JP7165728B2 - 低架橋エンドウ澱粉を有する春雨 - Google Patents

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Description

本発明は、澱粉及び水から基本的になる東洋系麺(oriental noodle)であって、この麺に従来存在する緑豆澱粉が、改善された調理耐性を麺に与える低架橋エンドウ澱粉によって置き換えられている、東洋系麺を提供する。
本発明は、それらの関連する作製プロセスにも関する。
澱粉麺は、アジアにおける料理及び食事の重要な一部分である。
これらは、一般に、セロハン(cellophane)又は春雨(glass noodle)と呼ばれ、ガラスのような半透明の外観で知られており、スープ、炒め物及び包餡食品に使用されている。
消費者が澱粉麺に求める品質は、口当たりの良さ及び調理時間の短さである。
消費者は、調理時に弾力を維持し、付着しない麺も好む。
高品質の澱粉麺の製造には、従来、緑豆が選択されており、これは、原産が南アジアであるが、オーストラリア及びインド等の地域でも栽培されているマメである。
緑豆澱粉は、独特の性質を提供し、例えば調理前及び調理後の両方で春雨に半透明な状態を維持させる、麺の製造に理想的な材料である。
しかしながら、緑豆の世界生産量は、限られているため、緑豆から作製された澱粉麺がこのような品質の全てを提供する場合、緑豆澱粉は、高価な選択肢である。
したがって、それを他の澱粉に置き換える試みが行われており、作製プロセスを適合させる/最適化する必要性も頻繁に生じている。
製造業者は、澱粉麺に同じ高品質を提供することができる、緑豆澱粉の代替となるより経済的な選択肢を求めている。
この種の試みの1つは、C.-Y.Lii及びS.-M.Changによる“Characterization of Red Bean(Phaseolus radiatus var.Aurea)Starch and Its Noodle Quality”,J.Food Science 46,p.79(1981)という名称の論文で報告されている。
それは、小豆澱粉、より正確には小豆澱粉及び緑豆澱粉の等量混合物を使用することを伴うものであった。
官能評価から、緑豆-小豆澱粉混合物から製造された麺は、緑豆麺に類似した食感を有していたが、小豆澱粉麺は、僅かに軟らかいことが示された。
緑豆澱粉を代替する他の試みは、カンナ、甘藷及びキャッサバ澱粉の使用を含んでいる。これらは、それぞれ約27、26,5及び22,5%のアミロース含有量を有し、緑豆
澱粉は、約33%のアミロース含有量を有することが知られている。
しかし、これらの塊茎澱粉から作製された麺は、技術的に劣っており、これらは、軟らか過ぎ、調理時の固形分損失がはるかにより高かった。
別の試みでは、標準的な馬鈴薯澱粉及びエンドウ澱粉を使用することが説明されているが、食感及び色は、満足できるものではない。
例えば、Northern Pulse growers Associationにより発表されている文献を参照されたく(http://www.northernpulse.com/uploads%5Cresources%5C908%5C2013-food-applications-of-pea-starch-npga-(2).pdf)、この文献では、エンドウ澱粉が緑豆澱粉の優れた代替候補として提示されているにも関わらず、馬鈴薯及びエンドウ澱粉は、緑豆澱粉から作製されたものと比較してより弾力が低い食感、やや短い調理時間及びやや高い調理損失をもたらすことが示されている。
最後に、緑豆澱粉を完全に代替することは不可能であるように思えるが、コストを最小限に削減するために、緑豆澱粉を馬鈴薯澱粉又はエンドウ澱粉等の他の澱粉とブレンドすることが提案された。
しかし、それによって食感(しっかりした(strong)食感等)及び調理後の色(暗い、濁っている等)が損なわれた。
別の重要な側面は、これらの麺が、アジアの人々によって一般に食されている煮込み鍋で供された場合の食感に関するものである。
小麦粉を原料とする麺等の他の麺と同様に、従来の春雨の食感は、直ちに軟らかくなる。
そのため、麺製造業者は、喫食中に食感が維持されるように煮込み鍋専用の太い春雨を製造した。
