JP2019174538A - 光デバイス - Google Patents

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慶一 野田
Keiichi Noda
慶一 野田
平澤 拓
Hiroshi Hirasawa
拓 平澤
安寿 稲田
Yasuhisa Inada
安寿 稲田
享 橋谷
Akira Hashiya
享 橋谷
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Abstract

【課題】比較的簡単な構成で、光によるスキャンを実現する。【解決手段】光デバイスは、第1の方向および前記第1の方向に垂直な第2の方向に拡がる第1の反射面を有する第1のミラーと、前記第1の反射面に対向する第2の反射面を有する第2のミラーと、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間の領域の一部に位置し、光を前記第1の方向に沿って伝搬させる光導波層と、前記第1のミラーの前記第1の反射面とは反対の側に位置する誘電体層と、を備え、前記第1のミラーにおける前記光の透過率は、前記第2のミラーにおける前記光の透過率よりも高く、前記光導波層は、屈折率および/または厚さを調整することが可能な構造により、前記光導波層から前記第1のミラーを介して出射する光の方向、または前記第1のミラーを介して前記光導波層内に取り込まれる光の入射方向が変化する。【選択図】図11A

Description

本開示は、光デバイスに関する。
従来、光で空間を走査(スキャン)できる種々のデバイスが提案されている。
特許文献1は、ミラーを回転させる駆動装置を用いて、光によるスキャンを行うことができる構成を開示している。
特許文献2は、2次元的に配列された複数のナノフォトニックアンテナ素子を有する光フェーズドアレイを開示している。それぞれのアンテナ素子は可変光遅延線(すなわち、位相シフタ)に光学的に結合される。この光フェーズドアレイでは、コヒーレント光ビームが導波路によってそれぞれのアンテナ素子に誘導され、位相シフタによって光ビームの位相がシフトされる。これにより、遠視野放射パターンの振幅分布を変化させることができることが開示されている。
特許文献3は、内部を光が導波する光導波層、および光導波層の上面および下面に形成された第1分布ブラッグ反射鏡を備える導波路と、導波路内に光を入射させるための光入射口と、光入射口から入射して導波路内を導波する光を出射させるために導波路の表面に形成された光出射口とを備える光偏向素子を開示している。
国際公開第2013/168266号 特表2016−508235号公報 特開2013−16591号公報
本開示の一態様は、比較的簡単な構成で、光によるスキャンを実現し得る新規な光デバイスを提供する。
本開示の一態様に係る光デバイスは、第1の方向および前記第1の方向に垂直な第2の方向に拡がる第1の反射面を有する第1のミラーと、前記第1の反射面に対向する第2の反射面を有する第2のミラーと、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間の領域の一部に位置し、真空における波長がλである光を前記第1の方向に沿って伝搬させる光導波層と、前記第1のミラーの前記第1の反射面とは反対の側に位置する誘電体層と、を備える。前記第1のミラーにおける前記光の透過率は、前記第2のミラーにおける前記光の透過率よりも高く、前記光導波層は、屈折率および/または厚さを調整することが可能な構造を有し、前記光導波層の屈折率および/または厚さを調整することにより、前記光導波層から前記第1のミラーを介して出射する光の方向、または前記第1のミラーを介して前記光導波層内に取り込まれる光の入射方向が変化する。
本開示の包括的または具体的な態様は、デバイス、システム、方法、またはこれらの任意の組み合わせによって実現されてもよい。
本開示の一態様によれば、比較的簡単な構成で、光による1次元スキャンまたは2次元スキャンを実現することができる。
図1は、本開示の例示的な実施形態における光スキャンデバイスの構成を模式的に示す斜視図である。 図2は、1つの導波路素子の断面の構造および伝搬する光の例を模式的に示す図である。 図3は、シミュレーションにおいて用いた計算モデルを模式的に示す図である。 図4Aは、光導波層の一例における屈折率と、光の出射角度との関係を計算した結果を示している。 図4Bは、光導波層の他の例における屈折率と、光の出射角度との関係を計算した結果を示している。 図5は、光スキャンデバイスの例を模式的に示す図である。 図6Aは、比較例の構成を模式的に示す断面図である。 図6Bは、他の比較例の構成を模式的に示す断面図である。 図7は、導波路の屈折率を変化させたときの結合効率の変化の例を示すグラフである。 図8Aは、全反射導波路の概略構成を示す図である。 図8Bは、全反射導波路の電場強度分布を示す図である。 図8Cは、スローライト導波路の概略構成を示す図である。 図8Dは、スローライト導波路の電場強度分布を示す図である。 図9は、複数の第1の導波路と複数の第2の導波路との接続の例を模式的に示す図である。 図10Aは、基板上に設けられたスローライト導波路の例を模式的に示す図である。 図10Bは、2つの基板によって挟まれたスローライト導波路の例を模式的に示す図である。 図11Aは、本開示の実施形態における光デバイスの一例を模式的に示す図である。 図11Bは、本開示の実施形態における光デバイスの一例を模式的に示す図である。 図12Aは、本開示の実施形態における光デバイスの一例を模式的に示す図である。 図12Bは、本開示の実施形態における光デバイスの一例を模式的に示す図である。 図13Aは、本開示の実施形態における光デバイスの一例を模式的に示す図である。 図13Bは、本開示の実施形態における光デバイスの一例を模式的に示す図である。 図14Aは、本開示の実施形態における光デバイスの一例を模式的に示す図である。 図14Bは、本開示の実施形態における開口部を備える反り防止膜の一例を模式的に示す図である。 図15は、本開示のある実施形態における光デバイスを模式的に示す図である。 図16は、全反射導波路からスローライト導波路へのグレーティングを介した光伝搬を示す図である。 図17は、グレーティングが存在しない構成の例を示す図である。 図18Aは、全反射導波路における導波モードの電界強度分布を示す図である。 図18Bは、スローライト導波路における高次の導波モードの電界強度分布を示す図である。 図19は、グレーティングにおける凹部の深さと、結合効率との関係の例を示す図である。 図20は、結合効率の低い条件で計算した光伝搬の様子を示す図である。 図21は、グレーティングにおける凹部の個数と、結合効率との関係の例を示す図である。 図22Aは、光デバイスの第1の変形例を模式的に示す断面図である。 図22Bは、光デバイスの第2の変形例を模式的に示す断面図である。 図22Cは、光デバイスの第3の変形例を模式的に示す断面図である。 図23Aは、光デバイスの第4の変形例を模式的に示す断面図である。 図23Bは、光デバイスの第5の変形例を模式的に示す断面図である。 図24Aは、全反射導波路およびスローライト導波路の接続の第1の例を模式的に示す断面図である。 図24Bは、全反射導波路およびスローライト導波路の接続の第2の例を模式的に示す断面図である。 図24Cは、全反射導波路およびスローライト導波路の接続の第3の例を模式的に示す断面図である。 図24Dは、全反射導波路およびスローライト導波路の接続の第4の例を模式的に示す断面図である。 図25は、スローライト導波路の他の例を模式的に示す断面図である。 図26は、全反射導波路およびスローライト導波路の接続の他の例を模式的に示す断面図である。 図27は、図22Aに示す例における、光導波層の厚さと、導波光の結合効率との関係を示す図である。 図28Aは、図22Aに示す例において、2つのグレーティングを有する光デバイスを模式的に示す図である。 図28Bは、図28Aに示す例における、光導波層の厚さと、導波光の結合効率との関係を示す図である。 図28Cは、図28Aに示す例における、光導波層の厚さおよび領域101の屈折率と、導波光の結合効率との関係を示す他の図である。 図28Dは、図28Aに示す例における、光導波層の厚さと、導波光の結合効率との関係を示す他の図である。 図29Aは、図28Aに示す例の変形例を模式的に示す断面図である。 図29Bは、図28Aに示す例の変形例を模式的に示す断面図である。 図29Cは、図28Aに示す例の変形例を模式的に示す断面図である。 図29Dは、図28Aに示す例の変形例を模式的に示す断面図である。 図30Aは、2つのグレーティングがY方向に並んでいる例を模式的に示す図である。 図30Bは、グレーティングの周期がY方向における位置の変化に伴ってpからpに連続的に変化する例を模式的に示す図である。 図31は、2つの周期成分を含むグレーティングが混在している例を模式的に示す他の図である。 図32Aは、光導波層の両隣にスペーサが配置されている構成例を模式的に示す図である。 図32Bは、導波路アレイの構成例を模式的に示す図である。 図33は、光導波層内の導波光の伝搬を模式的に示す図である。 図34Aは、グレーティングを介して第1の導波路に光が導入される例を示す図である。 図34Bは、第1の導波路1の端面から光が入力される例を示す図である。 図34Cは、レーザー光源から第1の導波路に光が入力される例を示す図である。 図35Aは、導波路アレイの出射面に垂直な方向に光を出射する導波路アレイの断面を示す図である。 図35Bは、導波路アレイの出射面に垂直な方向とは異なる方向に光を出射する導波路アレイの断面を示す図である。 図36は、3次元空間における導波路アレイを模式的に示す斜視図である。 図37Aは、pがλよりも大きい場合において、導波路アレイから回折光が出射される様子を示す模式図である。 図37Bは、pがλよりも小さい場合において、導波路アレイから回折光が出射される様子を示す模式図である。 図37Cは、pがλ/2に実質的に等しい場合において、導波路アレイから回折光が出射される様子を示す模式図である。 図38は、位相シフタが導波路素子に直接的に接続されている構成の例を示す模式図である。 図39は、導波路アレイおよび位相シフタアレイを、光出射面の法線方向(Z方向)から見た模式図である。 図40は、位相シフタにおける導波路が、導波路素子における光導波層と、他の導波路を介して繋がる構成の例を模式的に示す図である。 図41は、光分岐器にカスケード状に並ぶ複数の位相シフタ80を挿入した構成例を示す図である。 図42Aは、第1調整素子の構成の一例を模式的に示す斜視図である。 図42Bは、第1調整素子の他の構成例を模式的に示す斜視図である。 図42Cは、第1調整素子のさらに他の構成例を模式的に示す斜視図である。 図43は、ヒーターを含む調整素子と導波路素子とを組み合わせた構成の例を示す図である。 図44は、支持部材でミラーが保持された構成例を示す図である。 図45は、ミラーを移動させる構成の一例を示す図である。 図46は、光の伝搬を妨げない位置に電極配置した構成例を示す図である。 図47は、圧電素子の例を示す図である。 図48Aは、ユニモルフの構造を有する支持部材の構成例を示す図である。 図48Bは、支持部材が変形した状態の例を示す図である。 図49Aは、バイモルフの構造を有する支持部材の構成例を示す図である。 図49Bは、支持部材が変形した状態の例を示す図である。 図50は、アクチュエータの例を示す図である。 図51Aは、支持部材の先端の傾きを説明するための図である。 図51Bは、伸縮する方向の異なる2つのユニモルフ型の支持部材を直列に繋ぎ合わせた例を示す図である。 図52は、複数の第1のミラーを保持する支持部材をアクチュエータで一括して駆動する構成の例を示す図である。 図53は、複数の導波路素子における第1のミラーが1つのプレート状のミラーである構成例を示す図である。 図54Aは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第1の例を示す図である。 図54Bは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第1の例を示す図である。 図55は、光入力装置を備える光スキャンデバイスの例を示す断面図である。 図56Aは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第2の例を示す図である。 図56Bは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第2の例を示す図である。 図57Aは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第3の例を示す図である。 図57Bは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第3の例を示す図である。 図58Aは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第4の例を示す図である。 図58Bは、光導波層に液晶材料を用いた構成の第4の例を示す図である。 図59は、光導波層に液晶材料を使用した構成における、光の射出角度の印加電圧依存性を示すグラフである。 図60は、本実験で用いた導波路素子の構成を示す断面図である。 図61は、光導波層に電気光学材料を用いた構成の第1の例を示す図である。 図62は、光導波層に電気光学材料を用いた構成の第1の例を示す図である。 図63Aは、一対の電極が第2のミラーの近傍にのみ配置されている例を示す図である。 図63Bは、一対の電極が第1のミラーの近傍にのみ配置されている例を示す図である。 図64は、それぞれの導波路素子の電極から配線を共通に取り出す構成の例を示す図である。 図65は、一部の電極および配線を共通にした構成の例を示す図である。 図66は、複数の導波路素子に対して共通の電極を配置した構成の例を示す図である。 図67は、位相シフタアレイを配置する領域を大きく確保して、導波路アレイを小さく集積した構成の例を模式的に示す図である。 図68は、2つの位相シフタアレイが、導波路アレイ10Aの両側にそれぞれ配置された構成例を示す図である。 図69Aは、導波路素子の配列方向および導波路素子が延びる方向が直交していない導波路アレイの構成例を示している。 図69Bは、導波路素子の配列間隔が一定でない導波路アレイの構成例を示している。 図70Aは、本実施形態における光スキャンデバイスを模式的に示す図である。 図70Bは、図70Aに示した光スキャンデバイスの断面図である。 図70Cは、図70Aに示したる光スキャンデバイスの他の断面図である。 図71Aは、第2のミラーと導波路との間に誘電体層が配置された構成例を示す図である。 図71Bは、第1の導波路の上に第2の誘電体層がさらに配置された構成例を示す図である。 図72は、第2のミラーが第1の導波路と基板との間の領域に配置されていない構成例を示す図である。 図73は、第2のミラーが第1の導波路1と基板との間において薄くなっている構成例を示す図である。 図74Aは、第2のミラーの厚さが段階的に変化する構成例を示す図である。 図74Bは、上部電極、第1のミラー、および第2の基板が、第1の導波路1における保護と、第2の導波路における光導波層との上に跨って配置されている構成例を示す図である。 図74Cは、図74Bの構成例の製造過程の一部を示す図である。 図75は、複数の第2の導波路の断面を示す図である。 図76は、第1の導波路1および第2の導波路が反射型導波路である構成例を示す図である。 図77は、上部電極が第1のミラーの上に配置されており、下部電極が第2のミラーの下に配置されている構成例を示す図である。 図78は、第1の導波路が2つの部分に分離された例を示す図である。 図79は、電極が、各光導波層と、各光導波層に隣接する光導波層との間に配置されている構成例を示す図である。 図80は、第1のミラーが厚く、第2のミラー0が薄い構成例を示す図である。 図81は、ある実施形態における光スキャンデバイスの断面図である。 図82は、光ロスの割合とyの関係を示す図である。 図83は、本実施形態における導波路アレイの別の構成例を模式的に示す、光スキャンデバイスの断面図である。 図84Aは、図32Bの構成例における、電場強度分布の計算結果を示す図である。 図84Bは、図83の構成例における、電場強度分布の計算結果を示す図である。 図85は、ある実施形態において、異なる屈折率を有するスペーサが存在する構成例を模式的に示す、光スキャンデバイスの断面図である。 図86は、変形例における導波路素子の構成例を模式的に示す、光スキャンデバイスの断面図である。 図87は、光導波領域の幅と電界の広がりとの関係を示す図である。 図88は、本実施形態おける、光導波領域および非導波領域の構成例を模式的に示す光スキャンデバイスの断面図である。 図89Aは、導波モードの電界分布の計算結果を示す図である。 図89Bは、導波モードの電界分布の計算結果を示す図である。 図90は、ミラー間距離に対する部材の寸法の比と電界の広がりとの関係を示す図である。 図91は、図90の例における、ミラー間距離に対する部材の寸法の比と導波モードの消衰係数との関係を示す図である。 図92は、ミラー間距離に対する部材の寸法の比と電界の広がりとの関係を示す図である。 図93は、光導波領域および非導波領域の構成を模式的に示す光スキャンデバイスの断面図である。 図94は、ミラー間距離に対する部材の寸法の比と電界の広がりとの関係を示す図である。 図95Aは、第2のミラーの反射面の一部に、他の部分から盛り上がった凸部が設けられた例を示す断面図である。 図95Bは、第2のミラーの反射面の一部に凸部が設けられた他の例を模式的に示す断面図である。 図96は、第1のミラー側に2つの部材が離れて配置されている構成例を模式的に示す光スキャンデバイスの断面図である。 図97は、第1および第2のミラーの両側の各々に2つの部材が離れて配置されている構成例を模式的に示す光スキャンデバイスの断面図である。 図98は、第1のミラー側に2つの部材が離れて配置され、第2のミラー側に他の部材が配置されている構成例を模式的に示す光スキャンデバイスの断面図である。 図99は、第2のミラー側に2つの部材が離れて配置されている構成例を模式的に示す光スキャンデバイスの断面図である。 図100は、第1および第2のミラーの両側の各々に部材が配置されている構成例を示す光スキャンデバイスの断面図である。 図101は、回路基板上に光分岐器、導波路アレイ、位相シフタアレイ、および光源などの素子を集積した光スキャンデバイスの構成例を示す図である。 図102は、光スキャンデバイスから遠方にレーザーなどの光ビームを照射して2次元スキャンを実行している様子を示す模式図である。 図103は、測距画像を生成することが可能なLiDARシステムの構成例を示すブロック図である。
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった知見を説明する。
本発明者らは、従来の光スキャンデバイスには、装置の構成を複雑にすることなく、光で空間をスキャンすることが困難であるという課題があることを見出した。
例えば、特許文献1に開示されている技術では、ミラーを回転させる駆動装置が必要である。このため、装置の構成が複雑になり、振動に対してロバストでないという課題がある。
特許文献2に記載の光フェーズドアレイでは、光を分岐して複数の列導波路および複数の行導波路に導入し、2次元的に配列された複数のアンテナ素子に光を誘導する必要がある。このため、光を誘導するための導波路の配線が非常に複雑になる。また、2次元スキャンの範囲を大きくすることができない。さらに、遠視野における出射光の振幅分布を2次元的に変化させるためには、2次元的に配列された複数のアンテナ素子の各々に位相シフタを接続し、位相シフタに位相制御用の配線を取り付ける必要がある。これにより、2次元的に配列された複数のアンテナ素子に入射する光の位相をそれぞれ異なる量変化させる。このため、素子の構成が非常に複雑になる。
本発明者らは、従来技術における上記の課題に着目し、これらの課題を解決するための構成を検討した。本発明者らは、対向する一対のミラーと、それらのミラーに挟まれた光導波層とを有する導波路素子を用いることにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。導波路素子における一対のミラーの一方は、他方に比べて高い光透過率を有し、光導波層を伝搬する光の一部を外部に出射させる。出射した光の方向(または出射角度)は、後述するように、光導波層の屈折率もしくは厚さ、または光導波層に入力される光の波長を調整することにより、変化させることができる。より具体的には、屈折率、厚さ、または波長を変化させることにより、出射光の波数ベクトル(wave vector)の、光導波層の長手方向に沿った方向の成分を変化させることができる。これにより、1次元的なスキャンが実現される。
さらに、複数の導波路素子のアレイを用いた場合には、2次元的なスキャンを実現することもできる。より具体的には、複数の導波路素子に供給する光に適切な位相差を与え、その位相差を調整することにより、複数の導波路素子から出射する光が強め合う方向を変化させることができる。位相差の変化により、出射光の波数ベクトルの、光導波層の長手方向に沿った方向に交差する方向の成分が変化する。これにより、2次元的なスキャンを実現することができる。なお、2次元的なスキャンを行う場合でも、複数の光導波層の屈折率、厚さ、または光の波長を異なる量変化させる必要はない。すなわち、複数の光導波層に供給する光に適切な位相差を与え、かつ、複数の光導波層の屈折率、厚さ、および波長の少なくとも1つを同期して同量変化させることにより、2次元的なスキャンを行うことができる。このように、本開示の実施形態によれば、比較的簡単な構成で、光による2次元スキャンを実現することができる。
本明細書において、「屈折率、厚さ、および波長の少なくとも1つ」とは、光導波層の屈折率、光導波層の厚さ、および光導波層に入力される波長からなる群から選択される少なくとも1つを意味する。光の出射方向を変化させるために、屈折率、厚さ、および波長のいずれか1つを単独で制御してもよい。あるいは、これらの3つのうちの任意の2つまたは全てを制御して光の出射方向を変化させてもよい。以下の説明では、主に光導波層の屈折率または厚さを制御する形態を説明する。以下の各実施形態において、屈折率または厚さの制御に代えて、または加えて、光導波層に入力される光の波長を制御してもよい。
以上の基本原理は、光を出射する用途だけでなく、光信号を受信する用途にも同様に適用できる。屈折率、厚さ、および波長の少なくとも1つを変化させることにより、受信できる光の方向を1次元的に変化させることができる。さらに、一方向に配列された複数の導波路素子にそれぞれ接続された複数の位相シフタによって光の位相差を変化させれば、受信できる光の方向を2次元的に変化させることができる。
本開示の実施形態による光スキャンデバイスおよび光受信デバイスは、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)システムなどの光検出システムにおけるアンテナとして用いられ得る。LiDARシステムは、ミリ波などの電波を用いたレーダシステムと比較して、短波長の電磁波(可視光、赤外線、または紫外線)を用いるため、高い分解能で物体の距離分布を検出することができる。そのようなLiDARシステムは、例えば自動車、UAV(Unmanned Aerial Vehicle、所謂ドローン)、AGV(Automated Guided Vehicle)などの移動体に搭載され、衝突回避技術の1つとして使用され得る。本明細書において、光スキャンデバイスと光受信デバイスを「光デバイス」と総称することがある。また、光スキャンデバイスまたは光受信デバイスに使用されるデバイスについても「光デバイス」と称することがある。
<光スキャンデバイスの構成例>
以下、一例として、2次元スキャンを行う光スキャンデバイスの構成を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複する説明を省略することがある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
本開示において、「光」とは、可視光(波長が約400nm〜約700nm)だけでなく、紫外線(波長が約10nm〜約400nm)および赤外線(波長が約700nm〜約1mm)を含む電磁波を意味する。本明細書において、紫外線を「紫外光」と称し、赤外線を「赤外光」と称することがある。
本開示において、光による「スキャン」とは、光の方向を変化させることを意味する。「1次元スキャン」とは、光の方向を、当該方向に交差する方向に沿って直線的に変化させることを意味する。「2次元スキャン」とは、光の方向を、当該方向に交差する平面に沿って2次元的に変化させることを意味する。
本明細書において、2つの方向が「平行」とは、厳密に平行であることのみならず、両者のなす角度が15度以下である形態を含む。本明細書において、2つの方向が「垂直」とは、厳密に垂直であることを意味せず、両者のなす角度が75度以上105度以下である形態を含む。
図1は、本開示の例示的な実施形態における光スキャンデバイス100の構成を模式的に示す斜視図である。光スキャンデバイス100は、複数の導波路素子10を含む導波路アレイを備える。複数の導波路素子10の各々は、第1の方向(図1におけるX方向)に延びた形状を有する。複数の導波路素子10は、第1の方向に交差する第2の方向(図1におけるY方向)に規則的に配列されている。複数の導波路素子10は、第1の方向に光を伝搬させながら、第1および第2の方向に平行な仮想的な平面に交差する第3の方向D3に光を出射させる。本実施形態では、第1の方向(X方向)と第2の方向(Y方向)とが直交しているが、両者が直交していなくてもよい。本実施形態では、複数の導波路素子10がY方向に等間隔で並んでいるが、必ずしも等間隔に並んでいる必要はない。
なお、本願の図面に示される構造物の向きは、説明のわかりやすさを考慮して設定されており、本開示の実施形態が現実に実施されるときの向きをなんら制限するものではない。また、図面に示されている構造物の全体または一部分の形状および大きさも、現実の形状および大きさを制限するものではない。
複数の導波路素子10のそれぞれは、互いに対向する第1のミラー30および第2のミラー40(以下、それぞれを単に「ミラー」と呼ぶ場合がある)と、ミラー30とミラー40の間に位置する光導波層20とを有する。ミラー30および40の各々は、第3の方向D3に交差する反射面を、光導波層20との界面に有する。ミラー30および40、ならびに光導波層20は、第1の方向(X方向)に延びた形状を有している。
なお、後述するように、複数の導波路素子10の複数の第1のミラー30は、一体に構成された第3のミラーの複数の部分であってもよい。また、複数の導波路素子10の複数の第2のミラー40は、一体に構成された第4のミラーの複数の部分であってもよい。さらに、複数の導波路素子10の複数の光導波層20は、一体に構成された光導波層の複数の部分であってもよい。少なくとも、(1)各第1のミラー30が他の第1のミラー30と別体に構成されているか、(2)各第2のミラー40が他の第2のミラー40と別体に構成されているか、(3)各光導波層20が他の光導波層20と別体に構成されていることにより、複数の導波路を形成することができる。「別体に構成されている」とは、物理的に空間を設けることのみならず、間に屈折率が異なる材料を挟み、分離することも含む。
第1のミラー30の反射面と第2のミラー40の反射面とは略平行に対向している。2つのミラー30および40のうち、少なくとも第1のミラー30は、光導波層20を伝搬する光の一部を透過させる特性を有する。言い換えれば、第1のミラー30は、当該光について、第2のミラー40よりも高い光透過率を有する。このため、光導波層20を伝搬する光の一部は、第1のミラー30から外部に出射される。このようなミラー30および40は、例えば誘電体による多層膜(「多層反射膜」と称することもある。)によって形成される多層膜ミラーであり得る。
それぞれの導波路素子10に入力する光の位相を制御し、さらに、これらの導波路素子10における光導波層20の屈折率もしくは厚さ、または光導波層20に入力される光の波長を同期して同時に変化させることで、光による2次元スキャンを実現することができる。
本発明者らは、そのような2次元スキャンを実現するために、導波路素子10の動作原理について詳しく分析を行った。その結果に基づき、複数の導波路素子10を同期して駆動することで、光による2次元スキャンを実現することに成功した。
図1に示されるように、各導波路素子10に光を入力すると、各導波路素子10の出射面から光が出射される。出射面は、第1のミラー30の反射面の反対側に位置する。その出射光の方向D3は、光導波層の屈折率、厚さ、および光の波長に依存する。本実施形態では、各導波路素子10から出射される光が概ね同じ方向になるように、各光導波層の屈折率、厚さ、および波長の少なくとも1つが同期して制御される。これにより、複数の導波路素子10から出射される光の波数ベクトルのX方向の成分を変化させることができる。言い換えれば、出射光の方向D3を、図1に示される方向101に沿って変化させることができる。
さらに、複数の導波路素子10から出射される光は同じ方向を向いているので、出射光は互いに干渉する。それぞれの導波路素子10から出射される光の位相を制御することにより、干渉によって光が強め合う方向を変化させることができる。例えば、同じサイズの複数の導波路素子10がY方向に等間隔で並んでいる場合、複数の導波路素子10には、一定量ずつ位相の異なる光が入力される。その位相差を変化させることにより、出射光の波数ベクトルの、Y方向の成分を変化させることができる。言い換えれば、複数の導波路素子10に導入される光の位相差をそれぞれ変化させることにより、干渉によって出射光が強め合う方向D3を、図1に示される方向102に沿って変化させることができる。これにより、光による2次元スキャンを実現することができる。
