以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(ロータの構造)
図1~図12を参照して、第1実施形態によるロータ10の構造について説明する。
本願明細書では、「軸方向」とは、ロータ10の回転軸線(符号O)(Z1方向、Z2方向)に沿った方向(図1参照)を意味する。また、「周方向」とは、ロータコア11の周方向(A方向、A1方向、A2方向)を意味する。また、「径方向内側」とは、ロータコア11の中心に向かう方向(B1方向)を意味する。また、「径方向外側」とは、ロータコア11の外に向かう方向(B2方向)を意味する。
図1に示すように、回転電機100は、ロータ10と、ステータ20とを備えている。ステータ20は、円環状のステータコア21を含む。ステータコア21には、複数のスロット22が設けられている。複数のスロット22には、それぞれ、セグメント導体30が配置されている。ステータコア21は、スロット22の径方向外側を円環状に接続するバックヨーク23と、隣り合うスロット22の間に設けられ、バックヨーク23から径方向内側に向かって延びる複数のティース24とを含む。また、スロット22には、セグメント導体30とステータコア21とを絶縁するための絶縁部材(図示せず)が配置されている。
ロータ10は、環形状を有するロータコア11を備える。ロータコア11は、複数の電磁鋼板12が積層されることにより形成されている。また、ロータコア11は、円環状のステータコア21の径方向の内側においてステータコア21と径方向に対向するように配置されている。すなわち、回転電機100は、インナーロータ型の回転電機である。
また、複数の電磁鋼板12の各々には、永久磁石40が挿入される複数(第1実施形態では4つ)の貫通孔12aが設けられている。永久磁石40は、複数の電磁鋼板12が積層されることにより複数の貫通孔12aが軸方向に並んで配置されている状態で、軸方向に並ぶ複数の貫通孔12aを貫通するように設けられている。
また、ロータ10は、積層された複数の電磁鋼板12に挿入されるシャフト13を備える。シャフト13は、ロータコア11の回転軸として機能する。また、シャフト13は、円筒形状を有している。すなわち、シャフト13は、中空形状を有しており、軸方向(Z方向)に延びるように形成されている。また、複数の電磁鋼板12の各々は、シャフト13が挿入される貫通孔12bを含む。また、ロータコア11は、焼き嵌めによりシャフト13に固定されている。
図2に示すように、ロータコア11は、後述する電磁鋼板ブロック120、後述する電磁鋼板ブロック121、後述する電磁鋼板ブロック122、および、後述する電磁鋼板ブロック123が、互いに軸方向に積層されるように構成されている。なお、電磁鋼板ブロック120および電磁鋼板ブロック121は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1電磁鋼板ブロック」および「第2電磁鋼板ブロック」の一例である。また、電磁鋼板ブロック122および電磁鋼板ブロック123は、それぞれ、特許請求の範囲の「第3電磁鋼板ブロック」および「第4電磁鋼板ブロック」の一例である。
また、図3に示すように、複数の電磁鋼板12は、少なくとも軸方向の一方側(Z1方向側)の端部に配置される電磁鋼板120aを含む。貫通孔12bのうちの電磁鋼板120aの貫通孔120bには、ダレ部120c、せん断面120d、破断面120e、および、バリ部120f(図4参照)が、貫通孔120bの打ち抜き時に形成されている。なお、図3では、バリ部120fは、簡略化のため図示を省略している。また、電磁鋼板120aは、特許請求の範囲の「第1電磁鋼板」の一例である。
図4に示すように、ダレ部120cは、貫通孔120bの軸方向の端部120gに設けられている。端部120gは、貫通孔120bのZ1方向側の端部である。ダレ部120cは、滑らかな湾曲形状を有している。また、ダレ部120cは、せん断面120dと連続するように設けられている。
せん断面120dは、軸方向(Z方向)に延びるように設けられている。せん断面120dは、光沢を有している。
破断面120eは、せん断面120dと連続するように設けられている。また、破断面120eは、せん断面120d側から、シャフト13から離間する方向に傾斜するように形成されている。これにより、破断面120eは、シャフト13と接触していない。具体的には、シャフト13と電磁鋼板120aとが接触する部分は、ダレ部120cおよびせん断面120dにより構成される。すなわち、上記接触する部分の軸方向の長さL1は、電磁鋼板120aの軸方向の厚みt1よりも小さい。その結果、上記接触する部分の軸方向の中央の位置P11は、電磁鋼板120aの軸方向の中央の位置P12よりも、ダレ部120c側(Z1方向側)に寄っている。なお、電磁鋼板120aの厚みt1には、バリ部120fの突出量は加味されていない。
バリ部120fは、破断面120eと連続するように設けられている。バリ部120fは、電磁鋼板120aから、端部120gとは反対側(Z2方向側)に突出するように設けられている。
ここで、第1実施形態では、電磁鋼板120aの破断面120eが、電磁鋼板120aのせん断面120dに対して、ロータコア11の軸方向の中央(位置P1、図2参照)側(Z2方向側)に配置されている。また、言い換えると、電磁鋼板120aでは、ダレ部120cが、破断面120eおよびせん断面120dに対してロータコア11の軸方向の中央側とは反対側(Z1方向側)に配置されている。
これにより、電磁鋼板120aの軸方向の中央の位置P12は、電磁鋼板120aとシャフト13との上記接触部分の軸方向の中央の位置P11に対して、ロータコア11の軸方向の中央の位置P1側(Z2方向側)に設けられる。その結果、電磁鋼板120aには、ロータコア11の軸方向の中央の位置P1側(Z2方向側)に傾斜する方向に回転モーメントがかかる。
また、図5に示すように、複数の電磁鋼板12は、少なくとも軸方向の他方側(Z2方向側)の端部に配置される電磁鋼板121aを含む。貫通孔12bのうちの電磁鋼板121aの貫通孔121bには、ダレ部121c、せん断面121d、破断面121e、および、バリ部121f(図6参照)が、貫通孔120bの打ち抜き時に形成されている。なお、図5では、バリ部121fは、簡略化のため図示を省略している。また、電磁鋼板121aは、特許請求の範囲の「第2電磁鋼板」の一例である。
