以下、本発明の複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1~図16を参照して説明する。
<全体構成>
図1に示すように、本実施形態の電池監視ユニット1は、車両における電動化されたシステム2に用いられる電池スタック3を監視する。システム2が適用される車両としては、ハイブリッド自動車であるHEV、プラグインハイブリッド自動車であるPHVおよび電気自動車であるEVが挙げられる。システム2は、前述した電池監視ユニット1および電池スタック3に加え、ジャンクションボックス4、インバータ5、モータ6、電子制御装置7、補機バッテリ8などを備えている。なお、本明細書では、ジャンクションボックスのことをJ/Bと省略するとともに、電子制御装置のことをECUと省略することがある。
電池スタック3は、一対の直流電源線L1、L2の間に複数の電池セルCbが直列接続された構成である。本実施形態では、電池セルCbは、例えばリチウムイオン電池などの二次電池により構成されている。なお、図1では、複数の電池セルCbのうち一部だけを図示している。各電池セルCbは、所定の個数毎に1つの電池モジュール9としてまとめられている。言い換えると、電池モジュール9は、複数の電池セルCbのうちの一部の電池セルCbから構成されており、そのような構成の電池モジュール9が複数集まることで電池スタック3が構成されている。
この場合、各電池モジュール9が複数の電池セルCbが直列接続された組電池に相当する。図示は省略するが、電池セルCb同士の間および電池モジュール9同士の間は、導電部材であるバスバーにより電気的に接続されている。上記構成では、電池セルCbには、コモンモード電圧が重畳されている。このコモンモード電圧は、電池モジュール9の上段側、つまり高電位側に接続される電池セルCbほど高くなり、その最大値は例えば数百ボルト程度の比較的高い電圧となる。
直流電源線L1、L2は、J/B4へと引き込まれている。J/B4には、接続などに関連する各種の構成、具体的には、電流センサ10、リレー11~13、抵抗14などが設けられている。高電位側の直流電源線L1は、電流センサ10およびリレー11を介してインバータ5へと接続される。低電位側の直流電源線L2は、リレー12を介してインバータ5へと接続される。また、直流電源線L2は、リレー13および抵抗14を介してインバータ5へと接続される。
リレー11、12は、システムメインリレーであり、システム2が通常の動作を実行する際に常時オンとなる。一方、リレー13は、プリチャージリレーであり、システム2の起動時の一定期間にだけオンされる。これにより、システム2の起動時、電池スタック3からインバータ5の入力コンデンサを充電する電流が抵抗14により制限され、起動時における突入電流が低減される。電流センサ10は、電池スタック3に流れる電流、つまり電池セルCbに対する充放電電流を検出する。電流センサ10から出力される電流検出信号は、電池監視ユニット1に与えられている。
インバータ5は、6つの半導体スイッチング素子が三相フルブリッジの形態となるように接続された主回路を備えている。半導体スイッチング素子としては、例えばパワーMOSFET、IGBTなどを用いることができる。インバータ5は、車両の走行時、電池スタック3からJ/B4および図示しない昇圧コンバータを介して与えられる直流電力を交流電力に変換してモータ6に供給する。インバータ5の動作は、ECU7から与えられる指令に基づいて制御される。これにより、ECU7は、モータ6の駆動制御、特に車両の走行時にモータ6が発生するトルクを制御する。また、車両の制動時、モータ6からインバータ5を介して回生される回生電力は、J/B4などを介して電池スタック3に供給される。
ECU7は、システム2の動作全般を制御する。具体的には、ECU7は、各種の異常検出、各種のフェールセーフ制御、電池セルCbの充電状態であるSOCの算出、電池セルCbの充電電力上限値Winおよび放電電力下限値Woutの算出、電池セルCbの充放電電力要求の算出、モータ6が発生するトルクの指令値に相当する制御トルク指令の算出、J/B4のリレー11~13のオンオフ制御、電池監視ユニット1を冷却するための図示しない冷却ファンの制御などを行う。
補機バッテリ8は、前述した冷却ファンを含めた車両に搭載される各種の電装品に対する電力供給を行う。補機バッテリ8は、電池スタック3からJ/B4を介して供給される直流電力により充電可能な構成となっている。なお、この場合、電池スタック3から供給される直流電力は、図示しないDC/DCコンバータを介して降圧されてから補機バッテリ8に供給される。
電池監視ユニット1は、電池スタック3が備える複数の電池モジュール9のそれぞれに対応して設けられた複数の電池監視装置15、絶縁部16、メインマイクロコンピュータ17、漏電検出部18、温度検出部19などを備えている。なお、本明細書では、マイクロコンピュータのことをマイコンと省略することがある。電池監視装置15には、その監視対象となる電池モジュール9を構成する各電池セルCbの端子電圧が入力されている。
電池監視装置15は、半導体装置、つまりICとして構成されている。そこで、本明細書では、電池監視装置のことを監視ICとも称することとする。監視IC15は、対応する電池モジュール9を監視するための所定の処理を実行する。監視IC15が実行する所定の処理としては、電池セルCbの電圧を検出する処理、断線や機能ブロックの故障検知などの診断である故障診断、各電池セルCbの電圧を均等化するための電池均等化などの処理が挙げられる。
各監視IC15は、メインマイコン17との間で所定の通信プロトコルに従った通信を行う。各監視IC15は、その通信を介して、メインマイコン17から各指令などのデータを受信するとともに、メインマイコン17に対して各処理を実行することにより得られる各検出結果などのデータを送信するようになっている。この場合、各監視IC15には、電池セルCbに重畳される高いコモンモード電圧が印加される。そのため、各監視IC15とメインマイコン17との間は、例えばフォトカプラ、磁気カプラなどからなる絶縁部16により絶縁されている。
漏電検出部18には、電池スタック3に接続される低電位側の直流電源線L2の電位と補機用のグランドとに基づいて、電池スタック3の漏電を検出する。なお、図1では、補機用のグランドを補機GNDと称している。漏電検出部18による漏電の検出結果は、メインマイコン17に与えられている。図示は省略するが、電池スタック3において、電池セルCbの近傍にはサーミスタなどの温度センサが設けられている。温度検出部19には、このような温度センサから出力される温度検出信号が与えられている。温度検出部19は、上記温度検出信号に基づいて電池セルCbの温度を検出する。温度検出部19による温度の検出結果は、メインマイコン17に与えられている。
メインマイコン17は、上述したように与えられる各検出結果などに基づいて、全ての電池セルCbの電圧検出、電池セルCbの過充放電検出、断線検出、故障診断などの各種の処理を実行する。メインマイコン17は、ECU7との間でシリアル通信などを行い、その通信を介して各種データの送受信を行う。
<電池監視に関する各機能>
電池監視ユニット1により実現される電池監視に関する各機能は、次のような内容となっている。
(1)電圧検出
電圧検出では、各電池セルCbの端子間電圧が検出される。このような電圧検出の結果は、後述するSOC算出などに用いられる。電圧検出の精度としては、特に過充電検出時および過放電検出時には高い検出精度が要求される。
(2)SOC算出
SOCは、電池セルCbがオープンのときの値に相関があり、電池セルCbの使用中は、電池セルCbへの充放電電流による誤差が発生する。電池セルCbは、等価的には、図2に示すように、内部抵抗R1および電圧源V1の直列回路により表される。
そのため、図3に示すように、電池セルCbの外部から見た電圧であるセル電圧CCVは、電池セルCbに電流が流れると、電圧源V1の電圧VOCVから低下する。そこで、上記構成では、このような電池セルCbの電圧値および電流値をモニタし、それらのモニタ結果に基づいて真のSOCを見積もるようになっている。なお、このようなSOCの算出は、メインマイコン17により行われる。
(3)温度検出
上記構成では、電池セルCb毎の温度ばらつきを抑える冷却構造設計が行われており、温度検出では、代表的な複数個所の温度がセンシングされるようになっている。
(4)故障診断
故障診断では、断線、スイッチの固着故障、例えばADCなどの機能ブロックの故障検知などの診断が行われる。
(5)電池均等化
電池均等化は、各電池セルCbの電圧を均等化する処理である。この場合、電池セルCb毎にスイッチおよび抵抗などからなる放電回路が設けられており、各電池セルCbの電圧が、最も低い電池セルCbの電圧と同程度の電圧となるように各放電回路の動作が制御される。図4に示すように、電池セルCbの容量のばらつきにより、過充電または過放電を起こす電池セルCbが現れると、その時点以降は充電ができなくなる。そこで、上記構成では、上述したような電池均等化を行い、充電を可能とするようになっている。
