JP7163639B2 - 鋼棒又は鋼製品と、それらの製造方法 - Google Patents

鋼棒又は鋼製品と、それらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐遅れ破壊特性に優れた鋼棒、又は、鋼棒を素材とする鋼製品と、それらの製造方法に関する。
例えば、使用時に高い張力が掛る車両懸架装置におけるトーションバー等の鋼棒を素材とする鋼製品、又は、PCパイルのような補強鉄筋が内包された構造物の該補強鉄筋の一部には、引張強度の70%程度の高い引張応力が付与されるため、耐遅れ破壊特性に優れた鋼棒が使用される。このような鋼棒とするために、Crの他、MoやV、Ti、又は、Nbといった高価な合金元素が添加されている。
特に、PCパイル等においては、上述した耐遅れ破壊特性に優れた鋼棒を引張応力が付与される部分の鋼材として採用し、その他の引張応力が付与されない部分の鉄筋・鋼棒(非緊張材)には、通常の鋼材が使用されていた。
しかし、近年では、PCパイルに曲げや、撓み等の変形応力が付与された場合、該応力が原因となって遅れ破壊が生じる危険性が指摘されており、PCパイル等の安全性を確保するために、非緊張材の鉄筋、鋼棒についても、一定程度の耐遅れ破壊特性が求められるようになっている。
遅れ破壊は、鋼材中に含有された原子状水素が、鋼材に掛る応力等によって、主として結晶粒界に集合して粒界破壊を生じることが原因と考えられている。このため、非緊張材の鉄筋・鋼棒や車両懸架装置のトーションバー等についても、低コストで耐遅れ破壊特性に優れた鋼素材が求められるようになってきている。
特許文献1には、Cを0.15~0.50重量%と、SiとMnを最大2.0%以下含有し、焼戻しマルテンサイト組織からなり、旧オーステナイト粒のアスペクト比が2以上、粒界炭化物のサイズが0.2μm以下であって、強度が145kgf/mm2以上であることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼棒とその製造方法が記載されている。
特許文献1の発明は、低温領域で30%以上の圧下率で圧延加工することで、オーステナイトの伸長粒を維持しつつマルテンサイト変態をさせて、高い限界拡散性水素量と高強度を維持するものであるが、低温度領域で大圧下率を達成するためには、大型の圧延設備が必要となり、設備コストが高騰する欠点があった。
また、特許文献2には、質量%で、C:0.05~0.20%、Si:1.0~3.5%、Mn:4.5~5.5%、Al:0.001~0.080%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、N:0.010%以下である高硬度鋼であって、ミクロ組織が平均結晶粒径2.6μm以下の超微細マルテンサイト組織であり、前記マルテンサイト組織のビッカース硬度が490以上である高硬度鋼が記載されている。
特許文献2の発明は、1200℃に均一に加熱後、600~400℃の温度域に冷却し、その温度域で一回鍛造により塑性相当歪1.1以上の加工を施した後、室温まで空冷するというもので、鍛造加工を必要とし、圧延加工による鋼棒の製造に適用できないことは明らかである。
特許第3153072号公報 特許第5896458号公報
本発明は、このような実情を鑑み、高強度であるとともに、加工性や靱性を備え、かつ、高価な添加元素に頼らずに、コストパフォーマンスに優れた高強度鋼棒や鋼製品と、それらの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、高強度鋼材の遅れ破壊現象をシミュレーションでき、遅れ破壊特性を破壊に要する水素量で評価する遅れ破壊試験法を既に開発している。この方法を用いた試験結果から、鋼棒の熱処理における焼戻しの際の加熱温度と保持温度、保持時間の制御により、遅れ破壊に要する水素量を増加できる、即ち、耐遅れ破壊特性を改善できるとの知見を得て、本発明を完成した。
