)に関するデータを含む。また本実施形態では、制御情報データに、スキャナー140(180)が読み取った画像情報を更に含んでも良い。
図5(b)に示すように、上位装置71は、本実施形態では、CPU(Central Processing Unit)71a、ROM(Read Only Memory)71b、RAM(Random Access Memory)71c、HDD(Hard Disk Drive)71dを備える。また、上位装置71は、外部I/F71e、制御情報用I/F71f及び画像データ用I/F71gを備える。更に、上位装置71は、CPU71a等を夫々接続するバス71hを備えることによって、バス71hを介して、CPU71a等を相互に送受信可能になる。
CPU71aは、上位装置71全体の動作を制御するものである。CPU71aは、ROM71b及び/又はHDD71dに格納(記憶)されている制御プログラム等を用いて、上位装置71の動作を制御する。
ROM71b、RAM71c及びHDD71dは、データ等を記憶する記憶手段である。ROM71b及び/又はHDD71dには、CPU71aを制御するための制御プログラムを予め格納されている。RAM71cは、CPU71aのワークメモリとして用いられる。
外部I/F71eは、印刷装置1のホスト装置等の外部装置との送受信(通信)を制御する。制御情報用I/F71fは、制御情報データの送受信を制御する。画像データ用I/F71gは、印刷画像データの送受信を制御する。
なお、図5では、印刷装置1のデータ信号や制御信号を上位装置71から受け取る例を示したが、上記の信号のやりとりは印刷装置1の内部で実施してもよい。
あるいは、下記、印刷装置内部で、スキャナーの読み取り結果を処理させる読取結果処理部118及び記録ヘッドの着弾位置を演算させる記録ヘッド着弾位置設定部117を実行させる例を示すが、これらを上位装置71側で実行させてもよい。
<印刷装置の制御>
図6は、本発明の一実施形態の印刷装置1の印刷機構120(160)のハードウェア構成例を示すブロック図である。印刷装置1は、印刷機構120(160)のために、メイン制御基板100と、ヘッド中継基板200と、画像処理基板300とを備える。
メイン制御基板100には、CPU101、FPGA(Field-Programmable Gate Array)102、RAM103、ROM104、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)105、モータドライバ106、及び駆動波形生成回路107などが実装されている。
CPU101は、印刷装置1の全体の制御を司る。例えば、CPU101は、RAM103を作業領域として利用して、ROM104に格納された各種の制御プログラムを実行し、印刷装置1における各種動作を制御するための制御指令を出力する。この際CPU101は、FPGA102と通信しながら、FPGA102と協働して印刷装置1における各種の動作制御を行う。即ち、CPU101とFPGA102が協働して、プリンタコントローラ(図5参照)として機能する。
FPGA102には、CPU制御部111、メモリ制御部112、I2C制御部113、センサ処理部114、モータ制御部115、記録ヘッド制御部116、記録ヘッド着弾位置設定部117及び読取結果処理部118が設けられている。
CPU制御部111は、CPU101と通信を行う機能を持つ。メモリ制御部112は、RAM103やROM104にアクセスする機能を持つ。I2C制御部113は、シリアルバス(I2C)を制御してNVRAM105と通信を行う機能を持つ。
センサ処理部114は、各種センサ108のセンサ信号の処理を行う。各種センサ108は、印刷装置1における各種の状態を検知するセンサの総称である。各種センサ108には、搬送駆動手段の搬送情報(例えば、搬送ローラの回転情報)を検知するエンコーダセンサ、用紙Pの通過を検知する用紙センサ、環境温度や湿度を検知する温湿度センサ、カートリッジのインク残量を検知する残量検知センサなどが含まれる。なお、温湿度センサなどから出力されるアナログのセンサ信号は、例えばメイン制御基板100などに実装されるADコンバータによりデジタル信号に変換されてFPGA102に入力される。
モータ制御部115は、各種モータ109の制御を行う。各種モータ109は、印刷装置1が備えるモータの総称である。各種モータ109には、用紙Pを搬送方向(副走査方向)に搬送するための搬送駆動モータなどが含まれる。
記録ヘッド制御部116は、ROM104に格納されたヘッド駆動データ、吐出同期信号LINE、吐出タイミング信号CHANGE(図7参照)を駆動波形生成回路107に渡して、駆動波形生成回路107に共通駆動波形信号Vcomを生成させる。駆動波形生成回路107が生成した共通駆動波形信号Vcomは、ヘッド中継基板200に実装された後述の記録ヘッドドライバ210に入力される。
読取結果処理部118は、スキャナー140から送られてきた読取画像の処理を行う。
記録ヘッド着弾位置設定部117は、読取結果を基に、各記録ヘッドの列間(20A,20B)、同一色ヘッド間(40K−1,40K−2,40K−3,40K−4)、及び異色ヘッドアレイ間(400K,400C,400M,400Y)の着弾位置の調整を行う。
