以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1~図3は、本実施形態に係る車両1(本実施形態では、自動車)の前部2の一部(左前側部分)を示す。この車両1は、SUV(Sport Utility Vehicle、スポーツ多目的車)タイプの車両である。以下、車両1についての前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。また、以下の説明で左右一対あるもの(例えば前輪3)は、左側のものしか図示していない。尚、図1中、矢印Frは、車両1の前方を示す(図3、図5、図7、及び図8においても同様)。
車両1の前部2は、車両1の運転者が乗り込む客室部分よりも前側の部分であって、エンジン、トランスミッション、冷却装置、懸架装置、舵取り装置、左右一対の前輪3等のような、車両1の走行に関わる構成部品を搭載する搭載空間(エンジンルームを含む)と、前照灯4や霧灯等のような、車両1の前方又は側方に対する灯火類とを有している。
また、車両1の前部2は、前部2の左右両側の側面をそれぞれ形成する左右一対のフロントフェンダー5と、左右一対のフロントフェンダー5の前端(車両1の前端)に配設され、車幅方向に延びるフロントバンパー6と、左右一対のフロントフェンダー5及びフロントバンパー6で囲まれた上記搭載空間(エンジンルーム)の上方開口を覆うボンネット7とを有している。
フロントバンパー6は、車両1の前面から車両1の側面における前輪3の前側の位置に亘って設けられるバンパー本体6aを有する。バンパー本体6aの車幅方向(左右方向)の外側部分は、車両1の前端から左右両側の側方にそれぞれ回り込むコーナ部6bとされている。これら左右のコーナ部6bは、車両1の底面視において、車幅方向外側ほど後側に位置するように湾曲したラウンド形状に形成されている(図3参照)。また、左右のコーナ部6bは、車両1の正面視において、側縁の輪郭線の下端部が、該輪郭線の上部よりも車幅方向内側でかつ前輪3の車幅方向外側の端よりも車幅方向内側に位置する湾曲形状をなしている(図2参照)。バンパー本体6aの下端からは、車両内側に向かって下面部6cが水平に延びている。
各コーナ部6bにおける後側の部分(以下、コーナ後部6dという)は、左右一対のオーバーフェンダー10に車幅方向外側からそれぞれ覆われている。各オーバーフェンダー10は、後述する前輪ホイールハウス8の形状に対応して、上側に向かって後側に湾曲する略円弧状をなしている。各オーバーフェンダー10は、該オーバーフェンダー10の車幅方向内側の面から車幅方向内側に向かって延びる爪部12及び複数のボルト13を介して、各コーナ後部6dの車幅方向外側にそれぞれ取付固定されている(図7参照)。つまり、各オーバーフェンダー10は、バンパー本体6aにおける後側の部分の車幅方向外側に取り付けられている。各オーバーフェンダー10の下部、詳しくは、各オーバーフェンダー10におけるコーナ後部6dを覆う部分(以下、フェンダー下部10aという)は、フロントバンパー6の一部を構成する。つまり、フロントバンパー6は、バンパー本体6aと各オーバーフェンダー10とを有する。各フェンダー下部10aは、車両1の底面視において、各コーナ部6bのラウンド形状に連続する形状を有している(図3参照)。各爪部12及び各ボルト13は、オーバーフェンダー10をバンパー本体6aに取り付けるフェンダー取付部に相当する。
各オーバーフェンダー10における、後述の前輪ホイールハウス8側の縁部(以下、ホイール側縁部10bという)は、車幅方向内側に折れ曲がっている(図7及び図8参照)。ホイール側縁部10bは、複数箇所でボルト11により、各マットガード9の車幅方向外側の端部における前側の部分にそれぞれ取付固定されている。
フロントバンパー6における車幅方向外側の下端部(本実施形態では、各コーナ部6bの下端部及び各フェンダー下部10aの下端部)には、車幅方向外側に膨出しかつ前後方向に延びる膨出部15がそれぞれ設けられている。各膨出部15は、各フェンダー下部10aよりも前側において、各コーナ部6bの下端部にそれぞれ形成される一方、フェンダー下部10aの位置において、該フェンダー下部10aの下端部にそれぞれ形成されている。各コーナ部6bの下端部に形成された膨出部15は、下面部6cと一体になっている。各膨出部15は、下面部6cと連続するような形状を有する(図6参照)。
