以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る印刷装置10の斜視図である。印刷装置10は、被印刷媒体に印刷を行う印字部としてサーマルヘッドを備える印刷装置であり、例えば、長尺の帯状の被印刷媒体Mに対して、シングルパス方式で印刷を行うプリンタである。被印刷媒体Mは、例えば、接着層を有する基材と、基材に対して接着層を覆うように貼付された剥離可能な剥離紙と、を有するテープ部材である。被印刷媒体Mとして、剥離紙を備えないタイプのテープ部材を適用してもよい。
なお、本実施形態では、インクリボンを使用する熱転写方式のラベルプリンタを例にして説明するが、本発明を適用する印刷装置や印刷方式はこれに限定されず、スティッキングが発生する可能性があるものであればよい。例えば、感熱紙を使用する感熱方式の印刷であってもよい。
図1に示すように、印刷装置10は装置筐体11を有し、装置筐体11の上面手前側に入力部12を有し、装置筐体11の上面奥側に表示装置13と開閉蓋14を有している。図示していないが、装置筐体11には、給電用の電源コードが接続する電源コード接続端子、外部機器との接続用の外部機器接続端子、メモリカードなどの記憶媒体を挿入する記憶媒体挿入口、などが設けられている。
入力部12は、押しボタンタイプの複数の入力キーや十字キーなどを備えており、入力部12への操作によって、印刷する文字や図形などの印刷内容の入力や、印刷の実行を含む各種動作に関する入力や、その他の機能や設定の選択などが行われる。
表示装置13は、液晶表示パネルなどの表示手段を備えており、入力部12への入力に対応する文字や図形などの表示、各種設定のための選択メニューの表示、各種処理に関するメッセージ類の表示、印刷処理の進捗状況の表示などを行う。なお、表示装置13を入力受付可能なタイプ(タッチパネル入力方式など)にして、入力部12としての機能を表示装置13に持たせてもよい。
開閉蓋14は、装置筐体11に対して開閉可能に取り付けられている。装置筐体11の内部には、閉じた状態の開閉蓋14により覆われるカセット収納部15(図3参照)が設けられている。カセット収納部15の詳細については後述する。開閉蓋14は閉じた状態でロック可能であり、ボタン14aを押し込むことにより、ロックを解除して開閉蓋14の開放動作が行われる。開閉蓋14に設けた窓14bを通して、開閉蓋14が閉じた状態におけるカセット収納部15内の状態(図2に示すテープカセット20の装填状態)を視認することができる。
装置筐体11の側面には、カセット収納部15に通じる排出口11aが形成されている。印刷装置10の内部で印刷が行われた被印刷媒体Mは、排出口11aを通って印刷装置10の外側へ排出される。
図2は、印刷装置10のカセット収納部15に収納されるテープカセット20の斜視図である。テープカセット20は箱状のカセットケース21を有し、カセットケース21の内部に、それぞれが平行な円筒状のテープコア22とインクリボン供給コア23とインクリボン巻取りコア24が設けられている。被印刷媒体Mは、カセットケース21の内部でテープコア22にロール状に巻かれている。熱転写用のインクリボンKは、インクリボン供給コア23にロール状に巻かれており、インクリボン供給コア23から引き出されて、その先端がインクリボン巻取りコア24に巻きつけられている。
カセットケース21には、被印刷媒体MとインクリボンKの通過領域の近傍に、サーマルヘッド被挿入部25が形成されている。カセットケース21の外縁には、板状の複数の係合部26が形成されている。
図3は、カセット収納部15の斜視図である。カセット収納部15の内部には、被印刷媒体Mへの印刷時に発熱制御される複数の発熱素子30a(図5参照)を有するサーマルヘッド30が設けられている。サーマルヘッド30には、温度を測定するヘッド温度測定部として、サーミスタ31が埋め込まれている。また、カセット収納部15の内部には、被印刷媒体MとインクリボンKの搬送に関係する部位として、プラテンローラ32とテープコア係合軸33とインクリボン巻取り駆動軸34が設けられている。
また、カセット収納部15の内部には、テープカセット20を所定の位置に支持するための複数のカセット受け部35が設けられている。カセット収納部15の内部にはさらに、テープカセット20が収容する被印刷媒体M(テープ)の幅を検出するためのテープ幅検出スイッチ36が設けられている。テープ幅検出スイッチ36は、テープカセット20の形状に基づいて被印刷媒体Mの幅を検出する検出部である。
装置筐体11の排出口11aの部分には、被印刷媒体Mを切断するためのハーフカット装置37とフルカット装置38が設けられている。フルカットとは、被印刷媒体Mの基材を剥離紙と共に幅方向に沿って切断する動作のことであり、ハーフカットは、基材のみを幅方向に沿って切断する動作のことである。
テープカセット20がカセット収納部15に収納された状態では、図4に示すように、カセットケース21に設けた複数の係合部26が、カセット収納部15内に設けられた複数のカセット受け部35に支持されて、テープカセット20の位置が定まる。この状態で、テープカセット20のサーマルヘッド被挿入部25にサーマルヘッド30が挿入される。また、テープカセット20のテープコア22がテープコア係合軸33に係合し、インクリボン巻取りコア24がインクリボン巻取り駆動軸34に係合する。そして、テープコア22から引き出された被印刷媒体Mと、インクリボン供給コア23及びインクリボン巻取りコア24に架け渡されたインクリボンKが、互いに重なる状態でサーマルヘッド30とプラテンローラ32の間を通過可能になる。
印刷装置10に印刷実行の指示が入力されると、プラテンローラ32が回転駆動されて、被印刷媒体Mがテープコア22から繰り出される。このとき、インクリボン巻取り駆動軸34がプラテンローラ32に同調して回転されて、被印刷媒体Mと共にインクリボンKがインクリボン供給コア23から繰り出される。これにより、被印刷媒体MとインクリボンKは重なった状態で搬送され、印刷進行方向においてサーマルヘッド30との相対位置が変化する。そして、サーマルヘッド30とプラテンローラ32の間を通過する際にインクリボンKがサーマルヘッド30によって加熱されることで、インクリボンKに付着しているインクが被印刷媒体Mに転写され、印刷が行われる。
サーマルヘッド30とプラテンローラ32の間を通過した使用済みのインクリボンKは、インクリボン巻取りコア24に巻き取られる。サーマルヘッド30とプラテンローラ32の間を通過した印刷済みの被印刷媒体Mは、ハーフカット装置37又はフルカット装置38で切断(ハーフカット又はフルカット)され、排出口11aからカセット収納部15の外部へ排出される。
図5は、印刷装置10のハードウェア構造を示したブロック図である。このブロック図は、上述した入力部12、表示装置13、サーマルヘッド30、サーミスタ31、プラテンローラ32、テープ幅検出スイッチ36、ハーフカット装置37、フルカット装置38、を含んでいる。印刷装置10はさらに、制御装置40、ROM(Read Only Memory)41、RAM(Random Access Memory)42、表示装置駆動回路43、ヘッド駆動回路44、搬送用モータ駆動回路45、ステッピングモータ46、カッターモータ駆動回路47、カッターモータ48、温度センサ49を備える。なお、少なくとも制御装置40、ROM41、及びRAM42は、印刷装置10のコンピュータを構成している。
