以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]外用組成物
まず、本発明の外用組成物について説明する。
ところで、皮膚の老化は、例えば、加齢に伴う、真皮線維芽細胞の活性低下や増殖能の低下、コラーゲン、ヒアルロン酸等の細胞外マトリックス成分の減少等の要因によって生じる。
このような皮膚の老化を抑制する目的で、種々の外用剤等が上市されている。また、例えば、発芽玄米を精米して発芽米とする際に得られる胚芽と胚乳の外皮を主体としてなる糠のエキスを配合した化粧料が提案されている。
しかしながら、皮膚老化防止効果のさらなる向上が求められており、従来の外用剤では、このような要求に応えることができていなかった。
そこで、本発明者は、上記のような問題の解決を目的として、鋭意研究を行い、その結果、本発明に至った。
すなわち、本発明の外用組成物は、発芽玄米の酵母による発酵液と、ビタミンC誘導体とを含有することを特徴とする。
このような外用組成物は、優れた皮膚老化防止効果を有する。より具体的には、例えば、保湿作用、線維芽細胞における細胞増殖促進作用、線維芽細胞におけるコラーゲン産生促進作用、線維芽細胞におけるヒアルロン酸産生促進作用、線維芽細胞におけるヒアルロン酸合成酵素(HAS2)のmRNA発現促進作用、表皮角化細胞における細胞増殖促進作用、表皮角化細胞におけるATP産生促進作用、表皮角化細胞におけるプロフィラグリンのmRNA発現促進作用、表皮角化細胞におけるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)のmRNA発現促進作用、表皮角化細胞におけるセラミド産生促進作用、表皮角化細胞におけるアクアポリン3(AQP3)のmRNA発現量の促進作用等において、優れた効果を発揮することができる。
これに対し、上記のような条件を満たさない場合には、満足のいく結果が得られない。
例えば、発芽玄米の発酵液およびビタミンC誘導体のうちの少なくとも一方を含まない場合や、発芽玄米の代わりに通常の玄米(発芽していない玄米)や精白された米を用いた場合には、皮膚老化防止効果を十分に高めることができない。
発芽玄米の発酵液は、酵母による発酵液であればよく、前記酵母としては、例えば、Lachancea kluyveri(ラカンセア・クルイベリ)、L.cidri、L.fermentati、L.thermotolerans、L.waltii、L.meyersii、L.dasiensis、L.nothofagi、L.mirantina、L.lanzarotensis、L.quebecensis等のラカンセア属の酵母、S.cerevisiae、S.bayanus、S.pastorianus等のサッカロミセス族の酵母、K.lactis、K.thermotolerans、K.marxianus等のKluyveromyces属の酵母等が挙げられる。中でも、ラカンセア属の酵母が好ましく、ラカンセア・クルイベリがより好ましく、受託番号NITE P-03101の酵母(ラカンセア・クルイベリ)であるのがさらに好ましい。
これにより、外用組成物による皮膚老化防止効果を、より優れたものとすることができる。
なお、受託番号NITE P-03101の酵母は、日本国東京都渋谷区西原2丁目49番10号に住所を有する独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに、2020年1月9日に「受託番号:NITE P-03101」として受託されている(受託証:通知番号2019-0684、通知年月日2020年2月10日)。
発芽玄米のコメ種は、特に限定されず、例えば、コシヒカリ、ヒノヒカリ、ユメヒカリ、ほしのゆめ、ひとめぼれ、あきたこまち等が挙げられる。
ビタミンC誘導体としては、例えば、アスコルビン酸リン酸エステルやその塩(例えば、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩(VC-MP)、L-アスコルビン酸2-りん酸エステル三ナトリウム等のアスコルビン酸リン酸エステル類、アスコルビン酸2-グルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸等の水溶性ビタミンC誘導体、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル等の脂溶性誘導体、パルミチン酸アスコルビルリン酸3ナトリウム、グリセリルオクチルアスコルビン酸等の両親媒性ビタミンC誘導体等が挙げられる。
特に、本発明の外用組成物は、ビタミンC誘導体として、アスコルビン酸リン酸エステル類を含むものであるのが好ましく、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩を含むものであるのがより好ましい。
これにより、発芽玄米の発酵液とともにビタミンC誘導体とが含まれることによる相乗効果がより顕著に発揮され、線維芽細胞によるコラーゲン産生がより顕著に促進される等、外用組成物による皮膚老化防止効果を、より優れたものとすることができる。
