JP7130944B2 - 検査システム、検査方法及び検査システムの製造方法 - Google Patents
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Description
樹脂シート10は、床材などの建材の化粧シート、農業用シート、半導体素子の封止シート、包装用シートなど、様々な用途で用いられ得るシートである。樹脂シート10は、基材シート11と、基材シート11に積層された樹脂層12と、を備える。樹脂層12は、基材シート11の面の全域に設けられていてもよく、若しくは、模様を呈するように基材シート11の面に部分的に設けられていてもよい。以下の説明において、樹脂シート10の面のうち、樹脂層12側に位置する面を第1面10xと称し、基材シート11側に位置する面を第2面10yと称する。
ポリエチレン系樹脂の例としては、ポリエチレンの他、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)などの、エチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体などを挙げることができる。また、樹脂層12の樹脂材料は、ゴムを含んでいてもよい。
ゴムの例としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴムなどを挙げることができる。樹脂層12の厚みは、例えば50μm以上且つ600μm以下である。
次に、上述の樹脂シート10の状態を検査するための検査システム20について説明する。はじめに、検査システム20の原理について説明する。
照射装置21は、樹脂シート10に照射光として近赤外線を照射するための構成要素である。図2に示すように、照射装置21は、近赤外線を照射することが可能な照射部211を含む。照射部211によって、樹脂シート10の第1面10x側から樹脂シート10の領域に照射光を照射することができる。照射光とする近赤外線の波長は、例えば800nm以上2500nm以下である。
検出装置24は、樹脂シート10によって反射された照射光L1を受光して拡散反射スペクトルを取得するための構成要素である。検出装置24は、上述の照射装置21と一体化していてもよい。検出装置24の大きさは、特に限定されないが、小型であることが好ましい。「小型」とは、検出装置24の質量(検出装置24が照射装置21と一体化している場合には、検出装置24と照射装置21との質量を合わせた質量)が1000g以下であることを意味する。検出装置24が照射装置21と一体化していること、及び検出装置24が小型であることにより、検査システム20の持ち運びが容易になり、屋外での検査や、固定されていて動かせない試料の検査がより容易になる。以下の説明において、樹脂シート10によって反射された照射光L1のことを、反射光L2とも称する。
(吸光度)=log{100/(100-R)}
処理装置27は、検出装置24が取得した拡散反射スペクトルに所定の処理を施すための構成要素である。処理装置27は、上述の検出装置24と一体化していてもよい。以下の説明において、拡散反射スペクトルに所定の処理を施すことにより複数の波長点において得られた値のことを、パラメータ値と称する。なお、「拡散反射スペクトルに処理を施す」とは、拡散反射スペクトルそのものに処理を施す場合だけでなく、上述の吸収スペクトルなど、拡散反射スペクトルと同等の情報を含むスペクトルに対して処理を施す場合も含む概念である。
平均化処理を行うことにより、樹脂シート10の表面に凹凸があったり、表面の状態が均一でなかったりする場合であっても、複数の領域から取得した拡散反射スペクトルを平均化して判定に用いることにより、より精度よく分子量を算出し、樹脂シート10の状態を判定することができる。
判定装置28は、処理装置27が算出したパラメータ値に基づいて樹脂層12の樹脂材料の分子量を算出することにより、樹脂シート10の状態を判定するための構成要素である。判定装置28は、上述の処理装置27と一体化していてもよい。図2に示すように、判定装置28は、記憶部281と、解析部282と、判定部283と、を含む。
次に、上述の検査システム20を用いて樹脂シート10の状態を検査するための検査方法について説明する。
まず、照射装置21の照射部211を用いて、樹脂シート10に、照射光として近赤外線を照射する照射工程を行う。
次に、近赤外線を樹脂シート10に照射することにより生じる反射光を、検出装置24により受光し、複数の波長点における反射光の強度に関する情報を含む拡散反射スペクトルを取得する検出工程を行う。
次に、検出工程において取得した拡散反射スペクトルに、処理装置27により、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施して、複数の波長点に対応する複数のパラメータ値を算出する処理工程を行う。