<電池監視ユニットおよびECUの具体的な配置構成>
図5に示すように、車両に搭載される電池パック、つまり前述した電池スタック3のサイズは、HEV、PHV、EVの順に大型化の傾向があり、同様に、電池モジュール9の数も増加する傾向がある。
HEVでは、例えば特許第6160557号公報に開示されるような構成、つまり電池セルCbの監視機能を有する電池監視ユニット1がECU7に取り込まれた一体型の構成が採用される。この場合、電池スタック3とECU7との間は、電池セルCbの電圧を検出するための電圧検出線21により接続される。これに対し、PHVおよびEVでは、電池スタック3の大型化などに伴い、電池監視ユニット1が、ECU7と独立して電池スタック3の直近に配置される分散型の構成が採用される。なお、図5では、複数の電池監視ユニットのうち一部にだけ符号1を付して表している。
このような分散型の構成では、電池監視ユニット1を構成する各回路素子が実装される回路基板は、電池スタック3の直上などに搭載されることから、その小型化が強く求められる。本明細書では、このような構成における電池監視ユニットのことをSBMとも称する。なお、SBMは、Satellite Battery Monitorの略称である。この場合、電池スタック3とSBM1との間は電圧検出線22により接続される。
なお、図5では、複数の電圧検出線のうち一部にだけ符号22を付して表している。また、この場合、SBM1とECU7との間は、通信線23を介して接続される。このような分散型の構成によれば、一体型の構成に比べ、電圧検出線が短縮されることから車両における配線が削減されるとともに、車両への搭載の自由度が向上するという効果が得られる。
続いて、一体型の構成および分散型の構成のそれぞれにおける通信に関する構成について図6および図7を参照して説明する。図6および図7では、説明を簡略化するため、監視IC15の数が2つであるものとしている。また、ここでは、2つの監視15と、それら2つの監視IC15のそれぞれに対応する構成とには、符号の末尾にそれぞれ「A」および「B」を付して区別している。
図6に示すように、一体型の構成では、ECU7は、マイコン24、磁気カプラ25~27および監視IC15A、15Bを備えている。マイコン24および監視IC15Aは、磁気カプラ25を介して通信可能となっている。また、マイコン24および監視IC15Bは、磁気カプラ26を介して通信可能となっている。また、監視IC15A、15Bは、磁気カプラ27を介して通信可能となっている。
図7に示すように、分散型の構成では、ECU7は、マイコン24、通信IC28およびパルストランス29、30を備えている。SBM1Aは、パルストランス31、32および監視C15Aを備えている。SBM1Bは、パルストランス33、34および監視IC15Bを備えている。
マイコン24および監視IC15Aは、通信IC28、パルストランス29、通信線35およびパルストランス31を介して通信可能となっている。また、マイコン24および監視IC15Bは、通信IC28、パルストランス30、通信線36およびパルストランス34を介して通信可能となっている。また、監視IC15A、15Bは、パルストランス32、通信線37およびパルストランス33を介して通信可能となっている。
<マイコンおよび電池監視装置の間における通信>
続いて、マイコン24および各監視IC15の間における通信の概要について、図8を参照して説明する。ここでは、監視IC15の数が5つであるものとしている。また、ここでは、5つの監視IC15には、符号の末尾にそれぞれ「A」、「B」、「C」、「D」および「E」を付して区別している。
マイコン24は、監視IC15Aとの通信で、監視IC15Aに対して、電圧検出、診断などの処理の実行を指令するライトコマンドが含まれるデータを送信する。このようなライトコマンドが含まれるデータは、監視IC15Aから監視IC15Dへとデイジーチェーン通信によって順次伝送される。これにより、マイコン24は、1つの監視IC15Aにライトコマンドが含まれるデータを送信することで、全ての監視IC15に対する電圧検出、診断などの処理の実行を指令することができる。
マイコン24は、監視IC15Aとの通信で、監視IC15Aに対して、電圧検出、診断などの処理の結果の読み出しを要求するリードコマンドが含まれるデータを送信する。このようなリードコマンドおよび対象とされた監視IC15において読み出された処理結果が含まれるデータは、監視IC15Aから監視IC15Dへとデイジーチェーン通信によって順次伝送される。このように、マイコン24は、1つの監視IC15Aにリードコマンドが含まれるデータを送信することで、全ての監視IC15による電圧検出、診断などの処理の結果を取得することができる。
<監視ICの全体構成>
監視IC15の具体的な全体構成としては、例えば図9に示すような構成を採用することができる。図9に示すように、監視IC15は、電源制御部41、均等化時電源42、簡易電源43、基準電源44、5V電源45、1.8V電源46、電圧検出部47、制御回路48、CR発振回路49、メモリ50、通信I/F51などを備える。
電源IC15は、通常の動作を実行する通常モード、全ての動作が停止される暗電流モードおよび均等化の処理を実行する均等化モードの3つの動作モードを有している。なお、暗電流モードは、監視IC15に対する電源供給が遮断されたときのモード、つまり電源OFF時のモードとなる。監視IC15には、その動作用電源として、降圧電源52の出力および絶縁電源53の出力のうち一方が選択的に入力されるようになっている。降圧電源52は、降圧型のスイッチング電源などであり、監視対象となる電池モジュール9の電圧を降圧することで監視C15の動作用電源を生成する。絶縁電源53は、車両の+B電源を用いて監視IC15の動作用電源を生成する。監視IC15は、通常時には絶縁電源53の出力を動作用電源として動作し、絶縁電源53の出力が正常に得られないときなどには降圧電源52の出力を動作用電源として動作する。
電源制御部41は、降圧電源52の動作を制御する。具体的には、電源制御部41は、通常時には降圧電源52のスイッチング素子をオフするなどして動作を停止し、絶縁電源53の出力が正常に得られないときには降圧電源52による電源生成の動作を実行する。均等化時電源42は、電池モジュール9の電圧を降圧することで、1.8V電源46に供給する電源を生成する。均等化時電源42は、監視IC15が均等化モードに設定されている期間に動作し、その他の通常モードおよび暗電流モードでは動作を停止するようになっている。
簡易電源43は、降圧電源52の出力または絶縁電源53の出力のうちいずれかを入力し、それを降圧およびノイズ除去することで、基準電源44、5V電源45および1.8V電源46に供給する電源を生成する。基準電源44は、電圧検出部47において使用される基準電圧VREF1、VREF2を生成する。5V電源45は、電圧検出部47などにおいて使用される5V系の電源電圧を生成する。
1.8V電源46は、制御回路48などにおいて使用される1.8V系の電源電圧を生成する。1.8V電源46は、均等化時電源42の出力および簡易電源43の出力のうちいずれかにより動作する。具体的には、1.8V電源46は、監視IC15が通常モードに設定されている期間には簡易電源43の出力により動作し、監視IC15が均等化モードに設定されている期間には均等化時電源42の出力により動作する。
電圧検出部47には、電池モジュール9を構成する各電池セルCbの端子電圧が入力される。電圧検出部47は、フィルタ54、検出部55、均等化部56、診断用検出部57などを備えている。フィルタ54は、RCフィルタなどの低域通過フィルタであり、各電池セルCbの電圧を入力し、その低域成分を除去して出力する。なお、本明細書では、低域通過フィルタのことをLPFと省略することがある。
検出部55は、各電池セルCbのそれぞれに対応して設けられた複数のADCを備え、フィルタ54の出力をA/D変換し、それにより得られるデジタル信号を制御回路48に出力する。均等化部56は、均等化を実行するための複数の均等化スイッチから構成される。診断用検出部57は、マルチプレクサおよびADCを備え、複数の電池セルCbの電圧を時分割で検出し、その検出値を表すデジタル信号を制御回路48に出力する。
制御回路48は、ロジック回路として構成されたものであり、その機能ブロックとして、デジタルフィルタ58、検出制御部59、均等化制御部60、故障診断部61、補正部62および通信制御部63を備えている。制御回路48には、クロック信号を生成する発振器49、各種のデータを記憶するためのメモリ50および発振器64が接続されている。制御回路48は、例えばCR発振回路からなる発振器49から供給されるクロック信号を動作クロックとして動作する。
デジタルフィルタ58は、検出部55から出力されるデジタル信号を入力し、その低域成分を除去するLPFとして機能する。検出制御部59は、検出部55の動作を制御するとともに、デジタルフィルタ58の出力信号に基づいて電池セルCbの電圧を検出する、つまり前述した電圧検出の処理を実行する。均等化制御部60は、均等化部56の動作を制御し、前述した電池均等化の処理を実行する。
