JP7140134B2 - カバー部材 - Google Patents

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Description

本発明は、カバー部材に関する。
各種機器(例えば、テレビ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、車両等に備えられた画像表示装置(例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等))においては、蛍光灯などの室内照明や太陽光等の外光が表示面に映り込むと、反射像によって視認性が低下する。
外光の映り込みを抑制する方法として、画像表示装置の表示面に防眩処理(AG処理)が行われている。画像表示装置の表示面にガラス基板が用いられている場合、該ガラス基板表面に化学的または物理的な表面処理を施して凹凸を形成したのち、表面形状を整えるためにフッ酸等を用いてエッチングする方法が知られている(特許文献1参照)。
また、外光の映り込みを抑制する方法として、防眩膜を画像表示装置の表示面側に配置する方法もある。防眩膜は、表面に凹凸を有し、外光を拡散反射させ、反射像を不鮮明にするものである。このような防眩膜は、例えば、アルコキシシランの加水分解縮合物などの加水分解性有機ケイ素化合物をシリカ前駆体として含む塗布液を、スプレー法にて透光性基材表面に塗布した後、焼成して形成される(例えば、特許文献2参照。)。
また、画像表示装置の表示面に低反射膜を備えた透明基材を配置し、透明基材への入射光の反射自体を抑えて、反射像を不鮮明にする方法もある。低反射膜としては、低屈折率材料からなる単層膜、低屈折率材料からなる層と高屈折率材料からなる層とを組み合わせた多層膜が知られている。また、低反射膜として、含フッ素加水分解性有機ケイ素化合物から形成される膜も知られている(例えば、特許文献3~6参照。)。
また、高視認性と高防眩性を有する基材として、滑らかな一方の主面とテクスチャを有する他方の主面とを備える部材と、前記テクスチャに形成された金属層又は前記部材の屈折率とは異なる屈折率を有する誘電体層と、前記部材と同程度の屈折率を有する部材とで形成された積層構造が知られている(例えば、特許文献7)。ところが、表面はなめらかな面であり、カバー表面の防眩性と、表示素子用カバー部材として必要なぎらつき抑制とを両立できるような構成となっていなかった。
日本国特開昭61-36140号公報 国際公開2016/021560号 日本国特開昭64-1527号公報 日本国特開2003-344608号公報 日本国特開2002-79616号公報 国際公開2005/121265号 日本国特許第6082107号
画像表示装置の表示面側にカバー部材を設ける場合は、カバー部材の表示面側に防眩処理(AG処理)を施すか、カバー部材の表示面側に防眩膜を配置すること(以降、防眩層ともいう)で、外光が表示面に映り込むことによる画像の視認性の低下を抑制できる。しかし同時に、防眩層は、防眩性が高いほど、視認性が低下する。これは、防眩性を表す表面反射散乱と、視認性を表す透過散乱が、防眩層の凹凸表面と空気との界面においてこれらの屈折率差により発現しているためである。また、防眩性が高いほど、防眩処理(AG処理)面や防眩膜表面にぎらつきが生じて、さらに視認性が低下する。
そのため、高防眩性、高視認性、および低ぎらつきを同時に達成できなかった。
本発明は、高防眩性、高視認性、および低ぎらつきを同時に達成できるカバー部材を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、第1凹凸部を有する第1主面と第2凹凸部を有する第2主面とを備えた透明基材;高屈折率層;及び樹脂層を備え、前記高屈折率層と前記樹脂層とがこの順に前記透明基材の前記第2主面側に備えられ、
波長550nmでの、前記透明基材の屈折率をn1、前記樹脂層の屈折率をn2、前記高屈折率層の屈折率をn3とするとき、下記式1,式2を満たすカバー部材を提供する。
1<n3 ・・・式1
2<n3 ・・・式2
本発明のカバー部材において、前記第1主面側から測定した前記カバー部材の反射率から、前記第1主面と空気との界面での反射率を差し引いた値が0.1%以上4%以下であることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記樹脂層の波長550nmでの屈折率n2が1.4~1.8であることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記屈折率n1と前記屈折率n2との差の絶対値|n1-n2|は0.1以下であることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記高屈折率層の波長550nmでの屈折率n3が2.0以上であることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記高屈折率層の厚さが5~80nmであることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記高屈折率層が、二酸化チタン(TiO2)、五酸化ニオブ(Nb25)、五酸化タンタル(Ta25)、窒化ケイ素(Si34)、アルミナ(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、および二酸化スズ(SnO2)からなる群から選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記第1凹凸部及び第2凹凸部の最表面は、表面粗さRqが0.02μm以上0.3μm以下であり、粗さ曲線の要素の平均長さRSmが8μm以上50μm以下であることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記第1凹凸部及び第2凹凸部は防眩処理により形成されていることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記透明基材は、ガラスからなることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記透明基材は、化学強化ガラスからなることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記透明基材は、屈曲部を有することが好ましい。
