以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る時計1の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、時計1は、電池2、発振回路3、分周回路4、記憶部5、制御部10、第1モータ20a、第2モータ20b、第3モータ20c、輪列30a、輪列30b、輪列30c、第1指針40a、第2指針40b、および第3指針40cを備える。
制御部10は、パルス制御部11、および指針駆動部12を備える。
指針駆動部12は、第1指針駆動部121a、モータ負荷検出部122a、第2指針駆動部121b、モータ負荷検出部122b、第3指針駆動部121c、およびモータ負荷検出部122cを備える。
なお、時計用ムーブメントは、少なくとも記憶部5、制御部10、第1モータ20a、第2モータ20b、第3モータ20c、輪列30a、輪列30b、および輪列30cを備える。
なお、第1モータ20a、第2モータ20b、および第3モータ20cのうちの1つを特定しない場合は、モータ20という。また、輪列30a、輪列30b、および輪列30cのうちの1つを特定しない場合は、輪列30という。また、第1指針40a、第2指針40b、および第3指針40cのうちの1つを特定しない場合は、指針40という。また、第1指針駆動部121a、第2指針駆動部121b、および第3指針駆動部121cのうちの1つを特定しない場合は、指針駆動部121という。また、モータ負荷検出部122a、モータ負荷検出部122b、およびモータ負荷検出部122cのうちの1つを特定しない場合は、モータ負荷検出部122という。
なお、図1に示す時計1は、計時した時刻を指針40によって表示するアナログ時計である。図1に示した例では、時計1が3本の指針40を備える例であるが、指針40の数は、1本でも2本でも4本以上であってもよい。その場合、時計1は、指針駆動部121、モータ負荷検出部122、モータ20、および輪列30を、指針40毎に備えている。
電池2は、例えばリチウム電池や酸化銀電池等の、いわゆるボタン電池である。なお、電池2は、太陽電池、および太陽電池によって発電された電力を蓄電する蓄電池であってもよい。電池2は、電力を制御部10に供給する。
発振回路3は、例えば水晶の圧電現象を利用し、その機械的共振から所定の周波数を発振するために用いられる受動素子である。ここで、所定の周波数は、例えば32[kHz]である。
分周回路4は、発振回路3が出力した所定の周波数の信号を所望の周波数に分周し、分周した信号を制御部10に出力する。
記憶部5は、第1指針40a、第2指針40b、第3指針40cそれぞれの主駆動パルス、補助駆動パルスを記憶する。なお、主駆動パルス、補助駆動パルスについては、後述する。また、記憶部5は、第1指針40a、第2指針40b、第3指針40cそれぞれのサーチパルスを記憶する。なお、サーチパルスは、指針40の基準位置を検出する際に用いられる。サーチパルス、基準位置の検出については、後述する。記憶部5は、区間T1~T3における、モータ負荷検出部122が備える比較器Q7(図3参照)の出力の組み合わせと回転状態とモータ20の状態を関連付けて記憶している。なお、区間T1~T3については、図7を用いて後述する。記憶部5は、所定周期、後述する駆動パルスにおけるパルスの幅、駆動パルスにおけるパルスの数、変更したパルスの数等を記憶する。記憶部5は、制御部10が制御に用いるプログラムを記憶する。
制御部10は、分周回路4が分周した所望の周波数を用いて計時を行い、計時した結果に応じて、指針40を運針するようにモータ20を駆動する。また、制御部10は、モータ20の回転によって発生する逆起電圧(誘起電圧)を検出し、検出した結果に基づいて、指針40の基準位置を検出する。なお、基準位置の検出方法は、後述する。
パルス制御部11は、分周回路4が分周した所望の周波数を用いて計時を行い、計時した結果に応じて指針40を運針するようにパルス信号を生成し、生成したパルス信号を指針駆動部12に出力する。また、パルス制御部11は、指針駆動部12が検出したモータ20に発生する誘起電圧と基準電圧との比較結果を取得し、取得した結果に基づいて基準位置の検出を行う。
また、パルス制御部11は、駆動端子M111、駆動端子M112、駆動端子M121、駆動端子M122、制御端子G11、制御端子G12が、第1指針駆動部121aに接続され、検出端子CO1がモータ負荷検出部122aに接続されている。また、駆動端子M211、駆動端子M212、駆動端子M221、駆動端子M222、制御端子G21、制御端子G22が、第2指針駆動部121bに接続され、検出端子CO2がモータ負荷検出部122bに接続されている。また、駆動端子M311、駆動端子M312、駆動端子M321、駆動端子M322、制御端子G31、制御端子G32が、第3指針駆動部121cに接続され、検出端子CO3がモータ負荷検出部122cに接続されている。
指針駆動部12は、パルス制御部11が出力したパルス信号に応じてモータ20を駆動することで指針40を運針させる。また、指針駆動部12は、モータ20を駆動したときに発生する誘起電圧を検出し、検出した誘起電圧と基準電圧との比較結果をパルス制御部11に出力する。
第1指針駆動部121aは、パルス制御部11の制御に応じて、第1モータ20aを正転または逆転させるためのパルス信号を生成する。第1指針駆動部121aは、生成したパルス信号によって第1モータ20aを駆動する。
第2指針駆動部121bは、パルス制御部11の制御に応じて、第2モータ20bを正転または逆転させるためのパルス信号を生成する。第2指針駆動部121bは、生成したパルス信号によって第2モータ20bを駆動する。
第3指針駆動部121cは、パルス制御部11の制御に応じて、第3モータ20cを正転または逆転させるためのパルス信号を生成する。第3指針駆動部121cは、生成したパルス信号によって第3モータ20cを駆動する。
モータ負荷検出部122aは、第1モータ20aの回転によって第1指針駆動部121aに発生する逆起電圧を検出し、検出した逆起電圧を閾値である基準電圧Vcompと比較した結果をパルス制御部11に出力する。
モータ負荷検出部122bは、第2モータ20bの回転によって第2指針駆動部121bに発生する逆起電圧を検出し、検出した逆起電圧を基準電圧Vcompと比較した結果をパルス制御部11に出力する。
モータ負荷検出部122cは、第3モータ20cの回転によって第3指針駆動部121cに発生する逆起電圧を検出し、検出した逆起電圧を基準電圧Vcompと比較した結果をパルス制御部11に出力する。
第1モータ20a、第2モータ20b、第3モータ20cそれぞれは、例えばステッピングモータである。第1モータ20aは、第1指針駆動部121aが出力したパルス信号によって、輪列30aを介して第1指針40aを駆動する。第2モータ20bは、第2指針駆動部121bが出力したパルス信号によって、輪列30bを介して第2指針40bを駆動する。第3モータ20cは、第3指針駆動部121cが出力したパルス信号によって、輪列30cを介して第3指針40cを駆動する。
輪列30a、輪列30b、輪列30cそれぞれは、少なくとも1つの歯車を有する。輪列30aは、第1モータ20aの駆動力を第1指針40aに伝達する。輪列30bは、第2モータ20bの駆動力を第2指針40bに伝達する。輪列30cは、第3モータ20cの駆動力を第3指針40cに伝達する。輪列30が有する歯車は、基準負荷部を有する。基準負荷部は、指針40が基準位置に位置するときにロータ202が受ける負荷(トルク)に変動を与えるように構成されている。すなわち、輪列30は、指針40が360度回転する間において、一カ所、負荷変動するように形成されている。輪列30および基準負荷部の詳細な構成については後述する。
第1指針40aは、例えば時針である。第2指針40bは、例えば分針である。第3指針40cは、例えば秒針である。第1指針40a、第2指針40b、第3指針40cそれぞれは、不図示の支持体に回転可能に支持されている。
次に、基準負荷部と基準位置について説明する。
図2は、本実施形態に係る基準負荷部と基準位置の一例を説明するための図である。図2の指針40は、例えば秒針である第3指針40cである。
図2において、略12時の位置が基準位置であり、この位置(第1領域)に指針があるとき、他の位置(第2領域)と比較して、ロータ202が受ける負荷が大きい。すなわち、図2に示す例では、略12時の位置に基準負荷部が設けられている。換言すると、ロータ202が受ける第1領域の負荷は、第2領域の負荷より大きい。本実施形態では、このようにロータ202が受ける負荷が大きくなる位置を基準位置として検出する。
なお、図2では、略12時の位置が基準位置の例を示したが、基準位置は他の位置であってもよい。また、第1指針40a、第2指針40b、第3指針40cそれぞれの基準位置は、同じ位置であっても互いに異なる位置であってもよい。
次に、指針駆動部121とモータ負荷検出部122の構成例を説明する。
図3は、本実施形態に係る指針駆動部121とモータ負荷検出部122の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、指針駆動部121は、スイッチング素子Q1~Q6を備えている。また、モータ負荷検出部122は、抵抗R1とR2、比較器Q7を備えている。
スイッチング素子Q3は、ゲートがパルス制御部11の駆動端子Mn11(nは1~3のいずれか)に接続され、ソースが電源+Vccに接続され、ドレインがスイッチング素子Q1のドレインと抵抗R1の一端と比較器Q7の第1入力部(+)と第1出力端子Outn1に接続されている。
スイッチング素子Q1は、ゲートがパルス制御部11の駆動端子Mn12に接続され、ソースが接地されている。
スイッチング素子Q5は、ゲートがパルス制御部11の制御端子Gn1に接続され、ソースが電源+Vccに接続され、ドレインが抵抗R1の他端に接続されている。
スイッチング素子Q4は、ゲートがパルス制御部11の駆動端子Mn21に接続され、ソースが電源+Vccに接続され、ドレインがスイッチング素子Q2のドレインと抵抗R2の一端と比較器Q7の第2入力部(+)と第2出力端子Outn2に接続されている。
スイッチング素子Q2は、ゲートがパルス制御部11の駆動端子Mn22に接続され、ソースが接地されている。
スイッチング素子Q6は、ゲートがパルス制御部11の制御端子Gn2に接続され、ソースが電源+Vccに接続され、ドレインが抵抗R2の他端に接続されている。
比較器Q7は、第3入力部(-)に基準電圧Vcompが供給され、出力部がパルス制御部11の検出端子COnに接続されている。