図6に示すように、ダレ部121cは、貫通孔121bの軸方向の端部121gに設けられている。端部121gは、貫通孔121bのZ2方向側の端部である。ダレ部121c、せん断面121d、破断面121e、および、バリ部121fの位置関係は、電磁鋼板120a(図4参照)を(軸方向に)反転させた位置関係となるので、詳細な説明は省略する。
電磁鋼板121aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の長さL2は、電磁鋼板121aの軸方向の厚みt2よりも小さい。その結果、電磁鋼板121aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の中央の位置P21は、電磁鋼板121aの軸方向の中央の位置P22よりも、ダレ部121c側(Z2方向側)に寄っている。
ここで、第1実施形態では、電磁鋼板121aの破断面121eが、電磁鋼板121aのせん断面121dに対して、ロータコア11の軸方向の中央(位置P1、図2参照)側(Z1方向側)に配置されている。言い換えると、電磁鋼板121aでは、ダレ部121cが、破断面121eおよびせん断面121dに対してロータコア11の軸方向の中央側とは反対側(Z2方向側)に配置されている。
これにより、電磁鋼板121aの軸方向の中央の位置P22は、電磁鋼板121aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の中央の位置P21に対して、ロータコア11の軸方向の中央の位置P1側(Z1方向側)に設けられる。その結果、電磁鋼板121aには、ロータコア11の軸方向の中央の位置P1側(Z1方向側)に傾斜する方向に回転モーメントがかかる。
また、図2および図3に示すように、ロータコア11の軸方向の一方側(Z1方向側)の端部には、複数の電磁鋼板120aにより構成されている電磁鋼板ブロック120が配置されている。すなわち、電磁鋼板ブロック120の複数の電磁鋼板120aの全ては、ロータコア11の軸方向の中央の位置P1よりも軸方向の一方側(Z1方向側)に配置されている。なお、複数の電磁鋼板120aは、互いに転積されていない状態で、かつ、軸方向の表裏も同じ状態で(軸方向において互いに反転されないで)積層されている。
また、図2および図5に示すように、ロータコア11の軸方向の他方側(Z2方向側)の端部には、複数の電磁鋼板121aにより構成されている電磁鋼板ブロック121が配置されている。電磁鋼板ブロック121は、電磁鋼板ブロック120とは(軸方向に)反転されるように設けられている。
また、電磁鋼板ブロック121の複数の電磁鋼板121aの全ては、ロータコア11の軸方向の中央の位置P1よりも軸方向の他方側(Z2方向側)に配置されている。なお、複数の電磁鋼板121aは、互いに周方向において同位相で(周方向における向きが互いに同じで)、かつ、軸方向の表裏も同じ状態で(軸方向において互いに反転されないで)積層されている。
また、第1実施形態では、電磁鋼板ブロック120を構成する電磁鋼板120aの積厚t11(図2参照)は、電磁鋼板ブロック121を構成する電磁鋼板121aの積厚t12(図2参照)と略等しい。具体的には、電磁鋼板ブロック120を構成する電磁鋼板120aの枚数は、電磁鋼板ブロック121を構成する電磁鋼板121aの枚数と略等しい。詳細には、電磁鋼板ブロック120を構成する電磁鋼板120aの枚数、および、電磁鋼板ブロック121を構成する電磁鋼板121aの枚数は、ロータコア11の全ての電磁鋼板12の枚数の約1/4である。
また、図2に示すように、電磁鋼板ブロック120と電磁鋼板ブロック121との間で、かつ、ロータコア11の軸方向の中央に対して軸方向の一方側(Z1方向側)には、電磁鋼板12のうちの、複数の電磁鋼板122a(図7参照)により構成されている電磁鋼板ブロック122が配置されている。複数の電磁鋼板122aの全ては、ロータコア11の軸方向の中央に対して軸方向の一方側(Z1方向側)に配置されている。また、複数の電磁鋼板122aは、互いに転積されていない状態で、かつ、軸方向の表裏も同じ状態で(軸方向において互いに反転されないで)積層されている。また、電磁鋼板ブロック122は、電磁鋼板ブロック120と表裏が同じ状態(軸方向において互いに反転されていない状態)である。また、電磁鋼板ブロック122は、電磁鋼板ブロック120とは転積されるように設けられている。
また、電磁鋼板ブロック120と電磁鋼板ブロック121との間で、かつ、ロータコア11の軸方向の中央に対して軸方向の他方側(Z2方向側)には、電磁鋼板ブロック122とは反転されるように設けられる電磁鋼板ブロック123が配置されている。また、電磁鋼板ブロック123は、電磁鋼板ブロック121とは転積されるように設けられている。
また、電磁鋼板ブロック123は、電磁鋼板12のうちの、複数の電磁鋼板123a(図9参照)により構成されている。複数の電磁鋼板123aの全ては、ロータコア11の軸方向の中央に対して軸方向の他方側(Z2方向側)に配置されている。また、複数の電磁鋼板123aは、互いに周方向において同位相で(周方向における向きが互いに同じで)、かつ、軸方向の表裏も同じ状態で(軸方向において互いに反転されないで)積層されている。
図7に示すように、貫通孔12bのうちの電磁鋼板122aの貫通孔122bには、ダレ部122c、せん断面122d、破断面122e、および、バリ部122f(図8参照)が、貫通孔122bの打ち抜き時に形成されている。なお、図7では、バリ部122fは、簡略化のため図示を省略している。
図8に示すように、ダレ部122cは、貫通孔122bの軸方向の端部122gに設けられている。端部122gは、貫通孔122bのZ1方向側の端部である。ダレ部122c、せん断面122d、破断面122e、および、バリ部122fの位置関係は、電磁鋼板120a(図4参照)と同じ位置関係となるので、詳細な説明は省略する。
電磁鋼板122aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の長さL3は、電磁鋼板122aの軸方向の厚みt3よりも小さい。その結果、電磁鋼板122aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の中央の位置P31は、電磁鋼板122aの軸方向の中央の位置P32よりも、ダレ部122c側(Z1方向側)に寄っている。
