JP7162786B1 - 冷凍サイクル装置 - Google Patents

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    • F25REFRIGERATION OR COOLING; COMBINED HEATING AND REFRIGERATION SYSTEMS; HEAT PUMP SYSTEMS; MANUFACTURE OR STORAGE OF ICE; LIQUEFACTION SOLIDIFICATION OF GASES
    • F25BREFRIGERATION MACHINES, PLANTS OR SYSTEMS; COMBINED HEATING AND REFRIGERATION SYSTEMS; HEAT PUMP SYSTEMS
    • F25B1/00Compression machines, plants or systems with non-reversible cycle

Abstract

圧縮機(3)を含む冷媒回路(100)を備え、前記冷媒回路(100)内に冷媒が封入されており、前記冷媒は、炭素数が1から4の炭化水素と、硫黄系付臭剤と、を含み、前記圧縮機(3)内に冷凍機油が充填されており、前記冷凍機油は、ポリアルキレングリコールを含み、ポリアルキレングリコールの分子構造中の酸素原子数と炭素原子数の比率は、0.50以下である、冷凍サイクル装置。

Description

本開示は、冷凍サイクル装置に関する。
現在、冷凍サイクル装置に使用する冷媒は、例えば、フロン排出抑制法(平成27年4月施行)によって規制されている。具体的には、使用する冷媒の地球温暖化係数(Global Warming Potential:GWP)値の上限が設定されている。このため、よりGWPの低い冷媒の使用が必要とされている。
近年、GWP値が低い冷媒として、例えば、R-290(プロパン)、R-1270(プロピレン)、R-600a(イソブタン)等の炭素数1から4の炭化水素(ハイドロカーボン)が検討されている。炭素数1から4の炭化水素は、GWP値が比較的低い冷媒である飽和フッ化炭化水素化合物(ハイドロフルオロカーボン)よりもさらに低いGWP値を有する。
しかしながら、炭素数1から4の炭化水素は、ハイドロフルオロカーボンよりも高い燃焼性を有している。例えば、冷媒の安全等級を定める国際規格ISO-817において、ハイドロフルオロカーボンの一種であるR-32(ジフルオロメタン)は微燃性(Class 2L)として登録されているのに対して、R-290、R-1270およびR-600aは強燃性(Class 3)として登録されている。
冷凍サイクル装置の冷媒として、例えば、炭素数1から4の炭化水素のような燃焼性の高い冷媒を用いる場合、冷媒を嗅覚または視覚により認識可能とする措置がなされていることが好ましい。また、冷凍機油への冷媒の溶け込みを抑制し、冷媒の充填量を削減するため、冷媒との相溶性が低い冷凍機油を使用することが好ましい。
冷媒を嗅覚により認識可能とする措置としては、例えば、特許文献1(特開2020-112285号公報)には、メルカプタン類、スルフィド類、チオフェン類等の硫黄系付臭剤を冷媒に混合し、冷媒の漏出を不快臭によって検知させる方法が開示されている。また、特許文献1には、冷凍機油としてポリアルキレングリコールを使用することで、冷凍機油に相溶する冷媒の量が少なくなり、より少ない冷媒の充填量で必要な冷凍サイクル性能を確保できることも開示されている。
また、特許文献2(特開2002-38135号公報)には、冷凍回路の材料と反応を起こさないこと、冷媒との相溶性を有すること、冷凍機油との相溶性を有することから、付臭剤としてテトラヒドロチオフェン(THT)が好ましいことが開示されている。
特開2020-112285号公報 特開2002-38135号公報
しかしながら、発明者らは、THT等の硫黄系付臭剤は分子内の電荷の偏りにより極性を有するため、高極性の冷凍機油を使用する場合に硫黄系付臭剤が冷凍機油に圧縮機内で溶解し、冷媒とともに冷媒回路を循環する硫黄系付臭剤量が減少し、冷媒を冷凍サイクル装置から放出させた場合にも冷媒を嗅覚で検知されにくくなることを見出した。また、ポリアルキレングリコールは分子構造中に電気陰性度の大きい元素である酸素(O)を多く含むため、高い極性を有する冷凍機油であり、組成次第では硫黄系付臭剤を多量に溶解させる。
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、硫黄系付臭剤のポリアルキレングリコールへの溶解を抑制し、冷媒の漏洩を嗅覚により認識可能とする冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
本開示に係る冷凍サイクル装置は、
圧縮機を含む冷媒回路を備え、
前記冷媒回路内に冷媒が封入されており、
前記冷媒は、炭素数が1から4の炭化水素と、硫黄系付臭剤と、を含み、
前記圧縮機内に冷凍機油が充填されており、
前記冷凍機油は、ポリアルキレングリコールを含み、
ポリアルキレングリコールの分子構造中の酸素原子数と炭素原子数の比率は、0.50以下である。
本開示によれば、硫黄系付臭剤のポリアルキレングリコールへの溶解を抑制し、冷媒の漏洩を嗅覚により認識可能とする冷凍サイクル装置を提供することができる。
図1は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の一例を示す概略構成図である。 図2は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の圧縮機の一例を示す断面模式図である。 図3は、封入した冷媒中のテトラヒドロチオフェンの濃度と回収した冷媒ガス中のテトラヒドロチオフェンの濃度との関係を示すグラフである。 図4は、サンプルガス中のテトラヒドロチオフェンの濃度と臭気指数(相当値)との関係を示すグラフである。
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図面において、長さ、幅、厚さ、深さ等の寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
実施の形態1.