図1~図3に示すように、左右のフロントフェンダー5の下側に、左右の前輪3がそれぞれ収容される左右一対の前輪ホイールハウス8がそれぞれ設けられている。各前輪ホイールハウス8は、マットガード9で覆われている。このマットガード9によって、前輪3が跳ね上げる汚泥、小石、水滴が上記搭載空間に進入するのが防止される。マットガード9は、例えば、ポリプロピレン等の硬質合成樹脂製であって、車両1の側面視で、前輪3の上側部分に沿うように略円弧状に形成されている。
車両1の前部2における下面(底面)には、前側アンダーカバー21と、その後側に位置する後側アンダーカバー22とが設けられている。後側アンダーカバー22は、車幅方向に延びる不図示のサスペンションクロスメンバの前側に位置していて、前記エンジンの下側を覆っている。
図1~図4に示すように、車両1の前部2における下面には、左右一対のフロントデフレクタ30が設けられている。各フロントデフレクタ30は、前輪ホイールハウス8の前端(マットガード9の前端)と、フロントバンパー6と、前側アンダーカバー21とで囲まれた部分に設けられている。すなわち、各フロントデフレクタ30は、車両1における前輪ホイールハウス8よりも前方の下面に、前輪3の前方に間隔を隔てて設けられている。つまり、各フロントデフレクタ30は、前輪ホイールハウス8の前側にそれぞれ位置する。各フロントデフレクタ30は、車両1の前進走行時に生じる走行風が前輪3に当たらないようにして、車両1の空気抵抗を低減するものである。
左右のフロントデフレクタ30は、車両1の車幅方向中央に対して対称の位置に取り付けられているとともに、車両1の車幅方向中央に対して対称の形状に形成されている。左右のフロントデフレクタ30の構成は、基本的に同じであるので、以下では、左側のフロントデフレクタ30について詳細に説明する。また、以下に説明する左側のフロントデフレクタ30についての前、後、左、右、上及び下は、それぞれ、左側のフロントデフレクタ30が車両1に設けられた状態での前、後、左、右、上及び下のことであり、車両1についての前、後、左、右、上及び下と同じである。
本実施形態では、左側のフロントデフレクタ30(以下、フロントデフレクタ30という)は、図5に示すように、上側部材31と下側部材32との上下2部材で構成されている。上側部材31は、金属の板材で形成され、下側部材32は、可撓性を有する合成ゴム等の軟質合成樹脂で形成されている。
上側部材31は、車両1の底面視においてフロントバンパー6のコーナ部6bと同様の形状(ラウンド形状)に形成された、前端から車幅方向外側の端にかけての曲線状縁部31aを有している(図3参照)。この曲線状縁部31aが、コーナ部6bの下面部6c(図3参照)に複数箇所でボルト37により取付固定されている。上側部材31の後端縁部は、上側に折り曲げられた折曲部31bとされている。ボルト37は、フロントデフレクタ30を下面部6cに取り付ける取付部材に相当する。
下側部材32は、上側部材31の曲線状縁部31aの車両内側に位置する、曲線状縁部31aと同様のラウンド形状に形成された曲線状縁部32aを有する。この曲線状縁部32aは、複数箇所でクリップ38により上側部材31に取付固定されている。
曲線状縁部32aの後端部は、車幅方向外側に突出する突出縁部32kとなっている。突出縁部32kは、フロントデフレクタ30の車幅方向外側の端部に位置する。突出縁部32kは、曲線状縁部31aの後端部と上下に重ねられて、ボルトによりコーナ部6bから延びる下面部6cに取付固定されている。突出縁部32kを下面部6cに取り付けるボルトは、フロントデフレクタ30を下面部6cに取り付ける複数の取付部材のうち最も車幅方向外側に位置する最外側部材に相当する。以下、突出縁部32kを下面部6cに取り付けるボルトを最外側ボルト41という。
図6に示すように、最外側ボルト41は、コーナ後部6dから延びる下面部6cに位置している。最外側ボルト41は、該最外側ボルト41及び膨出部15を通りかつ車幅方向に延びる鉛直面で切断した断面において、コーナ後部4dにおける当該膨出部15よりも上側の部分に沿って車幅方向内側に延ばした延長線Lと下面部6cとの交点CPよりも車幅方向外側に位置する。最外側ボルト41は、車両前後方向において、コーナ後部6dの下部に位置するボルト13と略同じ位置に位置している。
下側部材32の車幅方向内側の端縁部は、上側部材31の車幅方向内側の端縁部と上下に重ねられて、上側部材31に複数箇所でボルト39により取付固定されている。上側部材31及び下側部材32の車幅方向内側の端縁部は、前側アンダーカバー21及び後側アンダーカバー22上に支持されている。