指針駆動部121の第1出力端子Outn1と第2出力端子Outn2の両端には、モータ20が接続されている。
スイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6それぞれは、例えばPチャネルのFET(Field effect transistor;電界効果トランジスタ)である。また、スイッチング素子Q1,Q2それぞれは、例えばNチャネルのFETである。
スイッチング素子Q1とQ2は、モータ20を駆動する構成要素である。スイッチング素子Q5とQ6と抵抗R1と抵抗R2は、回転検出のための構成要素である。スイッチング素子Q3とQ4は、モータ20の駆動と回転検出の双方に兼用される構成要素である、スイッチング素子Q1~Q6それぞれは、オン状態でオン抵抗が小さく、低インピーダンスの素子である。また、抵抗R1とR2の抵抗値は、同じであり、スイッチング素子のオン抵抗より大きな値である。
なお、指針駆動部121は、スイッチング素子Q1,Q4を同時にオン状態、Q2,Q3を同時にオフ状態にすることで、モータ20が備える駆動コイル209に対して正方向の電流を供給することで、モータ20を180度正方向に回転駆動させる。また、指針駆動部121は、スイッチング素子Q2,Q3を同時にオン状態、Q1,Q4を同時にオフ状態にすることで、駆動コイル209に対して逆方向の電流を供給することで、モータ20を正方向に更に180度回転駆動させる。
次に、パルス制御部11が出力する駆動信号の例を説明する。
図4は、本実施形態に係るパルス制御部11が出力する駆動パルスの例を示す図である。
図4において、横軸は時刻、縦軸は信号がH(ハイ)レベルであるかL(ロー)レベルであるかを表している。波形P1は、第1の駆動パルスの波形である。波形P2は、第2の駆動パルスの波形である。
時刻t1~t6の期間は、モータ20を正転させる期間である。時刻t1~t2の期間、パルス制御部11は、第1駆動パルスMn1を生成する。時刻t3~t4の期間、パルス制御部11は、第2駆動パルスMn2を生成する。なお、時刻t1~t2または時刻t3~t4の期間の駆動信号は、符号g31が示す領域のように、複数のパルス信号により構成され、パルス制御部11がパルスのデューティを調整する。この場合、時刻t1~t2の期間または時刻t3~t4の期間は、パルスのデューティに応じて変化する。以下、本実施形態では、符号g31が示す領域の信号波を「くし歯波」という。または、時刻t1~t2または時刻t3~t4の期間の駆動信号は、符号g32が示す領域のように、1つのパルス信号により構成され、パルス制御部11がパルスの幅を調整する。この場合、時刻t1~t2の期間または時刻t3~t4の期間は、パルスの幅に応じて変化する。以下、本実施形態では、符号g32が示す領域の信号波を「矩形波」という。
なお、本実施形態では、時刻t1~t2または時刻t3~t4の期間のパルスを主駆動パルスP1という。以下の説明では、主駆動パルスP1が、くし歯波の例を説明する。
なお、時刻t5~t6の期間の補助駆動パルスP2は、主駆動パルスP1によってロータが回転しなかったことが検出されたときのみに出力される駆動パルスである。
また、実施形態では、補助駆動パルスを用いずに主駆動パルス(検出駆動パルス)によって指針40を運針させる状態を第1回転状態という。さらに、第1回転状態の後に補助駆動パルスも用いて指針を運針させる状態を第2回転状態という。
次に、モータ20の構成例を説明する。
図5は、本実施形態に係るモータ20の構成例を示す図である。
図5に示すように、モータ20をアナログ電子時計に用いる場合には、ステータ201および磁心208はネジ(図示せず)によって地板(図示せず)に固定され、互いに接合されている。また、駆動コイル209は、第1端子OUT1、第2端子OUT2を有している。
ロータ202は、2極(S極およびN極)に着磁されている。ロータ202には、かな202a(図10参照)が設けられている。
ステータ201は、磁性材料によって形成されている。ステータ201の外端部には、ロータ収容用貫通孔203を挟んで対向する位置に複数(本実施形態では2個)の切り欠き部(外ノッチ)206,207が設けられている。各外ノッチ206,207とロータ収容用貫通孔203間には可飽和部210,211が設けられている。
可飽和部210,211は、ロータ202の磁束によっては磁気飽和せず、駆動コイル209が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなるように構成されている。ロータ収容用貫通孔203は、輪郭が円形の貫通孔の対向部分に複数(本実施形態では2つ)の半月状の切り欠き部(内ノッチ)204,205を一体形成した円孔形状に構成されている。
切り欠き部204,205は、ロータ202の停止位置を決めるための位置決め部を構成している。駆動コイル209が励磁されていない状態では、ロータ202は、図5に示すように前記位置決め部に対応する位置、換言すれば、ロータ202の磁極軸Aが、切り欠き部204,205を結ぶ線分と直交するような位置(角度θ0位置)に安定して停止している。ロータ202の回転軸(回転中心)を中心とするXY座標空間を4つの象限(第1象限I~第4象限IV)に区分している。
ここで、指針駆動部121から矩形波の主駆動パルスを駆動コイル209の端子OUT1,OUT2間に供給して(例えば、第1端子OUT1側を正極、第2端子OUT2側を負極)、図5の矢印方向に駆動電流iを流すと、ステータ201には破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、可飽和部210,211が飽和して磁気抵抗が大きくなり、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は図5の矢印方向に180度回転し、磁極軸が角度θ1位置で安定的に停止する。なお、モータ20を回転駆動することによって通常動作(本実施形態ではアナログ電子時計であるため運針動作)を行わせるための回転方向(図5では反時計回り方向)を正方向とし、その逆(図5では時計回り方向)を逆方向としている。
指針駆動部121から、逆極性の矩形波の主駆動パルスを駆動コイル209の端子OUT1,OUT2に供給して(前記駆動とは逆極性となるように、第1端子OUT1側を負極、第2端子OUT2側を正極)、図5の反矢印方向に駆動電流iを流すと、ステータ201には反破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が先ず飽和し、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は前記と同一方向(正方向)に180度回転し、磁極軸が角度θ0位置で安定的に停止する。
以後、このように、指針駆動部121が、駆動コイル209に対して極性の異なる信号(交番信号)を供給する。これにより、モータ20は、前記動作が繰り返し行われて、ロータ202を180度ずつ矢印方向に連続的に回転させることができるように構成されている。
指針駆動部121は、相互に極性の異なる駆動パルスP1で交互に駆動することによってモータ20を回転駆動し、主駆動パルスP1で回転できなかった場合には、後述する区間T3の後に主駆動パルスP1と同極性の補助駆動パルスP2を用いて回転駆動する。
次に、モータ20の駆動時のスイッチング素子Q1~Q6の動作とモータ回転時に発生する誘起電圧の例について説明する。なお、以下の例では、モータ20が正転の場合を説明する。
図6は、本実施形態に係る主駆動パルスP1とモータ回転時に発生する誘起電圧の例を示す図である。図6において、横軸は時刻、縦軸は信号がHレベルであるかLレベルであるかを表している。波形g11は、指針駆動部121のOutn1から出力される主駆動パルスP1および検出パルスの波形である。符号g12は、検出区間を示している。波形g13は、スイッチング素子Q3のゲートに入力される制御信号Mn11の波形である。
波形g14は、スイッチング素子Q1のゲートに入力される制御信号Mn12の波形である。波形g15は、スイッチング素子Q4のゲートに入力される制御信号Mn21の波形である。波形g16は、スイッチング素子Q2のゲートに入力される制御信号Mn22の波形である。波形g17は、スイッチング素子Q5のゲートに入力される制御信号Gn1の波形である。波形g18は、スイッチング素子Q6のゲートに入力される制御信号Gn2の波形である。
なお、図6に示す状態は、図4における時刻t1~t3の期間の状態である。
なお、図6において、スイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6は、ゲートに入力される信号がLレベルの期間、オン状態になり、ゲートに入力される信号がHレベルの期間、オフ状態になる。また、スイッチング素子Q1,Q2は、ゲートに入力される信号がHの期間、オン状態になり、ゲートに入力される信号がLレベルの期間、オフ状態になる。
時刻ta~tbの期間は、駆動区間である。
また、時刻tb~tcの期間は、回転状態の検出区間である。
駆動区間であるta~tbの期間、波形g13と波形g14に示すように、パルス制御部11は、くし歯波である主駆動パルスP1に応じてスイッチング素子Q3とQ1を所定周期でオン状態とオフ状態に切り換えることで、モータ20を正方向に回転させるように制御する。モータ20が正常に回転できた場合は、モータ20が備えるロータが正方向に180度回転する。なお、この期間、スイッチング素子Q2,Q5,Q6それぞれは、オフ状態であり、スイッチング素子Q4は、オン状態である。
検出区間の時刻tb~tcの期間、パルス制御部11は、スイッチング素子Q1のオフ状態を維持し、スイッチング素子Q3を所定のタイミングでオン状態とオフ状態を切り換えてハイインピーダンスの状態になるように制御する。そして、パルス制御部11は、この検出区間、スイッチング素子Q5をオン状態に切り換えるように制御する。なお、検出期間、パルス制御部11は、スイッチング素子Q4のオン状態を維持し、スイッチング素子Q2,Q6をオフ状態に制御する。
これにより、検出区間では、スイッチング素子Q4とQ5をオン状態でスイッチング素子Q3をオフ状態にする検出ループと、スイッチング素子Q4とQ5をオン状態でスイッチング素子Q3をオン状態にする閉ループとが所定周期で交互に繰り返される。このとき、検出ループの状態は、スイッチング素子Q4,Q5、抵抗R1によってループが構成されるため、モータ20に制動がかからない。一方、閉ループの状態は、スイッチング素子Q3,Q4、モータ20が有する駆動コイル209によってループが構成されることにより、駆動コイル209が短絡されているので、モータ20に制動がかかり、モータ20の自由振動が抑制される。