故障診断部61は、診断用検出部57の動作を制御し、診断用検出部57から出力されるデジタル信号と、検出制御部59による電圧検出の結果とに基づいて、電圧検出に関連する各種の経路、構成などの故障を診断する、つまり前述した故障診断の処理を実行する。補正部62は、各種の処理において必要となる様々な補正処理を実行する。通信制御部63は、通信I/F51を介して外部の装置との間で行われる通信を制御する。
上記構成の監視IC15は、設定される動作モードに応じて、各構成の動作状況が図10に示すように変化するようになっている。なお、図10では、各構成について、動作が実行される状態を「ON」と表し、動作が停止される状態を「OFF」と表している。図10に示すように、監視IC15が暗電流モードに設定されると、全ての構成がOFFとなる。これにより、暗電流モード設定時、監視IC15の消費電流は、暗電流に対応する値となる。
監視IC15が通常モードに設定されると、各構成のうち、均等化時電源42がOFFとなり、均等化時電源42を除く構成がONとなる。これにより、通常モード設定時、監視IC15の消費電流は、定常値となる。監視IC15が均等化モードに設定されると、各構成のうち、均等化時電源42、発振器64および制御回路48がONとなり、それらを除く構成がONとなる。
監視IC15は、均等化モードに設定された場合、電池均等化の処理だけを実行できればよいため、上述したように均等化に関係のない各構成がOFFされるようになっている。電池均等化の処理では、所定の均等化スイッチをオンにし、そのオン状態を所定時間継続し、その後、その均等化スイッチをオフする、という動作の流れとなる。制御回路48の均等化制御部60は、発振器64から供給されるクロック信号を用いて上記した所定時間を計測する。
電池均等化の処理が実行される際、制御回路48は、ONされるものの、均等化に関係のない機能ブロックの動作は不要であるため、均等化制御部60などの均等化に関係のある機能ブロックだけが動作状態となる。このようなことから、均等化モード時、監視IC15の消費電流は、定常値よりも低い値となる。つまり、均等化モードは、通常モードに比べ、省電力のモードとなる。
<監視ICの要部の具体的な回路構成>
監視IC15の要部の具体的な回路構成としては、例えば図11に示すような構成を採用することができる。なお、図11では、監視IC15の監視対象となる電池モジュール9の複数の電池セルCbのうち、6つの電池セルCbが示されており、それら6つの電池セルCbを区別するために、符号の末尾に「A」~「F」を付している。
また、6つの電池セルCbのそれぞれに対応して設けられる各構成についても、符号の末尾に同様のアルファベットを付して区別することとする。ただし、これら各構成について、区別する必要がない場合には、末尾のアルファベットを省略して総称することとする。なお、図11では、監視IC15について、主に3つの電池セルCbC、CbD、CbEに対応する構成を示しているが、他の電池セルCbに対応する構成も同様である。
電池セルCbAは、電池モジュール9において最も高電位側に配置されたものであり、電池セルCbFは、電池モジュール9において最も低電位側に配置されたものである。電池セルCbB~CbEは、電池モジュール9において電池セルCbAと電池セルCbFとの間の任意の箇所に配置されたものである。電池セルCbBの高電位側端子および電池セルCbBの高電位側に隣接する図示しない電池セルCbの低電位側端子は、均等化用抵抗RB1を介して接続端子PB1に接続されている。
電池セルCbBの低電位側端子および電池セルCbCの高電位側端子は、接続端子PS1に接続されるとともに、均等化用抵抗RB2を介して接続端子PB2に接続されている。電池セルCbCの低電位側端子および電池セルCbDの高電位側端子は、接続端子PS2に接続されるとともに、均等化用抵抗RB3を介して接続端子PB3に接続されている。電池セルCbDの低電位側端子および電池セルCbEの高電位側端子は、接続端子PS3に接続されるとともに、均等化用抵抗RB4を介して接続端子PB4に接続されている。電池セルCbEの低電位側端子および電池セルCbFの低電位側に隣接する図示しない電池セルCbの高電位側端子は、接続端子PS4に接続されている。
接続端子PB1および接続端子PB2の間には、均等化スイッチ71Bおよびコンデンサ72Bが並列に接続されている。接続端子PB2および接続端子PB3の間には、均等化スイッチ71Cおよびコンデンサ72Bが並列に接続されている。接続端子PB3および接続端子PB4の間には、均等化スイッチ71Bおよびコンデンサ72Bが並列に接続されている。均等化スイッチ71は、例えばNチャネル型MOSFETから構成されており、そのオンオフは、制御回路48の均等化制御部60により制御される。均等化スイッチ71およびコンデンサ72は、前述した均等化部56に含まれる。
この場合、均等化用抵抗RB1~RB4およびコンデンサ72により、パイ型のRCフィルタが構成される。具体的には、コンデンサ72Bは、均等化用抵抗RB1、RB2とともにRCフィルタ73Bを構成する。また、コンデンサ72Cは、均等化用抵抗RB2、RB3とともにRCフィルタ73Cを構成する。また、コンデンサ72Dは、均等化用抵抗RB3、RB4とともにRCフィルタ73Dを構成する。
上記構成において、RCフィルタ73Bは、接続端子PB1、PB2を介して与えられる電池セルCbBの各端子電圧を入力し、その低域成分を除去するLPFとして機能する。また、RCフィルタ73Cは、接続端子PB2、PB3を介して与えられる電池セルCbCの各端子電圧を入力し、その低域成分を除去するLPFとして機能する。また、RCフィルタ73Dは、接続端子PB3、PB4を介して与えられる電池セルCbDの各端子電圧を入力し、その低域成分を除去するLPFとして機能する。
抵抗RS1の一方の端子は接続端子PS1に接続され、その他方の端子はADC74Cの一方の入力端子に接続されている。抵抗RS2の一方の端子は接続端子PS2に接続され、その他方の端子はADC74Cの他方の入力端子に接続されている。また、抵抗RS1および抵抗RS2の各他方の端子間には、コンデンサCS1が接続されている。抵抗RS1、RS2およびコンデンサCS1により、パイ型のRCフィルタ75Cが構成される。
抵抗RS2の他方の端子は、ADC74Dの一方の入力端子にも接続されている。抵抗RS3の一方の端子は接続端子PS3に接続され、その他方の端子はADC74Dの他方の入力端子に接続されている。また、抵抗RS2および抵抗RS3の各他方の端子間には、コンデンサCS2が接続されている。抵抗RS2、RS3およびコンデンサCS2により、パイ型のRCフィルタ75Dが構成される。
抵抗RS3の他方の端子は、ADC74Eの一方の入力端子にも接続されている。抵抗RS4の一方の端子は接続端子PS4に接続され、その他方の端子はADC74Eの他方の入力端子に接続されている。また、抵抗RS3および抵抗RS4の各他方の端子間には、コンデンサCS3が接続されている。抵抗RS3、RS4およびコンデンサCS3により、パイ型のRCフィルタ75Eが構成される。
上記構成において、RCフィルタ75Cは、接続端子PS1、PS2を介して与えられる電池セルCbCの各端子電圧を入力し、その低域成分を除去するLPFとして機能する。また、RCフィルタ75Dは、接続端子PS2、PS3を介して与えられる電池セルCbDの各端子電圧を入力し、その低域成分を除去するLPFとして機能する。また、RCフィルタ75Eは、接続端子PS3、PS4を介して与えられる電池セルCbEの各端子電圧を入力し、その低域成分を除去するLPFとして機能する。詳細は後述するが、RCフィルタ75は、制御回路48のデジタルフィルタ58による折り返しを抑制するアンチエイリアスフィルタとして機能する。
ADC74Cには、RCフィルタ75Cの出力電圧、つまり対応する電池セルCbCの電圧に応じた入力電圧が入力されている。ADC74Cは、このような入力電圧をA/D変換し、その変換結果として得られるデジタル信号を制御回路48に出力する。ADC74Dには、RCフィルタ75Dの出力電圧、つまり対応する電池セルCbDの電圧に応じた入力電圧が入力されている。ADC74Dは、このような入力電圧をA/D変換し、その変換結果として得られるデジタル信号を制御回路48に出力する。
ADC74Eには、RCフィルタ75Eの出力電圧、つまり対応する電池セルCbEの電圧に応じた入力電圧が入力されている。ADC74Eは、このような入力電圧をA/D変換し、その変換結果として得られるデジタル信号を制御回路48に出力する。ADC74の動作は、制御回路48の検出制御部59により制御される。
このように、監視IC15は、複数の電池セルCbのそれぞれに対応して設けられ、対応する電池セルCbの電圧に応じた入力電圧を入力する複数のADC74を備えている。この場合、ADC74は、高いコモン電圧を低いコモン電圧まで降圧させるレベルシフトも行っている。なお、ADC74としては、例えばΔΣ型ADCなど、変換精度が比較的高い方式のADCを採用することができる。