まず、本実施の形態の冷凍サイクル装置の概要について簡単に説明する。図1は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の一例を示す概略構成図である。室外機1は、圧縮機3、凝縮器4、室外送風機5等を備え、圧縮機3と凝縮器4とが配管で接続されている。室内機2は、膨張弁6、蒸発器7、室内送風機8等を備え、膨張弁6と蒸発器7とが配管で接続されている。
室外機1の圧縮機3と室内機2の蒸発器7とは、ガス管10で接続されている。室外機1の凝縮器4と室内機2の膨張弁6とは、液管9で接続されている。
このような冷凍サイクル装置の構成により冷媒回路100が形成され、液管9およびガス管10を介して冷媒回路100内で冷媒が循環する。
圧縮機3は、ガス管10内でガス状となった冷媒を圧縮する。凝縮器4は、圧縮機3が圧縮したガス状の冷媒を冷却して、高圧液状の冷媒または気液2相状の冷媒にする。膨張弁6は、高圧液状の冷媒または気液2相状の冷媒を減圧する。蒸発器7は、減圧された冷媒を加熱して低圧ガス状の冷媒とする。圧縮機3は、蒸発器7によって低圧ガス状となった冷媒を吸引して再度圧縮する。
なお、室外送風機5は、凝縮器4に空気を送る構成要素であり、凝縮器4に流れる冷媒が空気と熱交換して熱を吸収または放出することを促進するために設けられている。また、室内送風機8は、蒸発器7に空気を送る構成要素であり、蒸発器7に流れる冷媒が空気と熱交換して熱を吸収または放出することを促進するために設けられている。
本実施の形態においては、凝縮器4および蒸発器7と空気との熱交換を実施するための構成について説明しているが、これに限定されず、例えば、空気ではなく水等の液体と熱交換するように構成されていてもよい。
また、本実施の形態においては、蒸発器7が室内機2内に設けられる構成について説明しているが、これに限定されず、例えば、凝縮器4が室内に配置され、蒸発器7が室外に配置されていてもよい。
上記のような室外機1に対し、例えば、四方弁または複数の弁を組み合わせて配置し、圧縮機3の吸入管と吐出管とを切り替える切替機構を設けてもよい。切替機構を設けることにより、室外機1内の熱交換器が蒸発器7として機能し、および、室内機2内の熱交換器が凝縮器4として機能し、室外の熱を利用して、室内を加熱する暖房が可能となる。
なお、冷凍サイクル装置は、例えば、冷房および暖房の両方が実施可能な装置、冷房のみが実施可能な装置、または、暖房のみが実施可能な装置、のいずれであってもよい。
本実施の形態においては、膨張弁6が室内機2内に設けられる構成について説明しているが、これに限定されず、例えば、膨張弁6を室外機1内に設けてもよい。また、例えば、膨張弁6を室外機1と室内機2との両方に設けるようにしてもよい。さらに、例えば、冷媒回路100内に、複数の室内機2を設けてもよく、複数の室外機1を設けてもよい。
<冷媒>
次に、本実施の形態において、冷媒回路内に封入される冷媒について説明する。冷媒は、冷媒として機能する主成分を含み、さらに、冷媒の漏出を検知するための硫黄系付臭剤を含む。
ここで、上述の「主成分」とは、冷媒(硫黄系付臭剤等を含む)の総量に対する比率(冷媒中の含有率)が50質量%より多い成分である。冷媒中の主成分の含有率は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。
冷媒として機能する主成分は、炭素数1から4個の炭化水素である。炭素数1から4個の炭化水素としては、例えば、R-290(プロパン)、R-1270(プロピレン)、R-600a(イソブタン)等が挙げられる。炭素数1から4個の炭化水素は、プロパン、プロピレン、またはそれらの混合物であることが好ましい。これらは冷凍サイクル装置への使用に適した動作圧力を有しているためである。酸化安定性の観点からは、プロパンがより好ましい。プロパンは、GWP値が3と非常に低く、かつ、高い冷却性能を有しているため、冷凍サイクル装置の製造時および運転時による環境負荷の軽減に貢献し得る。
(硫黄系付臭剤)
冷媒中に配合される硫黄系付臭剤とは、硫黄元素を含む付臭剤である。硫黄系付臭剤としては、例えば、メルカプタン類、スルフィド類、チオフェン類等が挙げられる。メルカプタン類としては、例えば、ターシャリーブチルメルカプタン(TBM)、エチルメルカプタン(EM)等が、スルフィド類としては、例えば、ジメチルスルフィド(DMS)、ジエチルスルフィド(DES)等が、チオフェン類としては、例えば、テトラヒドロチオフェン(THT)等が挙げられる。これらの硫黄系付臭剤は、燃料ガスに使用実績のある化合物であり、不快臭を有する化合物である。これらの硫黄系付臭剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硫黄系付臭剤としては、家庭向けの燃料ガスにも使用されているTBM、EM、DMS、THT、または、それらの混合物であることが好ましい。家庭向けの燃料ガスに使用される硫黄系付臭剤を冷媒に混合することで、硫黄系付臭剤に特有の不快臭により冷媒の漏出を容易に検知することができる。
