JP7156219B2 - 硬化性シリコーンゲル組成物及びシリコーンゲル硬化物 - Google Patents

硬化性シリコーンゲル組成物及びシリコーンゲル硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、高温においても優れた透明性(光透過性)を保持することができるシリコーンゲル硬化物を与える硬化性シリコーンゲル組成物に関し、特に、密閉状態で50℃を超える温度に長時間晒された状態においても、性状や物性が安定し、かつ深部硬化性に優れる硬化性シリコーンゲル組成物、及び該組成物を硬化してなるシリコーンゲル硬化物に関する。
付加硬化型のシリコーンゲル組成物は、ケイ素原子に結合した水素原子(すなわち、SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ケイ素原子に結合したビニル基等のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン及び白金系触媒を含有し、前記ケイ素原子に結合した水素原子のアルケニル基へのヒドロシリル化付加反応により硬化物を得る付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物として調製される。このシリコーンゲル組成物を加熱することにより硬化したシリコーンゲル硬化物は、太陽電池セルと外装樹脂もしくはガラスとの間の光学的な充填材や液晶表示装置と外装樹脂もしくはガラスとの間の光学的な充填材として使用されている。しかし、付加反応により硬化して得られるシリコーンゲル硬化物は、高温において、外観の透明性が低下し、該シリコーンゲル硬化物を用いてなる電子部品の信頼性が著しく低下するという問題があった。
このような問題は、シリコーンゲル組成物中に硬化触媒として添加した白金系化合物及び該シリコーンゲル組成物の硬化に関与するケイ素原子結合水素原子のモル数とアルケニル基のモル数と比により大きく影響されることが知られている。このため、シリコーンゲル組成物中の白金系化合物の添加量を、得られるシリコーンゲル硬化物の高温における可視光透過率の経時的な低下を無視し得る程度に著しく減量したり、該シリコーンゲル組成物中のアルケニル基のモル数に対してケイ素原子結合水素原子のモル数を著しく過剰とする等の方法があるが、該シリコーンゲル組成物が硬化阻害を生じ易くなったり、また、得られるシリコーンゲル硬化物の硬度が経時的に大きくなったり、該シリコーンゲル組成物が硬化途上で発泡するという問題があった。
付加反応により硬化して得られるシリコーンゲル硬化物の高温における透明性の低下を抑えるため、例えば、1分子中に平均約2個のケイ素原子結合ビニル基を含有するオルガノポリシロキサン、1分子中に平均して少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサン、1分子中に、少なくとも1個のケイ素原子結合ヒドロキシル基と少なくとも2個のケイ素原子結合ビニル基を含有するオルガノポリシロキサン、少なくとも1個のエポキシ含有有機基と少なくとも1個のケイ素原子結合アルコキシ基を含有するシラン化合物及び白金系化合物からなるシリコーンゲル組成物(特許文献1:特開昭54-48720号公報)、分子鎖両末端にアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサン及び白金系化合物からなるシリコーンゲル組成物(特許文献2:特開昭54-101884号公報)、1分子中に平均0.1~2.0個のケイ素原子結合ビニル基を含有するオルガノポリシロキサン、1分子中に平均2個を超えるケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、1分子中に平均2個より少ないケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金系化合物からなるシリコーンゲル組成物(特許文献3:特開昭62-39659号公報)、1分子中に平均0.1~2.0個のケイ素原子結合ビニル基を含有するオルガノポリシロキサン、トリス(ジアルキルハイドロジェンシロキシ)オルガノシラン及び白金系化合物からなるシリコーンゲル組成物(特許文献4:特開昭62-39660号公報)、ジメチルシロキサン単位、メチルシロキサン単位、トリメチルシロキサン単位及びジメチルビニルシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端がビニル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端がケイ素原子結合水素原子で封鎖されたジオルガノポリシロキサン及び白金系化合物からなるシリコーンゲル組成物(特許文献5:特開昭62-181357号公報)、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、1分子中に平均1個のアルケニル基とケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金系化合物からなるシリコーンゲル組成物(特許文献6:特開平3-56565号公報)が提案されている。
しかし、上記提案のシリコーンゲル組成物は、高温におけるシリコーンゲル硬化物の透明性低下を抑制するには十分ではないという問題があった。また近年、生産拠点のグローバル化に伴い、硬化前状態、すなわち液体状態での保存安定性が高い材料が好まれること、さらには電気・電子部品の小型化に伴い、硬化後においても物性の変化が少ない材料が求められている。
特開昭54-48720号公報 特開昭54-101884号公報 特開昭62-39659号公報 特開昭62-39660号公報 特開昭62-181357号公報 特開平3-56565号公報
本発明は、上記問題点の解消や顧客要求を満足すべく、高温においても優れた透明性(光透過性)を保持することができるシリコーンゲル硬化物を与え、特に密閉状態で50℃を超える温度に長時間晒された状態においても、性状や物性が安定しており、かつ深部硬化性に優れる硬化性シリコーンゲル組成物、及び該組成物を硬化してなるシリコーンゲル硬化物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、付加反応硬化型のシリコーンゲル組成物に、下記一般式(3)
Figure 0007156219000001
(式中、R3は独立に炭素原子数1~10の1価脂肪族炭化水素基であり、R4は独立に水素原子又は炭素原子数1~10の1価脂肪族炭化水素基である。nは1,2又は3である。)
で表される亜リン酸化合物を特定量添加することで、高温条件による硬化においても、白金系触媒が白金ブラック化して相溶性が低下しシリコーンマトリックス中に相溶できずに黒色化し沈降(非相溶化)することにより硬化物が黒色化して透明性が低下するのを防止し、かつ密閉状態で50℃を超える温度に長時間晒された状態においても、性状や物性が安定し、深部硬化性に優れ、さらに高温においても優れた透明性(光透過性)を保持することができるシリコーンゲル硬化物を与えることができる硬化性シリコーンゲル組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記の硬化性シリコーンゲル組成物及び該組成物を硬化してなるシリコーンゲル硬化物を提供する。
[1]
(A)下記平均組成式(1)
