JP7137183B2 - がんの治療又は予防用医薬および癌のバイオマーカー - Google Patents
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本発明者は、これらの知見に基づき、今回、COBLL1を標的とする複数のsiRNAを設計し、アンドロゲン依存性の前立腺癌細胞株LNCaPを用いて細胞癌細胞増殖抑制効果を調べたところ、設計したsiRNAの中でも効果に顕著な差異が認められ、特定の標的配列に対するsiRNAが癌細胞増殖抑制剤として有用であることが示唆された。更に、これらの中から効果の優れたsiRNAを選択し、難治性の去勢抵抗性前立腺癌のモデルであるLTAD細胞及び22Rv1細胞を用いて、前記前立腺癌細胞の増殖と、動物モデルでの移植された腫瘍の増殖を有意に抑制することを示した。
また、癌組織でのCOBLL1高発現は前立腺癌患者の予後不良因子であると共に、進行の程度と相関することを示し、診断学的な価値や治療薬選択法のバイオマーカーとしての利用価値を有していることを示した。
[1]COBLL1遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖核酸であって、配列番号1~6のいずれかの標的配列に対応する塩基配列を含むセンス鎖と、前記センス鎖に相補的な塩基配列を含むアンチセンス鎖とを含む、二本鎖核酸;
[2]siRNAである、[1]の二本鎖核酸;
[3]前記[1]又は[2]の二本鎖核酸をコードする塩基配列を含む、DNA;
[4]前記[3]のDNAを含む、発現ベクター;
[5]前記[1]又は[2]の二本鎖核酸、前記[3]のDNA、及び前記[4]の発現ベクターからなる群から選んだ少なくとも1つの有効成分を含む、癌細胞増殖抑制剤;
[6]前記[5]の癌細胞増殖抑制剤を含む、癌の治療又は予防用医薬;
[7]前立腺癌の予後を判定する検査方法であって:
(1)患者の前立腺から採取した細胞におけるCOBLL1遺伝子の発現レベルを測定する工程と;
(2)前記発現レベルを正常な前立腺細胞における発現レベルと比較する工程と、
を含む方法;
[8]前立腺癌の進行を判定する検査方法であって:
(1)患者の前立腺から採取した細胞におけるCOBLL1遺伝子の発現レベルを測定する工程と;
(2)前記発現レベルを正常な前立腺細胞における発現レベルと比較する工程と、
を含む方法;
に関する。
また、本発明の検査方法によれば、前立腺癌の予後または進行を判定することができる。
本発明の二本鎖核酸は、COBLL1遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖核酸であって、配列番号1~6のいずれかの標的配列に対応する塩基配列を含むセンス鎖と、前記センス鎖に相補的な塩基配列を含むアンチセンス鎖とを含むことを特徴とする。なお、本明細書において「二本鎖核酸」とは、所望のセンス鎖とアンチセンス鎖とがハイブリダイズしてなる二本鎖核酸領域を含む核酸分子を意味し、siRNA(small interfering RNA)であることが好ましい。
前記COBLL1(cordon-bleu like 1)遺伝子の塩基配列はGenBank(NCBI)などの公共データベースを通じて容易に入手することができ、例えば、ヒトCOBLL1遺伝子は、NCBI accession number NM_014900.3である。COBLL1はアクチン結合ドメインを有するが、その詳細な機能は不明であった。本発明者は、今回、COBLL1遺伝子の或る特定の配列を標的とするsiRNAが前立腺癌細胞の増殖と、動物モデルでの移植された腫瘍の増殖を有意に抑制することを示し、本発明を完成した。
参考として、ヒトCOBLL1遺伝子の塩基配列を配列番号25に示す。
本発明の二本鎖核酸は、23塩基からなる配列番号1~6のいずれかの標的配列に対応する塩基配列を含むセンス鎖と、前記センス鎖に相補的な塩基配列を含むアンチセンス鎖とを含む。
ここで、「標的配列に対応する塩基配列」とは、標的配列と同一の塩基配列であるか、あるいは、前記標的配列において1若しくは数個(例えば、2~3個)の塩基が置換された塩基配列を意味する。二本鎖核酸がsiRNAである場合、1~数塩基のミスマッチを含んでいても、RNAi効果が得られることが知られている。本発明では、標的配列と同一の塩基配列だけでなく、RNAi効果が得られる限り、ミスマッチを含む塩基配列であってもよい。
二本鎖核酸を構成する核酸の種類は、特に限定されるものではなく、適宜選択することができ、例えば、二本鎖RNA、DNA-RNAキメラ型二本鎖核酸を挙げることができる。キメラ型はRNAi効果を有する二本鎖RNAの一部をDNAに換えたものであり、血清中での安定性が高く、免疫応答誘導性が低いことが知られている。
