JP7162266B2 - 光スキャンデバイス、光受信デバイス、および光検出システム - Google Patents

光スキャンデバイス、光受信デバイス、および光検出システム Download PDF

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Description

本開示は、光スキャンデバイス、光受信デバイス、および光検出システムに関する。
従来、光で空間を走査(スキャン)できる種々のデバイスが提案されている。
特許文献1は、ミラーを回転させる駆動装置を用いて、光によるスキャンを行うことができる構成を開示している。
特許文献2は、2次元的に配列された複数のナノフォトニックアンテナ素子を有する光フェーズドアレイを開示している。それぞれのアンテナ素子は可変光遅延線(すなわち、位相シフタ)に光学的に結合される。この光フェーズドアレイでは、コヒーレント光ビームが導波路によってそれぞれのアンテナ素子に誘導され、位相シフタによって光ビームの位相がシフトされる。これにより、遠視野放射パターンの振幅分布を変化させることができることが開示されている。
特許文献3は、内部を光が導波する光導波層、および光導波層の上面および下面に形成された第1分布ブラッグ反射鏡を備える導波路と、導波路内に光を入射させるための光入射口と、光入射口から入射して導波路内を導波する光を出射させるために導波路の表面に形成された光出射口とを備える光偏向素子を開示している。
国際公開第2013/168266号 特表2016-508235号公報 特開2013-16591号公報
本開示の一態様は、比較的簡単な構成で、光によるスキャンを実現し得る新規な光スキャンデバイスを提供する。
本開示の一態様に係る光スキャンデバイスは、多層反射膜を備える第1のミラーと、前記多層反射膜に対向する多層反射膜を備える第2のミラーと、前記第1のミラーと前記第2のミラーの間に位置し、入力光を伝搬光として伝搬させる光導波層と、前記光導波層を間に挟んで位置する一対の電極と、前記一対の電極に電圧を印加する駆動回路と、を備える。前記第1のミラー、前記第2のミラー、および前記光導波層は、同一の方向に延びた構造を有する。前記第1のミラーは、前記第2のミラーよりも高い光透過率を有し、前記光導波層内を伝搬する前記伝搬光の一部を、前記光導波層の外部に出射光として出射する。前記光導波層は、液晶材料または電気光学材料を含む。前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直である。前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記光導波層を伝搬する前記伝搬光に対する前記液晶材料または前記電気光学材料の屈折率を変化させることで、前記光導波層から出射される前記出射光の方向を変化させる。
本開示の包括的または具体的な態様は、デバイス、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、記録媒体、またはこれらの任意の組み合わせによって実現されてもよい。
本開示の一態様によれば、比較的簡単な構成で、光による1次元スキャンまたは2次元スキャンを実現することができる。
図1は、本開示の例示的な実施形態における光スキャンデバイスの構成を模式的に示す斜視図である。 図2は、1つの導波路素子の断面の構造および伝搬する光の例を模式的に示す図である。 図3は、シミュレーションにおいて用いた計算モデルを模式的に示す図である。 図4Aは、光導波層の一例における屈折率と光の出射角度との関係を計算した結果を示している。 図4Bは、光導波層の他の例における屈折率と光の出射角度との関係を計算した結果を示している。 図5は、光スキャンデバイスの例を模式的に示す図である。 図6Aは、導波路素子に光が入力される構成の例を模式的に示す断面図である。 図6Bは、導波路素子に、光ファイバーによって光が入射される構成の例を模式的に示す断面図である。 図7は、導波路の屈折率を変化させたときの結合効率の変化を示すグラフである。 図8は、複数の第1の導波路と、複数の第2の導波路との接続を模式的に示す図である。 図9は、光導波層の両隣にスペーサが配置されている構成例を模式的に示す、導波路素子の断面図である。 図10は、導波路アレイの構成例を模式的に示す、光スキャンデバイスの断面図である。 図11は、光導波層内の導波光の伝搬を模式的に示す図である。 図12は、本開示の例示的な実施形態における光スキャンデバイスの構造の一部を模式的に示す断面図である。 図13は、光スキャンデバイスの構造の他の例を模式的に示す断面図である。 図14は、光スキャンデバイスの構造のさらに他の例を模式的に示す断面図である。 図15は、2つの多層反射膜で挟まれた光導波層2への光の入射の一例を示している。 図16Aは、グレーティングを介して第1の導波路に光が導入される例を示している。 図16Bは、第1の導波路の端面から光が入力される例を示している。 図16Cは、レーザー光源から第1の導波路に光が入力される例を示している。 図17は、第1の導波路から第2の導波路への導波光の結合効率のd依存性を示している。 図18は、他の例における結合効率のd依存性を示している。 図19は、結合効率が0.5以上になる場合と、結合効率が0.5未満になる場合とを分類した図である。 図20は、第1の導波路における光導波層の厚さ方向の中心と、第2の導波路における光導波層の厚さ方向の中心とがずれた構成を示す図である。 図21は、第1の導波路から第2の導波路への光の結合効率のΔz依存性を示す図である。 図22Aは、更に他の例における結合効率のd依存性を示している。 図22Bは、更に他の例における結合効率のd依存性を示している。 図23Aは、他のモード次数の光の伝搬を示す計算で用いた計算モデルを示す図である。 図23Bは、他のモード次数の光の伝搬を示す計算結果を示す図である。 図24Aは、他の実施形態における光スキャンデバイスを示す断面図である。 図24Bは、結合効率のギャップ幅依存性の計算結果を示す図である。 図25Aは、導波路アレイの出射面に垂直な方向に光を出射する導波路アレイの断面を示す図である。 図25Bは、導波路アレイの出射面に垂直な方向とは異なる方向に光を出射する導波路アレイの断面を示す図である。 図26は、3次元空間における導波路アレイを模式的に示す斜視図である。 図27Aは、pがλよりも大きい場合において、導波路アレイから回折光が出射される様子を示す模式図である。 図27Bは、pがλよりも小さい場合において、導波路アレイから回折光が出射される様子を示す模式図である。 図27Cは、pがλ/2に実質的に等しい場合において、導波路アレイから回折光が出射される様子を示す模式図である。 図28は、位相シフタが導波路素子に直接的に接続されている構成の例を示す模式図である。 図29は、導波路アレイおよび位相シフタアレイを、光出射面の法線方向から見た模式図である。 図30は、位相シフタにおける導波路が、導波路素子における光導波層と、他の導波路を介して繋がる構成の例を模式的に示す図である。 図31は、光分岐器にカスケード状に並ぶ複数の位相シフタを挿入した構成例を示す図である。 図32Aは、第1調整素子の構成の一例を模式的に示す斜視図である。 図32Bは、第1調整素子の他の構成例を模式的に示す斜視図である。 図32Cは、第1調整素子のさらに他の構成例を模式的に示す斜視図である。 図33は、ヒーターを含む調整素子と導波路素子とを組み合わせた構成の例を示す図である。 図34Aは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第1の例を示す図である。 図34Bは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第1の例を示す図である。 図35は、光入力装置を備える光スキャンデバイスの例を示す断面図である。 図36Aは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第2の例を示す図である。 図36Bは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第2の例を示す図である。 図37Aは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第3の例を示す図である。 図37Bは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第3の例を示す図である。 図38Aは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第4の例を示す図である。 図38Bは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第4の例を示す図である。 図39は、光導波層に液晶材料を使用した構成における、光の射出角度の印加電圧依存性を示すグラフである。 図40は、本実験で用いた導波路素子の構成を示す断面図である。 図41は、光導波層に電気光学材料を用いた構成の第1の例を示す図である。 図42は、光導波層に電気光学材料を用いた構成の第1の例を示す図である。 図43Aは、一対の電極が第2のミラーの近傍にのみ配置されている例を示す図である。 図43Bは、一対の電極が第1のミラーの近傍にのみ配置されている例を示す図である。 図44は、それぞれの導波路素子の電極から配線を共通に取り出す構成の例を示す図である。 図45は、一部の電極および配線を共通にした構成の例を示す図である。 図46は、複数の導波路素子に対して共通の電極を配置した構成の例を示す図である。 図47は、位相シフタアレイを配置する領域を大きく確保して、導波路アレイを小さく集積した構成の例を模式的に示す図である。 図48は、2つの位相シフタアレイが、導波路アレイの両側にそれぞれ配置された構成例を示す図である。 図49Aは、導波路素子の配列方向および導波路素子が延びる方向が直交していない導波路アレイの構成例を示している。 図49Bは、導波路素子の配列間隔が一定でない導波路アレイの構成例を示している。 図50Aは、本実施形態における光スキャンデバイスを模式的に示す図である。 図50Bは、図50Aに示した光スキャンデバイスの断面図である。 図50Cは、図50Aに示した光スキャンデバイスの他の断面図である。 図51Aは、第2のミラーと導波路との間に誘電体層が配置された構成例を示す図である。 図51Bは、第1の導波路の上に第2の誘電体層がさらに配置された構成例を示す図である。 図52は、第2のミラーが第1の導波路と基板との間の領域に配置されていない構成例を示す図である。 図53は、第2のミラーが第1の導波路と基板との間において薄くなっている構成例を示す図である。 図54Aは、第2のミラーの厚さが段階的に変化する構成例を示す図である。 図54Bは、上部電極、第1のミラー、および第2の基板が、第1の導波路の保護層と、第2の導波路の光導波層との上に跨って配置されている構成例を示す図である。 図54Cは、図54Bの構成例の製造過程の一部を示す図である。 図55は、図54Bに示す構造を有する光スキャンデバイスにおける複数の第2の導波路の断面を示す図である。 図56は、第1の導波路および第2の導波路が反射型導波路である構成例を示す図である。 図57は、上部電極が第1のミラーの上に配置されており、下部電極が第2のミラーの下に配置されている構成例を示す図である。 図58は、第1の導波路が2つの部分に分離された例を示す図である。 図59は、電極が、各光導波層と、各光導波層に隣接する光導波層との間に配置されている構成例を示す図である。 図60は、第1のミラーが厚く、第2のミラーが薄い構成例を示す図である。 図61は、本実施形態おける光スキャンデバイスの断面図である。 図62は、光ロスの割合とyとの関係を示す図である。 図63は、本実施形態おける導波路アレイの別の構成例を模式的に示す、光スキャンデバイスの断面図である。 図64Aは、図10の構成例における、電場強度分布の計算結果を示す図である。 図64Bは、図63の構成例における、電場強度分布の計算結果を示す図である。 図65は、本実施形態において、異なる屈折率を有するスペーサが存在する構成例を模式的に示す、光スキャンデバイスの断面図である。 図66は、本実施形態の変形例における導波路素子の構成例を模式的に示す、光スキャンデバイスの断面図である。 図67は、回路基板上に光分岐器、導波路アレイ、位相シフタアレイ、および光源などの素子を集積した光スキャンデバイスの構成例を示す図である。 図68は、光スキャンデバイスから遠方にレーザーなどの光ビームを照射して2次元スキャンを実行している様子を示す模式図である。 図69は、測距画像を生成することが可能なライダー(LiDAR)システムの構成例を示すブロック図である。 図70は、全反射導波路の概略構成を示す図である。 図71は、全反射導波路の電場強度分布を示す図である。 図72は、スローライト導波路の概略構成を示す図である。 図73は、スローライト導波路の電場強度分布を示す図である。
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった知見を説明する。本発明者らは、従来の光スキャンデバイスには、装置の構成を複雑にすることなく、光で空間をスキャンすることが困難であるという課題があることを見出した。例えば、特許文献1に開示されている技術では、ミラーを回転させる駆動装置が必要である。このため、装置の構成が複雑になり、振動に対してロバストでないという課題がある。
特許文献2に記載の光フェーズドアレイでは、光を分岐して複数の列導波路および複数の行導波路に導入し、2次元的に配列された複数のアンテナ素子に光を誘導する必要がある。このため、光を誘導するための導波路の配線が非常に複雑になる。また、2次元スキャンの範囲を大きくすることができない。さらに、遠視野における出射光の振幅分布を2次元的に変化させるためには、2次元的に配列された複数のアンテナ素子の各々に位相シフタを接続し、位相シフタに位相制御用の配線を取り付ける必要がある。これにより、2次元的に配列された複数のアンテナ素子に入射する光の位相をそれぞれ異なる量変化させる。このため、素子の構成が非常に複雑になる。
特許文献3の構成によれば、光偏向素子に入射する光の波長を変化させることにより、出射光によって1次元的に大きくスキャンすることができる。しかし、光偏光素子に入射する光の波長を変化させる機構が必要である。そのような機構をレーザーなどの光源に組み込むと、光源の構造が複雑になるという課題がある。
本発明者らは、従来技術における上記の課題に着目し、これらの課題を解決するための構成を検討した。本発明者らは、対向する一対のミラーと、それらのミラーに挟まれた光導波層とを有する導波路素子を用いることにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。導波路素子における一対のミラーの一方は、他方に比べて高い光透過率を有し、光導波層を伝搬する光の一部を外部に出射させる。出射した光の方向(または出射角度)は、後述するように、光導波層の屈折率を調整することにより、変化させることができる。より具体的には、屈折率を変化させることにより、出射光の波数ベクトル(wave vector)の、光導波層の長手方向に沿った方向の成分を変化させることができる。これにより、1次元的なスキャンが実現される。
さらに、複数の導波路素子のアレイを用いた場合には、2次元的なスキャンを実現することもできる。より具体的には、複数の導波路素子に供給する光に適切な位相差を与え、その位相差を調整することにより、複数の導波路素子から出射する光が強め合う方向を変化させることができる。位相差の変化により、出射光の波数ベクトルの、光導波層の長手方向に沿った方向に交差する方向の成分が変化する。これにより、2次元的なスキャンを実現することができる。なお、2次元的なスキャンを行う場合でも、複数の光導波層の屈折率を異なる量変化させる必要はない。すなわち、複数の光導波層に供給する光に適切な位相差を与え、かつ、複数の光導波層の屈折率を同期して同量変化させることにより、2次元的なスキャンを行うことができる。このように、本開示の実施形態によれば、比較的簡単な構成で、光による2次元スキャンを実現することができる。
以上の基本原理は、光を出射する用途だけでなく、光信号を受信する用途にも同様に適用できる。光導波層の屈折率を変化させることにより、受信できる光の方向を1次元的に変化させることができる。さらに、一方向に配列された複数の導波路素子にそれぞれ接続された複数の位相シフタによって光の位相差を変化させれば、受信できる光の方向を2次元的に変化させることができる。
本開示の実施形態による光スキャンデバイスおよび光受信デバイスは、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)システムにおけるアンテナとして用いられ得る。LiDARシステムは、ミリ波などの電波を用いたレーダシステムと比較して、短波長の電磁波(可視光、赤外線、または紫外線)を用いるため、高い分解能で物体の距離分布を検出することができる。そのようなLiDARシステムは、例えば自動車、UAV(Unmanned Aerial Vehicle、所謂ドローン)、AGV(Automated Guided Vehicle)などの移動体に搭載され、衝突回避技術の1つとして使用され得る。
以下、の説明において、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複する説明を省略することがある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
本開示において、「光」とは、可視光(波長が約400nm~約700nm)だけでなく、紫外線(波長が約10nm~約400nm)および赤外線(波長が約700nm~約1mm)を含む電磁波を意味する。本明細書において、紫外線を「紫外光」と称し、赤外線を「赤外光」と称することがある。
本開示において、光による「スキャン」とは、光の方向を変化させることを意味する。「1次元スキャン」とは、光の方向を、当該方向に交差する方向に沿って直線的に変化させることを意味する。「2次元スキャン」とは、光の方向を、当該方向に交差する平面に沿って2次元的に変化させることを意味する。
本開示において、回路、ユニット、装置、部材又は部の全部又は一部、又はブロック図の機能ブロックの全部又は一部は、半導体装置、半導体集積回路(IC)、又はLSI(large scale integration)を含む一つ又は複数の電子回路によって実行されてもよい。LSI又はICは、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。例えば、記憶素子以外の機能ブロックは、一つのチップに集積されてもよい。ここでは、LSIまたはICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、若しくはULSI(ultra large scale integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、Field Programmable Gate Array(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができるreconfigurable logic deviceも同じ目的で使うことができる。
さらに、回路、ユニット、装置、部材又は部の全部又は一部の機能又は操作は、ソフトウエア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウエアは一つ又は複数のROM、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウエアが処理装置(processor)によって実行されたときに、そのソフトウエアで特定された機能が処理装置および周辺装置によって実行される。システム又は装置は、ソフトウエアが記録されている一つ又は複数の非一時的記録媒体、処理装置、及び必要とされるハードウエアデバイス、例えばインターフェース、を備えていても良い。
本明細書において、2つの方向が「平行」とは、厳密に平行であることのみならず、両者のなす角度が15度以下である形態を含む。本明細書において、2つの方向が「垂直」とは、厳密に垂直であることを意味せず、両者のなす角度が75度以上105度以下である形態を含む。
<光スキャンデバイスの構成例>
以下、一例として、2次元スキャンを行う光スキャンデバイスの構成を説明する。図1は、本開示の例示的な実施形態における光スキャンデバイス100の構成を模式的に示す斜視図である。光スキャンデバイス100は、第1の方向(図1におけるY方向)に規則的に配列された複数の導波路素子10を含む導波路アレイを備える。複数の導波路素子10の各々は、第1の方向に交差する第2の方向(図1におけるX方向)に延びた形状を有する。複数の導波路素子10は、第2の方向に光を伝搬させながら、第1および第2の方向に平行な仮想的な平面に交差する第3の方向D3に光を出射させる。本実施形態では、第1の方向(Y方向)と第2の方向(X方向)とが直交しているが、両者が直交していなくてもよい。本実施形態では、複数の導波路素子10がY方向に等間隔で並んでいるが、必ずしも等間隔に並んでいる必要はない。
なお、本願の図面に示される構造物の向きは、説明のわかりやすさを考慮して設定されており、本開示の実施形態が現実に実施されるときの向きをなんら制限するものではない。また、図面に示されている構造物の全体または一部分の形状および大きさも、現実の形状および大きさを制限するものではない。
複数の導波路素子10のそれぞれは、互いに対向する第1のミラー30および第2のミラー40(以下、単にミラーと呼ぶ場合がある)と、ミラー30とミラー40の間に位置する光導波層20とを有する。ミラー30および40の各々は、第3の方向D3に交差する反射面を、光導波層20との界面に有する。ミラー30および40、ならびに光導波層20は、第2の方向(X方向)に延びた形状を有している。
なお、後述するように、複数の導波路素子10の複数の第1のミラー30は、一体に構成された第3のミラーの複数の部分であってもよい。また、複数の導波路素子10の複数の第2のミラー40は、一体に構成された第4のミラーの複数の部分であってもよい。さらに、複数の導波路素子10の複数の光導波層20は、一体に構成された光導波層の複数の部分であってもよい。少なくとも、(1)各第1のミラー30が他の第1のミラー30と別体に構成されているか、(2)各第2のミラー40が他の第2のミラー40と別体に構成されているか、(3)各光導波層20が他の光導波層20と別体に構成されていることにより、複数の導波路を形成することができる。「別体に構成されている」とは、物理的に空間を設けることのみならず、間に屈折率が異なる材料を挟み、分離することも含む。
第1のミラー30の反射面と第2のミラー40の反射面とは略平行に対向している。2つのミラー30および40のうち、少なくとも第1のミラー30は、光導波層20を伝搬する光の一部を透過させる特性を有する。言い換えれば、第1のミラー30は、当該光について、第2のミラー40よりも高い光透過率を有する。このため、光導波層20を伝搬する光の一部は、第1のミラー30から外部に出射される。このようなミラー30および40は、例えば誘電体による多層膜(「多層反射膜」と称することもある。)によって形成される多層膜ミラーであり得る。
それぞれの導波路素子10に入力する光の位相を制御し、さらに、これらの導波路素子10における光導波層20の屈折率を同期して同時に変化させることで、光による2次元スキャンを実現することができる。
本発明者らは、そのような2次元スキャンを実現するために、導波路素子10の動作原理について詳しく分析を行った。その結果に基づき、複数の導波路素子10を同期して駆動することで、光による2次元スキャンを実現することに成功した。
図1に示されるように、各導波路素子10に光を入力すると、各導波路素子10の出射面から光が出射される。出射面は、第1のミラー30の反射面の反対側に位置する。その出射光の方向D3は、光導波層の屈折率、厚さ、および光の波長に依存する。本実施形態では、各導波路素子10から出射される光が概ね同じ方向になるように、各光導波層の屈折率が同期して制御される。これにより、複数の導波路素子10から出射される光の波数ベクトルのX方向の成分を変化させることができる。言い換えれば、出射光の方向D3を、図1に示される方向101に沿って変化させることができる。
さらに、複数の導波路素子10から出射される光は同じ方向を向いているので、出射光は互いに干渉する。それぞれの導波路素子10から出射される光の位相を制御することにより、干渉によって光が強め合う方向を変化させることができる。例えば、同じサイズの複数の導波路素子10がY方向に等間隔で並んでいる場合、複数の導波路素子10には、一定量ずつ位相の異なる光が入力される。その位相差を変化させることにより、出射光の波数ベクトルの、Y方向の成分を変化させることができる。言い換えれば、複数の導波路素子10に導入される光の位相差をそれぞれ変化させることにより、干渉によって出射光が強め合う方向D3を、図1に示される方向102に沿って変化させることができる。これにより、光による2次元スキャンを実現することができる。
以下、光スキャンデバイス100の動作原理をより詳細に説明する。
<導波路素子の動作原理>