本発明の外用組成物中におけるビタミンC誘導体の含有率は、0.01質量%以上1.0質量%以下であるのが好ましく、0.015質量%以上0.5質量%以下であるのがより好ましく、0.02質量%以上0.1質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、発芽玄米の発酵液とビタミンC誘導体とが含まれることによる相乗効果がさらに顕著に発揮され、線維芽細胞によるコラーゲン産生がさらに顕著に促進される等、外用組成物による皮膚老化防止効果を、さらに優れたものとすることができる。
本発明の外用組成物は、上記以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、増粘剤、ゲル化剤、pH調整剤、酸化防止剤、着色剤、ラクトース等の安定化剤、グルタミン酸、アスパラギン酸等の溶解補助剤、溶媒、分散媒として機能する液状の希釈剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、エリキシル剤、芳香剤、香料、他の有効成分(薬効成分)等が挙げられる。
本発明の外用組成物中における発芽玄米の酵母による発酵液の含有率は、1.0質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、20質量%以上であるのがさらに好ましい。本発明の外用組成物中における発芽玄米の酵母による発酵液の含有率の上限値は、100質量%である。
本発明の外用組成物は、例えば、液状、固体状、半固体状等、いかなる状態のものであってもよい。また、本発明の外用組成物は、基体に担持されたものであってもよい。この場合、基体は、例えば、綿状やシート状等、いかなる形態のものであってもよい。
本発明の外用組成物は、動物(ヒトを含む)の皮膚(爪を含む)または粘膜に接触して用いるものであれば、いかなるものであってもよいが、例えば、医薬品;医薬部外品;化粧水、クリーム、乳液、美容液、美白剤、洗顔料(洗顔用クレンザーを含む)等のスキンケア製品;リップクリーム、口紅等のリップ用製品;化粧下地、チーク、ファンデーションクリーム等の化粧品;ポリッシュ、ポリッシュリムーバー、ストレンスナー、レングスナー、ハードナー、キューティクルリムーバー、ソフナー等のネイルケア製品;シェービングクリームおよびローション、脱毛剤、髭剃り後のスキンコンディショナー等の脱毛関連製品;その他、石鹸、ボディーソープ、手洗い用洗剤(ハンドソープ)、アンチエイジング剤、制汗剤、日焼け止め剤、日焼け促進剤、香水、冷却用スプレー、入浴剤等が挙げられる。中でも、本発明の外用組成物は、化粧水、クリーム、乳液および美容液よりなる群から選択されるものであるのが好ましい。
[2]外用組成物の製造方法
次に、本発明の外用組成物の製造方法について説明する。
本発明の外用組成物は、例えば、酵母により、発芽玄米液を発酵させ発酵液を得る工程と、前記発酵液にビタミンC誘導体を添加する工程とを有する方法を用いて、好適に製造することができる。
これにより、優れた皮膚老化防止効果を有する外用組成物を好適に製造することができる。
特に、本実施形態の外用組成物の製造方法は、発芽玄米と水との混合物を加熱し加熱滅菌するとともに糊化させる糊化工程と、酵素を用いて加水分解させる加水分解工程と、加水分解反応を停止させる加水分解反応停止工程と、酵母を用いた発酵を行う発酵工程と、酵母による発酵を停止させる発酵停止工程と、発酵物をろ過するろ過工程と、ビタミンC誘導体を添加するビタミンC誘導体添加工程とを有する。
以下、各工程について詳細に説明する。
[2-1]糊化工程
糊化工程では、発芽玄米と水との混合物を加熱し加熱滅菌するとともに糊化させる。
このように、発芽玄米が、発芽玄米を糊化させる工程を経て得られたものであることにより、後の工程での加水分解や発酵をより効率よく進行させることができ、外用組成物の生産性をより優れたものとすることができる。また、最終的に得られる外用組成物中において有効成分を好適な含有率で含有させることができ、外用組成物の皮膚老化防止効果をより優れたものとすることができるとともに、好ましくない未反応成分が残存することをより効果的に防止することができる。
本工程での加熱温度(最高処理温度)は、特に限定されないが、90℃以上180℃以下であるのが好ましく、100℃以上160℃以下であるのがより好ましく、110℃以上140℃以下であるのがさらに好ましい。
これにより、発芽玄米を、省エネルギーでかつより効率よく糊化させることができる。
本工程での加熱時間(例えば、90℃以上180℃以下での保持時間)は、特に限定されないが、5分間以上120分間以下であるのが好ましく、7分間以上60分間以下であるのがより好ましく、10分間以上40分間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、外用組成物の生産性をより優れたものとすることができる。また、最終的に得られる外用組成物中において有効成分を好適な含有率で含有させることができ、外用組成物の皮膚老化防止効果をより優れたものとすることができるとともに、好ましくない未反応成分が残存することをより効果的に防止することができる。
本工程で使用する水の量は、特に限定されないが、発芽玄米100質量に対して、500質量部以上20000質量部以下であるのが好ましく、1000質量部以上15000質量部以下であるのがより好ましく、3000質量部以上7000質量部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、本工程において、より効率よく発芽玄米を糊化させることができ、外用組成物の生産性をより優れたものとすることができる。また、最終的に得られる外用組成物中における有効成分の含有率が低下することをより効果的に防止することができ、外用組成物の皮膚老化防止効果をより優れたものとすることができる。
