本発明のポリエステル樹脂は、第1のジカルボン酸単位(A1)を含むジカルボン酸単位(A)とジオール単位(B)とを有している。
[ジカルボン酸単位(A)]
(第1のジカルボン酸単位(A1))
ジカルボン酸単位(A)は、少なくとも下記式(1)で表される第1のジカルボン酸単位(A1)を含んでいる。
(式中、各Z1はそれぞれアレーン環、各R1及び各R2は置換基、各kは0~4の整数、各mはそれぞれ0以上の整数を示す)。
前記式(1)において、環Z1で表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10-16アレーン環)、縮合三環式アレーン環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい環縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10-16アレーン環さらに好ましくは縮合多環式C10-14アレーン環が挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環集合アレーン環としては、ビアレーン環(例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1-フェニルナフタレン環、2-フェニルナフタレン環など)などのビC6-12アレーン環など)、テルアレーン環(例えば、テルフェニレン環などのテルC6-12アレーン環など)などが例示できる。好ましい環集合アレーン環は、ビC6-10アレーン環などが挙げられ、特にビフェニル環が好ましい。
2つの環Z1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。環Z1のうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環などが好ましく、なかでもベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環が好ましく、特に、複屈折をより低減し易い点からはベンゼン環が、よりガラス転移温度を向上し、かつ高屈折率化できる点からはナフタレン環が好ましい。特に、高い屈折率、低い複屈折及び高い耐熱性とのバランスに優れる点からベンゼン環が好ましい。
なお、フルオレン環の9位に結合する環Z1の置換位置は、特に限定されない。例えば、環Z1がベンゼン環の場合、1~6位のいずれかの位置であってもよく、環Z1がナフタレン環の場合、1位又は2位のいずれかの位置であってもよく、環Z1がビフェニル環の場合、2位、3位、4位のいずれかの位置であってもよい。
基R1で表される置換基としては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6-10アリール基など)など]、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)などが挙げられる。これらの基R1のうち、アルキル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、なかでもアルキル基が好ましい。アルキル基のうち、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基であり、特に、メチル基などのC1-3アルキル基が好ましい。
基R1の置換数kは、例えば、0~4程度の整数から選択でき、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に0である。なお、フルオレン環を構成する2つの異なるベンゼン環において、それぞれの置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。また、フルオレン環を構成する2つの異なるベンゼン環に置換する基R1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、kが2以上である場合、同一のベンゼン環に置換する2以上の基R1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R1の置換位置は、特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位乃至7位(2位、3位及び7位など)であってもよい。
基R2で表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭化水素基{例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基など);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基など);アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基など];アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基など)など};アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基など);シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基など);アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基など);アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基など);アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基など);シクロアルキルチオ基(例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基など);アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6-10アリールチオ基など);アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基など);アシル基(例えば、アセチル基などのC1-6アシル基など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基[例えば、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基など);ビス(アルキルカルボニル)アミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基など)など]などが挙げられる。
これらの基R2のうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい基R2としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基が挙げられ、具体的には、前記アルキル基としては、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、アリール基としては、フェニル基などのC6-12アリール基、アルコキシ基としては、メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基が挙げられる。なかでも、アルキル基、アリール基が好ましく、特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基、フェニル基などのC6-10アリール基が好ましい。
基R2の置換数mは、0以上の整数であればよく、環Z1の種類に応じて適宜選択できる。例えば、0~8程度の整数であってもよく、好ましくは0~4の整数、より好ましくは0~3の整数、さらに好ましくは0~2の整数、なかでも0又は1、特に0である。なお、異なる環Z1において、それぞれの置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよい。また、異なる環Z1に置換するそれぞれの基R2種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、置換数mが2以上である場合、同一の環Z1に置換する2以上の基R2の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。基R2の置換位置は、特に制限されず、環Z1と、カルボニル基[-C(=O)-]及びフルオレン環の9位との結合位置以外の位置に置換していればよい。
カルボニル基[-C(=O)-]の置換位置は、環Z1とフルオレン環との結合位置以外の位置であれば、特に限定されず、例えば、環Z1がベンゼン環である場合、2~6位のいずれかの位置であればよく、通常、4位であることが多い。環Z1がナフタレン環である場合、通常、フルオレン環の9位に対して、1位又は2位で結合するナフチル基の5~8位のいずれかの位置に置換している場合が多く、フルオレン環の9位に対して、ナフタレン環の1位又は2位が置換し(1-ナフチル又は2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位(特に、2,6位)などの関係で置換しているのが好ましい。環Z1がビフェニル環である場合、ビフェニル環の2~6位及び2’~6’位のいずれかの位置に置換していればよいが、例えば、ビフェニル環の3位又は4位がフルオレンの9位に結合していてもよく、ビフェニル環の3位がフルオレンの9位に結合する場合、カルボニル基の置換位置は、例えば、ビフェニル環の2位、4位、5位、6位、2’位、3’位、4’位のいずれの位置であってもよく、好ましくは6位、4’位のいずれかの位置(特に、6位)などに置換していてもよい。ビフェニル環の4位がフルオレンの9位に結合している場合、カルボニル基の置換位置は、ビフェニル環の2位、3位、2’位、3’位、4’位のいずれの位置であってもよく、好ましくは2位、4’位のいずれかの位置(特に、2位)などに置換していてもよい。