下側部材32の後端縁部は、上側に立ち上がる縦壁部32bとされ、この縦壁部32bが、複数箇所でクリップ40により上側部材31の折曲部31bに取付固定されている。複数のクリップ40の一部は、下側部材32の縦壁部32bを上側部材31の折曲部31bのみに取付固定する(図6及び図7参照)。一方で、複数のクリップ40の残部は、マットガード9の前端部と共に、縦壁部32bを折曲部31bに取付固定する(図4参照)。
このように下側部材32は、クリップ38,40、ボルト39、及び最外側ボルト41により、その周縁部の複数箇所で上側部材31に固定されていることになる。また、下側部材32は、上記周縁部以外の部分に、上側部材31に引っ掛けられる引掛部32cを有している。本実施形態では、引掛部32cは、後述の立壁部32hの上端面から上側に延びるように設けられている。引掛部32cには、クリップ34が挿通されるクリップ挿通孔32dが形成されている。
下側部材32が上側部材31に固定される際、引掛部32cが、上側部材31に形成された貫通孔31cを通って上側部材31の上側に露出する。上側部材31の上面において貫通孔31cの側方には、クリップ挿通孔31dが形成された突出部31eが設けられている。上側部材31の上側に露出した引掛部32cのクリップ挿通孔32dは、突出部31eのクリップ挿通孔31dと対向する。これらクリップ挿通孔32d,31dにクリップ34を挿通することで、クリップ34がクリップ挿通孔32d,31dに係合される。これにより、引掛部32cが上側部材31に引っ掛けられることになる。
下側部材32における周縁部以外の部分は、該周縁部よりも下側に凹む凹部32eとされている。下側部材32が上側部材31に取付固定された状態にあるとき、凹部32eの上側の開口が上側部材31により塞がれることで、凹部32eが、上側部材31と下側部材32との間に形成される内部空間とされる。
フロントデフレクタ30の下面(下側部材32の下面)における後端部でかつ車幅方向外側の部分には、下側に突出しかつ車両1の前進走行時に生じる走行風を前側の端面により車幅方向外側へガイドするフィン部32fが設けられている。フィン部32fは、車両1の正面視で前輪3と重複する位置に位置している(図2参照)。このフィン部32fの前側端面に、走行風が当たる。フィン部32fの前側端面は、車幅方向外側の端部を除いて、車幅方向外側に向かって後側に傾斜し、フィン部32fの前側端面における車幅方向外側の端部は、車幅方向外側に略真っ直ぐに延びている。フィン部32fの車幅方向外側の端部は、最外側ボルト41の近傍、具体的には、突出縁部32kから下側に突出している。フィン部32fの車幅方向外側の端は、前輪3(ここでは、左側の前輪3)の車幅方向外側の端面よりも車幅方向内側に位置する(図2及び図3参照)。
下側部材32の凹部32eにおいて、フィン部32fに対応する部分の凹み量は、他の部分の凹み量よりも大きくなっている。フィン部32fの後側の端面は、縦壁部32bで構成される。
フロントデフレクタ30(詳細には、下側部材32)は、前方に向けて開口しかつ車両1の前進走行時にフロントデフレクタ30の内部空間(凹部32e)に空気を取り入れるための第1の空気取入口32g(図1~図3、図5参照)と、この第1の空気取入口32gから内部空間に取り入れた空気を、内部空間内で後側かつ車幅方向外側に指向させるガイド部としての立壁部32h(図5参照)と、フィン部32fの後側の端面(縦壁部32b)に後方に向けて開口し、内部空間の空気を、後側に向かって車幅方向外側に斜めに排出する第1の空気排出口32i(図4及び図5参照)とを備えている。
第1の空気取入口32gは、前輪3よりも車幅方向内側に位置している。第1の空気排出口32iは、第1の空気取入口32gよりも車幅方向外側に位置しているとともに、車両1の正面視で前輪3と重複する位置に位置している。
また、第1の空気排出口32iの開口面積(特に上下方向の長さ)が、第1の空気取入口32gの開口面積(特に上下方向の長さ)よりも大きくされている。この構成は、第1の空気排出口32iがフィン部32fの後側の端面に開口していることで、可能になる。