そして、記録ヘッド着弾位置設定部117は、記録ヘッド制御部116へ、吐出タイミング信号CHANGE(図7参照)を生成させるための補正値を送信する。
読取結果処理部118が算出手段として機能し、記録ヘッド着弾位置設定部117が補正手段として機能する。着弾位置の調整の詳細は、図9〜図18とともに後述する。
<画像形成に係る信号制御>
図7は、画像形成に係る、記録ヘッド制御部116、駆動波形生成回路107、記録ヘッドドライバ210の構成例を示すブロック図である。図8は、本発明の実施形態に係る駆動波形の一例である。本例では、駆動波形生成回路107は本体であるメイン制御基板100側にあり、記録ヘッドドライバ210はヘッド40の列ごとのヘッド中継基板200側に搭載されている。
図7に示すように、記録ヘッド制御部116は、吐出のタイミングのトリガーとなるトリガー信号Trigを受信すると、駆動波形の生成のトリガーとなる吐出同期信号LINEを駆動波形生成回路107へ出力する。さらに、入力される補正値に基づいて、吐出同期信号LINEからの遅延量に当たる吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成回路107へ出力する。
駆動波形生成回路107は、吐出同期信号LINEと、吐出タイミング信号CHANGEに基づいたタイミングで、共通駆動波形Vcomを生成する。
さらに、記録ヘッド制御部116は、画像処理基板300に設けられた画像処理部310から画像処理後の画像データSD'を受け取り、この画像データSD'をもとに、記録ヘッド40の各ノズル48から吐出させるインク滴の大きさに応じて共通駆動波形信号Vcomの所定波形を選択するためのマスク制御信号(滴制御信号)MNを生成する。
マスク制御信号MNは吐出タイミング信号CHANGEに同期したタイミングの信号である。詳しくは、記録ヘッド制御部116では画像データに合わせて、液滴サイズを設定し、その液滴サイズに合わせて、図8に示すように滴サイズ毎のマスク制御信号(大滴用MN信号、中滴用MN信号、小滴用MN信号)を記録ヘッドドライバ210へ送信する。
また、記録ヘッド制御部116は、画像データSD'と、同期クロック信号SCKと、画像データのラッチを命令するラッチ信号LTと、生成したマスク制御信号MNとを、記録ヘッドドライバ210に転送する。
本発明の実施形態では、吐出タイミング信号CHANGEとマスク制御信号MNのタイミングを変更することで、ヘッド列毎の吐出タイミングを微小に変更することができる。CHANGEの値のデフォルト値(図中、Defと示す)を1以上にしておくことで、CHANGEの値をデフォルト値に対して小さくすることで早くすることも可能である。吐出タイミング信号CHANGEによる共通駆動波形のタイミング調整は、図15とともに後述する。
また、記録ヘッドドライバ210は、図7に示すように、シフトレジスタ211、ラッチ回路212、階調デコーダ213、レベルシフタ214及びアナログスイッチ215を備える。
シフトレジスタ211は、記録ヘッド制御部116から転送される画像データSD'及び同期クロック信号SCKを入力する。ラッチ回路212は、シフトレジスタ211の各レジスト値を、記録ヘッド制御部116から転送されるラッチ信号LTによってラッチする。
階調デコーダ213は、ラッチ回路212でラッチした値である画像データSD'とマスク制御信号MNとをデコードして結果を出力する。レベルシフタ214は、階調デコーダ213のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ215が動作可能なレベルへとレベル変換する。
アナログスイッチ215は、レベルシフタ214を介して与えられる階調デコーダ213の出力でオン/オフするスイッチである。このアナログスイッチ215は、ヘッド40に形成される上述したノズル48ごとに設けられ、各ノズルに対応する圧電素子45Pに接続されている。
ここで圧電素子45は、図4(b)で示したように、端面に交互に個別電極45Pei又は共通電極45Pecが接続されている。共通電極45Pecは、各ヘッド40内において、ノズル列ごとに共通する共通駆動波形が印加され、個別電極45Peiには、滴の大きさを示す駆動波形が選択的に印加される。
また、アナログスイッチ215には、駆動波形生成回路107からの共通駆動波形信号Vcomが入力されている。また、上述したようにマスク制御信号MNのタイミングが共通駆動波形Vcomのタイミングと同期している。
したがって、レベルシフタ214を介して与えられる階調デコーダ213の出力に応じて適切なタイミングでアナログスイッチ215のオン/オフが切り替えられる。よって、図8に示すように、共通駆動波形信号Vcomを構成する駆動波形の中から各ノズル48に対応する圧電素子45Pに印加される波形が選択される。
レベルシフタ214からきているチャンネルごと、即ちノズルごとに、どうON/OFFするかという情報であるマスク制御信号MNがHの部分に基づいて、クロックタイミング単位で、チャンネルごとに、共通駆動波形内で与えられるべき波形を選択して、印加電圧として圧電素子へ与える。
