以下に添付図面を参照して、情報処理装置、情報処理方法、および情報処理システムの一実施形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、情報処理装置を、診断装置に適用した形態を一例として説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施の形態の情報処理システム1000の構成例の概要を示す模式図である。
情報処理システム1000は、加工機20と、診断装置10と、を備える。診断装置10と加工機20とは、通信可能に接続されている。加工機20と診断装置10は、どのような接続形態で接続されてもよい。例えば加工機20と診断装置10とは、専用の接続線、有線LAN(ローカルエリアネットワーク)などの有線ネットワーク、および、無線ネットワークなどにより接続される。
加工機20は、診断装置10による診断の対象となる対象装置の一例である。加工機20には、工作機械23が設けられている。工作機械23は、加工対象を加工する機械である。工作機械23には、工具59が設けられており、工具59を用いて対象物60を加工する。工具59は、例えば、対象物60を切削する切削部材や、対象物60を研磨する研磨部材などである。具体的には、工具59は、ドリル、ボーリング工具、などの穴加工工具や、カッター、バイト、などの切削工具、などである。
対象物60は、加工機20によって加工される対象の部材である。対象物60は、工具59で加工する対象の部材であればよい。
診断装置10は、加工機20を診断する装置である。加工機20に設けられた工具59は、対象物60を加工することで摩耗する。本実施の形態では、診断装置10は、この工具59の状態を診断する。
図2は、加工機20のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、加工機20は、CPU(Central Processing Unit)51と、ROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53と、通信I/F(インタフェース)54と、駆動制御回路55と、モータ56と、センサ57とが、バス58で接続された構成となっている。
CPU51は、加工機20の全体を制御する。CPU51は、例えばRAM53をワークエリア(作業領域)としてROM52等に格納されたプログラムを実行することで、加工機20全体の動作を制御し、加工機能を実現する。
通信I/F54は、診断装置10などの外部装置と通信するためのインタフェースである。駆動制御回路55は、モータ56の駆動を制御する回路である。モータ56は、工具59を駆動する。
図3は、診断装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、診断装置10は、CPU61と、ROM62と、RAM63と、通信I/F64と、HDD(Hard Disk Drive)65と、操作パネル67と、スピーカ68と、ランプ69と、が、バス66で接続された構成となっている。
操作パネル67は、表示装置67Aと、操作装置67Bと、を含む。表示装置67Aは、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminesce)パネルなどである。操作装置67Bは、例えば、キーボードやマウスである。なお、操作パネル67は、表示装置67Aと操作装置67Bとを一体的に構成したタッチパネルであってもよい。
スピーカ68は、音を外部へ出力する。ランプ69は、特定の色の光を出力する。本実施の形態では、ランプ69は、赤色、黄色、緑色、の3色に点灯する。なお、ランプ69の点灯色は、これらの3色に限定されない。また、ランプ69は、2色以下、または、4色以上の光を出力可能であってもよい。
CPU61は、診断装置10の全体を制御する。CPU61は、例えばRAM63をワークエリア(作業領域)としてROM62等に格納されたプログラムを実行することで、診断装置10全体の動作を制御し、診断機能を実現する。通信I/F64は、加工機20などの外部装置と通信するためのインタフェースである。HDD65は、診断装置10の設定情報、加工機20から受信された検知情報などの情報を記憶する。HDD65に代えて、または、HDD65とともに、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶手段を備えてもよい。
図4は、情報処理システム1000に設けられた加工機20および診断装置10の各々の、機能構成の一例を示すブロック図である。
加工機20は、数値制御部21と、通信制御部22と、工作機械23と、を備える。
工作機械23は、数値制御部21の制御によって駆動し、加工対象の対象物60を加工する機械である。工作機械23は、センサ25と、駆動部24と、工具59と、を備える。
駆動部24は、数値制御部21の制御によって工具59を駆動させる。工具59の駆動によって対象物60が加工される。駆動部24は、例えば、モータ56で実現する(図2参照)。なお、駆動部24は、加工に用いられ、数値制御の対象となるものであればどのようなものであってもよい。また、工作機械23は、複数の駆動部24を備えていてもよい。
なお、加工機20では、一度に動作する工具59は1つであるものとして説明する。すなわち、工作機械23が複数の工具59を備えた構成であっても、一度に動作する工具59は1つであるものとして説明する。なお、工具59は、加工工程の種類によって、変更される場合がある。
センサ25は、加工機20の動作状況に応じて変化する物理量を検知する検知部である。センサ25は、物理量を検知した検知情報(センサデータ)を、診断装置10へ送信する。センサ25は、例えば図2のセンサ57に相当する。
物理量は、本実施の形態では、加工機20(詳細には工作機械23)の振動を示すデータであればよい。振動を示すデータは、振動そのものを示す振動データ、振動により発生する音の音データ、振動により発生する音波の音波データ(AE波データ)、振動により発生する加速度の加速度データなどである。センサ25は、例えば、マイク、振動センサ、加速度センサ、AE(アコースティックエミッション)センサ、などである。
工具59が対象物60の加工を行うことで、工具59には摩耗が生じる。すると、工作機械23において対象物60を加工するときに発生する振動(音、加速度、音波など)は、異なるものとなる。本実施の形態では、診断装置10は、検知情報を工具59の残り寿命の判断に用いる(詳細後述)。
なお、加工機20が備えるセンサ25の数は限定されない。すなわち、加工機20は、1つのセンサ25を備えた構成であってもよいし、同一の物理量を検知する複数のセンサ25を備えた構成であってもよいし、互いに異なる物理量を検知する複数のセンサ25を備えた構成であってもよい。
数値制御部21は、工作機械23を数値制御(Numerical Control)する。数値制御部21は、駆動部24の動作を制御するための制御データを生成し、駆動部24へ出力する。また、数値制御部21は、駆動部24の現在の動作状態に関するコンテキスト情報を、診断装置10へ送信する。すなわち、数値制御部21は、駆動部24に現在送信する(または直前に送信した)制御データに示される動作状態に関するコンテキスト情報を、診断装置10へ送信する。
コンテキスト情報は、工作機械23の動作状態情報と、加工履歴情報と、を含む。本実施の形態では、コンテキスト情報は、加工機20(具体的には工作機械23)が行う動作の種類(加工の種類)ごとに定まる情報である。
動作状態情報は、駆動部24の動作状態を示す情報であり、駆動部24を制御するための制御データに示される、駆動部24の動作状態を示す情報である。動作状態情報は、例えば、加工に用いる工具59の仕様を示す工具仕様情報、該工具59を駆動する駆動部24の識別情報、駆動部24の回転数、駆動部24の回転速度、駆動部24にかかる負荷、駆動部24の大きさ、などを含む。
