本明細書では、ヒト成長分化因子15タンパク質(以下、場合によって、「GDF15」と称する)に、高アフィニティーおよび特異性で結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体)が開示される。本明細書で提示される抗GDF15抗体を指すように、以下で使用される「抗体」という用語は、全長抗体およびその抗原結合性断片の両方を含む。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体は、GDF15、例えば、GDF15のナックル(knuckle)ドメインのC末端領域に結合することが可能である。理論に束縛されることを望まずに述べると、ある種の実施形態では、GDF15のC末端領域(例えば、ナックルドメイン)への特異的な結合は、少なくとも部分的に、本明細書で記載される抗GDF15抗体の生物学的機能および/または臨床的効果を付与すると考えられる。
また、抗体をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、および抗体を作製するための方法も提供される。また、免疫コンジュゲート、多特異性抗体または二特異性抗体、および抗体を含む医薬組成物も提供される。本明細書で開示される抗GDF15抗体を使用して(単独で、または他の薬剤または治療モダリティーと組み合わせて)、食欲不振または悪液質などの消耗性障害を伴うGDF15関連障害またはGDF15関連状態を含む、GDF15関連障害またはGDF15関連状態を処置、防止、および/または診断することができる。したがって、GDF15を検出するための組成物および方法のほか、抗GDF15抗体を使用して、多様なGDF15関連障害またはGDF15関連状態を処置するための方法も開示される。
したがって、本明細書の一態様では、GDF15(例えば、ヒトGDF15)に結合する抗体(例えば、単離抗体もしくは組換え抗体またはこれらの抗原結合性断片)であって、以下の特性または特徴のうちの1つまたは複数を有する抗体が提示される。
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、GDF15に、150nM以下の平衡解離定数(KD)で結合する。一部の実施形態では、抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、ヒトGDF15またはその断片、例えば、配列番号1のアミノ酸配列を有するか、または配列番号2のヌクレオチド配列によりコードされるヒトGDF15に結合する。例えば、本明細書で記載される抗体または抗原結合性断片は、ヒトGDF15に、100nM以下、50nM以下、10nM以下、1nM以下、750pM以下、600pM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、150pM以下、100pM以下、75pM以下、65pM以下、60pM以下、55pM以下、50pM以下、45pM以下、40pM以下、35pM以下、30pM以下、25pM以下、20pM以下、15pM以下、10pM以下、5pM以下、2pM以下、1pM以下、0.5pM以下、0.2pM以下、または0.1pM以下のKDで結合しうる。
一実施形態では、抗体または抗原結合性断片、例えば、ABGDF15-Aは、ヒトGDF15に、Biacoreにより測定される11pM以下の、または溶液平衡滴定アッセイ(SET)により測定される1pM以下のKDで結合する。別の実施形態では、抗体または抗原結合性断片、例えば、ABGDF15-Bは、ヒトGDF15に、Biacoreにより測定される115pM以下の、またはSETにより測定される120pM以下のKDで結合する。さらに別の実施形態では、抗体または抗原結合性断片、例えば、ABGDF15-Cは、ヒトGDF15に、Biacoreにより測定される66pM以下の、またはSETにより測定される120pM以下のKDで結合する。さらに別の実施形態では、抗体または抗原結合性断片、例えば、ABGDF15-Dは、ヒトGDF15に、Biacoreにより測定される19pM以下の、またはSETにより測定される0.16pM以下のKDで結合する。さらに別の実施形態では、抗体または抗原結合性断片、例えば、ABGDF15-Eは、ヒトGDF15に、Biacoreにより測定される39pM以下の、またはSETにより測定される2.3pM以下のKDで結合する。さらに別の実施形態では、抗体または抗原結合性断片、例えば、ABGDF15-Fは、ヒトGDF15に、Biacoreにより測定される37pM以下の、またはSETにより測定される4.4pM以下のKDで結合する。さらに別の実施形態では、抗体または抗原結合性断片、例えば、ABGDF15-Gは、ヒトGDF15に、Biacoreにより測定される20pM以下のKDで結合する。
本明細書で記載される抗体または抗原結合性断片は、ヒトGDF15、カニクイザルGDF15、マウスGDF15、またはラットGDF-15に、表2に記載されている、例えばBiacoreにより測定される、KDで結合しうる。一実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、ヒトGDF15(例えば、天然ヒトGDF15)に、120pM以下、100pM以下、80pM以下、60pM以下、40pM以下、20pM以下、15pM以下、または10pM以下のKDで結合する。別の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、ヒトGDF(例えば、ヒトHis-GDF15)に、150pM以下、100pM以下、80pM以下、60pM以下、40pM以下、20pM以下、10pM以下、5pM以下、または2pM以下のKDで結合する。別の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、カニクイザルGDF(例えば、カニクイザルHis-GDF15)に、120pM以下、100pM以下、80pM以下、60pM以下、40pM以下、20pM以下、または10pM以下のKDで結合する。別の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、マウスGDF(例えば、マウスHis-GDF15)に、250pM以下、200pM以下、150pM以下、100pM以下、80pM以下、60pM以下、または40pM以下のKDで結合する。別の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、マウスGDF(例えば、ラットHis-GDF15)に、150pM以下、100pM以下、80pM以下、60pM以下、40pM以下、または20pM以下のKDで結合する。ある種の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、ヒトGDF15、カニクイザルGDF15、マウスGDF15、またはラットGDF-15のうちの1つ、2つ、3つ、または全てと交差反応性である。例えば、本明細書で記載される抗体または抗原結合性断片は、ヒトGDF15およびカニクイザルGDF15の両方と交差反応性でありうる。
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、8~10の間、例えば、8.2~9.8の間、8.4~9.6の間、8.6~9.4の間、8.8~9.2の間、8~8.5の間、8~9の間、8~9.5の間、8~5.10の間、9~10の間、または9.5~10の間の等電点(pI)を有する。一実施形態では、抗GDF15抗体(例えば、ABGDF15-A)または抗原結合性断片は、8.7(IgGとして)または9.1(Fabとして)のpIを有する。別の実施形態では、抗GDF15抗体(例えば、ABGDF15-B)または抗原結合性断片は、8.9(IgGとして)または9.3(Fabとして)のpIを有する。別の実施形態では、抗GDF15抗体(例えば、ABGDF15-C)または抗原結合性断片は、8.3(IgGとして)または8.8(Fabとして)のpIを有する。別の実施形態では、抗GDF15抗体(例えば、ABGDF15-D)または抗原結合性断片は、8.6(IgGとして)または9(Fabとして)のpIを有する。別の実施形態では、抗GDF15抗体(例えば、ABGDF15-EまたはABGDF15-F)または抗原結合性断片は、8.9(IgGとして)または9.2(Fabとして)のpIを有する。別の実施形態では、抗GDF15抗体(例えば、ABGDF15-G)または抗原結合性断片は、9.3(IgGとして)または9.6(Fabとして)のpIを有する。ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、表4に記載されている等電点(pI)を有する。
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、表1に記載されている抗体分子(例えば、重鎖可変領域および軽鎖可変領域)、例えば、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dと同じであるかもしくは同様の結合アフィニティーもしくは結合特異性、またはこれらの両方を示す。諸実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、表1に示されているアミノ酸配列を有するか、または表1に示されているヌクレオチド配列によりコードされる抗体分子と同じであるかもしくは同様の結合アフィニティーもしくは結合特異性、またはこれらの両方を示す。
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、結合について、表1に記載されている抗体、例えば、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dと競合する。
諸実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、第2の抗体分子の、GDF15への結合を阻害する、例えば、これを競合的に阻害し、この場合、第2の抗体は、表1に記載されている抗体、例えば、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dから選択される、例えば、抗体である。
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、表1に記載されている抗体、例えば、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dと同じエピトープまたは実質的に同じエピトープ(例えば、重複するエピトープ)に結合する。一部の実施形態では、抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、GDF15のC末端領域内の1つまたは複数のアミノ酸、例えば、GDF15、例えば、ヒトGDF15のナックルドメイン(例えば、Mueller, T. D. ら、FEBS Letters 586 (2012):1846~1859に記載されているナックル領域)に結合する。諸実施形態では、抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸231~294内の1つまたは複数のアミノ酸に結合する。一実施形態では、抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、GDF15、例えば、ヒトGDF15(例えば、配列番号1)のアミノ酸231、285または294のうちの1つ、2つ、または全てに結合する。一実施形態では、抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、GDF15、例えば、ヒトGDF15(例えば、配列番号1)の、アミノ酸285および294と、任意選択で、アミノ酸231とに結合する。一実施形態では、抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、GDF15、例えば、ヒトGDF15(例えば、配列番号1)の、アミノ酸231および285と、任意選択で、アミノ酸294とに結合する。一実施形態では、抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、ABGDF15-A、ABGDF15-D、ABGDF15-E、ABGDF15-F、またはABGDF15-Gと、同じであるかまたは実質的に同じエピトープに結合する、例えば、GDF15、例えば、ヒトGDF15の、アミノ酸285または294の一方または両方を含むエピトープに結合する。一実施形態では、抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、ABGDF15-A、ABGDF15-D、ABGDF15-E、ABGDF15-F、またはABGDF15-Gと、同じであるかまたは実質的に同じエピトープに結合し、例えば、この場合、結合は、GDF15、例えば、ヒトGDF15の、アミノ酸285および/または294における突然変異(例えば、配列番号1の、I285Rおよび/またはL294Rの突然変異)により遮断される。一実施形態では、抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、ABGDF15-BまたはABGDF15-Cと、同じであるかまたは実質的に同じエピトープに結合し、例えば、この場合、結合は、GDF15、例えば、ヒトGDF15の、アミノ酸231および/または285における突然変異(例えば、配列番号1の、S231Rおよび/またはI285Rの突然変異)により遮断される。
本明細書で記載される抗体および抗原結合性断片の結合アフィニティーおよび結合特異性は、溶液平衡滴定(SET)により決定することができる。当技術分野では、SET法が知られており、以下でさらに詳細に記載される。代替的に、本明細書で記載される抗体または断片の結合アフィニティーは、Biacoreアッセイにより決定することができる。当技術分野では、Biacore反応速度アッセイのための方法が知られており、以下でさらに詳細に記載される。
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、表1に記載されている抗体、例えば、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dから選択される抗体の、1つまたは複数の生物学的特性を有する。例示的な生物学的特性は、(i)GDF15の、受容体への結合を阻害する特性;(ii)循環GDF15のレベルを低減する、例えば、循環GDF15を枯渇させる特性;(iii)GDF-15を媒介する食物摂取の抑制を軽減する、例えば、これを阻止する特性;(iv)GDF-15を媒介する体重減少の抑制を軽減する、例えば、これを阻止する特性;または(v)GDF-15を媒介する食欲不振または悪液質を軽減する、例えば、これを反転させる特性のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、またはこれを超える特性を含む。特定の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、食物摂取を増大させる。特定の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、体重を増大させる。
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、GDF15の、受容体への結合を、例えば、100nM以下、50nM以下、35nM以下、25nM以下、10nM以下、または3nM以下のEC50で阻害する。
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、循環GDF15のレベルを低減する、例えば、循環GDF15を枯渇させる。
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、例えば、図1A~図1Bに示されている通り、対象、例えば、動物モデルにおける、GDF-15を媒介する食物摂取および/または体重減少の抑制を軽減する、例えば、これらを阻止する。
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、例えば、図2A~図3Bに示されている通り、対象、例えば、動物モデルにおける、GDF-15を媒介する食欲不振を軽減する、例えば、これを反転させる。
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、例えば、図4~図5に示されている通り、対象、例えば、動物モデルにおける、GDF-15を媒介する体重減少を軽減する。
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体または抗原結合性断片は、ヒトGDF15に結合し、カニクイザルGDF15と交差反応性である。
本明細書で記載される単離抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、モノクローナル抗体、ヒトまたはヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、Fv断片、F(ab’)2断片、またはscFv断片、および/または、例えば本明細書で記載されるIgGのアイソタイプでありうる。
本明細書で提示される抗体またはその抗原結合性断片のうちのいずれかは、モノクローナル抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体)またはその抗原結合性断片でありうる。他の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、多特異性抗体、例えば、二特異性抗体である。本明細書で記載される単離抗GDF15抗体またはそれらの抗原結合性断片はまた、アミノ酸が、ヒトVH生殖細胞系列配列またはヒトVL生殖細胞系列配列のそれぞれに由来する抗体フレームワークへと置換されたフレームワークも含みうる。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、表1に記載されている抗体の全長重鎖および/または全長軽鎖を含む。一実施形態では、抗体またはその抗原結合性断断片は、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、もしくはABGDF15-Dの重鎖アミノ酸配列および/もしくは軽鎖アミノ酸配列、またはこれらと実質的に同一なアミノ酸配列(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、もしくはこれを超えてこれらと同一であるか、またはABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、もしくはABGDF15-Dの重鎖アミノ酸配列および/もしくは軽鎖アミノ酸配列と比較した、少なくとも30、20、15、10、5カ所、もしくはこれより少数の変化(例えば、置換、例えば、保存的置換)を有する)を含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、もしくはABGDF15-Dの重鎖ヌクレオチド配列および/もしくは軽鎖ヌクレオチド配列、またはこれらと実質的に同一な(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、もしくはこれを超えてこれらと同一であるか、またはABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dの重鎖ヌクレオチド配列および/または軽鎖ヌクレオチド配列と比較した、少なくとも90、60、45、30、15カ所、もしくはこれより少数の変化(例えば、置換)を有する)ヌクレオチド配列によりコードされる。諸実施形態では、上述の配列のうちのいずれも、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dの重鎖に由来する、1つ、2つ、もしくは3つの相補性決定領域(CDR)、および/またはこれらの軽鎖に由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDRを含む。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、表1に記載されている抗体の重鎖可変ドメインのうちの1つもしくは2つ、および/または1つもしくは2つの軽鎖可変ドメインを含む。一実施形態では、抗体またはその抗原結合性断断片は、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、もしくはABGDF15-Dの重鎖可変ドメインのアミノ酸配列のうちの1つもしくは2つ、および/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列のうちの1つもしくは2つ、またはこれらと実質的に同一な(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、もしくはこれを超えてこれらと同一であるか、またはABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dの重鎖可変ドメインのアミノ酸配列および/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列と比較して、少なくとも20、15、10、5カ所、もしくはこれより少数の変化(例えば、置換、例えば、保存的置換)を有する)アミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、もしくはABGDF15-Dの重鎖可変ドメインのヌクレオチド配列および/もしくは軽鎖可変ドメインのヌクレオチド配列、またはこれらと実質的に同一な(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、もしくはこれを超えてこれらと同一であるか、またはABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、もしくはABGDF15-Dの重鎖可変ドメインのヌクレオチド配列および/もしくは軽鎖可変ドメインのヌクレオチド配列と比較した、少なくとも60、45、30、15カ所、もしくはこれより少数の変化(例えば、置換)を有する)ヌクレオチド配列によりコードされる。諸実施形態では、上述の配列のうちのいずれも、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dの重鎖可変ドメインに由来する、1つ、2つ、もしくは3つのCDR、および/またはこれらの軽鎖可変ドメインに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDRを含む。
別の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、表1に記載されている抗体、例えば、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、もしくはABGDF15-Dのうちのいずれかから選択される抗体に由来する、少なくとも1つの抗原結合性領域、例えば、可変領域もしくはその抗原結合性断片を含むか;または、表1のヌクレオチド配列;もしくは上述の配列のうちのいずれかと実質的に同一な(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、またはこれを超えて同一な)配列によりコードされる。一部の実施形態では、上述の配列のうちのいずれも、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dの重鎖可変ドメインに由来する、1つ、2つ、もしくは3つのCDR、および/またはこれらの軽鎖可変ドメインに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDRを含む。
さらに別の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、表1に記載されている抗体、例えば、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、もしくはABGDF15-Dのうちのいずれかから選択される抗体の重鎖可変領域に由来する、少なくとも1つ、2つ、もしくは3つのCDR、および/またはこれらの軽鎖可変領域に由来する、少なくとも1つ、2つ、もしくは3つのCDRを含むか;あるいは、表1のヌクレオチド配列;または上述の配列のうちのいずれかと実質的に同一な(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、またはこれを超えて同一な)配列によりコードされる。一実施形態では、CDRのうちの1つまたは複数(または、併せて、CDRの全て)は、表1に示されているか、または、表1に示されているヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列と比べて、1、2、3、4、5、6カ所、またはこれを超える変化、例えば、アミノ酸の置換または欠失を有する。一実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片のCDRのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはこれを超えるCDR(または、併せて、CDRの全て)は、Kabatらに従う(例えば、表1に示される、Kabatによる定義に従う、少なくとも1つ、2つ、もしくは3つのCDR)。他の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片のCDRのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはこれを超えるCDR(または、併せて、CDRの全て)は、Chothiaらに従う(例えば、表1に示される、Chothiaによる定義に従う、少なくとも1つ、2つ、もしくは3つのCDR)。さらに別の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片のCDRのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはこれを超えるCDR(または、併せて、CDRの全て)は、表1に示される、KabatおよびChothiaの組合せによる定義に従う。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3、29、55、81、107、133、もしくは159から選択される重鎖CDR1;配列番号4、30、56、82、108、134、もしくは160から選択される重鎖CDR2;および/または配列番号5、31、57、83、109、135、もしくは161から選択される重鎖CDR3(KabatおよびChothiaの組合せによるCDR定義に従う)を含む。一実施形態では、CDRのうちの1つまたは複数(または、併せて、CDRの全て)は、上述のアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、1、2、3、4、5、6カ所、またはこれを超える変化、例えば、アミノ酸の置換または欠失を有する。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号6、32、58、84、110、136、もしくは162から選択される重鎖CDR1;配列番号7、33、59、85、111、137、もしくは163から選択される重鎖CDR2;および/または配列番号8、34、60、86、112、138、もしくは164から選択される重鎖CDR3(KabatによるCDR定義に従う)を含む。一実施形態では、CDRのうちの1つまたは複数(または、併せて、CDRの全て)は、上述のアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、1、2、3、4、5、6カ所、またはこれを超える変化、例えば、アミノ酸の置換または欠失を有する。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9、35、61、87、113、139、もしくは165から選択される重鎖CDR1;配列番号10、36、62、88、114、140、もしくは166から選択される重鎖CDR2;および/または配列番号11、37、63、89、115、141、もしくは167から選択される重鎖CDR3(ChothiaによるCDR定義に従う)を含む。一実施形態では、CDRのうちの1つまたは複数(または、併せて、CDRの全て)は、上述のアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、1、2、3、4、5、6カ所、またはこれを超える変化、例えば、アミノ酸の置換または欠失を有する。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号16、42、68、94、120、146、もしくは172から選択される軽鎖CDR1;配列番号17、43、69、95、121、147、もしくは173から選択される軽鎖CDR2;および/または配列番号18、44、70、96、122、148、もしくは174から選択される軽鎖CDR3(KabatおよびChothiaの組合せによるCDR定義に従う)を含む。一実施形態では、CDRのうちの1つまたは複数(または、併せて、CDRの全て)は、上述のアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、1、2、3、4、5、6カ所、またはこれを超える変化、例えば、アミノ酸の置換または欠失を有する。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号19、45、71、97、123、149、もしくは175から選択される軽鎖CDR1;配列番号20、46、72、98、124、150、もしくは176から選択される軽鎖CDR2;および/または配列番号21、47、73、99、125、151、もしくは177から選択される軽鎖CDR3(KabatによるCDR定義に従う)を含む。一実施形態では、CDRのうちの1つまたは複数(または、併せて、CDRの全て)は、上述のアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、1、2、3、4、5、6カ所、またはこれを超える変化、例えば、アミノ酸の置換または欠失を有する。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号22、48、74、100、126、152、または178から選択される軽鎖CDR1;配列番号23、49、75、101、127、153、または179から選択される軽鎖CDR2;および配列番号24、50、76、102、128、154、または180から選択される軽鎖CDR3(ChothiaによるCDR定義に従う)を含む。一実施形態では、CDRのうちの1つまたは複数(または、併せて、CDRの全て)は、上述のアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、1、2、3、4、5、6カ所、またはこれを超える変化、例えば、アミノ酸の置換または欠失を有する。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、
(i)配列番号3、29、55、81、107、133、または159から選択される重鎖CDR1;配列番号4、30、56、82、108、134、または160から選択される重鎖CDR2;および配列番号5、31、57、83、109、135、または161から選択される重鎖CDR3と;
(ii)配列番号16、42、68、94、120、146、または172から選択される軽鎖CDR1;配列番号17、43、69、95、121、147、または173から選択される軽鎖CDR2;および配列番号18、44、70、96、122、148、または174から選択される軽鎖CDR3と(KabatおよびChothiaの組合せによるCDR定義に従う)
を含む。
一実施形態では、(i)および/または(ii)におけるCDRのうちの1つまたは複数(または、併せて、CDRの全て)は、上述のアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、1、2、3、4、5、6カ所、またはこれを超える変化、例えば、アミノ酸の置換または欠失を有する。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、
(i)配列番号6、32、58、84、110、136、162から選択される重鎖CDR1;配列番号7、33、59、85、111、137、または163から選択される重鎖CDR2;および配列番号8、34、60、86、112、138、または164から選択される重鎖CDR3と;
(ii)配列番号19、45、71、97、123、149、175から選択される軽鎖CDR1;配列番号20、46、72、98、124、150、176から選択される軽鎖CDR2;および配列番号21、47、73、99、125、151、177から選択される軽鎖CDR3と(KabatによるCDR定義に従う)
を含む。
一実施形態では、(i)および/または(ii)におけるCDRのうちの1つまたは複数(または、併せて、CDRの全て)は、上述のアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、1、2、3、4、5、6カ所、またはこれを超える変化、例えば、アミノ酸の置換または欠失を有する。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、
(i)配列番号9、35、61、87、113、139、または165から選択される重鎖CDR1;配列番号10、36、62、88、114、140、または166から選択される重鎖CDR2;および配列番号11、37、63、89、115、141、または167から選択される重鎖CDR3と;
(ii)配列番号22、48、74、100、126、152、または178から選択される軽鎖CDR1;配列番号23、49、75、101、127、153、または179から選択される軽鎖CDR2;および配列番号24、50、76、102、128、154、または180から選択される軽鎖CDR3と(ChothiaによるCDR定義に従う)
を含む。
一実施形態では、(i)および/または(ii)におけるCDRのうちの1つまたは複数(または、併せて、CDRの全て)は、上述のアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、1、2、3、4、5、6カ所、またはこれを超える変化、例えば、アミノ酸の置換または欠失を有する。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、
G-X2-X3-F-X5-X6-X7-X8-X9-X10(配列番号188)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1(HCDR1)[配列中、X2は、YもしくはGであり;X3は、SもしくはTであり;X5は、R、T、もしくはSであり;X6は、SもしくはDであり;X7は、YもしくはHであり;X8は、A、W、もしくはYであり;X9は、VもしくはIであり;X10は、S、G、もしくはNである];
X1-I-X3-P-X5-X6-X7-X8-X9-X10-Y-X12-X13-X14-F-Q-G(配列番号189)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2(HCDR2)[配列中、X1は、G、I、もしくはVであり;X3は、IもしくはDであり;X5は、I、S、G、A、もしくはDであり;X6は、FもしくはGであり;X7は、GもしくはSであり;X8は、T、Y、もしくはGであり;X9は、AもしくはTであり;X10は、NもしくはIであり;X12は、AもしくはSであり;X13は、QもしくはPであり;X14は、KもしくはSである];
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-D-X17(配列番号190)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3(HCDR3)[配列中、X1は、G、V、Y、もしくはFであり;X2は、P、S、もしくはGであり;X3は、I、Y、R、もしくはSであり;X4は、I、Y、もしくはVであり;X5は、M、G、もしくはYであり;X6は、G、T、もしくはVであり;X7は、YもしくはSであり;X8は、Q、F、もしくはRであり;X9は、F、Y、もしくは非存在であり;X10は、G、S、もしくは非存在であり;X11は、L、S、もしくは非存在であり;X12は、F、Y、もしくは非存在であり;X13は、Yもしくは非存在であり;X14は、Hもしくは非存在であり;X15は、Mもしくは非存在であり;X17は、H、I、Y、もしくはVである];
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13(配列番号191)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1(LCDR1)[配列中、X1は、SもしくはRであり;X2は、GもしくはAであり;X3は、DもしくはSであり;X4は、N、Q、もしくはSであり;X5は、I、SもしくはTであり;X6は、G、I、もしくはNであり;X7は、S、I、もしくはYであり;X8は、Gもしくは非存在であり;X9は、Vもしくは非存在であり;X10は、H、N、L、もしくはRであり;X11は、I、N、Y、もしくはSであり;X12は、VもしくはLであり;X13は、S、N、もしくはAである];
X1-X2-X3-X4-X5-X6-S(配列番号192)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2(LCDR2)[配列中、X1は、D、A、S、もしくはGであり;X2は、K、A、もしくはNであり;X3は、SもしくはDであり;X4は、NもしくはIであり;X5は、RもしくはLであり;X6は、PもしくはQである];または
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10(配列番号193)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3(LCDR3)[配列中、X1は、Q、F、もしくはLであり;X2は、T、Q、もしくはSであり;X3は、W、L、もしくはRであり;X4は、DもしくはYであり;X5は、S、H、もしくはTであり;X6は、IもしくはSであり;X7は、G、P、もしくはSであり;X8は、S、N、もしくは非存在であり;X9は、V、F、もしくはYであり、X10は、VもしくはTである]
のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全てを含む。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、この場合、
(i)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号3、4、および5を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号16、17、および18を含むか;または
(ii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号29、30、および31を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号42、43、および44を含むか;または
(iii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号55、56、および57を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号68、69、および70を含むか;または
(iv)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号81、82、および83を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号94、95、および96を含むか;または
(v)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号107、108、および109を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号120、121、および122を含むか;または
(vi)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号133、134、および135を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号146、147、および148を含むか;または
(vii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号159、160、および161を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号172、173、および174を含む。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、この場合、
(i)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号6、7、および8を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号19、20、および21を含むか;または
(ii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号32、33、および34を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号45、46、および47を含むか;または
(iii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号58、59、および60を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号71、72、および73を含むか;または
(iv)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号84、85、および86を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号97、98、および99を含むか;または
(v)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号110、111、および112を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号123、124、および125を含むか;または
(vi)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号136、137、および138を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号149、150、および151を含むか;または
(vii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号162、163、および164を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号175、176、および177を含む。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、この場合、
(i)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号9、10、および11を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号22、23、および24を含むか;または
(ii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号35、36、および37を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号48、49、および50を含むか;または
(iii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号61、62、および63を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号74、75、および76を含むか;または
(iv)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号87、88、および89を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号100、101、および102を含むか;または
(v)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号113、114、および115を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号126、127、および128を含むか;または
(vi)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号139、140、および141を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号152、153、および154を含むか;または