制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ40aを含む。制御装置40は、ROM41に記憶されているプログラムを読み出してRAM42に展開し実行することで、印刷装置10の各部の動作を制御する。後述するスティッキング発生推定ラインの設定、対策データの生成、などの一連の制御や処理についても、ROM41に記憶されているプログラムに基づいて行われる。
ROM41は、被印刷媒体Mに印刷を行う印刷プログラム、印刷プログラムの実行に必要な各種データ(例えば、フォント、サーマルヘッド30の通電制御に関する通電テーブルなど)を記憶する。ROM41のうち、通電テーブルを記憶する概念的な機能ブロックを、通電テーブル記憶部41a(図6参照)とする。
RAM42は、印刷装置10に入力された印刷内容のパターン(画像)を示す印刷データが記憶される。RAM42ののち、印刷データを記憶する概念的な機能ブロックを、印刷データ記憶部42a(図6参照)とする。
表示装置駆動回路43は、表示装置13を駆動するディスプレイドライバを備えている。RAM42に記憶された印刷データに基づく印刷内容や、印刷処理の進捗状況などが、表示装置駆動回路43の制御下で表示装置13に表示される。
ヘッド駆動回路44は、制御装置40から供給された制御信号であるストローブ信号と印刷データと対策データとに基づいてサーマルヘッド30を駆動するヘッド駆動部である。より詳細には、ストローブ信号(制御信号)がONである期間(以降、通電制御期間と記す)中に、印刷データ及び対策データに基づいて複数の発熱素子30aへの通電又は非通電を行う。
サーマルヘッド30は、主走査方向(図8及び図11参照)に配列された複数の発熱素子30aを有する印刷ヘッドである。ヘッド駆動回路44が、制御装置40から供給されたストローブ信号の通電制御期間中に、印刷データ及び対策データに応じて、サーマルヘッド30の複数の発熱素子30aに電圧を選択的に印加することで、印刷データ及び対策データに応じた箇所の発熱素子30aが発熱する。
被印刷媒体Mは、主走査方向に対して垂直な副走査方向(図8及び図11参照)に長手方向を向けて、副走査方向への移動によりサーマルヘッド30の位置まで搬送される。そして、被印刷媒体Mを副走査方向に搬送しながらサーマルヘッド30の各発熱素子30aの発熱を制御することで、サーマルヘッド30は、熱転写により被印刷媒体Mに対して、主走査方向に延びる1ラインずつ印刷を行う。つまり、副走査方向へのサーマルヘッド30と被印刷媒体Mの相対位置の変化と、サーマルヘッド30の各発熱素子30aの発熱制御とによって、被印刷媒体Mには複数の印刷ラインが熱転写で順次印刷される。
制御装置40は、被印刷媒体Mの搬送を制御する搬送制御部としての機能を有する。制御装置40の制御に応じて搬送用モータ駆動回路45がステッピングモータ46を駆動し、ステッピングモータ46はプラテンローラ32を回転させる。プラテンローラ32は、ステッピングモータ46の動力によって回転し、被印刷媒体Mの長手方向(副走査方向)に被印刷媒体Mを搬送する。少なくともプラテンローラ32とステッピングモータ46は印刷装置10の搬送部を構成する。
制御装置40は、印刷後の被印刷媒体Mの切断を制御するカット制御部としての機能を有する。カッターモータ駆動回路47は、カッターモータ48を駆動する。ハーフカット装置37及びフルカット装置38は、カッターモータ48の動力によって動作し、被印刷媒体Mをハーフカット又はフルカットする。
温度センサ49は、印刷装置10の周囲の温度を環境温度として測定する環境温度測定部である。
ところで、印刷装置10で印刷を行う際に、サーマルヘッド30において高温状態から低温状態への急激な温度変化(温度低下)が生じると、サーマルヘッド30にインクリボンKが貼り付く現象であるスティッキングが生じる可能性がある。サーマルヘッド30におけるこのような急激な温度低下は、印字率の高い(発熱させる発熱素子30aの数が多い)印刷ラインから印字率の低い(発熱させる発熱素子30aの数が少ない)印刷ラインに急に切り替わる印刷内容である場合に生じやすい。すなわち、副走査方向で隣接又は近接する関係の印刷ライン間で印字率が急減するような境界部分を印刷するときに、スティッキングが生じやすい。
スティッキングが生じやすい印刷内容の一例を図8に示した。図8に示す印刷画像IM1では、印刷順序が先頭側の領域E1で、主走査方向(被印刷媒体Mの幅方向)に隙間なく印字する、いわゆるベタ塗りの印刷内容になっている。この領域E1に続く下流側の領域E2では、印字しない白抜き部分の割合が急激に増えて、主走査方向で印字する範囲が大幅に減っている。従って、主走査方向の印字率が高い領域E1の印刷ではサーマルヘッド30が高温になり、印字率が低い領域E2の印刷ではサーマルヘッド30が急激に低温になり、領域E1と領域E2の境界がスティッキングの生じやすい箇所になる。
スティッキングが発生すると、被印刷媒体Mへの印刷が正常に行われず、部分的に印刷が欠けてしまう(印刷が行われない領域が生じてしまう)おそれがある。そのため、スティッキングが生じた状況でそのまま印刷を継続すると、印刷品質が低下してしまう。
その対策として、印刷装置10では、スティッキングが発生する(発生しやすい)印刷ラインを推定してスティッキング発生推定ラインとして設定し、スティッキング発生推定ラインの印刷の際にサーマルヘッド30の急激な温度低下が抑制されるように制御する。具体的には、制御装置40は、複数の印刷ラインのそれぞれを印刷するための1ライン周期内に、被印刷媒体Mに印刷を行うための第1の通電制御期間と、被印刷媒体Mに印刷を行うことなくサーマルヘッド30の温度変化を調整するための第2の通電制御期間を設定し、第2の通電制御期間におけるサーマルヘッド30の各発熱素子30aへの通電を制御する対策データを生成する。また、制御装置40は、第1の通電制御期間と第2の通電制御期間を指定する制御信号であるストローブ信号を生成する。そして、対策データに基づく各発熱素子30aへの通電制御によって、スティッキング発生推定ラインでのサーマルヘッド30の温度変化を抑制する。対策データに基づく通電でサーマルヘッド30の温度管理を行う一連の制御を、スティッキング防止制御とする。
第1の通電制御期間は、サーマルヘッド30が有する複数の発熱素子30aへの通電又は非通電が印刷データ(RAM42の印刷データ記憶部42aから読み出された印刷データ)に応じて設定される期間である。第2の通電制御期間は、サーマルヘッド30が有する複数の発熱素子30aへの通電又は非通電が対策データに応じて設定される期間である。第2の通電制御期間は、第1の通電制御期間から時間的に離間した(時間的に重ならない)期間であり、第1の通電制御期間よりも時間的に短い期間である。
図6は、スティッキング防止制御を行う印刷装置10の機能的構造を示したブロック図である。図6では主に、印刷装置10に含まれる制御装置40の機能的構造を示している。制御装置40は、推定部50、データ生成部51、ヘッド制御部52を備えている。推定部50は、印刷データに基づいてスティッキング発生推定ラインを設定する。データ生成部51は、スティッキングの発生を抑制するための対策データを生成する。ヘッド制御部52は、推定部50やデータ生成部51からの出力データなどに基づいて、サーマルヘッド30を制御する制御信号であるストローブ信号を生成する。そして、制御装置40は、少なくともストローブ信号と印刷データと対策データをヘッド駆動回路44へ供給し、ヘッド駆動回路44を介してサーマルヘッド30を制御する。なお、制御装置40では、図6に示す各機能ブロックに対応する個々の電子部品や回路を必ずしも備えるわけではなく、所定の電子部品や回路が複数の機能ブロックの役割を有する場合や、複数の電子部品や回路の協働によって1つの機能ブロックとして成立する場合もある。