[2-2]加水分解工程
加水分解工程では、酵素を用いて発芽玄米を加水分解させる。特に、本実施形態では、糊化工程に供された発芽玄米に対して、加水分解工程を行う。
加水分解工程を有することにより、後の工程での発酵をより効率よく進行させることができ、外用組成物の生産性をより優れたものとすることができる。また、最終的に得られる外用組成物中において有効成分を好適な含有率で含有させることができ、外用組成物の皮膚老化防止効果をより優れたものとすることができるとともに、好ましくない成分が残存することをより効果的に防止することができる。
特に、本実施形態では、加水分解工程において、アミラーゼによる加水分解反応を行う。
これにより、加水分解反応をさらに好適に進行させることができ、後の工程での発酵をより効率よく進行させることができ、外用組成物の生産性をさらに優れたものとすることができる。また、最終的に得られる外用組成物中において有効成分を好適な含有率で含有させることができ、外用組成物の皮膚老化防止効果をさらに優れたものとすることができるとともに、好ましくない成分が残存することをさらに効果的に防止することができる。
特に、本実施形態では、加水分解工程として、α-アミラーゼを用いる第1の加水分解工程と、グルコアミラーゼを用いる第2の加水分解工程とを有している。
このように、α-アミラーゼを用いる加水分解工程を有することにより、澱粉に含まれるアミロースおよびアミロペクチンがオリゴ糖単位に切り出され、グルコアミラーゼによる反応を効率的に進めさせることができる。
また、グルコアミラーゼを用いる加水分解工程を有することにより、微生物の炭素源となるグルコースが効率的に生産され、後の工程での発酵をより効率よく進行させることができる。
特に、本実施形態では、α-アミラーゼを用いた第1の加水分解工程の後に、グルコアミラーゼを用いた第2の加水分解工程を行う。
このように、粘性のある澱粉を先にα-アミラーゼで液化することで、グルコアミラーゼが作用しやすくなる。
また、本実施形態では、加水分解工程において、プロテアーゼを用いた加水分解反応を行う。
これにより、玄米中のタンパク質からアミノ酸が生産され、微生物における窒素源として働くとともに肌の保湿性をさらに高めることができる。
特に、本実施形態では、α-アミラーゼを用いた第1の加水分解工程の後に、プロテアーゼを用いた第2の加水分解工程を行う。
このように、粘性のある澱粉を先にα-アミラーゼで液化することで、プロテアーゼが作用しやすくなる。
グルコアミラーゼを用いた加水分解反応と、プロテアーゼを用いた加水分解反応との順番は特に限定されないが、本実施形態では、グルコアミラーゼを用いた加水分解反応の後に、プロテアーゼを用いた加水分解反応を行う。
これにより、被処理物中に含まれるタンパク質やポリペプチドをより好適に加水分解でき、後の工程での反応をより好適に進行させることができる。
[2-2-1]第1の加水分解工程
第1の加水分解工程では、糊化工程で糊化された発芽玄米に対して、α-アミラーゼを用いた加水分解反応を行う。
これにより、糊化工程に供された発芽玄米中に含まれる澱粉等のα-1,4-結合が不規則に切断され、後の工程での反応をより好適に進行させることができる。その結果、例えば、後の工程での発酵等をより効率よく進行させることができ、外用組成物の生産性をさらに優れたものとすることができる。また、最終的に得られる外用組成物中において有効成分を好適な含有率で含有させることができ、外用組成物の皮膚老化防止効果をさらに優れたものとすることができるとともに、好ましくない成分が残存することをさらに効果的に防止することができる。
第1の加水分解工程でのα-アミラーゼの使用量は、原料として用いた発芽玄米100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であるのが好ましく、0.2質量部以上5.0質量部以下であるのがより好ましく、0.3質量部以上3.0質量部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
第1の加水分解工程での処理温度は、50℃以上85℃以下であるのが好ましく、50℃以上80℃以下であるのがより好ましく、65℃以上75℃以下であるのがさらに好ましい。
これにより、糊化工程に供された発芽玄米を、省エネルギーでかつより効率よく加水分解することができる。
第1の加水分解工程での処理時間(例えば、50℃以上85℃以下での保持時間)は、10分間以上360分間以下であるのが好ましく、20分間以上270分間以下であるのがより好ましく、30分間以上210分間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、外用組成物の生産性をより優れたものとすることができる。また、最終的に得られる外用組成物中において有効成分を好適な含有率で含有させることができ、外用組成物の皮膚老化防止効果をより優れたものとすることができるとともに、好ましくない成分が残存することをより効果的に防止することができる。
[2-2-2]第2の加水分解工程
第2の加水分解工程では、第1の加水分解工程を経た発芽玄米に対して、プロテアーゼおよびグルコアミラーゼを用いた加水分解反応を行う。
