JP2021031420A - Myh9の阻害物質を用いた、がん転移抑制 - Google Patents

Myh9の阻害物質を用いた、がん転移抑制 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、高悪性度かつ高転移能の癌の転移を抑制することを課題とする。【解決手段】本明細書において、MYH9の阻害物質を含む、癌転移抑制剤が提供される。【選択図】図2

Description

本発明は、癌の転移を抑制するための医薬およびその方法に関する。
癌治療においては、癌細胞死の誘導による治療、癌細胞の増殖抑制による治療および癌組織の除去による治療が主流であるが、これらの治療と組み合わせて、癌細胞の転移抑制の治療を行うことは、癌の進行や癌の再発防止の観点で重要である。しかし、癌細胞の転移を抑制するための有効な治療が実現化されていない。そのため、癌治療において、癌細胞の転移を抑制する手法の確立が望まれている。癌治療の手法としては、特許文献1には、heat shock protein 47(HSP47)を標的化する分子を用いて、腫瘍の増殖を抑制することで、腫瘍を治療することが記載されている。非特許文献1には、小胞体膜タンパク質であるInositol-Requiring Enzyme 1-ALPHA(IRE1α)のドミナントネガティブ形態においてグリオーマ細胞の遊走が促進されることが示唆されている。non-muscle myosin IIA; NMIIA (MYH9)は、細胞運動の重要な因子であり、がん細胞で発現することが知られているが、MYH9の発現を阻害することによる癌転移抑制効果については確認されていない。また、非特許文献2には、HSP47およびMYH9の強制発現がトリプルネガティブ乳癌の転移能を増強することが記載されているが、MYH9の発現を阻害することによる癌転移抑制効果については確認されていない。
トリプルネガティブ乳癌は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、およびヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)の発現が陰性であり、高転移能を有していることから、従来の乳癌治療法(化学療法、ホルモン療法、分子標的治療)の効果がほとんど発揮されず、現状、それに対する解決策は皆無である。例えば、近年、乳癌治療の分子標的薬としてHER2を標的とする抗体医薬が使用されているが、トリプルネガティブ乳癌はHER2が陰性であるため、このような分子標的薬によって、細胞死や増殖抑制を誘導することが困難である。また、トリプルネガティブ乳癌には、ホルモン療法が奏効しない。トリプルネガティブ乳癌を外科的に除去する治療が可能であるが、外科的に癌組織を除去したとしても、癌細胞の一部が体内から除去しきれない場合がある。トリプルネガティブ乳癌は遠隔組織への転移能が非常に高いため、外科的な処置を施したとしても、残存するリスクを考慮して、転移を抑制する治療を併せて行うことが望ましい。しかしながら、一般的に、癌細胞の転移を抑制するための有効な治療は確立されていない。このように、乳癌、特にトリプルネガティブ乳癌についても高転移能の獲得機序は未解明であり、転移の制御・抑制を行える治療法も無い。
米国特許出願公開第2017/0218365号公報
Journal of Cell Science 125, 4278-4287 Akihiro Yoneda et. al., P-2149 "HSP47 augments a metastatic potential of triple negative breast cancer", 第77回日本癌学会学術総会
本発明は、高悪性度かつ高転移能の癌の転移を抑制することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねる中で、トリプルネガティブ乳癌において、その細胞集団がMYH9を高発現していること、トリプルネガティブ乳癌および非トリプルネガティブ乳癌において、その細胞集団がIRE1αを高発現していること、MYH9またはIRE1α陽性トリプルネガティブ乳癌細胞は非常に転移能が高いこと、そして、トリプルネガティブヒト乳癌において、MYH9またはIRE1αの発現を抑制することにより、その転移能を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明者らは、HSP47タンパク質が、IRE1αを介して、細胞運動の重要な因子であるnon-muscle myosin IIA; NMIIA (MYH9)に結合し、HSP47とIRE1αとMYH9とが複合体を形成することを新たに見出している。HSP47は、IRE1αを介して、細胞運動に重要な因子に結合して、細胞運動制御に関与しており、HSP47、IRE1α、またはMYH9のいずれかの阻害物質は、HSP47、IRE1α、またはMYH9の発現阻害を介して、細胞運動を抑制することが予想される。
すなわち、本発明は、以下に関するものである。
(1)MYH9の阻害物質を含む、癌転移抑制剤。
(2)癌が乳癌である、(1)に記載の癌転移抑制剤。
(3)癌が、ホルモン受容体陰性かつヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)陰性のトリプルネガティブ乳癌である、(2)に記載の癌転移抑制剤。
(4)ホルモン受容体が、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体である、(3)に記載の癌転移抑制剤。
(5)癌細胞が、MYH9を発現するトリプルネガティブ乳癌細胞である、(3)または(4)に記載の癌転移抑制剤。
(6)MYH9の阻害物質が、MYH9に対する干渉核酸、リボザイム、アンチセンス核酸、マイクロRNA、短鎖ヘアピンRNA、これらを発現するベクター、またはこれらで形質転換された細胞である、(1)〜(5)のいずれかに記載の癌転移抑制剤。
(7)IRE1αの阻害物質をさらに含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の癌転移抑制剤。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の癌転移抑制剤を含む医薬組成物。
(9)癌を処置するための、(8)に記載の医薬組成物。
(10)転移性肺癌を処置するための、(9)に記載の医薬組成物。