したがって、麺の形状、特に太さを変えることなく調理耐性を付与することが春雨市場において重要な点である。
エンドウ澱粉等のより経済的な澱粉を用いて、許容される食感を有する澱粉麺を製造するための代替策は、麺を製造する新規なプロセスの開発に基づくものであった。
従来、緑豆澱粉麺は、シリンダー型押出プロセスを用いて製造されている。
このプロセスは、緑豆澱粉を採取することと、少量、例えば5%の水と混練することと、それが糊化するまで調理することとを伴う。
次いで、この糊化した部分を残りの澱粉に戻し、それをより多くの水と混練する。この糊化した部分を追加することにより、混練物は、シリンダーに投入可能なペースト状の粘稠性を呈するようになり、圧縮されてダイから押し出されることにより麺が製造される。次いで、この麺を沸騰した湯中で調理し、水道水で冷却した後、空気中で乾燥させる。
この新規なプロセスには、エンドウ澱粉(https://www.grainsca
nada.gc.ca/fact-fait/peas-pois-eng.htmを参照されたい)を使用し、高温で二軸押出を行うことが推奨されている。このプロセスは、麺の製造に従来使用されていないが、シリアル、軽食及び大豆ベースの代替肉を製造するために製造業者によって一般に使用されている。
しかしながら、高温二軸押出が、澱粉麺を製造するためのより簡素且つより経済的となり得る選択肢であることが実証できたとしても、全ての製造業者が新しい方法を採用し且つ新しい設備を利用することを望むわけではない。
製造業者は、プロセスを変更することなく緑豆澱粉を完全に代替することができる新規な澱粉を期待している。
直面する全ての課題に対処するため、より具体的には調理耐性を改善するため、本発明が提案する解決策は、緑豆澱粉を加工エンドウ澱粉、特に低架橋エンドウ澱粉、より具体的にはリン酸エステルの網目が疎であるエンドウ澱粉に置き換えることである。
本発明は、澱粉及び水から基本的になる押出成形された東洋系麺において、麺の作製に使用される澱粉は、低架橋エンドウ澱粉であることを特徴とする、押出成形された東洋系麺に関する。
本発明において、「基本的に」は、99%を超えることを意味する。
こうして得られた麺は、低架橋エンドウ澱粉のリン含有量が5mg~10mg/kg未加工澱粉であり、より詳細には、低アセチル化エンドウ澱粉が、天然エンドウ澱粉のものと比較して約2℃上昇した(約2℃高い)糊化温度を示すことを特徴とする。
春雨の食感の比較を示す。 調理過程における春雨の硬さの変化を示す。 春雨の含水率の変化を示す。 麺の色の比較を示す。 春雨の食感の比較を示す。
春雨は、従来、100%緑豆澱粉で製造されている、「澱粉を基本成分とするアジアの麺」である。
食文化の発展に伴い、春雨製造業者は、コストを削減するためにその原料の一部をエンドウ澱粉又は馬鈴薯澱粉に変更し得る。
春雨製造業者は、エンドウ澱粉及び緑豆澱粉を混ぜて製造される「低価格」タイプ又は「標準」タイプの春雨に加えて、緑豆澱粉のみを含有する高級タイプも提示している。
しかしながら、本出願人は、低価格タイプ又は標準タイプのいずれかにより得られる品質が高級タイプのものとかけ離れていることを認識している。
以下の表は、得られる食感及び調理耐性を示す。
Figure 0007165728000001
このように、例えば麺線の径の変化に関して、全ての春雨の径が吸水により増大した場合、その増加率は、麺の原料に依存することが認められる。
より詳細には、高級タイプは、径の著しい増加率を示す。
低価格タイプは、他と比べて熱湯中でより早く軟らかい食感を示し、標準及び高級タイプと比較して十分なオーバークッキング耐性を有していない。
標準タイプは、高級タイプと比較してオーバークッキング耐性でも劣る。
したがって、緑豆澱粉にエンドウ澱粉を混ぜた春雨は、許容できない食感を示す。
有利に且つ経済的に緑豆澱粉を完全に代替することができる新規なエンドウ澱粉を提案するために、本出願人は、加工澱粉、より詳細には架橋エンドウ澱粉に関する多くの実験を実施した。
天然エンドウ澱粉は、耐剪断性及び耐酸性が低く、耐熱性が低く、老化傾向が高い等、機能的性質に劣ることから、新規な機能性食品成分及び機能性食品を開発することを目的として、エンドウ澱粉の特定の機能的性質を、例えば、所望の耐消化性が得られるように調整するために加工を施すことが必要であることが知られている。
