ところで、タクシー業者が乗車料金の改定を検討する際には、改定後の収益の変動予測を行うことが考えられる。そのためには、改訂後の料金制情報を用いて乗車料金を試算する必要がある。
改訂後の乗車料金を試算するには、改定後の料金制情報が必要になることは言うまでもない。また、特に時間距離併用制が採用されている場合は、低速の連続走行により基本料金に追加されるじ後料金にも改定後の料金制情報を適用して、改定後の乗車料金を試算しなければならない。
以上の事情を考慮すると、改定後の乗車料金を試算する際には、改定後の料金制情報を格納した改定料金対応のタクシーメータをタクシー車両に搭載し、現行のタクシーメータと並行して改定後の乗車料金を計算させる必要がある。
そうすると、タクシー車両の乗務員は、乗客の乗車及び降車等に応じて、現行のタクシーメータの他に改定料金対応のタクシーメータのタリフ操作を同時に行うことになる。試算する改定後の乗車料金が複数パターンある場合は、乗務員のタリフ操作の手間が、各パターンに対応した改定料金対応のタクシーメータの数だけ増えることになる。
このような改定料金対応のタクシーメータのタリフ操作は、乗務員の負担の増加を招いてしまう。
なお、乗車料金改定後の収益変動予測の正確性を期するためには、多くのタクシー車両において改定後の乗車料金を試算して、改定後の乗車料金のサンプル数を増やすことが望ましい。
しかし、改定料金対応のタクシーメータを搭載するタクシー車両が多くなればなるほど、改定料金対応のタクシーメータの必要数が増えて、タクシー業者の負担が大きくなる。
この種の問題は、タクシーの乗車料金だけでなく、運転代行業者による運転代行料金等を含む車両の賃走料金の改定を検討する場合に、広く発生する。
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、改訂後の賃走料金の試算にかかる業務負担及び費用負担を抑制することができる賃走料金計算装置及び賃走料金試算装置を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明の第1の態様による賃走料金計算装置は、
車両の営業走行中に、該車両の走行距離に応じた走行パルスと前記車両のタリフ状態とに基づいて計算する前記車両の賃走料金の料金制における後続料金の加算の要否を判定するための演算パルスを生成するパルス生成部と、
前記パルス生成部が生成する前記演算パルスを前記営業走行毎にカウントするカウント部と、
前記営業走行毎の前記カウント部による前記演算パルスのカウント値を、前記賃走料金の試算用に出力する出力部と、
を備える。
車両の賃走料金は基本料金に後続料金を加えて計算される。後続料金は、車両の営業走行中に加算条件が成立する毎に基本料金に加算される従量料金である。
ここで、後続料金の加算条件は、走行距離が一定距離に達すると成立する。また、時間距離併用制が採用された料金制では、低速走行の連続時間が一定時間に達した場合も、後続料金の加算条件が成立する。したがって、賃走料金を計算する際には、後続料金の加算分を特定することが不可欠となる。
そして、本発明の第1の態様による賃走料金計算装置によれば、車両の営業走行において後続料金の加算の要否を判定するために、パルス生成部により演算パルスが生成される。
パルス生成部により生成された演算パルスの数は、営業走行毎にカウント部によりカウントされる。カウント部により営業走行毎にカウントされた演算パルスのカウント値は、出力部によって賃走料金の試算用に出力される。
したがって、出力された営業走行毎の演算パルスのカウント値から、賃走料金の試算に適用する料金制において規定された後続料金の加算分が営業走行毎に特定される。この後続料金の加算分に、試算用の料金制において規定された基本料金等を加えることで、現行以外の料金制を適用した場合の賃走料金の試算が可能となる。
このため、賃走料金の試算に当たって、現行の賃走料金メータと共に試算用の料金制を適用して賃走料金を計算する賃走料金メータを車両に搭載して、各メータを同時に操作する必要をなくし、料金制改訂後の賃走料金の試算にかかる業務負担及び費用負担を抑制することができる。
なお、賃走料金計算装置としては、例えば、計算した賃走料金を表示する表示部を有する既存の態様の賃走料金メータの他、計算した賃走料金を外部のデバイスに出力してそのデバイスの表示部に表示させる装置が考えられる。
