以下、図面を参照して、X線診断装置及び放射線診断装置の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
まず、図1を用いて第1の実施形態に係るX線診断装置100の構成の一例を説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、X線高電圧装置101と、X線管102と、X線絞り器103と、天板104と、Cアーム105と、検出器106と、温度センサ107と、メモリ108と、ディスプレイ109と、入力インターフェース110と、処理回路111とを備える。
X線高電圧装置101は、処理回路111による制御の下、X線管102に高電圧を供給する。例えば、X線高電圧装置101は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管102に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管102が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
X線管102は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管102は、X線高電圧装置101から供給される高電圧を用いて、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。
X線絞り器103は、X線管102により発生されたX線の照射範囲を絞り込むコリメータと、X線管102から曝射されたX線を調節するフィルタとを有する。
X線絞り器103におけるコリメータは、例えば、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。コリメータは、絞り羽根をスライドさせることで、X線管102が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管102のX線照射口付近に設けられる。
X線絞り器103におけるフィルタは、被検体Pに対する被曝線量の低減とX線画像データの画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、被検体Pに吸収されやすい軟線成分を低減したり、X線画像データのコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタは、その材質や厚み、位置などによってX線の線量及び照射範囲を変化させ、X線管102から被検体Pへ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
例えば、X線絞り器103は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路111による制御の下、駆動機構を動作させることによりX線の照射を制御する。例えば、X線絞り器103は、処理回路111から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、コリメータの絞り羽根の開度を調整して、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、X線絞り器103は、処理回路111から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、フィルタの位置を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の線量の分布を制御する。
天板104は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。なお、被検体Pは、X線診断装置100に含まれない。例えば、寝台は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路111による制御の下、駆動機構を動作させることにより天板104の移動を制御する。例えば、寝台は、処理回路111から受け付けた制御信号に応じて、駆動電圧を駆動機構に付加することにより、天板104を移動させる。
Cアーム105は、X線管102及びX線絞り器103と検出器106とを、被検体Pを挟んで対向するように保持する。例えば、Cアーム105は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路111による制御の下、駆動機構を動作させることにより、回転したり移動したりする。例えば、Cアーム105は、処理回路111から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、X線管102及びX線絞り器103と検出器106とを被検体Pに対して回転・移動させ、X線の照射位置や照射角度を制御する。なお、図1では、X線診断装置100がシングルプレーンの場合を例に挙げて説明しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、バイプレーンの場合であってもよい。
検出器106は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。検出器106は、X線管102から照射されて被検体Pを透過したX線を検出して、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路111へと出力する。なお、検出器106は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
温度センサ107は、検出器106の温度を検知するセンサである。例えば、温度センサ107は、熱電対等の接触式のセンサや、赤外線温度センサ等の非接触式のセンサである。温度センサ107は、後述する処理回路111による制御の下、検出器106における1又は複数箇所の温度を検知する。なお、検出器106の温度については後述する。
メモリ108は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ108は、例えば、処理回路111によって生成されたX線画像データを受け付けて記憶する。また、メモリ108は、処理回路111によって読み出されて実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。
ディスプレイ109は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ109は、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、処理回路111によって生成された各種のX線画像データを表示する。例えば、ディスプレイ109は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。
入力インターフェース110は、各種指示や各種設定などを行うためのマウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネル等によって実現される。入力インターフェース110は、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路111へと出力する。
処理回路111は、X線診断装置100全体の動作を制御する。例えば、処理回路111は、制御機能111a、生成機能111b及び表示制御機能111cを有する。
処理回路111の各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ108へ記憶されている。処理回路111は、メモリ108からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路111は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。なお、図1においては、制御機能111a、生成機能111b及び表示制御機能111cの各処理機能が単一の処理回路111によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路111は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路111が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
例えば、処理回路111は、メモリ108から制御機能111aに相当するプログラムを読み出して実行することにより、待機期間中の検出器106の電源を制御する。なお、この点については後述する。