架橋による加工は、一般に、多官能性試剤を利用して、隣接する澱粉鎖上の水酸基間にエーテル又はエステルのいずれかの分子間架橋又は分子内架橋を形成するものである。トリメタリン酸ナトリウム(STMP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、塩化ホスホリル(オキシ塩化リン:POCl3)、エピクロロヒドリン(EPI)及び無水アジピン酸-無水酢酸混合物が架橋澱粉の生成に利用される一般的な試剤である。
最適な反応条件及び手法は、試剤の種類に応じて異なる。
STMP及び/又はSTPPと反応させる場合、一般に、水性顆粒スラリー中で澱粉に
試剤及び塩基触媒の両方を含浸させる。
最も一般的に使用されている澱粉の食品用架橋剤は、リン酸化効率の高い99:1(w/w)STMP/STPPである。
食用の加工澱粉中のリンは、米国食品医薬品局による連邦規則(CFR,2001)又はEEC指令(2000)により規制されている。STMP/STPPを食用澱粉のリン酸化に使用する場合、加工澱粉のリン含有量は、0,4%を超えることはできない。
このリン含有量に基づき、リン酸モノエステル及びリン酸ジエステルの置換度(DS)をそれに従って算出することができる。
架橋澱粉のリン含有量は、エネルギー分散型蛍光X線分光(EDXRF)及び誘導結合プラズマ発光分光(ICP-OES)により求めることもできる。
本発明において、本出願人は、緑豆澱粉を効率的に置き換えて調理耐性を改善することを目的として、リン酸化度の異なる様々な品質の架橋澱粉を試験することを決定した。
本出願人は、そのために、考慮すべき2つの重要なパラメータ:
- この特殊な澱粉のアミロース含有量;
- その糊化温度
が存在することを見出した。
第1の点に関して、緑豆澱粉は、30~35%のアミロースを含み、アミロース含有量が35%であるエンドウ澱粉が最良の選択肢となる。
第2の点に関して、本出願人は、エンドウ澱粉の調理耐性を改善するようにその糊化温度を上昇させる加工度が必要であり、有利には約2℃、より有利には1,5℃~2,5℃上昇させることが可能であることを見出した。
この約2度の値を求めるために、2種の架橋エンドウ澱粉について試験を行った:
- 架橋エンドウ澱粉「A」:そのリン含有量が5mg~10mg/kg未加工澱粉になるように、従来法で(澱粉スラリーを0.0385%w/wのSTMPで処理)作製した低架橋エンドウ澱粉。その糊化温度は、75,4℃である。
- 架橋エンドウ澱粉「B」:そのリン含有量が130mg~150mg/kg未加工澱粉になるように、従来法で(澱粉スラリーを0.6%w/wのSTMPで処理)作製した低架橋エンドウ澱粉。その糊化温度は、95℃である。
比較として、天然エンドウ澱粉の糊化温度は、約73,4℃であり、緑豆エンドウ澱粉の糊化温度は、約66,95℃(これらのそれぞれの澱粉の標準的なRVAプロファイルの分析により求められる値)である。
本発明に有用な低架橋エンドウ澱粉は、リン含有量が20mg/kg未加工澱粉未満であるエンドウ澱粉である。
後に例示するように、調理耐性を得るために緑豆澱粉と置き換えられる架橋エンドウ澱粉のリン又はリン含有量の範囲は、より有利には、5~10mg/kg未加工澱粉である。
本発明は、以下に示す実施例に照らし、より十分に理解されることになるが、実施例は、例示のみを目的とし、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1:
Figure 0007165728000002
冷凍を行わない春雨の製造方法:
- A相の澱粉を水と混練することにより澱粉スラリーを生成する。
- 熱湯(140ml、B相)を加え、ハンドミキサー(820rpm)で5分間混練する。
- 澱粉スラリーにC相を加え、61rpmで1分間、次いで113rpmで10分間混練する。
- 生地をポンプで送り、径2,5mmのノズルを介して押出し、10秒間茹でる。
- 氷冷水中で5分間冷却する。
- 80℃の空気中で1時間乾燥させる。
調理及び食感分析
- 500mlの熱湯が入ったカップ内で麺を湯戻しする。
- 2分間待つ。