a1 bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R1は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2の正数であり、bは1.7~2.2の正数であり、a+bは1.9~2.4である。)
で表される、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均して少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)下記平均組成式(2)
2 cdSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R2は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、cは0.7~2.2の正数であり、dは0.001~1の正数であり、但しc+dは0.8~2.8である。)
で表される、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 組成物全体中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個あたり、(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.01~3個となる量、
(C)白金系触媒: 有効量、
(D)下記一般式(3)
Figure 0007156219000002
(式中、R3は独立にメチル基又はエチル基であり、R4は独立に水素原子又は炭素原子数1~10の1価脂肪族炭化水素基である。nは1,2又は3である。)
で表される亜リン酸化合物: 上記(C)成分中の白金1原子に対し、一般式(3)で表される亜リン酸化合物が1分子以上10分子以下である量
を含有する硬化性シリコーンゲル組成物。

(A)成分が、下記平均組成式(1b)で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサンである[1]に記載の硬化性シリコーンゲル組成物。
αVi βγδ (1b)
M:R1 3SiO1/2
Vi:R1 2RSiO1/2
D:R1 2SiO2/2
T:R1SiO3/2
(式中、M、MVi、D、Tはそれぞれ上記に示す単位であり、R、R1は上記と同じである。αは0.01~3.6の正数であり、βは0.01~3.6の正数であり、かつ、(α+β)=0.5~5であり、(α/β)=0.1~5である。γは10~1,600の正数であり、δは0.5~3の正数であり、((α+β)/δ)は0.8~1.7である。)

硬化してJIS K2220で規定される針入度が10~110であるシリコーンゲル硬化物を与えるものである[1]又は[2]に記載の硬化性シリコーンゲル組成物。

[1]~[]のいずれかに記載の硬化性シリコーンゲル組成物を硬化してなるシリコーンゲル硬化物。
本発明の硬化性シリコーンゲル組成物は、密閉状態において50℃を超える高温に長時間晒された状態においても、性状や物性が安定し、かつ深部硬化性に優れたシリコーンゲル組成物であり、高温においても優れた透明性(光透過性)を保持することができるシリコーンゲル硬化物を与えるものである。
本発明の硬化性シリコーンゲル組成物は、下記の(A)~(D)成分を必須成分として含有してなるものである。なお、本発明において、シリコーンゲル硬化物とは、オルガノポリシロキサンを主成分とする架橋密度の低い硬化物であって、JIS K2220(1/4コーン)による針入度が10~110のものを意味する。これは、JIS K6253によるゴム硬度測定では測定値(ゴム硬度値)が0となり、有効なゴム硬度値を示さない程低硬度(すなわち、軟らか)でかつ低弾性であるものに相当し、この点において、いわゆるシリコーンゴム硬化物(ゴム状弾性体)とは別異のものである。
以下、各成分について詳細に説明する。なお、本明細書において、粘度は23℃における値である。
〔(A)オルガノポリシロキサン〕
本発明にかかる(A)成分は、硬化性シリコーンゲル組成物の主剤(ベースポリマー)である。該(A)成分は、下記平均組成式(1)で表される、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基(本明細書中において「ケイ素原子結合アルケニル基」という)を平均して少なくとも1個有するオルガノポリシロキサンである。
a1 bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R1は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2の正数であり、bは1.7~2.2の正数であり、但しa+bは1.9~2.4である。)
上記式(1)中、Rは独立に、通常炭素原子数2~6、好ましくは炭素原子数2~4、より好ましくは炭素原子数2又は3のアルケニル基である。その具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。
1は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、その炭素原子数は、通常1~10、好ましくは1~6である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部を、塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子で置換したクロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも合成が容易であることから、メチル基、フェニル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。
また、aは0.0001~0.2の正数であることが必要であり、好ましくは0.0005~0.1の正数である。bは1.7~2.2の正数であることが必要であり、好ましくは1.9~2.02の正数である。但し、a+bは1.9~2.4の範囲を満たすことが必要であり、好ましくは1.95~2.05の範囲である。
(A)成分は、1分子中にケイ素原子結合アルケニル基を平均して少なくとも1個有することが必要であり、好ましくは平均して1.2~50個、より好ましくは平均して1.4~10個有する。このケイ素原子結合アルケニル基の条件を満たすように前記a及びbの値を選択すればよい。
(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子構造は特に限定されず、直鎖状であっても、例えば、RSiO3/2単位、R1SiO3/2単位(R、R1は上記と同じ)、SiO4/2単位等を含む分岐鎖状であってもよく、例えば、下記一般式(1a)で表されるオルガノポリシロキサン、すなわち主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンが例示される。
Figure 0007156219000003