このように、ヘッド49内において、列ごとで共通駆動波形Vcomが与えられながら、マスク制御信号MNで、ノズル毎にノズルから吐出されるインク滴の大きさが制御される。
<着弾位置補正>
図9は、記録ヘッド40、スキャナー140、メイン制御基板100、及び画像処理部310の機能構成を示すブロック図である。
図9に示すように、ヘッド内で列ごと(ノズル列20A,20Bで)に、異なるタイミングで共通駆動波形が印加できるように、1つのヘッド40内に2つのヘッド中継基板200A,200Bが設けられている。そして、各中継基板200には、図6、図7に示した記録ヘッドドライバ210と、圧電素子45Pが設けられている。
ヘッドドライバ210Aは、上流側のノズル列20Aの複数のノズル48に対応させる、画素群データから変換した駆動波形を圧電素子45P−Aへ出力する。ヘッドドライバ210Bは、下流側のノズル列20Bの複数のノズル48―Bに対応している、画素群データから変換した駆動波形を圧電素子45P−Bへ出力する。
このようなヘッドの機能構成に対応できるように、図6及び図9を参照して、メイン制御基板100において、駆動波形生成回路107は、ヘッド40に設けられる列の数と同数設けられている。例えば、図3のヘッド構成では、2列×4ヘッド×4色の32個である。駆動波形生成回路107は、着弾位置を調整するように、吐出制御信号CHANGEを基に、調整されたタイミングの共通駆動波形Vcomを夫々出力する。
また、メイン制御基板100において、記録ヘッド制御部116は、ヘッド40の数と同数設けられている。例えば、図3のヘッド構成では、4ヘッド×4色の16個の記録ヘッド制御部116が設けられている。
例えば、40K−1に対応付けられた記録ヘッド制御部116には、画像処理部310からヘッド40K−1に対応するデータが割り振られて送られてくる。なお、記録ヘッド制御部116も、列の数と同数(32個)、設けられていてもよい。
ここで、図9では、ヘッド40K−1,40K−2の機能構成を例として示しているが、他のヘッドや他の色のヘッド内の構成、及びヘッドを駆動させるための記録ヘッド制御部116や、駆動波形生成回路107の構成は同様である。
さらに、図7で示すように、記録ヘッド制御部116は、記録ヘッド着弾位置設定部117から、吐出のタイミングのトリガーとなるトリガー信号Trigを受信する。
記録ヘッド制御部116は、トリガー信号Trigを受信すると、駆動波形の生成のトリガーとなる吐出同期信号LINEと、さらに、吐出同期信号LINEからの遅延量の大小に当たる吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成回路107へ出力する。
ここで、スキャナー140がテストチャートを読み取り、読取結果処理部118が演算した着弾位置の補正量に基づく補正値を、記録ヘッド着弾位置設定部117は記録ヘッド制御部116へ出力する。
読取結果処理部118は、スキャナー140のCCDカメラ141からの読取結果に基づいて、ヘッドの列毎の調整に加えて、同一色ヘッド間の調整、及び異色ヘッドアレイ間の調整についても、スキャナーからの読取結果に基づいて演算する。
詳しくは、図9に示すように、読取結果処理部118は、ヘッド内列間ズレ量算出部52、同一色ヘッド間段差算出部53、異色間位置差算出部54、及びデータ格納部51を備える。また、記録ヘッド着弾位置設定部117は、着弾位置タイミング演算部61及びデータ格納部62を備える。
これらの、読取結果処理部118及び記録ヘッド着弾位置設定部117における着弾位置の補正について、下記説明する。
図10に本発明の第1の実施形態に係る着弾位置補正の概略全体フローを示す。図9及び図10を用いて、スキャナー140からの読取結果に基づく、着弾位置の調整について説明する。
まず、S1で、オーバーラップ部において、ヘッド内列間の着弾位置調整(補正)を行う。詳しくは、スキャナー140で、ヘッド内列間補正用のテストチャート(図13、図18上部参照)を読み取る。この際、スキャナー140で読み取るテストチャートの画像は、画像全域であってもよいし、オーバーラップ部のみであってもよい。
そして、メイン制御基板100(図9)の読取結果処理部118のヘッド内列間ズレ量算出部52で、ヘッド内列内補正用のテストパターンを読み取って得られた画像情報に基づいて、ヘッド内のオーバーラップ部のノズル列間差分を算出する。この際、閾値や差分などの範囲などを、データ格納部51から参照してもよい。
そして、記録ヘッド着弾位置設定部117の着弾位置タイミング演算部61は、ヘッド内のオーバーラップ部の列間差分を基に、ヘッド内列間の着弾位置のタイミング補正が必要かどうか判断する。タイミング補正が必要な場合は、ヘッド内列間タイミングの差を生じさせる補正値を算出して、算出したタイミングをデータ格納部62へ記憶させる。
次に、図10のS2で、オーバーラップ部において、同一色のヘッド間の着弾位置調整を行う。
詳しくは、スキャナー140で、同一色ヘッド間調整用のテストチャート(図16、図18参照)を読み取る。
