JP7145167B2 - レーザー溶着体の製造方法 - Google Patents

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    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L67/00Compositions of polyesters obtained by reactions forming a carboxylic ester link in the main chain; Compositions of derivatives of such polymers

Description

本発明は、レーザー溶着体の製造方法に関し、詳しくは、ポリエステル系樹脂からなり、複雑な形状の溶着用接合面を有する部材を安定した高い溶着強度でレーザー溶着するレーザー溶着体の製造方法に関する。
近年の自動車部品や民生部品では軽量化やリサイクル等の環境面から、従来金属を使用していた部品の樹脂化や、樹脂製品の小型化等が進んでいる。ポリエステル樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性等に優れており、また優れた耐熱性、成形性、リサイクル性を有していることから、各種の機器部品に広く用いられている。特にポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性ポリエステル樹脂は機械的強度や成形性に優れ、また難燃化が可能であることから、火災安全性の必要とされる電気・電子機器部品等に広く使用されている。
これら機器部品は内部に空間を設けて、電子回路、モーターやファン等の駆動部や電子回路やコネクター等を収容することが行われ、これらのための成形品は、複数の樹脂部材に分割して成形したものを接合して製造することにより、一体成形する場合に比べて、軽量化、中空化による形状の最適化を図ることができる。
樹脂部材同士を接合させる方法として、接着剤を用いる方法、機械的接合、熱板溶着、振動溶着、超音波溶着、加熱溶着等の方法があるが、最近では、樹脂部材や収容する電子部品等へ与える影響が少なく、作業性が良い等の利点を持つレーザー溶着体の製造方法が注目されてきている。
レーザー溶着は、レーザー光を透過させる透過側部材とレーザー光を吸収する吸収側部材の接合させたい部分を重ね合わせ、その接合面に透過側部材側からレーザー光を照射して走査することで、吸収側部材を溶融させて、両部材を溶着する。
しかしながら、ポリカーボネート樹脂やポリスチレン系樹脂等に比べて、熱可塑性ポリエステル樹脂、特にポリブチレンテレフタレート樹脂はレーザー透過性が低いためレーザー溶着性が悪く、溶着強度が不十分となりやすい。
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂は結晶性樹脂であるため、これを成形した部材には反り変形による高低差が発生しやすく、接合しようとする樹脂部材同士の接合面で間隙が生じてしまい、このような場合には高い溶着強度を得ることはより難しくなる。近年製品設計の複雑化に伴い、接合面が円環状等ではない、対称軸の存在しない複雑な形状の成形体をレーザーにて溶着するニーズが出てきているが、その場合、この問題は特に顕著となり対称軸の存在しない複雑な形状での溶着が不十分となる問題が生じた。
ポリブチレンテレフタレート樹脂のレーザー溶着性を向上させるために、ポリブチレンナフタレート(PBN)やポリエチレンナフタレート(PEN)を配合する方法(特許文献1)が提案されている。しかしながらこの手法では、接合面で間隙が生じた部材の溶着強度を改良するには不十分である。また吸収側部材に突条を設けるとともに、治具等により両樹脂材を加圧した状態でレーザー光を照射する方法や、さまざまな突条形状(特許文献2)が提案されている。しかしながら、突条の設置、また種々の突条形状とすることや加圧は有効な方法であるものの、透過材や吸収材の組み合わせや、対称軸の存在しない複雑な形状の場合には、間隙を埋めることができず、安定した溶着が困難である。さらに特許文献3では、透過側部材の接合面に突起を設け、突起形状を多角形とし、加圧する方法が提案されているものの、対称軸の存在しない複雑な形状では、記載されているような透過材や吸収材の組み合わせだけでは安定した溶着強度を得ることは難しい。また間隙を埋めるために極度に加圧することは、製品形状を歪めてしまうという課題もある。
特許第3510817号公報 特開2005-288934号公報 特開2011-5705号公報
本発明の目的(課題)は、上記の状況を鑑み、複雑な形状の溶着用接合面を有する部材を安定した高い溶着強度でレーザー溶着するレーザー溶着体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、透過側部材はレーザー光を透過し且つ吸収し得る色素材(以下「レーザー光透過吸収色素材」と称する)を含有する熱可塑性ポリエステル系樹脂からなり、吸収側部材がレーザー光を透過せずに吸収し得る色素材(以下「レーザー光吸収色素材」と称する)を含有する熱可塑性ポリエステル系樹脂からなり、透過側部材と吸収側部材の接合面には対称軸が存在せず、両部材間に10N/mm以下の単位距離当たりの押し力をかけながらレーザー溶着することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下のレーザー溶着体の製造方法に関する。
[1]少なくとも一部のレーザー光を透過する透過側部材とレーザー光を吸収する吸収側部材を、接合面を介してレーザー溶着するレーザー溶着体の製造方法であって、前記接合面は対称軸が存在しない形状を有し、
透過側部材が熱可塑性ポリエステル系樹脂にレーザー光透過吸収色素材を含有する組成物からなり、吸収側部材が熱可塑性ポリエステル系樹脂とレーザー光吸収色素材を含有する組成物からなり、
両部材間に10N/mm以下の単位距離当たりの押し力をかけながら溶着することを特徴とするレーザー溶着体の製造方法。
[2]未加圧下における吸収側部材の、透過側部材との接合面の高低差が0.01mm以上である上記[1]に記載のレーザー溶着体の製造方法。
[3]吸収側部材の接合面には凸部が形成されている上記[1]又は[2]に記載のレーザー溶着体の製造方法。
[4]レーザー光のスポット径が1.5~3.0mmである上記[1]~[3]のいずれかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
[5]吸収側部材は、透過側部材に当接する接合面の輪郭が、曲率が異なる複数の曲線および直線から選ばれる2以上の線から構成される上記[1]~[4]のいずれかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
[6]吸収側部材の接合面の形状に合わせて、レーザーの出力、溶着予定ライン、走査速度、及び/又は走査方法を可変させる上記[1]~[5]のいずれかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
[7]吸収側部材の接合面に設けた凸部の、溶着前後で凸部の高さの減少量が0.06~0.6mmである請求項[3]~[6]のいずれかに記載のレーザー溶着体の製造方法。[8]透過側部材は、その接合部のレーザー光透過率が、部分的に異なり、かつ連続して変化している上記[1]~[7]のいずれかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
[9]吸収側部材の接合面に設けた凸部の形状及び、幅、高さに合わせて、レーザー光のスポット径を選択する上記[1]~[8]のいずれかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
[10]レーザー光透過吸収色素材がニグロシンである上記[1]~[9]のいずれかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
[11]レーザー光吸収色素材がカーボンブラックである上記[1]~[10]のいずれかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
本発明のレーザー溶着体の製造方法によれば、複雑な接合面を有する部材であっても、安定した高い溶着強度でレーザー溶着することが可能となる。
本発明のレーザー溶着体の製造方法の一例を示す概観図である。 実施例に用いた吸収側部材の接合面に設けた凸部(凸条)の形状を示す図である。 参考例1に用いた透過側部材及び吸収側部材の形状を示す図である。
本発明のレーザー溶着体の製造方法は、少なくとも一部のレーザー光を透過する透過側部材とレーザー光を吸収する吸収側部材を、接合面を介してレーザー溶着するレーザー溶着体の製造方法であって、前記接合面は対称軸が存在しない形状を有し、
透過側部材が熱可塑性ポリエステル系樹脂にレーザー光透過吸収色素材を含有する組成物からなり、吸収側部材が熱可塑性ポリエステル系樹脂とレーザー光吸収色素材を含有する組成物からなり、
両部材間に10N/mm以下の単位距離当たりの押し力をかけながら溶着することを特徴とする。
以下、本発明の内容について詳細に説明する。以下の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。
[熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)]
本発明のレーザー溶着体の製造方法に使用する透過側部材と吸収側部材は、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)の成形体からなる。
熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)としては、(A1)ポリブチレンテレフタレートホモポリマー、(A2)ポリブチレンテレフタレート共重合樹脂、(A3)ポリブチレンテレフタレートホモポリマーを含むホモPBT系混合樹脂、または、(A4)ポリブチレンテレフタレート共重合樹脂を含む共重合PBT系混合樹脂のいずれかであることが好ましい。
<(A1)ポリブチレンテレフタレートホモポリマー>
ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(「ホモPBT」とも称する)は、テレフタル酸単位及び1,4-ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有する高分子であり、テレフタル酸単位及び1,4-ブタンジオール単位からなる重合体である。
ホモPBTの末端カルボキシル基量は、好ましくは60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることがより好ましく、30eq/ton以下であることが更に好ましい。
なお、ポリブチレンテレフタレートホモポリマーの末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLに樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定することにより、求めることができる。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
ホモPBTの固有粘度は0.5~2.0dl/gであることが好ましい。当該固有粘度が0.5dl/g以上であれば、溶着体の機械的強度が低くなり過ぎることがなく、2.0dl/g以下であれば、流動性が低下して成形性が悪化したりレーザー溶着性が低下したりするのを防ぐことができる。
かかる観点から、ホモPBTの固有粘度は、0.5~2dl/gであることが好ましく、中でも0.6dl/g以上、或いは1.5dl/g以下、その中でも0.7dl/g以上、或いは1.2dl/g以下であることがさらに好ましい。
なお、固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定される値である。
<(A2)ポリブチレンテレフタレート共重合樹脂>
ポリブチレンテレフタレート共重合樹脂(「共重合PBT」とも称する)は、テレフタル酸単位及び1,4-ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体である。
テレフタル酸以外の他のジカルボン酸単位としては、例えばイソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4,4’-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類、1,4-シクロへキサンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸類などを挙げることができる。
1,4-ブタンジオール以外の他のジオール単位としては、炭素原子数2~20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類などを挙げることができる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオぺンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオールなどを挙げることができる。
共重合PBTは、機械的性質、耐熱性の観点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合が、70モル%以上であることが好ましく、中でも90モル%以上であることがさらに好ましい。
また、ジオール単位中の1,4-ブタンジオールの割合が、70モル%以上であることが好ましく、中でも90モル%以上であることがさらに好ましい。
共重合PBTは、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能若しくは四官能のアルコール等の多官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
共重合PBTは、特に、共重合成分として、ポリアルキレングリコール類(特にはポリテトラメチレングリコール(PTMG))を共重合したポリブチレンテレフタレート樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、特にはイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
ポリテトラメチレングリコール(PTMG)を共重合した共重合PBTにおいては、共重合体中のテトラメチレングリコール成分の割合が3~40質量%であることが好ましく、中でも5質量%以上或いは30質量%以下、その中でも10質量%以上或いは25質量%以下であることがさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性と耐熱性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。
他方、ダイマー酸を共重合した共重合PBTの場合は、全カルボン酸成分に占めるダイマー酸成分の割合は、カルボン酸基として0.5~30モル%であることが好ましく、中でも1モル%以上或いは20モル%以下、その中でも3モル%以上或いは15モル%以下であることがさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性、長期耐熱性及び靭性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
また、イソフタル酸を共重合した共重合PBTの場合には、全カルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の割合は、カルボン酸基として1~30モル%であることが好ましく、中でも2モル%以上或いは20モル%以下、その中でも3モル%以上或いは15モル%以下であることがさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性、耐熱性、射出成形性及び靭性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
共重合PBTとしては、レーザー溶着性と成形性の観点から、ポリテトラメチレングリコールを共重合した共重合PBT若しくはイソフタル酸を共重合した共重合PBTが特に好ましい。
共重合PBTの固有粘度は0.5~2.0dl/gであることが好ましい。当該固有粘度が0.5dl/g以上であれば、溶着体の機械的強度が低くなり過ぎることがなく、2.0dl/g以下であれば、流動性が低下して成形性が悪化したりレーザー溶着性が低下したりするのを防ぐことができる。
かかる観点から、共重合PBTの固有粘度は、0.5~2.0dl/gであることが好ましく、中でも0.6dl/g以上或いは1.5dl/g以下、その中でも0.7dl/g以上或いは1.2dl/g以下であることがさらに好ましい。
なお、固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定される値である。
共重合PBTの末端カルボキシル基量は、60eq/ton以下であることが好ましい。当該末端カルボキシル基量が60eq/ton以下であれば、樹脂組成物の溶融成形時にガスの発生を抑えることができる。
かかる観点から、共重合PBTの末端カルボキシル基量は、60eq/ton以下であることが好ましく、中でも50eq/ton以下、その中でも30eq/ton以下であることがさらに好ましい。
他方、末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではない。通常は5eq/ton以上である。
なお、共重合PBTの末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLに樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定することにより、求めることができる。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
<(A3)ポリブチレンテレフタレートホモポリマーを含むホモPBT系混合樹脂>
ポリブチレンテレフタレートホモポリマーを含むホモPBT系混合樹脂(「ホモPBT系混合樹脂」とも称する)は、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(A3-1)と、ポリブチレンテレフタレート共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂及び芳香族ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂(A3-2)とからなる樹脂組成物であることが好ましい。
(ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(A3-1))
ポリブチレンテレフタレートホモポリマーは、上述したポリブチレンテレフタレートホモポリマー(A1)と同様である。
(ポリブチレンテレフタレート共重合樹脂(A3-2-1))
上記ポリブチレンテレフタレート共重合樹脂(A3-2-1)は、上述したポリブチレンテレフタレート共重合樹脂(A2)と同様である。
(ポリエチレンテレフタレート樹脂(A3-2-2))
上記ポリエチレンテレフタレート樹脂(「PET」とも称する)は、全構成繰り返し単位に対するテレフタル酸及びエチレングリコールからなるオキシエチレンオキシテレフタロイル単位を主たる構成単位とする樹脂である。
オキシエチレンオキシテレフタロイル単位以外の構成の繰り返し単位を含んでいてもよい。
PETは、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルとエチレングリコールとを主たる原料として製造される。他の酸成分及び/又は他のグリコール成分を併せて原料として用いてもよい。
テレフタル酸以外の酸成分としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸及びこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸及びその誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸等のオキシ酸又はその誘導体などを挙げることができる。
また、エチレングリコール以外のジオール成分としては、例えば1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体等を挙げることができる。
