以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による手指衛生管理システムが備える各装置およびそれらの設置場所の一例を示す図である。なお、以下の実施形態では、手指衛生管理システムを適用する施設が病院であるものとして説明するが、介護施設など、手指衛生の励行が推奨される施設には何れにも適用することが可能である。
図1に示すように、本実施形態による手指衛生管理システムは、消毒液を吐出する消毒用ボトル10(特許請求の範囲の消毒用容器に相当。図1では簡易的に「ボ」と表記している)に設けられた吐出操作検出装置100と、医療従事者により携帯される無線送信装置200と、病院内の各場所に設置される中継装置300(図1では簡易的に「中」と表記している)と、中継装置300に通信ネットワークを介して接続された管理装置400とを備えて構成される。
図1に示すように、消毒用ボトル10は、例えば病院内の各病室R1,R2,R3内に設置される。消毒用ボトル10が設置される病室R1,R2,R3内の位置は、例えば出入口の近傍である。あるいは、病室内のベッド近傍の位置であってもよい。なお、消毒用ボトル10が設置される位置は、各病室R1,R2,R3の出入口近傍で病室外(廊下CR)の位置であってもよい。
図1に示すように、消毒用ボトル10は、ポンプ式のボトルであり、上部のノズルヘッドを下方に押下することにより、ポンプ機能によりボトル内の消毒液が一定量吐出されるようになっている。ここでいう一定量とは、ノズルヘッドを押下可能な最下部の位置(下限位置)まで押下した場合に、一定量の消毒液が吐出されるという意味である。ノズルヘッドが下限位置に達する前に押下を中止すると、一定量より少ない消毒液が吐出される。手指衛生の実施に際しては、ノズルヘッドを下限位置まで押下して一定量の消毒液を吐出することが推奨されている。
消毒用ボトル10のノズルヘッドには、吐出操作検出装置100が装着されている。吐出操作検出装置100は、異なる消毒用ボトル10にも装着して使うことができるように、消毒用ボトル10に対して着脱可能に設けられる。吐出操作検出装置100は、2つのスイッチ(図2を用いて後述する)を備えており、消毒用ボトル10に対する吐出操作(ノズルヘッドの押下操作)が行われたことを第1のスイッチにより検出するとともに、ノズルヘッドが下限位置まで押下されたことを第2のスイッチにより検出する。
吐出操作検出装置100は、無線送信回路を備えており、消毒用ボトル10に対する吐出操作が第1のスイッチにより検出されると、吐出操作が実行されたことを示す操作実行情報を、自身の識別情報である検出装置IDと共に無線で送信する。また、吐出操作検出装置100は、ノズルヘッドが下限位置まで押下されたことが第2のスイッチにより検出されると、ノズルヘッドが適正に押下されたことを示す適正押下情報を検出装置IDと共に無線で送信する。検出装置IDは、吐出操作検出装置100に固有の識別情報であり、内部メモリにあらかじめ記憶されている。消毒用ボトル10に装着された吐出操作検出装置100から送信された操作実行情報、適正押下情報および検出装置IDは、当該消毒用ボトル10と同じスペース内に設置されている中継装置300にて受信される。
医療従事者により携帯される無線送信装置200は、医療従事者の識別情報である医療従事者IDを所定のインターバルを置いて定期的に送信する。例えば、無線送信装置200は、200ミリ秒という微小時間間隔で医療従事者IDを送信する。医療従事者IDは、医療従事者に固有の識別情報であり、無線送信装置200の内部メモリにあらかじめ記憶されている。無線送信装置200により送信された医療従事者IDは、医療従事者が存在している位置の周囲にある中継装置300にて受信される。
中継装置300は、消毒用ボトル10と同じスペースである各病室R1,R2,R3内に設置されるほか、消毒用ボトル10とは異なるスペースにも設置される。消毒用ボトル10とは異なるスペースとは、各病室R1,R2,R3以外の場所を意味し、図1の例では廊下CRである。
