A.第1実施形態:
図1には、非接触給電システムの第1実施形態として、給電装置100と、受電装置200と、を備える構成が示されている。
給電装置100は、制御回路150と、電源回路140と、送電回路130と、送電回路130に並列に接続される複数の送電共振回路110と、を備えている。なお、図1には、5つの送電共振回路110が送電回路130に並列に接続された例が示されている。
送電共振回路110は、送電コイル112と、共振コンデンサ116と、を有している。送電回路130は、電源回路140から供給される直流電力を予め定められた駆動周波数の交流電力に変換して、受電装置200への電力の供給を実行する送電共振回路110に供給する回路である。送電回路130は、例えば、インバータ回路として構成される。電源回路140は、例えば、外部電源の交流電圧を整流して直流電圧を出力するAC/DCコンバータ回路として構成される。制御回路150は、送電回路130及び電源回路140の作動状態を制御する。
図1において、x方向は送電共振回路110の送電コイル112が配列されている水平方向を示し、y方向はx方向に垂直な水平方向を示し、z方向はx及びyに垂直な上方向を示す。
受電装置200は、電子機器や電気自動車等のように、電力を利用して作動する種々の装置である。受電装置200は、送電共振回路110との磁界結合により電力の供給を受ける受電共振回路210と、受電回路220と、を備えている。受電共振回路210は、受電コイル212と、共振コンデンサ216と、を有し、送電共振回路110との間の磁界結合によって受電コイル212に誘導された交流の電力を得る回路である。受電回路220は、例えば、受電共振回路210で得られた交流の電力を直流の電力に変換し、負荷としてのバッテリに充電する回路である。バッテリに充電された電力は、受電装置を作動させる電力として利用される。
なお、図1は、受電装置200の受電コイル212が、給電装置100の中央の送電コイル112の上方に配置されている状態を例として示している。送電コイル112の受電コイル212側を向くコイル面の大きさに対する受電コイル212の送電コイル112側を向くコイル面に対する大きさは、同じとして示されている。なお、コイル面は、ループ状の配線によって囲まれ、ループ状のコイルとして機能する面であり、図1においては、基本的にはxy平面に沿った面である。但し、送電コイル112のコイル面に対する受電コイル212のコイル面の大きさは、小さくても大きくても共振コンデンサと組み合わせて共振周波数を同じに設定すればよい。なおこの場合、複数の送電コイルと1つの受電コイル間で送電することも可能である。
受電コイル212が上方に配置されている中央の送電コイル112には、駆動周波数の電流Ic1が送電回路130から供給される。この場合、受電コイル212と送電コイル112との間の後述する磁気的な結合により誘導される交流の電流が受電コイル212に流れることにより、受電装置200に電力の供給が実行される。これに対して、他の送電コイル112には、電流Ic1に比べて小さな電流Ic0しか流れなくなり、受電コイル212が上方に配置されていない送電コイル112を有する送電共振回路110では無駄な電力の消費が抑制される。また、受電コイル212が配置されていない送電コイル112に流れる電流Ic0が小さくなることによって、漏洩磁束の低減及び送電効率の向上が可能である。なお、受電コイル212が上方に配置されている送電コイル112を有する送電共振回路110と、受電コイル212が上方に配置されていない送電コイル112を有する送電共振回路110の相違については後述する。
図2には、受電装置200の受電コイル212がz方向で重なるように配置された送電コイル112を有する送電共振回路110と、受電コイル212がz方向で重なるように配置されていない送電コイル112を有する送電共振回路110とが示されている。
送電共振回路110は、直列に接続された送電コイル112と共振コンデンサ116とを有している。なお、受電共振回路210も、送電共振回路110と同様に、直列に接続された受電コイル212と共振コンデンサ216とを有している。送電共振回路110及び受電共振回路210には、一次直列二次直列コンデンサ方式(「SS方式」とも呼ばれる)が適用されている。また、送電側が単相の送電コイル112で構成され、受電側が単相の受電コイル212で構成された送電側単相-受電側単相の非接触給電方式が適用されている。
ここで、送電コイル112と受電コイル212との間の磁界結合による電力の伝送度合いは、送電コイル112と受電コイル212との間の磁気的な結合の大きさを示す結合係数kの大きさに応じて変化する。なお、結合係数kは、送電コイル112のコイル面の中心位置と受電コイル212のコイル面の中心位置の相対的な位置関係(図1のx方向、y方向、z方向の3次元方向の間隔である)に応じて変化する。例えば、x方向の間隔が大きくなれば結合係数kは小さくなり、x方向の間隔が狭くなれば結合係数kは大きくなる。他の方向においても同様である。そして、所定の結合係数kの場合に、受電コイル212で受電可能な電力は最大値となる。但し、実際の受電電力は、不図示の負荷に応じて設定される。
そこで、送電共振回路110の各回路定数及び受電共振回路210の各回路定数は、結合係数kが予め定めた値k1(1>k1>0)となる状態において、以下で説明するように設定されている。なお、結合係数kが予め定めた値k1となる状態とは、送電コイル112のコイル面の中心位置と受電コイル212のコイル面の中心の相対位置がx方向、y方向及びz方向で予め定めた値に一致した状態(いわゆる送電側コイルと受電側コイルが所定の間隔で正対した状態)で、結合係数kが予め定めた値k1となる状態である。予め定めた値k1は設計値であり、以下では、この値k1を「設定結合係数k1」とも呼ぶ。この設定結合係数k1は、本例では、k1=0.8とする。
送電回路130の駆動周波数fdは、k=k1の状態(図2の上段の回路参照)で、駆動周波数fdの電流Ic1が送電共振回路110に供給されて、送電共振回路110及び受電共振回路210の共振周波数frがfr=frr1で共振するように、fd=frr1に設定されている。この場合、入力インピーダンスZは、送電回路130から印加される交流の一定電圧で電流Ic1が流れるようなインピーダンスZr1となる。