外部のデバイスとしては、車両の乗客から視認可能な箇所に設置されたタブレット端末、乗客が携帯する携帯端末(スマートフォン、タブレット端末等)を利用することができる。これらの外部デバイスには、専用のアプリケーションソフトウェアがインストールされ、賃走料金計算装置が計算した賃走料金の信号を無線で受信し、表示部に表示させることができる。
そして、計算した賃走料金を外部のデバイスに出力する装置には、賃走料金を表示する表示部が設けられなくなる可能性もある。そのような態様の装置でも、本発明の第1の態様による賃走料金計算装置を構成することは可能である。
また、本発明の第2の態様による賃走料金計算装置は、本発明の第1の態様による賃走料金計算装置において、前記出力部は、前記営業走行毎の前記カウント部による前記演算パルスのカウント値を、該演算パルスの生成時間帯別に分類して出力する。
本発明の第2の態様による賃走料金計算装置によれば、本発明の第1の態様による賃走料金計算装置において、演算パルスのカウント値が演算パルスの生成時間帯別に分類される。
このため、時間帯によって金額が異なる料金制を賃走料金の試算に用いる場合に、時間帯別の演算パルスのカウント値から各時間帯の後続料金の加算分を特定し、時間帯によって金額が異なる料金制を適用した場合の賃走料金を精度良く試算することができる。
さらに、本発明の第3の態様による賃走料金計算装置は、本発明の第2の態様による賃走料金計算装置において、前記演算パルスの生成時間帯は、前記賃走料金に割増を適用する時間帯の開始時前後及び終了時前後の各期間において、他の期間よりも短い時間間隔に設定されている。
賃走料金に割増を適用する時間帯が規定された料金制では、割増適用時間帯の開始時前後及び終了時前後に演算パルスが生成された場合、生成された演算パルスを割増料金の適用時間中と適用時間外のどちらの時間帯に分類するかで賃走料金の試算値が異なる。
そこで、本発明の第3の態様による賃走料金計算装置によれば、本発明の第2の態様による賃走料金計算装置において、営業走行毎の演算パルスのカウント値を分類する演算パルスの生成時間帯を、割増適用時間帯の開始時前後及び終了時前後の各期間では、他の期間よりも短い時間間隔とする。
したがって、割増適用時間帯の開始時前後及び終了時前後に生成された演算パルスが、割増の適用中に生成されたのであれば割増適用時間帯に、割増の適用中に生成されたのでなければ割増適用以外の時間帯に、それぞれ精度良く分類される。
このため、賃走料金に割増を適用する時間帯が料金制に規定されている場合であっても、その料金制を適用して正確な賃走料金を試算することができる。
また、本発明の第4の態様による賃走料金計算装置は、本発明の第1、第2又は第3の態様による賃走料金計算装置において、前記車両はタクシー車両であり、前記出力部は、前記タクシー車両の入庫処理の際に、前記営業走行毎の前記カウント部による前記演算パルスのカウント値を出力する。
本発明の第4の態様による賃走料金計算装置によれば、本発明の第1、第2又は第3の態様による賃走料金計算装置において、タクシー車両が車庫に戻った入庫時に、異なる料金制を適用して賃走料金を試算する車庫側の相手に、営業走行毎の演算パルスのカウント値が出力される。
このため、車庫から離れた遠隔地からも、車庫の出力相手に届く手段を用いて演算パルスのカウント値を随時出力する必要がない。よって、車庫の出力相手への受け渡しが容易なタクシー車両の入庫時に、営業走行毎の演算パルスのカウント値をまとめて出力するようにして、演算パルスのカウント値の受け渡しの確実性を高めることができる。
さらに、本発明の第5の態様による賃走料金計算装置は、本発明の第1、第2、第3又は第4の態様による賃走料金計算装置において、前記出力部は、前記営業走行毎の前記カウント部による前記演算パルスのカウント値を携帯記録媒体に出力して記憶させる。
本発明の第5の態様による賃走料金計算装置によれば、本発明の第1、第2、第3又は第4の態様による賃走料金計算装置において、営業走行毎の演算パルスのカウント値が携帯記録媒体に出力される。このため、営業走行毎の演算パルスのカウント値を賃走料金の試算を行う相手に、例えば賃走料金メータで積算した営業データと共にオフラインで引き渡すことができる。
また、上記目的を達成するため本発明の第6の態様による賃走料金試算装置は、
車両の営業走行中に該車両の賃走料金の料金制における後続料金の加算の要否を判定するために生成される演算パルスの、前記車両の営業走行毎の生成数のカウント値が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記営業走行毎の前記演算パルスのカウント値と、前記賃走料金の試算に適用する試算用の料金制の情報とに基づいて、該試算用の料金制を適用した前記賃走料金を試算する試算部と、
