以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)を図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下の内容に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形して実施できる。また、異なる実施形態同士を組み合わせて実施できる。さらに、同じ部材、装置については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。
図1は、本実施形態の解析装置201を示すブロック図である。解析装置201は、除染剤による除染後の対象空間101において、対象空間101の除染剤濃度が目標濃度に低下するまでの目標換気時間を推測するものである。ここでいう除染剤濃度は、対象空間101の平均の濃度である。解析装置201の除染システム10(後記する)への適用例については、図11以降を参照しながら後記する。また、目標換気時間については、図3を参照しながら後記する。除染剤は例えば過酸化水素ガスである。対象空間101は、例えばクリーンブース100(図3参照。局所清浄化装置)の内部空間であるが、対象空間101を形成する換気対象設備はクリーンブース100に限られない。
図2は、対象空間101の除染時、対象空間101の内表面に吸着する除染剤GPの様子を示す図である。クリーンブース100は、例えば気流循環型クリーンブースであり、クリーンブース100の内部に上記の対象空間101が形成される。
クリーンブース100は、台106及び脚107により、作業室(図示しない)に設置される。クリーンブース100は、内部を気密にする筐体104を備える。筐体104には、対象空間101での作業を行うために、作業グローブ105が備えられる。クリーンブース100の内部には、下方が開口した箱体103が備えられる。
箱体103の上面には、箱体103の外部であって筐体104の内部から箱体103の内部に除染剤を供給するファン(図示しない)及びHEPAフィルタユニット102が備えられる。HEPAフィルタユニット102は、図3において想像線で示すHEPAフィルタ102aを備える。ファンの駆動により、筐体104の内部であって箱体103の外部のガスは、HEPAフィルタ102aを通り、箱体103の内部に供給される。箱体103の内部に供給されたガスは、箱体103の下方に形成された開口を通じ、再度筐体104の内部であって箱体103の外部に戻される。
対象空間101には、除染剤G(ガス状態)が供給される。除染剤Gは、ファンの駆動により、対象空間101を循環する。これにより、除染剤Gは、対象空間101の内部に充満する。除染剤Gがクリーンブース100の内部で充満した状態で保持されることで、クリーンブース100の除染が行われる。具体的には例えば、対象空間101の除染剤濃度をC0に維持することで、対象空間101の除染が行われる。C0は例えば200ppm以上である。除染時間は例えば30分~10時間である。
また、対象空間101での充満により、除染剤Gは、対象空間101の内表面に、図3においてドット柄の丸で示す除染剤GPとして吸着する。ここでいう内表面は、例えば、箱体103の表面、筐体104の表面、HEPAフィルタ102aの表面、ファン表面等を含む。なお、上記図2を参照しながら説明した除染剤濃度C0は、対象空間101での気相における除染剤Gの濃度を表し、対象空間101の内表面に吸着した除染剤GPを含まない濃度である。除染時間経過後、対象空間101で再度作業可能になるように、対象空間101の換気が行われる。
図3は、本実施形態の解析装置201により推測される目標換気時間を説明するグラフである。このグラフにおいて、横軸は換気開始からの経過時間、縦軸は対象空間101での除染剤濃度を示す。除染後、対象空間101の換気により、図3に示すように、除染剤濃度が初期濃度C0から低下する。換気は、例えば、対象空間101への無菌空気の供給により行われる。除染剤濃度が目標濃度であるCnになった時点で対象空間101での除染が完了し、対象空間101での作業が可能になる。Cnは例えば0ppm(検出限界以下)~10ppmである。本実施形態の解析装置201は、これから設置しようとする除染システム10において、例えば設計図面の段階で、対象空間101での除染剤濃度が目標濃度Cn以下になる目標換気時間tnをシミュレーションにより推測するものである。
図1に戻って、解析装置201は、初期吸着量推測部211と、脱離定数決定部212と、残存吸着量推測部213と、脱離速度推測部214と、換気時間推測部215とを備える。また、解析装置201は、第1相関217と、第2相関218と、第3相関219とを備える。
初期吸着量推測部211は、対象空間101内での除染剤の初期濃度C0と、予め定められた第1相関217とに基づき、対象空間101の内表面での除染剤の初期吸着量q0を推測するものである。初期濃度C0は除染時の除染剤濃度と通常は等しく、初期吸着量q0は除染時の除染剤吸着量q0と通常は等しい。そこで、本実施形態では、これから設置する除染システム10において行われる除染時の除染剤濃度が、入力装置(図示しない)を介してユーザにより入力される。これにより、初期吸着量推測部211は、入力された除染剤濃度を初期濃度C0として換気するときの、対象空間101の内表面での除染剤の初期吸着量q0を推測する。
