JP7128276B2 - ランフラットタイヤ - Google Patents

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Description

本開示は、ランフラットタイヤに関する。
タイヤの内圧が低下した状態でも一定距離を走行可能にするランフラットタイヤとして、タイヤサイド部をサイド補強ゴムで補強したサイド補強型のランフラットタイヤがある(例えば、特開2012-116212号公報参照)。
ところで、タイヤとして、車両の燃費性能に関係する転がり抵抗を低減することが望まれており、ランフラットタイヤにおいても、転がり抵抗を低減することが望まれている。
また、サイド補強型のランフラットタイヤでは、一般のタイヤに比較して縦ばね定数が高くなるため、通常走行時の乗り心地の改善も望まれている。しかしながら、通常走行時の乗り心地を改善するためにサイド補強ゴムを軟らかくすると、ランフラット走行時の耐久性を損なう問題がある。
本開示は、上記事実を考慮して、転がり抵抗を低減し、乗り心地、及びランフラット耐久性を両立可能なランフラットタイヤを提供することを目的とする。
本開示に係るランフラットタイヤは、一対のビードコアと、前記一対のビードコアを跨る本体部と前記ビードコアを折り返される折返し部とを備えたカーカスと、前記カーカスのタイヤ径方向外側に設けられたベルトと、前記カーカスのタイヤ幅方向内側に設けられ、タイヤ径方向両側に向けて厚さが漸減するサイド補強層と、タイヤ径方向外側に位置する前記カーカスのタイヤ内面側で、前記ベルトのタイヤ幅方向最外端を通り、かつタイヤ内面に対して垂直に延びる仮想線よりもタイヤ幅方向内側に設けられるインナーライナーと、を備え、前記カーカスの中心線をケースラインとし、標準リムに装着して零内圧の状態でタイヤ回転軸に沿った断面で見たときの、前記ビードコアのタイヤ径方向外側端を通って前記タイヤ回転軸に平行な基準線からタイヤ径方向へ計測した前記ケースラインの高さ寸法をサイドハイトSH、前記基準線からタイヤ径方向外側へ前記サイドハイトSHの10%離れた位置を通りタイヤ回転軸に沿って平行とされた仮想線と前記ケースラインとの交点を0.1SHp、前記基準線からタイヤ径方向外側へ前記サイドハイトSHの20%離れた位置を通りタイヤ回転軸に沿って平行とされた仮想線と前記ケースラインとの交点を0.2SHp、前記基準線からタイヤ径方向外側へ前記サイドハイトSHの40%離れた位置を通りタイヤ回転軸に沿って平行とされた仮想線と前記ケースラインとの交点を0.4SHp、前記基準線からタイヤ径方向外側へ前記サイドハイトSHの60%離れた位置を通りタイヤ回転軸に沿って平行とされた仮想線と前記ケースラインとの交点を0.6SHp、タイヤ回転軸に沿った断面で見たときの前記交点0.1SHpと前記0.2SHpとの間における前記ケースラインの平均の曲率半径を半径R1、タイヤ回転軸に沿った断面で見たときの前記交点0.4SHpと前記0.6SHpとの間における前記ケースラインの平均の曲率半径を半径R2としたときに、比R2/R1を0.3よりも大きく設定した。
タイヤのインナーライナーには、タイヤを構成する他のゴムよりも、気体が透過し難い、例えば、主にブチルゴムが一般的に用いられるが、このブチルゴムはタイヤを構成する他のゴムよりもロス(tanδ)が大きい。タイヤにおいて、走行時の変形の大きい部分にロスの大きいゴムを使用すると、転がり抵抗が悪化する。また、タイヤにおいては、トレッド部とサイド部とを比較すると、サイド部の方が、ベルト等が埋設されているトレッド部よりも変形が大きい。
本開示に係るランフラットタイヤでは、インナーライナーをタイヤ径方向外側に位置するカーカスのタイヤ内面側で、ベルトのタイヤ幅方向最外端を通り、かつタイヤ内面に対して垂直に延びる仮想線よりもタイヤ幅方向内側に設けている。言い換えれば、インナーライナーは、トレッド部よりも変形が大きいサイド部に設けられていないので、タイヤ内面全体にインナーライナーを設けたタイヤに比較して、転がり抵抗を低減することができる。