受電コイル212が送電コイル112上に配置されていない状態(図2の下段の回路参照)は、受電コイル212が送電コイル112上に配置されている状態(図2の上段の回路参照)であって、このコイル間距離が無限遠と等価であり、結合係数k及び相互インダクタンスMがk=0,M=0となる状態として、扱うことができる。この状態では、駆動周波数fdの電流が送電共振回路110に供給されても、送電共振回路110が共振しないように、送電共振回路110の共振周波数frは、k=k1における共振周波数frr1に比べて予め定めた乖離周波数fdv以上乖離する周波数frr0に設定されている(下式(1)参照)。この場合、入力インピーダンスZは、送電回路130から印加される交流の一定電圧で、電流Ic1に比べて小さな電流に低減された電流Ic0が流れるような大きなインピーダンスZr0(>Zr1)となる。なお、k=0における共振周波数frr0は、送電共振回路110単体での共振周波数frn(以下、「基準共振周波数frn」とも呼ぶ)に等しくなる。そこで、k=0における共振周波数frr0を、「基準共振周波数frn」とも呼ぶ。なお、下式(1)の関係は、k=k1における共振周波数frr1は、基準共振周波数frnに比べて乖離周波数fdv以上高い周波数に設定されている(下式(2)参照)、と言い換えることができる。
なお、乖離周波数fdvは、後述するように、k=0の状態での送電共振回路110単体の基準共振周波数frnにおける共振のピーク値に対して半値となる周波数の幅(「半値幅」と呼ばれる)δfrnのm倍(m>1)に設定されている(下式(3)参照)。なお、倍率mは、本例ではm=10である。乖離周波数fdvの設定については後述する。
送電共振回路110の各回路定数は、上式(1)及び式(2)を満たすように、送電コイル112のインダクタンスL1がLa、共振コンデンサ116のキャパシタンスC1がCaに設定されている。受電共振回路210の各回路定数も、同様に、受電コイル212のインダクタンスL2がLb、共振コンデンサ216のキャパシタンスC2がCbに設定されている。
以下では、送電共振回路110の各回路定数及び受電共振回路210の各回路定数が、結合係数kが予め定めた値k1となる状態において、上式(1)及び式(2)が満たされるように設定されている点について説明する。
送電共振回路110と受電共振回路210とが近接した場合の各共振回路間の磁界結合のモードには、図3に示すように、磁束貫通モード(以下、「第1共振モード」とも呼ぶ)による共振と、磁束反発モード(以下、「第2共振モード」とも呼ぶ)による共振とがある。第1共振モードの共振周波数frp(以下、「第1共振周波数frp」とも呼ぶ)は下式(4)で表され、第2共振モードの共振周波数frr(以下、「第2共振周波数frr」とも呼ぶ)は下式(5)で表される。
ここで、Mは送電コイル112のインダクタンスLaと受電コイル212のインダクタンスLbの間の相互インダクタンスであり、下式(6)で表される。
相互インダクタンスMは、上式(6)で示すように、結合係数kの大きさに比例して変化するので、第1共振周波数frp及び第2共振周波数frrは、図4に示すように、結合係数kの大きさに応じて変化する。第1共振周波数frpは、結合係数kが大きくなるに従って低くなる。一方、第2共振周波数frrは、結合係数kが大きくなるに従って高くなる。特に、第2共振周波数frrは結合係数kが大きくなるほど増加量が大きくなるように高くなる。なお、図4は、送電共振回路110の共振周波数frp,frrを例に示している。また、k=0の場合の共振周波数frpの値frp0,frr0は、上式(4)及び式(5)の相互インダクタンスMをM=0とした式で表され、送電共振回路110単体の基準共振周波数frnに等しくなる。図示を省略するが受電共振回路210においても同様である。
結合係数kがk=k1(本例では0.8)における第2共振周波数frr(=frr1)と、k=0における基準共振周波数frn(=frr0)との差δfrrが後述する乖離周波数fdv以上となる場合には、以下で説明するように、その第2共振周波数frr1を送電回路130(図2参照)の駆動周波数fdに設定すればよい。
上記のように設定された場合、受電コイル212が送電コイル112上に配置されてk=k1となる状態では、駆動周波数fdの電流Ic1が送電共振回路110(図2参照)に流れることで、送電共振回路110及び受電共振回路210を第2共振周波数frr1で共振させることができる。この場合、送電共振回路110の入力インピーダンスZは、上述したように電流Ic1が流れるインピーダンスZr1となる。この場合、この結合状態において周波数frr1で駆動するとインピーダンスの虚部がゼロ近傍になるため、送電共振回路110から受電共振回路210に電力を伝送することができる。
これに対して、受電コイル212が送電コイル112上に配置されず、k=0,M=0となる状態では、送電共振回路110単体の基準共振周波数frn(=frr0)に対して駆動周波数fdが乖離周波数fdv以上大きく乖離(「離隔」とも呼ぶ)し、送電共振回路110の共振状態が崩れることになる。この場合、送電共振回路110の入力インピーダンスZは虚部が大きな値を持つようになるため、上述したように、入力インピーダンスZr1に比べて大きなインピーダンスZr0となり、送電共振回路110に流れる電流は、電流Ic1に比べて小さな所望の電流Ic0とすることができる。これにより、受電コイル212が上方に配置されていない送電共振回路110における無駄な電力の消費が抑制される。
以上の理由から、結合係数kがk=k1の場合における第2共振周波数frr1とk=0における基準共振周波数frn(=frr0)との差δfrrが、後述する乖離周波数fdv以上となる場合には、第2共振周波数frr1を送電回路130の駆動周波数fdに設定すればよい。
ここで、乖離周波数fdvは、受電コイル212が配置されていない送電コイル112の送電共振回路110に流れる電流Ic0を予め定めた値(以下、「目標値」とも呼ぶ)以下に低減することが可能な値に設定される。具体的には、電流Ic0を目標値以下とするには、k=0の状態における第2共振周波数frr0すなわち送電共振回路110単体の共振周波数frnに対して、駆動周波数fdをどれくらい乖離する必要があるかを求めることにより、設定される。
例えば、k=0における送電共振回路110の入力インピーダンスZr0は、下式(7)で表される。
Rは電力が供給される負荷抵抗分である。