上記構成において、ADC74には、対応する電池セルCbの両端子に接続される検出経路を介して入力電圧が入力されるようになっている。具体的には、ADC74Cに対応する検出経路は、「電池セルCbCの高電位側端子→接続端子PS1→抵抗RS1→ADC74C」という経路および「電池セルCbCの低電位側端子→接続端子PS2→抵抗RS2→ADC74C」という経路となる。
また、ADC74Dに対応する検出経路は、「電池セルCbDの高電位側端子→接続端子PS2→抵抗RS2→ADC74D」という経路および「電池セルCbDの低電位側端子→接続端子PS3→抵抗RS3→ADC74D」という経路となる。また、ADC74Eに対応する検出経路は、「電池セルCbEの高電位側端子→接続端子PS3→抵抗RS3→ADC74E」という経路および「電池セルCbEの低電位側端子→接続端子PS4→抵抗RS4→ADC74E」という経路となる。
また、上記構成において、均等化スイッチ71は、上記した検出経路とは異なる均等化経路を介して、対応する電池セルCbを放電することができる構成となっている。具体的には、均等化スイッチ71Bに対応する均等化経路は、「電池セルCbBの高電位側端子→抵抗RB1→接続端子PB1→均等化スイッチ71B」という経路および「電池セルCbBの低電位側端子→抵抗RB2→接続端子PB2→均等化スイッチ71B」という経路となる。
また、均等化スイッチ71Cに対応する均等化経路は、「電池セルCbCの高電位側端子→抵抗RB2→接続端子PB2→均等化スイッチ71C」という経路および「電池セルCbCの低電位側端子→抵抗RB3→接続端子PB3→均等化スイッチ71C」という経路となる。また、均等化スイッチ71Dに対応する均等化経路は、「電池セルCbDの高電位側端子→抵抗RB3→接続端子PB3→均等化スイッチ71D」という経路および「電池セルCbDの低電位側端子→抵抗RB4→接続端子PB4→均等化スイッチ71D」という経路となる。
診断用検出部57は、マルチプレクサ76およびADC77を備えている。マルチプレクサ76には、RCフィルタ73の各出力電圧、つまり各電池セルCbの電圧に応じた入力電圧が入力されている。言い換えると、マルチプレクサ76には、上記した均等化経路を介して各電池セルCbの電圧に応じた入力電圧が入力されている。マルチプレクサ76は、各入力電圧のうちいずれか1つを選択してADC77に出力する。
ADC77は、マルチプレクサ76から与えられる入力電圧をA/D変換し、その変換結果として得られるデジタル信号を制御回路48に出力する。この場合、ADC77としては、例えばΔΣ型ADCなど、各種の方式のADCを採用することができる。マルチプレクサ76およびADC77の動作は、制御回路48の均等化制御部60により制御される。
リークキャンセル回路78は、電池セルCbAの高電位側端子の電圧に応じた入力電圧、つまり電池セルCbAに対応して設けられるRCフィルタ75から出力される高電位側の出力電圧をADC74へと入力するための経路を介して流れるリーク電流を低減する。リークキャンセル回路79は、電池セルCbFの低電位側端子の電圧に応じた入力電圧、つまり電池セルCbFに対応して設けられるRCフィルタ75から出力される低電位側の出力電圧をADC74へと入力するための経路を介して流れるリーク電流を低減する。
ここで言うリーク電流は、特開2017-156194号公報に記載されているリーク電流と同様のものであるため、その説明を省略し、必要に応じて特開2017-156194号公報の記載を参照することとする。また、リークキャンセル回路78、79の具体的な構成としては、例えば、特開2017-156194号公報に開示される各構成を採用することができる。リークキャンセル回路78、79の動作は、制御回路48により制御される。
制御回路48のデジタルフィルタ58は、ADC74から出力されるデジタル信号を入力し、その低域成分を除去するLPFとして機能する。デジタルフィルタ58のカットオフ周波数は、任意の値に設定することができる。制御回路48の検出制御部59は、複数のADC74の動作を制御するとともに、デジタルフィルタ58の出力信号に基づいて各電池セルCbの電圧を検出する。この場合、検出制御部59は、複数の入力電圧が同じタイミングでA/D変換されるように複数のADC74の動作を制御する。なお、本明細書などにおける「同じタイミング」とは、タイミングが完全に一致するものだけでなく、目的とする効果を奏するものであれば、互いのタイミングに若干の差があり厳密には一致していないようなものも含む。また、この場合、検出制御部59は、複数のADC74が変換動作を常時実行するように、それらの動作を制御する。
均等化制御部60は、均等化部56の動作、具体的には均等化スイッチ71のオンオフを制御し、前述した電池均等化の処理を実行する。故障診断部61は、診断用検出部57の動作を制御し、診断用検出部57から出力されるデジタル信号と、検出制御部59による電圧検出の結果とに基づいて、上記した検出経路および複数のADC74に関連する故障を診断するなどの故障診断の処理を実行する。
この場合、故障診断部61は、ADC74から出力される所定の電池セルCbの電圧の検出値に相当するデジタル信号と、診断用検出部57から出力される所定の電池セルCbの電圧の検出値に相当するデジタル信号と、を比較することで行う。具体的には、故障診断部61は、各デジタル信号、つまり各検出値が一致している場合には、所定の電池セルCbに対応する検出経路およびADC74の双方が正常であると診断し、各検出値が異なる場合には所定の電池セルCbに対応する検出経路およびADC74の少なくとも一方に故障が生じていると診断する。
上記構成では、診断用検出部57および故障診断部61により、均等化経路を介して複数の電池セルCbの電圧を検出し、その検出値に基づいて検出経路およびADC74に関連する故障を診断する故障診断回路80が構成される。この場合、故障診断回路80は、複数の電池セルCbの電圧を時分割で検出する1つの電圧検出回路として機能する診断用検出部57を備えている。
<RCフィルタおよびデジタルフィルタの特性>
上記構成において、RCフィルタ75は、電池セルCb毎に専用で設けられた単独型の構成ではなく、隣接する電池セルCb間でフィルタを構成する回路素子である抵抗を共用する非単独型の構成となっている。このような構成を採用する理由の一つとしては、非単独型のフィルタは、単独型のフィルタに比べてコモンモードノイズ耐量が向上するというメリットがあるからである。しかし、非単独型のフィルタは、次のようなデメリットがある。すなわち、単独型のフィルタの場合、そのフィルタの定数、つまりフィルタの時定数は、他のフィルタの影響を受けることがないため、各フィルタの定数を概ね同じ値にすることができる、つまりフィルタ定数ずれが発生しない。
これに対し、非単独型のフィルタであるRCフィルタ75の場合、各RCフィルタ75の定数は、自身を構成する回路素子だけでなく、他のRCフィルタ75を構成する回路素子の影響を受けるものとなる。そのため、各RCフィルタ75の定数は、そのRCフィルタ75に対応する電池セルCbの電池モジュール9中における位置によって変化する。したがって、この場合、各RCフィルタ75の定数を同じ値にすることが困難となる、つまりフィルタ定数ずれが発生する。
このような課題を解消するため、本実施形態では、RCフィルタ75に加え、デジタルフィルタ58が設けられており、デジタルフィルタ58のカットオフ周波数がRCフィルタ75のカットオフ周波数よりも低い値に設定されている。なお、RCフィルタ75のカットオフ周波数は、上述したように発生するフィルタ定数ずれに伴いRCフィルタ75毎にばらついた値となるが、本実施形態では、そのような点をも考慮したうえで、デジタルフィルタ58のカットオフ周波数が全てのRCフィルタ75のカットオフ周波数よりも低くなるように設定されている。また、デジタルフィルタ58のカットオフ周波数は、電池セルCbに重畳するノイズであるセルノイズを十分に除去できるような値に設定されている。
上記構成の監視IC15における電池セルCbの電圧の検出結果に影響を及ぼすフィルタ全体の特性は、図12に示すようなものとなる。なお、図12では、デジタルフィルタ58の特性を実線で示し、RCフィルタ75の特性を点線で示している。図12に示すように、フィルタ全体のカットオフ周波数の1stポールは、デジタルフィルタ58のカットオフ周波数に依存する。
そのため、上記構成では、セルノイズがデジタルフィルタ58により除去され、RCフィルタ75の除去にはほとんど寄与しない。ただし、デジタルフィルタ58には、図12に示すような折り返し、つまりエイリアシングがある。この場合、RCフィルタ75のカットオフ周波数は、デジタルフィルタ58の折り返しを低減することができる値に設定されている。なお、RCフィルタ75のカットオフ周波数は、前述したようにばらついた値となるが、全てのRCフィルタ75のカットオフ周波数が、このような折り返しを抑制できる程度の範囲に設定することは容易である。
<ADCの具体的な構成>
