JP7130095B2 - 硬化性樹脂組成物およびドライフィルム - Google Patents

硬化性樹脂組成物およびドライフィルム Download PDF

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Description

本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。より詳細には、本発明は、洗浄除去性に優れる硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物を用いたドライフィルムにも関する。
一般にソルダーレジストインキは、電子機器のプリント配線板に部品をはんだ付けする時に必要以外の部分へのはんだ付着の防止および回路の保護を目的とする絶縁性のインキであり、液状型やドライフィルム型で使用される。ソルダーレジストインキとして用いられる硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を主原料として他に有機溶剤、フィラーなどで構成されている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、ソルダーレジストインキの製造過程では大釜の桶にて配合を行い、ディゾルバー、プラネタリーミキサー、バタフライミキサーなどの混合撹拌機により予備分散を行い、三本ロールミル、ビーズミル、ブレンダーなどの混錬機にて均一に分散される。これらの混合撹拌機や混錬機を用いて粉体を粘度の高い液体に均一に分散させることは重要な課題であるため、様々な器具が開発され使用されている(例えば、特許文献2参照)。
ここで、ソルダーレジストインキは化学反応によりパターンを形成するため、特性の変化をもたらす化合物の混在を防ぐためには、使用器具の洗浄は重要となる(例えば、特許文献3参照)。しかし、硬化反応が進んだソルダーレジストインキの洗浄除去は、一般的な塗料インキよりも困難であると考えられる。
特開平1-141904号公報 特開2014-147883号公報 特表2012-522068号公報
ソルダーレジストインキの製造過程で用いる配合桶や器具は繰り返し使用のためには、付着して乾燥したソルダーレジストインキの洗浄除去が容易なことが望ましい。洗浄除去に時間がかかると、ソルダーレジストインキの製造のコストとなるためである。したがって、本発明の目的は、ソルダーレジストインキの製造過程で用いる配合桶や器具に付着して乾燥した場合でも洗浄除去性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、該硬化性樹脂組成物を用いたドライフィルムを提供することにある。
本発明者等は、鋭意研究した結果、硬化性樹脂組成物を用いて形成した縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、特定の洗浄溶剤に対する溶解開始時間を調節することによって、ソルダーレジストインキの製造過程で用いる配合桶や器具に付着して乾燥した場合でも洗浄除去性に優れる硬化性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による硬化性樹脂組成物は、(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂組成物を用いて形成した縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であることを特徴とする。
本発明の態様においては、前記完全乾燥塗膜の溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内であることが好ましい。
本発明の態様においては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、45質量%以下であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記(A)硬化性樹脂がカルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。
本発明の態様においては、前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が、6000以下であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記硬化性樹脂が2種類以上のカルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。
本発明の態様においては、ソルダーレジスト層の形成に用いられることが好ましい。
本発明の態様においては、層間絶縁層の形成に用いられることが好ましい。
本発明の別の態様によるドライフィルムは、第一のフィルムと、前記第一のフィルム上に形成された硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備えるものであって、
前記硬化性樹脂組成物が、(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有し、
前記ドライフィルムから得られた縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であることを特徴とする。
本発明によれば、ソルダーレジストインキの製造過程で用いる配合桶や器具に付着して乾燥した場合でも洗浄除去性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化性樹脂組成物を用いたドライフィルムを提供することができる。
実施例において完全乾燥塗膜の溶解開始時間および溶解完了時間の測定に用いた装置の模式図である。
[硬化性樹脂組成物]
本発明による硬化性樹脂組成物は、(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有するものである。本発明による硬化性樹脂組成物は、下記の物性を満たすものであればよく、光重合開始剤、着色剤、消泡剤、レベリング剤、その他の成分等をさらに含有してもよい。また前記硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂、カルボキシル基含有樹脂および光重合性モノマーのいずれか1種を含有していてもよく、複数種の組合せであってもよい。本発明による硬化性樹脂組成物は、下記の物性を満たすことで、ソルダーレジストインキの製造過程で用いる配合桶や器具に付着して乾燥した場合でも洗浄除去性に優れるものとなる。これは、乾燥した組成物(完全乾燥塗膜)の洗浄除去性(洗浄溶剤への溶解性)は、主に洗浄溶剤に対する溶解開始時間に反映されるためであると推測される。
[物性]
本発明の硬化性樹脂組成物は、縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であり、15秒以内であることが好ましく、10秒以内であることがより好ましく、9秒以内であることがさらに好ましく、8秒以内であることが特に好ましい。