(vii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号165、166、および167を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、配列番号178、179、および180を含む。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号12、38、64、90、116、142、または168の可変重鎖の、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、配列番号25、51、77、103、129、155、または181の可変軽鎖の、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3とを含む。一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号12の可変重鎖の、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、配列番号25の可変軽鎖の、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3とを含む。一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号38の可変重鎖の、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、配列番号51の可変軽鎖の、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3とを含む。一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号64の可変重鎖の、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、配列番号77の可変軽鎖の、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3とを含む。一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号90の可変重鎖の、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、配列番号103の可変軽鎖の、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3とを含む。一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号116の可変重鎖の、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、配列番号129の可変軽鎖の、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3とを含む。一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号142の可変重鎖の、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、配列番号155の可変軽鎖の、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3とを含む。一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号168の可変重鎖の、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、配列番号181の可変軽鎖の、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3とを含む。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、Chothiaにより規定される、配列番号12、38、64、90、116、142、または168の可変重鎖の、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、配列番号25、51、77、103、129、155、または181の可変軽鎖の、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3とを含む。
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、Kabatにより規定される、配列番号12、38、64、90、116、142、または168の重鎖可変ドメイン配列の、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、配列番号25、51、77、103、129、155、181の軽鎖可変ドメイン配列の、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3とを含む。
さらに他の実施形態では、抗体または抗原結合性断断片は、KabatおよびChothiaの組合せにより規定される、配列番号12、38、64、90、116、142、168の重鎖可変ドメイン配列の、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、配列番号25、51、77、103、129、155、181の軽鎖可変ドメイン配列の、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3とを含む。
さらに他の実施形態では、抗体または抗原結合性断断片は、配列番号12、38、64、90、116、142、または168から選択される重鎖可変ドメイン配列を含む。単離抗体または抗原結合性断片は、軽鎖可変ドメイン配列をさらに含むことが可能であり、この場合、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインとは、組み合わさってGDF15に対する抗原結合性部位を形成する。一実施形態では、軽鎖可変ドメイン配列は、配列番号25、51、77、103、129、155、または181から選択され、この場合、前記単離抗体またはその抗原結合性断片は、GDF15に結合する。
さらに他の実施形態では、抗体または抗原結合性断断片は、配列番号25、51、77、103、129、155、または181から選択される軽鎖可変ドメイン配列を含み、この場合、前記抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトGDF15に結合する。抗体または抗原結合性断片は、重鎖可変ドメイン配列をさらに含むことが可能であり、この場合、軽鎖可変ドメインと、重鎖可変ドメインとは、組み合わさってGDF15に対する抗原結合性部位を形成する。
一部の実施形態では、GDF15に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号12および25;38および51;64および77;90および103;116および129;142および155;または168および181の配列をそれぞれ含む、重鎖および軽鎖可変ドメインを含む。
他の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号12、38、64、90、116、142、または168から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、重鎖可変ドメインを含み、この場合、前記抗体は、GDF15に結合する。一態様では、単離抗体またはその抗原結合性断片はまた、配列番号25、51、77、103、129、155、または181から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、軽鎖可変ドメインも含む。諸実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、Kabatにより規定され、表1に記載されている、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を有する。
他の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号25、51、77、103、129、155、または181からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含み、この場合、前記抗体は、GDF15に結合する。
別の実施形態では、GDF15に結合する単離抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号14、40、66、92、118、144、または170の配列を含む重鎖を有しうる。単離抗体はまた、重鎖と組み合わせて、ヒトGDF15への抗原結合性部位を形成しうる軽鎖とも含みうる。特に、軽鎖は、配列番号27、53、79、105、131、157、または183を含む配列を有しうる。特に、GDF15に結合する単離抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号14および27;40および53;66および79;92および105;118および131;144および157;または170および183の配列をそれぞれ含む重鎖および軽鎖を有しうる。
本明細書で提示される他の実施形態は、配列番号14、40、66、92、118、144、170からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖を含む単離抗体またはその抗原結合性断片を含み、この場合、前記抗体は、GDF15に結合する。一態様では、単離抗体またはその抗原結合性断片はまた、配列番号27、53、79、105、131、157、183からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖も含む。
他の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断断片は、配列番号27、53、79、105、131、157、183からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖を含み、この場合、前記抗体は、GDF15に結合する。
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される単離抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物が提示される。本明細書ではまた、薬学的に許容される担体と組み合わせた抗体組成物も提示される。とりわけ、本明細書では、例えば、抗体のABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dなど、表1の抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物が提示される。本明細書ではまた、表1の単離抗体またはその抗原結合性断片のうちの2つ以上の組合せを含む医薬組成物も提示される。
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される抗GDF15抗体の重鎖および軽鎖、重鎖および軽鎖可変領域、重鎖CDRおよび軽鎖CDRをコードするヌクレオチド配列の一方または両方を含む核酸分子が提示される。ある種の実施形態では、抗GDF15抗体をコードするヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。本明細書の一実施形態では、例えば、表1にまとめられたABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、もしくはABGDF15-Dのうちのいずれか、またはこれと実質的に同一な配列のうちの1つまたは複数から選択される抗GDF15抗体の重鎖および軽鎖可変領域をそれぞれコードする、第1の核酸および第2の核酸が提示される。例えば、核酸は、表1に示されるヌクレオチド配列、またはこれと実質的に同一な配列(例えば、これと、少なくとも約85%、90%、95%、99%、またはこれを超えて同一な配列、または表1に示されている配列と、3、6、15、30、または45ヌクレオチド以下分異なる配列)を含みうる。
他の実施形態では、核酸分子は、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、もしくはABGDF15-Dのアミノ酸配列、または表1に記載されているアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび/または重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列;あるいは表1のヌクレオチド配列;あるいは上述の配列のうちのいずれかと実質的に同一な配列(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、99%、またはこれを超えて同一な配列)を含む。
他の実施形態では、核酸分子は、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、もしくはABGDF15-Dのアミノ酸配列、または表1に記載されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインおよび/または軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列;あるいは表1のヌクレオチド配列;あるいは上述の配列のうちのいずれかと実質的に同一な配列(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、99%、またはこれを超えて同一な配列)を含む。
抗GDF15重鎖および抗GDF15軽鎖の可変ドメインおよび定常領域をコードする上述のヌクレオチド配列は、別個の核酸分子内に存在する場合もあり、同じ核酸分子内に存在する場合もある。ある種の実施形態では、核酸分子は、リーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む。
ある種の実施形態では、核酸分子は、表1に示されるアミノ酸配列、またはこれと実質的に相同な配列(例えば、これと、少なくとも約85%、90%、95%、99%、もしくはこれを超えて同一な配列、および/または1、2、3カ所、もしくはこれを超える置換、挿入、もしくは欠失、例えば、保存された置換を有する配列)を有する重鎖可変領域に由来する、少なくとも1つ、2つ、もしくは3つのCDRをコードするヌクレオチド配列を含む。
別の実施形態では、核酸分子は、表1に示されるアミノ酸配列、またはこれと実質的に相同な配列(例えば、これと、少なくとも約85%、90%、95%、99%、もしくはこれを超えて同一な配列、および/または1、2、3カ所、もしくはこれを超える置換、挿入、もしくは欠失、例えば、保存された置換を有する配列)を有する軽鎖可変領域に由来する、少なくとも1つ、2つ、もしくは3つのCDRをコードするヌクレオチド配列を含む。
さらに別の実施形態では、核酸分子は、表1に示されるアミノ酸配列、またはこれと実質的に相同な配列(例えば、これと、少なくとも約85%、90%、95%、99%、もしくはこれを超えて同一な配列、および/または1、2、3カ所、もしくはこれを超える置換、挿入、もしくは欠失、例えば、保存された置換を有する配列)を有する重鎖および軽鎖可変領域に由来する、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのCDR、または超可変ループをコードするヌクレオチド配列を含む。
本明細書の他の実施形態では、配列番号12、38、64、90、116、142、または168から選択される配列を有する、重鎖可変領域をコードする単離核酸配列が提示される。諸実施形態では、核酸は、配列番号13、39、65、91、117、143、または169から選択される配列と、少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。ある種の実施形態では、配列は、配列番号13、39、65、91、117、143、または169のヌクレオチドを含む。
諸実施形態では、軽鎖可変領域をコードする単離核酸配列は、配列番号25、51、77、103、129、155、または182から選択される配列を含む。特に、核酸は、配列番号26、52、78、104、130、156、または183から選択される配列と、少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。ある種の実施形態では、配列は、配列番号26、52、78、104、130、156、または183である。
他の実施形態では、重鎖をコードする単離核酸は、配列番号14、40、66、92、118、144、もしくは170から選択されるアミノ酸配列、またはこれと実質的に同一なヌクレオチド配列、例えば、少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を有する。他の実施形態では、重鎖をコードする単離核酸は、配列番号15、41、67、93、119、145、もしくは171から選択されるヌクレオチド配列、またはこれと実質的に同一なヌクレオチド配列、例えば、少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を有する。
他の実施形態では、軽鎖をコードする単離核酸は、配列番号27、53、79、105、131、157、もしくは183から選択されるヌクレオチド配列、またはこれと実質的に同一なヌクレオチド配列、例えば、少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を有する。他の実施形態では、軽鎖をコードする単離核酸は、配列番号28、54、80、106、132、158、もしくは184から選択されるヌクレオチド配列、またはこれと実質的に同一なヌクレオチド配列、例えば、少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を有する。
本明細書では、配列番号28、54、80、106、132、158、または184から選択される配列と、少なくとも90%の配列同一性を有する、軽鎖可変ドメインを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸が提示される。
本明細書ではまた、本明細書で記載される核酸分子のうちの1つまたは複数を含むベクターも提示される。重鎖領域および軽鎖領域は、同じベクター内に存在する場合もあり、別個のベクター内に存在する場合もある。
本明細書ではまた、上記で記載した抗体の重鎖をコードする組換えDNA配列と、上記で記載した抗体の軽鎖をコードする、第2の組換えDNA配列とを含み、この場合、前記DNA配列は、プロモーターに作動可能に連結され、宿主細胞内で発現することが可能である単離宿主細胞も提示される。核酸は、単一のベクター内に存在する場合もあり、同じ宿主細胞内または別個の宿主細胞内に存在する、別個のベクター内に存在する場合もある。宿主細胞は、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞の場合もあり、または、原核細胞、例えば、大腸菌(E. coli)の場合もある。例えば、哺乳動物細胞は、培養細胞の場合もあり、細胞系の場合もある。例示的な哺乳動物細胞は、リンパ球細胞系(例えば、NSO)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、COS細胞、卵母細胞、およびトランスジェニック動物に由来する細胞、例えば、乳腺上皮細胞を含む。抗体は、ヒト抗体でありうる。宿主細胞は、非ヒト哺乳動物細胞でありうる。
諸実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。細胞は、対象中にありうる。一実施形態では、細胞は、内皮細胞である。他の実施形態では、細胞は、脂肪細胞、筋細胞、および肝細胞のうちの1つまたは複数でありうる。諸実施形態では、対象は、ヒトである。
別の態様では、本明細書で記載される抗体を提供する方法が開示される。方法は、GDF15抗原(例えば、GDF15エピトープの少なくとも一部を含む抗原)を用意するステップと;GDF15ポリペプチドに特異的に結合する抗体分子を得るステップと;抗体分子が、GDF15ポリペプチドに特異的に結合するのかどうかを査定するか、または抗体分子をモジュレートするとき、例えば、GDF15の活性を阻害するときの有効性を査定するステップとを含む。方法は、抗体分子を、対象、例えば、ヒトまたは非ヒト動物へと投与するステップをさらに含みうる。
本明細書の別の態様では、対象、例えば、患者におけるGDF15関連障害を処置、改善、または防止する方法が提示される。方法は、有効量の、本明細書で記載される抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物を、対象へと投与するステップを含む。一実施形態では、GDF15関連障害は、食欲不振-悪液質、高齢者の食欲不振、神経性食欲不振、がんと関連する悪液質、AIDSと関連する悪液質、心不全と関連する悪液質、嚢胞性線維症と関連する悪液質、関節リウマチと関連する悪液質、腎疾患と関連する悪液質、COPDと関連する悪液質、ALSと関連する悪液質、腎不全と関連する悪液質、または股関節骨折と関連する悪液質などの消耗性障害と関連する。他の実施形態では、GDF15関連障害は、サルコペニア、飢餓、ならびに食欲、脂肪量、エネルギー平衡の異常、および/または不随意の体重減少と関連する障害、ならびに重篤な疾病患者の死亡率および罹患率の低減と関連する。
本明細書の一態様では、対象、例えば、それを必要とする対象における食欲および/または食物摂取を増大させる方法が提示される。方法は、有効量の、本明細書で記載される抗GDF15抗体またはその断片を、対象へと投与するステップを含む。
本明細書の別の態様では、対象、例えば、それを必要とする対象における体重を増大させる方法が提示される。方法は、有効量の、本明細書で記載される抗GDF15抗体またはその断片を、対象へと投与するステップを含む。
本明細書の別の態様では、対象、例えば、それを必要とする対象における体重、筋肉量、食欲、または食物摂取の減少のうちの1つまたは複数を阻害または軽減する方法が提示される。方法は、有効量の、本明細書で記載される抗GDF15抗体またはその断片を、対象へと投与するステップを含む。
一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、ヒトである。一実施形態では、対象は、消耗性障害、例えば、悪液質もしくはサルコペニア、またはこれらの両方を有する。他の実施形態では、対象は、がん、慢性心不全、慢性腎疾患、COPD、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、敗血症、または結核を有する。抗GDF15抗体またはその断片は、対象へと、全身投与(例えば、経口投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、直腸内投与、筋内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、経皮投与、または吸入もしくは腔内植込みにより投与)することもでき、局所投与することもでき、粘膜への適用により投与することもできる。
本明細書の一態様では、医薬としての使用のための、本明細書で記載される抗GDF15抗体またはその断片が提示される。
本明細書の別の態様では、対象、例えば、本明細書で記載される対象における、GDF15関連障害(例えば、本明細書で記載されるGDF15関連障害、例えば、消耗性障害、例えば、悪液質もしくはサルコペニア、がん、慢性心不全、慢性腎疾患、COPD、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、敗血症、または結核)の、処置、改善、または防止における使用のための、本明細書で記載される抗GDF15抗体またはその断片が提示される。
本明細書の一態様では、対象、例えば、本明細書で記載される対象における食欲および/または食物摂取の増大における使用のための、本明細書で記載される抗GDF15抗体またはその断片が提示される。
本明細書の別の態様では、対象、例えば、本明細書で記載される対象における体重の増大における使用のための、本明細書で記載される抗GDF15抗体またはその断片が提示される。
本明細書の別の実施形態では、対象、例えば、本明細書で記載される対象における体重、筋肉量、食欲、または食物摂取の減少のうちの1つまたは複数の阻害または軽減における、抗GDF15抗体またはその断片が提示される。
ある実施形態では、消耗性障害、例えば、悪液質もしくはサルコペニア、がん、慢性心不全、慢性腎疾患、COPD、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、敗血症、または結核の処置における使用のための、抗GDF15抗体またはその断片が提供される。
本明細書の別の態様では、対象、例えば、本明細書で記載される対象における、GDF15関連障害(例えば、本明細書で記載されるGDF15関連障害)を処置、改善、または防止するための医薬の製造における、本明細書で記載される抗GDF15抗体またはその断片の使用が提示される。
本明細書の一態様では、対象、例えば、本明細書で記載される対象における食欲および/または食物摂取を増大させるための医薬の製造における、本明細書で記載される抗GDF15抗体またはその断片の使用が提示される。
本明細書の別の態様では、対象、例えば、本明細書で記載される対象における体重を増大させるための医薬の製造における、本明細書で記載される抗GDF15抗体またはその断片の使用が提示される。
本明細書の別の実施形態では、対象、例えば、本明細書で記載される対象における体重、筋肉量、食欲、または食物摂取の減少のうちの1つまたは複数を阻害または軽減する方法における、本明細書で記載される抗GDF15抗体またはその断片の使用が提示される。
ある実施形態では、消耗性障害、例えば、悪液質もしくはサルコペニア、がん、慢性心不全、慢性腎疾患、COPD、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、敗血症、または結核を処置するための医薬の製造における、本明細書で記載される抗GDF15抗体またはその断片の使用が提供される。
抗GDF15抗体の投与量および治療レジメンは、当業者が決定しうる。ある種の実施形態では、抗GDF15抗体を、約1~30mg/kg、例えば、約5~25mg/kg、約10~20mg/kg、または約1~5mg/kgの用量で、注射(例えば、皮下注射または静脈内注射)により投与する。投与スケジュールは、例えば、毎週1回~2、3、または4週間ごとに1回で変動しうる。
本明細書で記載される方法および組成物は、他の薬剤または治療モダリティーと組み合わせて使用することができる。一実施形態では、本明細書で記載される方法は、本明細書で記載される抗GDF15抗体を、薬剤または治療手順もしくは治療モダリティーと組み合わせて、障害を処置または防止するのに有効な量で対象へと投与するステップを含む。抗GDF15抗体および薬剤または治療手順もしくは治療モダリティーは、同時に投与することもでき、任意の順序で、逐次的に投与することもできる。抗GDF15抗体分子の配列と、他の治療剤、手順、またはモダリティー(例えば、本明細書で記載される)との任意の組合せを使用することができる。抗体分子および/または他の治療剤、手順、もしくはモダリティーは、障害が活動性である期間に投与することもでき、寛解期またはそれほど疾患がより活動性でない期間に投与することもできる。抗体は、他の処置の前に投与することもでき、処置と共時的に投与することもでき、処置後に投与することもでき、障害の寛解期に投与することもできる。
本明細書の別の態様では、例えば、in vitroまたはin vivoにおける試料中(例えば、生物学的試料中、例えば、血清中、精液中、もしくは尿中、または組織生検中)の、GDF15の存在を検出する方法が提示される。本方法を使用して、対象における、本明細書で記載される障害を査定する(例えば、その処置もしくは進行をモニタリングし、診断し、かつ/または病期分類する)ことができる。方法は、(i)試料(および、任意選択で、基準試料、例えば、対照試料)を、相互作用が生じることを可能とする条件下で、本明細書で記載される抗体分子と接触させるか、または対象へと投与するステップと、(ii)抗体と、試料(および、任意選択で、基準試料、例えば、対照試料)との複合体の形成を検出するステップとを含む。複合体の形成は、GDF15の存在を指し示し、本明細書で記載される処置の適性または必要を指し示しうる。方法は、免疫組織化学、免疫細胞化学、FACS、抗体分子複合体化磁気ビーズ、ELISAアッセイ、PCR技法(例えば、RT-PCR)を伴いうる。
典型的に、in vivoおよびin vitroの診断方法において使用される抗体は、結合したかまたは結合していない結合剤の検出を容易にするように、検出可能な物質で、直接的または間接的に標識される。適切な検出可能な物質は、多様な生体活性酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、常磁性(例えば、核磁気共鳴活性)材料、および放射性材料を含む。
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される抗体と使用のための指示書とを含む、診断用キットまたは治療用キットが提示される。
別段に定義されない限り、本明細書で使用される、全ての技術用語および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本開示の実施または試験では、本明細書で記載される方法および材料と同様または同等な方法および材料を使用しうるが、下記では、適切な方法および材料について記載される。本明細書で言及される、全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりそれらの全体において組み込まれる。齟齬が生じる場合は、定義を含む本明細書に従う。加えて、材料、方法、および例は、例示的なものであるに過ぎず、限定を意図するものではない。
本開示の他の特徴、目的、および利点は、明細書および図面から明らかであり、特許請求の範囲からも明らかであろう。
用語法
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本開示が関する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。ある種の用語は、下記および本出願を通して定義される。本明細書で使用される「ある(a)」、「ある(an)」、および「その」という冠詞は、その冠詞の、1つまたは1つを超える(例えば、少なくとも1つの)文法的目的語を指す。
文脈から別段に指し示されない限り、本明細書では、「または」という用語を、「および/または」という用語を意味するように使用し、これと互換的に使用される。
要素を、例えば、マーカッシュ群のフォーマットによる一覧、または「~から選択された」一覧として提示する場合、要素の各亜群もまた開示され、任意の要素を群から除去することもできる。
一般に、本発明または本発明の態様が、特定の要素および/または特徴を含むと称する場合、本発明のある種の実施形態または本発明の態様は、このような要素および/または特徴からなるか、またはこれらから本質的になる。簡便さを目的として述べると、本明細書では、これらの実施形態が、その言葉通りに、具体的に示されているわけではない。また、「~を含むこと(comprising)」、および「~を含むこと(including)」という用語は、オープンであることを意図し、さらなる要素またはステップの包含を許容することも留意されたい。
範囲を与える場合、端点を含む。さらに、別段に指し示されるか、文脈および当業者の理解から別段に明らかでない限り、範囲として表す値は、文脈により別段であることが明確に指示されない限り、本発明の異なる実施形態で言明される範囲内で、範囲の下限の単位の10分の1までの、任意の具体的な値または部分範囲を仮定しうる。
「約(About)」および「約(approximately)」とは一般に、測定値の性質および精度を踏まえ、測定される数量について許容可能な程度の誤差を意味するものとする。例示的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の、20パーセント(%)以内、典型的に、10%以内である、より典型的に、5%以内である。
「GDF15タンパク質」または「GDF15抗原」または「GDF15」という用語は、互換的に使用され、異なる種における成長分化因子15(GDF15)タンパク質を指す。例えば、表1で示される配列番号1(NCBI基準配列:NP_004855.2)は、ヒトGDF15タンパク質の、例示的なアミノ酸配列を提示し、表1で示される配列番号2(NCBI基準配列:NM_004864.2)は、ヒトGDF15をコードする、例示的な核酸配列を提示し、ヒトGDF15については、先行の報告および文献でも記載されており、そこでは、ヒトGDF15はまた、MIC-1、PLAB、TGF-PL、PTGFB、PDF、およびNAG-1としても公知である。「GDF15」という用語は、ヒト、カニクイザル(cyno)、齧歯類、および他の種などの哺乳動物種に由来する、自然発生の分子を含む。
本明細書で記載される抗体は、GDF15の変異体または突然変異体に結合しうる。「GDF15の変異体または突然変異体」という用語は、本明細書で記載される、天然の一次構造(アミノ酸配列)と実質的に同じアミノ酸配列を有する、天然GDF15タンパク質の突然変異体を含む。本明細書の「実質的に同じアミノ酸配列を有する、天然ヒト成長分化因子15(GDF15)タンパク質の突然変異体」という用語は、このような突然変異体タンパク質を指す。
本明細書で使用される「抗体」という用語は、タンパク質、例えば、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む免疫グロブリン鎖またはその断片を指す。「抗体」という用語は、例えば、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する全長抗体を含む)を含む。一実施形態では、抗体は、全長抗体または全長免疫グロブリン鎖を含む。別の実施形態では、抗体は、全長抗体または全長免疫グロブリン鎖の抗原結合性断片(すなわち、「抗原結合性部分」)または機能的断片を含む。
諸実施形態では、全長抗体は、ジスルフィド結合により相互接続される少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、VHと略記する)および重鎖定常領域を含む。本明細書では、「重鎖可変領域」および「重鎖可変ドメイン」という用語が、互換的に使用される。重鎖定常領域は、3つのドメインであるCH1、CH2、およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、VLと略記する)および軽鎖定常領域を含む。本明細書では、「軽鎖可変領域」および「軽鎖可変ドメイン」という用語が、互換的に使用される。軽鎖定常領域は、1つのドメインであるCLを含む。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称するより保存的な領域を散在させた、相補性決定領域(CDR)と称する超可変性の領域へとさらに細分することができる。各VHおよび各VLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと、以下の順序で配置される3つのCDRおよび4つのFR:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4からなる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、宿主組織または免疫系の多様な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(Clq)を含む因子への結合を媒介しうる。
ある実施形態では、抗体は、単一特異性抗体であり、単一のエピトープに結合する。例えば、それらの各々が同じエピトープに結合する、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を有する単一特異性抗体である。
ある実施形態では、抗体は、多特異性抗体である、例えば、抗体は、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、この場合、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列のうちの第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第1のエピトープに対する結合特異性を有し、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列のうちの第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第2のエピトープに対する結合特異性を有する。ある実施形態では、第1のエピトープと、第2のエピトープとは、同じ抗原上、例えば、同じタンパク質(または多量体タンパク質のサブユニット)上にある。ある実施形態では、第1のエピトープと、第2のエピトープとは、重複する。ある実施形態では、第1のエピトープと、第2のエピトープとは、重複しない。ある実施形態では、第1のエピトープと、第2のエピトープとは、異なる抗原上、例えば、異なるタンパク質(または多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。ある実施形態では、多特異性抗体分子は、第3の、第4の、または第5の免疫グロブリン可変ドメインを含む。ある実施形態では、多特異性抗体は、二特異性抗体、三特異性抗体、または四特異性抗体である。
ある実施形態では、多特異性抗体分子は、二特異性抗体分子である。二特異性抗体は、2つを超えない抗原に対する特異性を有する。二特異性抗体分子は、第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列が、第1のエピトープに対する結合特異性を有し、第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列が、第2のエピトープに対する結合特異性を有することを特徴とする。
本明細書で使用される、抗体の「抗原結合性部分」または「抗原結合性断片」という用語は、所与の抗原(例えば、ヒトGDF15)に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結合性機能は、インタクトな抗体の断片により果たされうる。抗体の抗原結合性部分または抗原結合性断片という用語内に包含される結合性断片の例は、(i)Fab断片、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなる一価断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなるダイアボディ(dAb)断片;(vi)ラクダ科動物可変ドメインまたはラクダ化可変ドメイン;(vii)単鎖Fv(scFv)(例えば、Birdら、(1988) Science 242:423~426;およびHustonら、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879~5883を参照されたい);(viii)VHドメインまたはVLドメインからなる単一ドメイン抗体(dAb)断片(Wardら、1989 Nature 341:544~546);ならびに(ix)単離相補性決定領域(CDR)を含む。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技法を使用して得ることができ、断片も、インタクトな抗体と同じ形で有用性についてスクリーニングされる。
さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLドメインおよびVHドメインは、個別の遺伝子によりコードされるが、組換え法を使用して、それらを単一のタンパク質鎖として作製することを可能とする人工のペプチドリンカーにより付着することができ、この場合、VL領域およびVH領域は、対合して一価分子(単鎖Fv(scFv)として公知であり、例えば、Birdら、1988 Science 242:423~426;およびHustonら、1988 Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879~5883を参照されたい)を形成する。このような単鎖抗体は、抗体の1つまたは複数の抗原結合性部分または抗原結合性断片を含む。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技法を使用して得られ、断片も、インタクトな抗体と同じ形で有用性についてスクリーニングされる。
抗原結合性断片はまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、およびbis-scFv(例えば、HollingerおよびHudson、2005、Nature Biotechnology、23、9、1126~1136を参照されたい)へと組み込むこともできる。抗体の抗原結合性部分は、III型フィブロネクチン(Fn3)などのポリペプチド(フィブロネクチンポリペプチドモノボディについて記載する米国特許第6,703,199号明細書を参照されたい)に基づく足場へとグラフトすることができる。
抗原結合性断片は、相補的な軽鎖ポリペプチドと併せて抗原結合性領域の対を形成する、タンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)の対を含む単鎖分子へと組み込むことができる(Zapataら、1995 Protein Eng. 8(10):1057~1062;および米国特許第5,641,870号明細書)。
ある実施形態では、抗体は、ダイアボディおよび単鎖分子のほか、抗体(例えば、Fab、F(ab’)2、およびFv)の抗原結合性断片を含む。例えば、抗体は、重(H)鎖可変ドメイン配列(本明細書では、VHと略記する)と、軽(L)鎖可変ドメイン配列(本明細書では、VLと略記する)とを含みうる。ある実施形態では、抗体は、重鎖および軽鎖を含むか、またはこれらからなる。別の例では、抗体は、2つの重(H)鎖可変ドメイン配列と、2つの軽(L)鎖可変ドメイン配列とを含み、これにより、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、Fd、Fd’、Fv、単鎖抗体(例えば、scFv)、単一可変ドメイン抗体、ダイアボディ(Dab)(二価および二特異性)、および全抗体の修飾により作製される場合もあり、組換えDNA技術を使用してデノボで合成された抗体の場合もある、キメラ(例えば、ヒト化)抗体など、2つの抗原結合性部位を形成する。これらの機能的な抗体断片は、それらのそれぞれの抗原または受容体と選択的に結合する能力を保持する。抗体および抗体断片は、IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgEを含むがこれらに限定されない、任意のクラスの抗体、および任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)の抗体に由来しうる。抗体の調製物は、モノクローナル抗体分子の場合もあり、ポリクローナル抗体分子の場合もある。抗体はまた、ヒト抗体、ヒト化抗体、CDRグラフト抗体、またはin vitroで作り出された抗体でもありうる。抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から選択される重鎖定常領域を有しうる。抗体はまた、例えば、カッパまたはラムダから選択される軽鎖も有しうる。本明細書では、「免疫グロブリン」(Ig)という用語が、「抗体」という用語と互換的に使用される。
本明細書で使用される「アフィニティー」という用語は、単一の抗原性部位における抗体と抗原との間の相互作用の強度を指す。各抗原性部位内では、抗体「アーム」の可変領域は、多数の部位において、弱い非共有結合的力を介して抗原と相互作用し、相互作用が大きいほど、アフィニティーは強くなる。抗体またはその抗原結合性断片(例えば、Fab断片)について本明細書で使用される「高アフィニティー」という用語は一般に、10-9M以下のKDを有する抗体または抗原結合性断片を指す。
「アミノ酸」という用語は、自然発生のアミノ酸および合成アミノ酸のほか、自然発生のアミノ酸と同様の形で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体も指す。自然発生のアミノ酸とは、遺伝子コードによりコードされるアミノ酸のほか、後で修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンでもある。アミノ酸類似体とは、自然発生のアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムに結合したアルファ炭素を有する化合物を指す。このような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、自然発生のアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、自然発生のアミノ酸と同様の形で機能する化学化合物を指す。
本明細書で使用される「結合特異性」という用語は、1つの抗原決定基だけと反応する個別の抗原結合部位の能力を指す。
抗体(例えば、GDF15結合性抗体)に「特異的に(または選択的に)結合する」という語句は、タンパク質および他の生体物質の異質な集団内のコグネイト抗原(例えば、ヒトGDF15またはカニクイザルGDF15)の存在を決定する結合反応を指す。本明細書では、「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という語句は、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と互換的に使用される。
「GDF15を媒介する」という用語は、GDF15が、TGFβスーパーファミリーの食欲調節メンバーとして公知であり、GDF15レベルの上昇が、食欲不振(例えば、食欲不振-悪液質)など、消耗性障害と関連するという事実を指す。
本明細書で使用される「GDF15関連障害」、「GDF15関連状態」、または同様の用語は、GDF15のレベルおよび/または生物学的活性の低減が求められる、任意の数の状態または疾患を指す。これらの状態は、食欲不振-悪液質、老年性食欲不振、神経性食欲不振、がんと関連する悪液質、AIDSと関連する悪液質、心不全と関連する悪液質、嚢胞性線維症と関連する悪液質、関節リウマチと関連する悪液質、腎疾患と関連する悪液質、COPDと関連する悪液質、ALSと関連する悪液質、腎不全と関連する悪液質、または股関節骨折と関連する悪液質などの消耗性障害を伴う状態を含むがこれらに限定されない。
GDF15レベルの上昇と関連するか、またはこれから生じる、他のGDF15関連疾患またはGDF15関連障害は、サルコペニア、例えば、悪液質と関連する臨床状態であって、骨格筋量および筋強度の減少を特徴とする臨床状態と;飢餓とを含む。飢餓は、典型的に、不十分な食餌および/または栄養の取込みに起因する、体脂肪量および除脂肪量(non-fat mass)の減少を結果としてもたらす(Thomas (2007) Clinical Nutrition 26:389~399)。飢餓の影響は、食餌と、栄養、例えば、タンパク質の取込みとを改善することにより反転することが多い。
GDF15レベルの上昇と関連するか、またはこれから生じる、さらに他のGDF15関連疾患またはGDF15関連障害は、食欲、脂肪量、エネルギー平衡の異常、および/または不随意の体重減少と関連する障害、ならびに重篤な疾病患者の死亡率および罹患率の低減を含むがこれらに限定されない。
本明細書で使用される「悪液質」とは、基礎疾患と関連し、筋肉量の不随意的減少を特徴とする、代謝性症候群を意味する。悪液質は、不随意的体重減少、脂肪量の減少、食欲不振、炎症、インスリン抵抗性、疲労、筋力低下、食欲の著明な喪失、および/または筋肉タンパク質分解の増大を伴うことが多い。悪液質は、飢餓、加齢と関連する筋肉量の減少、吸収不良、および甲状腺機能亢進と異なる。悪液質と関連する基礎疾患は、がん、慢性心不全、慢性腎疾患、COPD、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、敗血症、または結核を含む。
本明細書で使用される「サルコペニア」とは、主に、骨格筋量および筋強度の減少を特徴とする、状態であると理解される。サルコペニアは、しばしば、老化と関連する。RueggおよびGlass (2011) Annual Rec. Pharmacol. Toxicol. 51:373~395を参照されたい。1つの手法では、メートル単位の対象の身長で除した、対象の四肢骨格筋量の値が、若齢者の正常平均値を、2標準偏差下回ると、対象において、サルコペニアを同定することができる(Thomas (2007) Clin Nutr. 26(4):389~99; Baumgartnerら、(1999) Mech. Aging Dev. 147:755~763)。
