以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態に係る直流電源装置、モータ駆動装置、送風機、圧縮機及び空気調和機について説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下では、電気的な接続を単に「接続」と称して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る直流電源装置50を含むモータ駆動装置100の構成例を示す図である。実施の形態1に係る直流電源装置50は、単相の交流電源1から出力される交流電圧である電源電圧を直流電圧に変換して負荷12に印加する電源装置である。また、実施の形態1に係るモータ駆動装置100は、直流電源装置50から出力される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力をモータ500に供給してモータ500を駆動する駆動装置である。
実施の形態1に係るモータ駆動装置100は、図1に示すように、主たる構成部として、直流電源装置50と、制御部10と、負荷12とを備える。
直流電源装置50は、リアクトル2と、コンバータ3と、第1の駆動回路であるゲート駆動回路15と、平滑コンデンサ4と、電圧検出部5と、電流検出部6と、電圧検出部7と、制御電源である電源回路14と、短絡回路330とを備える。リアクトル2の一端は、交流電源1に接続され、リアクトル2の他端は、コンバータ3に接続される。リアクトル2は、交流電源1から供給される電力を一時的に蓄積する。コンバータ3は、交流電源1から出力される交流電圧を直流電圧に変換して直流母線16a,16bに出力する。直流母線16a,16bは、コンバータ3と負荷12とを接続する電気配線である。直流母線16aと直流母線16bとの間の電圧は「母線電圧」と呼ばれる。
短絡回路330は、リアクトル2とコンバータ3との間に配置される。また、短絡回路330は、コンバータ3の入力端子間に接続される。短絡回路330は、短絡スイッチング素子331と、短絡スイッチング素子331に並列に接続されるダイオードブリッジ332とを備える。短絡スイッチング素子331は、トランジスタ331aと、トランジスタ331aに並列に接続されるダイオード331bとを備える。なお、ダイオード331bは実装しなくても動作上の問題はない。トランジスタ331aの一例は、不図示の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)である。IGBTに代えて、MOSFETを用いてもよい。トランジスタ331aがMOSFETである場合、MOSFETの寄生ダイオードを、ダイオード331bとして用いてもよい。
短絡回路330は、短絡スイッチング素子331のオン動作により、リアクトル2を介して印加される交流電圧を短絡させる電源短絡動作を行う。
負荷12は、第2の駆動回路であるゲート駆動回路17と、インバータ18と、電流検出部9と、モータ500と、を備える。負荷12の構成要素のうち、モータ500を除く、ゲート駆動回路17、インバータ18及び電流検出部9がモータ駆動装置100の構成要素である。インバータ18は、直流電源装置50から出力される直流電圧をモータ500に印加する交流電圧に変換して出力する。モータ500が搭載される機器の例は、送風機、圧縮機又は空気調和機である。
なお、図1では、インバータ18に接続される機器がモータ500である例を示したが、これに限定されない。インバータ18に接続される機器は、交流電力が入力される機器であればよく、モータ500以外の機器でもよい。
コンバータ3は、第1のレグ31と、第2のレグ32とを備える。第1のレグ31と第2のレグ32とは、並列に接続されている。第1のレグ31では、第1の上アーム素子311と、第1の下アーム素子312とが直列に接続されている。第2のレグ32では、第2の上アーム素子321と、第2の下アーム素子322とが直列に接続されている。リアクトル2の他端は、第1のレグ31における第1の上アーム素子311と第1の下アーム素子312との接続点3aに接続されている。第2の上アーム素子321と第2の下アーム素子322との接続点3bは、交流電源1の他端に接続されている。コンバータ3において、接続点3a,3bは、交流端子を構成する。
なお、図1において、リアクトル2は、交流電源1の一端と、接続点3aとの間に接続されているが、交流電源1の別の一端と、接続点3bとの間に接続されていてもよい。
コンバータ3において、接続点3a,3bがある側を「交流側」と呼び、交流電源1から出力される交流電圧を「電源電圧」と呼び、電源電圧の周期を「電源周期」と呼ぶ場合がある。
第1の上アーム素子311は、スイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q1に並列に接続されるダイオードD1とを含む。第1の下アーム素子312は、スイッチング素子Q2と、スイッチング素子Q2に並列に接続されるダイオードD2とを含む。第2の上アーム素子321は、スイッチング素子Q3と、スイッチング素子Q3に並列に接続されるダイオードD3とを含む。第2の下アーム素子322は、スイッチング素子Q4と、スイッチング素子Q4に並列に接続されるダイオードD4とを含む。
ダイオードD1,D4は、電源電圧の極性が正、即ちリアクトル2に接続される側がリアクトル2に接続されない側よりも高電位であるときに、順方向の電流が流れるように配置された一方向性素子である。ダイオードD2,D3は、電源電圧の極性が負、即ちリアクトル2に接続されない側がリアクトル2に接続される側よりも高電位であるときに、順方向の電流が流れるように配置された一方向性素子である。
なお、図1では、ダイオードD1,D2,D3,D4のそれぞれにスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4が並列に接続される構成を開示しているが、これに限定されない。平滑コンデンサ4の正側に接続される2つのダイオード、即ち第1のレグ31におけるダイオードD1及び第2のレグ32におけるダイオードD3のそれぞれにスイッチング素子が接続されていればよい。或いは、平滑コンデンサ4の負側に接続される2つのダイオード、即ち第1のレグ31におけるダイオードD2及び第2のレグ32におけるダイオードD4のそれぞれにスイッチング素子が接続されていればよい。或いは、第1のレグ31における2つのダイオード、即ちダイオードD1,D2のそれぞれにスイッチング素子が接続されていればよい。或いは、第2のレグ32における2つのダイオード、即ちダイオードD3,D4のそれぞれにスイッチング素子が接続されていればよい。
また、図1では、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のそれぞれにMOSFETを例示しているが、MOSFETに限定されない。MOSFETは、ドレインとソースとの間で双方向に電流を流すことができるスイッチング素子である。ドレインに相当する第1端子とソースに相当する第2端子との間で双方向に電流を流すことができるスイッチング素子、即ち双方向素子であれば、どのようなスイッチング素子でもよい。
また、ここで言う「並列」とは、MOSFETのドレインに相当する第1端子とダイオードのカソードとが接続され、MOSFETのソースに相当する第2端子とダイオードのアノードとが接続されることを意味する。なお、ダイオードは、MOSFET自身が内部に有する寄生ダイオードを用いてもよい。寄生ダイオードは、ボディダイオードとも呼ばれる。
また、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4は、シリコン系材料により形成されたMOSFETに限定されず、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)又はダイヤモンドといったワイドバンドギャップ(Wide Band Gap:WBG)半導体により形成されたMOSFETでもよい。
