JP7150082B1 - 船舶の方位制御装置および方位制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】情報処理に過大な記憶容量と計算時間を必要とせず、変化する船体パラメータをオンラインで算定して制御ゲインを適応的に調整し、外乱に対応できる方位制御装置および方位制御方法を得ることを目的とする。【解決手段】方位指令生成部によって生成された方位指令信号、ヨー角信号、ヨー角速度信号、に基づいて船舶を進行すべき方位へ向かわせる舵角指令信号を出力する方位制御部、舵角指令信号に基づいて舵を制御する舵角制御部、舵角検出部によって出力された舵角信号に対するヨー角信号およびヨー角速度信号の周波数特性を算定して方位制御部の制御ゲインを調整する制御ゲイン調整部、を備えた船舶の方位制御装置。【選択図】図1

Description

本願は、船舶の方位制御装置および方位制御方法に関するものである。
船舶の進む方向を指定の進路に乗せ、維持するべく操舵する方位制御装置が存在する。船舶の方位制御装置のことを、船舶の自動操舵装置またはオートパイロットとも称する。船舶の方位制御装置は、船舶の重心を通る上下方向の軸の周りの回転角度であるヨー角を、指示された方位に一致させるように舵を制御する。
船舶の方位制御装置は、指示方位に船首方位(ヨー角)を追従させるために舵を制御する装置である。指示方位と船首方位との偏差に対して、所定の制御ゲインを乗じて舵角指令を生成し、舵角指令に従って舵を制御する。船舶の方位制御装置は、舵駆動部によって舵を駆動する。舵駆動部は舵を駆動し、船体にヨーレートを誘起させて船首方位を変化させる。
船舶の方位制御装置では、潮流、波浪、風雨等の船舶への外乱要因に対して、船体の振動が助長されることを予防するために、制御ゲインを最適化しなければならない。制御ゲインは、船体パラメータに基づいて決定することができる。しかしながら、船体パラメータは、船速、喫水の変化等によって変動する。
そこで、船体パラメータの変化への対応が必要とされる。実際の船舶を航走させて、入力データ(舵角)と出力データ(船首方位)を蓄積する。蓄積されたデータ群に対して、予め船体パラメータを仮決めして構築した船体モデルに入力データ(舵角)を流し込み、出力データ(船首方位)を算出する。この算出された船首方位と、実際に計測した船首方位との比較結果から、船体パラメータを調節(修正)する技術が開示されている(例えば特許文献1)。
特開2006-321455号公報
しかしながら、特許文献1の船舶の方位制御装置にあっては、舵角指令と船首方位のデータを蓄積してSQP(Sequential Quadratic Programming)のアルゴリズムを用いて船体パラメータを同定するため、船舶の方位制御装置の情報処理には多くの記憶容量と計算時間を必要とする。その結果、大きなメモリ容量と高速かつ高機能の演算処理装置が必要となり、船舶の方位制御装置のコストアップにつながる。また、同定対象とする船体モデルに、単純な1次のモデルを使用すると、変針時にオーバーシュートが発生しない。このため、船速によってヨーイング振動が生じるような船体には対応できないといった課題がある。
また、制御ゲインの最適化のためには、船速が変化した際に船体パラメータを再度算定する必要がある。しかし、先行技術の方法では記憶容量と計算時間を要するため、即座に船体パラメータの修正ができないといった課題がある。
本願は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、情報処理に過大な記憶容量と計算時間を必要とせず、変化する船体パラメータをオンラインで算定して制御ゲインを適切に調整し、外乱に対応できる方位制御装置および方位制御方法を得ることを目的とする。
本願に係る船舶の方位制御装置は、
船舶が進行すべき方位を示す方位指令信号を生成する方位指令生成部、
船舶の重心を通る上下方向の軸の周りの回転角度を示すヨー角信号を出力するヨー角検出部、
船舶の重心を通る上下方向の軸の周りの回転角速度を示すヨー角速度信号を出力するヨー角速度検出部、
船舶の舵の角度を示す舵角信号を出力する舵角検出部、
方位指令生成部によって生成された方位指令信号と、ヨー角検出部によって出力されたヨー角信号と、ヨー角速度検出部によって出力されたヨー角速度信号と、に基づいて船舶を進行すべき方位へ向かわせる舵角指令信号を出力する方位制御部、
方位制御部によって出力された舵角指令信号に基づいて舵を制御する舵角制御部、および、
舵角検出部によって出力された舵角信号に対するヨー角信号およびヨー角速度信号の周波数特性を算定して方位制御部の制御ゲインを調整する制御ゲイン調整部、を備え
方位制御部は、
方位指令信号と、ヨー角信号との偏差を0とするヨー角速度指令信号を演算する第一の制御演算部、
第一の制御演算部によって演算されたヨー角速度指令信号と、ヨー角速度信号との偏差を0とするフィードバック舵角指令信号を演算する第二の制御演算部、
ヨー角速度指令信号に基づいてフィードフォワード舵角指令信号を演算する第三の制御演算部、および、
第二の制御演算部によって演算されたフィードバック舵角指令信号と、第三の制御演算部によって演算されたフィードフォワード舵角指令信号を加算して舵角指令信号を出力する加算器、を有するものである。
また、本願に係る船舶の方位制御方法は、
方位指令生成部によって船舶が進行すべき方位を示す方位指令信号が生成されるステップと、
ヨー角検出部によって船舶の重心を通る上下方向の軸の周りの回転角度を示すヨー角信号が出力されるステップと、
ヨー角速度検出部によって船舶の重心を通る上下方向の軸の周りの回転角速度を示すヨー角速度信号が出力されるステップと、
舵角検出部によって船舶の舵の角度を示す舵角信号が出力されるステップと、
方位制御部によって方位指令生成部が生成した方位指令信号と、ヨー角検出部が出力したヨー角信号と、ヨー角速度検出部が出力したヨー角速度信号と、に基づいて船舶を進行すべき方位へ向かわせる舵角指令信号が出力されるステップと、
舵角制御部によって舵角指令信号に基づいて舵が制御されるステップと、
