以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)アントラセン環を有する第1の熱硬化性樹脂、及び(B)第1の熱硬化性樹脂とは異なる第2の熱硬化性樹脂、を含む樹脂組成物であって、(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上20質量%以下である。所定量の(A)成分及び(B)成分を組み合わせて樹脂組成物に含有させることで、HAST試験後においても、銅箔等の導体層との間の密着性に優れる硬化物を得ることが可能となるとともに、反りが抑制された硬化物を得ることが可能となる。さらには、得られた硬化物は、通常HAST試験前のメッキ導体層との間のピール強度、及びHAST試験前の銅箔等の導体層との間のピール強度にも優れる。
また、前記の樹脂組成物は、(A)~(B)成分に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(C)無機充填材、(D)熱可塑性樹脂、(E)硬化促進剤、及び(F)その他の添加剤などが挙げられる。以下、本発明の樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
<(A)アントラセン環を有する第1の熱硬化性樹脂>
樹脂組成物は、(A)アントラセン環を有する第1の熱硬化性樹脂を含有し、(A)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上20質量%以下である。アントラセン環は、疎水性が高いので水分の影響を受けにくい。また、アントラセン環は、平面構造であることからスタック型構造で充填されやすく、その結果変形しにくくなるので、HAST試験後においても、導体層との間の密着性を向上させることが可能となるとともに、反りが抑制されると考えられる。
(A)成分の含有量は、HAST試験後の密着性が向上し、反りが抑制可能な硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。上限は、20質量%以下であり、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
本明細書において、「アントラセン環」とは、ベンゼン環が3個縮合した芳香族炭化水素環を表す。アントラセン環は、下記式(X)で表される構造であり、例えば、下記式(Y)で表されるジヒドロアントラセンは、ベンゼン環が3個縮合していないので本明細書における「アントラセン環」に含めない。
(A)成分は、通常、アントラセン環に1以上の基が結合した分子構造を有する。1つのアントラセン環に結合する基の数は、好ましくは1つ以上であり、好ましくは6つ以下、より好ましくは3つ以下、さらに好ましくは2つ以下であり、特に好ましくは2つである。前記の基がアントラセン環に結合する部位は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、アントラセン環の9位又は10位の部位が好ましい。
(A)成分は、アントラセン環を有し、加熱により硬化する樹脂を用いることができる。(A)成分は、例えば、HAST試験後の密着性がより向上し、反りがより抑制可能な硬化物を得る観点から、2官能以上の熱硬化性樹脂であることが好ましく、6官能以下の熱硬化性樹脂が好ましく、3官能以下の熱硬化性樹脂がより好ましく、2官能の熱硬化性樹脂がさらに好ましい。
(A)成分が含有する官能基としては、例えば、グリシジルエーテル基、エポキシ基、水酸基、フェノール性水酸基のいずれかを有することが好ましく、グリシジルエーテル基又はフェノール性水酸基を有することがより好ましい。官能基は、1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
(A)成分としては、樹脂組成物の硬化物をプリント配線板の絶縁層等の絶縁用途として使用される、アントラセン環を有する熱硬化性樹脂を用いることができ、中でも、アントラセン環を有するエポキシ樹脂、アントラセン環を有するフェノール樹脂が好ましい。
(A)成分としては、下記式(1)で表される樹脂であることが好ましい。
(式(1)中、R
1及びR
5は、それぞれ独立に官能基を表し、R
2は、(n+1)価の芳香族基を表し、R
3は、2価の炭化水素基を表し、R
4は、(m+1)価の芳香族基を表す。n及びmは、それぞれ独立に1~3の整数を表す。R
1~R
5は、それぞれ置換基を有していてもよい。)
R1及びR5は、それぞれ独立に官能基を表す。官能基としては、例えばグリシジルエーテル基、エポキシ基、水酸基が挙げられ、グリシジルエーテル基又は水酸基が好ましい。
R2は、(n+1)価の芳香族基を表す。芳香族基としては、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン等の芳香族炭化水素から、水素原子を(n+1)個除いた基等が挙げられる。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、ベンゼンから水素原子を(n+1)個除いた基、ナフタレンから水素原子を(n+1)個除いた基が好ましく、具体的にはフェニレン基、ナフチレン基がより好ましく、フェニレン基がさらに好ましい。
R4は、(m+1)価の芳香族基を表す。芳香族基としては、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン等の芳香族炭化水素から、水素原子を(m+1)個除いた基等が挙げられる。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、ベンゼンから水素原子を(m+1)個除いた基、ナフタレンから水素原子を(m+1)個除いた基が好ましく、具体的にはフェニレン基、ナフチレン基がより好ましく、フェニレン基がさらに好ましい。
R3は、2価の炭化水素基を表す。2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基等が挙げられる。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基が特に好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。これらの中でも、R3はアルキレン基が好ましい。
n及びmは、それぞれ独立に1~3の整数を表し、1又は2が好ましく、1がさらに好ましい。
R1~R5は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基等が挙げられる。これら置換基は複数有していてもよい。
(A)成分は、具体的に以下の構造を有することが好ましい。
(A)成分は市販品を用いることができる。(A)成分の市販品としては、例えば旭有機材社製の「BIP-ANT-EPO」、「BIP-ANT」等が挙げられる。(A)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)成分がエポキシ基やグリシジルエーテルを有する場合、(A)成分のエポキシ当量は、好ましくは50~5000、より好ましくは50~3000、さらに好ましくは80~2000、さらにより好ましくは110~1000である。この範囲となることで、HAST試験後の密着性がより向上し、反りがより抑制可能な硬化物を得ることができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
(A)成分が水酸基やフェノール性水酸基を有する場合、(A)成分の水酸基当量は、好ましくは50~5000、より好ましくは50~3000、さらに好ましくは80~2000、さらにより好ましくは110~1000である。この範囲となることで、HAST試験後の密着性がより向上し、反りがより抑制可能な硬化物を得ることができる。水酸基当量は、1当量の水酸基を含む樹脂の質量である。この水酸基当量は、JIS K1557-1に従って測定した水酸基価でKOHの分子量を割ることで算出することができる。
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは300~1500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
<(B)第2の熱硬化性樹脂>