一般的にWBG半導体は、シリコン半導体に比べて耐電圧及び耐熱性が高い。このため、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のうちの少なくとも1つにWBG半導体を用いることにより、スイッチング素子の耐電圧性及び許容電流密度が高くなり、スイッチング素子を組み込んだ半導体モジュールを小型化できる。
また、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4は、WBG半導体に代えて、スーパージャンクション(Super Junction:SJ)構造のMOSFETを用いてもよい。SJ-MOSFETを用いることにより、SJ-MOSFETのメリットである低オン抵抗を生かしつつ、静電容量が高くリカバリが発生しやすいというWBG半導体のデメリットを抑制できる。
図1の説明に戻る。平滑コンデンサ4の正側は、高電位側の直流母線16aに接続されている。直流母線16aは、第1のレグ31における第1の上アーム素子311と、第2のレグ32における第2の上アーム素子321との接続点3cから引き出されている。平滑コンデンサ4の負側は、低電位側の直流母線16bに接続されている。直流母線16bは、第1のレグ31における第1の下アーム素子312と、第2のレグ32における第2の下アーム素子322との接続点3dから引き出されている。コンバータ3において、接続点3c,3dは、直流端子を構成する。また、コンバータ3において、接続点3c,3dがある側を「直流側」と呼ぶ場合がある。
コンバータ3の出力電圧は、平滑コンデンサ4の両端に印加される。平滑コンデンサ4は、直流母線16a,16bに接続されている。平滑コンデンサ4は、コンバータ3の出力電圧を平滑する。平滑コンデンサ4によって平滑された電圧は、インバータ18に印加される。
電圧検出部5は、電源電圧を検出し、電源電圧の検出値Vsを制御部10に出力する。電源電圧は、交流電源1の瞬時電圧の絶対値である。なお、瞬時電圧の実効値を、電源電圧としてもよい。
電流検出部6は、交流電源1とコンバータ3との間に流れる交流電流である電源電流を検出し、電源電流の検出値Isを制御部10に出力する。電流検出部6に用いる電流検出器の一例は、交流変流器(Alternating Current Current Transformer:ACCT)である。電圧検出部7は、母線電圧を検出し、母線電圧の検出値Vdcを制御部10に出力する。
母線電圧は、コンバータ3の直流側、即ち出力側の動作状態を表す物理量である。また、電源電圧は、コンバータ3の交流側、即ち入力側の動作状態を表す物理量である。なお、これらの2つの物理量を区別するため、母線電圧を「第1の物理量」と呼び、電源電圧を「第2の物理量」と呼ぶ場合がある。また、母線電圧を検出する電圧検出部7を「第1の物理量検出部」と呼び、電源電圧を検出する電圧検出部5を「第2の物理量検出部」と呼ぶ場合がある。
電源回路14は、平滑コンデンサ4の両端に接続される。電源回路14は、平滑コンデンサ4の電圧を利用して、5V、12V、15V、24Vといった低圧の直流電圧を生成する。低圧の直流電圧は、平滑コンデンサ4に蓄積された電荷を利用して生成される。低圧の直流電圧は、動作電圧として供給先の各部に付与される。電源回路14は、例えば5Vの直流電圧を制御部10、電流検出部6などに出力する。制御部10において、5Vの直流電圧は、図1では不図示のプロセッサに印加される。
インバータ18は、上アーム素子18UPと下アーム素子18UNとが直列に接続されたレグ18Aと、上アーム素子18VPと下アーム素子18VNとが直列に接続されたレグ18Bと、上アーム素子18WPと下アーム素子18WNとが直列に接続されたレグ18Cと、を備える。レグ18A、レグ18B及びレグ18Cは、互いに並列に接続されている。
図1では、上アーム素子18UP,18VP,18WP及び下アーム素子18UN,18VN,18WNがIGBTである場合を例示しているが、これに限定されない。IGBTに代えて、MOSFET、又は集積化ゲート転流型サイリスタ(Integrated Gate Commutated Thyristor:IGCT)を用いてもよい。
上アーム素子18UPは、トランジスタ18aと、トランジスタ18aに並列に接続されるダイオード18bとを含む。他の上アーム素子18VP,18WP、及び下アーム素子18UN,18VN,18WNについても同様の構成である。ここで言う「並列」とは、IGBTのエミッタに相当する第1端子にダイオードのアノード側が接続され、IGBTのコレクタに相当する第2端子にダイオードのカソード側が接続されることを意味する。
なお、図1は、上アーム素子と下アーム素子とが直列に接続されるレグを3つ備える構成であるが、この構成に限定されない。レグの数は4つ以上でもよい。また、図1に示す回路構成は、三相モータであるモータ500に合わせたものである。モータ500が単相モータの場合、インバータ18も単相モータに対応した構成とされる。具体的には、上アーム素子と下アーム素子とが直列に接続されるレグを2つ備える構成となる。なお、モータ500が単相モータ及び三相モータの何れの場合も、1つのレグが複数対の上下アーム素子で構成されていてもよい。
上アーム素子18UP,18VP,18WP及び下アーム素子18UN,18VN,18WNのトランジスタ18aがMOSFETである場合、上アーム素子18UP,18VP,18WP及び下アーム素子18UN,18VN,18WNは、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドといったWBG半導体により形成されていてもよい。WBG半導体により形成されたMOSFETを用いれば、耐電圧性及び耐熱性の効果を享受することができる。
上アーム素子18UPと下アーム素子18UNとの接続点26aはモータ500の第1の相(例えばU相)に接続され、上アーム素子18VPと下アーム素子18VNとの接続点26bはモータ500の第2の相(例えばV相)に接続され、上アーム素子18WPと下アーム素子18WNとの接続点26cはモータ500の第3の相(例えばW相)に接続されている。インバータ18において、接続点26a,26b,26cは、交流端子を構成する。
電流検出部9は、インバータ18とモータ500との間に流れるモータ電流を検出し、モータ電流の検出値Iuvwを制御部10に出力する。
制御部10は、電圧検出部5の検出値Vs、電流検出部6の検出値Is、及び電圧検出部7の検出値Vdcに基づいて、コンバータ3内の各スイッチング素子を制御するための制御信号S311~S322と、短絡回路330の短絡スイッチング素子331を制御するための短絡制御信号S331とを生成する。
制御信号S311は、スイッチング素子Q1を制御するための制御信号であり、制御信号S322は、スイッチング素子Q4を制御するための制御信号である。スイッチング素子Q2,Q3も制御部10からの制御信号によって制御される。制御部10によって生成された制御信号S311~S322は、ゲート駆動回路15に入力される。
なお、以下では、制御信号S311~S322に従った各アーム素子の動作を適宜「スイッチング動作」と呼ぶ。また、短絡制御信号S331に従った短絡スイッチング素子331の動作を適宜「短絡スイッチング動作」と呼ぶ。
また、制御部10は、電圧検出部7の検出値Vdc及び電流検出部9の検出値Iuvwに基づいて、モータ500が所望の回転数で回転するように、インバータ18に具備される各スイッチング素子を制御するための制御信号S1~S6を生成する。インバータ18は三相の回路構成であり、三相の回路構成に対応して6つのスイッチング素子を有する。また、6つのスイッチング素子に対応して、6つの制御信号S1~S6が生成される。制御部10によって生成された制御信号S1~S6は、ゲート駆動回路17に入力される。
ゲート駆動回路15は、制御信号S311~S322に基づいて、コンバータ3内の各スイッチング素子を駆動するための駆動パルスG311~G322を生成する。駆動パルスG311は、スイッチング素子Q1を駆動するための駆動パルスであり、駆動パルスG322は、スイッチング素子Q4を駆動するための駆動パルスである。スイッチング素子Q2,Q3もゲート駆動回路15からの駆動パルスによって駆動される。
ゲート駆動回路17は、制御信号S1~S6に基づいて、インバータ18内の各スイッチング素子を駆動するための駆動パルスG1~G6を生成する。