以下、光スキャンデバイス100の動作原理をより詳細に説明する。
<導波路素子の動作原理>
図2は、1つの導波路素子10の断面の構造および伝搬する光の例を模式的に示す図である。図2では、図1に示すX方向およびY方向に垂直な方向をZ方向とし、導波路素子10のXZ面に平行な断面が模式的に示されている。導波路素子10において、一対のミラー30とミラー40が光導波層20を挟むように配置されている。光導波層20のX方向における一端から導入された光22は、光導波層20の上面(図2における上側の表面)に設けられた第1のミラー30および下面(図2における下側の表面)に設けられた第2のミラー40によって反射を繰り返しながら光導波層20内を伝搬する。第1のミラー30の光透過率は第2のミラー40の光透過率よりも高い。このため、主に第1のミラー30から光の一部を出力することができる。
通常の光ファイバーなどの導波路では、全反射を繰り返しながら光が導波路に沿って伝搬する。これに対して、本実施形態における導波路素子10では、光は光導波層20の上下に配置されたミラー30および40によって反射を繰り返しながら伝搬する。このため、光の伝搬角度に制約がない。ここで光の伝搬角度とは、ミラー30または40と光導波層20との界面への入射角度を意味する。ミラー30または40に対して、より垂直に近い角度で入射する光も伝搬できる。すなわち、全反射の臨界角よりも小さい角度で界面に入射する光も伝搬できる。このため、光の伝搬方向における光の群速度は自由空間における光速に比べて大きく低下する。これにより、導波路素子10は、光の波長、光導波層20の厚さ、および光導波層20の屈折率の変化に対して光の伝搬条件が大きく変化するという性質を持つ。このような導波路を、「反射型導波路」または「スローライト導波路」と呼ぶ。
導波路素子10の光の伝搬について、より詳しく説明する。光導波層20の屈折率をn、光導波層20の厚さをdとする。ここで、光導波層20の厚さdは、ミラー30または40の反射面の法線方向における光導波層20のサイズである。光の干渉条件を考慮すると、波長λの光の伝搬角度θは、以下の式(1)を満たす。
Figure 2019174538
mはモード次数である。式(1)は、光導波層20内の光が厚さ方向に定在波を形成する条件に相当する。光導波層20内の波長λがλ/nのとき、光導波層20の厚さ方向における波長λg’はλ/(ncosθ)であると考えることができる。光導波層20の厚さdが、光導波層20の厚さ方向における波長λg’の半分λ/(2ncosθ)の整数倍と等しいとき、定在波が形成される。この条件から式(1)が得られる。なお、式(1)におけるmは定在波の腹(anti−node)の数を表す。
ミラー30および40が多層膜ミラーである場合、反射時にミラー内部にも光が侵入する。このため、厳密には、光が侵入した分の光路長に対応する項を式(1)の左辺に付け加える必要がある。しかし、ミラー内部への光の侵入の影響よりも光導波層20の屈折率nおよび厚さdの影響の方が遥かに大きいため、式(1)によって基本的な動作を説明できる。
光導波層20内を伝搬する光が、第1のミラー30を通じて外部(典型的には空気)に出射されるときの出射角度θは、スネルの法則にしたがって以下の式(2)のように記述できる。
Figure 2019174538
式(2)は、光の出射面において、空気側の光の面方向における波長λ/sinθと、導波路素子10側の光の伝搬方向の波長λ/(nsinθ)とが等しいという条件から得られる。
式(1)および式(2)より、出射角度θは、以下の式(3)のように記述できる。
Figure 2019174538
式(3)からわかるように、光の波長λ、光導波層20の屈折率nおよび光導波層20の厚さdのいずれかを変えることで光の出射方向を変えることができる。
例えば、n=2、d=387nm、λ=1550nm、m=1の場合、出射角度は0°である。この状態から、屈折率をn=2.2に変化させると、出射角度は約66°に変化する。一方、屈折率を変えずに厚さをd=420nmに変化させると、出射角度は約51°に変化する。屈折率も厚さも変化させずに波長をλ=1500nmに変化させると、出射角度は約30°に変化する。このように、光の波長λ、光導波層20の屈折率n、および光導波層20の厚さdのいずれかを変えることにより、光の出射方向を大きく変えることができる。
そこで、本開示の実施形態における光スキャンデバイス100は、光導波層20に入力される光の波長λ、光導波層20の屈折率n、および光導波層20の厚さdの少なくとも1つを制御することで、光の出射方向を制御する。光の波長λは、動作中に変化させず、一定に維持されてもよい。その場合、よりシンプルな構成で光のスキャンを実現できる。波長λは、特に限定されない。例えば、波長λは、一般的なシリコン(Si)により光を吸収することで光を検出するフォトディテクタまたはイメージセンサで高い検出感度が得られる400nmから1100nm(可視光から近赤外光)の波長域に含まれ得る。他の例では、波長λは、光ファイバーまたはSi導波路において伝送損失の比較的小さい1260nmから1625nmの近赤外光の波長域に含まれ得る。なお、これらの波長範囲は一例である。使用される光の波長域は、可視光または赤外光の波長域に限定されず、例えば紫外光の波長域であってもよい。
本発明者らは、上記のような特定方向への光の出射が実際に可能であるかを光学解析によって検証した。光学解析は、サイバネット社のDiffractMODを用いた計算によって行った。これは、厳密結合波解析(RCWA:Rigorous Coupled−Wave Analysis)に基づいたシミュレーションであり、波動光学の効果を正確に計算することができる。
図3は、本シミュレーションにおいて用いた計算モデルを模式的に示す図である。この計算モデルでは、基板50上に、第2のミラー40と、光導波層20と、第1のミラー30とが、この順に積層されている。第1のミラー30および第2のミラー40は、いずれも誘電体多層膜を含む多層膜ミラーである。第2のミラー40は、相対的に屈折率の低い低屈折率層42および相対的に屈折率の高い高屈折率層44を交互に6層ずつ(計12層)積層した構造を有する。第1のミラー30は、低屈折率層42および高屈折率層44を交互に2層ずつ(すなわち、計4層)積層した構造を有する。ミラー30とミラー40の間に光導波層20が配置されている。導波路素子10および基板50以外の媒質は空気である。
このモデルを用いて、光の入射角度を変化させながら入射光に対する光学応答を調べた。これは、空気からの入射光と光導波層20とが、どの程度結合するかを調べることに対応している。入射光が光導波層20と結合する条件では、光導波層20を伝搬した光が外部に出射されるという逆の過程も起きる。よって、入射光が光導波層20と結合する場合の入射角度を求めることは、光導波層20を伝搬した光が外部に出射する際の出射角度を求めることに相当する。入射光が光導波層20と結合すると、光導波層20内において光の吸収および散乱によるロスが生じる。つまり、大きなロスが生じる条件では、入射光が光導波層20に強く結合しているということになる。吸収などによる光のロスがなければ、光の透過率および反射率の合計が1になる。しかし、ロスがあれば、透過率および反射率の合計は1よりも小さくなる。本計算では、光の吸収の影響を取り入れるために、光導波層20の屈折率に虚部を導入し、1から透過率および反射率の合計を引いた値をロスの大きさとして計算した。
本シミュレーションでは、基板50はSi、低屈折率層42はSiO(厚さ267nm)、高屈折率層44はSi(厚さ108nm)であるものとした。波長λ=1.55μmの光を、角度を様々に変えて入射したときのロスの大きさを計算した。
図4Aは、光導波層20の厚さdが704nmの場合における光導波層20の屈折率nと、モード次数m=1の光の出射角度θとの関係を計算した結果を示している。白い線はロスが大きいことを表している。図4Aに示されているように、n=2.2付近でモード次数m=1の光の出射角度がθ=0°となる。n=2.2に近い屈折率をもつ物質には、例えばニオブ酸リチウムがある。
図4Bは、光導波層20の厚さdが446nmの場合における光導波層20の屈折率nと、モード次数m=1の光の出射角度θとの関係を計算した結果を示している。図4Bに示されているように、n=3.45付近でモード次数m=1の光の出射角度がθ=0°となる。n=3.45に近い屈折率をもつ物質には、例えばシリコン(Si)が挙げられる。
このように、光導波層20の厚さdを調整することにより、特定の光導波層20の屈折率nに対して、特定のモード次数(例えばm=1)の光の出射角度θが0°となるように設計できる。
図4Aおよび図4Bに示すように、屈折率の変化に応じて、出射角度θが大きく変わることが確認できた。後述するように、屈折率は、例えばキャリア注入、電気光学効果、および熱光学効果などの様々な方法によって変化させることができる。そのような方法による屈折率の変化は0.1程度とあまり大きくない。そのため、これまでは、そのような小さな屈折率の変化では出射角度はそれほど大きく変化しないと考えられていた。しかし、図4Aおよび図4Bに示すように、出射角度がθ=0°となる屈折率付近では、屈折率が0.1増加すると出射角度θが0°から約30°にまで変化することがわかった。このように、本実施形態における導波路素子10では、小さい屈折率変化であっても、出射角度を大きく調整することが可能である。
同様に、図4Aおよび図4Bの比較からわかるように、光導波層20の厚さdの変化に応じて、出射角度θが大きく変わることが確認できた。後述するように、厚さdは、例えば2つのミラーの少なくとも一方に接続されたアクチュエータによって変化させることができる。厚さdの変化が小さくても、出射角度を大きく調整することができる。
このように、光導波層20の屈折率nおよび/または厚さdを変化させることにより、導波路素子10から出射される光の方向を変えることができる。同様に、光導波層20に入力する光の波長を変化させることによっても、導波路素子10から出射される光の方向を変えることができる。出射光の方向を変化させるために、光スキャンデバイス100は、各導波路素子10における光導波層20の屈折率、厚さ、および波長の少なくとも1つを変化させる第1調整素子を備え得る。第1調整素子の構成例については、後述する。
以上のように、導波路素子10を用いれば、光導波層20の屈折率nw、厚さd、および波長λの少なくとも1つを変化させることで、光の出射方向を大きく変えることができる。これにより、ミラー30から出射される光の出射角度を、導波路素子10に沿った方向に変化させることができる。少なくとも1つの導波路素子10を用いることにより、このような1次元のスキャンを実現することができる。
図5は、単一の導波路素子10によって1次元スキャンを実現する光スキャンデバイス100の例を模式的に示す図である。この例では、Y方向に広がりのあるビームスポットが形成される。光導波層20の屈折率、厚さ、波長の少なくとも1つを変化させることにより、ビームスポットをX方向に沿って移動させることができる。これにより、1次元スキャンが実現される。ビームスポットがY方向に広がりをもつため、一軸方向のスキャンであっても、2次元的に拡がる比較的広いエリアをスキャンすることができる。2次元スキャンが不要な用途では、図5に示すような構成も採用し得る。
2次元スキャンを実現する場合には、図1に示すように、複数の導波路素子10が配列された導波路アレイが用いられる。複数の導波路素子10内を伝搬する光の位相が特定の条件を満たすとき、光は特定の方向に出射する。その位相の条件が変化すると、光の出射方向が導波路アレイの配列方向にも変化する。すなわち、導波路アレイを用いることにより、2次元スキャンを実現することができる。2次元スキャンを実現するためのより具体的な構成の例については後述する。
以上のように、少なくとも1つの導波路素子10を用いて、導波路素子10における光導波層20の屈折率、光導波層20の厚さ、および波長の少なくとも1つを変化させることにより、光の出射方向を変化させることができる。本開示の実施形態における導波路素子10は、光の全反射を利用する一般的な全反射導波路とは異なり、光導波層が一対のミラーに挟まれた反射型導波路の構造を備える。このような反射型導波路への光の結合については、これまでに十分に検討されてこなかった。本発明者らは、光導波層20に光を効率的に導入するための構造についても検討した。
図6Aは、空気およびミラー30を介して間接的に光が光導波層20に入力される構成の例を模式的に示す断面図である。この例では、反射型導波路である導波路素子10の光導波層20に対して、外部から空気およびミラー30を介して間接的に伝播光が導入される。光導波層20に光を導入するためには、光導波層20の内部における導波光の反射角θに対して、スネルの法則(ninsinθin=nsinθ)を満たす必要がある。ここで、ninは外部媒質の屈折率、θinは伝播光の入射角、nは光導波層20の屈折率である。この条件を考慮して入射角θinを調整することにより、光の結合効率を最大化することができる。さらに、この例では、第1のミラー30の一部に多層反射膜の膜数を減らした部分が設けられている。その部分から光が入力されることで結合効率を高めることができる。しかし、このような構成では、光導波層20の伝搬定数の変化に起因するθwavの変化に応じて、光導波層20への光の入射角θinを変化させる必要が生じる。
光導波層20の伝搬定数の変化が生じても、光が常に導波路に結合できる状態を保つことが重要である。そのために、多層反射膜の膜数を減らした部分に角度広がりのあるビームを入射する方法がある。図6Bは、そのような方法の一例を示している。この例では、導波路素子10に、ミラー30の法線方向に対して角度θinだけ傾けて配置された光ファイバー7から角度広がりのある光が導入される。このような構成によって、外部から空気およびミラー30を介して間接的に光を入射した場合の結合効率について検討する。
簡単のため光を光線として考える。通常のシングルモードファイバーの開口数(NA)は0.14程度である。これは角度に換算すると約±8度である。導波路に結合する光の入射角度の範囲は、導波路から出射される光の広がり角と同程度である。出射光の広がり角θdivは、以下の式(4)で表される。
Figure 2019174538
ここでLは伝搬長、λは光の波長、θoutは光の出射角である。Lを10μm以上とすると、θdivは大きくても1度以下である。したがって、光ファイバー7からの光の結合効率は、1/16×100%(すなわち、約6.3%)以下である。さらに、光の入射角θinを固定し、導波路の屈折率nを変化させることによって光の出射角θoutを変化させたときの結合効率の変化を計算した結果を図7に示す。結合効率は、入射光のエネルギーに対する導波光のエネルギーの比を表す。図7に示す結果は、入射角θinを30°、導波路膜厚を1.125μm、波長を1.55μmとして、結合効率を計算することによって得られた。この計算では、屈折率nを1.44から1.78の範囲で変化させることにより、出射角θoutを10°から65°の範囲で変化させた。図7に示すように、このような構成では、結合効率は最大でも7%に満たない。また、出射角θoutを、結合効率がピークになる出射角から20°以上変化させると、結合効率はさらに半分以下に低下する。
このように、光スキャンのために導波路の屈折率等を変化させることによって伝搬定数を変化させると、結合効率はさらに低下する。結合効率を維持するためには、伝搬定数の変化に応じて光の入射角θinを変化させる必要がある。しかし、光の入射角θinを変化させる機構を導入すると、装置構成の複雑化を招く。
本発明者らは、屈折率等を変化させる導波路を有する領域の前段に、屈折率が一定に維持される導波路を有する領域を設けることにより、光入射角を固定する事ができることを見出した。さらに、本発明者らは、それらの2種類の導波路を接続して高い光結合効率を実現する方法についても検討した。
異なる2つの導波路における導波光の結合を考える際に重要な要因が2点ある。1つ目は、伝搬光の伝搬定数であり、2つ目はモードの電場強度分布である。これらが2つの導波路において近いほど結合効率は高くなる。導波路における伝搬光の伝搬定数βは、簡単のため幾何光学的に考えると、β=k・sinθ=(2πnsinθ)/λで表される。波数をk、導波角度をθ、光導波層の屈折率をnとする。全反射型の導波路では、全反射を用いて導波光を導波層に閉じ込めるため、全反射条件であるnsinθ>1を満たす。一方、スローライト導波路では、導波路の上下に存在する多層反射膜により光を導波路に閉じ込め、導波光の一部を多層反射膜を通して射出するため、nsinθ<1となる。全反射型導波路と、導波光の一部を射出するスローライト導波路とでは、伝搬定数は等しくなり得ない。図8Aに示すような全反射導波路の電場強度分布は、図8Bに示すように、ピークを導波路内に持ち、導波路外では単調減少する。他方、図8Cに示すようなスローライト導波路は、図8Dに示すような電場強度分布を持つ。導波路内にピークを持つ事は変わらないが、図8Cに示すスローライト導波路では、導波光が誘電多層膜内において光の干渉により反射する。このため、図8Dに示すように電場強度は誘電多層膜に深く染み出し、かつ振動的に変化する。
以上のように、全反射型導波路とスローライト導波路とでは、導波光の伝搬定数、電場強度分布共に大きく異なる。よって、全反射型導波路とスローライト導波路とを直接的に繋げることは従来考えられていなかった。本発明者らは、可変の屈折率および/または厚さを有する光導波層に、直接的に全反射導波路を繋げることができることを発見した。
さらに、本発明者らは、そのような2種類の導波路を、共通の基板上に配置することにより、光スキャンデバイスの作製を容易にできることも見出した。すなわち、一体に形成された一つの基板上に2種類の導波路を配置してもよい。一般的な導波路は、半導体プロセスを用いて、基板上に作製される。例えば、蒸着またはスパッタリングなどによる成膜と、リソグラフィーまたはエッチングなどによる微細加工とを組み合わせた製法が用いられ得る。そのような製法によって、基板の上に導波路の構造を作製することができる。基板の材料として、例えばSi、SiO、GaAs、またはGaNが用いられ得る。
反射型導波路も、同様の半導体プロセスを用いて作製され得る。反射型導波路では、光導波層を挟む一対のミラーのうち、一方のミラーから光を透過させることよって、光を出射させる。ミラーは、例えば低コストで入手可能なガラス基板の上に作製され得る。ガラス基板の代わりに、例えばSi、SiO、GaAs、GaNなどの基板を用いてもよい。
反射型導波路に別の導波路を接続することによって、光を反射型導波路に導入することができる。以下、そのような構造の例を説明する。
図9は、基板50Aの上に作製された複数の第1の導波路1と、別の基板50Bの上に作製された複数の第2の導波路10との接続を模式的に示す図である。2つの基板50Aおよび50Bは、XY平面に平行に配置されている。複数の第1の導波路1および複数の第2の導波路10は、X方向に延び、Y方向に配列されている。第1の導波路1は、例えば、光の全反射を利用する一般的な導波路である。第2の導波路10は、反射型導波路である。別々の基板50Aおよび50Bの上にそれぞれ配置された第1の導波路1および第2の導波路10を位置合わせして接続することによって、第1の導波路1から第2の導波路10に光を導入することができる。
第1の導波路1から第2の導波路10に効率よく光を導入するためには、10nmオーダーの極めて高精度の位置合わせが望まれる。また、高精度の位置合わせができたとしても、2つの基板50A、50Bの熱膨張係数が異なる場合、温度変化により、位置合わせがずれるおそれがある。例えば、Si、SiO、GaAsおよびGaNの熱膨張係数は、それぞれおよそ4、0.5、6および5(×10―6/K)であり、ガラス基材としてよく使われるBK7の熱膨張係数は、9(×10―6/K)である。別々の基材としてどの材料を組み合わせても、1×10―6/K以上の熱膨張係数の違いが生じる。例えば、複数の第1の導波路1および複数の第2の導波路10の配列方向(図中ではY方向)における2つの基板50A、50Bのサイズが1mmである場合、1℃の温度変化によって、2つの基板50A、50Bの位置合わせは、1nmずれる。さらに、数十℃の温度変化によって、2つの基板50A、50Bの位置合わせは、数十〜百nmのオーダーで大きくずれる。
同じ基板の上に第1の導波路および第2の導波路を配置すれば、上記の課題を解決できる。共通の基板上にこれらの導波路を配置することにより、第1の導波路および第2の導波路の位置合わせが容易になる。さらに、熱膨張による第1の導波路および第2の導波路の位置合わせのずれが抑制される。その結果、第1の導波路から第2の導波路にさらに効率よく光を導入することができる。
上記態様における「第2の導波路」は、前述の実施形態における「導波路素子」に相当する。本開示のある実施形態では、第2の導波路の前段に、屈折率も厚さも一定に維持される第1の導波路が設けられ、第1の導波路に光が入力される。第1の導波路は、入力された光を伝搬させ、第2の導波路の端面から入力する。第1の導波路と第2の導波路とは、端面同士が直接接続されていてもよいし、例えば、端面間にギャップがあってもよい。
上記構成によれば、第1の導波路を第2の導波路(すなわち導波路素子)の前段に設けることにより、第1の導波路に入射する光の入射角を一定に維持しても、スキャンによる結合効率の低下(すなわちエネルギーのロス)を抑制することができる。
同じ基板の上に第1の導波路および第2の導波路を配置した場合には、第1の導波路および第2の導波路の位置合わせが容易になる。さらに、熱膨張による第1および第2の導波路の位置合わせのずれが抑制される。その結果、第1の導波路から第2の導波路へ効率よく光を導入することができる。
<反射防止膜>
図10Aは、基板上に設けられたスローライト導波路の例を模式的に示す図である。光導波層20内を伝搬する光22の一部は、第1のミラー30から外部に出射される。通常、第1のミラー30内の最上層と外部の媒質との屈折率の差は、比較的大きい。その場合、図10Aに示すように、第1のミラー30と外部の媒質との界面において、光の反射が生じる。
また、光デバイスは、2つの構造体を貼り合わせて作製され得る。2つの構造体のうち、一方の構造体は、基板50上に設けられた第2のミラー40と、第2のミラー40上に設けられた光導波層20とを含む。他方の構造体は、基板50とは他の基板上に設けられた第1のミラー30を含む。上記2つの構造体の貼り合わせによって作製された光デバイスは、基板50と他の基板とによって挟まれたスローライト導波路10を備える。
図10Bは、2つの基板によって挟まれたスローライト導波路の例を模式的に示す図である。第1のミラー30と第2の基板53との屈折率差は、比較的小さい。そのため、第1のミラー30と第2の基板53との界面における光の反射は大きな問題にはならない。しかし、通常、第2の基板53と外部の媒質との屈折率の差は、比較的大きい。その場合、図10Bに示すように第2の基板53と外部の媒質との界面において、光の反射が生じる。
図10Aおよび10Bに示すように、界面において光の反射が生じると、第1のミラー30から外部に出射される光の強度が減少する。そのため、光スキャンに影響を及ぼす可能性がある。
本発明者らは、上記の考察に基づき、第1のミラー30から外部に出射される光の強度の減少を抑制する光デバイスの構成を検討した。その結果、以下の各実施形態の構成に想到した。
第1の項目に係る光デバイスは、第1の方向および前記第1の方向に垂直な第2の方向に拡がる第1の反射面を有する第1のミラーと、前記第1の反射面に対向する第2の反射面を有する第2のミラーと、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間の領域の一部に位置し、真空における波長がλである光を前記第1の方向に沿って伝搬させる光導波層と、前記第1のミラーの前記第1の反射面とは反対の側に位置する誘電体層と、を備える。前記第1のミラーにおける前記光の透過率は、前記第2のミラーにおける前記光の透過率よりも高い。前記光導波層は、屈折率および/または厚さを調整することが可能な構造を有する。前記光導波層の屈折率および/または厚さを調整することにより、前記光導波層から前記第1のミラーを介して出射する光の方向、または前記第1のミラーを介して前記光導波層内に取り込まれる光の入射方向が変化する。
この光デバイスでは、誘電体層は、第1のミラーの第1の反射面とは反対の側に位置する。当該誘電体層は、反射防止の機能を有する。これにより、光導波層を伝搬する光の一部は、当該誘電体層によってほとんど反射されることなく、効率よく第1のミラーから外部に出射される。
第2の項目に係る光デバイスは、第1の項目に係る光デバイスにおいて、前記誘電体層が有する2つの面のうち、一方の面に接触する媒質の屈折率をnとし、他方の面に接触する媒質の屈折率をnとし、前記誘電体層の屈折率をnとすると、n<n<nまたはn<n<nであり、前記第1の反射面に垂直な方向における前記誘電体層の厚さが、λ/(4n)の0.8倍以上1.2倍以下である。
この光デバイスでは、誘電体層の屈折率および/または厚さを調整することにより、第1の項目に係る光デバイスの効果を実現することができる。
第3の項目に係る光デバイスは、第2の項目に係る光デバイスにおいて、前記誘電体層の屈折率nが、(n1/2の0.8倍以上1.2倍以下である。
この光デバイスでは、第2の項目に係る光デバイスにおいて誘電体層の屈折率をさらに調整することにより、第1の項目に係る光デバイスの効果を実現することができる。
第4の項目に係る光デバイスは、第1から第3の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記誘電体層が、SiO、TaO、TiO、NbO、Si、およびNbからなる群から選択される1つを含む。
この光デバイスでは、誘電体層の材料を上記の群から選択することにより、第1の項目に係る光デバイスの効果を実現することができる。
第5の項目に係る光デバイスは、第1の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記誘電体層が、屈折率の異なる複数の層を含む。前記複数の層の屈折率は、前記光導波層から離れるにつれて低くなる。各層が有する2つの面のうち、一方の面に接触する媒質の屈折率をnとし、他方の面に接触する媒質の屈折率をnとし、各層の屈折率をnとすると、n<n<nまたはn<n<nであり、前記第1の反射面に垂直な方向における各層の厚さは、λ/(4n)の0.8倍以上1.2倍以下である。
この光デバイスでは、誘電体層は、屈折率が異なる複数の層を含む。各層の屈折率および厚さを調整することにより、誘電体層の反射防止の精度を向上させることができる。
第6の項目に係る光デバイスは、第5の項目に係る光デバイスにおいて、各層の屈折率nが、(n1/2の0.8倍以上1.2倍以下である。
この光デバイスでは、第5の項目に係る光デバイスにおいて各層の屈折率をさらに調整することにより、第1の項目に係る光デバイスの効果を実現することができる。
第7の項目に係る光デバイスは、第5または第6の項目に係る光デバイスにおいて、前記複数の層が、SiO、TaO、TiO、NbO、Si、およびNbからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
この光デバイスでは、誘電体層が含む複数の層の材料を上記の群から選択することにより、第1の項目に係る光デバイスの効果を実現することができる。
第8の項目に係る光デバイスは、第1から第7の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記第2のミラーの前記第2の反射面とは反対の側に位置する基板をさらに備える。
この光デバイスでは、第2のミラーの第2の反射面の反対の側に基板を設けても、第1の項目に係る光デバイスと同じ効果を得ることができる。
第9の項目に係る光デバイスは、第8の項目に係る光デバイスにおいて、前記第2のミラーの前記第2の反射面とは反対の側に位置する第2の誘電体層をさらに備える。前記基板は、前記第2のミラーと前記第2の誘電体層との間に位置する。
この光デバイスでは、基板は、第2のミラーと第2誘電体層とによって挟まれている。これにより、基板の反りを抑制することができる。
第10の項目に係る光デバイスは、第1から第9の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記第1のミラーと前記誘電体層との間に位置する第2の基板をさらに備える。
この光デバイスでは、第1のミラーと誘電体層との間に第2の基板が設けられていても、第1の項目に係る光デバイスと同じ効果を得ることができる。第2の基板は、第1のミラーと誘電体層とによって挟まれている。これにより、第2の基板の反りは抑制される。
第11の項目に係る光デバイスは、第1から第10の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記光導波層が、液晶材料または電気光学材料を含み、前記光導波層を間に挟む一対の電極と、前記一対の電極に電圧を印加することにより、前記光導波層の前記少なくとも一部の屈折率を変化させる制御回路と、をさらに備える。
この光デバイスでは、光導波層は、液晶材料または電気光学材料を含む。一対の電極によって光導波層に電圧を印加することにより、光導波層から第1のミラーを介して出射する光の方向、または第1のミラーを介して光導波層内に取り込まれる光の入射方向が変化する。
第12の項目に係る光デバイスは、第1から第10の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記第1および第2のミラーの少なくとも一方に接続された少なくとも1つのアクチュエータと、前記少なくとも1つのアクチュエータを制御して前記第1のミラーと前記第2のミラーとの距離を変化させることにより、前記光導波層の厚さを変化させる制御回路と、をさらに備える。