硫黄系付臭剤としては、THTがより好ましい。THTは、TBM、EM、DMS等と比較して化学的に安定であり、冷媒回路内で分解反応や腐食反応を起こしにくく、また、融点が-96℃と低温であるため、冷媒回路内で凝固を起こしにくい。
硫黄系付臭剤の含有量は、50重量ppm以上1100重量ppm未満であることが好ましい。硫黄系付臭剤の含有量が上記範囲内の場合、冷媒回路からの冷媒の漏出を容易に検知することができ、かつ、過度に不快ではない臭気となるからである。硫黄系付臭剤の含有量は、90重量ppm以上1026重量ppm未満であることがより好ましく、176重量ppm以上987重量ppm未満であることがさらに好ましい。
<圧縮機>
本実施の形態において、冷凍サイクル装置は、圧縮機を備える。冷媒は圧縮機の内部を通過する。圧縮機はポリアルキレングリコールを主成分とする冷凍機油を含む。
図2は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の圧縮機の一例を示す断面模式図である。圧縮機3は、図2に示されるように、シェル11を備える。シェル11は、内部に圧縮機構12を備え、圧縮機構12を駆動する電動機13を備える。また、シェル11には、冷媒を内部に流入させるための吸入管14と、外部に流出させるための吐出管15とが接続されている。吸入管14の上流側には、冷媒中の気液を分離し蒸気を吸入管14に送るアキュームレーター16が接続されている。
アキュームレーター16を経た冷媒は、吸入管14からシェル11内の圧縮機構12に流入する。圧縮機構12に流入した冷媒は、圧縮されて高温高圧となり、吐出管15から吐出される。つまり、圧縮機構12は、吸入管14からシェル11に流入した冷媒を圧縮して吐出管15から吐出するように構成されている。
圧縮機構12は、ローリングピストン17とベーン(図示なし)等の組み合わせからなるロータリ型の圧縮機構である。シリンダー18のシリンダー室19の内周面とローリングピストン17の外周面とベーン(図示なし)とで囲まれた空間がローリングピストン17の偏心回転運動によって体積変化することで、冷媒が圧縮される。
圧縮された冷媒は、上軸受20の吐出孔21からマフラー空間22に吐出され、その後、吐出マフラー23の吐出孔24からシェル11内に吐出される。吐出された冷媒は電動機13の隙間(電動機回転子25と電動機固定子26間の隙間、電動機固定子26の外周面に設けた溝等)を通過した後、吐出管15から冷媒回路100の下流側へ排出される。
なお、圧縮機3は、圧縮機構12の内部に摺動部を有する。摺動部の潤滑のため、圧縮機3には、下方に位置する油溜部27に冷凍機油が貯留されている。油溜部27に貯留された冷凍機油は、駆動軸28の軸内に設けられた給油孔(図示なし)を通じてポンプ作用により圧縮機構12の内部の摺動部に供給される。冷凍機油は、圧縮機3内で冷媒と接触する。
<冷凍機油>
次に、本実施の形態において、圧縮機内を潤滑するために充填される冷凍機油について説明する。冷凍機油として機能する主成分は、ポリアルキレングリコール(PAG)である。
ここで、上述の「主成分」とは、冷凍機油の総量に対する比率が50質量%より多い成分である。冷凍機油中の主成分の含有率は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
PAGは、下記化学式で表されるエキレンオキサイド基(EO基)およびプロピレンオキサイド基(PO基)からなる群より選択される少なくとも1種の重合体である。
Figure 0007162786000001
上記化学式1中、mおよびnは、それぞれEO基およびPO基の数を表す0以上の整数であり、RおよびRは、水素原子(H)または炭素原子(C)の数が1以上の炭化水素鎖である。EO基およびPO基の配列は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体のいずれでも良い。
上記化学式1中、mおよびnは、下記式(1)および(2)の関係を満たすことが好ましい。下記式(1)および(2)の関係を満たさない場合、PAGが低温で凝固するおそれがある。また、RおよびRは、炭素原子(C)の数が1以上の炭化水素鎖であることが好ましい。RおよびRが水素原子(H)の場合、PAGの吸湿性が高くなり、水分が混入するおそれがある。
m+n≦100・・・式(1)
n/m+n≧0.20・・・式(2)
(PAGの分子構造中の酸素原子数と炭素原子数との比率)
PAGの分子構造中の酸素原子(O)数と炭素原子(C)数との比率(O/C比)(以下、単に「O/C比」とも称する。)は、0.50以下である。O/C比が0.50以下の場合、PAGへの硫黄系付臭剤の溶解量が小さくなり、冷媒回路から放出された冷媒を嗅覚で認識することが可能となる。O/C比は、0.43以下であることが好ましく、0.39以下であることがより好ましい。また、O/C比の下限は、特に制限はないが、0.25以上であってもよく、0.30以上であってもよい。