なお、図1では、制御部10は、短絡回路330、直流電源装置50及び負荷12を制御する共通の制御部としてモータ駆動装置100の内部に設けられているが、この構成に限定されない。直流電源装置50及び負荷12のそれぞれを制御する個別の制御部を構成し、それぞれの制御部が、直流電源装置50及び負荷12のそれぞれの内部に設けられていてもよい。また、短絡回路330を制御する制御部は、直流電源装置50を制御する制御部内に設けられるのが一般的である。
次に、実施の形態1に係るモータ駆動装置100の基本的な動作を説明する。まず、第1のレグ31では、第1の上アーム素子311及び第1の下アーム素子312は相補的、又は同時にオン状態とならないように動作する。即ち、第1の上アーム素子311及び第1の下アーム素子312のうち、一方がオンの場合には他方はオフである。前述したように、第1の上アーム素子311及び第1の下アーム素子312は、制御部10により生成される制御信号S311,S312により制御される。制御信号S311,S312の一例は、パルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)信号である。
交流電源1及びリアクトル2を介した平滑コンデンサ4の短絡を防ぐため、交流電源1から出力される電源電流の検出値Isの絶対値が電流閾値以下の場合には、第1の上アーム素子311及び第1の下アーム素子312は、共にオフとなる。以下では、平滑コンデンサ4の短絡を「コンデンサ短絡」と呼ぶ。コンデンサ短絡は、平滑コンデンサ4に蓄えられたエネルギーが放出され、交流電源1に電流が回生される状態である。
前述したように、第2のレグ32を構成する第2の上アーム素子321及び第2の下アーム素子322は、制御部10により生成される制御信号S321,S322により制御される。第2の上アーム素子321及び第2の下アーム素子322は、基本的には、電源電圧の極性である電源電圧極性に応じてオン又はオフの状態となる。具体的には、電源電圧極性が正の場合、第2の下アーム素子322はオンであり、且つ、第2の上アーム素子321はオフである。また、電源電圧極性が負の場合、第2の上アーム素子321はオンであり、且つ、第2の下アーム素子322はオフである。
次に、実施の形態1におけるコンバータ3の各アーム素子の状態と実施の形態1に係るモータ駆動装置100に流れる電流の経路との関係を説明する。なお、以下の説明では、コンバータ3の各アーム素子はMOSFETであり、各アーム素子のダイオードは、MOSFET自身が内部に有する寄生ダイオードであるとする。
まず、MOSFETの構造について、図2を参照して説明する。図2は、実施の形態1のコンバータ3に用いられるMOSFETの概略構造を示す模式的断面図である。図2には、n型MOSFETが例示されている。
n型MOSFETの場合、図2に示すように、p型の半導体基板600が用いられる。半導体基板600には、ソース電極S、ドレイン電極D及びゲート電極Gが形成される。ソース電極S及びドレイン電極Dと接する部位には、高濃度の不純物がイオン注入されてn型の領域601が形成される。また、半導体基板600において、n型の領域601が形成されない部位とゲート電極Gとの間には、酸化絶縁膜602が形成される。即ち、ゲート電極Gと、半導体基板600におけるp型の領域603との間には、酸化絶縁膜602が介在している。
ゲート電極Gに正電圧が印加されると、半導体基板600におけるp型の領域603と酸化絶縁膜602との間の境界面に電子が引き寄せられ、当該境界面が負に帯電する。電子が集まった所は、電子の密度がホール密度よりも高くなりn型化する。このn型化した部分は電流の通り道となりチャネル604と呼ばれる。チャネル604は、図2の例では、n型チャネルである。MOSFETがオンに制御されることにより、通流する電流は、p型の領域603に形成される寄生ダイオードよりも、チャネル604に多く流れる。
図3は、実施の形態1におけるコンバータ3に流れる電流の経路を示す第1の図である。図3には、電源電圧極性が正であり、且つ、電源電流の検出値Isの絶対値が電流閾値よりも大きい状態が示されている。この状態では、第1の上アーム素子311及び第2の下アーム素子322はオンであり、第1の下アーム素子312、第2の上アーム素子321及び短絡スイッチング素子331はオフである。このとき、交流電源1、リアクトル2、スイッチング素子Q1、平滑コンデンサ4、スイッチング素子Q4、交流電源1の順序で電流が流れる。このように、実施の形態1では、ダイオードD1,D4に電流を流すのではなく、ダイオードD1,D4に電流が流れるタイミングで、ダイオードD1,D4に対応するスイッチング素子Q1,Q4をオン動作させて、それぞれのチャネルに電流を流す動作モードを有している。この動作は「同期整流動作」もしくは「同期整流」と呼ばれる。なお、図3では、オンしているMOSFETを丸印で示している。以降の図においても同様である。動作モードの詳細については、後述する。
図4は、実施の形態1におけるコンバータ3に流れる電流の経路を示す第2の図である。図4には、電源電圧極性が負であり、且つ、電源電流の検出値Isの絶対値が電流閾値よりも大きい状態が示されている。この状態では、第1の下アーム素子312及び第2の上アーム素子321はオンであり、第1の上アーム素子311、第2の下アーム素子322及び短絡スイッチング素子331はオフである。このとき、交流電源1、スイッチング素子Q3、平滑コンデンサ4、スイッチング素子Q2、リアクトル2、交流電源1の順序で電流が流れる。このように、実施の形態1では、ダイオードD3,D2に電流を流すのではなく、スイッチング素子Q3,Q2のそれぞれのチャネルに電流を流す同期整流動作が行われる場合がある。
図5は、実施の形態1におけるコンバータ3に流れる電流の経路を示す第3の図である。図5には、電源電圧極性が正であり、且つ、電源電流の検出値Isの絶対値が電流閾値より大きい状態が示されている。この状態では、短絡スイッチング素子331はオンであり、第1の上アーム素子311、第1の下アーム素子312、第2の上アーム素子321及び第2の下アーム素子322はオフである。このとき、交流電源1、リアクトル2、ダイオードブリッジ332、短絡スイッチング素子331、ダイオードブリッジ332、交流電源1の順序で電流が流れる。これにより、平滑コンデンサ4を経由しない電源短絡経路が形成される。この例のように、実施の形態1では、各アーム素子に電流を流すことなく、短絡スイッチング素子331及びダイオードブリッジ332に電流を流すことで電源短絡経路を形成するモードを用意している。
図6は、実施の形態1におけるコンバータ3に流れる電流の経路を示す第4の図である。図6には、電源電圧極性が負であり、且つ、電源電流の検出値Isの絶対値が電流閾値より大きい状態が示されている。この状態では、短絡スイッチング素子331はオンであり、第1の上アーム素子311、第1の下アーム素子312、第2の上アーム素子321及び第2の下アーム素子322はオフである。このとき、交流電源1、ダイオードブリッジ332、短絡スイッチング素子331、ダイオードブリッジ332、リアクトル2、交流電源1の順序で電流が流れる。これにより、平滑コンデンサ4を経由しない電源短絡経路が形成される。この例のように、実施の形態1では、各アーム素子に電流を流すことなく、短絡スイッチング素子331及びダイオードブリッジ332に電流を流すことで電源短絡経路を形成するモードを用意している。
制御部10は、以上に述べた電流経路の切り替えを制御することで、電源電流及び母線電圧の値を制御できる。モータ駆動装置100は、電源電圧極性が正のときは、図3に示す動作と図5に示す動作とを連続的に切り替える。また、モータ駆動装置100は、電源電圧極性が負のときは、図4に示す動作と図6に示す動作とを連続的に切り替える。これにより、母線電圧を上昇させ、又は母線電圧の上昇を抑制する母線電圧制御、力率及び電源高調波を改善するための電流制御、並びに運転効率を改善するための同期整流を実現することができる。
次に、図7及び図8を参照して、実施の形態1の直流電源装置50において使用する動作モードについて説明する。図7は、実施の形態1における動作モードの特徴を説明する図である。図8は、図7に示す動作モードで動作させたときの動作波形の第1の例を示す図である。
