以下、図面を参照しながら、本開示に係るレーザ光源ユニット及び照明装置の実施形態の一例について詳細に説明する。実施形態の説明で参照する図面は模式的に記載されたものであるから、各構成要素の寸法比率などは以下の説明を参酌して判断されるべきである。以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、数量等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、レーザ光源ユニットの仕様に合わせて適宜変更することができる。以下で説明する複数の実施形態の各構成要素を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。以下では、すべての図面において同様の要素には同一の符号を付して説明する。
図1は、実施形態のレーザ光源ユニット10の正面図である。図2は、レーザ光源ユニット10を、図1の右側から見た図において、下側半部を断面にして内側の部品を省略して示す図である。まず、図1、図2を用いて、レーザ光源ユニット10を構成する筐体12を説明する。以下の説明では、レーザ光源ユニット10を設置した状態で、扉部15側を前側とし、左右方向を、レーザ光源ユニット10を前側から見た状態で定義する。
筐体12は、前端(図1の紙面の表側端、図2の左側端)が開口する略直方体状の箱型の本体部13と、筐体12の前側の側面部12aに配置された扉部15とを含む。図1、図2及び後述する図3、図4では、筐体12の前後方向をXで示し、左右方向をYで示し、X,Yと直交する鉛直方向をZで示している。筐体12は、鉛直方向Zに長い直方体形状である。これにより、後述するように筐体12の内側に配置したレーザ光源の放熱性を高くできる。また、筐体12の外側面である外装面Fは、直方体の6つの側面部を持っている。
本体部13は、前端に開口部13aが形成され、扉部15はその開口部13aを開閉可能に取り付けられる。具体的には、扉部15は、本体部13の左右方向Y一端部(図1の右端部)において、図1に一点鎖線で示す回動軸Gを中心に回動可能にヒンジ等により取り付けられる。ヒンジは、筐体12の鉛直方向Zに離れた複数位置に設けることができる。扉部15の左右方向Y他端部(図1の左端部)の前側面には操作部16が露出している。ユーザは、その操作部16を前側から押す等で扉部15と本体部13との係合状態を解除する。これにより、扉部15の開放が可能となる。また、扉部15が閉鎖された状態で筐体12内は略密閉される。扉部15が閉鎖された状態で、筐体12内は完全に密閉されてもよい。本体部13及び扉部15は、鉄、鋼等の金属板等の金属製である。筐体12は、裏側面(図1の紙面の裏側面、図2の右側面)が建物等の壁面にボルト等で固定される。壁面に凹部が形成され、その凹部の内側に筐体12の裏側部分が埋め込まれることで、壁面に筐体12が固定されてもよい。後述するように、筐体12の底面12bからは、外部に光ファイバ30をまとめたものが導出されている。
図3は、実施形態のレーザ光源ユニット10を、斜め上側から見た透視斜視図である。図4は、実施形態において、半導体レーザ光源20及び光ファイバ30の結合構造21を示す断面図である。図5は、筐体12上部における図3のB-B断面図である。図3~図5に示すように、レーザ光源ユニット10は、上記の筐体12と、複数の半導体レーザ光源20と、複数の光ファイバ30と、複数の半導体レーザ光源20及び複数の光ファイバ30の結合構造21と、基板35と、複数の駆動電源回路37と、複数のヒートシンク40とを含んでいる。以下では、半導体レーザ光源20は、レーザ光源20と記載する。
複数のレーザ光源20、複数の結合構造21、複数のヒートシンク40、基板35、及び複数の駆動電源回路37は、筐体12の内部に外部から略密閉された状態で筐体12に支持されて配置される。複数のレーザ光源20と複数の駆動電源回路37とは、筐体12内に筐体12との間での絶縁性を確保した状態で設置されている。例えば、各レーザ光源20及び各駆動電源回路37と、筐体12との間には樹脂等の絶縁材料製の部材が配置され、各レーザ光源20及び各駆動電源回路37とは筐体12に支持される。
