JP7137737B2 - 金属ナノ粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本明細書の技術分野は、プラズマを用いた金属ナノ粒子の製造方法に関する。
プラズマ技術は、電気、化学、材料の各分野に応用されている。プラズマは、電子、陽イオンの他に、化学反応性の高いラジカルや紫外線を発生させる。ラジカルは、例えば、成膜や半導体のエッチングに用いられる。紫外線は、例えば、殺菌に用いられる。このように豊富なプラズマ生成物が、プラズマ技術の応用分野の裾野を広げている。
プラズマを発生させるためにマイクロ波を用いる装置がある。例えば、特許文献1には、反応溶液格納容器2の内部の塩化金酸水溶液にマイクロ波プラズマを照射する技術が開示されている。これにより、溶液中の金イオンが還元されるとしている。特許文献1の技術において、金イオンの還元反応には40分要する旨が記載されている(特許文献1の段落[0060])。
特開2018-31054号公報
このように長い処理時間を要していると、金属ナノ粒子を大量生産することは困難である。量産するためには、インラインで連続的に金属ナノ粒子を製造することが好ましい。しかし、特許文献1の技術では、溶液を流しながら処理すると、プラズマの処理時間が足りず、金属ナノ粒子を製造することが非常に困難である。
本明細書の技術は、前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、インラインで連続的に金属ナノ粒子を製造することを図った金属ナノ粒子の製造方法を提供することである。
第1の態様における金属ナノ粒子の製造方法においては、金属ナノ粒子の製造方法において、金属または金属化合物を含有する溶液をプラズマ処理装置の流路に流し、スリットを有する導波管にマイクロ波を伝搬させてスリットの箇所であって流路に対面する位置プラズマを発生させる。流路に溶液を流しながらプラズマを溶液に照射して溶液の内部に金属ナノ粒子を生成する。プラズマのガスは、溶液の溶媒が揮発した気体または大気である。プラズマの圧力は、0.01気圧以上0.9気圧以下である。
この金属ナノ粒子の製造方法では、インラインで連続的に金属ナノ粒子を製造することができる。また、プラズマを発生させる際に外部からプラズマ発生領域にガスを供給する必要が無い。したがって、この製造方法は、金属ナノ粒子の量産に適している。この製造方法では、液体が流れているわずかな時間の間に金属ナノ粒子が生成される。つまり、プラズマの処理時間は、従来に比べて非常に短い。
本明細書では、インラインで連続的に金属ナノ粒子を製造することを図った金属ナノ粒子の製造方法が提供されている。
第1の実施形態のプラズマ処理装置の概略構成図である。 第1の実施形態のプラズマ処理装置における第1の外導体および第2の外導体の対面箇所の周辺を示す断面図である。 第1の実施形態の変形例のプラズマ処理装置における第1の外導体および第2の外導体の対面箇所の周辺を示す断面図(その1)である。 第1の実施形態の変形例のプラズマ処理装置における第1の外導体および第2の外導体の対面箇所の周辺を示す断面図(その2)である。 第1の実施形態の変形例におけるプラズマ処理装置の概略構成図である。 流路に流す水の流量とプラズマ発生領域の圧力との間の関係を示すグラフである。 流路に流す水の流量とプラズマ発生領域の圧力との間の関係を理論計算により求めたグラフである。 プラズマ処理装置のプラズマ生成物を示すグラフである。 銀ナノ粒子の電子顕微鏡写真(その1)である。 実験に用いたプラズマ処理装置の構造を示す図である。 銀ナノ粒子の電子顕微鏡写真およびエネルギー分散型X線分析(EDX)の画像である。
以下、具体的な実施形態について、プラズマ処理装置を用いた金属ナノ粒子の製造方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。
(第1の実施形態)
1.プラズマ処理装置