(11)癌の転移を抑制するための医薬の製造における、MYH9の阻害物質の使用。
(12)癌がトリプルネガティブ乳癌である、(11)に記載の使用。
(13)癌の転移の抑制における使用のための、MYH9の阻害物質を含む組成物。
(14)癌がトリプルネガティブ乳癌である、(13)に記載の組成物。
(15)有効量のMYH9の阻害物質を癌患者に投与することを特徴とする、癌の転移抑制方法。
(16)前記癌患者が乳癌患者であって、前記有効量のMYH9の阻害物質の投与前に、乳癌患者がトリプルネガティブ乳癌患者であるか否かを確認する工程を含む、(15)に記載の癌の転移抑制方法。
(17)前記有効量のMYH9の阻害物質の投与前に、前記癌患者の癌組織がMYH9を発現しているか否かを確認する工程を含む、(15)または(16)に記載の癌の転移抑制方法。
(18)外科的治療、放射線治療、粒子線治療、化学療法、及び分子標的治療からなる群より選択される治療と共に行われる、(15)〜(17)のいずれかに記載の癌の転移抑制方法。
(19)癌患者由来の癌細胞を、有効量のMYH9の阻害物質を用いてインビトロで処置することを含む、インビトロで癌の転移を抑制する方法。
本発明の癌転移抑制剤は、癌細胞におけるMYH9またはIRE1αの発現を阻害することにより、癌の転移を抑制することができる。本発明の方法は、MYH9またはIRE1αの阻害物質を投与することにより、癌の転移を抑制することができる。
MYH9およびIRE1αの発現パターンは、トリプルネガティブ乳癌および非トリプルネガティブ乳癌におけるように癌種において異なるため、その発現パターンに合わせて、MYH9の阻害物質およびIRE1αの阻害物質を併用することにより、乳癌を含む幅広い癌種に対して転移抑制効果を発揮することが可能である。
図1Aは、ヒト乳癌細胞におけるMYH9 mRNAの発現を示す。トリプルネガティブヒト乳癌細胞2種類(MDA-MB-231, MDA-MB-468)におけるMYH9 mRNAの発現をReal time-PCRにて検出した。 図1Bは、MYH9発現抑制によるトリプルネガティブヒト乳癌細胞の細胞増殖能を示す。siControl、もしくはMYH9 siRNA(siMYH9-A、siMYH9-B、siMYH9-C)を遺伝子導入して作成したトリプルネガティブヒト乳癌細胞(MDA-MB-231およびMDA-MB-468)を1×104 cells/wellで6-well plateに播種し、培養開始後5日間、細胞カウントにより細胞増殖能を測定した。 図2Aは、MYH9発現抑制によるトリプルネガティブヒト乳癌細胞の細胞運動能を示す。siControl、もしくはMYH9 siRNA(siMYH9-A、siMYH9-B、siMYH9-C)を遺伝子導入して作成したトリプルネガティブヒト乳癌細胞(MDA-MB-231, MDA-MB-468)を1×105 cells/wellで35-mm dishに播種し、培養開始後24時間で、スクラッチアッセイを用いて細胞運動能を測定した。図2Bは、MYH9発現抑制によるヒトトリプルネガティブ乳癌細胞の肺転移能を示す。siControl、もしくはMYH9 siRNA(siMYH9-A、siMYH9-B、siMYH9-C)を遺伝子導入して作成したトリプルネガティブヒト乳癌細胞(MDA-MB-231, MDA-MB-468)を2×104 cells/インサートの濃度で、トランズウェルチャンバー中で培養した。培養開始から24時間後、トランズウェルメンブレンを通過した細胞を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、ヘマトキシリンを用いて染色した。視野当たりの細胞数の結果を図2Bに示す。
図3Aは、ヒト乳癌細胞におけるIRE1α mRNAの発現を示す。トリプルネガティブヒト乳癌細胞2種類(MDA-MB-231, MDA-MB-468)におけるIRE1α mRNAの発現をReal time-PCRにて検出した。 図3Bは、IRE1α発現抑制によるトリプルネガティブヒト乳癌細胞の細胞増殖能を示す。siControl、もしくはIRE1α siRNA(siIRE1α-A、siIRE1α-B)を遺伝子導入して作成したトリプルネガティブヒト乳癌細胞(MDA-MB-231およびMDA-MB-468)を1×104 cells/wellで6-well plateに播種し、培養開始後5日間、細胞カウントにより細胞増殖能を測定した。 図4Aは、IRE1α発現抑制によるトリプルネガティブヒト乳癌細胞の細胞運動能を示す。siControl、もしくはIRE1α siRNA(siIRE1α-A、siIRE1α-B)を遺伝子導入して作成したトリプルネガティブヒト乳癌細胞(MDA-MB-231, MDA-MB-468)を1×105 cells/wellで35-mm dishに播種し、培養開始後24時間で、スクラッチアッセイを用いて細胞運動能を測定した。図4Bは、IRE1α発現抑制によるヒトトリプルネガティブ乳癌細胞の肺転移能を示す。siControl、もしくはIRE1α siRNA(siIRE1α-A、siIRE1α-B)を遺伝子導入して作成したトリプルネガティブヒト乳癌細胞(MDA-MB-231, MDA-MB-468)を2×104 cells/インサートの濃度で、トランズウェルチャンバー中で培養した。培養開始から24時間後、トランズウェルメンブレンを通過した細胞を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、ヘマトキシリンを用いて染色した。視野当たりの細胞数の結果を図4Bに示す。 図5Aは、トリプルネガティブ乳癌細胞(MDA-MB-231, MDA-MB-468)および非トリプルネガティブ乳癌細胞(MCF7, BT474)におけるMYH9タンパク質およびIRE1αタンパク質の発現を示す。 図5Bは、非トリプルネガティブ乳癌細胞株MCF7であるMock細胞、MYH9発現細胞(Mock+MYH9-GFP)、HSP47ノックアウト(KO)細胞、および、MYH9発現HSP47 KO細胞(HSP47 KO+MYH9-GFP)におけるMYH9タンパク質、IRE1αタンパク質およびHSP47タンパク質の発現を示す。
本明細書において、MYH9またはIRE1αの阻害物質を含む癌転移抑制剤、これを含む医薬組成物およびキット、ならびにMYH9またはIRE1αの阻害物質を投与することを含む癌の転移を抑制するための方法が提供される。