「キメラ抗体」という用語は、(a)抗原結合性部位(可変領域)を、クラス、エフェクター機能、および/もしくは種が異なるか、またはクラス、エフェクター機能、および/もしくは種を改変された定常領域、あるいはキメラ抗体に新たな特性を付与する全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などへと連結するように、定常領域またはその一部を、改変するか、置きかえるか、または交換した抗体分子;あるいは(b)可変領域またはその一部を、抗原特異性が異なるか、または抗原特異性を改変された可変領域により改変するか、置きかえるか、またはこれと交換した抗体分子である。例えば、マウス抗体は、その定常領域を、ヒト免疫グロブリンに由来する定常領域で置きかえることにより修飾することができる。ヒト定常領域による置きかえに起因して、キメラ抗体は、ヒトにおける抗原性を、元のマウス抗体と比較して低減しながら、抗原の認識におけるその特異性を保持しうる。
「保存的に修飾された変異体」という用語は、アミノ酸配列および核酸配列のいずれにも適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体とは、同一なアミノ酸配列もしくは本質的に同一なアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は、本質的に同一な配列を指す。遺伝子コードの縮重性のために、多数の機能的に同一な核酸が、所与の任意のタンパク質をコードする。例えば、コドンであるGCA、GCC、GCG、およびGCUのいずれも、アミノ酸であるアラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより指定されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを改変せずに、コドンを、記載された対応するコドンのうちのいずれかへと改変することができる。このような核酸変異は、保存的に修飾された変異のうちの1種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする、本明細書のあらゆる核酸配列はまた、核酸のあらゆる可能なサイレント変異についても記載する。当業者は、核酸内の各コドン(通常メチオニンだけのコドンであるAUG、および通常トリプトファンだけのコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一な分子をもたらしうることを認識するであろう。したがって、記載される各配列内では、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異が含意されている。
ポリペプチド配列では、「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸の、化学的に類似するアミノ酸による置換を結果としてもたらす、ポリペプチド配列への個別の置換、欠失、または付加を含む。当技術分野では、機能的に類似するアミノ酸を提示する保存的置換表が周知である。このような保存的に修飾された変異体は、本開示の多型変異体、種間相同体、および対立遺伝子に追加されるものであり、これらを除外するものではない。以下の8つの群:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)は、互いに対して保存的置換であるアミノ酸を含有する(例えば、Creighton、Proteins(1984)を参照されたい)。いくつかの実施形態では、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特徴にそれほど大きな影響を及ぼしたりこれを改変したりしないアミノ酸修飾を指すのに使用する。
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的な結合が可能なタンパク質決定基を意味する。エピトープは通例、アミノ酸または糖側鎖など、化学的に活性な表面分子群からなり、通例、特異的な三次元構造特徴のほか、特異的な電荷特徴も有する。コンフォメーショナルエピトープと非コンフォメーショナルエピトープとは、前者への結合は、変性溶媒の存在下で失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク領域およびCDR領域のいずれもが、ヒト由来の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図する。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域もまた、このようなヒト配列、例えば、ヒト生殖細胞系列配列またはヒト生殖細胞系列配列の突然変異させたバージョンに由来する。本明細書で記載されるヒト抗体は、ヒト配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroにおけるランダム突然変異誘発もしくは部位特異的突然変異誘発により導入された突然変異、またはin vivoにおける体細胞突然変異により導入された突然変異)を含みうる。
「ヒト化」抗体とは、ヒトにおける治療剤として投与される場合の免疫原性は小さいが、非ヒト抗体、例えば、マウスモノクローナル抗体の抗原特異的反応性を保持する抗体である。例えば、Robelloら、Transplantation, 68: 1417~1420を参照されたい。これは、例えば、非ヒト抗原結合性領域を保持し、抗体の残りの部分を、それらのヒト対応物(すなわち、定常領域ならびに可変領域の結合に関与しない部分)で置きかえることにより達成することができる。例えば、Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81:6851~6855、1984; MorrisonおよびOi、Adv. Immunol.、44:65~92、1989; Verhoeyenら、Science、239:1534~1536、1988; Padlan、Molec. Immun.、28:489~498、1991;およびPadlan、Molec. Immun.、31:169~217、1994を参照されたい。ヒト操作技術の他の例は、US5,766,886において開示されているXoma技術を含むがこれらに限定されない。
2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における「同一な」または「同一性」パーセントという用語は、2つ以上の配列または部分配列が同じであることを指す。以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、または手作業のアライメントおよび目視により測定される比較域または指定領域にわたり、最大の対応性について比較され、配列決定された場合の、2つの配列の、指定された百分率のアミノ酸残基またはヌクレオチドが同じであれば(すなわち、指定される領域にわたる、または、指定されない場合は、配列全体にわたる、60%の同一性、任意選択で、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%の同一性を有すれば)、2つの配列は「実質的に同一」である。任意選択で、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド(または10アミノ酸)の長さの領域にわたり、またはより好ましくは、100~500、または1000ヌクレオチド以上(または20、50、または200アミノ酸以上)の長さの領域にわたり存在する。
配列比較では、1つの配列が、それに照らして被験配列を比較する基準配列として働くことが典型的である。配列比較アルゴリズムを使用する場合、被験配列および基準配列をコンピュータへと入力し、必要な場合は、部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用することもでき、代替的なパラメータを指定することもできる。次いで、配列比較アルゴリズムにより、プログラムパラメータに基づき、被験配列について、基準配列と比べた配列同一性パーセントを計算する。
本明細書で使用される「比較域」は、2つの配列を最適に配列決定した後で、配列を、同じ数の連続的な位置による基準配列と比較しうる、20~600、通例約50~約200、より通例では、約100~約150からなる群から選択される連続的な位置の数のうちのいずれか1つによるセグメントに対する言及を含む。当技術分野では、比較のための配列アライメント法が周知である。比較のための最適な配列アライメントは、例えば、SmithおよびWaterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cによる局所相同性アルゴリズムにより行うこともでき、NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol. 48:443、1970による相同性アライメントアルゴリズムにより行うこともでき、PearsonおよびLipman、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444、1988による類似性検索法(search for similarity method)により行うこともでき、これらアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)により行うこともでき、手作業のアライメントおよび目視(例えば、Brentら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, Inc.(Ringbou編、2003)を参照されたい)により行うこともできる。
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定するのに適するアルゴリズムの2つの例は、それぞれ、Altschulら、Nuc. Acids Res. 25:3389~3402、1977;およびAltschulら、J. Mol. Biol. 215:403~410、1990において記載されている、BLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationにより公表されている。このアルゴリズムは、データベース配列内の同じ長さのワードで配列決定したときに、ある正の値の閾値スコアTにマッチするかまたはこれを満たす、クエリー配列内の短いワード長Wを同定することにより、高スコア配列対(HSP)をまず同定することを伴う。Tを、隣接ワードスコア閾値(Altschulら、前出)と称する。これらの初期の隣接ワードヒットが、これらを含有するより長いHSPを見出す検索を開始するためのシードとして働く。累積アライメントスコアが増大しうる限りにおいて、ワードヒットを、各配列に沿っていずれの方向にも拡張する。累積スコアは、ヌクレオチド配列では、パラメータM(マッチする残基の対についてのリウォードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基についてのペナルティースコア;常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列では、スコアリングマトリックスを使用して、累積スコアを計算する。累積アライメントスコアが、達成されたその最大値から量Xだけ低下した場合;1つまたは複数の負スコア残基のアライメントの累積のために、累積スコアが、ゼロ以下に低下した場合;または配列のいずれかの末端に達した場合は、各方向へのワードヒットの拡張を停止させる。BLASTアルゴリズムパラメータであるW、T、およびXにより、アライメントの感度および速度が決定される。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)では、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4をデフォルトとして使用し、両方の鎖の比較を行う。アミノ酸配列のためのBLASTPプログラムでは、3のワード長、および10の期待値(E)、および50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915、1989を参照されたい)アライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4をデフォルトとして使用し、両方の鎖の比較を行う。
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列の間の類似性についての統計学的解析(例えば、KarlinおよびAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873~5787、1993を参照されたい)も実施する。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間のマッチングが偶然に生じる確率の指標をもたらす最小合計確率(P(N))である。例えば、被験核酸を基準核酸に照らして比較したときの最小合計確率が約0.2未満であり、より好ましくは、約0.01未満であり、最も好ましくは、約0.001未満であれば、核酸は基準配列と類似すると考えられる。
2つのアミノ酸配列の間の同一性パーセントはまた、PAM120重みづけ残基表、12のギャップ長ペナルティー、および4のギャップペナルティーを使用するALIGNプログラム(バージョン2.0)へと組み込まれた、E. MeyersおよびW. Miller(Comput. Appl. Biosci.、4:11~17、1988)によるアルゴリズムを使用しても決定することができる。加えて、2つのアミノ酸配列の間の同一性パーセントは、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重みづけ、および1、2、3、4、5、または6の長さ重みづけを使用する、GCGソフトウェアパッケージ(インターネット上のgcg.comで入手可能である)内のGAPプログラムへと組み込まれた、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol, Biol. 48:444~453、1970)によるアルゴリズムを使用しても決定することができる。
上記で言及した配列同一性百分率以外の、2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であることの別の指標は、下記で記載される通り、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドに対する抗体と免疫学的に交差反応性であることである。したがって、例えば、2つのペプチドが保存的置換だけによって異なる場合、ポリペプチドは、第2のポリペプチドと実質的に同一なことが典型的である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、下記で記載される通り、2つの分子またはそれらの相補体が、厳密な条件下で、互いとハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であることのさらに別の指標は、同じプライマーを使用して配列を増幅しうることである。
「単離抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、GDF15に特異的に結合する単離抗体は、GDF15以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、GDF15に特異的に結合する単離抗体は、他の抗原に対する交差反応性を有しうる。さらに、単離抗体は、他の細胞内物質および/または化学物質を実質的に含まない場合もある。
「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によりもたらされる抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG1またはIgG4などのIgG)を指す。アイソタイプはまた、これらのクラスのうちの1つの修飾バージョンも含み、その修飾は、Fc機能を改変する、例えば、エフェクター機能またはFc受容体への結合を増強または低減するように施されている。
本明細書で使用される「Kassoc」または「Ka」という用語が、特定の抗体-抗原間相互作用の会合速度を指すことを意図するのに対し、本明細書で使用される「Kdis」または「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原間相互作用の解離速度を指すことを意図する。本明細書で使用される「KD」という用語は、KdのKaに対する比(すなわち、Kd/Ka)から得られる解離定数を指すことを意図し、モル濃度(M)として表す。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKDを決定するための方法は、Biacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用して表面プラズモン共鳴を測定するか、または溶液平衡滴定(SET)により溶液中のアフィニティーを測定するステップを含む。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一の分子組成による抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性およびアフィニティーを提示する。
本明細書では、「核酸」という用語が、「ポリヌクレオチド」という用語と互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらの一本鎖形態または二本鎖形態におけるポリマーを指す。「核酸」という用語は、公知のヌクレオチド類似体または修飾骨格残基もしくは修飾連結を含有する核酸であって、合成の核酸、自然発生の核酸、および非自然発生の核酸であり、基準核酸と同様の結合特性を有し、基準ヌクレオチドと同様の形で代謝される核酸を包含する。このような類似体の例は、限定なしに述べると、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)を含む。
別段に指し示されない限りにおいて、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたその変異体(例えば、縮重コドン置換)および相補的配列も暗示的に包含するほか、明示的に指し示される配列も包含する。とりわけ、下記で詳述される通り、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作り出すことにより達成することができる(Batzerら、Nucleic Acid Res. 19:5081、1991; Ohtsukaら、J. Biol. Chem. 260:2605~2608、1985;およびRossoliniら、Mol. Cell. Probes 8:91~98、1994)。
「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチド(例えば、DNA)セグメントの間の機能的関係を指す。「作動可能に連結された」という用語は、転写調節配列の、転写される配列に対する機能的関係を指すことが典型的である。例えば、プロモーター配列またはエンハンサー配列は、それが、適切な宿主細胞内または他の発現系内のコード配列の転写を刺激またはモジュレートするとき、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、転写される配列に作動可能に連結されたプロモーター転写調節配列は、転写される配列と物理的に隣接する、すなわち、シス作用型である。しかし、エンハンサーなど、一部の転写調節配列は、その転写をそれらが増強するコード配列に物理的に隣接する必要も、近接して配置される必要もない。
本明細書で使用される「最適化された」という用語は、ヌクレオチド配列を、産生細胞または産生生物、一般に、真核細胞、例えば、ピキア(Pichia)属細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、またはヒト細胞において好ましいコドンを使用してアミノ酸配列をコードするように改変していることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、「親」配列としてもまた公知の出発ヌクレオチド配列により本来コードされるアミノ酸配列を、完全に、または可能な限り多く保持するように操作する。本明細書の最適化された配列は、哺乳動物細胞において好ましいコドンを有するように操作されている。しかし、本明細書ではまた、他の真核細胞または原核細胞におけるこれらの配列の最適化された発現も企図される。最適化されたヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列もまた、最適化されていると称する。
本明細書では、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語が、アミノ酸残基のポリマーを指すように互換的に使用される。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する自然発生のアミノ酸の人工の化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーのほか、自然発生のアミノ酸ポリマーおよび非自然発生のアミノ酸ポリマーにも適用される。別段に指し示されない限りにおいて、特定のポリペプチド配列はまた、保存的に修飾されたその変異体も暗示的に包含する。
本明細書で使用される「組換えヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルである動物(例えば、マウス)またはこれにより調製されるハイブリドーマから単離される抗体、ヒト抗体を発現させるように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離される抗体、組換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、およびヒト免疫グロブリン遺伝子配列の全部または一部の、他のDNA配列へのスプライシングを伴う、他の任意の手段により調製されるか、発現させるか、創出されるか、または単離される抗体など、組換え手段により調製されるか、発現させるか、創出されるか、または単離される、全てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域およびCDR領域が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかし、ある種の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、in vitroの突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックである動物を使用する場合は、in vivoの体細胞突然変異誘発)にかけることができ、したがって、組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVH配列およびVL配列に由来し、これらに関連するが、in vivoのヒト抗体の生殖細胞系列レパートリー内で天然には存在しない可能性がある配列である。
「組換え宿主細胞」(または、簡単に、「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベクターを導入した細胞を指す。このような用語は、特定の対象細胞だけを指すことを意図するものではなく、このような細胞の子孫細胞も指すことを意図するものであることを理解されたい。後続する世代では、突然変異または環境的影響に起因して、ある種の修飾が生じうるため、このような子孫細胞は、実のところ、親細胞と同一ではない可能性もあるが、やはり本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、非ヒト霊長動物(例えば、カニクイザル)、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類など、全ての脊椎動物(例えば、哺乳動物および非哺乳動物)を含む。特記される場合を除き、本明細書では、「患者」または「対象」という用語が互換的に使用される。本明細書で使用される「カニクイザル(cyno)」または「カニクイザル(cynomolgus)」という用語は、カニクイザル(cynomolgus monkey)(カニクイザル(Macaca fascicularis))を指す。
本明細書で使用される、任意の疾患または障害(例えば、GDF15関連障害)「~を処置すること」またはこれらの「処置」という用語は、疾患または障害を改善すること(すなわち、疾患またはその臨床症状のうちの少なくとも1つの発症を緩徐化するか、停止させるか、または軽減すること)を指す。別の実施形態では、「~を処置すること」または「処置」とは、患者により識別可能でない可能性があるパラメータを含む少なくとも1つの物理的パラメータを緩和または改善することを指す。さらに別の実施形態では、「~を処置すること」または「処置」とは、疾患または障害を、物理的にモジュレートする(例えば、識別可能な症状の安定化)か、生理学的にモジュレートする(例えば、物理的パラメータの安定化)か、または物理的かつ生理学的にモジュレートすることを指す。さらに別の実施形態では、「~を処置すること」または「処置」とは、疾患または障害の発生または発症または進行を防止するかまたは遅延させることを指す。
例えばGDF15関連障害を含む、本明細書で記載される適応に関する場合の「防止」とは、例えば、前記悪化の危険性がある患者における、下記で記載される、GDF15関連疾患パラメータの悪化を防止または緩徐化する任意の作用を意味する。
「ベクター」という用語は、それが連結された別のポリヌクレオチドを輸送することが可能なポリヌクレオチド分子を指すことを意図する。ベクターのうちの1つの種類は、さらなるDNAセグメントをライゲーションしうる、環状の二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。ベクターの別の種類は、さらなるDNAセグメントを、ウイルスゲノムへとライゲーションしうる、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVまたはAAV2)などのウイルスベクターである。ある種のベクター(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよび哺乳動物のエピソームベクター)は、それらが導入された宿主細胞における自己複製が可能である。他のベクター(例えば、非哺乳動物のエピソームベクター)は、宿主細胞へと導入すると、宿主細胞のゲノムへと組み込むことができ、これにより、宿主ゲノムと共に複製する。さらに、ある種のベクターは、それらが作動的に連結された遺伝子の発現を方向付けることが可能である。本明細書では、このようなベクターを、「組換え発現ベクター」(または簡単に、「発現ベクター」)と称する。一般に、組換えDNA法において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態にあることが多い。プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」とを互換的に使用することができる。しかし、本開示は、同等な機能をもたらすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)など、発現ベクターの他の形態も含むことを意図する。
表についての簡単な記載
表1は、抗GDF15抗体分子のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列についての概要である。重鎖CDRおよび軽鎖CDRのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列、重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列、ならびに重鎖および軽鎖のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を、この表に示す。
表2は、本明細書で記載される抗GDF15抗体の結合特徴についての概要である。各抗体について、以下のパラメータ:同定されるリガンドの各々に対する、ka(1/M秒)、kd(1/秒)、KD(M)、およびRmax(RU)を提示する。
表3は、SETまたはBiacoreにより決定される、ABGDF-A~ABGDF-GのKD値についての概要である。
表4は、ABGDF-A~ABGDF-GのpI値についての概要である。
発明の詳細な説明
本開示は、部分的に、GDF15に特異的に結合し、その消耗に関連する影響、レベル、および/もしくは活性、ならびに病理学的影響、病理学的レベル、および/もしくは病理学的活性、例えば、疾患状態において、食欲を低減し、かつ/または食物摂取、体重、および/もしくは脂肪量を低減するその能力を阻害する抗体分子の発見に基づく。本明細書では、全長IgGフォーマット抗体(例えば、ヒト抗体)、ならびにFab断片など、その抗原結合性断片の両方(例えば、抗体の、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、およびABGDF15-D)が提示される。
本明細書で記載される抗GDF15抗体分子は、GDF15、例えば、GDF15のナックルドメインのC末端領域に結合することが可能である。実施例5で開示される通り、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、およびABGDF15-Dは、ヒトGDF15のナックルドメインに結合する。図6は、ナックルドメインの突然変異である、L294RまたはI285Rが存在すると、ABGDF15-A、ABGDF15-D、ABGDF15-E、ABGDF15-F、またはABGDF15-Gの、ヒトGDF15への結合が失われたことを示す。同様に、図6は、ナックルドメインの突然変異である、I285RまたはS231Rが存在すると、ABGDF15-BまたはABGDF15-Cの、ヒトGDF15への結合が失われたことを示す。これと比較して、ヒトGDF15のN末端の切断、ならびにリストドメイン内の突然変異(Q247R、W228R、M253R、およびQ295R)、フィンガーチップ領域内の突然変異(D289R)、およびバックオブハンドドメイン内の突然変異(S278R)は、例示的な抗GDF15抗体分子の結合に対して影響を及ぼさなかった。
理論に束縛されることを望まずに述べると、ある種の実施形態では、GDF15のC末端領域(例えば、ナックルドメイン)への特異的な結合は、少なくとも部分的に、本明細書で記載される抗GDF15抗体分子の生物学的機能および/または臨床的効果を付与すると考えられる。
実施例6で示されている通り、ナックルドメイン結合性抗体分子、すなわち、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、およびABGDF15-Dは、マウス食欲不振モデルで裏付けられる通り、GDF15を媒介する体重減少を反転させた。本明細書で記載される抗GDF15抗体分子を使用して、例えば、GDF15関連障害を処置することもでき、食欲および/または食物摂取を増大させることもでき、体重を増大させることもでき、体重、筋肉量、食欲、または食物摂取の減少のうちの1つまたは複数を阻害または軽減することもできる。例えば、食欲不振、サルコペニア、または老化、がん、心不全、COPD、および/もしくは腎不全と関連する悪液質のうちの1つもしくは複数を有する対象、または消耗性障害を有する対象は、本明細書で記載される抗体分子で処置することができる。本明細書で記載される抗体分子はまた、がん、慢性心不全、慢性腎疾患、COPD、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、敗血症、または結核を有する対象の処置にも適する。
したがって、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体(例えば、ヒトGDF15)、医薬組成物、このような抗体および組成物の作製方法および使用方法が提示される。
GDF15タンパク質
本明細書では、GDF15に特異的に結合し、その生物学的活性を阻害し、かつ/または遊離GDF15を循環から枯渇させる抗体が提示される。
成長分化因子15(GDF15)は、TGFβスーパーファミリーの分岐メンバーであり、また、マクロファージ阻害性サイトカイン1(MIC1)(Bootcov MR, 1997, Proc Natl Acad Sci 94: 11514-9)、胎盤骨形成因子(PLAB)(Hromas R 1997, Biochim Biophys Acta. 1354:40-4)、胎盤形質転換成長因子ベータ(PTGFB)(Lawton LN 1997, Gene. 203: 17-26)、前立腺由来因子(PDF)(Paralkar VM 1998, J Biol Chem. 273: 13760-7)、および非ステロイド系抗炎症薬活性化遺伝子(NAG-1)(Baek SJ 2001, J Biol Chem. 276: 33384- 92)とも称する。成熟GDF15ペプチドは、他のファミリーメンバーと共有する相同性が小さい(Katoh M 2006, Int J Mol Med. 17:951-5)。GDF15は、大型の前駆体タンパク質として合成され、これが、二塩基性の切断部位で切断され、カルボキシ末端の成熟ペプチドを放出する。ヒト全長前駆体は、308アミノ酸を含有するが、RGRRRAR(配列番号185)切断部位で切断されて、成熟GDFペプチドをもたらす。自然発生のGDF15は、1つの鎖間ジスルフィド結合により、共有結合的に連結された成熟ペプチドの、25KDのホモ二量体である。GDF15は、多数の異なる生理学的状態および病理学的状態と関与性であることが報告されている。例えば、GDF15ノックアウトマウスおよびGDF15トランスジェニックマウスについての研究は、GDF15が、虚血/再灌流または過負荷に誘導される心損傷に対して保護的であることが可能であり(Kempf T, 2006, Circ Res. 98:351-60)(Xu J, 2006, Circ Res. 98:342-50)、老化と関連する、運動ニューロンの喪失および感覚ニューロンの喪失に対して保護的であることが可能であり(Strelau J, 2009, J Neurosci. 29: 13640-8)、腎臓における代謝性アシドーシスに対して、軽微に保護的であることが可能であり、がん患者において、悪液質を引き起こしうる(Johnen H 2007 Nat Med. 11: 1333-40)ことを示唆する。GDF15はまた、腸および肺において、発がん物質(またはApc突然変異)により誘導される新生物に対して保護的であることも報告されている(Baek SJ 2006, Gastroenterology. 131: 1553-60; Cekanova M 2009, Cancer Prev Res 2:450-8)。
GDF15は、例えば、フィンガードメイン、ナックルドメイン、リストドメイン、N末端のループドメイン、およびバックオブハンドドメインを含む、複数のドメインを含有する。機能に不可欠なドメインおよび残基を解明するように、一連の構造誘導性部位指向突然変異体をデザインした(例えば、国際公開第2015198199号パンフレットを参照されたい)。
GDF15のアミノ末端領域を破壊するGDF15類似体、例えば、マウス血清アルブミン(MSA)-GDF15(211~308)およびMSA-GDF15(C203S、C210S)が、やはり、生物学的活性を保持することから、このループは、活性に要求されないことが指し示される。
TGFベータスーパーファミリーメンバーのナックル領域、フィンガー領域、およびリスト領域は、受容体の結合およびシグナル伝達に重要であることが公知である。GDF15のこれらの領域が、活性に重要であるのかどうかを決定するために、鍵となる表面残基を、大型の側鎖を含有するアミノ酸であるアルギニンへと突然変異させて、機能の喪失を誘導しようと試みた(例えば、国際公開第2015198199号パンフレットを参照されたい)。GDF15の残基である、ロイシン294(ナックル)、アスパラギン酸289(フィンガー)、グルタミン247(リスト)、およびセリン278(バックオブハンド)に突然変異を含有するMSA-GDF15融合タンパク質を作製し、次いで、肥満マウスへと皮下投与した(例えば、3mg/kgでs.c.投与した)。MSA-GDF15の単回の皮下注射は、7日間にわたり、食物摂取を、媒体対照と比較して30%低減した。食物摂取は、フィンガー領域突然変異体(D289R)、リスト突然変異体(Q247R)、およびバックオブハンド突然変異体(S278R)によってもまた、対照と比べて、それぞれ、22、14、および24%低減された。これと比較して、ナックル領域突然変異体(L294R)は、食物摂取を、対照と比べて、17%増大させた。7日間にわたり、媒体処置マウスおよびL294R処置マウスでは、体重が増大した(それぞれ、2.2および6.3%)のに対し、MSA-GDF15処置マウス、MSA-GDF15(D289R)処置マウス、MSA-GDF15(Q247R)処置マウス、およびMSA-GDF15(S278R)処置マウスでは、それぞれ、6.6、5.7、5.7、および5.4%体重が低下した。これらのデータは、GDF15(L294など)のナックル領域が、活性に重要であることを指し示す。GDF15の他の領域内の突然変異は一般に、許容される。
GDF15は、特に、がんにおいて、食欲減退作用を及ぼす(Brown D. A. Clinical Cancer Res 2003; 9:2642~2650; Koopmann J. Clinical Cancer Res 2006; 12:442~446)。がん、および慢性腎不全または慢性心不全など、他の疾患における、循環MIC-1/GDF15レベルの実質的上昇は、ボディーマスインデックスの低下と関連する(Breit S.N.ら、Growth factors 2011; 29:187~195; Johnen H.ら、Nat Med. 2007; 13:1333~1340)ことから、疾患の炎症における役割以外に、MIC-1/GDF15はまた、体重の調節においても役割を果たしうることが示唆される。マウスにおける、長期にわたるMIC-1/GDF15の発現の上昇は、正常な食餌条件下および肥満の原因となる食餌条件下のいずれにおいても、共時的な耐糖能の改善と共に、食物摂取、体重、および過脂肪状態の低下をもたらす(Macia L.ら、PloS One 2012; 7(4): e34868)。食物摂取および体重は、様々な中枢因子および末梢因子により制御されているが、これらの過程の背後にある正確な機構は、未だ完全には理解されていない。
悪液質は、複合的で、完全には理解されていない症候群であるが、GDF15が、多様な疾患において、悪液質の重要なメディエーターであることは明らかである(Tsaiら、上述)。少なくとも一部の腫瘍は、GDF15を過剰発現させ、分泌し、血清GDF15レベルの上昇は、多様ながんと関連している(Johnenら、(2007) Nat. Med. 13:1333~1340; Bauskinら、 (2006) Cancer Res. 66:4983~4986)。GDF15に対するモノクローナル抗体は、潜在的な抗悪液質治療剤として認識されている。例えば、米国特許第8,192,735号明細書を参照されたい。
ある種の態様では、ヒトにおける多くの食欲不振-悪液質性状態において、循環GDF15レベルは、顕著に上昇する。特定の実施形態では、GDF15レベルの正常な生理学的範囲の非限定的な例は、約150~1150pg/mL(6~50pM)である。具体的な実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体で処置される対象は、150pg/mLを超える、または1000pg/mLを超える、または1150pg/mLを超えるGDF15レベルを有する。具体的な実施形態では、コミュニティーの老齢者(例えば、65歳以上)集団の中央値の非限定的な例は、約1370(55pM)であり、CVM中央値は、約1740(70pM)である。ある種の実施形態では、妊婦(例えば、妊婦のサンプリングまたは妊婦集団)における、例示的なGDF15レベルは、最高で、約15,000pg/mL(600pM)である。ある種の実施形態では、(i)ベータ-サラセミアに罹患している対象は、非限定的で、例示的なGDF15レベルであって、最高で、約60,000pg/mL(2,400pM)のGDF15レベルを有し;(ii)肺塞栓症に罹患している対象は、非限定的で、例示的なGDF15レベルであって、最高で、約48000pg/mL(1,900pM)のGDF15レベルを有し;(iii)結腸直腸がんに罹患している対象は、非限定的で、例示的なGDF15レベルであって、約10,000pg/mL(400pM)のGDF15レベルを有し;(iv)重度慢性腎疾患に罹患している対象は、非限定的で、例示的なGDF15レベルであって、on平均約8400pg/mL(360pM)のGDF15レベルを有し;(v)膵臓がんに罹患している対象は、非限定的で、例示的な平均GDF15レベルであって、約5388pg/mL(220pM)の平均GDF15レベルを有し;(vi)神経性食欲不振に罹患している対象は、非限定的で、例示的なGDF15レベルであって、最高で、約2000pg/mL(80pM)のGDF15レベルを有し;(vi)2型糖尿病に罹患している対象は、非限定的で、例示的な平均GDF15レベルであって、約1200pg/mL(50pM)の平均GDF15レベルを有し;(vii)肥満に罹患している対象は、非限定的で、例示的な平均GDF15レベルであって、約500pg/mL(20pM)の平均GDF15レベルを有する。
特定の実施形態では、慢性心不全に罹患している対象は、例えば、生存者の症例では、非限定的で、例示的なGDF15レベルであって、最高で、約1,082(802~1,502)(50pM)のGDF15レベルを有するのに対し、非生存者は、非限定的で、例示的なGDF15レベルであって、約1,900(1,357~2,671)pg/mL(80pM)のGDF15レベルを有する。具体的な実施形態では、前立腺がん対象は、非限定的で、例示的なGDF15レベルであって、約12,416pg/mL(500pM)のGDF15レベルを平均で有し、悪液質を経ていない前立腺がん対象の症例では、非限定的で、例示的な平均GDF15レベルは、約3,265pg/mL(130pM)である。
特定の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体および抗原結合性断片は、例えば、GDF15に結合し、これを中和することにより、GDF15のレベルおよび/または生物学的活性を低下させる。具体的な実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体は、GDF15レベルの上昇を特徴とする疾患、例えば、悪液質、サルコペニアなどの急性症状および慢性症状を防止および改善することが予測される。ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体(例えば、ABGDF15-A、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-D、ABGDF15-E、ABGDF15-F、またはABGDF15-G)および抗原結合性断片は、対象における食欲または食物摂取を、例えば、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%増大させる。特定の実施形態では、本明細書で記載される抗GDF15抗体(例えば、ABGDF15-A、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-D、ABGDF15-E、ABGDF15-F、またはABGDF15-G)および抗原結合性断片は、対象における体重を、例えば、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%増大させる。本明細書で記載される抗GDF15抗体および抗原結合性断片は、例えば、GDF15に結合し、これを中和することにより、GDF15のレベルおよび/または生物学的活性を低下させる。これらの抗体は、GDF15レベルの上昇を特徴とする疾患、例えば、悪液質、サルコペニアなどの急性症状および慢性症状を防止および改善することが予測される。
GDF15抗体および抗原結合性断片
GDF15に特異的に結合する抗体、例えば、ヒトGDF15が開示される。前記抗体は、実施例で記載される通りに単離されたヒトモノクローナル抗体およびFabを含むがこれらに限定されない。
本明細書の一態様では、GDF15タンパク質(例えば、ヒトGDF15)に特異的に結合する抗体であって、配列番号12、38、64、90、116、142、または168のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む抗体が提示される。また、GDF15タンパク質に特異的に結合する抗体であって、前出の表1に列挙されるVH CDRのうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む抗体も提示される。本明細書の一実施形態では、GDF15タンパク質(例えば、ヒトGDF15)に特異的に結合する抗体であって、前出の表1に列挙されるVH CDRのうちのいずれかのアミノ酸配列を有する、1つ、2つ、3つ以上のVH CDRを含む(または、代替的に、これらからなる)抗体が提示される。
一部の実施形態では、GDF15タンパク質に特異的に結合する抗体であって、配列番号25、51、77、103、129、155、または181のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む抗体が提供される。また、GDF15タンパク質(例えば、ヒトGDF15)に特異的に結合する抗体であって、前出の表1に列挙されるVL CDRのうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む抗体も提示される。特に、GDF15タンパク質(例えば、ヒトGDF15)に特異的に結合する抗体であって、前出の表1に列挙されるVL CDRのうちのいずれかのアミノ酸配列を有する、1つ、2つ、3つ以上のVL CDRを含む(または、代替的に、これらからなる)抗体が開示される。
他の抗体は、突然変異させているが、なお、CDR領域内で、表1に記載されている配列内で描示されるCDR領域と、少なくとも60、70、80、85、90、または95パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、本発明の他の抗体は、CDR領域内で、表1に記載されている配列内で描示されるCDR領域と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以下のアミノ酸を突然変異させた、突然変異体のアミノ酸配列を含む。
また、GDF15タンパク質(例えば、ヒトGDF15)に特異的に結合する抗体の、VH、VL、全長重鎖、および全長軽鎖をコードする核酸配列も提示される。このような核酸配列は、哺乳動物細胞内の発現のために最適化することができる(例えば、表1は、本明細書で記載される抗体の重鎖および軽鎖のために最適化された核酸配列を示す)。
表2に提示された測定値は、実施例で記載されるBiacore解析を使用して得た。異なるリガンドを、表2で示されている各抗体について調べた。例えば、以下のリガンド:
天然ヒトGDF15:Peprotechから購入した、天然で産生されるヒトGDF15;
ヒトHis-GDF15:HISタグ付けヒトGDF15;
カニクイザルHis-GDF15:HISタグ付けカニクイザルGDF15;
マウスHis-GDF15:HISタグ付けマウスGDF15;および
ラットHIS GDF15:HISタグ付けラットGDF15
を調べた。
表3は、SETおよびBiacoreに従い、選択された抗GDF15抗体の結合アフィニティー(解離定数)を提示する。
他の抗体は、アミノ酸またはアミノ酸をコードする核酸を突然変異させているが、表1に記載されている配列となお少なくとも60、65、70、75、80、85、90、または95パーセントの同一性を有する抗体を含む。いくつかの実施形態は、可変領域内で、実質的に同じ抗原結合活性を保持しながら、表1に記載されている配列内で描示された可変領域と比較した場合に、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以下のアミノ酸を突然変異させている、突然変異体のアミノ酸配列を含む。
これらの抗体の各々は、GDF15に結合しうるので、VH配列、VL配列、全長軽鎖配列、および全長重鎖配列(アミノ酸配列と、アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と)を「混合し、マッチさせて」、本明細書に記載の他のGDF15結合性抗体を創出することができる。このような「混合し、マッチさせた」GDF15結合性抗体および/もしくはFXIa結合性抗体は、当技術分野で公知の結合アッセイ(例えば、ELISAおよび実施例節で記載される他のアッセイ)を使用して調べることができる。これらの鎖を混合し、マッチさせる場合、特定のVH/VL対合に由来するVH配列を、構造的に類似するVH配列で置きかえるものとする。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対合に由来する全長重鎖配列を、構造的に類似する全長重鎖配列で置きかえるものとする。同様に、特定のVH/VL対合に由来するVL配列を、構造的に類似するVL配列で置きかえるものとする。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対合に由来する全長軽鎖配列を、構造的に類似する全長軽鎖配列で置きかえるものとする。
したがって、本明細書の一態様では、配列番号12、38、64、90、116、142、168からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号25、51、77、103、129、155および181からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを有し、GDF15(例えば、ヒトGDF15)に特異的に結合する、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。
より具体的に、ある種の態様では、本明細書では、それぞれ、配列番号12および25;38および51;64および77;90および103;116および129;142および155;または168および181から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを有する、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。ある種の態様では、本明細書では、配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを有する、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。ある種の態様では、本明細書では、配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号51のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを有する、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。ある種の態様では、本明細書では、配列番号64のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを有する、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。ある種の態様では、本明細書では、配列番号90のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号103のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを有する、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。ある種の態様では、本明細書では、配列番号116のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号129のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを有する、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。ある種の態様では、本明細書では、配列番号142のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号155のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを有する、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。ある種の態様では、本明細書では、配列番号168のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号181のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを有する、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。
別の態様では、本明細書では、(i)哺乳動物細胞における発現について最適化されたアミノ酸配列であって、配列番号14、40、66、92、118、144、および170からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む全長重鎖、ならびに哺乳動物細胞における発現について最適化されたアミノ酸配列であって、配列番号27、53、79、105、131、157、および183からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む全長軽鎖を有する単離抗体、または(ii)その抗原結合性部分を含む機能的タンパク質が提示される。より具体的に、ある種の態様では、本明細書では、それぞれ、配列番号14および27;40および53;66および79;92および105;118および131;144および157;または170および183から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖を有する、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。特定の態様では、本明細書では、配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号27のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。特定の態様では、本明細書では、配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号53のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。特定の態様では、本明細書では、配列番号66のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号79のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。特定の態様では、本明細書では、配列番号92のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号105のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。特定の態様では、本明細書では、配列番号118のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号131のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。特定の態様では、本明細書では、配列番号144のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。特定の態様では、本明細書では、配列番号170のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号183のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、単離抗体またはその抗原結合性領域が提示される。
本明細書で使用される「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、抗原特異性および抗原結合アフィニティーを付与する、抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一般に、各重鎖可変領域(HCDR1、HCDR2、HCDR3)内には、3つのCDRがあり、各軽鎖可変領域(LCDR1、LCDR2、LCDR3)内には、3つのCDRがある。
所与のCDRの正確なアミノ酸配列の境界は、Kabatら(1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(「Kabat」番号付けスキーム)、Al-Lazikaniら、(1997) JMB 273, 927-948(「Chothia」番号付けスキーム)により記載されているスキームを含む、周知の多数のスキームのうちのいずれかを使用して、たやすく決定することができる。
例えば、Kabatによれば、重鎖可変ドメイン(VH)内の抗体であるABGDF15-AのCDRアミノ酸残基は、31~35(HCDR1)、50~66(HCDR2)、および99~108(HCDR3)と番号付けされており、軽鎖可変ドメイン(VL)内のCDRアミノ酸残基は、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、および89~97(LCDR3)と番号付けされている。Chothiaによれば、VH内のCDRアミノ酸は、26~32(HCDR1)、52~57(HCDR2)、および99~108(HCDR3)と番号付けされており、VL内のアミノ酸残基は、26~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)、および91~96(LCDR3)と番号付けされている。KabatおよびChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、CDRは、ヒトVH内のアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~66(HCDR2)、および99~108(HCDR3)、ならびにヒトVL内のアミノ酸残基24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、および89~97(LCDR3)からなる。
別の態様では、本明細書では、表1に記載されている、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3、またはそれらの組合せを含むGDF15結合性抗体が提示される。抗体のVH CDR1のアミノ酸配列を、配列番号6、32、58、84、110、136、162に示す。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号7、33、59、85、111、137、163に示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号8、34、60、86、112、138、164に示されている。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号19、45、71、97、123、149、175に示されている。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号20、46、72、98、124、150、176に示されている。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号21、47、73、99、125、151、177に示されている。これらのCDR領域は、Kabatシステムを使用して表される。
代替的に、Chothiaシステム(Al-Lazikaniら、(1997)、JMB 273 927~948)を使用して規定される通り、抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号9、35、61、87、113、139、165に示されている。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号10、36、62、88、114、140、166に示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号11、37、63、89、115、141、167に示されている。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号22、48、74、100、126、152、178に示されている。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号23、49、75、101、127、153、179に示されている。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号24、50、76、102、128、154、180に示されている。
別の態様では、Kabatシステムと、Chothiaシステムとの番号付けの組合せを前提として、本明細書では、表1に記載されている、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3、またはこれらの組合せを含むGDF15結合性抗体が提示される。抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号3、29、55、81、107、133、159に示されている。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号4、30、56、82、108、134、160に示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5、31、57、83、109、135、161に示されている。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号16、42、68、94、120、146、172に示されている。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号17、43、69、95、121、147、173に示されている。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号18、44、70、96、122、148、174に示されている。これらのCDR領域は、組合せシステムを使用して表される。
これらの抗体の各々は、GDF15に結合することが可能であり、抗原結合性特異性は、主に、CDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域によりもたらされることを踏まえれば、各抗体は、本明細書で記載される他のGDF15結合分子を創出するのに、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、ならびにVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含有することが好ましいが、VH CDR1配列、VH CDR2配列、およびVH CDR3配列、ならびにVL CDR1配列、VL CDR2配列、およびVL CDR3配列を「混合し、マッチさせる」ことができる(すなわち、異なる抗体に由来するCDRを混合し、マッチさせることができる)。このような「混合し、マッチさせた」GDF15結合性抗体は、当技術分野で公知の結合アッセイ、および実施例で記載される結合アッセイ(例えば、ELISA、SET、Biacore)を使用して調べることができる。VH CDR配列を混合し、マッチさせる場合、特定のVH配列に由来するCDR1配列、CDR2配列、および/またはCDR3配列を、構造的に類似するCDR配列で置きかえるものとする。同様に、VL CDR配列を混合し、マッチさせる場合、特定のVL配列に由来するCDR1配列、CDR2配列、および/またはCDR3配列を、構造的に類似するCDR配列で置きかえるものとする。当業者には、新規のVH配列およびVL配列を、1つまたは複数のVH CDR領域配列および/またはVL CDR領域配列を、モノクローナル抗体のための、本明細書で示されるCDR配列に由来する、構造的に類似する配列で置換することにより、創出しうることがたやすく明らかであろう。前出に加えて、一実施形態では、本明細書で記載される抗体の抗原結合性断片は、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、またはVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むことが可能であり、この場合、断片は、GDF15に、単一の可変ドメインとして結合する。
ある種の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、表1に記載されているFabの重鎖および軽鎖配列を有しうる。より具体的に、抗体またはその抗原結合性断片は、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dの重鎖および軽鎖配列を有しうる。具体的な実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ABGDF15-A、ABGDF15-D、ABGDF15-E、またはABGDF15-Fの重鎖および軽鎖配列を有しうる。
ある種の実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、KabatおよびChothiaの組合せにより規定され、表1に記載されている、重鎖可変領域のCDR1、重鎖可変領域のCDR2、重鎖可変領域のCDR3、軽鎖可変領域のCDR1、軽鎖可変領域のCDR2、および軽鎖可変領域のCDR3を含む。他の実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、Kabatにより規定され、表1に記載されている、重鎖可変領域のCDR1、重鎖可変領域のCDR2、重鎖可変領域のCDR3、軽鎖可変領域のCDR1、軽鎖可変領域のCDR2、および軽鎖可変領域のCDR3を含む。さらに他の実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、Chothiaにより規定され、表1において記載されている重鎖可変領域のCDR1、重鎖可変領域のCDR2、重鎖可変領域のCDR3、軽鎖可変領域のCDR1、軽鎖可変領域のCDR2、および軽鎖可変領域のCDR3を含む。
本明細書の一実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、
(i)配列番号3のHCDR1;配列番号4のHCDR2;配列番号5のHCDR3;配列番号16のLCDR1;配列番号17のLCDR2;および配列番号18のLCDR3;または
(ii)配列番号6のHCDR1;配列番号7のHCDR2;配列番号8のHCDR3;配列番号19のLCDR1;配列番号20のLCDR2;および配列番号21のLCDR3;または
(iii)配列番号9のHCDR1;配列番号10のHCDR2;配列番号11のHCDR3;配列番号22のLCDR1;配列番号23のLCDR2;および配列番号24のLCDR3
を含む抗体が提示される。
本明細書の一実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、
(i)配列番号107のHCDR1;配列番号108のHCDR2;配列番号109のHCDR3;配列番号120のLCDR1;配列番号121のLCDR2;および配列番号122のLCDR3;または
(ii)配列番号110のHCDR1;配列番号111のHCDR2;配列番号112のHCDR3;配列番号123のLCDR1;配列番号124のLCDR2;および配列番号125のLCDR3;または
(iii)配列番号113のHCDR1;配列番号114のHCDR2;配列番号115のHCDR3;配列番号126のLCDR1;配列番号127のLCDR2;および配列番号128のLCDR3
を含む抗体が提示される。
本明細書の一実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、
(i)配列番号29のHCDR1;配列番号30のHCDR2;配列番号31のHCDR3;配列番号42のLCDR1;配列番号43のLCDR2;および配列番号44のLCDR3;または
(ii)配列番号32のHCDR1;配列番号33のHCDR2;配列番号34のHCDR3;配列番号45のLCDR1;配列番号46のLCDR2;および配列番号47のLCDR3;または
(iii)配列番号35のHCDR1;配列番号36のHCDR2;配列番号37のHCDR3;配列番号48のLCDR1;配列番号49のLCDR2;および配列番号50のLCDR3
を含む抗体が提示される。
本明細書の一実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、
(i)配列番号55のHCDR1;配列番号56のHCDR2;配列番号57のHCDR3;配列番号68のLCDR1;配列番号69のLCDR2;および配列番号70のLCDR3;または
(ii)配列番号58のHCDR1;配列番号59のHCDR2;配列番号60のHCDR3;配列番号71のLCDR1;配列番号72のLCDR2;および配列番号73のLCDR3;または
(iii)配列番号61のHCDR1;配列番号62のHCDR2;配列番号63のHCDR3;配列番号74のLCDR1;配列番号75のLCDR2;および配列番号76のLCDR3
を含む抗体が提示される。
本明細書の一実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、
(i)配列番号81のHCDR1;配列番号82のHCDR2;配列番号83のHCDR3;配列番号94のLCDR1;配列番号95のLCDR2;および配列番号96のLCDR3;または
(ii)配列番号84のHCDR1;配列番号85のHCDR2;配列番号86のHCDR3;配列番号97のLCDR1;配列番号98のLCDR2;および配列番号99のLCDR3;または
(iii)配列番号87のHCDR1;配列番号88のHCDR2;配列番号89のHCDR3;配列番号100のLCDR1;配列番号101のLCDR2;および配列番号102のLCDR3
を含む抗体が提示される。
本明細書の一実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、
(i)配列番号133のHCDR1;配列番号134のHCDR2;配列番号135のHCDR3;配列番号146のLCDR1;配列番号147のLCDR2;および配列番号148のLCDR3;または
(ii)配列番号136のHCDR1;配列番号137のHCDR2;配列番号138のHCDR3;配列番号149のLCDR1;配列番号150のLCDR2;および配列番号151のLCDR3;または
(iii)配列番号139のHCDR1;配列番号140のHCDR2;配列番号141のHCDR3;配列番号152のLCDR1;配列番号153のLCDR2;および配列番号154のLCDR3
を含む抗体が提示される。
本明細書の一実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、
(i)配列番号159のHCDR1;配列番号160のHCDR2;配列番号161のHCDR3;配列番号172のLCDR1;配列番号173のLCDR2;および配列番号174のLCDR3;または
(ii)配列番号162のHCDR1;配列番号163のHCDR2;配列番号164のHCDR3;配列番号175のLCDR1;配列番号176のLCDR2;および配列番号177のLCDR3;または
(iii)配列番号165のHCDR1;配列番号166のHCDR2;配列番号167のHCDR3;配列番号178のLCDR1;配列番号179のLCDR2;および配列番号180の軽鎖可変領域CDR3
を含む抗体が提示される。
一実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号3の重鎖可変領域のCDR1;配列番号4の重鎖可変領域のCDR2;配列番号5の重鎖可変領域のCDR3;配列番号16の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号17の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号18の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
一実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号29の重鎖可変領域のCDR1、配列番号30の重鎖可変領域のCDR2、配列番号31の重鎖可変領域のCDR3、配列番号42の軽鎖可変領域のCDR1、配列番号43の軽鎖可変領域のCDR2、および配列番号44の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
一実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号55の重鎖可変領域のCDR1、配列番号56の重鎖可変領域のCDR2、配列番号57の重鎖可変領域のCDR3、配列番号68の軽鎖可変領域のCDR1、配列番号69の軽鎖可変領域のCDR2、および配列番号70の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
一実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号81の重鎖可変領域のCDR1、配列番号82の重鎖可変領域のCDR2、配列番号83の重鎖可変領域のCDR3、配列番号94の軽鎖可変領域のCDR1、配列番号95の軽鎖可変領域のCDR2、および配列番号96の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
一実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号107の重鎖可変領域のCDR1;配列番号108の重鎖可変領域のCDR2;配列番号109の重鎖可変領域のCDR3;配列番号120の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号121の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号122の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
一実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号133の重鎖可変領域のCDR1;配列番号134の重鎖可変領域のCDR2;配列番号135の重鎖可変領域のCDR3;配列番号146の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号147の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号148の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
本明細書の一実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号159の重鎖可変領域のCDR1;配列番号160の重鎖可変領域のCDR2;配列番号161の重鎖可変領域のCDR3;配列番号172の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号173の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号174の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
本明細書の一実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号6の重鎖可変領域のCDR1;配列番号7の重鎖可変領域のCDR2;配列番号8の重鎖可変領域のCDR3;配列番号19の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号20の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号21の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
本明細書の一実施形態では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号32の重鎖可変領域のCDR1;配列番号33の重鎖可変領域のCDR2;配列番号34の重鎖可変領域のCDR3;配列番号45の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号46の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号47の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
具体的な実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号58の重鎖可変領域のCDR1;配列番号59の重鎖可変領域のCDR2;配列番号60の重鎖可変領域のCDR3;配列番号71の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号72の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号73の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
具体的な実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号84の重鎖可変領域のCDR1;配列番号85の重鎖可変領域のCDR2;配列番号86の重鎖可変領域のCDR3;配列番号97の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号98の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号99の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
具体的な実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号110の重鎖可変領域のCDR1;配列番号111の重鎖可変領域のCDR2;配列番号112の重鎖可変領域のCDR3;配列番号123の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号124の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号125の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
具体的な実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号136の重鎖可変領域のCDR1;配列番号137の重鎖可変領域のCDR2;配列番号138の重鎖可変領域のCDR3;配列番号149の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号150の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号151の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
具体的な実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号162の重鎖可変領域のCDR1;配列番号163の重鎖可変領域のCDR2;配列番号164の重鎖可変領域のCDR3;配列番号175の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号176の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号177の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
具体的な実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号9の重鎖可変領域のCDR1;配列番号10の重鎖可変領域のCDR2;配列番号11の重鎖可変領域のCDR3;配列番号22の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号23の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号24の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
具体的な実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号35の重鎖可変領域のCDR1;配列番号36の重鎖可変領域のCDR2;配列番号37の重鎖可変領域のCDR3;配列番号48の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号49の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号50の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
具体的な実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号61の重鎖可変領域のCDR1;配列番号62の重鎖可変領域のCDR2;配列番号63の重鎖可変領域のCDR3;配列番号74の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号75の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号76の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
具体的な実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号87の重鎖可変領域のCDR1;配列番号88の重鎖可変領域のCDR2;配列番号89の重鎖可変領域のCDR3;配列番号100の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号101の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号102の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
具体的な実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号113の重鎖可変領域のCDR1;配列番号114の重鎖可変領域のCDR2;配列番号115の重鎖可変領域のCDR3;配列番号126の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号127の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号128の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
具体的な実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号139の重鎖可変領域のCDR1;配列番号140の重鎖可変領域のCDR2;配列番号141の重鎖可変領域のCDR3;配列番号152の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号153の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号154の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
具体的な実施形態では、本明細書では、GDF15に特異的に結合する抗体であって、配列番号165の重鎖可変領域のCDR1;配列番号166の重鎖可変領域のCDR2;配列番号167の重鎖可変領域のCDR3;配列番号178の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号179の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号180の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
ある種の実施形態では、本明細書では、表1に記載されている、GDF15に特異的に結合する抗体または抗原結合性断片が提示される。特定の実施形態では、GDF15に結合する抗体または抗原結合性断片は、ABGDF15-A、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、ABGDF15-E、またはABGDF15-Dである。
抗体の可変領域または全長鎖が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られる場合、本明細書で使用されるヒト抗体は、特定の生殖細胞系列配列「の産物」であるかまたはこれ「に由来する」、重鎖もしくは軽鎖可変領域または全長重鎖もしくは軽鎖を含む。このような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを、対象の抗原で免疫化するか、または対象の抗原を伴うファージ上で提示されるヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることを含む。ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列「の産物」であるかまたはこれ「に由来する」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列を、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、配列がヒト抗体の配列と最も近似する(すなわち、同一性%が最大である)ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列を選択することにより、それ自体として同定することができる。
特定のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列「の産物」であるかまたはこれ「に由来する」ヒト抗体は、例えば、自然発生の体細胞突然変異または部位特異的突然変異の意図的な導入に起因して、生殖細胞系列配列と比較したアミノ酸の差異を含有しうる。しかし、VHフレームワーク領域またはVLフレームワーク領域では、選択されたヒト抗体は、アミノ酸配列が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一であり、ヒト抗体を、他の種の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖細胞系列配列)と比較した場合に、ヒトとして同定するアミノ酸残基を含有することが典型的である。ある種の場合には、ヒト抗体は、アミノ酸配列が、生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と、少なくとも60%、70%、80%、90%、または少なくとも95%、なおまたは、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一でありうる。
組換えヒト抗体は、VHフレームワーク領域内またはVLフレームワーク領域内のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列との、10アミノ酸以下の差異を提示することが典型的である。ある種の場合には、ヒト抗体は、生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列との、5アミノ酸以下、なおまたは、4、3、2、または1アミノ酸以下の差異を提示しうる。ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子の例は、下記で記載される生殖細胞系列の可変ドメイン断片を含むがこれらに限定されない。
相同抗体
さらに別の実施形態では、本明細書では、表1に記載されている配列と相同なアミノ酸配列を含む、抗体またはその抗原結合性断片が提示されるが、抗体は、GDF15タンパク質(例えば、ヒトGDF15)に結合し、表1に記載されている抗体の、所望の機能的特性を保持する。
例えば、本明細書では、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む単離抗体またはその機能的な抗原結合性断片が提示され、この場合、重鎖可変ドメインは、配列番号12、38、64、90、116、142、168からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;軽鎖可変ドメインは、配列番号25、51、77、103、129、155、181からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;抗体は、GDF15(例えば、ヒトGDF15)に特異的に結合する。ある種の実施形態では、重鎖および軽鎖配列は、Kabatにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号6、7、8、および19、20、21をさらに含む。ある種の他の実施形態では、重鎖配列および軽鎖配列は、Chothia番号付けにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号9、10、11、および22、23、24をさらに含む。さらに他のある種の実施形態では、重鎖および軽鎖配列は、KabatおよびChothiaの両方、例えば、それぞれ、配列番号3、4、5、および配列番号16、17、18を組み合わせることにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列をさらに含む。
他の実施形態では、VHアミノ酸配列および/またはVLアミノ酸配列は、表1に示される配列と、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一でありうる。他の実施形態では、VHアミノ酸配列および/またはVLアミノ酸配列は、1、2、3、4、または5カ所以下のアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を除き同一でありうる。表1に記載されている抗体のVH領域およびVL領域と大きな(すなわち、80%以上の)同一性を有するVH領域およびVL領域を有する抗体は、配列番号13、39、65、91、117、143、169、および配列番号26、52、78、104、130、156、182のそれぞれをコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発)の後、本明細書で記載される機能アッセイを使用して、コードされる改変抗体を、機能の保持について調べることにより得ることができる。
他の実施形態では、全長重鎖アミノ酸配列および/または全長軽鎖アミノ酸配列は、表1に示される配列と、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一でありうる。配列番号14、40、66、92、118、144、170のうちのいずれかの全長重鎖、および配列番号27、53、79、105、131、157、183のうちのいずれかの全長軽鎖と大きな(すなわち、80%以上の)同一性を有する全長重鎖および全長軽鎖を有する抗体は、このようなポリペプチドをコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発)の後、本明細書で記載される機能アッセイを使用して、コードされる改変抗体を、機能の保持について調べることにより得ることができる。
他の実施形態では、全長重鎖および/または全長軽鎖のヌクレオチド配列は、表1に示される配列と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一でありうる。
他の実施形態では、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域のヌクレオチド配列は、表1に示される配列と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一でありうる。
本明細書で使用される、2つの配列の間の同一性パーセントとは、2つの配列の最適なアライメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮する配列により共有される、同一な位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一な位置の数/位置の総数×100)である。2つの配列の間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、下記の非限定的な例で記載されている、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
加えて、または代替的に、本明細書で記載されるタンパク質配列は、公表されたデータベースに照らして検索を実施する、例えば、関連の配列を同定するための「クエリー配列」としてさらに使用することもできる。例えば、このような検索は、Altschulら、1990 J. Mol. Biol. 215:403~10によるBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。
保存的修飾を伴う抗体