制御ゲイン調整部によって、舵角検出部によって出力された舵角信号に対してヨー角信号およびヨー角速度信号の周波数特性が算定され、方位制御部の制御ゲインが調整されるステップと、を有し、
方位制御部によって舵角指令信号が出力されるステップは、
第一の制御演算部によって、方位指令信号と、ヨー角信号との偏差を0とするヨー角速度指令信号が演算されるステップと、
第二の制御演算部によって、第一の制御演算部によって演算されたヨー角速度指令信号と、ヨー角速度信号との偏差を0とするフィードバック舵角指令信号が演算されるステップと、
第三の制御演算部によって、ヨー角速度指令信号に基づいてフィードフォワード舵角指令信号が演算されるステップと、
加算器によって、第二の制御演算部によって演算されたフィードバック舵角指令信号と、第三の制御演算部によって演算されたフィードフォワード舵角指令信号が加算されて舵角指令信号が出力されるステップと、を有するものである。
本願に係る船舶の方位制御装置および方位制御方法によれば、情報処理に過大な記憶容量と計算時間を必要とせず、変化する船体パラメータをオンラインで算定して制御ゲインを適切に調整し、外乱に対応できる方位制御装置および方位制御方法を得ることができる。
実施の形態1に係る方位制御装置の構成図である。 実施の形態1に係る方位制御装置のハードウェア構成図である。 実施の形態1に係る方位制御装置が設置された船舶の座標系の説明図である。 実施の形態1に係る方位制御装置の基本動作を示すフロー図である。 実施の形態1に係る方位制御装置の方位指令生成部の構成を示すブロック図である。 実施の形態1に係る方位制御装置の方位制御部の構成を示すブロック図である。 実施の形態1に係る方位制御装置の制御演算部の構成を示すブロック図である。 実施の形態1に係る方位制御装置の制御ゲイン調整部の構成を示すブロック図である。 実施の形態1に係る方位制御装置の船舶特性情報を示す図である。 実施の形態1に係る方位制御装置の周波数特性算定部の構成を示すブロック図である。 実施の形態2に係る方位制御装置の構成図である。 実施の形態2に係る方位制御装置の周波数特性算定部の構成を示すブロック図である。
以下、船舶の方位制御装置および方位制御方法の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。
1.実施の形態1
<方位制御装置の構成>
図1には実施の形態1に係る船舶の方位制御装置10を搭載した船舶1の構成例を示す。船舶1に設置された方位制御装置10は、操作装置30およびセンサ群20から操作情報CIと各種センサ情報を受信し、舵角駆動指令信号RUADを出力する。方位制御装置10は、方位指令生成部100、方位制御部200、ゲイン調整部300と周波数特性算定部400から成る制御ゲイン調整部500、舵角制御部600より構成される。方位制御装置10は、センサ群20から各検出部の信号を入力し、方位指令生成部100から進行すべき方位指令信号DRCを受けとる。そして、舵角駆動部40に舵角駆動指令信号RUADを出力して舵角を制御する。舵角駆動部40は舵角駆動指令信号RUADに応じて船舵を操作する。これにより、方位制御装置10は、進行すべき方位指令信号DRCを出力することで、船舶1の方位を変更または保持せしめるものである。
図1において、船舶1には、船舶を推進するために図示されない推進器が備えられている。推進器の出力は操作装置30から操作される。船舶1の推進器には、船外機を用いることができる。船外機は、船舶の推進、操舵機構として、エンジンの下にスクリューが一体に設けられている。そして、船外機は本体が船体の外側に取り付けられた推進装置である。船外機による進行方位の制御は、船外機本体の船体への取り付け角度を変えて実施する。船外機は小型船舶に多く採用される。船外機は複数機具備されていてもよい。
実施の形態1に係る方位制御装置10の適用は船外機を備えた船舶に限定されない。大型船には船内機を備えた場合が多く見られる。船内機は、エンジン等の駆動部が船体内部にあり、この駆動部と繋がれた回転方向が可変のスクリューが船外に露出し、舵がスクリューと別体となっている形態の推進、操舵機構である。実施の形態1に係る方位制御装置10は、船内機による推進装置を備えた船舶にも適用可能である。
その他船内外機を備えた船舶が存在する。船内外機は、エンジン等の駆動部が船内にあり、船外でこの駆動部と繋がれた回転方向が可変のスクリューと舵とが一体となっている形態の推進、操舵機構である。実施の形態1に係る方位制御装置10は、船内外機を備えた船舶にも適用可能である。
操作装置30は、操船者が船舶の航走の初期条件と終端条件を入力する場合にも用いられる。センサ群20は、例えば、船舶1の緯度・経度を計測する全球測位衛星システム(以下、GNSS(Global Navigation Satellite System)と称す)および船舶1の方位角を計測する磁方位センサから構成される。センサ群20は、船舶1の角速度を計測するジャイロ、船舶1の並進加速度を計測する加速度センサ等に接続された慣性航法装置を備えていてもよい。
センサ群20として具体的には、船舶1の重心を通る上下方向の軸の周りの回転角度を示すヨー角信号Yを出力するヨー角検出部21が設けられている。船舶1の重心を通る上下方向の軸の周りの回転角速度を示すヨー角速度信号YRを出力するヨー角速度検出部22が設けられている。船舶1の船速を示す船速信号Vを出力する船速検出部23が設けられている。さらに船舶1の舵角を示す舵角信号RUAを出力する舵角検出部24を設けてもよい。ここで、ヨー角速度検出部22として、角速度検出のためのセンサを独自に備えてもよいが、ヨー角検出部21の出力であるヨー角信号Yを時間微分した値から求めることとしてもよい。船速検出部23は船速を、スクリュー回転速度計、対水面速度計、対気速度計、加速度センサ、GNSS、電波またはレーザによるドップラ計測器等から求めることもできる。
<方位制御装置の機能>
方位制御装置10は、船舶が進行すべき方位を示す方位指令信号DRCを生成する方位指令生成部100を備える。方位制御装置10は、センサ群20よりヨー角信号Y、ヨー角速度信号YR、舵角信号RUA、船速信号Vを入力する。方位制御装置10は、操作装置30より操作情報CIを入力する。