推定部50は、サーマルヘッド30により印刷する複数の印刷ラインのそれぞれに対応する、複数の印刷ラインデータを含む印刷データに基づいて、スティッキングが発生する可能性が比較的高いラインを、スティッキング発生推定ライン(第nライン:nは2以上の整数)として推定する。推定部50が使用する印刷データは、RAM42の印刷データ記憶部42aから読み出される。そして、推定部50は、印刷データに基づいて、サーマルヘッド30の温度が急激に低下する可能性があるラインを特定することで、スティッキング発生推定ラインを推定する。
推定部50は、より詳細には、比較部53と決定部54を備える。比較部53は、印刷データに含まれる複数の印刷ラインデータのうちの、互いに隣接して印刷される2つのラインのそれぞれに対応する2つの印刷ラインデータを比較する。決定部54は、比較部53による比較結果に基づいて、スティッキングが発生する可能性が比較的高いと推定されるラインをスティッキング発生推定ラインとして決定する。このように、互いに隣接して印刷される2つのラインのそれぞれに対応する2つの印刷ラインデータを比較することで、互いに隣接して印刷される2つのライン間で生じる急激な温度変化を予想し、スティッキング発生推定ラインを決定することができる。
比較部53が上記2つの印刷ラインデータを比較する際の要素として、主走査方向での印字率を参照することができる。印刷順序の上流側の印刷ラインデータと下流側の印刷ラインデータの間で印字率の急激な低下がある場合には、サーマルヘッド30での急激な温度低下が生じることが推定される。例えば、各印刷ラインデータには、印刷ドットの配列データが含まれている。印刷ドットは、サーマルヘッド30の個々の発熱素子30aを発熱させて被印刷媒体Mに印字させる箇所を示す。そして、各印刷ラインデータに含まれている印刷ドットの数が多ければ印字率が高く、印刷ドットの数が少なければ印字率が低い。隣接する2つの印刷ラインデータの印刷ドットの数を比較することで、サーマルヘッド30の温度の低下を予想することができる。
また、比較部53が上記2つの印刷ラインデータを比較する際の要素として、各印刷ラインデータにおける印字領域(印刷ドット)の分布を参照することができる。主走査方向に長く連続する印字領域があると、主走査方向で印字領域が分散している場合に比べて、サーマルヘッド30の温度へ与える影響が大きくなりやすい。つまり、主走査方向で印刷ドットが複数集まる(連続する)ことで、印刷ドットが分散するよりも、サーマルヘッド30の温度変化が生じやすくなる。各印刷ラインデータの印字領域の分布は、主走査方向で印刷ドットが所定数連続する印刷ドット群の数によって判別できる。そして、隣接する2つの印刷ラインデータにおける印字領域の分布(複数の印刷ドットの集合である印刷ドット群の数)を比較することで、サーマルヘッド30の温度の低下をより高精度に予想することができる。
決定部54は、例えば、印字率(印刷ドットの数)又は連続する印字領域(印刷ドット群の数)の比に対して閾値を設定してもよく、あるいは、印字率(印刷ドットの数)又は連続する印字領域(印刷ドット群の数)の低減率に対して閾値を設定してもよい。決定部54は、比または低減率が閾値以上又は閾値を上回っている場合に、スティッキングが発生する可能性が比較的高いと決定してもよい。
なお、閾値は、予め設定された値であってもよく、温度センサ49で測定された環境温度に基づいて設定されてもよい。一般的に、環境温度が低いほど、発熱素子の発熱時と非発熱時の温度差が大きくなりやすく、スティッキングが発生しやすいことから、環境温度に基づいて設定する場合には、環境温度が低いほど閾値を下げることが望ましい。これにより、スティッキングの発生をさらに高精度に予想することができる。また、閾値の設定には、テープ幅検出スイッチ36で検出された被印刷媒体Mの幅の数値を利用してもよい。
推定部50は、複数の印刷ラインデータのうちにスティッキングの発生が推定されるラインが存在する場合に、スティッキング発生推定ラインを特定するデータであるスティッキング発生推定ラインデータを、データ生成部51へ出力する。
データ生成部51は、RAM42の印刷データ記憶部42aから取得した印刷データと、推定部50で生成されたスティッキング発生推定ラインデータとに基づいて、第2の通電制御期間中における複数の発熱素子30aへの通電又は非通電を指定する対策データを生成する。対策データは、印刷データに含まれる複数の印刷ラインデータに対応する複数のラインデータ(以降、対策データに含まれるラインデータについても、印刷データに含まれる印刷ラインデータと区別するため、対策データと記す)を含んでいる。なお、データ生成部51では、印刷データに含まれる複数の印刷ラインデータと同数の対策データを生成することが望ましい。
印刷装置10では、スティッキングを引き起こす可能性が高いサーマルヘッド30の温度低下が予想される期間において、印刷データとは別のデータである対策データに基づいて発熱素子30aを発熱させることでサーマルヘッド30の急激な温度低下を抑制し、スティッキングの発生を抑制する。これを実現するべく、データ生成部51は、少なくとも印刷データに基づいて、対策対象ライン群の各ラインにおいて、第2の通電制御期間中に複数の発熱素子30aの少なくとも一部へ電圧が印加されるように、対策データを生成する。
対策対象ライン群は、スティッキング発生推定ライン(第nライン)の1ライン前(直前)に印刷が行われる先行ライン(第n-1ライン)と、この先行ラインの後に、先行ラインから連続して印刷される、スティッキング発生推定ラインを含む少なくとも1つのラインと、を含む、連続する2以上の数のラインからなる。つまり、対策対象ライン群には、少なくとも先行ラインとスティッキング発生推定ラインの2ラインが含まれる。先行ラインとスティッキング発生推定ラインに加えて、スティッキング発生推定ラインから連続して印刷される少なくとも1つのライン(後続ライン)を対策対象ライン群に含めることがさらに望ましい。
データ生成部51は、ライン数設定部55とパターン設定部56を備えている。ライン数設定部55は、対策データにより第2の通電制御期間中に発熱素子に電圧が印加される対策対象ライン群に含まれるラインの数を設定する。パターン設定部56は、複数のラインにおける対策データの各々のパターンを設定する。
ライン数設定部55は、印刷データに基づいて、少なくとも先行ラインとスティッキング発生ラインとを対策対象ライン群に設定する。より望ましくは、ライン数設定部55は、印刷データに基づいて、先行ラインと、スティッキング発生推定ラインと、スティッキング発生推定ラインから連続して印刷される少なくとも1つの後続ラインと、を対策対象ライン群に設定する。
ライン数設定部55は、対策対象ライン群のライン数を環境温度に基づいて設定してもよい。一般的に、環境温度が低いほどスティッキングが発生しやすいことから、環境温度に基づいて設定する場合には、環境温度が低いほど対策対象ライン群に含まれるラインの数を増やして、環境温度の低下に起因する急激な温度低下を抑制することが望ましい。これにより、印刷装置10が置かれた環境によらずスティッキングの発生を抑制することができる。一方、環境温度が比較的高い環境ではスティッキングは発生し難くなる。そのため、環境温度が予め設定された閾値(例えば、40℃など)よりも高い場合には、対策対象ライン群のライン数を0に設定して、第2の通電制御期間における通電制御を行わないようにしたり、対策対象ライン群のライン数を1に設定して、先行ラインの第2の通電制御期間でのみ通電制御を行うようにしたりしてもよい。