検出区間、抵抗R1には、駆動電流と同方向に誘起電流が流れる。この結果、抵抗R1には、誘起電圧信号VRsが発生する。比較器Q7は、区間T1,T2,T3それぞれの区間毎に、この誘起電圧信号VRsと基準電圧Vcompとを比較して、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcomp以下である場合に「1」を示す信号を出力し、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcompより大きい場合に「0」を示す信号を出力する。なお、図7を用いて後述するように、区間T1は、検出区間における1番目の区間である。区間T2は、検出区間における2番目の区間である。区間T3は、検出区間における3番目の区間である。
図4の時刻t3~t5の期間は、第2の駆動パルスが生成される。これにより、駆動区間、パルス制御部11は、主駆動パルスP1に応じてスイッチング素子Q4とQ2を所定周期でオン状態とオフ状態に切り換えることで、モータ20を正方向に回転させるように制御する。なお、この期間、スイッチング素子Q1、Q5、Q6それぞれは、オフ状態であり、スイッチング素子Q3は、オン状態である。
そして、検出区間、パルス制御部11は、スイッチング素子Q2のオフ状態を維持し、スイッチング素子Q4を所定のタイミングでオン状態とオフ状態を切り換えてハイインピーダンスの状態になるように制御する。そして、パルス制御部11は、この検出区間、スイッチング素子Q6をオン状態に切り換えるように制御する。なお、検出期間、パルス制御部11は、スイッチング素子Q3のオン状態を維持し、スイッチング素子Q1、Q5をオフ状態に制御する。これにより、抵抗R2には、駆動電流と同方向に誘起電流が流れる。この結果、抵抗R2には、誘起電圧信号VRsが発生する。比較器Q7は、区間T1、T2、T3それぞれの区間毎に、この誘起電圧信号VRsと基準電圧Vcompとを比較して、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcomp以下である場合に「1」を示す信号を出力し、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcompより大きいである場合に「0」を示す信号を出力する。
次に、図7を用いて、負荷の状態と誘起電圧の関係について、さらに説明する。
図7は、本実施形態に係る負荷の状態と誘起電圧の関係を説明するための図である。なお、図7において、符号P1は駆動パルスP1を示す。符号T1は、区間T1を示す。符号T2は、区間T2を示す。符号T3は、区間T3を示す。なお、波形g201~g204は、比較器Q7に入力される信号CO1と駆動パルスP1を模式的に合わせて示した波形である。
モータ20にかかっている負荷が通常の場合(通常負荷)、波形g201に示すように、区間T2のときに、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcomp以上である。このため、比較器Q7の出力は、区間T1のときが「0」、区間T2のときが「1」、区間T3のときが「-」である。なお、「-」は、「0」であっても「1」であってもよいことを表している。
モータ20にかかっている負荷が小さい場合(負荷小)、波形g202に示すように、区間T1と区間T2のときに、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcomp以上である。このため、比較器Q7の出力は、区間T1のときが「1」、区間T2のときが「1」、区間T3のときが「-」である。
モータ20にかかっている負荷が大きい場合(負荷大)、波形g203に示すように、区間T1と区間T3のときに、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcomp以上である。このため、比較器Q7の出力は、区間T1のときが「-」、区間T2のときが「0」、区間T3のときが「1」である。
モータ20が回転できていない場合(非回転)、波形g204に示すように、区間T1のときに、誘起電圧信号VRsが基準電圧Vcomp以上である。このため、比較器Q7の出力は、区間T1のときが「-」、区間T2のときが「0」、区間T3のときが「0」である。
なお、パルス制御部11は、主駆動パルスP1で非回転の状態が検出された場合、主駆動パルスP1と同極性の補助駆動パルスP2で回転駆動するように制御する。
すなわち、比較器Q7の区間T1~T3の出力の組み合わせによって、モータ20の負荷の状態や、非回転状態を検出することができる。
なお、記憶部5は、図7の符号g211で囲んだ領域の区間T1~T3の比較器Q7の出力と、符号g212で囲んだ領域の負荷の状態や回転状態を対応付けて記憶している。
次に、制御部10が、くし歯波である駆動パルスP1のパルスの大きさ(パルスのデューティ)を変化させ、その時の比較器Q7の出力に基づいて、指針位置を検出する手順の概要を説明する。
図8は、本実施形態に係る指針位置を検出する手順の概要を説明するための図である。
なお、制御部10は、以下の処理を、例えば、電池2が交換されたとき、初めて電源がオン状態にされたとき、所定の時間毎(例えば一日に一回)、設定が初期化された時、指針40の位置検出を行う針位置検出動作モード等に行う。なお、指針40の基準位置を検出するために用いられるサーチパルスは、記憶部5が記憶している。また、サーチパルスとは、図8に示すように、基準位置検出用の主駆動パルスであり、パルスの大きさ(デューティ)の異なる複数のパルスから構成されている。また、サーチパルスは、主駆動パルスに基づく検出駆動パルスである。
パルス制御部11は、主駆動パルスP1の初期値に基づく指針40の一周分のパルス信号を指針駆動部121に出力する。
そして、パルス制御部11は、パルス信号を出力した後の区間T1~T3における比較器Q7の出力を指針の1周分、取得する。例えば、指針40が秒針の場合、パルス制御部11は、パルス信号を60回、出力するように制御する。パルス制御部11は、パルスの発数毎に、区間T1~T3の比較器Q7の出力を、記憶部5に記憶させる。具体的には、パルス制御部11は、1発目のパルスに、区間T1が「0」、区間T2が「1」、区間T3が「0」を対応付けて記憶させ、2発目のパルスに、区間T1が「0」、区間T2が「1」、区間T3が「0」を対応付けて記憶させ、以下同様に記憶させる。
パルス制御部11は、取得した区間T1~T3における比較器Q7の出力の組み合わせと、記憶部5が記憶する区間T1~T3における比較器Q7の出力のパターンとを比較して、モータ20の状態を検出する。なお、モータ20の状態とは、モータ20が小さな負荷(負荷小)が有る状態か否か、大きな負荷(負荷大)が有る状態か否か、非回転状態であるか否か、である。
パルス制御部11は、検出結果に基づいて、主駆動パルスの大きさを変化させる。なお、本実施形態では、主駆動パルスにおいてパルスのLレベルを長くする処理、またはパルスの幅を長くする処理を、パルスアップ(パルスUP)という。また、本実施形態では、駆動パルスにおいてパルスのLレベルの長さを減らす処理、またはパルスの幅を短くする処理を、パルスダウン(パルスDOWN)という。
パルス制御部11が、パルスの大きさを変化させることで、指針40の一周(360度)における指針40の位置毎の比較器Q7の出力状態が変化する。
輪列30にロータ202が受ける負荷を変動させる構成要素がない場合は、指針40の一周の間中、図7で説明した通常負荷の状態(区間T1が「0」、区間T2が「1」、区間T3が「0」)を60回繰り返す。
本実施形態では、上述したように、輪列30にロータ202が受ける負荷を変動させる構成要素(基準負荷部)があるため、指針40が360度回転する間において、一カ所、ロータ202が受ける負荷が変動するように形成されている。このため、通常状態であっても、サーチパルスの大きさが適切であれば輪列30にロータ202が受ける負荷を変動させる構成要素がある位置で負荷大となり、区間T2が「0」、区間T3が「1」になる。このように、指針40の一周において、負荷大となる箇所が一カ所の場合が、指針の検出位置である。具体的には、区間T2が「0」かつ区間T3が「1」が検出された位置が基準位置である。本実施形態では、このように、負荷が大きくなる位置を検出することを、針位置検出という。
パルスを大きく(パルスのLレベルの長さを増やす)しすぎた場合は、ロータ202が回転しやすくなるので、負荷が検出されにくくなり、基準位置を検出しにくくなる。このように、負荷が検出されなくなった場合、パルス制御部11は、パルスダウンを行う。
一方、パルスを小さく(パルスのLレベルの長さを減らす)しすぎた場合は、ロータ202が回転しにくくなり負荷が大きくなるため、負荷大の状態が複数回発生する。このように、2回以上、負荷が検出された場合、パルス制御部11は、パルスアップを行う。
これにより、本実施形態では、指針40を1周(360度)運針させ、運針中の区間T1~T3の検出結果を取得して、取得した結果に基づいて指針40の基準位置を検出することができる。なお、本実施形態では、パルスダウンを行う場合であっても、非回転状態にならない主駆動パルスで、針位置検出を行うことが望ましい。
次に、針位置検出を行う処理手順例を説明する。
図9は、本実施形態に係る針位置検出を行う処理手順例を示すフローチャートである。
なお、図9に示す例は、基準位置の負荷が、他の位置の負荷より大きくなる例を説明する。
(ステップS1)パルス制御部11は、主駆動パルスを初期状態に設定する。
(ステップS2)パルス制御部11は、指針40を1周分(360度)運針させるように主駆動パルスを生成し、生成した主駆動パルスに基づいて指針駆動部121を制御する。続けて、指針駆動部121は、モータ20を駆動して指針40を1周分(360度)運針させる。
(ステップS3)パルス制御部11は、1周分の区間T1、区間T2、区間T3それぞれのモータ負荷検出部122の出力を取得する。なお、パルス制御部11は、パルスの発数毎に、区間T1~T3それぞれのモータ負荷検出部122の出力を、記憶部5に記憶させる。