本発明のカバー部材によれば、高防眩性、高視認性、および低ぎらつきを同時に達成できる。
図1は、本発明のカバー部材の一構成例を模式的に示した断面図である。 図2は、反射像拡散性指標の測定手法を示した図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
<カバー部材10>
図1は本発明のカバー部材10の一構成例を模式的に示した断面図である。
図1に示すカバー部材10は、第1凹凸部を有する第1主面12と第2凹凸部を有する第2主面13とを備えた透明基材11、高屈折率層15及び樹脂層14を備え、前記高屈折率層15と前記樹脂層14とがこの順に前記透明基材11の前記第2主面13に備えられている。さらに、図1に示すカバー部材10は、波長550nmでの、前記透明基材11の屈折率をn1、前記樹脂層14の屈折率をn2、前記高屈折率層15の屈折率をn3とするとき、下記式1,式2を満たす。
1<n3 ・・・式1
2<n3 ・・・式2
図1に示すカバー部材10は、波長550nmの屈折率n3が上記式1及び式2を満たす高屈折率層15が透明基材11の第2主面13と、樹脂層14との間に存在することにより、高屈折率層15が無い場合に比べて、透明基材11の第1主面12側から高屈折率層15に入射した光の拡散反射成分を増大させられる。これにより透明基材11の第1主面側からカバー部材10に写りこんだ反射像を不鮮明とできる防眩性を増大させられる。
ここで、光散乱は大きく「表面散乱」と「内部散乱」に分けられる。
「内部散乱」とは、空気との界面ではなく、透明基材11、樹脂層14など画像表示素子表面に付加された一連のカバー部材10の内部に屈折率差がある界面を持つ構造を持つ場合、その界面において、その界面形状に応じ発生する散乱を意味する。内部散乱は「内部透過散乱」と「内部反射散乱」に分けられる。「内部透過散乱」は、透過光が、屈折率の異なる含有粒子や層との界面を通過する際に発生する散乱を意味し、内部透過散乱が大きくなると視認性が悪化する。「内部反射散乱」は、入射光が、屈折率の異なる含有粒子や層との界面で反射する際に発生する散乱を意味し、内部反射散乱が大きくなると防眩性が増大する。
「表面散乱」とは、屈折率差がある空気とカバー部材10との界面において発生する散乱を意味する。具体的には、「表面透過散乱」と「表面反射散乱」に分けられる。「表面透過散乱」は、透過光の空気とカバー部材10との界面での散乱を意味し、表面透過散乱が大きくなると視認性が低下する。「表面反射散乱」は、入射光の空気とカバー部材10との界面での散乱を意味し、表面反射散乱が大きくなると防眩性が高くなる。
さらに「透過散乱」とは、内部透過散乱と表面透過散乱の和を意味し、透過散乱が大きくなると視認性が低下する。
また、「正反射」とは、反射において、表面に対する入射角度と同じ角度で反射された反射を意味する。「拡散反射」とは、反射において、表面に対する入射角度と異なる角度で反射されて全体として拡散された反射を意味する。この場合の表面とは、微細な表面凹凸それぞれの傾斜表面ではなく、表面に凹凸を持った透明基材の凹凸の平均高さを含む平面に平行な面を指す。
従来、防眩性を増加させる表面反射散乱と、視認性を低下させる透過散乱が、いずれも同じ界面、即ち、防眩層(第1凹凸部)の凹凸表面と空気との界面(ここでは第1主面12)においてそれらの屈折率差により発現していた。そのため、高防眩性を発現すると視認性が低下し、ぎらつき性が悪くなってしまう。その結果、高防眩性、高視認性および低ぎらつき性を同時に実現できなかった。
本発明によれば、第2凹凸部を有する第2主面13と高屈折率層15と樹脂層14が形成する界面では、透明基材11/高屈折率層15界面と、高屈折率層15/樹脂層14界面とが、微視的に見てほぼ平行関係にある。また、透明基材11の屈折率n1と樹脂層14の屈折率n2との差が小さく、高屈折率層15の膜厚が非常に薄い。以上より、透過光はほとんど散乱されることはなく、内部透過散乱を増加させない。一方、透明基材11/高屈折率層15界面は、屈折率差が大きく、垂直入射光に対して角度がついているので内部反射散乱が発現する。以上より、内部透過散乱を増加させずに内部反射散乱により反射防眩性のみを向上できる。また、第1主面12の表面反射散乱を抑えることで透過散乱を抑え、低ぎらつき性が得られる。以上の結果、カバー部材10として高防眩性、高視認性、および低ぎらつきを同時に達成できる。
<透明基材11>
図1に示すカバー部材10における透明基材11は、第1主面12と第2主面13とを有する透明板を準備し、透明板の第1主面12に第1凹凸部が、透明板の第2主面13に第2凹凸部が形成されたものである。本願明細書では、透明基材11の表面形状、より具体的には、透明基材11の第1主面12及び第2主面13の表面形状、さらに、具体的には、第1主面12の第1凹凸部及び第2主面の第2凹凸部の表面形状の指標として、表面粗さRq、および粗さ曲線の要素の平均長さRSmを用いる。なお、表面粗さRqと粗さ曲線の要素の平均長さRSmは、JIS B0601-2001により測定し求められる。
[透明板]
透明板の材料としては、ガラス、樹脂等が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
中でも安全性や強度の観点から透明板はガラスが好ましい。さらに車載用表示部材へのガラスの使用は、高い耐熱性、高い耐候性の観点からも好ましい。