これにより、例えば、被処理物中に含まれるタンパク質やポリペプチドを好適に加水分解するとともに、被処理物中に含まれる糖鎖の非還元末端のα-1,4-結合をエキソ型に加水分解してブドウ糖分子を産生し、後の工程での反応をより好適に進行させることができる。その結果、例えば、後の工程での発酵等をより効率よく進行させることができ、外用組成物の生産性をさらに優れたものとすることができる。また、最終的に得られる外用組成物中において有効成分を好適な含有率で含有させることができ、外用組成物の皮膚老化防止効果をさらに優れたものとすることができるとともに、好ましくない成分が残存することをさらに効果的に防止することができる。
第2の加水分解工程でのプロテアーゼの使用量は、原料として用いた発芽玄米100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であるのが好ましく、0.2質量部以上5.0質量部以下であるのがより好ましく、0.3質量部以上3.0質量部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
第2の加水分解工程でのグルコアミラーゼの使用量は、原料として用いた発芽玄米100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であるのが好ましく、0.3質量部以上10質量部以下であるのがより好ましく、0.5質量部以上7.0質量部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
第2の加水分解工程での処理温度は、40℃以上70℃以下であるのが好ましく、45℃以上68℃以下であるのがより好ましく、50℃以上65℃以下であるのがさらに好ましい。
これにより、糊化工程に供された発芽玄米を、省エネルギーでかつより効率よく加水分解することができる。
第2の加水分解工程での処理時間(例えば、40℃以上70℃以下での保持時間)は、5分間以上240分間以下であるのが好ましく、10分間以上210分間以下であるのがより好ましく、20分間以上180分間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、外用組成物の生産性をより優れたものとすることができる。また、最終的に得られる外用組成物中において有効成分を好適な含有率で含有させることができ、外用組成物の皮膚老化防止効果をより優れたものとすることができるとともに、好ましくない成分が残存することをより効果的に防止することができる。
第2の加水分解工程は、第1の加水分解工程で用いたα-アミラーゼも存在する条件で行うのが好ましい。言い換えると、第2の加水分解工程は、α-アミラーゼを含む加水分解反応液中に、プロテアーゼ、グルコアミラーゼを添加して行うのが好ましい。
これにより、外用組成物の生産性をより優れたものとすることができる。また、加水分解反応をより好適に進行させることができ、最終的に得られる外用組成物中において有効成分を好適な含有率で含有させることができ、外用組成物の皮膚老化防止効果をより優れたものとすることができるとともに、好ましくない成分が残存することをより効果的に防止することができる。
上記のように、第2の加水分解工程を、第1の加水分解工程で用いたα-アミラーゼが存在する条件で行う場合、第2の加水分解工程中においても、第1の加水分解工程が進行していると言える。この場合、第1の加水分解工程の処理時間は、プロテアーゼおよびグルコアミラーゼを用いずにα-アミラーゼを用いた加水分解反応処理時間と、α-アミラーゼとともにプロテアーゼおよびグルコアミラーゼを用いた加水分解反応処理時間との和である。
[2-3]加水分解反応停止工程
加水分解反応停止工程では、上記の加水分解反応を停止させる。
本工程は、通常、酵素が失活する温度より高い温度に加熱することにより行う。
加水分解反応停止工程での加熱温度は、特に限定されないが、80℃以上130℃以下であるのが好ましく、90℃以上121℃以下であるのがより好ましい。
これにより、後の発酵工程で目的とする発酵反応をより好適に進行させることができ、外用組成物の生産性をより優れたものとすることができる。また、最終的に得られる外用組成物中において有効成分を好適な含有率で含有させることができ、外用組成物の皮膚老化防止効果をより優れたものとすることができるとともに、好ましくない成分が残存することをより効果的に防止することができる。
加水分解反応停止工程での処理時間(例えば、90℃以上121℃以下での保持時間)は、10分間以上90分間以下であるのが好ましく、20分間以上60分間以下であるのがより好ましく、30分間以上45分間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、最終的に得られる外用組成物の有効成分やその前駆物質等の変性等をより効果的に防止しつつ、省エネルギーでより好適に加水分解反応を停止させることができる。
[2-4]発酵工程
発酵工程では、上記の工程に供された組成物(発芽玄米の加水分解物を含む組成物)に対して、酵母を用いた発酵を行う。
