以下、本発明の物理量センサーの製造方法、物理量センサー、慣性計測装置、移動体測位装置、携帯側電子機器、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る物理量センサーおよび物理量センサーの製造方法について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。図2は、図1中のA-A線断面図である。図3は、図1の物理量センサーが有する素子部を示す平面図である。図4は、図1の物理量センサーに印加する電圧を示す図である。図5は、図3に示す素子部の振動モードを説明するための模式図である。図6は、図3に示す素子部が有するばねを示す平面図である。図7は、図6中のB-B線断面図である。図8ないし図10は、それぞれ、図6に示すばねの変形例を示す断面図である。図11ないし図14は、それぞれ、図6に示すばねの製造方法を説明するための断面図である。図15および図16は、それぞれ、図3に示す素子部が有する駆動ばねを示す平面図である。図17は、図3に示す素子部が有する検出ばねを示す平面図である。図18は、図3に示す素子部が有する接続ばねを示す平面図である。図19は、図1に示す物理量センサーの製造方法を示すフローチャートである。図20ないし図24は、ぞれぞれ、図1に示す物理量センサーの製造方法を説明するための断面図である。
各図には、互いに直交する3つの軸としてX軸、Y軸およびZ軸が図示されている。また、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」とも言う。また、各軸の矢印先端側を「プラス側」とも言い、反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z軸方向プラス側を「上」とも言い、Z軸方向マイナス側を「下」とも言う。
なお、本願明細書において、「直交」とは、90°で交わっている場合の他、90°から若干傾いた角度(例えば、90°±5°)で交わっている場合も含むものである。具体的には、X軸がYZ平面の法線方向に対して±5°程度傾いている場合、Y軸がXZ平面の法線方向に対して±5°程度傾いている場合、Z軸がXY平面の法線方向に対して±5°程度傾いている場合、についても「直交」に含まれる。
図1に示す物理量センサー1は、Y軸まわりの角速度ωyを検出することのできる角速度センサーである。物理量センサー1は、基板2と、蓋体3と、素子部4と、を有している。
図1に示すように、基板2は、矩形の平面視形状を有している。また、基板2は、上面に開放する凹部21を有している。凹部21は、素子部4と基板2との接触を防止(抑制)するための逃げ部として機能する。また、基板2は、凹部21の底面から突出する複数のマウント22(221、222、224、225)を有している。そして、これらマウント22の上面に素子部4が接合されている。これにより、基板2との接触が防止された状態で、基板2に素子部4を固定することができる。また、基板2は、上面に開放する溝部23、24、25、26、27、28を有している。
基板2としては、例えば、アルカリ金属イオン(ナトリウムイオン:Na+)を含むガラス材料、具体的にはテンパックスガラス(登録商標)、パイレックスガラス(登録商標)のような硼珪酸ガラスで構成されたガラス基板を用いることができる。ただし、基板2の構成材料としては、特に限定されず、シリコン基板、セラミックス基板等を用いてもよい。
図1に示すように、凹部21の底面には固定検出電極81、82が配置されている。また、溝部23、24、25、26、27、28には、配線73、74、75、76、77、78が配置されている。配線73、74、77、78は、それぞれ、素子部4と電気的に接続されており、配線75、76は、固定検出電極81、82と電気的に接続されている。また、配線73、74、75、76、77、78の一端部は、それぞれ、蓋体3の外側に露出し、外部装置との電気的な接続を行う電極パッドPとして機能する。
図1に示すように、蓋体3は、矩形の平面視形状を有している。また、図2に示すように、蓋体3は、下面に開放する凹部31を有している。蓋体3は、凹部31内に素子部4を収納するようにして、基板2の上面に接合されている。そして、蓋体3および基板2によって、その内側に、素子部4を収納する収納空間Sが形成されている。
また、図2に示すように、蓋体3は、収納空間Sの内外を連通する連通孔32を有している。そのため、連通孔32を介して、収納空間Sを所望の雰囲気に置換することができる。また、連通孔32内には封止部材33が配置され、封止部材33によって連通孔32が気密封止されている。なお、収納空間Sは、減圧状態、特に真空状態であることが好ましい。これにより、粘性抵抗が減り、素子部4を効率的に振動させることができる。
このような蓋体3としては、例えば、シリコン基板を用いることができる。ただし、蓋体3としては、特に限定されず、例えば、ガラス基板やセラミックス基板を用いてもよい。また、基板2と蓋体3との接合方法としては、特に限定されず、基板2や蓋体3の材料によって適宜選択すればよいが、例えば、陽極接合、プラズマ照射によって活性化させた接合面同士を接合させる活性化接合、ガラスフリット等の接合材による接合、基板2の上面および蓋体3の下面に成膜した金属膜同士を接合する拡散接合等が挙げられる。本実施形態では、ガラスフリット39(低融点ガラス)を介して基板2と蓋体3とが接合されている。
素子部4は、収納空間Sに配置されており、マウント22の上面に接合されている。素子部4は、例えば、リン(P)、ボロン(B)、砒素(As)等の不純物がドープされた導電性のシリコン基板をドライエッチング法(シリコンディープエッチング。特にボッシュ法)によってパターニングすることで形成することができる。以下、素子部4の構成を図3に基づいて説明する。なお、以下では、Z軸方向からの平面視で、素子部4の中心Oと交わり、Y軸方向に延びる直線を「仮想直線α」とも言う。また、図3では、説明の便宜上、素子部4の詳細までは図示していない。素子部4の詳細については、図15~図18に基づいて、別途説明する。
図3に示すように、素子部4の形状は、仮想直線αに対して対称である。また、素子部4は、仮想直線αの両側に配置された2つの駆動部41A、41Bを有している。駆動部41Aは、櫛歯状の可動駆動電極411Aと、櫛歯状をなし可動駆動電極411Aと噛み合って配置された固定駆動電極412Aと、を有している。同様に、駆動部41Bは、櫛歯状の可動駆動電極411Bと、櫛歯状をなし可動駆動電極411Bと噛み合って配置された固定駆動電極412Bと、を有している。
また、固定駆動電極412A、412Bは、それぞれ、マウント221の上面に接合され、基板2に固定されている。また、可動駆動電極411A、411Bは、それぞれ、配線73と電気的に接続され、固定駆動電極412A、412Bは、それぞれ、配線74と電気的に接続されている。
また、素子部4は、駆動部41Aの周囲に配置された4つの固定部42Aと、駆動部41Bの周囲に配置された4つの固定部42Bと、を有している。そして、各固定部42A、42Bは、マウント222の上面に接合され、基板2に固定されている。
また、素子部4は、各固定部42Aと可動駆動電極411Aとを連結する4つの駆動ばね43Aと、各固定部42Bと可動駆動電極411Bとを連結する4つの駆動ばね43Bと、を有している。各駆動ばね43AがX軸方向に弾性変形することで可動駆動電極411AのX軸方向への変位が許容され、各駆動ばね43BがX軸方向に弾性変形することで可動駆動電極411BのX軸方向への変位が許容される。
可動駆動電極411A、411Bを振動させるには、例えば、配線73を介して図4に示す電圧V1を可動駆動電極411A、411Bに印加し、配線74を介して図4に示す電圧V2を固定駆動電極412A、412Bに印加する。電圧V1は、GND基準(例えば、0.9V程度の電位)よりも大きい15V程度の定電圧であり、電圧V2は、GND基準を中心とした矩形波である。
これにより、可動駆動電極411Aと固定駆動電極412Aとの間および可動駆動電極411Bと固定駆動電極412Bとの間にそれぞれ静電引力が発生し、可動駆動電極411Aが駆動ばね43AをX軸方向に弾性変形させつつX軸方向に振動すると共に、可動駆動電極411Bが駆動ばね43BをX軸方向に弾性変形させつつX軸方向に振動する。前述したように、駆動部41A、41Bは、仮想直線αに対して対称的に配置されているため、可動駆動電極411A、411Bは、互いに接近、離間するようにX軸方向に逆相で振動する。そのため、可動駆動電極411A、411Bの振動がキャンセルされ、振動漏れを低減することができる。以下では、この振動モードを「駆動振動モード」とも言う。
なお、駆動振動モードを励振することができれば、電圧V1、V2としては、特に限定されない。また、本実施形態の物理量センサー1では、静電引力によって駆動振動モードを励振させる静電駆動方式となっているが、励振させる方式は、特に限定されず、例えば、圧電駆動方式、磁場のローレンツ力を利用した電磁駆動方式等を適用することもできる。
また、素子部4は、駆動部41Aと仮想直線αとの間に位置する検出部44Aと、駆動部41Bと仮想直線αとの間に位置する検出部44Bと、を有している。検出部44Aは、板状の可動検出電極441Aで構成されている。同様に、検出部44Bは、板状の可動検出電極441Bで構成されている。また、可動検出電極441Aは、固定検出電極81と対向して配置され、可動検出電極441Bは、固定検出電極82と対向して配置されている。
