JP7167652B2 - 高炉の操業方法 - Google Patents
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Description
一方、近年では出銑比が2.6t/d/m3を超える、高出銑比操業が求められる場合がある。
高出銑比操業においては、鉄源中の酸化鉄の、単位時間当たりの還元量を従来よりも増やす必要がある。具体的には酸化鉄を還元するCOガス量を増やす必要がある。そのための手段として、微粉炭を羽口から吹き込む方法が知られている(特許文献1、2)。
投入する酸素量を増やす方法としては、炉内に吹き込む空気の量を増やす方法がある。しかしながら、この方法では、炉内のガス流量が増加し、圧力損失が増大するため、通気性が悪化する。通気性が悪化すると、還元反応が進まなくなり、融着帯が下がることにより、炉内の冷え込みを招く恐れがある。ガス流量の増加により、特に炉壁側にガス流が偏流しやすいため、炉中心での反応が進まない場合もある。
特許文献1および特許文献2に記載の微粉炭吹込みを行う方法は、吹込み量が多すぎると、炉内の通気性が悪化するため、吹込み量に制約があるという問題があった。また、微粉炭の分解熱により、羽口先の温度が下がるという問題もあった。
本発明によれば、羽口先温度と熱流比を、安定した高炉操業が可能な範囲とするため、より安定して高出銑比操業が可能となる。
高出銑比操業において、単位時間当たりの酸化鉄の還元量を従来よりも増やす方法として、酸素富化と微粉炭吹込みは公知である。
微粉炭吹込みの場合、微粉炭の分解熱により、羽口先の温度が下がるという問題がある。
そこで本発明者は、酸素富化による羽口先の温度上昇を、微粉炭の熱分解による温度低下で相殺できないか検討した。
以上が本発明の概要である。
まず、高炉の操業の前提を説明する。
本実施形態で対象とする高炉は、炉頂から鉄源とコークスを層状に装入し、かつ羽口から微粉炭と酸素富化した熱風とを吹き込み、2.6t/d/m3を超える高出銑比操業が可能であれば、構造は特に限定しない。
炉頂から装入する鉄源の種類も特に限定しない。一般に鉄源は焼結鉱である。
原料の装入方法も特に限定しない。ベルレスでもよいし、ベル式でもよい。
装入物分布も特に限定しない。
本実施形態に係る高炉の操業方法では、出銑比は2.6t/d/m3以上とする。出銑比が2.6t/d/m3未満の操業の場合、本実施形態に係る操業条件としなくても、安定した操業が可能であるためである。
以下、各操業条件とその根拠を説明する。
コークス比は溶銑1t当たりの生産に要するコークスの質量である。コークス比が大きくなると、ガス容量が大きくなり通気性が悪化する。羽口先温度や熱流比も上昇するため、340kg/t以下とする。下限は特に規定しないが、コークス比が小さすぎると、還元材比を維持するために微粉炭比を多くする必要が生じることから、320kg/t以上とするのが好ましい。
酸素富化率は、熱風に付加する酸素ガスの体積率である。単位時間当たりの酸化鉄の還元量を増やし、高出銑操業を行うために、酸素富化率は7.0体積%以上とする。
流速およびガス容量を、より下げるために、酸素富化率は7.5体積%以上とするのが好ましく、8.5体積%以上とするのが、より好ましい。
酸素富化率の上限は、酸素富化に用いられる設備の酸素供給能力に依存するが、12体積%程度である。
微粉炭比は、羽口から高炉に吹き込む微粉炭の溶銑1t当たりの質量である。微粉炭吹込みは、単位時間当たりの酸化鉄の還元量を増やす目的と、還元材比を維持しつつコークス比を下げる目的と、酸素富化による羽口先の温度上昇を抑制する目的で行われる。
酸素富化による羽口先の温度上昇を抑制するために、微粉炭比は170kg/t以上が好ましい。上限は特に規定しないが、微粉炭比を多くしすぎると炉内通気性が悪化するため、230kg/t以下が好ましい。
また、酸素富化を行わず、微粉炭吹き込みで還元性を向上させる場合と比べて、微粉炭比を下げることができ、通気性の悪化を防止できる。
これにより、炉内に投入する酸素量を増やした場合でも、通気性、還元性を維持した上で、安定して高出銑比操業が可能となる。これが本実施形態の特徴である。
