JP7121182B1 - 射出成形機 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形材料の漏出量の抑制と、プランジャと射出シリンダとの接触の抑制を両立しつつ、射出シリンダとプランジャのクリアランスを比較的大きく設けることができる、射出成形機を提供する。【解決手段】成形材料を可塑化する可塑化部と、成形材料を計量し射出する射出部と、可塑化部と射出部とを接続するジャンクションと、制御装置と、を備え、可塑化部は、可塑化シリンダと、スクリュと、を含み、射出部は、射出シリンダと、プランジャと、射出シリンダの後端に設けられプランジャが挿通されるシールリングと、を含み、プランジャと射出シリンダとの間の間隔である第1のクリアランスは、プランジャとシールリングとの間の間隔である第2のクリアランスよりも大きく、シールリングは冷却可能に構成され、プランジャとシールリングとの間に流入した成形材料を固化または増粘させる、射出成形機が提供される。【選択図】図2

Description

本発明は、射出成形機に関する。特に本発明は、スクリュプリプラ式射出成形機に関する。
射出成形機は、成形材料を可塑化し、所定量計量して金型へと射出して、所望の成形品を成形する。現在実用化されている射出成形機は、主にインラインスクリュ方式とスクリュプリプラ方式に大別される。
スクリュプリプラ式射出成形機は、可塑化シリンダと、可塑化シリンダ内に回転自在に設けられるスクリュと、射出シリンダと、射出シリンダ内に進退自在に設けられるプランジャと、を備える。可塑化シリンダ内でスクリュが回転して、成形材料が可塑化され、射出シリンダに送られる。そして、射出シリンダ内のプランジャが後退して成形材料が計量され、計量後プランジャが前進して成形材料を射出する。
かじりを防止するため、プランジャの外面と射出シリンダの内面との間には、ある程度のクリアランスが設けられる必要がある。プランジャと射出シリンダの隙間を通り、可塑化した成形材料が、射出シリンダの後部からわずかに漏出することがある。成形材料の漏出量が大きかったりばらつきがあったりすると、成形の安定性が損なわれる。そこで、通常はクリアランスを可能な限り小さくし、漏出量を低減させるとともに一定に保ち、安定した成形を実現している。
例えば、特許文献1は、スクリュプリプラ式射出成形機において、プランジャと射出シリンダをそれぞれ温度制御することにより、クリアランスを最適値に保つ構成を開示している。
特許第2549357号公報
一部の成形材料においては、プランジャと射出シリンダのクリアランスが小さすぎると、かえって良好な成形が行えない場合や、部材の消耗が激しくなる場合がある。
成形材料には、樹脂に加え、物性向上等を目的として様々なフィラーが添加されることがある。また、成形材料には、金属粉末やセラミック粉末等のフィラーを主材とし、それにバインダーとしての樹脂を混合したものがある。本明細書では、その形状および混合比率を問わず、樹脂に混合されて使用される充填剤を広くフィラーという。このような、樹脂とフィラーとを含んでなる材料を成形材料として使用したとき、プランジャの前後退に伴い、プランジャと射出シリンダの間に入り込んだフィラーがプランジャや射出シリンダに押し付けられて各部に固着する可能性がある。特に、フィラーが金属である場合、固着が起こりやすい。フィラーが部材に固着すると、プランジャの摺動性が悪化して成形が不安定になったり、プランジャや射出シリンダが摩耗したりする虞がある。
また、成形材料によっては、可塑化時に腐食性のアウトガスを生じ得るため、プランジャや射出シリンダが腐食することがある。腐食が進行して表面硬度が低下した状態で射出動作を繰り返すと、プランジャと射出シリンダが接触したときに、成形材料にプランジャまたは射出シリンダを構成する鋼材の一部が溶出する虞がある。このような溶出は、成形品の表面に黒色のスジやモヤ等が発生する成形不良を引き起こす。
フィラーの固着を回避するため、あるいは、プランジャと射出シリンダとの接触を回避するために、プランジャと射出シリンダのクリアランスを大きくすることが考えられる。しかしながら、単純にクリアランスを大きくしただけでは、成形材料の漏出量が増え、成形の安定性が損なわれる。また、クリアランスが大きいとプランジャが射出シリンダ内でぐらつきやすくなるため、かえってプランジャと射出シリンダとの接触が誘発される可能性がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、成形材料の漏出量の抑制と、プランジャと射出シリンダとの接触の抑制を両立しつつ、射出シリンダとプランジャのクリアランスを比較的大きく設けることができる、射出成形機を提供することを目的とする。