前記酵母としては、例えば、Lachancea kluyveri(ラカンセア・クルイベリ)、L.cidri、L.fermentati、L.thermotolerans、L.waltii、L.meyersii、L.dasiensis、L.nothofagi、L.mirantina、L.lanzarotensis、L.quebecensis等のラカンセア属の酵母、S.cerevisiae、S.bayanus、S.pastorianus等のサッカロミセス族の酵母、K.lactis、K.thermotolerans、K.marxianus等のKluyveromyces属の酵母等が挙げられる。中でも、ラカンセア属の酵母が好ましく、ラカンセア・クルイベリがより好ましく、受託番号NITE P-03101の酵母(ラカンセア・クルイベリ)であるのがさらに好ましい。
これにより、外用組成物による皮膚老化防止効果を、より優れたものとすることができる。
発酵工程での処理温度は、15℃以上40℃以下であるのが好ましく、18℃以上35℃以下であるのがより好ましく、20℃以上30℃以下であるのがさらに好ましい。
これにより、発酵反応を、省エネルギーでかつより効率よく進行させることができる。
発酵工程での処理時間(例えば、15℃以上40℃以下での保持時間)は、2時間以上48時間以下であるのが好ましく、3時間以上36時間以下であるのがより好ましく、4時間以上24時間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、外用組成物の生産性をより優れたものとすることができる。また、最終的に得られる外用組成物中において有効成分を好適な含有率で含有させることができ、外用組成物の皮膚老化防止効果をより優れたものとすることができる。
[2-5]発酵停止工程
発酵停止工程では、前記酵母による発酵を停止させる。
本工程は、例えば、前記発酵工程に供された組成物に、酵母細胞壁溶解酵素を添加して前記酵母を溶菌させ、その後、加熱して殺菌することにより行うことができる。
酵母細胞壁溶解酵素としては、例えば、β-1,3-グルカナーゼ、β-1,6-グルカナーゼ、α-マンナナーゼ、キチナーゼ、リパーゼ、ケラチナーゼ等が挙げられる。中でも、酵母細胞壁溶解酵素としては、β-1,3-グルカナーゼ、β-1,6-グルカナーゼが好ましい。
これにより、酵母細胞壁をより好適に分解し、酵母内容物を発酵液中により好適に漏出させることができる。
発酵停止工程での酵母細胞壁溶解酵素の使用量は、原料として用いた発芽玄米100質量部に対して、0.2質量部以上15質量部以下であるのが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であるのがより好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、比較的短時間での処理で、前記酵母による発酵をより好適に停止させることができる。また、最終的に得られる外用組成物中に、好ましくない成分が残存することをより効果的に防止することができる。
酵母細胞壁溶解酵素が添加された組成物は、必要に応じて、加温してもよい。酵母細胞壁溶解酵素を用いた前記酵母の溶菌時における処理温度は、30℃以上65℃以下であるのが好ましく、40℃以上60℃以下であるのがより好ましく、45℃以上55℃以下であるのがさらに好ましい。
これにより、発酵停止工程を、省エネルギーでかつより効率よく進行させることができる。
酵母細胞壁溶解酵素を用いた前記酵母の溶菌の処理時間(例えば、45℃以上55℃以下での保持時間)は、0.5時間以上6時間以下であるのが好ましく、1時間以上3時間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、外用組成物の生産性をより優れたものとしつつ、前記酵母による発酵をより好適に停止させることができる。
酵母の殺菌時における処理温度は、75℃以上105℃以下であるのが好ましく、78℃以上100℃以下であるのがより好ましく、80℃以上98℃以下であるのがさらに好ましい。
これにより、最終的に得られる外用組成物の有効成分やその前駆物質等の変性等をより効果的に防止しつつ、省エネルギーでより好適に酵母の殺菌を行うことができる。
酵母の殺菌の処理時間(例えば、75℃以上105℃以下での保持時間)は、15分間以上90分間以下であるのが好ましく、20分間以上60分間以下であるのがより好ましく、30分間以上45分間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、最終的に得られる外用組成物の有効成分やその前駆物質等の変性等をより効果的に防止しつつ、省エネルギーでより好適に酵母の殺菌を行うことができる。
[2-6]ろ過工程
ろ過工程では、前記酵母による発酵を停止した組成物である発酵物をろ過する。
これにより、不溶成分を除去することができ、外用組成物の保存安定性、使用感、外観等をより優れたものとすることができる。
ろ過工程でのろ過は、例えば、珪藻土ろ過、メンブレンフィルター等を用いて行うことができる。
[2-7]ビタミンC誘導体添加工程
ビタミンC誘導体添加工程では、酵母による発芽玄米の発酵液に、ビタミンC誘導体を添加する。
ビタミンC誘導体を添加するタイミングは、特に限定されず、例えば、発酵停止工程よりも前のタイミングで系内に添加してもよいが、本実施形態では、発酵停止工程後に、ビタミンC誘導体を添加しており、特に、ろ過工程後に、ビタミンC誘導体を添加している。
これにより、線維芽細胞によるコラーゲン産生がより顕著に促進される等、外用組成物による皮膚老化防止効果を、より優れたものとすることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されない。