第1相関217は、対象空間101内での除染剤濃度と、対象空間101の内表面での除染剤吸着量との相関である。第1相関217について、図4を参照しながら説明する。
図4は、対象空間101内での除染剤濃度と対象空間101の内表面での除染剤吸着量との第1相関217を示すグラフである。従って、第1相関217を用いることで、換気開始時における除染剤吸着量を、換気開始時における対象空間101での除染剤濃度に基づき、推測できる。
第1相関217は、例えば、予備実験等により予め決定された実験式である。脱離現象は、予備実験であっても実際の除染システム10であっても同様に生じると考えられる。そこで、実験式を用いることで、第1相関217を容易に決定できる。ただし、第1相関217は、実験式である必要はなく、例えば理論式であってもよい。
第1相関217は、例えば吸着等温線に基づく吸着等温式である。従って、吸着に関する吸着等温式を、脱離に関する推測を行う解析装置201に適用することで、第1相関217を決定できる。吸着等温式を第1相関217に適用可能な理由は定かではないが、本発明者の検討によれば、吸着及び脱離は平衡反応であるため、吸着現象を規定する吸着等温式を脱離現象にも同様に適用できるためと考えられる。
吸着等温式は、例えば、Freundlichの吸着等温式、ラングミュアの吸着等温式、BETの吸着等温式等である。吸着等温式は、1種のみでもよく、2種以上を組み合わせてもよい。図4の例では、横軸及び縦軸のいずれも対数スケールとし、一例としてFreundlichの吸着等温式が図示される。
第1相関217は、例えば、予め定められた単位表面積あたりのモデル式と、前記対象空間の内表面の表面積と、に基づいて決定されたものである。モデル式は、例えば、表面積既知の実験室等の小スケールで決定される。第1相関217は、決定されたモデル式を、実際に設置しようとする対象空間101の内表面の表面積にスケールアップすることで、決定できる。モデル式に基づいて第1相関217を決定することで、第1相関217の決定を容易に行うことができる。
第1相関217は、図示の例では1つの相関(グラフ)のみであるが、例えば換気風量(単位は例えばm3/h)に応じて異なる相関(グラフ)を使用してもよい。
ここで、上記の図2を参照しながら説明したように、対象空間101において、除染剤Gは除染剤GPとして様々な部位に吸着する。そして、対象空間101の内表面は、除染剤が比較的脱離し易い内表面と、除染剤が比較的脱離し難い内表面とを含む。この点を、対象空間101の内表面からの除染剤の脱離のし易さを表す「脱離定数Kda」の文言を使用して説明すれば、対象空間101の内表面は、第1脱離定数Kda1を有する第1脱離面と、第1脱離定数Kda1よりも大きな第2脱離定数Kda2を有する第2脱離面とを含む。内表面は、さらに異なる脱離定数Kdaを有する異なる脱離面を含んでもよい。脱離定数Kdaが大きいほど脱離し易いことを表す。
脱離のし易さに注目し、脱離し易い内表面及び脱離し難い内表面に分けることで、脱離現象をより適切に把握できる。なお、より脱離し難い(吸着し易い)第1脱離面は例えばHEPAフィルタ102aのガラス繊維ろ材表面であり、より脱離し易い(吸着し難い)第2脱離面は例えばステンレス製の筐体104の表面、又はポリカーボネイト製の箱体103の表面である。
そして、初期吸着量推測部211は、第1脱離面での除染剤の第1初期吸着量q01、及び、第2脱離面での除染剤の第2初期吸着量q02を、第1脱離面及び第2脱離面のそれぞれの第1相関217に基づいて、それぞれ推測する。これとともに、初期吸着量推測部211は、少なくとも第1初期吸着量q01と第2初期吸着量q02との和を、対象空間101の内表面での除染剤の初期吸着量q0として推測する。小さな第1脱離定数Kda1の第1脱離面と比べ、脱離定数Kdaが大きく脱離し易い(即ち吸着し難い)第2脱離面での第2初期吸着量q02を考慮することで、内表面全体への初期吸着量q0が小さく見積もられることを抑制できる。
なお、以下の例では、計算の簡略化のため、ここで計算された和を初期吸着量q0として用い、対象空間101全体として一つの脱離定数Kdaを決定しているが、例えば脱離のし易さが異なる部分及び表面積に応じて、その部分ごとに脱離定数Kdaを決定してもよい。この場合、脱離定数Kdaが厳密に一致する部分同士で組み合わせる必要はなく、例えば、比較的近い脱離定数Kdaの部分同士で組み合わせることができる。そして、決定された脱離定数Kdaごとに目標換気時間tnを計算し、最後に時間の和を計算し、対象空間101全体としての目標換気時間tnを決定するようにしてもよい。
脱離定数決定部212は、対象空間101への換気風量に関する換気風量パラメータの入力値と、予め定められた第2相関218と、に基づき、換気風量パラメータの入力値に対応する脱離定数Kdaを決定するものである。第2相関218は、換気風量パラメータと脱離定数Kadとの相関である。第2相関218について、図5を参照しながら説明する。
図5は、換気風量パラメータと脱離定数Kdaとの第2相関218を示すグラフである。換気風量パラメータは、対象空間101への換気風量に関するパラメータである。換気風量パラメータは、入力装置(図示しない)を介し、ユーザにより入力される。換気風量パラメータは、例えば供給風量(単位は例えばm3/h)、1時間当たりの換気回数(対象空間101の内容積と等体積の風量供給を1回とする)等である。