図2は、1つの導波路素子10の断面の構造および伝搬する光の例を模式的に示す図である。図2では、図1に示すX方向およびY方向に垂直な方向をZ方向とし、導波路素子10のXZ面に平行な断面が模式的に示されている。導波路素子10において、一対のミラー30とミラー40が光導波層20を挟むように配置されている。光導波層20のX方向における一端から導入された光22は、光導波層20の上面(図2における上側の表面)に設けられた第1のミラー30および下面(図2における下側の表面)に設けられた第2のミラー40によって反射を繰り返しながら光導波層20内を伝搬する。第1のミラー30の光透過率は第2のミラー40の光透過率よりも高い。このため、主に第1のミラー30から光の一部を出力することができる。
通常の光ファイバーなどの導波路では、全反射を繰り返しながら光が導波路に沿って伝搬する。これに対して、本実施形態における導波路素子10では、光は光導波層20の上下に配置されたミラー30および40によって反射を繰り返しながら伝搬する。このため、光の伝搬角度(すなわち、ミラー30または40と光導波層20との界面への入射角度)に制約がなく、ミラー30または40に対して、より垂直に近い角度で入射する光も伝搬できる。すなわち、全反射の臨界角よりも小さい角度(すなわち、より垂直に近い角度)で界面に入射する光も伝搬できる。このため、光の伝搬方向における光の群速度は自由空間における光速に比べて大きく低下する。これにより、導波路素子10は、光の波長、光導波層20の厚さ、および光導波層20の屈折率の変化に対して光の伝搬条件が大きく変化するという性質を持つ。
導波路素子10の光の伝搬について、より詳しく説明する。光導波層20の屈折率をn、光導波層20の厚さをdとする。ここで、光導波層20の厚さdは、ミラー30または40の反射面の法線方向における光導波層20のサイズである。光の干渉条件を考慮すると、波長λの光の伝搬角度θは、以下の式(1)を満たす。
Figure 0007162266000001
mはモード次数である。式(1)は、光導波層20内の光が厚さ方向に定在波を形成する条件に相当する。光導波層20内の波長λがλ/nのとき、光導波層20の厚さ方向における波長λg’はλ/(ncosθ)であると考えることができる。光導波層20の厚さdが、光導波層20の厚さ方向における波長λg’の半分λ/(2ncosθ)の整数倍と等しいとき、定在波が形成される。この条件から式(1)が得られる。なお、式(1)におけるmは定在波の腹(anti-node)の数を表す。
ミラー30および40が多層膜ミラーである場合、反射時にミラー内部にも光が侵入する。このため、厳密には、光が侵入した分の光路長に対応する項を式(1)の左辺に付け加える必要がある。しかし、ミラー内部への光の侵入の影響よりも光導波層20の屈折率nおよび厚さdの影響の方が遥かに大きいため、式(1)によって基本的な動作を説明できる。
光導波層20内を伝搬する光が、第1のミラー30を通じて外部(典型的には空気)に出射されるときの出射角度θは、スネルの法則にしたがって以下の式(2)のように記述できる。
Figure 0007162266000002
式(2)は、光の出射面において、空気側の光の面方向における波長λ/sinθと、導波路素子10側の光の伝搬方向の波長λ/(nsinθ)とが等しいという条件から得られる。
式(1)および式(2)より、出射角度θは、以下の式(3)のように記述できる。
Figure 0007162266000003
式(3)からわかるように、光の波長λ、光導波層20の屈折率n、または光導波層20の厚さdのいずれかを変えることで光の出射方向を変えることができる。
例えば、n=2、d=387nm、λ=1550nm、m=1の場合、出射角度は0°である。この状態から、屈折率をn=2.2に変化させると、出射角度は約66°に変化する。一方、屈折率を変えずに厚さをd=420nmに変化させると、出射角度は約51°に変化する。屈折率も厚さも変化させずに波長をλ=1500nmに変化させると、出射角度は約30°に変化する。このように、光の波長λ、光導波層20の屈折率n、または光導波層20の厚さdのいずれかを変えることにより、光の出射方向を大きく変えることができる。
この原理を利用して、光導波層20内を伝搬する光の波長を変化させる波長可変手段を設けることによって光の出射方向を制御することが考えられる。しかしながら、波長可変手段をレーザーなどの光源に組み込むと、光源の構成が複雑になる。
そこで、本実施形態における光スキャンデバイス100は、光導波層20の屈折率nを制御することで、光の出射方向を制御する。本実施形態では、光の波長λは、動作中に変化せず、一定に維持される。波長λは、特に限定されない。例えば、波長λは、一般的なシリコン(Si)により光を吸収することで光を検出するフォトディテクタまたはイメージセンサで高い検出感度が得られる400nm~1100nm(可視光から近赤外光)の波長域に含まれ得る。他の例では、波長λは、光ファイバーまたはSi導波路において伝送損失の比較的小さい1260nm~1625nmの近赤外光の波長域に含まれ得る。なお、これらの波長範囲は一例である。使用される光の波長域は、可視光または赤外光の波長域に限定されず、例えば紫外光の波長域であってもよい。本実施形態では波長および光導波層の厚さの制御は行われないが、屈折率の制御に加えて、波長および/または光導波層の厚さを変化させる制御を行ってもよい。
本発明者らは、上記のような特定方向への光の出射が実際に可能であるかを光学解析によって検証した。光学解析は、サイバネット社のDiffractMODを用いた計算によって行った。これは、厳密結合波解析(RCWA:Rigorous Coupled-Wave Analysis)に基づいたシミュレーションであり、波動光学の効果を正確に計算することができる。
図3は、本シミュレーションにおいて用いた計算モデルを模式的に示す図である。この計算モデルでは、基板50上に、第2のミラー40と、光導波層20と、第1のミラー30とが、この順に積層されている。第1のミラー30および第2のミラー40は、いずれも誘電体多層膜を含む多層膜ミラーである。第2のミラー40は、相対的に屈折率の低い低屈折率層42および相対的に屈折率の高い高屈折率層44を交互に6層ずつ(計12層)積層した構造を有する。第1のミラー30は、低屈折率層42および高屈折率層44を交互に2層ずつ(すなわち、計4層)積層した構造を有する。ミラー30とミラー40の間に光導波層20が配置されている。導波路素子10および基板50以外の媒質は空気である。
このモデルを用いて、光の入射角度を変化させながら入射光に対する光学応答を調べた。これは、空気からの入射光と光導波層20とが、どの程度結合するかを調べることに対応している。入射光が光導波層20と結合する条件では、光導波層20を伝搬した光が外部に出射されるという逆の過程も起きる。よって、入射光が光導波層20と結合する場合の入射角度を求めることは、光導波層20を伝搬した光が外部に出射する際の出射角度を求めることに相当する。入射光が光導波層20と結合すると、光導波層20内において光の吸収および散乱によるロスが生じる。つまり、大きなロスが生じる条件では、入射光が光導波層20に強く結合しているということになる。吸収などによる光のロスがなければ、光の透過率および反射率の合計が1になるが、ロスがあれば、透過率および反射率の合計は1よりも小さくなる。本計算では、光の吸収の影響を取り入れるために、光導波層20の屈折率に虚部を導入し、1から透過率および反射率の合計を引いた値をロスの大きさとして計算した。
本シミュレーションでは、基板50はSi、低屈折率層42はSiO(厚さ267nm)、高屈折率層44はSi(厚さ108nm)であるものとした。波長λ=1.55μmの光を、角度を様々に変えて入射したときのロスの大きさを計算した。
図4Aは、光導波層20の厚さdが704nmの場合における光導波層20の屈折率nと、モード次数m=1の光の出射角度θとの関係を計算した結果を示している。白い線はロスが大きいことを表している。図4Aに示されているように、n=2.2付近でモード次数m=1の光の出射角度がθ=0°となる。n=2.2に近い屈折率をもつ物質には、例えばニオブ酸リチウムがある。
図4Bは、光導波層20の厚さdが446nmの場合における光導波層20の屈折率nと、モード次数m=1の光の出射角度θとの関係を計算した結果を示している。図4Bに示されているように、n=3.45付近でモード次数m=1の光の出射角度がθ=0°となる。n=3.45に近い屈折率をもつ物質には、例えばシリコン(Si)が挙げられる。
このように、光導波層20の厚さdを調整することにより、特定の光導波層20の屈折率nに対して、特定のモード次数(例えばm=1)の光の出射角度θが0°となるように設計できる。
図4Aおよび図4Bに示すように、屈折率の変化に応じて、出射角度θが大きく変わることが確認できた。後述するように、屈折率は、例えばキャリア注入、電気光学効果、および熱光学効果などの様々な方法によって変化させることができる。そのような方法による屈折率の変化は0.1程度とあまり大きくない。そのため、これまでは、そのような小さな屈折率の変化では出射角度はそれほど大きく変化しないと考えられていた。しかし、図4Aおよび図4Bに示すように、出射角度がθ=0°となる屈折率付近では、屈折率が0.1増加すると出射角度θが0°から約30°にまで変化することがわかった。このように、本実施形態における導波路素子10では、小さい屈折率変化であっても、出射角度を大きく調整することが可能である。
このように、光導波層20の屈折率nを変化させることにより、導波路素子10から出射される光の方向を変えることができる。これを実現するために、本実施形態における光スキャンデバイス100は、各導波路素子10における光導波層20の屈折率を変化させる第1調整素子を備える。第1調整素子の構成例については、後述する。
以上のように、導波路素子10を用いれば、光導波層20の屈折率nを変化させることで、光の出射方向を大きく変えることができる。これにより、ミラー30から出射される光の出射角度を、導波路素子10に沿った方向に変化させることができる。少なくとも1つの導波路素子10を用いることにより、このような1次元のスキャンを実現することができる。
図5は、単一の導波路素子10によって1次元スキャンを実現する光スキャンデバイス100の例を模式的に示す図である。この例では、Y方向に広がりのあるビームスポットが形成される。光導波層20の屈折率を変化させることにより、ビームスポットをX方向に沿って移動させることができる。これにより、1次元スキャンが実現される。ビームスポットがY方向に広がりをもつため、一軸方向のスキャンであっても、2次元的に拡がる比較的広いエリアをスキャンすることができる。2次元スキャンが不要な用途では、図5に示すような構成も採用し得る。
2次元スキャンを実現する場合には、図1に示すように、複数の導波路素子10が配列された導波路アレイが用いられる。複数の導波路素子10内を伝搬する光の位相が特定の条件を満たすとき、光は特定の方向に出射する。その位相の条件が変化すると、光の出射方向が導波路アレイの配列方向にも変化する。すなわち、導波路アレイを用いることにより、2次元スキャンを実現することができる。2次元スキャンを実現するためのより具体的な構成の例については後述する。
以上のように、少なくとも1つの導波路素子10を用いて、導波路素子10における光導波層20の屈折率を変化させることにより、光の出射方向を変化させることができる。本開示の実施形態における導波路素子10は、光の全反射を利用する一般的な導波路(以下、「全反射導波路」と称することがある。)とは異なり、光導波層が一対のミラー(例えば多層反射膜)に挟まれた導波路構造(以下、「反射型導波路」と称することがある。)を備える。このような反射型導波路への光の結合については、これまでに十分に検討されてこなかった。本発明者らは、光導波層20に光を効率的に導入するための構造についても検討した。
図6Aは、空気およびミラー30を介して間接的に光が光導波層20に入力される構成の例を模式的に示す断面図である。この例では、反射型導波路である導波路素子10の光導波層20対して、外部から空気およびミラー30を介して間接的に伝播光が導入される。光導波層20に光を導入するためには、光導波層20の内部における導波光の反射角θに対して、スネルの法則(ninsinθin=nsinθ)を満たす必要がある。ここで、ninは外部媒質の屈折率、θinは伝播光の入射角、nは光導波層20の屈折率である。この条件を考慮して入射角θinを調整することにより、光の結合効率を最大化することができる。さらに、この例では、第1のミラー30の一部に多層反射膜の膜数を減らした部分が設けられている。その部分から光が入力されることで結合効率を高めることができる。しかし、このような構成では、光導波層20の伝搬定数の変化(θwavの変化)に応じて、光導波層20への光の入射角θinを変化させる必要が生じる。
光導波層20の伝搬定数の変化が生じても、光が常に導波路に結合できる状態を保つために、多層反射膜の膜数を減らした部分へ角度広がりのあるビームを入射する方法がある。そのような方法の一例として、図6Bに示すように、導波路素子10に、ミラー30の法線方向に対して角度θinだけ傾けて配置された光ファイバー7によって、外部から空気およびミラー30を介して間接的に光を入射した場合の結合効率について検討する。簡単のため光を光線として考える。通常のシングルモードファイバーの開口数(NA)は0.14程度である。これは角度に換算すると約±8度である。導波路に結合する光の入射角度の範囲は、導波路から出射される光の広がり角と同程度である。出射光の広がり角θdivは、以下の式(4)で表される。
Figure 0007162266000004
ここでLは伝搬長、λは光の波長、θoutは光の出射角である。Lを10μm以上とすると、θdivは大きくても1度以下である。したがって、光ファイバー7からの光の結合効率は、1/16×100(すなわち、約6.3%)以下である。さらに、光の入射角θinを固定し、導波路の屈折率nを変化させることによって光の出射角θoutを変化させたときの結合効率の変化を計算した結果を図7に示す。結合効率は、入射光のエネルギーに対する導波光のエネルギーの比を表す。図7に示す結果は、入射角θinを30°、導波路膜厚を1.125μm、波長を1.55μmとして、結合効率を計算することによって得られた。この計算では、屈折率nを1.44~1.78の範囲で変化させることにより、出射角θoutを10°~65°の範囲で変化させた。図7に示すように、このような構成では、結合効率は最大でも7%に満たない。また、出射角θoutを、結合効率がピークになる出射角から20°以上変化させると、結合効率はさらに半分以下に低下する。
このように、光スキャンのために導波路の屈折率を変化させることによって伝搬定数を変化させると、結合効率はさらに低下する。結合効率を維持するためには、伝搬定数の変化に応じて光の入射角θinを変化させる必要がある。しかし、光の入射角θinを変化させる機構を導入すると、装置構成の複雑化を招く。
本発明者らは、屈折率を変化させる導波路を有する領域の前段に、屈折率が一定に維持される導波路を有する領域を設けることにより、光入射角を固定する事ができることを見出した。
また、異なる2つの導波路における導波光の結合を考える際に重要な要因が2点ある。1つ目は、伝搬光の伝搬定数であり、2つ目はモードの電場強度分布である。これらが2つの導波路において近いほど結合効率は高くなる。導波路における伝搬光の伝搬定数βは、簡単のため幾何光学的に考えると、β=k・sinθ=(2πnsinθ)/λで表される。波数をk、導波角度をθ、導波層屈折率をnとする。全反射型の導波路(全反射導波路)では、全反射を用いて導波光を導波層に閉じ込めているため、全反射条件であるnsinθ>1を満たす。一方、スローライト導波路では、導波路の上下に存在する多層反射膜により光を導波路に閉じ込め、導波光の一部を多層反射膜越しに射出するため、nsinθ<1となる。全反射導波路と、導波光の一部を射出するスローライト導波路では、伝搬定数は等しくなり得ない。電場強度分布について、図70に示すような全反射導波路の電場強度分布は、図71のような、ピークを導波路内に持ち、導波路外では単調減少する。しかし、図72に示すようなスローライト導波路においては、電場強度分布は図73に示すようになる。導波路内にピークを持つ事は変わらないが、導波光が誘電多層膜内において光の干渉により反射するため、図73に示すように電場強度は誘電多層膜に深く染み出し、また振動的に変化する。以上のように、全反射導波路とスローライト導波路では、導波光の伝搬定数、電場強度分布共に大きく異なる。よって、全反射導波路とスローライト導波路を直接的に繋げることは考えられていなかった。本発明者らは、可変の屈折率を有する光導波層に、直接的に全反射導波路を繋げることができることを発見した。
さらに、本発明者らは、そのような2種類の導波路を、共通の基板上に配置することにより、光スキャンデバイスの作製を容易にできることを見出した。すなわち、一体に形成された一つの基板上に2種類の導波路を配置してもよい。一般的な導波路は、半導体プロセスを用いて、基板上に作製される。例えば、蒸着またはスパッタリングなどによる成膜と、リソグラフィーまたはエッチングなどによる微細加工とを組み合わせることによって、基板の上に導波路の構造を作製するのが一般的である。基板の材料として、Si、SiO、GaAs、GaNなどが挙げられる。
反射型導波路も、同様の半導体プロセスを用いて作製され得る。反射型導波路では、光導波層を挟む一対のミラーのうち、一方のミラーから光を透過させることよって、光を出射させる。ほとんどの場合、ミラーは、低コストで入手可能なガラス基板の上に作製される。ガラス基板の代わりに、Si、SiO、GaAs、GaNなどの基板を用いてもよい。
反射型導波路に別の導波路を接続することによって、光を反射型導波路に導入することができる。
図8は、基板50Aの上に作製された複数の第1の導波路1と、別の基板50Bの上に作製された複数の第2の導波路10との接続を模式的に示す図である。2つの基板50A、50Bは、XY平面に平行に配置されている。複数の第1の導波路1および複数の第2の導波路10は、X方向に延び、Y方向に配列されている。第1の導波路1は、例えば、光の全反射を利用する一般的な導波路である。第2の導波路10は、反射型導波路である。別々の基板50A、50Bの上にそれぞれ配置された第1の導波路1および第2の導波路10を位置合わせして接続することによって、第1の導波路1から第2の導波路10へ光を導入することができる。
第1の導波路1から第2の導波路10へ効率よく光を導入するためには、10nmオーダーの極めて高精度の位置合わせが望まれる。また、高精度の位置合わせができたとしても、2つの基板50A、50Bの熱膨張係数が異なる場合、温度変化により、位置合わせがずれるおそれがある。例えば、Si、SiO、GaAsおよびGaNの熱膨張係数は、それぞれおよそ4、0.5、6および5(×10―6/K)であり、ガラス基材としてよく使われるBK7の熱膨張係数は、9(×10―6/K)である。別々の基材としてどの材料を組み合わせても、1×10―6/K以上の熱膨張係数の違いが生じる。例えば、複数の第1の導波路1および複数の第2の導波路10の配列方向(図中ではY方向)における2つの基板50A、50Bのサイズが1mmである場合、1℃の温度変化によって、2つの基板50A、50Bの位置合わせは、1nmずれる。さらに、数十℃の温度変化によって、2つの基板50A、50Bの位置合わせは、数十~百nmのオーダーで大きくずれる。その結果、第1の導波路1から第2の導波路10へ効率よく光を導入することができなくなる。
本発明者らは、同じ基板の上に第1の導波路および第2の導波路を配置することにより、上記の課題を解決できることに想到した。共通の基板上にこれらの導波路を配置することにより、第1の導波路および第2の導波路の位置合わせが容易になる。さらに、熱膨張による第1の導波路および第2の導波路の位置合わせのずれが抑制される。その結果、第1の導波路から第2の導波路へ効率よく光を導入することができる。
本開示のある態様における光スキャンデバイスは、第1の導波路と、前記第1の導波路に繋がる第2の導波路と、前記第1および第2の導波路を支持する基板とを備える。前記第2の導波路は、多層反射膜を備える1のミラーと、前記第1のミラーの前記多層反射膜に対向する多層反射膜を備える第2のミラーと、前記第1のミラーおよび前記第2のミラーの間に位置し、前記第1の導波路に入力され前記第1の導波路を伝搬した光を伝搬させる光導波層と、を有する。前記第1のミラーは、前記第2のミラーよりも高い光透過率を有し、前記光導波層内を伝搬する光の一部を、前記光導波層の外部に出射する。光スキャンデバイスは、前記光導波層の屈折率を変化させることによって出射光の方向を変化させる調整素子をさらに備える。
上記態様における「第2の導波路」は、前述の実施形態における「導波路素子」に相当する。本開示のある実施形態では、第2の導波路の前段に、屈折率も厚さも一定に維持される第1の導波路が設けられ、第1の導波路に光が入力される。第1の導波路は、入力された光を伝搬させ、第2の導波路の端面から入力する。第1の導波路と第2の導波路とは、端面同士が直接接続されていてもよいし、例えば、端面間にギャップがあってもよい。本明細書において「第1の導波路と第2の導波路とが繋がる」とは、第1の導波路と第2の導波路との間で光の授受が可能な態様で両者が位置していることを意味する。「第1の導波路と第2の導波路とが繋がる」形態は、第1の導波路と第2の導波路とが直接接続されている(すなわち接触している)形態だけでなく、伝搬する光の波長よりも十分に短いギャップを介して両者が配置されている形態も含む。また、本開示で、AがBに「直接的に繋がる」とは、AとBの間で光の授受が可能なように、Aの何れかの部分とBの何れかの部分とがギャップなしに接触することをいう。
上記構成によれば、第1の導波路を第2の導波路(導波路素子)の前段に設けることにより、第1の導波路に入射する光の入射角を一定に維持しても、スキャンによる結合効率の低下(すなわちエネルギーのロス)を抑制することができる。
上記構成によれば、同じ基板の上に第1の導波路および第2の導波路を配置することによって、第1の導波路および第2の導波路の位置合わせが容易になる。さらに、熱膨張による第1および第2の導波路の位置合わせのずれが抑制される。その結果、第1の導波路から第2の導波路へ効率よく光を導入することができる。
さらに、第1の導波路の前段に第3の導波路が設けられていてもよい。そのような第3の導波路は、第1の導波路に繋がり、第3の導波路を伝搬した光を、第1の導波路に入力する。ある実施形態において、第3の導波路は全反射導波路であり、第2の導波路は反射型導波路であり得る。第1および第2の導波路を支持する基板は、第3の導波路をさらに支持していてもよい。
図9は、第1のミラー30と第2のミラー40の間に位置する光導波層20の両隣に、スペーサ73が配置されている構成例を模式的に示す、YZ平面における導波路素子10の断面図である。スペーサ73の屈折率nlowは、光導波層の屈折率nよりも低い(nlow<n)。スペーサ73は、例えば、空気でもよい。スペーサ73は、光導波層よりも低い屈折率を有する限り、例えば、TiO、Ta、SiN、AlN、SiOなどであってもよい。
図10は、図9における導波路素子10をY方向に配列した導波路アレイ10Aの構成例を模式的に示す、YZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。図10の構成例では、Y方向において、第1のミラー30の幅は、光導波層20の幅と同じである。そのため、第1のミラー30が存在しない領域から導波光が漏れるという課題がある。従来では、複数の反射型導波路も含め、複数の導波路素子10をアレイ化する際に、第1および第2のミラー30および40の少なくとも一方の幅を光導波層20の幅よりも長くすることにより、導波光の漏れを防ぐという発想はなかった。
光スキャンの性能を向上させるためには、導波路アレイ10Aにおける各導波路素子10を、細線化することが望ましい。この場合、導波光が漏れるという課題はより顕著になる。
導波光が漏れる理由を説明する。
図11は、光導波層20内において、導波光がX方向に伝搬することを模式的に示す図である。n>nlowであることから、導波光は、±Y方向において全反射により閉じ込められながら、X方向に伝搬する。しかし、実際には、光導波層20のY方向における端面から外側へ染み出す、エバネッセント光が存在する。また、図2に示すように、導波光は、±Z方向において第1および第2のミラー30および40により反射されながら、全反射角θinよりも小さい角度で、X方向に伝搬する。このとき、図10に示す第1のミラー30が存在しない領域では、エバネッセント光は、反射されず、外に漏れ出る。この意図しない光ロスにより、光スキャンに用いられる光量は低下し得る。
本発明者らは、複数の導波路素子10の配列方向において、第1および第2のミラー30および40の少なくとも一方の幅を、光導波層20の幅よりも長くすることにより、上記の課題を解決できることに想到した。これにより、上記の意図しない光ロスを低減することができる。その結果、光スキャンに用いられる光量の低下は抑制される。
