1.定義
1-1.低温
本明細書において、「低温」という用語は、撥水加工における熱処理する温度(キュア温度)が低いことを意味する。このキュア温度は、例えば、140℃未満、好ましくは、138℃以下、より好ましくは、135℃以下である。キュア温度の下限は、撥水性を繊維製品に付与することができる温度であり、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上、より好ましくは、95℃以上である。したがって、本明細書において、キュア温度は、例えば、80℃~140℃未満、好ましくは、90℃~138℃、より好ましくは、95℃~135℃である。
2.繊維処理組成物
本発明の繊維処理組成物(以下、単に「組成物」ということがある)は、前述のように、撥水剤と、ブロックポリイソシアネートと、水性媒体とを含む。本発明の組成物が前述のブロックポリイソシアネートを含むことにより、低温で熱処理することによって、優れた洗濯耐久性を有する撥水性を繊維製品に付与することができる。前述のように、低温で熱処理を行うことにより、例えば、撥水加工時のエネルギー消費を低減することができ、製造コストを低下させることができる。また、低温で熱処理を行うことにより、例えば、撥水性が付与される繊維の劣化、硬化を低減することもでき、使用できる繊維の範囲を広げることもできる。本発明の組成物が、前述の性能を発揮するのは、例えば、各種の繊維製品を撥水加工する際に、繊維とブロックポリイソシアネート中のイソシアネート反応性部位と撥水剤との間での反応により、繊維製品表面に、緻密で立体的な網目構造が形成されるためと考えられる。ただし、本発明は、前述の考察により、限定または制限されない。
2-1.ブロックポリイソシアネート
本発明の組成物は、架橋剤としてブロックポリイソシアネートを含む。前記ブロックポリイソシアネートは、第1ブロック剤および第2ブロック剤としてイミダゾール系化合物によってブロックされているイソシアネート基(潜在イソシアネート基)を含有するブロックポリイソシアネートである。前記ブロックポリイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤および第2ブロック剤とを反応させることにより、得ることができる。前記ブロックポリイソシアネートは、好ましくは、第1ブロック剤および第2ブロック剤に加えて、第3ブロック剤によってブロックされているイソシアネート基を含有するブロックポリイソシアネートである。この場合、前記ブロックポリイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを反応させることにより、得ることができる。
2-1-1.ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物(前記ブロックポリイソシアネートのブロック化前のイソシアネート)としては、特に限定はなく、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。ポリイソシアネート化合物は、同化合物分子中に、複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を意味する。同様に、ジイソシアネート化合物は、同化合物分子中、2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を意味する。
ポリイソシアネート単量体としては、特に限定はなく、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、特に限定はなく、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定はなく、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定はなく、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。前記芳香族ポリイソシアネートは、前記脂肪族ポリイソシアネートよりイソシアネートの反応性が高い。しかしながら、本発明のブロックポリイソシアネートに使用されるポリイソシアネート化合物は、脂肪族ポリイソシアネートが好ましく、より好ましくは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。このようなポリイソシアネート化合物を選択することにより、例えば、より優れた洗濯耐久性を有する撥水性を繊維製品に付与することができる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、特に限定はなく、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(H6XDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネート誘導体としては、特に限定はなく、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、後述する低分子量ポリオールとの反応より形成されたウレタン基に更にポリイソシアネート単量体のイソシアネート基が付加することにより生成するアロファネート変性体など)、アダクト体(例えば、ポリイソシアネート単量体と後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアダクト体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水またはアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により形成されたウレア基に更にポリイソシアネート単量体のイソシアネート基が付加することにより生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
さらに、ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。
これらポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
これらポリイソシアネート化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
なお、ポリイソシアネート化合物を2種類以上併用する場合には、例えば、ブロックポリイソシアネートの製造時において、2種類以上のポリイソシアネート化合物を同時に反応させてもよく、また、各ポリイソシアネート化合物を個別に用いて得られたブロックポリイソシアネートを混合してもよい。
ポリイソシアネート化合物として、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートおよびその誘導体、脂環族ポリイソシアネートおよびその誘導体が挙げられる。
上記のポリイソシアネート化合物を用いれば、低温架橋性に優れる。
ポリイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのみからなる誘導体を含むことができる。同誘導体は、NCO骨格がヘキサメチレンジイソシアネートからなり、例えば、2つ以上のヘキサメチレンジイソシアネートが多量体化した多量体、または、ヘキサメチレンジイソシアネートが後述する変性基により変性されている変性体であることができる。ヘキサメチレンジイソシアネートとしては、特に限定はなく、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらの中でも、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が好ましい。
2-1-2.第1ブロック剤
第1ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を活性化し、また、イソシアネート基をブロックした状態および脱ブロックされた状態において、イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)を有する。
具体的には、第1ブロック剤は、後述する第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)が大きく、下記一般式(1)で示される。
(式中、R1、R2、およびR3は、同一または異なって、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R1、R2、およびR3の少なくともいずれか1つが水素原子を示す。また、R1およびR3は、互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。R4は、炭素数1~12の炭化水素基、水素原子、またはNR5R6基(ここで、R5およびR6は、同一または異なって、炭素数1~12の炭化水素基を示す。また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示す。)
上記一般式(1)において、R1、R2、およびR3は、同一または異なって、炭素数1~12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R1、R2、およびR3の少なくともいずれか1つが水素原子を示す。
R1、R2、およびR3で示される炭素数1~12の炭化水素基としては、特に限定はなく、例えば、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基などが挙げられる。
炭素数1~12のアルキル基としては、特に限定はなく、例えば、炭素数1~12の鎖状アルキル基、炭素数3~12の環状アルキル基などが挙げられる。
炭素数1~12の鎖状アルキル基としては、特に限定はなく、直鎖または分岐の炭素数1~12の鎖状アルキル基が挙げられ、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどが挙げられる。
炭素数3~12の環状アルキル基としては、特に限定はなく、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロドデシルなどが挙げられる。
炭素数6~12のアリール基としては、特に限定はなく、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、アズレニル、ビフェニルなどが挙げられる。
これら炭素数1~12の炭化水素基は、R1、R2、およびR3において、互いに同一または異なっていてもよい。
炭素数1~12の炭化水素基として、低温架橋性の向上を図る観点から、好ましくは、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、炭素数1~12の鎖状アルキル基が挙げられる。
また、R1およびR3は、互いに結合してヘテロ環を形成することができる。
R1およびR3が互いに結合して形成されるヘテロ環は、-N=C-N-構造を有する含窒素ヘテロ環であって、特に限定はなく、例えば、3~20員環のヘテロ環、好ましくは、3~10員環、より好ましくは、3~8員環、さらに好ましくは、5~7員環のヘテロ環が挙げられる。また、ヘテロ環は、例えば、単環状であってもよく、例えば、複数の単環が一辺を共有する多環状であってもよい。また、ヘテロ環は、共役系ヘテロ環であってもよい。なお、R1およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成する場合、R2は、水素原子を示す。
このようなヘテロ環構造として、具体的には、例えば、イミダゾール構造、イミダゾリン構造、ピリミジン構造などが挙げられる。
上記一般式(1)において、R4は、炭素数1~12の炭化水素基、水素原子、または、NR5R6基(R5およびR6は、炭素数1~12の炭化水素基を示し、また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示し、好ましくは、炭素数1~12の炭化水素基、または、NR5R6基(R5およびR6は、炭素数1~12の炭化水素基を示し、また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団を示す。
R4で示される炭素数1~12の炭化水素基としては、上記した炭素数1~12の炭化水素基が挙げられ、低温架橋性の向上を図る観点から、好ましくは、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、炭素数1~12の鎖状アルキル基が挙げられる。
NR5R6基で示される原子団において、R5およびR6は、同一または異なって、炭素数1~12の炭化水素基を示す。
R5およびR6で示される炭素数1~12の炭化水素基としては、特に限定はなく、上記した炭素数1~12の炭化水素基が挙げられ、低温架橋性の向上を図る観点から、好ましくは、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、炭素数1~12の鎖状アルキル基が挙げられる。
また、R4がNR5R6基で示される原子団である場合には、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成することができる。また、それらR1、R3、R5およびR6から形成されるヘテロ環は、複数の単環が一辺を共有する多環状であってもよい。その場合に形成されるヘテロ環は、-N=C-N-構造を有する含窒素ヘテロ環であって、特に限定はなく、例えば、6~20員環のヘテロ環、好ましくは、6~15員環、より好ましくは、6~12員環、さらに好ましくは、10~12員環のヘテロ環が挙げられる。また、ヘテロ環は、共役系ヘテロ環であってもよい。なお、R1、R3、R5およびR6がヘテロ環を形成する場合、R2は、水素原子を示す。
このようなヘテロ環構造として、具体的には、例えば、トリアザビシクロ環構造などが挙げられる。
R4として、低温架橋性の向上を図る観点から、好ましくは、NR5R6基(R5およびR6は、炭素数1~12の炭化水素基を示し、また、R5およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R6およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)で示される原子団が挙げられる。
第1ブロック剤として、具体的には、イミダゾリン系化合物、ピリミジン系化合物、グアニジン系化合物などが挙げられる。
イミダゾリン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、2-メチルイミダゾリン(解離温度110℃)、2-フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。
ピリミジン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンなどが挙げられる。
グアニジン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、3,3-ジメチルグアニジンなどの3,3-ジアルキルグアニジン、例えば、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(解離温度120℃)などの1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンなどが挙げられる。
このような第1ブロック剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
第1ブロック剤として、好ましくは、R1、R2、およびR3が、炭素数1~12のアルキル基または水素原子を示し、かつ、R1、R2、およびR3の少なくともいずれか1つが水素原子を示し、R4が、NR5R6基(R5およびR6は、炭素数1~12のアルキル基を示す。)で示される第1ブロック剤が挙げられ、より好ましくは、グアニジン系化合物が挙げられ、さらに好ましくは、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジンが挙げられ、とりわけ好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンが挙げられる。
このような第1ブロック剤を用いれば、低温架橋性の向上を図ることができる。
また、第1ブロック剤の解離温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、130℃以下、好ましくは、120℃以下である。
なお、ブロック剤の解離温度は、以下の方法により測定することができる。
すなわち、ブロックポリイソシアネートをシリコンウェハーに塗布し、加熱しながら赤外分析法(IR)測定によってイソシアネート基が再生する温度を観察することにより、ブロック剤の解離温度を測定できる。なお、ブロック剤の触媒能(後述)が高く、再生したイソシアネート基を観察できない場合には、ポリオール化合物と混合し、その混合物をシリコンウェハーに塗布し、加熱しながらIR測定によってポリオール化合物の水酸基が反応する温度を観察することにより、ブロック剤の解離温度を測定できる。
2-1-3.第2ブロック剤
第2ブロック剤は、イミダゾール系化合物であり、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を再生し、また、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有しないか、または、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有したとしてもその触媒作用(後述)が上記の第1ブロック剤よりも小さい。
イミダゾール系化合物としては、特に限定ななく、例えば、上記したイミダゾール系化合物、すなわち、イミダゾール(解離温度100℃)、ベンズイミダゾール(解離温度120℃)、2-メチルイミダゾール(解離温度70℃)、4-メチルイミダゾール(解離温度100℃)、2-エチルイミダゾール(解離温度70℃)、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどが挙げられる。これらの中でも、イミダゾールが好ましい。
第2ブロック剤の解離温度は、例えば、130℃以下、好ましくは、120℃以下、より好ましくは、110℃以下であり、通常、60℃以上である。本発明において、イソシアネート基をブロックしている全てのブロック剤(すなわち、第1ブロック剤および第2ブロック剤)が解離する温度は、130℃以下であることが好ましい。ここで、「同温度が130℃以下である」は、例えば、イソシアネート基をブロックしている第1ブロック剤および第2ブロック剤それぞれの解離温度が、130℃以下であってもよいし、また、例えば、ブロックポリイソシアネート全体としてブロック剤が解離する温度が、130℃以下であってもよい。「ブロックポリイソシアネート全体としてブロック剤が解離する温度が130℃以下である」は、例えば、第1ブロック剤の解離温度が100℃であり、第2ブロック剤の解離温度が140℃であるような場合でも、例えば、ブロックポリイソシアネート全体としての解離温度が120℃になることを言う。
解離温度が上記範囲であれば、低温架橋性の向上を図ることができる。
2-1-4.第1ブロック剤と第2ブロック剤との組み合わせ
また、第1ブロック剤と第2ブロック剤との組み合わせとして、低温架橋性の観点から、以下の「好ましい組み合わせ」、「より好ましい組み合わせ1~4」、「さらに好ましい組み合わせ」が挙げられる。
(好ましい組み合わせ)
・第1ブロック剤:グアニジン系化合物(より好ましくは、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン、さらに好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)
・第2ブロック剤:イミダゾール系化合物(より好ましくは、イミダゾール)
(より好ましい組み合わせ1)
・第1ブロック剤:1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン(さらに好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)
・第2ブロック剤:イミダゾール系化合物(さらに好ましくは、イミダゾール)
(より好ましい組み合わせ2)
・第1ブロック剤:1,1,3,3-テトラメチルグアニジン
・第2ブロック剤:イミダゾール系化合物(さらに好ましくは、イミダゾール)
(より好ましい組み合わせ3)
・第1ブロック剤:グアニジン系化合物(さらに好ましくは、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン、特に好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)
・第2ブロック剤:イミダゾール
(より好ましい組み合わせ4)
・第1ブロック剤:1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン(さらに好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)
・第2ブロック剤:イミダゾール
(さらに好ましい組み合わせ)
・第1ブロック剤:1,1,3,3-テトラメチルグアニジン
・第2ブロック剤:イミダゾール
2-1-5.第3ブロック剤
前述のように、前記ブロックポリイソシアネートは、1つ以上の第3ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基を更に含むことができる。第3ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を再生するブロック剤である。好ましくは、第3ブロック剤は、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有しないか、または、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有したとしてもその触媒作用(後述)が上記の第1ブロック剤よりも小さいブロック剤である。第3ブロック剤が触媒作用(後述)を有する場合、その触媒作用(後述)は、例えば、上記の第2ブロック剤よりも小さくてもよいし、または、大きくてもよい。
このような第3ブロック剤として、具体的には、例えば、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩などが挙げられる。
アルコール系化合物としては、特に限定はなく、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、1-または2-オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、2-(ヒドロキシメチル)フラン、2-メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2-エトキシエタノール、n-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-エトキシエトキシエタノール、2-エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2-ブトキシエチルエタノール、2-ブトキシエトキシエタノール、N,N-ジブチル-2-ヒドロキシアセトアミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-モルホリンエタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、3-オキサゾリジンエタノール、2-ヒドロキシメチルピリジン(解離温度140℃)、フルフリルアルコール、12-ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどが挙げられる。