ここで、第1実施形態では、電磁鋼板122aの破断面122eが、電磁鋼板122aのせん断面122dに対して、ロータコア11の軸方向の中央(位置P1、図2参照)側(Z2方向側)に配置されている。すなわち、電磁鋼板122aの軸方向の中央の位置P32は、電磁鋼板122aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の中央の位置P31に対して、ロータコア11の軸方向の中央の位置P1側(Z2方向側)に配置されている。これにより、電磁鋼板122aには、ロータコア11の軸方向の中央の位置P1側(Z2方向側)に傾斜する方向に回転モーメントがかかる。
図9に示すように、貫通孔12bのうちの電磁鋼板123aの貫通孔123bには、ダレ部123c、せん断面123d、破断面123e、および、バリ部123f(図10参照)が、貫通孔123bの打ち抜き時に形成されている。なお、図9では、バリ部123fは、簡略化のため図示を省略している。
図10に示すように、ダレ部123cは、貫通孔123bの軸方向の端部123gに設けられている。端部123gは、貫通孔123bのZ2方向側の端部である。ダレ部123c、せん断面123d、破断面123e、および、バリ部123fの位置関係は、電磁鋼板121a(図6参照)と同じ位置関係となるので、詳細な説明は省略する。
電磁鋼板123aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の長さL4は、電磁鋼板123aの軸方向の厚みt4よりも小さい。その結果、電磁鋼板123aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の中央の位置P41は、電磁鋼板123aの軸方向の中央の位置P42よりも、ダレ部123c側(Z2方向側)に寄っている。
ここで、第1実施形態では、電磁鋼板123aの破断面123eが、電磁鋼板123aのせん断面123dに対して、ロータコア11の軸方向の中央(位置P1、図2参照)側(Z1方向側)に配置されている。すなわち、電磁鋼板123aの軸方向の中央の位置P42は、電磁鋼板123aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の中央の位置P41に対して、ロータコア11の軸方向の中央の位置P1側(Z1方向側)に配置されている。これにより、電磁鋼板123aには、ロータコア11の軸方向の中央の位置P1側(Z1方向側)に傾斜する方向に回転モーメントがかかる。
また、第1実施形態では、電磁鋼板ブロック122を構成する電磁鋼板122aの積厚t13(図2参照)は、電磁鋼板ブロック123を構成する電磁鋼板123aの積厚t14(図2参照)と略等しい。具体的には、電磁鋼板ブロック122を構成する電磁鋼板122aの枚数と、電磁鋼板ブロック123を構成する電磁鋼板123aの枚数とは略等しい。詳細には、電磁鋼板ブロック122を構成する電磁鋼板122aの枚数、および、電磁鋼板ブロック123を構成する電磁鋼板123aの枚数は、ロータコア11の全ての電磁鋼板12の枚数の約1/4である。すなわち、電磁鋼板ブロック120の電磁鋼板120aの積厚t11(枚数)、電磁鋼板ブロック121の電磁鋼板121aの積厚t12(枚数)、電磁鋼板ブロック122の電磁鋼板122aの積厚t13(枚数)、および、電磁鋼板ブロック123の電磁鋼板123aの積厚t14(枚数)は、互いに略等しい。その結果、電磁鋼板ブロック120による回転モーメントと電磁鋼板ブロック122による回転モーメントとの合計、および、電磁鋼板ブロック121による回転モーメントと電磁鋼板ブロック123による回転モーメントとの合計は、略等しい。
また、図2に示すように、電磁鋼板ブロック122と電磁鋼板ブロック123との間には、積み厚調整用の電磁鋼板124(12)が設けられている。これにより、ロータコア11の軸方向の長さL10が、所定の長さ(たとえばステータコア21(永久磁石40)の軸方向の長さL20)と略等しくなるように調整されている。
なお、電磁鋼板124は、電磁鋼板122aと、周方向において同位相で(周方向における向きが互いに同じで)、かつ、軸方向の表裏も同じ状態で(軸方向において互いに反転されないで)配置されている。すなわち、電磁鋼板124には、電磁鋼板ブロック122と同様に軸方向の他方側(Z2方向側)に傾斜する方向に、回転モーメントがかかっている。なお、各電磁鋼板ブロック(120~123)は、積み厚調整用の電磁鋼板124の回転モーメントのみに起因してロータコア11の傾きに影響が及ぼされない程度の枚数の電磁鋼板12により構成されている。また、積み厚調整用の電磁鋼板124の配置場所は、上記に限られない。
また、図11に示すように、複数の電磁鋼板12の各々の貫通孔12bには、軸方向に延びる溝部50が設けられている。溝部50は、軸方向から見て、径方向外側に窪むように設けられている。溝部50は、ダレ部(120c、121c、122c、123c)からバリ部(120f、121f、122f、123f)まで延びるように設けられている。なお、図11では、溝部50の一例として、電磁鋼板120aの貫通孔120bに設けられた溝部51を図示している。また、図11では、貫通孔12a、ダレ部120c、せん断面120d、破断面120e、および、バリ部120fの各々は、簡略化のため図示を省略している。
ここで、第1実施形態では、図12に示すように、電磁鋼板ブロック120および電磁鋼板ブロック121は、互いに反転(および転積)されていることによって、電磁鋼板120aの溝部51および電磁鋼板121aの溝部52(50)の周方向における位置が互いに異なるように設けられている。具体的には、溝部51と溝部52とは、回転軸線O(図1参照)を中心に、周方向における位置(位相)が90度異なるように配置されている。なお、電磁鋼板ブロック120の複数の電磁鋼板120aの溝部51同士は、周方向において互いに同じ位置に配置されている。また、電磁鋼板ブロック121の複数の電磁鋼板121aの溝部52同士は、周方向において互いに同じ位置に配置されている。
また、電磁鋼板ブロック120および電磁鋼板ブロック122は、互いに転積されていることによって、電磁鋼板120aの溝部51および電磁鋼板122aの溝部53(50)の周方向における位置が互いに異なるように設けられている。具体的には、溝部51と溝部53とは、回転軸線O(図1参照)を中心に、互いに対向するように設けられている。なお、電磁鋼板ブロック122の複数の電磁鋼板122aの溝部53同士は、周方向において互いに同じ位置に配置されている。