また、ライン数設定部55は、印刷データに基づいて対策対象ライン群のライン数を設定してもよい。例えば、スティッキング発生推定ラインに続く後続ラインにおいて、第1の通電制御期間に十分な数の発熱素子30aに電圧が印加される場合には、後続ラインでは温度低下が生じず、第2の通電制御期間における通電制御は省略可能と判断できる。従って、ライン数設定部55は、印刷データに基づいてスティッキング発生推定ライン以降、印刷ドットの数が閾値以下のライン(低印字率ラインとする)が何ライン連続して並んでいるかを算出し、算出した低印字率ラインの連続数に基づいて対策対象ライン群のライン数を設定してもよい。
また、ライン数設定部55は、環境温度と印刷データの両方に基づいて、対策対象ライン群のライン数を設定してもよい。この場合、ライン数設定部55は、環境温度に基づく対策対象ライン群のライン数と印刷データに基づく対策対象ライン群のライン数のうちの小さい方を選択してもよい。
パターン設定部56は、スティッキング発生推定ラインの印刷ラインデータと先行ラインの印刷ラインデータとに基づいて、少なくとも先行ラインの対策データのパターンを設定することができる。パターン設定部56は、例えば、これら2つの印刷ラインデータのうちの同じ発熱素子に対応するデータを比較して、対策データに含まれる各発熱素子に対応するデータを生成してもよい。
図7を参照して、対策データのパターン設定方法の具体例について説明する。図7の縦軸が主走査方向である。ここでは、第1の通電制御期間中に、本通電データに基づいて通電制御が行われる本通電制御期間と、履歴通電データに基づいて通電制御が行われる履歴通電制御期間と、が含まれる場合を例に説明する。なお、図7では、本通電データ、履歴通電データ及び対策データにおいて、サーマルヘッド30の発熱素子30aを発熱させるときをオンとして黒丸で示し、発熱素子30aを発熱させないときをオフとして白丸で示している。
本通電データとは、印刷データの一部であり、第1の通電制御期間中に印刷が行われる被印刷媒体M上のライン(印刷対象ラインとする)に形成すべき印刷パターンを示す印刷データである。また、履歴通電データとは、印刷データの一部であり、印刷対象ラインよりも先に印刷が行われるライン(例えば、印刷対象ラインよりも1ライン前のラインなど)の印刷データに基づいて生成される印刷データであり、印刷ドットが適切に印刷されるようにするためのデータである。
パターン設定部56は、図7のケース4に示すように、注目する発熱素子30aについての、先行ラインL1の本通電データがオン(黒丸)であり、先行ラインL1の履歴通電データがオフ(白丸)であり、スティッキング発生推定ラインL2の本通電データがオフ(白丸)であるときに、注目する発熱素子30aについてオン(黒丸)である先行ラインL1の対策データを生成してもよい。その理由は、ケース4において対策データによる通電が行われないとすると、先行ラインL1の本通電データによる通電で発熱素子30aの温度が高い状態になった後、1ライン周期以上の長い期間にわたって通電が行われず、発熱素子30aの温度が高温から低温へ急激に変化(低下)することになり、スティッキングが発生する可能性が比較的高いからである。
一方で、それ以外のケース(ケース1~3、ケース5、ケース6)では、パターン設定部56は、先行ラインL1について、オフ(白丸)の対策データを生成する。これは、ケース1~3では、先行ラインL1での履歴通電とスティッキング発生推定ラインL2での本通電の少なくとも一方が行われるので、先行ラインL1での本通電後に生じる非通電期間がケース4に比べて短いことが想定され、その結果、スティッキングが発生する可能性が比較的低いからである。また、ケース5とケース6では、先行ラインL1での温度上昇がないため著しい温度低下が生じず、その結果、スティッキングが発生する可能性が比較的低いからである。
図7に示すような対策対象ライン群以外のラインについては、パターン設定部56は、対策データのパターンをオフ(白丸)だけからなるパターンに設定する。
なお、図7に示すパターン設定方法は、先行ラインの対策データのパターンを設定する方法の一例であり、他の設定方法に従って先行ラインの対策データを生成しても良い。
図8と図9は、印刷データと対策データの組み合わせの具体例を示している。これらの具体例では、印刷画像IM1(図8参照)などの印刷に際して、スティッキング発生推定ライン(第nライン)から連続して印刷される後続ラインを対策対象ライン群に含めている。より詳しくは、スティッキング発生推定ラインである第nラインの1つ後の第n+1ラインと、その1つ後の第n+2ラインの2ラインまでを後続ラインとし、これら後続ライン(第n+1、第n+2)と、スティッキング発生推定ライン(第nライン)と、先行ライン(第n-1ライン)とを含む計4ラインを、対策対象ライン群としている。
図8は、先行ライン以外の対策対象ライン群の各ラインに対する対策データとして、先行ラインの対策データのパターンを引き継ぐ(コピーする)例を示している。つまり、対策対象ライン群の各ラインにおいて、先行ラインの対策データを基準とした同じ対策データを用いる例である。
このように対策対象ライン群の各ラインで同じパターンの対策データを用いることで、データ生成用の処理負担を軽減できるという利点がある。但し、図8の例とは異なり、対策対象ライン群に含まれるそれぞれのライン毎に、個別パターンの対策データを設定してもよい。
図9は、先行ライン以外の対策対象ライン群の各ラインに対する対策データとして、各ラインの本通電データのパターンを反転したパターンを用いる例を示している。このようなパターンで対策データを生成することで、サーマルヘッド30における特定の発熱素子30aが過剰に加熱されてしまうことを避けることができるため、印刷の階調が予定以上に高くなってしまうことを回避することができる。
データ生成部51は、生成した対策データをヘッド制御部52へ出力する。ヘッド制御部52は、第1の通電制御期間と第2の通電制御期間を指定する制御信号であるストローブ信号を生成し、ヘッド駆動回路44へ出力する。より詳細には、ヘッド制御部52は、ROM41の通電テーブル記憶部41aから読み出した通電時間データと、サーミスタ31で測定したヘッド温度とに基づいて、第1の通電制御期間と第2の通電制御期間のそれぞれの通電時間(通電する時間の長さ)を算出する。そして、通電時間に応じたストローブ信号(制御信号)と、印刷データ(ラインデータ)と、データ生成部51で生成された対策データ(各ラインについての対策データ)と、をヘッド駆動回路44へ出力する。
図10に示すストローブ信号SSは、ヘッド制御部52により生成されるストローブ信号の一例である。ヘッド制御部52は、入力された本通電データ(本通電時間)と履歴通電データ(履歴通電時間)と対策データ(対策通電時間)に応じて、ストローブ信号SSの本通電制御期間T11、履歴通電制御期間T12、第2の通電制御期間T2の時間的な長さを設定する。本通電制御期間T11と履歴通電制御期間T12を合わせた期間が第1の通電制御期間T1となる。ヘッド制御部52は、各ラインを印刷するための1ライン周期T内に、第1の通電制御期間T1(本通電制御期間T11、履歴通電制御期間T12)と第2の通電制御期間T2を設定する。
このように生成されたストローブ信号に基づいて、ヘッド駆動回路44がサーマルヘッド30の各発熱素子30aへの通電を制御することで、対策対象ライン群を印刷する際のサーマルヘッド30の急激な温度低下を抑制することができる。従って、簡単な制御でスティッキングの発生を抑制し、スティッキングに起因する印刷品質の低下も回避することができる。