例えば、本発明の外用組成物は、前述した工程に加えて、さらに、他の工程を有する方法を用いて製造されたものであってもよい。このような工程としては、例えば、後処理工程としての希釈工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。
また、前述した外用組成物の製造方法の各工程の順番は、特に限定されず、前述した実施形態での各工程のうち少なくとも一部について順番を入れ替え行ってもよい。例えば、ビタミンC誘導体添加工程は、発酵工程後であって、かつ、ろ過工程前のタイミングで行ってもよい。
以下に具体的な実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に温度条件、湿度条件を示していない処理は、室温(23℃)、相対湿度50%において行ったものである。また、各種測定条件についても、特に温度条件、湿度条件を示していないものは、室温(23℃)、相対湿度50%における数値である。
[3]外用組成物の製造
(実施例1)
まず、無農薬・無化学肥料で生産された北海道産の玄米(ゆきひかり)を用意した。
この玄米100質量部に、水800質量部を加え、水流を起こした状態で、ドラム内で循環させた。
水温を30℃に調整した状態で、12時間毎に水交換を行った。
玄米から1~4mm(平均3mm)の発芽が確認された時点で、過剰な水を除去したうえで、玄米(発芽玄米)を回収し、冷凍保存した。
上記の冷凍した発芽玄米10質量部に対して、500質量部の水を加えて、121℃で20分間の加熱滅菌処理を行い、糊化させた。
次に、70℃に保持した状態で、0.1質量部のα-アミラーゼを加え、1時間酵素反応させた。
次に、60℃に保持した状態で、さらに、0.1質量部のプロテアーゼおよび0.2質量部のグルコアミラーゼを加え、2時間酵素反応させた。
その後、95℃で30分間の加熱処理を行うことにより、加水分解反応(酵素反応)を停止させた。
この発芽玄米の酵素反応物(加水分解物)に、同培地で24時間培養した10質量部のラカンセア・クルイベリ(受託番号NITE P-03101の酵母)前培養液を加え、24℃に調整し、16時間発酵させた。
次に、0.25質量部の酵母細胞壁溶解酵素を加え、50℃で1時間加熱して溶菌させ、その後、85℃で30分間加熱することにより、殺菌して発酵を停止させた。
得られた発酵物を珪藻土ろ過し、0.2μmのメンブレンフィルターを通し、発酵液を得た。
上記のようにして得られた発酵液:100質量部に、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩:0.1質量部を加え、表1に示す条件の外用組成物を得た。
(実施例2~8)
各工程での条件を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして外用組成物を製造した。
(比較例1)
ビタミンC誘導体添加工程を省略した以外は、前記実施例1と同様にして外用組成物を製造した。言い換えると、本比較例では、珪藻土ろ過により得られた発酵液を、そのまま、外用組成物として用いた。
(比較例2)
アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩と精製水とを用いて、0.1質量%のアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩を調製し、これを外用組成物とした。
前記各実施例および各比較例の外用組成物の製造条件を、表1にまとめて示す。
[4]評価
前記各実施例および各比較例に係る外用組成物について、以下の評価を行った。
[4-1]表皮角化細胞における細胞増殖促進効果
凍結した初代培養後の正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)(クラボウ社製)を、細胞の解凍と植え込みのマニュアルに従って、クラボウ社製細胞増殖培地:HuMedia-KG2を用いて、37℃、CO2濃度5%の環境下で培養した。T25cmフラスコの底面細胞が70~80%コンフルエンシーになった後、トリプシン処理により細胞を回収した。
回収した細胞の含有率が3×104個/mLとなるように、HuMedia-KG2で調整し、96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLを播種した。
24時間培養した後、ウェル中の培地を吸い取り、外用組成物を含む培地で置き換えて、72時間培養した。前記外用組成物を含む培地の代わりに、外用組成物が添加されていないHuMedia-KB2培地を交換用培地として用いたものをコントロールとした。前記外用組成物を含む培地としては、HuMedia-KB2培地と外用組成物とを質量比で90:10で混合した混合物を用いた。
表皮角化細胞増殖促進作用は、同仁堂セルカウンティングキット8を用いて生細胞数を測定することにより評価した。より詳細には以下のとおりである。すなわち、培養終了後、各ウェルの培地を抜いて、事前に調製した10質量%のWST-8を含有するHumedia-KB2培地に交換して、37℃、CO2濃度5%の環境下、2時間インキュベートした。その後、マイクロプレートリーダー(バイオレッド)にて、450nmおよび605nmの2波長における吸光度をそれぞれ測定した。得られた値より、前記外用組成物を用いなかったコントロール中の生細胞数を100として、各ウェルの生細胞数の相対値を算出し、以下の基準に従い評価した。この値が大きいほど、細胞増殖促進効果に優れていると言える。