ADC74の具体的な構成としては、例えば図13に示すような構成を採用することができる。なお、ここでは、図示されたADC74Cの構成を例にしてADC74の構成を説明するが、図示されたADC74Dおよび図示されていない他のADC74についても同様の構成となっている。ADC74は、ΔΣ型ADCであり、前述した入力電圧が与えられる2つの入力ノードN1、N2間の差電圧を検出する差動構成のスイッチトキャパシタ回路91と、差動出力形式のOPアンプ92と、を備えている。なお、図13では、ADC74の構成のうち一部の構成の図示を省略している。
OPアンプ92の一方の入力端子と一方の出力端子との間にはコンデンサC3が接続されており、OPアンプ92の他方の入力端子と他方の出力端子との間にはコンデンサC4が接続されている。コンデンサC3、C4は、積分容量として機能する。OPアンプ92の各出力端子から出力される差動電圧は、制御回路48に与えられる。OPアンプ92のコモン電圧は、電圧Vcmに等しく設定されている。電圧Vcmは、ADC74において用いられる2つの基準電圧の中間電圧となっている。
スイッチトキャパシタ回路91は、スイッチS1~S8およびコンデンサC1~C4を備えている。差動構成において対をなすコンデンサC1、C2は、入力電圧を充電するためのものであり、互いに同じ容量値になっている。なお、本明細書における「同じ容量値」とは、容量値が完全に一致するものだけでなく、目的とする効果を奏するのであれば、互いの容量値に若干の差があり厳密には一致していないようなものも含む。
コンデンサC1の一方の端子は、スイッチS1を介してノードN1に接続されているとともに、スイッチS2を介してノードN2に接続されている。コンデンサC2の一方の端子は、スイッチS3を介してノードN1に接続されているとともに、スイッチS4を介してノードN2に接続されている。コンデンサC1、C2の各他方の端子には、それぞれスイッチS5、S6を介して、電圧Vcmが印加可能とされている。また、コンデンサC1、C2の各他方の端子は、それぞれスイッチS7、S8を介して、OPアンプ92の各入力端子に接続されている。
スイッチS1~S8は、例えばMOSFETなどの半導体スイッチング素子により構成されており、そのオンオフは制御回路48の検出制御部59により制御される。スイッチS1、S4、S5、S6を第1スイッチと総称するとともに、スイッチS2、S3、S7、S8を第2スイッチと総称すると、第1スイッチおよび第2スイッチは、相補的にオンオフされる。具体的には、第1スイッチは、スイッチトキャパシタ回路91においてコンデンサC1、C2を充電するサンプル動作が行われるサンプル期間にオンされる。また、第2スイッチは、スイッチトキャパシタ回路91においてコンデンサC1、C2に蓄積された電荷を保持するホールド動作が行われるホールド期間にオンされる。
上記構成において、ADC74C、74Dは、電池セルCbCの低電位側端子の電圧に応じた入力電圧を入力するための経路と、電池セルCbDの高電位側端子の電圧に応じた入力電圧を入力するための経路と、を共有している。すなわち、本実施形態では、隣接する2つの電池セルCbのそれぞれに対応して設けられた2つのADC74は、2つの電池セルCbのうち一方の低電位側端子の電圧に応じた入力電圧を入力するための経路と2つの電池セルのうち他方の高電位側端子の電圧に応じた入力電圧を入力するための経路とを共有する構成になっている。
このような構成によれば、次のようにしてリーク電流が低減される、つまりリークキャンセルが可能となる。すなわち、ADC74Cのスイッチトキャパシタ回路91における動作の1周期中には、コンデンサC2を放電する放電電流が流れる。この放電電流は、図13に太い一点鎖線で示すように、「電池セルCbの高電位側端子→接続端子S1→抵抗RS1→スイッチS3→スイッチS4→抵抗RS2→接続端子S2→電池セルCbの低電位側端子」という経路で流れる。
また、ADC75Dのスイッチトキャパシタ回路91における動作の1周期中には、コンデンサC1を充電する充電電流が流れる。この充電電流は、図13に太い点線で示すように、「電池セルCbDの高電位側端子→接続端子S2→抵抗RS2→スイッチS1→スイッチS2→抵抗RS3→接続端子S3→電池セルCbDの低電位側端子」という経路で流れる。
このように、上記構成では、ADC74C、74Dにおいて共有する経路には、上述した充電電流および放電電流が流れる。この場合、隣接する2つの電池セルCbC、CbDの電位、具体的には電池セルCbCの低電位側端子の電位および電池セルCbDの高電位側端子の電位は概ね同じ電位となる。そのため、これら充電電流および放電電流は、互いに逆向きであり且つ同程度の電流値となる。したがって、ADC74C、74Dにおいて共有する経路には、ほとんどリーク電流が流れない状態となり、その結果、リークキャンセルが実現される。
<監視ICのチップ構成>
監視IC15のチップ構成としては、例えば図14に示すような構成を採用することができる。図14に示すように、監視IC15は、複数の半導体チップが1つのパッケージに収容されたマルチチップパッケージのICとなっている。すなわち、監視IC15は、第1半導体チップ101と、第2半導体チップ102と、第1半導体チップ101および第2半導体チップ102を収容するパッケージ103と、を備えている。
第1半導体チップ101および第2半導体チップ102は、いずれもシリコンなどの半導体からなる板状をなす半導体チップである。第1半導体チップ101には、RCフィルタ75が形成されている。RCフィルタ75を構成する抵抗RS1~RS4などは、例えばポリシリコン抵抗、薄膜抵抗などにより形成される。RCフィルタ75を構成するコンデンサCS1~CS3などは、例えば半導体基板にトレンチを掘るとともに電極および誘電体を形成することにより構成されるトレンチキャパシタを集積することにより形成される。
第2半導体チップ102には、ADC74、デジタルフィルタ58および検出制御部59を備えた制御回路48などの回路が形成されている。このように、監視IC15において、RCフィルタ75は、ADC74、デジタルフィルタ58および検出制御部59とともにICとして構成されている。監視IC15は、例えば均等化用抵抗RB1~RB4など、電池の監視機能の各構成要素、つまり電池監視ユニット1を構成する各回路素子のうち監視IC15に実装されていない他の回路素子などとともに、図示しない回路基板に実装される。なお、RCフィルタ75を構成する抵抗RS1~RS4などは、監視IC15の外部に外付け部品として設けてもよい。
<デジタルフィルタの具体的な構成>
ΔΣ型ADCは、オーバーサンプリング方式に基づいており、信号帯域よりも十分に高い周波数でサンプリングを行い、ΔΣ変調器でノイズシェーピングを行い、高域周波数に追いやられた量子化雑音を、デジタルフィルタ58により除去することで、分解能の高いA/D変換を実現している。そのため、ADC74としてΔΣ型ADCを採用する場合、デジタルフィルタ58としては、オーバーサンプリングされた信号から、サンプリング周波数よりも十分に低い信号成分だけを通して、それ以外の量子化雑音を除去することができるもの、つまり非常にカットオフ周波数の低いLPFである必要がある。
このようなデジタルフィルタ58を、1段のデジタルフィルタで実現することは、フィルタの次数を極めて高くしなければならない、フィルタ係数の精度を高くしなければならない、などの理由から困難となる。そこで、デジタルフィルタ58の具体的な構成としては、例えば図15に示すような構成を採用することができる。図15に示すデジタルフィルタ58は、低域フィルタリングおよびディシメーションという2つの機能を有する。ディシメーションとは、オーバーサンプリングされた信号から、サンプル値を適当な間隔で間引くことにより、サンプリング周波数を低くする操作である。
ディシメーションの際には、信号帯域以外の成分が、エイリアシングにより信号帯域に変換されて混入しないよう考慮する必要がある。また、フィルタの次数が不必要に高くならないような配慮も必要となる。図15の構成によれば、これらの点が解決されるようになっている。すなわち、この場合、ADC74から出力される信号は、最初に、構成が簡単なデジタル低域フィルタであるくし形フィルタ104を通過する。これにより、量子化雑音がある程度減少する。
その後、上記構成では、第1段階のディシメーションが行われる。なお、図15では、ディシメーションが行われるブロックを下向きの矢印で表している。そして、上記構成では、第1段階のディシメーションが行われた後の出力をFIR型のデジタルフィルタ105に通過させることで、必要な信号帯域以外の量子化雑音を減衰させる。この後に残留する雑音成分により、ADC74の信号対雑音比、つまりSNRが定まることになる。なお、FIRは、Finite Impulse Responseの略称である。
その後、上記構成では、第2段階のディシメーションが行われ、信号帯域に対して必要最低限の周波数までサンプリング周波数が下げられる。くし形フィルタ104は、周期的にゼロ点があるため、第1段階のディシメーションの後、量子化雑音の折り返し成分が、信号帯域に混入しないようにすることができる。従って、デジタルフィルタの特性としては急峻なものでなくてよい。その後、急峻なカットオフ特性を有するFIR型のデジタルフィルタ105により信号帯域型の雑音が除去されるが、第1段階のディシメーションによりサンプリング周波数が既に低くなっているため、カットオフ周波数もサンプリング周波数に比べて極端に低くする必要がなく、カットオフ特性の急峻さの要求も緩和される。