図5及び図6に示すように、立壁部32hは、凹部32eの底部に立設されていて、第1の空気取入口32gに対して車幅方向内側の近傍部分から、第1の空気排出口32iに対して車幅方向内側の近傍部分に向かって、後側に向かって車幅方向外側に傾斜して延びている。立壁部32hの、前後方向に対する車幅方向外側への傾斜角は、立壁部32hにより指向される空気(走行風)が、第1の空気排出口32iから排出された後に前輪3に当たらないように設定されている。
立壁部32hによって、フロントデフレクタ30の内部空間は、車幅方向において内側空間部と外側空間部とに区画され、外側空間部が空気流通路とされる。第1の空気取入口32g及び第1の空気排出口32iは、外側空間部に連通することになる。
下側部材32は、軟質合成樹脂で形成されているので、変形し易い。そこで、凹部32eの底部における立壁部32hの内側空間部側には、立壁部32hが風圧によって内側空間部側に変位しないように、立壁部32hに対して垂直な方向に延びる複数のリブ32jが立設されている。また、上記のように、下側部材32における周縁部以外の部分に、上側部材31に引っ掛けられる引掛部32cが設けられていることで、下側部材32における周縁部以外の部分(特に中央部及びその近傍部分)の下側への変位が防止される。さらに、引掛部32cが立壁部32hの上端面に設けられていることで、下側部材32における周縁部以外の部分の下側への変位が防止されることに加えて、立壁部32hの変形も防止される。
前記のフロントデフレクタ30の構成により、第1の空気取入口32gからフロントデフレクタ30の内部空間(凹部32e)に空気(走行風)が取り入れられ、その内部空間内で立壁部32hにより空気が後側かつ車幅方向外側に指向される。指向された走行風が、第1の空気排出口32iから後側に向かって車幅方向外側に斜めに排出される。立壁部32hにより走行風が指向されることによって、その走行風は、第1の空気排出口32iから排出された後に前輪3には当たらない。また、フィン部32fの後側の空間の気圧は、その空間の前のフィン部32fによって負圧になり易い。さらに、第1の空気排出口32iがフィン部32fの後側の端面に開口しているとともに、第1の空気取入口32gよりも車幅方向外側に位置しているので、フロントデフレクタ30の内部空間を通過しながら立壁部32hにより指向された走行風は、第1の空気排出口32iから後側に向かって車幅方向外側に斜めにスムーズにかつ勢い良く排出される。
一方、フィン部32fによって、フィン部32fの前側の端面に当たった走行風は、車幅方向外側に偏向される。これにより、フィン部32fにより偏向された走行風も、前輪3に当たらなくなる。特に、本実施形態では、第1の空気排出口32iから排出された走行風によって、フィン部32fにより偏向された走行風が、車幅方向外側へ押し出される。このため、フィン部32fにより偏向された走行風と前輪3との干渉が効果的に抑制される。
本実施形態に係る車両1の前部2は、前輪3の車幅方向外側を流れる走行風を整流するための機構として、前述の左右のフロントデフレクタ30に加えて、前輪3の車幅方向外側にカーテン状の気流を生成するためのエアカーテン機構60を左右のそれぞれに有する。左右のエアカーテン機構60は、車両1の車幅方向中央に対して対称の位置に取り付けられているとともに、車両1の車幅方向中央に対して対称の形状に形成されている。以下、エアカーテン機構60の構成について詳細に説明する。左右のエアカーテン機構60の構成は、基本的に同じであるので、以下では、左側のエアカーテン機構60について詳細に説明する。また、以下に説明する左側のエアカーテン機構60についての前、後、左、右、上及び下は、それぞれ、左側のエアカーテン機構60が車両1に設けられた状態での前、後、左、右、上及び下のことであり、車両1についての前、後、左、右、上及び下と同じである。尚、図7及び図8では、図面の簡略化のために、マットガード9や前側アンダーカバー21等は図示を省略している。
本実施形態では、左側のエアカーテン機構60(以下、エアカーテン機構60という)は、車両1の前進走行時に空気(走行風)を取り入れるための第2の空気取入口61(開口部、図1~図3参照)と、第2の空気取入口61から取り入れた空気を後側に案内するダクト部材62(図8参照)と、ダクト部材62を通過した空気を車幅方向外側に向けて排出する第2の空気排出口65(図4参照)とを有する。