また、完全乾燥塗膜の溶解完了時間が、洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましく、28秒以内であることがさらに好ましく、26秒以内であることが特に好ましく、25秒以内であることが最も好ましい。
本発明における完全乾燥塗膜の形成について、完全乾燥塗膜中の含有溶剤が十分に揮発していることが重要である。本明細書において完全乾燥塗膜状態にあると判断する基準は、印刷等によって形成された直後の膜厚7μmの塗膜に対し、80℃で3時間加熱して作製した乾燥状態の組成物と、常温(25℃)下で放置した組成物との揮発率差が、10%以内になった時とする。揮発率差の求め方としては、電子天秤を用いて重量を測定し、下記数式(1)により算出した。すなわち、上記条件を満たしているものは完全乾燥塗膜が形成されたものと判断する。
Figure 0007130095000001
洗浄溶剤に対する完全乾燥塗膜の溶解過程は、平滑的であった表面が凹凸状になり、完全に塗膜が溶解すると基材表面が現れる。本発明においては、最も乾燥して洗浄しにくい塗膜表面の溶解が目的であるため、溶解の基準は塗膜表面の状態で判断する。
以下、本発明による硬化性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
[(A)硬化性樹脂]
硬化性樹脂としては、加熱により熱硬化反応に寄与する熱硬化性樹脂、光照射により光硬化反応に寄与する光硬化性樹脂、および、そのいずれの反応にも寄与する光硬化性熱硬化性樹脂が挙げられる。硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂のいずれか一方のみを含有してもよく、両方を含有してもよい。
硬化性樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物中において、固形分換算で、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは25~75質量%であり、さらに好ましくは50~70質量%である。硬化性樹脂の含有量が上記範囲内であることで、より優れた硬化物を得ることができる。以下、各硬化性樹脂について説明する。
[熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂としては、公知のものをいずれも用いることができる。硬化性樹脂組成物が、熱硬化性樹脂を含むことにより、硬化塗膜の耐熱性を向上させることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、多官能オキセタン化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用のものが挙げられる。これらの中でも好ましい熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である。熱硬化性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
市販されるエポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER 828、806、807、YX8000、YX8034、834、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYD-128、YDF-170、ZX-1059、ST-3000、DIC株式会社製のEPICLON 830、835、840、850、N-730A、N-695、および日本化薬株式会社製のRE-306等が挙げられる。
イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物を配合することができる。ポリイソシアネート化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに先に挙げたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物を用いることができる。イソシアネートブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤;ラクタム系ブロック剤;活性メチレン系ブロック剤;アルコール系ブロック剤;オキシム系ブロック剤;メルカプタン系ブロック剤;酸アミド系ブロック剤;イミド系ブロック剤;アミン系ブロック剤;イミダゾール系ブロック剤;イミン系ブロック剤等が挙げられる。
アミノ樹脂としては、メチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等が挙げられる。
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
熱硬化性樹脂の含有量は、組成物中に後述するカルボキシル基含有樹脂を含む場合、カルボキシル基含有樹脂に含有されるカルボキシル基1molあたりに対し、反応する熱硬化成分の官能基数が0.5~2.5molが好ましく、より好ましくは0.8~2.0molである。
熱硬化性成分としては、組成物にアルカリ現像性を付与できる点において、アルカリ可溶性基を有するアルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有樹脂、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有する化合物、チオール基を2個以上有する化合物が挙げられる。中でも、下地との密着性が向上するため、カルボキシル基含有樹脂またはフェノール樹脂であることが好ましく、特に現像性に優れるため、カルボキシル基含有樹脂であることがより好ましい。以下、カルボキシル基含有樹脂について、説明する。
カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種樹脂を使用できる。カルボキシル基含有樹脂は分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するものであっても有さないものであってもよいが、特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、光硬化性や耐現像性の面から好ましい。かかる場合は光硬化性熱硬化性樹脂に該当する。なお、本発明の硬化性組成物がカルボキシル基含有樹脂を含む場合、アルカリ現像する用途だけでなく、アルカリ現像しない用途に使用してもよい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物、即ち光重合性モノマーを併用する必要がある。カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂(低級アルキル(メタ)アクリレートとして、メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる)。