フェノール系化合物としては、特に限定はなく、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、s-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール、ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-s-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4-[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、2-ヒドロキシピリジン(解離温度80℃)、2-または8-ヒドロキシキノリン、2-クロロ-3-ピリジノール、ピリジン-2-チオール(解離温度70℃)などが挙げられる。
活性メチレン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、メルドラム酸、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ-t-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸メチルn-ブチル、マロン酸エチルn-ブチル、マロン酸メチルs-ブチル、マロン酸エチルs-ブチル、マロン酸メチルt-ブチル、マロン酸エチルt-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t-ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネートなど)、アセト酢酸アルキル(例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-ブチル、アセト酢酸t-ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなど)、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、シアノ酢酸エチルなどが挙げられる。
アミン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン(解離温度130℃)、イソプロピルエチルアミン、2,2,4-、または、2,2,5-トリメチルヘキサメチレンアミン、N-イソプロピルシクロヘキシルアミン(解離温度140℃)、ジシクロヘキシルアミン(解離温度130℃)、ビス(3,5,5-トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン(解離温度130℃)、t-ブチルメチルアミン、t-ブチルエチルアミン(解離温度120℃)、t-ブチルプロピルアミン、t-ブチルブチルアミン、t-ブチルベンジルアミン(解離温度120℃)、t-ブチルフェニルアミン、2,2,6-トリメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(解離温度80℃)、(ジメチルアミノ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン、6-メチル-2-ピペリジン、6-アミノカプロン酸などが挙げられる。
イミン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、グアニジンなどが挙げられる。
オキシム系化合物としては、特に限定はなく、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(解離温度130℃)、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt-ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4-ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3-エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n-アミルケトンオキシム、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2-ヘプタノンオキシムなどが挙げられる。
カルバミン酸系化合物としては、特に限定はなく、例えば、N-フェニルカルバミン酸フェニル、N-フェニルカルバミン酸メチル、N-フェニルカルバミン酸イソプロピル、N-フェニルカルバミン酸ブチルなどが挙げられる。
尿素系化合物としては、特に限定はなく、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などが挙げられる。
酸アミド系(ラクタム系)化合物としては、特に限定はなく、例えば、アセトアニリド、N-メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、ピロリドン、2,5-ピペラジンジオン、ラウロラクタムなどが挙げられる。
酸イミド系化合物としては、特に限定はなく、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミドなどが挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、特に限定はなく、例えば、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
ピラゾール系化合物としては、特に限定はなく、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール(解離温度120℃)、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、3,5-ジ-t-ブチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾールなどが挙げられる。
メルカプタン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどが挙げられる。
重亜硫酸塩としては、特に限定はなく、例えば、重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。
また、第3ブロック剤としては、上記に限定されず、例えば、ベンゾオキサゾロン、無水イサト酸、テトラブチルホスホニウム・アセタートなどのその他のブロック剤も挙げられる。
イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)を有する第3ブロック剤としては、例えば、上記一般式(1)で示されるブロック剤が挙げられ、具体的には、例えば、上記したイミダゾリン系化合物、上記したピリミジン系化合物、上記したグアニジン系化合物などが挙げられる。また、イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)を有する第3ブロック剤としては、例えば、イミダゾール系化合物も挙げられる。イミダゾール系化合物としては、特に限定はなく、例えば、イミダゾール(解離温度100℃)、ベンズイミダゾール(解離温度120℃)、2-メチルイミダゾール(解離温度70℃)、4-メチルイミダゾール(解離温度100℃)、2-エチルイミダゾール(解離温度70℃)、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどが挙げられる。
なお、第3ブロック剤として上記一般式(1)で示されるブロック剤が用いられる場合には、例えば、イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)が第1ブロック剤よりも小さいブロック剤が選択される。
これらの第3ブロック剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。2種類以上の第3ブロック剤を併用する例示は後述する。
第3ブロック剤として、好ましくは、アミン系化合物(さらに好ましくは、ジイソプロピルアミン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルベンジルアミン)、オキシム系化合物(さらに好ましくは、メチルエチルケトオキシム)、酸アミド系化合物(さらに好ましくは、ε-カプロラクタム)、ピラゾール系化合物(さらに好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)、イミダゾール系化合物(さらに好ましくは、イミダゾール)が挙げられ、とりわけ好ましくは、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルベンジルアミン、メチルエチルケトオキシム、3,5-ジメチルピラゾール、イミダゾールが挙げられる。
また、第3ブロック剤として、好ましくは、イソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有しないブロック剤が挙げられ、具体的には、アミン系化合物(さらに好ましくは、ジイソプロピルアミン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルベンジルアミン)、オキシム系化合物(さらに好ましくは、メチルエチルケトオキシム)、酸アミド系化合物(さらに好ましくは、ε-カプロラクタム)、ピラゾール系化合物(さらに好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)が挙げられ、とりわけ好ましくは、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルベンジルアミン、メチルエチルケトオキシム、3,5-ジメチルピラゾールが挙げられる。
第3ブロック剤の解離温度は、例えば、130℃以下、好ましくは、120℃以下、より好ましくは、110℃以下であり、通常、60℃以上である。本発明において、イソシアネート基をブロックしている全てのブロック剤が解離する温度は、130℃以下であることが好ましい。ここで、「同温度が130℃以下である」は、例えば、イソシアネート基をブロックしている第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤それぞれの解離温度が、130℃以下であってもよいし、また、例えば、ブロックポリイソシアネート全体としてブロック剤が解離する温度が、130℃以下であってもよい。「ブロックポリイソシアネート全体としてブロック剤が解離する温度が130℃以下である」は、例えば、第1ブロック剤の解離温度が100℃であり、第2ブロック剤および/または第3ブロック剤の解離温度が140℃であるような場合でも、例えば、ブロックポリイソシアネート全体としての解離温度が120℃になることを言う。
また、第3ブロック剤は、好ましくは、ピラゾール系化合物(より好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)またはアミン系化合物(より好ましくは、ジイソプロピルアミン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルベンジルアミン)である。
第3ブロック剤は、例えば、2種類以上を併用することができる。具体的には、第3ブロック剤は、例えば、2種類を併用することができる。2種類の第3ブロック剤を併用する場合において、第3ブロック剤の組み合わせとしては、前述の第3ブロック剤の中から、例えば、3,5-ジメチルピラゾールとメチルエチルケトオキシムとの組み合わせ、3,5-ジメチルピラゾールとt-ブチルエチルアミンとの組み合わせ、3,5-ジメチルピラゾールとt-ブチルベンジルアミンとの組み合わせ等が挙げられる。2種類の第3ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基の含有割合は、後述のとおりである。2種類の第3ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基(第3-1潜在イソシアネート基および第3-2潜在イソシアネート基)間の比率は、特に限定はなく、例えば、第3-1潜在イソシアネート基:第3-2潜在イソシアネート基が、99:1~1:99であり、好ましくは、99:1~50:50であり、より好ましくは、99:1~80:20である。
2-1-6.第1ブロック剤と第2ブロック剤と第3ブロック剤との組み合わせ
また、第1ブロック剤と第2ブロック剤と第3ブロック剤との組み合わせとして、低温架橋性の観点から、好ましくは、第1ブロック剤が、グアニジン系化合物(より好ましくは、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン、さらに好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)であり、第2ブロック剤が、イミダゾール系化合物(より好ましくは、イミダゾール)であり、第3ブロック剤が、ピラゾール系化合物(より好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)またはアミン系化合物(より好ましくは、ジイソプロピルアミン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルベンジルアミン)である。第1ブロック剤と第2ブロック剤と第3ブロック剤との組み合わせとして、より好ましくは、第1ブロック剤が、グアニジン系化合物(さらに好ましくは、1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン、特に好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)であり、第2ブロック剤が、イミダゾール系化合物(さらに好ましくは、イミダゾール)であり、第3ブロック剤が、ピラゾール系化合物(さらに好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)である。第1ブロック剤と第2ブロック剤と第3ブロック剤との組み合わせとして、さらに好ましくは、第1ブロック剤が、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンであり、第2ブロック剤が、イミダゾールであり、第3ブロック剤が、3,5-ジメチルピラゾールである。なお、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤は、同じ化合物となることはない。
2-1-7.第1ブロック剤および第2ブロック剤を使用するブロックポリイソシアネートの製造方法
そして、ブロックポリイソシアネートは、上記ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤および第2ブロック剤とを反応させることによって、得ることができる。
なお、この方法における反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させることができる。
また、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させることもできる。
さらには、ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤および第2ブロック剤とを同時に反応させてもよい。
好ましくは、第1ブロック剤がグアニジン系化合物(好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)であり、第2ブロック剤がイミダゾール系化合物(好ましくは、イミダゾール)である場合、ポリイソシアネート化合物と、これらのブロック剤とを同時に反応させてもよいし、または、ポリイソシアネート化合物に対して、これらのブロック剤を任意の順序で反応させてもよい。例えば、この反応において、第1ブロック剤が1,1,3,3-テトラメチルグアニジンであり、第2ブロック剤がイミダゾールである場合、ポリイソシアネート化合物と、これらのブロック剤とを同時に反応させてもよいし、または、ポリイソシアネート化合物に対して、これらのブロック剤を任意の順序で反応させてもよい。
例えば、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤および第1ブロック剤とをこの順序で反応させる場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.4以上、好ましくは0.5以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下である。また、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
この反応において、第1ブロック剤および第2ブロック剤の割合は、ブロックポリイソシアネート中における第1潜在イソシアネート基(後述)と、第2潜在イソシアネート基(後述)との含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。
また、上記の各反応は、いずれも、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
溶剤としては、特に限定はなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類、さらには、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートなどが挙げられる。
また、溶剤としては、さらに、可塑剤も挙げられる。
可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、芳香族ポリカルボン酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、ポリオール系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などが挙げられる。
フタル酸系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジへキシルフタレート、ジへプチルフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート、ジフェニルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、オクチルデシルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのフタル酸エステル系可塑剤、例えば、ジ-(2-エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ-n-オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸エステル系可塑剤が挙げられる。
脂肪酸系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、ジ-n-ブチルアジペート、ジ-(2-エチルへキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジ(C6-C10アルキル)アジペート、ジブチルジグリコールアジペートなどのアジピン酸系可塑剤、例えば、ジ-n-へキシルアゼレート、ジ-(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレートなどのアゼライン酸系可塑剤、例えば、ジ-n-ブチルセバケート、ジ-(2-エチルへキシル)セバケート、ジイソノニルセバケートなどのセバシン酸系可塑剤、例えば、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジ-n-ブチルマレート、ジ-(2-エチルヘキシル)マレートなどのマレイン酸系可塑剤、例えば、ジ-n-ブチルフマレート、ジ-(2-エチルへキシル)フマレートなどのフマル酸系可塑剤、例えば、モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ-(2-エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸系可塑剤、例えば、n-ブチルステアレート、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸系可塑剤、例えば、ブチルオレート、グリセリルモノオレート、ジエチレングリコールモノオレートなどのオレイン酸系可塑剤、例えば、トリエチルシトレート、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリ-(2-エチルへキシル)シトレートなどのクエン酸系可塑剤、例えば、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸系可塑剤、および、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸系可塑剤などが挙げられる。
芳香族ポリカルボン酸系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、トリ-n-ヘキシルトリメリテート、トリ-(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ-n-オクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリット酸系可塑剤、例えば、テトラ-(2-エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ-n-オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸系可塑剤などが挙げられる。
リン酸系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェートなどが挙げられる。
ポリオール系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ-(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール系可塑剤、例えば、グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン系可塑剤などが挙げられる。
エポキシ系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどが挙げられる。
ポリエステル系可塑剤としては、特に限定はなく、例えば、アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどが挙げられる。
また、可塑剤としては、その他に、部分水添ターフェニル、接着性可塑剤、さらには、ジアリルフタレート、アクリル系モノマーやオリゴマーなどの重合性可塑剤などが挙げられる。これら可塑剤は、単独または2種以上併用することができる。
これら溶剤は、単独使用または2種類以上併用することもできる。
これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第1ブロック剤および第2ブロック剤によりブロックされた、ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
そして、このようなブロックポリイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを、1分子中に併有している。
第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の含有割合は、それぞれ、前述のとおりである。同含有割合は、全ての潜在イソシアネート基(すなわち、前記第1潜在イソシアネート基および前記第2潜在イソシアネート基)の総モル量に対して、第1潜在イソシアネート基が、例えば、1モル%以上30モル%以下、好ましくは、5モル%以上25モル%以下、より好ましくは、10モル%以上20モル%以下であり、第2潜在イソシアネート基が、例えば、40モル%以上99モル%以下、好ましくは、50モル%以上95モル%以下、より好ましくは、60モル%以上90モル%以下である。
第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の含有割合が上記範囲であれば、低温架橋性の向上を図ることができる。
また、このようなブロックポリイソシアネートは、例えば、非水分散性ブロックポリイソシアネートとして得られ、例えば、上記した溶剤に溶解させて用いることができる。