透明板がガラスである場合、例えば車載用表示部材のカバー部材10として必要な機械的強度および耐擦傷性を確保するため、透明板が強化処理されていることが好ましい。強化処理としては物理強化処理、化学強化処理ともに使用できるが、比較的に薄いガラスでも強化処理できる点から、透明板は化学強化処理された化学強化ガラスが好ましい。
透明板に使用できるガラス組成は、化学強化処理を実施しない場合には無アルカリガラス、ソーダライムガラスが、化学強化処理を行う場合には、例えば、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラスが挙げられる。厚さが薄くても強化処理によって大きな応力が入りやすく薄くても高強度なガラスが得られ、画像表示装置の視認側に配置される物品として好適である点から、アルミノシリケートガラスが好ましい。
透明板は、表面圧縮応力(CS)の最大値が400MPa以上が好ましく、500MPa以上がより好ましく、600MPa以上がさらに好ましい。また透明板の圧縮応力層深さ(DOL)は10μm以上が好ましい。透明板の表面圧縮応力および圧縮応力層深さを当該範囲とすることにより、透明板の主面に優れた強度と耐擦傷性を付与できる。
透明板の厚さは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。また、透明板の厚さは、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましい。この範囲であれば、最終製品を割れにくくできる。
透明板は少なくとも1つ以上の屈曲部を備えてもよい。屈曲部と平坦部を組み合わせた形状、全体が屈曲部となる形状などが挙げられるが、屈曲部を有すれば特に形状は限定されない。最近では、屈曲部を有するカバー部材を表示装置に使用する場合、各種機器(テレビ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、カーナビゲーション等)において、表示パネルの表示面が曲面となったものが登場している。屈曲部は、表示パネルの形状や表示パネルの筐体の形状などに合わせて作製できる。なお、「平坦部」とは、平均曲率半径が1000mm超である部分を意味し、「屈曲部」とは、平均曲率半径が1000mm以下である部分を意味する。
透明板の波長550nmでの屈折率をn1とすると、n1は1.45~1.62が好ましい。これは屈折率n1が1.62より大きいと空気との界面での屈折率差が大きくなり、表面反射が増大してぎらつきが見えやすくなるためである。また、屈折率n1が1.45以上であると透過率の高い透明板として入手しやすいためである。
なお、前記屈折率n1及び後述する屈折率n2及びn3は、可視光波長領域のうち、波長550nmで最も視感度が高いため、波長550nmでの値とした。
また、屈折率は、分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム社製のM-2000)を用い、s偏光とp偏光の位相差Δと、反射振幅比tanψを測定する。各層の屈折率をコーシーの分散公式で波長400~700nmの範囲でフィッティングすることにより、屈折率を得る。なお、屈折率の測定方法は上述の方法以外であっても、同様に測定できるものであれば使用可能である。
[凹凸部]
図1に示すカバー部材10における透明基材11は、第1主面12に第1凹凸部及び第2主面13に第2凹凸部を備える。第1凹凸部及び第2凹凸部の最表面のRqは0.02μm以上0.3μm以下が、高防眩性、高視認性、および低ぎらつきを同時に達成するうえで好ましく、0.1μm以上0.25μm以下がより好ましい。
ここで、防眩性とは、反射光を散乱させることで、光源の映り込みによる反射光の眩しさを低減する性能を意味し、高防眩性であるほど眩しさを低減できる。視認性とは、表示素子用カバー部材の場合、表示された文字や図形等が明瞭に見える性能を意味し、透過光が散乱される割合が少ないほど明瞭に見える。すなわち、高視認性であるほど明瞭に視認できる。ぎらつき(Sparkle)とは、カバー部材をピクセルマトリックスタイプの表示素子に用いる場合、カバー部材表面に、ピクセルマトリックスよりも大きな周期を持つ多くの光の粒が観察され、視認性を阻害する度合いを意味し、低ぎらつきであるほど光の粒が観察されにくく、視認性が向上する。
また、第1凹凸部及び第2凹凸部の最表面のRSmは8μm以上50μm以下が、高防眩性、高視認性、および低ぎらつきを同時に達成するうえで好ましく、10μm以上22μm以下がより好ましい。なお、第1凹凸部と第2凹凸部の表面形状は、同じでもよく異なってもよく特に制限はない。
透明板の第1主面12及び第2主面13に第1凹凸部及び第2凹凸部を形成して透明基材11を得るには、いわゆる防眩処理を実施すればよい。この目的で実施する防眩処理は特に限定されず、透明板自体の主面を加工して形成してよく、別途堆積処理方法により形成してもよい。透明板自体の主面を加工する場合、フロスト処理のような、エッチング処理を伴う化学的処理方法を用いてもよく、サンドブラスト処理のような物理的処理方法を用いてもよい。
エッチング処理を伴う化学的処理方法を用いる場合、たとえば、透明板の第1主面12及び第2主面13を、濃度15~50%のフッ化水素(HF)水溶液でエッチング処理することにより、第1主面12及び第2主面13に第1凹凸部及び第2凹凸部を形成できる。エッチング処理に使用するHF水溶液の濃度や処理時間を変え、凹凸形状を制御できる。これにより、第1主面12及び第2主面13のRqおよびRSm、より具体的には、第1凹凸部と第2凹凸部の最表面のRqおよびRSmを制御できる。エッチング処理には、フッ化水素水溶液にフッ化カリウムを混合した薬液や、フッ化水素と塩化水素の混合薬液を使用してもよい。