この光デバイスでは、アクチュエータは、第1および第2のミラーの少なくとも一方に接続されている。アクチュエータを制御して第1のミラーと第2のミラーとの距離を変化させることにより、光導波層から第1のミラーを介して出射する光の方向、または第1のミラーを介して光導波層内に取り込まれる光の入射方向が変化する。
第13の項目に係る光デバイスは、第1から第12の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記光導波層に接続され、実効屈折率がne1である導波モードの光を前記第1の方向に沿って伝搬させる導波路をさらに備える。前記導波路の先端部は、前記光導波層の内部にある。前記第1の反射面に垂直な方向から見て前記導波路および前記光導波層が重なる領域において、前記導波路および前記光導波層の少なくとも一部は、前記第1の方向に沿って屈折率が周期pで変化する少なくとも1つのグレーティングを含む。さらに、λ/ne1<p<λ/(ne1−1)が満たされる。
この光デバイスでは、導波路を伝搬する光は、グレーティングを介して、スローライト導波路である光導波層に高い効率で伝搬することができる。これにより、導波光の高い結合効率を実現することができる。
第14の項目に係る光デバイスは、第1から第12の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記第2の方向に配列された複数の導波路ユニットを備える。各導波路ユニットは、前記第1および第2のミラーと、前記光導波層と、前記誘電体層とを備える。
この光デバイスでは、第1の項目に係る光デバイスがアレイ化されている。このアレイ化された光デバイスでも、第1の項目に係る光デバイスの効果を得ることができる。
第15の項目に係る光デバイスは、第14の項目に係る光デバイスにおいて、前記複数の導波路ユニットにそれぞれ接続された複数の位相シフタであって、それぞれが、前記複数の導波路ユニットの対応する1つにおける前記光導波層に直接的にまたは他の導波路を介して繋がる導波路を含む複数の位相シフタをさらに備える。前記複数の位相シフタを通過する光の位相の差をそれぞれ変化させることにより、前記第1のミラーから出射する前記光の方向、または、前記第1のミラーを介して前記光導波層に取り込まれる前記光の入射方向が変化する。
この光デバイスでは、位相シフタによって光スキャンおよび光受信の方向を変化させることができる。
第16の項目に係る光デバイスは、第13の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記第2の方向に配列された複数の導波路ユニットを備える。各導波路ユニットは、前記第1および第2のミラーと、前記光導波層と、前記誘電体層と、前記導波路とを備える。
この光デバイスでは、少なくとも1つのグレーティングを含む導波路をさらに備える第1の項目に係る光デバイスが、アレイ化されている。このアレイ化された光デバイスでも、第1の項目に係る光デバイスの効果を得ることができる。
第17の項目に係る光デバイスは、第16の項目に係る光デバイスにおいて、前記複数の導波路ユニットにそれぞれ接続された複数の位相シフタであって、それぞれが、前記複数の導波路ユニットの対応する1つにおける前記導波路に直接的にまたは他の導波路を介して繋がる第2の導波路を含む複数の位相シフタをさらに備える。前記複数の位相シフタを通過する光の位相の差をそれぞれ変化させることにより、前記第1のミラーから出射する前記光の方向、または、前記第1のミラーを介して前記光導波層に取り込まれる前記光の入射方向が変化する。
この光デバイスでは、位相シフタによって光スキャンおよび光受信の方向を変化させることができる。
第18の項目に係る光検出システムは、第1から第17の項目のいずれかに記載の光デバイスと、前記光デバイスから出射され、対象物から反射された光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力に基づいて、距離分布データを生成する信号処理回路と、を備える。
この光検出システムでは、対象物から反射された光が戻ってくる時間を計測することにより、対象物の距離分布データを得ることができる。
図11Aおよび11Bは、本開示の実施形態における光デバイスの一例を模式的に示す図である。図11Aおよび11Bに示す例では、反射防止膜35が新たに設けられている。
本実施形態における光デバイスは、第1および第2のミラー30、40と、光導波層20と、反射防止膜35と、を備える。
第1および第2のミラー30、40の各々は、XY平面に平行な反射面を有する。光導波層20は、第1のミラー30と第2のミラー40との間の領域の一部に存在する。光導波層20は、真空における波長がλである光22をX方向に沿って伝搬させる。第1および第2のミラー30、40、および光導波層20の詳細については、前述した通りである。
反射防止膜35は、第1のミラー30の反射面とは反対の側に設けられている。反射防止膜35は透光性を有する。図11Aに示す例では、反射防止膜35は、第1のミラー30上に設けられている。図11Bに示す例では、反射防止膜35は、第2の基板53上に設けられている。言い換えれば、図11Bに示す例では、第2の基板53は、第1のミラー30と反射防止膜35との間に存在する。
この例における反射防止膜35は単層膜である。反射防止膜35は、SiO、TaO、TiO、NbO、Si、およびNbからなる群から選択される1つを含む。反射防止膜35が有する2つの面のうち、一方の面に接触する媒質の屈折率をnとし、他方の面に接触する媒質の屈折率をnし、反射防止膜35の屈折率をnとし、反射防止膜35のZ方向の厚さをdとする。n<n<nまたはn<n<n、かつ、d=λ/(4n)のとき、反射防止膜35に起因する反射率は最小になる。dが、例えば、λ/(4n)の0.8倍以上1.2倍以下であっても、反射防止膜35に起因する反射率はある程度小さくなる。
さらに、n=(n1/2、かつ、d=λ/(4n)のとき、反射防止膜35に起因する反射率は理論上ゼロになる。nが、例えば、(n1/2の0.8倍以上1.2倍以下であり、かつ、λ/(4(n1/2)の0.8倍以上1.2倍以下であっても、反射防止膜35に起因する反射率はある程度小さくなる。
図11Aに示す例では、反射防止膜35が有する2つの面のうち、一方の面に接する媒質は、外部の媒質であり、他方の面に接する媒質は、第1のミラー30の最上層である。図11Bに示す例では、反射防止膜35が有する2つの面のうち、一方の面に接する媒質は、外部の媒質であり、他方の面に接する媒質は、第2の基板53である。
反射防止膜35は、屈折率が異なる複数の層を含む多層膜であってもよい。複数の層は、SiO、TaO、TiO、NbO、Si、およびNbからなる群から選択される少なくとも1つを含む。多層膜において、複数の層の屈折率は、光導波層20から離れるにつれて低くなる。多層膜において、各層が、隣接する2つの媒質との関係において上記の屈折率nおよび厚さdの条件を満たせば、反射防止の精度を向上させることができる。
反射防止膜35は、スパッタリングまたは化学気相成長法などの蒸着によって設けられるが、他の方法によって設けられてもよい。
<基板の反りの防止>
図11Aおよび11Bに示す例では、第2のミラー40は、基板50上に設けられている。言い換えると、基板50は、第2のミラー40の反対の側に存在する。このとき、基板50には第2のミラー40の応力に起因する反りが生じ得る。第2の基板53についても同様である。そこで、基板50および第2の基板53の反りを抑制する構造を以下に説明する。
図12Aおよび12Bは、本開示の実施形態における光デバイスの一例を模式的に示す図である。
図12Aおよび12Bに示す例では、反り防止膜47が、第2のミラー40の反射面とは反対の側に設けられている。基板50は、第2のミラー40と反り防止膜47との間に存在する。反り防止膜47が第2のミラー40と同等の応力を有していれば、基板50の反りを抑制することができる。図12Bに示す例において、反射防止膜35が第1のミラー30と同等の応力を有していれば、第2の基板53の反りを抑制することができる。
図12Aおよび12Bに示す例では、第2のミラー40から光は出射されない。したがって、第2のミラー40の反射面とは反対の側に、反射防止膜を設ける必要はない。しかし、図示しないが、反り防止膜47の代わりに、反射防止膜35とは他の反射防止膜を設けてもよい。当該他の反射防止膜が第2のミラー40と同等の応力を有すれば、基板50の反りを抑制することができる。
図13Aおよび13Bは、本開示の実施形態における光デバイスの一例を模式的に示す図である。図13Aおよび13Bに示す例では、図12Aおよび12Bに示す反り防止膜47の代わりに第2のミラー40が設けられている。すなわち、基板50は、2つの同じ第2のミラー40によって挟まれている。これら2つの第2のミラー40は、ほとんど同じの応力を有している。したがって、基板50の反りを抑制することができる。
図12Bに示す例では、第2の基板53上に反射防止膜35が設けられているが、この例に限られない。例えば、図10Bに示すように第2の基板53と外部の媒質との界面における光の反射が生じてもなお、外部に出射される光の強度が十分高い場合もある。その場合、基板50および第2の基板53の反りを抑制することが望ましいが、第1のミラー30と外部の媒質との界面における光の反射を抑制する必要はない。
図14Aは、本開示の実施形態における光デバイスの一例を模式的に示す図である。図14Aに示す例では、図12Bに示す反射防止膜35の代わりに、反り防止膜47とは他の開口部37oを備える反り防止膜37が設けられている。図14Bは、本開示の実施形態における開口部を備える反り防止膜の一例を模式的に示す図である。開口部37oの形状は、長方形に限定されず、例えば正方形、平行四辺形、円、ひし形、または台形などの任意の形状であってもよい。
図14Aおよび14Bに示す例では、光導波層20内を伝搬する光22の一部は、第1のミラー30から、反り防止膜37の開口部37oを介して外部に出射される。第2のミラー40から光は出射されない。したがって、反り防止膜47は、開口部を備える必要はない。
図11Aから図14Bに示すスローライト導波路10をY方向にアレイ化してもよい。本実施形態における光デバイスは、Y方向に配列された複数の導波路ユニットを備える。各導波路ユニットは、第1および第2のミラー30、40と、光導波層20と、反射防止膜35と、を備える。各導波路ユニットは、後述するグレーティングを備える導波路をさらに含んでもよい。各導波路ユニットは、基板50をさらに備えてもよい。各導波路ユニットは、反り防止膜47をさらに備えてもよい。各導波路ユニットは、第2の基板53をさらに備えてもよい。本実施形態における光デバイスは、複数の導波路ユニットにそれぞれ接続された複数の位相シフタをさらに備えてもよい。
各導波路ユニットが、後述するグレーティングを備える導波路を含まない場合、複数の位相シフタのそれぞれは、複数の導波路ユニットの対応する1つにおける光導波層20に直接的にまたは他の導波路を介して繋がる導波路を含む。
各導波路ユニットが、後述するグレーティングを備える導波路を含む場合、複数の位相シフタのそれぞれは、複数の導波路ユニットの対応する1つにおける前述したグレーティングを備える導波路に直接的にまたは他の導波路を介して繋がる第2の導波路を含む。
後述するように、アレイ化された光デバイスは、2次元方向の光スキャンおよび/または光受信を可能にする。
<グレーティングを介した導波光結合>
本発明者らは、図9に示す構成を改良することにより、光の結合効率をさらに向上させることができることを見出した。
図15は、本開示の例示的な実施形態における光デバイスを模式的に示す断面図である。
本実施形態では、全反射導波路である第1の導波路1の先端部は、スローライト導波路である第2の導波路10における光導波層20の内部にある。以下、第1の導波路1を「全反射導波路1」と称し、第2の導波路10を「スローライト導波路10」と称することがある。Z方向からみたとき、全反射導波路1およびスローライト導波路10が重なる領域101において、全反射導波路1は、X方向に沿って屈折率が周期pで変化するグレーティング15を備える。図15に示すグレーティング15は、X方向に並ぶ複数の凹部を有する。図15には4つの凹部が例示されているが、実際にはさらに多数の凹部が設けられ得る。複数の凹部に代えて、複数の凸部が設けられていてもよい。グレーティング15におけるX方向に並ぶ凹部または凸部の個数は、例えば4以上が望ましい。また、凹部または凸部の個数は、4以上64以下であり得る。ある例では、凹部または凸部の個数は、8以上32以下であり得る。ある例では、凹部または凸部の個数は、8以上16以下であり得る。凹部または凸部の個数は、各凹部または凸部の回折効率に応じて調整され得る。各凹部または凸部の回折効率は、その深さまたは高さ、および幅などの寸法条件に依存する。したがって、グレーティング15全体として良好な特性が得られるように、各凹部または凸部の寸法に応じて、それらの個数は調整される。
全反射導波路1は、領域101において、ミラー30の反射面に対向する第1の表面1s、およびミラー40の反射面に対向する第2の表面1sを有する。図15に示す例では、グレーティング15は、全反射導波路1の第1の表面1sに設けられている。グレーティング15は、第2の表面1sに設けられていてもよい。グレーティング15は、全反射導波路1の第1の表面1sおよび第2の表面1sの少なくとも一方に設けられ得る。
グレーティング15は、全反射導波路1とスローライト導波路10との界面に限らず、他の位置に設けられていてもよい。また、複数のグレーティングが設けられていてもよい。ミラー30の反射面に垂直な方向から見て導波路1および10が重なる領域101において、導波路1および10の少なくとも一部は、少なくとも1つのグレーティングを含み得る。各グレーティングは、導波路1および10が延びるX方向に沿って屈折率が周期的に変化する。
全反射導波路1のうち、光導波層20の外部に位置する部分は、他の誘電体層によって支持されてもよいし、2つの誘電体層によって挟まれていてもよい。
領域101のX方向における寸法は、例えば、4μmから50μm程度であり得る。そのような大きさの領域101の内部に、8周期から32周期程度のグレーティング15が形成され得る。領域102のX方向における寸法は、例えば、100μmから5mm程度であり得る。領域101のX方向における寸法は、例えば領域102の寸法の数百分の1から数十分の1程度であり得る。ただし、この寸法に限定されず、必要な特性に応じて各部材の寸法は決定される。
領域101において、第1のミラー30は、第2のミラー40よりも高い透過率を有していなくてもよい。スローライト導波路10のうち、領域101以外の領域102においても、領域101に近い領域では、第1のミラー30は、第2のミラー40よりも高い透過率を有していなくてもよい。領域101は、光の結合効率を高めるために設けられる。このため、領域101の近傍では、スローライト導波路10は、必ずしも光を出射する必要はない。
全反射導波路1における導波モードの伝搬定数をβ=2πne1/λとし、スローライト導波路10における導波モードの伝搬定数をβ=2πne2/λとする。λは、空気中における光の波長である。ne1およびne2は、それぞれ全反射導波路1およびスローライト導波路10における実効屈折率(等価屈折率とも称する)である。全反射導波路1内を伝搬する光は、外部の空気とは結合しない。そのような導波モードの実効屈折率は、ne1>1である。一方、スローライト導波路10における光導波層20を伝搬する光の一部は、外部の空気に出射される。そのような導波モードの実効屈折率は、0<ne2<1である。したがって、βとβとは大きく異なる。そのため、一般に、全反射導波路1からスローライト導波路10への導波光の結合効率は低い。
領域101において、全反射導波路1がグレーティング15を備える場合、グレーティング15に起因する回折が生じる。その場合、全反射導波路1における導波モードの伝搬定数βは、逆格子2π/pの整数倍だけシフトする。例えば−1次回折によってβがβ−(2π/p)にシフトする場合、pを適切に設定すれば、β−(2π/p)=βが成り立つようにすることができる。その場合、領域101における2つの伝搬定数が一致するため、導波光は全反射導波路1からスローライト導波路10に高い効率で結合する。β−(2π/p)=βから、周期pは以下の式(5)によって表される。
Figure 2019174538
0<ne2<1であるため、周期pは、以下の式(6)を満たす。
Figure 2019174538
スローライト導波路10において、領域101と、それ以外の領域102とでは、同じ導波モードであることから、導波光は高い効率で結合する。
図16は、グレーティングを介した全反射導波路からスローライト導波路に光を伝搬させたときの電場分布の計算例を示す図である。計算には、Synopsys社のModePROPを用いた。図16に示すように、全反射導波路1を伝搬する光は、グレーティング15を介してスローライト導波路10に効率よく伝搬する。
図16に示す例における計算条件は、以下の通りである。
全反射導波路1において、屈折率はnw1=1.88であり、Z方向の厚さはd=300nmである。スローライト導波路10において、屈折率はnw2=1.6であり、Z方向の厚さはd=2.1μmである。グレーティングにおける凹部の数は16である。グレーティングの周期はp=800nmである。各凹部の深さは200nmである。全反射導波路1およびスローライト導波路10を伝搬する光は、空気中において波長λ=940nmを有する。全反射導波路1における伝搬モードの光の実効屈折率ne1は1.69であり、領域101におけるスローライト導波路10における伝搬モードの光の実効屈折率ne2は0.528であった。
この例では、全反射導波路1からスローライト導波路10への導波光の結合効率は、61.4%であった。グレーティング15が存在しない構成、および全反射導波路1の端面とスローライト導波路10の端面とが直接接続された構成と比較して、結合効率が大幅に向上することが確認された。
比較のため、図17に示すように、グレーティングが存在しない構成においても同様の計算を行った。計算条件は、グレーティングが存在しないことを除けば、上記の条件と同じである。この場合、結合効率は1.8%であった。また、全反射導波路1の端面とスローライト導波路10の端面とが直接接続された構成においても、結合効率が例えば数%程度に留まることが確認されている。
次に、全反射導波路1および導波路10における導波モードを説明する。
図18Aは、全反射導波路1における導波モードの電場強度分布の例を示す図である。図18Bは、スローライト導波路10における高次の導波モードの電場強度分布の例を示す図である。図18Aおよび18Bに示す例では、YZ平面における電界強度分布が示されている。図18Bに示す例では、第1のミラー30と第2のミラー40との間において、光導波層20は、2つの非導波領域73の間にある。
図18Aに示す全反射導波路1における導波モードはシングルモードである。図18Bに示すスローライト導波路10における導波モードは、式(3)におけるm=7の高次モードである。全反射導波路1における実効屈折率はne1=1.69であり、スローライト導波路10における実効屈折率はne2=0.528である。
図18Aおよび18Bに示すように導波モードの分布が大きく異なっていても、グレーティング15を介すことにより、導波光の結合効率は高くなる。
スローライト導波路10における高次モードには、以下の利点がある。スローライト導波路10では、全体の電界強度分布に対する光導波層20での電界強度分布の占める比率は、高次モードの方が、低次モードよりも高い。すなわち、高次モードでは、光導波層20に閉じ込められる光の量がより多い。そのため、光導波層20の屈折率の変化に対して、スローライト導波路10から出射される光の出射角度は大きく変化する。
当然、スローライト導波路10における導波モードは、式(3)におけるm=7の高次モードに限定されない。式(5)におけるpを調整することにより、スローライト導波路10において他の導波モードを励起させることも可能である。
図15および図16に示す例において、領域101における全反射導波路1と各ミラーとの距離が近ければ、以下の現象が生じ得る。第1のミラー30および/または第2のミラー40が全反射導波路1よりも高い屈折率を有する場合、全反射導波路1におけるエバネッセント光は、第1のミラー30および/または第2のミラー40に移る傾向にある。その結果、全反射導波路1を伝搬する光は、第1のミラー30および/または第2のミラー40を介して外部に漏れ得る。そのため、領域101における全反射導波路1と各ミラーとの距離は、λ/4以上離れている。これにより、全反射導波路1からスローライト導波路10への導波光の結合効率の低下を抑制できる。
図19は、グレーティング15における各凹部の深さと、導波光の結合効率との関係の例を示す図である。この例では、光の波長は940nmである。全反射導波路1の屈折率nw1は1.88である。全反射導波路1の厚さdは300nmである。スローライト導波路10の屈折率nw2は1.68である。スローライト導波路の厚さdは2.1μmである。グレーティング15の周期pは800nmである。グレーティング15における凹部の数は32である。
図19に示す例では、結合効率は、凹部の深さが0から0.13μmの範囲では、当該深さの増加とともに単調に増加する。凹部の深さが0.13μmよりも大きい範囲では、凹部の深さを増加させると、結合効率が低下し、その後振動する。
図19に示す例では、凹部の深さが0.13μmのとき、結合効率は約50%になり、最大になる。この例では、グレーティング15における各凹部の深さが、全反射導波路1の厚さdの3分の1以上15分の8以下の場合に、特に高い結合効率が実現される。
図19に示す結果は、以下のように説明できる。全反射導波路1のモードとスローライト導波路10のモードとの結合効率は、グレーティング15の構造に依存する。結合効率は、グレーティング15が存在する領域における全反射導波路1の規格化電界分布と、スローライト導波路10の規格化電界分布との重なり積分に比例する。このため、グレーティング15における凹部の深さが増加すると、一般に光結合効率は高くなる。しかし、結合効率が高くなりすぎると、一度スローライトモードに変換された導波光が再度、全反射導波路のモードに変換される。このため、光結合効率は低下する。さらに凹部が深くなると、再び結合効率が増加し、以後、振動する。
図20は、図19に示す例における凹部の深さが0.2μmである場合の電界強度分布を示す図である。図示されるように、この条件では、スローライトモードに変換される導波光の割合は高くない。
図21は、グレーティング15における凹部の個数に対する結合効率の依存性の例を示す図である。たとえ凹部の深さを膜厚dと同程度にしても、グレーティング構造の個数が少なすぎると導波光の変換効率は低くなる。結合効率をある程度高くするため、凹部または凸部の個数は、例えば4個以上に設定され得る。
上記の例では、グレーティングにおける、1周期当たりの凹部のX方向の長さ、すなわちデューティ比を50%として計算したが、50%に限定されない。グレーティングのデューティ比は、グレーティングの凹部の深さおよび数によって適宜変更してもよい。導波光の結合効率の最大値は、グレーティングの凹部の深さ、数、およびデューティ比によって決定され得る。
次に、グレーティング15を介した全反射導波路およびスローライト導波路の接続の変形例を説明する。
図22Aから22Cは、図15に示す例の変形例を模式的に示す断面図である。図22Aから22Cに示す例では、全反射導波路1は、誘電体層51によって支持されており、誘電体層51は、第2のミラー40によって支持されている。全反射導波路1およびスローライト導波路10では、第2のミラー40が共通に用いられている。誘電体層51は、例えばSiOから形成される。誘電体層51の屈折率nsubは、全反射導波路1の屈折率nw1よりも小さい。したがって、全反射導波路1を伝搬する光は、誘電体層51には漏れない。誘電体層51は、第2のミラー40によって支持されていなくてもよい。領域101および領域102以外の領域では、第2のミラー40を、誘電体層51と同じ材料の構造に置き換えてもよい。
図22Aに示す例では、全反射導波路1は、第1の表面1sにおいて、グレーティング15を備える。図22Bに示す例では、全反射導波路1は、第2の表面1sにおいて、グレーティング15を備える。図22Cに示す例では、全反射導波路1は、第1の表面1sおよび第2の表面1sの両方において、グレーティング15を備える。
このように、全反射導波路1は、第1および第2の表面1s、1sの少なくとも一方において、グレーティング15を備えてもよい。
図23Aおよび23Bは、図15に示す例の他の変形例を模式的に示す断面図である。図23Aおよび23Bに示す例では、図22Aから22Cに示す例と同様に、全反射導波路1は、誘電体層51によって支持されており、誘電体層51は、第2のミラー40によって支持されている。
図23Aおよび23Bの例では、全反射導波路1ではなく、第1のミラー30および/または第2のミラー40の反射面にグレーティング15が設けられている。図23Aに示す例では、スローライト導波路10は、第1のミラー30における反射面において、グレーティング15を備える。図23Bに示す例では、スローライト導波路10は、第2のミラー40における反射面において、グレーティング15を備える。
図23Aおよび23Bに示す例では、全反射導波路1と、第1および/または第2のミラー30、40とのZ方向の距離は比較的近い。これにより、全反射導波路1におけるエバネッセント光は、グレーティング15によって回折される。その結果、前述の例と同様、全反射導波路1からスローライト導波路10に導波光の結合効率を高めることができる。
このように、スローライト導波路10は、第1のミラー30における反射面および第2のミラー40における反射面の少なくとも一方において、グレーティング15を備えてもよい。
次に、スローライト導波路10の内部における、全反射導波路1のY方向の幅と、光導波層20のY方向の幅との関係を説明する。
図24Aから24Dは、YZ平面における全反射導波路1およびスローライト導波路10の配置関係の例を模式的に示す断面図である。図24Aから24Dは、全反射導波路1およびスローライト導波路10を全反射導波路1側からX方向にみたときの構造を示している。図24Aから24Dに示す例では、2つの非導波領域73は、第1のミラー30と、第2のミラー40とに挟まれており、光導波層20は、2つの非導波領域73の間にある。光導波層20の平均屈折率は、各非導波領域73の平均屈折率よりも高い。これにより、光は非導波領域73に漏れることなく、光導波層20内を伝搬することができる。
図24Aに示す例では、全反射導波路1は、誘電体層51によって支持されていない。全反射導波路1のY方向の幅は、光導波層20のY方向の幅よりも狭い。
図24Bに示す例では、全反射導波路1は、誘電体層51によって支持されている。全反射導波路1のY方向の幅は、光導波層20のY方向の幅よりも狭い。誘電体層51のY方向の幅は、全反射導波路1のY方向の幅と同じである。
図24Cに示す例では、全反射導波路1は、誘電体層51によって支持されている。全反射導波路1のY方向の幅は、光導波層20のY方向の幅よりも狭い。誘電体層51のY方向の幅は、光導波層20のY方向の幅と同じである。
図24Dに示す例では、全反射導波路1は、誘電体層51によって支持されている。全反射導波路1のY方向の幅は、光導波層20のY方向の幅と同じである。誘電体層51のY方向の幅は、全反射導波路1のY方向の幅と同じである。
全反射導波路1からスローライト導波路10に導波光が結合するときの光散乱ロスは、図24Aおよび24Bに示す例よりも、図24Cおよび24Dに示す例の方が小さい。図24Aに示す例において、光散乱ロスは最も大きく、図24Dに示す例において、光散乱ロスは最も小さい。図24Dに示す例では、全反射導波路1のY方向の幅は、光導波層20のY方向の幅と同じである。これにより、スローライト導波路10の導波モードにおいて、領域101内のYZ平面における電界強度分布は、領域102内のYZ平面における電界強度分布と広範囲に重なる。そのため、光散乱ロスは最も小さい。
図24Cおよび図24Dに示すように、誘電体層51のY方向の幅が光導波層20のY方向の幅と同じであれば、光散乱ロスを有効に低減させることができる。
図25は、スローライト導波路10の他の変形例を模式的に示す断面図である。図25に示す例では、領域102における断面図が示されている。図25に示すように、各非導波領域73は、2つ以上の屈折率が異なる部材を含んでもよい。図25に示す例では、光導波層20および2つの非導波領域73は、共通の材料45によって構成される領域を含む。各非導波領域73は、部材46と、共通の材料45とを含む。光導波層20の平均屈折率が、各非導波領域73の平均屈折率よりも高ければ、光は各非導波領域73に漏れることなく、光導波層20内を伝搬することができる。
次に、全反射導波路1のうち、光導波層20の外側に位置する部分の構造の例を説明する。
図26は、全反射導波路およびスローライト導波路の接続の例を模式的に示す図である。
図26に示す例では、全反射導波路1のうち、光導波層20の外側において、全反射導波路1は、スローライト導波路10に近づくにつれて、幅すなわちY方向の寸法が単調に増加する部分を含む。すなわち、全反射導波路1の一部は、テーパー構造1tを有する。光導波層20から遠い部分における全反射導波路1の幅wは、結合部である領域101における全反射導波路1の幅wよりも狭い。wはwの、例えば100分の1から2分の1程度であり得る。全反射導波路1のうち、幅の狭い導波路部分1wと、幅の広い導波路部分1cとの間にテーパー構造1tが存在する。このような構造を採用すれば、幅の狭い導波路部分1wを伝搬する光が、幅の広い導波路部分1cに入射するときの反射を抑制することができる。