本発明によれば、少なくとも樹脂を含んでなる成形材料が供給され、成形材料を可塑化する可塑化部と、可塑化部から送られた成形材料を計量し射出する射出部と、可塑化部と射出部とを接続するジャンクションと、可塑化部および射出部を制御する制御装置と、を備え、可塑化部は、成形材料が供給される可塑化シリンダと、可塑化シリンダ内に回転自在に設けられるスクリュと、を含み、射出部は、可塑化シリンダから成形材料が送られる射出シリンダと、射出シリンダ内に進退自在に設けられるプランジャと、射出シリンダの後端に設けられ、プランジャが挿通されるシールリングと、を含み、プランジャの中心軸と射出シリンダの中心軸とが一致しているときのプランジャと射出シリンダとの間隔である第1のクリアランスは、プランジャの中心軸と射出シリンダの中心軸とが一致しているときのプランジャとシールリングとの間隔である第2のクリアランスよりも大きく、シールリングは冷却可能に構成され、プランジャとシールリングとの間に流入した成形材料を固化または増粘させる、射出成形機が提供される。
本発明に係る射出成形機では、射出シリンダの後端に冷却可能に構成されたシールリングが設けられる。プランジャとシールリングとの間に流入した成形材料は固化または増粘し、プランジャを支持するとともに、成形材料の漏出を抑制する。これにより、プランジャと射出シリンダとの間のクリアランスを比較的大きく設けたとしても、成形材料の漏出が抑制される。また、プランジャの後部がシールリング自体、またはシールリング内の固化もしくは増粘した成形材料により支持されるので、プランジャのぐらつきが抑えられ、プランジャと射出シリンダとの接触が抑制される。
本実施形態に係る射出成形機の射出ユニットの概略構成図である。 シールリング周辺の拡大図である。 シールリング、ホルダおよび温調ブロックの斜視図である。 シールリングの断面図である。 第1のクリアランスと第2のクリアランスとを示す。 ホルダの正面図である。 温調ブロックの断面図である。 可能な限り前進し最も下方に傾斜しているプランジャの状態を示す。 図8のシールリング周辺の拡大図である。 図8のプランジャ先端周辺の拡大図である。 図8のプランジャ先端周辺の拡大図である。
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に説明される各種変形例は、それぞれ任意に組み合わせて実施することができる。
本実施形態の射出成形機は、スクリュプリプラ式射出成形機である。射出成形機は、射出ユニット1と、不図示の型締ユニットと、射出ユニット1および型締ユニットを制御する制御装置6と、を備える。射出ユニット1は、成形材料を可塑化させ、所定量を計量した後に、型締ユニットによって保持される不図示の金型に対して射出する。型締ユニットは、金型を開閉および型締可能に構成されている。型締ユニットは、成形材料が射出されるときは、金型を閉じ、所定圧力の型締力を金型に対して付与する。金型のキャビティ内に射出された成形材料が冷却されて成形品となった後、型締ユニットは金型を開いて成形品を排出し、再度金型を閉じる。型締ユニットとしては、直圧式やトグル式等、周知の構成が採用できる。
図1に示されるように、射出ユニット1は、可塑化部2と、ジャンクション3と、射出部4と、を備える。図1においては、構成の一部を断面図として示している。なお、以下おいて特に断りがない限り、成形材料が射出される側(図1における左側)を「前」とし、成形材料が供給される側(図1における右側)を「後」として説明する。また、以下においては、横型射出成形機を例に説明するが、射出成形機は竪型射出成形機等の他の形態であってもよい。
可塑化部2は、供給された成形材料を可塑化し、前方に送る。可塑化部2は、可塑化シリンダ21と、スクリュ23と、逆止装置25と、スクリュ駆動装置27と、ヒータ29と、を含む。
可塑化シリンダ21は、成形材料が供給される筒体である。可塑化シリンダ21の後側には材料投入口211が形成され、不図示のホッパー等を介して材料投入口211に成形材料が供給される。可塑化シリンダ21は、ヒータ29により所定の温度に加熱される。
スクリュ23は、可塑化シリンダ21内に回転自在に設けられる。スクリュ23は、可塑化シリンダ21に供給された成形材料を、ヒータ29による熱と、剪断熱によって可塑化しながら、前方へと送る。