を備える。
上述したように、従量料金である後続料金を基本料金に加えて車両の賃走料金を計算する際には、後続料金の加算分を特定することが不可欠となる。
そして、本発明の第6の態様による賃走料金試算装置によれば、車両の営業走行中に賃走料金の料金制における後続料金の加算の要否を判定するために生成される演算パルスの、営業走行毎のカウント値が、入力部に入力される。
営業走行毎の演算パルスのカウント値が入力部に入力されると、賃走料金の試算に適用する試算用の料金制の情報を用いて、試算用の料金制を適用した賃走料金が試算部により試算される。
即ち、入力部に入力された営業走行毎の演算パルスのカウント値から、賃走料金の試算に適用する試算用の料金制において規定された後続料金の加算分が営業走行毎に特定される。この後続料金の加算分に、試算用の料金制において規定された基本料金等を加えることで、現行以外の料金制を適用した場合の賃走料金の試算が可能となる。
このため、賃走料金の試算に当たって、現行の賃走料金メータと共に試算用の料金制を適用して賃走料金を計算する賃走料金メータを車両に搭載して、各メータを同時に操作する必要をなくし、料金制改訂後の賃走料金の試算にかかる業務負担及び費用負担を抑制することができる。
さらに、本発明の第7の態様による賃走料金試算装置は、本発明の第6の態様による賃走料金試算装置において、前記試算用の料金制の情報を複数パターン保持する料金制保持部と、該料金制保持部の複数パターンの前記試算用の料金制の情報から前記賃走料金の試算に適用する前記試算用の料金制の情報を選択する料金制選択部とをさらに備え、前記試算部は、前記料金制選択部が選択したパターンの前記試算用の料金制の情報を用いて前記車両の賃走料金を試算する。
本発明の第7の態様による賃走料金試算装置によれば、本発明の第6の態様による賃走料金試算装置において、賃走料金の試算に用いる料金制を、料金制保持部が保持する複数パターンの中から選択して、複数パターンの賃走料金を試算することができる。
また、本発明の第8の態様による賃走料金試算装置は、本発明の第6又は第7の態様による賃走料金試算装置において、前記入力部には、前記営業走行毎の前記演算パルスのカウント値が、前記演算パルスの生成時間帯別に分類して入力され、前記試算部は、時間帯によって金額が異なる前記試算用の料金制と、前記演算パルスの生成時間帯別に分類して前記入力部に入力された前記営業走行毎の前記演算パルスのカウント値とを用いて、前記車両の賃走料金を試算する。
本発明の第8の態様による賃走料金試算装置によれば、本発明の第6又は第7の態様による賃走料金試算装置において、入力部に入力される演算パルスのカウント値は、演算パルスの生成時間帯別に分類されている。
このため、時間帯によって金額が異なる料金制を賃走料金の試算に用いる場合に、時間帯別の演算パルスのカウント値から各時間帯の後続料金の加算分を特定し、時間帯によって金額が異なる料金制を適用した場合の賃走料金を精度良く試算することができる。
さらに、本発明の第9の態様による賃走料金試算装置は、本発明の第8の態様による賃走料金試算装置において、前記演算パルスの生成時間帯は、前記賃走料金に割増を適用する時間帯の開始時前後及び終了時前後の各期間において、他の期間よりも短い時間間隔に設定されている。
賃走料金に割増を適用する時間帯が規定された料金制では、割増適用時間帯の開始時前後及び終了時前後に演算パルスが生成された場合、生成された演算パルスを割増料金の適用時間中と適用時間外のどちらの時間帯に分類するかで賃走料金の試算値が異なる。
そこで、本発明の第9の態様による賃走料金試算装置によれば、本発明の第8の態様による賃走料金試算装置において、入力部に入力される営業走行毎の演算パルスのカウント値を分類する演算パルスの生成時間帯が、割増適用時間帯の開始時前後及び終了時前後の各期間では、他の期間よりも短い時間間隔とされている。
したがって、割増適用時間帯の開始時前後及び終了時前後に生成された演算パルスが、割増の適用中に生成されたのであれば割増適用時間帯に、割増の適用中に生成されたのでなければ割増適用以外の時間帯に、それぞれ精度良く分類されている。
このため、賃走料金に割増を適用する時間帯が料金制に規定されている場合であっても、その料金制を適用して正確な賃走料金を試算することができる。