第1のジカルボン酸単位(A1)として代表的には、例えば、前記式(1)において、環Z1がそれぞれベンゼン環である9,9-ビス(カルボキシフェニル)フルオレン類{例えば、9,9-ビス(カルボキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレンなど];9,9-ビス(カルボキシ-アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(4-カルボキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-カルボキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシ-(モノ又はジ)C1-4アルキルフェニル)フルオレンなど];9,9-ビス(カルボキシ-アリールフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(4-カルボキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシ-C6-10アリールフェニル)フルオレンなど]など};環Z1がそれぞれナフタレン環である9,9-ビス(カルボキシナフチル)フルオレン類{例えば、9,9-ビス(カルボキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(6-カルボキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-カルボキシ-1-ナフチル)フルオレンなど]など};及びこれらのエステル形成性誘導体[例えば、低級アルキルエステル(メチルエステルなどのC1-4アルキルエステル)、酸ハライド(例えば、酸クロリドなど)、酸無水物など]などの第1のジカルボン酸成分(A1)に由来(又は対応)する単位などが挙げられる。
これらの第1のジカルボン酸成分(A1)は、慣用の方法、例えば、特許文献2に記載の方法[例えば、第1のジカルボン酸成分のカルボキシル基に代えてヒドロキシル基を有するジオール化合物と、トリフルオロメタンスルホン酸無水物とを塩基触媒(ピリジンなど)及び溶媒(アセトニトリル/トルエン混合溶媒など)の存在下で反応させてトリフラート化合物を調製する工程;このトリフラート化合物と一酸化炭素とを、遷移金属触媒(酢酸パラジウムなど)、配位性化合物(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなど)、塩基触媒(トリエチルアミンなど)、エステル化剤(メタノールなど)及び溶媒(トルエンなど)の存在下で反応させて、エステル化合物を調製する工程;このエステル化合物を塩基又は酸触媒により加水分解する工程などを含む方法など]などにより調製できる。
これらの第1のジカルボン酸単位(A1)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの第1のジカルボン酸単位のうち、9,9-ビス(カルボキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(6-カルボキシ-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシナフチル)フルオレンが好ましく、特に、複屈折をより低減し易く、高い屈折率、低い複屈折及び高い耐熱性とのバランスに優れる点から9,9-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシフェニル)フルオレンが好ましい。
第1のジカルボン酸単位(A1)の割合は、特に制限されず、ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば、0.01~100モル%程度の広い範囲から選択でき、例えば、0.1~90モル%、好ましくは、以下段階的に、0.5~70モル%、1~50モル%、3~40モル%、5~30モル%であり、さらに好ましくは5~20モル%、特に、8~15モル%である。
第1のジカルボン酸単位(A1)の割合が少なすぎると、耐熱性や屈折率を向上できないおそれがあるが、本発明では、第1のジカルボン酸単位(A1)の割合が比較的少なくても(ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば、50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下であっても)、意外にも耐熱性を大きく向上できる。そのため、ポリエステル樹脂の光学的特性などの他の特性のバランス(例えば、屈折率と複屈折とのバランスなど)に悪影響を与えることなく、耐熱性を向上できる。
また、ジカルボン酸単位(A)は、第1のジカルボン酸単位(A1)を少なくとも含んでいればよいが、通常、第2のジカルボン酸単位(A2)、第3のジカルボン酸単位(A3)及び第4のジカルボン酸単位(A4)から選択される少なくとも1種のジカルボン酸単位を含んでいる場合が多い。
(第2のジカルボン酸単位(A2))
第2のジカルボン酸単位(A2)は、下記式(2a)又は(2b)で表される。
(式中、各R3は置換基、各n及びpはそれぞれ0~4の整数、各X1及びX2はそれぞれ置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を示す)。
前記式(2a)及び(2b)において、置換基R3は、前記第1のジカルボン酸単位(A1)の項に記載の基R1と、置換数nは、前記第1のジカルボン酸単位(A1)の項に記載の置換数kと、それぞれ好ましい態様を含めて同様である。
基X1及びX2で表される炭化水素基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-8アルキレン基が挙げられる。好ましい炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキレン基であり、より好ましくは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキレン基であり、特に、エチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルキレン基である。
炭化水素基の置換基としては、例えば、アリール基(フェニル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基など)などが挙げられる。
基X1は直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、好ましくはエチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基である場合が多く、X2は直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルキレン基、好ましくはメチレン基、エチレン基である場合が多い。置換基を有する炭化水素基X1は、例えば、1-フェニルエチレン基、1-フェニルプロパン-1,2-ジイル基などであってもよい。なお、2つの基X1の種類は、互いに異なっていてもよく、通常、同一である。
前記式(2b)において、メチレン基の繰り返し数pは、例えば、0~4程度の整数から選択でき、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1である。
前記式(2a)で表されるジカルボン酸単位(A2)として、代表的には、例えば、X1が直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキレン基である単位、具体的には、例えば、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)フルオレン及びこれらのエステル形成性誘導体などの第2のジカルボン酸成分(A2)に由来する構成単位などが挙げられる。
前記式(2b)で表されるジカルボン酸単位(A2)として、代表的には、例えば、pが0であり、かつ基X2が直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキレン基である単位、具体的には、例えば、9-(1-カルボキシ-2-カルボキシエチル)フルオレン;pが1であり、かつ基X2が直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキレン基である化合物、9-(2,3-ジカルボキシプロピル)フルオレンなどの9-(ジカルボキシC2-8アルキル)フルオレン及びこれらのエステル形成性誘導体などの第2のジカルボン酸成分(A2)に由来するジカルボン酸単位などが挙げられる。
これらの第2のジカルボン酸単位(A2)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの第2のジカルボン酸単位(A2)のうち、複屈折を低減し易い点から、前記式(2a)で表されるジカルボン酸単位が好ましく、なかでも、9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)フルオレン、さらに好ましくは9,9-ビス(カルボキシC2-4アルキル)フルオレン、特に、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-3アルキル)フルオレン及びこれらのエステル形成性誘導体に由来するジカルボン酸単位が好ましい。
第2のジカルボン酸単位(A2)を含むことにより、ポリエステル樹脂の複屈折を低減し易くなる。第2のジカルボン酸単位(A2)を含む場合、第1のジカルボン酸単位(A1)と第2のジカルボン酸単位(A2)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=0.1/99.9~90/10程度の広い範囲から選択でき、例えば、0.5/99.5~70/30、好ましくは、以下段階的に、1/99~50/50、3/97~40/60、5/95~30/70、8/92~20/80であり、さらに好ましくは10/90~15/85である。第1のジカルボン酸単位(A1)が多すぎると、重合反応性が低下するおそれがあり、第2のジカルボン酸単位(A2)が多すぎると、耐熱性や屈折率が低下するおそれがある。