(式中、R、R1は上記と同じであり、R5はR又はR1であり、但し、平均して分子中の少なくとも1個、好ましくは平均して1.2~50個、より好ましくは平均して1.4~10個はアルケニル基であり、分子鎖両末端のR5のいずれかがアルケニル基である場合には、xは40~1,200の整数であり、yは0~50の整数であり、zは0~50の整数であり、x+y+zは40~1,200の整数であり、分子鎖両末端のR5のいずれもがアルケニル基でない場合には、xは39~1,199の整数であり、yは1~50の整数であり、zは0~50の整数であり、x+y+zは40~1,200の整数である。)
上記式(1a)中、R、R1は上記と同じであり、上記式(1)においてR、R1として例示したものと同様の基が挙げられる。Rとしては、中でもビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基が好ましく、より好ましくはビニル基であり、R1としては、中でも合成が容易であることから、メチル基、フェニル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。
上記式(1a)中、分子鎖両末端のR5のいずれかがアルケニル基である場合には、xは40~1,200の整数であり、yは0~50の整数であり、zは0~50の整数であり、x+y+zは40~1,200の整数であり、好ましくは、xは100~1,000の整数であり、yは0~40の整数であり、zは0であり、x+y+zは100~1,000の整数である。また、分子鎖両末端のR5のいずれもアルケニル基でない場合には、xは39~1,199の整数であり、yは1~50の整数であり、zは0~50の整数であり、好ましくは、xは98~998の整数であり、yは2~40の整数であり、zは0であり、x+y+zは100~1,000の整数である。
また、(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、上記一般式(1a)で示される直鎖状ジオルガノポリシロキサンの主鎖構造中に、2官能性ジオルガノシロキサン単位である((R12SiO2/2)単位、((R1)(R)SiO2/2)単位及び((R)2SiO2/2)単位の合計の繰り返し数(x+y+z)が100個あたり、平均して0.5~3個、好ましくは、1~2.5個程度の3官能性分岐単位であるオルガノシルセスキオキサン単位(RSiO3/2単位、又はR1SiO3/2単位)を少量含有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであってもよい。
このような分岐鎖状のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(1b)で表され、1分子中に分岐構造となるT単位構造(下記組成式(1b)のTで示されるオルガノシルセスキオキサン単位)を特定の比率で有していると共に、分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基(下記組成式(1b)のMViで示されるトリオルガノシロキシ単位(R1 2RSiO1/2単位)中のR)を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサンが好ましい。
αVi βγδ (1b)
M:R1 3SiO1/2
Vi:R1 2RSiO1/2
D:R1 2SiO2/2
T:R1SiO3/2
(式中、M、MVi、D、Tはそれぞれ上記に示す単位であり、R、R1は上記と同じである。αは0.01~3.6の正数であり、βは0.01~3.6の正数であり、かつ、(α+β)=0.5~5であり、(α/β)=0.1~5である。γは10~1,600の正数であり、δは0.5~3の正数であり、((α+β)/δ)は0.8~1.7である。)
上記式(1b)中、R、R1は上記と同じであり、上記式(1)においてR、R1として例示したものと同様の基が挙げられる。Rとしては、ビニル基が好ましく、R1としては、中でも合成が容易であることから、メチル基、フェニル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。
また、上記式(1b)中、αは0.01~3.6の正数、好ましくは0.3~2.5の正数、より好ましくは0.5~2の正数であり、βは0.01~3.6の正数、好ましくは0.3~2.5の正数、より好ましくは0.5~2の正数であり、かつ、(α+β)=0.5~5、好ましくは0.6~4、より好ましくは0.8~3であり、(α/β)=0.1~5、好ましくは0.2~4、より好ましくは0.5~2である。
また、γは10~1,600の正数、好ましくは30~1,200の正数、より好ましくは50~1,000の正数であり、δは0.5~3の正数、好ましくは1~2.5の正数、より好ましくは1.2~2.1の正数であり、((α+β)/δ)は0.8~1.7、好ましくは0.85~1.5、より好ましくは0.9~1.2である。
ここで、分子中の分岐構造(T単位)の比率を示すδが大きすぎると(T単位が3を超える場合)、ベースポリマー中の分岐構造(架橋点)が多すぎてしまい、未硬化状態のシリコーンゲル組成物が経時で増粘・ゲル化を起こす不具合が起こりやすくなる。また、逆に分岐構造(T単位)の比率を示すδが小さすぎると(T単位が0.5未満である場合)、分岐構造(架橋点)が少なすぎるため、加熱後に十分な硬度を有するシリコーンゲル硬化物が得られなかったり、未硬化となる場合がある。
また、((α+β)/δ)は0.8~1.2の範囲内である。これは、(α+β)すなわち無反応性の分子鎖末端(M単位)と反応性の分子鎖末端(MVi単位)の合計がすでにベースポリマー中で架橋点(分岐構造)を形成しているT単位の量と一定の比率とすることで、未硬化状態のシリコーンゲル組成物に十分な保存安定性と開封加熱時に十分な硬化性とを付与させることができるからである。((α+β)/δ)が0.8未満である場合、すなわちT単位の比率が大きくなりすぎると、未硬化状態のシリコーンゲル組成物は高温保管時に経時で増粘・ゲル化を起こす不具合が起こりやすくなる。また、((α+β)/δ)が1.7を超える場合、すなわちT単位の比率が小さくなりすぎると、ベースポリマー中の架橋点(分岐構造)が少なすぎるため、加熱後に十分な硬度を有するシリコーンゲル硬化物が得られなかったり、未硬化となる場合がある。
上記のγの値は10~1,600の正数であり、(A)成分の分岐鎖状オルガノポリシロキサンの粘度に反映されるため、使用用途によりγの数値の異なるベースポリマーを使用することが有利であるが、広域に使用される(A)成分の粘度を考慮すると、好ましくは30~1,200の正数、その中でも50~1,000の正数が特に好ましい。
(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ビニルメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体等の直鎖状ジオルガノポリシロキサンや、上記で例示した直鎖状の各ジオルガノポリシロキサンにおいて、主鎖中にそれぞれ少量のオルガノシルセスキオキサン単位(例えば、メチルシルセスキオキサン単位;(CH3)SiO3/2)を含有する分岐鎖状オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。
(A)成分のオルガノポリシロキサンの粘度は特に限定されないが、組成物の取扱作業性、得られる硬化物の強度、及び流動性が良好となる点から、23℃における粘度が50~100,000mPa・sであることが好ましく、100~10,000mPa・sであることがより好ましい。なお、粘度は、回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)により測定することができる(以下、同じ)。