本発明の癌転移抑制剤、医薬組成物、キットおよび方法は、MYH9またはIRE1αの転写体RNA(pre−mRNAおよびmRNAを含む)、例えば配列番号1または2によって例示されるMYH9またはIRE1αのmRNAに結合する核酸分子(例えば短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖(double-stranded)RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)または短鎖ヘアピンRNA(shRNA))を使用すること、あるいは、MYH9またはIRE1α遺伝子をゲノム編集技術を使用してノックアウトすることを特徴とする。
1.本発明の癌転移抑制剤
本発明の一側面は、MYH9またはIRE1αの阻害物質を含む癌転移抑制剤、例えば、MYH9またはIRE1αの発現の阻害剤を含む、癌転移抑制剤に関する。
MYH9およびIRE1α遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列は、当該技術分野で公知であり、本発明において、MYH9およびIRE1αのmRNA配列は、Accession No. NM_002473およびAccession No. NM_001433(それぞれ配列番号1および2)によって示される。
本発明において、MYH9またはIRE1αの転写体RNAは、例えば、ヒト由来であり、配列番号1または2で示される塩基配列またはこの各塩基配列において1若しくは数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加又は挿入を含む塩基配列、或いは、上記の各塩基配列と70%以上、80%以上又は90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上もしくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列であってもよい。
本明細書において、「数個」とは、2〜10個、好ましくは2〜5個、より好ましくは2〜3個の塩基数をいう。また、配列同一性は、例えばBLASTなどの公知のアルゴリズムを使用して決定することができる。
本発明において、MYH9またはIRE1αの発現の阻害剤は、MYH9またはIRE1αの発現を阻害する成分、或いは、MYH9またはIRE1αタンパク質の機能を阻害する成分であってもよく、例えば、RNA干渉(RNAi)作用を有する、siRNA若しくはその前駆体RNA(例えば、shRNA)、又はそれらの修飾RNA、或いは、MYH9またはIRE1α遺伝子の転写体RNAに対するsiRNAをコードするDNAを含むベクターを包含する。また、本発明において、MYH9またはIRE1αの発現の阻害剤は、例えば、短鎖干渉核酸(siNA)、リボザイム、shRNA、マイクロRNAなどであってもよい。ベクターは、アンチセンスRNA若しくはアンチセンスDNA、該アンチセンスRNAをコードするDNA若しくは該アンチセンスDNAを含んでいてもよい。
本発明において、siRNAは、MYH9またはIRE1α遺伝子の転写体RNAの一部に実質的に相補的な18〜25ヌクレオチド、好ましくは20〜24ヌクレオチド、さらに好ましくは、21〜23ヌクレオチドを含むアンチセンスRNA、を有し、かつRNAi(RNA干渉)作用を有する、センスRNAとアンチセンスRNAとからなる二本鎖RNAであってもよい。
本発明において、「相補的」とは、核酸が、他の核酸配列と、古典的なワトソン−クリック型か、または他の非古典的なタイプにより水素結合を形成できることを意味する。
また、本発明において、「実質的に相補的」とは、核酸配列の全ての連続する残基が、他の核酸配列における同じ数の連続する残基と水素結合を形成する場合のみならず、核酸配列の全ての残基のうち、例えば、70%、80%、および90%の残基が、他の核酸配列の残基と水素結合を形成する場合も含む。
したがって、本発明において、siRNAは、MYH9またはIRE1α遺伝子の転写体RNAの一部に100%相補的なヌクレオチドから数塩基変更されているヌクレオチドを含むアンチセンスRNAを有していてもよい。
また、本発明において、センスRNAとアンチセンスRNAの各3'末端には、2〜5ヌクレオチド、好ましくは2ヌクレオチドの突出末端を有していてもよい。また、本発明において、siRNAは、修飾siRNAであってもよい。
例えば、本発明において、siRNAは、MYH9 siRNA、例えば、センス鎖の5’- GGGUAUCAAUGUGACCGAUtt -3’(配列番号3)とアンチセンス鎖の5’- AUCGGUCACAUUGAUACCCaa -3’(配列番号4)の組合せ(siMYH9-A)、センス鎖の5’- CCACCAACCUCACAGAAGAtt -3’(配列番号5)とアンチセンス鎖の5’- UCUUCUGUGAGGUUGGUGGtg -3’(配列番号6)の組合せ(siMYH9-B)、センス鎖の5’- CGGCAAGGUGGAUUACAAAtt -3’(配列番号7)とアンチセンス鎖の5’- UUUGUAAUCCACCUUGCCGgc -3’(配列番号8)の組合せ(siMYH9-C)(日東電工において作成)であってもよい。
例えば、本発明において、siRNAは、MYH9 siRNAに加えて、IRE1α siRNA、例えば、センス鎖の5’- GAAACUUCCUUUUACCAUCtt -3’(配列番号9)とアンチセンス鎖の5’- GAUGGUAAAAGGAAGUUUCgt -3’(配列番号10)の組合せ(siIRE1α-A)、センス鎖の5’- CAGGACAUCUGGUAUGUUAtt -3’(配列番号11)とアンチセンス鎖の5’- UAACAUACCAGAUGUCCUGtt -3’(配列番号12)の組合せ(siIRE1α-B)(日東電工において作成)を含んでいてもよい。