可動検出電極441A、441Bは、それぞれ、配線73と電気的に接続され、固定検出電極81は、配線75と電気的に接続され、固定検出電極82は、配線76と電気的に接続されている。そして、物理量センサー1の駆動時には、可動検出電極441Aと固定検出電極81との間に静電容量Caが形成され、可動検出電極441Bと固定検出電極82との間に静電容量Cbが形成される。
また、素子部4は、検出部44A、44Bの間に配置された2つの固定部451、452を有している。固定部451、452は、それぞれ、マウント224の上面に接合され、基板2に固定されている。なお、本実施形態では、固定部451、452を介して、可動駆動電極411A、411Bや可動検出電極441A、441Bが配線73と電気的に接続されている。
また、素子部4は、可動検出電極441Aと固定部42A、451、452とを連結する4つの検出ばね46Aと、可動検出電極441Bと固定部42B、451、452とを連結する4つの検出ばね46Bと、を有している。各検出ばね46AがX軸方向に弾性変形することで可動検出電極441AのX軸方向への変位が許容され、Z軸方向に弾性変形することで可動検出電極441AのZ軸方向への変位が許容される。同様に、各検出ばね46BがX軸方向に弾性変形することで可動検出電極441BのX軸方向への変位が許容され、Z軸方向に弾性変形することで可動検出電極441BのZ軸方向への変位が許容される。
また、素子部4は、可動駆動電極411Aと可動検出電極441Aとの間に位置し、これらを接続する梁47Aと、可動駆動電極411Bと可動検出電極441Bとの間に位置し、これらを接続する梁47Bと、を有している。そのため、図5に示すように、駆動振動モードでは、可動検出電極441A、441Bも、可動駆動電極411A、411Bと一体となってX軸方向に逆相で振動する。言い換えると、駆動振動モードでは、可動駆動電極411A、可動検出電極441Aおよび梁47Aの集合体である可動体4A(振動体)と、可動駆動電極411B、可動検出電極441Bおよび梁47Bの集合体である可動体4B(振動体)と、がX軸方向に逆相で振動する。
このような駆動振動モードで駆動させている最中に物理量センサー1に角速度ωyが加わると、可動検出電極441A、441Bは、コリオリの力によって、図5中の矢印Aに示すように、検出ばね46A、46BをZ軸方向に弾性変形させつつZ軸方向に逆相で振動する。なお、以下では、この振動モードを「検出振動モード」とも言う。検出振動モードでは、可動検出電極441A、441BがZ軸方向に振動するため、可動検出電極441Aと固定検出電極81とのギャップおよび可動検出電極441Bと固定検出電極82とのギャップがそれぞれ変化し、それに伴って静電容量Ca、Cbがそれぞれ変化する。そのため、静電容量Ca、Cbの変化に基づいて、角速度ωyを求めることができる。
検出振動モードでは、静電容量Caが大きくなると静電容量Cbが小さくなり、反対に、静電容量Caが小さくなると静電容量Cbが大きくなる。そのため、配線75から出力される検出信号(静電容量Caの大きさに応じた信号)と、配線76から出力される検出信号(静電容量Cbの大きさに応じた信号)とを差動演算(減算処理:Ca-Cb)することで、ノイズをキャンセルすることができ、より精度よく角速度ωyを検出することができる。
また、図3に示すように、素子部4は、その中央部(検出部44A、44Bの間)に位置するフレーム48を有している。フレーム48は、「H」形状をなし、Y軸方向マイナス側に位置する欠損部481(凹部)と、Y軸方向プラス側に位置する欠損部482(凹部)と、を有している。そして、欠損部481の内外に亘って固定部451が配置されており、欠損部482の内外に亘って固定部452が配置されている。これにより、固定部451、452をそれぞれY軸方向に長く形成することができ、その分、基板2との接合面積が増え、基板2と素子部4との接合強度が増す。
また、素子部4は、固定部451とフレーム48との間に位置し、これらを接続するフレームばね488と、固定部452とフレーム48との間に位置し、これらを接続するフレームばね489と、を有している。フレームばね488、489は、それぞれ、Y軸方向に延在しており、X軸方向に弾性変形可能となっている。
また、素子部4は、フレーム48と可動検出電極441Aとの間に位置し、これらを接続する接続ばね40Aと、フレーム48と可動検出電極441Bとの間に位置し、これらを接続する接続ばね40Bと、を有している。接続ばね40Aは、検出ばね46Aと共に可動検出電極441Aを支持し、接続ばね40Bは、検出ばね46Bと共に可動検出電極441Bを支持している。これにより、可動検出電極441A、441Bをより安定した姿勢で支持することができ、可動検出電極441A、441Bの不要振動(スプリアス)を低減することができる。
また、素子部4は、駆動振動モードでの可動検出電極441A、441Bの振動状態を検出するためのモニター部49A、49Bを有している。モニター部49Aは、可動検出電極441Aに配置された櫛歯状の可動モニター電極491Aと、櫛歯状をなし可動モニター電極491Aと噛み合って配置された固定モニター電極492A、493Aと、を有している。同様に、モニター部49Bは、可動検出電極441Bに配置された櫛歯状の可動モニター電極491Bと、櫛歯状をなし可動モニター電極491Bと噛み合って配置された固定モニター電極492B、493Bと、を有している。また、固定モニター電極492A、493A、492B、493Bは、それぞれ、マウント225の上面に接合され、基板2に固定されている。
モニター部49Aでは、可動モニター電極491AのX軸方向プラス側に固定モニター電極492Aが位置し、X軸方向マイナス側に固定モニター電極493Aが位置している。一方、モニター部49Bでは、可動モニター電極491BのX軸方向マイナス側に固定モニター電極492Bが位置し、X軸方向プラス側に固定モニター電極493Bが位置している。
可動モニター電極491A、491Bは、それぞれ、配線73と電気的に接続され、固定モニター電極492A、492Bは、配線77と電気的に接続され、固定モニター電極493A、493Bは、配線78と電気的に接続されている。そして、物理量センサー1の駆動時には、可動モニター電極491Aと固定モニター電極492Aとの間および可動モニター電極491Bと固定モニター電極492Bとの間に静電容量Ccが形成され、可動モニター電極491Aと固定モニター電極493Aとの間および可動モニター電極491Bと固定モニター電極493Bとの間に静電容量Cdが形成されている。
前述したように、駆動振動モードでは、可動検出電極441A、441BがX軸方向に振動するため、可動モニター電極491Aと固定モニター電極492A、493Aとのギャップおよび可動モニター電極491Bと固定モニター電極492B、493Bとのギャップがそれぞれ変化し、それに伴って静電容量Cc、Cdがそれぞれ変化する。そのため、静電容量Cc、Cdの変化に基づいて、可動検出電極441A、441Bの振動状態を検出することができる。
以上、素子部4の構成について一通り説明した。次に、物理量センサー1の特徴の1つである駆動ばね43A、43B、検出ばね46A、46Bおよび接続ばね40A、40Bの構成について詳細に説明する。なお、駆動ばね43A、43B、検出ばね46A、46Bおよび接続ばね40A、40Bは、それぞれ、「アーム51と並んで保護梁53が設けられている」という特徴的な構造が同じであるため、以下では、これらを「ばね5」として説明する。
図6に示すように、ばね5は、Y軸方向に往復する蛇行形状となっている。具体的には、ばね5は、Y軸方向に延在しX軸方向に沿って並んで配置された2本のアーム51(511、512)と、アーム511、512の一端部同士を接続する接続部52と、を有している。そして、アーム511の他端部が固定部58に接続され、アーム512の他端部が振動体59に接続されている。このような構成のばね5では、アーム511、512がそれぞれX軸方向に弾性変形することで、固定部58に対して振動体59がX軸方向に変位する。なお、アーム51の数としては、特に限定されず、1本でもよいし、3本以上であってもよい。
隣り合うアーム511、512の離間距離D3としては、特に限定されないが、例えば、5μm以上、20μm以下であることが好ましい。これにより、ばね5の過度な大型化を抑制することができる。また、アーム511、512の変形を許容するスペースを十分に確保することができ、アーム511、512同士の接触を効果的に抑制することができる。
また、図7に示すように、アーム51は、等脚台形の横断面形状を有している。すなわち、アーム51の横断面形状は、上辺51a(Z軸方向プラス側の辺)と下辺51b(Z軸方向プラス側の辺)の中点を共に通る直線Lに対して対称的な形状となっている。これにより、アーム51が実質的にZ軸方向の振動成分を含まず、駆動振動モードの際の不要振動、すなわち可動検出電極441AのZ軸方向への振動を抑制することができる。ここで、等脚台形と言っても、通常は、例えば、アーム51の高さTが50μm程度であって、上辺51aの幅W1が2.0μm~2.5μm程度である場合、下辺51bの幅W2が2.5μm~3.0μm程度と、ほぼ矩形(長方形)と見做せる程度の等脚台形となる(説明の便宜上、図においては、誇張して示している)。
なお、アーム51の横断面形状としては、特に限定されず、例えば、図8に示すように、本実施形態と上下逆転した等脚台形であってもよし、図9に示すように、上側から下側へ幅が漸増するテーパー部51’と、このテーパー部51’の下側に位置し、上側から下側へ幅が漸減するテーパー部51”と、を有する樽形であってもよいし、図10に示すように、矩形であってもよい。アーム51の横断面形状は、ドライエッチングの環境に影響を受け易く、上述した形状のいずれかとなる場合が多い。