冷凍機油には、PAGの分子構造中のO/C比がPAGよりも小さければ、他の冷凍機油が混合されていてもよい。他の冷凍機油としては、例えば、ポリオールエステル、ポリビニルエーテル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、鉱物油、ポリα―オレフィン、または、それらの混合物等が挙げられる。ポリオールエステルおよびポリビニルエーテルは、PAGと同様に炭素数1から4個の炭化水素との相溶性が低いため、冷媒の溶解量が小さく冷媒充填量を削減できる点から好ましい。
また、冷凍機油には、油中添加剤として、酸化防止剤、酸捕捉剤、極圧剤(摩耗防止剤)が含まれていてもよい。
酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)等のフェノール系、フェニル-α-ナフチルアミン、N,N’-ジ-フェニル-p-フェニレンジアミン等のアミン系が挙げられる。
酸捕捉剤としては、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α-オレフィンオキシド、エポキシ化大豆油等のエポキシ化合物が挙げられる。酸捕捉剤としては、アルキルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエーテル、α-オレフィンオキシドが好ましい。
極圧剤(摩耗防止剤)としては、リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステルおよびこれらのアミン塩等のリン系極圧剤が挙げられる。極圧剤(摩耗防止剤)としては、リン酸エステル、チオリン酸エステルまたはこれらの混合物が好ましい。具体的には、トリクレジルホスフェート(O=P-(OC)、トリフェニルホスフォロチオエート(S=P-(OC)、トリフェニルホスフェート(O=P-(OC)、これらの誘導体またはこれらの混合物が好ましい。
また、冷凍機油には、酸素捕捉剤が含まれていてもよい。酸素捕捉剤としては、例えば、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ジフェニルスルフィド、ジオクチルジフェニルスルフィド、ジアルキルジフェニレンスルフィド、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フェノチアジン、ベンゾチアピラン、チアピラン、チアントレン、ジベンゾチアピラン、ジフェニレンジスルフィド等の含硫黄芳香族化合物、各種オレフィン、ジエン、トリエン等の脂肪族不飽和化合物、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、フェランドレン等の不飽和結合を有する環式テルペン類が挙げらる。酸素捕捉剤としては、脂肪族不飽和化合物、不飽和結合を有する環式テルペン類等が好ましい。
その他、冷凍機油には、冷媒および冷凍機油を視覚で検知できるように、蛍光剤、着色剤等を含ませていてもよい。
ただし、冷凍機油に水分が含まれると、冷媒、冷凍機油、圧縮機内材料の劣化を促進させるおそれがあるため、充填される冷凍機油に含まれる水分は、100重量ppm以下に制御する必要がある。
上述した冷凍サイクル装置においては、圧縮機3としてロータリ圧縮機を用いる形態について説明しているが、これに限定されず、例えば、圧縮機3として、低圧シェル型または高圧シェル型のスクロール圧縮機またはスクリュー圧縮機等を用いてもよい。
<HSP距離>
PAGおよび硫黄系付臭剤のHSP距離と、PAGおよび冷媒のHSP距離との差は、-2.0以上である。なお、以下、PAGおよび硫黄系付臭剤のHSP距離を「硫黄系付臭剤とのHSP距離」と、PAGおよび冷媒のHSP距離を「冷媒とのHSP距離」と、それぞれ称することがある。
ここで、「HSP」とは、「Hansen Solubility Parameter(ハンセン溶解度パラメータ)」であり、「分子間の相互作用が似ている物質同士は互いに溶解しやすい」という考えに基づき、物質同士の溶解性を予測するのに用いられる値のことである。具体的には、HSPは3つのパラメーター(dD、dP、dH)により3次元ベクトルとして表され、それぞれ分散項、分極項、水素結合項である。2つの物質について、(dD、dP、dH)のベクトルが似ているほど溶解性が大きい。
物質のHSPは、コンピューターソフトウェアであるHSPiP(Hansen Solubility Parameter in Practice)を使用することで、データベースからの引用および分子構造からの計算が可能である。また、HSPiPを使用しなくとも、HSPの計算方法は文献(例えば、Van Krevelen著,Properties of Polymers,4th Edition,2009)に記載されている。
また、「HSP距離」とは、2つの物質のHSP値の間の距離であり、2つの物質のベクトル((dD1、dP1、dH1)および(dD2、dP2、dH2))同士の類似性を示す値のことである。具体的には、上記3つのパラメーター(dD、dP、dH)を基に、下記式(3)で求められる。なお、下記式(3)では、HSP距離を算出する2つの物質につき、一方の物質のdD、dPおよびdHをdD1、dP1およびdH1とし、他方の物質のdD、dPおよびdHをdD2、dP2およびdH2としている。2つの物質について、HSP距離が大きいほど溶解性が小さい。