また、堆積処理方法として、公知のウェットコート法(スプレーコート法、静電塗装法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スクリーンコート法、インクジェット法、フローコート法、グラビアコート法、バーコート法、フレキソコート法、スリットコート法、ロールコート法等)を使用できる。堆積処理により形成する膜としては、シリカを主成分とする膜が挙げられる。ここで主成分とは、酸化物換算含有量で膜中に70質量%以上含まれる成分である。膜は、微粒子を含有してよく、微粒子としては、鱗片状、球状などの微粒子を使用できる。微粒子を使用することで、所望の凹凸形状を形成できる。また別の防眩処理として、公知の防眩性を有するフィルムを第1主面及び第2主面に張り付けることでも形成できる。なお、第1凹凸部と第2凹凸部の形成方法は、同じでもよく異なってもよく特に制限はない。
<樹脂層14>
図1に示すカバー部材10における樹脂層14は、透明基材11の第2主面13側に備えられる。樹脂層14は例えば、高可視光透過性、粘着性、接着性、高耐久性等の機能を有する。
樹脂層14は特に制限はなく、アクリルなどの熱可塑性樹脂、接着性樹脂、粘着性樹脂等を使用できる。中でも、粘着性樹脂が好ましく、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ブタジエン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤等の粘着剤を使用できる。可視光での透過率が非常に高く、表示装置用のカバーガラスなどに好適に使用できる観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
アクリル系粘着剤は、アクリル系単量体単位を主成分として含む重合体である。アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、及びこれらのアルキルエステル等が挙げられる。
アクリル系粘着剤においては、粘着剤の凝集力を高めるために、架橋点となりうる官能基、例えば、ヒドロキシル基、グリシジル基等を有する単量体の使用が好ましい。架橋点となりうる官能基を有する単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。
架橋点となりうる官能基を有する単量体を使用する場合には、架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤を官能基に反応させることで架橋点を有するポリマーが得られ、粘着剤とした際に凝集力を確保できる。該架橋剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物、金属塩、金属水酸化物、金属キレート、ポリイソシアネート、カルボキシル基含有ポリマー、酸無水物、ポリアミン等が挙げられ、架橋点となりうる官能基の種類に応じて適宜選択される。
図1に示すカバー部材10における樹脂層14は、樹脂層14を貼り合わせる対象、具体的には、画像表示装置の前面透明基材に対する密着力が5.5N以上であることが好ましく、5.5N~20Nがより好ましく、5.5N~10Nがさらに好ましい。該密着力を5.5N以上とするには、極性基を導入すればよく、極性基を持つモノマーやポリマーやシランカップリング剤などの添加物を配合すればよい。なお、樹脂層14が2層以上の積層構造の場合、該密着力は積層構造の樹脂層14全体としての密着力である。
ここで密着力は、JIS Z 0237:2009の方法により、例えば株式会社イマダ社製、90°剥離試験治具評価(型番P90-200N)を使用して測定できる。
図1に示すカバー部材10における樹脂層14の厚さは、10μm~500μmの範囲が好ましく、50μm~300μmの範囲がより好ましい。樹脂層14の厚さが10μm未満となると、貼合時に気泡が混入し易くなるおそれがある。樹脂層14の厚さが500μm以下であれば、所望の形状や厚さに加工しやすい。
なお、樹脂層14が2層以上の積層構造の場合、樹脂層14の厚さは積層構造の樹脂層14全体としての厚さとする。
図1に示すカバー部材10における樹脂層14は、波長550nmでの屈折率をn2とすると、屈折率n2は1.4~1.8が好ましい。これは屈折率n1と同程度の屈折率であり、実用上入手しやすいためである。屈折率n2の値が屈折率n1の値と近いほど、樹脂層14/高屈折率層15/透明基材11を透過する透過光の散乱が減少し、視認性が向上する。
なお、樹脂層14を構成する各層の波長550nmでの屈折率が上記範囲を満たすものであれば、樹脂層14が2層以上の積層構造であってもよい。樹脂層14を構成する各層には同種の樹脂層を用いてもよく、異なる樹脂層を用いてもよい。
屈折率n2が上記範囲を満たす粘着剤としては、たとえば、綜研化学社製光学用粘着剤SKダイン(登録商標)シリーズ、Henkel社製光学透明接着剤ロックタイト(登録商標)シリーズ、日東電工社製光学用透明粘着シートLUCIACS(登録商標)CS986シリーズが挙げられる。
<高屈折率層15>
高屈折率層15は、透過光を散乱させず、反射光散乱を増大させる機能を有する層であり、後述の視認性指標値Tの低減を抑え、反射像拡散性指標値Rを増大させる。
高屈折率層15は、透明基材11の第2主面13側に備えられる。
透明基材11の第2主面13と、樹脂層14と、の間に高屈折率層15を含む2層以上の層を設けてもよい。
高屈折率層15を含む2層以上の層が、第2主面13と樹脂層14との間に存在する構成が挙げられる。具体例としては、高屈折率層15の波長550nmの屈折率をn3とすると、屈折率n3よりも低い屈折率を有する2つの層(以下、「低屈折率層」と記載する。)で高屈折率層15が挟持された三層構造、高屈折率層15を2層有し、2層の高屈折率層15の間に低屈折率層が挟持された三層構造が挙げられる。さらには、上述した三層構造に加えて、高屈折率層15と低屈折率層と、これらの層の屈折率の間の屈折率を有する中間屈折率層とをさらに積層した構造が第2主面13と、樹脂層14との間に存在する構成が挙げられる。