逆止装置25は、例えば単動シリンダであり、計量完了時にスクリュ23を前進させて流路を塞ぎ、射出時の成形材料の逆流を防止する。なお、逆止装置25に代えてボールバルブ等の他の逆止機構が設けられてもよい。
スクリュ駆動装置27は、スクリュ23を回転させる任意のアクチュエータであってよいが、例えば油圧モータまたは電動モータである。
ジャンクション3は、可塑化部2と射出部4とを接続する。可塑化シリンダ21から送られた成形材料は、ジャンクション3内の連通路を通り、射出シリンダ41へと送られる。なお、ジャンクション3にヒータを設け、ジャンクションを加熱可能に構成してもよい。
射出部4は、可塑化部2から送られた成形材料を計量して、金型へと射出する。射出部4は、射出シリンダ41と、プランジャ42と、ノズルシリンダ43と、ノズル44と、連結部材45と、プランジャ駆動装置46と、カップリング47と、ヒータ48,49と、を含む。
射出シリンダ41は、可塑化シリンダ21から送られた成形材料を計量する筒体である、射出シリンダ41は、ヒータ48により所定の温度に加熱される。
プランジャ42は、射出シリンダ41内に進退自在に設けられる略円柱状の部材である。ただし、プランジャ42の先端は、円錐形状の円錐部を有していてもよい。計量時、プランジャ42は、射出シリンダ41に供給された成形材料の圧力により後退する。プランジャ42の位置を不図示のエンコーダで検出することで、所望の量の成形材料を射出シリンダ41内で計量することができる。ただし、計量にあたっては、プランジャ42をプランジャ駆動装置46により能動的に後退させてもよい。所定量の成形材料を計量後、プランジャ42は所定の速度または圧力で前進され、射出シリンダ41内の成形材料をノズル44へと押し出す。
射出シリンダ41の前方には、ノズルシリンダ43が設けられる。ノズルシリンダ43は、ジャンクション3の連通路と接続され可塑化シリンダ21から送られた成形材料を射出シリンダ41の前方へと送る流路と、プランジャ42により射出シリンダ41から押し出された成形材料をノズル44へと送る流路と、を有する。ノズルシリンダ43は、ヒータ48により所定の温度に加熱される。
ノズルシリンダ43の前面にはノズル44が取り付けられ、ノズル44は少なくとも射出時、金型のゲート口に当接される。プランジャ42によって押し出された成形材料は、ノズル44の先端から金型へと射出される。ノズル44は、ヒータ49により所定の温度に加熱される。
射出シリンダ41の後方は、連結部材45を介してプランジャ駆動装置46と接続される。プランジャ駆動装置46は、プランジャ42を前後退させる任意のアクチュエータであってよいが、例えば油圧シリンダまたは電動シリンダである。プランジャ駆動装置46のピストンと、プランジャ42とは、カップリング47により接続される。
ここで、図2および図3に示されるように、射出部4は、シールリング51と、ホルダ53と、温調ブロック55と、温度センサ57と、をさらに含む。
シールリング51は、射出シリンダ41の後端に設けられ、冷却可能に構成された筒体である。なお、シールリング51における冷却とは、射出シリンダ41の温度よりも、相対的に低い温度に温度調整されることをいう。図4に示されるように、シールリング51は、プランジャ42が挿通される内孔511を有する。
ここで、図5に示されるように、プランジャ42が射出シリンダ41の中心に位置するとき、すなわち、プランジャ42の中心軸と射出シリンダ41の中心軸とが一致しているときの、プランジャ42と射出シリンダ41との間隔を第1のクリアランスC1とし、シールリング51と射出シリンダ41との間隔を第2のクリアランスC2とする。射出シリンダ41およびシールリング51は、第1のクリアランスC1が第2のクリアランスC2よりも大きくなるよう構成される。シールリング51を設けることで、第1のクリアランスC1を比較的大きく設定することができる。