また、本発明の第10の態様による賃走料金試算装置は、本発明の第6、第7、第8又は第9の態様による賃走料金試算装置において、前記営業走行毎の前記演算パルスのカウント値を携帯記録媒体から読み出す読出部をさらに備え、前記入力部には、前記読出部が前記携帯記録媒体から読み出した前記営業走行毎の前記演算パルスのカウント値が入力される。
本発明の第10の態様による賃走料金試算装置によれば、本発明の第6、第7、第8又は第9の態様による賃走料金試算装置において、営業走行毎の演算パルスのカウント値が携帯記録媒体から読み出されて入力部に入力される。このため、営業走行毎の演算パルスのカウント値を演算パルスの発生元である賃走料金メータ側から、例えば賃走料金メータで積算した営業データと共にオフラインで受け取ることができる。
本発明によれば、改訂後の賃走料金の試算にかかる業務負担及び費用負担を抑制することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
図1は本発明の一実施形態に係る賃走料金試算システムの概略構成を示す説明図である。図1に示す本実施形態の賃走料金試算システム1は、不図示のタクシー車両(請求項中の車両に相当)に搭載されるタクシーメータ3により計算される賃走料金を、タクシーメータ3とは異なる料金制情報を適用して試算するシステムである。
そして、賃走料金試算システム1は、メモリカード5(請求項中の携帯記録媒体に相当)を介してタクシーメータ3(請求項中の賃走料金計算装置に相当)とオフライン接続される管理用コンピュータ7(請求項中の賃走料金試算装置に相当)とを有している。管理用コンピュータ7は、タクシー車両を管理するための管理部署(図示せず)に配置される。管理部署には、例えば、タクシー業者の営業所(車庫)等が該当する。
タクシーメータ3は、全体制御用のCPU9を有している。CPU9には、オンボードメモリ(RAM、ROM)11、賃走料金の料金制情報を記憶したROMチップ13、タッチパネル付きの表示器(LCD)15、カードリーダライタ17が接続されている。
オンボードメモリ11(請求項中の入力部に相当)は、CPU9が行う処理のプログラムを格納するエリア及びワークエリアとして利用される。ROMチップ13には、所轄官庁による認可(型式認定)を受けた認証済みの賃走料金の料金制情報が記憶されている。ROMチップ13は、料金制情報の改ざん防止のため、所轄官庁によって封印されている。
表示器15は、タクシーメータ3の前面で賃走料金、タクシー車両のタリフ状態等を表示するものである。カードリーダライタ17には、タクシーメータ3に収集されたデータやタクシーメータ3で生成されたデータを出力するメモリカード5が、必要に応じて装着される。
タクシーメータ3は、上述したオンボードメモリ11、ROMチップ13、表示器15及びカードリーダライタ17の他、CPU9に接続された入出力インタフェース部19,21,23を有している。各入出力インタフェース部19,21,23には、GPS受信器25、ETC車載器27及び外部機器(入力装置)29がそれぞれ接続されている。
CPU9は、タクシーメータ3の時計を自動補正するための正確な時刻の情報をGPS受信器25から取得する。また、CPU9は、タクシーメータ3の高速タリフを自動でオンオフさせるための、高速(有料)道路の入出の情報を、ETC車載器27から取得する。
外部機器(入力装置)29は、例えば、テンキー、磁気カードリーダ、ICカードリーダ等を有する外付け端末である。CPU9は、クレジットカード、電子マネーカード等のICカードからの決済情報等を、外部機器29から取得する。
CPU9は、タクシー車両の走行距離に応じた走行パルス、タクシーメータ3のタリフ状態、ETC車載器27から取得される高速(有料)道路の入出状態、タクシーメータ3の時計の時刻、ROMチップ13の料金制情報等から、賃走料金を計算する。
なお、ROMチップ13の料金制情報では、賃走料金を構成する基本料金の金額と、賃走料金が基本料金となる実車タリフの開始からの走行距離(基本距離)とが規定されている。
また、料金制情報では、基本距離の走行後にタクシー車両の走行距離に応じて基本料金に加算されるじ後料金(請求項中の後続料金に相当)の金額と、基本料金にじ後料金を加算する周期となる基本距離の走行後のタクシー車両の走行距離(後続距離)とが規定されている。
そして、CPU9は、実車タリフにおいて走行パルスが入力される度に、実車タリフにおけるタクシー車両の走行距離を計算するために、演算パルスを生成する。
