以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」を意味する。
<<包装体>>
本実施の形態に係る包装体は、酸化により錆びる金属製品が、包装袋により密封包装されている包装体である。本実施の形態に係る包装体を構成する包装袋により金属製品の錆を防ぐことが可能となる。以下、本実施の形態に係る包装体を構成する包装袋について説明する。
<包装袋>
この包装袋は、少なくともバリアフィルムとシーラント層とが積層されている積層フィルムによって構成される。積層フィルム1aを構成するバリアフィルム1は、図1に示すように、基材層2と、酸化アルミニウム蒸着層3と、有機被覆層4と、がこの順に積層されている。そして、積層フィルム1aは、このバリアフィルム1の有機被覆層4の表面にはさらにシーラント層5が積層されている。図2に示すように、2枚の積層フィルムの対向するシーラント層同士の周囲が密封接合することにより包装袋6が形成される。
なお、本明細書において「この順に積層」とは基材層と、酸化アルミニウム蒸着層と、被覆層と、がこの順番に並ぶように積層されていればよく、これらの層の間に他の層が積層されていてもよい。
この包装袋6を構成する酸化アルミニウム蒸着層3は、Al2O3
-構造部と、Al3
-構造部と、で表される元素結合構造部を有する。このAl2O3
-構造部と、Al3
-構造部と、は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により測定される、前記Al2O3
-構造部の強度に対する前記Al3構造部-の最大強度の比率である、「Al3
-最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)」(以下、単に最大強度比率ともいう)が、1以上20以下であることを特徴とする。
本発明者らの見解によれば、Al3
-構造部の最大強度比率を制御することによりバリアフィルムのバリア性を向上させることができる。これにより、多層構造のバリアフィルムとせずに、十分にバリアフィルムにバリア性を付与することが可能となり、包装される金属製品の錆を防ぐことが可能となる。なお、Al3
-構造部の最大強度比率が特定された酸化アルミニウム蒸着層が積層された包装袋及びバリアフィルムは、少なくとも本発明の包装体の生産にのみ用いる物であり、本発明の包装体による課題の解決に不可欠なものである。
TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法、Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)は、一次イオン銃から一次イオンビームを被分析固体試料表面に照射して、試料表面からスパッタリングされて放出される二次イオンを、その飛行時間差(飛行時間は重さの平方根に比例)を利用して質量分離して、質量分析する方法である。
ここで、スパッタリングを進行させつつ二次イオン強度を検出することによって、二次イオン、即ち被検出元素イオン又は被検出元素と結合した分子イオンのイオン強度の時間推移のデータに対して、推移時間を深さに換算することで、該試料表面の深さ方向の被検出元素の濃度分布を知ることができる。
そして、予め、一次イオンの照射により試料表面に形成された窪みの深さを表面粗さ計を用いて測定して、この窪みの深さと推移時間とから平均スパッタ速度を算出しておき、スパッタ速度が一定であるとの仮定の下に、照射時間(即ち、推移時間)又は照射サイクル数から、深さ(スパッタ量)を算出することが可能である。
バリアフィルムの酸化アルミニウム蒸着層に対し、好ましくは、深い領域まで測定する為にCs(セシウム)イオン銃を用いて、上記のように一定の速度でソフトエッチングを繰り返しながら、酸化アルミニウム蒸着層由来のAl3
-、Al2O3
-のイオンと、基材層や有機被覆層に由来するC6イオンを測定することにより、各イオンの強度比率を算出できる。
例えば、質量数27のAlイオンであると、Al3
-構造部及びAl2O3
-構造部いずれからも検出されてしまうことから、Al3
-構造部とAl2O3
-構造部との比率を定量する指針としては相応しくない。本発明では、質量数80.94のAl3
-のイオンと、質量数101.94Al2O3
-のイオンと、の強度比率を算出することにより、Al3
-構造部とAl2O3
-構造部との比率を定量することを可能としている。
また、酸化アルミニウム蒸着層、基材層の界面を特定することで、検出されるイオンの最大値が界面からどの深さの位置に存在するか知ることができる。即ち、C6のイオンの強度が最大値の半分になる位置を、基材層と酸化アルミニウム蒸着層との界面であると定義することで、検出されるイオンの強度の最大値が、酸化アルミニウム蒸着層のどの深さの位置にあるかを知ることができる。
測定結果は、例えば、図4に示したようなグラフとして得ることが出来る。図4のグラフにおいて、縦軸の単位(intensity)は、測定されたイオンの強度であり、横軸の単位(cycle)はエッチングの回数である。
そして、各サイクルにおける酸化アルミニウム蒸着層内の深さと、Al3
-強度、Al2O3
-強度が得られ、最大Al3
-強度を示した時の、Al3
-最大強度比率Al3
-/Al2O3
-×100と、深さのアルミニウム層厚に対する割合を算出することができる。
最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)が1未満であると、酸化アルミニウム蒸着層中のAl3
-構造部が少なすぎて、バリア性が低下する傾向がある。最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)が20超であると、酸化アルミニウム蒸着層の透明性が低下する傾向があり、包装材料としての印刷性が損なわれ、また、包装した金属製品等の内容物の視認性が悪くなるという問題が生じやすい。なお、最大強度比率は、2以上であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)が1以上20以下であることにより、バリア樹脂フィルムがバリア性被覆層を含む場合には、酸素透過度が、0.02cc/m2/day/atm以上、0.15cc/m2/day/atm以下であり、水蒸気透過度が、0.02g/m2/day以上、0.2g/m2/day以下のバリア性を発揮することができる。
以下、バリアフィルム1を構成する各層について説明する。
[基材層]
基材層2は主に樹脂を含む層である。樹脂は特に制限されるものではなく、公知の樹脂フィルム又はシートを使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂などを含むポリエステル系樹脂や、ポリアミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのα-オレフィンの重合体や共重合体などを含むポリオレフィン系樹脂等、を含む樹脂フィルムを用いることができる。
これらの樹脂の中でも、ポリエステル系樹脂が好適に用いられ、更には、ポリエステル系樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリブチレンテレフタレート系樹脂を用いることが好ましい。
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)としては、従来公知のPETフィルム以外に、バイオマスPETフィルム、リサイクルPETフィルム、高スティフネスPETフィルム(強靭PETフィルム)を基材層2として用いてもよい。
<バイオマスPETフィルム>
バイオマスPETフィルムは、バイオマス由来のポリエステルを含む樹脂フィルムであり、バイオマス由来のポリエステルは、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールで、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸である。
バイオマス由来のエチレングリコールは、従来の化石燃料由来のエチレングリコールと化学構造が同じであるため、バイオマス由来のエチレングリコールを用いて合成されたポリエステルのフィルムは、従来の化石燃料由来のポリエステルフィルムと機械的特性等の物性面で遜色がない。したがって、バイオマス由来のポリエステルフィルムを使用した基材層は、カーボンニュートラルな材料からなる層を有するため、従来の化石燃料から得られる原料から製造された基材層に比べて、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、サトウキビ、トウモロコシ等のバイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、市販のバイオマスエチレングリコールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から市販されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
ポリエステルのジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を使用する。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体を使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボ
ン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
バイオマス由来のポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位とを重縮合させる従来公知の方法により得ることができる。具体的には、上記のジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造することができる。