この遅れ破壊試験方法は、図1に示す形状の環状ノッチをもつPC鋼棒からなる供試材に、定電流によって水素をチャージした後、大気中で、図2に示す、バランスウェイト2と支点3を有するカンチレバー式の試験機により、供試材1に引張強度の70%の定荷重引張応力を負荷し、破断に要する時間を計測するものである。
他方、これと同一形状の供試材に、同一条件で陰極チャージを行い、この供試材にチャージされた水素量をガスクロマトグラフ法により測定する。このとき、100℃/hの昇温速度で加熱して測定を行うが、水素の放出プロファイルには、図3に示すような2つのピークが認められる。このうち、低温側のピークは、室温で拡散し得る水素量を示すため、これを拡散性水素量と定義した。
こうして求めた破断時間と、そのときの拡散性水素量をグラフ化すると図4に示すような曲線を描く。この図から、試験開始から100時間経過後においても破断しない最大水素量Hcを求め、これを限界拡散性水素量と定義し、この値の大小で鋼材の耐遅れ破壊性を評価するものである。
この遅れ破壊試験方法によって、PC鋼棒での遅れ破壊クラックの発生と伝播現象を調査した結果、以下のことが判明した。
種々の成分のPC鋼棒について、焼入れ前の旧オーステナイト粒径と限界拡散性水素量との関係を計測したところ、図5に示すように、一般的な焼入れ焼戻しマルテンサイト組織における旧オーステナイト粒径が平均値で12~15μmの場合、限界拡散性水素量は0.20ppm程度であったのに対して、旧オーステナイト粒径を平均値で5μm以下に微細化すると、限界拡散性水素量は0.45ppm以上に増大し、耐遅れ破壊特性の向上が認められた。
次に、同様にして、引張強度の異なる種々のPC鋼棒について、限界拡散性水素量を測定したところ、図6に示すように、引張強度の上昇と共に、限界拡散性水素量は低下する傾向があり、同程度の引張強度の鋼棒であっても、塑性や組織に相違によって、限界拡散性水素量には違いが生じることも判明した。
本発明においては、PCパイルの非緊張材や、トーションバー等への適用と、コストパフォーマンスを勘案して、遅れ破壊現象に対して支配的な粒界破壊を防ぐという観点から、引張強度1300MPa超であって、旧オーステナイト粒径の平均値が5μm以下を達成できる組成・組織と、製造工程を限定したものであって、その要旨は以下のとおりである。
(1)成分組成が、質量%で、
C :0.12~0.35%、
Si:1.5~3.0%、
Mn:2.0~5.0%、
N :0.02%以下、
P :0.03%以下、
S :0.02%以下、
残部:Fe及び不純物であり、
棒鋼又は鋼製品の長尺方向と垂直な断面上において、組織が、面積率%で、マルテンサイト:90%以上、残部:ベイナイト、残留オーステナイト、パーライト、フェライトの1種又は2種以上であり、
上記断面上の任意の位置で測定した旧オーステナイト粒径が5μm以下であり、
棒鋼又は鋼製品の長尺方向の引張強度が1300MPa超である
ことを特徴とする鋼棒又は鋼製品。
(2)前記成分組成が、更に、質量%で、Cr:3.0%以下、及び、B:0.005%以下の1種又は2種を含むことを特徴とする前記(1)に記載の鋼棒又は鋼製品。
(3)前記成分組成が、更に、質量%で、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、及び、Mo:1.0%以下の1種又は2種以上を含むことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の鋼棒又は鋼製品。
(4)前記成分組成が、更に、質量%で、Al:0.2%以下、V:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Nb:0.2%以下、REM:0.02%以下の1種又は2種以上を含むことを特徴とする前記(1)~(3)のいずれかに記載の鋼棒又は鋼製品。
(5)前記(1)~(4)のいずれかに記載の成分組成の鋼素材を熱間圧延し、最終仕上げ圧延後、焼戻して、前記(1)~(4)のいずれかに記載の鋼棒又は鋼製品を製造する製造方法において、