なお、カーカスのタイヤ幅方向内側には、ランフラット走行時に荷重を支持可能とする厚肉のサイド補強層が設けられているので、カーカスのタイヤ幅方向内側にインナーライナーが設けられていなくても、タイヤ幅方向外側への気体の透過は抑制できる。言い換えれば、カーカスのタイヤ幅方向内側において、サイド補強層がインナーライナーの代わりになっている。
さらに、本開示に係るランフラットタイヤでは、交点0.1SHpと0.2SHpとの間におけるケースラインの平均の曲率半径を半径R1、タイヤ回転軸に沿った断面で見たときの交点0.4SHpと0.6SHpとの間におけるケースラインの平均の曲率半径を半径R2としたときに、比R2/R1を0.3よりも大きく設定しているので、通常走行時の縦ばね定数を低下させることができ、かつランフラット走行時のビード部、及びタイヤサイド部の過度の倒れ込みを抑制でき、乗り心地とランフラット耐久性とを両立することができる。
本開示のランフラットタイヤによれば、転がり抵抗を低減し、乗り心地、及びランフラット耐久性を両立することができる。
本発明の一実施形態に係るランフラットタイヤをタイヤ軸方向に沿って切断した切断面の片側を示す半断面図である。 本発明の一実施形態に係るランフラットタイヤをタイヤ軸方向に沿って切断した切断面の片側を示す半断面図である。
(ランフラットタイヤの構成)
以下、図を参照しながら本発明の実施形態に係るランフラットタイヤ10について説明する。なお、本実施形態では、乗用車用のランフラットタイヤ10について説明する。
ここで、図中矢印TWはランフラットタイヤ10の幅方向(タイヤ幅方向)を示し、矢印TRはランフラットタイヤ10の径方向(タイヤ径方向)を示す。
ここでいうタイヤ幅方向とは、ランフラットタイヤ10の回転軸と平行な方向を指し、タイヤ軸方向ともいう。また、タイヤ径方向とは、ランフラットタイヤ10の回転軸と直交する方向をいう。
また、符号CLはランフラットタイヤ10の赤道面(タイヤ赤道面)を示している。さらに、本実施の形態では、タイヤ径方向に沿ってランフラットタイヤ10の回転軸側を「タイヤ径方向内側」、タイヤ径方向に沿ってランフラットタイヤ10の回転軸とは反対側を「タイヤ径方向外側」と記載する。
一方、タイヤ幅方向に沿ってランフラットタイヤ10の赤道面CL側を「タイヤ幅方向内側」、タイヤ幅方向に沿ってランフラットタイヤ10の赤道面CLとは反対側を「タイヤ幅方向外側」と記載する。
また、以下の説明において、リムとは、下記規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または、”Approved Rim”、”Recommended Rim”)のことである。規格は、タイヤが生産又は使用される地域に有効な産業規格によって決められている。例えば、アメリカ合衆国では、”The Tire and Rim Association Inc.のYear Book ”で、欧州では”The European Tire and Rim Technical OrganizationのStandards Manual”で、日本では日本自動車タイヤ協会の“JATMA Year Book”にて規定されている。
図1、及び図2は、標準リム30に組み付けて内圧を充填していない状態(外気と同じ気圧)のランフラットタイヤ10のタイヤ回転軸に沿った断面図である。
図1に示されるように、本実施の形態に係るランフラットタイヤ10は、一対のビード部12と、カーカス14と、ベルト16と、ベルト補強層18と、トレッド部20と、タイヤサイド部22と、サイド補強層としてのサイド補強ゴム24と、インナーライナー32と、を備えている。
ビード部12は、タイヤ幅方向に間隔を空けて左右一対設けられている(図1では、片側のビード部12のみ図示している。)。この一対のビード部12には、ビードコア26がそれぞれ埋設されており、このビードコア26の間には、カーカス14が跨っている。
(カーカス)