バイオマス由来のポリエステルを含む樹脂フィルムを構成する樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエステルのみで構成されていてもよいし、バイオマス由来のポリエステルに加えて、化石燃料由来のポリエステルを含んでいてもよい。化石燃料由来のポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなり、ジオール単位として化石燃料由来のジオールのエチレングリコールを用い、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を用いて重縮合反応により得られたものである。
バイオマス由来のポリエステルを含む樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中の樹脂は、バイオマス由来のポリエステルに加えて、リサイクルポリエステルを含んでいてもよい。リサイクルポリエステルは、バイオマス由来のポリエステルをリサイクルしたものであってもよいし、化石燃料由来のポリエステルをリサイクルしたものであってもよい。
バイオマス由来のポリエステルを含む樹脂フィルムを構成する樹脂組成物は、各種の添加剤を含有することができる。添加剤として、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、着色顔料などが挙げられる。添加剤は、PETを含む樹脂組成物全体中に、5質量%以上50質量%以下、好ましくは5質量%以上20質量%以下の範囲で含有されることが好ましい。
バイオマス由来のポリエステルを含む樹脂フィルムは、例えば、Tダイ法によってフィルム化することにより形成することができる。具体的には、上記したPETを乾燥させた後、PETの融点以上の温度(Tm)~Tm+70℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、樹脂組成物を溶融し、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化することによりフィルムを成形することができる。溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。なお、本明細書上では、Tmとは融点を意味する。
大気中の二酸化炭素には、14Cが一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中の14C含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中には14Cが殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエステル中の全炭素原子中に含まれる14Cの割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明において、「バイオマス度」とは、バイオマス由来成分の質量比率を示すものである。PET(ポリエチレンテレフタレート)を例にとると、PETは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであり、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、PET中のバイオマス由来成分の質量比率は31.25%であるため、バイオマス度は31.25%となる(バイオマス由来のエチレングリコール由来の分子量/ポリエステルの重合1単位の分子量=60÷192)。また、化石燃料由来のポリエステルのバイオマス由来成分の質量比率は0%であり、化石燃料由来のポリエステルのバイオマス度は0%となる。本発明において、バイオマス由来のポリエステルを含む樹脂フィルム中のバイオマス度は、5.0%以上であることが好ましく、さらに好ましくは10.0%以上であり、好ましくは30.0%以下である。
バイオマス由来のポリエステルを含む樹脂フィルムは2軸延伸されていることが好ましい。二軸延伸は従来公知の方法で行うことができる。例えば、上記のようにして冷却ドラム上に押し出されたフィルムを、続いて、ロール加熱、赤外線加熱などで加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムとする。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。縦延伸は、通常、50~100℃の温度範囲で行われる。また、縦延伸の倍率は、フィルム用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上4.2倍以下とするのが好ましい。延伸倍率が2.5倍未満の場合は、ポリエステルフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムを得ることが難しい。
縦延伸されたフィルムは、続いて横延伸、熱固定、熱弛緩の各処理工程を順次施して二軸延伸フィルムとなる。横延伸は、通常、50~100℃の温度範囲で行われる。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上5.0倍以下が好ましい。2.5倍未満の場合はフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムが得られにくく、5.0倍を超える場合は製膜中に破断が発生し易くなる。
横延伸のあと、続いて熱固定処理を行うが、好ましい熱固定の温度範囲は、ポリエステルのTg+70~Tm-10℃である。また、熱固定時間は1~60秒が好ましい。さらに熱収縮率の低滅が必要な用途については、必要に応じて熱弛緩処理を行ってもよい。なお、本明細書上では、Tgとはガラス転移点を意味する。
バイオマス由来のポリエステルを含む樹脂フィルムの厚さは、その用途に応じて任意であるが、通常、5~500μm程度である。バイオマス由来のポリエステルを含む樹脂フィルムの破断強度は、MD方向で5~40kgf/mm2、TD方向で5~35kgf/mm2であり、また、破断伸度は、MD方向で50~350%、TD方向で50~300%である。また、150℃の温度環境下に30分放置した時の収縮率は、0.1~5%である。
バイオマス由来のポリエステルを含む樹脂フィルムは、本件の粘接着バリアフィルム用途以外にも、袋、蓋材、ラミチューブなどの包装製品、各種ラベル材料、シート成型品等の用途に好適に使用することができる。なお、リサイクルPETを含む樹脂フィルムを包装製品の用途に使用する場合、延伸フィルムの厚さは、5~30μmであることが好ましい。
<リサイクルPETフィルム>
リサイクルPETフィルムは、リサイクルPETを含む樹脂フィルムであり、メカニカルリサイクルによりリサイクルされたPETを含む。具体的には、PETボトルをメカニカルリサイクルによりリサイクルしたPETを含み、このPETは、ジオール成分がエチレングリコールであり、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸を含む。
ここで、メカニカルリサイクルとは、一般に、回収されたPETボトル等のポリエチレンテレフタレート樹脂製品を粉砕、アルカリ洗浄してPET樹脂製品の表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してPET樹脂の内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、PET樹脂からなる樹脂製品の汚れを取り除き、再びPET樹脂に戻す方法である。
以下、PETボトルをリサイクルしたポリエチレンテレフタレートを「リサイクルポリエチレンテレフタレート(以下、リサイクルPETとも記す)」といい、リサイクルされていないポリエチレンテレフタレートを「ヴァージンポリエチレンテレフタレート(以下、ヴァージンPETとも記す)」というものとする。
基材層に含まれるPETのうち、イソフタル酸成分の含有量は、PETを構成する全ジカルボン酸成分中に、0.5モル%以上5モル%以下であることが好ましく、1.0モル%以上2.5モル%以下であることがより好ましい。イソフタル酸成分の含有量が0.5モル%未満であると柔軟性が向上しない場合があり、一方、5モル%を超えるとPETの融点が下がり耐熱性が不十分となる場合がある。
なお、PETは、通常の化石燃料由来のPETの他、バイオマス由来のPETであってもよい。このバイオマス由来のPETは、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール成分とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸成分とするPETである。
PETボトルに用いられるPETは、上記したジオール成分とジカルボン酸成分とを重縮合させる従来公知の方法により得ることができる。具体的には、上記のジオール成分とジカルボン酸成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法、又は有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法などによって製造することができる。上記PETを製造する際に用いるジオール成分の使用量は、ジカルボン酸又はその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化及び/又はエステル交換反応及び/又は縮重合反応中の留出があることから、0.1モル%以上20モル%以下過剰に用いられる。また、重縮合反応は、重合触媒の存在下で行うことが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