PETは、分岐成分、例えばトリカルバリル酸、トリメリシン酸、トリメリット酸等の如き三官能、もしくはピロメリット酸の如き四官能のエステル形性能を有する酸またはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等の如き三官能もしくは四官能のエステル形成能を有するアルコールを好ましくは1.0モル%以下、より好ましくは0.5モル%以下、更に好ましくは0.3モル%以下を共重合せしめたものであってもよい。
PETの固有粘度は、0.3~1.5dl/gであることが好ましく、中でも0.4dl/g以上或いは1.2dl/g以下、その中でも0.5dl/g以上或いは0.8dl/g以下であることがさらに好ましい。
なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
PETの末端カルボキシル基量は、3~60eq/tonであることが好ましい。末端カルボキシル基量を60eq/ton以下とすることで、樹脂材料の溶融成形時にガスが発生しにくくなり、得られるレーザー溶着用部材の機械的特性が向上する傾向にあり、逆に末端カルボキシル基量を3eq/ton以上とすることで、レーザー溶着用部材の耐熱性、滞留熱安定性や色相が向上する傾向にあり、好ましい。
かかる観点から、PETの末端カルボキシル基量は、3~60eq/tonであることが好ましく、中でも5eq/ton以上或いは50eq/ton以下、その中でも8eq/ton以上或いは40eq/ton以下であることがさらに好ましい。
なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル量は、ベンジルアルコール25mLにポリエチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより、求められる値である。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
(ポリカーボネート樹脂(A3-2-2))
上記ポリカーボネート樹脂(「PC」とも称する)は、ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。
PCの製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができるが、溶融重合法で製造したポリカーボネート樹脂が、レーザー光透過性、レーザー溶着性の点から好ましい。
原料のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ちビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
PCとしては、上述した中でも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂、又は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の共重合体であってもよい。更には、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
PCの粘度平均分子量は5000~30000であることが好ましい。粘度平均分子量が5000以上のPCを用いると、得られる溶着体の機械的強度を維持することができ、また30000以下であれば、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化したり、レーザー溶着性が低下したりするのを抑えることができる。
かかる観点から、PCの粘度平均分子量は5000~30000であることが好ましく、中でも10000以上或いは28000以下、その中でも14000以上或いは24000以下であることが更に好ましい。
なお、PCの粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算される粘度平均分子量[Mv]である。
PCのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)により測定したポリスチレン換算の質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)は、2~5であることが好ましく、中でも2.5以上或いは4以下であることがさらに好ましい。Mw/Mnが過度に小さいと、溶融状態での流動性が増大し成形性が低下する傾向にある。一方、Mw/Mnが過度に大きいと、溶融粘度が増大し成形困難となる傾向がある。
また、PCの末端ヒドロキシル基量は、熱安定性、加水分解安定性、色調等の点から、100質量ppm以上であることが好ましく、より好ましくは120質量ppm以上、更に好ましくは150質量ppm以上、最も好ましくは200質量ppm以上である。但し、通常1500質量ppm以下、好ましくは1300質量ppm以下、更に好ましくは1200質量ppm以下、最も好ましくは1000質量ppm以下である。ポリカーボネート樹脂の末端ヒドロキシル基量が過度に小さいと、レーザー透過性が低下しやすい傾向にあり、また、成形時の初期色相が悪化する場合がある。末端ヒドロキシル基量が過度に大きいと、滞留熱安定性や耐湿熱性が低下する傾向がある。
(芳香族ビニル系樹脂(A3-2-3))
芳香族ビニル系樹脂は、芳香族ビニル化合物を主成分とする重合体であり、例えば芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等を挙げることができる。
また、芳香族ビニル系樹脂として、芳香族ビニル化合物に他の単量体を共重合させた共重合体も用いることができる。代表的なものとしては、例えばスチレンとアクリロニトリルを共重合させたアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレンと無水マレイン酸を共重合させた無水マレイン酸-スチレン共重合体(無水マレイン酸変性ポリスチレン樹脂)を挙げることができる。
芳香族ビニル系樹脂としては、例えばポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-スチレン(AS)、メチルメタクリレート-スチレン(MS)、スチレン-マレイン酸共重合体などが代表的なものである。
芳香族ビニル系樹脂には、ゴム成分を共重合することができる。ゴム成分の例としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエンなどの共役ジエン系炭化水素を挙げることができる。ゴム成分を共重合する場合、共重合するゴム成分の量は、芳香族ビニル系樹脂全セグメント中の1質量%以上50質量%未満とする。ゴム成分の量は、好ましくは3~40質量%、さらに好ましくは、5~30質量%である。
ゴム成分共重合芳香族ビニル系樹脂としては、例えばゴム変性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸(ASA)、スチレン-ブタジエン共重合体(SBS)、およびその水素化物(SEBS)、スチレン-イソプレン共重合体(SIS)、およびその水素化物(SEPS)等を挙げることができる。
共重合可能な他の単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸などのα,β-不飽和カルボン酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸-t-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのα,β-不飽和カルボン酸エステル類、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのα,β-不飽和ジカルボン酸無水物類、N-フェニルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-t-ブチルマレイミドなどのα,β-不飽和ジカルボン酸のイミド化合物類などを挙げることができる。
芳香族ビニル系樹脂としては、GPCにより測定した質量平均分子量が50000~500000であることが好ましい。当該分子量が50000以上であれば、ブリードアウトを抑制することができ、成形時の分解ガス発生によるウエルド強度の低下を抑えることができる。他方、当該分子量が500000以下であれば、流動性及びレーザー溶着強度を高めることができる。かかる観点から、芳香族ビニル系樹脂としては、GPCにより測定した質量平均分子量が50000~500000であることが好ましく、中でも100000以上或いは400000以下、その中でも150000以上或いは300000以下であることがさらに好ましい。
芳香族ビニル系樹脂は、アクリロニトリル-スチレン共重合体の場合、220℃、98Nで測定されたメルトフローレート(MFR)が、0.1~50g/10分であることが好ましい。当該MFRが0.1g/10分以上であれば、ポリブチレンテレフタレート樹脂と相溶性がよく、射出成形時に層剥離などの外観不良が生じるのを抑えることができる。他方、当該MFRが50g/10分以下であれば、耐衝撃性の低下を抑えることができる。かかる観点から、芳香族ビニル系樹脂の上記メルトフローレート(MFR)は、0.1~50g/10分であることが好ましく、中でも0.5g/10分以上或いは30g/10分以下、その中でも1g/10分以上或いは20g/10分以下であることがさらに好ましい。
また、芳香族ビニル系樹脂がポリスチレンである場合は、200℃、48Nで測定されたMFRが1~50g/10分であることが好ましく、中でも3g/10分以上或いは35g/10分以下、その中でも5g/10分以上或いは20g/10分以下であることがさらに好ましい。
芳香族ビニル系樹脂がブタジエンゴム含有ポリスチレンである場合は、200℃、49Nで測定されたMFRが0.1~40g/10分であることが好ましく、中でも0.5g/10分以上或いは30g/10分以下、その中でも0.8g/10分以上或いは20g/10分以下であることが更に好ましい。
(ホモPBTと共重合PBT)
(A3)ホモPBT系混合樹脂が、ホモPBTと共重合PBTとを含有する場合、共重合PBTの含有割合は、ホモPBT及び共重合PBTの合計100質量%中、10~90質量%であることが好ましい。