例えば、電流Ic0は、送電共振回路110が基準共振周波数frnで共振しているときにピーク電流の1/10以下となるように、ピーク電流の1/√101以下を電流Ic0の目標値とする。この場合、上式(7)を下式(8a)で表すことができ、下式(8a)を下式(8b)に変形することができ、下式(8b)から下式(8c)の関係を求めることができる。そして、ωn=1/√(La・Ca)、Q=(ωn・La)/Rとすると、下式(8c)を下式(8d)で表すことができる。ここで、ωnは送電共振回路110単体の基準共振周波数frnに対応する基準共振角周波数であり、Qは負荷RLでの基準共振角周波数ωnにおけるQ値である。
上記(8d)式から、電流Ic0がピーク電流の1/√101以下となる角周波数ωの解を求めると、下式(9a)に示す高周波側の角周波数ω+、及び、式(9b)に示す低周波側の隔週周波数ω-を得る。
そして、電流Ic0がピーク電流の1/√101以下となる角周波数ωの幅(ω+-ω-)は、上式(9a)及び式(9b)から、下式(10)で表される。
上式(10)において、(ωn/Q)は、送電共振回路110の基準共振角周波数ωnで共振ピークとなる共振特性において、ピーク値に対して半値となる角周波数の幅(「半値幅」と呼ばれる)であり、周波数の半値幅δfrnは、δfrn=(ωn/Q)/2πで表される。
上式(10)からわかるように、半値幅(ωn/Q)の10倍以上乖離された角周波数であれば、電流Ic0をピーク値の1/√101≒1/10以下とすることが可能となる。
そこで、上式(3)の倍率mをm=10として、乖離周波数fdvを半値幅δfrnの10倍に設定すれば、k=k1における第2共振周波数frr1に設定された駆動周波数fdを、基準共振周波数frnに対して半値幅δfrnの10倍の大きさの乖離周波数fdvだけ乖離することができる。これにより、受電コイル212が送電コイル112上に配置されておらずk=0の状態において、送電共振回路110に流れる電流Ic0を、基準共振周波数frnで共振時のピーク値の1/10以下、すなわち、k=K1の状態において送電共振回路110に流れる電流Ic1の1/10以下、に低減することができる。
従って、受電コイル212が送電コイル112上に配置されていない状態における電流Ic0を、基準共振周波数frnで共振時の電流のピーク値の1/10以下とする条件は、下記の通りである。すなわち、上式(3)の倍率mをm=10とし、第2共振周波数frr1に設定される駆動周波数fdが、基準共振周波数frnの共振特性における半値幅δfrnを10倍した乖離周波数fdv以上高い周波数に乖離されていることが条件となる。
例えば、図5には、k=0,0.2,0.6,0.7,0.8の各値における第2共振周波数frrの共振特性の一例が示されている。なお、図5の電流Icは、ピーク値Icpを基準とする比で示されている。また、図5は、k=0.8を予め定めた値k1とし、この際の第2共振周波数frr1が85kHzとなるように、送電共振回路110及び受電共振回路210(図2参照)の各回路定数がそれぞれ設定されている例を示している。k=0における第2共振周波数frr0は38kHzとなっている。この第2共振周波数frr0は、上記したように送電共振回路110単体の共振周波数frnと一致する。半値幅δfrnはδfrn=1.6kHz、倍率mはm=10でとする。この場合の乖離周波数fdvは、上式(3)よりfdv=16kHzとなる。従って、駆動周波数fdとして設定可能な第2共振周波数frrの条件はfrr≧(frn+fdv)=54kHzとなる。
k=0.2の第2共振周波数frrは42.5kHzとなっている。この第2共振周波数frrは、(frn+fdv)=54kHzよりも低くなる。従って、frr=42.5kHzを駆動周波数fdに設定したとしても、駆動周波数fdを基準共振周波数frnに対して乖離周波数fdv以上乖離することができない。このため、k=0の状態における電流Ic0をピーク値の1/10以下に低減することができない。
これに対して、k=k1=0.8の場合には、第2共振周波数frrはfrr1=85kHzとなっており、(frn+fdv)=54kHzよりも高くなる。従って、frr=85kHZを駆動周波数fdに設定すれば、駆動周波数fdを基準共振周波数frnに対して乖離周波数fdv以上乖離することができる。このため、k=0の状態における電流Ic0をピーク値の1/10以下に低減することができる。
以上のように、送電回路130の駆動周波数fdを、結合係数kが予め定めた値k1となる状態において、送電共振回路110および受電共振回路210で発生する第2共振周波数frr1に設定している。そして、この第2共振周波数frr1は、k=0となる状態の第2共振周波数frr0、すなわち、送電共振回路110単体の基準共振周波数frnに対して、予め定めた乖離周波数fdv以上乖離した周波数となっている。なお、乖離周波数fdvは、受電コイル212が送電コイル112に配置されていない状態における電流Ic0を、基準共振周波数frnで共振時の共振電流のピーク値の1/10以下とすることが可能な周波数差である。これにより、受電コイル212が送電コイル112上に配置されていない状態において、送電共振回路110が駆動周波数fdで共振しないようにすることができ、送電共振回路110に流れる電流Ic0を、基準共振周波数frnで共振時の電流のピーク値の1/10以下に低減することができる。従って、受電コイル212が送電コイル112上に配置されず、k=0,M=0となる状態では、送電共振回路110における無駄な電力の消費を抑制することができる。これに対して、受電コイル212が送電コイル112上に配置されてk=k1となる状態において、送電共振回路110から受電共振回路210に電力を伝送することができる。
なお、上記説明では、電流Ic0をピーク値の1/10以下とするための倍率mをm=10とし、乖離周波数fdvを半値幅δfrnの10倍とするものとした。しかしながら、これに限定されるものではない。倍率mは、電流Ic0をピーク値に対してどれくらい低減するかに応じて、適宜変更されるものである。この場合の倍率mの値は、上記説明と同様の手順で求めることができる。また、乖離周波数fdvを半値幅δfrnのm倍とするものに限定するものではなく、要するに、電流Ic0をピーク値に対して予め設定する目標の電流値まで低減できる値に設定できれば、どのような設定の仕方であってもよい。