最終仕上げ圧延温度が600℃以上、850℃以下で、圧下率が20%以上、30%以下であり、
最終仕上げ圧延終了後、10秒以内に、300℃まで冷却速度30℃/秒以上で冷却し、次いで、100℃以下まで冷却し、その後、
150℃以上、250℃以下で10秒以上保持して焼戻す
ことを特徴とする鋼棒又は鋼製品の製造方法。
本発明によれば、引張強度1300MPa以上で、加工性と靱性に優れた鋼棒や鋼製品とそれらの製造方法を、高価な添加元素に寄らずに、圧延加工により提供することができる。
鋼棒の遅れ破壊試験に用いる試験片の平面図である。 遅れ破壊試験装置の説明図である。 水素量分析における放出水素量のプロファイルを表す図である。 遅れ破壊と限界拡散性水素量の関係を示す図である。 旧オーステナイト粒径と限界拡散性水素量との関係を示す図である。 引張強度と限界拡散性水素量との関係を示す図である。
本発明について説明する。
<成分組成>
まず、成分組成について説明する。以下、成分組成に係る「%」は「質量%」を意味を意味する。
C:0.12%以上、0.35%以下
Cは、焼入れ・焼戻しにより、1300MPa以上の強度を得るために必要な元素であるが、0.35%超の含有では、靱性と耐遅れ破壊性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、0.35%を上限とした。強度を確保する点から0.12%以上添加するが、強度を高める点で、0.15%以上が好ましく、0.20%以上がより好ましい。
Si:1.5%以上、3.0%以下
Siは、鋼の脱酸及び強度の向上に寄与する元素である。添加効果を得るため、1.5%以上を添加するが、3.0%を超えると、靱性が著しく低下するので、上限は3.0%とした。
Mn:2.0%以上、5.0%以下
Mnは、鋼の脱酸と、冷却時のフェライト変態を抑制して、焼入れ性の向上に寄与する元素であり、添加効果を得るため、2.0%以上を添加するが、5.0%を超えると、耐遅れ破壊性が低下するので、上限を5.0%とした。
N:0.02%以下
Nは、鋼棒製造段階で不可避的に混入する元素であるが、脱酸剤としてAlを使用した時、Alと結合してAlNを微細に形成し、オーステナイト粒界移動抑制のピニング効果を担う元素である。Nが0.02%を超えると、鋼が脆化するので、上限を0.02%とした。
P:0.03%以下
Pは、不純物であり、粒界に偏析して鋼を脆化させるので、少ない方が好ましい元素である。Pが0.03%を超えると、耐遅れ破壊特性が低下するので、上限を0.03%とする。好ましくは0.015%以下である。下限は0%を含むが、技術的に0%とするのは難しく、実用上、0.001%が実質的な下限である。
S:0.02%以下
Sは、不純物であり、耐遅れ破壊特性に悪影響を与えるので、上限を0.02%とする。好ましくは0.015%以下である。下限は0%を含むが、技術的に0%とするのは難しく、実用上、0.001%が実質的な下限である。
残部:Fe及び不純物
成分組成の残部は、Fe及び不純物である。不純物は、鋼原料から及び/又は製鋼過程で混入する元素で、本発明の特性を阻害しない範囲で許容される。不純物とは、例えば、0.01%以下のPb、Bi、Te、Sn、W、Co、As、Mg、Zr、In、REMである。
本発明の鋼棒又は鋼製品は、更に、焼入れ性の向上を目的として、Crを3.0%以下、及び/又は、Bを0.005%以下含有することができる。また、主として耐食性の向上を目的として、Cu:2.0%以下、Ni2.0%以下、Mo:1.0%以下の1種又は2種以上を含有することができる。
更に、旧オーステナイト粒径を小さくするため、Al:0.2%以下、V:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Nb:0.2%以下、REM:0.02%以下の1種又は2種以上を含有することができる。
これらの元素のうち、前述したように、Alは、鋼中に含まれるNと優先的に結合して、旧オーステナイト粒界でピニング効果を発揮するAlNを形成する。V、Ti、及び、Nbは、Alと同様に、旧オーステナイト粒界でピニング効果を発揮する窒化物又は炭窒化物を形成する。REMは、酸化物を微細化して、ピニング効果を高める作用をなす。