また、図6に示すように、ばね5は、さらに、各アーム51のX軸方向の一方側に位置する保護梁53を有している。具体的には、アーム511のX軸方向プラス側であって、アーム511、512の間には保護梁531(53)が配置されており、アーム512のX軸方向プラス側には保護梁532(53)が配置されている。保護梁531、532は、それぞれ、アーム511、512と平行となるように、Y軸方向に沿って延在している。なお、保護梁531、532の幅(X軸方向の長さ)としては、特に限定されないが、例えば、2μm以上、5μm以下とすることができる。これにより、保護梁531、532の機械的強度を十分に確保しつつ、より細い保護梁531、532となる。また、保護梁531、532は、それぞれ、その一端部において接続部52に接続されている。
このような保護梁53を設けることで、アーム51が過度に弾性変形した際に、アーム51が保護梁53を介して他の部分にぶつかるため、保護梁53によって衝撃が吸収、緩和され、アーム51に過度な衝撃が加わってしまうことを低減することができる。そのため、アーム51の破損を効果的に抑制することができる。また、アーム51が保護梁53と接触することで、それ以上のアーム51の弾性変形が抑制され、アーム51の過度な弾性変形を抑制することもできる。
特に、本実施形態では、保護梁531が隣り合うアーム511、512の間に配置されている。そのため、アーム511、512が過度に変形した際は、保護梁531を介して互いに接触することになり、アーム511、512が直接接触する場合と比べて、その衝撃を小さく抑えることができる。アーム511、512は、機械的強度が低く、破損し易い箇所であるため、保護梁531を配置して、アーム511、512が直接接触することを防止することで、機械的強度の高いばね5となる。
ここで、アーム511と保護梁531との離間距離D1と、アーム512と保護梁531との離間距離D2と、の関係としては、特に限定されないが、D1≠D2であることが好ましく、D1<D2であることが好ましい。D1≠D2とすることで、前述したようにアーム511、512が過度に弾性変形した際に、アーム511、512が保護梁531の両側から同時に接触することを抑制することができる。そのため、アーム511との接触時およびアーム512との接触時に保護梁531がそれぞれ弾性変形し、接触時の衝撃を効果的に吸収、緩和することができる。
また、前述したように、保護梁531、532は、それぞれ、接続部52に接続されている。接続部52は、アーム511、512と比較して、ばね5の特性に影響を与え難い箇所である。そのため、接続部52に保護梁531、532を接続することで、ばね5の特性の変動を効果的に抑制することができる。また、保護梁531、532を含めたばね5全体の設計が、例えば、アーム51に保護梁53が接続されている場合と比べて容易となる。
このような保護梁53は、ばね5の製造工程において、次のような効果を発揮することもできる。なお、説明の便宜上、上述した保護梁53の効果を「構造体上の効果」とも言い、以下に説明する保護梁53の効果を「製造方法上の効果」とも言う。
まず、ばね5の製造方法について簡単に説明する。ばね5は、図11に示すように、シリコン基板50の上面にハードマスクHMを形成し、図12に示すように、このハードマスクHMを介してシリコン基板50をドライエッチングすることで形成することができる。ドライエッチングとしては、反応性プラズマガスを用いたエッチングプロセスとデポジション(堆積)プロセスとを組み合わせたドライボッシュ(Bosch)法を用いることができる。
反応性プラズマガスによるシリコン基板50の加工は、シリコン基板50を配置したチャンバー内にエッチングガスを導入し、反応性プラズマを発生させるが、反応性プラズマは、シリコン基板50に対して同心円状の密度分布を持つため、チャンバー内での位置によってその入射角度が異なる。したがって、シリコン基板50内で垂直加工精度に分布が生じる。具体的には、チャンバーの中心部では、シリコン基板50に対してほぼ垂直にエッチングが進むため、アーム51の横断面形状は、等脚台形となる。これに対して、チャンバーの縁部では、シリコン基板50に対して傾斜した方向にエッチングが進むため、アーム51の横断面形状は、等脚台形から傾いた台形となる。この傾き度合は、チャンバーの中心部から縁部に向かうほど大きくなる傾向にある。
アーム51の横断面形状が等脚台形から傾いてしまうと、アーム51がX軸方向の振動成分に加えてZ軸方向の振動成分を含んでしまうため、素子部4を駆動振動モードで振動させた際に、可動検出電極441A、441BがZ軸方向に振動してしまう。すると、物理量センサー1に角速度ωyが加わっていないにも関わらず、静電容量Ca、Cbがそれぞれ変化してしまう。そのため、クアドラチャ信号(ノイズ信号)が生じ、角速度ωyの検出精度が悪化してしまう。なお、以下では、駆動振動モードにおける可動検出電極441A、441BのX軸方向以外の振動(特に、Z軸方向の振動)をクアドラチャとも言う。
物理量センサー1は、このような問題(クアドラチャの発生)を解消するために、アーム51の隣に保護梁53を配置している。すなわち、保護梁53は、アーム51の横断面形状が等脚台形から崩れてしまうことを抑制する機能を有している。ここで、ドライエッチングでは、隣り合う構造体(ドライエッチング後に残る部分)同士の離間距離が小さい程、側面の傾きが大きくなる傾向にある。これは、隣り合う構造体同士の離間距離が小さい程、エッチングが進むに連れて反応性ガスが隣り合う構造体の間に入り込み難くなってエッチングレートが低下するためと思われる。このような性質を利用すれば、アーム51と保護梁53との離間距離D1を調整することで、アーム51の保護梁53側の側面51cの傾斜角θ1を調整することができる。そのため、ドライエッチングの結果、横断面形状が等脚台形から傾いてしまうと想定されるアーム51について、その隣に保護梁53を配置し、かつ、想定される傾きの度合いに応じてアーム51と保護梁53との離間距離D1を調整することで、ドライエッチング後のアーム51の横断面形状をほぼ等脚台形とすることができる。
具体的には、図13に示すように、保護梁53を配置しなければアーム51の横断面形状が等脚台形から傾いてしまうところ、図14に示すように、アーム51の隣に保護梁53を所定の離間距離D1で配置して、アーム51の保護梁53側の側面51cの傾斜角θ1を、反対側の側面51dの傾斜角θ2と等しくすることで、アーム51の横断面形状を等脚台形とすることができる。そのため、クアドラチャが効果的に抑制された物理量センサー1が得られる。なお、離間距離D1としては、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上、2μm以下程度であることが好ましい。これにより、傾斜角θ1を調整し易くなる。離間距離D1が0.1μm未満であると、反応性ガスが侵入し難くなり過ぎてしまい、シリコン基板50の厚さ等によっては、エッチング不良等が生じるおそれがある。反対に、2μmを超えると、傾斜角θ1の調整効果が飽和してしまい(すなわち、離間距離D1をこれ以上大きくしても傾斜角θ1はほとんど変わらず)、単にばね5の大型化を招くだけのおそれがある。
なお、前述したように、チャンバー内のどの位置にあるかで、アーム51の横断面形状の等脚台形からの傾き方が異なるため、例えば、所定の領域(例えば、チャンバー内の中央部、縁部)毎、アーム51毎に離間距離D1を設定して保護梁53を配置することが好ましい。また、例えば、チャンバー内の中央部に位置するアーム51では、横断面形状の等脚台形からのずれが生じ難いため、このようなアーム51の隣には保護梁53を配置しなくてもよい。
以上、保護梁53の「製造方法上の効果」について説明した。なお、保護梁53は、「構造体上の効果」および「製造方法上の効果」を共に発揮することができるのが好ましいが、これらのうちの一方だけを発揮することができるものであってもよい。
次に、このようなばね5を適用した本実施形態の駆動ばね43A、43B、検出ばね46A、46Bおよび接続ばね40A、40Bについて説明する。
まず、4つの駆動ばね43Aを代表して、図3中の駆動ばね43A’について説明する。図15に示すように、駆動ばね43A’は、Y軸方向に延在し、X軸方向に並んで配置された2本のアーム511、512と、これら2本のアーム511、512のY軸方向プラス側の端部同士を接続する接続部521と、アーム512のY軸方向マイナス側の端部と可動駆動電極411Aとを接続する接続部522と、を有している。
また、駆動ばね43A’は、アーム511のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁531と、アーム512のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁532と、を有している。そして、保護梁531は、そのY軸方向プラス側の端部が接続部521に接続され、保護梁532は、そのY軸方向マイナス側の端部が接続部522に接続されている。このような構成によれば、保護梁531によってアーム511の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁532によってアーム512の横断面形状のずれを抑制できる。
次に、4つの駆動ばね43Bを代表して、図3中の駆動ばね43B’について説明する。図16に示すように、駆動ばね43B’は、Y軸方向に延在し、X軸方向に並んで配置された2本のアーム511、512と、これら2本のアーム511、512のY軸方向プラス側の端部同士を接続する接続部521と、アーム512のY軸方向マイナス側の端部と可動駆動電極411Bとを接続する接続部522と、を有している。