(第3のジカルボン酸単位(A3))
第3のジカルボン酸単位(A3)は、下記式(3)で表される。
(式中、Arはアレーン環、R4は置換基、qは0以上の整数を示す)。
前記式(3)において、環Arとしては、例えば、前記第1のジカルボン酸単位(A1)の項に記載の環Z1と同様のアレーン環などが挙げられる。好ましい環Arとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-14アレーン環が挙げられ、さらに好ましくはC6-12アレーン環、なかでもベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、特に、ナフタレン環が挙げられる。
基R4で表される置換基としては、例えば、前記第1のジカルボン酸単位(A1)の項に記載の基R2と好ましい態様を含めて同様の置換基などが挙げられる。
基R4の置換数qは、環Arの種類に応じて選択でき、例えば、0~6程度の整数、好ましくは0~4の整数、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に、0である。qが2以上である場合、2以上の基R4の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R4の置換位置は特に制限されず、カルボニル基[-C(=O)-]と環Arとの結合位置以外の位置に置換していればよい。
2つのカルボニル基[-C(=O)-]の置換位置は特に制限されず、例えば、環Arがベンゼン環である場合、2つのカルボニル基[-C(=O)-]は、o-位、m-位又はp-位のいずれの位置関係で置換していてもよく、m-位又はp-位(特に、m-位)の位置関係で置換するのが好ましい。また、環Arがナフタレン環である場合、2つのカルボニル基[-C(=O)-]は、1~8位のいずれの位置に置換していてもよいが、通常、1又は2-位に置換したナフチル基に対して、5~8位に置換する場合が多く、例えば、1,5位又は2,6位(特に、2,6位)の位置関係で置換するのが好ましい。環Arがビフェニル環である場合、2つのカルボニル基[-C(=O)-]は、いずれの位置関係で置換していてもよいが、通常、異なるベンゼン環にそれぞれ置換する場合が多く、2,2’位、3,3’位又は4,4’位(特に、4,4’位)の位置関係で置換するのが好ましい。
第3のジカルボン酸単位(A3)として、代表的には、例えば、前記式(3)において、環Arがベンゼン環であるベンゼンジカルボン酸類[例えば、ベンゼンジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸);アルキルベンゼンジカルボン酸(例えば、5-メチルイソフタル酸などのC1-4アルキル-ベンゼンジカルボン酸など)など];環Arが多環式アレーン環である多環式アレーンジカルボン酸類{例えば、縮合多環式アレーンジカルボン酸[例えば、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸など)、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10-24アレーン-ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10-14アレーン-ジカルボン酸など];環集合アレーンジカルボン酸(例えば、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸などのビC6-10アレーン-ジカルボン酸など)など};及びこれらのエステル形成性誘導体などの第3のジカルボン酸成分(A3)に由来するジカルボン酸単位などが挙げられる。
これらの第3のジカルボン酸単位(A3)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの第3のジカルボン酸単位(A3)のうち、イソフタル酸、テレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸などのベンゼンジカルボン酸類、縮合多環式アレーンジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位が好ましく、屈折率及び耐熱性を向上し易い点から、縮合多環式C10-14アレーン-ジカルボン酸、さらに好ましくはナフタレンジカルボン酸、特に、2,6-ナフタレンジカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体に由来するジカルボン酸単位が好ましい。
第3のジカルボン酸単位(A3)を含むことにより、ポリエステル樹脂の屈折率及び耐熱性を向上し易くなる。第3のジカルボン酸単位(A3)を含む場合、第1のジカルボン酸単位(A1)と第3のジカルボン酸単位(A3)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=0.1/99.9~90/10程度の広い範囲から選択でき、例えば、0.5/99.5~70/30、好ましくは、以下段階的に、1/99~60/40、5/95~50/50、10/90~45/55、15/85~40/60、20/80~35/65であり、さらに好ましくは25/75~30/70である。第1のジカルボン酸単位(A1)が多すぎると、重合反応性が低下するおそれがあり、第3のジカルボン酸単位(A3)が多すぎると、複屈折が上昇するおそれがある。
(第4のジカルボン酸単位(A4))
第4のジカルボン酸単位は、脂環族ジカルボン酸単位であり、シクロアルカンジカルボン酸、橋架環式シクロアルカンジカルボン酸、シクロアルケンジカルボン酸、橋架環式シクロアルケンジカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体などの第4のジカルボン酸成分(A4)に由来するジカルボン酸単位などが挙げられる。
シクロアルカンジカルボン酸としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
橋架環式シクロアルカンジカルボン酸としては、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのジ又はトリシクロアルカンジカルボン酸などが挙げられる。
シクロアルケンジカルボン酸としては、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5-10シクロアルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
橋架環式シクロアルケンジカルボン酸としては、ノルボルネンジカルボン酸などのジ又はトリシクロアルケンジカルボン酸などが挙げられる。
これらの第4のジカルボン酸単位(A4)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの第4のジカルボン酸単位(A4)のうち、シクロアルカンジカルボン酸単位が好ましく、より好ましくはC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸単位、さらに好ましくはC5-8シクロアルカン-ジカルボン酸単位であり、なかでもシクロヘキサンジカルボン酸単位が好ましく、特に1,4-シクロヘキサンジカルボン酸単位が好ましい。
第4のジカルボン酸単位(A4)を含むことにより、ポリエステル樹脂のある程度の耐熱性を維持しつつ複屈折を低減し易くなる。第4のジカルボン酸単位(A4)を含む場合、第1のジカルボン酸単位(A1)と第4のジカルボン酸単位(A4)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=0.1/99.9~99/1程度の広い範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、1/99~95/5、5/95~90/10、10/90~80/20、15/85~70/30、20/80~60/40、25/75~55/45、30/70~50/50であって、より好ましくは30/70~45/55、さらに好ましくは35/65~45/55である。第1のジカルボン酸単位(A1)が多すぎると、重合反応性が低下するおそれがあり、第4のジカルボン酸単位(A4)が多すぎると、耐熱性や屈折率が低下するおそれがある。
本発明のポリエステル樹脂として代表的には、(i)ジカルボン酸単位(A)が、第2のジカルボン酸単位(A2)及び第3のジカルボン酸単位(A3)から選択された少なくとも1種のジカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂;及び(ii)ジカルボン酸単位(A)が、少なくとも第4のジカルボン酸単位(A4)を含むポリエステル樹脂、前記(i)及び(ii)の双方を満たすポリエステル樹脂などが挙げられる。
前記(i)を満たすポリエステル樹脂において、第1のジカルボン酸単位(A1)、第2のジカルボン酸単位(A2)及び第3のジカルボン酸単位(A3)の総量の割合は、ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば、10重量%程度以上であってもよく、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に90重量%以上である。また、前記割合は、例えば、20~100重量%程度であってもよく、好ましくは40~99重量%、より好ましくは60~98重量%、さらに好ましくは80~97重量%、特に90~95重量%である。前記割合のなかでも、実質的に100重量%(第1~第3のジカルボン酸単位のみ)であるのが最も好ましい。
第1のジカルボン酸単位(A1)と、第2のジカルボン酸単位(A2)及び第3のジカルボン酸単位(A3)の総量との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=0.1/99.9~99/1程度の範囲から選択でき、例えば、0.5/99.5~90/10、好ましくは、以下段階的に、1/99~70/20、2/98~50/50、3/97~30/70、5/95~25/75、7/93~20/80であり、さらに好ましくは、9/91~15/85である。第1のジカルボン酸単位(A1)が少なすぎると、耐熱性や屈折率が低下するおそれがある。
