詳細な説明
開示される組成物および方法は、以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解することができる。本明細書において別に定義しない限り、本開示に関して用いられる全ての科学用語および技術用語は、当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。
本明細書において引用される全ての参考文献は、任意の目的で、参照することにより援用される。本明細書において本開示と引用参考文献が矛盾する範囲においては、本明細書が優先される。
本明細書で用いられる単語の単数形は、文脈上明らかにそうではないと示されていない限り、複数形も含み;例として、用語「a」、「an」、および「the」は単数形または複数形となると理解される。例として、「構成要素(an element)」は1つまたはそれ以上の構成要素を意味する。用語「or」は、具体的な文脈において明らかにそうではないと示されない限り、「および/または」を意味する。「値Xから値Yまでの間」という形式で示されたものを含む全ての範囲は、文脈上明らかにそうではないと示されていない限り、端点(endpoints)および中間の全ての点を含むものとする。
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介して、例えばタンパク質、ポリペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、またはこれらの組み合わせのようなターゲットを識別すると共にそれらに結合する免疫グロブリン分子を指すように、最も広い意味で用いられる。抗体の重鎖は重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)で構成される。軽鎖は軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)で構成される。本出願の目的のために、成熟重鎖および軽鎖可変領域は各々、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)ならびに4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)を含み、N末端からC末端へ:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4と配列する。「抗体」は、天然に存在するか、または人工、例えば従来のハイブリドーマ技術により製造されたモノクローナル抗体のようなものであってよい。抗体は、1つまたはそれ以上の重鎖および/または軽鎖を含み得る。用語「抗体」には、全長モノクローナル抗体および全長ポリクローナル抗体、ならびに、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、および一本鎖抗体のような抗体フラグメントが含まれる。抗体は、免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMのうちのいずれか1つ、またはそのサブクラス(例えば、アイソタイプIgG1、IgG2(例えばIgG2a、IgG2b)、IgG3、IgG4)であり得る。該用語はさらに、1つまたはそれ以上の所望の生物活性(例えば、TIGIT結合等)を示しさえすれば、抗原認識部位を含むヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および任意の修飾(modified)免疫グロブリン分子も包含する。
抗体におけるCDRおよびFR領域の位置を説明するためのナンバリングシステムは、すでに様々なグループによって定義されている。かかるシステムの1つは、Kabatナンバリングシステムである(例えば、Kabat et al.“Sequences of Proteins of Immunological Interest,” Diane Publishing Company(1992)参照; また、Kabat et al. “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” U.S. Department of Health and Human Services, U.S. Government Printing Office (1987 and 1991)も参照)。Kabatナンバリングシステムにより定義される例示的なCDR配列が表2に記載されており、本明細書に開示される例示的な抗体および抗原結合性フラグメントのいずれかも用いることができる。いくつかの実施形態において、本開示の抗体および抗原結合性フラグメントは、本明細書に記載されるCDR配列に100%の同一性で一致するCDR配列を含む。いくつかの実施形態において、本開示の抗体および抗原結合性フラグメントは、本明細書に記載されるCDR配列に90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%,または99%の同一性で一致するCDR配列を含む。
抗体におけるCDRおよびFR領域の位置を定義するさらなるナンバリングシステムには、例えば、IMGTナンバリングシステム(International ImMunoGeneTics Information System (IMGT(登録商標))、Chothiaナンバリングシステム (例えば、Al-Lazikani et al. J Mol Biol.1997;273:927-48参照)、およびChemical Computing Group(CCG)ナンバリングシステム(例えば、Molecular Operating Environment (MOE), 2013.08; Chemical Computing Group ULC, Montreal, QC, Canada, H3A 2R7, 2018参照)が含まれる。
本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指す、つまり、少量だけ存在し得る可能性のある自然発生突然変異を除き、集団を含む個々の抗体は同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原エピトープに対し、高度に特異的である。これに対し、従来の(ポリクローナル)抗体製剤は通常、異なるエピトープに対する(または特異的な)多くの抗体を含む。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の集団から得られるような抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造が要されると解されるべきものではない。モノクローナル抗体の製造に用いる例示的な方法が本明細書に記載され、他の方法は当該分野において既知である。
本明細書に記載されるモノクローナル抗体は具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であり、残りの鎖が別の種に由来するかまたは別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である、「キメラ」抗体、ならびにかかる抗体のフラグメントが含まれ、それらがTIGITに結合する、および/または所望の生物活性を示すものでありさえすればモノクローナル抗体に含まれる。
本明細書で用いられる用語「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるもしくは変化したクラス、エフェクター機能、および/もしくは種の定常領域と連結するように定常領域が変化、置換、もしくは交換されている;ならびに/または(b)可変領域もしくはその一部が、異なるもしくは変化した抗原特異性を有する可変領域もしくはその一部に変化、置換、もしくは交換されている抗体を指す。修飾語「キメラ」は、2つ以上の種からの構造要素を有するといった抗体の特徴を示すものであって、何らかの特定の方法による抗体の製造が要されると解されるべきものではない。例えば、キメラ抗体を作製するのに、非ヒトドナー抗体(例えば、マウスドナー抗体)由来の可変領域配列を、当該分野において既知の方法を用いてヒト定常領域に連結させることができる。例として、マウス抗ヒトTIGIT抗体はその定常領域を、ヒト免疫グロブリンからの定常領域で置き換えることにより修飾することができる。ヒト定常領域での置換により、元のマウス抗体に比べ、キメラ抗体は、ヒトにおける免疫原性を低減させながら、ヒトTIGITの認識におけるその特異性を保つことができる。
本明細書において用いられる用語「ヒト化抗体」は、少なくともいくつかのヒト配列および少なくともいくつかの非ヒト配列を含む抗体の形式を指す。一般に、この抗体は、ヒト配列を大部分、およびターゲット抗原に対する結合特異性を付与する非ヒト配列を少ない割合で含む。かかる抗体は、非ヒト抗体に由来する最小の配列を含むと共に、ヒトにおける免疫原性がより低い一方で非ヒト抗体の反応性を保持するキメラ抗体を含む。一般に、ヒト化抗体は、ヒトアクセプター抗体からの超可変領域配列を、目的の抗原(例えば、ヒトTIGIT)に結合する非ヒトドナー抗体(例えば、マウスドナー抗体)からの超可変領域配列で置換することによって生成される。いくつかのケースにおいて、アクセプター抗体のフレームワーク領域配列は、ドナー抗体の対応する配列と置換することもできる(例えば、復帰突然変異により)。本明細書において述べられるように、ドナーおよびアクセプターの抗体に由来する配列に加え、ヒト化抗体はさらに、抗体特異性、選択制、親和性、および/または活性を精密にすると共に最適化するため、フレームワーク領域中および/または置換された非ヒトの残基内において、残基の置換によって修飾されてもよい。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体および抗原結合性フラグメントはヒト化される。いくつかの実施形態において、開示される抗体および抗原結合性フラグメントは、非ヒト抗体に由来する最小の配列を含む。いくつかの実施形態において、開示される抗体および抗原結合性フラグメントは、非ヒト抗体の親和性を保持するが、1つまたはそれ以上のCDRおよび/またはフレームワークに修飾を含む。いくつかの実施形態において、開示される抗体および抗原結合性フラグメントは、非ヒト抗体により示されない1つまたはそれ以上の好ましい特性も示し、これには、限定はされないが、より低い免疫原性および低減された毒性が含まれる。いくつかの実施形態において、非ヒト抗体はマウス抗体である。いくつかの実施形態において、非ヒト抗体はマウス抗ヒトTIGIT抗体である。例示的なマウス抗ヒトTIGIT抗体は本明細書に記載されており、限定はされないが、7D4、2C9、および3A9を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト抗体、またはその抗原結合性フラグメントもしくは抗原結合ドメインは、コンパレータもしくは「リファレンス(reference)」抗体、抗原結合性フラグメント、または抗原結合ドメインとして用いられて、例えば、比較の結合親和性(comparative binding affinity)を評価する。
本明細書において用いられる用語「抗体の抗原結合性フラグメント」は、抗原(例えば、TIGIT)に結合する能力を保持している1つまたはそれ以上の抗体またはタンパク質のフラグメントを指す。抗原結合性フラグメントはまた、免疫エフェクター細胞活性も保持し得る。全長抗体のフラグメントが全長抗体の抗原結合機能を果たし得ることは、すでに示されている。用語「抗体の抗原結合性フラグメント」内に包含される結合フラグメントの例には、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価のフラグメント(monovalent fragment)であるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメント(bivalent fragment)であるF(ab’)2フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)単一の可変ドメイン、例えばVHドメインを含むdAbフラグメント(例えば、Ward et al. (1989) Nature 341:544-6;およびIntl. Pub. No. WO 1990/005144参照)、ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVLおよびVHは、別々の遺伝子によりコードされるが、これらは、合成リンカーによって結合され(例えば、組換え法を用い)VL領域およびVH領域が対合して一価分子(1本鎖Fv(scFv)として知られる)を成す1本鎖タンパク質としてこれらを形成することを可能にする。例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-6;およびHuston et al. (1988) Proc Natl Acad Sci. USA 85:5879-83を参照されたい。かかる1本鎖抗体も、抗体の「抗原結合性フラグメント」という用語に包含されるよう意図されている。いくつかの実施形態において、scFv分子は融合タンパク質に組み込まれる。1本鎖抗体の他の形態、例えばダイアボディも包含される。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現する二価、二重特異性の抗体であるが、同じ鎖上における2つのドメイン間を対合させるには短すぎるリンカーを用いるため、そのドメインを別の鎖の相補的なドメインと対合させて、2つの抗原結合部位を作り出すものである(例えば、Holliger et al. (1993) Proc Natl Acad Sci. USA 90:6444-8;および Poljak et al. (1994) Structure 2:1121-3参照)。抗原結合性フラグメントは、当業者には周知である従来の技術を用いて得ることができ、かつ、インタクト抗体と同じ方式で結合フラグメントの有用性(例えば、結合親和性)をスクリーニングすることができる。抗原結合性フラグメントは、インタクトタンパク質の切断、例えばプロテアーゼまたは化学的切断により作製され得る。
本明細書において用いられる用語「T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン」または「TIGIT」は、そうではないと示されていない限り、霊長類の動物(例えば、ヒトおよびサル)ならびに齧歯動物(例えば、マウスおよびラット)のような哺乳動物を含む任意の脊椎動物由来の任意のTIGITの天然型(native form)を指す。また、TIGITは、当該分野において、DKFZp667A205、FLJ39873、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有タンパク質9、Vセットおよび膜貫通ドメイン含有タンパク質3、VSIG9、VSTM3、ならびにWUCAMとしても知られている。該用語は、「全長」未処理TIGIT(例えば、アミノ酸配列SEQ ID NO:22を有する全長ヒトTIGIT)、ならびに細胞発現またはプロセス、例えば選択的スプライシング現象、可変プロモーターの使用、転写後修飾、翻訳後修飾等により生じる任意の形態のTIGIT(例えば、調製された、シグナル配列を持たないヒトTIGIT、つまりアミノ酸配列SEQ ID NO:22のアミノ酸22~244のアミノ酸配列を有するTIGIT)を包含する。該用語はまた、限定はされないが、1つまたはそれ以上のTIGITの生物学的機能を保持するスプライス変異体、対立遺伝子変異体、およびアイソフォームを含むTIGITの機能的変異体またはフラグメントも包含する(つまり、該用語が野生型タンパク質のみを指すのに用いられることが文脈上示されない限り、変異体およびフラグメントは包含される)。例示的なヒトTIGITのアミノ酸配列は、UniProt Accession No.Q495A1で見つけることができる。
用語「抗TIGIT抗体」または「TIGITに結合する抗体」は、TIGITに結合する、例えば特異的に結合する任意の形式の抗体またはその抗原結合性フラグメントを指す。該用語は、TIGITに結合する、例えば特異的に結合するものでさえあれば、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、および生物学的機能抗体フラグメントを包含する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、本明細書に記載されるように、TIGITの細胞外ドメインにおける1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合、例えば特異的に結合し得る。いくつかの実施形態において、TIGITの細胞外ドメインは、SEQ ID NO:22のアミノ酸24~138を含む。
本明細書において用いられる用語「特異的な」、「特異的に結合する(specifically binds)」または「特異的に結合する(binds specifically)」は、異種集団のタンパク質および他の生物製剤において、抗体または抗原結合性フラグメント(例えば、抗TIGIT抗体)とターゲット抗原(例えば、TIGIT)との間の結合反応を指す。所定の一連の条件下で、適した抗原への結合と、別の(alternate)抗原または抗原混合物への結合とを比較することにより、抗体の結合の特異性をテストすることができる。抗体が、別の抗原または抗原混合物の少なくとも2倍、5倍、7倍、10倍またはそれ以上高い親和性で適した抗原に結合する場合、特異的であるとみなされる。「特異抗体(specific antibody)」または「ターゲット特異抗体(target-specific antibody)」は、ターゲット抗原(例えば、TIGIT)だけに結合するが、他の抗原には結合しない(または最小限の結合を示す)ものである。いくつかの実施形態において、ターゲット抗原(例えば、TIGIT)に特異的に結合する抗体または抗原結合性フラグメントは、1×10-6M未満、1×10-7M未満、1×10-8M未満、1×10-9M未満、1×10-10M未満、1×10-11M未満、1×10-12M未満、または1×10-13M未満のターゲットに対するKDも有する。いくつかの実施形態において、KDは1pMから500pMである。いくつかの実施形態において、KDは、500pMから1μM、1μMから100nM、または100mMから10nMの間である。
用語「エピトープ」は、抗体に認識されると共に特異的に結合され得る抗原の部分を指す。抗原がポリペプチドであるとき、エピトープは、ポリペプチドの三次の折りたたみにより並列した連続するアミノ酸または非連続のアミノ酸から形成され得る。抗体が結合したエピトープは、抗原抗体複合体の直接可視化によるエピトープの同定に用いるX線結晶構造解析(X-ray crystallography)、ならびに抗原のフラグメントもしくは突然変異体への抗体の結合の監視、または抗体および抗原の異なる部分の溶媒接近性(solvent accessibility)の監視を含む、当該分野において既知である任意のエピトープマッピング技術を用いて同定することができる。抗体エピトープをマッピングする例示的な方法は、本明細書中の実施例に記載されており(例えば、実施例20参照)、当該分野において既知である。例示的なストラテジーには、限定はされないが、アレイベースのオリゴペプチドスキャン(array-based oligo-peptide scanning)、限定加水分解(limited proteolysis)、部位特異的変異導入(site-directed mutagenesis)、ハイスループット変異導入マッピング(high-throughput mutagenesis mapping)、水素重水素交換(hydrogen-deuterium exchange)、および質量分析(mass spectrometry)が含まれる(例えば、Gershoni et al. (2007) 21:145-56;および Hager-Braun and Tomer (2005) Expert Rev Proteomics 2:745-56参照)。
競合的結合(Competitive binding)およびエピトービニング(Epitope binning)もまた、同一またはオーバーラップするエピトープを共有する抗体を決定するのに用いることができる。競合的結合は、例えば“Antibodies, A Laboratory Manual,” Cold Spring Harbor Laboratory, Harlow and Lane(1st edition 1988, 2nd edition 2014)に記載されているアッセイのようなクロスブロッキングアッセイ(cross-blocking assay)を用いて評価することができる。いくつかの実施形態では、クロスブロッキングアッセイにおいて、テスト抗体または結合タンパク質が、リファレンス抗体または結合タンパク質(例えば、表2および表3において同定されたものから選ばれたCDRおよび/または可変領域を含む結合タンパク質)のTIGITのようなターゲット抗原への結合を、少なくとも約50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、99.5%、もしくはそれ以上、またはこれらの間の任意のパーセンテージ)低減させるとき、競合的結合が確認され、および/または逆もまた同様である。いくつかの実施形態において、競合的結合は、共有されたまたは類似の(例えば、一部がオーバーラップする)エピトープによるか、または抗体または結合タンパク質がエピトープ近くで結合する立体障害によるものであり得る (例えば、Tzartos, Methods in Molecular Biology (Morris, ed. (1998) vol. 66, pp. 55-66)参照)。いくつかの実施形態において、競合的結合は、類似のエピトープを共有する結合タンパク質のグループを分類するのに用いることができる。例えば、結合を競合する結合タンパク質は、オーバーラップするまたは近くのエピトープを有する結合タンパク質のグループとして「ビニングされ(binned)」得る一方で、競合しないものは、オーバーラップまたは近くのエピトープを有していない結合タンパク質の別々のグループ(つまり、ビン(bin))内に位置する。
リファレンス抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいてリファレンス抗体のその抗原への結合を50%またはそれ以上ブロックする抗体、および/または、反対に、競合アッセイにおいてリファレンス抗体が抗体のその抗原への結合を50%またはそれ以上ブロックすることを指す。例示的な競合アッセイは、本明細書に記載されると共に例示されている。
本明細書において用いられる用語「アミノ酸」および「残基」は、天然型アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然型アミノ酸と類似する方式で機能するアミノ酸模倣物およびアミノ酸アナログを指す。天然型アミノ酸は、遺伝情報によりコードされるもの、ならびに、in vivoで後に修飾されるアミノ酸であり、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸アナログは、天然型アミノ酸と同じ基本的化学構造、つまり水素、カルボキシル基、アミノ基に結合したα炭素、およびR基を有する、例えばセレノシステイン、ホモセリン、ノルロイシン、およびメチオニンスルホキシドなどの化合物を指す。かかるアナログは、修飾されたR基(例えば、セレノシステイン、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格(例えば、ホモセリン)を有し得るが、天然型アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なるが、天然型アミノ酸と類似する方式で機能する構造を有する化学化合物を指す。例示的なアミノ酸の3文字コードおよび1文字コードが表1に提示されている。