(ステップS4)1周分の運針終了後、パルス制御部11は、全ての領域(例えば0~359度の1周分)において、区間T1が「0」かつ区間T2が「1」であったか否かを判定する。パルス制御部11は、全ての領域において、区間T1が「0」かつ区間T2が「1」であったと判定した場合(ステップS4;YES)、ステップS5の処理に進める。パルス制御部11は、全ての領域において、区間T1が「0」かつ区間T2が「1」でなかったと判定した場合(ステップS4;NO)、ステップS6の処理に進める。
(ステップS5)全ての領域において、区間T1が「0」かつ区間T2が「1」であった場合は、全ての領域が通常負荷の状態であり、回転に余裕があり、負荷を検出できない状態である。この場合は、負荷を検出しやすくするために、回転しにくくさせる必要がある。このため、パルス制御部11は、1つパルスダウンする。すなわち、パルス制御部11は、主駆動パルスのLレベルの長さを1つ減らす。換言すると、パルス制御部11は、第1エネルギを、第1エネルギより小さい第2エネルギにする。なお、パルス制御部11は、例えば、分周回路4によって生成される周波数に基づいた1クロック分、主駆動パルスのLレベルの長さを短くする。パルス制御部11は、処理後、ステップS2に処理を戻す。
(ステップS6)パルス制御部11は、区間T1が「1」かつ区間T2が「1」が一箇所(1つの領域)、または区間T2が「0」かつ区間T3が「1」が一箇所(1つの領域)であった場合(ステップS6;YES)、ステップS7の処理に進める。パルス制御部11は、複数の箇所(複数の領域)で区間T1が「1」かつ区間T2が「1」、または複数の箇所(複数の領域)で区間T2が「0」かつ区間T3が「1」であった場合(ステップS6;NO)、ステップS8の処理に進める。
(ステップS7)パルス制御部11は、区間T1が「1」かつ区間T2が「1」が一箇所(1つの領域)、または区間T2が「0」かつ区間T3が「1」が一箇所(1つの領域)であった場合、負荷が検出された位置を基準位置であると特定し記憶部5に記憶させる。特定後、パルス制御部11は、基準位置を特定したときのサーチパルスである主駆動パルスを最適パルスとして記憶部5に記憶させ、針位置検出処理を終了する。なお、パルス制御部11は、このように基準位置を特定したときの駆動パルスを、通常の運針時の駆動パルスに用いるようにしてもよい。
(ステップS8)パルス制御部11は、複数の箇所(複数の領域)で区間T1が「1」かつ区間T2が「1」、または複数の箇所(複数の領域)で区間T2が「0」かつ区間T3が「1」であった場合、1つパルスアップする。すなわち、パルス制御部11は、主駆動パルスのLレベルの長さを1つ長くする。換言すると、パルス制御部11は、第1エネルギを、第1エネルギより大きい第3エネルギにする。なお、パルス制御部11は、例えば、分周回路4によって生成される周波数に基づいた1クロック分、主駆動パルスのLレベルの長さを長くする。パルス制御部11は、処理後、ステップS2に処理を戻す。
なお、製造のバラツキにより基準位置と通常位置の負荷の相対差が大きく主駆動パルスで基準位置を検出できない場合、パルス制御部11は、補助駆動パルスも用いて基準位置を検出して記憶部5に記憶させる。このように、補助駆動パルスを用いて基準位置を検出(区間T2が「0」かつ区間T3が「0」)した場合、パルス制御部11は、基準位置を検出できた主駆動パルスと補助駆動パルスを最適パルスとして記憶部5に記憶させないようにしてもよい。
なお、図9の処理において、負荷の多い位置が指針40の2ステップ以上に渡る場合があるが、負荷が2つ以上連続して得られた場合、パルス制御部11は、最初に負荷が検出されたパルスの発数に対応する位置を基準位置として検出する。なお、負荷が多い位置、負荷が検出された位置とは、区間T1が「1」かつ区間T2が「1」の位置、または区間T2が「0」かつ区間T3が「1」の位置である。
ここで、図9の処理の概要を説明する。
パルス制御部11は、初期状態の主駆動パルス(第1エネルギ)を用いて、指針40を一周させて、区間T1~T3それぞれの値を取得する。なお、初期状態の主駆動パルスは、運針に用いている主駆動パルス、または前回、基準位置を検出できた主駆動パルスである。
パルス制御部11は、初期状態の主駆動パルスで指針40を一周させたとき、負荷が増える箇所を1つ見つけられた場合、その領域を第1領域(図2)、すなわち基準位置であると判別する。
初期状態の主駆動パルスで負荷が増える箇所を1つも見つけられなかった場合、パルス制御部11は、負荷小または負荷大(図7)となる箇所が1つとなる状態までパルスダウンを行う。パルスダウンした主駆動パルスが、第2エネルギであり、第2エネルギからさらにパルスダウンした主駆動パルスが、第4エネルギである。
さらに、負荷小または負荷大となる箇所が1つとなる状態までパルスダウンを行っても1つに絞れない場合、パルス制御部11は、補助駆動パルスも用いて、非回転(図7)となる箇所が1つとなる状態までパルスダウンを行う。
また、初期状態の主駆動パルスを用いて指針40を一周させた結果、負荷小または負荷大(図7)となる箇所が複数見つかった場合、パルス制御部11は、負荷小または負荷大(図7)となる箇所が1つとなる状態までパルスアップを行って、基準位置を検出する。
なお、上述した処理手順は一例であり、処理手順は用途に応じて入れ替えてもよい。また、パルスダウンには下限を設け、パルスアップには上限を設け、これらの上限と下限を予め記憶部5に記憶させておくようにしてもよい。このように、上限と下限が記憶されている場合、パルス制御部11は、上限までパルスアップしても負荷が大きくなる位置を1つに絞れない場合に、再度、初期状態に戻して基準位置を検出するか、異常であると判別して報知するようにしてもよい。または、パルス制御部11は、下限までパルスダウンしても負荷が大きくなる位置を1つに絞れない場合に、再度、初期状態に戻して基準位置を検出するか、異常であると判別して報知するようにしてもよい。
以下、第1実施形態の輪列30について詳述する。なお、以下の説明では、輪列30を構成する歯車の回転のうち、指針40を時計回りに回転させる際の回転を正転といい、指針40を反時計回りに回転させる際の回転を逆転という。また、各図中において、輪列30を構成する歯車の回転方向のうち、正転時の回転方向(正転方向、第1回転方向)を矢印Dnで示し、逆転時の回転方向(逆転方向)を矢印Drで示す。
図10は、第1実施形態の輪列を示す平面図である。
図10に示すように、輪列30は、第1中間車31と、第2中間車32と、指針車33と、を備える。第1中間車31は、第1中間歯車31aと第1中間かな(不図示)とを有する。第1中間歯車31aは、モータ20のロータ202のかな202aに噛み合っている。第2中間車32は、第2中間歯車32aと第2中間かな32b(第2歯車)とを有する。第2中間歯車32aは、第1中間車31の第1中間かなに噛み合っている。指針車33は、第2中間車32の第2中間かな32bに噛み合う指針歯車33a(第1歯車)を有する。指針車33には、指針40が取り付けられる。以下の説明では、指針歯車33aの径方向を単に径方向という。
図11は、第1実施形態の輪列における指針歯車と第2中間かなとの噛み合い部を示す拡大図である。
図11に示すように、指針歯車33aは、複数の歯50を有する。指針歯車33aの複数の歯50は、標準歯51と、弾性歯52と、である。標準歯51は、一般的な歯車の歯であって、円弧歯形やインボリュート歯形、サイクロイド歯形等に形成された歯である。
弾性歯52は、指針歯車33aの有する複数の歯50のうち1つの歯である。弾性歯52は、上述した基準負荷部であって、指針40が基準位置に位置するときに、ロータ202が受ける負荷を増大させる。弾性歯52には、弾性変形可能に形成された弾性部56と、弾性変形不能に形成された剛体57と、が設けられている。また、弾性歯52は、正転方向の上流側を向く第1歯面53と、正転方向の下流側を向く第2歯面54と、を備える。第1歯面53は、弾性部56により形成されている。第1歯面53は、標準歯51の正転方向上流側に向く歯面よりも全体的に正転方向上流側に位置している。第2歯面54は、剛体57により形成されている。第2歯面54は、標準歯51の正転方向下流側に向く歯面よりも全体的に正転方向下流側に位置している。これにより、弾性歯52の歯厚は、標準歯51の歯厚よりも大きくなっている。弾性部56と剛体57との間には、弾性歯52の歯先近傍から径方向内側に向かって延びるスリット59が形成されている。
弾性部56は、弾性歯52と弾性歯52よりも1つ正転方向上流側の標準歯51との間の上流側歯溝61、およびスリット59により挟まれている。上流側歯溝61およびスリット59の寸法は、径方向において、標準歯51と標準歯51との間の歯溝の寸法よりも大きく、図示の例ではそれぞれ倍程度になっている。これにより、弾性部56は、標準歯51よりもアスペクト比が大きくなっており、指針歯車33aの周方向に弾性変形可能となっている。弾性部56は、径方向内側の端部から径方向に沿って延びた後、径方向外側かつ正転方向下流側に向かって屈曲して延びている。弾性部56における径方向外側の端縁は、指針歯車33aの歯先円Ctよりも径方向内側に位置している。
剛体57は、弾性歯52と弾性歯52よりも1つ正転方向下流側の標準歯51との間の下流側歯溝62、およびスリット59により挟まれている。下流側歯溝62の寸法は、径方向において、標準歯51と標準歯51との間の歯溝の寸法と同程度になっている。これにより、剛体57は、弾性部56よりもアスペクト比が小さくなっており、弾性変形不能となっている。剛体57は、径方向内側の端部から径方向に沿って延びた後、径方向外側かつ正転方向上流側に向かって屈曲して延びている。剛体57における径方向外側の端縁は、指針歯車33aの歯先円Ct上に位置している。これにより、弾性歯52の歯先は、剛体57により形成されている。
続いて、指針歯車33aと第2中間かな32bとの関係について説明する。
まず、輪列30の正転時の動作について説明する。
指針車33は、第2中間車32に対する受動側の車である。指針歯車33aの各歯50には、正転時、第2中間かな32bの歯32cが正転方向上流側から接触する。第2中間かな32bに係合する歯が標準歯51から弾性歯52に交替する際、第2中間かな32bの歯32cは、指針歯車33aの弾性歯52と、弾性歯52よりも1つ正転方向上流側の標準歯51と、の間の上流側歯溝61に入り込み、弾性歯52の第1歯面53に接触する。
図12は、第1実施形態の輪列における指針歯車と第2中間かなとの噛み合い部を示す拡大図である。なお、図12では、図11に示す状態からさらに正転した状態を示している。
