JP7159084B2 - 義歯ケア用組成物、義歯用抗菌剤、及び義歯用バイオフィルム形成抑制剤 - Google Patents
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即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔6〕を提供する。
〔1〕義歯表面に付着する口腔内の細菌に対する義歯ケア用組成物であって、(A)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位の少なくともいずれかと、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位の少なくともいずれかと、を有する水溶性ポリエステル共重合体、並びに(B)成分:アルキレンオキシド鎖を含むポリアルキレンアミン構造単位を有するポリアルキレンアミンアルキレンオキシド系共重合体、の少なくともいずれかである水溶性ポリマーを含有する義歯ケア用組成物。
〔2〕前記(A)成分及び前記(B)成分の少なくともいずれかの含有率が、有効成分量として、0.001~10質量%である上記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕義歯表面に付着する口腔内の細菌に対する抗菌剤であって、(A)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位の少なくともいずれかと、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位の少なくともいずれかと、を有する水溶性ポリエステル共重合体、並びに(B)成分:アルキレンオキシド鎖を含むポリアルキレンアミン構造単位を有するポリアルキレンアミンアルキレンオキシド系共重合体、の少なくともいずれかである水溶性ポリマーを含有する義歯用抗菌剤。
〔4〕義歯表面に付着する口腔内の細菌により形成されるバイオフィルムの形成抑制剤であって、(A)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位の少なくともいずれかと、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位の少なくともいずれかと、を有する水溶性ポリエステル共重合体、並びに(B)成分:アルキレンオキシド鎖を含むポリアルキレンアミン構造単位を有するポリアルキレンアミンアルキレンオキシド系共重合体、の少なくともいずれかである水溶性ポリマーを含有する義歯用バイオフィルム形成抑制剤。
〔5〕前記(A)成分及び前記(B)成分の少なくともいずれかの含有率が、有効成分量として、0.001~10質量%である上記〔3〕又は〔4〕に記載の剤。
〔6〕対象がカンジダ菌である、上記〔3〕~〔5〕のいずれかに記載の剤。
また、本明細書中、(A)成分及び(B)成分の含有量は、有効成分量である。
(A)成分は、アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位の少なくともいずれかと、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位の少なくともいずれかと、を有する水溶性ポリエステル共重合体である。(A)成分を含有することで、義歯材料表面への抗菌効果を付与し得る。
以下、アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位をまとめて単位(a1)という。また、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位をまとめて単位(a2)という。
単位(a1)は、アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位の総称をいう。
なお、単位(a1)は、アルキレンテレフタレート単位のみであってもよく、アルキレンイソフタレート単位のみであってもよく、アルキレンテレフタレート単位とアルキレンイソフタレート単位の両方を有してもよい。
アルキレンテレフタレート単位は、下記一般式(I)で表される単位である。
R1として表される低級アルキレン基の炭素原子数は、1~4であり、2~4が好ましい。
単位(a1)は、単一種類のアルキレンテレフタレート単位を用いてもよく、複数種類のアルキレンテレフタレート単位を組み合わせて用いてもよい。
アルキレンイソフタレート単位は、下記一般式(II)で表される単位である。
R2として表される低級アルキレン基の炭素原子数は、1~4であり、2~4が好ましい。
単位(a1)は、単一種類のアルキレンイソフタレート単位を用いてもよく、複数種類のアルキレンイソフタレート単位を組み合わせて用いてもよい。
単位(a2)は、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位の総称をいい、下記一般式(III)で表される単位である。
なお、単位(a2)は、オキシアルキレン単位のみであってもよく、ポリオキシアルキレン単位のみであってもよく、オキシアルキレン単位とポリオキシアルキレン単位の両方であってもよい。
R3として表される低級アルキレン基の炭素原子数は、1~4であり、2~4が好ましい。また、一般式(III)中、eが1の場合はオキシアルキレン単位であり、eが2以上の場合はポリオキシアルキレン単位である。eは、1~80の整数が好ましく、1~50の整数がより好ましい。
(A)成分は、単位(a1)及び単位(a2)以外の他の単位を含んでもよい。他の単位としては、例えば、重合開始剤や重合停止剤等に由来する単位や、単位(a1)及び単位(a2)と共重合可能な単位が挙げられる。
(A)成分が他の単位を含む場合、(A)成分の全単位に対する、単位(a1)と単位(a2)の合計の割合は、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。
なお、(A)成分は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(IV)中、fとgの比率は、1:5~1:20が好ましく、1:8~1:18がより好ましい。fとgとの比率が斯かる範囲であれば、水に対する溶解性を向上し得る。
一般式(V)中、hとiの比率は、一般式(IV)におけるfとgの比率と同じ理由で、1:5~1:20が好ましく、1:8~1:18がより好ましい。