光導波層20の少なくとも一部は、屈折率および/または厚さを調整することが可能な構造を有していてもよい。屈折率および/または厚さを調整することにより、第1のミラー30から出射される光の方向のうち、X方向の成分が変化する。
光導波層20の少なくとも一部の屈折率を調整するために、光導波層20は、液晶材料または電気光学材料を含んでいてもよい。光導波層20は、一対の電極によって挟まれ得る。一対の電極に電圧を印加することにより、光導波層20の屈折率を変化させることができる。
光導波層20のうち、領域101における屈折率と、領域102における屈折率とを同時に調整してもよい。しかし、領域101における屈折率を調整すると、式(5)の条件が変化し得る。その結果、全反射導波路1からスローライト導波路10への導波光の結合効率が低下し得る。そこで、領域101における屈折率を一定に維持し、領域102における屈折率のみを調整できるようにしてもよい。領域101および領域102における屈折率が異なっても、領域101と領域102との界面において生じる導波光の反射の影響は小さい。
その場合、上記の一対の電極(「第1の一対の電極」と称する)は、光導波層20のうち、第1のミラーにおける反射面に垂直な方向から見て第1の導波路に重なる部分とは異なる部分を間に挟む。不図示の制御回路が一対の電極に電圧を印加することにより、領域102における上記少なくとも一部の屈折率を調整することができる。
設計通りに式(5)の条件が満たされていればよいが、実際には、製造誤差に起因して、式(5)の条件が完全に満たされない場合がある。そのような場合の補償のために、領域102における屈折率の調整とは別に、領域101に屈折率を調整する機能を光デバイスに付与してもよい。
その場合、上記第1の一対の電極に加えて、第2の一対の電極が設けられ得る。第2の一対の電極は、光導波層20のうち、第1のミラーの反射面に垂直な方向から見て第1の導波路に重なる部分の少なくとも一部を間に挟む。制御回路は、第1および第2の一対の電極に独立して電圧を印加することにより、第1の一対の電極の間に位置する光導波層の部分の屈折率と、第2の一対の電極の間に位置する光導波層の部分の屈折率とを独立して調整することができる。
光導波層20の厚さを調整するために、例えば、第1および第2のミラー30、40の少なくとも一方に少なくとも1つのアクチュエータが接続されてもよい。制御回路は、少なくとも1つのアクチュエータを制御して第1のミラー30と第2のミラー40との距離を変化させることにより、光導波層20の厚さを変化させることができる。光導波層20が液体から形成されていれば、光導波層20の厚さは容易に変化し得る。
上記少なくとも1つのアクチュエータは、領域102における第1および第2のミラー30、40の少なくとも一方に接続され得る。アクチュエータによって、領域102における光導波層102の厚さを変化させることができる。このとき、式(5)の条件は変化しない。
上記少なくとも1つのアクチュエータは、2つのアクチュエ―タであってもよい。一方のアクチュエータは、領域101における第1および第2のミラー30、40の少なくとも一方に接続され得る。他方のアクチュエータは、領域102における第1および第2のミラー30、40の少なくとも一方に接続され得る。2つのアクチュエータによって、領域101における光導波層20の厚さと、領域102における光導波層20の厚さとを別々に変化させることができる。これにより、設計通りに式(5)の条件が満たされていない場合の補償が可能である。
光導波層20の屈折率および/または厚さを調整する具体的な構成の例については、後述する。
製造誤差に起因して、光導波層20の厚さなどの寸法が設計値からずれることがある。光導波層20の寸法が設計値からずれると、式(5)における実効屈折率ne2にも誤差が生じる。その場合、導波光の結合効率が低下するという課題がある。以下、導波光の結合効率が光導波層20の厚さにどのように依存するかを説明する。
図27は、図22Aに示す例における、光導波層の厚さと、導波光の結合効率との関係を示す図である。横軸は光導波層20の厚さdを表し、縦軸は、導波光の結合効率を最大値によって規格化した値を表している。図27に示す例における計算条件は、以下の通りである。
全反射導波路1において、屈折率はnw1=2.0であり、Z方向の厚さはd=300nmである。誘電体層51において、屈折率はnsub=1.44である。スローライト導波路10において、屈折率はnw2=1.61である。グレーティングにおける凹部の数は16である。グレーティングの周期はp=795nmである。各凹部の深さは85nmである。全反射導波路1およびスローライト導波路10を伝搬する光は、空気中において波長λ=940nmを有する。
図27に示すように、結合効率は1つのピークを有する。上記の条件では、結合効率はd=2.15μmのとき最大になる。光導波層20の厚さがd=2.15μmからずれると、結合効率が低下する。
本発明者らは、製造誤差に起因する結合効率の低下を抑制するために、領域101において、周期の異なる複数のグレーティングを設ける構成に想到した。そのような複数のグレーティングを設けることにより、光導波層20の厚さdの製造誤差を補償することができる。
以下の実施形態において、複数のグレーティングの屈折率は、X方向に沿って周期的に変化する。複数のグレーティングのうちの少なくとも2つのグレーティングの周期は互いに異なる。複数のグレーティングの各々の周期は、式(6)の範囲内にある。複数のグレーティングの各々は、上記のいずれかの例におけるグレーティングと同じ構造を備え得る。
図28Aは、図22Aに示す例において、2つのグレーティングを有する光デバイスを模式的に示す図である。図28Bは、図28Aに示す例における、光導波層の厚さと、導波光の結合効率との関係を示す図である。
図28Aに示す例において、2つのグレーティング15a、15bは、X軸方向に沿って並んでいる。図28Bに示す例における計算条件は、以下の通りである。
グレーティング15a、15bにおける凹部の数は、共に16である。グレーティング15aの周期はp=795nmであり、グレーティング15bの周期はp=610nmである。各凹部の深さは85nmである。その他の計算条件は、図27に示す例における計算条件と同じである。
図28Bに示すように、結合効率は、1.95μm<d<2.0μmにおいて幅の狭い第1のピークを有し、2.1μm<d<2.2μmにおいて平均して幅の広い第2のピークを有する。第1のピークの幅が狭いのは、dの変化によってne2が大きく変化するからである。第1および第2のピークは、それぞれ周期p=610nmのグレーティング15bおよび周期p=795nmのグレーティング15aに起因する。
図28Cは、図28Aに示す例における、光導波層の厚さおよび領域101の屈折率と、導波光の結合効率との関係を示す他の図である。複数の周期と、前述の領域101において屈折率を調整する機能とを適切に組み合わせることができる。これにより、図28Cに示すように、導波光が結合可能なdの範囲を、途切れることなく広くすることができる。
図28Cに示す例では、周期p=610nmおよび周期p=710nmである。図28Cに示すように、周期p=610nmに対応する導波光が結合可能なdの範囲は1.92μm<d<2.03μmであり、周期p=710nmに対応する導波光が結合可能なdの範囲は2.01μm<d<2.12μmである。すなわち、2つの導波光が結合可能なdの範囲は、1.92μm<d<2.12μmであり、各導波光が結合可能なdの範囲よりも広くなる。図28Cに示す計算条件において、領域101の屈折率を1.52から1.68まで変化させた。その他の計算条件は、図28Bに示す例における計算条件と同じである。
図28Dは、図28Aに示す例における、光導波層の厚さと、導波光の結合効率との関係を示す他の図である。図28Dに示す例における計算条件は、以下の通りである。
黒丸は、周期が610nmの一種類のみの場合である。その他の計算条件は、図27に示す例における計算条件と同じである。白い三角印は、グレーティング15aの周期p=630nmであり、グレーティング15bの周期p=610nmの場合である。その他の計算条件は、図28Bに示す例における計算条件と同じである。
図28Bに示す例において、pを徐々にpに近づけると、第2のピークは、第1のピークに近づく。これにより、領域101における屈折率を一定に維持した場合においても、図28Dに示す白い三角印のように、2つのピークが混在し、広いピークが得られる。その結果、導波光が結合可能なdの範囲は広くなる。
以上のように、領域101において複数のグレーティングがあれば、光導波層20の厚さdに製造誤差があっても、導波光の結合効率の低下を抑制することができる。
図28Aでは、2つの互いに周期が異なるグレーティング15a、15bが示されているが、3つ以上の互いに周期が異なるグレーティングであってもよい。
次に、周期の異なる複数のグレーティングを有する光デバイスの変形例を説明する。
図29Aから29Dは、図28Aに示す例の変形例を模式的に示す断面図である。
図29Aに示す例では、全反射導波路1は、第2の表面1sにおいて、グレーティング15a、15bを備える。図29Bに示す例では、全反射導波路1は、第1の表面1sおよび第2の表面1sの両方において、グレーティング15a、15bを備える。図29Cに示す例では、スローライト導波路10は、第1のミラー30における反射面において、グレーティング15a、15bを備える。図29Dに示す例では、スローライト導波路10は、第2のミラー40における反射面において、グレーティング15a、15bを備える。
本開示の実施形態では、全反射導波路の第1および第2の表面1s、1s、ならびに、第1および第2のミラー30、40の反射面の少なくとも一方が、複数のグレーティングを含み得る。
上記の各例では、複数のグレーティングが、X方向に並ぶ2つ以上のグレーティングを含む。そのような形態に限らず、複数のグレーティングは、Y方向において隣接する2つ以上のグレーティングを含んでもよい。ここで、「隣接する2つ以上のグレーティング」は、Y方向において接していてもよいし、間隔を空けて隣り合っていてもよい。
図30Aは、2つのグレーティングがY方向に並んでいる例を模式的に示す図である。
図30Aに示す例では、グレーティング15a、15bの各々のY方向の幅はw/2である。Y方向の幅が短い代わりに、X方向において、グレーティング15a、15bの各々の凹部の数を増やしてもよい。これにより、図28Aに示す例と同様の効果を期待することができる。図28Aに示す例では、各々のY方向の幅がwである2つのグレーティング15a、15bがX方向に沿って並んでいる。
「複数のグレーティングがY方向において隣接する」場合には、X方向に沿ったグレーティングの周期が、Y方向における位置の変化に伴って連続的に変化する場合も含まれる。
図30Bは、グレーティングの周期が、Y方向における位置の変化に伴ってpからpに連続的に変化する例を模式的に示す図である。ここで、pはpよりも大きい。
図30Bに示す例では、全反射導波路1における導波モードの伝搬定数βは、グレーティング15cによる−1次回折により、β−(2π/p)からβ−(2π/p)まで連続的にシフトする。したがって、光導波層20の厚さdに製造誤差があっても、β−(2π/p)≦β≦β−(2π/p)であれば、導波光は、全反射導波路1からスローライト導波路10に高い効率で結合する。
複数のグレーティングは、空間的に分離している必要はない。グレーティングは、複数の周期成分を含んでいてもよい。本明細書では、そのような場合でも、「周期の異なる複数のグレーティング」が設けられているものと解釈する。当該グレーティングの屈折率は、X方向に沿って変化する。複数の周期成分の各周期は、式(6)を満たす。
図31は、2つの周期成分を含むグレーティングが混在している例を模式的に示す図である。図31に示す例では、グレーティング15mにおいて2つの異なる周期がランダムに混在している。
グレーティング15mが複数の周期成分を含むことは、グレーティング15mの屈折率の空間変化をフーリエ変換することによって知ることができる。屈折率の空間変化n(x)をフーリエ変換すると、N(k)=∫n(x)exp(‐ikx)dxのフーリエ成分が得られる。例えば、周期pおよび周期pの2つの周期成分が混在している場合、フーリエ成分N(k)は、k=(2π/p)mおよびk=(2π/p)mにおいてピークを有する。m、mは整数である。
領域101において複数のグレーティングがある場合でも、前述したように、光導波層20の少なくとも一部は、屈折率および/または厚さを調整することが可能な構造を有していてもよい。また、複数のグレーティングを有する光デバイスは、図24Aから図26に示す各構造を備えていてもよい。
全反射導波路1およびスローライト導波路10の組を複数組備える光デバイスを構成することにより、2次元の光スキャンも可能である。そのような光スキャンデバイスは、Y方向に配列された複数の導波路ユニットを備える。各導波路ユニットは、上記の全反射導波路1およびスローライト導波路10を備える。当該光スキャンデバイスでは、複数の位相シフタが、複数の導波路ユニットにそれぞれ接続される。複数の位相シフタは、それぞれ、複数の導波路ユニットの対応する1つにおける全反射導波路1に直接的にまたは他の導波路を介して繋がる導波路を含む。複数の位相シフタを通過する光の位相の差をそれぞれ変化させることにより、光スキャンデバイスから出射される光の方向のうち、Y方向の成分を変化させることができる。同様の構造によって光受信デバイスを構成することもできる。
図32Aは、第1のミラー30と第2のミラー40の間に位置する光導波層20の両隣に、非導波領域73(以下、「スペーサ73」とも称する)が配置されている構成例を模式的に示す、YZ平面における導波路素子10の断面図である。スペーサ73の屈折率nlowは、光導波層の屈折率nよりも低い(nlow<n)。スペーサ73は、例えば、空気でもよい。スペーサ73は、光導波層よりも低い屈折率を有する限り、例えば、TiO、Ta、SiN、AlN、SiOなどであってもよい。
図32Bは、図32Aにおける導波路素子10をY方向に配列した導波路アレイ10Aの構成例を模式的に示す、YZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。図32Bの構成例では、Y方向において、第1のミラー30の幅は、光導波層20の幅と同じである。そのため、第1のミラー30が存在しない領域から導波光が漏れるという課題がある。従来では、複数の反射型導波路も含め、複数の導波路素子10をアレイ化する際に、第1および第2のミラー30および40の少なくとも一方の幅を光導波層20の幅よりも長くすることにより、導波光の漏れを防ぐという発想はなかった。
光スキャンの性能を向上させるためには、導波路アレイ10Aにおける各導波路素子10を、細線化することが望ましい。この場合、導波光が漏れるという課題はより顕著になる。
図33は、光導波層20内において、導波光がX方向に伝搬することを模式的に示す図である。n>nlowであることから、導波光は、±Y方向において全反射により閉じ込められながら、X方向に伝搬する。しかし、実際には、光導波層20のY方向における端面から外側へ染み出すエバネッセント光が存在する。また、図2に示すように、導波光は、±Z方向において第1のミラー30および第2のミラー40によって反射されながら、全反射角θinよりも小さい角度で、X方向に伝搬する。このとき、図32Bに示す第1のミラー30が存在しない領域では、エバネッセント光は、反射されず、外に漏れ出る。この意図しない光ロスにより、光スキャンに用いられる光量は低下し得る。
複数の導波路素子10の配列方向において、第1のミラー30および第2のミラー40の少なくとも一方の幅を、光導波層20の幅よりも長くすることにより、上記の課題を解決できる。これにより、上記の意図しない光ロスを低減することができる。その結果、光スキャンに用いられる光量の低下は抑制される。
図34Aから図34Cは、第1の導波路1に光が入力される構成において、第1の導波路1への光の入力方法の例を示す図である。図34Aは、第1の導波路1の表面に設けられたグレーティング5を介して第1の導波路1に光が導入される例を示している。図34Bは、第1の導波路1の端面から光が入力される例を示している。図34Cは、第1の導波路1の表面に設けられたレーザー光源6から、当該表面を介して光が入力される例を示している。図34Cのような構成は、例えば、M. Lamponi et al., “Low−Threshold Heterogeneously Integrated InP/SOI Lasers With a Double Adiabatic Taper Coupler”, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL. 24, NO. 1, JANUARY 1, 2012, pp 76−78. に開示されている。この文献の開示内容全体を本願明細書に援用する。以上の構成によれば、効率よく光を導波路1に入射させることができる。
次に、本実施形態における第1の導波路1および第2の導波路10の組み合わせ(本明細書において、「導波路ユニット」と称する。)を複数組用いて、2次元的な光のスキャンを実現する構成を説明する。2次元スキャンを実行可能な光スキャンデバイスは、第1の方向に配列された複数の導波路ユニットと、各導波路ユニットを制御する調整素子(例えばアクチュエータおよび制御回路の組み合わせ)を備える。調整素子は、各導波路ユニットにおける第2の導波路10における光導波層20の屈折率および厚さの少なくとも一方を変化させる。これにより、各第2の導波路10から出射される光の方向を変化させることができる。また、複数の導波路ユニットにおける第2の導波路10に、適切に位相差が調整された光が入力されることにより、図1を参照して説明したように、光の2次元スキャンが可能となる。以下、2次元スキャンを実現するための実施形態をより詳細に説明する。
<2次元スキャンの動作原理>
複数の導波路素子(すなわち、第2の導波路)10が一方向に配列された導波路アレイにおいて、それぞれの導波路素子10から出射される光の干渉により、光の出射方向は変化する。各導波路素子10に供給する光の位相を調整することにより、光の出射方向を変化させることができる。以下、その原理を説明する。
図35Aは、導波路アレイの出射面に垂直な方向に光を出射する導波路アレイの断面を示す図である。図35Aには、各導波路素子10を伝搬する光の位相シフト量も記載されている。ここで、位相シフト量は、左端の導波路素子10を伝搬する光の位相を基準にした値である。本実施形態における導波路アレイは、等間隔に配列された複数の導波路素子10を含んでいる。図35Aにおいて、破線の円弧は、各導波路素子10から出射される光の波面を示している。直線は、光の干渉によって形成される波面を示している。矢印は、導波路アレイから出射される光の方向(すなわち、波数ベクトルの方向)を示している。図35Aの例では、各導波路素子10における光導波層20を伝搬する光の位相はいずれも同じである。この場合、光は導波路素子10の配列方向(Y方向)および光導波層20が延びる方向(X方向)の両方に垂直な方向(Z方向)に出射される。
図35Bは、導波路アレイの出射面に垂直な方向とは異なる方向に光を出射する導波路アレイの断面を示す図である。図35Bの例では、複数の導波路素子10における光導波層20を伝搬する光の位相が、配列方向に一定量(Δφ)ずつ異なっている。この場合、光は、Z方向とは異なる方向に出射される。このΔφを変化させることにより、光の波数ベクトルのY方向の成分を変化させることができる。
導波路アレイから外部(ここでは空気とする。)へ出射される光の方向は、以下のように定量的に議論できる。
図36は、3次元空間における導波路アレイを模式的に示す斜視図である。互いに直交するX、YおよびZ方向で定義される3次元空間において、光が空気に出射される領域と、導波路アレイとの境界面をZ=zとする。この境界面は、複数の導波路素子10のそれぞれの出射面を含む。Z<zでは、Y方向に複数の導波路素子10が等間隔に配列され、複数の導波路素子10のそれぞれはX方向に延びている。Z>zにおいて、空気へ出射される光の電場ベクトルE(x、y、z)は、以下の式(7)で表される。
Figure 2019174538
ただしEは電場の振幅ベクトルであり、k、kおよびkはそれぞれX、YおよびZ方向における波数(wave number)であり、jは虚数単位である。この場合、空気へ出射される光の方向は、図36において太い矢印で表される波数ベクトル(k、k、k)に平行となる。波数ベクトルの大きさは、以下の式(8)で表される。
Figure 2019174538
から、境界面に平行な波数ベクトル成分kおよびkは、それぞれ導波路アレイにおける光のX方向およびY方向における波数に一致する。これは、式(2)のスネルの法則と同様に、境界面において、空気側の光が有する面方向の波長と、導波路アレイ側の光が有する面方向の波長とが一致する条件に相当する。
は、X方向に延びた導波路素子10の光導波層20を伝搬する光の波数に等しい。上述した図2に示される導波路素子10では、kは、式(2)および式(3)を用いて、以下の式(9)で表される。
Figure 2019174538
は、隣接する2つの導波路素子10の間の光の位相差から導出される。Y方向に等間隔に配列されたN本の導波路素子10のそれぞれのY方向の中心をy(q=0、1、2、・・・、N−1)とし、隣接する2つの導波路素子10の間の距離(中心間距離)をpとする。そのとき、空気へ出射される光の電場ベクトル(式(7))は、境界面内(Z=z)のyおよびyq+1において、式(10)の関係を満たす。
Figure 2019174538
任意の隣接する2つの導波路素子10の位相差がΔφ=kp(一定)となるように設定した場合、kは、以下の式(11)の関係を満たす。
Figure 2019174538
この場合、yにおける光の位相はφ=φ+qΔφとなる(φq+1−φ=Δφ)。つまり、位相φは、Y方向に沿って、一定(Δφ=0)か、比例して増加(Δφ>0)または減少(Δφ<0)する。Y方向に配列された導波路素子10が等間隔でない場合は、例えば、所望のkに対して、yおよびyq+1での位相差がΔφ=φq+1−φ=k(yq+1−y)となるように設定する。この場合、yにおける光の位相はφ=φ+k(y−y)となる。式(10)および式(11)からそれぞれ得られるkおよびkを用いれば、式(8)からkが導出される。これにより、光の出射方向(すなわち、波数ベクトルの方向)が得られる。
例えば、図36に示すように、出射光の波数ベクトル(k、k、k)と、その波数ベクトルをYZ平面に射影したベクトル(0、k、k)とがなす角度をθとする。θは、波数ベクトルとYZ平面とがなす角度である。θは、式(8)および式(9)を用いて、以下の式(12)で表される。
Figure 2019174538
式(12)は、出射光がXZ平面に平行な場合に限定したときの式(3)と全く同じである。式(12)からわかるように、波数ベクトルのX成分は、光の波長、光導波層20の屈折率、および光導波層20の厚さに依存して変化する。
同様に、図36に示すように、出射光(0次光)の波数ベクトル(k、k、k)と、その波数ベクトルをXZ平面に射影したベクトル(k、0、k)とがなす角度をαとする。αは、波数ベクトルとXZ平面とがなす角度である。αは、式(8)および式(9)を用いて、以下の式(13)で表される。
Figure 2019174538
式(13)からわかるように、光の波数ベクトルのY成分は、光の位相差Δφによって変化する。
このように、波数ベクトル(k、k、k)の代わりに、式(12)および式(13)からそれぞれ得られるθおよびαを用いて光の出射方向を特定することもできる。その場合、光の出射方向を表す単位ベクトルは、(sinθ、sinα、(1−sinα−sinθ)1/2)と表すことができる。光出射においてこれらのベクトル成分はすべて実数でなければならないので、sinα+sinθ≦1が満たされる。sinα≦1−sinθ=cosθから、出射光は−cosθ≦sinα≦cosθを満たす角度範囲で変化することがわかる。−1≦sinα≦1から、θ=0では、出射光は−90≦α≦90の角度範囲で変化する。しかし、θが増加するとcosθは小さくなるので、αの角度範囲は狭くなる。θ=90(cosθ=0)では、α=0のときのみしか光は出射されない。
本実施形態における光による2次元スキャンは、導波路素子10が少なくとも2本あれば実現できる。しかし、導波路素子10の本数が少ない場合、上記のαの広がり角度Δαが大きくなる。導波路素子10の本数が増加するとΔαは小さくなる。このことは、以下のようにして説明できる。簡単のために、図36においてθ=0の場合を考える。つまり、光の出射方向がYZ平面に平行な場合を考える。
N本(Nは2以上の整数)の導波路素子10のそれぞれから、同じ出射強度および上述した位相φを有する光が出射されるとする。そのとき、N本の導波路素子10から出射される合計の光(電場)の振幅分布の絶対値は、遠視野において、以下の式(14)で表されるF(u)に比例する。
Figure 2019174538
ただし、uは以下の式(15)で表される。
Figure 2019174538
αは、YZ平面において、観測点および原点を結ぶ直線と、Z軸とがなす角度である。αは、式(13)を満たす。式(14)のF(u)は、u=0(α=α)でN(最大)となり、u=±2π/Nで0となる。u=−2π/Nおよび2π/Nを満たす角度をそれぞれαおよびαとすると(α<α<α)、αの広がり角度はΔα=α−αとなる。−2π/N<u<2π/N(α<α<α)の範囲のピークは、一般にメインローブと呼ばれる。メインローブの両側にはサイドローブと呼ばれる複数の小さいピークが存在する。メインローブの幅Δu=4π/Nと、式(15)から得られるΔu=2πpΔ(sinα)/λとを比較すると、Δ(sinα)=2λ/(Np)となる。Δαが小さければ、Δ(sinα)=sinα−sinα=[(sinα−sinα)/(α−α)]Δα≒[d(sinα)/dα]ααΔα=cosαΔαとなる。このため、広がり角度は、以下の式(16)で表される。
Figure 2019174538
したがって、導波路素子10の本数が多いほど、広がり角度Δαを小さくすることができ、遠方においても高精細な光スキャンが実現できる。同様の議論は、図36においてθ≠0の場合にも適用できる。
<導波路アレイから出射される回折光>
導波路アレイからは0次光のほかに高次の回折光も出射され得る。簡単のために、図36においてθ=0の場合を考える。つまり、回折光の出射方向はYZ平面に平行である。
図37Aは、pがλよりも大きい場合において、導波路アレイから回折光が出射される様子を示す模式図である。この場合、位相シフトがなければ(α=0)、図37Aに示す実線矢印の方向に0次光および±1次光が出射される(pの大きさによっては、さらに高次の回折光も出射され得る)。この状態から位相シフトを与えると(α≠0)、図37Aに示す破線矢印のように、0次光および±1次光の出射角度が同じ回転方向に変化する。±1次光のような高次光を用いてビームスキャンを行うことも可能であるが、よりシンプルにデバイスを構成する場合、0次光のみが用いられる。0次光の利得が低減することを回避するために、隣接する2つの導波路素子10の間の距離pをλよりも小さくすることによって高次光の出射を抑制してもよい。p>λであっても、高次光を物理的に遮断することによって0次光のみを用いることも可能である。
図37Bは、pがλよりも小さい場合において、導波路アレイから回折光が出射される様子を示す模式図である。この場合、位相シフトがなければ(α=0)、高次の回折光は、回折角度が90度を超えるため存在せず、前方には0次光だけが出射する。ただし、pがλに近い値の場合、位相シフトを与えると(α≠0)、出射角度の変化に伴って±1次光が出射される場合がある。
図37Cは、p≒λ/2の場合において、導波路アレイから回折光が出射される様子を示す模式図である。この場合、位相シフトを与えても(α≠0)±1次光は出射しない、あるいは出射したとしてもかなり大きな角度で出射する。p<λ/2の場合は、位相シフトを与えても高次の光が出射することはない。しかし、pをこれ以上小さくすることによるメリットも特にない。よって、pは、例えばλ/2以上に設定され得る。
図37Aから図37Cにおける空気へ出射される0次光および±1次光の関係は、以下のように定量的に説明できる。式(14)のF(u)は、F(u)=F(u+2π)であることから、2πの周期関数である。u=±2mπのとき、F(u)=N(最大)となる。そのとき、u=±2mπを満たす出射角度αで±m次光が出射される。u=±2mπ(m≠0)付近のピーク(ピーク幅はΔu=4π/N)をグレーティングローブと呼ぶ。
高次光のうち、±1次光のみを考えると(u=±2π)、±1次光の出射角度α±は、以下の式(17)を満たす。
Figure 2019174538
+1次光が出射されない条件sinα>1から、p<λ/(1―sinα)が得られる。同様に、−1次光が出射されない条件sinα<−1から、p<λ/(1+sinα)が得られる。
出射角度α(>0)の0次光に対して±1次光が出射されるか否かの条件は、以下のように分類される。p≧λ/(1―sinα)の場合、±1次光の両方が出射される。λ/(1+sinα)≦p<λ/(1―sinα)の場合、+1次光は出射されないが−1次光は出射される。p<λ/(1+sinα)の場合、±1次光はいずれも出射されない。特に、p<λ/(1+sinα)を満たせば、図36においてθ≠0の場合でも±1次光は出射されない。例えば、±1次光が出射されない場合において片側10度以上のスキャンを達成するため、α=10°として、pは、p≦λ/(1+sin10°)≒0.85λの関係を満たす。例えば、この式と、pに関する前述の下限についての条件と組み合わせれば、pは、λ/2≦p≦λ/(1+sin10°)を満たす。