工具仕様情報は、加工に用いる工具59の仕様を示す情報である。本実施の形態では、工具仕様情報には、該工具59による加工を継続した場合の加工機20本体への負荷レベルを、制御部30で導出可能な情報が含まれていればよい。具体的には、本実施の形態では、工具仕様情報は、工具59の識別情報(以下、工具IDと称する場合がある)、工具59の名称、工具59の種類を示す種類情報、工具59の材質を示す材質情報、工具59の寸法を示す寸法情報を含む。
工具59の種類情報は、工具59の種類を示す情報である。種類情報は、加工方法に応じて予め定められる。本実施の形態では、種類情報は、穴加工工具(ドリルなど)や、切削工具(バイトやカッターなど)を示す場合を一例として説明する。
工具59の寸法情報は、具体的には、工具59がドリルなどの穴加工工具である場合、工具59の径(ドリル径など)を示す。また、工具59の寸法情報は、工具59がカッターなどの切削工具である場合、刃の部分の幅(羽幅)を示す。
加工履歴情報は、加工機20の加工履歴に関する情報である。具体的には、加工履歴情報は、該加工履歴情報を含むコンテキスト情報に含まれる、工具IDによって識別される工具59の、加工履歴に関する情報である。加工履歴情報は、加工履歴に関する情報として、累積加工量、および、累積加工量を特定可能な情報、の少なくとも一方を含む。
累積加工量は、工具59が対象物60を加工した加工量の累積値である。言い換えると、累積加工量は、ある工具59が、1または複数種類の対象物60を加工した加工量の累積値である。加工量は、加工した量を示す情報であればよい。コンテキスト情報に含まれる累積加工量は、具体的には、コンテキスト情報に含まれる工具IDによって識別される工具59が対象物60を加工した累積加工量である。加工量は、具体的には、切削距離や切削時間を示す。このため、累積加工量は、累積切削距離や累積切削時間を示す。
累積加工量を特定可能な情報は、コンテキスト情報に含まれる工具IDによって識別される工具59が対象物60を加工した、累積加工量を特定可能な情報であればよい。累積加工量を特定可能な情報は、例えば、1回の加工あたりの切削距離と加工回数、1回の加工あたりの切削時間と加工回数、1回の加工あたりの主軸回転数と加工回数、1回の加工当りの送り量と加工回数、加工対象の対象物60のサイズと加工した対象物60の数、等である。
数値制御部21は、予め設定された加工工程の実行順などに応じて、各加工工程に対応する動作の種類(加工の種類)に応じた制御データを生成し、駆動部24へ出力する。これにより、駆動部24は、制御データに示される動作状態に応じた動作を実行し、工具59を駆動する。また、数値制御部21は、該動作状態の動作状態情報および加工履歴情報を含むコンテキスト情報を、診断装置10へ送信する。
数値制御部21が、診断装置10へ送信するコンテキスト情報には、加工履歴に関する加工履歴情報(累積加工量、および、累積加工量を特定可能な情報、の少なくとも一方を含む)が含まれる。なお、数値制御部21は、現在の動作状態情報および加工履歴情報を含むコンテキスト情報を、診断装置10へ出力してもよい。
本実施の形態では、数値制御部21は、現在の動作状態情報および加工履歴情報を含むコンテキスト情報を、診断装置10へ出力する形態を説明する。現在の動作状態情報は、数値制御部21が直前に工作機械23へ送信した制御データによって示される動作状態を示す動作状態情報である。また、数値制御部21が診断装置10へ送信するコンテキスト情報に含まれる加工履歴情報は、該送信時(すなわち現在)における、工具59の累積加工量、および、該累積加工量を特定可能な情報、の少なくとも一方である。
通信制御部22は、診断装置10などの外部装置との間の通信を制御する。例えば通信制御部22は、数値制御部21から受付けたコンテキスト情報を診断装置10に送信する。
なお、数値制御部21は、診断装置10からのコンテキスト情報の取得要求に応じて、コンテキスト情報を診断装置10へ出力してもよいし、所定タイミングごとにコンテキスト情報を診断装置10へ出力してもよい。例えば、数値制御部21は、各加工工程に対応する動作の種類(加工の種類)に応じた動作状態情報を含むコンテキスト情報に対応する制御データを駆動部24へ出力する毎に、該動作状態情報および現在の加工履歴情報を含むコンテキスト情報を、診断装置10へ送信してもよい。
次に、診断装置10の機能的構成を説明する。診断装置10は、制御部30と、記憶部32と、操作部33と、表示部34と、を含む。制御部30と、記憶部32、表示部34、および操作部33と、は、データや信号を授受可能に接続されている。
表示部34は、各種画像を表示する。表示部34は、例えば、表示装置67A(図3参照)で実現する。操作部33は、ユーザによって操作される。操作部33は、例えば、67B(図3参照)で実現する。なお、表示部34および操作部33を一体的に構成し、タッチパネルとしてもよい。
スピーカ36は、音を外部へ出力する。スピーカ36は、例えば、スピーカ68(図3参照)で実現する。ランプ35は、特定の色の光を出力する。ランプ35は、例えば、ランプ69(図3参照)で実現する。
記憶部32は、各種情報を記憶する。記憶部32は、例えば、図3のHDD65で実現する。記憶部32は、例えば、摩耗閾値管理DB32Aと、通知形態管理DB32Bと、検知モデル32Cと、加工量モデル32Dと、を記憶する。
図5は、摩耗閾値管理DB32Aおよび通知形態管理DB32Bのデータ構成の一例を示す模式図である。
図5(A)は、摩耗閾値管理DB32Aのデータ構成の一例を示す模式図である。摩耗閾値管理DB32Aは、工具59の摩耗閾値に関する情報を管理するためのデータベースである。なお、摩耗閾値管理DB32Aのデータ形式は、データベースに限定されない。
摩耗閾値管理DB32Aは、工具の種類と、工具仕様情報と、加工継続による加工機20本体への負荷レベルと、摩耗閾値Lと、通知重要度と、を対応づけたものである。加工継続による加工機20本体への負荷レベルは、対応する工具仕様情報の工具59を用いて加工継続したときに、加工機20本体にかかる負荷のレベルを示す情報である。例えば、工具59がドリルである場合、直径の大きさが大きいほど(太いほど)、加工を継続した時に加工機20本体にかかる負荷は大きくなる。摩耗閾値管理DB32Aにおける負荷レベルは、この負荷のレベルを示す値である。
摩耗閾値Lは、診断装置10の制御部30が、通知形態の変更のタイミングを判断するために用いる閾値である。摩耗閾値Lは、摩耗値の閾値を示す。通知形態については、詳細を後述する。
通知重要度は、通知の重要度を示す。通知の重要度が高いほど、加工機20は、より緊急性の高い状態である。本実施の形態では、4段階の通知重要度を用いる場合を説明する。なお、通知重要度は、3段階以下、または、5段階以上であってもよい。本実施の形態では、通知重要度として、第1レベル(通常レベル)、第2レベル(警告1レベル)、第3レベル(警告2レベル)、第4レベル(警報レベル)、の4段階を規定する。なお、第1レベルが最も通知重要度が低く、第2レベル、第3レベル、第4レベル、と通知重要度が高くなり、第4レベルが最も通知重要度が高いものとして説明する。
なお、摩耗閾値管理DB32Aには、後述する制御部30の処理によって、各情報(工具の種類、工具仕様情報、加工継続による加工機20本体への負荷レベル、摩耗閾値L、通知重要度)の各々の値が登録される。
次に、通知形態管理DB32Bについて説明する。図5(B)は、通知形態管理DB32Bのデータ構成の一例を示す模式図である。通知形態管理DB32Bは、通知形態を管理するためのデータベースである。通知形態管理DB32Bは、通知重要度と、通知形態と、を対応づけたデータベースである。なお、通知形態管理DB32Bのデータ形式は、データベースに限定されない。
通知形態管理DB32Bには、通知重要度の各々に対して、通知重要度が高いほどユーザに対してより強い注意を促すことの可能な通知形態が、予め対応づけられている。
通知形態は、診断装置10から診断装置10の外部に対して発する通知の形態を示す。本実施の形態では、通知形態は、通知内容と通知方法を含む。
通知内容は、光の点灯方法、点灯色、音量、表示内容、および、外部への通信内容、の少なくとも1を含む。通知方法は、表示、発光、音出力、および外部装置への通信、の少なくとも1つを含む。
