<第1実施形態>
本実施形態に係るDC・AC変換装置(以下、電力変換装置という)について説明する。電力変換装置は、入力端子である直流端子を介して交流電源に接続されており、直流端子を通じて供給される直流電力を交流電力へ変換して交流電源に供給する。
図1に示す電力変換装置100の第1,第2直流端子TD1、TD2には、不図示の直流電源が接続されており、第1,第2交流端子TA1,TA2には、交流電源200が接続されている。交流電源200は、例えば、商用電源であり、直流電源は、バッテリである。
電力変換装置100は、コンデンサ16と、ハーフブリッジ回路15と、リアクトル13と、フルブリッジ回路12と、第1~第6配線LP1~LP6とを備えている。
第1直流端子TD1には、第1配線LP1の第1端が接続されており、第2直流端子TD2には第2配線LP2の第1端が接続されている。第1配線LP1と第2配線LP2との間には、コンデンサ16が接続されている。
第1,第2配線LP1,LP2の第2端には、ハーフブリッジ回路15が接続されている。ハーフブリッジ回路15は、第5スイッチSW5と、第6スイッチSW6とを備えている。第5,第6スイッチSW5,SW6は、電圧駆動型のスイッチであり、本実施形態では、NチャネルMOSFETである。第5スイッチSW5のソースと、第6スイッチSW6のドレインとが接続されている。第5スイッチSW5のドレインが第1配線LP1に接続され、第6スイッチSW6のソースが第2配線LP2に接続されている。第5,第6スイッチSW5,SW6それぞれは、逆並列接続された寄生ダイオードを備えている。本実施形態では、第5スイッチSW5が駆動スイッチに相当する。
ハーフブリッジ回路15とフルブリッジ回路12とは、第3配線LP3及び第4配線LP4により接続されている。第3配線LP3の第1端は、第5スイッチSW5のソースと、第6スイッチSW6のドレインとの間の第1接続点K1に接続されている。第3配線LP3には、リアクトル13が設けられている。また、第4配線LP4の第1端は、第6スイッチSW6のソースに接続されている。第3,4配線LP3,LP4それぞれの第2端は、フルブリッジ回路12に接続されている。
フルブリッジ回路12は、第1~第4スイッチSW1~SW4を備えている。第1~第4スイッチSW1~SW4は、電圧駆動型のスイッチであり、本実施形態では、NチャネルMOSFETである。第3スイッチSW3のソースと、第4スイッチSW4のドレインとが接続されている。第1スイッチSW1のソースと、第2スイッチSW2のドレインとが接続されている。第1,第3スイッチSW1,SW3の各ドレインが第3配線LP3に接続され、第2,第4スイッチSW2,SW4の各ソースが第4配線LP4に接続されている。
第3スイッチSW3のソースと第4スイッチSW4のドレインとの間の第2接続点K2は、第6配線LP6の第1端に接続されており、第6配線LP6の第2端は第2交流端子TA2に接続されている。第1スイッチSW1と第2スイッチSW2との第3接続点K3は、第5配線LP5の第1端に接続されており、第5配線LP5の第2端は第1交流端子TA1に接続されている。
電力変換装置100は、第1電圧センサ31と、電流センサ32と、第2電圧センサ33とを備えている。第1電圧センサ31は、第1,第2配線LP1,LP2の間に接続されており、第1,第2直流端子TD1,T2を通じて入力される直流電圧を入力電圧Vdcとして検出する。電流センサ32は、第4配線LP4に設けられており、リアクトル13に流れる電流をリアクトル電流ILrとして検出する。第2電圧センサ33は、第5,第6配線LP5,LP6の間に接続されており、交流電源200の電圧を交流電圧Vacとして検出する。
電力変換装置100は、制御装置30を備えている。制御装置30は、第1~第6スイッチSW1~SW6を操作する。なお、制御装置30が提供する各機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
図2は、制御装置30の機能を説明する機能ブロック図である。制御装置30は、周知のピーク電流モード制御により、第5,第6スイッチSW5,SW6をオン状態又はオフ状態に操作する。制御装置30は、波形生成部34、乗算器35、絶対値算出部36、加算器37、電流補正部40、電流制御部50、及び極性切替部55を備えている。本実施形態では、制御装置30が、電流取得部と、交流電圧取得部とに相当する。
波形生成部34は、交流電圧Vacの基準波形sinωtを生成する。基準波形sinωtは、交流電圧Vacの半周期(T/2)における電圧変化を示す値であり、振幅が1であり、交流電圧Vacと同じ周期で変動する。例えば、本実施形態においては、基準波形sinωtは、Vacと同位相となる。波形生成部34は、第2電圧センサ33により検出された交流電圧Vacが0となる点を、ゼロクロスタイミングとして検出し、交流電圧Vacが、ゼロクロスタイミングから次のゼロクロスタイミングまで変化する期間を、交流電圧Vacの半周期(T/2)として設定する。
乗算器35は、リアクトル電流ILrの振幅指令値Ia*と基準波形sinωtとを乗算する。振幅指令値Ia*は、リアクトル電流ILrの振幅を定める指令値である。絶対値算出部36は、乗算器35からの出力値の絶対値を、補正前指令電流IL*として設定する。本実施形態では、補正前指令電流IL*が電流指令値に相当する。波形生成部34と、乗算器35と、絶対値算出部36とが指令値設定部に相当する。