脱離定数Kdaは、対象空間101の内表面からの除染剤の脱離のし易さを表す物質移動係数であり、例えば脱離移動面積係数(単位は1/s)である。従って、換気風量パラメータの入力値に基づき、除染剤の脱離のし易さが決定される。この点を概念的に説明すれば、例えば換気風量パラメータが大きくなれば(例えば換気回数が多くなれば)、除染剤の脱離が促されるため、脱離定数Kdaは大きくなる。一方で、例えば換気風量パラメータが小さくなれば(例えば換気回数が少なくなれば)、除染剤の脱離が抑制されるため、脱離定数daは小さくなる。
第2相関218は、図示はしないが、例えば、対象空間101内での除染剤の濃度毎に決定されている。即ち、基準時(例えば換気開始時)の除染剤濃度によっては、換気風量パラメータが同じであっても、基準後の換気時における脱離定数が異なり得る。そこで、基準時の除染剤濃度に応じ、異なる第2相関218が使用される。対象空間101内での除染剤濃度に応じた第2相関218を使用することで、実際の脱離により即した脱離定数を決定できる。
第2相関218は、例えば予備実験等により予め決定された実験式である。脱離現象は、厳密には対象空間の脱離面表面の風速に支配され、対象空間の形状などにより換気回数と脱離定数との関係は異なる。ただし、対象空間101が、実験式を決定した実験室と幾何学的に相似又は相似に近いことも多く、予備実験であっても実際の除染システム10であっても、同様の脱離現象が生じると考えられる。そこで、実験式を用いることで、第2相関218を容易に決定できる。また、仮に相似又は相似に近くなくても、実験式を用いることで、ある程度の精度を有した状態で、対象空間101に関する各種パラメータに基づいて初めから決定するよりは簡便に、第2相関218を決定できる。ただし、第2相関218は、実験式である必要はなく、例えば理論式であってもよい。
図1に戻って、残存吸着量推測部213は、脱離定数Kda及び初期吸着量q0と、予め定められた第3相関219とに基づき、対象空間101での換気開始から所定時間経過後の内表面での除染剤の残存吸着量qを推測するものである。脱離定数Kdaは、脱離定数決定部212により決定されたものである。初期吸着量q0は、初期吸着量推測部211により推測されたものである。第3相関219は、脱離定数Kdaと初期吸着量q0と残存吸着量qとの相関である。第3相関219について、図6を参照しながら説明する。
図6は、脱離定数Kdaと初期吸着量q0と残存吸着量qとの第3相関219を示すグラフである。例示のグラフでは、横軸は対象空間101での換気開始からの経過時間、縦軸は残存吸着量qを初期吸着量q0で除した値である。縦軸は、図示の例では対数スケールにしている。
第3相関219では、例えば、残存吸着量qを初期吸着量q0で除した値(q/q0)が、脱離定数Kdaと、対象空間101での換気開始からの経過時間tとの積を指数とする指数関数になっている。ただし、初期吸着量q0及び脱離定数Kdaは上記の方法によって推測されている。このため、予め定められた第3相関219に初期吸着量q0及び脱離定数Kdaを適用することで、第3相関219における変数は、残存吸着量q及び経過時間tになる。第3相関219は、例えば、以下の式(1)で表されるグラフである。
対象空間101の内表面では、残存吸着量qが最も多い換気開始直後には脱離量も多い。しかし、換気の進行とともに残存吸着量qが少なくなり、換気開始から時間が経過すると脱離量も少なくなる。このため、指数関数によって第3相関219を規定することで、指数関数的に減少する残存吸着量qを適切に推測できる。
式(1)の両片を時間tで微分することで、以下の式(2)が得られる。
式(2)の左辺は残存吸着量qの時間変化、即ち脱離速度を示す。従って、式(2)によれば、残存吸着量qは一定割合で減少し、吸着した除染剤は一定割合で脱離することが分かる。
第3相関219は、例えば予備実験等により予め決定された実験式である。脱離現象は、上記の第2相関218と同様に、予備実験であっても実際の除染システム10であっても同様に生じると考えられる。そこで、実験式を用いることで、第3相関219を容易に決定できる。ただし、第3相関219は、実験式である必要はなく、例えば理論式であってもよい。
また、第3相関219は、図示の例では、換気風量(単位は例えばm3/h)が同じ場合を例示したが、換気風量に応じてさらに異なる相関(グラフ)を使用してもよい。さらに、第3相関219は、図示の例に限定されず、例えばx軸を脱離定数、y軸を初期吸着量、z軸を残存吸着量とする3軸の相関としてもよい。
図1に戻って、脱離速度推測部214は、初期吸着量q0及び残存吸着量qに基づき、内表面からの除染剤の脱離速度を推測するものである。具体的には、脱離速度推測部214は、例えば換気開始時(時刻0)における吸着量である初期吸着量q0と、上記式(1)とに基づく、換気開始後時間t1経過時における吸着量である残存吸着量q1を推測する。次いで、脱離速度推測部214は、以下の式(3)に基づき、時刻t0(即ち0)から時刻t1までの除染剤の脱離速度dγ01を算出する。