高屈折率層15や低屈折率層の形成には、湿式成膜法、乾式成膜法を使用できる。中でも真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法、スパッタリング法、プラズマCVD法等の乾式成膜法が好ましい。これは下地の形状に追随して、比較的均一に成膜できるためである。下地の表面形状と、成膜後の表面形状とが並行に近いほど、界面通過時の透過光の屈折角度が小さくなるため、高防眩性を発現すると同時に、視認性が向上する。ここで、「並行」とは、下地の防眩処理表面の形状に追従して、略均一な厚さの高屈折率層、もしくは高屈折率層15を含む2層以上の層が形成された状態を示す。
図1に示すカバー部材10における高屈折率層15の屈折率n3は2.0以上が好ましい。これは透明基材11の屈折率nとの差が大きいほど透明基材11/高屈折率層15界面での反射が増大し、防眩性が増大するためである。さらに、高屈折率層15の膜厚を調整することにより、任意の防眩性を得やすくなるためである。
図1に示すカバー部材10における高屈折率層15の膜厚は特に制限はないが、例えば、5~80nmが好ましい。これは該膜厚が5nmより薄いと、連続膜になりにくいためである。また、高屈折率層15の膜厚が80nmより厚いと、高屈折率層15/透明基材11界面と、高屈折率層15/樹脂層14界面の並行の度合いが悪くなることで、樹脂層14/高屈折率層15/透明基材11を透過する透過光が散乱され、視認性が低下しやすくなるためである。
なお、透明基材11の第2主面13と、樹脂層14と、の間に高屈折率層15を含む2層以上の層が存在する場合、高屈折率層15の膜厚は高屈折率層15を含む2層以上の層の合計厚さである。
図1に示すカバー部材10における高屈折率層15の構成材料は、屈折率n3が上述した条件を満たす限り特に制限はない。屈折率n3が上述した条件を満たす高屈折率層15の構成材料としては、二酸化チタン(TiO2)、五酸化ニオブ(Nb25)、五酸化タンタル(Ta25)、窒化ケイ素(Si34)、アルミナ(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化スズ(SnO2)等が挙げられる。高屈折率層15は、上記1種のみで構成されてもよく、2種以上で構成されてもよい。
なお、高屈折率層15と低屈折率層との積層の場合、低屈折率層の構成材料としては、二酸化ケイ素(SiO2)、BaF2、CaF2、LaF3、LiF、MgF2、クリオライト(Na3AlF6)、チオライト(Na5l314)、NdF3、NaF、YF3等が挙げられる。これらの構成材料にはAlやB、Pなどがドーピングされていてもよい。また、上記低屈折率層の構成材料は、低屈折率層中に主成分として70質量%以上含有されることが好ましい。
高屈折率層15上に樹脂層14を形成するには、利用する樹脂層に応じた公知の方法で形成すればよい。
一例として、粘着剤の塗布(さらに乾燥および(半)硬化)によって形成する方法、粘着テープを利用して形成する方法が例示される。
なお、形成後の樹脂層14の表面に保護フィルムを貼付した状態でカバー部材10を保管する。
以上より図1に示すカバー部材10において、高屈折率層15は屈折率差の絶対値|n1-n2|が小さい透明基材11と樹脂層14で挟まれ、かつ、樹脂層14/高屈折率層15界面と高屈折率層15/透明基材11界面がほぼ平行となっている。そのため、樹脂層から入射した光は高屈折率層で一度屈折されるが、高屈折率層から透明基材へ入射する際、一度目の屈折と逆方向に屈折し、結果として入射光はほとんど屈折せず(進行方向が変わらず)、透明基体11へと進行していく。そのため高屈折率層15が凹凸を有する第2主面13と樹脂層14との間に存在することで、透過散乱を増大させず、視認性やぎらつき性を悪化させず、前述のような内部反射散乱により反射防眩性を向上する効果が得られる。該屈折率差の絶対値|n1-n2|は0.1以下が好ましい。
また図1に示すカバー部材10において、透明基材11の第1主面12側から測定したカバー部材10の反射率から前記透明基材の第1主面12と空気との界面での反射率を差し引いた値が0.1%以上4%以下であることが好ましい。この範囲であれば、反射散乱が増大することにより防眩性が向上する一方、樹脂層14側からの透過光は散乱されないため、高視認性および低ぎらつきを同時に達成でき、優れた光学特性が得られる。
図1に示すカバー部材10において、透明基材11の第2主面13と、樹脂層14と、の間に高屈折率層15を含む2層以上の層が存在する場合も、透明基材11の第1主面12側から測定した高屈折率層15の反射率から透明基材11の第1主面12と空気との界面での反射率を差し引いた値が、計算上、0.1%以上4%未満が好ましく、0.1%以上3%未満がより好ましく、0.1%以上2%未満がさらに好ましく、0.1%以上1%未満が特に好ましい。
上述したように、図1に示すカバー部材10によれば、高防眩性、高視認性および低ぎらつきを同時に達成できる。
なお、防眩性、ぎらつき、視認性は、それぞれ反射像拡散性指標値R、ぎらつき指標値S、視認性指標値Tで評価でき、以下にそれぞれの測定方法について示す。
〔反射像拡散性指標値R〕
本願明細書では、防眩性の指標として、以下の手順で測定される反射像拡散性指標値(Reflection image diffusiveness index value):Rを用いる。反射像拡散性(Reflection image diffusiveness index value)とは、ガラス板の周辺に置かれている物体(例えば照明)の反射像が、元の物体とどの程度一致しているかを表すものであり、観察者の目視による防眩性の判断結果と良好な相関関係を示すことが確認されている。例えば、反射像拡散性指標値Rが小さな(0に近い)値を示すガラス板は防眩性が劣り、逆に反射像拡散性指標値Rが大きな値(1に近いほど大きい)を示すガラス板は、良好な防眩性を有する。