中でも、水への溶解性が高く、保存後のバイオフィルム形成抑制効果の低下が少ない点から、「TexCare SRN-100」や、「TexCare SRN-100」の70質量%水溶液である「TexCare SRN-170」(クラリアント社製)が好ましく、「TexCare SRN-170」がより好ましい。
なお、本明細書中、重量平均分子量は、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)により測定した値を、PEG(ポリエチレングリコール)の較正曲線から換算した値をいう。
(A)成分の含有量の一実施態様は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.1~10質量%がさらに好ましい。
なお、(A)成分の含有量は、組成物をそのまま使用する場合は、上記範囲とし得る。一方、使用時に組成物を水で希釈又は溶解して使用する場合は、希釈液又は溶解液の濃度が上記範囲となるよう調整し得る。
(B)成分は、アルキレンオキシド鎖を含むポリアルキレンアミン構造単位を有するポリアルキレンアミンアルキレンオキシド系共重合体である。即ち、(B)成分は、ポリアルキレンイミンのアルキレンオキシド付加体である。(B)成分を含有することで、義歯材料表面への抗菌効果を付与し得る。
R31及びR32のアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。R31及びR32のアルキレン基の炭素原子数は、2~4が好ましく、2がより好ましい。
ポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミン(以下、「PEI」と記載する)、ポリプロピレンイミンが好ましく、PEIがより好ましい。PEIは、エチレンイミンを重合することによって得られ、その構造中に、1級、2級及び3級のアミン窒素原子を含む分岐鎖構造を有する。
ポリアルキレンイミン1分子が有する活性水素の数は、5~30個が好ましく、7~25個がより好ましく、10~20個がさらに好ましい。
なお、ポリアルキレンイミンのエチレンオキシド-プロピレンオキシド付加体は、ポリアルキレンイミンに、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドを付加したものである。ポリアルキレンイミンに対するエチレンオキシドとプロピレンオキシドの付加順序や付加形態(ブロック状、ランダム状)は任意である。
なお、(B)成分は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の含有量の一実施態様は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.1~10質量%がさらに好ましい。
なお、(B)成分の含有量は、組成物をそのまま使用する場合は、上記範囲とし得る。一方、使用時に組成物を水で希釈又は溶解して使用する場合は、希釈液又は溶解液の濃度が上記範囲となるよう調整し得る。
本発明は、上記成分に加えて、製品の剤形等に応じて、その他の公知成分を必要に応じて含有し得る。その他の成分は、例えば、香料、溶剤、着色剤、殺菌剤、賦形剤が挙げられる。
香料としては、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、シンナモンバーク油等の天然香料;メントン、カルボン、エチルブチレート、バニリン、エチルマルトール、アネトール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、シネオール、オイゲノール、エチルバニリン、マルトール、リモネン、シトロネロール、リナロール、リナリールアセテート、メンチルアセテート、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、ジンジャーオレオレジン、クレオソール、dl-カンファー等の単品香料;エチルアセテート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール等の単品香料及び/又は天然香料も含む各種調合香料等、公知の香料を通常量で使用することができる。
溶剤としては、通常、水(水道水、精製水等)が用いられるが、多価アルコール等を5~20%程度添加したアルコール含有水性溶媒を用いてもよい。
着色剤としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号等の法定色素;カラメル色素、ベニバナ色素、クチナシ色素、コチニール色素、アナトー色素、雲母チタン、酸化チタンが挙げられる。
殺菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤が挙げられる。配合量は本発明の効果を妨げない範囲の有効量である。
製品が錠剤等の固形物である場合、通常、賦形剤を含有する。賦形剤は、例えば、ぶどう糖、果糖、乳糖、蔗糖、白糖、麦芽糖、D-マンニトール、エリスリトール、マルチトール、トレハロース、ソルビトール、キシリトール、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ポリエチレングリコール、結晶セルロース、無水ケイ酸、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、マルチトース、小麦粉、部分α化デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン、ゼラチン、湿式シリカ、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酒石酸、二酸化ケイ素、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、硬化ヒマシ油、水酸化マグネシウムが挙げられる。
本発明の義歯ケア用組成物は、上記の構成成分を含有する。義歯ケア用組成物を使用する際、使用者は、義歯を口腔から取り外し、義歯ケア用組成物を義歯の表面に直接適用する。
一部の実施形態では、義歯ケア用組成物を義歯表面に適用した後、そのまま口腔内に義歯を装着し得る。また、他の実施形態では、義歯ケア用組成物を義歯表面に適用し、水ですすいだ後、口腔内に義歯を装着し得る。