電流補正部40は、出力電流Iacの歪みを抑制すべく、補正前指令電流IL*に対する補正に用いる電流補正値Icを設定する。電流補正部40の具体的な構成は後述する。加算器37は、補正前指令電流IL*に電流補正値Icを加算し、加算後の値を補正後指令電流ILa*として設定する。
電流制御部50は、電流センサ32により検出されたリアクトル電流ILrと、補正後指令電流ILa*とに基づいて、第5スイッチSW5を操作する第5ゲート信号GS5と、第6スイッチSW6を操作する第6ゲート信号GS6とを生成する。本実施形態では、電流制御部50は、周知のピーク電流モード制御により、第5,第6ゲート信号GS5,GS6を生成する。
電流制御部50は、DA変換器351と、コンパレータ352と、加算器353と、RSフリップフロップ357と、スロープ補償部60と、を備えている。補正後指令電流ILa*は、DA変換器351に入力される。DA変換器351は、入力された補正後指令電流ILa*をデジタル値からアナログ値に変換する。アナログ値に変換された補正後指令電流ILa*は、コンパレータ352の反転入力端子に入力される。加算器353は、リアクトル電流ILrとスロープ補償部60により設定されたスロープ補償信号Slopeとを加算し、補償したリアクトル電流ILrを出力する。加算器353からの出力は、コンパレータ352の非反転入力端子に入力される。なお、スロープ補償信号Slopeは、リアクトル13に流れる電流の変動に伴う発振を抑制するものである。
コンパレータ352は、補正後指令電流ILa*とリアクトル電流ILrとを比較し、リアクトル電流ILrが補正後指令電流ILa*より小さい期間において、ロー状態の信号をRSフリップフロップ357のR端子に入力する。また、コンパレータ352は、リアクトル電流ILrが補正後指令電流ILa*より大きい期間において、ハイ状態の信号をRSフリップフロップ357のR端子に入力する。更に、RSフリップフロップ357のS端子には、クロック信号が入力される。クロック信号の1周期が第5,第6スイッチSW5,SW6の1スイッチング周期Tswとなる。
RSフリップフロップ357のQ端子は、第5スイッチSW5のゲートに接続されている。Q端子から第5スイッチSW5のゲートに出力される信号が、第5ゲート信号GS5となる。また、RSフリップフロップ357の出力端子は、反転器358を介して第6スイッチSW6のゲートに接続されている。Q端子から反転器358を介して第6スイッチSW6のゲートに出力される信号が、第6ゲート信号GS6となる。第6ゲート信号GS6は、第5ゲート信号GS5を反転させた値となる。
極性切替部55は、交流電圧Vacの極性に応じて、出力信号を反転させる。極性切替部55は、交流電圧Vacの極性を正の極性と判定した場合に、出力端子からの出力信号をハイ状態とする。一方、極性切替部55は、交流電圧Vacの極性を負の極性と判定した場合に、出力端子からの出力信号をロー状態とする。
極性切替部55の出力端子は、第1,第4スイッチSW1,SW4の各ゲートに接続されている。極性切替部55の出力端子から第1,第4スイッチSW1,SW4の各ゲートに出力される信号が、第1,第4ゲート信号GS1,GS4となる。また、極性切替部55の出力端子は、反転器359を介して、第2,第3スイッチSW2,SW3の各ゲートに接続されている。極性切替部55の出力端子から反転器359を介して第2,第3スイッチSW2,SW3の各ゲートに出力される信号が、第2,第3ゲート信号GS2,GS3となる。第2,第3ゲート信号GS2,GS3は、第1,第4ゲート信号GS1,GS4を反転させた値となる。
次に、電力変換装置100の動作を説明する。図3は、電力変換装置100のタイミングチャートである。図3(a)は、交流電圧Vac及び入力電圧Vdcの推移を示している。図3(b)は、第1,第4ゲート信号GS1,GS4、及び第2,第3ゲート信号GS2,GS3を反転させた値の推移を示し、図3(c)は、第5ゲート信号GS5及び第6ゲート信号GS6を反転させた値の推移を示す。図3(d)は、補正前指令電流IL*の推移を示し、図3(e)は、リアクトル電流ILrの推移を示す。図3(f)は、出力電流Iacの推移を示す。
交流電圧Vacが正となる第1期間P1では、第1,第4ゲート信号GS1,GS4がハイ状態となることで、第1,第4スイッチSW1,SW4がオン状態となる。第2,第3ゲート信号GS2,GS3がロー状態となることで、第2,第3スイッチSW2,SW3がオフ状態となる。この第1期間P1において、第5ゲート信号GS5がオフ状態となり、第6ゲート信号GS6がオン状態となることで、リアクトル13、第1スイッチSW1、第4スイッチSW4及び第6スイッチSW6を含む閉回路が形成される。この閉回路内において、第1交流端子TA1から交流電源200を介して第2交流端子TA2の向きに出力電流Iacが流れる。このとき、1スイッチング周期Tswでのリアクトル電流ILrは、第5スイッチSW5の1スイッチング周期Tswにおけるオン期間Tonの比を示すデューティ比D(=Ton/Tsw)に応じた値となる。
交流電圧Vacが負となる第2期間P2では、第1,第4ゲート信号GS1,GS4がロー状態となることで、第1,第4スイッチSW1,SW4がオフ状態となる。第2,第3ゲート信号GS2,GS3がハイ状態となることで、第2,第3スイッチSW2,SW3がオン状態となる。この第2期間P2においても、リアクトル13には、第5スイッチSW5のデューティ比Dに応じたリアクトル電流ILrが流れる。