(表1)例示的なアミノ酸の3文字コードおよび1文字コード
特定の位置、例えば抗体のFc領域における「アミノ酸修飾」は、特定の残基の置換もしくは欠失、または特定の残基に隣接する少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を指す。特定の残基に「隣接する」挿入は、その1つから2つの残基内の挿入を意味する。挿入は、特定の残基に対しN末端側またはC末端側であってよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるアミノ酸修飾は置換である。
アミノ酸配列に関し、用語「同一性」および「相同性」は、配列を比較することにより決定される2つまたはそれ以上のポリペプチド配列間の関係を指す。用語「同一性」はまた、2つまたはそれ以上のアミノ酸残基のストリング間で一致した数により決定されるポリペプチド間の配列関連性の程度も意味する。2つの配列間の「同一性」パーセントは、2つの配列の最適なアライメントのために導入される必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを計算に入れた、それら配列が共有する同一の位置の数の関数である(つまり、同一性パーセントは、同一の位置の数/位置の全数×100に等しい)。配列の比較、および2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて実行することができる。配列比較では通常、1つの配列がリファレンス配列となり、それとテスト配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、テスト配列およびリファレンス配列をコンピュータに入力し、必要であれば部分配列座標(subsequence coordinate)を指定し、かつ配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。デフォルトのプログラムのパラメーターを使用してもよいし、または代替のパラメーターを指定してもよい。次いで、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメーターに基づいて、リファレンス配列に対するテスト配列の配列同一性パーセントを算出する。加えて、または、その代わりに、本開示のタンパク質配列をさらに「問い合わせ配列(query sequence)」として用い、公開データベースに対し検索を行って、例えば関連する配列を同定することができる。例として、かかる検索は、Altschul et al. ((1990) J Mol Biol. 215(3):403-10)のBLASTプログラムを用いて実行可能である。
概して、本明細書に開示されるタンパク質と、TIGITの変異体および抗体可変ドメインの変異体(個別の変異体CDRを含む)を含むその変異体と間のアミノ酸の同一性または相同性は、本明細書に示される配列と少なくとも80%同一または相同であり、例えば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、ほぼ100%、または100%の同一性または相同性である。
類似する方式で、本明細書において同定された抗体および他のタンパク質をコードする核酸配列に関し、「核酸配列同一性」パーセントは、特定の抗体および他のタンパク質のコーディング配列におけるヌクレオチド残基と同一である候補配列中のヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。
本明細書において用いられる用語「単離された」は、そのソースの環境(例えば、それが天然に発生するなら、天然の環境)から取り出された物質を指す。例えば、生体中に存在する天然型のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、生体中に共存する物質のいくつかまたは全てから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されている。
本明細書において用いられる「単離抗体(isolated antibody)」は、同定されていると共に、そのソース環境の成分のうち(重量で)1つまたはそれ以上(例えば大部分)の成分から、例えば、ハイブリドーマ細胞培養液またはその産生に用いられた異なる細胞培養液(例えば、抗体を組換え発現するマウスミエローマNS0細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞(例えば、CHO-S細胞)のようなプロデューサー細胞)の成分から分離されている抗体である。いくつかの実施形態において、所望の用途(例えば、抗TIGIT抗体の治療上の使用)に対する抗体の適合性を他の方法で妨げ得る成分を充分に除去するように、分離を行う。単離抗体の作製方法は、当該分野において既知であり、限定はされないが、プロテインAクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、ウィルス保持ろ過(virus retentive filtration)、および限外ろ過が含まれる。
結合「親和性」は、単一の抗原部位における抗体と抗原との間の相互作用の強度を指す。各抗原部位内において、抗体の「アーム」の可変領域は、弱い非共有結合的な力によって、多数の部位で抗原と相互作用する。一般に、相互作用が大きいほど、親和性も強くなる。KDと親和性とは反比例する。いくつかの実施形態において、本開示の抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、KD約1×10-6Mまたはそれ以下で、TIGIT(例えば、ヒトTIGIT)に結合する能力を保持する。
本明細書で用いられる用語「KD」は、kdのkaに対する比(つまり、kd/ka)から得られる平衡解離定数を指し、かつ一般にモル濃度(M)として表されるものである。本明細書で用いられる用語「ka」は、特定の抗体-抗原の相互作用の会合速度を指し、一方、本明細書で用いられる用語「kd」は、特定の抗体-抗原の相互作用の解離速度を指す。抗体のKD値を測定する例示的な方法が本明細書の実施例(例えば、実施例5参照)に開示されており、他の方法は当該分野において既知である。
「親和性成熟(affinity-matured)」抗体は、その1つまたはそれ以上のCDRにおいて1つまたはそれ以上の改変を有しているものであり、これにより、それら改変を有さない親抗体(parent antibody)に比べ、ターゲット抗原に対する抗体の親和性が改善する。いくつかの実施形態において、親和性成熟抗体は、ターゲット抗原に対してナノモルまたはピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体を製造する例示的な方法が本明細書の実施例(例えば実施例13、14、および17参照)に開示され、かつ当該分野で既知であり、これには、VHおよびVLドメインシャフリング(domain shuffling)、CDRならびに/またはフレームワーク残基(framework residues)のランダム変異誘発(random mutagenesis)などによる親和性成熟が含まれる。
本明細書において、用語「Fc領域」は、天然配列Fc領域および変異型Fc領域を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を画成するのに用いられる。Fc領域のC末端リジンは、例えば、抗体の産生または精製時に、抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え操作することにより、除去されることができる。したがって、インタクトな抗体の組成物は、全てのC末端リジン残基が除去された抗体集団、C末端リジン残基が除去されていない抗体集団、およびC末端リジン残基を有するかまたは有さない抗体の混合物を有する抗体集団を含み得る。本発明の抗体に用いるのに適した天然配列Fc領域には、ヒトIgG1、IgG2(例えば、IgG2a、IgG2b)、IgG3、およびIgG4が含まれる。
本明細書において用いられる「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を示す。いくつかの実施形態において、FcRは、天然配列ヒトFcRである。いくつかの実施形態において、FcRは、IgG抗体(γ受容体)に結合すると共に、FCγRI、FCγRII、およびFCγRIIIサブクラスの受容体を含むものであり、これらは、これら受容体の対立遺伝子変異体およびオルタナティブスプライシング型(alternatively spliced forms)を含む。将来同定されることになるものを含む他のFcRは、本明細書における用語「FcR」に包含される。
「エフェクター細胞」は、1つまたはそれ以上のFcRを発現すると共に、エフェクター機能を実行する白血球を指す。いくつかの実施形態において、この細胞は、少なくともFCγRIIIを発現する、および/または(複数の)ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球細胞、細胞障害性T細胞、および好中球が含まれる。
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因するそれらの生物活性を指し、これは抗体のアイソタイプにより異なる。抗体エフェクター機能の例には:C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション;およびB細胞活性化が含まれる。
「抗体依存性細胞傷害」または「ADCC」は、特定の細胞毒性エフェクター細胞(例えば、NK細胞、単球細胞)上に存在するFc受容体上に結合した分泌型免疫グロブリンにより、細胞毒性エフェクター細胞が、抗原保有(antigen-bearing)ターゲット細胞に特異的に結合した後に細胞毒でターゲット細胞を殺傷できるようになる細胞毒性の形式を指す。ADCC活性を評価するには、いくつかの実施形態において、in vitro ADCCアッセイ、例えば米国特許第5,500,362または5,821,337または6,737,056号に記載されたもの等を実行することができる。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞にはPBMCおよびNK細胞が含まれる。あるいは、または、加えて、ADCC活性は、例えばClynes et al. ((1998) PNAS (USA) 95:652-6)に開示されているような動物モデルにおいて、in vivoで評価することができる。ADCC活性を評価するための例示的なアッセイが本明細書の実施例(例えば実施例19参照)に記載されている。
本明細書において用いられる用語「免疫細胞」には、造血系起源のものであって、免疫応答において役割を果たす細胞が含まれる。免疫細胞には、B細胞およびT細胞(例えば、細胞障害性T細胞、ヘルパーT細胞)のようなリンパ球;ナチュラルキラー細胞;ならびに単球細胞、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、および顆粒球のような骨髄細胞が含まれる。用語「T細胞」には、細胞毒性(CD8+)T細胞およびヘルパー(CD4+)T細胞が含まれる。用語、T細胞にはまた、Tヘルパー1型T細胞およびTヘルパー2型T細胞の両方が含まれる。用語「抗原提示細胞」には、プロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、単球細胞、樹状細胞、およびランゲルハンス細胞)、ならびに他の抗原提示細胞(例えば、ケラチノサイト、内皮細胞、アストロサイト、線維芽細胞、およびオリゴデンドロサイト)が含まれる。
本明細書において用いられる用語「免疫応答」には、T細胞共刺激の調節により影響を受けるT細胞媒介性および/またはB細胞媒介性免疫応答が含まれる。例示的な免疫応答には、B細胞応答(例えば、抗体産生)、T細胞応答(例えば、サイトカイン産生、細胞傷害性)、およびサイトカイン応答性細胞、例えばマクロファージの活性化が含まれる。免疫応答に関し、本明細書において、用いられる、免疫応答に関する用語「ダウンモジュレーション(downmodulation)」には、任意の1つまたはそれ以上の免疫応答の減少が含まれ、一方、免疫応答に関する用語「アップモジュレーション(upmodulation)」には、任意の1つまたはそれ以上の免疫応答の増加、増強、または刺激が含まれる。1つの型の免疫応答のアップモジュレーションは、別の型の免疫応答の対応するダウンモジュレーションをもたらし得るということが、理解されよう。例えば、特定のサイトカインの産生のアップモジュレーションは、細胞性免疫応答のダウンモジュレーションをもたらし得る。
本明細書において用いられる用語「共刺激受容体」には、共刺激シグナルを免疫細胞に伝達する受容体、例えば、CD28またはICOSが含まれる。本明細書において用いられる用語「阻害性受容体」には、負のシグナルを免疫細胞に伝達する受容体(例えば、CTLA-4またはPD-1)が含まれる。
活性化された免疫細胞に関し、本明細書で用いる用語「共刺激する」には、増殖またはエフェクター機能を含む第2の非活性化受容体媒介シグナル(“共刺激シグナル”)を提供する共刺激分子の能力が含まれる。例えば、共刺激シグナルは、例えば、T細胞受容体媒介シグナルを受け取ったT細胞におけるサイトカイン分泌という結果をもたらし得る。例えば活性化受容体を介して細胞受容体媒介シグナルを受け取った免疫細胞を、本明細書では「活性化免疫細胞」という。
阻害性受容体により伝達されるときの阻害性シグナルは、共刺激受容体(例えばCD28またはICOS)が免疫細胞上に存在していなくても発生し得るため、単なる共刺激分子の結合に対する 阻害性受容体と共刺激受容体間の競合の機能ではない(Fallarino et al. (1998) J. Exp. Med. 188:205)。免疫細胞への阻害性シグナルの伝達は、免疫細胞における不応答性、アネルギー、またはプログラム細胞死という結果をもたらし得る。いくつかの実施形態において、阻害性シグナルの伝達は、アポトーシスを伴わないメカニズムにより作用する。本明細書において用いられる用語「アポトーシス」には、当該分野で既知である技術を用いて特徴付けられ得るプログラム細胞死が含まれる。アポトーシス細胞死は、例えば、最終的に細胞断片化で終わる細胞萎縮、膜ブレブ形成(membrane blebbing)、およびクロマチン凝縮を特徴とし得る。アポトーシスが進行している細胞もまた、ヌクレオソーム間のDNA開裂の特徴パターンを示す。
いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるのは、例えば、1つまたはそれ以上の免疫細胞の活性化および/または殺傷に、開示された抗体および/または抗原結合性フラグメントを用いる治療上の方法および使用である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された治療上の方法および使用は、対象における免疫応答または機能を増加、増強、または刺激するのに有用である。いくつかの実施形態において、免疫応答または機能は、本開示の抗体または抗原結合性フラグメントによる処置の結果として、対象におけるエフェクター細胞(例えば、T細胞)を活性化すること、エフェクター細胞集団を増大(増加)させること、および/またはターゲット細胞(例えば、ターゲット腫瘍細胞)を殺傷することにより、増加、増強、および/または刺激される。
本明細書において用いられる「免疫細胞活性化」、ならびにこの元の用語(例えば「免疫細胞を活性化すること」)の複数形(pluralizations)およびバリエーション(variations)は、免疫細胞の増殖、1つまたはそれ以上の免疫細胞のマーカー(例えば、CD69、CD71)の発現を活性化または増強すること、シグナル物質(例えばIFN-γ、IL-2)の分泌の誘発、細胞溶解性分子(例えば、パーフォリン、グランザイムB)の分泌の誘発、増強された細胞毒性、サイトカイン産生、細胞移動、細胞増殖、またはこれら特徴の任意の2つもしくはそれ以上の組み合わせを指す。いくつかの実施形態において、免疫細胞活性化は、サイトカイン分泌(例えば、IFN-γ、IL-2、または両方の分泌)を特徴とする。いくつかの実施形態において、免疫細胞活性化は、T細胞機能を増強することを特徴とする。免疫細胞活性化は、in vitroで、例えば、抗原またはTCR媒介刺激によるT細胞増殖の評価によって測定することができる。免疫細胞活性化を評価する例示的な方法が本明細書に記載されており(例えば実施例7~9参照)、他の方法は当該分野において既知である。
「T細胞機能の増強」とは、維持または増幅された生体機能を持つように、T細胞を誘発する、せしめる、もしくは刺激すること、または疲弊したもしくは不活性のT細胞を再生もしくは再活性化することを意味する。T細胞機能の増強の例には、処置(intervention)前のそのようなレベルに対して、増加した細胞障害性T細胞からのIFN-γの分泌、増加した増殖、および増加した抗原応答性(例えば、ウィルス、病原体、または腫瘍の除去)が含まれる。いくつかの実施形態において、増強のレベルは、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%であり、かつ当業者には既知である方法を用いて測定することができる。
「免疫関連疾患」は、正常な生理機能が傷害もしくは外傷に対して反応する、傷害もしくは外傷からの修復を開始させる、ならびに/または先天性および後天性の防御を開始する生理的経路が、その反応の強度に直接関連するさらなる傷害もしくは外傷を引き起こす(例えば、異常な調節もしくは過度な刺激の結果として)ときに、または自己に対する反応として、発生する任意の病理を指す。本明細書に記載された免疫関連疾患の具体的な例には、がん(腫瘍)、免疫媒介性炎症疾患(immune-mediated inflammatory disease)、非免疫媒介性炎症疾患、感染症、および免疫不全症(immunodeficiency diseases)が含まれる。いくつかの実施形態において、免疫関連疾患は、抗原刺激に対する応答性の低下を特徴とするT細胞の疾患、障害または状態であり得る。いくつかの実施形態において、免疫関連疾患は、T細胞がアネルギー性であるか、またはサイトカイン分泌、増殖、もしくは細胞溶解活性の実行の能力が低減したものであり得る。いくつかの実施形態において、応答性の低下は、免疫原を発現する病原体または腫瘍の効果の無い制御につながる。T細胞の機能障害を特徴とする免疫関連疾患の例には、未解明の急性感染症、慢性感染症、および腫瘍免疫が含まれる。
「腫瘍免疫」は、腫瘍が免疫認識および免疫クリアランスを回避するプロセスを指す。よって、かかる回避が弱められると共に、腫瘍が免疫システムによって認識されて攻撃されたとき、治療上の考えとして、腫瘍免疫は「治療された」ものとなる。腫瘍認識の例には、腫瘍結合(tumor binding)、腫瘍縮小(tumor shrinkage)、および腫瘍クリアランス(tumor clearance)が含まれる。
「免疫原性」または「免疫原性の」は、免疫応答、例えば、T細胞応答を誘導する特定の薬剤または組成物の能力を指す。免疫応答は、抗体媒介性または細胞媒介性、または両方の免疫応答であり得る。腫瘍は免疫原性であり、腫瘍免疫原性を増強させることは、免疫応答による腫瘍細胞のクリアランスに役立ち得る。いくつかの実施形態において、腫瘍免疫原性は、本明細書に記載された抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントで処置されることによって増強し得る。
本明細書において用いられる用語「チェックポイント阻害剤」は、任意の小分子化合物、抗体、核酸分子、もしくはポリペプチド、またはその任意のフラグメントを含む任意の治療薬を指し、それは免疫刺激に対する免疫応答を弱める分子の1つまたはそれ以上を阻害し、これによってより広範な免疫活性を与える。
本明細書において用いられる用語「阻害する」または「~の阻害」は、対照(例えば、未処置サンプル)と比較して、統計学的に有意な測定可能な量だけ減少させることを意味し、かつ、完全であることは要されないが、予防または抑制が含まれ得る。
本明細書において用いられる用語「がん」および「腫瘍」は、互換的に、かつ単数形か複数形のいずれかで用いられ、宿主生物にとって細胞を異常にさせる悪性転換を受けた細胞を指す。プライマリーがん細胞は、組織学的検査のような確立した技術により、容易に非がん細胞と区別することができる。本明細書において用いられるがん細胞の定義には、プライマリーがん細胞だけでなく、がん祖先細胞(cancer cell ancestor)由来の任意の細胞も含まれる。これには、転移したがん細胞、ならびにがん細胞由来のin vitro培養物および細胞株が含まれる。がんは固形腫瘍として、例えば、健康診断におけるコンピュータ断層(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、X線、超音波もしくは触診のような方式により腫瘍量に基づいて検出可能な腫瘍、および/または対象から得ることのできるサンプル中の1つまたはそれ以上のがん特異抗原の発現によって検出可能な腫瘍として現れ得る。腫瘍はまた、造血(または血液の(hematologic)もしくは血液(hematological)もしくは血液関連)がん、例えば血液細胞または免疫細胞由来のがんであってもよく、「液性腫瘍」とも称され得る。本明細書に記載されたがんの具体的な例には、結腸直腸がんおよび白血病が含まれる。いくつかの実施形態において、がんは結腸直腸がんである。
本明細書において用いられる用語「感染」は、病原体による生物の体の組織への侵入、それらの増殖、ならびに感染病原体およびそれらが産出する毒素に対する宿主組織の反応を指す。該用語は急性感染および慢性感染の両方を包含する。例示的な感染病原体には、病原体、例えばウィルス、およびウイロイドおよびプリオンのような関連する病原体;バクテリア;真菌;および寄生虫等が含まれる。「感染症」はまた、伝染性疾患または伝染病としても知られる、感染の結果としての病気である。例示的な感染または感染症はヒトT細胞白血病ウイルス1型関連疾患である。
用語「対象」および「患者」は、本明細書において互換的に用いられ、限定はされないが、ヒト、ヒトではない霊長類の動物、齧歯動物、および類似の動物を含む任意の哺乳動物のような任意の動物を指す。 いくつかの実施形態において、対象または患者は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象または患者はヒトである。
本明細書において用いられる用語「薬剤(agent)」は、化合物、化合物の混合物、生体高分子、または生体物質から作製した抽出物を指す。用語「治療薬」は、生物学的プロセスを調節することが可能な、かつ/または生物活性を有する薬剤を指す。本明細書に記載された抗TIGIT抗体および抗原結合性フラグメントは例示的な治療薬である。
「医薬組成物」は、投与を可能にしかつ続いて活性剤(複数の活性剤)の所期の生物活性を提供するようなおよび/または治療効果を達成するような形式の製剤であって、かつその処方が投与されることになる対象に受け入れられない有毒な追加の成分を含まない製剤を指す。医薬組成物は無菌のものであり得る。
本明細書において用いられる「医薬的に許容され得るキャリア」には、採用される投与量および濃度でそれに曝される細胞または哺乳動物に対して無毒性であるキャリア、希釈剤、賦形剤、または安定剤が含まれる。いくつかの実施形態において、医薬的に許容され得るキャリアは水性pH緩衝溶液である。医薬的に許容され得るキャリアの例には、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸のような緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(例えば、約10個の残基より少ない)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジンのようなアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成対イオン(salt-forming counterions);および/またはポリエチルグリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤が含まれる。医薬活性物質へのかかるキャリアの使用は当該分野において周知である。任意の従来のキャリアが活性剤(複数の活性剤)と非相溶でない限りは、開示される組成物中へのその使用は考慮される。