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗体は、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、この場合、これらのCDR配列のうちの1つまたは複数は、本明細書で記載される抗体またはそれらの保存的修飾に基づき指定されたアミノ酸配列を有し、抗体は、本明細書で記載されるGDF15結合性抗体の所望の機能的特性を保持する。
したがって、本明細書では、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる単離抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖可変領域のCDR1アミノ酸配列が、配列番号3、29、55、81、107、133、および159、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、重鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、配列番号4、30、56、82、108、134、および160、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、重鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、配列番号5、31、57、83、109、135、および161、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、軽鎖可変領域のCDR1アミノ酸配列が、配列番号16、42、68、94、120、146、および172、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、軽鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、配列番号17、43、69、95、121、147、および173、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、軽鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、配列番号18、44、70、96、122、148、および174、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、GDF15に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合性断片が提示される。
したがって、本明細書では、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖可変領域のCDR1アミノ酸配列が、配列番号6、32、58、84、110、136、および162、ならびにその保存的修飾からなる群から選択され;重鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、配列番号7、33、59、85、111、137、および163、ならびにその保存的修飾からなる群から選択され;重鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、配列番号8、34、60、86、112、138、および164、ならびにその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域のCDR1アミノ酸配列が、配列番号19、45、71、97、123、149、および175ならびにその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、配列番号20、46、72、98、124、150、および176、ならびにその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、配列番号21、47、73、99、125、151、および177、ならびにその保存的修飾からなる群から選択され;抗体またはその抗原結合性断片が、GDF15に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合性断片が提示される。
したがって、本明細書では、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなり、重鎖可変領域のCDR1アミノ酸配列が、配列番号9、35、61、87、113、139、および165、ならびにその保存的修飾からなる群から選択され;重鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、配列番号10、36、62、88、114、140、および166、ならびにその保存的修飾からなる群から選択され;重鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、配列番号11、37、63、89、115、141、および167、ならびにその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域のCDR1アミノ酸配列が、配列番号22、48、74、100、126、152、および178、ならびにその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、配列番号23、49、75、101、127、153、および179、ならびにその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、配列番号24、50、76、102、128、154、および180、ならびにその保存的修飾からなる群から選択される、抗体またはその抗原結合性断片が提示され;抗体またはその抗原結合性断片はGDF15に特異的に結合する。
他の実施形態では、本明細書で記載される抗体は、哺乳動物細胞における発現について最適化されており、全長重鎖配列および全長軽鎖配列を有し、これらの配列のうちの1つまたは複数は、本明細書で記載される抗体またはそれらの保存的修飾に基づき指定されたアミノ酸配列を有し、抗体は、本明細書で記載されるGDF15結合性抗体の所望の機能的特性を保持する。したがって、本明細書では、全長重鎖および全長軽鎖からなる、哺乳動物細胞における発現について最適化された単離抗体であって、全長重鎖が、配列番号14、40、66、92、118、144、および170、ならびにそれらの保存的修飾の群から選択されるアミノ酸配列を有し、全長軽鎖が、配列番号27、53、79、105、131、157、および183、ならびにそれらの保存的修飾の群から選択されるアミノ酸配列を有し、GDF15(例えば、ヒトGDF15)に特異的に結合する抗体が提示される。
同じエピトープに結合する抗体
本明細書では、表1に記載されているGDF15結合性抗体と同じエピトープに結合する抗体が提示される。したがって、GDF15結合アッセイ(実施例で記載されるGDF15結合アッセイなど)において、本明細書で記載される他の抗体と競合する(例えば、本明細書で記載される他の抗体の結合を、統計学的に有意な形で競合的に阻害する)それらの能力に基づき、さらなる抗体を同定することができる。本明細書で記載される抗体の、GDF15タンパク質への結合を阻害する被験抗体の能力により、被験抗体が、その抗体と、GDF15の結合について競合することが可能であり、このような抗体は、非限定的な理論によれば、GDF15タンパク質上の、それが競合する抗体と同じであるかまたは関連の(例えば、構造的に類似するか、または空間的に近接した)エピトープに結合しうることが裏付けられる。ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗体と同じGDF15上のエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。このようなヒトモノクローナル抗体は、本明細書で記載される通りに、調製および単離することができる。本明細書で使用される通り、等モル濃度の競合抗体の存在下で、競合抗体が、本明細書で記載される抗体または抗原結合性断片の、GDF15への結合を、50%を超えて(例えば、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)阻害する場合、抗体は、結合について「競合する」。
操作抗体および修飾抗体
出発抗体から特性を改変した修飾抗体を操作する出発材料として、本明細書で示されるVH配列および/またはVL配列のうちの1つまたは複数を有する抗体を使用して、本明細書で記載される抗体をさらに調製することができる。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)内、例えば、1つもしくは複数のCDR領域内、および/または1つもしくは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を修飾することにより操作することができる。加えて、または代替的に、抗体は、定常領域内の残基を修飾して、例えば、抗体のエフェクター機能を改変することによっても操作することができる。
実施しうる可変領域操作のうちの1つの種類は、CDRグラフティングである。抗体は、主に6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)内に位置するアミノ酸残基を介して、標的抗原と相互作用する。この理由で、CDR内のアミノ酸配列は、個別の抗体の間の多様性が、CDRの外部の配列より大きい。CDR配列は、大半の抗体-抗原間相互作用の一因となるため、異なる特性を伴う異なる抗体に由来するフレームワーク配列へとグラフトされた特異的自然発生抗体に由来するCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特異的自然発生抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann, L.ら、1998 Nature 332:323~327; Jones, P.ら、1986 Nature 321:522~525; Queen, C.ら、1989 Proc. Natl. Acad. U.S.A. 86:10029~10033;Winterによる米国特許第5,225,539号明細書、ならびにQueenらによる米国特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書;および同第6,180,370号明細書を参照されたい)。
したがって、本開示の別の実施形態は、配列番号6、32、58、84、110、136、および162からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号7、33、59、85、111、137、および163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列、配列番号8、34、60、86、112、138、164、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列のそれぞれを含む重鎖可変領域と、配列番号19、45、71、97、123、149、および175からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号20、46、72、98、124、150、および176からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列、ならびに配列番号21、47、73、99、125、151、および177からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるCDR3配列のそれぞれを有する軽鎖可変領域とを含む単離抗体またはその抗原結合性断片に関する。したがって、このような抗体は、モノクローナル抗体のVH CDR配列およびVL CDR配列を含有するが、これらの抗体に由来する異なるフレームワーク配列を含有しうる。
このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列の抗体遺伝子配列を含む公表されたDNAデータベースまたは公表された参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、ヒト生殖細胞系列の配列データベースである「VBase」(インターネットのmrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能である)のほか、それらの各々の内容が、参照により本明細書に明示的に組み込まれる、Kabat, E. A.ら、1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication第91-3242号; Tomlinson, I. M.ら、1992 J. Mol. Biol. 227:776~798;およびCox, J. P. L.ら、1994 Eur. J Immunol. 24:827~836においても見出すことができる。
本明細書で記載される抗体における使用のためのフレームワーク配列の例は、本明細書で記載される選択された抗体により使用されるフレームワーク配列、例えば、本明細書で記載されるモノクローナル抗体により使用されるコンセンサス配列および/またはフレームワーク配列と構造的に類似するフレームワーク配列である。VH CDR1配列、VH CDR2配列、およびVH CDR3配列、ならびにVL CDR1配列、VL CDR2配列、およびVL CDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子内で見出される配列と同一の配列を有するフレームワーク領域へとグラフトすることもでき、CDR配列は、生殖細胞系列配列と比較して、1つまたは複数の突然変異を含有するフレームワーク領域へとグラフトすることもできる。例えば、ある種の場合には、フレームワーク領域内の残基を突然変異させて、抗体の抗原結合能力を維持または増強することが有益であると見出されている(例えば、Queenらによる米国特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書;および同第6,180,370号明細書を参照されたい)。本明細書で記載される抗体および抗原結合性断片をその上に構築する足場として活用されうるフレームワークは、VH1A、VH1B、VH3、Vk1、Vl2、およびVk2を含むがこれらに限定されない。当技術分野では、さらなるフレームワークが知られており、例えば、インターネットのvbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/index.php?&MMN_position=1:1上のvBaseデータベースにおいて見出すことができる。
したがって、本開示の実施形態は、配列番号12、38、64、90、116、142、および168からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはこのような配列のフレームワーク領域内に1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、配列番号25、51、77、103、129、155、および181からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはこのような配列のフレームワーク領域内に1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、単離GDF15結合性抗体またはそれらの抗原結合性断片に関する。
可変領域修飾の別の種類は、「アフィニティー成熟」として公知の、VH CDR1領域内、VH CDR2領域内、および/もしくはVH CDR3領域内、ならびに/またはVL CDR1領域内、VL CDR2領域内、および/もしくはVL CDR3領域内のアミノ酸残基を突然変異させて、これにより、対象の抗体の1つまたは複数の結合特性(例えば、アフィニティー)を改善することである。部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発を実施して、突然変異を導入することができ、本明細書で記載され、実施例でも提示される、in vitroアッセイまたはin vivoアッセイにおいて、抗体結合性または他の対象の機能的特性に対する効果を査定することができる。保存的修飾(上記で論じた)を導入することができる。突然変異は、アミノ酸の置換の場合もあり、付加の場合もあり、欠失の場合もある。さらに、CDR領域内の、典型的には1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以下の残基も改変する。
したがって、別の実施形態では、本明細書では、配列番号3、29、55、81、107、133、および159を有する群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号3、29、55、81、107、133、および159と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1領域、配列番号4、30、56、82、108、134、および160からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号4、30、56、82、108、134、および160と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域、配列番号5、31、57、83、109、135、および161からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号5、31、57、83、109、135、および161と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域、配列番号16、42、68、94、120、146、および172からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号16、42、68、94、120、146、および172と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域、配列番号17、43、69、95、121、147、および173からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号17、43、69、95、121、147、および173と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域、ならびに配列番号18、44、70、96、122、148、および174からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号18、44、70、96、122、148、および174と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域を有する重鎖可変領域からなるGDF15結合性抗体またはそれらの抗原結合性断片が提示される。
したがって、別の実施形態では、本明細書では、配列番号6、32、58、84、110、136、および162からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号6、32、58、84、110、136、および162と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR1領域、配列番号7、33、59、85、111、137、および163からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号7、33、59、85、111、137、および163と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域、ならびに配列番号8、34、60、86、112、138、および164からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号8、34、60、86、112、138、および164と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域と、配列番号19、45、71、97、123、149、および175からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号19、45、71、97、123、149、および175と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域、配列番号20、46、72、98、124、150、および176からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号20、46、72、98、124、150、および176と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域、ならびに配列番号21、47、73、99、125、151、および177からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号21、47、73、99、125、151、および177と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域を有する軽鎖可変領域とからなるGDF15結合性抗体またはそれらの抗原結合性断片が提示される。
したがって、本明細書の別の実施形態では、配列番号9、35、61、87、113、139、および165からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号9、35、61、87、113、139、および165と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR1領域;配列番号10、36、62、88、114、140、および166からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号10、36、62、88、114、140、および166と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号11、37、63、89、115、141、および167からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号11、37、63、89、115、141、および167と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域;配列番号22、48、74、100、126、152、178からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号22、48、74、100、126、152、および178と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;配列番号23、49、75、101、127、153、179からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号23、49、75、101、127、153、および179と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;ならびに配列番号24、50、76、102、128、154、および180からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号24、50、76、102、128、154、および180と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域とを有する重鎖可変領域からなる、GDF15結合性抗体またはその抗原結合性断片が提示される。
抗原結合性ドメインの、代替的なフレームワークまたは足場へのグラフティング
結果として得られるポリペプチドが、GDF15に特異的に結合する少なくとも1つの結合性領域を含む限りにおいて、多種多様な抗体/免疫グロブリンのフレームワークまたは足場を援用することができる。このようなフレームワークまたは足場は、ヒト免疫グロブリンまたはそれらの断片の5つの主要なイディオタイプを含み、好ましくはヒト化側面を有する他の動物種の免疫グロブリンを含む。この点で、ラクダ科動物において同定される単一重鎖抗体などの単一重鎖抗体は、特に対象である。当業者により、新規のフレームワーク、足場、および断片が、発見および開発され続けている。
一態様では、本開示は、本明細書で記載されるCDRをグラフトしうる非免疫グロブリン足場を使用して、非免疫グロブリンベースの抗体を作り出すことに関する。それらが、標的のGDF15タンパク質に特異的な結合性領域を含む限りにおいて、公知または将来の非免疫グロブリンフレームワークおよび非免疫グロブリン足場を援用することができる。公知の非免疫グロブリンフレームワークおよび非免疫グロブリン足場は、フィブロネクチン(Compound Therapeutics,Inc.、Waltham、MA)、アンキリン(Molecular Partners AG、Zurich、Switzerland)、ドメイン抗体(Domantis,Ltd.、Cambridge、MA;およびAblynx nv、Zwijnaarde、Belgium)、リポカリン(Pieris Proteolab AG、Freising、Germany)、低分子モジュラー免疫医薬(Trubion Pharmaceuticals Inc.、Seattle、WA)、マキシボディ(Avidia,Inc.、Mountain View、CA)、プロテインA(Affibody AG、Sweden)、およびアフィリン(ガンマ-クリスタリンまたはユビキチン)(Scil Proteins GmbH、Halle、Germany)を含むがこれらに限定されない。
フィブロネクチン足場は、III型フィブロネクチンドメイン(例えば、III型フィブロネクチンの第10モジュール(10 Fn3ドメイン))に基づく。III型フィブロネクチンドメインは、それら自体が互いに対してパックされてタンパク質のコアを形成し、ベータ鎖を互いへと接続し、溶媒へと露出されるループもさらに含有する(CDRと類似する)、2つのベータシートの間に分配された、7つまたは8つのベータ鎖を有する。ベータシートサンドイッチの各エッジには、少なくとも3つのこのようなループがあり、エッジは、ベータ鎖の方向に対して垂直なタンパク質の境界である(US6,818,418を参照されたい)。全体的なフォールドは、ラクダおよびラマIgG内の抗原認識単位全体を含む最小の機能的抗体断片である重鎖可変領域のフォールドと密接に関連するが、これらのフィブロネクチンベースの足場は、免疫グロブリンではない。この構造のために、非免疫グロブリン抗体は、性質およびアフィニティーが抗体の性質およびアフィニティーと類似する抗原結合特性を模倣する。これらの足場は、in vivoにおける抗体のアフィニティー成熟の工程と類似する、in vitroにおけるループのランダム化戦略およびシャフリング戦略において使用することができる。これらのフィブロネクチンベースの分子は、標準的なクローニング法を使用して、分子のループ領域を本明細書で記載される発明のCDRで置きかえうる、足場として使用することができる。
アンキリン技術は、アンキリンに由来するリピートモジュールを伴うタンパク質を、異なる標的への結合に使用しうる可変領域を保有する足場として使用することに基づく。アンキリンリピートモジュールとは、2つのアンチパラレルのα-ヘリックスおよびβ-ターンからなる、33アミノ酸のポリペプチドである。可変領域の結合は、リボソームディスプレイを使用することにより大部分が最適化される。
アビマーは、LRP-1など、天然のAドメイン含有タンパク質に由来する。これらのドメインは、本来、タンパク質間相互作用に使用され、ヒトでは、250を超えるタンパク質が、構造的にAドメインに基づく。アビマーは、アミノ酸リンカーを介して連結された多数の(2つ~10の)異なる「Aドメイン」単量体からなる。標的抗原に結合しうるアビマーは、例えば、米国特許出願公開第20040175756号明細書;同第20050053973号明細書;同第20050048512号明細書;および同第20060008844号明細書において記載されている方法を使用して創出することができる。
アフィニティーリガンドであるアフィボディとは、プロテインAのIgG結合性ドメインのうちの1つの足場に基づく3ヘリックスバンドルからなる、低分子の単純なタンパク質である。プロテインAとは、細菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に由来する表面タンパク質である。この足場ドメインは、それらのうちの13が、多数のリガンド変異体を伴うアフィボディライブラリーを作り出す、ランダム化されている58アミノ酸からなる(例えば、US5,831,012を参照されたい)。アフィボディ分子は、抗体を模倣し、150kDaである抗体の分子量と比較して、分子量が6kDaである。その小サイズにもかかわらず、アフィボディ分子の結合部位は、抗体の結合部位と同様である。
アンチカリンとは、Pieris ProteoLab AG社により開発された生成物である。アンチカリンは、通例、化学的に感受性の化合物または不溶性の化合物の生理学的輸送または貯蔵に関与する、広範にわたる低分子の頑健なタンパク質群であるリポカリンに由来する。いくつかの天然リポカリンは、ヒト組織内またはヒト体液中で生じる。タンパク質のアーキテクチャーは、リジッドフレームワークの上部の超可変ループを伴う免疫グロブリンを連想させる。しかし、抗体またはそれらの組換え断片とは対照的に、リポカリンは、単一の免疫グロブリンドメインよりかろうじて大きい、160~180アミノ酸残基を伴う単一のポリペプチド鎖からなる。結合性ポケットを構成する4つのループのセットは、顕著な構造可塑性を示し、様々な側鎖を許容する。したがって、異なる形状の規定の標的分子を、高度なアフィニティーおよび特異性で認識するために、結合性部位を独自の工程で再形成することができる。4つのループのセットを突然変異誘発することによりアンチカリンを開発するのには、リポカリンファミリーの1つのタンパク質である、オオモンシロチョウ(Pieris Brassicae)のビリン結合性タンパク質(BBP)が使用されている。アンチカリンについて記載する特許出願の1つの例は、PCT公開国際公開第199916873号パンフレットにある。
アフィリン分子とは、タンパク質および低分子に対する特異的なアフィニティーのためにデザインされた低分子非免疫グロブリンタンパク質である。新たなアフィリン分子は、それらの各々が、異なるヒト由来の足場タンパク質に基づく2つのライブラリーから非常に迅速に選択することができる。アフィリン分子は、免疫グロブリンタンパク質に対するいかなる構造相同性も示さない。現在、2つのアフィリン足場が援用されており、それらのうちの一方は、ヒト水晶体の構造タンパク質であるガンマクリスタリンであり、他方は、「ユビキチン」スーパーファミリータンパク質である。いずれのヒト足場も非常に小型で、高度な熱安定性を示し、pH変化および変性剤に対してほぼ耐性である。この高度な安定性は主に、タンパク質のベータシート構造の展開に起因する。ガンマクリスタリンに由来するタンパク質の例は、WO200104144において記載されており、「ユビキチン様」タンパク質の例は、WO2004106368において記載されている。
タンパク質エピトープ模倣体(PEM)とは、タンパク質間相互作用に関与する主要な二次構造である、タンパク質のベータ-ヘアピン二次構造を模倣する、中程度のサイズの環状ペプチド様分子(分子量:1~2kDa)である。
本明細書では、GDF15タンパク質に特異的に結合する完全ヒト抗体が提示される。キメラ抗体またはヒト化抗体と比較して、本明細書で記載されるヒトGDF15結合性抗体は、ヒト対象へと投与された場合の抗原性がさらに低減されている。
ラクダ科動物抗体
ラマ種(アルパカ(Lama paccos)、ラマ(Lama glama)、およびビクーニャ(Lama vicugna))などの新世界メンバーを含む、ラクダおよびヒトコブラクダ(dromedary)(フタコブラクダ(Camelus bactrianus)およびヒトコブラクダ(Calelus dromaderius))ファミリーのメンバーから得られる抗体タンパク質は、サイズ、構造的複雑性、およびヒト対象に対する抗原性に関して特徴付けられている。天然で見出されるこのファミリーの哺乳動物に由来するある種のIgG抗体は、軽鎖を欠き、したがって、他の動物に由来する抗体の場合の、2つの重鎖および2つの軽鎖を有する、典型的な4つの鎖の四次構造とは構造的に異なっている。PCT/EP93/02214(1994年3月3日に公表された国際公開第94/04678号パンフレット)を参照されたい。
VHHとして同定される小型の単一の可変ドメインである、ラクダ科動物抗体の領域は、標的に対して高いアフィニティーを有する低分子タンパク質をもたらすことから、「ラクダ科動物ナノボディ」として公知の低分子量抗体由来タンパク質を結果としてもたらす遺伝子操作により得ることができる。1998年6月2日に取得された米国特許第5,759,808号を参照されたい。また、Stijlemans, B.ら、2004 J Biol Chem 279:1256~1261; Dumoulin, M.ら、2003 Nature 424:783~788; Pleschberger, M.ら、2003 Bioconjugate Chem 14:440~448; Cortez-Retamozo, V.ら、2002 Int J Cancer 89:456~62;およびLauwereys, M.ら、1998 EMBO J 17:3512~3520も参照されたい。ラクダ科動物抗体および抗体断片の操作ライブラリーは、例えば、Ablynx、Ghent、Belgiumから市販されている。非ヒト由来の他の抗体と同様に、ラクダ科動物抗体のアミノ酸配列は、ヒト配列により酷似する配列を得るように、組換えにより改変することができる、すなわち、ナノボディは、「ヒト化」することができる。したがって、ヒトに対するラクダ科動物抗体の天然の小さな抗原性を、さらに低減することができる。
ラクダ科動物ナノボディの分子量は、ヒトIgG分子の分子量の約10分の1で、タンパク質の物理的直径は、数ナノメートルに過ぎない。サイズが小さいことの1つの帰結は、大型の抗体タンパク質には機能的に不可視である抗原性部位に結合するラクダ科動物ナノボディの能力である、すなわち、ラクダ科動物ナノボディは、古典的な免疫学的技法を使用するこれ以外の形では隠蔽されたままの抗原を検出する試薬として有用であり、可能な治療剤として有用である。したがって、サイズが小さいことのさらに別の帰結は、ラクダ科動物ナノボディが、標的タンパク質のグルーブ内または狭小なクレフト内の特異的部位に結合することの結果として、標的タンパク質を阻害することが可能であり、よって、古典的な抗体の機能よりも、古典的な低分子量の薬物の機能により酷似する能力において用いられうることである。
低分子量およびコンパクトなサイズはさらに、熱安定性が極めて大きく、極端なpHおよびタンパク質分解性消化に対して安定的であり、抗原性が小さいラクダ科動物ナノボディを結果としてもたらす。別の帰結は、ラクダ科動物ナノボディが、循環系から組織へとたやすく移動し、血液脳関門もなお越え、神経組織に影響を及ぼす障害も処置しうることである。ナノボディはさらに、血液脳関門を越える薬物輸送も容易としうる。2004年8月19日に公表された米国特許出願第20040161738号明細書を参照されたい。これらの特色を、ヒトに対する抗原性が小さいことと組み合わせることにより、大きな治療的可能性が指し示される。さらに、これらの分子は、大腸菌(E. coli)などの原核細胞内で完全に発現させることができ、バクテリオファージとの融合タンパク質として発現させ、機能的である。
したがって、本開示の特色は、GDF15に対して高いアフィニティーを有するラクダ科動物抗体またはラクダ科動物ナノボディである。本明細書のある種の実施形態では、ラクダ科動物抗体またはラクダ科動物ナノボディは、天然ではラクダ科動物において産生される、すなわち、他の抗体について本明細書で記載される技法を使用する、GDF15またはそのペプチド断片による免疫化の後で、ラクダ科動物により産生される。代替的に、GDF15結合性ラクダ科動物ナノボディは、操作されたものである、すなわち、例えば、本明細書の実施例において記載されている、標的としてのGDF15を伴うパニング手順を使用する、適切に突然変異誘発させたラクダ科動物ナノボディタンパク質を提示するファージライブラリーからの選択によって作製される。操作されたナノボディはさらに、遺伝子操作により、レシピエント対象における半減期が、45分間~2週間となるようにカスタマイズすることもできる。具体的な実施形態では、ラクダ科動物抗体またはラクダ科動物ナノボディを、例えば、WO94/04678として公表されたPCT/EP93/02214において記載されている通り、本明細書に記載されるヒト抗体の重鎖または軽鎖のCDR配列を、ナノボディまたは単一ドメイン抗体フレームワーク配列へとグラフトすることにより得る。
二特異性分子および多価抗体
別の態様では、本開示は、本明細書で記載されるGDF15結合性抗体またはその断片を含む二特異性分子または多特異性分子を特色とする。本明細書で記載される抗体またはその抗原結合性領域は、少なくとも2つの異なる結合性部位または標的分子に結合する二特異性分子を作り出すように誘導体化することもでき、別の機能的分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質(例えば、受容体に対する別の抗体またはリガンド)へと連結することもできる。本明細書で記載される抗体は実際、3つ以上の異なる結合性部位および/または標的分子に結合する多特異性分子を作り出すように誘導体化することもでき、他の2つ以上の機能的分子へと連結することもでき、このような多特異性分子はまた、本明細書で使用される「二特異性分子」という用語により包含されることも意図される。本明細書で記載される二特異性分子を創出するには、本明細書で記載される抗体を、二特異性分子が結果として得られるように、別の抗体、抗体断片、ペプチド、または結合性模倣体など、1つまたは複数の他の結合性分子へと機能的に連結する(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合により、またはこれら以外の形で)ことができる。
したがって、本開示は、GDF15に対する少なくとも1つの第1の結合特異性および第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む二特異性分子を含む。例えば、第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープと異なる、GDF15の別のエピトープである。
加えて、二特異性分子が多特異性である本開示では、分子は、第1の標的エピトープおよび第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性もさらに含みうる。
一実施形態では、本明細書で記載される二特異性分子は、結合特異性として、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、または単鎖Fvを含む、少なくとも1つの抗体またはその抗体断片を含む。抗体はまた、軽鎖もしくは重鎖の二量体、またはLadnerら、米国特許第4,946,778号明細書において記載されている、Fvもしくは単鎖構築物など、その任意の最小断片でありうる。
ダイアボディとは、同じ鎖上の2つのドメインの間の対合を可能とするには短すぎるリンカーにより接続されたVHドメインおよびVLドメインを単一のポリペプチド鎖上で発現させた、二価の二特異性分子である。VHドメインおよびVLドメインは、別の鎖の相補的なドメインと対合し、これにより、2つの抗原結合性部位を創出する(例えば、Holligerら、1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444~6448; Poljakら、1994 Structure 2:1121~1123を参照されたい)。ダイアボディは、VHA-VLBおよびVHB-VLA構造(VH-VL立体配置)、またはVLA-VHBおよびVLB-VHA構造(VL-VH立体配置)を伴う2つのポリペプチド鎖を、同じ細胞内で発現させることにより作製することができる。ダイアボディの大半は、細菌内の可溶性形態で発現させることができる。単鎖ダイアボディ(scDb)は、2つのダイアボディ形成ポリペプチド鎖を、約15アミノ酸残基のリンカーで接続することにより作製する(HolligerおよびWinter、1997 Cancer Immunol. Immunother.、45(3~4):128~30; Wuら、1996 Immunotechnology、2(1):21~36を参照されたい)。scDbは、細菌内の可溶性で活性の単量体形態で発現させることができる(HolligerおよびWinter、1997 Cancer Immunol. Immunother.、45(34):128~30; Wuら、1996 Immunotechnology、2(1):21~36; PluckthunおよびPack、1997 Immunotechnology、3(2):83~105; Ridgwayら、1996 Protein Eng.、9(7):617~21を参照されたい)。ダイアボディをFcへと融合させて、「ジダイアボディ」を作り出すことができる(Luら、2004 J. Biol. Chem.、279(4):2856~65を参照されたい)。
本明細書で記載される二特異性分子内で援用しうる他の抗体は、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、およびヒト化モノクローナル抗体である。
二特異性分子は、当技術分野で公知の方法を使用して、構成要素である結合特異性をコンジュゲートさせることにより調製することができる。例えば、二特異性分子の各結合特異性は、個別に作り出し、次いで、互いとコンジュゲートさせることができる。結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合は、様々なカップリング剤または架橋剤を、共有結合的コンジュゲーションに使用することができる。架橋剤の例は、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)を含む(例えば、Karpovskyら、1984 J. Exp. Med. 160:1686; Liu, MAら、1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照されたい)。他の方法は、Paulus、1985 Behring Ins. Mitt. 78号、118~132; Brennanら、1985 Science 229:81~83;およびGlennieら、1987 J. Immunol. 139:2367~2375において記載されている方法を含む。コンジュゲート剤は、SATAおよびスルホ-SMCCであり、いずれも、Pierce Chemical Co.(Rockford、IL)から入手可能である。
結合特異性が、抗体である場合、それらは、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域をスルフヒドリル結合させることによりコンジュゲートさせることができる。特定の実施形態では、コンジュゲーションの前に、奇数のスルフヒドリル残基、例えば、1つのスルフヒドリル残基を含有するように、ヒンジ領域を修飾する。
代替的に、いずれの結合特異性も、同じベクター内でコードさせ、同じ宿主細胞内で発現およびアセンブルさせることができる。この方法は、二特異性分子が、mAb×mAb融合タンパク質、mAb×Fab融合タンパク質、Fab×F(ab’)2融合タンパク質、またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に、特に有用である。本明細書で記載される二特異性分子は、1つの単鎖抗体および結合決定基を含む単鎖分子の場合もあり、2つの結合決定基を含む単鎖二特異性分子の場合もある。二特異性分子は、少なくとも2つの単鎖分子を含みうる。二特異性分子を調製する方法については、例えば、米国特許第5,260,203号明細書;米国特許第5,455,030号明細書;米国特許第4,881,175号明細書;米国特許第5,132,405号明細書;米国特許第5,091,513号明細書;米国特許第5,476,786号明細書;米国特許第5,013,653号明細書;米国特許第5,258,498号明細書;および米国特許第5,482,858号明細書において記載されている。
それらの特異的な標的に対する二特異性分子の結合は、例えば、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS解析、バイオアッセイ(例えば、成長阻害アッセイ)、またはウェスタンブロットアッセイにより確認することができる。これらのアッセイの各々では一般に、対象の複合体に特異的な、標識された試薬(例えば、抗体)を援用することにより、特に対象となるタンパク質-抗体間複合体の存在が検出される。
別の態様では、本明細書では、GDF15に結合する、本明細書で記載される抗体の少なくとも2つの同一であるかまたは異なる抗原結合性部分を含む、多価化合物が提示される。抗原結合性部分は、タンパク質の融合または共有結合的連結もしくは非共有結合的連結を介して、併せて連結することができる。代替的に、二特異性分子のための連結法も記載されている。四価化合物は、例えば、本明細書で記載される抗体を、本明細書で記載される抗体の定常領域に結合する抗体、例えば、Fc領域またはヒンジ領域と架橋することにより得ることができる。
三量体化ドメインについては、例えば、Boreanによる特許であるEP1012280B1において記載されている。五量体化モジュールについては、例えば、WO98/18973として発表されたPCT/EP97/05897において記載されている。
半減期を延長した抗体
本明細書では、in vivoにおける半減期を延長した、GDF15タンパク質に特異的に結合する抗体が提示される。
多くの因子が、in vivoにおけるタンパク質の半減期に影響を及ぼしうる。例えば、腎臓における濾過、肝臓における代謝、タンパク質分解性酵素(プロテアーゼ)による分解、および免疫原性応答(例えば、抗体によるタンパク質の中和およびマクロファージおよび樹状細胞による取込み)。様々な戦略を使用して、本明細書で記載される抗体の半減期を延長することができる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、reCODE PEG、抗体足場、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合性リガンド、および炭水化物シールドとの化学的連結により、アルブミン、IgG、FcRn、およびトランスフェリンなどの血清タンパク質に結合するタンパク質との遺伝子融合により、ナノボディ、Fab、DARPin、アビマー、アフィボディ、およびアンチカリンなど、血清タンパク質に結合する他の結合部分とカップリングする(遺伝子的または化学的に)ことにより、rPEG、アルブミン、アルブミンのドメイン、アルブミン結合性タンパク質、およびFcとの遺伝子融合により、またはナノ担体、徐放製剤、もしくは医療デバイスへの組込みにより、本発明の抗体の半減期を延長することができる。