制御装置30は、交流電源200に供給する交流電力の力率を改善するために、交流電圧Vacの基準波形sinωtに振幅指令値Ia*を乗算した値を補正前指令電流IL*として設定している。そのため、補正前指令電流IL*は、正弦波の正の半波が周期T/2で繰り返される波形となっている。図3では、補正前指令電流IL*は、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングta,tcから交流電圧Vacのピークタイミングtb,tdに推移するに従い電流が増加する。また、補正前指令電流IL*は、交流電圧Vacのピークタイミングtb,tdからゼロクロスタイミングtc,teに推移するに従い電流が減少する。ピークタイミングは、交流電圧Vacの1周期において、交流電圧Vacが正の最大値又は負の最大値を取るタイミングである。
リアクトル電流ILrの平均値Iaveは、補正前指令電流IL*と同様、ゼロクロスタイミングta,tc,teにおいて0付近の値を取るように正の半波状に推移する。このため、ピーク電流モード制御において、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングta,tc,te付近で検出されたリアクトル電流ILrにスイッチングノイズ等のノイズが重畳することにより、補償後のリアクトル電流ILrが補正後指令電流ILa*を上回り、意図したタイミングと異なるタイミングで第5スイッチSW5をオフ操作させる誤ターンオフが生じる場合がある。図4では、誤ターンオフにより、1スイッチング周期Tswでの実際のオン期間Ton1が、補正後指令電流ILa*により意図するオン期間Ton2よりも短くなっている。オン期間Tonの意図しない短縮は、出力電流Iacの過度の変化を生じさせるため、交流電圧Vacのゼロクロスタイミング付近での第5スイッチSW5の誤ターンオフが出力電流Iacの歪みを生じさせる要因となる。
一方で、リアクトル電流ILrにノイズ等が重畳する場合でも、補償後のリアクトル電流ILrに対するノイズの割合であるS・N比を低下させることができれば、ノイズに対する耐性を高め、ひいては誤ターンオフの発生を抑制することが可能である。本実施形態では、この点に鑑み、交流電圧Vacに基づいてリアクトル電流ILrに加算されるスロープ補償信号Slopeの単位時間当たりの上昇速度を示す傾きmsを変更することにより、リアクトル電流ILrに対するノイズの割合を低下させ、誤ターンオフの発生を抑制する。
具体的には、制御装置30は、リアクトル電流ILrに対するノイズの割合が高くなり易いゼロクロスタイミング付近において、スロープ補償信号Slopeの傾きmsを最大値とする。これにより、補償後のリアクトル電流ILrに対するノイズの割合を低下させることにより、ノイズに対する耐性を高めることが可能となり、誤ターンオフの発生を抑制することができる。
次に、スロープ補償部60について説明する。スロープ補償部60は、交流電圧Vacに基づいて、スロープ補償信号Slopeの傾きmsを設定する。図5は、交流電圧Vacと、スロープ補償信号Slopeとの関係を説明する図である。図5に示す交流電圧Vacは、t0,t8が,交流電圧Vacが負の値から正の値に切り替わるゼロアップクロス点であり、t4が、交流電圧Vacが正の値から負の値に切り替わるゼロダウンクロス点である。t2,t6が、交流電圧Vacにおける正負それぞれのピークタイミングである。
スロープ補償部60は、第1,第2期間P1,P2のそれぞれにおいて、スロープ補償信号Slopeの傾きmsを、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングt0,t4,t8で最大値となるように設定する。リアクトル電流ILrにノイズが重畳してから、このノイズが収束するまでにある程度の期間を伴う。そこで、本実施形態では、スロープ補償部60は、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングを含む所定期間(t0-t1,t3-t5,t7-t8)において、傾きmsが最大値となるように設定している。
交流電圧Vacのピーク値では、リアクトル電流ILrが最も大きな値となるため、ピークタイミングにおいてリアクトル電流ILrにノイズが重畳してもS・N比は低い値となる。スロープ補償信号Slopeが過剰となると、かえって補償後のリアクトル電流ILrが補正後指令電流ILa*を上回り易くなるため、誤ターンオフを生じさせ易くなる。そこで、本実施形態では、スロープ補償部60は、傾きmsを交流電圧Vacの正負それぞれのピークタイミングt2,t6を含む期間で最小値となるように設定している。スロープ補償部60は、傾きmsが最大値となる期間から最小値となる期間までの間では、交流電圧Vacの増加に応じて傾きmsを直線状に低下させる。また、傾きmsが最小値となる期間から最大値となる期間までの間では、交流電圧Vacの低下に応じて傾きmsを直線状に増加させている。
交流電圧Vacの絶対値を定める振幅指令値Ia*に応じて、補正前指令電流IL*を変更する構成では、振幅指令値Ia*が小さいほど、補正前指令電流IL*が小さくなる。このため、振幅指令値Ia*が小さいほど、リアクトル電流ILrが小さくなるため、リアクトル電流ILrに対するノイズの割合が大きくなることが想定される。そこで、スロープ補償部60は、振幅指令値Ia*が小さいほど、傾きmsを大きくしている。本実施形態では、スロープ補償部60は、振幅指令値Ia*が小さいほど、傾きmsの最大値及び最小値が大きな値となるよう傾きmsを設定する。
例えば、制御装置30は、交流電圧Vacと、振幅指令値Ia*と、傾きmsとの関係を示すスロープ量マップを記憶部に記憶している。スロープ補償部60は、第5スイッチSW5の1スイッチング周期Tswに同期させて、各値Vac,Ia*に応じた傾きmsを、スロープ量マップから読み出す。