図8に例示した印刷画像IM1では、スティッキング発生推定ラインを含めて、印刷データに含まれる複数の印刷ラインの全てに、主走査方向において所定以上の範囲の印字領域(印刷ドットの数)が含まれている。つまり、複数の印刷ラインの全てが印刷対象ラインである。そのため、上述した対策データを利用したスティッキング防止制御によって、各ラインで印刷品質の低下を防ぐ効果が得られる。
これに対し、図11に示す印刷画像IM2では、副走査方向の所定範囲に亘って印刷対象が存在しない(白紙の)印刷内容になっている。換言すれば、主走査方向での印字領域(印刷ドット)を全く含まない複数のライン(印刷対象ラインではないライン)を含んでいる。例えば、図11に示す3つのラインQは、その直前のラインから印字率が急減するのでスティッキングが発生する可能性が高いラインであると共に、印字領域(印刷ドット)を含んでいないラインでもある。このような場合に、仮にいずれかのラインQでスティッキングが発生したとしても、当該ラインQ上には印刷する内容が存在しないため、スティッキングを起因とする印刷不良(印刷画像の部分的な欠落や乱れなど)は基本的に生じない。換言すれば、このようなラインQは、スティッキングによる印刷品質への影響が生じにくく、スティッキングの発生対策を行う必要性が低い対策除外ラインである。
上述したスティッキング防止制御では、対策データに基づいて、1ライン周期中の第2の通電制御期間にサーマルヘッド30の発熱素子30aに電圧を印加する。一方、図11の印刷画像IM2のように、ラインQ(対策除外ライン)に対してスティッキング防止制御を行っても、印刷品質の向上に寄与しない(寄与しにくい)場合もある。そのため、スティッキングが発生する可能性が高い全てのラインに対して一律にスティッキング防止制御を実行すると、電力消費を要する一方で、それに見合った有用な効果を得られない可能性が出てくる。
また、スティッキング防止制御で第2の通電制御期間に発熱素子30aに電圧を印加することにより、サーマルヘッド30の温度を高める傾向になり、スティッキング防止制御の頻度や継続の程度によっては、印字品位に悪影響(階調が高くなりすぎるなど)を及ぼすほどサーマルヘッド30が高温になる可能性がある。つまり、スティッキングの発生を防止するためにサーマルヘッド30の温度変化を抑制することが望ましいが、その結果としてサーマルヘッド30の温度が高くなりすぎることは回避したい、という要求がある。
以上のような課題や要求に対応するべく、本実施形態の印刷装置10では、必要最小限のスティッキング防止制御を行うものとしている。具体的には、制御装置40が、印刷データに含まれる各ラインについて、スティッキング発生対策を行うのが有用なラインであるか否かを判定し、有用ではない(有用性が低い)ラインの場合には、スティッキング発生対策の適用外にする。すなわち、印刷データに基づいて、スティッキングによる印刷品質への影響が所定以下である対策除外ラインを判定し、対策除外ラインについては、スティッキングの発生可能性に関わらず、スティッキング防止制御を行わないようにする。これにより、スティッキングの発生を抑えるためのサーマルヘッド30の電力消費(第2の通電制御期間での発熱素子30aへの電圧の印加)を少なくして、スティッキングによる印刷品質の低下を効率良く防止することができる。また、スティッキング防止制御に伴うサーマルヘッド30の過剰な高温化を防ぐことができる。
対策除外ラインの判定は、推定部50(決定部54)によって行うことが望ましい。詳細は後述するが、スティッキング発生推定ライン決定処理(図12)の一部として対策除外ラインの判定を行うことが好適であり、スティッキング発生推定ライン決定処理を担当する推定部50の機能の一部として、対策除外ラインの判定を行うことができる。
なお、図11では、ラインQ(対策除外ライン)に印字領域が全く含まれない(全白)タイプの印刷画像IM2を例にしているが、印字領域を含むラインでも、印字する範囲が狭い(印字率が低い)場合や、印字の濃度が極めて薄い場合などには、スティッキングの発生を起因とする印刷品質の低下が目立たないと想定される。制御装置40は、このようなラインについても対策除外ラインであると判定することができる。つまり、スティッキングによる印刷品質への影響が所定以下であるという概念は、ラインQのように印刷品質に影響を受ける印刷内容を全く含まない場合と、印字領域を含むもののスティッキングの発生が印刷品質における実質的な問題になりにくい場合の両方を含むものである。
図12から図14のフローチャートを参照して、印刷装置10におけるデータ生成と印刷処理の流れを説明する。図12は、スティッキング発生推定ライン決定処理のフローチャートである。図13は、対策データ生成処理のフローチャートである。図14は、ライン印刷処理のフローチャートである。
スティッキング発生推定ライン決定処理では、図12に示すように、推定部50は、印刷データのうちの現在ラインのラインデータ(本通電用のラインデータ)を取得する(ステップS201)。スティッキング発生推定ライン決定処理における現在ラインは、スティッキング発生の推定処理が完了していないラインのうち最も先頭のラインになる。そして、現在ラインに対応する本通電用のラインデータを現在ラインデータとする。
なお、印刷データに含まれる全てのラインのうち印刷順序が先頭であるライン(第1ライン)については、スティッキングが発生する状況にはならないものとして、初めからスティッキング発生推定ラインではないという扱い(後述するステップS206でのスティッキング発生推定ラインの決定対象外)にすることも可能である。
推定部50は、ステップS201で取得した現在ラインデータをチェックして、対策除外ラインに該当するか否かを判定する(ステップS202)。換言すれば、現在ラインデータが、スティッキングが発生した場合に、印刷品質への影響が所定以下に留まる印刷内容であるかを判定する。この判定基準は、適宜選択が可能である。
例えば、最も厳格な判定基準では、図11に示すラインQのように、現在ラインデータに印字領域(印字ドット)が全く含まれない場合だけを対策除外ラインであると判定する。換言すれば、現在ラインデータに僅かでも印字領域(印字ドット)が含まれる(印刷対象ラインである)場合には、対策除外ラインではないと判定する。この判定基準によれば、スティッキング防止制御の対象となるライン(対策除外ラインではないライン)が多くなりやすいので、スティッキングを起因とする印刷品質の低下を抑制する効果が高い。
これよりも緩和した判定基準として、現在ラインデータが印字領域(印字ドット)を含む印刷対象ラインであっても、印刷品質に目立った影響が生じない範囲であれば、対策除外ラインであると判定するようにしてもよい。この判定基準によれば、スティッキング防止制御の実行頻度を低くして、サーマルヘッド30の高温化や電力消費を抑制する効果が見込める。
具体的には、印刷品質に目立った影響が生じるか否かの判定基準として、主走査方向での印字率に閾値を設定し、現在ラインデータの印字率が閾値以下である場合に、対策除外ラインであると判定してもよい。その理由として、印字率が高いラインほど、スティッキングを起因とする印刷の欠落や乱れが目立ちやすく、印刷品質に及ぼす影響が大きいので、スティッキング発生防止への要求が高いためである。閾値は、予め設定されてROM41などに記憶された設定(固定)値であってもよいし、温度センサ49で測定された環境温度などを加味して変化する変動値であってよい。
なお、図11のラインQでは印字率の値が「0」であるため、印字率が閾値以下という判定基準を必ず満たすものとなり、対策除外ラインであると判定される。