しかし、±1次光が出射されない条件を満たすためには、pを非常に小さくする必要がある。これは、導波路アレイの作製を困難にする。そこで、±1次光の有無に関わらず、0次光を0°<α<αmaxの角度範囲でスキャンすることを考える。ただし、±1次光はこの角度範囲には存在しないとする。この条件を満たすためには、α=0°において、+1次光の出射角度はα≧αmaxでなければならず(すなわち、sinα=(λ/p)≧sinαmax)、α=αmaxにおいて、−1次光の出射角度はα≦0でなければならない(すなわち、sinα=sinαmax−(λ/p)≦0)。これらの制限から、p≦λ/sinαmaxが得られる。
上記の議論から、±1次光がスキャンの角度範囲に存在しない場合における0次光の出射角度αの最大値αmaxは、以下の式(18)を満たす。
Figure 2019174538
例えば、±1次光がスキャンの角度範囲に存在しない場合において片側10度以上のスキャンを達成するため、αmax=10°とし、p≦λ/sin10°≒5.76λを満たす。例えば、今式と、pに関する前述の下限についての条件とを組み合わせれば、pは、λ/2≦p≦λ/sin10°を満たす。このpの上限(p≒5.76λ)は±1次光が出射されない場合における上限(p≒0.85λ)と比べて十分大きいので、導波路アレイの作製は比較的容易である。ここで、使用される光が単一波長の光ではない場合、使用される光の中心波長をλとする。
以上のことから、より広い角度範囲をスキャンするためには、導波路間の距離pを小さくする必要がある。一方、pが小さい場合に式(16)における出射光の広がり角度Δαを小さくするためには、導波路アレイの本数を増やす必要がある。導波路アレイの本数は、用途および要求される性能に応じて適宜決定される。導波路アレイの本数は、例えば16本以上、用途によっては100本以上であり得る。
<導波路アレイに導入する光の位相制御>
それぞれの導波路素子10から出射される光の位相を制御するために、例えば、導波路素子10に光を導入する前段に、光の位相を変化させる位相シフタが設けられ得る。本実施形態における光スキャンデバイス100は、複数の導波路素子10のそれぞれに接続された複数の位相シフタと、各位相シフタを伝搬する光の位相を調整する第2調整素子とを備える。各位相シフタは、複数の導波路素子10の対応する1つにおける光導波層20に直接的にまたは他の導波路を介して繋がる導波路を含む。第2調整素子は、複数の位相シフタから複数の導波路素子10へ伝搬する光の位相の差をそれぞれ変化させることにより、複数の導波路素子10から出射される光の方向(すなわち、第3の方向D3)を変化させる。以下の説明では、導波路アレイと同様に、配列された複数の位相シフタを「位相シフタアレイ」と呼ぶことがある。
図38は、位相シフタ80が導波路素子10に直接的に接続されている構成の例を示す模式図である。図38において、破線枠で囲まれた部分が位相シフタ80に該当する。この位相シフタ80は、前述の全反射導波路1と、全反射導波路1の近傍に配置されたヒーター68とを含む。ヒーター68は、外部の制御回路からの制御によって発熱し、導波路1内の屈折率を変化させる。これにより、導波路1内を伝搬する光の位相を変化させる。この例では、位相シフタ80が、前述の「第1の導波路」を含む。このように、「第1の導波路」は、位相シフタとして機能してもよい。
位相シフタ80は、図38の構成に限定されない。位相シフタ80は、導波路1に接続された屈折率が可変な他の導波路を含んでいてもよい。その場合、当該他の導波路内の屈折率を変調させることにより、位相シフトを生じさせることができる。当該他の導波路は、導波路素子10と同様のスローライト導波路であってもよい。導波路素子10と同様の方法により、屈折率の変調を生じさせることができる。
図39は、導波路アレイ10Aおよび位相シフタアレイ80Aを、光出射面の法線方向(Z方向)から見た模式図である。図39に示される例では、全ての位相シフタ80が同じ伝搬特性を有し、全ての導波路素子10が同じ伝搬特性を有する。それぞれの位相シフタ80およびそれぞれの導波路素子10は同じ長さであってもよいし、長さが異なっていても良い。それぞれの位相シフタ80の長さが等しい場合は、例えば、駆動電圧によってそれぞれの位相シフト量を調整することができる。また、それぞれの位相シフタ80の長さを等ステップで変化させた構造にすることで、同じ駆動電圧で等ステップの位相シフトを与えることもできる。さらに、この光スキャンデバイス100は、複数の位相シフタ80に光を分岐して供給する光分岐器90と、各導波路素子10を駆動する第1駆動回路110と、各位相シフタ80を駆動する第2駆動回路210とをさらに備えている。図39における直線の矢印は光の入力を示している。別々に設けられた第1駆動回路110と第2駆動回路210とをそれぞれ独立に制御することにより、2次元スキャンを実現できる。この例では、第1駆動回路110は、第1調整素子の1つの要素として機能し、第2駆動回路210は、第2調整素子の1つの要素として機能する。
第1駆動回路110は、後述するように、各導波路素子10における光導波層20の屈折率および厚さの少なくとも一方を変化させることにより、光導波層20から出射する光の角度を変化させる。第2駆動回路210は、後述するように、各位相シフタ80における導波路20aの屈折率を変化させることにより、導波路20aの内部を伝搬する光の位相を変化させる。光分岐器90は、全反射によって光が伝搬する導波路で構成してもよいし、導波路素子10と同様の反射型導波路で構成してもよい。
なお、光分岐器90で分岐したそれぞれの光に対して位相を制御した後に、それぞれの光を位相シフタ80に導入してもよい。この位相制御には、例えば、位相シフタ80に至るまでの導波路の長さを調整することによるパッシブな位相制御構造を用いることができる。あるいは、位相シフタ80と同様の機能を有する電気信号で制御可能な位相シフタを用いても良い。このような方法により、例えば、全ての位相シフタ80に等位相の光が供給されるように、位相シフタ80に導入される前に位相を調整してもよい。そのような調整により、第2駆動回路210による各位相シフタ80の制御をシンプルにすることができる。
図40は、位相シフタ80における導波路が、導波路素子10における光導波層20と、他の導波路85を介して繋がる構成の例を模式的に示す図である。他の導波路85は、上述した何れかの第1の導波路1であってもよい。各位相シフタ80は、図38に示す位相シフタ80と同じ構成を有していてもよいし、異なる構成を有していてもよい。図40では、位相シフタ80を、位相シフト量を表す記号φ〜φを用いて、簡易的に表現している。以降の図でも同様の表現を用いることがある。位相シフタ80には、全反射を利用して光を伝搬させる導波路を利用することができる。
図41は、光分岐器90にカスケード状に並ぶ複数の位相シフタ80を挿入した構成例を示す図である。この例では、光分岐器90の経路の途中に、複数の位相シフタ80が接続されている。各位相シフタ80は、伝搬する光に一定の位相シフト量φを与える。それぞれの位相シフタ80が伝搬光に与える位相シフト量を一定にすることで、隣接する2つの導波路素子10の間の位相差が等しくなる。したがって、第2調整素子は、全ての位相シフタ80に共通の位相制御信号を送ることができる。このため、構成が容易になるという利点がある。
光分岐器90、位相シフタ80および導波路素子10などの間で、光を効率的に伝搬させるために、導波路を利用することができる。導波路には、周囲の材料よりも高い屈折率を有する、光の吸収が少ない光学材料を用いることができる。例えば、Si、GaAs、GaN、SiO、TiO、Ta、AlN、SiNなどの材料が用いられ得る。また、光分岐器90から導波路素子10に光を伝搬させるために、上述した何れかの第1の導波路1を用いてもよい。
位相シフタ80では、光に位相差を与えるために光路長を変える機構が必要である。光路長を変えるために、本実施形態では、位相シフタ80における導波路の屈折率が変調される。これにより、隣接する2つの位相シフタ80から導波路素子10に供給される光の位相差を調整することができる。より具体的には、位相シフタ80が有する導波路内の位相シフト材料の屈折率変調を行うことで、位相シフトを与えることができる。屈折率変調を行う構成の具体例については、後述する。
<第1調整素子の例>
次に、導波路素子10における光導波層20の屈折率および厚さの少なくとも一方を調整する第1調整素子の構成例を説明する。
まず、屈折率を調整する場合の構成例を説明する。
図42Aは、第1調整素子60(以下、単に調整素子と呼ぶことがある)の構成の一例を模式的に示す斜視図である。図42Aに示される例では、一対の電極62を有する調整素子60が導波路素子10に組み込まれている。光導波層20は、一対の電極62に挟まれている。光導波層20および一対の電極62は、第1のミラー30と第2のミラー40との間に設けられている。光導波層20の側面(XZ面に平行な表面)の全体が、電極62に接触している。光導波層20は、電圧が印加された場合に、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率が変化する屈折率変調材料を含む。調整素子60は、一対の電極62から引き出された配線64と、配線64に接続された電源66とをさらに有している。電源66をオンにして配線64を通じて一対の電極62に電圧を印加することで、光導波層20の屈折率を変調することができる。このため、調整素子60を屈折率変調素子と呼ぶこともできる。
図42Bは、第1調整素子60の他の構成例を模式的に示す斜視図である。この例では、光導波層20の側面の一部のみが電極62に接触している。それ以外の点は、図42Aに示す構成と同じである。このように、光導波層20の屈折率を部分的に変化させる構成であっても、出射光の方向を変化させることができる。
図42Cは、調整素子60のさらに他の構成例を模式的に示す斜視図である。この例では、一対の電極62は、ミラー30および40の反射面に略平行な層状の形状を有する。一方の電極62は、第1のミラー30と光導波層20との間に挟まれている。他方の電極62は、第2のミラー40と光導波層20との間に挟まれている。このような構成を採用する場合、電極62には、透明電極が用いられ得る。このような構成によれば、製造が比較的容易であるという利点がある。
図42Aから図42Cに示す例では、各導波路素子10における光導波層20は、電圧が印加された場合に、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率が変化する材料を含む。第1調整素子60は、光導波層20を挟む一対の電極62を有し、一対の電極62に電圧を印加することにより、光導波層20の屈折率を変化させる。電圧の印加は、前述の第1駆動回路110(図39参照)によって行われ得る。
ここで、各構成要素に用いられ得る材料の例を説明する。
ミラー30、40、30a、および40aの材料には、例えば誘電体による多層膜を用いることができる。多層膜を用いたミラーは、例えば、各々が1/4波長の光学厚さを有する、屈折率の異なる複数の膜を周期的に形成することによって作製できる。このような多層膜ミラーによれば、高い反射率を得ることができる。膜の材料として、例えばSiO、TiO、Ta、Si、SiNなどを用いることができる。各ミラーは、多層膜ミラーに限らず、Ag、Alなどの金属で形成されていてもよい。
電極62および配線64には、導電性を有する様々な材料を利用することができる。例えば、Ag、Cu、Au、Al、Pt、Ta、W、Ti、Rh、Ru、Ni、Mo、Cr、Pdなどの金属材料、またはITO、酸化錫、酸化亜鉛、IZO(登録商標)、SROなどの無機化合物、またはPEDOT、ポリアニリンなどの導電性高分子などの導電性材料を用いることができる。
光導波層20の材料には、誘電体、半導体、電気光学材料、液晶分子などの様々な透光性の材料を利用することができる。誘電体としては、例えばSiO、TiO、Ta、SiN、AlNが挙げられる。半導体材料としては、例えば、Si系、GaAs系、GaN系の材料が挙げられる。電気光学材料としては、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、チタン酸バリウム(BaTi)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)などが挙げられる。
光導波層20の屈折率を変調する方法には、例えば、キャリア注入効果、電気光学効果、複屈折効果、または熱光学効果を利用した方法がある。以下、各方法の例を説明する。
キャリア注入効果を利用した方法は、半導体のpin接合を利用した構成によって実現され得る。この方法では、ドープ濃度の低い半導体をp型半導体およびn型半導体で挟み込んだ構造が用いられ、半導体にキャリアを注入することによって屈折率が変調される。この構成では、各導波路素子10における光導波層20は、半導体材料を含む。一対の電極62の一方はp型半導体を含み、他方はn型半導体を含み得る。第1調整素子60は、一対の電極62に電圧を印加することにより、半導体材料にキャリアを注入し、光導波層20の屈折率を変化させる。光導波層20をノンドープまたは低ドープ濃度の半導体で作製し、これに接するようにp型半導体およびn型半導体を設ければ良い。低ドープ濃度の半導体にp型半導体およびn型半導体が接するように配置し、さらにp型半導体およびn型半導体に導電性材料が接するような複合的な構成にしてもよい。例えば、Siに1020cm−3程度のキャリアを注入すると、Siの屈折率が0.1程度変化する(例えば、“Free charge carrier induced refractive index modulation of crystalline Silicon” 7th IEEE International Conference on Group IV Photonics, P102 ‐ 104, 1−3 Sept. 2010を参照)。この方法を採用する場合、図42Aから図42Cにおける一対の電極62の材料として、p型半導体およびn型半導体が用いられ得る。あるいは、一対の電極62は金属で構成し、電極62と光導波層20との間の層、または、光導波層20自体にp型またはn型半導体を含ませてもよい。
電気光学効果を利用した方法は、電気光学材料を含む光導波層20に電場をかけることで実現され得る。特に、電気光学材料としてKTNを用いれば、大きな電気光学効果を得ることができる。KTNは正方晶から立方晶への相転移温度よりも少し高い温度で比誘電率が著しく上昇するため、この効果を利用することができる。例えば、“Low−Driving−Voltage Electro−Optic Modulator With Novel KTa1−xNbxO3 Crystal Waveguides” Jpn. J. Appl. Phys., Vol.43, No. 8B (2004) によれば、波長1.55μmの光に対して電気光学定数g=4.8×10−15/Vが得られる。よって、例えば2kV/mmの電場をかけると、屈折率が0.1(=gn/2)程度変化する。このように、電気光学効果を利用した構成では、各導波路素子10における光導波層20は、KTNなどの電気光学材料を含む。第1調整素子60は、一対の電極62に電圧を印加することにより、電気光学材料の屈折率を変化させる。
液晶による複屈折効果を利用した方法では、液晶材料を含む光導波層20を電極62で駆動することで、液晶の屈折率異方性を変化させることができる。これにより、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率を変調することができる。液晶は一般に0.1〜0.2程度の複屈折率差を有するので、液晶の配向方向を電場で変えることで複屈折率差と同等の屈折率変化が得られる。このように、液晶の複屈折効果を利用した構成では、各導波路素子10における光導波層20は、液晶材料を含む。第1調整素子60は、一対の電極62に電圧を印加することにより、液晶材料の屈折率異方性を変化させ、光導波層20の屈折率を変化させる。
熱光学効果は、材料の温度変化に伴って屈折率が変化する効果である。熱光学効果による駆動を行うために、熱光学材料を含む光導波層20を加熱することで屈折率を変調してもよい。
図43は、高い電気抵抗を有する材料によって構成されるヒーター68を含む調整素子60と導波路素子10とを組み合わせた構成の例を示す図である。ヒーター68は、光導波層20の近傍に配置され得る。電源66をオンにして導電性材料を含む配線64を通じてヒーター68に電圧をかけることにより、加熱することができる。ヒーター68を光導波層20に接触させてもよい。本構成例では、各導波路素子10における光導波層20は、温度変化に伴って屈折率が変化する熱光学材料を含む。第1調整素子60は、光導波層20に接触してまたは光導波層20の近傍に配置されたヒーター68を有する。第1調整素子60は、ヒーター68によって熱光学材料を加熱することにより、光導波層20の屈折率を変化させる。
光導波層20自体を高電気抵抗材料で作製し、光導波層20を直接一対の電極62で挟み電圧を印加することで加熱してもよい。その場合、第1調整素子60は、光導波層20を挟む一対の電極62を有する。第1調整素子60は、一対の電極62に電圧を印加して光導波層20における熱光学材料(例えば、高電気抵抗材料)を加熱することにより、光導波層20の屈折率を変化させる。
ヒーター68または光導波層20に用いられる高電気抵抗材料として、半導体または抵抗率の大きい金属材料を用いることができる。半導体としては、例えば、Si、GaAs、またはGaNなどを用いることができる。また、抵抗率の高い金属としては、鉄、ニッケル、銅、マンガン、クロム、アルミニウム、銀、金、プラチナ、またはこれら複数の材料を組み合わせた合金などが用いられ得る。例えば、波長1500nmの光に対するSiの屈折率の温度依存性dn/dTは1.87×10−4(K−1)である(“Temperature−dependent refractive index of silicon and germanium”, Proc. SPIE 6273, Optomechanical Technologies for Astronomy, 62732Jを参照)。したがって、温度を500℃変えると屈折率を0.1程度変化させることができる。光導波層20の近傍にヒーター68を設け局所的に加熱すれば、500℃という大きい温度変化でも比較的高速に行うことができる。
キャリア注入による屈折率変化の応答速度は、キャリアの寿命によって決まる。一般に、キャリア寿命はナノ秒(ns)のオーダーであるため100MHz〜1GHz程度の応答速度が得られる。
電気光学材料を用いた場合、電場をかけて電子の分極を誘起することで屈折率変化が生じる。分極を誘起する速度は一般的に極めて高速で、LiNbO、LiTaOなどの材料では応答時間はフェムト秒(fs)オーダーであるため、1GHzを越えた高速駆動が可能である。
熱光学材料を用いた場合、温度昇降の速度で屈折率変化の応答速度が決まる。局所的に導波路近傍のみ加熱することで急激な温度上昇が得られる。また、局所的に温度が上がった状態でヒーターを切ると周辺に放熱することで急激に温度を下げることができる。速いものでは100KHz程度の応答速度が得られる。
以上の例では、第1調整素子60は、各光導波層20の屈折率を同時に一定の値だけ変化させることにより、出射光の波数ベクトルのX成分を変化させる。屈折率変調において、その変調量は材料の特性に依存し、大きな変調量を得るためには、高い電界を印加したり、液晶を配向させたりする必要がある。一方、導波路素子10から出射される光の方向は、ミラー30とミラー40の間の距離にも依存する。したがって、ミラー30とミラー40の間の距離を変えることによって光導波層20の厚さを変化させてもよい。以下、光導波層20の厚さを変化させる構成の例を説明する。
光導波層20の厚さを変えるためには、光導波層20は、例えば気体または液体などの容易に変形する材料で構成され得る。光導波層20を挟むミラー30および40の少なくとも一方を移動させることにより、光導波層20の厚さを変化させることができる。この際、上下のミラー30とミラー40の間の平行度を保つために、ミラー30または40の変形を最小限にするような構成が採用され得る。
図44は、変形し易い材料で構成された支持部材70でミラー30が保持された構成例を示す図である。支持部材70は、ミラー30よりも相対的に変形しやすい厚さの薄い部材または細いフレームを含み得る。この例では、第1調整素子は、各導波路素子10における第1のミラー30に接続されたアクチュエータを有する。アクチュエータは、第1のミラー30と第2のミラー40との距離を変化させることにより、光導波層20の厚さを変化させる。なお、アクチュエータは、第1のミラー30および第2のミラー40の少なくとも一方に接続され得る。ミラー30を駆動するアクチュエータとして、例えば、静電気力、電磁誘導、圧電材料、形状記憶合金、または熱を利用した種々のアクチュエータを用いることができる。
静電気力を利用した構成では、第1調整素子におけるアクチュエータは、静電気力によって発生する電極間の引力または斥力を用いてミラー30および/または40を移動させる。以下、そのような構成のいくつかの例を説明する。
図45は、電極間に発生する静電気力によってミラー30および/または40を移動させる構成の一例を示す図である。この例では、ミラー30と光導波層20との間、およびミラー40と光導波層20との間に、透光性を有する電極62(例えば透明電極)が設けられている。ミラー30の両側に配置された支持部材70の各々は、一端がミラー30に固定され、他端が不図示の筐体に固定されている。一対の電極62に正負の電圧を印加することで、引力が生じ、ミラー30とミラー40の間の距離が縮小する。電圧の印加を止めると、ミラーを保持する支持部材70の復元力が生じ、ミラー30とミラー40の間の距離が元の長さに戻る。このような引力を生じさせる電極62は、ミラー全面に設けられている必要はない。この例におけるアクチュエータは、一対の電極62を有し、一対の電極62の一方は第1のミラー30に固定され、一対の電極62の他方は第2のミラー40に固定されている。アクチュエータは、一対の電極62に電圧を印加することにより、電極間に静電気力を発生させ、第1のミラー30と第2のミラー40との距離を変化させる。なお、電極62への電圧の印加は、前述の第1駆動回路110(例えば図39)によって行われる。
図46は、引力を生じさせる電極62を、光の伝搬を妨げない位置に配置した構成例を示す図である。この例では、電極62を透明にする必要はない。図示されているように、ミラー30および40のそれぞれに固定された電極62は単一である必要はなく、分割されていてもよい。分割された電極の一部の静電容量を計測することで、ミラー30とミラー40の間の距離を計測し、ミラー30とミラー40の平行度を調整するなどのフィードバック制御を行うことができる。
電極間の静電気力を利用する代わりに、コイル内の磁性体に引力または斥力を生じさせる電磁誘導を利用してミラー30および/または40を駆動してもよい。
圧電材料、形状記憶合金、または熱による変形を利用したアクチュエータでは、外部から加えられたエネルギーによって材料が変形する現象が利用される。例えば、代表的な圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)は、電界を分極方向に印加することによって伸縮する。この圧電材料によってミラー30とミラー40の間の距離を直接変化させることができる。しかし、PZTの圧電定数は100pm/V程度であるため、例えば1V/μmの電界を印加しても変位量は0.01%程度と微小である。このため、このような圧電材料を用いた場合には、十分なミラーの移動距離を得ることができない。そこで、ユニモルフまたはバイモルフと呼ばれる構成を用いて、変化量を増加させることができる。
図47は、圧電材料を含む圧電素子72の例を示す図である。矢印は、圧電素子72の変位方向を示し、その矢印の大きさは変位量を示す。図47に示すように、圧電素子72の変位量は材料の長さに依存するため、面方向の変位量は厚さ方向の変位量よりも大きい。
図48Aは、図47に示す圧電素子72を用いたユニモルフの構造を有する支持部材74aの構成例を示す図である。この支持部材74aは、1層の圧電素子72と、1層の非圧電素子71とが積層された構造を有する。このような支持部材74aをミラー30および40の少なくとも一方に固定し、変形させることにより、ミラー30とミラー40の間の距離を変化させることができる。
図48Bは、圧電素子72に電圧を印加することによって支持部材74aが変形した状態の例を示す図である。圧電素子72に電圧が印加されると、圧電素子72のみが面方向に伸びるため、支持部材74a全体がたわむ。このため、非圧電素子71が無い場合と比較して、変位量を増加させることができる。
図49Aは、図47に示す圧電素子72を用いたバイモルフの構造を有する支持部材74bの構成例を示す図である。この支持部材74bは、2層の圧電素子72と、その間の1層の非圧電素子71とが積層された構造を有する。このような支持部材74bをミラー30および40の少なくとも一方に固定し、変形させることにより、ミラー30とミラー40の間の距離を変化させることができる。
図49Bは、両側の圧電素子72に電圧を印加することによって支持部材74aが変形した状態の例を示す図である。バイモルフでは、上下の圧電材料72において変位方向が反対になる。そのため、バイモルフの構成を用いた場合、ユニモルフの構成よりもさらに変位量を増加させることができる。
図50は、図48Aに示す支持部材74aをミラー30の両側に配置したアクチュエータの例を示す図である。このような圧電アクチュエータによって梁をたわませるように支持部材74aを変形させることにより、ミラー30とミラー40の間の距離を変化させることができる。図48Aに示す支持部材74aに代えて、図49Aに示す支持部材74bを用いてもよい。
なお、ユニモルフ型のアクチュエータは、円弧状に変形するため、図51Aに示すように、固定されていない側の先端には傾きが生じる。そのため、ミラー30の剛性が低いと、ミラー30とミラー40を平行に保持することが困難である。そこで、図51Bに示すように、伸縮する方向の異なる2つのユニモルフ型の支持部材74aを直列に繋ぎ合わせてもよい。図51Bの例では、支持部材74aにおいて、伸縮する領域と伸展する領域とで、たわむ方向が反対になる。その結果、固定されていない側の先端に傾きを生じさせないようにすることができる。このような支持部材74aを用いることにより、ミラー30および40が傾くことを抑制することができる。
上記と同様に、熱膨張係数の異なる材料を貼り合わせることによっても、たわみ変形する梁構造を実現することができる。さらに、梁構造を形状記憶合金で実現することもできる。いずれも、ミラー30とミラー40の距離の調整に利用され得る。
また、光導波層20を密閉空間とし、内部の空気または液体を小型ポンプなどで出し入れして光導波層20の体積を変化させることによってミラー30とミラー40の間の距離を変えることも可能である。
以上のように、第1調整素子におけるアクチュエータは、多様な構造によって光導波層20の厚さを変化させることができる。このような厚さの変化は、複数の導波路素子10のそれぞれについて個別に行ってもよいし、全ての導波路素子10について一律に行ってもよい。特に、複数の導波路素子10の構造が全て同じである場合、各導波路素子10におけるミラー30とミラー40の間の距離が一定に制御される。このため、1つのアクチュエータが、全ての導波路素子10を一括して駆動することができる。
図52は、複数の第1のミラー30を保持する支持部材(すなわち、補助基板)52をアクチュエータで一括して駆動する構成の例を示す図である。図52では、第2のミラー40は1つのプレート状のミラーである。ミラー40は、前述の実施形態のように、複数のミラーに分割されていてもよい。支持部材52は、透光性を有する材料で構成され、両側にユニモルフ型の圧電アクチュエータが設けられている。
図53は、複数の導波路素子10における第1のミラー30が1つのプレート状のミラーである構成例を示す図である。この例では、第2のミラー40は、導波路素子10ごとに分割されている。図52および図53の例のように、各導波路素子10におけるミラー30および40の少なくとも一方が、1つのプレート状のミラーの部分であってもよい。アクチュエータは、当該プレート状のミラーを移動させることにより、ミラー30とミラー40の間の距離を変化させてもよい。
<液晶材料を用いた構成の具体例>
次に、光導波層20に液晶材料を用いた構成の具体例を説明する。
前述のように、液晶による複屈折効果を利用した方法では、液晶材料を含む光導波層20を電極62で駆動することで、液晶の屈折率異方性を変化させることができる。これにより、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率を変調することができる。液晶は一般に0.1〜0.2程度の複屈折率差を有するので、液晶の配向方向を電場で変えることで複屈折率差と同等の屈折率変化が得られる。このように、液晶の複屈折効果を利用した構成では、各導波路素子10における光導波層20は、液晶材料を含む。第1調整素子60における駆動回路は、一対の電極62に電圧を印加することにより、液晶材料の屈折率異方性を変化させ、光導波層20の屈折率を変化させることができる。
電圧印加時に屈折率の変化を大きくするためには、一対の電極62の配置と、液晶材料の配向方向すなわち液晶分子の長手方向とが適切な関係にあることが望まれる。さらに、光導波層20に入力する光として、直線偏光を用い、その偏光方向を適切な方向に設定することが望まれる。
液晶の複屈折差は、液晶分子の長手方向の誘電率と短手方向の誘電率とが異なることに起因する。このため、光導波層20内の液晶分子の配向方向を入射光の偏光方向に応じて適切に制御することで、より効果的に屈折率を変化させることができる。