図1は、第1の実施形態のプラズマ処理装置100の概略構成図である。プラズマ処理装置100は、マイクロ波を導波する導波管を用いてプラズマを発生させる。プラズマ処理装置100は、内導体110と、第1の外導体120と、第2の外導体130と、外部管140と、マイクロ波発生部150と、誘電体160と、ショートプランジャー170と、を有する。
プラズマ処理装置100は、内導体110と、第1の外導体120と、第2の外導体130と、を備える同軸導波管を有する。そのため、内導体110と、第1の外導体120と、第2の外導体130との中心軸は、共通である。マイクロ波は、図1に示すように、内導体110と、第1の外導体120および第2の外導体130と、の間の空間MP1を伝播する。
内導体110は、同軸導波管における内側の導波管である。そのため、内導体110は、第1の外導体120および第2の外導体130の内側に配置されている。内導体110の形状は、円筒形状である。内導体110の材質は、銅、黄銅、またはその他の金属である。また、内導体110の表面にメッキが施されていてもよい。
第1の外導体120は、同軸導波管における外側の導波管である。そのため、第1の外導体120は、内導体110の外側に配置されている。第1の外導体120は、第1の端部E1を有する。第1の端部E1は、第1の外導体120の長さ方向の2つの端部のうちの一方の端部である。第1の外導体120は、円筒形状に近い形状をしている。第1の外導体120の材質は、銅、黄銅、またはその他の金属である。また、第1の外導体120の表面にはメッキが施されていてもよい。
第2の外導体130は、同軸導波管における外側の導波管である。そのため、第2の外導体130は、内導体110の外側に配置されている。第2の外導体130は、第2の端部E2を有する。第2の端部E2は、第2の外導体130の長さ方向の2つの端部のうちの一方の端部である。第2の外導体130は、円筒形状に近い形状をしている。第2の外導体130の材質は、銅、黄銅、またはその他の金属である。また、第2の外導体130の表面にはメッキが施されていてもよい。
外部管140は、第1の外導体120および第2の外導体130の外側に配置されている。外部管140は、第1の外導体120および第2の外導体130とともに液体を流すための流路LP1を形成している。外部管140の形状は、円筒形状である。外部管140の中心軸は、内導体110、第1の外導体120、第2の外導体130の中心軸と共通である。外部管140の材質は、例えばガラスである。
マイクロ波発生部150は、マイクロ波を発生させるための装置である。このマイクロ波は、同軸導波管に伝播させるためのものである。マイクロ波発生部150は、例えば、マグネトロンである。また、マイクロ波発生部150は、アイソレーター等の装置を適宜有していてもよい。マイクロ波発生部150が発生するマイクロ波の周波数は、例えば2.45GHzである。もちろん、これ以外の周波数であってもよい。これらは例示であり、マイクロ波発生部150の構成は、上記と異なっていてもよい。
誘電体160は、マイクロ波の一部を透過するとともに、残部を反射させる。誘電体160は、第1の外導体120の第1の凸部121と第2の外導体130の第2の凸部131との対面箇所とに沿うとともに対面箇所より内側の領域に配置されている。誘電体160は、第1の外導体120および第2の外導体130から内導体110までにわたって、これらの間に挟まれた状態で配置されている。誘電体160の材質は、例えば、石英管、アルミナである。もちろん、その他の材質を用いてもよい。
ショートプランジャー170は、マイクロ波を反射させる。ショートプランジャー170は、内導体110と、第2の外導体130との間に挟まれた状態で配置されている。誘電体160の材質と、誘電体160からショートプランジャー170までの距離と、を選択することにより、誘電体160からショートプランジャー170までの間の空間に定在波を発生させることができる。定在波を発生させることにより、プラズマをより励起させやすくなる。また、励起されたプラズマが安定する。なお、ショートプランジャー170は、マイクロ波の一部をわずかに吸収してもよい。