環境温度については、スティッキングを起因とする印字の欠落が生じた場合に、低温環境であるほど当該欠落が複数のライン間で目立ちやすく、高温環境であるほど当該欠落が複数のライン間で目立ちにくい傾向がある。従って、環境温度が低いほど、上記の閾値を低くすることができる。
また、印刷品質に目立った影響が生じるか否かの判定基準として、現在ラインデータにおける印字領域(印刷ドット)の分布を参照することができる。印字率が同程度でも、印字領域が主走査方向に連続する場合と、印字領域が主走査方向で分散している場合では、スティッキングの影響を受けたときの見栄えが異なる可能性がある。例えば、主走査方向での印字領域の分散度が高いほど、個々の印字領域の欠落や乱れが目立たず印刷品質には影響しにくくなると想定して、印字領域の分布を加味して対策除外ラインの判定を行ってもよい。
さらに、印刷品質に目立った影響が生じるか否かの判定基準として、現在ラインとその前後のラインとの間における印字領域の相対的な関係を参照することもできる。複数のラインに亘って副走査方向に連続して印字する箇所では、一部のラインにスティッキングに起因する印字不良(欠落やずれ)が生じると、当該部分が印刷の途切れやずれであると認識されて目立ちやすい。これに対し、隣接するライン間で副走査方向に印字が連続していない箇所では、一部のラインにスティッキングに起因する印字不良(欠落やずれ)が生じても、当該部分が印刷の途切れやずれとして認識されにくい傾向がある。従って、現在ラインデータとその前後のラインデータとを比較部53で比較参照し、その比較結果を加味することで、決定部54は、印刷品質への影響をより高い精度で判定して対策除外ラインの決定を行うことができる。
現在ラインが対策除外ラインではないと判定した場合(ステップS202:NO)、推定部50は、現在ラインの1つ前の前ラインのラインデータ(本通電用のラインデータ)を取得する(ステップS203)。この段階で、現在ラインはスティッキング発生推定ラインであるか否かが判定されておらず、スティッキング発生推定ラインの1つ前のラインを意味する上述の「先行ライン」と区別するべく、ステップS203では「前ライン」と称している。そして、前ラインのラインデータを前ラインデータとする。
続いて、推定部50は、互いに隣接して印刷される2つのラインのそれぞれに対応する2つのラインデータを比較する(ステップS204)。ここでは、比較部53が、ステップS201とステップS203で取得した現在ラインデータと前ラインデータを比較する。具体的には、例えば、前ラインデータと現在ラインデータの各々に含まれる連続した印刷ドットを示すデータ「0xff」をカウントし、その比(前ラインの0xff数/現在ラインの0xff数)を算出する。
推定部50は、比較結果に基づいて現在ラインがスティッキング発生推定ラインか否かを判定する(ステップS205)。ここでは、決定部54が前ラインデータと現在ラインデータとの比較結果に基づいて、現在ラインでスティッキングが発生する可能性が比較的高いか否かを判定する。具体的には、例えば、ステップS204で算出した比(前ラインの0xff数/現在ラインの0xff数)が1.5を上回っている場合には、現在ラインでスティッキングが発生する可能性が比較的高いと判定し、1.5以下である場合には、現在ラインスティッキングが発生する可能性は比較的低いと判定する。
現在ラインでスティッキングが発生する可能性が比較的高いと判定されると(ステップS205:YES)、推定部50は、現在ラインがスティッキング発生推定ラインであると決定する(ステップS206)。
現在ラインでスティッキングが発生する可能性が比較的低いと判定されると(ステップS205:NO)、ステップS206の処理はスキップされ、現在ラインはスティッキング発生推定ラインではないという扱いになる。
また、上述のステップS202で、現在ラインが対策除外ラインであると判定した場合(ステップS202:YES)、ステップS203からステップS206までの処理はスキップされる。つまり、推定部50は、スティッキングが発生しても印刷品質への影響が低い(あるいは影響しない)と判断される印刷内容のラインについては、仮にスティッキングが発生しそうな場合でも、スティッキング発生推定ラインには設定しないという処理を行う。
例えば、図11の印刷画像IM2における3つのラインQはそれぞれ、ステップS202での判定を行わない場合には、そのままステップS203からステップS206まで進んでスティッキング発生推定ラインとして決定され得るものである。しかし、これらのラインQは、ステップS202での判定によって対策除外ラインとなり、ステップS206までをスキップされて、スティッキング発生推定ラインには設定されない。
続いて、推定部50は、ステップS203でラインデータを取得した現在ラインが最終ラインか否かを印刷データに基づいて判定する(ステップS208)。現在ラインが最終ラインであれば(ステップS208:YES)、スティッキング発生推定ライン決定処理を終了する。一方、現在ラインが最終ラインでなければ(ステップS208:NO)、ステップS208で最終ラインであると判定されるまで、ステップS201からステップS207の処理を繰り返す。
図12に示すスティッキング発生推定ライン決定処理が終了すると、データ生成部51は、図13に示す対策データ生成処理を開始する。対策データ生成処理では、データ生成部51は、まず、対策対象ライン数を設定する(ステップS301)。対策対象ライン数は、第2の通電制御期間中にサーマルヘッド30の発熱素子30aに電圧を印加するライン(対策対象ライン群に含まれるライン)の数である。上述のように、対策対象ライン群は、スティッキング発生推定ラインの1つ前のラインである先行ラインから連続する一群のラインである。ここでは、ライン数設定部55が、例えば、温度センサ49から出力される環境温度に基づいて対策対象ライン数を設定してもよく、RAM42の印刷データ記憶部42aから読み出した印刷データに基づいて対策対象ライン数を設定してもよい。
続いて、データ生成部51は、印刷データのうちの現在ラインのラインデータを取得する(ステップS302)。対策データ生成処理における現在ラインは、対策データの設定処理が完了していないラインのうち最も先頭のラインになる。ここでは、パターン設定部56が、RAM42の印刷データ記憶部42aから現在ラインのラインデータ(本通電用のラインデータ)を読み出す。
続いて、データ生成部51は、履歴通電用のラインデータを生成する(ステップS303)。ここでは、パターン設定部56が、既に取得されている本通電用のラインデータに基づいて、現在ラインの履歴通電用のラインデータを生成し、RAM42の印刷データ記憶部42aに格納する。
履歴通電用のラインデータが生成されると、パターン設定部56は、推定部50から出力されたスティッキング発生推定ラインデータに基づいて、現在ラインが先行ラインであるか否かを判定する(ステップS304)。
現在ラインが先行ラインであると判定されると(ステップS304:YES)、パターン設定部56は、RAM42の印刷データ記憶部42aから次ライン(すなわち、スティッキング発生推定ライン)のラインデータ(本通電用のラインデータ)を先読みし、現在ライン(先行ライン)のラインデータと次ライン(スティッキング発生推定ライン)のラインデータとに基づいて、現在ラインの対策データのパターンを設定する(ステップS305)。そして、設定されたパターンを有する現在ラインの対策データを生成する(ステップS309)。
現在ラインが先行ラインではないと判定されると(ステップS304:NO)、パターン設定部56は、現在ラインが先行ラインからステップS301で設定した対策対象ライン数以内か否かを判定する(ステップS306)。