中継装置300は、消毒用ボトル10の吐出操作検出装置100から操作実行情報、適正押下情報および検出装置IDを受信するとともに、無線送信装置200から医療従事者IDを受信し、通信ネットワークを介して接続された管理装置400に対して、受信した情報を自身の識別情報である中継装置IDと共に送信する。中継装置IDは、中継装置300に固有の識別情報であり、内部メモリにあらかじめ記憶されている。
ここで、中継装置300は、吐出操作検出装置100から情報を受信する際の受信電波に基づいて、吐出操作検出装置100の中継装置300からの相対位置を特定する。例えば、中継装置300は、AoA(Angle of Arrival)方式により電波が到来する方向を検出する公知技術を用いて吐出操作検出装置100の相対方向を特定するとともに、受信電波強度に基づいて電波発信源までの距離を検出する公知技術を用いて吐出操作検出装置100までの相対距離を特定することにより、吐出操作検出装置100の中継装置300からの相対位置を特定する。そして、中継装置300は、当該特定した吐出操作検出装置100の相対位置情報を操作実行情報、適正押下情報、検出装置IDおよび中継装置IDと共に管理装置400に送信する。
また、中継装置300は、無線送信装置200から医療従事者IDを受信する際の受信電波に基づいて、上記と同様にして無線送信装置200の相対位置を特定する。そして、中継装置300は、当該特定した無線送信装置200の相対位置情報を医療従事者IDおよび中継装置IDと共に管理装置400に送信する。
管理装置400は、中継装置300から同じ中継装置IDと共に所定の微小時間(200ミリ秒)以内に受信される操作実行情報、適正押下情報、検出装置ID、医療従事者ID、吐出操作検出装置100の相対位置情報および無線送信装置200の相対位置情報に基づいて、消毒用ボトル10を操作した医療従事者を特定した上で、医療従事者による手指衛生の実行状況に関する管理を行う。例えば、管理装置400は、消毒用ボトル10を操作して手指衛生を実行した医療従事者と、手指衛生を適正に実行したか否かを示す情報(以下、適正実行判定情報という)とを関連付けて管理する。以下に、手指衛生を実行した医療従事者の特定について説明する。なお、適正実行判定情報に関する管理については、図2~図4を用いて後述する。
上述のように、無線送信装置200は、医療従事者IDを200ミリ秒おきに常に送信している。そのため、中継装置300は、吐出操作検出装置100から操作実行情報、適正押下情報および検出装置IDを受信したときに、それとほぼ同タイミング(多くとも200ミリ秒以内の時間ずれの範囲内)で、無線送信装置200から医療従事者IDも受信することになる。これにより、管理装置400では、吐出操作検出装置100からの情報および無線送信装置200からの情報(それぞれ中継装置300で付加された情報を含む)を中継装置300からほぼ同タイミングで受信することとなり、これらの情報から手指衛生を実行した医療従事者を特定することが可能である。
一方、中継装置300が無線送信装置200から医療従事者IDを受信したにもかかわらず、それから所定の微小時間以内に吐出操作検出装置100から操作実行情報、適正押下情報および検出装置IDを受信しなかった場合は、管理装置400では、所定の微小時間以内に無線送信装置200からの情報(中継装置300で付加された情報を含む)のみを中継装置300から受信することとなる。よって、この場合に管理装置400は、その微小時間以内のタイミングでは医療従事者が手指衛生を実行していないと判定することが可能である。
ここで、ある中継装置IDと共に受信された操作実行情報および検出装置IDに基づき検出された消毒用ボトル10の操作の時点から所定の微小時間以内に、同じ中継装置IDと共に受信された医療従事者IDが1つの場合は、その中継装置IDで示される中継装置300の付近には医療従事者が1人しかいない状況に相当する。従って、この場合は、操作実行情報、検出装置IDおよび医療従事者IDの3つの情報があれば、消毒用ボトル10を操作した医療従事者を一意に特定することが可能である。すなわち、検出装置IDで示される吐出操作検出装置100が装着された消毒用ボトル10を、医療従事者IDで示される医療従事者が操作したと判定することが可能である。