また、直鎖状ジオルガノポリシロキサンの場合には、該オルガノポリシロキサンの主鎖を構成する2官能性ジオルガノシロキサン単位の繰り返し数(上記式(1a)におけるx+y+z)の値として示される重合度や、分岐鎖状オルガノポリシロキサンの場合には、分子中の主鎖を構成する2官能性ジオルガノシロキサン単位及び3官能性オルガノシルセスキオキサン単位の合計の繰り返し数(上記式(1b)におけるγ+δ)の値として示される重合度、また後述する(B)成分において、下記式(2a)におけるeの値等として示される重合度又は分子量は、通常、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる(以下、同じ)。
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
〔(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン〕
次に、本発明にかかる(B)成分は、上記(A)成分と反応し、架橋剤(硬化剤)として作用するものである。該(B)成分は、下記平均組成式(2)
2 cdSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R2は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、cは0.7~2.2の正数であり、dは0.001~1の正数であり、但しc+dは0.8~2.8である。)
で表される、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンが1分子中に有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)は、通常、2~1,000個、好ましくは2~500個、より好ましくは2~100個、特に好ましくは2~80個である。
上記式(2)中、R2は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、その炭素原子数は、通常1~10、好ましくは1~6である。その具体例としては、上記式(1)においてR1として例示したものと同様の基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部を、塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子で置換した3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも好ましくはアルキル基、アリール基、3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基である。
また、cは0.7~2.2の正数であり、1.0~2.1の正数であることが好ましい、dは0.001~1の正数であり、0.002~0.5の正数であることが好ましく、0.005~0.1の正数であることがより好ましい。また、c+dは0.8~2.8であり、1.0~2.5であることが好ましく、1.5~2.2であることがより好ましい。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、通常2~1,000個であるが、組成物の取扱作業性及び得られる硬化物の特性(低弾性率、低応力)が良好となる点から、好ましくは3~600個、より好ましくは10~500個、さらに好ましくは20~100個である。
本発明においては、下記一般式(2a)で表される、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を分子鎖両末端にのみ有する直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(すなわち、分子鎖両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン)であることが好ましい。
Figure 0007156219000004
(式中、R2は上記と同じであり、eは1~598の整数である。)
上記式(2a)中、R2は上記と同じであり、上記式(2)のR2で例示したものと同様のものが例示できる。中でもメチル基、フェニル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。
また、分子中の2官能性ジオルガノシロキサン単位(Si(R222/2)の繰り返し数(又は重合度)を示すeは1~598の整数であることが必要であり、好ましくは8~498の整数であり、より好ましくは18~98の整数である。eが1未満であると、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの粘度が低くなり、作業性が悪くなるほか、得られるシリコーンゲル硬化物が硬すぎたりするおそれがある。またeが598を超える数値であると、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの粘度が高くなってしまうため、作業性に悪影響を与える。
上記式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン環状重合体、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリルメチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリルフェニルシラン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等が挙げられる。
(B)成分の粘度は、0.1~1,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは1~500mPa・sである。(B)成分の粘度が低すぎると、得られる硬化性シリコーンゲル組成物の粘度も低くなり、作業性が悪くなるほか、得られるシリコーンゲル硬化物が硬くなりすぎる場合があり、(B)成分の粘度が高すぎると、結果として得られる硬化性シリコーンゲル組成物の粘度も高くなり、作業性に悪影響を与える場合がある。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の添加量は、組成物全体(特には、上記(A)成分)中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個に対して(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)が0.01~3個、好ましくは0.05~2個、より好ましくは0.2~1.5個となる量である。この(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)が、組成物全体中のアルケニル基1個に対して、0.01個より少なくなると、硬化物が得られなくなる。また、3個より多い場合は、硬化物の耐熱性が低下する。
〔(C)白金系触媒〕