図2を参照し、防眩機能を有するカバー部材50の反射像拡散性指標値Rの測定方法について説明する。図2には、反射像拡散性指標値Rを測定する際に使用される測定装置の一例を模式的に示す。
図2に示す防眩機能を有するカバー部材50は図1のカバー部材10に相当するが、図1における樹脂層14及び高屈折率層15の記載を省略している。また、図2に示す第1主面52及び第2主面53は、図1における透明基材11の第1主面12及び第2主面13にそれぞれ対応している。
反射像拡散性指標値Rを測定する場合、通常カバー部材50は図1における樹脂層14の高屈折率層15に接する面と反対の面に光の反射を防止する処理が施される。この処理は非対象表面からの反射の影響を排除するために実施される。この「光の反射を防止する処理」には、例えば樹脂層14の該表面に黒インク等を塗布して、該表面を黒色化することが含まれる。また樹脂層14の該表面に黒インク層を設置して、この表面からの光の反射を防止してもよい。あるいは、別の方法で、第2主面からの光の反射を防止してもよい。
図2に示すように、測定装置70は、線状光源装置71および面輝度測定器75を有し、測定装置70内に、被測定試料、すなわち防眩機能を有するカバー部材(または防眩加工が施された防眩機能を有する透明基体)50が配置される。線状光源装置71は、光源711と黒色平板712からなり、黒色平板712にスリット状の開口部に光源711が設けられている。防眩機能を有するカバー部材50は、防眩機能を有する層が形成された第1主面52と、第2主面53とを有する。線状光源装置71は、防眩機能を有するカバー部材50に向かい、かつ図2で紙面に垂直方向に配置される。面輝度測定器75は線状光源装置71の紙面垂直方向中央で、線状光源装置71と垂直に交わる平面上に配置される。面輝度測定器75の焦点は、カバー部材50で反射した線状光源装置71の像に合わせる。つまり、像の焦点があう面を黒色平板712に一致させる。ここで線状光源装置71から照射されカバー部材50で反射し、面輝度測定器75に入射した光のうち、入射角θiと反射角θrが等しい光線(以下、第1の入射光731,第1の反射光732とする)に着目すると、θi=θr=5.7°である。
なお、防眩機能を有するカバー部材50は、第1主面52が線状光源装置71および面輝度測定器75の側となるように配置される。カバー部材50の第2主面53側には黒色板を配置する。従って、面輝度測定器75が検出する光は、防眩機能を有するカバー部材50で反射された反射光である。
次に、測定方法について説明する。例えば入射角θiと反射角θrの差θr-θi=0.5°である光線733,734に着目すると、この光線734はカバー部材50で、正反射から0.5°ずれた方向に散乱された成分を表す。この方向から来る光線は、面輝度測定器75では、黒色平板712と仮想入射光733-2(入射角が光線734の反射角と等しい角度から入射する光線)が交わる部分の像として観測される。つまり面輝度測定器75で面輝度を取得すると、線状光源装置71から照射された光線の正反射に対応する輝線を中心に、カバー部材50の第1主面52で散乱された光が前記輝線の左右に広がった画像が得られる。この輝線に垂直な方向の輝度断面プロファイルを抽出する。なお、測定精度を上げるために輝線に平行な方向にデータを積算してもよい。
まず、防眩機能を有するカバー部材50の第1主面52に入射した光のうち正反射される第1の反射光732の輝度をRとする。第1の入射光731の入射角θiは5.7°、第1の反射光732の反射角θrは5.7°である。カバー部材50による反射によって光線の方向が変化する角度はθr-θiと書け、0°である。実際には誤差が含まれるので、θr-θiは0°±0.1°の範囲となる。
次に、入射角θiと反射角θrの差θr-θi=0.5°である光線733,734の輝度をRとする。この光線はカバー部材50で、正反射から0.5°ずれた方向に散乱された成分を表す。実際には誤差が含まれるので、θr-θi=0.5°±0.1°である。
同様にθr-θi=-0.5°である光線735,736の輝度をRとする。この光線はカバー部材50で、正反射から-0.5°ずれた方向に散乱された成分を表す。実際には誤差が含まれるので、θr-θi=-0.5°±0.1°である。
得られた各輝度R、R、Rを用いて、以下の式(3)により、防眩機能を有するカバー部材50の反射像拡散性指標値Rが算出される。
反射像拡散性指標値R=(R+R)/(2×R) 式(3)
反射像拡散性指標値Rは、観察者の目視による防眩性の判断結果と良好な相関関係を示すことが確認されている。例えば、反射像拡散性指標値Rが小さな(0に近い)値を示す防眩機能を有するカバー部材50は防眩性が劣り、逆に反射像拡散性指標値Rが大きな値(1に近いほど大きい)を示す防眩機能を有するカバー部材50は、良好な防眩性を有する。
なお、このような測定は、例えば、DM&S社製の装置SMS-1000を使用することにより実施できる。この装置を使用する場合、カメラレンズの焦点距離が16mmのC1614Aレンズが絞り5.6で使用する。また、第1主面52からカメラレンズまでの距離は、約300mmであり、Imaging Scaleは、0.0276~0.0278の範囲に設定される。線状光源装置71の黒色平板712により形成されるスリット状開口部は101mm×1mmである。
〔ぎらつき指標値S〕
本願明細書では、ぎらつきの指標として、以下の手順で測定されるぎらつき指標値(Anti-Sparkle):Sを用いる。
カバー部材10のぎらつき指標値Sの測定方法について説明する。
ぎらつき指標値Sを測定する際には、まず、表示装置(iPad(登録商標)-Air;解像度264ppi)を準備する。表示装置の表示面側には、破損防止目的等のカバーを備えてもよい。