また、二本鎖核酸は、例えば、2’-OH基の修飾、バックボーンのホスホロチオエートによる置換やボラノホスフェート基による修飾、リボースの2位と4位が架橋されたLNA(locked nucleic acid)の導入などによって、ヌクレアーゼに対する耐性や安定化を高めることもできる。あるいは、細胞への導入効率を高める等の目的から、二本鎖核酸のセンス鎖の5’端、或いは3’端に、例えば、ナノ粒子、コレステロール、細胞膜通過ペプチド等の修飾を施すこともできる。
本発明の二本鎖RNAは、siRNA(キメラ型を含む)であることが好ましい。ここで、「siRNA」とは、18塩基長~29塩基長の小分子二本鎖RNAであり、前記siRNAのアンチセンス鎖(ガイド鎖)と相補的な配列をもつ標的遺伝子のmRNAを切断し、標的遺伝子の発現を抑制する機能を有する。
前記siRNAは、先述したようなセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、かつ所望のRNAi効果を示すものであれば、その末端構造に特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、前記siRNAは、平滑末端を有するものであってもよいし、突出末端(オーバーハング)を有するものであってもよい。中でも、前記siRNAは、各鎖の3’末端が2塩基~6塩基突出した構造を有することが好ましく、各鎖の3’末端が2塩基突出した構造を有することがより好ましい。
本発明の二本鎖RNA(特にはsiRNA)は、従来公知の手法に基づき作製することができる。
例えば、所望のセンス鎖とアンチセンス鎖とに相当する18塩基長~29塩基長の一本鎖RNAを、それぞれ既存のDNA/RNA自動合成装置等を利用して化学的に合成し、それらをアニーリングすることにより作製することができる。また、後述する本発明のベクターのような、所望のsiRNA発現ベクターを構築し、前記発現ベクターを細胞内に導入することにより、細胞内の反応を利用してsiRNAを作製することもできる。
本発明のDNAは、先述した、本発明の二本鎖核酸(特にはsiRNA)をコードする塩基配列を含むことを特徴とするDNAであり、本発明の発現ベクターは、前記DNAを含むことを特徴とする発現ベクターである。
前記DNAとしては、先述した、本発明の二本鎖核酸をコードする塩基配列を含むDNAであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記二本鎖核酸をコードする塩基配列の上流(5’側)に、前記二本鎖核酸の転写を制御するためのプロモーター配列が連結されていることが好ましい。前記プロモーター配列としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、CMVプロモーター等のpol II系プロモーター、H1プロモーター、U6プロモーター等のpol III系プロモーターなどが挙げられる。
前記ベクターとしては、前記DNAを含むものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクターなどが挙げられる。前記ベクターは、前記二本鎖核酸(特にsiRNA)を発現可能な発現ベクターであることが好ましい。
前記二本鎖核酸の発現様式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば二本鎖核酸としてsiRNAを発現させる方法として、短い一本鎖RNAを二本発現させる方法(タンデム型)、shRNA(short hairpin RNA)として一本鎖RNAを発現させる方法(ヘアピン型)等が挙げられる。ここで、shRNAとは、18塩基~29塩基程度のdsRNA領域と3塩基~9塩基程度のloop領域を含む一本鎖RNAであるが、shRNAは、生体内で発現されることにより、塩基対を形成してヘアピン状の二本鎖RNAとなる。その後、shRNAはDicer(RNase III酵素)により切断されてsiRNAとなり、標的遺伝子の発現抑制に機能することができる。
前記各ベクターは、従来公知の手法を用いて構築することができ、例えば、前記DNAを、予め制限酵素で切断したベクターの切断部位に連結(ライゲーション)することにより構築することができる。
本発明の癌細胞増殖抑制剤は、先述した本発明の二本鎖核酸、DNA、又はベクターの少なくともいずれか1つの有効成分を含み、更に必要に応じてその他の成分を含むことができる。
