1.定義
1-1.加工部
本明細書において、「加工部」という用語は、繊維または皮革表面に適用される加工法の種類によって、以下のような意味を有する。すなわち、例えば、顔料捺染加工では、「加工部」は、繊維または皮革表面に形成される「印刷部」を意味する。また、例えば、繊維の機能加工および皮革の水系塗装または仕上げ加工では、「加工部」は、繊維または皮革表面に形成される「塗工部」を意味する。
1-2.低温
本明細書において、「低温」という用語は、架橋剤を含む繊維または皮革処理剤を使用して繊維または皮革表面に形成された加工部を熱処理する温度が低いことを意味する。例えば、繊維の顔料捺染加工では、印刷部を熱処理する温度は、例えば、130℃以下、好ましくは、120℃以下、より好ましくは、115℃以下である。また、前記熱処理温度の下限は、後述の熱処理時間との組み合わせにおいて、印刷部を繊維表面に固着させることができる温度であり、例えば、95℃以上、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、105℃以上である。したがって、本明細書において、前記熱処理温度は、例えば、95℃~130℃、好ましくは、100℃~120℃、より好ましくは、105℃~115℃である。
また、例えば、人工皮革・合成皮革の顔料捺染加工では、印刷部を熱処理する温度は、例えば、130℃以下、好ましくは、120℃以下、より好ましくは、115℃以下である。また、前記熱処理温度の下限は、後述の熱処理時間との組み合わせにおいて、印刷部を人工皮革・合成皮革表面に固着させることができる温度であり、例えば、95℃以上、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、105℃以上である。したがって、本明細書において、前記熱処理温度は、例えば、95℃~130℃、好ましくは、100℃~120℃、より好ましくは、105℃~115℃である。さらに、皮革として、天然皮革を使用する場合には、その素材の性質上、前記熱処理温度は、100℃以下、好ましくは、98℃以下、より好ましくは、95℃以下である。また、前記熱処理温度の下限は、後述の熱処理時間との組み合わせにおいて、印刷部を天然皮革表面に固着させることができる温度であり、例えば、80℃以上、好ましくは、82℃以上、より好ましくは、85℃以上である。したがって、本明細書において、前記熱処理温度は、例えば、80℃~100℃、好ましくは、82℃~98℃、より好ましくは、85℃~95℃である。
また、例えば、人工皮革・合成皮革の水系塗装または仕上げ加工では、塗工部を熱処理する温度は、例えば、130℃以下、好ましくは、120℃以下、より好ましくは、115℃以下である。また、前記熱処理温度の下限は、後述の熱処理時間との組み合わせにおいて、塗工部を人工皮革・合成皮革表面に密着させることができる温度であり、例えば、95℃以上、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、105℃以上である。したがって、本明細書において、前記熱処理温度は、例えば、95℃~130℃、好ましくは、100℃~120℃、より好ましくは、105℃~115℃である。さらに、皮革として、天然皮革を使用する場合には、その素材の性質上、前記熱処理温度は、100℃以下、好ましくは、98℃以下、より好ましくは、95℃以下である。また、前記熱処理温度の下限は、後述の熱処理時間との組み合わせにおいて、塗工部を天然皮革表面に密着させることができる温度であり、例えば、80℃以上、好ましくは、82℃以上、より好ましくは、85℃以上である。したがって、本明細書において、前記熱処理温度は、例えば、80℃~100℃、好ましくは、82℃~98℃、より好ましくは、85℃~95℃である。
1-3.短時間
本明細書において、「短時間」という用語は、架橋剤を含む繊維または皮革処理剤を使用して、繊維または皮革表面に形成された加工部を熱処理する時間が短いことを意味する。例えば、繊維の顔料捺染加工では、印刷部を熱処理する時間は、例えば、10分以内、好ましくは、5分以内、より好ましくは、3分以内である。前記熱処理時間の下限は、前述の熱処理温度との組み合わせにおいて、印刷部を繊維表面に固着させることができる時間であり、例えば、10秒以上、好ましくは、30秒以上、より好ましくは、1分以上である。したがって、本明細書において、前記熱処理時間は、例えば、10秒~10分、好ましくは、30秒~5分、より好ましくは、1分~3分である。
また、例えば、人工皮革・合成皮革および天然皮革の顔料捺染加工では、印刷部を熱処理する時間は、例えば、10分以内、好ましくは、5分以内、より好ましくは、3分以内である。前記熱処理時間の下限は、前述の熱処理温度との組み合わせにおいて、印刷部を皮革表面に固着させることができる時間であり、例えば、10秒以上、好ましくは、30秒以上、より好ましくは、1分以上である。したがって、本明細書において、前記熱処理時間は、例えば、10秒~10分、好ましくは、30秒~5分、より好ましくは、1分~3分である。
また、例えば、人工皮革・合成皮革および天然皮革の水系塗装または仕上げ加工では、塗工部を熱処理する時間は、例えば、10分以内、好ましくは、5分以内、より好ましくは、3分以内である。前記熱処理時間の下限は、前述の熱処理温度との組み合わせにおいて、印刷部を皮革表面に固着させることができる時間であり、例えば、10秒以上、好ましくは、30秒以上、より好ましくは、1分以上である。したがって、本明細書において、前記熱処理時間は、例えば、10秒~10分、好ましくは、30秒~5分、より好ましくは、1分~3分である。なお、天然皮革の場合、革の上記熱処理工程の後、例えば、20℃~60℃、好ましくは、30℃~50℃、より好ましくは、35℃~45℃程度で、例えば、1~7日間、好ましくは、2~5日間、より好ましくは、3日間程度熱処理する工程(エージング工程)を行うことができる。
したがって、繊維の顔料捺染加工では、低温短時間での熱処理における前記熱処理温度と前記熱処理時間との組み合わせは、例えば、95℃~130℃および10秒~10分の範囲、好ましくは、100℃~120℃および30秒~5分の範囲、より好ましくは、105℃~115℃および1分~3分の範囲、特に好ましくは、110℃および2分である。
また、人工皮革・合成皮革の顔料捺染加工では、低温短時間での熱処理における前記熱処理温度と前記熱処理時間との組み合わせは、例えば、95℃~130℃および10秒~10分の範囲、好ましくは、100℃~120℃および30秒~5分の範囲、より好ましくは、105℃~115℃および1分~3分の範囲である。また、天然皮革の顔料捺染加工では、低温短時間での熱処理における前記熱処理温度と前記熱処理時間との組み合わせは、例えば、80℃~100℃および10秒~10分の範囲、好ましくは、82℃~98℃および30秒~5分の範囲、より好ましくは、85℃~95℃および1分~3分の範囲である。
また、人工皮革・合成皮革の水系塗装または仕上げ加工では、低温短時間での熱処理における前記熱処理温度と前記熱処理時間との組み合わせは、例えば、95℃~130℃および10秒~10分の範囲、好ましくは、100℃~120℃および30秒~5分の範囲、より好ましくは、105℃~115℃および1分~3分の範囲である。また、天然皮革の水系塗装または仕上げ加工では、低温短時間での熱処理における前記熱処理温度と前記熱処理時間との組み合わせは、例えば、95℃~130℃および10秒~10分の範囲、好ましくは、100℃~120℃および30秒~5分の範囲、より好ましくは、105℃~115℃および1分~3分の範囲である。
1-4.堅牢性
本明細書において、「堅牢性」という用語は、顔料捺染加工についての「摩擦に対する堅牢性」、顔料捺染加工についての「洗濯に対する堅牢性」、もしくは顔料捺染加工についての「摩擦および洗濯の両方に対する堅牢性」、または、皮革の水系塗装または仕上げ加工についての「摩擦に対する堅牢性」および「密着性」を意味する。摩擦に対する堅牢性は、例えば、JIS.L.0849-96 II型により評価することができ、具体的には、実施例に記載された方法で評価された「摩擦堅牢度」および「加工布色落ち」の少なくとも一方により評価することができる。洗濯に対する堅牢性は、例えば、実施例に記載された方法で評価された「洗濯堅牢度」により評価することができる。また、密着性は、例えば、実施例に記載された方法で評価することができる。
2.架橋剤
本発明の架橋剤は、繊維用架橋剤または皮革用架橋剤(以下、単に「架橋剤」という)である。本発明の架橋剤は、ブロックイソシアネートを含む。前記ブロックイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤(第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤)によってブロックされた潜在イソシアネート基を含有するブロックイソシアネートである。前記ブロックイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを反応させることにより、得ることができる。
2-1.ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物(前記ブロックイソシアネートのブロック化前のイソシアネート)は、ヘキサメチレンジイソシアネートのみからなる誘導体を含む。同誘導体は、NCO骨格がヘキサメチレンジイソシアネートからなり、例えば、2つ以上のヘキサメチレンジイソシアネートが多量体化した多量体、または、ヘキサメチレンジイソシアネートが後述する変性基により変性されている変性体であることができる。ヘキサメチレンジイソシアネートとしては、特に限定はなく、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらの中でも、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が好ましい。ポリイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのみからなる誘導体に加えて、例えば、別のポリイソシアネート単量体および/またはポリイソシアネート誘導体を含んでもよい。ポリイソシアネート化合物は、同化合物分子中に、複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を意味する。同様に、ジイソシアネート化合物は、同化合物分子中、2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を意味する。
ポリイソシアネート単量体としては、特に限定はなく、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、特に限定はなく、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定はなく、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定はなく、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、特に限定はなく、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(H6XDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネート誘導体としては、特に限定はなく、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、後述する低分子量ポリオールとの反応より形成されたウレタン基に更にポリイソシアネート単量体のイソシアネート基が付加することにより生成するアロファネート変性体など)、アダクト体(例えば、ポリイソシアネート単量体と後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアダクト体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水またはアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により形成されたウレア基に更にポリイソシアネート単量体のイソシアネート基が付加することにより生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
さらに、ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。
これらポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
これらポリイソシアネート化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
なお、ポリイソシアネート化合物を2種類以上併用する場合には、例えば、ブロックイソシアネートの製造時において、2種類以上のポリイソシアネート化合物を同時に反応させてもよく、また、各ポリイソシアネート化合物を個別に用いて得られたブロックイソシアネートを混合してもよい。
ポリイソシアネート化合物として、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートおよびその誘導体、脂環族ポリイソシアネートおよびその誘導体、より好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートおよびその誘導体が挙げられる。
上記のポリイソシアネート化合物を用いれば、低温架橋性に優れ、また、例えば、水に分散させる場合にも比較的長いポットライフを有する。
2-2.第1ブロック剤
第1ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を活性化し、また、イソシアネート基をブロックした状態および脱ブロックされた状態において、イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)を有する。
具体的には、第1ブロック剤は、後述する第2ブロック剤および第3ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)が大きく、下記一般式(1)で示される。
(式中、R1、R2、およびR3は、同一または異なって、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R1、R2、およびR3の少なくともいずれか1つが水素原子を示す。また、R1およびR3は、互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。R4は、炭素数1~12の炭化水素基、水素原子、またはNR5R6基(ここで、R5およびR6は、同一または異なって、炭素数1~12の炭化水素基を示す。また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示す。)
上記一般式(1)において、R1、R2、およびR3は、同一または異なって、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R1、R2、およびR3の少なくともいずれか1つが水素原子を示す。
R1、R2、およびR3で示される炭素数1~12の炭化水素基としては、特に限定はなく、例えば、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基などが挙げられる。
炭素数1~12のアルキル基としては、特に限定はなく、例えば、炭素数1~12の鎖状アルキル基、炭素数3~12の環状アルキル基などが挙げられる。
炭素数1~12の鎖状アルキル基としては、特に限定はなく、直鎖または分岐の炭素数1~12の鎖状アルキル基が挙げられ、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどが挙げられる。
炭素数3~12の環状アルキル基としては、特に限定はなく、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロドデシルなどが挙げられる。
炭素数6~12のアリール基としては、特に限定はなく、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、アズレニル、ビフェニルなどが挙げられる。
これら炭素数1~12の炭化水素基は、R1、R2、およびR3において、互いに同一または異なっていてもよい。
炭素数1~12の炭化水素基として、低温架橋性の向上を図る観点から、好ましくは、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、炭素数1~12の鎖状アルキル基が挙げられる。
また、R1およびR3は、互いに結合してヘテロ環を形成することができる。
R1およびR3が互いに結合して形成されるヘテロ環は、-N=C-N-構造を有する含窒素ヘテロ環であって、特に限定はなく、例えば、3~20員環のヘテロ環、好ましくは、3~10員環、より好ましくは、3~8員環、さらに好ましくは、5~7員環のヘテロ環が挙げられる。また、ヘテロ環は、例えば、単環状であってもよく、例えば、複数の単環が一辺を共有する多環状であってもよい。また、ヘテロ環は、共役系ヘテロ環であってもよい。なお、R1およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成する場合、R2は、水素原子を示す。
このようなヘテロ環構造として、具体的には、例えば、イミダゾール構造、イミダゾリン構造、ピリミジン構造などが挙げられる。
上記一般式(1)において、R4は、炭素数1~12の炭化水素基、水素原子、または、NR5R6基(R5およびR6は、炭素数1~12の炭化水素基を示し、また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示し、好ましくは、炭素数1~12の炭化水素基、または、NR5R6基(R5およびR6は、炭素数1~12の炭化水素基を示し、また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示す。
R4で示される炭素数1~12の炭化水素基としては、上記した炭素数1~12の炭化水素基が挙げられ、低温架橋性の向上を図る観点から、好ましくは、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、炭素数1~12の鎖状アルキル基が挙げられる。
NR5R6基で示される原子団において、R5およびR6は、同一または異なって、炭素数1~12の炭化水素基を示す。
R5およびR6で示される炭素数1~12の炭化水素基としては、特に限定はなく、上記した炭素数1~12の炭化水素基が挙げられ、低温架橋性の向上を図る観点から、好ましくは、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、炭素数1~12の鎖状アルキル基が挙げられる。
また、R4がNR5R6基で示される原子団である場合には、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成することができる。また、それらR1、R3、R5およびR6から形成されるヘテロ環は、複数の単環が一辺を共有する多環状であってもよい。その場合に形成されるヘテロ環は、-N=C-N-構造を有する含窒素ヘテロ環であって、特に限定はなく、例えば、6~20員環のヘテロ環、好ましくは、6~15員環、より好ましくは、6~12員環、さらに好ましくは、10~12員環のヘテロ環が挙げられる。また、ヘテロ環は、共役系ヘテロ環であってもよい。なお、R1、R3、R5およびR6がヘテロ環を形成する場合、R2は、水素原子を示す。
このようなヘテロ環構造として、具体的には、例えば、トリアザビシクロ環構造などが挙げられる。
R4として、低温架橋性の向上を図る観点から、好ましくは、NR5R6基(R5およびR6は、炭素数1~12の炭化水素基を示し、また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団が挙げられる。
第1ブロック剤として、具体的には、イミダゾリン系化合物、ピリミジン系化合物、グアニジン系化合物などが挙げられる。
イミダゾリン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、2-メチルイミダゾリン(解離温度110℃)、2-フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。
ピリミジン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンなどが挙げられる。
グアニジン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、3,3-ジメチルグアニジンなどの3,3-ジアルキルグアニジン、例えば、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(解離温度120℃)などの1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンなどが挙げられる。
このような第1ブロック剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