また、例えば、制御機能111aは、入力インターフェース110を介して入力された操作者の指示に従って、X線高電圧装置101を制御し、X線管102に供給する電圧を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量やオン/オフを制御する。また、例えば、制御機能111aは、X線絞り器103の動作を制御し、コリメータが有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、制御機能111aは、X線絞り器103の動作を制御し、フィルタの位置を調整することで、X線の線量の分布を制御する。また、例えば、制御機能111aは、Cアーム105の動作を制御することで、Cアーム105を回転させたり、移動させたりする。また、例えば、制御機能111aは、寝台の動作を制御することで、天板104を移動させる。
また、処理回路111は、メモリ108から生成機能111bに相当するプログラムを読み出して実行することにより、検出器106によってX線から変換された検出信号を用いてX線画像データを生成し、生成したX線画像データをメモリ108に格納する。例えば、生成機能111bは、検出器106から受信した検出信号に対して、電流・電圧変換やA(Analog)/D(Digital)変換、パラレル・シリアル変換を行い、X線画像データを生成する。
また、生成機能111bは、メモリ108が記憶するX線画像データに対して各種画像処理を行う。例えば、生成機能111bは、X線画像データに対して、画像処理フィルタによるノイズ低減処理や、散乱線補正を実行する。また、例えば、生成機能111bは、X線画像データに対して、オフセット成分を除去するためのオフセット補正を実行する。なお、オフセット補正については後述する。
また、処理回路111は、メモリ108から表示制御機能111cに相当するプログラムを読み出して実行することにより、ディスプレイ109において、生成機能111bによる各種画像処理が施されたX線画像データを表示する。また、表示制御機能111cは、ディスプレイ109において、操作者の指示を受け付けるためのGUIを表示する。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理医療デバイス(例えば、単純プログラマブル論理医療デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理医療デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ108に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリ108にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態のプロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
次に、検出器106の一例について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係る検出器106の一例を示す図である。例えば、検出器106は、図2に示すように、検出膜や画素容量部、TFT(Thin Film Transistor)等から構成されるFPDである。検出膜は、照射されたX線のエネルギーを電荷に変換する。画素容量部は、検出膜により変換された電荷を蓄積するコンデンサであり、検出膜から電荷の入力を受けるための画素電極や、絶縁膜に挟まれた金属、リーク電流を放出するための接地電極などを有する。TFTは、各画素容量部から電荷を取り出す半導体スイッチであり、図示しない駆動回路からの駆動信号を入力するゲート線や、画素容量部から取り出した電荷を流す信号線に接続される。
以上、X線診断装置100の構成の一例について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係るX線診断装置100は、以下、詳細に説明する処理回路111による処理によって、待機期間中の消費電力を低減させつつ、安定した画質のX線画像データを迅速に提供する。以下、第1の実施形態に係るX線診断装置100が行う処理について詳細に説明する。
まず、X線診断装置100は常時使用されるものではなく、X線の照射及び検出を行わない待機期間が存在する。待機期間においては、消費電力を低減する観点から、検出器106等の電源をオフにすることが考えられる。この場合、検出器106の温度は室温に向けて低下する。
ここで、温度が低下したままの検出器106を用いてX線画像データを収集すると、X線画像データの画質が不安定になる場合がある。具体的には、生成機能111bは、図2に示した検出膜やTFTからのリーク電荷等によって生じるオフセット成分を除去するため、X線画像データについてオフセット補正を実行するが、検出器106の温度が一定の温度範囲外にある場合、オフセットレベルが安定しないために適切なオフセット補正を実行することができず、得られるX線画像データの画質が不安定なものとなる。なお、以下では、X線画像データの画質が安定する温度を、安定温度と記載する。
一方で、温度が低下した検出器106を安定温度まで昇温してからX線画像データを収集することとすると、検出器106の昇温を行なっている間は待ち時間となり、X線画像データの提供が遅延する。そこで、制御機能111aは、待機期間中の検出器106の電源を制御し、検出器106の温度を第1の温度よりも高い状態に維持することにより、待機期間中の消費電力を低減させつつ、安定した画質のX線画像データを迅速に提供する。
以下、図3を用いて、制御機能111aが待機期間中の検出器106の電源を制御し、検出器106の温度を第1の温度よりも高い状態に維持する場合について説明する。図3は、第1の実施形態に係る検出器106の電源の制御の一例を示す図である。なお、図3においては、第1の温度よりも高い状態の一例として、第1の温度から第2の温度までの温度範囲について説明する。即ち、図3においては、制御機能111aが、待機期間中の検出器106の電源を制御し、検出器106の温度を第1の温度から第2の温度までの温度範囲において維持する場合について説明する。
図3において、縦軸は検出器106の温度Tdを示し、横軸は時間tを示す。即ち、図3は、検出器106の温度Tdの経時的な変化を示す。また、図3においては、室温Trを破線で示す。なお、以下では、説明の便宜のため、室温Trは固定値とする。また、図3においては、第1の温度として、安定温度の下限L1を破線で示す。また、図3においては、第2の温度として、安定温度の上限L2を破線で示す。この場合、第1の温度から第2の温度までの温度範囲は、安定温度に対応する。
なお、制御機能111aは、温度センサ107を用いて検出器106の温度Tdを取得し、取得した温度Tdに基づいて待機期間中の検出器106の電源を制御する。例えば、制御機能111aは、熱電対である温度センサ107を用いて、図2に示したTFTの温度を測定し、測定結果を温度Tdとして取得する。ここで、制御機能111aは、マトリクス状に配置されたTFTにおける1箇所の温度を測定してもよいし、複数箇所の温度を測定してもよい。
例えば、検出器106の構造及び材質により、検出器106内での温度分布が生じにくい場合、制御機能111aは、マトリクス状に配置されたTFTのうち1箇所(例えば、中心に位置するTFT)の温度を測定する。また、例えば、検出器106内での温度分布が生じやすい場合、制御機能111aは、マトリクス状に配置されたTFTのうち複数箇所の温度を測定する。一例を挙げると、制御機能111aは、高温になりやすい位置のTFT及び低温になりやすい位置のTFTの温度を測定する。この場合、制御機能111aは、複数箇所で測定した複数の温度のうち、安定温度の中心値(例えば、図3の下限L1及び上限L2の平均値)との差の絶対値が最も大きい温度を、検出器106の温度Tdとして取得する。
なお、温度センサ107は熱電対に限られるものではなく、制御機能111aは、検出器106の温度Tdを取得するため、接触式又は非接触式の任意のセンサを用いることができる。また、制御機能111aは、検出器106の電源がオンになっているかオフになっているかに関わらず、検出器106の温度Tdを取得することができる。
図3の時間t11において、制御機能111aは、検出器106の電源をオンとし、時間t11から時間t12までの間、被検体P1に対してX線を照射する。また、時間t11から時間t12までの間、検出器106は、被検体P1を透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、生成機能111bは、検出器106から出力された検出信号を用いて、被検体P1のX線画像データを生成する。なお、被検体P1は、被検体Pの一例である。