これに対し、ある中継装置IDと共に受信された操作実行情報および検出装置IDに基づき検出された消毒用ボトル10の操作の時点から所定の微小時間以内に、同じ中継装置IDと共に受信された医療従事者IDが複数ある場合は、その中継装置IDで示される中継装置300の付近には複数人の医療従事者がいる状況に相当する。従って、この場合は、操作実行情報、検出装置IDおよび医療従事者IDの3つの情報だけでは、消毒用ボトル10を操作した医療従事者を一意に特定することができない。
この場合に管理装置400は、中継装置300から同じ中継装置IDと共に所定の微小時間以内に受信される操作実行情報、検出装置ID、医療従事者ID、吐出操作検出装置100の相対位置情報および無線送信装置200の相対位置情報に基づいて、消毒用ボトル10を操作した医療従事者を特定する。すなわち、管理装置400は、複数の医療従事者IDと共に送信された無線送信装置200の相対位置情報のそれぞれと、検出装置IDと共に送信された吐出操作検出装置100の相対位置情報とを用いて、消毒用ボトル10から最も近くにいる医療従事者を特定する。そして、管理装置400は、消毒用ボトル10から最も近くにいる医療従事者を、消毒用ボトル10を操作した医療従事者として特定する。
図2は、吐出操作検出装置100の一構成例を、消毒用ボトル10の一部と共に模式的かつ簡略的に示す図である。図3は、吐出操作検出装置100が備えるハードウェア構成の例を示す図である。
図2に示すように、消毒用ボトル10は、本体10a、キャップ10b、押下軸10c、ノズルヘッド10dおよびノズル10eを有している。キャップ10bは、消毒用ボトル10の本体10aに螺合する態様で着脱可能に構成されている。そして、キャップ10bに対してパイプ状の押下軸10cが上下方向に摺動可能に支持されており、押下軸10cの先端にノズルヘッド10dが設けられている。また、ノズルヘッド10dには水平方向にパイプ状のノズル10eが形成されている。このように構成された消毒用ボトル10において、消毒液は、押下軸10c、ノズルヘッド10dおよびノズル10eを介して吐出される。
図2に示すように、吐出操作検出装置100は、消毒液の吐出操作(ノズルヘッド10dの押下操作)が行われたことを検出する第1のスイッチ101(特許請求の範囲の第1の検出センサに相当)と、ノズルヘッド10dが下限位置まで押下されたことを検出する第2のスイッチ102(特許請求の範囲の第2の検出センサに相当)とを備えている。第2のスイッチ102は、ノズルヘッド10dが押下されたときに消毒用ボトル10の一部と接触することによってオンとなるスイッチである。図2の例において、ノズルヘッド10dの下限位置は、第2のスイッチ102がキャップ10bに接する位置である。
また、図3に示すように、吐出操作検出装置100は、第1のスイッチ101および第2のスイッチ102に対して電気的に接続されたマイコン103と、マイコン103に対して電気的に接続された無線送信回路104とを備えている(マイコン103および無線送信回路104は、図2では図示を省略している)。第1のスイッチ101および第2のスイッチ102とマイコン103との間は、例えばI2C通信インタフェースにより接続されている。
第1のスイッチ101は、ノズルヘッド10dの上面側となる位置に設けられている。第1のスイッチ101は押しボタンであり、医療従事者がノズルヘッド10dを押下する際に押圧されてオン状態となり、ノズルヘッド10dの押下操作が行われたことを検出する。マイコン103は、第1のスイッチ101がオン状態となったことを検出すると、操作実行情報を生成する。
第2のスイッチ102は、ノズルヘッド10dの下面側となる位置で、かつ、キャップ10bと対向する位置に設けられている。第2のスイッチ102は、ノズルヘッド10dが押下されたときにキャップ10bに接するとオン状態となり、ノズルヘッド10dが下限位置まで押下されたことを検出する。マイコン103は、第2のスイッチ102がオン状態となったことを検出すると、適正押下情報を生成する。