共重合PBTの当該含有割合が10質量%以上であれば、レーザー溶着性能が高くなるため好ましく、当該含有割合が90質量%以下であれば、成形性が良くなるため好ましい。かかる観点から、ホモPBT及び共重合PBTの合計100質量%中、共重合PBTの含有割合は10~90質量%であることが好ましく、中でも15質量%以上或いは85質量%以下、その中でも20質量%以上或いは80質量%以下であることがさらに好ましい。
(ホモPBT+PET)
(A3)ホモPBT系混合樹脂が、ホモPBTとPETとを含有する場合、PETの含有割合は、ホモPBT及びPETの合計100質量%中、5~50質量%であることが好ましい。PETの当該含有割合が5質量%以上であれば、レーザー溶着性能が高くなるため好ましく、当該含有割合が50質量%以下であれば、成形性が良くなるので好ましい。かかる観点から、ホモPBT及びPETの合計100質量%中、PETの含有割合は5~50質量%であることが好ましく、中でも10質量%以上或いは45質量%以下、その中でも15質量%以上或いは40質量%以下であることがさらに好ましい。
(ホモPBT+PC)
(A3)ホモPBT系混合樹脂が、ホモPBTとPCとを含有する場合、PCの含有割合は、ホモPBT及びPCの合計100質量%中、5~50質量%であることが好ましい。PCの当該含有割合が5質量%以上であれば、レーザー溶着性能が高くなるため好ましく、当該含有割合が50質量%以下であれば、成形性が良くなるため好ましい。かかる観点から、ホモPBT及びPCの合計100質量%中、PCの含有割合は5~50質量%であることが好ましく、中でも10質量%以上或いは45質量%以下、その中でも15質量%以上或いは40質量%以下であることがさらに好ましい。
(ホモPBT+芳香族ビニル系樹脂)
(A3)ホモPBT系混合樹脂が、ホモPBTと芳香族ビニル系樹脂とを含有する場合、芳香族ビニル系樹脂の含有割合は、ホモPBT及び芳香族ビニル系樹脂の合計100質量%中、5~50質量%であることが好ましい。芳香族ビニル系樹脂の当該含有割合が5質量%以上であれば、レーザー溶着性能が高くなるため好ましく、当該含有割合が50質量%以下であれば、成形性が良くなるため好ましい。かかる観点から、ホモPBT及び芳香族ビニル系樹脂の合計100質量%中、芳香族ビニル系樹脂の含有割合は5~50質量%であることが好ましく、中でも10質量%以上或いは45質量%以下、その中でも15質量%以上或いは40質量%以下であることがさらに好ましい。
尚、上記には、ホモPBT(A3-1)と、共重合PBT、PET、PC、芳香族ビニル系樹脂(A3-2)の中の1つとを組み合わせた場合の好ましい含有割合を記載した。ただし、上記(A3-2)の中から適宜選択して、複数種を用いてもよく、その場合のそれぞれの含有割合は、ホモPBT及び/又は共重合PBTを全体の50質量%以上とし、かつ、上記した(A3-2)をそれぞれの割合範囲で合計が100質量%を越えないようすることが好ましい。
例えば、(A3-2)として、芳香族ビニル系樹脂とPCを併用する場合には、ホモPBT50質量%以上、芳香族ビニル系樹脂5~50質量%、及び、PC5~50質量%で、合計を100質量%とすることが好ましい。
また、後述する(A4)においても、(A4-2)から複数種を用いる場合には、上記と同じ考え方にて、組み合わせることができる。
<(A4)ポリブチレンテレフタレート共重合樹脂を含む共重合PBT混合樹脂>
ポリブチレンテレフタレート共重合樹脂を含む共重合PBT系混合樹脂(以下「共重合PBT系混合樹脂」とも称する)は、共重合PBT(A4-1)と、PET、PC及び芳香族ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂(A4-2)とを含む樹脂組成物であることが好ましい。
この際、共重合PBT系混合樹脂(A4)における共重合PBT(A4-1)は、ホモPBT系混合樹脂(A3)における共重合PBTと同様である。
また、共重合PBT系混合樹脂(A4)におけるPET、PC及び芳香族ビニル系樹脂は、ホモPBT系混合樹脂(A3)におけるPET、PC及び芳香族ビニル系樹脂とそれぞれ同様である。
(共重合PBT+PET)
共重合PBT系混合樹脂(A4)が、共重合PBTとPETとを含有する場合、PETの含有割合は、共重合PBT及びPETの合計100質量%中、50質量%以下であることが好ましい。PETの当該含有割合が50質量%以下であれば、成形性に優れるから好ましい。かかる観点から、共重合PBT及びPETの合計100質量%中、PETの含有割合は50質量%以下であることが好ましく、中でも5質量%以上或いは40質量%以下、その中でも5質量%以上或いは30質量%以下であることがさらに好ましい。
(共重合PBT+PC)
共重合PBT系混合樹脂(A4)が、共重合PBTとPCとを含有する場合、PCの含有割合は、共重合PBT及びPCの合計100質量%中、50質量%以下であることが好ましい。PC(B3-2)の含有割合が50質量%以下であれば、成形性に優れるから好ましい。かかる観点から、共重合PBT及びPCの合計100質量%中、PCの含有割合は50質量%以下であることが好ましく、中でも5質量%以上或いは40質量%以下、その中でも5質量%以上或いは30質量%以下であることがさらに好ましい。
(共重合PBT+芳香族ビニル系樹脂)
共重合PBT系混合樹脂(A4)が、共重合PBTと芳香族ビニル系樹脂とを含有する場合、芳香族ビニル系樹脂の含有割合は、共重合PBT及び共重合PBTの合計100質量%中、50質量%以下であることが好ましい。芳香族ビニル系樹脂の当該含有割合が50質量%以下であれば、成形性に優れるから好ましい。かかる観点から、共重合PBT及び共重合PBTの合計100質量%中、芳香族ビニル系樹脂の含有割合は50質量%以下であることが好ましく、中でも5質量%以上或いは45質量%以下、その中でも5質量%以上或いは40質量%以下であることがさらに好ましい。
[透過側部材]
レーザー光を透過する透過側部材は、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)とレーザー光透過吸収色素材を含む樹脂組成物からなる部材であり、少なくとも一部のレーザー光を透過し、一部のレーザー光を吸収する。
上記レーザー光透過吸収色素材としては、例えばニグロシンやアニリンブラックなどのアジン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ポルフィリン系、クオテリレン系、アゾ系、アゾメチン系、アントラキノン系、スクエア酸誘導体及びインモニウム、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリドン系、イソインドリノン系、インダンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、キノリン系、トリフェニルメタン系などの各種有機染顔料を挙げることができる。これらのうちの一種を選択して使用することも、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
なお、本発明において「染顔料」とは、染料乃至顔料の意味である。
透過側部材が含有する上記レーザー光透過吸収色素材としては、以上の中でも、黒色度を高めるために、レーザー光波長において主に吸収する染顔料(X)とレーザー光を主に透過する染顔料(Y)とを組合せて使用することが好ましい。
上記レーザー光波長において主に吸収する染顔料(X)としては、アジン(Azine)骨格を有するアジン系化合物の縮合混合物を含むのが好ましい。アジン骨格を有するアジン系化合物の縮合混合物として、ニグロシンが好ましい。ニグロシンを含有することで、透過側部材もレーザー光により発熱溶融し、吸収側部材のみが発熱溶融するだけでは適切な溶着が困難な複雑な形状でも、十分な溶着強度が達成できる。
ニグロシンは、アジン(Azine)骨格を有するアジン系化合物の混合物であり、レーザー光吸収性を有する染料として働き、800nm~1200nmのレーザー光の範囲に、緩やかな吸収を有している。ニグロシンは、C.I.Solvent Black 5やC.I.Solvent Black 7として、Color Indexに記載されているような、黒色のアジン系縮合混合物である。
ニグロシンは、例えばアニリン、アニリン塩酸塩及びニトロベンゼンを、塩化鉄の存在下、反応温度160~190℃で酸化及び脱水縮合することにより合成することができる。
ニグロシン等の染顔料(X)の含有量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して0.001~0.6質量部であることが好ましい。染顔料(X)の含有量が0.001質量部以上であれば染顔料(X)がムラなく分散し、レーザー光を吸収し樹脂がムラなく溶融するので好ましい。かつ、0.6質量部以下であればレーザー光を透過し、樹脂の分解による発泡が起こりにくいので好ましい。
かかる観点から、染顔料(X)の含有量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して0.001~0.6質量部であることが好ましく、中でも0.02質量部以上或いは0.3質量部以下、その中でも0.05質量部以上或いは0.1質量部以下であることがさらに好ましい。
上記レーザー光を主に透過する染顔料(Y)としては、例えばアントラキノン系染顔料、ペリノン系染顔料及びアゾメチン系染顔料を挙げることができる。
これら染顔料は、光線の吸収波長により呈する色が決まるが、黒色度を高めるためには、具体的には、青色を呈する染顔料(以下「青色染料」とも称する)と、黄色を呈する染顔料(以下「黄色染料」とも称する)と、赤色を呈する染顔料(以下、「赤色染料」とも称する)の組合せ、紫色を呈する染顔料(以下、「紫色染料」とも称する)と、黄色染料の組合せ、緑色を呈する染顔料(以下、「緑色染料」とも称する)と、赤色染料、青色染料と、茶色を呈する染顔料(以下、「茶色染料」とも称する)などの染顔料の組合せを挙げることができる。
好ましい青色染料は、最大吸収波長が590~635nmの範囲のアントラキノン染料である。アントラキノン染料は通常青色の油溶性染料である。透過側部材が含有する上記レーザー光透過吸収色素材として、この染料を組み合わせることにより、例えば、緑色アントラキノン染料より、視認性が高く、黒色混合染料を組み合わせる場合にも、減法混色で、赤色染料、黄色染料を組み合わせることにより、着色力の高い黒色を示す着色剤を得ることができる。