図7には、(a)整流モード、(b)同期整流モード、(c)低速スイッチングモード、(d)高速スイッチングモードという4つの動作モードが記載されている。それぞれの動作モードは、同期整流、及び短絡スイッチング動作という2つの制御の実施の有無の組合せで区分される。同期整流は、前述した通りであり、運転効率改善のために行う。短絡スイッチング動作は、母線電圧の制御、コンバータ3に流出入する電流の力率改善及び高調波抑制のために行う。なお、低速スイッチングモードを「第1のスイッチングモード」と呼び、高速スイッチングモードを「第2のスイッチングモード」と呼ぶ場合がある。また、整流モードによる動作を「ダイオード整流動作」と呼び、同期整流モードによる動作を「同期整流動作」と呼ぶ場合がある。また、第1のスイッチングモードによる動作を「第1のスイッチング動作」と呼び、第2のスイッチングモードによる動作を「第2のスイッチング動作」と呼ぶ場合がある。
実施の形態1における直流電源装置50は、整流モードを有し、更に、同期整流モード、低速スイッチングモード及び高速スイッチングモードのうちの少なくとも1つの動作モードを有する。なお、昇圧動作が必要とされない用途又は製品では、低速スイッチングモード及び高速スイッチングモードを有していなくてもよい場合がある。
図8(a)には、整流モードで動作させたときの動作波形が示されている。具体的には、上部側から、電源電圧、電源電流、及びスイッチング素子Q1~Q4のそれぞれを制御する制御信号S311~S322の波形が示されている。他の動作モードも同様である。整流モードにおいては、スイッチング素子Q1~Q4及び短絡スイッチング素子331を制御する必要がないため、ゲート駆動回路15を動作させる駆動電源及び短絡スイッチング素子331を動作させる駆動電源の消費が抑えられるという利点がある。また、スイッチング素子Q1~Q4及び短絡スイッチング素子331を制御する必要がないため、制御が容易であるという利点がある。
図8(b)には、同期整流モードで動作させたときの動作波形が示されている。同期整流モードにおいては、寄生ダイオードに通流するタイミングで対応するスイッチング素子をオン状態として、スイッチング素子のチャネル側に通流させる動作モードである。図8(b)の例では、寄生ダイオードに通流するタイミングでスイッチング素子Q1,Q4、又はスイッチング素子Q2,Q3をオンに制御している。同期整流モードを使用すると、特に流れる電流が小さい場合に、高効率化を図ることが可能である。なお、同期整流モードは、通流する素子を寄生ダイオードからスイッチング素子に置き換えただけである。このため、電流制御及び母線電圧制御は実施されない。
図8(c)には、低速スイッチングモードで動作させたときの動作波形が示されている。低速スイッチングモードは、電源周期の半周期に1回以上、リアクトル2を介して電源電圧を短絡させる動作モード、言い替えると電源周期の半周期内に局所的に電源短絡を行わせる動作モードである。図8(c)の例では、電源電圧の半周期ごとに、短絡スイッチング素子331によって、2回の短絡動作が行われている。短絡動作を行うことで、リアクトル2にエネルギーが蓄積される。エネルギーの蓄積後に短絡動作を解除すると、リアクトル2に蓄積されたエネルギーが平滑コンデンサ4に移送されて蓄積される。これにより、平滑コンデンサ4の電圧、即ち母線電圧の昇圧が可能となる。
母線電圧の昇圧量については、母線電圧制御によって調整される。母線電圧制御には、比例積分制御器などが用いられる。母線電圧制御では、母線電圧の検出値Vdcが目標電圧に近づくようにコンバータ3の動作が制御される。また、母線電圧制御では、リアクトル2を介して電源電圧を短絡させるときの短絡時間が制御される。また、母線電圧制御では、比例積分制御器の応答時間を変化させることにより、負荷変動の発生に起因して生じ得る母線電圧の過大な上昇を抑制することができる。
低速スイッチングモードでは、短絡動作によって短絡電流を流すことができる。これにより、電源電流の通流幅の拡大によって、力率の改善及び高調波電流の抑制を図ることができる。電流波形の改善に関しては、電源電圧のゼロクロス点を基準にして短絡動作を行わせるタイミングを予め決めておき、負荷に応じて参照する形をとってもよい。或いは、電源電流を検出し、検出した電流波形が正弦波に近づくように短絡時間を制御してもよい。なお、低速スイッチングモードにおいては短絡動作させる動作時間が短いため、高調波ノイズの発生を抑制することが可能である。
図8(d)には、高速スイッチングモードで動作させたときの動作波形が示されている。高速スイッチングモードは、電源電圧の1周期の全域に亘って、前述した電源短絡動作を行わせる動作モードである。電源短絡動作の意義は、低速スイッチングモードと同じである。即ち、電源短絡動作を行うことでリアクトル2にエネルギーを蓄積し、エネルギーの蓄積後に短絡動作を解除することで、リアクトル2に蓄積されたエネルギーを平滑コンデンサ4に移送する。これにより、母線電圧の昇圧が可能である。母線電圧の昇圧量の制御についても、低速スイッチングモードと同様な制御で実現することができる。
前述したように、高速スイッチングモードでは、電源電圧の1周期の全域に亘って短絡動作が行われるので、低速スイッチングモードよりも電流の通流幅が拡大する。これにより、低速スイッチングモードに比して、更なる力率改善及び高調波電流の抑制を図ることができる。また、高速スイッチングモードにおいては、力率を1近くの値に制御可能である。これにより、特に高負荷側において、ブレーカ容量の限界まで負荷を駆動することができ、装置のハイパワー化を図ることができる。
次に、図1に示すゲート駆動回路15がブートストラップ回路を備える構成である場合の効果について説明する。ここでは、まず、ブートストラップ回路について、図9を参照して説明する。図9は、実施の形態1におけるゲート駆動回路15の構成例を示す図である。
図9において、ゲート駆動回路15は、駆動回路51,52と、ブートストラップ回路54とを備える。駆動回路51は、第1のレグ31の第1の上アーム素子311を駆動する際に用いられる駆動回路である。駆動回路52は、第1のレグ31の第1の下アーム素子312を駆動する際に用いられる駆動回路である。第2のレグ32の第2の上アーム素子321及び第2の下アーム素子322も同様な2つの駆動回路で駆動される。
ブートストラップ回路54は、抵抗54aと、ダイオード54bと、ブートストラップコンデンサであるコンデンサ54cとを備えている。コンデンサ54cには、抵抗54aとダイオード54bとによる直列回路を介して駆動電源55から駆動電圧が印加される。このように構成されたブートストラップ回路54において、下アームのスイッチング素子Q2,Q4がオン動作すると、抵抗54a、ダイオード54b、コンデンサ54c、下アームのスイッチング素子Q2,Q4によって電流が流れ、コンデンサ54cが充電される。コンデンサ54cの充電電圧は、上アームのスイッチング素子Q1,Q3を駆動するためのゲート駆動電圧となる。
図9の例のように、ブートストラップ回路54を備えたゲート駆動回路15では、上アームのスイッチング素子Q1,Q3を駆動するためのゲート駆動電圧は、下アームのスイッチング素子Q2,Q4をオン動作させることで得られる。
図8(b)~(d)のスイッチングパターンによれば、スイッチング素子Q1~Q4のうち、下アーム素子であるスイッチング素子Q2,Q4は、電源電圧の半周期の間交互にオン動作するように制御される。下アームのスイッチング素子Q2,Q4が動作すると、前述のようにブートストラップ回路54のコンデンサ54cが充電される。このため、図8のような制御信号S311~S322とすれば、上アームのスイッチング素子Q1,Q3を駆動するためのゲート駆動電圧を確実に生成することが可能となる。
また、図10は、図7に示す動作モードで動作させたときの動作波形の第2の例を示す図である。図10(b)は、図8(b)に示す制御信号S311,S322及び短絡制御信号S331はそのままで、制御信号S312と制御信号S321とを入れ替えたものである。このように入れ替えても、下アームのスイッチング素子Q2,Q4がオン動作する時間は充分に与えられている。これにより、上アームのスイッチング素子Q1,Q3を駆動するためのゲート駆動電圧を確実に生成することが可能となる。