また、ROMチップ13の料金制情報の料金制が時間距離併用制を採用している場合は、CPU9は、タクシー車両が低速走行(例えば、時速10Km以下)を行っている間にも、走行パルスを模擬した擬似パルスとして演算パルスを生成する。
時間距離併用制の料金制では、低速走行の積算時間が一定時間に達する度に、じ後料金が1回加算される。このため、CPU9は、CPU9が走行パルスから検出するタクシー車両の走行速度が低速走行に該当する速度である間、所定周期で演算パルス(擬似パルス)を生成する。なお、擬似パルスとしての演算パルスを生成する所定周期は、低速走行の上限速度と後続距離とに基づいて予め決定される。
そして、CPU9は、実車タリフの開始に伴って発生した基本料金に、実車タリフの開始後から終了(空車タリフへの移行)までの間に生成した演算パルス数から計算した追加回数分のじ後料金を追加して、賃走料金を計算する。
なお、基本料金及びじ後料金以外の料金を除くと、賃走料金は、次の式(1)、即ち、
賃走料金=基本料金+じ後料金×{[〔(実車タリフ中に生成した演算パルス数)×(走行パルスの1周期にタクシー車両が走行する距離)-基本距離〕/後続距離]+1}
・・・式(1)
によって計算することができる。
また、ROMチップ13の料金制情報に、深夜及び早朝(例えば午後10時から午前5時まで)の割増料金(例えば2割増)が規定されている場合は、その時間帯に発生した基本料金及びじ後料金に割増料金の規定を適用して賃走料金を計算する。
そして、CPU9は、計算した賃走料金を表示器15に表示する。表示器15には、賃走料金の他、タリフ状態等を表示することができる。
また、CPU9は、上述した演算パルスの生成数を、時間帯別(例えば1時間毎に区切った時間帯別)にカウントする。
ところで、料金制に深夜及び早朝(例えば午後10時から午前5時まで)の割増料金(例えば2割増)が規定されている場合、割増料金の適用時間帯の開始時前後及び終了時前後に生成された演算パルスは、時間帯の区切り方次第で、割増料金の適用時間中に発生した演算パルスとしてカウントされる可能性がある。反対に、割増料金の適用時間外に発生した演算パルスとしてカウントされる可能性もある。
ここで、時間帯別に分類した演算パルスと料金制とを用いて計算される賃走料金は、割増料金の適用時間帯の開始時前後及び終了時前後に生成された演算パルスが割増料金の適用時間中と適用時間外のどちらの時間帯の演算パルスとしてカウントされるかによって異なる値となる。
このため、割増料金の適用時間帯の開始時前後及び終了時前後に生成された演算パルスは、生成された時間と割増料金の適用時間帯との関係で、割増料金の適用時間中又は適用時間外のどちらかに正確に分類されるようにすることが望ましい。
そこで、営業走行毎の演算パルスのカウント値を分類する時間帯を、割増料金の適用時間帯の開始時前後及び終了時前後の各期間では、他の期間よりも短い時間間隔としてもよい。例えば、通常は1分区切りで演算パルスを分類するところを、割増料金の適用時間帯の開始時前後及び終了時前後の各一定期間(例えば開始時及び終了時の前後1分間)では、1秒区切りで演算パルスを分類するようにしてもよい。
そして、時間帯別に分類して営業走行毎にカウントした演算パルス数は、タクシー車両の運行終了時にカードリーダライタ17によりメモリカード5に記憶させる。
管理部署の管理用コンピュータ7には、メモリカード5用のカードリーダライタ31が接続されている。
また、管理用コンピュータ7は、CPU(図示せず)を有している。管理用コンピュータ7のCPUは、外部記憶装置(図示せず)にインストールされた賃走料金試算プログラムを実行することで、賃走料金の試算処理を行う。
そのために、外部記憶装置には、賃走料金を試算するためのアプリケーションソフトウェアのプログラムがインストールされている。また、外部記憶装置には、賃走料金の試算に用いる試算用の料金制情報が複数パターン記憶されている。
試算用の料金制情報は、タクシーメータ3のROMチップ13に記憶された認証済みの料金制情報とは内容が異なっている。
また、管理用コンピュータ7のCPUは、賃走料金を試算する際に、カードリーダライタ31によりメモリカード5から、時間帯別の演算パルス数を読み出す。
次に、タクシーメータ3のCPU9がオンボードメモリ11のROMに格納されたプログラムにしたがって行う演算パルスのカウント処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。