以下、本開示の実施形態をより具体的に説明する。図12は、本開示の例示的な実施形態における光スキャンデバイスの構造の一部を模式的に示す断面図である。この光スキャンデバイスは、第1の導波路1と、第1の導波路に繋がる第2の導波路(導波路素子)10とを備える。第2の導波路10は、多層反射膜を備える第1のミラー30と、第1のミラー30の多層反射膜に対向する多層反射膜を備える第2のミラー40と、第1のミラー30と第2のミラー40の間に位置する光導波層20とを有する。光導波層20は、第1の導波路1に入力され第1の導波路1を伝搬した光を伝搬させる。光導波層20は、第1の導波路1の導波方向と同じ方向に光を伝搬させる。第1のミラー30は、第2のミラー40よりも高い光透過率を有し、光導波層20内を伝搬する光の一部を、光導波層20の外部に出射する。図12には示されていないが、光スキャンデバイス100は、光導波層20の屈折率を変化させる調整素子をさらに備える。光導波層20は、例えば、電圧が印加された場合に、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率が変化する材料を含む。調整素子は、光導波層20に電圧を印加することにより、光導波層20の屈折率を変化させることで、第2の導波路10から出射される光の方向を変化させる。
第1の導波路1は、対向する2つの多層反射膜3、4と、2つの多層反射膜3、4に挟まれた光導波層2とを有する。第1の導波路1における多層反射膜3、4は、導波光をロスなく伝えるために、第2の導波路10における光出射側の多層反射膜(すなわち、第1のミラー30)よりも高い反射率(すなわち、低い透過率)をもつことが望ましい。よって、多層反射膜3、4の膜厚は、第1のミラー30における膜厚よりも大きい。第1の導波路1の屈折率、すなわち、第1の導波路1における光導波層2の屈折率は、変化しない又は光導波層20の屈折率と異なる量変化する。第1の導波路1は、第2の導波路10における光導波層20に直接的に繋がっている。
例えば、第1の導波路1における光導波層2の端面は、第2の導波路10における光導波層20の端面に接続されている。この例における多層反射膜3は、隣接する部位よりも膜厚が薄い(すなわち反射率が低い)箇所3aを有する。この箇所3a(「光入力部3a」とも称する。)から光が入力される。このように反射率の低い領域から光を入力することにより、効率よく光導波層2に光を導入することができる。光導波層2は、光入力部3aに入射した光を伝搬させ、第2の導波路10における光導波層20の端面に入力する。これにより、光導波層2から光導波層20へ光を伝搬させ、ミラー30から出射することができる。
第2の導波路10においては、光を出射する必要があることから、第1のミラー30の多層反射膜の反射率は、第2のミラー40の多層反射膜の反射率よりも低い。第1の導波路1においては、光を出射させないようにするために、多層反射膜3、4の反射率が、第2のミラー40の反射率と同程度の大きさに設計されている。
このような構造により、光スキャンデバイスは、後述するように、光を効率よく第2の導波路10から出射することができる。
図13は、光スキャンデバイスの構造の他の例を模式的に示す断面図である。この例では、第1の導波路1が、多層反射膜3、4を有していない。第1の導波路1は、全反射によって光を伝搬させる。第1の導波路1は、表面の一部にグレーティング5を有している。グレーティング5を介して光が入力される。この例では、グレーティング5が設けられている箇所が、光入力部として機能する。グレーティング5を設けることにより、光を導波路1内に導入することが容易になる。この例のように多層反射膜3、4がない場合は、導波角度θw1が全反射条件を満たすように設計される。この場合も、第1の導波路1の屈折率は、変化しない又は光導波層20と異なる量変化する。また、第1の導波路1は、第2の導波路10における光導波層20に直接的に繋がっている。また、光導波層20は、第1の導波路1の導波方向と同じ方向に光を伝搬させる。
図14は、光スキャンデバイスの構造のさらに他の例を模式的に示す断面図である。この例における光スキャンデバイスは、第1の導波路1に繋がる第3の導波路1’をさらに備えている。第1の導波路1は、反射型導波路であり、対向する2つの多層反射膜3、4と、その間の光導波層2とを有する。一方、第3の導波路1’は、全反射によって光を伝搬させる全反射導波路である。第3の導波路1’の屈折率は、変化しない又は光導波層20と異なる量変化する。また、第3の導波路1’は、第2の導波路10における光導波層20に直接的に繋がっている。また、光導波層20は、第3の導波路1’の導波方向と同じ方向に光を伝搬させる。第3の導波路1’は、図13の例における第1の導波路1と同様、表面の一部にグレーティング5’を有している。グレーティング5’を介して光源からの光が第3の導波路1’内に入力される。この例では、グレーティング5’が設けられている箇所が光入力部として機能する。第2の導波路10における光導波層20は、不図示の調整素子(例えば、変調素子)によって屈折率が変調される。一方、第1の導波路1については、そのような変調機能はない。第1の導波路1からの光の出射を抑えるために、第1の導波路1の反射ミラー(すなわち、多層反射膜3、4)の反射率は、第2の導波路10の第1のミラー30の反射率よりも高く設定されている。第2の導波路10における第1のミラー30の反射率は、第2のミラー40の反射率よりも低く設定されている。このような構成により、第3の導波路1’に入力された光は、第3の導波路1’および第1の導波路1を伝搬して第2の導波路10に入力される。当該光は、第2の導波路10の光導波層20をさらに伝搬しながら、第1のミラー30を介して外部に出射される。
図15および図16Aから図16Cは、第1の導波路1に光が入力される構成において、第1の導波路1への光の入力方法の例を示す図である。図15は、図12に示す例のように、2つの多層反射膜で挟まれた光導波層2への光の入射の一例を示している。図示されるように、多層反射膜の膜厚の薄い箇所(すなわち、反射率の低い箇所)3aに光を入射することにより、効率よく光を光導波層2に導入することができる。図16Aは、図13に示す例のように、第1の導波路1の表面に設けられたグレーティング5を介して第1の導波路1に光が導入される例を示している。図16Bは、第1の導波路1の端面から光が入力される例を示している。図16Cは、第1の導波路1の表面に設けられたレーザー光源6から、当該表面を介して光が入力される例を示している。図16Cのような構成は、例えば、M. Lamponi et al., “Low-Threshold Heterogeneously Integrated InP/SOI Lasers With a Double Adiabatic Taper Coupler”, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL. 24, NO. 1, JANUARY 1, 2012, pp 76-78.に開示されている。この文献の開示内容全体を本願明細書に援用する。以上の構成によれば、効率よく光を導波路1に入射させることができる。
図15から図16Cに示す光の入力方法は、いずれも、図14に示す第3の導波路1’を用いる構成においても適用できる。図14に示す例では、第3の導波路1’の表面の一部にグレーティング5’が設けられているが、グレーティング5’が設けられていなくてもよい。例えば図16Bまたは図16Cに示す光の入力方法を第3の導波路1’に適用することができる。図16Bに示す光の入力方法を第3の導波路1’に適用する場合、第3の導波路1’は、第3の導波路1’の端面から入射した光を伝搬させ、第1の導波路1の端面に入力する。図16Cに示す光の入力方法を第3の導波路1’に適用する場合、第3の導波路1’の表面に設けられたレーザー光源から、当該表面を介して光が入力される。第3の導波路1’は、入力された光を伝搬させ、第1の導波路1の端面に入力する。また、第3の導波路1’が全反射導波路である必要はなく、図15に示すような反射型導波路であってもよい。
図12および図13に示すように、第1の導波路1の光導波層2の屈折率をnw1、第2の導波路10の光導波層20の屈折率をnw2、第2の導波路10からの光の出射角をθ、第1の導波路1における導波光の反射角をθw1、第2の導波路10における導波光の反射角をθw2とする。また、図14に示すように、第3の導波路1’における光導波層2’の屈折率をnw3、第3の導波路1’における導波光の反射角をθw3とする。本実施形態では、第2の導波路10から光を外部(例えば、屈折率が1の空気層)に取り出すために、nw2sinθw2=sinθ<1が満足される。
<導波光結合の原理>
以下、図12および図13を参照しながら、導波路1、10間の導波光の結合の原理を説明する。簡単のため、導波路1、10内を伝搬する光を近似的に光線であると考える。導波路10の上下の多層反射膜と光導波層20との界面、および導波路1の上下の多層反射膜と光導波層2との界面(または、光導波層2と外部媒質との界面)で、光が完全に反射されると仮定する。第1の導波路1における光導波層2の厚さをd、第2の導波路10における光導波層20の厚さをdとする。導波路1、10のそれぞれにおいて、伝播光が存在する条件は、以下の式(5)、(6)で表される。
2dw1cosθw1=mλ (5)
2dw2cosθw2=mλ (6)
ここで、λは光の波長、mは1以上の整数である。
導波路1、10の界面について、スネルの法則を考慮すると、式(7)が成立する。
w1sin(90°-θw1)=nw2sin(90°-θw2) (7)
式(7)を変形すると、次の式(8)が得られる。
w1cosθw1=nw2cosθw2 (8)
式(5)および(8)が成立するとき、dとdとが等しい場合には、nw2が変化した場合においても式(6)は成立する。つまり、光導波層20の屈折率が変化した場合においても、光導波層2から光導波層20に光が効率よく伝搬するということとなる。
上式の導出に際しては簡単のため光を光線として考えたが、実際には厚さd、dが波長λと同程度(長くとも波長の10倍以下)であるため、導波光は波動性を有する。したがって、厳密には、上記の屈折率nw1、nw2として、光導波層2、20の材料の屈折率ではなく、有効屈折率を考慮する必要がある。また、光導波層2の厚さdと光導波層20の厚さdとが同一ではない場合、または厳密に式(8)を満たしていない場合においても光は光導波層2から光導波層20へ導波され得る。これは、光導波層2から光導波層20への光の伝達が近接場を通じて行われるからである。すなわち、光導波層2の電場分布と光導波層20における電場分布の重なりがあれば、光導波層2から光導波層20へ光が伝達される。
以上の議論は、図14に示す例における第3の導波路1’と第1の導波路1との間の導波光についても同様に成立する。
<計算結果>
本実施形態の効果を確認するため、本発明者らは、条件を様々に変えて、光の結合効率を計算した。計算には、Photon Design社のFIMMWAVEを用いた。
まず、図12に示すように、導波路1、10共に多層反射膜に挟まれている構成について、結合効率を計算した。以下の計算では、導波路1から導波路10に伝搬する光のモードの次数は、m=2であるが、導波路1と導波路10の光のモードの次数が同じであれば、同様の原理により光は結合する。このため、光のモードの次数はm=2に限らない。
図17は、nw1を1.45、dを1.27μm、波長λを1.55μmとした場合の導波路1から導波路10への導波光の結合効率のd依存性を示している。横軸は、dを、導波光を光線と仮定した場合のカットオフ膜厚dcutoff(=mλ/(2nw2))で割った値である。縦軸は、ピーク値を1として規格化された結合効率である。計算は、導波光が存在できなくなるカットオフ条件を満たす下限値から、光が外部に射出される上限値まで行った。また、nw2が1.3、1.6、1.9、2.2、2.5のそれぞれの場合について計算を行った。第1の導波路1における厚さ方向の中心と、第2の導波路10における厚さ方向の中心とは同一とした。図17に示す結果から、d/dcutoffが大きいほど結合効率が高くなることがわかる。d/dcutoffが小さくなるに従い、モードが存在できなくなり、結合効率は低下する。
図18は、nw1を3.48、dを0.5μmに変更して同様の方法で行った計算の結果を示している。この場合も、導波路1から導波路10に伝搬する光のモードの次数は、m=2であるが、前述のとおり光のモードの次数はm=2に限らない。図18からわかるように、d/dcutoffが大きいほど結合効率が高く、d/dcutoffが小さくなるに従い、モードが存在できなくなり、結合効率は低下する。
図17および図18において、d/dcutoffが1よりも低い値においてもモードが存在している(すなわち導波光が結合している)のは、多層反射膜によって反射される際の光の染み出しに起因して、光導波層2の有効厚さがdよりも厚くなるからである。dの上限については、光が外部に出射しなくなる値である。この値は、導波光を光線として考え、各導波路の上下の多層反射膜が光を導波路との界面において完全に反射させると仮定すると、導波光の反射角が大気に対し全反射角度になるときのdである。このとき、次の式(9)が満たされる。
w2sinθw2=1 (9)
式(6)、式(9)、およびdcutoff=mλ/(2nw2)より、次の式(10)が成立する。
/dcutoff=nw2/√(nw2 -1) (10)
多層反射膜で反射される際の光の染み出しに起因して、導波光の有効屈折率がnw2よりも低くなる。そのため、式(6)よりもdの上限値は大きくなる。
本実施形態の構成において、図6Bに示す構成よりも結合効率が高くなることが望ましい。例えば、図17および図18の結果より、以下の式が満たされることにより、結合効率が図7に示すピーク値よりも高い7%以上であるという条件が満たされる。
0.95×dcutoff<d<1.5×dcutoff
(0.95×mλ/(2nw2)<d<1.5×mλ/2nw2))
図19は、横軸をd/dcutoff、縦軸を屈折率比(|nw1-nw2|/nw1)とし、結合効率が0.5以上になる場合と、結合効率が0.5未満になる場合とを分類した図である。例えば、屈折率比が0.4よりも小さく、かつ、以下の式が満たされることにより、結合効率が0.5(50%)以上という条件が満たされる。
0.95×dcutoff<d<1.5×dcutoff
本実施形態においては、第1の導波路1の屈折率nw1は、第2の導波路10の屈折率nw2よりも大きい(nw1>nw2)。しかし、本開示はこのような構成に限定されず、nw1≦nw2であってもよい。
図20は、第1の導波路1における光導波層2の厚さ方向の中心と、第2の導波路10における光導波層20の厚さ方向の中心とがΔzだけずれた構成を示す図である。Δzの正負は、図20に示すように、第2の導波路10の光導波層20の厚さ方向の中心線が、第1の導波路1の光導波層2の厚さ方向の中心線よりも光放射側(すなわち、第1のミラー30の側)にあるときを正とする。第1の導波路1の光導波層2の厚さdと第2の導波路10の光導波層20の厚さdとの差の絶対値をΔdとする。Δz=Δd/2のとき、導波路1の光導波層2の下部(すなわち、光放射側とは反対の側)と導波路10の光導波層20の下部のZ方向の位置が一致する。
図21は、第1の導波路1から第2の導波路10への光の結合効率のΔz依存性を示す図である。図21の結果は、nw1を2.2、波長λを1.55μm、nw2を2.2、Δdを0.12μmとして、Δzを変えて結合効率を計算することによって得られた。図21に示す結合効率は、Δz=0の場合の値で規格化されている。光導波層2、20の厚さ方向の中心線がZ方向にずれている場合、結合効率はΔzがゼロ(0)の場合よりも低くなる。しかし、-Δd/2<Δz<Δd/2の場合には、Δzが0の場合の結合効率の90%以上になり、比較的高い結合効率を維持できる。
図13に示す例のように、第1の導波路1が全反射によって光を導波する構成についても、基本的な原理は同じであり、導波路1、10を伝搬する導波光は互いに結合し得る。図13に示す構成についても、第1の導波路1から第2の導波路10への導波光の結合効率のd依存性を計算によって求めた。図22Aは、nw1を2.2、dを0.7μm、波長λを1.55μmとした場合における結合効率のd依存性を示している。図22Bは、nw1を3.48、dを0.46μm、波長λを1.55μmとした場合における結合効率のd依存性を示している。例えば、以下の式が満たされることにより、結合効率が7%以上になるという条件が満たされる。
0.95×dcutoff <1.5×dcutoff
(すなわち、0.95×mλ/(2nw2)<d<1.5×(mλ/2nw2))
であればよい。
また、例えば、以下の式が満たされることにより、結合効率が50%以上という条件が満たされる。
1.2×dcutoff <1.5×dcutoff
(すなわち、1.2×mλ/2nw2)< <1.5×mλ/(2nw2))
図13の構成においても、nw1>nw2でもよいし、nw1≦nw2でもよい。
上述した通り、導波路1から導波路10に伝搬する光のモードの次数はm=2に限定されない。例えば、nw1=1.883、d=0.3μm、nw2=1.6、d=0.55μmの条件で、図23Aの様なモデルを用いて計算すると、図23Bに示すように、光が導波路に結合することがわかる。
次に、第1の導波路1と第2の導波路10との間にギャップがある場合を検討する。
図24Aは、本実施形態の変形例を示す断面図である。この例では、第2の導波路10における光導波層20は、ギャップ(例えば空隙)を介して第1の導波路1に繋がっている。このように、第1の導波路1と第2の導波路10との間にギャップが存在する場合であっても、導波モードの近接場を介して光が結合するため、ギャップ幅(X方向の幅)が波長λに比べて十分小さければ、導波光は導波路1、10の間で結合する。これは、図6Aまたは図6Bのように、自由空間における伝播光から導波モードへと結合させる方法とは異なる。
図24Bは、結合効率のギャップ幅依存性の計算結果を示す図である。図24Bにおける結合効率は、ギャップが0μmのときの値を1として規格化された値である。計算では、nw1を3.48、nw2を1.5、dを0.9μm、dを1.1μm、ギャップの屈折率を1、波長λを1.55μmとした。図24Bより、規格化された結合効率が50%以上になるのは、ギャップが0.24μm以下の場合である。ギャップが空気以外の媒質である場合、および波長λが1.55μmとは異なる場合を考慮すると、ギャップの光学長(すなわち、ギャップの屈折率とギャップ幅との積)がλ/6.5以下であれば、規格化された結合効率が50%以上になる。このギャップの光学長は、導波路1、10のパラメータには依存しない。
図14に示す例のように、第1の導波路1に、第3の導波路1’から光が入力される形態でも同様に、第3の導波路1’の端面と第1の導波路1の端面との間にギャップがあってもよい。前述のとおり、ギャップの光学長(ギャップの屈折率とギャップ幅との積)は、例えばλ/6.5以下に設定される。
次に、本実施形態における第1の導波路1および第2の導波路10の組み合わせ(本明細書において、「導波路ユニット」と称する。)を複数組用いて、2次元的な光のスキャンを実現する構成を説明する。2次元スキャンを実行可能な光スキャンデバイスは、第1の方向に配列された複数の導波路ユニットと、各導波路ユニットを制御する調整素子(例えばアクチュエータおよび制御回路の組み合わせ)を備える。調整素子は、各導波路ユニットにおける第2の導波路10における光導波層20の屈折率を変化させる。これにより、各第2の導波路10から出射される光の方向を変化させることができる。また、複数の導波路ユニットにおける第2の導波路10に、適切に位相差が調整された光が入力されることにより、図1を参照して説明したように、光の2次元スキャンが可能となる。以下、2次元スキャンを実現するための実施形態をより詳細に説明する。
<2次元スキャンの動作原理>
複数の導波路素子(すなわち、第2の導波路)10が一方向に配列された導波路アレイにおいて、それぞれの導波路素子10から出射される光の干渉により、光の出射方向は変化する。各導波路素子10に供給する光の位相を調整することにより、光の出射方向を変化させることができる。以下、その原理を説明する。
図25Aは、導波路アレイの出射面に垂直な方向に光を出射する導波路アレイの断面を示す図である。図25Aには、各導波路素子10を伝搬する光の位相シフト量も記載されている。ここで、位相シフト量は、左端の導波路素子10を伝搬する光の位相を基準にした値である。本実施形態における導波路アレイは、等間隔に配列された複数の導波路素子10を含んでいる。図25Aにおいて、破線の円弧は、各導波路素子10から出射される光の波面を示している。直線は、光の干渉によって形成される波面を示している。矢印は、導波路アレイから出射される光の方向(なわち、波数ベクトルの方向)を示している。図25Aの例では、各導波路素子10における光導波層20を伝搬する光の位相はいずれも同じである。この場合、光は導波路素子10の配列方向(Y方向)および光導波層20が延びる方向(X方向)の両方に垂直な方向(Z方向)に出射される。
図25Bは、導波路アレイの出射面に垂直な方向とは異なる方向に光を出射する導波路アレイの断面を示す図である。図25Bの例では、複数の導波路素子10における光導波層20を伝搬する光の位相が、配列方向に一定量(Δφ)ずつ異なっている。この場合、光は、Z方向とは異なる方向に出射される。このΔφを変化させることにより、光の波数ベクトルのY方向の成分を変化させることができる。
導波路アレイから外部(ここでは空気とする。)へ出射される光の方向は、以下のように定量的に議論できる。
図26は、3次元空間における導波路アレイを模式的に示す斜視図である。互いに直交するX、YおよびZ方向で定義される3次元空間において、光が空気に出射される領域と、導波路アレイとの境界面をZ=zとする。この境界面は、複数の導波路素子10のそれぞれの出射面を含む。Z<zでは、Y方向に複数の導波路素子10が等間隔に配列され、複数の導波路素子10のそれぞれはX方向に延びている。Z>zにおいて、空気へ出射される光の電場ベクトルE(x、y、z)は、以下の式(11)で表される。
Figure 0007162266000005
ただしEは電場の振幅ベクトルであり、k、kおよびkはそれぞれX、YおよびZ方向における波数(wave number)であり、jは虚数単位である。この場合、空気へ出射される光の方向は、図26において太い矢印で表される波数ベクトル(k、k、k)に平行となる。波数ベクトルの大きさは、以下の式(12)で表される。
Figure 0007162266000006
Z=zにおける電界の境界条件から、境界面に平行な波数ベクトル成分kおよびkは、それぞれ導波路アレイにおける光のX方向およびY方向における波数に一致する。これは、式(2)のスネルの法則と同様に、境界面において、空気側の光が有する面方向の波長と、導波路アレイ側の光が有する面方向の波長とが一致する条件に相当する。
は、X方向に延びた導波路素子10の光導波層20を伝搬する光の波数に等しい。上述した図2に示される導波路素子10では、kは、式(2)および式(3)を用いて、以下の式(13)で表される。
Figure 0007162266000007
は、隣接する2つの導波路素子10の間の光の位相差から導出される。Y方向に等間隔に配列されたN本の導波路素子10のそれぞれのY方向の中心をy(q=0、1、2、・・・、N-1)とし、隣接する2つの導波路素子10の間の距離(中心間距離)をpとする。そのとき、空気へ出射される光の電場ベクトル(式(11))は、境界面内(Z=z)のyおよびyq+1において、
Figure 0007162266000008
の関係を満たす。任意の隣接する2つの導波路素子10の位相差がΔφ=kp(一定)となるように設定すれば、kは、以下の式(15)の関係を満たす。
Figure 0007162266000009
この場合、yにおける光の位相はφ=φ+qΔφとなる(φq+1-φ=Δφ)。つまり、位相φは、Y方向に沿って、一定(Δφ=0)か、比例して増加(Δφ>0)または減少(Δφ<0)する。Y方向に配列された導波路素子10が等間隔でない場合は、例えば、所望のkに対して、yおよびyq+1での位相差がΔφ=φq+1-φ=k(yq+1-y)となるように設定する。この場合、yにおける光の位相はφ=φ+k(y-y)となる。式(14)および式(15)からそれぞれ得られるkおよびkを用いれば、式(12)からkが導出される。これにより、光の出射方向(すなわち、波数ベクトルの方向)が得られる。
例えば、図26に示すように、出射光の波数ベクトル(k、k、k)と、その波数ベクトルをYZ平面に射影したベクトル(0、k、k)とがなす角度をθとする。θは、波数ベクトルとYZ平面とがなす角度である。θは、式(12)および式(13)を用いて、以下の式(16)で表される。
Figure 0007162266000010
式(16)は、出射光がXZ平面に平行な場合に限定したときの式(3)と全く同じである。式(16)からわかるように、波数ベクトルのX成分は、光の波長、光導波層20の屈折率、および光導波層20の厚さに依存して変化する。
同様に、図26に示すように、出射光(0次光)の波数ベクトル(k、k、k)と、その波数ベクトルをXZ平面に射影したベクトル(k、0、k)とがなす角度をαとする。αは、波数ベクトルとXZ平面とがなす角度である。αは、式(12)および式(13)を用いて、以下の式(17)で表される。
Figure 0007162266000011
式(17)からわかるように、光の波数ベクトルのY成分は、光の位相差Δφによって変化する。