ブロックポリイソシアネートを溶剤に溶解させる場合において、その固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
2-1-8.第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤を使用するブロックポリイソシアネートの製造方法
ブロックポリイソシアネートは、上記ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを反応させることによって、得ることができる。
なお、この方法における反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させ、さらに、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させることができる。
また、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させ、さらに、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させることもできる。上記のように、ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とは、あらゆる順序で反応させることができる。
さらには、ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とを同時に反応させてもよい。なお、2種類以上(例えば、2種類)の第3ブロック剤を併用する場合には、それぞれの第3ブロック剤は、ポリイソシアネート化合物と、例えば、同時にまたはあらゆる順序で反応させることができる。
好ましくは、第1ブロック剤がグアニジン系化合物(好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン)であり、第2ブロック剤がイミダゾール系化合物(好ましくは、イミダゾール)であり、第3ブロック剤がピラゾール系化合物(好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール)である場合、ポリイソシアネート化合物と、これらのブロック剤とを同時に反応させてもよいし、または、ポリイソシアネート化合物に対して、これらのブロック剤を任意の順序で反応させてもよい。例えば、この反応において、第1ブロック剤が1,1,3,3-テトラメチルグアニジンであり、第2ブロック剤がイミダゾールであり、第3ブロック剤が3,5-ジメチルピラゾールである場合、ポリイソシアネート化合物と、これらのブロック剤とを同時に反応させてもよいし、または、ポリイソシアネート化合物に対して、これらのブロック剤を任意の順序で反応させてもよい。
例えば、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤、第3ブロック剤、および第1ブロック剤とをこの順序で反応させる場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.4以上、好ましくは、0.5以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.0以下である。また、第3ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.0以下であり、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.0以下、より好ましくは、0.5以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
この反応において、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤の割合は、ブロックポリイソシアネート中における第1潜在イソシアネート基(後述)と、第2潜在イソシアネート基(後述)と、第3潜在イソシアネート基(後述)との含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。
また、上記の各反応は、いずれも、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
溶剤としては、特に限定はなく、例えば、前述のものが挙げられ、単独使用または2種類以上併用することもできる。
これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤にブロックされた、ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
そして、このようなブロックポリイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基と、第3ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基を、1分子中に併有している。
第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合は、全ての潜在イソシアネート基(すなわち、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基、および前記第3潜在イソシアネート基)の総モル量に対して、第1潜在イソシアネート基が、1モル%以上30モル%以下、好ましくは、5モル%以上25モル%以下、より好ましくは、10モル%以上20モル%以下であり、第2潜在イソシアネート基が、40モル%以上99モル%以下、好ましくは、50モル%以上95モル%以下、より好ましくは、60モル%以上90モル%以下であり、第3潜在イソシアネート基が、1モル%以上59モル%以下、好ましくは、5モル%以上50モル%以下、より好ましくは、10モル%以上40モル%以下である。
第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合が上記範囲であれば、低温架橋性の向上を更に図ることができる。
また、このようなブロックポリイソシアネートは、例えば、非水分散性ブロックポリイソシアネートとして得られ、例えば、上記した溶剤に溶解させて用いることができる。
ブロックポリイソシアネートを溶剤に溶解させる場合において、その固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
2-1-9.活性水素基を含有する親水性化合物により変性されているブロックポリイソシアネート
また、このようなブロックポリイソシアネートは、例えば、水に分散させて用いることもできる。そのような場合、水分散性の観点から、好ましくは、ブロックポリイソシアネートが、活性水素基を含有する親水性化合物により変性される。これにより、水分散性のブロックポリイソシアネートを得ることができる。このようなブロックポリイソシアネートは、前記ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基以外のイソシアネート基を有し、前記イソシアネート基が、下記親水性化合物の活性水素基と結合している、ブロックポリイソシアネートである。
より具体的には、水分散性のブロックポリイソシアネートを得るには、例えば、まず、上記したポリイソシアネート化合物と、活性水素基を含有する親水性化合物とを反応させ、親水性基含有ポリイソシアネートを調製する。
活性水素基を含有する親水性化合物(以下、活性水素基含有親水性化合物と称する場合がある。)としては、特に限定はなく、例えば、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物、活性水素基含有アニオン性親水性化合物、活性水素基含有カチオン性親水性化合物(例えば、4級アミノ基含有活性水素化合物など)などが挙げられ、好ましくは、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物、活性水素基含有アニオン性親水性化合物が挙げられる。
活性水素基含有ノニオン性親水性化合物としては、特に限定はなく、例えば、少なくとも3つ連続したエチレンオキシド基を有するポリオキシエチレン化合物が挙げられる。
このようなポリオキシエチレン化合物としては、特に限定はなく、例えば、ポリオキシエチレン基含有ポリオール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレンジアミンなどが挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有ポリオールは、分子内にポリオキシエチレン基を有するとともに、水酸基を2つ以上有する化合物であって、特に限定はなく、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレントリオール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体(例えば、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンコポリマージオールあるいはトリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマージオールあるいはトリオール、ポリプロピレングリコールの末端にエチレンオキサイドを付加重合させたプルロニックタイプのポリプロピレングリコールあるいはトリオールなど)などが挙げられる。
また、ポリオキシエチレン基含有ポリオールとしては、さらに、例えば、水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールなども挙げられる。
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、例えば、まず、ジイソシアネート(上記したジイソシアネート)と片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対してジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させた後、必要により、未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを合成し、次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(C1~20のジアルカノールアミン)とをウレア化反応させることにより、得ることができる。
なお、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールの調製において、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとして、好ましくは、メトキシエチレングリコールが挙げられ、ジイソシアネートとして、好ましくは、脂肪族ジイソシアネート(例えば、HDI)が挙げられ、ジアルカノールアミンとして、ジエタノールアミンが挙げられる。
また、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパンなどの3価アルコールの1つの水酸基に、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールを付加して得られるポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールも挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、特に限定はなく、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。
片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとしては、特に限定はなく、例えば、アルキル基で片末端封止したアルコキシエチレングリコール(モノアルコキシポリエチレングリコール)などが挙げられる。
モノアルコキシポリエチレングリコールにおいて、片末端を封止するためのアルキル基の炭素数は、特に限定はなく、例えば、1~20、好ましくは、1~8、より好ましくは、1~6、さらに好ましくは、1~4、とりわけ好ましくは、1~2である。すなわち、片末端を封止するためのアルキル基として、好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。
そのようなアルキル基によって片末端封止されたモノアルコキシポリエチレングリコールとして、具体的には、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコールが挙げられ、好ましくは、メトキシポリエチレングリコールが挙げられる。
片末端封鎖ポリオキシエチレンジアミンとしては、特に限定はなく、例えば、炭素数1~20のアルコキシ基で片末端封止したポリオキシエチレンジアミン(モノアミノモノアルコキシポリオキシエチレン)などが挙げられる。
これらポリオキシエチレン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリオキシエチレン化合物として、好ましくは、水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール、ポリオキシエチレングリコール、モノアルコキシポリエチレングリコール、モノアミノモノアルコキシポリオキシエチレンジアミンが挙げられ、より好ましくは、水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール、モノアルコキシポリエチレングリコールが挙げられる。
水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールを用いれば、1分子当たりの官能基数が増大するため、ブロックポリイソシアネートを用いて得られる組成物を使用して付与された撥水性の洗濯耐久性を向上させることができる。
また、モノアルコキシポリエチレングリコールを用いれば、粘度を制御することができ、水分散性の向上を図ることができる。
なお、ポリオキシエチレン化合物は、エチレンオキシド基の他のオキシアルキレン基、具体的には、オキシプロピレン基、オキシスチレン基などを含有していてもよい。そのような場合において、ポリオキシエチレン化合物の全量に対するエチレンオキシド基のモル比率は、水分散性の観点から、例えば、60モル%以上、好ましくは、70モル%以上、より好ましくは、80モル%以上である。
また、ポリオキシエチレン化合物は、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、ポリオキシエチレングリコールとして、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG2000(以上、日本油脂製)などが挙げられ、また、モノメトキシポリオキシエチレングリコールとして、例えば、メトキシPEG#400、メトキシPEG#550、メトキシPEG#1000、(以上、東邦化学製)、ユニオックスM400、ユニオックスM550、ユニオックスM1000、ユニオックスM2000(以上、日本油脂製)、MPG-081(日本乳化剤)などが挙げられ、さらに、ポリオキシエチレンエーテルジアミンとしては、ジェファーミンシリーズ(ハンツマン製)などが挙げられる。
これら活性水素基含有ノニオン性親水性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
活性水素基含有ノニオン性親水性化合物(ポリオキシエチレン化合物を含む。)の数平均分子量は、特に限定はなく、例えば、200以上、好ましくは、300以上、より好ましくは、400以上であり、例えば、2000以下、好ましくは、1500以下、より好ましくは、1200以下、さらに好ましくは、1000以下である。
活性水素基含有ノニオン性親水性化合物の数平均分子量が上記下限以上であれば、ブロックポリイソシアネートの水分散性の向上を図ることができる。また、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物の数平均分子量が上記上限以下であれば、ブロックポリイソシアネートの溶解性を向上させることができ、また、ブロックポリイソシアネートを用いて得られる組成物を使用して付与された撥水性の洗濯耐久性を向上させることができる。
活性水素基含有アニオン性親水性化合物としては、特に限定はなく、例えば、カルボン酸基含有活性水素化合物、スルホン酸基含有活性水素化合物などが挙げられる。
カルボン酸基含有活性水素化合物としては、特に限定はなく、例えば、モノヒドロキシカルボン酸およびその誘導体、ジヒドロキシカルボン酸およびその誘導体などが挙げられる。
モノヒドロキシカルボン酸として、具体的には、例えば、ヒドロキシピバリン酸、グリコール酸、乳酸などが挙げられる。
ジヒドロキシカルボン酸として、具体的には、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(以下、DMPAとする。)、2,2-ジメチロールブタン酸(以下、DMBAとする。)、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸などが挙げられる。
また、モノヒドロキシカルボン酸またはジヒドロキシカルボン酸の誘導体としては、特に限定はなく、例えば、上記モノヒドロキシカルボン酸またはジヒドロキシカルボン酸の金属塩類やアンモニウム塩類、さらには、上記モノヒドロキシカルボン酸またはジヒドロキシカルボン酸を開始剤としたポリカプロラクトンジオールやポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
カルボン酸基含有活性水素化合物として、好ましくは、モノヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸が挙げられ、より好ましくは、ジヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
スルホン酸基含有活性水素化合物としては、特に限定はなく、例えば、エポキシ基含有化合物と酸性亜硫酸塩との合成反応から得られる、ジヒドロキシブタンスルホン酸、ジヒドロキシプロパンスルホン酸が挙げられる。また、例えば、アミノエチルスルホン酸、エチレンジアミノ-プロピル-β-エチルスルホン酸、1,3-プロピレンジアミン-β-エチルスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノブタンスルホン酸、1,3-フェニレンジアミン-4,6-ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、ジアミノプロパンスルホン酸、3,6-ジアミノ-2-トルエンスルホン酸、2,4-ジアミノ-5-トルエンスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、2-アミノエタンスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-2-アミノブタンスルホン酸;それらスルホン酸の金属塩類;それらのアンモニウム塩類などが挙げられる。
これら活性水素基含有アニオン性親水性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。活性水素基含有アニオン性親水性化合物として、好ましくは、製造容易性、組成物における配合性の観点から、カルボン酸基含有活性水素化合物が挙げられる。
なお、活性水素基含有アニオン性親水性化合物を用いる場合には、ブロックポリイソシアネートの製造後、好ましくは、中和剤によって中和する。中和剤としては、特に限定はなく、例えば、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの3級アミンなどが挙げられる。
これら活性水素基含有親水性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。活性水素基含有親水性化合物として、好ましくは、製造容易性の観点から、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物が挙げられ、より好ましくは、ポリオキシエチレン化合物が挙げられる。
活性水素基含有親水性化合物として、活性水素基含有ノニオン性親水性化合物を用いれば、他の樹脂と混合して用いる場合に、相溶性の向上を図ることができ、種々の樹脂と混合して用いることができる。
また、活性水素基含有親水性化合物として、ブロックポリイソシアネートを用いて得られる組成物を使用して付与される撥水性の洗濯耐久性の観点から、好ましくは、上記したモノヒドロキシカルボン酸またはその誘導体、ジヒドロキシカルボン酸またはその誘導体も挙げられる。
そして、これらポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物とを、反応させることにより、親水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。
親水性基含有ポリイソシアネートの調製において、ポリイソシアネート化合物に対する活性水素基含有親水性化合物の配合割合は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基100モルに対して、活性水素基含有親水性化合物の活性水素基が、例えば、1モル以上、好ましくは、2モル以上、より好ましくは、3モル以上であり、例えば、25モル以下、好ましくは、22モル以下、より好ましくは、20モル以下の割合となるように調整される。
ポリイソシアネート化合物に対する活性水素基含有親水性化合物の配合割合が上記下限以上であれば、水に対する分散性の向上を図ることができ、また上記上限以下であれば、水に分散させた場合の粒径を適度に保つことができる。
このようなポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物との配合割合として、より具体的には、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、活性水素基含有親水性化合物が、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、100質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、30℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間は、上記の反応温度において、滴定法により測定されるイソシアネート量に変化がなくなるまでであって、具体的には、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、120時間以下、好ましくは、72時間以下である。
また、ポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物とは、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、上記した公知の溶剤の存在下において反応させることもできる。
そして、これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部が活性水素基含有親水性化合物の活性水素基と反応され、また、イソシアネート基の残部が遊離状態とされた親水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。
親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基含有割合(溶剤を含む場合には溶剤を除いた樹脂換算)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7質量%以上であり、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
また、活性水素基含有親水性化合物としてポリオキシエチレン化合物を用いる場合には、親水性基含有ポリイソシアネートのエチレンオキシド基の含有割合(すなわち、ポリイソシアネート化合物および親水性化合物の(存在する場合は、後述の疎水性基を加えた)総量に対するエチレンオキシド基の含有割合)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