例えば本明細書に開示された抗体または抗原結合性フラグメントの「有効量」は、具体的に述べられた目的を果たすのに十分な量、例えば免疫応答のアップモジュレーションもしくはダウンモジュレーション、1つもしくはそれ以上の免疫細胞の活性化、1つもしくはそれ以上の免疫細胞の殺傷、腫瘍増殖率もしくは腫瘍体積の減少、免疫関連疾患(例えば、がんまたは感染もしくは感染症)の症状の軽減、または治療効果の他のいくつかの兆候のような投与後に治療効果を発揮するのに十分な量である。用語「治療上有効量」は、対象における疾患または障害を治療するのに有効な抗体または抗原結合性フラグメントの量を指す。がんの場合、治療上有効量の抗体または抗原結合性フラグメントは、がん細胞の数を減少、腫瘍サイズを減少、腫瘍転移を抑制(例えば、遅らせるもしくは止める)、腫瘍増殖を抑制(例えば、遅らせるもしくは止める)、および/または1つもしくはそれ以上の症状を緩和することができる。「予防上有効量」は、必要な投与量および期間にて、所望の予防の結果を達成するのに有効な量を指す。通常は、疾患の初期段階の前、または疾患の初期段階に、対象に予防的な投与量が用いられるため、予防上有効量は治療上有効量よりも少ないであろう。
本明細書において用いられる用語「治療する(treat)」または「治療(treatment)」または「治療の(therapeutic)」(および文法的に関連する用語)は、生存の延長、死亡率の低下、および/または代替治療法により生じる副作用の減少のような、疾患の任意の結果の任意の改善を指す。当該分野では容易に理解されるように、治療行為について、疾患の完全な根絶は含まれるが、必須ではない。本明細書において用いられる用語「治療する」または「治療」はまた、記載された抗体または抗原結合性フラグメントの対象、例えば、例としてがんまたは感染もしくは感染症のような免疫関連疾患に罹っているかもしくは罹っていることが疑われる対象への投与をも指す。治療は、治す(cure)、治癒する(heal)、緩和する(alleviate)、軽減する(relieve)、変化させる(alter)、治療する(remedy)、寛解させる(ameliorate)、和らげる(palliate)、改善する(improve)、またはその他の方法で疾患、疾患の症状、もしくは対象の疾患になり易い体質に作用することであり得る。いくつかの実施形態において、疾患を有する対象を治療することに加え、本明細書に開示された組成物を、その疾患が発生する可能性を抑えるかまたは低減させるため、予防的に提供することもできる。
抗TIGIT抗体
本開示は、いくつかの実施形態において、TIGITに結合する、および/またはTIGITの活性を調節する抗体およびその抗原結合性フラグメント、ならびに治療組成物へのそれらの使用に関する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体および抗原結合性フラグメントはTIGITに特異的に結合する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体および抗原結合性フラグメントは、TIGITとCD155との相互作用を低減または遮断する能力がある。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体および抗原結合性フラグメントは、単独で用いらるか、または医薬組成物もしくは併用療法の一部として投与することができる。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体および抗原結合性フラグメントはヒト化されたものである。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体および抗原結合性フラグメントは、非ヒト(例えば、マウス)抗体由来の最小の配列を含み、かつ非ヒト抗体の反応性を保持する一方で、ヒトにおける免疫原性は少ない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体および抗原結合性フラグメントは、リファレンス抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントに比べ、例えば結合親和性、交差反応性、T細胞賦活活性、in vivo抗がん活性、または抗体依存性細胞傷害作用を含む1つまたはそれ以上の改善された特性を有する。具体的には、いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体および抗原結合性フラグメントは、例えば、リファレンス抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントと比較して、ヒトTIGITへの高い結合親和性;ヒトTIGIT、カニクイザル(cyno)TIGIT、および/もしくはマウスTIGIT間の交差反応性;有効なT細胞賦活活性;有効なin vivo抗がん活性;ならびに/またはTIGIT発現調節性T細胞に対する強力な抗体依存性細胞傷害作用のうちの1つまたはそれ以上を示し得る。これら改善された特性のいくつかまたは全てにより、開示される抗体および抗原結合性フラグメントは、例えば、対象(例えばヒト)における免疫関連疾患(例えば、がんまたは感染もしくは感染症)を治療する、またはその進行を遅くするための治療薬として有用となり得る。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体および抗原結合性フラグメントは、例えば免疫細胞上に発現したTIGITに結合する。抗体または抗原結合性フラグメントは、例えばフローサイトメトリー分析により測定される解離定数(KD)≦1mM、≦100nM、≦10nM、または中間の任意の量で、TIGITと結合し得る。いくつかの実施形態において、KDは、例えばフローサイトメトリー分析により測定され、0.1nMから10nMの間である。
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、2本の重鎖および2本の軽鎖を含む4本鎖(four-chain)の抗体(免疫グロブリンとも称される)である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、2本鎖のハーフボディ(half body)(1本の軽鎖および1本の重鎖)、または免疫グロブリンの抗原結合性フラグメントである。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、ターゲット抗原(例えば、TIGIT)に結合するおよび/または免疫グロブリンの機能を提供する能力を保持する免疫グロブリンの抗原結合性フラグメントである。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された抗体または抗原結合性フラグメントは、表3にリストされたものから採用された対合した重鎖および軽鎖可変領域のセット、または対合した重鎖および軽鎖のセットからの6個のCDR配列のセット、例えば、表2にリストされたCDRのセットを含み得る。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト重鎖および軽鎖フレームワーク(例えば結合親和性を高めるために、任意で1つまたはそれ以上の復帰突然変異を有する)ならびに/またはヒト重鎖および軽鎖定常領域もしくはそのフラグメントをさらに含む。例えば、抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒトIgG重鎖定常領域(例えば、エフェクター機能を修正するために、任意で1つまたはそれ以上の突然変異を有する)、およびヒトカッパまたはラムダ軽鎖定常領域を含み得る。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒトIgカッパ軽鎖定常領域を有するヒト免疫グロブリンGサブタイプ1(IgG1)重鎖定常領域を含む。
本開示の例示的な抗体のアミノ酸配列が表2~5に記載されている。
(表2)抗TIGIT抗体のKabat CDRのアミノ酸配列
(表5)選択の抗TIGIT抗体の全長Ig鎖のアミノ酸配列
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された抗体または抗原結合性フラグメントは、上述の表にリストされた重鎖可変領域および軽鎖可変領域の任意のセット、または、例えば選ばれたヒトドナー抗体フレームワーク中への6個のCDRの移植による、重鎖および軽鎖セットからの6個のCDR配列のセットを含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示された抗体または抗原結合性フラグメントは、抗体または抗原結合性フラグメントがTIGITに結合する(例えば、KD 1×10-8M未満で)能力を保持している、ならびに/または本明細書に開示された抗体および抗原結合性フラグメントの1つもしくはそれ以上の機能性(例えば、TIGITとCD155の相互作用を低減もしくは遮断する能力等)を保持している限り、上述の表にリストされた配列に相同なアミノ酸配列を含み得る。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1(HCDR1)、SEQ ID NO:2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:3(HCDR3)を含む3つのHCDR;およびアミノ酸配列SEQ ID NO:4(LCDR1)、SEQ ID NO:5(LCDR2)、およびSEQ ID NO:23(LCDR3)を含む3つのLCDRを含む。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域、または1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むように変異したヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含む重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:40を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、重鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:39、および軽鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:40、または開示された配列と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:39と少なくとも90%同一である重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:40と少なくとも90%同一である軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、SEQ ID NO:39と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖可変領域のアミノ酸配列;および/またはSEQ ID NO:40と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、1A11の対合した重鎖および軽鎖可変領域のセット、または1A11の対合した重鎖および軽鎖のセットからの6個のCDR配列のセットを含む。
本明細書に記載された例示的な抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1(HCDR1)、SEQ ID NO:2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:3(HCDR3)を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);ならびにアミノ酸配列SEQ ID NO:4(LCDR1)、SEQ ID NO:5(LCDR2)、およびSEQ ID NO:23(LCDR3)を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域、または1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むように変異したヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:39と少なくとも90%同一である重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:40と少なくとも90%同一である軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含む重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:40を含む軽鎖可変領域を含む。
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:46を含む重鎖、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:48を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:46と少なくとも90%同一である重鎖、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:48と少なくとも90%同一である軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、SEQ ID NO:46と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖アミノ酸配列;および/またはSEQ ID NO:48と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖はC末端リジン(K)をさらに含む。
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:47を含む重鎖、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:48を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:47と少なくとも90%同一である重鎖、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:48と少なくとも90%同一である軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、SEQ ID NO:47と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖アミノ酸配列;および/またはSEQ ID NO:48と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、重鎖はC末端リジン(K)をさらに含む。
本明細書に記載された例示的な抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:44を含む重鎖定常領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:45を含む軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:47を含む重鎖、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:48を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、重鎖定常領域または重鎖はC末端リジン(K)をさらに含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは1A11である。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1(HCDR1)、SEQ ID NO:2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:3(HCDR3)を含む3つのHCDR;ならびに、アミノ酸配列SEQ ID NO:4(LCDR1)、SEQ ID NO:5(LCDR2)、および SEQ ID NO:24(LCDR3)を含む3つのLCDRを含む。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域、または1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むように変異したヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:41を含む重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:42を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、重鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:41および軽鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:42、または開示された配列と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:41と少なくとも90%同一である重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:42と少なくとも90%の同一である軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、SEQ ID NO:41と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖可変領域のアミノ酸配列;および/またはSEQ ID NO:42と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、1E3の重鎖および軽鎖可変領域の対合したセット、または1E3の対合した重鎖および軽鎖のセットからの6個のCDR配列のセットを含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは1E3である。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1(HCDR1),SEQ ID NO:2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:3(HCDR3)を含む3つのHCDR;ならびにアミノ酸配列SEQ ID NO:4(LCDR1)、SEQ ID NO:5(LCDR2)、および SEQ ID NO:6(LCDR3)を含む3つのLCDRを含む。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:25を含む重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:26を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、重鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:25および軽鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:26、または開示された配列と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:25と少なくとも90%同一である重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:26と少なくとも90%同一である軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、SEQ ID NO:25と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖可変領域のアミノ酸配列;および/またはSEQ ID NO:26と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、7D4の重鎖および軽鎖可変領域の対合したセット、または7D4の対合した重鎖および軽鎖のセットからの6個のCDR配列のセットを含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは7D4である。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1(HCDR1)、SEQ ID NO:2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:3(HCDR3)を含む3個のHCDR;ならびにアミノ酸配列SEQ ID NO:4(LCDR1)、SEQ ID NO:5(LCDR2)、およびSEQ ID NO:6(LCDR3)を含む3個のLCDRを含む。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域、または1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むように変異したヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:31を含む重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:32を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、重鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:31および軽鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:32、または開示された配列と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:31と少なくとも90%同一である重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:32と少なくとも90%同一である軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、SEQ ID NO:31と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖可変領域のアミノ酸配列;および/またはSEQ ID NO:32と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、hz7D4の重鎖および軽鎖可変領域の対合したセット、またはhz7D4の対合した重鎖および軽鎖のセットからの6個のCDR配列のセットを含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントはhz7D4である。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1(HCDR1)、SEQ ID NO:2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:19(HCDR3)を含む3個のHCDR;ならびにアミノ酸配列SEQ ID NO:4(LCDR1)、SEQ ID NO:5(LCDR2)、およびSEQ ID NO:6(LCDR3)を含む3個のLCDRを含む。