最大吸収波長が590~635nmの範囲であるアントラキノン染料としては、空気存在下における熱重量分析計TG/DTAの測定値(分解開始温度)が300℃以上のものを選択することが好ましい。
好ましいアントラキノン染料は、COLOR INDEXに記載されているようなC.I.ソルベントブルー97(分解開始温度320℃)、C.I.ソルベントブルー104(分解開始温度320℃)等が例示される。それらは、1種または2種以上使用されてもよい。但し、配合量が多くなると高温雰囲気下で成形体からブリードしやすくなり、耐熱変色特性が悪化する傾向がある。
市販されているアントラキノン染料としては、例えば、「NUBIAN(登録商標)BLUE シリーズ」、「OPLAS(登録商標) BLUE シリーズ」(いずれも商品名、オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。
好ましい赤色染料としては、耐熱性が良好なペリノン染料が選ばれ、最大吸収波長が460~480nmの範囲である赤色ペリノン染料が挙げられる。このようなペリノン染料の具体例は、C.I.ソルベント レッド 135、162、178、179等を使用することができる。それらは、1種または2種以上使用されてもよい。但し、配合量が多くなると高温雰囲気下で成形体からブリードしやすくなり、耐熱変色特性が悪化する傾向がある。
赤色ペリノン染料の市販品としては、例えば、「NUBIAN(登録商標) RED シリーズ、OPLAS(登録商標) RED シリーズ」(いずれも商品名、オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。
好ましい黄色染料としては、耐熱性が良好なアントラキノン染料が選ばれ、最大吸収波長が435~455nmの範囲のアントラキノン染料が好適である。最大吸収波長が435~455nmの範囲にあるアントラキノン染料は、通常黄色の油溶性染料である。
黄色アントラキノン染料の具体例は、C.I.ソルベント イエロー 163、C.I.バット イエロー 1、2、3等を使用することができる。それらは、1種または2種以上使用されてもよい。それらは、1種または2種以上使用されてもよい。但し、配合量が多くなると高温雰囲気下で成形体からブリードしやすくなり、耐熱変色特性が悪化する傾向がある。
黄色アントラキノン染料の市販品としては、例えば、「NUBIAN(登録商標) YELLOW シリーズ、OPLAS(登録商標) YELLOW シリーズ」(いずれも商品名、オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。
好ましい茶色染料として、アゾメチン系染料が選ばれる。例えば、下記式(1)に示す1:1型アゾメチンニッケル錯体を少なくとも含有する染料を挙げることができる。
Figure 0007145167000001
[式(1)中、R~Rは、互いに同一または異なり、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基またはハロゲン原子である。]
式(1)におけるR~R中の炭素数1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、neo-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-デシル基等が好ましく挙げられ、炭素数1~18のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、neo-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基等が好ましく、アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ、ジエチルアミノ等を好ましく挙げることができ、ハロゲン原子は、例えばF、Cl、Br等である。
1:1型アゾメチンニッケル錯体に用いるアゾメチン色素は、公知の方法で製造出来る。例えば、以下の反応式で示すようなジアミノマレオニトリルと置換基を有しても良いサリチルアルデヒドを反応させることで得られる。
Figure 0007145167000002
式(2)中、R~Rは、前記式(1)と同義である。
このアゾメチン色素をニッケル化剤、例えば、酢酸ニッケルを用いて金属化することにより、下記に示すように、1:1型アゾメチンニッケル錯体が得られる。
Figure 0007145167000003
式(3)中、R~Rは、前記式(1)と同義である。
得られたニッケル錯体は、アゾメチン色素がキレート性の4配位子として働き、安定な錯体を構成する。
1:1型アゾメチンニッケル錯体は、耐熱性、耐光性等の堅牢性が良好であるため、屋外の部材や熱にさらされる部材用樹脂組成物に有用であり、レーザー溶着時の溶融時に熱変化が起こりにくく、レーザー溶着部材用の着色剤として好適である。
前記式(1)に示す1:1型アゾメチンニッケル錯体の具体例としては、R~Rが以下の通りである下記表1の化合物例1~7等を好ましく挙げることができる。
なお、透過側部材が含有する上記レーザー光透過吸収色素材として用いるアゾメチンニッケル錯体はこれらに限定されるものではない。
Figure 0007145167000004
上記レーザー光透過吸収色素材として用いるレーザー光を主に透過する染顔料(Y)を、透過側部材に含有する場合、最大吸収波長が590~635nmの範囲であるアントラキノン染顔料(C1)と、最大吸収波長が460~480nmの範囲であるペリノン染顔料(C2)と、最大吸収波長が435~455nmの範囲であるアントラキノン染顔料(C3)を用いることが好ましい。
熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)との相溶性によって、レーザー光波長において主に吸収する染顔料である染顔料(X)及びレーザー光を主に透過する染顔料を構成する染顔料(Y)の色相が変化するため、黒色色相として好適な漆黒の成形板を得るためには、染顔料(Y)を構成する各染料の割合を調整することが望まれる。その場合、C1~C3の含有割合は、質量比で(C1、C2、C3の合計100質量部基準で)C1:C2:C3=24~42:24~48:22~46であることが好ましい。更に好ましいC1:C2:C3の比率は、24~41:24~39:22~46である。
更に、透過側部材が含有する上記レーザー光透過吸収色素材として用いるレーザー光を主に透過する染顔料(Y)は、最大吸収波長が460~480nmの範囲であるペリノン染顔料(C2)及び最大吸収波長が590~635nmの範囲であるアントラキノン染顔料(C1)を、両者の質量比C2/C1が0.4~2の割合で含有する着色剤であることが好ましい。本発明に用いる樹脂組成物による発色性や、ブリードアウト抑制を考慮すると、より好ましくは0.4~1.5、更に好ましくは0.6~1.5である。
併用してよいその他の染顔料としては、アゾ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、キノフタロン系、ペリレン系、ペリノン系(上記したC2とは異なる波長の化合物)、イソインドリノン系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系(上記したC1、C3とは異なる波長の化合物)、アゾメチン系等の染顔料を挙げることができる。ただし、ニッケルを含まないほうが好ましい。
レーザー光透過吸収色素材の含有量は、ポリエステル系樹脂材料(A)100質量部に対し、0.0005~5.0質量部が好ましい。透過吸収色素材の含有量が0.0005質量部以上であればレーザー光を樹脂が吸収し溶融するので好ましい。他方、当該含有量が5.0質量部以下であれば染顔料のブリードアウトを抑制でき、かつ発熱量をコントロールできるため好ましい。
かかる観点から、レーザー光透過吸収色素材の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)に対して、0.0005~5.0質量部であることが好ましく、中でも0.001質量部以上或いは4.0質量部以下、その中でも0.005質量部以上或いは3.0質量部以下であることがさらに好ましい。
上記したように、レーザー光透過吸収色素材として、レーザー光波長において主に吸収する染顔料(X)とレーザー光を主に透過する染顔料(Y)とを組み合わせる場合には、染顔料(X)はポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して0.0005~0.6質量部であることが好ましい。
染顔料(X)の含有量が0.0005質量部以上であれば吸収染顔料がむらなく分散し、レーザー光を樹脂が吸収しむらなく溶融するので好ましい。他方、当該含有量が0.6質量部以下であれば、レーザー光を透過し、樹脂の分解による発泡が起こり難いため、好ましい。
かかる観点から、染顔料(X)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して、0.0005~0.6質量部であることが好ましく、中でも0.001質量部以上或いは0.3質量部以下、その中でも0.003質量部以上或いは0.1質量部以下であることがさらに好ましい。
レーザー光を主に透過する染顔料(Y)はポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して0.0005~5質量部であることが好ましい。
レーザー光を主に透過する染顔料(Y)の含有量が5.0質量部以下であれば、染顔料のブリードアウトが起こり難いため、好ましい。
かかる観点から、レーザー光を主に透過する染顔料(Y)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して、0.0005~5質量部であることが好ましく、中でも0.05質量部以上或いは4質量部以下、その中でも0.1質量部以上或いは3質量部以下であることがさらに好ましい。
染顔料(X)含有量に対する、染顔料(Y)含有量の比率(Y/X)は、1~100であるのが好ましく、中でも10以上或いは90以下、その中でも20以上或いは80以下であるのがさらに好ましい。
[吸収側部材]
吸収側部材は、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)とレーザー光吸収色素材を含有する樹脂組成物からなる。上記レーザー光吸収色素材としては、カーボンブラックなどの黒色系着色剤、酸化チタンや硫化亜鉛等の白色系着色剤などを挙げることができ、これらのうちの少なくとも一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、カーボンブラックを含むものが好ましい。