第1ブロック剤として、好ましくは、R1、R2、およびR3が、炭素数1~12のアルキル基または水素原子を示し、かつ、R1、R2、およびR3の少なくともいずれか1つが水素原子を示し、R4が、NR5R6基(R5およびR6は、炭素数1~12のアルキル基を示す。)で示される第1ブロック剤が挙げられ、より好ましくは、グアニジン系化合物が挙げられ、さらに好ましくは、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジンが挙げられ、とりわけ好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンが挙げられる。
このような第1ブロック剤を用いれば、低温架橋性の向上を図ることができ、例えば、ポットライフの向上を図ることもできる。
また、第1ブロック剤の解離温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、130℃以下、好ましくは、120℃以下である。
なお、ブロック剤の解離温度は、以下の方法により測定することができる。
すなわち、ブロックイソシアネートをシリコンウェハーに塗布し、加熱しながら赤外分析法(IR)測定によってイソシアネート基が再生する温度を観察することにより、ブロック剤の解離温度を測定できる。なお、ブロック剤の触媒能(後述)が高く、再生したイソシアネート基を観察できない場合には、ポリオール化合物と混合し、その混合物をシリコンウェハーに塗布し、加熱しながらIR測定によってポリオール化合物の水酸基が反応する温度を観察することにより、ブロック剤の解離温度を測定できる。
2-3.第2ブロック剤
第2ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を再生するブロック剤であって、また、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有しないか、または、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有したとしてもその触媒作用(後述)が上記の第1ブロック剤よりも小さいブロック剤である。
このような第2ブロック剤として、具体的には、例えば、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩などが挙げられる。
アルコール系化合物としては、特に限定はなく、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、1-または2-オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、2-(ヒドロキシメチル)フラン、2-メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2-エトキシエタノール、n-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-エトキシエトキシエタノール、2-エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2-ブトキシエチルエタノール、2-ブトキシエトキシエタノール、N,N-ジブチル-2-ヒドロキシアセトアミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-モルホリンエタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、3-オキサゾリジンエタノール、2-ヒドロキシメチルピリジン(解離温度140℃)、フルフリルアルコール、12-ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどが挙げられる。
フェノール系化合物としては、特に限定はなく、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、s-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール、ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-s-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4-[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、2-ヒドロキシピリジン(解離温度80℃)、2-または8-ヒドロキシキノリン、2-クロロ-3-ピリジノール、ピリジン-2-チオール(解離温度70℃)などが挙げられる。
活性メチレン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、メルドラム酸、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ-t-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸メチルn-ブチル、マロン酸エチルn-ブチル、マロン酸メチルs-ブチル、マロン酸エチルs-ブチル、マロン酸メチルt-ブチル、マロン酸エチルt-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t-ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネートなど)、アセト酢酸アルキル(例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-ブチル、アセト酢酸t-ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなど)、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、シアノ酢酸エチルなどが挙げられる。
アミン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン(解離温度130℃)、イソプロピルエチルアミン、2,2,4-、または、2,2,5-トリメチルヘキサメチレンアミン、N-イソプロピルシクロヘキシルアミン(解離温度140℃)、ジシクロヘキシルアミン(解離温度130℃)、ビス(3,5,5-トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン(解離温度130℃)、t-ブチルメチルアミン、t-ブチルエチルアミン(解離温度120℃)、t-ブチルプロピルアミン、t-ブチルブチルアミン、t-ブチルベンジルアミン(解離温度120℃)、t-ブチルフェニルアミン、2,2,6-トリメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(解離温度80℃)、(ジメチルアミノ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン、6-メチル-2-ピペリジン、6-アミノカプロン酸などが挙げられる。
イミン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、グアニジンなどが挙げられる。
オキシム系化合物としては、特に限定はなく、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(解離温度130℃)、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt-ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4-ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3-エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n-アミルケトンオキシム、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2-ヘプタノンオキシムなどが挙げられる。
カルバミン酸系化合物としては、特に限定はなく、例えば、N-フェニルカルバミン酸フェニル、N-フェニルカルバミン酸メチル、N-フェニルカルバミン酸イソプロピル、N-フェニルカルバミン酸ブチルなどが挙げられる。
尿素系化合物としては、特に限定はなく、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などが挙げられる。
酸アミド系(ラクタム系)化合物としては、特に限定はなく、例えば、アセトアニリド、N-メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、ピロリドン、2,5-ピペラジンジオン、ラウロラクタムなどが挙げられる。
酸イミド系化合物としては、特に限定はなく、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミドなどが挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、特に限定はなく、例えば、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
ピラゾール系化合物としては、特に限定はなく、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール(解離温度120℃)、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、3,5-ジ-t-ブチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾールなどが挙げられる。
メルカプタン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどが挙げられる。
重亜硫酸塩としては、特に限定はなく、例えば、重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。
また、第2ブロック剤としては、上記に限定されず、例えば、ベンゾオキサゾロン、無水イサト酸、テトラブチルホスホニウム・アセタートなどのその他のブロック剤も挙げられる。
イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)を有する第2ブロック剤としては、例えば、上記一般式(1)で示されるブロック剤が挙げられ、具体的には、例えば、上記したイミダゾリン系化合物、上記したピリミジン系化合物、上記したグアニジン系化合物などが挙げられる。また、イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)を有する第2ブロック剤としては、例えば、イミダゾール系化合物も挙げられる。イミダゾール系化合物としては、特に限定はなく、例えば、イミダゾール(解離温度100℃)、ベンズイミダゾール(解離温度120℃)、2-メチルイミダゾール(解離温度70℃)、4-メチルイミダゾール(解離温度100℃)、2-エチルイミダゾール(解離温度70℃)、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどが挙げられる。
なお、第2ブロック剤として上記一般式(1)で示されるブロック剤が用いられる場合には、イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)が第1ブロック剤よりも小さいブロック剤が選択される。
これら第2ブロック剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
第2ブロック剤として、好ましくは、アミン系化合物(さらに好ましくは、ジイソプロピルアミン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルベンジルアミン)、オキシム系化合物(さらに好ましくは、メチルエチルケトオキシム)、酸アミド系化合物(さらに好ましくは、ε-カプロラクタム)、ピラゾール系化合物(さらに好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)、イミダゾール系化合物(さらに好ましくは、イミダゾール)が挙げられ、とりわけ好ましくは、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルベンジルアミン、メチルエチルケトオキシム、3,5-ジメチルピラゾール、イミダゾールが挙げられる。
また、第2ブロック剤として、好ましくは、イソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有しない第2ブロック剤が挙げられ、具体的には、アミン系化合物(さらに好ましくは、ジイソプロピルアミン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルベンジルアミン)、オキシム系化合物(さらに好ましくは、メチルエチルケトオキシム)、酸アミド系化合物(さらに好ましくは、ε-カプロラクタム)、ピラゾール系化合物(さらに好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)が挙げられ、とりわけ好ましくは、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルベンジルアミン、メチルエチルケトオキシム、3,5-ジメチルピラゾールが挙げられる。
第2ブロック剤の解離温度は、例えば、130℃以下、好ましくは、120℃以下、より好ましくは、110℃以下であり、通常、60℃以上である。
また、第2のブロック剤は、好ましくは、ピラゾール系化合物(より好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)またはアミン系化合物(より好ましくは、ジイソプロピルアミン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルベンジルアミン)である。
2-4.第3ブロック剤
第3ブロック剤は、イミダゾール系化合物であり、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を再生し、また、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有しないか、または、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有したとしてもその触媒作用(後述)が上記の第1ブロック剤よりも小さい。
イミダゾール系化合物としては、特に限定ななく、例えば、上記したイミダゾール系化合物、すなわち、イミダゾール(解離温度100℃)、ベンズイミダゾール(解離温度120℃)、2-メチルイミダゾール(解離温度70℃)、4-メチルイミダゾール(解離温度100℃)、2-エチルイミダゾール(解離温度70℃)、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどが挙げられる。これらの中でも、イミダゾールが好ましい。
第3ブロック剤の解離温度は、例えば、130℃以下、好ましくは、120℃以下、より好ましくは、110℃以下であり、通常、60℃以上である。本発明において、イソシアネート基をブロックしている全てのブロック剤が解離する温度は、130℃以下であることが好ましい。ここで、「同温度が130℃以下である」は、例えば、イソシアネート基をブロックしている第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤それぞれの解離温度が、130℃以下であってもよいし、また、例えば、ブロックイソシアネート全体としてブロック剤が解離する温度が、130℃以下であってもよい。「ブロックイソシアネート全体としてブロック剤が解離する温度が130℃以下である」は、例えば、第1ブロック剤の解離温度が100℃であり、第2ブロック剤および/または第3ブロック剤の解離温度が140℃であるような場合でも、例えば、ブロックイソシアネート全体としての解離温度が120℃になることを言う。
解離温度が上記範囲であれば、低温架橋性の向上を図ることができ、例えば、ポットライフの向上を図ることもできる。
2-5.第1ブロック剤と第2ブロック剤と第3ブロック剤との組み合わせ
また、第1ブロック剤と第2ブロック剤と第3ブロック剤との組み合わせとして、低温架橋性の観点から、好ましくは、第1ブロック剤が、グアニジン系化合物(より好ましくは、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン、さらに好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)であり、第2ブロック剤が、ピラゾール系化合物(より好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)またはアミン系化合物(より好ましくは、ジイソプロピルアミン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルベンジルアミン)であり、第3ブロック剤が、イミダゾール系化合物(より好ましくは、イミダゾール)である。第1ブロック剤と第2ブロック剤と第3ブロック剤との組み合わせとして、より好ましくは、第1ブロック剤が、グアニジン系化合物(さらに好ましくは、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン、特に好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)であり、第2のブロック剤が、ピラゾール系化合物(さらに好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)であり、第3ブロック剤が、イミダゾール系化合物(さらに好ましくは、イミダゾール)である。第1ブロック剤と第2ブロック剤と第3ブロック剤との組み合わせとして、さらに好ましくは、第1ブロック剤が、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンであり、第2のブロック剤が、3,5-ジメチルピラゾールであり、第3ブロック剤が、イミダゾールである。なお、第1ブロック剤、第2ブロック剤、第3ブロック剤は、同じ化合物となることはなく、本発明では必ず3種類以上のブロック剤を使用する。
2-6.ブロックイソシアネートの製造方法
そして、ブロックイソシアネートは、上記のヘキサメチレンジイソシアネートのみからなる誘導体を含むポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを反応させることによって、得ることができる。
なお、この方法における反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させ、さらに、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させることができる。
また、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させ、さらに、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させることもできる。上記のように、ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とは、あらゆる順序で反応させることができる。
さらには、ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを同時に反応させてもよい。
好ましくは、第1ブロック剤がグアニジン系化合物(好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)であり、第2ブロック剤がピラゾール系化合物(好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)であり、第3ブロック剤がイミダゾール系化合物(好ましくは、イミダゾール)である場合、ポリイソシアネート化合物と、これらのブロック剤とを同時に反応させてもよいし、または、ポリイソシアネート化合物に対して、これらのブロック剤を任意の順序で反応させてもよい。例えば、この反応において、第1ブロック剤が1,1,3,3-テトラメチルグアニジンであり、第2ブロック剤が3,5-ジメチルピラゾールであり、第3ブロック剤がイミダゾールである場合、ポリイソシアネート化合物と、これらのブロック剤とを同時に反応させてもよいし、または、ポリイソシアネート化合物に対して、これらのブロック剤を任意の順序で反応させてもよい。
例えば、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤、第3ブロック剤、および第1ブロック剤とをこの順序で反応させる場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.0以下、好ましくは、0.8以下、より好ましくは、0.6以下である。また、第3ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.3以上、例えば、1.0以下、好ましくは、0.9以下、より好ましくは、0.85以下であり、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、0.8以下、好ましくは、0.6以下、より好ましくは、0.4以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