複数の光ファイバ30は、まとめられた状態で筐体12の下端の側面部である底面12bから導出される。このために、筐体12において光ファイバ30が導出されるファイバ出口12cは、底面12bに設けられている。これにより、レーザ光漏れの安全性を高くできると共に、光ファイバ30の筐体12からの導出部分がレーザ光源ユニット10を設置する作業者の足元近くになることで、光ファイバ30の取り回し作業を容易に行える。さらに、光ファイバ30の筐体12からの導出部分の上側に筐体12があることで、筐体12が屋外に設置される場合に、筐体12の光ファイバ出口12cに雨水がかかりにくくなると共に、上から埃がつきにくくなる。複数の光ファイバ30は筐体12の内部で1本の光ファイバに結合された状態で底面12bから導出されてもよい。
複数の光ファイバ30の導出側の先端には例えば灯具ユニット(図示せず)が接続されることで、レーザ光源ユニット10が照明装置を構成するために使用される。なお、レーザ光源ユニットの用途は、照明装置を構成することに限定しない。例えば、レーザ光源ユニットは、レーザ加工を行う加工装置を構成するために用いることもできる。
複数のレーザ光源20は、筐体12内において、左右方向Yに一列に並んで配置され、それぞれ下側にレーザ光を出射する。複数の光ファイバ30は、その光ファイバ30と組み合わされるレーザ光源20に、結合構造21で結合される。
図4に示すように、結合構造21は、レーザ光源20が支持されるケース状の光源支持部22と、光源支持部22に結合され、光ファイバ30を保持するファイバ支持部23とを含む。光源支持部22の内側には、光学系24が配置されてもよい。
レーザ光源20は、レーザ光を放射する半導体レーザ素子を有する。レーザ光源20は、例えば青色光を含むレーザを発生させ、光ファイバ30を用いて灯具ユニット側にレーザ光を供給する。各レーザ光源20は、下側に向かってレーザ光を出力する。各レーザ光源20の光軸方向は、筐体12の高さ方向である鉛直方向Zと平行である。
レーザ光源20は、筐体12内に配置された駆動電源回路37(図3)から電力を供給されて駆動される。駆動電源回路37は、筐体12から導出される電源ケーブル(図示せず)を介して商用交流電源に接続される。駆動電源回路37は、商用交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換してレーザ光源20に出力する。駆動電源回路37は、制御装置(図示せず)により制御される。図3では、複数のレーザ光源20に対応して駆動電源回路37が1つずつ、レーザ光源20より上側に配置されている。図3では、駆動電源回路を模式的に直方体で示しているが、実際には回路を形成するように複数の素子である電気部品が配置される。複数の駆動電源回路37は、例えば、前後方向Xに対し直交する平面に沿って配置された回路基板(図示せず)上に配置される。回路基板は、筐体12の内部の裏側端部(図3の紙面の裏側端部、図5の右端部)付近に配置される。なお、駆動電源回路として、複数のレーザ光源20で共通の1つの駆動電源回路のみが筐体12内に配置されていてもよい。
制御装置は、プログラムを実行することによって、本開示のレーザ光源ユニット10の主体の機能を実現する。制御装置は、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって、上記機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、集積回路(IC)または大規模集積回路(LSI)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されていてもよく、複数のチップに設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよく、複数の装置に備えられていてもよい。また、プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記憶媒体に記憶される。プログラムは、記憶媒体に予め格納されていてもよく、インターネット等を含む広域通信網を介して記憶媒体に供給されてもよい。
さらに、制御装置は、駆動電源回路37を制御することによって、各レーザ光源20に対する供給電流を制御し、各レーザ光源20の点灯の切換、及び発光強度の調節を行う。
図4に示すように、光学系24は、コリメートレンズ25、バンドパスフィルタ26、及び集光レンズ27を含む。コリメートレンズ25、バンドパスフィルタ26、及び集光レンズ27は、レーザ光源20から出射されるレーザ光の光路L1上に配置される。