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域、または1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むように変異したヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含む重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:34を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、重鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:33および軽鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:34、または開示された配列と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:33と少なくとも90%同一である重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:34と少なくとも90%同一である軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、SEQ ID NO:33と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖可変領域のアミノ酸配列;および/またはSEQ ID NO:34と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、1G3の重鎖および軽鎖可変領域の対合したセット、または1G3の対合した重鎖および軽鎖のセットからの6個のCDR配列のセットを含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは1G3である。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1(HCDR1)、SEQ ID NO:2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:20(HCDR3)を含む3個のHCDR;ならびにアミノ酸配列SEQ ID NO:4(LCDR1)、SEQ ID NO:5(LCDR2)、およびSEQ ID NO:6(LCDR3)を含む3個のLCDRを含む。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域、または1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むように変異したヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:35を含む重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:36を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、重鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:35および軽鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:36、または開示された配列と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:35と少なくとも90%同一である重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:36と少なくとも90%同一である軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、SEQ ID NO:35と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖可変領域のアミノ酸配列;および/またはSEQ ID NO:36と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、2F1の重鎖および軽鎖可変領域の対合したセット、または2F1の対合した重鎖および軽鎖のセットからの6個のCDR配列のセットを含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは2F1である。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1(HCDR1)、SEQ ID NO:2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:21(HCDR3)を含む3個のHCDR;ならびにアミノ酸配列SEQ ID NO:4(LCDR1)、SEQ ID NO:5(LCDR2)、およびSEQ ID NO:6(LCDR3)を含む3個のLCDRを含む。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域、または1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むように変異したヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:37を含む重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:38を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、重鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:37および軽鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:38、または開示された配列と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:37と少なくとも90%同一である重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:38と少なくとも90%同一である軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、SEQ ID NO:37と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖可変領域のアミノ酸配列;および/またはSEQ ID NO:38と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、3H2の重鎖および軽鎖可変領域の対合したセット、または3H2の対合した重鎖および軽鎖のセットからの6個のCDR配列のセットを含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは3H2である。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:7(HCDR1)、SEQ ID NO:8(HCDR2)、およびSEQ ID NO:9(HCDR3)を含む3個のHCDR;ならびにアミノ酸配列SEQ ID NO:10(LCDR1)、SEQ ID NO:11(LCDR2)、およびSEQ ID NO:12(LCDR3)を含む3個のLCDRを含む。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:27を含む重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:28を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、重鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:27および軽鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:28、または開示された配列と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:27と少なくとも90%同一である重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:28と少なくとも90%同一である軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、SEQ ID NO:27と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖可変領域のアミノ酸配列;および/またはSEQ ID NO:28と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、2C9の重鎖および軽鎖可変領域の対合したセット、または2C9の対合した重鎖および軽鎖のセットからの6個のCDR配列のセットを含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは2C9である。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:13(HCDR1)、SEQ ID NO:14(HCDR2)、およびSEQ ID NO:15(HCDR3)を含む3個のHCDR;ならびにアミノ酸配列SEQ ID NO:16(LCDR1)、SEQ ID NO:17(LCDR2)、およびSEQ ID NO:18(LCDR3)を含む3個のLCDRを含む。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含む重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:30を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、重鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:29および軽鎖可変領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:30、または開示された配列と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:29と少なくとも90%同一である重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:30と少なくとも90%同一である軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、SEQ ID NO:29と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖可変領域のアミノ酸配列;および/またはSEQ ID NO:30と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは、3A9の重鎖および軽鎖可変領域の対合したセット、または3A9の対合した重鎖および軽鎖のセットからの6個のCDR配列のセットを含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントは3A9である。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメント(例えば、上述された例示的な抗体または抗原結合性フラグメントのいずれか)は、IgG1重鎖定常領域、またはエフェクター機能を改変するように変異させたIgG1重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、重鎖定常領域はヒトIgG1重鎖定常領域である。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:43を含む重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、位置239、330、および332にアミノ酸置換を含むように変異したアミノ酸配列SEQ ID NO:43を含む重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、SEQ ID NO:43の位置239におけるSはDで置換され;SEQ ID NO:43の位置330におけるAはLで置換され;SEQ ID NO:43の位置332におけるIはEで置換される。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:44を含む重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、重鎖定常領域は、C末端リジン(K)をさらに含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメント(例えば、上述された例示的な抗体または抗原結合性フラグメントのいずれか)は、IgG2(例えば、IgG2a、IgG2b)、IgG3、もしくはIgG4重鎖定常領域、またはエフェクター機能を改変するように変異させたIgG2(例えば、IgG2a、IgG2b)、IgG3、もしくはIgG4重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、重鎖定常領域は、ヒトIgG2(例えば、IgG2a、IgG2b)、IgG3、またはIgG4重鎖定常領域である。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された抗TIGIT抗体または抗体または抗原結合性フラグメント(例えば、上述された例示的な抗体または抗原結合性フラグメントのいずれか)は、Igカッパ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、Igカッパ軽鎖定常領域はヒトIgカッパ軽鎖定常領域である。いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:45を含む軽鎖定常領域を含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された抗TIGIT抗体または抗体または抗原結合性フラグメント(例えば、上述された例示的な抗体または抗原結合性フラグメントのいずれか)は、Igラムダ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、Igラムダ軽鎖定常領域はヒトIgラムダ軽鎖定常領域である。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒトTIGITに特異的に結合し、このうち、抗体または抗原結合性フラグメントは、SEQ ID NO:22の位置106におけるYを含むヒトTIGITの領域に結合する。いくつかの実施形態において、領域は:SEQ ID NO:22の位置56におけるQ;SEQ ID NO:22の位置74におけるG;SEQ ID NO:22の位置110におけるY;およびSEQ ID NO:22の位置111におけるH、のうちの1つまたはそれ以上をさらに含む。いくつかの実施形態において、領域は、SEQ ID NO:22の位置56におけるQをさらに含む。いくつかの実施形態において、領域は、SEQ ID NO:22の位置74におけるGをさらに含む。いくつかの実施形態において、領域は、SEQ ID NO:22の位置110におけるYをさらに含む。いくつかの実施形態において、領域は、SEQ ID NO:22の位置111におけるHをさらに含む。いくつかの実施形態において、領域は、SEQ ID NO:22の位置56におけるQ;SEQ ID NO:22の位置74におけるG;SEQ ID NO:22の位置106におけるY;SEQ ID NO:22の位置110におけるY;およびSEQ ID NO:22の位置111におけるH、の全てを含む。
いくつかの実施形態において、その領域は少なくとも、SEQ ID NO:22の位置56におけるQ;およびSEQ ID NO:22の位置106におけるYを含む。いくつかの実施形態において、その領域は少なくとも、SEQ ID NO:22の位置56におけるQ;SEQ ID NO:22の位置74におけるG;SEQ ID NO:22の位置106におけるY;およびSEQ ID NO:22の位置110におけるYを含む。いくつかの実施形態において、領域は非線形(non-linear)である。
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒトTIGITへの結合について、リファレンス抗体または抗原結合性フラグメントと競合し、このうちリファレンス抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1(HCDR1)、SEQ ID NO:2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:3(HCDR3)を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);ならびにアミノ酸配列SEQ ID NO:4(LCDR1)、SEQ ID NO:5(LCDR2)、およびSEQ ID NO:23(LCDR3)を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、リファレンス抗体または抗原結合性フラグメントとヒトTIGITの同じ領域に結合し、このうちリファレンス抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1(HCDR1)、SEQ ID NO:2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:3(HCDR3)を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);ならびにアミノ酸配列SEQ ID NO:4(LCDR1)、SEQ ID NO:5(LCDR2)、およびSEQ ID NO:23(LCDR3)を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。いくつかの実施形態において、リファレンス抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域、または1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むように変異したヒト生殖細胞系重鎖および軽鎖フレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態において、リファレンス抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含む重鎖可変領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:40を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、リファレンス抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:44を含む重鎖定常領域、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:45を含む軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、リファレンス抗体または抗原結合性フラグメントは、アミノ酸配列SEQ ID NO:47を含む重鎖、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:48を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、重鎖定常領域または重鎖はC末端リジン(K)をさらに含む。いくつかの実施形態において、リファレンス抗体または抗原結合性フラグメントは1A11である。いくつかの実施形態において、リファレンス抗体または抗原結合性フラグメントは、本明細書に開示された別の例示的な抗体または抗原結合性フラグメントである。
本明細書に開示される抗体および抗原結合性フラグメントは、TIGITに結合する能力を維持する一方で、さらなる修飾(例えば、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入)を含み得る。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、特定の修飾を含み(例えば、リファレンス配列に対し)、かつ任意で、該特定の修飾に加え、最大で約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10個のアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、任意の特定のアミノ酸修飾に加え、最大で約2、最大で約5、または最大で約10個のアミノ酸修飾を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、任意の特定のアミノ酸修飾に加え、最大で約2、最大で約5、または最大で約10個のアミノ酸修飾を含む重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、任意の特定のアミノ酸修飾に加え、最大で約2、最大で約5、または最大で約10個のアミノ酸修飾を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、任意の特定のアミノ酸修飾に加え、最大で約2、最大で約5、または最大で約10個のアミノ酸修飾を含む軽鎖定常領域を含む。
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は単一の残基によるものである。生体機能が保持されさえすれば(例えば、TIGITへの結合)、かなり多い挿入が許容され得るが、通常、挿入は約1個から約20個ほどのアミノ酸残基となるであろう。生体機能が保持されさえすれば(例えば、TIGITへの結合)、いくつかのケースでは欠失はより多いかもしれないが、通常、欠失は約1個から約20個のアミノ酸残基に及ぶ。置換、欠失、挿入、またはこれらの任意の組み合わせは、最終的な誘導体または変異体に到達するために用いられ得る。一般に、これらの変化は、分子の改変、特に抗原結合タンパク質の免疫原性および特異性、を最小限にするため、可能な限り少ないアミノ酸でなされる。しかしながら、生体機能が保持されさえすれば(例えば、TIGITへの結合)、特定の環境においてはより大きな改変が許容され得る。保存的置換は一般に、以下の表6に示した例示的な表のような、機能的に類似するアミノ酸を提示する表に従ってなされるものであり、他のものは当該分野において既知である。
いくつかの実施形態において、表6に示されたものに比べてより保存的でない置換を選ぶことにより、機能または免疫同一性の実質的な変化がなされ得る。例えば、改変のエリア内のポリペプチド骨格の構造、例えばアルファヘリカルまたはベータシート構造;ターゲット部位における分子の電荷もしくは疎水性;または側鎖のバルクに、より大きく影響する置換がなされ得る。一般に、ポリペプチドの性質に最大の変化をもたらし得る置換は、(a)親水性残基、例えば、セリンまたはトレオニンが疎水性残基、例えばロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリンまたはアラニンに置き換わる(によって置換される);(b)システインまたはプロリンが任意の他の残基に置き換わる(によって置換される);(c)電気陽性の側鎖を有する残基、例えばリジン、アルギニン、もしくはヒスチジンが電気陰性の残基、例えばグルタミン酸もしくはアスパラギン酸に置き換わる(によって置換される);または(d)嵩高い(bulky)側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが、側鎖を持たないもの、例えばグリシンに置き換わる(によって置換される)、という置換である。