図12に示すように、第2中間かな32bに係合する歯が標準歯51から弾性歯52に交替した後、指針歯車33aおよび第2中間かな32bが正転すると、指針歯車33aの弾性歯52よりも1つ正転方向下流側の標準歯51から、第2中間かな32bの歯32cが離間する。そして、標準歯51から離間した第2中間かな32bの歯32cは、弾性歯52の第2歯面54に接触する。これにより、弾性歯52は、正転方向の下流側および上流側のそれぞれから第2中間かな32bの一対の歯32cにより挟まれる。弾性歯52が第2中間かな32bの一対の歯32cにより挟まれると、弾性部56が剛体57側に向かって弾性変形する。これにより、輪列30には、弾性部56の弾性変形に伴うエネルギ損失が生じる。
その後、指針歯車33aおよび第2中間かな32bが正転すると、弾性歯52の第2歯面54に接触した第2中間かな32bの歯32cは、弾性歯52の第2歯面54から離間する。これにより、指針歯車33aは、弾性歯52が第2中間かな32bの一対の歯32cに挟まれることによって正転が阻止されることなく、1回転以上正転可能になっている。なお、図中の符号Fは、第2中間かな32bと弾性部56との接触部において、第2中間かな32bに作用する弾性部56の復元力を示すベクトルである。
ここで、図11を参照して、圧力角θについて定義する。圧力角θは、指針歯車33aと第2中間かな32bとの中心線L1に直交する直線L2と、指針歯車33aと第2中間かな32bとの接触部における指針歯車33aおよび第2中間かな32bそれぞれの歯の歯面の共通法線L3と、のなす角度である。前記共通法線L3は、指針歯車33aと第2中間かな32bとの接触部におけるトルク伝達方向Tと平行に延びる。
図13は、第1実施形態の輪列における指針歯車と第2中間かなとの噛み合い部を示す拡大図である。なお、図13では、図11に示す状態よりも前であって、第2中間かな32bに係合する歯が標準歯51から標準歯51に交替する状態を示している。
ここで、図13に示すように、指針歯車33aの標準歯51と第2中間かな32bとが係合する状態を標準歯係合状態という。また、図11および図12に示すように、指針歯車33aの弾性歯52と第2中間かな32bとが係合する状態を弾性歯係合状態という。図11および図13に示すように、指針歯車33aと第2中間かな32bとの接触部における圧力角θは、正転時の弾性歯係合状態において、正転時の標準歯係合状態よりも大きい。つまり、弾性歯52は、正転時に、指針歯車33aと第2中間かな32bとの接触部におけるトルク伝達方向Tが、弾性歯係合状態の少なくとも一部の期間において標準歯係合状態よりも前記直線L2に対して大きく傾斜するように形成されている。
次に、輪列30の逆転時の動作について説明する。
図14は、第1実施形態の輪列における指針歯車と第2中間かなとの噛み合い部を示す拡大図である。
図14に示すように、指針歯車33aの各歯50には、逆転時、第2中間かな32bの歯32cが逆転方向上流側から接触する。第2中間かな32bに係合する歯が標準歯51から弾性歯52に交替する際、第2中間かな32bの歯32cは、指針歯車33aの弾性歯52と、弾性歯52よりも1つ逆転方向上流側の標準歯51と、の間の下流側歯溝62に入り込み、弾性歯52の第2歯面54に接触する。
図15は、第1実施形態の輪列における指針歯車と第2中間かなとの噛み合い部を示す拡大図である。なお、図15では、図14に示す状態からさらに逆転した状態を示している。
図15に示すように、第2中間かな32bに係合する歯が標準歯51から弾性歯52に交替した後、指針歯車33aおよび第2中間かな32bが逆転すると、指針歯車33aの弾性歯52よりも1つ逆転方向下流側の標準歯51から、第2中間かな32bの歯32cが離間する。そして、標準歯51から離間した第2中間かな32bの歯32cは、弾性歯52の第1歯面53に接触する。これにより、弾性歯52は、逆転方向の下流側および上流側のそれぞれから第2中間かな32bの一対の歯32cにより挟まれる。弾性歯52が第2中間かな32bの一対の歯32cにより挟まれると、弾性部56が剛体57側に向かって弾性変形する。これにより、輪列30には、弾性部56の弾性変形に伴うエネルギ損失が生じる。
その後、指針歯車33aおよび第2中間かな32bが逆転すると、弾性歯52の第1歯面53に接触した第2中間かな32bの歯32cは、弾性歯52の第1歯面53から離間する。これにより、指針歯車33aは、弾性歯52が第2中間かな32bの一対の歯32cに挟まれることによって逆転が阻止されることなく、1回転以上逆転可能になっている。
図14に示すように、指針歯車33aと第2中間かな32bとの接触部における圧力角θは、逆転時の弾性歯係合状態において、正転時の弾性歯係合状態(図11参照)よりも小さい。つまり、弾性歯52は、指針歯車33aと第2中間かな32bとの接触部におけるトルク伝達方向Tが、逆転時の弾性歯係合状態において正転時の弾性歯係合状態よりも前記直線L2に対して小さく傾斜するように形成されている。
このように、本実施形態の時計用ムーブメントは、主駆動パルスに基づく検出駆動パルスによって指針40を回転させたときにロータ202の回転状態の検出により指針40の基準位置を判断する制御部10を備えるので、指針40の基準位置を把握する手段を通常運針可能な所定負荷によっても実現できる。さらに、時計用ムーブメントは、指針歯車33aに設けられ指針40が基準位置に位置するときに第2中間かな32bに接触して弾性変形する弾性部56を備える。このため、指針40が基準位置に位置するときに、弾性部56と第2中間かな32bとが接触して弾性部56が弾性変形することで、輪列30には弾性部56の弾性変形に伴うエネルギ損失が生じる。これにより、指針40が基準位置に位置するときに、ロータ202の回転状態を変化させることができる。よって、制御部10によって指針40の基準位置を判断させることが可能となる。したがって、指針40の基準位置を把握する手段を通常運針可能な所定負荷によっても実現できる時計用ムーブメントを提供できる。
しかも、弾性部56は、輪列30が有する指針歯車33aに設けられているので、新たな部品を追加する必要がない。したがって、部品コストの上昇を抑制することができる。
さらに、指針歯車33aは正逆双方向に1回転以上回転可能なので、指針40の回転方向および回転範囲に制限が生じることを回避できる。したがって、指針40を任意に回転させることが可能となる。
また、指針歯車33aは、指針歯車33aが有する歯50であって、指針歯車33aの正転方向の上流側に向く第1歯面53と、正転方向の下流側に向く第2歯面54と、を有する弾性歯52を備える。弾性歯52の第1歯面53は、弾性部56により形成されている。この構成によれば、弾性歯52には、指針歯車33aの正転時に、第2中間かな32bの歯32cが正転方向の上流側から係合するので、弾性部56は、指針歯車33aの正転時に第2中間かな32bと接触して弾性変形する。このため、少なくとも正転時においてロータ202の回転状態を変化させることができる。よって、正転時に制御部10によって指針40の基準位置を判断させることが可能となる。
また、弾性歯52の第2歯面54は、剛体57により形成されている。この構成によれば、第2歯面54が弾性変位しないので、第2歯面54に第2中間かな32bが係合している状態では、弾性歯52と第2中間かな32bとの係合のずれを抑制できる。したがって、指針歯車33aと第2中間かな32bとを正確に噛み合わせることができる。
また、弾性部56は、第2中間かな32bと指針歯車33aとの接触部におけるトルク伝達方向Tが、弾性歯係合状態において標準歯係合状態よりも前記直線L2に対して大きく傾斜するように形成されている。この構成によれば、第2中間かな32bから指針歯車33aへのモータ20の駆動力の伝達効率が、弾性歯係合状態において標準歯係合状態よりも低下する。したがって、指針40が基準位置に位置するときにロータ202が受ける負荷を増大させて、ロータ202の回転状態を変化させることができる。
特に、本実施形態では、弾性歯52は、指針歯車33aと第2中間かな32bとの接触部におけるトルク伝達方向Tが、逆転時の弾性歯係合状態において正転時の弾性歯係合状態よりも前記直線L2に対して小さく傾斜するように形成されている。これにより、ロータ202が受ける負荷の変動が逆転時に正転時よりも小さくなる。このため、モータ20の逆方向の駆動が正方向の駆動と比べて複雑な場合であっても、モータ20の逆方向の駆動が不能となることを抑制できる。したがって、指針40を任意に逆転させることが可能となる。
また、指針歯車33aには、指針40が取り付けられている。この構成によれば、弾性歯52を指針40と同期して変位させることができる。このため、指針歯車33aと同じ輪列30に含まれる指針歯車33a以外の歯車に弾性歯を設ける場合と比較して、より正確に指針40の基準位置を把握することができる。
また、弾性歯52は、指針歯車33aの有する複数の歯50のうちの1つの歯である。このため、例えば複数の弾性歯52が並んで設けられた場合と比較して、ロータ202が受ける負荷に変動が生じる際に指針40が配置される範囲を狭くすることができる。したがって、正確に指針40の基準位置を把握することができる。
なお、上記第1実施形態では、弾性歯52の第2歯面54が剛体57により形成されているが、これに限定されない。弾性歯52の第1歯面53および第2歯面54のうち少なくともいずれか一方が弾性部により形成されていればよい。すなわち、弾性歯52の第2歯面54は、第1歯面53を形成する弾性部56とは別体の弾性部により形成されていてもよい。
また、上記第1実施形態では、弾性歯52の第1歯面53は、標準歯51の正転方向上流側に向く歯面よりも全体的に正転方向上流側に位置しているが、これに限定されない。弾性歯の第1歯面は、標準歯51の正転方向上流側に向く歯面と同じ位置に位置していてもよい。弾性歯52の第2歯面54についても同様である。
(第2実施形態)
図16は、第2実施形態の輪列における指針歯車と第2中間かなとの噛み合い部を示す拡大図である。
図16に示す第2実施形態では、指針歯車133aの有する複数の歯50のうち互いに隣り合う一対の歯50が弾性歯152である点で、第1実施形態と異なっている。
図16に示すように、弾性歯152は、上述した基準負荷部であって、指針40が基準位置に位置するときに、ロータ202が受ける負荷を増大させる。弾性歯152には、弾性変形可能に形成された弾性部156と、弾性変形不能に形成された剛体157と、が設けられている。また、一対の弾性歯152のそれぞれは、指針歯車133aの周方向で互いに対向する第1歯面153(対向歯面)と、第1歯面153とは反対側に向く第2歯面154と、を備える。第1歯面153は、弾性部156により形成されている。第2歯面154は、剛体157により形成されている。弾性部156と剛体157との間には、弾性歯152の歯先近傍から径方向内側に向かって延びるスリット159が形成されている。