具体的には、通知方法は、通知に用いる機器を示す。すなわち、本実施の形態では、通知方法は、表示部34(表示装置67A)、スピーカ36(スピーカ68)、ランプ35(ランプ69)、送信部30B(通信I/F64)の何れの機器を通知に用いるかを示す。なお、表示部34(表示装置67A)、スピーカ36(スピーカ68)、ランプ35(ランプ69)、および、送信部30B(通信I/F64)の少なくとも1つが、通知部37に相当する。
また、本実施の形態では、通知内容は、上記通知方法によって示される機器を用いて通知する内容を示す。例えば、ランプ35を用いた通知内容は、点灯する点灯色、点灯の方法(点灯か点滅か)を示す。また、スピーカ36を用いた通知内容は、音量(強か弱かなど)を示す。また、表示部34を用いた通知内容は、表示部34に表示する表示内容を示す。また、送信部30Bを用いた通知内容は、外部装置へのメール通知内容や、加工機20へ出力する信号内容を示す。
図4に戻り、次に、検知モデル32Cおよび加工量モデル32Dについて説明する。
検知モデル32Cは、工具59の摩耗実測値と、検知実測値と、の関係を示すモデルである。本実施の形態では、検知モデル32Cは、工具59の摩耗実測値と、検知実測値と、を対応づけたデータベースである場合を一例として説明する。なお、本実施の形態では、実測値とは、実際の測定によって得られた値を示す。具体的には、実測値とは、演算によって得られた値ではなく、直接測定した値を示すものとする。
図6は、検知モデル32Cおよび加工量モデル32Dのデータ構成の一例を示す模式図である。図6(A)は、検知モデル32Cのデータ構成の一例を示す模式図である。検知モデル32Cは、工具IDと、摩耗実測値と、検知実測値と、を対応づけたものである。
摩耗実測値は、工具IDによって識別される工具59の摩耗値を実測した値である。摩耗値とは、工具59の摩耗の度合いを示す値である。摩耗値は、例えば、工具59の摩耗量(長さ)や、工具59の摩耗した重量などである。詳細には、摩耗値は、未摩耗の状態の工具59を基準とした、摩耗量や摩耗した重量を示す。検知実測値は、対応する工具IDによって識別される工具59であって、対応する摩耗実測値まで摩耗した工具59を備えた加工機20の、センサ25によって検知された物理量の実測値である。
すなわち、検知モデル32Cは、1つの工具59を工作機械23に搭載し、該工具59で1または複数の対象物60の加工を行った時の、該工具59の摩耗値と、該加工時に工作機械23のセンサ25で検知された検知情報と、の各々を実測した実測結果である。検知モデル32Cは、診断対象の加工機20を用いて予め計測し、予め作成すればよい。
加工量モデル32Dは、工具59の摩耗実測値と、累積加工実測値と、の関係を示すモデルである。本実施の形態では、加工量モデル32Dは、工具59の摩耗実測値と、累積加工実測値と、を対応づけたデータベースである場合を一例として説明する。
図6(B)は、加工量モデル32Dのデータ構成の一例を示す模式図である。加工量モデル32Dは、工具IDと、摩耗実測値と、累積加工実測値と、を対応づけたものである。
摩耗実測値は、上記と同様である。累積加工実測値は、対応する工具IDによって識別される工具59であって、未摩耗の状態から対応する摩耗実測値まで摩耗した工具59が対象物60を加工した累積加工量の実測値である。
すなわち、加工量モデル32Dは、1つの工具59を工作機械23に搭載し、該工具59で1または複数の対象物60の加工を行った時の、該工具59の摩耗値と、該工具59が対象物60を加工した加工量の累積値(合計値)と、の各々を実測した実測結果である。加工量モデル32Dは、診断対象の加工機20を用いて摩耗実測値および累積加工実測値を予め計測することで、予め作成すればよい。
図4に戻り、本実施の形態では、記憶部32は、通知形態管理DB32B、検知モデル32C、および加工量モデル32Dを、予め記憶する。また、摩耗閾値管理DB32Aについては、上述したように、後述する制御部30の処理によって登録および更新される。
次に、診断装置10の制御部30について説明する。
制御部30は、診断装置10を制御する。制御部30は、通信制御部30Aと、取得部30Dと、累積加工量特定部30Fと、摩耗値特定部30Gと、演算部30Hと、受付部30Mと、通知制御部30Lと、変更部30Pと、導出部30Tと、決定部30Wと、を含む。通信制御部30Aは、送信部30Bと、受信部30Cと、を含む。取得部30Dは、検知情報取得部30Eと、コンテキスト情報取得部30Qと、工具仕様情報取得部30Sと、を含む。
通信制御部30A、送信部30B、受信部30C、取得部30D、検知情報取得部30E、累積加工量特定部30F、摩耗値特定部30G、演算部30H、第1の演算部30I、第2の演算部30J、第3の演算部30K、通知制御部30L、受付部30M、変更部30P、コンテキスト情報取得部30Q、工具仕様情報取得部30S、導出部30T、および決定部30Wの一部または全ては、例えば、CPUなどの処理装置にプログラムを実行させること(すなわちソフトウェア)により実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現してもよいし、併用して実現してもよい。
通信制御部30Aは、加工機20などの外部装置との間の通信を制御する。通信制御部30Aは、送信部30Bと、受信部30Cと、を含む。
送信部30Bは、各種要求や信号を加工機20へ送信する。例えば、送信部30Bは、コンテキスト情報の取得要求を加工機20へ送信する。受信部30Cは、加工機20から各種情報や信号を取得する。本実施の形態では、受信部30Cは、加工機20から検知情報とコンテキスト情報を受信する。
受付部30Mは、操作部33からユーザの操作指示を受付ける。受付部30Mは、加工機20から取得するコンテキスト情報とは異なるコンテキスト情報を受付けてもよい。また、受付部30Mは、受信部30Cが加工機20から受信するコンテキスト情報に含まれる情報の一部を、操作部33から受付けてもよい。例えば、受付部30Mは、工具仕様情報の少なくとも一部を、操作部33から受付けてもよい。また、受付部30Mは、工具仕様情報の少なくとも一部を、外部サーバなどの外部装置から通信回線を介して受付けてもよい。
次に、取得部30Dについて説明する。取得部30Dは、検知情報や仕様情報を取得する。本実施の形態では、取得部30Dは、仕様情報として、工具仕様情報を取得する。
取得部30Dは、検知情報取得部30Eと、コンテキスト情報取得部30Qと、工具仕様情報取得部30Sと、を含む。
検知情報取得部30Eは、検知情報を取得する。検知情報取得部30Eは、受信部30Cを介して加工機20から、検知情報を取得する。
コンテキスト情報取得部30Qは、コンテキスト情報を取得する。コンテキスト情報取得部30Qは、受信部30Cを介して加工機20から、コンテキスト情報を取得する。なお、上述したように、コンテキスト情報取得部30Qは、加工機20から受信するコンテキスト情報に含まれる情報の一部を、受付部30Mから取得からしてもよい。
工具仕様情報取得部30Sは、工具仕様情報を取得する。工具仕様情報取得部30Sは、コンテキスト情報取得部30Qで取得したコンテキスト情報に含まれる工具仕様情報を読取ることで、工具仕様情報を取得する。
導出部30Tは、仕様情報に基づいて、工具59による加工を継続した場合の加工機20本体への負荷レベルを導出する。本実施の形態では、導出部30Tは、工具仕様情報取得部30Sで取得した工具仕様情報に基づいて、工具59による加工を継続した場合の加工機20本体への負荷レベルを導出する。
導出部30Tは、工具仕様情報に示される仕様の工具59を用いて加工を継続したときの、加工機20本体にかかる負荷のレベルを示す負荷レベルを導出する。具体的には、ここで、上述したように、工具59がドリルである場合、直径の大きさが大きいほど(太いほど)、加工を継続した時に加工機20本体にかかる負荷は大きくなる。このため、導出部30Tは、工具仕様情報に示される工具59の種類がドリルなどの穴加工工具である場合、工具仕様情報に示される直径が大きいほど(太いほど)、高い負荷レベルを導出する。そして、導出した負荷レベルと、該工具仕様情報に示される工具仕様情報および工具の種類と、を対応づけて摩耗閾値管理DB32Aに登録する。