樹脂組成物は、第1の熱硬化性樹脂とは異なる第2の熱硬化性樹脂を含有する。第2の熱硬化性樹脂としては、樹脂組成物の硬化物を絶縁層等の絶縁用途として使用される、アントラセン環を含まない熱硬化性樹脂を用いることができる。このような熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂等が挙げられる。(B)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。以下、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂をまとめて「硬化剤」ということがある。
(B)成分としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(B)成分としてのエポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物は、(B)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(B)成分としてのエポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
(B)成分としてのエポキシ樹脂は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、その分子内に芳香環を有する、芳香族系のエポキシ樹脂であることが好ましい。
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(B)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。(B)成分として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いることで、後述する樹脂組成物層の可撓性を向上させたり、樹脂組成物の硬化物の破断強度を向上させたりできる。
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系の液状エポキシ樹脂がより好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-850CRP」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP7200」、「HP7200HH」、「HP7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」、「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:1~1:20、より好ましくは1:1~1:15、特に好ましくは1:1~1:10である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。さらに、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、適度な粘着性がもたらされる。また、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
(B)成分としてのエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50~5000、より好ましくは50~3000、さらに好ましくは80~2000、さらにより好ましくは110~1000である。この範囲となることで、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
(B)成分としてのエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系樹脂、又はノボラック構造を有するナフトール系樹脂が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系樹脂が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂が挙げられる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
活性エステル系樹脂の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造を表す。
活性エステル系樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000」、「HPC-8000H」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65TM」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「EXB9416-70BK」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
シアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
カルボジイミド系樹脂の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
アミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する樹脂が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系樹脂の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン等が挙げられる。アミン系樹脂は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂が挙げられる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
(B)成分としては、エポキシ樹脂及び硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、絶縁信頼性を向上させる観点から、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、及びカルボジイミド系樹脂のいずれか1種以上であることが好ましく、フェノール系樹脂、活性エステル系樹脂、及びカルボジイミド系樹脂のいずれか1種以上であることがより好ましい。特に、(A)成分としてエポキシ基を含有するものを用いる場合、(B)成分として活性エステル系樹脂を用いると、HAST試験後の密着性及び反りを効果的に改善することができる。
樹脂組成物は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A)成分としてのアントラセン環を有するエポキシ樹脂及び(B)成分としての硬化剤の組み合わせ、並びに(A)成分としてのアントラセン環を有するフェノール樹脂及び(B)成分としてのエポキシ樹脂の組み合わせのいずれか1つ以上の組み合わせにて、(A)成分及び(B)成分を含有させることが好ましい。
樹脂組成物は、(A)成分がアントラセン環を有するエポキシ樹脂であり、(B)成分としてエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、(A)成分及び(B)成分におけるエポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[(A)成分及び(B)成分におけるエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.05~1:5の範囲が好ましく、1:1~1:2がより好ましく、1:0.05~1:1がさらに好ましい。ここで、反応基とは、フェノール性水酸基、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、(A)成分及び(B)成分におけるエポキシ基の合計数とは、各成分の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべての樹脂について合計した値であり、反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。これら量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
また、樹脂組成物は、(A)成分がアントラセン環を有するフェノール樹脂であり、(B)成分としてエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、(B)成分におけるエポキシ樹脂と(A)成分及び硬化剤との量比は、[(B)成分におけるエポキシ基の合計数]:[(A)成分及び硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.02~1:5の範囲が好ましく、1:0.03~1:3がより好ましく、1:0.03~1:1がさらに好ましい。これら量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