本実施形態のカーカス14は、1枚のカーカスプライ15によって構成されており、カーカスプライ15は、複数本のコード(図示省略。例えば、有機繊維コードや金属コードなど。)を被覆ゴムで被覆して形成されている。このようにして形成されたカーカス14が一方のビードコア26から他方のビードコア26へトロイド状に延びてタイヤの骨格を構成している。なお、本実施形態のランフラットタイヤ10は、ラジアル構造のタイヤであり、カーカスプライ15のコードは、タイヤ側部においてタイヤ径方向(ラジアル方向)に延びており、タイヤ外周部においてはタイヤ赤道面CLに対して交差する方向に延びている。
なお、このカーカス14において、一方のビードコア26から他方のビードコア26に跨っている部分を本体部14A、ビードコア26をタイヤ内側から外側へ折り返されている部分を折返し部14Bと呼ぶ。なお、本実施形態において、折返し部14Bの端部14BEは、後述するベルト16のタイヤ幅方向最外端16Eの近傍において、ベルト16とカーカス14の本体部14Aとの間に挟持されている。
また、折返し部14Bの端部14BEは、後述するサイド補強ゴム24の他端部24Bよりもタイヤ幅方向外側、かつ、後述する何れのベルトプライ16A、16Bのベルト端よりもタイヤ径方向内側に配置されることが好ましい。
以下の説明において、「ケースライン14CL」とは、カーカス14の厚みの中心線のことを指す。例えば、カーカスプライ15が一枚の部分においては、カーカスプライ15の厚みの中心線を「ケースライン14CL」とし、カーカスプライ15が複数枚重なっている部分においては、複数枚重なったカーカスプライ15の厚みの中心線を「ケースライン14CL」とする。また、カーカス14の本体部14Aと折返し部14Bとがある部分(後述するビードフィラー28の配置されている部分)においては、本体部14と折返し部14Bとの中心線(図1における2点鎖線で図示する)を「ケースライン14CL」とする。
また、本実施形態では、標準リム30に組み付けて内圧を充填していない状態のランフラットタイヤ10において、ビードコア26のタイヤ径方向外側端を通ってタイヤ回転軸(図示せず)に平行とされた基準線BLからタイヤ径方向外側へ向けて計測するケースライン14CLの最大高さSHをサイドハイトと呼ぶ(図1参照。)。
さらに、本実施形態では、基準線BLからタイヤ径方向外側へサイドハイトSHの10%離れた位置を通りタイヤ回転軸に沿って平行とされた仮想線FL1とケースライン14CLとの交点を0.1SHp、基準線BLからタイヤ径方向外側へサイドハイトSHの20%離れた位置を通りタイヤ回転軸に沿って平行とされた仮想線FL2とケースライン14CLとの交点を0.2SHp、基準線BLからタイヤ径方向外側へサイドハイトSHの40%離れた位置を通りタイヤ回転軸に沿って平行とされた仮想線FL4とケースライン14CLとの交点を0.4SHp、基準線BLからタイヤ径方向外側へサイドハイトSHの60%離れた位置を通りタイヤ回転軸に沿って平行とされた仮想線FL6とケースライン14CLとの交点を0.6SHpと呼ぶ。
本実施形態のカーカス14のケースライン14CLは、交点0.1SHpと交点0.2SHpとの間が、タイヤ内側に曲率中心を有し平均の曲率半径がR1とされたタイヤ外側へ凸となる円弧形状とされ、交点0.4SHpと交点0.6SHpとの間が、タイヤ内側に曲率中心を有し平均の曲率半径がR2とされたタイヤ外側へ凸となる円弧形状とされている。なお、交点0.2SHpと交点0.4SHpとの間のケースライン14CLは、交点0.1SHpと交点0.2SHpとの間の円弧形状、及び交点0.4SHpと交点0.6SHpとの間の円弧形状に対して滑らかに繋がるタイヤ外側へ凸となる円弧形状とされている。
本実施形態では、曲率半径R1は、曲率半径R2よりも大きく設定されており、比R2/R1は0.3よりも大きく設定されている。また、比R2/R1は、0.4よりも大きく設定することが好ましい。なお、比R2/R1は、1.3よりも小さく設定することが好ましい。
さらに、曲率半径R1は、サイドハイトSHの100~200%の範囲内に設定されている事が好ましく、曲率半径R2は、サイドハイトSHの50~150%の範囲内に設定されている事が好ましい。