これらの任意添加元素の上限は、夫々の元素が奏する効果とコストのバランスから規定され、上限値は、上限値を超えて添加しても、増加するコストに見合う効果が得られ難い値である。
<組織>
次に、棒鋼又は鋼製品の長尺方向と垂直な断面上の組織(以下、単に「組織」ということがある。)について説明する。組織に係る%は、「面積率」を意味する。
マルテンサイト:90%以上
本発明の鋼棒及び鋼製品において、棒鋼又は鋼製品の長尺方向において、引張強度1300MPa超を確保するため、マルテンサイトは90%以上とする。好ましくは93%以上である。
残部:ベイナイト、残留オーステナイト、パーライト、フェライトの1種又は2種以上
組織の残部は、マルテンサイト以外の組織であり、不可避的に生成する、ベイナイト、残留オーステナイト、パーライト、フェライトの1種又は2種以上である。
棒鋼又は鋼製品の長尺方向と垂直な断面上の組織は、棒鋼又は鋼製品の長尺方向と垂直な断面を観察できるように、棒鋼又は鋼製品を切り出し、その断面に鏡面研磨を施した後、組織分率(面積率)については、ナイタール溶液(硝酸3gをエタノール100mlで溶解し、必要に応じて、界面活性剤を加えた溶液)にて、5~30秒腐食し、水洗し、光学顕微鏡で観察する。
組織分率は、光学顕微鏡で撮影した組織写真において、ベイナイト、残留オーステナイト、パーライト、及び、フェライトをマーキングし、通常の画像解析装置を用いて組織面積を計測して算出する。
旧オーステナイト粒径:5μm以下
棒鋼又は鋼製品の長尺方向と垂直な断面上の旧オーステナイト粒径は、所要の加工性、靱性を維持し、優れた耐遅れ破壊特性を確保するため、5μm以下とした。好ましくは3μm以下である。
棒鋼又は鋼製品の長尺方向と垂直な断面上の旧オーステナイト粒径については、棒鋼又は鋼製品の長尺方向と垂直な断面を観察できるように、棒鋼又は鋼製品を切り出し、上記断面に鏡面研磨を施し、JIS G 0551(2013)に記載の腐食方法で組織を現出させ、光学顕微鏡にて観察して撮影し、上記JIS規格に記載の切断法にて求めることができる。
また、棒鋼又は鋼製品の長尺方向と垂直な断面上の旧オーステナイト粒径については、棒鋼又は鋼製品の長尺方向と垂直な断面を観察できるように、棒鋼又は鋼製品を切り出し、その断面に鏡面研磨を施した後、ピクリン酸とエタノールの混合溶液(アルコール100mlに対しピクリン酸4gを加えた溶液)に5分浸漬して、オーステナイト粒界を現出させ、その後、最表面を含むよう、光学顕微鏡で1000倍の写真を撮影し、画像解析装置を用いて、平均粒相当径として求めることができる。
<機械特性>
次に、機械特性について説明する。
引張強度:1300MPa超
本発明の鋼棒及び鋼製品において、鋼棒及び鋼製品の用途を拡大するため、棒鋼又は鋼製品の長尺方向の引張強度は1300MPa超とした。引張強度は、JIS Z 2241(2011)に記載の方法で測定することができる。
ほぼ円形断面の鋼棒の場合、鋼棒を引張試験可能な長さに切り出し、加工することなく、引張試験に供する試験片とし、長尺方向に引張応力をかけて測定する。加工された鋼製品の場合、切り出した鋼製品を、上記JIS規格に記載の比例試験片に加工し、鋼製品の長尺方向に引張応力をかけて測定する。
<製造方法>
次に、製造方法について説明する。基本的には、上述した成分組成のビレット等の素材に、粗圧延、熱間圧延、及び、熱処理を施して、所望の寸法及び性能を具備する鋼棒等を製造する。
熱間圧延において、最終仕上げ圧延は、600℃以上、850℃以下、圧下率20%以上、30%以下で行う。最終仕上げ圧延終了後、10秒以内に、300℃まで、冷却速度30℃/秒以上で冷却し、次いで、所要の冷却速度で100℃以下まで冷却する。その後、150℃以上、250℃以下で、10秒以上保持して焼戻して、旧オーステナイト粒径が5μm以下、引張強度が1300MPa超の棒鋼材を得ることができる。