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
カルボキシル基含有樹脂としては、カルボキシル基含有共重合樹脂を用いてもよい。カルボキシル基含有共重合樹脂としては、(1)の樹脂や(12)の中の共重合樹脂が挙げられる。(12)の樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸とメチル(メタ)アクリレートとの共重合により得られたカルボキシル基含有樹脂にさらにグリシジルメタクリレートまたは3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレートを付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
本発明に使用できるカルボキシル基含有樹脂は、上記列挙したものに限られない。また、上記列挙したカルボキシル基含有樹脂は1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
本発明において、炭酸ナトリウム水溶液等の弱アルカリ現像液を用いる際の現像性とレジストパターンの描画性を考慮すると、カルボキシル基含有樹脂の酸価は30~150mgKOH/gの範囲であることが好ましく、50~120mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。カルボキシル基含有樹脂の酸価は高いほど現像性は向上するものの、現像液による露光部の溶解が進むために、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離する場合がある。
カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、好ましくは6,000以下であり、また、好ましくは2,000以上である。重量平均分子量が6,000以下のカルボキシル基含有樹脂を用いることにより、完全乾燥塗膜の溶解溶剤への溶解性を向上させ、洗浄除去性を改善することができる。また、重量平均分子量が2,000以上のカルボキシル基含有樹脂を用いることにより、解像性やタックフリー性能を向上させることができる。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
カルボキシル基含有樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物中において、固形分換算で、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは20~75質量%であり、さらに好ましくは20~50質量%である。20質量%以上とすることにより硬化塗膜の強度を向上させることができる。また80質量%以下とすることで硬化性樹脂組成物の粘性が適当となり加工性が向上する。
[光硬化性樹脂]
光硬化性樹脂とは、エチレン性不飽和基を有する化合物であり、ポリマー、オリゴマー、モノマーなどが挙げられ、それらの混合物であってもよい。光硬化性樹脂を含むことにより、硬化膜の強度を向上させることができる。光硬化性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマー、光重合性モノマー等を用いることができる。この中でも、硬化塗膜の架橋性や硬化性をより付与できる点において、光重合性モノマーを用いることが好ましい。
光重合性オリゴマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマーである。光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。このような光重合性モノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキサイド誘導体のモノまたはジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類;およびメラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。光重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光硬化性樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物中において、固形分換算で、好ましくは3~20質量%であり、より好ましくは5~15質量%である。光重合性モノマーの含有量は、3質量%以上の場合、光硬化性が良好であり、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像において、パターン形成がし易い。一方、20質量%以下の場合、ハレーションが生じにくく良好な解像性が得られ易い。
[(B)フィラー]
フィラーとしては、公知のものをいずれも用いることができる。フィラーとしては、例えば、非晶質シリカ、結晶質シリカ、溶融シリカ、球状シリカなどのシリカ、タルク、ベーマイト、ハイドロタルサイト、消石灰、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、クレー、雲母粉、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫化銅、アルミナ、酸化亜鉛、鉄、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化カドミウム、硫化カドミウム、酸化銅等が挙げられる。この中でも、分散性の観点より、シリカ、硫酸バリウムが好ましい。フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。フィラーを含有させることで、耐熱性を向上したり、塗布時のばらつきを少なくしたりすることができる。また、より低光沢化する観点では、SiO2 とAl2 3 を主成分とするケイ酸アルミニウム等を用いてもよい。
フィラーの表面処理の有無は特に限定されないが、分散性を高めるための表面処理がされていてもよい。表面処理がされているフィラーを使用することで、凝集を抑制することができる。フィラーの表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機のフィラーの表面を処理することが好ましい。
フィラーの平均粒子径は、10μm以下のものを好ましく用いることができるが、分散性の観点より、より好ましくは0.1~5.0μmであり、さらに好ましくは0.2~3.0μmである。フィラーの平均粒子径とは、一次粒子の粒子径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒子径も含めた平均粒子径(D50)であり、レーザー回折法により測定されたD50の値である。レーザー回折法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社製のMicrotrac MT3300EXIIが挙げられる。また、前述したフィラーの各粒子径の値は、硬化性樹脂組成物を調整(予備撹拌、混練)する前のフィラーを上記のようにして測定した値をいうものとする。