この反応において、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤の割合は、ブロックイソシアネート中における第1潜在イソシアネート基(後述)と、第2潜在イソシアネート基(後述)と、第3潜在イソシアネート基(後述)との含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。
また、上記の各反応は、いずれも、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
溶剤としては、特に限定はなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類、さらには、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートなどが挙げられる。
また、溶剤としては、さらに、可塑剤も挙げられる。
可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、芳香族ポリカルボン酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、ポリオール系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などが挙げられる。
フタル酸系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジへキシルフタレート、ジへプチルフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート、ジフェニルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、オクチルデシルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのフタル酸エステル系可塑剤、例えば、ジ-(2-エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ-n-オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸エステル系可塑剤が挙げられる。
脂肪酸系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、ジ-n-ブチルアジペート、ジ-(2-エチルへキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジ(C6-C10アルキル)アジペート、ジブチルジグリコールアジペートなどのアジピン酸系可塑剤、例えば、ジ-n-へキシルアゼレート、ジ-(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレートなどのアゼライン酸系可塑剤、例えば、ジ-n-ブチルセバケート、ジ-(2-エチルへキシル)セバケート、ジイソノニルセバケートなどのセバシン酸系可塑剤、例えば、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジ-n-ブチルマレート、ジ-(2-エチルヘキシル)マレートなどのマレイン酸系可塑剤、例えば、ジ-n-ブチルフマレート、ジ-(2-エチルへキシル)フマレートなどのフマル酸系可塑剤、例えば、モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ-(2-エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸系可塑剤、例えば、n-ブチルステアレート、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸系可塑剤、例えば、ブチルオレート、グリセリルモノオレート、ジエチレングリコールモノオレートなどのオレイン酸系可塑剤、例えば、トリエチルシトレート、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリ-(2-エチルへキシル)シトレートなどのクエン酸系可塑剤、例えば、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸系可塑剤、および、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸系可塑剤などが挙げられる。
芳香族ポリカルボン酸系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、トリ-n-ヘキシルトリメリテート、トリ-(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ-n-オクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリット酸系可塑剤、例えば、テトラ-(2-エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ-n-オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸系可塑剤などが挙げられる。
リン酸系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェートなどが挙げられる。
ポリオール系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ-(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール系可塑剤、例えば、グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン系可塑剤などが挙げられる。
エポキシ系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどが挙げられる。
ポリエステル系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどが挙げられる。
また、可塑剤としては、その他に、部分水添ターフェニル、接着性可塑剤、さらには、ジアリルフタレート、アクリル系モノマーやオリゴマーなどの重合性可塑剤などが挙げられる。これら可塑剤は、単独または2種以上併用することができる。
これら溶剤は、単独使用または2種類以上併用することもできる。
これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤にブロックされた、ブロックイソシアネートを得ることができる。
そして、このようなブロックイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基と、第3ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基を、1分子中に併有している。
第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合は、それぞれ、前述のとおりである。同含有割合は、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基、および前記第3潜在イソシアネート基の総モル量に対して、第1潜在イソシアネート基が、好ましくは、7モル%以上15モル%以下、より好ましくは、10モル%以上12モル%以下であり、第2潜在イソシアネート基が、好ましくは、10モル%以上30モル%以下、より好ましくは、10モル%以上20モル%以下であり、第3潜在イソシアネート基が、好ましくは、60モル%以上85モル%未満、より好ましくは、70モル%以上85モル%未満である。
また、このようなブロックイソシアネートは、例えば、非水分散性ブロックイソシアネートとして得られ、例えば、上記した溶剤に溶解させて用いることができる。
ブロックイソシアネートを溶剤に溶解させる場合において、その固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
2-7.活性水素基を含有する親水性化合物により変性されているブロックイソシアネート
また、このようなブロックイソシアネートは、例えば、水に分散させて用いることもできる。そのような場合、水分散性の観点から、好ましくは、ブロックイソシアネートが、活性水素基を含有する親水性化合物により変性される。これにより、水分散性のブロックイソシアネートを得ることができる。このようなブロックイソシアネートは、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基以外のイソシアネート基を有し、前記イソシアネート基が、下記親水性化合物の活性水素基と結合している、ブロックイソシアネートである。
より具体的には、水分散性のブロックイソシアネートを得るには、例えば、まず、上記したポリイソシアネート化合物と、活性水素基を含有する親水性化合物とを反応させ、親水性基含有ポリイソシアネートを調製した後、ブロック剤と反応させることにより、ブロックイソシアネートを得ることができる。あるいは、同ブロックイソシアネートは、イソシアネートを有するブロックイソシアネートと活性水素基を含有する親水性化合物とを反応させることにより得ることができる。
活性水素基を含有する親水性化合物(以下、活性水素基含有親水性化合物と称する場合がある。)としては、特に限定はなく、例えば、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物、活性水素基含有アニオン性親水性化合物、活性水素基含有カチオン性親水性化合物(例えば、4級アミノ基含有活性水素化合物など)などが挙げられ、好ましくは、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物、活性水素基含有アニオン性親水性化合物が挙げられる。
活性水素基含有ノニオン性親水性化合物としては、特に限定はなく、例えば、少なくとも3つ連続したエチレンオキシド基を有するポリオキシエチレン化合物が挙げられる。
このようなポリオキシエチレン化合物としては、特に限定はなく、例えば、ポリオキシエチレン基含有ポリオール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレンジアミンなどが挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有ポリオールは、分子内にポリオキシエチレン基を有するとともに、水酸基を2つ以上有する化合物であって、特に限定はなく、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレントリオール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体(例えば、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンコポリマージオールあるいはトリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマージオールあるいはトリオール、ポリプロピレングリコールの末端にエチレンオキサイドを付加重合させたプルロニックタイプのポリプロピレングリコールあるいはトリオールなど)などが挙げられる。
また、ポリオキシエチレン基含有ポリオールとしては、さらに、例えば、水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールなども挙げられる。
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、例えば、まず、ジイソシアネート(上記したジイソシアネート)と片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対してジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させた後、必要により、未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを合成し、次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(C1~20のジアルカノールアミン)とをウレア化反応させることにより、得ることができる。
なお、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールの調製において、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(後述)として、好ましくは、メトキシポリエチレングリコールが挙げられ、ジイソシアネートとして、好ましくは、脂肪族ジイソシアネート(例えば、HDI)が挙げられ、ジアルカノールアミンとして、ジエタノールアミンが挙げられる。
また、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパンなどの3価アルコールの1つの水酸基に、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールを付加して得られるポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールも挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、特に限定はなく、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。
片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとしては、特に限定はなく、例えば、アルキル基で片末端封止したアルコキシエチレングリコール(モノアルコキシポリエチレングリコール)などが挙げられる。
モノアルコキシポリエチレングリコールにおいて、片末端を封止するためのアルキル基の炭素数は、特に限定はなく、例えば、1~20、好ましくは、1~8、より好ましくは、1~6、さらに好ましくは、1~4、とりわけ好ましくは、1~2である。すなわち、片末端を封止するためのアルキル基として、好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。
そのようなアルキル基によって片末端封止されたモノアルコキシポリエチレングリコールとして、具体的には、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコールが挙げられ、好ましくは、メトキシポリエチレングリコールが挙げられる。
片末端封鎖ポリオキシエチレンジアミンとしては、特に限定はなく、例えば、炭素数1~20のアルコキシ基で片末端封止したポリオキシエチレンジアミン(モノアミノモノアルコキシポリオキシエチレン)などが挙げられる。
これらポリオキシエチレン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリオキシエチレン化合物として、好ましくは、水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール、ポリオキシエチレングリコール、モノアルコキシポリエチレングリコール、モノアミノモノアルコキシポリオキシエチレンジアミンが挙げられ、より好ましくは、水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール、モノアルコキシポリエチレングリコールが挙げられる。
水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールを用いれば、1分子当たりの官能基数が増大するため、ブロックイソシアネートを用いて得られる処理剤を使用して形成された加工部の耐水性を向上させることができる。
また、モノアルコキシポリエチレングリコールを用いれば、粘度を制御することができ、水分散性の向上を図ることができる。
なお、ポリオキシエチレン化合物は、エチレンオキシド基の他のオキシアルキレン基、具体的には、オキシプロピレン基、オキシスチレン基などを含有していてもよい。そのような場合において、ポリオキシエチレン化合物の全量に対するエチレンオキシド基のモル比率は、水分散性の観点から、例えば、60モル%以上、好ましくは、70モル%以上、より好ましくは、80モル%以上である。
また、ポリオキシエチレン化合物は、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、ポリオキシエチレングリコールとして、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG2000(以上、日本油脂製)などが挙げられ、また、モノメトキシポリオキシエチレングリコールとして、例えば、メトキシPEG#400、メトキシPEG#550、メトキシPEG#1000、(以上、東邦化学製)、ユニオックスM400、ユニオックスM550、ユニオックスM1000、ユニオックスM2000(以上、日本油脂製)、MPG-081(日本乳化剤)などが挙げられ、さらに、ポリオキシエチレンエーテルジアミンとしては、ジェファーミンシリーズ(ハンツマン製)などが挙げられる。
これら活性水素基含有ノニオン性親水性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
活性水素基含有ノニオン性親水性化合物(ポリオキシエチレン化合物を含む。)の数平均分子量は、特に限定はなく、例えば、200以上、好ましくは、300以上、より好ましくは、400以上であり、例えば、2000以下、好ましくは、1500以下、より好ましくは、1200以下、さらに好ましくは、1000以下である。
活性水素基含有ノニオン性親水性化合物の数平均分子量が上記下限以上であれば、ブロックイソシアネートの水分散性の向上を図ることができる。また、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物の数平均分子量が上記上限以下であれば、ブロックイソシアネートの溶解性を向上させることができ、また、ブロックイソシアネートを用いて得られる処理剤を使用して形成された加工部の耐水性を向上させることができる。
活性水素基含有アニオン性親水性化合物としては、特に限定はなく、例えば、カルボン酸基含有活性水素化合物、スルホン酸基含有活性水素化合物などが挙げられる。
カルボン酸基含有活性水素化合物としては、特に限定はなく、例えば、モノヒドロキシカルボン酸およびその誘導体、ジヒドロキシカルボン酸およびその誘導体などが挙げられる。
モノヒドロキシカルボン酸として、具体的には、例えば、ヒドロキシピバリン酸、グリコール酸、乳酸などが挙げられる。
ジヒドロキシカルボン酸として、具体的には、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(以下、DMPAとする。)、2,2-ジメチロールブタン酸(以下、DMBAとする。)、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸などが挙げられる。
また、モノヒドロキシカルボン酸またはジヒドロキシカルボン酸の誘導体としては、特に限定はなく、例えば、上記モノヒドロキシカルボン酸またはジヒドロキシカルボン酸の金属塩類やアンモニウム塩類、さらには、上記モノヒドロキシカルボン酸またはジヒドロキシカルボン酸を開始剤としたポリカプロラクトンジオールやポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
カルボン酸基含有活性水素化合物として、好ましくは、モノヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸が挙げられ、より好ましくは、ジヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
スルホン酸基含有活性水素化合物としては、特に限定はなく、例えば、エポキシ基含有化合物と酸性亜硫酸塩との合成反応から得られる、ジヒドロキシブタンスルホン酸、ジヒドロキシプロパンスルホン酸が挙げられる。また、例えば、アミノエチルスルホン酸、エチレンジアミノ-プロピル-β-エチルスルホン酸、1,3-プロピレンジアミン-β-エチルスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノブタンスルホン酸、1,3-フェニレンジアミン-4,6-ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、ジアミノプロパンスルホン酸、3,6-ジアミノ-2-トルエンスルホン酸、2,4-ジアミノ-5-トルエンスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、2-アミノエタンスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-2-アミノブタンスルホン酸;それらスルホン酸の金属塩類;それらのアンモニウム塩類などが挙げられる。