コリメートレンズ25は、レーザ光源20から放出されたレーザ光を平行光に変換する。コリメートレンズ25とレーザ光源20とは別体としても一体としてもよい。
バンドパスフィルタ26は、コリメートレンズ25を透過したレーザ光から特定の波長帯の光を抽出する。集光レンズ27は、バンドパスフィルタ26を通過したレーザ光を集光し、光ファイバ30の一端面(図4の上端面)に入射させる。
レーザ光源20から出射されたレーザ光は、光ファイバ30の一端面に入射され、光ファイバ30の他端面(図示せず)から、例えば灯具ユニット(図示せず)に入射される。灯具ユニットは、レーザ光源ユニット10からのレーザ光を非可干渉性の光に変換して放射する。例えば灯具ユニットは、波長変換素子の一方の面にレーザ光が入射され、反対側の面から、レーザ光とは異なる波長帯の照明光、例えば白色光の照明光が出射される透過型の照明器具である。例えば、灯具ユニットは、波長変換素子から出射された光を光学部材に放射する。
光学部材は、照明光の配光を制御する。光学部材としては、例えば照明光を拡散する拡散部材、照明光を集光する集光部材等がある。これにより、灯具ユニットは、レーザ光を非可干渉性の光に変換して放射する。複数の光ファイバ30は、1つの灯具ユニットに接続された構成に限定せず、1つの光ファイバ30ごとに1つの灯具ユニットが接続されてもよい。なお、灯具ユニットは透過型の場合に限定せず、レーザ光が入射される波長変換素子の入射側と同じ側の面から白色光等の照明光が出射される反射型としてもよい。
さらに、各光ファイバ30におけるレーザ光源20に対する結合側端部である一端部(図4の上端部)は、そのレーザ光源20に対し、鉛直下方に位置する。これにより、レーザ光源20の光出射側が下側に向くので、レーザ光源ユニット10の施工時等におけるレーザ光漏れに対する安全性を高くできるとともに、レーザ光源20の出射部に水や埃等の異物が浸入しにくくなる。
さらに、図3に示すように、筐体12の内部で、レーザ光源20の鉛直方向Z下側には、各光ファイバ30のうち、筐体12内に配置された部分の余裕代として設けられている余剰部分を取り回すためのファイバ収容空間S1と、余剰部分の取り回しのための部材(図示せず)とが設けられる。このようにレーザ光源20の下側に光ファイバ30の余剰部分を配置する場合には、レーザ光源20が筐体12の下端部に配置されにくくなる。この場合でも、本例の場合には、筐体12を鉛直方向に長い直方体状としているので、後述のように筐体12において、レーザ光源20及びヒートシンク40の上側に、空気の自然対流が生じやすい放熱空間S2を配置しやすくなる。これにより、レーザ光源20の放熱性を高くできる。
複数のレーザ光源20の後面側(図3の紙面の裏側)にはそれぞれ1つずつヒートシンク40が配置される。ヒートシンク40は、ヒートシンク40と組み合わされるレーザ光源20に熱的に接続される。ヒートシンク40は、板状の本体部41と、鉛直方向Zに対し平行に設けられた複数の板状のフィン42とが一体に設けられる。複数のフィン42は、本体部41の後側から互いに平行に突出し、左右方向Yに並んで配置される。ヒートシンク40は、アルミニウム合金等の高い熱伝導性を有する金属により形成される。これにより、レーザ光源20がヒートシンク40により放熱されて冷却される。図5に示すようにヒートシンク40は、筐体12の内部の後側面にほぼ接触する位置にある。また、レーザ光源20は、前後方向(図5の左右方向)の略中央位置にある。
図5に示すように、筐体12の内側における、複数のレーザ光源20の配列方向である左右方向Yに対し直交するXZ平面に沿う断面上において、ヒートシンク40の鉛直方向Z上方には、筐体12の外装面Fに沿った放熱経路17を有する放熱空間S2が配置される。図5では、一点鎖線矢印αにより、放熱経路17における主となる自然対流方向を示している。レーザ光源20が温度上昇することで、レーザ光源20から伝熱されるヒートシンク40の鉛直方向Z真上の空気は、外装面Fに沿って上昇する。これにより筐体12の上端部内で空気の温度は高くなっている。そして、筐体12の上端部内の空気が筐体12を介して外部の空気と熱交換を行うことで上端部内の空気は冷やされ、それに伴ってヒートシンク40の真上から離れた位置で下降する。下降した空気は、レーザ光源20及びヒートシンク40の近くで暖められて再びヒートシンク40の真上から上昇する。