また、電磁鋼板ブロック122および電磁鋼板ブロック123は、互いに反転(および転積)されていることによって、電磁鋼板122aの溝部53および電磁鋼板123aの溝部54(50)の周方向における位置が互いに異なるように設けられている。具体的には、溝部53と溝部54とは、回転軸線O(図1参照)を中心に、周方向における位置(位相)が90度異なるように配置されている。なお、電磁鋼板ブロック123の複数の電磁鋼板123aの溝部54同士は、周方向において互いに同じ位置に配置されている。
なお、電磁鋼板ブロック121および電磁鋼板ブロック123は、互いに転積されていることによって、電磁鋼板121aの溝部52および電磁鋼板123aの溝部54の周方向における位置が互いに異なるように設けられている。具体的には、溝部52と溝部54とは、回転軸線Oを中心に、互いに対向するように設けられている。
(ロータの製造方法)
次に、図2、図3、図5、図13、および、図14を参照して、ロータ10の製造方法について説明する。
図13に示すように、まず、ステップS1において、貫通孔12bの打ち抜き工程が行われる。
具体的には、図14に示すように、ロータコア11(図1参照)を構成する積層された複数の電磁鋼板12に対して、電磁鋼板12の積層方向に沿ってパンチ部材60を移動させる。この際、積層された複数の電磁鋼板12は、円環形状を有するダイス61に載置されている。パンチ部材60は、ダイス61の孔部61aに挿入されるように移動される。この工程により、複数の電磁鋼板12の中央部分がパンチ部材60により打ち抜かれることによって、軸方向に延びるシャフト13が挿入される貫通孔12bが複数の電磁鋼板12に形成される。なお、溝部50(図11参照)は、貫通孔12bの打ち抜きと同時にパンチ部材60により形成されてもよいし、貫通孔12bの形成後にパンチ部材60とは別個の治具等により形成されてもよい。
次に、図13に示すように、ステップS2において、ロータコア11を形成する工程が行われる。
具体的には、図3に示すように、複数の電磁鋼板12のうちの少なくとも軸方向の一方側(Z1方向側)の端部に、貫通孔120b(12b)に形成されている破断面120eが、貫通孔120b(12b)に形成されているせん断面120dに対して、ロータコア11の軸方向の中央側に設けられる電磁鋼板120aを配置する。
また、図5に示すように、複数の電磁鋼板12のうちの少なくとも軸方向の他方側(Z2方向側)の端部に、電磁鋼板120aとは反転されるように設けられているとともに、貫通孔121b(12b)に形成されている破断面121eが、貫通孔121b(12b)に形成されているせん断面121dに対して、ロータコア11の軸方向の中央側に設けられる電磁鋼板121aを配置する。
詳細には、図2に示すように、ステップS1において形成された複数の電磁鋼板12を、電磁鋼板ブロック120、電磁鋼板ブロック121、電磁鋼板ブロック122、電磁鋼板ブロック123、および、積み厚調整用の電磁鋼板124に分ける。そして、軸方向の一方側(Z1方向側)の端部に電磁鋼板ブロック120を配置するとともに、軸方向の他方側(Z2方向側)の端部に電磁鋼板ブロック121を配置することにより、ロータコア11を形成する。具体的には、軸方向の他方側(Z2方向側)から、電磁鋼板ブロック121、電磁鋼板ブロック123、電磁鋼板124、電磁鋼板ブロック122、電磁鋼板ブロック120の順に、互いを反転または転積させながら積層することによりロータコア11を形成する。
次に、図13に示すように、ステップS3において、シャフト13および永久磁石40の各々を、ステップS2において形成(積層)されたロータコア11に挿入する。具体的には、シャフト13が貫通孔12bに挿入されるように、シャフト13を軸方向(Z方向)に移動させる。この際、予め積層されたロータコア11にシャフト13を挿入することによって、シャフト13の挿入作業は1回のみで完了させることが可能である。
また、永久磁石40を軸方向(Z方向)に移動させることによって、永久磁石40を複数の電磁鋼板12の貫通孔12aに挿入する。永久磁石40の挿入後に、電磁鋼板12の溝部50(51~54)(図12参照)の周方向の位置を確認し、ロータコア11が所定の積層状態になっていることを確認する。
そして、ステップS4において、シャフト13が貫通孔12bに挿入された状態で、焼き嵌めによりロータコア11をシャフト13に固定する。この際、電磁鋼板ブロック120および電磁鋼板ブロック122には、シャフト13との接触部分からの応力に起因して、Z2方向側に傾く方向に回転モーメントがかかる。一方、電磁鋼板ブロック121および電磁鋼板ブロック123には、シャフト13との接触部分からの応力に起因して、Z1方向側に傾く方向に回転モーメントがかかる。すなわち、電磁鋼板ブロック120および電磁鋼板ブロック122の回転モーメントと、電磁鋼板ブロック121および電磁鋼板ブロック123の回転モーメントとは、互いに反発し合う方向にかかる。
[第2実施形態]
次に、図14~図19を参照して、第2実施形態によるロータ110について説明する。第2実施形態のロータ110では、電磁鋼板ブロック120と電磁鋼板ブロック121との間に、互いに反発する電磁鋼板ブロック122と電磁鋼板ブロック123とが設けられている上記第1実施形態と異なり、電磁鋼板ブロック120と電磁鋼板ブロック121との間に、互いに反発しない電磁鋼板ブロック222と電磁鋼板ブロック223とが設けられている。なお、上記第1実施形態と同様の構成は、第1実施形態と同じ符号を付して図示するとともに説明を省略する。
(ロータの構造)
図15~図19を参照して、第2実施形態によるロータ110の構造について説明する。
図15に示すように、ロータ110は、ロータコア111を備える。ロータコア111は、電磁鋼板ブロック120、電磁鋼板ブロック121、電磁鋼板ブロック222、および、電磁鋼板ブロック223が、互いに軸方向に積層されるように構成されている。なお、電磁鋼板ブロック222および電磁鋼板ブロック223は、それぞれ、特許請求の範囲の「第5電磁鋼板ブロック」および「第6電磁鋼板ブロック」の一例である。
図16に示すように、電磁鋼板ブロック222は、複数の電磁鋼板222aにより構成されている。電磁鋼板ブロック222は、電磁鋼板ブロック120と電磁鋼板ブロック121との間で、かつ、ロータコア111の軸方向の中央に対して軸方向の一方側(Z1方向側)に設けられている。なお、電磁鋼板ブロック222は、電磁鋼板ブロック120に対して反転されるように設けられている。