フィラーは、使用態様により、粉体または固体状態で他の成分と配合してもよく、溶剤や分散剤と混合してスラリーとした後で他の成分と配合してもよい。なお、後述するフィラーの含有量においては、粉体または固体状態での値をいうものとする。
フィラーの含有量は、硬化性樹脂組成物中において、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下であり、また、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。フィラーの含有量が上記範囲内であることで、硬化物を高強度にしながら、完全乾燥塗膜の洗浄除去性を改善することができる。
[(C)有機溶剤]
本発明の硬化性樹脂組成物には、組成物の調製や、基板やフィルムに塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有させることができる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。この中でも、本発明における硬化性樹脂組成物が非晶質シリカのような多孔質のものを使用した場合、硬化や乾燥の際にシリカ表面に吸油しやすい結果、形成された硬化塗膜の光沢度がより低くなる点で、エステル類が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤の含有量は、特に限定されず、硬化性樹脂組成物を調製し易いように目的の粘度に応じて適宜設定することができる。
本発明においては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量は、前記硬化性樹脂組成物中において、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。本発明において、硬化性樹脂組成物中のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量とは、(C)有機溶剤として配合したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの量だけでなく、他の成分(上記の(A)硬化性樹脂および(B)フィラー等)の調製に用いた液体成分中のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの量も含めた値である。プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が上記範囲内であることで、完全乾燥塗膜の洗浄除去性を改善することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、以下の任意成分をさらに含んでもよい。
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、カルボキシル基含有樹脂や光重合性モノマーを露光により反応させるためのものである。光重合開始剤としては、公知のものをいずれも用いることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤としては、具体的には例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
アルキルフェノン系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 907、369、369E、379等が挙げられる。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 819等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、BASFジャパン株式会社製のIrgacure OXE01、OXE02、株式会社ADEKA製N-1919、アデカアークルズ NCI-831、NCI-831E、常州強力電子新材料社製TR-PBG-304などが挙げられる。
その他、特開2004-359639号公報、特開2005-097141号公報、特開2005-220097号公報、特開2006-160634号公報、特開2008-094770号公報、特表2008-509967号公報、特表2009-040762号公報、特開2011-80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物中において、固形分換算で、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。光重合開始剤の含有量は、0.1質量%以上の場合、硬化性樹脂組成物の光硬化性が良好となり、耐薬品性等の塗膜特性も良好となる。一方、10質量%以下の場合、レジスト膜(硬化塗膜)表面での光吸収が良好となり、深部硬化性が低下しにくい。
上記した光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。特に、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物を用いることが好ましい。チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは樹脂組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストパターンのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の精度を向上させることができる。
[着色剤]
本発明の硬化性樹脂組成物には、着色剤を配合することができる。着色剤としては、特に限定されず、赤、青、緑、黄等の公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよいが、環境負荷の低減や人体への影響が少ない観点からハロゲンを含有しない着色剤であることが好ましい。
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等があり、具体的には以下のようなカラ-インデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyersand Colourists)発行)番号が付されているものが挙げられる。
モノアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269等が挙げられる。また、ジスアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 37,38,41等が挙げられる。また、モノアゾレーキ系赤色着色剤としては、Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68等が挙げられる。また、ベンズイミダゾロン系赤色着色剤としては、Pigment Red 171,175,176、185、208等が挙げられる。また、ぺリレン系赤色着色剤としては、Solvent Red 135,179,Pigment Red 123,149,166,178,179,190,194,224等が挙げられる。また、ジケトピロロピロール系赤色着色剤としては、Pigment Red 254,255,264,270,272等が挙げられる。また、縮合アゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 220,144,166,214,220,221,242等が挙げられる。また、アントラキノン系赤色着色剤としては、Pigment Red 168,177,216、Solvent Red 149,150,52,207等が挙げられる。また、キナクリドン系赤色着色剤としては、Pigment Red 122,202,206,207,209等が挙げられる。
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられ、例えば、Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,60。染料系としては、Solvent Blue 35,63,68,70,83,87,94,97,122,136,67,70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられ、例えば、アントラキノン系黄色着色剤としては、Solvent Yellow 163,Pigment Yellow 24,108,193,147,199,202等が挙げられる。イソインドリノン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 110,109,139,179,185等が挙げられる。縮合アゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 93,94,95,128,155,166,180等が挙げられる。ベンズイミダゾロン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 120,151,154,156,175,181等が挙げられる。また、モノアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,183等が挙げられる。また、ジスアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198等が挙げられる。
その他、紫、オレンジ、茶色、黒、白等の着色剤を加えてもよい。具体的には、Pigment Black 1,6,7,8,9,10,11,12,13,18,20,25,26,28,29,30,31,32、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet13,36、C.I.Pigment Orange 1,5,13,14,16,17,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73、PigmentBrown 23,25,カーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。
着色剤の含有量は、硬化性樹脂組成物中において、固形分換算で、好ましくは0.1~2.0質量%であり、より好ましくは0.3~1.5質量%である。
[その他の添加成分]
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてさらに、光開始助剤、熱硬化触媒、シアネート化合物、エラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
[調製方法]
本発明の硬化性樹脂組成物の調製には、各成分を秤量、配合した後、撹拌機にて予備撹拌する。続いて、必要に応じて混練機にて各成分を分散させ、混練を行うことで調製することができる。
上記の混練機としては、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、3本ロールミル、2本ロールミル等を挙げることができる。ビーズミルのビーズの種類や粒径等の分散条件は、目的とする粘度に応じて適宜設定することができるが、ビーズの種類としては、例えば、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等が挙げられる。ビーズの粒径としては、例えば、φ0.015~2.0mmの範囲が挙げられる。この中でもφ0.3~1.5mmの範囲がより好ましい。ビーズの充填率は50~95%であり、ローターの回転数は800~1300rpmであることが好ましい。また、目的とする粘度としては、分散性向上や硬化塗膜がより低光沢となる点でビーズミル投入時の組成物粘度が200dPa・s以下であることが好ましい。一方、下限としては、50dPa・s以上が好ましい。本発明における粘度は、JIS Z 8803:2011の10 円すい-平板形回転粘度計による粘度測定方法に準じ、50℃、100rpm、30秒とし、コーン・ロータとして3°×R9.7を用いたコーンプレート型粘度計(TVE-33H、東機産業株式会社製)にて測定した値である。
一方、3本ロールミルの各ロールの回転比等の分散条件も、目的とする粘度に応じて適宜設定することができる。
また、分散性をより向上させるため、先ずは原料をビーズミルや3本ロールミル等の混練機を用いてスラリー化したものを秤量、配合した後、撹拌機にて予備撹拌してもよい。原料をスラリー化する際は、シランカップリング剤等の湿潤分散剤も秤量、配合してからビーズミル等により混練することが好ましい。続いて、上記例示にあるような混練機にてスラリー化したものを含む各成分を分散させ、ビーズミル等により混練を行うことで調製してもよい。
[用途]
本発明による硬化性樹脂組成物は、ソルダーレジスト層やカバーレイ、層間絶縁層等のプリント配線板の永久被膜としてのパターン層を形成するために有用であり、特にソルダーレジスト層の形成に有用である。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、薄膜でも膜強度に優れた硬化物を形成できることから、薄膜化が要求されるプリント配線板、例えばパッケージ基板(半導体パッケージに用いられるプリント配線板)におけるパターン層の形成にも好適に用いることができる。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、屈曲性に優れることから、フレキシブルプリント配線板に好適に使用できる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化塗膜のパターン層を形成する用途だけでなく、パターン層を形成しない用途、例えばモールド用途(封止用途)に用いることができる。