また、駆動ばね43B’は、アーム511のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁531と、アーム512のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁532と、を有している。そして、保護梁531は、そのY軸方向マイナス側の端部が固定部42Bに接続され、保護梁532は、そのY軸方向プラス側の端部が接続部521に接続されている。このような構成によれば、保護梁531によってアーム511の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁532によってアーム512の横断面形状のずれを抑制できる。
次に、4つの検出ばね46Aを代表して、図3中の検出ばね46A’について説明する。図17に示すように、検出ばね46A’は、Y軸方向に延在し、X軸方向に並んで配置された4本のアーム511、512、513、514と、アーム511のY軸方向マイナス側の端部と固定部451とを接続する接続部521と、アーム511、512のY軸方向プラス側の端部同士を接続する接続部522と、アーム512、513のY軸方向マイナス側の端部同士を接続する接続部523と、アーム513、514のY軸方向プラス側の端部同士を接続する接続部524と、アーム514のY軸方向マイナス側の端部と可動検出電極441Aとを接続するアーム55と、を有している。
また、検出ばね46A’は、アーム511のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁531と、アーム512のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁532と、アーム513のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁533と、アーム514のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁534と、を有している。そして、保護梁531は、そのY軸方向プラス側の端部が接続部522に接続され、保護梁532は、そのY軸方向マイナス側の端部が接続部523に接続され、保護梁533、534は、それぞれ、そのY軸方向プラス側の端部が接続部524に接続されている。
このような構成によれば、保護梁531によってアーム511の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁532によってアーム512の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁533によってアーム513の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁534によってアーム514の横断面形状のずれを抑制できる。
次に、4つの検出ばね46Bを代表して、図3中の検出ばね46B’について説明する。図17に示すように、検出ばね46B’は、Y軸方向に延在し、X軸方向に並んで配置された4本のアーム511、512、513、514と、アーム511のY軸方向マイナス側の端部と固定部451とを接続する接続部521と、アーム511、512のY軸方向プラス側の端部同士を接続する接続部522と、アーム512、513のY軸方向マイナス側の端部同士を接続する接続部523と、アーム513、514のY軸方向プラス側の端部同士を接続する接続部524と、アーム514のY軸方向マイナス側の端部と可動検出電極441Bとを接続するアーム55と、を有している。
また、検出ばね46B’は、アーム511のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁531と、アーム512のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁532と、アーム513のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁533と、アーム514のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁534と、を有している。そして、保護梁531は、そのY軸方向マイナス側の端部が接続部521に接続され、保護梁532は、そのY軸方向プラス側の端部が接続部522に接続され、保護梁533は、そのY軸方向マイナス側の端部が接続部523に接続され、保護梁534は、そのY軸方向プラス側の端部が接続部524に接続されている。
このような構成によれば、保護梁531によってアーム511の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁532によってアーム512の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁533によってアーム513の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁534によってアーム514の横断面形状のずれを抑制できる。
次に、接続ばね40Aについて説明する。図18に示すように、接続ばね40Aは、第1部分40A’と第2部分40A”とを有している。第1部分40A’は、Y軸方向に延在し、X軸方向に並んで配置された3本のアーム511、512、513と、アーム511のY軸方向プラス側の端部とフレーム48とを接続する接続部521と、アーム511、512のY軸方向マイナス側の端部同士を接続する接続部522と、アーム512、513のY軸方向プラス側の端部同士を接続する接続部523と、を有している。また、第2部分40A”は、Y軸方向に延在し、X軸方向に並んで配置された3本のアーム514、515、516と、アーム514のY軸方向マイナス側の端部とフレーム48とを接続する接続部524と、アーム514、515のY軸方向プラス側の端部同士を接続する接続部525と、アーム515、516のY軸方向マイナス側の端部同士を接続する接続部526と、を有している。また、接続ばね40Aは、アーム513、516の先端部同士と可動検出電極441Aとを接続する接続部57を有している。
また、第1部分40A’は、アーム511のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁531と、アーム512のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁532と、アーム513のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁533と、を有している。そして、保護梁531は、そのY軸方向マイナス側の端部が接続部522に接続され、保護梁532、533は、それぞれ、そのY軸方向プラス側の端部が接続部523に接続されている。
また、第2部分40A”は、アーム514のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁534と、アーム515のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁535と、アーム516のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁536と、を有している。そして、保護梁534は、そのY軸方向プラス側の端部が接続部525に接続され、保護梁535、536は、それぞれ、そのY軸方向マイナス側の端部が接続部526に接続されている。
このような構成によれば、保護梁531によってアーム511の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁532によってアーム512の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁533によってアーム513の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁534によってアーム514の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁535によってアーム515の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁536によってアーム516の横断面形状のずれを抑制できる。
次に、接続ばね40Bについて説明する。図18に示すように、接続ばね40Bは、第1部分40B’と第2部分40B”とを有している。第1部分40B’は、Y軸方向に延在し、X軸方向に並んで配置された3本のアーム511、512、513と、アーム511のY軸方向プラス側の端部とフレーム48とを接続する接続部521と、アーム511、512のY軸方向マイナス側の端部同士を接続する接続部522と、アーム512、513のY軸方向プラス側の端部同士を接続する接続部523と、を有している。また、第2部分40B”は、Y軸方向に延在し、X軸方向に並んで配置された3本のアーム514、515、516と、アーム514のY軸方向マイナス側の端部とフレーム48とを接続する接続部524と、アーム514、515のY軸方向プラス側の端部同士を接続する接続部525と、アーム515、516のY軸方向マイナス側の端部同士を接続する接続部526と、を有している。また、接続ばね40Bは、アーム513、516の先端部同士と可動検出電極441Bとを接続する接続部57を有している。