換気開始後時間t1経過時における吸着量である残存吸着量q1が推測できれば、換気開始後時間t1経過時における吸着量である残存吸着量q1と上記式(1)とに基づき、換気開始後時間t2経過時における吸着量である残存吸着量q2を推測できる。また、上記式(3)と同様にして、時刻t1から時刻t2までの除染剤の脱離速度dγ12を算出できる。そこで、式(3)を任意の時刻tから時刻t+Δtにまで拡張すれば、以下の式(4)が得られる。
式(4)において、
q
tは、時刻tにおける残存吸着量、
q
t+Δtは、時刻t+Δtにおける残存吸着量、
d
γΔtは、時刻tから時刻t+Δtまでにおける除染剤の脱離速度、
である。
なお、Δtは、例えば1秒~1分程度で設定可能である。
換気時間推測部215は、脱離速度推測部214によって推測された脱離速度dγΔtに基づき、対象空間101内での除染剤の濃度が初期濃度C0(図3参照)から換気により目標濃度Cn(図3参照)に低下するまでの目標換気時間tn(図3参照)を推測するものである。推測された目標換気時間tnは、例えばモニタ等の表示部(図示しない)に表示される。
換気時間推測部215は、時刻tにおける除染剤の第1濃度を推測するとともに、時刻t+Δtにおける除染剤の第2濃度を第1濃度に基づいて推測するものである。具体的には、換気時間推測部215は、上記の式(1)と、上記式(3)の説明で説明した方法により、時刻t+Δtにおける第2濃度を推測できる。そして、換気時間推測部215は、換気開始後、第2濃度が目標濃度Cnになるまでの時間を目標換気時間tnとして推測するものである。
ここで、対象空間101の換気時、対象空間101からガスを抜き出し、抜き出したガス中の除染剤を除去後、再度対象空間101に戻す系を考える。この系は、ガスを循環させる図11(後記する)に示す系に相当する。この系では、以下の式(5)で表される物質収支式が成立する。
式(5)において、
Vは対象空間101の内容積、
Cは対象空間101における除染剤濃度、
C
inは対象空間101から抜き出し、対象空間101に戻るガス中の除染剤濃度(即ち0)、
Qは循環風量、
γは対象空間101の内表面からの除染剤の脱離速度
である。
なお、Vには厳密には空気が流れるダクト等が含まれるが、ここでは算出の簡略化のために対象空間101の内容積のみを考慮するものとする。
式(5)を、除染剤濃度Cについて任意の時刻tからt+Δtで積分すると、以下の式(6)が得られる。
式(6)において、
dγ
Δtは、時刻tからt+Δtまでにおける除染剤の脱離速度、
C
tは時刻tにおける対象空間101での除染剤濃度、
C
t+Δtは時刻t
+Δtにおける対象空間101での除染剤濃度、
である。
ここで、t=0の時を考える。そうすると、Ctは除染剤の初期濃度C0と等しくなる。また、dγΔtは、上記の式(4)に基づき算出できる。従って、式(6)から、時刻t+Δtにおける除染剤濃度Ct+Δtを算出できる。そして、換気時間推測部215は、これらの算出を繰り返すことで、対象空間101での除染剤濃度が目標濃度Cnとなる目標換気時間tnを推測できる。
以上の解析装置201は、いずれも図示しないが、CPUと、ROMと、RAMと、I/Fとを備える。そして、ROMに記録されたプログラムがCPUによって実行されることで、解析装置201が具現化される。
本実施形態に係る解析装置201によれば、例えば設計図面の段階で、対象空間101での除染剤濃度が目標濃度Cnとなる目標換気時間tnを推測できる。目標換気時間tnの推測により、推測した目標換気時間tnに対応する換気設備(例えば換気ファンの仕様、換気ダクトの径(又は相当直径)、長さ等)の設計を適切に行うことができる。
図7は、本実施形態の解析方法を示すフローチャートである。本実施形態の解析方法は、例えば上記の解析装置201によって実施できる。従って、上記の解析装置201における説明と重複する説明については、簡略化のために省略する。
本実施形態の解析方法は、初期吸着量推測ステップS1と、脱離定数決定ステップS2と、残存吸着量推測ステップS3と、脱離速度推測ステップS4と、換気時間推測ステップS5とを含む。
初期吸着量推測ステップS1は、対象空間101内での除染剤の初期濃度C0と、予め定められた第1相関217とに基づき、対象空間101の内表面での除染剤の初期吸着量q0を推測するものである。第1相関217は、上記の図4に示すように、対象空間101内での除染剤濃度と、対象空間101の内表面での除染剤吸着量との相関である。初期吸着量推測ステップS1は、例えば、上記の初期吸着量推測部211によって実行できる。
脱離定数決定ステップS2は、対象空間101への換気風量に関する換気風量パラメータの入力値と、予め定められた第2相関218とに基づき、換気風量パラメータの入力値に対応する脱離定数Kdaを決定するステップである。第2相関218は、上記の図5に示すように、換気風量パラメータと脱離定数Kdaとの相関である。脱離定数決定ステップS2は、例えば、上記の脱離定数決定部212によって実行できる。
残存吸着量推測ステップS3は、決定された脱離定数Kda及び推測された初期吸着量q0と、予め定められた第3相関219とに基づき、対象空間101での換気開始から所定時間経過後の内表面での除染剤の残存吸着量qを推測するステップである。第3相関219は、上記の図6に示すように、脱離定数Kdaと初期吸着量q0と残存吸着量qとの相関である。残存吸着量推測ステップS3は、例えば、上記の残存吸着量推測部213によって実行できる。