タクシーメータ3のCPU9は、まず、タクシーメータ3のタリフ状態が営業中のタリフ(実車等)であるか否かを確認し(ステップS11)、営業中のタリフでない場合は(ステップS11でNO)、一連の処理を終了する。
一方、営業中のタリフである場合は(ステップS11でYES)、CPU9は、時間距離併用制による低速走行中に擬似パルスとしての演算パルスを生成する周期の時間カウントを、オンボードメモリ11(のRAM)において開始する(ステップS13)。そして、CPU9は、時間距離併用フラグFを「1」に設定した後(ステップS14)、走行パルスが入力されたか否かを確認する(ステップS15)。
走行パルスが入力された場合は(ステップS15でYES)、後述するステップS19に処理を移行する。一方、入力されていない場合は(ステップS15でNO)、CPU9は、時間距離併用フラグFが「1」であるか否かを確認する(ステップS16)。フラグFが「1」でない場合は(ステップS16でNO)、ステップS15にリターンし、フラグFが「1」である場合は(ステップS16でYES)、時間カウントが擬似パルスとしての演算パルスを生成する周期の時間に達したか否かを確認する(ステップS17)。
時間カウントが擬似パルスとしての演算パルスを生成する周期の時間に達していなければ(ステップS17でNO)、ステップS15にリターンし、達した場合は(ステップS17でYES)、ステップS19に処理を移行する。
ステップS19では、CPU9は、演算パルスの生成時点として現在時刻を取得する。続いて、CPU9は、オンボードメモリ11(のRAM)に設けた時間帯別の演算パルスのカウントエリアの中から、演算パルスのカウント値をインクリメントする時間帯(演算パルスの格納先のアドレス)を指定する(ステップS21-1~S21-24)。
具体的には、CPU9は、24時間を複数の時間帯に区切った演算パルスのカウントエリアの中から、現在時刻が属する時間帯を、演算パルスのカウント値をインクリメントする時間帯(演算パルスの格納先のアドレス)として指定する。
そして、CPU9は、指定した時間帯(アドレス)の演算パルスのカウント値をインクリメント(+1)する(ステップS23)。
次に、CPU9は、タクシーメータ3のタリフ状態が営業中のタリフ(実車等)であるか否かを確認する(ステップS25)。営業中のタリフである場合は(ステップS25でYES)、後述するステップS27に処理を移行し、営業中のタリフでない場合は(ステップS25でNO)、一連の処理を終了する。
ステップS27では、CPU9は、図3のフローチャートに示すように、タクシーメータ3のタリフ状態が高速タリフ又は支払タリフであるか否かを確認する。タリフ状態が高速タリフ又は支払タリフでない場合は(ステップS27でNO)、後述するステップS33に処理を移行する。
一方、タリフ状態が高速タリフ又は支払タリフである場合は(ステップS27でYES)、CPU9は、時間距離併用フラグFが「1」であるか否かを確認する(ステップS29)。フラグFが「1」でない場合は(ステップS29でNO)、図2のステップS15にリターンする。また、フラグFが「1」である場合は(ステップS29でYES)、CPU9は、時間距離併用フラグFを「0」に設定した後(ステップS31)、図2のステップS15にリターンする。なお、時間距離併用フラグFを「0」に設定する際に、オンボードメモリ11(のRAM)における時間カウントを停止する。
さらに、ステップS27において、タクシーメータ3のタリフ状態が高速タリフ又は支払タリフでない場合(NO)に進むステップS33では、CPU9は、時間距離併用フラグFが「1」であるか否かを確認する。フラグFが「1」である場合は(ステップS33でYES)、図2のステップS15にリターンする。また、フラグFが「1」でない場合は(ステップS33でNO)、CPU9は、時間距離併用フラグFを「1」に設定した後(ステップS35)、図2のステップS15にリターンする。なお、時間距離併用フラグFを「1」に設定する際に、オンボードメモリ11(のRAM)における時間カウントを再開する。
以上の説明からも明らかなように、本実施形態の賃走料金試算システム1では、図2のフローチャートにおけるステップS15乃至ステップS23が、請求項中のカウント部に相当する処理となっている。