最終仕上げ圧延温度:600℃以上、850℃以下
最終仕上げ圧延温度が600℃未満では、被圧延材の変形抵抗が大きくなり、圧延機に多大な負荷がかかり、また、再結晶が進行し難くなり、旧オーステナイト粒径が微細化し難いので、最終仕上げ圧延温度は600℃以上とした。一方、最終仕上げ圧延温度が850℃を超えると、再結晶が進行しすぎて、旧オーステナイト粒径が微細化しないので、最終仕上げ圧延温度は850℃以下とした。
圧延後の冷却開始:10秒以内
最終仕上げ圧延後、最終仕上げ温度で保持、又は、徐冷すると、その間に再結晶が進行して、旧オーステナイト粒径の微細化が難しくなるので、仕上げ圧延終了後、10秒以内に冷却を開始した。
圧延後の冷却速度:300℃まで30℃/秒以上
最終仕上げ圧延後、10秒以内に、最終仕上げ温度から300℃まで、冷却速度30℃/秒以上で冷却し、再結晶の進行を抑制し、旧オーステナイト粒径の微細化を図る。最終仕上げ圧延温度から、300℃まで冷却速度30℃/秒以上で冷却する手段としては、巻き取ったコイル状態で、水槽に浸漬するEDC(Easy Drawing Conveyer)冷却を適用できる。
300℃からの冷却温度範囲:100℃以下まで
冷却速度30℃/秒以上で300℃まで冷却した後は、所要の冷却速度で100℃まで冷却する。
焼戻し温度:150℃以上、250℃以下
焼戻し時間:10秒以上
所要の強度と靭性を確保するため、焼戻し脆化温度の250超~350℃を避けて、150℃以上、250℃以下で焼戻した。焼戻し時間が10秒を超えると、所要の強度を確保できないので、焼戻し時間は10秒以下とした。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
種々の成分組成の直径10mmの鋼棒を、種々の圧延・冷却条件で作製して、引張強度TSと限界拡散性水素量を測定した。その結果を表1と表2に示す。表1は、成分組成を示し、表2は、圧延・冷却条件と引張強度TS及び限界拡散性水素量を示す。
ミクロ組織の観察と測定方法、及び、旧オーステナイト粒径の測定方法は、前述した方法である。また、引張試験は、鋼棒を300mmの長さに切り出して、加工することなく試験片として実施した。
Figure 0007163639000001
Figure 0007163639000002
表1において、発明例1~発明例7は、本発明の基本の成分組成を満たす例であり、発明例8~発明例17は、Cr以下の任意添加元素を、規定量含有する応用例である。
本発明の成分組成と、圧延・冷却条件で製造した発明例は、いずれも、引張強度1300MPa以上、限界拡散性水素量:少なくとも0.10ppm以上を充足していた。
比較例1は、C量が本発明の範囲を下回り、引張強度が1300MPaに達しなかった。比較例2は、C量が本発明の範囲を超え、引張強度は1300MPa超であるものの、限界拡散性水素量が0.02ppmと低く、実用に供し得ない。
比較例3は、成分組成は本発明の範囲を満たすが、焼戻し温度が高すぎて、引張強度に応じた限界拡散性水素量が得られていない。比較例4は、成分組成は本発明の範囲を満たすが、焼戻し温度が低すぎて、やはり、引張強度に応じた限界拡散性水素量が得られていない。比較例5は、最終仕上げ圧延後の冷却速度が遅く、マルテンサイト変態が十分に進行せず、引張強度が規定値に達しなかった。
比較例6は、Si量が本発明の範囲を下回り、限界拡散性水素量が0.03ppmと低い。比較例8は、Si量が本発明の範囲を超え、N量も0.025%で、本発明の範囲の上限0.02%を超え、フェライト変態が進行し、引張強度が規定値に達しなかった。
比較例7は、Mn量が本発明の範囲を超え、引張強度が規定値に至っていない。この原因は、Mn量が高すぎて、マルテンサイト変態開始温度(Ms点)が低下し、焼入れ後の残留オーステナイトが増加したためと推測される。比較例9は、Mn量が本発明の範囲を下回って、引張強度が規定値に至っていない。この原因は、Mn量の不足により、焼入れ性が低下したためと推測される。
