JP7138034B2 - コンクリート及び既設コンクリート構造物の補修方法 - Google Patents

コンクリート及び既設コンクリート構造物の補修方法 Download PDF

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Description

本発明は、速硬性を有するコンクリート及び既設コンクリート構造物の補修方法に関する。
車両の通行等により道路橋梁等におけるコンクリート床版が損傷した場合、その損傷箇所の補修が行われる。一般的に、損傷したコンクリート床版を補修する場合には、コンクリート床版の上面に敷設されたアスファルトを除去し、損傷した既設コンクリートを切削した後、新たにコンクリートを打設し、これを硬化させる。そして、再度アスファルト舗装を施して完了する。
コンクリート床版の補修に際しては、車両の通行止めを伴うことから、夜間等に短時間で完了させるために、打設数時間で所定の強度を発現できる速硬性を有するコンクリートが用いられる。例えば、超速硬セメントに骨材を配合した超速硬コンクリートは、材齢3時間の圧縮強度を24.0(N/mm2)以上とすることができ、その結果、短時間で補修を完了させることができる。
しかしながら、従来の超速硬コンクリートは、材齢28日において、圧縮強度が60(N/mm2)程度、静弾性係数が40(kN/mm2)程度にまで達する。一方で、例えば道路橋梁等における既設のコンクリート床版は、圧縮強度が24~30(N/mm2)程度であり、静弾性係数が25~30(kN/mm2)程度である。このため、従来の超速硬コンクリートを用いて床版を補修した場合、補修部分の圧縮強度と静弾性係数が、既設のコンクリート床版に対して大きく異なってしまう。その結果、交通開放後に車両の繰り返し荷重が作用することで、補修部分と既設のコンクリート床版との境界に応力が集中し、この境界部分からひび割れ等の劣化が生じる虞がある。このため、補修材として用いられるコンクリートは、速硬性を有するとともに、長期の静弾性係数の低減を図る必要がある。
従来、静弾性係数を一定の範囲に抑制するものとして、特許文献1、2の開示技術が提案されている。特許文献1には、セメントと、速硬材と、軽量骨材と、シリカフュームを、所定の割合で含有する超速硬性セメントモルタルが提案されている。しかしながら、特許文献1の開示技術は、軽量骨材が含有されるため、速硬性を十分に発揮できない虞があった。また、特許文献1の開示技術は、高価なシリカフュームを含有するため、コストを低減させることができないという問題点があった。また、特許文献1の開示技術は、あくまでモルタルであって、コンクリートとして適用されるものではないため、補修に必要なモルタル量が嵩んでしまい、その結果、コストを低減させることができないという問題点があった。
また、特許文献2には、超速硬セメント、粗骨材および細骨材を含有するコンクリート組成物であって、細骨材が、無機中空バルーンおよび絶乾比重2.3以上の細骨材からなることを特徴とするコンクリート組成物が提案されている。しかしながら、特許文献2の開示技術は、無機中空バルーンが粒子内に気泡を含むことから品質にばらつきが生じ、その結果、速硬性の確保と、長期の静弾性係数の低減とができない虞があった。また、無機中空バルーンが高価であることから、コストを低減させることができないという問題点があった。
したがって、速硬性を有するとともに長期の静弾性係数の低減を図ることができ、コストを低減させることが可能となるコンクリートが切望されている。
特開2017-114734号公報 特開2015-107893号公報
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、速硬性を有するとともに長期の静弾性係数の低減を図ることができ、コストを低減させることが可能となるコンクリート及び既設コンクリート構造物の補修方法を提供することにある。
第1発明に係るコンクリートは、セメントが含有される速硬性結合材と、細骨材と、粗骨材と、ラテックスと、弾性骨材と、凝結遅延剤と、が含有され、ラテックスの含有量は、速硬性結合材の重量に対して固形分換算で3.0重量%以上14.0重量%以下であり、弾性骨材の含有量は、全体積に対して1.5体積%以上5.0体積%以下であり、上記弾性骨材は、静弾性係数が1~10MPaであり、最大粒径が5.0mm以下であることを特徴とする。
第2発明に係る既設コンクリート構造物の補修方法は、第1発明のコンクリートを用いて、既設コンクリート構造物を補修することを特徴とする。
本発明によれば、速硬性を有するとともに長期の静弾性係数の低減を図ることができ、コストを低減させることが可能となる。