HSP距離={4×(dD1-dD2)+(dP1-dP2)+(dH1-dH2)0.5・・・式(3)
硫黄系付臭剤のPAGへの溶解量が小さいほど、冷媒回路を循環する硫黄系付臭剤の量が多くなり、冷媒回路から放出される冷媒を嗅覚で認識可能となる。また、硫黄系付臭剤を除く冷媒のPAGへの溶解量が大きいほど、後述の理由から、硫黄系付臭剤を除く冷媒がPAGに溶解した影響で硫黄系付臭剤のPAGへの溶解量が小さくなり、結果として冷媒回路を循環する硫黄系付臭剤の量が多くなり、冷媒回路から放出される冷媒を嗅覚で認識可能となる。すなわち、硫黄系付臭剤とのHSP距離と、冷媒とのHSP距離との差(硫黄系付臭剤とのHSP距離-冷媒とのHSP距離)が大きいほど、硫黄系付臭剤のPAGへの溶解量が小さくなり、冷媒回路から放出される冷媒に硫黄系付臭剤が多く含まれ、嗅覚で認識可能となる。
硫黄系付臭剤とのHSP距離と、冷媒とのHSP距離との差が-2.0以上である場合、PAGへの硫黄系付臭剤の溶解量が十分小さく、冷媒回路から放出された冷媒を嗅覚で認識することが可能となる。硫黄系付臭剤とのHSP距離と、冷媒とのHSP距離との差は、-0.5以上であることが好ましく、0以上であることがより好ましい。また、硫黄系付臭剤とのHSP距離と、冷媒とのHSP距離との差の上限は、特に制限はないが、5.0以下であってもよく、3.0以下であってもよい。
以下、実施例を挙げて本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
<評価試験1>
冷媒、硫黄系付臭剤およびPAGを混合した場合に冷媒と共に放出される硫黄系付臭剤の量を評価するために、冷媒、硫黄系付臭剤およびPAGを混合した冷媒ガスを表1に示す条件で準備した。使用したPAGは、m=7、n=36、RおよびRはCHであった。また、冷媒ガス中の硫黄系付臭剤(THT)の濃度を表2に示す。
Figure 0007162786000002
Figure 0007162786000003
上記冷媒ガスを試験容器に封入し、140℃下で振とうすることで冷媒ガスを攪拌した後、25℃下で静置した。静置開始から24時間経過した後に、試験容器の放出口にテドラーバッグ(アズワン株式会社製 1-2711-05)を接続し、25℃下で冷媒ガスを回収した。回収した冷媒ガスについて、ガスクロマトグラフ質量分析計(日本電子株式会社製 JMS-K9)を使用してTHTの濃度を測定した。
封入した冷媒ガス中のTHTの濃度と、回収した冷媒ガス中のTHTの濃度との関係を図3に示す。回収した冷媒ガス中のTHTの濃度は、封入した冷媒ガス中のTHTの濃度が2.3重量ppmから987重量ppmの範囲において直線関係で増加し、987重量ppmから2230重量ppmの範囲では傾きがより大きな直線関係で増加した。図3中の近似線の数式は、THTの濃度が2.3重量ppmから987重量ppmの範囲においてy=0.047xであり、987重量ppmから2230重量ppmの範囲においてy=1.66x-774であった。すなわち、封入した冷媒ガス中のTHTの濃度が2.3重量ppmから987重量ppmの範囲において、R-290と共に放出されたTHTの量は、封入したTHTのうちの約4.7%分であり、残りの約95.3%分はPAGに溶解した状態のまま、ガスとして放出されなかった。
以上のように、R-290にTHTを混合しても、PAGがTHTを溶解させるため、封入した冷媒ガス中のTHTのうち、一部しかR-290と共に放出されず、冷媒を冷凍サイクル装置から放出させた場合にも冷媒を嗅覚で検知されにくくなることが確認された。
<評価試験2>
空気中の硫黄系付臭剤の濃度と臭気の強さとの関係を定量評価するために、空気と硫黄系付臭剤(THT)とを混合したサンプルガスを表3に示す条件で準備した。また、サンプルガス中のTHTの濃度を表4に示す。
Figure 0007162786000004
Figure 0007162786000005
上記サンプルガスについて、臭気指数(相当値)を測定した。ここで、「臭気指数」とは、人間の嗅覚を用いてにおいの程度を数値化したものであり、臭気成分の臭気濃度(においを人間の嗅覚で感じなくなるまで空気で薄めたときの臭気成分の濃度)の常用対数に10を乗じた値である。また、「臭気指数(相当値)」とは、におい識別装置による測定で得られる、臭気指数に相当する数値である。測定は、キャリアガスとして窒素(N)を使用し、キャリアガスによるサンプルの希釈倍率は100倍に設定した。
サンプルガス中のTHTの濃度と臭気指数(相当値)との関係を図4に示す。サンプルガス中のTHTの濃度と臭気指数(相当値)とは、対数関数の関係であった。これは、臭気物質の濃度と臭気の強さとの関係を表すWeber-Fechnerの法則に則った結果が得られていることを意味する。なお、本試験において、THTを希釈するガスとして高純度空気を使用したが、THTがR-290で希釈された場合についても、R-290は無臭であるため、THTの濃度と臭気指数(相当値)とは同じ相関が得られるものとみなされる。