変異抗体配列が抗体または抗原結合性フラグメント中に用いられるいくつかの実施形態では、変異体は、必要時に抗原結合タンパク質の特性を修飾するのに選ばれることもあるが、通常は同じ定性的生物活性を示すと共に、同じ免疫応答を誘発し得る。さらに、本開示の抗体は、いくつかの実施形態において、化学的に修飾され得る(例えば、1つもしくはそれ以上の化学部分が抗体に付着し得る)、またはそのグリコシル化を変える、例えば、抗体または抗原結合性フラグメントの1つもしくはそれ以上の機能性を変えるために修飾され得る。
改変(例えば、置換)は、例えば抗体親和性を維持するかまたは高めるために、フレームワークまたはCDR領域内でなされ得る。かかる改変は、「ホットスポット(hotspots)」、つまり、体細胞変異プロセス時において高頻度で変異するコドンによりコードされた残基(例えば、Chowdhury (2008) Methods Mol. Biol. 207:179-96参照)、および/または抗原に接触する残基でなされ得、結果として得られた変異体VHもしくはVLは結合親和性が試験される。二次ライブラリの構築、およびこれからの再選択による親和性成熟が、例えばHoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, N.J., (2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施態様において、様々な方法(例えば、エラープローン(error-prone)PCR、鎖シャッフリング(chain shuffling)、またはオリゴヌクレオチド指定突然変異(oligonucleotide-directed mutagenesis))のいずれかにより、成熟のために選択されたバリアブル遺伝子中に多様性を導入する。次いで、二次ライブラリーを作成する。次いで、ライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有する抗体変異体を同定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのCDR残基(例えば、一度に4~6残基)がランダム化されるCDR指向のアプローチを伴う。抗原結合に関与するCDR残基は、例えばアラニンスキャニング突然変異誘発またはモデリングを用いて、特異的に同定され得る。HCDR3およびLCDR3が特に標的にされることが多い。親和性成熟に用いられる例示的な方法が本明細書における実施例(例えば、実施例13、14、および17参照)に記載されている。
フレームワークまたはCDR領域内でなされる修飾に加え、本開示の抗体は、Fc領域内に修飾を含むように操作されて、通常は、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞傷害性のような、抗体または抗原結合性フラグメントの1つまたはそれ以上の機能性が改変され得る。かかる抗体は、本明細書に記載されていると共に例示されている。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸修飾を、本開示の抗体または抗原結合性フラグメントのFc領域中に導入し、これによりFc領域変異体を生成する。Fc領域変異体は、1つまたはそれ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域)を含み得る。Fc領域内のアミノ酸位置は、例えばEUナンバリングシステムを用いて表すことができる(Kabat et al. “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” U.S. Department of Health and Human Services, U.S. Government Printing Office (1991))。いくつかの実施形態において、かかる変異体は、エフェクター機能を修飾する、例えばADCCを改善または増強するために、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するFc領域を含み、例えば、Fc領域の位置239、330、および/または332における置換である(残基のEUナンバリング)(例えば、Lazar et al. (2006) Proc Natl Acad Sci USA 103(11):4005-10参照)。
本明細書に記載されたアミノ酸置換は、絶対的な残基の位置をリストした後に、置換した(つまり、置換(replacement))アミノ酸の3文字または1文字コードをリストすることによって示すことができる。例えば、SEQ ID NO:43(残基のEUナンバリング)の位置239におけるセリンのアスパラギン酸による置換は、「Ser239Asp」または「S239D」として表すことができる。この例では、セリンは置換されているアミノ酸(または「置換された(replaced)」アミノ酸)であり、かつアスパラギン酸はセリンを置き換えたアミノ酸(または「置換(replacement)」アミノ酸)である。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒトTIGIT、カニクイザル(cyno)TIGIT、および/またはマウスTIGITに結合する能力を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒトTIGITに加え、マウスTIGITに結合する能力を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒトTIGITに加え、cyno TIGITに結合する能力を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒトTIGITに結合する能力を有するが、マウスまたはcyno TIGITに結合する能力を有さない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒトTIGIT、cyno TIGIT、およびマウスTIGITに結合する能力を有する。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗体または抗原結合性フラグメントは、単独で(例えば、抗体または抗原結合性フラグメントとして)、1つまたはそれ以上の追加の物質と連結して(例えば、抗体薬物複合体として)、またはより大きい高分子(macromolecule)の一部として(例えば、二重特異性抗体および 多重特異性抗体)、有用であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、二重特異性または多重特異性抗体中の抗原結合ドメインである、および/または二重特異性または多重特異性抗体の一部である。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは抗原結合性フラグメントである。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインおよび/または抗原結合性フラグメントは一本鎖可変フラグメント(single chain variable fragment, scFv)、またはFabフラグメントである。いくつかの実施形態において、単独で、またはより大きい高分子の一部として用いられる本明細書に開示される抗体または抗原結合性フラグメントは、TIGIT結合機能を保持しながら、さらなる修飾(例えば、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入)を含み得る。
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に記載された抗体および抗原結合性フラグメントのセグメントを含むポリペプチドまたは全長ポリペプチドをコードする、単離された、および/または実質的に精製された核酸分子(ポリヌクレオチドとも称される)を提供する。いくつかの実施形態において、単一の核酸は、本明細書に開示される抗体または抗原結合性フラグメントの重鎖可変領域および軽鎖可変領域両方のコード配列を含んでいてよく、かつ任意で、1つまたはそれ以上の定常領域のコード配列を含んでいてもよい。あるいは、これらコード配列のいくつかまたは全てが、個別の核酸分子上に存在し得る。適した発現ベクターから発現したとき、これらポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、TIGIT(例えば、ヒトTIGIT)に結合する能力を備える。
また、本明細書において提供されるのは、本開示の例示的な抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントの重鎖および/または軽鎖からの少なくとも1つのCDR領域、通常は3個全てのCDR領域をコードするポリヌクレオチドである。さらに、本明細書において提供されるのは、本開示の例示的な抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントの重鎖および/または軽鎖の可変領域配列の全てまたは実質的に全てをコードするポリヌクレオチドである。遺伝暗号の縮重(degeneracy of the genetic code)のために、様々な核酸配列が、本明細書に開示される例示的なアミノ酸配列の各々をコードし得る。
また、本明細書において提供されるのは、本開示の抗TIGIT抗体および抗原結合性フラグメントを製造するのに用いる発現ベクター、宿主細胞、および方法である。
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示される抗体または抗原結合性フラグメントをコードする単離核酸を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示される抗体または抗原結合性フラグメントをコードする単離核酸を含む単離ベクターを提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示される抗体もしくは抗原結合性フラグメントをコードする単離核酸を含む単離細胞もしくは細胞集団、またはその単離核酸を含むベクターを提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に記載された抗体または抗原結合性フラグメントをコードする1つまたはそれ以上の核酸配列を含むよう修飾された宿主細胞または細胞集団を、抗体または抗原結合性フラグメントを製造するのに適した条件下で培養することにより、抗体または抗原結合性フラグメントを製造する方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、製造された抗体または抗原結合性フラグメントを単離、精製、および/または回収するステップをさらに含む。
用語「ベクター」は、それが結合した別のポリヌクレオチドを輸送する、および/またはその発現を制御する能力を持つポリヌクレオチド分子を指すよう意図されている。1つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、それは、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す。もう1つのタイプのベクターはウィルスベクターであり、これにおいて、追加のDNAセグメントがウィルスゲノム中にライゲートされ得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自己複製する能力を有する(例えば、複製の細菌起源を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター(episomal mammalian vectors))。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入されたときに、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得ることから、宿主ゲノムと共に複製される。また、特定のベクターは、それらが機能するよう結合される遺伝子の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書において、「発現ベクター」または「組換え発現ベクター」と称される。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形式であることが多い。本開示は、プラスミド、ならびに、ウィルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウィルスまたはレンチウイルス、アデノウィルス、およびアデノ随伴ウイルス)のような同等の機能を提供する他の形式の発現ベクターを含むことが意図されている。
抗TIGIT抗体重鎖および/もしくは軽鎖可変領域またはその抗原結合性フラグメントをコードする配列を受けるのに用いられることとなるベクターは、定常領域またはその一部をコードすることもある。かかるベクターは、融合タンパク質とする、可変領域またはそのフラグメントと定常領域との発現を可能とし、これにより全長抗体またはその抗原結合性フラグメントが産生される。いくつかの実施形態において、かかる定常領域はヒトのものである。いくつかの実施形態において、定常領域はヒトIgG1重鎖定常領域である。いくつかの実施形態において、定常領域はヒトIgカッパ軽鎖定常領域である。他の実施形態において、定常領域はマウスIgG2(例えば、IgG2a)重鎖定常領域である。いくつかの実施形態において、定常領域はマウスIgカッパ軽鎖定常領域である。
用語「宿主細胞」は、ペプチドの配列をコードする核酸を含むように人工的に操作された(artificially engineered)細胞(または細胞集団)を指し、それは転写して翻訳し、かつ任意でペプチドを細胞増殖培地に分泌するものである。組換え産生の目的のため、ペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸は通常、従来の方法により合成またはクローン化されると共に、発現ベクターに組み込まれ得る。用語「宿主細胞」は、特定の被験細胞だけでなく、かかる細胞の子孫をも指す。突然変異または環境の影響のいずれかによって次の世代に特定の修飾が起こり得るため、かかる子孫は実際には親細胞と同一ではないが、本明細書で用いられる場合、依然として該用語の範囲内に含まれる。
抗TIGIT抗体鎖または抗原結合性フラグメントをコードする核酸を保有すると共に発現するのに用いられる宿主細胞は、原核または真核のいずれかであり得る。いくつかの実施形態において、哺乳類宿主細胞が、本開示の抗TIGITポリペプチドを発現し産生するのに用いられる。例えば、それらは、内因性免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞株、または外因性発現ベクターを保有する哺乳類細胞株のいずれかであってよい。これらは、任意の正常な死に至る(mortal)動物もしくはヒト細胞、または正常もしくは異常な不死の(immortal)動物もしくはヒト細胞を含む。例えば、CHO細胞株、各種COS細胞株、HeLa細胞、ミエローマ細胞株、形質転換B細胞、およびハイブリドーマを含む、インタクト免疫グロブリンを分泌する能力を持つ多数の適した宿主細胞株が開発されている。例示的な宿主細胞には、限定はされないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、CHO-S)、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞(例えば、293T)、サル腎培養(COS)細胞(例えば、COS-1、COS-7)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞(例えば、BHK-21)、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、BSC-1)、HeLa細胞、ヒト肝細胞がん細胞(例えば、Hep G2)、ミエローマ細胞(例えば、NS0、653、SP2/0)、およびリンパ腫細胞、または任意のその由来細胞、不死化細胞、もしくは形質転換細胞が含まれる。いくつかの実施形態において、宿主細胞または細胞集団には、1つまたはそれ以上のCHO細胞(例えば、CHO-S)が含まれる。いくつかの実施形態において、宿主細胞または細胞集団には、1つまたはそれ以上のミエローマ細胞(例えば、NS0)が含まれる。
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントの重鎖および/もしくは軽鎖をコードする1つもしくはそれ以上の核酸分子、またはかかる核酸分子を含む1つもしくはそれ以上の発現ベクターは、選ばれた宿主細胞に適した任意の方法(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、感染)を用い、適した宿主細胞(例えば、1つもしくはそれ以上のCHO-S細胞または1つもしくはそれ以上のNS0細胞)に導入されて、組換え宿主細胞を作り出すことができ、これにより核酸分子は、1つまたはそれ以上の発現制御エレメント(例えば、ベクター内、細胞におけるプロセスにより作り出された構築体内、または宿主細胞ゲノム中に組み込まれた)に操作可能に結合される。いくつかの実施形態において、得られる組換え宿主細胞は、発現または産生に適した条件下で(例えば、誘導物質の存在下、適した非ヒトの動物中、または適した塩、増殖因子、抗生物質、栄養補助食品が補充された適した培地中等で)維持され得、これによりコードされたポリペプチドが産生される。必要であれば、コードされたタンパク質は、(例えば、動物、宿主細胞、または培地から)単離または回収することができる。このプロセスは、トランスジェニック非ヒト動物の宿主細胞における発現を包含する(例えば、Intl. Pub. No.WO1992/003918参照)。さらに、産生細胞株からの抗体鎖またはその抗原結合性フラグメントの発現は、既知の技術を利用して増強することができる。例えば、グルタミンシンテターゼおよびDHFR遺伝子発現システムは、特定の条件下で発現を増強するための一般的なアプローチである。高発現の細胞クローンは、限界希釈法クローニング(limited dilution cloning)、ゲルマイクロドロップ(gel micro-drop)技術、または当該分野において既知である任意の他の方法のような従来技術を用いて同定することができる。
医薬組成物
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示された1つもしくはそれ以上の抗体および/または1つもしくはそれ以上の抗原結合性フラグメント、ならびに少なくとも1つの医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物を提供する。
適したキャリアには、治療用組成物と併用されるときに、治療用組成物の機能を保持すると共に、通常は患者の免疫システムと反応しない任意の物質が含まれる。医薬的に許容され得るキャリアには、任意かつあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに生理学的に適合性がある類似のものが含まれる。医薬的に許容され得るキャリアの例には、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、ヒスチジン、デキストロース、グリセロール、エタノール、メシル酸塩(mesylate salt)、および類似のもの、ならびにこれらの組み合わせのうちの1つまたはそれ以上が含まれる。いくつかの実施形態において、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール、または塩化ナトリウムが、組成物に含まれる。医薬的に許容され得るキャリアには、抗体または抗原結合性フラグメントの保存性(shelf life)または有効性を高める少量の補助剤、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤、または緩衝剤等がさらに含まれ得る。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された医薬組成物は、抗体または抗原結合性フラグメントの複数のコピーを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された医薬組成物は、少なくとも1つの追加の物質(agent)を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、1つまたはそれ以上の追加の治療薬、例えば、免疫関連疾患(例えば、がんまたは感染もしくは感染症)を処置するかまたはその進行を遅らせる能力を備える1つまたはそれ以上の物質を含み得る。かかる治療薬の非限定的な例には、PD-1、PD-L1、CTLA-4、OX40、CD40、LAG3、TIM3、GITR、および/またはKIRをターゲットとしたチェックポイント阻害剤のようなチェックポイント阻害剤が含まれる。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は、そのターゲットに対して阻害性またはアゴニスト活性を有する抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は、阻害抗体または他の類似する阻害分子にターゲットにされる。他の実施形態において、チェックポイント阻害剤は、アゴニスト抗体または他の類似するアゴニスト分子にターゲットにされる。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1および/またはPD-L1をターゲットとする。
治療的使用および組成物
本明細書に開示された抗体、抗原結合性フラグメント、および/または医薬組成物は、様々な治療用途に用いることができる。本明細書に開示されるのは、対象の免疫関連疾患(例えば、がんまたは感染もしくは感染症)の処置において、開示された抗体、抗原結合性フラグメント、および/または医薬組成物を用いる方法である。抗体および/または抗原結合性フラグメントは、単独で、または1つもしくはそれ以上の追加の治療薬と併用して投与することができ、かつ任意の医薬的に許容され得る剤型、用量および投与計画で投与することが可能である。本明細書に記載された抗体または抗原結合性フラグメントによる治療は、有効性の指標に加えて毒性も評価され、かつそれに応じて調整され得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、開示された抗体および/または抗原結合性フラグメントが、例えば、1つまたはそれ以上の免疫細胞の活性化および/または殺傷に用いられる治療上の方法および使用である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された治療上の方法および使用は、対象における免疫応答または機能を高める、増強する、または刺激するのに有用である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの免疫応答または機能は、本開示の抗体または抗原結合性フラグメントによる処置の結果として、例えば対象におけるエフェクター細胞(例えば、T細胞)を活性化する、エフェクター細胞集団を拡大する、および/またはターゲット細胞(例えば、ターゲット腫瘍細胞)を殺傷することにより、高まる、増強される、および/または刺激される。