次に、判定工程を行う。判定工程においては、まず判定装置28の記憶部281に記憶された回帰式、及び処理工程において算出したパラメータ値に基づいて、解析部282において樹脂材料の分子量を算出する。そして、算出した分子量に基づいて、判定部283において樹脂シート10の状態を判定する。
以上の方法により、樹脂シート10の状態を判定することができる。検査方法の具体例については、実施例において後述する。
次に、上述の検査システム20を製造するための製造方法について説明する。
まず、図2に示すような照射装置21、検出装置24、処理装置27及び判定装置28を準備する。
次に、照射装置21の照射部211を用いて、樹脂材料を含む樹脂層12を備える樹脂シート10を有する複数の標準試料に近赤外線を照射する標準試料照射工程を行う。
次に、照射光を複数の標準試料に照射することにより得られる反射光を、それぞれ検出装置24により受光し、各々が複数の波長点における反射光の強度に関する情報を含む、複数の標準試料拡散反射スペクトルを取得する標準試料検出工程を行う。
次に、複数の標準試料拡散反射スペクトルの各々に、処理装置27により、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施して、複数の波長点に対応する複数のパラメータ値をそれぞれ算出する標準試料処理工程を行う。
次に、判定装置28の解析部282において、各標準試料の複数のパラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する回帰式作成工程を行う。多変量解析手法としては、例えばPLS回帰分析を行うことができる。多変量解析は、記憶部281に多変量解析用のプログラムを記録しておき、このプログラムを解析部282において実行することによって行うことができる。作成した回帰式は、判定装置28の記憶部281に記録しておく。
以上の方法により、上述の検査システム20を製造することができる。回帰式作成工程の具体例については、実施例において後述する。
なお、上述の実施の形態においては、検出装置24が取得した拡散反射スペクトル又は吸収スペクトルに微分などの処理を施すことによって得られるパラメータ値に基づいて、多変量解析を実施する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、拡散反射スペクトル又は吸収スペクトルに含まれる、各波長点における強度、反射率、吸収率などの値に基づいて、多変量解析を実施してもよい。
検査システムの製造方法
(標準試料の準備工程)
まず、実施例1に係る検査システム20の製造方法について説明する。具体的には、検査システム20の記憶部281に記憶させておく回帰式の作成方法について説明する。
次に、準備した約270個のサンプルのそれぞれについて、3箇所に近赤外線を照射し、3つの拡散反射スペクトルを取得した。図4に、取得した拡散反射スペクトルを反転させることによって得られる吸収スペクトルを示す。近赤外線を照射する照射装置21、及び反射光を検出して吸収スペクトルを生成する検出装置24としては、近赤外線の照射機能と検出機能とが一体化した近赤外線分光器を用いた。具体的には、テキサス・インスツルメンツ製の近赤外線分光器 DLP NIR Scan Nanoを用いた。検出装置24の波長分解能は10nmであり、出力波長間隔は3.5nmであるため、吸収スペクトルは、波長900nm以上1700nm以下の範囲内の228個の波長点における、樹脂シート10の吸収率に関する情報を含む。
次に、処理装置27を用いて、吸収スペクトルの各々に二次微分の処理を施し、波長900nm以上1700nm以下の範囲内の各波長点におけるパラメータ値を算出した。パラメータ値の算出結果を図5に示す。
次に、判定装置28の解析部282を用いて、多変量解析としてPLS回帰分析を行って、各サンプルの吸収スペクトルに処理を施して得たパラメータ値と、各サンプルの分子量の基準値との関係を示す回帰式を作成した。結果を図6に示す。また、作成した回帰式を、判定装置28の記憶部281に記憶させた。PLS回帰分析には、カモソフトウェア製の多変量解析ソフト The Unscrambler Xを用いた。