2.第1の外導体および第2の外導体の対面箇所
図2は、第1の外導体120および第2の外導体130の対面箇所の周辺を示す断面図である。第1の外導体120と第2の外導体130とは別体である。そして、第1の外導体120と第2の外導体130とは非接触状態で対面している。第1の外導体120の中心軸および第2の外導体130の中心軸は、内導体110の中心軸と共通である。また、第1の外導体120の内径および第2の外導体130の内径は同じである。そして、第1の外導体120の内面120aを延長すると、第2の外導体130の内面130aと一致するように、第1の外導体120および第2の外導体130は配置されている。ただし、場合によっては、第1の外導体120の内径と第2の外導体130の内径とは多少異なっていてもよい。
2-1.凸部およびスリット
図2に示すように、第1の外導体120の第1の端部E1と第2の外導体130の第2の端部E2とは、非接触状態で対面している。
第1の外導体120は、第1の凸部121を有している。第1の凸部121は、第1の外導体120の一方の端面である第1の端部E1に形成されている。第1の凸部121は、第1の端部E1から第2の外導体130に向かって突出している。第1の凸部121の形状は、円環状である。その円環の中心は、第1の外導体120の中心軸と一致する。
第2の外導体130は、第2の凸部131を有している。第2の凸部131は、第2の外導体130の一方の端面である第2の端部E2に形成されている。第2の凸部131は、第2の端部E2から第1の外導体120に向かって突出している。第2の凸部131の形状は、円環状である。その円環の中心は、第2の外導体130の中心軸と一致する。
第1の凸部121および第2の凸部131は、非接触状態で対面している。そのため、第1の凸部121と第2の凸部131とは、スリットS1を構成している。スリットS1の幅は0.05mm以上1mm以下の程度である。第1の凸部121の円環状の直径と第2の凸部131の円環状の直径とは同じである。
2-2.プラズマ発生領域
図2に示すように、プラズマ処理装置100は、プラズマを発生させるプラズマ発生領域PG1を有する。プラズマ発生領域PG1は、スリットS1に沿う領域である。つまり、プラズマ発生領域PG1は、第1の外導体120の第1の凸部121と第2の外導体130の第2の凸部131との対面箇所に沿う領域である。
プラズマ発生領域PG1は、第1の凸部121および第2の凸部131の幅より広くてもよい。プラズマ発生領域PG1は、第1の外導体120の第1の凸部121と第2の外導体130の第2の凸部131との対面箇所であってその対面箇所より外側の領域を含んでいてもよい。プラズマ発生領域PG1は、第1の外導体120の第1の凸部121と第2の外導体130の第2の凸部131との対面箇所であってその対面箇所より内側の領域を含んでいてもよい。
したがって、プラズマ発生領域PG1である「第1の外導体120の第1の凸部121と第2の外導体130の第2の凸部131との対面箇所に沿う領域」とは、第1の凸部121と第2の凸部131との間の第1の領域と、その第1の領域から第1の外導体120および第2の外導体130の半径方向より内側の領域および外側の領域と、を含む領域である。つまり、第1の外導体120の第1の端部E1と第2の外導体130の第2の端部E2との対面箇所に沿う領域である。
前述のように、第1の凸部121および第2の凸部131は円環状である。したがって、プラズマ発生領域PG1も、円環状である。なお、プラズマ発生領域PG1は、流路LP1を流れる液体により浸されるおそれはない。そのため、プラズマ処理装置100は、液体をプラズマ処理している間、安定してプラズマを発生させることができる。
2-3.傾斜面
第1の外導体120は、第1の傾斜面122を有する。第1の傾斜面122は、第1の外導体120の外周から外部管140に向かって突出している。第1の傾斜面122は、第1の凸部121に近くなるほど外部管140に突出している。そのため、流路LP1は、第1の端部E1に近づくほど狭くなっている。第1の傾斜面122は、第1の外導体120の外周を周回するように形成されている。