なお、吐出操作検出装置100をノズルヘッド10dに装着するための具体的な構成は図示していないが、任意に設計することが可能である。例えば、ノズルヘッド10dの形状に合わせて形成された貫通孔を有する筒状体として吐出操作検出装置100を構成し、当該筒状体の上部に第1のスイッチ101を設けるとともに、下部に第2のスイッチ102を設ける構成とすることが可能である。この場合、吐出操作検出装置100の貫通孔にノズル10eを挿入し、吐出操作検出装置100をノズルヘッド10dの方向に移動させることによって装着する。
マイコン103は、第1のスイッチ101によりオン状態が検出された場合に生成する操作実行情報と、第2のスイッチ102によりオン状態が検出された場合に生成する適正押下情報と、図示しないメモリから読み出した検出装置IDとを無線送信回路104に出力する。具体的には、マイコン103は、第1のスイッチ101がオンになった時点で操作実行情報と検出装置IDとを無線送信回路104に出力し、第2のスイッチ102がオンになった時点で適正押下情報と検出装置IDとを無線送信回路104に出力する。無線送信回路104は、マイコン103から入力した操作実行情報と検出装置ID、または適正押下情報と検出装置IDの組み合わせを無線で送信する。このように、マイコン103および無線送信回路104は、第1の検出センサおよび第2の検出センサの検出結果を示す操作状況情報(操作実行情報および適正押下情報)を無線送信する特許請求の範囲の情報送信部に相当する。
図4は、管理装置400の機能構成例を示すブロック図である。図4に示すように、管理装置400は、記憶媒体として、手指衛生管理情報記憶部401を備えている。また、管理装置400は、機能構成として、送信情報取得部41、適正判定部42および情報記録部43を備えている。
上記各機能ブロック41~43は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック41~43は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。なお、当該プログラムは、ハードディスクや半導体メモリ等の他の記録媒体に記憶されていてもよい。
送信情報取得部41は、中継装置300から送信された情報を取得する。具体的には、送信情報取得部41は、消毒用ボトル10の吐出操作検出装置100におけるノズルヘッド10dの操作検出時(第1のスイッチ101のオン状態検出時)に吐出操作検出装置100から送信された操作実行情報および検出装置IDと、中継装置300にて付加された中継装置IDおよび吐出操作検出装置100の相対位置情報とを取得する。また、送信情報取得部41は、消毒用ボトル10の吐出操作検出装置100におけるノズルヘッド10dの適正操作検出時(第2のスイッチ102のオン状態検出時)に吐出操作検出装置100から送信された適正押下情報および検出装置IDと、中継装置300にて付加された中継装置IDおよび吐出操作検出装置100の相対位置情報とを取得する。また、送信情報取得部41は、医療従事者の無線送信装置200から定期的に送信された医療従事者IDと、中継装置300にて付加された中継装置IDおよび無線送信装置200の相対位置情報とを取得する。
適正判定部42は、送信情報取得部41により取得される操作状況情報(操作実行情報および適正押下情報)に基づいて、医療従事者による手指衛生が適正に行われているかどうかを判定する。具体的には、適正判定部42は、次の2つのケースであることが操作状況情報により示されている場合に、医療従事者による手指衛生が適正に行われていると判定する。
手指衛生が適正に行われていると判定する第1のケースは、第1のスイッチ101により押下が検出されてから第1の所定時間以内に第2のスイッチ102により押下が検出された場合である。すなわち、送信情報取得部41が、ある検出装置IDと共に操作実行情報を取得したタイミングから第1の所定時間以内に、それと同じ検出装置IDと共に適正押下情報を取得した場合である。
この第1のケースは、医療従事者が一度の操作でノズルヘッド10dを下限位置まで押下した場合に相当する。第1の所定時間は、一度の吐出操作でノズルヘッド10dを下限位置まで押下するのにかかる時間として通常想定される時間またはそれより若干長い時間であり、例えば0.5秒である。