貫通孔12bのうちの電磁鋼板222aの貫通孔222bには、ダレ部222c、せん断面222d、破断面222e、および、バリ部222f(図17参照)が、貫通孔222bの打ち抜き時に形成されている。なお、図16では、バリ部222fは、簡略化のため図示を省略している。
図17に示すように、ダレ部222cは、貫通孔222bの軸方向の端部222gに設けられている。端部222gは、貫通孔222bのZ2方向側の端部である。ダレ部222c、せん断面222d、破断面222e、および、バリ部222fの位置関係は、電磁鋼板121a(図6参照)と同じ位置関係となるので、詳細な説明は省略する。
電磁鋼板222aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の長さL5は、電磁鋼板222aの軸方向の厚みt5よりも小さい。その結果、電磁鋼板222aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の中央の位置P51は、電磁鋼板222aの軸方向の中央の位置P52よりも、ダレ部222c側(Z2方向側)に寄っている。
ここで、第2実施形態では、電磁鋼板222aのせん断面222dが、電磁鋼板222aの破断面222eに対して、ロータコア111の軸方向の中央(位置P2、図15参照)側(Z2方向側)に配置されている。すなわち、電磁鋼板222aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の中央の位置P51は、電磁鋼板222aの軸方向の中央の位置52に対して、ロータコア111の軸方向の中央の位置P2側(Z2方向側)に配置されている。これにより、電磁鋼板222aには、ロータコア111の軸方向の中央の位置P2側(Z2方向側)とは反対側(Z1方向側)に傾斜する方向に回転モーメントがかかる。すなわち、電磁鋼板ブロック120および電磁鋼板ブロック222には、互いに反発する方向に回転モーメントがかかる。
図18に示すように、電磁鋼板ブロック223は、複数の電磁鋼板223aにより構成されている。電磁鋼板ブロック223は、電磁鋼板ブロック120と電磁鋼板ブロック121との間で、かつ、ロータコア111の軸方向の中央に対して軸方向の他方側(Z2方向側)に設けられている。なお、電磁鋼板ブロック223は、電磁鋼板ブロック121に対して反転されるように設けられている。
貫通孔12bのうちの電磁鋼板223aの貫通孔223bには、ダレ部223c、せん断面223d、破断面223e、および、バリ部223f(図19参照)が、貫通孔223bの打ち抜き時に形成されている。なお、図18では、バリ部223fは、簡略化のため図示を省略している。
図19に示すように、ダレ部223cは、貫通孔223bの軸方向の端部223gに設けられている。端部223gは、貫通孔223bのZ1方向側の端部である。ダレ部223c、せん断面223d、破断面223e、および、バリ部223fの位置関係は、電磁鋼板120a(図4参照)と同じ位置関係となるので、詳細な説明は省略する。
電磁鋼板223aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の長さL6は、電磁鋼板223aの軸方向の厚みt6よりも小さい。その結果、電磁鋼板223aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の中央の位置P61は、電磁鋼板223aの軸方向の中央の位置P62よりも、ダレ部223c側(Z1方向側)に寄っている。
ここで、第2実施形態では、電磁鋼板223aのせん断面223dが、電磁鋼板223aの破断面223eに対して、ロータコア111の軸方向の中央(位置P2、図15参照)側(Z1方向側)に配置されている。すなわち、電磁鋼板223aとシャフト13とが接触する部分の軸方向の中央の位置P61は、電磁鋼板223aの軸方向の中央の位置P62に対して、ロータコア111の軸方向の中央の位置P2側(Z1方向側)に配置されている。これにより、電磁鋼板223aには、ロータコア111の軸方向の中央の位置P2側(Z1方向側)とは反対側(Z2方向側)に傾斜する方向に回転モーメントがかかる。すなわち、電磁鋼板ブロック121と電磁鋼板ブロック223とは、互いに反発する方向に回転モーメントがかかる。
また、第2実施形態では、電磁鋼板ブロック120を構成する電磁鋼板120aの積厚t11と、電磁鋼板ブロック222を構成する電磁鋼板222aの積厚t15とは略等しい。また、電磁鋼板ブロック121を構成する電磁鋼板121aの積厚t12と、電磁鋼板ブロック223を構成する電磁鋼板223aの積厚t16とは略等しい。具体的には、電磁鋼板ブロック120を構成する電磁鋼板120aの枚数と、電磁鋼板ブロック222を構成する電磁鋼板222aの枚数とは略等しい。また、電磁鋼板ブロック121を構成する電磁鋼板121aの枚数と、電磁鋼板ブロック223を構成する電磁鋼板223aの枚数とは略等しい。詳細には、各電磁鋼板ブロック(120、121、222、223)の電磁鋼板12の枚数は、ロータコア111の全ての電磁鋼板12の枚数の約1/4である。その結果、電磁鋼板ブロック120による回転モーメントと電磁鋼板ブロック222による回転モーメントとは略等しく、電磁鋼板ブロック121による回転モーメントと電磁鋼板ブロック223による回転モーメントとは略等しい。
また、図15に示すように、電磁鋼板ブロック222と電磁鋼板ブロック223との間には、積み厚調整用の電磁鋼板224(12)が設けられている。これにより、ロータコア111の軸方向の長さL110が、所定の長さ(たとえばステータコア21(永久磁石40)の軸方向の長さL20)と略等しくなるように調整されている。
なお、電磁鋼板224は、電磁鋼板222aと、周方向において同位相で(周方向における向きが互いに同じで)、かつ、軸方向の表裏も同じ状態で(軸方向において互いに反転されないで)配置されている。なお、積み厚調整用の電磁鋼板224の配置場所は、上記に限られない。
(ロータの製造方法)
次に、図15および図20を参照して、ロータ110の製造方法について説明する。
図20に示すように、ステップS12において、ロータコア111を形成する工程が行われる。
具体的には、図15に示すように、ステップS1において形成された複数の電磁鋼板12を、電磁鋼板ブロック120、電磁鋼板ブロック121、電磁鋼板ブロック222、電磁鋼板ブロック223、および、積み厚調整用の電磁鋼板224に分ける。そして、軸方向の他方側(Z2方向側)から、電磁鋼板ブロック121、電磁鋼板ブロック223、電磁鋼板224、電磁鋼板ブロック222、電磁鋼板ブロック120の順に、互いを反転または転積させながら積層することによりロータコア111を形成する。