PETボトルをリサイクルしたPETは、上記のようにして重合して固化させた後、さらに重合度を高めたり、環状三量体などのオリゴマーを除去したりするため、必要に応じて固相重合を行ってもよい。具体的には、固相重合は、PETをチップ化して乾燥させた後、100℃以上180℃以下の温度で1時間から8時間程度加熱してPETを予備結晶化させ、続いて、190℃以上230℃以下の温度で、不活性ガス雰囲気下又は減圧下において一時間~数十時間加熱することにより行われる。
リサイクルPETに含まれるPETの極限粘度は、0.58dl/g以上0.80dl/g以下であることが好ましい。極限粘度が0.58dl/g未満の場合は、樹脂基材としてPETフィルムに要求される機械特性が不足する可能性がある。他方、極限粘度が0.80dl/gを超えると、フィルム製膜工程における生産性が損なわれる場合がある。なお、極限粘度は、オルトクロロフェノール溶液で、35℃において測定される。
リサイクルPETは、リサイクルPETを50質量%以上95質量%以下の割合で含むことが好ましく、リサイクルPETの他、ヴァージンPETを含んでいてもよい。ヴァージンPETとしては、上記したようなジオール成分がエチレングリコールであり、ジカルボン酸成分がテレフタル酸及びイソフタル酸を含むPETであってもよく、また、ジカルボン酸成分がイソフタル酸を含まないPETであってもよい。例えば、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸及びイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸以外にも、脂肪族ジカルボン酸等が含まれていてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸などの、通常炭素数が2以上40以下の鎖状又は脂環式ジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステルなどの低級アルキルエステル、無水コハク酸などの上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物が挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸又はこれらの混合物が好ましく、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸及びコハク酸のメチルエステル、又はこれらの混合物がより好ましい。
リサイクルPETを含む樹脂フィルムを構成する樹脂組成物中の樹脂は、リサイクルPETのみで構成されていてもよいし、リサイクルPETに加えて、ヴァージンPETを含んでいてもよい。また、リサイクルPETフィルムは、単層であってもよく、多層であってもよい。リサイクルPETを含む樹脂フィルムを最内層/中間層/最外層の3層とする場合、中間層をリサイクルPETのみから構成される層又はリサイクルPETとヴァージンPETとの混合層とし、両側の最内層及び最外層は、ヴァージンPETのみから構成される層とすることが好ましい。このように、最内層及び最外層にヴァージンPETのみを用いることにより、リサイクルPETが樹脂フィルムの表面又は裏面から表出することを防止することができる。このため、積層体の衛生性を確保することができる。また、リサイクルPETを含む樹脂フィルムを2層とする場合、一方の層をリサイクルPETのみから構成される層又はリサイクルPETとヴァージンPETとの混合層とし、他方の層は、ヴァージンPETのみから構成される層とすることが好ましい。リサイクルPETとヴァージンPETとを混合してリサイクルPETを含む樹脂フィルムを単層で成形する場合には、別々に成形機に供給する方法、ドライブレンド等で混合した後に供給する方法などがある。中でも、操作が簡便であるという観点から、ドライブレンドで混合する方法が好ましい。
リサイクルポリエチレンPETを含む樹脂フィルムを構成する樹脂組成物は、その製造工程において、又はその製造後に、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤を含有することができる。添加剤として、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、着色顔料などが挙げられる。添加剤は、PETを含む樹脂組成物全体中に、5質量%以上50質量%以下、好ましくは5質量%以上20質量%以下の範囲で含有されることが好ましい。
リサイクルPETを含む樹脂フィルムは、例えば、Tダイ法によってフィルム化することにより形成することができる。具体的には、上記したPETを乾燥させた後、PETの融点以上の温度(Tm)~Tm+70℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、樹脂組成物を溶融し、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化することによりフィルムを成形することができる。溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。
リサイクルPETを含む樹脂フィルムは二軸延伸されていることが好ましい。二軸延伸は従来公知の方法で行うことができる。例えば、上記のようにして冷却ドラム上に押し出されたフィルムを、続いて、ロール加熱、赤外線加熱などで加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムとする。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。縦延伸は、通常、50℃以上100℃以下の温度範囲で行われる。また、縦延伸の倍率は、フィルム用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上4.2倍以下とするのが好ましい。延伸倍率が2.5倍未満の場合は、PETフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムを得ることが難しい。縦延伸されたフィルムは、続いて横延伸、熱固定、熱弛緩の各処理工程を順次施して2軸延伸フィルムとなる。横延伸は、通常、50℃以上100℃以下の温度範囲で行われる。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上5.0倍以下が好ましい。2.5倍未満の場合はフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムが得られにくく、5.0倍を超える場合は製膜中に破断が発生し易くなる。横延伸のあと、続いて熱固定処理を行うが、好ましい熱固定の温度範囲は、PETのTg+70~Tm-10℃である。また、熱固定時間は1秒以上60秒以下が好ましい。さらに熱収縮率の低滅が必要な用途については、必要に応じて熱弛緩処理を行ってもよい。
リサイクルPETを含む樹脂フィルムの厚さは、その用途に応じて任意であるが、通常、5~500μm程度である。リサイクルPETを含む樹脂フィルムの破断強度は、MD方向で5kgf/mm2以上40kgf/mm2以下、TD方向で5kgf/mm2以上35kgf/mm2以下であり、また、破断伸度は、MD方向で50%以上350%以下、TD方向で50%以上300%以下である。また、150℃の温度環境下に30分放置した時の収縮率は、0.1%以上5%以下である。
なお、ヴァージンPETは、化石燃料ポリエチレンテレフタレート(以下化石燃料PETとも記す)であってもよく、バイオマスPETであってもよい。ここで、「化石燃料PET」とは、化石燃料由来のジオールをジオール成分とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸成分とするものである。また、リサイクルPETは、化石燃料PETを用いて形成されたPET樹脂製品をリサイクルして得られるものであってもよく、バイオマスPETを用いて形成されたPET樹脂製品をリサイクルして得られるものであってもよい。
リサイクルPETを含む樹脂フィルムは、本件の粘接着バリアフィルム用途以外にも、袋、蓋材、ラミチューブなどの包装製品、各種ラベル材料、シート成型品等の用途に好適に使用することができる。なお、リサイクルPETを含む樹脂フィルムを包装製品の用途に使用する場合、延伸フィルムの厚さは、5~30μmであることが好ましい。
<高スティフネスPETフィルム(強靭PETフィルム)>
高スティフネスPETフィルムは、ポリエステルを主成分として含み、少なくとも1つの方向において、試験片15mm巾において0.0017N以上のループスティフネスを有する。高スティフネスフィルムは、例えば流れ方向(MD)又は垂直方向(TD)の少なくとも一方において0.0017N以上のループスティフネスを有する。高スティフネスフィルムは、例えば流れ方向(MD)及び垂直方向(TD)の両方において0.0017N以上のループスティフネスを有していてもよい。
ループスティフネスとは、フィルムのこしの強さを表すパラメータである。以下、図5~図10を参照して、ループスティフネスの測定方法を説明する。なお、以下に説明する測定方法は、延伸プラスチックフィルムなどの単層のフィルムだけでなく、蒸着フィルム、積層フィルムなどの、複数の層を含むフィルムに関しても使用可能である。蒸着フィルムとは、延伸プラスチックフィルムなどの単層のフィルムと、単層のフィルム上に形成されている蒸着層と、を含むフィルムである。積層フィルムとは、積層された複数のフィルムを含むフィルムである。