このように、波数ベクトル(k、k、k)の代わりに、式(16)および式(17)からそれぞれ得られるθおよびαを用いて光の出射方向を特定することもできる。その場合、光の出射方向を表す単位ベクトルは、(sinθ、sinα、(1-sinα-sinθ)1/2)と表すことができる。光出射においてこれらのベクトル成分はすべて実数でなければならないので、sinα+sinθ≦1が満たされる。sinα≦1-sinθ=cosθから、出射光は-cosθ≦sinα≦cosθを満たす角度範囲で変化することがわかる。-1≦sinα≦1から、θ=0では、出射光は-90≦α≦90の角度範囲で変化する。しかし、θが増加するとcosθは小さくなるので、αの角度範囲は狭くなる。θ=90(cosθ=0)では、α=0のときのみしか光は出射されない。
本実施形態における光による2次元スキャンは、導波路素子10が少なくとも2本あれば実現できる。しかし、導波路素子10の本数が少ない場合、上記のαの広がり角度Δαが大きくなる。導波路素子10の本数が増加するとΔαは小さくなる。このことは、以下のようにして説明できる。簡単のために、図26においてθ=0の場合を考える。つまり、光の出射方向がYZ平面に平行な場合を考える。
N本(Nは2以上の整数)の導波路素子10のそれぞれから、同じ出射強度および上述した位相φを有する光が出射されるとする。そのとき、N本の導波路素子10から出射される合計の光(電場)の振幅分布の絶対値は、遠視野において、以下の式(18)で表されるF(u)に比例する。
Figure 0007162266000012
ただし、uは以下の式(19)で表される。
Figure 0007162266000013
αは、YZ平面において、観測点および原点を結ぶ直線と、Z軸とがなす角度である。αは、式(17)を満たす。式(18)のF(u)は、u=0(α=α)でN(最大)となり、u=±2π/Nで0となる。u=-2π/Nおよび2π/Nを満たす角度をそれぞれαおよびαとすると(α<α<α)、αの広がり角度はΔα=α-αとなる。-2π/N<u<2π/N(α<α<α)の範囲のピークは、一般にメインローブと呼ばれる。メインローブの両側にはサイドローブと呼ばれる複数の小さいピークが存在する。メインローブの幅Δu=4π/Nと、式(19)から得られるΔu=2πpΔ(sinα)/λとを比較すると、Δ(sinα)=2λ/(Np)となる。Δαが小さければ、Δ(sinα)=sinα-sinα=[(sinα-sinα)/(α-α)]Δα≒[d(sinα)/dα]α=α0Δα=cosαΔαとなる。このため、広がり角度は、以下の式(20)で表される。
Figure 0007162266000014
したがって、導波路素子10の本数が多いほど、広がり角度Δαを小さくすることができ、遠方においても高精細な光スキャンが実現できる。同様の議論は、図26においてθ≠0の場合にも適用できる。
<導波路アレイから出射される回折光>
導波路アレイからは0次光のほかに高次の回折光も出射され得る。簡単のために、図26においてθ=0の場合を考える。つまり、回折光の出射方向はYZ平面に平行である。
図27Aは、pがλよりも大きい場合において、導波路アレイから回折光が出射される様子を示す模式図である。この場合、位相シフトがなければ(α=0)、図27Aに示す実線矢印の方向に0次光および±1次光が出射される(pの大きさによっては、さらに高次の回折光も出射され得る)。この状態から位相シフトを与えると(α≠0)、図27Aに示す破線矢印のように、0次光および±1次光の出射角度が同じ回転方向に変化する。±1次光のような高次光を用いてビームスキャンを行うことも可能であるが、よりシンプルにデバイスを構成する場合、0次光のみが用いられる。0次光の利得が低減することを回避するために、隣接する2つの導波路素子10の間の距離pをλよりも小さくすることによって高次光の出射を抑制してもよい。p>λであっても、高次光を物理的に遮断することによって0次光のみを用いることも可能である。
図27Bは、pがλよりも小さい場合において、導波路アレイから回折光が出射される様子を示す模式図である。この場合、位相シフトがなければ(α=0)、高次の回折光は、回折角度が90度を超えるため存在せず、前方には0次光だけが出射する。ただし、pがλに近い値の場合、位相シフトを与えると(α≠0)、出射角度の変化に伴って±1次光が出射される場合がある。図27Cは、p≒λ/2の場合において、導波路アレイから回折光が出射される様子を示す模式図である。この場合、位相シフトを与えても(α≠0)±1次光は出射しない、あるいは出射したとしてもかなり大きな角度で出射する。p<λ/2の場合は、位相シフトを与えても高次の光が出射することはない。しかし、pをこれ以上小さくすることによるメリットも特にない。よって、pは、例えばλ/2以上に設定され得る。
図27Aから図27Cにおける空気へ出射される0次光および±1次光の関係は、以下のように定量的に説明できる。式(18)のF(u)は、F(u)=F(u+2π)であることから、2πの周期関数である。u=±2mπのとき、F(u)=N(最大)となる。そのとき、u=±2mπを満たす出射角度αで±m次光が出射される。u=±2mπ(m≠0)付近のピーク(ピーク幅はΔu=4π/N)をグレーティングローブと呼ぶ。
高次光のうち、±1次光のみを考えると(u=±2π)、±1次光の出射角度α±は、以下の式(21)を満たす。
Figure 0007162266000015
+1次光が出射されない条件sinα>1から、p<λ/(1―sinα)が得られる。同様に、-1次光が出射されない条件sinα<-1から、p<λ/(1+sinα)が得られる。
出射角度α(>0)の0次光に対して±1次光が出射されるか否かの条件は、以下のように分類される。p≧λ/(1―sinα)の場合、±1次光の両方が出射される。λ/(1+sinα)≦p<λ/(1―sinα)の場合、+1次光は出射されないが-1次光は出射される。p<λ/(1+sinα)の場合、±1次光はいずれも出射されない。特に、p<λ/(1+sinα)を満たせば、図26においてθ≠0の場合でも±1次光は出射されない。例えば、±1次光が出射されない場合において片側10度以上のスキャンを達成するために、α=10°とし、pは、p≦λ/(1+sin10°)≒0.85λの関係を満たす。例えば、この式と、pに関する前述の下限についての条件とを組み合わせれば、λ/2≦p≦λ/(1+sin10°)が満足される。
しかし、±1次光が出射されない条件を満たすためには、pを非常に小さくする必要がある。これは、導波路アレイの作製を困難にする。そこで、±1次光の有無に関わらず、0次光を0°<α<αmaxの角度範囲でスキャンすることを考える。ただし、±1次光はこの角度範囲には存在しないとする。この条件を満たすためには、α=0°において、+1次光の出射角度はα≧αmaxでなければならず(すなわち、sinα=(λ/p)≧sinαmax)、α=αmaxにおいて、-1次光の出射角度はα≦0でなければならない(すなわち、sinα=sinαmax-(λ/p)≦0)。これらの制限から、p≦λ/sinαmaxが得られる。
上記の議論から、±1次光がスキャンの角度範囲に存在しない場合における0次光の出射角度αの最大値αmaxは、以下の式(22)を満たす。
Figure 0007162266000016
例えば、±1次光がスキャンの角度範囲に存在しない場合において片側10度以上のスキャンを達成するために、αmax=10°とし、p≦λ/sin10°≒5.76λの関係を満たす。例えば、この式と、pに関する前述の下限についての条件とを組み合わせれば、λ/2≦p≦λ/sin10°が満足され得る。このpの上限(p≒5.76λ)は±1次光が出射されない場合における上限(p≒0.85λ)と比べて十分大きいので、導波路アレイの作製は比較的容易である。ここで、使用される光が単一波長の光ではない場合、使用される光の中心波長をλとする。
以上のことから、より広い角度範囲をスキャンするためには、導波路間の距離pを小さくする必要がある。一方、pが小さい場合に式(20)における出射光の広がり角度Δαを小さくするためには、導波路アレイの本数を増やす必要がある。導波路アレイの本数は、用途および要求される性能に応じて適宜決定される。導波路アレイの本数は、例えば16本以上、用途によっては100本以上であり得る。
<導波路アレイに導入する光の位相制御>
それぞれの導波路素子10から出射される光の位相を制御するために、例えば、導波路素子10に光を導入する前段に、光の位相を変化させる位相シフタを設ける。本実施形態における光スキャンデバイス100は、複数の導波路素子10のそれぞれに接続された複数の位相シフタと、各位相シフタを伝搬する光の位相を調整する第2調整素子とを備える。各位相シフタは、複数の導波路素子10の対応する1つにおける光導波層20に直接的にまたは他の導波路を介して繋がる導波路を含む。第2調整素子は、複数の位相シフタから複数の導波路素子10へ伝搬する光の位相の差をそれぞれ変化させることにより、複数の導波路素子10から出射される光の方向(すなわち、第3の方向D3)を変化させる。以下の説明では、導波路アレイと同様に、配列された複数の位相シフタを「位相シフタアレイ」と呼ぶことがある。
図28は、位相シフタ80が導波路素子10に直接的に接続されている構成の例を示す模式図である。図28において、破線枠で囲まれた部分が位相シフタ80に該当する。この位相シフタ80は、対向する一対のミラー(第5のミラー30aおよび第6のミラー40a、以下、単にミラーと呼ぶことがある。)と、ミラー30aとミラー40aの間に設けられた導波路20aとを有する。この例における導波路20aは、導波路素子10における光導波層20と共通の部材で構成され、光導波層20に直接的に繋がっている。同様に、ミラー40aも、導波路素子10におけるミラー40と共通の部材で構成され、ミラー40に接続されている。ミラー30aは、導波路素子10におけるミラー30よりも低い透過率(すなわち、高い反射率)を有する。ミラー30aは、ミラー30に接続されている。位相シフタ80では、光を放射しないようにするために、ミラー30aの透過率はミラー40、40aと同様の低い値に設計されている。すなわち、第5のミラー30aと第6のミラー40aの光透過率は、第1のミラー30の光透過率よりも低い。この例では、位相シフタ80が、前述の「第1の導波路」に相当する。このように、「第1の導波路」は、位相シフタとして機能してもよい。
図29は、導波路アレイ10Aおよび位相シフタアレイ80Aを、光出射面の法線方向(Z方向)から見た模式図である。図29に示される例では、全ての位相シフタ80が同じ伝搬特性を有し、全ての導波路素子10が同じ伝搬特性を有する。それぞれの位相シフタ80およびそれぞれの導波路素子10は同じ長さであってもよいし、長さが異なっていても良い。それぞれの位相シフタ80の長さが等しい場合は、例えば、駆動電圧によりそれぞれの位相シフト量を調整する。また、それぞれの位相シフタ80の長さを等ステップで変化させた構造にすることで、同じ駆動電圧で等ステップの位相シフトを与えることもできる。さらに、この光スキャンデバイス100は、複数の位相シフタ80に光を分岐して供給する光分岐器90と、各導波路素子10を駆動する第1駆動回路110と、各位相シフタ80を駆動する第2駆動回路210とをさらに備えている。図29における直線の矢印は光の入力を示している。別々に設けられた第1駆動回路110と第2駆動回路210とをそれぞれ独立に制御することにより、2次元スキャンを実現できる。この例では、第1駆動回路110は、第1調整素子の1つの要素として機能し、第2駆動回路210は、第2調整素子の1つの要素として機能する。
第1駆動回路110は、後述するように、各導波路素子10における光導波層20の屈折率を変化(変調)させることにより、光導波層20から出射する光の角度を変化させる。第2駆動回路210は、後述するように、各位相シフタ80における導波路20aの屈折率を変化させることにより、導波路20aの内部を伝搬する光の位相を変化させる。光分岐器90は、全反射によって光が伝搬する導波路で構成してもよいし、導波路素子10と同様の反射型導波路で構成してもよい。
なお、光分岐器90で分岐したそれぞれの光に対して位相を制御した後に、それぞれの光を位相シフタ80に導入してもよい。この位相制御には、例えば、位相シフタ80に至るまでの導波路の長さを調整することによるパッシブな位相制御構造を用いることができる。あるいは、位相シフタ80と同様の機能を有する電気信号で制御可能な位相シフタを用いても良い。このような方法により、例えば、全ての位相シフタ80に等位相の光が供給されるように、位相シフタ80に導入される前に位相を調整してもよい。そのような調整により、第2駆動回路210による各位相シフタ80の制御をシンプルにすることができる。
図30は、位相シフタ80における導波路が、導波路素子10における光導波層20と、他の導波路85を介して繋がる構成の例を模式的に示す図である。他の導波路85は、上述した何れかの第1の導波路1であってもよい。また、他の導波路85は、図14に示した導波路1および1’であってもよい。各位相シフタ80は、図28に示す位相シフタ80と同じ構成を有していてもよいし、異なる構成を有していてもよい。図30では、位相シフタ80を、位相シフト量を表す記号φ~φを用いて、簡易的に表現している。以降の図でも同様の表現を用いることがある。位相シフタ80には、全反射を利用して光を伝搬させる導波路を利用することができる。その場合、図28に示されているようなミラー30aおよび40aは不要である。
図31は、光分岐器90にカスケード状に並ぶ複数の位相シフタ80を挿入した構成例を示す図である。この例では、光分岐器90の経路の途中に、複数の位相シフタ80が接続されている。各位相シフタ80は、伝搬する光に一定の位相シフト量φを与える。それぞれの位相シフタ80が伝搬光に与える位相シフト量を一定にすることで、隣接する2つの導波路素子10の間の位相差が等しくなる。したがって、第2調整素子は、全ての位相シフタ80に共通の位相制御信号を送ることができる。このため、構成が容易になるという利点がある。
光分岐器90、位相シフタ80および導波路素子10などの間で、光を効率的に伝搬させるために、導波路を利用することができる。導波路には、周囲の材料よりも高い屈折率を有する、光の吸収が少ない光学材料を用いることができる。例えば、Si、GaAs、GaN、SiO、TiO、Ta、AlN、SiNなどの材料が用いられ得る。また、光分岐器90から導波路素子10に光を伝搬させるために、上述した何れかの第1の導波路1を用いてもよい。また、光分岐器90から導波路素子10に光を伝搬させるために、図14に示した導波路1および1’を用いてもよい。
位相シフタ80では、光に位相差を与えるために光路長を変える機構が必要である。光路長を変えるために、本実施形態では、位相シフタ80における導波路の屈折率が変調される。これにより、隣接する2つの位相シフタ80から導波路素子10に供給される光の位相差を調整することができる。より具体的には、位相シフタ80が有する導波路内の位相シフト材料の屈折率変調を行うことで、位相シフトを与えることができる。屈折率変調を行う構成の具体例については、後述する。
<第1調整素子の例>
次に、導波路素子10における光導波層20の屈折率を調整する第1調整素子の構成例を説明する。
図32Aは、第1調整素子60(以下、単に調整素子と呼ぶことがある)の構成の一例を模式的に示す斜視図である。図32Aに示される例では、一対の電極62を有する調整素子60が導波路素子10に組み込まれている。光導波層20は、一対の電極62に挟まれている。光導波層20および一対の電極62は、第1のミラー30と第2のミラー40との間に設けられている。光導波層20の側面(XZ面に平行な表面)の全体が、電極62に接触している。光導波層20は、電圧が印加された場合に、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率が変化する屈折率変調材料を含む。調整素子60は、一対の電極62から引き出された配線64と、配線64に接続された電源66とをさらに有している。電源66をオンにして配線64を通じて一対の電極62に電圧を印加することで、光導波層20の屈折率を変調することができる。このため、調整素子60を屈折率変調素子と呼ぶこともできる。
図32Bは、第1調整素子60の他の構成例を模式的に示す斜視図である。この例では、光導波層20の側面の一部のみが電極62に接触している。それ以外の点は、図32Aに示す構成と同じである。このように、光導波層20の屈折率を部分的に変化させる構成であっても、出射光の方向を変化させることができる。
図32Cは、第1調整素子60のさらに他の構成例を模式的に示す斜視図である。この例では、一対の電極62は、ミラー30および40の反射面に略平行な層状の形状を有する。一方の電極62は、第1のミラー30と光導波層20との間に挟まれている。他方の電極62は、第2のミラー40と光導波層20との間に挟まれている。このような構成を採用する場合、電極62には、透明電極が用いられ得る。このような構成によれば、製造が比較的容易であるという利点がある。
図32Aから図32Cに示す例では、各導波路素子10における光導波層20は、電圧が印加された場合に、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率が変化する材料を含む。第1調整素子60は、光導波層20を挟む一対の電極62を有し、一対の電極62に電圧を印加することにより、光導波層20の屈折率を変化させる。電圧の印加は、前述の第1駆動回路110(図29参照)によって行われ得る。
ここで、各構成要素に用いられ得る材料の例を説明する。
ミラー30、40、30a、および40aの材料には、例えば誘電体による多層膜を用いることができる。多層膜を用いたミラーは、例えば、各々が1/4波長の光学厚さを有する、屈折率の異なる複数の膜を周期的に形成することによって作製できる。このような多層膜ミラーによれば、高い反射率を得ることができる。膜の材料として、例えばSiO、TiO、Ta、Si、SiNなどを用いることができる。各ミラーは、多層膜ミラーに限らず、Ag、Alなどの金属で形成されていてもよい。
電極62および配線64には、導電性を有する様々な材料を利用することができる。例えば、Ag、Cu、Au、Al、Pt、Ta、W、Ti、Rh、Ru、Ni、Mo、Cr、Pdなどの金属材料、またはITO、酸化錫、酸化亜鉛、IZO(登録商標)、SROなどの無機化合物、またはPEDOT、ポリアニリンなどの導電性高分子などの導電性材料を用いることができる。
光導波層20の材料には、誘電体、半導体、電気光学材料、液晶分子などの様々な透光性の材料を利用することができる。誘電体としては、例えばSiO、TiO、Ta、SiN、AlNが挙げられる。半導体材料としては、例えば、Si系、GaAs系、GaN系の材料が挙げられる。電気光学材料としては、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、チタン酸バリウム(BaTi)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)などが挙げられる。
光導波層20の屈折率を変調する方法には、例えば、キャリア注入効果、電気光学効果、複屈折効果、または熱光学効果を利用した方法がある。以下、各方法の例を説明する。
キャリア注入効果を利用した方法は、半導体のpin接合を利用した構成によって実現され得る。この方法では、ドープ濃度の低い半導体をp型半導体およびn型半導体で挟み込んだ構造が用いられ、半導体にキャリアを注入することによって屈折率が変調される。この構成では、各導波路素子10における光導波層20は、半導体材料を含む。一対の電極62の一方はp型半導体を含み、他方はn型半導体を含み得る。第1調整素子60は、一対の電極62に電圧を印加することにより、半導体材料にキャリアを注入し、光導波層20の屈折率を変化させる。光導波層20をノンドープまたは低ドープ濃度の半導体で作製し、これに接するようにp型半導体およびn型半導体を設ければ良い。低ドープ濃度の半導体にp型半導体およびn型半導体が接するように配置し、さらにp型半導体およびn型半導体に導電性材料が接するような複合的な構成にしてもよい。例えば、Siに1020cm-3程度のキャリアを注入すると、Siの屈折率が0.1程度変化する(例えば、“Free charge carrier induced refractive index modulation of crystalline Silicon” 7th IEEE International Conference on Group IV Photonics, P102 ‐ 104, 1-3 Sept. 2010を参照)。この方法を採用する場合、図32Aから図32Cにおける一対の電極62の材料として、p型半導体およびn型半導体が用いられ得る。あるいは、一対の電極62は金属で構成し、電極62と光導波層20との間の層、または、光導波層20自体にp型またはn型半導体を含ませてもよい。
電気光学効果を利用した方法は、電気光学材料を含む光導波層20に電場をかけることで実現され得る。特に、電気光学材料としてKTNを用いれば、大きな電気光学効果を得ることができる。KTNは正方晶から立方晶への相転移温度よりも少し高い温度で比誘電率が著しく上昇するため、この効果を利用することができる。例えば、“Low-Driving-Voltage Electro-Optic Modulator With Novel KTa1-xNbxO3 Crystal Waveguides” Jpn. J. Appl. Phys., Vol.43, No. 8B (2004)によれば、波長1.55μmの光に対して電気光学定数g=4.8×10-15/Vが得られる。よって、例えば2kV/mmの電場をかけると、屈折率が0.1(=gn/2)程度変化する。このように、電気光学効果を利用した構成では、各導波路素子10における光導波層20は、KTNなどの電気光学材料を含む。第1調整素子60は、一対の電極62に電圧を印加することにより、電気光学材料の屈折率を変化させる。
液晶による複屈折効果を利用した方法では、液晶材料を含む光導波層20を電極62で駆動することで、液晶の屈折率異方性を変化させることができる。これにより、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率を変調することができる。液晶は一般に0.1~0.2程度の複屈折率差を有するので、液晶の配向方向を電場で変えることで複屈折率差と同等の屈折率変化が得られる。このように、液晶の複屈折効果を利用した構成では、各導波路素子10における光導波層20は、液晶材料を含む。第1調整素子60は、一対の電極62に電圧を印加することにより、液晶材料の屈折率異方性を変化させ、光導波層20の屈折率を変化させる。
熱光学効果は、材料の温度変化に伴って屈折率が変化する効果である。熱光学効果による駆動を行うために、熱光学材料を含む光導波層20を加熱することで屈折率を変調してもよい。
図33は、高い電気抵抗を有する材料によって構成されるヒーター68を含む調整素子60と導波路素子10とを組み合わせた構成の例を示す図である。ヒーター68は、光導波層20の近傍に配置され得る。電源66をオンにして導電性材料を含む配線64を通じてヒーター68に電圧をかけることにより、加熱することができる。ヒーター68を光導波層20に接触させてもよい。本構成例では、各導波路素子10における光導波層20は、温度変化に伴って屈折率が変化する熱光学材料を含む。第1調整素子60は、光導波層20に接触してまたは光導波層20の近傍に配置されたヒーター68を有する。第1調整素子60は、ヒーター68によって熱光学材料を加熱することにより、光導波層20の屈折率を変化させる。
光導波層20自体を高電気抵抗材料で作製し、光導波層20を直接一対の電極62で挟み電圧を印加することで加熱してもよい。その場合、第1調整素子60は、光導波層20を挟む一対の電極62を有する。第1調整素子60は、一対の電極62に電圧を印加して光導波層20における熱光学材料(例えば、高電気抵抗材料)を加熱することにより、光導波層20の屈折率を変化させる。
ヒーター68または光導波層20に用いられる高電気抵抗材料として、半導体または抵抗率の大きい金属材料を用いることができる。半導体としては、例えば、Si、GaAs、またはGaNなどを用いることができる。また、抵抗率の高い金属としては、鉄、ニッケル、銅、マンガン、クロム、アルミニウム、銀、金、プラチナ、またはこれら複数の材料を組み合わせた合金などが用いられ得る。例えば、波長1500nmの光に対するSiの屈折率の温度依存性dn/dTは1.87×10-4(K-1)である(“Temperature-dependent refractive index of silicon and germanium”, Proc. SPIE 6273, Optomechanical Technologies for Astronomy, 62732Jを参照)。したがって、温度を500℃変えると屈折率を0.1程度変化させることができる。光導波層20の近傍にヒーター68を設け局所的に加熱すれば、500°という大きい温度変化でも比較的高速に行うことができる。
キャリア注入による屈折率変化の応答速度は、キャリアの寿命によって決まる。一般に、キャリア寿命はナノ秒(ns)のオーダーであるため100MHz~1GHz程度の応答速度が得られる。
電気光学材料を用いた場合、電場をかけて電子の分極を誘起することで屈折率変化が生じる。分極を誘起する速度は一般的に極めて高速で、LiNbO、LiTaOなどの材料では応答時間はフェムト秒(fs)オーダーであるため、1GHzを越えた高速駆動が可能である。