すなわち、図5(A)に示すように、導出部30Tは、工具仕様情報に示されるドリルの直径が細い(予め定めた閾値(φ1)未満)場合、負荷レベルとして負荷小を導出する。また、導出部30Tは、工具仕様情報に示されるドリルの直径が中程度(予め定めた閾値(φ1)以上、該φ1より大きい閾値(φ2)以下(なお、φ1<φ2))の場合、負荷レベルとして負荷中を導出する。また、導出部30Tは、工具仕様情報に示されるドリルの直径が太い(予め定めた閾値(φ2)より大きい)場合、負荷レベルとして負荷大を導出する。
また、例えば、工具59がバイトなどの切削工具である場合、刃幅が大きいほど(刃幅が太い(厚い)ほど)、加工を継続した時に加工機20本体にかかる負荷は大きくなる。このため、導出部30Tは、工具仕様情報に示される工具59の種類がバイトなどの切削工具である場合、工具仕様情報に示される刃幅が大きいほど(太いほど)、高い負荷レベルを導出する。そして、導出した負荷レベルと、該工具仕様情報に示される工具仕様情報および工具の種類と、を対応づけて摩耗閾値管理DB32Aに登録する。
すなわち、図5(A)に示すように、導出部30Tは、工具仕様情報に示される切削工具の刃幅が細い場合(予め定めた閾値(φ1’)未満の場合)、負荷レベルとして負荷小を導出する。また、導出部30Tは、工具仕様情報に示される切削工具の刃幅が中程度(予め定めた閾値(φ1’)以上、該φ1’より大きい閾値(φ2’)以下(なお、φ1’<φ2’))の場合、負荷レベルとして負荷中を導出する。また、導出部30Tは、工具仕様情報に示される切削工具の刃幅が太い(予め定めた閾値(φ2’)より大きい)場合、負荷レベルとして負荷大を導出する。
なお、図5(A)には、導出部30Tが、負荷レベルとして、負荷大、負荷中、負荷小の3段階の値を導出する場合を一例として示した。しかし、導出部30Tは、2段階、または、4段階以上の負荷レベルを導出してもよい。
また、導出部30Tは、工具仕様情報に示される工具59の材質情報が、より硬い材料であるほど、大きい負荷レベルを導出してもよい。
そして、導出部30Tは、導出した負荷レベルを、工具の種類および工具仕様情報に対応づけて、摩耗閾値管理DB32Aに登録する。
図4に戻り説明を続ける。決定部30Wは、負荷レベルが高いほど、低い摩耗閾値を決定する。すなわち、決定部30Wは、工具仕様情報を用いて導出部30Tが負荷レベルを導出する毎に、導出された負荷レベルに対応する摩耗閾値として、負荷レベルが高いほど低い摩耗閾値を決定する。
例えば、図5(A)に示すように、決定部30Wは、負荷レベルが高いほど、低い値の摩耗閾値を決定する。なお、図5(A)中、L6、L8、L10の各々は、摩耗値を示す。なお、これらの数値の大小関係は、L6<L8<L10である。
このため、負荷大に対応する摩耗閾値Lは、負荷中および負荷小に比べて小さい値である。また、負荷小に対応する摩耗閾値Lは、負荷大および負荷中に比べて大きい値である。ここで、上述したように、摩耗閾値Lは、通知形態の変更のタイミングを判断するために用いる閾値である。
このため、負荷レベルが大きいほど、工具59の摩耗がより小さい段階で通知形態が変更される。また、負荷レベルが小さいほど、工具59がより大きく摩耗した段階、すなわち、より摩耗の進行した段階で、通知形態が変更されることとなる。通知形態の変更については、詳細を後述する。
決定部30Wは、決定した摩耗閾値Lを、工具の種類、工具仕様情報、および負荷レベルに対応づけて、摩耗閾値管理DB32Aに登録する。
次に、累積加工量特定部30Fについて説明する。累積加工量特定部30Fは、コンテキスト情報取得部30Qで取得されたコンテキスト情報から、加工機20に設けられた工具59が対象物60を加工した累積加工量を特定する。
上述したように、コンテキスト情報取得部30Qが取得するコンテキスト情報には、工作機械23の動作状態情報と、加工履歴情報と、が含まれる。また、上述したように、コンテキスト情報は、加工履歴情報として、累積加工量を含む場合と、累積加工量を特定可能な情報を含む場合と、がある。
コンテキスト情報に含まれる加工履歴情報が、累積加工量(累積切削距離、累積切削時間)を示す場合、累積加工量特定部30Fは、該コンテキスト情報から累積加工量(累積切削距離および累積切削時間の少なくとも一方)を抽出することで、累積加工量を特定する。
また、コンテキスト情報に含まれる加工履歴情報が、累積加工量を特定可能な情報である場合、累積加工量特定部30Fは、該情報から累積加工量を特定すればよい。具体的には、コンテキスト情報が加工履歴情報として、1回の加工あたりの切削距離と加工回数、1回の加工あたりの切削時間と加工回数、1回の加工あたりの主軸回転数と加工回数、1回の加工当りの送り量と加工回数、および、加工対象の対象物60のサイズと加工した対象物60の数、の少なくとも1つを含むと仮定する。この場合、累積加工量特定部30Fは、これらの情報から累積加工量を算出することによって、累積加工量を特定すればよい。
次に、摩耗値特定部30Gについて説明する。摩耗値特定部30Gは、検知情報取得部30Eで取得した検知情報を用いて、工具59の摩耗値を特定する。
まず、摩耗値特定部30Gは、検知情報取得部30Eで取得した検知情報に応じた検知実測値に対応する摩耗実測値を、検知モデル32C(図6(A)参照)から読取る。すなわち、摩耗値特定部30Gは、検知情報取得部30Eで取得した検知情報の示す値(具体的には、音データの示す波形や、振動データを示す波形)に一致または最も類似する検知実測値を、検知モデル32Cから特定する。そして、摩耗値特定部30Gは、特定した検知実測値に対応する摩耗実測値を、検知モデル32Cから読取る。
このとき、コンテキスト情報取得部30Qで取得したコンテキスト情報に、工具59の工具IDが含まれる場合には、摩耗値特定部30Gは、該工具IDと、取得部30Dで取得した検知情報に応じた検知実測値と、に対応する摩耗実測値を、検知モデル32Cから読取ればよい。
そして、摩耗値特定部30Gは、読取った摩耗実測値の示す値を、工具59の摩耗値として特定すればよい。
次に、変更部30Pについて説明する。変更部30Pは、摩耗値特定部30Gで特定した摩耗値と、工具仕様情報取得部30Sで取得した工具仕様情報に応じて、通知形態を変更する。通知形態を変更する、とは、それまで(変更前まで)通知していた通知形態の通知内容および通知方法の少なくとも一方を変更することを意味する。
本実施の形態では、診断装置10の通知部37には、摩耗値特定部30Gで特定した摩耗値が、決定部30Wが決定した摩耗閾値L未満であるときには、通知重要度の最も低い第1レベル(通常レベル)に対応する通知形態の通知がなされている。そして、変更部30Pは、摩耗値特定部30Gで特定した摩耗値が、決定部30Wが決定した摩耗閾値L以上であるときに、導出部30Tで導出した負荷レベルに応じて通知形態を変更する。
図5(A)に示すように、摩耗閾値管理DB32Aには、負荷レベルが大きいほど、より高い通知重要度が対応づけられている。この対応付けは、導出部30Tで行ってもよいし、決定部30Wで行ってもよい。
このため、例えば、導出部30Tで導出した負荷レベルが“負荷大”であり、摩耗値特定部30Gで特定した摩耗値が対応する摩耗閾値L6以上である場合、変更部30Pは、最も高い通知重要度“第4レベル”(警報レベル)に対応する通知形態を、通知形態管理DB32Bから読取る。そして、変更部30Pは、通知形態を、最も高い通知重要度“第4レベル”(警報レベル)に対応する通知形態に変更する(図5(B)参照)。
通知制御部30Lは、通知部37(表示部34、ランプ35、スピーカ36、送信部30B)の各々を制御する。すなわち、通知制御部30Lは、表示部34の表示制御、ランプ35の発光制御、スピーカ36の音出力制御、および、送信部30Bの通信制御を行う。