比較例10は、成分組成は本発明の範囲を満たすが、圧延仕上げ温度が高すぎて、旧オーステナイト粒径が大きくなり、また、引張強度に応じた限界拡散性水素量が得られず、素材としての適用範囲が制約される可能性が高い。
比較例11は、成分組成は本発明の範囲を満たすが、最終仕上げ圧延における圧下率が低すぎて、旧オーステナイト粒径が大きくなり、また、引張強度に応じた限界拡散性水素量が得られず、素材としての適用範囲が制約される可能性が高い。
比較例12は、任意添加元素のNi量が2.3%で、本発明の範囲の上限を超え、引張強度が規定値に達していない。比較例13は、Cr量が多すぎて、フェライトが生成し、引張強度が低下している。比較例14は、Cu量が多すぎて、圧延時に割れが発生し、測定ができなかった。比較例15は、圧延仕上げ温度が低すぎて、圧延時に加工誘起変態割れが発生し、測定ができなかった。
比較例16は、Al量とN量が本発明の範囲の上限を超え、粒界に多量のAlNが生成して、引張強度に応じた限界拡散性水素量が得られなかった。比較例17は、任意添加元素のNi量が2.3%で、本発明の範囲の上限を超え、かつ、仕上げ圧延時の圧下率が大きすぎて、圧延時に割れが発生して、測定ができなかった。
前述したように、本発明によれば、引張強度1300MPa以上で、加工性と靱性に優れた鋼棒や鋼製品とそれらの製造方法を、高価な添加元素に寄らずに、圧延加工により提供することができる。本発明の鋼棒又は鋼製品は、特に、PCパイルの非緊張材や懸架装置のトーションバー等の素材として好適であるので、本発明は、産業上の利用可能性が高いものである。
1 供試材
2 バランスウェイト
3 支点

Claims (5)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C :0.12~0.35%、
    Si:1.5~3.0%、
    Mn:2.0~5.0%、
    N :0.02%以下、
    P :0.03%以下、
    S :0.02%以下、
    Al:0.2%以下又はTi:0.1%以下、及び
    残部:Fe及び不純物であり、
    棒鋼又は鋼製品の長尺方向と垂直な断面上において、組織が、面積率%で、マルテンサイト:90%以上、残部:ベイナイト、残留オーステナイト、パーライト、フェライトの1種又は2種以上であり、
    上記断面上の任意の位置で測定した旧オーステナイト粒径が5μm以下であり、
    棒鋼又は鋼製品の長尺方向の引張強度が1300MPa超である
    ことを特徴とする鋼棒又は鋼製品。
  2. 前記成分組成が、更に、質量%で、Cr:3.0%以下、及び、B:0.005%以下の1種又は2種を含むことを特徴とする請求項1に記載の鋼棒又は鋼製品。
  3. 前記成分組成が、更に、質量%で、Cu:0.50%以下、Ni:2.0%以下、及び、Mo:1.0%以下の1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼棒又は鋼製品。
  4. 前記成分組成が、更に、質量%で、V:0.5%以下、Nb:0.2%以下、REM:0.02%以下の1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼棒又は鋼製品。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の成分組成の鋼素材を熱間圧延し、最終仕上げ圧延後、焼戻して、請求項1~4のいずれか1項に記載の鋼棒又は鋼製品を製造する製造方法において、
    最終仕上げ圧延温度が600℃以上、850℃以下で、圧下率が20%以上、30%以下であり、
    最終仕上げ圧延終了後、10秒以内に、300℃まで冷却速度30℃/秒以上で冷却し、次いで、100℃以下まで冷却し、その後、
    150℃以上、250℃以下で10秒以上保持して焼戻す
    ことを特徴とする鋼棒又は鋼製品の製造方法。
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