ここで、時間t11における検出器106の温度Tdは安定温度であり、オフセットレベルは安定しているため、生成機能111bは、オフセット補正を適切に実行し、安定した画質のX線画像データを生成することができる。そして、表示制御機能111cは、ディスプレイ109において、オフセット補正が施されたX線画像データを表示する。なお、時間t11から時間t12までの間は、検出器106の電源がオンになっているため、検出器106内で発生するジュール熱等により、検出器106の温度Tdは上昇する。
また、制御機能111aは、被検体P1に対するX線の照射が終了した時間t12において、検出器106の電源をオフにする。これにより、検出器106の温度Tdは、室温Trに向けて低下する。次に、制御機能111aは、検出器106の温度Tdが、安定温度の下限L1と略同一の温度になる時間t13に、検出器106の電源をオンにする。これにより、検出器106の温度Tdは、検出器106内で発生するジュール熱等によって上昇する。次に、制御機能111aは、検出器106の温度Tdが、安定温度の上限L2と略同一の温度になる時間t14に、検出器106の電源をオフにする。これにより、検出器106の温度Tdは、室温Trに向けて低下する。
上述したように、制御機能111aは、温度Tdが下限L1と略同一の温度になった時に検出器106の電源をオンとし、温度Tdが上限L2と略同一の温度になった時に検出器106の電源をオフとすることにより、被検体P1に対するX線の照射が終了した時間t12以降の待機期間中、検出器106の温度Tdを、安定温度に対応する温度範囲において維持する。これにより、X線診断装置100は、待機期間中の消費電力を低減させつつ、安定した画質のX線画像データを迅速に提供することができる。
例えば、時間t15において、急患である被検体P2が搬入された場合、制御機能111aは、時間t15において検出器106の電源をオンとし、時間t15から時間t16までの間、被検体P2に対してX線を照射する。即ち、制御機能111aは、検出器106の昇温を行なうことなく、X線の照射を開始する。また、検出器106は、時間t15から時間t16までの間、被検体P2を透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、生成機能111bは、検出器106から出力された検出信号を用いて、被検体P2のX線画像データを生成する。なお、被検体P2は、被検体Pの一例である。
ここで、時間t15の時点で検出器106は安定温度となっており、オフセットレベルは安定しているため、生成機能111bは、オフセット補正を適切に実行し、安定した画質のX線画像データを生成することができる。そして、表示制御機能111cは、ディスプレイ109において、オフセット補正が施されたX線画像データを表示する。なお、時間t15から時間t16までの間は、検出器106の電源がオンになっているため、検出器106内で発生するジュール熱等により、検出器106の温度Tdは上昇する。更に、制御機能111aは、被検体P2に対するX線の照射が終了した時間t16以降の待機期間中、検出器106の温度Tdを、安定温度に対応する温度範囲において維持する。
次に、X線診断装置100による処理の手順の一例を、図4を用いて説明する。図4は、第1の実施形態に係るX線診断装置100の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS101、ステップS102、ステップS103、ステップS104、ステップS105及びステップS106は、制御機能111aに対応するステップである。ステップS107及びステップS108は、生成機能111bに対応するステップである。ステップS109は、表示制御機能111cに対応するステップである。
まず、処理回路111は、X線の照射を開始するか否かを判定する(ステップS101)。X線の照射を開始しない場合(ステップS101否定)、処理回路111は、検出器106の温度Tdが、安定温度の下限L1より低いか否かを判定する(ステップS102)。ここで、温度Tdが下限L1より低い場合(ステップS102肯定)、処理回路111は、検出器106の電源をオンに切り替え、または検出器106の電源をオンのまま維持する(ステップS103)。
一方で、温度Tdが下限L1より高い場合(ステップS102否定)、又は、ステップS103の後、処理回路111は、検出器106の温度Tdが、安定温度の上限L2より高いか否かを判定する(ステップS104)。ここで、温度Tdが上限L2より高い場合(ステップS104肯定)、処理回路111は、検出器106の電源をオフに切り替え、または検出器106の電源をオフのまま維持する(ステップS105)。一方で、温度Tdが上限L2より低い場合(ステップS104否定)、又は、ステップS105の後、処理回路111は、再度ステップS101に移行する。
X線の照射を開始する場合(ステップS101肯定)、処理回路111は、被検体Pに対してX線の照射を開始する(ステップS106)。ここで、検出器106は、被検体Pを透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、処理回路111は、検出信号を用いて、被検体PのX線画像データを生成し(ステップS107)、生成したX線画像データに対するオフセット補正を実行する(ステップS108)。更に、処理回路111は、ディスプレイ109においてX線画像データを表示し(ステップS109)、再度ステップS101に移行する。
なお、ステップS102及びステップS103と、ステップS104及びステップS105との順番は逆でもよい。この場合、処理回路111は、ステップS101においてX線の照射を開始しないと判定した後、検出器106の温度Tdが、安定温度の上限L2より高いか否かを判定する(ステップS104)。ここで、温度Tdが上限L2より高い場合(ステップS104肯定)、処理回路111は、検出器106の電源をオフに切り替え、または検出器106の電源をオフのまま維持する(ステップS105)。一方で、温度Tdが上限L2より低い場合(ステップS104否定)、又は、ステップS105の後、処理回路111は、検出器106の温度Tdが、安定温度の下限L1より低いか否かを判定する(ステップS102)。ここで、温度Tdが下限L1より低い場合(ステップS102肯定)、処理回路111は、検出器106の電源をオンに切り替え、または検出器106の電源をオンのまま維持する(ステップS103)。一方で、温度Tdが下限L1より高い場合(ステップS102否定)、又は、ステップS103の後、処理回路111は、再度ステップS101に移行する。
上述したように、第1の実施形態によれば、X線管102は、被検体Pに対してX線を照射する。また、検出器106は、被検体Pを透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、制御機能111aは、検出器106の温度Tdを取得し、取得した温度Tdに基づいて待機期間中の検出器106の電源を制御することにより、検出器106の温度Tdを第1の温度から第2の温度までの温度範囲において維持する。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、待機期間中の消費電力を低減させつつも、安定した画質のX線画像データを迅速に提供することができる。
また、第1の実施形態によれば、制御機能111aは、待機期間において、検出器106の温度Tdが安定温度の下限L1と略同一の温度になった時に検出器106の電源をオンとし、検出器106の温度Tdが安定温度の上限L2と略同一の温度になった時に検出器106の電源をオフとすることにより、検出器106の温度Tdを安定温度に対応する温度範囲において維持する。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、検出器106の温度Tdを安定温度の範囲において維持しつつも、検出器106のオン/オフの切り替えの回数を低減し、検出器106のオン/オフに係る回路系への負担を軽減することができる。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、待機期間における検出器106の電源の制御として、図3に示す一例についてのみ説明した。これに対して、第2の実施形態では、待機期間における検出器106の電源の制御のバリエーションについて説明する。