熱光学材料を用いた場合、温度昇降の速度で屈折率変化の応答速度が決まる。局所的に導波路近傍のみ加熱することで急激な温度上昇が得られる。また、局所的に温度が上がった状態でヒーターを切ると周辺に放熱することで急激に温度を下げることができる。速いものでは100KHz程度の応答速度が得られる。
<液晶材料を用いた構成の具体例>
次に、光導波層20に液晶材料を用いた構成の具体例を説明する。
前述のように、液晶による複屈折効果を利用した方法では、液晶材料を含む光導波層20を電極62で駆動することで、液晶の屈折率異方性を変化させることができる。これにより、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率を変調することができる。液晶は一般に0.1~0.2程度の複屈折率差を有するので、液晶の配向方向を電場で変えることで複屈折率差と同等の屈折率変化が得られる。このように、液晶の複屈折効果を利用した構成では、各導波路素子10における光導波層20は、液晶材料を含む。第1調整素子60における駆動回路は、一対の電極62に電圧を印加することにより、液晶材料の屈折率異方性を変化させ、光導波層20の屈折率を変化させることができる。
電圧印加時に屈折率の変化を大きくするためには、一対の電極62の配置と、液晶材料の配向方向すなわち液晶分子の長手方向とが適切な関係にあることが望まれる。さらに、光導波層20に入力する光として、直線偏光を用い、その偏光方向を適切な方向に設定することが望まれる。
液晶の複屈折差は、液晶分子の長手方向の誘電率と短手方向の誘電率とが異なることに起因する。このため、光導波層20内の液晶分子の配向方向を入射光の偏光方向に応じて適切に制御することで、より効果的に屈折率を変化させることができる。
図34Aおよび図34Bは、光導波層20に液晶材料75を用いた構成の第1の例を示している。図34Aおよび図34Bには、一対の電極62に挟まれた光導波層20と、一対の電極62に電圧を印加する駆動回路110とが示されている。この例における駆動回路110は、駆動電源111と、スイッチング素子112(以下、スイッチ112とも称する)とを備えている。図34Aはスイッチ112がOFFの状態を示し、図34Bはスイッチ112がONの状態を示している。
一対の電極62は、透明電極である。一対の電極62は、図示されていない第1および第2のミラーに平行に配置されている。すなわち、一対の電極62は、電圧が印加されたとき、第1および第2のミラーの反射面の法線方向であるZ方向に電場を発生させるように配置されている。図34Aに示されるように、液晶分子76の長手方向は、一対の電極62に電圧が印加されていない状態において、光導波層20が延びる方向(Y方向)に平行である。
図34Aおよび図34Bにおける実線矢印は光の進行方向を示し、破線矢印は偏光方向を示している。この例においては、光導波層20にはP偏光が入力される。P偏光は、光の入射面に平行に電場が振動する直線偏光である。光の入射面は、各ミラーの反射面に入射する光の方向と反射される光の方向とで形成される面である。本実施形態では、光の入射面はYZ面にほぼ平行である。各ミラーの反射面における光の入射角および反射角をθとするとき、P偏光の光の電場の振動方向は、YZ面内においてY方向から角度θだけ傾斜した方向である。しかし、図34A、図34B、および以降の図では、S偏光との区別をわかり易くするために、θが十分に小さいものとして、P偏光の偏光方向を示す破線矢印を、Y方向に平行に示している。
光導波層20のZ方向のサイズ(高さ)は、例えば0.1μmから10μmの範囲内の値、より望ましくは0.2μmから3μmの範囲内の値に設定され得る。光導波層20のX方向のサイズ(幅)は、例えば1μmから100μmの範囲内の値、より望ましくは1μmから30μmの範囲内の値に設定され得る。光導波層20のY方向のサイズ(長さ)は、例えば100μmから100mmの範囲内の値、より望ましくは1mmから30mmの範囲内の値に設定され得る。
液晶材料は、例えばネマチック液晶であり得る。ネマチック液晶の分子構造は、以下のとおりである。
R1-Ph1-R2-Ph2-R3
ここで、R1、R3は、それぞれ独立して、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル、シアノ基、アミン基、ニトロ基、ニトリル基、およびアルキル鎖からなる群から選択される一つを表す。アルキル鎖は、例えば、炭素数3以上のアルキル基である。Ph1およびPh2は、それぞれ独立して、フェニル基またはビフェニル基等の芳香族基を表す。Ph1の芳香族基は、R1とR2との間と接続する。Ph2の芳香族基は、R2とR3との間を接続する。R2は、ビニル基、カルボニル基、カルボキシル基、ジアゾ基、およびアゾキシ基からなる群から選択される一つを表す。R2のビニル基、カルボニル基、カルボキシル基、ジアゾ基、またはアゾキシ基は、Ph1とPh2との間を接続する。
液晶は、ネマチック液晶に限定されない。例えば、スメクチック液晶を用いてもよい。液晶は、スメクチック液晶の中でも、例えばスメクチックC相(SmC相)であってもよい。スメクチック液晶は、スメクチックC相(SmC相)の中でも、例えば液晶分子内にキラル中心(不斉炭素)を有し強誘電性液晶であるカイラルスメクチック相(SmC相)あってもよい。
SmC相の分子構造は、以下のように表される。
Figure 0007162266000017
R1、R4は、それぞれ独立して、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミン基、ニトロ基、ニトリル基、およびアルキル鎖からなる群から選択される一つである。アルキル鎖は、例えば、炭素数3以上のアルキル基である。Ph1およびPh2は、それぞれ独立して、フェニル基またはビフェニル基等の芳香族基である。Ph1の芳香族基は、R1とR2との間と接続する。Ph2の芳香族基は、R2と(CHとの間を接続する。R2は、ビニル基、カルボニル基、カルボキシル基、ジアゾ基、およびアゾキシ基のいずれかである。R2のビニル基、カルボニル基、カルボキシル基、ジアゾ基、またはアゾキシ基は、Ph1とPh2との間を接続する。Chはキラル中心を表す。キラル中心は典型的には炭素(C*)である。R3およびR5は、水素、メチル基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミン基、ニトロ基、ニトリル基、およびアルキル鎖からなる群から選択される一つである。R3、R4、およびR5は、互いに異なる官能基である。
液晶材料は、組成の異なる複数の液晶分子の混合物であってもよい。例えば、ネマチック液晶分子と、スメクチック液晶分子との混合物を光導波層20の材料として用いてもよい。
一般に、液晶セル内に液晶材料を注入する際には、液晶セルの温度を上げ、液晶材料の流動性を増した状態で液晶セル内に液晶材料を注入する。このため、注入時の流れに沿った方向に液晶分子が配向する傾向が高いことが知られている。図34Aに示す光導波層20に液晶を注入する場合には、光導波層20のXZ面に平行な端面から液晶材料を注入すると、液晶分子76は、光導波層20の長手方向(Y方向)に平行に配向する。
図34Aに示すように、駆動回路110のスイッチング素子112がOFF、すなわち光導波層20に駆動電圧が印加されない状態では、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とが平行に近くなる。厳密には、偏光方向と液晶分子の長手方向とは、前述のとおり角度θで交差する。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的高い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.6から1.7程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的大きくなる。
他方、図34Bに示すように、駆動回路110のスイッチング素子112をON、すなわち光導波層20に駆動電圧を印加すると、液晶分子76が透明電極62に対して垂直に立ち上がるように配向する。このため、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とがなす角度が90度に近くなる。厳密には、偏光方向と液晶分子の長手方向とは、角度(90°-θ)で交差する。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的低い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.4から1.5程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的小さくなる。
なお、図34Bは、図中の下側の電極62と光導波層20との間に配向膜がある例を示している。配向膜があるため、図中の下側の液晶分子76は立ち上がりにくくなっている。このような配光膜は、上側の電極62に設けられていてもよい。配向膜は設けられていなくてもよい。
このように、光導波層20に液晶材料を用いることで、印加電圧のON/OFFによって屈折率を0.1から0.2程度変化させることができる。これにより、光導波層20から出射する光の出射角を変化させることができる。
なお、この例では、駆動回路110が駆動電源111とスイッチング素子112とを有しているが、このような構成に限定されない。例えば、駆動回路110は、スイッチング素子112の代わりに電圧アンプ(voltage amplifier)のような電圧制御回路を用いてもよい。そのような構成を用いることで、液晶分子76の配向を連続的に変化することが可能となり、任意の出射角度に制御することができる。
図35は、光導波層20に光を入力する光入力装置113の構成例を模式的に示す断面図である。この例における光入力装置113は、光源130と、光源130から出射された光を伝搬して光導波層20に入力する導波路とを有している。この例における導波路は、図28に示す構成と同様の位相シフタ80であるが、他の構造をもつ導波路であってもよい。例えば、位相シフタ80に代えて、光導波層20に直接的に繋がる全反射導波路により、光源130の光を光導波層20に入力してもよい。この場合、全反射導波路の前段に位相シフタ80を設けてもよい。
光源130は、図35におけるYZ面内で振動する電場をもつ直線偏光を出射する。光源130から出射された直線偏光は、位相シフタ80を介して光導波層20に入射し、P偏光として伝搬する。このように、光スキャンデバイスは、光導波層20にP偏光を入力する光入力装置113を備えていてもよい。後述する例のように、光源130がS偏光を出射するように構成することにより、光導波層20にS偏光、すなわち、X方向に振動する電場をもつ直線偏光を入力することができる。
図36Aおよび図36Bは、光導波層20に液晶材料を用いた構成の第2の例を示している。第2の例が第1の例と異なる点は、入射光の偏光がS偏光であり、一対の電極62に電圧が印加されていない状態において、液晶分子76の配向方向が、光導波層20が延びる方向(Y方向)および第1および第2のミラーの反射面の法線方向(Z方向)の両方に垂直な方向(X方向)である点にある。入射光がS偏光であるため、その電場の方向は入射面に垂直なX方向である。
液晶分子76の配向方向は、液晶を挿入する前に予め液晶セルとなる上下の電極62の表面をラビングすることで配向方向を制御することができる。また、上下の電極62の表面にポリイミド等の配向層(配向膜ともいう)を塗布形成することで配向方向を制御することができる。
図36Aに示すように、駆動回路110のスイッチング素子112がOFF、すなわち光導波層20に駆動電圧が印加されない状態では、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とがほぼ平行である。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的高い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.6から1.7程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的大きくなる。
他方、図36Bに示すように、駆動回路110のスイッチング素子112をON、すなわち光導波層20に駆動電圧を印加すると、液晶分子76が透明電極62に対して垂直に立ち上がるように配向する。このため、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とがなす角度はほぼ直角になる。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的低い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.4から1.5程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的小さくなる。
図36Aおよび図36Bに示す構成では、電圧が印加されていない状態では偏光方向と液晶分子76の配向方向とが一致し、高い電圧が印加されている状態では偏光方向と液晶分子76の配向方向とが直交する。このため、図34Aおよび図34Bに示す構成と比較して、同一の電圧の印加に対して屈折率をより大きく変化させることができる。したがって、光の出射角度をより大きく変化させることができる。他方、図34Aおよび図34Bに示す構成は、製造し易いという利点がある。
図37Aおよび図37Bは、光導波層20に液晶材料を用いた構成の第3の例を示している。第3の例が第1の例と異なる点は、入射光の偏光がS偏光であり、一対の電極62が、光導波層20を間に挟んで、YZ面に平行に配置されている点にある。この例における一対の電極62は、第1のミラー30および第2のミラー40の各々にほぼ垂直に配置されている。一対の電極62は、電圧が印加されたとき、光導波層20が延びる方向(Y方向)および各ミラーの法線方向(Z方向)の両方に垂直なX方向に電場を発生させる。第1の例と同様、一対の電極に電圧が印加されていない状態において、液晶材料の配向方向は光導波層20が延びる方向に平行である。
図37Aに示すように、駆動回路110のスイッチング素子112がOFF、すなわち光導波層20に駆動電圧が印加されない状態では、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とがほぼ垂直になる。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的低い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.4から1.5程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的小さくなる。
他方、図37Bに示すように、駆動回路110のスイッチング素子112をON、すなわち光導波層20に駆動電圧を印加すると、液晶分子76の長手方向が、光導波層20が延びる方向(Y方向)および各ミラー30、40の法線方向(Z方向)の両方に垂直な方向(X方向)になる。このため、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とがほぼ平行になる。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的高い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.6から1.7程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的大きくなる。
図38Aおよび図38Bは、光導波層20に液晶材料を用いた構成の第4の例を示している。第4の例が第3の例と異なる点は、入射光の偏光がP偏光である点にある。
図38Aに示すように、駆動回路110のスイッチング素子112がOFF、すなわち光導波層20に駆動電圧が印加されない状態では、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とが平行に近くなる。厳密には、偏光方向と液晶分子の長手方向とは、前述のとおり角度θで交差する。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的高い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.6から1.7程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的大きくなる。
他方、図38Bに示すように、駆動回路110のスイッチング素子112をON、すなわち光導波層20に駆動電圧を印加すると、液晶分子76が、透明電極62に対して垂直に配向する。このため、伝搬する光の偏光方向が液晶分子の長手方向にほぼ垂直になる。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的低い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.4から1.5程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的小さくなる。
以上のように、光導波層20に液晶材料を使用した例では、光の偏光方向、液晶分子76の配向方向、および一対の電極62の配置を適切に設定することにより、出射光の方向を制御することができる。入射光の偏光方向がP偏光であってもS偏光であっても、駆動電圧に応じて出射角度を変化させ光線の方向を制御することができる。
図39は、光導波層20に液晶材料を使用した構成における、光の射出角度の印加電圧依存性を示すグラフである。このグラフは、図34Aおよび図34Bに示す構成を用いて、印加電圧を変化させながら光導波層20から出射する光の射出角度を測定した実験の結果を示している。図40は、本実験で用いた導波路素子の構成を示す断面図である。この導波路素子では、電極62b、多層反射膜である第2のミラー40、液晶層である光導波層20、多層反射膜である第1のミラー30、および透明電極62aが、この順で積層されている。光導波層20の両側には、SiOの層が形成されている。
本実験では、液晶材料として、5CB(4-Cyano-4’-pentylbiphenyl)が用いられている。0V時の液晶の配向方向は、光導波層20が延びる方向に平行、すなわち、図40の紙面垂直方向である。光導波層20の厚さは1μm、光導波層20の幅は20μmである。測定に使用した光は1.47μmの波長をもつTM偏光(P偏光)である。電極62bは、第2のミラー40における多層反射膜と、図示されていない基板との間に成膜した。この実験では、2つの多層反射膜が電極62aおよび62bの間に配置されているため、比較的高い電圧を印加した。
図39に示されているように、電圧の印加により、射出角度を約15°変化させることができた。この実験では、図34Aおよび34Bに示す構成を用いているが、他の構成でも同等以上の効果を得ることができる。
<電気光学材料を用いた構成の具体例>
次に、光導波層20に電気光学材料を用いた構成の具体例を説明する。
光導波層20が電気光学材料を含む光スキャンデバイスにおいては、電気光学材料の分極軸の方向が、一対の電極62に電圧を印加したときに発生する電場の方向に一致するように光導波層20が構成される。そのように構成により、一対の電極62に電圧を印加することで生じる電気光学材料の屈折率の変化を大きくすることができる。
図41は、光導波層20に電気光学材料77を用いた構成の第1の例を示している。この例では、一対の電極62は、電圧が印加されたときに一対の電極62間に発生する電場の方向が、光導波層20が延びる方向(Y方向)および各ミラーの法線方向(Z方向)の両方に垂直な方向(X方向)に一致する態様で配置されている。この例における電気光学材料の分極軸の方向は、光導波層20が延びる方向および各ミラーの法線方向の両方に垂直なX方向である。駆動回路110は、一対の電極62に電圧を印加することにより、電気光学材料の、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率を変化させる。
電気光学材料の分極軸の方向は、電場を与えたときに屈折率の変化が最大になる方向を指す。分極軸を光学軸と呼ぶこともある。図41において、分極軸の方向は、実線両矢印で示されている。分極軸に沿った方向における屈折率neは、印加される電圧に応じて変化する。
本実施形態において使用され得る電気光学材料は、例えば、KTa1-xNb、またはK1-yTa1-xNb(Aはアルカリ金属であり、典型的にはLiまたはNa)で表される化合物であり得る。xはNbのモル比を表し、yはAのモル比を表す。xは、0よりも大きく1よりも小さい実数である。yは、0よりも大きく1よりも小さい実数である。
電気光学材料は、以下の化合物のいずれかであってもよい。
・KDP(KHPO)型結晶・・・例えば、KDP、ADP(NHPO)、KDA(KHAsO)、RDA(RbHPO)、またはADA(NHAsO
・立方晶系材料・・・例えば、KTN、BaTiO、SrTiOPbMgNb、GaAs、CdTe、またはInAs
・正方晶系材料・・・例えば、LiNbOまたはLiTaO
・せん亜鉛鉱型材料・・・例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、GaAs、またはCuCl
・タングステンブロンズ型材料・・・KLiNbO、SrBaNb、KSrNbO、BaNaNbO、CaNb
図41に示すように、電気光学材料の分極軸を一対の電極62に垂直な方向に揃え、一対の電極62に印加する電圧を駆動回路110によって変化させることで屈折率を変化させることができる。この際、入射光をS偏光とすることで偏光面と電気光学材料の分極軸が平行となる。このため、電圧による屈折率変化が最も効果的に入射光に反映され、光の出射角度の変化を大きくすることができる。
図42は、光導波層20に電気光学材料77を用いた構成の第2の例を示している。図41の構成との違いは、一対の電極62が、図示されていない第1および第2のミラーに平行に配置されていることである。この例では、電圧印加時に電極62間に発生する電場の方向、すなわち各電極62の法線方向はZ方向であるため、電気光学材料の分極軸の方向もその方向に揃えられている。この例では、入射光をP偏光とすることにより、偏光面と電気光学材料の分極軸とが平行となる。このため、電圧による屈折率変化が入射光に反映され、光の出射角度の変化を大きくすることができる。
このように、光導波層20に電気光学材料を使用し、光の偏光方向、および、電気光学材料の分極軸を電極62と垂直方向に揃え、印加する駆動電圧を制御することで、光の出射角度を変化させ、光線の方向を制御することができる。
図43Aおよび図43Bは、各ミラー30、40に垂直な一対の電極62の配置の他の
例を示している。図43Aの例では、一対の電極62は、第2のミラー40の近傍にのみ配置されている。図43Bの例では、一対の電極62は、第1のミラー30の近傍にのみ配置されている。これらの例のように、一対の電極62は、光導波層20の一部の両側にのみ設けられていてもよい。これらの電極62は、第2のミラー40を支持する基板、または第1のミラー30を支持する基板のいずれかに設けられていてもよい。図43Aおよび図43Bのような構成は、光導波層20の材料が液晶材料および電気光学材料のいずれの場合にも適用され得る。
以上のように、図34Aから図43Bに示す光スキャンデバイスにおける光導波層20は、液晶材料または電気光学材料を含む。液晶材料の配向方向または電気光学材料の分極軸の方向は、一対の電極62に電圧が印加されていない状態において、光導波層20が延びる方向に平行または垂直である。駆動回路110は、一対の電極62に電圧を印加することにより、光導波層20を伝搬する光に対する液晶材料または電気光学材料の屈折率を変化させることで、光導波層20から出射される光の方向を変化させる。これにより、入射光の偏光方向を適切に設定することで、光導波層20の屈折率の変化を大きくし、光の出射角度の変化を大きくすることができる。
なお、前述のように、2つの方向が「平行」または「一致する」とは、厳密に平行である、または一致することのみならず、両者のなす角度が15度以下であることを含む。また、2つの方向が「垂直」とは、厳密に垂直であることを意味せず、両者のなす角度が75度以上105度以下であることを含む。
<位相シフトのための屈折率変調>
次に、第2調整素子による複数の位相シフタ80における位相の調整のための構成を説明する。複数の位相シフタ80における位相の調整は、位相シフタ80における導波路20aの屈折率を変化させることによって実現され得る。この屈折率の調整は、既に説明した、各導波路素子10における光導波層20の屈折率を調整する方法と全く同じ方法によって実現することができる。例えば、図32Aから図33を参照しながら説明した屈折率変調の構成および方法をそのまま適用することができる。図32Aから図33に関する説明において、導波路素子10を位相シフタ80と読み替え、第1調整素子60を第2調整素子と読み替え、光導波層20を導波路20aと読み替え、第1駆動回路110を第2駆動回路210と読み替える。このため、位相シフタ80における屈折率変調についての詳細な説明は省略する。