本実施の形態では、変更部30Pが通知形態を変更すると、通知制御部30Lは、変更した通知形態に応じた通知を行うように通知部37を制御する。例えば、変更部30Pによる変更前の通知形態が、通知形態管理DB32B(図5(B)参照)に示す通知重要度“第1レベル(通常レベル)”に対応する通知形態であり、変更後の通知形態が通知重要度“第3レベル(警告2レベル)”に対応する通知形態であったとする。
この場合、通知制御部30Lは、通知形態管理DB32B(図5(B)参照)における、通知重要度“第3レベル(警告2レベル)”に対応する通知形態に示される通知内容を、該通知形態に示される通知方法で通知するように、通知部37(表示部34、ランプ35、スピーカ36、送信部30B)の各々を制御する。
このため、この場合、通知制御部30Lは、ランプ35を黄色に点滅させるように制御する。また、通知制御部30Lは、スピーカ36から音量“弱”で警告音を出すようにスピーカ36を制御する。また、通知制御部30Lは、動作状態(警告2)、工具情報、加工個数、摩耗レベル、摩耗レベル推移、残り加工数(工具59の残り寿命)を、表示部34に表示する。工具59の残り寿命(残り加工数)は、後述する演算部30Hから取得すればよい。摩耗レベルは、未摩耗の状態の工具59の加工方向の長さ(寸法)または重量を、予め定めたレベルの段階(例えば10段階)に区切り、摩耗値がどの段階にあるかを示したものである。
また、通知制御部30Lは、通知重要度が警告2レベルであることを示すメールを予め定めた管理者の端末へ送信するように送信部30Bを制御する。また、通知制御部30Lは、加工機20の停止要求を示す信号を加工機20へ出力するように、送信部30Bを制御する。
なお、摩耗値特定部30Gで特定した摩耗値が、決定部30Wが決定した摩耗閾値L未満であるときには、通知重要度の最も低い第1レベル(通常レベル)に対応する通知形態の通知がなされている。この場合、例えば、表示部34には、通知形態管理DB32B(図5(B)参照)における、通知重要度“第1レベル(通常レベル)”に対応する通知形態に示される通知内容が表示される。図7は、通知重要度“第1レベル(通常レベル)”のときに、表示部34に表示される表示画面80の一例を示す模式図である。この場合、表示画面80には、加工機20の動作状態が正常であることを示す情報、加工機20に設けられている工具情報(工具ID、工具名、設置位置など)、摩耗レベル、および、残り加工数などが表示される。なお、表示画面80には、摩耗レベルに代えて、または摩耗レベルと共に、摩耗値を表示してもよい。
図4に戻り説明を続ける。次に、演算部30Hについて説明する。演算部30Hは、累積加工量特定部30Fで特定した累積加工量と、摩耗値特定部30Gで特定した摩耗値と、に基づいて、工具59の残り寿命を演算する。すなわち、演算部30Hは、取得部30Dで取得したコンテキスト情報に含まれる、工具IDによって識別される工具59の、残り寿命を演算する。
残り寿命は、工具59で加工可能な残りの寿命を示すものであればよい。残り寿命は、例えば、工具59で加工可能な残り加工期間や、工具59が加工可能な残り加工数で表す。
演算部30Hは、第1の演算部30Iと、第2の演算部30Jと、第3の演算部30Kと、を含む。図8は、演算部30Hによる演算の説明図である。
第1の演算部30Iは、摩耗値特定部30Gで特定した摩耗値と、加工量モデル32Dと、を用いて、累積加工量実測値を演算する。
第1の演算部30Iは、加工量モデル32D(図6(B)参照)における、摩耗値特定部30Gで特定した摩耗値と一致または摩耗値に最も近い値の摩耗実測値を特定する。そして、第1の演算部30Iは、加工量モデル32Dにおける、特定した摩耗実測値に対応する累積加工実測値を加工量モデル32Dから読取ることで、累積加工実測値を演算する。
すなわち、第1の演算部30Iは、検知情報から特定された摩耗値(図8中、摩耗値M参照)を用いて、図8における、累積加工量実測値Aを特定する。
なお、コンテキスト情報取得部30Qで取得したコンテキスト情報に、工具59の工具IDが含まれる場合には、第1の演算部30Iは、該工具IDと、摩耗値特定部30Gで特定した摩耗値と一致または摩耗値に最も近い値の摩耗実測値と、に対応する累積加工実測値を、加工量モデル32Dから読取ればよい。
第2の演算部30Jは、累積加工量特定部30Fで特定した累積加工量を、第1の演算部30Iで演算した累積加工量実測値で除算する。
例えば、コンテキスト情報に基づいて累積加工量特定部30Fで特定した累積加工量が、図8中の累積加工量A’であったとする。この場合、第2の演算部30Jは、この累積加工量A’を、累積加工量実測値Aで除算する(累積加工量A’/累積加工量実測値A)。すなわち、第2の演算部30Jは、累積加工量特定部30Fでコンテキスト情報から特定された累積加工量A’を、摩耗値特定部30Gで検知情報から特定された摩耗値を用いて特定された累積加工量実測値Aで除算する。
また、第2の演算部30Jは、検知情報から摩耗値特定部30Gで特定された摩耗値から、工具59の理論上の寿命である理論工具寿命を演算する。工具寿命を、加工可能な累積加工量で表すと仮定すると、第2の演算部30Jは、図8中の累積加工量実測値Aから、理論工具寿命としての累積加工量Cを特定する。
例えば、第2の演算部30Jは、検知モデル32C(図6(A)参照)を、工具IDによって識別される工具59の理論上の寿命である理論工具寿命に対応づけて予め記憶部32に記憶する。
そして、第2の演算部30Jは、摩耗値特定部30Gで検知情報から特定された摩耗値と一致する摩耗実測値と、該検知情報に一致する検知実測値と、を対応づけている工具IDに対応する理論工具寿命を、記憶部32から読取る。これによって、第2の演算部30Jは、検知情報に基づいて理論工具寿命としての累積加工量Cを特定する。すなわち、第2の演算部30Jは、検知情報に基づいて、理論工具寿命(図8では累積加工量C)を特定する。
なお、第2の演算部30Jは、加工モデル32B(図5(B)参照)から、理論工具寿命としての累積加工量Cを導出してもよい。この場合、第2の演算部30Jは、まず、加工モデル32Bにおける、コンテキスト情報に含まれる工具IDに対応する摩耗実測値を読取る。そして、第2の演算部30Jは、加工モデル32Bにおける、読取った摩耗実測値の内の最大の摩耗実測値(すなわち、工具59が全て摩耗したときの摩耗実測値)に対応する累積加工実測値を、累積加工量Cとして用いてもよい。
次に、第2の演算部30Jは、累積加工量A’を累積加工量実測値Aで除算した除算値(除算結果、すなわち(累積加工量A’/累積加工量実測値A))に、特定した理論工具寿命としての累積加工量Cを乗算する((累積加工量A’/累積加工量実測値A)×累積加工量C)。第2の演算部30Jは、この乗算によって得た乗算値を、工具寿命として演算する。すなわち、下記式(1)が成り立つ。
(累積加工量A’/累積加工量実測値A)×累積加工量C=工具寿命としての累積加工量C’・・式(1)
言い換えると、第2の演算部30Jは、検知情報に基づいて求めた累積加工量実測値Aと、コンテキスト情報に基づいて求めた累積加工量A’と、を用いて、検知情報に基づいて求めた理論上の工具寿命としての累積加工量Cから、現実の工具59の工具寿命である累積加工量C’を演算する。
そして、第3の演算部30Kは、第2の演算部30Jで演算した工具寿命(累積加工量C’)から、累積加工量特定部30Fで特定した累積加工量A’を減算した減算値を、工具59の残り寿命として演算する。図8に示す例では、第3の演算部30Kは、累積加工量C’から累積加工量A’を減算した残り寿命Bを演算する。
通知制御部30Lは、演算部30Hが工具59の残り寿命を演算した場合、残り寿命を更に表示部34に表示してもよい。
次に、診断装置10で実行する情報処理の手順を説明する。図9は、診断装置10で実行する情報処理の手順の一例を示すフローチャートである。
まず、コンテキスト情報取得部30Qがコンテキスト情報を取得する(ステップS100)。次に、工具仕様情報取得部30Sが、ステップS100で取得したコンテキスト情報から工具仕様情報を取得する(ステップS102)。