脱離速度推測ステップS4は、推測された初期吸着量q0及び残存吸着量qに基づき、内表面からの除染剤の脱離速度dγを推測するステップである。脱離速度推測ステップS4は、例えば、上記の脱離速度推測部214によって実行できる。
換気時間推測ステップS5は、推測された脱離速度dγに基づき、対象空間101内での除染剤濃度が初期濃度C0から換気により目標濃度Cnに低下するまでの目標換気時間tnを推測するステップである。換気時間推測ステップS5は、例えば、上記の換気時間推測部215によって実行できる。
本実施形態の解析方法によれば、例えば設計図面の段階で、対象空間101での除染剤濃度が目標濃度Cnとなる目標換気時間tnを推測できる。目標換気時間tnの推測により、推測した目標換気時間tnに対応する換気設備(例えば換気ファンの仕様、換気ダクトの径(又は相当直径)、長さ等)の設計を適切に行うことができる。
ここで、解析装置201による上記解析方法の実行により、実際に換気中の対象空間101での除染剤濃度の推移を評価した。
図8は、本実施形態の解析装置201による解析結果を示すグラフであり、横軸を時間、縦軸を除染剤濃度としたときに、推測値(実線)及び実測値(プロット)を図示したグラフである。対象空間101での実測値は、対象空間101に設置した濃度計206(図11参照)を用いて行った。試験条件は、以下のとおりである。対象空間101は、後記する図11に示す、ガスを循環させる系とした。対象空間101の内容積は4.8m3とした。換気開始時の除染剤濃度(初期濃度C0)は750ppm、循環風量Qは100m3/h、換気風量パラメータとしての換気回数は22.9回/hとした。計測値は、Δt=5秒とした。
図8に示した計算値の一例として、計算の簡略化のため、対象空間101の小型化により幾何学的に相似とした実験室スケールにおいて、第1相関217、第2相関218及び第3相関219の各実験式を決定した。そして、式(1)~(6)に沿った計算により、例えば、t=0.2(12分)ではC0.2=155.02ppmとなり、t+Δt=0.2時間+5秒(12分5秒)ではC0.2+Δt=153.77ppmを得ることができた。これらの計算を繰り返すことで、図8、及び図9(後記する)を図示した。
試験の結果、図8に示すように、対象空間101の除染剤濃度についての実測値であるプロットは、推測値である実線とほぼ一致した。特に、換気開始直後では、実線で示す推測値よりも実測値がわずかに上回ったが、その後は、換気中全域で実測値と推測値とは概ね一致していた。
図9は、本実施形態の解析装置201による解析結果を示すグラフであり、横軸を除染剤濃度の実測値、縦軸を除染剤濃度の推測値としたグラフである。除染剤濃度が10ppm~100ppmでは、概ね、実測値よりも推測値がわずかに上回った。一方で、除染剤濃度が100ppm~1000ppmでは、概ね、推測値よりも実測値がわずかに上回った。しかしながら、推測値は、除染剤濃度が10ppm~1000ppmの全域において実測値と同様の傾向を示しており、概ね実測値と同じような値を示した。
図9及び上記図8の結果から、本実施形態の解析装置201及び解析方法によれば、設備の例えば設計図面の段階で、これから設置しようと計画している対象空間101での除染剤濃度を精度よく推測可能なことがわかった。
図10は、本実施形態の解析装置201による解析結果を示すグラフであり、横軸を換気回数、縦軸を除染剤濃度が10ppmに到達するまでの時間としたときに、推測値及び実測値を図示したグラフである。図10は、換気開始時の除染剤濃度(初期濃度C0)は500ppmとし、換気回数を変更した場合の10ppm到達時間(縦軸)を推測(実線)及び実測(プロット)した。
換気回数が4回/hでは、推測値と実測値との差がやや大きくなったものの、換気回数が6.2回/h以上では、推測値と実測値との差は1時間以内であった。特に、換気回数が10.5回/h以上になると、推測値と実測値との差は殆ど無く(約10分~15分以内)、極めて正確な推測を行うことができた。従って、本実施形態の解析装置201及び解析方法によれば、設備の例えば設計図面の段階で、これから設置しようと計画している対象空間101の除染剤濃度を目標濃度Cnにするための目標換気時間tnを精度よく推測できることがわかった。
図11は、本実施形態の除染システム10を示す系統図である。上記の構成と同じ構成については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。除染システム10は、対象空間101の除染を行う除染装置300と、除染後の対象空間101の換気を行う換気装置209と、上記解析装置201と同様の構成を有する解析装置201Aとを備える。除染装置300及び換気装置209は、解析装置201Aによる推測が行われた例えば設計図面に基づいて実際に設置されたものである。ただし、解析装置201Aは、上記の解析装置201とは一部異なる構成を有している。解析装置201Aの構成については、図12を参照しながら後記する。除染剤は、上記のように例えば過酸化水素であるが、除染剤は過酸化水素に限定されるものではない。
除染装置300は、対象空間101への除染剤の供給により対象空間101の除染を行うものである。除染装置300は、除染剤の分解触媒301と、除湿器302と、ファン303と、インバータ304と、プレヒータ305と、流量計306と、気化器307と、除染剤タンク308と、ポンプ309と、制御装置311とを備える。これらは、対象空間101の内外でガスが循環するように設置された除染剤ダクト(図示しない)に設置される。