ステップS306で対策対象ライン数以内と判定されると(ステップS306:YES)、パターン設定部56は、現在ラインの1ライン前のラインの対策データのパターンを引き継ぐ(ステップS307)。そして、1ライン前のラインの対策データのパターンと同じパターンを有する現在ラインの対策データを生成する(ステップS309)。
図13のステップS307は、図8の対策データ生成例のように、先行ライン以外の対策対象ライン群の各ラインに対する対策データとして、先行ラインの対策データのパターンを引き継ぐ(コピーする)場合の処理である。これとは異なり、図9の対策データ生成例のように、先行ライン以外の対策対象ライン群の各ラインに対する対策データとして、各ラインの本通電データのパターンを反転したパターンを用いてもよい。この場合は、ステップS307での処理内容が、「本通電データのパターンを反転した対策データのパターンを設定」に変更される。
ステップS306で対策対象ライン数以内でないと判定されると(ステップS306:NO)、パターン設定部56は、対策データのパターンをオフだけからなる空パターンに設定し(ステップS308)、空パターンを有する現在ラインの対策データを生成する(ステップS309)。
図12のスティッキング発生推定ライン決定処理におけるステップS202で、対策除外ラインであると判定されたラインについては、ステップS206でのスティッキング発生推定ラインの決定が行われていない。そのため、対策除外ラインを基準(スティッキング発生推定ライン)とした対策対象ライン群の設定は行われず、結果として、対策除外ラインでのスティッキングを防止する内容の対策データは生成されない。
例えば、図13の対策データ生成処理におけるステップS302でラインデータを取得した現在ラインが、対策除外ラインの1つ前のラインであるとする。対策除外ラインはスティッキング発生推定ラインとして設定されていない(ステップS202:YES)ため、現在ラインを先行ラインとするフラグが立っておらず、ステップS304での判定はNOになる。
また、図13の対策データ生成処理におけるステップS302でラインデータを取得した現在ラインが、対策除外ラインの1つ後のラインであるとする。対策除外ラインはスティッキング発生推定ラインとして設定されていない(ステップS202:YES)ため、現在ラインを対策対象ライン群に含めるフラグが立っておらず、ステップS306での判定はNOになる。
また、図13の対策データ生成処理におけるステップS302でラインデータを取得した現在ラインが対策除外ラインである場合にも、当該対策除外ラインがスティッキング発生推定ラインとして設定されていない(ステップS202;YES)ことから、ステップS304とステップS306での判定はそれぞれNOになる。
その結果、対策除外ラインとその前後のラインはいずれも、対策除外ラインを基準とした場合には、先行ラインにはならず、且つ対策対象ライン群の一部にもならないので、これらの各ラインについて対策データ生成処理を行うと、対策データのパターンは、オフだけからなる空パターンに設定される(ステップS308)。つまり、対策除外ラインでのスティッキングを防止するための電圧の印加を第2の通電制御期間で行わない、という内容の対策データになる。
対策データが生成されると、データ生成部51は、現在ラインが最終ラインか否かを判定し(ステップS310)、最終ラインであれば(ステップS310:YES)対策データ生成処理を終了する。一方、最終ラインでなければ(ステップS310:NO)、データ生成部51は、RAM42の印刷データ記憶部42aから次ラインのラインデータ(本通電用のラインデータ)を読み出し、読み出したラインを現在ラインに設定する(ステップS311)。その後、ステップS310で現在ラインが最終ラインであると判定されるまで、ステップS304からS311の処理を繰り返す。これにより、印刷されるライン数と同数の対策データを含む対策データが生成される。データ生成部51は、生成した対策データをRAM42の印刷データ記憶部42aに格納する。
図13に示す対策データ生成処理が終了すると、ヘッド制御部52は、図14に示すライン印刷処理を開始する。ライン印刷処理では、ヘッド制御部52は、まず、サーミスタ31から出力されるサーマルヘッド30のヘッド温度のデータを取得する(ステップS401)。
次に、ヘッド制御部52は、ROM41の通電テーブル記憶部41aから通電時間を取得する(ステップS402)。ここでは、ヘッド制御部52は、通電テーブル記憶部41aに格納されている通電テーブルを参照して、ステップS401で取得したヘッド温度に応じた通電時間(本通電時間、履歴通電時間、対策通電時間)を取得する。
通電時間を取得すると、ヘッド制御部52は、RAM42の印刷データ記憶部42aからラインデータ(本通電用のラインデータと履歴通電用のラインデータ)と対策データを取得する(ステップS403)。
続いて、ヘッド制御部52は、ラインデータ(本通電用のラインデータと履歴通電用のラインデータ)と対策データと制御信号であるストローブ信号をヘッド駆動回路44へ出力する(ステップS404)。ここでは、ヘッド制御部52は、ステップS402で取得した本通電時間と履歴通電時間と対策通電時間に応じたストローブ信号(例えば、図10に示すストローブ信号SS)を生成し、ヘッド駆動回路44へ出力する。これにより、ヘッド駆動回路44がラインデータ(本通電用のラインデータと履歴通電用のラインデータ)と対策データと制御信号(ストローブ信号)に基づいてサーマルヘッド30を駆動し、サーマルヘッド30により被印刷媒体Mに1ライン分の印刷が行われる。
ヘッド制御部52は、ステップS403でラインデータを取得したラインが最終ラインか否かを判定し(ステップS405)、最終ラインであればライン印刷処理を終了する(ステップS405:YES)。一方、最終ラインでなければ(ステップS405:NO)、ステップS405で最終ラインであると判定されるまで、ステップS401からS405を繰り返す。
印刷装置10が以上のデータ処理及び印刷処理を行うことで、簡単な制御によりスティッキングの発生を抑制することができる。特に、対策データは、図8や図9に示すように、スティッキング発生推定ラインの1ライン前の先行ラインから対策対象ライン数だけ連続して第2の通電制御期間に複数の発熱素子30aの少なくとも一部へ電圧が印加されるように生成される。これにより、印刷装置10では、少なくとも先行ラインの第2の通電制御期間には電圧が印加されることになるため、スティッキング発生推定ラインでの温度の急激な低下を緩和することができる。
また、印刷装置10は、スティッキング発生推定ライン以降において大きな温度低下が予想される場合にも有効である。印刷装置10では、対策対象ライン数が環境温度や印刷データに基づいて適切に設定されるため、スティッキング発生推定ライン以降のラインでの温度の急激な低下についても緩和することができる。従って、スティッキングの発生をさらに抑制することができる。
また、印刷装置10では、先行ラインにおける対策データのパターンが、先行ラインとスティッキング発生推定ラインのラインデータに基づいて設定される。このため、比較的印字率が高くサーマルヘッド30が高温になる先行ラインにおいて、第2の通電制御期間における通電制御により印刷ドットの階調が変化してしまうといった事態が生じないように対策データのパターンを設定することができる。従って、スティッキングの発生を抑制しながらスティッキング対策に起因する印刷品質の低下を回避することができる。