成形中、プランジャ42と射出シリンダ41との間を通った成形材料は、プランジャ42とシールリング51との間に流入することがある。プランジャ42とシールリング51との間に流入した成形材料は、シールリング51により温度が低下し、固化または増粘する。以下、この固化または増粘した成形材料を、固化/増粘物という。固化/増粘物は、プランジャ42とシールリング51との間を封止してそれ以上の成形材料の流入を抑制するので、プランジャ42とシールリング51との間を通ってシールリング51の後端から漏出され得る成形材料の量を削減することができる。また、シールリング51自体、あるいは固化/増粘物により、プランジャ42の後部が支持されるので、射出シリンダ41内でプランジャ42がぐらつくことが抑制される。なお、シールリング51の温度が適正に保たれていれば、固化/増粘物がプランジャ42を固定しようとする力は、プランジャ42を前後退させる力よりも大幅に低いので、固化/増粘物が計量・射出の妨げになることはない。
ホルダ53は、シールリング51を保持するとともに、シールリング51を射出シリンダ41に固定する。具体的に、本実施形態では、ホルダ53にはシールリング51の後端が挿通され、ホルダ53が不図示のボルト等で連結部材45に固定される。これにより、シールリング51が射出シリンダ41の後端に位置決めされる。図6に示されるように、ホルダ53は、プランジャ42が挿通される内孔531と、温度センサ57の少なくとも一部が挿通される挿通穴532と、を有する。内孔531の内面には、周方向に沿って複数の溝が形成される。このような構成によれば、プランジャ42とホルダ53との接触が抑えられるとともに、シールリング51から排出された成形材料が、内孔531の溝を通って好適に後方に排出される。内孔531の溝により、排出される成形材料の量が均一化され、ひいてはプランジャ42の摺動抵抗も略一定に保たれる。
温調ブロック55は、シールリング51に直接的または間接的に当接して、シールリング51を冷却する。本実施形態においては、温調ブロック55はホルダ53に当接し、ホルダ53を介してシールリング51を冷却している。図7に示されるように、温調ブロック55は、内部に温調媒体が流通可能な媒体流路551と、プランジャ42が挿通される内孔552と、を有する。媒体流路551の導入口と排出口には、それぞれ継手553,554が設けられる。内孔552は、プランジャ42が接触しない十分な大きさに形成されればよい。シールリング51後方から排出された成形材料は、ホルダ53の内孔531および温調ブロック55の内孔552を通り、連結部材45の下方へと落下する。落下位置には、排出された成形材料を受けるための受皿が設置されていてもよい。
本実施形態においては、温調媒体は具体的には圧縮空気である。本実施形態では、温調媒体を所望の圧力へと調節する減圧弁555と、媒体流路への温調媒体の供給のオン/オフを切り換える開閉弁556と、温調媒体を所望の流量へと調節する流量弁557と、が設けられる。不図示のエアコンプレッサから供給された圧縮空気は、減圧弁555、開閉弁556、流量弁557を通り所定の圧力および流量に調節された後、継手553を介して媒体流路551へと送られる。媒体流路551を通り熱交換を終えた圧縮空気は、継手554を介して、温調ブロック55の外へと排出される。なお、本実施形態では、温調ブロック55に供給される温調媒体は圧縮空気であったが、例えば、水や油等の他の流体が使用されてもよい。
温度センサ57は、シールリング51の温度を検出するセンサである。温度センサ57は任意のセンサであってよいが、例えば熱電対である。本実施形態においては、温度センサ57は、直接的にはホルダ53の温度を測定することで、間接的にシールリング51の温度を検出している。温度センサ57は、ホルダ53の挿通穴532に挿通され、センサカバー533により固定される。
本実施形態においては、制御装置6は、温度センサ57の検出値に基づき、シールリング51が所望の温度となるよう開閉弁556を制御する。すなわち、制御装置6は、シールリング51の温度をフィードバック制御する。好ましくは、制御装置6は、シールリング51の温度をPID制御する。このようにすれば、より正確にシールリング51の温度管理を行う事ができる。シールリング51の温度は、成形材料が成形可能な温度帯よりも低く設定される。換言すれば、シールリング51の温度は、可塑化シリンダ21、射出シリンダ41、ノズルシリンダ43およびノズル44の温度よりも低く設定される。成形材料の種類にもよるが、シールリング51の温度の設定値は、例えば100℃前後である。
制御装置6は、可塑化部2および射出部4を含む射出ユニット1と、型締ユニットと、を制御する。より具体的には、制御装置6は、各部の設定値と、温度センサ57を含む各種測定器の検出値等に基づき、少なくとも、逆止装置25と、スクリュ駆動装置27と、プランジャ駆動装置46と、ヒータ29,48,49と、開閉弁556と、を制御する。制御装置6は、所望の制御を実現する限りにおいて、ハードウェアとソフトウェアを任意に組み合わせて構成されてよく、例えば、CPU、RAM、ROM、補助記憶装置、出入力インターフェースを有している。