第2の実施形態に係るX線診断装置100は、図1に示したX線診断装置100と同様の構成を有し、制御機能111aによる処理の一部が相違する。そこで、第1の実施形態において説明した構成と同様の構成を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
例えば、制御機能111aは、待機期間中の検出器106の電源を制御することにより、検出器106の温度Tdを、安定温度及び安定温度に近接した温度に対応する温度範囲において維持する。以下、この点について、図5を用いて説明する。図5は、第2の実施形態に係る検出器106の電源の制御の一例を示す図である。
図5において、縦軸は検出器106の温度Tdを示し、横軸は時間tを示す。即ち、図5は、検出器106の温度Tdの経時的な変化を示す。また、図5においては、室温Tr、安定温度の下限L1及び安定温度の上限L2を破線で示す。また、図5においては、第1の温度として、安定温度に近接した温度の下限L1’を破線で示す。また、図5においては、第2の温度として、安定温度に近接した温度の上限L2’を破線で示す。この場合、第1の温度から第2の温度までの温度範囲は、安定温度及び安定温度に近接した温度に対応する。
ここで、安定温度に近接した温度の下限L1’は、安定温度の下限L1よりも低い温度範囲のうち、急患の検査であっても最低限必要となる準備期間内に安定温度の下限L1まで昇温可能な温度範囲において設定される。また、安定温度に近接した温度の上限L2’は、安定温度の上限L2よりも高い温度範囲のうち、急患の検査であっても最低限必要となる準備期間内に安定温度の上限L2まで冷却可能な温度範囲において設定される。
図5の時間t21において、制御機能111aは、検出器106の電源をオンとし、時間t21から時間t22までの間、被検体P1に対してX線を照射する。また、時間t21から時間t22までの間、検出器106は、被検体P1を透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、生成機能111bは、検出器106から出力された検出信号を用いて、被検体P1のX線画像データを生成する。
ここで、時間t21における検出器106の温度Tdは安定温度であり、オフセットレベルは安定しているため、生成機能111bは、オフセット補正を適切に実行し、安定した画質のX線画像データを生成することができる。そして、表示制御機能111cは、ディスプレイ109において、オフセット補正が施されたX線画像データを表示する。なお、時間t21から時間t22までの間は、検出器106の電源がオンになっているため、検出器106内で発生するジュール熱等により、検出器106の温度Tdは上昇する。
また、制御機能111aは、被検体P1に対するX線の照射が終了した時間t22において、検出器106の電源をオフにする。これにより、検出器106の温度Tdは、室温Trに向けて低下する。次に、制御機能111aは、検出器106の温度Tdが、安定温度に近接した温度の下限L1’と略同一の温度になる時間t23に、検出器106の電源をオンにする。これにより、検出器106の温度Tdは、検出器106内で発生するジュール熱等によって上昇する。次に、制御機能111aは、検出器106の温度Tdが、安定温度に近接した温度の上限L2’と略同一の温度になる時間t24に、検出器106の電源をオフにする。これにより、検出器106の温度Tdは、室温Trに向けて低下する。
上述したように、制御機能111aは、温度Tdが下限L1’と略同一の温度になった時に検出器106の電源をオンとし、温度Tdが上限L2’と略同一の温度になった時に検出器106の電源をオフとすることにより、被検体P1に対するX線の照射が終了した時間t22以降の待機期間中、検出器106の温度Tdを、下限L1’から上限L2’までの範囲において維持する。これにより、X線診断装置100は、消費電力を低減させつつ、安定した画質のX線画像データを迅速に提供することができる。
例えば、温度Tdが下限L1’と略同一の温度になった時間t25において、急患である被検体P2が搬入された場合、制御機能111aは、時間t25において検出器106の電源をオンにする。ここで、急患である被検体P2に対しては検査が迅速に行われるとしても、被検体P2が搬入されてからX線管102がX線の照射を開始するまでには準備期間があり、その間は検出器106の昇温が可能である。特に、検出器106の電源をオンにした直後は発熱が大きいため、短い期間でも一定の昇温が可能である。
図5に示すように、制御機能111aは、時間t25から時間t26までの間、検出器106を昇温し、時間t26から時間t27までの間、被検体P2に対してX線を照射する。また、時間t26から時間t27までの間、検出器106は、被検体P2を透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、生成機能111bは、検出器106から出力された検出信号を用いて、被検体P2のX線画像データを生成する。
ここで、時間t26の時点で検出器106は安定温度の範囲内となっており、オフセットレベルは安定しているため、生成機能111bは、オフセット補正を適切に実行し、安定した画質のX線画像データを生成することができる。そして、表示制御機能111cは、ディスプレイ109において、オフセット補正が施されたX線画像データを表示する。なお、時間t25から時間t27までの間は、検出器106の電源がオンになっているため、検出器106内で発生するジュール熱等により、検出器106の温度Tdは上昇する。更に、制御機能111aは、被検体P2に対するX線の照射が終了した時間t27以降の待機期間中、検出器106の温度Tdを、下限L1’から上限L2’までの範囲において維持する。
同様に、温度Tdが上限L2’と略同一の温度になった時間において急患である被検体P2が搬入された場合、制御機能111aは、被検体P2が搬入された時点で検出器106の電源をオフにする。これにより、準備期間中に検出器106の温度Tdは安定温度の上限L2以下まで低下する。その後、制御機能111aは、被検体P2に対してX線を照射し、検出器106は、被検体P2を透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、生成機能111bは、検出器106から出力された検出信号を用いて、被検体P2のX線画像データを生成する。ここで、X線の照射を開始した時点で検出器106は安定温度の範囲内となっており、オフセットレベルは安定しているため、生成機能111bは、オフセット補正を適切に実行し、安定した画質のX線画像データを生成することができる。そして、表示制御機能111cは、ディスプレイ109において、オフセット補正が施されたX線画像データを表示する。更に、制御機能111aは、被検体P2に対するX線の照射が終了した後の待機期間中、検出器106の温度Tdを、下限L1’から上限L2’までの温度範囲において維持する。
なお、図5においては、安定温度に近接した温度の下限L1’が第1の温度に対応し、安定温度に近接した温度の上限L2’が第2の温度に対応するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御機能111aは、安定温度の下限L1が第1の温度に対応し、安定温度に近接した温度の上限L2’が第2の温度に対応するものとして、検出器106の温度Tdを第1の温度から第2の温度までの温度範囲において維持してもよい。また、例えば、制御機能111aは、安定温度に近接した温度の下限L1’が第1の温度に対応し、安定温度の上限L2が第2の温度に対応するものとして、検出器106の温度Tdを第1の温度から第2の温度までの温度範囲において維持してもよい。
上述したように、第2の実施形態に係る制御機能111aは、待機期間中の検出器106の電源を制御することにより、検出器106の温度Tdを、安定温度及び安定温度に近接した温度に対応する温度範囲において維持する。従って、第2の実施形態に係るX線診断装置100は、安定した画質のX線画像データを迅速に提供することを可能にしつつも、検出器106のオン/オフの切り替えの回数を更に低減することができる。
次に、図6を用いて、待機期間における検出器106の電源の制御について別の例を説明する。図6は、第2の実施形態に係る検出器106の電源の制御の一例を示す図である。
図6において、縦軸は検出器106の温度Tdを示し、横軸は時間tを示す。即ち、図6は、検出器106の温度Tdの経時的な変化を示す。また、図6においては、室温Trを破線で示す。また、図6においては、第1の温度として、安定温度の下限L1を破線で示す。また、図6においては、第2の温度として、安定温度の上限L2を破線で示す。この場合、第1の温度から第2の温度までの温度範囲は、安定温度に対応する。