各位相シフタ80における導波路20aは、電圧の印加または温度変化に応じて屈折率が変化する材料を含む。第2調整素子は、各位相シフタ80における導波路20aに電圧を印加する、または導波路20aの温度を変化させることにより、導波路20a内の屈折率を変化させる。これにより、第2調整素子は、複数の位相シフタ80から複数の導波路素子10に伝搬する光の位相の差をそれぞれ変化させることができる。
各位相シフタ80は、光が通過するまでの間に、少なくとも2πの位相シフトが可能なように構成され得る。位相シフタ80における導波路20aの単位長さあたりの屈折率の変化量が小さい場合には、導波路20aの長さを大きくしてもよい。例えば、位相シフタ80の大きさは、数百マイクロメートル(μm)から数ミリメートル(mm)、場合によってはそれ以上であってもよい。これに対し、各導波路素子10の長さは、例えば数十μmから数十mm程度の値であり得る。
<同期駆動のための構成>
本実施形態では、第1調整素子は、複数の導波路素子10から出射される光の方向が揃うように、各導波路素子10を駆動する。複数の導波路素子10から出射される光の方向を揃えるために、例えば、各導波路素子10に個別に駆動部を設け、これらの駆動部を同期駆動する。
図44は、それぞれの導波路素子10の電極62から配線64を共通に取り出す構成の例を示す図である。図45は、一部の電極62および配線64を共通にした構成の例を示す図である。図46は、複数の導波路素子10に対して共通の電極62を配置した構成の例を示す図である。図44~図46において、直線の矢印は光の入力を示している。これらの図に示すような構成にすることで、導波路アレイ10Aを駆動するための配線をシンプルにすることができる。
本実施形態の構成によれば、シンプルなデバイス構成で2次元的に光をスキャンすることが可能である。例えば、N本の導波路素子10で構成された導波路アレイを同期駆動する場合、それぞれ独立の駆動回路を設けると、N個の駆動回路が必要である。しかし、上記のように電極または配線を共通にする工夫を行えば1つの駆動回路で動作させることができる。
導波路アレイ10Aの前段に位相シフタアレイ80Aを設けた場合、それぞれの位相シフタ80を独立に動かすためには、さらにN個の駆動回路が必要である。しかし、図31の例のように位相シフタ80をカスケード状に配置することにより、1つの駆動回路でも動作させることができる。すなわち、本開示の構成では、2個ないし2N個の駆動回路で、2次元的に光をスキャンさせる動作を実現できる。また、導波路アレイ10Aおよび位相シフタアレイ80Aをそれぞれ独立して動作させてもよいため、互いの配線が干渉することなく容易に引き出すことができる。
<製造方法>
導波路アレイ、位相シフタアレイ80A、およびこれらをつなぐ導波路は、半導体プロセス、3Dプリンター、自己組織化、ナノインプリントなど、高精度の微細加工が可能なプロセスによって製造することができる。これらのプロセスにより、小さい領域に必要な要素を集積することが可能である。
特に、半導体プロセスを利用すれば、加工精度が極めて高く、量産性も高いという利点がある。半導体プロセスを利用する場合、基板上に蒸着、スパッタ、CVD、塗布などによって様々な材料を成膜することができる。さらに、フォトリソグラフィーとエッチングプロセスにより、微細加工が可能である。基板の材料として、例えばSi、SiOAl 、AlN、SiC、GaAs、GaNなどを用いることができる。
<変形例>
続いて、本実施形態の変形例を説明する。
図47は、位相シフタアレイ80Aを配置する領域を大きく確保して、導波路アレイを小さく集積した構成の例を模式的に示す図である。このような構成によれば、位相シフタ80の導波路を構成する材料において小さな屈折率変化しか生じない場合でも、十分な位相シフト量を確保することができる。また、位相シフタ80を熱で駆動する場合、間隔を広く取れるため、隣の位相シフタ80に与える影響を小さくすることができる。
図48は、2つの位相シフタアレイ80Aaおよび80Abが、導波路アレイ10Aの両側にそれぞれ配置された構成例を示す図である。この例では、光スキャンデバイス100は、2つの光分岐器90aおよび90b、ならびに2つの位相シフタアレイ80Aaおよび80Abを、導波路アレイ10Aの両側に有している。図48において点線で示されている直線の矢印は、光分岐器90aおよび90bおよび位相シフタ80aおよび80bを伝搬する光を示している。位相シフタアレイ80Aaおよび光分岐器90aは、導波路アレイ10Aの一方の側に接続され、位相シフタアレイ80Abおよび光分岐器90bは、導波路アレイ10Aの他方の側に設けられている。光スキャンデバイス100は、さらに、光分岐器90aへの光の供給と光分岐器90bへの光の供給を切り替える光スイッチ92を備えている。光スイッチ92を切り替えることにより、図48における左側から導波路アレイ10Aに光を入力する状態と、図48における右側から導波路アレイ10Aに光を入力する状態とを切り替えることができる。
本変形例の構成によれば、導波路アレイ10Aから出射される光のX方向についてのスキャン範囲を拡大できるという利点がある。導波路アレイ10Aに片側から光を入力する構成においては、各導波路素子10の駆動によって、光の方向を、正面方向(すなわち、+Z方向)から、+X方向または-X方向のいずれかの方向に沿ってスキャンすることができる。これに対して、本変形例では、図48における左側の光分岐器90aから光を入力した場合、正面方向から+X方向に沿って光をスキャンすることができる。一方、右側の光分岐器90bから光を入力した場合、正面方向から-X方向に光をスキャンすることができる。つまり、図48の構成では、正面から見て図48における左右両方向に光をスキャンすることができる。このため、片側から光を入力する構成に比べて、スキャンの角度範囲を広くすることができる。光スイッチ92は、不図示の制御回路(例えば、マイクロコントローラユニット)から電気信号で制御される。本構成例によれば、全ての素子の駆動を電気信号によって制御することができる。
以上の説明では、導波路素子10の配列方向および導波路素子10が延びる方向が直交している導波路アレイのみを扱ってきた。しかし、これらの方向が直交している必要はない。例えば、図49Aに示すような構成を用いてもよい。図49Aは、導波路素子10の配列方向d1および導波路素子10が延びる方向d2が直交していない導波路アレイの構成例を示している。この例において、各導波路素子10の光出射面は、同一平面内になくてもよい。このような構成であっても、各導波路素子10および各位相シフタを適切に制御することにより、光の出射方向d3を2次元的に変化させることができる。
図49Bは、導波路素子10の配列間隔が一定でない導波路アレイの構成例を示している。このような構成を採用する場合であっても、各位相シフタによる位相シフト量を適切に設定することにより、2次元スキャンを行うことができる。図49Bの構成においても、導波路アレイの配列方向d1と、各導波路素子10の延びる方向d2とが直交していなくてもよい。
<基板上に第1および第2の導波路が配置された実施形態>
次に、基板上に第1および第2の導波路が配置された光スキャンデバイスの実施形態を説明する。
本実施形態における光スキャンデバイスは、第1の導波路と、第1の導波路に繋がる第2の導波路と、第1および第2の導波路を支持する基板とを備える。より具体的には、光スキャンデバイスは、第1の方向に配列された複数の導波路ユニットと、これらの複数の導波路ユニットを支持する基板とを備える。複数の導波路ユニットの各々は、第1の導波路と、第2の導波路とを備える。第2の導波路は、第1の導波路に繋がり、第1の方向に交差する第2の方向に光を伝搬させる。基板は、各導波路ユニットにおける第1の導波路および第2の導波路を支持する。
第2の導波路は、前述の実施形態における反射型導波路に相当する。すなわち、第2の導波路は、多層反射膜を備える第1のミラーと、第1のミラーの前記多層反射膜に対向する多層反射膜を備える第2のミラーと、第1のミラーと第2のミラーの間に位置し、前記第1の導波路に入力され第1の導波路を伝搬した光を伝搬させる光導波層と、を有する。第1のミラーは、第2のミラーよりも高い光透過率を有し、光導波層内を伝搬する光の一部を、光導波層の外部に出射する。光スキャンデバイスは、第2の導波路における光導波層の屈折率を変化させることにより、第2の導波路から出射される光の方向を変化させる調整素子をさらに備える。
本実施形態によれば、1つの基板の上に第1および第2の導波路を配置することにより、第1の導波路1および第2の導波路10の位置合わせが容易になる。さらに、熱膨張による第1および第2の導波路の位置のずれが抑制される。その結果、第1の導波路から第2の導波路へ効率よく光を導入することができる。
光導波層は、例えば電圧が印加された場合に、光導波層を伝搬する光に対する屈折率が変化する材料を含み得る。その場合、調整素子は、光導波層に電圧を印加することにより、光導波層の屈折率を変化させる。これにより、調整素子は、第2の導波路から出射される光の方向を変化させる。
第1の導波路の少なくとも一部は、前述の位相シフタとしての機能を有していてもよい。その場合、第1の導波路には、例えば屈折率を変調させる機構が組み込まれる。光スキャンデバイスは、第1の導波路の少なくとも一部の領域の屈折率を変調させる第2調整素子を備えていてもよい。第2調整素子は、例えば、第1の導波路の近傍に配置されたヒーターであり得る。ヒーターから発する熱によって第1の導波路の少なくとも一部の領域の屈折率を変化させることができる。これにより、第1の導波路から第2の導波路に入力される光の位相が調整される。第1の導波路から第2の導波路に入力される光の位相を調整するための構成は、前述のとおり多様である。それらのいずれの構成を採用してもよい。
位相シフタは、第1の導波路の外部に設けられていてもよい。その場合、第1の導波路は、外部の位相シフタと、導波路素子(第2の導波路)との間に位置する。位相シフタと、第1の導波路との間には明確な境界がなくてもよい。例えば、位相シフタと、第1の導波路とが、導波路および基板等の構成要素を共用していてもよい。
第1の導波路は、光の全反射を利用する一般的な導波路であってもよいし、反射型導波路であってもよい。位相が変調された光は、第1の導波路を経て、第2の導波路に導入される。
以下、基板上に第1および第2の導波路が配置された光スキャンデバイスの実施形態をより詳細に説明する。以下の説明においては、光スキャンデバイスが複数の導波路ユニットを備えているものとする。光スキャンデバイスは、単一の導波路ユニットを備えていてもよい。すなわち、第1の導波路および第2の導波路の組み合わせを1つだけ備える光スキャンデバイスも、本開示の範囲に含まれる。
図50Aは、本実施形態における光スキャンデバイスを模式的に示す図である。この光スキャンデバイスは、Y方向に配列された複数の導波路ユニットと、複数の導波路ユニットを支持する基板50とを備えている。各導波路ユニットは、第1の導波路1と、第2の導波路10とを備えている。基板50は、各導波路ユニットにおける第1の導波路1および第2の導波路10を支持している。
基板50は、XY平面に沿って拡がっている。基板50の上面および下面は、XY平面に略平行に配置されている。基板50は、例えば、ガラス、Si、SiO、GaAs、GaNなどの材料を用いて構成され得る。
第1の導波路アレイ1Aは、Y方向に配列された複数の第1の導波路1を含む。第1の導波路1の各々は、X方向に延びた構造を有する。第2の導波路アレイ10Aは、Y方向に配列された複数の第2の導波路10を含む。第2の導波路10の各々は、X方向に延びた構造を有する。
図50Bは、図50Aにおける一方の破線で示されたXZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。基板50の上に、第1および第2の導波路1、10が配置されている。第2のミラー40は、光導波層20と基板50との間、および第1の導波路1と基板50との間の領域に拡がっている。第1の導波路1は、例えば、光の全反射を利用する一般的な導波路である。当該一般的な導波路は、例えば、SiまたはGaAsなどの半導体の導波路を含む。第2の導波路10は、光導波層20と、第1および第2のミラー30および40とを有する。光導波層20は、対向する第1のミラー30と第2のミラー40の間に位置する。光導波層20は、第1の導波路に入力され第1の導波路1を伝搬した光を伝搬させる。
本実施形態における光導波層20は、電圧が印加された場合に、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率が変化する材料を含んでいる。調整素子は、一対の電極を有する。一対の電極は、下部電極62aと上部電極62bとを含む。下部電極62aは、光導波層20と第2のミラー40との間に配置されている。上部電極62bは、光導波層20と第1のミラー30との間に配置されている。本実施形態における調整素子は、一対の電極62a、62bに電圧を印加することにより、光導波層20の屈折率を変化させる。これにより、調整素子は、第2の導波路10から出射される光の方向を変化させる。一対の電極62a、62bの各々は、図示されるように光導波層20に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
図50Bの構成例では、積層された基板50および第2のミラー40を有する共通の支持体の上に、他の構造物が配置される。すなわち、一体に形成された一つの支持体の上に、第1の導波路1と、第1の電極62a、光導波層20、第2の電極62b、および第1のミラー30の積層体とが作製される。共通の支持体を用いているため、第1の導波路1および光導波層20の作製時の位置合わせが容易になる。さらに、熱膨張による第1の導波路1および光導波層20の接続部分の位置のずれが抑制される。支持体は、例えば、支持基板である。
図50Cは、図50Aにおける他方の破線で示されたYZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。この例では、第2のミラー40は、複数の第2の導波路10によって共用されている。すなわち、複数の第2の導波路10における第2のミラー40は互いに分離されていない。同様に、下部電極62aも、複数の第2の導波路10によって共用されている。これにより、製造プロセスが簡素化される。
一方、複数の第2の導波路10における光導波層20、上部電極62b、および第1のミラー30は、互いに分離して配置されている。これにより、各光導波層20は、光をX方向に伝搬させることができる。上部電極62bおよび第1のミラー30は、分離していなくてもよい。
以下に、本実施形態における光スキャンデバイスの変形例を説明する。以下の変形例において、重複する構成要素の説明は、省略されている。
図51Aは、第2のミラー40と導波路1との間に誘電体層51が配置された構成例を示す図である。この例における光スキャンデバイスは、第2のミラー40と第1の導波路1との間に拡がる誘電体層51をさらに備えている。この誘電体層51は、第1の導波路1と光導波層20との高さのレベルを合わせる調整層として機能する。以下、誘電体層51を調整層51と称する。Z方向における調整層51の厚さを調整することにより、第1の導波路1から光導波層20への光の結合効率を高めることができる。さらに、調整層51は、第1の導波路1における導波光が第2のミラー40によって吸収、散乱または反射されることを防ぐスペーサの役割を果たす。第1の導波路1は、全反射により光を伝搬させる。そのため、調整層51は、第1の導波路1の屈折率よりも低い屈折率を有する透明材料によって構成される。例えば、調整層51は、SiOなどの誘電体材料で形成され得る。
第1の導波路1の上に、他の誘電体層を保護層としてさらに配置してもよい。
図51Bは、第1の導波路1の上に第2の誘電体層61がさらに配置された構成例を示す図である。このように、光スキャンデバイスは、第1の導波路1の少なくとも一部を覆う第2の誘電体層61をさらに備えていてもよい。第2の誘電体層61は、第1の導波路1に接し、第1の導波路1の屈折率よりも低い屈折率を有する透明材料によって構成されている。第2の誘電体層61は、第1の導波路1の上にパーティクルまたはごみが付着することを防ぐ保護層として機能する。これにより、第1の導波路1における導波光のロスを抑制することができる。以下、第2の誘電体層61を保護層61と称する。
図51Bに示す第1の導波路1は、位相シフタとして機能する。光スキャンデバイスは、第1の導波路1の屈折率を変調させることによって光導波層20に導入される光の位相を変化させる第2調整素子をさらに備える。第1の導波路1が熱光学材料を含む場合、第2調整素子は、ヒーター68を含む。第2調整素子は、ヒーター68から発する熱によって第1の導波路1の屈折率を変調させる。
ヒーター68に含まれる金属などの配線材料は、光を吸収、散乱または反射し得る。保護層61は、第1の導波路1とヒーター68とを遠ざけることによって、第1の導波路1における導波光のロスを抑制する。
保護層61は、調整層51と同じ材料(例えばSiO)で形成されてもよい。保護層61は、第1の導波路1だけでなく、第2の導波路10の少なくとも一部を覆っていてもよい。その場合、第1のミラー30の少なくとも一部が保護層61で覆われる。保護層61は、第2の導波路10のみを覆っていてもよい。保護層61が透明材料であれば、第2の導波路10から出射される光は、保護層61を透過する。このため、光の損失を小さく抑えることができる。
図52は、第2のミラー40が第1の導波路1と基板50との間の領域に配置されていない構成例を示す図である。この例における調整層51は、第1の導波路1と基板50との間に拡がっている。調整層51は、第1の導波路1および基板50に接している。第2のミラー40が第1の導波路1の下にないため、第1の導波路1における導波光は、第2のミラー40の影響を受けない。
図53は、図51Bの構成例と比較して、第2のミラー40が第1の導波路1と基板50との間において薄くなっている構成例を示す図である。この例のように、第2のミラー40は、第1の導波路1と基板50との間において、第2の導波路10と基板50との間における第2のミラー40の厚さよりも薄い箇所を有していてもよい。第1の導波路1と第2のミラー40との間には、調整層51が配置されている。このような構造により、第1の導波路1における導波光は、第2のミラー40の影響を受けにくくなる。図53の例では、図52の例と比較して、第1の導波路1と光導波層20との接続箇所において第2のミラー40によって生じる段差が小さい。したがって、加工がより容易である。
第2のミラー40の厚さは、導波路1に沿って変化していてもよい。以下、そのような例を説明する。
図54Aは、第2のミラー40の厚さが段階的に変化する構成例を示す図である。第1の導波路1と基板50との間において、第2のミラー40の厚さは、第1の導波路1に沿って変化している。
図54Aの例では、第1の導波路1の左の部分の下には、第2のミラー40が存在しない。第1の導波路1の左の部分は、光導波層20よりも低い位置にある。一方、第1の導波路1の右の部分、すなわち光導波層20に接続される部分の下には、第2のミラー40が存在する。第1の導波路1の右の部分は、光導波層20と同程度の高さに位置する。保護層61の厚さを調整することにより、保護層61の上面を平らにすることができる。
図54Aの構成例では、保護層61の上に配置されたヒーター68は、第1の導波路1から十分に離れている。したがって、第1の導波路1における導波光は、ヒーター68の配線による影響を受けにくい。このため、第1の導波路1における導波光のロスは抑制される。
図54Bは、上部電極62b、第1のミラー30、および第2の基板50Cが、第1の導波路1における保護層61と、第2の導波路10における光導波層20との上に跨って配置されている構成例を示す図である。図54Cは、図54Bの構成例の製造過程の一部を示す図である。
図54Bの例において、上部電極62b、第1のミラー30、および第2の基板50Cを含む構造体(以下、「上部構造体」と称する。)と、上部電極62bよりも下の構造体(以下、「下部構造体」と称する。)とは、別々に製造される。
下部構造体の製造については、まず、第1の基板50の上に、傾斜を有する第2のミラー40が形成される。第2のミラー40における傾斜を含む部分に、調整層51、導波路1の層、および保護層61がこの順に形成される。第2のミラー40における平らな部分に、下部電極62aおよび光導波層20が形成される。
上部構造体は、第2の基板50Cの上に、第1のミラー30および上部電極62bをこの順で積層することによって作製される。上部構造体は、図54Cに示すように、上下を反転させ、下部構造体の上に貼り付けられる。以上の製造方法によれば、第1の導波路1および第2の導波路10の精密な位置合わせを不要にできる。
保護層61の上面、すなわち、第1の導波路1に接する表面とは反対側の表面は、第2の導波路10における光導波層20の上面よりも低い。第1の導波路1におけるヒーター68の上面は、第2の導波路10における光導波層20の上面と、ほぼ同じ高さである。この場合、上部構造体と下部構造体とを、段差なく貼り合わせることができる。上部構造体は、蒸着またはスパッタリングなどの方法によって形成してもよい。
図55は、図54Bに示す構造を有する光スキャンデバイスにおける複数の第2の導波路10のYZ面断面を示す図である。この例では、第1のミラー30、第2のミラー40、および電極62a、62bは、複数の第2の導波路10によって共用されている。共通の電極62a、62bの間に、複数の光導波層20が配置されている。複数の光導波層20の間の領域は、スペーサ73である。スペーサ73は、例えば、空気(または、真空)、SiO、TiO、Ta、SiNまたはAlNなどの透明材料である。スペーサ73が固体材料であれば、上部構造体を蒸着またはスパッタリングなどの方法によって形成することができる。スペーサ73は、隣接する光導波層20の両方に直接接触していてもよい。
第1の導波路1は、光の全反射を利用する一般的な導波路である必要はない。例えば、第1の導波路1は、第2の導波路10と同様の反射型導波路であってもよい。
図56は、第1の導波路1および第2の導波路10が、反射型導波路である構成例を示す図である。第1の導波路1は、対向する2つの多層反射膜3、40に挟まれている。第1の導波路1は、第2の導波路10と同じ原理で、光を伝搬させる。多層反射膜3の厚さが十分に大きければ、第1の導波路1から光は出射しない。
図56の構成例では、図20および図21などを参照して説明したように、2つの反射型導波路の接続条件を最適化することで、光の結合効率を高くすることができる。そのような最適化により、第1の導波路1から第2の導波路10へ効率よく光を導入することができる。
次に、一対の電極62a、62bの配置の変形例を説明する。図50A~図56の例では、一対の電極62a、62bは、第2の導波路10における光導波層20に接触している。図50Cおよび図55の例では、電極62a、62bの一方または両方が、複数の第2の導波路10によって共用されている。電極62a、62bの構成は、このような構成に限定されない。
図57は、上部電極62bが第1のミラー30の上に配置されており、下部電極62aが第2のミラー40の下に配置されている構成例を示す図である。第1のミラー30は、上部電極62bと光導波層20との間に配置されている。第2のミラー40は、下部電極62aと光導波層20との間に配置されている。この例のように、一対の電極62a、62bは、光導波層20を、第1および第2のミラー30および40を介して、間接的に挟んでいてもよい。
図57の例において、下部電極62aは、第1の導波路1の側にまで延びている。下部電極62aから配線を取り出すときに、第1の導波路の下のスペースを用いることができる。よって配線の設計の自由度が増す。
この例では、一対の電極62a、62bは、光導波層20に接触していない。光導波層20における導波光は、一対の電極62a、62bによる吸収、散乱または反射などの影響を受けにくい。このため、光導波層20における導波光のロスが抑制される。
図58は、さらに他の変形例を示す断面図である。この例では、第1の導波路1は、第1の部分1aと第2の部分1bとに分離されている。第1の部分1aは、相対的に低い位置にあり、第2の導波路10から離れている。第2の部分1bは、相対的に高い位置にあり、第2の導波路10の光導波層20に繋がっている。第1の部分1aおよび第2の部分1bは、+Z方向から見たときに重なる部分を有する。第1の部分1aおよび第2の部分1bは、X方向に略平行に延びている。この例では、調整層51も、2つの部分51a、51bに分離されている。調整層の第1の部分51aは、第1の導波路の第1の部分1aと下部電極62aとの間に配置されている。調整層の第2の部分51bは、第1の導波路の第2の部分1bと第2のミラー40との間に配置されている。保護層61は、第1の導波路の第1の部分1aおよび第2の部分1bの上に配置されている。第1の導波路の第1の部分1aの一部と、第1の導波路の第2の部分1bの一部とが、保護層61を介して対向している。電極62a、62bの配置は、図57における配置と同様である。
図58に示す構成では、第1の導波路の第1の部分1aおよび第2の部分1bの間隔、すなわちZ方向における距離は、導波路内での光の波長以下である。この場合、エバネッセント結合により、第1の部分1aから第2の部分1bへ光を伝搬させることができる。この例では、図54Aの例とは異なり、第2のミラー40の厚さを第1の導波路1a、1bに沿って変化させる必要はない。