そして、読取結果処理部118の、同一色ヘッド間段差算出部53で、同色ヘッドアレイ内ヘッド位置補正用のテストパターンを読み取って得られた画像情報に基づいて、同一色のヘッド内のオーバーラップ部のヘッド間段差の補正量を算出する。この際、閾値や差分などの範囲などを読み取りデータ格納部51から参照してもよい。
この際、図18のように、ヘッド内列間、ヘッド間段差、異色間位置差の調整のためのテストチャートに1回の出力でまとめて出力する場合、スキャナー140によって、印刷機構120にあるヘッドユニットのオーバーラップ部が吐出した、ヘッド列間、ヘッド間段差、異色間位置差のためのテストチャートを、一連の流れ、即ち1回の画像形成後の一度の読み取り動作で、読み取ることになる。
この場合、テストチャートを実際に読み取って得られた画像情報から、列間差分で補正する分を仮定して調整した上で、同一色ヘッドアレイのヘッド間段差であるヘッド列間差分を算出すると好ましい。
この際、記録ヘッド着弾位置設定部117の着弾位置タイミング演算部61は、同一色のヘッド間のオーバーラップ部の差分を基に、同一色のヘッド間の着弾位置のタイミング補正が必要かどうか判断する。タイミング補正が必要な場合は、各ヘッド内のノズル列それぞれの着弾位置の補正結果を反映させて、同一色ヘッド間タイミングの差を生じさせる補正値を算出して、算出したタイミングをデータ格納部62へ記憶させる。
次に、図10のS3で、オーバーラップ部において、異色のヘッド間の着弾位置調整を行う。
詳しくは、スキャナー140で、異色間調整用のテストチャート(図17、図18参照)を読み取る。
そして、読取結果処理部118の、異色間位置差算出部54で、記録媒体に形成された異色ヘッドアレイ位置補正用のテストチャートのオーバーラップ部を読み取って得られた画像情報に基づいて、基準となる色のヘッドアレイと比較する色のヘッドアレイとの間の位置差を算出する。この際、閾値や差分などの範囲などを読み取りデータ格納部51から参照してもよい。
この際、図18のように、ヘッド列間、ヘッド間段差、異色間位置差のためのテストチャートを、一連の流れで読み取る場合、テストチャートを実際に読み取って得られた画像情報から、列間差分で補正する分及びヘッド間段差で補正する分を仮定して調整した上で、ヘッド間段差に相当するヘッド列間の差分を算出すると好ましい。
この際、記録ヘッド着弾位置設定部117の着弾位置タイミング演算部61は、異なる色のヘッドアレイ間のオーバーラップ部が吐出した直線状のテストパターンから読み取られる画像情報の位置の差分を基に、異なる色のヘッドアレイ間の着弾位置のタイミング補正が必要かどうか判断する。タイミング補正が必要な場合は、基準色(例えばK)と比較色(例えば、C、M、Y)とのヘッドアレイ間のタイミング差を算出して、S1の上述の前記各ヘッド内のノズル列それぞれの着弾位置の補正結果と、S2の同一色のヘッドアレイ内におけるヘッド間の段差補正結果を反映させて、算出したタイミング差を生じさせる補正値をデータ格納部62へ記憶させる。
<ヘッド内列間調整>
図11〜図15、図18を用いて本発明のヘッド内列間補正(調整)について説明する。図11は図10に示すヘッド内列間調整工程の詳細フローである。
図11のフローにおいて、ステップS1で、図12に示す重なり部において、図13に示すようなテストチャートを印刷する。
図12は、第1の実施形態において、テストチャートを形成する領域と着弾位置の補正を実施する領域の一例について説明する図である。図12において、(a)は底面が長方形のヘッドを組みあわせたヘッドアレイにおけるテストチャート形成領域を示し、(b)は底面が平行四辺形のヘッドを組みあわせたヘッドアレイにおけるテストチャート形成領域を示す。
図12(a)及び図12(b)では、ヘッド40で、ノズル列20Aにおける複数のノズル48の位置とノズル列20Bにおける複数のノズル48の位置とが、第2方向Yにおいて重ならないように、ノズル列20Aとノズル列20Bとは第2方向Yで少しずれて配置している。
詳しくは、図12(a)では、図3と同様に、ノズル列20Aの端部の位置と、ノズル列20Bの端部の位置とのX方向のズレ量は、ノズル列20Aにおける複数のノズル48の位置とノズル列20Bにおける複数のノズル48の位置とのズレ量と等しい。
一方、図12(b)では、ノズル列20Aの端部の位置と、ノズル列20Bの端部の位置とのX方向のズレ量は、ノズル列20Aにおける複数のノズル48の位置とノズル列20Bにおける複数のノズル48の位置とのズレ量の正数倍であるとする。
図12(a)、図12(b)に示すようにテストチャートを記録媒体上に形成させる画像形成領域はヘッドにある全てのノズルとなる。
しかし、図12(a)に示すように、スキャナー140によってテストチャートを読み取り、その結果である画像情報に基づいて、着弾位置を補正する領域は、隣接するヘッドがオーバーラップした部分である重なり部が吐出したテストパターンのみとしている。
また、図12(b)の構成では、上記着弾位置の補正を実施する領域は、隣接するヘッド間の境界に該当する範囲のみとしている。なお、図12(b)のように、斜めに配置される場合も、吐出されて用紙Pに着弾される吐出領域はHead1の搬送方向の一部のノズルとHead2の搬送方向の一部のノズルから吐出されるのでオーバーラップ部と称し、用紙P上でオーバーラップ部が吐出した領域又は読み取られた画像のその領域をオーバーラップ領域とする。