第2の空気取入口61は、図2に示すように、フロントバンパー6の前面部における下部、具体的には、バンパー本体6aのコーナ部6bの前側下部でかつ車両1の正面視で前輪3と重複する位置に設けられている。第2の空気取入口61は、前側に向けて開口している。第2の空気取入口61は、車両1の正面視で、車幅方向に延びる細長い矩形状をなしている。より具体的には、図3に示すように、第2の空気取入口61は、車幅方向に延びるとともに、コーナ部6bの形状に沿って延びるラウンド形状をなしている。第2の空気取入口61の下端部は、車両1の正面視で、膨出部15の上端部に連続する。これにより、第2の空気取入口61の下端部のラインと膨出部15の上端部のラインとが連続するようになり、第2の空気取入口61によって、膨出部15の前側の端末処理ができる。この結果、車両1の前部2の意匠性を向上させることができる。
ダクト部材62は、図8に示すように、前輪ホイールハウス8よりも前側に設けられている。ダクト部材62は、コーナ部6bの車両内側の面に取り付けられている。ダクト部材62は、コーナ部6bに沿って、車幅方向外側ほど後側に位置するように湾曲して延びている。特に、ダクト部材62の後側の部分(後述の拡大部62c)は、後側に向かって車幅方向外側に傾斜している。ダクト部材62は、第2の空気取入口61からダクト部材62内に取り入れられた空気を受ける空気受け部62aと、空気受け部62aで受けた空気を後側かつ車幅方向外側に向かって斜め上側に案内する上方ガイド部62bと、上方ガイド部62bから後側に向かって上下方向に流路断面積を拡大する拡大部62cとを有する。空気受け部62aと上方ガイド部62bとの境界及び上方ガイド部62bと拡大部62cとの境界は、滑らかな湾曲形状をなしている。
図6に示すように、ダクト部材62は、相対的に車両外側に位置するアウターダクトパネル63と、該アウターダクトパネル63の車両内側に取り付けられかつアウターダクトパネル63と閉断面を構成するインナーダクトパネル64との2つのパネル材で構成されている。アウターダクトパネル63及びインナーダクトパネル64は、どちらも金属の板材で形成されている。
アウターダクトパネル63は、後側の部分において、複数箇所でボルト13によりコーナ後部6dに固定されている。具体的には、図6に示すように、オーバーフェンダー10の車幅方向内側の面には、車幅方向内側に向かって延びる複数のブラケット14が設けられている。ボルト13は、アウターダクトパネル63及びコーナ後部6dを車幅方向に貫通して、ブラケット14に締結されている。アウターダクトパネル63が、コーナ後部6dに固定されることにより、ダクト部材62が、コーナ後部6dに支持される。つまり、ボルト13は、オーバーフェンダー10をコーナ後部6dに取付固定すると共に、アウターダクトパネル63をコーナ後部6dに取付固定する。ダクト部材62は、アウターダクトパネル63をコーナ後部6dに取付固定されることで、該コーナ後部6dに支持されている。
インナーダクトパネル64は、アウターダクトパネル63の爪部63aと係合して、該アウターダクトパネルに取り付けられている。また、インナーダクトパネル64は、クリップ69によりマットガード9に取付固定されている。
第2の空気排出口65は、前輪3よりも前側でかつ車両1の正面視で該前輪3と重複する位置において後側に向けて開口している。具体的には、図4に示すように、第2の空気排出口65は、マットガード9の車幅方向外側の端部に設けられている。第2の空気排出口65は、前輪ホイールハウス8側から見て、上下方向に延びる細長い矩形状をなしている。より具体的には、第2の空気排出口65は、上下方向に延びるとともに、マットガード9の形状に沿って、上側ほどに後側に位置するように湾曲している。
前記のエアカーテン機構60の構成により、車両1の前進走行時において、第2の空気取入口61からダクト部材62内に取り入れられた空気(走行風)は、空気受け部62aにより上方ガイド部62bに向かって指向される。上方ガイド部62bに到達した走行風は、上方ガイド部62bに沿って、後側かつ車幅方向外側に案内されると共に、上側に案内される。そして、上方ガイド部62bを通った走行風は、拡大部62cを通った後、第2の空気排出口65から排出される。拡大部62cは、後側に向かって車幅方向外側に傾斜しているため、ダクト部材62内の走行風は、拡大部62cを通るときに車幅方向外側に指向される。これにより、第2の空気排出口65から排出される走行風は、後側に向かって車幅方向外側に斜めに排出される。この結果、第2の空気排出口65から排出された走行風は、第2の空気排出口65から排出された後、前輪3に当接せずに、前輪3の車幅方向外側を通って後側に流れる。このとき、第2の空気排出口65は上下方向に延びていることにより、第2の空気排出口65から排出される走行風は、前輪3に上下方向に広がるエアカーテンを形成する。このように、エアカーテンが形成されることで、前輪3の車幅方向外側を流れる走行風を整流することができる。