エチレンオキシド基の含有割合が上記下限以上であれば、優れた水分散性を得ることができ、また、上記上限以下であれば、得られる組成物を使用して付与される撥水性および撥水性の洗濯耐久性の向上を図ることができる。
そして、上記により得られた親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロックするように、親水性基含有ポリイソシアネートとブロック剤とを反応させることにより、ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
この反応において、第1ブロック剤および第2ブロック剤(および任意に、第3ブロック剤)の割合は、ブロックポリイソシアネート中における第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基と(任意に、第3潜在イソシアネート基と)の含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。
また、反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、親水性基含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させることができる。
また、例えば、まず、親水性基含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させることもできる。第3ブロック剤を使用する場合には、親水性基含有ポリイソシアネートと、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とは、あらゆる順序で反応させることができる。
さらには、親水性基含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤および第2ブロック剤(および任意に、第3ブロック剤)を同時に反応させてもよい。
さらには、親水性基含有ポリイソシアネートと全てのブロック剤とを同時に反応させてもよい。
好ましくは、まず、親水性基含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
このような場合、親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.4以上、好ましくは、0.5以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
これにより、遊離状態のイソシアネート基が残存するブロックポリイソシアネートが得られる。
次いで、この方法では、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させる。
このような場合、ブロックポリイソシアネートの遊離状態のイソシアネート基に対する、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.0以下、より好ましくは、0.5以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
第3ブロック剤を使用する場合、次いで、この方法では、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させる。
このような場合、ブロックポリイソシアネートの遊離状態のイソシアネート基に対する、第3ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.0以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、上記の反応は、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
これにより、親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基が第1ブロック剤および第2ブロック剤(および任意に、第3ブロック剤)によってブロックされた、ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
そして、このようなブロックポリイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基と(任意に、第3ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基と)を、1分子中に併有している。
第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合は、全ての潜在イソシアネート基(すなわち、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基、および前記第3潜在イソシアネート基)の総モル量に対して、第1潜在イソシアネート基が、1モル%以上30モル%以下、好ましくは、5モル%以上25モル%以下、より好ましくは、10モル%以上20モル%以下であり、第2潜在イソシアネート基が、40モル%以上99モル%以下、好ましくは、50モル%以上95モル%以下、より好ましくは、60モル%以上90モル%以下であり、第3潜在イソシアネート基が、1モル%以上59モル%以下、好ましくは、5モル%以上50モル%以下、より好ましくは、10モル%以上40モル%以下である。
第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合が上記範囲であれば、低温架橋性の向上を更に図ることができる。
なお、上記した説明では、まず、ポリイソシアネート化合物と活性水素基を含有する親水性化合物とを反応させ、得られた親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を、前述のブロック剤によりブロック化することによって、ブロックポリイソシアネートを調製したが、ポリイソシアネート化合物、親水性化合物、前述のブロック剤の反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と前述のブロック剤とを反応させ、得られたブロックポリイソシアネート(未反応のイソシアネート基を含む)と親水性化合物とを反応させることにより、ブロックポリイソシアネートを調製してもよい。
ブロック剤の分解、副反応、および/またはブロックポリイソシアネートの水分散性の観点から、好ましくは、ポリイソシアネート化合物と、活性水素基を含有する親水性化合物とを先に反応させ、親水性基含有ポリイソシアネートを調製し、得られた親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を前述のブロック剤によりブロック化する。
そして、このようにして得られたブロックポリイソシアネートは、水分散性ブロックポリイソシアネートとして得られ、水に分散させる場合にも、低温架橋性に優れる。
ブロックポリイソシアネートを水に分散させる方法としては、特に限定はなく、例えば、ブロックポリイソシアネートと水とを、ホモミキサー、ホモディスパー、マグネチックスターラーなどの撹拌機を用いて撹拌および混合すればよい。
なお、ブロックポリイソシアネート分散液には、必要により、分散剤、消泡剤などの添加剤を添加することができる。添加剤の配合割合は、特に限定はなく、目的および用途に応じて、適宜決定される。
その後、必要により、ブロックポリイソシアネート分散液に有機溶剤が含有されている場合(例えば、親水性基含有ポリイソシアネートと前述のブロック剤とを有機溶剤中で反応させた反応液を、ブロックポリイソシアネートとしてそのまま用いた場合)には、ブロックポリイソシアネート分散液を、例えば、減圧する、または、減圧下で加熱することにより、有機溶剤を揮発除去することができる。
このようにして得られたブロックポリイソシアネート分散液では、ブロックポリイソシアネートの体積平均粒子径が、特に限定はなく、例えば、1000nm以下、好ましくは、700nm、より好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは、300nm以下、通常、10nm以上である。
ブロックポリイソシアネートの体積平均粒子径が、上記上限以下であれば、優れた水分散性を確保することができる。
2-1-10.活性水素基を含有する疎水性化合物により変性されているブロックポリイソシアネート
前記ブロックポリイソシアネートは、好ましくは、活性水素基を含有する疎水性化合物により変性されているブロックポリイソシアネートである。本明細書で使用する場合、「疎水性化合物」という用語は、同化合物に含まれる活性水素基とイソシアネート基とが結合して得られた分子に、疎水性を付与することができる化合物を意味する。したがって、本明細書で使用する場合、疎水性化合物は、例えば、それ自体が疎水性であってもよいし、または、親水性であってもよい。このようなブロックポリイソシアネートを含む架橋剤により、得られる組成物を使用して付与される撥水性および撥水性の洗濯耐久性の向上を図ることができる。このようなブロックポリイソシアネートは、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基(および任意に、前記第3潜在イソシアネート基)以外のイソシアネート基を有し、前記イソシアネート基が、前記疎水性化合物の活性水素基と結合している、ブロックポリイソシアネートである。
より具体的には、活性水素基を含有する疎水性化合物により変性されているブロックポリイソシアネートを得るには、例えば、まず、上記ポリイソシアネート化合物と、活性水素基を含有する疎水性化合物とを反応させ、疎水性化合物含有ポリイソシアネートを調製する。
活性水素基を含有する疎水性化合物(以下、活性水素基含有疎水性化合物と称する場合がある。)としては、特に限定はなく、活性水素基を含有する疎水性ポリオール(以下、活性水素基含有疎水性ポリオール)が挙げられる。活性水素基含有疎水性ポリオールは、同ポリオールに含まれる水酸基とイソシアネート基とが結合して得られた分子に、疎水性を付与することができ、かつ、水酸基を2つ以上有する化合物(ポリオール)である。活性水素基含有疎水性ポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールおよび高分子量ポリマーが挙げられる。低分子量ポリオールは、例えば、水酸基を2つ以上有する、数平均分子量300未満、好ましくは、400未満のポリオールである。このような低分子量ポリオールとしては、特に限定はなく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、アルカン(C7~20)ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール;例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール;例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール;例えば、キシリトールなどの5価アルコール;例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール;例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール;例えば、ショ糖などの8価アルコール;などが挙げられる。高分子量ポリオールは、例えば、水酸基を2つ以上有する、数平均分子量300以上、好ましくは、400以上、より好ましくは、500以上のポリオールである。このような高分子量ポリオールとしては、特に限定はなく、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。また、活性水素基含有疎水性ポリオールとしては、例えば、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、上記低分子量ポリオールとの反応より形成されたウレタン基に、更にポリイソシアネート単量体のイソシアネート基が付加することにより生成されるアロファネート変性体など)、アダクト体(例えば、ポリイソシアネート単量体と上記低分子量ポリオールとの反応より形成されたウレア基に、更にポリイソシアネート単量体のイソシアネート基が付加することにより生成されるアダクト体(アルコール付加体)など)などが挙げられる。これらの活性水素基含有疎水性ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、ポリエーテルポリオール、より好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、さらに好ましくは、ポリテトラメチレングリコールを使用することができる。
そして、これらのポリイソシアネート化合物と活性水素基含有疎水性化合物とを、反応させることにより、疎水性化合物含有ポリイソシアネートを得ることができる。
疎水性化合物含有ポリイソシアネートの調製において、ポリイソシアネート化合物に対する活性水素基含有疎水性化合物の配合割合は、ブロック剤との反応前のイソシアネート化合物100質量部に対して、活性水素基含有疎水性化合物が、例えば、5質量部以上、好ましくは、6質量部以上、より好ましくは、7質量部以上であり、例えば、30質量部以下、好ましくは、25質量部以下、より好ましくは、20質量部以下の割合となるように調整される。前記配合割合を前記範囲内にすることで、例えば、得られる組成物を使用して付与される撥水性および撥水性の洗濯耐久性の向上を更に図ることができる。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、30℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間は、上記の反応温度において、滴定法により測定されるイソシアネート量に変化がなくなるまでであって、具体的には、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、120時間以下、好ましくは、72時間以下である。
また、ポリイソシアネート化合物と活性水素基含有疎水性化合物とは、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、上記した公知の溶剤の存在下において反応させることもできる。
そして、これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部が活性水素基含有疎水性化合物の活性水素基と反応され、また、イソシアネート基の残部が遊離状態とされる疎水性化合物含有ポリイソシアネートを得ることができる。
そして、上記により得られた疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロックするように、疎水性化合物含有ポリイソシアネートとブロック剤とを反応させることにより、ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
疎水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基含有割合(溶剤を含む場合には溶剤を除いた樹脂換算)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7質量%以上であり、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
そして、ブロックポリイソシアネートは、例えば、上記の疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤、第2ブロック剤(および任意に、第3ブロック剤)とを反応させることによって、得ることができる。
この反応において、第1ブロック剤、第2ブロック剤(および任意に、第3ブロック剤)の割合は、ブロックポリイソシアネート中における第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基と(任意に、第3潜在イソシアネート基と)の含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。
また、反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させることができる。
また、例えば、まず、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させることもできる。第3ブロック剤を使用する場合には、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とは、あらゆる順序で反応させることができる。
さらには、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤および第2ブロック剤(および任意に、第3ブロック剤)を同時に反応させてもよい。
好ましくは、まず、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
このような場合、疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.4以上、好ましくは、0.5以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
これにより、遊離状態のイソシアネート基が残存するブロックポリイソシアネートが得られる。
次いで、この方法では、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させる。
このような場合、ブロックポリイソシアネートの遊離状態のイソシアネート基に対する、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
第3ブロック剤を使用する場合、次いで、この方法では、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させる。
このような場合、ブロックポリイソシアネートの遊離状態のイソシアネート基に対する、第3ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.0以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、上記の反応は、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
これにより、疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基が第1ブロック剤および第2ブロック剤(および任意に、第3ブロック剤)によってブロックされた、ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
そして、このようなブロックポリイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基と(任意に、第3ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基と)を、1分子中に併有している。
第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合は、全ての潜在イソシアネート基(すなわち、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基、および前記第3潜在イソシアネート基)の総モル量に対して、第1潜在イソシアネート基が、1モル%以上30モル%以下、好ましくは、5モル%以上25モル%以下、より好ましくは、10モル%以上20モル%以下であり、第2潜在イソシアネート基が、40モル%以上99モル%以下、好ましくは、50モル%以上95モル%以下、より好ましくは、60モル%以上90モル%以下であり、第3潜在イソシアネート基が、1モル%以上59モル%以下、好ましくは、5モル%以上50モル%以下、より好ましくは、10モル%以上40モル%以下である。
第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合が上記範囲であれば、低温架橋性の向上を更に図ることができる。
なお、上記した説明では、まず、ポリイソシアネート化合物と活性水素基含有疎水性化合物とを反応させ、得られた疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を、前述のブロック剤によりブロック化することによって、ブロックポリイソシアネートを調製したが、ポリイソシアネート化合物、活性水素基含有疎水性化合物、前述のブロック剤の反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と前述のブロック剤とを反応させ、得られたブロックポリイソシアネート(未反応のイソシアネート基を含む)と活性水素基含有疎水性化合物とを反応させることにより、ブロックポリイソシアネートを調製してもよい。
ブロック剤の分解、副反応、および/またはブロックポリイソシアネートの水分散性の観点から、好ましくは、ポリイソシアネート化合物と、活性水素基含有疎水性化合物とを先に反応させ、疎水性化合物含有ポリイソシアネートを調製し、得られた疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を前述のブロック剤によりブロック化する。
そして、このようにして得られたブロックポリイソシアネートは、例えば、得られる組成物を使用して付与される撥水性および撥水性の洗濯耐久性の向上を図ることができる。
ブロックポリイソシアネートを水に分散させる方法としては、特に限定はなく、例えば、ブロックポリイソシアネートと水とを、ホモミキサー、ホモディスパー、マグネチックスターラーなどの撹拌機を用いて撹拌および混合すればよい。
なお、ブロックポリイソシアネート分散液には、必要により、分散剤、消泡剤などの添加剤を添加することができる。添加剤の配合割合は、特に限定はなく、目的および用途に応じて、適宜決定される。
その後、必要により、ブロックポリイソシアネート分散液に有機溶剤が含有されている場合(例えば、疎水性化合物含有ポリイソシアネートと前述のブロック剤とを有機溶剤中で反応させた反応液を、ブロックポリイソシアネートとしてそのまま用いた場合)には、ブロックポリイソシアネート分散液を、例えば、減圧する、または、減圧下で加熱することにより、有機溶剤を揮発除去することができる。
このようにして得られたブロックポリイソシアネート分散液では、ブロックポリイソシアネートの体積平均粒子径が、特に限定はなく、例えば、1000nm以下、好ましくは、700nm、より好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは、300nm以下、通常、10nm以上である。
ブロックポリイソシアネートの体積平均粒子径が、上記上限以下であれば、優れた水分散性を確保することができる。
2-1-11.活性水素基を含有する親水性化合物および活性水素基を含有する疎水性化合物により変性されているブロックポリイソシアネート
前記ブロックポリイソシアネートは、好ましくは、活性水素基を含有する親水性化合物および活性水素基を含有する疎水性化合物により変性されているブロックポリイソシアネートである。活性水素基を含有する親水性化合物による変性により、水分散性のブロックポリイソシアネートを得ることができ、かつ、活性水素基を含有する疎水性化合物による変性により、得られる組成物を使用して付与される撥水性および撥水性の洗濯耐久性の向上を図ることができる。このようなブロックポリイソシアネートは、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基(および任意に、前記第3潜在イソシアネート基)以外のイソシアネート基を有し、前記イソシアネート基が、前記親水性化合物および前記疎水性化合物の活性水素基と結合している、ブロックポリイソシアネートである。
より具体的には、水分散性のブロックポリイソシアネートを得ると共に、撥水性および撥水性の洗濯耐久性の向上のために、例えば、まず、上記したポリイソシアネート化合物と、活性水素基を含有する親水性化合物および活性水素基を含有する疎水性化合物とを反応させ、親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートを調製する。