第2の外導体130は、第2の傾斜面132を有する。第2の傾斜面132は、第2の外導体130の外周から外部管140に向かって突出している。第2の傾斜面132は、第2の凸部131に近くなるほど外部管140に突出している。そのため、流路LP1は、第2の端部E2に近づくほど狭くなっている。第2の傾斜面132は、第2の外導体130の外周を周回するように形成されている。
このように、プラズマ発生領域PG1に近い位置ほど流路LP1は狭くなっている。そのため、流路LP1を流れる液体の流速は、プラズマ発生領域PG1の周辺で非常に大きい。その結果、プラズマ発生領域PG1に対面する箇所では、液体の圧力は非常に小さくなる。例えば、1気圧下の液体を0.1気圧程度まで下降させることができる。第1の傾斜面122の傾きおよび第2の傾斜面132の傾きおよびプラズマ発生領域PG1の周辺での流路LP1の幅を調整することにより、プラズマ発生領域PG1の圧力を0.1気圧以上0.9気圧以下とすることができる。さらには、より低い圧力を実現することも可能である。また、流路LP1に流す液体の流量を調整することにより、プラズマ発生領域PG1の圧力を調整してもよい。このように、プラズマ処理装置100は、ベンチュリ効果を応用している。
3.プラズマ処理装置の動作
図2の矢印L1の向きに液体を流路LP1に流す。この段階では、プラズマ発生領域PG1にはプラズマが発生していないが、プラズマ発生領域PG1の周辺の気圧が低下する。
次に、マイクロ波発生部150が、マイクロ波を発生させるとともにマイクロ波を同軸導波管に伝播させる。これにより、マイクロ波は、第1の外導体120と内導体110との間に図2の矢印M1の向きに伝播する。マイクロ波の一部は、誘電体160を透過し、ショートプランジャー170に向かう。そして、誘電体160とショートプランジャー170との間の空間K1に定在波を発生させる。
そして、内導体110と、第1の外導体120と、第2の外導体130とに、表面電流を誘起する。その結果、第1の凸部121と第2の凸部131との間に比較的強い電界が加わる。これにより、第1の凸部121と第2の凸部131との間で放電が生じるとともにプラズマ発生領域PG1にプラズマが発生する。
プラズマ発生領域PG1で発生したプラズマは、流路LP1を流れる液体にプラズマ生成物を照射する。ここで、プラズマ生成物とは、電子と、陽イオンと、ラジカルと、紫外線と、を含む。これにより、流路LP1を流れる液体は、プラズマ処理される。
4.プラズマ処理装置の利点
本実施形態のプラズマ処理装置100は、均一な円環状のプラズマを発生させることができる。そのため、流路LP1に流す液体に対して均一にプラズマ処理を実施することができる。また、本実施形態では、減圧ポンプ等を用いずに、減圧下でプラズマを発生させることができる。また、液体をバッチ処理ではなく、インラインで連続的にプラズマ処理することができる。このプラズマ処理装置100を用いることにより、液体が流れているわずかな時間の間に金属ナノ粒子が生成される。つまり、プラズマの処理時間は、従来に比べて非常に短い。
このプラズマ処理装置100におけるプラズマ発生領域PG1の径は十分に大きい。それにともなって、流路LP1の径も十分に大きい。したがって、このプラズマ処理装置100が単位時間当たりに処理する液体の流量は、従来に比べて非常に大きい。また、流路LP1を構成する外部管140が透明であるため、作業者等がプラズマを目視で確認することができる。また、カメラ等を用いることにより、プラズマ処理の状態をモニタリングすることもできる。
5.金属ナノ粒子の製造方法
5-1.溶液準備工程
まず、金属または金属化合物を含有する溶液を準備する。この溶液として、例えば、硝酸銀水溶液または塩化金酸水溶液が挙げられる。もちろん、その他の水溶液であってもよい。
5-2.プラズマ処理工程