本発明のポリエステル樹脂は、第2のジカルボン酸単位(A2)及び第3のジカルボン酸単位(A3)のうち、いずれか一方のみを含んでいてもよく、双方を含んでいてもよいが、高い耐熱性及び屈折率と、低い複屈折とを高度にバランスよく充足できる点から、特に、双方を含むのが好ましい。
第2のジカルボン酸単位(A2)及び第3のジカルボン酸単位(A3)の双方を含む場合、第2のジカルボン酸単位(A2)と第3のジカルボン酸単位(A3)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/99~99/1程度の広い範囲から選択でき、例えば、10/90~95/5、好ましくは、以下段階的に、30/70~90/10、50/50~85/15、60/40~80/20であり、さらに好ましくは65/35~75/25である。第3のジカルボン酸単位(A3)の割合が多すぎると、複屈折が増加するおそれがあり、少なすぎると、耐熱性や屈折率が低下するおそれがある。
前記(ii)を満たすポリエステル樹脂において、第1のジカルボン酸単位(A1)及び第4のジカルボン酸単位(A4)の総量の割合は、ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば、10重量%程度以上であってもよく、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に90重量%以上である。また、前記割合は、例えば、20~100重量%程度であってもよく、好ましくは40~99重量%、より好ましくは60~98重量%、さらに好ましくは80~97重量%、特に90~95重量%である。前記割合のなかでも、実質的に100重量%(第1のジカルボン酸単位(A1)及び第4のジカルボン酸単位(A4)のみ)であるのが最も好ましい。
前記(ii)を満たすポリエステル樹脂において、第1のジカルボン酸単位(A1)と、第4のジカルボン酸単位との割合は、好ましい範囲を含めて前述の割合と同様である。
前記(i)及び(ii)から選択された少なくとも一方を満たすポリエステル樹脂のなかでも、高耐熱性及び高屈折率と、低複屈折という相反する特性をより一層バランスよく改善できる点から、特に、前記(i)を満たすポリエステル樹脂が好ましい。
(第5のジカルボン酸単位(A5))
なお、必ずしも含んでいなくてもよいが、ジカルボン酸単位(A)は、本発明の効果を害しない範囲であれば、さらに他のジカルボン酸単位(第1~第4のジカルボン酸単位の範囲に属さない第5のジカルボン酸単位(A5))を含んでいてもよい。第5のジカルボン酸単位(A5)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸(ただし、第1~第3のジカルボン酸単位を除く){例えば、ジアリールアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸などのジC6-10アリールC1-6アルカン-ジカルボン酸など);ジアリールケトンジカルボン酸[例えば、4.4’-ジフェニルケトンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)ケトン-ジカルボン酸など]など};脂肪族ジカルボン酸[例えば、アルカンジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などのC2-12アルカン-ジカルボン酸など);不飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸など)など];及びこれらのエステル形成性誘導体などの第5のジカルボン酸成分(A5)に由来するジカルボン酸単位などが挙げられる。
これらの第5のジカルボン酸単位(A5)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。第5のジカルボン酸単位(A5)の割合は、ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば、50モル%以下であってもよく、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下、特に5モル%以下である。また、前記割合は、例えば、0.1~50モル%であってもよい。
[ジオール単位(B)]
ジオール単位(B)は、特に制限されないが、例えば、第1のジオール単位(B1)及び/又は第2のジオール単位(B2)を含んでいてもよい。
(第1のジオール単位(B1))
第1のジオール単位(B1)は、下記式(4)で表される。
(式中、各Z2はそれぞれアレーン環、各R5及び各R6はそれぞれ置換基、各A1はそれぞれアルキレン基、各rはそれぞれ0~4の整数、各s及び各tはそれぞれ0以上の整数を示す)。
前記式(4)において、環Z2は、前記第1のジカルボン酸単位(A1)の項に記載の環Z1に、置換基R5は、前記第1のジカルボン酸単位(A1)の項に記載の置換基R1に、置換数rは、前記第1のジカルボン酸単位(A1)の項に記載の置換数kに、置換基R6は、前記第1のジカルボン酸単位(A1)の項に記載の置換基R2に、置換数sは、前記第1のジカルボン酸単位(A1)の項に記載の置換数mに対応して、それぞれ同様の環、置換基、数値範囲などが挙げられ、好ましい態様も含めて同様である。
アルキレン基A1としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキレン基などが挙げられ、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基であり、特に、エチレン基が好ましい。
オキシアルキレン基(OA1)の繰り返し数(付加モル数)tは、0以上の整数であればよく、例えば、0~15程度の広い範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、0~8の整数、0~4の整数であり、特に0~1である。また、前記好ましい範囲は、以下段階的に、1~10の整数、1~6の整数、1~2の整数である。なかでも、重合反応性の観点から1であるのが好ましい。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)t」は、平均値(算術平均値、相加平均値)又は平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、好ましい整数の範囲と同様である。繰り返し数tが大きすぎると、屈折率が低下するおそれがある。また、2つの繰り返し数tは、それぞれ同一又は異なっていてもよい。tが2以上の場合、2以上のオキシアルキレン基(OA1)は、同一又は異なっていてもよい。また、異なる環Z2にエーテル結合(-O-)を介して結合するオキシアルキレン基(OA1)は互いに同一又は異なっていてもよい。
基[-O-(A1O)t-]の置換位置は、特に限定されず、環Z2の適当な位置にそれぞれ置換していればよい。環Z2に対する基[-O-(A1O)t-]の置換位置は、前記第1のジカルボン酸単位(A1)の項に記載の環Z1に対するカルボニル基[-C(=O)-]の置換位置に対応して、好ましい態様を含めて同様である。
第1のジオール単位(B1)として代表的には、例えば、前記式(2)において、tが1以上(例えば、1~10、好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3)である9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類などの第1のジオール成分(B1)に由来(又は対応)する構成単位が挙げられる。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、特に断りのない限り、「(ポリ)アルコキシ」とは、アルコキシ基及びポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類としては、例えば、(B1-1)9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン{例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシフェニル]フルオレンなど};9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ-アルキルフェニル]フルオレン{例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシ-(モノ又はジ)C1-4アルキル-フェニル]フルオレンなど};(B1-2)9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ-アリールフェニル]フルオレン{例えば、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシ-C6-10アリールフェニル]フルオレンなど};9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレン{例えば、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシナフチル]フルオレンなど}などが挙げられる。