in vivoにおける抗体の血清中循環を延長するため、高分子量のPEGなど、不活性のポリマー分子を、PEGの、抗体のN末端もしくはC末端への部位特異的コンジュゲーションを介して、またはリシン残基上に存在するイプシロン-アミノ基を介して、多官能性リンカーを伴うかまたは多官能性リンカーを伴わない、抗体またはそれらの断片へと付着することができる。抗体をPEG化するには、抗体またはその断片を、ポリエチレングリコール(PEG)の反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのPEGと、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片に付着する条件下で反応させることが典型的である。PEG化は、反応性PEG分子(または類似する反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応により実行することができる。本明細書で使用される「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシ-ポリエチレングリコールもしくはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドなど、他のタンパク質を誘導体化するのに使用されているPEGの形態のうちのいずれかを包含することを意図するものである。ある種の実施形態では、PEG化される抗体は、脱グリコシル化抗体である。直鎖状ポリマーまたは分枝状ポリマーの誘導体化であって、生物学的活性の喪失を結果として最小とする誘導体化が、使用されるであろう。コンジュゲーションの程度を、SDS-PAGEおよび質量分析により緊密にモニタリングして、PEG分子の抗体への適正なコンジュゲーションを確認することができる。反応しなかったPEGは、サイズ除外クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーにより、抗体-PEGコンジュゲートから分離することができる。PEG誘導体化抗体は、当業者に周知の方法を使用して、例えば、本明細書で記載されるイムノアッセイにより、結合活性ならびにin vivoにおける有効性について調べることができる。当技術分野では、タンパク質をPEG化する方法が知られており、本明細書で記載される抗体に適用することができる。例えば、NishimuraらによるEP0154316およびIshikawaらによるEP0401384を参照されたい。
他の改変されたPEG化技術は、tRNAシンセターゼおよびtRNAを含む再構成系を介して、化学的に特定された側鎖を、生合成タンパク質へと組み込む、再構成化学的直交性直接操作技術(reconstituting chemically orthogonal directed engineering)(ReCODE PEG)を含む。この技術は、30を超える新たなアミノ酸の、大腸菌(E. coli)細胞内、酵母細胞内、および哺乳動物細胞内の生合成タンパク質への組込みを可能とする。tRNAは、非天然アミノ酸を、アンバーコドンが配置される任意の位置へと組み込み、終止アンバーコドンから、化学的に特定されたアミノ酸の組込みシグナルを伝達するコドンへと転換する。
組換えPEG化技術(rPEG)はまた、血清半減期の延長にも使用することができる。この技術は、300~600アミノ酸の非構造化タンパク質テールを、既存の医薬用タンパク質へと遺伝子融合させることを伴う。このような非構造化タンパク質鎖の見かけの分子量は、その実際の分子量の約15倍であるため、タンパク質の血清半減期は、大きく増大する。化学的コンジュゲーションおよび再精製を要求する従来のPEG化とは対照的に、製造工程は大きく簡略化され、生成物は、均質である。
ポリシアリル化は、天然のポリマーであるポリシアル酸(PSA)を使用して、活性寿命を延長し、治療用ペプチドおよび治療用タンパク質の安定性を改善する、別の技術である。PSAとは、シアル酸(糖)のポリマーである。タンパク質および治療用ペプチドの薬物送達に使用される場合、コンジュゲーション時に、ポリシアル酸は、保護的微小環境をもたらす。これは、循環内の治療用タンパク質の活性寿命を延長し、それが免疫系により認識されることを防止する。PSAポリマーは、天然では、ヒト体内で見出される。PSAは、数百万年にわたり、それらの壁をPSAでコーティングするように進化したある種の細菌により採用された。次いで、これらの天然でポリシアリル化した細菌は、分子的模倣により、体内の防御系を失効化することが可能となった。自然の究極のステルス技術であるPSAは、このような細菌から、大量に、かつ、所定の物理的特徴を伴って、容易に作製することができる。細菌PSAは、ヒト体内ではPSAと化学的に同一であるので、タンパク質へとカップリングさせた場合でもなお、完全に非免疫原性である。
別の技術は、抗体に連結されたヒドロキシエチルデンプン(「HES」)誘導体の使用を含む。HESとは、蝋状トウモロコシデンプンに由来する、修飾された天然ポリマーであり、体内の酵素により代謝されうる。HES溶液は通例、血液量不足を補い、血液のレオロジー特性を改善するために投与される。抗体のHES化は、分子の安定性を増大させることのほか、腎クリアランスを低減することによっても、循環半減期の延長を可能とし、生物学的活性の増大を結果としてもたらす。HESの分子量など、異なるパラメータを改変することにより、広範にわたるHES抗体コンジュゲートをカスタマイズすることができる。
in vivoにおける半減期を延長した抗体はまた、1つまたは複数のアミノ酸修飾(すなわち、置換、挿入、または欠失)を、IgG定常ドメインまたはそのFcRn結合性断片(好ましくはFcドメイン断片またはヒンジFcドメイン断片)へと導入しても作り出すことができる。例えば、国際特許公開第98/23289号パンフレット、国際特許公開第97/34631号パンフレット;および米国特許第6,277,375号明細書を参照されたい。
さらに、抗体または抗体断片を、in vivoにおいてより安定的とするか、またはin vivoにおける半減期を延長するために、抗体を、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン;HSA)へとコンジュゲートさせることもできる。当技術分野では、技法が周知であり、例えば、国際特許公開第93/15199号パンフレット、同第93/15200号パンフレット、および同01/77137号パンフレット;ならびに欧州特許第413,622号明細書を参照されたい。加えて、上記で記載した二特異性抗体の文脈では、抗体の特異性は、抗体の1つの結合性ドメインが、GDF15に結合するのに対し、抗体の第2の結合性ドメインは、血清アルブミン、好ましくは、HSAに結合するようにデザインすることもできる。
半減期を延長するための戦略は、in vivoにおける半減期の延長が所望される、ナノボディ、フィブロネクチンベースの結合剤、および他の抗体またはタンパク質においてとりわけ有用である。
抗体コンジュゲート
本明細書では、融合タンパク質を作り出すように、異種タンパク質または異種ポリペプチドへと(またはその断片、好ましくは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100アミノ酸のポリペプチドへと)、組換えにより融合させるかまたは化学的にコンジュゲートさせた(共有結合的コンジュゲーションおよび非共有結合的コンジュゲーションの両方を含む)、GDF15タンパク質に特異的に結合する抗体またはそれらの断片が提示される。特に、本明細書では、本明細書で記載される抗体の抗原結合性断片(例えば、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VH CDR、VLドメイン、またはVL CDR)と、異種タンパク質、異種ポリペプチド、または異種ペプチドとを含む融合タンパク質が提示される。当技術分野では、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを、抗体または抗体断片と融合またはコンジュゲートさせる方法が知られている。例えば、米国特許第5,336,603号明細書、同第5,622,929号明細書、同第5,359,046号明細書、同第5,349,053号明細書、同第5,447,851号明細書、および同第5,112,946号明細書;欧州特許第307,434号明細書および同第EP367,166号明細書;国際特許公開第96/04388号パンフレットおよび同第91/06570号パンフレット;Ashkenaziら、1991、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535~10539; Zhengら、1995、J. Immunol. 154:5590~5600;およびVilら、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337~11341を参照されたい。
さらなる融合タンパク質は、遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エクソンシャフリング、および/またはコドンシャフリング(まとめて、「DNAシャフリング」と称する)の技法を介して作り出すことができる。DNAシャフリングを援用して、本明細書で記載される抗体またはそれらの断片の活性を改変する(例えば、アフィニティーが大きく、解離速度が小さい抗体またはそれらの断片)ことができる。一般に、米国特許第5,605,793号明細書、同第5,811,238号明細書、同第5,830,721号明細書、同第5,834,252号明細書、および同第5,837,458号明細書;Pattenら、1997、Curr. Opinion Biotechnol. 8:724~33; Harayama、1998、Trends Biotechnol. 16(2):76~82; Hanssonら、1999、J. Mol. Biol. 287:265~76;ならびにLorenzoおよびBlasco、1998、Biotechniques 24(2):308~313(これらの特許および刊行物の各々は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる)を参照されたい。抗体もしくはそれらの断片、またはコードされる抗体もしくはそれらの断片は、組換えの前に、エラープローンPCRによるランダム突然変異誘発、ランダムヌクレオチド挿入、または他の方法にかけることにより改変することができる。GDF15タンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドは、1つまたは複数の異種分子の1つまたは複数の成分、モチーフ、区間、一部、ドメイン、断片などで組み換えることができる。
さらに、抗体またはそれらの断片は、精製を容易とするペプチドなどのマーカー配列へと融合させることもできる。好ましい実施形態では、マーカーのアミノ酸配列は、それらのうちの多くが市販されている中でとりわけ、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、CA、91311)において提供されているタグなどのヘキサヒスチジンペプチドである。Gentzら、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821~824において記載されている通り、例えば、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製をもたらす。精製に有用な他のペプチドタグは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープ(Wilsonら、1984、Cell 37:767)に対応するヘマグルチニン(「HA」)タグ、および「フラッグ」タグを含むがこれらに限定されない。
他の実施形態では、本明細書で記載される抗体またはそれらの断片を、診断剤または検出可能薬剤へとコンジュゲートさせる。このような抗体は、疾患または障害の発生、発症、進行、および/または重症度を、特定の治療の有効性を決定することなど、臨床検査手順の一部としてモニタリングまたは予後診断するのに有用でありうる。このような診断および検出は、抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼなどであるがこれらに限定されない多様な酵素;ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどであるがこれらに限定されない補欠分子族;ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンなどであるがこれらに限定されない蛍光材料;ルミノールなどであるがこれらに限定されない発光材料;ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンなどであるがこれらに限定されない生物発光材料;ヨウ素(131I、125I、123I、および121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、および111In)、テクネシウム(99Tc)、タリウム(201Tl)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、および117Tinなどであるがこれらに限定されない放射性材料;ならびに多様なポジトロン断層法を使用するポジトロン放出金属および非放射性の常磁性金属イオンを含むがこれらに限定されない検出可能な物質へとカップリングすることにより達成することができる。
本開示は、治療用部分へとコンジュゲートさせた抗体またはそれらの断片の使用もさらに包含する。抗体またはその断片は、細胞毒素、例えば、細胞増殖抑制剤または殺細胞剤、治療剤または放射性金属イオン、例えば、アルファ放射体などの治療用部分へとコンジュゲートさせることができる。細胞毒素または細胞傷害剤は、細胞に有害な任意の薬剤を含む。
さらに、抗体またはその断片は、所与の生物学的応答を修飾する治療用部分または薬物部分へとコンジュゲートさせることもできる。治療用部分または薬物部分は、古典的化学的治療剤に限定されるとはみなされないものとする。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を保有するタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドでありうる。このようなタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス属外毒素、コレラ毒素、またはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲン活性化因子、アポトーシス剤、抗血管新生剤;または例えば、リンホカインなどの生体応答修飾剤などのタンパク質を含みうる。
さらに、抗体は、213Biなどのアルファ放射体などの放射性金属イオン、131In、131LU、131Y、131Ho、131Smを含むがこれらに限定されない放射性金属イオンを、ポリペプチドへとコンジュゲートするのに有用な大環状キレート化剤などの治療用部分へとコンジュゲートさせることもできる。ある種の実施形態では、大環状キレート化剤は、リンカー分子を介して抗体へと付着させうる、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-テトラ酢酸(DOTA)である。当技術分野では、このようなリンカー分子が一般に公知であり、各々が参照によりそれらの全体において組み込まれる、Denardoら、1998、Clin Cancer Res. 4(10):2483~90; Petersonら、1999、Bioconjug. Chem. 10(4):553~7;およびZimmermanら、1999、Nucl. Med. Biol. 26(8):943~50において記載されている。
治療用部分を、抗体へとコンジュゲートさせるための技法は周知であり、例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編)、243~56頁(Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(2版)、Robinsonら(編)、623~53頁(Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」、Monoclonal Antibodies 84: Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)、475~506頁(1985); 「Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwinら(編)、303~16頁(Academic Press 1985);およびThorpeら、1982、Immunol. Rev. 62:119~58を参照されたい。
抗体はまた、特に、イムノアッセイまたは標的抗原の精製に有用な固体支持体へと付着させることもできる。このような固体支持体は、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンを含むがこれらに限定されない。
抗体を作製する方法
抗体をコードする核酸
本明細書では、上記で記載したGDF15結合性抗体鎖のセグメントまたはドメインを含むポリペプチドをコードする、実質的に精製された核酸分子が提示される。本明細書で記載される核酸のいくつかは、配列番号13、39、65、91、117、143、または169に示される重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、および/または配列番号26、52、78、104、130、156、または182に示される軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む。具体的な実施形態では、核酸分子は、表1において同定される核酸分子である。本明細書で記載される他のいくつかの核酸分子は、表1において同定される核酸分子のヌクレオチド配列と実質的に(例えば、少なくとも65、80%、95%、または99%)同一なヌクレオチド配列を含む。適切な発現ベクターから発現させるとき、これらのポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、GDF15抗原結合能を呈示することが可能である。
本明細書ではまた、上記で示したGDF15結合性抗体の重鎖または軽鎖に由来する少なくとも1つのCDR領域、および、通例3つ全てのCDR領域をコードするポリヌクレオチドも提示される。他のいくつかのポリヌクレオチドは、上記で示したGDF15結合性抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域配列の全てまたは実質的に全てをコードする。コードの縮重性のために、様々な核酸配列は、免疫グロブリンアミノ酸配列の各々をコードするであろう。
本明細書で記載される核酸分子は、抗体の可変領域および定常領域の両方をコードしうる。本明細書で記載される核酸配列のうちのいくつかは、配列番号14、40、66、92、118、144、170に示される重鎖配列と実質的に(例えば、少なくとも80%、90%、または99%)同一な重鎖配列をコードするヌクレオチドを含む。他のいくつかの核酸配列は、配列番号27、53、79、105、131、157、または183に示される軽鎖配列と実質的に(例えば、少なくとも80%、90%、または99%)同一な軽鎖配列をコードするヌクレオチドを含む。
ポリヌクレオチド配列は、デノボの固相DNA合成、またはGDF15結合性抗体またはその結合性断片をコードする既存の配列(例えば、下記の実施例で記載される配列)に対するPCRによる突然変異誘発により作製することができる。核酸の直接的な化学合成は、Narangら、1979、Meth. Enzymol. 68:90によるホスホトリエステル法;Brownら、Meth. Enzymol. 68:109、1979によるホスホジエステル法;Beaucageら、Tetra. Lett., 22:1859、1981によるジエチルホスホルアミダイト法;および米国特許第4,458,066号明細書による固体支持体法など、当技術分野で公知の方法により達成することができる。PCRによる、突然変異の、ポリヌクレオチド配列への導入は、例えば、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification、H.A. Erlich(編)、Freeman Press、NY、NY、1992;PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications、Innisら(編)、Academic Press、San Diego、CA、1990; Mattilaら、Nucleic Acids Res. 19:967、1991;およびEckertら、PCR Methods and Applications 1:17、1991において記載されている通りに実施することができる。
本明細書ではまた、上記で記載したGDF15結合性抗体を作製するための発現ベクターおよび宿主細胞も提供される。多様な発現ベクターを、援用して、GDF15結合性抗体鎖または結合性断片をコードするポリヌクレオチドを発現させることができる。ウイルスベースの発現ベクターおよび非ウイルス発現ベクターのいずれを使用しても、哺乳動物宿主細胞内で抗体を作製することができる。非ウイルスベクターおよび非ウイルス系は、プラスミド、典型的に、タンパク質またはRNAを発現させるための発現カセットを伴うエピソームベクター、およびヒト人工染色体を含む(例えば、Harringtonら、Nat Genet 15:345、1997を参照されたい)。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞内のGDF15結合性ポリヌクレオチドおよびGDF15結合性ポリペプチドの発現に有用な非ウイルスベクターは、pThioHis A、pThioHis B、およびpThioHis C、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、pEBVHis B、およびpEBVHis C(Invitrogen、San Diego、CA)、MPSVベクター、ならびに他のタンパク質を発現させるための、当技術分野で公知の他の多数のベクターを含む。有用なウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスに基づくベクター、SV40に基づくベクター、パピローマウイルス、HBPエプスタインバーウイルス、ワクシニアウイルスベクター、およびセムリキ森林熱ウイルス(SFV)を含む。Brentら、前出; Smith、Annu. Rev. Microbiol. 49:807、1995;およびRosenfeldら、Cell 68:143、1992を参照されたい。
発現ベクターの選択は、その中でベクターを発現させる、意図される宿主細胞に依存する。発現ベクターは、GDF15結合性抗体鎖または断片をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターおよび他の調節配列(例えば、エンハンサー)を含有することが典型的である。いくつかの実施形態では、誘導条件下を除き、挿入された配列の発現を防止するのに、誘導的プロモーターを援用する。誘導的プロモーターは、例えば、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーター、または熱ショックプロモーターを含む。形質転換された生物の培養物は、それらの発現産物が宿主細胞により良好に許容されるコード配列の集団にバイアスをかけずに、非誘導条件下で増殖させることができる。プロモーターに加えて、他の調節的エレメントもまた、GDF15結合性抗体鎖または断片の効率的な発現に要求または所望される可能性がある。これらのエレメントは、ATG開始コドンおよび隣接のリボソーム結合性部位または他の配列を典型的に含む。加えて、発現の効率は、使用される細胞系に適するエンハンサーを組み入れることにより増強することもできる(例えば、Scharfら、Results Probl. Cell Differ. 20:125、1994;およびBittnerら、Meth. Enzymol., 153:516、1987を参照されたい)。例えば、SV40エンハンサーまたはCMVエンハンサーを使用して、哺乳動物宿主細胞内の発現を増大させることができる。
発現ベクターはまた、挿入されたGDF15結合性抗体配列によりコードされるポリペプチドとの融合タンパク質を形成するように、分泌シグナル配列の位置ももたらしうる。挿入されたGDF15結合性抗体配列は、ベクター内に組み入れる前に、シグナル配列へと連結することが多い。GDF15結合性抗体の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインをコードする配列を受容するのに使用されるベクターは、場合によってまた、定常領域またはそれらの一部もコードする。このようなベクターは、定常領域との融合タンパク質としての可変領域の発現を可能とし、これにより、インタクトな抗体またはそれらの断片の作製をもたらす。このような定常領域は、ヒト定常領域であることが典型的である。
GDF15結合性抗体鎖を保有し、これを発現させるための宿主細胞は、原核細胞の場合もあり、真核細胞の場合もある。大腸菌(E. coli)は、本明細書で記載されるポリヌクレオチドをクローニングし、発現させるのに有用な1つの原核生物宿主である。使用に適する他の微生物宿主は、枯草菌(Bacillus subtilis)などの桿菌、およびサルモネラ(Salmonella)属種、セラチア(Serratia)属種、および多様なシュードモナス(Pseudomonas)属種など、他の腸内細菌科を含む。これらの原核生物宿主内ではまた、典型的に、宿主細胞と適合性の発現制御配列(例えば、複製起点)を含有する発現ベクターも作製することができる。加えて、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータ-ラクタマーゼプロモーター系、またはファージラムダに由来するプロモーター系など、任意の数の、様々な周知のプロモーターも存在する。プロモーターは、任意選択で、オペレーター配列により発現を制御することが典型的であるが、転写および翻訳を開始して終結させるためのリボソーム結合性部位配列なども有する。本明細書で記載されるGDF15結合性ポリペプチドを発現させるのに、酵母など、他の微生物もまた援用することができる。また、バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞も使用することができる。
いくつかの好ましい実施形態では、本明細書で記載されるGDF15結合性ポリペプチドおよび/もしくはFXIa結合性ポリペプチドを発現させ、作製するのに、哺乳動物宿主細胞を使用する。哺乳動物宿主細胞は、任意の正常非不死化動物細胞または正常不死化動物細胞もしくは非正常不死化動物細胞またはヒト細胞を含む。例えば、CHO細胞系、多様なCos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、および形質転換B細胞を含む、インタクトな免疫グロブリンを分泌することが可能な多数の適切な宿主細胞系が開発されている。ポリペプチドを発現させるための、哺乳動物組織細胞培養物の使用については、例えば、Winnacker、FROM GENES TO CLONES、VCH Publishers、N.Y.、N.Y.、1987において一般に論じられている。哺乳動物宿主細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、およびエンハンサーなどの発現制御配列(例えば、Queenら、Immunol. Rev. 89:49~68、1986を参照されたい)、ならびにリボソーム結合性部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列などの、必要なプロセシング情報部位を含みうる。
これらの発現ベクターは通例、哺乳動物遺伝子に由来するプロモーターまたは哺乳動物ウイルスに由来するプロモーターを含有する。適切なプロモーターは、構成的プロモーター、細胞型特異的プロモーター、段階特異的プロモーター、および/またはモジュレート可能プロモーターもしくは調節可能プロモーターでありうる。有用なプロモーターは、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモーター、構成的MPSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(ヒト即初期CMVプロモーターなど)、構成的CMVプロモーター、および当技術分野で公知のプロモーター-エンハンサーの組合せを含むがこれらに限定されない。
対象のポリヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主の種類に応じて変化する。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションが一般に原核細胞に活用されるのに対し、リン酸カルシウム処理または電気穿孔は、他の細胞宿主に使用することができる(一般に、Sambrookら、前出を参照されたい)。他の方法は、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム処理、リポソーム媒介型形質転換、注射およびマイクロインジェクション、遺伝子銃法、ウィロソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質であるVP22との融合体(ElliotおよびO'Hare、Cell 88:223、1997)、DNAの薬剤増強型取込み、およびex vivoにおける形質導入を含む。組換えタンパク質の長期にわたる高収率作製のためには、安定的発現が所望されることが多い。例えば、GDF15結合性抗体鎖または結合性断片を安定的に発現させる細胞系は、ウイルス複製起点または内因性発現エレメント、および選択マーカー遺伝子を含有する、本明細書で記載される発現ベクターを使用して調製することができる。ベクターを導入した後、細胞は、強化培地中で1~2日間にわたり成長させてから、選択培地へと切り替えることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与し、その存在により細胞の成長を可能とし、これにより、導入された配列を選択培地中で発現させることに成功することである。耐性で安定的にトランスフェクトされた細胞は、細胞型に適する組織培養法を使用して増殖させることができる。
フレームワークまたはFcの操作
本明細書で記載される操作抗体は、例えば、抗体の特性を改善するように、VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基へと修飾を施した操作抗体を含む。このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるように施すことが典型的である。例えば、1つの手法は、1つまたは複数のフレームワーク残基を、対応する生殖細胞系列配列へと「復帰突然変異させる」ことである。より具体的には、体細胞突然変異を経た抗体は、抗体が由来する生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含有しうる。このような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体が由来する生殖細胞系列配列と比較することにより同定することができる。フレームワーク領域配列を、それらの生殖細胞系列の立体配置へと戻すには、例えば、部位特異的突然変異誘発により、体細胞突然変異を、生殖細胞系列配列へと「復帰突然変異させる」ことができる。このような「復帰突然変異させた」抗体もまた、本開示により包含されることを意図する。
フレームワーク修飾の別の種類は、1つもしくは複数のフレームワーク領域内の残基、なおまたは、1つもしくは複数のCDR領域内の残基を突然変異させて、T細胞エピトープを除去して、これにより、抗体の潜在的な免疫原性を低減することを伴う。この手法はまた、「脱免疫化」とも称し、Carrらによる米国特許出願公開第20030153043号明細書においてさらに詳細に記載されている。
フレームワーク内またはCDR領域内に施された修飾に加えて、またはこれと代替的に、本明細書で記載される抗体は、Fc領域内の修飾を含んで、典型的に、血清半減期、補体の結合、Fc受容体の結合、および/または抗原依存性細胞性細胞傷害など、抗体の1つまたは複数の機能的特性を改変するように操作することもできる。さらに、本明細書で記載される抗体は、化学的に修飾することもでき(例えば、1つまたは複数の化学的部分を抗体に付着することができる)、そのグリコシル化を改変して、ここでもまた、抗体の1つまたは複数の機能的特性を改変するように修飾することもできる。これらの実施形態の各々については、下記でさらに詳細に記載する。Fc領域内の残基の番号付けは、KabatによるEUインデックスである。
一実施形態では、ヒンジ領域内のシステイン残基の数を改変する、例えば、増大または減少させるように、CH1のヒンジ領域を修飾する。この手法は、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号明細書においてさらに記載されている。CH1のヒンジ領域内のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖のアセンブリーを容易とするか、または抗体の安定性を増大もしくは低下させるように改変する。
別の実施形態では、抗体のFcヒンジ領域を突然変異させて、抗体の生物学的半減期を短縮する。より具体的には、抗体のブドウ球菌属(Staphylococcyl)プロテインA(SpA)への結合が、天然Fc-ヒンジドメインのSpAへの結合と比べて損なわれるように、1つまたは複数のアミノ酸突然変異を、Fc-ヒンジ断片のCH2ドメイン-CH3ドメイン間界面領域へと導入する。この手法は、Wardらによる米国特許第6,165,745号明細書においてさらに詳細に記載されている。
別の実施形態では、抗体は、その生物学的半減期を延長するように修飾する。多様な手法が可能である。例えば、Wardによる米国特許第6,277,375号明細書において記載されている次の突然変異、T252L、T254S、T256F、のうちの1つまたは複数を導入することができる。代替的に、生物学的半減期を延長するために、抗体を、Prestaらによる米国特許第5,869,046号明細書;および同第6,121,022号明細書において記載されている、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから採取されたサルベージ受容体結合性エピトープを含有するように、CH1領域内またはCL領域内で改変することもできる。
さらに他の実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸残基を、抗体のエフェクター機能を改変する異なるアミノ酸残基で置きかえることにより、Fc領域を改変する。例えば、抗体が、エフェクターリガンドに対するアフィニティーを改変しているが、親抗体の抗原結合能は保持するように、1つまたは複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基で置きかえることができる。それに対するアフィニティーを改変するエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分でありうる。この手法は、両方ともWinterらによる米国特許第5,624,821号明細書;および同第5,648,260号明細書においてさらに詳細に記載されている。
別の実施形態では、抗体が、C1qへの結合を改変し、かつ/または補体依存性細胞傷害作用(CDC)を低減もしくは消失させるように、アミノ酸残基から選択される1つまたは複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基で置きかえることができる。この手法は、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号明細書においてさらに詳細に記載されている。
別の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸残基を改変して、これにより、補体に結合する抗体の能力を改変する。この手法は、BodmerらによるPCT公開国際公開第94/29351号パンフレットにおいてさらに記載されている。
さらに別の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸を修飾することにより、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体の能力を増大させ、かつ/またはFcγ受容体に対する抗体のアフィニティーを増大させるように、Fc領域を修飾する。この手法は、PrestaによるPCT公開国際公開第00/42072号パンフレットにおいてさらに記載されている。さらに、ヒトIgG1上の、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、およびFcRnに対する結合性部位もマップされており、結合を改善させた変異体も記載されている(Shields, R.L.ら、2001 J. Biol. Chen. 276:6591~6604を参照されたい)。
さらに別の実施形態では、抗体のグリコシル化を修飾する。例えば、脱グリコシル化抗体(すなわち、抗体は、グリコシル化を欠く)を作製することができる。グリコシル化は、例えば、「抗原」に対する抗体のアフィニティーを増大させるように改変することができる。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内の1つまたは複数のグリコシル化部位を改変することにより達成することができる。例えば、1つまたは複数の可変領域フレームワークグリコシル化部位の消失を結果としてもたらす、1つまたは複数のアミノ酸置換を作製して、これにより、その部位におけるグリコシル化を消失させることができる。このような脱グリコシル化により、抗原に対する抗体のアフィニティーを増大させることができる。このような手法は、Coらによる米国特許第5,714,350号明細書;および同第6,350,861号明細書においてさらに詳細に記載されている。
加えて、または代替的に、フコシル残基の量を低減した低フコシル化抗体または二分枝型GlcNac構造を増大させた抗体など、グリコシル化の種類を改変した抗体を作製することもできる。このようなグリコシル化パターンの改変は、抗体のADCC能を増大させることが裏付けられている。このような炭水化物修飾は、例えば、グリコシル化機構を改変した宿主細胞内で抗体を発現させることにより達成することができる。当技術分野では、グリコシル化機構を改変した細胞が記載されており、本明細書で記載される組換え抗体を発現させ、これにより、グリコシル化を改変した抗体を産生するための宿主細胞として使用することができる。例えば、HangらによるEP1,176,195は、このような細胞系内で発現させた抗体が、低フコシル化を呈示するように、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を機能的に破壊した細胞系について記載している。PrestaによるPCT公開国際公開第03/035835号パンフレットは、フコースをAsn(297)連結された炭水化物へと付着する能力を低減し、また、その宿主細胞内で発現させた抗体の低フコシル化も結果としてもたらす、変異体のCHO細胞系である、Lecl3細胞について記載している(また、Shields, R.L.ら、2002 J. Biol. Chem. 277:26733~26740も参照されたい)。UmanaらによるPCT公開国際公開第99/54342号パンフレットは、操作細胞系内で発現させた抗体が、抗体のADCC活性の増大を結果としてもたらす二分枝型GlcNac構造の増大を呈示するように、糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)-NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現させるように操作された細胞系について記載している(また、Umanaら、1999 Nat. Biotech. 17:176~180も参照されたい)。
改変抗体を操作する方法
上記で論じた通り、本明細書で示されるVH配列およびVL配列または全長重鎖および全長軽鎖配列を有するGDF15結合性抗体は、全長重鎖配列および/もしくは全長軽鎖配列、VH配列および/もしくはVL配列、またはこれらへと付着された定常領域を修飾することにより、新たなGDF15結合性抗体を創出するのに使用することができる。したがって、別の態様では、本明細書で記載されるGDF15結合性抗体の構造特色を使用して、ヒトGDF15に結合し、GDF15の1つまたは複数の機能的特性もまた阻害すること(例えば、GDF15とGDF15受容体の結合を阻害し、遊離GDF15を循環から枯渇させること)など、本明細書で記載される抗体の、少なくとも1つの機能的特性を保持する、構造的に関連するGDF15結合性抗体を創出する。
例えば、本明細書で記載される抗体の1つまたは複数のCDR領域またはそれらの突然変異は、組換えにより、公知のフレームワーク領域および/または他のCDRと組み合わせて、組換えにより操作された、上記で論じた、本明細書で記載される、さらなるGDF15結合性抗体を創出することができる。他の種類の修飾は、前出の節で記載した修飾を含む。操作法のための出発材料は、本明細書で提示されるVH配列および/もしくはVL配列のうちの1つもしくは複数、またはそれらの1つもしくは複数のCDR領域である。操作抗体を創出するのに、本明細書で提示されるVH配列および/もしくはVL配列のうちの1つもしくは複数、またはそれらの1つもしくは複数のCDR領域を有する抗体を実際に調製する(すなわち、タンパク質として発現させる)ことは必要ではない。そうではなくて、配列内に含有される情報を、元の配列に由来する「第2世代の」配列を創出するための出発材料として使用し、次いで、「第2世代の」配列を、タンパク質として調製し、発現させる。
したがって、別の実施形態では、本明細書では、配列番号3、29、55、81、107、133、または159からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号4、30、56、82、108、134、または160からなる群から選択されるCDR2配列、ならびに/または配列番号5、31、57、83、109、135、または161からなる群から選択されるCDR3配列を有する重鎖可変領域の抗体配列と;配列番号16、42、68、94、120、146、または172からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号17、43、69、95、121、147、または173からなる群から選択されるCDR2配列、ならびに/または配列番号18、44、70、96、122、148、または174からなる群から選択されるCDR3配列を有する軽鎖可変領域の抗体配列とからなるGDF15結合性抗体を調製し;重鎖可変領域の抗体配列および/または軽鎖可変領域の抗体配列内の、少なくとも1つのアミノ酸残基を改変して、少なくとも1つの改変抗体配列を創出し;改変抗体配列を、タンパク質として発現させるための方法が提示される。
したがって、別の実施形態では、本明細書では、配列番号6、32、58、84、110、136、または162からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号7、33、59、85、111、137、または163からなる群から選択されるCDR2配列、ならびに/または配列番号8、34、60、86、112、138、または164からなる群から選択されるCDR3配列を有する重鎖可変領域の抗体配列と;配列番号19、45、71、97、123、149、または175からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号20、46、72、98、124、150、または176からなる群から選択されるCDR2配列、ならびに/または配列番号21、47、73、99、125、151、または177からなる群から選択されるCDR3配列を有する軽鎖可変領域の抗体配列とからなるGDF15結合性抗体を調製し;重鎖可変領域の抗体配列および/または軽鎖可変領域の抗体配列内の、少なくとも1つのアミノ酸残基を改変して、少なくとも1つの改変抗体配列を創出し;改変抗体配列を、タンパク質として発現させるための方法が提示される。
したがって、本明細書の別の実施形態では、配列番号9、35、61、87、113、139、もしくは165からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号10、36、62、88、114、140、もしくは166からなる群から選択されるCDR2配列、および/または配列番号11、37、63、89、115、141、もしくは167からなる群から選択されるCDR3配列を有する重鎖可変領域の抗体配列と;配列番号22、48、74、100、126、152、もしくは178からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号23、49、75、101、127、153、もしくは179からなる群から選択されるCDR2配列、および/または配列番号24、50、76、102、128、154、もしくは180からなる群から選択されるCDR3配列を有する軽鎖可変領域の抗体配列とからなるGDF15結合性抗体を調製し、重鎖可変領域の抗体配列内および/または軽鎖可変領域の抗体配列内の、少なくとも1つのアミノ酸残基を改変して、少なくとも1つの改変抗体配列を創出し;改変抗体配列を、タンパク質として発現させるための方法が提示される。
したがって、別の実施形態では、本明細書では、哺乳動物細胞における発現について最適化されたGDF15結合性抗体であって、配列番号14、40、66、92、118、144、または170の群から選択される配列を有する全長重鎖抗体配列と、配列番号27、53、79、105、131、157、または183の群から選択される配列を有する全長軽鎖抗体配列とからなるFXIa結合性抗体を調製し、全長重鎖抗体配列および/または全長軽鎖抗体配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を改変して、少なくとも1つの改変抗体配列を創出し、改変抗体配列を、タンパク質として発現させるための方法を提供する。一実施形態では、重鎖または軽鎖の改変は、重鎖または軽鎖のフレームワーク領域内である。
改変抗体配列はまた、CDR3配列、またはUS2005/0255552において記載されている、最小限の不可欠な結合決定基を固定し、CDR1配列およびCDR2配列には多様性を持たせた抗体ライブラリーをスクリーニングすることによっても調製することができる。スクリーニングは、ファージディスプレイ技術など、抗体を、抗体ライブラリーからスクリーニングするのに適切な任意のスクリーニング技術に従い実施することができる。
標準的な分子生物学の技法を使用して、改変抗体配列を調製し、発現させることができる。改変抗体配列によりコードされる抗体は、ヒト、カニクイザル、ラットおよび/またはマウスGDF15に特異的に結合すること;ならびに抗体が、F36E細胞増殖アッセイおよび/またはBa/F3-GDF15R細胞増殖アッセイにおいて、GDF15依存性の細胞増殖を阻害することを含むがこれらに限定されない、本明細書で記載されるGDF15結合性抗体の機能的特性のうちの1つ、一部、または全部を保持する抗体である。