また、本発明において、癌転移抑制剤は、MYH9またはIRE1αの阻害物質に加えて、HSP47の阻害物質、例えば、センス鎖の5’- CUACGACGACGAGAAGGAAtt -3’(配列番号13)とアンチセンス鎖の5’- UUCCUUCUCGUCGUCGUAGta -3’(配列番号14)の組合せ(siHSP47-A)(Ambion)、センス鎖の5’- AGCCCUCUUCUGACACUAAtt -3’(配列番号15)とアンチセンス鎖の5’- UUAGUGUCAGAAGAGGGCUgg -3’(配列番号16)の組合せ(siHSP47-B)(Ambion)、センス鎖の5’- GGACAGGCCUCUACAACUAtt -3’(配列番号17)とアンチセンス鎖の5’- UAGUUGUAGAGGCCUGUCCtt -3’(配列番号18)の組合せ(siHSP47-C)(日東電工において作成)を含んでいてもよい。あるいは、本発明において、MYH9またはIRE1αの阻害物質に加えて、HSP47の阻害物質として、Origen社から購入したHSP47 shRNA、または、HSP47 shRNAを含むプラスミドベクターを使用することができる。あるいは、本発明において、MYH9またはIRE1αの阻害物質に加えて、HSP47の阻害物質として、gRNA配列(例えば、5’-CAAGATGCGAGACGAGTTATAGG-3’(配列番号19))をコードするプラスミドを使用するゲノム編集技術を使用してHSP47遺伝子をノックアウトすることもできる。
MYH9またはIRE1αまたはHSP47の阻害物質の細胞への導入は、任意の既知の導入手法、例えば、限定されずに、リポフェクタミン法、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、超音波導入法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターなど)を利用する方法、またはマイクロインジェクション法などを用いることができる。
ウイルスベクターを使用する場合、ウイルスの力価としては1×10〜1×1015p.f.u.(プラーク形成単位)であってもよく、好ましくは1×10〜1×1013、より好ましくは1×10〜1×1011、さらに好ましくは1×10〜1×1010で用いることができる。
上記核酸分子は、裸の核酸として使用しても、種々の核酸構築物またはベクターに組み込んで使用してもよい。ベクターとしては、プラスミドベクター、ファージベクター、ファージミドベクター、コスミドベクター、ウイルスベクター等の公知の任意のものを利用することができる。核酸構築物またはベクターは、例えば哺乳動物、微生物、ウイルス、または昆虫遺伝子から誘導される適当な転写または翻訳制御配列を少なくとも含んでいることが好ましい。かかる制御配列は、遺伝子発現において調節的役割を有する配列、例えば転写プロモーターまたはエンハンサー、転写を調節するためのオペレーター配列、メッセンジャーRNA内部のリボゾーム結合部位をコードしている配列、ならびに、転写、翻訳開始または転写終了を調節する適切な配列を包含する。
2.本発明の医薬組成物
本発明はまた、上記の癌転移抑制剤を含む医薬組成物に関する。上記の癌転移抑制剤は、癌細胞の運動能の低減、および、癌の転移の抑制が可能であるため、医薬組成物の有効成分として有用である。本発明の医薬組成物は、上記のMYH9またはIRE1αの阻害物質と、1または2以上の薬学的に許容し得る界面活性剤、担体、希釈剤および/または賦形剤を含んでもよい。薬学的に許容し得る担体、希釈剤等は医薬分野でよく知られており、例えば、その全体を本明細書に援用するRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)などに記載されている。
本発明の一態様において、本発明の医薬組成物は、癌細胞の運動能および癌の転移を顕著に抑制することができ、例えば、スクラッチアッセイによって測定される細胞運動能が、例えば、2分の1、3分の1以下まで顕著に抑制される。本発明の医薬組成物は、癌細胞の運動能を抑制する結果として、MYH9またはIRE1αの阻害物質を投与しない場合と比較して、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%以上、癌の転移の領域を減少させることができる。
本発明の医薬組成物が対象とする癌としては、MYH9またはIRE1αの転写体RNAが発現している限り限定されないが、例えば、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫などの肉腫、脳腫瘍、頭頚部癌、乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、十二指腸癌、虫垂癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、肝癌、膵癌、胆嚢癌、胆管癌、肛門癌、腎癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、外陰癌、膣癌、皮膚癌などの癌腫、さらには白血病や悪性リンパ腫などが挙げられ、これらの中でも、固形癌の癌が好ましく、膵癌、大腸癌、乳癌がより好ましく、トリプルネガティブ乳癌などの乳癌が特に好ましい。特にトリプルネガティブ乳癌は、MYH9タンパク質の発現も高く、非トリプルネガティブ乳癌よりも運動能が高い癌種となっており、本発明は、トリプルネガティブ乳癌のように、運動能の高くなっている癌種に特に好適に適用できる。また、本発明の医薬組成物が対象とする転移性癌としては、例えば、転移性肺癌が挙げられる。
癌細胞がMYH9およびIRE1αを発現しているか否かは、MYH9およびIRE1αの転写体RNAの発現を、遺伝子レベルで検出することにより判断できる。具体的には、遺伝子レベルでは、例えば、ノーザンブロッティング法、RNaseプロテクションアッセイ、RT−PCR、リアルタイムPCR等のPCR法、in situハイブリダイゼーション法、in vitro転写法等の任意の公知の遺伝子発現解析法により検出することができる。また、癌細胞がMYH9およびIRE1αを発現しているか否かは、MYH9およびIRE1αの発現を、タンパク質レベルで検出することにより判断できる。具体的には、例えば、免疫沈降法、EIA(enzyme immunoassay)(例えば、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)など)、RIA(radio immuno assay)(例えば、IRMA(immunoradiometric assay)、RAST(radioallergosorbent test)、RIST(radioimmunosorbent test)など)、ウエスタンブロッティング法、免疫組織化学法、免疫細胞化学法、フローサイトメトリー法により検出することができる。