図13は、ヘッド内列間補正の着弾位置補正に用いるテストチャートの例を示す図である。図13に示すテストチャートに含まれるパターンを、ヘッド内列間補正用のテストパターンと称する。
図13(a)は、複数のノズル列から形成されるドットを主走査方向に直線状に並べたテストパターンを示す。図13(a)に示すパターンを、複数のノズル列から吐出されるドットが列状に揃うように吐出させる第1のパターンと称する。
図13(b)〜(e)は、基準となる任意のノズル列に対し補正対象となるノズル列から形成されるドットを搬送方向に複数の段階でずらした位置シフトパターンを示す。詳しくは、図13(b)は上流側のノズル列20Bを2ドット早くした例、図13(c)は上流側のノズル列20Bを1ドット早くした例、図13(d)は下流側のノズル列20Aを1ドット早くした例、図13(e)は上流側のノズル列20Aを2ドット早くした例を示す。
図13(b)〜(e)にパターンを、一のノズル列から吐出されるドット列と、該一のノズル列とは異なる列から吐出されるドット列が、搬送方向において異なる位置にシフトして並んで配置されるように吐出させる第2のパターンと称する。この第2のパターンでは、どのドット列がどのノズル列で吐出されたものかが分かり、このパターンを読み取った画像情報から、各ノズル列のずれ量を検出できる。
図11のステップS11で出力するテストチャートとして、(1)図13(a)に示すパターン、及び、(2)図13(b)〜(e)の少なくともいずれか1つのパターン、の2種類のテストパターンを同時に出力(用紙P上に形成)すると好適である。
ステップS12では、まず図13(a)に示す一列の直線状のテストパターンを、スキャナー140で図14のように読み取る。
そしてS13で補正が必要かどうか判断する。このとき補正が必要か否かを判別する方法としては着弾の早いドットの上端から、着弾の遅いドットの下端までの距離が予め登録したターゲットの範囲内か範囲外かで決める、などの方法が考えられる。
この読み取り結果から補正が必要と判別された際にはステップS14に移行し、図13(b)〜図13(e)の画像を読み取り、S15において、複数の読み取り結果から補正値を決定する。
図14を用いて、着弾位置補正に用いるテストパターンと、出力される画像の一例について説明する。図14において、(a)は出力される位置シフトテストパターンの設定段階の元データを示し、(b)は、出力された用紙P上のドット列からなる位置シフトテストパターンを、スキャナー140が読み取った画像(画像情報)を示す。
補正値を算出する手法の一例としては、図14のように各ノズル列から形成されたドットの中心同士の距離Zを読み取り、パターンによって定められる理想的な距離W(図2のノズル列間の距離に相当させてもよい)との差を求めることで補正値を決定するなどの方法が考えられる。
なお、この補正値を決定する際には、搬送ムラなどによる誤差を考慮して図13に示す複数種類のテストパターンが含まれるテストチャートを複数ページ出力し、それぞれの補正値の平均をとることが望ましい。
ステップS16ではステップS15で決定した補正値を反映した状態で、図13(b)〜(e)のテストパターンを含むテストチャートを出力する。ステップS17ではステップS16で得られた図13(a)の画像を読み取り、補正の必要か否かを検討するステップS18で、ターゲット範囲内であればヘッド間の段差補正に移行し、そうでなければ再度補正値を算出する。
図11のフローにより、表1のように決定した補正値は、図15に示すようにタイミングが調整される。図15は共通駆動波形のタイミング調整を説明する図である。表1に読み取り結果と、タイミング調整の例を示す。
上述の図7、図9で示したように、読み取り結果に基づいたタイミングを反映して、記録ヘッド制御部が、生成する吐出タイミング信号CHANGEとマスク制御信号MNのタイミングを変更することで、ヘッド列毎の吐出タイミングを微小に変更している。
吐出タイミング信号CHANGEの値がデフォルト値の場合は、共通駆動波形は、基準信号であるLINE信号からデフォルト値分、遅れたタイミングとなる。吐出タイミング信号CHANGEの値がデフォルト値の場合の遅延のタイミングを、図15(a)に示す基準のタイミングとする。
例えば、図15(a)に示すように遅延量のデフォルト値を7とすると、図15(b)のように吐出タイミング信号CHANGEの値を7より大きく(例えば、8〜13)しておくことで、吐出タイミングを遅くする。
反対に、図15(c)に示すように、吐出タイミング信号CHANGEの値を7未満(例えば、1〜6)にしておくことで、吐出タイミングを早くする。
なお、図15に示すようなタイミング調整は、1ドット以下の微小な変更になるように、遅延量に相当する吐出タイミング信号CHANGEの変化の範囲を設定する。
このように、ヘッド端部のつなぎ目であるオーラップ部に限定して列間補正を行うことで、各ノズル列を、全ノズルを平均的に補正する場合よりも、補正対象となる領域が少なくて済むため、補正に要する時間を短縮することができる。