図7に示すように、バンパー本体6aにおけるコーナ後部6dは、車幅方向内側に凹んでいる。また、コーナ後部6dの上下方向の中間部、具体的には、ダクト部材62が通る部分は、車幅方向外側にU字状に凹んだ凹部となっている(図8参照)。また、コーナ後部6dは、オーバーフェンダー10及びアウターダクトパネル63の各取付部分において、平面を形成している。これらのことから、コーナ後部6dは、上下方向及び前後方向に複数の稜線を有しており、剛性が比較的高くなっている。
ここで、本実施形態の車両のようにSUVタイプの車両では、車両1の正面視で前輪3が視認出来るようにしたいという要求がある。一方で、フロントデフレクタ30(特に、フロントデフレクタ30のフィン部32f)は、前輪ホイールハウス8への走行風の流入を抑制するとともに、走行風を前輪3の側方へ偏向させるものであるため、車両1の正面視で出来る限り車幅方向外側に配置させることが求められる。これに対して、本実施形態では、フロントバンパー6の構成及びフロントデフレクタ30の取付構造を工夫することで、2つの要求を両立させている。
具体的には、本実施形態では、フロントバンパー6のコーナ部6bが、車両1の正面視において、側縁の輪郭線の下端部が該輪郭線の上部よりも車幅方向内側に位置する湾曲形状をなしている。これにより、車両1の正面視で前輪3を視認することができる。
また、本実施形態では、フロントバンパー6の下端部に車幅方向外側に膨出する膨出部15が設けられており、膨出部15は、フロントバンパー6の下面部6cに連続するような形状を有している。そして、本実施形態において、フロントデフレクタ30を下面部6cに取り付ける最外側ボルト41は、該最外側ボルト41及び膨出部15を通りかつ車幅方向に延びる鉛直面で切断した断面において、コーナ後部4dにおける当該膨出部15よりも上側の部分に沿って車幅方向内側に延ばした延長線Lと下面部6cとの交点CPよりも車幅方向外側に位置する。これにより、膨出部15を設けない場合と比較して、フロントデフレクタ30を出来る限り車幅方向外側に位置させることができる。
すなわち、仮に膨出部15を設けない場合、下面部6cは交点CPの位置から車両内側に延びることになる。このため、仮に膨出部15を設けない場合、フロントデフレクタ30のフィン部32fは、交点CPよりも車幅方向内側に位置することになってしまう。これに対して、本実施形態のように膨出部15を設けると、下面部6cを交点CPよりも車幅方向外側に位置させることができる。そして、最外側ボルト41を前記のように配置することで、フロントデフレクタ30を交点CPよりも車幅方向外側まで延ばすことができる。
フロントデフレクタ30を出来る限り車幅方向外側に位置させることで、車両1の前進走行時の走行風を、前輪3に当たらないように車幅方向外側に偏向することができる。この結果、前輪ホイールハウス8への空気の流入を抑制して、前輪3にかかる空気抵抗の低減することができる。
したがって、本実施形態では、車両前面から車両側面における前輪3の前側に亘って設けられ、下端から車両内側に向かって延びる下面部6cを有するフロントバンパー6と、前輪ホイールハウス8の車両前側に位置し、複数の取付部材(ボルト37及び最外側ボルト41)を介して下面部6cに取り付けられるフロントデフレクタ30とを備え、フロントデフレクタ30は、車両1の正面視で前輪3と重複する位置において下側に突出しかつ車両1の前進走行時に生じる走行風を車両前側の端面により車幅方向外側へガイドするフィン部32fを有し、フロントバンパー6は、車両1の正面視で、車両側縁の輪郭線の下端部が該輪郭線の上部よりも車幅方向内側に位置するように構成され、フロントバンパー6における車幅方向外側の下端部には、車幅方向外側に膨出しかつ車両前後方向に延びる膨出部15が設けられ、膨出部15は、下面部3cと連続するような形状を有し、複数の取付部材のうち最も車幅方向外側に位置する最外側ボルト41は、該最外側ボルト41及び膨出部15を通りかつ車幅方向に延びる鉛直面で切断した断面において、フロントバンパー6における当該膨出部15よりも上側の部分に沿って車幅方向内側に延ばした延長線Lと下面部6cとの交点CPよりも車幅方向外側に位置する。これにより、車両1の正面視における前輪3の視認性を得つつ、前輪3にかかる空気抵抗を出来る限り小さくすることができる。