本発明の一態様において、本発明の医薬組成物の投与対象となる細胞は、MYH9またはIRE1αの転写体RNAが発現している細胞である。MYH9およびIRE1αの転写体RNAは、一般的に、正常細胞で発現している。本発明の医薬組成物の投与対象となる細胞は、MYH9またはIRE1αのタンパク質を発現している癌細胞が好ましく、MYH9およびIRE1αのタンパク質に加えて、HSP47タンパク質を発現している細胞がより好ましい。MYH9またはIRE1α陽性トリプルネガティブ乳癌は、HSP47タンパク質も発現している。従って、本発明の医薬組成物は、MYH9および/またはIRE1αの阻害物質に加えて、HSP47の阻害物質を含んでいてもよい。本発明の医薬組成物は、MYH9、IRE1α、およびHSP47の遺伝子のいずれか1つの転写を阻害することで、これらの遺伝子の1以上を発現する癌種に対して転移抑制効果を発揮することができるし、あるいは、本発明の医薬組成物は、本明細書に記載のMYH9、IRE1α、およびHSP47の遺伝子の発現パターンとは発現パターンが異なる癌種に対しても、その発現パターンに合わせてMYH9の阻害物質、IRE1αの阻害物質、およびHSP47の阻害物質を併用することにより、転移抑制効果を効果的に発揮することができる。
本発明の別の態様において、本発明の医薬組成物の投与対象となる細胞は、ホルモン受容体(例えば、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体)陰性かつヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)陰性のトリプルネガティブヒト乳癌細胞である。トリプルネガティブ乳癌の診断は、生検により採取した腫瘍組織の病理検査(主に免疫組織染色)および遺伝子発現解析を必要とする。2つのホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)、およびHER2の病理検査と遺伝子発現解析を行い、これら全てにおいて陰性の場合、トリプルネガティブ乳癌であると診断する。
本発明の医薬組成物は、対象とする疾患を処置するのに有用な他の化学療法剤をさらに含んでもよい。化学療法剤としては、限定されずに、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、アルカロイド、ホルモン療法剤、白金錯体、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、および微小管作用薬などが挙げられる。
本発明の医薬組成物において、MYH9またはIRE1αの阻害物質を、他の化学療法剤と組み合わせて用いる場合、これらを単一の組成物に含めてもよく、複数の組成物に別々に含ませ、それらを別々に用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
本発明の種々の態様において、上記の医薬組成物は、種々の薬物送達担体に担持させて使用することもできる。かかる担体としては、限定されずに、例えば、ポリマーナノ粒子、ポリマーミセル、デンドリマー、リポソーム、ウイルスナノ粒子、カーボンナノチューブ等が挙げられる(Cho K. et al., Clin Cancer Res. 2008 Mar 1;14(5):1310-6など参照)。
本発明の医薬組成物は、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、たとえば、限定することなく、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、直腸、腫瘍内、動脈内、門脈内、骨髄内、歯髄内、舌下、口腔内、心室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内、肺内および子宮内等の経路で投与してもよく、各投与経路に適した剤形に製剤してもよい。かかる剤形および製剤方法は任意の公知のものを適宜採用することができる(たとえば、標準薬剤学、渡辺喜照ら編、南江堂、2003年、上記Remington's Pharmaceutical Sciencesなどを参照)。
例えば、経口投与に適した剤形としては、限定することなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、シロップ剤などが挙げられ、また非経口投与に適した剤形としては、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤などの注射剤が挙げられる。非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張性無菌溶液または懸濁液の形態であり得る。
3.本発明のキット
本発明は、本発明の癌転移抑制剤または医薬組成物に含まれ得る活性成分(例えば、MYH9またはIRE1αの阻害物質)を、単独でもしくは組み合わせて含む1個または2個以上の容器を含む転移抑制剤または医薬組成物の調製キット、ならびに、そのようなキットの形で提供される癌転移抑制剤または医薬組成物の必要構成要素にも関する。本発明のキットは、上記のほか、本発明の癌転移抑制剤または医薬組成物の調製方法や投与方法などが記載された指示、例えば説明書や、CD、DVD等の電子記録媒体等を含んでいてもよい。
4.本発明の癌の転移抑制方法
本発明の一態様は、MYH9またはIRE1αの阻害物質を投与することを特徴とする、癌の転移抑制方法に関する。本方法において、MYH9またはIRE1αの阻害物質を投与しない場合とMYH9またはIRE1αの阻害物質を投与する場合とを比較すると、スクラッチアッセイによって測定する場合、癌細胞の運動能が、例えば、2分の1、3分の1以下まで低下している。また、本方法において、癌細胞の運動能を抑制する結果として、HSP47の阻害物質を投与しない場合と比較して、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%以上、癌の転移の領域を減少させることができる。