くし形フィルタ104は、平均化フィルタとも呼ばれ、いくつかの連続したサンプル値を単純に足し合わせたものを出力とする構成である。くし形フィルタ104の具体的な構成としては、例えば図16に示すような構成を採用することができる。図16に示すくし形フィルタ104は、入力x(n)と出力y(n)との間に設けられた複数の加算器106、107および複数の遅延器108、109を備えたものであり、3次のN=64のくし形フィルタとなっている。このような構成によれば、例えば1段のくし形フィルタに比べ、大きな減衰特性を有するため、ΔΣ型ADCの出力を入力するデジタルフィルタ58に採用するのに適したものとなる。
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
監視IC15は、電池セルCbのそれぞれに対応して設けられた複数のADC74、制御回路48などを備えている。制御回路48は、ADC74から出力されるデジタル信号を入力するとともにLPFとして機能するデジタルフィルタ58、複数のADC74の動作を制御するとともにデジタルフィルタ58の出力信号に基づいて電池セルCbの電圧を検出する検出制御部59を備えている。
検出制御部59は、複数の入力電圧が同じタイミングでA/D変換されるように複数のADC74の動作を制御する。これにより、検出制御部59は、複数のADC74が同じタイミングでA/D変換することで得られるデジタル信号に基づいて各電池セルCbの電圧を検出することができる。そのため、上記構成によれば、各電池セルCbの電圧の検出タイミングを揃える、つまり各電池セルCbの電圧の検出タイミングの同期性を高めることができる。
また、上記構成では、デジタルフィルタ58によりセルノイズが除去される。一般に、デジタルフィルタでは、折り返しが生じるが、上記構成では、このような折り返しの発生を抑制するためのアンチエイリアスフィルタとして機能するRCフィルタ75が設けられている。このように、上記構成では、各ADC74の前段に差動増幅回路を設けることなく、セルノイズを除去することができるため、差動増幅回路に起因する各種の誤差が生じることはない。したがって、本実施形態の監視IC15によれば、各電池セルCbの電圧の検出タイミングの同期性を高めるとともに、電圧の検出精度を高めることができるという優れた効果が得られる。
この場合、デジタルフィルタ58のカットオフ周波数は、セルノイズを十分に除去できるような値、且つ、RCフィルタ75のカットオフ周波数よりも低い値に設定されている。そのため、上記構成において、セルノイズ除去のカットオフ周波数は、デジタルフィルタ58のカットオフ周波数に依存することになる。したがって、RCフィルタ75のカットオフ周波数は、デジタルフィルタ58による折り返しを低減できるような値であればよく、多少ばらついても問題が生じない。したがって、上記構成では、RCフィルタ75の構成を簡素化することができる。
具体的には、上記構成において、RCフィルタ75は、単独型のフィルタ構成ではなく、非単独型のフィルタ構成を採用することができる。前述したように、非単独型のフィルタの場合にはフィルタ定数ずれが発生するが、この場合、RCフィルタ75の定数、つまりカットオフ周波数は多少ばらついても問題が生じることはない。非単独型のフィルタは、単独型のフィルタに比べ、隣接する電池セルCb間でフィルタを構成する回路素子の一部が共用されるため、その分だけ構成を簡素化することができる。したがって、上記構成によれば、電池監視IC15の回路面積を小さく抑えることができる。
一般に、デジタルフィルタのカットオフ周波数は、比較的容易に変更することが可能である。そのため、上記構成によれば、セルノイズ除去のカットオフ周波数を、デジタルフィルタ58のカットオフ周波数の設定に応じて容易に変更することが可能となる。したがって、上記構成によれば、例えば監視IC15の仕向け先に応じて、RCフィルタ75などの構成を変更することなく、セルノイズ除去のカットオフ周波数を個別に設定することができる。
この場合、RCフィルタ75は、パイ型フィルタの構成となっている。パイ型のフィルタ構成では、各RCフィルタ75は、それらを構成するコンデンサ72を介してグランドまで繋がることになる。そのため、このような構成によれば、電池セルCbに重畳するコモンモードノイズをも抑制することができる。
また、本実施形態において、RCフィルタ75は、複数のADC74、デジタルフィルタ58および検出制御部59を含む制御回路48とともに半導体装置である監視IC15として構成されている。具体的には、監視IC15は、RCフィルタ75が形成される第1半導体チップ101と、ADC74、制御回路48などが形成される第2半導体チップ102と、第1半導体チップ101および第2半導体チップ102を収容する1つのパッケージ103と、を備えたマルチチップパッケージの構成となっている。
このようにRCフィルタ75を監視IC15に取り込んで集積化することにより、監視IC15の外付け部品が削減される。これにより、電池監視ユニット1を構成する監視IC15を含めた各種の素子を実装するための回路基板の面積を小さく抑えること、つまり回路基板の小型化を図ることができる。また、この場合、監視IC15がマルチチップパッケージの構成とされているため、その分だけ、回路基板の面積が一層小さく抑えられることになる。
監視IC15は、電池均等化の処理を実行することが可能であり、複数の電池セルCbのそれぞれに対応して設けられ、対応する電池セルCbを放電するための均等化スイッチ71を備えている。そして、この場合、ADC74には、対応する電池セルCbの両端子に接続される検出経路を介して入力電圧が入力されるようになっており、均等化スイッチ71は、その検出経路とは異なる均等化経路を介して対応する電池セルCbを放電するようになっている。
このような構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、上述した検出経路には、RCフィルタ75が介在しているが、前述した通り、各RCフィルタ75には定数ずれが発生する。この場合、均等化経路は、検出経路とは異なる経路であり、RCフィルタ75による影響を受けることがない。したがって、上記構成によれば、電池均等化の処理が実行される際、RCフィルタ75の定数ずれによる影響を受けることなく、対象の電池セルCbを適切に放電することができ、その結果、電池均等化の精度を良好なものとすることができる。
本実施形態では、複数のADC74は、常に入力電圧をA/D変換する動作を行うことになる。そのため、これら複数のADC74を利用して検出経路などに関連する故障を診断することが困難となる。なぜなら、そこで、請求項7の構成を採用している。このようにすれば、検出経路などに関連する故障を診断することができる。
本実施形態では、各ADC74は、連続的に変換動作を行っている、つまり変換動作を常時行っている。そのため、動作の途中において、これらADC74を利用して検出経路などに関連する故障を診断することが困難となる。特に、本実施形態では、ADC74としてΔΣ型ADCを採用しているため、このような診断はより困難なものとなる。なぜなら、ΔΣ型ADCは、途中で変換動作を停止すると、再度動作させる際に比較的長い時間を必要とする。そのため、ADC74が途中で変換動作を停止して、それを用いて故障診断を行い、その後、変換動作を再開する、といった動作は現実的ではない。
そこで、本実施形態では、監視IC15には、均等化経路を介して複数の電池セルCbの電圧を検出する診断用検出部57と、診断用検出部57による検出値に基づいて検出経路および複数のADC74に関連する故障を診断する故障診断部61と、が設けられている。このようにすれば、ADC74が常時変換動作を行うような本実施形態の構成においても、検出経路などに関連する故障を診断することができる。
故障診断の際、各電池セルCbの電圧の検出タイミングの同期性は重要なものではない。そこで、診断用検出部57は、マルチプレクサ76および1つのADC77を備え、複数の電池セルCbの電圧を時分割で検出する構成となっている。このようにすれば、各電池セルCbのそれぞれに対応して診断用の電圧検出回路となるADCを設けるような構成に比べ、診断用検出部57の構成を簡素化することができ、監視IC15全体の回路面積を小さく抑えることができる。
この場合、均等化経路には、RCフィルタ75と同様のパイ型フィルタの構成であるRCフィルタ73が設けられている。つまり、この場合、故障診断の際に電池セルCbの電圧を検出するために用いられる均等化経路には、電圧検出の際に電池セルCbの電圧を検出するために用いられる検出経路に介在するRCフィルタ75と同様の構成をなすRCフィルタ73が介在する。このような構成によれば、所定の電池セルCbについて検出経路を介して検出される検出値と均等化経路を介して検出される検出値とが同様の態様となるため、それら各検出値を用いて実施される故障診断の精度が向上するという効果が得られる。