次に、検知情報取得部30Eが加工機20から検知情報を取得する(ステップS104)。次に、累積加工量特定部30Fが、コンテキスト情報から累積加工量を特定する(ステップS106)。次に、摩耗値特定部30Gが、ステップS104で取得した検知情報から、工具59の摩耗値を特定する(ステップS108)。
次に、演算部30Hが、ステップS106で特定した累積加工量とステップS108で特定した摩耗値から、工具59の残り寿命(例えば、残り加工数)を演算する(ステップS110)。
次に、導出部30Tが、ステップS102で取得した工具仕様情報から負荷レベルを導出する(ステップS112)。次に、決定部30Wが、ステップS112で導出した負荷レベルから、摩耗閾値Lを決定する(ステップS114)。上述したように、決定部30Wは、負荷レベルが高いほど、低い摩耗閾値Lを決定する。
次に、変更部30Pは、ステップS108において検知情報から特定した摩耗値が、ステップS114で決定した摩耗閾値L以上であるか否かを判別する(ステップS116)。摩耗値が摩耗閾値L以上である場合(ステップS116:Yes)、ステップS118へ進む。
ステップS118では、変更部30Pは、ステップS108で特定した摩耗値と、ステップS102で取得した工具仕様情報に応じて、通知形態を変更する(ステップS118)。すなわち、変更部30Pは、ステップS116で肯定判断した場合(ステップS116:Yes)、ステップS112で導出した負荷レベルが大きいほど、より高い通知重要度に対応する通知形態となるように、通知形態を変更する(ステップS118)。
通知制御部30Lは、ステップS120で変更された変更後の通知形態に示される通知内容を、該通知形態に示される通知方法で出力するように、通知部37(表示部34、ランプ35、スピーカ36、送信部30B)を制御する(ステップS120)。そして、ステップS124へ進む。
具体的には、通知制御部30Lは、摩耗閾値管理DB32A(図5(A)参照)における、導出した該負荷レベルに対応する通知重要度を読取る。このため、通知制御部30Lは、負荷レベルが大きいほど高い通知重要度を読取る。そして、通知制御部30Lは、通知形態管理DB32B(図5(B)参照)における、読取った通知重要度(例えば、第2レベル(警告1レベル)、第3レベル(警告2レベル)、または、第4レベル(警報レベル))に対応する通知形態を特定する。さらに、通知制御部30Lは、特定した通知形態に示される通知内容を、該通知形態に示される通知方法で通知するように、通知部37(表示部34、ランプ35、スピーカ36、送信部30B)を制御する。
このため、通知部37(表示部34、ランプ35、スピーカ36、送信部30B)には、工具59の工具仕様情報、および、工具59の摩耗値に応じた通知タイミングおよび通知形態で、通知部37から通知がなされる。
一方、上記ステップS116で否定判断した場合(ステップS116:No)、ステップS122へ進む。ステップS122では、通知制御部30Lは、通知形態管理DB32B(図5(B)参照)における第1レベル(通常レベル)に対応する通知形態に示される通知内容を、該通知形態に示される通知方法で通知するように、通知部37(表示部34、ランプ35、スピーカ36、送信部30B)を制御する。そして、ステップS124へ進む。
ステップS124では、制御部30は、処理を終了するか否かを判断する(ステップS124)。例えば、制御部30は、ユーザによる操作部33の操作指示によって受付部30Mが処理終了を示す信号を受付けたか否かを判別することで、ステップS124の判断を行う。
ステップS124で否定判断すると(ステップS124:No)、上記ステップS100へ戻る。一方、ステップS124で肯定判断すると(ステップS124:Yes)、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施の形態の診断装置10は、取得部30Dと、摩耗値特定部30G(第1の特定部)と、変更部30Pと、を備える。取得部30Dは、対象物60を加工する加工機20(対象装置)の動作状況に応じて変化する物理量の検知情報と、加工機20(対象装置)に設けられた工具59の仕様を示す工具仕様情報を含む仕様情報と、を取得する。摩耗値特定部30G(第1の特定部)は、検知情報に基づいて、工具59の摩耗値を特定する。変更部30Pは、摩耗値および工具仕様情報に応じて外部への通知形態を変更する。
このように、本実施の形態の診断装置10では、加工機20の物理量の検知情報に基づいて特定した工具59の摩耗値と、工具59の工具仕様情報と、に応じて、外部への通知形態を変更する。
従って、本実施の形態の診断装置10では、工具59の状態に応じた通知を行うことができる。
また、本実施の形態の診断装置10は、導出部30Tは、仕様情報(本実施の形態では工具仕様情報)に基づいて、工具59による加工を継続した場合の加工機20(対象装置)本体への負荷レベルを導出する。決定部30Wは、負荷レベルが高いほど低い摩耗閾値を決定する。変更部30Pは、特定した摩耗値が決定した摩耗閾値L以上であるときに、負荷レベルに応じて通知形態を変更する。
このため、本実施の形態の診断装置10では、導出部30Tが工具59の工具仕様情報に基づいて導出した、該工具59による加工を継続した場合の加工機20本体への負荷レベルが大きいほど、工具59の摩耗がより小さい段階で通知形態が変更される。また、負荷レベルが小さいほど、工具59がより大きく摩耗するまで、すなわち、より摩耗の進行した段階で、通知形態が変更されることとなる。
よって、本実施の形態の診断装置10では、上記効果に加えて、工具59の仕様に応じて、通知形態の変更のタイミングを調整することができる。
また、変更部30Pは、導出部30Tで導出した負荷レベルが大きいほど、より通知重要度の高い通知形態に変更する。
通知形態は、通知内容および通知方法を含む。通知内容は、光の点灯方法、点灯色、音量、表示内容、および、通信内容の少なくとも1つを含み、通知方法は、表示、発光、音出力、および外部装置への通信、の少なくとも1つを含む。
通知制御部30Lは、変更した通知形態に示される通知内容を該通知形態に示される通知方法で通知するように、通知部37(表示部34、ランプ35、スピーカ36、送信部30B)を制御する。
受信部30Cは、加工機20(対象装置)の動作状態に関するコンテキスト情報を受信する。累積加工量特定部30F(第2の特定部)は、コンテキスト情報から、加工機20(対象装置)に設けられた工具59が対象物60を加工した累積加工量を特定する。演算部30Hは、累積加工量と摩耗値とに基づいて、工具59の残り寿命を演算する。この場合、通知制御部30Lは、工具59の残り寿命を通知部37に更に通知してもよい。
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、仕様情報として、工具59の仕様を示す工具仕様情報と、加工される対象物60の仕様を示す対象物仕様情報と、を用いる形態を説明する。
図10は、本実施の形態の情報処理システム1000Aの機能構成の一例を示すブロック図である。情報処理システム1000Aは、加工機20と、診断装置10Aと、を備える。加工機20と診断装置10Aとは、データや信号授受可能に接続されている。なお、加工機20は、第1の実施の形態と同様である。また、診断装置10Aのハードウェア構成は、図3に示す構成であり、診断装置10と同様である。
診断装置10Aの機能的構成について説明する。診断装置10Aは、制御部31と、記憶部38と、操作部33と、表示部34と、ランプ35と、スピーカ36と、を備える。制御部31と、記憶部38、操作部33、表示部34、ランプ35、およびスピーカ36と、は、データや信号を授受可能に接続されている。表示部34、操作部33、ランプ35、およびスピーカ36は、第1の実施の形態と同様である。
記憶部38は、各種情報を記憶する。記憶部33は、例えば、図3のHDD65で実現する。記憶部33は、摩耗閾値管理DB32Aと、通知形態管理DB32Bと、検知モデル32Cと、加工量モデル32Dと、摩耗閾値管理DB32Eと、を記憶する。摩耗閾値管理DB32A、通知形態管理DB32B、検知モデル32C、および、加工量モデル32Dは、第1の実施の形態と同様である。