シャフトガス流速とは、シャフトを流れるガスの流速である。高出銑比操業においては、ある程度流速が速い方が還元速度は早まる。ただし流速が速すぎると、未還元のままでシャフトを通り過ぎる還元ガス量が増大し、ガス利用率が悪化するとともに、通気性も悪化する。また、装入物の吹き抜けによる操業不安定化の原因ともなるため、3.0m/s以下が好ましい。より好ましくは2.95m/s以下である。
炉口ガス流速とは、炉口におけるガスの流速である。
炉口ガス流速が速すぎると、炉口でのガス圧が増大し、配管等の設備の負担が増大するため、1.0m/s以下が好ましい。より好ましくは0.95m/s以下である。
炉口ガス流速は、シャフトガス流速と同様、酸素富化率を調整することにより、制御可能である。
高出銑比操業では、単位時間当たりのコークス燃焼量が増えるので、羽口先温度は通常の操業よりも高くなり、例えば2000℃以上となる。
一方で、羽口先温度が2350℃を超えると、偏流が生じやすくなり、羽口周囲の温度が下がる。偏流と羽口周囲温度の低下は操業が安定しなくなる原因となるため、2350℃以下が好ましい。
具体的には、送風温度を上昇させると羽口先温度も上昇する。送風湿分を増やすと、気化熱により羽口先温度が下がる。
ただし、本実施形態では、羽口先温度を主に酸素富化率と微粉炭比で調整するため、送風温度と送風湿分は固定するのが好ましい。
具体的には、送風温度は、送風装置が制御可能な上限温度とするのが好ましい。例えば1180℃程度である。送風湿分は、送風装置が制御可能な最小値とするのが好ましい。例えば0%である。
熱流比は、高炉内の固体とガスの熱容量比である。本実施形態では以下の式(A)で熱流比を求められる。
熱流比=(0.31×コークス比[t/pig]+0.21×鉱石比[t/pig])/炉頂ガスの熱容量[J/K] ・・・(A)
熱流比が大きいと、固体である鉄源およびコークスの昇温が進まず、還元が遅れて融着帯の高さが低下する恐れがあるため、0.90以下が好ましく、0.88以下がより好ましい。
熱流比は酸素富化率を変更することで、制御可能である。
送風量は、送風温度にもよるが、送風温度1180℃程度の場合、炉内容積比で1.3~1.5Nm3/minが好ましい。送風量が多すぎると通気性悪化の原因となる。送風量が少なすぎると、熱量および酸素量の不足で還元反応が進まず、出銑比や炉内温度が低下する恐れがある。
炉頂ガス温度は100℃以上が好ましい。炉頂での結露による腐食を防ぐとともに、装入物を乾燥させ、湿分で装入物に付着した付着粉を分離するためである。
炉頂は、炉頂ガスによる炉頂圧力が生じている。
出銑比を上げると炉頂圧力も増大するが、出銑比が2.6を超えると炉頂圧力はそれ以上増大しなくなる。
具体的な炉頂圧力は、4000m3級の高炉では、270000~275000Paが上限である。これは、ガス流速を制御し、装入物が巻き上げられるのを防ぐために加圧するための、配管の耐久性の限界である。
コークス比、微粉炭比、酸素富化率、シャフトガス流速、および炉口ガス流速を変更した高炉操業を行い、出銑比を比較した。具体的な手順は以下の通りである。
この高炉に対し、コークス比、微粉炭比、酸素富化率、シャフトガス流速、炉口ガス流速を変更した高炉操業を行い、出銑比が目標値である2.6t/d/m3に達しているか否かを評価した。
シャフトガス流速および炉口ガス流速は、流路に設置した熱線式流速計により検出した。
結果を表1に示す。表1における下線は、本実施形態で規定した数値の範囲外であることを意味する。
一方で、比較例1~5は、コークス比、酸素富化率、シャフトガス流速、炉口ガス流速のいずれかの条件が本実施形態の条件を満たさず、出銑比が2.6t/d/m3未満となってしまった。
Claims (2)
- 炉頂から鉄源とコークスを層状に装入し、かつ羽口から微粉炭と酸素富化した熱風とを吹き込み、出銑比2.6t/d/m3以上で操業を行う高炉の操業方法において、
コークス比が340kg/t以下、前記熱風中の酸素富化率を7.0体積%以上、微粉炭比が160kg/t以上、シャフトガス流速が、3.15m/s以下、炉口ガス流速が1.05m/s以下となるように操業を行うことを特徴とする、高炉の操業方法。 - 羽口先温度2350℃以下、炉頂での熱流比0.90以下の条件で操業を行うことを特徴とする、請求項1に記載の高炉の操業方法。
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