弾性骨材の粒度曲線を示す図である。
以下、本発明を適用したコンクリートを実施するための形態について、詳細に説明する。
本発明を適用したコンクリートは、セメントが含有される速硬性結合材と、細骨材と、粗骨材と、ラテックスと、弾性骨材と、凝結遅延剤と、が含有され、ラテックスの含有量は、速硬性結合材の重量に対して固形分換算で3.0重量%以上14.0重量%以下であり、弾性骨材の含有量は、全体積に対して1.5体積%以上5.0体積%以下である。
以下、本発明を適用したコンクリートに用いられる成分について説明する。
<速硬性結合材>
速硬性結合材は、セメントと速硬性混和材とが含有される。
<セメント>
セメントは、例えば普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、低硫酸塩等のポルトランドセメントが用いられる。セメントは、ポルトランドセメントに、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム又は石灰石微粉末等が混合された各種の混合セメントであってもよい。セメントの一種または二種以上のものが適宜用いられる。
<速硬性混和材>
速硬性混和材は、コンクリートに速硬性を付与するものである。速硬性混和材としては、例えばカルシウムアルミネート系、アルミン酸ナトリウム、仮焼明礬を含む明礬系、活性アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の急硬性物質の群の中から選ばれる一種又は二種以上を主成分とするものが挙げられる。特に好ましい速硬性混和材は、カルシウムアルミネート系を主成分としたものである。速硬性混和材は、好ましくは、粉体状である。
カルシウムアルミネート系の速硬性混和材は、CaOをC、Al23をA、Na2OをN、Fe23をFで表示した場合、C3A,C2A,C127,C53,CA,C35又はCA2等と表示される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、C2AF,C4AF等と表示されるカルシウムアルミノフェライト、カルシウムアルミネートにハロゲンが固溶又は置換したC33・CaF2やC117・CaF2等と表示されるカルシウムフロロアルミネートを含むカルシウムハロアルミネート、C8NA3やC325等と表示されるカルシウムナトリウムアルミネート、カルシウムリチウムアルミネート、アウイン(3CaO・3Al23・CaSO4)等のカルシウムサルホアルミネート、並びにこれらにSiO2,K2O,Fe23,TiO2等が固溶又は化合したもの等が含まれる。
速硬性混和材には、上記の急硬性物質以外にも、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物等が適宜併用される。硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられた場合、強度発現性が高まることから好ましい。
速硬性混和材の含有量は、速硬性結合材重量に対して20.0重量%以上40.0重量%以下であることが望ましい。速硬性混和材の含有量は、速硬性結合材の重量に対して20.0重量%未満の場合には、速硬性を発揮させることができない。また、速硬性混和材の含有量は、速硬性結合材の重量に対して40.0重量%を超える場合には、所定の可使時間を確保することができない。
速硬性結合材は、セメントと速硬性混和材とが含有されるものの代替として、超速硬セメントやアルミナセメントが用いられてもよい。
<細骨材>
細骨材は、一般のコンクリートの製造に使用される細骨材が用いられる。細骨材としては、例えば、川砂、海砂、砕砂、人工細骨材、スラグ細骨材、再生細骨材、珪砂等が挙げられる。
<粗骨材>
粗骨材は、一般のコンクリートの製造に使用される粗骨材が用いられる。粗骨材としては、例えば川砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材、スラグ粗骨材、再生粗骨材等が挙げられる。
<ラテックス>
ラテックスは、高分子が乳化剤の作用によってコロイド状に水中に分散した乳濁液である。ラテックスとしては、SBR(スチレンブタジエンゴム)ラテックス、BR(ブタジエンゴム)ラテックス、NR(天然ゴム)ラテックス、MBR(メチルメタクリレートブタジエンゴム)ラテックス、VP(2-ビニルピリジンスチレンブタジエン)ラテックス、NBR(アクリロニトリルブタジエン)ラテックス、CR(クロロプレンゴム)ラテックス、IR(イソプレンゴム)ラテックス等から一種又は二種以上を主成分とするものが挙げられる。ラテックスとしては、SBRラテックスが好ましい。