濃縮タイプの製剤としては、例えば、水道水、精製水等の水で希釈して得られる希釈液に義歯を浸漬することで義歯を洗浄できる義歯洗浄剤がある。この場合、義歯洗浄剤の水による希釈倍率は、使用性及び溶解性の点から洗浄剤の10~100倍希釈が好ましい。濃縮タイプの製剤の場合、洗浄方法として、上記濃度における希釈液中に義歯を浸漬するか、或いは液体状で分散性が高いことから、洗浄剤の洗浄機能を著しく高め得る超音波洗浄を併用して義歯洗浄を行うことで、有効に利用し得る。なお、洗浄後は、義歯を取り出し、水ですすいでから装着し得る。
原液タイプの製剤の場合、例えば義歯に直接使用するスプレーやジェル剤等がある。
デンチャーバイオフィルム形成抑制効果として、以下に示すカンジダバイオフィルム形成抑制効果の検証を行った。
カンジダ菌(Candida albicans SC5314)を、Potato Dextrose Agar培地(Difco社製)に白金耳にて植菌し、25℃24時間培養にて起菌した。続いて白金耳を用いて増殖したコロニーを、YPD液体培地(Difco社製)に植菌し、25℃で24時間前培養した後、25℃で24時間本培養した。その後、遠心にて培養液を除去し、1%ウシ胎児血清(FCS)含有RPMI 1640培地(Sigma-Aldrich社製)にて懸濁し、濁度(660nm)より1.0×107CFU/mLに調整した。
表1に示す義歯ケア用組成物を調製した(配合量はAI量で記載。単位は質量%である)。なお、表1中のA成分-1、A成分-2、B成分の詳細を下記に記す。
A成分-1: 「TexCare SRN-170」(クラリアント社製)
A成分-2: 「TexCare SRN-300」(クラリアント社製)
B成分: 「Sokalan HP20」(BASF社製)
歯科用レジン(アクロン No.5、クリアー、GC社製)を用いて、10×10mmの正方形の試験片を作製し、24穴マルチプレート(住友ベークライト社製)の各ウェルに設置した。
各ウェルに、調製した被験サンプル1mLを添加し、5分間静置して試験片表面をコーディングした後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、和光純薬工業社製)にて2回洗浄した。続いてフィルター滅菌した安静時唾液に60分間浸漬して、試験片表面の唾液コートを行った後、PBSにて1回洗浄した。唾液コート後、各ウェルに調製したカンジダ菌懸濁液(1.0×107CFU/mL、1%FCS含有RPMI 1640培地)を1mL添加し、37℃、好気条件下で24時間培養して、試験片上にカンジダバイオフィルムを形成した。
カンジダバイオフィルム形成抑制率から以下の基準に従い、バイオフィルム形成抑制効果を評価した。結果を表2に記す。
A:バイオフィルム形成抑制率75%以上
B:バイオフィルム形成抑制率50%以上75%未満
C:バイオフィルム形成抑制率25%以上50%未満
D:バイオフィルム形成抑制率25%未満
A成分-1:TexCare SRN-170(クラリアント社製) 1.0
グリセリン 10.0
ハッカ油 0.5
水 残
合計 100%
B成分:Sokalan HP20(BASF社製) 1.0
グリセリン 10.0
ハッカ油 0.5
水 残
合計 100%
A成分-1:TexCare SRN-170(クラリアント社製) 0.1
グリセリン 10.0
ハッカ油 0.5
水 残
合計 100%
B成分:Sokalan HP20(BASF社製) 0.1
グリセリン 1.0
ハッカ油 0.025
水 残
合計 100%
A成分-1:TexCare SRN-170(クラリアント社製) 4.0
無水クエン酸 20.0
炭酸水素ナトリウム 20.0
ラウリルスルホ酢酸ナトリウム 1.0
ソルビトール 55.0
合計 100%
B成分:Sokalan HP20(BASF社製) 5.0
無水クエン酸 20.0
炭酸水素ナトリウム 20.0
ラウリルスルホ酢酸ナトリウム 1.0
ソルビトール 54.0
合計 100%
Claims (8)
- 義歯表面に付着する口腔内の細菌に対する義歯ケア用組成物であって、
(A)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位の少なくともいずれかと、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位の少なくともいずれかと、を有する水溶性ポリエステル共重合体、並びに
(B)成分:アルキレンオキシド鎖を含むポリアルキレンアミン構造単位を有するポリアルキレンアミンアルキレンオキシド系共重合体、の少なくともいずれかである水溶性ポリマーを含有する義歯ケア用組成物。 - 前記(A)成分及び前記(B)成分の少なくともいずれかの含有率が、有効成分量として、0.001~10質量%である請求項1に記載の組成物。
- 口腔内の細菌がカンジダ菌を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
- 口腔内の細菌がデンチャーバイオフィルムである、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
- 義歯表面に付着する口腔内の細菌に対する抗菌剤であって、
(A)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位の少なくともいずれかと、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位の少なくともいずれかと、を有する水溶性ポリエステル共重合体、並びに
(B)成分:アルキレンオキシド鎖を含むポリアルキレンアミン構造単位を有するポリアルキレンアミンアルキレンオキシド系共重合体、の少なくともいずれかである水溶性ポリマーを含有する義歯用抗菌剤。 - 義歯表面に付着する口腔内の細菌により形成されるバイオフィルムの形成抑制剤であって、
(A)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位の少なくともいずれかと、オキシアルキレン単位及びポリオキシアルキレン単位の少なくともいずれかと、を有する水溶性ポリエステル共重合体、並びに
(B)成分:アルキレンオキシド鎖を含むポリアルキレンアミン構造単位を有するポリアルキレンアミンアルキレンオキシド系共重合体、の少なくともいずれかである水溶性ポリマーを含有する義歯用バイオフィルム形成抑制剤。 - 前記(A)成分及び前記(B)成分の少なくともいずれかの含有率が、有効成分量として、0.001~10質量%である請求項5又は6に記載の剤。
- 対象がカンジダ菌である、請求項5~7のいずれか1項に記載の剤。
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