カーボンブラックとしては、例えばファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック及びアセチレンブラック等のうちの少なくとも一種を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
カーボンブラックは、分散を容易にするため、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)を構成する樹脂成分あるいはその他の樹脂と予めマスターバッチ化されたものを使用することも好ましい。
カーボンブラックの一次粒子径は、分散性の観点から、10nm~30nmであることが好ましく、15nm以上、25nm以下であることがさらに好ましい。分散性が良いと、レーザー溶着時の溶着ムラが減少する。
また、カーボンブラックは、漆黒性の観点から、JIS K6217で測定した窒素吸着比表面積が30~400m/gであることが好ましく、中でも50m/g以上、その中でも80m/g以上であることがさらに好ましい。
さらに、カーボンブラックは、分散性の観点から、JIS K6221で測定したDBP吸収量が20~200cm/100gであることが好ましく、より好ましくは40~170cm/100g、さらには50~150cm/100gが好ましい。分散性が良いと、レーザー溶着時の溶着ムラが減少する。
レーザー光吸収色素材の含有量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して0.15~10質量部であることが好ましい。レーザー光吸収色素材の含有量が0.15質量部以上であればレーザー照射時に樹脂が発熱して溶融し、10質量部以下であれば急激かつ過剰な発熱による樹脂の分解を防ぐことができ、好ましい。
かかる観点から、レーザー光吸収色素材の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して0.15~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.15~5質量部、さらに好ましくは0.15~1質量部である。
また、吸収側部材は、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)及びレーザー光吸収色素材以外の他の成分を適宜含有することができる。
他の成分としては、レーザー光透過吸収色素材、例えばニグロシンを挙げることができる。吸収側部材は、レーザー光透過吸収色素材、例えばニグロシンを含有しても、含有しなくてもよい。レーザー光透過吸収色素材、特にニグロシンを含有しないことにより、耐熱変色、耐光性変色を防止することができる。
ニグロシンは、前記した通りである。吸収側部材にニグロシンを含有する場合の含有量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して0.001~0.6質量部であることが好ましい。ニグロシンの含有量が0.001質量部以上であればニグロシンが均一に分散し、レーザー光を吸収し樹脂が均一に溶融するので好ましく、また、0.6質量部以下であればレーザー光が溶着可能な程度に透過し、かつ過剰にレーザー光を吸収して起こる樹脂の分解による発泡を抑制できるので、好ましい。ニグロシンの含有量は、より好ましくは0.02~0.3質量部であり、0.05~0.1質量部がさらに好ましい。
[他の含有成分]
透過側部材及び吸収側部材は、所望に応じ、上記した成分以外の種々の添加剤を含有することが可能である。このような添加剤としては、例えば、強化充填材、耐衝撃改良剤、流動改質剤、助色剤、分散剤、安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、結晶促進剤、結晶核剤、難燃剤、及びエポキシ化合物等を挙げることができる。
[部材の形状]
部材の形状は任意である。例えば板状であっても、矩形状であっても、その他の複雑な形状であってもよい。例えば端部突き合わせて溶着に供するような異形押出品(棒、パイプ等)でもよく、また高い防水性、気密性が必要とされる通電部品、電子部品等に用いられる金属インサートされた成形品であってもよい。
部材の成形方法も任意である。例えば射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等を挙げることができる。
透過側部材は、その全厚さに渡ってレーザー光を透過する必要があるから、厚過ぎるのは好ましくない。他方、薄過ぎると、成形品の強度が弱くなるため好ましくない。
かかる観点から、透過側部材のレーザー溶着する接合部の厚さは、0.2mm~4.0mmであることが好ましく、中でも0.4mm以上或いは3.5mm以下、その中でも0.5mm以上或いは3.0mm以下であることがさらに好ましい。
[透過側部材と吸収側部材との関係]
接合強度の観点から、透過側部材と吸収側部材とは、透過側部材の融点Tm-Aと結晶化温度Tc-Aとの差((Tm-A)-(Tc-A))が、吸収側部材の融点Tm-Bと結晶化温度Tc-Bとの差((Tm-B)-(Tc-B))よりも大きいことがさらに好ましい。特に、吸収側部材に用いる樹脂に影響を強く受けるものの、((Tm-A)-(Tc-A))-((Tm-B)-(Tc-B))は0~30℃の範囲が好ましく、その中でも2~20℃の範囲がより好ましく、3~15℃、さらに4~10℃の範囲が特に好ましい。
そのようにするには、例えば吸収側部材に用いられる熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)の混合比率の調整、各種添加材の選択ならびに配合量の調整、透過側部材に用いられる熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)のレーザー光透過吸収染顔料の選択および配合量の調整などをすればよい。但しこれらの調整方法に限定するものではない。
また、接合強度の観点から、透過側部材の融解エンタルピーΔHm-Aと吸収側部材の融解エンタルピーΔHm-Bとは、透過側部材の融解エンタルピーΔHm-Aが、吸収側部材に用いられる熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)の融解エンタルピーΔHm-Bよりも高いことがさらに好ましい。(ΔHm-A)-(ΔHm-B)は0~20J/gの範囲が好ましく、0.5~10J/gの範囲がさらに好ましく、その中でも2~9J/gの範囲がさらに好ましい。
そのようにするには、例えば吸収側部材に用いられる熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)の混合比率の調整、各種添加材の選択ならびに配合量の調整、透過側部材に用いられる熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)のレーザー光透過吸収染顔料の選択および配合量の調整をすればよい。但しこれらの調整方法に限定するものではない。
なお、融点Tm、結晶化温度Tc及び融解エンタルピーΔHmは、射出成形により成形された透過側部材及び吸収側部材の、射出成形金型のゲートからの距離が5mm以上離れた箇所からサンプルを切り出し、測定して求められる。
[レーザー溶着体の製造方法]
透過側部材、吸収側部材に用いられる熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)の製造方法はそれぞれ、通常の方法により樹脂組成物を作成し、通常の方法により樹脂組成物を成形すればよい。
例えば、透過側部材又は吸収側部材の構成する原料を混合し、一軸または二軸押出機で溶融混練すればよい。また、各成分を予め混合することなく、若しくはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して樹脂組成物を調製してもよい。
また、透過側部材又は吸収側部材の構成する樹脂の一部に他の樹脂の一部を配合したものを溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りの樹脂や他の成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、ガラス繊維等の繊維状の強化充填材を用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220~300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
透過側部材及び吸収側部材の成形方法は、任意の方法を採用することができる。
例えば射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等を挙げることができる。
[レーザー溶着]
レーザー溶着は、上記した熱可塑性ポリエステル系樹脂材料を射出成形等により成形した透過側部材と吸収側部材とを、面接触または点接触させ、透過側部材側からレーザー光を照射することにより、両者の接合用の界面を少なくとも部分的に溶融させ一体化して1つの成形品とする。
透過側部材及び吸収側部材の形状は、各部材の形状はレーザー溶着によって接合できる形状であれば制限はないが、本発明においては、透過側部材及び吸収側部材が複雑な形状であっても溶着が可能なため、透過側部材と吸収側部材との接合面を透過側部材から見た時、接合面の形状には対称軸が存在しない。特に、吸収側部材の形状が、接合面を透過側部材から見た時、接合面の溶着予定ラインが、曲率が異なる複数の曲線および直線からなる群から選ばれた2以上の線から構成されていることが好ましい。
透過側部材は、吸収側部材の接合部と同じ大きさ、形状でもよいし、吸収側部材の接合部よりも大きくてもよく、異なる形状でもよい。
以下、図面も参照しながら、本発明のレーザー溶着体の製造方法について説明する。
図1は、本発明のレーザー溶着体の製造方法の一例を示す概観図である。吸収側部材1は、例えば、図1に示すように、上面3が長方形の一部を切り欠いたa~fの多角形状を有する箱型部材からなり、透過側部材2の形状は、例えば図1に示すように、吸収側部材1を覆う蓋状になっており、その下面が吸収側部材1の接合面3に面接触される。