ラテックスの含有量は、速硬性結合材の重量に対して固形分換算で3.0重量%未満の場合、コンクリートの長期の静弾性係数を低減できない。また、ラテックスの含有量は、速硬性結合材の重量に対して固形分換算で14.0重量%を超える場合、コンクリートに材料分離が生じ、コンクリートとして成型できない。よって、ラテックスの含有量は、速硬性結合材の重量に対して固形分換算で3.0重量%以上14.0重量%以下とする。より好ましくは、ラテックスの含有量は、速硬性結合材の重量に対して固形分換算で3.0重量%以上10.0重量%以下であり、これにより、速硬性の更なる向上を図ることができる。
<弾性骨材>
弾性骨材は、例えば、静弾性係数が1~10MPa程度のゴム弾性体であり、所定の伸びを有する。弾性骨材は、例えば、最大粒径が5.0mm以下のものが用いられる。弾性骨材は、所定の静弾性係数を有するものとして、品質安定性に優れている。弾性骨材を含有することにより、コンクリート内で所定の体積を確保することができるとともに、コストを低減させることが可能となる。また、弾性骨材は、工業用廃ゴムを所定の大きさに細断してゴムチップにしたものや、粉末状にしたものが用いられてもよく、これにより、コストを著しく低減させることが可能となる。さらに、弾性骨材はゴム弾性体の他に、樹脂、その他エラストマー、コルクなどを用いても良い。
ゴム弾性体としては、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、NR(天然ゴム)、MBR(メチルメタクリレートブタジエンゴム)、VP(2-ビニルピリジンスチレンブタジエン)、NBR(アクリロニトリルブタジエン)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)等から一種又は二種以上を主成分とするものが挙げられる。樹脂としては、弾性体を有するものであれば特段の指定はないが、ウレタン系の使用が好ましい。
弾性骨材の含有量は、コンクリートの全体積に対して1.5体積%未満の場合、コンクリートの長期の静弾性係数を低減できない。また、弾性骨材の含有量は、コンクリートの全体積に対して5.0体積%を超える場合、速硬性を十分に発揮できない。よって、弾性骨材の含有量は、コンクリートの全体積に対して1.5体積%以上5.0体積%以下とする。より好ましくは、弾性骨材の含有量は、コンクリートの全体積に対して3.0体積%以上5.0体積%以下であり、これにより、長期の静弾性係数の更なる低減を図ることができる。
<水>
水は、一般のコンクリートの製造に使用される水が用いられる。水としては、例えば水道水等が挙げられる。
また、水の含有量は、速硬性結合材の重量に対して15.0重量%以上35.0重量%以下であることが望ましい。水の含有量は、速硬性結合材の重量に対して15.0重量%未満の場合には、十分な練り混ぜができない。水の含有量は、速硬性結合材の重量に対して35.0重量%を超える場合には、材料分離が生じ、コンクリートとして成型できない。
<凝結遅延剤>
凝結遅延剤は、例えば、20分程度以上の所定の可使時間を確保するためのものである。凝結遅延剤としては、粉体又は液体のものが用いられる。凝結遅延剤としては、例えばクエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸等のオキシカルボン酸系等の有機酸、又はその塩、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、リン酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等の無機塩、糖類等の群の中から選ばれる一種又は二種以上を含むものが挙げられる。その中でもクエン酸、クエン酸塩、酒石酸、酒石酸塩、アルカリ金属炭酸塩の群の中から選ばれる一種又は二種以上を含むものが好ましい。
凝結遅延剤の含有量は、速硬性結合材の重量に対して0.05重量%以上1.0重量%以下であることが望ましい。凝結遅延剤の含有量は、速硬性結合材の重量に対して0.05重量%未満の場合には、所定の可使時間を確保することができない。また、凝結遅延剤の含有量は、速硬性結合材の重量に対して1.0重量%を超える場合には、凝結時間が遅くなり、速硬性を発揮させることができない。
なお、本発明を適用したコンクリートには、本発明の特長が損なわれない範囲で、必要に応じて、各種添加材(剤)が含まれていてもよい。添加材(剤)としては、例えば減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等のセメント分散剤、強度促進材、再乳化粉末樹脂、発泡剤、起泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、消泡剤等が挙げられる。