図6の時間t31において、制御機能111aは、検出器106の電源をオンとし、時間t31から時間t32までの間、被検体P1に対してX線を照射する。また、時間t31から時間t32までの間、検出器106は、被検体P1を透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、生成機能111bは、検出器106から出力された検出信号を用いて、被検体P1のX線画像データを生成する。
ここで、時間t31における検出器106の温度Tdは安定温度であり、オフセットレベルは安定しているため、生成機能111bは、オフセット補正を適切に実行し、安定した画質のX線画像データを生成することができる。そして、表示制御機能111cは、ディスプレイ109において、オフセット補正が施されたX線画像データを表示する。なお、時間t31から時間t32までの間は、検出器106の電源がオンになっているため、検出器106内で発生するジュール熱等により、検出器106の温度Tdは上昇する。
また、制御機能111aは、被検体P1に対するX線の照射が終了した時間t32において、検出器106の電源をオフにする。これにより、検出器106の温度Tdは、室温Trに向けて低下する。次に、制御機能111aは、検出器106の温度Tdが、安定温度の下限L1と略同一の温度になる時間t33に、検出器106の電源をパルス状にオンにする。これにより、検出器106の温度Tdは、検出器106内で発生するジュール熱等によって上昇した後、室温Trに向けて再度低下する。
次に、制御機能111aは、検出器106の温度Tdが再度下限L1と略同一の温度になる時間t34に、検出器106の電源をパルス状にオンにする。更に、制御機能111aは、検出器106の温度Tdが再度下限L1と略同一の温度になる時間t35に、検出器106の電源をパルス状にオンにする。即ち、制御機能111aは、待機期間中、検出器106の温度Tdが下限L1と略同一の温度になる毎に、検出器106の電源をパルス状にオンにする処理を繰り返す。
上述したように、制御機能111aは、温度Tdが下限L1と略同一の温度になった時に検出器106の電源をパルス状にオンとすることにより、被検体P1に対するX線の照射が終了した時間t32以降の待機期間中、検出器106の温度Tdを、下限L1に近い温度において維持する。下限L1よりも高く、かつ、下限L1に近い温度において維持する。ここで、検出器106の温度Tdは、室温Trに近いほど変化が緩やかであり、温度制御に要するエネルギーも低減される。従って、X線診断装置100は、温度Tdを下限L1に近い温度において維持することにより、安定した画質のX線画像データを迅速に提供することを可能にしつつも、消費電力を更に低減させることができる。
例えば、時間t36において、急患である被検体P2が搬入された場合、制御機能111aは、時間t36において検出器106の電源をオンとし、時間t36から時間t37までの間、被検体P2に対してX線を照射する。即ち、制御機能111aは、検出器106の昇温を行なうことなく、X線の照射を開始する。また、時間t36から時間t37までの間、検出器106は、被検体P2を透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、生成機能111bは、検出器106から出力された検出信号を用いて、被検体P2のX線画像データを生成する。
ここで、時間t36の時点で検出器106は安定温度の範囲内となっており、オフセットレベルは安定しているため、生成機能111bは、オフセット補正を適切に実行し、安定した画質のX線画像データを生成することができる。そして、表示制御機能111cは、ディスプレイ109において、オフセット補正が施されたX線画像データを表示する。なお、時間t36から時間t37までの間は、検出器106の電源がオンになっているため、検出器106内で発生するジュール熱等により、検出器106の温度Tdは上昇する。更に、制御機能111aは、被検体P2に対するX線の照射が終了した時間t37以降の待機期間中、検出器106の温度Tdを、下限L1に近い温度において維持する。
なお、図6においては、安定温度の下限L1が第1の温度に対応し、安定温度の上限L2が第2の温度に対応するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御機能111aは、第1の温度として、図5に示した安定温度に近接した温度の下限L1’を用いてもよい。また、例えば、制御機能111aは、第2の温度として、図5に示した安定温度に近接した温度の上限L2’を用いてもよい。
(第3の実施形態)
上述した第1~第2の実施形態では、待機期間中、検出器106の温度Tdを、第1の温度よりも高い状態に維持する場合について説明した。これに対して、第3の実施形態では、X線管102がX線の照射を開始する時点で検出器106の温度Tdが第1の温度よりも高い状態になるように、待機期間中に検出器106の電源をオンにする場合について説明する。
第3の実施形態に係るX線診断装置100は、図1に示したX線診断装置100と同様の構成を有し、制御機能111aによる処理の一部が相違する。そこで、第1の実施形態において説明した構成と同様の構成を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
例えば、制御機能111aは、検査情報を用いて、X線管102がX線の照射を開始する時点から、検出器106を第1の温度まで昇温するために必要な時間の分だけ早い時点に、検出器106の電源をオンにする。なお、以下では、検出器106を第1の温度まで昇温するために必要な時間を、昇温時間と記載する。以下、この点について、図7を用いて説明する。図7は、第3の実施形態に係る検出器106の電源の制御の一例を示す図である。なお、図7においては、第1の温度よりも高い状態の一例として、第1の温度から第2の温度までの温度範囲について説明する。即ち、図7においては、制御機能111aが、X線管102がX線の照射を開始する時点で検出器106の温度Tdが第1の温度から第2の温度までの温度範囲内なるように、待機期間中に検出器106の電源をオンにする場合について説明する。
図7において、縦軸は検出器106の温度Tdを示し、横軸は時間tを示す。即ち、図7は、検出器106の温度Tdの経時的な変化を示す。また、図7においては、室温Trを破線で示す。また、図7においては、第1の温度として、安定温度の下限L1を破線で示す。また、図7においては、第2の温度として、安定温度の上限L2を破線で示す。この場合、第1の温度から第2の温度までの温度範囲は、安定温度に対応する。
図7の時間t41において、制御機能111aは、検出器106の電源をオンとし、時間t41から時間t42までの間、被検体P1に対してX線を照射する。また、時間t41から時間t42までの間、検出器106は、被検体P1を透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、生成機能111bは、検出器106から出力された検出信号を用いて、被検体P1のX線画像データを生成する。
ここで、時間t41における検出器106の温度Tdは安定温度であり、オフセットレベルは安定しているため、生成機能111bは、オフセット補正を適切に実行し、安定した画質のX線画像データを生成することができる。そして、表示制御機能111cは、ディスプレイ109において、オフセット補正が施されたX線画像データを表示する。なお、時間t41から時間t42までの間は、検出器106の電源がオンになっているため、検出器106内で発生するジュール熱等により、検出器106の温度Tdは上昇する。また、制御機能111aは、被検体P1に対するX線の照射が終了した時間t42において、検出器106の電源をオフにする。これにより、検出器106の温度Tdは、室温Trに向けて低下する。
次に、制御機能111aは、検査情報を用いて、時間t42以降にX線管102がX線の照射を開始する時点を取得する。ここで、検査情報とは、過去に実施された検査、現在実施されている検査及び予約されている検査に関する種々の情報である。以下、過去に実施された検査に関する情報を、検査履歴と記載する。また、予約されている検査に関する情報を、検査予約情報と記載する。
例えば、制御機能111aは、検査予約情報として、予約されている検査の開始時刻を取得する。次に、制御機能111aは、検査の開始時刻から、X線管102がX線の照射を開始する前に行なわれる手順(例えば、X線画像データ収集の要否を判断するための診断や、検査着への着替え等)に要する時間の分だけ後の時点を、X線管102がX線の照射を開始する時点として取得する。