これらの第1のジオール単位(B1)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの第1のジオール単位(B1)のうち、9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシC6-10アリール]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類に由来する構成単位が好ましく;なかでも、(B1-1)9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン、(B1-2)9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ-アリールフェニル]フルオレン;さらに好ましくは9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至ヘキサ)C2-4アルコキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至ヘキサ)C2-4アルコキシ-C6-10アリールフェニル]フルオレン;特に、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至トリ)C2-3アルコキシフェニル]フルオレンに由来する単位が好ましい。
このような第1のジオール単位(B1)を含むことにより、ポリエステル樹脂の屈折率及び複屈折を容易に調整することができる。
また、第1のジオール単位(B1)において、(B1-1)9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン及び(B1-2)9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ-アリールフェニル]フルオレンに由来する単位は、いずれか一方を含んでいてもよく、双方を含んでいてもよい。
ジオール単位(B1-1)及び(B1-2)のうち、特に、低複屈折が重要な用途では、ジオール単位(B1-1)のみを含むのが好ましく、高耐熱性及び/又は高屈折率が重要な用途では、ジオール単位(B1-1)及び(B1-2)の双方を含むのが好ましく、これらの中でも、高耐熱性、高屈折率及び低複屈折をより一層バランスよく改善できる点から、ジオール単位(B1-1)のみを含むのが好ましい。ジオール単位(B1-1)及び(B1-2)の双方を含む場合、両者の割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/99~99/1程度の範囲から選択でき、例えば、3/97~90/10、好ましくは以下段階的に、5/95~70/30、10/90~50/50、15/85~45/55、20/80~40/60であり、さらに好ましくは25/75~35/65である。
(第2のジオール単位(B2))
第2のジオール単位(B2)は、下記式(5)で表される。
(式中、A2はアルキレン基、uは1以上の整数を示す)。
前記式(5)において、アルキレン基A2は、前記第1のジオール単位(B1)に記載のアルキレン基A1と好ましい態様を含めて同様であってもよい。
オキシアルキレン基(OA2)の繰り返し数uは、1以上であればよく、例えば、1~10程度の整数から選択でき、好ましくは以下段階的に、1~5の整数、1~3の整数、1又は2であり、さらに好ましくは1である。繰り返し数uが大きすぎると、耐熱性や屈折率が低下するおそれがある。
第2のジオール単位(B2)として、具体的には、例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、テトラメチレングリコール(1,4-ブタンジオール)、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2-12アルカンジオールなど);ポリアルキレングリコール(又はポリアルカンジオール)[例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリC2-6アルカンジオール、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジ乃至テトラC2-4アルカンジオールなど]などの第2のジオール成分(B2)に由来する構成単位などが挙げられる。
これらの第2のジオール単位(B2)は、単独で又は2種以上組み合わせて利用することもできる。これらの第2のジオール単位(B2)のうち、好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルカンジオール、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルカンジオール、特に、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルカンジオール、なかでもエチレングリコールに由来する単位が好ましい。
このような第2のジオール単位(B2)を含むことにより、重合反応性を高めるとともに、ポリエステル樹脂の機械的特性(例えば、柔軟性)や成形性などの特性を向上できる。
第1のジオール単位(B1)及び第2のジオール単位(B2)の総量の割合は、ジオール単位(B)全体に対して、例えば、10モル%以上の範囲から選択でき、例えば、50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。また、前記割合として、好ましくは以下段階的に、30~100モル%、60~99.9モル%、80~99モル%、90~95モル%である。前記割合は、特に、実質的に100モル%[第1のジオール単位(B1)及び/又は第2のジオール単位(B2)のみ]であるのが好ましい。
第1のジオール単位(B1)及び第2のジオール単位(B2)のうち、いずれか一方を含んでいてもよいが、耐熱性、光学的特性(屈折率、複屈折)のみならず、機械的特性や成形性なども含めて高度にバランスよく充足できる観点から、双方を含むのが好ましい。第1のジオール単位(B1)及び第2のジオール単位(B2)の双方を含む場合、第1のジオール単位(B1)と、第2のジオール単位(B2)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/99~99/1程度の広い範囲から選択でき、例えば、10/90~99/1、好ましくは以下段階的に、30/70~97/3、50/50~97/3、60/40~95/5、70/30~92/8、75/25~90/10であり、さらに好ましくは80/20~85/15である。
(第3のジオール単位(B3))
なお、必ずしも含む必要はないが、ジオール単位(B)は、本発明の効果を害しない範囲であれば、さらに、他のジオール単位(第1及び第2のジオール単位の範囲に属さない第3のジオール単位(B3))を含んでいてもよい。第3のジオール単位(B3)としては、例えば、脂環族ジオール[例えば、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなど);ビス(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロヘキサンジメタノールなど);後述する芳香族ジオールの水添物(例えば、ビスフェノールAの水添物など)など];芳香族ジオール(ただし、第1のジオール単位は除く)[例えば、ジヒドロキシアレーン(例えば、ヒドロキノン、レゾルシノールなど);芳香脂肪族ジオール(例えば、ベンゼンジメタノールなど);ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールSなど);ビフェノール類(例えば、p,p’-ビフェノールなど)など];及びこれらのジオール成分のC2-4アルキレンオキシド(又はアルキレンカーボネート、ハロアルカノール)付加体[例えば、ビスフェノールA 1モルに対して、2~10モル程度のエチレンオキシドが付加した付加体など]などの第3のジオール成分(B3)に由来する単位などが挙げられる。
これらの第3のジオール単位(B3)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。第3のジオール単位(B3)の割合は、ジオール単位(B)全体に対して、例えば、50モル%以下であってもよく、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下、特に5モル%以下である。前記割合は、例えば、0.1~50モル%であってもよい。
[ポリエステル樹脂の製造方法]
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、少なくとも第1のジカルボン酸成分(A1)を含むジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)とを反応させればよく、慣用の方法、例えば、エステル交換法、直接重合法などの溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などで調製でき、溶融重合法が好ましい。なお、反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。
ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)との使用割合(又は仕込み割合)は、通常、前者/後者(モル比)=例えば、1/1.2~1/0.8、好ましくは1/1.1~1/0.9である。なお、反応において、各ジカルボン酸成分(A)及びジオール成分(B)の使用量(使用割合)は、前記各ジカルボン酸単位及びジオール単位の割合と好ましい態様を含めて同様であり、必要に応じて、各成分などを過剰に用いて反応させてもよい。例えば、反応系から留出可能なエチレングリコールなどの第2のジオール成分(B2)は、ポリエステル樹脂中に導入される割合(又は導入割合)よりも過剰に使用してもよい。