図54Aおよび図54Bは、光導波層20に液晶材料75を用いた構成の第1の例を示している。図54Aおよび図54Bには、一対の電極62に挟まれた光導波層20と、一対の電極62に電圧を印加する駆動回路110とが示されている。この例における駆動回路110は、駆動電源111と、スイッチング素子112(以下、スイッチ112とも称する)とを備えている。図54Aはスイッチ112がOFFの状態を示し、図54Bはスイッチ112がONの状態を示している。
一対の電極62は、透明電極である。一対の電極62は、図示されていない第1および第2のミラーに平行に配置されている。すなわち、一対の電極62は、電圧が印加されたとき、各ミラーの法線方向であるZ方向に電場を発生させるように配置されている。図54Aに示されるように、液晶分子76の長手方向は、一対の電極62に電圧が印加されていない状態において、光導波層20が延びる方向(X方向)に平行である。
図54Aおよび図54Bにおける実線矢印は光の進行方向を示し、破線矢印は偏光方向を示している。この例においては、光導波層20にはP偏光が入力される。P偏光は、光の入射面に平行に電場が振動する直線偏光である。光の入射面は、各ミラーの反射面に入射する光の方向と反射される光の方向とで形成される面である。本実施形態では、光の入射面はXZ面にほぼ平行である。各ミラーの反射面における光の入射角および反射角をθとするとき、P偏光の光の電場の振動方向は、XZ面内においてX方向から角度θだけ傾斜した方向である。しかし、図54A、図54B、および以降の図では、S偏光との区別をわかり易くするために、θが十分に小さいものとして、P偏光の偏光方向を示す破線矢印を、X方向に平行に示している。
光導波層20のZ方向のサイズ(高さ)は、例えば0.1μmから10μmの範囲内の値、より好ましくは0.2μmから3μmの範囲内の値に設定され得る。光導波層20のY方向のサイズ(幅)は、例えば1μmから100μmの範囲内の値、より好ましくは1μmから30μmの範囲内の値に設定され得る。光導波層20のX方向のサイズ(長さ)は、例えば100μmから100mmの範囲内の値、より好ましくは1mmから30mmの範囲内の値に設定され得る。
液晶材料は、例えばネマチック液晶であり得る。ネマチック液晶の分子構造は、以下のとおりである。
R1−Ph1−R2−Ph2−R3
ここで、R1、R3は、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル、シアノ基、アミン基、ニトロ基、ニトリル基、およびアルキル鎖からなる群から選択されるいずれか1つを表す。R3は、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル、シアノ基、アミン基、ニトロ基、ニトリル基、およびアルキル鎖からなる群から選択されるいずれか一つを表す。Ph1は、フェニル基またはビフェニル基等の芳香族基を表す。Ph2は、フェニル基またはビフェニル基等の芳香族基を表す。R2は、ビニル基、カルボニル基、カルボキシル基、ジアゾ基、およびアゾキシ基からなる群から選択されるいずれか1つを表す。
液晶は、ネマチック液晶に限定されない。例えば、スメクチック液晶を用いてもよい。液晶は、スメクチック液晶の中でも、例えばスメクチックC相(SmC相)であってもよい。スメクチック液晶は、スメクチックC相(SmC相)の中でも、例えば液晶分子内にキラル中心(例えば、不斉炭素)を有し強誘電性液晶であるカイラルスメクチック相(SmC相)あってもよい。
SmC相の分子構造は、以下のように表される。
Figure 2019174538
R1、R4は、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミン基、ニトロ基、ニトリル基、およびアルキル鎖からなる群から選択されるいずれか1つである。Ph1は、フェニル基またはビフェニル基等の芳香族基である。Ph2は、フェニル基またはビフェニル基等の芳香族基である。R2は、ビニル基、カルボニル基、カルボキシル基、ジアゾ基、およびアゾキシ基からなる群から選択されるいずれか1つである。Chはキラル中心を表す。キラル中心は典型的には炭素(C*)である。R3は、水素、メチル基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミン基、ニトロ基、ニトリル基、およびアルキル鎖からなる群から選択されるいずれか1つである。R5は、水素、メチル基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミン基、ニトロ基、ニトリル基、およびアルキル鎖からなる群から選択されるいずれか一つである。R3、R4、およびR5は、互いに異なる官能基である。
液晶材料は、組成の異なる複数の液晶分子の混合物であってもよい。例えば、ネマチック液晶分子と、スメクチック液晶分子との混合物を光導波層20の材料として用いてもよい。
一般に、液晶セル内に液晶材料を注入する際には、液晶セルの温度を上げ、液晶材料の流動性を増した状態で液晶セル内に液晶材料を注入する。このため、注入時の流れに沿った方向に液晶分子が配向する傾向が高いことが知られている。図54Aに示す光導波層20に液晶を注入する場合には、光導波層20のYZ面に平行な端面から液晶材料を注入すると、液晶分子76は、光導波層20の長手方向(X方向)に平行に配向する。
図54Aに示すように、駆動回路110のスイッチング素子112がOFF、すなわち光導波層20に駆動電圧が印加されない状態では、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とが平行に近くなる。厳密には、偏光方向と液晶分子の長手方向とは、前述のとおり角度θで交差する。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的高い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.6から1.7程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的大きくなる。
他方、図54Bに示すように、駆動回路111のスイッチング素子112をON、すなわち光導波層20に駆動電圧を印加すると、液晶分子76が透明電極62に対して垂直に立ち上がるように配向する。このため、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とがなす角度が90度に近くなる。厳密には、偏光方向と液晶分子の長手方向とは、角度(90°−θ)で交差する。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的低い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.4から1.5程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的小さくなる。
なお、図54Bは、図中の下側の電極62と光導波層20との間に配向膜がある例を示している。配向膜があるため、図中の下側の液晶分子76は立ち上がりにくくなっている。このような配光膜は、上側の電極62に設けられていてもよい。配向膜は設けられていなくてもよい。
このように、光導波層20に液晶材料を用いることで、印加電圧のON/OFFによって屈折率を0.1から0.2程度変化させることができる。これにより、光導波層20から出射する光の出射角を変化させることができる。
なお、この例では、駆動回路110が駆動電源111とスイッチング素子112とを有しているが、このような構成に限定されない。例えば、駆動回路110は、スイッチング素子112の代わりに電圧アンプ(voltage amplifier)のような電圧制御回路を用いてもよい。そのような構成を用いることで、液晶分子76の配向を連続的に変化することが可能となり、任意の出射角度に制御することができる。
図55は、光導波層20に光を入力する光入力装置113の構成例を模式的に示す断面図である。この例における光入力装置113は、光源130と、光源130から出射された光を伝搬して光導波層20に入力する導波路1とを有している。この例における導波路1は、図38に示す構成と同様の位相シフタ80であるが、他の構造をもつ導波路であってもよい。
光源130は、図55におけるXZ面内で振動する電場をもつ直線偏光を出射する。光源130から出射された直線偏光は、位相シフタ80を介して光導波層20に入射し、P偏光として伝搬する。このように、光スキャンデバイスは、光導波層20にP偏光を入力する光入力装置113を備えていてもよい。後述する例のように、光導波層20にS偏光、すなわち、Y方向に振動する電場をもつ直線偏光を入力する場合には、光源130もS偏光を出射するように構成され得る。
図56Aおよび図56Bは、光導波層20に液晶材料を用いた構成の第2の例を示している。第2の例が第1の例と異なる点は、入射光の偏光がS偏光であり、一対の電極62に電圧が印加されていない状態において、液晶分子76の配向方向が、光導波層20が延びる方向(X方向)および各ミラーの法線方向(Z方向)の両方に垂直な方向(Y方向)である点にある。入射光がS偏光であるため、その電場の方向は入射面に垂直なY方向である。
液晶分子76の配向方向は、液晶を挿入する前に予め液晶セルとなる上下の電極62の表面をラビングすることで配向方向を制御することができる。また、上下の電極62の表面にポリイミド等の配向層(配向膜)を塗布形成することで配向方向を制御することができる。
図56Aに示すように、駆動回路110のスイッチング素子112がOFF、すなわち光導波層20に駆動電圧が印加されない状態では、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とがほぼ平行である。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的高い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.6から1.7程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的大きくなる。
他方、図56Bに示すように、駆動回路111のスイッチング素子112をON、すなわち光導波層20に駆動電圧を印加すると、液晶分子76が透明電極62に対して垂直に立ち上がるように配向する。このため、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とがなす角度はほぼ直角になる。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的低い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.4から1.5程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的小さくなる。
図56Aおよび図56Bに示す構成では、電圧が印加されていない状態では偏光方向と液晶分子76の配向方向とが一致し、高い電圧が印加されている状態では偏光方向と液晶分子76の配向方向とが直交する。このため、図54Aおよび図54Bに示す構成と比較して、同一の電圧の印加に対して屈折率をより大きく変化させることができる。したがって、光の出射角度をより大きく変化させることができる。他方、図54Aおよび図54Bに示す構成は、製造し易いという利点がある。
図57Aおよび図57Bは、光導波層20に液晶材料を用いた構成の第3の例を示している。第3の例が第1の例と異なる点は、入射光の偏光がS偏光であり、一対の電極62が、光導波層20を間に挟んで、XZ面に平行に配置されている点にある。この例における一対の電極62は、第1のミラー30および第2のミラー40の各々にほぼ垂直に配置されている。一対の電極62は、電圧が印加されたとき、光導波層20が延びる方向(X方向)および各ミラーの法線方向(Z方向)の両方に垂直なY方向に電場を発生させる。第1の例と同様、一対の電極に電圧が印加されていない状態において、液晶材料の配向方向は光導波層20が延びる方向に平行である。
図57Aに示すように、駆動回路110のスイッチング素子112がOFF、すなわち光導波層20に駆動電圧が印加されない状態では、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とがほぼ垂直になる。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的低い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.4から1.5程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的小さくなる。
他方、図57Bに示すように、駆動回路111のスイッチング素子112をON、すなわち光導波層20に駆動電圧を印加すると、液晶分子76の長手方向が、光導波層20が延びる方向(X方向)および各ミラー30、40の法線方向(Z方向)の両方に垂直な方向(Y方向)になる。このため、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とがほぼ平行になる。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的高い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.6から1.7程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的大きくなる。
図58Aおよび図58Bは、光導波層20に液晶材料を用いた構成の第4の例を示している。第4の例が第3の例と異なる点は、入射光の偏光がP偏光である点にある。
図58Aに示すように、駆動回路110のスイッチング素子112がOFF、すなわち光導波層20に駆動電圧が印加されない状態では、伝搬する光の偏光方向と液晶分子の長手方向とが平行に近くなる。厳密には、偏光方向と液晶分子の長手方向とは、前述のとおり角度θで交差する。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的高い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.6から1.7程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的大きくなる。
他方、図58Bに示すように、駆動回路111のスイッチング素子112をON、すなわち光導波層20に駆動電圧を印加すると、液晶分子76が、透明電極62に対して垂直に配向する。このため、伝搬する光の偏光方向が液晶分子の長手方向にほぼ垂直になる。この状態では、光導波層20は、伝搬する光に対して比較的低い屈折率をもつ。この際の液晶の屈折率nは、一般的な液晶材料を使用した場合、概ね1.4から1.5程度である。この状態では、光導波層20から出射する光の出射角は、比較的小さくなる。
以上のように、光導波層20に液晶材料を使用した例では、光の偏光方向、液晶分子76の配向方向、および一対の電極62の配置を適切に設定することにより、出射光の方向を制御することができる。入射光の偏光方向がP偏光であってもS偏光であっても、駆動電圧に応じて出射角度を変化させ光線の方向を制御することができる。
図59は、光導波層20に液晶材料を使用した構成における、光の射出角度の印加電圧依存性を示すグラフである。このグラフは、図54Aおよび図54Bに示す構成を用いて、印加電圧を変化させながら光導波層20から出射する光の射出角度を測定した実験の結果を示している。図60は、本実験で用いた導波路素子の構成を示す断面図である。この導波路素子では、電極62b、多層反射膜である第2のミラー40、液晶層である光導波層20、多層反射膜である第1のミラー30、および透明電極62aが、この順で積層されている。光導波層20の両側には、SiOの層が形成されている。
本実験では、液晶材料として、5CB(4−Cyano−4’−pentylbiphenyl)が用いられている。0V時の液晶の配向方向は、光導波層20が延びる方向に平行、すなわち、図60の紙面垂直方向である。光導波層20の厚さは1μm、光導波層20の幅は20μmである。測定に使用した光は1.47μmの波長をもつTM偏光(P偏光)である。電極62bは、第2のミラー40における多層反射膜と、図示されていない基板との間に成膜した。この実験では、2つの多層反射膜が電極62aおよび62bの間に配置されているため、比較的高い電圧を印加した。
図59に示されているように、電圧の印加により、射出角度を約15°変化させることができた。この実験では、図54Aおよび図54Bに示す構成を用いているが、他の構成でも同等以上の効果を得ることができる。
<電気光学材料を用いた構成の具体例>
次に、光導波層20に電気光学材料を用いた構成の具体例を説明する。
光導波層20が電気光学材料を含む光スキャンデバイスにおいては、電気光学材料の分極軸の方向が、一対の電極62に電圧を印加したときに発生する電場の方向に一致するように光導波層20が構成される。そのように構成により、一対の電極62に電圧を印加することで生じる電気光学材料の屈折率の変化を大きくすることができる。
図61は、光導波層20に電気光学材料77を用いた構成の第1の例を示している。この例では、一対の電極62は、電圧が印加されたときに一対の電極62間に発生する電場の方向が、光導波層20が延びる方向(X方向)および各ミラーの法線方向(Y方向)の両方に垂直な方向(Y方向)に一致する態様で配置されている。この例における電気光学材料の分極軸の方向は、光導波層20が延びる方向および各ミラーの法線方向の両方に垂直なY方向である。駆動回路110は、一対の電極62に電圧を印加することにより、電気光学材料の、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率を変化させる。
電気光学材料の分極軸の方向は、電場を与えたときに屈折率の変化が最大になる方向を指す。分極軸を光学軸と呼ぶこともある。図61において、分極軸の方向は、実線両矢印で示されている。分極軸に沿った方向における屈折率neは、印加される電圧に応じて変化する。
本実施形態において使用され得る電気光学材料は、例えば、KTa1−xNb、またはK1−yTa1−xNb(Aはアルカリ金属であり、典型的にはLiまたはNa)で表される化合物であり得る。xはNbのモル比を表し、yはAのモル比を表す。xおよびyは、0よりも大きく1よりも小さい実数である。
電気光学材料は、以下の化合物のいずれかであってもよい。
・KDP(KHPO)型結晶・・・例えば、KDP、ADP(NHPO)、KDA(KHAsO)、RDA(RbHPO)、またはADA(NHAsO
・立方晶系材料・・・例えば、KTN、BaTiO、SrTiOPbMgNb、GaAs、CdTe、またはInAs
・正方晶系材料・・・例えば、LiNbOまたはLiTaO
・せん亜鉛鉱型材料・・・例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、GaAs、またはCuCl
・タングステンブロンズ型材料・・・KLiNbO、SrBaNb、KSrNbO、BaNaNbO、CaNb
図61に示すように、電気光学材料の分極軸を一対の電極62に垂直な方向に揃え、一対の電極62に印加する電圧を駆動回路110によって変化させることで屈折率を変化させることができる。この際、入射光をS偏光とすることで偏光面と電気光学材料の分極軸が平行となる。このため、電圧による屈折率変化が最も効果的に入射光に反映され、光の出射角度の変化を大きくすることができる。
図62は、光導波層20に電気光学材料77を用いた構成の第2の例を示している。図61の構成との違いは、一対の電極62が、図示されていない第1および第2のミラーに平行に配置されていることである。この例では、電圧印加時に電極62間に発生する電場の方向、すなわち各電極62の法線方向はZ方向であるため、電気光学材料の分極軸の方向もその方向に揃えられている。この例では、入射光をP偏光とすることにより、偏光面と電気光学材料の分極軸とが平行となる。このため、電圧による屈折率変化が入射光に反映され、光の出射角度の変化を大きくすることができる。
このように、光導波層20に電気光学材料を使用し、光の偏光方向、および、電気光学材料の分極軸を電極62と垂直方向に揃え、印加する駆動電圧を制御することで、光の出射角度を変化させ、光線の方向を制御することができる。
図63Aおよび図63Bは、各ミラー30、40に垂直な一対の電極62の配置の他の例を示している。図63Aの例では、一対の電極62は、第2のミラー40の近傍にのみ配置されている。図63Bの例では、一対の電極62は、第1のミラー30の近傍にのみ配置されている。これらの例のように、一対の電極62は、光導波層20の一部の両側にのみ設けられていてもよい。これらの電極62は、第2のミラー40を支持する基板、または第1のミラー30を支持する基板のいずれかに設けられていてもよい。図63Aおよび図63Bのような構成は、光導波層20の材料が液晶材料および電気光学材料のいずれの場合にも適用され得る。
以上のように、図54Aから図63Bに示す光スキャンデバイスにおける光導波層20は、液晶材料または電気光学材料を含む。液晶材料の配向方向または電気光学材料の分極軸の方向は、一対の電極62に電圧が印加されていない状態において、光導波層20が延びる方向に平行または垂直である。駆動回路110は、一対の電極62に電圧を印加することにより、光導波層20を伝搬する光に対する液晶材料または電気光学材料の屈折率を変化させることで、光導波層20から出射される光の方向を変化させる。これにより、入射光の偏光方向を適切に設定することで、光導波層20の屈折率の変化を大きくし、光の出射角度の変化を大きくすることができる。
なお、前述のように、2つの方向が「平行」または「一致する」とは、厳密に平行である、または一致することのみならず、両者のなす角度が15度以下であることを含む。また、2つの方向が「垂直」とは、厳密に垂直であることを意味せず、両者のなす角度が75度以上105度以下であることを含む。
<位相シフトのための屈折率変調>
次に、第2調整素子による複数の位相シフタ80における位相の調整のための構成を説明する。複数の位相シフタ80における位相の調整は、位相シフタ80における導波路20aの屈折率を変化させることによって実現され得る。この屈折率の調整は、既に説明した、各導波路素子10における光導波層20の屈折率を調整する方法と全く同じ方法によって実現することができる。例えば、図42Aから図43を参照しながら説明した屈折率変調の構成および方法をそのまま適用することができる。図42Aから図43に関する説明において、導波路素子10を位相シフタ80と読み替え、第1調整素子60を第2調整素子と読み替え、光導波層20を導波路20aと読み替え、第1駆動回路110を第2駆動回路210と読み替える。このため、位相シフタ80における屈折率変調についての詳細な説明は省略する。
各位相シフタ80における導波路20aは、電圧の印加または温度変化に応じて屈折率が変化する材料を含む。第2調整素子は、各位相シフタ80における導波路20aに電圧を印加する、または導波路20aの温度を変化させることにより、導波路20a内の屈折率を変化させる。これにより、第2調整素子は、複数の位相シフタ80から複数の導波路素子10に伝搬する光の位相の差をそれぞれ変化させることができる。
各位相シフタ80は、光が通過するまでの間に、少なくとも2πの位相シフトが可能なように構成され得る。位相シフタ80における導波路20aの単位長さあたりの屈折率の変化量が小さい場合には、導波路20aの長さを大きくしてもよい。例えば、位相シフタ80の大きさは、数百マイクロメートル(μm)から数ミリメートル(mm)、場合によってはそれ以上であってもよい。これに対し、各導波路素子10の長さは、例えば数十μmから数十mm程度の値であり得る。
<同期駆動のための構成>
本実施形態では、第1調整素子は、複数の導波路素子10から出射される光の方向が揃うように、各導波路素子10を駆動する。複数の導波路素子10から出射される光の方向を揃えるために、例えば、各導波路素子10に個別に駆動部を設け、これらの駆動部を同期駆動する。
図64は、それぞれの導波路素子10の電極62から配線64を共通に取り出す構成の例を示す図である。図65は、一部の電極62および配線64を共通にした構成の例を示す図である。図66は、複数の導波路素子10に対して共通の電極62を配置した構成の例を示す図である。図64〜図66において、直線の矢印は光の入力を示している。これらの図に示すような構成にすることで、導波路アレイ10Aを駆動するための配線をシンプルにすることができる。
本実施形態の構成によれば、シンプルなデバイス構成で2次元的に光をスキャンすることが可能である。例えば、N本の導波路素子10で構成された導波路アレイを同期駆動する場合、それぞれ独立の駆動回路を設けると、N個の駆動回路が必要である。しかし、上記のように電極または配線を共通にする工夫を行えば1つの駆動回路で動作させることができる。
導波路アレイ10Aの前段に位相シフタアレイ80Aを設けた場合、それぞれの位相シフタ80を独立に動かすためには、さらにN個の駆動回路が必要である。しかし、図41の例のように位相シフタ80をカスケード状に配置することにより、1つの駆動回路でも動作させることができる。すなわち、本開示の構成では、2個ないし2N個の駆動回路で、2次元的に光をスキャンさせる動作を実現できる。また、導波路アレイ10Aおよび位相シフタアレイ80Aをそれぞれ独立して動作させてもよいため、互いの配線が干渉することなく容易に引き出すことができる。
<製造方法>
導波路アレイ、位相シフタアレイ80A、およびこれらをつなぐ導波路は、半導体プロセス、3Dプリンター、自己組織化、ナノインプリントなど、高精度の微細加工が可能なプロセスによって製造することができる。これらのプロセスにより、小さい領域に必要な要素を集積することが可能である。
特に、半導体プロセスを利用すれば、加工精度が極めて高く、量産性も高いという利点がある。半導体プロセスを利用する場合、基板上に蒸着、スパッタ、CVD、塗布などによって様々な材料を成膜することができる。さらに、フォトリソグラフィーとエッチングプロセスにより、微細加工が可能である。基板の材料として、例えばSi、SiO、Al、AlN、SiC、GaAs、GaNなどを用いることができる。
<変形例>
続いて、本実施形態の変形例を説明する。
図67は、位相シフタアレイ80Aを配置する領域を大きく確保して、導波路アレイを小さく集積した構成の例を模式的に示す図である。このような構成によれば、位相シフタ80の導波路を構成する材料において小さな屈折率変化しか生じない場合でも、十分な位相シフト量を確保することができる。また、位相シフタ80を熱で駆動する場合、間隔を広く取れるため、隣の位相シフタ80に与える影響を小さくすることができる。
図68は、2つの位相シフタアレイ80Aaおよび80Abが、導波路アレイ10Aの両側にそれぞれ配置された構成例を示す図である。この例では、光スキャンデバイス100は、2つの光分岐器90aおよび90b、ならびに2つの位相シフタアレイ80Aaおよび80Abを、導波路アレイ10Aの両側に有している。図68において点線で示されている直線の矢印は、光分岐器90aおよび90bおよび位相シフタ80aおよび80bを伝搬する光を示している。位相シフタアレイ80Aaおよび光分岐器90aは、導波路アレイ10Aの一方の側に接続され、位相シフタアレイ80Abおよび光分岐器90bは、導波路アレイ10Aの他方の側に設けられている。光スキャンデバイス100は、さらに、光分岐器90aへの光の供給と光分岐器90bへの光の供給を切り替える光スイッチ92を備えている。光スイッチ92を切り替えることにより、図68における左側から導波路アレイ10Aに光を入力する状態と、図68における右側から導波路アレイ10Aに光を入力する状態とを切り替えることができる。
本変形例の構成によれば、導波路アレイ10Aから出射される光のX方向についてのスキャン範囲を拡大できるという利点がある。導波路アレイ10Aに片側から光を入力する構成においては、各導波路素子10の駆動によって、光の方向を、正面方向(すなわち、+Z方向)から、+X方向または−X方向のいずれかの方向に沿ってスキャンすることができる。これに対して、本変形例では、図68における左側の光分岐器90aから光を入力した場合、正面方向から+X方向に沿って光をスキャンすることができる。一方、右側の光分岐器90bから光を入力した場合、正面方向から−X方向に光をスキャンすることができる。つまり、図68の構成では、正面から見て図68における左右両方向に光をスキャンすることができる。このため、片側から光を入力する構成に比べて、スキャンの角度範囲を広くすることができる。光スイッチ92は、不図示の制御回路(例えば、マイクロコントローラユニット)から電気信号で制御される。本構成例によれば、全ての素子の駆動を電気信号によって制御することができる。
以上の説明では、導波路素子10の配列方向および導波路素子10が延びる方向が直交している導波路アレイのみを扱ってきた。しかし、これらの方向が直交している必要はない。例えば、図69Aに示すような構成を用いてもよい。図69Aは、導波路素子10の配列方向d1および導波路素子10が延びる方向d2が直交していない導波路アレイの構成例を示している。この例において、各導波路素子10の光出射面は、同一平面内になくてもよい。このような構成であっても、各導波路素子10および各位相シフタを適切に制御することにより、光の出射方向d3を2次元的に変化させることができる。
図69Bは、導波路素子10の配列間隔が一定でない導波路アレイの構成例を示している。このような構成を採用する場合であっても、各位相シフタによる位相シフト量を適切に設定することにより、2次元スキャンを行うことができる。図69Bの構成においても、導波路アレイの配列方向d1と、各導波路素子10の延びる方向d2とが直交していなくてもよい。