次に、準備した溶液をプラズマ処理装置100の流路LP1に流しながら、プラズマ処理装置100のプラズマ発生領域PG1にプラズマを発生させる。つまり、流路LP1に対面する位置にマイクロ波を用いてプラズマを発生させる。このように、流路LP1に溶液を流しながらプラズマを溶液に照射する。この溶液にプラズマが照射されると、溶液の内部に金属ナノ粒子が生成される。なお、プラズマを液体に照射する向きは、流路における液体が流れる向きと交差している。
ここで、プラズマのガスは、大気または溶液の溶媒が揮発した気体である。流路LP1に液体が流れると、ベンチュリ効果により、プラズマ発生領域PG1の周辺の圧力は下がる。この圧力がある値まで下がると、液体が蒸発し、プラズマ発生領域PG1に気体として供給される。つまり、プラズマガスは、溶液の溶媒が揮発した気体または大気である。このときのプラズマの圧力は、0.01気圧以上0.9気圧以下である。また、プラズマの圧力は0.1気圧以上0.9気圧以下であってもよい。プラズマ処理装置100によりプラズマ処理された溶液(処理溶液)は、金属ナノ粒子を含んでいる。
5-3.分散剤添加工程
ここで、処理溶液に分散剤を添加する。分散剤の添加量は、処理溶液に対して3体積%以上15体積%以下である。分散剤として、例えば、オレイン酸、オレイルアミン、ヘキサン酸、ヘキシルアミン、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)が挙げられる。
5-4.有機溶媒添加工程
次に、分散剤を添加した処理溶液に有機溶媒を添加する。有機溶媒の添加量は、処理溶液の体積に対して、50体積%以上200体積%以下である。有機溶媒として、例えば、MIBK、MEK、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-プロパノールが挙げられる。
5-5.生成される金属ナノ粒子
このように、プラズマを照射された液体の内部では、金属ナノ粒子が生成する。
溶液として硝酸銀水溶液を用いた場合には、生成される金属ナノ粒子は銀ナノ粒子である。溶液として塩化金酸水溶液を用いた場合には、生成される金属ナノ粒子は金ナノ粒子である。このように、溶液が含有する金属イオンと生成される金属ナノ粒子との間には、上記のように相関関係がある。
6.変形例
6-1.後処理
分散剤添加工程と有機溶媒添加工程との少なくとも一方については、省略してよい場合がある。生成した金属ナノ粒子の凝集を抑制することが出来れば、その他の技術を用いてもよい。
6-2.誘電体
本実施形態のプラズマ処理装置100は、誘電体160を有する。しかし、プラズマ処理装置は、必ずしも誘電体160を有さなくてもよい。
6-3.誘電体の形状(絶縁体)
図3に示すように、誘電体160の代わりに、第1の外導体120と第2の外導体130とを絶縁する絶縁体260を設けてもよい。その絶縁体260は、第1の外導体120と第2の外導体130とを絶縁するとともに、第1の外導体120および第2の外導体130の内部からプラズマ発生領域PG1にガスが漏れることを抑制することができる。そして、その絶縁体260は、マイクロ波の伝播領域に重ならない位置に配置するとよい。
6-4.外部管の形状
外部管140は、必ずしも円筒形状である必要はない。また、外部管140の内径は、上記のように一定でなくともよい。液体の流路LP1は、プラズマ発生領域PG1の箇所だけ通過すればよい。ただし、第1の外導体120および第2の外導体130の少なくとも一方の中心軸の方向と、外部管140の中心軸の方向と、が平行であるとよい。
図4は、第1の外導体320および第2の外導体330の代わりに、外部管340が、第1の傾斜面341および第2の傾斜面342を有するプラズマ処理装置300を説明するための図である。この場合には、プラズマ発生領域PG1の周辺の液体の流れに注意する必要がある。
また、第1の外導体および第2の外導体と、外部管との両方に、傾斜面を設けてもよい。この場合には、液体の流路は、導波管の側と外部管の側との双方から、狭められる形状になっている。