これら活性水素基含有アニオン性親水性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。活性水素基含有アニオン性親水性化合物として、好ましくは、製造容易性、処理剤における配合性の観点から、カルボン酸基含有活性水素化合物が挙げられる。
なお、活性水素基含有アニオン性親水性化合物を用いる場合には、ブロックイソシアネートの製造後、好ましくは、中和剤によって中和する。中和剤としては、特に限定はなく、例えば、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの3級アミンなどが挙げられる。
これら活性水素基含有親水性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。活性水素基含有親水性化合物として、好ましくは、製造容易性の観点から、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物が挙げられ、より好ましくは、ポリオキシエチレン化合物が挙げられる。
活性水素基含有親水性化合物として、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物を用いれば、他の樹脂と混合して用いる場合に、相溶性の向上を図ることができ、種々の樹脂と混合して用いることができる。
また、活性水素基含有親水性化合物として、ブロックイソシアネートを用いて得られる処理剤を使用して形成された加工部の耐水性の観点から、好ましくは、上記したモノヒドロキシカルボン酸またはその誘導体、ジヒドロキシカルボン酸またはその誘導体も挙げられる。
そして、これらポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物とを、反応させることにより、親水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。
親水性基含有ポリイソシアネートの調製において、ポリイソシアネート化合物に対する活性水素基含有親水性化合物の配合割合は、ブロック剤との反応前のイソシアネート化合物100重量部に対して、活性水素基含有親水性化合物が、例えば、2.5重量部以上、好ましくは、5重量部以上、より好ましくは、10重量部以上であり、例えば、40重量部以下、好ましくは、30重量部以下、より好ましくは、25重量部以下の割合となるように調整される。
ポリイソシアネート化合物に対する活性水素基含有親水性化合物の配合割合が上記下限以上であれば、水に対する分散性の向上を図ることができ、また上記上限以下であれば、水に分散させた場合の粒径を適度に保つことができ、例えば、長いポットライフを得ることができる。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、30℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間は、上記の反応温度において、滴定法により測定されるイソシアネート量に変化がなくなるまでであって、具体的には、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、120時間以下、好ましくは、72時間以下である。
また、ポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物とは、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、上記した公知の溶剤の存在下において反応させることもできる。
そして、これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部が活性水素基含有親水性化合物の活性水素基と反応され、また、イソシアネート基の残部が遊離状態とされた親水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。
また、活性水素基含有親水性化合物としてポリオキシエチレン化合物を用いる場合には、親水性基含有ポリイソシアネートのエチレンオキシド基の含有割合(すなわち、ポリイソシアネート化合物および親水性化合物の(存在する場合は、後述の疎水性基を加えた)総量に対するエチレンオキシド基の含有割合)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7.5質量%以上であり、さらに好ましくは、10質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
エチレンオキシド基の含有割合が上記下限以上であれば、優れた水分散性を得ることができ、また、上記上限以下であれば、例えば、長いポットライフを得ることができる。また、例えば、得られる処理剤を使用して形成された加工部の物性(例えば、堅牢性)の向上を図ることができる。
そして、上記により得られた親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロックするように、親水性基含有ポリイソシアネートとブロック剤とを反応させることにより、ブロックイソシアネートを得ることができる。
そして、ブロックイソシアネートは、例えば、上記の親水性基含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを反応させることによって、得ることができる。
この反応において、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤の割合は、ブロックイソシアネート中における第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基と第3潜在イソシアネート基との含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。
また、反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、親水性基含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させ、さらに、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させることができる。
また、例えば、まず、親水性基含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させ、さらに、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させることもできる。上記のように、親水性基含有イソシアネート化合物と、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とは、あらゆる順序で反応させることができる。
さらには、親水性基含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを同時に反応させてもよい。
好ましくは、まず、親水性基含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
例えば、親水性基含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤、第3ブロック剤、および第1ブロック剤とをこの順序で反応させる場合、親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.0以下、好ましくは、0.8以下、より好ましくは、0.6以下である。また、第3ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.3以上、例えば、1.0以下、好ましくは、0.9以下、より好ましくは、0.85以下であり、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、0.8以下、好ましくは、0.6以下、より好ましくは、0.4以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、上記の反応は、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
これにより、親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基が第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤によってブロックされた、ブロックイソシアネートを得ることができる。
そして、このようなブロックイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基と、第3ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基とを、1分子中に併有している。
第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合は、それぞれ、前述のとおりである。同含有割合は、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基、および前記第3潜在イソシアネート基の総モル量に対して、第1潜在イソシアネート基が、好ましくは、7モル%以上15モル%以下、より好ましくは、10モル%以上12モル%以下であり、第2潜在イソシアネート基が、好ましくは、10モル%以上30モル%以下、より好ましくは、10モル%以上20モル%以下であり、第3潜在イソシアネート基が、好ましくは、60モル%以上85モル%未満、より好ましくは、70モル%以上85モル%未満である。
なお、上記した説明では、まず、ポリイソシアネート化合物と活性水素基を含有する親水性化合物とを反応させ、得られた親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤によりブロック化することによって、ブロックイソシアネートを調製したが、ポリイソシアネート化合物、親水性化合物、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤の反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを反応させ、得られたブロックイソシアネート(未反応のイソシアネート基を含む)と親水性化合物とを反応させることにより、ブロックイソシアネートを調製してもよい。
ブロック剤の分解、副反応、および/またはブロックイソシアネートの水分散性の観点から、好ましくは、ポリイソシアネート化合物と、活性水素基を含有する親水性化合物とを先に反応させ、親水性基含有ポリイソシアネートを調製し、得られた親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤によりブロック化する。
そして、このようにして得られたブロックイソシアネートは、水分散性ブロックイソシアネートとして得られ、水に分散させる場合にも、比較的長いポットライフを有し、低温架橋性に優れる。
ブロックイソシアネートを水に分散させる方法としては、特に限定はなく、例えば、ブロックイソシアネートと水とを、ホモミキサー、ホモディスパー、マグネチックスターラーなどの攪拌機を用いて攪拌および混合すればよい。
なお、ブロックイソシアネート分散液には、必要により、分散剤、消泡剤などの添加剤を添加することができる。添加剤の配合割合は、特に限定はなく、目的および用途に応じて、適宜決定される。
その後、必要により、ブロックイソシアネート分散液に有機溶剤が含有されている場合(例えば、親水性基含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを有機溶剤中で反応させた反応液を、ブロックイソシアネートとしてそのまま用いた場合)には、ブロックイソシアネート分散液を、例えば、減圧する、または、減圧下で加熱することにより、有機溶剤を揮発除去することができる。
このようにして得られたブロックイソシアネート分散液では、ブロックイソシアネートの体積平均粒子径が、特に限定はなく、例えば、1000nm以下、好ましくは、700nm、より好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは、300nm以下、通常、10nm以上である。
ブロックイソシアネートの体積平均粒子径が、上記上限以下であれば、優れた水分散性を確保することができ、また、上記下限以上であれば、比較的長いポットライフを確保できる。
2-8.活性水素基を含有する疎水性化合物により変性されているブロックイソシアネート
前記ブロックイソシアネートは、好ましくは、活性水素基を含有する疎水性化合物により変性されているブロックイソシアネートである。本明細書で使用する場合、「疎水性化合物」という用語は、同化合物に含まれる活性水素基とイソシアネート基とが結合して得られた分子に、疎水性を付与することができる化合物を意味する。したがって、本明細書で使用する場合、疎水性化合物は、例えば、それ自体が疎水性であってもよいし、または、親水性であってもよい。このようなブロックイソシアネートを含む架橋剤により、更に優れた堅牢性を示す印刷部を繊維表面に形成することができる。このようなブロックイソシアネートは、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基、および前記第3潜在イソシアネート基以外のイソシアネート基を有し、前記イソシアネート基が、前記疎水性化合物の活性水素基と結合している、ブロックイソシアネートである。
より具体的には、活性水素基を含有する疎水性化合物により変性されているブロックイソシアネートを得るには、例えば、まず、上記ポリイソシアネート化合物と、活性水素基を含有する疎水性化合物とを反応させ、疎水性化合物含有ポリイソシアネートを調製した後、ブロック剤と反応させることにより、ブロックイソシアネートを得ることができる。あるいは、同ブロックイソシアネートは、イソシアネートを有するブロックイソシアネートと活性水素基を含有する疎水性化合物を反応することにより得ることができる。
活性水素基を含有する疎水性化合物としては、特に限定はなく、活性水素基を含有する疎水性ポリオール(以下、活性水素基含有疎水性ポリオール)が挙げられる。活性水素基含有疎水性ポリオールは、同ポリオールに含まれる水酸基とイソシアネート基とが結合して得られた分子に、疎水性を付与することができ、かつ、水酸基を2つ以上有する化合物(ポリオール)である。活性水素基含有疎水性ポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールおよび高分子量ポリマーが挙げられる。低分子量ポリオールは、例えば、水酸基を2つ以上有する、数平均分子量300未満、好ましくは、400未満のポリオールである。このような低分子量ポリオールとしては、特に限定はなく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、アルカン(C7~20)ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール;例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール;例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール;例えば、キシリトールなどの5価アルコール;例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール;例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール;例えば、ショ糖などの8価アルコール;などが挙げられる。高分子量ポリオールは、例えば、水酸基を2つ以上有する、数平均分子量300以上、好ましくは、400以上、より好ましくは、500以上のポリオールである。このような高分子量ポリオールとしては、特に限定はなく、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。また、活性水素基含有疎水性ポリオールとしては、例えば、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、上記低分子量ポリオールとの反応より形成されたウレタン基に、更にポリイソシアネート単量体のイソシアネート基が付加することにより生成されるアロファネート変性体など)、アダクト体(例えば、ポリイソシアネート単量体と上記低分子量ポリオールとの反応より形成されたウレア基に、更にポリイソシアネート単量体のイソシアネート基が付加することにより生成されるアダクト体(アルコール付加体)など)などが挙げられる。これらの活性水素基含有疎水性ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、ポリエーテルポリオール、より好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、さらに好ましくは、ポリテトラメチレングリコールを使用することができる。
そして、これらのポリイソシアネート化合物と活性水素基含有疎水性化合物とを、反応させることにより、疎水性化合物含有ポリイソシアネートを得ることができる。
疎水性化合物含有ポリイソシアネートの調製において、ポリイソシアネート化合物に対する活性水素基含有疎水性化合物の配合割合は、ブロック剤との反応前のイソシアネート化合物100重量部に対して、活性水素基含有疎水性化合物が、例えば、5重量部以上、好ましくは、6重量部以上、より好ましくは、7重量部以上であり、例えば、30重量部以下、好ましくは、25重量部以下、より好ましくは、20重量部以下の割合となるように調整される。前記配合割合を前記範囲内にすることで、例えば、更に堅牢性に優れた加工部を繊維または皮革表面に形成することができ、例えば、長いポットライフを得ることができる。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、30℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間は、上記の反応温度において、滴定法により測定されるイソシアネート量に変化がなくなるまでであって、具体的には、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、120時間以下、好ましくは、72時間以下である。
また、ポリイソシアネート化合物と活性水素基含有疎水性化合物とは、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、上記した公知の溶剤の存在下において反応させることもできる。
そして、これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部が活性水素基含有疎水性化合物の活性水素基と反応され、また、イソシアネート基の残部が遊離状態とされる疎水性化合物含有ポリイソシアネートを得ることができる。
そして、上記により得られた疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロックするように、疎水性化合物含有ポリイソシアネートとブロック剤とを反応させることにより、ブロックイソシアネートを得ることができる。
そして、ブロックイソシアネートは、例えば、上記の疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを反応させることによって、得ることができる。
この反応において、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤の割合は、ブロックイソシアネート中における第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基と第3潜在イソシアネート基との含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。
また、反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させ、さらに、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させることができる。
また、例えば、まず、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させ、さらに、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させることもできる。上記のように、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とは、あらゆる順序で反応させることができる。
さらには、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを同時に反応させてもよい。
好ましくは、まず、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