方位指令生成部100によって生成された方位指令信号DRCに対して、方位制御部200はヨー角信号Y、ヨー角速度信号YR、船速信号Vを入力して、安定性と応答性を両立した制御ゲインで舵角指令信号RUACを出力する。舵角制御部600は舵角指令信号RUACを入力して舵角駆動指令信号RUADを生成して、舵角駆動部40へ出力し船舶1の舵を制御する。
方位制御部200は、操作装置30からの操作情報CIによって船舶1の舵角信号RUAに対するヨー角信号Y、ヨー角速度信号YRの周波数特性を取得するための指示を出力する。具体的には、矩形波状または鋸波状の舵角指令信号RUACを出力し、これに対する、ヨー角信号Y、ヨー角速度信号YRの出力データを制御ゲイン調整部500で取得する。
制御ゲイン調整部500は、取得した出力データから周波数特性を算定し、これに応じて、方位制御部200の制御ゲインを調整する。この調整によって、船舶1の船体パラメータが、船速、喫水の変化等によって変動しても、この変動に対応した制御ゲインを獲得することが可能となる。その結果、外乱に対応できる方位制御装置および方位制御方法を得ることができる。
ここでは、船舶1の舵角信号RUAに対するヨー角信号Y、ヨー角速度信号YRの周波数特性を取得するための指示を、操作装置30から操作情報CIによって行う場合の説明をした。しかし、方位制御部200が船舶1の安定した同一方位への航走継続を検出した場合に、必要に応じて周波数特性を取得する判断をし、矩形波状または鋸波状の舵角指令信号RUACを出力することとしてもよい。例えば方位制御部200が、所定時間ごとに、または方位制御装置10の起動ごとに、周波数特性の取得動作を行い、制御ゲイン調整部500に周波数特性を算定させ、方位制御部200の制御ゲインを調整させることとしてもよい。
<方位制御装置のハードウェア構成>
図2は、方位制御装置10のハードウェア構成図である。図2のハードウェア構成は、方位制御装置10aにも適用できる。以下では代表して方位制御装置10について説明する。本実施の形態では、方位制御装置10は、船舶の方位を制御する電子制御装置である。方位制御装置10の各機能は、方位制御装置10が備えた処理回路により実現される。具体的には、方位制御装置10は、処理回路として、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置90(コンピュータ)、演算処理装置90とデータのやり取りをする記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入力する入力回路92、および演算処理装置90から外部に信号を出力する出力回路93等を備えている。
演算処理装置90として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、各種の論理回路、および各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、演算処理装置90として、同じ種類のものまたは異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。記憶装置91として、演算処理装置90からデータを読み出しおよび書き込みが可能に構成されたRAM(Random Access Memory)、演算処理装置90からデータを読み出し可能に構成されたROM(Read only Memory)等が備えられている。記憶装置91としては、フラッシュメモリー、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等を使用してもよい。入力回路92は、センサ群20、操作装置30の出力信号を含む各種のセンサ、スイッチ、および通信線が接続され、これらセンサ、スイッチの出力信号と通信情報を演算処理装置90に入力するA/D変換器、通信回路等を備えている。出力回路93は、舵角駆動部40を含む駆動装置に演算処理装置90からの制御信号を出力する駆動回路等を備えている。
方位制御装置10が備える各機能は、演算処理装置90が、ROM等の記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置91、入力回路92、および出力回路93等の方位制御装置10の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、方位制御装置10が用いる閾値、判定値等の設定データは、ソフトウェア(プログラム)の一部として、ROM等の記憶装置91に記憶されている。方位制御装置10の有する各機能は、それぞれソフトウェアのモジュールで構成されるものであってもよいが、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって構成されるものであってもよい。
<座標系とヨー角>
図3は、実施の形態1に係る方位制御装置10が設置された船舶1の座標系の説明図である。座標系X1-Y1-Z1は、海抜0mの地上または水上における固定点を基準にした座標系を示す。座標系X0-Y0-Z0は船舶の船体を基準にした座標系を示す。これらの座標系は右手系である。地球上の海上、河川または湖沼の水面上を航行する船舶の位置は、地球の表面上にあり地球が球体である影響を受ける。しかし、海抜0mの地上または水上の固定点と船舶1の距離が小さければ、両者は同一平面上にあるとみなして単純化して考えることができる。
海抜0mの地上または水上における固定点の座標系X1-Y1-Z1は、X1が南北方向(矢印は北)を示し、Y1が東西方向(矢印は東)を示す。Z1は垂直方向(矢印は下)を示す。船舶1は、X1-Y1平面上に存在し、船体を基準にした座標系X0-Y0-Z0は、X0が船体の重心を通る前後方向(矢印は前であり船首方向)を示し、Y0が船体の重心を通る左右方向(矢印が右で右舷方向)を示し、Z0が船体の重心を通る船体構造の上下方向(矢印は下)を示す。
ヨー角YA(方位角とも言う)はZ0軸周りの回転角度であり、ヨー角速度(ヨーレート)はZ0軸周りの回転角速度である。