(B)成分の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは35質量%以下である。
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)成分の含有量(質量%)、及び(B)成分の含有量(質量%)をそれぞれa、bとしたとき、a/bは、HAST試験後においても導体層との間の密着性を向上させる観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上である。上限は、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下である。
<(C)無機充填材>
樹脂組成物は、反りを抑制する観点から(C)無機充填材を含有し得る。無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SOC4」、「SOC2」、「SOC1」;などが挙げられる。
(C)無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
(C)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(C)無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
(C)無機充填材の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは5m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
(C)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
(D)無機充填材の含有量は、絶縁性を向上させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。通常、(C)無機充填材の含有量が多いと密着性が低下する傾向にある。しかし、前記の樹脂組成物は(A)成分及び(B)成分を組み合わせて含有するので、(C)無機充填材の含有量が多くても密着性は低下せず、HAST後の密着性を良好にすることが可能となる。
<(D)熱可塑性樹脂>
樹脂組成物は、(D)熱可塑性樹脂を含有し得る。(D)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。特に、(A)成分として水酸基を含有する樹脂やフェノール樹脂を用いる場合、(D)成分としてポリビニルアセタール樹脂を用いると、HAST試験後の密着性及び反りを効果的に改善することができる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
(D)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは70,000以下、より好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。
(D)熱可塑性樹脂の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
<(E)硬化促進剤>
樹脂組成物は、(E)成分として、(E)硬化促進剤を含有していてもよい。(E)硬化促進剤を用いることにより、樹脂組成物を硬化させる際に硬化を促進できる。
(E)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤及び金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤及び金属系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン、4-ピロリジノピリジン等が挙げられる。中でも、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。中でも、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」;四国化成社製「2E4MZ」;等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。中でも、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
(E)硬化促進剤の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。
<(F)任意の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;難燃剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤等の樹脂添加剤;などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
<樹脂組成物の物性、用途>
樹脂組成物を100℃で30分間、その後180℃で30分間熱硬化させた硬化物は、メッキ導体層との間の密着性(ピール強度)に優れるという特性を示す。よって、前記の硬化物は、メッキ導体層とのピール強度に優れる絶縁層をもたらす。ピール強度としては、好ましくは0.3kgf/cm以上、より好ましくは0.35kgf/cm以上、さらに好ましくは0.4kgf/cm以上である。一方、ピール強度の上限値は特に限定されないが、2kgf/cm以下等とし得る。前記のピール強度の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、HAST試験前の銅箔との間の密着性(銅箔引き剥がし強度)に優れるという特性を示す。よって、前記の硬化物は、HAST試験前の銅箔との密着性に優れる絶縁層をもたらす。HAST試験前の硬化物と銅箔との密着強度としては、好ましくは0.5kgf/cm以上、より好ましくは0.6kgf/cm以上、さらに好ましくは0.7kgf/cm以上である。一方、HAST試験前の密着強度の上限値は特に限定されないが、5kgf/cm以下等とし得る。前記のHAST試験前の密着強度の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、HAST試験後の銅箔との間の密着性(銅箔引き剥がし強度)に優れるという特性を示す。よって、前記の硬化物は、HAST試験後の銅箔との密着性に優れる絶縁層をもたらす。HAST試験後の硬化物と銅箔との密着強度としては、好ましくは0.4kgf/cm以上、より好ましくは0.41kgf/cm以上、さらに好ましくは0.42kgf/cm以上である。一方、HAST試験後の密着強度の上限値は特に限定されないが、5kgf/cm以下等とし得る。前記のHAST試験後の密着強度の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
樹脂組成物を190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、反り量が低減されるという特性を示す。よって、前記の硬化物は、反り量が低減された絶縁層をもたらす。反り量としては、好ましくは50μm未満、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、30μm未満である。一方、反り量の下限値は特に限定されないが、0.001μm以上等とし得る。前記の反り量の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本発明の樹脂組成物は、HAST試験後においても、導体層との間の密着性に優れ、且つ反りが抑制された絶縁層をもたらすことができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物として好適に使用することができる。具体的には、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。