ファン303では、インバータ304による回転周波数制御によって回転速度が制御される。ポンプ309でも、インバータ(図示しない)による回転周波数制御によって回転速度が制御される。除染剤タンク308には、例えば除染剤を溶解させた水(例えば過酸化水素水)が貯留される。
除染装置300による対象空間101の除染方法を説明する。除染装置300による除染中、後記する換気装置209は停止しており、対象空間101への空気の供給は行われない。除染装置300の稼働が開始されると、ファン303が駆動開始する。このとき、流量計306により測定されるガス流量が一定になるように、インバータ304の回転周波数が制御される。インバータ304の回転周波数制御は、制御装置311によって行われる。また、この時点では、除染剤タンク308からの除染剤の供給は行われておらず、対象空間101に供給されるガス、及び対象空間101から抜き出されるガスに除染剤は含まれていない。
ファン303の駆動開始により、対象空間101へのガスの供給、及び対象空間101からのガスの抜き出しが行われる。抜き出されるガスは、通常、対象空間101での作業後の空気である。この時点では、ガスに除染剤は含まれていないため、抜き出されたガスは、分解触媒301を素通りする。分解触媒301を素通りしたガスは、除湿器302によって除湿され、プレヒータ305によって例えば50℃~80℃に予熱される。プレヒータ305によって予熱されたガスは、気化器307において例えば100℃~130℃に加熱された後、対象空間101に戻される。これらのガス流れを生じさせることで、対象空間101内の湿度が低下し、後記する除染剤供給を行った際も、対象空間101内で再凝縮(結露)が抑制される。また、これらのガス流れを生じさせることで、除染装置300を構成する除染剤ダクト及び各設備の暖気が行われる。
除湿及び暖気後、ポンプ309の駆動により、除染剤タンク308から除染剤が気化器307に供給される。気化器307では、除染剤を例えば100℃~130℃に昇温させることで、除染剤が気化する。気化した除染剤を含むガスは対象空間101に供給され、対象空間101での除染剤による除染が行われる。ポンプ309の稼働時間は、除染時間として、制御装置311の記録部(図示しない)に記録される。記録された除染時間は、後記する除染時間把握部234に入力される。なお、制御装置311は、いずれも図示しないが、CPUと、ROMと、RAMと、I/Fとを備える。そして、ROMに記録されたプログラムがCPUによって実行されることで、制御装置311が具現化される。
除染中、対象空間101での除染剤濃度は、例えばポンプ309の回転速度制御(ポンプが容積式(ピストンポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ)の場合は、弁の反復するストロークの位置を変える、又は弁の位置を変えることで吐出量を制御する)により、一定になっている。従って、対象空間101の除染は、除染剤濃度が一定(例えば200ppm以上)になる条件で行われる。また、対象空間101の除染は、所定時間(例えば10分~10時間)継続して行われる。除染中、例えば上記の図3を参照しながら説明したように、除染剤は対象空間101の内表面に吸着する。さらに、流量計306により測定される流量を参照したフィードバック制御が行われる。
除染中にもファン303の駆動は継続する。そのため、対象空間101の除染剤は対象空間101から抜き出され、分解触媒301と接触する。分解触媒301との接触により、ガス中の除染剤は分解除去される。除染剤分解除去後のガスは、上記の説明と同様にして分解触媒301の下流を流れ、再度除染剤を含むガスが対象空間101に供給される。
換気装置209は、除染後の対象空間101の換気を行うものである。上記除染装置300による除染が所定時間継続された後、ポンプ309が停止する。これにより、除染剤濃度が除染中の濃度と同じ状態で除染が完了する。ただし、ポンプ309の停止後も、除染装置300のファン303の駆動は継続する。除染完了後、換気装置209及び除染装置300による対象空間101の換気が行われ、対象空間101での除染剤濃度が目標濃度Cn(例えば1ppm以下)にまで低下する。
換気装置209は、ファン202と、除染剤の分解触媒204と、流量計205とを備える。これらは、対象空間101の内外でガスが循環するように設置された換気ダクト(図示しない)に設置される。ファン202では、インバータ203による回転周波数制御によって回転速度が制御される。インバータ203の回転周波数制御は、制御装置208によって行われる。本実施形態では、インバータ203の回転周波数制御、即ち、循環風量Qの制御は、対象空間101での除染剤濃度に基づいて行われる。対象空間101での除染剤濃度は、対象空間101に設置された濃度計206により測定可能である。なお、濃度計206は対象空間101に2つ以上設置されても良く、その場合の除染剤濃度は各濃度計206で得られた値の平均値とすることができる。循環風量Qの制御は、解析装置201Aにより行われる。この点の詳細は、図12を参照しながら後記する。