また、画像を形成する際に、他のヘッドの端部と重複して液滴を吐出するオーバーラップ部は、局所的なムラやスジが生じやすいため、このオーバーラップ部を重点的に列間補正することで、後段のヘッド間補正での精度を向上させることができる。
<同一色ヘッド間調整>
図16に同一色ヘッド間補正に用いるテストチャートの例を示す。図16及び図18の中央部のテストチャートは、段差補正を実施する際に読み取られ、同色ヘッドアレイ内ヘッド位置補正用の、少なくとも2種類のテストパターンを含んでいる。ヘッド間で着弾位置がずれると、ヘッドアレイで1つの直線を形成する際に、ヘッド毎に段差が発生するため、この段差を補正する。この補正を段差補正、段差調整、ヘッド列間補正ともいう。
図16(a)は、同一色の異なるヘッドから形成されるドットを主走査方向に直線状に並べたテストパターンを示す。図16(a)のパターンを、各ヘッドアレイ内の隣り合うヘッドから吐出されるドットが列状に揃うように吐出させる第3のパターンと、称する。
図16(b)はヘッド2をヘッド3に対して2ドット早くした例、図16(e)はヘッド2をヘッド3に対して2ドット早くした例を示す。図16(b)、図16(e)に示すパターンを、一のヘッドから吐出されるドット列と、該一のヘッドとは異なるヘッドから吐出されるドット列が、前記第2の方向において異なる位置にシフトして並んで配置されるように吐出させる第4のパターンと、称する。この第4のパターンでは、どのドット列がどのヘッドで吐出されたものかが分かり、このパターンを読み取った画像情報から、ヘッドアレイ内の各ヘッドのずれ量、即ち、隣りあうヘッドの段差の差分量を検出できる。
なお、図16では、第4のパターンとして、2つのパターン例を示しているが、図13に示すように、4つのパターンを吐出してもよいし、さらに上記第4のパターンの要件を満たす別のパターンを形成してもよい。
図11同様に、図16(a)のチャートのうち直線のテストパターンで補正が必要か否かを判別する。
図16(a)の読取結果から補正が必要と判別された際には、図16(b)、図16(e)の画像も検討する。
そして直線状のテストパターン(図16(a))と、ずらしたテストパターン(図16(b)又は図16(e)の少なくともいずれか1つ)の複数の種類のテストパターンを用いて補正値を算出するため、補正の精度が向上する。
このように、本発明の実施形態では、つなぎ目であるオーバーラップ部分での列間補正が十分に行った後に、ヘッド間の段差補正が行われるため、段差補正の際は列間のずれが解消された状態でヘッド間の着弾補正を実施するため、より正確に着弾位置を調整することができる。
<異色ヘッドアレイ間調整>
図17に異色ヘッド間補正に用いるテストチャートの例を示す。図17及び図17の下部に示すテストチャートは、異なる色のヘッドアレイ間補正を実施する際に読み取られる、異色ヘッドアレイ位置補正用の、少なくとも2種類のテストパターンを含む。
図17(a)は、異なる色のヘッドアレイから形成されるドットを主走査方向に直線状に並べたテストパターンを示す。図17(a)の例を、異なる色のヘッドアレイから吐出されるドットが列状に揃うように吐出させる第5のパターンと、称する。
図17(b)はシアンのヘッドアレイをブラックのヘッドアレイに対して2ドット早くした例を示す。図17(e)はシアンのヘッドアレイをブラックのヘッドアレイに対して2ドット早くした例を示す。図17(b)、図17(e)の例を、一の色のヘッドから吐出されるドット列と、該一の色とは異なる色のヘッドから吐出されるドット列が、前記第2の方向において異なる位置にシフトして並んで配置されるように吐出させる第6のパターンと、称する。この第6のパターンでは、どのドット列がどの色のヘッドアレイで吐出されたものかが分かり、このパターンを読み取った画像情報から、基準色(K)に対する比較色(C)のずれ量を検出できる。
なお、図17では、第6のテストパターンとして、2つのパターン例を示しているが、図13に示すように、直線状のパターンに加えて、4つのパターンを吐出してもよいし、さらに上記第6のテストパターンの要件を満たす別のパターンを形成してもよい。
図10のステップS3内においても、図11同様に、異色ヘッドアレイ間補正でも、図17(a)の直線状のパターンで補正が必要か否かを判別する。
図17(a)の読取結果から補正が必要と判別された際には、図17(b)、図17(e)の画像も検討されて、3の読み取り画像から補正値を演算する。
よって、直線状のテストパターン(図17(a))と、ずらしている位置シフトテストパターン(図17(b)又は図17(e)の少なくともいずれか1つ)の複数の種類のテストパターンを含むチャートを用いて補正値を算出するため、補正の精度が向上する。
このように、本発明の実施形態では、つなぎ目であるオーバーラップ部分での列間補正と、段差補正が行った後に、色ごとのヘッドアレイの補正を行う。この際、列間のずれ及びヘッド間のずれが解消された状態で、色ごとの補正ができるため、より正確に着弾位置を調整することができる。
ここで、異色ヘッド間の補正を実施する際には用紙の斜行などの理由により、例えば色ごとのヘッドアレイ(KとC)が主走査方向で異なる位置に印字されることがある。