本発明にかかる(C)成分は、前記(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基と前記(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)とのヒドロシリル化付加反応を促進させるための触媒として従来から通常使用されるものである。また、この(C)成分は、室温(23℃±15℃)における本発明の硬化性シリコーンゲル組成物の保存中において、後述する(D)成分の特定の亜リン酸化合物と混合すると、容易にかつ定量的に白金-亜リン酸化合物錯体を形成するものであり、該白金-亜リン酸化合物錯体を形成することで、50℃を超える温度に長時間晒された状態においても、性状や物性が安定した硬化性シリコーンゲル組成物を得ることが可能となり、また、高温においても優れた透明性(光透過性)を保持することができるシリコーンゲル硬化物が得られるものである。
該(C)成分は白金系触媒(白金又は白金系化合物)であり、公知のものを使用することができる。その具体例としては、白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸等のアルコール変性物;塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類等との錯体などの白金族金属化合物等が例示される。
(C)成分の配合量は有効量でよく、所望の硬化速度により適宜増減することができるが、通常、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して、白金族金属原子の質量で、通常0.1~10,000ppm、好ましくは1~5,000ppmの範囲である。この配合量が多すぎると得られる硬化物の耐熱性が低下する場合がある。
〔(D)亜リン酸化合物〕
本発明にかかる(D)成分であるトリオルガノシリル変性亜リン酸化合物は、前記(C)成分の白金系触媒と反応し、白金-亜リン酸化合物錯体を形成させることで、高温においても優れた透明性(光透過性)を保持することができるシリコーンゲル硬化物を与え、かつ50℃を超える温度に長時間晒された状態においても、性状や物性が安定し、深部硬化性に優れる硬化性シリコーンゲル組成物を得るための必須成分である。このトリオルガノシリル変性亜リン酸化合物としては、下記一般式(3)の構造を有することが必須である。
Figure 0007156219000005
(式中、R3は独立に炭素原子数1~10の1価脂肪族炭化水素基であり、R4は独立に水素原子又は炭素原子数1~10の1価脂肪族炭化水素基である。nは1,2又は3である。)
上記一般式(3)中、R3は独立に炭素原子数1~10、好ましくは炭素原子数1~6の1価脂肪族炭化水素基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等のアルケニル基等が挙げられ、その中でもメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、特にメチル基が好ましい。また、R4は独立に水素原子又は炭素原子数1~10、好ましくは炭素原子数1~6の1価脂肪族炭化水素基であり、1価脂肪族炭化水素基としては、R3で例示したものと同様の基が挙げられ、R4としては、その中でも特に水素原子又はメチル基であることが好ましい。ここで、R3、R4は同一もしくは異種であっても構わない。
また、nは1,2又は3であり、特に2又は3であることが好ましい。すなわち亜リン酸化合物中のトリオルガノシリル基が多くなるほど、高温においても優れた透明性(光透過性)を保持することができる。これは、上記に示すトリオルガノシリル変性亜リン酸化合物と(C)成分である白金系触媒が配位することで、(A)成分であるオルガノポリシロキサンや(B)成分であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンに対し、(C)成分の白金系触媒と(D)成分のトリオルガノシリル変性亜リン酸化合物の反応物との相溶性が向上することから、高温においても優れた透明性を保持することができるものと推定する。
上記、トリオルガノシリル変性亜リン酸化合物の具体例としては、亜リン酸トリス(トリメチルシリル)、亜リン酸トリス(トリエチルシリル)、亜リン酸トリス(トリプロピルシリル)、亜リン酸トリス(トリイソプロピルシリル)、亜リン酸ビス(トリメチルシリル)モノ(イソプロピル)、亜リン酸ビス(トリメチルシリル)モノ(tert-ブチル)、亜リン酸ビス(トリメチルシリル)モノ(sec-ブチル)、亜リン酸モノ(トリメチルシリル)ジ(イソプロピル)、亜リン酸モノ(トリメチルシリル)ジ(tert-ブチル)、亜リン酸モノ(トリメチルシリル)ジ(sec-ブチル)などが例示される。
上記一般式(3)で表される亜リン酸化合物の配合量は、前述する(C)成分中の白金1原子に対し、一般式(3)で表される亜リン酸化合物が1分子以上10分子以下の範囲内である量を添加することが必須である。これは、白金1原子に対し、一般式(3)で表される亜リン酸化合物が1分子より少ない場合、白金系触媒と配位するトリオルガノシリル基含有の亜リン酸化合物が少ないため、高温条件による硬化により、白金系触媒が白金ブラック化して相溶性が低下し、シリコーンマトリックス中に相溶できずに黒色化し沈降(非相溶化)することにより硬化物が黒色化して透明性が低下する。さらに、白金系触媒の活性を十分に低下させることができないため、高温条件下において長時間晒されると、シリコーン組成物が増粘したり、ゲル化したりする。また、白金1原子に対し、一般式(3)で表される亜リン酸化合物が10分子を超えてしまうと、高温条件に晒された際の透明性は低下しないものの、上記亜リン酸化合物の添加量が多すぎてしまい、硬化させるために加熱しても、十分に硬化しなかったり、硬化に長時間かかったり、最悪の場合は硬化物を得ることができなくなる。
また、(D)成分は予め(C)成分と混合したのち添加しても、組成物調製時に単独で((A)~(C)成分と同時に)添加してもよい。
〔その他の任意成分〕
本発明の硬化性シリコーンゲル組成物には、上記(A)~(D)成分以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、反応抑制剤、無機質充填剤、反応促進剤、ケイ素原子結合水素原子及びケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、顔料、染料等が挙げられる。
反応抑制剤は、上記組成物の反応を抑制するための成分であって、例えば、アセチレン系、アミン系、カルボン酸エステル系等の反応抑制剤が挙げられる。
無機質充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機質充填剤;これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物で表面疎水化処理した充填剤等が挙げられる。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。
また、より低温で硬化させたい場合は、反応促進剤として有機過酸化物を微量添加することができる。有機過酸化物の具体例としては、ジ-tert-ブチルペルオキシドやジ-tert-ヘキシルペルオキシドなどが挙げられる。その際、高温条件における性状安定性も低下することから、酸化防止剤を微量併用することが好ましい。用いられる酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエンやブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