いくつかの実施形態において、本開示の抗体、抗原結合性フラグメント、および/または組成物で処置された対象における1つまたはそれ以上の免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞、例えば細胞障害性T細胞)は、1つまたはそれ以上の特性、例えばプライミング、活性化、増殖、サイトカインリリースおよび/または細胞溶解性活性等が、処置前のこれら特性と比較して、高められるか、または増大される。いくつかの実施形態において、本開示の抗体、抗原結合性フラグメント、および/または組成物で処置された対象における免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞、例えば細胞障害性T細胞)の数は、処置前の数と比べして上昇する。いくつかの実施形態において、本開示の抗体、抗原結合性フラグメント、および/または組成物で処置された対象における活性化された免疫細胞(例えば、活性化されたT細胞またはNK細胞、例えば活性化された細胞障害性T細胞)の数は、処置前の数と比べて上昇する。いくつかの実施形態において、活性化された免疫細胞は、IFN-γ産生CD4+および/またはCD8+T細胞によって特徴付けられ得る、および/または処置前の活性と比較して細胞溶解性活性が高まった。いくつかの実施形態において、活性化された免疫細胞は、処置前のリリースと比較して、サイトカイン(例えば、IFN-γ、TNF-α、およびインターロイキン(例えばIL-2))のリリースが増加し得る。
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における1つまたはそれ以上の免疫細胞を活性化および/または殺傷する方法であって、有効量の本明細書に記載された抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または本明細書に記載された医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の免疫細胞の活性化は、1つもしくはそれ以上のナチュラルキラー細胞、1つもしくはそれ以上の細胞障害性T細胞、1つもしくはそれ以上のヘルパーT細胞、および/または1つもしくはそれ以上の単球細胞を活性化することを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の免疫細胞は、1つもしくはそれ以上のナチュラルキラー細胞および/または1つもしくはそれ以上の細胞障害性T細胞を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の免疫細胞の殺傷は、1つまたはそれ以上の調節性T細胞を殺傷することを含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントまたは医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1アンタゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における1つまたはそれ以上の免疫細胞を活性化および/または殺傷するのに用いる本明細書に記載された抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または本明細書に記載された医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の免疫細胞の活性化は、1つもしくはそれ以上のナチュラルキラー細胞、1つもしくはそれ以上の細胞障害性T細胞、1つもしくはそれ以上のヘルパーT細胞、および/または1つもしくはそれ以上の単球細胞を活性化することを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の免疫細胞は、1つもしくはそれ以上のナチュラルキラー細胞および/または1つもしくはそれ以上の細胞障害性T細胞を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の免疫細胞の殺傷は、1つまたはそれ以上の調節性T細胞を殺傷することを含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントまたは医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1アンタゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における1つまたはそれ以上の免疫細胞を活性化および/または殺傷するための本明細書に記載された抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または本明細書に記載された医薬組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の免疫細胞の活性化は、1つもしくはそれ以上のナチュラルキラー細胞、1つもしくはそれ以上の細胞障害性T細胞、1つもしくはそれ以上のヘルパーT細胞、および/または1つもしくはそれ以上の単球細胞を活性化することを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の免疫細胞は、1つもしくはそれ以上のナチュラルキラー細胞および/または1つもしくはそれ以上の細胞障害性T細胞を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の免疫細胞の殺傷は、1つまたはそれ以上の調節性T細胞を殺傷することを含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントまたは医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1アンタゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における1つまたはそれ以上の免疫細胞を活性化および/または殺傷するための薬剤の製造における本明細書に記載された抗体または抗原結合性フラグメントの使用を提供する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の免疫細胞の活性化は、1つもしくはそれ以上のナチュラルキラー細胞、1つもしくはそれ以上の細胞障害性T細胞、1つもしくはそれ以上のヘルパーT細胞、および/または1つもしくはそれ以上の単球細胞を活性化することを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の免疫細胞は、1つもしくはそれ以上のナチュラルキラー細胞および/または1つもしくはそれ以上の細胞障害性T細胞を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の免疫細胞の殺傷は、1つまたはそれ以上の調節性T細胞を殺傷することを含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1アンタゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、例えば、がんの治療に用いられる開示された抗体および/または抗原結合性フラグメントの治療上の方法および使用である。様々ながんを治療することができる、および/またはそれらの進行を遅延することができる。いくつかの実施形態において、がんは結腸直腸がんである。当該がん(例えば、結腸直腸がん)は、早期、中間期、または末期であり得る。
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、治療上有効量の本明細書に記載された抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または本明細書に記載された医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、がんはCD155を発現する。いくつかの実施形態において、がんは固形腫瘍である。いくつかの実施形態において、がんは結腸直腸がんである。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントまたは医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1アンタゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象におけるがんを治療するのに用いる、本明細書に記載された抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または本明細書に記載された医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、がんはCD155を発現する。いくつかの実施形態において、がんは固形腫瘍である。いくつかの実施形態において、がんは結腸直腸がんである。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントまたは医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1アンタゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象におけるがんを治療するための本明細書に記載された抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または本明細書に記載された医薬組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態において、がんはCD155を発現する。いくつかの実施形態において、がんは固形腫瘍である。いくつかの実施形態において、がんは結腸直腸がんである。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントまたは医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1アンタゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象におけるがんを治療するための薬剤の製造における本明細書に記載された抗体または抗原結合性フラグメントの使用を提供する。いくつかの実施形態において、がんはCD155を発現する。いくつかの実施形態において、がんは固形腫瘍である。いくつかの実施形態において、がんは結腸直腸がんである。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1アンタゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、例えば、感染または感染症の治療に用いられる開示された抗体および/または抗原結合性フラグメントの治療上の方法および使用である。いくつかの実施形態において、感染または感染症は急性または慢性感染(例えば、急性または慢性ウィルス感染)である。いくつかの実施形態において、感染または感染症はレトロウィルス感染、例えばT細胞に影響を及ぼすレトロウイルス感染、例えばヒトT細胞白血病ウイルス1型関連疾患である。いくつかの実施形態において、感染または感染症はヒトT細胞白血病ウイルス1型関連疾患である。
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における感染または感染症を治療する方法であって、治療上有効量の本明細書に記載された抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または本明細書に記載された医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、感染または感染症はヒトT細胞白血病ウイルス1型関連疾患である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントまたは医薬組成物は少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1アンタゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における感染または感染症の治療に用いる本明細書に記載された抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または本明細書に記載された医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、感染または感染症はヒトT細胞白血病ウイルス1型関連疾患である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントまたは医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1アンタゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における感染または感染症を治療するための本明細書に記載された抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または本明細書に記載された医薬組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態において、感染または感染症はヒトT細胞白血病ウイルス1型関連疾患である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントまたは医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1アンタゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における感染または感染症を治療するための薬剤の製造における本明細書に記載された抗体または抗原結合性フラグメントの使用を提供する。いくつかの実施形態において、感染または感染症はヒトT細胞白血病ウイルス1型関連疾患である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは、少なくとも1つの追加の治療薬と併用して投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1アンタゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。
本開示の抗TIGIT抗体、抗原結合性フラグメント、および/または組成物(および/または任意の追加の治療薬)は、非経口、肺内、および鼻腔内、および局所的な治療を必要とする場合、病巣内投与を含む任意の適した手段で投与することができる。例示的な非経口投与経路には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、および皮下が含まれる。投薬(Dosing)は、任意の適した経路、例えば、静脈注射または皮下注射のような注射によるものであってよく、一部においては投与が急性か慢性かによって決まる。ここでは、限定はされないが、各種時点での単回(single)または多回(multiple)投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含む様々な投薬スケジュールが想定されている。いくつかの実施形態において、本開示の抗TIGIT抗体、抗原結合性フラグメント、および/または組成物は、対象が疾患と診断された後、かつ疾患が治癒または消去される前に、投与される。いくつかの実施形態において、対象は疾患の早期にある。いくつかの実施形態において、対象は疾患の中間期にある。いくつかの実施形態において、対象は疾患の末期にある。いくつかの実施形態において、本開示の抗TIGIT抗体、抗原結合性フラグメント、および/または組成物は、対象が疾患の兆候を呈する前の、リスクがあると確認されていたときに投与される。
本開示の抗TIGIT抗体、抗原結合性フラグメント、および/または組成物は、単独で、または少なくとも1つの追加の治療薬(例えば、チェックポイント阻害剤、抗がん剤等)と併用して投与することができる。追加の治療薬と併用して投与するとき、追加の治療薬は、その標準的な投与量および/または投与計画にしたがって投与することができる。あるいは、追加の治療薬は、その標準的な投与量および/または投与計画に比べ、より高いまたは低い量および/または頻度で投与することができる。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、その標準的な投与量および/または投与計画に比べ、より低い量および/または頻度で投与することができる。
追加の治療薬(例えば、本明細書に記載された抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントと併用して投与され得るもの)は、治療されている特定の症状(例えば、がんまたは感染もしくは感染症)に適した任意の活性剤、例えば互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものを含んでいてよい。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、チェックポイント阻害剤、免疫調節剤、細胞毒性剤、または細胞増殖抑制剤である。いくつかの実施形態において、追加の治療薬はチェックポイント阻害剤である。
本明細書に開示されるように、チェックポイント阻害剤の治療戦略は、一般に、抗原性が弱いもしくは低い腫瘍(例えば、CTLA-4)に対するT細胞応答のプライミングを、治療が促進および/もしくは増強する、または抗原に応答するが、慢性的な抗原提示(例えば、PD-1, PD-L1)のために「消耗され」ているT細胞を、治療が修復および/もしくは再活性化するという仮定に基づくものである(Chen and Mellman (2013) Immunity 39(1):1-10)。適したチェックポイント阻害治療および薬剤、例えば、抗PD-1、抗PD-L1、および抗CTLA-4抗体の例は当該分野において既知である。例えば、WO2001/014424、WO2013/173223、WO2016/007235を参照されたい。
いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤(例えば、本明細書に記載された抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントと併用して投与され得るもの)は、細胞毒性Tリンパ球関連抗原(CTLA-4)経路の阻害剤である。CD152としても知られるCTLA-4は、免疫応答をダウンレギュレートするタンパク質受容体である。CTLA-4は、調節性T細胞に構成的に発現するが、活性化後は通常のT細胞においてアップレギュレートだけされる。本明細書において用いられる用語「CTLA-4阻害剤」は、CTLA-4および/またはCTLA-4経路の任意の阻害剤を指すよう意図されている。例示的なCTLA-4阻害剤には、限定はされないが、抗CTLA-4抗体が含まれる。例示的な抗CTLA-4抗体には、限定はされないが、イピリムマブ(ipilimumab)(MDX-010)およびトレメリムマブ(tremelimumab)(CP-675、206)が含まれ、両者はいずれも完全ヒト抗体である。イピリムマブは、血漿半減期約12~14日のIgG1であり;トレメリムマブは、血漿半減期約22日のIgG2である。例えば、Phan et al. (2003) Proc Natl Acad Sci USA.100:8372-7; Ribas et al. (2005) J Clin Oncol.23:8968-77; Weber et al. (2008)J Clin Oncol.26:5950-6を参照されたい。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はイピリムマブである。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はトレメリムマブである。
いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤(例えば、本明細書に記載された抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントと併用して投与され得るもの)は、プログラム死(programmed death)-1(PD-1)経路の阻害剤である。プログラム細胞死1(PD-1)経路は、アクティブなT細胞の免疫監視機構を打破するために腫瘍細胞が関与し得る免疫制御スイッチを表す。PD-1(PD-L1およびPD-L2)のリガンドは、様々な腫瘍において構成的に発現されるか、または誘発され得る。本明細書において用いられる用語「PD 1阻害剤」は、PD-1および/またはPD-L1経路の任意の阻害剤を指すよう意図されている。例示的なPD-1阻害剤には、限定はされないが、抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体が含まれる。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1抗体である。例示的な抗PD-1抗体には、限定はされないが、ニボルマブ(nivolumab)およびペムブロリズマブ(MK-3475)が含まれる。ニボルマブは、例えば、PD-1受容体とそのリガンドPD-L1およびPD-L2との相互作用を途絶させる完全ヒト免疫グロブリンG4(IgG4)PD-1免疫チェックポイント阻害抗体であり、これにより細胞性免疫応答が抑制される(Guo et al. (2017) J Cancer8(3):410-6)。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はニボルマブである。ペムブロリズマブは、例えば、PD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を直接遮断するようにデザインされた、IgG4/カッパアイソタイプの強力かつ高選択的なヒト化モノクローナル抗体である。ペムブロリズマブは、健康なヒトドナー、がん患者および霊長類由来の培養血球におけるTリンパ球免疫応答を増強する。ペムブロリズマブはまた、インターロイキン-2(IL-2)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、および他のサイトカインのレベルを調節することが報告されている。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブでる。例示的な抗PD-L1抗体には、限定はされないが、アテゾリズマブ(atezolizumab)、アベルマブ(avelumab)、およびデュルバルマブ(durvalumab)が含まれる。アテゾリズマブは、例えば、多種の悪性細胞上の発現したPD-L1をターゲットとすることによりPD-1/PD-L1の相互作用を遮断することが報告されているIgG1ヒト化モノクローナル抗体である。このPD-1/PD-L1経路の遮断は、腫瘍に対する免疫防御メカニズムを刺激し得る(Abdin et al. (2018) Cancers (Basel) 10(2):32)。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブである。
いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤(例えば、本明細書に記載された抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントと併用して投与され得るもの)は、PD-1/PD-L1、CTLA-4、OX40、CD40、LAG3、TIM3、GITR、および/またはKIRをターゲットとする。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、OX40、CD40、および/またはGITRをターゲットとする。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は、阻害抗体および他の類似する阻害分子(例えば、阻害抗CTLA-4または抗PD-1/PD-L1抗体)によりターゲットにされる。いくつかの他の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ターゲットに対するアゴニストによりターゲットにされ;このクラスの例には、刺激性標的(stimulatory targets)OX40、CD40、および/またはGITRが含まれる。いくつかの実施形態において、OX40、CD40、および/またはGITRをターゲットとするチェックポイント阻害剤はアゴニスト抗体である。OX40に対するアゴニスト抗体は、エフェクター細胞のT細胞機能を増強させながら、調節性T細胞の抑制を阻害するという、二重の役割を備え得る。アゴニスト抗GITR抗体は、エフェクターT細胞に、調節性T細胞に誘発された抑制への抵抗力をより高めさせることが示されている(Karaki et al. (2016) Vaccines (Basel) 4(4):37)。同じように、アゴニストCD40抗体はT細胞依存性の抗腫瘍活性を示す。樹状細胞上におけるCD40の活性化は、腫瘍抗原の交差提示を増加させ、その結果として、活性化された腫瘍指向のエフェクターT細胞の数を増加させる(Ellmark et al. (2015) Oncoimmunol. 4(7):e1011484)。
本明細書で用いられる用語「併用(combination)」または「併用療法(combination therapy)」は、投与される薬剤のうち1つまたはそれ以上の相互作用(co-action)による有益な効果を提供するよう意図された治療レジメンの一部として、追加の薬剤または治療(例えば、チェックポイント阻害剤)と共にする少なくとも1つの抗TIGIT抗体、抗原結合性フラグメント、または組成物の投与を指す。いくつかの実施形態において、併用は、限定はされないが、化学療法薬および免疫抑制を低減する薬剤(例えば第2のチェックポイント阻害剤)を含む1つまたはそれ以上の追加の薬剤も含み得る。併用の有益な効果には、限定はされないが、治療薬の併用の結果として生じる薬物動態または薬理学的な相互作用が含まれる。併用でのこれら治療薬の投与は一般に、定められた期間(例えば、選択された併用に応じて、分、時間、日、または週)にわたって実行される。
本明細書において用いられる「併用して」投与される、または「同時投与で」、とは、対象が疾患、障害、または状態(例えば、がんまたは感染もしくは感染症)を患っている期間に、2つまたはそれ以上の異なる治療薬(treatments)が対象に対して送達されることを意味する。これには、2つまたはそれ以上の治療薬の同時の投与、および任意の順番での連続的な投与が含まれる。例えば、いくつかの実施形態において、2つまたはそれ以上の治療薬は、対象が疾患と診断された後、かつ疾患が治癒または消去される前、または対象が疾患の兆候を呈する前の、リスクがあると確認されていたときに、送達される。いくつかの実施形態において、1つの治療薬の送達は、第2の治療薬の送達の開始時に依然として生じているため、オーバーラップがある。いくつかの実施形態において、第1の投薬および第2の投薬は同時に開始される。本明細書において、これらのタイプの送達は、「同時に起こる(simultaneous)」、「同時の(concurrent)」、または「伴う(concomitant)」送達を指すこともある。他の実施形態では、1つの治療薬の送達は、第2の治療薬の送達が開始する前に終わる。本明細書において、このタイプの送達は、「連続的な(successive)」または「一連の(sequential)」送達を指すこともある。
いくつかの実施形態において、2つの治療薬(treatments)(例えば、本明細書で述べた抗TIGIT抗体、抗原結合性フラグメント、または組成物とチェックポイント阻害剤)は、同じ組成物中に含まれる。かかる組成物は、任意の適した形式で、かつ任意の適した経路で投与され得る。他の実施形態では、2つの治療薬(例えば、本明細書で述べた抗TIGIT抗体、抗原結合性フラグメント、または組成物とチェックポイント阻害剤)は、別々の組成物において、任意の適した形式で、かつ任意の適した経路で投与される。例えば、いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントを含む組成物と、チェックポイント阻害剤を含む組成物とは、異なる時点において任意の順番で、同時にまたは連続して投与されてよい;いずれの場合においても、所望の治療または予防効果を提供するよう、十分に短い時間内に投与されなければならない。
同時または連続的送達のいずれかの実施形態においても、治療薬(treatment)は、併用投与でより効果的である。いくつかの実施形態において、第1の治療薬(treatment)はより効果的である、例えば、第2の治療薬の非存在下で第1の治療薬が投与された場合に見られるであろうよりも、より少ない第1の治療薬で(例えばより低い投与量で)同等の効果が見られる。いくつかの実施形態において、第1の治療薬は、症状の軽減、または疾患に関連する他のパラメータが、第2の治療薬の非存在下に送達された第1の治療薬に観察されるであろうより高くなるという形でより効果がある。他の実施形態では、第2の治療薬に類似の状況が観察される。
通常、治療上有効量の抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントが、本開示の医薬組成物中に用いられる。抗体または抗原結合性フラグメントは、当該分野において既知である従来の方法により医薬的に許容され得る剤型に配合されてよい。
抗TIGIT抗体もしくは抗原結合性フラグメント単独または少なくとも1つの追加の治療薬との併用の例示的な投与レジメンには、1つもしくは両方の薬剤の一回での単回ボーラス、または所定の期間にわたる数回に分けた投与が含まれる。任意の特定の対象に対し、個々の必要および治療担当医師の専門的判断に応じ、経時的に特定の投与レジメンを調整することができる。非経口組成物が、投与および投与量を均等にし易くするために、投与単位剤型(dosage unit form)中に配合されてよい。本明細書で用いられる投与単位剤型は、治療されるべき対象に対する単位の投与量(unitary dosages)として適した物理的に別々の単位(physically discrete units)を指し;各単位は、所要の医薬的に許容され得るキャリアと関連して、所望の治療効果を生じるよう計算された所定量の活性剤を含む。
抗TIGIT抗体もしくは抗原結合性フラグメントならびに/または任意の追加の治療薬(複数の治療薬)を含む組成物の投与量の値は、活性剤(複数の活性剤)の固有の特性、および達成されるべき特定の治療効果に基づいて選択され得る。医師または獣医は、医薬組成物に用いられる抗体または抗原結合性フラグメントの投与を、所望の治療効果を達成するのに要されるものより低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増やすことができる。一般に、免疫関連疾患 (例えば、がんまたは感染もしくは感染症)の治療に対する本開示の組成物の有効投与量は、治療されている特定の病気、治療されている特定の対象、対象の生理状態、病気の原因、薬剤の送達部位、対象がヒトか動物か、処置が予防か治療か、および医師には既知である他の要因、を含む多くの異なる要因によって変わり得る。選択された投与量のレベルは、用いられる本開示の特定の組成物の活性、投与の経路、投与の時間、用いられている特定の化合物の排出の比率、治療の期間、用いられる特定の組成物と併用される他の薬物、化合物および/もしくは物質、年齢、性別、体重、状態、治療を受けている対象の総合的な健康および過去の治療歴、ならびに類似の要因を含む様々な薬物動態学的要因によっても決まり得る。
本明細書に記載された治療上有効量の抗体または抗原結合性フラグメントは、概して、実質的な毒性を引き起こすことなく、治療効果を提供し得る。抗体または抗原結合性フラグメントの毒性と治療有効性は、標準的な製剤の手順(standard pharmaceutical procedures)により、例えば、細胞培養液中、または動物モデル中で測定することができる。細胞培養液アッセイおよび動物実験が、例えばLD50(個体群の50%を致死させる用量)およびED50(個体群の50%に治療上有効な用量)を測定するのに用いられ得る。毒性と治療効果との用量比は、LD50/ED50の比で表すことのできる治療指数である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性フラグメントは高い治療指数を示す。細胞培養液アッセイおよび動物実験(例えば、マウスおよび/または霊長類)から得られるデータは、ヒトへの使用に適した投与量の範囲を公式化(foumulating)するのに用いることができる。いくつかの実施形態において、投与量は、毒性が最小であるまたは無いED50を含む血中濃度の範囲内にある。投与量は、上述したような様々な要因に応じ、この範囲内で変わり得る。正確な処方、投与経路、および投与量は、対象の状態を考慮して担当医師により選択され得る。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された抗TIGIT抗体、抗原結合性フラグメント、または組成物は単回(single occasion)投与される。他の実施形態では、本明細書に記載された抗TIGIT抗体、抗原結合性フラグメント、または組成物は複数回(multiple occasions)投与される。1回ごとの投与の間隔は、例えば、1時間に1回、1日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1か月に1回、または1年に1回とすることができる。比較的一定した薬剤の血漿濃度を維持するように、間隔は対象における投与された活性剤(例えば、抗体または抗原結合性フラグメント)の血中濃度の測定を基に、不定期とすることもできる。抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントの投与量および投与の頻度も、治療が予防的なものか治療的なものかによって変わり得る。予防的用途では、比較的低い投与量が、長期間にわたり比較的低頻度で(infrequent intervals)投与され得る。一部の対象は、彼らの残りの生涯にわたり治療を受け続けるかもしれない。治療的用途では、疾患の進行が低減もしくは終了するまで、および/または対象が、疾患の1つもしくはそれ以上の症状の部分的もしくは完全な寛解を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い投与量が要されることがある。その後は、より低い、例えば予防的な、投与計画で対象に投与することができる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された治療的用途に用いるキットも提供される。いくつかの実施形態において、本開示は、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントを含むキットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、限定はされないが:使用説明書;他の試薬、例えば追加の治療薬(例えば、チェックポイント阻害剤)、医薬的に許容され得るキャリア等;および投与に用いる抗体もしくは抗原結合性フラグメントを作製するためのデバイス、容器、または他の材料、を含む1つまたはそれ以上の追加の構成要素をさらに含む。使用説明書は、免疫関連疾患(例えば、がんまたは感染もしくは感染症)に罹っているかまたは罹っている疑いがある対象において推奨される投与量および/または投与の方式を含む治療用途のためのガイダンスを含んでいてよい。
いくつかの実施形態において、本開示は、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントと、対象における免疫関連疾患(例えば、がんまたは感染もしくは感染症)を治療するかまたはその進行を遅延させるための抗体または抗原結合性フラグメントの使用説明書を含む添付文書と、を含むキットを提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントと、少なくとも1つの追加の治療薬(例えば、チェックポイント阻害剤)と、対象における免疫関連疾患(例えば、がんまたは感染もしくは感染症)を治療するかまたはその進行を遅延させるための併用の使用説明書を含む添付文書と、を含むキットを提供する。対象は、例えばヒトであってよい。本明細書に記載された例示的な抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントのいずれかが、単独または1つもしくはそれ以上の追加の治療薬との併用で、当該キットに含まれ得る。
いくつかの実施形態において、本開示は、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントと、対象における1つまたはそれ以上の免疫細胞を活性化および/または殺傷するために用いる抗体または抗原結合性フラグメントの使用説明書を含む添付文書と、を含むキットを提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントと、少なくとも1つの追加の治療薬(例えば、チェックポイント阻害剤)と、対象における1つまたはそれ以上の免疫細胞を活性化および/または殺傷するための併用の使用説明書を含む添付文書と、を含むキットを提供する。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。本明細書に記載された例示的な抗TIGIT抗体または抗原結合性フラグメントのいずれかが、単独または1つもしくはそれ以上の追加の治療薬との併用で、当該キットに含まれ得る。
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態を提示するものである。当業者は、本開示の精神または範囲を変えずしてなされ得る多数の修飾および変化を理解するであろう。かかる修飾および変化は本開示の範囲内に含まれる。提示された実施例は如何なる形でも本開示を限定しない。
実施例1:TIGIT免疫原の製造
ヒトおよびマウスのTIGIT IgVドメインをコードするcDNA フラグメントを別々に合成し(Integrated DNA Technologies, Inc.)、哺乳類発現ベクターpSecTag2/Hygro (Invitrogen)にサブクローン化した。組換えタンパク質を、Effectene(Qiagen)を用い、発現構築物の各々をマウスミエローマNS0細胞(European Collection of Authenticated Cell Cultures (ECACC))にトランスフェクトすることにより製造した。ハイグロマイシンB(400μg/ml)による2週間の選択後、細胞を、血清を加えない合成培地(chemically-defined medium)HyQNS0(Hyclone)中、初期播種密度5×105細胞/mlとし、振とうフラスコで培養した。5日後に培地を回収し、ヒトおよびマウスのTIGIT IgVドメインを、Strep-Tactin XT Superflowクロマトグラフィー(IBA Technology, Inc.)により、上清から別々に精製した。組換えヒトおよびマウスTIGIT IgVドメインの純度をSDS-PAGEで分析した(図1)。精製されたタンパク質を動物の免疫化に用いた 。
実施例2:TIGITに対するのモノクローナル抗体の生成
完全フロイントアジュバント(complete Freund’s adjuvant)の存在と組換えヒトおよびマウス TIGIT IgVドメインの各々50μgとの体積比1:1(v/v)での混合物を用い、腹腔内注射により6~12週齢のSJL/Jマウス10匹を免疫した。体積比1:1(v/v)の不完全フロイントアジュバント(incomplete Freund’s adjuvant)の存在下における同じ免疫原を用い、注射により動物を追加免疫した。ELISAによる血清抗体価に応じ、全部で1~4のブースターを、週1回の時間間隔で投与した。
ヒトまたはマウスTIGIT IgVドメインのいずれかに対し最も高い血清抗体価を有する8匹のマウスからの脾細胞およびリンパ系細胞を用いてミエローマNS0細胞(ECACC)と融合させた。ハイブリドーマ細胞をヒトおよびマウスTIGIT IgVの両方に対してスクリーニングし、ヒトFcドメイン(Sino Biological Inc.)と融合させた。一定濃度0.5μg/mlの組換えCD155-ヒトFc融合タンパク質(Sino Biological Inc.)を適用した競合ELISAを用い、TIGITとCD155との相互作用を遮断することのできるハイブリドーマクローンを同定した。TIGIT/CD155遮断能力を有する5つのハイブリドーマ単クローンを選択し、さらにAlphaLISA競合アッセイにより評価した。
実施例3:AlphaLISA競合アッセイ
抗TIGIT抗体によるTIGITとCD155の結合の阻害を評価するため、TIGIT:CD155ホモジニアスアッセイキット(PBS Biosciences, # 72029)を用いてAlphaLISAアッセイを行った。TIGIT-ビオチン(最終濃度0.2ng/μl)を含む溶液のアリコート(6μl)およびテスト抗体の4倍段階希釈(最終体積2μl)を384ウェルプレート中に加えた。そのプレートをふたで覆い、室温で30分インキュベートした。次いで、2μlのヒスチジンタグ付きCD155(最終濃度0.05ng/μl)を各ウェルに加え、室温で60分インキュベートした。最後に、ストレプトアビジンコンジュゲート(streptavidin-conjugated)ドナービーズ(最終濃度10μg/ml)のアリコート(5μl)および抗Hisタグアクセプタービーズ5μl(最終濃度20μg/ml)を加え、そのプレートを暗所にて室温で30分インキュベートした。AlphaLISAシグナルをEnSpire Alpha 2390 (Perkin-Elmer Life Sciences)上で測定した。15A6(米国特許第10,189,902号)およびMBSA43(Thermo Fisher Scientific, # 16-9500-82)をリファレンス抗体として用いた。
結果が図2A~2Eに示されている。3つの抗TIGITモノクローナル抗体、7D4、2C9および3A9が、0.32nM、0.40nMおよび0.55nMのTIGIT/CD155遮断能(IC50)をそれぞれ示した。これら抗体を選択し、さらなる機能の実験を行った。
実施例4:抗TIGITモノクローナル抗体のV遺伝子配列決定(gene sequencing)
約106個の細胞の抗TIGIT IgGを分泌するハイブリドーマクローン7D4、2C9および3A9から全RNAを単離し、SMARTer RACE 5’/3’キット(Takara Bio USA, Inc., #634913)を用い、メーカーのプロトコールに従って、RT-PCRにより各抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードするcDNAフラグメントを得た。7D4、2C9、および3A9抗体のアミノ酸配列は表2~5にリストされている。
実施例5:抗TIGIT抗体のヒトTIGITを発現するJurkat細胞への結合
プロテインAカラムで精製した7D4、2C9、および3A9抗体の段階希釈液を、50μlのFACSバッファー(0.09%アジ化ナトリウム含有ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)中に0.2%BSA)中で、5×105のヒトTIGIT発現Jurkat細胞(TIGIT/Jurkat)と共に、氷上で1時間それぞれ別々にインキュベートした。洗浄後、PE色素にコンジュゲートされた抗マウスIgGで細胞を染色し、抗体結合強度をフローサイトメトリーで分析した。
結果が図3A~3Cに示されている。7D4、2C9、および3A9は、TIGIT/Jurkat細胞に対してそれぞれ0.27、2.0、および1.86nMの平衡結合定数(KD)を示した。
実施例6:抗TIGIT抗体のヒトTIGIT、カニクイザル(cyno)TIGIT、およびマウスTIGITへの結合
抗TIGIT抗体7D4、2C9、および3A9の種の交差反応性を評価するため、ヒトTIGIT、カニクイザルTIGIT、およびマウスTIGITに対してELISA結合アッセイを行った。DPBS 50μl中それぞれ1μg/mlのヒトTIGIT、cyno TIGIT(R&D Systems, Inc., # 9380-TG)、およびマウスTIGITを、96ウェルプレート上に塗布し、4℃で一晩おいた。0.05%Tween20含有リン酸緩衝食塩水(PBST)でプレートを洗浄した後、7D4、2C9、および3A9抗体の段階希釈液をそれぞれ別々に加え、プレートを37℃で1時間インキュベートした。PBSTでプレートを3回洗浄した後、プレートを、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされた抗マウスFcγポリクローナル抗体と共に、37℃で1時間インキュベートした。PBSTでプレートを3回洗浄した後、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質(Thermo Fisher Scientific, # 34018)100μlを各ウェル中に加えた。発色から5分~10分後、停止液(2NのHCl)50μlを各ウェル中に加え、分光光度計により波長450nmでプレートを読み取った。
結果が図4に示されている。7D4、2C9、および3A9は、ヒトTIGITに対しsub-nMレンジでEC50値を示した。7D4は、マウスTIGITに対し10.53nMのEC50値を示した。
実施例7:TIGIT/CD155遮断アッセイ
TIGIT/CD155 Blockade Bioassay Kit(Promega, # J2405)を用い、メーカーのプロトコールに従って、細胞ベースのルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイにより、抗TIGIT抗体のTIGIT:CD155細胞シグナル伝達を阻害する能力を測定した。簡潔に言うと、CD155を発現する凍結したCHO-K1細胞(CD155/CHO)、およびTIGITを発現するJurkat細胞(TIGIT/Jurkat)を解凍し、新鮮な培地で回復させ、37℃で一晩インキュベートした。翌日、CD155/CHO細胞を、培地100μl中、密度4×104細胞/ウェルで、96ウェルプレートに播種した。抗TIGIT抗体(体積40μl)の段階希釈液を各ウェルに加え、次いで密度1.5×105細胞/ウェルでTIGIT/Jurkat細胞40μlを加えた。細胞を37℃で6時間共培養した。その後、One Glo reagent 80μlを加え、プレートを室温で15分インキュベートした。次いで、その反応溶液をルミネッセンス測定に供するホワイトプレートに移した。
結果が図5A~5Bに示されている。抗TIGIT抗体7D4、2C9、および3A9はTIGITとCD155との相互作用を遮断し、用量依存的なT細胞の活性化を生じさせた(図5A)。さらに、TIGIT/CD155遮断アッセイにおいて、リファレンス抗体15A6に比べ、7D4はより一層高いT細胞活性化を示した(図5B)。
実施例8:PD-1/PD-L1およびTIGIT/CD155併用遮断アッセイ
抗TIGIT抗体7D4およびリファレンス抗体15A6の、抗PD-1アンタゴニスト抗体(ペムブロリズマブ)と併用での能力を評価するため、PD-1+TIGIT Combination Bioassay Kit(Promega, # J2120)を用い、メーカーのプロトコールに従って、細胞ベースのルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイを行った。簡潔に言うと、CHO-K1細胞を発現する凍結したPD-L1+CD155を解凍し、培地100μl中、密度4×104細胞/ウェルで、96ウェルプレートに播種した。細胞を37℃でインキュベートし、細胞を付着させた。翌日、培地を除去し、抗TIGITおよび抗PD-1抗体の段階希釈液を各ウェル中に加えた(体積40μl)。最後に、1×105の凍結から回復したPD-1+TIGIT/Jurkat細胞を各ウェルに中に加えた(体積40μl)。6時間のインキュベーション後、80μlのBio-Glo試薬を各ウェルに加え、ルミノメーターでルミネッセンスを定量化した。