例えば、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤、第3ブロック剤、および第1ブロック剤とをこの順序で反応させる場合、疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.0以下、好ましくは、0.8以下、より好ましくは、0.6以下である。また、第3ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.3以上、例えば、1.0以下、好ましくは、0.9以下、より好ましくは、0.85以下であり、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、0.8以下、好ましくは、0.6以下、より好ましくは、0.4以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、上記の反応は、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
これにより、疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基が第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤によってブロックされた、ブロックイソシアネートを得ることができる。
そして、このようなブロックイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基と、第3ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基とを、1分子中に併有している。
第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合は、それぞれ、前述のとおりである。同含有割合は、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基、および前記第3潜在イソシアネート基の総モル量に対して、第1潜在イソシアネート基が、好ましくは、7モル%以上15モル%以下、より好ましくは、10モル%以上12モル%以下であり、第2潜在イソシアネート基が、好ましくは、10モル%以上30モル%以下、より好ましくは、10モル%以上20モル%以下であり、第3潜在イソシアネート基が、好ましくは、60モル%以上85モル%未満、より好ましくは、70モル%以上85モル%未満である。
なお、上記した説明では、まず、ポリイソシアネート化合物と活性水素基含有疎水性化合物とを反応させ、得られた疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤によりブロック化することによって、ブロックイソシアネートを調製したが、ポリイソシアネート化合物、活性水素基含有疎水性化合物、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤の反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを反応させ、得られたブロックイソシアネート(未反応のイソシアネート基を含む)と活性水素基含有疎水性化合物とを反応させることにより、ブロックイソシアネートを調製してもよい。
ブロック剤の分解、副反応、および/またはブロックイソシアネートの水分散性の観点から、好ましくは、ポリイソシアネート化合物と、活性水素基含有疎水性化合物とを先に反応させ、疎水性化合物含有ポリイソシアネートを調製し、得られた疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤によりブロック化する。
そして、このようにして得られたブロックイソシアネートは、例えば、更に堅牢性に優れた加工部を繊維または皮革表面に形成することができ、例えば、長いポットライフを得ることができる。
ブロックイソシアネートを水に分散させる方法としては、特に限定はなく、例えば、ブロックイソシアネートと水とを、ホモミキサー、ホモディスパー、マグネチックスターラーなどの攪拌機を用いて攪拌および混合すればよい。
なお、ブロックイソシアネート分散液には、必要により、分散剤、消泡剤などの添加剤を添加することができる。添加剤の配合割合は、特に限定はなく、目的および用途に応じて、適宜決定される。
その後、必要により、ブロックイソシアネート分散液に有機溶剤が含有されている場合(例えば、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを有機溶剤中で反応させた反応液を、ブロックイソシアネートとしてそのまま用いた場合)には、ブロックイソシアネート分散液を、例えば、減圧する、または、減圧下で加熱することにより、有機溶剤を揮発除去することができる。
このようにして得られたブロックイソシアネート分散液では、ブロックイソシアネートの体積平均粒子径が、特に限定はなく、例えば、1000nm以下、好ましくは、700nm、より好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは、300nm以下、通常、10nm以上である。
ブロックイソシアネートの体積平均粒子径が、上記上限以下であれば、優れた水分散性を確保することができ、また、上記下限以上であれば、比較的長いポットライフを確保できる。
2-9.活性水素基を含有する親水性化合物および活性水素基を含有する疎水性化合物により変性されているブロックイソシアネート
前記ブロックイソシアネートは、好ましくは、活性水素基を含有する親水性化合物および活性水素基を含有する疎水性化合物により変性されているブロックイソシアネートである。活性水素基を含有する親水性化合物による変性により、水分散性のブロックイソシアネートを得ることができ、かつ、活性水素基を含有する疎水性化合物による変性により、更に堅牢性に優れた印刷部を繊維表面に形成することができる。このようなブロックイソシアネートは、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基、および前記第3潜在イソシアネート基以外のイソシアネート基を有し、前記イソシアネート基が、前記親水性化合物および前記疎水性化合物の活性水素基と結合している、ブロックイソシアネートである。
より具体的には、水分散性のブロックイソシアネートを得ると共に、更に堅牢性に優れた印刷部を繊維表面に形成するために、例えば、まず、上記したポリイソシアネート化合物と、活性水素基を含有する親水性化合物および活性水素基を含有する疎水性化合物とを反応させ、親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートを調製する。
活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物としては、前述のものが挙げられる。
そして、これらポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物とを、反応させることにより、親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。
なお、これらポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物とを反応させる順序は、特に限定はなく、例えば、まず、これらポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物とを、反応させることにより、親水性基含有ポリイソシアネートを得た後に、親水性基含有ポリイソシアネートと活性水素基含有疎水性化合物とを、反応させることにより、親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。また、例えば、まず、これらポリイソシアネート化合物と活性水素基含有疎水性化合物とを、反応させることにより、疎水性基含有ポリイソシアネートを得た後に、疎水性基含有ポリイソシアネートと活性水素基含有親水性化合物とを、反応させることにより、親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。なお、例えば、これらポリイソシアネート化合物と、活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物とを、同時に反応させることにより、親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートを得ることもできる。
親水性基含有ポリイソシアネートの調製において、ポリイソシアネート化合物に対する活性水素基含有親水性化合物の配合割合はブロック剤との反応前のイソシアネート化合物100重量部に対して、活性水素基含有親水性化合物が、例えば、2.5重量部以上、好ましくは、5重量部以上、より好ましくは、10重量部以上であり、例えば、40重量部以下、好ましくは、30重量部以下、より好ましくは、25重量部以下の割合となるように調整される。
ポリイソシアネート化合物に対する活性水素基含有親水性化合物の配合割合が上記下限以上であれば、水に対する分散性の向上を図ることができ、また上記上限以下であれば、水に分散させた場合の粒径を適度に保つことができ、例えば、長いポットライフを得ることができる。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、30℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間は、上記の反応温度において、滴定法により測定されるイソシアネート量に変化がなくなるまでであって、具体的には、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、120時間以下、好ましくは、72時間以下である。
また、ポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物とは、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、上記した公知の溶剤の存在下において反応させることもできる。
そして、これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部が活性水素基含有親水性化合物の活性水素基と反応され、また、イソシアネート基の残部が遊離状態とされた親水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。
また、活性水素基含有親水性化合物としてポリオキシエチレン化合物を用いる場合には、親水性基含有ポリイソシアネートのエチレンオキシド基の含有割合(すなわち、ポリイソシアネート化合物および親水性化合物の(存在する場合は、後述の疎水性基を加えた)総量に対するエチレンオキシド基の含有割合)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7.5質量%以上であり、さらに好ましくは、10質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
エチレンオキシド基の含有割合が上記下限以上であれば、優れた水分散性を得ることができ、また、上記上限以下であれば、例えば、長いポットライフを得ることができる。また、得られる処理剤を使用して形成された加工部の物性(例えば、堅牢性)の向上を図ることができる。
次に、この親水性基含有ポリイソシアネートと、活性水素基含有疎水性化合物とを、反応させることにより、親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。
親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートの調製において、親水性基含有ポリイソシアネートに対する活性水素基含有疎水性化合物の配合割合は、ブロック剤と反応前のイソシアネート化合物100重量部に対して、活性水素基含有疎水性化合物が、例えば、5重量部以上、好ましくは、6重量部以上、より好ましくは、7重量部以上であり、例えば、30重量部以下、好ましくは、25重量部以下、より好ましくは、20重量部以下の割合となるように調整される。前記配合割合を前記範囲内にすることで、例えば、更に堅牢性に優れた加工部を繊維または皮革表面に形成することができ、例えば、長いポットライフを得ることができる。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、30℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間は、上記の反応温度において、滴定法により測定されるイソシアネート量に変化がなくなるまでであって、具体的には、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、120時間以下、好ましくは、72時間以下である。
また、親水性基含有ポリイソシアネートと活性水素基含有疎水性化合物とは、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、上記した公知の溶剤の存在下において反応させることもできる。
そして、これにより、親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部が活性水素基含有疎水性化合物の活性水素基と反応され、また、イソシアネート基の残部が遊離状態とされる親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートを得ることができる。
そして、上記により得られた親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロックするように、親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートとブロック剤とを反応させることにより、ブロックイソシアネートを得ることができる。
そして、ブロックイソシアネートは、例えば、上記の親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを反応させることによって、得ることができる。
この反応において、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤の割合は、ブロックイソシアネート中における第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基と第3潜在イソシアネート基との含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。
また、反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させ、さらに、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させることができる。
また、例えば、まず、親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させ、さらに、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させることもできる。上記のように、親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とは、あらゆる順序で反応させることができる。
さらには、親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを同時に反応させてもよい。
好ましくは、まず、親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
例えば、親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤、第3ブロック剤、および第1ブロック剤とをこの順序で反応させる場合、親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.0以下、好ましくは、0.8以下、より好ましくは、0.6以下である。また、第3ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.3以上、例えば、1.0以下、好ましくは、0.9以下、より好ましくは、0.85以下であり、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、0.8以下、好ましくは、0.6以下、より好ましくは、0.4以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、上記の反応は、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
これにより、親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基が第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤によってブロックされた、ブロックイソシアネートを得ることができる。
そして、このようなブロックイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基と、第3ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基とを、1分子中に併有している。
第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合は、それぞれ、前述のとおりである。同含有割合は、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基、および前記第3潜在イソシアネート基の総モル量に対して、第1潜在イソシアネート基が、好ましくは、7モル%以上15モル%以下、より好ましくは、10モル%以上12モル%以下であり、第2潜在イソシアネート基が、好ましくは、10モル%以上30モル%以下、より好ましくは、10モル%以上20モル%以下であり、第3潜在イソシアネート基が、好ましくは、60モル%以上85モル%未満、より好ましくは、70モル%以上85モル%未満である。
なお、上記した説明では、まず、ポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物とを反応させ、得られた親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤によりブロック化することによって、ブロックイソシアネートを調製したが、ポリイソシアネート化合物、活性水素基含有親水性化合物、活性水素基含有疎水性化合物、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤の反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを反応させ、得られたブロックイソシアネート(未反応のイソシアネート基を含む)と、活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物とを反応させることにより、ブロックイソシアネートを調製してもよい。
ブロック剤の分解、副反応、および/またはブロックイソシアネートの水分散性の観点から、好ましくは、ポリイソシアネート化合物と、活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物とを先に反応させ、親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートを調製し、得られた親水性化合物および疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤によりブロック化する。
そして、このようにして得られたブロックイソシアネートは、水分散性ブロックイソシアネートとして得られ、例えば、更に堅牢性に優れた加工部を繊維または皮革表面に形成することができ、例えば、長いポットライフを得ることができる。
ブロックイソシアネートを水に分散させる方法としては、特に限定はなく、例えば、ブロックイソシアネートと水とを、ホモミキサー、ホモディスパー、マグネチックスターラーなどの攪拌機を用いて攪拌および混合すればよい。
なお、ブロックイソシアネート分散液には、必要により、分散剤、消泡剤などの添加剤を添加することができる。添加剤の配合割合は、特に限定はなく、目的および用途に応じて、適宜決定される。
その後、必要により、ブロックイソシアネート分散液に有機溶剤が含有されている場合(例えば、親水性基含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを有機溶剤中で反応させた反応液を、ブロックイソシアネートとしてそのまま用いた場合)には、ブロックイソシアネート分散液を、例えば、減圧する、または、減圧下で加熱することにより、有機溶剤を揮発除去することができる。
このようにして得られたブロックイソシアネート分散液では、ブロックイソシアネートの体積平均粒子径が、特に限定はなく、例えば、1000nm以下、好ましくは、700nm、より好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは、300nm以下、通常、10nm以上である。
ブロックイソシアネートの体積平均粒子径が、上記上限以下であれば、優れた水分散性を確保することができ、また、上記下限以上であれば、比較的長いポットライフを確保できる。