船舶が進行すべき方位が方位指令生成部100によって指示された場合、方位指令信号DRCは、海抜0mの地上または水上における固定点の座標系X1-Y1-Z1のX1方向(図2では北)を基準として示される。また、船舶1の船体の方向はX1方向を基準としてヨー角で示される。例えば船舶が北東に進路を取るべく指示された場合は、X1方向である北を基準として時計回りに45度の角度のヨー角YAを維持するように運航する。
海抜0mの地上または水上の固定点と船舶1の距離が大きければ、両者は同一平面上にあると単純化して考えることができず、地球が球体であることを考慮して計算する必要がある。この場合でも、船舶が置かれた水面上で北を基準として指示されたヨー角を維持するように運航することは同じである。
<基本動作を示すフローチャート>
図4は、実施の形態1に係る方位制御装置10の基本動作を示すフローチャートである。方位制御部200は、操作装置30からの指示、または方位制御部200の判断によって船体パラメータの取得による制御ゲインの調整を行う。
方位制御部200は調整を実施しなくても、初期状態で規範伝達関数が設定されているので、方位指令生成部100の指示に基づいて、舵角指令信号RUACを算出することができる。しかし、船舶1の舵角信号RUAに対するヨー角信号Y、ヨー角速度信号YRの周波数特性を取得することによって、方位制御部200の制御ゲインを最新の船舶1の状態に対応して調整することができる。
図4のフローチャートは、方位制御装置10が船体パラメータの取得による制御ゲインの調整を行うたびに実行される。ステップS100で、航走中において、方位制御部200が舵角指令信号RUACを矩形波状または鋸波状の舵角指令として出力する。
ステップS101では、周波数特性算定部400が舵角信号RUAに対するヨー角信号Y、ヨー角速度信号YRの時系列データを取得する。周波数特性算定部400で船舶特性情報FCとして周波数特性を算定する。このとき、同時に船速信号Vのデータも取得して、船速に応じた周波数特性を算定することとしてもよい。
ステップS103では、目標応答性能情報TCを読み出す。目標応答性能情報TCは、船舶1について予め定められており、目標応答性能情報TCから基本となる規範伝達関数が設定される。
ステップS104では、ステップS101で算定した周波数特性(船舶特性情報FC)を用いて、目標応答性能情報TCから設定した規範伝達関数をもとに制御ゲイン情報GIを算出する。ステップS105で、制御ゲイン情報GIを用いて方位制御部200で方位制御演算が実行されて舵角指令信号RUACが出力される。舵角指令信号RUACに応じて舵角制御部600から舵角駆動指令信号RUADが出力され舵角駆動部40が制御されることによって船舶1の方位制御がされる。このとき、ステップS101からステップS105において同時に船速信号Vのデータを取得して、船速に応じた制御ゲイン情報GIを算定することとしてもよい。
船舶の方位制御装置10を構成する方位指令生成部100、方位制御部200、ゲイン調整部300、および周波数特性算定部400について、その機能を詳細に説明する。
<方位指令生成部>
図5は、実施の形態1に係る方位制御装置10の方位指令生成部100の構成を示すブロック図である。方位指令生成部100は、運動条件設定部101と方位演算部102で構成される。この運動条件設定部101は、船舶1の航走の初期条件と終端条件を設定するもので、操船者が船舶1の操作装置30に入力することにより操作情報CIによって設定される。
操船者は船舶1の操作装置30によって、航走開始前の初期状態と、所望の航走が完了した時点での終端状態における姿勢角(方位角またはヨー角と同義)、角速度(姿勢角の1回時間微分)および角加速度(姿勢角の2回時間微分)の情報を設定する。この条件設定は、姿勢角、角速度および角加速度を数値化した値で与えてもよい。GNSSのタッチパネル化されたユーザインターフェースを用いて設定することもできる。初期状態は、センサ群20の検出値をセンサ群情報として自動的に取込み、終端状態のみをユーザインターフェース画面でタッチ入力することによって設定してもよい。
方位演算部102は、運動条件設定部101の出力する初期状態の情報SCIと終端状態の情報ECIとを受けて、方位指令信号DRCを演算する。ここで、方位指令信号DRCの演算方法は、複数考えられる。例えば、運動条件設定部101で得られた船舶1の初期状態の情報SCIと終端状態の情報ECIにおける姿勢角、角速度および角加速度に基づいて、時間の多項式として与えられた軌道を演算することができる。
また、初期状態の情報SCIと終端状態の情報ECIを最短時間で結ぶ直線軌道を演算することもできる。初期状態と終端状態の間を最少燃料で到達可能な軌道を演算することもできる。すなわち、初期状態から終端状態に遷移する際、予め設定された評価関数を最小化する最適な軌道、例えば時間最短の意味で最適な軌道または最少燃料の意味で最適な軌道として演算してもよい。
<方位制御部>
図6は実施の形態1に係る方位制御装置10の方位制御部200の構成を示すブロック図である。方位制御部200は、制御演算部210およびセンサ情報処理部220で構成される。センサ情報処理部220は、センサ群20の出力であるヨー角信号Yとヨー角速度信号YRを制御演算部210へ出力する。このとき、同時に船速信号Vのデータも取得して、制御演算部210へ出力することとしてもよい。
センサ情報処理部220は、センサ群20から送られてきた各種センサの情報を、シリアル信号からパラレル信号に変換する機能を有していてもよい。また、ヨー角信号Yを時間微分してヨー角速度信号YRを生成する機能を有していてもよい。
制御演算部210は、方位指令生成部100の出力である方位指令信号DRCと、ゲイン調整部300の出力である制御ゲイン情報GI(GI1、GI2、GI3)、センサ情報処理部220の出力であるヨー角信号Yとヨー角速度信号YRとに基づいて、舵角指令信号RUACを舵角制御部600へ出力する。このとき、同時に船速信号Vのデータに応じて制御ゲインを切替えて、舵角指令信号RUACを算出し出力することとしてもよい。
<制御演算部>