また、上記説明では、第2共振周波数frrを駆動周波数fdに設定する場合を例に説明した。これに対して、図4に示したように、第1共振周波数frpも結合係数kの大きさが大きくなるのに従って低くなる特性を有している。そこで、第1共振周波数frpを、第2共振周波数frrと同様に駆動周波数fdとして設定するようにしてもよい。なお、この場合においても、k=k1となる状態における第1共振周波数frp、すなわち、第1共振周波数frp1が基準共振周波数frnに対して乖離周波数fdv以上低い値であることが条件となる。このようにすれば、駆動周波数fdを低く抑えることができるので、送電回路130の損失を低減することが可能である。
また、第1共振周波数frpを駆動周波数fdとする場合において、第2共振周波数frrが第1共振周波数frpの3倍の周波数となるように設定することが好ましい。このようにすれば、駆動周波数fdの3倍高調波の周波数の共振によっても電力の伝送が可能となり、電力の伝送効率を高めることが可能である。
なお、第2共振周波数frrを駆動周波数fdとして利用する方が、駆動周波数fdに対して、送電共振回路110単体の共振周波数frnの乖離を大きくすることができるので、受電コイル212が上方に配置されていない送電コイル112に流れる電力の低減効果を高めることができ、また磁束が反発するモードで動作するため、磁界のキャンセル効果により漏洩磁界の低減効果を高めることができる。
なお、給電装置100の送電回路130の作動状態は、制御回路150が図6に示す制御処理を繰り返し行うことによって、制御されることが好ましい。
制御回路150は、この制御処理を開始すると、まず、給電装置100の周辺に受電装置200が存在するか否か判断する(ステップS110)。この判断は、例えば、給電装置100と受電装置200との間の無線通信の確立の可否やカメラ等により受電装置が近づいたことを判別することにより行うことができる。また、センサにより一定範囲内に受電装置200が存在するか否か検出することにより行うこともできる。
給電装置100の周辺に受電装置200が存在しない場合には(ステップS110:NO)、制御回路150はこの処理を終了する。これに対して、給電装置100の周辺に受電装置200が存在する場合には(ステップS110:YES)、制御回路150は、送電回路130の作動を開始させ(ステップS120)、受電装置200が給電装置100の周辺に存在しなくなるまで(ステップS130:YES)、送電回路130の作動を継続させる(ステップS120)。そして、受電装置200が給電装置100の周辺に存在しなくなった場合には(ステップS130:NO)、制御回路150は、送電回路130の作動を停止させ(ステップS140)、処理を終了する。なお、ステップS130の判断は、ステップS110と同様である。
以上のように、給電装置100の制御回路150が送電回路130の作動状態を制御することにより、給電装置100と受電装置200との間の給電の開始と停止の制御を高速に行うことができる。また、給電装置100ごとに無駄な電力消費を抑制することができる。
なお、上記の送電コイル112および受電コイル212には、通常、コアの周囲に配線がループ状に巻かれた構造のコイルが用いられる。しかしながら、これに限定されるものではなく、図7に示すように、送電コイル112はコア310の周囲に配線312がループ状に巻かれたコア有り構造であるのに対して、受電コイルは、コア有り構造の受電コイル212に代えて、配線322がループ状に巻かれたコアレス構造の受電コイル212Aであることが好ましい。このようにすれば、受電コイル212Aと送電コイル112との間の結合による送電コイル112の自己インダクタンスの増加を抑えることが可能である。これにより、基準共振周波数frnに対する第2共振周波数frrの乖離効果を高めることができる。
また、受電コイルは、図8に示すように、3相の受電コイル212u,212v,212wが重ね合わされた構成としてもよい。また、3相の受電コイルに限定されるものではなく、2以上の複数相の受電コイルが重ね合わされた構成としてもよい。この構成とすれば、複数相の受電コイルのうち、送電コイル112との間で結合度合が高いコイル間における共振により順次電力の伝送が可能であり、電力の伝送効率を高めることが可能である。
B.第2実施形態:
図9に示すように、送電共振回路110の送電コイル112と受電共振回路210の受電コイル212との間に中継コイル412を配置する構成としてもよい。受電コイル212は、送電コイル112と同様に、コア320の周囲に配線322がループ状に巻かれたコア有り構造のコイルである。中継コイル412は、配線422がループ状に巻かれたコアレス構造である。但し、中継コイルは、コア有り構造であってもよい。中継コイル412には中継共振用の共振コンデンサ416が接続されている。中継コイル412と共振コンデンサ416は中継共振回路410を構成している。中継共振回路410は、駆動周波数で共振する閉ループの共振回路である。但し、共振コンデンサとしてコイル線間の浮遊容量を用いて駆動周波数で共振させる構成としてもよい。
各共振回路110,410,210のパラメータ(インダクタンス,キャパシタンス)については、送電共振回路110と中継共振回路410との間の共振周波数fr_th及び中継共振回路410と受電共振回路210との間の共振周波数fr_hrが以下で説明する周波数となるように設定される。
ここで、中継共振回路410の機能を考慮すれば、中継コイル412及び共振コンデンサ416は、送電側部分のコイル及びコンデンサと受電側部分のコイル及びコンデンサに仮想的に分離して表すことができ、送電共振回路110と中継共振回路410と受電共振回路210は、図10に示す回路で表すことができる。なお、送電コイル112、中継コイル412、及び受電コイル212のインダクタンスを、Lt、Lh、及びLrとし、送電共振用の共振コンデンサ116、中継共振用の共振コンデンサ416、及び受電共振用の共振コンデンサ216のキャパシタンスを、Ct、Ch、及びCrとする。また、送電コイル112と中継コイル412との間の相互インダクタンスをMth、中継コイル412と受電コイル212との間の相互インダクタンスをMhrとする。また、中継コイル412のインダクタンスLhのうち、送電側部分のインダクタンスをLha、受電側部分のインダクタンスをLhbとし、中継共振用の共振コンデンサ416のキャパシタンスChのうち、送電側部分のキャパシタンスをCha、受電側部分のキャパシタンスをChbとする。