次に、本実施形態に係る電流補正部40の構成について図6を用いて説明する。直流電圧を交流電圧に変換する場合、補正前指令電流IL*と、歪みが生じているリアクトル電流ILrの平均値Iaveとの差を示す乖離幅Δiは、ゼロクロスタイミング付近において最も小さな値となる。ここで、乖離幅Δiは、出力電流Iacの歪みの要因となる。乖離幅Δiは、補正前指令電流IL*からリアクトル電流ILrの平均値Iaveを引いた下記式(1)を用いて演算することができる。
上記式(1)により、入力電圧Vdcを交流電圧Vacに変換する場合、乖離幅Δiは、交流電圧Vacが0となるゼロクロスタイミングにおいて最小値を取り、交流電圧Vacが最大となるピークタイミングにおいて最大値を取る。そのため、上記式(1)により算出される乖離幅Δiに応じて、電流補正値Icを算出することが考えられる。しかし、ピーク電流モード制御では、スロープ補償信号Slopeの傾きmsが大きくなるほど、補償後のリアクトル電流ILrが補正後指令電流ILa*に達するまでの時間が短くなり、第5スイッチSW5のデューティ比Dが小さな値となる。そのため、傾きmsの変更と、電流補正値Icとを併用することにより、かえって誤ターンオフが生じ易くなることが懸念される。そこで、本実施形態では、電流補正部40は、スロープ補償信号Slopeの傾きmsが大きくなるほど、電流補正値Icが大きくなるように設定している。
図6に示す電流補正部40は、実効値算出部41と、係数設定部42と、基準補正値算出部43と、乗算器44と、を備えている。例えば、実効値算出部41は、交流電圧Vacに基づいて、交流電源200の実効値Vrmsを算出する。
基準補正値算出部43は、実効値算出部41により算出された実効値Vrmsに基づいて、電流補正値Icの基準補正値Ihを設定する。基準補正値Ihは、1スイッチング周期Tsw内の電流補正値Icの基準となる値であり、上記式(1)で示される乖離幅Δiに応じた値である。基準補正値Ihは、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングにおいて最小値を取り、ピークタイミングにおいて極大値を取る正の半波状に設定される。本実施形態では、基準補正値Ihは、ゼロクロスタイミングにおいて0に定められているが、これに限定されず、ゼロクロスタイミングにおいて0より大きい値に定められていても良い。基準補正値算出部43は、実効値Vrmsと、交流電圧Vacと、入力電圧Vdcとの組合せに応じた基準補正値Ihを記録した基準補正値マップを備えている。各基準補正値マップは、交流電源200の実効値Vrmsが大きいほど、基準補正値Ihの最大値が小さな値となるようにその値が定められている。
係数設定部42は、交流電圧Vac、振幅指令値Ia*及び傾きmsに基づいて、基準補正値Ihに乗算する補正係数βを設定する。補正係数βは、0より大きく、1以下の値としている。例えば、係数設定部42は、振幅指令値Ia*が閾値TH1より小さい場合、振幅指令値Ia*が大きいほど補正係数βを大きな値に設定し、閾値TH1以上の場合、補正係数βを所定値とする。また、本実施形態では、スロープ補償信号Slopeの傾きmsが大きくなるほど、電流補正値Icを大きな値に設定するため、係数設定部42は、傾きmsが大きくなるほど、補正係数βを大きな値に設定する。
乗算器44は、基準補正値算出部43により設定された基準補正値Ihに、係数設定部42により設定された補正係数βを乗算した値を電流補正値Icに設定する。これにより、スロープ補償信号Slopeの傾きmsが大きくなるほど、補正係数βが大きな値となるため、電流補正値Icが大きな値に設定される。
次に、電力変換装置100の動作を、図7を用いて説明する。図7(a)は、交流電圧Vac及び入力電圧Vdcの推移を示し、図7(b)は、第5ゲート信号GS及び第6ゲート信号GS6を反転させた値の推移を示す。図7(c)は、電流補正値Icの推移を示し、図7(d)は、補正前指令電流IL*の推移を示す。図7(e)は、傾きmsの推移を示し、図7(f)は、リアクトル電流ILrの推移を示す。図7(g)は、出力電流Iacの推移を示す。
交流電圧Vacが正の値となる第1期間P1(t11-t15)において、リアクトル電流ILrの平均値aveと、交流電圧Vacとの位相差を小さくすべく、ゼロクロスタイミング(t11,t15)付近での第5ゲート信号GS5のデューティ比D(=Ton/Tsw)が小さな値に設定される。第1期間P1では、ゼロクロスタイミングを含む所定期間(t11-t12,t14-t15)においてスロープ補償信号Slopeの傾きmsが最大値となる。これにより、補償後の補正前指令電流IL*に対する、ノイズの比率(S・N比)が、スロープ補償信号Slopeを固定値とする場合よりも高くなる。
また、補正前指令電流IL*とリアクトル電流ILrの平均値Iaveとの乖離幅に応じて、電流補正値Icがゼロクロスタイミングで最小値となる正の半波状に設定される。このとき、ゼロクロスタイミングを含む所定期間(t11-t12,t14-t15)では、傾きmsが最大値となるため、電流補正値Icの変化度合が他の期間(t12-t13、t13-t14)よりも大きくなる。これにより、第5ゲート信号GS5のデューティ比は、補正前指令電流IL*に応じた値に調整される。