また、例えば、制御機能111aは、検査履歴として、曜日及び依頼科の少なくとも一方と、過去に実施された検査とを対応付けた情報を取得する。一例を挙げると、制御機能111aは、各曜日の各時間帯について、依頼科ごとに、過去にX線画像データの収集が実施された割合を取得する。そして、制御機能111aは、該当する曜日及び依頼科における検査について、取得した割合が閾値よりも高い時間帯の開始時刻を、X線管102がX線の照射を開始する時点として取得する。
また、例えば、制御機能111aは、検査情報として、ルーチン検査においてX線診断装置100の前に使用される医用画像診断装置の稼働に関する情報を取得する。ここで、ルーチン検査とは、1の被検体Pについて、連続的に複数種類の画像データを収集する検査である。以下では、ルーチン検査の一例として、PET(Positron Emission computed Tomography)装置を用いたPET画像データの収集の後、X線診断装置100を用いたX線画像データの収集が連続的に行われる場合について説明する。一例を挙げると、制御機能111aは、まず、PET装置の稼働に関する情報として、PET装置を用いた検査の開始時刻を取得する。次に、制御機能111aは、PET装置を用いた検査の開始時刻から、PET装置を用いた検査の所要時間の分だけ後の時点を、X線管102がX線の照射を開始する時点として取得する。
以下では、図7に示す時間t44が、X線管102がX線の照射を開始する時点であるものとして説明する。制御機能111aは、X線管102がX線の照射を開始する時間t44から、昇温時間の分だけ早い時点を取得し、取得した時点に検出器106の電源をオンにする。ここで、制御機能111aは、昇温時間として、検出器106の温度Tdに応じた値を用いてもよいし、固定値を用いてもよい。
例えば、制御機能111aは、検出器106の温度Td及び時間tと、第1の温度である安定温度の下限L1及びX線管102がX線の照射を開始する時間t44と、検出器106の電源をオンにした場合の単位時間あたりの温度変化ΔTとに基づいて、昇温時間を算出する。具体的には、制御機能111aは、図7において、(t,Td)=(t44,L1)となる点を通り、かつ、検出器106の電源をオンにした場合の単位時間あたりの温度変化ΔTを傾きとする一次関数を算出する。その後、制御機能111aは、検出器106の温度Tdと、時間tとについて、一次関数を満たすか否かを経時的に判定する。そして、制御機能111aは、一次関数を満たした時間t43から、時間t44までを、昇温時間として算出する。更に、制御機能111aは、時間t44から昇温時間の分だけ早い時間t43に、検出器106の電源をオンにする。この場合、検出器106の温度Tdは、図7に示すように、時間t44において第1の温度である安定温度の下限L1と同程度となる。
また、例えば、制御機能111aは、昇温時間として、第1の温度である安定温度の下限L1及び室温Trに応じた固定値を設定する。具体的には、制御機能111aは、下限L1と室温Trとの差を、検出器106の電源をオンにした場合の単位時間あたりの温度変化ΔTで除することにより、昇温時間を固定値として設定する。更に、制御機能111aは、時間t44から昇温時間の分だけ早い時点に、検出器106の電源をオンにする。この場合、検出器106の温度Tdは、時間t44において、検出器106の電源をオンにした時点における温度Tdと室温Trとの差の分だけ、下限L1よりも高い温度となる。最も、電源をオフにされた検出器106の温度Tdは室温Trに向けて低下しているため、検出器106の電源をオンにした時点における温度Tdと室温Trとの差は小さく、多くの場合、温度Tdは時間t44において下限L1と同程度となる。なお、この場合、制御機能111aは、検出器106の温度Tdを取得しないこととしてもよい。
上述したように、制御機能111aは、検査情報を用いて、X線管102がX線の照射を開始する時間t44で、検出器106の温度Tdが第1の温度よりも高い状態になるように、待機期間中に検出器106の電源をオンにする。従って、X線診断装置100は、X線管102がX線の照射を開始する時間t44の直前を除く待機期間中の検出器106の電源をオフにして消費電力を更に低減させることができる。また、X線診断装置100は、X線管102がX線の照射を開始する時間t44に、検出器106の温度Tdを第1の温度よりも高い状態にしておくことにより、安定した画質のX線画像データを迅速に提供することができる。
例えば、制御機能111aは、時間t44において検出器106の電源をオンとし、時間t44から時間t45までの間、被検体P2に対してX線を照射する。即ち、制御機能111aは、X線管102がX線の照射を開始する時間t44において、検出器106の昇温のための待ち時間を生じさせることなく、X線の照射を開始する。また、時間t44から時間t45までの間、検出器106は、被検体P2を透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、生成機能111bは、検出器106から出力された検出信号を用いて、被検体P2のX線画像データを生成する。
ここで、時間t44の時点で検出器106は安定温度の範囲内となっており、オフセットレベルは安定しているため、生成機能111bは、オフセット補正を適切に実行し、安定した画質のX線画像データを生成することができる。そして、表示制御機能111cは、ディスプレイ109において、オフセット補正が施されたX線画像データを表示する。なお、時間t43から時間t45までの間は、検出器106の電源がオンになっているため、検出器106内で発生するジュール熱等により、検出器106の温度Tdは上昇する。更に、制御機能111aは、被検体P2に対するX線の照射が終了した時間t45において検出器106の電源をオフにする。これにより、検出器106の温度Tdは、室温Trに向けて再度低下する。
次に、X線診断装置100による処理の手順の一例を、図8を用いて説明する。図8は、第3の実施形態に係るX線診断装置100の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS201、ステップS202、ステップS203、ステップS204及びステップS205は、制御機能111aに対応するステップである。ステップS206及びステップS207は、生成機能111bに対応するステップである。ステップS208は、表示制御機能111cに対応するステップである。
まず、処理回路111は、X線の照射を開始するか否かを判定する(ステップS201)。X線の照射を開始しない場合(ステップS201否定)、処理回路111は、検出器106の電源をオフにする(ステップS202)。次に、処理回路111は、X線の照射を開始する時点から昇温時間の分だけ早い時点を取得し、取得した時点に現在時刻が到達したか否かを判定する(ステップS203)。
ここで、X線の照射を開始する時点から昇温時間の分だけ早い時点に到達していない場合(ステップS203否定)、処理回路111は、待機状態となる。一方で、X線の照射を開始する時点から昇温時間の分だけ早い時点に到達した場合(ステップS203肯定)、処理回路111は、検出器106の電源をオンにする(ステップS204)。
そして、ステップS204において検出器106の電源をオンにした後、又は、ステップS201においてX線の照射を開始すると判定した場合(ステップS201肯定)、処理回路111は、被検体Pに対してX線の照射を開始する(ステップS205)。ここで、検出器106は、被検体Pを透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、処理回路111は、検出信号を用いて、被検体PのX線画像データを生成し(ステップS206)、生成したX線画像データに対するオフセット補正を実行する(ステップS207)。更に、処理回路111は、ディスプレイ109においてX線画像データを表示し(ステップS208)、再度ステップS201に移行する。
なお、制御機能111aは、検査終了時点(例えば、X線の照射が終了した時間t42や時間t45等)において、検査終了時点の後の待機期間が昇温時間よりも長い場合、検出器106の電源をオフにすることとしてもよい。これは、X線の照射を行わない期間が昇温時間よりも短いのに検出器106の電源をオフにしてしまうと、その後に検出器106の電源をオンにしても、X線管102がX線の照射を開始する時点で温度Tdが安定温度の下限L1に届かない可能性があるためである。