ここで、曲率半径R1、及び曲率半径R2は、共に平均値であり、交点0.1SHpと交点0.2SHpとの間のケースライン14CL、及び交点0.4SHpと交点0.6SHpとの間のケースライン14CLは、単一の曲率半径を持つ円弧形状であってもよく、複数の曲率半径からなる円弧形状であってもよく、曲率半径が徐々に変化する略円弧形状であってもよい。また、交点0.4SHpと交点0.6SHpとの間のケースライン14CLの曲率半径は、場合によっては無限大、言い換えれば、交点0.4SHpと交点0.6SHpとの間のケースライン14CLは直線形状であってもよい。
本実施形態のケースライン14CLは、交点0.1SHpと交点0.2SHpとの間、及び交点0.4SHpと交点0.6SHpとの間共に、単一の曲率半径を持つ円弧形状である。
ビード部12において、カーカス14の本体部14Aと折返し部14Bとで挟まれた領域には、ビードコア26からタイヤ径方向外側へ延びるビードフィラー28が埋設されている。また、ビードフィラー28は、タイヤ径方向外側の端部28Aに向けて厚みが減少している。ビードフィラー28は、サイドゴム23よりも硬いゴムで形成されている。なお、ビードフィラー28の形状、及び材質は、本実施形態のものに限定されない。
なお、ランフラットタイヤ10をタイヤ回転軸に沿って断面にしたときのビードフィラー28の断面積をAbf、サイド補強ゴム24の断面積をArrとしたときに、比Abf/Arrは0.04~0.17の範囲内とすることが好ましく、0.08~0.15の範囲内とすることがより好ましく、0.09~0.13の範囲内とすることがより一層好ましい。
仮想線FLWよりタイヤ径方向内側のサイド補強ゴム24の断面積をArri、仮想線FLWよりタイヤ径方向外側のサイド補強ゴム24の断面積をArroとしたときに、比Arri/Arroを、0.3~1.5の範囲内とすることが好ましく、0.3~1.0の範囲内とすることがより好ましく、0.5~0.6の範囲内とすることがより一層好ましい。
ビードコア26の断面積をAcとしたときに、比Ac /Abfを、0.7~1.1の範囲内とすることが好ましく、0.8~1.8の範囲内とすることがより好ましく、0.90~0.95の範囲内とすることがより一層好ましい。
総ゲージGと厚みtaとの比ta/Gは、0.6~1.0の範囲内とすることが好ましく、0.6~0.8の範囲内とすることがより好ましく、0.7~0.8の範囲内とすることがより一層好ましい。
ランフラットタイヤ10の偏平率は、65%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、35%以下がより一層好ましい。
図2に示すように、標準リム30のリム端を通りタイヤ径方向に平行な仮想線FLHが、タイヤ最大幅部Wmaxのタイヤ径方向内側のカーカス14の本体部14Aと交わる交点をPa、該交点Paとビードコア26のタイヤ幅方向内側端26Pとを結ぶ仮想線FLαがタイヤ幅方向に対してなす角度をαとしたきに、30°<α<70°とすることが好ましく、35°<α<60°とすることがより好ましく、35°<α<45°とすることがより一層好ましい。
なお、本実施形態の様にビードコア26の断面形状が矩形の場合、ビードコア26のタイヤ幅方向内側端26Pは、ビードコア26のタイヤ幅方向内側の辺の長手方向の中点になる。
上記仮想線FLHが、タイヤ最大幅部Wmaxのタイヤ径方向外側のカーカス14の本体部14Aと交わる交点をPb、該交点Pbとビードコア26のタイヤ幅方向内側端26Pとを結ぶ仮想線FLβが、タイヤ幅方向に対してなす角度をβとしたときに、50°<β<80°とすることが好ましく、55°<β<70°とすることがより好ましく、55°<β<65°とすることがより一層好ましい。
図1に示すように、サイド補強ゴム24のタイヤ径方向外側の他端部24B側は、第1ベルトプライ16Aのベルト端、及び第2ベルトプライ16Bのベルト端よりもタイヤ幅方向内側に配置されていることが好ましい。
リムガード34の頂点34Tは、カーカス14の本体部14Aのタイヤ幅方向外端14maxよりもタイヤ幅方向外側に配置されていることが好ましい。