また、図11は、図7に示す動作モードで動作させたときの動作波形の第3の例を示す図である。図11(b)~(d)では、少なくともスイッチング素子Q1,Q2の動作を電源周期の1周期の全域に亘って停止させている。スイッチング素子Q1,Q2の動作を電源周期の1周期の全域に亘って停止させても同期整流が行われないだけであり、整流動作としては問題ない。また、詳細は後述するが、各アーム素子に流れる電流が大きい場合には、MOSFETのチャネルを通流させるよりも、寄生ダイオード又は並列に接続されたダイオードを通流させることにより損失が改善する場合がある。従って、スイッチング素子の温度上昇の度合いによって、図8、図10又は図11の動作を適宜入れ替えてもよい。
また、図11(b)~(d)のスイッチングパターンでは、同時に2つ以上のスイッチング素子がオンすることはない。このため、ダイオードD1~D4のうちの少なくとも1つのダイオードにより電流がブロックされるので、コンデンサ短絡を確実に防止することができる。
また、図8、図10及び図11の各(c),(d)のスイッチングパターンでは、スイッチング素子Q1~Q4による電源短絡動作を用いずに、短絡スイッチング素子331のみを用いて電源短絡を実現できる。以下、この制御による効果について説明する。
例えばスイッチング素子Q1,Q3をオン動作させて電源短絡動作を行う場合、スイッチング素子Q4をオン状態とすると、平滑コンデンサ4、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4のルートでコンデンサ短絡が生じてしまう。このため、スイッチング素子Q3がオン状態の場合には、スイッチング素子Q4はオフ状態とする必要がある。その後、同期整流を行う場合には、スイッチング素子Q3をオフ状態に制御した上で、スイッチング素子Q4をオン動作させる必要があり、制御が煩雑となる。一方、短絡回路330の短絡スイッチング素子331を動作させることで電源短絡を実現すれば、スイッチング素子Q3,Q4を相補的に動作させることなく、電源短絡動作と同期整流動作とを両立することができる。具体的には、短絡スイッチング素子331をオフ状態にしてから、スイッチング素子Q1~Q4をオン状態に制御すればよい。また、短絡スイッチング素子331が複数回オン状態に制御される場合には、短絡スイッチング素子331がオフするタイミングで、スイッチング素子Q1~Q4をオン状態とすればよい。何れの場合も、同期整流の効果を得ることができる。
また、スイッチング素子Q1,Q2及びスイッチング素子Q3,Q4の相補動作が行われない場合、スイッチング素子Q1,Q2及びスイッチング素子Q3,Q4が同時にオン状態となることを防止する短絡防止時間であるデッドタイムを設ける必要がなくなる。デッドタイムを設けない制御とすれば、制御による指令値と実際の指令値とが一致する一致性が高められる。これにより、制御性及び制御安定性を向上させつつ、効率を高めることができる。
特に、図11(d)のスイッチングパターンでは、電源電圧の1周期の全域に亘って、コンバータ3における全てのスイッチング素子Q1~Q4がオフ動作である。これにより、制御性及び制御安定性を向上することができる。また、スイッチング素子がオン動作しないので、コンデンサ短絡を確実に防止することができる。
また、図8及び図11の各(d)のスイッチングパターンでは、電源電圧の1周期の全域に亘って、上アームのスイッチング素子Q1,Q3がオフ動作である。これにより、上アームのスイッチング素子Q1,Q3を駆動する駆動回路51の消費電力を抑制することができる。駆動回路51の消費電力は、スイッチング回数に比例して増加するので、スイッチング回数の多い第2のスイッチング動作時に実施するのは、消費電力低減及び効率改善に有効である。更に、スイッチング素子Q1,Q2及びスイッチング素子Q3,Q4の相補動作が行われないので、制御性及び制御安定性を向上させることができる。
また、図11(c)は、短絡スイッチング素子331が第1のスイッチング動作しているときは、第1のレグ31及び第2のレグ32のうちの何れか一方のレグの各スイッチング素子はオン動作しないスイッチングパターンである。また、図10(d)は、短絡スイッチング素子331が第2のスイッチング動作しているときは、第1のレグ31及び第2のレグ32のうちの何れか一方のレグの各スイッチング素子はオン動作しないスイッチングパターンである。従って、これらのうちの何れかのスイッチングパターンを用いれば、簡易なスイッチング制御とすることができ、制御性及び制御安定性を向上させることができる。
なお、図8、図10及び図11に示すスイッチングパターンは一例であり、これらの例に限定されない。これらの図に示される、ダイオード整流動作、同期整流動作、第1のスイッチング動作及び第2のスイッチング動作を任意に組み合わせて、任意の動作モードでスイッチング素子Q1~Q4及び短絡スイッチング素子331を動作させることができる。
次に、モータ駆動装置100で使用されるMOSFETの損失特性について説明する。図12は、実施の形態1の直流電源装置50で使用されるMOSFETの損失特性を示す図である。図12において、横軸はオン状態のMOSFETに流れる電流、及び寄生ダイオードに流れる電流を示している。また、縦軸はオン状態のスイッチング素子に電流を流すために必要な電圧、及び寄生ダイオードに電流を流すために必要な電圧を示している。
図12において、実線は寄生ダイオード順方向電圧を表している。寄生ダイオード順方向電圧は、寄生ダイオードで生じる損失を表す電流電圧特性の例である。一般的に、ダイオードは、電流値が小さいときは損失が大きいため大きな電圧が必要であるが、電流値がある値より大きくなると損失の変化率が改善されて電流電圧特性の傾きが緩和される。図12の実線で示される波形には、この特性が現れている。
また、破線は、MOSFETのドレインとソースとの間の電圧であるMOSFETドレイン-ソース電圧を表している。MOSFETドレイン-ソース電圧は、スイッチング素子のキャリアに流れる電流と、当該電流が流れることによりスイッチング素子のオン抵抗に起因して生じる損失を表す電流電圧特性の例である。MOSFETなどのスイッチング素子は、電流を流すために必要な電圧は、電流値に対して2次曲線的に増加する。図12の破線で示される波形には、この特性が現れている。
図12において、実線と破線とが交差するクロスポイントは、寄生ダイオードに流れる電流及び当該電流を流すために必要な電圧と、MOSFETに流れる電流及び当該電流を流すために必要な電圧と、が等しくなるポイントである。実施の形態1では、寄生ダイオード及びスイッチング素子の2つの電流電圧特性が交差するクロスポイントにおける電流値を「第2の電流閾値」とする。なお、前述した電流閾値、即ち電源電流の検出値Isの絶対値を比較する際に用いる電流閾値を「第1の電流閾値」と呼ぶ。図12では、第2の電流閾値を「Ith2」で表している。第2の電流閾値は、第1の電流閾値よりも大きい値である。
次に、制御部10が、同期整流モードにおいて、第1の電流閾値及び第2の電流閾値を用いてスイッチング素子をオンオフするタイミングについて説明する。図13は、実施の形態1に係る直流電源装置50において制御部10がスイッチング素子をオンするタイミングを示す図である。図13において、横軸は時間である。図13の上段部には、電源電圧及び電源電流の波形が示されている。図13の下段部には、スイッチング素子Q1,Q2が電源電流の極性に応じてオンオフが制御される電流同期のスイッチング素子であること、及びスイッチング素子Q3,Q4が電源電圧の極性に応じてオンオフが制御される電圧同期のスイッチング素子であることが示されている。また、図13には、電源電流の波形と共に、第1の電流閾値Ith1及び第2の電流閾値Ith2の値が示されている。なお、図13では交流電源1から出力される交流電力の1周期を示しているが、制御部10は、他の周期においても図13に示す制御と同様の制御を行うものとする。