図5は、試験片40及びループスティフネス測定器45を示す平面図であり、図6は、図5の試験片40及びループスティフネス測定器45の線IV-IVに沿った断面図である。試験片40は、長辺及び短辺を有する矩形状のフィルムである。本願においては、試験片40の長辺の長さL1を150mmとし、短辺の長さL2を15mmとした。ループスティフネス測定器45としては、例えば、東洋精機社製のNo.581ループステフネステスタ(登録商標)LOOP STIFFNESS TESTER DA型を用いることができる。なお、試験片40の長辺の長さL1は、後述する一対のチャック部46によって試験片40を把持することができる限りにおいて、調整可能である。
ループスティフネス測定器45は、試験片40の長辺方向の一対の端部を把持するための一対のチャック部46と、チャック部46を支持する支持部材47と、を有する。チャック部46は、第1チャック461及び第2チャック462を含む。図5及び図6に示す状態において、試験片40は、一対の第1チャック461の上に配置されており、第2チャック462は、第1チャック461との間で試験片40を未だ把持していない。後述するように、測定時、試験片40は、チャック部46の第1チャック461と第2チャック462との間に把持される。第2チャック462は、ヒンジ機構を介して第1チャック461に連結されていてもよい。
延伸プラスチックフィルム、蒸着フィルム、積層フィルムなどの測定対象のフィルムを、フィルムが包装製品に加工される前の状態で入手可能な場合、試験片40は、測定対象のフィルムを切断することによって作製されてもよい。また、試験片40は、包装袋などの、包装材料から作製された包装製品を切断し、測定対象のフィルムを取り出すことによって作製されてもよい。
ループスティフネス測定器45を用いて試験片40のループスティフネスを測定する方法について説明する。まず、図5及び図6に示すように、間隔L3を空けて配置されている一対のチャック部46の第1チャック461上に試験片40を載置する。本願においては、後述するループ部41の長さ(以下、ループ長とも称する)が60mmになるよう、間隔L3を設定した。試験片40は、第1チャック461側に位置する内面40xと、内面40xの反対側に位置する外面40yと、を含む。試験片40が包装材料からなる場合、試験片40の内面40x及び外面40yは、包装材料の内面及び外面に一致する。後述するループ部41を試験片40に形成する際、内面40xがループ部41の内側に位置し、外面40yがループ部41の外側に位置する。続いて、図7に示すように、第1チャック461との間で試験片40の長辺方向の端部を把持するよう、第2チャック462を試験片40の上に配置する。
続いて、図8に示すように、一対のチャック部46の間の間隔が縮まる方向において、一対のチャック部46の少なくとも一方を支持部材47上でスライドさせる。これにより、試験片40にループ部41を形成することができる。図8に示す試験片40は、ループ部41と、一対の中間部42及び一対の固定部43とを有する。一対の固定部43は、試験片40のうち一対のチャック部46によって把持されている部分である。一対の中間部42は、試験片40のうちループ部41と一対の中間部42との間に位置している部分である。図8に示すように、チャック部46は、一対の中間部42の内面40x同士が接触するまで支持部材47上でスライドされる。これにより、60mmのループ長を有するループ部41を形成することができる。ループ部41のループ長は、一方の第2チャック462のループ部41側の面と試験片40とが交わる位置P1と、他方の第2チャック462のループ部41側の面と試験片40とが交わる位置P2との間における、試験片40の長さである。上述の間隔L3は、試験片40の厚みを無視する場合、ループ部41の長さに2×tを加えた値になる。tは、チャック部46の第2チャック462の厚みである。
その後、図9に示すように、チャック部46に対するループ部41の突出方向Yが水平方向になるよう、チャック部46の姿勢を調整する。例えば、支持部材47の法線方向が水平方向を向くように支持部材47を動かすことにより、支持部材47によって支持されているチャック部46の姿勢を調整する。図9に示す例において、ループ部41の突出方向Yは、チャック部の厚み方向に一致している。また、ループ部41の突出方向Yにおいて第2チャック462から距離Z1だけ離れた位置にロードセル48を準備する。本願においては、距離Z1を50mmとした。続いて、ロードセル48を、試験片40のループ部41に向けて、図9に示す距離Z2だけ速度Vで移動させる。距離Z2は、図9及び図10に示すように、ロードセル48がループ部61に接触し、その後、ロードセル48がループ部41をチャック部46側に押し込むよう、設定される。本願においては、距離Z2を40mmとした。この場合、ロードセル48がループ部41をチャック部46側に押し込んでいる状態におけるロードセル48とチャック部46の第2チャック462との間の距離Z3は、10mmになる。ロードセル48を移動させる速度Vは、3.3mm/秒とした。
続いて、図10に示す、ロードセル48をチャック部46側に距離Z2だけ移動させ、ロードセル48が試験片40のループ部41を押し込んでいる状態において、ループ部41からロードセル48に加えられている荷重の値が安定した後、荷重の値を記録する。このようにして得られた荷重の値を、試験片40を構成するフィルムのループスティフネスとして採用する。本願において、特に断らない限り、ループスティフネスの測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%である。
少なくとも1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有する高スティフネスフィルムを延伸プラスチックフィルムとして用いることにより、延伸プラスチックフィルムの突き刺し強度を高めることができる。これにより、高スティフネスフィルムを備える積層フィルムにおいて、積層フィルムの突き刺し強度を例えば13N以上にすることができ、より好ましくは14N以上にすることができ、さらに好ましくは15N以上又は16N以上にすることができる。
高スティフネスフィルムの例としては、51質量%以上のPETを含む高スティフネスPETフィルムを挙げることができる。高スティフネスPETフィルムにおけるPETの含有率は、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。高スティフネスフィルムの厚みは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上である。高スティフネスフィルムの厚みは、10μm以上であってもよく、14μm以上であってもよい。また、高スティフネスフィルムの厚みは、好ましくは30μm以下であり、25μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。
高スティフネスフィルムの好ましい機械特性について更に説明する。高スティフネスフィルムの突き刺し強度は、好ましくは10N以上であり、より好ましくは11N以上である。少なくとも1つの方向における高スティフネスフィルムの引張強度は、好ましくは250MPa以上であり、より好ましくは280MPa以上である。例えば、流れ方向における高スティフネスフィルムの引張強度は、好ましくは250MPa以上であり、より好ましくは280MPa以上である。垂直方向における高スティフネスフィルムの引張強度は、好ましくは250MPa以上であり、より好ましくは280MPa以上である。少なくとも1つの方向における高スティフネスフィルムの引張伸度は、好ましくは130%以下であり、より好ましくは120%以下である。例えば、流れ方向における高スティフネスフィルムの引張伸度は、好ましくは130%以下であり、より好ましくは120%以下である。垂直方向における高スティフネスフィルムの引張伸度は、好ましくは120%以下であり、より好ましくは110%以下である。好ましくは、少なくとも1つの方向において、高スティフネスフィルムの引張強度を引張伸度で割った値が2.0〔MPa/%〕以上である。例えば、垂直方向(TD)における高スティフネスフィルムの引張強度を引張伸度で割った値は、好ましくは2.0〔MPa/%〕以上であり、より好ましくは2.2〔MPa/%〕以上である。流れ方向(MD)における高スティフネスフィルムの引張強度を引張伸度で割った値は、好ましくは1.8〔MPa/%〕以上であり、より好ましくは2.0〔MPa/%〕以上である。
少なくとも1つの方向における高スティフネスフィルムの熱収縮率は、0.7%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。例えば、流れ方向における高スティフネスフィルムの熱収縮率は、0.7%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。垂直方向における高スティフネスフィルムの熱収縮率は、0.7%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。熱収縮率を測定する際の加熱温度は100℃であり、加熱時間は40分である。
少なくとも1つの方向における高スティフネスフィルムのヤング率は、好ましくは4.0GPa以上であり、より好ましくは4.5GPa以上である。例えば、流れ方向における高スティフネスフィルムのヤング率は、好ましくは4.0GPa以上であり、より好ましくは4.5GPa以上である。垂直方向における高スティフネスフィルムのヤング率は、好ましくは4.0GPa以上であり、より好ましくは4.5GPa以上である。
ヤング率は、引張強度及び引張伸度と同様に、JIS K7127に準拠して測定され得る。測定器としては、オリエンテック社製の引張試験機 STA-1150を用いることができる。試験片としては、高スティフネスフィルムを幅15mm、長さ150mmの矩形状のフィルムに切り出したものを用いることができる。試験片を保持する一対のチャックの間の、測定開始時の間隔は100mmであり、引張速度は300mm/分である。なお、試験片の長さは、一対のチャックによって試験片を把持することができる限りにおいて、調整可能である。本願において、特に断らない限り、ヤング率の測定時の環境は、温度25℃、相対湿度50%である。