以上のような構成の射出成形機によれば、第1のクリアランスC1を比較的大きく設けたとしても、シールリング51内の固化/増粘物によりプランジャ42とシールリング51との間が封止されるので、成形材料の漏出が抑制される。また、プランジャ42の後部はシールリング51自体、あるいは固化/増粘物により支持されるので、プランジャ42のぐらつきが抑えられ、プランジャ42と射出シリンダ41の接触が抑制される。
ここで、本実施形態の射出成形機に使用される成形材料について説明する。成形材料としては、少なくとも樹脂を含んでなる成形材料が広く使用可能である。ただし、本発明は、樹脂とフィラーとを含んでなる成形材料に対して、好適である。特に、フィラーが射出シリンダ41やプランジャ42の鋼材との親和性が高い材料からなるとき、より好適である。射出シリンダ41やプランジャ42の鋼材との親和性が高い材料とは、例えば金属であり、より具体的にはステンレス、ニッケルクロム合金、チタン等が例示される。また、本発明は、可塑化時に腐食性ガスを生じる成形材料に対して、好適である。
樹脂と金属のフィラーとを含んでなる材料は、例えば、MIM材料およびプラスチックマグネット材料である。MIM材料は、粉末射出成形に使用される材料の一種であり、フィラーとしての金属粉末と、バインダーとしての樹脂と、を混合してなる成形材料である。プラスチックマグネット材料は、フィラーとしての磁性金属粉末と、バインダーとしての樹脂と、を混合してなる成形材料である。
フィラーは、粉末状であってもよいし、繊維状であってもよい。以下においては、粉末状のフィラーの粒径と、繊維状のフィラーの太さとを総称して、直径という。
可塑化時に腐食性ガスが発生しやすい成形材料としては、樹脂自体から腐食性ガスを生じる材料や、難燃剤が添加されている材料が例示される。樹脂自体から腐食性ガスを生じる材料は、例えば、フッ素樹脂やポリ塩化ビニルである。難燃剤が添加されることが多い材料は、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリカーボネート-アクリロニトリルブタジエンスチレンアロイ、変性ポリフェニレンエーテル、オレフィン径熱可塑性エラストマー、ポリアミド(脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドを含む)、ポリブチレンテレフタレート、飽和ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートを含む)である。
ここで、第1のクリアランスC1および第2のクリアランスC2の、好適値について説明する。
第2のクリアランスC2は、成形材料に応じて設定される。樹脂とフィラーとを含んでなる成形材料が使用される場合、フィラーの固着やフィラーによる摩耗を防止するため、第2のクリアランスC2は比較的大きく設定されることが望ましい。具体的に、第2のクリアランスC2は、フィラーの最大直径を2で除した値以上であることが好ましい。ただし、第2のクリアランスC2は、5μm以上であることが好ましい。一方で、第2のクリアランスC2が大きすぎると、射出シリンダ41内の成形材料の滞留量の増加や、射出時の圧力損失、成形材料の漏出量の増加等が生じる可能性がある。そのため、第2のクリアランスC2は、フィラーの最大直径の値以下であることが好ましい。それ以外の成形材料が使用される場合は、第2のクリアランスC2は、従来の射出成形機におけるプランジャ42と射出シリンダ41とのクリアランスと同程度の大きさであってよい。具体的に、第2のクリアランスC2は、5μm以上100μm以下であってよい。また、フィラーを含む成形材料であっても、そのフィラーが射出シリンダ41やプランジャ42の鋼材に対して固着しにくい材料からなる場合は、第2のクリアランスC2は、5μm以上100μm以下であってよい。
本実施形態においては、プランジャ42の後部はシールリング51自体、あるいは固化/増粘物により支持される。これによりプランジャ42のぐらつきは抑えられるが、シールリング51内の支持位置を中心にプランジャ42が傾く可能性もある。そこで、プランジャ42の傾斜角度が最大となった場合でも、プランジャ42の先端と射出シリンダ41とが接触しないように、第1のクリアランスC1の値が設定されることが望ましい。