手指衛生が適正に行われていると判定する第2のケースは、第1のスイッチ101により押下が検出されてから第2の所定時間以内に第1のスイッチ101により押下が再び検出された場合である。すなわち、送信情報取得部41が、ある検出装置IDと共に操作実行情報を取得したタイミングから第2の所定時間以内に、それと同じ検出装置IDと共に再び操作実行情報を取得した場合である(その間、適正押下情報は取得されていない)。
この第2のケースは、医療従事者が複数回に分けてノズルヘッド10dを少しずつ押下操作したり、押下操作が意図せず不十分であったときに操作し直したり、消毒液の残量が少ないときに押下操作を複数回行ったりした場合に相当する。第2の所定時間は、ノズルヘッド10dを下限位置に至らない途中まで押下し、元の位置まで上昇して戻ってきたノズルヘッド10dをもう一度押し直すまでにかかる時間として通常想定される時間またはそれより若干長い時間であり、第1の所定時間より長く、例えば1.0秒である。
一方、適正判定部42は、第1のスイッチ101により押下が検出されてから第1の所定時間以内に第2のスイッチ102により押下が検出されず、かつ、第2の所定時間以内に第1のスイッチ101により押下が検出されなかったことが操作状況情報により示されている場合に、医療従事者による手指衛生が適正に行われていないと判定する。すなわち、適正判定部42は、上述した第1のケースおよび第2のケースの何れにも該当しない場合(以下、これを第3のケースとする)に、医療従事者による手指衛生が適正に行われていないと判定する。
適正判定部42は、送信情報取得部41により取得された操作状況情報に基づいて、第1のケースまたは第2のケースに該当すると判定した場合は、医療従事者が手指衛生を適正に実行したことを示す適正実行判定情報を情報記録部43に出力する。一方、適正判定部42は、送信情報取得部41により取得された操作状況情報に基づいて、第3のケースに該当すると判定した場合は、医療従事者が手指衛生を適正に実行していないことを示す適正実行判定情報を情報記録部43に出力する。適正実行判定情報は、医療従事者が手指衛生を適正に実行したか否かを2値によって示すフラグ情報により構成することが可能である。
情報記録部43は、送信情報取得部41により逐次取得される情報のうち、同じ中継装置IDと共に所定の微小時間以内に取得される操作実行情報、検出装置ID、医療従事者ID、吐出操作検出装置100の相対位置情報および無線送信装置200の相対位置情報に基づいて、消毒用ボトル10を操作した医療従事者を特定する。そして、当該特定した医療従事者を手指衛生の実行者として、実行時刻、実行場所に関する情報および適正実行判定情報と共に履歴情報のデータベースとして手指衛生管理情報記憶部401に記憶させる。すなわち、情報記録部43は、手指衛生を実行した医療従事者、手指衛生の実行時刻、実行場所、および適正実行判定情報をデータベースの1つのレコードに関連付けて記録する。ここで、情報記録部43は、送信情報取得部41による操作実行情報の取得時刻を手指衛生の実行時刻として用いるとともに、中継装置IDに対応する中継装置300の設置場所を手指衛生の実行場所として用いる。
以上詳しく説明したように、本実施形態では、消毒用ボトル10に対して着脱可能に設けられる吐出操作検出装置100が、ノズルヘッド10dが押下されたことを検出する第1のスイッチ101と、ノズルヘッド10dが下限位置まで押下されたことを検出する第2のスイッチ102とを備え、第1のスイッチ101および第2のスイッチ102の検出結果を示す操作状況情報を管理装置400に送信するようにしている。そして、管理装置400において、医療従事者による手指衛生が適正に行われているかどうかを操作状況情報に基づいて判定し、その判定結果である適正実行判定情報を含めて、各医療従事者による手指衛生の実行状況を手指衛生管理情報記憶部401に記憶させるようにしている。