次に、表示装置の表示面側に、被測定試料、すなわちカバー部材10が配置される。カバー部材10は、この防眩処理されている第1主面12が表示装置の反対側(検出器側)になるようにして、表示装置の表示面側に配置される。
次に、表示装置をONにして画像を表示させた状態で、解析装置(SMS-1000;Display-Messtechnik&System[DM&S]社製)を使用して、カバー部材10のぎらつき度合いを画像解析する。これにより、Sparkle値として表されるぎらつきSaが求められる。
なお、測定に際して、RGB(0,255,0)で構成される緑単色の像が、表示装置の表示画面全体に表示されることが好ましい。表示色の違いによる見え方の違い等の影響を極力小さくするためである。固定撮像素子とカバー部材10との間の距離dは540mmとする。この距離dは、距離指数rで表すとr=10.8に相当する。ここで、距離指数rは、固体撮像素子の焦点距離fおよび固体撮像素子とカバー部材10との間の距離dを用いて、以下の式4で表される。
距離指数r=(固体撮像素子とカバー部材10との間の距離d)/(固体撮像素子の焦点距離f) ・・・式4
次に、参照試料において、同様の測定を実施する。参照試料は、カバー部材10と同じ厚さのガラス基板(VRD140ガラス;Asahi Glass Europe社製)である。
得られたSparkle値をぎらつきSsとする。
得られたSaおよびSsから、以下の式5により、カバー部材10のぎらつき指標値Sが算出される。
ぎらつき指標値S=1-(Sa/Ss) ・・・式5
このぎらつき指標値(Anti-Sparkle)Sは、観察者の目視によるぎらつきの判断結果と良好な相関関係を示し、人の視感に近い挙動を示すことが確認されている。例えば、ぎらつき指標値Sが小さなカバー部材10は、ぎらつきが顕著であり、逆にぎらつき指標値Sが大きなカバー部材10は、ぎらつきが抑制される傾向にある。
なお、この測定では、カメラレンズとしては、焦点距離が50mmの23FM50SPレンズが絞り5.6で使用されることが好ましい。
〔視認性指標値T〕
本願明細書では、視認性の指標として、以下の手順で測定される視認性指標値(Clarity):Tを用いる。視認性(Clarity)とは、ガラス板を通して表示画を視認した際に、表示画とどの程度一致した像が得られるかを表すものであり、観察者の目視による視認性(解像性)の判断結果と良好な相関関係を示すことが確認されている。例えば、視認性指標値Tが小さな(0に近い)値を示すガラス板は視認性が劣り、逆に視認性指標値Tが大きな値を示すガラス板は、良好な視認性を有する。従って、この視認性指標値Tは、ガラス板の視認性を判断する際の定量的指標として使用できる。
視認性指標値Tの測定は、日本電色工業株式会社製変角光度計、GC5000Lを用いて、以下の手順で行う。まず、カバー部材10の樹脂層14側から、カバー部材10の厚さ方向と平行な方向を角度θ=0゜としたときに、角度θ=0゜±0.5゜の方向(以下、「角度0°の方向」ともいう)に、第1の光を照射する。第1の光は、カバー部材10を透過し、防眩層が形成されている第1主面12からの透過光を受光し、その輝度を測定して、「0゜透過光の輝度」とする。
次に、防眩層が形成されている第1主面12から出射された光を受光する角度θを、-30゜~30゜の範囲で変化させ、同様の操作を実施する。これにより、カバー部材10を透過して、防眩層が形成されている第1主面12から出射される光の輝度分布を測定して合計し、「全透過光の輝度」とする。
次に、以下の式6から、視認性指標値(Clarity):Tを算定する。
視認性指標値(Clarity)T=0゜透過光の輝度/全透過光の輝度 ・・・式6
この視認性指標値(Clarity)Tは、観察者の目視による解像性の判断結果と良好な相関関係を示し、人の視感に近い挙動を示すことが確認されている。例えば、視認性指標値Tが小さな(0に近い)値を示すカバー部材10は解像性が劣り、逆に視認性指標値Tが大きな値を示すカバー部材10は、良好な解像性を有する。従って、この視認性指標値Tは、カバー部材10の解像性を判断する際の定量的指標として使用できる。
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、これらの実施例に限定されない。
(実施例1)
実施例1では、以下の手順で図1に示すカバー部材10を作製した。
透明基材11として、ソーダライムガラス(旭硝子社製。サイズ:縦100mm×横100mm、厚さ:1.1mmのガラス基板。)を用意した。該ガラスの表面を炭酸水素ナトリウム水で洗浄後、イオン交換水でリンスし、乾燥させた。
屈折率は、分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム社製のM-2000)を用い、s偏光とp偏光の位相差Δと、反射振幅比tanψを測定した。各層の屈折率をコーシーの分散公式で波長400~700nmの範囲でフィッティングすることにより、屈折率を得た。以下、各層の屈折率の測定は同様に行った。
透明基材11の波長550nmでの屈折率nは1.52であった。
透明基材11の第1主面12及び第2主面13に対し以下に示す手順で防眩処理を施した。
透明基材11の第1主面12及び第2主面を、2wt%フッ化水素および3wt%フッ化カリウムを含むフロスト処理液に3分間浸漬して、予備エッチング処理を行った。さらに、透明基材を洗浄後、7.5wt%フッ化水素および7.5wt%塩化水素を含む水溶液中に18分間浸漬した(本エッチング処理)。これにより第1主面12及び第2主面13にそれぞれ第1凹凸部及び第2凹凸部を形成した。
JIS B0601-2001に規定されている方法に従って測定した第1主面12及び第2主面13のRqは0.14μm、RSmは16μmであった。
次に、透明基材11の第2主面13に、高屈折率層15として、二酸化チタン(TiO2)層(厚さ10nm)をスパッタリング法により形成した。二酸化チタン(TiO2)層の波長550nmでの屈折率n3は2.47であった。