また、第1部分40B’は、アーム511のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁531と、アーム512のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁532と、アーム513のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁533と、を有している。そして、保護梁531は、そのY軸方向プラス側の端部が接続部521に接続され、保護梁532は、そのY軸方向マイナス側の端部が接続部522に接続され、保護梁533は、そのY軸方向プラス側の端部が接続部523に接続されている。
また、第2部分40B”は、アーム514のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁534と、アーム515のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁535と、アーム516のX軸方向プラス側に隣り合って配置された保護梁536と、を有している。そして、保護梁534は、そのY軸方向マイナス側の端部が接続部524に接続され、保護梁535は、そのY軸方向プラス側の端部が接続部525に接続され、保護梁536は、そのY軸方向マイナス側の端部が接続部526に接続されている。
このような構成によれば、保護梁531によってアーム511の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁532によってアーム512の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁533によってアーム513の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁534によってアーム514の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁535によってアーム515の横断面形状のずれを抑制でき、保護梁536によってアーム516の横断面形状のずれを抑制できる。
以上、ばね5を適用した本実施形態の駆動ばね43A、43B、検出ばね46A、46Bおよび接続ばね40A、40Bについて説明したが、これらの構成としては、それぞれ、特に限定されず、少なくとも、1本のアーム51と、それに対応した1本の保護梁53と、を有していればよい。また、駆動ばね43A、43B、検出ばね46A、46Bおよび接続ばね40A、40Bの少なくとも1つが保護梁53を有さない構成であってもよい。なお、横断面形状のずれがクアドラチャに最も影響するのが検出ばね46A、46Bであり、次に影響するのが駆動ばね43A、43Bであり、最も影響し難いのが接続ばね40A、40Bである。そのため、例えば、検出ばね46A、46Bおよび駆動ばね43A、43Bについては、保護梁53を有するばね5の構成を適用し、接続ばね40A、40Bについては、保護梁53を有しない構成としてもよい。
以上、物理量センサー1について説明した。このような物理量センサー1は、可動体4A、4B(振動体)と、可動体4A、4BをX軸方向(第1方向)に振動可能に支持するばね5(駆動ばね43A、43B、検出ばね46A、46Aおよび接続ばね40A、40B)と、を有している。また、ばね5は、X軸方向(第1方向)と直交するY軸方向(第2方向)に沿って延在するアーム51と、このアーム51に対してX軸方向の一方側に隣り合って配置され、Y軸方向に沿って延在する保護梁53と、を有している。このような構成によれば、前述したように、保護梁53によってアーム51の横断面形状を制御することができ、クアドラチャが効果的に抑制された物理量センサー1を得られる。また、保護梁53によって、アーム51が他の部分に直接接触することを防止することができ、アーム51の破損を効果的に抑制することもできる。なお、本実施形態では、対象のアーム51に対してX軸方向プラス側に保護梁53が位置しているが、これに限定されず、アーム51に対してX軸方向マイナス側に保護梁53が位置していてもよく、ドライエッチングの条件等に応じて、適宜選択すればよい。
特に、本実施形態では、ばね5は、X軸方向に並んで配置されている複数のアーム51を有し、保護梁53は、隣り合う一対のアーム51の間に配置されている。このような構成によれば、アーム51同士が直接接触することを防止することができる。また、保護梁53によって、接触時の衝撃を緩和することもできる。そのため、アーム51の破損を効果的に抑制することができる。
また、前述したように、本実施形態の物理量センサー1では、ばね5は、隣り合う一対のアーム51を接続する接続部52を有している。そして、保護梁53は、接続部52に接続されている。接続部52は、アーム51と比較して、ばね5の特性に影響を与え難い箇所である。そのため、接続部52に保護梁53を接続することで、ばね5の特性の変動を効果的に抑制することができる。また、保護梁53を含めたばね5全体の設計が、アーム51に保護梁53が接続されている場合と比べて容易となる。
また、前述したように、本実施形態の物理量センサー1では、隣り合う一対のアーム511、512の一方(アーム511)と保護梁531との離間距離D1と、他方(アーム512)と保護梁531との離間距離D2と、が異なっている。本実施形態では、D1<D2となっている。これにより、アーム511、512同士の離間距離を十分に離しつつ、アーム511と保護梁531とを十分に接近させることができる。そのため、駆動時のアーム511、512の接触を抑制することができると共に、アーム511の横断面形状をより効果的に制御することができる。
次に、物理量センサー1の製造方法について説明する。図19に示すように、物理量センサー1の製造方法は、基板2の母材となるガラス基板20を準備する準備工程S1と、ガラス基板20に素子部4の母材となるシリコン基板40を接合する接合工程S2と、シリコン基板40の上面にハードマスクHMを形成するマスク形成工程S3と、ハードマスクHMを介してシリコン基板40をドライエッチングして素子部4を形成する素子部形成工程S4と、蓋体3の母材となるシリコン基板30をガラス基板20に接合する蓋体接合工程S5と、複数の物理量センサー1を個片化工程S6と、を有している。以下、各工程を順次説明する。
[準備工程S1]
まず、基板2の母材となるガラス基板20を用意する。次に、ガラス基板20に凹部21、マウント22(221、222、224、225)および溝部23、24、25、26、27、28を形成する。これらは、例えば、ウェットエッチングにより形成することができる。なお、ガラス基板20には、後に個片化されて1つの基板2となる複数の個片化領域Qが行列状に設けられており、これら個片化領域Q毎に、凹部21、マウント22および溝部23、24、25、26、27、28を形成する。次に、個片化領域Q毎に配線73、74、75、76、77、78を形成する。
[接合工程S2]
図20に示すように、素子部4の母材となるシリコン基板40を用意し、このシリコン基板40をガラス基板20に接合する。シリコン基板40とガラス基板20との接合方法としては、特に限定されず、例えば、陽極接合法により接合することができる。次に、必要に応じてCMP(化学機械研磨)を用いてシリコン基板40を薄肉化した後、シリコン基板40にリン、ボロン、砒素等の不純物をドープ(拡散)して導電性を付与する。
[マスク形成工程S3]
次に、図21に示すように、シリコン基板40の上面にドライエッチング耐性を有するハードマスクHMを素子部4の形状に対応させて形成する。例えば、シリコン基板40の表面を熱酸化して形成した酸化シリコン膜をパターニングすることで形成することができる。ここで、前述したように、シリコン基板40内での位置によって、アーム51の横断面形状にずれが生じるため、当該ずれが発生しないように、素子部4毎に、アーム51と保護梁53との離間距離D1を設定し、設定した離間距離D1となるようにハードマスクHMを形成する。なお、離間距離D1は、例えば、チャンバー内の中心部、縁部と言った複数の素子部4を含む比較的広い領域毎に設定してもよいし、素子部4毎と言った比較的狭い領域毎に設定してもよいし、ばね5毎と言ったより狭い領域毎に設定してもよいし、アーム51毎にと言ったさらに狭い領域毎に設定してもよい。また、チャンバー内の中央部に位置するアーム51については、横断面形状にずれが生じないため、当該部分にあるアーム51の隣には保護梁53が形成されないようなマスク形状としてもよい。
[素子部形成工程S4]
次に、ハードマスクHMを介してシリコン基板40をドライエッチングする。ドライエッチング方法としては、特に限定されないが、本実施形態では、反応性プラズマガスを用いたエッチングプロセスとデポジション(堆積)プロセスとを組み合わせたドライボッシュ(Bosch)法を用いている。これにより、図22に示すように、複数の素子部4が個片化領域Q毎に形成される。前述したように、シリコン基板40内での位置に応じて、素子部4毎に離間距離D1を設定しているため、各素子部4に、所望(等脚台形)の横断面形状を有するアーム51を形成することができる。
[蓋体接合工程S5]