前記癌細胞増殖抑制剤の適用対象となる細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前立腺癌細胞が好適に挙げられ、前記前立腺癌細胞は、アンドロゲン依存性前立腺癌細胞であっても、ホルモン療法の効かない難治性の去勢抵抗性前立腺癌細胞であってもよく、特に去勢抵抗性前立腺癌細胞に適用することが好ましい。前記癌細胞増殖抑制剤は、先述した本発明の二本鎖核酸、DNA、又はベクターの少なくともいずれかを含むため、COBLL1遺伝子の発現抑制を介して、癌細胞の増殖を効果的に抑制することができる。
前記癌細胞増殖抑制剤は、例えば、癌細胞に導入(トランスフェクト)することによって、前記細胞に作用させることができる。前記導入の方法としては、特に制限はなく、従来公知の手法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トランスフェクション試薬を用いる方法、エレクトロポレーションによる方法、磁気粒子を用いる方法、ウイルス感染を利用する方法などが挙げられる。
癌細胞に対して作用させる癌細胞増殖抑制剤の量としても、特に制限はなく、細胞の種類や所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、1×106個の細胞数に対し、二本鎖核酸の量として、0.1μg程度が好ましく、5μg程度がより好ましく、15μg程度が特に好ましい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記二本鎖核酸、DNA、及びベクターの少なくともいずれかを所望の濃度に希釈するための生理食塩水、培養液等の希釈用剤や、対象とする細胞内に前記二本鎖核酸、DNA、及びベクターの少なくともいずれかを導入(トランスフェクト)するためのトランスフェクション試薬などが挙げられる。
前記癌細胞増殖抑制剤中の前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の医薬(医薬組成物)は、癌を治療又は予防するための医薬であり、先述した本発明の癌細胞増殖抑制剤を含み、更に必要に応じてその他の成分を含むことができる。
前記癌治療又は予防用医薬の適用対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前立腺癌及び/又はその転移癌が好適に挙げられ、前記前立腺癌は、アンドロゲン依存性前立腺癌であっても、ホルモン療法の効かない難治性の去勢抵抗性前立腺癌であってもよく、特に去勢抵抗性前立腺癌細胞に適用することが好ましい。
前記医薬の剤型としては、特に制限はなく、所望の投与方法に応じて適宜選択することができ、例えば、経口固形剤(錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等)、経口液剤(内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、注射剤(溶液、懸濁液、用事溶解用固形剤等)、軟膏剤、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散剤などが挙げられる。
また、有効成分以外のその他の成分として、所望の医薬添加物、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等を含むことができる。
また、前記医薬の投与回数としても、特に制限はなく、投与対象である患者の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて、適宜選択することができる。
また、本発明は、癌の治療又は予防用医薬に加えて、
癌の治療又は予防の必要がある対象に、その有効量で、本発明の癌細胞増殖抑制剤を投与することを含む、癌の治療または予防方法;
本発明の癌細胞増殖抑制剤の、癌の治療又は予防用医薬の製造への使用;
癌の治療又は予防用である、本発明の癌細胞増殖抑制剤
にも関する。
本発明の前立腺癌の予後を判定する検査方法は、患者の前立腺から採取した細胞におけるCOBLL1遺伝子の発現レベルを測定する工程と、その発現レベルを正常な前立腺細胞における発現レベルと比較する工程と、を含む。
また、本発明の前立腺癌の進行を判定する検査方法は、患者の前立腺から採取した細胞におけるCOBLL1遺伝子の発現レベルを測定する工程と、その発現レベルを正常な前立腺細胞における発現レベルと比較する工程と、を含む。
本発明者は、患者の前立腺癌細胞において、COBLL1遺伝子の発現量の上昇が予後不良と相関関係を有することを見出した。従って、本発明の検査方法による検査の結果、COBLL1遺伝子の発現が正常細胞に比較して有意に高い場合、予後は不良となる可能性が高いものと予測することができる。