[ドライフィルム]
本発明の硬化性樹脂組成物は、第一のフィルムと、この第一のフィルム上に形成された上記硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。本発明のドライフィルムから得られた縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜は、上記の[硬化性樹脂組成物]の[物性]で記載した内容と同様の物性を満たすことを特徴とする。
本発明における第一のフィルムとは、基板等の基材上にドライフィルム上に形成された上記硬化性樹脂層からなる樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際には少なくとも樹脂層に接着しているものをいう。ドライフィルム化に際しては、本発明の硬化性樹脂組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で第一のフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、1~150μm、好ましくは5~60μmの範囲で適宜選択される。
第一のフィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、これらフィルムの積層体を第一のフィルムとして使用することもできる。
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
第一のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
第一のフィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物の樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な第二のフィルムを積層することが好ましい。本発明における第二のフィルムとは、基板等の基材上にドライフィルム上に形成された上記硬化性樹脂層からなる樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際、ラミネート前に硬化性樹脂層から剥離するものをいう。剥離可能な第二のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、第二のフィルムを剥離するときに樹脂層と第一のフィルムとの接着力よりも樹脂層と第二のフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
第二のフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
(硬化性樹脂溶液A-1の合成(カルボキシル基含有))
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキサイド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(アイカ工業株式会社製、商品名「ショーノールCRG951」、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19gおよびトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキサイド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキサイドが平均1.08モル付加しているものであった。
次いで、得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキサイド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18gおよびトルエン252.9gを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PMA」とする)118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルフォスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させて、硬化性樹脂溶液A-1を得た。得られた硬化性樹脂溶液A-1の固形分は65%、固形物の酸価88mgKOH/g、重量平均分子量は約2,500(ポリスチレン換算)であった。
(硬化性樹脂溶液A-2の合成)
冷却管、撹拌機を備えたフラスコに、ビスフェノールA 456部、水228部、37%ホルマリン649部を仕込み、40℃以下の温度を保ち、25%水酸化ナトリウム水溶液228部を添加した、添加終了後50℃で10時間反応した。反応終了後40℃まで冷却し、40℃以下を保ちながら37.5%リン酸水溶液でpH4まで中和した。その後静置し水層を分離した。分離後メチルイソブチルケトン300部を添加し均一に溶解した後、蒸留水500部で3回洗浄し、50℃以下の温度で減圧下、水、溶媒等を除去した。得られたポリメチロール化合物をメタノール550部に溶解し、ポリメチロール化合物のメタノール溶液1230部を得た。得られたポリメチロール化合物のメタノール溶液の一部を真空乾燥機中室温で乾燥したところ、固形分が55.2%であった。
得られたポリメチロール化合物のメタノール溶液500部、2,6-キシレノール440部を仕込み、50℃で均一に溶解した。均一に溶解した後50℃以下の温度で減圧下メタノールを除去した。その後シュウ酸8部を加え、100℃で10時間反応した。反応終了後180℃、50mmHgの減圧下で溜出分を除去し、ノボラック樹脂A 550部を得た。更に、温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキサイド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、上記のノボラック樹脂Aを130部、50%水酸化ナトリウム水溶液2.6部、トルエン/メチルイソブチルケトン(質量比=2/1)100部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、次に加熱昇温し、150℃、8kg/cm2でエチレンオキサイド45部を徐々に導入し反応させた。反応はゲージ圧0.0kg/cm2となるまで約4時間を続けた後、室温まで冷却した。この反応溶液に3.3部の36%塩酸水溶液を添加混合し、水酸化ナトリウムを中和した。この中和反応生成物をトルエンで希釈し、3回水洗し、エバポレーターにて脱溶剤して、水酸基価が175g/eq.であるノボラック樹脂Aのエチレンオキサイド付加物を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りエチレンオキサイドが平均1モル付加しているものであった。このように得られたノボラック樹脂Aのエチレンオキサイド付加物175部、メタクリル酸75部、p-トルエンスルホン酸3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トルエン130部を撹拌機、温度計、空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を吹き込みながら撹拌して、115℃に昇温し、反応により生成した水をトルエンと共沸混合物として留去しながら、さらに4時間反応させたのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液を5%NaCl水溶液を用いて水洗し、減圧留去にてトルエンを除去したのち、PMAを加えて、硬化性樹脂溶液A-2を得た。得られた硬化性樹脂溶液A-2の固形分は70%、重量平均分子量は約5,500(ポリスチレン換算)であった。