(ベルト)
カーカス14のタイヤ径方向外側には、ベルト16が配設されている。本実施形態のベルト16は、1枚又は複数枚のベルトプライによって構成されている。本実施形態のベルト16は、一例として、タイヤ径方向内側の第1ベルトプライ16A、及び第1ベルトプライ16Aのタイヤ径方向外側に配置されて第1ベルトプライ16Aよりも幅狭の第2ベルトプライ16Bとを含んで構成されている。
ベルトプライ16A、16Bは、互いに平行に並列された複数本のコード(本実施形態では、スチールコード)を被覆ゴムで被覆して形成されている。ベルトプライ16A、16Bを構成するコードは、タイヤ周方向に対して傾斜して配設されており(一例として、タイヤ周方向に対し15度~30度の傾斜角度で傾斜している。)。なお、ベルトプライ16Aのコードと、ベルトプライ16Bのコードとは、タイヤ赤道面CLに対して互いに反対方向に傾斜している。即ち、本実施形態のベルト16は、いわゆる交差ベルトである。
ベルト16のタイヤ径方向外側には、ベルト補強層18が配設されている。ベルト補強層18は、一例としてタイヤ周方向に沿って延びるコードを含んで構成され、ベルト16の全体を覆うように配設されている。
ベルト16及びベルト補強層18のタイヤ径方向外側には、トレッド部20を構成するトレッドゴム21が配置されている。トレッド部20は、走行中に路面に接地する部位であり、トレッド部20の表面には、タイヤ周方向に延びる周方向溝20Aが形成されている。また、トレッド部20には、タイヤ幅方向に延びる図示しない幅方向溝が形成されている。なお、周方向溝20A及び幅方向溝の形状や本数は、ランフラットタイヤ10に要求される排水性や操縦安定性等の性能に応じて適宜設定される。
ビード部12とトレッド部20との間には、タイヤサイド部22が設けられている。タイヤサイド部22は、タイヤ径方向に延びてビード部12とトレッド部20とを連結している。タイヤサイド部22、及びビード部12において、カーカス14のタイヤ幅方向外側に、サイドゴム23が配置されている。
(サイド補強ゴム)
タイヤサイド部22は、ランフラット走行時にランフラットタイヤ10に作用する荷重を負担できるように以下に説明するように構成されている。
タイヤサイド部22には、カーカス14のタイヤ幅方向内側にタイヤサイド部22を補強する単一のゴム材料からなるサイド補強ゴム24が配設されている。サイド補強ゴム24は、パンクなどでランフラットタイヤ10の内圧が減少した場合に車両及び乗員の重量を支えた状態で所定の距離を走行させるための補強ゴムである。なお、本実施形態では一例としてゴムを主成分とするサイド補強ゴム24を配設しているが、本発明はこれに限らず、サイド補強ゴム24は他の材料で形成してもよく、例えば、熱可塑性樹脂等を主成分として形成されていてもよい。
本実施形態では、サイド補強ゴム24を1種類のゴム部材で形成しているが、これに限らず、例えば、硬さの異なる複数のゴム部材で形成してもよい。また、サイド補強ゴム24は、ゴム部材が主成分であれば、他にフィラー、短繊維、樹脂等の材料を含んでもよい。さらに、ランフラット走行時の耐久力を高めるため、サイド補強ゴム24を構成するゴム部材として、デュロメータ硬さ試験機を用いて20℃で測定したJIS硬度が70~85のゴム部材を含んでもよい。さらに、粘弾性スペクトロメータ(例えば、東洋精機製作所製スペクトロメータ)を用いて周波数20Hz、初期歪み10%、動歪み±2%、温度60℃の条件で測定した損失係数tanδが0.10以下の物性を有するゴム部材を含んでもよい。
サイド補強ゴム24は、カーカス14の本体部14Aの内面に沿ってタイヤ径方向に延びており、ビードコア26側及びトレッド部20側に向かうにつれて厚みtが減少する形状、例えば、断面略三日月形状とされている。なお、ここでいう厚みtとは、ランフラットタイヤ10を標準リム30に組み付けて内圧を零とした状態において、サイド補強ゴム24のタイヤ内面から垂直に測定した長さを指している。