図59は、電極62が、隣り合う2つの光導波層20の間に配置されている構成例を示す図である。この例における調整素子は、複数の電極62を有し、これらの電極62に正負(図中では+および-で表示)の電圧を交互に印加する。これにより、各光導波層20の内部に、図59における左右方向の電場を発生させることができる。
図59の例では、Y方向において隣り合う2つの電極62は、その間の光導波層20の少なくとも一部に接触している。光導波層20と電極62との接触領域の面積は小さい。したがって、電極62が光を吸収、散乱または反射する材料であっても、光導波層20における導波光のロスを抑制することができる。
図50A~図59の構成例では、スキャンに用いられる光は、第1のミラー30を通して出射される。スキャンに用いられる光は、第2のミラー40を通して出射されてもよい。
図60は、第1のミラー30が厚く、第2のミラー40が薄い構成の例を示す図である。図60の例では、光は第2のミラー40を透過して基板50の側から出射される。この例における基板50は、透光性を有する材料によって構成される。基板50から出射される光をスキャンに用いることにより、光スキャンデバイスの設計の自由度が増す。
<ミラーの幅に関する検討>
図61は、本実施形態おける、複数の導波路素子10をY方向に配列した導波路アレイ10Aの構成例を模式的に示す、YZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。図61の構成例では、Y方向において、第1のミラー30の幅は、光導波層20の幅よりも長い。第2のミラー40は、複数の導波路素子10によって共用されている。言い換えれば、各導波路素子10における第2のミラー40は、1つの繋がったミラーの一部である。第1のミラー30、光導波層20の端面からY方向に突出する部分を有する。Y方向における当該突出する部分の寸法を、yとする。Y方向における、光導波層20の端面からの距離を、yとする。y=0は、光導波層20の端面に相当する。
導波光が光導波層20内をX方向に伝搬するとき、Y方向において、光導波層20からエバネッセント光が染み出す。Y方向における当該エバネッセント光の光強度Iは、以下の式で表される。
Figure 0007162266000018
ただし、光導波層20からのエバネッセント光の光強度が、光導波層20の端面における光導波層20からのエバネッセント光の光強度の1/eになる位置の、光導波層20の端面からのY方向における距離を、yとするとき、yは以下の式を満たす。
Figure 0007162266000019
は、y=0における、当該エバネッセント光の光強度である。全反射角θinは、図11に示されている。y=yにおいて、当該エバネッセント光の光強度Iは、Iの1/eになる。eは、自然対数の底である。
簡単のため、図11に示すように、光導波層20内における導波光を、光線として近似する。図61の構成例に示すように、第1のミラー30がy>yにおいて存在しない場合、y=0における導波光の1回の反射による光の漏れまたは光ロス(Lloss)は、以下の式で表される。
Figure 0007162266000020
式(4)に示すように、導波路素子10からの出射光の広がり角θdivを、0.1°以下にするためには、導波路素子10のX方向における伝搬長Lは、1mm以上であることが望ましい。このとき、Y方向における光導波層20の幅をaとすると、図11において、±Y方向における全反射の回数は、1000/(a・tanθin)以上である。a=1μmおよびθin=45°においては、全反射の回数は1000回以上である。1回の反射における光ロスを表す式(25)を用いると、β回の反射における光ロスは、以下の式で表される。
Figure 0007162266000021
図62は、β=1000の場合における、光ロス(L(β) loss)の割合およびyの関係を示す図である。縦軸は、光ロスの割合であり、横軸はyである。図62に示すように、光ロスの割合を50%以下にするため、例えば、y≧7yが満たされる。同様に、光ロスの割合を10%以下にするために、例えば、y≧9yが満たされる。光ロスの割合を1%以下にするために、例えば、y≧11yが満たされる。
式(25)に示すように、原理的には、yを大きくすることで、光ロスを低減することができる。しかし、光ロスは、ゼロではない。
図63は、本実施形態おける、導波路素子10をY方向に配列した導波路アレイ10Aの別の構成例を模式的に示す、YZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。図63の構成例では、第1および第2のミラー30および40は、複数の導波路素子10によって共用されている。言い換えれば、各導波路素子10における第1のミラー30は、1つの繋がったミラーの一部であり、各導波路素子10における第2のミラー40は、1つの繋がった他のミラーの一部である。これにより、原理的に光ロスを最小化することができる。
次に、図10および図63の構成例における光導波層20からのエバネッセント光の漏れ出しを、数値計算を用いて比較する。
図64Aは、図10の構成例における、電場強度分布の計算結果を示す図である。図64Bは、図63の構成例における、電場強度分布の計算結果を示す図である。数値計算には、Synopsys社のFemSimを用いた。図64Aおよび図64Bにおいて、Y方向における光導波層20の幅は、1.5μmであり、Z方向における光導波層20の厚さは、1μmであり、光の波長は、1.55μmであり、n=1.68およびnlow=1.44である。nおよびnlowのこの組み合わせは、例えば、光導波層20に含まれる液晶材料を、SiOのスペーサ73によって閉じ込める場合に相当する。
図64Aに示すように、図10の構成例では、第1のミラー30が存在しない領域から、エバネッセント光が漏れ出ることがわかる。一方、図64Bに示すように、図63の構成例では、そのようなエバネッセント光の漏れ出しは無視することができる。図64Aおよび図64Bにおいて、導波光がX方向に伝搬する際、第1のミラー30からの光出射およびエバネッセント光の漏れ出しにより、導波光の光強度は減少する。当該導波光の光強度が1/eになる、X方向における光の伝搬長を計算すると、当該光の伝搬長は、図64Aおよび図64Bにおいて、それぞれ7.8μmおよび132μmである。
本実施形態において、スペーサ73は、2つ以上の異なる媒質で構成されてもよい。
図65は、本実施形態において、スペーサ73が、異なる屈折率を有するスペーサ73a、73bを含む構成例を模式的に示す、YZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。図65の構成例において、光導波層20に隣接するスペーサ73aの屈折率nlow1は、光導波層20に隣接しないスペーサ73bの屈折率nlow2よりも高い(nlow1>nlow2)。例えば、光導波層20が液晶材料を含む場合、液晶材料を閉じ込めるために、スペーサ73aとして、SiO2を用いてもよい。スペーサ73bは、空気であってもよい。スペーサ73bの屈折率nlow2が低ければ、光導波層20からのエバネッセント光の染み出しを抑制することができる。
図66は、本実施形態の変形例における、導波路素子10の構成例を模式的に示す、YZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。図66の構成例では、光導波層20は、YZ平面において台形の断面を有する。第1のミラー30は、光導波層20の、上辺の上だけでなく、左右の辺の上にも配置される。これにより、光導波層20の左右の辺からの光の漏れを抑制することができる。
次に、光導波層20およびスペーサ73の材料を説明する。
図61、図63および図65の構成例において、光導波層20の屈折率nとスペーサ73の屈折率nlowとは、n>nlowの関係を満たす。すなわち、スペーサ73は、光導波層20よりも屈折率が低い材料を含む。例えば、光導波層20が電気光学材料を含む場合、スペーサ73は、SiO、TiO、Ta、SiN、AlNまたは空気などの透明材料を含んでもよい。光導波層20が液晶材料を含む場合、スペーサ73は、SiOまたは空気などを含んでもよい。光導波層20を一対の電極で挟み、電圧を印加することにより、電気光学材料または液晶材料を含む光導波層20の屈折率を変化させることができる。これにより、第1のミラー30から出射される光の出射角度を変化させることができる。光導波層20が液晶材料または電気光学材料を含む場合における、光スキャンデバイスの詳細な駆動方法などは、前述の通りである。
図63および図65の構成例を、第1のミラー30と、それ以外の構成とを貼り合わせることによって形成してもよい。これにより、製造が容易になる。また、スペーサ73が固体材料であれば、第1のミラー30を蒸着またはスパッタリングなどの方法によって形成してもよい。
図61、図63および図65の構成例において、第2のミラー40が複数の導波路素子10によって共用されていることを前提に、第1のミラー30の構成を説明した。当然、上記の議論は、第2のミラー40にも適用できる。すなわち、Y方向において、第1および第2のミラー30および40の少なくとも一方の幅が、光導波層20の幅よりも長ければ、光導波層20からのエバネッセント光の漏れ出しを抑制することができる。その結果、光スキャンに用いられる光量の低下は抑制される。
<応用例>
図67は、回路基板(例えば、チップ)上に光分岐器90、導波路アレイ10A、位相シフタアレイ80A、および光源130などの素子を集積した光スキャンデバイス100の構成例を示す図である。光源130は、例えば、半導体レーザーなどの発光素子であり得る。この例における光源130は、自由空間における波長がλである単一波長の光を出射する。光分岐器90は、光源130からの光を分岐して複数の位相シフタにおける導波路に導入する。図67の構成例において、チップ上には電極62aと、複数の電極62bとが設けられている。導波路アレイ10Aには、電極62aから制御信号が供給される。位相シフタアレイ80Aにおける複数の位相シフタ80には、複数の電極62bから制御信号がそれぞれ送られる。電極62a、62bは、上記の制御信号を生成する不図示の制御回路に接続され得る。制御回路は、図67に示すチップ上に設けられていてもよいし、光スキャンデバイス100における他のチップに設けられていてもよい。
図67に示すように、全てのコンポーネントをチップ上に集積することで、小型のデバイスで広範囲の光スキャンが実現できる。例えば2mm×1mm程度のチップに、図67に示される全てのコンポーネントを集積することができる。
図68は、光スキャンデバイス100から遠方にレーザーなどの光ビームを照射して2次元スキャンを実行している様子を示す模式図である。2次元スキャンは、ビームスポット310を水平および垂直方向に移動させることによって実行される。例えば、公知のTOF(Time Of Flight)法と組み合わせることで、2次元の測距画像を取得することができる。TOF法は、レーザーを照射して対象物からの反射光を観測することで、光の飛行時間を算出し、距離を求める方法である。
図69は、そのような測距画像を生成することが可能な光検出システムの一例であるライダー(LiDAR)システム300の構成例を示すブロック図である。ライダーシステム300は、光スキャンデバイス100と、光検出器400と、信号処理回路600と、制御回路500とを備えている。光検出器400は、光スキャンデバイス100から出射され、対象物から反射された光を検出する。光検出器400は、例えば光スキャンデバイス100から出射される光の波長λに感度を有するイメージセンサ、またはフォトダイオードなどの受光素子を含むフォトディテクタであり得る。光検出器400は、受光した光の量に応じた電気信号を出力する。信号処理回路600は、光検出器400から出力された電気信号に基づいて、対象物までの距離を計算し、距離分布データを生成する。距離分布データは、距離の2次元分布を示すデータ(すなわち、測距画像)である。制御回路500は、光スキャンデバイス100、光検出器400、および信号処理回路600を制御するプロセッサである。制御回路500は、光スキャンデバイス100からの光ビームの照射のタイミングおよび光検出器400の露光および信号読出しのタイミングを制御し、信号処理回路600に、測距画像の生成を指示する。
2次元スキャンにおいて、測距画像を取得するフレームレートとして、例えば一般的に動画でよく使われる60fps、50fps、30fps、25fps、24fpsなどから選択することができる。また、車載システムへの応用を考慮すると、フレームレートが大きいほど測距画像を取得する頻度が上がり、精度よく障害物を検知できる。例えば、60km/hでの走行時において、60fpsのフレームレートでは車が約28cm移動するごとに画像を取得することができる。120fpsのフレームレートでは、車が約14cm移動するごとに画像を取得することができる。180fpsのフレームレートでは車が、約9.3cm移動するごとに、画像を取得することができる。
1つの測距画像を取得するために必要な時間は、ビームスキャンの速度に依存する。例えば、解像点数が100×100のイメージを60fpsで取得するためには1点につき1.67μs以下でビームスキャンをする必要がある。この場合、制御回路500は、600kHzの動作速度で、光スキャンデバイス100による光ビームの出射、および光検出器400による信号蓄積・読出しを制御する。
<光受信デバイスへの応用例>
本開示における光スキャンデバイスは、ほぼ同一の構成で、光受信デバイスとしても用いることができる。光受信デバイスは、光スキャンデバイスと同一の導波路アレイ10Aと、受信可能な光の方向を調整する第1調整素子60とを備える。導波路アレイ10Aは、第3の方向から入射した光を複数の導波路素子10によって受ける。より具体的には、導波路アレイ10Aの各第1のミラー30は、第3の方向から第1の反射面の反対側に入射する光を導波路アレイ10Aの各光導波層20に透過させる。導波路アレイ10Aの各光導波層20は、受けた光、すなわち第2の方向に第1のミラー30を透過した光を伝搬させる。第1調整素子60が各導波路素子10における前記光導波層20の屈折率を変化させることにより、受信可能な光の方向である第3の方向を変化させることができる。さらに、光受信デバイスが、光スキャンデバイスと同一の複数の位相シフタ80、または80aおよび80bと、複数の導波路素子10から複数の位相シフタ80、または80aおよび80bを通過して出力される光の位相の差をそれぞれ変化させる第2調整素子を備えている場合には、受信可能な光の方向を2次元的に変化させることができる。
例えば図67に示す光スキャンデバイス100における光源130を受信回路に置換した光受信デバイスを構成することができる。導波路アレイ10Aに波長λの光が入射すると、その光は位相シフタアレイ80Aを通じて光分岐器90へ送られ、最終的に一箇所に集められ、受信回路に送られる。その一箇所に集められた光の強度は、光受信デバイスの感度を表すといえる。光受信デバイスの感度は、導波路アレイおよび位相シフタアレイ80Aに別々に組み込まれた調整素子によって調整することができる。光受信デバイスでは、例えば図26において、波数ベクトル(図中の太い矢印)の方向が反対になる。入射光は、導波路素子10が延びる方向(図中のX方向)の光成分と、導波路素子10の配列方向(図中のY方向)の光成分とを有している。X方向の光成分の感度は、導波路アレイ10Aに組み込まれた調整素子によって調整できる。一方、導波路素子10の配列方向の光成分の感度は、位相シフタアレイ80Aに組み込まれた調整素子によって調整できる。光受信デバイスの感度が最大になるときの光の位相差Δφ、光導波層20の屈折率nおよび厚さdから、θおよびα(式(16)および式(17))がわかる。このため、光の入射方向を特定することができる。
上述した実施形態および変形例は、適宜、組み合わせることができる。例えば、図61に示した第1のミラー30を他の実施例または変形例の第1のミラー30の代わりに用いてもよい。また、図65に示した導波路素子10を他の実施例または変形例の導波路素子10の代わりに用いてもよい。
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の光スキャンデバイス、光受信デバイス、およびライダーシステムを含む。
[項目1]
多層反射膜を備える第1のミラーと、
前記多層反射膜に対向する多層反射膜を備える第2のミラーと、
前記第1のミラーと前記第2のミラーの間に位置し、入力光を伝搬光として伝搬させる光導波層と、
前記光導波層を間に挟んで位置する一対の電極と、
前記一対の電極に電圧を印加する駆動回路と、
を備え、
前記第1のミラー、前記第2のミラー、および前記光導波層は、同一の方向に延びた構造を有し、
前記第1のミラーは、前記第2のミラーよりも高い光透過率を有し、前記光導波層内を伝搬する前記伝搬光の一部を透過させて前記光導波層の外部に出射光として出射し、
前記光導波層は、液晶材料または電気光学材料を含み、
前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記光導波層を伝搬する前記伝搬光に対する前記液晶材料または前記電気光学材料の屈折率を変化させることで、前記光導波層から出射される前記出射光の方向を変化させる、
光スキャンデバイス。
[項目2]
前記光導波層に直接的に繋がり、前記光導波層に前記入力光を入力する全反射導波路をさらに備える、項目1に記載の光スキャンデバイス。
[項目3]
前記光導波層は、前記液晶材料を含み、
前記液晶材料の前記配向方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記液晶材料の前記配向方向を変化させ、前記液晶材料の前記屈折率を変化させる、
項目2に記載の光スキャンデバイス。
[項目4]
前記一対の電極は、前記電圧が印加されたとき、前記第1および第2のミラーの反射面の法線方向に電場を発生させる態様で配置され、
前記液晶材料の前記配向方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行である、項目3に記載の光スキャンデバイス。
[項目5]
直線偏光を出射する光源をさらに備え、
前記光源が出射した前記直線偏光がP偏光の前記入力光として前記光導波層に入力される、
項目4に記載の光スキャンデバイス。
[項目6]
前記一対の電極は、前記電圧が印加されたとき、前記第1および第2のミラーの反射面の法線方向に電場を発生させる態様で配置され、
前記液晶材料の前記配向方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向および前記第1および第2のミラーの法線方向の両方に垂直である、項目3に記載の光スキャンデバイス。
[項目7]
直線偏光を出射する光源をさらに備え、
前記光源が出射した前記直線偏光がS偏光の前記入力光として前記光導波層に入力される、
項目6に記載の光スキャンデバイス。
[項目8]
前記一対の電極は、前記電圧が印加されたとき、前記光導波層が延びる前記方向および前記第1および第2のミラーの反射面の法線方向の両方に垂直な方向に電場を発生させる態様で配置され、
前記液晶材料の前記配向方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行である、
項目3に記載の光スキャンデバイス。
[項目9]
直線偏光を出射する光源をさらに備え、
前記光源が出射した前記直線偏光がS偏光の前記入力光として前記光導波層に入力される、
項目8に記載の光スキャンデバイス。
[項目10]
直線偏光を出射する光源をさらに備え、
前記光源が出射した前記直線偏光がP偏光の前記入力光として前記光導波層に入力される、
項目8に記載の光スキャンデバイス。
[項目11]
前記液晶材料は、ネマチック液晶分子を含み、
前記ネマチック液晶分子の分子構造は、
R1-Ph1-R2-Ph2-R3で表され、
R1およびR3は、それぞれ独立して、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミン基、ニトロ基、ニトリル基、およびアルキル鎖からなる群から選択される一つであり、
Ph1およびPh2は、それぞれ独立して、芳香族基であり、
R2は、ビニル基、カルボニル基、カルボキシル基、ジアゾ基、およびアゾキシ基からなる群から選択される一つである、項目1から10のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
[項目12]
前記液晶材料は、組成の異なる複数の液晶分子の混合物である、項目11に記載の光スキャンデバイス。
[項目13]
前記光導波層は、前記電気光学材料を含み、
前記電気光学材料の前記分極軸の前記方向は、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
前記一対の電極は、前記電圧が印加されたときに前記一対の電極間に発生する電場の方向が、前記前記分極軸の前記方向に一致する態様で配置され、
前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記電気光学材料の前記屈折率を変化させる、項目1または2に記載の光スキャンデバイス。
[項目14]
前記電気光学材料の前記分極軸の前記方向は、前記光導波層が延びる前記方向および前記第1および第2のミラーの反射面の法線方向の両方に垂直である、項目13に記載の光スキャンデバイス。
[項目15]
直線偏光を出射する光源をさらに備え、
前記光源が出射した前記直線偏光がS偏光の前記入力光として前記光導波層に入力される、
項目14に記載の光スキャンデバイス。
[項目16]
前記電気光学材料の前記分極軸の前記方向は、前記第1および第2のミラーの反射面の法線方向に一致している、項目13に記載の光スキャンデバイス。
[項目17]
直線偏光を出射する光源をさらに備え、
前記光源が出射した前記直線偏光がP偏光の前記入力光として前記光導波層に入力される、
項目16に記載の光スキャンデバイス。
[項目18]
前記電気光学材料は、
KTa1-xNb、または
1-yTa1-xNb(AはLiまたはNa)
で表される化合物を含み、
xは、0よりも大きく1よりも小さい実数であり、
yは、0よりも大きく1よりも小さい実数である、項目13から17のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
[項目19]
第1の方向に配列された複数の導波路ユニットを備え、
前記複数の導波路ユニットの各々は、
多層反射膜を備える第1のミラーと、
前記多層反射膜に対向する多層反射膜を備える第2のミラーと、
前記第1のミラーと前記第2のミラーの間に位置し、入力光を伝搬光として伝搬させる光導波層と、
前記光導波層を間に挟んで位置する一対の電極と、
前記一対の電極に電圧を印加する駆動回路と、
を備え、
前記第1のミラー、前記第2のミラー、および前記光導波層は、同一の方向に延びた構造を有し、
前記第1のミラーは、前記第2のミラーよりも高い光透過率を有し、前記光導波層内を伝搬する前記伝搬光の一部を透過させて前記光導波層の外部に出射光として出射し、
前記光導波層は、液晶材料または電気光学材料を含み、
前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記光導波層を伝搬する前記伝搬光に対する前記液晶材料または前記電気光学材料の屈折率を変化させることで、前記光導波層から出射される前記出射光の方向を変化させる、
光スキャンデバイス。
[項目20]
前記複数の導波路ユニットの各々は、前記光導波層に直接的に繋がり、前記光導波層に前記入力光を入力する全反射導波路をさらに備える、項目19に記載の光スキャンデバイス。
[項目21]
複数の位相シフタと、
前記複数の位相シフタを駆動する他の駆動回路と、
をさらに備え、
前記複数の位相シフタの各々は、前記複数の導波路ユニットの1つにおける前記光導波層に直接的にまたは前記全反射導波路を介して間接的に繋がる導波路を含み、
各位相シフタにおける前記導波路は、電圧の印加または温度変化に応じて屈折率が変化する材料を含み、
前記他の駆動回路は、各位相シフタにおける前記導波路に電圧を印加する、または前記導波路の温度を変化させることにより、前記導波路内の屈折率を変化させ、前記複数の位相シフタから前記複数の導波路ユニットに伝搬する光の位相の差をそれぞれ変化させる、項目19または20に記載の光スキャンデバイス。
[項目22]
多層反射膜を備える第1のミラーと、
前記多層反射膜に対向する多層反射膜を備える第2のミラーと、
前記第1のミラーと前記第2のミラーの間に位置し、入力光を伝搬光として伝搬させる光導波層と、
前記光導波層を間に挟んで位置する一対の電極と、
前記一対の電極に電圧を印加する駆動回路と、
を備え、
前記第1のミラー、前記第2のミラー、および前記光導波層は、同一の方向に延びた構造を有し、
前記第1のミラーは、前記第2のミラーよりも高い光透過率を有し、外部からの入射光を透過させて前記入力光として前記光導波層内に入力し、
前記光導波層は、液晶材料または電気光学材料を含み、
前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記光導波層の屈折率を変化させることで、受信可能な前記入射光の方向を変化させる、
光受信デバイス。
[項目23]
項目1から21のいずれかに記載の光スキャンデバイスと、
前記光スキャンデバイスから出射された出射光を対象物が反射光として反射した場合に、前記反射光を検出する光検出器と、
前記光検出器の出力に基づいて、距離分布データを生成する信号処理回路と、
を備える光検出システム。