また、後述する多層プリント配線板において、多層プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(多層プリント配線板の絶縁層形成用樹脂組成物)、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本発明の樹脂組成物は、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層用の樹脂組成物(再配線形成層形成用の樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)としても好適に使用することができる。場合によっては、封止層上に更に再配線層を形成してもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を含む。
樹脂組成物層の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは35μm以下、又は30μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。樹脂組成物層は、本発明の樹脂組成物で形成されるので、樹脂組成物層が薄膜であっても反りを抑制することが可能となる。
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。
プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上等とし得る。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上等とし得る。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
[メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定]
<ピール強度測定用サンプルの調製>
(1)内層回路基板の下地処理
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.4mm、パナソニック社製R1515A)の両面をマイクロエッチング剤(メック社製メッキエッチングボンド「CZ8101」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
(2)樹脂シートのラミネート
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機製作所社製MVLP-500)を用いて、内層回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaで圧着することにより行った。
(3)樹脂組成物の硬化
ラミネートされた樹脂シートを、100℃、30分続けて180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成した。
(4)粗化処理
絶縁層を形成した内層回路基板から支持体であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを剥離した後、膨潤液である、アトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガントP(グリコールエーテル類、水酸化ナトリウムの水溶液)に、60℃で10分間浸漬した。次に粗化液として、アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に、80℃で20分間浸漬した。最後に中和液として、アトテックジャパン社製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(硫酸の水溶液)に40℃で5分間浸漬した。その後80℃で30分乾燥した。
(5)セミアディティブ工法によるメッキ
この内層回路基板を、PdCl2を含む無電解メッキ用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成の後に、硫酸銅電解メッキを行い、30μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を200℃にて60分間行った。この基板を評価基板とした。
<ピール強度の測定>
評価基板の導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機 AC-50C-SL)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
[銅箔の引き剥がし強さ(CZ密着性)の測定]
<銅箔引き剥がし強度の測定用サンプルの調製>
(1)銅箔の下地処理
三井金属鉱山社製「3EC-III」(電界銅箔、35μm)の光沢面をマイクロエッチング剤(メック社製メックエッチボンド「CZ-8101」)に浸漬して銅表面に粗化処理(Ra値=1μm)を行い、防錆処理(CL8300)を施した。さらに、130℃のオーブンで30分間加熱処理した。この銅箔をCZ銅箔という。
(2)銅箔のラミネートと絶縁層形成
実施例及び比較例で作製した各樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)と接合するように、前記の積層板の両面にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaで30秒間圧着することにより行った。ラミネート処理された樹脂シートからポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した。その樹脂組成物層上に、CZ銅箔の処理面を、上記と同様の条件で、ラミネートした。そして、200℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成することで、サンプルを作製した。
<耐環境試験(HAST)前の銅箔引き剥がし強度(密着性1)の測定>
作製したサンプルを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれて、銅箔の一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機、「AC-50C-SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定した。
<耐環境試験(HAST)後の銅箔引き剥がし強度(密着性2)の測定>
作製したサンプルを、高度加速寿命試験装置(楠本化成社製「PM422」)を用いて、130℃、85%RHの条件で100時間の加速環境試験を実施した。その後、密着性1の測定と同様に、銅箔の一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機、「AC-50C-SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定した。
また、密着性2における測定結果が0.40kgf/cm未満の場合を「×」とし、0.40kgf/cm以上の場合を「○」として評価した。
[反りの測定]
<反り評価用基板の調製>
(1)内層基板の準備
内層基板として、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板の両面銅箔を全て除去したアンクラッド板(厚さ100μm、三菱ガス化学社製「HL832NSF-LCA」)を用意した。
(2)樹脂シートの積層
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製 2ステージビルドアップラミネーター CVP700)を用いて、樹脂組成物層が内層基板と接するように、内層基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、積層された樹脂シートを、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスして平滑化した。
(3)樹脂組成物層の硬化
樹脂シートの積層後、内層基板の両面からポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した。次いで、190℃で90分間の硬化条件で樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成し、反り評価用基板を作製した。
<反りの評価>