(硬化性樹脂溶液A-3の合成(カルボキシル基含有))
撹拌機および還流冷却器の付いた四つ口フラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N-695、エポキシ当量:220)220gを入れ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート)214gを加え、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1gと、反応触媒としてジメチルベンジルアミン2.0gを加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72gを徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物106gを加え、8時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られた硬化性樹脂溶液A-3の樹脂溶液を得た。得られた硬化性樹脂溶液A-3の固形分は65%、固形分の酸価は100mgKOH/g、重量平均分子量は約8,000(ポリスチレン換算)であった。
(硬化性樹脂溶液A-4の合成(カルボキシル基含有))
温度計、撹拌機、滴下ロートおよび還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてのジプロピレングリコールモノメチルエーテル325.0質量部を110℃まで加熱し、メタクリル酸174.0質量部、ε-カプロラクトン変性メタクリル酸(平均分子量314)174.0質量部、メタクリル酸メチル77.0質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)222.0質量部、および、重合触媒としてのt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日油株式会社製、パーブチルO)12.0質量部の混合物を、3時間かけて滴下し、さらに110℃で3時間撹拌し、重合触媒を失活させて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を冷却後、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(株式会社ダイセル製、サイクロマーM100)を289.0質量部、トリフェニルフォスフィン3.0質量部およびハイドロキノンモノメチルエーテル1.3質量部を加え、100℃に昇温し、撹拌することによってエポキシ基の開環付加反応を行い、硬化性樹脂溶液A-4を得た。得られた硬化性樹脂溶液A-4の固形分は46質量%、固形分の酸価は79.8mgKOH/g、重量平均分子量は約18,000(ポリスチレン換算)であった。
(表面処理無しのシリカスラリーの調製)
球状シリカ(株式会社アドマテック製)700g、溶剤としてPMA300g、ビーズミルにて0.7μmのジルコニアビーズを用い分散処理を行った。これを3回繰り返して3μmフィルターでろ過し、平均粒径が0.7μmとなるシリカスラリーを調製した。得られたシリカスラリーの固形分は70質量%であった。
(表面処理有りのシリカスラリーの調製)
上記で得られた平均粒径0.7μmのシリカスラリー(PMA中、固形分70質量%))を使用し、シリカに対し4質量%のメタクリルシラン(信越化学工業株式会社社、KBM-503)を添加し、ビーズミルで10分処理し、メタクリルシランで表面処理したシリカスラリーを得た。得られたシリカスラリーの固形分は70質量%であった。
(硫酸バリウムスラリーの調製)
平均粒径0.3μmの硫酸バリウム(堺化学工業株式会社製B-30)700gと、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート)295g、湿潤分散剤5gを混合撹拌し、ビーズミルにて0.7μmのジルコニアビーズを用い分散処理を行った。これを3回繰り返して3μmのフィルターでろ過し、平均粒径0.3μmとなる硫酸バリウムスラリーを調製した。得られた硫酸バリウムスラリーの固形分は70質量%であった。
[実施例1~6、比較例1~3]
(硬化性樹脂組成物の調製)
下記の表1中に示す配合に従い、各成分を配合し、撹拌機で分散させ、それぞれ硬化性樹脂組成物を調製した。表中の配合量は、質量部を示す。調整した硬化性樹脂組成物を用いて下記のように評価を行った。
Figure 0007130095000002
表1中の配合量は、質量部を示す。
表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
※1:上記で合成した硬化性樹脂溶液A-1(カルボキシル基含有)
※2:上記で合成した硬化性樹脂溶液A-2
※3:上記で合成した硬化性樹脂溶液A-3(カルボキシル基含有)
※4:上記で合成した硬化性樹脂溶液A-4(カルボキシル基含有)
※5:エポキシ樹脂(DIC株式会社製、HP-7200L)のカルビトールアセテートカット品
※6:上記で合成した表面処理無しのシリカスラリー
※7:上記で合成した表面処理有りのシリカスラリー
※8:上記で合成した硫酸バリウムスラリー
※9:PMA
※10:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(IGM Resins社製、Omnirad 907)
※11:黒色着色剤(三菱ケミカル株式会社製、MA-100)
※12:白色着色剤(石原産業株式会社製、タイベークCR-58)
※13:アクリレート系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン社製、BYK-350)
※14:アクリレート系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン社製、BYK-361N)
※15:重合禁止剤(川崎化成工業株式会社製、QS-30)
なお、※16の「硬化性樹脂組成物中のPMAの含有量」は、上記の(C)有機溶剤として配合したPMAの量だけでなく、上記の(A)硬化性樹脂および(B)フィラー(スラリー)の調製に用いた液体成分中のPMAの量も含めた値である。