除染完了後、ファン202の駆動開始により、対象空間101の換気が開始される。ファン202の駆動により、対象空間101のガス(除染剤を含む)は分解触媒204に供給される。分解触媒204では、ガス中の除染剤が分解除去される。除染剤を分解除去した後のガスは、換気ダクトを通じ対象空間101に戻される。これらのガス流れを繰り返すことで、対象空間101での除染剤濃度が低下する。また、除染装置300には分解触媒301が備えられている。このため、除染時から継続してファン303を稼働させておくことで、除染装置300でも除染剤を分解除去し、対象空間101の除染剤濃度は低下する。
換気は、入力装置207を介して入力された換気風量パラメータの入力値に基づいて行われる。具体的には例えば、入力装置207に対し、換気風量パラメータとしての例えば換気回数が入力された場合、入力された換気回数になるようにファン202のインバータ203が制御される。このとき、流量計205により測定される流量を参照したフィードバック制御が行われる。なお、入力装置207を介して入力された換気風量パラメータが、解析装置201Aでの推測時(例えば設備設置前)に使用された換気風量パラメータと異なる場合には、入力装置207に基づいて入力された換気風量パラメータに基づき、再度目標換気時間tnの推測が行われる。
また、換気は、解析装置201Aによって推測された目標換気時間tnになるように行われる。従って、対象空間101での除染剤濃度が何らかの原因で目標換気時間tn経過時に目標濃度Cnにならないと判断された場合には、換気風量パラメータの入力値の補正が行われる。補正の具体的内容については、図12を参照しながら後記する。
解析装置201Aは、対象空間101の除染剤の濃度が目標濃度Cnに低下するまでの目標換気時間tnを推測するものである。また、本実施形態では、解析装置201Aは、解析結果に基づきインバータ203の回転周波数を制御するようにもなっている。これにより、除染システム10は、解析装置201Aによる解析結果の通り運転される。解析装置201Aについて図12を参照しながら説明する。
図12は、本実施形態の除染システム10に備えられる解析装置201Aを示すブロック図である。解析装置201Aは、上記の解析装置201と重複する構成を有する。具体的には、解析装置201Aは、初期吸着量推測部211と、脱離定数決定部212と、残存吸着量推測部213と、脱離速度推測部214と、換気時間推測部215とを備える。また、解析装置201Aは、第1相関217と、第2相関218と、第3相関219とを備える。これらにより、解析装置201Aを備える除染システム10において、換気により除染剤濃度が目標濃度Cnに低下するまでの目標換気時間tnを推測できる。
さらに、解析装置201Aは、適正換気判断部231と、換気風量補正部232と、換気制御部233とを備える。
適正換気判断部231は、入力装置207による換気風量パラメータの入力値での換気中、対象空間101の除染剤濃度の実測値に基づき、目標換気時間tn経過時に対象空間101の除染剤の濃度を目標濃度Cnに低下できるか否かを判断するものである。
上記の換気時間推測部215において説明したように、換気時間推測部215は、任意の時刻tにおける除染剤濃度を推測する(図8を併せて参照)。そして、換気時間推測部215は、対象空間101での除染剤濃度が目標濃度Cnになる目標換気時間tnを推測する。そこで、適正換気判断部231は、換気時間推測部215により推測された除染剤濃度の推測値と、濃度計206による除染剤濃度の実測値とに基づき、目標換気時間経過時に対象空間101の除染剤の濃度を目標濃度Cnに低下できるか否かを判断する。例えば、除染剤濃度の実測値が推測値を大幅に上回っていれば、換気時間推測部215は、目標換気時間tn経過時に対象空間101の除染剤の濃度を目標濃度Cnに低下できないと判断できる。
換気風量補正部232は、目標換気時間tn経過時に対象空間101の除染剤の濃度を目標濃度Cnに低下できないと判断した場合に、目標換気時間tn経過時に対象空間101の除染剤の濃度を目標濃度Cnに低下できるように換気風量パラメータの入力値を補正するものである。目標換気時間tn経過時に対象空間101の除染剤の濃度を目標濃度Cnに低下できない理由としては、例えば、対象空間101内での局所的高温又は低温部分の存在、対象空間101内での設備の配置位置変更等である。
図13は、換気風量補正部232による換気風量パラメータの補正を説明するグラフである。このグラフにおいて、横軸は換気開始からの経過時間、縦軸は対象空間101での除染剤濃度を示す。実線グラフは、濃度計206により実測される除染剤濃度の実測値、破線グラフは解析装置201Aによって推測される除染剤濃度の推測値である。
換気開始時、除染剤の初期濃度をC0とする。そうすると、換気開始により、濃度計206により実測される除染剤濃度は低下する。しかし、何らかの理由により、実測値が推測値通りにはならず、実測値が推測値を上回ることがある。この結果、除染剤濃度が目標濃度Cnになる時間は、目標換気時間tnよりも遅れ、時刻tmになる。そこで、この場合、換気風量補正部232は、換気風量を増大させるように、換気風量パラメータを補正する。これにより、実測値グラフの傾きを大きくして、実測値を推測値に近づけることができる。この結果、対象空間101の除染剤の濃度を、目標換気時間tn経過時に目標濃度Cnに低下できる。