交流電圧Vacが負の値となる第2期間P2(t15-t19)においても、ゼロクロスタイミングを含む所定期間(t15-t16,t18-t19)において傾きmsが最大値に設定される。これにより、補償後の補正前指令電流IL*に対する、ノイズの比率(S・N比)が、スロープ補償信号Slopeを固定値とする場合よりも高くなる。また、ゼロクロスタイミングを含む所定期間(t15-t16,t18-t19)では、傾きmsが最大値となるため、電流補正値Icの増加度合が他の期間(t16-t17、t17-t18)よりも大きくなっている。これにより、第5ゲート信号GS5のデューティ比Dは、補正後指令電流ILa*に応じた値となる。
上述した第1,第2期間P1,P2における、傾きmsの変化により、ゼロクロスタイミング付近での第5スイッチSW5の誤ターンオフが抑制される。これにより、リアクトル電流ILrの平均値Iave及び出力電流Iacの歪みが抑制される。
次に、基準補正値マップの作成方法について図8を用いて説明する。
本実施形態では、乖離幅Δiを、補正前指令電流IL*からリアクトル電流ILrの平均値Iaveを引いた値としている。なお、図8において、Dは、第5スイッチSW5におけるオン期間のデューティ比を示す。
図8より、乖離幅Δiは、オン期間(=D×Tsw)でのスロープ補償信号Slopeの最大増加分Δslopeに、リアクトル電流ILrの最大増加分ΔILの半分の値(ΔIL/2)を加えたものとみなすことができる。そのため、乖離幅Δiは、下記数式(1)により算出される。
Δi=IL*-Iave=Δslope+ΔIL/2 … (2)
また、リアクトル電流ILrの最大増加分ΔILは、リアクトル13の両端に生じる電圧と、リアクトル13のインダクタンスLとを用いて、下記式(3)により算出することができる。
また、スロープ補償信号Slopeの最大増加分Δslopeは、下記式(4)により算出することができる。
Δslope = ms×D×Tsw … (4)
例えば、乖離幅Δiを算出する際のスロープ補償信号Slopeの傾きmsは、傾きmsの平均値を用いればよい。
第5スイッチSW5のオン期間のデューティ比Dは、交流電圧acの実効値Vrmsを用いて、下記式(5)により算出することができる。
上記式(2)~(5)により乖離幅Δiは上記式(1)として算出される。本実施形態では、上記式(1)で示される乖離幅Δiを用いて、基準補正値Ihを算出する。例えば、乖離幅Δiに算出係数αを乗算した値を、基準補正値Ihとして用いることができる。なお、算出係数αは、0より大きく、1以下の値とすることができる。そして、算出した各基準補正値Ihを、実効値Vrms毎に記録することで、基準補正値マップを作成することができる。
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
・制御装置30は、スロープ補償信号Slopeが加算されたリアクトル電流ILrを交流電圧Vacに基づいて生成された正弦波状の補正後指令電流ILa*に制御すべく、ピーク電流モード制御により第5スイッチSW5を操作する。このとき、制御装置30は、交流電圧Vacに基づいて、スロープ補償信号Slopeの傾きmsを設定する。これにより、ゼロクロスタイミング付近での第5スイッチSW5の誤ターンオフが抑制され、出力電流Iacの歪みを低減することができる。更には、電力変換装置100から交流電源200に供給される交流電力の力率の低下を抑制することができる。
・制御装置30は、交流電圧Vacのピークタイミングにおいて、スロープ補償信号Slopeの傾きmsが最小値を取るように傾きmsを設定する。これにより、スロープ補償信号Slopeの傾きmsを可変させることに伴う悪影響を低減し、出力電流Iacの歪みを好適に抑制することができる。
・制御装置30は、交流電圧Vacの絶対値が小さいほど、スロープ補償信号Slopeの傾きmsを大きくする。これにより、電力変換装置100が出力電圧を可変する場合でも、出力電流Iacの歪みを好適に抑制することができる。
・制御装置30は、第5スイッチSW5の1スイッチング周期Tswに同期させて、スロープ補償信号Slopeの傾きmsを変更する。これにより、制御装置30の演算負荷を低減することができる。
・制御装置30は、スロープ補償信号Slopeの傾きmsに基づいて、補正前指令電流IL*の補正に用いる電流補正値Icを変更する。これにより、スロープ補償信号Slopeの傾きmsの変更と、補正前指令電流IL*に対する補正とを好適に併用することができるため、出力電流Iacの歪みをいっそう抑制することができる。
<第1実施形態の変形例>
スロープ補償部60が設定するスロープ補償信号Slopeは、傾きmsが交流電圧Vacのゼロクロスタイミングにおいて最大値を取るものであればよい。
図9~図11は、本実施形態に係るスロープ補償信号Slopeを説明する図である。いずれのスロープ補償信号Slopeも、傾きmsは、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングで最大値を取り、交流電圧Vacのピークタイミングで最小値を取っている。
図9では、スロープ補償信号Slopeの傾きmsは、第1,第2期間P1,P2それぞれで、下に凸状となる折れ線状に変化している。そのため、傾きmsは、最大値と最小値との間が直線状に変化している。図10では、スロープ補償信号Slopeの傾きmsは、第1,第2期間P1,P2それぞれで、下に凸状となる円弧状に変化している。そのため、傾きmsは、最大値と最小値との間が曲線状に変化している。図11では、スロープ補償信号Slopeの傾きmsは、第1,第2期間P1,P2それぞれで、下に凸状となる階段状に変化している。
以上説明した本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