2-10.第1ブロックイソシアネート成分と第2ブロックイソシアネート成分と第3ブロックイソシアネート成分との混合
また、上記した説明では、得られるブロックイソシアネート1分子中に、第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基と第3潜在イソシアネート基が併有されるが、例えば、潜在イソシアネート基として第1潜在イソシアネート基のみを含有するブロックイソシアネートと、潜在イソシアネート基として第2潜在イソシアネート基のみを含有するブロックイソシアネートと、潜在イソシアネート基として第3潜在イソシアネート基のみを含有するブロックイソシアネートとをそれぞれ調製し、混合することもできる。
より具体的には、この方法では、まず、上記したポリイソシアネート化合物と、上記した第1ブロック剤とを反応させることにより、潜在イソシアネート基として第1潜在イソシアネート基のみを含有するブロックイソシアネート(以下、第1ブロックイソシアネート成分と称する。)を得る。
このような場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、1.0以上、好ましくは、1.05以上、例えば、1.1以下、好ましくは、1.05以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤とを、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、溶剤の存在下において反応させることもできる。
これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第1ブロック剤のみによってブロックされたブロックイソシアネート、すなわち、第1ブロックイソシアネート成分を得ることができる。
また、この方法では、第1ブロックイソシアネート成分とは別途、上記したポリイソシアネート化合物と、上記した第2ブロック剤とを反応させることにより、潜在イソシアネート基として第2潜在イソシアネート基のみを含有するブロックイソシアネート(以下、第2ブロックイソシアネート成分と称する。)を得る。
このような場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、1.0以上、好ましくは、1.05以上、例えば、1.1以下、好ましくは、1.05以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤とを、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、溶剤の存在下において反応させることもできる。
これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第2ブロック剤のみによってブロックされたブロックイソシアネート、すなわち、第2ブロックイソシアネート成分を得ることができる。
また、この方法では、第1ブロックイソシアネート成分および第2ブロックイソシアネート成分とは別途、上記したポリイソシアネート化合物と、上記した第3ブロック剤とを反応させることにより、潜在イソシアネート基として第3潜在イソシアネート基のみを含有するブロックイソシアネート(以下、第3ブロックイソシアネート成分と称する。)を得る。
このような場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第3ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、1.0以上、好ましくは、1.05以上、例えば、1.1以下、好ましくは、1.05以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、ポリイソシアネート化合物と第3ブロック剤とを、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、溶剤の存在下において反応させることもできる。
これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第3ブロック剤のみによってブロックされたブロックイソシアネート、すなわち、第3ブロックイソシアネート成分を得ることができる。
その後、この方法では、第1ブロックイソシアネート成分と第2ブロックイソシアネート成分とを混合する。
第1ブロックイソシアネート成分と第2ブロックイソシアネート成分と第3ブロックイソシアネート成分との混合割合は、ブロックイソシアネート中の第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合が下記の範囲となるように、適宜設定される。
具体的には、第1ブロックイソシアネート成分と第2ブロックイソシアネート成分と第3ブロックイソシアネート成分との総モル量に対して、第1ブロックイソシアネート成分が、例えば、5モル%以上20モル%以下、好ましくは、7モル%以上15モル%以下、より好ましくは、10モル%以上12モル%以下であり、第2ブロックイソシアネート成分が、例えば、10モル%以上40モル%以下、好ましくは、10モル%以上30モル%以下、より好ましくは、10モル%以上20モル%以下であり、第3ブロックイソシアネート成分が、例えば、40モル%以上85モル%未満、好ましくは、60モル%以上85モル%未満、より好ましくは、70モル%以上85モル%未満である。
これにより、第1ブロックイソシアネート成分と第2ブロックイソシアネート成分と第3ブロックイソシアネート成分との混合物として、ブロックイソシアネートを得ることができる。
なお、このようなブロックイソシアネート(混合物)は、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基と、第3ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基とを、上記した割合で含有する。
また、このようなブロックイソシアネートは、例えば、上記した溶剤に上記した割合で溶解させて用いることができ、また、例えば、水に上記した割合で分散させて用いることができる。
また、ブロックイソシアネートを水に分散させて用いる場合には、必要により、第1ブロックイソシアネート成分および/または第2ブロックイソシアネート成分および/または第3ブロックイソシアネート成分を、上記した親水性化合物および/または疎水性化合物によって、上記した方法で変性することができる。
上記したように、ブロックイソシアネートは、第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基と第3潜在イソシアネート基とを1分子中に併有していてもよく、また、併有していなくてもよい。低温架橋性の観点から、好ましくは、第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基と第3潜在イソシアネート基とが1分子中に併有されることが挙げられる。
2-11.第1ブロック剤と第2ブロック剤の触媒作用および第1ブロック剤と第3ブロック剤の触媒作用
第1ブロック剤の触媒作用と第2ブロック剤の触媒作用との比較、および、第1ブロック剤の触媒作用と第3ブロック剤の触媒作用の比較は、以下の方法による。
すなわち、まず、ポリイソシアネート化合物とメチルエチルケトンオキシム(MEKO)とを反応させてブロックイソシアネートを合成し、得られたブロックイソシアネートを用いて、例えば、特許第6033446号公報の[265]~[266]段落に記載されているように塗料組成物を調製する。この塗料組成物の硬化温度を、例えば、特許第6033446号公報の[272]~[274]段落に記載されている方法で求める。この硬化温度をA(℃)とする。
また、ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤と、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)とを反応させてブロックイソシアネートを合成し、得られたブロックイソシアネートを用いて、例えば、特許第6033446号公報の[265]~[266]段落に記載されているように塗料組成物を調製する。この塗料組成物の硬化温度を、例えば、特許第6033446号公報の[272]~[274]段落に記載されている方法で求める。この硬化温度をB(℃)とする。
そのような場合におけるA(℃)とB(℃)との差(℃)を、第1ブロック剤1モルに換算し、この値(℃/モル)を、第1ブロック剤の触媒能として定義する。
次に、ポリイソシアネート化合物と、第2ブロック剤と、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)を反応させてブロックイソシアネートを合成し、得られたブロックイソシアネートを用いて、例えば、特許第6033446号公報の[265]~[266]段落に記載されているように塗料組成物を調製する。この塗料組成物の硬化温度を、例えば、特許第6033446号公報の[272]~[274]段落に記載されている方法で求める。この硬化温度をC(℃)とする。
そのような場合におけるA(℃)とC(℃)との差(℃)を、第2ブロック剤1モルに換算し、この値(℃/モル)を、第2ブロック剤の触媒能として定義する。
更に、ポリイソシアネート化合物と、第3ブロック剤と、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)を反応させてブロックイソシアネートを合成し、得られたブロックイソシアネートを用いて、例えば、特許第6033446号公報の[265]~[266]段落に記載されているように塗料組成物を調製する。この塗料組成物の硬化温度を、例えば、特許第6033446号公報の[272]~[274]段落に記載されている方法で求める。この硬化温度をD(℃)とする。
そのような場合におけるA(℃)とD(℃)との差(℃)を、第3ブロック剤1モルに換算し、この値(℃/モル)を、第3ブロック剤の触媒能として定義する。
そして、この触媒能を比較することで、ブロック剤の触媒作用が比較できる。
より具体的には、ブロック剤としてメチルエチルケトンオキシム(MEKO)を80mol%、比較したいブロック剤を20mol%の割合でポリイソシアネート化合物と反応させ、ブロックイソシアネートを調製する。そして、調製したそれぞれのブロックイソシアネートの触媒能を比較し、数字が大きい方が触媒作用に優れる。
前述のように、前記ブロックイソシアネートにおいて、前記第1ブロック剤は、前記第2ブロック剤および第3ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きい。このような触媒作用を有する第1ブロック剤と第2ブロック剤および第3ブロック剤との組み合わせとしては、例えば、特許第6033446号公報の[0275]段落の表2に記載されているように、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン>イミダゾール>3,5-ジメチルピラゾールという大小関係がある。従って、第1ブロック剤:1,1,3,3-テトラメチルグアニジンと、第2ブロック剤:3,5-ジメチルピラゾールと、第3ブロック剤:イミダゾールとの組み合わせなどが挙げられる。なお、前記第2ブロック剤および前記第3ブロック剤が触媒作用を有する場合、前記第1ブロック剤は前記第2ブロック剤および前記第3ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きいが、前記第2ブロック剤および前記第3ブロック剤がイソシアネート基を活性化させる触媒作用はどちらが大きくても良い。
3.処理剤
本明細書において、本発明の処理剤は、4通りの処理剤が想定される。すなわち、本発明の第1の処理剤は、繊維処理剤であり、例えば、繊維の顔料捺染加工に使用される。本発明の第1の処理剤は、着色成分としての顔料と、顔料固着用樹脂としてのバインダーと、本発明の繊維用架橋剤とを含む。本発明の第2の処理剤は、皮革処理剤であり、例えば、人工皮革・合成皮革の顔料捺染加工あるいは天然皮革の顔料捺染加工に使用される。本発明の第2の処理剤は、着色成分としての顔料と、顔料固着用樹脂としてのバインダーと、本発明の皮革用架橋剤とを含む。本発明の第3の処理剤は、皮革処理剤であり、例えば、人工皮革・合成皮革の水系塗装または仕上げ加工あるいは天然皮革の水系塗装または仕上げ加工に使用される。本発明の第3の処理剤は、バインダーと、本発明の皮革用架橋剤とを含む。本発明の第4の処理剤は、繊維処理剤であり、例えば、繊維に機能加工剤(例えば、消臭剤、防臭剤、難燃剤、柔軟剤、可縫性向上剤、引裂き強度向上剤、硬仕上げ剤、SR剤、帯電防止剤、摩擦堅牢度向上剤、吸水剤、スリップ防止剤、ピリング防止剤、フェルト化防止剤、赤外線吸収剤、冷感剤、温感剤、紫外線吸収剤、防虫剤、防カビ剤、防ダニ剤、抗菌剤、制菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、深色化剤、平滑剤、親水剤、防汚剤、防縮剤、防しわ剤、など)を固着させるのに使用される。本発明の第4の処理剤は、バインダーと、本発明の繊維用架橋剤とを含み、場合により、例えば、前述の機能加工剤を更に含む。
本発明の第1の処理剤は、本発明の繊維用架橋剤を含むことにより、例えば、顔料捺染加工において、低温短時間で熱処理することによって、摩擦および/または洗濯に対する堅牢性に優れた印刷部を繊維表面に形成することができる。前述のように、低温短時間で熱処理を行うことにより、例えば、顔料捺染加工時のエネルギー消費を低減することができ、製造コストを低下させることができる。また、低温短時間で熱処理を行うことにより、例えば、表面に印刷部が形成される繊維の劣化を低減することもでき、使用できる繊維の範囲を広げることもできる。
本発明の第2の処理剤は、本発明の皮革用架橋剤を含むことにより、例えば、顔料捺染加工において、低温短時間で熱処理することによって、摩擦および/または洗濯に対する堅牢性に優れた印刷部を皮革表面に形成することができる。前述のように、低温短時間で熱処理を行うことにより、例えば、顔料捺染加工時のエネルギー消費を低減することができ、製造コストを低下させることができる。また、低温短時間で熱処理を行うことにより、例えば、表面に印刷部が形成される皮革の劣化を低減することもでき、使用できる皮革の範囲を広げることもできる。例えば、皮革の顔料捺染加工を、100℃以下の熱処理しかできない天然皮革に適用することができる。
本発明の第3の処理剤は、本発明の皮革用架橋剤を含むことにより、例えば、皮革の水系塗装または仕上げ加工において、低温短時間で熱処理することによって、摩擦に対する堅牢性および密着性に優れた塗工部を皮革表面に形成することができる。前述のように、低温短時間で熱処理を行うことにより、例えば、皮革の水系塗装または仕上げ加工時のエネルギー消費を低減することができ、製造コストを低下させることができる。また、低温短時間で熱処理を行うことにより、例えば、表面に塗工部が形成される皮革の劣化を低減することもでき、使用できる皮革の範囲を広げることもできる。例えば、皮革の水系塗装または仕上げ加工を、100℃以下の熱処理しかできない天然皮革に適用することができる。
本発明の第4の処理剤は、本発明の繊維用架橋剤を含むことにより、例えば、繊維に機能加工剤を固着させるのにおいて、低温短時間で熱処理することによって、摩擦および/または洗濯に対する堅牢性に優れた塗工部を繊維表面に形成することができる。前述のように、低温短時間で熱処理を行うことにより、例えば、機能加工剤固着時のエネルギー消費を低減することができ、製造コストを低下させることができる。また、低温短時間で熱処理を行うことにより、例えば、表面に塗工部が形成される繊維の劣化を低減することもでき、使用できる繊維の範囲を広げることもできる。
ここで、本発明の処理剤(例えば、本発明の第1の処理剤)を、従来の架橋剤を含む処理剤と、種々の観点から比較する。ただし、本発明は、以下の比較により制限されない。
従来の架橋剤としてエポキシ化合物またはイソシアネート化合物を含む処理剤は、処理剤がこれらの化合物を含むため、このような処理剤は、低温での熱処理によっても、顔料を繊維表面に固着させることができる。しかしながら、エポキシ化合物およびイソシアネート化合物は、毒性および刺激性が強いため、取扱いに注意を要するものである。また、これらの化合物の反応性が高いため、これらの化合物を顔料・バインダーと共に配合した処理剤は不安定であり、処理剤自体が増粘・ゲル化することにより、処理剤が使用できなくなる問題、いわゆる、ポットライフの問題が、このような化合物を使用する処理剤にはある。この点、本発明の架橋剤は、これらの化合物を含まないため、毒性および刺激性が低く、取扱いが容易である。また、本発明の架橋剤は、例えば、ポットライフが長く、さらに例えば、時間が経過した処理剤に、本発明の架橋剤を添加することにより、ポットライフを更に長くすることができる。
特許第3970926号公報(本願の特許文献1)には、低解離温度を有するピラゾールブロックのブロックポリイソシアネートが開示されている。このブロックポリイソシアネートは、水分散性に優れるとされている。しかしながら、同文献の実施例では、120℃で45分間の処理が行われている(同文献の第13頁第13行目)。この温度および時間条件は、本発明が目的とする熱処理温度より高く、熱処理時間より長いものである。
特開2000-129144号公報(本願の特許文献2)には、カルボキシル基含有重合体と多価オキサゾリン化合物、さらに、水酸基およびカルボキシル基の両方に反応する化合物(ブロックポリイソシアネート化合物)を含む樹脂組成物が開示されている。また、この樹脂組成物を用いて綿などのセルロース基材を加工することにより、オキサゾリン基と基材の水酸基との反応性の低さを、ブロックポリイソシアネート化合物が補って、綿などのセルロース基材とカルボキシル基含有重合体との間の密着性を改善されることが記載されている。しかしながら、オキサゾリン化合物とブロックポリイソシアネート化合物との両方を使用する必要があり、使用する薬剤の種類が増えるという問題がある。
特開2004-210877号公報(本願の特許文献3)には、架橋性官能基を有する水溶性重合体と、それにより微分散化された顔料を含む水性着色剤が開示されている。また、架橋性官能基として、分子内に2-オキサゾリン基を2個以上有することにより、顔料を微分散させることができ、耐水性・耐摩擦堅牢度に優れているとされる。しかしながら、同文献の実施例では、40℃で48時間の処理が行われている(同文献の[0035]段落)。この時間条件は、本発明が目的とする熱処理時間より長いものである。なお、同文献には、耐水性・耐摩擦堅牢度に優れることについて実施例中にデータが示されていない。
特開2007-154352号公報(本願の特許文献4)には、ポリウレタン樹脂、架橋剤および水性媒体を含有する繊維加工処理剤用ポリウレタン樹脂水性分散体が開示されている。架橋剤は、カルボジイミド基およびオキサゾリン基から選ばれる1種以上の基を1分子中に2個以上有する化合物であることが規定されている。しかしながら、同文献の実施例では、140℃で5分間の処理が行われている(同文献の[0065]段落)。この温度条件は、本発明が目的とする熱処理温度より高いものである。
特開2016-151078号公報(本願の特許文献5)には、有機溶媒と前記有機溶媒に溶解された多価イソシアネートとを含む有機溶液と、乳化剤とが、水溶性溶媒に分散されて構成された定着用組成物が開示されている。まず、この定着用組成物は、多価イソシアネートを含むため、毒性および刺激性の問題がある。
3-1.第1の処理剤(繊維処理剤)
本発明の第1の処理剤において、着色成分として含まれる顔料は、特に限定はなく、例えば、カーボンブラック、無機顔料および有機顔料などが挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどが挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料、およびカーボンブラック系無機顔料などが挙げられる。前記有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;などがあげられる。また、その他の顔料であっても水相に分散可能なものであれば使用できる。これらの顔料の具体例としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6、および7;C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、15、16、17、55、73、74、75、78、83、93、94、95、97、98、114、128、129、138、150、151、154、180、185、および194;C.I.ピグメントオレンジ31および43;C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、12、15、16、48、48:1、53:1、57、57:1、112、122、123、139、144、146、149、150、166、168、175、176、177、178、184、185、190、202、221、222、224、および238;C.I.ピグメントバイオレット19および196;C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、22、および60;C.I.ピグメントグリーン7および36;ならびにこれらの顔料の固溶体なども挙げられる。