弾性部156は、一対の弾性歯152の間の歯溝161、およびスリット159により挟まれている。歯溝161およびスリット159の寸法は、径方向において、標準歯51と標準歯51との間の歯溝の寸法よりも大きく、図示の例ではそれぞれ倍程度になっている。これにより、弾性部156は、標準歯51よりもアスペクト比が大きくなっており、指針歯車133aの周方向に弾性変形可能となっている。弾性部156は、径方向内側の端部から径方向に沿って延びた後、指針歯車133aの周方向のうち隣り合う弾性歯152から離間する方向、かつ径方向外側に向かって屈曲して延びている。弾性部156における径方向外側の端縁は、指針歯車133aの歯先円Ct上に位置している。これにより、弾性歯152の歯先は、弾性部156により形成されている。
剛体157は、弾性歯152と標準歯51との間の歯溝162、およびスリット159により挟まれている。歯溝162の寸法は、径方向において、標準歯51と標準歯51との間の歯溝の寸法と同程度になっている。これにより、剛体157は、弾性部156よりもアスペクト比が小さくなっており、弾性変形不能となっている。剛体157は、径方向内側の端部から径方向に沿って延びている。剛体157の先端部は、弾性変形する弾性部156との接触を避けるように先細っている。剛体157における径方向外側の端縁は、指針歯車133aの歯先円Ctよりも径方向内側に位置している。
一対の弾性歯152の間の歯溝161の幅は、第2中間かな32bの歯32cの歯厚よりも小さい。なお、歯溝161の幅は、指針歯車133aのピッチ円CP1上での一対の弾性歯152間の距離である。歯32cの歯厚は、第2中間かな32bのピッチ円CP2上での歯32cの厚さである。これにより、第2中間かな32bの歯32cは、一対の弾性歯152の間の歯溝161に入り込むと、一対の弾性歯152の第1歯面153(すなわち一対の弾性部156)に接触する。
続いて、指針歯車133aと第2中間かな32bとの関係について説明する。
なお、本実施形態の指針歯車133aは周方向に対称に形成されているので、指針歯車133aおよび第2中間かな32bは、輪列30の正転時および逆転時で同様に動作する。このため、以下では輪列30の正転時の動作について説明する。
第2中間かな32bに係合する歯が標準歯51から弾性歯152に交替する際、第2中間かな32bの歯32cは、指針歯車133aの一対の弾性歯52の間の歯溝161に入り込み、正転方向下流側の弾性歯152の第1歯面153に接触する。
指針歯車133aと第2中間かな32bとの接触部における圧力角θは、弾性歯係合状態において、標準歯係合状態よりも大きい。つまり、弾性歯152は、指針歯車133aと第2中間かな32bとの接触部におけるトルク伝達方向Tが、弾性歯係合状態の少なくとも一部の期間において標準歯係合状態よりも前記直線L2に対して大きく傾斜するように形成されている。
図17は、2実施形態の輪列における指針歯車と第2中間かなとの噛み合い部を示す拡大図である。なお、図17では、図16に示す状態からさらに正転した状態であって、第2中間かな32bが指針歯車133aの一対の弾性部156の間に挟まれている状態を示している。
図17に示すように、第2中間かな32bに係合する歯が標準歯51から弾性歯152に交替した後、指針歯車133aおよび第2中間かな32bが正転すると、第2中間かな32bの歯32cは、一対の弾性部156に接触する。この際、一対の弾性部156には、符号J,Kで示す方向の力が作用し、これらの力により一対の弾性部156が互いに離間するように弾性変形する。これにより、輪列30には、一対の弾性部156の弾性変形に伴うエネルギ損失が生じる。
このように、本実施形態の時計用ムーブメントは、モータ20の駆動力を指針40に伝達し互いに噛み合う指針歯車133aおよび第2中間かな32bを有する輪列30と、指針歯車133aに設けられ指針40が基準位置に位置するときに第2中間かな32bに接触して弾性変形する弾性部156と、を備える。この構成によれば、第1実施形態と同様に、指針40の基準位置を把握する手段を通常運針可能な所定負荷によっても実現できる時計用ムーブメントを提供できる。
また、指針歯車133aは、指針歯車133aが有する歯50であって、指針歯車133aの周方向で互いに隣り合う一対の弾性歯152を備える。一対の弾性歯152の間の歯溝161の幅は、第2中間かな32bが有する歯32cの歯厚よりも小さい。一対の弾性歯152のそれぞれは、指針歯車133aの周方向で互いに対向する第1歯面153を有する。第1歯面153は、弾性部156により形成されている。この構成によれば、一対の弾性歯152の間の歯溝161の幅は、第2中間かな32bが有する歯32cの歯厚よりも小さいので、第2中間かな32bの歯32cが一対の弾性歯152の間の歯溝161に入り込む際に、第2中間かな32bの歯32cを一対の弾性歯152のそれぞれの第1歯面153に接触させることができる。弾性歯152の第1歯面153は弾性部156により形成されているので、一対の弾性部156は、指針歯車133aの回転方向によらず第2中間かな32bに接触して弾性変形する。このため、指針歯車133aの回転方向によらず弾性部156を弾性変形させて、ロータ202の回転状態を変化させることができる。よって、指針歯車133aの正転時および逆転時に、制御部10によって指針40の基準位置を判断させることが可能となる。
また、指針歯車133aが互いに隣り合う一対の弾性歯152を備えることで、指針歯車が弾性歯を1つ有する構成と比較して、第2中間かな32bが有する歯32cに弾性部156が接触する時間が長くなる。これにより、ロータ202の回転状態をより長い時間変化させることができる。したがって、制御部10による指針40の基準位置の検出精度の向上を図ることができる。
(第3実施形態)
図18および図19は、第3実施形態の輪列における指針歯車と第2中間かなとの噛み合い部を示す拡大図である。なお、図18では、図19に示す状態からさらに正転した状態を示している。
図11に示す第1実施形態では、弾性部56が弾性歯52の歯面を形成するように設けられている。これに対して、図18に示す第3実施形態では、弾性部256が指針歯車233aの歯50とは別体で設けられている点で、第1実施形態と異なっている。
図18に示すように、指針歯車233aは、複数の歯50と、弾性部256と、を有する。複数の歯50は、それぞれ標準歯51である。複数の標準歯51は、互いに隣り合う第1標準歯51A(第1歯)および第2標準歯51B(第2歯)を含む。第1標準歯51Aは、第2標準歯51Bよりも1つ正転方向上流側に位置している。第1標準歯51Aと第2標準歯51Bとの間の歯溝には、スリット263が連なっている。スリット263は、第1標準歯51Aと第2標準歯51Bとの間の歯溝から、径方向内側に向かって径方向に沿って延びた後、径方向内側かつ正転方向上流側に向かって屈曲して延びている。
弾性部256は、上述した基準負荷部であって、指針40が基準位置に位置するときに、ロータ202が受ける負荷を増大させる。弾性部256は、スリット263に設けられている。弾性部256は、スリット263の最奥端との接続部を基端として延びる片持ち梁である。弾性部256は、スリット263の最奥端から、スリット263の側縁に対して離間した状態で、スリット263の延在方向に沿って延びている。具体的に、弾性部256は、基端から径方向外側かつ正転方向下流側に向かって延びた後、径方向外側に向かって径方向に沿って延びている。すなわち、弾性部256の一部は、径方向に交差する方向に沿って延びている。図19に示すように、弾性部256は、基端を支点として、先端(自由端)が径方向内側に向かって変位するように弾性変形する。弾性部256の先端は、第1標準歯51Aと第2標準歯51Bとの間の歯溝に位置している。
続いて、指針歯車233aと第2中間かな32bとの関係について説明する。
まず、輪列30の正転時の動作について説明する。
図18に示すように、正転時、第2中間かな32bに係合する歯が第2標準歯51Bに交替するタイミングに前後して、弾性部256の先端には、第2標準歯51Bに係合する第2中間かな32bの歯32cが接触する。その後、図19に示すように、第2中間かな32bが第2標準歯51Bに係合して、指針歯車233aおよび第2中間かな32bがさらに正転すると、第2中間かな32bの歯32cは、弾性部256を径方向内側に向かって押し込むように弾性変形させる。このように、弾性部256は、第2標準歯51Bと第2中間かな32bとの係合時において、第2中間かな32bに接触する。これにより、輪列30には、弾性部256の弾性変形に伴うエネルギ損失が生じる。なお、弾性部256は、正転時、第2標準歯51Bと第2中間かな32bとの係合状態における少なくとも一部の期間において第2中間かな32bの歯32cに接触すればよい。
ここで、第2中間かな32bの歯32cは、弾性部256の先端に接触する。このため、弾性部256と第2中間かな32bとの接触部における圧力角θ’は、第2標準歯51Bと第2中間かな32bとの接触部における圧力角θよりも大きい。なお、圧力角θ’は、前記直線L2と、弾性部256と第2中間かな32bとの接触部における弾性部256および第2中間かな32bそれぞれの接触面の共通法線L3’と、のなす角度である。これにより、弾性部256に作用する第2中間かな32bからの力の作用方向F2は、第2標準歯51Bに作用する第2中間かな32bからの力の作用方向F1よりも前記直線L2に対して大きく傾斜している。このため、指針歯車233aと第2中間かな32bとの接触部全体におけるトルク伝達方向は、正転時の第2中間かな32bが弾性部256に接触しない状態におけるトルク伝達方向T(図18参照)よりも前記直線L2に対して大きく傾斜する。つまり、弾性部256は、正転時に、指針歯車233aと第2中間かな32bとの接触部全体におけるトルク伝達方向が、第2標準歯51Bと第2中間かな32bとが係合する状態において、第2標準歯51B以外の標準歯51と第2中間かな32bとが係合する状態よりも前記直線L2に対して大きく傾斜するように形成されている。なお、指針歯車233aと第2中間かな32bとの接触部全体におけるトルク伝達方向は、符号F1で示す方向に作用する力のベクトルと、符号F2で示す方向に作用する力のベクトルと、の和の方向と一致する。
次に、輪列30の逆転時の動作について説明する。