制御部10は、電源電圧極性が正の場合、スイッチング素子Q4をオンし、スイッチング素子Q3をオフする。また、制御部10は、電源電圧極性が負の場合、スイッチング素子Q3をオンし、スイッチング素子Q4をオフする。なお、図13では、スイッチング素子Q4がオンからオフになるタイミングと、スイッチング素子Q3がオフからオンになるタイミングとが同じタイミングであるが、これに限定されない。制御部10は、スイッチング素子Q4がオンからオフになるタイミングと、スイッチング素子Q3がオフからオンになるタイミングとの間に、スイッチング素子Q3,Q4がともにオフになるデッドタイムを設けてもよい。同様に、制御部10は、スイッチング素子Q3がオンからオフになるタイミングと、スイッチング素子Q4がオフからオンになるタイミングとの間に、スイッチング素子Q3,Q4がともにオフになるデッドタイムを設けてもよい。
制御部10は、電源電圧極性が正の場合、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1以上になると、スイッチング素子Q1をオンする。更に、電源電流の絶対値が第2の電流閾値Ith2を超えると、スイッチング素子Q1をオフする。その後、制御部10は、電源電流の絶対値が小さくなり、電源電流の絶対値が第2の電流閾値Ith2以下になると、スイッチング素子Q1をオンする。更に、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1より小さくなると、スイッチング素子Q1をオフする。また、制御部10は、電源電圧極性が負の場合、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1以上になると、スイッチング素子Q2をオンする。更に、電源電流の絶対値が第2の電流閾値Ith2を超えると、スイッチング素子Q2をオフする。その後、制御部10は、電源電流の絶対値が小さくなり、電源電流の絶対値が第2の電流閾値Ith2以下になると、スイッチング素子Q2をオンする。更に、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1より小さくなると、スイッチング素子Q2をオフする。
制御部10は、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1以下の場合には、スイッチング素子Q1,Q3が同時にオンしないように制御し、スイッチング素子Q2,Q4が同時にオンしないように制御する。これにより、制御部10は、モータ駆動装置100においてコンデンサ短絡を防止できる。
以上の制御部10の制御によって、モータ駆動装置100は、第1のレグ31のスイッチング素子Q1,Q2による同期整流を実現できる。具体的には、制御部10は、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1以上、且つ第2の電流閾値Ith2以下の場合、この範囲で損失の小さいスイッチング素子Q1又はスイッチング素子Q2に電流を流す。また、制御部10は、電源電流の絶対値が第2の電流閾値Ith2より大きい場合、この範囲で損失の小さいダイオードD1又はダイオードD2に電流を流す。これにより、モータ駆動装置100は、電流値に応じて損失の小さい素子に電流を流すことができるので、効率の低下を抑制し、損失を低減した高効率な装置とすることができる。
なお、制御部10は、スイッチング素子Q1をオンする期間において、相補的にスイッチング素子Q1,Q2をオンオフするスイッチング制御をして昇圧動作を行ってもよい。同様に、制御部10は、スイッチング素子Q2をオンする期間において、相補的にスイッチング素子Q1,Q2をオンオフするスイッチング制御をして昇圧動作を行ってもよい。
即ち、制御部10は、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1以上、且つ第2の電流閾値Ith2以下の場合、電源電流の極性に応じて、第1のレグ31及び第2のレグ32のうちの一方の第1のレグ31を構成するスイッチング素子Q1,Q2のうちの1つのスイッチング素子のオンを許可する。また、制御部10は、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1より小さい、又は第2の電流閾値Ith2より大きい場合、スイッチング素子Q1,Q2のうちの前述のものと同じ1つのスイッチング素子のオンを禁止する。
具体的には、制御部10は、電源電流の極性が正であって、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1以上、且つ第2の電流閾値Ith2以下の場合、スイッチング素子Q1のオンを許可する。電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1より小さい、又は第2の電流閾値Ith2より大きい場合、スイッチング素子Q1のオンを禁止する。制御部10は、電源電流の極性が正であって、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1以上、且つ第2の電流閾値Ith2以下の場合、スイッチング素子Q1がオフの期間でスイッチング素子Q2をオンする。電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1より小さい、又は第2の電流閾値Ith2より大きい場合、スイッチング素子Q2のオンも禁止する。
また、制御部10は、電源電流の極性が負であって、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1以上、且つ第2の電流閾値Ith2以下の場合、スイッチング素子Q2のオンを許可する。電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1より小さい、又は第2の電流閾値Ith2より大きい場合、スイッチング素子Q2のオンを禁止する。また、制御部10は、電源電流の極性が負であって、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1以上、且つ第2の電流閾値Ith2以下の場合、スイッチング素子Q2がオフの期間でスイッチング素子Q1をオンする。電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1より小さい、又は第2の電流閾値Ith2より大きい場合、スイッチング素子Q1のオンも禁止する。
このように、制御部10は、電源電流の絶対値が第1の電流閾値Ith1以上であって、スイッチング素子の損失が寄生ダイオードの損失よりも小さい領域でスイッチング素子のオンを許可する。また、制御部10は、スイッチング素子の損失が寄生ダイオードの損失よりも大きい領域でスイッチング素子のオンを禁止する。
なお、図13の例では、制御部10は、電源電圧の極性に応じてスイッチング素子Q3,Q4のオンオフを制御し、電源電流の極性に応じてスイッチング素子Q1,Q2のオンオフを制御していたが、これに限定されない。制御部10は、電源電圧の極性に応じてスイッチング素子Q1,Q2のオンオフを制御し、電源電流の極性に応じてスイッチング素子Q3,Q4のオンオフを制御してもよい。
また、第2の電流閾値Ith2は、前述のように、寄生ダイオード及びスイッチング素子に電流を流すために必要な電圧が同じ値になるときの電流値であるが、これに限定されない。第2の電流閾値Ith2は、寄生ダイオードに電流を流すために必要な電圧の特性と、スイッチング素子に電流を流すために必要な電圧の特性とに応じて決定された値であってもよい。
例えば、第2の電流閾値Ith2を、寄生ダイオード及びスイッチング素子に電流を流すために必要な電圧が同じ値になるときの電流値より、スイッチング素子で発生するスイッチング損失分に応じて値を大きくした値にしてもよい。これにより、スイッチング素子をオンからオフに切り替える際に発生するスイッチング素子を考慮した第2の電流閾値Ith2を決定することができる。この場合、制御部10は、スイッチング素子をオンしている状態でさらに電源電流の絶対値が大きくなっても、スイッチング素子をオフすることで損失の低減が見込めないときはスイッチング素子をオンのままにする。これにより、モータ駆動装置100は、更に、効率の低下を抑制することができる。