また、本発明者は、患者の前立腺癌細胞において、COBLL1遺伝子の発現量の上昇が、前立腺特異抗原(PSA)の発現量の上昇、あるいは、グリーソンスコア(Gleason Score)の上昇と相関関係を有することを見出した。従って、本発明の検査方法による検査の結果、COBLL1遺伝子の発現が正常細胞に比較して有意に高い場合、前立腺癌が進行していると判断することができる。
本発明の検査方法において、COBLL1遺伝子の発現レベルは、常法により測定することができる。例えば、定量的リアルタイムPCR又はノーザンブロッティング等によりmRNAレベルで測定することもできるし、あるいは、ウエスタンブロッティング又は免疫組織染色等によりタンパク質レベルで測定することもできる。
このようにして測定した患者由来の前立腺癌細胞における測定値と、正常な前立腺細胞における発現レベルとの比較は、常法により行うことができ、例えば、それぞれ別々に採取した各細胞における発現レベルを測定し、それらを比較することもできるし、あるいは、予め決定した正常な前立腺細胞における閾値と比較することもできる。
GenBank(NCBI)から入手した、配列番号25で表されるヒトCOBLL1遺伝子(NM_014900.3)の塩基配列から、表1に示す8種類のsiRNAを設計し、SIGMA-Aldrichに合成を委託した。なお、前記塩基配列(NM_014900.3)は9488塩基からなり、コード領域(CDS)は223番~3723番である。また、siRNA#A~siRNA#H(以下、siCOBLL1#A~siCOBLL1#Hと称する)は、いずれも、標的配列は23塩基であり、21塩基からなるセンス鎖及びアンチセンス鎖は、その3’末端側の2塩基は突出末端(オーバーハング)である。
実施例1で合成したsiRNAによるCOBLL1発現抑制の効果を検証するため、RNAレベルでの発現量の測定を行った。アンドロゲン受容体(AR)陽性のヒト前立腺癌細胞株LNCaP細胞(ATCC CRL-1740)を、10%ウシ胎児血清(FBS;Sigma)、100μg/mLストレプトマイシン、100U/mLペニシリン(Invitrogen)を含むRPMI-1640培地(Sigma)にて培養し、6ウェルプレートに3×105細胞/ウェルになるようにまき、24時間以内にLipofectamine RNAi MAX(Thermofisher)を用いて計8種類のsiRNAのトランスフェクションを行った。siRNAは、20μmol/Lネガティブコントロール(siControl;Ambion)と、8種類の50μmol/L siCOBLL1(SIGMA-Aldrich)を10nmol/Lになるように調整し、細胞へ加えた。トランスフェクション後72時間以内にISOGEN(日本ジーン)でRNAの回収を行った。500ng RNAをPrimescript RT reagent kit(TaKaRa Bio)を用いてcDNA合成した。cDNA合成後、10倍希釈し、そのうちの2μLを用いて定量的リアルタイムPCRを行った。内部コントロールにはGAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)を用いて補正を行い発現レベルの解析を行った。
次にCOBLL1発現抑制によるLNCaP細胞の増殖能への影響を検討した。LNCaP細胞は96ウェルプレートに3×103細胞/ウェルになるように継代し、24時間以内にsiRNAをトランスフェクションした。siRNAは、20μmol/Lネガティブコントロール(siControl;Ambion)と、8種類の50μmol/L siCOBLL1(SIGMA-Aldrich)を10nmol/Lになるように調整し、細胞へ加えた。細胞の継代後1日後、4日後、5日後、6日後に細胞増殖アッセイを実施した。前記アッセイはMTSアッセイにより行い、PES(phenazine ethosulfate)を介して、テトラゾリウム塩[MTS;3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-5-(3-carboxymethoxyphenyl)-2-(4-sulfophenyl)-2H-tetrazolium, inner salt]を発色物質であるホルマザン産物へ変換する還元反応に基づいて、生細胞数を測定した。マイクロプレートリーダーにて吸光度490nmで細胞増殖能を測定した。
LNCaP細胞の代わりに、難治性の去勢抵抗性前立腺癌(Castration-Resistant Prostate Cancer;CRPC)のモデルであるLTAD(long-time androgen deprived)細胞を用いること、8種類のsiCOBLL1の代わりに4種類のsiCOBLL1を用いること以外は、前記実施例2の手順に従って、mRNAの発現レベルを解析した。前記LTAD細胞は、LNCaP細胞をアンドロゲン枯渇培地で6か月間培養して得られたCRPCモデル細胞である(Takayama, K. et al., EMBO J 2013, 32, 1665-1680.)。