高スティフネスフィルムは、蒸着層が設けられた場合であっても、単体の高スティフネスフィルムと同等の機械特性を有している。例えば、酸化アルミニウム蒸着層3が設けられている高スティフネスフィルムは、少なくとも1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有している。また、更に蒸着層の上に有機被覆層が設けられた場合であっても、単体の高スティフネスフィルムと同等の機械特性を有している。例えば、酸化アルミニウム蒸着層3及び有機被覆層4が設けられている高スティフネスフィルムは、少なくとも1つの方向において0.0017N以上のループスティフネスを有している。
高スティフネスフィルムの製造工程においては、例えば、まず、ポリエステルを溶融及び成形することによって得られたプラスチックフィルムを、流れ方向及び垂直方向において、それぞれ90~145℃で3~4.5倍に延伸する第1延伸工程を実施する。続いて、プラスチックフィルムを、流れ方向及び垂直方向において、それぞれ100~145℃で1.1~3.0倍に延伸する第2延伸工程を実施する。その後、190~220℃の温度で熱固定を行う。続いて、流れ方向及び垂直方向において、100~190℃の温度で0.2~2.5%程度の弛緩処理(フィルム幅を縮める処理)を実施する。これらの工程において、延伸倍率、延伸温度、熱固定温度、弛緩処理率を調整することにより、上述の機械特性を備える高スティフネスフィルムを得ることができる。
高スティフネスフィルムの具体例としては、東レ株式会社製のXP-55を用いることができる。この高スティフネスフィルムは二軸延伸されており、90質量%以上のPETを含み、厚みは16μmである。この高スティフネスPETフィルムのループスティフネスの測定値は、流れ方向及び垂直方向のいずれにおいても0.0021Nであった。また、流れ方向における高スティフネスPETフィルムのヤング率は4.8GPaであり、垂直方向における高スティフネスPETフィルムのヤング率は4.7GPaであった。また、流れ方向における高スティフネスPETフィルムの引張強度は292MPaであり、垂直方向における高スティフネスPETフィルムの引張強度は257MPaであった。また、流れ方向における高スティフネスPETフィルムの引張伸度は107%であり、垂直方向における高スティフネスPETフィルムの引張伸度は102%であった。この場合、流れ方向における高スティフネスPETフィルムの引張強度を引張伸度で割った値は2.73〔MPa/%〕であり、垂直方向における高スティフネスPETフィルムの引張強度を引張伸度で割った値は2.52〔MPa/%〕である。また、流れ方向及び垂直方向における高スティフネスPETフィルムの熱収縮率はいずれも0.4%であった。
樹脂基材は、1層であっても、2層以上の多層構成であってもよく、多層構成の場合には、同一組成の層であっても、異なる組成の層であってもよい。また、多層構成の場合に、各層間は、接着剤層等が介在して接着されていてもよい。
基材層2の厚さは、特に限定されるものではないが、5μm以上25μm以下であることが好ましく、8μm以上15μm以下であることがより好ましい。5μm以上であることにより、バリアフィルムの強度を好ましいものにすることができる。25μm以下であることにより、バリアフィルム全体の厚さを小さくすることができることから、透明性が増加し、内容物の視認性が向上する。
[酸化アルミニウム蒸着層]
酸化アルミニウム蒸着層3は、主成分として酸化アルミニウムを含む無機酸化物の薄膜である。そして、この酸化アルミニウム蒸着層3には、Al2O3
-構造部と、Al3
-構造部と、で表される元素結合構造部を有しており、Al2O3
-構造部と前記Al3
-構造部との最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)が、1以上20以下であることを特徴としている。
このように、単にAl2O3
-構造部のみからなる酸化アルミニウムではなく、Al2O3
-構造部とAl3
-構造部との最大強度比率を制御することによりバリアフィルムのバリア性を向上させることができる。
具体的には、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)によって検出されるAl3
-の強度と、Al2O3
-の強度との比である、強度比率Al3
-/Al2O3
-によって表現することができる。本発明における、Al3
-構造部、Al2O3
-構造部とは、それぞれ、TOF-SIMSにおけるAl3
-の強度(元素結合Al3由来の強度)、Al2O3
-の強度(元素結合Al2O3由来の強度)を意味する。Al3
-の強度はアルミニウムに由来し、Al2O3
-の強度は酸化アルミニウムに由来する。
ここで飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)とは、固体試料にイオンビーム(一次イオン)を照射し、表面を構成する分子の一部がイオン化され放出されるイオン(二次イオン)を、その飛行時間差(飛行時間は重さの平方根に比例)を利用して質量分離する手法である。本明細書において、この強度比率Al3
-/Al2O3
-は、バリアフィルムの有機被覆層側からイオンビームを照射し、酸化アルミニウム蒸着層に由来するAl2O3
-構造部と、Al3
-構造部と、の二次イオンにより特定される。
TOF-SIMSの測定結果における酸化アルミニウム蒸着層の判断は、有機被覆層の構成元素であるSiO2の強度が、最大強度の半分になる位置をバリア性有機被覆層と酸化アルミニウム蒸着層の界面として、次いで、基材層の構成材料であるC6の強度が、最大強度の半分になる位置を、フィルム基材と酸化アルミニウム蒸着層の界面として、最初の界面から2番目の界面までを酸化アルミニウム蒸着層とする。
そして、酸化アルミニウム蒸着層内でAl3
-の強度が最も高いピーク位置(最大強度)を求め、その位置でのAl3
-の強度とAl2O3
-との強度比率であるAl3
-最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)と、Al3
-の最大強度の酸化アルミニウム蒸着層厚に対する割合(酸化アルミニウム蒸着層における、有機被覆層側からの深さ)を算出する。
また、このAl3
-構造部の最大強度は、酸化アルミニウム蒸着層における有機被覆層側(イオンビームを照射側)の表面から酸化アルミニウム蒸着層の膜厚の4%以上45%以下の深さ位置に存在することが好ましく、10%以上25%以下の深さ位置に存在することがより好ましい。このことを、図11を用いて説明する。図11は、基材/蒸着層の構成のバリアフィルムにおける、TOF-SIMSによる測定結果を示すグラフ解析図である。後述する図4は、実施例1のTOF-SIMSによる測定結果(基材/蒸着層/有機被覆層)であり、図11では有機被覆層が存在しないという層構成の相違があるものの、図11の蒸着膜付近の拡大図として疑似的に理解することができる。図11において、Al3
-構造部の最大強度は横軸0サイクルと10サイクルの間にピークが存在しており、一方、Al2O3
-構造部は0サイクルから100サイクル弱にかけて広く存在している。このことは、酸化アルミニウム蒸着層において、Al3
-構造部が有機被覆層側に偏在していることを意味し、具体的には、膜厚の4%以上45%以下の深さ位置に存在している。逆にいうと、蒸着膜における基材界面付近にはAl3
-構造部の最大強度が存在せず、Al2O3
-構造部が主に存在していることを意味する。このように、単一の蒸着膜であるにもかかわらず、蒸着膜の有機被覆層側にはAl2O3
-構造部の領域に加えてAl3
-構造部の主領域が存在し、蒸着膜の基材層側には、Al2O3
-構造部の領域が主として存在するという構成をとることにより、Al3
-構造部に由来する高いバリア性と、Al2O3
-構造部に由来する透明性と基材層への密着性という、従来相反する物性の両立を図ることに成功したものである。
なお、Al3
-構造部の最大強度を、酸化アルミニウム蒸着層における有機被覆層側(イオンビームを照射側)の表面から酸化アルミニウム蒸着層の膜厚の4%以上45%以下とするには、酸化アルミニウム蒸着層の形成時における蒸着時の酸素濃度を制御することで調整でき、より好ましい10%以上25%以下とするには、前処理、特に酸素プラズマ処理の条件と、酸化アルミニウム蒸着層の形成時における蒸着時の酸素濃度との組み合わせを制御することで調整することができる。適切な酸素プラズマによる前処理によって、蒸着膜の基材層側では、有機被覆層側に比べてAlの酸化が促進される結果、Al3
-構造部が生じ難くなるものと推定され、蒸着膜全体として透明性を維持することに成功している。
なお、酸化アルミニウム蒸着層には、微量の、アルミニウムの窒化物、炭化物、水酸化物の単独又はその混合物などのアルミニウム化合物や、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸化窒化物、ケイ素炭化物、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、又はこれらの金属窒化物、炭化物及びその混合物などを含んでいてもよい。
酸化アルミニウム蒸着層の厚さは特に限定されるものではないが、5nm以上100nm以下であることが好ましく、8nm以上30nm以下であることがより好ましい。酸化アルミニウム蒸着層の厚さが5nm以上であることにより、バリアフィルムのバリア性が向上する。酸化アルミニウム蒸着層の厚さが100nm以下であることにより、粘接着バリアフィルムの透明性をより向上させることができる。
また、Al3
-構造部は、Al2O3