次に、二酸化チタン(TiO2)層上に、日東電工社製光学用透明粘着シートLUCIACS(登録商標)CS986を用いて、厚さ200μmの樹脂層14を形成して、図1に示すカバー部材10を作製した。
樹脂層14の波長550nmでの屈折率n2は1.5であった。
また、上述の手順で測定したカバー部材10の反射像拡散性指標値Rは0.88であった。
また、上述の手順で測定したカバー部材10のぎらつき指標値Sは0.76であった。
また、上述の手順で測定したカバー部材10の視認性指標値Tは0.89であった。
(比較例1)
透明基材10の第1主面12のみに防眩処理により第1凹凸部を形成し、第2主面13には凹凸も高屈折率層も形成せずに、日東電工社製光学用透明粘着シートLUCIACS(登録商標)CS986を用いて、厚さ200μmの樹脂層14を形成した以外は実施例1と同様の手順を実施してカバー部材を得た。
また、上述の手順で測定したカバー部材の反射像拡散性指標値Rは0.39であった。
また、上述の手順で測定したカバー部材のぎらつき指標値Sは0.76であった。
また、上述の手順で測定したカバー部材の視認性指標値Tは0.90であった。
本出願は、2017年10月10日出願の日本特許出願2017-196754に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
10 カバー部材
11 透明基材
12 第1主面
13 第2主面
15 高屈折率層
14 樹脂層
50 カバー部材
70 測定装置
71 線状光源装置
75 面輝度測定器
711 光源
712 黒色平板

Claims (14)

  1. 第1凹凸部を有する第1主面と第2凹凸部を有する第2主面とを備えた透明基材;
    高屈折率層;及び
    樹脂層を備え、
    前記高屈折率層と前記樹脂層とがこの順に前記透明基材の前記第2主面側に備えられたカバー部材であって
    波長550nmでの、前記透明基材の屈折率をn1、前記樹脂層の屈折率をn2、前記高屈折率層の屈折率をn3とするとき、下記式1,式2を満たし、
    前記第1主面側から測定した前記カバー部材の反射率から、前記第1主面と空気との界面での反射率を差し引いた値が0.1%以上4%以下である、カバー部材。
    1<n3 式1
    2<n3 式2
  2. 第1凹凸部を有する第1主面と第2凹凸部を有する第2主面とを備えた透明基材;
    高屈折率層;及び
    樹脂層を備え、
    前記高屈折率層と前記樹脂層とがこの順に前記透明基材の前記第2主面側に備えられ、
    波長550nmでの、前記透明基材の屈折率をn 1 、前記樹脂層の屈折率をn 2 、前記高屈折率層の屈折率をn 3 とするとき、下記式1,式2を満たし、
    前記高屈折率層の波長550nmでの屈折率n 3 が2.0以上である、カバー部材。
    1 <n 3 式1
    2 <n 3 式2
  3. 第1凹凸部を有する第1主面と第2凹凸部を有する第2主面とを備えた透明基材;
    高屈折率層;及び
    樹脂層を備え、
    前記高屈折率層と前記樹脂層とがこの順に前記透明基材の前記第2主面側に備えられ、
    波長550nmでの、前記透明基材の屈折率をn 1 、前記樹脂層の屈折率をn 2 、前記高屈折率層の屈折率をn 3 とするとき、下記式1,式2を満たし、
    前記高屈折率層の厚さが5~80nmである、カバー部材。
    1 <n 3 式1
    2 <n 3 式2
  4. 前記第1主面側から測定した前記カバー部材の反射率から、前記第1主面と空気との界面での反射率を差し引いた値が0.1%以上4%以下である、請求項2または3に記載のカバー部材。
  5. 前記樹脂層の波長550nmでの屈折率n2が1.4~1.8である、請求項1~4のいずれか一項に記載のカバー部材。
  6. 前記屈折率n1と前記屈折率n2との差の絶対値|n1-n2|が0.1以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のカバー部材。
  7. 前記高屈折率層の波長550nmでの屈折率n3が2.0以上である、請求項1または3に記載のカバー部材。
  8. 前記高屈折率層の厚さが5~80nmである、請求項1または2に記載のカバー部材。
  9. 前記高屈折率層が、二酸化チタン(TiO2)、五酸化ニオブ(Nb25)、五酸化タンタル(Ta25)、窒化ケイ素(Si34)、アルミナ(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、および二酸化スズ(SnO2)からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項1~のいずれか一項に記載のカバー部材。
  10. 前記第1凹凸部及び第2凹凸部の最表面は、表面粗さRqが0.02μm以上0.3μm以下であり、粗さ曲線の要素の平均長さRSmが8μm以上50μm以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のカバー部材。
  11. 前記第1凹凸部及び第2凹凸部は防眩処理により形成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のカバー部材。
  12. 前記透明基材は、ガラスからなる、請求項1~11のいずれか一項に記載のカバー部材。
  13. 前記透明基材は、化学強化ガラスからなる、請求項1~12のいずれか一項に記載のカバー部材。
  14. 前記透明基材は、屈曲部を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のカバー部材。
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