活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物としては、前述のものが挙げられる。
そして、これらポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物とを、反応させることにより、親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。
なお、これらポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物とを反応させる順序は、特に限定はなく、例えば、まず、これらポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物とを、反応させることにより、親水性基含有ポリイソシアネートを得た後に、親水性基含有ポリイソシアネートと活性水素基含有疎水性化合物とを、反応させることにより、親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。また、例えば、まず、これらポリイソシアネート化合物と活性水素基含有疎水性化合物とを、反応させることにより、疎水性基含有ポリイソシアネートを得た後に、疎水性基含有ポリイソシアネートと活性水素基含有親水性化合物とを、反応させることにより、親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。なお、例えば、これらポリイソシアネート化合物と、活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物とを、同時に反応させることにより、親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートを得ることもできる。
親水性基含有ポリイソシアネートの調製において、ポリイソシアネート化合物に対する活性水素基含有親水性化合物の配合割合は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基100モルに対して、活性水素基含有親水性化合物の活性水素基が、例えば、1モル以上、好ましくは、2モル以上、より好ましくは、3モル以上であり、例えば、25モル以下、好ましくは、22モル以下、より好ましくは、20モル以下の割合となるように調整される。
ポリイソシアネート化合物に対する活性水素基含有親水性化合物の配合割合が上記下限以上であれば、水に対する分散性の向上を図ることができ、また上記上限以下であれば、水に分散させた場合の粒径を適度に保つことができる。
このようなポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物との配合割合として、より具体的には、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、活性水素基含有親水性化合物が、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、100質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、30℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間は、上記の反応温度において、滴定法により測定されるイソシアネート量に変化がなくなるまでであって、具体的には、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、120時間以下、好ましくは、72時間以下である。
また、ポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物とは、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、上記した公知の溶剤の存在下において反応させることもできる。
そして、これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部が活性水素基含有親水性化合物の活性水素基と反応され、また、イソシアネート基の残部が遊離状態とされた親水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。
親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基含有割合(溶剤を含む場合には溶剤を除いた樹脂換算)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7質量%以上であり、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
また、活性水素基含有親水性化合物としてポリオキシエチレン化合物を用いる場合には、親水性基含有ポリイソシアネートのエチレンオキシド基の含有割合(すなわち、ポリイソシアネート化合物および親水性化合物の(存在する場合は、前述の疎水性基を加えた)総量に対するエチレンオキシド基の含有割合)は、例えば、7質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
エチレンオキシド基の含有割合が上記下限以上であれば、優れた水分散性を得ることができ、また、上記上限以下であれば、得られる組成物を使用して付与される撥水性および撥水性の洗濯耐久性の向上を図ることができる。
次に、この親水性基含有ポリイソシアネートと、活性水素基含有疎水性化合物とを、反応させることにより、親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートを得ることができる。
親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートの調製において、親水性基含有ポリイソシアネートに対する活性水素基含有疎水性化合物の配合割合は、ブロック剤と反応前のイソシアネート化合物100質量部に対して、活性水素基含有疎水性化合物が、例えば、5質量部以上、好ましくは、6質量部以上、より好ましくは、7質量部以上であり、例えば、30質量部以下、好ましくは、25質量部以下、より好ましくは、20質量部以下の割合となるように調整される。前記配合割合を前記範囲内にすることで、例えば、得られる組成物を使用して付与される撥水性および撥水性の洗濯耐久性の向上を更に図ることができる。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、30℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間は、上記の反応温度において、滴定法により測定されるイソシアネート量に変化がなくなるまでであって、具体的には、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、120時間以下、好ましくは、72時間以下である。
また、親水性基含有ポリイソシアネートと活性水素基含有疎水性化合物とは、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、上記した公知の溶剤の存在下において反応させることもできる。
そして、これにより、親水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部が活性水素基含有疎水性化合物の活性水素基と反応され、また、イソシアネート基の残部が遊離状態とされる親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートを得ることができる。
そして、上記により得られた親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロックするように、親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートとブロック剤とを反応させることにより、ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
疎水性基含有ポリイソシアネートのイソシアネート基含有割合(溶剤を含む場合には溶剤を除いた樹脂換算)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7質量%以上であり、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
そして、ブロックポリイソシアネートは、例えば、上記の親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤、第2ブロック剤(および任意に、第3ブロック剤)とを反応させることによって、得ることができる。
この反応において、第1ブロック剤、第2ブロック剤(および任意に、第3ブロック剤)の割合は、ブロックポリイソシアネート中における第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基と(任意に、第3潜在イソシアネート基と)の含有割合が、後述する所定範囲となるように、適宜設定される。
また、反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させることができる。
また、例えば、まず、親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させることもできる。第3ブロック剤を使用する場合には、親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと、第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤とは、あらゆる順序で反応させることができる。
さらには、親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第1ブロック剤、第2ブロック剤(および任意に、第3ブロック剤)とを同時に反応させてもよい。
好ましくは、まず、親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートと第2ブロック剤とを、遊離状態のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
このような場合、親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.4以上、好ましくは、0.5以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
これにより、遊離状態のイソシアネート基が残存するブロックポリイソシアネートが得られる。
次いで、この方法では、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させる。
このような場合、ブロックポリイソシアネートの遊離状態のイソシアネート基に対する、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、0.5以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
第3ブロック剤を使用する場合、次いで、この方法では、その遊離状態のイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートと第3ブロック剤とを反応させる。
このような場合、ブロックポリイソシアネートの遊離状態のイソシアネート基に対する、第3ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.0以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、上記の反応は、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
これにより、親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基が第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤によってブロックされた、ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
そして、このようなブロックポリイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基と(任意に、第3ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基と)を、1分子中に併有している。
第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合は、全ての潜在イソシアネート基(すなわち、前記第1潜在イソシアネート基、前記第2潜在イソシアネート基、および前記第3潜在イソシアネート基)の総モル量に対して、第1潜在イソシアネート基が、1モル%以上30モル%以下、好ましくは、5モル%以上25モル%以下、より好ましくは、10モル%以上20モル%以下であり、第2潜在イソシアネート基が、40モル%以上99モル%以下、好ましくは、50モル%以上95モル%以下、より好ましくは、60モル%以上90モル%以下であり、第3潜在イソシアネート基が、1モル%以上59モル%以下、好ましくは、5モル%以上50モル%以下、より好ましくは、10モル%以上40モル%以下である。
第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の含有割合が上記範囲であれば、低温架橋性の向上を更に図ることができる。
なお、上記した説明では、まず、ポリイソシアネート化合物と活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物とを反応させ、得られた親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を、前述のブロック剤によりブロック化することによって、ブロックポリイソシアネートを調製したが、ポリイソシアネート化合物、活性水素基含有親水性化合物、活性水素基含有疎水性化合物、前述のブロック剤の反応順序は、特に限定はなく、例えば、まず、ポリイソシアネート化合物と前述のブロック剤とを反応させ、得られたブロックポリイソシアネート(未反応のイソシアネート基を含む)と、活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物とを反応させることにより、ブロックポリイソシアネートを調製してもよい。
ブロック剤の分解、副反応、および/またはブロックポリイソシアネートの水分散性の観点から、好ましくは、ポリイソシアネート化合物と、活性水素基含有親水性化合物および活性水素基含有疎水性化合物とを先に反応させ、親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートを調製し、得られた親水性基および疎水性化合物含有ポリイソシアネートのイソシアネート基を前述のブロック剤によりブロック化する。
そして、このようにして得られたブロックポリイソシアネートは、水分散性ブロックポリイソシアネートとして得られ、例えば、得られる組成物を使用して付与される撥水性および撥水性の洗濯耐久性の向上を図ることができる。
ブロックポリイソシアネートを水に分散させる方法としては、特に限定はなく、例えば、ブロックポリイソシアネートと水とを、ホモミキサー、ホモディスパー、マグネチックスターラーなどの撹拌機を用いて撹拌および混合すればよい。
なお、ブロックポリイソシアネート分散液には、必要により、分散剤、消泡剤などの添加剤を添加することができる。添加剤の配合割合は、特に限定はなく、目的および用途に応じて、適宜決定される。
その後、必要により、ブロックポリイソシアネート分散液に有機溶剤が含有されている場合(例えば、親水性基含有ポリイソシアネートと前述のブロック剤とを有機溶剤中で反応させた反応液を、ブロックポリイソシアネートとしてそのまま用いた場合)には、ブロックポリイソシアネート分散液を、例えば、減圧する、または、減圧下で加熱することにより、有機溶剤を揮発除去することができる。
このようにして得られたブロックポリイソシアネート分散液では、ブロックポリイソシアネートの体積平均粒子径が、特に限定はなく、例えば、1000nm以下、好ましくは、700nm、より好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは、300nm以下、通常、10nm以上である。
ブロックポリイソシアネートの体積平均粒子径が、上記上限以下であれば、優れた水分散性を確保することができる。
2-1-12.第1ブロックポリイソシアネート成分と第2ブロックポリイソシアネート成分との混合
また、上記した説明では、得られるブロックポリイソシアネート1分子中に、第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基とが併有されるが、例えば、ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基として第1潜在イソシアネート基のみを含有するブロックポリイソシアネートと、ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基として第2潜在イソシアネート基のみを含有するブロックポリイソシアネートとをそれぞれ調製し、混合することもできる。
より具体的には、この方法では、まず、上記したポリイソシアネート化合物と、上記した第1ブロック剤とを反応させることにより、ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基として第1潜在イソシアネート基のみを含有するブロックポリイソシアネート(以下、第1ブロックポリイソシアネート成分と称する。)を得る。
このような場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第1ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.9以上、好ましくは、1.0以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤とを、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、溶剤の存在下において反応させることもできる。
これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第1ブロック剤のみによってブロックされたブロックポリイソシアネート、すなわち、第1ブロックポリイソシアネート成分を得ることができる。
また、この方法では、第1ブロックポリイソシアネート成分とは別途、上記したポリイソシアネート化合物と、上記した第2ブロック剤とを反応させることにより、ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基として第2潜在イソシアネート基のみを含有するブロックポリイソシアネート(以下、第2ブロックポリイソシアネート成分と称する。)を得る。
このような場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第2ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.9以上、好ましくは、1.0以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤とを、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、溶剤の存在下において反応させることもできる。
これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第2ブロック剤のみによってブロックされたブロックポリイソシアネート、すなわち、第2ブロックポリイソシアネート成分を得ることができる。
第3ブロック剤を使用する場合、この方法では、第1ブロックポリイソシアネート成分、第2ブロックポリイソシアネート成分とは別途、上記したポリイソシアネート化合物と、上記した第3ブロック剤とを反応させることにより、ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基として第3潜在イソシアネート基のみを含有するブロックポリイソシアネート(以下、第3ブロックポリイソシアネート成分と称する。)を得る。
このような場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第3ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.9以上、好ましくは、1.0以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下である。
また、反応条件としては、特に限定はなく、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下、反応温度が、特に限定はなく、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。また、反応時間が、特に限定はなく、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、ポリイソシアネート化合物と第3ブロック剤とを、無溶剤下において反応させることもできるが、例えば、溶剤の存在下において反応させることもできる。
これにより、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第3ブロック剤のみによってブロックされたブロックポリイソシアネート、すなわち、第3ブロックポリイソシアネート成分を得ることができる。
その後、この方法では、第1ブロックポリイソシアネート成分と第2ブロックポリイソシアネート成分と(任意に、第3ブロックポリイソシアネート成分と)を混合する。
第1ブロックポリイソシアネート成分と第2ブロックポリイソシアネート成分と(任意に、第3ブロックポリイソシアネート成分と)の混合割合は、ブロックポリイソシアネート中の第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基(および任意に、第3潜在イソシアネート基)の含有割合が上記の範囲となるように、適宜設定される。
具体的には、第1ブロックポリイソシアネート成分と第2ブロックポリイソシアネート成分と(任意に、第3ブロックポリイソシアネート成分と)の総モル量に対して、第1ブロックポリイソシアネート成分が、1モル%以上30モル%以下、好ましくは、5モル%以上25モル%以下、より好ましくは、10モル%以上20モル%以下であり、第2ブロックポリイソシアネート成分が、40モル%以上99モル%以下、好ましくは、50モル%以上95モル%以下、より好ましくは、60モル%以上90モル%以下であり、第3ブロックポリイソシアネート成分が、1モル%以上59モル%以下、好ましくは、5モル%以上50モル%以下、より好ましくは、10モル%以上40モル%以下である。
これにより、第1ブロックポリイソシアネート成分と第2ブロックポリイソシアネート成分と(任意に、第3ブロックポリイソシアネート成分と)の混合物として、ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
なお、このようなブロックポリイソシアネート(混合物)は、第1潜在イソシアネート基と、第2潜在イソシアネート基と(任意に、第3潜在イソシアネート基と)を、上記した割合で含有する。
また、このようなブロックポリイソシアネートは、例えば、上記した溶剤に上記した割合で溶解させて用いることができ、また、例えば、水に上記した割合で分散させて用いることができる。
また、ブロックポリイソシアネートを水に分散させて用いる場合には、必要により、第1ブロックポリイソシアネート成分および/または第2ブロックポリイソシアネート成分(および/または任意に、第3ブロックポリイソシアネート成分)を、上記した親水性化合物によって、上記した方法で変性することができる。