サイド補強ゴム24のタイヤ径方向内側の一端部24A側は、カーカス14を挟んでビードフィラー28と重なっている。すなわち、サイド補強ゴム24の一端部24A側は、ビードフィラー28とタイヤ径方向にオーバーラップするように配設されている。
一方、サイド補強ゴム24のタイヤ径方向外側の他端部24B側は、カーカス14を挟んでベルト16と重なっている。すなわち、サイド補強ゴム24の他端部24B側は、ベルト16とタイヤ幅方向にオーバーラップするように配設されている。
さらに、ランフラットタイヤ10のタイヤ最大幅部Wmaxを通り、かつタイヤ回転軸に平行な仮想線FLW上で計測したときのタイヤ内面からタイヤ外面までの総ゲージをG、タイヤ内面からケースライン14CLまでをタイヤ内面に対して垂直な方向で計測したときの距離をtとしたときに、仮想線FL1と仮想線FL6との間において、距離tは、総ゲージGの50~90%の範囲内に設定されていることが好ましい。
また、サイド補強ゴム24が最大幅(tmax)となるサイド補強ゴム最大幅部位置24Pは、サイドハイトSHの20~60%の範囲内が好ましく、サイドハイトSHの30~50%の範囲内がより好ましく、サイドハイトSHの30~40%の範囲内がより一層好ましい。
(インナーライナー)
本実施形態では、トレッド部20のタイヤ径方向内側におけるカーカス14、及びサイド補強ゴム24の内面に、インナーライナー32が配設されている。インナーライナー32は、一例として、ブチルゴムを主成分とするゴムで構成されている。インナーライナー32を構成するゴムは、ランフラットタイヤ10を構成する他のゴム(一例として、トレッドゴム21、サイドゴム23等)よりも、気体が透過し難く、かつロス(損失係数tanδ)が大きいものが用いられている。
インナーライナー32は、タイヤ幅方向端32Eが、タイヤ内面(本実施形態では、サイド補強ゴム24の内面)に対して垂直で、かつベルト16のタイヤ幅方向最外端(第1ベルトプライ16Aの幅方向端部)16Eを通る仮想線FLEよりもタイヤ幅方向外側へ越えることのないように配置される。言い換えれば、インナーライナー32は、タイヤサイド部22、及びビード部12のタイヤ内面側に配置されない。本実施形態では、インナーライナー32のタイヤ幅方向端32Eが、仮想線FLE上に位置している。
ここで、インナーライナー32のタイヤ幅方向端32Eからカーカス14のケースライン14CLまでの距離(最短距離)Lminは、1mm以上に設定することが好ましい。
(作用、効果)
次に、本実施形態のランフラットタイヤ10の作用について説明する。
本実施形態のランフラットタイヤ10は、インナーライナー32が、タイヤ径方向外側に位置するカーカス14のタイヤ内面側で、ベルト16のタイヤ幅方向最外端16Eを通り、かつタイヤ内面に対して垂直に延びる仮想線FLEよりもタイヤ幅方向外側に配置されていない。言い換えれば、本実施形態のランフラットタイヤ10は、インナーライナー32がタイヤサイド部22に設けられていないので、タイヤ内面全体にインナーライナーを設けたランフラットタイヤに比較して、転がり抵抗を低減することができ、燃費性能を向上させることができる。
さらに、本実施形態のように、インナーライナー32のタイヤ幅方向端32Eを、仮想線FLE上に配置することで、転がり抵抗を悪化させることなく、タイヤ外側への気体(タイヤ内に充填した空気)の透過を最大限に抑制することができる。なお、仮想線FLEよりもタイヤ幅方向外側では、厚いサイド補強ゴム24が配置されているので、タイヤ外側への気体の透過は十分に抑制できる。
また、本実施形態のランフラットタイヤ10では、交点0.1SHpと交点0.2SHpとの間のケースライン14CLをタイヤ外側へ凸となる円弧形状とすると共に、その平均の曲率半径を半径R1、タイヤ回転軸に沿った断面で見たときの交点0.4SHpと0.6SHpとの間のケースライン14CLをタイヤ外側へ凸となる円弧形状とすると共に、その平均の曲率半径を半径R2としたときに、比R2/R1を0.3よりも大きく設定したので、通常走行時の縦ばね定数を低下させることができ、かつランフラット走行時のビード部12、及びタイヤサイド部22の過度の倒れ込みを抑制でき、乗り心地とランフラット耐久性とを両立することができる。なお、ランフラット耐久性が良くなるため、比R2/R1は0.4よりも大きく設定することが更に好ましい。