<基板上に第1および第2の導波路が配置された実施形態>
次に、基板上に第1および第2の導波路が配置された光スキャンデバイスの実施形態を説明する。
本実施形態における光スキャンデバイスは、第1の導波路と、第1の導波路に繋がる第2の導波路と、第1および第2の導波路を支持する基板とを備える。より具体的には、光スキャンデバイスは、第1の方向に配列された複数の導波路ユニットと、これらの複数の導波路ユニットを支持する基板とを備える。複数の導波路ユニットの各々は、第1の導波路と、第2の導波路とを備える。第2の導波路は、第1の導波路に繋がり、第1の方向に交差する第2の方向に光を伝搬させる。基板は、各導波路ユニットにおける第1の導波路および第2の導波路を支持する。
第2の導波路は、前述の実施形態における反射型導波路に相当する。すなわち、第2の導波路は、多層反射膜を有する第1のミラーと、第1のミラーの前記多層反射膜に対向する多層反射膜を有する第2のミラーと、第1のミラーと第2のミラーの間に位置し、前記第1の導波路に入力され第1の導波路を伝搬した光を伝搬させる光導波層と、を有する。第1のミラーは、第2のミラーよりも高い光透過率を有し、光導波層内を伝搬する光の一部を、光導波層の外部に出射する。光スキャンデバイスは、第2の導波路における光導波層の屈折率および厚さの少なくとも一方を変化させることにより、第2の導波路から出射される光の方向を変化させる調整素子をさらに備える。
本実施形態によれば、1つの基板の上に第1および第2の導波路を配置することにより、第1の導波路1および第2の導波路10の位置合わせが容易になる。さらに、熱膨張による第1および第2の導波路の位置のずれが抑制される。その結果、第1の導波路から第2の導波路へ効率よく光を導入することができる。
光導波層は、例えば電圧が印加された場合に、光導波層を伝搬する光に対する屈折率が変化する材料を含み得る。その場合、調整素子は、光導波層に電圧を印加することにより、光導波層の屈折率を変化させる。これにより、調整素子は、第2の導波路から出射される光の方向を変化させる。
第1の導波路の少なくとも一部は、前述の位相シフタとしての機能を有していてもよい。その場合、第1の導波路には、例えば屈折率を変調させる機構が組み込まれる。光スキャンデバイスは、第1の導波路の少なくとも一部の領域の屈折率を変調させる第2調整素子を備えていてもよい。第2調整素子は、例えば、第1の導波路の近傍に配置されたヒーターであり得る。ヒーターから発する熱によって第1の導波路の少なくとも一部の領域の屈折率を変化させることができる。これにより、第1の導波路から第2の導波路に入力される光の位相が調整される。第1の導波路から第2の導波路に入力される光の位相を調整するための構成は、前述のとおり多様である。それらのいずれの構成を採用してもよい。
位相シフタは、第1の導波路の外部に設けられていてもよい。その場合、第1の導波路は、外部の位相シフタと、導波路素子(第2の導波路)との間に位置する。位相シフタと、第1の導波路との間には明確な境界がなくてもよい。例えば、位相シフタと、第1の導波路とが、導波路および基板等の構成要素を共用していてもよい。
第1の導波路は、光の全反射を利用する一般的な導波路であってもよいし、反射型導波路であってもよい。位相が変調された光は、第1の導波路を経て、第2の導波路に導入される。
以下、基板上に第1および第2の導波路が配置された光スキャンデバイスの実施形態をより詳細に説明する。以下の説明においては、光スキャンデバイスが複数の導波路ユニットを備えているものとする。光スキャンデバイスは、単一の導波路ユニットを備えていてもよい。すなわち、第1の導波路および第2の導波路の組み合わせを1つだけ備える光スキャンデバイスも、本開示の範囲に含まれる。
図70Aは、本実施形態における光スキャンデバイスを模式的に示す図である。この光スキャンデバイスは、Y方向に配列された複数の導波路ユニットと、複数の導波路ユニットを支持する基板50とを備えている。各導波路ユニットは、第1の導波路1と、第2の導波路10とを備えている。基板50は、各導波路ユニットにおける第1の導波路1および第2の導波路10を支持している。
基板50は、XY平面に沿って拡がっている。基板50の上面および下面は、XY平面に略平行に配置されている。基板50は、例えば、ガラス、Si、SiO、GaAs、GaNなどの材料を用いて構成され得る。
第1の導波路アレイ1Aは、Y方向に配列された複数の第1の導波路1を含む。第1の導波路1の各々は、X方向に延びた構造を有する。第2の導波路アレイ10Aは、Y方向に配列された複数の第2の導波路10を含む。第2の導波路10の各々は、X方向に延びた構造を有する。
図70Bは、図70Aにおける一方の破線で示されたXZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。基板50の上に、第1の導波路1および第2の導波路10が配置されている。第2のミラー40は、光導波層20と基板50との間、および第1の導波路1と基板50との間の領域に拡がっている。第1の導波路1は、例えば、光の全反射を利用する一般的な導波路である。当該導波路1は、例えば、SiまたはGaAsなどの半導体の導波路を含む。第2の導波路10は、光導波層20と、第1および第2のミラー30および40とを有する。光導波層20は、対向する第1のミラー30と第2のミラー40の間に位置する。光導波層20は、第1の導波路に入力され第1の導波路1を伝搬した光を伝搬させる。
本実施形態における光導波層20は、電圧が印加された場合に、光導波層20を伝搬する光に対する屈折率が変化する材料を含んでいる。調整素子は、一対の電極を有する。一対の電極は、下部電極62aと上部電極62bとを含む。下部電極62aは、光導波層20と第2のミラー40との間に配置されている。上部電極62bは、光導波層20と第1のミラー30との間に配置されている。本実施形態における調整素子は、一対の電極62a、62bに電圧を印加することにより、光導波層20の屈折率を変化させる。これにより、調整素子は、第2の導波路10から出射される光の方向を変化させる。一対の電極62a、62bの各々は、図示されるように光導波層20に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
図70Bの構成例では、積層された基板50および第2のミラー40を有する共通の支持体の上に、他の構造物が配置される。すなわち、一体に形成された一つの支持体の上に、第1の導波路1と、第1の電極62a、光導波層20、第2の電極62b、および第1のミラー30の積層体とが作製される。共通の支持体を用いているため、第1の導波路1および光導波層20の作製時の位置合わせが容易になる。さらに、熱膨張による第1の導波路1および光導波層20の接続部分の位置のずれが抑制される。支持体は、例えば、支持基板である。
図70Cは、図70Aにおける他方の破線で示されたYZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。この例では、第2のミラー40は、複数の第2の導波路10によって共用されている。すなわち、複数の第2の導波路10における第2のミラー40は互いに分離されていない。同様に、下部電極62aも、複数の第2の導波路10によって共用されている。これにより、製造プロセスが簡素化される。
一方、複数の第2の導波路10における光導波層20、上部電極62b、および第1のミラー30は、互いに分離して配置されている。これにより、各光導波層20は、光をX方向に伝搬させることができる。上部電極62bおよび第1のミラー30は、分離していなくてもよい。
以下に、本実施形態における光スキャンデバイスの変形例を説明する。以下の変形例において、重複する構成要素の説明は、省略されている。
図71Aは、第2のミラー40と導波路1との間に誘電体層51が配置された構成例を示す図である。この例における光スキャンデバイスは、第2のミラー40と第1の導波路1との間に拡がる誘電体層51をさらに備えている。この誘電体層51は、第1の導波路1と光導波層20との高さのレベルを合わせる調整層として機能する。以下、誘電体層51を調整層51と称する。Z方向における調整層51の厚さを調整することにより、第1の導波路1から光導波層20への光の結合効率を高めることができる。さらに、調整層51は、第1の導波路1における導波光が第2のミラー40によって吸収、散乱または反射されることを防ぐスペーサの役割を果たす。第1の導波路1は、全反射により光を伝搬させる。そのため、調整層51は、第1の導波路1の屈折率よりも低い屈折率を有する透明材料によって構成される。例えば、調整層51は、SiOなどの誘電体材料で形成され得る。
第1の導波路1の上に、他の誘電体層を保護層としてさらに配置してもよい。
図71Bは、第1の導波路1の上に第2の誘電体層61がさらに配置された構成例を示す図である。このように、光スキャンデバイスは、第1の導波路1の少なくとも一部を覆う第2の誘電体層61をさらに備えていてもよい。第2の誘電体層61は、第1の導波路1に接し、第1の導波路1の屈折率よりも低い屈折率を有する透明材料によって構成されている。第2の誘電体層61は、第1の導波路1の上にパーティクルまたはごみが付着することを防ぐ保護層として機能する。これにより、第1の導波路1における導波光のロスを抑制することができる。以下、第2の誘電体層61を保護層61と称する。
図71Bに示す第1の導波路1は、位相シフタとして機能する。光スキャンデバイスは、第1の導波路1の屈折率を変調させることによって光導波層20に導入される光の位相を変化させる第2調整素子をさらに備える。第1の導波路1が熱光学材料を含む場合、第2調整素子は、ヒーター68を含む。第2調整素子は、ヒーター68から発する熱によって第1の導波路1の屈折率を変調させる。
ヒーター68に含まれる金属などの配線材料は、光を吸収、散乱または反射し得る。保護層61は、第1の導波路1とヒーター68とを遠ざけることによって、第1の導波路1における導波光のロスを抑制する。
保護層61は、調整層51と同じ材料(例えばSiO)で形成されてもよい。保護層61は、第1の導波路1だけでなく、第2の導波路10の少なくとも一部を覆っていてもよい。その場合、第1のミラー30の少なくとも一部が保護層61で覆われる。保護層61は、第2の導波路10のみを覆っていてもよい。保護層61が透明材料であれば、第2の導波路10から出射される光は、保護層61を透過する。このため、光の損失を小さく抑えることができる。
図72は、第2のミラー40が第1の導波路1と基板50との間の領域に配置されていない構成例を示す図である。この例における調整層51は、第1の導波路1と基板50との間に拡がっている。調整層51は、第1の導波路1および基板50に接している。第2のミラー40が第1の導波路1の下にないため、第1の導波路1における導波光は、第2のミラー40の影響を受けない。
図73は、図71Bの構成例と比較して、第2のミラー40が第1の導波路1と基板50との間において薄くなっている構成例を示す図である。この例のように、第2のミラー40は、第1の導波路1と基板50との間において、第2の導波路10と基板50との間における第2のミラー40の厚さよりも薄い箇所を有していてもよい。第1の導波路1と第2のミラー40との間には、調整層51が配置されている。このような構造により、第1の導波路1における導波光は、第2のミラー40の影響を受けにくくなる。図73の例では、図72の例と比較して、第1の導波路1と光導波層20との接続箇所において第2のミラー40によって生じる段差が小さい。したがって、加工がより容易である。
第2のミラー40の厚さは、導波路1に沿って変化していてもよい。以下、そのような例を説明する。
図74Aは、第2のミラー40の厚さが段階的に変化する構成例を示す図である。第1の導波路1と基板50との間において、第2のミラー40の厚さは、第1の導波路1に沿って変化している。
図74Aの例では、第1の導波路1の左の部分の下には、第2のミラー40が存在しない。第1の導波路1の左の部分は、光導波層20よりも低い位置にある。一方、第1の導波路1の右の部分、すなわち光導波層20に接続される部分の下には、第2のミラー40が存在する。第1の導波路1の右の部分は、光導波層20と同程度の高さに位置する。保護層61の厚さを調整することにより、保護層61の上面を平らにすることができる。
図74Aの構成例では、保護層61の上に配置されたヒーター68は、第1の導波路1から十分に離れている。したがって、第1の導波路1における導波光は、ヒーター68の配線による影響を受けにくい。このため、第1の導波路1における導波光のロスは抑制される。
図74Bは、上部電極62b、第1のミラー30、および第2の基板50Cが、第1の導波路1における保護層61と、第2の導波路10における光導波層20との上に跨って配置されている構成例を示す図である。図74Cは、図74Bの構成例の製造過程の一部を示す図である。
図74Bの例において、上部電極62b、第1のミラー30、および第2の基板50Cを含む構造体(以下、「上部構造体」と称する。)と、上部電極62bよりも下の構造体(以下、「下部構造体」と称する。)とは、別々に製造される。
下部構造体の製造については、まず、第1の基板50の上に、傾斜を有する第2のミラー40が形成される。第2のミラー40における傾斜を含む部分に、調整層51、導波路1の層、および保護層61がこの順に形成される。第2のミラー40における平らな部分に、下部電極62aおよび光導波層20が形成される。
上部構造体は、第2の基板50Cの上に、第1のミラー30および上部電極62bをこの順で積層することによって作製される。上部構造体は、図74Cに示すように、上下を反転させ、下部構造体の上に貼り付けられる。以上の製造方法によれば、第1の導波路1および第2の導波路10の精密な位置合わせを不要にできる。
保護層61の上面、すなわち、第1の導波路1に接する表面とは反対側の表面は、第2の導波路10における光導波層20の上面よりも低い。第1の導波路1におけるヒーター68の上面は、第2の導波路10における光導波層20の上面と、ほぼ同じ高さである。この場合、上部構造体と下部構造体とを、段差なく貼り合わせることができる。上部構造体は、蒸着またはスパッタリングなどの方法によって形成してもよい。
図75は、図74Bに示す構造を有する光スキャンデバイスにおける複数の第2の導波路10のYZ面断面を示す図である。この例では、第1のミラー30、第2のミラー40、および電極62a、62bは、複数の第2の導波路10によって共用されている。共通の電極62a、62bの間に、複数の光導波層20が配置されている。複数の光導波層20の間の領域は、スペーサ73である。スペーサ73は、例えば、空気(または、真空)、SiO、TiO、Ta、SiNまたはAlNなどの透明材料である。スペーサ73が固体材料であれば、上部構造体を蒸着またはスパッタリングなどの方法によって形成することができる。スペーサ73は、隣接する光導波層20の両方に直接接触していてもよい。
第1の導波路1は、光の全反射を利用する一般的な導波路である必要はない。例えば、第1の導波路1は、第2の導波路10と同様の反射型導波路であってもよい。
図76は、第1の導波路1および第2の導波路10が、反射型導波路である構成例を示す図である。第1の導波路1は、対向する2つの多層反射膜3、40に挟まれている。第1の導波路1は、第2の導波路10と同じ原理で、光を伝搬させる。多層反射膜3の厚さが十分に大きければ、第1の導波路1から光は出射しない。
図76の構成例では、図25および図26などを参照して説明したように、2つの反射型導波路の接続条件を最適化することで、光の結合効率を高くすることができる。そのような最適化により、第1の導波路1から第2の導波路10へ効率よく光を導入することができる。
次に、一対の電極62a、62bの配置の変形例を説明する。図70A〜図76の例では、一対の電極62a、62bは、第2の導波路10における光導波層20に接触している。図70Cおよび図75の例では、電極62a、62bの一方または両方が、複数の第2の導波路10によって共用されている。電極62a、62bの構成は、このような構成に限定されない。
図77は、上部電極62bが第1のミラー30の上に配置されており、下部電極62aが第2のミラー40の下に配置されている構成例を示す図である。第1のミラー30は、上部電極62bと光導波層20との間に配置されている。第2のミラー40は、下部電極62aと光導波層20との間に配置されている。この例のように、一対の電極62a、62bは、光導波層20を、第1および第2のミラー30および40を介して、間接的に挟んでいてもよい。
図77の例において、下部電極62aは、第1の導波路1の側にまで延びている。下部電極62aから配線を取り出すときに、第1の導波路10の下のスペースを用いることができる。よって配線の設計の自由度が増す。
この例では、一対の電極62a、62bは、光導波層20に接触していない。光導波層20における導波光は、一対の電極62a、62bによる吸収、散乱または反射などの影響を受けにくい。このため、光導波層20における導波光のロスが抑制される。
図78は、さらに他の変形例を示す断面図である。この例では、第1の導波路1は、第1の部分1aと第2の部分1bとに分離されている。第1の部分1aは、相対的に低い位置にあり、第2の導波路10から離れている。第2の部分1bは、相対的に高い位置にあり、第2の導波路10の光導波層20に繋がっている。第1の部分1aおよび第2の部分1bは、+Z方向から見たときに重なる部分を有する。第1の部分1aおよび第2の部分1bは、X方向に略平行に延びている。この例では、調整層51も、2つの部分51a、51bに分離されている。調整層の第1の部分51aは、第1の導波路の第1の部分1aと下部電極62aとの間に配置されている。調整層の第2の部分51bは、第1の導波路の第2の部分1bと第2のミラー40との間に配置されている。保護層61は、第1の導波路の第1の部分1aおよび第2の部分1bの上に配置されている。第1の導波路の第1の部分1aの一部と、第1の導波路の第2の部分1bの一部とが、保護層61を介して対向している。電極62a、62bの配置は、図77における配置と同様である。
図78に示す構成では、第1の導波路の第1の部分1aおよび第2の部分1bの間隔、すなわちZ方向における距離は、導波路内での光の波長以下である。この場合、エバネッセント結合により、第1の部分1aから第2の部分1bへ光を伝搬させることができる。この例では、図74Aの例とは異なり、第2のミラー40の厚さを第1の導波路1a、1bに沿って変化させる必要はない。
図79は、電極62が、隣り合う2つの光導波層20の間に配置されている構成例を示す図である。この例における調整素子は、複数の電極62を有し、これらの電極62に正負(図中では+および−で表示)の電圧を交互に印加する。これにより、各光導波層20の内部に、図79における左右方向の電場を発生させることができる。
図79の例では、Y方向において隣り合う2つの電極62は、その間の光導波層20の少なくとも一部に接触している。光導波層20と電極62との接触領域の面積は小さい。したがって、電極62が光を吸収、散乱または反射する材料であっても、光導波層20における導波光のロスを抑制することができる。
図70Aから図79の構成例では、スキャンに用いられる光は、第1のミラー30を通して出射される。スキャンに用いられる光は、第2のミラー40を通して出射されてもよい。
図80は、第1のミラー30が厚く、第2のミラー40が薄い構成の例を示す図である。図80の例では、光は第2のミラー40を透過して基板50の側から出射される。この例における基板50は、透光性を有する材料によって構成される。基板50から出射される光をスキャンに用いることにより、光スキャンデバイスの設計の自由度が増す。
<ミラーの幅に関する検討>
図81は、本実施形態おける、複数の導波路素子10をY方向に配列した導波路アレイ10Aの構成例を模式的に示す、YZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。図81の構成例では、Y方向において、第1のミラー30の幅は、光導波層20の幅よりも長い。第2のミラー40は、複数の導波路素子10によって共用されている。言い換えれば、各導波路素子10における第2のミラー40は、1つの繋がったミラーの一部である。第1のミラー30、光導波層20の端面からY方向に突出する部分を有する。Y方向における当該突出する部分の寸法を、yとする。Y方向における、光導波層20の端面からの距離を、yとする。y=0は、光導波層20の端面に相当する。
導波光が光導波層20内をX方向に伝搬するとき、Y方向において、光導波層20からエバネッセント光が染み出す。Y方向における当該エバネッセント光の光強度Iは、以下の式で表される。
Figure 2019174538
ただし、光導波層20からのエバネッセント光の光強度が、光導波層20の端面における光導波層20からのエバネッセント光の光強度の1/eになる位置の、光導波層20の端面からのY方向における距離を、yとするとき、yは以下の式を満たす。
Figure 2019174538
は、y=0における、当該エバネッセント光の光強度である。全反射角θinは、図33に示されている。y=yにおいて、当該エバネッセント光の光強度Iは、Iの1/eになる。eは、自然対数の底である。
簡単のため、図33に示すように、光導波層20内における導波光を、光線として近似する。図81の構成例に示すように、第1のミラー30がy>yにおいて存在しない場合、y=0における導波光の1回の反射による光の漏れまたは光ロス(Lloss)は、以下の式で表される。
Figure 2019174538
式(4)に示すように、導波路素子10からの出射光の広がり角θdivを、0.1°以下にするためには、導波路素子10のX方向における伝搬長Lは、1mm以上であることが望ましい。このとき、Y方向における光導波層20の幅をaとすると、図33において、±Y方向における全反射の回数は、1000/(a・tanθin)以上である。a=1μmおよびθin=45°においては、全反射の回数は1000回以上である。1回の反射における光ロスを表す式(21)を用いると、β回の反射における光ロスは、以下の式で表される。
Figure 2019174538
図82は、β=1000の場合における、光ロス(L(β) loss)の割合およびyの関係を示す図である。縦軸は、光ロスの割合であり、横軸はyである。図82に示すように、光ロスの割合を50%以下にするために、例えば、y≧7yが満たされる。同様に、光ロスの割合を10%以下にするため、例えば、y≧9yが満たされる。光ロスの割合を1%以下にするために、例えば、y≧11yが満たされる。
式(21)に示すように、原理的には、yを大きくすることで、光ロスを低減することができる。しかし、光ロスは、ゼロではない。
図83は、本実施形態おける、導波路素子10をY方向に配列した導波路アレイ10Aの別の構成例を模式的に示す、YZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。図83の構成例では、第1および第2のミラー30および40は、複数の導波路素子10によって共用されている。言い換えれば、各導波路素子10における第1のミラー30は、1つの繋がったミラーの一部であり、各導波路素子10における第2のミラー40は、1つの繋がった他のミラーの一部である。これにより、原理的に光ロスを最小化することができる。
次に、図32Bおよび図83の構成例における光導波層20からのエバネッセント光の漏れ出しを、数値計算を用いて比較する。
図84Aは、図32Bの構成例における、電場強度分布の計算結果を示す図である。図84Bは、図83の構成例における、電場強度分布の計算結果を示す図である。数値計算には、Synopsys社のFemSimを用いた。図84Aおよび図84Bにおいて、Y方向における光導波層20の幅は、1.5μmであり、Z方向における光導波層20の厚さは、1μmであり、光の波長は、1.55μmであり、n=1.68およびnlow=1.44である。nおよびnlowのこの組み合わせは、例えば、光導波層20に含まれる液晶材料を、SiOのスペーサ73によって閉じ込める場合に相当する。
図84Aに示すように、図32Bの構成例では、第1のミラー30が存在しない領域から、エバネッセント光が漏れ出ることがわかる。一方、図84Bに示すように、図83の構成例では、そのようなエバネッセント光の漏れ出しは無視することができる。図84Aおよび図84Bにおいて、導波光がX方向に伝搬する際、第1のミラー30からの光出射およびエバネッセント光の漏れ出しにより、導波光の光強度は減少する。当該導波光の光強度が1/eになる、X方向における光の伝搬長を計算すると、当該光の伝搬長は、図84Aおよび図84Bにおいて、それぞれ7.8μmおよび132μmである。
本実施形態において、スペーサ73は、2つ以上の異なる媒質で構成されてもよい。
図85は、本実施形態において、スペーサ73が、異なる屈折率を有するスペーサ73a、73bを含む構成例を模式的に示す、YZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。図85の構成例において、光導波層20に隣接するスペーサ73aの屈折率nlow1は、光導波層20に隣接しないスペーサ73bの屈折率nlow2よりも高い(nlow1>nlow2)。例えば、光導波層20が液晶材料を含む場合、液晶材料を閉じ込めるために、スペーサ73aとして、SiO2を用いてもよい。スペーサ73bは、空気であってもよい。スペーサ73bの屈折率nlow2が低ければ、光導波層20からのエバネッセント光の染み出しを抑制することができる。
図86は、本実施形態の変形例における、導波路素子10の構成例を模式的に示す、YZ平面における光スキャンデバイスの断面図である。図86の構成例では、光導波層20は、YZ平面において台形の断面を有する。第1のミラー30は、光導波層20の、上辺の上だけでなく、左右の辺の上にも配置される。これにより、光導波層20の左右の辺からの光の漏れを抑制することができる。
次に、光導波層20およびスペーサ73の材料を説明する。
図81、図83および図85の構成例において、光導波層20の屈折率nとスペーサ73の屈折率nlowとは、n>nlowの関係を満たす。すなわち、スペーサ73は、光導波層20よりも屈折率が低い材料を含む。例えば、光導波層20が電気光学材料を含む場合、スペーサ73は、SiO、TiO、Ta、SiN、AlNまたは空気などの透明材料を含んでもよい。光導波層20が液晶材料を含む場合、スペーサ73は、SiOまたは空気などを含んでもよい。光導波層20を一対の電極で挟み、電圧を印加することにより、電気光学材料または液晶材料を含む光導波層20の屈折率を変化させることができる。これにより、第1のミラー30から出射される光の出射角度を変化させることができる。光導波層20が液晶材料または電気光学材料を含む場合における、光スキャンデバイスの詳細な駆動方法などは、前述の通りである。
図83および図85の構成例を、第1のミラー30と、それ以外の構成とを貼り合わせることによって形成してもよい。これにより、製造が容易になる。また、スペーサ73が固体材料であれば、第1のミラー30を蒸着またはスパッタリングなどの方法によって形成してもよい。
図81、図83および図85の構成例において、第2のミラー40が複数の導波路素子10によって共用されていることを前提に、第1のミラー30の構成を説明した。当然、上記の議論は、第2のミラー40にも適用できる。すなわち、Y方向において、第1および第2のミラー30および40の少なくとも一方の幅が、光導波層20の幅よりも長ければ、光導波層20からのエバネッセント光の漏れ出しを抑制することができる。その結果、光スキャンに用いられる光量の低下は抑制される。
<光導波層およびスペーサに関する検討>
次に、第1のミラー30と第2のミラー40の間における、光導波層20(以下、「光導波領域20」とも称する。)およびスペーサ73(以下、「非導波領域73」とも称する。)の構成が導波モードに与える影響を詳しく説明する。以下の説明において、「幅」とはY方向の寸法を意味し、「厚さ」とはZ方向の寸法を意味する。
図83に示す構成例を導波モードの計算モデルとする。計算に用いたパラメータは以下の通りである。第1のミラー30は、屈折率が2.1の材料と、屈折率が1.45の材料とを交互に12ペア積層した多層反射膜であり、第2のミラー40は、同じ2つの材料を17ペア積層した多層反射膜である。光導波領域20の厚さはh=0.65μmであり、光導波領域20の屈折率は1.6である。非導波領域73の厚さはh=0.65μmであり、非導波領域73の屈折率は1.45である。光の波長はλ=940nmである。
非導波領域73の幅を光導波領域20の幅よりも十分大きくし、光導波領域20の幅を変えたときの導波モードの電界分布を計算した。これにより、図84Aおよび図84Bに示すようなY方向およびZ方向に依存する電界分布が得られる。Y方向およびZ方向に依存する電界分布をZ方向に積分することによって、Y方向における電界分布が得られる。Y方向における電界分布の分散σを計算するために、ガウス関数を用いたフィッティングを行った。ガウス関数では、−3σ≦Y≦3σの範囲に99.73%の成分が存在する。そこで、6σがY方向における電界分布の広がりに相当するとして、分析を行った。以下、「電界の広がり」とは、Y方向における6σの電界の広がりを意味する。
図87は、光導波領域20の幅と電界の広がりとの関係を示す図である。図87に示すように、光導波領域20の幅がw=3μm以上では、導波モードの電界の広がりは光導波領域20の幅より小さい。光導波領域20の幅がw=3μm以下では、導波モードの電界の広がりは光導波領域20の幅より大きく、非導波領域73に染み出す。
次に、非導波領域73が複数の部材を含む構成例を説明する。
図88は、本実施形態における、光導波領域20および非導波領域73の構成例を模式的に示す光スキャンデバイスの断面図である。