上記したように、ブロックポリイソシアネートは、第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基と(任意に、第3潜在イソシアネート基)を1分子中に併有していてもよく、また、併有していなくてもよい。低温架橋性の観点から、好ましくは、第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基と(任意に、第3潜在イソシアネート基と)が1分子中に併有されることが挙げられる。
2-1-13.第1ブロック剤と第2ブロック剤の触媒作用および第1ブロック剤と第3ブロック剤の触媒作用
第1ブロック剤の触媒作用と第2ブロック剤の触媒作用との比較、および、第1ブロック剤の触媒作用と第3ブロック剤の触媒作用の比較は、以下の方法による。
すなわち、まず、ポリイソシアネート化合物とメチルエチルケトンオキシム(MEKO)とを反応させてブロックポリイソシアネートを合成し、得られたブロックポリイソシアネートを用いて、例えば、特許第6033446号公報の[265]~[266]段落に記載されているように塗料組成物を調製する。この塗料組成物の硬化温度を、例えば、特許第6033446号公報の[272]~[274]段落に記載されている方法で求める。この硬化温度をA(℃)とする。
また、ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤と、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)とを反応させてブロックポリイソシアネートを合成し、得られたブロックポリイソシアネートを用いて、例えば、特許第6033446号公報の[265]~[266]段落に記載されているように塗料組成物を調製する。この塗料組成物の硬化温度を、例えば、特許第6033446号公報の[272]~[274]段落に記載されている方法で求める。この硬化温度をB(℃)とする。
そのような場合におけるA(℃)とB(℃)との差(℃)を、第1ブロック剤1モルに換算し、この値(℃/モル)を、第1ブロック剤の触媒能として定義する。
次に、ポリイソシアネート化合物と、第2ブロック剤と、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)を反応させてブロックポリイソシアネートを合成し、得られたブロックポリイソシアネートを用いて、例えば、特許第6033446号公報の[265]~[266]段落に記載されているように塗料組成物を調製する。この塗料組成物の硬化温度を、例えば、特許第6033446号公報の[272]~[274]段落に記載されている方法で求める。この硬化温度をC(℃)とする。
そのような場合におけるA(℃)とC(℃)との差(℃)を、第2ブロック剤1モルに換算し、この値(℃/モル)を、第2ブロック剤の触媒能として定義する。
更に、ポリイソシアネート化合物と、第3ブロック剤と、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)を反応させてブロックポリイソシアネートを合成し、得られたブロックポリイソシアネートを用いて、例えば、特許第6033446号公報の[265]~[266]段落に記載されているように塗料組成物を調製する。この塗料組成物の硬化温度を、例えば、特許第6033446号公報の[272]~[274]段落に記載されている方法で求める。この硬化温度をD(℃)とする。
そのような場合におけるA(℃)とD(℃)との差(℃)を、第3ブロック剤1モルに換算し、この値(℃/モル)を、第3ブロック剤の触媒能として定義する。
そして、この触媒能を比較することで、ブロック剤の触媒作用が比較できる。
より具体的には、ブロック剤としてメチルエチルケトンオキシム(MEKO)を80mol%、比較したいブロック剤を20mol%の割合でポリイソシアネート化合物と反応させ、ブロックポリイソシアネートを調製する。そして、調製したそれぞれのブロックポリイソシアネートの触媒能を比較し、数字が大きい方が触媒作用に優れる。
前述のように、前記ブロックポリイソシアネートにおいて、前記第1ブロック剤は、前記第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きく、好ましくは、第3ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きい。このような触媒作用を有する第1ブロック剤と第2ブロック剤および第3ブロック剤との組み合わせとしては、例えば、特許第6033446号公報の[0275]段落の表2に記載されているように、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン>イミダゾール>3,5-ジメチルピラゾールという大小関係がある。従って、第1ブロック剤:1,1,3,3-テトラメチルグアニジンと、第2ブロック剤:イミダゾールと、第3ブロック剤:3,5-ジメチルピラゾール、2,6-ジメチルピペリジン、ジイソプロピルアミン、メチルエチルケトキシム、ε-カプロラクタムとの組み合わせなどが挙げられる。なお、前記第2ブロック剤および前記第3ブロック剤が触媒作用を有する場合、前記第1ブロック剤は前記第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きく、好ましくは、前記第3ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きいが、前記第2ブロック剤および前記第3ブロック剤がイソシアネート基を活性化させる触媒作用はどちらが大きくてもよい。
2-2.撥水剤
本発明の組成物は、撥水剤を含む。撥水剤は、繊維製品に撥水性を付与するための有効成分として機能する成分である。撥水剤としては、特に限定はなく、例えば、フッ素系撥水剤または非フッ素系撥水剤などが挙げられる。
2-2-1.フッ素系撥水剤
フッ素系撥水剤としては、例えば、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基(以下、「パーフルオロアルキル基」を、「Rf基」ということがある)を含むフッ素系化合物、炭素数8以上のRf基を含むフッ素系化合物などが挙げられる。これらの中でも、環境および安全性の観点から、炭素数6以下のRf基を含むフッ素系化合物が好ましい。炭素数6以下のRf基の炭素数は、好ましくは、4~6であり、より好ましくは、6である。炭素数6以下のRf基を含むフッ素系化合物としては、炭素数が6以下のRf基を含有する重合体またはRf基を含有するポリウレタン化合物が好ましく、Rf基を含有する重合体がより好ましい。
Rf基を含有する重合体としては、特に限定はなく、例えば、Rf基を含有するアクリレートおよび/またはメタクリレート基に基づく重合単位を含む重合体などが挙げられる。以下、アクリレートとメタクリレートとをまとめて(メタ)アクリレートということがある。
Rf基含有(メタ)アクリレートとしては、下記式(2)で表わされる化合物が好ましい。
CH2=C(R)COO-Q-Rf (2)
(式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Qは、2価の有機基を示し、Rfは、前述のRf基を示す。)
式(2)におけるQは、アルキレン基(CnH2n:nは、2~10の整数を示す)またはアルキレン基を含む2価の有機基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、CH2CH2、CH(CH3)CH2、CH2CH2N(CH3)CO、CH2CH2N(CH3)SO2、CH(CH2Cl)CH2OCH2CH2N(CH3)SO2などが更に好ましい。
式(2)におけるRfは、例えば、直鎖構造または分岐構造のいずれでもよく、特に、CnF2n+1(式中、nは、6以下の整数を示す。)で表わされる直鎖構造のRf基が好ましい。
式(2)で表わされる化合物の具体例を、以下に列記する。ただし、同化合物は、これらに限定されない。以下の具体例において、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Rfは、前述のRf基を示す。
・CH2=CRCOOCH2CH2Rf
・CH2=CRCOOCH(CH3)CH2Rf
・CH2=CRCOOCH2CH2N(CH3)CORf
・CH2=CRCOOCH2CH2N(C2H5)CORf
・CH2=CRCOOCH2CH2N(C3H7)CORf
・CH2=CRCOOCH2CH2N(CH3)SO2Rf
・CH2=CRCOOCH2CH2N(C2H5)SO2Rf
・CH2=CRCOOCH2CH2N(C3H7)SO2Rf
・CH2=CRCOOCH(CH2Cl)CH2OCH2CH2N(CH3)SO2Rf
Rf基含有(メタ)アクリレートは、例えば、1種類を単独で使用することができ、または、2種類以上を併用することができる。また、例えば、Rf基含有(メタ)アクリレートは、Rf基の炭素数の異なる化合物を2種類以上併用することができる。
また、撥水剤として前述のRf基含有(メタ)アクリレートに基づく重合単位を含む重合体を採用する場合には、例えば、重合体中のフッ素含有量を調節するなどの目的で、Rf基含有(メタ)アクリレート以外の他の単量体に基づく重合単位を含有させることが好ましい。他の単量体としては、特に限定はなく、例えば、ラジカル重合性の不飽和結合を有する単量体などが挙げられる。
他の単量体としては、例えば、具体的には、エチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール化ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルキルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル、ビニルアルキルケトン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、メチルポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート、ポリシロキサンを有する(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、N-ビニルカルバゾール、マレイミド、N-メチルマレイミド、(2-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、炭素数8~24のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、側鎖にシリコーンを有する(メタ)アクリレート、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、ブロック化イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、アルキレンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
Rf基含有(メタ)アクリレートに基づく重合単位を含む重合体における、Rf基含有(メタ)アクリレートの重合単位の含有量は、例えば、重合体の25重量%以上である。
Rf基含有(メタ)アクリレートに基づく重合単位を含む重合体の製造方法としては、特に限定はなく、例えば、従来公知または周知の、種々の重合法または条件が任意に選択できる。同重合法としては、特に限定はなく、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合などが挙げられる。また、ラジカル重合反応に加えて、同重合法としては、放射線重合反応、光重合反応などの重合反応などが挙げられる。本発明において、ラジカル重合反応を用いる乳化重合法が特に好ましい。
Rf基含有(メタ)アクリレートに基づく重合単位を含む重合体の製造方法に乳化重合法を適用する場合には、単量体、界面活性剤などを水の存在下で乳化させ、撹拌し、重合させる方法が、好ましく採用される。また、ホモジナイザーなどの乳化機を用いて、単量体、界面活性剤、水等を予め乳化した後、撹拌下で重合させる方法も、好ましく採用される。
重合開始剤としては、特に限定はなく、例えば、有機酸過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩などの各種の重合開始剤などが挙げられる。また、界面活性剤としては、特に限定はなく、例えば、陰イオン性、陽イオン性、両性、またはノニオン性の各種界面活性剤などが挙げられる。
また、炭素数6以下のRf基を含むフッ素系化合物として、Rf基を含むポリウレタン化合物を使用する場合、Rf基を含むポリウレタン化合物は、例えば、イソシアネート基との反応性を有する官能基を含むRf化合物と、ポリイソシアネート化合物との反応生成物である。
イソシアネート基との反応性を有する官能基を含むRf化合物としては、特に限定はなく、例えば、Rf基と水酸基とを有する化合物、Rf基とアミノ基とを有する化合物、Rf基とカルボキシル基とを有する化合物などが挙げられる。また、ポリイソシアネート化合物としては、特に限定はなく、例えば、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物などが挙げられる。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加MDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびこれらの多量体、ヌレート体、ビュレット体などが挙げられる。
また、Rf基を含むポリウレタン化合物は、例えば、イソシアネート基との反応性を有する官能基を含むRf化合物と、イソシアネート基との反応性を有する官能基を含み、Rf基を含まない化合物とを、ポリイソシアネート化合物と反応させた化合物でもよい。イソシアネート基との反応性を有する官能基を含み、Rf基を含まない化合物としては、例えば、アルコール、アミン、カルボン酸などが挙げられる。
フッ素系撥水剤としては、例えば、市販されているものを使用することができる。具体的には、例えば、旭硝子株式会社製の「AsahiGuard E-SERIES」、日華化学株式会社製の「NKガード」シリーズ、ダイキン工業株式会社製の「ユニダイン」シリーズなどを使用することができる。
2-2-2.非フッ素系撥水剤
非フッ素系撥水剤としては、特に限定はなく、例えば、フッ素を含まないアクリル系化合物、フッ素を含まないウレタン系化合物、フッ素を含まないシリコーン系化合物、フッ素を含まない炭化水素系化合物などが挙げられる。
フッ素を含まないアクリル系化合物としては、特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリレート単量体を重合して得られる(メタ)アクリレートポリマーなどが挙げられる。(メタ)アクリレート単量体は、炭素数が12以上のエステル部分を有することが好ましく、このエステル部分は炭化水素基であることが好ましい。この炭化水素基は、例えば、直鎖状であっても、または、分岐状であってもよく、飽和炭化水素であっても、または、不飽和炭化水素であってもよく、更には脂環式または芳香族の環状を有してもよい。これらの中でも、炭化水素基は、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。
上記エステル部分の炭素数は、12~30であることが好ましい。炭素数が12以上であると、例えば、撥水剤として十分な撥水性を発揮できる。一方、炭素数が30以下であると、例えば、風合いが粗硬となることがない。エステル部分の炭素数は、12~21であることがより好ましい。炭素数がこの範囲である場合、例えば、撥水性と風合との両方が特に優れるようになる。エステル部分としては、炭素数が12~18の直鎖状のアルキル基であることが特に好ましい。
上記の(メタ)アクリレート単量体としては、特に限定はなく、例えば、ラウリルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は、例えば、1種類を単独で使用することができ、または、2種類以上を併用することができる。
また、エステル部分に環状構造を有する単量体としては、特に限定はなく、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、4-モルホリノエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニルメタクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は、例えば、1種類を単独で使用することができ、または、2種類以上を併用することができる。
また、(メタ)アクリレート単量体は、架橋性を有する官能基を含むことが好ましい。官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックポリイソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基などが挙げられる。官能基の具体例としては、例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、モノクロロ酢酸ビニル、グリシジル(メタ)アクリレート、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレートなどが挙げられる。これらの官能基は、1種類を単独で使用することができ、または、2種類以上を併用することができる。
また、単量体としては、例えば、(メタ)アクリレート単量体ではない他の重合性単量体が挙げられる。このような他の単量体としては、特に限定はなく、例えば、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、酢酸ビニル、ビニルアルキルエーテル、アクリロニトリル、アルキロールアクリルアミド、マレイン酸ジエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
上記の単量体の単独重合体または共重合体を、例えば、アクリル系化合物として使用することができる。例えば、ステアリルアクリレートの単独重合体、ステアリルアクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体、ベヘニルアクリレートと塩化ビニルの共重合体などを好ましく使用することができる。
フッ素を含まないウレタン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、イソシアネートならびにソルビタン、シトレート、およびペンタエリスリオールなどの有機化合物から誘導されるフッ素を含まないウレタン系化合物などを使用することができる。このようなウレタン系化合物としては、例えば、特表2016-524628号公報に記載された方法により製造することができる化合物等が挙げられる。
フッ素を含まないシリコーン系化合物としては、特に限定はなく、例えば、架橋剤であるブロックポリイソシアネートと反応し得る官能基を有するものが好ましく、ブロックポリイソシアネートのイソシアネート基と反応し得るアミノ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基等を有するものが好ましく、例えば、アミノ変性シリコーンなどが挙げられる。アミノ変性シリコーンとしては、例えば、シロキサン構造の側鎖にアミノ基が導入されたもの、シロキサン構造の末端にアミノ基が導入されたもの、これらの混合体などが挙げられる。アミノ基としては、特に限定はなく、例えば、モノアミン、ジアミン、または一部が封鎖されたものなどが挙げられる。アミノ変性シリコーンにおいて、撥水性の観点から、アミン当量が300~20000g/mol程度のものを使用することが好ましく、アミン当量は、撥水性、洗濯耐久性、風合いおよび価格などを考慮する場合、1000~7000g/molがより好ましい。このようなアミノ変性シリコーンは、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の「WACKER FINISH WR301」、「WACKER FINISH WR1100」、「WACKER FINISH WR1200」、「WACKER FINISH WR1300」、「WACKER FINISH WR1600」、信越化学工業株式会社製の「KF-867」、「KF-869」、および「KF-8004」などを使用することができる。
また、フッ素を含まないシリコーン系化合物としては、例えば、カルビノール変性シリコーンも挙げることができる。カルビノール変性シリコーンとしては、特に限定はなく、例えば、シロキサン構造の側鎖に水酸基が導入されたもの、シロキサン構造の末端に水酸基が導入されたもの、これらの混合体などが挙げられる。このようなカルビノール変性シリコーンは、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、信越化学工業株式会社製の「X-22-4039」、「X-22-4015」、「X-22-170BX」、「X-22-170DX」、「KF-6000」、「KF-6001」、「KF-6002」、「KF-6003」などを使用することができる。
また、フッ素を含まないシリコーン系化合物としては、例えば、ジオール変性シリコーンも挙げることができる。ジオール変性シリコーンとしては、特に限定はなく、例えば、シロキサン構造の側鎖にジオール基が導入されたもの、シロキサン構造の末端にジオール基が導入されたもの、これらの混合体などが挙げられる。このようなジオール変性シリコーンは、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、信越化学工業株式会社製の「X-22-176DX」、「X-22-176F」、「X-22-176GX-A」などを使用することができる。
また、フッ素を含まないシリコーン系化合物としては、例えば、フェノール変性シリコーンも挙げることができる。フェノール変性シリコーンとしては、特に限定はなく、例えば、シロキサン構造の側鎖にフェノール性水酸基が導入されたもの、シロキサン構造の末端にフェノール性水酸基が導入されたもの、これらの混合体などが挙げられる。このようなフェノール変性シリコーンは、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、信越化学工業株式会社製の「KF-2201」などを使用することができる。
また、フッ素を含まないシリコーン系化合物としては、例えば、カルボキシル変性シリコーンも挙げることができる。カルボキシル変性シリコーンとしては、特に限定はなく、例えば、シロキサン構造の側鎖にカルボキシル基が導入されたもの、シロキサン構造の末端にカルボキシル基が導入されたもの、これらの混合体などが挙げられる。このようなカルボキシル変性シリコーンは、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、信越化学工業株式会社製の「X-22-3701E」、「X-22-162C」などを使用することができる。
また、フッ素を含まないシリコーン系化合物としては、例えば、メルカプト変性シリコーンも挙げることができる。メルカプト変性シリコーンとしては、特に限定はなく、例えば、シロキサン構造の側鎖にメルカプト基が導入されたもの、シロキサン構造の末端にメルカプト基が導入されたもの、これらの混合体などが挙げられる。このようなメルカプト変性シリコーンは、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、信越化学工業株式会社製の「KF-2001」、「KF-2004」、「X-22-167B」、「X-22-167C」などを使用することができる。
また、フッ素を含まないシリコーン系化合物としては、例えば、エポキシ変性シリコーンも挙げることができる。エポキシ変性シリコーンとしては、特に限定はなく、例えば、シロキサン構造の側鎖にエポキシ基が導入されたもの、シロキサン構造の末端にエポキシ基が導入されたもの、これらの混合体などが挙げられる。このようなエポキシ変性シリコーンは、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、信越化学工業株式会社製の「X-22-343」、「KF-101」、「KF-1001」、「X-22-163」、「X-22-163A」、「X-22-163B」、「X-22-163C」、「KF-105」、「X-22-169AS」、「X-22-169B」、「X-22-173BX」、「X-22-173DX」などを使用することができる。例えば、価格の面から、アミノ変性シリコーンがより好ましい。