また、臭気指数は、6段階臭気強度表示法における臭気強度と表5のような関係にある。表5に示したTHTの濃度は、図4のTHTの濃度と臭気指数(相当値)との関係から、臭気強度2.5から3.5に対応したTHTの濃度を求めた結果である。
Figure 0007162786000006
冷媒を嗅覚で認識するためには、冷媒に含まれる硫黄系付臭剤の存在を認識する必要がある。すなわち、冷媒の臭気強度が2(何のにおいかがわかる弱いにおい)以上であることが好ましく、3(楽に感知できるにおい)以上であることがより好ましい。
冷媒回路から大気中に放出された冷媒は、空気で希釈されてTHTの濃度が低下する。天然ガスの付臭処理に関する国際規格ISO-13734において、天然ガスはそのLFL(Lower Flammability Limit)の20体積%に希釈された場合にも臭気を有することが必要と記載されている。ISO-817において、R-290のLFLは21000体積ppmとされているため、LFLの20%は4200体積ppmである。
また、ガスの付臭処理に関する日本の省令(ガス工作物の技術上の基準を定める省令(平成十二年通商産業省令第百十一号))には、ガスの付臭処理について、「ガスの空気中の混合容積比率が千分の一である場合に臭気の有無が感知できる」ことが必要と記載されている。すなわち、空気中でR-290の濃度が1000体積ppmに希釈された場合にも、臭気によってR-290を認識可能である必要があり、ISO-13734よりも強い付臭処理が求められている。
R-290が1000ppm含まれている空気とTHTとの混合ガスにおいて、混合ガスの臭気強度を2以上とするには、THTが2.1体積ppb以上の濃度で含まれている必要がある。すなわち、R-290とTHTとの混合ガスにおいて、THTが2.1体積ppm(4.2重量ppm)以上含まれている必要がある。
また、混合ガスの臭気強度を3以上とするには、THTが4.1体積ppb以上の濃度で含まれている必要がある。すなわち、R-290とTHTとの混合ガスにおいて、THTが4.1体積ppm(8.2重量ppm)以上含まれている必要がある。
以上のように、サンプルガス中のTHTの濃度と臭気の強さとの関係を定量的に明らかにすることで、冷媒を嗅覚で認識するのに必要なTHTの濃度が確認された。
図3に示した評価試験1の結果において、放出された冷媒ガス中のTHT濃度が4.2重量ppmおよび8.2重量ppmとなるTHTの濃度は、それぞれ90重量ppmおよび176重量ppmである。すなわち、評価試験1で使用したPAGを冷凍サイクル装置に使用する場合、冷媒中のTHTの濃度が90重量ppm以上であれば、冷媒回路から放出された冷媒ガスが空気中で1/1000倍に希釈されても、嗅覚で認識可能となる。
その一方で、冷媒ガスを含んだ空気の臭気強度が5(強烈なにおい)となると、放出された冷媒ガスの臭気が不快すぎる。図3に示した評価試験1の結果において、放出された冷媒中のTHTの濃度が77体積ppm(154重量ppm)となるTHTの濃度は、514体積ppm(1026重量ppm)である。つまり、表2に示したPAGを冷凍サイクル装置に使用する場合、冷媒中のTHT濃度が1026重量ppm未満であれば、冷媒回路から放出された冷媒ガスが空気中で1/1000倍に希釈されたときに、不快すぎる臭気とはならない。
<評価試験3>
PAGの分子構造による評価試験1の結果への影響を確認するため、冷媒として硫黄系付臭剤(THT)を含むR-290と、表6に示すPAGとを混合した冷媒ガスを表7に示す条件で準備した。冷媒中のTHTの濃度は、表5に記載の冷媒の臭気強度が3となるように600重量ppmとした。
Figure 0007162786000007
Figure 0007162786000008
表6に示したPAGの分子構造は、それぞれのPAGの組成物の数平均重合度を基に決定した値である。また、O/C比は、分子構造中の酸素原子(O)数と炭素原子(C)数の比率を有効数字2桁で表した値である。
上記冷媒ガスを試験容器に封入し、140℃下で振とうすることで冷媒ガスを攪拌した後、25℃下で静置した。静置開始から24時間経過した後に、試験容器の放出口にテドラーバッグ(アズワン株式会社製 1-2711-05)を接続し、25℃下で冷媒ガスを回収した。回収した冷媒ガスについて、高純度空気(住友精化株式会社製 ZERO-A)を使用して1/1000倍に希釈した後に、文献(大気汚染学会誌,第27巻,第2号,P.A17-A24,1992年)を参考に、臭気官能試験法による臭気強度の評価を実施した。回収した冷媒ガスの臭気強度を6段階臭気強度表示法で表した結果を表8に示す。評価は、臭気強度が2以上を「A」、臭気強度が2以上を「B」とし、5名の試験者によって実施した。
Figure 0007162786000009