特に、本実施形態において、フロントデフレクタ30は、車両1の前進走行時の走行風を、該フロントデフレクタ30の内部空間を通って、後側に向かって車幅方向外側に斜めに排出する機構(第1の空気取入口32g、凹部32e、立壁部32h、及び第1の空気排出口32i)を有する。これにより、第1の空気排出口32iから排出された走行風によって、フィン部32fにより偏向された走行風が、車幅方向外側へ押し出されるため、フィン部32fにより偏向された走行風と前輪3との干渉が効果的に抑制される。この結果、前輪3にかかる空気抵抗をより効果的に小さくすることができる。
さらに、本実施形態では、エアカーテン機構60により、前輪3の車幅方向外側にエアカーテンが形成される。エアカーテン機構60の第2の空気排出口65は、フロントデフレクタ30の第1の空気排出口32iよりも上側に位置するため、上下方向に広い範囲で、走行風を整流することができる。この結果、前輪3にかかる空気抵抗を一層効果的に小さくすることができる。
また、本実施形態において、フロントデフレクタ30は、車両1の正面視で前輪3と重複する位置において下側に突出しかつ車両1の前進走行時に生じる走行風を車両前側の端面により車幅方向外側へガイドするフィン部32fを有する。これにより、車両1の前進走行時に生じる走行風を、前輪3の車幅方向外側により効率的に偏向させることができ、前輪3にかかる空気抵抗をより小さくすることができる。
また、本実施形態において、最外側ボルト41は、フロントデフレクタ30の車幅方向外側の端部に位置する。これにより、フロントデフレクタ30の車幅方向外側の端部まで、フロントバンパー6の下面部6cに支持されるため、フロントバンパー6に対するフロントデフレクタ30の支持剛性を向上させることができる。
また、本実施形態において、オーバーフェンダー10をダンパー本体6a(詳細には、コーナ後部6d)に取り付けるボルト13(フェンダー取付部)の少なくとも1つは、車両前後方向における最外側ボルト41と略同じ位置でかつバンパー本体6aの下部に位置している。これにより、フロントバンパー6における最外側ボルト41の近傍の部分は、剛性が高くなっている。このため、フロントバンパー6に対するフロントデフレクタ30の支持剛性をより向上させることができる。
特に、本実施形態では、コーナ後部6dは、ダクト部材62が通る部分に、車幅方向外側にU字状に凹んだ凹部を有するとともに、オーバーフェンダー10及びアウターダクトパネル63の各取付部分において、平面を有する。このため、コーナ後部6dは、上下方向及び前後方向に複数の稜線を有しており、剛性が比較的高くなっている。したがって、最外側ボルト41はコーナ後部6dから延びる下面部6cに位置させることで、フロントバンパー6に対するフロントデフレクタ30の支持剛性を一層向上させることができる。
本開示に係る技術は、前記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、前述の実施形態において、フロントデフレクタ30は、車両1の前進走行時の走行風を、該フロントデフレクタ30の内部空間を通って、後側に向かって車幅方向外側に斜めに排出する機構(第1の空気取入口32g、凹部32e、立壁部32h、及び第1の空気排出口32i)を有していたが、フロントデフレクタ30がこれらの機構を有していなくてもよい。フロントデフレクタ30がこれらの機構を有していなくても、該フロントデフレクタを出来る限り車幅方向外側に位置させることで、車両1の前進走行時の走行風を、前輪3に当たらないように車幅方向外側へ偏向させることができる。
また、前述の実施形態では、フロントデフレクタ30がフィン部32fを有していたが、フィン部32fは設けなくてもよい。
また、前述の実施形態では、エアカーテン機構60が設けられていたが、このエアカーテン機構60は設けなくてもよい。
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示に係る技術の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示に係る技術の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示に係る技術の範囲内のものである。