また、第2の電流閾値Ith2を、寄生ダイオード及びスイッチング素子に電流を流すために必要な電圧が同じ値になるときの電流値に対して規定された値を加算又は減算した値にしてもよい。これにより、各素子の部品のばらつきによる特性の違いを考慮した第2の電流閾値Ith2を決定することができる。この場合、制御部10は、第2の電流閾値Ith2が寄生ダイオード及びスイッチング素子に電流を流すために必要な電圧が同じ値になるときの電流値の場合と比較して、損失の低減を改善できない可能性はある。しかしながら、制御部10は、スイッチング素子をオンしている状態でさらに電源電流の絶対値が大きくなってもスイッチング素子をオンし続ける場合よりも、損失を低減することができる。
図14は、実施の形態1における要部の動作説明に使用するフローチャートである。図14には、モータ駆動装置100の制御部10がスイッチング素子Q1,Q2をオンオフ制御する処理フローが示されている。なお、ここでは一例として、電源電流の極性が正の場合について説明する。
制御部10は、電源電流の検出値Isの絶対値|Is|と、第1の電流閾値とを比較する(ステップS21)。制御部10は、絶対値|Is|が第1の電流閾値より小さい場合(ステップS21,No)、スイッチング素子Q1のオンを禁止する(ステップS22)。制御部10は、絶対値|Is|が第1の電流閾値以上の場合(ステップS21,Yes)、絶対値|Is|と第2の電流閾値とを比較する(ステップS23)。制御部10は、絶対値|Is|が第2の電流閾値以下の場合(ステップS23,No)、スイッチング素子Q1のオンを許可する(ステップS24)。制御部10は、絶対値|Is|が第2の電流閾値より大きい場合(ステップS23,Yes)、スイッチング素子Q1のオンを禁止する(ステップS22)。制御部10は、ステップS22又はステップS24の後、ステップS21に戻って上記処理を繰り返し行う。制御部10は、電源電流の極性が負の場合、スイッチング素子Q2を対象にして、上記同様の処理を行う。
なお、上記のステップS21では、絶対値|Is|と第1の電流閾値とが等しい場合を“Yes”で判定しているが、“No”で判定してもよい。即ち、絶対値|Is|と第1の電流閾値とが等しい場合を“Yes”、又は“No”の何れで判定してもよい。また、上記のステップS23では、絶対値|Is|と第2の電流閾値とが等しい場合を“No”で判定しているが、“Yes”で判定してもよい。即ち、絶対値|Is|と第2の電流閾値とが等しい場合を“Yes”、又は“No”の何れで判定してもよい。
次に、スイッチング素子の構成について説明する。モータ駆動装置100において、スイッチング素子のスイッチング速度を速くする方法の1つに、スイッチング素子のゲート抵抗を小さくする方法が挙げられる。ゲート抵抗が小さくなる程、ゲート入力容量への充放電時間が短くなり、ターンオン期間及びターンオフ期間が短くなるため、スイッチング速度が速くなる。
しかしながら、ゲート抵抗を小さくすることでスイッチング損失を低減するには限界がある。そこで、スイッチング素子を、GaN又はSiCといったWBG半導体で構成することを例示する。スイッチング素子にWBG半導体を用いることにより、1回のスイッチング当りの損失を更に抑制することができ、より一層効率が向上し、且つ高周波スイッチングが可能となる。また、高周波スイッチングが可能となることで、リアクトル2の小型化が可能となり、モータ駆動装置100の小型化及び軽量化が可能となる。また、スイッチング素子にWBG半導体を用いることにより、スイッチング速度が向上して、スイッチング損失が抑制される。これにより、スイッチング素子が正常な動作を継続できるような放熱対策を簡素化できる。また、スイッチング素子にWBG半導体を用いることにより、スイッチング周波数を十分に高い値、例えば16kHz以上にすることができる。これにより、スイッチングに起因する騒音を抑制できる。
また、GaN半導体は、GaN層と窒化アルミニウムガリウム層との界面に2次元電子ガスが生じ、この2次元電子ガスにより、キャリアの移動度が高い。このため、GaN半導体を用いたスイッチング素子は、高速スイッチングを実現可能である。ここで、交流電源1が、50Hz又は60Hzの商用電源である場合、可聴域周波数は、16kHzから20kHzまでの範囲、即ち商用電源の周波数の266倍から400倍までの範囲となる。GaN半導体は、この可聴域周波数より高い周波数でスイッチングする場合に好適である。半導体材料として主流である珪素(Si)で構成されたスイッチング素子Q1~Q4を、数十kHz以上のスイッチング周波数で駆動した場合、スイッチング損失の比率が大きくなり、放熱対策が必須となる。これに対して、GaN半導体で構成されたスイッチング素子Q1~Q4は、数十kHz以上のスイッチング周波数、具体的には20kHzより高いスイッチング周波数で駆動した場合でも、スイッチング損失が非常に小さい。このため、放熱対策が不要になり、又は放熱対策のために利用される放熱部材のサイズを小型化でき、モータ駆動装置100の小型化及び軽量化が可能となる。また、高周波スイッチングが可能となることで、リアクトル2の小型化が可能になる。なお、雑音端子電圧規格の測定範囲にスイッチング周波数の1次成分が入らないようにするため、スイッチング周波数は、150kHz以下とすることが好ましい。
また、WBG半導体は、Si半導体に比べて静電容量が小さいため、スイッチングに起因するリカバリ電流の発生が少なく、リカバリ電流に起因する損失及びノイズの発生を抑制できる。このため、WBG半導体は、高周波スイッチングに適している。
なお、SiC半導体はGaN半導体に比べてオン抵抗が小さい。このため、第2のレグ32よりもスイッチング回数が多い第1のレグ31の第1の上アーム素子311及び第1の下アーム素子312は、GaN半導体で構成し、スイッチング回数が少ない第2のレグ32の第2の上アーム素子321及び第2の下アーム素子322は、SiC半導体で構成してもよい。これにより、SiC半導体及びGaN半導体のそれぞれの特性を最大限に生かすことができる。また、SiC半導体を、第1のレグ31よりも、スイッチング回数が少ない第2のレグ32の第2の上アーム素子321及び第2の下アーム素子322に利用することで、第2の上アーム素子321及び第2の下アーム素子322の損失のうち、導通損失が占める割合が多くなり、ターンオン損失及びターンオフ損失が小さくなる。従って、第2の上アーム素子321及び第2の下アーム素子322のスイッチングに伴う発熱の上昇が抑制され、第2のレグ32を構成する第2の上アーム素子321及び第2の下アーム素子322のチップ面積を相対的に小さくできる。これにより、チップ製造時の歩留まりが低いSiC半導体を有効に活用できる。
また、スイッチング回数が少ない第2のレグ32の第2の上アーム素子321及び第2の下アーム素子322には、スーパージャンクション構造のSJ-MOSFETを用いてもよい。SJ-MOSFETを用いることにより、SJ-MOSFETのメリットである低オン抵抗を生かしつつ、静電容量が高くリカバリが発生しやすいというデメリットを抑制できる。また、SJ-MOSFETを用いることにより、WBG半導体を用いる場合に比べて、第2のレグ32の製造コストを低減できる。
また、WBG半導体は、Si半導体に比べて耐熱性が高く、ジャンクション温度が高温でも動作が可能である。このため、WBG半導体を用いることにより、第1のレグ31及び第2のレグ32を、熱抵抗が大きい小型のチップでも構成できる。特に、チップ製造時の歩留まりが低いSiC半導体は、小型のチップに利用した方が低コスト化を実現できる。
また、WBG半導体は、100kHz程度の高周波で駆動した場合でも、スイッチング素子で発生する損失の増加が抑制されるため、リアクトル2の小型化による損失低減効果が大きくなり、広い出力帯域、即ち広い負荷条件において、高効率なコンバータを実現できる。
また、WBG半導体は、Si半導体に比べて耐熱性が高く、アーム間の損失の偏りによるスイッチングの発熱許容レベルが高いため、高周波駆動によるスイッチング損失が発生する第1のレグ31に好適である。