図7は、実施の形態1に係る方位制御装置10の制御演算部210の構成を示すブロック図である。制御演算部210は、第一の制御演算部211、第二の制御演算部212、第三の制御演算部213、および加算器214からなる。
第一の制御演算部211は、DRCとヨー角信号Yとの偏差を零とするように、第一の制御ゲイン情報GI1を用いた公知のP(Proportional)制御でヨー角速度指令信号YRCを演算し出力する。第二の制御演算部212は、第一の制御演算部211の出力であるヨー角速度指令信号YRCとヨー角速度信号YRのヨー角速度偏差を零とするように、第二の制御ゲイン情報GI2を用いた公知のPI(Proportional Integral)制御でFB(Feedback)舵角指令FBCを演算し出力する。
第三の制御演算部213は、第一の制御演算部211の出力であるヨー角速度指令信号YRCと第三の制御ゲイン情報GI3に基づいて、FF(Feedforward)舵角指令FFCを演算し出力する。加算器214は、第二の制御演算部212の出力であるFB舵角指令FBCに第三の制御演算部213の出力であるFF舵角指令FFCを加算する。
加算器214は、加算した結果として舵角指令信号RUACを出力する。制御演算部210をこのような構成にすることで、第一および第二の制御演算部211、212によって方位安定性を向上させ、第三の制御演算部213によって方位応答性を向上させることができる。また、上記の第一の制御演算部211、第二の制御演算部212、第三の制御演算部213について、同時に船速信号Vのデータに応じて制御ゲインを切替えて、出力することとしてもよい。
<制御ゲイン調整部>
図8は、実施の形態1に係る方位制御装置10のゲイン調整部300の構成を示すブロック図である。船舶1の方位運動は、一般的に舵角信号RUAに対するヨー角速度信号YRの周波数特性として特徴付けることができる。例えば、特許文献1では、舵角信号RUAに対するヨー角速度信号YRの周波数特性として、1次のモデルが扱われている。
しかしながら、船舶1の周波数特性は、船舶1の運動状態、例えば船舶の速度(以下、船速)によって大きく変化し、例えば、舵角を所定量だけ所定速度で切った場合、船速が低い領域ではヨー角速度信号YRが小さく、船速が高い領域ではヨー角速度信号YRが大きい性質がある。したがって、船速による制御応答のばらつきを小さくしつつ、制御系の応答を決める交差周波数を船速に依らず一定とするためには、制御演算部210に入力する制御ゲイン情報を船速に応じて可変とする必要がある。
図9は、実施の形態1に係る方位制御装置10の船舶特性情報を示す図である。ここでは、舵角信号RUAに対するヨー角速度信号YRの周波数特性をゲインと位相について示している。船速が低い低速の領域(実線で示す)では、1次のモデルで比較的近似しやすい特性を有す。しかしながら、船速が高い高速の領域(破線で示す)では、ゲインが増大するとともに、条件によっては高周波側に緩やかなピークゲインを有する形状となり、1次のモデルでは近似できない。図9では、ヨー角速度信号YRの周波数特性を示したが、ヨー角信号Yについても同様なことが言える。
制御演算部210内の制御ゲイン情報GIを船速に応じて適切に設計ないし設定するために、ゲイン調整部300は、後述する周波数特性算定部400の出力である船舶特性情報と目標応答性能情報TCに基づき、制御ゲイン情報GIを演算し出力する。図8に示したゲイン調整部300は、規範伝達関数設定部301およびオンラインゲイン調整部302で構成される。
規範伝達関数設定部301は、任意に選定した目標応答性能情報TC、例えばゲイン交差周波数に基づいて、目標応答性能を達成する舵角信号RUAに対するヨー角信号Yの周波数特性を表す規範伝達関数と舵角信号RUAに対するヨー角速度信号YRの周波数特性を表す規範伝達関数を出力する。そして、オンラインゲイン調整部302は、前述した制御演算部210内の第一から第三の制御演算部(211~213)に係る制御ゲイン情報GI(GI1、GI2、GI3)を演算し出力する。
オンラインゲイン調整部302は、第一と第二の制御演算部211、212に係る制御ゲイン情報GI1、GI2を、後述する周波数特性算定部400の出力である船舶特性情報FCと、規範伝達関数設定部301の出力である規範伝達関数をもとに、例えば公知の部分的モデルマッチング法にて、算出する。
一方、第三の制御演算部213に係る制御ゲイン情報GI3は、船舶特性情報に基づいて、例えば舵角信号RUAに対するヨー角速度信号YRの周波数特性の逆モデルである、ヨー角速度信号YRに対する舵角信号RUAの周波数特性を利用して算出する。このとき、前記逆モデルが高次、例えば2回の時間微分を含む場合には、第三の制御演算部213の出力であるFF舵角指令FFCが急峻に変化することを抑えるため、ローパスフィルタまたは移動平均処理を逆モデルの後段に備えても良い。また、逆モデル自体の次数を減らす近似処理を導入してもよい。
図8のゲイン調整部300の入力として、同時に船速信号Vのデータを追加し、船速に応じた制御ゲインをもとめることとしてもよい。
<周波数特性算定部>
図10は、実施の形態1に係る方位制御装置10の周波数特性算定部400の構成を示すブロック図である。周波数特性算定部400は、ゲイン調整部300に船舶特性情報FCを入力する。船舶1の方位運動の周波数特性は、一般的に船速に応じて変化する。
この周波数特性は、例えば、船舶1が一定の船速で航走中に、正弦波状の舵角指令信号RUACを周波数掃引しながら印加した時の、舵角信号RUAとヨー角速度信号YRの応答の増幅率と位相差から求める方法が考えられる。しかしながら、このような方法は、低周波での特性取得に膨大な計測時間と記憶容量を要すため、上記周波数特性を特徴付ける船舶特性情報FCをオンライン推定するには不向きである。
これに対し、周波数特性算定部400は、周波数特性において注目したい帯域幅で十分なパワーを有する矩形波状あるいは鋸波状の信号を舵角指令信号RUACとして所定時間だけ印加した時のセンサ群20の出力であるセンサ群情報を入力とし、船舶特性情報をオンライン推定し出力するものである。周波数特性算定部400は、データ処理部401と逐次推定フィルタ部402で構成される。