A:生細胞数の相対値が128以上である。
B:生細胞数の相対値が118以上128未満である。
C:生細胞数の相対値が100以上118未満である。
D:生細胞数の相対値が98以上100未満である。
E:生細胞数の相対値が98未満である。
[4-2]線維芽細胞における細胞増殖促進効果
5質量%のウシ胎仔血清(FBS)を含むDMEM培地を入れた96ウェルプレートに1ウェル当たり2000個のヒト正常皮膚線維芽細胞(HDFn;GIBCO)を播いて3日間培養した後、各ウェルにFBSを含まないDMEM培地(無血清培地)に置き換えて、さらに24時間培養した。
その後、ウェル中の無血清培地を吸い取り、外用組成物を含む培地で置き換えて、4日間培養し、2日間に1回の頻度で、前記外用組成物を含む培地を交換した。前記外用組成物を含む培地の代わりに、外用組成物が添加されていない0.5質量%のFBSを含むDMEMを交換用培地として用いたものをコントロールとした。前記外用組成物を含む培地としては、0.5質量%のFBSを含むDMEMと外用組成物とを質量比で90:10で混合した混合物を用いた。
4日間の培養後、同仁堂セルカウンティングキット8に基づいて、WST-8テトラゾリウム塩を発色基質として生細胞内の脱水酵素により還元されて生成した水溶性ホルマザンを450nmの波長で測定した。生細胞数は、吸光度の値に正比例し、前記外用組成物を用いなかったコントロール中の生細胞数を100として、各ウェルの生細胞数の相対値を算出し、以下の基準に従い評価した。この値が大きいほど、細胞増殖促進効果に優れていると言える。
A:生細胞数の相対値が128以上である。
B:生細胞数の相対値が118以上128未満である。
C:生細胞数の相対値が113以上118未満である。
D:生細胞数の相対値が108以上113未満である。
E:生細胞数の相対値が108未満である。
[4-3]線維芽細胞におけるコラーゲン産生促進効果
5質量%のウシ胎仔血清(FBS)を含むDMEM培地を入れた96ウェルプレートに1ウェル当たり5000個のヒト正常皮膚線維芽細胞(HDFn;GIBCO)を播いて培養し続けた。
細胞がコンフルエント(サブコンフルエント)になったのを確認したうえ、各ウェル中の培地を吸い取り、外用組成物を含む培地で置き換えて、3日間培養した。前記外用組成物を含む培地の代わりに、外用組成物が添加されていない0.5質量%のFBSを含むDMEMを交換用培地として用いたものをコントロールとした。前記外用組成物を含む培地としては、0.5質量%のFBSを含むDMEMと外用組成物とを質量比で90:10で混合した混合物を用いた。
3日間の培養後、「コラーゲンステインキット」(コラーゲン技術研修会社製)を用いて、キットに添付されたマニュアルに従いコラーゲンの合成量を測定した。
前記外用組成物を用いなかったコントロール中のコラーゲン量を100として、各ウェルのコラーゲン量の相対値を算出し、以下の基準に従い評価した。この値が大きいほど、コラーゲン産生促進効果に優れていると言える。
A:コラーゲン量の相対値が132以上である。
B:コラーゲン量の相対値が118以上132未満である。
C:コラーゲン量の相対値が111以上118未満である。
D:コラーゲン量の相対値が108以上111未満である。
E:コラーゲン量の相対値が108未満である。
[4-4]線維芽細胞におけるヒアルロン酸産生促進効果
5質量%のウシ胎仔血清(FBS)を含むDMEM培地を入れた96ウェルプレートに1ウェル当たり5000個のヒト正常皮膚線維芽細胞(HDFn;GIBCO)を播いて培養し続けた。
細胞がコンフルエント(サブコンフルエント)になったのを確認したうえ、各ウェル中の培地を吸い取り、外用組成物を含む培地で置き換えて、3日間培養した。前記外用組成物を含む培地の代わりに、外用組成物が添加されていない0.5質量%のFBSを含むDMEMを交換用培地として用いたものをコントロールとした。前記外用組成物を含む培地としては、0.5質量%のFBSを含むDMEMと外用組成物とを質量比で90:10で混合した混合物を用いた。
3日間の培養後、培養上清を採集し、Hyaluronan Immunoassay(R&D systems Quantikine ELISA)キットを用いて、培養液中のヒアルロン酸量を定量測定した。定量結果をもとに、前記外用組成物を用いなかったコントロール中のヒアルロン酸量を100として、各ウェルのヒアルロン酸量の相対値を算出し、以下の基準に従い評価した。この値が大きいほど、ヒアルロン酸産生促進効果に優れていると言える。
A:ヒアルロン酸量の相対値が150以上である。)
B:ヒアルロン酸量の相対値が127以上150未満である。
C:ヒアルロン酸量の相対値が126以上127未満である。
D:ヒアルロン酸量の相対値が125以上126未満である。
E:ヒアルロン酸量の相対値が125未満である。
[4-5]表皮角化細胞におけるプロフィラグリンのmRNA発現促進作用
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)(クラボウ社製)を、2.5×105個/mLとなるように、HuMedia-KG2で調整した後、6ウェルプレートに1ウェル当たり2mLずつ播種した。