[項目24]
第1の導波路と、
前記第1の導波路に繋がる第2の導波路と、
を備え、
前記第2の導波路は、
多層反射膜を備える第1のミラーと、
前記第1のミラーの前記多層反射膜に対向する多層反射膜を備える第2のミラーと、
前記第1のミラーおよび前記第2のミラーの間に位置し、前記第1の導波路に入力され前記第1の導波路を伝搬した光を伝搬させる光導波層と、
を備え、
前記第1のミラーは、前記第2のミラーよりも高い光透過率を有し、前記光導波層内を伝搬する光の一部を、前記光導波層の外部に出射し、
前記光導波層の屈折率を変化させることにより、前記第2の導波路から出射される光の方向を変化させる調整素子をさらに備える、
光スキャンデバイス。
[項目25]
前記光導波層は、電圧が印加された場合に、前記光導波層を伝搬する光に対する屈折率が変化する材料を含み、
前記調整素子は、前記光導波層に電圧を印加することにより、前記光導波層の屈折率を変化させることで、前記第2の導波路から出射される光の方向を変化させる、
項目24に記載の光スキャンデバイス。
[項目26]
前記第1の導波路は、対向する2つの多層反射膜と、前記2つの多層反射膜に挟まれた光導波層とを有する、項目24または25に記載の光スキャンデバイス。
[項目27]
前記対向する2つの多層反射膜の光透過率は、前記第1のミラーの光透過率よりも低い、項目26に記載の光スキャンデバイス。
[項目28]
前記第1の導波路の屈折率をnw1、前記第2の導波路における前記光導波層の屈折率をnw2とするとき、
|nw1-nw2|/nw1<0.4
である、項目24から27のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
[項目29]
前記第2の導波路における前記光導波層の屈折率をnw2、前記第2の導波路における前記光導波層の厚さをd、前記第1の導波路に入力される光の波長をλとするとき、
0.95×mλ/(2nw2)<d<1.5×mλ/(2nw2
を満たす、項目24から28のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
[項目30]
前記第1の導波路は、前記第1の導波路に入力された光を全反射によって伝搬させ、
1.2×mλ/(2nw2)<d<1.5×mλ/(2nw2
をさらに満たす、項目24から29のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
[項目31]
前記第1の導波路の屈折率をnw1、前記第2の導波路における前記光導波層の屈折率をnw2とするとき、nw1>nw2である、項目24から30のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
[項目32]
前記第2の導波路における前記光導波層は、ギャップを介して前記第1の導波路に繋がり、
前記第1の導波路に入力される光の波長をλとするとき、
前記ギャップの屈折率と前記ギャップの幅との積は、λ/6.5以下である、
項目24から31のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
[項目33]
前記第1の導波路の厚さ方向の中心と、前記第2の導波路の厚さ方向の中心とのずれの大きさをΔzとし、前記第1の導波路における光導波層の厚さと前記第2の導波路における前記光導波層の厚さとの差をΔdとするとき、
-Δd/2<Δz<Δd/2
を満たす、項目24から32のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
[項目34]
前記第1の導波路は、対向する2つの多層反射膜と、前記2つの多層反射膜に挟まれた光導波層とを備え、
前記2つの多層反射膜の一方は、隣接する部位よりも膜厚が薄い箇所を備え、
前記光導波層は、前記箇所に入射した光を伝搬させ、前記第2の導波路における前記光導波層の端面に入力する、
項目24から33のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
[項目35]
前記第1の導波路は、表面の一部にグレーティングを備え、前記グレーティングに入射した光を伝搬させ、前記第2の導波路における前記光導波層の端面に入力する、
項目24から33のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
[項目36]
前記第1の導波路は、前記第1の導波路の端面から入射した光を伝搬させ、前記第2の導波路における前記光導波層の端面に入力する、
項目24から33のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
[項目37]
前記第1の導波路に繋がり、外部から入射した光を伝搬させて前記第1の導波路に入力する第3の導波路をさらに備える、項目24から33のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
[項目38]
前記第1の導波路は、対向する2つの多層反射膜と、前記2つの多層反射膜に挟まれた光導波層とを備え、
前記第3の導波路は、全反射によって光を伝搬させて前記第1の導波路に前記光を入力する、項目37に記載の光スキャンデバイス。
[項目39]
前記第3の導波路は、表面の一部にグレーティングを備え、前記グレーティングに入射した光を伝搬させ、前記第1の導波路の端面に入力する、
項目37または38に記載の光スキャンデバイス。
[項目40]
前記第3の導波路は、前記第3の導波路の端面から入射した光を伝搬させ、前記第1の導波路の端面に入力する、
項目37または38に記載の光スキャンデバイス。
[項目41]
第1の方向に配列された複数の導波路ユニットを備え、
前記複数の導波路ユニットの各々は、
第1の導波路と、
前記第1の導波路に繋がり、前記第1の方向に交差する第2の方向に光を伝搬させる第2の導波路と、
を備え、
前記第2の導波路は、
多層反射膜を備える第1のミラーと、
前記第1のミラーの前記多層反射膜に対向する多層反射膜を備える第2のミラーと、
前記第1のミラーおよび前記第2のミラーの間に位置し、前記第1の導波路に入力され前記第1の導波路を伝搬した光を伝搬させる光導波層と、
を備え、
前記第1のミラーは、前記第2のミラーよりも高い光透過率を有し、前記光導波層内を伝搬する光の一部を、前記光導波層の外部に出射し、
各第2の導波路における前記光導波層の屈折率を変化させることにより、各第2の導波路から出射される光の方向を変化させる第1調整素子をさらに備える、
光スキャンデバイス。
[項目42]
前記複数の導波路ユニットにおける前記第1の導波路から前記第2の導波路へ伝搬する光の位相の差を調整することにより、各第2の導波路から出射される光の方向を変化させる第2調整素子をさらに備える、項目41に記載の光スキャンデバイス。
[項目43]
前記複数の導波路ユニットにおける前記第1の導波路にそれぞれ接続された導波路を有する複数の位相シフタをさらに備え、
各位相シフタにおける前記導波路は、電圧の印加または温度変化に応じて屈折率が変化する材料を含み、
前記第2調整素子は、各位相シフタにおける前記導波路に電圧を印加する、または前記導波路の温度を変化させることにより、前記導波路内の屈折率を変化させ、前記複数の位相シフタから前記複数の導波路素子に伝搬する光の位相の差をそれぞれ変化させる、
項目42に記載の光スキャンデバイス。
[項目44]
各第2の導波路から出射する光の波数ベクトルの、前記第2の方向の成分をX成分、前記第1の方向の成分をY成分とするとき、
前記第1調整素子は、前記波数ベクトルのX成分を変化させ、
前記第2調整素子は、前記波数ベクトルのY成分を変化させる、
項目42または43に記載の光スキャンデバイス。
[項目45]
自由空間における波長がλの光を出射する光源と、
前記光源からの前記光を分岐して前記複数の位相シフタにおける前記導波路に導入する光分岐器と、
をさらに備える、項目42または43に記載の光スキャンデバイス。
[項目46]
第1の導波路と、
前記第1の導波路に繋がる第2の導波路と、
を備え、
前記第2の導波路は、
多層反射膜を備える第1のミラーと、
前記第1のミラーの前記多層反射膜に対向する多層反射膜を備える第2のミラーと、
前記第1のミラーおよび前記第2のミラーの間に位置し、光を伝搬させる光導波層と、を備え、
前記第1のミラーは、前記第2のミラーよりも高い光透過率を有し、前記第1のミラーに入射した光の一部を、前記光導波層内に導入し、
前記第1のミラーから前記光導波層に入射した光の一部は、前記第1の導波路に入力され、
前記光導波層の屈折率を変化させる調整素子をさらに備える、
光受信デバイス。
[項目47]
項目1から22のいずれかに記載の光スキャンデバイスと、
前記光スキャンデバイスから出射され、対象物から反射された光を検出する光検出器と、
前記光検出器の出力に基づいて、距離分布データを生成する信号処理回路と、
を備えるライダーシステム。
本開示の実施形態における光スキャンデバイスおよび光受信デバイスは、例えば自動車、UAV、AGVなどの車両に搭載されるライダーシステムなどの用途に利用できる。
1 第1の導波路
2 光導波層、導波路
3 多層反射膜
4 多層反射膜
5 グレーティング
6 レーザー光源
7 光ファイバー
10 導波路素子(第2の導波路)
20 光導波層
30 第1のミラー
40 第2のミラー
42 低屈折率層
44 高屈折率層
50,50A,50B,50C 基板
51 第1の誘電体層(調整層)
60 調整素子
61 第2の誘電体層(保護層)
62 電極
64 配線
66 電源
68 ヒーター
73,73a,73b スペーサ
80,80a,80b 位相シフタ
90,90a,90b 光分岐器
92 光スイッチ
100 光スキャンデバイス
110 導波路アレイの駆動回路
130 光源
210 位相シフタアレイの駆動回路
310 ビームスポット
400 光検出器
500 制御回路
600 信号処理回路

Claims (31)

  1. 第1のミラーと、
    前記第1のミラーに対向する第2のミラーと、
    前記第1のミラーと前記第2のミラーの間に位置し、入力光を伝搬光として伝搬させる光導波層と、
    前記光導波層を間に挟んで位置する一対の電極と、
    前記一対の電極に電圧を印加する駆動回路と、
    を備え、
    前記第1のミラー、前記第2のミラー、および前記光導波層は、同一の方向に延びた構造を有し、
    前記第1のミラーは、前記光導波層内を伝搬する前記伝搬光の一部を透過させて前記光導波層の外部に出射光として出射し、
    前記第1のミラーは多層反射膜を有し、
    前記光導波層は、液晶材料または電気光学材料を含み、
    前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
    前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記光導波層を伝搬する前記伝搬光に対する前記液晶材料または前記電気光学材料の屈折率を変化させることで、前記光導波層から出射される前記出射光の方向を変化させる、
    光スキャンデバイス。
  2. 前記光導波層に直接的に繋がり、前記光導波層に前記入力光を入力する全反射導波路をさらに備える、請求項1に記載の光スキャンデバイス。
  3. 前記光導波層は、前記液晶材料を含み、
    前記液晶材料の前記配向方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
    前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記液晶材料の前記配向方向を変化させ、前記液晶材料の前記屈折率を変化させる、
    請求項2に記載の光スキャンデバイス。
  4. 前記一対の電極は、前記電圧が印加されたとき、前記第1および第2のミラーの反射面の法線方向に電場を発生させる態様で配置され、
    前記液晶材料の前記配向方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行である、
    請求項3に記載の光スキャンデバイス。
  5. 直線偏光を出射する光源をさらに備え、
    前記光源が出射した前記直線偏光がP偏光の前記入力光として前記光導波層に入力される、請求項4に記載の光スキャンデバイス。
  6. 前記一対の電極は、前記電圧が印加されたとき、前記第1および第2のミラーの反射面の法線方向に電場を発生させる態様で配置され、
    前記液晶材料の前記配向方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向および前記第1および第2のミラーの法線方向の両方に垂直である、
    請求項3に記載の光スキャンデバイス。
  7. 直線偏光を出射する光源をさらに備え、
    前記光源が出射した前記直線偏光がS偏光の前記入力光として前記光導波層に入力される、請求項6に記載の光スキャンデバイス。
  8. 前記一対の電極は、前記電圧が印加されたとき、前記光導波層が延びる前記方向および前記第1および第2のミラーの反射面の法線方向の両方に垂直な方向に電場を発生させる態様で配置され、
    前記液晶材料の前記配向方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行である、
    請求項3に記載の光スキャンデバイス。
  9. 直線偏光を出射する光源をさらに備え、
    前記光源が出射した前記直線偏光がS偏光の前記入力光として前記光導波層に入力される、請求項8に記載の光スキャンデバイス。
  10. 直線偏光を出射する光源をさらに備え、
    前記光源が出射した前記直線偏光がP偏光の前記入力光として前記光導波層に入力される、請求項8に記載の光スキャンデバイス。
  11. 前記液晶材料は、ネマチック液晶分子を含み、
    前記ネマチック液晶分子の分子構造は、
    R1-Ph1-R2-Ph2-R3で表され、
    R1およびR3は、それぞれ独立して、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミン基、ニトロ基、ニトリル基、およびアルキル鎖からなる群から選択される一つであり、
    Ph1およびPh2は、それぞれ独立して、芳香族基であり、
    R2は、ビニル基、カルボニル基、カルボキシル基、ジアゾ基、およびアゾキシ基からなる群から選択される一つである、
    請求項1から10のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
  12. 前記液晶材料は、組成の異なる複数の液晶分子の混合物である、請求項11に記載の光スキャンデバイス。
  13. 前記光導波層は、前記電気光学材料を含み、
    前記電気光学材料の前記分極軸の前記方向は、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
    前記一対の電極は、前記電圧が印加されたときに前記一対の電極間に発生する電場の方向が、前記前記分極軸の前記方向に一致する態様で配置され、
    前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記電気光学材料の前記屈折率を変化させる、
    請求項1または2に記載の光スキャンデバイス。
  14. 前記電気光学材料の前記分極軸の前記方向は、前記光導波層が延びる前記方向および前記第1および第2のミラーの反射面の法線方向の両方に垂直である、
    請求項13に記載の光スキャンデバイス。
  15. 直線偏光を出射する光源をさらに備え、
    前記光源が出射した前記直線偏光がS偏光の前記入力光として前記光導波層に入力される、請求項14に記載の光スキャンデバイス。
  16. 前記電気光学材料の前記分極軸の前記方向は、前記第1および第2のミラーの反射面の法線方向に一致している、
    請求項13に記載の光スキャンデバイス。
  17. 直線偏光を出射する光源をさらに備え、
    前記光源が出射した前記直線偏光がP偏光の前記入力光として前記光導波層に入力される、請求項16に記載の光スキャンデバイス。
  18. 前記電気光学材料は、
    KTa1-xNb、または
    1-yTa1-xNb(AはLiまたはNa)
    で表される化合物を含み、
    xは、0よりも大きく1よりも小さい実数であり、
    yは、0よりも大きく1よりも小さい実数である、
    請求項13から17のいずれかに記載の光スキャンデバイス。
  19. 第1の方向に配列された複数の導波路ユニットを備え、
    前記複数の導波路ユニットの各々は、
    第1のミラーと、
    前記第1のミラーに対向する第2のミラーと、
    前記第1のミラーと前記第2のミラーの間に位置し、入力光を伝搬光として伝搬させる光導波層と、
    前記光導波層を間に挟んで位置する一対の電極と、
    前記一対の電極に電圧を印加する駆動回路と、
    を備え、
    前記第1のミラー、前記第2のミラー、および前記光導波層は、同一の方向に延びた構造を有し、
    前記第1のミラーは、前記光導波層内を伝搬する前記伝搬光の一部を透過させて前記光導波層の外部に出射光として出射し、
    前記第1のミラーは多層反射膜を有し、
    前記光導波層は、液晶材料または電気光学材料を含み、
    前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
    前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記光導波層を伝搬する前記伝搬光に対する前記液晶材料または前記電気光学材料の屈折率を変化させることで、前記光導波層から出射される前記出射光の方向を変化させる、
    光スキャンデバイス。
  20. 前記複数の導波路ユニットの各々は、前記光導波層に直接的に繋がり、前記光導波層に前記入力光を入力する全反射導波路をさらに備える、請求項19に記載の光スキャンデバイス。
  21. 複数の位相シフタと、
    前記複数の位相シフタを駆動する他の駆動回路と、
    をさらに備え、
    前記複数の位相シフタの各々は、前記複数の導波路ユニットの1つにおける前記光導波層に直接的にまたは前記全反射導波路を介して間接的に繋がる導波路を含み、
    各位相シフタにおける前記導波路は、電圧の印加または温度変化に応じて屈折率が変化する材料を含み、
    前記他の駆動回路は、各位相シフタにおける前記導波路に電圧を印加する、または前記導波路の温度を変化させることにより、前記導波路内の屈折率を変化させ、前記複数の位相シフタから前記複数の導波路ユニットに伝搬する光の位相の差をそれぞれ変化させる、請求項19または20に記載の光スキャンデバイス。
  22. 1のミラーと、
    前記第1のミラー対向する2のミラーと、
    前記第1のミラーと前記第2のミラーの間に位置し、入力光を伝搬光として伝搬させる光導波層と、
    前記光導波層を間に挟んで位置する一対の電極と、
    前記一対の電極に電圧を印加する駆動回路と、
    を備え、
    前記第1のミラー、前記第2のミラー、および前記光導波層は、同一の方向に延びた構造を有し、
    前記第1のミラーは、外部からの入射光を透過させて前記入力光として前記光導波層内に入力し、
    前記第1のミラーは多層反射膜を有し、
    前記光導波層は、液晶材料または電気光学材料を含み、
    前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
    前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記光導波層の屈折率を変化させることで、受信可能な前記入射光の方向を変化させる、
    光受信デバイス。
  23. 請求項1から21のいずれかに記載の光スキャンデバイスと、
    前記光スキャンデバイスから出射された出射光を対象物が反射光として反射した場合に、前記反射光を検出する光検出器と、
    前記光検出器の出力に基づいて、距離分布データを生成する信号処理回路と、
    を備える光検出システム。
  24. 前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の前記方向と、前記光導波層が延びる前記方向とが成す角度は、0度以上15度以下、または75度以上105度以下である、請求項1に記載の光スキャンデバイス。
  25. 前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の前記方向と、前記光導波層が延びる前記方向とが成す角度は、0度以上15度以下、または75度以上105度以下である、請求項19に記載の光スキャンデバイス。
  26. 前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の前記方向と、前記光導波層が延びる前記方向とが成す角度は、0度以上15度以下、または75度以上105度以下である、請求項22に記載の光受信デバイス。
  27. 前記第1のミラーは、前記第2のミラーよりも高い光透過率を有する、請求項1に記載の光スキャンデバイス。
  28. 前記第1のミラーおよび前記第2のミラーは、多層反射膜を有する、請求項1に記載の光スキャンデバイス。
  29. 第1のミラーと、
    前記第1のミラーに対向する第2のミラーと、
    前記第1のミラーと前記第2のミラーの間に位置し、入力光を伝搬光として伝搬させる光導波層と、
    前記光導波層を間に挟んで位置する一対の電極と、
    前記一対の電極に電圧を印加する駆動回路と、
    を備え、
    前記第1のミラー、前記第2のミラー、および前記光導波層は、同一の方向に延びた構造を有し、
    前記第1のミラーは、前記光導波層内を伝搬する前記伝搬光の一部を透過させて前記光導波層の外部に出射光として出射し、
    前記光導波層は、液晶材料または電気光学材料を含み、
    前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
    前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記光導波層を伝搬する前記伝搬光に対する前記液晶材料または前記電気光学材料の屈折率を変化させることで、前記光導波層から出射される前記出射光の方向を変化させ、
    前記第1のミラーおよび前記第2のミラーは、全反射の臨界角よりも小さい入射角で入射する前記伝搬光を反射することにより、前記伝搬光を前記光導波層内で伝搬させる、
    光スキャンデバイス。
  30. 第1の方向に配列された複数の導波路ユニットを備え、
    前記複数の導波路ユニットの各々は、
    第1のミラーと、
    前記第1のミラーに対向する第2のミラーと、
    前記第1のミラーと前記第2のミラーの間に位置し、入力光を伝搬光として伝搬させる光導波層と、
    前記光導波層を間に挟んで位置する一対の電極と、
    前記一対の電極に電圧を印加する駆動回路と、
    を備え、
    前記第1のミラー、前記第2のミラー、および前記光導波層は、同一の方向に延びた構造を有し、
    前記第1のミラーは、前記光導波層内を伝搬する前記伝搬光の一部を透過させて前記光導波層の外部に出射光として出射し、
    前記光導波層は、液晶材料または電気光学材料を含み、
    前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
    前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記光導波層を伝搬する前記伝搬光に対する前記液晶材料または前記電気光学材料の屈折率を変化させることで、前記光導波層から出射される前記出射光の方向を変化させ、
    前記第1のミラーおよび前記第2のミラーは、全反射の臨界角よりも小さい入射角で入射する前記伝搬光を反射することにより、前記伝搬光を前記光導波層内で伝搬させる、
    光スキャンデバイス。
  31. 第1のミラーと、
    前記第1のミラーに対向する第2のミラーと、
    前記第1のミラーと前記第2のミラーの間に位置し、入力光を伝搬光として伝搬させる光導波層と、
    前記光導波層を間に挟んで位置する一対の電極と、
    前記一対の電極に電圧を印加する駆動回路と、
    を備え、
    前記第1のミラー、前記第2のミラー、および前記光導波層は、同一の方向に延びた構造を有し、
    前記第1のミラーは、外部からの入射光を透過させて前記入力光として前記光導波層内に入力し、
    前記光導波層は、液晶材料または電気光学材料を含み、
    前記液晶材料の配向方向または前記電気光学材料の分極軸の方向は、前記一対の電極に前記電圧が印加されていない状態において、前記光導波層が延びる前記方向に平行または垂直であり、
    前記駆動回路は、前記一対の電極に前記電圧を印加することにより、前記光導波層の屈折率を変化させることで、受信可能な前記入射光の方向を変化させ、
    前記第1のミラーおよび前記第2のミラーは、全反射の臨界角よりも小さい入射角で入射する前記伝搬光を反射することにより、前記伝搬光を前記光導波層内で伝搬させる、
    光受信デバイス。
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