本実施形態では、出力電流Iacの歪みを抑制するために、電流補正値Icにより補正前指令電流IL*を補正することに換えて、電流補正値Icによりリアクトル電流ILrを補正する。
図12は、本実施形態に係る電力変換装置100の構成図である。本実施形態では、リアクトル電流ILrを検出する電流センサ32を、第5スイッチSW5のソースと第6スイッチSW6のドレインとを結ぶ第1接続点K1よりも第5スイッチSW5のソース側に設けている。この場合、制御装置30は、第5スイッチSW5に流れる電流をリアクトル電流ILrとして取得する。
図13は、本実施形態に係る制御装置30のブロック構成図である。電流補正部40は、スロープ補償信号Slopeの傾きmsに基づいて、リアクトル電流ILrの補正に用いる電流補正値Icを変更する。本実施形態において、電流補正部40が設定する電流補正値Icは、第1実施形態と同様のものを用いることができる。本実施形態では、制御装置30は、リアクトル電流ILrから電流補正値Icを減算する減算器53を備えている。そのため、リアクトル電流ILrから電流補正値Icを減算した値が、加算器353に入力される。加算器353は、電流補正値Icが減算されたリアクトル電流ILrに、スロープ補償信号Slopeを加算し、補償後のリアクトル電流ILrを出力する。
制御装置30に入力された補正前指令電流IL*は、そのままDA変換器351に入力される。DA変換器351によりアナログ値に変換された補正前指令電流IL*は、コンパレータ352の反転入力端子に入力される。コンパレータ352は、補償後のリアクトル電流ILrが補正前指令電流ILaより小さい期間において、ロー状態の信号をRSフリップフロップ357のR端子に入力する。また、コンパレータ352は、補償後のリアクトル電流ILrが補正前指令電流IL*より大きい期間において、ハイ状態の信号をRSフリップフロップ357のR端子に入力する。
以上説明した本実施形態においても第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第3実施形態>
本実施形態では、第1実施形態に示す電力変換装置100と比べて、回路トポロジーが異なる。具体的には、本実施形態に係る電力変換装置100は、第1実施形態と異なり、ハーフブリッジ回路を備えていない。
図14は、本実施形態に係る電力変換装置100を示す図である。第1直流端子TD1とフルブリッジ回路70とは、第1配線LP1を介して接続されている。第2直流端子TD2とフルブリッジ回路70とは、第2配線LP2を介して接続されている。
フルブリッジ回路70は、第1~第4スイッチSW11~SW14を備えている。第1~第4スイッチSW11~SW14は、第1実施形態のフルブリッジ回路12が備える第1~第4スイッチSW1~SW4と回路構成が同じであるため、説明を省略する。
第3スイッチSW13のソースと、第4スイッチSW14のドレインとの間には、第1電流センサ61が設けられている。第1電流センサ61は、第1,第4スイッチSW11,SW14に流れる電流を第1リアクトル電流IL1rとして検出する。また、第1スイッチSW11のソースと、第2スイッチSW12のドレインとの間には、第2電流センサ62が設けられている。第2電流センサ62は、第2,第3スイッチSW12,SW13に流れる電流を第2リアクトル電流IL2rとして検出する。
図15は、本実施形態に係る制御装置30の機能を示す機能ブロック図である。本実施形態においても、制御装置30は、ピーク電流モード制御により、電力変換装置100を制御する。
制御装置30は、電流補正部40により出力される電流補正値Icを、第1,第2リアクトル電流IL1r,IL2rから減算する減算器53と、第1電流制御部51と、第2電流制御部52とを備えている。第1電流制御部51は、電流補正値Icが減算された第1リアクトル電流IL1rを補正後指令電流ILa*に制御すべく、ピーク電流モード制御を実施する。第2電流制御部52は、電流補正値Icが減算された第2リアクトル電流IL2rを補正後指令電流ILa*に制御すべく、ピーク電流モード制御を実施する。第1,第2電流制御部51,52の構成は、電流制御部50の構成と同様であるため、その説明を省略する。
第1電流制御部51の出力は、第1AND回路382の一方の入力端子に接続されており、第2電流制御部52の出力は、第2AND回路383の一方の入力端子に接続されている。極性切替部55の出力端子は、第2AND回路383の他方の入力端子と、反転器360の入力端子とに接続されている。反転器360の出力端子は、第1AND回路382の他方の入力端子に接続されている。
第1AND回路382には、第1電流制御部51のRSフリップフロップ357の出力信号と、極性切替部55からの出力信号とが入力される。第1AND回路382の出力端子は、第4スイッチSW14のゲートに接続されている。第1AND回路382から第4スイッチSW14のゲートに出力される信号が、第4ゲート信号GS4となる。また、第1AND回路382の出力端子は、反転器361を介して第3スイッチSW13のゲートに接続されている。第1AND回路382から反転器361を介して第3スイッチSW13のゲートに出力される信号が、第3ゲート信号GS3となる。第3ゲート信号GS3は、第4ゲート信号GS4を反転させたものとなる。