回帰式作成工程の後、回帰式の精度などを検証する検証工程を行った。まず、標準試料として用いたサンプルと同様のサンプルを約130個準備した。これらのサンプルを、回帰式の精度などを検証するための検証用試料として用いた。検証用試料においても、樹脂層12の樹脂材料の分子量は既知である。続いて、標準試料の場合と同様に、準備した約130個のサンプルのそれぞれについて、3箇所に近赤外線を照射し、3つの拡散反射スペクトルを取得した。続いて、拡散反射スペクトルを吸収スペクトルに変換し、二次微分の処理を施してパラメータ値を算出した。続いて、算出したパラメータ値、及び、上述の回帰式作成工程において作成した回帰式に基づいて、各サンプルの樹脂層12の樹脂材料の分子量の予測値を算出した。結果を図7に示す。図7において、横軸は、約130個のサンプルの各3箇所から得られた吸収スペクトルのそれぞれに付したシリアル番号である。また、縦軸は、各吸収スペクトルから得られたパラメータ値に基づいて算出された分子量の予測値である。なお、図7には、分子量の予測値の誤差範囲を併せて示している。誤差範囲は、上述の多変量解析ソフト「The Unscrambler X」を用いて分子量の予測値を算出する際に出力される。
次に、検査システム20を用いた検査方法について説明する。最初に、樹脂層12の樹脂材料の分子量が未知の樹脂シート10からなるサンプルを57個準備した。
従って、本実施例による検査システム20を用いることにより、現場で簡易に樹脂シート10の樹脂層12の樹脂材料の分子量を算出することができ、このため、樹脂シートの状態を判定することができる。
検査システムの製造方法
(標準試料照射工程及び標準試料検出工程)
近赤外線を照射する照射装置21として、オーシャンフォトニクス社製の重水素ハロゲン光源 DH-2000を用い、反射光の受光及び拡散反射スペクトルの取得を行う検出装置24としてJFEテクノリサーチ株式会社製の近赤外線用イメージング分光解析装置
SWIR-2400を用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、標準試料の拡散反射スペクトルを取得した。標準試料としては、実施例1の場合と同様の樹脂シート10からなり、樹脂層12の樹脂材料の分子量が既知である15個のサンプルを用いた。
次に、測定領域において1画素毎に得た拡散反射スペクトルに対して、全て波長点毎に平均化処理を行って、領域全体における拡散反射平均化スペクトルを得た。取得したサンプルの拡散反射平均化スペクトルを図10に示す。
次に、実施例1の場合と同様に、処理装置27を用いて、拡散反射平均化スペクトルの各々に二次微分の処理を施し、波長900nm以上2400nm以下の範囲内の各波長点におけるパラメータ値を算出した。パラメータ値の算出結果を図11に示す。
次に、実施例1と同様の方法により、判定装置28の解析部282を用いて回帰式を作成した。結果を図12に示す。
回帰式作成工程の後、実施例1と同様の方法により、樹脂層12の樹脂材料の分子量が既知である7個のサンプルを検証用試料として用いて検証工程を行った。結果を図13に示す。また、図14に、検証用試料として用いた各サンプルの樹脂材料の分子量の予測値を菱形のマーカーで示し、各サンプルの既知の分子量を正方形のマーカーで示す。図14に示すように、各検証用試料の分子量の予測値は、基準値と近い値となっていた。よって、作成した回帰式によって、各サンプルの分子量を精度良く予測できたと言える。
10x 第1面
10y 第2面
11 基材シート
12 樹脂層
20 検査システム
21 照射装置
211 照射部
212 拡散部
24 検出装置
241 検出部
27 処理装置
28 判定装置
281 記憶部
282 解析部
283 判定部
Claims (20)
- 重合したポリエチレン系樹脂である樹脂材料を含む樹脂層を備える樹脂シートの状態を検査する検査システムであって、
前記樹脂シートに照射光として近赤外線を照射する照射部を含む照射装置と、
前記照射光を前記樹脂シートに照射することにより生じる反射光を受光し、複数の波長点における前記反射光の強度に関する情報を含む拡散反射スペクトルを取得する検出装置と、
複数の波長点における前記反射光の強度の値、又は、前記拡散反射スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と前記樹脂材料の重量平均分子量との関係を表す回帰式が予め記憶された記憶部と、前記記憶部の前記回帰式及び前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の前記樹脂材料の重量平均分子量を算出する解析部と、前記樹脂層の前記樹脂材料の重量平均分子量に基づいて前記樹脂シートの脆化の状態を判定する判定部と、を含む判定装置と、を備える、検査システム。 - 前記記憶部の前記回帰式は、前記樹脂材料を含む複数の標準試料の複数のパラメータ値と各標準試料の前記樹脂材料の重量平均分子量との関係を表している、請求項1に記載の検査システム。
- 前記記憶部の前記回帰式は、複数のパラメータ値に対応する複数の回帰係数を含む、請求項1又は2に記載の検査システム。
- 前記処理装置は、800nm以上2500nm以下の波長範囲内において、前記樹脂層のパラメータ値を69個以上含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の検査システム。