LNCaP細胞の代わりにLTAD細胞を用いること、8種類のsiCOBLL1の代わりに4種類のsiCOBLL1を用いること以外は、前記実施例3の手順に従って、細胞増殖能を解析した。結果を図4に示す。siCOBLL1#C、siCOBLL1#D、siCOBLL1#Gでは、試薬のみ(n.c.)、ネガティブコントロール(siControl)と比較して、有意に細胞増殖が抑えられていた。以下、発現抑制効果の強いsiCOBLL1#C、siCOBLL1#D(以下、それぞれ、siCOBLL1#1、siCOBLL1#2と称する)を選択しさらに詳細な実験を行った。
発現抑制効果の強かったsiCOBLL1#1、siCOBLL1#2によるCOBLL1発現抑制の効果を検証するため、タンパク質レベルでの発現量の測定を行った。LNCaP細胞又はLTAD細胞を6ウェルプレートに3×105細胞/ウェルになるようにまき、24時間以内にsiRNAのトランスフェクションを行った。siRNAは、20μmol/Lネガティブコントロール(siControl;Ambion)と、2種類の50μmol/L siCOBLL1(siCOBLL1#1、siCOBLL1#2;SIGMA-Aldrich)を10nmol/Lになるように調整し、細胞へ加えた。内部コントロールにはβ-アクチンを用いて補正を行い、ウエスタンブロッティングによりタンパク質レベルでの発現レベルの解析を行った。その結果を図5に示す。2種類のsiCOBLL1配列に関して、ネガティブコントロール(siControl)に比べてCOBLL1が顕著にノックダウンされており、siCOBLL1#1、siCOBLL1#2の両配列とも効果が高かった。
イン・ビボでの腫瘍増殖への影響を調べるため、マウス皮下への腫瘍移植モデルを使用し、siCOBLL1による効果を検討した。腫瘍移植のためにLTAD細胞を1×107細胞に調整した後、マトリゲル(BD bioscience)と1:1で混合し、5週齢雄性ヌードマウスへ皮下注射した。マウス皮下注射後5~8週間、腫瘍体積が100~200mm3くらいに達したところで精巣摘除を行い、難治性の去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)治療効果を検討するモデルとした。順次週3回のsiCOBLL1投与で治療を開始した。ネガティブコントロール(siControl;SIGMA-Aldrich)と比較し、この動物での検討にはsiCOBLL1#1を用いた。siRNAはそれぞれ5μg/匹になるように使用した。siRNAはフェノールレッド不含OPTI-MEM(Thermo Fisher Scientific)とRNAiMAX(Invitrogen)15μLと混合して100μLを腫瘍に注射した。siRNA剤による治療は3回/週を4週間繰り返し、腫瘍径(長径r1、短径(2か所)r2、r3)を測定し、v=0.5×r1×r2×r3の式により腫瘍体積を算出した。結果を図6に示す。siCOBLL1の投与はマウスにおける腫瘍の増殖を有意に抑制することを見出した。
腫瘍におけるsiRNAがCOBLL1を抑制しているかの確認をウエスタンブロッティングにより検証した。タンパク質の抽出のため腫瘍だけを取り除き、さらに5~10mm3の大きさに分けた。腫瘍に500μL NP40溶解緩衝液(150mmol/L NaCl、1%NP40、50mmol/L Tris-HCl[pH8.0])を加え、ホモジナイザーですりつぶした。その溶液を15,000rpm、4℃で30分間遠心し、上清を回収した。タンパク質をSDS溶解緩衝液により可溶化した後、ウエスタンブロッティングによるCOBLL1タンパク質発現量の解析を行った。その結果、図7に示すようにsiCOBLL1の腫瘍内への投与はCOBLL1の発現レベルを抑制させた。興味深いことに、siCOBLL1は腫瘍内においてアンドロゲン受容体(AR)の活性化の指標であるリン酸化AR(p-AR)の発現量を抑制していた。以上よりsiCOBLL1は腫瘍内においてもCOBLL1を抑制しCOBLL1を標的として阻害することで腫瘍増殖の抑制を促すことが示唆された。