第2AND回路383には、第2電流制御部52のRSフリップフロップ357の出力信号と、極性切替部55からの出力信号とが入力される。第2AND回路383の出力側は、第2スイッチSW12のゲートに接続されている。第2AND回路383から第2スイッチSW12のゲートに出力される信号が、第2ゲート信号GS2となる。また、第2AND回路383の出力端子は、反転器362を介して第1スイッチSW11のゲートに接続されている。第2AND回路383から反転器362を介して第1スイッチSW11のゲートに出力される信号が、第1ゲート信号GS1となる。第1ゲート信号GS1は、第2ゲート信号GS2を反転させたものとなる。
第1AND回路382に、ハイ状態の極性切替部55の出力信号とハイ状態のRSフリップフロップ357の出力信号とが入力されることで、第1AND回路382は、ハイ状態の第4ゲート信号GS4を出力し、ロー状態の第3ゲート信号GS3を出力する。また、第2AND回路383に、ハイ状態の極性切替部55の出力信号とハイ状態のRSフリップフロップ357の出力信号とが入力されることで、第2AND回路383は、ハイ状態の第2ゲート信号GS2と、ロー状態の第1ゲート信号GS1を出力する。
図16は、本実施形態に係る電力変換装置100のタイミングチャートである。図16(a)は、入力電圧Vdc及び交流電圧Vacの推移を示す。図16(b)は第1ゲート信号GS1の推移を示し、図16(c)は第2ゲート信号GS2の推移を示す。図16(d)は第3ゲート信号GS3の推移を示し、図16(e)は第4ゲート信号GS4の推移を示す。図16(f)は補正前指令電流IL*の推移を示し、図16(g)はスロープ補償信号Slopeの傾きmsを示す。図16(h)はリアクトル電流ILrの推移を示し、図16(i)は出力電流Iacの推移を示す。
交流電圧Vacが正となる第1期間P1では、第1ゲート信号GS1がハイ状態となることで第1スイッチSW11がオン状態となり、第2ゲート信号GS2がロー状態となることで第2スイッチSW12がオフ状態となる。第1期間P1では、第1,第2電流制御部51,52が実施するピーク電流モード制御により、第3,4ゲート信号GS3,GS4がハイ状態又はロー状態に変更される。これにより、第3,第4スイッチSW13,SW14が操作され、第1交流端子TA1から交流電源200を介して第2交流端子TA2の向きに出力電流Iacが流れる。
交流電圧Vacが負となる第2期間P2では、フルブリッジ回路70では、第3ゲート信号GS3がハイ状態となることで第3スイッチSW13がオン状態となり、第4ゲート信号GS4がロー状態となることで第4スイッチSW14がオフ状態となる。第2期間P2では、第1,第2電流制御部52が実施するピーク電流モード制御により、第1,2ゲート信号GS1,GS2がハイ状態又はロー状態に変更される。これにより、第2交流端子TA2から交流電源200を介して第1交流端子TA1の向きに出力電流Iacが流れる。
本実施形態においても、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングを含む所定期間(t21-t22,t24-t25,t25-t26,t28-t29)において傾きmsが最大値となる。これにより、補償後の指令電流IL*に対する、ノイズの比率(S・N比)が、スロープ補償信号Slopeを固定値とする場合よりも高くなる。
以上説明した本実施形態では、第1実施形態と同様の効果を奏する。
<第3実施形態の変形例1>
第1電流センサ61が、第1スイッチSW11のドレイン側に設けられていてもよい。第2電流センサ62が、第2スイッチSW12のドレイン側に設けられていてもよい。
<第3実施形態の変形例2>
図17は、第3実施形態の変形例に係る電力変換装置100の構成図である。本実施形態では、第1電流センサ61が、第1スイッチSW11のドレイン側に設けられている。第2電流センサ62が、第1,第2スイッチSW11,SW12間のソースとドレインとを接続する配線において、第5接続点K5よりも第2スイッチSW12側に設けられている。
図18は、第3実施形態の変形例に係る制御装置30の機能ブロック図である。本変形例においても、制御装置30は、ピーク電流モード制御により、電力変換装置100を制御する。
第1電流制御部51には、減算器53により電流補正値Icが減算された第2リアクトル電流IL2rが入力される。また、第2電流制御部52には、減算器53により電流補正値Icが減算された第1リアクトル電流IL1rが入力される。
極性切替部55の出力端子は、第2AND回路383の入力端子と、第4スイッチSW14のゲートと、反転器360の入力端子とに接続されている。反転器360の出力端子側は、第1AND回路382の入力端子と第3スイッチSW13のゲートとに接続されている。
第1AND回路382には、第1電流制御部51のRSフリップフロップ357の出力信号と、極性切替部55からの出力信号とが入力される。第1AND回路382の出力端子は、第2スイッチSW12のゲートに接続されている。
第2AND回路383には、第2電流制御部52のRSフリップフロップ357の出力信号と、極性切替部55からの出力信号とが入力される。第2AND回路383の出力側は、第1スイッチSW11のゲートに接続されている。
第1AND回路382から第2スイッチSW12のゲートに出力される信号が第2ゲート信号GS2となる。第2AND回路383から第1スイッチSW11のゲートに出力される信号が第1ゲート信号GS1となる。極性切替部55から反転器360を介して第3スイッチSW13のゲートに出力される信号が第3ゲート信号GS3となる。極性切替部55から第4スイッチSW14のゲートに出力される信号が第4ゲート信号GS4となる。