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
[第1および第2実施形態の効果]
第1および第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
(ロータの効果)
第1および第2実施形態では、上記のように、ロータ(10、110)は、軸方向に延びるシャフト(13)を備える。また、ロータ(10、110)は、シャフト(13)が挿入される貫通孔(12b)を含む複数の電磁鋼板(12)が積層されているとともに、焼き嵌めによりシャフト(13)に固定されているロータコア(11、111)を備える。また、複数の電磁鋼板(12)は、少なくとも軸方向の一方側の端部に配置され、貫通孔(120b(12b))の打ち抜き時に貫通孔(120b(12b))に形成されている破断面(120e)が、貫通孔(120b(12b))の打ち抜き時に貫通孔(120b(12b))に形成されているせん断面(120d)に対して、ロータコア(11、111)の軸方向の中央側に配置されている第1電磁鋼板(120a)を含む。また、複数の電磁鋼板(12)は、少なくとも軸方向の他方側の端部に配置され、貫通孔(121b(12b))の打ち抜き時に貫通孔(121b(12b))に形成されている破断面(121e)が、貫通孔(121b(12b))の打ち抜き時に貫通孔(121b(12b))に形成されているせん断面(121d)に対して、ロータコア(11、111)の軸方向の中央側に配置されている第2電磁鋼板(121a)を含む。
ここで、打ち抜き時に貫通孔(120b、121b)の端部(120g、121g)(せん断面(120d、121d)に対して破断面(120e、121e)とは反対側の端部)には、湾曲形状を有する滑らかなダレ部(120c、121c)が形成される。また、電磁鋼板(12)とシャフト(13)とは、一般的に、シャフト(13)側に最も近接するせん断面(120d、121d)を中心に接触している。ここで、破断面(120e、121e)は、一般的に、ダレ部(120c、121c)よりも軸方向の長さが大きいため、破断面(120e、121e)のうちの少なくともせん断面(120d、121d)とは反対側に設けられる、シャフト(13)との非接触部分の軸方向の長さが比較的大きくなる場合がある。この場合、電磁鋼板(12)とシャフト(13)とが接触している部分の軸方向の中央が、電磁鋼板(12)の軸方向の中央に対してダレ部(120c、121c)側に寄る。その結果、電磁鋼板(12)は、焼き嵌めを行った際にシャフト(13)から受ける力に基づくモーメントにより、電磁鋼板(12)の中央に対してダレ部(120c、121c)側ではなく破断面(120e、121e)側に傾斜しようとする。これにより、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)は、互いに反発し合う方向に傾斜しようとするので、焼き嵌めにより第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々にかかる力を互いに相殺することができるとともにロータコア(11、111)が軸方向の一方に偏って傾斜するのを防止することができる。すなわち、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々の外周縁同士を互いに近づけるように第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々を予め傾斜させておかなくとも、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)を互いに反転させることにより回転モーメントがかかる方向を調整するだけで、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)を互いに反発させることができる。また、この場合、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々の外周縁同士を互いに近づけるように第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々を予め傾斜させる必要がないことによって、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々を予め傾斜させた際に互いの内周縁同士の間において軸方向に比較的長い隙間が形成されるのを防止することができる。これらの結果、ロータコア(11、111)が軸方向の一方に偏って傾斜するのを防止しながら、ロータコア(11、111)の軸方向の長さが大きくなるのを防止することができる。
また、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々が予め傾斜していない状態で互いを反発させながら焼き嵌めを行うことができるので、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々が傾斜するのを極力防止しながら焼き嵌めを行うことができる。その結果、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々とシャフト(13)との嵌め合い力が低下するのを防止することができるとともに、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々をシャフト(13)に対してより確実に固定することができる。
また、ロータコア(11、111)が軸方向の一方に偏って傾斜するのを防止することによって、ロータコア(11、111)がステータコア(21)に対して軸方向にはみ出すのを防止することができるので、ロータコア(11、111)とステータコア(21)との間の磁束が損失するのを極力防止することができる。
また、第1および第2実施形態では、上記のように、ロータコア(11、111)の軸方向の一方側の端部には、複数の第1電磁鋼板(120a)により構成されている第1電磁鋼板ブロック(120)が配置されている。また、ロータコア(11、111)の軸方向の他方側の端部には、複数の第2電磁鋼板(121a)により構成されている第2電磁鋼板ブロック(121)が配置されている。このように構成すれば、複数の電磁鋼板(12)により構成されるブロック(120、121)同士の回転モーメントを互いに反発し合う方向にかけることができる。その結果、第1電磁鋼板ブロック(120)の回転モーメントと、第2電磁鋼板ブロック(121)の回転モーメントとを打ち消し合わせることができる。