吸収側部材1と透過側部材2の接合面3は、平滑でも、粗面でもよく、意図的に凸状の突起や、嵌合構造があってもよい。特に接合面には凸部を形成することが好ましい。凸部を設ける場合の形状は、特に制限はないが、凸部の垂直断面形状が、例えば山形、半円形、三角形、四角形または台形等、あるいは、それらが組み合わされた形状であってもよい。また、その幅や高さはレーザースポット径や所望の溶着体形状によって、任意である。
特に、吸収側部材には凸部が形成されることが好ましい。図1においては、吸収側部材1の接合面3の周縁の全周を周回するように、凸部が線状につながった凸条4が形成されているが、凸条を2列、或いは3列以上並行するように設けてもよく、凸部を連続的に点状に設けた列を並行して2列、或いは3列以上設けてもよい。
また、接合面の高低差は、種々の要因によって生じるが、例えば成形一次収縮及び、二次収縮(アニール等)によって、ヒケ、反りとして生じ、これらは成形品形状や成形条件などの複合的な要因によって生じる。またその影響は成形品全体に影響することもあれば、凸部などの細部に影響していることもある。この高低差は限りなく小さくすることが十分な溶着強度を得るためには望ましく、樹脂組成、成形条件、及びアニール条件等の組合わせを最適化することで可能ではあるが、成形品の設計上の許容範囲や製造コストにも関係するため、ある程度以上の高低差は許容される場合がある。本発明の方法では、0.01mm以上というような高低差があっても十分な溶着強度を達成することが可能である。
接合面の高低差は、好ましくは0.01~0.5mmであり、より好ましくは0.02~0.4mm、さらに好ましくは0.05~0.3mm以下である。
接合面の高低差は、溶着予定ライン全体における基準面に対する最も高い個所から最も低い個所との差として示される。接合面の高低差は、連続的に変化するものである。
またヒケ、反りは、透過側部材と吸収側部材のどちらか一方に生じる場合もあれば、両方に生じることもあり、特に凸部を設けていない部材側の場合の高低差は基準面から接合面までの距離をいう。さらに両方に凹部や凸部が生じている場合には、未加圧下において両部材を重ね合わせた際の隙間として表現され、これらは専用の検具を使用したり、簡易的には隙間ゲージ、ダイヤルゲージ、ハイトゲージとダイヤルゲージを併用するなどして計測する。
計測は、透過側部材及び、または吸収側部材の3点を基準面として、基準面から接合面または、凸部天面までの距離とする。
透過側部材の透過率は、少なくとも一部のレーザー光が透過することができれば、特に制限はないが、1.5mm厚みの波長940nmによる透過率は、好ましくは5~99%であり、より好ましくは15~80%、さらに好ましくは20~70%である。
透過率は、JIS規格等の試験片形状であれば大きく異なることはないが、実用的な製品形状では、成形品のゲート位置や、成形品の形状により透過率が高いところと低いところができ、透過率は完全に均一ではないことが多く、透過側部材の接合部のレーザー光透過率が部分的に異なり、かつ連続して変化することが多い。透過率が異なる場合、同じ出力、同じ走査速度で溶着した場合に、溶着強度にばらつきが生じやすいが、本発明の方法では、レーザー光透過率が部分的に異なり、かつ連続して変化する成形品でも良好な溶着強度を得ることが可能である。
レーザー溶着のために照射するレーザー光の種類は特に制限されないが、固体レーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザー、気体レーザー、液体レーザー等から選択できる。例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)レーザー(波長1064nm、1070nm)、LD(レーザーダイオード)レーザー(波長808nm、840nm、940nm、980nm)等を好ましく用いることができる。特には波長940n、980nm、1070nmのレーザー光が好ましい。発振形態はCWまたはパルスのいずれでもよい。照射方式も特に、制限はなく、レーザーヘッドをロボットにより移動させるものや、レーザー光をミラーで反射させてスキャンするガルバノスキャン方式、多数のレーザーヘッドを装備し、溶着面に同時に照射する方式等から適宜選択できる。
レーザースポット径は、0.1mm以上、30mm以下が好ましく、より好ましくは0.2mm以上、10mm以下、さらに好ましくは0.3mm以上、5mm以下、特に好ましくは1.5~3.0mmである。これ以下だと、溶着することが困難となりやすく、これ以上だと溶着幅を制御できにくくなる。また凸部の形状及び、幅、高さに合わせて、レーザー光のスポット径を選択することが好ましい。
またレーザー光は、接合面にフォーカスしてもよいし、デフォーカスしても良く、求める溶着体に応じて適宜選択する。
溶着条件は特に制限されるものではなく、装置の仕様によっても異なり、レーザー種類、レーザー径、レーザー出力、走査速度、溶着させる部材、部材形状等の諸条件の組み合わせにより種々の選択がされるが、例えば、レーザー出力は好ましくは1~1000W、より好ましくは10~500W、さらに好ましくは15~200Wである。これ以上の出力ではレーザー溶着設備費用が高くなりすぎ、これ以下では、十分な溶着強度を得ることは難しくなりやすい。
また、レーザー走査速度は、好ましくは0.1~20000mm/s、より好ましくは1~10000mm/s、さらに好ましくは10~1000mm/sである。
またレーザー走査方法としては、接合面の形状に合わせて、レーザーの出力、溶着予定ライン、走査速度、及び/又は走査方法を可変とすることが、溶着効率、溶着強度、溶着外観、装置負荷の点でより好ましい。
レーザー溶着を行うに当たっては、まず、透過側部材2と、吸収側部材1をその接合面3の凸部4と重ね合わせ、透過側部材2と吸収側部材1が重ね合わされた状態を維持する。重ね合わされた状態を維持する際、透過側部材2の上、つまりレーザー照射側にガラス板、または石英板、アクリル板などの透明板材を配置しても良い。特にガラス板、または石英板を配置した場合は、レーザー溶着時に発生する熱の放熱を促進し、良好な外観を得るのに適する。
次いで、透過側部材2の上方から、吸収側部材1の周縁に設けた凸部4に対応する溶着予定ライン5上に、レーザー光Xを走査し照射する。このとき、レーザー光Xの殆ど或いは大部分が透過側部材2を透過する。そして、レーザー光Xは、吸収側部材1の凸部4を中心に吸収され、凸部4の表面付近が発熱し、溶融する。また透過側部材2の樹脂組成によっては、レーザー光Xの一部を吸収発熱し、溶着に寄与する。また、少なくとも両部材のレーザー溶着の接合時には、両部材に治具或いは加圧手段により10N/mm以下、好ましくは9N/mm以下、さらに好ましくは5N/mm以下、特に好ましくは3N/mm以下の単位距離当たりの押し力をかける。これ以上の加圧を行うと、成形品に残留応力が残ったり、反り変形による高低差が大きくなる傾向があるため、発煙したり十分な溶着強度を得ることが出来ない。このようにすることで吸収側部材1の接合面と透過側部材とが溶け合い、レーザー光Xの照射が停止された後には、透過側部材2と吸収側部材1の溶融した部分が冷却され、固化して両部材が高い強度で溶着され一体化される。
また、単位距離当たりの押し力は0.4N/mm以上とすることが好ましい。これ以下だと、接合面の密着が保てず、溶着できにくくなる。
両部材のレーザー溶着の接合時における単位距離当たりの押し力は、実施例に記載したように、実際の加圧力(N)を溶着予定ラインの一周の長さ(mm)で除すことで求められる。
レーザー光Xの走査は、吸収側部材1の接合面3の凸部4に向けて、1周する形で行ってもよく、2周或いは3周以上の周回走査を行うこともできる。レーザー光Xの走査は、溶着予定ライン(図1では凸部4)を外れると、発煙が生じ溶着が困難となるため、走査位置の選択は重要である。
吸収側部材の接合面に凸部を設けた場合、レーザー溶着前後で凸部の高さの減少量が0.06~0.6mmとなることが好ましい。凸部の高さの減少量(変化量)は、溶着時の凸部溶融による変位を変位計により数値化することにより測定できる。
レーザー溶着において、下記する総熱量(J)が溶着の程度に大きく寄与するため、各種条件が違う場合でも、総熱量(J)を指標にしてこれを同じように近似させることにより、優れた溶着性を容易に可能とすることができる。
なお、総熱量は以下の式で計算される。
入熱量(J/mm)=出力(W)/走査速度(mm/s)
総熱量(J)=1周走査距離(mm)×周回数(回)×入熱量(J/mm)
本発明のレーザー溶着体の製造方法によれば、高い接合強度を有する溶着体を得ることが可能である。本発明による溶着体の接合強度は、好ましくは300N以上であり、500N以上がより好ましく、特に750N以上、また900N以上、さらに1000N以上、1200N以上であることが最も好ましい。
レーザー溶着の場合、条件によっては樹脂が分解することや、種々の要因により発煙が生じる場合がある。この発煙は、樹脂分解物から成る気体状のものであり、溶着体に冷却固着する場合があり、外観を著しく損なう場合がある。さらに、溶着体内部に電子部品等を内蔵した場合は、電子部品への悪影響を与える場合もあり、好ましくない。そのため、溶着強度が十分であっても、発煙しないことが好ましい。
またレーザー溶着装置の出力や走査速度には、その機構上からの限界があり、上限近くの条件で溶着した場合は、安定した接合強度の溶着体が得られず、不良品が出る可能性があるばかりでなく、装置自体を破損する可能性もあり、好ましくない。したがって、溶着性の判定にはこれらを考慮することも重要である。
レーザー溶着により一体化された溶着体の形状、大きさ、厚み等は任意であり、溶着体の用途としては、自動車等の輸送機器用の電装部品、電気電子機器部品、産業機械用部品、その他民生用部品等に、特に好適である。また、溶着強度が高く、その結果として耐圧強度も高いため、内部に電子基盤、回路、センサー、ソレノイド、モーター、トランス、電池等の電気電子部品を内蔵するための容器等の、気密性が必要な用途に用いることも好ましい。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
[吸収側部材A~Cの製造]
下記表2に記載した各成分を、表2の吸収側組成A~Cに記載した量(いずれも質量部)でブレンドし、これを30mmのベントタイプ2軸押出機を用いて250℃で混練してストランドを押し出し、吸収側組成A~Cのペレットを得た。