本発明を適用したコンクリートには、繊維を用いることができる。使用される繊維としては、無機繊維および合成繊維などが挙げられる。合成繊維としては、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などが挙げられる。これらの中で、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等のポリオレフィン繊維が好ましい。特に、ポリプロピレン繊維が好ましい。
本発明を適用したコンクリートは、既設コンクリート構造物の補修に用いることができる。本発明を適用したコンクリートは、既設コンクリート床版の断面修復材として用いることができる。本発明を適用したコンクリートは、既設コンクリート床版の上面に敷設されるコンクリート舗装材として用いることができる。本発明を適用したコンクリートは、橋梁のジョイントコンクリートとして用いることができる。本発明を適用したコンクリートは、プレキャスト床版間の間詰め材として用いることができる。
本発明を適用した既設コンクリート構造物の補修方法は、本発明を適用したコンクリートを用いて、補修する。以下では、既設コンクリート構造物を、橋梁のコンクリート床版として説明する。
本発明を適用した既設コンクリート構造物の補修方法は、必要に応じて、既設のコンクリート床版に被覆されたアスファルトを撤去する。そして、損傷した既設のコンクリート床版を切削・研掃し、切削した部分に本発明を適用したコンクリートを打設し、これを硬化させる。その後、必要に応じて、アスファルトを敷設する。
既設のコンクリート床版の補修に用いられた本発明を適用したコンクリートは、材齢3時間で、例えば24.0N/mm2以上、好ましくは27.0N/mm2以上の強度を発現することができ、速硬性を有するものとなる。このため、補修のための通行止め時間を極めて短くすることができる。また、材齢28日の時点における静弾性係数が、例えば31.5kN/mm2以下、好ましくは30.0kN/mm2以下に低減させることができる。このため、本発明を適用したコンクリートの静弾性係数と既設のコンクリート床版との静弾性係数との差を極めて小さくすることができる。したがって、交通開放後に車両の繰り返し荷重が作用した場合であっても、本発明を適用したコンクリートと既設のコンクリート床版との境界に応力が集中するのを抑制することができ、その結果、この境界部分からひび割れ等の劣化が生じるのを抑制することが可能となる。
以下、本発明を適用したコンクリートについて、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。
以下の実施例および比較例で使用した材料は以下のとおりである。
速硬性結合材:セメントと速硬性混和材とが含有されるもの
セメント:普通ポルトランドセメント 太平洋セメント株式会社製 密度;3.16g/cm3
速硬性混和材:カルシウムアルミネート系速硬性混和材 密度;2.93g/cm3
細骨材:花崗岩砕砂 表乾密度;2.58g/cm3
粗骨材:硬質砂岩砕石 表乾密度;2.72g/cm3
ラテックス:SBR系 固形分45% 密度;1.0g/cm3、平均粒子径0.2μm
弾性骨材:NRとSBRを含むゴムチップ くろがね産業社製 密度;1.2g/cm3
凝結遅延剤:オキシカルボン酸系粉体 密度;1.67g/cm3
水:水道水
図1は、弾性骨材の粒度曲線を示す。弾性骨材の粒度は、JIS A1102に準拠して測定を行った。また表1に、弾性骨材の粒度の測定における篩目寸法、残留率、及び通過率の関係を示す。なお、弾性骨材の粗粒率は、3.68であった。
Figure 0007138034000001
表2は、弾性骨材の硬度を示す。硬度はJIS K 6253-3に準拠して測定した。
Figure 0007138034000002
表3に実施例と比較例のコンクリートの配合を示す。表3の単位量は、コンクリート1m3当たりの配合を示す。なお、表3において、「W」は水の重量を、「P」は固形分換算でのラテックスの重量を、「C」はセメントの重量を、「CPJ」は速硬性混和材の重量を、「B」は速硬性結合材の重量を、「S」は細骨材の重量を、「R」は弾性骨材の重量を、「G」は粗骨材の重量を、「Re」は凝結遅延剤の重量を、示す。空気量は、コンクリート1m3当たりに2体積%とした。また、表3において、「W/B」は、速硬性結合材の重量に対する水の重量の比率を示す。「(s+r)/a」は、細骨材の体積と弾性骨材の体積と粗骨材の体積との和に対する、細骨材の体積と弾性骨材の体積との和の比率を示す。「P/B」は、速硬性結合材の重量に対する固形分換算でのラテックスの重量の比率を示す。「r/全体積」は、コンクリートの全体積に対する弾性骨材の体積の比率を示す。なお、凝結遅延剤は、外割りで含有され、コンクリートの全体積には含めない。