このように構成した本実施形態によれば、1回の吐出操作によってノズルヘッド10dが下限位置まで押下されると、第1のスイッチ101により押下が検出されてから第1の所定時間以内に第2のスイッチ102により押下が検出されるため(第1のケース)、医療従事者による手指衛生が適正に行われていると判定される。また、1回の吐出操作によってノズルヘッド10dが下限位置まで押下されなくても、続けて複数回の吐出操作が行われると、第1のスイッチ101により押下が検出されてから第2の所定時間以内に第1のスイッチ101により押下が再び検出されるため(第2のケース)、医療従事者による手指衛生が適正に行われていると判定される。これに対し、1回の吐出操作だけでノズルヘッド10dが下限位置まで押下されなかった場合は(第3のケース)、第1のケースおよび第2のケースの何れの状態も検出されないため、医療従事者による手指衛生が適正に行われていないと判定される。
このように、本実施形態によれば、1回の吐出操作時にノズルヘッド10dを下限位置まで押下することによって適正な量の消毒液が吐出された場合に加えて、医療従事者が複数回に分けてノズルヘッド10dを少しずつ押下操作したり、押下操作が意図せず不十分であったときに操作し直したり、消毒液の残量が少ないときに押下操作を複数回行ったりした結果として適正な量の消毒液が吐出された場合にも、医療従事者が適正な量の消毒液を吐出して手指衛生を実行していると判断することができる。これにより、医療従事者が適正な量の消毒液を吐出して手指衛生を適正に行っているかどうかをより正確に判断し、手指衛生の実行状況に関する履歴管理を適切に行うことができる。
なお、上記実施形態では、消毒用ボトル10のキャップ10bと接触することによって第2のスイッチ102がオンとなるように構成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、消毒用ボトル10の本体10aなど、消毒用ボトル10の他の一部と接触することによって第2のスイッチ102がオンとなるように構成してもよい。
また、上記実施形態では、消毒用ボトル10の一部と接触することによってオンとなる第2のスイッチ102により第2の検出センサを構成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2の検出センサは、ノズルヘッド10dと消毒用ボトル10の本体10aまたはキャップ10bとの距離を検出する距離検出センサとしてもよい。この場合、距離検出センサは、検出される距離が所定条件を満たしたときに、ノズルヘッド10dが下限位置まで押下されたことを検出するものとする。
図5は、第2の検出センサとして距離検出センサ102’を用いた場合の構成例を示す図である。距離検出センサ102’は、ノズルヘッド10dの下面側となる位置で、かつ、キャップ10bと対向する位置に設けられており、ノズルヘッド10dとキャップ10bとの距離Dを検出する。厳密には、ノズルヘッド10dに設けられた距離検出センサ102’とキャップ10bとの距離であるが、距離検出センサ102’が薄いこと、ノズルヘッド10dと距離検出センサ102’との位置関係は固定で不変であることから、ノズルヘッド10dとキャップ10bとの距離として説明する。距離検出センサ102’は、例えばToF(Time of Flight)方式の距離センサであり、発光した光がキャップ10bに反射して受光するまでの時間を測定し、これに光速を併せることでキャップ10bまでの距離を検出する。
図5は、ノズルヘッド10dが押下されていない状態(以下、初期状態という)を示している。この初期状態におけるノズルヘッド10dとキャップ10bとの距離を初期距離という。この初期状態からノズルヘッド10dを上方から下方に向かって押下すると、ノズルヘッド10dがキャップ10bに近づいていき、ノズルヘッド10dとキャップ10bとの距離は短くなっていく。距離検出センサ102’は、初期状態においてはスリープモードとなっており、第1のスイッチ101がオンになると起動する。そして、起動した後に距離検出センサ102’は、キャップ10bとの距離を所定時間間隔ごとに連続して検出する。