〔組成物の硬化〕
本発明の硬化性シリコーンゲル組成物は、上記(A)~(D)成分(任意成分が配合される場合には、任意成分も含む)を常法に準じて混合することにより調製することができる。その際に、混合される成分を必要に応じて2パート又はそれ以上のパートに分割して混合してもよく、例えば、(A)成分の一部及び(C)、(D)成分からなるパートと、(A)成分の残部及び(B)成分からなるパートとに分割して混合することも可能である。常温にて未硬化組成物を保管する際は、(A)成分の一部及び(C)、(D)成分からなるパートと、(A)成分の残部及び(B)成分からなるパートとに分割することがより好ましい。
また本発明の硬化性シリコーンゲル組成物は、用途に応じた温度条件下で硬化させることによりシリコーンゲル硬化物が得られる。加熱温度としては100~180℃の範囲内、より最適な温度は100~160℃の範囲内が好ましい。また、加熱時間としては10分~2時間、特に15分~1時間程度が好ましい。
本発明の硬化性シリコーンゲル組成物は、電気・電子部品の封止もしくは充填に用いることが好適である。
本発明の硬化性シリコーンゲル組成物の硬化物(シリコーンゲル硬化物)は、JIS K2220で規定される1/4コーンによる針入度が10~110であることが好ましく、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~90である。針入度が10未満になると、シリコーンゲル組成物が硬化する際の応力に耐えきれず、電子回路の一部が破断したり、シリコーンゲル硬化物内部にクラックが生成したりする場合がある。また、針入度が110を超えると、振動によりシリコーンゲル硬化物が脱落したり、落下したりする場合がある。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、実施例中、「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。また、針入度は、JIS K2220で規定される1/4コーンによる針入度であり、株式会社離合社製自動針入度計RPM-101を用いて測定した。また、粘度は回転粘度計による測定値であり、重合度はトルエンを展開溶媒としたGPC分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度である。
[実施例1]
(A)成分である下記平均組成式(4)
1.21Vi 0.8897.72.0 (4)
M:(CH33SiO1/2
Vi:(CH32(CH2=CH)SiO1/2
D:(CH32SiO2/2
T:(CH3)SiO3/2
(α=1.21、β=0.88、γ=97.7、δ=2.0、(α+β)=2.09、(α/β)=1.375、((α+β)/δ)=1.045)
で示され、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均して約1.68個有する23℃での粘度が800mPa・sの分岐鎖状オルガノポリシロキサン100部、
(B)成分である下記一般式(5)
Figure 0007156219000006
で示され、23℃での粘度が18mPa・sの両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン10.0部(上記(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個あたり、(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が1.24個となる量)を添加し、均一攪拌したのち、
(C)成分である白金原子を1.0%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液を0.50部、
(D)成分である下記一般式(6)
Figure 0007156219000007
で示される亜リン酸トリエステル化合物(品名;亜リン酸トリス(トリメチルシリル)(東京化成工業株式会社製))を0.0230部(上記(C)成分白金1分子に対して3.0分子となる量)、
任意成分であるエチニルシクロヘキサノールを0.10部添加し、均一に混合した混合物1を得た。得られた混合物1を150℃で30分間加熱硬化したところ、針入度40のシリコーンゲル硬化物を得た。
[実施例2]
(A)成分である下記平均組成式(7)
0.83Vi 0.8498.2φ 2.21.5 (7)
M:(CH33SiO1/2
Vi:(CH32(CH2=CH)SiO1/2
D:(CH32SiO2/2
φ:(C652SiO2/2
T:(CH3)SiO3/2
(α=0.83、β=0.84、γ=100.4、δ=1.5、(α+β)=1.67、(α/β)=0.988、((α+β)/δ)=1.11)
で示され、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均して約1.76個有する23℃での粘度が1,000mPa・sの分岐鎖状オルガノポリシロキサン100部、
(B)成分である下記一般式(5)
Figure 0007156219000008
で示され、23℃での粘度が18mPa・sの両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン10.0部(上記(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個あたり、(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が1.14個となる量)を添加し、均一攪拌したのち、
(C)成分である白金原子を1.0%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液を0.50部、
(D)成分である下記一般式(6)
Figure 0007156219000009
で示される亜リン酸トリエステル化合物(品名;亜リン酸トリス(トリメチルシリル)(東京化成工業株式会社製))を0.0230部(上記(C)成分白金1分子に対して3.0分子となる量)、
任意成分であるエチニルシクロヘキサノールを0.10部添加し、均一に混合した混合物2を得た。得られた混合物2を150℃で30分間加熱硬化したところ、針入度42のシリコーンゲル硬化物を得た。
[実施例3]
(A)成分である下記平均組成式(4)
1.21Vi 0.8897.72.0 (4)
M:(CH33SiO1/2
Vi:(CH32(CH2=CH)SiO1/2
D:(CH32SiO2/2
T:(CH3)SiO3/2
(α=1.21、β=0.88、γ=97.7、δ=2.0、(α+β)=2.09、(α/β)=1.375、((α+β)/δ)=1.045)
で示され、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均して約1.68個有する23℃での粘度が800mPa・sの分岐鎖状オルガノポリシロキサン100部、
(B)成分である下記一般式(5)
Figure 0007156219000010