そこで、図17に示している異色ヘッド間の補正チャートで、例えば、オーバーラップ部から吐出されたテストパターンのオーバーラップ領域内での、端部(図中、左端、右端)の位置を比較することで、色間の主走査方向の誤差について、複数のチャートを読み取った画像から、平均を算出してもよい。
<テストチャート>
図18に3種類のテストチャートを、それぞれ、ヘッド内列間補正用に各色、同一色ヘッド間の段差補正用に各色、及び異色ヘッド間補正用の色の組み合わせで、記録媒体上に出力する例を示す。
図18に示す例は、ヘッド内列間、ヘッド間段差、異色間位置差の調整のためのテストチャートに1回の出力でまとめて出力した例である。
詳しくは、図18の上部は、図13に示すヘッド内列間用のテストチャートが形成された部分である。図に示すように、各ヘッド毎に、ヘッド全体でドットを列状に形成するようにテストチャートを形成する。
図18の中央部は、図16に示す同一色ヘッドアレイ内ヘッド間段差補正用の複数のテストパターンが形成されるテストチャートである。
図18の下部は、図17に示す異色ヘッドアレイ間補正用の複数のテストパターンが形成されるテストチャートである。
この場合、スキャナー140によって、印刷機構120のヘッドユニットのオーバーラップ部から吐出された、ヘッド列間、ヘッド間段差、異色間位置差のためのテストチャートを、一連の流れ、即ち、1回の動作で読み取ることになる。
図18のテストチャートを読み取って得られた画像情報から、算出した補正値の例を表2に示す。
表2に示すように、ヘッド内の列間の補正値の補正関係を維持したまま、同一ヘッド毎の段差補正、異色ヘッドアレイ間の補正ができる。
このように、本発明の実施形態では、つなぎ目であるオーバーラップ部分での列間補正と、オーバーラップ部分での段差補正が行った後に、オーバーラップ部分での色ごとのヘッドアレイの補正を行う。このように、より細かい区分の着弾位置ずれを段階的に解消しながら、より大きな範囲の着弾位置ずれを段階的に行うため、より正確に着弾位置を調整することができる。
よって、上述のように、複数の記録ヘッドで構成されるラインヘッドにおいて、隣接するヘッド間のつなぎ目に特化して列間補正、ヘッド間補正、ヘッドアレイ間補正をすることで、搬送方向の着弾位置精度の誤差によるヘッドつなぎ目の局所的なムラやスジを抑制することができる。
<第2の実施形態>
上述はライン型の印刷機構において着弾位置補正を実行する例を説明したがヘッド内の列ごとの着弾位置補正は、シリアル型の印刷機構(インクジェット装置)にも適用できる。
図19に示すように、シリアル型の印刷機構において、キャリッジYはガイドロッド6によって、支持されており、キャリッジモータによって主走査方向に駆動される。キャリッジモータ8は、モータ制御部(不図示)によって制御される。
キャリッジYが主走査方向に走査すると同時に、記録ヘッド5に、主走査方向に対して交差する方向に備えられた複数のノズルからインクが吐出され、用紙P上に走査画像を形成する。
スキャン(キャリッジによる主走査方向の1回の移動)とスキャンの間に、搬送ローラ2(搬送手段)により、用紙Pが、次の走査に伴う吐出に備えて、搬送される。
本実施形態では、用紙Pを搬送する方向を第1の方向と称すると、ヘッドは、用紙P上にインク滴を吐出する複数のノズルが第1の方向に並んでいるノズル列を備えている。そして、ヘッドは、上述のように、用紙Pに対して相対的に第1の方向と直交する第2の方向(用紙Pの幅方向)に走査しながら用紙P上にインク滴を吐出する。
このような記録紙Pの搬送と、キャリッジ4の走査を繰り返して用紙Pに画像形成を行う。用紙Pに記録すべきデータが無くなると、画像記録動作を終了し、用紙Pはカッターによって裁断され、搬送ローラ2によって排出される。
各記録ヘッド5Y、5M、5C,5Kは同様の構造を備え、同様に制御されるため、インク滴の色による区別をしない場合は、単に記録ヘッド5として説明する。
<走査オーバーラップ領域>
図21は図20の印刷装置10におけるオーバーラップ領域の形成について説明する模式図である。図21(a)はスキャン(#n)による走査画像領域のおけるオーバーラップ領域を示し、図21(b)は記録ヘッド5で形成する複数の走査画像のオーバーラップ領域を示している。
まず、単一の記録ヘッドで複数の走査画像領域を形成する場合について説明する。
この場合、前提として、スキャンとスキャンの間の、搬送手段による用紙Pの1回の搬送量(搬送距離)は、ヘッドのノズル列の第1の方向の長さよりも短く設定されている。この設定により、多少前後しても、搬送量が画像内の空白の発生を防ぐことができる。
よって、単一の記録ヘッドで一度に形成される走査画像領域の第一の部分が、同一の記録ヘッドによる他の走査画像領域の第二の部分と重なるように、画像を形成することになる。
詳しくは、記録ヘッドは、図21(b)に示すように、主走査方向(X)方向に走査しながらインク滴を吐出し、用紙P上に走査画像を形成する(スキャン#1)。
その後、用紙Pは、副走査方向に搬送され記録ヘッド5は、再度画像を形成する(スキャン#2)。
このとき、用紙Pの搬送量を。記録ヘッド5の副走査幅に対して所定のノズル数分だけ減らすことにより、スキャン#1で形成する走査画像31と、スキャン#2で形成する走査画像32の一部を重複させる。