6-5.外部管の材質
本実施形態では、外部管140の材質は、例えばガラスである。しかし、ガラスの代わりに、ガラス以外の金属および絶縁体を用いてもよい。ただし、プラズマ発生領域PG1の周辺では、第1の外導体120および第2の外導体130と、外部管140との間の距離が比較的小さい。そのため、外部管140は、絶縁体であることが好ましい。また、外部管140が透明材料であるとよい。外部からプラズマを観察しやすいからである。
6-6.導波管の形状
内導体110と第1の外導体120と第2の外導体130とは、ほぼ円筒形状である。しかし、内導体110と第1の外導体120と第2の外導体130とはテーパ形状であってもよい。また、内導体110と第1の外導体120と第2の外導体130とは、多角形の断面を有する筒形状であってもよい。この場合、外部管の形状を導波管の形状と合わせることが好ましい。
6-7.ポンプ
本実施形態では、液体は流路LP1を自然に流れる。しかし、プラズマ処理装置は、液体を送出するポンプを有していてもよい。これにより、液体の流速を上げることができる。つまり、一度に処理する液体の量が増える。また、プラズマ発生領域PG1の周辺をさらに低圧にすることができる。
6-8.プラズマ処理装置の動作順序
本実施形態では、液体を流路LP1に流した後にマイクロ波を空間MP1に伝播させる。しかし、液体を流路LP1に流す前にマイクロ波を空間MP1に流してもよい。プラズマ処理装置100は、大気圧下でも、プラズマ発生領域PG1にプラズマを発生させることができるからである。また、何らかのダミー液体を流路LP1に流した後にマイクロ波を伝播させ、プラズマを発生させた後に、処理したい液体を流路LP1に流してもよい。このときダミー液体は、プラズマ処理されずに、プラズマ発生領域PG1に減圧状態を発生させるためだけに用いられる。
6-9.定在波
本実施形態では、誘電体160とショートプランジャー170との間の空間K1に定在波を発生させる。その際に、第1の凸部121および第2の凸部131の間に強い電界が加わるように、誘電体160の材質と、誘電体160およびショートプランジャー170の間の距離と、を選定するとよい。
6-10.別形態のプラズマ処理装置
図5は、第1の実施形態の変形例におけるプラズマ処理装置400の概略構成図である。プラズマ処理装置400は、マイクロ波を導波する導波管の内側に液体を流すことにより液体をプラズマ処理する。プラズマ処理装置400は、第1の内導体410と、第2の内導体420と、外導体430と、注入管441と、排出管442と、マイクロ波発生部150と、誘電体460と、ショートプランジャー470と、を有する。
プラズマ処理装置400は、第1の内導体410と、第2の内導体420と、外導体430と、を備える同軸導波管を有する。そのため、第1の内導体410と、第2の内導体420と、外導体430との中心軸は、共通である。マイクロ波は、図5に示すように、第1の内導体410および第2の内導体420と、外導体430と、の間の空間MP1を伝播する。第1の内導体410は、内部に液体を流すための第1の流路LP11を有する。第2の内導体420は、内部に液体を流すための第2の流路LP12を有する。
このように、図1および図5のプラズマ処理装置は、第1の端部を有する第1の導体と、第2の端部を有する第2の導体と、を有する。第1の導体の第1の端部と第2の導体の第2の端部とは、非接触状態で対面している。プラズマを発生させるプラズマ発生領域は、第1の導体の第1の端部と第2の導体の第2の端部との対面箇所に沿う領域である。
6-11.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
(実験)
1.プラズマ発生領域の圧力
プラズマ処理装置100におけるプラズマ発生領域の圧力を測定した。測定箇所は、プラズマ発生領域(第1の凸部121と第2の凸部131との対面箇所)である。しかし、測定時には、プラズマ発生領域にプラズマを発生させてはいない。