本発明の方法において、投与される患者は、典型的には、癌治療を必要とする患者である。かかる患者としては、限定されずに、例えば、上記のMYH9またはIRE1αの発現に関連する癌を患っているか、これらの癌を有すると診断されたか、これらの癌を発症するリスクが高い患者である。したがって、本発明の方法は、本発明のMYH9またはIRE1αの阻害物質を含む癌転移抑制剤または医薬組成物による処置を必要としている患者を同定する工程、例えば、乳癌患者がトリプルネガティブ乳癌患者であるか否かを確認する工程をさらに含んでもよい。乳癌患者がトリプルネガティブ乳癌患者であるか否かを確認する工程は、生検により採取した腫瘍組織の病理検査(主に免疫組織染色)および遺伝子発現解析を行う工程、より詳細には、2つのホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)、およびHER2の病理検査と遺伝子発現解析を行い、これら全てにおいて陰性の場合、トリプルネガティブ乳癌を有すると決定する工程を含む。癌の具体例は、医薬組成物に関して上記したとおりである。
本発明の方法においては、本発明の医薬組成物を、対象とする癌を処置するのに有用な他の作用物質または処置方法と併用することもできる。本発明の方法は、処置方法として、放射線治療、粒子線治療などの物理療法、外科手術などの外科的治療、化学療法、及び分子標的治療などと併用することができる。本発明の方法は、他の作用物質として、上記のような化学療法剤を併用することができ、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、アルカロイド、ホルモン療法剤、白金錯体、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、および微小管作用薬などが挙げられる。本発明の方法は、このような構成を採用することにより、癌細胞除去、細胞死誘導、または細胞増殖抑制などの一般的な治療を行いながら、これらの治療と共に、癌の転移を抑制することができる。したがって、本発明の方法により、多面的に癌の治療を行うことができ、癌治療の効果を向上させることができる。
本発明の癌の転移抑制方法における有効量とは、例えば、癌細胞の運動能を低下させる量、または、癌の転移の領域を減少させる量である。また、投与による利益を超える悪影響が生じない量が好ましい。かかる量は、培養細胞などを用いたin vitro試験や、マウス、ラット、イヌまたはブタなどのモデル動物における試験により適宜決定することができ、このような試験法は当業者によく知られている。また、本発明の処置方法に用いる薬物の用量は当業者に公知であるか、または、上記の試験等により適宜決定することができる。
本明細書に記載される本発明の方法において投与する活性成分(例えば、MYH9またはIRE1αの阻害物質)の具体的な用量は、処置を要する対象に関する種々の条件、例えば、症状の重篤度、対象の一般健康状態、年齢、体重、対象の性別、食事、投与の時期および頻度、併用している医薬、治療への反応性、剤形、および治療に対するコンプライアンスなどを考慮して決定され得る。本発明の方法に用いる活性成分の用量は、好ましくは、ヒトの場合、1回あたり、かつ成人1kg体重あたりsiRNA分子に換算して例えば0.1mg〜1,000mgである。
投与経路としては、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、腫瘍内、直腸、動脈内、門脈内、骨髄内、歯髄内、舌下、口腔内、心室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内、肺内および子宮内等の経路が含まれる。
投与頻度は、用いる剤や組成物の性状や、上記のものを含む対象の条件によって異なるが、例えば、1日多数回(すなわち1日2、3、4回または5回以上)、1日1回、数日毎(すなわち2、3、4、5、6、7日毎など)、1週間毎、数週間毎(すなわち2、3、4週間毎など)であってもよい。
本明細書で用いる場合、用語「患者」は、任意の生物個体を意味するが、例えば、動物、哺乳動物、またはヒト個体である。本発明において、「患者」は、典型的には癌に罹患しているか、罹患するリスクを有する対象を意味する。
また、用語「処置」は、本明細書で用いる場合、疾患の治癒、一時的寛解または予防などを目的とする医学的に許容される全ての種類の予防的および/または治療的介入を包含するものとする。例えば、「処置」の用語は、疾患の進行の遅延または停止、病変の退縮または消失、発症の予防または再発の防止などを含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
今回本発明者により、本発明の癌転移抑制剤または医薬組成物が、MYH9またはIRE1α(配列番号1または2)の発現を抑制することにより、トリプルネガティブ乳癌の細胞運動能を抑制し、結果として、転移性肺癌を抑制できることが明らかになった。
したがって、本発明はまた、MYH9またはIRE1αの阻害物質を含む、上記作用を提供するための癌転移抑制剤および医薬組成物、上記作用を提供するための医薬の製造における使用、ならびに、MYH9またはIRE1αの阻害物質の上記作用を提供するための使用にも関する。
本発明を下記の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施例に限定されないものとする。
例1:細胞株の取得および培養
本願明細書中で使用した全てのヒト乳癌細胞株(MDA-MB-468, MDA-MB-231, MCF7, BT474)は、American Type Culture Collectionから購入した。これらの細胞を、10%胎児ウシ血清(FBS, Invitrogen Life Technologies)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM, Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)で培養した。
例2:MYH9 siRNAでトランスフェクトしたトリプルネガティブ細胞のインビトロ増殖
ヒトトリプルネガティブ乳癌細胞(MDA-MB-231およびMDA-MB-468)細胞を、Lipofectamine RNAiMAX (Invitrogen Life Technologies)を使用して、以下のsiRNAでトランスフェクトし、大気中37℃で5時間培養した。
対照siRNA(siControl, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)、
MYH9-A siRNA (siMYH9-A, センス鎖: 5’-GGGUAUCAAUGUGACCGAUtt-3’(配列番号3); アンチセンス鎖: 5’-AUCGGUCACAUUGAUACCCaa-3’(配列番号4))、