図20および図21は、第3実施形態の輪列における指針歯車と第2中間かなとの噛み合い部を示す拡大図である。なお、図21では、図20に示す状態からさらに逆転した状態を示している。
図20に示すように、逆転時、第2中間かな32bに係合する歯が第1標準歯51Aに交替するタイミングに前後して、弾性部256の先端には、第1標準歯51Aに係合する第2中間かな32bの歯32cが接触する。その後、図21に示すように、第2中間かな32bが第1標準歯51Aに係合して、指針歯車233aおよび第2中間かな32bがさらに逆転すると、第2中間かな32bの歯32cは、弾性部256を径方向内側に向かって押し込むように弾性変形させる。このように、弾性部256は、第1標準歯51Aと第2中間かな32bとの係合時において、第2中間かな32bに接触する。これにより、輪列30には、弾性部256の弾性変形に伴うエネルギ損失が生じる。なお、弾性部256は、逆転時、第1標準歯51Aと第2中間かな32bとの係合状態における少なくとも一部の期間において第2中間かな32bの歯32cに接触すればよい。
ここで、第2中間かな32bの歯32cは、弾性部256の先端に接触する。このため、弾性部256と第2中間かな32bとの接触部における圧力角θ’は、第1標準歯51Aと第2中間かな32bとの接触部における圧力角θよりも大きい。これにより、弾性部256に作用する第2中間かな32bからの力の作用方向F2は、第1標準歯51Aに作用する第2中間かな32bからの力の作用方向F1よりも前記直線L2に対して大きく傾斜している。このため、指針歯車233aと第2中間かな32bとの接触部全体におけるトルク伝達方向は、逆転時の弾性部256に接触しない標準歯接触状態におけるトルク伝達方向T(図20参照)よりも前記直線L2に対して大きく傾斜する。つまり、弾性部256は、逆転時に、指針歯車233aと第2中間かな32bとの接触部全体におけるトルク伝達方向が、第1標準歯51Aと第2中間かな32bとが係合する状態において、第1標準歯51A以外の標準歯51と第2中間かな32bとが係合する状態よりも前記直線L2に対して大きく傾斜するように形成されている。なお、弾性部256は、指針歯車233aと第2中間かな32bとの接触部全体におけるトルク伝達方向が、逆転時において正転時よりも前記直線L2に対して小さく傾斜するように形成されていることが望ましい。
このように、本実施形態の時計用ムーブメントは、モータ20の駆動力を指針40に伝達し互いに噛み合う指針歯車233aおよび第2中間かな32bを有する輪列30と、指針歯車233aに設けられ指針40が基準位置に位置するときに第2中間かな32bに接触して弾性変形する弾性部256と、を備える。この構成によれば、第1実施形態と同様に、指針40の基準位置を把握する手段を通常運針可能な所定負荷によっても実現できる時計用ムーブメントを提供できる。
また、弾性部256は、第1標準歯51Aと第2標準歯51Bとの間に位置し、第1標準歯51Aと第2中間かな32bとの係合時、および第2標準歯51Bと第2中間かな32bとの係合時のそれぞれにおいて、第2中間かな32bに接触する。この構成によれば、正転時および逆転時のそれぞれにおいて弾性部256を弾性変形させて、ロータ202の回転状態を変化させることができる。よって、正転時および逆転時に制御部10によって指針40の基準位置を判断させることが可能となる。
また、弾性部256は、少なくとも一部が径方向に交差する方向に沿って延びるとともに、自由端が第1標準歯51Aと第2標準歯51Bとの間に位置する片持ち梁である。この構成によれば、弾性部256における径方向に交差する方向に沿って延びる部分を撓ませることにより、自由端を径方向に沿って弾性変位させることができる。したがって、第2中間かな32bに接触して弾性変形する弾性部256を形成することができる。
また、弾性部256は、第2中間かな32bと指針歯車233aとの接触部全体におけるトルク伝達方向が、第1標準歯51Aと第2中間かな32bとが係合する状態において、第1標準歯51A以外の標準歯51と第2中間かな32bとが係合する状態よりも前記直線L2に対して大きく傾斜するように形成されている。この構成によれば、第2中間かな32bから指針歯車233aへのモータ20の駆動力の伝達効率が、第1標準歯51Aと第2中間かな32bとが係合する状態において、第1標準歯51A以外の標準歯51と第2中間かな32bとが係合する状態よりも低下する。したがって、指針40が基準位置に位置するときにロータ202が受ける負荷を増大させて、ロータ202の回転状態を変化させることができる。
なお、上記第2実施形態では、弾性部256は、先端が径方向内側に向かって変位するように形成されているが、これに限定されない。弾性部は、基端から先端に向かって径方向に沿って延びるように形成され、先端が指針歯車の周方向に向かって変位するように形成されていてもよい。
また、上記第2実施形態では、弾性部256は、第1標準歯51Aと第2中間かな32bとの係合時、および第2標準歯51Bと第2中間かな32bとの係合時の両方において、第2中間かな32bに接触するように形成されているが、これに限定されない。弾性部は、第1標準歯51Aと第2中間かな32bとの係合時、および第2標準歯51Bと第2中間かな32bとの係合時のいずれか一方のみにおいて、第2中間かな32bに接触するように形成されていてもよい。
(第4実施形態)
図22および図23は、第4実施形態の輪列における指針歯車と第2中間かなとの噛み合い部を示す拡大図である。なお、図23では、図22に示す状態からさらに正転した状態を示している。
図11に示す第1実施形態では、弾性部56が弾性歯52一部を形成するように設けられている。これに対して、図22に示す第4実施形態では、弾性部356が指針歯車333aの弾性歯352の全体を形成するように設けられている点で、第1実施形態と異なっている。
図22に示すように、指針歯車333aは、複数の歯50と、弾性部356と、を有する。指針歯車333aの複数の歯50は、標準歯51と、弾性歯352と、である。弾性歯352は、指針歯車333aの有する複数の歯50のうち1つの歯である。弾性歯352は、上述した基準負荷部であって、指針40が基準位置に位置するときに、ロータ202が受ける負荷を増大させる。弾性歯352の全体は、弾性部356により形成されている。複数の標準歯51は、弾性歯352に隣り合う第1標準歯51Cおよび第2標準歯51Dを含む。第1標準歯51Cは、弾性歯352よりも1つ正転方向上流側に位置している。第2標準歯51Dは、弾性歯352よりも1つ正転方向下流側に位置している。
弾性歯352の歯厚は、標準歯51の歯厚よりも大きくなっている。弾性歯352と第2標準歯51Dとの間の歯溝362の幅は、第2中間かな32bの歯32cの歯厚よりも小さい。なお、歯溝362の幅は、指針歯車333aのピッチ円CP1上での弾性歯352と第2標準歯51Dとの間の距離である。これにより、第2中間かな32bの歯32cは、弾性歯352と第2標準歯51Dとの間の歯溝362に入り込むと、弾性歯352に接触する。
弾性歯352と第1標準歯51Cとの間の歯溝361には、第1スリット363が連なっている。第1スリット363は、弾性歯352と第1標準歯51Cとの間の歯溝361から、径方向内側に向かって径方向に沿って延びた後、正転方向下流側に向かって屈曲して延びている。弾性歯352と第2標準歯51Dとの間の歯溝362には、第2スリット364が連なっている。第2スリット364は、第1スリット363に沿って延びている。
弾性部356は、第1スリット363と第2スリット364との間の部位である。弾性部356は、先端に弾性歯352を有している。弾性部356は、第1スリット363の最奥端と第2スリット364の最奥端との間の部位を基端として延びる片持ち梁である。弾性部356は、基端から正転方向上流側に向かって延びた後、径方向外側に向かって径方向に沿って延びている。すなわち、弾性部356の一部は、径方向に交差する方向に沿って延びている。図23に示すように、弾性部356は、基端を支点として、先端(自由端)が径方向内側に向かって変位するように弾性変形する。
続いて、指針歯車333aと第2中間かな32bとの関係について、輪列30の正転時の動作を例に挙げて説明する。
図22に示すように、正転時、第2中間かな32bに係合する歯が第2標準歯51Dに交替するタイミングに前後して、弾性歯352には、第2標準歯51Dに係合する第2中間かな32bの歯32cが接触する。この際、弾性歯352には、第2中間かな32bの歯32cから符号Fで示す方向の力が作用する。
その後、図23に示すように、第2中間かな32bが第2標準歯51Dに係合して、指針歯車333aおよび第2中間かな32bがさらに正転すると、第2中間かな32bの歯32cは、弾性歯352を径方向内側かつ正転方向上流側に向かって弾性変形させる。第2中間かな32bの歯32cは、第2標準歯51Dと弾性歯352とにより挟み込まれる。このように、弾性部356は、第2標準歯51Dと第2中間かな32bとの係合時において、第2中間かな32bに接触する。これにより、輪列30には、弾性部356の弾性変形に伴うエネルギ損失が生じる。
弾性部356と第2中間かな32bとの接触部における圧力角θ’は、第2標準歯51Dと第2中間かな32bとの接触部における圧力角θよりも大きい。なお、圧力角θ’は、前記直線L2と、弾性部356と第2中間かな32bとの接触部における弾性部356および第2中間かな32bそれぞれの接触面の共通法線L3’と、のなす角度である。これにより、弾性部356に作用する第2中間かな32bからの力の作用方向F2は、第2標準歯51Dに作用する第2中間かな32bからの力の作用方向F1よりも前記直線L2に対して大きく傾斜している。このため、指針歯車333aと第2中間かな32bとの接触部全体におけるトルク伝達方向は、正転時の第2中間かな32bが弾性部356に接触しない状態におけるトルク伝達方向T(図22参照)よりも前記直線L2に対して大きく傾斜する。つまり、弾性部356は、正転時に、指針歯車333aと第2中間かな32bとの接触部全体におけるトルク伝達方向が、第2標準歯51Dと第2中間かな32bとが係合する状態において、第2標準歯51D以外の標準歯51と第2中間かな32bとが係合する状態よりも前記直線L2に対して大きく傾斜するように形成されている。なお、指針歯車333aと第2中間かな32bとの接触部全体におけるトルク伝達方向は、符号F1で示す方向に作用する力のベクトルと、符号F2で示す方向に作用する力のベクトルと、の和の方向と一致する。