Figure 0007138034000003
表3に示す配合によりコンクリートを作製した。コンクリートは、使用する材料を全てコンクリートミキサーに投入し、3分間練混をすることにより、作製した。
実施例と比較例において、材齢3時間の圧縮強度と、材齢28日の静弾性係数を測定した。圧縮強度及び静弾性係数は、JIS A1108及びJIS A1149に準拠して測定した。
ここで、速硬性を有するコンクリートは、材齢3時間の圧縮強度が交通開放強度とされる24.0(N/mm2)以上である必要がある。このため、本試験において、材齢3時間の圧縮強度が24.0(N/mm2)以上であるコンクリートを、速硬性を有するものとした。
また、高速道路総合技術研究所発行の構造物施工管理要領には、「床版上面における断面修復の性能照査」の基準値として、材齢28日の静弾性係数が31.5(kN/mm2)以下とされる。このため、本試験において、材齢28日の静弾性係数が31.5(kN/mm2)以下であるコンクリートを、長期の静弾性係数の低減を図ることができるものとした。
表4に、実施例と比較例の材齢3時間の圧縮強度及び材齢28日の静弾性係数の結果を示す。
Figure 0007138034000004
実施例1~9では、ラテックスの含有量は、速硬性結合材の重量に対して固形分換算で3.0重量%以上14.0重量%以下であり、弾性骨材の含有量は、コンクリートの全体積に対して1.5体積%以上5.0体積%以下である。このとき、材齢3時間の圧縮強度が、24.0(N/mm2)以上になるとともに、材齢28日の静弾性係数が、31.5(kN/mm2)以下になった。このため、速硬性を有するとともに長期の静弾性係数の低減を図ることができる。
実施例1~6では、ラテックスの含有量は、速硬性結合材の重量に対して固形分換算で3.0重量%以上10.0重量%以下であり、弾性骨材の含有量は、コンクリートの全体積に対して1.5体積%以上5.0体積%以下である。このとき、材齢3時間の圧縮強度が、27.0(N/mm2)以上になるとともに、材齢28日の静弾性係数が、31.5(kN/mm2)以下になった。このため、速硬性の更なる向上を図ることができる。
実施例2、3、5、6、8、9では、ラテックスの含有量は、速硬性結合材の重量に対して固形分換算で3.0重量%以上14.0重量%以下であり、弾性骨材の含有量は、コンクリートの全体積に対して3.0体積%以上5.0体積%以下である。このとき、材齢3時間の圧縮強度が、24.0(N/mm2)以上になるとともに、材齢28日の静弾性係数が、30.0(kN/mm2)以下になった。このため、長期の静弾性係数の更なる低減を図ることができる。
上述した実施例1~9に対して、比較例1では、弾性骨材の含有量は、コンクリートの全体積に対して1.0体積%である。このとき、材齢28日の静弾性係数が、31.5(kN/mm2)を超えることとなり、長期の静弾性係数の低減ができなかった。
比較例2では、弾性骨材の含有量は、コンクリートの全体積に対して6.0体積%である。このとき、材齢3時間の圧縮強度が、24.0(N/mm2)未満となり、速硬性が十分でなかった。
比較例3では、ラテックスの含有量は、速硬性結合材の重量に対して固形分換算で2.0重量%である。このとき、材齢28日の静弾性係数が、31.5(kN/mm2)を超えることとなり、長期の静弾性係数の低減ができなかった。
比較例4では、ラテックスの含有量は、速硬性結合材の重量に対して固形分換算で17.0重量%である。このとき、材料分離による試験体成型不可であった。

Claims (2)

  1. 速硬性を有するコンクリートであって、
    セメントが含有される速硬性結合材と、細骨材と、粗骨材と、ラテックスと、弾性骨材と、凝結遅延剤と、が含有され、
    上記ラテックスの含有量は、上記速硬性結合材の重量に対して固形分換算で3.0重量%以上14.0重量%以下であり、
    上記弾性骨材の含有量は、全体積に対して1.5体積%以上5.0体積%以下であり、
    上記弾性骨材は、静弾性係数が1~10MPaであり、最大粒径が5.0mm以下であること
    を特徴とするコンクリート。
  2. 請求項1に記載のコンクリートを用いて、既設コンクリート構造物を補修すること
    を特徴とする既設コンクリート構造物の補修方法。
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