本明細書で記載される抗体を操作する方法のある種の実施形態では、GDF15結合性抗体コード配列の全部または一部に沿って、ランダムに、または選択的に、突然変異を導入することができ、結果として得られる修飾GDF15結合性抗体を、本明細書で記載される結合活性および/または他の機能的特性についてスクリーニングすることができる。当技術分野では、突然変異法が記載されている。例えば、ShortによるPCT公開国際公開第02/092780号パンフレットは、飽和突然変異誘発、合成ライゲーションアセンブリー、またはこれらの組合せを使用して、抗体の突然変異を創出し、スクリーニングするための方法について記載している。代替的に、LazarらによるPCT公開国際公開第03/074679号パンフレットは、コンピュータによるスクリーニング法を使用して、抗体の生理化学的特性を最適化する方法について記載している。
ある種の実施形態では、抗体は、脱アミド化部位を除去するように操作されている。脱アミド化は、ペプチド内またはタンパク質内の構造的変化および機能的変化を引き起こすことが公知である。脱アミドは、生物学的活性の低下のほか、タンパク質医薬品の薬物動態および抗原性の改変も結果としてもたらしうる(Anal Chem. 2005年3月1日;77(5):1432~9)。
ある種の実施形態では、抗体は、pIを増大させ、それらの薬物様特性を改善するように操作されている。タンパク質のpIは、分子の全体的な生物物理的特性の鍵となる決定因子である。pIが小さな抗体は、可溶性が小さく、安定性が小さく、凝集しやすいことが公知である。さらに、pIが小さな抗体の精製は、とりわけ、臨床における使用のためのスケールアップにおいて、困難であり、問題を生じる可能性がある。本明細書で記載される抗GDF15抗体またはFabのpIを増大させることにより、それらの可溶性が改善され、抗体を高濃度(>100mg/ml)で製剤化することが可能となった。抗体を高濃度(例えば、>100mg/ml)で製剤化することにより、ガラス体内注射を介して、患者の眼へと、高用量の抗体を投与することが可能であるという利点がもたらされ、これにより、消耗性障害を含む慢性疾患の処置にとって重要な利点である、投与頻度の低減を可能とすることができる。pIの増大はまた、抗体のIgGバージョンのFcRnを媒介するリサイクリングも増大させ、これにより、薬物が長時間にわたり体内にとどまり、要求される注射の回数を少なくすることも可能としうる。最後に、pIの増大に起因して、抗体の全体的な安定性が著明に改善され、その結果として、保管寿命およびin vivoにおける生物学的活性の延長がもたらされる。pIは、8.2以上であることが好ましい。
改変抗体の機能的特性は、実施例において示されるアッセイ(例えば、ELISA)など、当技術分野において利用可能であり、かつ/または本明細書で記載される標準的なアッセイを使用して評価することができる。
予防的使用および治療的使用
本明細書で記載される、GDF15に結合する抗体(例えば、ABGDF15-A、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-D、ABGDF15-E、ABGDF15-F、またはABGDF15-G)は、有効量の、本明細書で記載される抗体または抗原結合性断片を、それを必要とする対象へと投与することにより、GDF15と関連する疾患または障害を処置するために、治療的に有用な濃度で使用することができる。
本明細書で開示される抗体を使用して、とりわけ、GDF15関連状態またはGDF15関連障害を防止処置、防止、および改善することができる。これらの状態は、食欲不振-悪液質、老年性食欲不振、神経性食欲不振、がんと関連する悪液質、AIDSと関連する悪液質、心不全と関連する悪液質、嚢胞性線維症と関連する悪液質、関節リウマチと関連する悪液質、腎疾患と関連する悪液質、COPDと関連する悪液質、ALSと関連する悪液質、腎不全と関連する悪液質、または股関節骨折と関連する悪液質などの消耗性障害を伴う消耗性障害を含むがこれらに限定されない。
したがって、本明細書では、有効量の、本明細書で記載される抗体を、それを必要とする対象へと投与することにより、GDF15関連障害、例えば、悪液質またはサルコペニアなどの消耗性障害を処置する方法が提示される。本明細書では、有効量の、本明細書で記載される抗体を、それを必要とする対象へと投与することにより、GDF15関連障害を処置する方法が提示される。GDF15レベルの上昇と関連するか、またはこれから生じる、他のGDF15関連疾患またはGDF15関連障害は、サルコペニア、すなわち、悪液質と関連する臨床状態であって、骨格筋量および筋強度の減少を特徴とする臨床状態と;飢餓とを含む。飢餓は、典型的に、不十分な食餌および/または栄養の取込みに起因する、体脂肪量および除脂肪量の減少を結果としてもたらす(Thomas (2007) Clinical Nutrition 26:389~399)。飢餓の影響は、食餌と、栄養、例えば、タンパク質の取込みとを改善することにより反転することが多い。GDF15レベルの上昇と関連するか、またはこれから生じる、さらに他のGDF15関連疾患またはGDF15関連障害は、食欲、脂肪量、エネルギー平衡の異常、および/または不随意の体重減少と関連する障害、ならびに重篤な疾病患者の死亡率および罹患率の低減を含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体を使用して、GDF15タンパク質レベルが異常に高く、かつ/またはGDF15タンパク質レベルの低減が求められる、任意の数の状態または疾患を処置することができる。諸実施形態では、対象は、GDF15の循環レベルの上昇、例えば、血清GDF15レベルの上昇を有する。例えば、GDF15を過剰発現させ、かつ/もしくは分泌する腫瘍に罹患している対象、および/または血清GDF15レベルの上昇と関連するがんに罹患している対象を処置することができる。血清GDF15レベルの上昇を示す、例示的な障害は、ベータ-サラセミア、肺塞栓症、がん、例えば、前立腺、結腸直腸、膵臓がん、重度慢性腎疾患、神経性食欲不振、慢性心不全、肥満、火傷患者、および妊娠を含むがこれらに限定されない。具体的な態様では、本明細書では、それを必要とする対象における食欲、食物摂取、体重、および/または筋肉量を増大させる方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗GDF15抗体(例えば、表1で示される、ABGDF15-A、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-D、ABGDF15-E、ABGDF15-F、またはABGDF15-G)を対象へと投与するステップを含む方法が提示される。具体的な態様では、対象は、消耗性障害(例えば、悪液質)を伴うと診断されている。特定の実施形態では、対象は、がん、慢性心不全、慢性腎疾患、COPD、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、敗血症、または結核を伴うと診断されている。具体的な実施形態では、状態/障害は、例えば、健常対象の集団内のGDF15レベルと比べたGDF15レベルの上昇と関連する。
特定の態様では、本明細書では、それを必要とする対象における体重、筋肉量、食欲、または食物摂取の減少を阻害または軽減する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗GDF15抗体(例えば、表1で示される、ABGDF15-A、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-D、ABGDF15-E、ABGDF15-F、またはABGDF15-G)を対象へと投与するステップを含む方法が提示される。具体的な態様では、対象は、消耗性障害(例えば、悪液質)を伴うと診断されている。特定の実施形態では、対象は、がん、慢性心不全、慢性腎疾患、COPD、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、敗血症、または結核を伴うと診断されている。具体的な実施形態では、状態/障害は、例えば、健常対象の集団内のGDF15レベルと比べたGDF15レベルの上昇と関連する。本明細書で開示される抗体はまた、GDF15関連障害を防止、処置、または改善するために、他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。例えば、TNFαおよびIL-1は、炎症促進性応答の媒介に関与することが公知であり、筋肉枯渇、食欲不振、および悪液質にもまた関与しているサイトカインであり、したがって、TNFαおよび/またはIL-1の阻害剤は、GDF15関連障害(例えば、消耗性状態)を伴う患者を処置するために、本明細書で記載されるGDF15抗体および抗原結合性断片と組み合わせて使用することができる。
下記では、例示的な障害について、より詳細に記載する。
本明細書で開示される抗体を使用して、様々な障害、例えば、体重(weight)または体重(body mass)の不随意的減少と関連する障害、例えば、消耗性障害を処置することができる。一部の実施形態では、障害は、代謝性障害である。諸実施形態では、障害は、悪液質、サルコペニア、または飢餓から選択される。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体を使用して、筋肉量の減少、例えば、基礎疾患と関連する、筋肉量の減少を阻害する。諸実施形態では、体重(body weight)または体重(body mass)の減少と関連する障害は、がん、心血管疾患(例えば、慢性心不全)、腎疾患(例えば、慢性腎疾患)、COPD、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、敗血症、または結核を含むがこれらに限定されない。一実施形態では、障害は、がん食欲不振-悪液質症候群(CACS)である。
対象へと投与されると、本明細書で開示される抗体は、筋肉量の減少、例えば、基礎疾患と関連する筋肉量の減少を阻害しうる。基礎疾患は、がん、慢性心不全、慢性腎疾患、COPD、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、敗血症、および結核からなる群から選択することができる。一部の実施形態では、筋肉量の減少は、脂肪量の減少を伴いうる。開示される抗体はまた、哺乳動物における不随意的体重減少を阻害するのに使用することもできる。一部の実施形態では、開示される抗体はまた、臓器量の減少を阻害するのに使用することもできる。さらに、対象における悪液質および/またはサルコペニアを処置する方法であって、有効量の、開示される抗体のうちの1つまたは複数を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法も開示される。
一部の実施形態では、開示される抗体は、筋肉量および/または脂肪量の減少を、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、または100%阻害する。一部の実施形態では、開示される抗体は、臓器量の減少を、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、または100%阻害する。一部の実施形態では、臓器量の減少は、心臓、肝臓、腎臓、および/または脾臓において観察される。一部の実施形態では、臓器量の減少は、筋肉量の減少、脂肪量の減少、および/または不随意的体重減少を伴う。
不随意的体重減少は、下記で記載される3つの主要な病因であって、悪液質、サルコペニア、および飢餓を含む病因へと類別することができる。
悪液質は、がん、AIDS、慢性心不全(先天性心不全としてもまた公知である)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎疾患、結核、敗血症、全身性炎症、および/または急性炎症性応答を含む、多数の疾患と関連しうる、不随意的体重減少を伴う消耗性/代謝性障害である(Thomas (2007) Clin. Nutr 26: 389~399)。悪液質は、その症状が変動するが、一般に、骨格筋量の不随意的減少と、基礎疾病の一部の形態とを伴う(Evansら、(2008) Clin. Nutr. 27: 793~799)。脂肪量および筋肉量の減少は、悪液質の顕著な臨床的特徴である。いくつかの症例では、悪液質は、前悪液質、悪液質、および不応性悪液質と称される病期を通して進行する(Fearonら、(2011) Lancet Onc. 12: 489~495)。2つの、異なるが、場合によって、重複する過程:(a)筋肉に直接作用し、その量および機能を低減する代謝性過程;ならびに(b)脂肪および筋肉のいずれの減少ももたらす、食物摂取の低減過程が、悪液質の発生および進行に関与すると考えられる(Tsaiら、(2012) J. Cachexia Sarcopenia Muscle 3:239~243)。悪液質から生じる体重減少は、多様な疾患における予後不良と関連し(Evansら、上述)、悪液質およびその帰結は、がんによる死のうちの約20%において、死を直接引き起こすと考えられる(Tisdale (2002) Nat. Rev. Cancer 2:862~871)。
サルコペニアは、悪液質と関連する臨床状態であって、骨格筋量および筋強度の減少を特徴とする臨床状態である。筋肉量の減少は、筋力の減少を伴う身体機能障害、転倒の可能性の増大、および自律の喪失をもたらしうる。肺活量の低減により、呼吸器機能もまた、損なわれうる。代謝ストレス時に、筋肉タンパク質は、急速に動員されて、免疫系、肝臓、および消化管に、アミノ酸、特に、グルタミンをもたらす。サルコペニアは、老齢者の疾患であることが多いが、その発症はまた、筋肉の不使用および栄養不良とも関連する場合があり、悪液質と同時でありうる。サルコペニアは、筋肉量の低下および歩行速度の低下など、機能的観察に基づき診断することができる。例えば、Muscaritoliら、(2010) Clin. Nutrition 29: 154~159を参照されたい。したがって、ある種の実施形態では、本明細書で開示される抗GDF抗体のうちの1つまたは複数を使用して、対象が、悪液質または食欲の減退を有するか、またはこれらを伴うと診断されているのであれ、そうでないのであれ、サルコペニア、筋肉消耗性障害、および/または著明な筋肉量の減少を患うか、またはこれらを伴うと診断された対象を処置することができる。このような方法は、治療有効量の、1つまたは複数の本明細書で開示される抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む。
がん
諸実施形態では、本明細書で開示される抗体を使用して、進行性であるか、または不随意的な体重減少と関連するがんを有する対象を処置することができる。進行したがんの患者は、食欲不振、栄養不良、貧血、炎症、および免疫機能の抑制と関連する進行性体重減少を経る場合がある。まとめると、この一連の複合的かつ相互関連的な症状は、がん食欲不振-悪液質症候群(CACS)として記載されている。CACSは、筋肉量の減少および脂肪量の減少、生活の質の低下、抗がん治療への応答の低減、処置毒性の増大、および生存の低減と関連する。さらに、多様ながんを処置するのに使用される、ある種の化学療法による処置は、悪液質を誘導するか、またはこれに寄与することが示されている。例えば、カルボプラチンおよびオキサリプラチンなど、白金ベースの治療で処置される対象が、用量制限的で、有害で、場合によって、致死的な悪液質を経る場合がある。
それによる処置および効果が、1つまたは複数の抗GDF15抗体との組合せから利益を得うる抗がん剤の例は、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンなど、白金ベースの治療剤である。それによる処置および効果が、1つまたは複数の抗GDF15抗体との組合せから利益を得うる、他の抗がん剤は、カペシタビン、ドキソルビシン、およびゲムシタビンを含む。
本明細書で開示される方法はまた、治療的処置レジメンの増強、ならびに/またはアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生剤、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、コルチコステロイド、標的療法、ホルモン療法、免疫療法、およびがんワクチンを含む、他の抗がん剤で処置された対象における全生存の延長に有用でもありうる。
したがって、1つまたは複数の抗がん剤と組み合わせた、抗GDF15抗体の使用が開示される。例示的な抗がん剤は、アナストロゾール(Arimidex(登録商標))、ビカルタミド(Casodex(登録商標))、ブレオマイシン硫酸塩(Blenoxane(登録商標))、ブスルファン(Myleran(登録商標))、ブスルファン注射剤(Busulfex(登録商標))、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、N4-ペントキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、シスプラチン(Platinol(登録商標))、クラドリビン(Leustatin(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)またはNeosar(登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(Cytosar-U(登録商標))、シタラビンリポソーム注射剤(DepoCyt(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD、コスメガン)、ダウノルビシン塩酸塩(Cerubidine(登録商標))、ダウノルビシンクエン酸塩リポソーム注射剤(DaunoXome(登録商標))、デキサメタゾン、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、ドキソルビシン塩酸塩(Adriamycin(登録商標)、Rubex(登録商標))、エトポシド(Vepesid(登録商標))、フルダラビンリン酸塩(Fludara(登録商標))、5-フルオロウラシル(Adrucil(登録商標)、Efudex(登録商標))、フルタミド(Eulexin(登録商標))、テザシチビン、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素(Hydrea(登録商標))、イダルビシン(Idamycin(登録商標))、イホスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(Camptosar(登録商標))、L-アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ロイコボリンカルシウム、メルファラン(Alkeran(登録商標))、6-メルカプトプリン(Purinethol(登録商標))、メトトレキセート(Folex(登録商標))、ミトキサントロン(Novantrone(登録商標))、マイロターグ、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、フェニックス(イットリウム90/MX-DTPA)、ペントスタチン、カルムスチンインプラントを伴うポリフェプロサン20(Gliadel(登録商標))、タモキシフェンクエン酸塩(Nolvadex(登録商標))、テニポシド(Vumon(登録商標))、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(Tirazone(登録商標))、注射用のトポテカン塩酸塩(Hycamptin(登録商標))、ビンブラスチン(Velban(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、ビノレルビン(Navelbine(登録商標))、イブルチニブ、イデラリシブ、およびブレンツキシマブ・ベドチンを含むがこれらに限定されない。
例示的なアルキル化剤は、限定なしに述べると、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、およびトリアゼン:ウラシルマスタード(Aminouracil Mustard(登録商標)、Chlorethaminacil(登録商標)、Demethyldopan(登録商標)、Desmethyldopan(登録商標)、Haemanthamine(登録商標)、Nordopan(登録商標)、Uracil nitrogen mustard(登録商標)、Uracillost(登録商標)、Uracilmostaza(登録商標)、Uramustin(登録商標)、Uramustine(登録商標))、クロルメチン(Mustargen(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Clafen(登録商標)、Endoxan(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標))、イホスファミド(Mitoxana(登録商標))、メルファラン(Alkeran(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、ピポブロマン(Amedel(登録商標)、Vercyte(登録商標))、トリエチレンメラミン(Hemel(登録商標)、Hexalen(登録商標)、Hexastat(登録商標))、トリエチレンチオホスホラミン(triethylenethiophosphoramine)、テモゾロミド(Temodar(登録商標))、チオテパ(Thioplex(登録商標))、ブスルファン(Busilvex(登録商標)、Myleran(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ロムスチン(CeeNU(登録商標))、ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標))、およびダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標)を含む。さらなる例示的なアルキル化剤は、限定なしに述べると、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標));テモゾロミド(Temodar(登録商標)およびTemodal(登録商標));ダクチノマイシン(また、アクチノマイシン-Dとしても公知である;Cosmegen(登録商標));メルファラン(また、L-PAM、L-サルコリシン、およびフェニルアラニンマスタードとしても公知である;Alkeran(登録商標));アルトレタミン(また、ヘキサメチルメラミン(HMM)としても公知である;Hexalen(登録商標));カルムスチン(BiCNU(登録商標));ベンダムスチン(Treanda(登録商標));ブスルファン(Busulfex(登録商標)およびMyleran(登録商標));カルボプラチン(Paraplatin(登録商標));ロムスチン(また、CCNUとしても公知である;CeeNU(登録商標));シスプラチン(また、CDDPとしても公知である;Platinol(登録商標)およびPlatinol(登録商標)-AQ);クロラムブシル(Leukeran(登録商標));シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)およびNeosar(登録商標));ダカルバジン(また、DTIC、DIC、およびイミダゾールカルボキサミドとしても公知である;DTIC-Dome(登録商標));アルトレタミン(また、ヘキサメチルメラミン(HMM)としても公知である;Hexalen(登録商標));イホスファミド(Ifex(登録商標));プレドニマスチン(Prednumustine);プロカルバジン(Matulane(登録商標));メクロレタミン(また、ナイトロジェンマスタード、ムスチン、およびメクロレタミン(mechloroethamine)塩酸塩としても公知である;Mustargen(登録商標));ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標));チオテパ(また、チオホスファミド(thiophosphoamide)、TESPA、およびTSPAとしても公知である;Thioplex(登録商標));シクロホスファミド(Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(登録商標));およびベンダムスチンHCl(Treanda(登録商標))を含む。
例示的なアントラサイクリンは、例えば、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)およびRubex(登録商標));ブレオマイシン(lenoxane(登録商標));ダウノルビシン(ダウノルビシン(dauorubicin)塩酸塩、ダウノマイシン、およびルビドマイシン塩酸塩;Cerubidine(登録商標));リポソーム化ダウノルビシン(ダウノルビシンリポソームクエン酸塩;DaunoXome(登録商標));ミトキサントロン(DHAD、Novantrone(登録商標));エピルビシン(Ellence(商標));イダルビシン(Idamycin(登録商標)、Idamycin PFS(登録商標));マイトマイシンC(Mutamycin(登録商標));ゲルダナマイシン;ハービマイシン;ラビドマイシン;およびデスアセチルラビドマイシンを含む。
例示的なビンカアルカロイドは、ビノレルビン酒石酸塩(Navelbine(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、およびビンデシン(Eldisine(登録商標));ビンブラスチン(また、ビンブラスチン硫酸塩、ビンカロイコブラスチン、およびVLBとしても公知である;Alkaban-AQ(登録商標)およびVelban(登録商標));およびビノレルビン(Navelbine(登録商標))を含むがこれらに限定されない。
例示的なプロテオソーム阻害剤は、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標));カーフィルゾミブ(PX-171-007、(S)-4-メチル-N-((S)-1-(((S)-4-メチル-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソペンタン-2-イル)アミノ)-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセトアミド)-4-フェニルブタンアミド)-ペンタンアミド);マリゾミブ(NPI-0052);イキサゾミブクエン酸塩(MLN-9708);デランゾミブ(CEP-18770);およびO-メチル-N-[(2-メチル-5-チアゾリル)カルボニル]-L-セリル-O-メチル-N-[(1S)-2-[(2R)-2-メチル-2-オキシラニル]-2-オキソ-1-(フェニルメチル)エチル]-L-セリンアミド(ONX-0912)を含むがこれらに限定されない。
例示的なチロシンキナーゼ阻害剤は、表皮成長因子(EGF)経路阻害剤(例えば、表皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤)、血管内皮成長因子(VEGF)経路阻害剤(例えば、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)阻害剤(例えば、VEGFR-1阻害剤、VEGFR-2阻害剤、VEGFR-3阻害剤))、血小板由来成長因子(PDGF)経路阻害剤(例えば、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)阻害剤(例えば、PDGFR-β阻害剤))、RAF-1 阻害剤、KIT 阻害剤、およびRET 阻害剤を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤と組み合わせて使用した抗がん剤は:アキシチニブ(AG013736)、ボスチニブ(SKI-606)、セジラニブ(RECENTIN(商標)、AZD2171)、ダサチニブ(SPRYCEL(登録商標)、BMS-354825)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、イマチニブ(Gleevec(登録商標)、CGP57148B、STI-571)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、TYVERB(登録商標))、レスタウルチニブ(CEP-701)、ネラチニブ(HKI-272)、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、セマキサニブ(セマキシニブ、SU5416)、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、SU11248)、トセラニブ(PALLADIA(登録商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(登録商標)、ZD6474)、バタラニブ(PTK787、PTK/ZK)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標))、ENMD-2076、PCI-32765、AC220、ドビチニブ乳酸塩(TKI258、CHIR-258)、BIBW 2992(TOVOK(商標))、SGX523、PF-04217903、PF-02341066、PF-299804、BMS-777607、ABT-869、MP470、BIBF 1120(VARGATEF(登録商標))、AP24534、JNJ-26483327、MGCD265、DCC-2036、BMS-690154、CEP-11981、チボザニブ(AV-951)、OSI-930、MM-121、XL-184、XL-647、XL228、AEE788、AG-490、AST-6、BMS-599626、CUDC-101、PD153035、ペリチニブ(EKB-569)、バンデタニブ(ザクチマ)、WZ3146、WZ4002、WZ8040、ABT-869(リニファニブ)、AEE788、AP24534(ポナチニブ)、AV-951(チボザニブ)、アキシチニブ、BAY 73-4506(レゴラフェニブ)、ブリバニブアラニネート(BMS-582664)、ブリバニブ(BMS-540215)、セジラニブ(AZD2171)、CHIR-258(ドビチニブ)、CP 673451、CYC116、E7080、Ki8751、マシチニブ(AB1010)、MGCD-265、モテサニブ二リン酸塩(AMG-706)、MP-470、OSI-930、パゾパニブ塩酸塩、PD173074、ソラフェニブトシル酸塩(Bay 43-9006)、SU 5402、TSU-68(SU6668)、バタラニブ、XL880(GSK1363089、EXEL-2880)からなる群から選択される。選択されるチロシンキナーゼ阻害剤は、スニチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、またはソラフェニブから選択される。
本明細書で開示される方法の、例示的な適応は、以下の腫瘍およびがん:乳がん;肺がん(小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんを含む);肛門がん、結腸がん、直腸がん、および結腸直腸がん;肝臓がん;腎臓(kidney)および腎臓(renal)がん(腎細胞癌を含む);頭頸部がん;膵臓がん;骨がん;子宮頸がん、卵巣がん、膣がん、および外陰がん;前立腺がん、陰茎がん、および精巣がん;肛門がん;膀胱がん;白血病(AML;CML;ALL、およびCLLを含む);胃がん(stomach cancer)(消化管間葉系腫瘍を含む)および胃がん(gastric cancer);脳腫瘍;神経膠腫;神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫;甲状腺がん;皮膚がん(黒色腫を含む);多発性骨髄腫(および他の形質細胞新生物);リンパ腫(ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を含む);肉腫;骨髄増殖性新生物;悪性中皮腫;成年/小児軟部組織肉腫;AIDS関連カポジ肉腫;子宮内膜がん;妊娠性絨毛性疾患;悪性中皮腫;多中心性キャッスルマン病;骨髄増殖性新生物;平滑筋肉腫;基底細胞癌;ウィルムス腫瘍および他の小児腎臓がんを含む。
ある種の実施形態では、1つまたは複数の抗悪液質剤を、本明細書で開示される抗体に加えて使用することができる。有用でありうる抗悪液質剤は、メゲストロール酢酸塩(Agilesら、(2013) Clinical Nutrition 32:319~324);コルチコステロイドまたはグルココルチコイド(デキサメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンなど);カンナビノイド(ドロナビノールなど);ゲレリンおよびアナモレリン;メラノコルチンアンタゴニスト;抗IL6モノクローナル抗体;選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARS);サリドマイド;オキサンドロロン;アクチビン受容体II;GDF8(ミオスタチン);およびIL-1a阻害剤を含む。
ある種の実施形態では、結腸または直腸のがんであって、身体の他の部分へと拡散したがん(転移性結腸直腸がん)、または手術の後における結腸がんのために、対象を、カペシタビン(例えば、Xeloda(登録商標))で処置する。カペシタビンによる処置の前に、これと共時的に、またはこれに後続して、対象を、本明細書で記載される抗GDF15抗体で処置する。
他の実施形態では、身体の他の部分へと拡散した乳がん(転移性乳がん)のために、対象を、ドセタキセル(例えば、Taxotere(登録商標))による処置と組み合わせて、またはこの後で、カペシタビンにより処置する。カペシタビンによる処置の前に、これと共時的に、またはこれに後続して、対象を、本明細書で記載される抗GDF15抗体で処置する。カペシタビンの投与量および投与は、臨床医学の当業者が決定しうる。典型的なレジメンは、毎日2回ずつ、2週間にわたり経口投与される1250mg/ml2の投与に、1週間の休薬期間を後続させる、3週間のサイクルとしての投与を含みうる。ドセタキセルと組み合わせて使用する場合、ドセタキセルのための典型的なレジメンは、3週間ごとに1時間の静脈内注入としての75mg/ml2である。
ある種の実施形態では、膵臓がんのために;卵巣がんのために、カルボプラチンと組み合わせて;乳がんのために、パクリタキセルと組み合わせて;非小細胞肺がん(NSCLC)のために、シスプラチンと組み合わせて、対象を、ゲムシタビン(例えば、Gemzar(登録商標))で処置する。ゲムシタビンによる処置の前に、これと共時的に、またはこれに後続して、対象を、本明細書で記載される抗GDF15抗体で処置する。ゲムシタビンの投与量および投与は、臨床医学の当業者が決定しうる。典型的なレジメンは、21日間のサイクルの、各々1および8日目において;または28日間のサイクルの、各々1、8、および15日目において、30分間にわたり静脈内投与される1000~1250mg/ml2の間の投与を含みうる。
ある種の実施形態では、結腸または直腸のがんであって、身体の他の部分へと拡散したがん(転移性結腸直腸がん)、または手術の後における結腸がんのために、対象を、ドキソルビシン(例えば、Adriamycin(登録商標))で処置する。カペシタビンによる処置の前に、これと共時的に、またはこれに後続して、対象を、本明細書で記載される抗GDF15抗体で処置する。
ドキソルビシン(例えば、Doxil(登録商標))はまた、卵巣がん、AIDS関連カポジ肉腫の処置;およびボルテゾミブと組み合わせた、多発性骨髄腫の処置のほか、急性リンパ芽球性リンパ腫(ALL);急性骨髄芽球性リンパ腫(AML);神経芽細胞腫;乳癌;卵巣癌;ホジキン病;悪性リンパ腫;および小細胞型が、他の細胞型と比較して最も応答性が大きい気管支癌の処置にも承認されている。ドキソルビシンによる処置の前に、これと共時的に、またはこれに後続して、対象を、本明細書で記載される抗GDF抗体で処置する。ドキソルビシンの投与量および投与は、臨床医学の当業者が決定しうる。典型的なレジメンは、4週間ごと、最低4コースにわたり静脈内投与される50mg/ml2(卵巣がん)~AIDS関連カポジ肉腫の処置のために、3週間ごとに静脈内投与される20mg/ml2の間の投与を含みうる。多発性骨髄腫では、典型的なレジメンは、3週間ごと、1、4、8、および11日目における静脈内ボーラス注射として、1.3mg/ml2で投与される、ボルテゾミブの投与、およびボルテゾミブの投与後4日目に、30mg/ml2で静脈内投与される、ドキソルビシンの投与である。
ある種の実施形態では、卵巣がんのために、対象を、カルボプラチン(例えば、Paraplatin(登録商標))で処置する。他の実施形態では、進行した卵巣がんのために、対象を、シクロホスファミドによる処置と組み合わせて、またはこの後で、カルボプラチンで処置する。カルボプラチンによる処置の前に、これと共時的に、またはこれに後続して、対象を、本明細書で記載される抗GDF15抗体で処置する。カルボプラチンの投与量および投与は、臨床医学の当業者が決定しうる。典型的なレジメンは、4週間ごとの1日目における、約6サイクルにわたる、300~360mg/ml2の静脈内投与を含みうる。シクロホスファミドを共投与する場合、典型的なレジメンは、4週間ごとに1日の、6サイクルにわたる、600mg/ml2のシクロホスファミドの静脈内注入と組み合わせた、4週間ごとに1日の、6サイクルにわたる、300mg/ml2のカルボプラチンの静脈内注入でありうる。
ある種の実施形態では、転移性精巣腫瘍、転移性卵巣腫瘍、または進行した膀胱がんの処置のために、対象を、シスプラチン(例えば、Platinol(登録商標))で処置する。他の実施形態では、対象を、シクロホスファミドによる処置と組み合わせて、またはこの後で、シスプラチンで処置する。シスプラチンによる処置の前に、これと共時的に、またはこれに後続して、対象を、本明細書で記載される抗GDF15抗体で処置する。シスプラチンの投与量および投与は、臨床医学の当業者が決定しうる。典型的なレジメンは、転移性精巣腫瘍のための、1サイクル当たり、5日間にわたり、毎日、20mg/ml2の静脈内投与を含みうる。進行した膀胱がんのための、シスプラチンの典型的なレジメンは、先行する放射線治療への曝露の程度および/または先行する化学療法に応じて、3~4週間ごとに1回ずつ、50~70mg/ml2の静脈内注入を含みうる。重度に前処置された患者には、4週間ごとに1回の、50mg/ml2の静脈内投与が典型的である。転移性卵巣腫瘍の処置のためには、4週間ごとに1回の、1サイクル当たり、75~100mg/ml2の静脈内が典型的である。シスプラチンの投与を、シクロホスファミドと組み合わせる場合、シスプラチンの注射と、シクロホスファミドとを、逐次的に投与するものとする。典型的なレジメンは、4週間ごとの1日目における、600mg/ml2のシクロホスファミドの静脈内注入でありうる。
ある種の実施形態では、結腸がんもしくは進行した結腸直腸がん、または手術の後における結腸がんの処置のために、対象を、5-フルオロウラシルおよび/またはロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン、例えば(Eloxatin(登録商標))で処置する。オキサリプラチンによる処置の前に、これと共時的に、またはこれに後続して、対象を、本明細書で記載される抗GDF15抗体で処置する。オキサリプラチンの投与量および投与は、臨床医学の当業者が決定しうる。典型的なレジメンは、200mg/ml2のロイコボリンの静脈内注入と同時の250~500mlの5%デキストロース中に、85mg/ml2のオキサリプラチンの静脈内注入による、120分間にわたる投与に続き、4~6分間にわたり、静脈内ボーラスで施される、400mg/ml2の5-フルオロウラシルを含みうる。
心血管疾患
悪液質、慢性腎疾患、貧血、鉄欠損、および高血圧症は、先天性心不全または慢性心不全(CHF)と関連しうる。したがって、本明細書で記載される抗体を使用して、それを必要とする対象における心機能を増大させることができる。諸実施形態では、有効量の抗GDF15抗体を投与して、対象における心機能を増大させるステップを含む方法が開示される。一部の実施形態では、対象は、心機能不全またはCHFを患い、任意選択で、悪液質、慢性腎疾患、貧血、鉄欠損、または高血圧症のうちの1つまたは複数を呈示しうる。
本明細書の他の実施形態では、開示される抗GDF15抗体を使用して、心血管疾患を処置する方法が提示される。一部の実施形態では、心血管疾患は、先天性心不全もしくは慢性心不全(CHF)、心筋肥大もしくは心筋萎縮、急性冠動脈症候群、狭心症、または他の心障害もしくは心状態を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、処置される対象は、心筋梗塞などの心事象を患ったことがあるか、または経皮的冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス移植術、冠動脈血管形成術、またはステント留置などの心臓インターベンションを施されたことがあるか、もしくはこれらを必要とすると診断されている。
ある種の実施形態では、本発明は、1つまたは複数の心関連症状であって、心血管疾患もしくは心機能不全、先天性心不全もしくは慢性心不全、心ミオパシー、心肥大、虚血/再灌流損傷、呼吸困難、特発性肺動脈性高血圧症、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)、または他の心障害もしくは心状態の症状でありうる症状を呈示する対象を処置する方法を含む。このような心関連症状については、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2015/196142号パンフレットにおいて開示されている。一部の実施形態では、本明細書で記載されるGDF抗体による処置に応答して、かつ、臨床的に適切であるとみなされた場合、投与レジメンを改変するように、対象をモニタリングすることができる。
ある種の実施形態では、心血管疾患または先天性心不全もしくは慢性心不全(CHF)などの心障害を有する対象は既に、公知の心処置で処置されているが、依然として、1つまたは複数の症状を呈示している。したがって、本明細書では、上記の心関連症状のうちの少なくとも1つの発生および/または重症度を回避または軽減するための方法および組成物が提示され、上記で記載した心臓インターベンションのうちの1つに対する必要もまた、回避または軽減しうる。
腎疾患
本明細書で開示される方法および組成物はまた、腎臓または腎組織の疾患、機能不全、肥大、または萎縮を伴う状態および障害を検出、防止、および処置するために有用でもありうる。このような状態は、慢性腎臓または末期腎不全、尿毒症性症候群、貧血および/または腎臓からのエリスロポエチン産生の低減、糖尿病、インスリン抵抗性、ならびに腎機能または腎サイズの低減を含むがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、対象は、慢性腎疾患(CKD)の、1つまたは複数のさらなる症状を呈示する。諸実施形態では、対象は、食欲不振および/またはGDF15の血漿レベルの上昇を伴うCKDを有する。前記CKDの症状は、慢性腎疾患、腎不全、または腎機能不全の以下の指標:血清クレアチニンレベルの上昇、血清ビリルビンレベルの低下、尿中アルブミン濃度の上昇、尿中クレアチニンレベルの上昇、尿中アルブミン対クレアチン比(30mg/gの値が重篤なCKDを指し示す、女性における25mg/g以上のアルブミン対クレアチニン比、および男性における17mg/g以上のアルブミン対クレアチニン比)の上昇、尿中タンパク質対クレアチニン比(200mg/gのタンパク質対クレアチニン比は大きすぎ、CKDを指し示す)の上昇、高血圧症(140mmHg以上の収縮期血圧;90mmHg以上の拡張期血圧として規定される;または、現在、降圧薬処置を受けている)、糖尿病(126mg/dLもしくはこれを超える空腹時グルコースレベルとして規定される;またはインスリンもしくは経口血糖降下薬の使用);尿中もしくは血漿中のシスタチンC、または尿中のC反応性タンパク質(uCRP)の出現、尿中レチノール結合性タンパク質(uRBP)、ヘプシジン、クレアチニンの血清レベルの上昇、ヘモジュベリン;尿酸および/または尿素;ベータ微量タンパク質;腎臓損傷分子1(KIM-1);尿中N-アセチル-ベータ-(D)-グルコサミニダーゼ(NAG);尿中インターロイキン18(uIL-18);肝臓脂肪酸結合タンパク質1(L-FABP-1);血中尿素窒素(BUN);マイクロRNA21(miRNA-21);および電解質のうちの1つまたは複数を含みうる。
腎疾患について、対象を診断し、かつ/またはモニタリングするのに使用しうる、さらなる症状、生化学的パラメータ、および生理学的パラメータについては、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2015/196145号パンフレットにおいて開示されている。
諸実施形態では、本明細書で記載される抗体を使用して、腎疾患を伴う対象の処置時、例えば、透析時に、GDF15を低減する、例えば、これを枯渇させることができる。
本明細書で開示される抗体により、障害を処置するのに使用しうる、さらなる適応および投与量については、それらの全ての内容が、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2014/100689号パンフレット、国際公開第2016/049470号パンフレット、国際公開第2015/196142号パンフレット、および国際公開第2015/196145号パンフレットにおいて記載されている。
医薬組成物
本明細書では、薬学的に許容される担体と併せて製剤化されたGDF15結合性抗体(インタクトなまたは結合性断片)を含む医薬組成物が提示される。組成物は加えて、例えば、消耗性障害の処置または防止に適する1つまたは複数の他の治療剤も含有しうる。薬学的に許容される担体は、組成物を増強するかもしくは安定化させるか、または、組成物の調製を容易とするのに使用することもできる。薬学的に許容される担体は、生理学的に適合性の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。
本明細書で記載される医薬組成物は、当技術分野で公知の様々な方法により投与することができる。投与経路および/または投与方式は、所望される結果に応じて変化する。投与は、ガラス体内投与、静脈内投与、筋内投与、腹腔内投与、もしくは皮下投与であるか、または標的部位に近接して投与することが好ましい。薬学的に許容される担体は、ガラス体内投与、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与、または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適するものとする。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、二特異性分子および多特異性分子である抗体は、化合物を、化合物を不活化しうる酸および他の天然の状態の作用から保護する材料でコーティングすることができる。
組成物は、滅菌であり、かつ、流体であるものとする。適正な流体性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより維持することができ、分散液の場合には、要求される粒子サイズを維持し、界面活性剤を使用することにより維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトールまたはソルビトールなどの多価アルコール、および塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長時間吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組み入れることによりもたらすことができる。