続いて、タクシーメータ3のCPU9がオンボードメモリ11のROMに格納されたプログラムにしたがってタクシー車両の運行終了時に行う、演算パルスのカウント値のメモリカードへの書き込み処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
タクシーメータ3のCPU9は、例えば、タクシーメータ3の入庫操作、あるいはタクシーメータ3に接続された外部機器(入力装置)29の入庫操作により、入庫の指示が入力されたか否かを確認する(ステップS31)。
入庫の指示が入力されていない場合は(ステップS31でNO)、一連の処理を終了し、入庫の指示が入力された場合は(ステップS31でYES)、時間帯別に分類した演算パルスのカウント値を、オンボードメモリ11(のRAM)から出力させる(ステップS33)。
そして、出力させた時間帯別の演算パルスのカウント値を、カードリーダライタ17によりメモリカード5に書き込ませた後(ステップS35)、一連の処理を終了する。
以上の説明からも明らかなように、本実施形態の賃走料金試算システム1では、図4のフローチャートにおけるステップS33及びステップS35が、請求項中の出力部に相当する処理となっている。
次に、管理用コンピュータ7のCPUが不図示の外部記憶装置にインストールされたプログラムにしたがって行う賃走料金の試算処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。
まず、管理用コンピュータ7のCPUは、カードリーダライタ31によりメモリカード5から時間帯別の演算パルスのカウント値を読み込んで、オンボードメモリ11(のRAM)に一時記憶させる(ステップS41)。そして、管理用コンピュータ7のCPUは、賃走料金の試算に適用する料金制を、不図示の外部記憶装置に記憶された複数の料金制の中から、キーボードやマウスの操作によって選択する(ステップS43)。
さらに、管理用コンピュータ7のCPUは、メモリカード5から読み込んだ時間帯別の演算パルスのカウント値と、キーボードやマウスの操作によって選択した試算用の料金制とを用いて、賃走料金を各営業走行毎に試算する(ステップS45)。賃走料金の試算には、上述した式(1)を試算用の料金制に対応する内容としたものを用いることができる。
さらに、管理用コンピュータ7のCPUは、試算した賃走料金をディスプレイに表示させて(ステップS47)、一連の処理を終了する。
以上の説明からも明らかなように、本実施形態の賃走料金試算システム1では、図5のフローチャートにおけるステップS41が、請求項中の読出部に相当する処理となっている。そして、図5中のステップS41の処理を実行する管理用コンピュータ7とカードリーダライタ31とで、請求項中の読出部が構成されている。
また、本実施形態では、図5中のステップS43が請求項中の料金制選択部二層右党する処理となっており、図5中のステップS45が請求項中の料金制選択部に相当する処理となっている。
以上のように構成された本実施形態の賃走料金試算システム1では、タクシーメータ3で現行の料金制による賃走料金が計算されると、その計算の際に生成された演算パルスの生成数が、営業走行毎に、生成された時間帯別に分類してカウントされる。
そして、営業走行毎の時間帯別に分類された演算パルスのカウント値が、タクシー車両の入庫時にメモリカード5に記憶される。
また、管理用コンピュータ7において賃走料金の試算用のプログラムを起動し、メモリカード5から営業走行毎の時間帯別に分類された演算パルスのカウント値を読み出すと、キーボードあるいはマウスの操作等で指定した試算用の料金制を適用した賃走料金が、管理用コンピュータ7において試算されてディスプレイに表示される。
したがって、管理用コンピュータ7において賃走料金を試算するのに当たり、現行の料金制の賃走料金を計算するタクシーメータ3と共に試算用の料金制を適用して賃走料金を計算するタクシーメータをタクシー車両に搭載して、各メータを同時に操作する必要をなくすことができる。
よって、料金制改訂後の賃走料金の試算にかかるタクシー車両の乗務員の業務負担及びタクシー業者の費用負担を抑制することができる。
なお、本実施形態では、営業走行中にカウントした演算パルスのカウント値をタクシー車両の入庫時にメモリカード5に記憶させて、管理用コンピュータ7にオフラインで受け渡す場合について説明した。
しかし、営業走行毎にカウントした時間帯別の演算パルスのカウント値を、無線通信(無線LAN、公衆無線電話回線網等)によってタクシーメータ3から管理用コンピュータ7に出力するように構成してもよい。