さらに、上記のフッ素を含まないシリコーン系化合物に加えて、架橋剤であるブロックポリイソシアネートと反応し得る官能基を有していないシリコーン系化合物、ワックス系化合物を併用してもよい。特に、シリコーン系化合物が好ましく、例えば、長鎖アルキル変性シリコーン、長鎖アルキル・アラルキル変性シリコーン、高級脂肪酸アミド変性シリコーンが好ましい。このような変性シリコーンは、市販品としても入手可能である。例えば、長鎖アルキル変性シリコーンは、信越化学工業株式会社製の「KF-412」、「KF-413」、「KF414」、「KF-415」、「KF-4003」、「KF-4701」、「KF-4917」、「KF-7235B」、「X-22-7322」、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の「BELSIL CDM 3526 VP」、「BELSIL CM 7026 VP」、「BELSIL SDM 5055 VP」などを使用することができる。長鎖アルキル・アラルキル変性シリコーンは、信越化学工業株式会社製の「X-22-1877」などを使用することができる。高級脂肪酸アミド変性シリコーンは、信越化学工業株式会社製の「KF-3935」などを使用することができる。
架橋成分と反応し得る官能基を有さない化合物を、フッ素を含まないシリコーン系化合物と併用する場合、併用する量としては、撥水剤の総質量に基づいて、例えば、0.01~50質量%、好ましくは、0.01~40質量%、より好ましくは0.01~30質量%である。
フッ素を含まない炭化水素系化合物としては、例えば、長鎖アルキル基を有するものが好ましく、架橋成分と反応し得る官能基を有することが好ましい。フッ素を含まない炭化水素系化合物としては、特に限定はなく、例えば、脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、具体的にはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエートなど、また、国際公開第2014/190905号パンフレットに開示された各種のソルビタン誘導体、クエン酸アルキル、ペンタエリスリトール誘導体などの脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、例えば、撥水性の点から、ソルビタントリステアレート、クエン酸トリステアリルが好ましい。
撥水剤は、例えば、1種類を単独で使用することができ、または、2種類以上を併用することができる。具体的には、フッ素系撥水剤は、例えば、1種類を単独で使用することができ、または、2種類以上を併用することができる。また、具体的には、非フッ素系撥水剤は、例えば、1種類を単独で使用することができ、または、2種類以上を併用することができる。非フッ素系撥水剤を2種類以上併用する場合、非フッ素系撥水剤の組み合わせは、例えば、フッ素を含まないアクリル系化合物とフッ素を含まないシリコーン系化合物との組み合わせ、フッ素を含まないシリコーン系化合物とフッ素を含まない炭化水素系化合物との組み合わせ、フッ素を含まないシリコーン系化合物とフッ素を含まないウレタン系化合物との組み合わせ、などの各化合物の混合物あるいは反応物が挙げられる。非フッ素系撥水剤は、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、明成化学工業株式会社製の「メイシールド」シリーズや日華化学株式会社製の「ネオシード」シリーズ、ダイキン工業株式会社製の「ユニダインXF」シリーズなどを使用することができる。また、撥水剤は、例えば、フッ素系撥水剤と非フッ素系撥水剤とを組み合わせて使用することもできる。フッ素系撥水剤と非フッ素系撥水剤とを2種類以上併用する場合、フッ素系撥水剤と非フッ素系撥水剤との組み合わせは、特に限定はなく、例えば、フッ素系化合物とフッ素を含まないアクリル系化合物との組み合わせ、フッ素系化合物とフッ素を含まないシリコーン系化合物との組み合わせ、フッ素系化合物とフッ素を含まないウレタン系化合物との組み合わせ、フッ素系化合物とフッ素を含まない炭化水素系化合物との組み合わせ、などが挙げられる。
撥水剤は、例えば、乳化分散された形態で使用することが好ましい。
2-3.水性媒体
本発明の組成物は、水性媒体を含む。水性媒体としては、特に限定はなく、例えば、水または水を主成分とする溶液などが挙げられる。水を主成分とする溶液としては、特に限定はなく、例えば、水と水溶性溶剤とを含む混合溶液などが挙げられる。この混合溶液は、好ましくは、80質量%以上の水と20質量%未満の水溶性溶剤とを含む混合溶液であり、より好ましくは、90質量%以上の水と10質量%未満の水溶性溶剤とを含む混合溶液である。
水溶性溶剤としては、特に限定はなく、例えば、グリコール、グリコールエーテル、およびグリコールエステルなどが挙げられる。これらのグリコール、グリコールエーテル、およびグリコールエステルとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどが挙げられる。
2-4.撥水剤、ブロックポリイソシアネート、および水性媒体の配合割合
本発明の組成物全量における撥水剤の固形分配合割合(撥水剤固形分割合)は、特に限定はなく、例えば、付与される撥水性の度合いなどにより、適宜決定することができる。前記撥水剤固形分割合は、例えば、0.2質量%~6質量%であり、好ましくは、0.5質量%~5質量%であり、より好ましくは、1質量%~3.5質量%である。
本発明の組成物全量におけるブロックポリイソシアネート(架橋剤)の固形分配合割合は、特に限定はなく、例えば、0.03質量%~3質量%であり、好ましくは、0.06質量%~1.8質量%であり、より好ましくは、0.12質量%~0.6質量%である。
本発明の組成物全量における水性媒体の配合割合(水性媒体割合)は、例えば、80質量%~99質量%であり、好ましくは、85質量%~96質量%である。前記水性媒体割合は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
2.5-他の架橋剤
また、本発明の組成物は、本発明の架橋剤(ブロックポリイソシアネート)に加えて、例えば、他の架橋剤を含むこともできる。他の架橋剤としては、特に限定はなく、例えば、既存のブロックイソシアネート系架橋剤が挙げられる。既存のブロックイソシアネート系架橋剤は、特に限定はなく、例えば、ピラゾール系化合物によりイソシアネート基がブロックされているブロックイソシアネート、オキシム系化合物によりイソシアネート基がブロックされているブロックイソシアネート等が挙げられる。本発明の組成物に他の架橋剤を含ませることにより、例えば、本発明の架橋剤により奏される本発明の効果を維持しつつ、本発明の架橋剤の使用量を減らすことができ、例えば、コストを下げることができる。本発明の組成物全量における他の架橋剤の配合割合は、例えば、1質量%~99質量%、好ましくは、5質量%~70質量%、より好ましくは、10質量%~40質量%である。
2-6.その他の成分
また、本発明の組成物は、撥水剤、ブロックポリイソシアネート、および水性媒体に加えて、例えば、界面活性剤を含むこともできる。本発明の組成物を、水系エマルションとするために界面活性剤が使用される。界面活性剤としては、特に限定はなく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、例えば、1種類を単独で使用することができ、または、2種類以上を併用することができる。
ノニオン性界面活性剤としては、特に限定はなく、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、特に限定はなく、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネートなどが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、特に限定はなく、例えば、アミン塩、アミドアミン塩、4級アンモニウム塩、およびイミダゾリニウム塩などが挙げられる。カチオン性界面活性剤の具体例としては、特に限定はなく、例えば、アルキルアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩、アルキルアミドアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型界面活性剤;などが挙げられる。両性界面活性剤としては、特に限定はなく、例えば、アルキルアミンオキシド類、アラニン類、イミダゾリニウムベタイン類、アミドベタイン類、酢酸ベタインなどが挙げられ、具体的には、例えば、長鎖アミンオキシド、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどが挙げられる。
本発明の組成物全量における界面活性剤の固形分配合割合(界面活性剤固形分割合)は、特に限定はなく、例えば、乳化が可能であり、かつ、撥水性と洗濯耐久性とを損なわない限りにおいて、適宜決定することができる。前記界面活性剤固形分割合は、例えば、1質量%~20質量%であり、好ましくは、1.5質量%~10質量%である。
また、本発明の組成物は、例えば、撥水助剤を更に含むことができる。撥水助剤としては、特に限定はなく、例えば、ジルコニウム系化合物などが挙げられる。ジルコニウム系化合物としては、特に限定はなく、例えば、酢酸ジルコニウム、塩酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどが挙げられる。
また、本発明の組成物は、上記以外にも、本発明の効果を生じる限りにおいて、例えば、任意の添加剤を更に含んでもよい。任意の添加剤としては、特に限定はなく、例えば、スリップ防止剤、防しわ剤、難燃剤、帯電防止剤などの繊維用薬剤;消臭剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの添加剤は、例えば、1種類を単独で使用することができ、または、2種類以上を併用することができる。
2-7.繊維処理組成物の形態
本発明の組成物は、撥水剤とブロックポリイソシアネートとの両方が水性媒体中に含まれている1液型の形態である。一方、撥水剤とブロックポリイソシアネートとは、水性媒体中に別々に含まれている形態で存在することもできる。例えば、撥水剤が水性媒体中に含まれる液体と、ブロックポリイソシアネートが水性媒体中に含まれる液体とに分けられている2液型の形態である。この2液型の形態は、繊維処理キットとして後述する。
1液型の形態である本発明の組成物は、例えば、撥水剤とブロックポリイソシアネートとの両方が水性媒体中に含まれている水分散液である。この水分散液は、例えば、撥水剤(例えば、乳化分散された撥水剤)と、水分散性を有するブロックポリイソシアネートとを、水性媒体中で混合することにより調製することができる。ブロックポリイソシアネートが水分散性を有さない場合には、水分散液は、例えば、撥水剤と、水分散性を有さないブロックポリイソシアネートと、前述の界面活性剤とを、水性媒体中で混合することにより調製することができる。また、水分散液は、まず、撥水剤を水性媒体中に分散させた水分散液(A)とブロックポリイソシアネートを水性媒体中に分散させた水分散液(B)とを調製し、(A)と(B)とを混合することによっても調製することができる。
本発明の組成物は、例えば、濃縮液の形態であることができる。このような形態の場合、本発明の組成物を、使用時に希釈して使用することができる。例えば、このような形態の場合、本発明の組成物は、撥水剤およびブロックポリイソシアネートの固形分濃度を前述の範囲より高く含ませておき、使用時に、撥水剤およびブロックポリイソシアネートの固形分濃度が前述の範囲となるように、所望の水性媒体を使用して希釈して使用される。希釈に使用される水性媒体としては、水以外にもアルコール類等を使用することができる。アルコール類としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロパン-1-オール、ブタン-1-オール、ペンタン-1-オール、ヘキサン-1-オール、プロパン-2-オール、ブタン-2-オール等が挙げられる。
2-8.繊維処理組成物を使用する撥水加工方法
本発明の組成物を使用して、繊維製品に撥水加工を行うことができる。本発明の組成物を使用する撥水加工方法は、本発明の組成物と繊維製品とを接触させる工程と、前記繊維製品を熱処理する工程とを含む。また、本発明の組成物を使用する撥水加工方法は、例えば、熱処理工程前に、前記繊維製品を乾燥させる工程を更に含む。本発明の組成物を使用する撥水加工方法は、例えば、連続法またはバッチ法において行うことができる。
連続法では、まず、本発明の組成物(加工液)を、含浸装置中で調製する。前記接触工程において、加工液で満たされた含浸装置に、繊維製品を連続的に送り込み、加工液を繊維製品に含浸させる。その後、繊維製品から余分な加工液を除去する。含浸装置としては、特に限定はなく、例えば、パッダ、キスロール式付与装置、グラビアコーター式付与装置、スプレー式付与装置、フォーム式付与装置、コーティング式付与装置などが挙げられる。含浸装置は、特にパッダ式が好ましい。続けて、繊維製品に残存している水を除去するために、乾燥機を使用して、この繊維製品を乾燥させる。乾燥機としては、特に限定はなく、例えば、ホットフルー、テンター(例えば、ピンテンター)などの拡布乾燥機などが挙げられる。連続法は、繊維製品が織物などの布帛状である場合に、好ましく採用することができる。
バッチ法は、繊維製品を前述の加工液に浸漬する工程と、浸漬後の繊維製品に残存する水を除去する工程とからなる。バッチ法は、繊維製品が布帛状でない場合、例えば、バラ毛、トップ、スライバ、かせ、トウ、糸などの場合、または、繊維製品が連続法に適さないもの(例えば、編み物など)の場合に、好ましく採用することができる。浸漬工程では、例えば、ワタ染機、チーズ染色機、液流染色機、工業用洗濯機、ビーム染色機などを使用することができる。水を除去する工程では、例えば、チーズ乾燥機、ビーム乾燥機、タンブルドライヤーなどの温風乾燥機;高周波乾燥機などを使用することができる。
熱処理工程において、繊維製品を熱処理する温度(キュア温度)は、低温であり、前述のとおりである。繊維製品を熱処理する時間(キュア時間)は、特に限定はない。ただし、キュア時間は、短時間であるのが好ましい。キュア時間は、例えば、10分以内、好ましくは、5分以内、より好ましくは、2分以内である。キュア時間の下限は、前述のキュア温度との組み合わせにおいて、撥水性を繊維製品に付与することができる時間であり、例えば、10秒以上、好ましくは、20秒以上、より好ましくは、30秒以上である。したがって、キュア時間は、例えば、10秒~10分、好ましくは、20秒~5分、より好ましくは、30秒~2分である。熱処理工程において、ブロックポリイソシアネートのブロック剤が熱解離し、再生したイソシアネート基と撥水剤または繊維製品とが反応し、結合するものと考えられている。ただし、本発明は、前述の考察により、限定または制限されない。
前述のように、乾燥工程は、熱処理工程の前に行われる。乾燥の方法としては、特に限定はなく、例えば、繊維製品が布帛状である場合には、テンター(例えば、ピンテンター)が好ましい。乾燥工程において、繊維製品を乾燥させられる温度(乾燥温度)であれば特に限定はない。乾燥温度は、キュア温度より低い温度であることが好ましい。
繊維製品を乾燥させられる時間(乾燥時間)であれば、特に限定はない。乾燥時間は、短時間であるのが好ましい。
繊維製品としては、特に限定はなく、例えば、原材料形状のもの、加工形態のものが挙げられる。原材料形状のものとしては、特に限定はなく、例えば、バラ毛、ステープル、フィラメント、トウ、糸、トップ、スライバ、かせなどが挙げられる。加工形態のものとしては、特に限定はなく、例えば、織物、編み物、詰め綿、不織布、紙、シート、フィルムなどが挙げられる。繊維製品の素材は、特に限定はなく、例えば、天然繊維、合成繊維、天然繊維と合成繊維との混紡繊維などが挙げられる。天然繊維としては、特に限定はなく、例えば、綿、絹、麻、羊毛などが挙げられる。合成繊維としては、特に限定ななく、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン、ナイロン、アクリル、スパンデックスなどが挙げられる。
3.繊維処理キット
3-1.繊維処理キットの形態
本発明の繊維処理キット(以下、「本発明のキット」ということがある)は、前述のブロックポリイソシアネートおよび水性媒体を含む第1繊維処理組成物と、前述の撥水剤および水性媒体を含む第2繊維処理組成物とを含む。すなわち、本発明のキットは、撥水剤が水性媒体中に含まれる液体と、ブロックポリイソシアネートが水性媒体中に含まれる液体とに分けられている2液型の形態である。例えば、第1繊維処理組成物および第2繊維処理組成物は両方とも、水分散液である。水分散液である第1繊維処理組成物は、水分散性を有するブロックポリイソシアネートを、水性媒体中に分散させることにより調製することができる。また、水分散液である第2繊維処理組成物は、撥水剤(例えば、乳化分散された撥水剤)を、水性媒体中に分散させることにより調製することができる。ブロックポリイソシアネートが水分散性を有さない場合には、水分散液である第1繊維処理組成物は、水分散性を有さないブロックポリイソシアネートと、前述の界面活性剤とを、水性媒体中で混合することにより調製することができる。
本発明のキットにおいて、第1繊維処理組成物中のブロックポリイソシアネートの濃度は、例えば、本発明の組成物中のブロックポリイソシアネートについての前述の濃度と同様である。また、第2繊維処理組成物中の撥水剤の濃度は、例えば、本発明の組成物中の撥水剤についての前述の濃度と同様である。
第1繊維処理組成物および第2繊維処理組成物は、例えば、濃縮液の形態であることができる。このような形態の場合、本発明のキットを、使用時に希釈して使用することができる。例えば、このような形態の場合、本発明のキットは、第1繊維処理組成物中にブロックポリイソシアネートを前述の濃度より高く含ませておき、第2繊維処理組成物中に撥水剤を前述の濃度より高く含ませておき、使用時に、撥水剤およびブロックポリイソシアネートの固形分濃度が前述の範囲となるように、所望の水性媒体を使用して、第1繊維処理組成物および第2繊維処理組成物を希釈して使用される。
3-2.繊維処理キットを使用する撥水加工方法
本発明のキットを使用して、繊維製品に撥水加工を行うことができる。本発明のキットを使用する撥水加工方法は、2通りの方法で行うことができる。第1の方法は、本発明のキットの第1繊維処理組成物と第2繊維処理組成物とを混合する工程と、混合した組成物と繊維製品とを接触させる工程と、前記繊維製品を熱処理する工程とを含む。第2の方法は、本発明のキットの第1繊維処理組成物および第2繊維処理組成物と繊維製品とを接触させる工程と、前記繊維製品を熱処理する工程とを含む。第2の方法において、第1繊維処理組成物および第2繊維処理組成物と繊維製品とを接触させる順序は、特に限定はない。同順序としては、例えば、第1繊維処理組成物と繊維製品とを接触させ、その後に、第2繊維処理組成物と繊維製品とを接触させる順序、または、第2繊維処理組成物と繊維製品とを接触させ、その後に、第1繊維処理組成物と繊維製品とを接触させる順序、または、第1繊維処理組成物および第2繊維処理組成物を同時に、繊維製品と接触させる順序が挙げられる。また、本発明のキットを使用する撥水加工方法は、例えば、熱処理工程前に、前記繊維製品を乾燥させる工程を更に含む。本発明のキットを使用する撥水加工方法は、例えば、前述の連続法またはバッチ法において行うことができる。
第1の方法を連続法において行う場合、例えば、第1繊維処理組成物と第2繊維処理組成物とを、含浸装置中で混合する。この点を除いて、第1の方法を行うための連続法は、前述の本発明の組成物を使用する撥水加工方法を行うための連続法と同様である。
第2の方法を連続法において行う場合、例えば、第1繊維処理組成物(第1加工液)を第1浴中で調製し、第2繊維処理組成物(第2加工液)を第2浴中で調製し、前記接触工程において、第1浴および第2浴に、繊維製品を連続的に送り込み、第1加工液と第2加工液とを含浸させる。これらの点を除いて、第2の方法を行うための連続法は、前述の本発明の組成物を使用する撥水加工方法を行うための連続法と同様である。
熱処理工程において、キュア温度、キュア時間、および熱処理方法は、特に限定はなく、例えば、前述の本発明の組成物を使用する撥水加工方法におけるキュア温度、キュア時間、および熱処理方法と同様とすることができる。乾燥工程において、乾燥温度、乾燥時間、および乾燥方法は、特に限定はなく、例えば、前述の本発明の組成物を使用する撥水加工方法における乾燥温度、乾燥時間、および乾燥方法と同様とすることができる。
4.繊維製品
本発明の繊維製品は、例えば、本発明の処理剤を使用して撥水性が付与された繊維製品、または、本発明のキットを使用して撥水性が付与された繊維製品である。繊維製品としては、前述のものが挙げられる。本発明の繊維製品は、優れた洗濯耐久性を有する撥水性を付与されているため、例えば、繰返しの洗濯が可能である。
5.撥水性繊維製品の製造方法
撥水性繊維製品の製造方法は、前述の撥水剤および前述のブロックポリイソシアネートを、同時にまたは順次に、繊維製品と接触させる工程と、前記繊維製品を、熱処理する工程とを含む。接触工程において、撥水剤およびブロックポリイソシアネートを同時に繊維製品と接触させる場合、例えば、本発明の組成物を使用して、撥水剤およびブロックポリイソシアネートを同時に繊維製品と接触させることができる。また、接触工程において、撥水剤およびブロックポリイソシアネートを順次に繊維製品と接触させる場合、別々の準備した前述の撥水剤と前述のブロックポリイソシアネートを順次に繊維製品と接触させることができる。この場合、撥水剤とブロックポリイソシアネートを繊維製品と接触させる順序は、特に限定はなく、例えば、先に撥水剤を繊維製品と接触させ、その後に、ブロックポリイソシアネートを繊維製品と接触させてもよいし、または、先にブロックポリイソシアネートを繊維製品と接触させ、その後に、撥水剤を繊維製品と接触させてもよい。接触工程において、撥水剤およびブロックポリイソシアネートを順次に繊維製品と接触させる場合、例えば、本発明のキット(第1繊維処理組成物および第2繊維処理組成物)を使用して、撥水剤およびブロックポリイソシアネートを順次に繊維製品と接触させることができる。本発明の撥水性繊維製品の製造方法は、例えば、熱処理工程前に、前記繊維製品を乾燥させる工程を更に含む。本発明の撥水性繊維製品の製造方法は、例えば、前述の連続法またはバッチ法において行うことができる。このような製法方法により製造された撥水性繊維製品は、優れた洗濯耐久性を有する撥水性を有する。熱処理工程および乾燥工程における条件(温度、時間、方法等)は、前述の撥水加工方法と同様である。
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例および比較例により制限されない。
(ブロックポリイソシアネートの合成)
[合成例1]
撹拌機、温度計、冷却器、および窒素ガス導入管を備えた容量1Lの反応器に、室温で、ポリイソシアネート化合物として、タケネートD-170N(三井化学株式会社製、NCO基含有量:20.7%、NV:100%、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体)を150g(NCO当量:0.755mol)およびタケネートD-127N(三井化学株式会社製、NCO基含有量:13・5%、水添キシリレンジイソシアネートの三量体、NV:75%、希釈溶媒:酢酸エチル)を200g(NCO当量:0.643mol)と、溶媒ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(以下、MEDGと略す場合がある)246gとを混合し、減圧加熱条件下で酢酸エチルを留去した。次いで、活性水素基を含有する親水性化合物として、メトキシPEG#1000(数平均分子量1000:東邦化学工業株式会社製)を52.9g(OH:0.053mol、当量比:OH/NCO=0.038)を充填し、90℃において残存するイソシアネート量に変化がなくなるまでウレタン化反応させ、親水性基含有ポリイソシアネートを合成した。
この親水性基含有ポリイソシアネートに、第2ブロック剤として、イミダゾール(以下、IMZと略す場合がある。)73.3g(1.08mol)を、反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加えた。