印刷装置10ではさらに、印刷データなどに基づいて、スティッキング防止制御が有用なラインであるか否かを判断し、有用性の低いライン(対策除外ライン)については、スティッキングの発生可能性に関わりなく、スティッキング防止制御を行わないようにしている。このように、単にスティッキングの発生を推定してその抑制を図るだけでなく、印刷内容に応じて、印刷品質の向上に顕著な効果が得られる場合に絞ってスティッキング防止制御を実行することで、スティッキング防止制御に要する電力消費(第2の通電制御期間での電圧の印加)や制御の負担を低減させて、効率良く印刷品質を向上させることができる。また、サーマルヘッド30が過剰に加熱されることを防止できる。
以上のように、本実施の形態に係る印刷装置、印刷制御方法、及びプログラムによれば、サーマルヘッド30の制御負担や電力消費を低減して、効率良くスティッキングによる印刷品質の低下を防ぐことができる。
なお、上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
本発明は、複数の発熱素子の少なくとも一部に対して、印字用の通電とは別にサーマルヘッド温度調節用の通電を行うことでスティッキングの発生を抑制させるタイプの印刷装置において、広く適用が可能である。つまり、対策除外ラインを対象としたスティッキング防止制御を行わないという技術的ポイントを含むものであればよく、スティッキング防止制御の詳細は上述した実施形態とは異なっていてもよい。
例えば、図12に示すスティッキング発生推定ライン決定処理では、ステップS202で対策除外ラインの判定を先に行い、ここで対策除外ラインである場合には、スティッキング発生推定ラインとして設定しないようにステップS206までをスキップさせている。この処理では、予め対策除外ラインを除外してから、スティッキング発生推定ラインの判定(図12のステップS205)や、第2の通電制御期間での通電を含む場合の対策データのパターン設定(図13のステップS305、ステップS307)を行うので、これらの後続処理における制御負担を軽減することができる。
しかし、対策除外ラインに関する判定を、上記とは異なる態様で組み込んでもよい。一例として、スティッキング発生推定ライン決定処理の変形例として、スティッキング発生推定ラインの決定(図12のステップS206に相当)を先に行い、設定されたスティッキング発生推定ラインが対策除外ラインに該当するか否かを後から判定し、対策除外ラインに該当したものをスティッキング発生推定ラインから除外する(スティッキング発生フラグを外す)、という処理を行ってもよい。
また、スティッキング防止制御の詳細についても、上述した実施形態には限定されない。例えば、図8及び図9に示す印刷データと対策データの組み合わせ例では、先行ライン(第n-1ライン)とスティッキング発生推定ライン(第nライン)に加えて、続く第n+1ラインと第n+2ラインまでを対策対象ライン群としている。この例とは異なり、先行ラインとスティッキング発生推定ラインだけを対策対象ライン群に設定して、スティッキング防止制御を行うことも可能である。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
複数の発熱素子を有し、被印刷媒体に複数のラインを印刷するサーマルヘッドと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記複数のラインのそれぞれを印刷させるための複数の印刷ラインデータを含む印刷データに基づいて、前記複数のラインのうち、スティッキングが発生する可能性があると推定されるスティッキング発生推定ラインを設定し、
前記複数のラインのそれぞれについて、少なくとも前記印刷データに基づいて、スティッキングによる印刷品質への影響が所定以下である対策除外ラインであるか否かを判定し、
前記対策除外ラインではないと判定された場合、少なくとも前記スティッキング発生推定ラインの直前の先行ラインの印刷と前記スティッキング発生推定ラインの印刷の間に、前記複数の発熱素子の少なくとも一部に電圧を印加して前記サーマルヘッドの温度低下を抑制するスティッキング防止制御を行い、
前記対策除外ラインであると判定された場合、前記対策除外ラインについては前記スティッキング防止制御を行わないことを特徴とする印刷装置。
[付記2]
前記制御装置は、前記印刷ラインデータに印字領域が含まれないラインを前記対策除外ラインと判定することを特徴とする付記1に記載の印刷装置。
[付記3]
前記制御装置は、前記印刷ラインデータでの印字率が閾値以下であるラインを前記対策除外ラインと判定することを特徴とする付記1に記載の印刷装置。
[付記4]
前記制御装置は、
前記対策除外ラインを前記スティッキング発生推定ラインとせず、前記複数のラインのうち前記対策除外ライン以外のラインについて、隣接する2つのラインの前記印刷ラインデータを比較して前記スティッキング発生推定ラインの決定を行うことを特徴とする付記1から3のいずれかに記載の印刷装置。
[付記5]
前記制御装置は、前記スティッキング防止制御として、
前記複数のラインのそれぞれを印刷するための1ライン周期内に前記被印刷媒体に印刷を行うための第1の通電制御期間を設定するとともに、前記1ライン周期内に前記被印刷媒体に印刷を行うことなく前記サーマルヘッドの温度変化を調整するための、前記第1の通電制御期間から離間した第2の通電制御期間を設定し、
少なくとも前記印刷データに基づいて、前記スティッキング発生推定ラインと前記先行ラインを少なくとも含む対策対象ライン群のそれぞれのラインにおける前記第2の通電制御期間において、前記複数の発熱素子の少なくとも一部に電圧が印加されるように制御するための対策データを生成することを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の印刷装置。
[付記6]
印刷装置のサーマルヘッドにより被印刷媒体に複数のラインを印刷させるための複数の印刷ラインデータを含む印刷データに基づいて、前記複数のラインのうち、スティッキングが発生する可能性があると推定されるスティッキング発生推定ラインを設定し、
前記複数のラインのそれぞれについて、少なくとも前記印刷データに基づいて、スティッキングによる印刷品質への影響が所定以下である対策除外ラインであるか否かを判定し、
前記対策除外ラインではないと判定された場合、少なくとも前記スティッキング発生推定ラインの直前の先行ラインの印刷と前記スティッキング発生推定ラインの印刷の間に、前記複数の発熱素子の少なくとも一部に電圧を印加して前記サーマルヘッドの温度低下を抑制するスティッキング防止制御を行い、
前記対策除外ラインであると判定された場合、前記対策除外ラインについては前記スティッキング防止制御を行わないことを特徴とする印刷制御方法。
[付記7]
印刷装置が備えるコンピュータに、
サーマルヘッドにより被印刷媒体に複数のラインを印刷させるための複数の印刷ラインデータを含む印刷データに基づいて、前記複数のラインのうち、スティッキングが発生する可能性があると推定されるスティッキング発生推定ラインを設定させ、
前記複数のラインのそれぞれについて、少なくとも前記印刷データに基づいて、スティッキングによる印刷品質への影響が所定以下である対策除外ラインであるか否かを判定させ、
前記対策除外ラインではないと判定された場合、少なくとも前記スティッキング発生推定ラインの直前の先行ラインの印刷と前記スティッキング発生推定ラインの印刷の間に、前記複数の発熱素子の少なくとも一部に電圧を印加して前記サーマルヘッドの温度低下を抑制するスティッキング防止制御を行わせ、
前記対策除外ラインであると判定された場合、前記対策除外ラインについては前記スティッキング防止制御を行わせないことを特徴とするプログラム。