図11は、摩耗閾値管理DB32Eのデータ構成の一例を示す模式図である。摩耗閾値管理DB32Eは、工具59の摩耗閾値に関する情報を管理するためのデータベースである。なお、摩耗閾値管理DB32Eのデータ形式は、データベースに限定されない。
摩耗閾値管理DB32Eは、対象物の種類と、対象物仕様情報と、加工継続による加工機20本体への負荷レベルと、摩耗閾値Lと、通知重要度と、を対応づけたものである。対象物の種類は、加工機20で加工している対象物60の種類を示す情報である。対象物仕様情報は、加工機20で加工されている対象物60の仕様を示す情報である。本実施の形態では、対象物仕様情報には、工具59が該対象物60への加工を継続した場合の加工機20本体への負荷レベルを、制御部30で導出可能な情報が含まれていればよい。具体的には、本実施の形態では、対象物仕様情報は、対象物60の識別情報(以下、対象物IDと称する場合がある)、対象物60の名称、対象物60の材質を示す材質情報、対象物60の硬度を示す硬度情報、などを含む。
図11に示す例では、摩耗閾値管理DB32Eには、対象物仕様情報として、対象物60の硬度を示す情報が格納されている場合を示した。
摩耗閾値管理DB32Eにおける、加工継続による加工機20本体への負荷レベル、摩耗閾値L、および通知重要度は、第1の実施の形態で説明したため、ここでは説明を省略する。
図10に戻り、次に、診断装置10の制御部31について説明する。
制御部31は、診断装置10Aを制御する。制御部31は、通信制御部30Aと、取得部31Dと、累積加工量特定部30Fと、摩耗値特定部30Gと、演算部30Hと、受付部30Mと、通知制御部30Lと、変更部30Pと、導出部31Tと、決定部31Wと、を含む。通信制御部30Aは、送信部30Bと、受信部30Cと、を含む。取得部31Dは、検知情報取得部30Eと、コンテキスト情報取得部30Qと、工具仕様情報取得部30Sと、対象物仕様情報取得部30Yと、を含む。
すなわち、本実施の形態の制御部31は、取得部30D、導出部30T、決定部30Wに代えて、取得部31D、導出部31T、決定部31Wを備える以外は、第1の実施の形態の制御部30と同様の構成である。また、取得部31Dは、検知情報取得部30E、コンテキスト情報取得部30Q、および工具仕様情報取得部30Sに加えて更に、対象物仕様情報取得部30Yを備えた以外は、第1の実施の形態の取得部30Dと同様である。
なお、本実施の形態では、コンテキスト情報取得部30Qは、第1の実施の形態と同様に、工作機械23の動作状態情報と、加工履歴情報と、を含むコンテキスト情報を取得する。なお、本実施の形態では、コンテキスト情報に含まれる動作状態情報は、加工に用いる工具59の仕様を示す工具仕様情報、該工具59を駆動する駆動部24の識別情報、駆動部24の回転数、駆動部24の回転速度、駆動部24にかかる負荷、および駆動部24の大きさに加えて、加工対象の対象物60の仕様を示す対象物仕様情報を含むものとして説明する。
なお、受付部30Mは、第1の実施の形態と同様に、受信部30Cが加工機20から受信するコンテキスト情報に含まれる情報の一部を、操作部33から受付けてもよい。例えば、受付部30Mは、工具仕様情報の少なくとも一部や、対象物仕様情報の少なくとも一部を、操作部33から受付けてもよい。また、受付部30Mは、工具仕様情報の少なくとも一部や、対象物仕様情報の少なくとも一部を、外部サーバなどの外部装置から通信回線を介して受付けてもよい。
対象物仕様情報取得部30Yは、対象物仕様情報を取得する。対象物仕様情報取得部30Yは、コンテキスト情報取得部30Qで取得したコンテキスト情報に含まれる、対象物仕様情報を読取ることで、対象物仕様情報を取得する。
導出部31Tは、仕様情報に基づいて、工具59による加工を継続した場合の加工機20本体への負荷レベルを導出する。本実施の形態では、導出部30Tは、工具仕様情報取得部30Sで取得した工具仕様情報、および、対象物仕様情報取得部30Yで取得した対象物仕様情報の少なくとも一方に基づいて、工具59による対象物60への加工を継続した場合の加工機20本体への負荷レベルを導出する。
導出部31Tが、工具仕様情報に基づいて負荷レベルを導出する方法は、第1の実施の形態の導出部30Tと同様である。
導出部31Tが、対象物仕様情報に基づいて負荷レベルを導出する場合について説明する。導出部31Tは、対象物仕様情報に示される仕様の対象物60に対して加工を継続したときの、加工機20本体にかかる負荷のレベルを示す負荷レベルを導出する。
ここで、加工対象の対象物60の硬度が高い(より硬い)ほど、該対象物60への加工を継続した時に加工機20本体にかかる負荷は大きくなる。このため、導出部31Tは、対象物仕様情報に示される硬度が高い(または硬度の高い材料であるほど)、高い負荷レベルを導出する。そして、導出部31Tは、導出した負荷レベルと、該対象物仕様情報に示される対象物仕様情報および対象物の種類と、を対応づけて摩耗閾値管理DB32Eに登録する。
すなわち、図11に示すように、導出部31Tは、対象物仕様情報に示される対象物60の硬度が低い(柔らかい)(予め定めた閾値(K1)未満)場合、負荷レベルとして負荷小を導出する。また、導出部31Tは、対象物仕様情報に示される対象物60の硬度が中程度(予め定めた閾値(K1)以上で且つ閾値(K2)以下(なお、K1<K2))の場合、負荷レベルとして負荷中を導出する。また、導出部31Tは、対象物仕様情報に示される対象物60の硬度が高い(硬い)(予め定めた閾値(K2)より大きい)場合、負荷レベルとして負荷大を導出する。
なお、図11には、導出部31Tが、負荷レベルとして、負荷大、負荷中、負荷小の3段階の値を導出する場合を一例として示した。しかし、導出部31Tは、2段階、または、4段階以上の負荷レベルを導出してもよい。
また、導出部31Tは、対象物仕様情報に示される対象物60の材質情報が、より硬い材料であるほど、大きい負荷レベルを導出してもよい。
そして、導出部31Tは、導出した負荷レベルを、対象物の種類および対象部仕様情報に対応づけて、摩耗閾値管理DB32Eに登録する。
図10に戻り説明を続ける。決定部31Wは、負荷レベルが高いほど、低い摩耗閾値を決定する。
すなわち、決定部31Wは、工具仕様情報を用いて導出部31Tが負荷レベルを導出した場合、導出された負荷レベルに対応する摩耗閾値として、負荷レベルが高いほど低い摩耗閾値を決定する。
また、決定部31Wは、対象物仕様情報を用いて導出部31Tが負荷レベルを導出した場合、導出された負荷レベルに対応する摩耗閾値として、負荷レベルが高いほど低い摩耗閾値を決定する。
例えば、図11に示すように、決定部31Wは、負荷レベルが高いほど、低い値の摩耗閾値を決定する。なお、図11中、L6、L8、L10の各々は、摩耗値を示す。なお、これらの数値の大小関係は、L6<L8<L10である。このため、負荷大に対応する摩耗閾値Lは、負荷中および負荷小に比べて小さい値である。また、負荷小に対応する摩耗閾値Lは、負荷大および負荷中に比べて大きい値である。
また、導出部31Tが、工具仕様情報を用いた負荷レベルと、対象物仕様情報を用いた負荷レベルと、の双方を導出する場合がある。この場合、導出部31Tは、負荷レベルの高い方を、決定部31Wで用いる負荷レベルとして導出する。そして、決定部31Wは、導出部31Tで導出した、工具仕様情報を用いた負荷レベルおよび対象物仕様情報を用いた負荷レベルの内の高い方の負荷レベルに応じて、該負荷レベルが高いほど低い摩耗閾値を決定すればよい。
ここで、摩耗閾値Lは、通知形態の変更のタイミングを判断するために用いる閾値である。
このため、工具59および対象物60の少なくとも一方による加工機20本体への負荷レベルが大きいほど、工具59の摩耗がより小さい段階で通知形態が変更される。また、工具59および対象物60の少なくとも一方による加工機20本体への負荷レベルが小さいほど、工具59がより大きく摩耗した段階、すなわち、より摩耗の進行した段階で、通知形態が変更されることとなる。