顔料は、自己分散型顔料でもよい。自己分散型顔料は、例えば、顔料粒子にカルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性官能基およびそれらの塩の少なくとも一種が、直接または他の基を介して化学結合により導入されていることによって、分散剤を使用しなくても水に分散可能なものである。自己分散型顔料は、例えば、特開平8-3498号公報、特表2000-513396号公報、特表2008-524400号公報、特表2009-515007号公報、特表2011-515535号公報などに記載の方法によって顔料が処理されたものを用いることができる。自己分散型顔料の原料としては、無機顔料および有機顔料のいずれも使用することができる。また、前記処理を行うのに適した顔料としては、例えば、三菱化学株式会社製の「MA8」および「MA100」などのカーボンブラックなどが挙げられる。自己分散型顔料は、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、キャボット・コーポレーション製の「CAB-O-JET(登録商標)200」、「CAB-O-JET(登録商標)250C」、「CAB-O-JET(登録商標)260M」、「CABO-JET(登録商標)270Y」、「CAB-O-JET(登録商標)300」、「CAB-O-JET(登録商標)400」、「CAB-O-JET(登録商標)450C」、「CAB-O-JET(登録商標)465M」および「CAB-O-JET(登録商標)470Y」;オリエント化学工業株式会社製の「BONJET(登録商標)BLACK CW-2」および「BONJET(登録商標)BLACK CW-3」;東洋インキ製造株式会社製の「LIOJET(登録商標)WD BLACK 002C」などがあげられる。
本発明の第1の処理剤全量における顔料の固形分配合割合(顔料固形分割合)は、特に限定はなく、例えば、形成される印刷部の所望の光学濃度または彩度などにより、適宜決定することができる。前記顔料固形分割合は、例えば、0.01質量%~30質量%であり、好ましくは、0.05質量%~20質量%であり、より好ましくは、0.1質量%~15質量%である。
本発明の第1の処理剤は、顔料以外の着色成分を含んでもよい。顔料以外の着色成分としては、例えば、染料などが挙げられる。
本発明の第1の処理剤において、顔料固着用樹脂として含まれるバインダーは、特に限定はなく、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム-アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体などのアクリル共重合体;スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体などのスチレン-アクリル酸樹脂;スチレン-マレイン酸;スチレン-無水マレイン酸;ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体;ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体;酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体およびこれらの塩が挙げられる。これらのバインダーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
本発明の第1の処理剤には、例えば、処理液粘度の適性を付与するため、捺染糊等を配合することができる。捺染糊は、処理剤を増粘させ、印刷適性を付与する。捺染糊は、特に限定はなく、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、プロピオキシセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル、ポリカルボン酸塩などを水に溶解または分散させたもの、あるいは、水とターペンとを非イオン界面活性剤により乳化し、糊状としたターペン糊などが挙げられる。
本発明の第1の処理剤全量におけるバインダーの固形分配合割合は、特に限定はなく、例えば、0.1質量%~50質量%であり、好ましくは、0.5質量%~45質量%であり、より好ましくは、1質量%~40質量%である。
本発明の第1の処理剤全量における繊維用架橋剤の固形分配合割合は、特に限定はなく、例えば、0.01質量%~10質量%であり、好ましくは、0.1質量%~5質量%であり、より好ましくは、0.5質量%~3質量%である。
本発明における処理剤には、必要に応じて、例えば、浸透剤、防腐剤、粘度調整剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、増粘剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、撥水剤などの添加剤を含有することができる。
本発明の第1の処理剤は、例えば、顔料、バインダー、および繊維用架橋剤と、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で、水中で均一に混合することにより調製することができる。
前記水としては、特に限定はなく、イオン交換水、純水、水道水等が挙げられる。本発明の第1の処理剤全量における水の配合割合(水割合)は、例えば、10質量%~99.9質量%であり、好ましくは、42質量%~98.4質量%である。前記水割合は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
つぎに、本発明の第1の処理剤を使用し、低温短時間で熱処理することによって、摩擦および/または洗濯に対する堅牢性に優れた印刷部を繊維表面に形成する方法を説明する。本方法は、本発明の第1の処理剤を印刷して印刷部を繊維表面に形成する工程と、この印刷部を熱処理する工程とを含む。
印刷部形成工程において、本発明の第1の処理剤を繊維表面に印刷する方法としては、従来公知の方法、例えば、スクリーン捺染法、インクジェット捺染法などが挙げられる。印刷の対象となる繊維は、例えば、繊維構造物である。繊維構造物は、編物、織物、または不織布のいずれの構造物でもよい。繊維構造物としては、特に限定はなく、例えば、Tシャツ、水着、トレーナーなどの衣類、バック、靴、スリッパ、靴下、ソファー、カーテンなどの家具、旗などの布製品、生地などが挙げられる。繊維の素材としては、例えば、天然繊維、合成繊維、合成繊維と天然繊維との混紡繊維などがあげられる。天然繊維としては、特に限定はなく、例えば、綿、絹、羊毛、麻などが挙げられる。合成繊維としては、特に限定はなく、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、レーヨンなどが挙げられる。
熱処理工程において、熱処理に使用される温度および時間条件は、前述のとおりであり、特に好ましくは、110℃2分である。熱処理を実行する熱処理手段としては、上記熱処理条件を適用することができるものであり、例えば、ホットフルー、テンター等の拡布乾燥機や、高周波乾燥機などが挙げられる。
本方法は、熱処理工程前に、繊維表面に形成された印刷部を乾燥させる乾燥工程を更に含んでもよい。乾燥工程において、乾燥温度は、例えば、80℃~110℃、好ましくは、85℃~105℃、より好ましくは、90℃~100℃である。乾燥時間は、例えば、10秒~10分、好ましくは、30秒~5分、より好ましくは、60秒~3分である。乾燥を実行する乾燥手段としては、例えば、ホットフルー、テンター等の拡布乾燥機、高周波乾燥機などが挙げられる。なお、例えば、乾燥工程は、熱処理工程と同時に行われてもよい。すなわち、熱処理工程を行うことにより、乾燥工程が行われてもよい。
3-2.第2の処理剤(皮革処理剤)
本発明の第2の処理剤において、着色成分として含まれる顔料は、特に限定はなく、例えば、本発明の第1の処理剤に含まれる前述の顔料が挙げられる。
本発明の第2の処理剤全量における顔料の固形分配合割合(顔料固形分割合)は、特に限定はなく、例えば、形成される印刷部の所望の光学濃度または彩度などにより、適宜決定することができる。前記顔料固形分割合は、例えば、0.01質量%~30質量%であり、好ましくは、0.05質量%~20質量%であり、より好ましくは、0.1質量%~15質量%である。
本発明の第2の処理剤は、顔料以外の着色成分を含んでもよい。顔料以外の着色成分としては、例えば、染料などが挙げられる。
本発明の第2の処理剤において、顔料固着用樹脂として含まれるバインダーは、特に限定はなく、例えば、本発明の第1の処理剤に含まれる前述のバインダーが挙げられる。
本発明の第2の処理剤全量におけるバインダーの固形分配合割合は、特に限定はなく、例えば、0.1質量%~50質量%であり、好ましくは、0.5質量%~45質量%であり、より好ましくは、1質量%~40質量%である。
本発明の第2の処理剤全量における皮革用架橋剤の固形分配合割合は、特に限定はなく、例えば、0.01質量%~30質量%であり、好ましくは、0.1質量%~20質量%であり、より好ましくは、0.5質量%~15質量%である。
本発明における処理剤には、必要に応じて、例えば、浸透剤、防腐剤、粘度調整剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、増粘剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、撥水剤などの添加剤を含有することができる。
本発明の第2の処理剤は、例えば、顔料、バインダー、および皮革用架橋剤と、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で、水中で均一に混合することにより調製することができる。
前記水としては、特に限定はなく、イオン交換水、純水、水道水等が挙げられる。本発明の第2の処理剤全量における前記水の配合割合(水割合)は、例えば、10質量%~99.9質量%であり、好ましくは、30質量%~98.4質量%である。前記水割合は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
つぎに、本発明の第2の処理剤を使用し、低温短時間で熱処理することによって、摩擦および/または洗濯に対する堅牢性に優れた印刷部を皮革表面に形成する方法を説明する。本方法は、本発明の第2の処理剤を印刷して印刷部を皮革表面に形成する工程と、この印刷部を熱処理する工程とを含む。
印刷部形成工程において、本発明の第2の処理剤を人工皮革・合成皮革および天然皮革表面に印刷する方法としては、従来公知の方法、例えば、スクリーン捺染法、インクジェット捺染法、アプリケータ、バーコータ、ロールコータ、スプレーコータ、T-ダイコータ、ナイフコータ、コンマコータなどを使用して塗工する方法、ディップ法などが挙げられる。印刷の対象となる皮革は、例えば、皮革構造物である。皮革構造物としては、特に限定はなく、例えば、革製のジャケット、パンツ、帽子などの衣類、鞄、財布、ベルト、靴などの革製品、生地が挙げられる。皮革の素材としては、例えば、天然皮革、合成皮革、人工皮革などが挙げられる。天然皮革としては、特に限定はなく、例えば、牛革、豚革、馬革、ダチョウ革、カンガルー革、ワニ革、ヘビ革などが挙げられる。合成皮革としては、特に限定はなく、例えば、イーエッチケミカル株式会社製の合成皮革:商品名「サクソンタフペット リベロ」、「サクソンタフペット リンクス」、ユニチカ株式会社製の合成皮革:商品名「シルセーム(登録商標)」などが挙げられる。人工皮革としては、特に限定はなく、例えば、クラレ株式会社製の商品名「クラリーノ(登録商標)」、「ソフリナ(登録商標)」、「ティレニーナ(登録商標)」 ; 帝人株式会社製の商品名「コードレ(登録商標)」、「メアジュ(登録商標)」、「コードレエアリー(登録商標)」などが挙げられる。
熱処理工程において、熱処理に使用される温度および時間条件は、前述のとおりであり、特に好ましくは、人工皮革・合成皮革の場合、110℃2分であり、天然皮革の場合、90℃2分である。熱処理を実行する熱処理手段としては、上記熱処理条件を適用することができるものであり、例えば、人工皮革・合成皮革および天然皮革の場合、ホットフルー、テンター等の乾燥機、高周波乾燥機などが挙げられる。なお、天然皮革の場合、本方法は、熱処理工程後に、エージング工程を更に含んでもよい。エージング工程に使用される温度および時間条件は、前述のとおりであり、特に好ましくは、40℃で3日間である。
本方法は、熱処理工程前に、繊維表面に形成された印刷部を乾燥させる乾燥工程を更に含んでもよい。乾燥工程において、乾燥温度は、人工皮革・合成皮革の場合、例えば、80℃~110℃、好ましくは、85℃~105℃、より好ましくは、90℃~100℃である。乾燥時間は、例えば、10秒~10分、好ましくは、30秒~5分、より好ましくは、60秒~3分である。また、乾燥温度は、天然皮革の場合、例えば、60℃~100℃、好ましくは、70℃~90℃、より好ましくは、75℃~85℃である。乾燥時間は、例えば、10秒~10分、好ましくは、30秒~5分、より好ましくは、60秒~3分である。乾燥を実行する乾燥手段としては、人工皮革・合成皮革および天然皮革の場合、例えば、ホットフルー、テンター等の乾燥機、高周波乾燥機などが挙げられる。なお、例えば、乾燥工程は、熱処理工程と同時に行われてもよい。すなわち、熱処理工程を行うことにより、乾燥工程が行われてもよい。
3-3.第3の処理剤(皮革処理剤)
本発明の第3の処理剤において、バインダーは、特に限定はなく、例えば、本発明の第1の処理剤に含まれる前述のバインダーが挙げられる。
本発明の第3の処理剤全量におけるバインダーの固形分配合割合は、特に限定はなく、例えば、0.1質量%~50質量%であり、好ましくは、0.5質量%~45質量%であり、より好ましくは、1質量%~40質量%である。
本発明の第3の処理剤全量における皮革用架橋剤の固形分配合割合は、特に限定はなく、例えば、
0.01質量%~30質量%であり、好ましくは、0.1質量%~20質量%であり、より好ましくは、0.5質量%~15質量%である。
本発明における処理剤には、必要に応じて、例えば、浸透剤、防腐剤、粘度調整剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、増粘剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、撥水剤などの添加剤を含有することができる。
本発明の第3の処理剤は、例えば、バインダーおよび皮革用架橋剤と、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で、水中で均一に混合することにより調製することができる。
前記水としては、特に限定はなく、イオン交換水、純水、水道水等が挙げられる。本発明の第3の処理剤全量における前記水の配合割合(水割合)は、例えば、10質量%~99.9質量%であり、好ましくは、45質量%~98.5質量%である。前記水割合は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
つぎに、本発明の第3の処理剤を使用し、低温短時間で熱処理することによって、密着性に優れた塗工部を皮革表面に形成する方法を説明する。本方法は、本発明の第3の処理剤を塗工して塗工部を皮革表面に形成する工程と、この塗工部を熱処理する工程とを含む。
塗工部形成工程において、本発明の第3の処理剤を人工皮革・合成皮革および天然皮革表面に塗工する方法としては、従来公知の方法、例えば、アプリケータ、バーコータ、ロールコータ、スプレーコータ、T-ダイコータ、ナイフコータ、コンマコータなどを使用した方法、ディップ法などが挙げられる。塗工の対象となる皮革は、例えば、皮革構造物である。皮革構造物としては、特に限定はなく、例えば、前述の皮革構造物が挙げられる。
熱処理工程において、熱処理に使用される温度および時間条件は、前述のとおりであり、特に好ましくは、人工皮革・合成皮革の場合、110℃2分であり、天然皮革の場合、90℃2分である。熱処理を実行する熱処理手段としては、上記熱処理条件を適用することができるものであり、人工皮革・合成皮革および天然皮革の場合、例えば、ホットフルー、テンター等の乾燥機、高周波乾燥機などが挙げられる。
本方法は、熱処理工程前に、皮革表面に形成された印刷部を乾燥させる乾燥工程を更に含んでもよい。乾燥工程において、乾燥温度は、人工皮革・合成皮革の場合、例えば、80℃~110℃、好ましくは、85℃~105℃、より好ましくは、90℃~100℃である。乾燥時間は、例えば、10秒~10分、好ましくは、30秒~5分、より好ましくは、60秒~3分である。また、乾燥温度は、天然皮革の場合、例えば、60℃~100℃、好ましくは、70℃~90℃、より好ましくは、75℃~85℃である。乾燥時間は、例えば、10秒~10分、好ましくは、30秒~5分、より好ましくは、60秒~3分である。乾燥を実行する乾燥手段としては、人工皮革・合成皮革および天然皮革の場合、例えば、ホットフルー、テンター等の乾燥機、高周波乾燥機などが挙げられる。なお、例えば、乾燥工程は、熱処理工程と同時に行われてもよい。すなわち、熱処理工程を行うことにより、乾燥工程が行われてもよい。
3-4.第4の処理剤(繊維処理剤)
本発明の第4の処理剤において、バインダーは、特に限定はなく、例えば、本発明の第1の処理剤に含まれる前述のバインダーが挙げられる。
本発明の第4の処理剤には、例えば、処理液粘度の適性を付与するため、捺染糊等を配合することができる。捺染糊は、処理剤を増粘させ、塗工適性を付与する。捺染糊は、特に限定はなく、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、プロピオキシセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル、ポリカルボン酸塩などを水に溶解または分散させたもの、あるいは、水とターペンとを非イオン界面活性剤により乳化し、糊状としたターペン糊などが挙げられる。
本発明の第4の処理剤全量におけるバインダーの固形分配合割合は、特に限定はなく、例えば、0.01質量%~50質量%であり、好ましくは、0.05質量%~45質量%であり、より好ましくは、0.1質量%~40質量%である。
本発明の第4の処理剤全量における繊維用架橋剤の固形分配合割合は、特に限定はなく、例えば、
0.01質量%~30質量%であり、好ましくは、0.05質量%~20質量%であり、より好ましくは、0.1質量%~15質量%である。
本発明の第4の処理剤は、前述のように、例えば、繊維に機能性を付与するための機能加工剤を更に含むことができる。本発明の第4の処理剤全体における機能加工剤の固形分配合割合は、例えば、当業者により適宜決定されるであろう。
本発明における処理剤には、必要に応じて、例えば、浸透剤、防腐剤、粘度調整剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、増粘剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、撥水剤などの添加剤を含有することができる。
本発明の第4の処理剤は、例えば、バインダーおよび繊維用架橋剤と、必要に応じて他の添加成分(例えば、機能加工剤)とを、従来公知の方法で、水中で均一に混合することにより調製することができる。
前記水としては、特に限定はなく、イオン交換水、純水、水道水等が挙げられる。本発明の第4の処理剤全量における前記水の配合割合(水割合)は、例えば、20質量%~99.9質量%であり、好ましくは、45質量%~98.5質量%である。前記水割合は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
つぎに、例えば、繊維に機能加工剤を固着させるのにおいて、本発明の第4の処理剤(例えば、機能加工剤を含む)を使用し、低温短時間で熱処理することによって、摩擦および/または洗濯に対する堅牢性に優れた塗工部を繊維表面に形成する方法を説明する。本方法は、本発明の第4の処理剤を塗工して塗工部を繊維表面に形成する工程と、この塗工部を熱処理する工程とを含む。
塗工部形成工程において、本発明の第4の処理剤を繊維表面に塗工する方法としては、従来公知の方法、例えば、アプリケータ、バーコータ、ロールコータ、スプレーコータ、T-ダイコータ、ナイフコータ、コンマコータなどを使用した方法、ディップ法、スクリーン捺染法、インクジェット捺染法などが挙げられる。塗工の対象となる繊維は、例えば、繊維構造物である。繊維構造物としては、特に限定はなく、例えば、前述の繊維構造物が挙げられる。繊維の素材としては、例えば、天然繊維、合成繊維、合成繊維と天然繊維との混紡繊維などが挙げられる。繊維の素材としては、特に限定はなく、例えば、前述の繊維の素材が挙げられる。
熱処理工程において、熱処理に使用される温度および時間条件は、前述のとおりであり、特に好ましくは、110℃2分である。熱処理を実行する熱処理手段としては、上記熱処理条件を適用することができるものであり、例えば、ホットフルー、テンター等の拡布乾燥機、高周波乾燥機などが挙げられる。