但し、比R2/R1は、1.3未満に設定することが好ましい。比R2/R1が大きくなり過ぎると、タイヤサイド部のランフラット走行時のたわみが大きくなり過ぎ、ランフラット耐久性を満足できない。
また、本実施形態のランフラットタイヤ10では、インナーライナー32のタイヤ幅方向端32Eからカーカス14の本体部14Aまでの距離Lminを、1mm以上に設定しているので、ベルト16のコード(一例としてスチールコード)がタイヤ内の空気中に含まれる酸素の影響を受けて劣化(錆の発生等)しないように、インナーライナー32のタイヤ幅方向端32Eからベルト16のコードまでの距離を長くとってサイド補強ゴム24の厚さを確保することができる。
また、本実施形態のランフラットタイヤ10では、タイヤ側方のケースライン14CLにおいて、タイヤ径方向外側のケースライン14CLの半径R2をサイドハイトSHの100~200%の範囲内に設定し、タイヤ径方向内側のケースライン14CLの半径R1をサイドハイトSHの50~150%の範囲内に設定することで、ランフラットタイヤ10の通常走行時の縦ばね定数を低減しつつ、ランフラット走行時のランフラット耐久性を確保することができる。
半径R1がサイドハイトSHの100%未満になると、ビード付近の剛性が低くなり、リム側に倒れこむ変形が増加する事で該箇所に変形が集中するため、特にランフラット耐久性能が損なわれる。
半径R1がサイドハイトSHの200%を超えるになると、ビード付近の剛性が高くなり、通常内圧時の乗り心地性に悪影響を及ぼす。
半径R2がサイドハイトSHの50%未満になると、最大幅付近の剛性が低くなり、しなやかに撓むことはできるが、ランフラット走行時にサイド補強層に集中する変形が大きくなり、特にランフラット耐久性能が損なわれる。
半径R2がサイドハイトSHの150%を超えるとになると、最大幅付近の剛性が高くなりしなやかに撓むことができないため、通常内圧時の乗り心地性に悪影響を及ぼす。
ところで、タイヤ幅方向外側へ突出する略円弧形状のタイヤサイド部22が、内圧低下により潰れると、タイヤサイド部22の中立軸よりもタイヤ外側の部分ではタイヤ径方向に引張力が作用してタイヤ径方向に伸張変形し(伸びる)、タイヤサイド部22の中立軸よりもタイヤ内側の部分ではタイヤ径方向に圧縮力が作用してタイヤ径方向に圧縮される。また、中立軸から離れるにしたがって、変形量は増大する。
本実施形態のランフラットタイヤ10では、仮想線FL1と仮想線FL6との間において、t/Gが0.5~0.8の範囲内に設定されているので、タイヤサイド部22における中立軸に対して、タイヤサイド部22の中に埋設されるカーカスプライ15の位置がタイヤ幅方向外側へ離れて配置される、即ち、内圧低下時に変形量が大きくなる部位に、ゴムに比較して伸び難いコードを含むカーカスプライ15が配置されるため、通常走行時の乗り心地を悪化させるサイド補強ゴム24を厚くせずとも内圧低下時のタイヤサイド部22の変形(潰れ)をカーカスプライ15のコードの張力負担により抑制し、ランフラット耐久性を確保することができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
上記実施形態のカーカス14は、1枚のカーカスプライ15によって構成されていたが、本発明はこれに限らず、カーカス14は複数枚のカーカスプライ15によって構成されていてもよい。
上記実施形態のベルト16は、2枚のベルトプライによって構成された所謂交錯ベルトであったが、スパイラルベルトであってもよい。また、ベルト16は、樹脂層内にコードを埋設した構造のものであってもよい。
上記実施形態のインナーライナー32は、一例として、ブチルゴムを主成分としたゴムで形成されているが、本発明はこれに限らず、インナーライナー32は、他のゴム部材や、樹脂を主成分としたものであってもよく、樹脂フィルムであってもよい。