-構造部と比べて透明性を有していない。このため、上記の最大強度比率の他に、全光線透過率(全光線透過率)やヘイズや、色差(Lab表色系のL値)によってもAl3
-構造部を定量することができる。具体的には、基材層と、酸化アルミニウム蒸着層と、有機被覆層と、が積層されたバリアフィルムの全光線透過率は、85%以上89.0%以下が好ましく、86%以上88.5%以下がより好ましい。基材層と、酸化アルミニウム蒸着層と、有機被覆層と、が積層されたバリアフィルムのヘイズは、2.15%以上3.0%以下が好ましく、2.2%以上2.5%以下がより好ましい。色差(L*a*b*表色系)は、L*が98以上100未満であることが好ましい。b*は0.50以上1.00以下であることが好ましく、0.80以上1.00以下であることがより好ましく、0.90以上1.00以下であることが特に好ましい。なお、全光線透過率は、JIS K7361に基づいて測定され、ヘイズは、JIS K7136に基づいて測定される。また、色差(L*a*b*表色系)は、JIS Z8722に基づいて測定される。
[有機被覆層]
有機被覆層4は、酸化アルミニウム蒸着層を機械的・化学的に保護するとともに、バリアフィルムのバリア性能を向上させるものである。
有機被覆層4は金属アルコキシドと、好ましくはケン化度が90%以上、100%以下の水酸基含有水溶性樹脂とを含む有機被覆層用コート剤から形成される。有機被覆層内で、金属アルコキシドは、縮合反応生成物を生成しているが、水酸基含有水溶性樹脂との間で共縮合物を生成していてもよい。
質量比水酸基含有水溶性樹脂/金属アルコキシドは、5/95以上、20/80以下が好ましく、8/92以上、15/85以下がより好ましい。上記範囲よりも小さいと、有機被覆層のバリア効果が不十分になり易い傾向になり、上記範囲よりも大きいと、有機被覆層の剛性と脆性とが大きくなり易くなる。
金属アルコキシドは、一般式R1nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、水素原子又は炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表す。1分子中の複数のR1、R2のそれぞれは、同一であっても、異なっていてもよい。)で表される。
金属アルコキシドのMで表される具体的な金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、スズ、鉛、ボラン、その他等を例示することができ、例えば、MがSi(ケイ素)であるアルコキシシランを使用することが好ましい。
アルコキシシランは、一般式R1nSi(OR2)m(ただし、n+m=4)で表される。このため、アルコキシシランを使用する場合、有機被覆層には、SiO2構造部で表される元素結合構造部を有することとなる。
上記において、OR2の具体例としては、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-プロポキシ基、ブトキシ基、3-メタクリロキシ基。3-アクリロキシ基、フェノキシ基、等のアルコキシ基又はフェノキシ基等が挙げられる。
上記において、R1の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、p-スチリル基、3-クロロプロピル基、トリフルオロメチル基、ビニル基、γ-グリシドキシプロピル基、メタクリル基、γ-アミノプロピル基等が挙げられる。
アルコキシシランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、フェニルフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等の各種アルコキシシランやフェノキシシラン等が挙げられる。
アルコキシシランにおいて、R1がビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基等の官能基を有する有機基の場合には、一般的にシランカップリング剤と呼ばれる。
シランカップリング剤の具体例としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好適である。
上記の金属アルコキシドは、1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよく、特に、シランカップリング剤を併用することが好適である。シランカップリング剤を併用する場合には、全金属アルコキシド中の2質量%以上、15質量%以下をシランカップリング剤にすることが好ましい。
(水酸基含有水溶性樹脂)
水酸基含有水溶性樹脂は、金属アルコキシドと脱水共縮合し得るものであり、ケン化度は、90%以上、100%以下が好ましく、95%以上、100%以下がより好ましく、99%以上、100%以下が更に好ましい。ケン化度が上記範囲よりも小さいと、有機被覆層の硬度が低下し易くなる。
水酸基含有水溶性樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコ一ル共重合体、2官能フェノール化合物と2官能エポキシ化合物との重合体、等が挙げられ、各々を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、共重合させて用いてもよい。これらの中で、特に、柔軟性と親和性に優れることから、ポリビニルアルコールが好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂が好適である。
具体的には、例えば、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコ一ル系樹脂や、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化して得られたエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することができる。
このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRS樹脂である「RS-110(ケン化度=99%、重合度=1000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM-14(ケン化度=99%、重合度=1400)」等を挙げることができる。
有機被覆層の厚さは、特に限定されるものではないが150nm以上、800nm以下が好ましく、250nm以上600nm以下であることがより好ましい。有機被覆層の厚さが150nm以上であることによりバリア性をより効果的に付与することができる。有機被覆層の厚さが800nm以下であることにより透明性をより向上させることができる。
次に積層フィルムを構成するシーラント層について説明する。
[シーラント層]
シーラント層は、主にシーラント層同士を熱融着することにより、層同士が接合される層である。シーラント層は、主に樹脂によって構成され、樹脂の融点は、基材層などの他の層を構成する樹脂よりも通常は低いものである。
シーラント層としては、例えば、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、などで選択される1種又は2種以上の樹脂を用いることができる。シーラント層は単層であってもよく、多層であってもよい。
シーラント層の厚さは、20μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上80μm以下であることがより好ましい。
次に包装袋に包装される金属製品について説明する。
[金属製品]
金属製品は、酸化により錆びる金属製品である。金属製品とは、少なくとも一部に金属を含む製品であり、各種電化製品、電子デバイス等を挙げることができる。
そして、この金属製品は、包装袋により密封包装される。上述した通り、この包装袋は、バリア性に優れていることから、密封包装されることにより包装される金属製品の錆を防ぐことが可能となる。
なお、この密封包装は、金属製品にできるだけ酸素及び/又は水蒸気と接触させないようにした状態で包装することが好ましい。例えば、金属製品を包装袋で包装して、包装袋内の空気を吸引しながら密封する方法や、脱酸素剤存在下及び/又は吸湿剤存在下で密封包装する方法や、低酸素低湿状態(例えば、酸素濃度が10質量%以下、好ましくは1質量%以下の空気や湿度が10%以下、好ましくは1%以下の空気や窒素や希ガス存在下)で密封包装する方法などが挙げられる。なお、これらの方法を組み合わせてもよい。
次に、バリアフィルムの製造方法について説明する。
<バリアフィルムの製造方法>
バリアフィルムを製造する方法は、例えば、樹脂フィルム(基材層)に酸素プラズマ処理し、プラズマ処理された樹脂フィルムの面に酸素雰囲気下でアルミニウムを蒸着して酸化アルミニウム蒸着層を形成し、酸化アルミニウム蒸着層の表面に被覆層用コート剤組成物を塗布し、乾燥して被覆層を形成し、溶融押出法を用いて被覆層上にシーラント層を積層する方法を挙げることができる。
[プラズマ処理]
本実施の形態に係るバリアフィルムでは、酸化アルミニウム蒸着層中のAl3
-構造部を増やしたことにより酸化アルミニウム蒸着層と基材との密着性は低下し易くなる傾向がある。そこで、樹脂フィルム(基材層)に酸素プラズマ処理することにより、基材表面の酸化アルミニウム蒸着層の酸化度を上げて、酸化アルミニウム蒸着層と基材との密着性を上昇することができる。
プラズマ処理において、供給されるプラズマ原料ガスは、酸素単体あるいは酸素分圧が高い不活性ガスとの混合ガスが使用されることが好ましい。
図3に、プラズマ処理及び酸化アルミニウム蒸着層を成膜する装置の一例(平面図)を示す。プラズマ前処理室12B内には、前処理が行われる樹脂基材Sを搬送し、かつプラズマ処理を可能にするプラズマ前処理ローラー20の一部が樹脂基材搬送室12Aに露出するように設けられており、樹脂基材Sは巻き取られながらプラズマ前処理室12Bに移動するようになっている。