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用のエステル化触媒、例えば、金属触媒などが利用できる。金属触媒としては、例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど);アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、遷移金属(マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルト、チタンなど);周期表第13族金属(アルミニウムなど);周期表第14族金属(ゲルマニウムなど);周期表第15族金属(アンチモンなど)などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、例えば、アルコキシド、有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩など)、無機酸塩(ホウ酸塩、炭酸塩など)、金属酸化物などであってもよく、これらの水和物であってもよい。代表的な金属化合物としては、例えば、ゲルマニウム化合物(例えば、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウム-n-ブトキシドなど);アンチモン化合物(例えば、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエチレンリコレートなど);チタン化合物(例えば、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウムなど);マンガン化合物(酢酸マンガン・4水和物など);カルシウム化合物(酢酸カルシウム・1水和物など)などが例示できる。
これらの触媒は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。複数の触媒を用いる場合、反応の進行に応じて、各触媒を添加することもできる。これらの触媒のうち、酢酸マンガン・4水和物、酢酸カルシウム・1水和物、二酸化ゲルマニウムなどが好ましい。触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分(A)1モルに対して、0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~40×10-4モルである。
また、反応は、必要に応じて、熱安定剤(例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、亜リン酸、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトなどのリン化合物など)や酸化防止剤などの安定剤の存在下で行ってもよい。熱安定剤の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分(A)1モルに対して、0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~40×10-4モルである。
反応は、通常、不活性ガス(例えば、窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気中で行ってもよい。また、反応は、減圧下(例えば、1×102~1×104Pa程度)で行うこともできる。反応温度は、重合方法に応じて選択でき、例えば、溶融重合法における反応温度は、150~300℃、好ましくは180~290℃、さらに好ましくは200~280℃である。
[ポリエステル樹脂の特性]
本発明のポリエステル樹脂は、前記第1のジカルボン酸単位(A1)を含むため、優れた耐熱性及び光学的特性(高屈折率及び低複屈折)を高度にバランスよく充足できる。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば、100~250℃程度の範囲から選択でき、例えば、110~220℃、好ましくは120~200℃、さらに好ましくは130~180℃、特に135~160℃である。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などにより測定でき、ポリスチレン換算で、例えば、10000~200000程度の範囲から選択でき、例えば、15000~100000、好ましくは以下段階的に、20000~80000、25000~60000、30000~40000であり、通常、35000~50000、特に、38000~48000である。
ポリエステル樹脂の屈折率は、温度20℃、波長589nmにおいて、例えば、1.55~1.7程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.6~1.69、1.609~1.685、1.61~1.68、1.62~1.67、1.63~1.66であり、さらに好ましくは1.64~1.655である。
ポリエステル樹脂のアッベ数は、温度20℃において、例えば、30程度以下の範囲から選択でき、好ましくは28以下、より好ましくは26.3以下、さらに好ましくは25以下である。また、前記アッベ数は、例えば、17~30程度の範囲から選択でき、好ましくは18~26、さらに好ましくは19~23である。
ポリエステル樹脂の複屈折は、ポリエステル単独で形成したフィルムを、延伸倍率3倍で一軸延伸した延伸フィルムの複屈折(3倍複屈折)により評価してもよい。延伸温度(ガラス転移温度Tg+10)℃、延伸速度25mm/分の延伸条件で調製した前記延伸フィルムの3倍複屈折は、測定温度20℃、波長600nmにおいて、例えば、100×10-4以下の範囲から選択でき、好ましくは60×10-4以下、より好ましくは40×10-4以下、さらに好ましくは20×10-4以下、特に8×10-4以下である。また、前記好ましい範囲は、以下段階的に、0.001×10-4~75×10-4、0.005×10-4~50×10-4、0.01×10-4~30×10-4であり、さらに好ましくは0.05×10-4~10×10-4、特に0.1×10-4~5×10-4である。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、ガラス転移温度Tg、重量平均分子量Mw、屈折率、アッベ数及び3倍複屈折は、後述する実施例に記載の方法などにより測定できる。
[成形体]
本発明の成形体は、前記ポリエステル樹脂を含み、優れた耐熱性及び光学的特性(高屈折率、低複屈折など)を有しているため、光学フィルム、光学レンズ、光学シートなどの光学用部材として利用できる。成形体の形状は、特に限定されず、例えば、一次元的構造(例えば、線状、糸状など)、二次元的構造(例えば、フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造(例えば、凹又は凸レンズ状、棒状、中空状(管状)など)などが挙げられる。
本発明の成形体は、各種添加剤[例えば、充填剤又は補強剤、着色剤(例えば、染顔料など)、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤(例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末など)、炭素材など]を含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
特に、本発明のポリエステル樹脂は、種々の光学的特性に優れているため、フィルム(特に光学フィルム)を形成するのに有用である。そのため、本発明には、前記ポリエステル樹脂で形成されたフィルム(光学フィルム)も含まれる。
このようなフィルムの厚み(平均厚み)は1~1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、好ましくは1~200μm、より好ましくは5~150μm、さらに好ましくは10~120μmである。
このようなフィルム(光学フィルム)は、前記ポリエステル樹脂を、慣用の成膜方法、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(又は成形)することにより製造できる。
フィルムは、延伸フィルムであってもよい。本発明のフィルムは、延伸フィルムであっても、低複屈折を維持できる。なお、このような延伸フィルムは、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
延伸倍率は、一軸延伸又は二軸延伸において各方向にそれぞれ1.1~10倍(好ましくは1.2~8倍、さらに好ましくは1.5~6倍)程度であってもよく、通常1.1~2.5倍(好ましくは1.2~2.3倍、さらに好ましくは1.5~2.2倍)程度であってもよい。なお、二軸延伸の場合、等延伸(例えば、縦横両方向に1.5~5倍延伸)であっても、偏延伸(例えば、縦方向に1.1~4倍、横方向に2~6倍延伸)であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸(例えば、縦方向に2.5~8倍延伸)であっても横延伸(例えば、横方向に1.2~5倍延伸)であってもよい。
延伸フィルムの厚み(平均厚み)は、例えば1~150μm、好ましくは3~120μm、さらに好ましくは5~100μmである。
なお、このような延伸フィルムは、成膜後のフィルム(又は未延伸フィルム)に、延伸処理を施すことにより得ることができる。延伸方法は、特に制限が無く、一軸延伸の場合、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法ともいわれる)であってもチューブ法であってもよいが、延伸厚みの均一性に優れるテンター法が好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。評価方法及び原料を以下に示す。
[評価方法]
(ガラス転移温度Tg)
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製「DSC 6220」)を用い、アルミパンに試料を入れ、30℃から200℃の範囲でTgを測定した。
(分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィ(東ソー(株)製、「HLC-8120GPC」)を用い、試料をクロロホルムに溶解させ、ポリスチレン換算で、重量平均分子量Mwを測定した。
(屈折率)
ポリエステル樹脂を200~240℃でプレス成形し、厚み200~300μmのフィルムを成形した。このフィルムを20~30mm×10mmの短冊状に切り出し、試験片を得た。得られた試験片について、多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製「DR-M2/1410(循環式恒温水槽60-C3)」)を用い、測定温度20℃、光源波長589nmで測定した。