イン・ビボでの腫瘍増殖への影響を調べるため、実施例7(LTAD細胞)とは別の難治性の去勢抵抗性前立腺癌によるマウス皮下への腫瘍移植モデルを使用し、siCOBLL1による効果を検討した。腫瘍移植のために22Rv1細胞(ATCC CRL-2505)を1×107細胞に調整した後、マトリゲル(BD bioscience)と1:1で混合し、5週齢雄性ヌードマウスへ皮下注射した。マウス皮下注射後1週間、腫瘍体積が100~200mm3くらいに達したところで精巣摘除を行い、難治性の去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)治療効果を検討するモデルとした。順次週3回のsiCOBLL1投与で治療を開始した。ネガティブコントロール(siControl;SIGMA-Aldrich)と比較し、この動物での検討には、実施例7(LTAD細胞)で使用したsiCOBLL1#1に加えて、siCOBLL1#2も使用した。siRNAはそれぞれ5μg/匹になるように使用した。siRNAはフェノールレッド不含OPTI-MEM(Thermo Fisher Scientific)とRNAiMAX(Invitrogen)15μLと混合して100μLを腫瘍に注射した。siRNA剤による治療は3回/週を2週間繰り返し、腫瘍径(長径r1、短径(2か所)r2、r3)を測定し、v=0.5×r1×r2×r3の式により腫瘍体積を算出した。結果を図8に示す。siCOBLL1#1及びsiCOBLL1#2の投与は共に本腫瘍モデル実験においてもマウスにおける腫瘍の増殖を有意に抑制することを見出した。
腫瘍におけるsiRNAがCOBLL1を抑制しているかの確認をウエスタンブロッティングにより検証した。タンパク質の抽出のため腫瘍だけを取り除き、さらに5~10mm3の大きさに分けた。腫瘍に500μL NP40溶解緩衝液(150mmol/L NaCl、1%NP40、50mmol/L Tris-HCl[pH8.0])を加え、ホモジナイザーですりつぶした。その溶液を15,000rpm、4℃で30分間遠心し、上清を回収した。タンパク質をSDS溶解緩衝液により可溶化した後、ウエスタンブロッティングによるCOBLL1タンパク質発現量の解析を行った。その結果、図9に示すようにsiCOBLL1の腫瘍内への投与はCOBLL1の発現レベルを抑制させた。興味深いことに、siCOBLL1は、腫瘍内においてアンドロゲン受容体(AR)の活性化の指標であるリン酸化AR(p-AR)の発現量と、去勢抵抗性前立腺癌の発症に関わるAR-V7を含むアンドロゲン受容体の変異体(AR-V)のタンパク質発現を抑制していた。以上よりsiCOBLL1は腫瘍内においてもCOBLL1を抑制しCOBLL1を標的として阻害することで腫瘍増殖の抑制を促すことが示唆された。
COBLL1のヒト前立腺癌組織内における発現について、臨床検体を用いた免疫染色により検討を行った。免疫染色は、102例の根治的前立腺全摘術により得られた前立腺癌検体を用いて行った。発現の定量は発現強度と発現の割合をスコアリングしたものを用いた。具体的には、染色強度を3段階に、1視野における発現の割合を4段階に分類し、それぞれ加算したものを用いた。結果を図10、図11に示す。COBLL1高発現群(+)では前立腺全摘術後の癌特異的生存率が有意に低く(図10)、また、前立腺全摘患者において、COBLL1の発現が、有意にグリーソンスコア(Gleason Score)と相関し、前立腺特異抗原(PSA)とも相関した(図11)。以上よりCOBLL1は前立腺癌の進行に関連し、予後予測因子となりうることが示された。またこのCOBLL1を標的とした治療法選択する際のバイオマーカーともなりうることが示唆された。
Claims (2)
- 配列番号7のセンス鎖及び配列番号8のアンチセンス鎖を含む二本鎖核酸、又は配列番号9のセンス鎖及び配列番号10のアンチセンス鎖を含む二本鎖核酸、
前記二本鎖核酸をコードする塩基配列を含む、DNA、及び
前記DNAを含む、発現ベクター、
からなる群から選んだ少なくとも1つの有効成分を含む、前立腺癌細胞増殖抑制剤。 - 請求項1に記載の癌細胞増殖抑制剤を含む、前立腺癌の治療又は予防用医薬。
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WO2017026843A1 (ko) | 2015-08-12 | 2017-02-16 | 가톨릭대학교 산학협력단 | 만성골수성백혈병에 관한 정보 제공 방법 |
Non-Patent Citations (2)
Title |
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BMC Cancer,2011年,Vol. 11:169,P. 1-9 |
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Publication number | Publication date |
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JP2019165706A (ja) | 2019-10-03 |
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