前記プラズマ前処理室12Bは、プラズマが生成する空間を他の領域と区分し、対向空間を効率よく真空排気できるように構成されることで、プラズマガス濃度の制御が容易となり、生産性が向上する。その減圧して形成する前処理圧力は、0.1Pa以上100Pa以下程度に設定、維持することができ、特に、1Pa以上20Pa以下が好ましい。
樹脂基材Sの搬送速度は、特に限定されないが、生産効率の観点から、200m/min以上1000m/min以下にすることができ、特に、300m/min以上800m/min以下が好ましい。
プラズマ処理は、プラズマ供給手段及び磁気形成手段を含むものである。プラズマ処理はプラズマ前処理ローラー20と協働し、樹脂基材S表面近傍に酸素プラズマPを閉じ込める。具体的には、前処理ローラー20の外周近傍の表面に沿ってプラズマ前処理手段を構成するプラズマ供給手段と磁気形成手段を配置して、前処理ローラー20とプラズマ原料ガスを供給するとともにプラズマPを発生させる電極ともなるプラズマ供給ノズル22a~22cとプラズマPの発生を促進するためマグネット21等を有する磁気形成手段とにより挟まれた空隙を形成するように設置する。
前処理ローラー20とプラズマ供給ノズル22a~22cとの間の電圧としては、周波数が10Hzから2.5GHzであり、電圧が50ボルト以上1000ボルト以下の交流電圧であり、投入電力制御又はインピーダンス制御等によって、任意の安定した印加状態の電圧である。
プラズマ処理におけるプラズマ供給手段は、減圧チャンバ12の外部に設けたプラズマ供給ノズルに接続された原料揮発供給装置18と、該装置から原料ガス供給を供給する原料ガス供給ラインを含むものである。供給されるプラズマ原料ガスは、酸素単独又は酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスが、ガス貯留部から流量制御器を介することでガスの流量を計測しつつ供給される。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素なる群から選ばれる、1種又は2種以上の混合ガスが挙げられる。
プラズマ処理としては、酸素ガスと前記不活性ガスとの混合比率、酸素ガス/不活性ガスは、6/1~1/1が好ましく、5/2~3/2.5がより好ましい。
混合比率を6/1~1/1とすることで、樹脂基材上での蒸着アルミニウムの膜形成エネルギーが増加し、更に5/2~3/2とすることで、酸化アルミニウム蒸着膜の酸化度を上げて酸化アルミニウム蒸着膜と基材との密着性を確保することができる。
プラズマ処理における単位面積あたりのプラズマ強度として50W・sec/m2以上8000W・sec/m2以下であり、50W・sec/m2以下では、プラズマ前処理の効果がみられず、また、8000W・sec/m2以上では、樹脂基材の消耗、破損着色、焼成などプラズマによる樹脂基材の劣化が起きる傾向にある。特に、酸化アルミウム層とするためプラズマ前処理のプラズマ強度としては、100W・sec/m2以上1000W・sec/m2以下が好ましい。
[酸化アルミニウム蒸着層の形成]
酸化アルミニウム蒸着層を形成する蒸着法としては、物理蒸着法、化学蒸着の中から種々の蒸着法が適用できる。物理蒸着法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、クラスターイオンビーム法からなる群から選ぶことができ、化学蒸着法としては、プラズマCVD法、プラズマ重合法、熱CVD法、触媒反応型CVD法からなる群から選ぶことができる。本実施の形態に係る粘接着バリアフィルムでは、物理蒸着法の蒸着法が好適である。
蒸着膜成膜装置は、減圧された成膜室12C内に配置され、プラズマ前処理装置で前処理された樹脂基材Sの処理面を外側にして樹脂基材Sを巻きかけて搬送し、成膜処理する成膜ローラー23と、該成膜ローラーに対向して配置された蒸着膜成膜手段24のターゲットを蒸発させて樹脂基材表面に蒸着膜(酸化アルミニウム蒸着層)を形成する。
蒸着膜成膜手段24は抵抗加熱方式であり、アルミニウムを蒸発源としてアルミニウムの金属線材を用い、酸素を供給ししてアルミニウム蒸気を酸化しつつ、樹脂基材Sの表面に酸化アルミニウム蒸着層を形成する。
酸素は、酸素単体でも、アルゴンのような不活性ガスとの混合ガスでの供給でもよいが、Al3
-構造部の最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)が、1以上20以下となるように酸素量を制御する。実施例における一例でいえば、酸素供給量として7000sccm以上12000sccm以下が好ましく、8000sccm以上10000sccm以下がより好ましい。この範囲にすることにより、バリア性、透明性、密着性を両立できる。
また、アルミニウムの蒸発は、例えば、舟形(「ボートタイプ」という)蒸着容器に、ローラー23の軸方向にアルミニウムの金属線材を複数配置し、抵抗加熱式により加熱することで行うことができる。
このような方法で、供給される熱、熱量を調節しながらアルミニウムを蒸発させ、かつ供給する酸素量を調整することにより、アルミニウムと酸素との反応を制御して、酸化アルミニウム蒸着層を形成することができる。
[有機被覆層の形成]
まず、金属アルコキシド、水酸基含有水溶性樹脂、反応促進剤(ゾルゲル法触媒、酸等)、及び溶媒としての水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等のアルコール等の有機溶媒を混合し、有機被覆層用コート剤組成物を調製する。
次いで、酸化アルミニウム蒸着層等の表面に、常法により、有機被覆層用コート剤組成物を塗布し、乾燥する。この乾燥工程によって、縮合又は共縮合反応が更に進行し、塗膜が形成される。第一の塗膜の上に、更に上記塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗膜を形成してもよい。
さらに、20℃以上200℃以下、好ましくは50℃以上180℃以下の範囲の温度、かつ樹脂基材の融点以下の温度で、3秒以上10分以下加熱処理する。これによって、酸化アルミニウム蒸着層の表面に、有機被覆層コート組成物による有機被覆層を形成することができる。
尚、有機被覆層を形成は、酸化アルミニウム蒸着層の形成後に、外気に触れることなく、インラインで行われることが好ましい。
[シーラント層の積層]
シーラント層は、溶融押出法を用いて有機被覆層の表面に積層してもよいし、ドライラミネート法を用いて予め製膜された熱可塑性樹脂フィルムからなるシーラント層と有機被覆層とを貼り合わせてもよい。また、シーラント層は未延伸であることが好ましい。
<包装袋の製造方法>
包装袋は、バリアフィルムの該シーラント層同士を接合し、シーラント層を構成する樹脂の融点以上の温度で熱融着して周囲を密封接合することにより製造される。
包装袋の形状は従来公知の形状のものであってもよく、例えば、ガセット形状や横ガセット形状であってもよく、さらに他のバリアフィルムを用いてスタンド袋形状であってもよい。金属製品の防錆性を向上させる目的で密閉されていることが好ましい。
<包装体の製造方法>
本実施の形態に係る包装体は、上記の包装袋により金属製品を密封包装することにより製造される。金属製品を密封包装する方法は、空気を吸引しながらシーラント層同士の周囲を密封接合することにより製造することができる。また、低酸素状態で金属製品を密封包装してもよい。
包装体は、金属製品のみを密封包装するものであれば特に制限はされないが、金属製品とともに吸湿剤及び/又は脱酸素剤を密封包装することが好ましい。これにより、包装される金属製品の錆をより効果的に防ぐことが可能となる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
<酸化アルミニウム蒸着層形成>
まず、樹脂基材である厚さ12μmのポリエステルフィルム(以下、PETフィルム)を巻き取ったロールを準備した。
次に、このPETフィルムの酸化アルミニウム蒸着層を設ける面に、プラズマ前処理装置を配置した前処理区画と成膜区画を隔離した連続蒸着膜成膜装置を用いて、前処理区画において下記プラズマ条件下でプラズマ供給ノズルからプラズマを導入し、搬送速度400m/minでプラズマ前処理を施し、連続搬送した成膜区画内で、プラズマ処理面上に下記条件において真空蒸着法の加熱手段として反応性抵抗加熱方式により、厚さ12nmの酸化アルミニウム蒸着層をPETフィルムに形成して、バリアフィルムのロール巻きを得て、各種評価を実施した。
(プラズマ前処理条件)
・プラズマ強度:150W・sec/m2
・プラズマ形成ガス比:酸素/アルゴン=2/1
・前処理ドラム-プラズマ供給ノズル間印加電圧:340V
・前処理圧力:3.8Pa
(酸化アルミニウム成膜条件)
・真空度:8.1×10-2Pa
・搬送速度:400m/min
・酸素のガス供給量:8000sccm
<被覆層用コート剤組成物の調製>
水226g、イソプロピルアルコール39g及び0.5N塩酸5.3gを混合し、pH2.2に調整した溶液に、テトラエトキシシラン167gとグリシドキシプロピルトリメトキシシラン9.2gを10℃となるよう冷却しながら混合させて溶液Aを調製した。
ケン価度99%以上の重合度2400のポリビニルアルコール23.3g、水513g、イソプロピルアルコール27gを混合した溶液Bを調製した。
A液とB液を重量比4.4:5.6となるよう混合して得られた溶液を有機被覆層用コート剤組成物とした。
上記のPETフィルムの酸化アルミニウム蒸着層上に、上記で調製した被覆層用コート剤組成物をスピンコート法によりコーティングした。その後、180℃で60秒間、オーブンにて加熱処理して、厚さ約400nmの被覆層を酸化アルミニウム蒸着層上に形成して、有機被覆層付きバリアフィルムを得た。
[TOF-SIMSにおける強度比率Al3
-/Al2O3
-×100]