ここで、中継共振回路410の送電側部分は、送電共振回路110と同じ周波数で共振させるので、送電側部分のインダクタンスLha及びキャパシタンスChaは、送電コイル112のインダクタンスLt及び送電共振用の共振コンデンサ116のキャパシタンスCtを用いて、Lha=Lt/2及びCha=2Ctのように表すことができる。また、中継共振回路410の受電側部分は受電共振回路210と同じ周波数で共振させるので、受電側部分のインダクタンスLhb及びキャパシタンスChbは、受電コイル212のインダクタンスLr及び受電共振用の共振コンデンサ216のキャパシタンスCrを用いて、Lhb=Lr/2及びChb=2Crのように表すことができる。そして、中継コイル412のインダクタンスLhは、Lh=(Lha+Lhb)=(Lt+Lr)/2のように表すことができる。また、中継共振用の共振コンデンサ416のキャパシタンスChは、Ch=[Cha・Chb/(Cha+Chb)]=[2Ct・Cr/(Ct+Cr)]のように表すことができる。
そして、図10に示した回路は、図11に示す等価回路で表すことができる。一点鎖線の左側は、送電共振回路110と中継共振回路410の仮想的に分離された送電側部分とによる共振部分(「送電側共振部」とも呼ぶ)の等価回路を示し、一点鎖線の右側は、中継共振回路410の仮想的に分離された受電側部分と受電共振回路210とによる共振部分(「受電側共振部」とも呼ぶ)の等価回路を示している。
送電側共振部の等価回路の各パラメータは、送電コイル112のインダクタンスLt、共振コンデンサ116のキャパシタンスCt及び送電コイル112と中継コイル412との間の相互インダクタンスMthとを用いて、図11に示すように表される。また、受電共振回路の等価回路の各パラメータは、受電コイル212のインダクタンスLr、共振コンデンサ216のキャパシタンスCr及び受電コイル212と中継コイル412との間の相互インダクタンスMhrとを用いて、図11に示すように表される。
送電側共振部の共振周波数(以下、「送電側共振周波数」とも呼ぶ)fr_thは、送電コイル112のインダクタンスLt及び共振コンデンサ116のキャパシタンスCtを用いて下式(11)で表される。また、受電側共振部の共振周波数(以下、「受電側共振周波数」とも呼ぶ)fr_hrは、受電コイル212のインダクタンスLr及び共振コンデンサ216のキャパシタンスCrを用いて下式(12)で表される。
以下では、インダクタンスとキャパシタンスによる共振回路単体の共振周波数が、第1実施形態で説明した基準共振周波数frnとなる場合のインダクタンスをLn、キャパシタンスをCnとし、第1実施形態で説明した第2共振周波数frrとなる場合のインダクタンスをLu、キャパシタンスをCuとして、説明する。なお、基準共振周波数frnは下式(13)で表され、第2共振周波数frrは下式(14)で表される。
送電側共振周波数fr_th及び受電側共振周波数fr_hrを、基準共振周波数frnとし、かつ、駆動周波数fdに等しく設定するとした場合、図11の等価回路は、Lt=Lr=Ln及びCt=Cr=Cnとして、図12に示すように表すことができる。また、送電側共振周波数fr_th及び受電側共振周波数fr_hrを、第2共振周波数frrとし、かつ、駆動周波数fdに等しく設定するとした場合、図11の等価回路は、Lt=Lr=Lu及びCt=Cr=Cuとして、図13に示すように表すことができる。なお、ここで記載しているLu、Cuは、第1実施形態で記載したように送受電する2つのコイル間が近接した場合に所定の相対位置で実現される結合係数の時に共振するパラメータであり、Ln-Mもしくは、Ln+Mに対して共振する系で設定するパラメータと同等である。
ここで、図14には、第1実施形態のような中継共振回路を有しない構成で、駆動周波数fdに等しく設定する送電共振回路と受電共振回路との間の共振周波数を、第1共周波数fdp及び第2共振周波数frrのうちの一方とした場合の伝送効率と、基準共振周波数frnとした場合の伝送効率とが、示されている。なお、図14の伝送効率は、fd=frnの場合の伝送効率を基準値「1」とした相対値として示されている。
fd=frnの場合の伝送効率は、送電共振回路と受電共振回路のコイル同士の位置関係が正対している位置からずれるに従ってなだらかに低下する。これに対して、fd=frrあるいはfd=frpの場合、fd=frnの場合に比べて、伝送効率のピーク値は若干低下するが、コイル同士の位置関係が正対している位置からずれると急激に低下する。従って、fd=frrあるいはfd=frpの場合、送電共振回路と受電共振回路のコイル同士の位置関係に応じて電力の伝送の開始と停止の急峻な切り替えが可能であり、電力の伝送を行なわない送電共振回路の遮断性能を向上させることができる。
以上のことから、図12に示したように、送電側共振周波数fr_th及び受電側共振周波数fr_hrの両方を基準共振周波数frnとして、駆動周波数fdを基準共振周波数frnに設定した場合、電力の伝送の効率は良いが、伝送の開始と停止の切り替えがなだらかとなって、急峻な切り替えが難しい。これに対して、図13に示したように、送電側共振周波数fr_th及び受電側共振周波数fr_hrの両方を第2共振周波数frrとして、駆動周波数fdを第2共振周波数frrに設定した場合、伝送の開始と停止の急峻な切り替えが可能である。但し、この場合、効率が若干低い共振による電力の伝送が2段階で行なわれるため、電力の伝送効率が1段階の場合に比べて悪くなる。
そこで、図13に示した構成の場合の電力の伝送効率の低下を抑制するためには、図15に示すように、送電側共振周波数fr_thを第2共振周波数frrとし、受電側共振周波数fr_hrを基準共振周波数frnとし、駆動周波数fdを第2共振周波数frrに設定すればよい。このようにすれば、送電側共振部で伝送の開始と停止の急峻な切り替えを可能とするとともに、受電側共振部での伝送効率の低下を抑制することができる。これにより、送電側共振周波数fr_th及び受電側共振周波数fr_hrの両方を第2共振周波数frrとした場合(図13参照)に比べて、伝送効率の低下を抑制しつつ、伝送の開始と停止の急峻な切り替えを可能とすることができる。
なお、送電側共振周波数fr_thを第2共振周波数frrとし、受電側共振周波数fr_hrを基準共振周波数frnとする場合、等価回路のパラメータを、図15に示すようにすればよい。すなわち、Lt=Lu及びCt=Cuとし、Lr=Ln及びCr=Cnとし、Lh=(Lu+Ln)/2及びCh=[2Cu・Cn/(Cu+Cn)]とすればよい。なお、この場合、図9の中継共振回路410の中継コイル412のインダクタンスの値はLh、共振コンデンサの値はChとなる。