(アッベ数)
屈折率の測定に用いた試験片について、多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製「DR-M2/1410(循環式恒温水槽60-C3)」)を用いて、測定温度20℃で、接触液にジヨードメタンを使用して、測定波長486nm(F線)、589nm(D線)、656nm(C線)の屈折率nF、nD、nCを其々、測定し、以下の式によって算出した。
アッベ数=(nD-1)/(nF-nC)。
(複屈折(又は3倍複屈折))
ポリエステル樹脂を160~240℃でプレス成形し、厚み100~400μmのフィルムを成形した。このフィルムを15mm×50mmの短冊状に切り出し、Tg+10℃の温度条件下、25mm/分で延伸倍率が3倍となるように一軸延伸して試験片を得た。得られた試験片について、位相差フィルム・光学材料検査装置(大塚電子(株)製「RETS-100」)を用い、測定温度20℃、測定波長600nmの条件下、平行ニコル回転法(回転検光子法)にてリタデーションを測定し、その絶対値を測定部位の厚みで除することで算出した。
[原料]
(ジカルボン酸成分)
フルオレンジ安息香酸:9,9-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン(後述する合成例1によって合成)
FDPM:9,9-ビス(2-メトキシカルボニルエチル)フルオレン[9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン(又はフルオレン-9,9-ジプロピオン酸)のジメチルエステル]、特開2005-89422号公報の実施例1記載のアクリル酸t-ブチルをアクリル酸メチル[37.9g(0.44モル)]に変更したこと以外は同様にして合成したもの
FDPT:9,9-ビス(2-t-ブトキシカルボニルエチル)フルオレン[9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン(又はフルオレン-9,9-ジプロピオン酸)のジt-ブチルエステル]、特開2005-89422号公報の実施例1と同様にして合成したもの
DMN:2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル
DMI:イソフタル酸ジメチルエステル
DMT:テレフタル酸ジメチルエステル
DMCD-pt:シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステル、trans/cis(モル比)=98/2
(ジオール成分)
BPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BOPPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
EG:エチレングリコール。
[合成例1]フルオレンジ安息香酸の合成
5Lのフラスコを窒素置換し、ピリジン308.5g(3.9mol)、アセトニトリル1.4L、トルエン1.2L及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-フェニル)フルオレン[BPF、大阪ガスケミカル(株)製]525.6g(1.5mol)を混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物[Tf2O、[昭和電工(株)製]930.9g(3.3mol)を滴下して終夜撹拌した。次に、水及びトルエンを加えて撹拌し、Tf2Oを加水分解して水相を除去した。有機相を水、飽和食塩水で順次洗浄した後、減圧濃縮した。貧溶媒としてn-ヘキサンを用いて再結晶し、9,9-ビス(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-フェニル)フルオレン(Tf体)763g(収率83%)を得た。
2LのオートクレーブにTf体を368.7g(0.6mol)、酢酸パラジウム[三津和化学薬品(株)製]270mg(1.2mmol)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン[DPPP、アヅマックス(株)製]990mg(2.4mol)、トリエチルアミン243g(2.4mol)、メタノール96g(3mol)、トルエン600mLを入れ、容器全体を窒素置換した後、一酸化炭素で置換した。この溶液を100℃に加熱し、一酸化炭素で2MPaに加圧して6時間撹拌した。得られた溶液に水を加えて撹拌後、水相を除去し、有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、減圧乾固した。得られた固体をトルエンに溶解し、貧溶媒としてn-ヘキサンを用いて15℃で再結晶し、9,9-ビス(4-メトキシカルボニル-フェニル)フルオレン(Meエステル体)224g(収率86%)を得た。
上記方法を繰り返して得られたMeエステル体692g(1.59mol)、テトラヒドロフラン(THF)1.5Lを窒素置換したフラスコ内で撹拌し、10重量%水酸化ナトリウム水溶液1.5Lを添加した。還流しながら5時間撹拌して、Meエステル体を加水分解した。THFを留去して、水及びトルエンを加えて撹拌し、有機相を除去した。60℃に加熱した水相に濃塩酸470g(4.5mol)を滴下し、徐々に冷却して析出した結晶をろ過した。得られた結晶を50℃で通風乾燥して、フルオレンジ安息香酸651g(収率99%)を得た。
[比較例1]
ジカルボン酸成分としてFDPM 0.7モル及びDMN 0.3モル、ジオール成分としてBPEF 0.85モル及びEG 2.15モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10-4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10-4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10-4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、250℃まで昇温した後、10kPaまで段階的に減圧を行った。270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらEGを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の70モル%がFDPM由来、30モル%がDMN由来であり、導入されたジオール単位の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[実施例1]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 0.10モル、FDPM 0.63モル及びDMN 0.27モル、ジオール成分としてBPEF 0.85モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の10モル%がフルオレンジ安息香酸由来、63モル%がFDPM由来、27モル%がDMN由来であり、導入されたジオール単位の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[比較例2]
ジカルボン酸成分としてFDPM 0.7モル及びDMN 0.3モル、ジオール成分としてBPEF 0.25モル、BOPPEF 0.6モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の70モル%がFDPM由来、30モル%がDMN由来であり、導入されたジオール単位の25モル%がBPEF由来、60モル%がBOPPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[実施例2]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 0.10モル、FDPM 0.63モル及びDMN 0.27モル、ジオール成分としてBPEF 0.25モル、BOPPEF 0.6モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の10モル%がフルオレンジ安息香酸由来、63モル%がFDPM由来、27モル%がDMN由来であり、導入されたジオール単位の25モル%がBPEF由来、60モル%がBOPPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[実施例3]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 1モル、ジオール成分としてBPEF 0.8モル及びEG 2.2モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の100モル%がフルオレンジ安息香酸由来であり、導入されたジオール単位の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。
[実施例4]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 0.5モル及びDMI 0.5モル、ジオール成分としてBPEF 0.8モル及びEG 2.2モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の50モル%がフルオレンジ安息香酸由来、50モル%がDMI由来であり、導入されたジオール単位の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。
[比較例3]
ジカルボン酸成分としてFDPT 1モル、ジオール成分としてBPEF 0.85モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の100モル%がFDPT由来であり、導入されたジオール単位の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[比較例4]