得られた反り評価用基板を45mm角の個片に切り出した後、ピーク温度260℃の半田リフロー温度を再現するリフロー装置(日本アントム社製「HAS-6116」)に一回通した(リフロー温度プロファイルはIPC/JEDEC J-STD-020Cに準拠)。次いで、シャドウモアレ装置(Akrometrix製「TherMoire AXP」)を用いて、IPC/JEDEC J-STD-020C(ピーク温度260℃)に準拠したリフロー温度プロファイルにて反り評価用基板の一方の面を加熱し、反り評価用基板の他方の面に配した格子線に基づき基板中央の10mm角部分の変位を測定した。この測定を5つの反り評価用基板に対して行い、反り量の平均値を下記表に示した。また、反り量を以下の評価基準に従って評価した。
評価基準:
◎:全5サンプルについて、全温度範囲における変位データの最大高さと最小高さの差異が30μm未満
○:全5サンプルについて、全温度範囲における変位データの最大高さと最小高さの差異が30以上50μm未満
×:少なくとも1サンプルについて、全温度範囲における変位データの最大高さと最小高さの差異が50μm以上
[無機充填材の平均粒径及び比表面積の測定]
<無機充填材の平均粒径の測定方法>
無機充填材100mg、及びメチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散した。レーザー回折式粒径分布測定装置(堀場製作所社製「LA-960」)を使用して、使用光源波長を青色および赤色とし、フローセル方式で無機充填材の粒径分布を体積基準で測定した。そして、得られた粒径分布から、メディアン径として、無機充填材の平均粒径を算出した。
<無機充填材の比表面積の測定方法>
BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで無機充填材の比表面積を測定した。
[実施例1]
アントラセン環含有エポキシ樹脂(旭有機材社製「BIP-ANT-EPO」、エポキシ等量約248)20部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828US」、エポキシ当量約180)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269)5部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7760」、エポキシ当量約238)5部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部を、ソルベントナフサ25部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへトリアジン骨格含有フェノール系樹脂(DIC社製「LA7054」、水酸基当量約125の固形分60%のMEK溶液)5部、活性エステル系樹脂(DIC社製「HPC8000-65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)40部、硬化促進剤(DMAP(N,N-ジメチル-4-アミノピリジン)、固形分5質量%のMEK溶液)8部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、比表面積5.9m2/g、アドマテックス社製「SOC2」)200部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。
次いで、離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)の離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが30μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80~120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて、樹脂シートを作製した。
BIP-ANT-EPOの構造は以下のとおりである。
[実施例2]
実施例1において、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、比表面積5.9m2/g、アドマテックス社製「SOC2」)200部を、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製、「KBM573」)で表面処理された球状シリカ(平均粒径0.3μm、比表面積30.7m2/g、電気化学工業社製「UFP-30」)100部に変え、さらにカルボジイミド系樹脂(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、固形分50質量%のトルエン溶液)10部を加えた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
[実施例3]
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032SS」、エポキシ当量約144)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269)15部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)10部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部を、ソルベントナフサ25部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへトリアジン骨格含有フェノール系樹脂(DIC社製「LA7054」、水酸基当量約125の固形分60%のMEK溶液)5部、アントラセン環含有フェノール樹脂(旭有機材社製「BIP-ANT」、フェノール当量約188)の固形分30質量%のシクロヘキサノン溶液50部、ポリビニルブチラール樹脂(ガラス転移温度105℃、積水化学工業社製「KS-1」)の固形分15%のエタノールとトルエンの1:1の混合溶液10部、硬化促進剤(北興化学工業社製「TBP-DA」、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩)0.2部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、比表面積5.9m2/g、アドマテックス社製「SOC2」)200部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。
次いで、離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)の離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが30μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80~120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて、樹脂シートを作製した。
[比較例1]
実施例1において、アントラセン環骨格含有エポキシ樹脂(旭有機材社製「BIP-ANT-EPO」、エポキシ当量約248)20部を、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX8800」、エポキシ当量約180)20部に変えた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
[比較例2]
実施例2において、アントラセン環含有エポキシ樹脂(旭有機材社製「BIP-ANT-EPO」、エポキシ当量約248)20部を、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX8800」、エポキシ当量約180)20部に変えた。以上の事項以外は、実施例2と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
[比較例3]
実施例3において、アントラセン環含有フェノール樹脂(旭有機材社製「BIP-ANT」、フェノール当量約188)の固形分30質量%のシクロヘキサノン溶液50部を、ナフトール系フェノール硬化剤(新日鉄住金化学社製「SN-485」、水酸基当量約215、固形分60%のMEK溶液)25部に変えた。以上の事項以外は、実施例3と同様にして樹脂ワニス、樹脂シートを作製した。
表中、「(C)成分の含有量(質量%)」は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量を表す。
実施例1~3において、(C)成分~(E)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。