上記実施形態のランフラットタイヤ10では、ビード部12の外側面に、ビード部12の過度の変形(タイヤ幅方向外側への倒れ)を抑制するための突起状のリムガード(リムプロテクション)を設けていないが、本発明はこれに限らず、ビード部12の外側面にリムガードが設けられていてもよい。
上記実施形態では、乗用車用のランフラットタイヤについて説明したが、本発明は乗用車用以外の車両に用いるランフラットタイヤについても適用できる。
2018年6月25日に出願された日本国特許出願2018-120306号の開示は、その全体が参照される。
本明細書に記載されたすべての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照されることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照される。

Claims (4)

  1. 一対のビードコアと、
    前記一対のビードコアを跨る本体部と前記ビードコアを折り返される折返し部とを備えたカーカスと、
    前記カーカスのタイヤ径方向外側に設けられたベルトと、
    前記カーカスのタイヤ幅方向内側に設けられ、タイヤ径方向両側に向けて厚さが漸減するサイド補強層と、
    タイヤ径方向外側に位置する前記カーカスのタイヤ内面側で、前記ベルトのタイヤ幅方向最外端を通り、かつタイヤ内面に対して垂直に延びる仮想線よりもタイヤ幅方向内側に設けられるインナーライナーと、
    を備え、
    前記カーカスの中心線をケースラインとし、
    標準リムに装着して零内圧の状態でタイヤ回転軸に沿った断面で見たときの、前記ビードコアのタイヤ径方向外側端を通って前記タイヤ回転軸に平行な基準線からタイヤ径方向へ計測した前記ケースラインの高さ寸法をサイドハイトSH、
    前記基準線からタイヤ径方向外側へ前記サイドハイトSHの10%離れた位置を通りタイヤ回転軸に沿って平行とされた仮想線と前記ケースラインとの交点を0.1SHp、
    前記基準線からタイヤ径方向外側へ前記サイドハイトSHの20%離れた位置を通りタイヤ回転軸に沿って平行とされた仮想線と前記ケースラインとの交点を0.2SHp、
    前記基準線からタイヤ径方向外側へ前記サイドハイトSHの40%離れた位置を通りタイヤ回転軸に沿って平行とされた仮想線と前記ケースラインとの交点を0.4SHp、
    前記基準線からタイヤ径方向外側へ前記サイドハイトSHの60%離れた位置を通りタイヤ回転軸に沿って平行とされた仮想線と前記ケースラインとの交点を0.6SHp、
    タイヤ回転軸に沿った断面で見たときの前記交点0.1SHpと前記0.2SHpとの間における前記ケースラインの平均の曲率半径を半径R1、
    タイヤ回転軸に沿った断面で見たときの前記交点0.4SHpと前記0.6SHpとの間における前記ケースラインの平均の曲率半径を半径R2としたときに、
    比R2/R1を0.3よりも大きく設定した、ランフラットタイヤ。
  2. タイヤ回転軸に沿った断面で見たときに、前記インナーライナーのタイヤ幅方向端が、前記ベルトのタイヤ最外幅端を通ってタイヤ内面に対して垂直に延びる仮想線上に位置している、請求項1に記載のランフラットタイヤ。
  3. 前記半径R1が前記サイドハイトSHの100~200%の範囲内に設定され、
    前記半径R2が前記サイドハイトSHの50~150%の範囲内に設定されている、請求項1または請求項2に記載のランフラットタイヤ。
  4. タイヤ最大幅部を通りタイヤ回転軸に平行な仮想線上で計測するタイヤ総ゲージをG、
    前記交点0.1SHpを通りタイヤ内面に対して垂直に延びる仮想線と前記交点0.6SHpを通りタイヤ内面に対して垂直に延びる仮想線との間において、タイヤ内面に対して垂直な方向に沿って計測するタイヤ内面から前記ケースラインまでの距離をt、
    としたきに、
    t/Gを0.5~0.8の範囲内に設定した、請求項1~請求項3の何れか1項に記載のランフラットタイヤ。
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