上記評価の結果、O/C比が0.43以下のPAG(試験No.3~13)を混合した冷媒ガスは、臭気強度2(何のにおいかがわかる弱いにおい)から臭気強度4(強いにおい)の範囲の臭気であり、冷媒ガスにTHTが含まれていることが確認できた。一方、O/C比が0.53以上のPAG(試験No.1および2)を混合した冷媒ガスは、臭気強度0(無臭)から臭気強度1(やっと感知できる臭い)の範囲の臭気であり、冷媒ガスにTHTが含まれていることが確認できなかった。
この結果は、THTがPAGに溶解して冷媒ガスとともに放出されなくなる量が、PAGの分子構造における極性基(C-O-CおよびC-O-H)の比率によって説明できることを意味する。
THTは、分子内に電荷の偏りによる双極子モーメントを有する極性分子である。文献(J.Am.Chem.Soc.,Vol.61,P.1769-1780,1939)によると、THTの双極子モーメントの大きさは1.87Dである。極性溶媒とされているHOおよびCHOHの双極子モーメントが、それぞれ1.9Dおよび1.7Dであることからも、THTが大きな双極子モーメントを有する極性分子であることが確認できる。
THTは極性分子であるため、PAGが有する極性基(C-O-CおよびC-O-H)との電気的な相互作用によってPAGの分子鎖に取り込まれて溶解する。O/C比が大きいPAGは、分子構造中に極性基を多数有するため、THTを取り込む強い電気的な相互作用が働く。そのため、O/C比が大きいPAGとTHTとを混合した場合、THTが放出されにくくなる。
また、R-290は、分子内に極性基を有していないため、電荷の偏りが非常に小さい無極性分子である。文献(J.Chem.Phys.,Vol.33,No.5,P.1514-1518,1960)によると、R-290の双極子モーメントは0.083Dと小さい値であり、非極性分子であることが確認できる。そのため、R-290に対するTHTの溶解性は小さく、PAGにR-290が溶解するとPAGのTHTの溶解性が低下する。O/C比が大きいPAGほど、分子構造中に極性基を多数有するため、無極性分子であるR-290の溶解性は小さい。O/C比が小さいPAGほど、R-290の溶解性が大きいため、PAGにより多くのR-290が溶解し、PAGに対するTHTの溶解性がより小さくなり、THTがより放出されやすくなる。なお、O/C比が0.50以下であることで、PAGの分子構造中の分極した原子団の割合が半分以下となり、THT放出量を増大させる効果を奏していると考えられることから、O/C比は0.50以下であることが好ましい。
以上の結果から、THTのPAGへの溶解を抑制することにより、THTをR-290とともに冷媒回路で循環させるためには、O/C比が0.43以下のPAGを使用することが好ましい。
また、評価試験1で示した結果は、R-290以外の炭素数1から4個の炭化水素、THT以外の硫黄系付臭剤、PAG以外の冷凍機油を使用した場合にも同様にO/C比と臭気強度との関係が得られると考えられる。その理由は、R-290以外の炭素数1から4個の炭化水素も、R-290と同様に分子内の電荷の偏りが非常に小さい無極性分子であり、THT以外の硫黄系付臭剤もTHT同様に極性分子であるからである。文献(J.Chem.Phys.,Vol.1,P.337-340,1933)によると、メルカプタン類の双極子モーメントは1.3Dから1.5D程度、スルフィド類の双極子モーメントは1.4Dから1.58D程度と報告されており、炭素数1から4個の炭化水素とは異なり、極性分子である。
<評価試験4>
評価試験3の結果より、O/C比が小さいPAGを使用することで、THTのPAGへの溶解性を小さくし、THTをR-290と共に放出させられることが確認できた。しかしながら、試験No.3~13のPAG内での冷媒の臭気強度の差異は説明することができない。そこで、HSPを使用して、PAGの分子構造とTHTの放出量との相関を調べた。THT、R-290および各試験No.のPAGのHSPを表9に示す。HSPは、コンピューターソフトウェアであるHSPiP Ver.5.3を使用し、各試験No.のPAGはVan Krevelen法で算出した。
Figure 0007162786000010
R-290とTHTとのHSP距離は、PAGとTHTとのHSP距離よりも大きい値となっており、R-290に対するTHTの溶解性は、PAGに対するTHTの溶解性よりも小さい。すなわち、PAGにR-290が溶解すると、PAGに対するTHTの溶解量は減少すると考えられる。
また、PAGとTHTとのHSP距離が大きいほど、PAGに対するTHTの溶解性は小さく、PAGとR-290とのHSP距離が小さいほど、PAGに対するR-290の溶解性は大きくなる。したがって、PAGにR-290がより多く溶解し、PAGにTHTがより溶解しにくくなる。すなわち、PAGとTHTとのHSP距離と、PAGとR-290とのHSP距離との差が大きい値であるほど、PAGへのTHTの溶解量が小さくなり、冷媒回路から放出される冷媒ガスにTHTが多く含まれると考えられる。PAGとTHTとのHSP距離と、PAGとR-290とのHSP距離との差と、評価試験3における臭気強度との関係を表10示す。
Figure 0007162786000011