本明細書で記載される医薬組成物は、当技術分野において周知であり、日常的に実施されている方法に従い調製することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Mack Publishing Co.、20版、2000;およびSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R. Robinson編、Marcel Dekker, Inc.、New York、1978を参照されたい。医薬組成物は、GMP条件下で製造することが好ましい。本明細書で記載される医薬組成物中では、GDF15結合性抗体の治療的に有効な用量または治療的に効果的な用量を援用することが典型的である。GDF15結合性抗体は、当業者に公知の従来の方法により、薬学的に許容される剤形へと製剤化する。投与レジメンは、所望される最適応答(例えば、治療的応答)をもたらすように調整する。例えば、単一のボーラスを投与することもでき、複数に分割された用量をある期間にわたり投与することもでき、治療状況の要件により指し示されるのに応じて、用量を比例的に低減するかまたは増大させることもできる。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、非経口組成物を、投与量単位形態で製剤化することがとりわけ有利である。本明細書で使用される投与量単位形態とは、処置される対象のための単位投与量として適する、物理的に個別の単位を指す。各単位は、要求される医薬担体との関連で、所望の治療効果をもたらすように計算された、所定量の活性化合物を含有する。
本明細書で記載される医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性とならずに、特定の患者、組成物、および投与方式に所望される治療的応答を達成するのに有効な量の有効成分を得るように変化させることができる。選択される投与量レベルは、援用される本明細書で記載される特定の組成物、またはそれらのエステル、塩もしくはアミド、投与経路、投与時期、援用される特定の化合物の排出速度、処置の持続期間、援用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的健康、および医療既往歴などの因子を含む様々な薬物動態因子に依存する。
医師または獣医師は、医薬組成物中で援用される本明細書で記載される抗体の用量を、所望の治療効果を達成するのに要求されるレベル未満のレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで、投与量を漸増させることができる。一般に、本明細書で記載される消耗性障害を処置するのに有効な、本明細書で記載される組成物の用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるのか、動物であるのか、投与される他の医薬、および処置が予防的であるのか、治療的であるのかを含む、多くの異なる因子に応じて変化する。処置投与量は、安全性および有効性を最適化するように滴定することが必要である。抗体の全身投与では、投与量は、宿主の体重1kg当たり約0.0001~100mg/kg、通例は約0.01~15mg/kgの範囲である。抗体のガラス体内投与では、投与量は、0.1mg/眼~5mg/眼でありうる。例示的な処置レジメは、2週間ごとに1回、または毎月1回、または3~6カ月ごとに1回の全身投与を伴う。例示的な処置レジメは、2週間ごとに1回、もしくは毎月1回、もしくは3~6カ月ごとに1回、または必要に応じて(PRN)の全身投与を伴う。
抗体は通例、複数回投与する。単回の投与の間の間隔は、毎週、毎月、または毎年でありうる。間隔はまた、患者におけるFXI結合性抗体および/もしくはGDF15結合性抗体の血中レベルを測定することにより指し示される通り、不規則でもありうる。加えて、医師が代替的な投与間隔を決定する場合もあり、毎月または効果的であるのに必要な間隔で投与する。全身投与のいくつかの方法では、投与量は、抗体の血漿中濃度1~1000μg/mlを達成するように調整し、いくつかの方法では、25~500μg/mlを達成するように調整する。代替的に、抗体は、持続放出製剤として投与することもでき、この場合は、低頻度の投与が要求される。投与量および頻度は、患者における抗体の半減期に応じて変化する。一般に、ヒト抗体は、キメラ抗体および非ヒト抗体の半減期より長い半減期を示す。投与量および投与頻度は、処置が予防的であるのか治療的であるのかに応じて変化しうる。予防的適用では、比較的低投与量を、比較的低頻度の間隔で、長期にわたり投与する。一部の患者には、彼らの余生にわたり処置を施し続ける。治療的適用では場合によって、比較的高投与量が、疾患の進行が軽減されるか終結するまで、比較的短い間隔で要求され、好ましくは、患者が、疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで要求される。その後、患者には、予防的レジメを投与することができる。
以下の実施例は、本開示をさらに例示するために提示されるものであり、その範囲を限定するために提示されるものではない。当業者には、本開示の他の変形がたやすく明らかであろうし、添付の特許請求の範囲によっても包含される。
[実施例1]
抗原としての使用のための、精製組換えHis-GDF15の調製
His-GDF15の構築物で形質転換した大腸菌(大腸菌(E. coli))BL21(DE3)を、Luria Broth培地中で増殖させた。His-GDF15を含有する封入体(IB)を、6Mのグアニジンおよび20mMのベータ-メルカプトエタノールを含有する緩衝液中で可溶化させた。可溶化IBを、Ni-NTA-カラム上に続き、逆相クロマトグラフィー上で、さらに精製した。His-GDF15を含有するプールを、リフォールディング緩衝液中で、15~20倍に希釈し、4℃で数日間にわたり、静かに攪拌した。リフォールディングさせたHis-GDF15を、調製用逆相クロマトグラフィーにより、さらに精製した。精製His-GDF15プールを凍結乾燥させ、30mMの酢酸ナトリウム緩衝液中で再構成した。
[実施例2]
ヒトFabファージライブラリーによるパニング
ファージディスプレイのために、ビオチニル化ヒトGDF15を、MorphoSys製のHuCAL(Human Combinatorial Antibody Library)ファージライブラリーと混合し、1時間にわたり結合させた。GDF15/ファージ複合体は、Dynal M280ストレプトアビジンビーズ上で、10分間にわたり捕捉した。反復的なパニングラウンドの後、プールされたプラスミドDNAを精製し、制限酵素であるEcoRIおよびXbaIで消化した。プラスミドDNAを、アガロースゲル電気泳動により分離し、2つの遺伝子セグメント(免疫グロブリンの重鎖(VH/CH)および軽鎖(VL/CL))を含有する、1.5kBのインサートを、切り出し、精製した。この1.5kBの断片(Fabインサート)を、Morphosys製の発現ベクターであるpMORPHX9_FHへとサブクローニングし、エレクトロコンピテントのTG-1細胞へと形質転換した。個別のコロニーを採取し、マスタープレートを調製した。マスタープレートから接種された娘プレートを、低グルコース培地中で再増殖させ、IPTGの存在下、一晩にわたる培養により、Fabの発現を誘導した。細胞ペレットを凍結させ、リゾチームにより溶解させ、清澄にした溶解物を、ニュートラビジンコーティングウェル(陰性対照ニュートラビジン単独)上にコーティングしたPEO-ビオチニル化GDF15でコーティングされたプレート上のELISAにより査定した。マスタープレートを、寒天プレート上へと再画線し、再試験のために、3つの個別のコロニーを採取した後で、ELISA陽性溶解物を再度調べた。DNAシーケンシングのために、GDF15 Fabクローンに由来するプラスミドDNAもまた調製した。固有のクローンに由来するFabを、IPTGで誘導された、リットルスケールの培養物中で調製し、次いで、IMACおよびサイズ除外クロマトグラフィーにより、連続的に精製した。SDS-PAGEとカップリングさせた、A280nmの吸光度で、タンパク質濃度を決定した。
[実施例3]
IgGの発現および精製
抗GDF15 FabのVHドメインおよびVLドメインを、ヒトIgG定常領域と共に、適切なベクター(CX28-98GC、pPL1551)へとサブクローニングした。
結果として得られるクローンの完全性を、DNAシーケンシングにより確認し、HEK-293T細胞の一過性トランスフェクションにより、全長IgGの発現のために、各構築物のプラスミドDNAを調製した。細胞培養物上清を、トランスフェクション後7日目に採取し、次いで、HiTrap Protein A上で精製した。
[実施例4]
抗体操作(生殖細胞系列化および翻訳後修飾(PTM)部位の除去)
所与のVHドメイン配列およびVLドメイン配列と最も近縁のヒト生殖細胞系列配列を選択することにより、コンピュータによる生殖細胞系列化を行った。所与の抗体のフレームワーク領域内の位置であって、最も近縁のヒト生殖細胞系列配列と異なると考えられる位置を、ヒト残基で置きかえた。次いで、生殖細胞系列化配列を、組換えにより作製し、標準的な分子生物学法を使用して調べる。
抗体のVHドメイン配列およびVLドメイン配列を、PTMモチーフ、例えば、NS、NG、DG、またはNxS/Tの存在により走査した。同定されたPTMは、重要な残基、例えば、NGモチーフ内のNまたはGを突然変異させることにより除去することができる。置きかえられる残基は、異なる基準、例えば、この特定の位置において、生物物理的特性との関連で、同じファミリーであるか、または最も近縁の残基のVH/VL配列内で、最も高頻度の残基に従い選択される。次いで、組換えにより、変異体を作製し、活性および結合について調べた。
[実施例5]
抗体アフィニティー
Biacoreアッセイは、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づき、抗体の、GDF15への結合アフィニティーを決定するのに使用された。
表面上で、8000~12,000共鳴単位(RU)を達成するように、抗ヒトFc捕捉抗体を、4つ全てのフローセル内のCM5チップ上に、0.5mg/mlで固定化した。抗hGDF15抗体を、チップ上の流量10ml/秒、0.25~0.5mg/mlで捕捉して、フローセル2、3、および4内で、約30RUを得た。GDF15リガンドを、捕捉された抗体および基準フローセル1上、45μl/秒で、600~1200秒の接触時間にわたり流過させた。20~0.156nMの範囲で、1対2に系列希釈された、8つの用量について調べた。全てのサイクルは、2回ずつ繰り返し、サイクルの間に、流量を10μl/秒、接触時間を20秒とする、3MのMgCl2で再生させた。データは、基準フローセル結果を控除することにより標準化した。データに、RI(バルク屈折率)を0で一定とする、1:1の反応速度モデルを当てはめた。
Kdの結果を、表2に示す。
[実施例6]
エピトープマッピング
抗体エピトープは、GDF15突然変異体を伴う、直接的ELISA法により決定した。96ウェルEIAプレートのウェルを、アルブミン融合GDF15突然変異体でコーティングした。ブロッキングの後、系列希釈された抗hGDF15ヒト抗体を、GDF15でコーティングされたウェルへと添加するのに続き、周囲温度で、数時間にわたるインキュベーションを行った。抗体結合は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートさせた抗ヒトIgG抗体と、HRP基質とを使用して検出した。
図6は、ELISAを使用する、GDF15の断片への結合の喪失、または結合の部分的な阻害と、突然変異とに基づく、抗GDF15抗体のエピトープマッピングについての概要である。被験抗体は、第1欄に示される、ABGDF15-A、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-D、ABGDF15-E、ABGDF15-F、およびABGDF15-G、ならびにHu01G06(抗GDF15抗体である01G06のヒト化抗体(国際公開第2014/100689号パンフレットを参照されたい))であり、以下の野生型GDF15および突然変異体のGDF15変異体:野生型ヒトGDF15、齧歯類GDF15、カニクイザルGDF15、N末端切断型hGDF15(アミノ酸211~308を有する)、ナックル領域内の突然変異(L294R、I285R、またはS231R)、リスト領域内の突然変異(Q247R、W228R、またはM253R)、フィンガーチップ領域内の突然変異(D289R)、およびバックオブハンド領域内の突然変異(S278R)を有するGDF15突然変異体について調べた。「ナックル」、「リスト」、「フィンガーチップ」、および「バックオブハンド」とは、全てのTGFβファミリータンパク質相同な結晶構造に基づき名付けられた三次元ドメイン(正確な直鎖状のアミノ酸ペプチドではない)である(出典:MuellerおよびNickel (2012) Promiscuity and specificity in BMP receptor activation. FEBS Letters 586: 1846~1859)。L294R、I285R、およびS231Rなど、ナックルドメインと関連する突然変異は、結合の喪失、または結合の部分的な阻害を結果としてもたらしたので、ABGDF15-A、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-D、ABGDF15-E、ABGDF15-F、およびABGDF15-Gの全ては、ナックルドメインに結合する。これに対し、L294R突然変異は、既に記載されているヒト化抗GDF15抗体である、Hu01G06による結合に影響を及ぼさなかった。
[実施例7]
抗GDF15抗体の、体重に対する効果
抗GDF15抗体の、体重に対する効果について、マウス食欲不振モデルにおいて研究した。
13週齢のDIOマウスを、Taconicから購入し、研究を通じて、高脂肪食餌で維持した。マウスは、ACUCプロトコール下、通常の明暗周期(6:00~18:00)で、1匹ずつ飼育した。研究の開始時、平均体重が、陰性対照群と、処置群との間で合致するように、動物を秤量し、体重に基づき群分けした。食物の重量もまた、記録した。0日目に、DNAハイドロダイナミック注射法(HDI)(出典:Bonamassaら、(2011) Hydrodynamic gene delivery and its applications in pharmaceutical research. Pharm Res:694~701)により、マウスに、尾静脈を介して、0.3μgの、陰性対照としての空ベクター、またはヒト全長GDF15発現ベクターを注射した。HDIは、肝細胞の、発現ベクター内の目的の遺伝子へのハイドロダイナミックトランスフェクションをもたらした。血漿hGDF15レベルは、6日目に決定した。7日目に、体重および食物の重量を記録した。マウスを、同等な平均hGDF15レベルおよび体重に基づき、再度群分けし、それぞれのマウスに、治療用抗体、または陰性対照としての非関与性抗体を投与した。体重および食物の重量を、週に数回にわたり記録し、研究の終了時に、血漿を回収した。
食餌誘導性肥満(DIO)マウスにおける、GDF15を媒介する食物摂取の抑制および体重減少の阻止における、ABGDF15-Aの効果の時間経過を、図1A~図1Bに示す。ヒト全長GDF15発現ベクターのハイドロダイナミック注射(HDI)により、ヒトGDF15を、肝臓内で発現させ、7日目までに、約10%の体重減少をもたらしてから、抗GDF15抗体の投与を行った(図中の0日目)。マウスの1つの群に、陰性対照としての空ベクター(ベクター)を注射した。個別のマウスについて、体重および血漿ヒトGDF15レベルを決定し、同等な平均体重およびGDF15レベルに基づき、動物を、2つの群へと分けた。抗体(ABGDF15-Aまたは非関与性の対照抗体)を、10mg/kgで静脈内投与し、食物摂取および体重をモニタリングした。
図1Aは、注射後の日数(1、3、5、7、10、11、および15日)後における、1日当たりの食物摂取(グラム)について描示する棒グラフである。3つの群の測定値を、抗体注射後の各時点について、左から右へ:ベクター+媒体;hGDF15+対照IgG;およびhGDF15+ABGDF15-Aと提示する。
図1Bは、注射後の日数(1、3、5、7、10、11、および15日)後における、体重のパーセント変化について描示する折れ線グラフである。3つの群の測定値を、被験注射後の各時点について、ベクター+媒体;hGDF15+対照IgG;およびhGDF15+ABGDF15-Aと提示する。
統計学的解析は、いずれの研究についても、スチューデントのt検定を使用して行った[図中、*、**:ABGDF15-A対媒体について、p<0.05および0.01;&、&&、&&&:ABGDF15-A対対照IgGについて、p<0.05、0.01、および0.001である]。
HD1モデルにおける、GDF15を媒介する食欲不振の阻止における、ABGDF15-Bの効果の、時間経過および用量応答性を、図2A~図2Bに描示する。HDI注射により、ヒトGDF15を、肝臓内で発現させ、7日目までに、約10%の体重減少をもたらしてから、抗GDF15抗体の投与を行った(図中の0日目)。ABGDF15-BおよびABGDF15-Cに対する親抗体、または陰性対照抗体を、表示の濃度で注射し、食物摂取および体重をモニタリングした。図2A~図2Bは、抗体注射後の日数(1、4、8、12、および16日)後における、累積食物摂取(グラム)および体重のパーセント変化のそれぞれについて描示する折れ線グラフである。図2A~図2Bには、以下の処置群:ベクター+媒体;hGDF15+対照IgG;hGDF15+親抗体(30mg/kg);hGDF15+親抗体(10mg/kg);hGDF15+親抗体(3mg/kg);およびhGDF15+親抗体(1mg/kg)を例示した。親抗体は、GDF15を媒介する食欲不振の影響を、用量依存的に反転させた。
親被験抗体は、ABGDF15-BおよびABGDF15-Cと共に、同一な重鎖CDRおよび軽鎖CDRを共有するが、フレームワーク領域内には、差異も存在する。親抗体の軽鎖のアミノ酸配列は、以下:
図3A~図3Bには、HD1モデルにおける、天然GDF15を媒介する食欲不振の阻止における、ABGDF15-Dの効果の時間経過。HDI注射により、ヒトGDF15を、肝臓内で発現させ、7日目までに、約10%の体重減少をもたらしてから、抗GDF15抗体の投与を行った(図中の0日目)。ABGDF15-Dまたは陰性対照抗体を、20mg/kgで注射し、食物摂取および体重をモニタリングした。図3A~図3Bは、注射後の日数後における、1日当たりの食物摂取(グラム)および体重のパーセント変化のそれぞれについて描示する折れ線グラフおよび棒グラフである。図3A~図3Bには、以下の群:ベクター+媒体;hGDF15+対照IgG;hGDF15+ABGDF15-Dを、各時点について例示した。ABGDF15-Dは、GDF15を媒介する食欲不振の影響を反転させた。
図4は、DIOマウスにおける、ヒトGDF15を媒介する体重減少の阻止における、ABGDF15-BおよびABGDF15-Cの効果の時間経過について描示する折れ線グラフである。GDF15は、HDI注射により、DIOマウスにおいて、過剰発現させた。抗GDF15抗体を、20mg/kgで静脈内投与し、体重をモニタリングした。以下の群:ベクター+媒体;hGDF15+対照IgG;hGDF15+ABGDF15-B、およびhGDF15+ABGDF15-Cを、各時点について比較した。ABGDF15-BおよびABGDF15-Cのいずれも、GDF15を媒介する体重減少を反転させた。
図5は、DIOマウスにおける、ヒトGDF15を媒介する体重減少の阻止における、ABGDF15-Gの効果の時間経過について描示する折れ線グラフである。GDF15は、HDI注射により、DIOマウスにおいて、持続的に過剰発現させた。ABGDF15-Gを、20mg/kgで静脈内投与し、体重をモニタリングした。以下の群:ベクター+媒体;hGDF15+対照IgG;およびhGDF15+ABGDF15-Gを、各時点について例示した。ABGDF15-Gは、GDF15を媒介する体重減少を反転させた。
下記の表は、上記で記載した同様のHDI実験の、抗体処置後のマウスにおける、対照IgGと比べた、体重および体重増大のパーセント変化の、一対一の比較についての概要を提示する。
このin vivoモデルを使用して、抗GDF15抗体の活性を比較した。
まとめると、本明細書の抗GDF15被験抗体、例えば、ABGDF15-A、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-D、ABGDF15-E、ABGDF15-F、およびABGDF15-G、は、これらのマウスモデルにおいて、GDF15を媒介する、食物摂取の抑制および体重減少を反転させることが可能であった。
参照による組込み
本明細書で引用される全ての参考文献であって、特許、特許出願、論文、教科書などを含む参考文献、およびそれらにおいて引用された参考文献は、それらについて既にではない程度において、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。
同等物
前出の明細書は、当業者が、本発明を実施することを可能とするのに十分であると考えられる。前出の記載および実施例は、本発明のある種の好ましい実施形態について詳述する。しかし、前出の記載および実施例が、本文中でいかに詳述されているように見えるとしても、本発明は、多くの様式で実施することができ、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの任意の同等物に従うとみなされるべきであることが察知されるであろう。
本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.ヒト成長分化因子15(GDF15)に結合し、
G-X2-X3-F-X5-X6-X7-X8-X9-X10(配列番号188)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)CDR1(HCDR1)[配列中、X2は、YもしくはGであり;X3は、SもしくはTであり;X5は、R、T、もしくはSであり;X6は、SもしくはDであり;X7は、YもしくはHであり;X8は、A、W、もしくはYであり;X9は、VもしくはIであり;X10は、S、G、もしくはNである];
X1-I-X3-P-X5-X6-X7-X8-X9-X10-Y-X12-X13-X14-F-Q-G(配列番号189)のアミノ酸配列を含むVH CDR2(HCDR2)[配列中、X1は、G、I、もしくはVであり;X3は、IもしくはDであり;X5は、I、S、G、A、もしくはDであり;X6は、FもしくはGであり;X7は、GもしくはSであり;X8は、T、Y、もしくはGであり;X9は、AもしくはTであり;X10は、NもしくはIであり;X12は、AもしくはSであり;X13は、QもしくはPであり;X14は、KもしくはSである];
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-D-X17(配列番号190)のアミノ酸配列を含むVH CDR3(HCDR3)[配列中、X1は、G、V、Y、もしくはFであり;X2は、P、S、もしくはGであり;X3は、I、Y、R、もしくはSであり;X4は、I、Y、もしくはVであり;X5は、M、G、もしくはYであり;X6は、G、T、もしくはVであり
;X7は、YもしくはSであり;X8は、Q、F、もしくはRであり;X9は、F、Y、もしくは非存在であり;X10は、G、S、もしくは非存在であり;X11は、L、S、もしくは非存在であり;X12は、F、Y、もしくは非存在であり;X13は、Yもしくは非存在であり;X14は、Hもしくは非存在であり;X15は、Mもしくは非存在であり;X17は、H、I、Y、もしくはVである];
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13(配列番号191)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)CDR1(LCCDR1)[配列中、X1は、SもしくはRであり;X2は、GもしくはAであり;X3は、DもしくはSであり;X4は、N、Q、もしくはSであり;X5は、I、SもしくはTであり;X6は、G、I、もしくはNであり;X7は、S、I、もしくはYであり;X8は、Gもしくは非存在であり;X9は、Vもしくは非存在であり;X10は、H、N、L、もしくはRであり;X11は、I、N、Y、もしくはSであり;X12は、VもしくはLであり;X13は、S、N、もしくはAである];
X1-X2-X3-X4-X5-X6-S(配列番号192)のアミノ酸配列を含むVL CDR2(LCCDR2)[配列中、X1は、D、A、S、もしくはGであり;X2は、K、A、もしくはNであり;X3は、SもしくはDであり;X4は、NもしくはIであり;X5は、RもしくはLであり;X6は、PもしくはQである];または
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10(配列番号193)のアミノ酸配列を含むVL CDR3(LCCDR3)[配列中、X1は、Q、F、もしくはLであり;X2は、T、Q、もしくはSであり;X3は、W、L、もしくはRであり;
X4は、DもしくはYであり;X5は、S、H、もしくはTであり;X6は、IもしくはSであり;X7は、G、P、もしくはSであり;X8は、S、N、もしくは非存在であり;X9は、V、F、もしくはYであり、X10は、VもしくはTである]
を含む、抗体またはその抗原結合性断片。
2.配列番号8、112、34、60、86、138、および164からなる群から選択されるHCDR3を含む、上記1に記載の抗体またはその断片。
3.配列番号12、116、38、64、90、142、および168からなる群から選択されるVH;ならびに/もしくは配列番号25、129、51、77、103、155、および181からなる群から選択されるVL、またはこれらと97~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記1または2に記載の抗体またはその断片。
4.配列番号12、116、38、64、90、142、168からなる群から選択される可変重鎖配列と;
配列番号25、129、51、77、103、155、181からなる群から選択される可変軽鎖配列と
を含む、上記1から3のいずれかに記載の抗体またはその断片。
5.配列番号3、107、29、55、81、133、および159からなる群から選択されるHCDR1;配列番号4、108、30、56、82、134、および160からなる群から選択されるHCDR2;ならびに配列番号5、109、31、57、83、135、および161からなる群から選択されるHCDR3と;
配列番号16、120、42、68、94、146、および172からなる群から選択されるLCDR1;配列番号17、121、43、69、95、147、および173からなる群から選択されるLCDR2;ならびに配列番号18、122、44、70、96、148、および174からなる群から選択されるLCDR3と
を含む、上記1から3のいずれかに記載の抗体またはその断片。
6.配列番号6、110、32、58、84、136、および162からなる群から選択されるHCDR1;配列番号7、111、33、59、85、137、および163からなる群から選択されるHCDR2;配列番号8、112、34、60、86、138、および164からなる群から選択されるHCDR3と;
配列番号19、123、45、71、97、149、および175からなる群から選択されるLCDR1;配列番号20、124、46、72、98、150、および176からなる群から選択されるLCDR2;ならびに配列番号21、125、47、73、99、151、および177からなる群から選択されるLCDR3と
を含む、上記1から3のいずれかに記載の抗体またはその断片。
7.配列番号9、113、35、61、87、139、165からなる群から選択されるHCDR1;配列番号10、114、36、62、88、140、166からなる群から選択されるHCDR2;および配列番号11、115、37、63、89、141、167からなる群から選択されるHCDR3と;
配列番号22、126、48、74、100、152、178からなる群から選択されるLCDR1;配列番号23、127、49、75、101、153、179からなる群から選択されるLCDR2;および配列番号24、128、50、76、102、154、180からなる群から選択されるLCDR3と
を含む、上記1から3のいずれかに記載の抗体またはその断片。
8.HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、
(i)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号3、4、および5を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号16、17、および18を含むか;または
(ii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号107、108、および109を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号120、121、および122を含むか;または
(iii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号29、30、および31を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号42、43、および44を含むか;または
(iv)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号55、56、および57を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号68、69、および70を含むか;または
(v)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号81、82、および83を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号94、95、および96を含むか;または
(vi)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号133、134、および135を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号146、147、および148を含むか;または
(vii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号159、160、および161を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号172、173、および174を含む、
上記1から3のいずれかに記載の抗体またはその断片。
9.HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、
(i)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号6、7、および8を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号19、20、および21を含むか;または
(ii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号110、111、および112を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号123、124、および125を含むか;または
(iii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号32、33、および34を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号45、46、および47を含むか;または
(iv)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号58、59、および60を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号71、72、および73を含むか;または
(v)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号84、85、および86を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号97、98、および99を含むか;または
(vi)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号136、137、および138を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号149、150、および151を含むか;または
(vii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号162、163、および164を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号175、176、および177を含む、
上記1から3のいずれかに記載の抗体またはその断片。
10.HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、
(i)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号9、10、および11を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号22、23、および24を含むか;または
(ii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号113、114、および115を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号126、127、および128を含むか;または
(iii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号35、36、および37を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号48、49、および50を含むか;または
(iv)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号61、62、および63を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号74、75、および76を含むか;または
(v)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号87、88、および89を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号100、101、および102を含むか;または
(vi)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号139、140、および141を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号152、153、および154を含むか;または
(vii)HCDR1、HCDR2、およびHCDR3が、配列番号165、166、および167を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3が、配列番号178、179、および180を含む、
上記1から3のいずれかに記載の抗体またはその断片。
11.(a)配列番号3のHCDR1;配列番号4のHCDR2;配列番号5のHCDR3;配列番号16のLCDR1;配列番号17のLCDR2;および配列番号18のLCDR3;または
(b)配列番号107のHCDR1;配列番号108のHCDR2;配列番号109のHCDR3;配列番号120のLCDR1;配列番号121のLCDR2;および配列番号122のLCDR3;または
(c)配列番号29のHCDR1;配列番号30のHCDR2;配列番号31のHCDR3;配列番号42のLCDR1;配列番号43のLCDR2;および配列番号44のLCDR3;または
(d)配列番号55のHCDR1;配列番号56のHCDR2;配列番号57のHCDR3;配列番号68のLCDR1;配列番号69のLCDR2;および配列番号70のLCDR3;または
(e)配列番号81のHCDR1;配列番号82のHCDR2;配列番号83のHCDR3;配列番号94のLCDR1;配列番号95のLCDR2;および配列番号96のLCDR3;または
(f)配列番号133のHCDR1;配列番号134のHCDR2;配列番号135のHCDR3;配列番号146のLCDR1;配列番号147のLCDR2;および配列番号148のLCDR3;または
(g)配列番号159のHCDR1;配列番号160のHCDR2;配列番号161のHCDR3;配列番号172のLCDR1;配列番号173のLCDR2;および配列番号174のLCDR3;または
(h)配列番号6のHCDR1;配列番号7のHCDR2;配列番号8のHCDR3;配列番号19のLCDR1;配列番号20のLCDR2;および配列番号21のLCDR3;または
(i)配列番号110のHCDR1;配列番号111のHCDR2;配列番号112のHCDR3;配列番号123のLCDR1;配列番号124のLCDR2;および配列番号125のLCDR3;または
(j)配列番号32のHCDR1;配列番号33のHCDR2;配列番号34のHCDR3;配列番号45のLCDR1;配列番号46のLCDR2;および配列番号47のLCDR3;または
(k)配列番号58のHCDR1;配列番号59のHCDR2;配列番号60のHCDR3;配列番号71のLCDR1;配列番号72のLCDR2;および配列番号73のLCDR3;または
(l)配列番号84のHCDR1;配列番号85のHCDR2;配列番号86のHCDR3;配列番号97のLCDR1;配列番号98のLCDR2;および配列番号99のLCDR3;または
(m)配列番号136のHCDR1;配列番号137のHCDR2;配列番号138のHCDR3;配列番号149のLCDR1;配列番号150のLCDR2;および配列番号151のLCDR3;または
(n)配列番号162のHCDR1;配列番号163のHCDR2;配列番号164のHCDR3;配列番号175のLCDR1;配列番号176のLCDR2;および配列番号177のLCDR3;または
(o)配列番号9のHCDR1;配列番号10のHCDR2;配列番号11のHCDR3;配列番号22のLCDR1;配列番号23のLCDR2;および配列番号24のLCDR3;または
(p)配列番号113のHCDR1;配列番号114のHCDR2;配列番号115のHCDR3;配列番号126のLCDR1;配列番号127のLCDR2;および配列番号128のLCDR3;または
(q)配列番号35のHCDR1;配列番号36のHCDR2;配列番号37のHCDR3;配列番号48のLCDR1;配列番号49のLCDR2;および配列番号50のLCDR3;または
(r)配列番号61のHCDR1;配列番号62のHCDR2;配列番号63のHCDR3;配列番号74のLCDR1;配列番号75のLCDR2;および配列番号76のLCDR3;または
(s)配列番号87のHCDR1;配列番号88のHCDR2;配列番号89のHCDR3;配列番号100のLCDR1;配列番号101のLCDR2;および配列番号102のLCDR3;または
(t)配列番号139のHCDR1;配列番号140のHCDR2;配列番号141のHCDR3;配列番号152のLCDR1;配列番号153のLCDR2;および配列番号154のLCDR3;または
(u)配列番号165のHCDR1;配列番号166のHCDR2;配列番号167のHCDR3;配列番号178のLCDR1;配列番号179のLCDR2;および配列番号180の軽鎖可変領域CDR3
を含む、上記1から3のいずれかに記載の抗体またはその断片。
12.以下の特性:
(i)GDF15のナックルドメイン内の1つもしくは複数のアミノ酸に特異的に結合する特性;
(ii)Biacoreにより決定される150pM以下のK
D
値を有する特性;
(iii)ヒトGDF15、カニクイザルGDF15、マウスGDF15、もしくはラットGDF-15のうちの2つ、3つ、もしくは全てと交差反応性である特性;
(iv)8~10の間の等電点(pI)を有する特性;
(v)対象におけるGDF15のレベルを低減する特性;
(vi)GDF-15を媒介する食物摂取の抑制を軽減する特性;
(vii)GDF-15を媒介する体重減少の抑制を軽減する特性;
(viii)GDF-15を媒介する食欲不振を軽減する特性;または
(ix)結合について、ABGDF15-A、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-D、ABGDF15-E、ABGDF15-F、もしくはABGDF15-Gのうちのいずれかの抗体と競合する特性
のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または全てを有する、上記1から11のいずれかに記載の抗体またはその断片。
13.Biacoreにより測定される115pM以下の、または溶液平衡滴定アッセイ(SET)により測定される120pM以下の、ヒトGDF15に対するK
D
を有する、上記1から12のいずれかに記載の抗体またはその断片。
14.配列番号1のアミノ酸231~294内の1つまたは複数のアミノ酸に結合する、上記1から13のいずれかに記載の抗体またはその断片。
15.配列番号1のアミノ酸231、285、または294のうちの1つ、2つ、または全てに結合する、上記1から14のいずれかに記載の抗体またはその断片。
16.配列番号1のアミノ酸285および294、または配列番号1のアミノ酸231および285に結合する、上記1から15のいずれかに記載の抗体またはその断片。
17.ABGDF15-A、ABGDF15-D、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、およびABGDF15-Eからなる群から選択される、抗GDF15抗体またはその断片。
18.ABGDF15-A、ABGDF15-D、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、またはABGDF15-Eのうちのいずれかと同じエピトープ、または重複するエピトープに結合する、抗体またはその抗原結合性断片。
19.ヒトGDF15タンパク質に結合し、ABGDF15-A、ABGDF15-D、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、またはABGDF15-Eのうちのいずれかと競合する、抗体またはその抗原結合性断片。
20.上記1から19のいずれかに記載の抗体またはその断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
21.ヒトGDF15への結合が可能である抗体またはその抗原結合性断片の、VHをコードする第1のヌクレオチド配列、もしくはVLをコードする第2のヌクレオチド配列、またはこれらの両方を含み、ABGDF15-A、ABGDF15-D、ABGDF15-G、ABGDF15-B、ABGDF15-C、ABGDF15-F、またはABGDF15-Eのうちのいずれかの、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3をコードするVHヌクレオチド配列、ならびに/またはLCDR1、LCDR2、およびLCDR3をコードするVLヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
22.抗体またはその抗原結合性断片の、VHをコードする第1のヌクレオチド配列、もしくはVLをコードする第2のヌクレオチド配列、またはこれらの両方を含み、前記第1のヌクレオチド配列が、配列番号13、39、65、91、117、143、もしくは169、またはこれらと少なくとも90%同一なヌクレオチド配列のうちのいずれかを含み、前記第2のヌクレオチド配列が、配列番号25、51、77、103、129、155、もしくは181、またはこれらと少なくとも90%同一なヌクレオチド配列のうちのいずれかを含む、単離核酸分子。
23.上記21または22に記載の核酸分子を含むベクター。
24.上記21から23のいずれかに記載の核酸またはベクターを含む宿主細胞。
25.抗体を作製する方法であって、上記24に記載の宿主細胞を、遺伝子発現に適する条件下で培養するステップを含む方法。
26.GDF15関連障害の処置における使用のための、上記1から19のいずれかに記載の抗体もしくは断片、または上記20に記載の医薬組成物。
27.前記障害が、食欲不振、サルコペニア、または老化、がん、心不全、COPD、腎不全、および/もしくは消耗性障害と関連する悪液質などの悪液質である、上記26に記載のGDF15関連障害の処置における使用のための抗体もしくは断片、または医薬組成物。
28.対象における、食欲および/もしくは食物摂取の増大、体重の増大、または体重、筋肉量、食欲、もしくは食物摂取の減少のうちの1つもしくは複数の阻害もしくは軽減における使用のための、上記1から19のいずれかに記載の抗体もしくはその断片、または上記20に記載の医薬組成物。
29.前記対象が、消耗性障害、がん、慢性心不全、慢性腎疾患、COPD、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、敗血症、または結核を有する、上記28に記載の使用のための抗体もしくはその断片、または医薬組成物。
30.GDF15関連障害を処置する方法であって、GDF15関連障害に罹患している対象へと、有効量の、上記1から19のいずれかに記載の抗体もしくは断片、または上記20に記載の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
31.前記対象が、食欲不振、サルコペニア、または老化、がん、心不全、COPD、腎不全、および/もしくは消耗性障害と関連する悪液質のうちの1つまたは複数を有する、上記30に記載の方法。
32.それを必要とする対象における食欲および/または食物摂取を増大させる方法であって、有効量の、上記1から19のいずれかに記載の抗体もしくはその断片、または上記20に記載の医薬組成物を、前記対象へと投与するステップを含む方法。
33.それを必要とする対象における体重を増大させる方法であって、有効量の、上記1から19のいずれかに記載の抗体もしくはその断片、または上記20に記載の医薬組成物を、前記対象へと投与するステップを含む方法。
34.それを必要とする対象における体重、筋肉量、食欲、または食物摂取の減少のうちの1つまたは複数を阻害または軽減する方法であって、有効量の、上記1から19のいずれかに記載の抗体もしくはその断片、または上記20に記載の医薬組成物を、前記対象へと投与するステップを含む方法。
35.前記対象が、消耗性障害、がん、慢性心不全、慢性腎疾患、COPD、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、敗血症、または結核を有する、上記32から34のいずれかに記載の方法。