次に、蓋体3の母材となるシリコン基板30を用意し、このシリコン基板30をフォトリソグラフィー技法およびエッチング技法を用いてパターニングすることで、個片化領域Q毎に凹部31を形成する。次に、図23に示すように、ガラスフリット39を介してシリコン基板30をガラス基板20に接合する。これにより、個片化領域毎に、素子部4を収納する収納空間Sが形成される。次に、連通孔32を介して収納空間S内を所望の雰囲気にした後、連通孔32を封止部材33で封止する。これにより、複数の物理量センサー1が一体的に形成された積層体10が得られる。
[個片化工程S6]
次に、例えば、ダイシングブレード等を用いて積層体10を個片化領域Q毎に個片化する。これにより、図24に示すように、複数の物理量センサー1が一括形成される。
以上、物理量センサー1の製造方法について説明した。このような物理量センサー1の製造方法は、前述したように、シリコン基板40(基板)にハードマスクHM(マスク)を形成するマスク形成工程S3と、ハードマスクHMを介してシリコン基板40をドライエッチングすることで、シリコン基板40から素子部4を形成する素子部形成工程S4と、を有している。そして、素子部形成工程S4で得られる素子部4は、可動体4A、4Bと、可動体4A、4BをX軸方向に振動可能に支持するばね5と、を有している。さらに、ばね5は、X軸方向と直交するY軸方向(第2方向)に沿って延在するアーム51と、アーム51に対してX軸方向の一方側に隣り合って配置され、Y軸方向に沿って延在する保護梁53と、を有している。このような製造方法によれば、保護梁53によってアーム51の横断面形状を制御することができ、クアドラチャが効果的に抑制された物理量センサー1を製造することができる。また、保護梁53によってアーム51が他の部分に直接接触することを防止することができ、アーム51の破損を効果的に抑制することができる。そのため、機械的強度の高い物理量センサー1が得られる。
また、前述したように、素子部形成工程S4では、シリコン基板40から複数の素子部4が形成される。そして、少なくとも2つの素子部4において、アーム51と保護梁53との離間距離D1が異なっている。これにより、シリコン基板40内での位置に影響されることなく、各素子部4のアーム51の横断面形状を所望の形状とすることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る物理量センサーについて説明する。
図25は、本発明の第2実施形態に係る物理量センサーが有するばねを示す平面図である。
本実施形態にかかる物理量センサーは、ばね5の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の物理量センサーと同様である。
なお、以下の説明では、第2実施形態の物理量センサーに関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図25では前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
図25に示すように、本実施形態のばね5では、1本のアーム51に対して複数の保護梁53が配置され、これら複数の保護梁53がY軸方向に沿って配置されている。本実施形態では、2本の保護梁53がY軸方向に沿って配置されている。そして、一方の保護梁53は、アーム51の一端部に接続された接続部521(52)に接続されており、他方の保護梁53は、アーム51の他端部に接続された接続部522(52)に接続されている。このような構成によれば、保護梁53を前述した第1実施形態と比べて短くすることができ、その分、保護梁53の機械的強度が向上する。また、一方の保護梁53は、接続部521と共に変位し、他方の保護梁53は、接続部522と共に変位する。そのため、2本の保護梁53は、アーム51の弾性変形に伴ってそれぞれ独立して変位し、駆動振動モードにおいて、保護梁53とアーム51との接触を効果的に抑制することができる。
以上のように、本実施形態のばね5では、保護梁53は、Y軸方向に沿って複数配置されている。これにより、保護梁53を、前述した第1実施形態と比べて短くすることができ、その分、保護梁53の機械的強度が向上する。特に、本実施形態では、2本の保護梁53がY軸方向に沿って配置されている。このように、保護梁53を2本とすることで、一方を接続部521に接続することができ、他方を接続部522に接続することができる。すなわち、全ての保護梁53を接続部52に接続することができる。そのため、前述した第1実施形態でも述べたように、ばね5の特性の変動を効果的に抑制することができ、また、ばね5全体の設計が容易となる。
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。なお、保護梁53は、Y軸方向に沿って3本以上配置されていてもよい(例えば、後述する第3実施形態参照)。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る物理量センサーについて説明する。
図26は、本発明の第3実施形態に係る物理量センサーが有するばねを示す平面図である。
本実施形態にかかる物理量センサーは、ばね5の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の物理量センサーと同様である。
なお、以下の説明では、第3実施形態の物理量センサーに関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図28では前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
図26に示すように、本実施形態のばね5では、1本のアーム51に対して複数の保護梁53が配置され、これら複数の保護梁53がY軸方向に沿って配置されている。本実施形態では、4本の保護梁53がY軸方向に沿って配置されている。そして、各保護梁53は、連結梁54を介してアーム51に接続されている。このような構成によれば、保護梁53を前述した第1実施形態と比べて短くすることができ、その分、保護梁53の機械的強度が向上する。また、保護梁53がアーム51に接続されているため、保護梁53をアーム51と共に変位させることができる。そのため、駆動振動モードにおいて、保護梁53とアーム51との接触を効果的に抑制することができる。
以上のように、本実施形態のばね5では、保護梁53は、Y軸方向に沿って複数配置されている。これにより、保護梁53を、前述した第1実施形態と比べて短くすることができ、その分、保護梁53の機械的強度が向上する。特に、本実施形態では、保護梁53は、アーム51に接続されている。そのため、保護梁53をアーム51と共に変位させることができ、保護梁53とアーム51との意図しない接触を効果的に抑制することができる。
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る慣性計測装置について説明する。
図27は、本発明の第4実施形態に係る慣性計測装置の分解斜視図である。図28は、図27に示す慣性計測装置が有する基板の斜視図である。
図27に示す慣性計測装置2000(IMU:Inertial Measurement Unit)は、自動車や、ロボットなどの運動体(被装着装置)の姿勢や、挙動(慣性運動量)を検出する慣性計測装置である。慣性計測装置2000は、3軸の加速度センサーと、3軸の角速度センサーと、を備えた、いわゆる6軸モーションセンサーとして機能する。
慣性計測装置2000は、平面形状が略正方形の直方体である。また、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に固定部としてのネジ穴2110が形成されている。この2ヶ所のネジ穴2110に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測装置2000を固定することができる。なお、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンや、デジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
慣性計測装置2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300と、を有し、アウターケース2100の内部に、接合部材2200を介在させて、センサーモジュール2300を挿入した構成となっている。また、センサーモジュール2300は、インナーケース2310と、基板2320と、を有している。
アウターケース2100の外形は、前述した慣性計測装置2000の全体形状と同様に、平面形状が略正方形の直方体であり、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、それぞれネジ穴2110が形成されている。また、アウターケース2100は、箱状であり、その内部にセンサーモジュール2300が収納されている。
インナーケース2310は、基板2320を支持する部材であり、アウターケース2100の内部に収まる形状となっている。また、インナーケース2310には、基板2320との接触を防止するための凹部2311や後述するコネクター2330を露出させるための開口2312が形成されている。このようなインナーケース2310は、接合部材2200(例えば、接着剤を含浸させたパッキン)を介してアウターケース2100に接合されている。また、インナーケース2310の下面には接着剤を介して基板2320が接合されている。