MYH9-B siRNA (siMYH9-B, センス鎖: 5’-CCACCAACCUCACAGAAGAtt-3’(配列番号5); アンチセンス鎖: 5’-UCUUCUGUGAGGUUGGUGGtg-3’(配列番号6))、または、
MYH9-C siRNA (siMYH9-C, センス鎖: 5’-CGGCAAGGUGGAUUACAAAtt-3’(配列番号7); アンチセンス鎖: 5’-UUUGUAAUCCACCUUGCCGgc-3’(配列番号8))
siRNAでのトランスフェクションの5時間後、細胞を、10%胎児ウシ血清(FBS, Invitrogen Life Technologies)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM, Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)で培養した。
トリプルネガティブヒト乳癌細胞(MDA-MB-231およびMDA-MB-468)におけるMYH9タンパク質の発現をReal time-PCRにて検出した。結果を図1Aに示す。試験群(siMYH9-A、siMYH9-B、siMYH9-C)におけるMYH9 mRNAの発現は、siControl群におけるMYH9 mRNAの発現と比較して、顕著に低かった。
また、これらの細胞を1×104 cells/wellで6-well plateに播種し、培養開始後5日間、細胞カウントにより細胞増殖能を測定した。結果を図1Bに示す。MDA-MB-231およびMDA-MB-468の両方の細胞について、試験群(siMYH9-A、siMYH9-B、siMYH9-C)では、siControl群と比較して、細胞増殖能が、有意に減少していた。
また、これらの細胞を1×105 cells/wellで35-mm dishに播種し、培養開始後24時間目に、スクラッチアッセイを用いて細胞運動能を測定した。結果を図2Aに示す。MDA-MB-231およびMDA-MB-468の両方の細胞について、試験群(siMYH9-A、siMYH9-B、siMYH9-C)では、siControl群と比較して、細胞運動能が、5分の1〜3分の1程度に有意に減少していた。
さらに、これらの細胞を2×104 cells/インサートの濃度で、トランズウェルチャンバー中で培養した。培養開始から24時間後、トランズウェルメンブレンを通過した細胞を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、ヘマトキシリンを用いて染色した。フィールド当たりの細胞数の結果を図2Bに示す。MDA-MB-231およびMDA-MB-468の両方の細胞について、試験群(siMYH9-A、siMYH9-B、siMYH9-C)では、siControl群と比較して、細胞浸潤能が、4分の1〜3分の1程度に有意に減少していた(図2B)。したがって、癌細胞におけるMYH9発現の抑制が、癌の転移抑制に有効であることが示唆された。
例3:IRE1α siRNAでトランスフェクトしたトリプルネガティブ細胞のインビトロ増殖
ヒトトリプルネガティブ乳癌細胞(MDA-MB-231およびMDA-MB-468)細胞を、Lipofectamine RNAiMAX (Invitrogen Life Technologies)を使用して、以下のsiRNAでトランスフェクトし、大気中37℃で5時間培養した。
対照siRNA(siControl, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)、
IRE1α-A siRNA (siIRE1α-A, センス鎖: 5’- GAAACUUCCUUUUACCAUCtt -3’(配列番号9); アンチセンス鎖: 5’- GAUGGUAAAAGGAAGUUUCgt -3’(配列番号10))、または、
IRE1α-B siRNA (siIRE1α-B, センス鎖: 5’- CAGGACAUCUGGUAUGUUAtt -3’(配列番号11); アンチセンス鎖: 5’- UAACAUACCAGAUGUCCUGtt -3’(配列番号12))
siRNAでのトランスフェクションの5時間後、細胞を、10%胎児ウシ血清(FBS, Invitrogen Life Technologies)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM, Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)で培養した。
トリプルネガティブヒト乳癌細胞(MDA-MB-231およびMDA-MB-468)におけるIRE1αタンパク質の発現をReal time-PCRにて検出した。結果を図3Aに示す。試験群(siIRE1α-A、siIRE1α-B)におけるIRE1α mRNAの発現は、siControl群におけるIRE1α mRNAの発現と比較して、顕著に低かった。
また、これらの細胞を1×104 cells/wellで6-well plateに播種し、培養開始後5日間、細胞カウントにより細胞増殖能を測定した。結果を図3Bに示す。MDA-MB-231およびMDA-MB-468の両方の細胞について、試験群(siIRE1α-A、siIRE1α-B)では、siControl群と比較して、細胞増殖能が、有意に減少していた。
また、これらの細胞を1×105 cells/wellで35-mm dishに播種し、培養開始後24時間目に、スクラッチアッセイを用いて細胞運動能を測定した。結果を図4Aに示す。MDA-MB-231およびMDA-MB-468の両方の細胞について、試験群(siIRE1α-A、siIRE1α-B)では、siControl群と比較して、細胞運動能が、5分の1〜3分の1程度に有意に減少していた。
さらに、これらの細胞を2×104 cells/インサートの濃度で、トランズウェルチャンバー中で培養した。培養開始から24時間後、トランズウェルメンブレンを通過した細胞を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、ヘマトキシリンを用いて染色した。フィールド当たりの細胞数の結果を図4Bに示す。MDA-MB-231およびMDA-MB-468の両方の細胞について、試験群(siIRE1α-A、siIRE1α-B)では、siControl群と比較して、細胞浸潤能が、4分の1〜2分の1程度に有意に減少していた(図4B)。したがって、癌細胞におけるIRE1α発現の抑制が、癌の転移抑制に有効であることが示唆された。