ジカルボン酸成分としてFDPT 0.5モル及びDMN 0.5モル、ジオール成分としてBPEF 0.85モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の50モル%がFDPT由来、50モル%がDMN由来であり、導入されたジオール単位の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[比較例5]
ジカルボン酸成分としてFDPT 0.25モル及びDMN 0.75モル、ジオール成分としてBPEF 0.85モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の25モル%がFDPT由来、75モル%がDMN由来であり、導入されたジオール単位の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[比較例6]
ジカルボン酸成分としてFDPM 0.4モル及びDMN 0.6モル、ジオール成分としてBPEF 0.9モル及びEG 2.1モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の40モル%がFDPM由来、60モル%がDMN由来であり、導入されたジオール単位の90モル%がBPEF由来、10モル%がEG由来であった。
[比較例7]
ジカルボン酸成分としてFDPM 0.3モル及びDMN 0.7モル、ジオール成分としてBPEF 0.9モル及びEG 2.1モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の30モル%がFDPM由来、70モル%がDMN由来であり、導入されたジオール単位の90モル%がBPEF由来、10モル%がEG由来であった。
[比較例8]
ジカルボン酸成分としてFDPM 0.8モル及びDMN 0.2モル、ジオール成分としてBOPPEF 0.8モル及びEG 2.2モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の80モル%がFDPM由来、20モル%がDMN由来であり、導入されたジオール単位の80モル%がBOPPEF由来、20モル%がEG由来であった。
[比較例9]
ジカルボン酸成分としてFDPM 0.6モル及びDMN 0.4モル、ジオール成分としてBOPPEF 0.8モル及びEG 2.2モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の60モル%がFDPM由来、40モル%がDMN由来であり、導入されたジオール単位の80モル%がBOPPEF由来、20モル%がEG由来であった。
[比較例10]
ジカルボン酸成分としてDMCD-pt 1モル、ジオール成分としてBPEF 0.8モル及びEG 2.2モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の100モル%がDMCD-pt由来であり、導入されたジオール単位の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。
[実施例5]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 0.3モル及びDMCD-pt 0.7モル、ジオール成分としてBPEF 0.8モル及びEG 2.2モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の30モル%がフルオレンジ安息香酸由来、70モル%がDMCD-pt由来であり、導入されたジオール単位の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。
[実施例6]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 0.4モル及びDMCD-pt 0.6モル、ジオール成分としてBPEF 0.8モル及びEG 2.2モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の40モル%がフルオレンジ安息香酸由来、60モル%がDMCD-pt由来であり、導入されたジオール単位の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。
[実施例7]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 0.5モル及びDMCD-pt 0.5モル、ジオール成分としてBPEF 0.8モル及びEG 2.2モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の50モル%がフルオレンジ安息香酸由来、50モル%がDMCD-pt由来であり、導入されたジオール単位の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。
[実施例8]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 0.5モル及びDMCD-pt 0.5モル、ジオール成分としてBPEF 0.85モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の50モル%がフルオレンジ安息香酸由来、50モル%がDMCD-pt由来であり、導入されたジオール単位の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[比較例11]
ジカルボン酸成分としてDMT 1モル、ジオール成分としてBOPPEF 0.85モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の100モル%がDMT由来であり、導入されたジオール単位の85モル%がBOPPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[実施例9]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 0.05モル及びDMT 0.95モル、ジオール成分としてBOPPEF 0.85モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の5モル%がフルオレンジ安息香酸由来、95モル%がDMT由来であり、導入されたジオール単位の85モル%がBOPPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[実施例10]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 0.1モル及びDMT 0.9モル、ジオール成分としてBOPPEF 0.85モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の10モル%がフルオレンジ安息香酸由来、90モル%がDMT由来であり、導入されたジオール単位の85モル%がBOPPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[実施例11]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 0.05モル及びDMT 0.95モル、ジオール成分としてBPEF 0.4モル、BOPPEF 0.45モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の5モル%がフルオレンジ安息香酸由来、95モル%がDMT由来であり、導入されたジオール単位の40モル%がBPEF由来、45モル%がBOPPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[実施例12]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 0.1モル及びDMT 0.9モル、ジオール成分としてBPEF 0.4モル、BOPPEF 0.45モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の10モル%がフルオレンジ安息香酸由来、90モル%がDMT由来であり、導入されたジオール単位の40モル%がBPEF由来、45モル%がBOPPEF由来、15モル%がEG由来であった。
[実施例13]
ジカルボン酸成分としてフルオレンジ安息香酸 0.15モル及びDMT 0.85モル、ジオール成分としてBPEF 0.4モル、BOPPEF 0.45モル及びEG 2.15モルを使用する以外は、比較例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸単位の15モル%がフルオレンジ安息香酸由来、85モル%がDMT由来であり、導入されたジオール単位の40モル%がBPEF由来、45モル%がBOPPEF由来、15モル%がEG由来であった。
実施例及び比較例で得られた結果を表1及び2に示す。
表1及び2から明らかなように、実施例では比較例に比べて、屈折率を維持又は向上し、複屈折を維持又は低減しつつ、ガラス転移温度Tgが向上できた。なかでも、実施例1及び2、特に実施例1において、前記特性をバランスよく改善できた。
また、比較例1及び2、又は実施例1及び2を比較すると、BPEFよりもベンゼン環を2つ多く含むBOPPEF単位を全ジオール単位に対して60モル%含むことで、ガラス転移温度がそれぞれ7℃向上している。これに対して、比較例1及び実施例1、又は比較例2及び実施例2を比較すると、FDPMやDMNよりもベンゼン環を2つ多く含むフルオレンジ安息香酸単位を全ジカルボン酸単位に対して、わずか10モル%しか含まないにも拘らず、意外にもガラス転移温度がそれぞれ8℃向上している。すなわち、BOPPEFと比べて、含有割合がわずか6分の1であっても、Tgがほぼ同程度向上するため、フルオレンジ安息香酸単位のTg向上効果は、BOPPEFの約6倍と顕著であった。