これによって、図5の一点鎖線矢印αで示すように空気が自然対流する。特に、図5の例では、ヒートシンク40及びレーザ光源20の上側で前後方向の略中央位置には鉛直方向Zに沿うYZ平面に沿って基板35が配置される。基板35は、回路に対しての接触防止の機能を担うために、筐体12の内部で、駆動電源回路37より扉部15側(図5の左側)に固定される。また、この基板35を回路基板として、ヒートシンク40側(図5の右側)には熱源としての駆動電源回路37等の回路が配置されてもよい。これにより、ヒートシンク40の鉛直方向Z上方には、駆動電源回路37が配置される。基板35は、対流を筐体12の壁面に沿わせるための障害物としての仕切り部に相当する。この状態で、レーザ光源20は、駆動電源回路37よりも鉛直方向Z下側に存在する。これにより、レーザ光源20の発熱による温度上昇と筐体12を介しての外部との熱交換によって生じる筐体12内部の空気の主となる対流方向が、外装面Fにより沿いやすくなる。このように、ヒートシンク40の鉛直方向Z上方に、筐体12の外装面Fに沿った放熱経路17を有する放熱空間S2が配置されるので、筐体12を介して筐体12内外での空気の熱伝達性が高くなる。これにより、筐体12の内側に配置したレーザ光源20の放熱性を高くできる。なお、図5では、基板35の裏面側で放熱経路17が、駆動電源回路37の前端(図5の左端)と基板35との間を通過するように示しているが、放熱経路17が駆動電源回路37の内部の複数の電気部品の間を通過してもよい。
さらに、本例の場合には、筐体12は、鉛直方向Zに長い直方体形状であるので、レーザ光源20及びヒートシンク40の鉛直方向Z上側に広い放熱空間S2を形成しやすくなる。これにより、レーザ光源20の放熱性をより高くできる。
上記のように筐体12内において、ヒートシンク40の鉛直方向Z上方に放熱空間S2を配置する構造を実現するためには、ヒートシンク40の鉛直方向Z上方に十分な広さを確保することと、外装面Fに沿った放熱経路17上に対流を阻害する障害物がないことが必要である。さらに、対流を外装面Fに沿わせるための仕切り部が配置されることと、ヒートシンク40の鉛直方向Z上方に熱源が配置されることとの一方または両方があることが、外装面Fに沿って放熱経路17を形成しやすくなる面から好ましい。
上記のレーザ光源ユニット10によれば、レーザ光源20と、駆動電源回路37とが、金属製で略密閉された筐体12内に筐体12との間での絶縁性を確保した状態で設置される。また、結合構造21が筐体12内に設置される。また、筐体12の側面部12aに開閉可能な扉部15が配置される。これにより、レーザ光の外部への漏れを防止すると共にレーザ光源20及び駆動電源回路37の絶縁性を確保できる。さらに、長期間にわたってレーザ光源20及び光ファイバ30の結合構造21を含む部分への異物の侵入を防止できる。さらに、ヒートシンク40が筐体12内に配置されるので、レーザ光源の放熱部のみを筐体の外部に配置する構造と異なり、筐体12を簡素化できる。また、レーザ光源の放熱部のみを筐体の外部に配置する構造では、筐体において放熱部が貫通する部分を、樹脂ペーストを用いて密閉する必要があるが、この場合には、樹脂ペーストが光ファイバの端面に光集塵を招く可能性がある。本例の構成によれば、放熱部であるヒートシンク40が筐体12内に配置されるので、このような不都合が生じない。
また、複数の熱源であるレーザ光源20の放熱性を向上させる面から、複数のレーザ光源20が並んだ方向と直交する断面上において、筐体12の外装面Fに沿う対流方向を持つ放熱経路17が形成されることが好ましい。例えば、本例のように、複数のレーザ光源20が、左右方向Yに沿って並んでいる場合には、左右方向Yに対し直交するXZ平面内で、空気の自然対流が、レーザ光源20の位置と筐体12内の上端部とを結ぶ鉛直方向Z長さが大きい環状に生じることが好ましい。また、この場合に、ヒートシンク40のフィン42が鉛直方向Zに対し平行に設けられることが、ヒートシンク40と対流した空気とを熱交換しやすくする面から好ましい。より具体的には、各フィン42が、複数のレーザ光源20が並んだY方向と直交するXZ平面に平行であることが好ましい。