結果が図6に示されている。抗PD 1抗体、ペムブロリズマブと、7D4またはリファレンス15A6のいずれかとの、抗PD-1:抗TIGIT抗体濃度比1:1(0.1から100μg/mlの範囲)での併用は、ペムブロリズマブ単独に比べ、より高いT細胞賦活活性を有していた。また、7D4とペムブロリズマブとの併用は、リファレンス抗体15A6に比べ、より一層高いT細胞活性化を示した。
実施例9:7D4、2C9、および3A9によるT細胞活性化
抗TIGITアンタゴニスト抗体によるT細胞活性化の評価のため、抗体処理にあたり、ヒトTIGITを発現するJurkat細胞株およびヒトT細胞の両者を、IL-2およびIL-2/IFN-γサイトカイン分泌の測定にそれぞれ用いた。CD155/CHO細胞を、RPMI 1640培地100μl中、密度4×104細胞/ウェルで、96ウェルプレートに播種し、一晩インキュベートした。翌日、培地上清を取り除いた後、抗TIGIT抗体(7D4、2C9、および3A9)ならびにリファレンス抗体(15A6およびMBSA43)の段階希釈液をそれぞれ別々に加え(40μl/ウェル)、続いて、培地40μl中、1.5×105細胞/ウェルの濃度で、TIGIT/Jurkat細胞を加えた。26時間共培養した後、プレートを4000rpmで5分遠心分離し、上清からのIL-2の濃度をELISAで分析した。
結果が図7に示されている。それぞれ異なる抗TIGIT抗体は、濃度依存的に、TIGIT/Jurkat細胞によりIL-2の分泌を増加させた。
ヒト末梢血単核球(PBMC)からのTIGIT発現細胞の活性化を評価するため、3人の別個の健康なドナー由来のPBMC(5×104細胞/ウェル)を、プレートに塗布された組換えヒトCD155-Fc融合タンパク質(96ウェル培養プレート中のDPBS中1μg/ml)で、7D4の10倍段階希釈液の存在下、37℃にて1時間処理した。抗ヒトCD3抗体(OKT3)を最終濃度1μg/mlで各ウェルに加えた。48時間のインキュベーションの後、プレートを1500rpmで3分遠心分離し、IL-2およびIFN-γの上清濃度をELISAにより分析した。
結果が図8A~8Bに示されている。3人の異なる健康なヒトドナー由来のPBMC中、T細胞活性化抗CD3抗体OKT3の存在下、7D4は、TIGIT発現T細胞とCD155との相互作用により生じるT細胞抑制シグナルを遮断した。活性化されたT細胞は、炎症誘発性サイトカインIL-2およびIFN-γも分泌した。ドナー1~3は、7D4添加への反応として、用量依存的なT細胞活性化を示し、ドナー1が最も強い反応を示した。抗CD3抗体によるT細胞活性化の基底レベル(Basal levels)(7D4が0μg/ml)は、ドナー1におけるよりも、ドナー2およびドナー3における方が高かった。
実施例10:組換え抗TIGIT抗体の構築、発現、および精製
組換えマウス抗体の発現のために、各抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードするcDNAフラグメントを哺乳類発現ベクターpFUSEss-CHIg-mG2a(Invivogen)およびpSecTag2/Hygro(Thermo Fisher Scientific)にサブクローン化した。各抗体の重鎖および軽鎖cDNAを含むプラスミドを、Effectene(Qiagen)を用いてマウスミエローマNS0細胞に同時形質移入した。ハイグロマイシンB(400μg/ml)およびG418(800μg/ml)による4週間の選択後、コーティングとして組換えヒトTIGIT IgVドメインを、検出試薬として抗マウスIgG Fcγ-HRPを用い、ELISAでいくつかの安定クローン由来の培地をスクリーニングした。各抗体から高発現クローンを取り、振とうフラスコに入れ、初期播種密度5×105細胞/mlで、血清を添加していない合成培地HyQNS0(Hyclone)中で培養した。5日後、その培地を回収し、Protein A(MabSelect SuRe)カラム(Cytiva)で、抗体を上清から精製した。
実施例11:7D4の抗体ヒト化
ホモロジーモデリングをFan等((2017) Biochem Biophys Rep 9: 51-60)の手順に従って行った。抗TIGIT抗体7D4のマウスVHおよびVL領域のCDR領域を、IGHV3-11およびIGKV3-11フレームワーク領域のヒト生殖細胞系ファミリーにそれぞれグラフトした。ヒトフレームワーク領域内のいくつかのアミノ酸残基を元のマウスの残基に復帰突然変異させて、抗体結合親和性を保った。hz7D4抗体のアミノ酸配列は表2~5にリストされている。
hz7D4のVHおよびVL領域のヌクレオチド配列を合成し、シグナルペプチド配列を有する哺乳類発現ベクターpFUSE-CHIg-hIG1(Invivogen)、およびヒトカッパ鎖定常領域を含有するpSecTag2/Hygro(Invitrogen)にそれぞれサブクローン化した。リファレンスヒトIgG1抗体である15A6および1D3を、米国特許第10,189,902号および10,017,572号におけるVHおよびVL配列に基づいてそれぞれ作製した。組換えhz7D4、15A6、および1D3 hIgG1抗体を、CHO-S細胞(Thermo Fisher Scientific)中で産生させ、Protein A(MabSelect SuRe)カラムで精製した。
実施例12:ヒト化7D4(hz7D4)抗体の細胞競合結合アッセイ
hz7D4、ならびにリファレンス抗体(15A6および1D3)を含む抗TIGIT抗体を用い、ヒトTIGITを発現する細胞への結合についてCD155と競合させた。MJ[G11](American Type Culture Collection (ATCC), CRL-8294)は、ヒトT細胞白血病ウィルス(HTLV-I)を担持するCD3+CD4+Tリンパ腫細胞株である。MJ[G11]細胞は、CD4、CD25、CD127、およびFoxP3を含む調節性T細胞表現型抗体マーカーでの免疫染色により特徴付けられ、調節性T細胞様細胞株であることが見いだされた(図9A)。また、PE-コンジュゲート抗ヒトTIGIT、MBSA43抗体で免疫染色することにより示されるように、MJ[G11]細胞はヒトTIGITを構成的に発現する(図9B)。抗TIGIT抗体の連続3倍希釈液を、50μl FACSバッファー(0.09%アジ化ナトリウム含有DPBS中、0.2%BSA)中の5×105のヒトTIGIT-発現Jurkat細胞または3×105のMJ[G11]細胞に加え、氷上で30分インキュベートした。次いで、10μlのDyLight 650-コンジュゲートCD155-ヒトFc融合タンパク質を細胞に加え、ヒトTIGIT-Jurkat細胞1μg/ml、およびMJ[G11]細胞1.5μg/mlの最終濃度にし、4℃で30分インキュベートした。細胞を洗浄し、FACSCalibur血球計算器(Becton Dickinson)で分析した。正規化した中央値蛍光強度(MFI)値に基づいてIC50値を算出した。
結果が図10A~10Bに示されている。抗TIGIT hIgG1抗体、hz7D4、15A6および1D3は、CD155のTIGIT/JurkatおよびMJ[G11]細胞両者への結合を遮断した。hz7D4の50%のCD155結合阻害(IC50)を達成するのに要される遮断抗体濃度は、TIGIT/Jurkat細胞では0.2nM(図10A)、MJ[G11]細胞では0.3nM(図10B)であった。
実施例13:ファージディスプレイ抗体ライブラリー構築およびhz7D4の親和性成熟
ヒト化7D4(hz7D4)scFv遺伝子を、Nco IおよびNot I制限部位で、ファージミドベクターpKHにクローン化した。重鎖および軽鎖のCDR3領域をコードするアミノ酸配列を、NNK配列のストレッチを含有するプライマーによりランダムに変異させた。反応溶液50μl中、オーバーラップ伸長(overlapping extension)PCRにより、30サイクル、95℃30秒、60℃30秒、および72℃1分で、等モル量の2つのフラグメントおよび25pmolのベクタークローニングプライマーの融合により、重鎖CDR3(HCDR3)および軽鎖CDR3(LCDR3)ライブラリーをそれぞれ増幅した。増幅した生成物をゲル精製し、Nco I およびNot Iで消化し、pKHファージミドにサブクローン化した。そのプラスミドライブラリーを、エレクトロポレーションにより、大腸菌(Escherichia coli)TG1細胞に形質転換した。hz7D4 scFvの重鎖CDR3(HCDR3)または軽鎖CDR3(LCDR3)レパートリーのいずれかを有する最終的なM13ファージライブラリーを、KM13ヘルパーファージによりそれぞれ別々にレスキューした。
実施例14:マウスTIGITに対するhz7D4の親和性成熟
マウスTIGITに対するhz7D4 scFvの親和性成熟のために、重鎖CDR3(HCDR3)ライブラリーからのファージ(109cfu)を1nMのビオチン化マウスTIGIT IgVドメインと、1mlの3%脱脂乳含有PBS/0.1%Tween-20中で1時間室温にてインキュベートした。M280ストレプトアビジン磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific, # 11205D) 50μlと15分インキュベートすることによりファージを捕らえた。PBS/0.1%Tween-20での10回の洗浄、次いでPBSでの10回の洗浄を、それぞれ5分ずつ行うことで非特異的なファージを除去した。結合したファージを0.1M グリシン(pH2.0)で溶出し、1M Tris-HCl(pH8.0)で中和し、対数増殖期の(log-phase)TG1細胞に再感染させた。2回目のパンニングのラウンドで、0.1nMのビオチン化マウスTIGIT IgVドメインに対してファージ(109cfu)を用いた。
マウスTIGIT IgVドメインに結合するファージクローンのヌクレオチド配列を決定した。1G3、2F1、および3H2と命名された3つのクローンを選択した。HCDR3を含むCDRアミノ酸配列が表2にリストされている。
HCDR3領域において異なるアミノ酸配列を有する選択された3つのscFvクローンを、Fc領域にDLE突然変異を有するマウスIgG2aアイソタイプ(mIgG2a-DLE)に変換し、上述のようにCHO-S細胞中で組換え抗体を発現させると共に精製した。S239D/A330L/I332E(DLE)突然変異を有する抗体Fc変異体はエフェクター機能を増強することが報告されている(Lazar et al. (2006) Proc Natl Acad Sci USA 103:4005-10)。ヒトおよびマウスTIGITのELISA結合、ならびに3つのhz7D4由来の抗体クローン(1G3、2F1、および3H2)によるマウスTIGIT/CD155の競合を分析し、表7にまとめた。hz7D4およびリファレンス抗体1G9(Bio X Cell, # BE0150)を比較物として含めた。
(表7)hz7D4由来抗体1G3、2F1、および3H2に対するELISA結合測定
実施例15:抗TIGIT抗体のマウスTIGIT発現CHO細胞への結合
表7にリストされたProtein Aカラムで精製した抗TIGIT抗体をそれぞれ別々に、5×105のマウスTIGIT発現CHO細胞(mTIGIT/CHO)と、50μlのFACSバッファー(0.09%アジ化ナトリウム含有ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)中に0.2%BSA)中、最終濃度2μg/mlで、氷上にて1時間インキュベートした。洗浄後、PE色素にコンジュゲートされた抗マウスIgGで細胞を染色し、フローサイトメトリーにより抗体結合強度を分析した。
図11は、異なる抗TIGIT抗体によるmTIGIT/CHO細胞の結合を示すフローサイトメトリープロットを示している。細胞結合レベルは、表7に示されるELISA結合データと一致した。
実施例16:同系大腸がん(colon carcinoma)腫瘍モデルにおける抗腫瘍効果
同系腫瘍モデル実験のため、6~8週齢のBALB/cマウスに2×105細胞のCT26大腸がん細胞(ATCC、CRL-2638)を皮下(s.c.)注射した。腫瘍が平均約80mm3に達したら、マウスをグループ分けし(n=9)、週に2回、3週間にわたり腹腔内(i.p.)注射により200μgの抗体(1G9、2F1、および3H2)またはPBS対照で処置した。腫瘍増殖を観察し、腫瘍体積を測定した。
結果が図12A~12Bに示されている。hz7D4由来、マウス親和性成熟2F1および3H2 mIgG2a-DLE抗体は、BALB/cマウスにおけるCT26腫瘍増殖を抑制した。2F1および3H2で処置した群では腫瘍増殖遅延が観察された。2F1および3H2抗体の両方で処置した9匹のうち6匹のマウスが、最長で120日間、完全寛解(complete response)を示した(臨床エンドポイント)。
実施例17:ヒトおよびカニクイザルTIGITに対するhz7D4の親和性成熟
ヒトおよびカニクイザルTIGITに対するhz7D4 scFvの親和性成熟のために、重鎖および軽鎖CDR3ライブラリーからのファージ(109cfu)をそれぞれ別々に、0.1nMのビオチン化ヒトTIGIT IgVドメインと、1mlの3%脱脂乳含有PBS/0.1%Tween-20中、1時間室温でインキュベートした。M280ストレプトアビジン磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific)50μlと15分インキュベートすることによりファージを捕らえた。PBS/0.1%Tween-20での10回の洗浄、次いでPBSでの10回の洗浄を、それぞれ5分ずつ行うことで非特異的なファージを除去した。結合したファージを0.1M グリシン(pH2.0)で溶出し、1M Tris-HCl(pH8.0)で中和し、対数増殖期の(log-phase)TG1細胞に再感染させた。2回目のパンニングのラウンドで、0.1nMのビオチン化cyno TIGIT IgVドメインに対してファージ(109cfu)を用いた。
ヒトおよびcyno TIGIT IgVドメインの両方に結合するファージクローンのヌクレオチド配列を決定した。全ての重鎖CDR3(HCDR3)クローンが、野生型HCDR3アミノ酸配列LGRGYWYFDV(SEQ ID NO:3)を含んでいる。軽鎖ライブラリーによりスクリーニングされ、1A11および1E3と命名された2つの軽鎖CDR3(LCDR3)クローンは、LCDR3アミノ酸配列QLFRSGSA(SEQ ID NO:23)およびSTFTVINL(SEQ ID NO:24)をそれぞれ含んでいる。
ADCCエフェクター機能を高めるため、LCDR3領域において異なるアミノ酸配列を有する選択されたscFvクローン1A11および1E3を、Fc領域にDLE突然変異を有するヒトIgG1アイソタイプ(hIgG1-DLE)に変換した。これら2つの組換え抗体1A11 hIgG1-DLEおよび1E3 hIgG1-DLEをCHO-S細胞中で発現させると共に、Protein A(MabSelect SuRe)カラムで精製した。ヒト化1A11 hIgG1-DLEおよび1E3 hIgG1-DLE抗体のアミノ酸配列は表2~5にリストされている。
実施例18:cyno TIGIT発現CHO細胞への抗TIGIT抗体の結合
hz7D4 hIgG1、1A11 hIgG1-DLE、1E3 hIgG1-DLEを含む抗TIGIT抗体、ならびにリファレンス抗体(15A6 hIgG1および1D3 hIgG1)をそれぞれ別々に、5×105のcyno TIGIT発現CHO細胞(cynoTIGIT/CHO)と、50μlのFACSバッファー(0.09%アジ化ナトリウム含有ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)中に0.2%BSA)中、最終濃度1μg/mlで、氷上にて1時間インキュベートした。洗浄後、Alexa-647色素にコンジュゲートされた抗ヒトIgGで細胞を染色し、フローサイトメトリーにより抗体結合強度を分析した。結果が図13に示されている。
実施例19:hz7D4 hIgG1、1A11 hIgG1-DLE、および1E3 hIgG1-DLEの抗体依存性細胞傷害機能
Tリンパ腫細胞株MJ[G11](ATCC,CRL-8294)を用い、FcRγIIIa(F176V)発現ヒトNK92細胞株(ATCC、PTA-6967)により、hz7D4 hIgG1、1A11 hIgG1-DLE、および1E3 hIgG1-DLE、ならびにリファレンス抗体(15A6hIgG1および1D3 hIgG1)を含む異なる抗TIGIT抗体の存在下、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を評価した。先ずMJ[G11]細胞膜を10μMのカルセインAM蛍光色素で染色してから、37℃で30分インキュベートした。それら細胞を培地で3回洗浄した。トリパンブルーにより細胞の数をカウントし、細胞密度を2×10
5細胞/mlに調整した。異なる抗TIGIT抗体の段階希釈液を、96ウェルV底マイクロタイタープレートに、10
-5から10μg/mlまで範囲の各濃度につき体積20μlで加えた。NK92細胞を洗浄し、1.6×10
5細胞/mlの培地に調整した。8000個のNK92(エフェクター細胞,E)および10000個のMJ[G11](ターゲット細胞,T)細胞をそれぞれ50μlずつ同じウェルに加え、E:T比=0.8:1にした。次いで、そのプレートを37℃で4時間インキュベートした。そのプレートを500×gで5分遠心分離し、細胞をペレットダウンした。次いで、各サンプルウェルからの上清100μlを96ウェル黒色マイクロタイタープレート中に移し、蛍光(励起:488nm、発光:518nm)をプレートリーダーで分析した。抗体を有さないターゲット細胞の蛍光強度を、ターゲット細胞の自発的放出(spontaneous release)として用いた。ターゲット細胞の完全な溶解を達成させる20μlの1% Triton X-100の添加を、最大放出として用いた。処置された抗体の存在下、NK92細胞によるターゲット細胞の溶解の割合を、蛍光強度に基づいて、次の等式により算出した:
結果が図14に示されている。1A11および1E3(hIgG1-DLE)のFc操作変異体(engineered variant)の両方は、ヒトナチュラルキラー細胞による抗体依存性細胞傷害(ADCC)が増強し、TIGIT発現MJ[G11]細胞を殺傷し、1A11 hIgG1-DLEは、テストされた抗体のうち最も強力なADCC活性を示した。ヒトFcが欠如した対照群における7D4 mIgG2aは、基底レベルのADCC活性(つまり、何らの抗体もなく共培養されたエフェクター細胞およびターゲット細胞のレベル)を示した。
実施例20:7D4およびヒト化7D4変異体、1A11のエピトープマッピング
選択された抗TIGIT抗体がヒトTIGITの連続(線状)または不連続(立体的)エピトープを認識するか確定するため、SDSおよび還元剤で変性されたかまたは変性されていない組換えヒトTIGIT IgVタンパク質0.1μgを、ドットブロッド転写装置を用いてニトロセルロース膜上に直接転写した。ブロッキングおよび洗浄ステップの後、膜のストリップを7D4、2C9、3A9、およびMBSA43抗体でそれぞれ免疫ブロットし、抗マウスFcγ-HRPで検出した。結果が図15Aに示されている。抗TIGITモノクローナル抗体、7D4、2C9、および3A9は天然型のヒトTIGITタンパク質のみに結合し、それらがTIGITの立体構造(conformational)エピトープを認識することが示された。対照的に、抗体MBSA43は天然TIGITおよび変性TIGITの両方に結合し、それがTIGITの線状エピトープを認識することが示された。
PEPperMAP構造的エピトープマッピングを用い、組換え7D4抗体(マウスIgG2aアイソタイプ中)により、ヒトTIGITの結合領域(SEQ ID NO:22)を同定した。ペプチドシンセサイザーを用い、マイクロチップ上に、ループペプチドの長さが7、10、または13個のアミノ酸残基を有する、TIGIT IgVドメイン(SEQ ID NO:22、下線)全体を覆う環状ペプチドを合成した。各スポットのオーバーラップするペプチド配列は、1つのアミノ酸残基だけ異なっていた。次いで、マイクロチップを組換え7D4抗体とハイブリダイズした。洗浄後、スポットの強度を、Dylight 680にコンジュゲートされた抗マウスIgGにより定量化した。図15Bに示されるように、7D4は、コンセンサスモチーフ、YFCIYを含有する7、10、および13個のアミノ酸環状ペプチドと最も強い結合シグナルを示した。
組換え7D4 mIgG2a抗体と相互作用するTIGITのアミノ酸残基をさらに同定するため、標準的な分子技術を用い、部位特異的変異導入(site-directed mutagenesis)によりヒトTIGIT IgVドメイン中に単一のアラニン置換変異体を生成させた。次いで、ELISA結合アッセイを行って、7D4結合強度を評価した。
図16は、ヒト、カニクイザル、およびマウスTIGIT IgVドメインのアミノ酸配列アライメントを示している。TIGIT/7D4結合を調べるためアラニンに変異させた個々のアミノ酸残基がボールド体で示されている。7D4エピトープマッピングのために、次の10個の変異体をELISA結合アッセイに用いた:Q56A、N70A、D72A、G74A、Y106A、F107A、Y110A、H111、Y113A、およびF123A。Q56、N70、D72、G74、およびY113のアミノ酸残基は、TIGIT/CD155複合体の接合面近くにあり(Stengel et al. (2012) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109:5399-5404)、一方、Y106、F107およびY110は、TIGIT中の親マウス7D4抗体結合コンセンサスモチーフ、YFCIYに位置する。図15Bに示されたマイクロアレイデータの蛍光シグナル強度に基づいて、組換えTIGIT IgV点置換変異体(point substitution mutants)をExpi293F細胞(Thermo Fisher Scientific, # A14527)中に、メーカーのプロトコールに従って作製し、Strep-Tactin XT Superflowクロマトグラフィー(IBA Technology, Inc.)により培養上清からそれぞれ別々に精製した。
図17は、TIGIT変異体への7D4のELISA結合結果を示している。Q56およびY106の単一のアラニン置換変異体は7D4の結合を完全に破壊した。G74、およびY110、およびH111の単一のアラニン置換変異体は、10μg/mlまでの濃度において、7D4結合の大幅な低減を示した(野生型の50%以上)。これらデータは、TIGIT/PVR接合面の外側に面するβシートに位置する3つのアミノ酸残基、Y106、Y110、およびH111が、hz7D4のTIGITへの結合に関与することを示している。図18は、Stengel等((2012) Proc Natl Acad Sci USA 109: 5399-5404)によるヒトPVR(CD155)およびTIGITの共結晶化の分析に用いる分子構造モデルを示すものである。
ヒト化7D4変異体、1A11(ヒトIgG1-DLEアイソタイプ中)と相互作用するTIGITのアミノ酸残基を同定するため、単一のアラニン置換変異体とのELISA結合アッセイを行って1A11結合強度を評価した。図19は、1A11の各種TIGIT変異体へのELISA結合結果を示している。親マウス7D4抗体と同じように、Q56およびY106の単一のアラニン置換変異体は、1A11の結合を完全に破壊した。G74、Y110、およびH111の単一のアラニン置換変異体は、10μg/mlまでの濃度において、1A11結合の大幅な低減を示した(野生型の40%以上)。