図28に示すように、基板2320の上面には、コネクター2330、Z軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340z、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサー2350などが実装されている。また、基板2320の側面には、X軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340xおよびY軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340yが実装されている。なお、角速度センサー2340z、2340x、2340yとしては、特に限定されず、例えば、コリオリの力を利用した振動ジャイロセンサーを用いることができる。特に、Y軸方向の角速度を検出するものとして、前述した実施形態の構成を用いることができる。また、加速度センサー2350としては、特に限定されず、例えば、静電容量型の加速度センサーを用いることができる。
また、基板2320の下面には、制御IC2360が実装されている。制御IC2360は、MCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部や、A/Dコンバーターなどを内蔵しており、慣性計測装置2000の各部を制御する。記憶部には、加速度、および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラムや、検出データをデジタル化してパケットデータに組込むプログラム、付随するデータなどが記憶されている。なお、基板2320には、その他にも複数の電子部品が実装されている。
以上、慣性計測装置2000について説明した。このような慣性計測装置2000は、物理量センサーとしての角速度センサー2340z、2340x、2340yおよび加速度センサー2350と、これら各センサー2340z、2340x、2340y、2350の駆動を制御する制御IC2360(制御回路)と、を含んでいる。これにより、本発明の物理量センサーの効果を享受でき、信頼性の高い慣性計測装置2000が得られる。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係る移動体測位装置について説明する。
図29は、本発明の第5実施形態に係る移動体測位装置の全体システムを示すブロック図である。図30は、図29に示す移動体測位装置の作用を示す図である。
図29に示す移動体測位装置3000は、移動体に装着して用い、当該移動体の測位を行うための装置である。移動体としては、特に限定されず、自転車、自動車(四輪自動車およびバイクを含む)、電車、飛行機、船等のいずれでもよいが、本実施形態では四輪自動車として説明する。移動体測位装置3000は、慣性計測装置3100(IMU)と、演算処理部3200と、GPS受信部3300と、受信アンテナ3400と、位置情報取得部3500と、位置合成部3600と、処理部3700と、通信部3800と、表示部3900と、を有している。なお、慣性計測装置3100としては、例えば、前述した慣性計測装置2000を用いることができる。
また、慣性計測装置3100は、3軸の加速度センサー3110と、3軸の角速度センサー3120と、を有している。演算処理部3200は、加速度センサー3110からの加速度データおよび角速度センサー3120からの角速度データを受け、これらデータに対して慣性航法演算処理を行い、慣性航法測位データ(移動体の加速度および姿勢を含むデータ)を出力する。
また、GPS受信部3300は、受信アンテナ3400を介してGPS衛星からの信号(GPS搬送波。位置情報が重畳された衛星信号)を受信する。また、位置情報取得部3500は、GPS受信部3300が受信した信号に基づいて、移動体測位装置3000(移動体)の位置(緯度、経度、高度)、速度、方位を表すGPS測位データを出力する。このGPS測位データには、受信状態や受信時刻等を示すステータスデータも含まれている。
位置合成部3600は、演算処理部3200から出力された慣性航法測位データおよび位置情報取得部3500から出力されたGPS測位データに基づいて、移動体の位置、具体的には移動体が地面のどの位置を走行しているかを算出する。例えば、GPS測位データに含まれている移動体の位置が同じであっても、図30に示すように、地面の傾斜等の影響によって移動体の姿勢が異なっていれば、地面の異なる位置を移動体が走行していることになる。そのため、GPS測位データだけでは移動体の正確な位置を算出することができない。そこで、位置合成部3600は、慣性航法測位データ(特に、移動体の姿勢に関するデータ)を用いて、移動体が地面のどの位置を走行しているのかを算出する。なお、当該判定は、三角関数(鉛直方向に対する傾きθ)を用いた演算によって比較的簡単に行うことができる。
位置合成部3600から出力された位置データは、処理部3700によって所定の処理が行われ、測位結果として、表示部3900に表示されるようになっている。また、位置データは、通信部3800によって外部装置に送信されるようになっていてもよい。
以上、移動体測位装置3000について説明した。このような移動体測位装置3000は、前述したように、慣性計測装置3100と、測位用衛星から位置情報が重畳された衛星信号を受信するGPS受信部3300(受信部)と、受信した衛星信号に基づいて、GPS受信部3300の位置情報を取得する位置情報取得部3500(取得部)と、慣性計測装置3100から出力された慣性航法測位データ(慣性データ)に基づいて、移動体の姿勢を演算する演算処理部3200(演算部)と、算出された姿勢に基づいて位置情報を補正することにより、移動体の位置を算出する位置合成部3600(算出部)と、を含んでいる。これにより、慣性計測装置3100(2000)の効果を享受でき、信頼性の高い移動体測位装置3000が得られる。
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態に係る電子機器について説明する。
図31は、本発明の第6実施形態に係る電子機器を示す斜視図である。
図31に示すモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューター1100は、本発明の電子機器を適用したものである。この図において、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部1108を備えた表示ユニット1106と、により構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このようなパーソナルコンピューター1100には、物理量センサー1と、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1110(制御部)と、が内蔵されている。なお、物理量センサー1としては、特に限定されないが、例えば、前述した各実施形態のいずれのものも用いることができる。
このようなパーソナルコンピューター1100(電子機器)は、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1110(制御部)と、を有している。そのため、前述した物理量センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態に係る電子機器について説明する。
図32は、本発明の第7実施形態に係る電子機器を示す斜視図である。
図32に示す携帯電話機1200(PHSも含む)は、本発明の電子機器を適用したものである。この図において、携帯電話機1200は、アンテナ(図示せず)、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206を備え、操作ボタン1202と受話口1204との間には、表示部1208が配置されている。
このような携帯電話機1200には、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1210(制御部)と、が内蔵されている。なお、物理量センサー1としては、特に限定されないが、例えば、前述した各実施形態のいずれのものも用いることができる。
このような携帯電話機1200(電子機器)は、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1210(制御部)と、を有している。そのため、前述した物理量センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
<第8実施形態>
次に、本発明の第8実施形態に係る電子機器について説明する。
図33は、本発明の第8実施形態に係る電子機器を示す斜視図である。
図33に示すデジタルスチールカメラ1300は、本発明の電子機器を適用したものである。この図において、ケース1302の背面には表示部1310が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部1310は、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。そして、撮影者が表示部1310に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押すと、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー1308に転送・格納される。
このようなデジタルスチールカメラ1300には、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1320(制御部)と、が内蔵されている。なお、物理量センサー1としては、特に限定されないが、例えば、前述した各実施形態のいずれのものも用いることができる。