図示及び説明は省略するが、送電側共振周波数fr_thを基準共振周波数frnとし、受電側共振周波数fr_hrを第2共振周波数frrとしてもよい。この場合、各共振回路のパラメータを、Lt=Ln及びCt=Cnとし、Lr=Lu及びCr=Cuとし、Lh=(Lu+Ln)/2及びCh=[2Cu・Cn/(Cu+Cn)]とすればよい。このようにしても、伝送効率の低下を抑制しつつ、伝送の開始と停止の急峻な切り替えを可能とすることができる。
なお、上記説明では第2共振周波数frrを例としたが、第2共振周波数frrを第1共振周波数frpとしても同様である。この場合、インダクタンスとキャパシタンスによる共振回路単体の共振周波数が、第1共振周波数frpとなる場合のインダクタンス及びキャパシタンスを用いることで、等価回路の対応するパラメータを設定することができる。
C.第3実施形態:
図16に示すように、送電共振回路110の送電コイル112と受電共振回路210の受電コイル212との間に、送電コイル112と対向する送電側の中継コイル412Tと、受電コイル212と対向する電側の中継コイル412Rと、を配置する構成としてもよい。中継コイル412T,412Rは、配線422T,422Rがループ状に巻かれたコアレス構造である。但し、中継コイルは、コア有り構造であってもよい。送電側の中継コイル412Tには中継共振用の共振コンデンサ416Tが接続されており、受電側の中継コイル412Rには中継共振用の共振コンデンサ416Rが接続されている。送電側の中継コイル412Tと共振コンデンサ416Tは送電側の中継共振回路410Tを構成し、受電側の中継コイル412Rと共振コンデンサ416Rは受電側の中継共振回路410Rを構成している。送電側の中継共振回路410T及び受電側の中継共振回路410Rは、それぞれ、駆動周波数で共振する閉ループの共振回路である。但し、共振コンデンサとしてコイル線間の浮遊容量を用いて駆動周波数で共振させる構成としてもよい。
各共振回路110,410T,410R,210のパラメータについては、各共振回路間の共振周波数fr_th,fr_hh,fr_hrが以下で説明する周波数となるように設定される。送電側共振周波数fr_thは、送電共振回路110と送電側の中継共振回路410Tの間の共振周波数である。受電側共振周波数fr_hrは、受電側の中継共振回路410Rと受電共振回路210との間の共振周波数である。中継側共振周波数fr_hhは、送電側の中継共振回路410Tと受電側の中継共振回路410Rとの間の共振周波数である。
送電共振回路110と送電側の中継共振回路410Tと受電側の中継共振回路410Rと受電共振回路210は、第2実施形態でも説明したように、送電側の中継共振回路410T及び受電側の中継共振回路410Rをそれぞれ仮想的に分離することにより、図17に示す回路で表すことができる。なお、送電コイル112、送電側の中継コイル412T、受電側の中継コイル412R、及び受電コイル212のインダクタンスを、Lt、Lth、Lhr、及びLrとする。また、送電共振用の共振コンデンサ116、送電側の中継共振用の共振コンデンサ416T、受電側の中継共振用の共振コンデンサ416R、及び受電共振用の共振コンデンサ216のキャパシタンスを、Ct、Cth、Chr、及びCrとする。また、送電コイル112と中継コイル412との間の相互インダクタンスをMth、送電側の中継コイル412Tと受電側の中継コイル412Rとの間の相互インダクタンスをMhh、受電側の中継コイル412Rと受電コイル212との間の相互インダクタンスをMhrとする。
図17に示した回路は、図18に示す等価回路で表すことができる。2つの一点鎖線で区分された等価回路のうち、左側の等価回路は、送電共振回路110と送電側の中継共振回路410Tの仮想的に分離された送電側部分とによる共振部分(「送電側共振部」とも呼ぶ)の等価回路を示している。右側の等価回路は、受電側の中継共振回路410Rの仮想的に分離された受電側部分と受電共振回路210とによる共振部分(「受電側共振部」とも呼ぶ)の等価回路を示している。中央の等価回路は、送電側の中継共振回路410Tの仮想的に分離された受電側部分と、受電側の中継共振回路410Rの仮想的に分離された送電側部分とによる共振部分(「中継側共振部」とも呼ぶ)の等価回路を示している。但し、各共振回路のパラメータを、Lt=Lth=Lhr=Lr=Lu及びCt=Cth=Chr=Cr=Cuとして、送電側共振部の送電側共振周波数fr_th、中継側共振部の中継側共振周波数fr_hh及び受電側共振部の受電側共振周波数fr_hrの全ての共振周波数を第2共振周波数frrとした場合として示している。
図18に示したように、送電側共振周波数fr_th、中継側共振周波数fr_hh及び受電側共振周波数fr_hrの全てを第2共振周波数frrとし、駆動周波数fdを第2共振周波数frrに設定した場合、第2実施形態で図13を用いて説明した場合と同様に、電力の伝送効率は悪くなるが、伝送の開始と停止の急峻な切り替えが可能である。なお、第3実施形態の構成の場合、3段階の共振で電力の伝送が行なわれるため、図13に示した2段階の構成の場合よりも伝送効率はさらに悪くなる。
図18に示した構成の場合の電力の伝送効率の低下を抑制するためには、図19に示すように、送電側共振周波数fr_thを第2共振周波数frrとし、中継側共振周波数fr_hh及び受電側共振周波数fr_hrを基準共振周波数frnとし、駆動周波数fdを第2共振周波数frrに設定すればよい。このようにすれば、送電側共振部で伝送の開始と停止の急峻な切り替えを可能とするとともに、中継側共振部及び受電側共振部での伝送効率の低下を抑制することができる。これにより、送電側共振周波数fr_th、中継側共振周波数fr_hh及び受電側共振周波数fr_hrの全てを第2共振周波数frrとした場合(図18参照)に比べて、伝送効率の低下を抑制しつつ、伝送の開始と停止の急峻な切り替えを可能とすることができる。
なお、送電側共振周波数fr_thを第2共振周波数frrとし、中継側共振周波数fr_hh及び受電側共振周波数fr_hrを基準共振周波数frnとする場合、各共振回路のパラメータを、図19に示すようにすればよい。すなわち、Lt=Lu及びCt=Cuとし、Lth=(Lu+Ln)/2及びCth=[2Cu・Cn/(Cu+Cn)]とし、Lhr=Ln及びChr=Cnとし、Lr=Ln及びCr=Cnとすればよい。