データ処理部401は、センサ群20の出力であるセンサ群情報に基づいて、舵角信号RUAとヨー角速度信号YR、および船速信号Vに重畳した観測雑音を除去するフィルタである。データ処理部401の出力は舵角信号RUAとヨー角速度信号YR、および船速信号V等の処理後データである。
逐次推定フィルタ部402は、データ処理部401の出力である処理後データに基づいて、船舶特性情報FCを出力する。例えば公知の逐次最小二乗法にて、舵角信号RUAに対するヨー角速度信号YRの周波数特性モデルを逐次的に推定し、船舶特性情報FCとして出力する。前述したとおり、船速が高い高速領域では、高周波側にピークゲインが発生する場合がある。このため、ピークゲインが発生するような高速領域に対応すべく、周波数特性モデルの次数を2次以上にして、舵角信号RUAに対するヨー角速度信号YRの周波数特性モデルを逐次的に推定する。舵角信号RUAに対するヨー角信号Yの周波数特性についても周波数特性モデルを同様に推定してもよい。
この逐次推定フィルタ部402で使用する手法は、前述した逐次最小二乗法に限定されない。公知のカルマンフィルタ、カルマンスムーザ、逐次部分空間同定法等、さまざまな逐次推定手法を利用して船舶特性情報FCを得ることができる。
SQP(Sequential Quadratic Programming)のアルゴリズムを始めとする従来のオフライン推定方法は、データを多く取りためてオフラインでパラメータを推定するため、記憶容量と計算時間を多く必要とする。このようなオフライン推定方法と比べ、逐次推定手法を用いることで、新しい計測データが得られるたびに過去の不要なデータを逐次削除することができる。このため、記憶容量の削減が可能となる。また、逐次的にデータを処理するために、扱うデータ量が少なくなり、計算時間が短くなる。
ここで、推定した周波数特性モデルをデータ処理部401の出力である船速に紐づけることで、船舶特性情報FCを船速の関数あるいはマップとして蓄積することができる。船舶特性情報FCを蓄積することで、船速が変化した場合、あるいは目標応答性能情報TCを変更した場合にも即応できる。再度周波数特性を推定することなく、蓄積した船舶特性情報FCをもとに制御ゲイン情報GIを適切に設計ないし設定することができる。
以上のように、実施の形態1に係る船舶1を所望の方位で航走させる船舶の方位制御装置10について説明した。方位制御装置10は、方位指令信号DRCを出力する方位指令生成部100と、船舶に搭載されたセンサ群20からのセンサ群情報を入力とし、船舶特性情報FCを出力する周波数特性算定部400と、周波数特性算定部400の出力である船舶特性情報FCに基づいて制御ゲイン情報GIを出力するゲイン調整部300を有する。そして、方位制御部200は方位指令生成部100の出力である方位指令信号DRCと、ゲイン調整部300による制御ゲイン情報GIと、センサ群20からのセンサ群情報と、に基づいて舵角指令信号RUACを出力する。
これによって、船速等で変化しえる制御対象のモデル化誤差に対して、即座に適切な制御ゲインを演算することができる。その結果、制御対象の特性変化に対してロバストな設計を可能とし、かつ方位制御に関わる外乱抑圧性能と目標値応答性能を適正に調整できる。さらに、潮流、波浪、風雨等の船舶への外乱要因で励起される振動を助長すること無く、安定な方位制御を実現できる。さらに、SQP等のアルゴリズムを用いて船体パラメータを同定する必要が無いため、船舶の方位制御装置の情報処理には過大な記憶容量と計算時間を必要としない。
2.実施の形態2
図11は、実施の形態2に係る方位制御装置10aの構成図である。図12は、実施の形態2に係る方位制御装置10aの周波数特性算定部400aの構成を示すブロック図である。
図11の、実施の形態2に係る方位制御装置10aにおいて、実施の形態1に係る方位制御装置10との違いは、方位制御部200への入力されるセンサ群情報が、制御ゲイン調整部500aの周波数特性算定部400aで演算された補正後のセンサ群情報である点である。その他の構成は、図1と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
周波数特性算定部400aは、データ処理部401と逐次推定フィルタ部402aで構成される。実施の形態1にて、逐次推定フィルタ部402の出力が船舶特性情報FCのみであった。しかし、実施の形態2によれば、逐次推定フィルタ部402aは、例えば公知の逐次最小二乗法、カルマンフィルタ、カルマンスムーザ、逐次部分空間同定法等の逐次推定手法を用いて、船舶特性情報FCを推定し出力しつつ、センサ群情報に重畳された観測雑音、システム雑音の影響を除去した補正後ヨー角速度信号YRcp及び補正後ヨー角信号Ycpを、補正センサ群情報(すなわち新たな制御量)として方位制御部200へ出力し、方位制御を行う。
このような構成とすることで、観測雑音等が重畳しやすいセンサ群を用いた場合においても、外乱抑圧性能と目標値応答性能の適正な調整が可能となり、安定な方位制御が実現できる。
前述の実施の形態1および2において、図1に記載された方位制御装置10の方位指令生成部100、方位制御部200、ゲイン調整部300、周波数特性算定部400、400a、舵角制御部600さらにはこれらを構成する図4から図8、および図10から図12に示された各機能からなる制御ブロックは、別々の制御回路で構成してもよい。あるいはこれらを1つの制御回路でまとめて構成してもよい。また、前述の制御ブロックにおいては、船外機および船内機の舵角を制御する舵角駆動機構までを含めて統合してもよい。これらの機能を実現する処理回路は、専用のハードウェアであってもよい。これらの機能は、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSPともいう)であっても構成可能である。