このようなデジタルスチールカメラ1300(電子機器)は、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1320(制御部)と、を有している。そのため、前述した物理量センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
なお、本発明の電子機器は、前述した実施形態のパーソナルコンピューターおよび携帯電話機、本実施形態のデジタルスチールカメラの他にも、例えば、スマートフォン、タブレット端末、時計(スマートウォッチを含む)、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンタ)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、移動体端末基地局用機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、ネットワークサーバー等に適用することができる。
<第9実施形態>
次に、本発明の第9実施形態に係る携帯型電子機器について説明する。
図34は、本発明の第9実施形態に係る携帯型電子機器を示す平面図である。図35は、図34に示す携帯型電子機器の概略構成を示す機能ブロック図である。
図34に示す腕時計型の活動計1400(アクティブトラッカー)は、本発明の携帯型電子機器を適用したリスト機器である。活動計1400は、バンド1401によってユーザーの手首等の部位(被検体)に装着される。また、活動計1400は、デジタル表示の表示部1402を備えると共に、無線通信が可能である。上述した本発明に係る物理量センサー1は、加速度を測定する加速度センサー1408や角速度を計測する角速度センサー1409として活動計1400に組込まれている。
活動計1400は、物理量センサー1が収容されているケース1403と、ケース1403に収容され、物理量センサー1からの出力データを処理する処理部1410と、ケース1403に収容されている表示部1402と、ケース1403の開口部を塞いでいる透光性カバー1404と、を備えている。また、透光性カバー1404の外側にはベゼル1405が設けられている。また、ケース1403の側面には複数の操作ボタン1406、1407が設けられている。
図35に示すように、加速度センサー1408は、互いに交差する(理想的には直交する)3軸方向の各々の加速度を検出し、検出した3軸加速度の大きさおよび向きに応じた信号(加速度信号)を出力する。また、角速度センサー1409は、互いに交差する(理想的には直交する)3軸方向の各々の角速度を検出し、検出した3軸角速度の大きさおよび向きに応じた信号(角速度信号)を出力する。
表示部1402を構成する液晶ディスプレイ(LCD)では、種々の検出モードに応じて、例えば、GPSセンサー1411や地磁気センサー1412を用いた位置情報、移動量や物理量センサー1に含まれる加速度センサー1408や角速度センサー1409などを用いた運動量などの運動情報、脈拍センサー1413などを用いた脈拍数などの生体情報、もしくは現在時刻などの時刻情報などが表示される。なお、温度センサー1414を用いた環境温度を表示することもできる。
通信部1415は、ユーザー端末と図示しない情報端末との間の通信を成立させるための各種制御を行う。通信部1415は、例えば、Bluetooth(登録商標)(BTLE:Bluetooth Low Energyを含む)、Wi-Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)、Zigbee(登録商標)、NFC(Near field communication)、ANT+(登録商標)等の近距離無線通信規格に対応した送受信機や、USB(Universal Serial Bus)等の通信バス規格に対応したコネクターを含んで構成される。
処理部1410(プロセッサー)は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成される。処理部1410は、記憶部1416に格納されたプログラムと、操作部1417(例えば操作ボタン1406、1407)から入力された信号とに基づき、各種の処理を実行する。処理部1410による処理には、GPSセンサー1411、地磁気センサー1412、圧力センサー1418、加速度センサー1408、角速度センサー1409、脈拍センサー1413、温度センサー1414、計時部1419の各出力信号に対するデータ処理、表示部1402に画像を表示させる表示処理、音出力部1420に音を出力させる音出力処理、通信部1415を介して情報端末と通信を行う通信処理、バッテリー1421からの電力を各部へ供給する電力制御処理などが含まれる。
このような活動計1400では、少なくとも以下のような機能を有することができる。
1.距離:高精度のGPS機能により計測開始からの合計距離を計測する。
2.ペース:ペース距離計測から、現在の走行ペースを表示する。
3.平均スピード:平均スピード走行開始から現在までの平均スピードを算出し表示する。
4.標高:GPS機能により、標高を計測し表示する。
5.ストライド:GPS電波が届かないトンネル内などでも歩幅を計測し表示する。
6.ピッチ:1分あたりの歩数を計測し表示する。
7.心拍数:脈拍センサーにより心拍数を計測し表示する。
8.勾配:山間部でのトレーニングやトレイルランにおいて、地面の勾配を計測し表示する。
9.オートラップ:事前に設定した一定距離や一定時間を走った時に、自動でラップ計
測を行う。
10.運動消費カロリー:消費カロリーを表示する。
11.歩数:運動開始からの歩数の合計を表示する。
このような活動計1400(携帯型電子機器)は、物理量センサー1と、物理量センサー1が収容されているケース1403と、ケース1403に収容され、物理量センサー1からの出力データを処理する処理部1410と、ケース1403に収容されている表示部1402と、ケース1403の開口部を塞いでいる透光性カバー1404と、を含んでいる。そのため、前述した物理量センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
なお、活動計1400は、ランニングウォッチ、ランナーズウォッチ、デュアスロンやトライアスロン等マルチスポーツ対応のランナーズウォッチ、アウトドアウォッチ、および衛星測位システム、例えばGPSを搭載したGPSウォッチ、等に広く適用できる。
また、上述では、衛星測位システムとしてGPS(Global Positioning System)を用いて説明したが、他の全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用してもよい。例えば、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO、BeiDou(BeiDou Navigation Satellite System)、等の衛星測位システムのうち1又は2以上を利用してもよい。また、衛星測位システムの少なくとも1つにWAAS(Wide Area Augmentation System)、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)等の静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS:Satellite-based Augmentation System)を利用してもよい。
<第10実施形態>
次に、本発明の第10実施形態に係る移動体について説明する。
図36は、本発明の第10実施形態に係る移動体を示す斜視図である。
図36に示す自動車1500は、本発明の移動体を適用した自動車である。この図において、自動車1500には、物理量センサー1が内蔵されており、物理量センサー1によって車体1501の姿勢を検出することができる。物理量センサー1の検出信号は、車体姿勢制御装置1502(姿勢制御部)に供給され、車体姿勢制御装置1502は、その信号に基づいて車体1501の姿勢を検出し、検出結果に応じてサスペンションの硬軟を制御したり、個々の車輪1503のブレーキを制御したりすることができる。ここで、物理量センサー1としては、例えば、前述した各実施形態と同様のものを用いることができる。
このような自動車1500(移動体)は、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う車体姿勢制御装置1502(制御部)と、を有している。そのため、前述した物理量センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
なお、物理量センサー1は、他にも、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。
また、移動体としては、自動車1500に限定されず、例えば、飛行機、ロケット、人工衛星、船舶、AGV(無人搬送車)、二足歩行ロボット、ドローン等の無人飛行機等にも適用することができる。
以上、本発明の物理量センサーの製造方法、物理量センサー、慣性計測装置、移動体測位装置、携帯型電子機器、電子機器および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、前述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
また、前述した実施形態では、物理量センサーとして角速度を検出するものについて説明したが、これに限定されず、例えば、加速度を検出するものであってもよい。また、加速度と角速度の両方を検出するものであってもよい。