ここで、プランジャ42が最も前進しかつ最も傾斜した状態を想定する。すなわち、プランジャ42において、任意の母線である第1の母線を有する側を一方側、第1の母線と反対側の母線である第2の母線を有する側を他方側としたとき、プランジャ42が可能な限り前進し、プランジャ42の一方側がシールリング51の後端と接しており、プランジャ42の他方側がシールリング51の前端と接した状態を想定する。ここでは、図8に示されるように、一方側を上側、他方側を下側として、下方に傾斜したプランジャ42に基づき説明を行う。なお、説明のため、図8における各部の寸法比率は誇張して示されている場合がある。
まず、プランジャ42の傾斜角度θを求める。図9に示されるように、シールリング51の幅をA、内孔511の断面の中心から、内孔511の下端への垂線の大きさをB、内孔511の断面の中心と、内孔511の下側の前端との距離をC、内孔511の断面の中心から、プランジャ42の下端への垂線の大きさをD、内孔511の断面の対角線と、内孔511の下端とのなす角度をθ、内孔511の断面の対角線と、プランジャ42の下端とのなす角度をθ、とする。ここで、Bは、Dに第2のクリアランスC2を足した値であり、シールリング51の内孔511の直径を2で除した値である。Cは、内孔511の断面の対角線を2で除した値である。Dは、プランジャ42の半径と一致する。ゆえに、
θ=θ-θ
={tan-1(2B/A)}-{sin-1(D/C)}
が求められる。
次いで、内孔511の下側の前端と、プランジャ42の最下限位置を通る水平線との距離Eを求める。プランジャ42の先端が円錐形状を有するとき、プランジャ42の先端の頂点が前進限に位置する場合と、プランジャ42の上側の上端が前進限に位置する場合とがある。なお、前進限とは、プランジャ42が可能な限り前進したときの、プランジャ42における最も前の位置をいう。
まずは、プランジャ42の先端の頂点が前進限に位置する場合から説明する。ここで、図10に示されるように、プランジャ42の最下限位置と、シールリング51の前端を通る垂線との距離をF、前進限と、シールリング51の前端を通る垂線との距離をG、前進限と、プランジャ42の最下限位置との距離をH、プランジャ42の円錐部の母線の大きさをI、プランジャ42の円錐部の母線と、プランジャ42の最下限位置を通る水平線とのなす角度をθ、プランジャ42の円錐部の母線と、底面とのなす角度をθ、とする。このとき、
E=F×tanθ
=(G-H)×tanθ
={G-(I×cosθ)}×tanθ
=[G-{I×cos(90°-θ-θ)}]×tanθ
となる。
次に、プランジャ42の上側の上端が前進限に位置する場合について説明する。図11に示されるように、同様にしてF、G、H、θ、θをおく。このとき、
E=F×tanθ
=(G-H)×tanθ
=[G-{2D×cos(θ+θ)}]×tanθ
=[G-{2D×cos(90°-θ)}]×tanθ
となる。なお、プランジャ42が円錐部を有しない場合は、θ=0°として扱う。
以上のようにして求めたEから、第1のクリアランスC1の好適値が求められる。シールリング51の内孔511の直径をJとすると、第1のクリアランスC1は、(E+B-D、すなわち、(E+C2)より大きいことが好ましい。換言すれば、第1のクリアランスC1は、射出シリンダ41の中心軸と、プランジャ42の最下限位置(すなわち、プランジャ42の下側における前端位置)との距離から、プランジャ42の半径を減じた値よりも大きいことが好ましい。第1のクリアランスC1がこのような値であれば、プランジャ42が傾斜したとしても射出シリンダ41の内孔側面に接触することが理論上はないので、プランジャ42と射出シリンダ41との接触をより防止できる。なお、第1のクリアランスC1が大きいほど、射出シリンダ41内の成形材料の滞留量の増加や射出時の圧力損失が大きくなるので、第1のクリアランスC1は、500μm以下であることが好ましい。
樹脂とフィラーとを含んでなる成形材料が使用されるとき、シールリング51は、フィラーに対して耐焼付性があり、摩耗しにくい材料から構成されることが好ましい。具体的には、シールリング51は、フィラーとの摩擦係数が0.6以下であって、ロックウェル硬さHRCが60以上である材料からなることが好ましい。なお、ここでの摩擦係数は、JIS R 1613(2010)に準拠したボールオンディスク法による磨耗試験方法によって計測された数値に基づく。このような材料で構成されたシールリング51は、フィラーとの固着が起こりにくく、かつ一定の硬度を有しているので、消耗しにくく長時間使用することができる。本実施形態では、ステンレスからなるフィラーに対して、シールリング51をサーメタル(登録商標)CT510にて構成した。