また、第1および第2実施形態では、上記のように、第1電磁鋼板ブロック(120)を構成する第1電磁鋼板(120a)の積厚(t11)は、第2電磁鋼板ブロック(121)を構成する第2電磁鋼板(121a)の積厚(t12)と略等しい。このように構成すれば、第1電磁鋼板ブロック(120)の回転モーメントと第2電磁鋼板ブロック(121)の回転モーメントとを互いに略等しい大きさにすることができる。その結果、ロータコア(11、111)が、軸方向の一方に偏って傾斜するのをより確実に防止することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第1電磁鋼板ブロック(120)と第2電磁鋼板ブロック(121)との間で、かつ、ロータコア(11)の軸方向の中央に対して軸方向の一方側には、第1電磁鋼板ブロック(120)とは転積されるように設けられ、破断面(122e)がせん断面(122d)に対してロータコア(11)の軸方向の中央側に配置されている複数の電磁鋼板(12、122a)により構成されている第3電磁鋼板ブロック(122)が配置されている。また、第1電磁鋼板ブロック(120)と第2電磁鋼板ブロック(121)との間で、かつ、ロータコア(11)の軸方向の中央に対して軸方向の他方側には、第3電磁鋼板ブロック(122)とは反転されるとともに第2電磁鋼板ブロック(121)とは転積されるように設けられ、破断面(123e)がせん断面(123d)に対してロータコア(11)の軸方向の中央側に配置されている複数の電磁鋼板(12、123a)により構成されている第4電磁鋼板ブロック(123)が配置されている。このように構成すれば、第3電磁鋼板ブロック(122)の回転モーメントと、第4電磁鋼板ブロック(123)の回転モーメントとを打ち消し合わせることができる。その結果、第3電磁鋼板ブロック(122)および第4電磁鋼板ブロック(123)が設けられている場合でも、ロータコアが軸方向の一方に偏って傾斜するのを防止することができる。第3電磁鋼板ブロック(122)および第4電磁鋼板ブロック(123)に予め傾斜をつけておかなくても、回転モーメントを打ち消し合わせることができるので、第3電磁鋼板ブロック(122)と第4電磁鋼板ブロック(123)との間に比較的大きい隙間が生じるのを防止することができる。これにより、第3電磁鋼板ブロック(122)および第4電磁鋼板ブロック(123)が設けられている場合でも、ロータコア(11)が軸方向の一方に偏って傾斜するのを防止しながら、ロータコア(11)の軸方向の長さが大きくなるのを防止することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第3電磁鋼板ブロック(122)を構成する電磁鋼板(12)の積厚(t13)と、第4電磁鋼板ブロック(123)を構成する電磁鋼板(12)の積厚(t14)とは略等しい。このように構成すれば、第3電磁鋼板ブロック(122)の回転モーメントと第4電磁鋼板ブロック(123)の回転モーメントとを互いに略等しい大きさにすることができる。その結果、第3電磁鋼板ブロック(122)および第4電磁鋼板ブロック(123)が設けられている場合に、軸方向の一方に偏って傾斜するのをより確実に防止することができる。
第2実施形態では、上記のように、第1電磁鋼板ブロック(120)と第2電磁鋼板ブロック(121)との間で、かつ、ロータコア(111)の軸方向の中央に対して軸方向の一方側には、せん断面(222d)が破断面(222e)に対してロータコア(111)の軸方向の中央側に配置されている複数の電磁鋼板(222a)により構成されている第5電磁鋼板ブロック(222)が配置されている。また、第1電磁鋼板ブロック(120)と第2電磁鋼板ブロック(121)との間で、かつ、ロータコア(111)の軸方向の中央に対して軸方向の一方側には、せん断面(223d)が破断面(223e)に対してロータコア(111)の軸方向の中央側に配置されている複数の電磁鋼板(223a)により構成されている第6電磁鋼板ブロック(223)が配置されている。このように構成すれば、第1電磁鋼板ブロック(120)の回転モーメントと、第5電磁鋼板ブロック(222)の回転モーメントとを打ち消し合わせることができる。また、第2電磁鋼板ブロック(121)の回転モーメントと、第6電磁鋼板ブロック(223)の回転モーメントとを打ち消し合わせることができる。その結果、軸方向の一方側および他方側の各々において、ロータコア(111)が軸方向の一方に偏って傾斜されるのを防止することができるので、ロータコア(111)の全体が軸方向の一方に偏って傾斜されるのを防止することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、第1電磁鋼板ブロック(120)を構成する第1電磁鋼板(120a)の積厚(t11)と、第5電磁鋼板ブロック(222)を構成する電磁鋼板222aの積厚(t15)とは略等しい。また、第2電磁鋼板ブロック(121)を構成する第2電磁鋼板(121a)の積厚(t12)と、第6電磁鋼板ブロック(223)を構成する電磁鋼板223aの積厚(t16)とは略等しい。このように構成すれば、第1電磁鋼板ブロック(120)の回転モーメントと第5電磁鋼板ブロック(222)の回転モーメントとを互いに略等しい大きさにすることができる。また、第2電磁鋼板ブロック(121)の回転モーメントと第6電磁鋼板ブロック(223)の回転モーメントとを互いに略等しい大きさにすることができる。その結果、第5電磁鋼板ブロック(222)および第6電磁鋼板ブロック(223)が設けられている場合に、ロータコア(111)が軸方向の一方に偏って傾斜されるのをより確実に防止することができる。
(ロータの製造方法の効果)