実施の形態1および実施の形態2に係る船舶の方位制御装置10、10aにおける、制御部分をソフトウェアで構成した場合、各実施の形態のそれぞれの制御部分の機能は、ソフトウェアを実行のたびにメモリにダウンロードして実行するタイプのソフトウェア、コンピュータの不揮発性記憶装置に固定化されたファームウェア、または前述のタイプのソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。前述のタイプのソフトウェアとファームウェアはプログラムとして記述され、メモリに格納される。処理回路であるプロセッサは、メモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。これらのプログラムは、前述の各部の手順、方法をコンピュータに実行させるものである。ここで、メモリとは、たとえば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等が該当する。
なお、前述の各制御ブロックの機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部を前述のタイプのソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、各実施の形態の処理回路は、ハードウェア、前述のタイプのソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、各機能を実現することができる。また処理に必要な各種情報は、ハードウェア構成の場合は回路に予め設定され、またソフトウェア構成の場合にはメモリに予め記憶させておく。
なお、上述の全ての実施の形態において、制御演算部の構成は、角度メジャーループのみ、角度メジャーループと角速度マイナーループの2重ループの他に、角度メジャーループと角速度マイナーループと角加速度マイナーループの3重ループとすることも当然可能である。このとき、角加速度は、センサ群情報の1つであるヨー角信号Yを2回時間微分で求めてもよく、あるいはヨー角速度信号YRを1回時間微分して求めてもよい。
さらに、全ての実施の形態において、制御器の形態は、古典制御系のみならず、状態フィードバック制御のための現代制御系も利用することができる。
本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
1 船舶、10、10a 方位制御装置、20 センサ群、21 ヨー角検出部、22 ヨー角速度検出部、23 船速検出部、24 舵角検出部、30 操作装置、40 舵角駆動部、100 方位指令生成部、200 方位制御部、210 制御演算部、211 第一の制御演算部、212 第二の制御演算部、213 第三の制御演算部、214 加算器、220 センサ情報処理部、300 ゲイン調整部、301 規範伝達関数設定部、302 オンラインゲイン調整部、400、400a 周波数特性算定部、401 データ処理部、402、402a 逐次推定フィルタ部、500、500a 制御ゲイン調整部、600 舵角制御部、CI 操作情報、DRC 方位指令信号、ECI 終端状態の情報、FBC FB舵角指令、FC 船舶特性情報、FFC FF舵角指令、GI1 第一の制御ゲイン情報、GI2 第二の制御ゲイン情報、GI3 第三の制御ゲイン情報、GI 制御ゲイン情報、RUA 舵角信号、RUAC 舵角指令信号、RUAD 舵角駆動指令信号、SCI 初期状態の情報、TC 目標応答性能情報、V 船速信号、Y ヨー角信号、Ycp 補正後ヨー角信号、YA ヨー角、YR ヨー角速度信号、YRcp 補正後ヨー角速度信号、YRC ヨー角速度指令信号

Claims (10)

  1. 船舶が進行すべき方位を示す方位指令信号を生成する方位指令生成部、
    前記船舶の重心を通る上下方向の軸の周りの回転角度を示すヨー角信号を出力するヨー角検出部、
    前記船舶の前記重心を通る上下方向の軸の周りの回転角速度を示すヨー角速度信号を出力するヨー角速度検出部、
    前記船舶の舵の角度を示す舵角信号を出力する舵角検出部、
    前記方位指令生成部によって生成された前記方位指令信号と、前記ヨー角検出部によって出力された前記ヨー角信号と、前記ヨー角速度検出部によって出力された前記ヨー角速度信号と、に基づいて前記船舶を前記進行すべき方位へ向かわせる舵角指令信号を出力する方位制御部、
    前記方位制御部によって出力された前記舵角指令信号に基づいて舵を制御する舵角制御部、および、
    前記舵角検出部によって出力された前記舵角信号に対する前記ヨー角信号および前記ヨー角速度信号の周波数特性を算定して前記方位制御部の制御ゲインを調整する制御ゲイン調整部、を備え
    前記方位制御部は、
    前記方位指令信号と、前記ヨー角信号との偏差を0とするヨー角速度指令信号を演算する第一の制御演算部、
    第一の制御演算部によって演算された前記ヨー角速度指令信号と、前記ヨー角速度信号との偏差を0とするフィードバック舵角指令信号を演算する第二の制御演算部、
    前記ヨー角速度指令信号に基づいてフィードフォワード舵角指令信号を演算する第三の制御演算部、および、
    前記第二の制御演算部によって演算された前記フィードバック舵角指令信号と、前記第三の制御演算部によって演算された前記フィードフォワード舵角指令信号を加算して舵角指令信号を出力する加算器、を有する船舶の方位制御装置。
  2. 前記船舶の速度を示す船速信号を出力する船速検出部を備え、
    前記制御ゲイン調整部は、前記船速検出部によって出力された前記船速信号に応じて前記周波数特性を算定し、前記方位制御部の制御ゲインを前記船速信号に応じて調整する請求項1に記載の船舶の方位制御装置。
  3. 前記ヨー角信号および前記ヨー角速度信号に重畳されたノイズを除去するノイズ除去部を備え、
    前記方位制御部は、前記ノイズ除去部によってノイズが除去された前記ヨー角信号および前記ヨー角速度信号に基づいて前記舵角指令信号を出力する請求項1または2に記載の船舶の方位制御装置。
  4. 前記制御ゲイン調整部は、2次以上の周波数特性モデルを用いて制御ゲインを調整する請求項1からのいずれか一項に記載の船舶の方位制御装置。
  5. 前記方位制御部は、前記方位指令信号と、前記ヨー角信号の偏差を0とする前記舵角指令信号を出力する請求項1からのいずれか一項に記載の船舶の方位制御装置。
  6. 船舶が進行すべき方位を示す方位指令信号を生成する方位指令生成部、