交流電圧Vacが正となる第1期間P1では、極性切替部55からの出力信号がハイ状態となることで、第4ゲート信号GS4がハイ状態となり、第3ゲート信号GS3がロー状態となる。また、第1期間P1では、第1,第2電流制御部51,52は、ピーク電流モード制御により第1,第2ゲート信号GS1,GS2をハイ状態又はロー状態に変化させて、第1,第2スイッチSW11,SW12を操作する。
交流電圧Vacが負となる第2期間P2では、極性切替部55からの出力信号がロー状態となることで、第4ゲート信号GS4がロー状態となり、第3ゲート信号GS3がハイ状態となる。また、第2期間P2では、第1,第2電流制御部51,52は、ピーク電流モード制御により第1,第2ゲート信号GS1,GS2をハイ状態又はロー状態に変化させて、第1,第2スイッチSW11,12を操作する。
本実施形態においても、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングを含む所定期間においてスロープ補償信号Slopeの傾きmsが最大値に設定される。これにより、補償後の指令電流IL*に対する、ノイズの比率(S・N比)が、スロープ補償信号Slopeを固定値とする場合よりも高くなる。
以上説明した本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第4実施形態>
第4実施形態では、第3実施形態と異なる構成を中心に説明する。なお、同一の符号を付した箇所は同一の部位を示しその説明は繰り返さない。
図19は、実施形態に係る電力変換装置100の回路図である。本実施形態に係る電力変換装置100では、第1,第2交流端子TA1,TA2と、フルブリッジ回路70との間に、第5スイッチSW15と、第6スイッチSW16とが接続されている。具体的には、第5スイッチSW15のソースに、第6スイッチSW16のドレインが接続されている。また、第5スイッチSW15のドレインが、第5配線LP5のうち、リアクトル13よりもフルブリッジ回路70側に接続され、第6スイッチSW16のドレインが第6配線LP6に接続されている。
第5,第6スイッチSW15,SW16それぞれは、電圧駆動型の半導体スイッチであり、逆並列接続された寄生ダイオードを備えている。
図20は、本実施形態に係る制御装置30の機能を示す機能ブロック図である。本実施形態においても、制御装置30は、ピーク電流モード制御により、電力変換装置100を制御する。
極性切替部55の出力端子は、第2AND回路383の入力端子と、第5スイッチSW15のゲートと、反転器360の入力端子とに接続されている。反転器360の出力端子側は、第1AND回路382の入力端子と第6スイッチSW16のゲートとに接続されている。
第1AND回路382の出力端子は、第1,第4スイッチSW11,SW14のゲートに接続されている。第2AND回路383の出力側は、第2,第3スイッチSW12,SW13のゲートに接続されている。
第1AND回路382から第1スイッチSW11のゲートに出力される信号が第1ゲート信号GS1となり、第4スイッチSW14のゲートに出力される信号が第4ゲート信号GS4となる。第2AND回路383から第2スイッチSW12のゲートに出力される信号が第2ゲート信号GS2となり、第3スイッチSW13のゲートに出力される信号が第3ゲート信号GS3となる。極性切替部55から第5スイッチSW15のゲートに出力される信号が第5ゲート信号GS5となる。極性切替部55から反転器360を介して第6スイッチSW16のゲートに出力される信号が第6ゲート信号GS6となる。
図21は、本実施形態に係る電力変換装置100のタイミングチャートである。図21(a)は入力電圧Vdc及び交流電圧Vacの推移を示す。図21(b)は第1,第4ゲート信号GS11,GS14の推移を示し、図21(c)は第2,第3ゲート信号GS12,GS13の推移を示す。図21(d)は第5ゲート信号GS5の推移を示し、図21(e)は第6ゲート信号GS6の推移を示す。図18(f)はリアクトル電流ILrの推移を示し、図21(g)はスロープ補償信号Slopeの傾きmsの推移を示す。図21(h)はリアクトル電流ILrの推移を示し、図21(i)は出力電流Iacの推移を示す。
交流電圧Vacが正となる第1期間P1では、第6ゲート信号GS6がハイ状態となることで第6スイッチSW16がオン状態となり、第5ゲート信号GS5がロー状態となることで第5スイッチSW15がオフ状態となる。第1期間P1では、第1電流制御部51が実施するピーク電流モード制御により、第1,4ゲート信号GS1,GS4がハイ状態又はロー状態に変化する。
交流電圧Vacが負となる第2期間P2では、第5ゲート信号GS5がハイ状態となることで第5スイッチSW15がオン状態となり、第6ゲート信号GS6がロー状態となることで第6スイッチSW16がオフ状態となる。第2期間P2では、第2電流制御部52が実施するピーク電流モード制御により、第2,3ゲート信号GS2,GS3がハイ状態又はロー状態に変化する。
本実施形態においても、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングを含む所定期間(t31-t32,t34-t36,t38-t39)において傾きmsが最大値となる。これにより、補償後の指令電流IL*に対する、ノイズの比率(S・N比)が、スロープ補償信号Slopeを固定値とする場合よりも高くなる。
以上説明した本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<その他の実施形態>
・制御装置30は、指令電流IL*及びリアクトル電流ILrを電流補正値Icにより補正しない構成としてもよい。
・フルブリッジ回路を、4つのIGBTを用いた回路により構成してもよい。