48時間培養した後、ウェル中の培地を吸い取り、外用組成物を含む培地で置き換えて、37℃、CO2濃度5%の環境下で72時間培養した。前記外用組成物を含む培地の代わりに、外用組成物が添加されていないHuMedia-KB2培地を交換用培地として用いたものをコントロールとした。前記外用組成物を含む培地としては、HuMedia-KB2培地と外用組成物とを質量比で99:1で混合した混合物を用いた。
その後、各ウェルの培地を除去し、RNA isolation(MACHEREY-NAGEL社、Germany)キットに添付したマニュアルに従って、RNAの抽出を行った。
抽出したRNAについて、分光光度計を用いて、260nmの波長での測定を行い、この測定結果からRNA濃度を求めた。
その後、一定濃度となるように、RNA濃度を調整し、PrimeScript RT Master Mix(タカラバイオ社)のキットを用いて、マニュアルに従ってcDNAの逆転写を行った。
逆転写で得られたcDNAを鋳型としてSYBR premix Ex TaqII(タカラバイオ社)キットを用いて、Real Time PCR装置(タカラバイオ社 Thermal Cycler Dice Real Time SystemIII)にて、プロフィラグリンの発現量を測定した。内部標準補正は、GAPDHの発現量を同時に測定することにより行った。
各実施例および各比較例についてのプロフィラグリンの発現量としては、ΔΔCt値を用いて、前記外用組成物を用いなかったコントロール中のプロフィラグリン量を1とした時の相対値を算出し、以下の基準に従い評価した。この値が大きいほど、プロフィラグリンのmRNA発現促進作用に優れていると言える。表皮角化細胞の分化促進作用を有するカルシウムを、ポジティブコントロールとして同時に測定した。
A:プロフィラグリン量の相対値が3.0以上である。
B:プロフィラグリン量の相対値が1.2以上3.0未満である。
C:プロフィラグリン量の相対値が0.4以上1.2未満である。
D:プロフィラグリン量の相対値が0.3以上0.4未満である。
E:プロフィラグリン量の相対値が0.3未満である。
[4-6]表皮角化細胞におけるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)のmRNA発現促進作用
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)(クラボウ社製)を、2.5×105個/mLとなるように、HuMedia-KB2で調整した後、6ウェルプレートに1ウェル当たり2mLずつ播種した。
24時間培養した後、ウェル中の培地を吸い取り、外用組成物を含む培地で置き換えて、さらに72時間培養した。前記外用組成物を含む培地の代わりに、外用組成物が添加されていないHuMedia-KB2培地を交換用培地として用いたものをコントロールとした。前記外用組成物を含む培地としては、HuMedia-KG2培地と外用組成物とを質量比で99:1で混合した混合物を用いた。
その後、各ウェルの培地を除去し、RNA isolation(MACHEREY-NAGEL社、Germany)キットに添付したマニュアルに従って、RNAの抽出を行った。
抽出したRNAについて、分光光度計を用いて、260nmの波長での測定を行い、この測定結果からRNA濃度を求めた。
その後、一定濃度となるように、RNA濃度を調整し、PrimeScript RT Master Mix(タカラバイオ社)のキットを用いて、マニュアルに従ってcDNAの逆転写を行った。
逆転写で得られたcDNAを鋳型としてSYBR premix Ex TaqII(タカラバイオ社)キットを用いて、Real Time PCR装置(タカラバイオ社 Thermal Cycler Dice Real Time SystemIII)にて、セリンパルミトイルトランスフェラーゼの発現量を測定した。セリンパルミトイルトランスフェラーゼは、スフィンゴ脂質の生合成における律速酵素であり、3種類のサブユニット(SPTLC1、SPTLC2、SPTLC3)から構成される複合体酵素である。本試験において、SPTLC1、SPTLC3に対して特異的なプライマーを用いてRT-PCRにてmRNA発現量を測定した。内部標準補正は、GAPDHの発現量を同時に測定することにより行った。
各実施例および各比較例についてのSPTLC1、SPTLC3の発現量としては、ΔΔCt値を用いて、前記外用組成物を用いなかったコントロール中のSPTLC1量、SPTLC3量を1とした時の相対値を算出し、以下の基準に従い評価した。この値が大きいほど、SPTのmRNA発現促進作用に優れていると言える。ポジティブコントロールとしてニコチンアミドも同時に測定した。
A:SPTLC1量、SPTLC3量の相対値が2.7以上である。
B:SPTLC1量、SPTLC3量の相対値が1.5以上2.7未満である。
C:SPTLC1量、SPTLC3量の相対値が0.6以上1.5未満である。
D:SPTLC1量、SPTLC3量の相対値が0.5以上0.6未満である。
E:SPTLC1量、SPTLC3量の相対値が0.5未満である。
上記の結果を、表2にまとめて示す。
表2から明らかなように、本発明の外用組成物では、優れた結果が得られたのに対し、各比較例では、満足のいく結果が得られなかった。