本方法は、熱処理工程前に、繊維表面に形成された塗工部を乾燥させる乾燥工程を更に含んでもよい。乾燥工程において、乾燥温度は、例えば、80℃~110℃、好ましくは、85℃~105℃、より好ましくは、90℃~100℃である。乾燥時間は、例えば、10秒~10分、好ましくは、30秒~5分、より好ましくは、60秒~3分である。乾燥を実行する乾燥手段としては、例えば、ホットフルー、テンター等の拡布乾燥機、高周波乾燥機などが挙げられる。なお、例えば、乾燥工程は、熱処理工程と同時に行われてもよい。すなわち、熱処理工程を行うことにより、乾燥工程が行われてもよい。
4.繊維または皮革構造物
本明細書において、本発明の構造物は、3通りの構造物が想定される。すなわち、本発明の第1の構造物は、例えば、本方法により、本発明の第1の処理剤を使用して繊維表面に形成された印刷部を含む、繊維構造物である。繊維構造物としては、前述のものが挙げられる。本発明のこの繊維構造物は、摩擦および/または洗濯に対する堅牢性に優れた印刷部を有するため、例えば、繰返しの使用および繰返しの洗濯が可能である。本発明の第2の構造物は、例えば、本方法により、本発明の第2の処理剤を使用して皮革表面に形成された印刷部を含む、皮革構造物である。皮革構造物としては、前述のものが挙げられる。本発明のこの皮革構造物は、摩擦および/または洗濯に対する堅牢性に優れた印刷部を有するため、例えば、繰返しの使用および繰返しの洗濯が可能である。本発明の第3の構造物は、例えば、本方法により、本発明の第3の処理剤を使用して皮革表面に形成された塗工部を含む、皮革構造物である。皮革構造物としては、前述のものが挙げられる。本発明のこの皮革構造物は、摩擦に対する堅牢性および塗工部(例えば、ベースコート層またはトップコート層)と皮革との間の密着性に優れた塗工部を有するため、例えば、繰返しの使用が可能である。
つぎに、本発明の実施例について、比較例および参考例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例ならびに比較例および参考例により制限されない。以下の実施例において、繊維用架橋剤および皮革用架橋剤は両方とも、「架橋剤」と呼ばれる。また、繊維処理剤および皮革処理剤は両方とも、「処理剤」と呼ばれる。
(ブロックイソシアネートの合成)
[実施例1-1]
攪拌機、温度計、冷却器、および窒素ガス導入管を備えた容量1Lの反応器に、室温で、ポリイソシアネート化合物として、タケネートD-170N(三井化学株式会社製、NCO当量:1.51mol、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体)を300g、活性水素基を含有する親水性化合物として、メトキシPEG#1000(MeOPEG、数平均分子量1000:東邦化学工業株式会社製、OH:0.053mol)を52.9g(当量比:OH/NCO=0.035)充填し、90℃において残存するイソシアネート量に変化がなくなるまでウレタン化反応させ、親水性基含有ポリイソシアネートを合成した。
この親水性基含有ポリイソシアネートに、溶媒としてジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(以下、DGMEAと略する場合がある)259.5gをよく混合した後、第3ブロック剤として、イミダゾール(以下、IMZと略する場合がある。)39.6g(0.58mol)を、反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加えた。ついで、第2ブロック剤として、3,5-ジメチルピラゾール(以下、DMPと略する場合がある)55.9g(0.58mol)を、IMZと同様に反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加えた。
ついで、第1ブロック剤として、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(以下、TMGと略する場合がある)33.5g(0.29mol)をIMZと同様に数回に分けて加えた後に、室温で1時間攪拌した。
その後、フーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルを測定することにより、イソシアネート基がブロック化されていることを確認して、固形分65重量%のブロックイソシアネートを得た。
[実施例1-8]
攪拌機、温度計、冷却器、および窒素ガス導入管を備えた容量1Lの反応器に、室温で、ポリイソシアネート化合物として、タケネートD-170N(三井化学株式会社製、NCO当量:1.51mol、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体)を300g、活性水素基を含有する疎水性化合物として、ポリテトラメチレングリコール1000(PTMG1000、数平均分子量1000:三菱ケミカル株式会社製、OH:0.028mol)を27.9g(当量比:OH/NCO=0.018)、活性水素基を含有する親水性化合物として、メトキシPEG#1000(MeOPEG、数平均分子量1000:東邦化学工業株式会社製、OH:0.058mol)を57.9g(当量比:OH/NCO=0.038)充填し、90℃において残存するイソシアネート量に変化がなくなるまでウレタン化反応させ、疎水性基および親水性基含有ポリイソシアネートを合成した。
この疎水性基および親水性基含有ポリイソシアネートに、溶媒としてDGMEA 269.3gをよく混合した後、第3ブロック剤として、IMZ、67.9g(1.00mol)を、反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加えた。ついで、第2ブロック剤として、DMP、13.7g(0.14mol)を、IMZと同様に反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加えた。
ついで、第1ブロック剤として、TMG、32.8g(0.28mol)をIMZと同様に数回に分けて加えた後に、室温で1時間攪拌した。
その後、フーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルを測定することにより、イソシアネート基がブロック化されていることを確認して、固形分65重量%のブロックイソシアネートを得た。
[実施例1-2~1~7および1-9~1-12]
表1に示す配合処方とした以外は、実施例1-1、1-8と同様にしてブロックイソシアネートを得た。表1中の各ブロック剤の下段に記載されている数値は、その数値の上に記載されているブロック剤のモル比である。例えば、実施例1-1における第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤のモル比は、TMG(1,1,3,3-テトラメチルグアニジン):DMP(3、5-ジメチルピラゾール):IMZ(イミダゾール)=20:40:40である。
[実施例2-1~2-12ならびに比較例2-1~2-3および参考例2-1~2-3]
実施例2-1~2-12ならびに比較例2-2~2-3および参考例2-1~2-3は、顔料とバインダーと架橋剤とを含む処理剤の例である。比較例2-1は、顔料とバインダーとを含み、架橋剤を含まない処理剤の例である。処理剤組成(表2)における顔料、バインダー、および架橋剤を水中で混合して、処理剤を得た。表2中の単位は、質量%である。
[堅牢性評価方法]
(1)摩擦堅牢度評価方法
実施例2-1~2-12ならびに比較例2-1~2-3および参考例2-1~2-3の処理剤により繊維表面に形成された印刷部の堅牢性を、以下の方法で評価した。すなわち、まず、実施例ならびに比較例および参考例の処理剤を、試験布(綿ギャバ:目付け:257g/m2)上に、100メッシュのスクリーン(株式会社藤木友禅型製作所製)を通して印刷した。ついで、印刷された試験布を、100℃で2分間乾燥させた。その後、この試験布を、所定の温度(110℃、130℃、または150℃)で2分間熱処理するか、または、室温で7日間置いて、加工布(評価サンプル)を作製した。
学振型摩擦試験機(株式会社大栄科学精機製作所製、型番:RT-200、摩擦子形状:表面半径45mm、試験荷重:2N、往復距離:100mm、往復速度:30往復/分)を使用して、JIS.L.0849-96 II型に従い、乾燥条件(乾式)または湿潤条件(湿式)の条件下において、評価サンプルの表面を擦った。この評価サンプルの摩擦堅牢度について、汚染グレースケールを使用し、下記評価基準に従って評価した。なお、同等級の評価であっても、性能がわずかに良好な場合には、等級に「+」と付し、一方、性能がわずかに劣る場合には、等級に「-」を付した。
摩擦堅牢度 評価基準
5 :汚染が汚染グレースケールの5級程度のもの。
4-5:汚染が汚染グレースケールの4-5級程度のもの。
4 :汚染が汚染グレースケールの4級程度のもの。
3-4:汚染が汚染グレースケールの3-4級程度のもの。
3 :汚染が汚染グレースケールの3級程度のもの。
2-3:汚染が汚染グレースケールの2-3級程度のもの。
2 :汚染が汚染グレースケールの2級程度のもの。
1-2:汚染が汚染グレースケールの1-2級程度のもの。
1 :汚染が汚染グレースケールの1級またはその程度を超えるもの。
(2)加工布色落ち評価方法
上記摩擦堅牢度評価において、擦られた評価サンプルの色落ち状態を、下記評価基準に従って評価した。なお、同等級の評価であっても、性能がわずかに良好な場合には、等級に「+」と付し、一方、性能がわずかに劣る場合には、等級に「-」を付した。
加工布色落ち 評価基準
5:全く色落ちがない
4:僅かに色落ちがある
3:少し色落ちがある
2:色落ちがある
1:大きな色落ちがある(架橋剤を使用しない比較例2-1の評価サンプル(室温で7日間)での結果と同程度)
(3)洗濯堅牢度評価方法
前述の評価サンプルを、家庭用洗濯機(垂直軸・上部投入型(セパレータ式))およびアタック(登録商標)(花王株式会社製、0.65g/L)を使用し、水温(40℃または60℃)で30分間洗濯した。その後、これらの評価サンプルを、2分間×2回すすぎ洗いした。洗濯後の評価サンプルについて、洗濯による評価サンプル同士の摩擦に対する耐久性を、変褪色の度合いにより、下記評価基準に従って評価した。なお、同等級の評価であっても、性能がわずかに良好な場合には、等級に「+」と付し、一方、性能がわずかに劣る場合には、等級に「-」を付した。
洗濯堅牢度 評価基準
4:変褪色が全くない
3:少し変褪色がある
2:変褪色がある
1:大きな変褪色がある(架橋剤を使用しない比較例2-1の評価サンプル(室温で7日間)での結果と同程度)
実施例2-1~2-12ならびに比較例2-1~2-3および参考例2-1~2-3の処理剤により繊維表面に形成された印刷部の摩擦堅牢度、加工布色落ち、および洗濯堅牢度の評価結果を、下記表3に示す。
表3に示されたとおり、架橋剤を含まない処理剤(比較例2-1)については、110℃で2分間の熱処理では、堅牢性が低かった(摩擦堅牢度:1、加工布色落ち:1、洗濯堅牢度:1)。また、従来のブロックポリイソシアネート化合物を架橋剤として含む処理剤(比較例2-2)についても、110℃で2分間の熱処理では、堅牢性が低かった(摩擦堅牢度:1、加工布色落ち:1+、洗濯堅牢度:2)。
一方、本発明の架橋剤を含む処理剤(実施例2-1~2-12)は、110℃で2分間の熱処理において、比較例2-1および2-2と比較して、摩擦堅牢度および加工布色落ちの両方により優れており、実施例2-6および2-10は、洗濯堅牢性にも優れていた。さらに、活性水素基を含有するポリテトラメチレングリコールにより変性されているブロックイソシアネートが使用された架橋剤を含む処理剤(実施例2-8~2-12)は、110℃で2分間の熱処理において、比較例2-1~2-3と比較して、摩擦堅牢度および加工布色落ちの両方に特に優れており、実施例2-10は、洗濯堅牢性にも優れていた。
参考例2-1または2-2の架橋剤は、エポキシ化合物またはイソシアネート化合物を含む架橋剤である。これらの化合物は、毒性および刺激性が強いため、取扱いに注意を要するものである。この点、本発明の架橋剤は、これらの化合物を含まないため、参考例の架橋剤2-1および2-2と比較して、毒性および刺激性が低く、取扱いが容易である。
[実施例3]
つぎに、本発明の架橋剤について、ポットライフを評価した。ポットライフとは、架橋剤、顔料、およびバインダーを配合して処理剤を調製した時点から、処理剤を正常に使用できる間の時間を言う。繊維処理剤には、配合された成分の反応が進んで、繊維処理剤には、処理液自体が増粘・ゲル化することにより、ポットライフが短くなるという問題がある。
実施例1-10の架橋剤を、顔料およびバインダーと水中で混合して、実施例3-1および3-2の処理剤を得た(表4)。エポキシ化合物およびイソシアネート化合物を架橋剤として使用して、比較例3-1および3-2の処理剤を得た(表4)。表4中の単位は、質量%である。
[ポットライフ評価方法]
まず、実施例3-1および3-2ならびに比較例3-1および3-2の処理剤を配合した。配合直後の処理剤を、実施例2の摩擦堅牢性評価方法において記載されたのと同様に、試験布上に印刷した。ついで、印刷された試験布を、100℃で2分間乾燥させた。その後、この試験布を、所定の温度(110℃、130℃、または150℃)で2分間熱処理するか、または、室温で7日間置いて、加工布(評価サンプル)を作製した。また、この処理剤を、50℃で24時間静置した。静置後の処理剤について、同様にして、加工布(評価サンプル)を作製した。また、静置後の処理剤に対して、実施例1-10の架橋剤を所定量添加し、同様にして、評価サンプルを作製した。
実施例2の堅牢性評価方法において記載されたのと同様に、評価サンプルの表面を擦った。この評価サンプルの堅牢度について、実施例2と同様にして、摩擦堅牢度および加工布色落ちを評価した(表4)。
表4に示されたように、エポキシ化合物およびイソシアネート化合物が高い反応性を有するため、従来の架橋剤を含む処理剤(比較例3-1および3-2)は、50℃で24時間の静置後に、処理剤が増粘・ゲル化し、印刷に供することができなかった(表4中、「-」で表示)。
一方、本発明の架橋剤を含む処理剤(実施例3-1および3-2)の性状は、50℃で24時間の静置後でも変化せず、液状のままであった。また、前述の静置後に、本発明の架橋剤を処理剤に再度添加することにより、処理剤の配合直後の堅牢性(摩擦堅牢度および加工布色落ち)が得られた。また、実施例1-10の架橋剤の配合量を増やす(3.0質量%)ことにより、50℃で24時間の静置後でも、堅牢性(摩擦堅牢度)を維持することができた。このように、本発明の架橋剤を使用することにより、ポットライフを長くすることができ、例えば、処理液を廃棄することなく使用することができる。
実施例1-1~1-12の架橋剤は全て、溶剤系の架橋剤である(固形分濃度:65質量%)。この架橋剤を水に希釈させると、乳化させることができる(乳化液として希釈させることができる)。
[実施例4]
つぎに、本発明の繊維用架橋剤について、綿以外の繊維種である合成繊維の一種であるポリエステルに対する堅牢性を評価した。実施例1-10の架橋剤を、顔料およびバインダーと水中で混合して、実施例4の処理剤を得た(表5)。従来のエポキシ化合物、ブロックドイソシアネート化合物、およびカルボジイミド化合物を架橋剤として使用して、比較例4-2~4-4の処理剤を得た(表5)。表5中の単位は、質量%である。
[堅牢性評価方法]
試験布を、PETトロピカル(目付け:135g/m2)としたこと以外は、実施例2の摩擦堅牢性評価方法において記載されたのと同様に、加工布(評価サンプル)を作製した。ついで、実施例2の堅牢性評価方法において記載されたのと同様に、評価サンプルの表面を擦った。この評価サンプルの堅牢度について、実施例2と同様にして、摩擦堅牢度および加工布色落ちを評価した(表5)。
表5に示されたように、架橋剤を含まない処理剤(比較例4-1)については、110℃で2分間の熱処理では、堅牢性が低かった。また、従来の架橋剤を含む処理剤(比較例4-2~4-4)についても、110℃で2分間の熱処理では、堅牢性が低かった。
一方、本発明の架橋剤を含む処理剤(実施例4)は、110℃で2分間の熱処理において、比較例4-1~4-4と比較して、摩擦堅牢度および加工布色落ちに優れていた。以上の結果から、本発明の架橋剤は、天然繊維である綿だけではなく、合成繊維に対しても、低温短時間で熱処理することによって、摩擦および/または洗濯に対する堅牢性に優れた印刷部を形成することができる。
[実施例5]
つぎに、本発明の架橋剤について、バインダー層と皮革との間の密着性を向上させる能力を評価した。実施例1-10の架橋剤を、バインダーと水中で混合して、実施例5の処理剤を得た(表6)。従来のブロックドイソシアネート化合物を架橋剤として使用して、比較例5-2の処理剤を得た(表6)。表6中の単位は、質量%である。
[密着性評価方法]
試験皮革として、天然皮革(加脂工程処理済み牛皮)を使用した。この皮革を、縦15cm×横5cmのサイズに切断した。この切断された皮革に、実施例および比較例の処理剤を、ハケ(アズワン株式会社製)で塗工した。処理剤(湿潤状態)の塗工量は、この切断された皮革に対して、1gとした。この塗工された皮革を、90℃で1分間乾燥させた。その後、この皮革を、90℃で60秒間または40℃で3日間熱処理して、評価サンプルを作製した。
熱プレス機(GARMENT PRESS、JUKI株式会社製、型式:JMP-520)を使用し、200g/cm2の圧力を掛けながら、熱融着テープ(MELCOテープ、サン化成株式会社製、ホットメルト接着タイプ、BW-II)を、評価サンプル表面に、90℃で60秒間熱処理して融着させた。
オートグラフ(株式会社島津製作所製、AG-5kNX)を使用して、下記測定条件において、評価サンプル表面に融着させた熱融着テープを剥離した。剥離時の強度を測定した差異の試験力(N)により、塗工部と皮革との間の密着性を評価した(表6)。
(オートグラフ測定条件)
・冶具つかみ間隔:40mm
・引張速度:100mm/分
・引張距離:50mm
・つかみ幅:4mm
表6に示されたように、本発明の架橋剤を含む処理剤(実施例5)は、90℃で60秒の熱処理において、架橋剤を含まない処理剤(比較例5-1)および従来の架橋剤を含む処理剤(比較例5-2)よりも良好な密着性を示した。この結果から、本発明の架橋剤は、バインダーと皮革との間の密着性を飛躍的に向上させることが可能である。
[実施例6]
つぎに、本発明の皮革用架橋剤について、天然皮革に対する堅牢性を評価した。実施例1-10の架橋剤を、顔料入りバインダー液と混合して、実施例の処理剤を得た(表7)。従来のイソシアネート化合物を架橋剤として使用して、比較例6-2の処理剤を得た(表7)。表7中の単位は、質量%である。架橋剤を使用せずに、比較例6-1の処理剤を得た(表7)。
[堅牢性評価方法]
実施例6ならびに比較例6-1および6-2の処理剤により皮革表面に形成された印刷部の堅牢性を、以下の方法で評価した。すなわち、まず、天然皮革(加脂工程処理済み牛皮)を、縦14cm×横4cm(試験皮革1)および縦4cm×横1cm(試験皮革2)のサイズに切断した。これらの皮革に、実施例および比較例の処理剤を、ハケ(アズワン株式会社製)で均一に塗工した。処理剤(湿潤状態)の塗工量は、25g/m2とした。その後、これらの皮革を、風乾(室温乾燥)した。乾燥後、再度同量の処理剤を、乾燥後の皮革に、同様にして塗工した。その後、これらの皮革を、80℃で90秒間熱処理し、その後更に、80℃で24時間静置(エージング)した。このようにして、評価サンプル1および2を作製した。
学振型摩擦試験機(大栄科学機器製作所製、型番:RT-200、摩擦子形状:表面半径45mm、試験荷重:10N、往復距離:100mm、往復速度:30往復/分)を使用して、JIS.L.0849-96 II型(学振型法)に従い、乾燥条件(乾式)の条件下において、評価サンプル1および2の表面を擦った。具体的には、評価サンプル1(縦14cm×横4cmの試験皮革1)の場合には、綿布を摩擦子側にセットし、試験皮革1を被摩擦側にセットして、4000回摩擦した。一方、評価サンプル2(縦4cm×横1cmの試験皮革2)の場合には、試験皮革2を摩擦子側にセットし、綿布を被摩擦側にセットして、100回摩擦した。これらの評価サンプルの摩擦堅牢度について、汚染された綿布の表面状態を、汚染グレースケールを使用し、下記評価基準に従って評価した。なお、同等級の評価であっても、性能がわずかに良好な場合には、等級に「+」と付し、一方、性能がわずかに劣る場合には、等級に「-」を付した。
摩擦堅牢度 評価基準
5 :汚染が汚染グレースケールの5級程度のもの。
4-5:汚染が汚染グレースケールの4-5級程度のもの。
4 :汚染が汚染グレースケールの4級程度のもの。
3-4:汚染が汚染グレースケールの3-4級程度のもの。
3 :汚染が汚染グレースケールの3級程度のもの。
2-3:汚染が汚染グレースケールの2-3級程度のもの。
2 :汚染が汚染グレースケールの2級程度のもの。
1-2:汚染が汚染グレースケールの1-2級程度のもの。
1 :汚染が汚染グレースケールの1級またはその程度を超えるもの。
実施例6ならびに比較例6-1および6-2の処理剤により皮革表面に形成された印刷部の摩擦堅牢度の評価結果を、下記表7に示す。
表7に示されたとおり、本発明の架橋剤を含む処理剤(実施例6)は、評価サンプル1および2の両条件において、架橋剤を含まない処理剤(比較例6-1)および従来の架橋剤を含む処理剤(比較例6-2)よりも良好な摩擦堅牢度を示した。この結果から、本発明の架橋剤は、天然皮革対して、低温短時間で熱処理することによって、摩擦に対する堅牢性に優れた印刷部を形成することができる。