有機被覆層付きバリアフィルムに対して、飛行時間型二次イオン質量分析計(ION TOF社製、TOF.SIMS5)を用いて、下記測定条件で、バリアフィルムの有機被覆層側から、Cs(セシウム)イオン銃により一定の速度でソフトエッチングを繰り返しながら、樹脂基材由来のC6(質量数72.00)、酸化アルミウム蒸着層由来のAl3
-(質量数80.94)、Al2O3
-(質量数101.94)、被覆層由来のSiO2(質量数59.96)イオンの質量分析を行った。測定結果のグラフ解析図を図4に示す。
有機被覆層の構成元素であるSiO2の強度が、最大強度の半分になる位置を被覆層と酸化アルミニウム蒸着層の界面として、次いで、樹脂基材の構成材料であるC6の強度が、最大強度の半分になる位置を、樹脂基材と酸化アルミニウム蒸着層の界面として、最初の界面から2番目の界面までを酸化アルミニウム蒸着層とした。
そして、酸化アルミニウム蒸着層内でAl3
-の強度が最も高い位置(最大強度)を求め、その位置でのAl3
-の強度とAl2O3
-との強度比率であるAl3
-最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)と、Al3
-の最大強度の酸化アルミニウム蒸着層厚に対する割合(酸化アルミニウム蒸着層における、有機被覆層側からの深さ、単位%)を算出した。
TOF-SIMS測定条件
・一次イオン種類:Bi3++(0.2pA,100μs)
・測定面積:150×150μm2
・エッチング銃種類:Cs(1keV、60nA)
・エッチング面積:600×600μm2
・エッチングレート:10sec/Cycle
酸化アルミニウム蒸着層のAl2O3
-構造部とAl3
-構造部との最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)は、5.1であった。
[実施例1]
<積層フィルムの製造>
上記により製造したバリアフィルムの有機被覆層の表面に接着剤を塗布して厚さ70μムの無延伸ポリプロピレン(シーラント層)を積層することにより積層フィルムを製造した。
<包装袋の製造>
2枚のバリアフィルム1のシーラント層同士を当接し、無延伸ポリプロピレン以上の融点にて周囲を熱融着させることで、実施例1の包装袋を製造した。
[実施例2]
実施例1の包装袋において包装袋の内部に吸湿剤(有限会社オアシスプランニング製 オアシスシリカゲル 5g)を包装した実施例2の包装袋を製造した。
[実施例3]
実施例1の包装袋において包装袋の内部に脱酸素剤(株式会社鳥繁産業製 エバーフレッシュ QJ-50)を包装した実施例3の包装袋を製造した。
[比較例1]
バリアフィルム1の代わりに気化性防錆フィルム(日本パーカライジング株式会社製 PIPAK)同士のシーラント層同士を当接し、周囲を熱融着させることで、比較例1の包装袋を製造した。
[比較例2]
比較例1の包装袋において包装袋の内部に吸湿剤(シリカゲル)を包装した比較例2の包装袋を製造した。
[比較例3]
比較例1の包装袋において包装袋の内部に脱酸素剤を包装した比較例3の包装袋を製造した。
<防錆性試験>
実施例、比較例の包装袋を用いて、防錆性試験を行った。具体的には、実施例、比較例の包装袋に鉄板(冷間圧延鋼板(SPCC)、50mm×50mm×1mm)、及び銅板(タフピッチ銅板 C1100P-1/4H、50mm×50mm×1mm)を脱脂した後、包装して包装体を製造し、放置試験(温度:60℃、湿度:90%RH、14日間)を行い、放置試験後の外観を下記評価基準にて評価した。
[評価基準]
◎:錆、変色なし
◎~〇:点錆、わずかな変色発生
〇:試験片の面積に対して10%未満に錆発生
×:試験片の面積に対して10%以上50%未満に錆発生
××:試験片の面積に対して50%以上に錆発生
表1より、実施例の包装袋(包装体)は、多層構造を採らずに、包装される金属製品の錆を防ぐことができることが分かる。
<積層フィルムの作成及び評価>
(積層フィルム3)
積層フィルム1において、酸素のガス供給量を10000sccmにした以外同様に製造することにより、積層フィルム3を得た。有機被覆層付きバリアフィルムにおける、酸化アルミニウム蒸着層のAl3
-最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)を上記同様に測定したところ、3.7であった。
(積層フィルム4)
積層フィルム1において、前処理(プラズマ処理)を行わなかった以外同様に製造し、積層フィルム4を得た。有機被覆層付きバリアフィルムにおける、酸化アルミニウム蒸着層のAl3
-最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)を上記同様に測定したところ、4.5であった。
(積層フィルム5)
積層フィルム1における基材を、下記のバイオマス由来の二軸延伸ポリエステルフィルム(バイオマスPETフィルム)とし、前処理のプラズマ強度を、250W・sec/m2とした以外同様に製造し、積層フィルム5を得た。有機被覆層付きバリアフィルムにおける、酸化アルミニウム蒸着層のAl3
-最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)を上記同様に測定したところ、4.9であった。
<バイオマス由来のポリエステルの合成>
テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とを、常法の直重方法でエステル化反応を行った後、減圧下において縮重合反応を行い、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートを得た。
<樹脂フィルムの作製>
上記のバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートを60質量部と、化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート30質量部と、化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートを含むマスターバッチ10質量部とを押出機に供給し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、縦方向に延伸した後、横方向に延伸して厚みが12mμである二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムのバイオマス度を測定したところ、18.8%であった。
(積層フィルム6)
積層フィルム1において、酸素のガス供給量を20000sccmにした以外同様に製造することにより、積層フィルム6を得た。有機被覆層付きバリアフィルムにおける、酸化アルミニウム蒸着層のAl3
-最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)を上記同様に測定したところ、0.8であった。
(積層フィルム7)
積層フィルム1において、酸素のガス供給量を6000sccmにした以外同様に製造し、積層フィルム7を得た。有機被覆層付きバリアフィルムにおける、酸化アルミニウム蒸着層のAl3
-最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)を上記同様に測定したところ、25であった。目視で着色しており印刷適性にも劣るために、以後の評価に供さなかった。
積層フィルム1、3~7における、粘接着層を積層する前の有機被覆層付きバリアフィルムについて、蒸着前処理条件、蒸着条件、TOF-SIMS分析値、評価結果(酸素・水蒸気バリア、全光線透過率、ヘイズ、色差)をまとめて表2に示す。
<酸素透過度>
酸素透過度測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/21)を用いて、有機被覆層付きバリアフィルムの樹脂基材側が酸素供給側になるようにセットして、JIS K 7126 B法に準拠して、23℃、90%RH雰囲気下における酸素透過度を測定した。
<水蒸気透過度>
水蒸気透過度測定装置(MOCON社製、PERMATRAN3/33)を用いて、有機被覆層付きバリアフィルムの樹脂基材層側がセンサー側になるようにセットして、JIS K 7126 B法に準拠して、40℃、100%RH雰囲気下における水蒸気透過度を測定した。
<光学特性>
全光線透過率は、ヘイズは、ヘイズメーターを用いて、JIS K7136に基づいて測定した。 色差(L*a*b*表色系)は、分光測色計CM-700dを用いて、JIS Z8722に基づいて測定した。なお、有機被覆層付きバリアフィルムを白色板上に置いて測定した。なお、「目視着色」については、有機被覆層付きバリアフィルムを白色板上に置いて目視し、着色が認められないものを〇、着色が認められるものを×とした。
表2より、最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)が、1以上20以下である積層フィルム1、3~5は高いバリア性と透明性を両立できていることが分かる。
一方、最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)が、1未満である積層フィルム6の酸素透過度は0.2cc/m2/day/atmであり、水蒸気透過度は0.5g/m2/dayであった。一方、最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)が、20超である積層フィルム7は、酸素透過度や水蒸気透過度は良好であったものの、バリアフィルムが黒ずんでおり、透明度が低下していた。
以上より、酸化アルミニウム蒸着層のAl2O3
-構造部とAl3
-構造部との最大強度比率(Al3
-/Al2O3
-×100)が、1以上20以下である本発明のバリアフィルムは多層構造でなくとも、高いバリア性と透明性を両立し、包装される金属製品の錆を防ぐことができる包装体であることが分かる。