- 麺を4℃の冷蔵庫で保管し、1日後、4日後、8日後、12日後及び16日後の麺の
食感を、テクスチャーアナライザSHIMADZU EZ-SXを使用して、製造業者の操作指示に従い、以下に示す条件で検査する:
○時間:1
○プランジャー:歯形押棒
○速度:3mm/分
○試験片のサイズ:1本。
結果:
麺の食感:硬さ及び軟らかさ(図1を参照されたい)
このようにして得られた麺の食感を比較した(全て調理/6分間湯戻ししたもの)。
架橋エンドウ澱粉「A」を有する春雨は、緑豆澱粉のものよりも硬く、しっかりした食感を示し、天然エンドウ澱粉を有する春雨は、架橋エンドウ澱粉「A」のものほどではないものの、緑豆澱粉のものよりも硬く、しっかりした食感を示すことが認められた。
架橋エンドウ澱粉「B」を用いた春雨を得ることはできなかった。これは、網目量の選択がこの用途において最も重要であることを示している。
麺の食感:調理耐性(図2を参照されたい)
調理耐性を比較するために、調理後の春雨のピークの硬さを2分毎にプロットした。
この評価において、本発明者らは、喫食に適した麺の硬さを0,2~0,7Nと定めた。
架橋エンドウ澱粉「A」は、長時間(緑豆澱粉と比較して約9倍以上長く)適切な硬さを維持しており、優れた特性を有することが分かる。
吸水率:
調理過程における各春雨の含水率も比較した(図3を参照されたい)。
このように、架橋エンドウ澱粉「A」を有する春雨は、他の澱粉と比較して遅い吸水速度を示す。
麺の色:
麺の色を比較した(図4を参照されたい)。
架橋エンドウ澱粉「A」を有する麺の色は、緑豆澱粉の麺に類似している。
これは、緑豆を架橋エンドウ澱粉「A」に置き換えると、麺の色を変えることなく調理耐性を向上させ得ることを示している。
実施例2:
本実施例において、本発明者らは、架橋エンドウ澱粉「A」対緑豆澱粉の性能を比較する。
Figure 0007165728000003
冷凍工程を行う春雨の製造方法:
- A相の澱粉を水と混練することにより澱粉スラリーを生成する。
- 熱湯(140ml、B相)を加え、ハンドミキサー(820rpm)で5分間混練する。
- C相を澱粉スラリーに加え、61rpmで1分間、次いで113rpmで10分間混練する。
- 生地をポンプで送り、径2,5mmのノズルを介して押出し、30秒間茹でる。
- 氷冷水中で5分間冷却する。
- 水に晒し、-20℃で1日間冷凍する。
- 凍結した春雨を流水で30分間解凍する。
- 型枠に入れる。
- 次いで、80℃の空気中で1時間乾燥させる。
調理及び食感分析
- 春雨をカップに入れ、500mlの熱湯を注ぐ。
- 3分間待つ。
- 食感を、テクスチャーアナライザSHIMADZU EZ-SXを使用して、製造業者の操作指示に従い、以下に示す条件で測定する:
○時間:1
○プランジャー:歯形押棒
○速度:3mm/分
○試験片のサイズ:1本。
結果:
加工が即席春雨の食感に与える効果(図5を参照されたい)
崩れやすい食感の観点でその挙動を比較するために、本発明者らは、先に説明した冷凍
工程を経る春雨の製造方法を用いて評価する。
架橋エンドウ澱粉「A」は、春雨の食感を緑豆澱粉と比較してほとんど変化させない。これは、架橋エンドウ澱粉「A」がより優れた調理耐性を付与することを意味する。
天然エンドウ澱粉を有する麺は、緑豆澱粉を有する麺よりも脆く、崩れやすい食感を示す。換言すれば、天然エンドウ澱粉を有する麺は、調理耐性を有していないか、又は緑豆澱粉を有する麺よりも脆い。即ち、これは、エンドウ澱粉を架橋する加工の利点を裏付けるものである。

Claims (3)

  1. 澱粉及び水から基本的になる押出成形された澱粉麺において、前記麺の作製に使用される前記澱粉は、リン含有量が未架橋澱粉1kgあたり20mg未満であるリン酸架橋エンドウ澱粉であることを特徴とする、押出成形された澱粉麺。
  2. 前記リン酸架橋エンドウ澱粉のリン含有量は、未架橋澱粉1kgあたり5mg~10mであることを特徴とする、請求項1に記載の麺。
  3. 前記リン酸架橋エンドウ澱粉は、天然エンドウ澱粉のものと比較して1.5℃~2.5℃上昇した糊化温度を示すことを特徴とする、請求項2に記載の麺。
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