なお、後述の図6(c)(d)に示す実施例3、実施例4のように、実施形態の別例として、レーザ光源20(図4)に相当する熱源M1を筐体12の外装面Fの近傍に配置することもできる。この場合も、外装面Fに沿って放熱経路17が形成されやすい。より具体的には、筐体12の内側で熱源M1が、鉛直方向Zに対し直交する方向、例えば前後方向Xにおいて偏って配置されると、外装面Fに沿って放熱経路17が形成されやすい。
図6は、実施例1~5((a)~(e))を用いて、筐体12の上部における内部の空気の主な対流方向をシミュレーションした結果を示す図5に対応する図である。図6(a)に示す実施例1は、ヒートシンク40の前側(図6(a)の左側)にレーザ光源20(図4)に相当する熱源M1が熱的に接続され、その熱源M1が筐体12の内部の前後方向X(図6(a)の左右方向)で中央位置にある。また、ヒートシンク40は、筐体12内部の後側面(図6(a)の右側面)にほぼ接触している。一方、熱源M1の上側には、前後方向Xの略中央位置に鉛直方向Zに沿う仕切り板Pが配置される。仕切り板Pは、基板であってもよい。実施例1では、図6(a)に砂地部で示す部分の温度が高くなる。これにより、主な対流方向が矢印C1で示すように、ヒートシンク40の真上である後側(図6(a)の右側)上部から、外装面Fと仕切り板Pとに沿って上昇し、筐体12の上端部で折り返して、筐体12内部のヒートシンク40の真上から離れた前側(図6(a)の左側)で、外装面Fと仕切り板Pとに沿って下降している。図6(a)に示すように、主な対流方向が外装面Fに沿っているので、実施例1によりレーザ光源20の放熱性を向上できることを確認できた。
図6(b)に示す実施例2は、図6(a)の実施例1に対して、仕切り板Pが省略される一方、駆動電源回路等に相当する他の熱源M2が、ヒートシンク40の鉛直方向Z上側に配置される。実施例2では、図6(b)に砂地部で示す部分の温度が高くなることで、ヒートシンク40の上側の温度上昇がより大きくなる。これにより、主な対流方向が矢印C2で示すように、外装面Fに沿って筐体12の上端部で折り返すように形成されやすい。実施例2によっても、レーザ光源20の放熱性を向上できることを確認できた。
図1~図5に示した実施形態は、図6(a)と図6(b)との組み合わせに対応する。これにより、実施形態の効果を確認できた。
図6(c)に示す実施例3は、ヒートシンク40の前側(図6(c)の左側)にレーザ光源20に相当する熱源M1が配置され、その熱源M1が筐体12内部の前側面にほぼ接触する位置にある。また、筐体12内において、熱源M1及びヒートシンク40の上側には障害物のない空間が形成される。実施例3では、図6(c)に砂地部で示す部分の温度が高くなる。これにより、主な対流方向が矢印C3で示すように、ヒートシンク40の真上である前側(図6(c)の左側)上部から外装面Fに沿って上昇し、筐体12の上端部で折り返して、筐体12内部の後側(図6(c)の右側)で、外装面Fに沿って下降している。主な対流方向が矢印C3で示すように外装面Fに沿っているので、実施例3によっても、レーザ光源20の放熱性を向上できることを確認できた。
図6(d)に示す実施例4は、図6(c)の実施例3に対して、ヒートシンク40が筐体12の内部の前後方向X(図6(c)の左右方向)で中央位置にある。これに伴って、熱源M1は、筐体12内部の前側(図6(c)の左側)に偏って配置される。実施例4では、図6(d)に砂地部で示す部分の温度が高くなることで、主な対流方向が矢印C4で示すように前後方向Xの中央位置から前後方向Xの両側に分かれて、それぞれ外装面Fに沿って下降している。これにより、実施例4によっても、レーザ光源20の放熱性を向上できることを確認できた。
一方、図6(e)に示す実施例5は、図6(a)の実施例1に対して、仕切り板Pが省略され、かつ、図6(b)の実施例2とは異なり、熱源M1とは異なる他の熱源がヒートシンク40の上側に配置されない。実施例5では、図6(e)に砂地部で示す部分の温度が高くなる。具体的には、ヒートシンク40の前側(図6(e)の左側)に熱源M1が配置される一方、ヒートシンク40の後端(図6(e)の右端)が筐体12にほぼ接触する。これにより、ヒートシンク40の上部で前後方向Xに温度差が生じて、ヒートシンク40の上側の空気が熱源M1側(図6(e)の左側)で、反対側(図6(e)の右側)より温度上昇しやすくなる。これにより、ヒートシンク40の上側で空気が上昇しながら熱源M1側に引っ張られやすくなる。また、温度上昇した空気が前側で筐体12に接触することで相対的に温度が高い後側に戻りながら上昇する。これにより、主な対流方向が矢印C5で示すようにU字形に曲がりながら上昇し、外装面Fに沿わない。筐体12の上端部で温度低下した空気は左右方向Yにずれた位置で下降するが、左右方向Yに配置される他の部品等との関係で対流が停滞しやすくなるので対流性が低い。このため、筐体12の内部と外部との熱交換に効果的な対流を十分に得られないので、実施例1~4の場合よりもレーザ光源20の放熱性は低くなる。