図6は、流路LP1に流す水の流量とプラズマ発生領域の圧力との間の関係を示すグラフである。図6の横軸は単位時間当たりに流す水の流量である。図6の縦軸は圧力である。図6に示すように、流路LP1に流す水の流量を増やすと、プラズマ発生領域の圧力は低下する。そして、水の流量が50L/minを越えたところで、プラズマ発生領域の圧力は一定になった。その圧力は19kPaであった。これは、水が水蒸気になってプラズマ発生領域の圧力を担っているためと考えられる。
図7は、流路LP1に流す水の流量とプラズマ発生領域の圧力との間の関係を理論計算により求めたグラフである。図7の横軸および縦軸は、図6と同じである。図7に示すように、理論計算上、溶液の流量の増加とともにプラズマ発生領域の圧力は減少している。この理論計算においては、水の気化により水蒸気が発生することは考慮されていない。
2.プラズマ生成物
図8は、プラズマ処理装置100のプラズマ生成物を示すグラフである。プラズマ生成物の種類を同定するために、プラズマからの発光を測定した。図8の横軸は検出した光の波長である。図8の縦軸はその発光波長における強度である。図8に示すように、このプラズマ中では、酸素ラジカル、水素ラジカル、ヒドロキシラジカルが発生している。このように、水由来の化学活性種が観測された。そして、大気由来の化学活性種、例えば、硝酸イオン等はほとんど観測されなかった。なお、このプラズマ処理装置100のプラズマ密度は1×1014cm-3程度である。
3.金属ナノ粒子の製造(その1)
3-1.実験手順
溶液としてAgNO3 溶液を準備した。AgNO3 の濃度は0.1mol/Lであった。AgNO3 溶液をプラズマ処理装置100の流路LP1に流しながら、AgNO3 溶液にプラズマを照射した。そのときの溶液の流量は55L/minであった。図6より、そのときのプラズマ圧力は0.2気圧程度であった。マイクロ波の周波数は2.45GHzであった。マイクロ波の電力は1kWであった。プラズマ照射後のAgNO3 溶液に5体積%の分散剤を混合した。場合によって、その混合溶液に、AgNO3 溶液と同体積の有機溶媒を混合した。
3-2.実験結果
表1に実験結果を示す。表1に示すように、金属ナノ粒子が有機溶媒によく分散する有機溶媒と分散剤の組み合わせは、ブタノールとオレイン酸、MEKとオレイルアミン、MIBKとヘキサン酸、MEKとヘキサン酸、ブタノールとヘキサン酸、MIBKとヘキシルアミン、MEKとヘキシルアミン、ブタノールとヘキシルアミンの組み合わせだった。
Figure 0007137737000001
図9は、銀ナノ粒子の電子顕微鏡写真(その1)である。図9に示すように、銀ナノ粒子が得られた。この銀ナノ粒子は、粒径20nm以上50nm以下の程度の銀粒子が凝集した凝集体である。このときの分散剤として、170mg/Lの臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)を用いた。有機溶媒を用いずに、マイクログリッドによりサンプルを採取し、自然乾燥させた。
4.金属ナノ粒子の製造(その2)
4-1.実験手順
図10に示すプラズマ処理装置(特開2015-50010)を用いた。図10のプラズマ処理装置は、溶液の流れに対してほぼ垂直な方向からマイクロ波を照射する。AgNO3 の濃度は2mmol/Lであった。そのときの溶液の流量は9L/minであった。マイクロ波の周波数は2.45GHzであった。マイクロ波の電力は1.8kWであった。このときの分散剤として、5体積%のオレイン酸を用いた。そして、有機溶媒として、硝酸銀溶液と同体積の1-メトキシ-2-プロパノールを用いた。その後、マイクログリッドによりサンプルを採取し、自然乾燥させた。
4-2.実験結果
図11(a)は、銀ナノ粒子の電子顕微鏡写真(その2)である。図11(b)は、銀ナノ粒子のエネルギー分散型X線分析(EDX)の画像である。図11(a)および図11(b)に示すように、溶液の内部に粒径100nm程度の銀ナノ粒子が発生している。
(付記)