図19は送電側共振周波数fr_thを第2共振周波数frrとした場合を示したが、図20に示すように受電側共振周波数fr_hrを第2共振周波数frrとしてもよい。この場合、各共振回路のパラメータを、図20に示すように、Lt=Ln及びCt=Cnとし、Lth=Ln及びCth=Cnとし、Lhr=(Lu+Ln)/2及びChr=[2Cu・Cn/(Cu+Cn)]とし、Lr=Ln及びCr=Cnとすればよい。また、図21に示すように中継側共振周波数fr_hhを第2共振周波数frrとしてもよい。この場合、各共振回路のパラメータを、図21に示すように、Lt=Ln及びCt=Cnとし、Lth=(Lu+Ln)/2及びCth=[2Cu・Cn/(Cu+Cn)]とし、Lhr=(Lu+Ln)/2及びChr=[2Cu・Cn/(Cu+Cn)]とし、Lr=Ln及びCr=Cnとすればよい。これらのようにしても、伝送効率の低下を抑制しつつ、伝送の開始と停止の急峻な切り替えを可能とすることができる。
なお、上記説明では第2共振周波数frrを例としたが、第2共振周波数frrを第1共振周波数frpとしても同様である。この場合、インダクタンスとキャパシタンスによる共振回路単体の共振周波数が、第1共振周波数frpとなる場合のインダクタンス及びキャパシタンスを用いることで、等価回路の対応するパラメータを設定することができる。
D.第4実施形態:
図22に示すように、送電側の中継コイル412Tmと受電側の中継コイル412Rmの一方端同士を電気的に接続し、他方端同士を中継共振用のコンデンサ416を介して接続する構成としてもよい。本実施形態と第3実施形態の違いは、本実施形態では送電側の中継コイル412Tmと受電側の中継コイル412Rmの間の距離が離れており、双方のコイルが発生する磁束が鎖交しない点にある。中継コイル412Tm,412Rmは、送電コイル112と同様に、コア420T,420Rの周囲に配線422T,422Rがループ状に巻かれたコア有り構造のコイルである。但し、中継コイルはコアレス構造であってもよい。中継コイル412Tm,412Rm及び中継共振用の共振コンデンサ416は、第2実施形態の中継共振回路410(図10参照)と同様に機能する中継共振回路410Mを構成する。
各共振回路110,410M,210のパラメータについては、各共振回路間の共振周波数fr_th,fr_hrが以下で説明する周波数となるように設定される。送電側共振周波数fr_thは、送電共振回路110と中継共振回路410Mの送電側の中継コイル412Tmによる共振部分との間の共振周波数である。受電側共振周波数fr_hrは、中継共振回路410Mの受電側の中継コイル412Rmによる共振部分と受電共振回路210との間の共振周波数である。
送電共振回路110と中継共振回路410Mと受電共振回路210は、第2実施形態でも説明したように、中継共振回路410Mの共振コンデンサ416を仮想的に分離して、図23に示す回路で表すことができる。なお、送電コイル112、送電側の中継コイル412Tm、受電側の中継コイル412Rm、及び受電コイル212のインダクタンスを、Lt、Lth、Lhr、及びLrとし、送電共振用の共振コンデンサ116、中継共振用の共振コンデンサ416、及び受電共振用の共振コンデンサ216のキャパシタンスを、Ct、Ch、及びCrとする。また、送電コイル112と送電側の中継コイル412Tmとの間の相互インダクタンスをMth、受電側の中継コイル412Rmと受電コイル212との間の相互インダクタンスをMhrとする。
そして、図23に示した回路は、図11に示した等価回路と同様に、図24に示す等価回路で表すことができる。一点鎖線の左側は、送電共振回路110と中継共振回路410Mの仮想的に分離された送電側部分とによる共振部分(「送電側共振部」とも呼ぶ)の等価回路を示し、一点鎖線の右側は、中継共振回路410Mの仮想的に分離された受電側部分と受電共振回路210とによる共振部分(「受電側共振部」とも呼ぶ)の等価回路を示している。但し、各共振回路のパラメータを、Lt=Lth=Lhr=Lr=Lu及びCt=Cr=Ch・2=Cuとして、送電側共振部の送電側共振周波数fr_th及び受電側共振部の受電側共振周波数fr_hrの両方の共振周波数を第2共振周波数frrとした場合として示している。
図24に示したように、送電側共振周波数fr_th及び受電側共振周波数fr_hrの両方を第2共振周波数frrとし、駆動周波数fdを第2共振周波数frrに設定した場合、第2実施形態の構成で図13を用いて説明した場合と同様に、電力の伝送効率は悪くなるが、伝送の開始と停止の急峻な切り替えが可能である。
図24に示した構成の場合の電力の伝送効率の低下を抑制するためには、図25に示すように、送電側共振周波数fr_thを第2共振周波数frrとし、受電側共振周波数fr_hrを基準共振周波数frnとし、駆動周波数fdを第2共振周波数frrに設定すればよい。このようにすれば、送電側共振部で伝送の開始と停止の急峻な切り替えを可能とするとともに、受電側共振部での伝送効率の低下を抑制することができる。これにより、送電側共振周波数fr_th及び受電側共振周波数fr_hrの両方を第2共振周波数frrとした場合(図24参照)に比べて、伝送効率の低下を抑制しつつ、伝送の開始と停止の急峻な切り替えを可能とすることができる。
なお、送電側共振周波数fr_thを第2共振周波数frrとし、受電側共振周波数fr_hrを基準共振周波数frnとする場合、各共振回路のパラメータを、図25に示すようにすればよい。すなわち、Lt=Lu及びCt=Cuとし、Lth=Lu、Lhr=Ln及びCh=[Cu・Cn/(Cu+Cn)]とし、Lr=Ln及びCr=Cnとすればよい。
図25は送電側共振周波数fr_thを第2共振周波数frrとした場合を示したが、受電側共振周波数fr_hrを第2共振周波数frrとしてもよい。この場合、各共振回路のパラメータを、Lt=Ln及びCt=Cnとし、Lth=Ln、Lhr=Lu及びCh=[Cu・Cn/(Cu+Cn)]とし、Lr=Lu及びCr=Cuとすればよい。このようにしても、伝送効率の低下を抑制しつつ、伝送の開始と停止の急峻な切り替えを可能とすることができる。
なお、上記説明では第2共振周波数frrを例としたが、第2共振周波数frrを第1共振周波数frpとしても同様である。この場合、インダクタンスとキャパシタンスによる共振回路単体の共振周波数が、第1共振周波数frpとなる場合のインダクタンス及びキャパシタンスを用いることで、等価回路の対応するパラメータを設定することができる。
E.第5実施形態:
上記実施形態で説明した非接触給電システムは、種々の受電装置に対して非接触で給電が可能な種々の非接触給システムとして適用可能である。例えば、図26に示すように、受電装置としての車両200Aに対して、車両走行路RSを走行中あるいは車両走行路RSに停車中において、給電装置100Aから非接触で給電が可能な車両用非接触給電システムとして適用可能である。車両200Aは、例えば、電気自動車やハイブリッド車として構成される。図14において、x方向は車両走行路RSの車線に沿った車両200Aの進行方向を示し、y方向は車両走行路RSの幅方向を示し、z方向は垂直上方向を示す。
給電装置100Aは、給電装置100と同様に、電源回路140と、送電回路130と、送電回路130に並列に接続される複数の送電共振回路110と、を備えている。
送電共振回路110は、車両走行路RS上に設置された送電コイル112と、不図示の共振コンデンサを有している。各送電共振回路110の送電コイル112は、車両走行路RSの車線に沿った方向であるx方向に沿って配列されている。なお、図26には、7つの送電共振回路110が示されている。そして、前述の図6のシーケンスに基づき、車両200Aがこの7つの共振回路近傍に存在するか否かを検知し通電を開始終了する。
なお、Y方向の車両の位置ズレに対応するため、X方向に設置したコイルをY方向に並列に数セット並べることも可能である。
受電装置としての車両200Aは、受電共振回路210と、受電回路220と、バッテリ230と、を備えている。
受電共振回路210は、車両200Aの底部に設置された受電コイル212と、不図示の共振コンデンサを含んでおり、送電共振回路110との間の磁界結合現象によって受電コイルに誘導された交流電力を得る装置である。
受電回路220は、受電共振回路210で得られた交流電力を直流電力に変換し、負荷としてのバッテリ230に充電する回路である。バッテリ230に充電された電力は、不図示のモータ等を駆動するために利用される。
なお送電コイルと受電コイルの結合係数を大きくするため、コイルを大型化する手段や、受電コイルを地上側へ接近させる手段を用いることも可能である。
この車両用非接触給電システムにおいても、上記実施形態の非接触給電システムと同様の効果を得ることができる。
F.他の実施形態:
(1)上記実施形態では、複数の送電共振回路を備える構成の給電装置を有する非接触給電システムを例に説明したが、これに限定されるものではなく、1つの送電共振回路を備える構成の給電装置を有する非接触給電システムであってもよい。
(2)上記実施形態では、直列共振を利用した送電共振回路および受電共振回路を例に説明したが、これに限定されるものではなく、並列共振を利用した送電共振回路および受電共振回路としてもよく、いずれか一方は直列共振で他方は並列共振を利用した共振回路としてもよい。
(3)上記実施形態において、送電回路130と各送電共振回路110との間に、まとめて1つのフィルタ回路、あるいは、各送電共振回路110についてそれぞれ1つのフィルタ回路が設けられていてもよい。フィルタ回路は、送電回路130から供給される交流電力に含まれるスイッチングノイズ等の高周波なノイズ成分を抑制するための回路である。フィルタ回路としては、イミタンスフィルタ回路やローパスフィルタ回路、バンドパスフィルタ回路等の種々のフィルタ回路が用いられる。フィルタ回路の次数は、2次でも3次でもよく、4次以上であってもよい。除去すべきノイズを所望のレベルまで低減することができれば、フィルタ回路の次数に限定はない。また、受電共振回路210と受電回路220との間にも、同様にフィルタ回路が設けられていてもよい。
(4)なお、上記第1実施形態で説明した技術は、送電コイルのインダクタンスあるいは共振コンデンサのキャパシタンスが変更可能な場合、この変更システムを併用したり、この変化幅に応じて倍率mを小さく設定したりすることも可能である。例えば、インダクタンスあるいはキャパシタンスを、k=0(送電側と受電側が大きく離れた)の場合に対し、所定のkの時に、1/α倍(α>=1)に小さくできると、共振周波数を√α倍に高くできるため(下式(11参照)、結合係数kを大きくして周波数を乖離させることと同じ作用になる。従って、これらの作用を組み合わせて用いることにより、共振周波数の乖離効果を高めたり、あるいは倍率mを小さく設定したりすることも可能となる。
下式(15)に、上式(5)のインダクタンスあるいはキャパシタンスが1/α倍になった場合の共振周波数を示す。この式が示すように、インダクタンスあるいはキャパシタンスを1/α倍にすることで共振周波数を√α倍にする効果と、結合係数を大きくして共振周波数を1/√(1-k)にする効果の双方を併用することが可能である。
(5)上記第2~第4実施形態で説明した中継共振回路を備える構成において、送電コイルのインダクタンスあるいは共振コンデンサのキャパシタンスが変更可能である場合、中継共振回路のコイルのインダクタンスあるいはコンデンサのキャパシタンスが変更可能な場合、以下で説明するように、変更してもよい。
例えば、車両用非接触給電システム(図26参照)において、送電コイル112が車両走行路の地表あるいは地中に埋められ、受電コイル212及び中継共振回路の中継コイルが車両に搭載されている場合には、以下のように変更してもよい。すなわち、送電コイルと中継コイルとが結合している場合と、結合していない場合とで、送電共振回路の共振コンデンサのキャパシタンスあるいは送電コイルのインダクタンスの値を変更してもよい。
また、例えば、車両用非接触給電システム(図26参照)において、送電コイル112が車両走行路の地中深くに埋められ、1つの中継コイルが地表面近傍に埋められており、受電コイル212が車両に搭載されている場合、あるいは、受電コイル212及び1つの中継コイルが車両に搭載されている場合には、以下のように変更してもよい。すなわち、地表面側の中継コイルと受電コイルとが結合している場合と、結合していない場合とで、あるいは、地表面側の中継コイルと車両側の空閨コイルとが結合している場合と、結合していない場合とで、送電共振回路110の共振コンデンサ116のキャパシタンスあるいは送電コイル112のインダクタンスの値を変更してもよい。また、送電共振回路110の共振コンデンサ116のキャパシタンスあるいは送電コイル112のインダクタンスの値を変更するとともに、地表面側の中継コイルのインダクタンスあるいは中継コイルとともに中継共振回路を構成するコンデンサのキャパシタンスの値を変更してもよい。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。