このように重複させて印刷することを、スキャン間オーバーラップと称し、この重複した領域を、スキャン間オーバーラップ領域とする。
以下、記録ヘッド5の次回(n+1)の走査(スキャン#2)による走査画像32に、次の次の回(n+2)の走査(スキャン#3)の走査画像を重ね、スキャン間オーバーラップ領域35を形成する。以下、これを必要に応じて繰り返す。
即ち、用紙P(被吐出物)上のインク滴吐出領域は、n回目の走査で搬送方向の上流側のヘッド端に位置するノズルから吐出されるインク滴で形成されるパターンと、n+1回目の走査で吐出される搬送方向の下流側のヘッド端に位置するノズルから吐出されるインク滴で形成されるパターンとは、オーバーラップしている。このように複数の走査によって生じる用紙P上の画像の重なり部分を走査オーバーラップ領域(スキャン間オーバーラップ)とする。
なお、記録ヘッド5のスキャン#1で形成する走査画像31の上端、記録ヘッド5の
最終スキャンで形成する走査画像の下端には、スキャン間オーバーラップは形成しない。
スキャン間オーバーラップ領域33、35は、用紙Pの搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に記録ヘッドを走査させ、複数回の記録ヘッドの走査と、複数回の記録用紙の搬送を繰り返して画像形成を行う印刷装置であるシリアル式のインクジェットプリンタのみで発生する。
ここで、スキャン間の、前記搬送手段による1回の搬送量は、ヘッドのノズル列の第1の方向の長さよりも短く設定されている。この設定により、スキャンを繰り返すことで、画像が重なり、上記の走査オーバーラップ領域が形成されることになる。
本発明におけるテストチャートを用いた本発明の着弾位置方法は、図2に示すノズル間オーバーラップ領域のみならず、図20に示す走査オーバーラップ領域にも適用できる。
この場合において、スキャナー140(読取手段、図1参照)は、ヘッドの各ノズルからインク滴を吐出させて形成した、用紙P上の検査用のテストパターンを読み取る。
そして、着弾位置補正手段は、スキャナー140が読み取って得られた、用紙P上のインク滴吐出領域の走査オーバーラップ領域の画像情報から、ノズル列それぞれから形成された第2の方向の着弾位置ずれを算出して、このノズル列の各ノズルから吐出されるインク滴を前記被吐出物上に着弾させる着弾位置を補正する。
走査オーバーラップ領域は、スキャンによる誤差を確認するものである。ここで、
ヘッドユニットはキャリッジ上の全ての色のヘッドは一緒に移動するため、本構成では、上述の調整のうち、同一色ヘッド間段差補正、異色ヘッドアレイ間位置差調整は行わず、走査オーバーラップ領域について、ヘッド内列間調整のみを実施する。
<第3の実施形態>
第2の実施形態では、シリアル型において、単一の記録ヘッドで複数の走査画像領域を形成する場合について説明したが、シリアル型においても、複数のヘッドを千鳥状に配置してもよい。この場合、ヘッド構成は図20のシリアル型に対して、図2に示す複数のヘッドを千鳥状に組み合わせた形状を90°回転して含めた構成となる。
詳しくは、本実施形態では、ヘッドアレイの、前記ノズル列で前記複数のノズルの並び方向である前記第1の方向は、用紙Pの搬送方向である。そして、第2の方向は、前記被吐出物の搬送方向と直交する用紙Pの幅方向である。
ここで、第2実施形態と同様に、ヘッドアレイは、用紙Pに対して相対的に第2の方向に走査しながら用紙P上にインク滴を吐出する。
この際、搬送手段による1回の搬送量は、前記ヘッドの前記ノズル列の前記第1の方向の長さよりも短く設定されている。
よって、用紙P上のインク滴吐出領域は、n回目の走査で搬送方向の上流側のヘッド端に位置するノズルから吐出されるインク滴で形成されるパターンと、n+1回目の走査で吐出される搬送方向の下流側のヘッド端に位置するノズルから吐出されるインク滴で形成されるパターンとは、オーバーラップする。
図9の読取結果処理部118と同様に、算出手段は、スキャナーが読み取った、被吐出物上のインク滴吐出領域の走査による前記オーバーラップ領域の前記テストパターンを読み取って得られた画像情報から、前記ノズル列それぞれから形成された前記第2の方向の着弾位置ずれを算出する。そして、図9の記録ヘッド着弾位置設定部117と同様に、補正手段は、前記ノズル列の各ノズルから吐出されるインク滴を前記被吐出物上に着弾させる着弾位置をさらに補正する。
このようにして、本実施形態では、第1の実施形態で説明した配置によるオーバーラップ領域(ノズル間オーバーラップ部)と、走査オーバーラップ領域の両方について読み取り、着弾位置を補正すると好適である。
上記、インクジェット装置として、印刷装置内の印刷機構の例を説明したが、本発明は、印刷装置内の印刷機構以外の、プリンタ、スキャナー、被写機、プロッタ、及びファクシミリなどの画像形成装置等において、吐出器(吐出ヘッド、インクヘッド、記録ヘッド、インクジェットなど)から液滴(インクなど)を吐出して、記録媒体の表面に画像を形成(又は、印刷、印写、印字、記録など)するものであれば、いずれのものにも用いることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。