本実施形態における光スキャンデバイスは、第1のミラー30と、第2のミラー40と、2つの非導波領域73と、光導波領域20とを備える。
第1のミラー30は、光透過性を有し、第2のミラー40は、第1のミラー30に対向する。
2つの非導波領域73は、第1のミラー30と第2のミラー40との間において、Y方向に間隙を空けて並ぶ。Y方向は、第1のミラー30および第2のミラー40の少なくとも一方の反射面に平行である。
光導波領域20は、第1のミラー30と第2のミラー40との間で、且つ、2つの非導波領域73の間に位置する。光導波領域20は、非導波領域73の平均屈折率よりも高い平均屈折率を有する。光導波領域20は、X方向に沿って光を伝搬させる。X方向は、第1のミラー30および第2のミラー40の少なくとも一方の反射面に平行で、且つ、Y方向に垂直である。
光導波領域20および2つの非導波領域73の各々は、共通の材料45によって構成される領域を含む。光導波領域20または2つの非導波領域73の各々は、共通の材料45とは異なる屈折率を有する少なくとも1つの部材46をさらに含む。図示されるように、当該少なくとも1つの部材46は、第1のミラー30および第2のミラー40の少なくとも一方に接していてもよい。
第1のミラー30は、第2のミラー40よりも高い光透過率を有する。第1のミラー30は、光導波領域20内を伝搬する光の一部を、光導波領域20から、XY平面に交差す方向に出射する。XY平面は、X方向およびY方向によって形成される平面である。外部の調整素子は、光導波領域20の屈折率および/または厚さを変化させる。これにより、光導波領域20から出射される光の方向が変化する。より具体的には、調整素子により、出射される光の波数ベクトルのX成分が変化する。
図88に示す例では、光導波領域20および2つの非導波領域73の各々は、共通の材料45を含み、2つの非導波領域73の各々は、部材46を含む。部材46は第2のミラー40に接する。部材46の屈折率nが共通の材料45の屈折率nよりも低いとき、光導波領域20の平均屈折率は、非導波領域73の平均屈折率よりも高い。これにより、光は、光導波領域20を伝搬することができる。共通の材料45および部材46の各々は、例えば、SiO、TaO、TiO、AlO、SiN、AlN、およびZnOからなる群から選択される一種類の材料であり得る。Z方向において、部材46の寸法が、第1のミラー30と第2のミラー40の間の距離(以下、「ミラー間距離」と称する。)のr倍(0≦r≦1)であるとき、非導波領域73の平均屈折率は、nave=n×r+n×(1−r)である。以下、「部材の寸法」とは、Z方向における部材の寸法を意味する。
図88に示す例において、導波モードをさらに詳しく分析した。第1のミラー30および第2のミラー40の構成は、図87に示す計算に用いた構成と同じである。計算に用いた屈折率は、n=1.45およびn=1.6である。光導波領域20の幅はw=6μmである。光導波領域20の幅は、2つの離れた非導波領域73の距離でもある。光導波領域20の厚さは、h=0.65μmまたは2.15μmである。0.65μmおよび2.15μmの厚さは、それぞれ式(9)における2次(m=2)および7次(m=7)のモードに対応する。非導波領域73の厚さは、光導波領域20の厚さと同じである。ミラー間距離に対する部材46の寸法の比rによって導波モードの電界の広がりがどのように変化するか調べた結果を以下に示す。
図89Aは、r=0.1およびh=2.15μmでの導波モードの電界分布の計算結果を示す図である。図89Bは、r=0.5およびh=2.15μmでの導波モードの電界分布の計算結果を示す図である。いずれにおいても、図84Bに示す導波モードと同様の導波モードが存在することが確認できる。図89Aに示すr=0.1のときの方が、図89Bに示すr=0.5のときよりも、電界分布がY方向により広がることがわかる。
図90は、光導波領域20の幅がw=6.0μmでの、ミラー間距離に対する部材46の寸法の比rと電界の広がりとの関係を示す図である。光導波領域20の厚さは、h=0.65μm(m=2、図中の実線)またはh=2.15μm(m=7、図中の点線)である。図90に示すように、rを小さくする、すなわち、部材46の寸法を小さくするほど、電界の広がりが大きくなることがわかる。2次および7次の導波モードにおいて、電界の広がりはほとんど同じ振舞いを示す。特に、r≦0.2では、電界の広がりが急激に大きくなり、光導波領域20の幅(w=6.0μm)を超えることがわかる。
図91は、図90に示す例における、ミラー間距離に対する部材46の寸法の比rと導波モードの消衰係数との関係を示す図である。図91に示すように、rを変化させても、消衰係数のオーダー(10−5)はほとんど同じである。すなわち、消衰係数はrにほとんど依存しない。しかし、電界が非導波領域73まで広がると、様々な要因で散乱または吸収が増大し得る。例えば、非導波領域73の端が平滑でないとき、非導波領域73にパーティクルが存在するとき、または、非導波領域73自体が光吸収するときには、光導波領域20を伝搬する光に損失が生じる。したがって、電界の広がりが非導波領域73に染み出さない条件であるr≧0.2が望ましい。
次に、光導波領域20の幅、すなわち、2つの離れた非導波領域73の距離がw=3μmである構成例を分析した。これは、r=1である図87に示すように、電界の広がりがちょうど光導波層20の幅と同程度である条件である。
図92は、光導波領域20の幅がw=3.0μmでの、ミラー間距離に対する部材46の寸法の比rと電界の広がりとの関係を示す図である。図90に示す例と同様に、r≦0.2では、電界の広がりが急激に大きくなることがわかる。r<0.1では、電界の広がりは6μmを超える。
たとえ導波モードの電界が過度に広がっても、単体の光導波領域20を用いて光スキャンデバイスを構成するときには問題ない。しかし、光導波領域20をアレイ化した光スキャンデバイスでは、導波モードの電界の過度な広がりは避けた方がよい。当該光スキャンデバイスにおいて、2つの光導波領域20に挟まれた非導波領域73の幅が3μm以下の場合、光導波領域20の導波モードの電界は、隣の光導波領域20の導波モードの電界と非導波領域73において重なり合う。その結果、光導波領域20を伝搬する光の少なくとも一部が、隣の光導波領域20に伝わるというクロストーク現象が生じ得る。クロストーク現象は、複数の光導波領域20から出射される光の干渉効果に影響を及ぼすおそれがある。
上記の理由から、本実施形態においては、例えばr≧0.1に設定される。さらに、r≧0.2であれば、ほとんどの電界が光導波領域20の内部に分布することができる。r<0.1であっても、非導波領域73の幅が光導波領域20の幅よりも大きければ、クロストーク現象を回避することができる。すなわち、他の実施形態における光スキャンデバイスにおいては、r<0.1にすることも可能である。
本実施形態における光スキャンデバイスでは、共通の材料45にコストの安い材料を用いることにより製造コストを下げることができる。
<変形例>
図93は、本実施形態の変形例における、光導波領域20および非導波領域73の構成を模式的に示す光スキャンデバイスの断面図である。図93に示す例では、光導波領域20および2つの非導波領域73の各々は、共通の材料45を含み、光導波領域20は、部材46を含む。部材46は、第2のミラー40に接する。部材46の屈折率nが共通の材料45の屈折率nよりも高いとき、光導波領域20の平均屈折率は、非導波領域73の平均屈折率よりも高い。これにより、光は光導波領域20を伝搬することができる。この構成では、共通の材料45および部材46の各々は、例えば、SiO、TaO、TiO、AlO、SiN、AlN、およびZnOからなる群から選択される一種類の材料であり得る。共通の材料45として空気などの気体または液体を用いてもよい。その場合には、厚さを容易に変化させることができる。つまり、図93に示す構成は、厚さを変調する方式に有利である。
図94は、図93に示す例における、ミラー間距離に対する部材46の寸法の比rと電界の広がりとの関係を示す図である。計算に用いた屈折率はn=1.6およびn=1.45である。光導波領域20の幅はw=3.0μmであり、光導波領域20の厚さはh=0.65μm(m=2)である。図94からわかるように、本変形例においても、図90および図92に示す例と同様に、r≦0.2において電界の広がりは急激に大きくなる。
第1のミラー30および第2のミラー40の少なくとも一方の反射面に段差を設けることによっても、光導波領域20または非導波領域73を形成することができる。当該段差を設けることによって生じる凸部は、共通の材料45とは異なる屈折率を有する部材46に相当する。
図95Aは、第2のミラー40の反射面の一部に、他の部分から盛り上がった凸部が設けられた例を示す断面図である。この例では、凸部が、前述の例における部材46に相当する。このため、以下の説明では、凸部を「部材46」と称する。この例における凸部、すなわち部材46は、第2のミラー40と同一の材料から形成されている。部材46は、第2のミラー40の一部であるともいえる。図95Aに示す例では、共通の部材の屈折率nが、部材46の平均屈折率よりも低い。この例では、Z方向から見たときに、部材46を含む領域が光導波領域20に相当し、部材46を含まない領域が非導波領域73に相当する。
図95Bは、第2のミラー40の反射面の一部に凸部が設けられた他の例を模式的に示す断面図である。図95Bに示す例では、共通の部材の屈折率nが、凸部46の平均屈折率よりも高い。この例では、Z方向から見たときに、凸部、すなわち部材46を含まない領域が光導波領域20に相当し、部材46を含む領域が非導波領域73に相当する。
図95Aおよび図95Bに示すように、共通の材料45の屈折率と部材46の屈折率との大小関係により、光導波領域20および非導波領域73が決まる。
図96は、第1のミラー30と第2のミラー40との間において、第1のミラー30側に2つの部材46が離れて配置されている構成例を模式的に示す断面図である。図97は、第1のミラー30と第2のミラー40との間において、第1のミラー30および第2のミラー40の両側の各々に2つの部材46が離れて配置されている構成例を模式的に示す光スキャンデバイスの断面図である。図96に示す例において、2つの部材46は第1のミラー30に接し、図97に示す例において、上の2つの部材46は第1のミラー30に接し、下の2つの部材46は第2のミラーに接する。部材46の屈折率はnであり、共通の材料45の屈折率はnである。n<nでは、Z方向から見たときに、部材46を含まない領域が光導波領域20に相当し、部材46を含む領域が非導波領域73に相当する。n>nでは、Z方向から見たときに、部材46を含む領域が光導波領域20に相当し、部材46を含まない領域が非導波領域73に相当する。
図98は、第1のミラー30と第2のミラー40の間において、第1のミラー30側に2つの部材46が離れて配置され、第2のミラー40側に他の部材47が配置されている構成例を模式的に示す断面図である。図98に示す例において、2つの部材46は第1のミラー30に接し、他の部材47は第2のミラー40に接する。Z方向から見たときに、部材46と他の部材47とは重なり合わない。共通の材料45の屈折率はnであり、部材46の屈折率はnであり、他の部材47の屈折率はnである。部材46と他の部材47において、屈折率および寸法の少なくとも1つは異なっていてもよい。
Z方向から見たときに、部材46を含む領域の平均屈折率が他の部材47を含む領域の平均屈折率よりも大きいとき、部材46を含む領域が光導波領域20に相当し、他の部材47を含む領域が非導波領域73に相当する。Z方向から見たときに、部材46を含む領域の平均屈折率が他の部材47を含む領域の平均屈折率よりも小さいとき、他の部材47を含む領域が光導波領域20に相当し、部材46を含む領域が非導波領域73に相当する。
例えば、部材46の屈折率nが共通の材料45の屈折率nよりも低く、他の部材47の屈折率nが共通の材料45の屈折率nよりも高い構成(n<n<n)を想定する。この構成では、Z方向から見たときに、他の部材47を含む領域が光導波領域20に相当し、部材46を含む領域が非導波領域73に相当する。光導波領域20が共通の材料45の屈折率nよりも高い屈折率nを有する少なくとも1つの他の部材47を含むことにより、光導波領域20の平均屈折率と非導波領域73の平均屈折率との差が大きくなる。これにより、光導波領域20の導波モードの非導波領域73への染み出しを抑制することができる。
図99は、第1のミラー30と第2のミラー40の間において、第2のミラー40側に2つの部材46が離れて配置されている例を模式的に示す光スキャンデバイスの断面図である。図99に示す例では、光スキャンデバイスは、第1のミラー30と第2のミラー40との距離を固定する2つの支持部材74をさらに備える。2つの支持部材74は、2つの非導波領域の外側に位置する。
図100は、第1のミラー30とおよび第2のミラー40の間において、第1のミラー30とおよび第2のミラー40の両側の各々に部材46が配置されている構成例を示す断面図である。Z方向から見たときに、上下の2つの部材46は重なり合う。共通の材料45が空気であれば、Z方向から見たときに、部材46を含む領域が光導波領域20に相当し、部材46を含まない領域が非導波領域73に相当する。
光スキャンデバイスにおいて、調整素子は、第1のミラー30とおよび第2のミラー40の少なくとも一方に接続されたアクチュエータ78を備えてもよい。アクチュエータ78は、第1のミラー30と第2のミラー40との距離を変化させることにより、光導波領域20の厚さを変化させることができる。
アクチュエータ78は、圧電部材を含み、圧電部材を変形させることにより、第1のミラー30と第2のミラー40との距離を変化させてもよい。これにより、光導波領域20から出射される光の方向を変化させることができる。圧電部材の材料は、図47から53を参照して説明した通りである。
また、図88、93、95A,95Bおよび96〜100に示す共通の材料45は液晶であり得る。その場合、調整素子は、光導波領域20を間に挟む一対の電極を備え得る。調整素子は、当該一対の電極に電圧を印加する。これにより、光導波領域20の屈折率が変化する。その結果、光導波領域20から出射される光の方向が変化する。
上記の光導波領域20および2つの非導波領域73をアレイ化して光スキャンデバイスを構成してもよい。当該光スキャンデバイスは、上記の光導波領域20を含む複数の光導波領域と、上記の2つの非導波領域73を含む複数の非導波領域とを備える。複数の光導波領域の各々の平均屈折率は、複数の非導波領域の各々の平均屈折率よりも高い。複数の光導波領域および複数の非導波領域は、第1のミラー30と第2のミラー40の間においてY方向に交互に並ぶ。
当該光スキャンデバイスは、複数の光導波領域にそれぞれ接続された複数の位相シフタをさらに備えてもよい。複数の位相シフタのそれぞれは、複数の光導波領域の対応する1つにおける光導波領域20に直接的にまたは他の導波路を介して繋がる導波路を含む。
各位相シフタにおける導波路は、電圧の印加または温度変化に応じて屈折率が変化する材料を含んでもよい。上記調整素子を、第1調整素子とする。第1調整素子と異なる第2調整素子は、各位相シフタにおける導波路に電圧を印加する、または導波路の温度を変化させる。これにより、導波路内の屈折率が変化し、複数の位相シフタから複数の光導波領域に伝搬する光の位相の差がそれぞれ変化する。その結果、複数の光導波領域から出射される光の方向が変化する。より具体的には、第2調整素子により、出射される光の波数ベクトルのY成分が変化する。
<応用例>
図101は、回路基板(たとえば、チップ)上に光分岐器90、導波路アレイ10A、位相シフタアレイ80A、および光源130などの素子を集積した光スキャンデバイス100の構成例を示す図である。光源130は、例えば、半導体レーザーなどの発光素子であり得る。この例における光源130は、自由空間における波長がλである単一波長の光を出射する。光分岐器90は、光源130からの光を分岐して複数の位相シフタにおける導波路に導入する。図101の構成例において、チップ上には電極62aと、複数の電極62bとが設けられている。導波路アレイ10Aには、電極62aから制御信号が供給される。位相シフタアレイ80Aにおける複数の位相シフタ80には、複数の電極62bから制御信号がそれぞれ送られる。電極62a、62bは、上記の制御信号を生成する不図示の制御回路に接続され得る。制御回路は、図101に示すチップ上に設けられていてもよいし、光スキャンデバイス100における他のチップに設けられていてもよい。
図101に示すように、全てのコンポーネントをチップ上に集積することで、小型のデバイスで広範囲の光スキャンが実現できる。例えば2mm×1mm程度のチップに、図101に示される全てのコンポーネントを集積することができる。
図102は、光スキャンデバイス100から遠方にレーザーなどの光ビームを照射して2次元スキャンを実行している様子を示す模式図である。2次元スキャンは、ビームスポット310を水平および垂直方向に移動させることによって実行される。例えば、公知のTOF(Time Of Flight)法と組み合わせることで、2次元の測距画像を取得することができる。TOF法は、レーザーを照射して対象物からの反射光を観測することで、光の飛行時間を算出し、距離を求める方法である。
図103は、そのような測距画像を生成することが可能な光検出システムの一例であるLiDARシステム300の構成例を示すブロック図である。LiDARシステム300は、光スキャンデバイス100と、光検出器400と、信号処理回路600と、制御回路500とを備えている。光検出器400は、光スキャンデバイス100から出射され、対象物から反射された光を検出する。光検出器400は、例えば光スキャンデバイス100から出射される光の波長λに感度を有するイメージセンサ、またはフォトダイオードなどの受光素子を含むフォトディテクタであり得る。光検出器400は、受光した光の量に応じた電気信号を出力する。信号処理回路600は、光検出器400から出力された電気信号に基づいて、対象物までの距離を計算し、距離分布データを生成する。距離分布データは、距離の2次元分布を示すデータ(すなわち、測距画像)である。制御回路500は、光スキャンデバイス100、光検出器400、および信号処理回路600を制御するプロセッサである。制御回路500は、光スキャンデバイス100からの光ビームの照射のタイミングおよび光検出器400の露光および信号読出しのタイミングを制御し、信号処理回路600に、測距画像の生成を指示する。
2次元スキャンにおいて、測距画像を取得するフレームレートとして、例えば一般的に動画でよく使われる60fps、50fps、30fps、25fps、24fpsなどから選択することができる。また、車載システムへの応用を考慮すると、フレームレートが大きいほど測距画像を取得する頻度が上がり、精度よく障害物を検知できる。例えば、60km/hでの走行時において、60fpsのフレームレートでは車が約28cm移動するごとに画像を取得することができる。120fpsのフレームレートでは、車が約14cm移動するごとに画像を取得することができる。180fpsのフレームレートでは車が、約9.3cm移動するごとに、画像を取得することができる。
1つの測距画像を取得するために必要な時間は、ビームスキャンの速度に依存する。例えば、解像点数が100×100のイメージを60fpsで取得するためには1点につき1.67μs以下でビームスキャンをする必要がある。この場合、制御回路500は、600kHzの動作速度で、光スキャンデバイス100による光ビームの出射、および光検出器400による信号蓄積・読出しを制御する。
<光受信デバイスへの応用例>
本開示の前述の各実施形態における光スキャンデバイスは、ほぼ同一の構成で、光受信デバイスとしても用いることができる。光受信デバイスは、光スキャンデバイスと同一の導波路アレイ10Aと、受信可能な光の方向を調整する第1調整素子60とを備える。導波路アレイ10Aの各第1のミラー30は、第3の方向から第1の反射面の反対側に入射する光を透過させる。導波路アレイ10Aの各光導波層20は、第2の方向に第1のミラー30を透過した光を伝搬させる。第1調整素子60が各導波路素子10における前記光導波層20の屈折率および厚さ、ならびに光の波長の少なくとも1つを変化させることにより、受信可能な光の方向を変化させることができる。さらに、光受信デバイスが、光スキャンデバイスと同一の複数の位相シフタ80、または80aおよび80bと、複数の導波路素子10から複数の位相シフタ80、または80aおよび80bを通過して出力される光の位相の差をそれぞれ変化させる第2調整素子を備えている場合には、受信可能な光の方向を2次元的に変化させることができる。
例えば図101に示す光スキャンデバイス100における光源130を受信回路に置換した光受信デバイスを構成することができる。導波路アレイ10Aに波長λの光が入射すると、その光は位相シフタアレイ80Aを通じて光分岐器90へ送られ、最終的に一箇所に集められ、受信回路に送られる。その一箇所に集められた光の強度は、光受信デバイスの感度を表すといえる。光受信デバイスの感度は、導波路アレイおよび位相シフタアレイ80Aに別々に組み込まれた調整素子によって調整することができる。光受信デバイスでは、例えば図36において、波数ベクトル(図中の太い矢印)の方向が反対になる。入射光は、導波路素子10が延びる方向(図中のX方向)の光成分と、導波路素子10の配列方向(図中のY方向)の光成分とを有している。X方向の光成分の感度は、導波路アレイ10Aに組み込まれた調整素子によって調整できる。一方、導波路素子10の配列方向の光成分の感度は、位相シフタアレイ80Aに組み込まれた調整素子によって調整できる。光受信デバイスの感度が最大になるときの光の位相差Δφ、光導波層20の屈折率nおよび厚さdから、θおよびα(式(12)および式(13))がわかる。このため、光の入射方向を特定することができる。
上述した実施形態および変形例は、適宜、組み合わせることができる。例えば、図15から図31を参照して説明した光デバイスの構成は、他の何れの実施形態におけるアレイ構造と組み合わせてもよい。
本開示の実施形態における光スキャンデバイスおよび光受信デバイスは、例えば自動車、UAV、AGVなどの車両に搭載されるライダーシステムなどの用途に利用できる。
1 第1の導波路
2 光導波層、導波路
3 多層反射膜
4 多層反射膜
5 グレーティング
6 レーザー光源
7 光ファイバー
10 導波路素子(第2の導波路)
15、15a、15b、15c、15m グレーティング
20 光導波層
30 第1のミラー
40 第2のミラー
42 低屈折率層
44 高屈折率層
50、50A、50B、50C 基板
51 第1の誘電体層(調整層)
52 支持部材(補助基板)
60 調整素子
61 第2の誘電体層(保護層)
62 電極
64 配線
66 電源
68 ヒーター
70 支持部材
71 非圧電素子
72 圧電素子
73、73a、73b スペーサ
74 支持部材
75 液晶材料
76 液晶分子
80、80a、80b 位相シフタ
90、90a、90b 光分岐器
92 光スイッチ
100 光スキャンデバイス
101、102 領域
110 導波路アレイの駆動回路
111 駆動電源
112 スイッチ
130 光源
210 位相シフタアレイの駆動回路
310 ビームスポット
400 光検出器
500 制御回路
600 信号処理回路

Claims (18)

  1. 第1の方向および前記第1の方向に垂直な第2の方向に拡がる第1の反射面を有する第1のミラーと、
    前記第1の反射面に対向する第2の反射面を有する第2のミラーと、
    前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間の領域の一部に位置し、真空における波長がλである光を前記第1の方向に沿って伝搬させる光導波層と、
    前記第1のミラーの前記第1の反射面とは反対の側に位置する誘電体層と、
    を備え、
    前記第1のミラーにおける前記光の透過率は、前記第2のミラーにおける前記光の透過率よりも高く、
    前記光導波層は、屈折率および/または厚さを調整することが可能な構造を有し、
    前記光導波層の屈折率および/または厚さを調整することにより、前記光導波層から前記第1のミラーを介して出射する光の方向、または前記第1のミラーを介して前記光導波層内に取り込まれる光の入射方向が変化する、
    光デバイス。
  2. 前記誘電体層が有する2つの面のうち、一方の面に接触する媒質の屈折率をnとし、他方の面に接触する媒質の屈折率をnとし、
    前記誘電体層の屈折率をnとすると、
    <n<nまたはn<n<nであり、
    前記第1の反射面に垂直な方向における前記誘電体層の厚さは、λ/(4n)の0.8倍以上1.2倍以下である、
    請求項1に記載の光デバイス。
  3. 前記誘電体層の屈折率nは、(n1/2の0.8倍以上1.2倍以下である、
    請求項2に記載の光デバイス。
  4. 前記誘電体層は、SiO、TaO、TiO、NbO、Si、およびNbからなる群から選択される1つを含む、
    請求項1から3のいずれかに記載の光デバイス。
  5. 前記誘電体層は、屈折率が異なる複数の層を含み、
    前記複数の層の屈折率は、前記光導波層から離れるにつれて低くなり、
    各層が有する2つの面のうち、一方の面に接触する媒質の屈折率をnとし、他方の面に接触する媒質の屈折率をnとし、
    各層の屈折率をnとすると、
    <n<nまたはn<n<nであり、
    前記第1の反射面に垂直な方向における各層の厚さは、λ/(4n)の0.8倍以上1.2倍以下である、
    請求項1に記載の光デバイス。
  6. 各層の屈折率nは、(n1/2の0.8倍以上1.2倍以下である、
    請求項5に記載の光デバイス。
  7. 前記複数の層は、SiO、TaO、TiO、NbO、Si、およびNbからなる群から選択される少なくとも1つを含む、
    請求項5または6に記載の光デバイス。
  8. 前記第2のミラーの前記第2の反射面とは反対の側に位置する基板をさらに備える、
    請求項1から7のいずれかに記載の光デバイス。
  9. 前記第2のミラーの前記第2の反射面とは反対の側に位置する第2の誘電体層をさらに備え、
    前記基板は、前記第2のミラーと前記第2の誘電体層との間に位置する、
    請求項8に記載の光デバイス。
  10. 前記第1のミラーと前記誘電体層との間に位置する第2の基板をさらに備える、
    請求項1から9のいずれかに記載の光デバイス。
  11. 前記光導波層は、液晶材料または電気光学材料を含み、
    前記光導波層を間に挟む一対の電極と、
    前記一対の電極に電圧を印加することにより、前記光導波層の前記少なくとも一部の屈折率を変化させる制御回路と、
    をさらに備える、
    請求項1から10のいずれかに記載の光デバイス。
  12. 前記第1および第2のミラーの少なくとも一方に接続された少なくとも1つのアクチュエータと、
    前記少なくとも1つのアクチュエータを制御して前記第1のミラーと前記第2のミラーとの距離を変化させることにより、前記光導波層の厚さを変化させる制御回路と、
    をさらに備える、
    請求項1から10のいずれかに記載の光デバイス。
  13. 前記光導波層に接続され、実効屈折率がne1である導波モードの光を前記第1の方向に沿って伝搬させる導波路をさらに備え、
    前記導波路の先端部は、前記光導波層の内部にあり、
    前記第1の反射面に垂直な方向から見て前記導波路および前記光導波層が重なる領域において、前記導波路および前記光導波層の少なくとも一部は、前記第1の方向に沿って屈折率が周期pで変化する少なくとも1つのグレーティングを含み、
    λ/ne1<p<λ/(ne1−1)
    を満たす、
    請求項1から12のいずれかに記載の光デバイス。
  14. 前記第2の方向に配列された複数の導波路ユニットを備え、
    各導波路ユニットは、前記第1および第2のミラーと、前記光導波層と、前記誘電体層とを備える、
    請求項1から12のいずれかに記載の光デバイス。
  15. 前記複数の導波路ユニットにそれぞれ接続された複数の位相シフタであって、それぞれが、前記複数の導波路ユニットの対応する1つにおける前記光導波層に直接的にまたは他の導波路を介して繋がる導波路を含む複数の位相シフタをさらに備え、
    前記複数の位相シフタを通過する光の位相の差をそれぞれ変化させることにより、前記第1のミラーから出射する前記光の方向、または、前記第1のミラーを介して前記光導波層に取り込まれる前記光の入射方向が変化する、
    請求項14に記載の光デバイス。
  16. 前記第2の方向に配列された複数の導波路ユニットを備え、
    各導波路ユニットは、前記第1および第2のミラーと、前記光導波層と、前記誘電体層と、前記導波路とを備える、
    請求項13に記載の光デバイス。
  17. 前記複数の導波路ユニットにそれぞれ接続された複数の位相シフタであって、それぞれが、前記複数の導波路ユニットの対応する1つにおける前記導波路に直接的にまたは他の導波路を介して繋がる第2の導波路を含む複数の位相シフタをさらに備え、
    前記複数の位相シフタを通過する光の位相の差をそれぞれ変化させることにより、前記第1のミラーから出射する前記光の方向、または、前記第1のミラーを介して前記光導波層に取り込まれる前記光の入射方向が変化する、
    請求項16に記載の光デバイス。
  18. 請求項1から17のいずれかに記載の光デバイスと、
    前記光デバイスから出射され、対象物から反射された光を検出する光検出器と、
    前記光検出器の出力に基づいて、距離分布データを生成する信号処理回路と、
    を備える光検出システム。
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