本実施形態では、各ADC74は、入力電圧が与えられる2つの入力ノード間の差電圧を検出する差動構成のスイッチトキャパシタ回路91を備えた構成となっている。そして、隣接する2つの電池セルCbのそれぞれに対応して設けられた2つのADC74は、2つの電池セルCbのうち一方の低電位側端子の電圧に応じた入力電圧を入力するための経路と2つの電池セルCbのうち他方の高電位側端子の電圧に応じた入力電圧を入力するための経路とを共有する構成になっている。このような構成によれば、前述したように、これら共有する経路において電圧検出の動作に伴い生じる可能性があるリーク電流の発生が大幅に低減される。
ただし、上記構成であっても、電池モジュール9において最も高電位側に配置された電池セルCbAの高電位側端子の電圧に応じた入力電圧を入力するための経路と、電池モジュール9において最も低電位側に配置された電池セルCbFの低電位側端子の電圧に応じた入力電圧を入力するための経路と、は、上述したような経路の供給が不可能となることから、それら経路を介してリーク電流が発生するおそれがある。そこで、本実施形態では、リークキャンセル回路78、79を設け、これら経路を介して流れるリーク電流を低減するようにしている。このようにすれば、電圧検出の動作に伴って発生するおそれがあるリーク電流を確実に低減することができる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について図17を参照して説明する。
各電池セルCbのそれぞれに対応して設けられるADCの具体的な構成としては、第1実施形態において説明した具体的な構成に限らず、様々な構成を採用することができる。本実施形態では、ADCの具体的な別の一構成例について説明する。
図17に示すように、本実施形態ADC111C、ADC111Dは、図13に示したADC74C、74Dに対し、スイッチS2、S3に代えて、スイッチS10を備えている点などが異なる。この場合、スイッチS10は、スイッチS2、S3と同様のタイミングでオンオフされることになる。
以上説明した本実施形態のADC111によっても、第1実施形態のADC74と同様の動作を行うことができる。したがって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態によれば、ADC111を構成するスイッチの数が、第1実施形態のADC74に対して1つ削減することができ、その分だけ、回路面積が低減されるという効果が得られる。
(第3実施形態)
以下、第1実施形態に対して監視ICの要部の具体的な回路構成が変更された第3実施形態について図18~図21を参照して説明する。
図18に示すように、本実施形態の監視IC121は、第1実施形態の監視IC15に対し、制御回路48に代えて制御回路122を備えている点、診断用検出部57に代えて診断用検出部123を備えている点などが異なる。
制御回路122は、制御回路48に対し、故障診断部61に代えて故障診断部124を備えている点などが異なる。上記構成では、診断用検出部123および故障診断部124により、均等化経路を介して複数の電池セルCbの電圧を検出し、その検出値に基づいて検出経路およびADC74に関連する故障を診断する故障診断回路125が構成される。この場合、故障診断回路125は、複数の電池セルCbの電圧を時分割で検出する1つの電圧検出回路として機能する診断用検出部123を備えている。第1実施形態において既述したように、均等化経路には、検出経路に介在するRCフィルタ75と同様の構成をなすRCフィルタ73が介在する。この場合、RCフィルタ73は、RCフィルタ75と同じポール、つまり同じカットオフ周波数を有する構成となっている。
故障診断回路125は、診断用検出部123により電池セルCbの電圧が検出される期間の少なくとも一部が検出制御部59により電池セルCbの電圧が検出される期間と重複するように、診断用検出部123による電池セルCbの電圧の検出タイミングを制御する。具体的には、故障診断回路125は、診断用検出部123により所定の電池セルCbの電圧が検出される期間と、検出制御部59により上記所定の電池セルCbの電圧が検出される期間とが重複するように、診断用検出部123による電池セルCbの電圧の検出タイミングを制御する。すなわち、本実施形態では、所定の電池セルCbについて、診断用検出部123による電圧検出と検出制御部59による電圧検出とを同時に実施するようになっている。
このように、本実施形態では、診断用検出部123による電池セルCbの電圧の検出タイミングに特徴がある。以下、このような検出タイミングの具体例について図19を参照して説明する。なお、以下の説明では、検出制御部59による電圧検出処理のための電池セルCbの電圧の検出のことを電圧検出処理用の電圧検出と称するとともに、診断用検出部123による故障診断処理のための電池セルCbの電圧の検出のことを故障診断処理用の電圧検出と称することとする。また、図19などでは、電圧検出処理用の電圧検出のことを「電圧検出」と省略するとともに、故障診断処理用の電圧検出のことを「故障診断」と省略している。
図19に示すように、本実施形態の検出タイミングの具体例では、第1実施形態と同様、全ての電池セルCbに対する電圧検出処理用の電圧検出が同じタイミングで行われる。つまり、この場合、電圧検出処理用の電圧検出は、全セル同時に実施される。そして、この場合、各電池セルCbに対する故障診断処理用の電圧検出は、全セル同時に実施される電圧検出処理用の電圧検出と同じタイミングで行われる。
具体的には、期間Taでは、全ての電池セルCbに対する電圧検出処理用の電圧検出が行われるとともに、電池セルCbAに対する故障診断処理用の電圧検出が行われる。そのため、期間Taでは、同じ電池セルCbAについて電圧検出処理用の電圧検出と故障診断処理用の電圧検出とが同時に、つまり並列に実施される。期間Tbでは、全ての電池セルCbに対する電圧検出処理用の電圧検出が行われるとともに、電池セルCbBに対する故障診断処理用の電圧検出が行われる。そのため、期間Tbでは、同じ電池セルCbBについて電圧検出処理用の電圧検出と故障診断処理用の電圧検出とが並列に実施される。
期間Tcでは、全ての電池セルCbに対する電圧検出処理用の電圧検出が行われるとともに、電池セルCbCに対する故障診断処理用の電圧検出が行われる。そのため、期間Tcでは、同じ電池セルCbCについて電圧検出処理用の電圧検出と故障診断処理用の電圧検出とが並列に実施される。期間Tdでは、全ての電池セルCbに対する電圧検出処理用の電圧検出が行われるとともに、電池セルCbDに対する故障診断処理用の電圧検出が行われる。そのため、期間Tdでは、同じ電池セルCbDについて電圧検出処理用の電圧検出と故障診断処理用の電圧検出とが並列に実施される。
期間Teでは、全ての電池セルCbに対する電圧検出処理用の電圧検出が行われるとともに、電池セルCbEに対する故障診断処理用の電圧検出が行われる。そのため、期間Teでは、同じ電池セルCbEについて電圧検出処理用の電圧検出と故障診断処理用の電圧検出とが並列に実施される。期間Tfでは、全ての電池セルCbに対する電圧検出処理用の電圧検出が行われるとともに、電池セルCbFに対する故障診断処理用の電圧検出が行われる。そのため、期間Tfでは、同じ電池セルCbFについて電圧検出処理用の電圧検出と故障診断処理用の電圧検出とが並列に実施される。
従来の監視ICでは、所定の電池セルCbについて、電圧検出処理用の電圧検出と、故障診断処理用の電圧検出と、が交互に行われるような検出タイミング、具体的には、図20に示すような検出タイミングが採用されることが一般的であった。なお、以下では、このような従来の検出タイミングのことを比較例と称する。比較例において、期間Ta1では、電池セルCbAに対する電圧検出処理用の電圧検出が行われ、期間Ta2では、電池セルCbAに対する故障診断処理用の電圧検出が行われる。つまり、比較例では、電池セルCbAに対する電圧検出処理用の電圧検出と、同じ電池セルCbAに対する故障診断処理用の電圧検出とが交互に行われる。なお、他の電池セルCbB~CbFについても、同様に、電圧検出処理用の電圧検出と故障診断処理用の電圧検出とが交互に行われる。
このような比較例では、電圧検出処理用の電圧検出と故障診断処理用の電圧検出とで、検出のタイミングが異なることから、互いに異なるノイズ環境での検出となる。なお、図20などには、電池セルCbに重畳するノイズ波形の一例を模式的に示している。このようなノイズ波形の一例のように、所定の電池セルCbAに対する電圧検出処理用の電圧検出が行われる期間Ta1と、同じ電池セルCbAに対する故障診断処理用の電圧検出が行われる期間Ta2とでは、電池セルCbに重畳するノイズの態様が異なることが多い。