決定部31Wは、決定した摩耗閾値Lを、摩耗閾値管理DB32Aまたは摩耗閾値管理DB32Eに登録する。
次に、本実施の形態の診断装置10Aで実行する情報処理の手順を説明する。図12は、診断装置10Aで実行する情報処理の手順の一例を示すフローチャートである。
まず、コンテキスト情報取得部30Qがコンテキスト情報を取得する(ステップS200)。次に、工具仕様情報取得部30Sが、ステップS200で取得したコンテキスト情報から工具仕様情報を取得する(ステップS202)。次に、対象物仕様情報取得部30Yが、ステップS200で取得したコンテキスト情報から対象物仕様情報を取得する(ステップS204)。
次に、検知情報取得部30Eが加工機20から検知情報を取得する(ステップS206)。次に、累積加工量特定部30Fが、コンテキスト情報から累積加工量を特定する(ステップS208)。次に、摩耗値特定部30Gが、ステップS206で取得した検知情報から、工具59の摩耗値を特定する(ステップS210)。
次に、演算部30Hが、ステップS208で特定した累積加工量とステップS210で特定した摩耗値から、工具59の残り寿命(例えば、残り加工数)を演算する(ステップS212)。
次に、導出部31Tが、ステップS202で取得した工具仕様情報、およびステップS204で取得した対象物仕様情報の少なくとも一方から、負荷レベルを導出する(ステップS214)。
なお、導出部31Tは、ステップS202およびステップS204の処理により、工具仕様情報および対象物仕様情報の双方を取得した場合には、該工具仕様情報および該対象物仕様情報を用いて、負荷レベルを導出すればよい。また、導出部31Tは、ステップS202およびステップS204の処理により、工具仕様情報のみを取得した場合には、該工具仕様情報を用いて負荷レベルを導出すればよい。また、導出部31Tは、ステップS202およびステップS204の処理により、対象物仕様情報のみを取得した場合には、該対象物仕様情報を用いて負荷レベルを導出すればよい。
また、予め、工具仕様情報および対象物仕様情報の内、何れを負荷レベルの導出に用いるかを示す設定情報を予め導出部31Tに記憶してもよい。この設定情報はユーザによる操作部33の操作指示などにより変更可能としてもよい。
そして、導出部31Tは、該設定情報に示される、導出に用いる工具仕様情報および対象物仕様情報の少なくとも一方を用いて、負荷レベルを導出すればよい。
次に、決定部31Wが、ステップS214で導出した負荷レベルから、摩耗閾値Lを決定する(ステップS216)。上述したように、決定部31Wは、負荷レベルが高いほど、低い摩耗閾値Lを決定する。
次に、変更部30Pは、ステップS210において検知情報から特定した摩耗値が、ステップS216で決定した摩耗閾値L以上であるか否かを判別する(ステップS218)。摩耗値が摩耗閾値L以上である場合(ステップS218:Yes)、ステップS220へ進む。
ステップS220では、変更部30Pは、ステップS210で特定した摩耗値と、仕様情報(ステップS202で取得した工具仕様情報およびステップS204で取得した対象物仕様情報の少なくとも一方)に応じて、通知形態を変更する(ステップS220)。すなわち、変更部30Pは、ステップS218で肯定判断した場合(ステップS218:Yes)、ステップS214で導出した負荷レベルが大きいほど、より高い通知重要度に対応する通知形態となるように、通知形態を変更する(ステップS220)。
通知制御部30Lは、ステップS220で変更された変更後の通知形態に示される通知内容を、該通知形態に示される通知方法で出力するように、通知部37(表示部34、ランプ35、スピーカ36、送信部30B)を制御する(ステップS222)。そして、ステップS226へ進む。
具体的には、通知制御部30Lは、摩耗閾値管理DB32A(図5(A)参照)および摩耗閾値管理DB32E(図11参照)の内、ステップS214の最終的な負荷レベルの導出に用いた仕様情報(工具仕様情報または対象物仕様情報)のデータベース(摩耗閾値管理DB32Aまたは摩耗閾値管理DB32E)における、導出した該負荷レベルに対応する通知重要度を読取る。このため、通知制御部30Lは、負荷レベルが大きいほど高い通知重要度を読取る。そして、通知制御部30Lは、通知形態管理DB32B(図5(B)参照)における、読取った通知重要度(例えば、第2レベル(警告1レベル)、第3レベル(警告2レベル)、または、第4レベル(警報レベル))に対応する通知形態を特定する。さらに、通知制御部30Lは、特定した通知形態に示される通知内容を、該通知形態に示される通知方法で通知するように、通知部37(表示部34、ランプ35、スピーカ36、送信部30B)を制御する。
このため、通知部37(表示部34、ランプ35、スピーカ36、送信部30B)には、工具59の工具仕様情報、対象物60の対象物仕様情報、および、工具59の摩耗値に応じた通知タイミングおよび通知形態で、通知部37から通知がなされる。
一方、上記ステップS218で否定判断した場合(ステップS218:No)、ステップS224へ進む。ステップS224では、通知制御部30Lは、通知形態管理DB32B(図5(B)参照)における第1レベル(通常レベル)に対応する通知形態に示される通知内容を、該通知形態に示される通知方法で通知するように、通知部37(表示部34、ランプ35、スピーカ36、送信部30B)を制御する。そして、ステップS226へ進む。
ステップS226では、制御部31は、処理を終了するか否かを判断する(ステップS226)。例えば、制御部31は、ユーザによる操作部33の操作指示によって受付部30Mが処理終了を示す信号を受付けたか否かを判別することで、ステップS226の判断を行う。
ステップS226で否定判断すると(ステップS226:No)、上記ステップS200へ戻る。一方、ステップS226で肯定判断すると(ステップS226:Yes)、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施の形態の診断装置10Aでは、導出部31Tが、仕様情報に基づいて、工具59による加工を継続した場合の対象装置(加工機20)本体への負荷レベルを導出する。決定部31Wは、負荷レベルが高いほど低い摩耗閾値を決定する。そして、変更部30Pは、特定した摩耗値が決定した摩耗閾値以上であるときに、負荷レベルに応じて通知形態を変更する。
従って、本実施の形態の診断装置10Aでは、第1の実施の形態の診断装置10の効果に加えて、精度の良いタイミングで、工具59の状態に応じた通知を行うことができる。
なお、上記実施の形態の診断装置10および診断装置10Aで実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
上記実施の形態の診断装置10および診断装置10Aで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータ・プログラム・プロダクトとして提供するように構成してもよい。
さらに、上記実施の形態の診断装置10及び診断装置10Aで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上記実施の形態の診断装置10および診断装置10Aで実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
上記実施の形態の診断装置10および診断装置10Aで実行されるプログラムは、上述した各部(通信制御部、判定部など)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、各部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
なお、上記には、実施の形態を説明したが、上記実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施の形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。