上記評価の結果、PAGとTHTとのHSP距離と、PAGとR-290とのHSP距離との差が-1.6以上であることで、放出された冷媒ガスが臭気強度2以上となることが、-0.4以上であることで、放出された冷媒ガスが臭気強度3以上となることが、それぞれ確認された。
以上の結果から、THTをR-290とともに冷媒回路で循環させるためには、HSP距離の差が-1.6以上のPAGを使用することが好ましく、-0.4以上であるPAGを使用することがより好ましい。
本試験の結果の通り、HSPを用いることでPAGに対するTHTの溶解性を詳細に確認することができた。しかし、HSPはPAGの分子構造から計算する必要がある。一方、O/C比はCHNSO元素分析装置を使用することで分子構造が未知の状態でも簡易に分析することができる。
<評価試験5>
冷媒回路を有する市販の家庭用ルームエアコン(三菱電機株式会社製、室内機型番MSZ-GV5620S/室外機型番MUCZ-G5620S)を使用し、冷媒回路から放出された冷媒ガスを回収した。冷媒回路には、冷媒の主成分としてR-290を450g封入し、硫黄系付臭剤としてTHTを290mg(冷媒の質量に対して643重量ppm)封入した。圧縮機には、冷凍機油として評価試験1で用いたPAG(評価試験3の試験No.10)を400g封入した。
家庭用ルームエアコンを運転させた後に、停止させた状態で膨張弁と蒸発器の間から冷媒ガスを放出し、テドラーバッグ(アズワン株式会社製 1-2711-05)に回収した。回収した冷媒ガスについて、高純度空気(住友精化株式会社製 ZERO-A)を使用して1/1000倍に希釈し、臭気の官能評価を実施した。官能評価は評価試験3と同じく5名の試験者によって実施した。
その結果、冷媒ガスの臭気は、臭気強度3から4であった。確認のため、回収した冷媒ガスについて確認試験1と同様にガスクロマトグラフ質量分析計(日本電子株式会社製 JMS-K9)を使用してTHTの濃度を分析したところ、THTは冷媒ガス中に80重量ppm(40体積ppm)の濃度で含まれていた。すなわち、高純度空気で1/1000倍希釈されたときのTHT濃度が40体積ppbとなるため、評価試験2の臭気強度としては臭気強度4に相当し、官能評価の結果とは矛盾しないことが確認された。
以上の結果から、THTの溶解性が小さいPAGを使用することで、PAGに対するTHTの溶解が抑制され、THTをR-290とともに冷媒回路で循環させ、冷媒回路から放出される冷媒ガスを嗅覚で認識可能となることが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 室外機、2 室内機、3 圧縮機、4 凝縮器、5 室外送風機、6 膨張弁、7 蒸発器、8 室内送風機、9 液管、10 ガス管、11 シェル、12 圧縮機構、13 電動機、14 吸入管、15 吐出管、16 アキュームレーター、17 ローリングピストン、18 シリンダー、19 シリンダー室、20 上軸受、21 上軸受の吐出孔、22 マフラー空間、23 吐出マフラー、24 吐出マフラーの吐出孔、25 電動機回転子、26 電動機固定子、27 油溜部、28 駆動軸、100 冷媒回路。

Claims (6)

  1. 圧縮機を含む冷媒回路を備え、
    前記冷媒回路内に冷媒が封入されており、
    前記冷媒は、炭素数が1から4の炭化水素と、硫黄系付臭剤と、を含み、
    前記圧縮機内に冷凍機油が充填されており、
    前記冷凍機油は、ポリアルキレングリコールを含み、
    ポリアルキレングリコールの分子構造中の酸素原子数と炭素原子数の比率は、0.50以下であり、
    ポリアルキレングリコールと前記硫黄系付臭剤とのHSP距離と、ポリアルキレングリコールと前記冷媒とのHSP距離との差は、-2.0以上である、冷凍サイクル装置。
  2. ポリアルキレングリコールと前記硫黄系付臭剤とのHSP距離と、ポリアルキレングリコールと前記冷媒とのHSP距離との差は、-0.5以上である、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
  3. 前記硫黄系付臭剤は、メルカプタン類、スルフィド類およびチオフェン類からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
  4. 前記冷媒は、プロパン、プロピレンおよびイソブタンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
  5. 前記硫黄系付臭剤は、テトラヒドロチオフェンであり、
    前記冷媒は、プロパンである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
  6. 前記冷媒中の前記硫黄系付臭剤の濃度は、50重量ppm以上1100重量ppm未満である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
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