    前記船舶の重心を通る上下方向の軸の周りの回転角度を示すヨー角信号を出力するヨー角検出部、
    前記船舶の前記重心を通る上下方向の軸の周りの回転角速度を示すヨー角速度信号を出力するヨー角速度検出部、
    前記船舶の舵の角度を示す舵角信号を出力する舵角検出部、
    前記方位指令生成部によって生成された前記方位指令信号と、前記ヨー角検出部によって出力された前記ヨー角信号と、前記ヨー角速度検出部によって出力された前記ヨー角速度信号と、に基づいて前記船舶を前記進行すべき方位へ向かわせる舵角指令信号を出力する方位制御部、
    前記方位制御部によって出力された前記舵角指令信号に基づいて舵を制御する舵角制御部、および、
    前記舵角検出部によって出力された前記舵角信号に対する前記ヨー角信号および前記ヨー角速度信号の周波数特性を算定して前記方位制御部の制御ゲインを調整する制御ゲイン調整部、を備え、
    前記制御ゲイン調整部は、
    前記舵角信号に対し、前記ヨー角信号について目標とすべき周波数特性を有するヨー角信号規範伝達関数と、前記ヨー角速度信号について目標とすべき周波数特性を有するヨー角速度信号規範伝達関数と、を設定する規範伝達関数設定部と、
    前記規範伝達関数設定部によって設定された前記ヨー角信号規範伝達関数と前記ヨー角速度信号規範伝達関数に基づいて、前記方位制御部の制御ゲインを調整するオンラインゲイン調整部と、を有する船舶の方位制御装置。
  7. 方位指令生成部によって船舶が進行すべき方位を示す方位指令信号が生成されるステップと、
    ヨー角検出部によって前記船舶の重心を通る上下方向の軸の周りの回転角度を示すヨー角信号が出力されるステップと、
    ヨー角速度検出部によって前記船舶の前記重心を通る上下方向の軸の周りの回転角速度を示すヨー角速度信号が出力されるステップと、
    舵角検出部によって前記船舶の舵の角度を示す舵角信号が出力されるステップと、
    方位制御部によって前記方位指令生成部が生成した前記方位指令信号と、前記ヨー角検出部が出力した前記ヨー角信号と、前記ヨー角速度検出部が出力した前記ヨー角速度信号と、に基づいて前記船舶を前記進行すべき方位へ向かわせる舵角指令信号が出力されるステップと、
    舵角制御部によって前記舵角指令信号に基づいて舵が制御されるステップと、
    制御ゲイン調整部によって、前記舵角検出部によって出力された前記舵角信号に対して前記ヨー角信号および前記ヨー角速度信号の周波数特性が算定され、前記方位制御部の制御ゲインが調整されるステップと、を有し、
    前記方位制御部によって前記舵角指令信号が出力されるステップは、
    第一の制御演算部によって、前記方位指令信号と、前記ヨー角信号との偏差を0とするヨー角速度指令信号が演算されるステップと、
    第二の制御演算部によって、第一の制御演算部によって演算された前記ヨー角速度指令信号と、前記ヨー角速度信号との偏差を0とするフィードバック舵角指令信号が演算されるステップと、
    第三の制御演算部によって、前記ヨー角速度指令信号に基づいてフィードフォワード舵角指令信号が演算されるステップと、
    加算器によって、前記第二の制御演算部によって演算された前記フィードバック舵角指令信号と、前記第三の制御演算部によって演算された前記フィードフォワード舵角指令信号が加算されて舵角指令信号が出力されるステップと、を有する船舶の方位制御方法。
  8. 船速検出部によって前記船舶の速度を示す船速信号が出力されるステップを有し、
    前記制御ゲイン調整部によって前記方位制御部の制御ゲインが調整されるステップでは、前記制御ゲイン調整部によって、前記船速検出部により出力された前記船速信号に応じて、前記周波数特性が算定され、前記方位制御部の前記制御ゲインが前記船速信号に応じて調整される請求項に記載の船舶の方位制御方法。
  9. ノイズ除去部によって、前記ヨー角信号および前記ヨー角速度信号に重畳されたノイズが除去されるステップを有し、
    前記方位制御部によって前記舵角指令信号が出力されるステップでは、前記ノイズ除去部によりノイズが除去された前記ヨー角信号および前記ヨー角速度信号に基づいて前記舵角指令信号が出力される請求項7または8に記載の船舶の方位制御方法。
  10. 前記制御ゲイン調整部によって制御ゲインが調整されるステップでは、予め定められた期間、矩形波状または鋸波状の信号が方位指令生成部によって前記舵角指令信号として生成され、前記舵角制御部によって舵が制御され、前記舵角検出部によって出力された前記舵角信号に対する前記ヨー角信号および前記ヨー角速度信号の周波数特性が前記制御ゲイン調整部によって算定され前記方位制御部の制御ゲインが調整される、請求項からのいずれか一項に記載の船舶の方位制御方法。
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マリン向けボートコントロールユニット,三菱電機技報,日本,株式会社オーム社,2021年01月,Vol.95, No.1,p.19,ISSN 0369-2302
大津皓平,長谷川和彦,オートパイロットの評価と展望,第3回操縦性シンポジウムテキスト,日本,日本造船学会,1981年,pp.243-278
大津皓平,長谷川和彦: "オートパイロットの評価と展望", 第3回操縦性シンポジウムテキスト, JPN6022012296, 1981, JP, pages 243 - 278, ISSN: 0004768809 *
家城竜也,最新型自動操舵装置"BNAAC"について,海洋水産エンジニアリング,日本,海洋水産システム協会,2011年05月10日,第97号,pp.46-59,ISSN 1346-9800
家城竜也: "最新型自動操舵装置"BNAAC"について", 海洋水産エンジニアリング, vol. 第97号, JPN6022012297, 10 May 2011 (2011-05-10), JP, pages 46 - 59, ISSN: 0004768808 *

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