マイコン103は、吐出操作が行われていないときにおけるノズルヘッド10dとキャップ10bとの初期距離と、距離検出センサ102’により逐次検出された距離との差分の最大値を算出し、当該最大値を、ノズルヘッド10dの押下量として検出する。そして、マイコン103は、その押下量が初期距離と等しい場合に、ノズルヘッド10dが下限位置まで押下されたことを検出する。すなわち、距離検出センサ102’を用いる構成の場合、距離検出センサ102’およびマイコン103によって第2の検出センサが構成される。
また、図6(a)に示すように、ノズルヘッド10dを最大限押下可能な下限位置を可変とするために、消毒用ボトル10のノズルヘッド10dとキャップ10bとの間の押下軸10cに装着されるアダプタ110を更に備えるようにしてもよい。アダプタ110は、押下軸10cに対して着脱可能に構成される。着脱可能にする具体的な構成は、公知の様々な構造または技術を適用することが可能である。
例えば、アダプタ110を上方から見た状態を示す図6(b)のように、側面の一部に空隙111を有する略円筒形状の嵌合部112を備え、この嵌合部112の円筒の内径を押下軸10cの円筒の外径と略同じサイズとし、嵌合部112を樹脂等の可撓部材により構成することにより、アダプタ110を押下軸10cに着脱可能に構成することが可能である。その他、アダプタ110をクリップ形状として押下軸10cに着脱可能に構成してもよいし、他の公知の構成を採用してもよい。
アダプタ110は、これを押下軸10cに装着した状態において、ノズルヘッド10dの押下によって下降してくる第2のスイッチ102が接触するような形状および大きさに構成する。この場合、第2のスイッチ102は、押下軸10cに装着されたアダプタ110と接触することによってオンとなる。このようにアダプタ110を装着することにより、ノズルヘッド10dの下限位置を可変とし、ノズルヘッド10dを下限位置まで押し切ったときにおける消毒液の吐出量を調整することができる。
手の大きさが小さい医療従事者にとっての消毒液の適正量は、通常の手の大きさの医療従事者の適正量よりも少ない。このような医療従事者は、一度の押下操作で、ノズルヘッド10dを下限位置まで押下することなく適正量の消毒液を吐出している。しかし、アダプタ110がない場合には、手指衛生が適正に実行されていると判定されない。これに対し、手の大きさが小さい医療従事者が専用で使用する消毒用ボトル10にアダプタ110をあらかじめ装着しておいたり、手の大きさが小さい医療従事者が共用の消毒用ボトル10を使用する際にアダプタ110を装着したりすることにより、手の大きさが小さい医療従事者が消毒用ボトル10を使用する場合にも、適正な量の消毒液を吐出して手指衛生を適正に行っているかどうかを正確に判断し、手指衛生の実行状況に関する履歴管理を適切に行うことができる。
なお、ここでは、ノズルヘッド10dの押下によって下降してくる第2のスイッチ102がアダプタ110に接触するように構成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、押下によって下降してくるノズルヘッド10dがアダプタ110に接触して下限位置となったときに、第2のスイッチ102が消毒用ボトル10の何れかの位置に接触するように構成してもよい。
また、上記実施形態では、第1のスイッチ101がオンとなった時点で操作実行情報を管理装置400に送信するとともに、第2のスイッチ102がオンとなった時点で適正押下情報を管理装置400に送信し、管理装置400の適正判定部42がこれらの操作状況情報に基づいて、第1のケースまたは第2のケースの何れかに該当するか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、吐出操作検出装置100のマイコン103が、第1のケースまたは第2のケースの何れかに該当するか否かを判定し、その判定結果を操作状況情報として管理装置400に送信するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、第1の検出センサをスイッチにより構成する例について説明したが、圧力センサ等により構成することも可能である。
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。