第1の態様における金属ナノ粒子の製造方法においては、金属または金属化合物を含有する溶液をプラズマ処理装置の流路に流し、流路に対面する位置にマイクロ波を用いてプラズマを発生させる。流路に溶液を流しながらプラズマを溶液に照射して溶液の内部に金属ナノ粒子を生成する。プラズマのガスは、溶液の溶媒が揮発した気体または大気である。プラズマの圧力は、0.01気圧以上0.9気圧以下である。
第2の態様における金属ナノ粒子の製造方法においては、プラズマを液体に照射する向きは、流路における液体が流れる向きと交差している。
第3の態様における金属ナノ粒子の製造方法においては、プラズマ処理装置は、第1の端部を有する第1の導体と、第2の端部を有する第2の導体と、を有する。第1の導体の第1の端部と第2の導体の第2の端部とは、非接触状態で対面している。プラズマを発生させるプラズマ発生領域は、第1の導体の第1の端部と第2の導体の第2の端部との対面箇所に沿う領域である。
第4の態様における金属ナノ粒子の製造方法においては、溶液は、硝酸銀水溶液であり、金属ナノ粒子は、銀ナノ粒子である。
第5の態様における金属ナノ粒子の製造方法においては、溶液は、塩化金酸水溶液であり、金属ナノ粒子は、金ナノ粒子である。
100…プラズマ処理装置
110…内導体
120…第1の外導体
121…第1の凸部
122…第1の傾斜面
130…第2の外導体
131…第2の凸部
132…第2の傾斜面
140…外部管
150…マイクロ波発生部
160…誘電体
170…ショートプランジャー
E1…第1の端部
E2…第2の端部
S1…スリット
LP1…流路
PG1…プラズマ発生領域

Claims (5)

  1. 金属ナノ粒子の製造方法において、
    金属または金属化合物を含有する溶液をプラズマ処理装置の流路に流し、
    スリットを有する導波管にマイクロ波を伝搬させて前記スリットの箇所であって前記流路に対面する位置プラズマを発生させ、
    前記流路に前記溶液を流しながら前記プラズマを前記溶液に照射して前記溶液の内部に金属ナノ粒子を生成し、
    前記プラズマのガスは、
    前記溶液の溶媒が揮発した気体または大気であり、
    前記プラズマの圧力は、
    0.01気圧以上0.9気圧以下であること
    を特徴とする金属ナノ粒子の製造方法。
  2. 請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法において、
    前記プラズマを前記液体に照射する向きは、
    前記流路における前記液体が流れる向きと交差していること
    を特徴とする金属ナノ粒子の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の金属ナノ粒子の製造方法において、
    前記プラズマ処理装置は、
    第1の端部を有する第1の導体と、
    第2の端部を有する第2の導体と、
    を有し、
    前記第1の導体の前記第1の端部と前記第2の導体の前記第2の端部とは、
    非接触状態で対面しており、
    前記プラズマを発生させるプラズマ発生領域は、
    前記スリットにおける、 前記第1の導体の前記第1の端部と前記第2の導体の前記第2の端部との対面箇所に沿う領域であること
    を特徴とする金属ナノ粒子の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の金属ナノ粒子の製造方法において、
    前記溶液は、硝酸銀水溶液であり、
    前記金属ナノ粒子は、銀ナノ粒子であること
    を特徴とする金属ナノ粒子の製造方法。
  5. 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の金属ナノ粒子の製造方法において、
    前記溶液は、塩化金酸水溶液であり、
    前記金属ナノ粒子は、金ナノ粒子であること
    を特徴とする金属ナノ粒子の製造方法。
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