- 前記照射装置は、前記照射光を拡散させる拡散部をさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の検査システム。
- 前記樹脂シートは、前記樹脂層に重なり、セルロース樹脂を含む基材シートを更に含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の検査システム。
- 前記樹脂層の前記樹脂材料は、ゴムを含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の検査システム。
- 前記検出装置は、近赤外分光器を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の検査システム。
- 前記検出装置は、近赤外ハイパースペクトルカメラを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の検査システム。
- 重合したポリエチレン系樹脂である樹脂材料を含む樹脂層を備える樹脂シートの状態を検査する検査方法であって、
前記樹脂シートに照射光として近赤外線を照射する照射工程と、
前記照射光を前記樹脂シートに照射することにより生じる反射光を受光し、複数の波長点における前記反射光の強度に関する情報を含む拡散反射スペクトルを取得する検出工程と、
複数の波長点における前記反射光の強度の値、又は、前記拡散反射スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理工程と、
複数のパラメータ値と前記樹脂材料の重量平均分子量との関係を表す回帰式、及び前記処理工程において算出された前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の前記樹脂材料の重量平均分子量を算出し、前記樹脂層の前記樹脂材料の重量平均分子量に基づいて前記樹脂シートの脆化の状態を判定する判定工程と、を備える、検査方法。 - 前記回帰式は、前記樹脂材料を含む複数の標準試料の複数のパラメータ値と各標準試料の前記樹脂材料の重量平均分子量との関係に基づいて予め作成されている、請求項10に記載の検査方法。
- 前記回帰式は、複数のパラメータ値に対応する複数の回帰係数を含む、請求項10又は11に記載の検査方法。
- 前記処理工程は、800nm以上2500nm以下の波長範囲内において、前記樹脂層のパラメータ値を69個以上算出する、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の検査方法。
- 前記照射工程は、前記照射光を拡散させることを含む、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の検査方法。
- 前記樹脂シートは、前記樹脂層に重なり、セルロース樹脂を含む基材シートを更に含む、請求項10乃至14のいずれか一項に記載の検査方法。
- 前記樹脂層の前記樹脂材料は、ゴムを含む、請求項10乃至15のいずれか一項に記載の検査方法。
- 前記検出工程は、近赤外分光器を用いて前記拡散反射スペクトルを取得する、請求項10乃至16のいずれか一項に記載の検査方法。
- 前記検出工程は、近赤外ハイパースペクトルカメラを用いて前記拡散反射スペクトルを取得する、請求項10乃至16のいずれか一項に記載の検査方法。
- 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の検査システムの製造方法であって、
前記樹脂材料を含む樹脂層を備える樹脂シートを有する複数の標準試料に近赤外線を照射する標準試料照射工程と、
前記照射光を複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光をそれぞれ受光し、各々が複数の波長点における前記反射光の強度に関する情報を含む、複数の標準試料拡散反射スペクトルを取得する標準試料検出工程と、
複数の標準試料拡散反射スペクトルの複数の波長点における前記反射光の強度の値、又は、複数の前記標準試料拡散反射スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値としてそれぞれ算出する標準試料処理工程と、
各標準試料の複数のパラメータ値と各標準試料の前記樹脂材料の重量平均分子量との関係を表す回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する回帰式作成工程と、を備える、検査システムの製造方法。 - 前記回帰式作成工程は、重回帰分析、主成分回帰分析又はPLS回帰分析を行うことを含む、請求項19に記載の検査システムの製造方法。
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