<完全乾燥塗膜の作製(実施例1~6および比較例1~3)>
実施例1~6および比較例1~3の硬化性樹脂組成物を、基材となる銅板上にスクリーン印刷によって塗布し、常温(25℃)で4か月放置して乾燥させ、縦20mm×横20mm×膜厚7μmの塗膜を作製した。得られた塗膜は、上記数式(1)で算出した揮発率差が10%以内であったため、完全乾燥塗膜が形成されたものと判断した。なお、完全乾燥塗膜の膜厚については、レーザーマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VR-3200)を用いて計測した。
<完全乾燥塗膜の作成(実施例7)>
実施例6の硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いて、第一のフィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、80℃10分乾燥し、硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備えるドライフィルムを得た。その後、基材となる銅板上に真空ラミネーターを用いてラミネートをおこない、第一のフィルムを剥離後、常温(25℃)で4か月放置して乾燥させ、縦20mm×横20mm×膜厚7μmの塗膜を作製した。得られた塗膜は、上記数式(1)で算出した揮発率差が10%以内であったため、完全乾燥塗膜が形成されたものと判断した。なお、完全乾燥塗膜の膜厚については、レーザーマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VR-3200)を用いて計測した。
(溶解開始時間および溶解完了時間)
完全乾燥塗膜の溶解開始時間および溶解完了時間の測定には、図1に示した装置を用いた。具体的には、100mlビーカー2に洗浄溶剤5であるPMAを70mlと撹拌子6を入れ、25℃に設定したウォーターバス内に設置した。スターラー7(アズワン株式会社製、M-3、500rpm)を用いて、洗浄溶剤を撹拌させることで洗浄溶剤の温度を安定化させた。続いて、上記で作製した完全乾燥塗膜3が塗布された銅板1の浸漬深さが洗浄溶剤の水面から深さ20mmとなるように配置し、洗浄溶剤の水面に対して垂直に浸漬させた。レーザー墨出し器(株式会社TJMデザイン製、ZEROS-KJC)を用い、浸漬させた銅板上の完全乾燥塗膜に対してレーザー(可視光半導体レーザー、波長635nm、ライン幅2mm、光出力2.5mW以下)のラインを水平に入射し、洗浄溶剤の流れ方向において、完全乾燥塗膜の一部を照射した。完全乾燥塗膜が溶解して生じた下地の銅板上への輝線がレーザー光4の全照射部分(2mm×20mm)のうち、2mm×1mmの領域で確認した時を、溶解開始時間とした。一方、完全乾燥塗膜が溶解して生じた下地の銅板上への輝線がレーザー光の全照射部分(2mm×20mm)のうち、2mm×19mmの領域で確認した時を、溶解完了時間とした。なお、前記輝線はレーザー光の全照射部分のいずれの箇所で確認されたものであっても良い。溶解時間の計測の限度は120秒までとした。したがって、120秒経過しても溶解開始や完了しない場合は、表1でそれぞれ×と示した。
(洗浄除去性の確認)
上記で作製した完全乾燥塗膜が塗布された銅板の完全乾燥塗膜の表面を洗浄溶剤としてPMAを浸み込ませたクリーンウェスで拭いて、目視で以下の基準に従って評価した。
○:銅板から完全乾燥塗膜を完全に除去できた。
△:銅板から完全乾燥塗膜の一部を除去できた。
×:銅板から完全乾燥塗膜を除去できなかった。
Figure 0007130095000003
表2から明らかなように、実施例1~6の硬化性樹脂組成物および実施例7のドライフィルムは、完全乾燥塗膜の洗浄除去性に優れることがわかる。一方、比較例1~3の完全乾燥塗膜については、洗浄溶剤であるPMAへの浸漬開始から120秒を経過しても溶解開始も完了もせず、洗浄除去性に劣っていることがわかる。
1:銅板
2:100mlビーカー
3:完全乾燥塗膜
4:レーザー光
5:洗浄溶剤
6:撹拌子
7:スターラー

Claims (8)

  1. (A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
    プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上であり、
    前記硬化性樹脂組成物を用いて形成した縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であることを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
  2. 前記完全乾燥塗膜の溶解完了時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から40秒以内である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 前記(B)フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、45質量%以下である、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
  4. 前記(A)硬化性樹脂がカルボキシル基含有樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
  5. 前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が、6000以下である、請求項に記載の硬化性樹脂組成物。
  6. ソルダーレジスト層の形成に用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
  7. 層間絶縁層の形成に用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
  8. 第一のフィルムと、前記第一のフィルム上に形成された硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備える、ドライフィルムであって、
    前記硬化性樹脂組成物が、(A)硬化性樹脂、(B)フィラー、および(C)有機溶剤を含有し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの含有量が、前記硬化性樹脂組成物中において、20質量%以上であり、
    前記ドライフィルムから得られた縦20mm×横20mm×膜厚7μmの完全乾燥塗膜の、洗浄溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解開始時間が、前記洗浄溶剤への浸漬開始から20秒以内であることを特徴とする、ドライフィルム。
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