Figure 0007145167000005
得られた上記吸収側組成A~Cのペレットを120℃で7時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製、「J55」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で、図1の吸収側部材1に示すような箱型形状の吸収側部材A~Cを射出成形した。
吸収側部材A~Cの寸法は、図1中、高さhが20mm、厚み(幅)wは3mmである。そして、幅wが3mmの接合面3上には、底辺の幅0.75mm、高さ0.7mmの断面が略正三角形の凸条4を2列平行(ダブルと表記)、1列平行(シングルと表記)にして、接合面3の幅中心上のa-b-c-d-e-f-a点を周回するように設けた。凸条4の形状を示す接合面近傍の断面図を図2(a)、(b)に示した。図2(a)に示した2列の凸条4の場合、2列の凸部中央の幅の中央を基準として、図2(b)に示した1列の凸条4の場合、凸部中央を基準として、各点の間の距離は、a-b間:80mm、b-c間:50mm、c-d間:45mm、d-e間:30mm、e-f間:35mm、f-a間:20mmである。
得られた吸収側部材A~Cの凸条4の全周における凸部天面の高低差の測定を実施した。a~f点の各部を測定し、吸収側部材A~Cの凸部天面の平均高低差は、後記表4に示すように、0.18~0.22mmであった。
[融点Tm、結晶化温度Tc、融解エンタルピーΔHmの測定方法]
作製した吸収側部材の成形体の溶着予定部(ゲートからの距離:35mm部)を切削し、示差走査熱量測定(DSC)機(パーキンエルマー社製「Pyris Diamond」)を用いて、窒素雰囲気下、30℃から300℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、300℃で3分保持した後、降温速度20℃/分にて降温し、融点Tm、融解エンタルピーΔHm、結晶化温度Tcを測定した。
[透過側部材D~Hの製造]
透過側部材の製造に当たっては、以下の表3に示した成分を表3に示した割合で配合した染顔料(Y-1)~(Y-3)を使用した。
Figure 0007145167000006
前記表2及び表3に記載した各成分を、表2の透過側組成D~Hに記載した量(いずれも質量部)でブレンドし、これを30mmのベントタイプ2軸押出機を用いて250℃で混練してストランド押し出し、透過材組成D~Hのペレットを得た。
得られた上記透過材組成D~Hのペレットを120℃で7時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で射出成形して、上記吸収側部材A~Cの接合面3に対応する、図1に示す形状で、厚さ1mmの透過側部材D~Hを製造した。
吸収側部材1のa-b-c-d-e-f-a点に対応する、透過側部材2の溶着予定ライン5のa’~f’点における透過率(レーザー波長940nm)は、以下の通りであった。
透過材組成Dの場合、a’:28.1%、b’:30.2%、C’:27.3%、d’:22.4%、e’:21.4%、f’:25.3%、
透過材組成Eの場合、a’:30.5%、b’:27.9%、C’:29.9%、d’:28.6%、e’:26.8%、f’:28.4%
透過材組成Fの場合、a’:30.5%、b’:27.9%、C’:29.9%、d’:28.6%、e’:26.8%、f’:28.4%
透過材組成Gの場合、a’:30.5%、b’:27.9%、C’:29.9%、d’:28.6%、e’:26.8%、f’:28.4%
透過材組成Hの場合、a’:60.9%、b’:63.3%、C’:57.6%、d’:57.6%、e’:41.9%、f’:57.6%
[融点Tm、結晶化温度Tc、融解エンタルピーΔHmの測定方法]
作製した透過側部材の成形体の溶着予定部(ゲートからの距離:35mm部)を切削し、示差走査熱量測定(DSC)機(パーキンエルマー社製「Pyris Diamond」)を用いて、窒素雰囲気下、30℃から300℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、300℃で3分保持した後、降温速度20℃/分にて降温し、融点Tm、融解エンタルピーΔHm、結晶化温度Tcを測定した。
[レーザー溶着評価]
(実施例1~10、比較例1~5、参考例1)
表4及び表5に記載したように、透過側部材A~Cのいずれかを透過側に、吸収側部材D~Hのいずれかを吸収側にして、両者を重ね合わせて、表4及び表5に記載の単位距離当たりの押し力(単位:N/mm)をかけながら、透過側部材2の周縁からレーザー光Xを吸収側部材1の凸条4に向けて照射し、溶着予定ライン5に沿って周回するように走査し、レーザー溶着を行った。単位距離当たりの押し力(N/mm)の計測は、加圧用シリンダー(SMC製エアシリンダー(φ100mm))を取り付けた加圧ステージ上にコイン型ロードセル(株式会社イマダ製、LM-20kN)をセットし、実際の加圧力を計測した。得られた加圧力(N)を溶着予定ラインの1周の長さ(mm)で除した値とした。参考例1においては、レーザー光Xを、図3に示す円筒形状(直径48mm、高さ20mm)の吸収側部材1の接合面3上に形成された図2(a)に示した2列の凸条4(各凸条は、底辺の幅0.75mm、高さ0.7mm、かつ断面が略正三角形。に向けて照射した。
レーザー溶着は、ファインディバイス社製レーザー装置(レーザー波長:940nm、レーザースポット径φ2.1mm、最大出力140W、最大走査速度200mm/s)を用いた。各種の溶着条件を表4~5に示した。
溶着された溶着体のレーザー溶着強度の測定を行った。溶着体の接合強度の測定は、引張試験機(オリエンテック社製「1tテンシロン」)を使用し、溶着体内部に溶着以前に挿入しておいた試験用治具に取り付けた押し棒を取り付け、吸収側部材側から5mm/分で加重することで評価した。
凸条4の高さの減少量(変化量)を、加圧ステージに取り付けた変位計により測定した。
溶着性の判定は、レーザー溶着装置の負荷なども考慮して、以下の基準で行った。
A:発煙なく、溶着部の接合強度900Nより大、溶着速度はレーザー装置の最大走査速度200mm/sの85%より小。
B:発煙なし。接合強度900N以下、又は、溶着速度が最大速度の85%以上
C:発煙有り。
以上の結果を、以下の表4、表5に示す。
Figure 0007145167000007
Figure 0007145167000008
実施例1~10では、比較例1~5で溶着時に発煙が生じ、溶着不良であるのに対して、いずれも溶着時の発煙が確認されず、十分な接合強度が得られた。実施例6は、強度が低めであるが、実用的レベルであり、発煙もないことから有用であると判断された。なお、参考例1では、高い単位距離当たりの押し力でありながら、円筒状の対称形状であるために、溶着時の発煙が確認されず、十分な接合強度が得られた。
本発明のレーザー溶着体の製造方法は、接合面で間隙が生じたようなポリエステル部材であっても、安定した高い溶着強度でレーザー溶着できるので、自動車等の輸送機器用の電装部品、電気電子機器部品、産業機械用部品、その他民生用部品等の製造に好適に使用できる。また、溶着強度が高く、その結果として耐圧強度も高いため、内部に電子基盤、回路、センサー、ソレノイド、モーター、トランス、電池等の電気電子部品を内蔵するための容器等の、気密性が必要な用途に用いることも好ましい。
1:吸収側部材
2:透過側部材
3:接合面
4:凸部(凸条)
5:溶着予定ライン
X:レーザー光

Claims (11)

  1. 少なくとも一部のレーザー光を透過する透過側部材とレーザー光を吸収する吸収側部材を、接合面を介してレーザー溶着するレーザー溶着体の製造方法であって、前記接合面は対称軸が存在しない形状を有し、
    透過側部材が熱可塑性ポリエステル系樹脂にレーザー光を透過し且つ吸収し得る色素材(「レーザー光透過吸収色素材」と称する)を含有する組成物からなり、吸収側部材が熱可塑性ポリエステル系樹脂とレーザー光を透過せずに吸収し得る色素材(「レーザー光吸収色素材」と称する)を含有する組成物からなり、
    透過側部材の融解エンタルピーΔHm-Aと吸収側部材の融解エンタルピーΔHm-Bの差、(ΔHm-A)-(ΔHm-B)が0.5~20J/gであり、
    両部材間に0.4N/mm以上10N/mm以下の単位距離当たりの押し力をかけながら溶着することを特徴とするレーザー溶着体の製造方法。
  2. 未加圧下における吸収側部材の、透過側部材との接合面の高低差が0.01mm以上である請求項1に記載のレーザー溶着体の製造方法。
  3. 吸収側部材の接合面には凸部が形成されている請求項1又は2に記載のレーザー溶着体の製造方法。
  4. レーザー光のスポット径が1.5~3.0mmである請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザー溶着体の製造方法。
  5. 吸収側部材は、透過側部材に当接する接合面の輪郭が、曲率が異なる複数の曲線および直線から選ばれる2以上の線から構成される請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザー溶着体の製造方法。
  6. 吸収側部材の接合面の形状に合わせて、レーザーの出力、溶着予定ライン、走査速度、及び/又は走査方法を可変させる請求項1~5いずれか1項に記載のレーザー溶着体の製造方法。
  7. 吸収側部材の接合面に設けた凸部の、溶着前後で凸部の高さの減少量が0.06~0.6mmである請求項3~6のいずれか1項に記載のレーザー溶着体の製造方法。
  8. 透過側部材は、その接合部のレーザー光透過率が、部分的に異なり、かつ連続して変化している請求項1~7のいずれか1項に記載のレーザー溶着体の製造方法。
  9. 吸収側部材の接合面に設けた凸部の形状及び、幅、高さに合わせて、レーザー光のスポット径を選択する請求項1~8のいずれか1項に記載のレーザー溶着体の製造方法。
  10. レーザー光透過吸収色素材がニグロシンである請求項1~9のいずれか1項に記載のレーザー溶着体の製造方法。
  11. レーザー光吸収色素材がカーボンブラックである請求項1~10のいずれか1項に記載のレーザー溶着体の製造方法。
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