なお、図示しないが、第2中間かな32bに係合する歯が弾性歯352に交替する際、弾性歯352は、指針歯車333aの回転方向によらず弾性変形する。具体的に、正転時、第2中間かな32bに係合する歯が第2標準歯51Dから弾性歯352に交替すると、弾性歯352は、正転方向下流側に向かって弾性変形する。また、逆転時、第2中間かな32bに係合する歯が第1標準歯51Cから弾性歯352に交替すると、弾性歯352は、逆転方向下流側に向かって弾性変形する。
このように、本実施形態の時計用ムーブメントは、モータ20の駆動力を指針40に伝達し互いに噛み合う指針歯車333aおよび第2中間かな32bを有する輪列30と、指針歯車333aに設けられ指針40が基準位置に位置するときに第2中間かな32bに接触して弾性変形する弾性部356と、を備える。この構成によれば、第1実施形態と同様に、指針40の基準位置を把握する手段を通常運針可能な所定負荷によっても実現できる時計用ムーブメントを提供できる。
また、指針歯車333aは、指針歯車333aが有する歯50であって、複数の歯のうち1つの歯全体が弾性部356により形成された弾性歯352を備える。この構成によれば、第2中間かな32bが弾性歯352に係合する際に、指針歯車333aの回転方向によらず第2中間かな32bが弾性部356に接触する。これにより、弾性部356は、指針歯車333aの回転方向によらず弾性変形する。このため、指針歯車333aの回転方向によらず弾性部356を弾性変形させて、ロータ202の回転状態を変化させることができる。よって、指針歯車333aの回転時に、制御部10によって指針40の基準位置を判断させることが可能となる。
また、弾性歯352と、弾性歯352に隣り合う第2標準歯51Dと、の間の歯溝362の幅は、第2中間かな32bが有する歯32cの歯厚よりも小さい。この構成によれば、第2中間かな32bの歯32cが弾性歯352と第2標準歯51Dとの間の歯溝362に入り込む際に、第2中間かな32bの歯32cを弾性歯352に接触させることができる。これにより、弾性部356は、弾性歯352が第2中間かな32bに係合している状態のみならず、弾性歯352に隣り合う第2標準歯51Dが第2中間かな32bに係合している状態でも、第2中間かな32bに接触して弾性変形する。これにより、ロータ202の回転状態をより長い時間変化させることができる。したがって、制御部10による指針40の基準位置の検出精度の向上を図ることができる。
(第5実施形態)
図24および図25は、第5実施形態の輪列における指針歯車と第2中間かなとの噛み合い部を示す拡大図である。なお、図25では、図24に示す状態からさらに正転した状態を示している。
図22に示す第4実施形態では、弾性歯352の歯厚は、標準歯51の歯厚よりも大きくなっている。これに対して、図24に示す第5実施形態では、弾性歯452の歯厚は、標準歯51の歯厚と同じになっている点で、第4実施形態と異なっている。
図24に示すように、指針歯車433aは、第4実施形態の指針歯車333aの弾性歯352に代えて、弾性歯452を備える。また、指針歯車433aは、第4実施形態の指針歯車333aの弾性部356に代えて、弾性部456を備える。
弾性歯452は、上述した基準負荷部である。弾性歯452の全体は、弾性部456により形成されている。弾性歯452の歯先は、標準歯51における指針歯車433aのピッチ円CP1よりも歯先側(径方向外側)の部分と同じ形状に形成されている。弾性歯452は、弾性歯452に隣り合う一対の標準歯51の中間位置よりも、正転方向の下流側に配置されている。弾性歯452と第1標準歯51Cとの間の歯溝461の幅は、第2中間かな32bの歯32cの歯厚よりも大きい。これにより、第2中間かな32bの歯32cは、弾性歯452に接触せずに、弾性歯452と第1標準歯51Cとの間の歯溝461に入り込むことができる。また、弾性歯452と第2標準歯51Dとの間の歯溝462の幅は、第2中間かな32bの歯32cの歯厚よりも小さい。これにより、第2中間かな32bの歯32cは、弾性歯452と第2標準歯51Dとの間の歯溝462に入り込むと、弾性歯452に接触する(図25参照)。
弾性歯452と第1標準歯51Cとの間の歯溝461には、第1スリット463が連なっている。第1スリット463は、弾性歯452と第1標準歯51Cとの間の歯溝461から、径方向内側に向かって径方向に沿って延びた後、正転方向下流側に向かって屈曲して延びている。弾性歯452と第2標準歯51Dとの間の歯溝462には、第2スリット464が連なっている。第2スリット464は、第1スリット463に沿って延びている。
弾性部456は、第1スリット463と第2スリット464との間の部位である。弾性部456は、先端に弾性歯452を有している。弾性部456は、第1スリット463の最奥端と第2スリット464の最奥端との間の部位を基端として延びる片持ち梁である。弾性部456は、基端から正転方向上流側に向かって延びた後、径方向外側に向かって径方向に沿って延びている。すなわち、弾性部456の一部は、径方向に交差する方向に沿って延びている。弾性部456は、基端を支点として、先端(自由端)が径方向内側に向かって変位するように弾性変形する(図25参照)。
弾性部456は、幅広部456aを有する。幅広部456aは、平面視で弾性歯452よりも幅広に形成されている。幅広部456aは、弾性歯452に対して弾性部456の基端側に隣接している。幅広部456aは、弾性部456における径方向に沿って延びる部分に設けられている。
続いて、指針歯車433aと第2中間かな32bとの関係について、輪列30の逆転時の動作を例に挙げて説明する。なお、図24,25に示す輪列30の正転時の動作は、図22,23に示す第4実施形態と同様なので、説明を省略する。
図26および図27は、第5実施形態の輪列における指針歯車と第2中間かなとの噛み合い部を示す拡大図である。なお、図27では、図26に示す状態からさらに逆転した状態を示している。
図26に示すように、逆転時、第1標準歯51Cが第2中間かな32bに係合している状態で、弾性歯452には、第2中間かな32bの複数の歯32cのうち第1標準歯51Cに係合する歯32cよりも1つ逆転方向上流側の歯32cが接触する。弾性歯452には、第2中間かな32bの歯32cが径方向外側かつ逆転方向上流側から接触する。この際、弾性歯452には、第2中間かな32bの歯32cから符号Fで示す方向の力が作用する。
その後、図27に示すように、弾性歯452に接触する第2中間かな32bの歯32cは、弾性部456を弾性変形させつつ弾性歯452を前進させる。これにより、指針歯車433aの逆転が進み、第1標準歯51Cと第2中間かな32bとの係合が解除される。第2中間かな32bに係合する歯50は、第1標準歯51Cから弾性歯452に交替する。そして、第2中間かな32bの歯32cは、弾性歯452を径方向内側かつ逆転方向下流側に向かって弾性変形させつつ、弾性歯452と第2標準歯51Dとの間の歯溝462に入り込む。第2中間かな32bの歯32cは、第2標準歯51Dと弾性歯452とにより挟み込まれる。このように、弾性部456は、弾性歯452と第2中間かな32bとの係合時において、第2中間かな32bに接触する。これにより、輪列30には、弾性部456の弾性変形に伴うエネルギ損失が生じる。
第2標準歯51Dと第2中間かな32bとの接触部における圧力角θ’は、弾性部456と第2中間かな32bとの接触部における圧力角θよりも大きい。これにより、第2標準歯51Dに作用する第2中間かな32bからの力の作用方向F2は、弾性部456に作用する第2中間かな32bからの力の作用方向F1よりも前記直線L2に対して大きく傾斜している。このため、指針歯車433aと第2中間かな32bとの接触部全体におけるトルク伝達方向は、逆転時の弾性部456に接触しない標準歯接触状態におけるトルク伝達方向T(図26参照)よりも前記直線L2に対して大きく傾斜する。つまり、弾性部456は、逆転時に、指針歯車433aと第2中間かな32bとの接触部全体におけるトルク伝達方向が、弾性歯452と第2中間かな32bとが係合する状態において、標準歯51と第2中間かな32bとが係合する状態よりも前記直線L2に対して大きく傾斜するように形成されている。なお、指針歯車433aと第2中間かな32bとの接触部全体におけるトルク伝達方向は、符号F1で示す方向に作用する力のベクトルと、符号F2で示す方向に作用する力のベクトルと、の和の方向と一致する。
このように構成された本実施形態の時計用ムーブメントは、上述した第4実施形態の時計用ムーブメントが奏する作用効果に加えて以下の作用効果を奏する。
本実施形態の時計用ムーブメントでは、弾性歯452の歯先は、標準歯51における指針歯車433aのピッチ円CP1よりも歯先側(径方向外側)の部分と同じ形状に形成されているこの構成によれば、弾性歯452が第2中間かな32bの歯底に嵌まることを抑制できる。また、弾性歯452の歯先の形状が標準歯51の歯先の形状と同じになるように形成されているので、弾性歯452の歯先の形状が製造時にばらついても、第2中間かな32bと弾性歯452との噛み合いが悪化することを抑制できる。これにより、弾性部456の弾性変形に伴うエネルギ損失が所望の大きさよりも大幅に増加することを抑制できる。以上により、ロータ202が受ける負荷の変動を安定させることができる。
また、弾性部456は、自由端に弾性歯452を有する片持ち梁であり、弾性歯452に対して基端側に隣接して弾性歯452よりも幅広に形成された幅広部456aを有する。この構成によれば、弾性部が幅広部を有さない場合と比較して、弾性部456における弾性歯452に対して基端側に隣接する箇所の剛性を向上させることができる。このため、弾性部456における弾性歯452に隣接する箇所が局所的に屈曲することが抑制される。これにより、弾性部456全体の撓みによって弾性歯452を所望の軌跡で変位させることが可能となる。したがって、ロータ202が受ける負荷の変動を安定させることができる。
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、各指針40a~40cのそれぞれにモータ20a~20cが設けられているが、これに限定されず、各指針40a~40cを1つのモータ20により駆動するように構成されていてもよい。この場合、弾性部は、輪列が有する歯車のうち、モータ20の駆動力の伝達経路上において、よりモータ20に近い位置の歯車に設けられることが望ましい。これにより、ロータに与える負荷の変動がノイズに埋もれることを抑制できる。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態および各変形例を適宜組み合わせてもよい。