例えば、制御機能111aは、検査終了時点において、待機期間と昇温時間とを比較する。ここで、制御機能111aは、検査終了時点の後の待機期間が夜間である場合等、待機期間が昇温時間よりも長い場合は検出器106の電源をオフにする。一方で、検査終了時点の後の待機期間が昼休みである場合等、待機期間が昇温時間よりも短い場合は検出器106の電源をオンのまま維持する。
また、図7においては、時間t43において検出器106の電源をオンにするまでの待機期間中、検出器106の電源を常にオフにするものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御機能111aは、時間t43において検出器106の電源をオンにするまでの待機期間の一部において、検出器106の温度Tdを、第1の温度よりも高い状態に維持してもよい。
例えば、制御機能111aは、まず、待機期間中の各時間帯について、追加の検査を受け入れ可能か否かを判定する。一例を挙げると、制御機能111aは、予約は入っていないものの診療時間内であり、医師や技師等が病院内で待機している時間帯については、追加の検査を受け入れ可能と判定する。一方で、制御機能111aは、診療時間外であって医師や技師等が病院内にいない時間帯については、追加の検査を受け入れることができないと判定する。なお、以下では、待機期間のうち追加の検査を受け入れ可能な時間帯を第1の期間と記載し、待機期間のうち第1の期間を除く時間帯を第2の期間と記載する。
そして、制御機能111aは、第1の期間においては、検出器106の温度Tdを第1の温度よりも高い状態に維持する。これにより、制御機能111aは、第1の期間において、消費電力を低減しつつ、急患が来た場合でも安定した画質のX線画像データを迅速に提供することができる。また、制御機能111aは、第2の期間においては、X線の照射を開始する時点で温度Tdが安定温度の範囲内となるように、待機期間中に検出器106の電源をオンにする。これにより、制御機能111aは、検出器106の電源をオンにするまでの第2の期間中、検出器106の電源をオフにしておき、消費電力を更に低減することができる。
(第4の実施形態)
上述した第1~第3の実施形態では、X線診断装置100の構成として、図1の一例のみを説明した。これに対して、第4の実施形態では、図9を用いて、X線診断装置100の構成の別の例を説明する。図9は、第4の実施形態に係るX線診断装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図9に示すように、第4の実施形態に係るX線診断装置100は、図1に示したX線診断装置100と同様、X線高電圧装置101と、X線管102と、X線絞り器103と、天板104と、Cアーム105と、検出器106と、温度センサ107と、メモリ108と、ディスプレイ109と、入力インターフェース110と、処理回路111とを備える。以下、第1の実施形態において説明した構成については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。また、図9に示すように、第4の実施形態に係るX線診断装置100は、図1に示したX線診断装置100と比較し、熱交換器112及び温度制御装置113を更に有する点で相違する。
熱交換器112は、検出器106との間で熱交換を行なう。例えば、熱交換器112は、ポンプ及びラジエターを含み、検出器106に冷却液を供給することで検出器106を冷却する水冷装置である。また、例えば、熱交換器112は、羽根及びモータ等から構成されるファンを含み、検出器106への送風を行なうことで検出器106を冷却する空冷装置である。また、例えば、熱交換器112は、別種の金属が接合されたペルチェ素子を含み、ペルチェ効果を利用して検出器106を冷却する。
温度制御装置113は、熱交換器112を制御することにより、検出器106の冷却を行なう。例えば、温度制御装置113は、X線照射期間中、検出器106の温度Tdが一定の温度で推移するように、熱交換器112を制御する。なお、この点については後述する。
次に、図10を用いて、第4の実施形態に係るX線診断装置100が行う温度制御の一例について説明する。なお、図10においては、一例として、制御機能111aが、待機期間中の検出器106の電源を制御し、検出器106の温度Tdを第1の温度から第2の温度までの温度範囲において維持する場合について説明する。なお、図10は、第4の実施形態に係る検出器106の電源の制御の一例を示す図である。
図10において、縦軸は検出器106の温度Tdを示し、横軸は時間tを示す。即ち、図10は、検出器106の温度Tdの経時的な変化を示す。また、図10においては、室温Trを破線で示す。また、図10においては、第1の温度として、安定温度の下限L1を破線で示す。また、図10においては、第2の温度として、安定温度の上限L2を破線で示す。この場合、第1の温度から第2の温度までの温度範囲は、安定温度に対応する。
図10の時間t51において、制御機能111aは、検出器106の電源をオンとし、時間t51から時間t52までの間、被検体P1に対してX線を照射する。ここで、温度制御装置113は、検出器106の温度Tdが一定の温度で推移するように熱交換器112を制御する。例えば、温度制御装置113は、検出器106内でジュール熱等により発生する熱量と、検出器106から熱交換器112へと移動する熱量とが等しくなるように熱交換器112を制御することで、温度Tdを一定の温度で推移させる。
なお、図10において、時間t51の温度Tdは安定温度の上限L2に近い値となっている。かかる場合において、時間t51から時間t52までの間に温度Tdが上昇してしまうと、温度Tdが安定温度の範囲外になる可能性がある。これに対し、温度制御装置113は、温度Tdを一定の温度で推移させることで、時間t51から時間t52までの間、温度Tdを安定温度の範囲内で維持することができる。
また、時間t51から時間t52までの間、検出器106は、被検体P1を透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、生成機能111bは、検出器106から出力された検出信号を用いて、被検体P1のX線画像データを生成する。ここで、時間t51から時間t52までの間、検出器106の温度Tdは安定温度であり、オフセットレベルは安定している。従って、生成機能111bは、オフセット補正を適切に実行し、安定した画質のX線画像データを生成することができる。そして、表示制御機能111cは、ディスプレイ109において、オフセット補正が施されたX線画像データを表示する。
また、制御機能111aは、被検体P1に対するX線の照射が終了した時間t52において、検出器106の電源をオフにする。これにより、検出器106の温度Tdは、室温Trに向けて低下する。次に、制御機能111aは、検出器106の温度Tdが、安定温度の下限L1と略同一の温度になる時間t53に、検出器106の電源をオンにする。これにより、検出器106の温度Tdは、検出器106内で発生するジュール熱等によって上昇する。次に、制御機能111aは、検出器106の温度Tdが、安定温度の上限L2と略同一の温度になる時間t54に、検出器106の電源をオフにする。これにより、検出器106の温度Tdは、室温Trに向けて低下する。
上述したように、制御機能111aは、温度Tdが下限L1と略同一の温度になった時に検出器106の電源をオンとし、温度Tdが上限L2と略同一の温度になった時に検出器106の電源をオフとすることにより、被検体P1に対するX線の照射が終了した時間t52以降の待機期間中、検出器106の温度Tdを安定温度に対応する温度範囲において維持する。これにより、X線診断装置100は、待機期間中の消費電力を低減させつつ、安定した画質のX線画像データを迅速に提供することができる。
例えば、時間t55において、急患である被検体P2が搬入された場合、制御機能111aは、時間t55において検出器106の電源をオンとし、時間t55から時間t56までの間、被検体P2に対してX線を照射する。即ち、制御機能111aは、検出器106の昇温を行なうことなく、X線の照射を開始する。
ここで、温度制御装置113は、時間t55から時間t56までの間、検出器106の温度Tdが一定の温度で推移するように熱交換器112を制御する。これにより、温度制御装置113は、時間t55から時間t56までの間に温度Tdが安定温度の範囲外になることを防ぎ、時間t55から時間t56までの間、温度Tdを安定温度の範囲内で維持することができる。また、検出器106は、時間t55から時間t56までの間、被検体P2を透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、生成機能111bは、検出器106から出力された検出信号を用いて、被検体P2のX線画像データを生成する。