換気風量補正部232は、具体的には、上記判断時の除染剤濃度の実測値、及び実測値から算出される除染剤吸着量の推測値を、それぞれ、初期濃度C0及び初期吸着量q0と仮定する。そして、換気風量補正部232は、上記判断時から目標換気時間tnまでの残り時間で初期濃度C0から目標濃度Cnに除染剤濃度を低下させるための換気風量パラメータ(例えば換気回数)を算出する。算出は、上記の解析装置201での解析と同様の方法に沿って行うことができる。また、換気風量補正部232は、補正した換気風量パラメータを、例えばモニタ等の表示部220に表示する。
図12に戻って、換気制御部233は、補正された換気風量パラメータで換気されるように換気装置209を制御するものである。換気制御部233は、上記の換気風量補正部232によって例えば換気回数が増加するように補正された場合には、当該補正後の換気回数になるようにインバータ203(図11)の回転周波数を制御する。これにより、目標換気時間tn経過時に、対象空間101の除染剤濃度を目標濃度Cnに低下できる。
適正換気判断部231、換気風量補正部232、及び換気制御部233により、何らかの原因で目標換気時間経過tn時に除染剤濃度を目標濃度Cnに低下できないことが予想される場合であっても、除染剤濃度を目標換気時間tn経過時に目標濃度Cnに低下できる。
さらに、解析装置201Aは、除染時間把握部234と、換気時間補正部235とを備える。
除染時間把握部234は、除染装置300(図11参照)による対象空間101の除染時間を把握するものである。除染時間の把握は、例えば、上記のように、制御装置311からの入力により行われる。
換気時間補正部235は、把握された除染時間に応じて、目標換気時間tnを補正するものである。除染時間が長いほど、対象空間101の内表面への吸着量は多くなる傾向にあり、除染時間が短いほど、対象空間101の内表面への吸着量は少なくなる傾向にある。そこで、換気時間補正部235は、除染時間に応じて、解析装置201Aによって解析された目標換気時間tnを補正する。上記の換気制御部233は、補正された目標換気時間tnで換気を行う。また、補正された目標換気時間tnは、例えばモニタ等の表示部220に表示される。
目標換気時間tnの補正は、例えば、予め定められた相関であって、除染時間と推測された目標換気時間tnに乗じるべき係数との相関に基づいて行うことができる。即ち、換気時間補正部235は、当該相関から除染時間に応じた係数を決定し、決定された係数を目標換気時間tnに乗じることで、補正された目標換気時間tnを決定できる。なお、補正された目標換気時間tnが増えた場合、上記の適正換気判断部231、換気風量補正部232及び換気制御部233によって換気風量パラメータを補正し、当初の目標換気時間tn(補正前の目標換気時間tn)で換気を行うことができる。
除染時間把握部234及び換気時間補正部235により、除染時間の長時間化に起因して吸着量が増えた場合であっても、その増加分を考慮した目標換気時間tnを推測できる。
なお、解析装置201Aは、いずれも図示しないが、CPUと、ROMと、RAMと、I/Fとを備える。そして、ROMに記録されたプログラムがCPUによって実行されることで、解析装置201Aが具現化される。
図14は、本実施形態の除染方法を示すフローチャートである。本実施形態の除染方法は、例えば、上記の解析装置201Aを備える除染システム10において行われる。本実施形態の除染方法は、除染ステップS11と、解析ステップS12と、換気ステップS13とを含む。
除染ステップS11は、対象空間101への除染剤の供給により対象空間101の除染を行うステップである。除染ステップS11は、例えば、上記の除染装置300によって行われる。
解析ステップS12は、対象空間101の除染剤の濃度が目標濃度Cnに低下するまでの目標換気時間tnを推測するステップである。解析ステップS12は、上記の解析方法を含み、具体的には、初期吸着量推測ステップS1と、脱離定数決定ステップS2と、残存吸着量推測ステップS3と、脱離速度推測ステップS4と、換気時間推測ステップS5とを含む。解析ステップS12は、例えば、上記の解析装置201Aによって行われる。
換気ステップS13は、除染後の対象空間101の換気を行うステップである。換気ステップS13は、例えば、上記の解析装置201Aによって行われる。また、換気ステップS13は、何れも図示しないが、適正換気判断部231と、換気風量補正部232と、換気制御部233と、除染時間把握部234と、換気時間補正部235とのそれぞれによって行われる各ステップを含む。
以上の本実施形態の除染方法によれば、これから設置しようと計画している除染システム10が例えば設計図面の段階において、対象空間101の除染剤濃度を目標濃度Cnに低下可能な目標換気時間tnを予め推測(即ち予測)したうえで除染システム10を製作し、除染を行うことができる。このようにすることで、製作した除染システム10において、予定した除染を行うことができる。
また、実際に除染システム10を設置後の運用中、除染システム10に備えられた対象空間101の除染時、除染後に行われる換気によって、対象空間101での除染剤濃度が換気開始から目標濃度Cnになるまでの目標換気時間tnを推測できる。これにより、対象空間101での作業可能になるまでの時間を推測でき、対象空間101の運用を効率よく行うことができる。