で示され、23℃での粘度が18mPa・sの両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン10.0部(上記(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個あたり、(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が1.24個となる量)を添加し、均一攪拌したのち、
(C)成分である白金原子を1.0%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液を0.50部、
(D)成分である下記一般式(6)
Figure 0007156219000011
で示される亜リン酸トリエステル化合物(品名;亜リン酸トリス(トリメチルシリル)(東京化成工業株式会社製))を0.0077部(上記(C)成分白金1分子に対して1.0分子となる量)、
任意成分であるエチニルシクロヘキサノールを0.10部添加し、均一に混合した混合物3を得た。得られた混合物3を150℃で30分間加熱硬化したところ、針入度40のシリコーンゲル硬化物を得た。
[実施例4]
(A)成分である下記平均組成式(4)
1.21Vi 0.8897.72.0 (4)
M:(CH33SiO1/2
Vi:(CH32(CH2=CH)SiO1/2
D:(CH32SiO2/2
T:(CH3)SiO3/2
(α=1.21、β=0.88、γ=97.7、δ=2.0、(α+β)=2.09、(α/β)=1.375、((α+β)/δ)=1.045)
で示され、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均して約1.68個有する23℃での粘度が800mPa・sの分岐鎖状オルガノポリシロキサン100部、
(B)成分である下記一般式(5)
Figure 0007156219000012
で示され、23℃での粘度が18mPa・sの両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン10.0部(上記(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個あたり、(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が1.24個となる量)を添加し、均一攪拌したのち、
(C)成分である白金原子を1.0%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液を0.50部、
(D)成分である下記一般式(8)
Figure 0007156219000013
で示される亜リン酸トリエステル化合物(品名;亜リン酸モノ(トリメチルシリル)ジ(イソプロピル)(信越化学工業株式会社製))を0.0183部(上記(C)成分白金1分子に対して3.0分子となる量)、任意成分であるエチニルシクロヘキサノールを0.10部添加し、均一に混合した混合物4を得た。得られた混合物4を150℃で30分間加熱硬化したところ、針入度40のシリコーンゲル硬化物を得た。
[実施例5]
(A)成分である下記平均組成式(7)
0.83Vi 0.8498.2φ 2.21.5 (7)
M:(CH33SiO1/2
Vi:(CH32(CH2=CH)SiO1/2
D:(CH32SiO2/2
φ:(C652SiO2/2
T:(CH3)SiO3/2
(α=0.83、β=0.84、γ=100.4、δ=1.5、(α+β)=1.67、(α/β)=0.988、((α+β)/δ)=1.11)
で示され、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均して約1.76個有する23℃での粘度が1,000mPa・sの分岐鎖状オルガノポリシロキサン100部、
(B)成分である下記一般式(5)
Figure 0007156219000014
で示され、23℃での粘度が18mPa・sの両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン10.0部(上記(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個あたり、(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が1.14個となる量)を添加し、均一攪拌したのち、
(C)成分である白金原子を1.0%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液を0.20部、
(D)成分である下記一般式(6)
Figure 0007156219000015
で示される亜リン酸トリエステル化合物(品名;亜リン酸トリス(トリメチルシリル)(東京化成工業株式会社製))を0.0306部(上記(C)成分白金1分子に対して10.0分子となる量)、
任意成分であるエチニルシクロヘキサノールを0.10部添加し、均一に混合した混合物5を得た。得られた混合物5を150℃で30分間加熱硬化したところ、針入度45のシリコーンゲル硬化物を得た。
[比較例1]
実施例1において、(D)成分である亜リン酸トリス(トリメチルシリル)を除いた以外は同様にして、混合物6を得た。この混合物6を150℃で30分間加熱硬化したところ、針入度40のシリコーンゲル硬化物を得た。
[比較例2]
実施例1において、(D)成分である亜リン酸トリス(トリメチルシリル)の代わりに亜リン酸トリイソプロピルを0.0160部(白金1分子に対して3.0分子となる量)用いた以外は同様にして、混合物7を得た。この混合物7を150℃で30分間加熱硬化したところ、針入度40のシリコーンゲル硬化物を得た。
[比較例3]
実施例1において、(D)成分である亜リン酸トリス(トリメチルシリル)を用いる代わりに亜リン酸トリス(2,4-tert-ブチルフェニル)を0.0828部(白金1分子に対して5.0分子となる量)用いた以外は同様にして、混合物8を得た。この混合物8を150℃で30分間加熱硬化したところ、表面のみ硬化し、深部は未硬化であった。
[比較例4]
実施例1において、(D)成分である亜リン酸トリス(トリメチルシリル)を0.1148部((C)成分白金1分子に対して15.0分子となる量)用いた以外は同様にして、混合物9を得た。この混合物9を150℃で30分間加熱硬化したところ、未硬化であった。
[試験]
上記実施例1~5及び比較例1~4で得られた組成物を用いて、以下の試験を実施した。これらの結果を表1、2に示す。
○針入度の測定:
硬化物の硬さは、上記実施例及び比較例で得られた組成物を、容器(寸法30mmφ×15mm)に入れて150℃にて30分間硬化させたのち、針入度を測定することで評価した。なお、針入度は、JIS K2220で規定される1/4コーンによる針入度であり、株式会社離合社製自動針入度計RPM-101を用いて測定した。
○粘度の測定:
上記実施例及び比較例で得られた組成物の粘度を、回転粘度計を用いて23℃の温度条件にて測定した。
○深部硬化性の評価:
上記実施例及び比較例で得られた組成物を、容器(寸法30mmφ×15mm)に入れて150℃にて30分間硬化させたのち、硬化したシリコーンゲル硬化物を掻き出して深部まで硬化しているかを評価した。15mmの深さまで硬化しているものを合格、深部が液状であるものを不合格と判定した。
○色調(透明性)の評価:
上記実施例及び比較例で得られた組成物を、容器(寸法30mmφ×15mm)に入れて150℃にて30分間硬化させたのち、さらに150℃にて2時間晒して硬化物を取り出し、冷却させた。その後、白い紙の上で色調を目視にて確認した。また、無色透明から淡黄色透明までを合格と判定し、それ以上着色が確認されたもの、あるいは、白い紙が見えなくなったものは不透明として不合格と判定した。
○高温保存性の確認;
容量120mlのガラス製容器に上記実施例及び比較例で得られた組成物を100g入れ、空隙を窒素にて置換したのち密閉した。その後、充填した容器を70℃の乾燥機に入れ、10日間保管した。この時の空間に占める酸素濃度は計算上50ppm以下になるように窒素で置換した。その後、目視にて性状を確認した。また、液状を保てたものを合格と判定し、液状を保てなかったものを不合格と判定した。
また、上記高温保存性の試験により、70℃にて10日間放置後に性状が液状であるものは、上記と同様の条件にて硬化させたのち上記と同様に針入度を測定した。その際、製造初期の針入度から±5ポイント以内のものを合格、±5ポイントを超えるものや測定不可能であったものを不合格と判定した。
また、上記高温保存性の試験により、70℃にて10日まで液状性状が保たれたサンプルにおいては、回転粘度計を用いて23℃の温度条件にて粘度測定を行い、初期値と比較した。その際、粘度が製造初期値の2倍以内であるものを合格、粘度が製造初期値の2倍を超える場合は、保存性不合格と判断した。
上記高温保存性の試験により、70℃にて10日まで液状性状が保たれたサンプルにおいては、さらに、容器(寸法30mmφ×15mm)に入れて150℃にて30分間硬化させたのち、上記と同様にして、深部硬化性の評価を行った。
Figure 0007156219000016
Figure 0007156219000017
[評価]
実施例1~5の組成物は、本発明の要件を満たすものである。実施例は使用する白金系触媒が多い条件を選択したが、そのような場合においても、硬化後に150℃の条件において晒されることで、白金系触媒が白金ブラック化して相溶性が低下しシリコーンマトリックス中に相溶できずに黒色化し沈降(非相溶化)することにより硬化物が黒色化して透明性が低下する現象が抑止されており、透明性が良好となっている。また製造初期の物性と性状が70℃にて10日間の保管サンプルにおいても保持されており、非常に保存安定性が良好な組成物であることが分かる。
これに対し、比較例1の組成物は、本発明の(D)成分である亜リン酸化合物を添加していないため、外観の色調が灰黒色まで変化して透明性が顕著に低下しており、また70℃保管における保存性は全くないことが分かる。比較例2においては、本発明の(D)成分である亜リン酸化合物にトリオルガノシリル基が含まれないため、亜リン酸化合物の添加による保存性向上は達成するものの、外観の色調が濃褐色まで変化し、透明性が顕著に低下している。比較例3においては、本発明の(D)成分とは構造が異なる亜リン酸化合物を使用した例であるが、このような亜リン酸化合物を使用した場合では、150℃で30分間の硬化条件では容器(寸法30mmφ×15mm)の底部までシリコーンゲル組成物が硬化していないことが分かる。その上、70℃保管にて8日ほどでゲル化してしまう。比較例4においては、本発明の(D)成分である亜リン酸化合物の添加量が白金1分子に対して15.0分子となる量と多すぎるため、150℃で30分間の硬化では硬化しないことが分かる。上記の結果から、本発明の有効性が確認できる。
本発明の透明性に優れる硬化物を与える硬化性シリコーンゲル組成物は、密閉状態において50℃を超える温度に長時間晒された状態においても、性状や物性が安定したシリコーンゲル組成物であるため、長期間の輸出や長期間の保存に対して非常に安定した加熱硬化性の材料となり、冷蔵・輸送コスト、保管の手間が省略できる材料であるといえる。また、高温においても優れた透明性(光透過性)を保持することができるシリコーンゲル硬化物であるため、光学部材や液晶表示装置と外装樹脂もしくはガラスとの間の光学的な充填材としても有用である。

Claims (4)

  1. (A)下記平均組成式(1)
    a1 bSiO(4-a-b)/2 (1)
    (式中、Rは独立にアルケニル基であり、R1は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2の正数であり、bは1.7~2.2の正数であり、a+bは1.9~2.4である。)
    で表される、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均して少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン: 100質量部、
    (B)下記平均組成式(2)
    2 cdSiO(4-c-d)/2 (2)
    (式中、R2は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、cは0.7~2.2の正数であり、dは0.001~1の正数であり、但しc+dは0.8~2.8である。)
    で表される、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 組成物全体中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個あたり、(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.01~3個となる量、
    (C)白金系触媒: 有効量、
    (D)下記一般式(3)
    Figure 0007156219000018
    (式中、R3は独立にメチル基又はエチル基であり、R4は独立に水素原子又は炭素原子数1~10の1価脂肪族炭化水素基である。nは1,2又は3である。)
    で表される亜リン酸化合物: 上記(C)成分中の白金1原子に対し、一般式(3)で表される亜リン酸化合物が1分子以上10分子以下である量
    を含有する硬化性シリコーンゲル組成物。
  2. (A)成分が、下記平均組成式(1b)で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサンである請求項1に記載の硬化性シリコーンゲル組成物。
    αVi βγδ (1b)
    M:R1 3SiO1/2
    Vi:R1 2RSiO1/2
    D:R1 2SiO2/2
    T:R1SiO3/2
    (式中、M、MVi、D、Tはそれぞれ上記に示す単位であり、R、R1は上記と同じである。αは0.01~3.6の正数であり、βは0.01~3.6の正数であり、かつ、(α+β)=0.5~5であり、(α/β)=0.1~5である。γは10~1,600の正数であり、δは0.5~3の正数であり、((α+β)/δ)は0.8~1.7である。)
  3. 硬化してJIS K2220で規定される針入度が10~110であるシリコーンゲル硬化物を与えるものである請求項1又は2に記載の硬化性シリコーンゲル組成物。
  4. 請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性シリコーンゲル組成物を硬化してなるシリコーンゲル硬化物。
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