また、第1および第2実施形態では、上記のように、ロータ(10、110)の製造方法は、ロータコア(11、111)を構成する複数の電磁鋼板(12)を打ち抜くことにより、軸方向に延びるシャフト(13)が挿入される貫通孔(12b)を複数の電磁鋼板(12)の各々に形成する工程を備える。また、ロータ(10、110)の製造方法は、電磁鋼板(12)を積層することによりロータコア(11、111)を形成する工程を備える。ロータコア(11、111)を形成する工程では、複数の電磁鋼板(12)のうちの少なくとも軸方向の一方側の端部に、貫通孔(120b(12b))に形成されている破断面(120e)が、貫通孔(120b(12b))に形成されているせん断面(120d)に対して、ロータコア(11、111)の軸方向の中央側に設けられる第1電磁鋼板(120a)が配置される。また、ロータコア(11、111)を形成する工程では、複数の電磁鋼板(12)のうちの少なくとも軸方向の他方側の端部に、貫通孔(121b(12b))に形成されている破断面(121e)が、貫通孔(121b(12b))に形成されているせん断面(121d)に対して、ロータコア(11、111)の軸方向の中央側に設けられる第2電磁鋼板(121a)が配置される。また、ロータ(10、110)の製造方法は、シャフト(13)が貫通孔(12b)に挿入されるように、シャフト(13)を軸方向に移動させる工程を備える。また、ロータ(10、110)の製造方法は、シャフト(13)が貫通孔(12b)に挿入された状態で、焼き嵌めによりロータコア(11、111)をシャフト(13)に固定する工程を備える。
これにより、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々の外周縁同士を互いに近づけるように第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々を予め傾斜させておかなくとも、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)を互いに反転させることにより回転モーメントがかかる方向を調整するだけで、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)を互いに反発させることができる。また、この場合、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々の外周縁同士を互いに近づけるように第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々を予め傾斜させる必要がないことによって、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々を予め傾斜させた際に互いの内周縁同士の間において軸方向に比較的長い隙間が形成されるのを防止することができる。これらの結果、ロータコア(11、111)が軸方向の一方に偏って傾斜するのを防止しながら、ロータコア(11、111)の軸方向の長さが大きくなるのを防止することが可能なロータの製造方法を提供することができる。
また、第1電磁鋼板(120a)および第2電磁鋼板(121a)の各々を予め傾斜させておく場合と異なり、予め傾斜を与えるための装置および作業が不要であるので、ロータ(10、110)の製造に要する装置の数を低減することができるとともにロータ(10、110)の製造における作業工程を簡略化することができる。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1および第2実施形態では、ロータコア11(111)が、複数の電磁鋼板ブロック(120~123、222、223)により構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、互いに反転された電磁鋼板12が交互に積層されることによりロータコアが形成されていてもよい。また、第1実施形態においては、電磁鋼板ブロック120(第1電磁鋼板ブロック)および電磁鋼板ブロック121(第2電磁鋼板ブロック)が、単一の電磁鋼板(120a、121a)(第1電磁鋼板、第2電磁鋼板)により構成されていてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、ロータコア11(111)が、4つの電磁鋼板ブロック(120~123、222、223)により構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ロータコアが、4つ以外の偶数個(たとえば2つまたは6つ)の電磁鋼板ブロックにより構成されていてもよい。
また、上記第1実施形態では、電磁鋼板120a(第1電磁鋼板)の積厚t11(枚数)と、電磁鋼板121a(第2電磁鋼板)の積厚t12(枚数)とが略等しい例を示したが、本発明はこれに限られない。軸方向一方側からの回転モーメントと、軸方向他方側からの回転モーメントとが釣り合っていれば、電磁鋼板120a(第1電磁鋼板)の積厚t11(枚数)と、電磁鋼板121a(第2電磁鋼板)の積厚t12(枚数)とは略等しくなくてもよい。また、同様に、電磁鋼板122aの積厚t13(枚数)と、電磁鋼板123aの積厚t14(枚数)とが略等しくなくてもよい。
また、上記第1実施形態では、電磁鋼板ブロック122(第3電磁鋼板ブロック)および電磁鋼板ブロック123(第4電磁鋼板ブロック)が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。電磁鋼板ブロック122(第3電磁鋼板ブロック)および電磁鋼板ブロック123(第4電磁鋼板ブロック)が設けられていなくてもよい。また、第2実施形態において、電磁鋼板ブロック222(第5電磁鋼板ブロック)および電磁鋼板ブロック223(第6電磁鋼板ブロック)が設けられていなくてもよい。
また、上記第1実施形態では、貫通孔12bに溝部50が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。視認可能な目印であれば溝部50以外(たとえば凹部)が貫通孔12bに設けられていてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、焼き嵌めによりロータコア11(111)をシャフト13に固定する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、冷やし嵌めによりロータコア11(111)をシャフト13に固定してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、シャフト13を軸方向に移動させることにより、シャフト13をロータコア11(111)に挿入する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ロータコア11(111)を軸方向に移動させることにより、シャフト13をロータコア11(111)に挿入してもよい。