一方、図6(a)の実施例1の場合には、ヒートシンク40の上側の温度上昇した空気が熱源M1側(図6(a)の左側)に引っ張られることが、仕切り板Pによって抑制される。図6(b)の実施例2の場合には、他の熱源M2によって、ヒートシンク40の上側で空気の前後方向の温度差が抑制されるので、温度上昇した空気が熱源M1側(図6(b)の左側)に引っ張られることが抑制される。これにより、図6(a)(b)の実施例1,2では対流方向が外装面Fに沿いやすくなる。
次に、図7、図8を用いて、実施形態においてヒートシンク40の上側に放熱空間S2(図3、図5)を形成したことによる放熱効果を確認するために行った解析結果を説明する。解析は、図6(a)に示す実施例1、図6(c)に示す実施例3、及び図6(e)に示す実施例5の3例を用いて、筐体12内部における放熱空間体積と放熱空間内の温度上昇率との関係を比較した。温度上昇率は、熱源M1の発熱量Wに対する、放熱空間の単位時間における温度上昇量DTの割合(DT/W)である。熱源M1の発熱量が一定の場合には、放熱空間体積の増大にしたがって温度上昇率DT/Wは低下する。その温度上昇率DT/Wの低下が大きくなるほど、放熱性能が高いことを意味する。
図7は、筐体12内における放熱空間体積の定義を説明するための透視斜視図である。図7に示すように、本解析では、筐体12の内部に熱源M1と、熱源M1に接触するヒートシンク40とが配置された場合を想定する。本解析では、放熱空間体積は、筐体12内において、閉鎖空間における熱源M1よりも鉛直方向上側にある部分の体積である。このとき、放熱空間Saの最大高さHは、熱源M1の上端から筐体12の上端部内面までの長さである。
また、本解析の条件として、熱源M1の発熱量を5Wとし、放熱空間Sa内で空気が自然対流され、筐体12の外部の空気温度は30℃とした。そして、実施例1,2,5において、放熱空間体積と放熱空間Sa内の温度上昇率(DT/W)との関係を求めた。
図8は、実施例1、3、5を用いて、放熱空間体積と温度上昇率(DT/W)との関係を解析した結果を示している。図8で一点鎖線αは実施例1を示し、実線βは実施例3を示し、破線γは実施例5を示している。
図8の解析結果から、自然対流による熱源M1の放熱の場合には、放熱性能は熱交換の対象である放熱空間体積に強く影響されることが分かる。図6(e)の実施例5のように、対流が停滞するような部品配置となった場合には放熱性能を十分に発揮できず、図8の破線γで示すように放熱性能は放熱空間の体積によりほぼ一義的に決定される。また、放熱空間として対流が停滞するような狭小な空間しか存在しない場合も、実施例5の解析結果と同様になる。
一方、図6(a)(c)の実施例1,3のように、放熱空間S2内に外部との熱交換を促すように、筐体12の外装面Fに沿う対流が促される場合であって、放熱空間体積に十分な大きさがある場合には、放熱性能が向上する。具体的には、実施例1のように、対流の方向を規制する仕切り板P(図6(a))が配置される場合には、図8の一点鎖線αで示すように放熱空間体積が増大する場合の温度上昇率DT/Wの低下が、実施例5よりも大きくなるので、放熱性能が向上する。また、仕切り板Pと同様の効果をもたらす部品や障害物が放熱空間に配置される場合も、放熱性能が向上する。
また、実施例3のように、熱源M1(図6(c))の位置が中央よりも筐体12内の壁面近くに配置される場合も、図8の実線βで示すように放熱空間体積が増大する場合の温度上昇率DT/Wの低下が、実施例5よりも大きくなるので、放熱性能が向上する。上記の図1~図5の実施形態は実施例1に対応するので、実施形態により放熱性能を向上できることを確認できた。
上記の実施形態において、図1、図2では、筐体12の扉部15が本体部13の前側の側面部12aのみに配置される場合を説明したが、扉部は、前側の側面部12a以外の側面部にも配置されることで、筐体に複数の扉部が配置されてもよい。また、扉部は、筐体の前側の側面部12a以外に配置されてもよい。