ここで、時間t55から時間t56までの間、検出器106は安定温度となっており、オフセットレベルは安定しているため、生成機能111bは、オフセット補正を適切に実行し、安定した画質のX線画像データを生成することができる。そして、表示制御機能111cは、ディスプレイ109において、オフセット補正が施されたX線画像データを表示する。更に、制御機能111aは、被検体P2に対するX線の照射が終了した時間t56以降の待機期間中、検出器106の温度Tdを、安定温度に対応する温度範囲において維持する。
上述したように、第4の実施形態に係るX線診断装置100は、検出器106の冷却を行なう温度制御装置113を備える。従って、X線診断装置100は、X線照射期間中においても、検出器106の温度Tdが安定温度の範囲内となるように温度制御を行ない、より安定した画質のX線画像データを提供することができる。
なお、図10においては、温度制御装置113が、X線照射期間中に検出器106の冷却を行なう点についてのみ説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、温度制御装置113は、更に、熱交換器112を用いて検出器106の加熱を行なってもよい。また、例えば、温度制御装置113は、待機期間中に検出器106の冷却を行なってもよい。
一例を挙げると、制御機能111aは、図5に示した準備期間中、検出器106をオンにするとともに、温度制御装置113に検出器106の加熱を実行させる。これにより、準備期間内に安定温度の下限L1まで昇温可能な温度範囲が拡大し、安定温度に近接した温度の下限L1’をより低温に設定することができる。また、一例を挙げると、制御機能111aは、準備期間中、検出器106をオフにするとともに、温度制御装置113に検出器106の冷却を実行させる。これにより、準備期間内に安定温度の上限L2まで冷却可能な温度範囲が拡大し、安定温度に近接した温度の上限L2’をより高温に設定することができる。そして、下限L1’をより低温に設定したり、上限L2’をより高温に設定したりすることにより、制御機能111aは、安定した画質のX線画像データを迅速に提供することを可能にしつつも、検出器106のオン/オフの切り替えの回数を更に低減することができる。
(第5の実施形態)
さて、これまで第1~第4の実施形態について説明したが、上述した第1~第4の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
上述した実施形態では、制御機能111aが、X線診断装置100に関する検査情報を用いて、検出器106の温度Tdを制御する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、制御機能111aは、X線診断装置100以外の他のX線診断装置に関する情報を用いて、温度Tdを制御する場合であってもよい。例えば、病院内に複数のX線診断装置が配置されている場合において、制御機能111aは、X線診断装置100以外の他のX線診断装置の稼働に関する情報を用いて、待機期間中の検出器106の温度Tdを第1の温度よりも高い状態に維持するか否かを判定する。
一例を挙げると、制御機能111aは、病院内の他のX線診断装置のうち、緊急検査用のX線診断装置の稼働に関する情報を取得する。なお、緊急検査用のX線診断装置とは、予約の有無に関わらず、迅速に使用可能な状態で管理されるX線診断装置である。例えば、急患が搬入された場合、緊急検査用のX線診断装置を用いて検査が実行される。
ここで、緊急検査用のX線診断装置が稼働していない場合(緊急検査用のX線診断装置を用いた検査が実行されていない場合)、制御機能111aは、待機期間中の検出器106の電源をオフにする。即ち、急患が来たとしても緊急検査用のX線診断装置により対応できるため、制御機能111aは、待機期間中の検出器106の電源をオフにすることにより、消費電力を更に低減する。
一方で、緊急検査用のX線診断装置が稼働している場合(緊急検査用のX線診断装置を用いた検査が実行されている場合)、制御機能111aは、待機期間中の検出器106の温度Tdを第1の温度よりも高い状態に維持すると判定する。即ち、緊急検査用のX線診断装置が既に稼働している時に急患が来た場合、緊急検査用のX線診断装置では対応できないため、制御機能111aは、待機期間中の検出器106を急患に対応できる状態で維持する。
また、上述した実施形態では、制御機能111aが検出器106の電源を制御し、検出器106の電源のオン/オフを切り替える場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御機能111aは、待機期間中の検出器106に供給する電力を増減することにより、検出器106の温度Tdを、第1の温度よりも高い状態に維持してもよい。
また、上述した実施形態では、X線診断装置100が制御機能111aを有する処理回路111を有する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線診断装置100とネットワークを介して接続された医用情報処理装置が、制御機能111aに対応した機能を有する処理回路を備える場合であってもよい。
この場合、医用情報処理装置は、検出器106の温度Tdを取得し、取得した温度Tdに基づいて待機期間中の検出器106の制御内容(例えば、電源をオンにする時間及びオフにする時間)を算出し、算出した制御内容をX線診断装置100に通知することにより、検出器106の温度Tdを、第1の温度よりも高い状態に維持する。或いは、医用情報処理装置は、検査情報を用いて、X線管102がX線の照射を開始する時点で検出器106の温度Tdが第1の温度よりも高い状態になるように、待機期間のうち検出器106の電源をオンにする時間を算出し、算出した時間をX線診断装置100に通知する。
また、制御機能111aに対応した機能を有する処理回路を備える医用情報処理装置は、複数のX線診断装置と接続されてもよい。この場合、医用情報処理装置は、検査情報を用いて、待機期間中に検出器の電源を制御するX線診断装置を選択してもよい。例えば、医用情報処理装置は、待機期間中の複数のX線診断装置のうち1つのX線診断装置について、検出器の温度を第1の温度よりも高い状態に維持する。これにより、医用情報処理装置及び複数のX線診断装置を含んだ医用情報処理システムは、待機期間中の消費電力を低減させつつ、例え急患が来たとしても、安定した画質のX線画像データを迅速に提供することができる。
また、上述した実施形態では、X線診断装置100について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、PET装置やX線CT(Computed Tomography)装置など、種々の放射線診断装置について適用することができる。
例えば、PET装置は、被検体から放出されたガンマ線を検出して検出信号を出力する検出器と、制御機能111aに対応した機能を有する処理回路とを備える。そして、PETT装置は、検出器の温度を取得し、取得した温度に基づいて待機期間中の検出器の電源を制御することにより、検出器の温度を第1の温度よりも高い状態に維持する。或いは、PET装置は、検査情報を用いて、検出器が放射線の検出を開始する時点で検出器の温度が第1の温度よりも高い状態になるように、待機期間中に検出器の電源をオンにする。
また、例えば、X線CT装置は、被検体に対してX線を照射するX線管と、被検体を透過したX線を検出して検出信号を出力する検出器と、制御機能111aに対応した機能を有する処理回路とを備える。そして、X線CT装置は、検出器の温度を取得し、取得した温度に基づいて待機期間中の検出器の電源を制御することにより、検出器の温度を第1の温度よりも高い状態に維持する。或いは、X線CT装置は、検査情報を用いて、検出器が放射線の検出を開始する時点(X線管がX線の照射を開始する時点)で検出器の温度が第1の温度よりも高い状態になるように、待機期間中に検出器の電源をオンにする。
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
また、上述した実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、待機期間中の消費電力を低減させつつ、安定した画質の画像データを迅速に提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。