本発明は、すでにいくつかの例が具体的に示されているように、図面に示される実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形または応用が可能である。
2 可塑化部
3 ジャンクション
4 射出部
6 制御装置
21 可塑化シリンダ
23 スクリュ
41 射出シリンダ
42 プランジャ
51 シールリング
53 ホルダ
55 温調ブロック
57 温度センサ
556 開閉弁
C1 第1のクリアランス
C2 第2のクリアランス

Claims (9)

  1. 少なくとも樹脂を含んでなる成形材料が供給され、前記成形材料を可塑化する可塑化部と、
    前記可塑化部から送られた前記成形材料を計量し射出する射出部と、
    前記可塑化部と前記射出部とを接続するジャンクションと、
    前記可塑化部および前記射出部を制御する制御装置と、を備え、
    前記可塑化部は、
    前記成形材料が供給される可塑化シリンダと、
    前記可塑化シリンダ内に回転自在に設けられるスクリュと、を含み、
    前記射出部は、
    前記可塑化シリンダから前記成形材料が送られる射出シリンダと、
    前記射出シリンダ内に進退自在に設けられるプランジャと、
    前記射出シリンダの後端に設けられ、前記プランジャが挿通されるシールリングと、
    温調媒体が流通可能な媒体流路を有し、前記シールリングに直接的または間接的に当接して前記シールリングを冷却する温調ブロックと、
    を含み、
    前記プランジャの中心軸と前記射出シリンダの中心軸とが一致しているときの前記プランジャと前記射出シリンダとの間の間隔である第1のクリアランスは、前記プランジャの前記中心軸と前記射出シリンダの前記中心軸とが一致しているときの前記プランジャと前記シールリングとの間の間隔である第2のクリアランスよりも大きく、
    前記シールリングは冷却可能に構成され、前記プランジャと前記シールリングとの間に流入した前記成形材料を固化または増粘させる、射出成形機。
  2. 前記第1のクリアランスは、前記プランジャにおいて、任意の母線である第1の母線を有する側を一方側、前記第1の母線と反対側の母線である第2の母線を有する側を他方側としたとき、前記プランジャが可能な限り前進し、前記プランジャの一方側が前記シールリングの後端と接しており、前記プランジャの他方側が前記シールリングの前端と接した状態における、前記射出シリンダの中心軸と、プランジャの他方側における前端位置との距離から、前記プランジャの半径を減じた値よりも大きい、請求項1に記載の射出成形機。
  3. 前記射出部は、前記シールリングを保持するとともに、前記シールリングを前記射出シリンダに固定するホルダをさらに含む、請求項1または請求項2に記載の射出成形機。
  4. 前記射出部は、
    前記シールリングの温度を検出する温度センサと、
    前記媒体流路への前記温調媒体の供給のオン/オフを切り換える開閉弁と、をさらに含み、
    前記制御装置は、前記温度センサの検出値に基づき、前記シールリングが所望の温度となるよう前記開閉弁を制御する、請求項に記載の射出成形機。
  5. 前記成形材料は、前記樹脂と、フィラーと、を含んでなる、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の射出成形機。
  6. 前記第2のクリアランスは、前記フィラーの最大直径を2で除した値以上である、請求項に記載の射出成形機。
  7. 前記フィラーは、金属からなる、請求項または請求項に記載の射出成形機。
  8. 前記シールリングは、前記フィラーとの摩擦係数が0.6以下であり、ロックウェル硬さHRCが60以上である材料からなる、請求項から請求項のいずれか1項に記載の射出成形機。
  9. 前記成形材料は、可塑化時に腐食性ガスを生じる材料である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の射出成形機。
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