例4:MYH9はトリプルネガティブ乳癌で発現され、IRE1αはトリプルネガティブ乳癌および非トリプルネガティブ乳癌の両方で発現される
トリプルネガティブヒト乳癌細胞2種類(MDA-MB-231, MDA-MB-468)および非トリプルネガティブヒト乳癌細胞2種類(MCF7, BT474)におけるMYH9またはIRE1αタンパク質の発現をウエスタンブロット法にて検出した。結果を図5Aに示す。
トリプルネガティブヒト乳癌細胞2種類におけるMYH9タンパク質の発現は、非トリプルネガティブヒト乳癌細胞2種類における発現と比較して、顕著に高かった。詳細には、MYH9タンパク質は、非トリプルネガティブヒト乳癌細胞2種類において実質的に発現していなかった。しかしながら、トリプルネガティブヒト乳癌細胞2種類におけるIRE1αタンパク質の発現は、非トリプルネガティブヒト乳癌細胞2種類における発現と同程度であった。
また、MYH9発現の誘導が、MYH9ではなくHSP47が発現される非トリプルネガティブ乳癌細胞(MCF7)の転移能を増強するか否かを決定するために、MYH9を安定して発現する非トリプルネガティブ乳癌細胞株(Mock+MYH9-GFP)を作製した(図5B)。また、MYH9(別名NMIIA)を発現するプラスミドとして、pCMV-NMIIA-GFPプラスミド(Origene)を入手し、これを使用した。
また、HSP47の発現をノックアウトした(KO)MCF7細胞(HSP47 KO)を以下のとおり作製した(図5B)。HSP47 KO細胞は、信州大学の桜井博士より譲り受けた、Cas9配列およびgRNA配列についてのクローニング部位を含むpCG:SapIプラスミドを使用して作製した(Sakurai, T. et al. (2014) BMC Biotechnol. 14, 69、および、Sakurai, T. et al. (2016) Sci. Rep. 6, 20011を参照)。ヒトHSP47ゲノムのエキソン5について設計されたgRNA配列(5’-CAAGATGCGAGACGAGTTATAGG-3’(配列番号13))をpCG:SapIプラスミドに挿入した。pP2A-mCherry-N1プラスミド(Addgege)を使用して、P2A-mCherry cDNAのDNAフラグメントを増幅した。構築された標的化ベクターおよびpcDNA3.1(+)(Promega)をLipofectamine 2000(Thermo Fisher Scientific)を使用してMCF7細胞株に同時トランスフェクトした。処理した細胞を10%FBSおよびG418(1000μg/mL, Thermo Fisher Scientific)を補充したDMEM中で培養し、細胞クローンを選択した。細胞クローンから抽出したHSP47ゲノムDNAのDNA配列決定を実施して、HSP47遺伝子の下流部位へのP2A-mCherry遺伝子の挿入を確認した。単一細胞クローンは、DNA配列分析によって評価して、標的アレルにおける挿入欠失を検出した。
Mock群およびHSP47 KO群におけるMYH9、IRE1αおよびHSP47タンパク質の発現をウエスタンブロット法にて検出した。結果を図5Bに示す。
IRE1αタンパク質は、Mock群およびHSP47 KO群の両方で発現していた。MYH9は、これを発現するプラスミドを導入した細胞株でのみ発現していた。HSP47 KO細胞では、HSP47は発現がノックアウトされていた。

Claims (19)

  1. MYH9の阻害物質を含む、癌転移抑制剤。
  2. 癌が乳癌である、請求項1に記載の癌転移抑制剤。
  3. 癌が、ホルモン受容体陰性かつヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)陰性のトリプルネガティブ乳癌である、請求項2に記載の癌転移抑制剤。
  4. ホルモン受容体が、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体である、請求項3に記載の癌転移抑制剤。
  5. 癌細胞が、MYH9を発現するトリプルネガティブ乳癌細胞である、請求項3または4に記載の癌転移抑制剤。
  6. MYH9の阻害物質が、MYH9に対する干渉核酸、リボザイム、アンチセンス核酸、マイクロRNA、短鎖ヘアピンRNA、これらを発現するベクター、またはこれらで形質転換された細胞である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の癌転移抑制剤。
  7. IRE1αの阻害物質をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の癌転移抑制剤。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の癌転移抑制剤を含む医薬組成物。
  9. 癌を処置するための、請求項8に記載の医薬組成物。
  10. 転移性肺癌を処置するための、請求項9に記載の医薬組成物。
  11. 癌の転移を抑制するための医薬の製造における、MYH9の阻害物質の使用。
  12. 癌がトリプルネガティブ乳癌である、請求項11に記載の使用。
  13. 癌の転移の抑制における使用のための、MYH9の阻害物質を含む組成物。
  14. 癌がトリプルネガティブ乳癌である、請求項13に記載の組成物。
  15. 有効量のMYH9の阻害物質を癌患者に投与することを特徴とする、癌の転移抑制方法。
  16. 前記癌患者が乳癌患者であって、前記有効量のMYH9の阻害物質の投与前に、乳癌患者がトリプルネガティブ乳癌患者であるか否かを確認する工程を含む、請求項15に記載の癌の転移抑制方法。
  17. 前記有効量のMYH9の阻害物質の投与前に、前記癌患者の癌組織がMYH9を発現しているか否かを確認する工程を含む、請求項15または16に記載の癌の転移抑制方法。
  18. 外科的治療、放射線治療、粒子線治療、化学療法、及び分子標的治療からなる群より選択される治療と共に行われる、請求項15〜17のいずれか一項に記載の癌の転移抑制方法。
  19. 癌患者由来の癌細胞を、有効量のMYH9の阻害物質を用いてインビトロで処置することを含む、インビトロで癌の転移を抑制する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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