ついで、第1ブロック剤として、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(以下、TMGと略す場合がある)31.0g(0.27mol)を、IMZと同様に数回に分けて加えた後に、室温で1時間撹拌した。
その後、フーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルを測定することにより、イソシアネート基がブロック化されていることを確認して、固形分65質量%の本合成例のブロックポリイソシアネートを得た。本合成例のブロックポリイソシアネートにおいて、第1ブロック剤(TMG)によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基および第2ブロック剤(IMZ)によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基の含有割合はそれぞれ、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の総モル量に対して、20モル%および80モル%である。
[合成例2]
撹拌機、温度計、冷却器、および窒素ガス導入管を備えた容量1Lの反応器に、室温で、ポリイソシアネート化合物として、タケネートD-110N(三井化学株式会社製、NCO基含有量:11.5%、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、NV:75%、希釈溶媒:酢酸エチル)を200g(NCO当量:0.548mol)およびタケネートD-127Nを200g(NCO当量:0.643mol)と、溶媒MEDGとを252g混合し、減圧加熱条件下で酢酸エチルを留去した。次いで、活性水素基を含有する親水性化合物として、メトキシPEG#1000を75.0g(OH:0.075mol、当量比:OH/NCO=0.063)充填し、90℃において残存するイソシアネート量に変化がなくなるまでウレタン化反応させ、親水性基含有ポリイソシアネートを合成した。
この親水性基含有ポリイソシアネートに、第2ブロック剤として、イミダゾール(以下、IMZと略す場合がある。)64.9g(0.95mol)を、反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加えた。
ついで、第1ブロック剤として、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(以下、TMGと略す場合がある)27.4g(0.24mol)を、IMZと同様に数回に分けて加えた後に、室温で1時間撹拌した。
その後、フーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルを測定することにより、イソシアネート基がブロック化されていることを確認して、固形分65質量%の本合成例のブロックポリイソシアネートを得た。本合成例のブロックポリイソシアネートにおいて、第1ブロック剤(TMG)によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基および第2ブロック剤(IMZ)によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基の含有割合はそれぞれ、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の総モル量に対して、20モル%および80モル%である。
[合成例3]
撹拌機、温度計、冷却器、および窒素ガス導入管を備えた容量1Lの反応器に、室温で、ポリイソシアネート化合物として、タケネートD-170Nを300g(NCO当量:1.51mol)と、活性水素基を含有する疎水性化合物として、ポリテトラメチレングリコール1000(以下、PTMG1000と略す場合がある。数平均分子量1000:三菱ケミカル株式会社製)を27.9g(OH:0.028mol、当量比:OH/NCO=0.018)と、活性水素基を含有する親水性化合物として、メトキシPEG#1000を57.9g(OH:0.058mol、当量比:OH/NCO=0.038)充填し、90℃において残存するイソシアネート量に変化がなくなるまでウレタン化反応させ、親水性基含有ポリイソシアネートを合成した。
この親水性基および疎水性基含有ポリイソシアネートに、溶媒としてジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(以下、DGMEAと略す場合がある)266gをよく混合した後、第3ブロック剤として、3,5-ジメチルピラゾール(以下、DMPと略す場合がある)を13.7g(0.14mol)、反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加えた。ついで、第2ブロック剤として、IMZ 77.6g(1.14mol)を、反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加えた。ついで、第1ブロック剤として、TMG 16.4g(0.14mol)を、IMZと同様に数回に分けて加えた後に、室温で1時間撹拌した。
その後、フーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルを測定することにより、イソシアネート基がブロック化されていることを確認して、固形分65質量%の本合成例ブロックポリイソシアネートを得た。本合成例のブロックポリイソシアネートにおいて、第1ブロック剤(TMG)によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基、第2ブロック剤(IMZ)によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基、および第3ブロック剤(DMP)によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基の含有割合はそれぞれ、第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の総モル量に対して、10モル%、80モル%、および10モル%である。
[合成例4]
撹拌機、温度計、冷却器、および窒素ガス導入管を備えた容量1Lの反応器に、室温で、ポリイソシアネート化合物として、タケネートD-170Nを300g(NCO当量:1.51mol)と、活性水素基を含有する親水性化合物として、メトキシPEG#1000を52.9g(OH:0.053mol、当量比:OH/NCO=0.035)充填し、90℃において残存するイソシアネート量に変化がなくなるまでウレタン化反応させ、親水性基含有ポリイソシアネートを合成した。
この親水性基含有ポリイソシアネートに、溶媒としてMEDG 257gをよく混合した後、第3ブロック剤として、DMP 42.0g(0.44mol)、反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加えた。ついで、第2ブロック剤として、IMZ 49.6g(0.73mol)を、反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加えた。ついで、第1ブロック剤として、TMG 33.6g(0.29mol)を、IMZと同様に数回に分けて加えた後に、室温で1時間撹拌した。
その後、フーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルを測定することにより、イソシアネート基がブロック化されていることを確認して、固形分65質量%の本合成例ブロックポリイソシアネートを得た。本合成例のブロックポリイソシアネートにおいて、第1ブロック剤(TMG)によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基、第2ブロック剤(IMZ)によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基、および第3ブロック剤(DMP)によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基の含有割合はそれぞれ、第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の総モル量に対して、20モル%、50モル%、および30モル%である。
[合成例5]
ブロックポリイソシアネートにおいて、第1ブロック剤(TMG)によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基、第2ブロック剤(IMZ)によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基、および第3ブロック剤(DMP)によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基の含有割合がそれぞれ、第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の総モル量に対して、20モル%、40モル%、および40モル%となるようにしたこと以外は、合成例4と同様にして、本合成例のブロックポリイソシアネートを得た。
[合成例6]
ブロックポリイソシアネートにおいて、第1ブロック剤(TMG)によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基、および第2ブロック剤(DMP)によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基の含有割合がそれぞれ、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の総モル量に対して、20モル%、80モル%となるようにしたこと以外は、合成例4と同様にして、本合成例のブロックポリイソシアネートを得た。本合成例のブロックポリイソシアネートは、第2ブロック剤としてIMZではないDMPによりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基を含有する。
[合成例7]
ブロックポリイソシアネートにおいて、第1ブロック剤(TMG)によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基、第2ブロック剤(IMZ)によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基、および第3ブロック剤(DMP)によりイソシアネート基がブロックされている第3潜在イソシアネート基の含有割合がそれぞれ、第1潜在イソシアネート基、第2潜在イソシアネート基、および第3潜在イソシアネート基の総モル量に対して、20モル%、30モル%、および50モル%となるようにしたこと以外は、合成例4と同様にして、本合成例のブロックポリイソシアネートを得た。本合成例のブロックポリイソシアネートでは、第2ブロック剤(IMZ)によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基が、40モル%を下回っている。
合成例1~7のブロックポリイソシアネートおよび比較対象とするブロックポリイソシアネート(比較対象1および2)について、NCO骨格、ブロック剤(第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤)、各ブロック剤のモル%、および親水性基(wt%)を、表1に示す。比較対象1および2のブロックポリイソシアネートは、1種類のブロック剤によりブロックされているイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネートである。比較対象1のブロックポリイソシアネートでは、ブロック剤は、ピラゾール系化合物であり、比較対象2のブロックポリイソシアネートでは、ブロック剤は、オキシム系化合物である。各ブロック剤のモル%、例えば、合成例3における第1ブロック剤、第2ブロック剤、および第3ブロック剤のモル%は、TMG(1,1,3,3-テトラメチルグアニジン):IMZ(イミダゾール):DMP(3、5-ジメチルピラゾール)=10(モル%):80(モル%):10(モル%)である。ここで、以下の表1における「各ブロック剤のモル%」は、対応する潜在イソシアネート基のモル%に相当する。すなわち、第1ブロック剤のモル%は、第1潜在イソシアネート基のモル%に相当し、第2ブロック剤のモル%は、第2潜在イソシアネート基のモル%に相当し、第3ブロック剤のモル%は、第3潜在イソシアネート基のモル%に相当する。
これらのブロックポリイソシアネートを、繊維処理組成物(以下、単に、「組成物」ということがある)における架橋剤とした。
[実施例1]
本実施例では、本発明の繊維処理組成物を調製し、撥水性および撥油性の洗濯耐久性を評価した。
[繊維処理組成物の調製]
実施例1-1~1-3は、合成例1~3のブロックポリイソシアネート(架橋剤)と撥水剤とを含む組成物の例である。比較例1-1は、撥水剤を含み、架橋剤を含まない組成物の例である。比較例1-2は、合成例6の架橋剤と撥水剤とを含む組成物の例である。比較例1-3および1-4は、比較対象1および2の架橋剤と撥水剤とを含む組成物の例である。組成物の組成を、表2~6に示す。表2~6中の単位は、質量%である。実施例1-1~1-3および比較例1-2の組成物では、合成例のブロックポリイソシアネートが、0.3質量%で含まれている。また、比較例1-3および1-4の組成物では、比較対象のブロックポリイソシアネートが、1質量%で含まれている。本実施例において、0.3質量%の合成例のブロックポリイソシアネートと、1質量%の比較対象のブロックポリイソシアネートとは、同固形分である。
[撥水性評価方法]
実施例1-1~1-3および比較例1-1~1-4の組成物により繊維製品に付与された撥水性を、以下の方法で評価した。すなわち、まず、実施例および比較例の組成物として、加工浴中において、架橋剤および撥水剤が表1に示された濃度となるように、水で希釈して加工液を調製した。下記各試験布(サイズ:20cm×20cm)を、加工浴中に浸漬させた。試験布を加工浴から取り出し、試験布を2本のゴムローラーの間を通して絞った。すなわち、本実施例では、各試験布を1回加工浴に浸漬させ、その後1回絞った。この試験布を、ピンテンターにおいて、100℃で90秒間乾燥させた。乾燥後の試験布を、所定の温度(100℃、110℃、120℃、130℃、または140℃)で60秒間熱処理して(キュア)、評価布を作製した。
(試験布)
・ポリエステルタフタ(PETタフタ)
・ナイロン高密度タフタ(Ny高密度)
・ナイロンタスランタフタ(Nyタスラン)
・綿ブロード
スプレーテスター(大栄科学精器株式会社製)を使用して、JIS L 1092(2009)のスプレー法に従い、得られた評価布の撥水性を評価した(表2~6、同表中の「初期」に該当)。この評価は、下記基準に従って行った。なお、同等級の評価であっても、性能がわずかに良好な場合には、等級に「+」と付し、一方、性能がわずかに劣る場合には、等級に「-」を付した。
撥水性 評価基準
5:評価布表面に浸潤および水滴の付着を示さない
4:評価布表面に浸潤を示さないが、小さな水滴の付着を示す
3:評価布表面に小さな個々の水滴状の浸潤を示す
2:評価布表面の半分に浸潤を示し、小さな個々の浸潤が評価布表面を浸透した状態を示す
1:評価布の表面全体に浸潤を示す
[撥油性評価方法]
AATCC-118に従って、得られた評価布の撥油性を評価した(表2~6、同表中の「初期」に該当)。すなわち、まず、n-ヘプタン、n-オクタン、n-デカン、n-ドデカン、n-テトラデカン、n-ヘキサデカン、ヌジョール/n-ヘキサデカン、ヌジョールの試験溶液を調製した。この試験溶液を、得られた試験布表面上の5箇所に、数滴(直径約5mmまたは0.05mL)置いた。30秒後に、各試験溶液の浸潤状態により、撥油性を評価した。本実施例では、図1に示されたように、試験溶液が試験布表面上で、「A」の状態にあるのを「撥油性あり」とした。例えば、n-ヘプタン、n-オクタン、n-デカンの試験溶液では浸潤する(図1における「B」~「D」の状態)が、n-ドデカンの試験溶液では浸潤しない(図1における「A」の状態)場合には、評価布の撥油性評価は、「5」となる。また、例えば、n-ドデカンの試験溶液について、図1における「A」と「B」との間の状態にある場合には、「4-5」となる。他の試験溶液についても、同様である。なお、図1のイメージは、AATCC TECHNICAL MANUAL Volume 82,2007 P188から引用したものである。図1に示された方法による評価は、例示であり、本発明を限定するものではない。
撥油性 評価基準
8:n-ヘプタン
7:n-オクタン
6:n-デカン
5:n-ドデカン
4:n-テトラデカン
3:n-ヘキサデカン
2:ヌジョール/n-ヘキサデカン
1:ヌジョール
0:1に及ばないもの
[洗濯耐久性評価方法]
JIS L 1092(2009)に記載の洗濯方法に準拠して、得られた評価布を洗濯した。洗濯後の評価布について、前述の撥水性評価および撥油性評価を行った(表2~6)。表2~6中の「HL-10」は、同洗濯方法を10回行ったことを示し、「HL-20」は、同洗濯方法を20回行ったことを示す。また、表2~6中の「(N)」は、自然乾燥(約1日の吊り干し)させたことを示し、表2~6中の「(T)」は、タンブラー乾燥を行ったことを示す。タンブラー乾燥は、AATCC-135に準拠して、66℃±5℃、40分)で行った。
表2~6に示されたとおり、架橋剤を含まない組成物(比較例1-1)については、全ての温度での熱処理において、撥水性の洗濯耐久性が低かった。これと比べて、比較例1-2~1-4については、120℃~140℃の熱処理において、良好な初期撥水性および初期撥油性を示し、架橋剤を含まない組成物である比較例1-1よりは、ある程度良好な撥水性の洗濯耐久性を示した。
一方、本実施例の組成物は、100℃~130℃の熱処理において、良好な初期撥水性および初期撥油性を示し、比較例1-2~1-4と比較して、撥水性の洗濯耐久性に概ね優れていた。また、本実施例の組成物は、140℃の熱処理において、良好な初期撥水性および初期撥油性を示し、比較例1-2~1-4と同等またはそれ以上の撥水性の洗濯耐久性を有していた。なお、データを示さないが、140℃を超える熱処理(例えば、170℃)においても、本発明の組成物は、140℃の熱処理におけるのと同様の傾向の性能を示した。
また、撥油性の洗濯耐久性について、比較例1-1が全くその性能を示さないところ、比較例1-2~1-4では、130℃以上の熱処理において、ある程度の性能を示した。一方、本実施例の組成物は、100℃~130℃の熱処理において、比較例1-2~1-4と比較して、撥油性の洗濯耐久性に概ね優れていた。また、本実施例の組成物は、140℃の熱処理において、比較例1-2~1-4と同等またはそれ以上の撥油性の洗濯耐久性を有していた。
[実施例2]
本実施例では、種々の撥水剤と、合成例および比較対象のブロックポリイソシアネートとを組み合わせて、撥水性および撥油性の洗濯耐久性を評価した。
[繊維処理組成物の調製]
下記表7に示されたように、2種類の撥水剤と、合成例1~3もしくは6または比較対象1もしくは2のブロックポリイソシアネートとを含む組成物を調製した(実施例2-1~2-6および比較例2-2~2-4および2-6~2-8)。表7中の単位は、質量%である。表7中の撥水剤1および2は、フッ素を含まない(非フッ素)化合物である。比較例2-1および2-5は、撥水剤を含み、架橋剤を含まない組成物の例である。
[撥水性評価方法および洗濯耐久性評価方法]
表7に示された組成の組成物を使用し、熱処理温度を130℃としたこと以外は、実施例1の撥水性評価方法と同様にして、撥水性を評価した(表7)。また、本実施例で得られた評価布を使用したこと以外は、実施例1の洗濯耐久性評価方法と同様にして、前述の撥水性評価を行った(表7)。
表7に示されたとおり、合成例6または比較対象1もしくは2の架橋剤を含む比較例2-2~2-4および2-6~2-8については、130℃の熱処理により、良好な初期撥水性を示し、撥水性のある程度の洗濯耐久性を示した。
一方、合成例1~3の架橋剤を含む実施例2-1~2-3および2-4~2-6は、良好な初期撥水性を示し、撥水剤の種類または繊維の種類により、130℃の熱処理において、各種の撥水剤との組み合わせにおいて、本比較例と比較して、撥水性の概ね良好な洗濯耐久性が得られた。
[実施例3]
本実施例では、架橋剤における各ブロック剤のモル%の違いによる、撥水性および撥油性の洗濯耐久性を評価した。
[繊維処理組成物の調製]
実施例3-1および3-2は、合成例4または5の架橋剤と撥水剤とを含む組成物の例である。比較例3-1は、撥水剤を含み、架橋剤を含まない組成物の例である。比較例3-2は、合成例7の架橋剤と撥水剤とを含む組成物の例である。組成物の組成を、表8に示す。表8中の単位は、質量%である。合成例4および5ならびに7の架橋剤において、第1ブロック剤:第2ブロック剤:第3ブロック剤のモル%は、下記のとおりであり、合成例7の架橋剤では、第2ブロック剤(IMZ)によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基が、40モル%を下回っている。
・合成例4 第1ブロック剤:第2ブロック剤:第3ブロック剤のモル%:20:50:30
・合成例5 第1ブロック剤:第2ブロック剤:第3ブロック剤のモル%:20:40:40
・合成例7 第1ブロック剤:第2ブロック剤:第3ブロック剤のモル%:20:30:50
[撥水性評価方法、撥油性評価方法、および洗濯耐久性評価方法]
表8に示された組成の組成物を使用し、熱処理温度を130℃としたこと以外は、実施例1の撥水性評価方法と同様にして、撥水性を評価した(表8)。また、本実施例で得られた評価布を使用したこと以外は、実施例1の撥油性評価方法と同様にして、撥油性を評価した(表8)。また、本実施例で得られた評価布を使用したこと以外は、実施例1の洗濯耐久性評価方法と同様にして、前述の撥水性評価および撥油性評価を行った(表8)。
表8に示されたとおり、合成例7の架橋剤を含む比較例3-2については、130℃の熱処理において、良好な初期撥水性を示し、撥水性の概ね良好な洗濯耐久性を示した。一方、合成例4および5の架橋剤を含む実施例3-1および3-2については、130℃の熱処理において、良好な初期撥水性を示し、比較例3-2と比較して、撥水性の概ね良好な洗濯耐久性が得られた。また、撥油性の洗濯耐久性については、本実施例の組成物が、130℃の熱処理において、比較例3-2と比較して、撥油性の洗濯耐久性に優れる場合があった。
[実施例4]
本実施例では、各種の撥水剤との組み合わせにおいて、架橋剤における各ブロック剤のモル%の違いによる、撥水性の洗濯耐久性を評価した。
[繊維処理組成物の調製]
実施例4-1~4-4は、種々の撥水剤と、合成例4または5の架橋剤とを含む組成物の例である。比較例4-1および4-3は、撥水剤を含み、架橋剤を含まない組成物の例である。比較例4-2および4-4は、合成例7の架橋剤と撥水剤とを含む組成物の例である。組成物の組成を、表9に示す。表9中の単位は、質量%である。合成例4および5ならびに7の架橋剤において、第1ブロック剤:第2ブロック剤:第3ブロック剤のモル%は、下記のとおりであり、合成例7の架橋剤では、第2ブロック剤(IMZ)によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基が、40モル%を下回っている。
・合成例4 第1ブロック剤:第2ブロック剤:第3ブロック剤のモル%:20:50:30
・合成例5 第1ブロック剤:第2ブロック剤:第3ブロック剤のモル%:20:40:40
・合成例7 第1ブロック剤:第2ブロック剤:第3ブロック剤のモル%:20:30:50
表9に示されたとおり、合成例7の架橋剤を含む比較例4-2および4-4については、130℃の熱処理により、各種の撥水剤との組み合わせにおいて、良好な初期撥水性を示し、撥水性のある程度の洗濯耐久性を示した。一方、合成例4および5の架橋剤を含む実施例4-1~4-4については、130℃の熱処理により、各種の撥水剤との組み合わせにおいて、良好な初期撥水性を示し、比較例4-2および4-4と比較して、撥水性の概ね良好な洗濯耐久性が得られた。