このような比較例では、所定の電池セルCbについて電圧検出処理用の電圧検出の検出値と故障診断処理用の電圧検出の検出値とが同様の態様にならず、その結果、それら各検出値を用いて実施される故障診断の精度が低下するおそれがある。また、比較例では、1つの電池セルCb毎に電圧検出処理用の電圧検出および故障診断処理用の電圧検出を順に行うようになっているため、全ての電池セルCbに対応する電圧検出処理を完了するまでに要する時間が長期化するという問題があった。
これに対し、本実施形態では、所定の電池セルCbについて電圧検出処理用の電圧検出と故障診断処理用の電圧検出とが同じタイミングで並列して行われるようになっている。そのため、本実施形態では、図19に示すように、所定の電池セルCbAに対する電圧検出処理用の電圧検出と同じ電池セルCbAに対する故障診断処理用の電圧検出とは同じ期間Taに行われることから、それら各検出が行われる際に電池セルCbに重畳するノイズの態様が同じになり、同じノイズ環境での検出が可能となる。したがって、本実施形態によれば、電圧検出処理用の電圧検出の検出値と故障診断処理用の電圧検出の検出値とが同様の態様となるため、それら各検出値を用いて実施される故障診断の精度が向上するという効果が得られる。
さらに、本実施形態では、検出経路に介在するRCフィルタ75と、均等化経路に介在するRCフィルタ73とは、同様の構成、具体的には同じカットオフ周波数を有する構成となっている。つまり、検出経路に介在するRCフィルタ75と均等化経路に介在するRCフィルタ73とは同じポールを持ったRCフィルタとなっている。そのため、本実施形態によれば、電圧検出処理用の電圧検出と故障診断処理用の電圧検出とを一層同じノイズ環境での検出とすることができ、その結果、故障診断の精度を一層高めることができる。
また、本実施形態によれば、故障診断処理用の電圧検出は1つの電池セルCb毎に行われるものの、電圧検出処理用の電圧検出は全セル同時に行われることから、比較例に比べ、全ての電池セルCbに対応する電圧検出処理および故障診断処理が完了するまでの総合的な時間が大幅に短縮されるといった効果が得られる。上記した通り、本実施形態によれば、電圧検出処理用の電圧検出が全セル同時に行われることから、比較例に比べ、検出対象となる電池セルCbの数の逆数の時間で電圧検出処理を完了することができる。
このような電圧検出処理に要する時間短縮の効果を生かし、RCフィルタ73、75のカットオフ周波数をより低い周波数へと変更する変形例を採用することが可能となる。このような変形例によれば、RCフィルタ73、75を用いてより低周波の成分を除去することが可能となり、電圧検出処理および故障診断処理の精度をより一層高めることができる。しかも、この場合、図21に示すように、1つの電圧検出処理用の電圧検出に要する時間である期間Taなどの長さは、図19に示した期間Taなどの長さに比べて長くなるものの、全ての電池セルCbに対応する電圧検出処理および故障診断処理が完了するまでの総合的な時間は、比較例と同程度の時間に維持することができる。
(第4実施形態)
以下、第3実施形態について図22~図25を参照して説明する。
図22に示すように、本実施形態の監視IC131は、第1実施形態の監視IC15に対し、制御回路48に代えて制御回路132を備えている点などが異なる。制御回路132は、制御回路48に対し、デジタルフィルタ58に代えてデジタルフィルタ133を備えている点などが異なる。デジタルフィルタ133は、デジタルフィルタ58と同様のLPFとして機能する。ただし、デジタルフィルタ133は、外部から与えられる指令信号Saに基づいてカットオフ周波数を変更可能な構成となっている。指令信号Saは、例えばメインマイコン17から与えられる。
以上説明した本実施形態の構成では、次のような効果が得られる。すなわち、セルノイズ除去のカットオフ周波数は、監視IC131が用いられる車両の種類、具体的には車両のメーカ毎、車種毎などに、最適な値に設定する必要がある。本実施形態の構成によれば、セルノイズ除去のカットオフ周波数に大きく影響を及ぼすデジタルフィルタ133のカットオフ周波数は、指令信号Saに基づいて変更することができる。
そのため、上記構成によれば、セルノイズ除去のカットオフ周波数を、ハードウェアの変更を伴うことなく、指令信号Saに基づいて、容易に切り替えることができる。このようなことから、本実施形態の監視IC131は、車両の種類毎に異なる種々のECUシステムに対応することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、従来では車両システム毎にECU設計が必要であったものが、ECU構成を統一すること、つまり共用化することができるという優れた効果が得られる。
本実施形態の構成を含む各実施形態の構成、つまり第1~第4実施形態の構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、図23に示すように、従来の監視IC141では、ADC142により電池セルCbの電圧を精度良く検出するために抵抗143およびコンデンサ144から構成されたRCフィルタ145が外付けされる構成が採用されることが多い。以下、このような従来の監視IC141を比較例と称することとする。比較例では、均等化スイッチ146をオンすることにより、均等化用抵抗147、148および均等化スイッチ146のオン抵抗により、電池セルCbを放電することができるようになっている。
この場合、電池セルCbの高電位側端子から均等化用抵抗147、接続端子149、均等化スイッチ146、接続端子150および均等化用抵抗148を介して電池セルCbの低電位側端子へと至る経路が均等化経路となる。なお、図23では、均等化経路を実線の矢印で示している。この均等化経路には、実際には、図23に示すように、電池セルCbとECUとの間を接続するハーネスの抵抗成分151、152、ハーネスを接続するためのコネクタの接触抵抗153、154、ヒューズの抵抗成分155、156、フェライトビーズの抵抗成分157、158および基板の配線抵抗159、160が存在する。
比較例の構成では、配線抵抗159および均等化用抵抗147の相互接続ノードであるノードN11と配線抵抗160および均等化用抵抗148の相互接続ノードであるノードN12との間の電圧Vaが電池セルCbの電圧であるセル電圧に相当する。ただし、比較例の構成では、ノードN11、N12と接続端子161、150との間にRCフィルタ145が設けられているため、監視IC141のADC142に取り込まれる電圧Vbには、RCフィルタ145の時定数に応じた時間だけ遅れが生じる。
図24に示すように、均等化スイッチ146がオンからオフに転じる時点t1において、電圧Vaは急峻に立ち上がって安定するものの、電圧Vbは緩やかに立ち上がり安定するまでにRCフィルタ145の時定数に応じた時間を要する。しかも、比較例では、RCフィルタ145だけを用いてセルノイズを除去する構成であることから、RCフィルタ145のカットオフ周波数をより低域側に設定せざるを得ず、電圧Vbが安定するまでに要する時間がより長期化することになる。ADC142は、電圧Vbが安定した後に検出動作を行うことになるため、比較例では、システム制御の高速化が困難となっている。
これに対し、各実施形態の構成では、検出経路に介在するフィルタのメインは、デジタルフィルタ58、133であることから、RCフィルタ75のカットオフ周波数は、デジタルフィルタ58、133の折り返しノイズを除去できる程度の周波数でよく、比較例よりも高い周波数とすることができる。そのため、各実施形態の構成では、図25に示すように、監視IC131などに取り込まれて検出される電圧は、均等化スイッチ71がオンからオフに転じる時点t1から、比較例の電圧Vbに比べて急峻に立ち上がり素早く安定する。このように、各実施形態の構成では、均等化スイッチ71がオンからオフに転じた後に検出される電圧が安定するまでの時間が、比較例に比べて短い時間となり、その結果、電圧検出に要する時間が短縮されるため、制御の高速化を実現することができる。
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
デジタルフィルタ58、133の折り返しを低減するためのアンチエイリアスフィルタとしては、上記各実施形態において説明したRCフィルタ75に限らずともよく、例えば、パイ型のLCフィルタなど、様々な構成のフィルタを採用することができる。
故障診断回路80、125の構成は、上記各実施形態において説明したものに限らずともよく、同様の機能を実現できる構成であれば、適宜変更することができる。例えば、故障診断回路は、複数の電池セルCbの電圧を個別に検出する複数の電圧検出回路を備える構成であってもよい。
上記各実施形態では、RCフィルタ75が形成される第1半導体チップ101と、制御回路48などが形成される第2半導体チップ102と、を1つのパッケージ103に収容するマルチチップパッケージの構成を採用していたが、これに限らずともよい。例えば、第1半導体チップ101と第2半導体チップ102とを別々のパッケージに収容する構成、つまりRCフィルタ75と、制御回路48と、を別々の2つのICとして構成してもよい。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。