以上説明したように、実施の形態1によれば、第1の物理量検出部である電圧検出部7は、コンバータ3の出力側の動作状態を表す第1の物理量である母線電圧を検出し、第2の物理量検出部である電圧検出部5は、コンバータ3の入力側の動作状態を表す第2の物理量である電源電圧を検出する。第1及び第2の物理量は、制御部10に入力される。制御部10は、第1及び第2の物理量に基づいてコンバータ3の各スイッチング素子の導通を制御すると共に、スイッチング素子Q1~Q4の導通と短絡スイッチング素子331の導通とを組み合わせて、コンバータ3を異なる動作態様で動作させる動作モードを複数有する。これにより、同期整流により効率改善と、力率改善及び電源高調波抑制とを両立させることができる。
また、実施の形態1によれば、短絡スイッチング素子331が第2のスイッチング動作しているとき、制御部10は、コンバータ3における全てのスイッチング素子Q1~Q4をオフ動作とする。これにより、制御性及び制御安定性を向上することができ、コンデンサ短絡を確実に防止することができる。
また、実施の形態1によれば、短絡スイッチング素子331が第1のスイッチング動作しているとき、制御部10は、コンバータ3における第1のレグ31及び第2のレグ32のうちの何れか一方のレグのスイッチング素子をオフ動作とする。これにより、簡易なスイッチング制御とすることができ、制御性及び制御安定性を向上させることができる。
また、実施の形態1によれば、コンバータ3を駆動する駆動回路であるゲート駆動回路15は、平滑コンデンサ4の正側に接続される上アームのスイッチング素子Q1,Q3を駆動するための駆動電源であるブートストラップ回路54を備える。短絡スイッチング素子331が第2のスイッチング動作しているとき、制御部10は、コンバータ3における上アームのスイッチング素子Q1,Q3をオフ動作とする。これにより、ブートストラップ回路54の消費電力を抑制することができる。また、スイッチング素子Q1,Q2及びスイッチング素子Q3,Q4の相補動作を行わなくてよいので、制御性及び制御安定性を向上させることができる。
次に、実施の形態1における制御部10の機能を実現するためのハードウェア構成について、図15及び図16の図面を参照して説明する。図15は、実施の形態1における制御部10の機能を具現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図16は、実施の形態1における制御部10の機能を具現するハードウェア構成の他の例を示すブロック図である。
実施の形態1における制御部10の機能を実現する場合には、図15に示すように、演算を行うプロセッサ300、プロセッサ300によって読みとられるプログラムが保存されるメモリ302、及び信号の入出力を行うインタフェース304を含む構成とすることができる。
プロセッサ300は、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)といった演算手段であってもよい。また、メモリ302には、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)といった不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)を例示することができる。
メモリ302には、実施の形態1における制御部10の機能を実行するプログラムが格納されている。プロセッサ300は、インタフェース304を介して必要な情報を授受し、メモリ302に格納されたプログラムをプロセッサ300が実行し、メモリ302に格納されたテーブルをプロセッサ300が参照することにより、上述した処理を行うことができる。プロセッサ300による演算結果は、メモリ302に記憶することができる。
また、実施の形態1における制御部10の機能を実現する場合には、図16に示す処理回路305を用いることもできる。処理回路305は、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。処理回路305に入力する情報、及び処理回路305から出力する情報は、インタフェース306を介して入手することができる。なお、処理回路305を用いる構成でも、制御部10における一部の処理は、図15に示す構成のプロセッサ300で実施してもよい。
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1で説明したモータ駆動装置100の応用例について説明する。図17は、実施の形態2に係る空気調和機400の構成を示す図である。実施の形態1で説明したモータ駆動装置100は、送風機、圧縮機及び空気調和機といった製品に適用することが可能である。実施の形態2では、実施の形態1に係るモータ駆動装置100の応用例として、モータ駆動装置100を空気調和機400に適用した例について説明する。
図17において、モータ駆動装置100の出力側には、モータ500が接続されており、モータ500は、圧縮要素504に連結されている。圧縮機505は、モータ500と圧縮要素504とを備える。冷凍サイクル部506は、四方弁506a、室内熱交換器506b、膨張弁506c及び室外熱交換器506dを含む態様で構成されている。
空気調和機400の内部を循環する冷媒の流路は、圧縮要素504から、四方弁506a、室内熱交換器506b、膨張弁506c、室外熱交換器506dを経由し、再び四方弁506aを経由して、圧縮要素504へ戻る態様で構成されている。モータ駆動装置100は、交流電源1より交流電力の供給を受け、モータ500を回転させる。圧縮要素504は、モータ500が回転することによって、冷媒の圧縮動作を実行し、冷媒を冷凍サイクル部506の内部で循環させることができる。
また、空気調和機400では、出力が定格出力の半分以下である中間条件、即ち低出力条件での運転が年間を通じて支配的であるため、中間条件での年間の消費電力への寄与度が高くなる。また、空気調和機400では、モータ500の回転数が低く、モータ500の駆動に必要な母線電圧は低い傾向にある。このため、空気調和機400に用いられるスイッチング素子は、パッシブな状態で動作させることがシステム効率の面から有効である。従って、パッシブな状態から高周波スイッチング状態までの幅広い運転モードで損失の低減が可能なモータ駆動装置100は、空気調和機400にとって有用である。なお、モータ駆動装置には、実施の形態1の方式とは異なるインタリーブ方式と呼ばれる方式もある。インタリーブ方式ではリアクトル2を小型化できるが、空気調和機400では、中間条件での運転が多いため、リアクトル2を小型化する必要がない。一方、高調波の抑制及び電源力率の観点では、実施の形態1の方式の方が有効である。よって、実施の形態1に係るモータ駆動装置100は、特に空気調和機において有用である。
また、実施の形態1に係るモータ駆動装置100は、スイッチング損失を抑制できるため、モータ駆動装置100の温度上昇が抑制され、不図示の室外機送風機のサイズを小型化しても、モータ駆動装置100に搭載される基板の冷却能力を確保できる。従って、実施の形態1に係るモータ駆動装置100は、高効率であると共に4.0kW以上の高出力の空気調和機400に好適である。
また、実施の形態1に係るモータ駆動装置100を用いることにより、レグ間の発熱の偏りが低減される。これにより、スイッチング素子Q1~Q4の高周波駆動によるリアクトル2の小型化を実現でき、空気調和機400の重量の増加を抑制できる。また、実施の形態1に係るモータ駆動装置100によれば、スイッチング素子Q1~Q4の高周波駆動により、スイッチング損失が低減され、エネルギー消費率が低く、高効率の空気調和機400を実現できる。
なお、空気調和機400において、瞬時停電が発生した場合は、最初にコンバータ3の動作を停止し、その後に圧縮機駆動用のモータ500の回転を停止し、最後にファンの回転を停止するように動作させる。一般的にファンの駆動エネルギーは小さく、ファンの発熱量は小さい。このため、最後にファンの回転を停止するよう動作させることにより、コンバータ3及びインバータ18の回路部品をファンの風により冷却させることが可能となる。特に、コンバータ3の構成部品である平滑コンデンサ4の温度は高温になると容量低下を招くため、瞬時停電においても適切に冷却できるようにすることで長寿命化を図ることが可能となる。
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。