その場合、タクシーメータ3のCPU9は、タクシー車両の入庫時に、例えば図6のフローチャートに示す送信処理のように、入庫の指示が入力された場合に(ステップS51でYES)、時間帯別に分類した演算パルスのカウント値を、不図示の通信ユニットから管理用コンピュータ7に向けて送信させる(ステップS53)。
また、管理用コンピュータ7のCPUは、図5のステップS41で行った、カードリーダライタ31によりメモリカード5から営業走行毎の時間帯別に分類した演算パルスのカウント値を読み込む処理の代わりに、例えば図7のフローチャートに示す賃走料金の試算処理のステップS61の処理を行う。
即ち、図7のステップS61において、不図示の通信ユニットを介して、タクシーメータ3が送信した営業走行毎の時間帯別に分類した演算パルスのカウント値を受信する。そして、以後、管理用コンピュータ7のCPUは、図5のステップS43乃至ステップS49で行った処理と同じ処理を、図7のステップS63乃至ステップS69において行う。
この場合は、図6のフローチャートにおけるステップS53が、請求項中の出力部に相当する処理となる。
このように構成した場合にも、営業走行毎の時間帯別に分類した演算パルスのカウント値をメモリカード5によりオフラインでタクシーメータ3から管理用コンピュータ7に受け渡す上述の実施形態の賃走料金試算システム1と同様の効果を得ることができる。
なお、タクシーメータ3が営業走行毎にカウントした時間帯別の演算パルスのカウント値の送信先は、管理用コンピュータ7でなく、有線LAN等で管理用コンピュータ7と接続されたデータサーバとしてもよい。その場合、タクシーメータ3の送信内容は、無線通信回線を用いてデータサーバに送信され、保管される。このため、管理用コンピュータ7は、タクシーメータ3が送信した営業走行毎の時間帯別に分類した演算パルスのカウント値を、データサーバの保管データの中から抽出して取得することになる。
なお、本実施形態では、営業走行毎の時間帯別に分類した演算パルスのカウント値を、タクシー車両の入庫時にタクシーメータ3から管理用コンピュータ7にまとめて受け渡す場合について説明した。
しかし、タクシー車両の入庫を待たず、受け渡し条件が整う度に、それまでの間にカウントした、区切りの良いところまでの、営業走行毎の時間帯別に分類した演算パルスのカウント値を、タクシーメータ3から管理用コンピュータ7に受け渡す構成としてもよい。
タクシーメータ3から管理用コンピュータ7への、営業走行毎の時間帯別に分類した演算パルスのカウント値の受け渡しを、上述したデータサーバが仲介する場合も、同様にすることができる。
その場合は、タクシー車両がタクシー業者の営業所(車庫)から離れた場所にいるのが通常であるため、オフラインによる受け渡しは現実的でない。よって、公衆無線電話回線網等を利用して、タクシーメータ3から管理用コンピュータ7に無線で受け渡すのが現実的である。但し、他にも実現可能な方法がある場合、その方法を用いることは否定しない。
ところで、近年では、車両の乗客から視認可能な箇所に設置されたタブレット端末、あるいは、乗客が携帯する携帯端末(スマートフォン、タブレット端末)等の外部デバイスの表示部に、タクシーメータ3で計算した賃走料金を表示させることも行われている。これらの外部デバイスでは、例えば、専用のアプリケーションソフトウェアをインストールすることで、タクシーメータ3から無線で受信した信号に基づいて、自身の表示部に賃走料金を表示させることができる。
外部デバイスの表示部に賃走料金を表示することが普及すると、タクシーメータ3から表示部15がなくなった新しい態様のタクシーメータが出現し、賃走料金の計算までをタクシーメータが行うようになることも考えられる。そのような態様のタクシーメータであっても、上述した実施形態のタクシーメータ3と同様に、演算パルスの生成、営業走行毎の演算パルス数のカウント、及び、カウントした演算パルス数の管理用コンピュータ7へのオフライン又はオンラインによる受け渡しを行うことができる。
したがって、自らは賃走料金の表示部を持たないタクシーメータであっても、請求項中の賃走料金計算装置に該当することは、明らかである。
なお、本実施形態では、タクシー車両に搭載したタクシーメータが計算する賃走料金とは異なる料金制を適用した賃走料金を試算する場合について説明した。
しかし、本発明は、例えば、運転代行業者が伴走車に搭載した料金メータで算出する賃走料金(運転代行料金)とは異なる料金制を適用した賃走料金(運転代行料金)を試算する場合等にも適用可能である。